08/10/22 平成20年10月22日薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食品規格部会議事録 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会 食品規格部会議事録 ○日 時:平成20年10月22日(水)10:00〜11:55 ○場 所:中央合同庁舎5号館共用第8会議室 ○出席者:   【委 員】五十君委員、池上委員、石田委員、香山委員、小西委員、品川委員、西川 委員、早川委員、廣橋委員(部会長)、松田委員、宮原委員、山内委員        (敬称略)   【関係省庁】農林水産省消費・安全局農産安全管理課 岡田調査官   【事務局】牛尾参事官、國枝基準審査課長、光岡課長補佐、西嶋課長補佐 ○議 題:  (1)食品中のカドミウムに係る規格基準の設定について  (2)その他 ○西嶋補佐 定刻になりましたので、ただいまより「薬事・食品衛生審議会 食品衛生分 科会 食品規格部会」を開催いたしたいと思います。  本日は御多忙のところ、委員の皆様にはお集まりいただきまして誠にありがとうござい ました。  審議に入るまでの間、私、基準審査課長補佐、西嶋が議事を進行させていただきたく思 います。よろしくお願いをいたします。  本日は、小沼委員から御欠席ということで事前の御連絡をいただいております。  また、早川委員が若干遅れているようでございますが、現時点で部会委員13名中11名 御出席をいただいているということでございますので、当部会は成立していることをまず 御報告を申し上げます。  それでは、座長を部会長の廣橋先生にお願いしたいと思います。廣橋先生、よろしくお 願いいたします。 ○廣橋部会長 廣橋です。本日の部会の座長を務めさせていただきますので、どうぞよろ しくお願いいたします。  まず最初に、事務局から資料の説明をお願いします。 ○西嶋補佐 お手元の資料の確認をさせていただきます。  議事次第、委員名簿等の後に、資料1といたしまして、前回7月8日食品規格部会での 各委員コメント。  資料2といたしまして、食品安全委員会の評価結果です。  資料3は、パワーポイントでございます。  資料4は、カドミウムの1日摂取量年次推移の表でございます。  資料5は、食品からのカドミウム摂取量の資料でございます。  資料6は、農水産物に含まれるカドミウムの実態調査結果概要。  資料7は、米に含まれるカドミウムの濃度を地域別にお示しした資料でございます。  資料8は、食品の輸入量の推移等をお示ししております。  資料9は、農林水産省のパワーポイントでございます。  その後、参考資料を3つ付けさせていただいております。1つは、前回の部会の資料で、 御決定をいただきました基本的な規格設定の考え方。資料2は、カドミウムのコーデック ス規格の表。もう一つ、最後にございますが、カドミウムに関するQ&A、18年8月改訂 版がございます。  資料の過不足があれば事務局にお申しつけください。 ○廣橋部会長 ありがとうございました。  いかがですか。よろしいですか。  本日の議題は基本的に1つでして「食品中のカドミウムに係る規格基準の設定について」 であります。前回のこの会でも説明、若干の議論がありました。その審議内容の確認を兼 ねて、資料1及び2の説明を事務局からお願いします。 ○西嶋補佐 前回7月8日の規格部会におきまして、資料2の食品安全委員会の評価書に 基づきまして、事務局の方から、その概要を御説明させていただきました。その後、資料 1にございますように、各委員の方からコメントをちょうだいいたしましたので、それを まとめてございます。それを御紹介させていただければと思います。  1つ目といたしましては、暴露主体についてきちんと精査すべきである。  2つ目としましては、コーデックス規格が設定されている食品すべてに基準値を設定す ることによるコストと寄与率とのバランスを考慮すべきである。  3つ目といたしましては、いわゆる精米、玄米という関係で言う我が国の食生活の特殊 性をきちんと考慮すべきである。  4つ目といたしましては、寄与率の高い「米」についての、地域差も含めた汚染の実態 の確認が必要である。  次の意見といたしましては、コーデックス規格を基に基準を設定することは基本的に賛 成。  また、食品摂取実態からカドミウムの寄与率が高いもののデータが必要であるという御 意見がございました。  そのほか、コーデックス規格が個別に定められていない食品であっても、我が国で摂取 が多いと思われる食品などについてもきちんと検討する必要がある。  また、「米」「大豆」等のカドミウム低減措置対策はどのように行われているのかとい うことでございました。  そういった各委員のコメントの後に、座長から、食品中の汚染物質に係る規格基準設定 の基本的考え方に従って、コーデックス規格に準拠した方針とした上で、我が国の実情も 考慮した形で検討を行うということで前回おまとめをいただきました。  資料1の説明は以上です。  また、資料2につきましては、その評価書、そして、資料2の最後の2枚でございます けれども、参考といたしまして、食品安全委員会がこの評価書に対して一般の方からコメ ントを求めておりました。その際にいただいたコメントということで、食品安全委員会か ら我々の方に情報提供ございましたので、そちらも御参考までに付けさせていただいてお ります。  以上です。 ○廣橋部会長 ありがとうございました。  資料1は、前回の説明の後の各委員からの議論をまとめていただいたものですね。更に Q&Aの参考の資料についても今回説明がありました。いかがでしょうか。ただいまの説 明に御意見、質問ありますか。よろしいですか。では、一旦先に進めさせていただきます。  本日は、審議に入る前に、食品安全委員会の評価結果について更に理解を深めていただ くために、食品安全委員会の化学物質・汚染物質専門調査会の専門委員でもあった香山委 員がここにいらっしゃいますので、香山先生から、その評価の概要を説明していただけれ ばと思います。よろしくお願いいたします。 ○香山委員 食品安全委員会での評価と、その後、リスクコミュニケーションで用いまし たファイル等を追加資料として加えまして説明させていただきます。 (PP)  食品からのカドミウムの摂取量の割合の円グラフが示されておりますが、米が主なもの を占めておりまして、46.5%、次が魚介類、それから野菜・海草、雑穀・芋が多くありま す。豆・豆加工品は3.5%となっております。 (PP)  折れ線グラフが水色でよくわかりにくくなっておりますが、米の消費量もだんだんと減 ってきております。1962年に年間118kgも食べていたものが、約半分に減ってきておりま す。 (PP)  日本人のカドミウム摂取量がだんだんと減ってきているということがパラレルに起こっ ております。 (PP)  これは、実際に暴露の分布がどのようなものになっているかということです。国民栄養 調査で得られました食品の摂取量と、食品に含まれるカドミウムの実態調査、これは農林 水産省が行った調査で、食品中のカドミウム濃度がわかっておりますので、それから食品 に加工する過程で減衰する量などを計算したもの、この2つをランダムに10万回掛け合わ せて、どのような分布をしているかを調べたのがこの図であります。一番多いところは3 前後なんですけれども、分布がだんだん長くテーリングしていることがわかります。PT WIが7μg/kg体重/週でありますが、この7μg/kg体重/週を超えているものも若干ある ということです。 (PP)  食品安全委員会の評価では、どれを使うかということで議論があったわけですが、実際 のこれまでの毒性の評価として、動物実験で餌の中に混ぜて食べさせて、これを評価する という方法と、ヒトの疫学調査で摂取して、吸収、代謝、そして排泄されるわけですが、 どのような影響が起こるかということを調べる疫学調査の2つがあるということです。 (PP)  では、ヒトでは、カドミウムはどういうふうに体の中で動いているかということを調べ ております。カドミウムが食品として入った場合と、粉じんとして入った場合は少し違っ ておりまして、粉じんですと、吸入曝露して肺で吸収され、そのまま血液に入っていって 大循環に入っていくということが起こるわけですが、食事から入った場合は、胃から入っ て経口曝露し、腸管で吸収します。これの吸収率が、これまで2〜8%と言われておりま して、その残りの大部分が便の中に排泄される、92〜98%と言われております。これが肝 臓の中に蓄積しまして、メタロチオネインなどの蛋白と結合いたしまして貯蔵される。全 蓄積量の4分の1ぐらいが肝臓にたまっているわけですが、それがまた蛋白と結合したも のが血中に出ていって、腎臓にたまっていく。これが全体の3分の1ぐらいなんですが、 カドミウムの濃度としては一番大きい。ここで腎機能障害が少しずつ起こるわけですが、 尿中に分解されたカドミウムが排泄されていくということが起こっております。便に出て いるものに比べると、ここに出てくる量は本当に微量です。こういうカドミウムの体の中 での動きを示しております。 (PP)  腎臓での影響というのは、長期経口曝露によって腎臓で近位尿細管機能障害が起こって、 近位尿細管で低分子量蛋白質が再吸収されるのが阻害されるという現象が最初に見つかる んです。  更にそれがどんどん進んでいって重篤な近位尿細管機能障害が起こると、カルシウムや リンの再吸収なども悪くなり、骨への影響も与える。そして、実際にイタイタイタイ病が 起こったときは、妊娠とか、授乳、老化、低栄養というようなかつての状況がありました ものですから、非常に強高度な骨軟化が起こってイタイイタイ病となったと考えておりま す。 (PP)  ここで、ヒトに対する有害影響評価をどのようにするかということなんですが、正常で は、この低分子蛋白質というものは、水の再吸収や電解質の再吸収と同じように再吸収を されて使われるわけですが、実際には障害が起きて、再吸収能が低下をしますと、低分子 蛋白質などの尿中排泄量が増加するということが起こります。 (PP)  ここに腎臓がございまして、動脈血が供給され、そして尿がつくられるということです。 ここに腎臓を輪切りにした図があります。腎臓皮質というところがありまして、腎臓皮質 の障害が起こるわけです。尿がたまって出ていくところです。 (PP)  先ほどの皮質から髄質の部分を楔形に切り取りまして見てみますと、実際には動脈から、 毛細血管から、尿の基になるものがつくられ、薄い尿ですが、これが尿細管を通って、水 分が再吸収され、また電解質及び低分子蛋白が再吸収されて、最終的に濃縮された尿がで きるということになるんです。この糸玉状になっているところですが、こういうところで 尿がつくられます。ここで一番カドミウムが影響を受けるのが最初の部分の近以尿細管で、 ここでの再吸収が障害されることが報告されております。 (PP)  カドミウムはそれ以外の場所にも影響があると言われております。高血圧や心血管障害、 あるいは内分泌及び生殖器、あるいは神経系への影響などがありますが、これはまだ量反 応関係が明らかでなかったり、ヒトでの疫学調査では否定的なものもありまして、基準を 決めるための評価には使えないということになりました。 (PP)  発がん性に関しましても、IARC(国際がん研究機関)の評価でも「ヒトに発がん性 を示す十分な証拠がある」ということでありますが、これは職業性の吸入曝露、肺から入 った場合に発がんのリスクが高いと言われております。鉱山労働者でありますので、その 他のひ素等の粉じんが十分含まれていたり、喫煙などの包絡因子が調整されていないとい う状況がありますので、食事からの発がん性を示す証拠は報告されておりません。動物実 験でも、食事からのカドミウム曝露の発がん性の証拠は報告されておりません。 (PP)  評価の着目点といたしましては、食品からの長期低濃度曝露による経口曝露を評価し、 結果としては腎臓への影響に着目して評価をすることになりました。 (PP)  耐容摂取量の決め方なんですが、動物実験を用いた安全性評価ではなくて、ヒトにおけ るデータを優先するということです。それから、人の疫学調査から、理論モデルから摂取 量を推定するという方法が、第16回のJECFAもそうですし、J?rupらも報告している わけですが、日本の食品安全委員会では、食品中カドミウム濃度×食品摂取量からの総カ ドミウム量を推定するという方法で調べようと、ちょうどそこに日本での研究、Nogawaら 及びHoriguchiらの研究があるので、これについて議論をしましょうということになって いきました。 (PP)  すなわち、ヒトの食品からのカドミウム摂取量と腎臓の近位尿細管への影響を調べます という方向で、こういう疫学調査2つを見ましたということです。 (PP)  実際には、先ほど申しましたように、カドミウムの長期摂取量を評価し、かつ腎臓への 影響を評価するために、尿中に出てまいります低分子蛋白質、すなわちβ2−ミクログロ ブリンという低蛋白質濃度を使おうということです。 (PP)  影響の指標として、このβ2−ミクログロブリンを用いるわけですが、β2−ミクログ ロブリンが異常に上昇した場合、これを近位尿細管機能障害とみなす。これは再吸収が悪 くなっている状態ということです。しかし、これはすぐに健康影響を及ぼすものではなく て、治療が必要な腎不全などの腎疾患とは異なりまして、多くの論文でβ2−ミクログロ ブリン排泄量をクレアチニンという物質で尿の濃縮率を補正しておりますが、1,000μg/ gCr以上、やはりちょっと異常だろうという値を推定して設定をいたしました。 (PP)  実際にはカドミウムを1週間にどのくらいとったら、どのくらいβ2−ミクログロブリ ンの排泄量が上がるかということで、摂取量を推定しているわけであります。どういうふ うに尿中β2−ミクログロブリンが上がるのだろうかという相関のグラフをつくっており ます。位置的には、Horiguchiらは7μg/kg体重/週、Nogawaらは14.4μg/kg体重/週とい う値を示しております。 (PP)  まず、Nogawaらの摂取量、14.4μg/kg体重/週に関して見てみたいと思います。 (PP)  Nogawaらは、一般環境で米の中のカドミウム濃度が比較的高い地域、それと、対象とし て、米中カドミウム濃度が低い地域、50歳以上の2,144人を調べまして、日常食べている 米のカドミウム濃度、尿中β2−ミクログロブリン排泄量を測定し、米を何g食べるとい うことの推定から、一生涯同じように食べたという推定をいたしまして算出し、総カドミ ウム摂取量とβ2−ミクログロブリン尿の発症頻度を調べてみました。この地域は、米の カドミウム濃度が0.22〜0.61ppmの地域でした。上の方になりますと、割と高目の地域で す。 (PP)  Nogawaらの報告によりますと、大体14.4μg/kg体重/週、すなわち、カドミウムの一生 涯の摂取量が2.0gまでは米中カドミウム濃度が低い地域の人と比較をしますと、β2− ミクログロブリン尿症の発症頻度に差がないということです。すなわち、総カドミウム摂 取量が2.0g以下であれば、ヒトの健康には悪い影響を及ぼさないというふうに結論づけ ております。  どういう計算をしたかといいますと、摂取期間50年で、日本人の男女の平均値が53.3 kg、計算式はこのような年とPTWIに直すための計算をしてありますが、これで14.4 μg/kg体重/週というのが出てきた。彼はこの数字を言っているわけですが、こういうふう に計算ができるだろうということです。 (PP)  Horiguchiらの報告は、この7μg/kg体重/週という数字を求めております。 (PP)  これは2004年に出版されたものですが、対象として、米の中のカドミウムが中程度の4 地域、BCDEと、米のカドミウムが非常に低い地域、A地域とを比較しております。そ れぞれの方が米びつから持ってきたお米のカドミウムを測ってみましたら、このような状 況で、青は0.2ppm以下、黄色の部分は0.2〜0.4ppm、赤は0.4ppm以上であります。これ は全国にわたった地域でありますが、特にE地域などでは、非常に農家の女性に協力して いただきまして、ほかの地域は200名程度なんですが、569名の方が参加していただきま した。0.4ppmを超えるお米を、これは白米ですが、毎日食べていた人が7.4%。0.2〜0.4 のものをその日の米びつから持ってきた方は3割程度いらっしゃったということです。こ のような汚染状況が違う地域で調べたという結果です。 (PP)  これで米中カドミウムと尿中β2−ミクログロブリン排泄量を調べてみて、カドミウム の週間摂取量を調べております。これは摂取量を丁寧に調べた結果でありますが、週間摂 取量と近位尿細管機能障害の発生頻度の関係を見たところ、調査対象者の2〜3割が7μg /kg体重/週を超えるカドミウムを摂取していましたが、近位尿細管機能障害の発生頻度は 全地域で差がないことがわかりました。すなわち、7μg/kg体重/週程度のカドミウム摂取 量はヒトの健康に悪い影響を及ぼさないということは追認されたということであります。 (PP)  Nogawaらの14.4μg/kg体重/週でも大丈夫だろうとか、Horiguchiらの7μg/kg体重/週 でも特に差はなかったということがわかりました。 (PP)  JECFAによる評価は、同じように7μg/kg体重/週というものが出ているわけですが、 実際にはPTWIの考え方は、腎皮質のカドミウムレベルが200mg/kgを超えると腎障害が 起こる可能性がある。カドミウムの総摂取量が1μg/kg体重/日を超えなければ、腎皮質の カドミウムレベルは50mg/kgを超えそうにない。これはモデルで計算をして、吸収率を5 %と仮定して求めた。過去の会議でPTWIをこういうふうに提案していたわけですが、 この表現をその後、体重で割りまして、7μg/kg体重/週と変更いたしまして現在に至って おります。 (PP)  結果は同じに見えるわけですが、JECFAの場合は疫学調査は、摂取量は理論モデル から算出したということです。過去のデータは、労働環境や職業曝露の人やイタイイタイ 病の患者さんから得られた腎皮質中のカドミウム濃度等から求めた値であります。ですか ら、腎皮質の蓄積量と近位尿細管機能障害とを比較して求めたものであります。  ところが、日本の場合は、疫学調査で摂取量の推定をする。一般環境であって、労働者 はいないということです。ですから、経口摂取の方だけである。それから、自家産米を食 する住民で調べておりますということです。それから、カドミウム摂取量を求め、近位尿 細管機能障害を調べました。ですから、ここのところの大きな違いは、理論モデルを使っ たものと、実質的に測ったものとで比較しているところが違います。 (PP)  最終的な結論といたしましては、耐容週間摂取量は7μg/kg体重/週という結論が出まし た。 (PP)  実際に日本のお米がどの程度カドミウムが高目なのかというと、ほかの地域で高いもの がところどころで見つかっておりますが、日本は総体的に、平均値で見ても少し高目な国 であることがおわかりになると思います。 (PP)  現在は、食品衛生法で玄米のカドミウム含有量は1.0mg/kg未満であるという基準があり まして、精米では0.9mg/kgと定まっております。 (PP)  これがコーデックスの基準で、皆様にも配られているものもありますが、精米が0.4mg/ kg、小麦が0.2mg/kg、穀類(そばを除く)は0.1mg/kgです。こういうものが決まってお ります。 (PP)  日本の厚生労働科学研究費で我々のチームで曝露評価を行ってみました。カドミウム基 準を全く設定しない場合の曝露評価、米のみをカドミウム基準0.4mg/kgを設定した場合、 3番目のシナリオは、コーデックス基準をすべて当てはめた場合という形でやってみたシ ミュレーション結果です。 (PP)  これは先ほど出ましたモンテカルロシミュレーションで評価をいたしてみましたが、算 術平均値は、シナリオ設定せずは3.47、お米だけが3.44、全部コーデックス規格を当ては めると3.33となります。95パーセンタイル、上の方の5%の人はどのくらいいっている だろうかということですが、この基準値は、設定せずが7.33、米だけが7.18、全部設定す ると6.85となりました。 (PP)  これらの調査は、吸収率に関しては今回出てきていないのですが、理論式で推定するこ との難しさ、現実からいかに離れているかということをここでお示ししたいと思います。 (PP)  実際には、糖尿病のある方では、腎障害がひどくなって、かつ再吸収率が高いのではな いかということで、半分は全く治療されていないDMのある方を見つけて、半分は年齢を マッチしたおばさん、おばあさん方を、町の宿泊施設を借り切りまして、吸収率の調査を いたしました。 (PP)  お米は、0.4ppm含まれているお米を食糧庁から分けていただきまして使用いたしました。 (PP)  厨房でクッキングをするわけです。 (PP)  食事をつくっていただきます。 (PP)  食べる前と、これはおそばですが、お昼御飯で食べていただく。 (PP)  これは貧血グループの調査です。貧血がある方は吸収率が高いのではないかということ で、そうなりますと若い方が多いわけです。まだ生理がある方が貧血がありますので、そ ういう方に合宿していただいたわけです。 (PP)  食べ終わりましたら、残った量を測りまして、重さを測る。 (PP)  それぞれの調味料も1人ずつ1回の使用料を測定いたします。 (PP)  間食も、小分けしたものを何g食べたかということ。リクエストに合わせてある程度変 わりましたが、ここにリポビタンDもありますが、こういうのもすべて、この中のカドミ ウムを3点ぐらい測っていただくわけです。リクエストが増えるほどお金がかかるという ことになります。 (PP)  リンゴも1つずつ重さを測る。種とか皮とか芯は後で重さを測るわけです。初めに重さ を測っておきます。 (PP)  トイレは、絶対捨てられないようにカバーします。 (PP)  おまるも全部カバーです。 (PP)  それぞれ一人ひとりのお小水を取るものと大便を取るものを準備いたしました。 (PP)  それを地区に応じてサンプルを取る。 (PP)  便はこういうふうにミキサーに。 (PP)  蒸留水を加えまして定量にしましてミキシングする。 (PP)  シャーレに入れて重さを測る。 (PP)  保管をして、測定業者に送る。実際に凍らすまでは非常に臭いので大変でありました。 非常に寒いときだったので少しはよかったのですが、大変でした。 (PP)  これで結果が出たところは、5%とか8%という吸収率ではなくて、若い方はそれより 高く、お年になるとむしろマイナスになる。このように体にかなりカドミウムがたまった 方では、消化管からも排泄量が増えて、どちらかというとマイナスになるという結果が出 たということです。ですから、これからもモデルで説明するのは非常に難しいということ が現実的にわかったということで、JECFAの評価でも、理論式で計算しても現実には 合わないということが議論されたということであります。  以上であります。 ○廣橋部会長 どうもありがとうございました。  ただいまの御説明に直接の質問等があればどうぞ。山内委員。 ○山内委員 大変丁寧な御説明ありがとうございました。スライドの26番、資料では13 ページになりますが、Horiguchiさんの疫学調査は女性だけ調査されているようですが、 男女差はないのですか。 ○香山委員 カドミウムは女性の方が健康影響が出やすいという特性がございます。それ で、より感受性の高い方々を選ぶ。それから、男性を集めますと、なかなか約束どおりし ないという部分もありますし、ちゃんと栄養調査を書いてくれないとか、自分が何を食べ ているのかよくわからないというのもあります。それから、喫煙者が非常に多いので、喫 煙は非常にカドミウムの摂取量を上げてしまうんです。勿論、男性でも調べられればいい んですが、更に研究費がかかりますし、マンパワー的にも難しいということで、より感受 性の高い女性を調べましたということです。 ○山内委員 もう一点、スライドの6番、資料の3ページですが、いろいろな食べ方をさ れるということで、さまざまな取り合わせでおやりになって、平均的には3.47で、全体、 7μg/kg体重/週を設定されても、93%ぐらいの方がその中に入るということも非常によく わかりました。ただ、現実的に考えますと、さっきの調査の方ではないですけれども、た またまお住まいの地域がカドミウム汚染が高いところで、そこでとれたお米を継続して摂 取したり、その地域からもらった縁故米等を続けて食べている人もあろうかと思います。 継続してたくさん摂取する可能性がある場合は、どのように考えたらよいでしょうか。  それから、これは管理機関への質問ですが、カドミウム汚染の高い地域や、一生涯を通 じて汚染度の高いものを食べ続ける可能性の高い方などへの注意喚起や周知はどのように 進めるのかをお聞かせください。 ○香山委員 我々は、この2地域と、その隣接する、ほぼ同じように高い地域での調査を したときに、まさにトータルダイエットスタディを行いました。お米は個人個人の自家産 米をすべて全員の分を測りまして、そのローカルマーケットで野菜類、魚介類、全部で53 0品目ぐらいになりますが、すべてのカドミウムを測りました。済みませんが、スライド 出していただけませんか。それで、やはり同じようにトータルダイエットスタディ方式と モンテカルロシミュレーションを実際に行ってみました。そうすると、どのくらいの数値 になるだろうか。先ほどのは全国の平均値で行ったデータです。 (PP)  これが実際に行いました結果です。一番下がトータルダイエット方式で行ったものです が、963名の方です。これがトータルでありますが、平均値が7.4ですから、約2倍。メ ディアン6.6、最大が38.98。  モンテカルロシミュレーションで見ますと、7.10、95〜14%です。20代、30代と年齢階 層別に見ていきますと、勿論、全員農家の女性ですから、一般国民に比べましてお米はよ く食べる方々です。それでも、お年の方ほどお米もよく食べるし、海産物もたくさん食べ るという現状がありますので、この方々の摂取頻度を掛け合わせます。お米も、本当は自 分のお米を食べているんですけれども、モンテカルロシミュレーションですから、その地 域の936のお米を食べたという設定でシミュレーションしてみました。そうしますと、P TWI7μg/kg体重/週を超えている頻度というのは、高齢になる方ほど高いということな んです。ですから、実際に95パーセンタールのところをずっと見ていただきますと、大体 14〜15。このシミュレーションをやっても健康影響が出ていないということなので、これ はNogawaらの結果とほぼ同じということだと思うんです。ですから、これは全体像を示し ている。こういう汚染があった地域です。実際には初めて調査したときのデータですので、 今はお米はどんどん管理が進んでおりまして、低くなっておりますので、実際にはこんな ことはこの人たちでは起こっておりません。よろしいでしょうか。 ○山内委員 ありがとうございました。 ○廣橋部会長 先ほどの御指摘の問題は大事なことだと思うんですけれども、後からもそ の議論はできると思いますので、よろしいですか。  ほかに香山先生に直接質問があればどうぞ。 ○池上委員 2〜3御質問させてください。まず、今、食品から摂取することが前提でお 話しいただきましたが、様々な職業的な曝露があるということですが、その場合と、食品 から摂取する場合とで比べたときに、カドミウムの化学形態による生体影響に違いがある のでしょうか。  2点目は、NogawaらとHoriguchiらのデータの違いは、単に対象者に男性も含まれてい るか、女性だけかという、それだけで説明がつくのでしょうか。倍の数値を説明すること ができるのでしょうか。  それから、食品安全委員会の報告書を見ると、カドミウムの毒性の問題については、近 位尿細管での再吸収の阻害だけで論じられていますが、事前にいただいたものを詳細に見 てみますと、糸球体のところでのクレアチンのクリアランスに影響が出ているということ も示されています。そうすると、これは糸球体にも影響があると考えることができるので しょうか。同時に、カドミウムの排泄量、その他の生体影響を、ベースをクレアチニンと して示されています。実際にはクレアチニンの排泄量が増えるという事例があることもこ の報告書の中にあります。基準としてクレアチニンを使うことに問題があるんではないか と感じました。 ○廣橋部会長 どうですか。 ○香山委員 まず、化学系の吸収による吸入曝露との差ですが、最初に図でお示ししまし たように、まず肺から入りますと、肝臓を通らずにそのまま大循環の中に入っていくとい うことがありますので、これは蛋白に、アルブミンなどに吸着しても、肝臓で合成されま すメタロチオネインという解毒される蛋白に結合する。ですから、腸管から門脈を通して 肝臓に入ってまいりますので、ここでメタロチオネインと結合する。非常に誘導能が高い ものですから、ほとんど大部分が吸着されてしまう。その後、大循環に出ていって腎臓に たまるという過程をしますので、ほとんどメタロチオネインと結合している。そういう意 味では隔離されているようなものが移っていく。ただ、腎臓では分解されて、腎臓に障害 を起こすんだろう。長期間曝露では肝臓にはほとんど影響は出ません。肝機能には影響は 見えないぐらいです。ところが、肺だと、直接行きますので、メタロチオネインに結合し ていないものが大循環に流れるということですので、いろいろな健康影響が何十倍も出や すいと思われます。それは化学系の形がそのとおりだと思います。  3番目からお答えします。実際に糸球体のクレアチニンのクリアランスが変わるという 論文は1つだけあるんですけれども、ほかの方は余り報告されていないというのがまず第 1点です。  それから、クレアチニン補正の問題は、クレアチニンは筋肉の代謝産物ですから、筋肉 量が減ってまいりますと、お年寄りになるとだんだんと少なくなってきて、お年寄りほど クレアチニンが低いので、より影響が拡大して見えているんではないかという議論があり ます。そうでありますので、非常に微量なカドミウムでも影響があるという論文がいっぱ いあるんです。近年の論文で、高齢の方を加えた場合、70〜80歳の方を加えた場合は、ク レアチニン補正の問題は大きいと言われておりますが、できるだけそういうのを除くため に、年齢階層別にするとか、そういう形で我々は評価しておりまして、その点は非常に考 慮しております。それから、多品量解析でも、ちょっと専門的になりますけれども、クレ アチニン補正をせずに多品量解析の中間域分析の中にクレアチニンを独立変数として入れ る。そういうことをすると、クレアチニン補正の悪さが減らされる。そういうこともすべ て評価に加えております。  2番目が、2つの疫学調査の違いでありますが、まず、Nogawaらの地域とHoriguchiら の地域は曝露のレベルが違うというのが一番大きい。50歳以上がNogawaらの集団であり ますので、80何歳までの方も含んでおります。かなり高齢の方までも含んでいるので、影 響が出やすいんですけれども、それから推定して、摂取量が14μg/kg体重/週ぐらいにな りましたということです。Horiguchiらはもっと低い曝露の人たちという差です。結果と しては、そのときに取られた情報が違いますので、摂取量の推定法は違うわけですけれど も、14μg/kg体重/週でも対象郡と差がなかった。それから、我々は7μg/kg体重/週でも 対象郡と差がなかったという結論ですから、そういう意味では同じ結論ですということで す。 ○廣橋部会長 ありがとうございました。  更に摂取量、食品、農水産物に含まれるカドミウムの実態などについての資料が用意さ れておりますので、資料4、5、6の説明をお願いして、またその上で議論を進めたいと 思います。お願いします。 ○西嶋補佐 資料1に前回の先生方のコメントを示させていただきましたが、それを受け まして、我々事務局で資料4以降のものを用意させていただきました。資料4、5につき ましては厚生労働省の方で御用意させていただき、6以降につきましては、同じ、リスク 管理機関であります農林水産省から御用意をしていただいています。今日は農林水産省も 来てもらっていますので、後ほど農林水産省の方からも御説明をさせていただければと思 います。  まず、資料4から御説明をいたします。資料4につきましては、マーケットバスケット 方式による食事由来の曝露量の推計調査を年次推移ということで、1981年から見たもので ございます。これは食事を介したカドミウムの摂取量を明らかにする目的で毎年度行って いるものでございます。  これを見ていただきますと、直近2007年でございますけれども、日本人の日常食からの カドミウムの1日摂取量は21μgであることが示されております。大きなトレンドで言い ますと、減少傾向にある。内訳で見ると、米が大きな割合を占めているということがどの 年でも言えるところかと思っております。  先ほど、食品安全委員会の評価書PTWIが7μg/kg体重/週という御説明がありました が、それと比較をするという意味で、資料5に、資料4のデータを基に、単位を合わせる という形で計算させていただきまして、1997年、2002年、2007年のグラフを作成させて いただいております。この計算式のときにはヒトの体重を50kgとして計算させていただい ています。  これを見ますと、食品からのカドミウムの摂取量に関して言えば、PTWIに対して、 直近のデータ、2007年であれば大体4割、2002年、5年前であれば大体5割という形であ ることがこの図によってわかろうかと思っております。また、食品群ごとに見てみますと、 いずれの年におきましても、米の割合が4割程度を占めているということで、特に単品で 比べた場合、高いことがわかろうかと思っております。  また、資料5の2枚目でございますが、これは参考でございます。農林水産省からデー タを提供いただきましたが、米0.4ppm以上のカドミウムが検出された地区における調査結 果ということで、特にカドミウムの曝露の高い地域に限定して摂取量を出したものでござ いますが、その年次推移をお示ししたものでございます。これは御参考までに付けさせて いただいております。 ○廣橋部会長 お願いいたします。 ○農林水産省消費・安全局農産安全管理課 続きまして、資料6でございます。書いてあ るとおり、この資料については、コーデックスの第36回CCFACに提出したもので、農 水産物に含まれるカドミウムの実態調査結果ということで、既に農水省のホームページで は公表している資料になります。  ただ、この調査は全体で73品目調査しておりまして、試料数としては米が4万点と多い んですけれども、それを全部お示しするのも多過ぎるということで、今回の議論に資する という観点から加工してございます。  1つ目は、試料数20以上を挙げてございます。20に余り意味はないんですけれども、 それ以下だと、試料数的にはちょっと少ないかなというので、20以上というところを記載 しました。  あと、コーデックスで明確に定義がされているものを記載しました。例えば、根菜類だ と、カブ、サトイモは根菜と定義されているんですけれども、そうでないものについては 抜いている。例えば、フキは30ぐらい試料があるんですけれども、現時点でどこに入るの かが明確でないので、余り議論に対して意味がないのかなと考えておりますので、そうい う意味で整理したものということです。  もう一つ、外国産の小麦と大豆のカドミウム濃度をそれぞれ穀物の小麦の下のところ、 また、大豆の下のところに参考という形で入れてございます。これは厚生労働省なり農林 水産省がそれぞれ測った外国産のものに含まれるカドミウム濃度です。この後、御説明い たしますけれども、どちらかというと、比較的輸入の比率の高い産品が小麦と大豆となり ますので、その数字も参考として入れさせていただいております。  ちなみに、大豆の方は、これも後から御説明しますけれども、実は日本は400万トン近 く輸入しているんですけれども、そのほとんどが搾油用なので、食用の輸入量という点で はちょっと違うということなので、この数字については、食用、いわゆる豆腐とか納豆と かに加工される産品の数字でございます。  もう一つ、大豆についてはコーデックス規格が設定されておりません。ちなみに、コー デックスに日本が提案した数字は0.5mg/kgというものを提案してございますので、参考と していただければと思います。  1枚めくっていただきまして、その後ろに品目別実態ということで、これはあくまで参 考ということです。ホームページの方には主要な品目を全部、ヒストグラムで分布のもの は公開しているんです。ただ、下の方に書いてありますとおり、ある程度試料数がないと 分布のヒストグラムの意味がないというところもあるのかなと思いまして、今回は300点 以上試料数があるもの、6つあるんですけれども、これについて参考として、こういう分 布実態になっているということでお示ししております。  以上でございます。 ○廣橋部会長 ありがとうございました。  今の両省からの御説明に直接御質問があればどうぞ。よろしいですか。  それでは、本題であります食品中のカドミウムの規格基準の設定についての審議に入っ ていきたいと思います。前回の説明を受けた審議では、食品中の汚染物質に係る規格基準 設定の基本的な考え方というものを皆さんで確認いたしまして、コーデックスの規格に準 拠する方針とした上で、だけれども、我が国の事情も考慮した検討を行うということでし た。その辺からもう一回議論を起こしたいと思うんですけれども、まず、コーデックス規 格に準拠した規格基準を設定すべきかどうかということについて皆さんに御意見をいただ きたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○香山委員 私が曝露評価をしたときに、お米が一番寄与率が高いということで、お米の 基準は是非とも決めないといけないし、その低減対策もどんどんやっていただかないとい けないと思うのですが、それ以外のものはそれほど寄与が大きくないものが多くて、外国 産が多いものがあったりとかいうことを考えますと、現実的にはお米だけ決めればいいん ではないかと、私の印象としては思っております。  以上です。 ○廣橋部会長 皆さん、いかがですか。小西委員。 ○小西委員 私も、香山先生の御発表になられたスライドで言いますと、19ページの36 枚目と37枚目が今回の基準をつくる根拠になるデータになるのではないかと考えており ます。香山先生が各シナリオのカドミウムの曝露分布をつくってくださいましたので、こ のシナリオの1番、2番、3番において基準を決めることによってのリスクのインパクト があるか、ないかということを判断されて、基準をつくらないでいいのか、それとも2番 の米だけでいいのか、3番のコーデックス基準に全部従うべきかというのを決めるべきで はないかと思っております。  そうしますと、このデータを見る限り、95パーセンタイルのところに黄色くなっており ますが、95パーセンタイル値を評価の対象にするかどうかというのは議論しなければいけ ないと思いますけれども、いずれにしても、その3つにおいて、特に2番、米だけで決め た場合と、3番のコーデックス基準にすべて従うといった場合では、それほどのインパク トはないと私は考えます。コーデックス基準にすべて従った場合の違反率なり廃棄率なり ということも考慮いたしますと、米で寄与率の高いものを決めたということでも十分健康 被害を防止できると考えます。 ○廣橋部会長 ありがとうございます。  今、お2方から同じような意見を伺ったんですけれども、ほかに御意見があればどうぞ。 池上先生。 ○池上委員 原則的には香山先生や小西先生の御意見に私も賛成ですけれども、日本独特 の食生活もあると思います。コーデックスの規格で見ていくと、海産二枚貝とか、頭足類 のところがかなり基準値が高目に設定されていますが、これは恐らく、コーデックスで考 える場合に、海外ではこういったものを食べる地域はかなり限られている可能性がありま す。基準を決めるかどうかという問題とは別に、海底に生息する海産物の場合はどうして もカドミウムの汚染を受けやすいというところがあります。これらについては、一定の基 準を決める以外の何らかの手当てがあってもいいんではないかとも考えます。では具体的 に何をすればいいかというのは私にもわからないんですけれども、気になっているところ です。 ○廣橋部会長 わかりました。今の御意見もありますし、先ほどの縁故米の話もありまし て、基準の問題だけではなくて、ほかの取組みもいろいろ考えなくてはいけないのはまた 後で議論するとして、今、御意見を伺うと、やはり寄与率の最も高い米について基準を設 定すべきであるとか、いろいろ検討する必要があるということで、より詳細に検討する必 要があると思います。農林水産省から資料を用意していただいてあるので、その説明をお 願いできますか。 ○農林水産省消費・安全局農産安全管理課 それでは、引き続き、お米だけではないんで すけれども、主にお米について資料を用意させていただきましたので、御説明させていた だきます。お手元の資料7で、前回審議会で御指摘がありました、それでは、地域別はど ういう状況になっているのかという資料で、先ほど私の方から、実態調査で米は1本でお 示ししているんですけれども、これを地域別というか、手前勝手で申し訳ないんですけれ ども、農水省が農政局を置いている地域区分で、若干皆さんの感覚と違い、あそこは関東 だったのかというのがあるかもしれませんけれども、それで分けてお示ししてございます。 おおむね見ていただいたとおりという感じでございます。  もう一点、先ほど来からお話ししております輸入の状況について、資料8でまとめてご ざいます。この資料自体は食料需給表から引用したもので、すべて公表している資料にな ります。  ただ、1点、大豆については、先ほどお話ししたとおり、全体で400万トンぐらい輸入 しているんですけれども、ほとんど搾油用ということで、若干数字を操作しておりまして、 下の方に書いてあるんですけれども、小麦の方は実はそれほど影響を受けないんですけれ ども、大豆については加工用が大きいものですから、どのくらい、いわゆる豆腐とか納豆 とかになっているのかがわからないんで、加工してございます。はっきり言えば、大豆に ついては全体から加工用を抜いたというふうに理解していただければいいかなと思います。 そうなると、大豆については、直近の18年度で86万トンぐらいが食用に回っているだろ うと見積もってございます。パーセンテージの方は、それぞれつけているんですけれども、 1枚めくっていただいて、ちょっと見やすくしてございます。  これから見ると、基本的にまず、お米については、自給状態と考えていただければと思 います。輸入については、ミニマムアクセスということで、ウルグアイラウンドの合意に 基づいて輸入している分と御理解いただければと思います。  小麦については、ほとんどが輸入と言っていい状況でございます。  大豆についても、国内の出来、不出来が大きい作物なんで、若干ぶれますが、7割ぐら いが輸入で3割ぐらいが国産と考えていただければいいのかなと思っております。  野菜の方は、基本的には国産がほとんどですけれども、日本でつくれない時期の野菜が ございます。カボチャとかアスパラとか、こういうものについては、基本的には輸入に頼 る。野菜についてスーパーで国産品以外のものは余りお目にかからないんではないかなと 思うんですけれども、お弁当とか、お惣菜用に、例えばネギとか、そういうものは結構輸 入が多うございまして、それでも8割ぐらいは全体として自給しているという状況です。  果実については、皆さん、余り外国産のものを食べていないのに、思ったより低いなと いう印象かと思いますけれども、輸入も生鮮と、いわゆるジュースが半々ぐらいございま して、生鮮の大きい方はバナナとかオレンジのようなものが輸入されている。日本では商 業的にはバナナはほとんど栽培されていないんです。あとは缶詰と果汁、いわゆるジュー スです。日本ではジュース用の果汁生産がほとんどございませんので、そういう形で輸入 の割合が多くなっているという状況でございます。大まかに品目別に、この品目は輸入が 多くて、この品目は輸入が少ないというのがわかるかなと思います。  引き続きまして、先ほど山内委員の方からありましたリスク管理措置について、スライ ドを使って御説明させていただきたいと思います。 (PP)  米等のカドミウムのリスク管理措置ということで、まず、大まかな農水省が行っている 管理の流れをお示ししてございます。まず最初に実態調査ということで、土壌調査をやっ ております。農水省は毎年、現在は全国で3,500地域、昔は2万地域の土壌調査をやって おりまして、その中で土壌中のカドミウムの実態も把握してございます。と同時に、米に ついては大体1,000試料ぐらいの調査を、これは毎年公表しているんですけれども、やっ ております。19年だと36自治体でモニタリングをやるという形で、いわゆる土壌でカド ミウムが比較的高い地域をまず把握するという実態の把握から始めております。それを受 けた形で、この後、詳しく御説明しますけれども、汚染低減対策をそれぞれの地域で行う。 その後、それがきっちりやられているかどうか、その効果がちゃんとあるかというところ をまたモニタリングした上で、だめな場合は、どう改善するのかというのも含めて、この サイクルを回すというのが基本的なカドミウム管理の流れでございます。 (PP)  低減対策の大きな考え方でございます。農水省は、考え方として2つに分けて考えてご ざいます。1つは、そもそも土壌からカドミウムを除去するという対策。もう一つは、こ れは米だけになるんですけれども、カドミウムを抑制する対策というふうな2つのカテゴ リーで分けておりまして、それぞれ適用のレベルを、高いところについては、例えば、除 去として客土で、中ぐらいのところには、これは新技術になるんですけれども、植物浄化、 ときどき高目になるようなところについては湛水管理、これは米だけなんですけれども、 これを進めております。そのほかにも、実は今、化学洗浄という薬品を使った洗浄技術も 実用化する見込みが立っておりますので、こういうものも入れながら、大きな流れとして は、抑制ではいつまでたってもカドミウムの土壌中濃度は低くなりませんので、基本的に はカドミウムを除去していくという対策に重きをなしながら対策を進めるというふうに考 えてございます。 (PP)  その考え方の根拠ということになるんですけれども、厳密に言うと、土壌のカドミウム の濃度と米の濃度の間に、一つ一つの相関を見ると相関しておりませんけれども、全体の グループで見た場合は実は相関がございます。自然にそうだろうなというのはわかると思 うんですけれども、基本的にカドミウムの濃度が下がれば、玄米中の濃度は下がっていく ということが確認されておりますので、やはり基本的には、土壌のカドミウムをそもそも 除去していくという方向が最も合理的な方法かなと考えて、現在進めてございます。一つ 一つのリスク管理措置について御説明します。 (PP)  客土については、これは簡単なので余り説明しません。要は、上にきれいな土を乗せて いくというだけです。ただ、コストが10アール当たり500万円ぐらいかかってしまったり、 そもそも土が余りない。つまり、基本的に山の方からきれいな土を持ってくるんですけれ ども、現在、山をガリガリ削って土を持ってくるというのは環境保護上問題もあるという ことなんで、持ってくることができる土自体も少ない、さらに、山土を入れると、どうし ても収量が1割ぐらい下がってしまうという問題がある。それでも、根本的にこれは解決 しますので、これはいいなという形で進めてございます。 (PP)  効果なんですけれども、これはてきめんというか、当たり前の話ですけれども、かなり 下がります。ただ、取組み面積のところを見ていただきたいんですけれども、年間30ha とか20haとかという形で、すぐに大規模にできるものではないと思っております。 (PP)  次は米の抑制対策なんですけれども、今、いわゆる湛水管理というものをやってござい ます。この原理は、7〜8月ぐらいになるんですけれども、穂が出る時期に、普通は水を 出したり抜いたりしてやるんですけれども、この時期もずっと水を張ったままにしておく という技術でございます。問題としては、この時期、水がない地域において水をどうやっ て持ってくるんだという話とか、水が漏れていないで、ちゃんと湛水されているかという のを確認しなくてはいけないというような問題と、土壌中のヒ素が、この後の原理と逆に なるんですけれども、吸収が多くなるという問題もあると考えております。 (PP)  この湛水管理の原理なんですけれども、難しそうには書いてあるんですけれども、要す れば、酸素と遮断するということで、いわゆる還元状態に持っていきます。そうすると、 土壌中の硫黄とカドミウムが結合しまして水に溶けにくくなる中で水稲が吸いにくくなる という状況で、湛水管理というのは結構効きます。 (PP)  実際の現場の写真ですが、こういうふうに湛水管理を呼びかけたり、実際に見回る。何 で見回っているのかを説明しなくては山内委員への答えにならないんですけれども。 (PP)  効果なんですけれども、皆さん考えているよりも効果がございまして、湛水管理すると かなり下がるということです。現在、取り組む面積が4万haとかなり多うございます。こ れは先ほどの委員の質問への回答にもなるんですけれども、現在、農林水産省は米流通安 心確保対策事業というのをやってございまして、食衛法では現在、1ppm未満という基準 があるんですけれども、農水省は0.4ppm以上1ppm未満のものを国のお金で買い上げてご ざいます。このやり方なんですけれども、基本的には土壌調査なりで汚染地域を各県が決 めて、生産防止計画を定めた上で、各農家ごとに米のカドミウムの濃度を測ってございま す。0.4ppmを超えたものについては国が買い入れるというシステムになっておりまして、 先ほど委員から御指摘があったんですけれども、恒常的にものすごく高い濃度のものを食 べ続けている地域は、理論的にはそれほど多くないのかなとは考えてございます。現実に、 毎年、先ほど言った調査もやっておるんですけれども、大体1,000試料ぐらいで、0.4ppm 以上のものが、例えば、19年だと3点ぐらい出て、これも当然買い上げの対象になったん ですけれども、そういうことなので、一応、この仕組みはかなり機能しているんではない かと思っております。  何でこれが水管理と関係するかというと、実は買い入れの条件として、いわゆる吸収抑 制対策をやらないところからは買い入れませんというふうに要件化しております。そうい う意味で、かなりの地域でこういうものに取り組まれていると考えております。 (PP)  もう一つ、これからが新技術になるんですけれども、植物浄化がどうにか実用段階にき たかなということで、今度、全国的に実施をするという段階にきております。考え方は簡 単で、カドミウムをすごく吸う植物を植えて、それを燃やして土壌からカドミウムを除去 するという技術でございます。問題は、時間が3〜5年ぐらいかかるのと、結構大きなバ イオマスが発生しますので、これをどう処理するか。今の実験段階では一般廃棄物や産業 廃棄物として処理するんですけれども、かなり多くなると、なかなかこれが難しいという のもあるかなと思っています。 (PP)  効果の方ですけれども、品種として、長香穀が一般的には使われてございます。このほ かにも、品種としてIR−8、これは緑の革命で有名になった品種なので、もしかすると 御記憶の方もいらっしゃると思います。これらの実験で、大体、低減率が4割とか3割と かという形で、毎年10%ぐらいずつ土壌からカドミウムを奪うんではないか。勿論、低濃 度になれば、そこは10%というわけには多分いかないとは思うんですけれども、かなりの 高率で吸うことがわかっております。  長香穀の特徴ですけれども、普通の稲ですと、カドミウムは根っこの方に残るという性 質があるんですけれども、長香穀については、根っこではなくて、上の方の葉っぱとか実 の方にカドミウムが多く残るという性質がございまして、そういう意味でも効率的なのか なと思っております。これが実は21年産から、先ほど米流通安心確保対策事業を説明しま したけれども、買い入れ要件という形で、これに取り組んでいるところからしか買わない よと、当然全面的にやるというわけにはなかなかいかないんですけれども、そういう要件 にしておりますので、かなり広がるんではないかと思っております。 (PP)  客土もそうなんですけれども、これのいいところとしては、基本的には水田という、い わゆる生産装置自体からカドミウムを除去する。現在、御案内のとおり、国の方はいわゆ る生産調整を進めてございまして、今、農家、農村は一般的にどういうふうな形で水田を マネージメントしているかというのを示してございます。これは1つの例ですけれども、 ほ場を3つに分けて、2つで水稲をつくって、1つでは転作作物、いわゆる麦とか大豆を つくるというようなやり方が一般的にやられておりますので、除去するということになれ ば、それに付随する麦とか大豆の方にもカドミウムは低減できるのかなと考えてございま す。 (PP)  その後は、最新技術、もう実用間近という技術です。化学洗浄も既に実用間近という段 階にきてございます。具体的には、塩化第二鉄という薬剤を用いて洗浄する。ちょっと長 くなるので、ここは省略します。 (PP)  効果の方は、まさに客土並みの効果を見込んでございます。これは1年で終わってしま うので、冬場にやって、次の作に間に合わせてしまうというやり方になるんですけれども、 どこから水を持ってくるのかという問題とか、実際に現場におろすには幾つか解決しなく てはいけない問題があると考えておりますけれども、これも農水省では現在、精力的に研 究を進めているところでございます。これは御紹介までに。 (PP)  こういう事業を国はどうやって支援しているのかということですけれども、先ほど言っ た植物浄化技術については、21年の新規要求として2億円ほど要求しまして、まさに一挙 に全国に広げようと考えております。この考え方なんですけれども、今まではどちらかと いうと汚染地域をきれいにしようという考えなんですけれども、農水省としては、そうで はなくて、米を含む農産物全体のカドミウムを下げようという考えでございまして、汚染 地域のある、なしにかかわらず、こういう技術は早く現場におろしてくれということで各 県にはお願いしてございまして、現在の聞き取りの状況ですけれども、大体22の自治体か ら、植物浄化と化学洗浄も含めてなんですけれども、取り組みたいという意向はいただい てございます。 (PP)  今後の考え方なんですけれども、こういうふうに実証まではいいんですけれども、今後 どうやって現場までおろしていくのかという御懸念があろうかと思うんです。基本的に、 事業でやった、いわゆる植物浄化のデータとかは一元的に国に集まるような仕組みにして ございます。これを基に、当方では早い時期にカドミウム汚染低減に係る技術指針という ものを策定したいと考えてございます。これについては、現在、農水省が進めております 生産工程管理(GAP)を596産地で取り組んでおりますけれども、農水省としては、23 年までにほぼ全産地でこれをまず少なくとも取り入れるという形になりますので、このG APの管理項目の中にこの指針を組み入れていただくという形で普及を図りたいと思いま す。  参考の方で麦類のデオキシニバレノール・ニバレノール汚染低減の指針というのを抜粋 しておりますけれども、これは現在、パブリックコメントを募集している指針なんですけ れども、ここにも書いてあるとおり、基本的に、農水省は今後、こういった汚染物質の低 減対策については指針化して、それをGAPに寄せて全国に早急に普及させるという方針 でありますので、それをきっちり明記しておりますので、カドミウムについてもこの方式 で全国に普及させるという考えでございます。 (PP)  最後は、そうやって除いても、再汚染が生じてはだめではないかという話もありますが、 現在は各法律で再汚染は防がれているのかなと思いますので、基本的にはカドミウムを除 去する。当面は、応急としては、抑制技術をしっかりやってもらうという中で、農作物中 のカドミウムの濃度が十分低下する方向に施策を持っていきたいと考えてございます。  長くなりましたけれども、以上でございます。 ○廣橋部会長 ありがとうございました。  地域別の米の汚染の実態、農産物の輸入量の問題、汚染低減の対策に取り組んでおられ ることの説明を伺いましたけれども、直接この内容に質問があれば、どうぞ。 ○池上委員 2点ほど質問させていただきたいんですけれども、1つは、先ほどおっしゃ っていた、カドミウムで汚染されているお米の買い上げされた後の処分、今の時期ですの で、これについても明確にしておく必要があるんではないかと、一般消費者風の質問です。  2点目、結局、カドミウムの汚染というのは自然的な汚染ではなくて、過去に汚染をし た企業なりがあるわけです。そこが現状、今の汚染状態の除去とか、その他に係る負担等 にどういうふうにかかわっているのか。 ○農林水産省消費・安全局農産安全管理課 まず、1点目からお答えします。私も直接の 担当者ではないので、詳しくは説明しづらいのですけれども、基本的には0.4〜1ppmの買 い上げたものについては、すべて、いわゆる加工用という形で処理されるということです。 具体的には、受け取ったものについてはα化という処理をいたします。いわゆる糊にする。 その後、ベンガラで着色しまして、これは汚染米ですよと、汚染米というか、0.4ppm以上 〜1ppm未満のお米ですよというのをはっきりさせて、そもそも産地において区分管理と いうか、倉庫まで分けて管理した上で、それをちゃんと工場に送っている。区分管理の部 分までは農政事務所がきっちり確認する。事故米の話でいろいろ御批判も受けているんで すけれども、その際の国会の答弁でも、カドミウム米はなかなかしっかりやられているよ うだという御評価もいただいているようなので、昔からカドミウム米については、これは かなり長くやっている事業なんですけれども、しっかりやられているということかなと思 います。今後は、大臣からも発言があったんですけれども、そういうことになると、いろ いろあるだろうから、焼却という方向も現在出ておると承知してございます。  現在、帳簿上は全部チェックを終わっておりますが、適正な処理の仕方で完全にやられ ているということを10月末までに確認をするということで、今、やっているということに なっております。1ppmを超えるものについては、基本的には県の方で焼却処分しており ますので、これも流れてございません。ですので、基本的には0.4ppm以上のものは市場に は出回っていないことが担保されていると言えるかと思います。  もう一点、汚染企業ですけれども、これについても、公害防止事業費事業者負担法に基 づいて対処がされておりまして、例えば、客土とかをやる場合については、汚染企業がわ かっているところでは、過失割合に併せて企業が負担しているところもございます。また、 わからないところもあるんですけれども、そういうところは県なり国が補助しながらやっ ている。これについては、法律の枠の中で、それぞれ環境省と農水省でやりながら、当然、 汚染企業があるところについてはそこが負担するという基本理念がございますので、そう いう形でやっていただいているという状況でございます。 ○廣橋部会長 ほかに御意見いかがでしょうか。どうぞ。 ○宮原委員 今日のプレゼンテーションで、米の中のカドミウムは将来低減されるだろう というお話だったと思うんですが、例えば、10年、20年先に、今日議論されているような 基準値以下になるというような見通しがあるのかどうかということをお尋ねしたいんです。 ○農林水産省消費・安全局農産安全管理課 全体的に0.4ppmを下回るような方向になるか ということですか。 ○宮原委員 コーデックスについてとかですね。 ○農林水産省消費・安全局農産安全管理課 それは米に限らず。 ○宮原委員 今は米の話ですから、米について。 ○農林水産省消費・安全局農産安全管理課 今、全体では、基本的に3つの対策を進めて おりますので、現在でも、水管理なり、かなり広域でやっていますので、0.4ppmを下回る ような形でやっておりますから、将来的には広範囲に植物浄化、要は土壌自体をきれいに していくという施策があれば、全体的には下がっていくという方向になるのかなと思って おります。 ○宮原委員 つまり、基準をクリアする米だけが生産できる日がくるのかという質問です。 ○農林水産省消費・安全局農産安全管理課 時間軸の問題は当然あるかとは思います。一 番手っ取り早いのは、はっきり言えば客土を全部すればいいんですけれども、先ほど言っ たとおり、すべて客土というのは、時間軸にすると、何十年とか、そういう軸になってし まいます。植物浄化であれば、そういうものをより早める方向でやれる。また、水管理で できるところは当然できますので、そういう意味では、技術的にはクリアできるというふ うには考えてございます。 ○宮原委員 どうもありがとうございました。 ○廣橋部会長 ありがとうございました。  どうぞ。 ○山内委員 説明ありがとうございました。資料6を見ると、コーデックス基準を単純に 当てはめて、最大値で引っかかるものがかなりあるというのがわかります。最大値でコー デックス基準を上回るものには、小麦、大豆、根菜類系とホウレンソウ、ニンニク、ネギ、 ナス、オクラが該当します。質問したい点は、大豆やサトイモなどの生産に当たっても、 カドミウムを低減するような指導や技術的な協力などはしていますか。これから実施する 予定があればそれもお聞かせください。 ○農林水産省消費・安全局農産安全管理課 まず、大豆の方ですけれども、先ほど図でも お示ししたんですけれども、基本的に日本の大豆は、大きく言うと、いわゆる転作大豆と 畑大豆という形で2つに別れてございます。いわゆる畑大豆は北海道中心につくっている んですけれども、これは実態調査では濃度的にはそれほど高くないということがわかって ございます。一方、田大豆の方は若干高目ということなんですけれども、それについては、 今、植物浄化を導入する効用として、水田という生産装置自体のカドミウムの低減を図る ということになりますので、当然、ここで栽培される田大豆、転作大豆というものについ てもカドミウムは下がっていくのかなと考えております。  同じように麦もつくっていますので、実は構図は同じで、麦についても、畑麦と、田で やる転作麦があるんですけれども、畑麦の大きなところは北海道で、ここは余り高くない んですけれども、やはり田の方がありますので、それについても植物浄化技術なり、客土 もそうなんですけれども、こういうものを入れていけば、先ほど宮原委員からもあったん ですけれども、普及の速度にもよりますけれども、全体には下がっていくのかと思います。  一方、サトイモのような野菜類については何もやっていないのかということなんですけ れども、当方としても、寄与率の高いものから技術開発を進めるというプライオリティー をつけておりまして、そういう意味で、米の対策についてはかなり力を入れてずっとやっ てきて、ここまできたという状況です。  現在、植物浄化など、有力な技術が実用化される中で、研究段階ではあるんですけれど も、実は、植物浄化技術というのは、田んぼを畑状態にするという意味では畑の技術でも あるわけです。ちょっとわかりづらいと思いますけれども、水田は水を張るんですけれど も、転作作物は水を張りません。そこで、長香穀なり、ある意味、陸稲のような扱いで栽 培するのが植物浄化技術でございます。そういう意味で、この技術を畑に応用できないか という形で、現在、研究は進めてございます。  加えて、畑の場合は、何で米にこだわったかというと、今の農家の持っている装置、田 植機とか、稲刈機とか、そういうものがそのまま使えるので、すぐに取組やすいというこ とで、稲にこだわって植物浄化を進めたんですけれども、畑の場合はそういうわけでもな いので、例えば、ソルガム、トウモロコシの仲間ですけれども、ああいうものを使って、 野菜についても、畑の植物浄化というものについて現在研究が進んでおりまして、かなり いい成績というか、はっきり言えば畑と同じなので、それが畑にできるかどうかをやるだ けなので、それを今、進めているところです。16年のリスクコミュニケーションでも当方 からお約束したんですけれども、基本的には米についても、最終的には0.2ppmとか、そう いうところを目指していくというのがうちの方の約束でございますので、この約束は必ず 果たすという形で、今後もそういった予算は十分確保しながらやっていきたいと思ってお ります。 ○廣橋部会長 ありがとうございました。  どうぞ。 ○早川委員 今の御質問に関連するんですが、そうすると、汚染されたところでつくられ た米に関してはそういった処置をしますけれども、ほかの農作物をつくった場合について は、それはそのまま市場に出るということになるんでしょうか。 ○農林水産省消費・安全局農産安全管理課 そういうことになります。 ○廣橋部会長 ほかにいかがでしょうか。前回からの議論も含めて、寄与率が一番高いの が米である、米について基準を設定するということについて、皆さん、御意見いかがでし ょうか。当面それだけでいくという考え方。一方では、除去の対策を十分とっていかれる ということなんですけれども、もう一回、香山先生から。 ○香山委員 実際に汚染地域で疫学調査をしておりまして、開始した前後から追跡調査で コホート調査を行っていますから、5年後の調査も行っておりまして、高い地域にはずっ と入っておりまして、そこで米のスクリーニングを実際に行われております。サンプリン グ方法を決めまして、出荷するすべてのお米を測っているという労力と時間と、新米とし ていかにして年内に出荷するか、時間との勝負という生産者の状況を見ておりまして、そ ういうデータベースがあるからこそ、きちっとした湛水管理ができて、どんどん低減して いるという現状もあるわけです。  それを見るにつけまして、実際のコストベネフィットということも考えると、生産者に きちっとGood Agriculture Practis(GAP)をやっていただくためにも、米の基準をき ちっと決めて、それをきちっと守っていただくことが一番でありまして、それプラス、そ の他の生産量と消費量の割と低目のものに更に基準を決めて、コストをかけて基準を守ら せるということをすることがどれだけの低減効果があるかどうかというコストベネフィッ トを考えることも必要かなと思います。 ○廣橋部会長 これからの方針に関しての御意見が出たわけですけれども、ほかに御意見 ありますか。 ○宮原委員 資料5、厚労省の方から説明があったわけですけれども、これをごらんいた だきますと、米の寄与率は非常に高いということは一目瞭然なんですが、ただ、その寄与 率が年々低下していることも一目瞭然なんだろうと思います。したがいまして、プライオ リティーとしては米というのは重要だとは思うんですが、この中で増えていっているのは、 ざっと見た感じでは、魚介類です。こういうものについても、今すぐということはないに しても、配慮が必要なのではないかと思います。現在は確かに米は重要かもしれませんけ れども、要するに予防ということを考えますと、将来に向かってどうするかというのが考 えの中に必要だと思いますので、この2点についても、今回はともかく、御配慮というか、 審議をお願いしたいと思います。 ○廣橋部会長 どうぞ。 ○山内委員 皆さんの議論は大変よくわかりますが、重金属については基本的に基準があ った方がよいのではというのが私の意見でございます。ただ、基準設定の際は、全体への 寄与率ですとか、日本人の食生活を考慮した基準をつくるべきであるということもわかり ますし、できるだけ科学的に設定すべきということも承知しています。とりわけカドミウ ムは、たまたまそこの地域で農業に携わられたら、簡単によそへ移動することは難しいわ けで、生産者のご苦労も非常によくわかります。  例えば、仮に資料6のデータから、大豆は一律0.1ppmというような基準をつくってしま うと、3ページ目の品目別実態分布からいっても相当な量が該当してしまうことになりま す。現在、国産大豆などの転作の奨励もされていますし、国民の期待も高いところですか ら、不必要にそういったものを排除することはよくないとは思います。ただ、基本的には 重金属系なので、重要なものについては基準があった方がよいのではないか。そのときに 何と何にするかということは、お米は論ずべきもないと思いますけれども、大豆とか小麦 とかも検討いただきたいと考えます。仮に基準を設定しない場合も理由をきちんと説明で きるようにしてお願いしたいと思います。寄与率が低いとか、コストの問題もあって今回 はしないが、先ほど宮原先生のおっしゃったように、食生活も変わってまいりますので、 そのときにはもう一度検討し直すという留保条件つきでお決めいただくこともあると思い ます。  以上でございます。 ○廣橋部会長 ただいまの対応について、事務局から。 ○西嶋補佐 ただいま、いろいろ委員の方から御意見等ございました。リスク管理措置と いたしましては、御承知のとおり、基準の設定以外にも、先ほど農水省の方からいろいろ 説明ありました低減措置、そういった農水省、厚労省の取組み、あるいは実態として、先 ほど池上委員の方から御発言もございました魚介類等の食生活、そういったことにつきま しては、広く国民の皆様に情報提供するというのはまず1つ重要なことだろうと思います。 今回の資料でも、参考資料3ということで、最後の資料にQ&Aを付けさせていただいて いますけれども、例えば、こういったものを有効に活用させていただいて、広く情報提供 するというのも1つ考えられようかと思っております。  あと、米について、若干確認をとは思っておりますけれども、米につきまして、現在、 食品衛生法で1.0mg/kgという基準値があるということで、香山委員のパワーポイントにも ございましたが、それは玄米で1.0mg/kgの基準値を設けております。一方で今、コーデッ クスの規格で言うと、精米で0.4mg/kgという基準値でございます。資料1にもございます ように、必ずしも精米で食べるわけではない日本の状況であったりとか、そういったこと を考慮すべきだと、前回、御意見もございました。そういった状況を踏まえまして、今、 米で基準値をつくるべき、0.4mg/kgというお話もございましたけれども、現実的に、玄米 としてそれを設定をするべきなのか、あるいは精米、あるいは何分つきということをどう 考慮するのか、その辺りもよろしければ御議論いただければ、実際に基準値をつくるとき には、そういった形に落とし込めるのかなと思っております。 ○廣橋部会長 まず米について規格基準を設定しよう、それ以外について、広報であると か、いろんな取組みをやっていこう、また、適切なときに見直そうということで、方向は 大体。 ○品川委員 よろしいですか。ちょっと気になるのは、コーデックスが、海産類が高い。 一般的に消費者が見ると、2mgというのは米に対して非常に高い。それは不安を覚えるの は事実なんです。それに対して、なぜ外すのか、その理由づけがある程度出ないと、数字 から見ていくと、不安を非常に覚えると思います。対策がどうのこうのとか、今の経済性 の問題もあるんですけれども、ここは少し整理しておかないと、見る人が見たら、何でこ んな高いところを置いておいて米だけということになる。コーデックスで決めている米と は、日本は摂取量とか、その辺が全然違うんではないか。その辺は少し整理して説明をつ くっておかなければならないんではないかと思います。 ○廣橋部会長 皆さん、いかがですか。どうぞ。 ○五十君委員 今の値が高い2つにつきまして、私もちょっと気にかかっておりまして、 池上先生からの御指摘もありました。日本は海外よりもよく食べるカテゴリーの食品かな と思います。それから、コーデックスに規格があって、国内にないとすると、場合によっ ては海外からよくないものが入り込んでしまう、そういう恐れも考えると、ほかのものと は違う立場で、この2つについては議論していただいた方がいいと思います。いかがでし ょうか。 ○廣橋部会長 今の御意見は、魚介類の問題をどう取り扱うか。もし基準を設定しないで、 寄与率のことから考えて米からいくのであれば、少なくとも、なぜしないのかという合理 的な説明をできるようにしておかないといけないんではないかというのが出てきている意 見です。 ○品川委員 これで見ると、米というのは、高いところを決めたという現実がある。それ よりも高いのは置いておくのかという単純なあれが出てくるんではないか。 ○廣橋部会長 どうぞ。 ○香山委員 CCFACに私も何度か参加させていただいたときがありまして、ここで海 産二枚貝に関して「カキ、ホタテを除く」と書いてあります。また「頭足類(内臓を除去 したもの)」と書いてあります。それはなぜ書いてあるかというと、それらが非常に高い からです。これでも収まらないというものなんです。  ですから、カキ、ホタテをもっと厳しいものを付け加えるかどうかということは、食料 の確保ということと、それを実際に管理して市場から除くことによって、どれだけ摂取量 が低下するかという試算を、CCFACはJECFAに要求いたしまして、JECFAで その試算を実際にやったわけです。モンテカルロシミュレーションでやったわけですが、 ほとんど寄与はないというJECFAの評価を我々は出しました。そういうことを考えま すと、全体の寄与、食べる頻度、お米は毎日食べる人がいても、カキは年間に何回食べる かとかです。全体像から考えると、それほど問題にはならないだろう。養殖業者の方とか、 産地の方は頻繁に食べる方はいらっしゃるかもしれませんが、そういう方は注意喚起とい う形で対応できるんではないかと私は思います。ですから、JECFAの評価及びCCF ACの評価はそういうことだったということを付け加えさせていただきます。 ○廣橋部会長 いかがでしょうか。今の御説明が今回、基準を設定しない合理的な根拠と して十分かどうかということです。どうぞ。 ○山内委員 この農林水産省の資料から言うと、2と設定しても全然引っかかる状態では ないようなので、設定してはいけないのかと、科学的知識のない私などは思ってしまった りするんです。 ○廣橋部会長 どうぞ。 ○品川委員 今、基準が、コーデックスが定めているのを日本が定めない。それ以上を定 めてくれれば消費者は安心するんですけれども、ほかが決めているのに、日本だけがこう いうのがない、そういう中で、今、先生が言われたような形は、この場ではわかるんだけ れども、消費者にそれをどういうふうに説明できるかということをしっかりやらないと、 そこだけスポット買いされると、非常に甘いとかというマスコミの風評が出てくるんでは ないか。この辺はこの委員会でもきちんと説明できる、まして、それは今度、いかにリス クコミュニケーションで消費者なり国民に知らせていくかということが非常に重要になる んではないかと思います。 ○廣橋部会長 どうぞ。 ○基準審査課長 今の御議論をお伺いしまして、大変重要なことだと思いました。米につ いては基本的には設けるということでしたけれども、その他のものについては、基準をつ くるのか、あるいはそれ以外の低減策かということです。いずれにせよ、今日の資料には 付けさせていただいておりませんが、寄与率について、数値を把握しておりますので、そ れを見ながら、これについては、この前のときにコーデックスについては原則しましょう ということになっていましたので、そういった観点から、なぜこれは今回しなかったのか ということについて、香山先生の方からお話がありましたように、シミュレーションで、 米で管理すれば、7〜14μg/kg体重/週の間は基本的には問題ないという前提の下で、大丈 夫だというお話もありましたけれども、国民の皆様から見れば不安な部分もあると思いま すので、それについてどう考えているか。  あと、基準をつくると、実際にはこの基準が守られているか、守られていないかという ことで、そういった面での検査のコストとか、そういう問題が別の問題として出てくるこ とも事実です。ですから、トータルとして守られるかどうかという前提の下で、あと、食 の多様性ということで、例えば、少し前になりますけれども、魚介類によるメチル水銀の 摂取では、魚種によってはある程度高いものもありますけれども、全体としてマネージす ればいいというような考え方も提示されていたということもあります。そこら辺は広く御 意見を賜って、いずれにせよ、コーデックスで基準があるのに、もし仮に置かないんだと すれば、その説明をどういうふうにするか、きっちりしておかなければいけないと思いま すので、その資料をつくらせていただきたいと思います。  それから、先ほど西嶋が言いましたように、いずれにせよQ&Aとか、あるいはリスク コミュニケーションの中でいろいろ問われるかと思いますので、そのためにもきっちりつ くって、次回御説明して、御議論いただければと思っております。 ○廣橋部会長 大変大事な問題なので、今のお話のように、資料を用意していただいて、 今日も口頭では説明があったんですけれども、それをきちんと確認する形で議論していく というふうにしたいと思います。  一方、精米か玄米かという話もありましたけれども、基準を設けることに関しては皆さ ん御意見が一致していたわけで、その場合には玄米で0.4ppmということでよろしいですね。 そこまでは一応確認しておいたという形で、次に、米については設定する、それ以外のも のはどうするかということについての資料を用意していただいて、また議論を継続するこ とにしたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。 (「はい」と声あり) ○廣橋部会長 ありがとうございます。  では、今後の予定について、事務局から。 ○西嶋補佐 本日御指摘をいただいた米以外の部分のリスク管理の方法、また、それに資 するような資料等用意させていただきまして、次回、再度御審議賜ればと思っています。  以上でございます。 ○廣橋部会長 それでは、これをもちまして今日の食品規格部会を終了したいと思います。 御協力どうもありがとうございました。 照会先: 厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課  規格基準係TEL:03-5253-1111(内線4280、2484)