08/07/01 平成20年7月1日薬事・食品衛生審議会日本薬局方部会議事録


薬事・食品衛生審議会 日本薬局方部会 議事録


1.日時及び場所
    平成20年7月1日(火) 14:00~
    航空会館「201会議室」

2.出席委員(13名)五十音順
   大 石 了 三、 奥 田 晴 宏、 北 田 光 一、 木 津 純 子、
   楠   文 代、 合 田 幸 広、○棚 元 憲 一、 中 島 恵 美、
   橋 田   充、 渡 邉 治 雄
   (注) ◎部会長  ○部会長代理
  他参考人2名
  欠席委員(4名)五十音順
   赤 堀 文 昭、 富 田 基 郎、 長谷川 紘 二、◎早 川 堯 夫

3.行政機関出席者
    黒 川 達 夫(大臣官房審議官)、
      中 垣 俊 郎(審査管理課長)、
    豊 島    聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、
      川 原   章(独立行政法人医薬品医療機器総合安全管理監)、
    新 見 裕 一(独立行政法人医薬品医療機器総合機構品質管理部長)  他

4.備考
    本部会は、公開で開催された。



○審査管理課長 定刻でございますので、ただ今から薬事・食品衛生審議会日本薬局方
部会を開催させていただきます。委員の先生方におかれましては、御多忙の中御出席い
ただきましてありがとうございます。本日は、14名の当部会委員のうち10名の委員の
御出席をいただいており、定足数に達しておりますことを御報告申し上げます。なお、
赤堀委員、富田委員、長谷川委員、早川委員からは欠席という御連絡をいただいており
ます。また、本日の会合は日本薬局方の改正に関わるものですので、公開にて開催させ
ていただくこととしております。したがいまして、傍聴の方々に御参加いただいている
ところです。
 本日の議題は、お手元にございますとおり、ヘパリンナトリウムの日本薬局方の一部
改正ほかです。また、部会長の早川委員が本日御欠席ですので、部会長代理の棚元委員
に本日の議事進行をお願いすることをあらかじめ申し上げておきたいと思います。
 さらに、ヘパリンナトリウムの審議につきまして、国立医薬品食品衛生研究所生物薬
品部の山口部長、及び第一室の川崎室長に御参加いただいておりますことを御報告申し
上げます。以上です。それでは棚元先生、議事進行をよろしくお願い申し上げます。
○棚元部会長代理 先ほど御説明がございましたように、早川部会長が御欠席ですので、
代わりを務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。本日は、委員の
先生方におかれましては、大変お忙しい中御出席いただきまして、誠にありがとうござ
います。
 では、早速議事に入らせていただきます。本日は、審議議題として2題ございます。
その審議に先立ち、まず事務局の方から本日の配付資料の確認をお願いします。
○事務局 それでは、配付資料の確認をさせていただきます。まず、本日お手元に配付
させていただいているものとして議事次第、座席表、委員名簿となっております。次に
事前に配付させていただきました資料として、今回は資料の取りまとめに大変手間取り
まして、取り急ぎファクシミリで委員の皆さまにはお配りさせていただいたところです
けれども、同日、別途郵送でお配りさせていただきました資料を本日の資料とさせてい
ただきたいと思います。
 まず、資料No.1-1として「日本薬局方の一部改正(ヘパリンナトリウム)について」、
資料No.1-2として「分析方法の検討及びその結果」、参考資料No.1-1として「日本薬局方
(ヘパリンナトリウム)」、参考資料No.1-2として「日本薬局方外医薬品規格2002(ヘパリ
ンカルシウム)」、参考資料No.2として「USP(ヘパリンナトリウム及びヘパリンカル
シウム)」、最後に資料No.2として「第十五改正日本薬局方第二追補以降の新規収載候補
品目(案)等について」、以上6種類の資料を配付させていただきました。また、委員の
先生方におかれましては、本日追加配付資料として「資料No.1-1改」、及び「資料No.1-2
改」を合わせてお配りさせていただいておりますので、差し替えをお願いしたいと思い
ます。以上です。
○棚元部会長代理 先生方、資料はおそろいでしょうか。不足等がございましたらお申
し出いただきたいと思います。よろしいでしょうか。それでは資料もお揃いのようです
ので、審議議題に入りたいと思います。
 審議事項であります日本薬局方の一部改正(ヘパリンナトリウム)に係る案件につきま
して、事務局から資料を元に説明をお願いいたします。
○事務局 本日御審議いただきますのは、資料No.1-1に示しましたとおり、日本薬局方
の医薬品各条に収載されております、ヘパリンナトリウムの純度試験に過硫酸化コンド
ロイチン硫酸に係る規定を追加するというものです。改正案の背景、及び経緯について
の御説明をさせていただきます。
 昨年12月以降、米国においてヘパリンナトリウム製剤投与後にアレルギー反応等の発
生の増加がみられました。ヘパリンナトリウム製剤等は救命的な目的に使用されるなど
医療上重要な医薬品でありますが、今回のように世界的な副作用事例の発生があったこ
とによりまして、今年の4月17日~18日にかけてFDA主催のヘパリンに関する国際
会合が開催されております。
 その資料によりますと、本年1月1日~3月31日までに771件の副作用報告(うち97
%は米国国内からの報告)がございまして、そのうち346件が重篤、81名が死亡とされ
ております。その後FDAの分析により、ヘパリンナトリウム製剤に使用された原薬か
らは不純物として過硫酸化コンドロイチン硫酸が検出されております。
 日本国内においては同種の副作用報告はなく、また、これまでに出荷された製剤の原薬
からは、当該不純物が検出された事例は報告されておりませんが、製造販売業者に対し
て本年3月、ヘパリンナトリウム製剤等の品質管理の徹底を図るように指示し、厚生労
働省におきましては引き続きヘパリンナトリウム製剤等に関する国内外の品質、安全性
に関する情報の収集に努め、必要に応じ迅速かつ適切に対応を取ることとしているとこ
ろです。USPではヘパリンナトリウムについて本年6月18日にモノグラフを改正し、
過硫酸化コンドロイチン硫酸の規制を設けました。また、EPにおきましても、同様に
改正に向けて準備中であると聞いております。我が国でも、国立医薬品食品衛生研究所
において過硫酸化コンドロイチン硫酸に関する局方改正について調査、研究を進めてい
ただいたところ、今般その結果がまとまりましたので、ヘパリンナトリウムの局方改正
を行いたく審議をお願いする次第です。
 なお調査、研究の結果につきましては、参考人の川崎先生から御説明していただきま
す。今回の規定の設定に当たり、デルマタン硫酸についても共同検定を行うなど調査、
研究いただいているところですが、現段階では規格設定には更なる調査が必要であると
考えており、USP、EPでも規格は設定されていない旨、念のために申し上げておき
ます。また、ヘパリンカルシウムにつきましては局方に収載されておりませんが、調査
の上ヘパリンナトリウムに関する局方の改正と同様の措置を講じたいと考えておりま
す。以上改正案の背景、及び経緯について御説明させていただきました。
○棚元部会長代理 どうもありがとうございます。ただ今概要説明がございましたが、
冒頭審査管理課長の方からもお話がありましたように、本日は参考人として改正案に携
わっていただきました、国立医薬品食品衛生研究所の生物薬品部、第一室長の川崎先生
の方から、資料No.1-1の日本薬局方ヘパリンナトリウム純度試験法改正案、及び資料No.
1-2の分析方法の検討及びその結果についての御説明をお願いいたします。よろしくお
願いします。
○川崎参考人 では、資料No.1-1改を御覧ください。今回の改正案は、ヘパリンナトリ
ウム純度試験に、プロトンNMRによる過硫酸化コンドロイチン硫酸の分析を追加する
ものとなっております。では、改正案を読み上げます。
 「本品20mgを核磁気共鳴スペクトル測定用 3-トリメチルシリルプロピオン酸ナトリ
ウム-d4(以後TSPと省略します)の核磁気共鳴スペクトル測定用重水溶液0.60mLに
溶かし、試料溶液とする。この液につきTSPを内部基準物質として核磁気共鳴スペク
トル測定法(一般試験法NMR2.21)プロトン共鳴周波数400MHz以上の装置(1)(これは
FT-NMRを示しております)を用いる方法により、プロトンNMRを測定するとき、2.13
~2.17ppmに過硫酸化コンドロイチン硫酸のN-アセチル基に由来するシグナルを認め
ない」です。試験条件として温度、スピニング、データポイント数、スペクトル範囲、
パルス角、繰り返しパルス待ち時間、ダミースキャン、積算回数、ウインドウ関数を設
定しております。ここで訂正がございます。スペクトル範囲に関して、資料では「水の
シグナルを中心に」と記載されていますけれども、これは水ではなくDHOの間違いで
すのでて訂正させていただきたいと思います。訂正後は「DHOのシグナルを中心に±
6.0ppm」ということになります。
 システム適合性は次のとおりです。「本品20mgをTSPの重水溶液0.60mLに溶かし、
システム適合性試験用溶液とする。システム適合性試験用溶液に過硫酸化コンドロイチ
ン硫酸標準品0.1mgを加えて溶かした液につき、上記の条件で操作するとき、2.02~
2.06ppmにヘパリンのN-アセチル基に由来するシグナル、及び2.13~2.17ppmに過硫酸
化コンドロイチン硫酸のN-アセチル基に由来するシグナルを認める」となっておりま
す。添加する過硫酸化コンドロイチン硫酸の量につきましては、事前配付資料では0.4mg
になっておりますけれども、本日の配付資料No.1-1改では0.1mgに変更されています。
これは、多方面からいただきましたご意見を参考に、システム適合性において、システ
ムの特異性だけでなく、検出限界も確認することといたしましたことから、添加量を検
出限界に相当する量に変更したものです。また、標準品として過硫酸化コンドロイチン
硫酸標準品を用いることとなっております。
 続きまして、資料No.1-2改を御覧ください。この資料は、改正案作成の根拠となる分
析結果をまとめたものです。国立衛研では、FDAが3月にホームページに公開した分
析法を基に、プロトンNMRとキャピラリー電気泳動法を用いた限度試験案を作成し、
検証実験を行いました。
 では、1ページ目の(1)、プロトンNMRによる過硫酸化コンドロイチン硫酸限度試
験の実行可能性評価の結果から説明したいと思います。なお資料では、過硫酸化コンド
ロイチン硫酸(oversulfated chondroitin sulfate)はOSCSと省略されていますので
御了承ください。また、ここで用いましたOSCSは、衛研にてcontaminated heparin
から精製したものです。
 まず、1)特異性について説明します。図1を御覧ください。これは、ヘパリンに0.17
~10.0%になるようにOSCSを添加し、500MHzの装置を用いてプロトンNMRを測定
したときの2.0ppm周辺の拡大図を示したものです。まず、2.05ppmに、ヘパリンのN-
アセチル基に由来するシグナルが検出されています。また、その左横2.15ppmにOSC
Sのシグナルが検出されております。二つはよく分離していることから、この分析法の
特異性は高いと判断いたしました。
 次に2)の検出限界について説明します。0.35%のOSCSを添加したときのスペクト
ルを見ていただきたいのですが、0.35%のOSCSを添加したところまでOSCSのシ
グナルが観察できることがわかります。この結果から、この試験法の検出限界を0.35%
と判断しました。なお、このときのSN比は約5でした。その他の分析能パラメータは、
このページ下の表1にまとめているとおりです。また、直線性につきましては図2に示
すとおりで、0.4~10%の間で直線性が確認できました。
 では、次のページを御覧ください。3)は共同検定結果をまとめた図3を御覧ください。
この図は6機関7試験室による、多機関共同検定の結果を示しています。ここで使用し
た装置は、日本電子、バリアン、ブルカー社の400、500、600MHzの装置です。A~Gは
試験室を示しております。全ての試験室で特異性を確認することができました。また、
すべての試験室で0.5%以上のOSCSのシグナルを確認することができましたので、
共同検定における検出限界を0.5%としました。
 以上の結果から、プロトンNMRは、限度試験として採用可能と判断いたまして、次
に4)に示すように規格値について検討しました。まず、過硫酸化コンドロイチン硫酸は、
米国で発生したヘパリンナトリウムの有害事象の原因物質そのものでありますので、規
格は、OSCSに由来するシグナルを認めないこととしました。これは共同検定で得ら
れた検出限界0.5%以下であるということを意味しております。また、分析システムが
0.5%のOSCSを検出ができることを確認するために、システム適合性におきまして、
ヘパリンに過硫酸化コンドロイチン硫酸標準品0.1mg(これは0.5%に相当します)を添
加して測定したときに、2.13~2.17ppmにシグナルを認めることを確認するものになっ
ております。なお、300MHz以下の装置につきましては評価できておりませんので、今回
は採用しておりません。
 では、次のページを御覧ください。次のページは(2)キャピラリー電気泳動法による
過硫酸化コンドロイチン硫酸限度試験の実行可能性評価結果をまとめたものです。まず、
1)の特異性を御覧ください。図4は、ヘパリンに10%のOSCSを添加して泳動した
ときに得られた分離のパターンを示しています。図のように、ベースライン分離を得る
ことができませんでした。
 次の2)は検出限界について示したものです。分析能パラメータを表2にまとめてあり
ます。検出限界は一番下に示しておりますように2%でした。
 (3)の結論にプロトンNMRとキャピラリー電気泳動法の評価結果をまとめてありま
す。表3に示すように、プロトンNMRの方が特異性及び感度共に優れていることが分
かりました。そこで日本薬局方の純度試験として、プロトンNMRを採用することが適
当であろうと判断いたしました。
 では、次のページを御覧ください。(4)は米国薬局方と日本薬局方の違いについてま
とめたものです。1)では、用いるMNR装置の周波数を比較しています。米国薬局方で
は500MHzを用いることになっていますが、日本薬局方では400MHzとなっております。
これは国内7試験室による共同検定の結果、400MHzであっても500MHzと同様の特異性
が確認できるということ、また、いずれの装置でも0.5%の過硫酸化コンドロイチン硫
酸を検出できたということから、判断したものです。また、400MHzの装置を所有してい
る国内メーカーが多いということからも、日本薬局方では400MHz以上を使用することと
しました。なお、欧州薬局方も400MHz以上のNMRの使用を認めております。
 2)は、対象シグナルの化学シフト範囲の比較です。米国薬局方の2.13~2.19ppmに対
して、日本薬局方では2.13~2.17ppmとなっております。これも共同検定の結果に基づ
き、日本薬局方では2.13~2.17が適当と判断したものです。なお、3月6日に公表され
ましたFDAのヘパリンナトリウム中の不純物検出法におきましても、日本薬局方と同
じ2.13~2.17ppmの値が用いられております。
 3)は、キャピラリー電気泳動法の採用に関する比較です。米国薬局方では、ブタ由来
ヘパリンナトリウムにつきましては、プロトンNMRに加えて、キャピラリー電気泳動
法も実施することになっています。これに対して、日本薬局方ではNMRの方が特異性
及び感度共に優れていることから、NMRのみの採用となっております。なお、欧州薬
局方におきましてはプロトンNMR、あるいはキャピラリー電気泳動のいずれかの試験
を実施することとなっています。
 最後の4)は確認試験と純度試験の違いについてまとめたものです。米国薬局方は、ヘ
パリンナトリウムの確認試験においてプロトンNMRを用い実施し、過硫酸化コンドロ
イチン硫酸のシグナルが検出されないことを確認するものとなっています。しかし、日
本薬局方の確認試験は、目的物質を確認するものであって、不純物の有無を確認するも
のではないことから、プロトンMNRを確認試験ではなく純度試験として採用しており
ます。過硫酸化コンドロイチン硫酸につきましては、以上でございます。
 デルマタン硫酸の限度試験につきましても検討いたしましたが、今回の改正案には含
まれていませんので、資料の提出のみとし、説明は省略させていただきます。以上です。
○棚元部会長代理 どうもありがとうございました。ただ今、改正案につきまして、詳
細な御説明がございました。それでは委員の先生方からの御意見、コメントをお願いい
たしたいと思います。
○合田委員 大変よくできた試験法だと思いますが、一番最初の純度試験の最初の本文
の所で、測定方法の規定で核磁気共鳴スペクトル測定法2.21を規定されているのです
が、今の2.21のスペクトル測定法そのものの書き方がちょっと甘いのです。今のNMR
の局方上の測定ですと、機械の至適条件にもっていくことについては、余り書いてない
ので、そこのところを、これの一般試験法の中の部分を、もう少し充実をさせておいた
方がよろしいのではないかと思います。
 どういうことかと言いますと、NMRは機械の性能を本当にぎりぎりまで上げて、正
しく取ってからやると、こういうのがきれいに出るのですが、そのことについてはこの
文章には余り書いていないのです。まず、シムをきちんと合わせるということと、それ
からそのサンプルで分解能を見るというか、溶媒できちんと分解能を見て、それからき
ちんと機械のチューニングをするとかというのが一般的に常識的なことですが、実はそ
ういうことを普通のNMRの測定者ではやらない人が非常に多いのです。現実的に多分
そこまで常にやるというのは、ほんの一部の測定者だけなのです。こういう公定法でき
ちんとやろうと思うと、そういう部分をどこかで規制をしておく必要があるのだろうと
思います。
 今のシムの話は、実はUSPの方のNMRの中には、一応シムを合わせるという記載
が書かれています。これには操作法の所の一番最初の所に、「装置の感度及び分解能を
エチルベンゼン,1,2-ジクロロべンゼン又はアセトアルデヒドのNMR測定用重水素
化溶媒溶液などを用いて至適条件に調整した後、通例、次の方法でスペクトルを測定す
る」と書いて、至適条件というので、ここで全部読み込めるのかもしれないですが、至
適条件ということについて、とても甘いのです。ですから、今言ったようなシムの問題
とか、チューニングをきちんと取るとか、しっかり測定溶媒でパルスの長さを合わせる
ということが書き込まれるようにした方がいいと思います。至適条件という言葉を大き
く取れば大丈夫だとは思いますが、こういう試験に使われることを多分意識しないで書
かれているのだと思います。それ以外の所は良く出来ていると思います。
○北田委員 今の御質問に関係しているのですが、資料No.1-1改の「システム適合性」
という所で、それをカバーできるということはないのですか。
○合田委員 これは、液クロみたいなもので、システムの適合性をやれば、そこでかな
りカバーできます。しかし、シムが本当は合ってないような状態だと、何のチャートを
見ているか、実は全然分からないのです。ですから、何のチャートを見ているか分から
ないようなもので、そのものを取ってしまうと、何を規制するかもっと分からなくなり
ます。
 一方で、多分先生が言われるように「システム適合性」の、その本文で全部カバーで
きるのだということも、解釈できなくはないかもしれません。ただ、やはり世の中一般
にNMRを取られる方が、今、私が言ったようなことについて、意識をされないで取ら
れる方が非常に多いのです。実は本当はNMRの機械というのは、そこまでもっていか
ないと、正しいデータは出ないデリケートな機械なのです。ですから、それをどこかで
明確にしておいた方がいいかと思っています。
○奥田委員 合田委員の御指摘は、実際に測定をするときの、適切に測定するためのよ
り良い御指摘だと思うのですが、これは非常に短時間でまとめていただいて、このもの
自身については、私から特段のコメントはないのです。今、川崎参考人のお話を聞いて
いると、過硫酸化コンドロイチン硫酸標準品は、要するに不純物の入ったヘパリンを恐
らく米国から入手して、それから精製されたということだと思うのですが、実際にこの
ものを今後運用していこうと思うと、この標準品が安定して供給されるということは必
至になると思うのです。そこは今後、どちらかの責任の方がそれについて担当があり、
安定供給が可能だと思います。
 もう一つは、この標準品自身をどういうふうに考えられるのか教えていただきたいと
思います。
○山口参考人 アメリカのFDAも、ここの参考になっている論文に書かれていますよ
うに、OSCSを抽出すると同時に、これそのものが人工合成されたもので、それと同
じ方法で合成されて、中に入っているOSCSと合成されたOSCSは同じものである
ということを一応確認しています。今後、短期的にはOSCSは、今の抽出したもので
最初は供給しなければいけないかもしれませんが、すぐに合成の方に切り替えたいと考
えています。もちろんその同等性というか、同じものであるということを確認した上で
ということになりますけれども。
○棚元部会長代理 話が逸れましたので、先ほどの合田委員の方に戻りたいと思います。
合田委員の御提案につきまして、どのように対処するかということですが、これは共同
検定ということをおやりになったわけですが、その時点での感触としてはいかがでしょ
うか。
○川崎参考人 資料の図3に示しますように(この実験は定量性を確認するために行っ
たものではないのですが)、どの機関のデータもほぼ直線にのっていることから、良質な
シグナルを取られているのだと思います。また、この試験法に関する質問や、これで対
応できないというような意見もございませんでした。
○棚元部会長代理 一つは今、合田委員の方からは一般試験法の方にもう少しそういっ
た条件を加えてはどうかという御提案なのですが。
○合田委員 シグナルの形が1本のもの、その化合物全体を見ているのではなくて、た
またまその一つのシグナルを見ていますね。やる気になると、例えばシムのZ3軸を触
るとシグナルがどう変わるかといういことを知っている人だといくらでも触れるので
す。適当に取っている人は、余りその辺のことを知らないので、結構クリティカルポイ
ントかと思ったりするのですが、少なくともそういうことに、どこかで触れていた方が
よいですね。この報告を見る限り今の本文にはそれに全く触れていないのです。一方で
普通にシムがきちんと合わせてある機械で行えば、良心的な人がやればきちんとこの分
析は容易にできると思います。その考え方に従えば、今の書いてあるとおりで全く問題
はないと思います。
○棚元部会長代理 今の意見というのは、今回のものに限ってより一般試験法をもっと
具体的に書かないといけないという御提案なわけですね。
○合田委員 こういう用途に使うというより、このNMRの一般試験法がどのタイミン
グでどのようにできたかというのは、私は実は余り知らないのですが、単純な確認試験
みたいなものに使うような状態であれば、余り厳しく言わなくていいのでしょうが、こ
ういう限度試験法で何かに使おうとすると、やはり機械の性能をしっかり上げていると
いうことについて、どこかで触れておく必要があるかと思います。触れているのは、こ
の「至適条件に調整した後」というこの一言だけです。しかし、この至適条件というの
は、同じサンプルで行っているわけではないので、実は最後は結局自分が採るサンプル
で至適条件にもっていくのが当たり前なのです。ですから、その辺も少し気になります。
○事務局 ただ今、合田先生より御指摘いただきましたシムを合わせるとか、溶媒の分
解能、あるいは正しくチューニングするなどの御指摘なのですが、各条ではございませ
んので、一般試験法の問題であると認識しておりますので、今後は一般試験法の委員会
の方で検討させていただきます。
○合田委員 今すぐにこれを決めなくて、大きな問題が起きるとは思わないのですが、
そういうことを一般試験法の方にフィードバックして決めておいた方がこの後、トラブ
ルが少ないかと思います。
○棚元部会長代理 一般試験法の対応は、今後の課題ということで、それはよろしいと
思うのですが、今回のものに関しては、特にそのことに特別何か別な形でも触れる必要
はないですか。このままでよろしいですか。
○合田委員 それは触れると大変なのではないですか。ほかの所のNMRの所も同じよ
うなことで触れるということになってしまいますよね。
○棚元部会長代理 各条の中に、その何かを入れていくというようなこと、その対応は
必要ないですか。
○合田委員 ここは微妙な所ですよ。それはまず、一番最初の第一文の所に、まず機械
を最適な条件に設定するという、この本文に入れれば、このことについてはそれはそれ
で済むかもしれませんね。今の担保はこの一般試験法の文章中での担保ですよ。ですか
ら、各条の中で、どのように担保するかというのは、あとはテクニカルの問題だから、
どちらがいいかというのは分からないですね。しかし、一般試験法でやった方がこうい
うのはいいとは思います。USPでは少なくともそういう記載が、よく読むと確かにあ
ります。
○棚元部会長代理 一般試験法の改正は一般試験法の課題としまして、では、今後の課
題ということで、取り組んでいただくということでお願いいたします。
○合田委員 もう一つですが、あと重水溶媒について、重水溶媒が、試薬試液の中での
規格は、純度と言うのでしょうか、重水素化率の規格が今のものについてはないのです
よ。ですから、こういうことをやるならば、今回のバリデーションを取られた、一番重
水溶解率の低いもののことについて、規格化をしておいた方がいいかもしれないです。
今はNMR測定は、「重水を用いる」としか書いてないですね。でも、実はものすごく
バラエティがありまして、98%グレードから始まって、99.99まではあるわけです。ど
の辺でおやりになったかとかということで、実はデータポイントの一番上の巨大な所に、
全部そこを抜かれてしまいますから、ポイント数を取られてしまうので、データの精度
ががらっと変わるのです。ですから、バリデーションというのは、最後にそのデータポ
イント数をどのくらい大きなピークに取られたかどうかによって変わるのです。それは
その規格に入れておいた方が安全だと思うのです。わざわざセンターをDHOの所に決
めるということまで精度を上げようとしているのだから、そういう規格を入れておいた
方がいいです。
○棚元部会長代理 それは試薬試液のところにということですね。
○合田委員 試薬試液に、今、言葉で「核磁気共鳴スペクトル測定用重水溶液」しか書
いていないのです。この重水溶液って、何か規格があるのかと思って、実は今、試薬試
液の所を見てみたら、どれ以上を使いなさいというような具体的な規格は書いてないの
です。もしかしたら、そちらの試薬試液を規格で決めてしまうか、それともこれのもの
はもう少し別な規格にするかどちらかですね。
○棚元部会長代理 各条に入れるかどちらかですね。では、そこの対応はよろしくお願
いいたします。事務局の方はよろしいでしょうか。
○審査管理課長 実際、試験をやっていただいた先生方の御意見を聞いてみたいと思い
ますが、いかがでございましょうか。
○棚元部会長代理 川崎参考人どうでしょうか。
○川崎参考人 重水の規格につきましては、各機関にお任せしましたので、これから伺
わないと何パーセントのものを使用されたかは分かりません。合田委員からお話はなか
ったのですが、TSPにつきましては、衛研から配ったものなので、規格はわかります。
○合田委員 多分TSPはバリエーションは余りないです。重水はピンからキリまでの
バリエーションがありますから、入れておいた方がいいかもしれません。
○審査管理課長 今のお話からみると、私はよく分からないのですが、重水で、非常に
広いバリエーションがあると。仮に今回使ったのがここだとすると、ここに限定する理
由もまたなくて。
○合田委員 それ以上と。
○審査管理課長 ですから、一番下というのも、たまたまやったかやらないかくらいの
規格、根拠しかなくて、もし、そこを局方として定めるのであれば、その下では駄目な
のだというような、逆のデータもまた必要になるのかなということから考えると、現段
階では、局方そのものに載せないで、例えば通知で重水素については何%のものまで試
験をしたということを併せて情報として流すという対応なのかなと思います。今、この
分野について十分なデータがあれば、また話はできるのだと思いますが、今あるデータ
からちょっとお伺いしただけでは、そういうことかなと思いますが、いかがでございま
しょうか。
○合田委員 中垣審査管理課長の考えが一番良いと思います。現実問題として、下のデ
ータを取るというのは逆に無駄なことです。重水そのものは、そんなに高いものではな
いですが、なるべくならこういうのは、高規格のものを使った方が本当はいいですね。
データはより正確になります。データポイントがほかの所に取られない。ですから絶対
的な感度は良い重水を使った方が上がりますよね。
○審査管理課長 それでよろしければ、この規格は、局方を改正するときに、いずれに
しても通知を出しますので、その中で今の重水素のデータを山口先生、川崎先生の方か
らいただいて、それを載せるという形で対応したいと思います。よろしくお願い申し上
げます。
○棚元部会長代理 それでよろしいでしょうか。よろしければ承認可とさせていただき
ます。ほかに何か御意見ございますか。
○大石委員 基礎的なところで申し訳ないのですが、特異性のこのチャートは純品での
チャートだと思うのですが、実際の製剤を同じように試験をした場合も、このようにき
れいに分離できると考えてよろしいのですか。通常のクロマトグラフィーとかをやる場
合には、製品でするといろいろな物が入っているから、純品のようにはいかないですよ
ね。これは詳しくないのですが、この場合にはそういうことは問題ないというふうに理
解してよろしいのですか。同じような特異性をもって分析できるということでしょうか。
○川崎参考人 今回7試験室による検定では、各社が持っておられる原薬をご使用いた
だきました。原薬に関しては今回と同じようなスペクトルが得られると思っております
が、製剤に関しましては、添加物によって、シグナルの位置は変わる可能性があると思
います。
○大石委員 ただ、分析感度に問題はないということですね。
○川崎参考人 原薬に関しては、共同検定の結果、大きな差はございませんでしたし、
今まで各国の報告などを聞いておりましても、ヘパリンナトリウムに関しては、原薬で
特に大きく結果が変動したというような話はなかったと思います。
○棚元部会長代理 ほかに何かございますか。
○合田委員 今、中島先生から質問を受けて、実はそうかと思って気になった所がある
のです。資料No.1-2改の2ページに生データが出ていますよね。これは本当のデータだ
と思うのですが、直線性がない所が幾つかあって、特にE社などはある意味ではひどい
ですよね。これはSNの中に多分隠れてしまったのですね。ノイズの中に隠れていれば
こういうことだとは思うのですが、ノイズレベルをどこまで見ているかということの問
題なのです。要するに本当だったら、OSCSの濃度に関して、ある程度の直線性が本
当は出るはずなのですよ。ただ、感度的には、一番悪いE社のデータに基づいて、ここ
でシステム適合性が出されているということであろうとは思いますが。
○川崎参考人 そうです。0.5%は共同検定の結果に基づいています。
○合田委員 本当は、直線性がない所は、多分腕が良くないのです。ですから、こうい
うのは、コメントか何かを出しておいた方がいいかもしれません。どうしてこうなるの
だろうと思いました。
○川崎参考人 今回の試験は定量試験ではなく限度試験ですので、直線性ではなく検出
限界を確認すればよろしいのではないかと思います。
○合田委員 目的性としてはそのとおりだと思います。このデータを見ていて、特に今
回決定することに関して、異論があるわけではないのですが、こういうデータが出てき
た所について、何かコメントを返しておいた方がいいかもしれません。この物について
は、ここの会社がこれから実際に実験されるわけですよね。NMRは、それほど定量性
がないわけではなくて、Q-NMRという方法で定量試験に使うことも可能なぐらいですか
ら、実際には多分直線になるような形にはなると思います。こういうデータが出てきて
いるというのは、ベースラインの取り方が下手か、機械の調整が下手か、多分そういう
ことだと思います。
○棚元部会長代理 恐らくこれはQ-NMRを意識して、非常に厳密に条件を整えてやった
データではないのですね。
○合田委員 ないです。ですから、この物の決定に特に関係するわけではないですが、
データとして少し疑問です。中島先生が言われたとおりだと思います。
○棚元部会長代理 今回の目的がそうであったということで。
○合田委員 そうは思います。
○棚元部会長代理 ほかに何かございますでしょうか。特にございませんようでしたら、
この案件は御承認いただいたということにいたします。どうもありがとうございました。
 日本薬局方の一部改正につきましては御了解いただいたものとしまして、今後の手続
等について、事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 今回の日本薬局方の一部改正につきましては、告示を今月中に行いたいと考
えております。迅速に一部改正を行うということでございます。追補改正とは別枠の部
分改正として、日本薬局方の改正を行うこととなります。また、薬事分科会に御報告さ
せていただきます。以上でございます。
○棚元部会長代理 それでは、審議事項2の議題であります、第十五改正日本薬局方第
二追補以降の新規収載候補品目等に関わる案件について、事務局から資料を基に御説明
をお願いいたします。
○事務局 今後、日本薬局方へ収載すべく審議を行っていきたいと考える第十五改正日
本薬局方第二追補以降の新規収載候補品目(案)について、及び新規収載候補からの削除
品目(案)につきまして、本部会にて御審議いただきたく、議題として挙げさせていただ
きました。資料No.2を御覧ください。
 本日、御審議いただきます新規収載候補品目と言いますのは、平成19年5月から平成
20年5月までに、製造販売企業から機構に対して、新規収載の要望がありました22品
目について、機構の日本薬局方原案審議委員会の総合委員会におきまして、第十六改正
日本薬局方作成基本方針に基づき審議され、その結果、すべての品目について収載する
ことが適当と委員会において、御了承をいただき、厚生労働省に報告をいただきました。
機構からの報告につきましては資料3ページの別紙以降のものになります。
 続きまして、日本薬局方新規収載候補からの削除品目について御説明させていただき
ます。資料2ページにあります1品目は、過去に日本薬局方新規収載候補品目として挙
げられたものですが、その後、承認整理等によりまして、市場に流通されていないこと
から、新規収載候補品目の中から削除をしたいと考えている品目です。過去の日本薬局
方新規収載の方針におきまして、その一つに日本薬局方外医薬品規格等の規格品に既に
収載されている品目を、日本薬局方へと移行しようといった方針を掲げておりました。
しかしながら、これらの品目は、必ずしも医療上汎用性があるとは言えない品目、つま
り現在では既に承認整理等により、市場への流通がないといった品目があったというも
のです。今回、市場への流通がない1品目を、日本薬局方への新規収載候補から削除し
たいと考えているところです。
 今後の予定としましては、本日、この新規収載候補品目につきまして、本部会におい
て御審議をいただいた後に、御承認いただきましたら、近日中にこの新規収載候補品目
及び削除品目を公表いたしまして、その後機構において、日局収載へ向けて審議を行っ
ていくことになります。
 次に3のその他としまして、できるだけ多くの医薬品について、第二追補に収載すべ
く、当初の平成21年3月告示予定を、今回9月告示予定として、新規収載品目の充実を
図ることといたしました。以上、第十五改正日本薬局方第二追補以降の日本薬局方新規
収載候補品目(案)として22品目、新規収載品目からの削除品目(案)として1品目につ
き、御審議をお願いしたいと思います。
○棚元部会長代理 ただ今の御説明につきまして、御意見、御質問がございましたらお
願いいたします。ございませんでしょうか。御意見がなさそうですが、よろしいでしょ
うか。それでは、第十五改正日本薬局方第二追補以降の新規収載候補品目等に関わる報
告につきましては、御了解いただきましたものとさせていただきます。以上をもちまし
て、本日の審議は終わりにしたいと思います。その他、事務局の方から何かございます
か。
○事務局 今回は急な日程調整をお願いいたしましたにもかかわらず、委員の先生方に
おかれましては、大変お忙しい中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
次回の日本薬局方部会の日程等につきましては、事務局にてまた調整をいたしまして改
めて御連絡させていただきたいと思います。
○棚元部会長代理 それでは以上をもちまして、本日の日本薬局方部会を終了したいと
思います。委員の皆様どうもご苦労さまでした。
( 了 )
連絡先: 医薬食品局 審査管理課 化粧品専門官 鷲田(内線2743)