08/09/25 第35回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会議事録 第35回 労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会        日時 平成20年9月25日(木)        10:00〜          場所 厚生労働省職業安定局第1会議室(14階) ○大橋部会長 ただいまから、第35回雇用対策基本問題部会を開催いたします。最初に、 本日の委員の出欠状況を報告します。本日の欠席者ですが、公益代表宮本みち子委員、 森戸英幸委員、労働者代表久保隆志委員です。  それでは、議事に入ります。本日は、前回事務局から高齢者雇用対策の今後の在り方 について議論をしてもらいたいとのお話がありましたので、これを議題とします。事務 局から関連の資料を説明していただきます。資料1〜3についてご説明をお願いします。 ○山田企画課長補佐 8月11日に高齢・障害者雇用対策部企画課にまいりました山田と 申します。よろしくお願い申し上げます。  今回、ご議論の参考となるようなデータとして、資料1、2を準備しました。資料1は 各種調査から、資料2は平成19年の高年齢者雇用状況報告について分析を行ったもので す。  資料1からご説明します。「高齢者雇用の現状について」ということで、1頁ですが、 高齢者の就業率が、近年、高年齢者雇用確保措置の導入・定着が進展する中で、60歳代 で上昇していっているところが見られます。  2頁ですが、これは男女別で見た労働力率を国際比較したものです。それによります と、我が国は男性は55歳以上で特にその高さが際立ってくるということが言えます。女 性についても、特に60歳代で国際的に見て高くなっています。  この背景の1つとして、我が国の高齢者の方々の就業意欲が高いということがよく指 摘されます。3頁ですが、これは適切な退職年齢を見た意識調査です。それによります と、60歳代後半、さらにそれ以上として、年齢にこだわらず元気ならいつまでも働くほ うがいいといった回答が多くなってきております。  4頁ですが、これは55歳から69歳までの方々を対象とした調査です。これによります と、右のほうの括弧のところで65歳以上まで働きたい人の割合を集計しておりますが、 これが男性で6割程度以上、女性でも4割程度以上となっております。  5頁の調査は、いわゆる団塊の世代、このうち60歳定年の適用を受ける正社員の方を 対象にして、61歳以降の各年齢で、どのような形で仕事や社会的活動をしたいかを聞い たものです。これによりますと、65歳までは赤色の正社員希望、これは60歳代前半で徐 々に低下しますが、一方で黄色の契約社員・嘱託社員の希望は65歳までほぼ横這いとな っております。65歳を超えますと一層多様化が進み、紫色の「ボランティア活動をする」、 桃色の「仕事・社会的活動をしない」といったところが増えてくるという状況です。  いま多様化と申し上げましたが、次の6頁では、働く理由について、60歳代前半、後 半となるにつれて多様化してきます。青色の「経済上の理由」のほかに「いきがい、社 会参加のため」、さらには「健康上の理由」といったものが増えてきます。  7頁ですが、団塊の世代について60歳定年後に働くつもりの人の中で、現在と同じよ うな仕事で働きたい、次の8頁では現在の会社で継続して働きたいという割合が、それ ぞれ5割を超えています。  9頁は企業調査ですが、それによりますと、継続雇用者の勤務場所として、「通常、 定年到達時と同じ事業所で、同じ部署」というのが最も多く、10頁の同じ調査では、継 続雇用制度を希望する社員のうち実際にどのくらいの人が継続雇用されているかを見た ものです。これによると「ほぼ全員」というのが63.7%で最も多く、その次の希望者の うち「7割〜9割」というものも含め、希望者のうち7割以上が継続雇用されている企業 の割合と合わせると、上2つの合計で8割を超えているという状況です。  11頁ですが、年1回の高年齢者の雇用状況報告です。こちらでは、今後1年間の定年到 達予定者の方々が定年後、継続雇用を予定しているのか、あるいは継続雇用を希望せず 定年による離職を予定しているのか、それとも継続雇用を希望したが、基準に該当しな いことにより離職を予定しているのか、その3つのうちどのルートに該当するかを見て おります。それによりますと、76.8%が継続雇用予定者と、最も多くなっております。 一方で、継続雇用の希望がない離職予定者も2割程度いるということです。  その関係で、12頁ですが、こちらが継続雇用を希望しない人にその理由を聞いたもの です。それによりますと、真ん中の少し上の、継続雇用後の賃金についてが最も高く、 続いて一番上の仕事の内容の関係で「自分のやりたい仕事ができないから」、また、処 遇、環境面の理由が続くという状況が見られます。  13頁から4枚は、60歳代の雇用者の仕事上の満足度について、60歳代前半と後半に分 けて男女別に見たものです。13頁ですが、60〜64歳の男性で見ると、一番上の賃金・収 入面で、右側の緑色の「やや不満」が22.6%、その右の青色の「大いに不満」が12.7% を足した割合が最も多くなっております。これは60歳代後半でも、女性で見ても見られ るということを、次からの3枚で示しております。  17頁ですが、こちらは60歳代を目前にした正社員の方々に、60歳定年後の継続雇用時 の年収水準を聞いたものです。それによりますと、現在の年収の6〜7割程度の水準を最 低限希望する方、最も可能性が高いと考える方が、いずれも多くなっています。  一方、18頁が、企業に定年到達時の年収と比較して、継続雇用者の年収水準を聞いた ものです。こちらの方でも、真ん中の定年到達時の6〜7割程度が最も多くなっておりま す。  19頁は、同じ企業調査で、継続雇用者の雇用契約期間を聞いたものです。それにより ますと、1年の場合が最も多く、8割を超えております。  20頁ですが、これは60歳を目前にした正社員の方々に、60歳定年後の継続雇用時の就 業形態、21頁は勤務形態ですが、希望と見通しを聞いたものです。男女とも最も希望す る働き方は一番上の正社員ですが、最も可能性が高いのは嘱託・契約社員となっており ます。  21頁は、フルタイム、フルタイム以外というところで見たものですが、男性はフルタ イム勤務の希望が多い一方で、女性はフルタイム以外の勤務の希望が多くなっていると いう違いが見られます。  22頁は、企業が高年齢者を雇用する狙い・目的を複数回答で聞いたものです。最も多 いのは、「雇用が義務だから」というものですが、企業の社会的責任、高年齢者の人材 を活用したいという趣旨の回答が続いています。  23頁は、企業が考える課題、高年齢社員の雇用確保や雇用継続に当たっての課題を複 数回答で見たものです。仕事や適切な処遇の確保を課題と考えている企業が多くなって おります。  24頁が、60歳を目前にした正社員の方々の要望、継続雇用制度や高齢従業員向けの人 事労務管理に対する要望を見たものです。それによりますと、一番上の賃金水準の向上、 その次に技能・ノウハウが活用される配置、希望者全員の継続雇用の仕組みといったも のの要望が高くなっています。  25頁ですが、継続雇用制度に関して企業が考える労働組合等との協議における議論の 焦点を聞いたものです。これによりますと、制度を活用できる人の選考基準と回答した 企業が最も多く、7割となっております。以上が資料1の説明です。  続きまして、資料2をご説明します。こちらは、平成19年の高年齢者雇用状況報告の分 析をしたものです。2-1が企業規模51人以上、2-2がそのうちの301人以上について見たも のです。企業規模が異なるだけで、頁構成は全く同じになっております。今回は2-1に沿 ってご説明します。  1頁ですが、1-1ということで、産業別に企業における常用労働者のうち、高齢者がど の程度の割合を占めている企業が多いのか、その分布状態を見たものです。これは高齢 者を60歳以上として見たものです。一番下に全産業とあります。一番左の青色が0%、 つまり高齢者の方々がいない企業が1割強、その右の赤紫色、高齢者割合が0%超10% 未満、つまり1桁いらっしゃる企業は6割、2桁以上が3割弱となっています。これを産業 別分類に見ると、真ん中より少し上の「情報通信業」では、半分近くの企業で高齢者の 方がいない。一方で、「運輸業」、「教育、学習支援業」といったところでは、比較的 高齢者の割合が多いのではないかということが読み取れます。  2頁ですが、1-2は高齢者を60歳以上でなく65歳以上で見たものです。65歳以上の労働 者がいない企業が、全産業で4割と増えますが、産業別の傾向は1頁とほぼ同じものです。  3頁ですが、2ということで、60〜70歳の年齢ごとに高年齢者雇用確保措置が講じられ ているか、どのような手段で措置が講じられているかを見たものです。雇用確保措置が 着実に普及してきておりますが、一番上の白い部分はその年齢までの措置が未実施の企 業です。現在の高年齢者雇用安定法の義務化スケジュールの年齢である63歳で見ると、 一番上の白い部分を除く所、割合にして9割を超える企業で措置が講じられています。 その内容としては、一番下の赤色の「定年なし」、その上の黄色の「定年引上げ」を合 わせて1割強、その上の約8割で「希望者全員」、または「基準策定」による継続雇用の 措置が講じられているところです。  一方で、既に65歳までの雇用確保措置を講じているところ、真ん中辺りの65歳のとこ ろですが、7割強あります。また、65歳を超えて措置を講じている企業は1割強ですが、 65歳を超えると各年齢でほぼ横ばいとなっております。つまり、65歳を超えると、そこ での多くの先進的な企業は70歳までの措置を講じているようです。ちなみに、これを企 業規模301人以上で見ますと、63歳までの措置が未実施の企業割合は少なくなっています。  4頁、3-1ですが、65歳までの雇用確保措置を講じている企業について、措置の内容に よって実際に働いている高齢者の方々、ここでは60歳以上としておりますが、その割合 が異なってくるかどうかを見たものです。左軸の下から2つ目に「その他」と書いてあ りますが、雇用確保措置を63歳までは講じているが65歳までは講じていない企業、63歳 までも講じていない企業も含むものです。これで見ると、上から2つ目と3つ目、「定年 引上げ」、「希望者全員」の継続雇用の措置を65歳まで講じている企業では、高齢者の 割合が比較的大きくなっていると言えるようです。  5頁ですが、3-2は、高齢者を60歳以上でなく65歳以上で見たものです。こちらも高齢 者がいらっしゃらない企業が多くなりますが、3-1とほぼ同様の傾向、つまり「定年引上 げ」、「希望者全員」の継続雇用の所で高齢者の方が多くいらっしゃるようです。  6頁からの4というのは、3枚でセットになっております。6頁ですが、今後1年間の定年 到達予定者が、定年後に、第1に継続雇用を希望せず定年による離職を予定しているのか、 第2に継続雇用を予定しているのか、第3に継続雇用を希望したが、基準に該当しないこ とによる離職を予定しているのか、その3つのうちどのルートに該当するのかを見ていま す。4の図は、65歳までの雇用確保措置が講じられている企業において、措置の手段の違 いでどのルートをたどる方が多いのか、この状況に違いが見られるかを見ようとしたも のです。  4-1ですが、離職希望予定者を見たものです。4-3は基準に該当しないことによる離職 予定者で、真ん中の「基準策定」の継続雇用、その下の「その他」のところで比較的人 数が多くなっているように見えます。  7頁ですが、4-2は定年到達時に、その後に継続雇用を予定している方の割合分布です。 上から2つ目の、「希望者全員」の65歳までの継続雇用を講じている企業で多いように 見えます。  9頁ですが、5-1は、左軸は定年到達時の離職予定者の割合を見ているものです。離職 予定者が少ないところ、例えば上から2番目の「0%」、その下の「0%超10%未満」と いった所で、実際に高齢労働者の方が多く働いているように見えます。これは60歳以上 の高齢者で見たものですが、10頁が65歳以上で見たものです。ほぼ同じ傾向が見て取れ るのではないかと思います。  11頁の6ですが、定年制がある企業で、定年年齢がいくつであるかを見たものです。 8割を超える企業で60歳、赤色のところ、1割弱の企業で65歳となっております。これは 企業規模51人以上ですが、企業規模301人以上で絞って見ますと、約9割の企業で60歳と 設定しているということです。  12頁の7ですが、前の頁で見たように、定年年齢を60歳と設定している企業が多いわ けですが、60歳から64歳までのそれぞれの定年年齢別に、その後65歳までどのような 措置が講じられているかを見たものです。  引き続き、資料3のご説明をします。これは、「今後の高齢者雇用対策の在り方を考 える上での論点(案)」で、ご議論の参考となればと考え、事務局の方で用意をしたも のです。4点書いておりまして、上から、「高年齢者雇用確保措置の施行状況(特に中 小企業)をどうみるか」、「60歳代前半における働く環境をどのように考えるか」、 「60歳代後半以降の企業における働き方について、どのように考えるか」、「高齢者の 雇用以外の多様な働き方について、どのようにして確保していくか」、としております。 もちろん、ここに書いているものに限定せず、幅広い観点からのご議論を賜れればあり がたく思っております。 ○大橋部会長 ありがとうございました。それでは、議事に移ります。いろいろと面白 い資料が出てきましたが、今回は1回目ですので、事務局からご説明があった資料も踏 まえ、今後の高齢者雇用対策の在り方についてご自由にご議論いただきたいと思います。 ご意見をお願いします。 ○市瀬委員 この間も審議会でお願いをしたのですが、ここですと301人以上と51人以 上という分析しか出ておりませんが、いま日本の企業は87%が20人以下の小規模企業で すので、そちらの方の継続雇用の状況を検討するのは非常に重要なことだと思います。 是非その辺をお願いしたいと思います。この間のは少し出ているのでしょうか。 ○長門企画課長 前回、継続雇用の基準を設ける場合の経過措置の扱いについてご議論 いただいた中で、いまもご意見がありましたように、小規模の企業の実態把握を行うべ きだというお話がありましたが、今回お示ししたものは6月1日付の調査では、現在51人 以上の企業を対象としている関係で、そこまでの資料をお出ししました。今後、この6.1 調査についても、少なくとも31人以上の企業までは対象を拡大していくこととしており ます。  さらに規模の小さな企業の実態については、企業の数からして悉皆調査は難しい面が ありますので、抽出調査のような形で取組をしております。現在も、例えば「70歳まで 働ける企業」の実現を図るための施策を進める中で、小規模企業における高年齢者の雇 用実態について、個別に調査しているものもありますので、そういうものについてさら に充実する形で今後検討してまいりたいと思います。 ○市瀬委員 よろしくお願いします。 ○樋渡委員 資料1の12頁、継続雇用を希望しない人の理由の所で、継続雇用後の賃金 が安すぎるというのが39.4%でいちばん多くなっているのですが、これはあくまでも公 的給付などを除いた企業が支払う部分の賃金だけを聞いているのでしょうか。そこを確 認したいのですが、そうですか。 ○岡崎高齢・障害者雇用対策部長 そうです。 ○樋渡委員 そうすると、後ろの方では、これは調査が違うのですが、例えば17頁では 公的給付も含めて聞いている調査で、年収の水準で聞いている調査ですね。これは6〜7 割程度で、最低希望する水準で最も可能性が高い基準だと答えているのですが、12頁の ほうは公的給付が含まれていない、あくまでも企業の賃金でどのように感じているかを 聞いているということでよろしいのですね。 ○岡崎高齢・障害者雇用対策部長 調査をそのまま引用してきていますので、意味とし てはそういうことです。 ○樋渡委員 たぶん、感じ方が少し違ってくるのかなと思います。公的給付も含めて。 ○岡崎高齢・障害者雇用対策部長 17頁などの分については、公的給付などを含めて6 割であると。そうすると、公的給付を抜くともう少し低いわけですが、その賃金につい て低いのでと判断しているというのが前の12頁の表です。ですから、これを組み合わせ てどう読み解くかは、それぞれの立場で読み解いていただいて、ご議論いただければと 思います。 ○樋渡委員 項目ごとではなくて、この資料を拝見しての感想ですが、5頁に「60歳代 における就業見通し」ということで、希望する勤務形態等とあるのですが、先ほどご説 明にありましたように、61歳、62歳ぐらいのところは正社員を希望する人が多いのです が、それ以降ぐっと正社員を希望する人が少なくなって、特に65歳以降は非常に少なく なっています。一方で、契約社員や短時間勤務が増えていくと。こうなると、企業の制 度の仕組みとして、いろいろと働き方を選択できるような形で整理していっている、あ るいは今後そのような視点があるのかなというのが、1つ感じ取れたところです。そう なると、たぶん賃金の在り方なども、それぞれどのようにするかということと関連づけ が出てくるのではないかと思います。 ○大橋部会長 これは全体的な平均値で見ると解釈が難しくて、例えば高齢者の方は体 力や経済力において差が大きくなってきます。そうすると、経済力がまだ十分でないと 思っておられる方は一生懸命働きたいと思われるでしょうし、そこそこ経済力があるな という方はもう少し違った形で働きたいと。その辺りの比率がどうなっているかがわか らないと、平均値だけでは判断しにくいところがあると思います。  ただ、体力が低下するのは多くの人が同じですから、一般的には徐々に体力に応じて ということが言えると思います。その辺りの比率の動きは興味深いのですが、水準を評 価するのは非常に難しいですね。 ○長谷川委員 様々な資料をありがとうございます。樋渡委員が言ったように、すごく 重要な課題だと思うのですが、退職時の退職金がどの程度あるのか、現役時代に貯蓄し た財産がどのぐらいあるのか、持家なのか借家なのか、そういうものをその分布で見な いと、その人が60歳以降定年退職後に働くことを望んでいるかというのは、退職時にお ける財産がどういう状況にあるのかによってかなり違うのではないかと思うのです。賃 金が低いということに不満が出ているのですが、賃金と言ったときに、使側が考えるの と労側が考えるのとでは若干違いがあって、労働者が賃金に対して不満だと言うときに、 いまの会社で継続雇用だったら継続雇用されたときに、いままでは30万もらっていたの が15万だと、賃金が50%になったから、それで不満だと絶対言っていると思います。労 使交渉の中で制度設計したときに、60歳からの継続雇用では賃金を50%で制度設計して おいて、在職老齢年金や高齢者給付などを含め、結果的には70〜80%で制度設計をして いると思うのです。でも、労働者から見ると、賃金は賃金、給付は給付と見るのだと思 います。  生活調査の中で、高齢者になっても働きたいという理由がこれにはあって、経済的理 由というのがありますが、経済的理由と言ったときに働かざるを得ない、何もなくて本 当に働かざるを得ない人と、退職金などである程度見通しが立つ人で随分違うと思うの です。退職金制度や年金制度によってもかなり違うのではないかと思うし、アンケート の聞き方でもちゃんと聞かないと、労働者は、昨日まで30万だったのに15万になったら 絶対に不満だと。賃金に対して不満だという声が、労働組合の調査でもあるのです。こ の部会は高齢者の雇用をどうしようかという法的な事項についても検討するのだと思う のですが、そのときはどういうところを経済的に保障するのか、確保するのかは、もう 少し見ないといけないのかなと思います。60歳以降の高齢者雇用の賃金確保や労働条件 の確保は、もう少し聞かないとわからないというのは、正直言って私どもの中にはあり ます。大体はこのような傾向だと思うのですが、もう少し細かい分析が必要かなと思い ます。 ○原委員 単に60歳以降の高齢者雇用といった場合と60歳から65歳までの雇用確保とい う場合とでは、かなり意味合いが違うと思うのです。こういう資料を用意していただい て、厚生労働省としては60歳から65歳までの雇用についてどのようにされようとしてい るのか。年金問題は喫緊の課題で、65歳からでしか年金が受給されないという時期が迫 っているわけです。そうすると、65歳までの雇用をいかに確保するかというところに重 点を絞り込んで、60歳以降のというあいまいなことではなしに、60歳から65歳までの雇 用をいかに確保するかという観点に立って、いまの制度にはどういう問題があるかに絞 り込む必要があると思うのです。ここで何を論すればいいのかですが、そこに絞り込む ような誘導を是非お願いしたい。  一般的な調査をお伺いしましたが、この間のJAMの調査でも2,000組合ぐらいあって、 そのうち調査の回収が1,000、そのデータによると、原則本人希望と採用基準ありと、ち ょうど半々なのです。年金は65歳からしかもらえない。そうすると、原則本人希望、し かし採用基準ありということでここで選別されて、少なくとも場合によっては半分はそ の会社で働きたくても働けない。ではどこで収入を得るか。60歳を超えるとなかなか採 用してくれない。こういう時期が迫っているわけです。そこをどうするか、法律でそこ をきちんと規制するのかどうかとか、そういうことが必要ではないかと思うのです。  あまり軽々しく言ってほしくないのですが、こういう表現がよくあります。「我が国 では、幸いにして高齢者の就労意欲が国際的にも高い水準にあり」という言い方が一般 的にあります。今日もチラッとおっしゃいましたが、国際的にも高い水準にありといっ た場合に、例えばヨーロッパやアメリカと比べて、ヨーロッパの国々では60歳以降の年 金がどういう状況にあるのかとか、そういったことを踏まえ、なぜ日本では就労意欲が 高くて向こうでは低いのか、ということを考えることが重要です。実際問題、60歳にな って65歳まで働かなければならないのは、長谷川委員がおっしゃったように退職時点で いくら退職金がもらえるか、いくら貯金があるか、年金がいくらもらえるかで残りの人 生を考えた場合、働かなくて好きなことをしたいにもかかわらず、収入が少ないから働 く、本当はそういうことをしたいけれど働かざるを得ない状況に追い込まれているとい う現状があると、私はどうしてもそのような考えを持ってしまうのです。年金との関係 をヨーロッパと比較する場合に、そういった年金水準等の比較をしながらやっていただ きたくて、我が国では幸いにして云々と、あまり軽々しくは言ってほしくないと思うの ですが、その辺りも厳密に判断する必要があるのではないかと思います。 ○長谷川委員 もう1つ、この資料の23頁にある、これはおそらく労使同じような思い ではないかと思うのですが、高年齢社員の担当する仕事を自社内に確保するのが難しい という問題と、管理職の社員の継続雇用の扱い方は非常に難しいのだと思います。昨日 派遣法の議論が終わりましたが、今回派遣法の中でグループ企業派遣の割合規制の対象 から高齢者は外しました。高齢者の場合、このアンケートから言うといままでの部署と なっていますが、実際は自分の子会社に出したりいろいろ工夫をしていますが、そうい う意味ではこれ以降自社内に確保するのが難しいというのは、よく私どもの中でも聞こ える話で、このようなことをどうしていくのかということと管理職社員の扱いが難しい というのも、本当にそうだなと思います。  また、一般的には60〜65歳というのは、健康や様々なものが現役時代よりもダウンし てくると思うのです。それに対して職場の環境改善をしたとか、就労形態を変えたとい うのはあまり聞かないのです。意外といまのままで継続雇用しているのです。そういう 意味では、統計などであればどういう改善をしたのか、労働時間やそういうものについ て事例があれば出してもらえるといいなと思います。以前、失業率がうんと高いときに、 ワーク・シェアリングをやろうということで、いろいろな組合せがありますねと、曜日 ごとにとか、午前・午後とか、労働時間を短くするとかいろいろなことがあったのです が、最近そういう声もあまり聞こえなくなりました。高齢者が65歳の年金開始年齢まで 働き続けるときに、どういう働き方がいいのかというのは、資料があったらそういうも のもほしいなと思います。 ○橋本委員 これは基本的にこの年齢に近い人の統計を取っているのですが、本当はも う少し下の世代、中堅層がこの先どのように考えているのか、その辺りもデータとして 必要ではないかと思います。特に若年者などもそうですが、本当に60歳まで働くつもり があるのか、あるとしても自分でどのようなライフプランを考えるのか、その辺りも含 めたものがないと、いま原委員がおっしゃったように、それを絞り込んでやることも必 要ですが、その下の考え方もないと偏る可能性があるのではないかと思います。 ○岡崎高齢・障害者雇用対策部長 多分、この問題はいくつかの観点から考えなければ いけないだろうと思います。1つは、現実に労働者の方々の生活、生きがいを含めた生 活をどう考えていくか。その場合に、明らかに年金制度については65歳まで段階的に引 き上げるというのは、制度設計上そうなっているわけです。原委員もおっしゃいました が、60代前半については、近い将来、年金開始年齢が順次上がっていくという中で、そ の部分の労働者の生活をどう考えていくかを考えなければいけないだろうと思います。  一方で、全体のマクロの雇用の状況を考えた場合、もちろん今おっしゃったように若 年者との関係が一方にあるのは事実です。ただ、中期的には我が国の人口構造は若年層 が減って高齢者が増えていく、この人口構造の変化自体は、今後少子化対策があったと しても、一定の年まではそのように進んでいくわけです。その中で中期的にどう見てい くか。これはこの場で議論していただかなくてもいいのですが、昨年、全体の雇用対策 の5年ぐらいの見通しをどうするか、あるいは2030年ぐらいまでの見通しはどうかとい う議論の中で、高齢者の活用ということも、我が国の経済社会を考えた場合には必要で はないかという感じで議論が進んできたのではないかと思います。ですから、そういう 部分をどう考えていくかという問題があります。  もう1つは、団塊の世代の部分をどう考えているかというのがありますが、いままで 2007年問題ということで、2007年が1つの節目の年になっていました。今後、この層は 3、4年は60代前半なわけですが、2012年になれば60代後半になってきます。その層が抜 けていく場合に、これは全員がと言うつもりはありませんが、その部分の方々がそのま ま65歳で引退していくのか、あるいは働きたい方々については、ある程度働けるように していく必要があるかということがあるのではないかと思います。ほかの観点もあるか もしれませんが、いろいろな組合せの中で政策的に何をやっていく必要があるかという ことで、そのような中で企業には何をお願いしていくか。それは、もちろん法律などで 義務付けるようなところから助成措置をしていく、あるいは労使で考えてもらうなど、 いろいろなやり方があると思うのですが、全体の中でどういう形で今後進めていくかと いうことでご議論いただければありがたいなと思っております。 ○野村委員 資料の5頁を見ると、65歳以降にボランティア活動や、仕事・社会的活動 をしない、ある意味では趣味だとか、そういうものに時間を費やしたいという人たちの 気持ちがずっと上がってくると。65歳というのが、いま言われているとおり年金支給と のリンクの問題で、いずれにしても65歳までの経済的な安定をどのように図っていくか が一番のポイントだろうと思います。また、高齢者雇用対策はこれはこれで重要なので すが、年金支給とのリンクをこれからどのように考えていくのか、特にいまは65歳は制 度設計されていますが、私もよくわかりませんが、いろいろな話を聞くと65歳もきつい からもう少し上に上げようという議論が将来的に出てきたときに、またこういう議論に なるのかなと。どちらかというと、年金支給の年齢に引きずられた議論になりつつある のかなというのが気になっているところです。  継続雇用の人たちの不満ということで賃金問題が出ていますが、賃金の絶対額もさる ことながら、いままでやっていた仕事の内容、労働時間もそうですし、労働のボリュー ム、質といったものと、6割、5割に下がった賃金とのバランスがどのように取れている のか。賃金が50、60%に減額されれば、それに見合う働き方になっていればそれなりに 納得性もあるのでしょうけれど、極端に言うとほとんど仕事が変わらないのに、ただ単 に継続雇用になったから、あなたはこれから5割、6割ですよということに対する賃金の 不満があるのだろうと思います。したがって、継続雇用ということで60歳以降になった 場合の働き方、労働時間もさることながら、労働の質、中身なども総合的に検討しない と、単に賃金が安い云々だけではなかなか議論できない、中身がよく見えてこないこと もあるのではないかと思っております。 ○大橋部会長 今日はフリートーキングですので、どうぞご自由にご発言ください。 ○山川委員 資料1の11頁ですが、これによると継続雇用を希望しない人が2割以上い ると。私どもは駐留軍という特殊な職場ですが、ここでも基準に基づく再雇用制度はあ りますが、この制度ができてから実際に希望する人は68%、3割以上が希望しないとい う状況なのです。いろいろな事情で生活上、経済上どうしても働かなければならない人 が多いにもかかわらず、希望しない人がいる。希望しない理由は12頁にありますが、い ろいろなことが書かれています。そういう意味では、この辺りを企業なりにどう努力し ていくのかというところが、最大のポイントになるだろうと思います。  私は働く者の立場からしかものが言えませんが、働く者の立場から言えば、最大の問 題は年金とどうリンクさせるかがポイントです。そういう意味では、65歳までの雇用に ついては、何らかの形で生活を確保する意味では、一定の義務的な規制が必要ではない かと思っております。それ以降については、これはある意味では本人の意思次第、選択 でいいのかなと思っております。65歳までは、少なくても確実に希望する者はこれぐら い確保されるという枠組みを作った上で、次のステップを考えてもらったほうがいいの かなと思います。 ○征矢委員 いまいろいろお話がありましたが、考え方としては、年金の支給開始年齢 65歳までの雇用確保をどうするかは非常に大きな課題で、これについてどうするかとい う議論と、65歳以上の働き方の問題を分けて議論したほうがいいのではないかと思いま す。ただし、65歳以上の働き方の議論もする必要がある。これは、ご承知のように世界 一の長寿国で、超高齢社会で、65歳以上の方が22%、4人に1人に近づいている状況の中 で、65歳以上の高齢者がどうあるべきかという議論は避けて通れない。したがって、年 金支給開始年齢が完全に65歳になったときに雇用がどうあるべきかは、非常に大事な課 題です。個人的には、当然年金支給開始年齢が65歳だったら、雇用はそこまで継続して いないとおかしいと、あるべき姿として65歳定年になっていないとおかしいのではない かと思います。そうでないと、国際的に見ても、一方で年齢による差別禁止という考え 方と定年との関係を考えた場合に、年金の支給開始年齢が65歳で定年が60歳では、国際 的に通用しないと思います。最終的な姿としては、65歳が年金支給開始年齢になるとき には、65歳定年が実現しているはずであると思っています。ただ、いまはその経過措置 で、年金のほうも弾力的に行われている。それに応じて雇用対策も取られているという ことなので、それが今後どうなっていくか。また、一方で賃金については労使間でどの ようなカーブで雇用を継続するか、それは時間がかかるわけですから、そういうところ がどうなるかということが必要ではないかと思います。また、超高齢社会で世界一の長 寿国ですから、いわば海図のない海に漕ぎ出している中で、全体の雇用をどう考えてい くかが非常に重要な課題であって、そういうことも併せて検討する必要があると考えま す。 ○大橋部会長 これまでの厚労省の基本的な政策は、65歳までの継続雇用が柱になって きたと思うのです。ただ、65歳以上ということになると、継続雇用ばかりではなく、他 社での働きや、あるいはボランティア活動をするというのは65歳を過ぎると急に増えて きます。実は、資料を見たら、ボランティア活動だって、さて明日からボランティア活 動すると言っても簡単に見つからないです。前もってやっていないとボランティア活動 もできない。特に高齢者になると、ボランティア活動は雇用関係ではなくなるから、そ の点では仲間の所に入っていく。そうすると、高齢化するとなかなか仲間に入りにくい、 人間関係がかえって難しくなってきている面があるので、そういう点では65歳から急に 増えると言ってもこれは甘いので、前もって準備しておく必要があるなと強く感じまし た。その点では、65歳以上の働き方について、継続雇用ばかりではなく、いろいろな面 から考えなければいけないかなと思っています。 ○北村委員 関連で、60歳からと65歳からでは年金絡みで状況が違うと思うのですが、 その年齢で私たちが想定するのは、子育ても終わって家のローンもそこそこめどがつい てといった、ほかにハードルがない人たちを想定すると思うのですが、実際にはいまの 50代後半から60代を考えると、孫育ての手伝いをするとか、私の周辺では60歳前後で超 高齢の親を抱えている人がすごく多いのです。自分は60歳で、会社から次の継続雇用の オファーをもらったけれど、92歳の母親の面倒を見なくてはいけないみたいに、意外に この年齢は思われているよりも家庭的事情に足を取られる年代でもあります。フリーハ ンドの60代を雇うというのではなく、そういういろいろな問題を背負った人たちを雇う ことも視点に入れる必要があるのではないかと思います。 ○荻野委員 十分頭が整理できていないところもあるのですが、いままで皆様のお話を 聞いて思ったことを少し述べさせていただきます。賃金が下がるということ、仕事は同 じだけれど賃金が下がる、それが大変不満の原因になっているという話があって、それ はもっともな話なのだろうと思います。ただ、これは言うまでもなく、60歳までの賃金 制度や人事管理等の全体的な考え方の中で捉えていただく必要があろうかと思いますの で、そういった中で、いま日本の企業が特に正社員を中心に人材育成・能力開発を促進 し、定着を促進し、さらに生計費にも一定の配慮を行った賃金制度を持っている中で、 60歳時点での賃金がこうなっていって、それが再雇用のときに見直しをせざるを得ない ということになっているわけですので、その辺りは若年、中年、中壮年世代との総合的 な利害の調整の中で解決すべき問題なのかなと思っております。  2つ目は年金制度との関係で、60歳から65歳までの生計費を確保していかなければい けないという問題です。これも、企業の人事管理上、そういったことに不安を持たずに 働いていけるようにしていくことは大変大事なことだと思いますので、企業としても重 要なテーマだと思います。そのときに、希望者全員というのは望ましい、少なくとも60 歳から65歳までの生計費はそんなに心配ないという人はともかくとして、そうでない人 は希望者全員という形で雇用することが望ましいことは間違いないと思います。資料を 見ても、基準を策定している企業においても、実際どれだけの人が基準から外れて再雇 用されなかったかというと、かなり限定的であると。ただ、基準を見て自主規制して、 そもそも希望しない人が結構な割合いると思いますので、過大評価はできないと思いま すが、そうは言ってもかなり再雇用されていると。  一方で、問題なのは、基準に満たなくて再雇用されなかった人がむしろ厳しい状況に 置かれているわけで、そういう方は再就職も体力やいろいろな理由で難しいでしょうし、 そのような人は十分な貯えがない可能性も高いということで、そこをどうしていくのか というところで、私は2つポイントがあると思います。1つは、なるべく多くの人が再雇 用されるようにするためには、もっと若い段階から、60歳以前のことを念頭に置いた施 策が必要であると。例えば、40歳を過ぎたぐらいからタバコを止めなさいとか、メタボ な人は悔い改めて酒を減らしなさいとか、そういったことをやっていって、60歳を過ぎ ても悠々とそれまでの仕事が続けられる人を増やすことが、多分一番ハッピーなはずで、 その辺りから手をつけていく必要があるのではないかと思います。  2つ目は、これは企業サイドからすればどうしても申し上げたくなるのが、そういっ た人たちに対して福祉的な配慮をするのが本当に雇用という手段だけしかないのかとい うことです。やはり、一定の人に対しては、福祉的な観点から何らかの別途の給付を行 うことで生計費を確保していくことは、年金財政の問題とは別問題として検討すべきと ころではないかと感じています。ここまでが65歳までのところですが、65歳までのとこ ろについてもう少し言うと、年金受給年齢と定年年齢が接続しなくてはいけないという のはそのとおりだろうと思います。これは個人的意見で、別に私の所属する会社の公式 見解では全くありませんが、それはそのとおりであろうかと思います。ただ、一方、そ うしなければ国際的に通用しないというのは1つの理念としてもっともであると思いま す。さはさりながら、現実の問題として、国際的に通用する国というのは多分、世界中 を見渡すと国数では大変少数派の一握り、経済規模で見てもそれほど大きいわけではな い。実際のビジネスは、そうでない国々との間でも競争が行われているということを考 えると、現実的にそれが理念どおりに行くのかということについては慎重に考える必要 があるのではないか。これは企業の立場からの感想です。  次に65歳以上については、いまでも働いてはいけないというようなことがあるわけで も何でもないわけです。現に、65歳を過ぎて働いている人もたくさんいるわけです。そ れについて、何か政策的にやらなくてはいけないのかというところは、少なくとも優先 順位としてそれほど高いのかなという疑問は持っています。高齢・障害者雇用支援機構 が研究会をやられたときに呼んでいただいて、その場でも申し上げたのですが、70歳ま で働ける企業というのは実はあまり意味のある考え方ではなくて、70歳まで働ける仕事 と70歳まで働ける人というのがあるだけである。しかも、世の中の仕事のうちの一定割 合は、この賃金でこの仕事をやってくださるのであれば、年齢は別に70歳でも80歳でも かまいませんという点も存在するということだろうと思います。ある程度、一定以上の 高齢になったら、そういった割り切った考え方をしていく必要があるのではないかとい うのが1つです。  もう1つ、これは労働政策全体として、本当にそこまで高齢者に対して手厚くやらな くてはいけないのかどうかということです。一方で最近改善されたとはいっても、若年 雇用の問題がなくなったかというと決してそういうわけではない。そういった中で、高 齢者については定年を65歳にして、65歳以上も70歳まで働ける企業にしてというように 非常に熱心にやる一方、その分、若年に対するトレード・オフというのはないのだろう か。そういったとき、ここの世代間の利害の調整と国全体として見たときに、特に中長 期的に見たときに若年層にお金を使うべきなのか、高齢層にお金を使うべきなのかとい うことは考慮して進めないと、長い目で見て「あのとき失敗した」とならなければいい なという感想を持ちました。長くなりましたが以上です。 ○木本委員 資料で定年後に同じ事業所、同じ部署が9割ぐらいということでした。私 もそういう仕事をしていたのでよくわかるのですが、「慣れた仕事、慣れた職場」とい うのは耳触りはいいのですが、企業にとっても個人にとってもその方がいちばんスムー スに60歳以降に入っていけるだろうということで、こういう形になっているのだろうと 思います。おそらく、賃金に対する不満というのは3月31日と4月1日で全く変わってし まうわけです。全く同じ労働をしておきながら、賃金が変わってしまう。そのことに対 する割り切れなさというか、理屈ではわかっていても、「同じ仕事をしていてなぜ」と なる。おそらく、1年後ぐらいになるとモチベーションが下がってしまって、周りの人 からも「何なの」となってしまう。おそらく、企業の中で実務をやっていらっしゃる、 人事をやっていらっしゃる方は、どういうように仕組みを作っていけばいいのかがいち ばん悩みだろうと思います。  先ほど、長谷川委員がおっしゃっていたように、賃金に対して不満があると言っても いろいろな要素がそこに絡んでいる。本当に切実な意味での不満なのか、先ほど言った ような不満なのか、いろいろなことが絡み合っている。本当は60歳で定年を迎えて、次 のステップにというときに、どういう要素をその世代の人たちが抱えているのかという ことがもう少しわかれば、例えば賃金設定をするにしても何にしても説得力があるのか なという気がしています。  私もちょうどその前後の年代なのですが、子供が独立する年齢がだんだん上がってき ているような気がするのです。子供の結婚年齢、出産年齢もだんだん上がってきている。 おそらく、いまの60歳定年では案外、まだ子供が独立し切っていない。まだ学校、人に よってはまだ中学校に行っていますという方たちが結構周辺にいるのです。おそらく、 いまの統計はこうでしょうけれども、これが5年後、10年後にライフステージがだいぶ 変化してくるのかなと。それから、先ほどあった介護の問題とかいうようなこともある ので、一概に賃金に不満があるとは言えないのではないか。もらえるにこした事はない のでしょうが、その辺が年金と組み合わせて、どの辺だったらやっていけるのかという ところが本当はもう少しいろいろな資料の中でわかればありがたいという感じはちょっ としています。感想のようで申し訳ありません。 ○長谷川委員 いま、使側から賃金の話がありました。賃金の話で言いますと1つ問題 があって、年金は労働の対価ではないわけです。だから、60歳から65歳までの継続雇用 のときの処遇の設定のときに、これは知恵だったと思うのですが、いろいろな要素を加 味しながら60歳以降の所得をこういう形で保障しましょうという、制度設計を労使の知 恵で行ったのだと思います。少し理論的に詰めていくと、要するに賃金というのは労働 の対価なのだから在職老齢年金を加味したものでいいのかという話があるわけです。そ の整理はきちんとしなければいけない。  荻野委員がおっしゃったように、私は60歳から65歳までの年金開始年齢までの雇用を どうするのか。労働者の所得をどう確保するかということでいえば、我が国は雇用社会 ですから雇用がなければ所得の確保ができないわけです。60歳から65歳までをどうする か。政府の雇用政策はまずそこが第一義だと思います。65歳以降については、もう少し 元気な人はもっと働きましょうとか、省庁横断的に施策をやることでいいのではないか。 とにかく60歳から65歳、年金開始年齢までの雇用を確保して、生計費を確保するという 政策をどう打つかということが重点になる。そのときの制度設計としては、前回の改正 のときに3つの方法で対応することにしたわけです。定年延長がいいのか、それとも継 続雇用をもっと充実させるのか。そして、希望者全員の制度でないときはどうするのか。 そのとき、荻野委員からは、どうしても基準から漏れた人は新たなものを考えたらどう かという提起もあったわけです。労側で言えば、65歳を定年にするか、もしくは希望す る者全員を継続雇用する。そのとき、もう少し働き方の柔軟性みたいなものをとり入れ て制度設計することが必要なのではないかと思っています。私どもの組織の中でも定年 延長がいいのか、継続雇用がいいのかというのはいま議論の最中です。本当にいろいろ な議論があって、まだまとめ切れていないという状況です。 ○荻野委員 別に雇用を全く否定しているわけではありません。政策の在り方として1 つあると思います。ある意味、ちょっと言葉は悪いのですが障害者雇用みたいに割り切 ってしまって、そのために作業負荷の低減のために投資をするのだったら助成金を出す とか、明らかに外部経済があるわけですから法的に補助していいと思います。そういう 形で、希望者全員に限りなく近づけていって、いずれ定年延長ということでやっていく 方法もあり得ると思います。いろいろ労使で議論していけばいいのだろうとは思ってい ます。  あと、いきなり技術的な話になっていますけれども、年金給付はどうしても労働の対 価とは受け取れないというのは全くそのとおりだと思います。そこが問題であるとすれ ば、高齢者継続給付をやめてしまって、その分、当然費用は減るわけですから、現に高 齢者を継続雇用している企業に対して、それを助成金として給付してそのまま賃金に上 乗せする。そういう形にすれば、多分どこも痛まずに、少なくとも「賃金は労働の対価 である」という形が作れるわけです。そういう方法も検討に値するかなと、いま話を聞 いて思いました。 ○白木委員 いろいろな議論が出ていますが、結局、要するにソフト・ランディングが できるようなシステムをうまくできないかなというのが、大きな課題として議論されて いると思います。それに加え、ここで議論がミス・リーディングの方向で議論されてい るデータがあるのかなという感じがしましたのでちょっと申し上げます。12頁のデータ、 継続雇用を希望しない人の理由として、賃金が問題だというのがかなり大きな議論にな っていると思います。これは継続雇用を希望しない人であって、どうも継続雇用を希望 して、雇用された人はどうなのかということについての調査はないわけです。  その人たちの問題はないのかというと、おそらく賃金以外の問題で大きな課題を抱え ているのかなという点が類推されます。それはなぜかというと、21頁の図表になります。 どうしてかなというように先ほど考えていたのですが、21頁の図を見せていただきます と、例えば上の男性で考えてみると最も理想的な働き方としてフルタイムが52.6%です が、実際は66.3%、女性も同様になっています。  逆に、フルタイム以外で働くのが理想的であったと思いながらも、実際はフルタイム 以外が低めになっている。ですから、継続雇用した場合、された人たちにとってはおそ らく給与だけではなく、むしろ働き方が自分たちの希望に十分合うようなシステムがま だできていない。広い意味ではソフト・ランディングするだけの準備をまだしてくれて いない、という方向のほうが大きな問題となっているのかなという印象を持っています が、データとしてはありません。先ほど、継続を希望しない人は、賃金に不満があって 希望していないというのがあったわけですが、希望して、継続雇用された人たちにとっ てはどうなのかという、また別の問題が指摘されている可能性が高いと思っています。 それも基礎的なデータとして考慮していただければと思います。以上です。 ○市瀬委員 いまの話に関連して発言します。13頁から16頁に雇用者の満足度が出てい ます。ここのところには経験・能力の活用度とか、仕事の内容・やりがいを90%近く回 答していますので、これは評価に値するのではないかと思います。賃金というのはいつ の時代も、どんな世代でも不満というか、不足があると思います。これのデータに関し てはやりがいや活用度に関して評価すべきデータではないかと考えます。 ○大橋部会長 賃金については50歳代の人のほうが不満が大きいですよ。 ○市瀬委員 私もそう思いますし。 ○大橋部会長 お金があればあったほうがいいですし。 ○市瀬委員 そうですね。だから、別にこの世代がどうとかということではないと思い ました。 ○荻野委員 労側もそうだと思いますが、賃金以外に不満がなければ大体うまくいって いるのではないかと思っていいというのが相場だと思います。 ○市瀬委員 このデータを信じれば、やりがいがあるということにこれだけの割合があ るというのは、思えばすごく良い回答だったかと思います。 ○荻野委員 いま白木委員がご指摘になった点なのですが、樋渡委員などはよくご存じ だと思います。経団連でたくさんいろいろな事例を集められて、それを見ると大体、再 雇用のときにフルタイム型とパートタイム型に分けて分析をされています。当初の思惑 にかかわらず、フルタイムのほうが非常に多いというのが実態としてあります。これは JILPT がやられた調査だと思いますが、どうも大変異和感がある。例えば賃金水準との 関係で、賃金がほどほどもらえるのであればフルタイムでなく、パートタイムで働きた いのだけれどもとか、若干調査と実態との間に少し齟齬があるのかなという感じがしま す。そういう意味では、こういうデータは見方が難しいのかなと思います。 ○大橋部会長 これ、調査と実態と合っているのではないですか。つまり、フルタイム で働きたいという人は比率が多いし、実態も多いのではないですか。ただ、皆さんが思 い描いているソフト・ランディングという、理念のようなものと合わないという。 ○荻野委員 そうですね、確かに。予想した以上にフルタイムで働いている人が多い。 理想と考えている以上にフルタイムで働いているのは。 ○大橋部会長 それはちょっと、このデータからは。 ○荻野委員 いや、後ろのほうはそうなっていますよね。21頁の図はそうなっています ね。予想した以上にフルタイムで働いている。それから、フルタイム以外で働きたいの ですが、実際働いている人は少ないということになります。やむを得ずなのか、あるい は周りがそうだからそうしたほうがいいのか、あるいは制度が不備だからそうなってい るのか、いろいろな理由が考えられるわけです。 ○白木委員 希望よりもフルタイムがちょっと高いということですね。 ○荻野委員 申し上げたかったのは制度の不備だからというか、そういう選択ができな いからこうなっているというわけでは決してないということです。選択肢は準備されて いるけれども実際にはこうなっている。それは多分、制度の不備以外の何かかと思いま す。 ○原委員 賃金の点が問題になっていますが、いろいろ設定賃金と在職老齢年金、高齢 者雇用給付金をどこでもシミュレーションしている。そこで、どうすれば得かという損 得論が出てくる、賃金をこのレベルに設定すれば、在職老齢年金をいくらもらえて、高 齢者雇用給付金がいくらもらえる。そういうことで議論して、労使と交渉しながらこの 3つを足したときにいちばん大きくなるのはどの賃金かといって設定した経緯がある。 それがたまたま、これまでもらっていた賃金の半分ぐらいだとして、これに加えていっ てトータル8割ぐらいの年収確保ということになる。賃金は低いけれども我慢して割り 切れということで、労働組合も組合員を説得してこういう制度に移行してきたというの が実態だと思います。  65歳からしか年金がもらえないという時代が迫ってくるわけです。そのとき、そうい う意味では在職老齢年金そのものについて踏み込むのか、高齢者雇用給付金についても どうするのか。一部廃止論とかいろいろありますが、そういった議論を本格的にやるの かどうか。この3つで行くのか、また別のものを用意するのか、この場ではすぐにはで きないと思いますがそういう課題もある。この3つをかみ合わせると、どうしても賃金 は低い方へ、低い方へ行くのです。それで半分かと。メニューとして、フルタイムのメ ニューしかない。だからフルタイムで働く。しかし、ちょっとしんどい。それが職場の 実態ではないかと思います。この3つ、在職老齢年金制度の問題と高齢者雇用給付金の 問題について、企業内労使にとっては何らかの考えを将来に向けて打ち出す用意がある のかどうか、という問題もからんでくる。 ○征矢委員 先ほど、やや乱暴なご意見を申し上げました。最終的には2025年に支給開 始年齢が完全に65歳になるわけです。その時点でどうなっているかという観点からいく と、雇用と年金がつながっていなければおかしい。そのつながり方は、定年が65歳にな っているのが一番素直であるというように思いました。いまのところは、おっしゃるよ うに制度設計が弾力的にある中をどういう整理をして、総合的に話していくか。そうい う中で、65歳定年がどう広がっていくのか。広がらないうちに、強制的に法律でやれと いうことが出来るわけではありませんから、そういう話ではないと思います。そういう 制度設計と賃金の在り方において労使間でどういう設定をしたか、そういう議論を積み 重ねていく中でどういうように整理をしていくかという問題ではないかと思います。  もう1点は、65歳以上でボランティアの希望者が増えているわけです。率直に言って、 このボランティアもシルバー人材センター等の経験からいくと有償ボランティアでない と、無償ボランティアというのはなかなかうまくいかないという問題があります。一定 の収入を得て働くという働き方が、65歳以上の1つの形として非常にいいのではないか。  もう1つの形としては、多様化する中で短期的2次的な仕事を65歳以上の人が全体の中 でやる。これも1つの方向としては姿として非常に良いのではないかと思います。 ○大橋部会長 シルバー人材センターの資料を少し出していただきたいと思います。年 齢構成とか所得、労働時間といったものを出していただくと。大体、シルバー人材セン ターは65歳以上が多いのですか。 ○岡崎高齢・障害者雇用対策部長 いや、60歳代から70歳代ですか。 ○大橋部会長 60歳の前半層よりは後半層が多いということですか。 ○石坂高齢者雇用対策課長 大体、平均年齢がいまだと69歳ぐらいになっています。 ○長谷川委員 有償ボランティアの話、いろいろな意見があると思います。あるとき、 私どものところに、有償ボランティアを認めていただきたいという話がありました。そ のときは、有償ボランティアはどうしても最賃割れを起こすので、労側にとってはなか なかきつい話だなとそのときはお断りしました。有償ボランティアはおそらく、必ず最 賃との関係があると思うので、そこの視点は持っておかなければいけないかなと思って います。良いとか悪いではなくて、そこがおそらく岐路になるのではないでしょうか。 ○橋本委員 賃金の話がずいぶん出ています。基本的に同じことをしているのであれば、 本当の考え方としては同じ賃金だというのは当たり前だと思います。先ほどおっしゃっ た点もそのとおりだと思います。ただ、個々の企業によって状況がかなり違いますので、 これを政策的にとか、そういう格好で一律にやっていくというのはちょっと無理がある のではないかという感じがします。基本的な考えとして同じ内容で、同じ条件で働いて いただくのであれば、同じ賃金を払うというのは企業側からして当然だと思います。 ○大橋部会長 賃金の話は政策というか、各労使の話だと思います。 ○橋本委員 状況によって。 ○大橋部会長 ただ、全体の動きとしては、賃金カーブがここのところかなりフラット になってきて、ピークがかなり若いほうにずれてきている。もう1つ、賃金カーブがス リープな大企業は、結局賃金を下げるために嘱託・契約社員という形で雇用をつないで いるのが圧倒的なのです。だから、定年年齢もほとんど60歳でつないでいる。これは1 つの知恵でとりあえずやっておられるのかなと思います。定年が65歳ぐらいまで来れば、 やはり賃金カーブが寝てこざるを得ないという動きはあるのです。 ○橋本委員 全くおっしゃるとおりだと思います。能力に限界がありますし。 ○大橋部会長 ただ、いま言っているのは水準ではなくて傾きを言っています。水準は もう、皆さん方、交渉でお決めください。 ○橋本委員 水準の話ではなくてカーブの話です。 ○荻野委員 いまのお話、結局55歳から60歳にしたときも、ほとんどの企業は55歳でい ったん下げるという設計を当初はしたわけです。今でもそうなっているところがたくさ んありますけど。それがだんだん、時間がかかって労使でいろいろ交渉して、やはりこ こでこんなに下がったら意欲が落ちるよねという話になって、いまみたいな賃金カーブ になってきたわけです。そういう意味では、段階としては再雇用をもっと拡大して、限 りなく希望者全員に近づけていって、その先にできれば老齢厚生年金の支給開始年齢で ある65歳になるまでには、65歳定年での形ができてきて、多分その先の話になってくる のではないか。実務的には多分、一遍にはなかなかやり切れないと思います。 ○長谷川委員 連合の中で、65歳定年の話が出ると面積の話になる。面積は一緒なのだ から、働く期間は長くなって賃金は一緒かと。面積は変わらないのだから、だから65歳 定年延長は嫌だ。特に、賃金表がきれいに出来ているところは、そこはすごく言います よね。この議論は、きれいな賃金表を持っているところと、それがない中小のところと では議論も様々かと思います。 ○大橋部会長 ただ、賃金カーブのフラット化はボーナスでやっているところが多いの です。賃金テーブルではなくて。面白い動きがあるなと思って見ています。 ○原委員 長谷川委員がおっしゃったように、労働組合の方も60歳から65歳について、 厚生労働省から3つのメニューを出していただきました。はっきり言って、65歳定年延 長という方針を出しているところはまだ少ないと思います。うちもまだ90%以上は再雇 用、実態もそうです。JAMの方針としても3つのメニューがありますねという程度で、 65歳定年延長というのはまだ決めていません。  なぜかと言うと、やはり賃金問題が絡んでくると思います。経営側もそう生易しいも のではないと思います。例えば、以前だったら、55歳定年を60歳定年にするときは、 ずっとカーブが来て、55歳からの賃金については横ばいか、ダウンかを労使で協議して 決まっていたと。いま、それが55歳から下がったものを何とか上げていく、という作業 に入っている時期なのです。  今度、60歳から65歳にするときは、60歳までの賃金はそのままで、60歳から65歳まで の賃金は下げるという議論ではないのです。遡っても50歳から、先ほどの面積論です。 50歳の段階から削って、それを60歳以降に持っていく。そういう面積論が良いか、悪い かは別ですが、そういったことを現実問題にやっているところもありますよね。60歳か ら65歳定年を採用したところについては、従業員に「あなたは60歳でやめますか、65歳 までの定年延長をしますか」と聞いて、65歳まで定年延長で働きたい人は、「あなたは 50歳からの賃金はこうです」ということになる。そういう意味では、なかなか65歳定年 と言えないというか、そういう実態にある。それが果たして、遡って50歳から賃金を下 げて、その分60歳からもらうというやり方がいいのかどうかという問題にもなってくる と思います。途中で死んだらどうするのか、ボーナスで返してくれるのかという問題に なってくるわけです。うちも労働政策委員会で議論を始めたのですが、これからちょっ と大変かなと思います。 ○野村委員 いずれにしても、支払い原資というのは決まっているわけです。それがい ま、どちらかというと、いろいろな制度を見直すなどいじくる中で、実は支払い原資が 小さくなってきている。ある意味、我々からすると、当然雇用期間が延びるのですから、 支払い原資というのは当然増えないとおかしい。ただ、はっきり言って、企業側からす ると支払い能力の問題なり、競争力の問題なり、いろいろなものがあるでしょうから、 そうイコール的に大きくはできないだろう。我々からするとやはり少しは増やしてほし いし、最低でも制度をいじくることによって、言い方が悪いですがどさくさまぎれに、 支払い原資自体が小さくなってしまっているというようなこともちょっと心配していま す。現実、そういうことになっている所というのは企業でも結構ありますので、細かく 賃金のいろいろなものを見てくると、賃金制度の見直しとか、いろいろなことをやって いる中で、実は支払い原資が相当減ってしまっていた。ただ、「あなたはよくやりまし た」といって、今度配分の問題で色をいっぱい付けています。実は、配分で色を付けて もらった人は本当はごく僅かで、多くの人たちは実質賃金は下がっている。それが今度、 60歳以降の継続雇用、定年延長という中でまた同じような、賃金制度なり、いろいろな ものをいじくることによった結果、我々からすると、賃金の総原資がまた縮小、小さく なってしまう。やはり、これはある意味労使の話でしょうが、しっかりチェックしてい かなければいけないなと思っています。 ○大橋部会長 いかがでしょうか。それでは、今日のところはこれぐらいで、高齢者雇 用についての議論はおしまいにしたいと思います。次回、またご議論を深めていただき たいと思います。  次に、「その他」の議題として1件報告事項がございます。第33回の当部会において、 原委員よりご質問のありました雇用対策法の施行状況について、事務局からご報告をお 願いします。 ○尾形外国人雇用対策課長 この届出制度については、昨年成立した改正雇用対策法の メニューの1つということで、この部会でも非常に精力的にご審議いただいたという経 緯のものであります。昨年の10月1日から施行されているわけですが、その施行状況に ついて当然委員の皆様方も関心を持たれているところではないかと思います。現にご指 摘もあり、今般、その状況についてご報告いたします。  ご案内のとおりですが、この制度自体の目的、雇用管理の改善とか再就職支援、外国 人の方はそういう面でまだまだやるべきことがあるということであります。その目的の ためにきめ細かく、まず実態を把握するということで、特別永住者などを除く、すべて の外国人労働者を雇う事業主の方に、雇入れ又は離職の都度、氏名、在留資格、在留期 間等を確認して届け出ていただくものです。  施行日後の雇入れ、離職ということでまず義務付けがされているわけですが、施行日 前、つまり昨年の9月30日以前から継続雇用している外国人労働者についても、経過措 置として1年間の猶予期間を設けて、本年10月1日までに届け出ていただくことになっ ています。現時点においてはその途中段階ということになるわけです。全容把握はもう 少しお時間をいただくことになるわけですが、今日、こういう形で部会が催されるとい うことで、直近、把握できる限り最新のデータということで、資料4にお付けしてある ものが今回ご報告資料ということであります。  まず、クロスデータで国籍と在留資格別になっています。国籍はそれぞれ人数の多い 所を選んだということであります。緑色のいちばん下、総数が左下にありますように33 万8,813です。国別に見ますと中国が一番多く、約半数弱となっています。その次が真 ん中辺になりますがブラジル、これは5分の1ぐらいです。その他、韓国、フィリピン、 ペルー、G8+オーストラリア+ニュージーランドということであります。それぞれについ て、専門的・技術的分野、あるいは技能実習等の特定活動か、アルバイトのような資格 外活動か、そういった在留資格ごとの分類があります。  表の右側のほう、黄色い欄を見ていただければと思います。永住者、日本人の配偶者、 それらの子供、定住者といった、身分に基づく在留資格で働いている人たちもいるわけ です。身分に基づく在留資格というのは、入管当局も比較的安定的な在留資格としてお り、長期に滞在する外国人はこういう在留資格に切り換えていくことになるわけです。  そういう意味で1つ、身分に基づく在留資格だけ固めて小計を取って、各国ごとに全 体の何パーセントぐらいのシェアになっているかを見たのが一番右端、括弧書きの中の パーセンテージであります。一見しておわかりいただけるとおり、日系人を中心にした ブラジル、ペルーがほとんどこちらである。他方、中国は非常に少ない。G8+オースト ラリア+ニュージーランド、これは大体3割ぐらいがこちらである。全体としては半々ぐ らいになっていますということで、国籍と在留資格のクロスで見ていただけるのではな いかと思います。  次は地域別の状況です。全体が34万弱の中で8万弱が東京に集中、約4分の1弱になり ます。その次が愛知県、これが大体全体の8分の1ぐらいということです。その他、続い て静岡、神奈川といった所です。やや少ないのが、意外に少ないという意味で言うと大 阪です。これは特別永住者の方が非常に多い。韓国・朝鮮籍の人が多いということもあ って、それが対象にならないということも影響して少なめに出ているということではな いか。全体には太平洋ベルト地帯において、製造業を中心とした所に多いという感じが します。  以上、雑駁ですが説明を終わります。現時点のものはあくまでも暫定的な、速報値で すので、大体のつかみのところを把握していただければということでございます。  やや脱線しますけれども、国籍と在留資格の細かいクロスのデータも、いままでの任 意の外国人雇用状況報告では取れませんでした。そういう意味でも、今回の新しい届出 制度はそれなりに意味があったのではないかと思っているわけです。まだ、届出総数が 33万8,000ということであります。これは6月末のデータですので、まだ猶予期間が残っ ています。3カ月分の猶予期間分の積上げがあった上で最終的に判断されるべきものだ とは思います。ただ、まだまだ、本来届け出ていただくべき方に届け出ていただいてい ないのかなと思っています。そういうことから、この制度の意義というものを十分皆さ ん方にご理解いただくよう、これまでも積極的にいろいろな業界団体、経営者団体、自 治体などに周知をお願いしてきたわけです。引き続き、一層緊密に、きめ細かく履行確 保に取り組んでまいりたいということでございます。  この部会でのご議論でも懸念があったわけですが、こういった届出制度は個人情報を 取り扱うこともあり、いろいろなトラブルが起きてうまくいかないのではないかという 懸念も寄せられていました。今日時点、私どもが現場から報告を受けている限りでは、 これはほとんど深刻な事案という意味ではなかったと思っています。比較的順調に、現 場、事業主の方々のご理解もいただけているのではないかと思っています。引き続き、 これまでの努力を続けて、届出制度の履行確保に取り組んでいきたいと思っているとこ ろです。 ○大橋部会長 ありがとうございました。ただいまのご報告に対して、ご意見があれば お願いいたします。 ○原委員 次回でもいいですから、質問だけお願いします。「資格外活動」の「その他」 というのはどういう明細があるのか、勉強不足でわかりません。教えてください。次回 で結構です。 ○尾形外国人雇用対策課長 この場でもお答えできる範囲でお答えしておきます。資格 外活動、留学、就学についてはいわゆるアルバイトということであります。「その他」 というのは、例えば家族滞在とか短期滞在、文化活動といった類型でも資格外活動はあ りますので、これらを含んだものです。  短期滞在で働くと不法就労だと一般的に思われてしまうのですが、必ずしも不法とは 限りません。いろいろなパターンの短期滞在があります。例えば、留学生が卒業後就職 できなくて、就職浪人する期間、短期滞在で180日在留が認められている。その間にア ルバイトでつなぐというのも資格外活動になるわけで、合法的であります。いろいろあ ると思います。見てのとおり、数はそれほど多くありません。 ○原委員 特別の事案が発生していないということですが、もうちょっと整理してまた 質問します。 ○大橋部会長 わかりました。ほかにございませんか、全体の内容でも結構です。ほか にないようでしたら、本日の部会はこれで終了いたします。議事録の署名人は野村委員、 および市川委員にお願いします。次回は10月22日(水)、15時から開催します。よろし くお願いします。  本日の会議は以上で終了します。どうもありがとうございました。 【照会先】   厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部企画課   〒100-8916   東京都千代田区霞が関1−2−2   TEL:(代表)03-5253-1111(内線5815)      (直通)03-3502-6778   FAX:03-3502-5394