08/12/15 平成20年12月15日薬事・食品衛生審議会医療機器安全対策部会議事録 薬事・食品衛生審議会 医療機器安全対策部会 議事録 1.日時及び場所    平成20年12月15日(月)16:00〜    厚生労働省専用第18〜20会議室 2.出席委員(17名)五十音順    天 笠 光 雄、 井 部 俊 子、◎笠 貫   宏、 木 下 勝 之、    許   俊 鋭、 釘 宮 豊 城、 佐 伯 晴 子、 澤     充、   ○勝 呂   徹、 高 谷 節 雄、 土 屋 利 江、 土 屋 文 人、    那須野 修 一、 西 島 正 弘、 配 島 由 二、 松 谷 雅 生、    目 黒   勉            (注) ◎部会長  ○部会長代理   欠席委員(5名)五十音順    内 田 恵理子、 甲 斐 知恵子、 古 幡   博、 宮 村 達 男、    横 井 英 人 1.行政機関出席者    岸 田 修 一(大臣官房審議官)    森   和 彦(安全対策課長)    倉 持 憲 路(安全使用推進室長) 松 田   勉(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)他 4.備  考   本部会は、公開で開催された。 ○事務局 定刻になりましたので、ただ今から平成20年度第2回「薬事・食品衛生審議 会薬事分科会医療機器安全対策部会」を開催いたします。本日の部会は、従前の取扱い と同様、公開で行うこととしております。なお、カメラ撮り等は議事に入る前までとさ せていただきますので、マスコミの皆様方におかれましては御協力をお願いいたします。  本日の委員の出席の状況ですが、現在、定数22人の委員中16名の委員に御出席いた だいていますので、定足数に達しております。なお、木下委員におかれましては本日出 席との御連絡をいただいていますが、遅れている模様です。内田委員、甲斐委員、古幡 委員、宮村委員、横井委員は欠席との御連絡を受けております。本日御出席の先生方に おかれましては、お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。  また、前回の7月30日に開催した本部会以降、委員の改選はありませんでしたが、事 務局の職員に異動がありましたので、御紹介をさせていただきます。まず、大臣官房審 議官医薬担当の岸田でございます。医薬品医療機器総合機構安全管理監の松田でござい ます。それから、私ですが、医薬食品局安全対策課の飯村と申します。本日はよろしく お願いいたします。  続いて、利益相反に関する平成20年3月24日の薬事・食品衛生審議会薬事分科会の 申合せである審議会参加に関する遵守事項についてですが、本日の議題は報告事項のみ となっておりますので、先ほどの遵守事項の対象となるような議題はありません。それ では、議事に入りますので、カメラ撮りはここまでとさせていただきます。高谷先生も、 現在下にはいらっしゃるということですが、遅れている模様ですので、訂正させていた だきます。これ以降の進行は、笠貫部会長にお願いしたいと思います。 ○笠貫部会長 議事に入らせていただきます。初めに、事務局の方から資料の確認をお 願いいたします。 ○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日の資料として、順に座席表、委員名 簿、議事次第、資料の一覧を配付しております。資料の一覧に資料番号を振っておりま すので、こちらも適宜御確認になりながら、御覧いただければと思います。各資料の右 上に資料番号を記載しておりますので、御確認ください。議題1は「医療機器の市販後 安全対策について(報告)」に関する資料として、資料1-1「人工呼吸器回路における人 工鼻と加温加湿器の併用に係る添付文書の自主点検等について」、資料1-2「ペン型イ ンスリン注入器の取扱いについて(医療機関への注意喚起及び周知徹底依頼)」、資料1-3 「尿管ステントに係る添付文書の改訂指示等について」、資料1-4「自己血糖測定器に おける測定範囲を超えた場合の表示等に係る自主点検等について」、資料1-5「インス リンペン型注入器等と注入用針の組合せ使用に係る『使用上の注意』の改訂等について」、 資料 1-6「ジャクソンリース回路の回収等について(注意喚起及び周知依頼)」です。  議題2の「医療機器の不具合等報告について(報告)」に関する資料としては、資料2-1 「医療機器の不具合等報告について」、資料2-2「医療機器不具合等報告」、資料2-3 「医療機器外国措置報告」、資料2-4「医療機器研究報告」です。  議題3の「医療機器の感染症定期報告について(報告)」に関する資料としては、資料 3-1「感染症定期報告感染症別文献一覧表」、資料3-2「感染症定期報告の報告状況」で す。  議題4の「その他」に関する資料としては、参考資料1「医療機器市販直後安全使用 情報収集事業の実施について」、参考資料2「微量採血のための穿刺器具(針の周辺部分 がディスポーザブルタイプでないもの)の取扱いに係る周知徹底及び調査の実施につい て」です。以上です。過不足等ありましたら、事務局までお申し付けください。  なお、先ほども御紹介しましたように、本日は審議事項はありません。すべて報告事 項ですので、よろしくお願いいたします。資料はよろしいでしょうか。資料確認は以上 とさせていただきます。 ○笠貫部会長 資料は御確認いただいたと思います。本日は審議事項はないということ ですので、報告事項から入らせていただきます。議題1について、事務局の方から御説 明をお願いいたします。 ○事務局 資料1-1「人工呼吸器回路における人工鼻と加温加湿器の併用に係る添付文 書の自主点検等について」です。2ページに9月11日付けで発出いたしました通知があ ります。本件については、この通知の内容を「医薬品・医療機器等安全性情報」のNo.251 号に掲載しておりますので、そちらの方が分かりやすくなっておりますため、8ページ で説明をさせていただきます。左端に8と書いてあり、真ん中には12と書いてあるペー ジです。「加温加湿器の併用による人工鼻の閉塞について」ということで、概要として は、財団法人日本医療機能評価機構におけるヒヤリ・ハット事例収集等事業において、 下の表のように人工鼻と加温加湿器を併用していた事例が報告されたということです。 この内容は、表にありますように、ヒヤリ・ハットの報告書のNo.7からの抜粋です。「長 時間人工呼吸器を使用している患者で、排痰のため加温加湿器を使用していた。夜間、 呼気吸気ともに回路内に水滴が溜まるために頻回に排出していたが、勤務者交替後、医 師が回路に人工鼻がついている事を確認した」ということです。これはヒヤリ・ハット ということで、重篤な健康被害等は起こってはいないのですが、二つ、加温加湿器と人 工鼻をつないでいたということで、回路に水が頻回に溜まるという状況が起きていたと いうヒヤリ・ハットの報告です。  表の下ですが、人工鼻というのは、患者の呼気の熱と水分を補捉し、これらを利用し て呼気ガスを加温加湿する器具です。他方、加温加湿器は、人工呼吸器等から送られる 患者回路内のガスを加温加湿する装置です。これらは同じような機能を持っているので すが、この人工鼻と加温加湿器とを併用した場合には、人工鼻の過度の吸湿による流量 抵抗の増加や人工鼻の閉塞のリスクがあり、人工呼吸器等の低圧アラーム値の設定によ っては、回路の外れやリークが生じても、低圧アラームが作動しなくなるおそれがあり ます。  このため、これら医療機器の添付文書を調査した結果、一部の人工鼻及び加温加湿器 の添付文書において、互いの製品を併用禁忌とする記載がなかったり、記載はあるもの のその理由が書いていないというものが見られました。以上のことから、2ページにあ る9月11日付けの通知で、当該医療機器を扱う製造販売業者に対して、添付文書の自主 点検を行い、点検の結果に応じて、添付文書の改訂と医療機関への情報提供を行うよう に指示したというものです。  9ページ、真ん中に13と書いてある所に概略図が書いてあります。図1、図2が人工 鼻、あるいは加温加湿器を使用した正しい人工呼吸器回路の簡略図で、患者に空気を提 供する際に加温加湿する装置ということで、人工鼻と加温加湿器がそれぞれ単独で用い られる。これは問題がないのですが、下にある図3のように併用しますと、加温加湿器 の側から湿度を与えられた空気、ガスが人工鼻に送られてくる。そうすると、人工鼻が 過度に吸湿すると、ここで人工鼻が閉塞してくるおそれがあるということで、自主点検 と添付文書の改訂を指示したものです。  10ページの具体的な添付文書の改訂の点検と指示の内容ですが、人工鼻に関しては、 (1)併用禁忌欄に「加温加湿器」を記載するとともに、その併用禁忌の理由として、「加 温加湿器を使用した場合、人工鼻のフィルタが閉塞し、換気が困難となるおそれがある」 旨を記載するということです。加温加湿器側が(2)で、併用禁忌欄に「人工鼻」を記載 するとともに、その理由として「人工鼻のフィルタは、加温加湿器との併用により閉塞 し、換気が困難となるおそれがある」旨を追加する。こうしたものを指示したのが資料 1-1です。  続いて、資料1-2「ペン型インスリン注入器の取扱いについて(医療機関への注意喚起 及び周知徹底依頼)」です。これも2ページに通知があり、10月3日付けで医政局の総 務課長と医薬食品局安全対策課長の連名で発出したものです。この通知本文の3行目で すが、「今般、医療機関において、針が交換可能な個人使用専用の器具であるペン型イ ンスリン注入器の複数の患者への使用事例が判明いたしました」ということで、これは 大阪府内の病院なのですが、大阪府内の病院からインスリンのペン型注入器を複数の患 者に使用していたという情報がありました。これを受けて対応した通知です。このペン 型インスリン注入器というのは、糖尿病患者がインスリン療法において使用する器具で、 インスリンのカートリッジ製剤と注射器が一体となったタイプのキット製剤及びカート リッジを交換できるタイプの注入器があります。  図がありますので、4ページです。ただ今説明したインスリンペン型注入器と呼ばれ るものの一つ目が4ページのキット製剤で、代表的な例としてはペン型タイプで、注入 器のペンの中に薬液が入っています。「インスリンカートリッジ」と書いてある所の中 に薬液が入っているということで、キットということで、これは一体型で、全体として 医薬品の扱いというようになります。下はイノレットという製品なのですが、ペンでは なくて特殊な形状をしたキット製剤ということで、ダイヤルを大きくしたというタイプ のキット製品です。  5ページですが、これがカートリッジを交換できるタイプの注入器ということで、上 の真ん中に「カートリッジホルダー」とありますが、ここに薬液のカートリッジだけを 交換してセットする。正にペン型の注入器で、薬液をセットして針を付けて単位設定ダ イヤルを回して、投与単位を設定して、注入ボタンを押すと、インスリンが投与される というものです。  2ページの通知に戻って、真ん中辺ですが、これらは「いずれも個人専用として使用 する器具であり、使用時に血液がカートリッジ内に逆流した場合、感染症の原因となる 可能性があるため、複数の患者に使用しない旨が添付文書中に記載されているところで す」。添付文書に書いてあったのですが、こうした事故があったことが分かりましたの で、「そこで、医療安全対策に万全を期すため、当該機器の使用について、貴管下の医 療機関に対し、添付文書による使用方法の再確認を行う等、適切な使用について、改め て周知徹底をお願いします」ということで、都道府県を通じて医療機関にこのペン型イ ンスリン注入器の取扱いを徹底していただいたものです。  6ページには製品の一覧があります。それから、先ほど紹介した2ページの通知は、 都道府県を経由した医療機関宛の依頼文ですが、8ページにはメーカー宛の通知もあり ます。  8ページです。これは安全対策課長から各製造販売会社に送ったものですが、医療機 関において、ペン型インスリン注入器の複数の患者への使用事例が判明したことから、 周知徹底のため別添の通知を送ったところです。各会社に対しても、このペン型インス リン注入器、それから同様のペン型タイプの注入器があるヒト成長ホルモン等について、 適正に使用されるよう改めて医療機関に、感染症の原因となるおそれがあるため、複数 の患者には使用しない旨の情報提供を徹底してくださいということのお願いをした文書 です。  10ページですが、この通知を受けて、実際にメーカー、代表としてノボノルディスク ファーマ社の文書ですが、各社がこうした文書を医療機関に配布いただいて、同じよう なものを患者向けということでも企業から配布いただきました。真ん中上段に大きく書 いてありますが、「『1本の製剤を複数の患者に使用しないこと』。1本の製剤を複数 患者に使用すると、毎回新しい針を交換した場合でも、カートリッジ内への血液混入等 により、感染の原因となるおそれがあります」ということで、こういった注意の徹底を 図っていただくことで対応したものです。ちなみに、これについては、医療機関からは 先ほどの最初の一例の大阪府の医療機関のほか3件、計4件の使い回しがあったという 報告を受けております。以上が資料1-2です。  続いて、資料1-3「尿管ステントに係る添付文書の改訂指示等について」です。こち らも2ページに通知があり、10月6日付けの通知を付けております。これはこの通知の 本文の1行目にあるように、通知でいう「尿管ステント」とは、尿管に挿入して留置す ることにより、尿管の確保及び排膿、排液、洗浄等の用途で用いる柔軟性のあるチュー ブです。  通知の二段落目ですが、今般、尿管ステントを長期留置中に腸管総腸骨動脈瘻を来し たとの症例が、尿管ステントの製造販売業者から報告されたところでした。この当該事 象については、患者の原疾患の治療歴と尿管ステントの長期留置等の複合的な要因によ って起こり得るものと考えました。発生頻度については、ごくわずかとは考えるのです が、こうしたものができた場合には、ときに致命的な合併症であるという認識です。こ の尿管ステントを長期留置する上でのリスクについては、報告があった当該製品以外の 尿管ステントについても同様であるということですから、都道府県宛の通知となってい ますが、貴管下の製造販売業者に対して、下記のとおり添付文書の改訂を行うとともに、 医療機関への情報提供を徹底して注意喚起をしてください、という通知です。  3ページの「記」、具体的な指示内容ですが、添付文書の「警告」欄に、以下のとお り追記することということで、「骨盤内手術及び放射線治療の既往歴があり、尿管ステ ントを長期間留置している場合には、尿管と大動脈又は腸骨動脈の間に尿管動脈瘻が形 成されることがあり、尿管ステント交換時に大量出血を来すおそれがあるため、注意深 い経過観察を行うとともに、尿道からの出血を認めた場合には、逆行性腎盂造影や血管 造影等を行い、適切な処置を行うこと」、こうした内容を警告欄に書くことを指示して おります。これも指示しただけではなく、4にありますが、改訂の状況については、1 か月後に医薬品医療機器総合機構に報告することということで、フォローもしていると いう状況です。すべてではない可能性があったのですが、把握していた製品一覧が4ペ ージに記載してあり、こうした尿管ステントは共通の問題だということで、これらの製 品に対して警告欄に記載を求めたという措置です。以上が資料1-3についてです。  続いて、資料1-4「自己血糖測定器における測定範囲を超えた場合の表示等に係る自 主点検等について」です。これも2ページに通知を付けております。10月31日付けの 安全対策課長と医療機器審査管理室長の連名通知です。この自己血糖測定器とは、通知 本文の1行目にあるように、「自己検査用グルコース測定器」が一般的名称です。糖尿 病の患者の血糖管理のために、患者御自身が穿刺器具で指先などから微量な血液を採取 して、血糖値を測定するための簡易型の装置です。この穿刺器具については、使い回し の問題について、議題4の参考資料2で詳しく紹介します。  この通知を出した経緯については、7ページはロシュ・ダイアグノスティックス株式 会社の記者発表資料を参考に付けておりますが、「アキュチェックアビバ」という製品 です。この製品は、先ほどの説明のとおり、本来は患者が御自身で血糖を測定する機械 ですが、簡易な操作で迅速に結果が表示されるため、救急医療の現場でも使われており ます。国内のある病院から、糖尿病の患者が意識障害の状態で救急搬送されてきた際に、 低血糖によるものなのか、高血糖による意識障害なのかを調べるために、このアキュチ ェックアビバという装置で測定したところ、エラーが表示され、測定ミスかと考えて、 測定をし直したところでも、やはりエラーとしか表示がされず、高血糖なのか、低血糖 なのかの判断ができなかったという報告がありました。この事例は、病院の救急の現場 での事例でしたので、検査室で行う血液検査の結果からは約1,400mg/dLという非常に高 い血糖の値だったのですが、取扱説明書の説明では600mg/dLを超える場合には、「HI」 という表示がなされると記載されていたのですが、メーカーが調べたところ4けたにな るような、1,000を超える場合ではエラーが表示される設定となっていたことが判明し ました。  このように実際の表示される内容と取扱説明書の内容が違うことが分かったというこ とで、2ページの通知本文の二段落目に記載しておりますように、表示される内容は血 糖管理等において重要な情報であるため、今回のロシュ社以外のものも含めて、各製造 販売会社に対して添付文書と取扱説明書上の表示される情報の内容と実際に表示される 内容について、自己点検して記載が誤っていたり、記載がされていない場合には、改訂 等を行い、医療機関と患者に情報を提供するように依頼したという通知です。  3ページですが、こうした指示をしただけではなくて、やはりフォローが必要だとい うことで、3にありますが、通知発出後2週間後までに、医薬品医療機器総合機構に報 告をすることを求めております。この結果、表示と実際の添付文書や取扱説明書の記載 が異なるのはロシュ社の製品だけだったのですが、添付文書に書いていないような製品 は幾つかありましたので、点検の結果、現在その改訂作業を各企業が行っているという 状況です。こちらが資料1-4の説明です。  続いて、資料1-5です。これも糖尿病の治療関係で、「インスリンペン型注入器等と 注入用針の組合せ使用に係る『使用上の注意』の改訂等について」です。これも2ペー ジに通知を付けており、11月17日付けの都道府県宛の通知です。  製造販売業者に宛てた通知がありますので、まずは3ページを御覧ください。本件は、 資料1-2で複数人使用に関する注意喚起を行ったインスリンのペン型注入器と、そのと きに使う注入用針の針に関する通知です。糖尿病の患者は、インスリン療法に使用する インスリンペン型注入器やインスリンキットを渡されており、一緒に、医薬品・ワクチ ン注入用針を医療機関から交付されております。これまでのインスリンのペン型注入器 やインスリンのキット製品の添付文書には、特定の針を使ってくださいというように、 私のこのペンは、この会社のこういう針を使ってくださいという形で、針は限定されて おりました。これは、糖尿病の患者は通常、複数のタイプのインスリンを渡されており、 インスリンのペンごとに針を交換するのが煩わしいということで、共通で針を使えるよ うにしてほしいという要望の声がありました。それを受けて、JISの規格化が検討さ れ、JIS規格もできたということで、今般JIS規格に準拠した各社のインスリンペ ン型注入器と注入用針の組合せについて、糖尿病協会を中心として確認試験を行ったと ころ、現在、流通している製品については、基本的にはJIS規格に準拠した製品同士 であれば、使用できることが確認されたということで、使用上の注意の改訂を行うとと もに、患者の正しい理解が得られるよう、患者向けの取扱説明書の内容を改めるなど、 薬局なども含めて、医療機関、患者に対して情報提供を行うようにお願いしますという 通知です。  4ページです。具体的な指示として、「記」以下の所がこの4ページの記載ですが、 1と2は同じ話です。1は医療機器であるインスリンペン型注入器に対する指示で、2 は医薬品になるインスリンキット製剤と、インスリンペン型注入器の機能の一部を有す るインスリンカートリッジ製剤の添付文書の改訂の指示です。内容は同じですので、1 で説明しますが、1)「本品は JIS T3226-2に準拠したA型専用注射針を用いて使用す ること」、括弧書きで、「本品はA型専用注射針との適合性の確認を○○○○で行って いること」。○○○○には製品名を書いていただくのですが、これで行っているという ことで、これまでの特定の会社の製品の針を使いなさいという表現を、こうしたJIS に合った針を使ってくださいという形に改めているものです。  2)「本剤とA型専用注入針との装着時に液漏れ等の不具合が認められた場合には、新 しい注射針に取り換える等の処置方法を患者に十分指導すること」ということです。J ISができて、組合せで使用できることは確認したのですが、やはり液漏れ等がある場 合を否定できませんので、その際には新しい針に換えてくださいということを、先生か ら患者に十分指導いただくという措置が2)です。これも3にあるように、言いっ放しと いうことはやめて、通知発出の1か月後までに、医薬品医療機器総合機構宛に対応状況 を報告することということで、対応を指示したものです。  7ページです。先ほどJISの針とペンであれば、原則として使えるということを申 したのですが、実は1種類だけ例外がありました。それがあったために出した通知がこ の7ページの通知です。サノフィ・アベンティス社の販売する「オプチクリック」とい うペンの製品と、ニプロの「ペンニードル」という針、この組合せだけ使用が合わない ことが確認されました。ニプロの方でペンニードルの形状を変更いただいて、現在、発 売されているペンニードルについてはオプチクリックとも、あるいは他社のインスリン のペンとも適合はできます。ただ、変更前の製品がオプチクリックとの相性が悪かった ことが分かりました。そうしたことから、安全対策課長と審査管理課長の連名で、両社 の協議の上で、医療機関、薬局及び患者に情報提供を行うよう指示したのがこの通知で す。  8ページです。このオプチクリックとペンニードルの形状変更前の製品は使えません ということで、情報提供していただいたのですが、これがサノフィ・アベンティス社の 名前で配布している文書です。このようにオプチクリックにペンニードルを御使用の際 は、内袋の表面又は裏面に、JIS T3226-2A型の表示があることを御確認ください。もし くは、針ケースの保護シールの「NIPRO」の表示を御確認くださいということで、形状変 更前の使えない針と、形状変更後の使える針について、写真付きで情報提供して、逆に 言えば、この「オプチクリックに使用できます」と書いてある針以外は、オプチクリッ クには使用しないでくださいということの注意喚起を行っていただいたというもので す。以上が資料1-5に関する事項です。  続いて、議題1の最後になりますが、資料1-6「ジャクソンリース回路の回収等につ いて(注意喚起及び周知依頼)」です。こちらも2ページに通知があり、本年度11月19 日付けの通知です。この件については、あとでイラストでも説明しますが、現物を用意 しておりますので、先生方にお回しいたします。現物も手に取りながら、この問題につ いて御確認をいただければと思います。2ページの通知の話ですが、麻酔用呼吸回路等 に含まれているジャクソンリース回路、この「ジャクソンリース」というのは人の名前 で、特段意味はありません。  このジャクソンリース回路は別添図参照ということで、4ページです。今、現物もお 回ししますが、絵は4ページに記載しております。この写真は少し見にくくなっており ますが、左上の写真がジャクソンリースの回路と言われるもので、酸素や麻酔ガスを供 給しながら、この場合には手動で、またこのカフ部分で空気を送り込むというものです。 問題になっているのは、このジャクソンリース回路のうち丸印を付けたアダプターの部 分で、右側に大きく絵を描いております。内管という管が伸びたという形状になってお り、これが問題のジャクソンリース回路のアダプターです。真ん中に書いてありますが、 このジャクソンリース回路は自主回収を行っていたものなのですが、回収の対象は内管 が長いものだということです。  また、下の図ですが、実はこのジャクソンリース回路は、平成13年と14年に自主回 収がなされております。このときに起こった事故があって、下の左側の絵ですが、この ジャクソンリース回路の内管と呼ばれる部分が長いことによって、患者につながってい る管とジャクソンリース回路の上から来ている麻酔ガスや酸素を供給する管が、直結状 態になってしまう。この内管と呼ばれる麻酔ガスや酸素の供給の管と患者への管が直結 してしまい、呼気、空気の逃げ道がなくなってしまい、一方的に肺に供給され続けるこ とによって、肺が損傷してしまい死亡したという事例もあります。  一方、正常な回収対象ではない事例としては、右側の絵ですが、内管が短い場合、あ るいは現在の製品はそもそも内管と呼ばれる所が出っ張っていないという状況になって いるのですが、短い場合には右の絵のように管が直結することはなくて、脇を通って、 呼気の逃げ道のルートが確保されるというものです。  2ページの通知に戻って、本文の一段落目ですが、別紙に掲げる製品については、気 管切開チューブ等との組合せにより閉塞するおそれがあるため、平成13年〜14年にか けて自主回収が行われておりました。「今般、この回収が徹底されておらず、医療機関 において回収対象だった製品が使用され、閉塞による気道内圧の上昇による肺損傷の事 例が発生したことが判明し、本日、東京都が五十嵐医科工業株式会社に対して、当該製 品の回収をするように命令したところです」ということで、回収対象であったジャクソ ンリース回路が医療機関に残っていて使われてしまった結果、事故が起こったというこ とで、11月19日付けで東京都知事から会社に対して、回収命令を出したというもので す。  同様の製品を使用した場合、閉塞等により患者に重大な健康被害を及ぼすおそれがあ るため、都道府県に対して、薬務主管課と医務主管課の協力の下で、あるいは政令市、 保健所設置市、特別区との連携の上で、管下の医療機関等に対して、下記の内容につい て周知願いますということで、医療機関に対する周知徹底を依頼したものです。依頼し た内容が「記」の所で、一つ目が「別紙に記載のジャクソンリース回路については、自 主回収の対象となった製品であり、閉塞等のおそれがあることから、各医療機関で使用 している製品を確認し、該当製品を保有している場合、直ちに使用を中止し、各製造販 売業者、又は購入した医療機器販売業者に返却すること」ということで、確認いただい て問題の製品があった場合には、使用中止と返品を依頼したというものです。  2つ目が一般的なお話ですが、「回収の対象外のジャクソンリース回路の使用時のみ ならず、呼吸回路の接続時には、添付文書や取扱説明書等に従って接続し、呼気・吸気 の回路が確保されているかを確認するとともに、閉塞やリークが生じていないか注意す ること」ということで、この問題だけではなくて、呼吸回路に関する問題は多々ありま すので、改めて確認をお願いしますということを依頼したものです。  8ページです。先ほど紹介した通知は、都道府県を通じた医療機関への依頼の通知で すが、8ページの通知が監視指導・麻薬対策課長から埼玉県、東京都、大阪府に宛てた もので、これはこの各埼玉、東京、大阪から問題の製品を扱っていた業者に対して、指 導してくださいという依頼の通知です。内容は、「記」の所ですが、1として「当時自 主回収が行われた別添のジャクソンリース回路について、適切に回収・廃棄が行われた かどうか再度確認を行うとともに、必要に応じて納入先医療機関等に対して情報提供や 確認を行うこと。また、その結果について、速やかに都道府県に報告をすること」、2 として、「当時回収対象であった製品が医療機関等に存在することが判明した場合には、 迅速に回収・廃棄を行うなどの対応の徹底を図ること」ということで、9ページにある 各社、五十嵐医科工業、アコマ医科工業、アネス、小林製薬に対して、同様に医療機関 に残っていないか、当時の自主点検の状況について改めて確認してください、というこ とを指示した通知です。以上が資料1-6で、議題1に関する説明は以上です。 ○笠貫部会長 資料1-1〜1-6までの御報告をいただきましたが、何か御質問はありませ んでしょうか。 ○釘宮委員 資料1-1の人工呼吸回路による人工鼻と加温加湿器の話なのですが、加温 加湿器のほかに、ネブライザーもかなり問題になると思うのですが、これについてはす べての添付文書に書いてあるのでしょうか。 ○事務局 御指摘のネブライザーについては記載があるということで、今回は指示して おりません。 ○勝呂部会長代理 ネブライザーも一緒なのですが、加温と加湿というと、例えば加湿 だけの装置もこの中に入ってしまうときがあるのです。ですから、これは両方含まれて だと、両方の機能があるのを加温加湿器、もし間に「、」を入れたら、加湿器もここに 入ってしまうのです。ですから、やはりJISが問題なので、どう表現していいかは分 からないのですが、その辺のところも含めて指導をしないとまずいのではないかと思う のです。 ○笠貫部会長 事務局の方、どうでしょうか。 ○機構 勝呂先生が御指摘の加温加湿器、これは人工呼吸器回路内に入れる、一般的名 称は加温加湿器というもので、そのほか一般的名称がネブライザーというように、加湿、 また薬剤を霧状にしてというカテゴリー別に分かれております。今回ここでいう加温加 湿器は、チャンバーを用いた、水を炊いて吸気を加温加湿するタイプの医療機器のみを 指しております。 ○笠貫部会長 今の御説明でよろしいですか。ほかにはありませんか。 ○配島委員 資料1-5のペン型注入器と針の組合せ使用に関する所なのですが、このペ ン型注入器については、たしか2005年にJISの初版が出て、今5年後の見直しの作業 をやっているところなのです。その見直しの内容は、用語の統一と不適切な表現の修正 みたいなものなのですが、このペン型注入器は結構、不具合報告が多いのです。あとで 議論されると思いますが、かなりの事例が報告されているのです。その見直しの場の中 で、一応、JISの規格はクリアしていても、実際この機械は患者御自身が直接使う特 殊な機械なので、もう少し基準となる数字などを厳しくしてもいいのではないですかと 御提案はしているのです。今回の針と注入器の互換性について、JISの中の表示の部 分にこのようなことを書くように規定すれば、第三者認証機関で審査するときに、そこ でもきちんと押さえることができるのではないかと考えているのですが、その辺はどう お考えでしょうか。 ○笠貫部会長 事務局の方で何かありますか。 ○機構 認証基準に入るかという話なのですが。 ○配島委員 認証基準ではなくJISの基準です。  ○機構 JISの基準ですね。JISの基準自身だけで、認証の方で審査をするという わけではなくて、まず一つ、認証の基準の中にリファレンスとなるものがJISの基準 です。認証の場合には、それに基づいて、例えばそれに関連する通知であるなども含め て見ざるを得ないところが現状なのです。一つ現状としては認証基準というか、認証の 中に今回の添付文書なりの規定を組み込むということで、まず前段階としてやると。J ISの基準ということになりますと、改正の時期であるなどといったことがかなり時間 がかかるということもありますので。 ○配島委員 今が改正の時期なのです。今もめているところです。 ○機構 具体的には、まず一つはISOという国際的な基準があって、それに基づいて、 実際JISの基準等も吟味されているところもありますので、ちょっとその辺の動きを 改正の時期などといったことを踏まえて、できれば改正をするということでやる。それ で、それまでの経過期間として、まず一つは実際の使用上の注意ということで、確実に それを審査のところ、認証の基準であるなどといったところに入れて、それも見てもら う、間違いなく見るということを実際に含むということで、実際、最終的には改定には 盛り込まれるということになると思います。 ○笠貫部会長 よろしいでしょうか。ほかにはありますか。 ○許委員 資料1-3の尿管ステントの話なのですが、この喚起は分かるのですが、これ はやむを得ずがんなどに冒されて、尿管ステントを入れて、私も実際1例経験して、最 終的には血は止められなかったわけです。注意を喚起し、最後の行に「適切な処置を行 うこと」と書いてあるのですが、これは何をしろというように、この文章はどうすれば いいと。適切な処置とは何かということを、臨床医側はどうすればいいのですかとお聞 きしたいと思ったのですが、その辺はいかがですか。 ○機構 許先生にお答えしたいのですが、一応、今回のこの事例は適切な処置がいろい ろありまして、過去にこの症例を経験された医療機関では、一つはシャント手術、それ から人工血管の移植といったもので対応されたということが、事例として報告されてお ります。この添付文書の改訂に伴い、該当企業にはそういった対処方法というものも、 適宜、尿管ステントをお使いの医療機関に、併せて情報提供をさせている次第です。 ○許委員 むしろこの添付文書には、こういうことが起こるリスクがどれぐらいあるか を少し書いていただいて、良性の疾患だと、まあまあいいのですが、悪性の場合はそれ に腫瘍が絡んできて、もうどうしようもない場合もあるのですね。ですから、その辺が やはり問題ではないかという気がするのです。もちろん腸骨動脈にステントグラフトを 入れる処置、あるいは人工血管置換、あるいはそこを修復して、腎瘻をつくるとか、い ろいろなことをやるのですが、悪性の場合はそれに感染が絡んできて、どうしようもな い場合もあるので、「適切な処置を行うこと」と書いてあって、それで実際的には救命 できなかった場合に適切でなかったのではないかと。訴訟などが起こると、こういう表 現だと適切に処置しなかったから止められなかったのだと言われそうな気がするので、 そのことについて、こういう方法があるけれども、やはり死亡する症例もあるような、 そういう含みのある表現の方がいいと思ったので、コメントさせていただきました。 ○笠貫部会長 これは特に原疾患の治療歴、原疾患との絡みがあるように、こういった 警告の書き方についてどうするかという許委員の御指摘だと思うのです。一つは「おそ れがある」というところで、どれぐらいの頻度かは分からないとは思うのですが、例え ば薬でいくと、「ときに」、「まれに」という表現ができるかどうかという御指摘です ね。そこについて、お考えをいただけたらと思うのと、適切な処置を行うというのを、 例えば具体的に書けるのか、あるいは適切な処置にはこういうことがあるということに とどめるのか、専門家の中で御検討いただいたのでしょうか。 ○機構 「適切な処置」というものが、そのときの症状とか個々の疾患によって異なっ てきますので、今回この添付文書の改定の際に、過去に経験されて公表されている文献 ・論文を、すべて添付文書の改訂と同時に、添付文書内に文献のリストも付けさせてい ただいて、その症例ごとに、個々に先生が今おっしゃったようにステントグラフトを入 れられた症例もありましたし、シャントをされた症例もありました。そういうのを次の 先生方の参考にしていただくということでは、添付文書の改訂等の際に、一緒にそうい うリファレンス文献も付けさせていただいている次第です。発生頻度に関しては、現時 点では明らかに我々の方も把握していないところがあります。今後、「適切な処置」の 書き振りに関しては、もう少し考えてみたいと思います。 ○笠貫部会長 「おそれ」というのは、余りサイエンティフィックではないので、まれ にということならば、薬と同じように判断するのかどうか、御検討をいただけたらと思 います。「適切な処置」は、今のように文献を載せるということでいくと、「こういう 処置があると報告されている」という方がいいかなと思います。これからこういったケ ースが出てくるかと思いますので、御検討いただくということで、許委員、よろしいで しょうか。ほかにはよろしいでしょうか。  今日の六つのうちの三つは糖尿病で、患者に直接、あるいは自宅での診断治療という 領域に入りますが、何か御意見はありますでしょうか。 ○佐伯委員 実際にエラーになるという場合は、自分ではほとんど意識がないわけです よね。多分救急隊が駆け付ける前に、家族だとか、そういう人たちが調べるだろうと思 うのです。いずれにせよ、エラーの表示のときには極めて危険であるからすぐにという ように、もう少し強調しておかれる方がいいのではないかと思いました。これだけ見る と、高血糖の疑いがあるだけで済ませているのですが、先ほどの御説明では低血糖とい うときもあったと思うので、低血糖・高血糖、いずれにせよ極めて危険であると強調し ていただきたいと思いました。  もう一つ、これはとても細かいことではあるのですが、資料1-2の文体だけがとても 柔らかいといいましょうか、悪いことではないのですが、書き手が違うのかなという印 象を受けました。ここの所で一つ思ったのは、最初に資料1-2の2ページの冒頭に、「医 療機関における医療安全の確保については」という一文が入っていて、この一文が入っ ているだけで、メッセージの導入という良い印象を私は受けました。ほかの文書には何 もこういうのが入っていなかったということは、受け取る側の印象が少し違ってくるの かなという感じです。  この資料で少し思ったのは、「ペン型インスリン注入器等の」ということですよね。 もう一つの8ページには「等」というのが入っていて、ヒト成長ホルモンの注入器も含 めるという意味だと思うのですが、2ページのタイトルの所には「等」が入っていない というのがありますので、同じものであれば、この辺は一致させる方がいいと思いまし た。以上です。 ○笠貫部会長 事務局の方でよろしいでしょうか。 ○事務局 御指摘ありがとうございます。最初の資料1-4の自己血糖測定器に関する件 ですが、これはメーカーが主治医の先生にエラーが表示される、あるいは低血糖の表示 がされる場合には、速やかに救急車を呼ぶとか、私に連絡してくださいなどということ で、連絡をしていただいて、診察を受けていただくことは徹底するようにということで、 メーカー各社、ロシュ社も医療機関や在宅訪問看護師への送付、それからMRの訪問と いったことで、お願いは徹底させているところです。  通知の書き方については、アドバイスをありがとうございました。今後の参考にした いと思います。  資料1-2で、2ページの都道府県を通じた医療機関宛の通知には、インスリンに特化 して、インスリンのペンを正しく使ってくださいとなっていて、一方で8ページのメー カーに対して依頼をした通知は、「インスリン等」ということで、成長ホルモン、ある いはほかにもありまして「等」と付けさせていただいています。この差別化した理由な のですが、これも入院患者で、複数の患者で同じペンを使われているときに、針だけ交 換して使ってしまったという事故がありました。糖尿病の患者は、一つの病棟に何人も 入院されていて、看護師が代わりに打ってあげているということがあるのですが、成長 ホルモンだとか、その他のペン型の注入器に関しては、病棟に患者が複数いて、看護師 が打って回ることは想定されにくいということで、医療機関にはペン型インスリン注入 器についてお願いしたということです。その他の同様のペンに関しては、メーカーに医 療機関や患者への情報伝達を徹底してくださいということで、少し差別化をさせていた だいたということです。 ○笠貫部会長 それでよろしいでしょうか。先ほどの患者向けの所で、エラーと書いて ありますと、患者に過度の不安感を与えないかというのも、気にはなるという御指摘だ と思います。こういうことがあってエラーが出たときは緊急だという形にしておかない と、それ以外にもエラーが出る可能性があるわけですから、「主治医を速やかに」とい うのは、主治医がなかなかつかまらないときには非常に不安になります。それにプラス、 こういうときは緊急だというところが、患者向けにはもう一つきめ細やかに、検討でき ないかなと感じましたが、どうでしょうか。 ○事務局 説明が不適切で恐縮でございます。実際にこの製品には、当然もっと読みや すくして、分かりやすい患者向けの取扱説明書を付けております。その中には、各エラ ー表示についての対応が、きちんときめ細やかに書いてあります。原則として、エラー というのは、そもそも診断の試薬が正しく挿入されていないとか、機械の故障を疑って くださいということが基本的なのですが、異常に高い血糖の場合にもエラーが出ますよ ということが今回分かったので、その正しい情報の伝達と、基本的にはどういった場合 にすぐに連絡してくださいというのは、先生も御指摘のように、患者が怖がってしまっ ても困りますので、基本的には主治医の先生が、糖尿病の患者には月に1回ぐらい、健 康の指導をしていると思います。その際に、機械の取扱いということで、そういったメ ーカーが用意しております取扱い説明書等を基に、指導をいただくことを考えておりま す。  先ほど佐伯先生もおっしゃいましたが、今回の4けたを超えるときというのは、基本 的には患者はもう意識はないような状況でしょうから、唯一あり得るのは、本当に高血 糖状態で倒れていて、患者の御家族が測定して、エラーが出た、しかも倒れている、お かしいぞと思ったときに、すぐに救急車なり主治医の方に連絡をいただくということが、 実際に今回の事例では患者にお伝えいただきたいことだと思っていまして、メーカーに はそういった対応をさせております。 ○笠貫部会長 高血糖が疑われて、医療機関向けと患者向けと同じに書いてあるので、 これは受け取る側は全然違うと思います。そこのところは、患者向けには、意識がこう ですよなどということを書いておいていただくと、分かりいいだろうということだと思 いますので、御検討いただけたらと思います。それ以外にはありませんか。 ○井部委員 一つ、もしお分かりでしたら教えていただきたいのですが、資料1-1は、 こうした事例は、ヒヤリ・ハット事例収集事業において分かりましたと書いてあるので すが、そのほかの所では、「今般○○という状況があった」。例えば資料1-4では、「今 般、自己検査用グルコース測定器を使用して、こういうことが分かりました」と。こう した事例はいつ分かって、医療安全情報が出されるまでの期間はどのぐらいなのか、ど こで分かったのか、「今般」とか「ありました」ことになっているのと、どのように違 うのかということを教えていただきたいと思います。 ○事務局 大体「今般」と書かせていただいたものは、情報を入手して、速やかに対応 をとったときです。それはまだ公になっていないような状況で、それこそ不具合報告で 来たり、あるいは報道で入手したりした場合、そういったことが多くあります。我々が こういった通知を出して、対応するというのは、当然、情報を入手してから内容の重篤 度等により、可能な限り早くということで対応させていただいております。基本的には、 我々が情報を入手したら、速やかに該当する、関連する企業、あるいは報告をいただい た医療機関に確認をするなどの対応をとりまして、可能な限り早く対応しているという ことでやっております。今日は、手元に実際に何日かかったかという資料がありません ので、報告ができませんが、基本的には1か月放置するなどということは決してありま せん。 ○井部委員 ということは、「今般」と使ってあると、非常に迅速に行われたと解釈す ればいいということですか。 ○事務局 基本的に今回の事例に関しては、少なくとも迅速に対応させていただいてお ります。 ○笠貫部会長 御質問の中で、情報を得た経路、経過についても、ここにはヒヤリ・ハ ット、あるいは医療機関などと分けて書いていただいているという理解でよろしいです か。 ○安全対策課長 このような事例の報告は、いろいろなルートで私どもの方に寄せられ てきております。その情報源について、開示可能なものは、できるだけ載せるようには しているのですが、やはり情報を提供された側の事情がいろいろあって、特に実際に被 害に遭われた方などの御理解を得るのに、なかなか難しいなどということもあったりし ます。基本的に、情報源を出して構わないものは出すようにしています。ただ、そうい ったデリケートな医療の中で起きることですので、当然そこに患者がいて、家族がいて、 そのような方々の御理解も得てやらなければならない場合など、そればかりではないの ですが、場合によってはそういったことがありますので、その点は御理解をいただけれ ばと思います。  基本的に迅速と申し上げておりますのは、私どもに情報が寄せられて、問題をできる だけ周知した方がいいと考えられる、その際には、本当に1週間、2週間という時間の 中で対応することがほとんどの場合です。もちろん、事実関係をある科学的な検討を行 って、その結果をもって判断をしなければいけないとか、そういう場合はいつまでに何 が分かるということのタイムラグを決めて処理をしているということですので、本当に 今は可能な限り早くという御説明になるということです。 ○笠貫部会長 井部委員、それでよろしいですか。では、土屋委員どうぞ。 ○土屋(利)委員 今回の中で、厚生労働省から回収と通知という二つの区分けがありま したが、一方では回収、他方は通知というのはどのようなことを基にして分けておられ るのか。  もう一つは、針の使用を複数者にというのは、以前にもそういう大きな問題があるに もかかわらず繰り返し行われていることから、そういったものを抜本的にできないよう な仕組み。患者の目の前で針を開封して、それを認めたサインを出させるとか、あるい はそれを行った、また行われた後では取り返しのつかないこともあるわけですが、もっ と厳しくされないと、結局繰り返しになるような気がします。そういったことについて 御意見等がもしおありでしたら、お願いします。 ○笠貫部会長 事務局の方でいかがですか。 ○事務局 今回は幾つかありましたが、通知を出しっ放しということはやめていまして、 基本的には2週間なり1か月でフォローの報告を求めていくということです。  それから、最初の土屋先生御指摘の回収なのか情報提供かの区分けというのは、構造 上の問題であって、製品の引上げあるいは修理が必要になる場合には回収の措置を求め ますし、正しく使っていただく、あるいはこういった不具合が起こることを医療従事者 の先生に知っていただければ、速やかな対応でこたえる、情報提供で済ませる。そうい った判断は基本的には各企業がしていまして、それを報告を受けた医薬品医療機器総合 機構の方で妥当だということであれば、情報提供で徹底しなさいということでやります し、必要によっては我々の課がこういった形で通知も出す。製品の不良品あるいは出荷 記録にも処置の問題があった場合には製品の速やかな回収措置ということで、原則は速 やかに自主回収に着手いただくことになっています。 ○笠貫部会長 先ほどの通知に関しては、報告をきちんと求めているのは、周知徹底す るという担保になっているだろうと理解しますが、よろしいでしょうか。それと安全対 策についての報告というのは、フォローアップをどうするかという仕組みをこれから考 え、徹底していくプロセスにあるのだろうと理解しています。回収についても、そうい う意味では回収しなかった会社等の理由が何なのかということも、次のこういった回収 を徹底するための方策を考えるこれからの知恵になると思いますので、御検討をいただ けたらと思います。 ○許委員 今日六つが出ましたが、2番目のインスリン機器の取扱いだけが厚生労働省 の医政局と医薬食品局の連名になって、他のものは全部医薬食品局だと思いますが、こ れは取扱いが違うのですか。ペン型インスリン注入器の取扱いは二つの局が連名で出さ れていますね。あとは全部医薬食品局から出されていますが、これはどう取扱いが違う のですか。 ○事務局 御説明します。まず、資料1-2のペン型インスリン注入器を複数の患者に使 っていたという事例については、病院内での管理の問題だということで、医療法で平成 19年4月から医療機器の管理などの手順書を作るとかのいろいろな措置が強まってい まして、医療安全の責任者が中心となってこういった事故を防止してほしいという趣旨 もありまして、医療法を所管している医政局の総務課長とその「もの」を所管している 医薬食品局安全対策課長の連名で出しています。基本的には、こういった医療機関側に 特段の安全管理を求めたいという内容の場合には、医政局と連名という形の通知を出し ています。そのほかの方は、メーカーに対して添付文書を直しなさいとかの指示ですの で、医薬食品局からということにしています。 ○笠貫部会長 ありがとうございます。ほかに御質問がありませんでしたら、議題2に 移ります。事務局から御説明をお願いします。 ○事務局 議題2「医療機器の不具合等報告について」、資料2-1〜2-4に基づいて説明 します。資料2-1は、「医療機器の不具合等について(報告)」です。2ページには、不 具合等報告のまとめを報告するということで、薬事法の規定を記載しています。薬事法 第 77条の4の4の規定に基づきまして、当部会に本日報告をすることになっています。  3ページは、医療機器の不具合等報告について、平成20年4〜9月末までの6か月間、 すなわち本年度の上半期分の報告を受けた件数をまとめました。1)不具合等報告の件数 は3,030件となっています。前回の7月の部会のときには、昨年度の下半期の件数を報 告しましたが、そのときは7,201件でした。今回は半分以下の件数に減っていますが、 これは後ほど御紹介しますが、前回の報告では医薬品ワクチン用注入針の針が詰まって しまうとの報告が7,201件の中に約4,000件ありました。これについては企業により改 良がなされてきていまして、その問題の製品は回収もされたということで、今回は250 件と大幅に針の針詰まりの件数が減ったことが原因です。それを除きますと、1)にある 分類別の報告件数や傾向というのは例年どおりであると考えています。1)については画 像診断用機器などの八つの分類に分けていますが、(3)の処置用・施設用機器等が1,538 件、(4)の生体機能補助・代行機器が1,048件と、この二つの機器の報告件数が多い状況 になっています。こちらも例年どおりです。  また、国内と海外の報告の内訳ですが、国内が2,215件で割合が約73%となっていま す。そのほか、海外措置報告として2)が398件、3)研究報告が4件、4)感染症定期報 告は 32件の報告が寄せられています。また、医療機関からの不具合報告については2にあり ますように、3〜9月末までに211件という報告を受けています。以上が資料2-1につ いての簡単な説明です。  資料2-2は、「医療機器不具合等報告」です。表紙の裏の見開きの部分に、医療機器 不具合等報告の集計結果についての注意事項として、ラインリストの見方を記載してい ます。1)まずこの報告については医療機器等の因果関係が不明なものを含めて、製造販 売業者等から報告されたものです。2)報告に関する分類というのは、第1の分類から第 8の分類までの八つに区分して記載しています。順番は国内、外国を別にして、一般的 名称の50音順で掲載しています。3)件数は、提出された報告書の件数を示したもので、 同一の症例で複数の医療機器が関与している場合、複数の企業からそれぞれ報告がされ ることがあります。このような場合は、同一症例を重複してカウントすることとなり、 報告件数がそのまま症例数にはならない場合があります。4)表の右端の欄にある「対応 措置」の項目については、原則として9月30日時点での措置の内容を簡潔に記載してい ます。「回収」と記載したものは製品を引き上げる回収、リコールです。また、修理や 検査の実施等を行った「改修」のリペアに関しては、リペアの措置を取ったことを意味 しています。  「情報提供」と記載したものは、添付文書の改訂あるいは書面による注意喚起文書を 医療機関等に配布したなどの措置を取ったものです。この中には既に添付文書等で、関 連する注意喚起の記述がなされていて、医療機関には情報伝達済みであるといったよう な場合も含まれています。対応措置の欄が「空欄」にあるものについては、措置が情報 不足のため不明なものや対応を検討中のものが該当しています。  目次の次から、表の下にページ番号を記載しています。1ページ以降が個別の品目ご とのラインリストを掲載しています。時間の関係上簡単に御紹介していきますが、その 前に前回の部会で、ラインリストに転帰を記載すべきだとの御意見をいただいていまし た。転帰の記載については外国の事例を中心に、残念ながらそのあと転帰がどうなった のかという情報を医療機関からなかなか得られない場合が少なくありません。また、因 果関係もはっきりしない中で、死亡や重度の障害が残ったと記載すると誤解を与えるよ うな懸念もあることから、転帰欄を新たに設けることとはしていませんで、健康被害状 況の欄に可能な限り、死亡の場合は死亡と記載しています。  1ページです。分類(1)は、X線装置やMRI装置などの画像診断用機器についての13 件のリストです。2、3ページが分類(2)として、心電計や内視鏡などの生体監視、臨床 検査機器等についてで45件となっています。この分類(2)の中に多くを占めていますもの が、2ページのカプセル内視鏡の滞留に関する国内報告が15〜22の計10件です。  4〜37ページが、分類(3)の注射器やカテーテルなどの処置用・施設用機器等です。こ ちらの報告件数は1,538件となっていまして、全体の報告の50%がこちらの分類になっ ています。この中では、4ページの中段の55に、前回は3,924件の報告がありました医 薬品・ワクチン注入用針の針詰まりがありました。この件は改良により、大幅に件数が 減少していますが、国内で今年度上半期ということでは243件の報告を受けています。 56からは議題1でも話題となりましたが、インスリンのペン型注入器に関する不具合を 記載していまして、9ページの120まで国内からの不具合の報告が続いています。イン スリンペンのペン型注入器の不具合報告が多いことも例年どおりで、ディスプレイの故 障や単位設定ダイヤルの故障などの報告が多くなっています。この分類には、様々なカ テーテル類など製品数も多いことから、報告件数が例年多くなっている状況です。  38〜79ページは分類(4)として、心臓ペースメーカーや人工呼吸器などの生体機能補助 ・代行機器です。分類(4)も1,048件と報告が多くなっていまして、全体の35%を占めて います。先ほどの分類(3)と分類(4)で、全体の約85%を占めています。分類(4)の中で不具 合の報告の件数が多いものとしては、38ページの546から40ページの581までの植込 み型除細動器・ペースメーカリードに関する断線などの国内報告。一般的名称が異なる ため、少し離れていますが、52ページの中段にある762からも心内膜植込み型ペースメ ーカリードということで、リードに関する不具合として56ページの821まで国内報告が 続いています。この分類(4)には、体内に留置するペースメーカやステントグラフト、人 工呼吸器というリスクが高い医療機器が多く分類されているため、報告件数も多くなっ ています。  80ページからは分類(5)として、手術用のドリルや電気メス、放射線治療用装置などの 治療・鋼製機器等で84件です。85ページは分類(6)として、歯科用機器・材料で14件で す。86ページは分類(7)の眼科用機器で、眼内レンズなどの不具合報告が280件あります。 89ページは分類(8)として、衛生材料・家庭用機器等の8件の報告となっています。90 ページは、国内の報告件数が50件を越えていた不具合として、5製品が該当しました。 そこで、この国内の報告数の上位5製品として抜き出して再掲しました。一番件数が多 かったのは、ボシュロム・ジャパン株式会社の「ハイドロヴュー眼内レンズ」で、計249 件の報告です。これは既に埋込みをしました眼内レンズが時間が経ちまして、カルシウ ムが沈着したという不具合が86ページの下から2番目の1266〜1275までの計248件が 報告されています。これは、この眼内レンズの旧パッケージの容器から由来すると考え ている低分子シリコンが関与している可能性があるとして、現在は包装変更して改良を 図っていますが、旧製品を埋め込んだ患者からの報告が今後も続くことが予想されてい ます。  90ページの2番目が、先ほどから紹介しているように日本ベクトン・ディッキンソン 株式会社の「BD マイクロファインプラス」で、「針詰まり」など計244件です。244 件のうち、針詰まりが243件ということで、ラインリストでいけば4ページの55に該当 しますが、多くなっています。これは先ほど説明しましたが、改良されて激減はしてい まして、製造ラインの改良等により件数自体は減ってきていますが、今回は2番目に多 かったということです。  3番目に多かったものは、サノフィ・アベンティス株式会社のインスリンペン型注入 器の「オプチクリック」で、ディスプレイの故障の疑いなどで計211件あります。ライ ンリストでは5ページの62から6ページの77までが該当し、単位設定ダイヤルやディ スプレイに関する不具合が多く報告されてきています。  90ページの4番目は、日本メディカルマテリアル株式会社の人工股関節の構成品の 「臼蓋カップGA02」です。これは人工股関節のうち、骨盤側で大腿骨の受け皿となる 部分で、主な不具合がライナーの脱転(金属製シェルからライナーが脱離)で、計69件で す。ライナーというのは関節の軟骨の役割をする部分です。この部分が外れてしまう不 具合が多く報告されています。ラインリストですと、50ページの725〜729までこの製 品が該当しています。  90ページの5番目は、Cook Japan株式会社の大動脈用ステントグラフトで、「クック ゼニスAAAエンドバスキュラーグラフト」です。こちらは「止血弁からの血液漏れ」 などで、計59件の報告を受けています。ラインリストですと、60ページの886から63 ページの923までが該当しています。資料2-2についての説明は以上です。  資料2-3は、「医療機器外国措置報告」です。医療機器に関する外国措置報告につい ては、企業が海外でも同じ製品を製造販売している場合、海外で取られた措置について 我が国の行政当局にも報告する制度です。これも同じく今年の4〜9月末までの分の報 告で、平成20年度の上半期分です。合計398件の報告を受けています。外国で措置を行 った結果については、おおむね日本においても同様の対応を取ることが多いということ になっています。中には2番目の事例ですが、海外では改修を行っていますが、日本で は改修対象となった対象製品の輸入がないということで、この外国措置報告の提出のみ で国内の対応は特段取っていないというものもあります。こちらも件数が多く、時間の 関係上説明は簡単にしますので、クラスI回収を国内で取ったものを紹介します。  2ページの一番下の68のボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社の「バル ーンカテーテル」です。これは日本で発生したバルーン収縮不良を基に、国内でクラス I回収、リコールを行ったものですが、外国でも同様の回収をしたとの報告を受けたも のです。なお、国内でのバルーン収縮不良についての不具合報告としては、先ほどの資 料2-2の141が該当します。9ページの281の日本メドトロニック株式会社のAEDで、 「ライフパックCR plus」です。281の事例は、海外で電源が入らなくなる不具合 がありまして、ドイツでリコールを行いました。国内でも、関係ロットの製品をクラス I回収したということで、このような記載となっています。また12ページの313でも全 く同じ記述がありまして、日本メドトロニック株式会社の「AEDライフパックCR p lus」が記載してあります。281と313は同一の事象で、313についてはイギリスでも 同じような回収を行った報告を受けたということで、重複して報告を受けています。資 料2-3の説明は以上です。  資料2-4は、「医療機器研究報告」です。医療機器の研究報告については、企業が製 造販売している製品に関連した文献や研究報告について、行政当局にも報告をするとい う仕組みで、こちらも本年4〜9月末までに4報が寄せられています。そうは言っても、 最初の二つは同じですので、実質3報です。初めの2件が同一文献で、吸収性靭帯固定 具であるジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社の「パナロック」と「パナロックR C」という製品に関する報告で、生分解性インプラントの周辺における骨融解に関連す る文献です。3件目は、ボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社の薬剤溶出 ステントである「TAXUSエクスプレス2ステント」に関する報告で、同じく薬剤溶出ス テントであるCypherとのメタアナリシスの文献です。4件目が振せん用脳電気刺激装置 で、日本メドトロニック株式会社の「DBSリード」に関する文献で、感染とリード関 連の不具合に関する記述があったという文献の報告を受けたものです。以上です。 ○笠貫部会長 どうもありがとうございました。ただ今の事務局からの報告について、 何か御質問はありませんか。 ○澤委員 前回も質問した眼内レンズのカルシウムの沈着は国内で非常に多い状況で、 時間が経つにつれて沈着を起こしているわけですが、海外での最近の報告状況はいかが でしょうか。今回の外国措置報告の中には見当たらなかったのですが、我が国でも容器 を換えたからもう大丈夫だという説明にはなっていますが、実際はこれらの製品はそう いう新しい容器のものは、もう入っていないのかどうかということです。 ○機構 お答えします。海外でも当時、旧包装製品に関しては米国ではまだ発売されて いませんでしたが、ヨーロッパの一部とアジアを中心に、旧製品が発売されていました。 同様に、このようなカルシウム沈着の事例は出ています。どの世界においても旧品はも う現在発売されていません。国内と同様に、現時点では報告はないのですが、旧包装の 眼内レンズを入れられた患者では、各国同様にカルシウム沈着の報告はあります。ただ し、個別レポートとしては企業の方からというか、東南アジアが中心になりますが、そ ういった事例の収集がなかなかレポートされていないのが現状で、国内の方では注意喚 起と周知徹底が出ていますので、すべての症例に関して企業の方で国内の収集をしてい ただいている状況で報告をいただいていますが、他国の把握に関しては、すべてを網羅 して把握はできていない現状です。 ○木下委員 いろいろな不具合の事例で大変多い内容のものがあります。この報告書は ここだけでの報告書なのか、各診療科にはこの内容は行っているのですか。ここだけで おしまいですか。いろいろな不具合があるのは、実際に使っている診療科では問題にな るわけですが、そういうのは個々ですから、トータルとしてこの製品に関しては何か不 具合が起こる可能性が高いのが出るわけですよね。そういったことは、各診療科の人た ちは知っていますか。それとも、この委員会だけで報告はおしまいですか。 ○事務局 今回、報告しました資料は、もちろんこのあとに厚生労働省のホームページ 上にも公開になりまして公にします。それから、各企業が自社製品にこういった不具合 が多発していますという情報は、医療機関に伝達することも当然ですので、資料2-3に もありますが、これは外国であったものばかりですが、情報提供というのはしっかりや っていただきますし、必要に応じては回収という措置を取っていただく。こういった情 報については、各企業から先生方への情報提供というのは徹底したいと思っています。 ○木下委員 何が言いたいかはお分かりになっていると思いますが、ここでインターネ ットのホームページに出ているから見ろと言っても見やしません。特に、こういう器具 に関しては問題だというのであれば、各診療科の医療安全担当の者に必ず報告して、そ こで今度は学会やら医界やらでこういった企業ではこういった問題があるということを 検討して、もっと具体的に改善の方向。そういったものはもう使わないとか、何かそう いうこととしての成果が出ないと報告でおしまいです。ですから、そういうようなとこ ろまで親切にやっていただいたらどうでしょうか。つまり、機械メーカーに言ったとこ ろで、自分たちから「こういうのが問題のある器具です」と言っていく方がむしろ少な いかもしれないです。それはできませんか。 ○安全対策課長 正しく情報を現場に伝えて、その現場で理解をしていただいて対応し ていただくためのターゲットをきちんと見て、情報を伝えることの貴重な御指摘だと思 います。ただ、最近安全管理責任者の方にお送りする情報が非常に多くなっています。 そういう情報があふれているという話もありますので、見ていただいて頭に入れていた だけるような伝え方というのも工夫しないといけないと思いますので、これについては こちらとしても工夫をして、情報をお届けすることについて取り組みたいと思います。  ○木下委員 分かりました。当然めりはりをつけなければいけないと思いますが、わず かな例であっても危険を伴うようなものはもちろんですし、最後にお示ししたような上 位5製品も、心臓外科の先生や整形といったところでは、こういうものをまた使うのか というと問題だということになれば当然配慮するし、みんなに徹底させるのは学会や医 界のそういう担当者の方が、情報としては伝えやすいなという気がするので、どうでし ょうか。ほかの各学会の方たちは、かえってそういったことを求めているのではないで しょうか。ですから、そういうところまで踏み込んだ対応の方が親切だと思います。よ ろしくお願いします。 ○土屋(利)委員 先ほどの不具合報告と、もう一つはこの医療機器研究報告というのが 出ているわけですが、これは一応学術論文で出されてきたものを各企業が届けているわ けで、届けられた報告内容についてこの企業はどう考えているかということも確認して いただきたいと思います。提起されたとか考えられるとか認めたとか、出されてきたも のに対してその企業の製品について言われているわけですから、それについて、今後ど うするのかということもお考えいただきたいと思います。 ○事務局 今の御指摘の点ですが、もちろん「報告がありました」とただ持ってくるだ けではありませんで、この報告を見て企業としてどう考えるのか。そういった情報も含 めて報告を求めていまして、情報提供や今後の製品開発につなげていくようなコメント 付きで報告を受けています。 ○土屋(利)委員 現状はそのままということですよね。製品開発ということであれば。 その中身によって、それなりに動くべきではないかと思います。 ○事務局 もちろん、特にこの報告を受けた中で緊急に対応が必要な場合は想定もされ まして、今回はそれはなかったということですが、緊急に対応が必要なものに関しては 場合によっては製品の回収、また医療機関に周知徹底を急ぐということであれば、国か らも今日の議題1のような通知を出す。そういったことも情報源の一つでもありますの で、この文献報告も私どもも、ただ単にもらったきりではありませんで、企業の対応が 妥当かを考えるといったこともこの報告を受け付けています医薬品医療機器総合機構で は対応をいただいているということです。 ○土屋(利)委員 例えば報告の1に対しては、緊急ではないと判断されたのですか。 ○事務局 ちなみに、ジョンソン・エンド・ジョンソンのパナロック1と2については、 添付文書の改訂を行う対応を取っています。 ○土屋(利)委員 これは、日本の大学の先生がまとめられた論文で、きちんとした大学 の先生がまとめられているので、きちんと内容によっては企業にもっと厳しく言う。製 品開発する必要があるならば、もっとそれを急ぐなどしないと、繰り返されると思いま す。専門家の間で評判が悪いわけですから、そういうのは緊急に。 ○事務局 先生の御指摘はよく分かりましたので、今後の検討課題とします。御意見あ りがとうございました。 ○木下委員 今いろいろと先進先端機器で、器具を保険点数に採用されることが多くな ってきていると思いますが、こういったもので繰り返すようなものは、もしも保険に採 用されているのであれば、当然切るなどペナルティとして、そういうことはありますか。 当然そのくらいの姿勢がないと繰り返すと思うし、これは全部がどうなっているか分か りませんけれども、医療費の問題というのは機械というのがものすごく大きな部分を占 めているだけに、確実で安全でなければ話にならない。しかも、国が認める保険に採用 されて、結果として悪いのであれば、それは当然ペナルティとして保険から切るという ところまでも含めた対応も考えていいのではないかと思いますが、その辺の考え方はど うでしょうか。 ○安全対策課長 保険適用の話について、ここでお答えすることは非常に難しいのは御 理解いただけると思いますが、製品として不具合が多くて現場で使いものにならないと いうことが目立つものについては、供給上の不安とか製品の不良が多いということで、 企業に対して厳しく指導することは同感です。現実に、供給の問題については医政局の 経済課が担当していますし、あるいは製品の不具合ということに関しての指導というこ とになりますと、物の品質管理といったところの話からしますと、私ども医薬食品局の 方が担当すると思いますので、それぞれ担当はありますが、こうした不具合の多いもの をそのまま放置することはないようにしたいと考えます。 ○木下委員 この情報も、先ほど申し上げたように局内の別の所で、関係するものに対 しては職員にはきちんと報告して、駄目なものをそのまま放置しておくのは意味がない と思いますので、そこまで踏み込んでいただきたいと思います。 ○許委員 今回の集計で、大動脈ステントグラフトに、外国の報告も国内の報告もいろ いろな不具合がある。数だけは多いですが、まず母集団が問題だと思いますが、この辺 は特に日本で今非常に黎明期で施設もどんどん拡大しているように思います。特に大動 脈ステントグラフトは冠動脈のインターベンションをやっていたカルジオロジーの先生 方、ラジオロジーの先生方も入ってきておられる。その辺で、先ほどありました国内の クックゼニスが59件と非常に多いということですが、たくさんやればたくさんまずいも のが起こるのは当然ですが、発生頻度という考え方を件数に加えて検討していただける といいのではないかと思います。国内の59件というのは、諸外国の報告に比べてどうで すか。 ○機構 その点についてお答えします。先生の御指摘のとおり、クックゼニスの大動脈 用のステントグラフトシステムは、新規性の高い医療機器ということで平成18年に承認 されまして、その際に施設基準と使用者の基準、トレーナーの医師の基準が厳しく決め られまして、施設も限定した状態で使用されています。実際は59件ありますが、そのほ とんどがエンドリークと言われるステント留置直後の血液の漏出による瘤の拡大。ほと んどが、自然消失しているような事例です。特段、それで重大な健康被害とか瘤の破裂 とか、そういう事例はありませんので、かなり手技がきちんと行われている現状です。 一番多いエンドリークに関しては、治験よりも発生頻度が低いということを我々の方で も確認していまして、施設基準共々きちんと守られて、適正に使用されていると判断し ています。 ○許委員 分かりました。発生頻度が治験より手慣れてきて低くなったことは、非常に 良いことだと思います。  もう一つは、医療機器の外国措置報告の中の285の植込み能動型機器用プログラマと いうものが米国では回収になって、日本は対応なしで国内承認済み。ほかのを見ると対 応なしでも検討中とか、回収とか情報提供とかの何かがあります。これだけは米国でリ コールになって日本は国内承認して、そのまま対応なしということになっていますが、 どうしてこんなに扱いが違うのでしょうか。 ○事務局 時間をいただいて調べたいと思います。 ○天笠委員 細かいことで恐縮ですが、歯科のことでお聞きしたいと思います。85ペー ジの1246〜1248辺りに水酸化カルシウム系の歯科根管充填材料、根尖孔からの溢出がか なり以前から出ていますが、これに対して添付文書で、根尖孔から溢出する可能性が高 いことなどについての注意記載はなされているのかどうかが分かれば教えていただけれ ばと思います。 ○事務局 添付文書には記載されているということです。 ○佐伯委員 先ほど許委員がおっしゃった外国の措置の中を見ますと、本国では注意喚 起になっているものが日本では情報提供であるとか、温度差の違うものが幾つか見られ ます。その違いの根拠というか、その辺りを一つひとつ本当は教えていただきたいです。  もう一つ大きなこととして、いろいろな固定器具のようなものが破損する、折れると いうことで、再手術が幾つも起こっているようです。再手術となりますと、患者御自身 の負担というものがまた加わってくるわけですよね。そうすると、先ほど医療費という こともありましたが、いろいろなものの保障とか、再手術で起こる新たなリスクという ものもあろうかと思います。そして、その再手術は、どういう事情でそうなりましたと いう患者への説明とどういうふうに納得いただいているのかの辺りも細かいことではあ りますが、少し幾つか具体例みたいなものを差し支えのないところで教えていただきた いと思います。そして、恐らく薬害肝炎もそうだったと思いますが、外国ではもう既に 注意喚起あるいはリコールである、そのものが起こっていたものは迅速にこちらも同等 以上の措置をしていただかないと、同じ過ちは繰り返してはいけないと思いますので、 よろしくお願いします。 ○笠貫部会長 今の御指摘は、個々にこれからお伝えするのは大変だと思いますので、 海外の対応と日本の対応が違うもののリストアップを別にしておいていただいて、その 説明をしていただくとすると、時間的には効率がいいと思いますし、お答えもしやすい と思いますので、次回からそういう形にしていただけたらと思います。 ○機構 先ほどのICS3000の件については、専門的な言葉が入って申し訳ないです が、米国の承認事項にVDディレイ機能が承認機能として含まれていなかった経緯があ ります。実際には、米国で販売された機器に対しても、その機能が有効になるようなソ フトウェア設定がされていた。日本においては、その機能が既に承認事項に入っている ということで、特にソフトウエアについて問題がない。アメリカでは承認事項に違反す るということで、米国では回収の措置、日本では回収の措置なしということになってい ます。 ○笠貫部会長 これからは対応の違うときは一覧表にしていただいて、簡単に説明でき るようにしていただければ十分に御理解いただけると思いますので、そういう形でお願 いします。不具合については収集の問題、評価の問題、情報伝達について種々多方面か らなされていると思いますが、それについて事務局からの説明はこの時間内ではなかな か難しいところがあったと思います。いずれにしても不具合についての効果的・効率的 な情報の収集と伝達については、また御検討いただけたらと思います。  議題3に移ります。事務局から説明をお願いします。 ○事務局 事務局から議題3、感染症定期報告の関係について御説明します。資料3-1 と3-2によりまして、薬事法の第68条の8になりますが、医療機器の感染症定期報告の 状況について御説明申し上げます。資料が二つありますが、従来より当部会においては 主に感染症ごとに文献を整理しました文献一覧、本日で申し上げますと資料3-1を用い まして説明しています。各医療機器と、それに用います生物由来の原材料ごとにまとめ ている資料を資料3-2として御用意していまして、前回までと枝番の1と2が逆になっ ていますので、御注意ください。  資料3-2は全体の報告状況です。議題2と同様に、本年度上半期4月1日〜9月30 日までに、生物由来の医療機器の製造販売業者等から報告された感染症定期報告のうち、 文献等の調査について報告登録順に表にして並べたものです。全部で23ページありまし て、件数としては一番左に振っているID番号で32件の報告がありました。1枚目で申 し上げますと、真ん中ぐらいに原材料名が書かれていますが、ブタの腸粘膜や大動脈弁 など、ウシの心のう膜といったものが報告対象として挙げられています。報告順にあり ましたものを右から三つ目のカラムに「感染症(PT)」がありますが、資料3-2ではこ れがバラバラになっていますので、これを整理したものが資料3-1です。  資料3-1で簡単に説明します。資料3-1は感染症で申し上げますと13種類、文献とし ては重複を整理しますと58件ありました。主な感染症は、インフルエンザ、鳥インフル エンザなどの関係が58件中12件。前回7月30日の部会にも一部報告が出ていましたが、 米国の豚肉加工場での神経症状の関係がProMEDに継続的に報告されているため、全部で 9件あります。そのほか、E型肝炎やブドウ球菌感染症がそれぞれ7件ありまして、E 型肝炎の関係と米国の豚肉加工場の関係は、先月27日に開催された医薬品等安全対策部 会に報告されているものと一部重複する文献がありました。内容はブタにおける、ある いはブタから人へのウイルス、細菌感染等に関する既知の事象の状況報告等が中心で、 本日は3名ともに御欠席となってしまいましたが、事前に国立医薬品食品衛生研究所の 内田委員、東大医科研の甲斐委員、感染症研究所の宮村委員に御相談をしまして、特に 宮村委員には感染症研究所の各御専門の先生方にもコメントをお願いするなどしまし て、措置を講ずる必要性を含め御意見、御検討をいただいていますが、今回の58報の文 献等については特に医療機器の安全対策上、新たな措置を講ずる必要のある文献等は見 られないということでした。  なお、先に行われました医薬品安全対策部会でも同様の検討内容でしたが、その際に もE型肝炎の関係の文献は結構報告されていましたので、宮村先生からコメントを頂戴 していまして、直接的な医薬品医療機器の安全対策というわけではありませんが、E型 肝炎一般に対するブタ等を由来とする食品からの感染や養豚作業に従事されていらっし ゃる方、ブタを実験動物として用いた場合に実験動物経由での感染に注意する必要があ るという感染に対する注意喚起と、臨床現場においてのABC型以外の急性肝炎の場合 のE型肝炎を考慮した診療の必要性等について注意しておく必要があるコメントをいた だいていましたので、併せて御報告申し上げます。事務局からの報告は以上です。 ○笠貫部会長 ありがとうございます。この件については専門家である内田委員、甲斐 委員、宮村委員から事前に御意見をいただいたということですが、ほかに委員の先生方 から御質問、御意見はありますか。ないようでしたら、議題4に移ります。事務局から 御説明をお願いします。 ○事務局 議題4「その他」について、参考資料1と2の説明をします。参考資料1「医 療機器市販直後安全使用情報収集事業の実施について」です。2ページは、医薬品の方 では既に始めている市販直後の安全使用情報の収集事業の医療機器版で、今年度から医 療機器に関しても市販直後の安全使用情報の収集を始めるということです。概要は資料 の1.「目的」にありますが、新たに承認される新医療機器のうち、新規性が高いものや 国内外における使用経験が少ないもの等については、特に市販直後の安全性確保が必要 と判断されることから、原則として市販直後の6か月間についてということで、一点目 は当該医療機器の使用の状況、二点目は不具合等の発生状況の確認、三点目は製造販売 業者による情報提供活動を国が直接臨床現場、医療機関から収集、評価をすることによ って、安全対策を講じるというものが目的です。  2.「対象医療機器の選定の考え方」です。新たに承認される医療機器のうち、(1)〜(3) に該当するものを考慮して選定するということです。(1)は新規性が高いと判断されるも の。(2)は承認条件として、全症例に係る使用成績調査を行うこととされたもの。すなわ ち、承認審査の段階でも全例の調査が必要だと判断されたというものです。ただし、医 療機関が特定され得る、あるいはもともと件数が少ないということで、希少疾病用医療 機器は除くとしています。もちろん、決して絶対に除くということではありませんで、 参考ですので希少疾病用のオーファンデバイスに関しても対象となることはあり得るか と思います。(3)は国内外における使用経験が少ないもの。例えば、国内治験症例数が少 ない欧州の主要国においてのもの、あるいは欧米の主要国において未発売のものとなっ ています。逆に医療機器の場合には、最近の医療機器でも外国での治験の症例のみで承 認されていて、国内での成績がないものもありますので、こういった国内外での使用経 験が少ないものを基準として選定を考えたいと思っています。  3.「対象医療機器の選定方法」です。2.の考え方に基づきまして、どの医療機器を 対象とするかについては、当課が医療機器安全対策部会の領域の分野の先生あるいは部 会長の御意見を伺いながら決定するということです。対象の医療機器については、調査 終了後まで非公開とします。これは先ほどの目的のところで3番目に説明しましたが、 製造販売業者による安全に対する情報提供活動や収集活動がきちんとされているかとい うことも確認する目的もありまして、どの医療機器を対象とするかについては調査終了 の時点まで公開しないということです。  4.「調査実施期間等の選定の考え方及び選定方法」で、これは調査実施の協力をいた だく医療機関の選定の考え方でして、基本的には1医療機器に関して2、3施設を選定 しまして、その分野の医師、それからその施設の薬剤師、看護師、臨床工学技士等の医 療従事者1名に協力いただくということです。この医療機関の選定に関しても当然、そ の領域の学会の先生、あるいはこの部会の先生方の御意見を伺いながらということで、 地域的なバランスや規模、設置主体等にも配慮しつつ、その分野の適切な医師等を選定 するということで、この医療機器であればこういった医療機関では扱っているのだろう というところを、学会等と相談させていただきながら、選定していくということでござ います。3ページの続きですが、どの医療機関から情報協力いただくかということにつ いても、先ほどの対象医療機器と同様で、調査の終了までどの医療機関から協力をいた だいて、情報を入手するかということは、非公開とさせていただいています。これは国 が直接医療機関から安全性情報を入手するのと、各メーカーの対応に問題がないかを確 認する意味もあるということでして、こうした対応をとっていくというものです。  7ページに報告の例を記載していますので御覧ください。これは既に始めています医 薬品の場合の報告の様式ですが、こうした形でこの事業が終わったあと、最終的な段階 としては、当部会の方にこの「定点観測実施終了報告書」という形で、こういった内容 を御報告させていただくものです。対象となる製品名を書いたり、協力いただいた医療 機関名を記載する。それから、その医療機関での使用の状況を書いたり、どのような副 作用、これは医薬品ですから副作用となっていますが、医療機器の場合には認められた 不具合の発生状況、件数がどれぐらいだったか、重篤度はどれぐらいだったかといった ことの報告いただいたことを、まとめて報告させていただくものです。  真ん中の下の方のボックスにありますが、「製造販売業者による情報提供活動状況」 ということで、訪問又はメール等による情報提供の頻度(適切な情報の頻度であったかを 含む)、提供されてくる内容が適切であったか、こういった企業の情報提供活動について も、各協力をいただいた医療機関からコメントをいただいて、まとめてこの部会に報告 をするといったような事業を、本年度から開始しますというのが、参考資料1の説明で す。  参考資料2を御覧ください。「微量採血のための穿刺器具(針の周辺部分がディスポー ザブルタイプでないもの)の取扱いに係る周知徹底及び調査の実施について」です。ここ では「穿刺器具」と簡単に呼ばせていただきますが、この微量採血用穿刺器具について は、3つのタイプがあります。資料の29ページになるのですが、「PMDA」、医薬品 医療機器総合機構の医療安全情報のところを御覧ください。  この穿刺器具には3タイプあると申しましたが、3タイプの説明がこの29ページにあ ります。現物のサンプルも用意しておりますので、また先生方のテーブルの方にお回し させていただきたいと思っています。  まず一つ目が真ん中の表の(1)となっていますが、器具全体がディスポーザブルタイプ のものということで、下の方の絵でいきますと、左上の(1)と書いてあるもの、いわゆる 全体が使い捨てで、1回使ったらもうそれを捨てるというものです。これに関しては当 然単回使用専用ということになっています。  (2)が針の周辺部分がディスポーザブルタイプのものということで、左下の絵ですが、 針の周辺部分、針だけではなくて、本体と患者さんの血液が接触する可能性がある部分、 こういった針の周辺部分ごとがディスポーザブルタイプであるものでして、これにつき ましては真ん中の表を見ていただきたいのですが、針と針の周辺部分自体の2つを交換 するということで、本体は複数回使うのですが、針の周辺部ごと交換するタイプのもの で、これに関しては複数人に使用が可能な医科向けの、医療機関で使っていただくよう な製品です。  三つ目が針の周辺部がディスポーザブルタイプでないものということで、針だけを交 換するタイプの器具です。これは針の交換をするのですが、針の周辺部は交換しないと いう製品でして、これが今回問題となった製品です。これに関しては真ん中の表の右下 の欄に備考という所がありますが、これが「複数人使用不可」ということで、個人専用 というものです。今回はこの個人専用である「複数人使用不可」という針だけを交換す るタイプの穿刺器具が、複数の患者さんに使われていたことが問題になったという内容 です。  資料の2ページです。これが平成20年5月30日に、医政局長と医薬食品局長で出さ せていただいた通知です。これにつきましては、先ほど先生の方からも御指摘がありま したが、医療機関での医療機器の適切な使用上の御協力をいただきたいという趣旨もあ りましたために、医薬食品局のみでなくて医政局の局長と、当局の医薬食品局長の連名 という形で、都道府県等を通じて医療機関に依頼を行ったものです。内容については、 これが5月30日の通知で、針の周辺部分がディスポーザブルタイプでないものについ て、複数の患者さんに使用していないか確認してくださいという依頼の通知です。  結果が9ページです。先ほどの5月30日付けの両局長の通知に基づきまして、各医療 機関に本当に大変な手間をおかけしたのですが、集計票とかをお送りしまして、各都道 府県、ほかの設置市等に返信いただきまして、それをまとめた結果が9ページの8月5 日付けの報道発表資料です。ちなみに、これは現在ホームページ上でもこの数字は公表 しているのですが、この8月5日の時点のあとに、追加で報告があった分が、あるいは 修正があった分がありますので、現在ホームページで掲載している数字とは若干異なり ますので、そこは御承知おきください。  この8月5日の公表資料としての数字になりますが、「調査結果について」(1)「医 療施設等」ということで、対象医療施設というのは8,919施設、基本的には全病院でし て、使用していない施設が3,820施設あったのですが、使用していた施設の中で、適切 に針と器具を交換していたという施設が1,771で、使用していた施設の35%。針自体も 複数人に使用したという所はゼロだったのですが、今回問題となっておりました針を交 換はしたのですが、本体部分を複数人に使用していた施設が3,291施設で65%ありまし た。  イの所が「診療所」でして、診療所についても10万の診療所、全診療所を対象として 調査に協力いただきました。これに関しては8万1,322施設が使用していなかったとい うことなのですが、使用していた施設の中で適切に針と器具を交換していたというのが 9,039施設で、約50%、半分の所が不適切に使用していた。これが一番リスクが高い所 ですが、針も交換せずに複数人に使用していた施設が2か所ありました。今回一番問題 となりました、針を交換していたのですが、機械の本体の方を複数人に使用していた施 設が8,456施設ということで約44%となっています。  ウが「介護老人保健施設」でして、3,566施設の所で、2,288は使用していなかったの ですが、使用していた施設の中で、420施設が針と器具を交換していたのですが、844 施設は針は交換したのですが、器具本体を複数人に使用していたという結果です。  エの「その他」というのは、訪問看護ステーションなどで、病院、診療所、介護老人 保健施設以外の所ということです。こちらは針と器具を交換していたのが1,858、針を 交換していたが複数人に使用していたというのが532施設です。  今回の問題は医療機関で使われていたというだけではなくて、10ページのところでは 「保健事業等」ということで、都道府県が行っているような、いわゆる健康増進事業と して糖尿病教室だとか、そういったときに行っていた事業の中でも不適切な使用が認め られた自治体数ということで、年度ごとに載せていますが、使い回しが不適切な使用が 認められた自治体が幾つかあったということの集計です。  同様に11ページがそれの政令市、12ページが特別区、13ページが市町村というふう になっています。  14ページ、先ほどは自治体の健康増進事業でしたが、健康保険組合等によるものが14 ページの結果です。15ページからが養成所等での状況でして、保健師の養成施設だとか 看護師さんの養成所、そういった所でのアンケートの結果をまとめたのがこのページで す。  20ページ、真ん中には12というページ番号が振ってあるものです。これは8月5日 に公表をしたときに厚生労働省としての今後の対応ということで、公表した資料です。 課題1としては、「医療機関において添付文書に記載されているとおりに使用されてい なかった」ということで、これに関しては今回通知だとか事務連絡とかを何回か出させ ていただきまして、適切な使用についての情報提供を行ってきたところですが、引き続 き情報提供を徹底していくことが対応です。  課題2としましては、「厚生労働省通知の周知方法について」ということで、厚生労 働省から発出された通知が通知で対象としている関係者、都道府県の関係部局、医療機 関の管理者及び医療従事者等に周知されていなかったのではないかという御指摘がござ いました。これは注意喚起をした平成18年の通知が届いていなかったということの御批 判を受けてのことですが、対応としましては、通知のタイトルに「注意喚起」と付記す るなどの見直しを行う。それから特に周知すべき相手を明記するということで、医療機 器の取扱いの場合には、医療法において定められた医療機器安全管理責任者等に配布く ださいといったことを明記するということになっています。これは8月5日に公表した 「今後の対応」ということですが、これを受けまして、例えば今日の資料1-2の通知な どでは、通知のタイトルに「注意喚起」あるいは「周知徹底依頼」ということを書かせ ていただいたり、通知の最後の所に枠囲みで、医療機関の医療機器安全管理責任者など に配布くださいということを書かせていただいています。この課題2に対応した措置は とっています。  課題3が「添付文書の記載について」ということで、添付文書の記載方法によっては、 複数患者に使用できないことが明確には認識できない。それから、添付文書にどのよう な内容の注意事項を記載すべきかについて、明確なルールが必要だというような御意見 がありました。これについては、平成13年12月に医療機器の添付文書の記載要領を定 めていまして、これに基づいて改めて製造販売業者などの指導を徹底していくというこ とです。  穿刺器具については、平成18年3月の通知により、添付文書の注意喚起の記載を「禁 忌・禁止」の項に統一するなど、製造販売業者に対する指導を行ってきました。  21ページで、真ん中に13と書いてあるページです。課題4として、「製造販売業者 による情報提供の改善」です。厚生労働省が製造販売業者に通知等に対して、通知等に より指導をした事項、例えば注意喚起のためのシールを器具に貼付すること、医療機関 等使用者に対する使用方法に関する情報提供等が十分に実施されていないのではないか という御意見・御批判に対してです。これについての対応としまして、通知等による指 示が確実に徹底されるよう、通知後に定期的に指示の実施状況を報告させるなど、引き 続き製造販売業者を指導していくということでして、本日の議題1で報告させていただ きました幾つかの説明をした通知の中にもありましたように、指示を出しっ放しという ことではなくて、フォローをすることを始めています。  課題5が看護師の養成所とかでの添付文書に関する安全教育がなされていないのでは ないかという御指摘です。上記の施設において添付文書の重要性の認識が不十分であり、 添付文書を確認することが、十分に教育されていないのではないかという意見でした。 今回の調査結果を受けまして、こうした養成所に対して、安全で適切な器具の取り扱い について周知を行っていただくことを、これは医政局の看護課、あるいは文部科学省の 方にこういった養成所において、添付文書の重要性を十分に教育いただくことを依頼し ています。以上が穿刺器具の問題に対する御報告です。以上で議題4の説明を終わらせ ていただきます。 ○笠貫部会長 どうもありがとうございます。先ほどまでの議論にもありました、どう 安全情報を徹底していくかということについて、大事な御報告だったと思います。御質 問はございますでしょうか。 ○澤委員 穿刺器具に関しましては、もう一つ問題点があると思うのですが、私の記憶 が正しければ、感染を起こして死亡例があったというのはイギリスの例で、それは老後 施設であったという情報が、ほとんど伝わっていないです。それから、カナダでも同じ ようなことがあったけれども、カナダでは感染の事実が確認されていないということも ない一方で、この情報が発出された5月の時点では、日本で感染の可能性があるので、 心配のある患者は医療機関に問い合わせる方がいいというような情報提供がされて、非 常に社会的にパニックになったわけです。そこのところの情報提供がもう少し適切に行 われるべきであったろうと考えます。  医療機関としては、これに対して調査には大変手間取りましたし、患者に対しても、 どういうふうに安全なのか、安全でないのか。それから先端のキャップ、針は換えてあ るけれども、キャップを換えていなかったとの処置の違いがどういう意味を持つのかと いうことが分からないまま、全部針の交換もしない状況のデータとしての、情報提供的 なところがあったように思うのです。ですから、そこのところで今回の「別紙」という 中の課題の最初の部分でそのことは書かれるべきではないかと思います。厚生労働省か らの情報の発出が、少し不正確であったのではないかというふうに私は考えております。 ○安全対策課長 非常に大切なことを御指摘いただいていると思います。リスクコミュ ニケーションに関して、基本的な押さえるべき点が多々あるということ。私ども、この 穿刺器具の一件で、学んだことが多大にございます。実際に患者さん、国民が非常に不 安を覚えるような情報の伝え方が、現実に起きてしまったということも、反省すべき点 としてあるかと思います。やはり、どれぐらい危ないのかということについて、できる だけ学術的に、科学的に、きちんと解説ができるようにというところは、確かにござい まして、感染の危険度について、感染症学会等に御指導をいただいて、その情報も提供 はしたのですが、これが後手に回ったということだったかと思います。  今後の参考というか教訓とさせていただいて、最初に伝えるときに、どのような形で きちんと伝えるべきか。もちろん不確実な状態で発表をせざるを得ないということもご ざいますので、そういう場合のメディアに対する日常からのコミュニケーションも大事 かなというふうに考えています。 ○笠貫部会長 日本にまだ感染が発生していない時点で、早くその対策はとったが、そ の情報について、どこまで詳細に伝えるかということと、現場への情報の提供をされた 後の反応についても、これから検討をした上で情報伝達を考えていくということだと思 います。今日の課題1〜5は、ここで教訓として安全対策としては大きな前進ができる だろうと思います。よろしくお願いいたします。先ほどの参考資料では、市販後の安全 使用情報の収集事業としても一歩前進というか、大きな前進だと思います。この成果に ついても期待したいと思います。 ○佐伯委員 今の収集事業なのですが、報告のところに患者への説明指導等について、 適切に実施されているかどうか記載ということがございますが、適切にされたかどうか は、恐らく受けた患者さんにしか分からないという部分もあろうかと思いますので、可 能な範囲で、その実施される医療機関に患者の立場の方、当該患者さんである必要はな いとは思うのですが、何かそういう方が含まれていると、先ほどのような自分で使うも のの添付文書ですとか、あるいはいろいろなことで力になっていただけるのではないか と思います。 ○笠貫部会長 よろしくお願いいたします。以上で本日予定しております報告事項はす べて終了になります。そのほか事務局から何かございますか。よろしいですか。 ○事務局 はい。 ○笠貫部会長 平成20年度第2回の医療機器安全対策部会はこれで閉会といたします。 大変貴重な御意見、活発な御議論をいただきましたことを、心からお礼を申し上げます。 長時間にわたりましてありがとうございました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 安全対策課安全使用推進室 室長補佐 飯村(内線2751)