08/10/22   第36回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会          日時 平成20年10月22日(水)          15:00〜          厚生労働省職業安定局 第1会議室 14F ○大橋部会長 定刻には時間がありますけれども、全員お揃いのようですので、これより第 36回「労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会」を開催いたします。  最初に本日の委員の出欠状況ですが、公益代表の北村委員及び宮本委員が欠席です。  それでは、議事に入ります。前回、「高齢者雇用対策の今後の在り方」につきましてご議 論いただきましたが、本日も前回に引き続きまして、「高齢者雇用対策の今後の在り方」の 議論をお願いいたします。  まず、事務局より資料1から3の説明をしていただき、ご質問、ご意見をいただいた後、 資料4の説明、そしてご議論をいただきます。それでは、ご説明をお願いします。 ○川村高齢者雇用対策企画官 資料1から3につきまして事務局から説明をいたします。資 料1につきましては、1-1と1-2に分かれております。まず、資料1-1は「高齢者の雇用状 況に関する記者発表の概要」です。これは毎年6月1日時点で、51人以上の企業から報告 を求めております高年齢者雇用状況報告の概要を取りまとめたもので、10月7日に記者発 表したものです。1番の「雇用確保措置の実施状況」ですが、年金支給開始年齢は63歳で すが、この年金支給開始年齢までの雇用確保措置を実施した企業は、本年6月1日現在で 96.2%となっておりまして、昨年より3.5ポイント増加しております。大企業、中小企業別 で下に示していますが、大企業301人以上で99.8%、ほぼ100%になっております。中小企 業につきましても95.6%と、着実に進展をしております。  2番の「雇用確保措置の義務づけ前と比較した高齢者雇用の状況」ですが、実際に60歳 以上の常用労働者がどのくらいの、どういう条件になっているかということで、法施行前、 平成17年6月1日と比較したものです。60〜64歳等につきましては78万人から129万人 (64%増加)。それから65歳以上につきましては27万人から49万人(84%増加)となって おります。これにつきましては人口の動向というのもありますので、参考として15歳以上 人口に占めます就業者の割合であります就業率につきまして60〜64歳等について四角の囲 みの中に示しております。男女共に平成17年から直近の20年8月と比べてみますと、着実 に就業率も向上しているということがおわかりいただけると思います。2つ目の○のところ で、「定年到達予定者のうち継続雇用される者及び割合が大幅に増加」ということで、平成 17年に12万人であったところが平成20年には32万人。定年到達予定者のうちの73%が継 続雇用をされる見込みであるとなっております。  資料1-2は記者発表の詳細版です。2頁の1番の(1)、(2)、これは先ほど概要で説明をし ましたとおりです。(3)は雇用確保措置を実施した企業について、雇用確保したときの上限 年齢をまとめたもので、次の3頁、上に棒グラフで示していまして、平成20年を見ていた だきますとわかりますように、既に上限年齢を前倒しにして65歳以上とする企業が79.5%、 8割程度を占めているということです。(4)の「雇用確保措置の内訳」で、依然として圧倒 的に継続雇用制度の導入を選択している企業が多く85.4%となっております。(5)の「継続 雇用制度の内訳」ですが、現在の法律が継続制度の対象者の基準を定めることを認めており ます。その中で希望者全員とする企業が、平成20年度38.6%で、やはり基準を設けている 企業の方が多く、それを労使協定で定めている企業が44.0%。労使協定なしに就業規則等で 基準設定している企業が17.4%、合わせて61.4%が基準を定めているということです。(6) の「希望者全員が65歳以上まで働ける企業の割合」、これは法律の義務を上回るものです が、定年の定めの廃止、65歳以上定年、希望者全員65歳以上継続制度の導入のいずれかを 実施している企業の割合は、全企業中39.0%、前年比2.0ポイントの増加となっております。 これにつきまして、今2010年度までにこの割合を50%までもっていこうということを目標 にして取り組んでいるものです。4頁は「70歳までの雇用確保措置を実施した企業」の割合 で、「70歳まで働ける企業」、定年の定めの廃止、70歳以上定年、希望者全員70歳以上・ 基準該当者70歳以上継続雇用制度の導入のいずれかを実施した企業の割合が全企業中 12.4%、前年比0.5ポイント微増という状況になります。以下は先ほど説明したとおりです。  次に、資料2です。これは前回あるいは前々回にもご要望のありましたもので、先ほど説 明しました雇用状況報告は51人以上の企業の雇用状況の集計ですが、現在のところ50人以 下については集計は取っておりません。来年度には30人以上に拡大をすべく準備を進めて おりますが、今現在ある調査の中で、2頁目に今年3月にまとめました調査がありまして、 これはサンプル数が1,622社で非常に少ないのですが、これについて回答を加工しまして今 回このような形でお示しております。これは50人以下の1,622社からの回答を集計したも のです。  まず、「定年関係」です。1番の「定年制度の導入状況」になります。右側の計の欄のと ころで、「定年年齢を定めていない」が30.6%、「定年制度あり」が69.1%となっておりま す。これは企業規模ごとにかなり違いがありまして、10人未満になりますと、67.5%の企業 が定年年齢を定めていないという回答になっております。それから逆に30〜50人未満の企 業は95.2%が定年制度を定めているという状況です。  2番の「定年年齢の状況」は、「定年制度あり」の企業についてどのような状況にあるか を示していまして、計の欄でわかりますが、「60〜62歳」、つまり雇用確保措置の63歳、 義務年齢の63歳を下回る定年年齢、これが72.9%です。確保措置の義務年齢を上回る定年 年齢は63歳(1.8%)、64歳(0.1%)、65〜69歳(24.0%)、70歳(1.2%)となっております。  次の頁は「継続雇用の関係」です。1番の「定年後の継続雇用制度の導入状況」では、定 年後の継続雇用制度を導入している企業の割合は78.0%となっております。これは企業規模 が大きくなるほど導入の割合が高くなっております。2番の「継続雇用制度の上限年齢」は、 確保措置の義務年齢を下回る62歳以下とするところは3.1%にすぎません。63、64歳 (12.5%)、65歳以上(43.2%)、本人が希望する年齢まで(9.4%)、上限年齢を設定せず(22.3%) となっております。63歳以上をまとめますと87.4%となります。3番の「継続雇用制度の対 象者の基準」は、特に基準を設けず原則的に希望者全員と回答している企業が66.2%となっ ております。これは企業規模が小さくなるほど高くなっております。労使協定で基準を定め た企業が15.2%。労使協定を結ばずに就業規則のみに定めた企業が11.0%。労使協定を結ば ずに、社内規定に明記した企業が4.9%となっております。資料2については以上です。  資料3で前回ご要望がありました「シルバー人材センター事業について」の概要を今回お 示ししております。シルバー人材センターは定年退職者など引退過程にある高齢者に臨時か つ短期的又は軽易な仕事を提供するもので、高年齢者雇用安定法で指定法人として指定をさ れております。1頁左側の地域の市町村、家庭、あるいは地域の企業から仕事の発注を請け 負いまして、そしてシルバー人材センター、これは概ね60歳以上の高齢者が会員構成員と なっております社団法人ですが、ここで会員である高齢者に提供するという仕組みになって おります。「シルバー人材センターで取扱う仕事の例」を左下に示しております。 【現状】ですが、右上の方の点線で囲んでありますが、現在、団体数が1,332団体、会員数 75万人、うち男性50万人、女性25万人となっております。契約件数は342万件、金額は 3,264億円。就業延人員は7,381万人日となっております。これは平成20年3月末現在の集 計です。平成20年度予算(一般会計)138億円とありますが、シルバー人材センターに対 しては国と地方自治体から補助金を交付しておりまして、これは国の補助金に該当する部分 の予算額です。  2頁は、「シルバー人材センター事業の概況@」で、団体数と会員数、契約金額などの数 字を示しております。左側のグラフは団体数、会員数の推移を示しておりますが、中長期的 には上昇傾向にあります。団体数が平成15年の1,866から平成19年1,332と減っておりま すが、これは市町村合併によるもので、市町村に1つという形は合併の影響で減っていると いうことです。会員数につきましては、100万人を目標にしておりますが、現在75万人で 若干伸び悩んでいるという状況にあります。契約金額は順調に推移しているということで す。  3頁は、「シルバー人材センター事業の概況A」で、会員の年齢構成の推移です。中長期 的には増えてきておりまして、最近ちょっと伸び悩んでいるということです。年齢別の構成 比はやはり60歳前半層の割合は低くなっており、70〜74歳、75歳以上といった年齢層の割 合が増えておりまして、シルバー会員の高齢化が進んでいるということがおわかりいただけ ると思います。  4頁は、「シルバー人材センター事業の概況B」で、会員の平均年齢を示したものです。 年を追うごとに上がっており、平成19年度現在、69.8歳が平均年齢です。  5頁は、「シルバー人材センター事業の概況C」で、年齢別入会者数・入会動機の状況を 示しております。それぞれの年齢層を棒グラフで入会の動機を示しております。すべての年 齢層で、健康維持のためというのが圧倒的に多いということで、次いで多いのが経済的理由、 そして社会参加といった状況です。ただし、75歳以上では、社会参加の方が経済的理由よ り多くなっております。年齢が高くなるにつきまして健康維持の割合が増える傾向にありま す。逆に、経済的理由の割合が減るといった傾向になります。  6頁は、「シルバー人材センター事業の概況D」で、シルバーの働き方のイメージをもっ ていただきたいということで示しております。「会員の就労状況」は、会員は754,391人、 就業延人員が73,806,064人日ということで、就業率が83.2%です。就業実人員当たりの月平 均就業日数が9.8日ということです。「契約に関する状況」は、受注件数3,418,281件、契 約金額が32,637,500万円。うち会員に対する配分金が29,131,100万円となっております。会 員当たり契約金額が432,600円。就業延べ人員当たり契約金額が4,400円ということです。 下に書いてあるのは全国シルバー人材センター協会が「国民生活基礎調査」から作成したも ので、「65歳以上の高齢者世帯の所得」の内訳を示しておりますが、稼働所得が300万円 のうち19.9%、60万ほどを占めております。それをシルバーに当てはめますと、シルバー 人材センターでの収入が44万円くらい、全収入の14.5%くらいを占めているというイメー ジをもっていただくために作られた資料を示しておるものです。  7頁は、シルバーの会員、今75万人を100万人に増やすということで取り組んでおりま すが、そのためには就業機会の開発をしなければいけないということで、今年から、「企画 提案方式によるシルバー人材センター事業」という施策を打ち出しております。これは教育、 子育て、介護、環境、この4分野に重点をおき、地元の市町村とシルバー人材センターが地 域のニーズを踏まえた新しい事業を企画提案していただき、それを採択しましたら、そこに 補助金を出すという仕組みを今年から実施しておりまして、181の企画提案事業が既に実施 されております。下に示してありますのはその代表的なもので、子育てと環境を組み合わせ た事業、教育と環境と組合わせた事業、介護の関係の事業といった新たな事業も今展開され ているということです。説明は以上です。 ○大橋部会長 ありがとうございました。ただいま事務局から先般公表されました今年度の 高齢者雇用状況報告、及び前回お願いしました資料の提示がございました。これらにつきま してご質問、ご意見等がありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。  ないようですので、次の資料のご説明をお願いいたします。 ○山田企画課長補佐 資料4です。「今後の高齢者雇用対策の在り方を考える上での論点 (案)」をご説明いたします。  前回までの部会での活発なご議論も踏まえまして、今回更にご議論を深めていただく、そ の上で参考となればと考えまして、事務局でこれまでにご説明をした資料も整理し、用意さ せていただいたものです。  大きな4つの項目を立て、これは前回の資料3の1枚紙と同じものになっております。そ れぞれの項目で【現状】を、ある場合は【関連する目標・報告等】、そして【論点(案)】 という順に書いております。  1頁目の第1、「高年齢者雇用確保措置の施行状況(特に中小企業)をどうみるか」です。 まず、【現状】としまして4つ書いております。(1)、(2)ですが、先ほど資料1で説明があ りましたように、企業規模51人以上における高年齢者雇用確保措置の実施状況は、着実に 進展をしているところです。(3)、(4)に書いておりますのは、継続雇用制度、これにおける 対象となる高年齢者に係る基準、これに関する経過措置につきまして、企業規模の301人以 上では平成20年度末、今年度末をもって廃止されます。企業規模300人以下につきまして は、平成22年度末をもって終了予定ですが、こちらにつきましては、高年齢者の雇用に関 する状況、社会経済情勢の変化等を勘案して検討することとされているところです。  こうした【現状】を受けての【論点(案)】ということで、以下4つです。まず、(1)で、 51人以上規模の企業において、法律に定める高年齢者雇用確保措置については概ね定着し てきていると評価してよいか。次の(2)ですが、本日資料2を用意しましたが、今後、中小 企業、特に50人以下の企業の高年齢者雇用確保措置の状況を十分把握することが必要では ないか。次の(3)で、中小企業においてさらに高年齢者雇用確保措置の導入・定着を進める ために何が必要か。さらに(4)で、中小企業における継続雇用制度の導入に当たりまして、 対象となる高齢者の基準を定める場合にはできる限り労使協定を締結するよう啓発すべき ではないか、としております。  続いて2頁目の第2、「60歳代前半における働く環境をどのように考えるか」。早速【現 状】ですが、(1)として、年金支給開始年齢につきましては、現在定額部分の引上げの途上 ですが、平成25年度に65歳となります。そして平成25年4月からは報酬比例部分の引上 げが始まるわけです。このため60歳代前半で段階的に年金が全く支払われなくなる方々が 出てくるわけです。一方、(2)として、60歳代前半の常用労働者数、こちらは大幅に増加し、 (3)の就業率では平成19年に55.5%、平成20年8月直近で57.7%となっております。  次に企業の方の取組を見てみますと、(4)と(5)、現在の雇用確保措置の義務化年齢は63 歳ですが、それ以上の措置を実施済みの企業について、措置の内訳を見てみますと、定年の 定めの廃止が2.1%、定年の引上げが12.5%と少なく、継続雇用制度が85.4%となっており ます。そして(5)、その継続雇用制度を導入した企業のうち、希望者全員を対象とする制度 を導入したところは4割弱、制度の対象となる高齢者に係る基準を定めたところは6割とな っております。なお、いくつかの調査によりますと、その基準というものの内容として、働 く意欲、そして健康面に関するものが多くなっております。  次に(6)で、65歳定年を含めまして、希望者全員が少なくとも65歳まで働ける企業の割 合が39.0%となっています。定年到達予定者の状況というものを見てみますと、(7)ですが、 今後1年間の定年到達予定者のうち、継続雇用予定者は7割超であるのに対して、継続雇用 の希望のない離職予定者というのが約2割、また基準非該当による離職予定者は1.4%とな っております。この「基準非該当」という関係で、(8)として、対象者の基準を策定してい る63歳以上までの継続雇用制度を導入しているところで、今後1年間に定年到達予定者の いる企業に聞いたものですが、基準に該当しないということによる離職を予定されている 方、こういった方がいない企業というのが94.5%となっております。  その下の(9)〜(12)というのは継続雇用について特に整理をしたものです。継続雇用時の 就業形態につきましては、60歳定年を間近にした労働者のうち、最も希望する働き方は正 社員ですが、最も可能性が高い働き方は嘱託・契約社員となっております。また(10)は、そ の継続雇用時の勤務形態につきまして、60歳定年を間近にした労働者の希望する働き方、 これはフルタイム、フルタイム以外ともある。そうした中で、フルタイム以外を希望しなが らフルタイムになる可能性が高いという者が相当程度存在する、いわばずれが見られている というところです。(11)は、継続雇用時の年収水準、これは定年到達時の6〜7割程度とい う企業が最も多いというところですが、その他半分程度とする企業も2割、3〜4割とする 企業が8%ほどあります。そして(12)は、継続雇用者の雇用継続期間、こちらは1年とする ものが83.5%となっております。  次に、【関連する目標・報告等】として、時系列に3つ書いております。2頁の下から、 昨年12月、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)」の推進に関する官民トッ プ会議により決められました、「仕事と生活の調和推進のための行動指針」。これによりま すと、60〜64歳の就業率、これを5年後に56〜57%、10年後に60〜61%としております。  続いて3頁上で、今年の2月に経済財政諮問会議の当時の民間議員の方々によるペーパー というものがあります。そこでは、希望者は70歳まで安定的に働けるようにする。新たな 高齢者雇用ルールの検討として、処遇形態の多様化、より長期の雇用契約を可能とするため 現役世代とは異なる柔軟な雇用ルールを新たに設定することを検討するということなどが 指摘されております。その後、今年4月の「新雇用戦略」におきましては、60〜64歳の就 業率につきまして、先ほどのワーク・ライフ・バランスの行動指針にある目標、これを前倒 しした形で、平成22年に56〜57%としています。この他、65歳以上定年企業との割合を平 成22年度までに50%としております。  続いて【論点(案)】ということで、以下9つ書いております。まず最初の2つは、平成 25年度から年金の報酬比例部分の支給開始年齢の引上げが始まるわけですが、(1)として、 その段階において高齢者に係わる雇用制度はどうあるべきか。(2)として、それまでに少な くとも希望する者は全員が65歳まで働ける状況というものを実現すべきではないか。(3) として、継続雇用制度を導入していて対象者の基準を設けていても、基準に該当しない者が いない企業が大部分、先ほどの資料で9割超ですが、この大部分であることをどう考えるか。 基準に該当する者がいないのであれば、基準を設けず、希望者全員としてもよい、このよう に考えることもできるのではないか、ということで、【論点(案)】に入れております。  また(4)ですが、継続雇用制度があっても、それを希望しない者が約2割となっている。 この方々はどういった状況でそのような選択をなさったのか。これをどう評価するか。次の (5)は、前回活発なご議論をいただきましたところですが、現在の継続雇用時の賃金の水準 をどう評価するか。また、60歳以降の賃金の在り方についてどう考えるか。(6)では、フル タイム以外を希望しながら、フルタイムで働かざるを得ない者がいる、これをどう考えるか。 高齢者の希望に合った柔軟な働き方、これが実現できるようにすべきではないか、としてお ります。  (7)では、現在は63歳までですが、65歳までの高年齢者雇用確保措置という義務化スケ ジュールにありますが、この継続雇用の中で雇用される高齢者の安心、そして安定もですが、 そのためには長い契約期間とすることが適当ではないか。(8)ですが、前回、ホワイトカラ ー管理職のお話ですとか、労働の質についてもご意見がございましたけれども、労働者が培 った知識・経験が発揮できるような仕事が望ましいのではないか。そして(9)として、高齢 者が働けるようにそのバックアップとしても職場環境の改善が必要ではないか。以上が第2 の60歳代前半の働く環境についてです。  次の4頁の第3、「60歳代後半以降の企業における働き方について、どのように考えるか」 です。【現状】として、まず、いわゆる「2012年問題」についてです。昭和22年から24 年生まれの狭義の団塊の世代、こちらが今から4年後の平成24年(2012年)に65歳に到達 し始めます。平成24年からの3年間で、約640万人が60歳代後半に達します。平成18年 の国立社会保障・人口問題研究所、こちらによる人口推計の中位推計によりますと、65〜69 歳というこの5歳層で、平成28年(2016年)には約1,010万人の人口が見込まれています。 現在この65〜69歳層が約800万人ですから、差し引き約210万人の増加がこの65〜69歳層 で見込まれる。この年齢層の就業率というのが今と同じ40%弱としますと、単純に計算し ますと、約80万人分の仕事が必要となると見込まれるわけです。一方、(3)と(4)にありま すが、65歳以上の常用労働者数は大幅に増加しておりますし、65〜69歳の就業率も上昇傾 向にあるわけです。  それから、(5)です。このような中で、希望する就業形態、勤務形態といったところもよ り一層多様化をしてくるというところがあります。企業に関する取組ですが、(6)ですが、 70歳まで働ける企業の割合は今12.4%ということで、関連して(7)、65歳を超えて雇用確保 措置を講じている企業の措置内容というものを見てみますと、これは前回の資料2の図2の バックデータです。対象者の基準を策定する継続雇用が約65%、希望者全員の継続雇用が 約17%などとなっております。  続いて頁の下に、【関連する目標・報告等】というものを4つ書いております。まず、昨 年12月の「仕事と生活の調和推進のための行動指針」、こちらでは65〜69歳の就業率とい うものを5年後に37%、10年後に38〜39%としております。その後、今年2月の経済財政 諮問会議における「労働市場改革専門調査会第3次報告」というものがまとまっております。 それはタイトルが「70歳現役社会の実現に向けて」というものですが、65歳継続雇用の着 実な推進や、一定の条件の下での定年後の安定した雇用契約の普及などが書かれておりま す。また、「新雇用戦略」では、70歳まで働ける企業について、現状12.4%と申しました が、平成22年度までに20%と目標を設定しております。社会保障国民会議における雇用・ 年金の分科会におきましても、希望すれば年齢に関わらず、いつまでも働き続けることので きる仕組み、生涯現役社会を構築するためには、企業が高齢者の有する能力を十分活かして いくことが重要であるとされているところです。  これらを受けて、5頁の【論点(案)】ですが、6つ書いております。まず、(1)として、 65〜69歳層、この就業率が高まりを見せる中で、いわゆる「2012年問題」に対応するため に、65歳を超える者の働く場を確保していく必要があるのではないか。その際、(2)としま して、60歳代前半と60歳代後半以降の働き方について、どのような違いがあるのか。それ を踏まえて対策を考える必要があるのではないか。(3)として、65歳を超える高齢者の雇用 の場の確保のためにどのような制度、施策が必要か。高年齢者雇用確保措置、これを65歳 の後へ延長することを考えるのか、あるいは別の方策で対応するのか。  続いて(4)として、企業の方々におかれては、65歳までに加えて、65歳を超える高齢者の 雇用の拡大に向けたご努力をしていただくことが必要ではないか。そして(5)として、65歳 を超えてからの一層の多様性、これに応じた柔軟な就労形態が可能となるようにすべきでは ないか。(6)として、そのためにも高齢者を雇用するため職場環境の改善等を行う企業を支 援すべきではないか、としております。以上が3つ目の柱です。  最後が6頁の第4、「高齢者の雇用以外の多様な働き方について、どのようにして確保し ていくか」です。【現状】として先ほどの資料3にありましたように、シルバー人材センタ ーの会員数が約75万人。また高齢者の就業形態、希望する形態というものは加齢とともに 多様化が進展しているということを現状に書いております。「新雇用戦略」では、シルバー 人材センターの会員を平成22年度までに100万人としております。【論点(案)】としま して2つ。(1)として、65歳を超える労働者の働き方については雇用のほか、様々な形での 就業やボランティア活動などの希望が多い。その中でどのような支援が必要とされている か。そして(2)として、多様な働き方の1つとしてのシルバー人材センター事業につきまし て、地方公共団体と連携するなどの取組が資料3の最後にありましたが、より広範な受け皿 となるように事業を充実していくことが必要ではないか。以上のようにまとめております。  以上、【現状】や【関連する目標・報告等】、そしてそれらを踏まえての【論点(案)】 のご説明をさせていただきました。 ○大橋部会長 「高齢者雇用に関する論点(案)」、ありがとうございます。  それでは、議論に移りますが、今説明のあった【論点(案)】等を踏まえ、ご意見を伺い たいと思います。いかがでしょうか。 ○原委員 今回、厚生労働省から出された、今後の高齢者雇用対策の在り方を考える上での 論点ということで、4つの項目に分けて提起されているわけですが、論点と言いながらもか なり前向きな方向性を示していただいた中での論点で、積極的に評価をしたいと思います。  その中で注意していただきたいというか、今後の要望であるわけですけども。ちょっと目 についたのが資料4の1頁の【論点(案)】で(3)、(4)で、「中小企業において」、「中小 企業についても」と書かれておりますが、私はむしろ、「大企業において」、「大企業につ いても」という意味合いで、この件に関しては大企業に問題があるのではないかと思います。 これまでの様々な施策の場合、大企業に比べて中小企業ではなかなか進んでいないというの が様々な制度で問題になるわけですが、この問題に関しては、特に希望者全員を60歳以降 再雇用するという面に関しては数字上明らかですね。希望者全員ということに関しては、大 企業はたしか21%、中小企業が42%です。はたまた、50人未満といった、失礼ながら、中 小零細企業ではなかなか人が採りにくくてやむなくということがあるのですが、希望者全員 に対して更に高いパーセンテージです。そういう実態になっている中で、大企業において希 望者全員が21%に過ぎないという問題について、むしろそこに焦点を当てるべきではない かと。一般的な再雇用制度そのものについては、もう大手も中小もほぼ問題ないと。今後の 力点は、いかに希望者全員とするのかしないのかと。厚生労働省も【論点(案)】、2項目 目の中できちっと、「少なくとも希望する者は全員が65歳まで働ける状況を実現すべきで はないか」という、非常に前向きな論点を挙げていますが、そういうことに注力するべきで はないかという意味で、1の論点(3)、(4)は論点にはならないと、この部分に関してはいい と、2項の「希望者全員云々」ということに集中していただいた方がむしろ有り難いです。  労使協定云々、就業規則云々がいろいろあります。労使協定と就業規則、これ以外に労使 協約があるわけですけども。組織率が18.1%という状況の中で、私は労使協定であろうが、 就業規則であろうがあまり関係ないと思いまして、そういう意味では(3)、(4)を論点にして いただくのも結構ですが、むしろ是非2項目の(2)に注力をしていただきたいと考えており ます。この点に関してはそういう意見です。 ○荻野委員 今、原委員からご説明がありましたように、中小企業の方で、60歳を超える、 65歳を超える雇用が進んでいるというのは、数字等を見ると大変そのとおりであると思い ますが、その以前の問題で、本当に60歳まで雇用が確保されているのかというところが大 変重要な問題ではないかと。大きい会社だと、入社された方が定年まで勤め上げる、あるい は50歳の時に在籍していた方が60歳の時に、出向とか転籍とかいった問題は当然あります が、とりあえず、そういう中で働き続けている確率は非常に高いと思いますが、中小企業、 それも小さい企業になるほど、そこの企業で適性とかがあまり合わないような方々はどんど ん辞めていかれる。そういう人を辞めさせないための努力がどれほどなされているかという と、これは企業によって大変差があると思いますが、十分されているとは言えないのではな いかと。  昨年くらいに高齢・障害者雇用支援機構の研究会に出させていただいたことがあって、そ のときにも、鋳物会社で、70歳を過ぎても働いているという会社が紹介されていましたが、 そのときに聞いてみると、非常に劣悪な作業環境の中で、それに耐えられない人は40歳く らいでどんどん辞めていってしまうと。そこで60歳までもった人は当然70歳までもつと、 有り体に言ってしまうと、どうもそういうことのようだという印象を持っております。そう いう意味で、中小企業だから、60歳までそこで働き続けた人が70歳まで働き続けているか ら、それで良しとするのは若干疑問があるのではないかと。むしろ逆のこと、60歳以前に ついて、60歳定年を目標にして、健康面、体力面、あるいは技能の陳腐化等が起こった際 にも労使で協力して、いろいろな支援をしつつ、本人も60歳定年を目標に、60歳まで何と か元気で頑張ろうということで雇用を確保しているというところとのバランスで見ていか ないと、本当に高齢者雇用対策として適当かどうかが疑問になるのではないかと思うので、 一言申し上げておきたいと思います。 ○原委員 荻野委員、それは別問題だから、私は論争する気はありません。中小企業が厳し いという問題と、60歳以降を「希望者全員」という問題、それは全く別次元の問題です。 それを言い出したら、全く別次元の問題であることだけは申し上げておかないとまずいので はないかと。では、大企業では60歳以降をどうされるのですかと。60歳までちゃんとやっ てきたから、いいというふうにするのか。政府は、65歳までやってくださいねと言ってい る中で、「希望者全員云々」について、するのかしないのかという問題が問われているわけ です。年金の問題もあるわけです。それに対して、大企業として社会的責任を果たすのか果 たさないのかという問題なので、「中小や零細企業だから云々」というのは全く別な問題で す。それはそれで、また言いたいことがありますが、今日は言いません。 ○大橋部会長 その他、いかがでしょうか。 ○橋本委員 今の話に関連するのですけれど。結果的に希望者全員になっているところが多 いと、統計上出ているのですが、これはいろいろな背景があると思いますし、幸いに雇用環 境も今までよかったという面もあります。それから、企業も努力しています。働く人もそう いう意識で、何とか基準に合わせようという格好でやってきているので、そういった背景が あることを考えています。それから、法律改正があってから3年くらいしか経っていなくて、 「希望者全員」について、今性急に全部やるのは本当にいいのかと。やはりもう少し見極め てやる必要があるのではないかと感じます。確かに全員を雇えれば望ましいのですが、やは り雇用環境がどう変化するかもなかなかわからないので、そう簡単に、「全員」とは言いづ らいところがあると、私は思います。 ○山川委員 今ご意見がありましたが、労働者の立場からいうと、60歳代前半の雇用は、 経済的理由を挙げている人が70%で非常に多いわけですね。そういう状況にあって、かつ、 2013年、報酬比例部分が実際上、段階的に縮小、廃止されるとのことです。こういう状況 に鑑みると、やはり60歳代前半というところの働き方については企業努力も大変だとは理 解しています。いろいろな理由はあろうかとは思いますが、状況を見ると、多くの企業では、 基準を設けても適応することはなくてというか、排除される人は少ないというようなことも 含めて考えると、その中身も、やる気があるとか健康であるとかというところに大分集中し ているようですので、そういう意味では、「希望者全員」ということについて大きな支障は ないのではないか。というよりも、むしろそういうことを前提にしていますが、やはり60 歳代前半の雇用を義務化するというか、そういう方向でやっていただくことが重要だと思い ます。  もちろん労働能力の本質ということになれば、これは全く別な話ですから、それは別とし て、やはり働く能力と意欲のある人はしっかり雇用していただくと。そういうことで希望者 全員とする必要があるのではないかと思います。具体的な方向として、やはり基準に基づく 制度そのものをなくすことが前提になるのではないかと思います。  あと、少し関連して補足しますと、私どもはいろいろと相談を受けるのですが、継続雇用 をされている従業員の方からは、やはり1年間という継続雇用期間については、来年どうな るかわからないと。いい話があっても、それを断って残っていいのか、それとも移った方が いいのかというようなことも含めて、非常に不安であると、この辺りを改善できないのかと いう声が非常に強いわけです。だから、そういう意味では、複数年数とは言わずに、年齢、 満額が出るまでは、期間について、法的にどう整理されるかわかりませんが、継続雇用がさ れるような方向に制度化する必要があるのではないかと思います。もう1つは、前回も出ま したが、賃金水準についても、フルタイムで働いても50%とか60%ということについては 非常に不満が大きいです。我々もどう考えても、60歳を過ぎたら生産性が半分に落ちると いうことはなかなか考えにくいわけで、やはり適正な評価に基づく仕組みが重要だろうと。 給料を100%というのではなくて、いろいろな対応者が出てきますから、勤務日数を変える とか、勤務時間を変えるとか、働き方の工夫の中で改善が必要かと思います。そんなことも 含めて、今は60歳代前半の雇用ということが一番重要ではないかと思います。 ○樋渡委員 高齢者雇用の法律の改正ができて3年弱ですね。段階的に65歳まで引き上げ ていこうという前提になっている中で、現在63歳までだということです。希望者全員であ るとか、雇用期間が1年という問題とか、賃金水準の問題とか、これからいろいろと議論し ていかなければいけないのではないかということで、1つ1つ項目として挙がっていますが、 企業あるいは働く人から考えてみると、それはトータルの話で、高齢者になってからという ことではなくて、現役の頃からの話だと思います。  こういうふうに論点を整理していただいたので、その論点に沿って意見を言わせていただ きます。総体的な視点としては、単に高齢者のところだけではない、企業として見たらば、 賃金制度全部の話であるし、所得保障の視点からいえば、それは企業だけの問題ではないと、 非常に大きな問題であるということだと思います。それを、この場で何か結論を出すという ことではなくて、今はこういう現状であって、今後それをどうしていけばいいのかという意 見ということで私は述べさせていただきたいと思います。  まず、「希望者全員」と「基準を設けている」ということに関してなのですけれども、ま ず、「基準を設けている」ということに関して言えば、例えば55歳あるいは58歳くらいに なると、60歳以降をどういうふうに働こうかということを個人が考えると思います。その 際に、では、60歳以降をどういう働き方をすれば残れるのか、それが1つ基準としてある 程度明確にされていれば、それに向かって自分も研鑚していくと、あるいは、キャリアアッ プしていくというような、1つの目標になることが基準を設けることのメリットとしてはあ るのではないかと思います。多分それがいけないということにはならないと思います。一方、 企業の方も、61歳以降も残ってもらうために、多分かなり前の段階から、高齢者に入る前 に、いろいろと研修をしたり、意識づけをしたりということをやっていると思います。これ から、63〜64歳、65歳になっていくときに、更に年を重ねるにつれて、個人個人に体力や 意欲に差が出てくると思います。そのときに、こういう目標で自分がやっていけば、65歳 まで働けるという1つの基準があっても悪くないと私は思います。  それから、「希望者全員」ということに関しては、実際に希望者全員ということで運用し ている場合でも、まず、本人が自分が残れるかどうかという判断をしていると思います。そ の際に、本人が判断をする基準が何なのかと考えると、多分健康であったりとか、例えば 65歳まで働けるのかということを自分に置き換えて考えるのではないかと思います。企業 の方としても、希望者全員というようなことであっても、多分その辺りを考慮して、仮にこ れまでの仕事をそのまま続けることが困難であれば、違う仕事を見つけたりというようなこ とで、希望者全員を幅広く、なるべく残ってもらうために対応しているというケースもある と思うのです。今そういうことで取り組んでいると私は認識していて、そこをどちらがいい か悪いかを、今の段階で結論を出すのは問題があるのではないかと思っております。  全員のことに関しても、先ほど申し上げたように希望者全員ということにも関わってくる と思いますが、制度全体としてどうするかという非常に大きな視点から、労使で話し合って いくべきだと思っております。これもいいか、悪いかをこの場で結論を出す問題ではないの かなと思いますが、60%、70%という数字は、多分結果としてそのような取組がなされたデ ータとして出てきているものだと思っております。そこも、労使で十分に話し合ってやって いることではないかと認識しております。1年という契約期間が不安定なのではないかとい うことも、この論点には入っておりましたが、これも今の63歳ということが義務化されて いる中で、1年ごとに1度本人も整理をしてもらうという意味合いで、1年更新としている のだと思います。これが64歳、65歳となっていったときに、一挙に65歳にしたときに、 逆に自分がいつ引けばいいのかの判断が非常に難しくなるという点も出てくるのではない かと考えております。 ○大橋部会長 いかがでしょうか。何か事務局の方からご意見はありますか。 ○岡崎高齢・障害者雇用対策部長 事務局がまだ意見を言う段階ではないと思いますが、私 どもが今回議論をお願いしたのは、必ずしも直ちに制度改正、法改正を念頭に置いたという よりは、3年経った中で、一方では経済財政諮問会議等でも民間議員の4人の方々からいろ いろなお話が出ている、あるいは社会保障審議会の中でもいろいろな議論が出ています。そ の中で、労使がこのような形で入っている場で、きちんと高齢者の雇用問題を議論していた だくいいタイミングではないかと思ったわけです。  もう1つの問題は、2012年か2013年か、団塊の世代の到達する時期と年金支給開始年齢 があるのですが、それ以降のこともそろそろ考えながら、現時点で義務づけるかどうかは別 に、全体の方向としてどういうことを考えていくかも、この時点で一度議論していただくこ とが必要ではないかと思ったわけです。ただ、その中で取り上げるべき制度・施策で、施策 の中にはもちろん義務づけという意味もありますが、いろいろな意味でガイドライン的に方 向性を示すということもあれば、誘導的な助成施策をするということもありますので、その 辺りも含めて皆様方でご議論いただくべきではないかと思います。その結論が出た範囲内 で、将来を見通してやるべきことをやっていきたいということですので、是非積極的にいろ いろなところでご議論いただいた上で、現時点において取るべき方向性を出していっていた だきたいと思っております。 ○長谷川委員 今事務局からご説明がありましたが、そのとおりだと思います。2013年ま ではそんなに長い期間ではないので、2013年問題をどう考えるか、私は今回この審議会で この議論をしていただいたことは本当によかったと思っています。単にこの3年間がどうな るかという話ではなくて、要するに2013年以降の話でもあると思っています。  論点にも出ていますので、それに忠実に発言したいと思いますが、特に中小企業をどう見 るかですが、自然人がこの社会で暮らしていくときに、中小企業で働こうが大企業で働こう が、生きている限りは生活していかなければいけないわけです。法律による定年年齢は60 歳と決まっていますが、60歳以降どう生活していくのかは、これまでのいろいろなアンケ ート調査でも、年金との関係だということは書かれていますので、そこは考えなければいけ ないのだと思います。そのときに、中小企業であろうが大企業であろうが、私はそこにこだ わる必要性は認められないというか、なぜ中小企業で考えなければいけないのかなと。ただ、 助成金の要件をどうするかという議論はあったとしても、労働者の雇用計画をどうするかと いう制度そのものは、中小企業も一緒だろうと思っています。助成金の在り方は若干違うだ ろうとは思います。でも、結果的に中小も含めて何らかの措置をとっているようなので、そ ういう意味では高齢者の雇用継続、雇用確保措置の在り方については、中小企業も大企業も 一緒でいいのではないかと思っております。  それは乱暴だと言われるかもしれませんが、働く側から見れば、たまたま自分は中小企業 に勤めている、たまたま大企業に勤めているはずだったのに、定年年齢や雇用継続が変わる というのは安定的なものを欠くのではないかと思っています。ある意味では、今は就業規則 による基準の決め方を大企業と中小企業で分けていますが、それはやむを得ないとしても、 これ以降の高齢者雇用の施策を考えるときには、企業規模ではなく、全体的にどうしていく のか。ただ、助成金の在り方は企業規模を考えてもいいと思います。  2つ目は、60歳代前半における働く環境をどのように考えるかです。この高齢者雇用確保 措置はうまく機能していると思いますが、【論点(案)】の(1)〜(9)にあるように、いろい ろな論点は出てきているのだと思います。(4)で、「継続雇用制度があっても、継続雇用を 希望しない者が約2割となっていることをどう評価するか」。働きたくないという人がいる のは当然で、60歳で定年退職して、退職金がいっぱいあって大丈夫だと思う人は働かない です。  この間、金融機関の人が60歳過ぎたら働かないと言っているという話をここでしたと思 いますが、その議論が私どもの組織でも行われました。「なぜ金融機関の人は60歳過ぎて から雇用継続を希望しないのでしょうか」と言ったら、2つの意見があって、1つは職場が きついからいやだと、もう1つは退職金がちゃんとあるからだという話で、それはそうだな と思いました。だから、ここは個人の様々な理由、その人が持っている理由、私は財力だと 思います。在職期間中に貯めたものだとか、もともと親から譲り受けたものだとか、何らか の理由があって働かない、それは個人の自由でいいではないですかと、2割くらいいるのは 当然でしょうと思います。後の8割の人たちをどうするかという話だと思っています。基本 的には生活をどうするかということとリンクしているわけですから、私は基本的には希望す る者全員だと思っています。非常に難しい職場の状況があるのだと思いますが、基本的には 希望者全員だと思っています。  そうは言っても、制度発足の時期にこの制度がどうなるか不安だったわけですから、労使 協定もしくは就業規則というのはそもそもいろいろな議論があるので、議論のある制度は使 わないと。ここで大企業は3年で切れるから、いろいろと議論のある就業規則による基準は やめた方がいい。なぜかというと、就業規則は使用者が一方的に策定できるものだから、そ れはやめた方がいい。今のところ、労使協定は過半数組合があれば過半数組合、過半数組合 がなければ労働者代表ということになっていますので、それで職場の中で何らかの基準を作 るのは、今の時点ではやむを得ないかなと思います。ただ、将来的にもその制度を堅持する かどうかは、少し検討する必要があるのではないかと思っています。  フルタイム以外を希望しながら、フルタイムで働かなければいけないというのが不幸だと 思うのです。本当は、自分は週に3日働こうとか、1日6時間くらい働こうと思っていたの だけれど、フルタイムのメニューしか提起されなかったと、そこにしか乗れなかったと。こ れで本当にいいのかなと思っております。企業の景気もよかったから、企業も高齢者雇用は 努力して、ある意味では高齢者を吸収する体力があったと思うのです。しかし、これ以降本 当にこんなにうまくいくのかなと、私は労側としては不安です。だから、高齢者雇用は慎重 に扱わないと、既存の高齢者だけに制度が厚くて、若者に厳しいと言われかねないので、こ の制度設計は非常に慎重に扱わなければいけないと思います。そうすると、一時言われたよ うに、フルタイマーだけではなく、ワークシェアリングというか、そういうことを、次回は もう少しいろいろな制度を考えたらどうかなと思います。  私は前回の改正のときに委員ではなかったのですが、希望者全員にするかどうかという大 議論のときに、A、B、C、D、Eと5つくらい労働時間と処遇のメニューを出して、そこか ら労働者に選ばせる方がいいのではないかと思っていたのです。それは当時取り入れられな かったのですが、これ以降は、団塊の世代は塊として大きいですから、このような雇用情勢 の中で高齢者雇用を継続しようとすれば、完全フルタイムだけでいけるかどうかはすごく不 安がありますので、もう少しメニューを多くしたらどうかなと思います。そのときの処遇に ついても、もう少し考慮する必要があるのかなと思います。でも、処遇の問題は労使の問題 なので、使用者が言うように、事業場の労使できっちりと決めていくことが重要ではないか と思います。モデルをいっぱい出していただければ、そのモデルは普及するのではないかと 思います。高齢者雇用のときには、結構、○○会社とか日本のしっかりした企業のいろいろ なモデル事例のメニューが新聞に載って、それをまねたところがあったので、そのようにす ることが必要なのではないかと思います。だから、就業規則はもうやめた方がいいと。当面 は労使協定でもう少しやってみて、どのような状況かを見た方がいいのではないか。できた ら希望者全員というところに持っていくべきだと思っております。  次に60歳代後半ですが、60歳代後半の働き方について、このような審議会でもっと真剣 に議論しなければいけないのかなと、正直に思っています。このようなところで議論するの は、労働者の生活の安定をどう図るかなので、退職と年金がつながっていないところをどう するかという議論を集中させた方がいいと思うのです。60歳代後半は、労働者も働きたい という人はどんどん働けばいいし、企業も60歳代後半でもどんどん人を雇いたいというと ころがあればそれでいいのではないか。あえてここの議題にしなければいけないかどうか は、私は疑問があります。むしろ、60〜65歳をどうするかが重要なのではないかと思いま す。  60〜65歳のところでは、2013年から高齢者で無収入の人が出てきて、年金もない、どう やって生活するか、霞を食べて生活するわけにはいきませんし、みんなが財力があるわけで はありません。年金が年間220万だとすると、自分は本当はこのくらいだと思っていたのが ゼロになるわけですから、そういうものをどうするのかは真剣に考えなければいけないと思 います。法定定年年齢を60以下としているのを引き上げるのか、それとも希望する者全員 にするのか、今の確保措置でいくのか、これは労使ともに非常にきつい議論をしなければな らないのではないか。いずれにせよ、ここに穴を開けてはいけないと思います。そういう意 味では今回の審議会で予備討議が少しできたのではないかと思います。 ○荻野委員 今、長谷川委員がおっしゃったことの大半は、大変同感するところがあります。 間違いなく、これから労働力人口が減っていくであろうと。外国人を入れるかどうかという 大変大きな議論がありますが、それは置いておいて、そういうことを議論する前にやるべき ことがたくさんあると思っていますが、労働力が減っていく中で、当然今まで十分に活躍し ていただけなかった方々、女性や高齢者の方々にご活躍いただくことが大事だということは 間違いないと思います。また、今おっしゃられたように、生計費の観点から年金支給開始と 定年年齢の接続が大変重要だということも、全くそのとおりであろうと。それは多分使用者 側の委員としても、ドライな成果主義だけではなくて、生活に対する安心感のようなものが 従業員の意欲に対して影響するということで、重視していることは間違いないと思います。  そのときに、いくつか論点があろうかと思います。1つは、生計費を確保していこうとい うときに、本当に雇用という形だけでやるべきなのか、やらなければいけないのかという問 題があろうかと思います。60歳を過ぎると個人差も大きくなってくるし、当然健康問題等 で就労が難しい、しかし、収入がないから働かなければいけないという状況で、そういった 方はなかなか会社の仕事もできないという状況もあるでしょうから、比較的賃金の高くない 仕事で働かなければいけない。それが本当にディーセントかというと、私はそうではないと 思います。それは雇用とは異なるので、何らかの福祉的な支援が必ず必要になってくるだろ うということがあります。それはこの場で申し上げてもどうしようもないことなのかもしれ ませんが、そのような前提の整備は望ましいのではないかと思います。  2つ目は、同じ企業で働き続けることがどこまで必要なのかという問題が出てこようかと 思います。これについては、若干滑った表現になりますが、社会全体あるいはマーケット全 体で雇用を確保していくという観点からの支援、施策も必要になってくるだろうということ です。そういったことまで含めてしっかりと検討した上で、原則として希望者全員とか、原 則として定年延長という議論に進めていくことが望ましいと思っております。  具体的には、55歳の定年が60歳に上がったときも似たような経緯があったかと思います が、各企業も労使で継続雇用の制度を設けていくと。その中である一定の基準があるものを だんだん緩めていって、限りなく希望者全員に近い形になっていく。そういう企業が全体の 半分とか3分の2になったところで法制化を考えていくといったような、グラデュアルなス テップが必要なのではないかと思いますので、これについては実態を見ながら、そういった プロセスが早く進むようなサポートが政策的に必要なのではないかと思っております。  60歳代後半ですから、65〜70歳までに関しては、こんなことを言ってもしょうがないの かもしれませんが、前回ご提示いただいた資料を見て、5年くらい前にも何度もこのような グラフを見せられたなという率直な感想があります。5年前は、60〜65歳までの継続雇用を やろうということで、それは当然年金の支給開始との接続を意識してやっていこうという議 論をして、今のような制度を労使で話合いの上で入れたのですが、また同じことを繰り返そ うとしているのではないかという印象を禁じ得ません。違うかもしれませんが、そういう意 味で、これは社会保障制度全体の在り方との関係の中で議論していかなければならない、単 に団塊の世代が65歳を過ぎて65歳代後半に差し掛かるから議論するのだという問題では ないのではないかと思います。先ほど申し上げたように、それはある意味、引退の自由みた いなものが確保されることは、社会的に大切なことだろうと思いますし、そういった観点も 含めて65歳を過ぎても働くことがすばらしいのであって、65歳を過ぎても働いていない人 はお荷物だという議論にならないように注意していく必要があるのではないかと考えてお ります。 ○森戸委員 久々に出てきたので、最近の議論の流れを読めていない部分があったらお許し いただきたいのですが、今日聞いていて思ったことをいくつか言わせていただきます。細か い話から入りますが、1つ目は最初の資料で、資料4の論点でも気になったのですが、基本 的な整理として高齢法の3つの選択肢のうちの定年がない企業というものを、定年がないと いうことは、イコール働きたければいつまでも働ける会社であるという前提で整理されてい ますが、本当にそうなのかは個人的にも疑問ですし、その議論が必要なのではないかと思っ ております。つまり、定年があるのと引き換えに定年までは解雇しないというルールがあっ て、本格的に定年をなくした会社というのは聞きますが、定年のない社会をあまり本格的に 想定していないので、まだ机上の理論のところもありますが、いずれにしても定年がないイ コールいつまでも働けるという整理がいいのかということを、まず考えなければいけないと 思いました。  後はもう少し大きな話になります。最初に労使の方で議論があった点は非常に興味深かっ たのですが、確かに60歳以降の話とそれまでの話は、別は別なのでしょうが、別な話だと して、議論としては一緒に考えるべきことだろうと思います。別に公益代表だから真ん中の ことを言おうというわけではありませんが、別だというのもわかりますが、議論するときは、 60歳以降の話は、60歳までどのような働き方や人事管理をするかという話と切り離すこと はできないと思いますので、議論としては是非一緒にしたらどうかと思います。もちろん法 律を作るときは別なのでしょうけれど、そのように思いました。  3つ目は、これはすでに皆さんから出ていることで、もちろん所管の法律に関する議論を ここではするのでしょうが、やはり話は年金制度そのもの、雇用継続給付やほかの制度も、 もしかしたら福祉の話などと一体の議論だと思いますので、議論する上であまり幅を狭める 必要はないのかなと思いました。4つ目は、長谷川委員がおっしゃったことですが、とりあ えずは65歳まで、年金支給開始年齢までどうつなぐかの話に重点があっていいのかなと思 います。  最後に、論点表が非常に詳細で、細かく論点を拾っていただいて、議論がしやすくてあり がたかったのですが、他方で、これはこういうデータだからこうすべきだと、強化すべきだ という感じで整理がされていますが、強化すべきだという前に、何でそうしなければいけな いのかがはっきりしていない感じがします。日本の労働者のどのような引退過程を想定する のか、どのようなモデルにするのかの議論があって、そういうモデルを標準とするなら、こ こは強化しなければいけないとか、ここは変えなければいけないと、順番としてはそういう 順番のはずで、私の理解では、今のところ60歳定年で、引上げ中ですが、将来的には年金 が65歳までで、60〜65歳まではどうするかというと、何となくつないでくださいというの が今の政策です。再雇用で賃金は下がるけれど、一応雇用継続確保措置があって、雇用継続 給付もあって、年金もしばらくは出るし、何となく60〜65歳はつないでくださいと、65歳 から年金ですという、ある意味、将来に向けてそういうモデルを作っているのだと思うので す。そういう60歳、65歳という節目を持つモデルで今後もいくのか、それとも年金をもら えることを重視して、例えば所得保障のある人はヨーロッパの法制にそういうものがありま すが、年金満額もらえる人は辞めさせていいとか、極端な話ですが、そういうことなのか、 アメリカみたいに定年がない世界を想定するのか。要するに、どのような引退過程を今後取 っていくのかという話があって、それならここは強化しなければとか、そういう細かい話が 来るのかなと思いますので、今日出たような細かい話とともに、どのような引退過程を取っ ていくべきなのか、政策のモデルとして何を前提にしていくかを頭に置きつつ議論できたら いいのかなと思いました。 ○征矢委員 今いろいろなご意見が出ましたが、誠にごもっともだと思います。2つほど意 見を言わせていただきます。現状の制度の運営、いわゆる高齢法に基づいてやっている、非 常に日本的なやり方ですが、現実的で、制度としてはうまく動いていると私は理解していま す。ただ、先ほどもご議論があったように、5年後の2013年からは報酬比例部分が社会保 障制度で年々上がっていくわけですから、そういうことを前提にして、そこをどう考えたら いいかも併せて頭に置いていかないといけない時期になっていると思います。その時期は、 おそらく賃金制度の在り方、これは基本的に労使で議論すべき問題ですが、その議論はその 時点で避けて通れないのではないか、ということも併せて今後考えていく必要があると思い ます。  もう1つは、年金の支給開始年齢が完全に65歳になった時点で、雇用がどうあるべきか。 まだ20年くらい先ですが、そのときの在り方を考えた場合、日本の今までの在り方からい って、その時点では年金支給開始年齢が65歳であれば、定年はおそらく65歳になっている、 あるいは、なるべきであると思います。  制度的に考えれば、今もいろいろご議論がありましたが、当然現実の労使の話合いの中で 進んでいって、一定の割合だけでは法制的に強制することができるわけではありませんが、 将来の在り方論としては、年金の支給開始年齢が65歳になった時点では65歳定年が実現し ているのではないか、あるいは、そうあるべきではないかと思います。60歳定年で、そこ から5年間を継続雇用でつなぐというのは、賃金論から言っておかしいです。それは制度と してはなかなか難しいのではないかと思います。長期的にはそういうことです。そういう意 味では、次の段階では支給開始年齢が上がっていくときに、それに応じてどう考えなければ いけないか。これは賃金をどうするかということを避けて通れない課題ではないかと思って おります。当面の在り方は、今ご意見がありましたように、現状の在り方を進めていけばい いのではないかと思いますが、併せて今言ったようなことを考えていく必要があるのではな いかと思います。 ○原委員 今後是非お願いしたいのは、生活するためにはお金が要るわけで、年金と雇用と の接続ということを国の制度として義務化することが、我々の最高の願いなのです。それは 社会的な責任だと思うのです。これがなかったら議論にはならないと思うのです。希望者全 員でないということは、逆に会社はいいとこ取りをするということですから。はっきり言え ば、基準を設けるということは選別雇用ですから、いいとこ取りです。60歳までその会社 で働いて、その会社に貢献したと。60歳以降年金と接続されないのに、君は駄目だと突き 放すということでしょう。そんなことがいいのかどうかという問題を議論していただかない と、この議論は前に進まないのではないかと思います。企業だってメリットはあるわけです から、現状でも人件費半分くらいで、ほとんどそのままの状態で働いているわけなので、人 件費半分で同じような成果を上げるという意味ではメリットがあるわけです。そのときにA さんはいいけれど、Bさんは駄目だと、ちょっとした基準であなたは外れますといういいと こ取りは、社会的な責任という点に関してはいかがなものかなと思います。  会社も、いろいろな人がいて会社なのです。評価でEもあるけれど、AもいてBもいてC もいてDもいる。Eもいて会社なのです。Aだけの会社などはあり得ないのです。そういう 意味では、会社から見れば、君はEだから駄目だということになるかもしれませんが、い ろいろな人がいて60歳までやってきたわけです。それが60歳になる段階で、君は駄目だと いうことが成り立つのかどうか。社会的な責任ということで、国の制度として誘導していく べきではないかと思います。そうしないと議論にはならないと思います。「希望者全員」と いうキーワードに関しては、いつまで経っても接点はなくなると。そこで社会的な責任を考 えてもらわないといけないと思います。 ○荻野委員 大変情緒的なご意見ですが、そのとおりだろうと思います。今60歳定年にな っていて、今おっしゃられたようにいろいろな人がいる中で、60歳までは皆さんしっかり 働いてもらえるようにということで、労使で努力をする。働く仲間なのだから、助け合って やっていこうということで、互助的な考え方で60歳定年まで頑張って働きましょうと。そ れは労使の間でそういう暗黙の、あるいは、明示の合意があって、お互いに努力をしてやっ ていると思うのです。ただ、65歳までその世界を伸ばしましょうというのであれば、それ はそれで1つの考え方としてあり得ると思いますし、労使がしっかり話合いをして、あの人 が65歳まで働けるように我々もそれを応援するし、我慢すべきところは我慢するし、努力 してもらうべきところは努力してもらうと、当然そういうことになると思います。それは、 基本的には労使の話合いでやるべきことであって、それが社会的責任だから法律でそうしま すという問題ではないと思います。必要なのは、労使がそういうことに共同でお互いに話し 合いながら取り組んでいけるように支援をすること。もっと必要なのは、きちんと適切な経 済政策などによって企業活動が活発化して、雇用が増えることを後押ししてもらうことで、 直接的に定年を延ばしなさいとかいうことを法律でするのは、政策的には間違いではないか なと思います。 ○長谷川委員 ここのところ、よく海外から調査が来ていて、何で日本の高齢者は働くのか とかいろいろなことを言われます。いくつかの要因はあると思います。高齢法がうまく機能 していることとか、もともと非常によく働くとかいろいろなことを言われているのですが、 私は高年齢者雇用確保措置がうまく機能しているのだと思います。それと日本のこの間の景 気の動向があって、高齢者を何らかの形で雇用していく受皿があったと。それが2025年も そうなるかどうかが非常に重要で、雇用の場というか、受皿としてどういう企業を産業政策 として作っていくかは、これ以降非常に重要だと思っています。一番いいのは、働く方から すればずっと最後まで同じ企業がいいと。これは働く方から言ったら絶対です。変わりたい 人は途中から変わっているはずです。ただ、中には定年退職を機にして、別なことをやろう という人たちもいるわけです。そのときに、どういう企業を日本の中で作っていくのかは、 少し検討する必要があるのではないかと思います。  最近、私のところの役員も関心があって、研究者も研究しているようですが、イギリスの 社会的企業などが雇用の受皿になっていると聞いていますし、そういうところにいろいろな 専門的な知識を持った経験のある人たちが行って、企業経営に就いてちゃんとはまっている と聞いています。2013年以降の高齢者の働く場は、もっといろいろな場が提供されなけれ ばいけないと思いますので、行政も政治もそういうことについて、これからは考慮していか なければいけないと思います。  そのようなことも考えた上で、今、公益側から意見がありましたように、2013年までど うするのかというのが1つだと思うのです。2013年から2025年までどうするのか、2025年 以降どうするのか、おそらく政策の打ち方が変わってくると思うのです。だから、全部一括 ではなく、2013年までどうするのか、2013年から2025年までどうするのか、2025年以降 どうするのかを、全体的な政策としてトータルで作っていくことが必要なのではないかと思 います。後は、労使の中で賃金体系などもきっちりと議論していくこと。  労側は何を心配しているかというと、定年が延長されたときに、賃金と退職金は必ず手が つくだろうと、そのことに対してすごく不安を持っているわけです。賃金カーブに対して手 をつけられるなと、退職金も手をつけられるなと、必ずそういうときは負けてしまうなと。 負けないようにどうしようかと。そういうことを全体的に見なければいけないので、これ以 降このような議論を本当に全体でしていくことが重要ではないかと思います。  もう1つ、定年退職がなくなったときにすごく心配しているのは、よく言われる解雇の問 題なのです。定年があると、定年は解雇ではないと解釈されていますが、定年がなくなった ときに解雇の問題をどう扱うかを非常に思っていて、まだ出ていませんが、解雇は自由など という話が出てくる。そういう意味で、定年がないことが本当にどうなのかということを私 どもは心配しています。 ○白木委員 少し違う論点で、感想めいたことなのですが、今回の資料1-1等を見ると、ほ かの論点もそうですが、継続雇用制度が入ったことによって60歳代前半層の働いている人 が増えたわけです。他方で、先ほどから引退の自由の確保も必要だと、いろいろな生き方が あり得るのではないかと言われていますが、日本の高齢者はそういう選択をしているのかな ということで、シルバー人材センターの2頁目などを見ると、シルバー人材センターの会員 数が減っているのです。つい2、3年前までは冗談で、「唯一の成長産業分野だ」と表現し ていたのですが、ここ数年で初めてマイナスになったわけです。  そうしますと、日本の高齢者、60歳代前半も後半も含めて、継続就業が可能になったこ とによって、企業にそういう人たちがほとんど吸い取られるというか、そちらを選択して、 自由にボランティアをやったり、シルバー人材センターへ行って地域の高齢者と一緒に何か の活動をする方を選ばなかったということが出ているのではないかと思うのです。ですか ら、日本の高齢者はもっと引退の自由や自由度を高めたいという話がありますが、実際には 企業と一体のような、これまでの生活をずっと継続しているパターンを選んでいる感じがし ます。これから高齢者がどんどん増えて、60歳代後半が増えていった場合に、どのような 選択をするのかなという感想です。まだまだ自由に、自分の意志で、雇用のチャンスはあっ ても、別のことをやりたいという選択をする人がそんなに出ていないのかなという感触で す。 ○野村委員 ここは大分議論でも出ているとおり、いずれにしても平成25年4月から報酬 比例部分の引上げが始まって、60歳代前半の段階的な年金が全く支払われなくなることも はっきりしているわけですから、いずれにしても仕事と年金の接続は、どのような形か、い ろいろ仕組みや制度があるとは思いますが、しっかり確保する措置は必要だろうと思ってい ます。  3頁の【論点(案)】ですが、これは論点が細かくいろいろ書かれていますが、(9)で「高 齢者が働けるように、職場環境の改善が必要ではないか」と、これは労使ともに不必要だと いうことはないと思います。ただ、そうは言っても、必要だということになれば、職場環境 の改善を如何にどのようにしていくのか、当然高齢者となれば、体力的にも、いろいろな意 味で一般の就業者に比べると若干不都合な部分も出てくると思います。そのような人たちが 働きやすいように職場環境を改善する。具体的には、オフィスや働く場所の向上、いろいろ な意味での手直し、見直しが必要になるだろうと思います。  そうなると、当然コストがかかるわけですから、働く側からすれば企業がコストを出して やっていただければありがたいけれど、企業がやりたくても、お金のかかる話ですので、そ もそもやることが難しい場合もあろうかと思います。そうなると、これは必要なのかと言っ ても、必要なのですから、もう一歩進んで補助金を出すとか、税制上の優遇措置をするとか、 そのようなところまで踏み込んだ1つの考え方がないと、ここで改善が必要ではないかと言 われても、必要だけれど、その後どういうことを考えているのかと思ったので、大変細かな 話ですが、意見として述べさせていただきました。 ○征矢委員 今のお話の中で、先をどう考えるかによって、このような支援策をやった方が いいという支援策について検討することも必要ではないかと思います。例えば、65歳が年 金支給開始年齢になったときに雇用がどうあるかということで、65歳定年の実現を目指す とすれば、今3つの措置でやっていますが、定年延長にウエートを置いた支援のようなこと が考えられるかどうか。  また、65歳以上について国全体として考えた場合に、超高齢社会になっていて、4人に1 人が65歳以上の高齢者であるときに、年金開始年齢は65歳になって、65歳以上の高齢者 でも希望する人は働くことが大事ではないかと。これは強制するのではなくて、希望する人 に働く場を提供する。65歳以上の高齢者も完全に自由に、国としては何ら対策を取らない のではなく、そういう支援策は検討する必要があるのではないかという気がします。 ○原委員 話はガラッと変わりますが、資料4の3頁の8行目くらいに、これは厚生労働省 とは直接関係ないと思いますが、「経済財政諮問会議・民間議員ペーパー」ということで、 「新たな高齢者雇用ルールの検討」の2行目で、「成果主義賃金の導入など」ということを おっしゃっています。賃金問題に関しては、高齢者の処遇を巡ってはあまりややこしいこと は必要ないのではないかと思うのです。特に「2008年版労働経済の分析」の中でも、厚生 労働省もかなり踏み込んで、「賃金制度見直しの光と影」ということで、成果主義賃金に対 してかなり辛口の評価をされているので、基本的にはそういったトーンで、成果主義、要す るに賃金に差をつけるのではなしに、水準をどうするかを中心に今後議論していきたいと考 えております。 ○山川委員 「希望者全員」というところにこだわりがあるのですが、高齢者雇用安定法の 9条では定年の引上げか継続雇用制度か、あるいは、定年の定めの廃止ということで第1項 があって、第2項で、これはある意味では企業への配慮でしょうけれど、基準を設けた制度 の導入もいいですよということになっているわけです。私は、本来は65歳までの安定した 雇用を確保する意味では、希望者を受け入れることが趣旨ではないかと思っております。そ うではないと言う方はおられるかもしれませんが、そういう意味では、私は今日、明日と言 っているわけではありませんので、ここはこういう制度が成熟した段階においては今後これ で引っかかる人は少ないことを勘案すると、制度の成熟に合わせて希望者全員にする、その ような制度に変えていくことについて検討する必要があると思います。重ねてですが、それ を申し上げたいと思います。 ○久保委員 また重ねてになりますが、私も、希望者全員の立場で、先ほど原委員が成果主 義について触れておられましたが、多くの企業で成果主義が入っていることは否めないと思 います。そういうところから見ると、成果や業績など結果で判断しているところで、60歳 以降になったから年齢で縛るのかということになると、企業として考え方の整合性が取れな いのではないかと思います。今まで年齢で評価してこなかったのに、急に年齢なのかという 観点もあるのかなというのが1つで、希望があれば、希望者全員雇用が必要ではないかとい うのが1つの観点かなと思っています。  また、どういった引退モデルを我々が目指しているのかというビジョンが、これまでの論 理では見えにくいところがあるのではないかと思います。例えば、労働力人口がどんどん減 っていくというのは、他国にはあまりない例かもしれませんが、海外でどういった制度や法 律があるのか、どういった工夫をしているのか、事例があれば紹介していただければと思い ます。 ○橋本委員 将来的な問題としてゆくゆくは希望者全員でという話は理解できますが、当面 は今の定着状況というか、法律が施行されてまだ3年なので、もう少し様子を見た方がいい のではないかと思います。【論点(案)】の3頁の中で、先ほど長谷川委員からもあったよ うに、(4)の「約2割やりたくない」というのをどう評価するか。これは全く同じ考え方で すが、当社で見ても、地域によってもかなり差があります。農地を持っていてもうやめたい とか、都会の工場は地方とは全然違いますし、この辺りは政策をやるときに一律的にやるの ではなく、地域を見ながらやる必要があるのではないかという感じがします。  先ほど年金との接続の話をされていましたが、企業に差が出ているというのはそのとおり だと思います。ただ、働く側も、働くのだという意識を持ち続けていただかないと、雇い続 けるのは大変ではないかと思うのです。会社の方もそういう取組みをやっていきますが、働 く側でもそのような意識づけが社会的に必要になってくるのではないかと思います。 ○木本委員 今のお話に関連して、昔は55歳定年とか58歳定年とか言われていましたが、 やっと60歳が定着してしばらく走ってきて、人事の現場を見ると、まだまだ働く側も会社 の側も60歳というのがどうしても残っているのです。だから、今のお話でもあったように、 ゴールを目指して走ってきて、そのゴールでやれやれと思っていたら、少し向こうに延びて しまったという感じが、働く側にも大分残っているかなと思います。今は過渡期だと思うの です。  そういう意味では、就業規則ではなく労働協約でよく話し合って、そこは軟着陸して、将 来的には全員が雇用継続してもらえるのが一番いいかなと。そこに基準がある。基準の使い 方はあってないようなので、健康で意欲があるというのは、働いている側と会社側とで相当 ギャップがあるわけです。客観的な基準を設けたところで、本当にそれが客観的な基準なの かと。だから、今の状態は会社側に対しても、働く側に対しても、ある基準があることによ って、ゴールが近づいてきたから少し手を抜いて流そうかと。基準がある以上は、その基準 をクリアしなければ継続雇用してもらえないということがあれば働き続けるという意味で、 過渡期としては止むを得ないのかなと思います。結果的にみんなが60歳以上も当然働くの だと、最終的にはある段階で65歳までは。今までは60歳定年だと、いろいろな形態はある にしても65歳まではいくのだと。57、8歳になったって、大分ゴールは先だという意識が 変化してこないと、いろいろな意味でうまくいかない部分があるのかなと思います。今はそ ういう過渡期ではないか。基準も必要悪とまでは言いませんが、会社側に対しても労働者側 に対しても、ある意味では双方に対する牽制球みたいになっている部分もあるのかなという 印象を持ちます。 ○荻野委員 これも繰り返しになりますが、雇用が中心になることは間違いなくそのとおり だと思うのですが、百パーセント、本当に雇用を継続しなくてはいけないのか、企業がやる にしても。例えば今回の高齢法改正でも、一定の基準を設けて再雇用しますと。その傍ら、 65歳までの5年有期でつなぎ年金みたいなものを企業年金に入れるとか、あるいは財形支 援として若い段階から個人年金みたいなものに拠出するときに、マッチングで会社が少しず つ一緒に拠出するようなことを入れている企業の例もあると思うのです。そういったものも 決して排除されるべきではないわけで、雇用は中心だけれど、雇用以外の取組みも、それは それで1つの存在価値を認めていく必要があると思います。  「経済財政諮問会議・民間議員ペーパー」の件ですが、率直に言って、私も成果主義に対 してさほどシンパシーを感じていないのです。ただ、原委員がご指摘になったように、労働 白書等でも指摘されている成果主義の影の部分は、個人のモラルの問題、あるいは、チーム ワークの問題に加えて、非常に大きかったのは人材育成の観点だと思うのです。人材育成の 観点を重視すると、実は先が短くて、育成というウエートの低い高齢者は成果主義に馴染み やすい部分があります。逆に言えば、諮問会議が言うように、そういった成果に応じた賃金 にすることで雇用は増やせるではないかというのも一面の正論だと思いますので、そこは水 準確保との間で一定のバランスを取りながらやっていくことも必要で、必ずしも水準だけを 元に一律にやることが高齢者の方々のモラルにとって良いのかどうかは、労使で職場の特性 に応じて議論していく必要があるのかなと思います。 ○長谷川委員 今、荻野委員が言われたように、必ずしも雇用だけではないと思うのです。 企業が福利厚生というか、自分のところの従業員の生活の制度設計に、どのように関わって いくのかということと大きな関係があると思います。自分の人生を線で描いたときに、子育 ての時期があって、それが終わった後とか、そのときの自分の資産形成を若いときからきち んとしていく、企業の中の年金も確立していく、そういうやり方もあると思うのです。そこ はもう少しトータルな議論が必要なのかなと思います。  先ほども言いましたが、おそらく60歳以降に継続雇用で働き続けなかった人は、60歳の 退職時点で5年くらいどのように自分で暮らせるかという設計ができていて、きっと見通し が立つとか、もしくは、別のところで働くとか、ボランティアをやるといったいろいろなパ ターンがあると思うのです。次の議論のときには、そのような労働者のモデルがもう少しみ んなでイメージできるといいのではないかと思いますし、それぞれの企業でどのような政策 を取っているのかもご披露していただきながら、厚労省にも調査をしてもらっていろいろな モデルを出していくと。これしかないということはないと思うので、このようなものもある ということを出していただいて、総合的に議論した方がいいのではないかと思います。  もう1つ、高齢者が働けるようなボランティア、ボランティアというと語弊がありますが、 そのような働ける場というか、機会をどうやって作っていくかはもっと考えなければいけな いと思います。農業の経験のある年代は団塊の世代ではないかと言われていて、団塊の世代 がやめたときに、農地を持っている人たちは農業をやる方がたくさんいらっしゃるようで、 農業法人ができればそこに雇用もできるわけで、日本全体がもう少しそういうところに向か っていくことが必要なのではないかと思います。使側が言うことについては、そのように思 います。 ○大橋部会長 時間が来たようですが、私も一言だけ言わせていただきます。賃金について、 定年までの賃金はこれまでたくさん検討されてきているのですが、例えば継続雇用したとし て、定年後の賃金についてはほとんど議論がないのです。そこのところの議論がないから、 もう少し議論した方がいいのかなと思います。特に定期昇給はもうないわけで、むしろ定期 加給を一律に入れるとか、そんな話は通りそうにもないので、成果主義というのはちょっと もう垢がついた言葉ですが、アメリカの大学の教授であれば、アメリカは定年がないのです。 どうやってやめていくのかというと、毎年毎年学部長と話をして、給与も講義の負担も話し 合って徐々に引退していくという、そういう姿はアメリカのやり方なのですが、日本ではど ういう姿がいいのか。日本はどちらかというと、一律でやりたがるわけですから、その辺り をうまくミックスするかどうかという問題があります。とにかく、定年後の賃金体系はまだ あまり議論されていないということです。  また、これまで何となく定年がないのが一番よくて、65歳定年以上が2番目で、3番目が 60歳定年で継続雇用という感じですが、私から見ると、定年がなければ退職金がもらえな いではないですか。65歳まで退職金は要らないのですか。私は63歳ですが、もらってよか ったと。そういう点では、退職金は若いうちにもらわないといけないと。定年の意味は、定 年は仕事をやめるという意味だけではなくて、退職金もついて回っていますから、その辺り もお考えいただきたいと思います。  それでは、時間が来ましたので、本日の部会はこの程度にいたします。次回はさらに議論 を深めていただきたいと思います。本日の会議の議事録の署名委員は、長谷川委員と市瀬委 員にお願いします。次回は11月26日(水)13時から開催しますので、よろしくお願いし ます。どうもありがとうございました。 【照会先】   厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部企画課   〒100-8916   東京都千代田区霞が関1−2−2   TEL:(代表)03-5253-1111(内線5815)      (直通)03-3502-6778   FAX:03-3502-5394