08/07/08 平成20年7月8日議事録(薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食品規格部会) 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会 食品規格部会議事録 ○日 時:平成20年7月8日(火) 10:00〜11:56 ○場 所:経済産業省別館第1012会議室 ○出席者:   【委 員】池上委員、香山委員、小西委員、小沼委員、品川委員、西川委員、        早川委員、廣橋委員(部会長)、松田委員、宮原委員、山内委員        (敬称略)   【事務局】國枝基準審査課長、西嶋課長補佐 ○議 題  (1)食品中の汚染物質に係る規格基準設定の基本的考え方  (2)食品中のアフラトキシンの取扱いについて  (3)食品中のカドミウムに係る規格基準の設定について  (4)食品中の金属試験法の妥当性評価ガイドラインについて  (5)寒天の規格基準の一部改正について  (6)その他 ○報告事項  (1)容器包装詰低酸性食品の取扱いについて (2)加工食品中の鉛の汚染実態調査結果について  (3)その他 ○西嶋補佐 それでは、定刻になりましたので、ただいまより薬事・食品衛生審議会食品 衛生分科会食品規格部会を開催させていただきたいと思います。  本日は、委員の皆様、御多忙のところお集まりいただきまして、ありがとうございまし た。審議に入る前での間、私、基準審査課の西嶋が議事を進行させていただきたいと思い ますので、よろしくお願いいたします。  本日は、五十君委員、石田委員から欠席ということで御連絡をいただいておりますけれ ども、部会委員13名のうち11名の委員に出席いただいておりますので、当部会が成立し ますことを、まず御報告申し上げます。  また、本部会の委員でありました国立医薬食品衛生研究所食品部長の米谷委員が、本年 3月末をもって退官されたことから、米谷委員に代わりまして松田りえ子食品部部長が新 たに委員に任命されておりますので、御紹介をいたします。 ○松田委員 ただいま御紹介いただきました松田でございます。  4月に米谷の後、食品部長を拝命いたしました。食品部での部長になるまでの仕事とし ましては、食品規格部会にもかなり関連しております汚染物の実態調査とか、摂取量調査 等を行っておりました。この規格部会では全く新参者で、わからないことも多々ございま すので、よろしく御指導をお願いいたします。 ○西嶋補佐 なお、この部会におきましては、発言に際してはマイクがつ1しかございま せんので、係の者がマイクをお持ちいたしますので、発言の際には挙手をお願いいたした いと思います。  それでは、座長を部会長の廣橋委員にお願いしたいと思います。廣橋先生、よろしくお 願いいたします。 ○廣橋部会長 廣橋でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  今日は多くの議事があるようですけれども、是非十分な議論をお願いいたします。  では、事務局から資料の説明をお願いします。 (配付資料確認) ○廣橋部会長 それでは、早速議題に入ります。議題1、食品中の汚染物質に係る規格基 準設定の基本的な考え方について、資料1を事務局から説明してください。 ○西嶋補佐 資料1−1、基本的な考え方についての資料でございます。  本部会におきましても、議題2、3以降で汚染物質についての取扱いあるいは規格基準 について本部会で今後議論していただくことになりますので、その前に、汚染物質に係る 規格基準の設定の際の基本的な考え方を少し整理したいということで、この紙を用意させ ていただいております。  「第1 趣旨」でございますが、現在、食品中の汚染物質低減対策については、国産品・ 輸入品問わず、国内に流通する食品すべてに関しまして、汚染物質の汚染実態及び暴露状 況等にかんがみ、必要に応じて食品衛生法第11条に基づいて、食品添加物の規格基準が設 定されているところです。ただ、その規格基準の設定が直ちに必要でないと判断される汚 染物質であっても、食品の安全性確保対策を推進するには、食品からの汚染物質の暴露を 可能な限りに低減するということが有効であると考えられているところです。  つきましては、食品中の汚染物質について、我が国における規格基準の設定に係る基本 的な考え方を定めるとともに、規格基準が定められていない汚染物質の低減対策について も、この際整理をするということによって、より一層の食品の安全性の確保を図るという ことで、この基本的な考え方をまとめさせていただいております。  「第2 基本方針」でございます。我が国の食品中の汚染物質の規格基準の設定に当たっ ては、コーデックス規格が定められている食品について、我が国では規格基準の設定を検 討することとし、その際にはコーデックスの規格を基本的には採用し、その際には、国内 に流通する食品中の汚染物質の汚染実態あるいは国民の食品摂取量等を踏まえてこの部会 で検討をしていただくことになりますが、コーデックス規格を採用することがその結果困 難であると判断された場合には、以下のとおり扱うということで、コーデックス規格に準 拠できない場合の取扱いを以下2つ、例示として記させていただいております。  まず、1つ、我が国の食品生産の実態等からコーデックス規格をそのまま採用すること が非常に困難である場合でございますが、その場合は関係者に対して、汚染物質の低減対 策に係る技術開発の推進等について要請を行うとともに、必要に応じて関係者と連携した 上で、ALARAの原則に基づいて適切な基準値あるいはガイドライン値等の設定を行うこと としてはどうかということでございます。  ALARAの原則は、注釈として下にございますが、As law as reasonably achievable ということで、合理的に達成可能な範囲でできる限り低くするという考え方でございます。 これはコーデックス委員会の食品汚染物質部会におきまして、食品中の汚染物質の最大基 準値設定を考えるときに用いられている基本的な考え方で、それに従うということでござ います。  2つ目の例示といたしまして、国内に流通する食品中の汚染物質の汚染実態あるいは国 民の食品摂取量等を踏まえると、直ちに規格基準の設定が必要でないと判断される場合も あろうかと思いますが、そういった場合には将来にわたってそういった汚染実態であった り、国民の食品摂取状況が変わること等もかんがみ、適宜将来にわたって見直しを行うこ ととしてはどうかということでございます。  「なお」というところでございますが、コーデックスにおいて規格基準が定められてい ない場合においても、汚染物質の暴露に寄与の高い食品あるいは我が国特有の汚染実態が 見られるような汚染物質につきましては、その都度規格基準の設定をこの場で検討するこ ととしたいと考えております。  「第3 規格基準の設定について、今後、検討を行う汚染物質の例」といたしまして、 本日の議題でもありますカドミウム、あるいはトータルアフラトキシンも書かせていただ いておりますが、それ以外にもアフラトキシンM1、鉛あるいはその他ということで、今 後コーデックスの動き等、あるいは日本での汚染状況等を見ながら、適宜この基本的な考 え方に基づいて基準値を考えていってはどうだろうかということでございます。  「第4 自主的な取組みの推進」でございます。厚生労働省は我が国で食品中の汚染物 質に係る各規格基準が設定されるまでの間、食品等事業者がコーデックス委員の食品中の 汚染物質及び毒素の一般規格に定められている最大基準値を準拠するよう努めること等に よって、食品中の汚染物質の低減対策に努めるよう推進することとするということでござ います。  こういった基本的な考え方を定める際に参考ということで、3ページ目に日本語をつけ ておりますし、資料1−2がコーデックスの原文でございますが、資料1−2を少し抜粋 させていただいたものが資料1−1の3ページの参考でございます。コーデックスにおけ る汚染物質に関する考え方ということで、まずは一般原則といたしましては、食品中の汚 染物質濃度は、合理的に達成可能な範囲でできる限り低くしなければらないということで、 汚染を防止・低減するときには以下の対策が非常に有効だということで3つ、環境汚染対 策あるいは生産・貯蔵・加工等における対策、食品中の汚染物質を除去するための対策と いうことでございます。  また、コーデックスにおいて規格基準値を検討するために必要な情報ということで、以 下のようなものが示されております。体内代謝や汚染物質の急性慢性毒性等の毒性情報。 統計的に有意な実態調査データ。食品中のいわゆる消費量のデータ。更には汚染工程、製 造・生産法、汚染の管理のための経済的な事項に関する情報。リスク評価・管理の選択肢 等に関する情報ということで、これらが必要な情報ということで列挙されているところで ございます。  また、規格基準作成の規準といたしましては、重要な健康リスクがあり、貿易問題があ るもののみ設定するということ。更には、汚染物質等の摂取寄与が大きな食品に対して設 定する。3つ目としましては先ほどから申し上げていますが、ALARAの原則に従って設定 するというものでございます。コーデックスでは主たる生産国を含む複数の地域からの実 態調査結果に基づいて設定されているということでございます。  コーデックスではこういったことで定められておりますが、あくまでも消費者の健康が 保たれているということが必要条件として書かれているということでございます。  資料1−1、資料1−2の説明は以上でございます。 ○廣橋部会長 それでは、ただいまの説明に質問・意見があれば承りたいと思いますけれ ども、いかがでしょうか。これはかなり基本的な原則ですよね。 ○香山委員 この原則案に賛成です。実際に、まずは基本原則をきっちり考えた上で、第 2の基本方針の中でALARAの原則に基づいて適切な基準値及びガイドライン等を設ける ということでいくのが一番よろしいのではないかと思います。特に、実際にはコーデック スの基準は、それぞれのGEMSfoodの暴露評価のもとによって行われたものでありますが、 日本国内の食品の摂取量等を考慮して、その都度において、ものによってはガイドライン 値あるいは基準値を設けるというのが妥当なやり方だと思います。 ○廣橋部会長 ありがとうございます。  ほかの委員の方々いかがでしょうか。よろしいですか。  では、この基本的な考え方を御了承いただいたということにいたします。 ○西嶋補佐 この基本的な方針につきましては、皆様に今御了承いただいたということで、 今後、業界団体等に周知させていただければと思っているところでございます。 ○廣橋部会長 それでは、議題2に入ります。食品中のアフラトキシンの取扱いについて です。資料2の説明をお願いします。 ○西嶋補佐 資料2−1、1枚紙から説明させていただければと思います。  我が国におきましては、前回、小西委員よりアフラトキシンについてパワーポイントを 使って御説明があったかと思いますが、現在、我が国では食品においては、アフラトキシ ンB1を検出してはならない、不検出であるということで、食品衛生法第6条第2号にお いて規制をしているところでございます。  ただ、最近コーデックスにおきまして、木の実の規格基準の設定につきまして動きがあ りましたので、平成16年度から調査研究を行っているところでございます。また、今般の 調査結果が一通り終了しましたので、資料2−1でその調査研究報告書から概要というこ とで事務局で抜粋をさせていただき、説明させていただくものでございます。簡単に御説 明いたします。  「1 アフラトキシンの毒性」ということで、これは前回、小西委員からも御説明がご ざいましたように、急性毒性、生殖毒性、免疫毒性、遺伝毒性それぞれから評価をされて いるところでございます。  「2 食品中のトータルアフラトキシンの汚染実態」ということでございますが、この 研究班によりますと不検出と検出というもので各項目はこのとおりでございますが、検出 されているものといたしましてピーナッツ、チョコレート、ピスタチオ、はと麦、そば粉、 香辛料、ココア、ピーナッツバター、アーモンド、コーングリッツ等が示されているとこ ろでございました。  この結果ですが、はと麦でアフラトキシンB1を9μg/kgを含んだもの以外は、おおむ ね低濃度であったということでございます。また、3年間で測定した検体数の平均汚染濃 度は、いずれの汚染食品からも1μg/kgを超える汚染濃度は検出されていないということ でございます。また、コーングリッツ、ピスタチオ、そば粉、香辛料は、いわゆるBグルー プの汚染が主流であったということでございますが、それ以外はBGグループの汚染が非 常に多かった。更には、ピーナッツに至っては、Gグループの方が汚染濃度が高いという 現象が見られているということでございます。  「3 アフラトキシンの暴露評価」でございますが、年齢構成比で重み付けした日本人 全体のアフラトキシンB1の暴露量でございます。これも前回御説明があったと思います が、99.9パーセンタイル値で最も安全側をとったシナリオ、つまりB1のみの規制という 場合には2.06ng/kg/日ということでございました。最も少なめに見積もれるアフラトキシン B1、4μg/kg、トータルアフラトキシンを8μg/kgの規制の場合で1.88ng/kg/日という 暴露評価でございます。  「4 考察」といたしまして、事務局で4つにまとめさせていただいております。  (1)トータルアフラトキシンとして基準値を設定する際には、アフラトキシンB1以外の アフラトキシン類による発がん性等を含めた健康被害を未然に防止するという目的では、 非常に妥当であるということでございます。  (2)ピーナッツバターについては、スーダンのアフラトキシン汚染地域において肝がんの リスク因子であったということもあることから、我が国における消費形態の調査を踏まえ た対応が必要だということでございます。  (3)アフラトキシンの暴露推定では、現在の規制、つまりアフラトキシンB1のみで規制 していることにつきまして、規制の有無において顕著な差異は認められなかったというこ とでございます。これは我が国における流通しているB1の含有量が設定された規制値を 超えるものの割合が非常に少なかったからということでございます。この結果は、現在の 規制が有効に機能していることを支持しているというものでございます。  (4)今回の結果を1ng/kg/日の摂取でB型肝炎の陽性者においての肝がんの発生リスクは、 1年間当たり10万人単位で0.3人ということでございますし、陰性者であれば10万人中 0.01人ということでございますが、そういった報告から評価をすると、日本人においては アフラトキシンの暴露による発がん発生のリスクは現時点では小さいと考えられるという ことでございました。  続いて、資料2−2をおめくりいただければと思います。先ほどの資料2−1にもござ いましたように、アフラトキシンの汚染状況ということでBグループ、Gグループそれぞ れどういった状況になっているかということを示した図でございます。これは落花生を示 しておりますけれども、日本全体の落花生の汚染状況を示しているわけではございません で、検体の提供をいただいた一機関のみのデータでございます。  まず、表4−1を見ていただくと、1972〜1989年、かつてはアメリカからの輸入が多かっ たピーナッツでございますが、最近は中国からの輸入が増えているということが、この表 によってわかろうかと思います。  また、右側の表あるいは図を見ていただければと思いますが、図で1972〜1989年の白い 点々があるところ、大部分を示しているのはB1ということで、当時はアフラトキシンB 1が主な分画であったところ、最近2006年、中国、アメリカ、南アフリカをそれぞれ見て いただければG1の割合が増えているということが年次推移によってわかろうかと思いま す。  これが資料2−1の研究結果を付随するデータでございます。  続きまして、資料2−3でございます。各国あるいはコーデックスでどういったアフラ トキシンの規制になっているかということを表裏の1枚でまとめてございます。  先ほどから御説明していますように、我が国におきましてはすべての食品に関してアフ ラトキシンB1が不検出であるべきだということで、第6条規制をしております。  コーデックス委員会でございますが、これまで加工原材料で使う落花生をトータルアフ ラトキシンで15ppb、乳をM1で0.5ppbということで基準値があったところでございます が、今回新たにアーモンド、ヘーゼルナッツ、ピスタチオといった木の実の基準値それぞ れ直接消費量と加工用ということで基準値が違いますが、それぞれ10ppb、15ppbをトー タルアフラトキシンで基準値を設定しているというところでございます。  また、アメリカ、オーストラリア、EUで、それぞれ基本的にはトータルアフラトキシ ンで規制をしているアメリカ、オーストラリアとEU、トータルアフラトキシンとB1そ れぞれで規制値を設けているという、それぞれの国・地域があるという御報告でございま す。  資料2−4は今まで御説明したことをリスクプロファイルという形でまとめさせていた だいているものでございますので、審議の参考にしていただければと思っております。  こういった調査の結果、まず1つは、現時点では現在の規制が有効に機能しているとい うことが研究班から報告がございました。なので、現在の規制は維持すべきではないかと いうことかと思います。  一方で、先ほど申し上げましたたように、コーデックス委員会、諸外国におきましては、 トータルアフラトキシンの規格設定が行われているということでございます。我が国にお きましては、落花生においてB1よりもG1の汚染濃度が昨今、非常に高くなっていると いうこと、あるいは我が国においては、そもそも木の実というのは輸入にほとんど頼って いるというようなこと等から、先ほど議題1で皆様から御了承いただきました規格基準設 定の基本的な考え方に基づきますと、コーデックス規格に準拠した規格基準を設定する方 針ということでございますので、落花生及び木の実、つまりアーモンド、ヘーゼルナッツ とピスタチオといったものに対しましては、トータルアフラトキシンの基準値を設定して はどうかと考えているところでございます。  こういった調査結果を踏まえまして、本日はまず、現在のアフラトキシンB1の規制に 加えて、落花生、木の実にトータルアフラトキシンの規格基準を設定する方針について御 審議をいただければと思っております。なお、具体的な規格基準の設定の検討につきまし ては、食品安全委員会にリスク評価を依頼することになりますので、その後改めて当部会 において御審議いただくことになろうかと思っております。よろしくお願いいたします。 ○廣橋部会長 ただいまの説明に御意見いかがでしょうか。 ○小西委員 ただいまの御説明に補足をさせていただきたいと思います。  まず、本日お示しいたしました資料は木の実とピーナッツでございますが、木の実の方 の具体的なG1の汚染ということについては資料を提出しておりませんので、ここで口頭 で御説明させていただきたいと思います。  このデーターもすべて市販に流通しているものではなくて、命令検査の結果でございま すが、アーモンドの場合はアメリカ産ではG1がB1より勝っています。また、2007年に 学術論文として一戸先生らが報告しておりますけれども、アーモンドについているカビと いうのは今まではAspergillus flavusというもので、B1とB2しか出さないものが主流で ございましたが、近年Aspergillus parasiticus、それから、Aspergillus nomiusなども検 出されていまして、この2つの菌種はGグループも産生するので、今後、同時汚染の可能 性は非常に高いだろうと示唆されております。  次に、ピスタチオでございますが、これはイラン産、アメリカ産ではBグループが有意 でございますが、オーストラリア産においてはG1グループがB1グループより勝ってい るという結果が出ております。  ヘーゼルナッツでございますが、これはトルコ産が我が国に入ってきておりますけれど も、トルコ産においてもG1グループがB1グループより高い場合もあるという結果が出 ております。  このような結果から、落花生、木の実に対してトータルアフラトキシンとして規格をつ くるということは、リーズナブルではないかと私は考えております。  また、このようにコーデックス規格が木の実で設定された、落花生では既に設定されて いるというように、この国際的な流れがトータルアフラトキシン規制で動いております。 もし我が国がトータルアフラトキシンで規制をつくらなかった場合は、当然規格外のもの が入ってくる危険があるだろうということも考えられます。ですから、今の汚染状況に基 づいた暴露評価を行った結果では、現在のB1規制で十分機能しているけれども、将来輸 入国もどんどん変わってきますし、それから、菌の分布も変わってきているという実態が 出始めているという状況で、やはり今、予測される健康被害はなるべく早く手を打ってお くことが我々の使命だろうと考えますと、ここでトータルアフラトキシンの規格基準を諮 問するということは賛同できることだと思います。  以上です。 ○廣橋部会長 追加の御説明どうもありがとうございました。  では、ほかの委員の先生方いかがですか。 ○山内委員 私も素人ではございますが、今日御説明いただきましたB1以外の汚染が増 えているという状況につきまして見せていただきましたし、コーデックスでの論議状況も ございますので、トータルで設定していく方向については賛成したいと思います。  基準値はこれからということになると思いますが、コーデックスはこの4つの分類に なっておりますけれども、裏面を見ますとEUはかなり細かく設定されておりますし、特 に下の方にベビーフードですとか子ども用の調製粉乳など、特別にM1の設定などもござ いますので、この辺りも日本でもどう考えるかということを御配慮いただいて、基準の方 向については検討していただきたいと思います。  もう一点関連ですけれども、先ほど考え方の基本の話をしていただいたときに、全体に 汚染物質の暴露を可能な限り低減するというようなことが出ておりました。今回は基準値 を設定するということでございますけれども、日本の国内生産についてですとか、日本国 内での保管状況などについて、汚染対策などについても併せてお示しいただくことになれ ば、もっと安心の要素が高まりますのでお願いしたいと思いました。 ○西嶋補佐 今、山内委員からの御指摘の点については、特に低減対策等につきましては 関係者とも連携した上で、勿論、基準値を決めればそれですべて解決ということではなく、 アフラトキシン全体、汚染物質全体の対策を考えていかなければいけないと考えておりま す。 ○廣橋部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○品川委員 考え方としては、B1を今までやっていたけれども、だんだんトータルに持っ ていった方がいいという考え方。今現在、一応決めているのはB1を決めているわけです ね。これを今度はどんどんトータルに決めていった方がいい。トータルとB1の比率は関 係があるんですか。例えば、トータルがどのくらいのときにB1がどうだとか。B1にし ても今、不検出というのはどこまでを不検出と言っているのか、検査法との問題が当然出 てくると思いますけれども、どの辺まで言っているのかなと。そして、トータルというの はどの辺まで検出できるのかなというのを教えてほしいんですけれども。 ○廣橋部会長 では、専門の小西委員から。 ○小西委員 今の御質問にお答えさせていただきます。  最初の御質問のトータルとB1の比率ですけれども、これは2003年にエグモンドさんが FAOから出版した本によりますと、B1を1としますとB2、G1、G2を足したもの が0.8です。ですから、約半分です。1対0.8、約半分がB1だろうと汚染実態から計算さ れています。  それから、2007年にEUが暴露評価を行いましたとき、これはトータルアフラトキシン として暴露評価を行っていますけれども、リスク評価はB1として行っています。そのと きはトータルの2分の1がB1であるという換算をしております。  2番目の質問ですけれども、今、近代的な測定方法がどんどん開発されていまして、一 概にこれが検出限界とは言いがたいですけれども、現在普及している分析法の中で一番セ ンシティブなものは0.01ng/g、すなわち、0.01μg/kgまで機械的には検出できます。それ から、トータルも同じです。それぞれのB1、B2、G1、G2ともそれだけ検出できま すので、トータルでいくと0.04μg/kgとなります。現在これほど感度よくできますけれど も、それと食品衛生法の不検出というのはイコールではないわけです。ここの不検出は、 最初の昭和46年に規制が決まりましたときの最も感度の高い試験法である薄層クロマトグ ラフィーという方法での検出限界を言っております。薄層では10ng/g、すなわち10μg/kg でございます。 ○廣橋部会長 ありがとうございます。 ○西川委員 確認ですが、B1の規制値はがんに対してのものなんでしょうか。 ○小西委員 西川先生の御質問は、今言いました不検出という数字は、がんに対してのリ スク評価から出てきたものであるかということですか。第6条違反はあってはならないと いうことですから、数値では表せませんので、そのときの検出限界以下という考えでござ います。 ○西川委員 もう一つ確認ですが、資料2−1を見ますと「4 考察」の4つの項目のう ち、がんに関するものが3つあります。一番最初の「1 アフラトキシンの毒性」のとこ ろに発がん性が抜けているんですが、これは間違いではなくて入れなかったということな んでしょうか。 ○廣橋部会長 小西先生の研究の概要ですね。 ○小西委員 これは発がん性は入っていると思います。 ○早川委員 私の方も確認と質問と両方ですが、今回方向としてはB1に加えてトータル で規制しようということは、すべての食品についてということで考えるわけですか。 ○西嶋補佐 現時点で、すべての食品についてB1がございます。コデックスについては 木の実、落花生についてトータルでございますので、トータルの議論をするときにすべて の食品まで広げるのか、あるいはコーデックスを採用するという形で木の実に限定した上 でトータルアフラトキシンは規制をするのかというところだと思いますが、基本的にはす べての食品についてはB1規制を継続としてやり、プラス木の実等についてトータルアフ ラトキシンの規制を設定するという考え方かと思います。 ○早川委員 そこで1つクリアになったんですが、先ほど山内委員が質問されたこととも ちょっと関連するんですけれども、乳製品などは代謝物になるわけですね。そうすると、 今の規制では事実上何も検出されない。 ○小西委員 規制されていないということになります。 ○早川委員 そういうことになりますね。今回はこれで結構かもしれないんですが、今後 の方向としてどうするかという方向性が出ないと、ちょっとまずいのかなと思うんですが。 ○小西委員 方向性は事務局から御説明があると思うんですが、M1に対してM1として の規制というのはございませんけれども、これは牛がB1の入っている飼料を食べること によって牛乳にM1が出てくるというメカニズムになっております。ですので、飼料の中 のB1をコントロールすることによって、牛乳の中に出てくるM1はコントロールできま す。飼料のB1は農林水産省によって規制がつくられておりますので、我が国においては 今のところM1の濃度も非常に低いものに保たれております。 ○早川委員 先ほどの御説明だと、これはものによるのかもしれませんが、落花生などで はB1からG1に汚染が移ってきているということになると、例えば、そういう家畜の飼 料については、汚染の原因がB1からG1に移ってきているということはないんでしょう か。 ○國枝基準審査課長 お答えしたいと思いますが、飼料の方については別途今、農水省の 方で審議されていまして、今はたしか局長通知で基準値が定められて、それによって日本 の牛乳中のM1を下げることが担保されていますけれども、これを告示に上げて、よりきっ ちりした形で担保しようという動きが進んでいると聞いております。  もう一つM1の件については、コーデックスでは27ページの上に書いてありますけれど も、先ほど御審議いただきました基本方針、コーデックスで定められたものについては、 まずは日本に取り込むという前提で考えようと。場合によってはできないこともあるとい うこともありますが。この基本方針を御了解いただければ、M1についても今ここでとい うことではありませんけれども、対象として考えていくこととなります。例えば、M1に ついて言うと、日本には飼料として入ってくる部分については飼料での基準値で反射的に 国産の牛乳中のM1は守られますが、最終的な乳製品として出回るものについては海外か らも入ってくる可能性があります。そういう観点からすると、コーデックスの規格基準が できてくると、現状としては守られていても、先ほど小西先生がお話しされましたように、 国際商品なのでその規格に合わないものが基準を定めていない国に入ってくる可能性もあ り得るので、基準をつくる必要があるのではないだろうかというコンセプトが基本的な考 え方の最初の部分に示されているということです。 ○廣橋部会長 どうもありがとうございました。  いろいろ御意見をいただいて明確になったところもありましたが、まとめてみると、ま ず、現在のすべての食品に対してかかっているアフラトキシンB1を検出してはならない という規制については、今のままで維持するということと、それに加えてコーデックス規 格が定められている落花生、木の実ついては、それに準拠する形でトータルアフラトキシ ンの基準値を設定する方針で臨むということで、皆さん御了解いただけますでしょうか。 (「異議なし」と声あり) ○廣橋部会長 では、事務局から。 ○西嶋補佐 ありがとうございます。今後の予定について申し上げますが、トータルアフ ラトキシンの規格基準設定につきましては、食品安全基本法に基づく食品健康影響評価が 必要になりますので、本日の議論の結果を踏まえまして、食品安全委員会に食品健康影響 評価依頼を行いたいと考えております。  食品安全委員会からの評価結果が答申され次第、本部会におきまして今度は具体的な規 格基準の設定について御審議をいただこうと思っておりますので、またよろしくお願いい たします。 ○廣橋部会長 それでは、次は議題3、食品中のカドミウムに係る規格基準の設定につい てです。資料3の説明を事務局からお願いします。 ○西嶋補佐 資料3−1、資料3−2、資料3−3と3種類ございます。食品中のカドミ ウムにつきましては、現在、我が国におきましては米、玄米におきまして1.0ppm未満、清 涼飲料水及び粉末清涼飲料については検出してはならないということで規格基準が定めら れているところでございます。こちらもコーデックス規格の策定の動きがございましたの で、平成14年から規格基準の見直しの必要性について、本部会において幾度かにわたり議 論をしております。その結果、平成15年の食品安全委員会が発足したのと同時に、食品健 康影響評価の依頼を厚労省から行わせていただいたものでございますが、昨今、食品安全 委員会から評価結果が戻ってまいりました。それが資料3−1でございますが、その評価 結果等について本日は御説明をさせていただければと思います。  資料3−1にございますが、カドミウムの耐容週間摂取量を7μg/kg体重/週とするとい うことが評価の結論でございますが、次のページ以降、若干小さい字で恐縮でございます けれども、汚染物質評価書ということでカドミウムの食品安全委員会からの評価書がつい てございますので、そちらについて事務局から簡単に御説明をさせていただければと思い ます。  6ページに評価書の要約がございます。時間の関係もありますので、要約に沿って若干 ほかのページにも触れつつ御説明させていただければと思います。  カドミウムは原子番号48、元素記号Cd、原子量112.411、密度8.65ということで銀白 色の重金属です。土壌中、水中、大気中の自然界に広く分布していると。このため、ほと んどの食品中に環境由来のカドミウムが多少なりとも含まれているということでございま す。過去、我が国におきましては、鉱山を汚染源とするカドミウム汚染地域が数多く存在 し、イタイイタイ病の発生を契機に、一般環境でのカドミウム暴露に関する疫学調査が数 多く実施されてきたということでございます。  これまでの知見から、カドミウムの長期低濃度暴露における食品健康影響評価のために は、因果関係が証明されている腎臓での近位尿細管機能障害を指標とすることが最も適切 であるとされております。  ここで36ページを見ていただければと思います。そういった基本的な方針について国際 的な動向としてはどういった形になっているかということでございますが、IARCではグ ループ1ということで、ヒトに対して発がん性のあるものだということで分類されており、 JECFAでのいわゆるPTWI(暫定耐容週間摂取量)の考え方といたしましては、そこにご ざいますように、腎皮質のカドミウムが200mg/kgを超えると腎機能障害が起こる可能性 があるということで、カドミウムの総摂取量が1μg/kg体重/日を超えなければ腎皮質のカ ドミウムが50を超えることはありそうにないことから、PTWI400〜500μg/人/週が提案さ れたということが1972年のJECFAの評価ということで、それを受けてPTWIは7μg/kg 体重/週ということで1989年に表現が改正されておりますが、そういった形でJECFAでは 評価されていると。  以降、職業暴露を中心としたいわゆるJECFAの評価が2000年以降にされているという ことが、それ以降のページにございます。  また、43〜44ページ辺りにJECFAでの評価と、要約で先ほど申し上げました近位尿細 管機能障害を指標とする我が国での評価のやり方についての関係が書いてございますが、 JECFAでの評価とは異なったアプローチで食品安全委員会では評価しようということで、 44ページの真ん中から上辺りに、JECFAでの評価の限界が記されているということでござ います。  6ページの要約に戻っていただきますと、そういった国際的な評価はあるのだけれども、 我が国では近位尿細管機能障害を指標とした評価を行うということで書かれております。  したがって、今回のリスク評価における耐容週間摂取量は、国内外における多くの疫学 調査や動物実験による知見のうち、特に一般環境における長期低濃度暴露の重視をするも のであると。つまり、職業暴露ではないということを重視し、日本国内におけるカドミウ ム摂取量が近位尿細管機能に及ぼす影響を調べた2つの疫学調査結果を主たる根拠として いるということでございます。  その疫学調査は具体的には47ページ辺りにあろうかと思いますが、要約が少し書いてご ざいますので御紹介させていただきます。  すなわち、カドミウム汚染地域住民と非汚染地域住民を対象とした疫学調査結果から、 ヒトの健康に悪影響を及ぼさないカドミウム摂取量として算出された量は14.4μg/kg体重/ 週以下であった。また、別の疫学調査では、7μg/kg体重/週前後のカドミウム暴露を受け た住民に過剰な近位尿細管機能障害は認められなかったということでございます。  こういった2つの疫学調査等から、カドミウムの耐容週間摂取量は総合的に判断して7 μg/kg体重/週に設定したということでございます。  現在、日本人の食品からのカドミウム摂取量の実態については、1970年代後半以降大幅 に減少してきている。導き出された耐容週間摂取量の7μg/kg体重/週よりも低いレベルに あるんだということでございます。  また、近年、食生活の変化により、一人当たりの米消費量が1962年のピーク時に比べて 半減した結果、日本人のカドミウム摂取量も非常に減少してきているということでござい ます。したがって、一般的な日本人における食品からのカドミウム摂取が健康に悪影響を 及ぼす可能性は低いと考えられるということが、この評価書の内容になっているというこ とでございます。  最後のところを御説明いたしますと、13〜14ページ辺りに食品からのカドミウム摂取量 の推移ということで、例えば、13ページの図2を見ていただくと、1970年代に46μg/人/ 日であったものがかなり減少してきていて、図2の2005年であれば22.3μg/人/日になっ ていますと。体重で計算すると、2.9μg/kg体重/週となっていることが示されております。  また図3で、日本人のカドミウム摂取量の分布ということでシミュレーションした度数 分布が示されておりますが、平均値も3.47μg/kg体重/週ということで、7よりはかなり低 い値に平均値は保たれておりますし、95パーセンタイル値であれば7.33と若干7を超えて いるのだけれども、その程度ということで御報告があったところでございます。  そういった内容が49〜51ページ辺りに評価書のまとめということで、米の摂取量の推移、 米の摂取量が非常に減っているという背景の中で、今要約で御説明させていただいたよう なことが少し詳しく書かれているということでございます。   また、資料3−2は、食品安全委員会からの答申を受けて薬事・食品衛生審議会食品衛 生分科会への諮問を行ったというものでございますし、資料3−3を見ていただければ、 カドミウムについてコーデックスでどういった規格を持っているかということが1枚でわ かるような形で示しているところでございます。  まず、本日につきましては、先ほど議題1で御了解いただきました基本的な考え方に基 づきまして、資料3−3にございますコーデックス規格の基準を採用するかどうか、また、 その採用の方法について御意見をいただければと思っています。その際には、資料3−1 で簡単に御説明させていただきました評価書の内容を御参照いただければと思っておりま す。  次回以降、必要な資料を事務局でそろえさせていただいた上で、このカドミウムの基準 値については本格的な審議を行っていきたいと考えているところでございます。  なお、最初に申し上げましたように、清涼飲料水につきましてはコーデックスと同様に 個別の食品規格ということで、別途、清涼飲料水の規格基準を本部会でも今後審議いただ きますが、その際に併せて検討していきたいと考えているところでございます。  以上でございます。 ○廣橋部会長 ただいまの説明に質問・意見いかがでしょうか。 ○香山委員 まず、このコーデックス規格を適用するかどうかということについて議論を 進めないといけないと思いますけれども、やはり日本の米の暴露の主体的なものは精米か らの暴露が約半分が米であるということで、やはり米の基準を決めるということをきっち りと議論しないといけないということです。例えば、海産二枚貝が2ppmと書いてありま すが、カキ、ホタテを除くとか、あるいは頭足類は内臓を除去したものという意味で、む しろ、あるものが高いというものがあるわけですが、現実的にはそれをどれだけ食べて寄 与するかということを考えると、そして、全体を規格基準で定めてしまえば、やはりスク リーニングにかかることと、リスク管理の部分でのコストの実効性ということもバランス として考えることは必要だろうと思います。  以上です。 ○池上委員 基本的な考え方としては、私も賛同いたしますけれども、やはり日本の食生 活の特殊性というのはある程度考えざるを得ないだろうと思います。  ちょっと質問したいんですが、精米というところで基準が決まっているんですけれども、 玄米については今まである基準をそのまま適用するということでよろしいのでしょうか。 玄米も含めて考えていくのか、新たな基準を設けていくのか、そこを質問したいんです。 と申しますのは、現在、健康志向等で精米ばかりではなくて、玄米を食べる方たちもいま すので、そこはやはりある程度通常食として、恐らく玄米の場合は精米することを前提に した基準だったろうと思うんですが、摂取量等先ほどの香山先生の御質問とも関連すると 思うんですが、そういった特別な食べ方をしているものがどの程度あるのかというのは、 きちんと把握しておいた方がいいだろうと思いました。  それから、もう一点は、日本の場合やはりお米のウエートが大きいという点で、地域差 がどの程度あるのかというのが、資料を細かく見切れなかったのでもしかしたらあるのか もしれないんですが、地域によってお米のカドミウムによる汚染度がどの程度かという辺 りがわかると判断しやすいかなと思っています。  以上です。 ○西嶋補佐 まず、1つ目の玄米の話でございますが、現在も玄米は1.0ppmということで 基準値を設けておりますが、玄米から精米するときに、どれだけカドミウムが減るかみた いなことも含めて、実質精米でもきちんとカドミウムの基準内で収まるようにしていると。 今回もコーデックスにおきましては精米ということで定められておりますが、玄米につい ても基準値について併せて検討することは当然必要なことだろうと、先生御指摘のとおり だろうと思っております。  2つ目の地域差でございますが、先生おっしゃるように、カドミについては濃度が高い 地域等がございます。次回以降になろうかと思いますが、そういった汚染の状況について も資料としてそろえさせていただいて、当然そういったことも加味しながら基準値の設定、 コーデックスの精米0.4ppmとありますが、そういった米について基準値をつくるのが適切 なのか、あるいは0.4ppmというのが適切なのか、そういったことも含めて御検討いただけ ればと思っております。 ○山内委員 私もコーデックス規格を基にして基準をつくることについては賛成です。今、 御意見がございましたように、日本人の食生活の中で一体、何がカドミウム摂取に影響を 及ぼすのが多いのかというのを具体的なデータでお示しいただきたいと思います。農産物 につきましては、さまざま残留の度合いなどについて既に基準を農林水産省の方でお持ち だと思いますので、そういうものも具体的に出していただければと思います。  玄米の健康志向のお話が出ましたが、私も好きなんですけれども、近年はそばも大変健 康志向で食べる方も多いと思いますので、1番目の穀類のそばを除くというのは日本の生 活にはそぐいませんので是非御検討をお願いします。あと、根菜なども多分、ヨーロッパ やアメリカとは違って、大根などもたくさん日本人は食べていると思いますので、その辺 りもお願いしたいと思います。  また、これも関連してですけれども、具体的なカドミウム残留の低減措置の対策などに ついても、お米ですとか、大豆等について教えていただければ参考になりますので、資料 を出していただければと思います。 ○廣橋部会長 食品中のカドミウムの規格基準について、コーデックス規格に準拠する方 針で策定するということについては、皆さん御賛成とお伺いしました。特に、基本的な考 え方に従って、日本の事情も考えながら検討しましょうということです。次回に本格的な 議論を行うことになりますが、今、お話が出たような部分も含めて資料の準備を事務局、 よろしくお願いいたします。  では、次の議題に進みます。次は議題4、食品中の金属試験法の妥当性評価ガイドライ ンについてということです。お願いします。 ○西嶋補佐 資料4−1で試験法の妥当評価手法についてのパワーポイントがございます が、資料4−1から資料4−3まで資料がございますので、ごらんいただければと思いま す。  妥当性評価のガイドラインにつきましては、前回の部会におきまして寒天中のホウ素の 試験法について機器分析を導入するべきかどうかということで御議論いただいた際に、委 員の先生から同等以上の性能を有する試験法は認めないのかとか、あるいは認める際には 妥当性を評価するためのガイドラインが必要なのではないかといったことについて、本部 会で審議をする必要があるのではないかという御意見をいただきましたので、今後の課題 とされたわけでございます。  現在、告示で示されている金属試験法のうち、米のカドミウム試験法については告示中 の同等以上の性能を有する試験法を用いることが認められているという現状がございます が、今回、金属試験法評価ガイドライン(案)につきまして、国衛研の食品部におきまし て作成をしていただいておりました。まず、資料4−1に基づきまして、妥当性評価に関 する国際的な考え方等につきまして、本部会の委員でもございます国立医薬品食品衛生研 究所の食品部長でございます松田委員から、概要について御説明していただければと思い ます。  その後、そういった国際的な考え方を踏まえて、既に通知をされております農薬につい て、今回の金属試験法の参考になるようなガイドラインがございますので、資料4−2の 農薬のバージョンと資料4−3が金属試験法の評価ガイドラインのエッセンスでございま すが、その相違点についても併せて御説明を先生の方からしていただければと思います。  松田先生から御説明していただいた後に、金属試験法ガイドラインの導入の是非につき まして、あるいはそもそも寒天の試験法に同等以上の試験法を認めるかどうか、認める際 にはこのガイドラインを適用するかどうかという2点について、委員の先生に御審議いた だければと考えております。 ○廣橋部会長 前回の会議での御意見を受けてという展開ですけれども、では、松田先生 から御説明いただけますか。 ○松田委員 それでは、資料4−1に従いまして説明をさせていただきます。  これは金属とは限りませんけれども、試験法あるいは分析法の妥当性評価について国際 的な考え方を挙げております。妥当性評価は、英語ですとvalidationと言うのですけれど も、分析法のバリデーションの必要性については、コーデックスのガイドライン27という、 輸出入にかかわる評価のためのガイドラインというのが27なんですけれども、その中にい ろいろなラボが守るべきこととして、ガイド25を守っているとか、技能試験に参加する、 内部精度管理を実施するということに加えまして、分析の方法がバリデートされていると いう方法を使用しているということが定められております。  ガイド25を遵守しているというのは古いバージョンでして、現在ISO/IEC17025あるい はJISQ17025というものに変わっておりまして、この中にも技術的要求事項の中で方法の 妥当性確認というのが求められております。これは、やはり輸出入にかかわるコーデック ス基準にその食品が適合しているかいないかを判定するためには、それなりの妥当性が確 認された方法を用いなくてはいけないということが定められております。  その妥当性確認というのは具体的にどのようなことかというと、分析法がどのような性 能を持っているかというのをパラメーターとして分けて数字で表して、妥当か妥当でない かということを評価いたします。  4枚目に分析法の性能パラメーターとして使われる、これは非常に広い範囲まで広げて おりますけれども、パラメーターを挙げております。1つは真度というもので、これはま さに正しい値が出るというものです。正確に言いますと、たくさん分析をして、その平均 値が真の値に近い、正しい値が出るというものですが、別に精度というものがありまして、 これは何遍も分析をしたときに、その分析値がばらつかない程度が精度です。真度の方は ばらつかないということを示しておりませんし、精度は集まっている値が正しいかどうか を示しておりませんので、合わせて一つの正しさを表すということで、5725とかそういう 規格では「精確度」という言葉を使ったりしております。これは真度と精度を合わせたも のということです。  それから、分析法の性能として重要なのは選択性というものでして、これはマトリック ス由来のものとか、あるいはその分析法で狙っている分析対象物とよく似た性質のものと 区別して測れる。必ずそのものを区別して測れるというものが、食品などのようにマトリッ クスが複雑なものでは、重要なパラメーターとなっていきます。  それから、先ほどアフラトキシンのお話にもございましたように、どこまで低いところ まで測れるかというパラメーターがありまして、検出限界あるいは定量限界という2つの パラメーターがあります。検出限界は定量できるかできないかにかかわらず、あるかない かがわかるというものですし、定量限界はあることは勿論ですけれども、ある程度の正し さ、ばらつきのなさをもって分析値が出せるというのが定量限界となります。これはもの によります。非常に低いところを測らなくてはならない、例えば、不検出であるアフラト キシンのような場合では、検出限界・定量限界は非常に重要ですけれども、例えば、成分 規格のように30%ぐらい入っているようなものであれば、あまり検出限界・定量限界が低 いことは問題にはなりません。  あと、そのほかに、以下は余り重要とは思えないパラメーターも入っておりますが、分 析法の適用範囲が広いとか、いろいろなラボでやったときに分析法の性能が変わりにくい というものが範囲とか頑健性というので表されているパラメーターです。  右側に精度が別に書いてございますけれども、精度というのは同じものを測ったときに 分析値がばらつかない程度なんですが、どういう条件で測ったかということで3段階の精 度があります。併行精度というのは1人の人が同じときに並べて測る精度です。一番下の 室間再現精度というのは、別々のラボで別の人が別の日に別の機械を使って測る精度です。 当然ながら、室間の方が併行精度よりもばらつきは大きくなります。それは使っている試 薬とか標準品とか機械、あとは環境、温度によってばらつきが変わるんですけれども、い ずれにしても併行精度だけよくても、室間再現精度とか室内では人が変わったり、日が変 わったりした場合ですが、これが大きいとあまり分析法としてはよろしくないということ になります。  5枚目、6枚目は、今申し上げたことと同じようなことが書いてあるんですけれども、 真度というのは一応バイアス、回収率と呼ばれることもあります。回収率というのは、例 えば、抽出する農薬のような場合は、食品からそのものを持ってくる率が非常に結果に影 響するので、回収率と呼んでいることがあります。ただし、金属のような場合、抽出操作 がないので金属関係の方は回収率という言葉はあまり使われないようで、真度あるいはバ イアスとおっしゃいます。  7枚目は「In−house validation」と書いてありますが、実際にコーデックス法とか AOAC法というのは室間精度までを保証するような分析法でないと採用されないので、そ のためにコラボラティブスタディというものをやって精度と真度を評価しています。それ は10か所ぐらいのラボに共通試料を配付して、決められた試験法に従って操作した場合に 同じ分析値が得られるかどうかということをするものです。  今回議論していただきます妥当性評価ガイドラインというのは、そうではなくて同等以 上の試験法あるいはそのラボが通知されている試験法をそのまま採用して実施する場合に、 それでもちゃんとした値が出るかということを評価するためですので、そのラボでちゃん とできるということを示す手順が必要になります。  そのためのガイドとしてIn−house validationのガイドラインというものが出ており まして、そのIn−house validation、1か所だけの試験室でやるバリデーションはどうい うときに使われるかというと、まず、1番目はコラボをやる前に正当性を保証するという ものですが、2番目のように既にバリデートされている方法が、その実験室で正しく実施 されていることを保証するために行うというもの。もしくは、コラボラティブ・スタディ ができないときに信頼性の証拠を示す、この2つの場合が今回、御審議いただく妥当性評 価ガイドラインになるかと思います。  8枚目には、農薬等にかかわる試験法のガイドラインについての説明を載せてございま す。これは昨年11月に通知された農薬試験の通知法を一部変更して実施する場合に、どの ように評価して、それを実施していいかどうかを決めるかというガイドラインです。です から、通知されている方法と比べるというのではなく、ある決まった数値の範囲に入って いればそれは妥当な方法なので、変更してもよいということを決めるためのものです。  そのときにガイドラインで想定した分析の目的というのは、規格基準に適合しているか どうかを正しく判定するということを目的といたしました。  これはどうしても結局は、分析をしたときに規格基準に適合していないと農薬などでは 廃棄とかそういうことにつながりますので、そこを適切に判定できるようにということで 目的といたしました。ですので、これはしょっちゅう聞かれるんですけれども、サーベイ ランスとか非常に低レベルまで測ろうとする方法、あるいはモニタリングというのは想定 していません。必ず規格基準に適合する判定のための分析法のガイドラインと限定してお ります。  この農薬試験法のガイドラインの場合は、通知で示している試験法以外の方法で試験を 実施する場合に、同等以上の方法が認められているんですけれども、それが同等以上の方 法であるということを示すためのものです。  今回のカドミウムにおきましても、同等以上の方法ということが示されておりますので そのための方法、あるいは寒天におきまして同等以上の方法を認める場合には、それが同 等以上の方法ということなります。  農薬では評価するパラメーターとしまして、選択性、真度、室内精度、定量限界という ものが決定されました。選択性が一番上に来ておりますけれども、農薬というのは非常に 種類が多くて、似たような構造のものもありますし、また、適用される食品もポジティブ リストになってから非常に増えましたので、農薬と誤認するピークが出てきて、それを絶 対に誤認しないということを確認するということが重要となりますので、選択性が1番に 入っております。  あとは真度。農薬の場合は大体皆さん真度を回収率と呼ばれますので、「回収率」と書い ております。  それから、室内精度は1ラボですので、室内精度しか求まらないので室内精度。  それから、農薬というのはかなり微妙なところを測っておりますので、定量限界という ものを評価するパラメーターとして選択しています。  評価の方法は、食品ごとに農薬を添加して、測定結果からパラメーターを求め、それぞ れの目標値に適合しているかどうかを確認するというものです。  その下に下線を引いてございますのは、金属であれば可能であろうというものでして、 認証標準物質を分析して回収率あるいは真度を求める。あとは、認証標準物質とか試料や 添加試料で精度を求めるというものが書いてございます。  農薬の場合はほとんど認証標準物質がございませんので書かなかったんですが、金属の 場合は非常に多種類のいろいろな濃度の認証標準物質が市販されておりますので、これを 用いて評価することは可能かと思い、農薬には入れなかったんですけれども、今回このよ うなものを付け加えてみるといいのではないかと思います。  14枚目が、真度と精度の目標値ですけれども、これは動物薬のコーデックスの部会があ るんですが、そこで示されている値やEUで示されている値を参考にして、そのように決 めております。真度は70〜120、併行精度と室内精度に関して、そのような値が決められ ています。範囲は農薬ですので多いところで0.1ppm、少ないところは1ppb以下という範 囲が定められております。  15枚目には、今回、寒天となりますと非常に高いところに基準値がございますので、そ こまで伸ばしていったものです。農薬等に比べますと真度の範囲あるいは併行精度の値が 狭くなっているということで、精度というのは濃度が高ければ高いほど小さい値になると いうことが達成し得るということが知られておりまして、非常低い濃度ではなかなか小さ い精度にならないということを考えまして、このような値となっております。  16枚目は、あまり関係ないんですけれども、これもコーデックスのプロセデュラル・マ ニュアルに書かれているんですが、単一試験室でバリデートした分析法を選択するための 基準として、まず、国際的に認められたプロトコルに従っているということが重要なんで すけれども、これは従うんですが、17025に適合した品質システム下で行われるべきであ るということが書かれておりまして、これは業務管理要領というもので登録検査機関か地 方衛生研究所はこれに従っていると思います。  あとは、精確さに関する情報の補完のために技能試験に参加するとか、他の方法と比較 することが求められておりますので、一応、国際的にはこれで妥当性評価が完結するとい うことになっております。  資料4−2は、今、御説明しました農薬の方の妥当性評価ガイドラインです。内容はお 示ししたとおりなのですが、「(3)精度」というところで、実際にこのような枝分かれ実験 デザインで精度と真度が同時に評価できますということが書かれております。  それから、添加回収なんですけれども、添加を行う食品の種類及び添加濃度が書かれて おりまして、農薬の基準値が決まっている食品が非常にたくさんございます。それを全部 添加回収するというのは非常に大変ですので、こういう代表的なものから選んで添加回収 をしてくださいということで、穀類とか豆類とか種実類、野菜等が書かれております。  それから、農薬等というときは実は残留動物薬も入りますので、肉についても書かれて おります。  また、添加濃度については基準値の2分の1の濃度を添加する、もしくは一律基準しか ない場合は一律基準濃度または定量限界の2倍ということを決めております。  最後に「別紙」とありますが、これは計算方法を書いたものでして、枝分かれ実験をし たときに分散分析を行って結果を出すための手順が書かれております。  これが農薬のガイドラインなんですけれども、それを参考にいたしまして資料4−3が 金属試験法評価ガイドラインというものです。大体農薬のものを踏襲しておりまして、選 択性、真度、精度が書かれております。選択性については農薬の方はほとんどクロマトと いうことでピークと書いておりましたけれども、金属はピークということではないので、 定量の妨害がないこと、妨害の信号がある場合は金属の信号の10分の1未満であるという ような書き方に若干変えております。  真度については、農薬の場合も添加試料ということが書かれていたんですけれども、金 属の場合は最初に認証標準物質、それがないときは添加試料ということで書いております。  真度と精度の求め方の枝分かれ実験等々は、農薬の場合と同じにしております。  下に書きましたのは目標値で、書かれているとおりの方法で得た真度・精度が、この目 標値の中に入っていれば同等である方法とみなすと考えております。  後ろは実験計画ということです。これについては、金属の方ではあまり実施した例がな いんですけれども、農薬については一度私の方でこういう実験をしてみて、かなり評価は 行えるという実証をしております。  以上でございます。 ○廣橋部会長 御説明ありがとうございました。  では、ただいまの説明に対して質問・意見があればどうぞ。 ○香山委員 大変わかりやすい説明をありがとうございました。  私はお米の中のカドミウムを測定するために、同じ検体を検査を生業にしている複数の 会社に出しまして、それでも随分ばらつくということを経験しておりまして、こういうこ とが実施されることが絶対に必要だと思います。  ただ、農薬のところでありましたように、適用ガイドラインの設定目的というのを、で きましたらこの中に入れていただいた方がよろしいのではないかと思います。例えば、こ れはスクリーニング、モニタリングとか、あるいはリスク管理のためのモニタリングなど が実際にカドミウムでは現実的に行われておりまして、そして、ある意味、実際にプロの 測定機関が測定していないところもありますので、それと混同されて間違った方向付けが されることを心配したものですから、今のような発言をさせていただきました。 ○松田委員 ありがとうございました。前部にそのように明記させていただきたいと思い ます。恐らく基準値ですので、非常に高いところで評価することになると思いますので、 低レベルのサーベイランスには余り向かないので、その場合は添加量を下げて同様に評価 するということがいいかと思います。 ○廣橋部会長 ほかに御意見ございますか。 ○小西委員 今まで通知法で同等の試験法を認めると書いてありますけれども、具体的に 一体どういうものを同等と言うかということがわからないという御質問を幾つか受けてお ります。こういうガイドラインをつくっていただいたことで非常に明確になったと思いま す。  細かいところですけれども、幾つか教えていただきたいことがあります。1つは、分析 値の算定方法ですけれども、真度と精度というのをガイドラインでお示しいただいており まして、例えば、80〜120%の真度であれば使っていいですよと。では、そのときに80% と120%であれば当然分析値も変わってくると思うのですが、基準値は数値が決まっている。 80%の回収率を出す分析機関で出したもの、120%の回収率を出す分析機関で出したもので は数値が変わってくるということで、後で回収率補正というものをするのか、それとも、 そのままの数値でいいのだと考えるのかということが1つ。  もう一つは、定量限界なんですが、資料4−2を見せていただきますと、ブランク試料 によって妨害ピークがないことを確認するということで、定量限界を求める場合にはブラ ンク試料に添加して求めるということではなくて、標準品をうって、その機械の定量限界 を求めると考えてよろしいかというところです。 ○松田委員 まず最初の方ですけれども、80%と120%の機関では違います。どうしても、 農薬であれ金属であれ、非常に低レベルになってくるとばらつきが出てくるので、5回やっ てもどうしても平均値は100近くにしかこなくて、遠いところにはいかないという程度で、 それが80〜120%まではしようがないのではないかというところがあります。もし、2か 所やられれば違う値となってしまいますけれども、それでもぴったり一致することは難し いということで、せめてこの範囲というところが書いてあるところです。 ○小西委員 回収率補正はしないということですか。 ○松田委員 それは規格基準の考え方ですので、農薬ではしないということにしておりま すけれども、例えば、CRMを使って回収率を補正するということを規格基準の中で決め られるのであれば、するということになると思います。それでも多分値は合わないと思う んですけれども。  それから、定量下限に関しましては、定量下限であっても定量下限の添加量で同じ真度・ 精度が満たされているということに加えて、ピークが極端に小さくないということを確認 するということで(1)(2)というのが定められています。これは選択性の問題です。真度・精 度については別途濃度で行うということになりますので、ブランク試料だけではないとい うことです。 ○廣橋部会長 よろしいでしょうか。ほかに御意見ございますか。 ○早川委員 ガイドラインの案で拝見したところで、まず、選択性のところ、試料につい てマトリックス中の他金属による定量の妨害がないことを確認する。妨害となる信号が認 められる場合は、対象金属の信号の10分の1未満であることを確認するということなんで すが、普通いろいろなものを具体的な食品を含めてやったときには、何らかの前処理をす るというのが通常だと思うんですが、まず、ガイドライン案の中で必要な前処理は施して やることということが全く書かれていない、それでいいかどうかということと、妨害とな る信号というのは例えば、ここでの10分の1未満であるというのは測定対象金属と同じ方 向に出る、いわゆる正の妨害を想定されているのだと思うんですが、当然ながら抑制、負 の妨害もあると。それはどういう表現になるのかが、ここではちょっとあいまいだなとい うことで、その2つの点について確認したいと思います。 ○松田委員 まず、前処理の件ですけれども、試験法全体に前処理は含まれていると考え ているんですね。寒天の場合は寒天をとって湿式灰化するあるいは乾式灰化するという方 法が定められているんですけれども、それも含めて分析法ということで考えておりますの で、選択制の場合の試料についてという場合は、試料を定められた前処理をした後に確認 すると考えております。  それから、負の妨害については、実は私は金属が不慣れで、米谷部長がおられたらお答 えになれると思うんですが、負の妨害についてはどのように考えるのかとか、例えば、10 分の1でいいのかということに関しては皆様の御意見をいただきたいと思います。 ○廣橋部会長 どなたか、その件についていかがですか。 ○香山委員 実際に重金属を測定しておりますと、勿論、灰化方法がほぼ同じでいても、 同じ原子吸光であっても、実際に機械によって随分違ったり、例えば灰化温度が違ったり とか、あるいはマトリックス・モディファイアは何を使ったか、何を添加したかによって 結構値が変わってしまうということが起こります。だから、どちらかというと直線性の相 関は非常にいいのだけれども、値がちょっとずれていると、1割ぐらい低めにこちらのラ ボでは出るということが必ず起こるんですよね。同じ方々に遵守したとしても。極めてプ ロとしてその仕事をやってきた方々が比較してもそんなことが起こっているということで すので、全国的な規格基準で何とか目標を達成させようとしても難しいと。ましてや方法 がICPと原子吸光という形になりますと、また灰化方法も違ってきて多様性が出てまい りますので、実際にこれをされる方は大変な思いをされるだろうなというのを今感じてお ります。その評価を見ていた私でも大変だったんです。  私も長らく重金属を分析しておりませんが、かなり精度が上がってきたことは確かです が、2種類の方法あるいはその他をすべて縛ったとしても非常に難しいという現実があり、 また、測定する範囲が、例えば米のカドミウムでしたら0.1〜1ppmという範囲で、うまく この間に収まってくれるだろうかというのを非常に心配しております。  それとともに、先ほどもちょっと申しましたけれども、これとは関係ないのですが、実 際にスクリーニングのための測定を行っているところでは、基準を違反をしていないとい うレベルを見つけるということが実際の作業なので、それはリスク管理としては一番大事 なことだと思うのですが、それが真値であるかということは意味が余りなくて、大部分が 間違いないという範囲のものを見つけ、危ないものを精度よく測るという2段階ぐらいに 現実的にはならざるを得ないのかなと。そうでないと、実際には農産物を新米として出荷 できないという状況も起こり得るかもしれないということを感じております。  以上です。 ○廣橋部会長 大分いろいろな御意見を伺いましたが、最後に意見を集約する上で、今回 御説明いただいた食品中の金属試験法評価ガイドラインを導入するかどうか、そして、金 属試験法について告示や通知で同等以上の試験法を認める場合は、このガイドラインを踏 まえた妥当性評価を行っていただくという方針にするかどうかということについて、皆さ んの御意見を確認したいと思いますが、いかがですか。それについてはよろしいですか。 (「異議なし」と声あり) ○廣橋部会長 では、まず、それを承認したということにして、今回は同等以上の試験法 を認める場合だけなのか、それとも告示や通知で示される試験法の実施に当たって、やは り妥当性評価を実施していただいた方がいいのかどうかということについてはいかがです か。 ○松田委員 寒天の方法でも前処理は2種類書いておりますし、また、ほかのカドミなど でも原子吸光、ICPと幾つかのものが並記されていて、使う方が自由に組み合わせるこ とができるんです。実際上、組合せは限られているかもしれませんが。また、いろいろな ところで共同試験をやった結果でも、使用しておられる装置によって違うということもあ るので、通知に書いてあるとおりにやる場合でも、一応評価をしていただいた方がよろし いと考えております。 ○廣橋部会長 御意見いかがですか。いろいろ難しいことがありましたけれども。 ○宮原委員 いろいろな方法で分析した場合、回収率が80%、あるいは120%とそれぞれ のラボが出した場合、その出た値がそれぞれ基準値を挟んだ場合、これは成分規格という ことですから、その場合どちらの数字を採用するのかということがいつも問題になるのか なと思いまして、この辺についてはどのように皆さんお考えになっていらっしゃるのか、 お尋ねしたいと思います。 ○松田委員 それは国内ではないんですけれども、コーデックスでも常に問題になること で、輸出国と輸入国の値がずれるということはよくあって、当然ながら輸入国の方では違 反であると言い、輸出国の方は違反ではなかったということになります。それについて CCMASというところでどうやって裁定するかというルールを今考えているところです。  1つは、2つのラボのステイタスで認証を受けているとか、バリデートされている試験 法を使っているけれども、片一方はバリデートされていないとだめですとか、そういうも のがまずありまして、それから、普通は交換してもう一遍やってみるとか、第三者の両方 がここならいいだろうと認めたところにやってもらうとか、そういう方法が今議論されて いるところです。国内でそのようになるのかどうかわかりませんけれども、少なくともバ リデートされている試験法を使っている方が、使っていないところよりは優先されるとい う方向にコーデックスではあるようです。 ○香山委員 カドミウムなどでは標準品の試料、例えば、国立環境研究所が出しておりま すカドミウムが含まれている米とかそういうものが数少ないですがありますので、それで ラウンドロビーのような形でインターラボラトリーのバリデーションができると思うので すが、それ以外の食品が全くないというのが非常に大変だなと思います。是非、そういう 形で行われることを期待しております。 ○廣橋部会長 それでは確認しますけれども、この金属試験法ガイドラインを導入すると。 それを使って、同等以上の試験法を認める場合は妥当性評価を行っていただく。それから、 告知や通知で示される試験法の実施に当たっても、この妥当性評価を実施していただいた 方がいいというように進めるということです。  寒天についても今回の議論の発端でありましたけれども、同等以上の性能を有する試験 法を認めるということでよろしいですね。 (「異議なし」と声あり) ○廣橋部会長 では、この議題はこれで終わりにいたしまして、議題5、それを受けての 話なんですけれども、寒天の規格基準の一部改正について事務局からお願いします。 ○西嶋補佐 前回、寒天の規格基準の一部改正については、この部会で御審議をいただい たところでございますが、前回の審議結果及び本日の審議結果を食品衛生分科会に御報告 することとなります。その報告する文書の案が資料5−1でございます。今までの経緯や その内容についてまとめたものでございますので、簡単に御説明させていただきます。  「1.経緯」でございますが、前回の部会で御説明いたしましたように、寒天中のホウ 酸1g/kg以下であるという基準値自体は問題ないんだけれども、滴定法については昭和38 年に定められて以降改正は行われていないということから、機器分析を導入するべきでは ないかという検討が行われ、導入するということで審議したということでございます。  「2.主な審議内容」は前回の内容でございますが、滴定法については従来どおり寒天 のホウ酸試験法として採用することは基本的には差し支えないと。それに加えて、新たに 開発したICP法を導入するということについても問題はないと。そういった方法につい ては通知で示すということでございます。  また、機器分析導入に当たり、同等以上の性能を有する試験法を認める際には、その妥 当性評価を行うためのガイドラインが必要であるということが前回審議されたところかと 思っております。  3で内容です。寒天のホウ酸試験法に機器分析を導入するに当たり、日々進歩する分析 技術に迅速に対応し、適宜試験法の修正を行うことを可能にするため、滴定法を従来告示 で示したところを削除して、ICP法とともに通知で示すという方法に改めることが適当 であると部会ではされたということでございます。  また、4でございますが、前回の部会でも申し上げましたが、規格基準そのものではな いんですけれども、それに関係するということで、試験法を改正するということについて 食品安全委員会に食品健康影響評価が必要かどうかをお伺いしたところでございます。そ れは平成20年3月18日付で食品安全委員会あてに意見を求めたところでございますが、 同3月27日付でいわゆる食品健康影響評価を行うことが明らかに必要でないときに該当す る旨、食品安全委員会から回答を得たところでございます。それが資料5−2でございま す。  それを受けまして、我が方でも資料5−3でございますが、4月25日から1か月間パブ リックコメントあるいはWTO通報等について検討させていただき、パブコメについては 寄せられた意見は特段ない。WTO通報については対象外の改正内容ということで実施し ていないところでございます。  ここまで資料の説明でございますが、先ほどの議題4のガイドラインの審議の結果で、 基本的にガイドラインを寒天についても適用するということでしたので、それを今回の部 会の審議結果として資料5−1の「3.寒天の規格基準の一部改正」というところに少し 加筆させていただければと思います。文例といたしましては、例えば、ICP法及びこれ と同等以上の性能を有する試験法で試験を実施する場合には、別途示す妥当性評価ガイド ラインを適用する必要があるということで、そういった審議結果であったという旨を加筆 する形で食品衛生分科会に御報告させていただければと思います。 ○廣橋部会長 ただいまの説明はいかがでしょうか。最後の部分で今回のガイドライン評 価を実施することで同等以上の性能を有する試験法も可とする文章が入りました。それも 含めてよろしいでしょうか。 ○香山委員 先ほど申しましたことですが、モニタリング及びスクリーニング目的に使う ものではないということも加筆願えませんでしょうか。 ○西嶋補佐 はい。 ○廣橋部会長 ほかに御意見がなければ、では、これで食品衛生分科会へ報告いたします。  今後の予定を事務局から。 ○西嶋補佐 寒天の規格基準一部改正の審議結果につきましては、今の香山委員の御意見 も加えた上で食品衛生分科会に報告して、食品衛生分科会で審議をいただこうと思ってお ります。食品衛生分科会で了承されれば、告示の一部改正の事務手続に入ることといたし ます。この金属試験法の妥当性評価ガイドラインにつきましては、農薬と同様に通知でお 示ししたいと思っているところでございます。 ○廣橋部会長 これで予定された議題は全部終了いたしましたが、何か審議事項はありま すか。あと残されたものは報告事項です。よろしいでしょうか。  それでは、報告事項に移ります。 ○西嶋補佐 報告事項は2つございます。1つ目が資料6でございます。これまで2回に わたりまして本部会でも御審議いただきました容器包装詰低酸性食品のボツリヌス食中毒 対策に係るものでございます。  前回の部会の結果を受けまして、ボツリヌス食中毒に対する通知を発出したところでご ざいますので、その通知が資料6でございます。これは各委員からのその後の御指摘等も 踏まえまして、6月17日に通知をさせていただいております。  基本的に各委員に御意見をいただいた後に、体裁等については若干修正をさせていただ いておりますが、内容については前回の部会で御審議をいただいたものと大きな変更はな いということでございます。  資料6を最初から見ていただけば、都道府県といった自治体であったり、業界団体や研 究所等にも発出させていただいておりますが、前回の部会でもございましたように、通知 を発出しっ放しではなくて、きちんとこの部会でフォローアップすべきだという御意見も ございましたので、この通知を受けまして通知発出後1年程度をめどにいたしまして、各 業界からの意見を集めるなどして本部会でもフォローアップしていただければと思ってお ります。  報告の2つ目でございますが、資料7でございます。資料7−1と資料7−2というこ とで2つ資料を御用意しておりますが、まず、資料7−1でございます。加工食品の鉛汚 染実態調査結果でございます。昨今の食品中の鉛についていろいろございましたので、厚 労省の方で国産品・輸入品をそれぞれ調査させていただいておりますので、その報告でご ざいます。  加工品の調査ですので、必ずしも同じ品目を試験しているわけではございませんで、例 えばこの表を見ていただいて、一番最初のページだと「冷凍食品さといも」とございます が、その中に例えば九州のものであったり、中国産のものだったりありますけれども、加 工品ですので単純にこの結果で国産品と輸入品の検出数値を比較するものでは必ずしもな いんですが、サトイモ、エダマメ等々、いわゆる鉛が一般的に含まれているのではないか と言われている加工食品について主に国産品と輸入品、特に中国産も含めて調査したのが この結果でございます。  資料7−2は食品安全委員会の資料でございますが、国際的にリスク評価、鉛摂取量削 減が提言されているという背景、あるいは中国製の土鍋から鉛が検出されているというよ うな背景等があり、また、厚労省からはいろいろ鉛の個別品目について食品安全委員会に お伺いを立てるというような動きもあるということから、鉛について食品安全委員会が網 羅的に自ら評価をしようということで決めたのが、この1枚紙でございます。  鉛は環境中に広く分布する物質で、日常生活において食品全体から幅広く暴露されると。 そこで、個別の規格基準の改正を行うに当たり、食品全体を対象として鉛のリスク評価を 自ら評価として行うこととしたということで、食品安全委員会は平成20年度、鉛について 採用するということを適用しております。  厚労省といたしましては、そういった食品安全委員会の評価が出て以降、必要な対策・ 対応について本部会等でも御検討いただければと考えているところでございます。  報告については以上でございます。 ○廣橋部会長 ただいまの報告に質問があれば。いかがでしょうか。皆さんよろしいでしょ うか。  では、特に御意見がないようですので、今の方針のとおり事務局は進めていただいて結 構だと思います。  それでは、議題も報告事項もすべて終了いたしましたので、これで本日の食品規格部会 を終了したいと思います。御協力どうもありがとうございました。 照会先: 厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課  規格基準係TEL:03-5253-1111(内線4280)