08/10/27 平成20年度第3回化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会議事録 平成20年度 第3回化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会    日時 平成20年10月27日(月)      16:00〜      場所 厚生労働省16階労働基準局第1・第2会議室 ○大淵化学物質評価室長補佐 先生方お集まりになりましたので、ただいまから平成 20年度第3回化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会を開催い たします。本日はお忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。本日の 出席者でございますけれども、今回からお二人の先生が新しくご出席くださっておりま すので最初にそのご紹介をさせていただきます。まず、日本作業環境測定協会調査研究 部長の小西先生でございます。 ○小西委員 どうぞよろしくお願いいたします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 続きまして、早稲田大学理工学術院教授の名古屋先生で ございます。 ○名古屋委員 よろしくお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 それから本日は、江馬委員、大前委員、和田委員は所用 により欠席されております。それでは以下の進行につきましては座長の櫻井先生にお願 いいたします。 ○櫻井座長 それでは、議事進行を務めさせていただきます。まず、議事に先立ちまし て事務局から資料の確認をお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 それでは、資料の確認をさせていただきます。お手元の 資料、表紙は議事次第ということでございます。2枚目に配布資料一覧がございますの でそちらに沿ってご確認をお願いいたします。まず、資料の3-1、これは第3回という 意味でこの3を付けてございます。3-1が前回の議事要旨でございます。続きまして、 資料の3-2、少量製造・取扱いの規制等に係る小検討会報告書ということでございまし て、ホルムアルデヒド関係のものでございます。それから、資料の3-3、リスク評価に 係るばく露調査の現状及び課題ということで、こちらが第5回の小検討会の資料でござ います。それから、資料の3-4、少量製造・取扱い作業の把握が可能なばく露調査手法 の検討、こちらも第5回の小検討会で配った資料でございます。それから、3-5といた しまして、「リスク評価の手法」の改訂(案)ということで前回、第2回でお配りした 資料に修正を加えたものでございます。続きまして、資料の3-6、平成20年度リスク 評価対象物質の評価値等ということで、こちらも前回のものに修正を加えたものでござ います。それから、資料の3-7といたしまして、二次評価値に関する別紙というもので ございます。それから、参考ということで2つご用意しておりまして、まず参考の1と して平成20年度リスク評価対象物質の有害性評価書(暫定版)ということで、3種類 の物質についてその資料をお配りしております。それから、参考の2といたしまして、 各物質の提案理由書ということで日本産業衛生学会及びACGIHの提案理由書をお配りし ております。資料のほうは以上でございます。 ○櫻井座長 お手元に揃ってらっしゃいますでしょうか。大丈夫のようですので今日の 議題に入る前に、事務局から前回の議事概要の説明をお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 それでは、お手元の資料の3-1をご覧ください。前回は 8月8日に開催させていただきましたが、その概要のほうは3のところからでございま す。(1)としまして、第1回目の議事概要についての説明を事務局からいたしました。 それから、(2)といたしまして、新しく立ち上げました「少量製造・取扱いの規制等に 係る小検討会」の設置について事務局より説明をさせていただきました。続きまして、 (3)といたしまして、ニッケル化合物の規制対象についてということで、第1回のとき に保留となっておりました事項で、ニッケル化合物を規制する場合の粒子サイズをどう するかということで、0.1mmという値を基準とするということなのですけれども、それ 以下とするのか未満とするのかということで、「以下」という表現が適当ということを 報告をさせていただきました。続きまして、ニッケル化合物、砒素及びその化合物に係 る作業環境測定基準等の検討状況ということで、こちらは「管理濃度等検討会」という、 私どもの検討会とはまた別の行政の検討会がございまして、そちらでの検討状況、ニッ ケル化合物、砒素及びその化合物についての測定方法、管理濃度、局所排気装置の抑制 濃度、こういったものの検討状況について事務局より報告をしております。  続きまして、(5)でございます。「リスク評価手法」の改訂についてということで、 昨年度、平成19年度にも先生方に見直しをしていただきましたけれども、本年度もま た追加で見直しということで事務局から案を示して説明申し上げて、それについていく つかご意見をいただきました。ご意見をいただいた点というところでは次の2頁目でご ざいますけれども、二次評価値をどういうふうに決めていくかというところについての ご意見でございまして、事務局でまず提案させていただいたこととして従来なかったも のとして、一般環境に関する濃度基準というものを参考にしてはどうかということでご 提案させていただいて、その際には一般環境の濃度基準そのものを使うのではなくて、 「考慮する」、あるいは「参考にする」というような表現が適当であるというご意見を いただきました。それから、同じく二次評価値の関係でございます。発がん性以外の毒 性試験から得られた無毒性量から外挿した値というものも、事務局から今後の検討の参 考ということでご提案させていただきまして、これについても先生方のほうからこうい った値についてそのまま使用するのではなく、「考慮する」、あるいは「参考にする」 というのが適当であるというご意見をいただきました。また同じく二次評価値の関係で 工学的なfeasibilityのある最低値ということについても、これもそのまま使用するの ではなく「考慮する」、「参考にする」というのが適当であるというご意見をいただき ました。以上がリスク評価手法の改訂についての前回の検討でございます。  続きまして、(6)平成20年度リスク評価対象物質の評価値についてということでござ いまして、まずアといたしまして、本年度、どういったところについてばく露実態調査 をするかということについて、事務局より進捗状況等説明をさせていただきました。そ して、そのうち2つの物質について少し事情に変更があったということを報告をさせて いただきまして、今年度の44物質の中の3番目の物質、ウレタンにつきましては事業 場で取り扱っていたものはポリウレタンということを確認しましたので、実態調査につ いては中止するということになりました。それから、20番目の物質1,2−ジブロモエタ ンについては、国内で取り扱ってる事業場があったわけですけれども、今年度は製造作 業がないということで、平成21年度に実態調査をするということを報告をさせていた だきました。  続きまして、コバルトのリスク評価についてということでございます。本年度の評価 予定ということでは当初、コバルト及びその化合物の中の塩化コバルト、硫酸コバルト、 この2つの物質だけを本年度の評価予定ということでご説明を申し上げていたのですけ れども、第1回目のときに先生方からいろいろご意見をいただきまして、その後、他の 状況も踏まえて検討させていただきまして、評価対象を当初予定よりももう少し広げる ということで、この2つの化合物に限定せずに「コバルト及びその化合物」ということ で拡大しまして、平成20年だけではなくて来年度にもかけて2年間で調査を実施する ことといたしました。  続きまして、インジウムの関係のリスク評価でございます。こちらにつきましても年 度当初は評価対象を「りん化インジウム」というものに限定して評価するという予定と しておりましたけれども、これに限定せず、「インジウム及びその化合物」ということ で評価対象を拡大して、平成20〜21年の2年間で評価を実施するということについて ご了承をいただきました。その際に、委員の先生のほうから「インジウム化合物のうち、 液晶の電極に使用されるインジウム・スズ酸化物については、現在は作業環境が改善さ れているので、可能であれば事業場から過去の測定結果を入手し、これを含めてリスク 評価を行うことが望ましい」との意見をいただきました。その他、事務局の資料のほう でIARCの評価等の記載に若干ミスがございましてご指摘をいただいたところでござい ます。  続きまして、エでございます。評価値についてということで本年度評価予定物質につ いて一次評価値、二次評価値を検討いたしました。前回の検討につきましては次の3頁 のほうに載せておりますけれども、まず基本的な問題といたしまして、上から4行目の ところにございますけれども、事務局の作成した資料の中で「一次評価値」というとこ ろの欄に「ユニットリスク」という言葉を書いてその上で数字を示しておりましたけれ ども、必ずしもこの表記が正しくないということで、「過剰発がん生涯リスクレベルに 対応する濃度」というような形の表現が適切ではないかというようなご意見をいただき ました。本日、新しくお配りした資料のほうはそういう形で修正をさせていただいてお ります。  以下は前回具体的に数値を検討いただきました物質でございまして、イソプレン、ウ レタン、オルト−ニトロアニソール、2−クロロ−1,3−ブタジエン、4−クロロ−2−メ チルアニリン及びその塩酸塩、コバルト化合物、酸化プロピレンということでございま すけれども、この中で前回の議論で数字が確定したものは2番のイソプレンということ で、まずはAIHA、アメリカの産業衛生の団体でございますが、この提案理由を検討し たところ、妥当ということで二次評価値を2ppmとし、一次評価値については候補とし て1.7ppmというのがありましたけれども、これは二次評価値と近いということで、一 次評価値はあえて定めないということといたしました。  ウレタンのほうは実態調査の予定がなくなったため、評価値の設定は不要ということ となりました。オルト−ニトロアニソールにつきましては、一次評価値は得られないが、 改訂されたリスク評価手法に基づいて、事務局で二次評価値の案を示して次回検討する ということとされました。2−クロロ−1,3−ブタジエンでございますけれども、こちら につきましては本年度委託で行っております有害性評価書の作成の事業がございますけ れども、それの評価書の作成を待って一次評価値、二次評価値を検討することとなりま した。4−クロロ−2−メチルアニリン及びその塩酸塩でございますけれども、これも同 様でございます。コバルト化合物につきましては、一次評価値のほうは定めないことと なりまして、二次評価値につきましてはACGIHと日本産業衛生学会の値を比較いたしま して、低いほうでありますACGIHの0.02mg/m3を採用することとなりました。酸化プ ロピレンでございますけれども、一次評価値は0.057ppmとし、二次評価値はACGIHの 2ppmを採用することとされました。ということで、この中では6番、8番、9番につい てはまだ保留になっていたというところでございまして、本日また後ほどご議論をいた だく予定でございます。  続きまして、(7)といたしまして、来年、平成21年の有害物ばく露作業報告の対象物 質の選定についてということでございまして、事務局より平成21年の報告対象物質の 案をお示しいたしまして、その選定理由をご説明し、先生方のご了解をいただいたとこ ろでございます。ということで、前回はこのような内容でご検討いただきました。以上 です。 ○櫻井座長 この議事内容について、何かご質問や修正のご意見がありましたらどうぞ。  特にないようですので、先に進みたいと思いますがよろしいでしょうか。  それでは、今日の議題に入ります。まず初めに、「少量製造・取扱いの規制等に係る 小検討会」の中間報告を行います。まず、医療現場におけるホルムアルデヒド規制に係 る報告書について、小検討会座長の名古屋委員から説明をお願いします。 ○名古屋委員 3-2の資料で、医療現場、特に歯科医師から医療機関、特に病理を検査 する所や解剖実習とか大きな所で取り扱われていますが、そのところでホルムアルデヒ ドをどのような形で取り扱うかということを検討しました。それは歯科医師、あるいは 病理等をやられている所からヒアリングをしまして、作業実態を把握して、それに伴い その中の作業性、あるいは取扱い量や取り扱っている時間、そのようなところを全部聞 きました。それに伴って、リスク評価をしながら検討した形が、この報告書になってま とめられていると思います。歯科医療や病理の細かい所は事務局にご説明をお願いした いと思いますが、そのような形で実態調査を踏まえて、我々の委員会の中で検討してま とめたものが今日皆さんのお手元にあります報告書(案)ということですので、これは 事務局のほうに説明をお願いしてもよろしいでしょうか。 ○有賀労働衛生専門官 では、事務局のほうから今回の資料3-2につきまして、名古屋 委員にご紹介いただきました少量製造・取扱いの規制等に係る小検討会報告書について、 簡単にご説明させていただきます。  まず、今回の検討会のスケジュール的なものが、最後の10頁にあります。今回の小 検討会は、非常にお忙しい中、先生方にタイトなスケジュールでお集まりいただきまし て、5回この検討会で検討してきました。第1回目の平成20年7月22日から、最終回 の第5回が平成20年10月8日まで、名古屋先生以下5名の先生方、当委員会の委員の 先生ともダブっている部分もありますが、この5名の先生により検討会が行われたとこ ろです。  内容は資料3-2の1頁に戻っていただきまして、本当にかいつまんでですが、説明し ます。今回は座長からもご紹介がありましたが、ホルムアルデヒドは歯科医療や病理学 的検査、解剖実習、司法解剖の現場で非常に幅広く使用されていることから、改正法令 の円滑な施行に資するためにいろいろな団体からヒアリングを行った上で、整理をさせ ていただいたということです。あくまでも規制自体がかかっているのですが、実際の運 用をどうするかということにつきまして、先生方にリスク評価を踏まえたご検討をいた だいたということです。今回まとめさせていただいた報告書は、行政のほうですべから く即座に、この報告書(案)に基づきまして何らかの通知で各地に周知徹底を図りたい と考えているところです。  中身ですが、大きく分けて3つに分けさせていただいています。1つ目が、歯科医療 です。これは社団法人の日本歯科医師会様よりヒアリングを行いまして、いくつか明ら かになった事案がありました。簡潔にまとめさせていただくと、歯科医療については、 非常に少量のホルムアルデヒド製剤を染み込ませたペーパーポイントという、マッチ棒 のすごく小さいものをご想像いただければと思うのですが、それを付けて患者さんの歯 の中に差し込むという貼薬処置を、非常に頻度は少ないが行っているところでして、2 頁目の所に使用頻度が書いてあります。使用頻度自体は大体月に12件で、1回の治療 時間が10秒から30秒程度で、実際に使う量も非常に少なくて、最大限発散したとして も0.024ppmということでした。  こういった事項を受けて評価をしていただきましたところ、歯科医療においては、ホ ルムアルデヒド取扱い作業については非常に健康影響リスクが低いのではないかという 結論をいただいたところです。それに伴っていくつか整理をさせていただいたのが、 (3)の整理のアからウまでです。  アは、非常に取扱いが短時間、低頻度であって気中濃度が著しく低い場合には、測定 そのものでも出てくる可能性も非常に低いということ、こうしたことから非常に必要性 が低いのではないかということ。また、定期健診に付加する形で、特定業務従事者の健 康診断が6カ月に1回定められているところですが、これについても必要性はかなり低 いのではないかという結論をいただいております。  3頁の作業主任者ですが、歯科医療においては、ホルムアルデヒド製剤の保管や配置 に際しましては、労働者が使う場合には作業主任者に指揮させることが重要であるとい うことから、きちんと選任をされて措置をしていただく必要があるという結論をいただ いています。  発散抑制装置ですが、今回はホルムアルデヒドの発散源が口の中ですので、なかなか 局所排気装置などを設置するのは非常に難しいということで、これは特化則の5条に局 所排気装置を設けてくださいとあり、著しく困難な場合は、それ以外の措置が定められ ているところですが、今回歯科医療については、そうした著しく局排を付けることが困 難な場合が多いのではないかという結論をいただいているところです。換気の措置とし てはきちんと歯科医師会から報告がありましたが、換気扇や口腔外バキュームの導入が 進んでいることが確認されたところです。こちらが歯科医療についてのまとめです。  2番ですが、こちらは医療機関や登録検査所という、専門に病理検査をやられている 検査所等々で、病理学的検査という意味で病理解剖や病理検査をやっていただいている 所です。これについてもホルムアルデヒドは非常に多く使っているということで、これ については社団法人日本病理学会様よりヒアリングを行わせていただいたところです。 非常に幅広く使っている所ですが、リスクとしては3頁のいちばん下のウに書いてあり ますが、ホルムアルデヒド濃度が非常に高く、0.4ppmや8ppmと、管理濃度と比べても 高いということが1つ。病理学的検査を専門に扱う場所につきましては、非常に毎日の ように取り扱っているというところから、病理学的検査を専門に行っている所につきま しては、これは非常にリスクがあるのではないかという結論をいただいております。  一方で、内視鏡検体や外来での小組職の固定などを臨床の場などで行う場合がありま すが、4頁のカに書いてありますが、ホルムアルデヒドの小瓶溶液の蓋を開けて、内視 鏡等で取った組織を浸けてすぐ閉じる作業があるのですが、これについては1回に開け ている時間は5秒ぐらいだということと、大病院においても日に10回程度。また小瓶 を開けている際の濃度も結局検出下限以下だということで、こういった所は病理学的検 査を専門に行っている所と比べて、健康影響リスクは低いのではないかという結論をい ただいているところです。  こうしたヒアリングやリスク評価を踏まえて出された結論が、5頁目の(3)整理のア、 イ、ウです。先ほど申しましたとおり医療機関でも病理検査室や衛生検査所など、専門 的に病理学的検査が行われている場所については、通常は常時使用されている。また、 高い濃度も出ているので、きちんと作業環境測定を行って作業環境改善を行うことが求 められるということです。  一方で、先ほど申し上げたような小瓶を開閉するだけのような作業を行っている場合 というのは短時間、低頻度であって、気中濃度が検知されないぐらい非常に低いという ことですので、作業環境測定の実施の必要性は非常に低いのではないかと考えられると いう結論をいただいています。健康診断についても同じです。  イの作業主任者については病理学的検査、特にホルムアルデヒドを使用する場所を病 理検査室なりに集中化することが非常に重要です。あとは、なるべく有害性の少ない製 品への変更や、臓器などを保管している場合には、保管方法がホルムアルデヒド濃度を 低減させるのに非常に有効であるというヒアリングを受けたところですので、作業主任 者に、こうした事項をきちんと指揮させることが重要だということで、結論をいただい ております。ウは発散抑制装置です。繰返しになりますが、ホルムアルデヒドを使う作 業については、病理検査室などに可能な限り集中化をすることが重要であるということ で、こういったところはきちんとした局排を設置して、発散抑制装置をやっていただく ことが必要になってきます。  6頁の上にも書かれていますが、それ以外の所については、例えば手術室などでは感 染防止のために陽圧に保つ必要があるということや、設置自体がそもそも医療行為を妨 げる可能性があるということで、すべてではないですが、局排の設置が著しく困難な場 合があることを結論でいただいております。その場合については歯科医療と同じく全体 換気装置の設置やその他の措置が必要だという結論をいただいています。  続きまして、3の解剖です。これは2番の病理学検査の中に病理解剖も若干入ってい るわけですが、ここの3の解剖については大学等で行われている解剖実習と司法解剖の 部分についてまとめていただいています。これにつきましては系統解剖や司法解剖など、 いろいろある使用実態につきましては、社団法人の日本解剖学会、司法解剖については ご紹介いただいた大学等からヒアリングを行ってきたところです。  系統解剖は、大きく分けて2通りの作業があります。1つは、解剖準備室で行われる 解剖体そのものの防腐処置や保存、実習終了後の解剖体の処置といった大学の職員が主 にやっている作業が1つ。  もう1つは、解剖実習室において学生が解剖実習しているとき、これはもちろん大学 の職員、教員なりが指導をしている所ですが、これら2つに系統解剖自体は分類して、 評価をいただいたところです。  前者の解剖体の処置ですが、これは1年間に40や50とかなりの数の防腐処置を行っ たり、基本的に毎日のように使っておられるということ、また量もかなり多いというと ころから、これについては健康影響リスクは高いのではないかという評価をいただいて いるところです。  解剖実習ですが、これは1年に大体3カ月程度行われるというところで、100名の学 生さんであれば解剖体が25体ぐらいだというところでした。これにつきましては7頁 (エ)に書いてありますが、それぞれ社団法人の日本解剖学会が全国の医科大学や歯科 大学に行ったアンケートの結果がありますが、これについてはホルムアルデヒド濃度は 結構高いところもありまして、これ自身は0.55ppmと、それぐらい高い所がありました。 また換気装置についても、それぞれ導入されてない大学も多いというところもありまし た。これについても、基本的には量なども勘案して健康影響リスクそのもの自体は高い のではないかという結論をいただいております。  最後の司法解剖ですが、こちらは不審死等の事案があった場合に警察等の依頼により まして死因等の調査を行っておりますが、件数としてはある大学では年間80体程度と 非常に多い数ということ、1回の解剖自体も2〜4時間程度かかるということで、なか なか非常に多く作業が行われていると。また、司法解剖(ウ)ですが、解剖は1回で 15リットル程度と非常に多く使っているということですので、健康影響リスクにつき ましては、基本的には高いのではないか。もちろんホルムアルデヒドよりも感染症なり ウイルスといった健康影響リスクのほうが高いとは思いますが、ホルムアルデヒドにつ いても十分高いのではないかというリスク評価をいただいています。  これにつきまして、こうしたリスク評価を踏まえて先生方に整理をしていただいたの が8頁の(3)です。こちらにつきましては、作業環境測定ですが、解剖準備室や司法解 剖室は、年間を通じてホルムアルデヒドが使われているということで、きちんと測定を していただくということです。ただ解剖実習室のほうは、通常6カ月に満たない3カ月 の作業ということですが、毎年繰り返す作業ですので、ホルムアルデヒドの発生が多い とされる解剖の開始時を含めた定期的な測定を行うことというのが、作業環境改善には 有効であり望ましいという結論をいただいています。作業主任者につきましては、事業 者は作業主任者に、労働者がホルムアルデヒドに汚染されないように、作業方法の決定 等をきちんとさせ、監視させることが重要であるという結論をいただいております。  ウの発散抑制装置ですが、解剖準備室や解剖実習室、司法解剖室というのは、基本的 には局所排気装置を設置したりして、労働者のばく露防止対策を行うことが基本である ということです。ただ、特に解剖実習室におきましては、実習のための解剖体が非常に 多いということとともに、実習ですので、解剖で取り出した臓器が発散源となっていま すが、これらを計測する場合や顕微鏡で観察する場合というのは移動しなければならな い。あと作業性の面から局排の設置というのが困難な場合があるということです。この ような場合につきましては、歯科医療等の場合とともに、同様に5条の但し書に基づい て全体換気装置の設置等の措置が義務づけられるところです。  また解剖につきましては、各メーカーのいろいろな業者さんから、こういった排気装 置付の解剖実習台やそういった解剖実習台に付設するような移動型の換気装置を開発し ている所がヒアリングによって確認されました。こういったことを総合的に行っていた だくことによって、管理濃度0.1ppm以下とすることが非常に重要、必要であるという 結論をいただいております。  エは、こういった解剖実習においては、局排なり全体換気装置1つだけで管理濃度以 下にするのは難しい部分もありますことから、全体換気装置を補助する機器を、各社に いろいろと導入していただいております。それは排気装置付の解剖実習台や解剖実習台 に付設するような移動型の換気装置等々ですが、こういった部分につきましては、機器 の有効性や、技術的に気をつけておくべき事項につきましても、先生方から結論をいた だいております。こういった機器については、1つで管理濃度以下になるかどうかは現 状ではなかなか難しい部分もありますが、ホルムアルデヒド濃度を低減するという有効 性は、認められるという結論をいただいております。今後は機器を単独で使用した場合 に、きちんとそれだけで管理濃度以下となるような装置の開発が期待されているところ です。こういった措置を導入するに当たっては、以下の4つのような点に特に留意をす べきだという結論をいただいております。  1つは、新たな有害物質が発生しないようにするということ。もう1つは、どうして もフィルターが切れてしまう可能性がありますので、こういった部分は検知管なりガス センサーなどで有効性をきちんと確認してくださいということ。また、作業環境中に戻 される空気中のホルムアルデヒド濃度というのは、少なくとも管理濃度以下にするとい うこと。  もう1つは、装置を使用する際の作業方法等について、労働者やその他関係者に周知 や情報提供を十分行っていただくことが重要であるということを、ご結論をいただきま した。  最後は、ホルムアルデヒド規制の周知のあり方です。歯科医療や病理学的検査、解剖 につきましては、関係団体が非常に規制の周知に重要な役割を果たすことから、こうい った団体と協力の下に適切な周知を図ることが重要であるという結論をいただいており ます。ちょっと長くなってしまいましたが、以上、簡単に説明させていただきました。 ○櫻井座長 はい、ただいま小検討会報告書の中での中間報告となっていますが、その 2つあるうちの1つ、ホルムアルデヒド規制に関する部分につきましては、およそ小検 討会での検討は、一応結論に到達しているものだと理解しておりますが、ご質問、ご意 見等をいただいて、場合によっては修正も可能かと思います。どうぞご発言があれば、 よろしくお願いします。 ○内山委員 2つ確認したいことがあります。まず1つの歯科医療のところは、これは 医療として使われているわけです。リスクは少ないと書いてあるのですが、発生源が抑 制されれば、あるいは代替されればいちばんいいわけですが、この治療にはホルムアル デヒドの代替品というのはないのですか。もしあれば、可能な限り代替するほうが望ま しいなどと入れてもいいような感じもするのですが。 ○名古屋委員 いまはペーパーポイントは、いまの若い人は使わないです。昔のかなり 年配の先生方は使われていて、いまの若い人は使っていない。たぶんもう、それは置き 換わってくると思います。ただ現状にあるので、一応除きましょうという形にしてあり ます。 ○内山委員 それでは厚生労働省が、代替品がある場合には代替品を使用するように勧 告しても、悪くはないのではないかと思うのです。そうすれば発生源はゼロになるから、 医療現場ではほとんどないということになるわけです。  もう1つ、これはよく聞かれることですが、解剖実習の所に労働者等と「等」が入っ ているのは学生のことだろうと思うのですが、これは現場としては、いくつかの大学で は学生の保護具使用というのも出てくるのですが、文章としては労働者等ということで すが、これは作業主任者は学生にも指示ができるという解釈ですか。  例えば8頁の最後の所の整理の解剖実習のイの作業主任者は、「労働者等がホルムア ルデヒドに汚染され、又はこれを吸入しないように、作業方法を決定させるとともに、 保護具の使用状況を監視させること等が重要である」とあります。ということは、これ は作業主任者は学生を監視し、あるいは指示することができるということでよろしいの でしょうか。他の所は「労働者に」となっているので、作業主任者は「労働現場」と、 いわゆる労働安全衛生法での権限ということで限定されていると思うのですが、ここは たぶん学生があるので労働者「等」になっているのではないかと思うのです。そうする と、作業主任者が学生も監視をしていい、あるいは命令することができるということで すか。 ○有賀労働衛生専門官 こちらは事務局から回答します。おっしゃるとおり「等」とし たのは学生がほとんどだということと、学生は保護具を使用されているのと使用されて いない方がいるということも受けて、きちんと法律上でいえば作業主任者は労働者にし か作業指揮権限がありませんので、本来的にはできないことになります。そうは言って も学生がほとんどですし、学生が保護具の着用といった部分をやっていただくのは非常 に教育という観点からも重要だと考えていますので、「等」で「望ましい」ということ を書かせていただいたという趣旨です。 ○内山委員 逆に言うと、作業主任者が解剖学教室の職員である可能性は、非常に高い ですね。 ○有賀労働衛生専門官 そうですね、はい。 ○内山委員 わたしが言いたかったことは、いわゆる学生を指導する立場の職員は、こ れは学生を指導してもかまわないわけで、間接的ではあるが、つまり作業主任者が大学 の職員であれば、学生を指導する立場上、むしろそれを徹底させなければいけないです ので、何か表現を工夫されてもいいのではないかという気がするのです。  それともう1つ、ご遺体への敬意の面から、保護具を使用しない大学があることはア ンケートでわかっているのだろうと思いますが、これに関しては特に、現場のそういう 大学での解釈に任せて保護具の使用は、特に積極的に進めることは、ここでは書かない のでしょうか。 ○有賀労働衛生専門官 もう個別対応です。 ○名古屋委員 個別対応ですね。 ○有賀労働衛生専門官 はい、個別対応しかないということです。 ○内山委員 それは実際にどのぐらいの大学で、こういうことがあるのですか。ヒアリ ングで。 ○有賀労働衛生専門官 保護具は、ちょっと正確な数字は失念してしまいましたが、結 構半々までいかないぐらい保護具をされてない大学も多かったように記憶しています。 ○名古屋委員 それと、ご遺体の形からしてないのか、ちょっときちんとしたデータは 取れませんけど、いまはこういうことがあるのでという形でさせないことがありますと いう話をしていました。 ○櫻井座長 ただいまのことについては、よろしいでしょうか。いまご指摘の点、いろ いろとごもっともなご意見をいただきました。ありがとうございました。  いまの、ご遺体への敬意の面からマスクをやらないということについては、委員会の 席上では、やはりそれについてはご理解をいただいたほうがいいのではないかという意 見が。 ○内山委員 解剖学会としての見解がなければ、出していただいたほうがいいのかもし れないです。 ○櫻井座長 そういう意見が出ていたことも、記憶しております。よろしいでしょうか。 ○清水委員 今回は医療現場ということですが、実際に歯科医療に関しては医療の現場 ですが、あとは医学教育機関になっていますね。実際病院のほうでは、ホルムアルデヒ ドの使用がどういう状況かは、まだ調べられてないのでしょうか。私のだいぶ古い知識 では、いまはどうかわからないのですが、かなり病室などで、感染症を発症した方が退 院した後は、ホルムアルデヒドを消毒、燻蒸で使っていたという話は聞いています。  あとは外科、オペルームなどでもかなりホルムアルデヒドを使っていたのですが、い まではそれはないと考えていいのですか。 ○名古屋委員 手術室なんかは我々もよく測定したりしまして、ほとんどの場合がその まま持っていってすぐ向こうに付けるという形で、そこでホルムアルデヒドを使うこと はないと。あったとしても少量のものを、あと上からの換気がくるので、作業者そのも のはばく露しないから、そこのところはいいだろうという形でリスクが低いということ で外しました。ただ、病室はあったのですか。 ○有賀労働衛生専門官 リネン室やシーツなども含めて、そういう部分では使っている 所もあるようです。そうした所で常時使っている場合については、別に検討をするまで もなく規制がかかる所はかかるということですので、どうしても使いたい所については きちんと措置をしていただくことになるわけです。 ○大淵化学物質評価室長補佐 補足ですが、燻蒸に関係しましては特化則の中に第38 条の14という特別な条文があります。従来は植物、野菜や穀物を海外から輸入したと きに燻蒸する、それの燻蒸対策ということで、臭化メチルとシアン化水素のみが燻蒸規 制の対象だったのですが、今度はホルムアルデヒドも燻蒸規制の対象物質の中に入れ込 むということで、この11月中を目処に改正の特化則が公布される見込みでいま作業を していますので、特に燻蒸の場所は輸入の際の燻蒸だけに限らず、医療機関、あるいは いろいろな研究機関で部屋を燻蒸する作業があれば、その燻蒸規定に従って対応してい ただくことになります。 ○小西委員 補助的に導入されるという換気装置付の解剖台ですね。これはホルムアル デヒドの除去方法というのはどういう方法なのですか。フィルターですか。 ○名古屋委員 還流させるというのは、1つは手術台の中において、それに光触媒やス クラバー的なもので循環させるものと、あともう1つは、ある程度加工された活性炭を 使ったものに対してはそのまま出してしまうので、そこについてはそのまま出すのはち ょっとまずいのかなということで、検知管も使いますので、それで一応確認して濃度が なるべくそうなるように努力してくださいという形がある。 ○小西委員 そういう装置のここに書いてあることはもちろんこの通りなのですが、そ ういうものに例えばいま、電気的センサーを組み込んだものはないのですか。 ○名古屋委員 ある。 ○小西委員 やはりあるのですか。 ○名古屋委員 ありますが、1台30万もするので、それから20〜30台あったときに、 それを全部オペレーターのところに持っていってやるのはかなりお金がかかるので、そ こまではちょっとしんどいかなと。 ○小西委員 本来装置が排気で、還流の所にそういう装置、センサーが組み込まれてい るものができてくると、もっと還流もスムーズにいくのだろうなと思います。 ○名古屋委員 先ほどの管理濃度のときは3分でと言ってましたが、今回出てきた設置 型というのは、分析に30分かかるのです。そうすると、やはり検知管で10分でできる のだったら、確認するのだったら作業主任者でも誰か確認して、ある程度リスクを軽減 できる形にすればいいのかなと。  もう1つはここに書いてあるのですが、それがどのくらい持つのかをユーザーにきち んと知らせておいて、そして管理して、なるべくそこにいる作業者をばく露させない形 にしていただければという形で、ちょっとここに付けたという感じです。 ○櫻井座長 9頁の4つ目の○の所は、この装置を使用する際の作業方法等について、 装置を使用する労働者、その他の関係者というのは学生さんのことですね。  ほかにはよろしいでしょうか。それでは、ご意見等ありがとうございました。  次に、2番目の少量作業ばく露調査手法についてです。これは少量製造・取扱い作業 の把握が可能なばく露調査手法を検討するということで、これは今後ももう少し続く予 定だと理解しておりますが、事務局から説明をお願いします。 ○島田化学物質評価室長 資料3-3、3-4に基づき、ご説明します。併せまして、パン フレットとして、平成20年度版の有害物質ばく露作業報告書の書き方を、併せて資料 の中に入れてありますので、この3資料を用いて概略を説明申し上げます。これにつき まして、リスク評価検討会で8月8日にご議論いただきまして、少量の製造または取扱 い作業の把握が可能なばく露調査手法の策定についてということで、特に今回の有害物 ばく露作業報告の対象が、500kg以上の製造取扱いということになっている結果、今回 のようなホルムアルデヒドについては、それ以下の少量の使用であったということで、 リスク評価の対象から外れてしまったという事例がありました。これに基づきまして、 前回の8月8日の検討会のほうで、その部分について改善措置が取れないかということ で、これについては小検討会のほうでご議論をいただくようにという指示をいただいた ものです。その後10月8日に小検討会を開きまして、本日提出させていただいている 3-3のリスク評価に係るばく露調査の現状及び課題というものを説明しました。実質、 小検討会における検討が今後の検討になりますので、第1回目のご意見等があったこと についてのご報告をさせていただきます。資料につきましては、リスク評価検討会のメ ンバーの方々につきましては既にご案内のとおりですので、概略の説明だけにとどめさ せていただきます。  リスク評価に係るばく露調査の現状については、1番に書かれているものです。私ど も行政のほうで、労働安全衛生法に基づきまして、「有害物ばく露作業報告」というも のを事業場から求めるという作業で始まっています。その内容を確認させていただきま して、実際にばく露のレベルが高いと推定されるような事業場については、「ばく露実 態調査」をさせていただいております。これはいま現在においては中災防に実際に事業 場にヒアリングをしていただきまして、併せてばく露レベルの高い作業につきましては、 実際に気中濃度を測っていただく作業環境測定をしていただいていまして、その結果を リスク評価検討会で検討いただいている状況です。  2頁につきましては、少量製造・取扱い作業の把握における課題ということで、これ は事務局のほうで課題となるものを4点ほど挙げさせていただき、説明をさせていただ きます。2の(1)で、特に取扱いが通常500kg以下であるような化学物質として、例え ばレアメタル(希少金属等)につきましては、一般に事業場における取扱い量が非常に 少ないという状況があります。こういう場合につきまして、リスク評価として、有害性 の調査がなされるわけですが、実際に使っている事業場からの報告がない場合がありま して、そういう場合においては、リスク評価に至らないという問題がありました。  2の(2)ですが、今回報告をさせていただいた医療機関等におけるホルムアルデヒド の使用等の事例です。これにつきましては、ホルムアルデヒドは例えば鍍金の現場では 非常に大量のものが使われております。一方で、医療機関等で使われているものについ ては、やはり500kgを下回るようなものでして、そういう場合には一部の事業場、ある いは今回の医療機関についての情報が入手できない状況で、そういったものに対する評 価ができず、それに対する適正な対応が取れないという課題がありました。  3点目ですが、取扱い量につきましては、大企業から中小企業に至るまでさまざまで す。こういった状況の中で、中小企業等については、一般的に取扱い量が少なくて500 kg以下のものが多いです。その場合には、大企業で取り扱われているような取扱いにつ いては把握できますが、一方で中小企業等で取り扱われているものについては把握がで きないという事情があります。この場合には、特にオートメーション化が進んでいる大 企業等での作業については把握できるわけですが、一方で中小企業等で、例えば手作業 等で実施しているものがあった場合に、こういったものが把握の対象から抜けてしまう ということで、そういう場合のリスクが高まっているということです。  4点目は、総じてですが、取扱い量が事業場によってまちまちですので、そういった 場合については一部のものだけが把握できるということで、調査サンプル数が不足する 場合がありますし、比較的規模の大きな事業場についての把握のみにとどまってしまう ことがあるということで、このような課題を指摘させていただいております。それを踏 まえまして、今後ご検討いただくものとして、10月8日の小検討会において一部初期 のご検討をいただきましたのが3-4の資料で、1枚紙です。  これは事務局よりあくまでも論点の素案ということで提出させていただきまして、小 検討会で検討をいただいたものです。これについては合計4点ほど挙げさせていただき ましたが、1番として、少量製造・取扱いの調査についての基本的考え方です。調査手 法の考え方として、(1)として、対象事業場の裾切り値で、今回裾切りが500kgとなっ ているものについて、今後これについてどうしたらいいかという検討をする必要がある のではないかという論点を挙げています。  2点目として、いま有害物ばく露作業報告に基づきまして対応をしているような作業 報告に、別の調査の手法を入れたらどうかという新たな調査の検討も視点に入れさせて いただきました。2番目、3番目というのが、それぞれ1の(1)、(2)に対応するもので すが、2番として、有害物ばく露作業報告の改善の方向ということで、報告のスキーム の改善を1点目に挙げています。これについては、このリスク評価検討会で検討いただ き、その結果を受けて、すぐに規制を導入するという作業を今まで行っている状況です が、さらに丁寧な調査が必要ではないかという視点を踏まえ、スキームの改善点を検討 いただきたいとお願いしています。  2点目ですが、有害物ばく露作業報告の様式の検討ということで、これについて本日、 パンフレットとして出しているものですが、この中の5頁、6頁にその様式が書かれて います。これについて既にご案内かと思いますが、対象の事業場に関する一般的な情報 として事業場の名称、所在地、労働者の数、事業の種類といったものを報告いただいた 上で、対象となるばく露作業報告の対象物の名称を記載していただき、その取扱いに関 する細かな部分の記載を求めているものです。その中で、例えば用途については資料の 6頁のいちばん右にある別表1という形で、用途の凡例を付けています。これに基づい て番号を記入していただく作業です。ばく露作業の種類については別表2ということで 下のピンク色の部分です。こういった凡例を示しています。こうした作業の様式、凡例 について3年間の調査を踏まえ、改善点があるのではないかと思いますので、こういっ た点についても掘り下げて検討していただく予定にしています。  3-4の資料に戻って3ですが、少量製造・取扱い事業者の特定のための新たな調査手 法の検討については、(1)として関係業界との連携を図っていって、情報を収集すると いう方法があるのではないかということ。(2)として、いま情報化社会ということでイ ンターネットなどにもさまざまな情報が出ていますので、こういったところで活用する と新たな使用形態、作業形態が把握できる可能性があるということで、そのあたりを入 れています。その他として、ばく露の調査の手法の中に統計学的な解析手法を活用して いったらどうか。当初予定されていたばく露調査についての考え方の中で、ばく露モデ ルの活用も検討されていたわけですが、いま現在としてはモデルを使った形のばく露調 査はされていません。こういったものについても、改めて検討していただいてはどうか ということで入れています。  この説明をして、前回、10月8日にご議論いただいたところでは、特にその他の部 分の統計学的な処理については、この調査自体がリスクの高い作業に特定して、それを 調査するということになっていること。一方、統計学的な処理をする場合にはランダム なサンプリングが必要であるということで、そのあたりで、もしかしたら相容れないも のがあるのではないかということもご議論いただき、そのあたりは今後、検討していく 必要があるという指摘をいただいています。  併せて4については、ばく露評価の方法の扱いになるのではないか、そういったもの に対する検討を加えてはどうかというご意見もいただいています。そんな状況で、今後、 また小検討会の中で、そのあたりの議論を進めていただくことになっています。以上、 ご報告です。 ○櫻井座長 ただいまのご説明の内容、その他、ご質問、ご意見等がございましたら、 ご発言をよろしくお願いします。 ○本間委員 少量製造・取扱い事業者の特定のための新たな調査手法の検討ということ で、関係業界との連携による情報の収集とありますが、これは例えば必ずしも取扱い量 の多くない500kg以下という少量であっても、リスクの高いかもしれないホルムアルデ ヒドのようなものとか、そういう物質を探していくという考え方ですか。 ○島田化学物質評価室長 いま新たな物質というよりは、次の年に評価する物質が、例 えばこの資料の中でいけば平成20年度には44物質挙げています。そのそれぞれの物質 の中で特殊な製造あるいは取扱いをとっているものは、把握の対象になりますから、そ ういう化学物質の業界団体、メーカーに取扱いの状況をお聞きするということで、この ばく露作業報告で把握できないものを、そういった方々から教えていただけるのではな いかという思想です。 ○櫻井座長 これは小検討会で議論が進んで、改めてまたご意見を頂戴するチャンスも あろうかと思います。今日のところは、お聞き取りするということで、よろしいですか。 ○清水委員 これは1物質で500kgという考え方ですよね。そうすると、例えばある工 場ではいろいろな物質を扱い、トータルで例えば500kgという形で提出を義務づけるこ とができますか。例えば廃棄物ですが、大学などでは年間何キロ以上の排出をする場合 は全部都条例か何かで出すのです。1物質に関してはごく少量であってもトータルでは 相当の量になりますから、そういう考え方を導入しないとなかなか難しいかもしれない。 ○島田化学物質評価室長 そのあたりの検討はしていただくことになると思いますが、 もともとこの報告自体が始まったのは平成17年5月に出ている報告書で、実際にはこ の資料に添付していますが、PRTR法の取扱いの1tが検討の材料になり、その中で大体 6割ぐらいの事業場が1tで把握できるのではないかということ。その半分の500kgだ と大体8割ぐらいのカバー率になるのではないかということで、そのあたりを把握でき れば妥当な評価になるのではないかという議論をいただいているところです。 ○櫻井座長 ほかに何かございますか。よろしいでしょうか。では先に進ませていただ きます。次は「リスク評価手法」の改訂についてです。これは前回も検討したもので、 その改訂についてですが、事務局から説明をお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 資料3-5をご覧ください。資料3-5は前回お配りした資 料を修正したもので、前回と比べての変更点は先ほどの議事概要の説明でもしています が、その箇所を念のため確認させていただく形で進めたいと思います。資料の5頁にな ります。真ん中辺に「イ 二次評価」と書いてあり、ここで二次評価値の決定手法につ いていろいろ述べています。波線のアンダーラインが前回から既に修正しているところ で、二重線でアンダーラインになっているところが、前回の議論を踏まえての修正点で す。  順に申し上げると、iiの(i)は前回と特に変更はありませんが、それ以降は少しず つ変わっています。(ii)は、一般環境に関する濃度基準を採用してはどうかという提 言をしたのですが、これについては一般環境の濃度をそのままではなく、その値を「参 考にする」ということで修正しました。(iii)は、発がん性以外の毒性試験で得られた 無毒性量から外挿した値を「参考にする」という表現に修正しています。(iV)は変更 はありません。(V)は若干変更していて、なかなか参考となる値がない場合、職場で の定量下限値、工学的対策の最大設定時の管理可能な最低値など、feasibilityのある 値ということですが、こういったものについても、これを「参考に」という表現に修正 しています。こういうことでご意見をいただきましたので、今後はこのような形で評価 値の検討、いろいろな資料の準備等もさせていただきたいと思っています。 ○櫻井座長 修正点についての提案です。いかがでしょうか。よろしいですか。特段ご 異議もありませんので、以上の修正に従って、今後、評価を実施することにしたいと思 います。ありがとうございました。次は平成20年度リスク評価対象物質の評価値につ いて、これは物質について次々と決められるものは決めていくということで、今日は残 りの時間、できる範囲内で進めてまいりたいと思います。事務局から順に説明をお願い します。 ○大淵化学物質評価室長補佐 今回から新しく参加された先生方もいらっしゃいますの で、前回からの資料と重なっていますが、少し詳しく説明させていただきたいと思いま す。資料3-6をご覧ください。資料3-6は本年度当初で44物質を評価していくという ことで、このリスク評価においては労働現場の実際のばく露の状況を把握するといのう が、一方の業務としてありますけれども、測定値を評価するために評価値を決めていか なければならないということで、それぞれの物質についての評価値を検討するための資 料を、このような横長の形で第1回目からお配りしています。  この資料は3段構成になっています。1がリスク評価対象物質の評価値の候補という ことで、評価値として一次評価値、二次表価値という2段階の評価値を設定します。一 次評価値はスクリーニング的な意味のもの、二次評価値は規制に結び付けていくかどう かを判断するものです。その候補の値を事務局で示し、それをご検討いただく形で第1 回目からきています。2は、その評価値の候補として日本産業衛生学会の許容濃度、 ACGIHのTLVといったものが候補値となっている場合には、どういう根拠でその値は定 まったかというところで、発がん性が考慮されているかということを記述しています。 3は、それぞれの物質の必要箇所に関係する数値の一覧表の形になっているものです。  1の評価値の候補というのが1頁目から始まっていますが、1から44まであります。 1や3などの網が掛かっているものは、44物質のうち、今回の有害物ばく露作業報告に よっては事業場がなかったというもので、これから現場での実態調査を行う予定がない ものです。こういった物質については現場での測定を行いませんから、このリスク評価 検討会で、あえて評価値を設定する作業は必要ないということで網掛けをしています。 数値のところですが、一次評価値の案、二次評価値の案となっています。前回までの議 論で既に確定したものについては四角で囲んでいます。アンダーラインを引いているの はまだこれから議論するもので、あくまでも候補となる値です。いちばん右側にはこれ までの議論の経過等を簡単に整理しています。今後は網の掛かっていないもので前回ま でまだ審議が終わっていない部分について、ご検討していただくことになります。  2の区分の資料は10頁から始まっています。これは二次評価値を決めるための濃度 として、産衛学会なりACGIHの値があるものについて、その具体的な数値と、それを決 めた場合の考え方を整理したものです。これも実際に評価値を決めていただく時にこの 資料、あるいは必要があれば本日、参考2としてそれぞれの提案理由書をお配りしてい ますが、そういったものを見ながら二次評価値のご議論をしていただきたいと思います。 16頁、17頁については、それぞれの物質、特に評価値を決めなければならない物質に ついての数値の一覧表です。  資料3-6の1頁に戻っていただき、前回はどこまで進んでいるかですが、大きくいく と1から11までが前回までの対象となりますけれども、このうち網が掛かっているも のは除かれます。11までの中でまだ確定していないところがあり、それを見ていただ くのが本日のひとつの仕事です。それから3頁のいちばん下にある14以降については、 まだ全くこの会議の中でご議論いただいていませんので、本日から議論をスタートして いくというものです。  前回、まだ宿題として残っていた物質が6のオルト−ニトロアニソール、8の2−ク ロロ−1,3−ブタジエン、9の4−クロロ−2−メチルアニリン及びその塩酸塩です。こ のうち6と9については二次評価値の欄でACGIHなり産衛学会の値がないというもので、 どういうことが考えられるか事務局で資料を作り、検討してほしいということで宿題を いただいていたものです。この会議ではまだ検討していませんけれども、同じような位 置づけで日本産衛学会なりアメリカのACGIHの値がないものが、ほかにも実は4物質あ り、3頁の下にあります14の物質、4頁の16の物質、6頁の32の物質、8頁の42の物 質と全部で6物質です。これについては同じような形で事務局として今回、資料を作り、 後ほど説明させていただきたいと思っています。この6物質の前に、既存のACGIHなり 産衛学会の値があって、まだ審議が不十分であった物質について、ご審議いただきたい と思っています。  8の2−クロロ−1,3−ブタジエンですが、これまで第1回、第2回のご議論では、一 次評価値のところについて、まだ私どものほうで情報が揃っていなくて情報提供できな い空欄の状態でしたが、今回は少し情報を提供させていただくことになりました。この 物質について今年度に入ってから、関係の先生に有害性評価書というのを委託事業の中 で作成していただいています。この中で発がん性に関する閾値があるかどうか。閾値が ない物質については、過剰発がん生涯リスクレベルについて調べていただく作業をして いただいています。これについては別の資料も見ていただきます。  一方、二次評価値については従来から、案としてACGIHの10ppmという値を挙げてい ます。これについては第1回の議論のときに、この10ppmというのは高すぎるのではな いかということで懸念をいただいた物質です。ですから、これは後ほどACGIHの資料も 見ていただきたいと思っています。  一次評価値に関係する有害性評価書ですが、これは本日お配りしている参考1が関係 する資料になります。参考1の中の1頁と3頁から2種類の資料を付けています。1頁 からは有害性総合評価表という表のスタイルで、それぞれの毒性ごとに数値と、その根 拠を示す資料です。3頁から始まっているのは、この総合評価表を作るための土台とな る資料です。「有害性評価書原案」というタイトルで、もう少し詳しい情報が入ってい るものです。  委託事業の中でこの情報を整理していくわけですが、発がん性以外についてもいろい ろな情報を整理していただきます。今回、3物質について参考1の資料を作っています が、実は発がん性についてはある程度情報収集は終わっていますけれども、それ以外の 毒性の情報についてはまだ情報収集の途中で、今年度が終わるまでにはその辺までいき ますが、今回は発がん性情報のほうを中心に、ご覧いただきたいと思います。  2−クロロ−1,3−ブタジエンの発がん性に関する情報ですが、参考1の2頁でキの発 がん性の項目をご覧いただくと、発がん性の有無については人に対する発がん性が疑わ れる物質であること。根拠としてIARCの「グループ2B」という分類を根拠としていま す。閾値の有無については「なし」ということです。閾値なしの物質についてはユニッ トリスク等の情報があれば、それを活用して評価値を検討していくということですが、 この物質についてはユニットリスク等の情報がないため、RLの計算はできないという 結果でした。ということで資料3-6では、一次評価値の欄に「閾値なし」ということで、 過剰発がん生涯リスクレベルに関する情報なしと書いています。したがってこの検討会 としては、一次評価値については設定できないという考え方になろうかと思います。  二次評価値の関係ですが、ACGIHで10ppmというのが提案されています。参考1の2 頁のコで、許容濃度の設定という欄がありますが、この中では10ppmの提案理由として、 クロロプレンは急性影響を誘発する量が経皮的に吸収されるとして、許容濃度を10ppm としているということです。許容濃度自体は発がんで決められているということではな く、経皮的な急性の影響というものを基に決めている状況です。  ACGIHのほうはもともとの提案理由書自体は、また別の資料になって恐縮ですが、お 配りしている参考2の8にβ−クロロプレン(別名2−クロロ−1,3−ブタジエン)と 書いていて、21頁からがACGIHの提案理由書になります。動物関係のデータ、人への データなどが書いてありますが、最終的にTLVの提案理由に当たるTLV Recommendationというのが、22頁の右側の下にあります。  先ほどの参考1の資料に書いてあるものも、ここから引っ張ってきているものですが、 この1行目に書いてあるところでいくと、毒性の面では実験データあるいは人への影響 について、データによって少し数字の乖離があるということで、上のほうのデータでは 必ずしも同じような数字の傾向というわけではないですが、全体を評価して、この ACGIHのほうでは10ppmという数字を採用しているようです。  採用の根拠となったおおもとのデータは、22頁のTLV Recommendationの上で2つ目 のパラグラフの真ん中に「Oettingen and coworkers」というのが出てきます。200ppm でdangerous、80ppmで毒性が出るとあります。人へのこういったデータからTLVは求 めているようです。この物質について、いまご説明した2つの資料から、一次評価値、 二次評価値についてご議論いただければと思います。 ○櫻井座長 情報量があまり多くない中で、どんな議論ができるか。これについては一 応、リスク評価書は完成していないということ。 ○大淵化学物質評価室長補佐 はい、そうです。 ○櫻井座長 今日はご意見をいただくだけで、よろしいかと思います。10ppmというの はACGIHの数値ですが、ほかの国のデータはないですか。 ○大淵化学物質評価室長補佐 ACGIH、産衛学会があった場合については、その他のデ ータについては必ずしも詳しく調べていません。 ○櫻井座長 要するにACGIHは1980年から改訂していなくて、その根拠として挙げて いる文献は、von Oettingenの1936年のデータに基づき、この数値を提案している。 これほど多く使われている物質であるにもかかわらず、疫学的な情報はあまり参考にな るようなものがない。動物実験のデータもありますが、どうでしょうか。いま読みなが ら、いろいろお考えいただいていると思いますけれども、比較的、発がん以外の毒性は そう強いほうではないというのが、この動物実験のデータの印象です。したがって、発 がんをどう考えるかというところに問題は帰着するのかなと思っています。 ○内山委員 この有害性の評価の参考1で、2頁の発がんのところで閾値がないとなっ ていて、その後、参考の「閾値のある場合」というのは量-反応関係がないので、これ をLOAELとするということなのですか。それとも、こういうデータはあるけどユニット リスクとしては計算されていないということ。ちょっと私も元を読んでいないのでわか らないのですが、2つ実験が出ていて、LOAELを2.9mg/m3と46mg/m3、マウスでの2つ の実験が出ています。これはLOAELと、この評価書は書いています。 ○大淵化学物質評価室長補佐 はい。 ○内山委員 いくつかの濃度でやっているので、これが濃度依存的な量-反応関係がな いのでLOAELしか求められなかったのか、あるいは今までの公的機関がユニットリスク を特に評価をしていないのか。 ○櫻井座長 どういう事情によるのかということですね。 ○内山委員 やればできるのでしょうか。 ○大淵化学物質評価室長補佐 探した公的機関のユニットリスク情報がなかったという ことです。 ○内山委員 ということは公的機関としては、これを特に重要な実験と認めているとい うことではないということでしょうか。それとも、その後にやられた実験なので評価さ れていないのか、この辺がわかると。 ○櫻井座長 この2つの引用されているのは、いずれも低用量、中用量、高用量の実験 が行われて、量-反応関係があるとしたら計算はやってできないことはない。 ○内山委員 やってできないことはないのではないか。ただ、これがうまく増加してい ないのか。2.9では有意に増加しても、その後の量-反応関係がうまくないのか。2年間 やっているので、上が7カ月間、下が2年間吸入ばく露しているのです。 ○櫻井座長 いずれにしても、このLOAELとされている数値のうち、上の数字は2.9mg /m3で、既にACGIHが提案している10ppm、これが36mg/m3、それよりも既に10分の1 以下です。下のデータの46mgというのもほぼそれに近い。ですから人に対して発がん が疑われるということですが、それにしてもこのデータを拝見すると、10ppmをそのま ま採用はしにくいなということです。前回もそういう印象で、10ppmは高すぎるのでは ないかという意見があったのだと思います。  そうしますと、たぶん発がん性以外の毒性についての情報も、もう少し報告がまとま ってくると参照できると思います。想像するところ、そちらについては閾値があると思 いますが、その閾値は比較的高い。発がんに関するこういったデータに比べれば比較的 高いところに落ち着く可能性が大きいという気はします。その際、発がんのほうはどう するかという判断を迫られます。人に対する発がん性が疑われるとしても、それほど強 烈な発がん性というわけではなさそうで、清水先生、これは変異原性が出たり出なかっ たりしていますね。 ○清水委員 そうですね。なかなか判断が難しいのですが、in vivoのほうでは出てい るので、これから否定することは難しい。 ○櫻井座長 それはできない。強烈なあれでしたら、定量的に見てその強さというよう な判断は可能でしょうか。 ○清水委員 サルモネラ菌は、どちらかというとクロロの付いたものには鈍感なのです。 クロロが入っている化合物ではあまり敏感には出ないことが多いのです。 ○櫻井座長 なるほど。そうすると必ずしも変異原性が弱いとも言いきれない。 ○清水委員 そうですね。in vivoの染色体異常の骨髄細胞を使ったものなどでは案外 出ていますね。ショウジョウバエですけど劣性致死も出て、出てないのもあるので何と も言いにくいところですけれども、これで「なし」と言ってしまうには、ちょっと言い すぎだと。結局、閾値なしということになる。 ○櫻井座長 閾値はないということ。 ○清水委員 ないということでしょうね、変異原性ありということで。 ○櫻井座長 そうすると、何らかの数値に辿り着くためには先ほどの2つ、あるいはも っとあるのかもしれませんが、あちらに関する動物実験のデータを定量的に評価して、 どうでしょうか。ユニットリスク等を計算できるものかどうか検討する一方、この LOAELから不確実性係数を考慮して考えるとか、いくつかの選択肢を検討するというこ とになりますでしょうか。 ○清水委員 遺伝毒性に関しては先ほど申し上げたとおりなのですが、もうひとつ、ち ょっと気にかかるのは、9頁のオの生殖・発生毒性で何らかの影響があると。ただ、こ の場合、記載が不十分で不明であるということがあるので、ちょっとここは気になるの です。かなり低い濃度で。 ○櫻井座長 2)というのは、これは引用してあるのは、ACGIHのDocumentationと書い てありますね。そうすると、これは2007年のCD ROMと書いてありますけど、出てくる ものは、いまお手元にあるのと同じものでしょうか。そうするとこれに書いてあるとい うことでしょうか。22頁の左のところですね。これはソ連の研究者と意見の不一致が あるという、Fomenko、Salnikova、あるいはDavtyanと言うのですか、これらの方々の 1973年とか74年のころのデータ。一方、それを否定するような動物実験のデータはあ るのですね。ACGIHは記載したけども採用していないということですかね。それも含め て次の機会に評価するということにしましょうか。今回はこの程度で。 ○大淵化学物質評価室長補佐 私どものほうの他の毒性情報もまだ少ないですので。 ○櫻井座長 次に進んでよろしいですか。ではよろしくお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 資料3-6、資料3-7をご覧ください。先ほど説明した中 で前回、事務局への宿題として与えられたACGIHなり産衛学会の許容濃度等のない物質 についての関係です。計6物質について参考となる資料3-7を用意しましたのでご覧い ただきたいと思います。  資料3-7については、先ほど確認していただいたように、この検討会の評価手法に基 づき二次評価値を設定するための情報を整理したところです。1頁は6のオルト−ニト ロアニソールです。(1)は関係機関の許容濃度等を確認したものを示していますが、日 本産業衛生学会、ACGIH、米国のREL、ドイツのMAK、英国のWELといったものについて は設定はされていないということです。(2)の一般環境に関する濃度基準もないという ことです。(3)の発がん性以外の毒性試験で得られた無毒性量ですが、これについては まだ委託の委員会で調査中ということです。(4)は構造的に類似していると思われる化 学物質について許容濃度等が定められていれば、それをリストアップすることを、今回 試しということで事務局でやっています。(1)オルト−アニシジン、(2)アニソール、(3)ニ トロベンゼン、(4)アニリンといった、ベンゼン環に置換基が付いているもので、それが ある程度似ていると思われるものをピックアップしてみました。この中で仮にというこ とですが、(1)のオルト−アニシジンの構造は、オルト−ニトロアニソールのニトロのと ころをアミノ基に変えた構造のものです。これをACGIHのTLVを基に二次評価値を仮に 考えればどうなるかというもので、オルト−アニシジンが0.1ppmで違う物質であり、 安全のためということで10分の1を掛けたと仮にすれば、0.01ppmという値も考えら れるかもしれないというところです。ただ、この数値は、今までの議論から、優先順位 としてより上位の情報があれば、それを参考にするほうがより適切かと思います。あく までもこの資料は、事務局でいま持っている数字で考えられるものということで、仮の ものとして整理しました。  続けて6物質を簡単に説明します。2頁は9の4−クロロ−2ーメチルアニリン及びそ の塩酸塩です。これについて(1)から(3)の情報どれもいま使えるものがありません。 (4)は構造的に類似した物質の許容濃度などですが、2−メチルアニリン、アニリンとい ったものが考えられるということです。仮にということで、2−メチルアニリンはTLV がACGIHで2ppmとなっていて、それの10分の1で0.2ppmを二次評価値(案)として 書きました。仮のものとして事務局で書かせていただきました。  3頁は14の4,4‘−ジアミノジフェニルエーテルです。これも今までのものと同様に (1)から(3)の情報は今のところありません。(4)の構造的に類似した物質の許容濃度は、 (1)ジフェニルエーテル、(2)4,4‘−ジフェニルメタンジアミンが考えられると思います。 二次評価値案として4,4‘−ジフェニルメタンジアミンのACGIHのTLVが0.1ppm、この 10分の1ということで0.01ppmを仮の提案として示しました。  4頁は16の4,4‘−ジアミノ−3,3,−ジメチルジフェニルメタンです。これも(1)か ら(3)の情報はまだありません。類似物質として4,4‘−ジフェニルメタンジアミンが あります。このACGIHのTLVが0.1ppm、仮に10分の1を二次評価値とすると0.01ppm が考えられるかと思います。  5頁は32の1,3−プロパンスルトンです。この(1)から(3)の情報はありません。(4) で構造的に類似した化学物質は、TLVで適当なものが見つかりません。無理にという形 でβ−プロピオラクトン、スルフォランというのを書きました。なかなか似ていると言 い難いのですが、仮にβ−プロピオラクトンのTLVの0.5ppmを使い、この10分の1と すると0.05ppmということです。  6頁は42の2−メトキシ−5−メチルアニリンです。これも(1)から(3)の情報は現在 ありません。構造類似のものとしてオルト−アニシジンがあり、これのACGIHのTLVが 0.1ppmです。この10分の1ということで二次評価値を考えると0.01ppmが考えられる かと思います。  いずれも、いま説明しましたように二次評価値の案というのは、発がん性以外の毒性 情報というのがまだないものですから、やや無理をしたような形で類似構造物質のもの を取り上げていますが、今回、これをお示ししたのは、いま現在、事務局で得られる情 報ということで作ったもので、今後、もう少し(3)の情報が集まった段階で、先生方に ご検討していただくのが適当かと事務局では考えています。以上です。 ○櫻井座長 基本的には、(3)の発がん性以外の毒性試験で得られた無毒性量の情報を 待って、ご検討いただくわけですが、いま資料を出していただきましたもので、考え方 や、個別に、かなり妥当性があると言えるのか、ものによってだいぶ違うと思いますが、 何かご意見があったら承っておくのがいいかと思います。いかがでしょうか。  1頁に2つの物質が出ていますが、いま検討しようと思っているのはニトロ基と、一 方、参考にしているのがアミノ基で、その違いなわけですけれども、アニリンとニトロ ベンゼンもそうですね。アニリンは要するにメトキシ基がない。アニリンとニトロベン ゼンを比べるとほぼ同じレベルです。ニトロベンゼンのほうがばく露限界値が2分の1 で、これはいずれもメトヘモグロビン血症を、クリティカルなエフェクトと考えて決め られているわけです。オルト−ニトロアニソール自体もメトヘモグロビン血症を起こす という情報が、どこかにチラッと書いてありましたが、そのあたりの定量的な情報を、 ほかのニトロベンゼンとかアニリンと比較できれば、10分の1にするということでな く、その情報からダイレクトに求めることはできないかという気はします。仮にアニリ ンとニトロベンゼンを比べると、ニトロベンゼンが2分の1だから、今回、オルト−ア ニシジンの10分1でなく2分の1にするという発想もあるかもしれないし、それに定 量的な情報が不十分だから、もう少し安全率をと考えたら10分の1になるのか、ある いは5分の1になるのか。そういうようなことなのかもしれませんが、もう少しほかの 物質との比較を丁寧にやることによって、判断しやすくなるかなという気がします。  次の頁はクロロが入るか入らないかだけなのですね。これもメトヘモグロビン血症が 問題になるとすれば、その無毒性量に関する情報を丁寧に見て、そういうものがあるか どうか。もしそういう情報がないとしても、こういうのは動物実験で比較することが比 較的簡単だと思います。比較毒性学と言いますか、似たような系列の物質を全く同じ投 与方法で動物実験をやると、クロロが入ったらメトヘモグロビン血症を起こす。濃度が 下がるのか、高くなるのか低くなるのか。比較的簡単にそういう情報が得られそうであ るにもかかわらず、それをやらないで10分の1を採用して、規制にかけるかかけない かという判断をするのは、ちょっとどうかなという気は率直なところしています。 ○清水委員 化学で特に代謝の詳しい方に、これが生体内に入ったらどこがいちばん切 れやすくて、どっちにいくか、その辺の情報を得て判断したら参考になるのではないで しょうか。 ○櫻井座長 そうですね。 ○本間委員 アニリンになれば当然、発がん性は出てきてしまうでしょうし、一般的に は構造活性相関というのはなかなか難しくて、構造が少し違うとかなり毒性なり活性な りが違うということはあると思います。印象ですけど、アニリンとか、ベンゼン環にア ミノ基とかニトロ基が付いているという化合物については、比較的メトヘモグロビン血 症という作用は共通していて、なおかつ、作用としてはそれほど違わないのではないか という印象は持っていますが、それは印象的で。 ○櫻井座長 次の3頁のものは、このアミノ基が問題であるとするならば似たようなも のと言えるのか。あるいはジフェニルエーテルという形になっているのと、ジフェニル メタンという形になっているのとで全然違う可能性があります。これになるとやや難し いという感じがするかなと思いますが、私もよくわかりません。  4頁はメチル基が付くか付かないかというので、やや構造活性相関的なアプローチが しやすいのかもしれないという気もします。5頁はちょっと難しい。誰もなかなか物が 言えないかなと。6頁はまたメチル基が入るかどうかというだけですから、かなり近い かなと思います。でもこの有機化学及び生物との関連で、見識を持っておられる方のご 意見をいただきたいという清水委員の先ほどのご意見は、私もそう思っています。 ○島田化学物質評価室長 いま、ご指摘をいただいたように、私どもとしてもそのあた りの専門家の方のご意見を聞くなり、この場でまたご発言をいただけるような環境を作 りまして、またご相談をさせていただきたいと思います。 ○櫻井座長 はい。今回、40いくつもあって、こういうふうに決めるのに難渋する物 質がたくさんありすぎるかと思いましたが、問題はこの6つなのですね。 ○大淵化学物質評価室長補佐 はい。 ○櫻井座長 ですから、その中でいくつかはこういった類似物質との比較で決めること が可能かもしれないし、とても決められないものもあろうかと思いますが、そういった ものについてどうするか。そういったことは次回以降、また検討課題とするということ で、今日はそろそろ時間が切れそうですので、これぐらいで収めさせていただきたいと 思います。 ○大淵化学物質評価室長補佐 ありがとうございました。次回ですが、まだ日程調整を させていただいておりませんので、こちらの評価対象物質に関係する有害性情報の収集 状況と、それから小検討会のほうの進捗状況も踏まえながら、また先生方に別途、日程 を調整させていただきたいと思っています。  事務局から本日説明させていただいた中で、小検討会のほうのホルムアルデヒドの報 告書の関係ですが、最終的に対外的に公表するスタイルとしては、今日お示しした案は 小検討会の先生方のお名前と、小検討会の検討経緯が最後に載っていました。もし先生 方のご了解を得られましたら、この親検討会のほうの先生方のお名前と、本日の検討会 の日付も追加した形で、最終的に発表させていただきたいと思いますが、いかがですか。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。よろしいでしょうか。                   (了承) ○大淵化学物質評価室長補佐 ではそのように進めさせていただきます。 ○櫻井座長 それでは以上で、今日の第3回リスク評価検討会を閉会いたします。あり がとうございました。 照会先: 労働基準局安全衛生部化学物質対策課          化学物質評価室 電話03-5253-1111(内線5511)