08/10/22 社会保障審議会第15回少子化対策特別部会議事録 日時:2008年10月22日(水) 15:00〜17:00 場所:経済産業省別館第1020号会議室 出席者:  委員   大日向部会長、岩渕部会長代理、岩村委員、大石委員、小島委員、清原委員、   駒村委員、庄司委員、杉山委員、宮島委員、山縣委員、吉田委員  参考人(オブザーバー)   三重県健康福祉部総括室長(こども分野) 速水 恒夫参考人(野呂委員代理)   社団法人日本経済団体連合会少子化対策委員会企画部会委員 中村 好信参考人   (福島委員代理)  参考人(ヒアリング)   東京大学名誉教授   子どもの虹情報研修センター センター長   ベネッセ次世代育成研究所 所長     小林 登参考人   新宿せいが保育園 園長   保育環境研究所ギビングツリー代表    藤森 平司参考人  事務局   北村審議官、朝川少子化対策企画室長、杉上虐待防止対策室長、松本育児・介護休業   推進室長、藤原家庭福祉課長、今里保育課長、田中育成環境課長、中村児童手当管理   室長 議題:  次世代育成支援のための新たな制度体系の設計について   1.保育サービスの質について   2.関係者からのヒアリング     〜ヒアリング出席者〜      ・東京大学名誉教授       子どもの虹情報研修センター センター長       ベネッセ次世代育成研究所 所長     小林 登参考人      ・新宿せいが保育園 園長       保育環境研究所ギビングツリー代表    藤森 平司参考人 配付資料:  資料1 保育サービスの質について(2) (認可外保育施設の質の向上)(第14回少子化対 策特別部会 資料2)  資料2 保育サービスの質について(第13回少子化対策特別部会 資料4)  資料3 小林参考人提出資料(1)  参考資料1 待機児童解消対策に関する自治体アンケート調査結果(平成20年10月)  参考資料2 内海委員提出資料  参考資料3 庄司委員提出資料  参考資料4-1 杉山委員提出資料(1)  参考資料4-2 杉山委員提出資料(2)  参考資料5 小林参考人提出資料(2)  参考資料6 少子化対策特別部会における保育サービスの提供の新しい仕組みに関する これまでの議論について(議論の項目) (第2回次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に関する保育事業者検討会 資料5)  参考資料7 第2回次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に関する保育事業者検 討会における委員提出資料 議事: ○大日向部会長  定刻になりましたので、ただ今から「第15回社会保障審議会少子化対策特別部会」を開 催いたします。委員の皆様方におかれましては、ご多用のところをお集まりいただきまし て、誠にありがとうございます。  それでは、議事に入ります前に、事務局より資料確認と委員の出席状況に関してご報告 をお願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  それでは、お手元に配付させていただいております資料の確認をさせていただきます。  まず、議事次第がございまして、資料1としまして「保育サービスの質について(2)」、 その下に資料2としまして「保育サービスの質について」という資料、資料3としまして小 林参考人にご提出いただきました資料、参考資料1としまして「待機児童解消対策に関す る自治体アンケート調査結果」、参考資料2としまして内海委員のご提出資料、参考資料3 としまして庄司委員のご提出資料、参考資料4-1、4-2として杉山委員のご提出資料、参考 資料5としまして小林参考人にご提出いただいた資料、その下に参考資料6といたしまし て「議論の項目」と書いてある資料、さらに参考資料7としまして、昨日、事業者検討会 を開催いたしました際に各委員から提出された資料、さらにその下に、資料番号なしで前 回までに少子化対策特別部会の委員よりお求めのあった資料を、参考に置かせていただい ています。もし不足等がございましたら、事務局の方にお声をかけていただければと思い ます。  委員の出席状況でございますが、本日は内海委員、佐藤委員、野呂委員、福島委員、山 本委員からはご都合により欠席とのご連絡をいただいております。  それから、駒村委員、杉山委員からは遅れて出席とのご連絡をいただいています。それ から、清原委員は途中で退席されるご予定だと伺っております。なお、本日ご欠席の野呂 委員の代理といたしまして、三重県健康福祉部総括室長の速水恒夫参考人、福島委員の代 理といたしまして、社団法人日本経済団体連合会少子化対策委員会企画部会委員の中村好 信参考人にご出席いただいております。ご出席いただいております委員の皆様方は定足数 を超えておりますので、会議は成立しております。  次に、本日参考人として本部会にご出席いただいております参考人のご紹介をさせてい ただきます。まず、東京大学名誉教授・国立小児病院名誉院長・子どもの虹情報研究セン ター長、ベネッセ次世代育成研究所長の小林登参考人でございます。 ○小林参考人  よろしくお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  次に、新宿せいが保育園長・保育環境研究所ギビングツリー代表の藤森平司参考人でご ざいます。 ○藤森参考人  よろしくお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  以上でございます。 ○大日向部会長  ありがとうございました。議事に入ります前に、本日ご欠席の委員の代理としてご出席 いただいています参考人のご出席についてお諮りいたします。  まず、野呂委員の代理として、三重県健康福祉部総括室長(こども分野)の速水恒夫参考人、 福島委員の代理として、社団法人日本経済団体連合会少子化対策委員会企画部会委員の中 村好信参考人、このお二方のご出席について、ご異議はございませんか。 (「異議なし」の声あり) ○大日向部会長  ありがとうございます。それでは、ここから議事に入りたいと思います。それに先立ち まして、昨日「第2回次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に関する保育事業者 検討会」が開催されましたので、昨日の会のご報告を事務局からお願いします。 ○今里保育課長  失礼いたします。昨日、第2回の保育事業者検討会が開催されたところでございます。「保 育サービスの新しい仕組みについて」というこちらの部会でもご議論いただいた部分につ いても議論をしていただきました。部会からは検討会のメンバーで座長でもいらっしゃる 岩渕部会長代理、庄司委員、宮島委員。それから、大日向部会長にもご参加いただきまし た。  行われた議論と申しますか意見の主なものをここでご紹介させていただきます。まず、 全体の話といたしまして、待機児童の問題というのは解決すべき大きな課題ではあるけれ ども、一部の都市部の問題であって、これを解決するために全国的な仕組みを変える必要 性、それから、その有効性には疑問があって、これらは分けて議論すべきであるというよ うな意見。それから、保育の供給量を確保するための現下の課題は地方の財源不足にある ものですので、この解決のためには、現在の保育所にかかる国庫補助率を上げることや認 可外保育促進事業といったものを、これまで以上に強力に進めるなど、時限的、地域的な 対策で十分ではないか。  さらに、一時的には質の担保は図った上での認可外の施設を保育の供給主体とすること も考えられるというご意見もございました。また、直接契約や直接補助を導入しなくても、 需給が整えば現在の制度でも利用者が選択できるようになるなど、挙げられている課題は 解決するのではないか。かえって、直接契約の導入は必要度の高い子どもに保育を保障で きなくなる危険があるとのご意見がございました。  また他方、早急に保育所を整備するに当たっては、まずは借入金を行って保育所を建て て、その後、保育所運営費に減価償却分を盛り込み、将来的に保育所の設置にかかる費用 になっていく形が良いのではないか。他の制度を見てみると、直接契約の導入や保育所運 営費に減価償却分を入れることによってサービスの供給量が増えた例がある。さらに、必 要な保育の量の認定を個々に行っていくと、保育所における子どもの生活を過度にコマ切 れにしてしまった場合には、保護者と保育所との信頼関係、子どもの生活のトータルな保 障、集団的保育等の観点から懸念が無しとはしない。多様な仕組みの選択が必要である。 といったご意見がございました。  また、株式会社等の民間企業とその他の運営主体では、施設整備費や地方自治体の運営 費補助に差があって、不公平感が生じているというご指摘もございました。さらに、保育 所運営費の使途について、配当というものを認めるかどうかについて、配当と保育の質は 車の両輪のような問題であって、配当を認めた場合には、保育の質に影響するという意見 と、それとは全く逆の配当と保育の質は全く関係なく、影響しないというご意見もござい ました。  さらに、認可園に入れずにいる子ども、さらに産むのを諦められてしまっている子ども までを視野に入れて、いろいろなニーズを受け止めなければいけないという意見がござい ました。また、多様なニーズを吸収するには小規模多機能施設といったものを進めていく ことを検討してはどうかというご意見がございました。  以上、雑駁でございますけれども、出された意見の主なものを紹介させていただきまし た。 ○大日向部会長  ありがとうございました。それでは、ここからお手元の議事次第に従いまして、進めて いきたいと思います。  まず「保育サービスの質について」の中で、認可外保育施設の質の向上ですが、ご議論 いただく前に、確認的な意味合いを含めまして、事務局から説明をお願いしたいと思いま す。その後に第13回の当部会でもご議論いただきました保育サービスの質につきまして、 これも最初に確認的な意味を含めまして、事務局から説明をお願いしたいと思います。そ の後に関係者からのヒアリングを行った後、一括して議論をお願いしたいと思います。  それでは、最初に「認可外保育施設の質の向上」につきまして、事務局の説明からお願 いします。 ○朝川少子化対策企画室長  それでは、資料1をお開きいただければと思います。これは前回に一度ご説明しており ますので簡単に、思い出していただく意味で見返していただければと思います。2ページか らずっと現行制度の説明が5ページ目までありまして、6ページ目以降に認可外保育施設に 関するデータをいろいろとご紹介しました。どういう利用特性があるかとか、開所時間が どうであるか等のデータを用意させていただいております。  その上で、22ページ目の「検討の視点」でございますが、まず1点目としては、すべて の子どもの健やかな育ちを支援するという観点からは、やはりこの認可外保育施設の質の 向上に対する支援の強化が必要ではないかということでございます。その次に、待機児童 が解消できていない中で考えますと、認可保育所に入所できない場合に質の保障も公費の 投入も得られないというのは公平性に欠けるのではないかという論点がございます。3点目 といたしましては、夜間の保育等の多様なニーズに対応するサービスの位置付け、あるい は質の確保をどう考えるかという論点がございます。  下の箱でいきますと、特に都市部に着目いたしまして、資格要件とか面積基準の緩和と いうご意見がありますが、すべての子どもに対する良好な育成環境の保障の観点からする と、地域によって基準を異ならせることについて、どう考えたらよいかという論点がござ います。  23ページ目の一番上の箱は、小規模の形態をどう考えていくかということで、現在は例 外的に20人まで定員が引き下げられることになっていますが、そういったことについて、 もう少し機動的な形態、あるいは家庭的保育は5人までだということを考えて、5〜20人の ところについて、今は措置がございませんので、そういったことも含めて定員規模、ある いは小規模なサービス形態をどう考えるかという論点がございます。次の箱につきまして は、保育士の資格要件についてどう考えるかという論点がありますが、他人の子どもを預 かるということ、あるいは集団保育の特性といったこと、あるいは近年の親支援、障害の ある子どもの受入れなど、保育所の役割が多様化・深化してきておりますので、そういっ たことも含めて、どう考えたらよいかということ。  関連して、認可外保育施設の場合は、データで見ていただきましたように、4割の方が保 育士資格を有していないという現状がありますので、その方々の資格取得も含め、従事者 の質の向上が課題であるということ。一番下の箱につきましては、認可外保育施設の質の 向上に対する支援を強化していってもなお、認可外保育施設が残る場合、その給付対象と なるサービスのみでは需要を満たし得ない地域が生じる場合には、公平性の観点からどう するか。一方で、サービスの質の確保という観点から、どうするか。この両面からどう考 えるかという論点がございます。  関連しまして、ますか、少しこの時間を借りて幾つか資料のご紹介をさせていただきま す。参考資料の1をお開きいただければと思います。何回か前のこの部会で、福島委員か ら待機児童の具体的な解消策というのはどう考えたらよいのだろうという宿題をいただい て、そのときに今年の4月の段階での待機児童がいる市町村に対して、私どもの方からア ンケート調査をさせていただきましたと申し上げました。その調査結果の概要を整理しま したので、ご報告申し上げます。調査結果の概要としましては、4月1日現在で待機児童が いる市町村(370市区町村)に対して調査を実施しています。まず1点目として、待機児童が 解消されない要因につきましては、グラフを見ていただくとわかりますが、「女性の就業率 の上昇による保育需要の増大」といったことを要因として挙げている市区町村が84.3%ご ざいます。それ以外では、マンションの建設等で一時的に重要が急激に増えているという 事情。あるいは、人口増加・流入に伴う児童人口の急激な増加といったことを挙げている 市町村が多いです。  2ページ目をお開きいただきまして、二つ目としましては、保育所の新設・定員増を思っ たように図ることができない理由について聞いています。グラフを見ていただきますと、 やはり財政的な事情を挙げている市町村、特に公立保育所について、そのような事情を挙 げている市町村が大変多いです。それ以外も、将来的に児童数が減少することを懸念して 躊躇している所も結構ございます。それ以外には、公立保育所の用地取得が困難。あるい は既存の保育所の配置との関係で立地条件が合わない。数は少ないですが、下から三つ目 のところでは「財政的余地はあるが新規参入が見込めない」という理由を挙げている市町 村もございます。 3ページ目です。3点目は、待機児童解消に向けて、どのような取組を 実施したかを聞いてみたところ、まず数として一番多いのは、特に私立保育所の新設が非 常に多いです。自治体単独による認可外保育施設の新設というのも42自治体にありました。 二つ目のところで、「施設整備を伴う定員増」というのも結構多く、その下「施設整備を伴 わない」で、既存のハコモノの中で定員増を図るという保育所も結構な割合を占めていま す。それ以外としましては、幼稚園の預かり保育の実施の勧奨、分園の設置、家庭的保育 事業の強化といったものが挙がっています。この資料には挙げておりませんが、「自由記述 欄」というものがありまして、そこの記述を若干読ませていただきます。数多く挙げられ ていますのは、「土地・建物の賃借料に補助してほしい」、あるいは「法人負担を軽減して ほしい」、というご意見が、それなりの数の市町村から出されておりました。  続きまして、参考資料2を見ていただきますと、今日ご欠席の内海委員から意見が提出 されていますので、簡単にご紹介させていただきたいと思います。まず(1)として最低基準 につきましては、「保育に携わる人は保育士でなければいけないと思います」と。「各家庭 での養育とは異なって、保育は有資格者が行うことが質を担保する最低条件ではないでし ょうか」と。(1)の最後の辺りですが「最低基準も、もっと子ども一人一人に手をかけられ るような人の配置が望まれます」という意見です。(2)は、「入所に関しては、希望される枠 は公的に責任を持って保障されるべきだ」とした上で、「やむなく私的な施設を利用せざる 得ない場合、保護者の負担は公的な場合と同等にすべきだと思います」と。(3)といたしま して「多様な働き方に対応していく公的な責任をどう果たしていくかを考えるべきではな いでしょうか」。(4)といたしましては「すべての子どもは平等であるという視点を大事にし て、大人の都合で子どもたちに不利益、格差が生じないように公的な役割を必要なだけ果 たす必要があります」と。最後に結びとしまして、「一刻も早く財源の確保をしなければい けない」ということと、「子どもたちの抱える多くの問題が乳幼児期の生育環境にあること は多くの小児科医が実感していることです」というご意見でございます。  あともう一つ、参考資料6を見ていただきますと、これは昨日の事業者検討会に出させ ていただいた資料で、これは本部会でこれまで項目に即して議論をしてきていただきまし た。この項目に沿って、どのようなご意見があったのかを私の方から紹介させていただき ました。この資料の中で、3ページ目をお開きいただきますと、そもそもこの議論の出発点 として、昨年末に取りまとめられました「子どもと家族を応援する日本」重点戦略におけ る議論があって、ここで少子化対策というのは国家的課題である。ワーク・ライフ・バラ ンスや働き方の見直しとともにサービス基盤の充実が必要である。サービスの中でも中核 的な位置を占める保育について、一部の地域だけの問題としてではなく、やはり国家的な 課題として取り上げていく必要があるのではないかというのが議論の出発点であるという 確認をさせていただいております。資料の説明は、以上でございます。 ○大日向部会長  ありがとうございました。前回の議論に関しまして、その後文書にてご意見の提出をい ただいております委員のうち、今事務局から今日ご欠席の内海委員のご意見につきまして はご紹介いただきましたが、庄司委員、杉山委員もお出しくださっていますので、それぞ れコメントいただければと思います。  まず、庄司委員からお願いいたします。 ○庄司委員  ご覧いただければ十分というような内容なのですが、先日、東京都の福祉保健局から認 証保育所についていろいろ情報提供いただきまして、これを私どもとしては、もう少し丁 寧に知るべきところを知り、検討していく余地があるのではないかと感じました。特に今、 やはり現在の認可保育所だけで対応できないところに、どういう形で対応していくのかと いうときに、東京都はやはり規模的にも認証保育所の急増などいろいろなことを考えます と、私はまだまだいろいろ気にしていることもありますが、一つの有力なモデルになり得 るといいますか、なる可能性もありますので、そういう点では、前回どちらかというと、 メリットがたくさん挙げられておりましたけれども、危惧するところはないのかどうかが はっきりしませんでしたので、ここに幾つか私なりの関心で挙げさせていただきました。  要するに、認証保育所は今、現実にはどういうニーズに一番対応しているのかというこ とも、あまり前回のご報告ではクリアではなかったように思いますので、引き続き、機会 がありましたら、厚生労働省の方から東京都にいろいろ情報提供を求めていただきたいと いう要望です。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。それでは、杉山委員お願いします。 ○杉山委員  ありがとうございます。参考資料4-1と2ということで、二つ出させていただいている のですが、一つは早めに保育の質について出しまして、もう一つは、前回の認可外保育園 のヒアリングを受けて出しました意見です。読んでいただければ大体わかるかと思うので すが、参考資料4-1の最初の方は「保育環境について」ということで、海外の調査は多いと 伺っているのですけれども、国内においてはこのような調査というのは、私の勉強不足で 知らないだけかもしれないのですが、もしかしてやっていたら教えていただきたいのです が。少子化が言われるようになって20年ぐらい経って、どのような状況になっていたのか というようなことや、それからその変化によって、保育の労働時間や雇用形態など保育の 現場がどのように変わってきたのかというようなことも、やはり調査をしていく必要があ るのではないかということで書かせていただきました。2番、3番、4番目の辺りは個人的 に感じていることなのですけれども、このところ本当に保育は変わらなければいけないと いうことで、家庭援助論が入ったり、いろいろな変化や進歩が見られると思っていますけ れども、現場がそんなにすぐ変われるのだろうかというのが私の正直な気持ちで、保育士 への負荷がとても高まっていってしまっては結局「これをやらねばならない」というばか りで、現場はできなくて疲弊していて環境はあまり良くないというのでは厳しいと思って いるので、これを足し算したら何か捨てなければいけないものも、もしかすると出てくる のではないかということを感じて、現場でできる、やってみせられるというようなところ から人材育成などを考えていくようにした方が良いのではないかと思っています。  もう1点が、これも外野からの印象ですけれども、どちらかというと子育て環境や子ど もの育ちのためには、どのようなかかわりを持ったらよいのかというところは、ものすご く進んでいると思いますけれども、全体の職場マネジメントというケアの職場をどのよう に継続的に安定的に運営していくのかという部分のありようであるとか、あとは昨今よく いわれるようになりました地域のつながり、地域交流をどのように地域として連携をとっ ていくのかという辺りの考え方などの技術やスキルなども一方で培っていく必要があるの ではないかと思っています。参考ということで、河合隼雄さんの本の中で、保育学につい て少し突っ込んでお書きになられたところがあったので、少し書かせていただきました。  もう1点目が、参考資料4-2ということで、認可外保育園に関しての意見を書かせてい ただきました。認可外保育園に関しては、私は本当にずいぶん関心を持っておりまして、 特に認証保育所のように、ある程度質を誰かが見てくださっているような施設ではなくて、 もっと届け出だけでやっているような認可外保育所、ベビーホテルといわれるような所の 保育施設がどうなっているのかというのが気がかりでなりません。ご承知の方がほとんど だと思いますが、そういったところに子どもを預けているようなご家庭こそが、実は児童 福祉的な視点から見ても対応や援助が必要であったり、かかわっていかなければいけない 場合も少なくないと感じています。そうなると、それは「多様なニーズに応える」という レベルではなくて、児童福祉的にも早急にそこから対応していかなければいけないという ところがあるのではないかと思っています。  そこにどのように切り込んでいくかは非常に難しいと思いますけれども、一つは認可外 保育園を認可に持っていくためのさまざまなアプローチを積極的に行っていくことを弛ま ずやっていくことと、前回も清原委員がおっしゃっていましたが、認可外保育園に関して は都と認可外保育園とのやりとりはあるけれども、市は直接はないというお話があったの で、そうではなくて、市町村にも一定の責任を持ってもらって、地域の子育て情報や保育 士同士の交流など、いろいろなつながりを付けていくことも必要ではないかと思っていま す。  あとは、全員が保育士になったら、それに越したことはないのですけれども、そうした ら、「だったら、やらない」と施設の人たちが思って、「もう閉所しました」となると、 その次の日から困るのはそこに預けていた親なのですから、最終的な理想の園整備をして いくためにというような事後的なやり方を考えていくことが必要ではないかと思っていま す。  後の議論とも関係すると思いますけれども、早朝・夜間保育を専門に扱うような認可保 育園がもう少し増えてもよいのではないかと思っています。それから、先ほども事務局か ら話が出ましたが、5〜20人といった小規模型の保育施設を今後は積極的に増やしていく方 向で、こういうモデルが良いのではないかというものを示していくというのもよいと思っ ています。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。それでは委員の皆様、どうぞご議論をお願いします。お手元 に資料1の22、23ページをお開きいただいて、いろいろご意見をいただければと思います。 それでは、清原委員お願いします。 ○清原委員  ありがとうございます。前回の第14回で三鷹市の取組について若干紹介をさせていただ きましたが、この認可外保育所の保育サービスの質について検討する上で、今私たちが取 組んでいることを補足させていただければと思います。私たちが保育のサービスの質につ いて注目するのは、いうまでもなく保育を受ける子どもたちにとって、その充実した内容 を保つことが第一義的に重要だからです。その上で、どのような保育サービスを受けるに しても、子どもたちに違いがないように私たちとしても実践の取組を公立保育園として取 組んでいかなければならないということです。今、三鷹市では前回ご紹介したように、保 育のガイドラインを2004年6月に策定して、これを三鷹市内における公立保育園のみなら ず、認可保育園や認証保育園や、その他保育の取組をしてくださる方との共有を進めてい ますが、その際にこのようなことを三鷹市としては留意しようとしています。それは多元 的な保育のサービスが地域で存在する上で、基軸となる保育の質の基準というものを、公 立保育園はしっかりと示していかなければならないのではないかということです。  そこで三鷹市としては例えば公立保育園を運営している中で、これまでは新設する場合 に、それを段階的に公設民営保育園とするように取り組んできましたが、今あるすべての 公設公営の保育園を、いずれ段階的にすべて公設民営保育園に変更するという方針は取ら ないことにしました。三鷹市の中に概ね七つのコミュニティ住区があるのですが、その七 つのコミュニティ住区にはむしろ公設公営の保育園を一つは必ず確保するということで臨 んでいこうと今のところ考えています。つまり、認可外保育所の保育サービスの質を考え るときに、そのサービスの質を単独で考えるのではなくて地域における保育のサービスの 質を、サービス主体がどうであろうと、それが認可であろうと認可外であろうと、一定の 基準をしっかりと示していくためにも、公立保育園が責任を持つサービスの質、あるいは 望ましさというのは、どういうものなのかについてはしっかり守っていこうと、今のとこ ろ再確認しているところです。  従いまして、この認可外保育所に、特に東京都ですので認証保育園もあるわけですが、 私たちは働きかけながら、保育内容の交流や共有だけではなくて、できる限り職員の保育 士の皆さんも実際的な交流を進めていきたいと考えていますし、先ほど話がありましたよ うにベビーホテル等につきましては、市町村がかかわれないこれまでの制度的な限界があ ったわけですが、できる限り制度的な壁を越えるような取組が進めば、認可、認可外とも に一定水準の保育サービスの質というものを保っていくことが重要ではないかと考えてい ます。  もう1点だけ申し上げますと、保育士の専門性ということが、状況あるいは環境によっ て影響を受けるというのではなくて、むしろ保育士の専門性がどのような条件の保育の場 所であっても十分生かされることが保障されていかなければならないと思います。そうい う場合に、市町村としてどのように認可外保育所の保育サービスを担っている保育士に支 援できるかということも視点におかなければいけないと思っています。ともすると保護者 に対する支援というところに、もちろん保育サービスの確保を図る市町村としては注目し なければいけませんが、働く保育士の皆さんの環境整備についても支援をしていくという ことがますます求められてくると考えています。ありがとうございます。以上です。 ○大日向部会長 ありがとうございました。他にいかがでしょうか。中村参考人。 ○中村参考人  私は不勉強で、かつては、認可外保育所という言葉から保育環境が非常に悪い施設のこ とと思っていたのですが、非常に多くの類型があるということを知り、ここでもう少し認 可基準の柔軟化を検討すべきであると思いました。利用者の視点に立った保育サービスが 提供されて、それを利用者が選択できる環境整備が一番重要な課題であると考えています。  そのためには、一定の質に裏打ちされた保育サービスの量をともに確保することが必要 となると思っています。保育サービスの量的拡大を図るためには、まず認可基準を満たす 施設については速やかに認可保育所として給付対象にすることが必要ではないかと思って います。基準を満たしている施設を認可外保育所として扱って、あたかも劣悪な状態なの かとお聞きしたら、非常に良い所も認可外となっているということがありましたので、こ れは認可保育所として取扱って公的助成の対象とするべきではないかと思います。  その上で、給付対象となる保育サービスのみでは保育の需要を満たし得ない地域では、 できるだけ多くの人が給付対象の施設を利用できるように公平性の観点からも柔軟な対応 が必要になってくると考えています。具体的には、先ほども話が出ていましたが、小規模 な所で非常に良いサービスをしている施設等、新たに認可という言葉が定義をされたもの で使えないのであれば、認可、認証とありますが他の言葉で置き換えるような、良好な小 規模認定保育園とか、こういった形の新たな類型を作ることによって解決もできるのでは ないかと思います。これを通じて認可外は悪い保育所だということを払しょくして、認可 外保育所も全体の質を上げるという形で期待できるのではないか。また、地域の実情を踏 まえた上で認可基準についても若干の柔軟性を持たせることによって、併せて保育所を増 やすということで保育の質と量の両方を上げることができるのではないかと思いますので、 よろしくご検討をいただければと思います。 ○大日向部会長  他に、いかがでしょうか。それでは小島委員、駒村委員の順にお願いします。 ○小島委員  今日の資料の「検討の視点」というところで出されているものが幾つかありますが、認 可外保育所の取扱いをどうするかということと、今、国が定めている最低基準のあり方を どう考えるかということですけれども、認可外といわれるところが全部で1万箇所、そこ を利用している児童数が23万人というデータになっていますが、これについて基本的には、 現在の最低基準をクリアし、認可保育所を基本的に目指すことが必要ではないかと思いま す。今、中村参考人が言われたように、その最低基準をクリアしたところは認可を認めて、 そこにも支援をしていくことが必要ではないかということで、今でもその基準はクリアし ているけれども認可外になっているということは、当然財源の問題もあると思いますが早 急に是正する必要がある。それが一つです。  それから、現在の国の説明で最低基準のあり方をどう考えるか。これは国の基準をやめ て各自治体に任せたらどうかという議論もありますが、基本的に最低基準といわれますの で、そこの一定の拠出を担保するという意味ではまさに最低の基準ですので、それは必要 であろうと思っています。自治体ごとの基準となってしまうと、基準が違うものに国が支 援をするということになってしまう。場合によっては基準が高いところと低いところがあ るということになると、一方は低いところの基準でも国の支援が入る。一方は基準より高 い地域のところは支援が入らないといったような矛盾や問題が出てきてしまう。基本的に は最低基準は据えた上で、その上に各自治体がどう創意工夫するかということが基本では ないかと思っています。これはサービスの質を担保する基準になると思っています。  そういう意味では、資料1の20ページに、「認可外保育施設の認可保育所への移行上の 問題点」ということで、この棒グラフの一番下に施設設置基準が問題とあります。そこが クリアできないから認可保育所になれない所が8割近いのですが、施設基準にはいろいろ ありますので、どこが一番ネックになっているのか。園庭の問題なのか、定員規模が60名 から20名となっているので、20名ないし60名のところの課題という形ということであれ ば、先ほど問題提起にもありましたが、定員を5〜20名の基準といったものについて、そ こは空白ですが、そこについてどう考えるかになると思います。そこを5〜20人の間の基 準ということも設けて、そこにも認可という形で認める。そこに支援をするといったよう な、小規模的なものも必要ではないかと思います。意見としてはそうです。小規模につい ても5〜20人についても認可保育所として認めていくような基準を作るべきではないかと いうことですが、質問としては20ページにある問題として挙げられている施設基準という ところで8割も出されていますが、ここは施設基準でどこが一番ネックになっているのか というところです。以上です。 ○大日向部会長  先に、今のご質問のお答えをいただきましょうか。 ○朝川少子化対策企画室長  申し訳ありません。この調査報告からこれをさらに分解ができないので、何があっても 結論としてよくわからないのですが、その前のページにいろいろある資料から推測するの ですが、この認可外保育施設が定員規模がかなり小さい所が多いというところからすると、 その定員規模で引っ掛かっている可能性があるのと、9ページ、10ページ、11ページ辺り を見ると、面積的には結構クリアしていそうなところが多いので、面積で引っ掛かってい る所はそれほどないという気もします。あとは、人員基準は施設基準の場合には入ってい ないとなると、調理室が引っ掛かっている可能性があります。 ○駒村委員  まず一つは資料について、地域児童福祉事業等調査報告は非常に多くのデータから構成 されていますので、まだまだいろいろ分析する余地があるのかなというのがまず一つで、 それは今後のデータのいろいろな分析の可能性について申し上げたいのですが、もう一つ は今質の話に入ってきましたが、今後の進め方として、まだ質の議論としては入り口です よね。この前からこの議論の中で一つ気になっていたのは、質といっても質の定義とか質 の構成要素が何もクリアされていない状態です。親の利用満足度を高めるのは質。これは 質の一つの要素かもしれませんが、それと引き換えに子どもの育ちの方が劣化していれば 質が上がったとはいえないわけです。問題になってくるのは子どもの育ちというところで 特定化される質はどのように構成されているのか。それは何らかの方法で実証的に測定可 能な議論なのか、測定が非常に難しいけれども先ほども議論が出た認可基準等々の中で、 これを劣化させたり動かすことで質自体に影響を与えることを間接的に即、できる話なの か。その部分が明らかでない以上、質の話ができないのです。そういう意味では、有識者 から質の話で構成要素をお聞きできると思いますので、議論の中で質というのは注意深く 使わないと、質を維持したままうんぬんという話は非常に空中戦になってしまうという心 配をしています。 ○大日向部会長  ありがとうございます。ただ今ご議論いただいておりますのは、認可外保育施設の質の 向上ということで、それに関して先ほど中村参考人から基準を満たしているものは認可し て公的助成の対象とすべきではないかという意見がありまして、この辺りは大方の委員の 同意も過去の議論で得られていると思います。ただ今、駒村委員がご指摘くださっている ように、その基準とは何なのか。小島委員は最低基準は国が統一すべきではないかという ご意見も出されましたし、清原委員はその辺りに関して行政として市区町村、地方自治体 として、その質の維持にいろいろご苦労されていることをご紹介くださったと思います。  その辺りから今、駒村委員がおっしゃった通りで、質は果たして親の要求に応えること なのか。もっと子どもの発達に関した質の議論も必要なのか。そしてこの辺りに関しては 実証的・科学的な検討が必要ではないかという前回の皆様のご指摘がありまして、お二方 の参考人に今日はご出席いただいていますので、この辺りで次のコーナーの方に入らせて いただいてよろしいでしょうか。  それでは資料2、前々回の資料4に当たりますが、保育サービスの質については全般的な 質に関してもう少しさらに深めた議論をいただきたいと思いますが、それに際しまして、 最初に確認的な意味合いもありますので事務局からご説明をお願いした後で、お二方の参 考人からヒアリングをお願いしたいと思います。 ○朝川少子化対策企画室長  それでは、簡単に。資料2の2ページ目をお開けいただくと、この質に関連するいろい ろな背景として核家族化の進行、あるいは家庭の教育力の低下、あるいは子育ての孤立化 に伴う保護者の負担感、あるいは障害児保育の対象となる子どもの増加、ひとり親家庭の 増加という家庭環境などの変化が近年見られるという背景がありながらということで、そ の上でこういった論点があるのではないかというのが3ページ目です。一つ目は今、部会 長におっしゃっていただきました科学的・実証的な調査・研究で継続的な検証を行ってい く仕組みの構築という論点があります。二つ目が最低基準のあり方。どこまでを国の基準 で担保して地域性をどこまで認めるか。三つ目としては人員配置をどのようにしていくか。 四つ目としては保育士の養成研修をどうしていくか。五つ目としては保育士の労働条件の 整備・改善をどうしていくか。六つ目としては監査や第三者評価の仕組みをどうしていく かの論点があるのではないかと思います。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。それでは、ヒアリングに入らせていただきたいと思います。 まず、小林参考人からお願いします。 ○小林参考人  それでは、座ったままで失礼いたします。私にお話がまいりましたのは、NICHDの保育 に関する研究の成果を話し、その中で今問題になっている保育の質その他の研究の話をす るようにというご指示です。NICHDといいますのは、「国立小児保健・人間発達研究所」 と訳しますが、ワシントンDCからニューヨークに向けて約1時間くらいドライブすると、 べセスダという町があります。そこにあるNIH国立健康研究所には、それこそこの国立小 児保健・人間発達研究所から始まって、がんの研究所まで幾つかのアメリカを代表する医 学研究所があります。大学にいましたときから、その研究者との行き来が多少あり、私自 身も定年後は、育児や保育、教育の問題を少し勉強したいと思っていたものですから、あ る機会に当時の所長はヤッフェ先生が、80年代の後半くらいだったと思いますが、NIHで は91年に保育の調査研究を始める計画を教えて下さいました。それは恐らく80年代に母 親が育てるべきか、母親以外ではまずいのかというディスカッションがアメリカの各地で 問題になったのだろうと思います。それでNIHが早速千数百人の1991年に生まれた赤ち ゃんを、毎年10の地域に分けて、24の小児病院ないしはそれに準ずるセンターと、30人 ほどの発達心理学者によって、コホート・スタディー、フォローアップ・スタディを始め たわけです。それで私も定年退官後の2000年にそういった問題をもう1回考えてみたい思 い、サーラ・フリードマンという女性心理学者で、当時、このプロジェクトのまとめ役を している人をお呼びして、小さな国際シンポジウムを開き勉強しました。それは参考資料 の5の中にあります。今回お配りした資料はその第二のレポートでありまして、フリード マンは退官していますので、その後の新しいスタッフによる4歳半までの1,364名の子ど ものフォローアップ・スタディの成果をまとめたデータと思います。これのもう少し厚い 本文があるのですが、それもいずれは訳されて出版される予定になっていますので、委員 の先生方には役に立つ機会が今後とも出てくると思います。  その時のテーマがマターナルケア。つまり母親のケアと、ノン・マターナルケア。つま り保育所のケアを中心として保育所以外のところでもやっているママ保育というか、家庭 保育というかそういうものも含めて調べたわけです。そうしましたら、要するに母親によ る保育というものの価値が絶対的ではないというのが、この研究のプロジェクトの要点で、 家庭に問題がなくて、経済的な要因や養育行動の質もよくて、家族が皆仲良くしているよ うな家庭の子どもであって、家庭外保育を行った場合に保育の質が良ければ、すなわち保 育者と子どもの人数の割合や保育者が専門教育をどの程度受けているかは、子どもの知的、 言語的、行動的発達には影響はほとんどない。影響の強さからみると、どちらかといえば 保育所よりも家庭の方が強いけれども、保育所が悪いということはないというデータにな っています。しかし、保育の時間の長さ、保育施設のタイプ、大きさといったものでは社 会性にわずかではあるけれども問題が出ているというデータです。これはあとで触れます が、つまり適当な規模でそして保育の施設もよくて保育士がきちんとしていれば問題がな いというデータであります。  それから、そのときにこの資料3をご覧になるとおわかりになりますが、保育者の質と いうところには前のレポートでは、保育者のセンシティビティーとインタラクション。す なわち、保育者が子どもの心を読み取る力があって、読み取ってそれと手際よくインタラ クションする、相互作用する。例えば、子どもが欲しているものがあればそれをとってあ げる、抱っこしてあげるとか、質問をして会話のきっかけをつくるとか、と書いてありま した。今回は保育の質の定義として、保育面から観察可能な行動を多方面から観察して、 ポジティブなケアギビング、養育をしているのが保育の質なのだと定義しています。です から、この中で保育者がポジティブな態度をとることが非常に重要だと。生き生きと子ど もをよくお世話し、微笑みかけるような態度を取るとか、あるいは身体的な接触、抱くと か、肩に手をかける。頭をなでるというのは書いていませんが、日本だと頭をなでるとい うのが入ると思いますが、子どもが困ったときには慰めてあげるとか、子どもの発声や発 語に応答する。子どもが言っていることを復唱したり、言いたいと思うことをこちらが心 で察して応答する。あるいは逆に質問するとか、子どもに答えられると思うような質問を して、つまりイエス、ノーで答えられるものをやってコミュニケーションを進めるとか、 家族やおもちゃの話で子どもと話し合う。他の子どもとも話しかけるような機会を作る。 ほめる。学びの手助けをする。物語、歌を歌うとか、子どもの発達を助ける。すなわち、 よちよち歩き始めるのに子どもが立ったりするのを助けてあげるとかいうことです。さら には、微笑みかけるとか、友達と一緒に遊ぶとか、本を読むとかそういう読む力を進める とかです。これに反して、ネガティブな相互作用は避ける。すなわち、子どもを驚かすよ うなことをしない。優しく語りかけることを、やさしさを十分与えるようにすることを強 調しています。  この資料の3をご覧になりますと、アメリカのNICHDの使った保育の質という定義は そこにあると思います。ここで保育時間が著しく長いと問題があるとか、著しく大きいと 問題があるという話が出ていますが、大体どのくらいの保育時間かというと、1週間の中の 保育時間で、3か月〜1歳半で30時間以上というのが37%です。30時間未満が27%。10 時間以下だと36%。大体平等に分布している。これは3か月から1歳半の子どもです。3 歳〜4歳になりますと、当然1週間に30時間以上が50%。30時間未満が31%。10時間以 下が15%となっています。  そしていろいろと調べた結果、子どもの認知、言語的なスキルや就学前の準備(就学準 備)など、そのようなものは保育とは全く関係ないというのです。むしろ保育が良ければ よい場合もあり得るということを強調しております。ただ、2歳半や4歳半で週10時間以 上の保育だと母親とのアタッチメントが不安になった例があるなど、小学校1年の時点で 協調性や従順性が低かった例、週30時間以上だと4歳で問題行動の頻度が少し多いようだ と報告しておりますけれども、医学的に行動問題や精神病理的問題は、ほとんど保育時間 と関係がないと報告してます。むしろ保育そのものよりも、家庭の中での親の育て方など、 そういうものの影響が強かったと報告しております。  ディスカッションの時間を残した方がよいと思いますので、とりあえずご報告させてい ただきました。 ○大日向部会長  貴重なご報告をありがとうございました。小林参考人に1点少し補足説明をお願いした いと思いますが、私どもは保育の質に関心を持って議論をしております。先ほど保育の質 に関して詳しいご紹介をいただきましたが、4ページの「保育の質に影響する構造的要因」 に書かれているところも、もしよろしければ若干ご説明をいただければと思います。 ○小林参考人  私も保育のことをよく勉強していないので、ご質問の趣旨がわからないので、もう1回。 ○大日向部会長  保育の質に影響する構造的要因とは何かということを4ページのところでご説明いただ いていたと思います。小林参考人の資料のところです。 ○小林参考人  これはここに書いてある通りだと思いますけれども。本研究では大きな枠組みを設定し ており、(2)で保育の質(ホジティブな養育行動の生起頻度)をプロセスの変数として、保育の 構造的設置基準の変数としては、大人と子どもの人数比率・クラス規模・保育者の学歴や 幼児教育に関する専門教育課程の4変数を測定していると書いてありますが、私は先ほど 触れなかったものですけれども、そういうものを枠組みとして保育の質がどういう影響を 与えるかを調べたわけです。そのときに立てた仮説は、マターナルケアで差が出るのでは ないかということであって、それに対しては差がないということを立証したと私は理解し ました。大人と子どもの比率やクラスサイズが小さいほど、保育者の学歴や専門教育歴が 高いほど、保育の質は良質なものになると、ここに書いてあると思います。 ○大日向部会長  ありがとうございました。それでは、続きまして藤森参考人、お願いいたします。 ○藤森参考人  藤森です。よろしくお願いします。時間を15分与えられましたが、うまく説明できるか わからないのですけれども。8時間ぐらいいただければ説明できるのですけれども、15分 では少し心配です。  私は現場をやっておりまして、保育所を運営しております。その中から、例えば今言っ た「保育の質」がどうなのかということに対する、担保するという条件で保育所保育指針 が告示化されたと思っております。今までの最低基準の保育内容は、健康の有無や服装の 異常の有無ぐらいを見るだけだったのですが、今回はこういうことということがあるので、 そこは研究者の方たちがご議論されて、発達論などのいろいろなデータから作っているの で、そこの証明をしても仕方がないので、そこは信じるとして、私たちはその指針に沿っ て、そのように保育をするかということから、見ていきたいと思います。  ただ、私は今回の指針で不満なことが幾つかあります。現場として不満なことです。そ れから私はもともと大学を建築で出たものですから、その点から不満なところが幾つかあ ります。例えば、子どもの発達は環境を通してという前回の指針の改定、それから教育要 領の改定から環境論が出てきたわけです。環境を通して行うと。そして、その環境との相 互性により発達すると書かれているのに、環境の質をきちんと議論しない。第7章は、環 境の中に特に保育士の質と園長の質という大人の質の向上しか議論していないのが少し不 満なのです。  ただ、今回はその他に面積など、いろいろと検討し始めていますので、その辺はどのよ うに出るかわかりませんけれども、世界の保育を見たときに、例えばイタリアのレッジオ 市の取組を見ようがどこを見ようがきちんと建築家が入っています。建物や空間というハ ード的な環境も子どもにどう影響するかということがとても研究されているのですけれど も、日本はそれが甘いです。人という心の問題がいかにも胸にあるかのように議論するの ですけれども、そういう意味ではもう少しきちんと議論した方がよいと思います。  そういう観点から、私は新宿で保育園をやっていますので、たまたま私どもの園の側に もあります認証保育所を幾つか見る機会があったり、私の友人が認証保育所をやっている などで、いろいろな認証保育所を見るときに幾つか疑問に思いました。それから、評価す べきことを思いました。まず、ある良いといわれている認証保育所に行きました。良い悪 いはそれぞれありますので、認証保育所が悪い、認可保育所が良い、どちらが良いという ことは一概に言えません。良い所はどこにもあるし、悪い所もどこにもあります。ただ、 良い所がそれ以上良くなり得ない一つの基準があるのだろうということがあるので、それ をお話しします。  良い所に行きました。そうするとまず入った瞬間とても安全な環境であると思いました。 壁にはマットが張ってあり、角は全部丸く、子どもたちはけがをしないだろうと。それか らとても清潔でした。安全で清潔でした。とても清潔で、衛生面は配慮されていました。 そういう意味できれいで清潔、安全でした。  それから保育士の数はというと、数は割と多くいました。そんなに少ない劣悪ではなく て、きちんと保育者が多くいました。ただ、これは後の面積のところで出るのですけれど も、子ども1人当たりの議論をしますが、0歳児が3人いると1人大人が入るのです。です から、人が多いというのは大人がたくさんいるということですので、面積は非常に狭くな るのです。そういう意味で、そこの園はとても先生たちが多かったです。  私たちが懸念するのは、多いと何でもやってあげてしまうのではないかと思ったら、そ んなことはありませんでした。例えば、トイレから出てくるときに、ズボンや洋服を着せ ないで、自分できちんと着るように床に置いて促していました。それから食事のときも、 口の中にどんどんと入れないで、きちんと子どもたちが自分で食べるように側で援助して いました。ですから、子どもたちはかなり自立していました。自分たちでいろいろなこと がどんどんとできていました。そういうことがあって、自立は問題ないだろうと。  その次に知識はどうだろうかというので、いろいろと子どもたちに聞いてみました。例 えば、2歳の子どもに給食にニンジンが出ていましたから「これは何ていうの」と聞いたら、 きちんと「ニンジン」「オレンジ色」と答えていました。とても知識も豊富でした。そうす ると、保護者がその子どもを家に連れて帰ったら、自分で服はどんどん着るようになり、 食事は自分で食べられるようになり、それから知識はいろいろと豊富だと。これは良い園 だと。けがもあまりしないし、清潔だと。多分すごく良い園だと評価します。そしてとて も人気があります。  そう思って見たときに、私がまず一つ思ったのは、こういう保育園というか、こういう 場所は何をする所だろうかと考えたのです。そうすると、当然よく言われるのは子どもの 最善の利益を求める所というのですけれども、私はいろいろな物事は両立しないと思って おります。例えば育児と仕事の両立支援とよく言いますが、私は育児と仕事は両立すると 思っておりません。ある時間仕事をしたら当然その時間は育児はできませんし、ある時間 育児をしたら仕事はできません。ですから、世界の中では育児と仕事の両立支援という言 い方ではなくて、バランスと言います。調和支援です。育児と仕事をどう調和させていく かです。そしてその調和をするときに、何を優先していくかです。ですから、例えば日本 は緑があって空き地もたくさんあるのですけれども、もしなかったら一つの面積に数を増 やしたかったら一つずつが小さくならざるを得ません。大きくしたら当然数は減るという ように両立はしないのですけれども、それは何をまず優先させるか、それをどこですり合 わせていくかです。そのときに子どもの最善の利益といっても、私は子どもの最善の利益 ではなくて、やはり国家の最善の利益を求めなくてはいけないと思っております。という ことは、この部会の目的は、次世代をどうつくっていくか、次世代を担う子どもたちをど うつくるかということが国としての課題を考えることだと思っております。数を増やすこ とが課題ではなくて、国を支える人材をどうつくっていくかだと思っております。それが とても乳幼児期に意味がある、乳幼児期にキーワードがあるということで、今OECDも ECECというEarly Childhood Education and Careですが、乳幼児期の教育と養護 ということを出しているのは、これから経済を担うOECDでさえ、乳幼児期を大切にしよ うと出ているのです。そのときの観点で言ったときに、何が次世代を担うか。  たまたまフィンランドから私どもの所に見学にみえたときに、「フィンランドは学力が高 くてよいですね」と言ったら、答えが「この少子化で人口が少ない国で1人の落ちこぼれ も出せないのです」と。子どもは全員大切なのですというお話をされたのです。そういう ことを考えたときに、私たちもこれから少子時代に入ったときに、一人一人の子どもをと ても大切にしないと、数を増やしてその子どもたちが事件を起こしたり、その子どもたち が社会を破壊したり、仕事をしなかったりと、そういう数を増やすと、余計に負担が増え るわけです。そういうことも私たちは担わなければいけないということで、きちんと質を 考えなければいけないというときに、最近の発達論、育児論、それから学力観の見直し、 これはOECDがやってPISAの学力調査でもわかるのです。これも簡単にいうと、何が今 の学力なのかというと一番今社会で求めているのはコミュニケーション能力です。コミュ ニケーション能力を求めています。それから、自ら問題にぶつかったときの問題解決能力 です。その二つのキーワードは何かというと、子ども集団が一つのキーワードです。子ど も集団がそれらの力を培っていく。それなので、多分親と施設のどちらが子どもにとって 良いかといったときに、親が良く、特に良い親ほどよいです。しかし、子ども集団の中で 育てることは、今は難しくなってきているのです。ということで、子ども集団の中の育ち が保育園の役割の一つです。  それからコミュニケーション能力や問題解決能力はどういうことかというと、これは指 針の発達論に書かれています。どのように書かれているかというと、子ども自ら環境には たらき掛ける。そしてその環境との相互作用により発達すると書かれています。子どもが 自ら環境にはたらき掛けないと子どもたちは発達してこないのです。認証保育所を午前中 ずっと見ていましたけれども、子どもが自ら環境にはたらき掛ける場面がなかったのです。 狭いのでおもちゃはしまってある。そして、出してきてこれで遊びましょうと。それから 食事も並べて次は食事ですとして、子どもが自分で環境にはたらき掛けるということがあ りません。それから、目の前で世話をする先生が決まっていますので、この先生に行こう という、人という環境、物という環境に対して、子どもが自らはたらき掛ける場面があり ませんでした。  それから、その次に子どもたちが主体的に活動する場面がありませんでした。これも私 は面積的に問題があると思っております。例えば、お散歩から帰ってきて、みんなでシャ ワーを浴びよう、トイレに行こうと。そうしたらそこしか部屋がありませんので狭いです。 そうすると、玄関先に靴箱のところに全員座らせて、先生が本の読み聞かせをしています。 そして5人だけシャワーに出します。そしてシャワーが終わった子どもが食事をする所に 座ったら次の5人を出します。私から見るとベルトコンベアです。順繰りに送り出して、 順繰りにその通りに子どもは動いています。子どもが主体的に活動するということ、それ から選択をする、自分の意思を伝えるという場面は見られませんでした。これはとても良 い認証保育所だったので、先生たちも一生懸命なのですけれども、場所的に無理です。1部 屋しかないのです。お昼寝は隣の子どもと重なっています。布団を全部敷いてすき間があ りません。ということは、食事をした子どもを次から次へとお昼寝の場所に奧から詰めて 寝かせていくのです。ですから、眠くない子どもを起こしてあげる、眠くなったら行くな ど、そういうことができないのです。これも場所の問題です。ですから、子どもたちが自 ら環境にはたらき掛ける場面がなかった。主体的に活動する場面がありませんでした。  それから最大の問題ですが、子どもがかかわる場面が少ないのです。子ども同士という ものは当然、ある危険が伴います。それはケンカをするなどです。そういうことを親はと ても不安に思うと思っているらしくて、安全ということを優先させると、子ども同士をな るべく触れさせません。食事をしているときも、ある子どもが隣の子どもに話し掛けよう としたら、先生がいすを置いて話を取って、先生と子どもで話をします。子ども同士のか かわりが非常に少ないです。そういうことがあると、いわゆる関係性発達ということが行 われなくなっているのです。  今、指針の発達のところに重要なことが書かれていると思います。これは発達論の基準 なのですけれども、子どもはさまざまな体験を元にして自ら環境にはたらき掛ける。この さまざまな体験というのもこれは場所的に仕方ないのかと思いますが、このさまざまな体 験をするためのさまざまな部屋もないし、さまざまなものがないのです。それが一つです。  さまざまな体験を元にして、自ら環境にはたらき掛け、環境との相互作用により発達す るという指針の項目。自ら環境にはたらき掛けるには、やはりある広さが必要なのです。 そして環境との相互作用により発達する。そしてその環境の中で一番大事なのは人です。 その中で特に思慮深い、愛情豊かな大人との関係が重要であると書かれております。けれ ども、この大人との関係で重要なのは、今回の養護とは少し違う、いわゆる世話や保護と いう部分が大事なのですけれども、発達においてはこの大人との関係を起点として他の子 どもとの関係にいくのです。他の子どもとの関係の中で、子どもたちのいろいろなことが 発達していくのです。この他の子どもたちが少ないのです。それから、他の子どもへかか わることをあまりさせないのです。それを考えたときに極端なことを言えば、発達してい かないのかなと逆に思ってしまいます。服が着られる、1人でいろいろなことができる、そ れからものを知っている、いろいろな知識があるというかつての自立ということは、もう 世界の中では古い学力観です。それはパソコンができてから、そういうものの学力はあま り価値を持っていません。それよりどう人とコミュニケーションを取っていくか、それか ら問題が起きたときにどう問題解決をするか、それからどのように行動抑制をしていくか。 これらは脳科学でいうと、多分前頭葉の働きです。まだまだ解明されていませんけれども、 前頭葉の働きの部分です。昨日もちょうどNHKで前頭葉の働きのことを言っていましたけ れども、笑うと前頭葉がとても動くというのです。そういうことを見ていると、見た園は とても良い園なのですけれども、子どもの笑い声があまりないです。ですから、多分後頭 葉はとても育つだろう。けれども、前頭葉は衰えてくるだろうという感じがしました。と いうことは、これからの時代の必要な前頭葉の力が、育ちにくい環境かもしれないと思い ました。それは、ただ、問題はあります。なぜかというと、一緒に見に行った学生がいる のですけれども、私がそういうことを言ったら、「先生、そういうことを言ったって、認可 の保育園だってそういう園は多いのではないですか」と言われました。一番痛いところを 突かれました。そのときに私が答えたのは「認可保育所は広さがあるから変えようがある。 広さがない所は変えようがない」と言ったのです。確かに今は良いところ、悪いところは それぞれあるのです。それぞれあるけれども、みんな良くしていかなければもちろんいけ ないのです。ですから保育所保育指針が告示化されるのです。  その保育所保育指針が告示化されたので現場が一つずつやっていこうとしたときに、ど うしてもできないのが広さや物の多さ、人の数などです。それを告示化されて法律でやれ というのであれば、それをやれる保障をぜひしてほしいと思います。だからといって無制 限に広ければよいとは思いません。人とかかわる場合に触れ合う。子ども同士が触り合う こと、触れ合うことはとても前頭葉を促しますので、必ずしも広い所で広々と1人ずつが ぽつんとすればよいというつもりはありません。やはり子ども同士が群れたり、重なり合 ったりということも重要です。そしてそれをするときに、ふと1人になれる場所も必要で す。子どもの育ちの中では、必ずしもただ広くしろ、人を増やせと言うつもりはありませ んけれども、どのようにしたら将来、次世代を担う子どもたちが育っていくのだろうか。 どのように発達をきちんと保障していくのだろうと思ったときに、この少子社会でとても 重要なのは人とかかわる力だと思っております。  それが最近ヨーロッパに行くと、日本の福祉の貧困さというのは何かというと、子ども は親が一番良いのなら親が育児できることを保障することが福祉ですから、育児休業を延 ばす、介護時間を増やすなど、本当はそちらにいかないとおかしいのです。現場からして 夜間や休日というのは、本当はおかしいと思いますけれども、例えば、現実にそこで行き 詰まっていたとしたら、それは充実できます。逆の意味で、今6年ぐらい続けてドイツに 行っているのですけれども、育児休業が3歳まであるのですが、減らそうという動きがあ ります。これは何かというと、少子社会では3歳まで家に置いておいたら虐待だというわ けです。というのは、子ども同士のかかわり合いが非常に少ないということなのです。子 ども同士がかかわる場所は、今は保育園しかないと思っています。ですから、逆に過疎で 子どもが少なくなった地域こそ保育園を残さないと、子どもはバラバラになってしまう気 がします。そのようなことを考えたときに、私たちはもう一度保育内容を見直さなければ いけないと思っております。今までのように手を掛け、面倒をみて、何かをしてあげて、 教えてあげるような保育から、子どもが子ども同士のかかわりの中で主体的に活動し、自 ら環境にはたらき掛けるような保育に変えていかなければいけないと思っております。け れども、変えていける余地がないと、とても不安だという気がします。  早口ですみません。以上で一応言いたいことは終わりましたので、質問があれば言って ください。 ○大日向部会長  ありがとうございました。限られた時間で恐縮でした。  小林参考人からは、NICHDの長期にわたる実証的・科学的研究から保育の質は何か。そ してその保育の質に影響する要因についてご説明いただきました。また、藤森参考人はた くさんの認証保育所をご覧になっていらっしゃるご経験から、認証保育所の良い点は多々 あるけれども、その中で3点。子どもたちが自ら環境にはたらき掛けることができない、 主体的活動の場面が少ない、またはない、そして子ども同士がかかわり合う場面が少ない。 これはいずれも狭さに起因した問題で、しかもその狭さは変えようのない空間的な限界だ ということをご説明いただきました。これを藤森参考人は子どもの最善の利益か、国家の 最善の利益かと、VS構造でお示しくださって、そこの辺りは異論があるかもしれませんが、 私は今ご説明いただいた3点は、いずれも子どもの最善の利益に間違いなくつながる点で はないかと大変興味深く伺いました。お二方の参考人、ありがとうございました。  それでは、ここからどうぞ皆様方にご議論いただきたいと思います。清原委員は早めに ご退出と伺っております。どうぞお願いいたします。 ○清原委員  お二人の参考人、ありがとうございました。  藤森参考人に1点だけ質問をさせていただきます。実は今日の参考資料1で「待機児童 解消対策に関する自治体アンケート調査結果」が紹介されましたが、その3ページ目をご 覧いただきますと、「待機児童解消に向けて実施した取組」の中で、4番目に「幼稚園の預 かり保育の実施の勧奨」があります。藤森参考人は認証保育所を多くご覧になっている観 点から、ただ今のご報告をいただいたのですが、幼稚園の場合には広さ的には認可幼稚園 であれば十分だと思いますが、時間の延長ということで対応するということになるかと思 います。藤森参考人は幼稚園につきましてもご見学されたり、保育園と比較されたご経験 がおありではないかと推測されまして、認定こども園等、幼保の一元化等の取組も進む中 で、幼稚園の預かり保育等についてご所見がありましたら教えていただければと思います。 以上です。 ○藤森参考人  では簡単にお話しします。新宿区はモデルで認定こども園をつくっています。そこの中 で問題点が幾つかあります。一つは発達の連続性をきちんと踏まえていないのです。途切 れています。発達の連続性です。ゼロからどのように発達してきて、それを小学校でどの ようにつないでいくかです。ECECは人生のより良いスタートを切らせるためにという0 歳児保育と、それから小学校にどのように移行していくかということの二つが大きな課題 です。その辺がきちんと押さえられていません。ここの年齢までは保育園、ここまでは幼 稚園というような言い方をしているのが一つの問題です。  もう一つは生活の連続性です。これは保育所保育指針に書かれていますけれども、子ど もたちはあらゆる生活の場面から学んでいきます。午前中のコアタイムで学んで、午後は ただ預かれればよいわけではなくて、そこからも学んでいます。ですから、これは家庭を 含めて子どもたちの生活の連続性の中から学びをさせていかないといけないと思っていま す。これは言葉の問題もあるのですけれども、ただ、保育園はやはり本来「幼児共育」だ と思っております。ただし、「教育」は学校教育の教育という意味とはもちろん違います。 これはいろいろな体験をして、自ら環境にはたらき掛けるという意味なのですけれども、 発達の連続性と生活の連続性を踏まえて、こども園にしても幼稚園にしてもそのような観 点を持たないと、子どもたちは分断されてしまいます。ある時間だけ教育するというのは、 今、脳科学でいうと、8歳以上の臨界域を超えた先のことです。8歳まではそうではないと 思っておりますので、その辺をきちんと議論してつくられた方がよいと思っております。 ○清原委員  ありがとうございました。 ○大日向部会長  他に、いかがでしょうか。駒村委員、お願いいたします。 ○駒村委員  小林参考人と藤森参考人それぞれにぜひ教えていただきたいと思います。大変興味深い お話だったので、非常に勉強させていただきました。  一つは保育の質についての測定ですが、このサラ・フリードマンの研究にしても、小林 参考人が要約された研究にしても、心理的な認知・社会性・情緒性のようなスコア、例え ばフリードマンの文献によると、18ページにこのようなスコアが表示されていますけれど も、保育の質を間接的に定義することはなかなか難しいと思いますけれども、子どもの発 達というのはこういうスコアで測れるというのが割と世界で標準的な考え方なのかどうか ということを確認させていただきたいのがまず1点です。  それから藤森参考人には、先ほどのハード面です。サラ・フリードマンの研究は割と人 材面の保育者の配置や水準の話ですけれども、ハード面も子どもの発達に影響を与えると いう研究があるというお話だったのですが、それは子どもの発達は同じように、何か尺度 的なもので測定された研究があるということなのでしょうか。それぞれ一つずつ教えてい ただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○小林参考人  成長は非常に簡単です。身長や体重を測ればそれで大体成長のパラメーターを測れます けれども、心の発達や行動の発達になりますと、良いパラメーターを作って定量的にやる ことは難しいと思うのです。しかし、このような研究で有意差を検定するという、つまり フォローアップ・スタディ、コンフォート・スタディの中で、母親がやった子育てと保育 所でやった子育てを比較するときに、数値化しないと有意差検定とかそういうものができ ないもので、ある意味テンタティブにといってもよいと思いますが、そういう方法はしば しば使うのです。それで、ここで観察可能な行動の面を見て評価して比較するということ でやったと思うのです。これは医学あるいは自然科学の常識的な研究方法の手段だと思い ます。それでは絶対かといわれれば難しいです。ですけれども、普通やることでこれは極 めて妥当な、それ無しにやってしまうとみんな感想的な意味になってこちらの方が良いと いう話になってしまう。日本では母親の役割が絶対的だといっていたのも、ある意味では そういうものかもしれない。でも母親の子育てと保育園の子育てに有意差がないと提示し て、いろいろな問題が起こるとすれば家庭の方が保育園よりも重要な役を果たしていると いうことをNICHDは数値で言っていると私は思います。 ○藤森参考人  ハード面の実証というのは、はっきりいって幼児期はありません。学校建築においては かなりあるのです。アメリカでオープン・スクールというものが1960年代に流行したのは スプートニク・ショックという宇宙開発競争にアメリカが負けて学校建築はどうなるのか 見直したときに出たことですので、そういう形態を含めたものはあるのですが、なかなか ありません。それを今、日本でやろうとしています。なぜかというと、最低基準の面積を どうするかという検討委員になっていますので、例えば座って大人が子どもに物を与えて 遊ぶときの広さと、子どもが自ら何かを出してきてそれで友達と遊ぶときの広さは多分違 うはずです。それを行動面積といいますが、座って本を読むときの面積と子どもが動いた ときどのくらいの面積かを測って、今いろいろな行動においてどのくらい広さが必要かと いうことを、今調査をしています。これは日本で多分始めてかもしれないし、世界でもあ まりないかもしれないけれども、ただ諮問されているのは1年以内で答えを出せといわれ ているのでとても苦しいのですが、それが面積として出せるのかどういうことかわかりま せんが、今そういうことを研究しています。 ○大日向部会長  小林参考人、それから吉田委員。 ○小林参考人  ちょっと今の話に関連してお話しさせていただきたいのは、「日本子ども学会」という学 会をつくりまして、子どもの問題は学際的に考えよう、つまり保育の問題も小児科の先生 だけでは駄目で、教育学者も建築学者も入って皆で考えようという趣旨の学会です。この 「子ども学会」ではチャイルド・ケアリング・デザインという発想を考えました。子ども のことをよく考えて、子どもの立場になって、物事をデザインしよう。その中の一つに保 育園のデザインももちろん入っていますし、幼稚園のデザインも学校のデザインも入って います。それだけではなくて、ある意味でいうと行政も行政のあり方もチャイルド・ケア リング・デザインで修正しなければならない時代になっていると思います。例えばイギリ スでは家庭子ども省ですか。韓国でもそういうものができたといいます。北欧は昔から子 ども家庭省というものがありましたが、そのような物事を一度子どものスタンスに戻して、 いろいろな学者が皆で考えて設計するという発想をしないと問題は解決しないのではない か。得てして専門家の集団だけが集まってがやがややっていることが、今の日本の現状を 良くしていないのではないかと実は思っているわけです。 ○大日向部会長  ありがとうございます。吉田委員がお手をお挙げになっていましたね。 ○吉田委員  小林委員と藤森委員に一つずつおたずねしたいのですが。小林委員には直接該当する質 問なのかどうかよくわかりませんが、この結果によるとマターナルケアとノン・マターナ ルケアはそれほど大きな違いがなかったということですが、どういう測定なのかわからな いのですが、例えばOECDでは子どもが置かれている家庭環境によって将来の成長発達に 影響があり得るということが言われています。家庭環境の違いを超えて、すべての子ども が健やかに成長し将来の人材となるためには質の高い幼児教育なり保育が必要だという話 だと理解しているのですが、その意味では保育の質もさることながら今、家庭環境が大変 さまざまである。そうするとマターナルケア自体が、その前提条件がこれからの日本は違 ってくる気がします。その点をどう考えたらよいかというのが一つです。  それから藤森委員の方には良い認証保育所。良いという言葉に若干皮肉がこもっている ような気がしましたが、本当に良いとは思っていらっしゃらないと思っているのですが、 それにしても一般の認可外保育施設に比べると、認証保育所は年度途中で2.5平方メートル になる等の問題は別として、基本的には認可保育所に近い最低基準をもっているわけで、 園庭が狭いところはありますが、保育所のスペースに関しては極端に認可保育所と認証保 育所は違いがないのではないかと私は思っています。裏返していうと認可保育所であって も最低基準ぎりぎりだと先ほど先生がおっしゃったような問題が出てくると考えてよいの でしょうか。 ○小林参考人  アメリカのNICHDがやった研究は、1,200人ほどの子どもたちを生まれてすぐから追い かけて20幾つかの小児病院も分担してマターナルケアとノン・マターナルケアを比較した わけです。そして全部いろいろなパラメーターを評価してみると差がない。ただし、保育 園のスケールや秩序、質、先生の教育のレベル、施設の広さ、子どもの人数や先生の割合 を考えると、保育の質が良ければ母親と家庭の問題がきちんとしていればマターナルケア もノン・マターナルケアも差がないという話です。それはよく考えてみると、例えば一昨 年のノーベル賞をもらった島津製作所の田中さんは叔母さんに育てられているのです。マ ターナルケアではなかったわけで、自分が東北大学に入ったときに親がどんな親だったか 探し回ったという話が出ていました。ですから、極言すればどんな子どもであっても、親 に代わるような良い人がいればという意味と私はとったのです。したがって、日本でも保 育をもう少し充実すれば、今のようなディスカッションはなくなってくると実は思ってい るわけです。OECDの話も出ましたけれども、OECDはなぜ経済の問題を扱っているのに 子どもの育児や教育問題を扱うかというと、発展途上国の問題をどのように処理するかと いう先進国家の大きなテーマです。それを最近は脳科学とか教育だとか保育というテーマ に広げていって、それこそ日本も科学技術機構が一生懸命やっていますが、これはいろい ろな立場から、科学的な手法を使って、保育の問題も、今はチルドレンズ・イシューとい っていろいろな問題もありますが、そういうものを解決するには科学的手法を使って学術 的に、いろいろな立場の人が英知をしぼって解決しない限り、解決できないと考えられま す。それは非常に多要因が絡まった問題だからです。一つのシングルな原因で保育が良い から悪いからというだけの問題ではなくて、親の問題も入ってきて、いろいろなものが入 ってくる多因子がからみ合って問題を起こしているのです。そんな問題をどうやって解析 するかということを、NICHDは手際よく現在の手法でやれる限りのことをしたものと私は 評価しています。 ○藤森参考人  面積のことですが、広さが子どもにとってどのくらいの広さが必要かだけを議論すると、 一緒にいた学生に面白く言われました。「こんなところで保育したら子どもがかわいそうだ ね」といったときに、「でも、家だってこんなものではないですか」といわれました。その ときに私はどこが違うか。家には向こうの方にトイレがあって向こうに台所がある。いろ いろなものが生活なのです。認証保育園に行ったら保育室一部屋しかありません。という ことは例えば面積が0歳児は3.3平方メートルだといって3.3平方メートルの中に子どもを ずっと入れていたら健やかに育つか。そういうわけではありません。生活として絡んだ一 つの空間の中にいたときに育ちます。どうも認証はそのような全体の生活の空間としてと らえていなくて保育室一部屋という感じです。ですから、そこも違うのかなと強く思いま した。面積の広さだけではなくて、それがどのようにうまく生活の中に絡み合ってきてい るのかというのは、他の子どもがいたり玄関に上がってきて、おはようと来てそこで靴を 脱いでとか洋服を脱いでとか生活の中で多分総合的に広さというのはあるのだろうと。た だ最低基準としては保育室の広さと園庭しか基準がありませんので、当然そこで議論にな ってしまうのですが、私が両方へ行った結果、違うというのはなぜ狭くても普通の認可保 育所はできているのかと思ったら、全体の生活があるのです。廊下で遊ぶ子がいれば着替 える場所でごろごろしている子どももいるのですが、認証保育所に行ったときは、部屋が 一部屋しかない。先生がすべて見えるところしかないということもあるのかなという気が しました。 ○大日向部会長  ありがとうございました。大石委員、お願いします。 ○大石委員  ありがとうございました。お二人の参考人に一つずつお伺いしたいと思います。まず小 林参考人にお伺いしたいのですが、参考資料5の中の26ページを拝見して、サラ・フリー ドマン先生の論文ですが、その26ページに貧困家庭の子どもが受ける保育について書かれ ています。この中で貧困家庭の子どもたちの方がむしろ補助金つきの保育を受けられるか ら、つまり貧困であるがゆえに公的な保育の枠組みが提供されているから、貧困の少し上 にいて完全に貧困とはいえないような子どもたちの方がかえって質の悪い保育に甘んじざ るを得ないという状況があると書かれているのですが、アメリカにおける所得階層と保育 手段の選択について、先生のご知見をお伺いできればと考えています。  それから二つ目としては、これも小林参考人にお伺いしたいことですが、別の添付資料 にもありますように、こちらでいわれている長時間保育はせいぜい週30時間であるという ことですね。週30時間を超える日本の子どもの、いわゆる保育園に通っているような子ど もの状態についての調査というのはどうやら世界的に見ると異常な状況で、あまり蓄積が ないようなのですが、たまたま「委員よりお求めのあった資料」という今日配付されてい る資料の山縣委員が請求された資料に「長時間保育が子どもに及ぼす影響」ということで 大学の安梅先生の論文が出ています。はたして諸外国では30時間を超えるような時間の保 育についての何らかの研究蓄積があるのかどうかという点もお伺いしたいと思います。  三つ目は藤森参考人にお伺いしたいのですが、藤森参考人の話を伺っていますと、保育 の良さというものを判断するには保育者と子どもの関係性、子どもと子どもの関係性の把 握するという、かなり複雑なプロセスが必要なようです。エピソード的になりますが私自 身も自分の経験を振り返ってみると最初に保育園に入れたころはよくわからなかった。卒 園させるころになってようやくどういうところが保育の質を判断する肝なのかというのを 見る目が養われたというのが正直な感想ですが、他の母親方もそういう状況だったとする と保育園を選択するときに、複雑でかなり専門的な方がご覧にならないとわからない質に かかわる部分をどうすれば伝えることができるのでしょうか。情報提供をすることができ るのでしょうか。その点についてお伺いしたいと思います。 ○小林参考人  ご質問にお答えします。アメリカの例えばスラムに住んでいるような生活補助が出てそ の地域の公設の保育園に行くことになります。保育というのは英語でチャイルドケアとい いますが有料のものを特に保育というようにアメリカの英語の字引きには書いてあります。 ですから、お金を払うという考え方です。貧乏なるがゆえに収入がある程度以下であるが ゆえに、生活費も出るし保育料も免除になるという意味で、ある程度以上の基準を満たし た保育園のケアが受けられるということになるわけです。本当に貧乏なスラムの黒人の子 どもの方が、ヒスパニック系というか本当に貧乏な貧困家庭でないような子どもよりも勝 るということは、確かにフリードマンさんも日本においでになったときに言っておられま した。そういう現実がある。アメリカがすべて豊かでよいというのではなくて、アメリカ なりにそういう貧困の問題も抱えているのですから、それは教育においてもいえるし、医 療においてもアメリカについてはいえると思っています。もう一つの長時間保育の話は長 時間保育つまりアメリカでいう30時間以上の保育の中で、そういう保育を受けた子どもに は問題が出ることがあるということを言っているわけです。しかし精神病理的な問題であ るとか、あるいはお医者さんに世話にならなければいけないような問題ではなかったし、 それも家庭がきちんとしていればそういうことが起こらないこともあるということを、こ のレポートの中で言っているのです。  ですから、保育が長時間であるだけですべてが悪いということでもないし、逆にその家 庭との関係、あるいは祖父母がどれだけ助けているかとか、そういう問題も含んでこの NICHDの評価はしていると思います。日本では長時間保育というと安梅さんの研究がある と思いますが、あれもあまり悪い影響は出なかったという報告と私は理解しています。し かし、あの手法には多少問題があるという学者もあります。ですから、NICHDがやってい るように、どこからも突っ込まれても問題のないような研究をするというのは、膨大なお 金がかかりますし、安梅さんがどれぐらいの研究費でやったか知りませんが、もう少しお 金をかけてきちんと検討しないといけないと思います。 ○藤森参考人  今のご質問で、保護者をどうするかはそれも痛い質問で、どうしようもないものはどう しようもないので困りますが。一つ今回保育指針の改定の子育て支援というのは、保護者 への支援ということが重視され始めました。今までは在宅で育児をする人たちへの支援と いうことでは保育園は課題でした。それは園が親の代わりをしていたからです。ですから、 親ははっきり言って親をしなくてよいということがあるのですが、保育園は子ども集団か らの役割を重視したら親は親として育っていってもらわないと困るのです。それで保護者 への子育て支援ということが今新しく指針では課題になっていますの。そのときに、現場 の一番良いところがあります。何がというと親は子どものことを大切に思っています。大 事にしたいと思っている人がほとんどです。そんなに変にしようとは思っていません。で すから、その大切にしたい子どもが変われば親が変わってきます。現場は子どもを変えて いかないと駄目ですね。ですから、私たちはこういう保育をすることによって子どもがこ んなに変わるのだ。これはただ言うことを聞くとか、ただいろいろな知識を知っているの ではなくて、自分から行動をするとか自分からどんどんいろいろなことをしようとする。 自分から親にはたらきかけようとか、話しかけようとかということをし始めるという子ど もの変化から、かなり評価をしてくると思います。これはそこしかないです。私たちはい くら文章を出そうが何をしようが、これは理屈ではなく実際に目の前の子どもを見てくだ さいと言うしかないので、定期的に保育参観をするとか、子どもの様子を見せるというこ とをしています。でも見せたい親ほど見に来ないということはもちろんあるので、それが 課題ですが。そういうときは、他の手段でお便りを出すということをしていきますが。そ れから、私どもの園がそうなったというだけでは説得力がないので、今、日本中に同じよ うなことを目指すような仲間を300園近くつくって同じようにすべて実践したら、すべて そこの子どもたちは同じように育ってくるということを発信しています。そして、お互い を見合っているのです。一つの園だけでやるべきことではないので、お互いを見合ってお 互いにそれが、こういうところで言ってよいのかどうかわかりませんが、教育の質は競争 原理からは絶対に上がらないと思っています。協力をしないと駄目だと思っていますので、 日本中の保育園が協力してそれぞれの質を高める。ある意味の切磋琢磨という意味の競争 原理ならよいのですが、そういうことをやるのが本当の親のニーズに応えること。親のニ ーズは口で言うだけでわからないのです。例えばのどが渇いているのにサイダーをほしい というのです。これはただのウォンツです。そのとき私たちはそれは水分補給が必要なら 水の方が良いと言ってあげないといけない。「サイダーでは駄目です」ではないと思ってい るのです。その辺は専門性が要ると思いますが、それが保育者の質だと思います。なかな か難しいですね。 ○大日向部会長  ありがとうございました。山縣委員、どうぞ。お待たせしました。 ○山縣委員  貴重な情報提供をありがとうございました。質問という意味ではなくて、安梅先生の話 とか若干、今日各委員に見ていただきたい資料を持ってきましたので、それに関して少し コメントしてよろしいですか。特に安梅先生の話が出ていましたが、10年来この領域で一 緒に仕事をしているのですが、小林参考人からも少し一部の関係者の間では疑問があると いうことがありましたが、ベースとしては小林参考人からご紹介いただいたNICHDのメ ンバーたちと一緒に情報交換をしながらやり、フリードマン先生を呼んでいただいたとき も一緒に交流したという事実はあります。批判されるポイントの一つは、要はこれはあく までも保育所利用者に限定した調査であって、即アメリカのものと比較できないというの が大前提です。それは理解していただきたいと思います。それは、恐らくお金がない、調 査費用がないということに明らかに起因していると思います。  ただ、保育所利用者の範囲内に限定して、同じように長時間保育による子どもの育ちの 差はなかったというのが結論の一つです。では、何が育ちの差か、経年的な比較をしたと きに何が出てきたかというと、彼女たちが提示した後の論文に出てきたのですが、家族要 因というものがあって、これはアメリカと同じような結果です。家族要因というものが影 響している。その家族要因は何かというと、かかわりの質ということに結果は相当集中し ていたようです。かかわりの質というのは、今日保育園においても同じように影響するも のだということで、保育におけるかかわりの質を高めていかなければいけないという流れ が出てくるということになります。  では、保育内の保育所のかかわりの質は何かというと、藤森参考人がいみじくもおっし ゃいました環境と子どもとの接触面で起こってくる相互作用とか交互作用というところに あります。その環境はハード面だけではなくてソフト面。ソフト面は、一つは保育士です し、一つは子ども自身、子ども同士ということになります。そういうところを高めていく ことが子どもの育ちを保障することになるし、ひいてはそれは保育の質になるのではない かということが安梅先生たちの結論であったと私は理解しています。  もう1点。今日私が紹介した先生方の名前は読みづらい人ばかりで申し訳ないのですが、 もう一人の先生は埋橋先生といいます。この先生はイギリスを中心にやっているのでイギ リスの資料を提出してくださいとお願いしたのですが、丁寧にアメリカの資料まで付けて いただきコメントをすべて付けていただいていますので、国際的にもこういう指標化をし て保育の中身を分析していくというのが流行しているのは間違いないのですが、日本では そこに申し訳ないのですが予算が付かなくて、大学が一生懸命研究費を稼いできてはやる ということですから、対象の選定や手法等にどうしても限界が出てきて、より深い研究手 法を用いられる方々から見たら限界があるという非難は免れないと思いますが、埋橋先生 が随所に書かれているように、そういうところから我々も学び予算を付けて長期的に子ど もの育ちの質を考えていく仕組みを作らなければいけないと思います。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。残り時間が少なくなりました。まだ、ご発言のない岩村委員、 宮島委員お願いします。 ○岩村委員  時間がないということで、ごく簡単に藤森参考人にお伺いしたいのですが。先ほど認証 保育所の話で面積の問題に触れられましたが、保育の質を何と定義するのかということが ありますが、保育の質をある程度総合的に見ると、もし仮に考えたとして建物の構造上の 問題というものと、例えばその保育所を経営している事業主体の保育の方針あるいは保育 士の質というものとが、ある程度全体としての保育の質に相乗的に影響していると考えて よいのかどうか。ある意味では、建物の構造などというのは独立した変数になるのか。そ れとも、そうでない変数なのかをお聞きしたいです。 ○藤森参考人  建物は、当然人が使わないと機能しませんので当然建物に広さがあれば子どもによいと いうことではありません。そこでどのような活動が行われるかということです。しかし、 その活動を行うためには広さが要るという話になるので、そこが行ったり来たりの相互作 用だと思いますが、もちろん私が見た良い認証保育所がそのような保育をするかというと、 認証保育所をするような経営主体の多くがベビーシッターなり託児的なことをやっている ところが受けているからということもあります。ですから、いわゆるイギリスのナニーの ような、清潔で安全に保育することが子どもにとってのは、最後に宮島委員お願いします。 ○宮島委員  いろいろ教えていただいてありがとうございました。私がこの中で着目したのは小林参 考人がお出しになった資料で、保育の特徴だけではなくて家庭の要因に強く影響を受ける ということに改めて注目しました。これまでの議論の中で、親のニーズは親のわがままと も思えるようなもので、その理由で保育の量だけを膨らますのはどうかという問題意識が もたれて、質の問題になっているのかもしれないと思います。でも、基本的には親の希望 と子どもの希望がものすごく離れているかというと、かなり多くの親に関しては子どもの 幸せをまず考えていると思うし子どもも幸せになって、でも子どものために自分が駄目に なるのではなくて、親も子どももよい形で保育をしたい、一緒に成長したいと思っている ことが多いと思うのです。ですから、話の中で子どものことを考えていく上で親がある程 度のゆとりを持って特に子どもと一緒の時間に関して少し余裕をもって接する環境を整え るというところにおいて親の希望というものに関しても配慮していいのではないかと思い ます。親の希望が子供の利益とまったく違う、親のわがままとばかり考えないでいきたい と思いました。例えば、ものすごく家から遠い認可保育所で庭が広い所と、近くの認可保 育所という選択肢があって、親にとって送り迎えなどで時間が1時間違ってしまう場合。 お庭がない、けれども近くに公園があるという認証保育所を親が選んだときに、認証保育 所を選ぶということがすなわち子どもを犠牲にして親のわがままを通すということともい えないと思います。親が保育園以外の時間でゆとりを持ちながら子どもを育てることも大 切だと思いますので、できれば話の中で子どものニーズと親のニーズがとても離れている ようにはとらえないでいただきたいと思いました。今日は認可外保育所の質ということだ ったと思うのですが、認可外の認証保育所には厳しい意見をうかがい、実際いろいろな問 題点もあると思いますが、トータルとしては全体を一緒に協力の輪の中で全体の質をアッ プしていくという形で進めていただきたいと思います。 ○大日向部会長  ありがとうございました。ちょうど時間がまいりました。今日は小林参考人、藤森参考 人のお二方から貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございました。お二人の話に 共通していたのは、子どもの発達を保障する環境は非常に複合的だと。家庭的な要因もも ちろんある。しかし、その中で私たちが保育の質を議論したときに、いかに保育というも のを子どもの最善の利益を保障するような、発達保障ができるような環境を探し続けてい くかという点で、お二方の話は共通していたとまとめさせていただきます。  時間の関係で、まだまだご意見をおっしゃりたいところがある方もたくさんおられると 思いますが、前回と同様に文書で事務局までお寄せいただければ幸いでございます。欠席 の委員の方にもそのように事務局からご連絡くださいますように。  それでは、次回の日程につきまして、事務局からご説明をお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  本日は誠にありがとうございました。次回の日程につきましては、10月29日水曜日15 時から厚生労働省9階の省議室で予定しております。引き続き、新たな制度体系の設計に ついてのご議論をお願いしたいと考えております。お忙しいところ恐縮ではございますが、 ご出席いただきますよう、よろしくお願いいたします。 ○大日向部会長  それでは、本日はこれで閉会といたします。ありがとうございました。 (照会先)  厚生労働省  雇用均等・児童家庭局総務課  少子化対策企画室  (内線7944)