08/11/10 第13回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会港湾労働専門委員会議事録 第13回労働政策審議会職業安定分科会 雇用対策基本問題部会港湾労働専門委員会  日時 平成20年11月10日(月)    15:00〜16:45  場所 職業安定局第1会議室 ○征矢座長 それでは定刻になりましたので、第13回「労働政策審議会雇用対策基本問 題部会港湾労働専門委員会」を開催させていただきます。最初に、本日の委員の出欠状 況を報告させていただきますが、本日は久保委員が欠席でございます。前回、開催され て以降、委員に異動がございましたのでご紹介いたします。参考資料1に名簿がござい ますが、10月1日付で、森川委員に代わり、花島孝明委員が本専門委員会使用者代表に 新たに就任されましたので、ご挨拶をお願いします。 ○花島委員 花島でございます。よろしくお願いいたします。 ○征矢座長 それでは、議事に入ります。本日の議題は、「新たな港湾雇用安定等計画 の策定等について」です。本日は、労働者代表委員の方からもお手元に資料が配付され ておりますので、労働者代表委員におかれましては、事務局からの説明に続いて、関連 部分の説明をお願いします。それでは事務局から、まず第1点目の検討項目「港湾労働 法の適用港湾・適用業種について」説明をお願いします。 ○今宮建設・港湾対策室長補佐 資料のほうは、配付資料になります。配付資料の1頁 目、2.(1)港湾労働法の適用港湾・適用業種について、という項目についてです。検討 事項、中ほどから下のほうにあります検討事項の1つ目の○、現行制度の在り方を見直す 必要はあるかといった点に関しまして、前回のご議論の中では、主な意見として、2点あ りました。1点目は、労側委員のほうから港湾労働法の適用港湾を港湾運送事業法の指定 港、93港まで拡大するとともに、同法の適用業種を検数・鑑定・検量の各業種まで拡大 すべきという意見がありました。それに対しまして、使用者側委員のほうから、地方港 と6大港に大きな格差が存在することに留意すべき、地方の実状に合わせた対策を取って いる地方港に対して、6大港のルールをそのまま適用するのはどうか、段階を踏んで進め ていくべきといったような意見が2点目としてございました。それらを踏まえまして、 主な具体的論点としては、3点ほどあるかと思います。  1点目、港湾労働法の適用港湾を港湾運送事業法の指定港まで拡大する必要は現時点に おいてあるか、2点目、港湾労働法の適用業種を検数・鑑定・検量の各業種まで拡大す る必要は現時点においてあるか。3点目として、港湾労働法の適用港湾・適用業種の拡 大について地方の実状も踏まえた上で、段階的に進めていくことは適当かどうか。適当 であれば、どのような視点から進めていく必要があるか。本項目については、こういっ た点を中心に本日は議論をいただければと思います。事務局のほうからは以上です。 ○征矢座長 引き続きまして、労働者代表委員からご意見をお願いいたします。 ○伊藤委員 お手元に労働側委員の意見をまとめたものを配付させていただきました。 また、もう1つ参考資料として、検数・鑑定・検量事業というものがどういうものであ るか、その概要等につきまして、資料を作らせていただきました。私のほうから、意見 に関して読み上げまして、意見と換えさせていただきたいと思います。  いま、検討項目が上がりました1「港湾労働法の適用港湾・適用職種」についてです。  (1)港湾労働法の適用港湾を港湾運送事業法の指定港まで拡大する必要は現時点にお いてある。必要な理由は、港湾運送事業の規制緩和が平成18年5月から全港・全職種で 実施されたこと、また、雇用保険法に基づく労働者福祉事業の廃止にともない、平成21 年度より港湾労働者福祉センターなどの予算措置がなくなることによる。  そもそも、港湾労働法第1条の目的である「港湾労働者の雇用の改善、能力の開発及 び向上等に関する措置を構ずることにより、港湾運送に必要な労働力の確保に資すると ともに、港湾労働者の雇用の安定その他の港湾労働者の福祉の増進を図ることを目的と する」は、6大港の現業労働者だけでなく、すべての港湾労働者に適用すべきものであ る。  行政改革委員会の最終意見(平成9年12月12日)は、「港湾運送事業においては、港 湾運送の効率化(コスト削減、サービス向上)を求めれば、港湾運送の安定化、(労働 関係の安定化等)が損なわれるという懸念もあるため、この2つの目標をどのようにバ ランスを取って解決するかという視点も重要である」と述べている。そのため、セーフ ティネットとしての港湾運送の安定化策が国土交通省の審議会、懇談会で検討されてき た。港湾運送事業の規制緩和が全港、全職種で実施されるようになり、地方港において も労働関係の安定化は重要な課題となっている。  また、港湾労働者の福利厚生事業の充実については、港湾運送事業の規制緩和につい て検討した運輸政策審議会海上交通部会答申(平成11年6月)、港湾運送事業の在り方 に関する懇談会報告(平成16年2月)でもその必要性が指摘されたところである。現在、 港湾労働者の福利厚生については、その根拠法を港湾法第12条(港湾局の業務)の「港 湾における労働者の休泊所等、福利厚生を増進するための施設を設置し、又は管理する こと」にもとづいているが、港湾管理者の業務は休泊所等の設置に留まり、非常に限定 されたものと解釈されている。港湾労働法の適用港湾を港湾運送事業法の指定港まで拡 大し、港湾労働者の福祉の増進を図る国の責務を明記した法的整備を図り、予算措置を 確保することが必要である。  (2)につきましては、この適用を段階的に進めるという問題につきましての私どもの考 え方であります。港湾労働法の適用港湾を港湾運送事業法の指定港まで拡大することに よって、港湾労働者派遣制度を港湾労働法のすべての適用港湾でおこなうべきである、 地方港から港湾労働付加金を徴収すべきであると言っているのではない。  適用港湾拡大の意図は、港湾労働法の目的を港湾運送事業法の指定港に適用すること、 港湾労働者の福利厚生に関わる予算を国の責任において支出できる方策を確保すること である。また、地方港においては、後述するように港湾運送事業の業域を特定港湾倉庫 に拡大することができる。さらに、地方港において港湾運送事業者が常用港湾労働者を 職安に届け出ることによって、常用港湾労働者証の交付を受けることになり、常時港湾 労働に従事する者を明確にすることができる。常用港湾労働者の届出は、安全教育、港 湾保安とも関連し、港湾運送事業法上の雇用管理、雇用安定策にも役立つと考える。  なお、地方港における港湾労働者派遣制度の導入については、今までどおり労使が合 意した港において実施すればよい。その場合、地方港から港湾労働法付加金を徴収する 必要はないと考える。  (3)港湾労働法の適用業種を検数・鑑定・検量の各業種まで拡大する必要は、現時点に おいてある。  海上運送において荷主と船社の間に立って、貨物の数、量の確認、破損、盗難、品質 などの状況、検査を行う第三者証明行為は「歴史的にも海上貿易を円滑に行うために不 可欠な業務として、世界的に認知されている重要な業務である」。これは、懇談会報告 であります。コンテナ化、専用船化などの輸送形態の変化により業務量は減少している が、輸送の安全管理、セキュリティの確保、社会悪品の不正輸送の防止などの新たなニ ーズに対応し、IT化の進展に対応した物流ネットワークの構成員としての役割りを担う など、業務内容が広範囲化、複雑化している。これら業務は専門性が高い業務であると 同時に、船舶の運行に伴う業務であるため波動性の高い業務である。  平成18年5月から実施された港湾運送事業の規制緩和によって、いままで国に登録さ れていた検数人、鑑定人、検量人の登録制度を廃止し、検数人等に対する教育や技術 レベルの維持は雇用主の責任とし、これら業種の質の確保は行政による事業者に対する 事業計画の審査等を通じて担保することになった。すなわち、検数等の行為が、個人レ ベルから組織レベルで行う体制となったのである。  したがって、これら業種で働く労働者について、より適正な雇用管理をおこない、雇 用の安定、福祉の増進を図ることが重要になったのである。  まず、前項で述べた港湾労働法の目的と福利厚生に関わる予算措置をこれら業種にも 適用する必要がある。  さらに、これら業種においては早急に港湾労働者派遣制度を行うべきである。なぜな ら、6大港においては、後述する指定事業体から派遣される労働者をこれら業種に従事 させる状況が常態化していること、地方港においては、仕事が忙しいときは他港から同 一事業者の労働者が応援を行っているにもかかわらず、同じ港の他の同業事業者の労働 者は仕事がなくて暇であるという状況がひんぱんに生じているからである。なお、労働 者派遣法との関係でこれら業種にも港湾労働法を適用すべきであることについては後述 する。以上です。 ○征矢座長 それでは、1つ目の検討項目につきましてご質問、あるいはご意見等があ りましたらご発言お願いいたします。 ○中谷委員 適用港湾、適用業種を拡大する必要はないというのが基本的な考え方であ ります。理由は、この前も久保委員もずいぶん詳しく言われましたけれども、そういっ た状況を、現状の中で拡大する必要はないと思いますし、いま言われました検数、鑑定 の部分についてもですね。これは、我々のいわゆる港湾労働者のブルーカラーと違いま して、基本的にはホワイトカラーではないか。港湾労働法の対象とする業種ではないと いうのが我々の基本的な考え方でありますから、基本的にはいま労働側が言われたご意 見には賛成ができないということであります。 ○征矢座長 ほかにございますでしょうか。 ○鈴木委員 これは、本来労使でもう少し詰めなければならない問題だと思うのですが、 組合側のこういう考えを出したことには、3つ理由があります。ここにも、謳っていま すけれども。  1つは、福祉事業、港湾労働者の休憩所とか食堂だとか、そういうものは港湾法だけ ではカバーしきれないで、これまでは雇用保険法の中の福祉事業というものがありまし て、雇用促進事業団が中心になって、いろいろな休憩所なり食堂なり、港湾労働者向け の住宅なりをカバーしていたわけです。それが、法的にも廃止されて、そして自治体な り事業者団体なり港湾の福利厚生協会が買い取って、いまは運営をしているわけです。 ですから、先ほど指摘しましたように、港湾法だけでこの港湾労働者の福祉事業をカバ ーしきれない。もっと幅広い法的な措置が大事だ。そして、いま閣議決定しながら港湾 の24時間、365日稼働というのが、国の政策としてやられているわけです。そのための 実証実験も国が予算を組んで実験をしているわけですが、そういう委員会の中でもここ にも先ほど指摘しましたように、港湾労働者の福祉の充実なり夜間荷役での休憩所なり、 それから港湾労働者が夜間に通勤できるような交通アクセスの拡充ということをやらな ければならないということになっています。誰がやるのかということなのです。この根 拠法はないのです。港湾の場合には、どちらかといえば事業者が出張して仕事をすると いうことですから、どうしても外で休憩したり食事をとったりということなので、事業 者個人が福祉事業を手がけることはできない性格を持っているわけです。ですから、港 湾運送事業法の運賃・料金にも付加金というので、福利厚生分担金をユーザー団体から いただきながら、そういう福祉事業をやっているわけで、そういう意味ではそれを全国 的に適用して充実させていくということになれば、根拠法としては港湾労働法の中に全 港全職種適用ということが必要になるということが1つなのです。  それから、2つ目はこれはこれから段階的に実施されるであろう港湾保安の問題です。 全国共通のIDカードを持って、生体認証できるカードを、そこで働く労働者が所持する ように、これは法律的に決まったのですか。決まって予算措置も出始めているのですよ。 それは、段階的に導入するということになっているのですが、そのカードを誰がどう負 担するかということは、これからの問題ですけれど、そのときに私たちは基本的には国 の保安ですから国が負担すべきと考えています。そして地方港であっても港で働く労働 者の特定をして、港湾に対する不正入出がないようにしなければならない。これは、横 浜港で起きた事件ですけれども、横浜港は、りっぱな顔写真入りの港湾への通行証を港 湾局が発行しているのです。ところが、なりすましといって船に船具とか何かを供給す る事業者になりすまして、結局は拳銃類の密輸があって、それが発覚、警察の取り締ま りでつかまったことがあるのですが、こういうなりすましを防止するために顔写真だけ ではなく、生体認証を導入するということは決まっています。ですから、6大港の場合 は労働者証、これは政府が全部予算措置をして常用労働者に所持させているわけです。 適用港湾を広げ、国の二重の負担を避けるという意味でも共通カードに労働者証をセッ トしながら、できないのかどうかということ。これが2つ目の理由です。  3つ目は、地域での港運事業者なり、港湾労働者の業域、職域の線引きの問題です。 地方港の場合は、そういうとこがあいまいになっているところもありますので、港湾運 送事業法上の業域は、港則法によって海上が中心になっているもので、陸のほうの業域 の線引きというものは、港労法である程度カバーしているようなところがあります。そ れと、関税の保税地域というのですかね。港湾運送事業法と港労法と関税法の3つがう まく機能しながら、港湾運送事業者の業域というものが、ある程度線引きされているわ けですから、そういうところも地方港についても同じように業域を確保していこうでは ないか。それが基本的な考えであって、そして実際に進めるにあたっては、ここにある ように段階的でいいのではないですかということですので、いま実際に政府が実践をし ている課題を港労法上でも整合性をもって、政府が一体となってフォローをしていくと いう意味からも現時点でいまのいろいろな法改正がされているわけだけれども、現実に は追いついていかないということがあるので、港労法上もカバーできるようにしたらど うだろうかということが組合側が基本的に考えていることです。 ○伊藤委員 お答えさせていただきますが、いま申しましたように、これは、むしろ業 者の負担軽減になると言いますか、業域拡大になるのではないかと私どもは思っており まして。港労法付加金を新たに地方港の業者なり、検定の業者なりが払うから、それは 困るよというような考え方で反対だと言われるのでしたら、ちょっと見当違いなのでは ないか。むしろ先ほど言いましたように、業域を地方港においても拡大をしていく、あ るいは港湾労働者証ということが、国の費用によって出されるのでしたら、むしろIDカ ードと共通にすれば、これは業者負担が軽減するとか、あるいは福利厚生のいろいろな 予算措置、今後は、福利分担金をどうするかという議論に発展するのですが、少なくと もそこは、国のいろいろな予算措置でカバーできるようにしていったほうがいいのでは ないかとか、そういう意味合いにおいて私どもは提案をさせていただいておりますので、 かえって業者に負担を強いるような提案内容ではないという点を、ご理解いただきたい と思います。 ○中谷委員 日本福利厚生協会がありますね。そこで、私も一昨年まで理事長をやって いましたが、十分に中央からの予算を、地方の実情に応じて出してもらって、いろいろ な設備の確保や保全をやっておりますから。先般の改定でその範囲が広がりましたが、 その中で実際に実行的に使っているもの、使っていないものを選択して、使っていない ものは切り捨てながら、使うものは拡充していこうという形で。これは福利厚生協会で やっていますから、そこはご心配なさるように、急速に福利が落ち込むということは私 はないと思っております。  それからいま業域の問題が出ましたが、業域の問題は、これは日本港運協会でそれぞ れ各港の実情も見ながら、我々の港としての業域確保については十分努力をしておりま す。実状を聞きながら、対策をつくりながら対応しているということで、私は別にそう 大きな問題はないと思っております。労側が言われることに反対ばかりして申し訳ない けれど、実状そういうことです。 ○糸谷委員 いずれにしてもこれは労使間の問題もあるので、ここでは意見を言って、 労使間の意見の違いはまた労使間で次回なり次々回までに詰めるようにこちらもやって います。ここで意見を交換していても時間がかかって。労使交渉ではないですから。 ○征矢座長 ここは、おっしゃるとおりで、ただ、ご意見はとにかく出していただいて、 それから先、いま言ったようなことでやっていただければと思います。ほかにご意見ご ざいますか。 ○鈴木委員 まあ、委員会ですからね。事業者の努力は理解しているのです、また、努 力してもらわなければ困るのでね。ただ、制度として、どうやって港湾の業域を確定し ていくか、特に我々がいま心配しているのは、違法派遣とか違法就労問題で、相当多く の港湾で告発がされているわけでしょう。そういう状況というのはやはりどこかに抜け 道というか、グレーゾーンがあった所に、うまく入られてきているわけです。だからこ れを機会に、そういうところもやはり線引きをして、グレーゾーンの所では港運同士が ある程度対応できるような、そういうところまでいけるというか、今回の港湾計画につ いても抽象的、絵に描いた餅にしないで、実践をしながら司直の手が伸びるような所に はガードを固められるような、そういうバックをつくろうかというのもあるのですよね。 事業者の努力しているのを否定しているわけではないですけどね。 ○征矢座長 ほかに何かご意見ございますか。 ○中谷委員 我々も意見は意見として受け止めています。 ○土井委員 それは大いに、労使の関係者でお話いただくというのは本当に大賛成です。 あと、我々の立場にとってはちょっと情報が不足していますので、そのときにできるだ け。例えば労働者福祉センターが自治体とかに移管されていますよね。それがその後ど うなっているのか、その辺のいろいろな情報を、いまご議論になったことに関する客観 的な情報を、いろいろお知らせいただき、勉強させていただければありがたいと思いま す。 ○征矢座長 よろしいですか。それでは、また何かありましたら後ほどご意見をいただ くとして、第2点目、「港湾労働者派遣制度の適正な運営について」。事務局から説明を お願いします。 ○今宮建設・港湾対策室長補佐 続きまして、配付資料の2頁目、(2)港湾労働者派遣制 度の適正な運営について、という項目についてです。検討事項として、大きな〇でいう と1つ目の〇。まず、現行制度をより円滑に運営していく方策はあるかとの関連で、主 な意見としては、大きなところでは3つありました。  1点目は、労側委員のほうから、港湾労働者派遣制度に係る派遣就業の上限日数の緩 和によって、常用港湾労働者の活用が進んでいる。この点は前回の計画策定後から5年 間の成果の1つであり、港湾労働の実態が改善されてきているものと評価できる。  2点目として使用者委員のほうから、港湾労働者派遣制度に係る派遣就業の上限日数 について、派遣日数が多い方が常用港湾労働者の活用にプラスの影響を及ぼすため、現 行の7日から10日に緩和すべき。  それに対して労側の意見として、港湾労働者派遣制度に係る派遣就業の上限日数のさ らなる緩和については、現行の港湾労働者派遣制度を十分に活用できるシステムを、港 湾ごとに構築した上で検討すべきといったご意見が3点目としてありました。  それらを踏まえた具体的論点としましては、港湾労働者派遣制度に係る派遣就業の上 限日数を緩和する必要は現時点においてあるか。必要があるのであれば、具体的な緩和 日数をどのくらいにするのかといった点があろうかと思います。  2つ目の〇。現行制度の在り方を見直す必要はあるかとの関連で主な意見としまして は、港湾労働者派遣制度の適用外業種である検数・鑑定・検量については、現在、いわ ゆる指定事業体に属する労働者をもって業務が行われているところ、労働者派遣法の適 用を前提に、いわゆる専ら派遣という形態によって業務が行われているため、同法の改 正にあわせて、こうした業種の取扱いについても見直しを行うべきといったご意見が労 側からありました。  それを踏まえた具体的論点としましては、労働者派遣法の改正を踏まえ、港湾労働者 派遣制度の適用外業種である検数・鑑定・検量の取扱いを見直す必要はあるか。必要が あるのであれば、具体的にどのように見直すかといった論点が1つ。  続いて3頁目です。前回の専門委員会では派遣との関係で、その他の所に記載してお りますが、人付きリースの問題に対して、行政はきちんと対処すべきといったご意見も ありました。このご意見を踏まえた具体的論点としましては、人付きリースの問題が未 だに現存する京浜地区における現状について、どのように評価すべきなのか。人付きリ ースの問題に対処するため、どのような視点に立った対策が必要か。本項目については、 こういった点を中心にご議論いただければと思っております。事務局からは以上です。 ○征矢座長 それでは労働側委員のご意見を。 ○伊藤委員 意見書の3頁です。(1)港湾労働者派遣制度に係る派遣就業の上限日数を緩 和する必要は現時点においてはないということです。前回、派遣就業の上限日数を5日 から7日に引き上げたことによって、その必要が言われていた港の港湾労働者派遣の実 績が伸びていることは認める。しかし、全体的に見ると、いまだに港湾労働者派遣より 日雇労働者の直接雇用が多い。また、違法な派遣労働者が就労していることは極めて問 題である。それは、雇用安定センターの斡旋が十分機能していないこと、職安紹介が機 能していないことによる。したがって、違法派遣ができないシステムの確立、雇用安定 センターの斡旋並びに職安紹介の機能を充実させることが先決である。  (2)労働者派遣法の改正を踏まえ、労働者派遣制度の適用外業種である検数・鑑定・ 検量の取扱いを見直す必要があるということです。  平成11年の労働者派遣法の改正によって、建設、港湾運送、警備以外の業務における 労働者派遣が認められるようになった。港湾運送業務とは港湾労働法の適用業務である ため、検数・鑑定・検量業務は労働者派遣法の適用業務となった。このことを問題にし た港湾労働組合と旧労働省との話合いの結果、これら業務に対する労働者派遣は、検数 ・鑑定・検量事業を行っている4協会のそれぞれの子会社、これを指定事業体と呼んで おりますが、その指定事業体から労働者を派遣することとなった。  検数・鑑定・検量事業は港湾運送事業法によって下請が認められていないので、指定 事業体は検数・鑑定・検量事業の許可を受けていない。派遣元である指定事業体は、そ れぞれの協会の退職者の受け皿として発足したわけであるから、当初、検数人手帳を所 持する者を雇用し派遣していたが、次第に新規採用者を抱えるようになった。現在、指 定事業体は、自ら雇用した者のうち、検数・鑑定・検量事業者の協会が実施する研修を 修了した者を検数・鑑定・検量事業者に派遣している。  この指定事業体は親会社にあたる検数・鑑定・検量事業者にしか派遣できないので、 「専ら派遣」にあたる。本年9月の労働政策審議会労働力需給制度部会の報告を受けて、 政府は、「専ら派遣」の割合を80%以下とする労働者派遣法の改正案を現在開会中の第 170回臨時国会に提出した。港湾労働者派遣制度を検数・鑑定・検量業務にも導入し、 相互の派遣を行った方が効率的である。  (3)人付きリースについては、労働者派遣法に違反するものであること、荷役機械のリ ースと人のリースは分離し、荷役機械のみをリースし、人は港湾労働者派遣制度を利用 し、他の港湾運送事業者に雇用される常用港湾労働者を使用することが現行雇用安定等 計画に記されている。  人付きリース問題が、未だ現存する京浜地区における現状については極めて遺憾であ る。厚生労働省はより積極的に人付きリースを取り締まるべきである。  人付きリース解消は可能であるので、厚生労働省が実態を調査し、業者と協力して具 体的解決策を策定するよう強力な対応を行うべきである。以上です。 ○征矢座長 それでは第2点目の論点、派遣制度の適正な運営についてご意見等ありま したら。 ○中谷委員 労働側は、7日から伸びるということは反対という。 ○伊藤委員 現時点では。 ○中谷委員 しかし、広げることによってまた考え方が変わってきて、いい点が出てく るのではないかと思いますけどね。港によって確かにこれが直接どうこうという、現時 点ではわからないかもしれませんが、5日から7日へ伸ばした結果が出てきているわけだ から、やはり10日ぐらいまでは伸ばしたってそんなに弊害は出てこないと思うし、むし ろいい結果は出てくるのではないかと思いますけどね、これは。 ○鈴木委員 これはあとで議論になると思いますけどね。いまの日雇いをどういうふう に減らしていくかというところとの関係もあるのですが、やはり、確かに大阪、名古屋 を中心にして、5日から7日に増やすことによって、センターの斡旋が増えたという事実 はあるわけです。しかし、全体的に運営はまだ、職安の紹介機能はやはり不十分なので すね。現行のシステムを十分に機能させてから、その上で、どうしても足りないという ときにこれは議論すべきであって、いまの段階ではまだ時期尚早という感じを受けます。 あとで、日雇雇用をどういうように削減するかというのは集中議論になると思いますけ どね。 ○征矢座長 労働者派遣制度が導入されたわけですね、従来日雇いでずっとやってきた のに。労働者派遣制度を導入したことについての評価としては、一応、派遣制度を導入 してよかったというようにお考えですか。そこは共通してるのですね。 ○鈴木委員 はい。 ○征矢座長 ただし、派遣制度に伴う保護対策がいろいろあるから、それで当面、日数 をどうするかというのはもう1つの議論ということで。 ○鈴木委員 だからもうちょっと雇用安定センターにも機能を持たせたほうがいいと思 うのです。ここはまだ不十分な、職安とのお互いのやり取りでうまくキャッチボールが できていないですよね。 ○糸谷委員 名古屋と大阪はそれなりの実績が上がっている。ところが、拡大してもほ とんど関係がないような港も、特に京浜を中心にある。これがあるから、じゃあもう少 し業全体の意見としてやるのなら、その辺の港の考え方を逆に言ったら聞かせてもらい たいというところもあるわけです。 ○中谷委員 私どもの内部意見では、関東の日雇いが多い。ということはやはりドライ バー、輸出車のドライバーが多いということでしょう。こんな経済情勢の中で、逆に、 自動車がこうなってきている。放っておいたってこれは減ってしまう可能性がある。あ る意味では残念ながらね、そういう経済の流れで輸出車が減っていくとなれば、こうい った日雇いの数も、ドライバーとしてはもう減っていってしまうのではないかというこ とは実状としてはあるようです。私たちも同じ港湾業者として、なんで日雇いが多いの かということは、私たちもある程度よく質問するし、実態どうなっているのですかとい うことは聞いています。その中でそういう答えをいただいていて、やはり自動車のドラ イバー、本船積みドライバーで、どうしても、職安にはいないということだから。やは りそうなってしまうということですからね。 ○糸谷委員 だけどこの問題は、何も昨日、今日始まったわけではないですよ。車の輸 出が始まってからずっと抱えている課題なのですよね。そのことを放置しておくという こと自体に大きな問題があるのですよ、単にこの常用派遣の日数を拡大する。本来なら 各企業、自動車なら自動車、あるいは青果なら青果、そういった特定貨物に対して問題 があるとすれば、その携わっている業者自身が自分の所でもし抱えるなら一歩ずつでも 進めて、1人でも2人でもそういう資格を持った人を雇用して、それを常用の派遣でカバ ーする。それはもう、10社から2人ずつ集めても20人になる。というような方向性が見 えれば、それはその辺で1回努力してみようというのはわかるのですが、何ら変わって いないという状況がずっと続いているわけですよ。今度は、確かに世界情勢がこうです から減っていくかもしれませんが、景気の拡大とともに日雇依存度も、少しずつですが、 これではないのですよね、依存度は高まってきているのです、このデータを見ればわか るようにね。そこがやはり大きな問題だという指摘の裏返しで、常用派遣日数を拡大す ることでそれがなくなるというように思えないから、とりあえずは必要ないですよとい うようにやっているわけです。 ○花島委員 もっと細かくいうと、常用というのは要するに、応援にというか、派遣に 行く常用もいるけれど、派遣に絶対に行かない常用もいるのです。例えば紹介を受けた 人間がいて、うちの仕事はいいけれど、よその仕事までわざわざ行ってやらないという のがいるから、そうすると行く人間というのは大体決まってしまう。7日だと、応援に行 く人間は決まってしまうから、やはり10日にしてもらえればもっと増えると思うのです。 ○鈴木委員 月間就労日数20日ちょっとですよ。20.9日ぐらいだから。その中で半分が 派遣数となると、これはちょっと。 ○伊藤委員 既定のニーズと。仕事しすぎたら駄目だね。 ○鈴木委員 我々も、強制しろとは言えないけれどもね。 ○征矢座長 日数の問題はご異論がいろいろあるようですが、そのほか。 ○鈴木委員 センターの有効活用と日雇いの縮少を、当面はここに重点を置いて取組ん でいただいて、その上でこの日数問題というのは、改めて議論したらいいのではないで しょうか。 ○中谷委員 もちろん結構ですよ。考え方として申し上げているのでね。 ○征矢座長 それでは3つ目の検討項目の港湾労働者の雇用改善について。事務局から 説明をお願いします。 ○今宮建設・港湾対策室長補佐 続きまして、配付資料の3頁以降になります。(3)港湾 労働者の雇用(労働条件等)の改善について、という項目についてです。検討事項は3 頁の下のほうにあります。まず、現行制度をより円滑に運営していく方策はあるかとの 関連で、主な意見としては、4頁目にかかりますが、大きな話としては3点ありました。  1点目は、労側の委員の方々から、東京港や横浜港においては、荷役の種類に応じた 縦割り体制で港湾運送業務を行っているため、大きな波動性が生じてしまう。こうした 東京港や横浜港固有の事情などを踏まえ、港湾ごとに改善策を考えていくべき。  2点目として、日雇港湾労働者の直接就労が未だに多い現状に対応するため、港湾ご とに実情の分析を行い、行政としての対応(派遣制度の活用促進、公共職業安定所紹介 の活用促進等)がきちんと行われるようにすべき。  3点目、これは使用者側委員から出てきたご意見です。港湾の雇用秩序を維持するた めの現行の仕組みは、基本的に維持すべき。現行の仕組みを前提にした上で、グレーゾ ーンの扱いをどのようにするのかが問題。こういったご意見がありました。  これらのご意見を踏まえた具体的論点としては、東京港及び横浜港における固有の事 情として、「荷役の種類に応じた縦割り体制の採用」の他にどのようなものがあるか。 6大港のうち東京港及び横浜港以外の各港における固有の事情としては、どのようなも のがあるのか。また、6大港それぞれの固有の事情をどこまで勘案して対策を講ずるこ とが適当なのか、といった点があろうかと思います。  2つ目の〇。現行制度の在り方を見直す必要があるかという項目との関係で、4頁の後 半以降ですが、主な意見として全部で5点ほどありました。  1点目として、労側から、日雇港湾労働者への安全教育は未だ十分ではないのが現状 であるため、日雇港湾労働者に対して最低限の安全教育を行うシステムを導入すべき。  2点目として、労側から、日雇港湾労働者の扱いについては、安全教育等の一定の研 修修了後、港湾労働者雇用安定センターに登録の上、公共職業安定所を通じて紹介する システムとしてはどうか。違法な日雇派遣による就労の防止、港湾労働者の安全性の確 保、職域の確保につながるものと考える。  そういった労側の意見に対して使用者からは、3点目。安全教育は必要。しかし安全 教育の徹底のため、日雇港湾労働者の登録制を導入することについては、労使合意の上 で過去に廃止した港湾労働者雇用安定センターにおける常用雇用制度を復活させること になるため、反対。日雇派遣などの違法就労の防止という観点から、他の対策を講ずる べき。  そういった使用者側意見に対して労側から、労働環境に甚だしい格差がある状況で就 労している労働者が実態として存在している。港湾労働者雇用安定センターにおける登 録など、日雇港湾労働者に関する何らかの登録システムを導入して、安全教育等の一定 の研修を行った港湾労働者を活用することが非常に重要、といったご意見が4点目とし て。  さらに労側からは、日雇港湾労働者の港湾労働者雇用安定センターにおける登録シス テムの導入目的は、違法就労を防止し、秩序ある職域を確保することにあるため、過去 に廃止をした港湾労働者雇用安定センターにおける常用雇用制度とは異なる。こういっ たご意見が5点目としてありました。  そういったご意見を踏まえた具体的論点としては、まず1点目。日雇港湾労働者への 安全教育を徹底するため、行政側、事業所側それぞれがどのような対応を行うことが適 当なのか。  2点目は、日雇港湾労働者の港湾労働者雇用安定センターにおける登録システムを導 入する必要は現時点においてあるか。必要がないのであれば、違法な日雇派遣による就 労の防止、港湾労働者の安全性の確保、職域の確保のため、他に講ずるべき対策はどの ようなものがあるのか、といった点があろうかと思います。  続いて5頁目です。今後の港湾労働者の雇用改善の推進に際して、留意すべき点とい うのはあるか。こういった項目に関連して主な意見としては3点ありました。  1点目、使用者側からですが、港湾地域における労働のうち、港湾労働者のみが働く ことができる職域はどこか、また、パート労働者(一般の派遣労働者)も働くことができ る職域はどこか。それぞれきちんとした線引きが必要。港湾で働く労働者として、港湾 労働者証を有する港湾労働者のみを認めるのか、それとも、一般の派遣労働者にも職域 の一部を解放し、ダブルスタンダード(賃金の二重価格制)を認めるのか。それぞれに ついて検討していくことが必要。  労側からの2点目、港湾倉庫において就労している労働者が港湾労働法の適用範囲に 含まれるか否かが曖昧になっているため、その適用関係について明確にすべき。  労側からの3点目、日雇港湾労働者が増加しつつある問題を解消するため、行政とし て何らかの対策を講ずるべき。こういったご意見がありました。  それらを踏まえて具体的な論点としては2点。1点目は、港湾労働法の適用関係を明ら かにすることにより、港湾労働者のみが働くことができる職域、すなわち港湾労働法が 適用される職域、すなわちパート労働者(一般の派遣労働者)は働くことができない職 域が一義的に確定されるのではないか。そうではなくて港湾労働の職域とは、港湾労働 法が適用されない職域も含む概念なのか。仮に適用されない職域も含む概念なのであれ ば、港湾労働者と、一般の派遣労働者が併存する港湾労働の職域といったものが生ずる 可能性があるので、それらの労働者に係る職域の線引きについて、どのような視点から 行っていくことが適当なのか。  2点目、日雇港湾労働者が増加しつつある現状について、どのように評価すべきなの か。本項目については、こういった点を中心にご議論いただければと思います。事務局 からは以上です。 ○征矢座長 それでは労働側、ご意見を。 ○伊藤委員 意見書の4頁になりますが、港湾労働者の雇用改善についてということで す。(1)現行制度をより円滑に運営していく方策として、違法雇用ができないシステムの 確立をすること、日雇労働者の直接雇用をなくすために職安紹介を充実させることが必 要である。自動車専用船、青果物、短時間作業などに日雇就労が多いと思われる。港湾 労働者派遣制度で対応できない作業については、日雇労働者を雇用安定センターに登録 し、職安の紹介を通じて港湾運送業務に従事させるようにすべきである。職安紹介を充 実させることにより、違法な日雇派遣を防止することにもなる。  日雇労働者の登録については、6大港それぞれ固有の事情を勘案したものにすること が適当である。このような登録制度を機能させるために、例えば、自動車専用船作業へ の就労を希望する者についてはその作業のみへの紹介をするなど、職安の紹介方法の工 夫など行政面からの援助も必要である。  (2)港湾労働は労働災害が多い職場であることは、前回の専門委員会の参考資料「港 湾雇用安定等計画の施行状況等について」で千人率が7.7であることを見てもわかる。 また、強度率が0.87であることから、一旦事故が起これば、重大災害になる傾向である こともわかる。  港湾労働者への安全教育は、極めて重要であり、常用、日雇を問わず、6大港並びに 地方港においても実施すべきである。このような安全教育を修了した者でなければ、港 湾労働に従事できないようにすべきである。常用港湾労働者については、この安全教育 を修了し、はじめて常用港湾労働者の届け出が可能になるようにすべきである。  安全教育については、港湾労働者として最低限の安全知識、技能を習得でき港湾労働 について概括的に理解できる内容とし、厚生労働省によって定められた研修内容を、港 湾災害防止協会などが実施するように体制を整備すべきである。  (3)港湾労働法の適用関係を明らかにすることにより、港湾労働者のみが働くことがで きる職域、港湾労働が適用される職域=一般の派遣労働者は働くことができない職域を 明確にすることは必要である。  平成11年の労働者派遣法の改正により、労働者派遣法の適用除外業務としての港湾運 送業務は港湾労働法適用業務となった。  特に問題になるのが、港湾運送事業法が適用されないが港湾労働法が適用される倉庫 荷役作業である。港湾労働法の適用港湾は6大港である。労働者派遣法は全国適用であ る。6大港以外の港湾倉庫すなわち特定港湾倉庫の倉庫荷役作業は、労働者派遣法の適 用除外業務であり、労働者派遣を行ってはならない業務である。しかし、港湾労働法が 適用されない地方港においては、港湾運送事業者以外の事業者が倉庫荷役作業を行うこ とができる。労働局に特定港湾倉庫の一覧表を提出するように求めても、そのようなも のは作っていないのが実情である。労働者派遣法の改正に伴い法律としての線引きをし ただけで、雇用秩序を確立するための具体的な行政措置が取られていないのが実態であ る。港湾労働法を地方港にも適用することは、業域の明確化につながり、港湾運送事業 者の業域拡大にもなるのである。  6大港の港湾倉庫についても各港職安で考え方が異なる。港湾運送事業者が請負う範 囲が港湾労働法の適用範囲と逆転した発想も見受けられる。港湾倉庫については、倉庫 を部分的に区分けして港湾労働法を適用するのではなく、倉庫の建物全体を港湾倉庫と して指定することが必要である。そして、港湾倉庫内の倉庫荷役作業はすべて港湾労働 法の適用とすべきである。  港湾労使が業域・職域の拡大、明確化に努力をしている。これらは、輸送手段や荷役 手段が変化するなかで、労使が安定的に港湾運送業務を遂行するために、業域・職域を 設定してきたのである。行政はしゃく子定規の法解釈をするのではなく、港湾運送の安 定という観点から、業域・職域問題で混乱が生じることがないよう対応すべきである。 そして、港湾労働法の適用対象業種の見直しを積極的に検討すべきである。例えば、1) 港湾運送事業法は適用されているが、港湾労働法が適用されていない貨物の受取りまた は引渡し、船舶貨物警備について港湾労働法を適用すること、2)港湾労働法施行令第2 条の業務は許可を受けた港湾運送事業者が行うようにするよう港湾運送事業法の見直し をすること、3)港湾労働法が適用されているバン詰めバン出し作業の適用地域を拡大 すること、4)コンテナターミナル内の作業に関して港湾労働法の適用を拡大すること などである。  (4)港湾労働者の雇用(労働条件等)の現状として、港湾労働者の労働時間、賃金が 報告されている。我々が指摘したように所定内給与が低下し続け、長時間労働で収入を 維持している実態が明らかになっている。平成13年に港湾のフルオープン(364日、24 時間稼働)が実施されたことにより、港湾の稼働時間が長くなったこと。しかも、交代 制は導入されず、ひとりあたりの労働時間が長くなったことが大きな要因である。また、 規制緩和の実施により、港湾運送料金が下がり、港湾労働者の賃金低下が進んだと言え る。  港湾労働者の長時間労働の解消、交代制の導入などに関して、労働時間短縮を図る事 業者に対する行政支援についての検討がなければ雇用改善もすすまないと考える。以上 です。 ○征矢座長 それでは、3点目の問題につきましてご意見、ご質問等がありましたらお 願いします。 ○糸谷委員 労働側は、もともと日雇を認めたくなかったわけなのです。で、常用と常 用の派遣と港労法の前回の改正のときに、途中まではそのような方向もあったのですが、 法制局ですか内閣の、これは職業選択の自由を侵すと言われてしぶしぶのんで。でも常 用の派遣制度もできたからそうはならないかなと思ったところが、実態は違うと。なお かつ安全については大きな問題があって、日雇労働者の事故が多いと。前回違法派遣が 発覚したのも、結果は事故から発生しているわけです。だからそういう意味では、日雇 としてたとえ港湾で今後も必要ならやむなしとしても、何らかの教育もしないで、ただ かつてのように帽子を被ってそこにいればそれで料金が払われたという状況ではもうな くなっているわけです。  非常に高度化されてきているし、機械化も進んでいるので、危険率はより一層高まっ ているわけです。そういう意味でこれを教育するとか、きちんとした登録をして。ただ 登録をしたら、今日欠席している久保委員が心配するように、またかつての登録日雇の 問題と同じようになるのではないかと言いますが、そこはもうちょっと柔軟な考え方で 国では対応していきたいと。  ただ何でもいい、誰でもいいという形では、これでは自分たち業者自身の業域が、非 常に規制緩和の運送事業法が許可事業になった中で、放っておくとやはり事業者自身も 自らの業域が狭まっていくのではないかということに懸念を持って、こういう提案をし ているわけです。 ○中谷委員 安全の問題は、日雇だけではなしに常用労働者にも大きな問題でして、そ れは各企業とも一生懸命やっているのですが、やはり最終的には本人のちょっとした油 断、いわゆるヒューマンエラーがほとんどなのです。  例えば日雇を集めて教育したら良くなるかというものではなしに、それは常用も含め てですが、港湾の場合は工場と異なり、日々の作業がほとんど毎日違いまして、船も違 う、ハッチも違う、荷物も違う中で、どう安全にやっていくのかを、私もやかましく言 うのですが、朝のスタートのときに1つの班、チームを集めて、班長が「今日はこうい う所を気をつけろ」という細かい指示をしないと、なかなか実際にそぐわないとみんな ピンとこないわけです。この辺の安全も、本当に我々の業種としてのいちばんの課題で はあります。  ただ、制度としてこうすれば良くなるというのではなしに、制度としてやるのであれ ば、我々は常用でも一生懸命やっていますし、日々の班の朝のスタートの朝礼時に必ず やれと言っていますが、やっていても事故は起こるわけです。ですから、本当にこれは 難しい問題で、いちばんの背景は、毎日職場が違う、荷物が違うと諸条件が毎日違う中 でやるということが、いちばんの大きな原因だと思います。  ですから、それをわかっているわけですから、それを乗り越えて安全にしなければい けないので、これは確かに大事な問題ですが、今おっしゃったように、組織化すればう まくいくというものとは、ちょっと違っていると思います。日雇でもたくさんベテラン がいます。むしろ常用よりもベテランの人もいるはずです。これはそういった人を含め ての話ですから、日雇だけの安全を取り上げるのではなしに、安全として取り上げるな ら、そういう問題とかですね。 ○糸谷委員 これは別に日雇だけではないのです。港湾で働く者すべてが最低限ここま での知識、初期教育を受けてきて入るという形でないということも含めて。だから別に 常用は、企業が責任を持ってやってくれるからいいわけです。日雇には誰が責任を持つ かです。  日常業務の中で作業開始の前にミーティングをやると。これはやるのでしょうが、そ れで受ける側がそれだけの知識があればミーティングで理解できますが、もともと日雇 でも千差万別です。ベテランならもうそれは教育はしなくても、登録は登録しておけば いいことであって、かつて港湾の常用だった人もいっぱいいるわけですから。だけど新 たに入ってくる人は、常用や日雇を問わず、本来は必要な知識をきちんとやると。結局 常用の場合は企業が責任を持つ、日雇は誰が責任を持つかということで、提案している わけです。 ○征矢座長 いずれにしても安全というのは、どう考えてもきちんとしなければいけな い課題ですから、現状を踏まえてどういう問題点があるかということと、製造面をどう したらいいか、これは今回の1つの重要なポイントではないかという気はします。だか らこの辺を踏まえて、どのように整理するかが大事だと思います。 ○鈴木委員 調査資料でも、企業の皆さんの安全研修は相当やられています。他産業か ら比べたら、日常的にやられているような統計も出ているわけです。  我々が今回出しているのは特に日雇で、センターに登録するのと同時に、登録する労 働者は最低限の安全教育を、むしろ事業者に求めているのではないのです。制度として 行政もちょっと手を貸してくれて、日雇労働者を教育するようなシステムを作ろうでは ないか、ここはそういう提案なので、事業者の皆さんに求めているわけではないです。  もう1つ。私は港湾保安対策の国交省の委員にもなっているのですが、どう日雇労働 者のなりすましをなくするのか。労働者の認定は、企業がこの人間は間違いなくうちの 従業員で、そんな不正なことをする人間ではないですと、事業者が認定することになっ ているのです。  しかし日雇労働者は、誰が認定するのかがはっきりしてないのです。だからむしろセ ンターに登録して職安が紹介するシステムを作って、職安が保証するしかないのです。 使用する事業者の皆さんが日雇で紹介してもらっても、本当に間違いない、なりすまし でない人間なのかどうかがわからないわけです。だからせっかくそういう生体認証まで するほどの厳しい措置を取りながら、日雇のところは抜けているのです。だからむしろ そういう側面からも登録制度や、少なくとも一定の安全研修を受けたぐらいの労働者を 日雇として抱えるぐらいのことはできないか、という提案です。 ○花島委員 同じ日雇がけがしても何をしても、全部雇用者責任だから、やはり雇用者 として。先ほど中谷委員が言ったように安全教育もしているし、朝のミーティングも全 部しているし、責任を取るのは雇用者だということだけだから、これを作ってもまた雇 用者が責任を持つのだから、今は企業がちゃんと自分で責任を持って一応教育をしてい るのだから、あまり心配しなくても。 ○糸谷委員 とはいえ、事故は起こるのです。 ○中谷委員 それよりも、むしろそのために組織がしなければいけないということが、 過去の例から見て決していい結果は起こらないと。これは我々は信じ込んでいるし経験 してきているから、そちらの話は、残念ながら我々はそれは結構ですと言うわけにいか ないし。 ○花島委員 安定センターを廃止するときにまるまる3年かかって、ずっとやってきた のだから。 ○鈴木委員 だから前回の登録、日雇センター労働者のように、賃金保証などを抜きに して。 ○糸谷委員 いや、同じことです。関わることですし。 ○伊藤委員 そのときは、業者さんも日雇労働者は一切使いませんと、この委員会で明 言したわけです。にもかかわらず、これだけの数字の日雇労働者が就労していると。な おかつ違法な派遣労働者も就労していると。ここの実態をどのようになくしていくのか ということで、やはり就労のルートというものを明確にすることによって、そこをたと え日雇として働くにしても、日雇をなくすことはできないのでしたら、働くにしてもき ちっとしたルールづくりが必要なのではないか、ルートも明らかにすべきではないかと、 そういうことの1つで安全問題を取り上げながら、今回の就労のシステムを考えたらど うかということを提案しているわけです。 ○花島委員 日雇だけの話でも、昔寿町というどやがありましたが、あそこは日雇が30 万人いたのです。いま何人いると思いますか。3,000人もいないのです。だからそれだ け日雇はいないのだから。 ○伊藤委員 いや、むしろ数字で表れているではないですか。 ○花島委員 だからそれはトラックの運転士とかタクシーの運転士。 ○伊藤委員 センターを廃止するときの議論では、明確に業者さんは、もう日雇は一切 使いませんと明言しているわけです。 ○花島委員 言ったかな。 ○伊藤委員 それでいて、これだけの数字があるのにどうしたらいいかと。日雇をなく せないのだったら、日雇は日雇としてむしろ明確な形でルートに乗せたほうが、そこに 違法な派遣まで入るような余地を少なくともなくしましょうと。港湾は港湾でそのエリ アできちんとやりましょうと言っているわけです。 ○中谷委員 やはりそれよりも、常用化に努力すべきだと。 ○糸谷委員 もちろんそうです。これは日雇を使わないと言ってくれればいいです。 ○中谷委員 そう、私たちはそう思っています。 ○糸谷委員 そうはいかないけれど。 ○中谷委員 だから協会でも、これは改善しなければいけないと思っています。 ○糸谷委員 そう、そう。ここで終わったら結論が出てしまうのですが、実態がついて いかないから。 ○中谷委員 これはマエダさんとも経費だから改善してくださいと言ってます。これが 一遍にできなくても、だんだんその方向になっていくと思うし。 ○征矢座長 とりあえずご意見ということです。では、4点目の検討項目の「港湾労働 者の職業能力開発」について、事務局からお願いします。 ○今宮建設・港湾対策室長補佐 続きまして、配付資料5頁目(4)港湾労働者の職業能力 開発についての項目に関連して、6頁をお開きください。検討事項2つ目の○の現行制度 の在り方を見直す必要はあるかに関連しまして、前回の議論の中では2点ほどあったか と思います。  1点目、高度な技能に関する研修のみならず、各港湾いずれにおいても必要とされる 一般的な研修に係る制度についても、ニーズを把握しながら確立していくべき。  2点目として、事業所において教育訓練を実施する時間がないということであれば、 行政として、その辺りをきちんとフォローすべきといったご意見がありました。  それらを踏まえた具体的論点としては、1つ目、各港湾いずれにおいても必要とされ る一般的な研修として、どのようなものが考えられるのか。2つ目、教育訓練を実施す る時間がない事業所に対して、行政としてどのようなフォローをすることが適当か。本 項目については、こういった点を中心にご議論をいただければと思います。事務局から は以上です。 ○征矢座長 では、労働側の意見をお願いします。 ○伊藤委員 意見書の6頁、4の港湾労働者の職業能力開発についてです。(1)一般的な 技術研修としては安全衛生、フォークリフト運転、はい付け作業、玉掛け、クレーン運 転などが考えられる。フォークリフトは、ガントリークレーンのオペレータなど革新荷 役機械のオペレータについては、一定の研修を終了したものに資格を与えるようにする 資格制度を導入すべきである。手始めにガンドリークレーン運転の技能競技会を行って はどうだろうかという点です。  (2)教育訓練を実施する時間がないとの声を聞くが、OJTにも訓練手当を行政が助成す るとか、ガンドリークレーンの未使用時間帯を教育訓練に有効活用できるよう港湾管理 者がOJTに協力する仕組みを作るなど、研修を受けやすくするための工夫が必要である ということです。以上です。 ○征矢座長 それでは、4点目の職業能力開発につきまして、何かご意見等がございま したら発言してください。 ○鈴木委員 少なくとも、ここだけは業側委員もよしとするでしょう。 ○中谷委員 そういうことです。 ○征矢座長 次に、5つ目の検討項目「港湾雇用安定等計画の期間」について、事務局 から説明をお願いします。 ○今宮建設・港湾対策室長補佐 続きまして、配付資料6頁以降で、6頁の下の(5)港湾雇 用安定等計画の期間についてですが、現状としては計画の中において、現在平成16年度 から平成20年度までの5年間とされていることを前提に、まず検討事項の1つ目の○の5 年間計画期間を見直す必要はあるかといった項目に関連して、前回は3点ほどご意見が あったかと思います。  6頁にあるとおり、1点目として、労側のほうから厚生労働省との関係のみならず国土 交通省との関係もあるため、さまざまな行政変化に臨機応変に対応できるようにする観 点から、5年間という現行の計画期間を短縮し、3年間にすべきではないか。  それに対して使用者側からは、3年の計画期間では短かすぎる、5年間は必要ではない かとのご意見が2点目として。それに対して労側からは、3点目として、5年間という 計画期間の不都合性は、違法就労等の形で表れていると認識をしている。こういったご 意見がありました。  これらを踏まえた具体的論点としては、5年間という計画期間を見直す具体的な必要 性は現時点においてあるのか。具体的な必要性があるのであれば、新たな計画期間は何 年間にするのが適当か、といった点があろうかと思います。  2つ目の検討項目、計画の実効性を担保するため、計画中に数値目標を設定し、毎年、 工程管理を行う必要があるか。こういった項目に関連して、前回の専門委員会では、主 な意見が2つありました。  1点目、計画中に数値目標を設定して、毎年定期的に港湾労働専門委員会を開催して、 工程管理をしながら計画の実現を図っていくべきと。2点目は、計画期間における工程 表を作成し、計画の進捗状況を随時チェックできるようにすべきではないか。こういっ たご意見を踏まえ、具体的論点としては2点あります。  まず1点目、数値目標の設定、工程表の作成、それぞれについて行う必要は現時点に おいてあるのか。数値目標の設定について、現時点で設定をする必要があるということ であれば、どのような項目・事項に数値目標を設定するのが適当なのか。また、目標と する具体的な数値そのものは、どのようなプロセスで確定させていくのが適当なのか。  また、数値目標の設定を前提に工程表の作成を行う必要があるのであれば、どのよう な内容の工程表が適当なのか。また、その具体的な内容はどのようなプロセスで確定さ せていくのが適当なのか。  具体的論点の2点目、新たな計画期間は、5年間または新たな期間といった数値目標 との関係をどのように整理するのか。本項目については、こういった点を中心に、ご議 論をいただければと思います。以上です。 ○征矢座長 それでは、労働側のご意見をお願いします。 ○伊藤委員 意見書6頁の下のほうに、5の港湾雇用安定等計画の期間についてがありま す。  (1)港湾労働を取り巻く情勢の変化は速い。港湾法、港湾運送事業法、労働者派遣法な ど港湾労働法に関係する法律が頻繁に改正する状況なので、港湾労働安定等計画の期限 は3年とすべきである。  (2)数値目標は、例えば港湾雇用安定センターの斡旋を倍増すると。日雇労働者の直接 雇用を半減するとか、人付きリースを完全縮小、すなわち無くすなどが考えられる。ま た、教育訓練の実施回数設定、長時間労働解消のための所定外労働時間規制の設定など が考えられる。  (3)工程表による工程管理というよりは、港湾労働専門委員会を毎年定期的に開催して、 計画の実施状況を点検しながら、計画の実現を図っていくことが重要である。以上です。 ○征矢座長 それでは、この観点につきまして、ご意見、ご質問等ありましたらどうぞ。 ○糸谷委員 組合側に提案するよりも、これは変化が速いというのは誰でもわかってい ると思うのです。だから3年がいい、5年がいいということではなく、その変化に対応す ることはこの計画でも当然大事なことだと。  実際にまたゼロにすると言って、いまだに何十年も実現できていないことから考える と、やはり数値目標を作って工程表をと、これは当然出てくる話なのです。ここで5年 経って言っても、いや、いやで終わったのでは、何のためにここで計画を練っているの かわけわからないです。計画というのは、実現するための計画でしょう。そういうこと ですから、こういう提案をせざるを得ないということではないですか。  傾向としてそちらに行っているならまだしも、全然直ってないし、拡大にはあるとい う話では、これだけ変化の激しい時代に我々自身も働く側として、自分の職域がどうな るかという危機感をものすごく持っているわけです。政府の大きな政策としては規制緩 和があってやってきましたが、我々の業種もいつ。規制改革会議ではいろいろなことを 言われているわけで、そうすると、やはりここできちんとした計画を作ったら、それに 基づいた実施状況を把握すると同時に、その目標に向かっているかどうかをチェックし たいのは当たり前なのです。そういうわけです。 ○征矢座長 計画を作りっ放しで、そのままでは駄目だということですね。 ○糸谷委員 そうですね。 ○征矢座長 ただ一方で、3年の計画期間では計画を作る観点からいくとやや大変では ないかという問題があるので、その辺をどのように考えるかが。 ○糸谷委員 その辺で折り合いがつけられないことはないとは思います。だから当局の ほうからもその辺の別にきちんとしたこういう計画策定のための専門委員会ではなくて も、折に触れてそういう委員会を開催することについては、努力するという言葉もいた だいていますから。 ○征矢座長 (3)ですね。それでは、この計画期間につきましては、よろしゅうございま すか。 ○中谷委員 実際問題としては数値目標の設定、工程表というのは難しいです。経済は 動いていますし。 ○糸谷委員 5ヶ年はないですよね。 ○中谷委員 たくさんの企業は、中でやってますからね。 ○糸谷委員 5ヶ年計画にしても、やはり実施目標があったり5ヶ年目はこうだというな ら、年次年次によってこれはないと、本来的には計画にはならないです。 ○中谷委員 それはわかるのですが、こうした問題はなかなか難しいから。 ○糸谷委員 会社なんて予算があって決算して、それで齟齬を来たしたらそれをどう埋 めるかと。 ○中谷委員 それは、みんなそうです。 ○鈴木委員 問題は、地域なのです。地域の地区審でどう実践していくかですからね。 ○中谷委員 それはそうです。 ○鈴木委員 そのときに、やはり行政の関与ではないですか、これが進むかどうかとい うのは。事業者はそれぞればらばらで、個々の事業のことを考えるわけで、それを全体 として束ねて全部示唆するとすれば、やはり行政がもう少し権限を持って指導していく ということを、むしろこの委員会では強調しておいたほうがいいのではないかと思いま す。  それにしても一定の目標が必要ですから、やはり3ヶ年で目処を立てるぐらいが。 ○征矢座長 とりあえず、ご意見としてはよろしいですか。 ○糸谷委員 はい。 ○征矢座長 それでは、その他につきまして、説明をお願いします。 ○今宮建設・港湾対策室長補佐 配付資料7〜8頁目で、7頁の後半部分(6)その他、前回 の専門委員会では、いまご説明した5つの大きな柱以外、またはそれに関連する内容と して、いくつかご意見をいただいたところです。  まず1点目は、計画の内容に関わる部分です。京浜地区においては日雇港湾労働者へ の依存度が大きく、また、港湾派遣労働者の派遣斡旋成立率も極端に低い状況となって います。これらも踏まえて、新たな計画の策定に当たっては、現行計画のように一般論・ 抽象論に終始することがないよう、港湾ごとの実情を分析した上で、港湾ごとの事情に 合わせた内容にすべき、実効性を迫っていく内容にすべきと。  2点目の意見として、地方港に対しても港湾労働法を適用し、港湾労働者の福利厚生 の向上を図っていくべきと。それと関連して3点目、港湾労働者の福利厚生に関する事 項について、必要があれば法的整備も念頭に置きつつ、新たな計画に盛り込むことが必 要と。 4点目、国際的なテロ対策の一環として国土交通省において導入予定の「IDカ ード」と厚生労働省で交付をしている「港湾労働者証」を共用化すべきと、こういった 意見がありました。それらを踏まえた具体的論点としては、8頁目の冒頭部分で、3つ論 点としてはあろうかと。  1点目、現行の計画を前提にした場合には、具体的に記述する必要がどういった項目 にあるのか。2点目、港湾労働者の福利厚生の向上を図る観点から行政側、事業者側そ れぞれに対して、どのような対応を求めるのか。3点目、「IDカード」と「港湾労働者 証」を共用化する必要は現時点においてあるのか。本項目については、こういった点を 中心にご意見、ご議論をいただければと思います。以上です。 ○征矢座長 労働側の意見をお願いします。 ○伊藤委員 意見書の7頁の6のその他ですが、(1)この間の港湾整備計画、スーパー中 枢港湾構想、アジアゲートウエイ構想等打ち出されてくるが、これらの計画や構想には、 港で働く労働問題の観点が全くない。ハードウエアを作る、システムを作ることはする が、それを誰がどう動かすのかというソフトウエアのこと、労働者のことは考えられて いないのである。港湾運送事業の規制緩和を地方港に、検数・鑑定・検量業務に拡大す る議論を行った港湾運送事業の在り方に関する懇談会でも感じたことであるが、港湾労 働問題を議論できない寂しさである。港湾労働問題を議論できる場は、この港湾労働専 門委員会にしかないのである。しかし、6大港、現業労働者に限定された現行港湾労働 法に基づく港湾雇用安定等計画の議論しかできない状況では、国際競争に負けない日本 の港湾を作り上げようとしてもハード、ソフトが噛み合った港湾を作ることはできない。 この港湾労働専門委員会をまさに総合的な港湾労働対策を議論できる場にすることが、 急務であると考える。  (2)今回の港湾雇用安定等計画に港湾労働者の福利厚生の増進に関する項目を起こす べきである。また、計画に直接書き込まなかった項目についても、今後の課題となるも のがあれば適切に対応をすべきである。  (3)港湾労働者の福利厚生の増進については、港湾労働法に条文を起こして国の責務 を明確にする、また、第3条第2項の港湾雇用安定等計画に定める事項に「港湾労働者の 福祉の増進に関する事項」を追加することが必要である。  また運輸政策審議会海上交通部会の答申で「夜間荷役の実施に関しては港湾労働者の 待機、購買、飲食等のための施設整備」が言われている。今まで行ってきた、港湾労働 者センター、港湾労働者住宅、現場休憩所などの施設についても、新しい視点から施設 の充実が図られる必要がある。例えば、港湾整備計画において港湾労働者の福祉に関す る計画を審査するなど、現場の声が反映できる仕組みを作る必要がある。  (4)また港湾におけるテロ防止対策として、国際船舶・港湾保安法が2004年7月から施 行された。適用された134港では、国際港湾施設への出入管理が行われているが、本年 の通常国会で港湾法が改正され、個人生体情報を含むIDカードを発行し、全国的な情報 管理システムを構築することになった。届出された常用港湾労働者に交付される港湾労 働者証については、港湾保安対策に伴う港湾労働者のIDカードと共用できるものにすれ ば、一元的な管理ができ、経費の削減にもなる。共用化について検討できる体制を作る べきである。以上です。 ○征矢座長 それでは、ただいまの件につきまして、特にご意見、ご質問等がありまし たらお願いします。 ○中谷委員 福利厚生については、国も地方行政府もそれぞれ力を入れていただくほう が我々もありがたいと思いますし、いままでやってきていますが、それぞれの各地に応 じた、また、これからスーパー中枢港を実現していった中で徹夜荷役も増えてくるでし ょうし、そういった中でまた設備が必要であれば、そういう点も行政府としてもご努力 をいただくことは非常にありがたいことだと思います。 ○糸谷委員 IDカードは私たちはもう1つわかりませんので、どのように。 ○中谷委員 この出入管理のIDカードは、どういうアイデアなのですか。 ○若林港湾経済課長 出入管理のIDカードにつきましては、先般、港湾法の改正をしま して、生体認証できるようなカードの導入とかが検討課題となっていますが、まだ具体 的な設計ができていない状況なのです。まだ実証実験をやろうかと言っているような段 階で、中にどんな情報を記載するべきなのかとか、いろいろあるかと思います。それを まだやっている最中なのです。  困っているのは、IDカードの連携や統合性が実は結構あちこちで言われていまして、 ちょっと脱線して恐縮ですが、私は前の職場は官邸の内閣官房ですが、同じようなID カードを何枚も持っていてジャラジャラやっていたのですが、さすがにうっとうしい。 また、各カードが統合可能かどうかの話だけではなくて、カード費用のご負担の問題が 出てくると思います。IDカードの詳細についての勉強は、うちの港湾局の危機管理室 のほうで始めた段階のようです。ただ、ここは厚労省とよく相談しながら、どんな形の 話が一緒にできるのか、できないのか、IDカードにどんな情報が載せられるのかなど を考えていきたいと考えています。 ○花島委員 厚生省と国土交通省でよく話し合ってもらって、業者に負担がこないよう にお願いします。前もSOLAS条約対応で、何だかんだ払わされてしまったので。 ○糸谷委員 本来なら建設計画と港湾労働対策は、表裏一体のものなのです。それが縦 割りの日本のシステムの中でこれが一緒に論じる場がない。若林課長は今日出ていらっ しゃるからまだ。だけど基本的にそれをすり合わせしようという、トータルでは内閣全 体がやるので政府全体がやることなのでしょうが、現実はそう簡単ではなくて、予算も みんなそれぞれ異なると。  教育訓練の問題もあれだけ立派な港湾建設をしたら、その何百分の一、何千分の一で す。ところが立派な機械を設置するのはいいが、それをこなすのはみんな事業者任せで 事業者が教育する、あるいは厚生労働省が一部それに支援すると。これでは、いいもの がいいものにならないです。一元管理できてないから、結果としてはそうなる。建設の 予算は国交省で、いわゆる労働対策は厚生労働省、これでは円滑に本当の機能は発揮で きないというのが、我々はずっと言っていることなのです。これは是非そういう意味で は技能訓練のときは、せめて設備の費用は国交省が出すとか。本当ですよ、これは。で ないと、せっかくいろいろないい施設を作っても立ち上げるのに時間もかかるし、事業 者任せではなく、それを誘導するような政策の施策、予算というのが1つ、それを私は 言いたいのです。 ○鈴木委員 港湾労働問題はここでしか言えないので、先月の海上交通部会の報告書で も、今後の港湾政策の在り方報告書を出しているのですが、ほんの一行もないのです。 港湾労働に配慮をしつつ、何々しつつと、労働対策はそれだけなのです。そして24時間 365日稼動だとか、勝手なことが書いてあるわけです。だからそういう政府の政策を議 論するのであれば、こことの連携をどうするのかと。それは5年間の間があるとよくな いので、やはりタイムリーなところで、議論する場を設ける。政府が一体となって進め るのであれば建設と労働問題も一緒にする。  港は、段取りは遠くに出ているわけです。外側に建設をしているのです。夜間荷役も やる、通勤アクセスも充実しなければならないと、海上交通部会の報告はなっているの です。ところが、例えば横浜市を見ても、ほとんどのバスは赤字団体でリストラ対象で す。だからいまの交通は、縮小してきているわけで、撤退し始めているのです。そうす ると、誰が責任を負うのかというのが、交通アクセスにしてもあります。港湾労働者の 通勤の特別便を別個にどういう形で出すのかとか、もっと議論しなければならない問題 があるのですが、通勤バスの縮小を指導しているのは国土交通省で撤退させろとやって いるわけですから、だからそのようにぎくしゃくしているのです。方針は出したが誰が 責任を持つのか。ものだけ出来てしまって、そこで稼動がうまくいかないとなるわけで す。そういう総合的な議論ができる場を作るべきではないかということも、その他のと ころでは提案していますので、それは是非検討してください。 ○若林港湾経済課長 先ほど鈴木委員のおっしゃった交通手段の話にしても、規制緩和 を行って参入も撤退も自由となりましたが、人口減少などの中で、例えばバスや鉄道も 最近はそうですが、撤退の自由の方が前面に出てきてしまっている。それで本当にいい のかなというのは当然あります。  交通手段の確保については、例えばある程度自治体やコミュニティが主体的に取り組 む場合には、国も予算をきちんと確保して支援するという仕組みもあります。あと例え ば港への交通手段についても、特別便の形で港湾労働者を輸送するなど、いろいろと工 夫の余地はあるはずです。これらの議論は、港湾の管理運営主体である港湾管理者さん がどのような形でそれを考えるのかによる部分も大きいです。国交省港湾局としては、 港湾管理者さんとよく連携をしながら考えていくということになります。 ○土井委員 いままで問題提起いただいたのを順番にご議論いただいて、非常に参考に はなっているのですが、いろいろと議論の軸があるのです。例えば研修についても調査 結果を見てみると、どうもかなり企業で差があるようなのです。だからどこに合わせて いくのかという問題もあるし、いまの港湾局のIDカードも、これもソーラスの延長の話 ですね。だからちょっと視点が違うので、すぐパッと合体できるかというのは。例えば シーナックスと税関のシステムと港湾EDIが別でずっとやっていて、初めて一緒になる という話ですから、急に最初から計画してパッというわけにはいかないところがありま す。  今日お話をお伺いしていて、例えば労働委員の方にいろいろ問題提起いただいた5頁 は、例のウエットリースというか、人付きリースの問題とも関係してくるわけですね。 人付きリースの問題が、ありとあらゆる危機において起こっているわけでもないのです。 だからそういう問題の整理もしていかなければいけない。検数の問題も何箇所かで出て きています。だから議論の整理もしていかないといけないし、この計画を何年に1回し たから片付く問題でもなし、いろいろちょっと複雑だと感じながら、しかし議論として は非常に勉強させていただきながら、これからどうやって考えていくか、そういう時期 ではないかなと感じました。 ○糸谷委員 適用拡大の話にしても、本当は行政にもっと素直に私たちの気持を伝えた り、ここではまだこういう限られた時間ですから、労使でもう1回話し合うと言ったの は、港湾運送事業法は、それぞれみんな適用されているわけです。だから運送事業法と 港湾労働法との整合性もあるのです。同じ法律を適用されないと、こちらはこれだけ、 こちらは全部だと、それが何となくそぐわないという働く側の意見ですが、このことは 何も働く側だけではなくて、使用者側にも十分理解していただける要素があるというこ とで、もう1回話をしたいなと思います。そういった意味で、同じ立場の人たちに同じ 法律を適用しないというのは、ある面おかしいなというのが、こちらサイドにあるわけ です。実際それによって地方港と6大港という格差がいままでは厳然とあったようです が、それはやはり事業法があれだけ全面的に規制緩和になった以上、働く側も同じよう にしてくれということなのです。 ○征矢座長 ほかにございますか。それでは、一通りご議論いただきましたので、ご意 見等が特にないようでしたら本日の委員会を終了したいと思います。  お願いとして、ただいまのそれぞれの項目について、労使のご意見が必ずしも一致し てない課題もあります。港湾労働問題につきましては、ご承知のように過去いろいろな 厳しい状況等もありましたが、基本的に労使でよくお話し合いをいただきながらやって きた経緯もありますので、ただいまもご意見はありましたが、現実的にその課題にどう 対応するか、労使でよくご議論をいただき、またそれを踏まえて行政側はどう対応でき るか、そういうところを調整していただいて今後進めさせていただければありがたいと 思います。 ○征矢座長 最後に事務局から何かありましたらお願いします。 ○今宮建設・港湾対策室長補佐 今後の日程についてですが、次回の専門委員会につい ては既に連絡しましたとおり11月28日(金)10時から、場所は今回と同じくこちらの第 1会議室にて開催しますので、よろしくお願いします。以上です。 ○征矢座長 最後になりますが、本日の会議に関する議事録の署名委員については、労 働者代表は鈴木委員、使用者代表は中谷委員にお願いします。よろしくお願いします。 本日はお忙しいところ、どうもありがとうございました。 以上                       照会先                        厚生労働省職業安定局                          建設・港湾対策室港湾労働係                           運永博史・安田喬                        〒100−8916 千代田区霞が関1−2−2                        TEL 03-5253-1111(内線5802)   FAX 03-3502-0516