08/04/21 社会保障審議会 第7回少子化対策特別部会議事録 第7回少子化対策特別部会 議事録 日時:2008年4月21日(月) 17:00〜19:00 場所:経済産業省別館 1020号会議室 出席者:  委員   大日向部会長、岩渕部会長代理、飯泉委員、岩村委員、内海委員、大石委員   小島委員、清原委員、駒村委員、佐藤委員、杉山委員、福島委員、宮島委員   山本委員、吉田委員  事務局   大谷雇用均等・児童家庭局長、村木審議官、高倉総務課長、小林調査官、朝川少子化   対策企画室長、杉上虐待防止対策室長、定塚職業家庭両立課長、田中育成環境課長、   井上児童手当管理室長、義本保育課長、千村母子保健課長、長良雇用保険課課長補佐 議題:  少子化対策特別部会におけるこれまでの議論の整理 配布資料:  資料1  少子化対策特別部会第4回〜第6回における各委員等による主な議論  資料2  第6回少子化対策特別部会において各委員からご要望のあった資料  参考資料 地方分権改革推進委員会「中間取りまとめ」に対する検討状況 回答  資料3-1 駒村委員提出資料(1)  資料3-2 駒村委員提出資料(2)  資料4  内海委員提出資料  資料5  山縣委員提出資料 議事: ○大日向部会長  それでは定刻になりましたので、ただ今から社会保障審議会第7回少子化対策特別部会 を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、ご多用のところお集まりくださいま して、ありがとうございます。それでは議事に入ります前に、事務局から資料の確認と委 員の出席状況に関するご報告をお願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  それでは、お手元に配付しています資料の確認をさせていただきます。最初に「議事次 第」がありまして、その下に資料1として横紙の「少子化対策特別部会第4回〜第6回に おける各委員等による主な議論」、その下に資料2として「第6回少子化対策特別部会にお いて各委員からご要望のあった資料」。その下に資料ナンバーなしの参考資料ということで 「地方分権改革推進委員会『中間取りまとめ』に対する検討状況 回答」。その下に今日ご 発表いただきます駒村委員から出していただきました資料3-1、資料3-2。その下に資料4 として、内海委員から小児科学会の関係の提言の資料。一番下に今日はご欠席ですが山縣 委員から意見が出されています。もし不足等がありましたら、事務局にお声を掛けていた だければと思います。  委員の出席状況ですが、本日は庄司委員、山縣委員から都合によりご欠席との連絡をい ただいています。ご出席いただいています委員の皆様方は定足数を超えていますので、会 議は成立しています。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。それでは、議事に入りたいと思います。本日はお手元の「議 事次第」にありますように、「少子化対策特別部会におけるこれまでの議論の整理」です。 まず、前回事務局に対して各委員からお求めがありました資料、それから最近は地方分権 の関係で動きがあるようですので、その関係について最初に事務局からご説明いただきま す。その後に前回の会議の最後に駒村委員にお願いしました保育の利用の拡大に当たって のサービス提供の在り方にかかわる視点整理について、駒村委員からプレゼンテーション をお願いしたいと思います。その後に事務局から、これまでの議論の整理の資料について 説明をお願いしたいと思っています。駒村委員のご発表に対するご質問等も含めて、いろ いろと資料説明がありました後に一括して議論をお願いしたいと思います。それでは最初 に委員の皆様から前回要求のありました資料、そして地方分権の関係について事務局から ご説明をお願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  それでは、まず資料2をお開きください。順にご説明をさせていただきます。1枚めくっ ていただいて1ページ目です。これは前回、私どもが出しました資料の4兆3,300億円の 内訳をそれぞれのサービス種別ごとに整理をするように福島委員から要請があったもので す。この表の見方は、縦に「給付・サービス種別」を並べてあり、横にそれぞれ「国」「地 方」「事業主」「個人」の負担の欄、そして右から二つ目に「利用者負担」の欄を設けてい ます。拾っています給付・サービスについては、今回の新たな枠組みにおいて議論の対象 になるような主なサービスを挙げさせていただいています。  まず、真ん中辺りにあります「児童手当」のところを見ていただきますと、「児童手当」 の欄は国、地方、事業主ということで、ここはすべてを社会全体で負担するような形での 負担の構成になっています。一番上の「育児休業給付」については地方負担なしで、国、 事業主、個人の3者で負担をする仕組みになっています。一方で、その二つ下にあります 「保育所(私立)」については、一方で国と地方で財源を負担し合う形になっているパターン です。さらにその二つ下以降に、「病児・病後児保育」「家庭的保育事業」「放課後児童クラ ブ」、さらにその下に「一時預かり」とあります。これらについては、私立の保育所で国の 一般財源と地方で分担し合っているところを、国の分については事業主の児童育成事業と いう形で財源をご負担いただいている形のパターンがその次にあります。さらに上から四 つ目の欄を見ていただきますと「延長保育(私立)」とあります。この欄と下の方に「全戸訪 問・育児支援家庭訪問」あるいは「ファミリーサポートセンター」という欄があります。 小さい字で恐縮ですけれども、ここには次世代育成支援のための交付金があります。これ はまず市町村で事業をやっていただいているものに対して、国の交付金でその取組を包括 的に支援するというパターンの財源分担があります。さらに上から二つ目の「保育所(公立)」 と一番下にあります「妊婦健診(公費助成)」については、公立の保育所であれば三位一体改 革の結果で一般財源化されていて、今は市町村の財源のみで賄われているという形になっ ています。  その次に右から二つ目の欄を見ていただきますと「利用者負担」があります。利用者負 担については、国で基準を示しているものが保育所についてです。従って、保育所につい ての利用者負担の推計額を、私立、公立とそれぞれについて分けて挙げています。それ以 外の※2と付いているサービスがあります。これらは欄外に注意書きで書かせていただいて いますが、国において利用者負担の基準を特段定めていませんので、推計することもなか なか難しいというものです。  下から二つ目にあります※3のファミリーサポートセンターについて、公費で出している 部分は利用調整です。提供希望者と利用希望者の間の連絡調整に係る事務負担、事務経費 を公費で補助していて、実際のサービスの利用は相対で行う形になっていますので、そこ はすべて利用者負担で賄われている形になっています。  さらに「妊婦健診(公費助成)」のところの※4です。これについて、一般的には概ね14 回分と言われていますが、昨年8月時点では、そのうち市町村で平均2.8回の助成がされて います。その残りの部分は利用者の負担になる形になっています。  次に2ページ目を開いていただいて、これは内海委員からありました「児童・家族関係 の社会支出」です。これについては社会保障全体の中での割合を見てみる必要があるので はないかというご指摘です。一番右の欄に「国民負担率」があります。これをざっと見て ヨーロッパ諸国と比べますと、日本の国民負担率自体が低い水準にあります。その裏返し ということで、その左の欄の「社会支出全体の対GDP比」もヨーロッパ諸国に比べると 低い形になっています。社会支出全体の中で家族分野にどれだけ支出されているかを見た ものが真ん中の欄のグラフです。4.01%ということで、ドイツ、イギリス、フランス、スウ ェーデンと比べると、この割合も低いということが見て取れます。  2枚めくっていただいて4ページ目です。これは前回、福島委員から財源の負担の在り方 について、その基本的な考え方を今後どのようにしていくべきか、あるいは現状はどうな っているのかというところの基本的な考え方について整理する必要があるのではないかと いうご意見をいただきました。その後に吉田委員から、5年前に厚生労働省の研究会で一度 費用負担の考え方を整理したものがあるはずだということで、資料の求めがあったもので す。3枚めくっていただいて7ページ目に、平成15年に開催した研究会の委員の名簿が付 いています。座長は京極先生にしていただき、当部会のメンバーの杉山委員と山縣委員に はこの検討会にも入っていただいていました。  中身を簡単に紹介しますと、4ページ目に「(1)基本的考え方」というところがあります。 その二つ目の○のところです。子育て支援施策の財源構成は、現在のところ、施策ごとに それぞれ異なっているけれども、2行目の辺りで、それを総合的に見直して財源の統合を図 ることが考えられるとしています。その下の○の2行目真ん中辺りから、このために「国 民一人ひとりが次世代育成支援のために拠出するという新たな枠組みを検討する」と書か れています。今、触れましたように、このときは国民一人一人が本人拠出もするのだとい うような枠組みを検討したらどうかという形になっています。  その関係で「(2)現役世代・高齢者」の2行目の最後に、子の有無や年齢を問わず国民皆 が費用を分かち合う仕組みとすることが適当ではないかと。その一つ下の○では、高齢者 については目に見える形でこの連帯の仕組みに加わって、費用の一部を担っていくことが 考えられるという整理がされています。その下の企業、事業主負担に関するところです。 ア)のところで児童手当については、将来の労働力の維持・確保の観点等から今は一部を負 担していただいていると。そしてイ)のところで保育所について見ると、就学前の子を持つ 労働者が安心して就業を継続するために必要なサービスであると。その充実は企業等にと っても大きなメリットがあるとされています。その下の○のところでは、次世代育成支援 は将来の労働力となる子の育成を図るものであり、それとともに、現在そして将来の日本 市場の消費の担い手となっていく面もあるということが触れられています。さらにその下 の段落のところで、0歳児保育と育児休業制度の代替関係を踏まえた両制度の整合性の観点 から、企業等の負担の在り方を検討すべきだということも触れられています。その下の○ で「ただし」ということで、「他の社会保障分野における企業等の負担の状況も踏まえつつ、 社会保障負担全体を見渡す中で、その在り方や水準を検討する必要がある」とされていま す。  その下のところは「国・都道府県・市町村」の公費の分担についてです。二つ目の○の ところで、こうした費用については、そのすべてを市町村の一般財源で賄うべきとの議論 が見られるが、さらに1行下のところで、国民全体で費用を分担するという形で、国・都 道府県等が重層的に財政負担を行う仕組みについても併せて検討し、適切な結論を得てい くことを期待したいという形で、このときは整理されています。  次に8ページ目をお開きください。こちらは吉田委員から、OECDが未来の投資とい った指摘をしているものがあるはずとお話のあったものです。ご紹介をさせていただきま すと、4年に1度ぐらいOECDの中で社会政策担当大臣が集まる会合が設けられていて、 直近の2005年の大臣会合の最終コミュニケに関連する部分が触れられています。  8ページの真ん中のところに、ポツが六つ並んでいるところがあります。その一番上のポ ツのところに「子どもの発達を促進するために、社会と家族は十分な資源を投資する必要 がある」と。こういったところに未来への投資という趣旨が表れています。この会合全体 が事後的な社会保障の負担ではなくて、もう少し予防的、事前的に社会保障の負担をして いくべきであるというような全体の流れがあり、特にこのような家族政策分野について、 未来への投資という観点から議論が活発に行われた会合です。その成果として今申し上げ たような取りまとめがされているものです。  次に10ページ以降が幼稚園の関係でいただきました宿題の関係です。11ページ目を開い ていただきますと、右側の方は保育所のお金の流れで、これはよろしいかと思います。左 の方は私立幼稚園の関係の補助金の流れです。二つの流れがあり、左側は都道府県から幼 稚園の施設に私学助成という形でまず補助金が流れている。その都道府県の補助に対して 国は定額の補助をするという形が一つの流れとしてあります。もう一つの流れは、市町村 の教育委員会から保護者に対して、就園奨励費という形でお金が流れています。市町村教 育委員会が保護者に補助するものの3分の1を国も補助をするという形を取っています。  次に12ページ目です。幼稚園と保育園の補完関係をきちんと見ながら、特に3〜5歳の ところの議論を進めていくべきではないかというご意見を幾つかいただいて、5歳児につい て都道府県別の状況を見たものです。一見して補完関係にあるというのは明らかに見て取 れるところだと思います。都道府県別に見ると、上の方全体がそうですが、幼稚園の就園 率の高い沖縄県、神奈川県、宮城県、埼玉県辺りのようなところもあれば、下の方のよう に保育園の在籍率の方が高い都道府県もあります。かなり地域的なばらつきがあるという 状況も一緒に併せて見て取れます。  次に13ページ目です。関連して、幼稚園と保育所の偏在の状況について人口規模別に見 てみたものです。上から二つ目の欄の「幼稚園のみ設置」の一番右のところを見ていただ きますと、市町村の数の合計を見て1.6%ですので、幼稚園しかないという市町村は数とし てはそれほど多くないという状況だと思います。一方で、その一つ下の欄の「保育所のみ 設置」という市町村は全体の17.7%あります。その中でも、左側の方にあります5,000人 未満、5,000〜1万人など、そのような人口規模の比較的小さな市町村において、保育所の みの設置、保育所しかないという市町村があるという状況が見て取れます。  1ページめくっていただいて14ページ目です。14ページ目から数ページは預かり保育の 状況です。これは前回も出しましたが、一つ目は公立幼稚園の預かり保育の実施率が約5 割、私立幼稚園で約9割という状況です。  2番目は預かる条件です。預かる条件として保護者の就労を条件として設けている所が公 立も私立も5割強です。一方でそれ以外の理由もそれなりにありまして、特に一番下の欄 の「特に理由は問わない」というところを見ていただきますと、私立では約7割が理由を 問わないということですので、保育所と同じように就労のために子どもを預けているとい う保護者もいれば、そうでない保護者もいらっしゃると。混在している状況が少し見て取 れると思います。  15ページ目は、どれぐらいやっているかということです。これも前回出した資料ですが、 週当たりの実施日数は5日ぐらいやっている所が多いと。これは公立も私立も同様ですが、 特に私立の場合は7割ぐらいが5日はやっていると。6日やっている所も2割あります。終 了時間については、特に私立の方が、18時、19時と遅くまでやっている所が多いというの が見て取れます。1枚めくっていただいて、では朝はどのような状況かという議論もありま した。教育時間の開始前にどれぐらい預かっているかというものですが、公立で約4分の1、 私立で約4割が朝も預かっているという状況です。  大きい4番です。こちらは夏休みや春休みという長期休業中に、どれぐらい預かり保育 をやっているかというものです。私立のところを見ますと、夏休み、冬休み、春休みとい ずれもやっている所が57.2%で6割ぐらいあるということで、結構な数の所で長期休業中 も行われている状況です。17ページは、その長期休業中にどれぐらいの時間数を預かって いるかというものです。特に私立のところを見ますと、一番右から二つ目の8時間を超え て預かっているという園が46.7%ということで5割ぐらいありますので、休業期間中に比 較的フルに近い形で開園している所がそれなりの数あるということが見て取れます。  次に18ページ、19ページは幾つかの預かり保育の事例を見てみたものです。「事例1(東 京都)」は黄色いところの3行目の終わりから書いてありますが、両親とも就労しながら保 育園教育を受けさせたいという要望に対応して、平成13年度から始めているというもので す。これも朝もやっていますし、夕方18時半ぐらいまでやっていると。2番の体制のとこ ろを見ていただきますと、預かり保育専任の担当者を複数名加配して行っているというこ とで、幼稚園教諭の免許を持っている方を午前も午後も2名ぐらいずつ配置してやってい るというパターンです。  右の「事例2(岡山県)」も黄色いところを見ますと、両親あるいは祖父母とも就労してい る場合が多いので、地域に同年代の幼児が少なく友達とのかかわりが持ちにくいという両 面の理由から預かり保育をやっているという事例で、これも18時ぐらいまでやっている。 体制についてはそれぞれ臨時の教諭の方を1名、通常の教育課程に入っていらっしゃる教 諭の方を1名という形でやっている事例です。  19ページ目の「事例3(徳島県)」は、農村地域で保護者の多くが農業に従事しているので、 幼児のみで遊ばせているのは危険だということで、昭和56年とかなり昔から預かり保育を 実施しているというものです。これも同様に夕方までやっていて、体制についても1〜2名 の担当者を配置しているというものです。  右側の「事例4(岩手県)」は、母親が安心して仕事や社会活動に参加しやすくなるように ということで、平成11年度から行われています。二つ目の○にありますように、平成12 年度からは一時預かりを実施したら、非常に希望者が増えているという事例です。これも 夕方までやっていて、担当者は2名ほどで人数に応じてさらに増やすという対応をしてい るというものです。  ざっと見ますと、就労対策、両立支援という色彩がいずれもあります。一方でそうでな い趣旨も併せて持っているということが見て取れます。預かっている人数が出ていません ので、その人数にもよると思いますが、体制としては1〜2名の体制でやっているというこ とです。従って、この新しい枠組みを検討していく中では、このように少し多様性がある というところ、あるいはその保育の内容についてどのように考えていくか、体制について どのように考えていくかというところに、少し調整の必要があると思います。  20ページ目です。参考として、文部科学省から幼稚園の教育要領が示されている中で、 この午後の預かり保育に関して留意事項が示されているものを付けさせていただきました。  次に、21ページ以降です。一般財源化の影響について宿題をいただいていて、これは市 町村に対して日本保育協会が調査をしたものです。ざっと見ますと、21ページ目では、入 所児童1人当たりの月額経費が左側のグラフを見て、総じてどのクラスの市町村でも経費 が節減されている傾向にあると。5万人未満の所は少し増えていますが、それ以外の所は節 減されている状況が見て取れると思います。  22ページ目の右側のグラフでは、何を節減しているかというと、人件費が6割ぐらいあ る。これは保育所運営費の約9割が人件費ですので、そういったところを中心に節減が行 われている状況だと思います。  23ページ目です。保育所運営費のために、財源を市町村がどのように節減しているかと いうものです。コスト削減が約半分ぐらいあり、右側を見ていただきますと、民間に移管 する、施設自体の運営を譲渡するということです。あるいは公立を統廃合する、あるいは 公立を民営化する、これは公設民営の形にするという形です。あるいは保育料の引き上げ を行ったと。そのような対応をしている所も10〜20%ぐらいの割合であるということです。 資料2の説明は以上です。 ○義本保育課長  続きまして、地方分権の動きについて、参考資料でご紹介したいと思います。地方分権 改革については、内閣にできました地方分権改革推進委員会で幅広くやっています。その 中で保育についても、例えば「認定こども園」の問題や、保育に欠ける要件の問題、ある いは福祉施設の最低基準の問題ということで取り上げていますので、その状況をご紹介さ せていただこうと思います。それから後からご紹介させていただきますけれども、先週の4 月17日に私どもの審議官と私が地方分権改革推進委員会に呼ばれまして、この検討状況に ついてヒアリングを受けました。その中でも地方分権改革推進委員会の議論、あるいは問 題認識等を当特別部会にお伝えするようにという要望がありましたので、その辺のことに ついても併せて説明させていただきたいと思います。  参考資料をご覧いただきたいと思います。この問題については、昨年5月から地方分権改 革推進委員会が始まり、11月に中間的な議論の取りまとめという形で、事項をそれぞれ の分野ごとにまとめたものです。それがこの参考資料の左手です。その内容について、3月 末時点においての当初の検討結果・状況について回答させていただいたものをまとめた資 料がこの参考資料の性格です。その内容を簡単にご紹介させていただきますと、大きく分 けて二つの項目があります。  この1ページに「幼保一元化」と書いてありますけれども、とりわけ「認定こども園」 の制度の問題は、平成18年10月からスタートして、昨年19年8月現在で105件という 形になっています。その取組について、地方の現場の実情を踏まえた運用改善を積極的に 取り組むべきだというご指摘をいただいています。  それから「幼保一元化に向けた制度改革」のところに関連しますけれども、この下の方 に書いてあります。子どもについては、法律の施行後5年経過した時点で見直しを行うべ きだということを法律の中において明記していますけれども、その制度見直しについて前 倒しで行うべきだというご指摘をいただいています。  それから、その他の制度改革の問題としては、特に「保育に欠ける」入所要件です。当 部会でも今まで議論をいただいたところですけれども、特に保護者の就労状況や家庭での 子どもをめぐる状況が大きく変化している中で、入所要件として「保育に欠ける」という 概念を昭和23年制定当時から使っていますけれども、そろそろ見直すべきではないかとい うご指摘をいただいています。それに併せて幼保一元化の実現に向けて、省の枠組みにと らわれないような全体の抜本的な改革を幼稚園、保育所を通じてやるべきだというご指摘 をいただいています。それらの事柄についての検討結果です。  まず「認定こども園」です。この真ん中にありますように、制度の普及促進、それから 都道府県、市町村の窓口の一本化、あるいは書類の共有化ということを文部科学省と厚生 労働省が連携を図りながら、現場に負担が掛からないようにお願いしているところです。 制度創設から1年以上が経過しますので、現場における運用の状況を把握するということ で、施設、自治体あるいは保護者等に行った実態調査を踏まえて、今後改善策をまとめて いきたいと思っています。夏ごろに改善策を取りまとめる方向をお伝えしたところです。 それから「認定こども園」についての制度見直しそのものについては、まずはこの運用の 改善面の方策にしっかりと取り組んで、その効果が見込まれるべきだと基本的な感覚で思 っていますけれども、運用の改善によって問題の解決がされない場合で、しかも緊急的な 対応が要る人の場合については、5年後の見直しにこだわらず検討も考えられるとお答えし ているところです。  それから「保育に欠ける」要件のところです。これは昨年12月の規制改革会議において も「認定こども園の実施状況等を踏まえ、保育所の入所基準の見直しの可否について、包 括的な次世代育成支援の枠組みを構築していく中で検討」ということになっています。そ れを受けて当特別部会において、3月以降この構築に向けての議論を行っていただいていま すように、5月中にも基本的な考え方を整理するということについて書かせていただいてい ます。いずれにしても、この問題は希望する者に対して受け入れていくことになれば、そ れに併せて、要件の見直しについても財源の確保と量的な整備を一体的に行わなければい けないということもありますので、税制改革の動向を踏まえながら進めていくという答え 方をしているところです。それが1点です。  もう1点が保育施設の基準の問題です。これについては2ページの左にありますように、 児童、介護、あるいは老人等の福祉施設について最低基準ということで、備えるべき施設 や設備、職員の配置等についての基準を設けています。これについて、例えば保育につい ては、山間地域においての廃校舎等を活用した場合でも設置が難しいという意見がありま す。あるいは全国一律の基準という位置付けについて、そもそも個別の現場においては実 情が異なるわけですから、画一的に適用するのではなく、例外を認めないということであ れば、多様なニーズに応えられないのではないかという問題認識が地方分権改革推進委員 会から示されています。  それから、保育について言えば、この4パラグラフの「さらに」というところから始ま りますが、最低基準という位置付けについても、昭和20年代に定めた保育所の基準につい ては今や科学的な根拠がなく、例示として、これは児童福祉最低基準として、例えば乳児1 人当たりどれぐらいという面積を決めていますけれども、これは昭和23年の制定以降、特 に変えていません。そのような観点から科学的な根拠がないのではないかというご指摘を いただいています。それで「したがって」ということですが、福祉施設の基準については、 国は最低基準ではなくて標準を示し、地域の実情に応じて自治体が責任持って判断を行え るようにすると。地域ごとの条例により、独自の基準設定をできるようにするべきではな いかというご指摘をいただいています。この点について、検討結果、保育所の最低基準に ついてということで、厚生労働省の見解を整理したものです。  ここにありますように、乳幼児がいわゆる人格の形成をする非常に大事な時期において、 生活の大半を過ごす所ですので、子どもたちの健康・安全面、あるいは情緒の安定した生 活ができるように、配置基準あるいは施設設備の国としての一定の基準が必要だという考 え方を示しています。どの地域においても、質を担保された一定の保育の環境を確保する ことが必要なことですので、そのような問題認識を示しています。ただ、昭和20年に制定 されて以降、基準の見直しをしていません。そのような観点から、この施設の基準等につ いては、どこまでの基準が必要なのかについて、平成20年度に科学的・実証的な調査研究 に着手する予定にしていますので、その検証結果を踏まえて考えていきたいということに しています。この実証研究については、建築関係あるいは児童発達の専門家、保育現場や 地方自治体の関係者に入っていただいて、面積を中心とする量的な基準とともに、子ども の生活環境と睡眠あるいは遊び、食事を含めた活動に着目して、機能的な基準として、ど のような基準ができるのかということも含めて、保育の環境・空間についての新たな在り 方について、1年をかけて研究していただく予定で進めているところです。  このようなことを17日にご紹介させていただきました。長くなりますけれども、17日の 議論においてのポイントとして、1枚目の幼保の問題については、特に「保育に欠ける」要 件の議論が問題になりました。少子化対策特別部会でも、これから議論いただくところで すので、私どもとしてはこの議論に先走って方向性を出すことについては差し控えるべき ではないかと申し上げましたところ、やはり、まずは「保育に欠ける」要件の見直しの検 討を進める方向を明確にすべきだというご意見・ご議論が委員会から出されています。  それから施設の基準の議論については、特に「認定こども園」のような参酌基準に改め て、最低基準という全国一律的な取り扱いは改めるべきだというご指摘をいただきました とともに、その実証研究の在り方等についてのご質問あるいはご意見をいただきました。 そのようなやり取りをさせていただきました。本来なら議事録をお持ちすれば良かったの ですが、今日は間に合いませんでした。そのような議論を行いました。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。  それでは次に、前回にお願いしていたことですが、駒村委員に保育の拡大に当たっての サービス提供の在り方にかかわる視点の整理ということでご発表いただきたいと思います。 駒村委員、お願いします。 ○駒村委員  意見を述べる場をいただきまして、大変ありがとうございます。資料3-1、資料3-2の二 つの資料を用意させていただきました。この両者の関係ですけれども、資料3-2は別のとこ ろに書いて、4月上旬に書き終わった論文です。これを抜粋する形で資料3-1があります。 従って資料3-1を中心にご説明しますが、私の細かい考え方については論文の方を読んでい ただければと思います。それでは資料3-2に従ってご説明したいと思います。報告は大きく 二つに分かれていて、保育そのものに関する話と、その前に考え方に関する話との二つに 分かれています。  まず、ここで準市場というものを示していますけれど、ここにある準市場というのは、 もしかしたらあまり耳にしない方もいらっしゃるかもしれません。これはイギリスでコミ ュニティーケアやNHSの改革、対人社会サービスを改革するときに、これは1990年代に 入ってから、従来の公的分野による独占は非常に規制が強い、あるいは非効率的な部分を どのように改変していくかという議論がありました。このときに ロンドン・スクール・オ ブ・エコノミクス(LSE)のジュリアン・ル・グラン、この方は社会政策の主任教授です。 市場でもなく、政府の仕組みでもない第3の類型の供給システムを考えようということを 提示しているわけです。ジュリアン・ル・グランはこの考え方を幾つかバージョンアップ して、騎士とならず者、女王と歩兵という考え方です。従来の対人社会サービスの供給は、 騎士のように気高い利他心を持った主体が、歩兵のような受け手の人に対して提供すると いう考え方であったと。しかしこれからは、ならず者は利己心という意味で営利追求の企 業を意味しています。企業やその他の多様な施設・組織を意味するのです。そのような者 が行って、しかもクイーンのような、つまり自分が好きなように振る舞うような利用者も 視野に入れたシステムに変えなくてはならない。ただ、問題は完全に市場メカニズムを目 指すのではなくて、そこにきちんとしたインセンティブを入れて制御していく。このイン センティブ・システムこそが既に重要なのだという考え方です。  その後、やはり準市場という考え方は日本にも影響を与えたのではないかと思いますけ れども、非常に残念なことに、この準市場というシステムが市場メカニズム、つまり完全 な規制緩和や、完全な市場に行く途中段階だと理解されてしまって、その後さまざまな引 き続きある官製市場改革などに巻き込まれていくことになってしまったのです。私はそう ではないと理解しております。この準市場というのはそれ自体が完成型であって、これを 官製マーケット改革の対象にするものではないと。これから利用者選択という議論をやっ ていくときに、この延長上に市場メカニズムがある。規制改革の対象であるなど、そのよ うなものではない。ここは明確にしておかないといけない。これまで介護等では、非常に その部分の理念が明確でなかったので、妙な動きに巻き込まれた。量的拡大を行っていく。 新しいシステムを考える上に、まず前提として考えておく哲学というか、考え方を整理し ておく必要があるだろうと思いました。  2.は、この新しい保育サービスのシステムというのはどのようなものなのかということを 少し整理して、ここから先が今日課題をいただいたものになるわけです。まず、新しい次 世代育成の政策目標は何なのかというと、大きく分けて両立支援、それから普遍的により 多くの子どもたちに良好な育成環境を保障するのが政策目的になってくるのだろうと思い ます。  その財源政策は当然そのような目的、あるいはそのような効果と受益がリンクする形で、 財源も考えられていってしかるべきだと。当然候補としては公費と目的税と拠出金と保険 料と、あとは自己負担というものが当然あるわけです。前回も少し資料が出ましたけれど も保険、つまり子ども保険、育児保険というのは非常に保険に合わないものではないのか という議論があります。これに対しての私の見解は、今日の保険は、保険のリスクと給付 の対応関係が密接になっている純粋な保険というのは実はそれほど多くなくて、介護保険 の拠出金にしても、今、問題になっている後期高齢者医療の拠出金の問題にしても、保険 という名を持ちながらも使途が限定されている事実上の維持的・目的税的な性格を持って いますので、もう既にそこを追認するのならば、あまり名称にこだわらなくてもよいのか もしれませんけれども、この保険を除外すると公費、目的税、拠出金が、ある意味政策目 的と対応する財源かと思います。  2-3)は、良好な養育環境の整備です。これによってどのような効果が得られるのかという ことを考えていかなくてはならないわけですけれども、一つは両立支援であり、出生率の 上昇や離職の減少、労働人口の確保につながっているだろうと。二つ目としては、ここの 会合で吉田委員からもお話があったかもしれませんし、OECDのレポートにあったかもし れませんけれども、子どもの可能性を拡大する、つまり良好な育成環境、あるいはそのこ と自体が人的資本に関する公的投資的な意味もあるのではないかと。これは社会の次世代 を支える子どもたちに、さまざまな力を与えるという意味があるのではないか。それから 三つ目としては、社会政策上の意義もあるのではないかと。これはあまり日本では超長期 にわたる施設保育の効果がどのようなものであるかがあまり検証されていないようですけ れども、これを機に幾つか文献を調べました。例えば、ペリー・プレスクールの研究です が、アメリカは系統立った非常に膨大な長期にわたる施設保育の意義や効果が計測されて いるわけです。その中で所得に与える影響や犯罪など、さまざまな問題を引き起こすかど うかという社会政策の必要対象になるような事象を減らす効果がある。この良好な保育環 境の確保という意味では、広義の意味での社会政策上の意義もある。この三つぐらいです。 特に利用者、特にその子ども本人と社会といった外部的なもの、外部性といったものもあ るのではないかと、このように整理できると思います。  4)で、今、直面している新待機児童ゼロ作戦との絡みで見ると、従来の政策が保育に欠け るという福祉あるいは限定的な措置制度の下で、公費財源との親和性があったわけですけ れども、新しい普遍的な育成環境の保障あるいは両立支援は、先ほどの財源の話に戻りま すけれども、どのような財源と親和性があるのか。どのような提供主体と、特に量的なサ ービスの拡充をするということでは、さまざまな提供主体の参入も認めて、これは部会長 もご指摘の通りなのですけれども、その利用者選択を同時に組み込むことができるのか。 同時というか、どちらが先かとまた議論があると思いますけれども、パッケージになって くるのではないかと思うわけです。ただ、その際に幾つか考えなくてはいけないことがあ るだろうと思います。  一つは一番気にするところなのですけれども、期待される保育所サービスの内容とは一 体どのようなものなのか、保育所サービスにはどのような特徴があるのかということを 3-(1)〜(3)で整理してみました。一つは保育所サービスの役割、これは保育士の役割とも言 えるわけですけれども、幼児の養育の専門職としての役割、教育職としての役割、それか らソーシャルワーカーとしての役割の三つがあるだろうと。これは日本だけではなくて、 諸外国の保育所あるいは保育士に求められる職に期待される役割だと整理できるわけです。 この中で特に今後考えなくてはならないのは、内海委員からも資料がありました親支援的 です。これについては、今後も非常に注目しなければいけない部分だと思います。ただ、 親支援と利用者選択制、利用者主権があるというのは、時としてまずい恣意(しい)整合的な 問題が起きる可能性があって、その親支援、つまりこの保育専門職と親が協力してサービ スを改善していく部分がある。相互関与性や相互編集性という性格があるわけで、自分の 都合の良い保育所を探して転々とするような利用者主体の支援ではないのだというところ は明確にしなければならない。  それから、保育所のサービスの質というものも、現時点では非常に評価が困難な部分が あるだろうと。海外では児童発達の関係で、そのような質の評価は行われているようです けれども、日本ではうまく見つからなかったので、もしあれば教えていただきたいのです が、難しい部分が多いだろうと。  それから最終的な利用者が子どもということで、虐待や不適切な保育が行われた場合も 選択者である親が知り得ないという、いわゆる隠された行動という問題もある。これにつ いても、やはり訓練を受けた倫理性の高い専門職をきちんと配置することによって、この ような問題も解消できるだろうと思うわけです。保育サービスの特性をよく考えた上で、 次の4.の幾つかの具体的なテーマを考えていかなければならないと思います。  その上で4.の「(1)保育サービス利用の範囲」です。これは従来の措置的な保育に欠ける というものから、普遍的な両立支援や子どもの発達上必要な養育という点で、制限をなる べく下げていき、この辺は利用必要性で少し順位立てる。順位を付けるかどうかはまた悩 ましいところでしょうけれども、新しいシステムに見合った考え方をしていくべきではな いかと。  二つ目としては、急がなくてはならない、弾力的な対応も必要なので、サービスの提供 主体としては多様な主体を認めていくべきではないか。  「(3)補助・利用者負担のあり方」ですけれども、保育サービス自体に外部性があるとい うことですから、当然親に全額負担を求める必要はないわけで、先ほども言ったような新 たな財源構成の中で親の負担を考えていくべきなのです。2ページ目で、この負担形態を応 益負担でいくか、応能負担でいくかは私も少し迷っているところなのですけれども、一応 考え方としては、応能負担の場合は所得の単位をどのように考えるかという問題が起きて います。個人単位で負担能力を考えるのか、世帯単位で考えるのか。世帯単位で考えると、 夫が先に働いているケースが多いと思いますが、妻が後から働くときに、自分が働くこと によって得られる収入が即座に保育料に連動しますので、限界負担が高くなって就業意欲 を減退させるということにもなりかねない。つまり、保育料での所得再分配ということは 避けて、原則、応益負担としながら、低所得者については児童手当の増額あるいは公費に よる保育料の減免という形に持っていったらどうなのか。  それから、保育サービス自体の親負担部分の引き下げ競争は質の悪化につながりますの で、これは許すべきではないと思いますけれども、もし上乗せや付加サービスをやりたい といった場合に自由に認めるかどうか。これは医療の混合診療と同じような問題が出てき ますので、簡単に区別できるかどうかという問題がありますけれども、一つの検討要件か と。  それから、「(4)情報提供や第三者評価について」は、ことさら親の満足度調査に重きを置 いた評価などは施設側に誤ったインセンティブを渡す可能性があると思います。もし質の 評価ができれば、当然質に応じた質の公開ができるわけですけれども、やはりそこに限界 がある場合はインプット、どのような労働者、専門職の方が働いていらっしゃるのか、そ の雇用は安定しているのかどうなのか、正社員なのか、非正規社員なのか。こういったこ とも、あるいはもちろん施設についても、情報を公開していくということ。  それから(5)では、実質的な利用者補助になるわけですけれども、その場合には、保育サ ービスの施設に対する報酬体系をどのようにするのか。これがこのインセンティブとして は一番大事なことで、これを一番工夫しなければならない。それが失敗すると、介護で起 きたようなさまざまな問題も起きるかもしれない。クリーム・スキミング、つまり自分の 都合の良い、手の掛からないような子どもだけを預かりたいという利用者の選択を施設側 が行うことを認めてよいのか。あるいはそのようなことをさせないように、そのようなこ とをしても決してメリットがないような報酬の工夫を行うのか。あるいは保育プロセスや 保育配置基準に応じた保育配置の内容、これも先ほど申し上げたように、正規社員なのか、 非正規社員なのか、転職率などはどうなのかといったインプットに応じた、そしてその配 置を良くすれば良くするほど、施設の収入が改善するようなインセンティブをもたらすよ うな報酬体系にしなければいけない。  それから(6)は直接契約ですけれども、やはりここに一定の歯止めを置いておかなければ いけない。消費者である子どもと選択者・購入者である親が別の人間であり、親は基本的 には子どものために選択をするはずですけれども、必ずしもそうではないようなケースも ある。親の都合による無理な長時間保育や、さまざまな無理な要求に対しては、誤った消 費者主権が発生しないように、一定の公的介入の余地も残しておかなければいけないと思 います。  まとめると2ページの表のような形になると思います。当然、考え方の整理で、各論で この辺は具体的に何対何の費用でどうですかと今申し上げることはできないわけです。あ くまでも疑似的な市場というもので、これはピュアな市場の延長線上の手前にあるもので は全くない。そのような完成されたシステムをどんどん改善していかなくてはならないわ けです。その上で、今回の論文の中で十分に検討できなかったのは、保育所はそれでよい としても、同じ3歳以降の子どもを預かっている幼稚園との整合性をどう考えるのか。地 域によっては幼稚園と保育所の役割は非常に複雑で、あるいは三世代家族で保育所の利用 がそれほど必要でないような地域もあるかもしれない。この辺の地方の負担をどのように 考えるかというのは、今回十分に検証することができませんでした。  それから保育所の賃金体系です。これは最後に賃金に反映されるわけですけれども、公 立保育所と民間保育所のコスト差については、ベテランが多いかどうかの差ということが よく言われます。それが最終的にかかわる費用に反映するのは賃金構造によるわけですけ れども、果たして専門職である保育士の賃金構造が年功賃金的で良いのかどうなのか。良 いのかもしれませんし、悪いのかもしれません。これは実は佐藤委員と介護の方で議論し ているのですけれども、この辺もきちんとした実証的な研究がどうもないようなので、こ こについても賃金体系がどうあるべきなのかというのは、今回は触れていないということ です。すみません、延びました。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。  それでは、次にこの少子化対策特別部会において、第4回から第6回までにいただいた 議論の整理について事務局からご説明をお願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  資料1について説明させていただきます。これはもう議論いただいた内容ですので、簡 単に触れていく形にしたいと思います。  幾つかの項目に分けてあります。まず一つ目として、基本理念に当たるものを幾つか整 理させていただきました。  一つ目の○では、いわゆる両立支援という観点とともに、まずすべての子どもの最大の 利益を大事にするということと、その類型としてすべての子どものことを考える必要があ るという理念を挙げていただいています。二つ目の○では、未来への投資の視点が挙がっ ています。四つ目の○では、親と子どもの利益は必ずしも一致しない。さらにその下の大 日向部会長のご意見ところでも、そのバランスの考慮ということが挙げられています。一 番下のところでは、考えていく上でトータルに、制度横断的に給付も費用負担も考えてい く必要があるという視点です。2ページ目の一番上は、重点戦略での整理を引用しています が、切れ目のない一体的な支援、さらに岩淵部会長代理から大幅にスピードアップした政 策展開をといった基本的な例に該当する議論をいただいています。  大きい二つ目は「働き方の見直し」ということで、新たな枠組みの検討に当たって、そ の大前提となるものとして、議論をいただいたものを幾つか挙げさせていただいています。 このページの一番下のところから「サービスの量的拡大」ということで、まずはそのサー ビスの量的拡大を図っていくのが大前提であるということで幾つか議論をいただいていま すが、3ページ目の一番上の○では、潜在需要に対応して量的拡大をスピード感をもってや っていくべき。二つ目の○では重点戦略を引用させていただいていますが、現金給付より も現物給付の方が緊急性が高いのではないかということ。三つ目、四つ目の○は量的拡大 を図っていく上では、ある程度参入規制の緩和なども考えていく必要があるのではないか という議論です。  大きい4番は、量の拡大とともにサービスの質の維持向上も重要な視点ではないかとい う議論がかなり多くされました。その一つ目としては、まず量的拡大と質の確保というの はバランスを常に考えながらやる必要がある。二つ目以降から幾つかは、質の高いサービ スを確保していくのは重要だという議論をいただいています。  4ページ目の二つ目の○のところでは、今、駒村委員からも第三者評価の話がありました が、現行の第三者評価についての見直しの議論もしていただいています。このページの一 番下の三つについては、担い手である保育士についての処遇の問題も質の確保の上では重 要であるという議論をいただいています。  次の5ページ目の上二つの○では、保育所の職員の配置基準について充実していく必要 があるのではないかという議論をいただいています。同じページの四つ目、五つ目の○辺 りでは、認可保育所だけではなくて無認可も含めて全体の質を考えていく必要がある。さ らには認証のような形で、無認可保育所を認可保育所に上げていくようなことも考えてい くべきだという議論をいただいています。  6ページ目は「財源・費用負担」に関するものです。その一つ目としては財源投入の必要 性ということで、そもそもパイそのものの拡大が必要であるという議論。大きい二つ目と して、そういうパイの拡大を図っていく中で、社会全体でどのように費用分担をしていく かということについては、上から三つ目の○では国、地方公共団体、事業主、利用者がど のように分担をしていくのかが重要な議論で、その基本的考え方についてまず整理すべき ではないかという議論。下から二つ目の○では、ただ今、駒村委員から発表いただいた内 容にもありましたが、どういう位置付けで保育システムを考え、また各サービスに何を期 待するかにによって、負担の在り方も変わってくるのではないかという議論。一番下のと ころでは、この必要な費用負担の在り方について税制改革の動向を十分見据えて議論する 必要があるだろうという手順に関する議論と、続いて7ページ目の2行目では、現役世代 や企業に費用負担が偏る仕組みではなくて、高齢者も含めてあらゆる世代が広く公平に負 担を分かち合うべきではないかという議論。その下から、このページの一番下の辺りにつ いては、その財源の具体的な見直しについて、幾つか視点を与えていただいているご意見 をいただいています。  次に8ページです。財源の議論をしていくときに、地方財政の考慮が非常に重要である ということで、一つ目、二つ目の○では、今後どのように市町村負担の軽減を図ってサー ビス水準を上げていくのかということが重要であるという議論。その次に公立保育所の一 般財源化に関連して、三位一体改革で一般財源化した影響を踏まえて議論する必要がある のではないかという議論をいただいています。  次に9ページ目です。利用者負担について、特に保育で利用者負担をどの程度を求めて いくかというのが重要な課題であるという議論と、その負担全体の中でどのような設定を していくか。応能負担にしていくのか応益負担にしていくのか、低所得者、中間層への配 慮という議論をいただいています。  次に大きい6番目は「給付やサービス」に関するものとして、まず一つ目が保育のサー ビス提供システムの関係です。上の二つの○は「保育に欠ける」要件の見直しについての 議論の必要性。このページの一番下からは直接契約に関する議論で、そういう議論をする 前提としてまず量的な拡大が必要であるという議論です。  10ページ目は、さまざまな観点から直接契約についていろいろな考える視点を与えてい ただいている議論です。  11ページ目は「地域間格差」ということで、特に都市部と過疎地域では保育でも次世代 育成支援全体でも、課題が違うのではないか。あるいは問題の質や取り組むべき内容がそ もそも違うのではないか。そういったことに留意が必要だという議論をいただいています。 下の方に「給付・サービスの具体論」とありますが、各論的な議論として、下から二つ目 の○では一時保育の重要性、一番下の○では0歳児保育をどのように考えるか。12ページ 目のところでは、育児休業、事業所内保育所あるいは家庭的保育事業についてそのように 考えていくか。さらに下から四つ目の○では、ファミリーサポートセンターなどで高齢者 の活用なども考えていく必要があるのではないか。その一つ下では、サービスをコーディ ネートするような助言者が必要ではないか。その下のところでは、社会的養護の関係の必 要性、これは重点戦略から引用させていただいています。  ここで関連しますので、今日ご欠席の山縣委員から意見が提出されています資料5をご 覧いただきたいと思います。山縣委員は児童部会の方で社会的養護の検討に加わっていら して、その関係でのご意見です。「これまで機会を見つけることがなかなか難しくて、社会 的養護の重要性について申し上げることができなかったので、今回紙を提出させていただ きます」という趣旨のご意見です。「記」と書いてあるところの下の5行目のところで、一 部はこの児童福祉法の改正に今回出している内容に反映されていますが、さらに上から3 段落目、「委員諸氏におかれましては」というところの3行目の後半辺りから「社会的養護 サービスの充実もこの部会の検討範囲であることをあえて記録としてとどめていただきた いと願っています」というご意見をいただいています。  資料1に戻っていただいて、12ページ目の下のところからは幼保連携の関係です。12〜 13ページにかけて、連携をもう少し強くしていく。あるいは建設的な一本化について検討 していく必要。あるいは「認定こども園」制度の改善についてのご意見、あるいは預かり 保育の取り扱いについての議論等が挙がっています。13ページの下のところからは「病児・ 病後児保育」、これは働き方の見直しが前提だけれども、その充実を図る必要があるという 議論です。  14ページ目の真ん中のところでは「育児休業給付等」に関して、そもそも育児休業制度 を取りやすい環境づくり、あるいは制度の周知とともに給付についての議論もいただいて います。一番下のところは「児童手当」に関連して、扶養控除を税額控除に見直していく 必要があるのではないかという議論をいただいています。  最後に15ページ目ですが、「多様な主体の参画・協働」ということで幾つか視点をいた だいています。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。前回、私どもが事務局にお願いしました資料も含めて委員の 意見の整理等、本日も事務局におかれましては大変膨大な、そして貴重な資料をご用意い ただきましたこと、ありがとうございます。また駒村委員におかれましては、先ほど私ど もが今後議論する上で大変貴重な視点について発表いただきまして、ありがとうございま した。  それでは、ここから後は質問も含めて、どうぞ自由な意見交換をお願いしたいと思いま す。どなたからでも結構です。よろしくお願いします。では、清原委員。 ○清原委員  失礼します。今日は前回、委員の皆様からご要請のあった点について、資料2で充実し た資料を作っていただきましたので、私もかなり理解を深めることができました。特に資 料2-1について申し上げます。今回は金額も入りましたので、次世代育成支援に関する給付 費の負担割合と利用者負担について、それぞれの相違点あるいは特徴点がかなり明らかに なったと思います。私たちが次世代育成支援を考えていくときに、特に重要な、こうした 給付費の負担割合については、これまでの間、ニーズに応じたさまざまなサービスが補強 されていくプロセスの中で、その負担について明確な考え方の共有がなされて制度化され た場合もあるでしょうし、まず充実ありきということで負担のあり方についての考え方を 明確にしないまま進んでいったものもあったかもしれません。そのような中で、この一つ の表からも、どのような負担割合が望ましいか、あるいは国民、市民の視点からどのよう な望ましいサービスの整備が必要かということについて、あらためて意見を申し上げたい と思います。  今日は、併せて平成15年8月にまとめられました「次世代育成支援施策の在り方に関す る研究会」の報告書も提出されました。この内容は、私たちがこれまで第4回から第6回 にわたって議論してきた問題認識とかなり重なり合うところがあると思い、この報告書に ついては大いに参考にしていきたいと思います。特に、かなり踏み込んだ視点が、もう既 に5年前に提起されているわけですけれども、理念のところで、皆様から提起されていた 「未来への投資」、あるいは「次世代育成支援制度というものは、将来の労働力となる子ど もの健全な育成を図るという意味で、保護者世代のみが享受するということではない」と いうことが明確に示されていた点は注目されます。併せて5ページに示されているように 国、都道府県、市町村の費用負担の在り方についても、その重層性とともに、国全体が市 町村の自主的な取り組みを最大限尊重しつつも、国民の理解のもとに負担について明確に していくべきであるということがまとめられている点は重要だと思います。これから取り まとめに向けて、この報告書を一つの参考となる枠組みとしつつ、給付費の負担割合と利 用者負担についても方向性を示していくことが重要ではないかと思います。  2点目に、手前みそで恐縮ですが、三鷹市でも平成20年度の施政方針では『輝くまち三 鷹を目指して、「未来への投資」』ということを積極的に掲げさせていただきました。これ を掲げた理由の一つは、特に次世代育成支援のみではなくて、広く各世代の皆様にとって 保障されている広い意味での社会保障制度などについて、世代を超えて継続性を考えて整 備していくターニングポイントであるという認識でした。その意味で、今回のこの部会で の私たちの取りまとめは国としての取りまとめなのですけれども、基礎自治体で責任を担 っている立場としても、このようなポジティブな、前向きな方向性が理念として貫かれて いくということを期待したいと思います。  最後に、私たちは「地域間格差」ということを避けなければなりません。特に自治体は それぞれの事情が違いますから、子育て支援策についても、例えば預かり保育を重視する 地域、あるいは一時保育を重視する地域、幼児保育等について幅広く目配りする地域等、 それぞれに差があると思いますけれども、今回、大日向部会長のご提案による資料として 12ページに示されましたように、地域によって幼稚園就園率と保育所在籍率との見事なま での役割分担ということが示されたということも大変意義が大きいと思います。私はこれ らを根拠として自治体間格差ではなくてそれぞれの特徴を生かしながら、特にこの乳幼児 の総合的な子育て支援あるいは子育ちの支援についての標準的な目標や水準については、 共有をして臨んでいくことが重要だと思います。そうでありませんと、例えば妊婦健診に ついて、三鷹市でも今年度は無償で受診できる回数をようやく2回から5回に増加しまし たが、これが市町村だけで財源負担する給付で実施していますと、ある町に住んでいた人 は10回保障されているのに、ある市では3回の保障であるというような相違が生じます。 こうした差があることは、同じ命を預かる行政の取組として本当に望ましいのかどうか、 この辺については、今回示された資料などを根拠にしながら整合性を取ることが望ましい と思います。以上です。ありがとうございました。 ○大日向部会長  ありがとうございました。この部会のたたき台を考える上での方向性をまとめていただ いたと思います。ありがとうございます。  他にいかがでしょうか。杉山委員、お願いします。 ○杉山委員  ありがとうございます。ご紹介いただきました平成15年の、こちらの社会連帯による次 世代育成支援に向けての方の議論にも加わらせていただいて、本当にあのときの活発な議 論を思い出したりもしていました。この時期になぜこういう議論をしていたかというと、 ちょうど三位一体改革があって保育の一般財源化が進みそうだというタイミングで、もう 少しきちんと議論しようということでこの議論がなされたのですが、保育園は一般財源化 されて今に至っているという状況の中で、では一体どうすれば良かったのかと思ってしま うのです。  例えば、資料2の24ページは日本保育協会のあのデータの中で民間保育所運営費の一般 財源化には反対と出ていたりして、これは民間保育所ではありますが、本当に一般財源化 して良かったのか悪かったのかいうところへ、もうしてしまったから一般財源化で良いと いうことではなくて、この機会にもう一度考え直してみるということも必要なのではない かと思ったりしています。  同じく資料2の1ページの表を見ながら、質問も含めてですけれども、やはり国の負担 という部分をどう見るかというところで一つ議題になっているのが、公立保育所の国の負 担の部分がない。一般財源化されたからですが、今の新待機児童ゼロ作戦が進む中では、 この家庭的保育事業や放課後児童クラブのようなところに、例えばずっとでなくてもよい と思うのですが、集中的に財源を充てるという方法で国が負担をしていくということがあ ってもよいのではないか。あとは、児童手当のところを国が負担しています。ここの部分 はよくわからないので見て思っただけなのですが、これこそ一般財源化ができないのかと 思ったりするわけです。あとは、例えば延長保育や病児・病後児保育のところは、これは 企業の事情で延長保育や病児・病後児保育がつくわけですから、この部分に事業主の負担 がもう少しあってもよいのではないかと思いました。  あと、駒村委員の準市場のご発言は本当になるほどと思う部分がとても多くて、特に私 たちが平成15年に議論していたときに、新しい考え方として「共助の視点に基づく費用負 担」ということを打ち出していますので、もしかすると共助の部分が準市場のメカニズム を理解するのに一つ関係してくるのかと思いました。保育園の園長先生といろいろとお話 しさせていただいているときに先生方がよくおっしゃるのは、保育園というのは親と一緒 につくるものなのだというようなことをおっしゃっていて、サービスを受けるだけ、子ど もも受けるだけ、親も受けるだけというものではなくて、本当に一緒につくっていくとい う、それが機能なのだということを、私たちはやはりここでもう一度確認をして、それが システムにも反映するようなものになっていけばよいと思いました。  駒村委員の資料の2ページ目に、現行制度では目的のところが児童福祉になっています が、準市場になっていくと両立支援、良好な育成環境を普遍的に保障するようなものにし ていくということで、目的を見直してみてはどうかというご提案があったと思います。駒 村委員に質問なのですが、イギリスの場合は山縣委員がご指摘されているような純然と福 祉が必要な部分と、こういった両立支援、ワーク・ライフ・バランスに寄与する部分がや はり日本と同じようにあると思うのですが、その辺りはこの準市場の中でどのように踏み 込んでいるのか。もし資料等でわかるようなことがあれば、イギリスの場合を教えていた だきたいと思っています。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。それでは駒村委員、お答えください。 ○駒村委員  準市場というのは、きっかけはイギリスなのですが、考え方としては医療の分野などい ろいろな分野で入っていて、イギリスの保育施策について、参考にしているわけではあり ません。もちろんその福祉部分は当然残るわけですから、これは福祉目的の機能も当然残 しておかなければならないということだと思います。イギリスの保育サービス体系自体は、 いろいろと違う体系で、それほど日本の現状には参考にならない。対人社会サービス全体 の改革として準市場という考え方があって、アプローチはさまざまなアプローチがあるけ れどもそれはケース・バイ・ケースで、それが全部概念をして固めると一つのアイデアと して既に確立しているという意味です。 ○大日向部会長  吉田委員、お願いします。 ○山本委員  ちょっと、よろしいですか。 ○大日向部会長  山本委員が、お先にということですので。 ○吉田委員  お先に、どうぞ。 ○山本委員  先に言わせてください。私は委員になっても出席できなかったものですから、どういう 検討をされているのかよく知りません。前回は出てきましたけれども途中で退席しました。 それで、今日ずっと皆様のご意見などを見せていただき、聞かせていただきましたが、ほ とんどが費用負担のことを言っていますね。それと現行、今やっていることについていろ いろと言われている。これが良いか悪いかというお話のようですが、これから先はどうい う議論をするのでしょうか。どのようなことで、どのような議論を進めていくのかという ことを教えてもらいたいのです。なぜ私がそのように言うかというと、私は学者でもなけ れば専門家でもありませんから、ここへ出てきて何もわからないような議論をしてもかえ って迷惑になりますから、場合によっては、辞任し、専門家と替わろうと思うのです。で すから、これからどのようなことを議論していくのか、検討していくのかを教えてもらい たいと思いまして、発言をさせていただきました。時間を取って誠に恐縮ですが、教えて いただけませんか。 ○朝川少子化対策企画室長  十分なお答えができるかどうかわかりませんが、昨年末に子どもと家族を応援する重点 戦略で1回まとめがされています。そこでは大きく分けて、働き方の見直しが重要である という柱と、もう一つは子育てサービスの基盤を十分新しい枠組みで構築していく必要が あるという二つの柱が提言されています。働き方の見直しについては、今はワーク・ライ フ・バランス憲章というもので進めていきましょうということになっていますので、この 部会ではもう一つの、サービス基盤の充実をいかに図っていくか。そのときに、今のそれ ぞれのサービス給付がばらばらの制度になっている、その縦割りの制度を体系的に見直し て、一つの新しい枠組みとして構築していくことを検討していくべきだと。その際にサー ビスの拡充というのが大きく必要なので、財源の投入も大きく図っていく必要があるので はないかと、大きく言うとそういう議論を出発点として、今この少子化部会で議論いただ きたいということです。 ○山本委員  それでは、もう一つお伺いしますが、最終的にどのようにまとまればよいのでしょうか。 少子化の問題まで入っていくのか。それは関係なくて、今の幼保だけのことを議論すれば よいのか。それがまとまればよいということなのか、どちらなのでしょうか。 ○朝川少子化対策企画室長  この議論のかなり大きなパーツとして保育の問題があるというのは否定し切れないと思 います。しかしながら、議論の対象として保育だけを考えているかというとそうではなく て、少子化対策にかかわる幅広い対策をどのように構成し直すかという、保育だけではな い対策のことも併せて考えていく。それを比較的、包括的に考えていくということが目指 すべきところです。当然保育は重要な部分なので、保育の改革が議論の中心になっている のはそういうことです。 ○山本委員  先ほどの話を聞いていますと、幼保一本化という議論もしていますね。私の町にも幼稚 園もあれば保育園もあります。幼稚園というのは非常に古い歴史を持っています。一本化 するのは良いことだと私は普段から思っていましたが、そういうところまで入ってやるの か。最終的な究極の目的は、今の少子化の言うなれば解消のための促進にしていくのかと いうことなのです。だから、何かこう専門的な議論ばかりやったのでは、私は専門家では ありませんから、こういうことをやっていくのだということを教えていただきたいのです。、 保育園をどうするのかというだけの話ならば、私はもう今日限りで辞任をします。むしろ 他の専門家に出てもらって議論した方が効果は上がると私は思います。 ○朝川少子化対策企画室長  ただ今の山本委員から幼保の関係を真剣に検討するのかという点について、この制度を 構築していく上で3〜5歳のところをどうしていくのかというのは、まさに幼稚園をどう扱 うかということで非常に重要な論点になりますので、具体的な制度設計のときには必ずそ この議論をしていただく必要があると思っています。今の段階で非常に抽象的で何ともつ かみどころがない議論のように見えますのは、春の段階では基本的な考え方のところを議 論いただきたいということで委員の方々にお願いしてありましたので、夏以降に議論を具 体化していくときにもう少し目に見える形の議論になっていくのではないかと私どもも期 待しているところです。 ○山本委員  では、そういうことでお願いします。 ○大日向部会長  山本委員の現場感覚に優れたご経験は、私たちの委員会には是非とも必要と考えます。 ご質問にありました点等、さらに事務局からもご説明にあがらせていただき、ご了解をい ただければと存じますので、どうか委員留任の件を今一度お考えいただきたくお願い申し 上げます。本日のところはご退席ということで、ありがとうございました。 ○山本委員  ありがとうございました。 ○大日向部会長  それでは引き続き、よろしくお願いします。お待たせしました。吉田委員、お願いしま す。 ○吉田委員  たまたまイギリスの話が出たので、それを含めたことを申し上げます。私も資料を持っ てきていないので正確でないと思いますが、保育システムそのものというよりは、私が何 回か行っていろいろな政府機関の話を聞いた感じでは、イギリスというのはやはり経済的 なこと、あるいは移民の問題を含めて地域格差が大きい。結果的に子どもの健全育成にそ のしわ寄せがいって、将来可能性のある子どもがたまたまその地域、その家庭に生まれ育 っただけでそこで将来の可能性が消えてしまう。それはその子どもや家庭だけでなくて、 まさに社会にとって損失であるという、先ほどのOECDに近い発想があって、例えばシュ アスタートという、確かなスタートを切りましょうということで、乳幼児期の子ども家庭、 そして地域の活性化という視点で計画を作り、例えばその一環として今チルドレンズセン ターというイギリス版の総合施設を、むしろ子どもだけではなく地域活性化という視点も 含めてやっているということですので、本当はそういうお話を聞いていただいた方が逆に 基礎的自治体である市町村はそういういろいろな地域社会資源を活用しながら、その地域 の子どもや親や地域住民や、要するに町の活性化という視点にもつながるということを、 やはり一つは基本に据えるべきだろうと思います。  それからもう一つは、先ほどの駒村委員の準市場メカニズムというのを重要な視点だろ うと思って、大変興味深く聞かせていただきました。準市場というのは恐らくとらえ方に よって、どちらによってとらえられるのかという気がしているのですが、その際に一つ考 え方としてもう一回パブリックとは何なのかという辺りを押えなければならないのではな いかと思います。例えばある古い考え方だとパブリックというのは基本的には行政が強く 関与して初めてパブリックが担保されという言い方がある。そうすると旧来の措置という 発想から抜け出られない。多分もうそれでは十分ではないだろう。しかしやはり利用者、 特に子ども、それから親ということを考えたときには、パブリックというのはどういうも のなのかという、その公的概念を一度整理する必要が恐らくあるだろうということ。 そし て、その公的概念の中にもちろん国の役割、都道府県の役割、市町村の役割というものが あって、そしてもう一つは公的な概念をうまく整理できれば、ある種のパブリックなマー ケットを子育て支援、保育という世界で組み立てることができる。その際に前回で申し上 げたように、まず例えば理念をしっかりする。例えばソーシャル・インクルージョンであ るとか未来の投資であるとか、ウェルビーイングであるとか、そういう理念をきちんとし た上で、仕組みとしてまずルールを作らなければいけない。今あるルールというのは、例 えば児童福祉最低基準はある種の事前に作られた形式的なルールですが、それだけでは恐 らく機能しないので評価あるいはプロセス評価のような話が出てくると思います。いずれ にしてもそういうルールを作り、そのルールの中でそのサービスの提供主体あるいは提供 手段の多様化のようなものをどのように整理するのか。あるいは契約の問題もそういうル ール作りの中でどのようにとらえたらよいのか。それから質の向上とある程度の量的な担 保とのバランスをどうするのか。あるいは入所要件の問題をこのルールの中で、全体でど うとらえるのか。そして一方で、全体としてセーフティーネットをどのようにするか。特 にセーフティーネットというと子ども、利用者サイドがもちろん大事なのですが、モンス ター・ペアレントという言葉があるように、あるいは保育料や給食費の滞納という現状を 見ると、やはり双方向でセーフティーネットを当然考えなければいけないだろうと思って います。  そして一番大事な質ということになれば、以前ここの資料で確か四つの項目があったと 思います。一つは保育指針に象徴される保育内容、保育士や看護師等の職員、それから施 設設備の保育環境、そして監査や評価というものを質を取り巻く要因としていましたが、 多分駒村委員がおっしゃった、もっと踏み込んだ質というのは保育の内容、保育の実践、 あるいはその結果、反映としての子どもの育ちが実際どうであったのかという辺りを質と して果たしてどこまで検証できるかできないかという議論だったろうと思います。長くな るので簡単にしてもうすぐ終わりますが、その質といったときに特に子どもの育ちで言え ば、例えば生活リズムがどうであるとか、基本的生活習慣とか、発達や学び、あるいは人 や物と関わる関係性の力がどうだとか、あるいはストレートに体力・運動能力あるいは身 長・体重・体格など、それは確かにもう少しいろいろな研究をしなければいけないだろう と思いますが、そういう要素をもう少し整理して質やパブリックというものを組み立てて いただく必要があると思っています。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございます。貴重な視点をご指摘いただきました。特にパブリックの概念を 明確に再検討すべきだというのは、本当にその通りだと思いました。日本におけるパブリ ックというのはイコール「お上」というような考え方ですが、恐らくこういう準市場シス テムというものが普及するヨーロッパのパブリックは私たちのパブリックとは違うのでし ょう。その辺りをきちんと整理することが、具体的制度設計の検討に着手するときに大前 提として大変に必要な議論になってくると思います。 飯泉委員、どうぞお願いします。その次が宮島委員。 ○飯泉委員  先ほど資料2をご用意いただいたので、制度のことが非常にわかりやすくなっているわ けですが、この中で4ページに研究会の報告書の抜粋があります。「費用負担の在り方」に ついて「国民一人ひとりが次世代育成支援のために拠出するという新たな枠組み」と、本 部会に課せられた大きな役割の一つがここにあると思うわけであります。特に清原委員か らもお話が出ましたが、1ページに各制度のそれぞれの給付負担者の割合の問題や利用者負 担といったものが出てくるわけですが、見れば見るほどそれぞれの制度がみんなばらばら だということになるかと思います。そこで、現場を預かる我々として、実際に現場でまず2 点申し上げたいと思います。  一つは、それぞれ「給付費」のところにあります費用負担者と、それから費用負担の在 り方について、やはりこの際しっかりと整理をしていく必要があるのではないか。そして 今後求められる費用負担の在り方といったものをどのように求めていくのか。これを考え るべきではないかと思います。そういう意味では今、部会長からもお話がありましたよう に、20世紀と21世紀の在り方をやはりここで大きく価値観を変えていくべきではないか。 つまり公イコール官という20世紀型から、やはり公を成熟した民の皆様にも負担をいただ くという形で、例えばNPOの皆様には非常にさかんに第一線でご活躍をいただいていま す。またボランティアという感覚でもう少しやはり第一線に出てきていただく。ボランテ ィアはイコール儲けてはいけない、お金を取ってはいけないというのが日本の感覚なので すが、そうではなくて、やはりNPO概念が日本でも大分成熟してきましたので、こうし たボランティアの皆様にもやはり何がしかはしっかりと取っていただいて、そして雇用に も役立てていただく。そういう新しい公を官と民と全体で負担していく。そうした意味で 財源をどうするのか。全部を税金でというだけではなくて、例えばNPOに対しての税制 支援あるいは寄付控除、こうしたものが実は日本の場合はアメリカ、ヨーロッパに比べる と非常に劣後しているところがありますので、こうした点についても今後税制の在り方と して、検討また寄附金の問題として考えられたらよいのではないかと考えています。  もう1点は現場で起こる話なのですが、実は1ページに出てきます「現金給付」と「現 物給付」もまたそれぞれがばらばらです。例えば一例を挙げますと、次世代育成に対して 大きな効果だと言われています乳幼児の医療費の関係の助成制度も、現場では現金給付の 所もあれば現物給付の所もある。あるいはお金が非常にある東京都などは今、中学卒業ま で全部無料にしています。そして徳島県は大分頑張っているところでありますが、7歳未満。 多くはまだ就学未満の所が多くあるわけで、こうした点についても今後、確かに地方分権 ということでそれぞれが特色を持つということは良いわけでありますが、やはりこうした 点についても国がどういった形で基準を設けていくのか。今のこうしたばらばらになって いる背景には、実は国にペナルティー制度があるということも一つあるわけですので、こ うした点についても今後現金給付また現物給付のそれぞれのメリットとデメリット、また 制度についてもぜひお考えいただければと思います。  そして最後に1点、今どうしてもお金の話が出てくるわけです。ファミリーサポートセ ンターが良い例ですが、今の子どもに対しての対策です。しかしそこで高齢者の皆様のま さに生涯現役という、そうしたパワーといったものをどう使っていくのか。使うという言 葉は悪いのかもしれませんが、そうした頑張りといったものにご協力をいただくとか。病 児・病後児保育の問題も出ました。今、地方の医療現場では医師は本当に足りないという ことになっています。その一方で、やはりここの部会が検討する場でもあるわけですが、 女医の数が非常に増えています。しかし女医が子育てをすると途端に現場に戻ってこない。 我々としても、そうした女医にぜひ現場に復帰していただきたい。そうした医療のバンク 制度なども積極的に作っているところではありますが、例えばこうした皆様に病児・病後 児保育を担当していただくような制度も考えていけばよいのではないか。つまり、お金の 面だけではなくてまだまだ使われてない資源、先ほどのNPOもそうですが、そうした点 をやはり正面からとらえて考えていく。そうした方向に持っていかれれば、先ほど山本委 員からもお話がありましたように、やはり市町村からしてみますとなかなか具体的な話が 出てこないと、難しい議論だと言われてしまう。確かにそういった方向もありますので、 こうした具体的な事例も挙げていただいて、わかりやすく、そして制度の現場で一番苦し んでいる市町村の皆様に対しての大きなモデルもご提示いただければと思います。以上で す。 ○宮島委員  今日の駒村委員のお話は、行き過ぎた市場化ではなくて準市場メカニズムというお話で 大変興味深く、私は親をどういう形で巻き込んでいくかということが一つのポイントにな るかと思って聞いていました。先日、幼児を育てている保護者、小学生を育てている保護 者の方々と意見交換をすることがありました。そこで感じましたのは、親は単に保育サー ビスを受けたいという受身の状況を希望しているのではなくて、自分たちも子どもにとっ てどういう環境が良いのか一緒に考えたい。自分たちも参加したいと思っている方が多か ったのです。こうした力をうまく生かしてNPO法人などの形で参入してもらえば、少子 化対策に希望しただけ財源が全部そろうということは現実には恐らく厳しい中で、子育て の環境や質を上げていく力になるのではないかと感じました。以前、保育所が民間委託さ れた自治体で、保護者がNPO法人を自分たちで作って保育所の委託を受けた、その代表 者を取材したことがあります。話を聞きますと、とてもではないけれどできないと思える ような苦労が山積みで、その保育所は母親に弁護士がいたり、地域の専門家の協力も得ら れて委託にこぎつけたのですけれども、そこまで苦労をしなくてもNPO法人が参入でき ないだろうかとそのとき思いました。  例えば具体的にあるハードルの一つとして、保育所で求められる会計基準が社会福祉法 人の基準だということがあります。こうしたルールがあることで、自治体によっては参入 を社会福祉法人であることに限っている自治体もあると聞いています。また今の施策の中 で地域の人が比較的参入しやすいと思うファミリーサポートセンターでも、実際に参入し ている所を見ますと、行政と半分公的な組織である社会福祉協議会が8割近くを占めます。 まずはこうした参入の細かいところの入りにくさ、目に見えないハードルを下げて多様な 組織に入っていただいて、そして良い意味でいろいろなサービスを提案しやすいような形 にして質のアップを図るのが良いのではないかと思います。そうすれば保護者も単にサー ビスを受けるという受身だけではなく、協力的な良い保育環境が目指せるのではないかと 思います。 ○大日向部会長  ありがとうございました。岩渕部会長代理が少し早めに退席なさるということですので。 ○岩渕部会長代理  建設的な議論がなされて何も言うことはありませんけれども、一つだけ少し気になって いるのは、地方分権改革推進委員会からも出ています「保育に欠ける」という要件の問題 です。これは私の記憶では15年ぐらい前からずっとやるのだという話が出て、それが実現 していないような感じを受けています。もちろん財政的な重要度など問題もあると思うの ですが、その他には何も理論的な問題点というか、クリアすべき問題点がないのかどうか というところは、私自身が不勉強でよくわかっていないので、なければないで教えていた だきたいし、今後の役所としての意向なり決意表明があれば示していただきたい。以上で す。 ○義本保育課長  「保育に欠ける要件」については、いろいろなところで議論があります。ただこのペー パーにも書いてありますように、やはりその対象範囲をどうするかという問題になります と、基本的にやはり拡大していくことになれば、当然のことながらそれに見合うだけの保 育サービスの量的な確保、それに必要な財源がやはり確保されなければなかなか現実問題 としては難しいという議論をこれまでしてきたところです。ただ昨年の重点戦略の中にお いて、未来への投資ということで財源をしっかり確保して量的な拡大をしていくというこ とになれば、議論いただく環境は整ってきている部分はあるかと思います。ただ、この問 題についてはそういう総論での見直しの話だけでなくて、例えば単純になくしてしまえば よいのかという議論、あるいは誰を対象にするかということをどうするかという技術的な 問題もあるということですので、その辺も含めて今後この部会でも議論いただくことにな るかと思っています。 ○大日向部会長  ありがとうございました。ただ今の点は大変難しいかもしれませんね。鶏と卵のどちら が先かということかもしれません。ただ、財源確保をしていただくためにも「保育に欠け る」要件を理念的にきちんと整理しておくということも、この部会では議論していくこと だと思います。岩渕部会長代理、そのような整理でよろしいでしょうか。ありがとうござ います。  他にいかがでしょう。それでは大石委員と小島委員どうぞ。飯泉委員と岩渕部会長代理 は社会保障国民会議の方にご出席になられるということで、ここで御退席になられます。 ありがとうございました。それでは大石委員、小島委員、お願いいたします。 ○大石委員  「保育に欠ける」の続きなのですが、やはり公的介入をする最後の砦(とりで)のような位 置付けになってしまうと、かえってまずいのではないかと思いました。むしろ普遍的にす べての子どもを対象として子どものウエルフェアを上げていくという視点で、もう少し組 み換えて考えていくことができないだろうか。例えば、中には社会的養護を必要とする、 あるいはそれに近いような家庭かもしれないけれども、例えば親が働いていないから網目 から漏れてしまうような家庭もあるかもしれないわけですから、むしろ今、役所が手を入 れる枠組みをもう少し考え直していく形で、逆に提案できるようなことが望ましいのでは ないかと思います。  それからもう一つ指摘されている最低基準関係なのですけれども、駒村委員からのご説 明にもありましたが、やはり圧倒的に児童発達の専門家を交えた継続調査が多分日本には ないのだと思うのです。私は過分にして存じませんけれども、部会長の方がよくご存じだ と思うのですが、やはり本当はもっと前からしておくべきだった。質の良い保育を得られ ると成長してからこのように良い結果が得られるなど。例えばアメリカの研究では、アメ リカでは公的保育の枠組みが、非常に貧困な家庭だけを対象とした公的保育などの枠組み などがあるに過ぎないのですが、それでも質の良い保育を得られるとその結果として10代 の妊娠率が低いとか、スクールドロップアウトが低いというような、望ましい結果が得ら れるという実証があるわけです。ですから日本においても、多少遅くはなりましたけれど も、ぜひそのような調査を開始しておいていただけると、それによって良い保育がもたら す外部性を評価する手だてが出てきて、一定の質を維持するための基準を設ける根拠とも なり得るわけです。そういうことがないと、今保育をしている子どもたちが大きくなった ときにこういう良いことがある。社会的なコストがこれだけ削減できて、質の良い社会人 となって、今これだけ貢献しているというところの評価がどうしても過少になります。そ れをしませんと、どんどんコストカットという方向に進みがちになりますので、そこは非 常に重要なのではないかと思います。ぜひ、国の立場から着手していただきたいと思いま す。 ○小島委員  駒村委員の方からお話しいただいた準市場メカニズムについてのお話は、今日、本文の 方を少し勉強させていただきました。私たち連合の方でも、これからの新しい公共という 概念をきちんと整理する必要があるのではないかと思っています。吉田委員も先ほどおっ しゃいました「パブリック」、新たなパブリックの概念を整理する必要があるということで ありますので、まさに子育て支援のところについては、そこが一つ、これからの大きなポ イントになってくるのではないかと思っています。従来のまさに公共イコール官によるサ ービス提供ということではなくて、多様なサービス提供者によるサービスということ。し かし、そこにやはり公的な役割ということが基本に、ベースにあると思っています。そう いうことの概念の整理ということです。特に新待機児童ゼロ作戦で100万人規模の供給量 を増やすことになりますと、これは官だけでは到底間に合わないと思います。そこはまさ に、そういう意味での新たな公共という概念からのサービス提供をどう増やしていくのか ということが一つ。その際には、やはり認可保育所がどうしてもベースになると思ってい ます。そこはやはり中核に据えて多様な子育て支援のサービスをどう充実させるかという ことが基本だろうと思っています。  それと重点戦略会議の方でも指摘されている「緊急性が高い」ということから言うと、 現金給付よりも現物給付、現物サービスということが強調されていますけれども、現金給 付と現物サービスを二者択一的な概念で整理するのではなくて、そこは現金給付の役割と いうものは当然ありますので、例えば働き方の見直しということからすれば、育児休業を どう促進するかという観点で言えば、そこでの現金給付という所得保障であります育児休 業、給付金の在り方ということも併せて考えることになります。そういう意味では現金給 付と現物給付を対立概念として考えるようなことが、連携をどう図るかという中で、総合 的な支援策にどう影響するのかと思っています。 ○大日向部会長  ありがとうございました。岩村委員が先ほど手を挙げていらしたそうですので、福島委 員の後にお願いします。 ○福島委員  今日は資料2の1ページと平成15年の資料を出していただいて、非常にわかりやすくな ってきたと思います、5年前にもこういう議論がされているということで、ある意味では発 射台、基本的な議論のベースはできているという感じがしました。少子化というのは国の 一番大きな問題であり、国力や国富など、ある意味では国の競争力につながる問題であり ます。基本理念をまとめる際には、企業の競争力ということも含めて、そういうコンセプ トをぜひ一つ入れていただくべきではないかと思います。また、そのために国と地方自治 体、国・自治体と対企業、それから国と個人など、こういうとてもたくさんの視点が、ま さに20世紀から21世紀に組み立てを変えることが必要なのではないかと思うのです。こ の点を、うまく最終のまとめの中で方向付けしていくべきではないかと思います。前回会 合でも発言したところですが、国、自治体、企業、国民・市民のそれぞれ役割と費用負担 は連動していると思うのです。ですから何かその辺りをもう少し踏み込んだ形で次回に整 理していただければと思います。  企業は何をやるのかということを考えた場合、一つは、やはり仕事と生活の調和だと思 います。今日はワーク・ライフ・バランスを取り上げた会議が19時から開始されるという ことで、これが今の日本の現状かという印象もないわけでもないのですが、それは置いて おいて、やはり企業というのは、従来型から少し企業の経営活動を変えて、経営と働く社 員の仕事と生活の調和をできるだけ高いレベルでつくり出すということに注力すべきです ので、その点で、日本の企業がどういう形でリーダーシップを取れるのかをいろいろ検討 したいと思っています。何かそのようなことをそれぞれのところがもう一度原点に戻って やるということが、ある意味では一番大事なことではないかと思っています。 ○大日向部会長  ありがとうございました。岩村委員、お待たせしました。 ○岩村委員  時間があまりないので手短に申し上げます。まず第1点としては、今日少し議論があり ました地方分権等をめぐる議論です。地方分権推進改革委員会の考え方というのは従来の 国の補助金という仕組みでやっていると多分、厚生労働省の人がいますけれども、要する にひも付きの補助金になってしまって、地方公共団体でいろいろな工夫をしようと思って もできないというところに恐らく問題がある。だから補助金ではなく、例えば一般財源化 して地方公共団体でそれぞれ創意工夫を持ってやってくださいというような発想だと思い ます。ただその場合でも、今日吉田委員もおっしゃったように、地方であまりにも格差が 開いてしまうということ自体は問題があるというのも確かなのです。そうすると、そのと きの国の役割が一体どのようなものなのかということについて考える必要があるのでない か。それが最低基準という形になるのか。しかし最低基準というのも、その最低のライン をどう定めるかというのが大問題で、あまり高く定めればこれまた結局同じことになって しまう。その辺のところを検討しなければいけないのだろうと思います。  それから今日の駒村委員のお話は大変興味深くて、ただそれに若干触発されて少しコメ ントしておきますと、一つはやはり「保育に欠ける」というのをどうするかということは 一つの大きな問題で、考え方としては非常にラフに考えれば要件そのものについて、児童 福祉法第24条を変えてしまう考え方があります。ただ非常に問題になるのは、本当に措置 的な部分を残さなくてよいのかというのがやはり出てくるだろうと思います。そうすると もう一つ考え得るのは、両立支援系と何となくみんなが言っている施設など現物給付系の ものは思い切ってくくり出してしまって、別の法体系で考えるというのがもう一つの極端 な立場としてあるかもしれません。その方が実は財源などを整理する上ではむしろ非常に 考えやすいという気がします。  いずれにせよ、サービスの量自体を増やさなくてはいけないということになりますので、 やはり財源については確保の必要がある。そうしますと、各方面にわたって負担を求める ということになるので部会の考え方として、そういう方向で臨むのかどうかということを、 今後本当に腹を決めて考えなければならないということだと思います。他方で措置的な部 分についても、やはり今日ご指摘があったように社会的養護の部分などがありますので、 結局それもやはり財源の問題だということになり、同じ問題だろうという気がします。  それからもう一つは、市場のメカニズムも使って契約という考え方を問うかという話と の関係で言いますと、一つの大きな問題は契約という考え方と親と子の利益が必ずしも一 致しないということをどうするかというのが大きな問題になります。従来は、やはり市町 村などが主体でやっていたというところがあって、いわばそこは貢献的に介入して整理を していたのだと思いますけれども、契約という形で考えたときにはそこが違ってきますの で、そこをどうするのか。やはりそこは公的な主体で考えて、サービスの基準といったも のを設定することによって、そういう事態の発生を防止するという考え方に持っていくの か。ただその場合には無認可保育所の問題なども含めて検討する必要があるので、問題の 広がりはもっと大きくなるだろうという気がします。  3番目は、その市場のメカニズムの機能については、今日、駒村委員から非常に詳しいご 説明があり、おっしゃる通りなのです。ただ、聞いていて少し気になったのは、駒村委員 の議論は施設などを選ぶときの話なのですね。そこでの情報の完全性と不完全性をどうや って解消するかという話に絞られるような気がするのですが、実は入った後をどうするか という問題もあって、要するに市場のメカニズムというのは、ある程度きちんと機能する ためのコントロールシステムなり何なり、特に法律家の観点からすると実行性のあるメカ ニズムをどうやって作るのかが非常に難しい。特に、施設などに入った後どうするか。そ この監督をどうするかという非常に難しい問題があるという気がします。  最後に報酬の体系です。おっしゃるように、質の良いサービスについて良い価格を付け ることによってインセンティブを持たせるというのはその通りです。もちろん質の良いサ ービスをどう定義するかというのは、また駒村委員がおっしゃるように大きな問題です。 ただそれをやると、出てくるのは多分給付の総量自体が増えていくという問題です。さら に定率負担にすると利用者負担が増えていきますので、所得が低い人たちはそういう所が 選べない。そうすると、そこは高額サービス費のような形で面倒をみるということになる とやはり総量が増えていくという話なので、そこをどうコントロールなり整理するかとい う問題があるような気がしました。もう時間がありませんので、またいずれ個別にお教え いただければと思います。以上です。 ○大日向部会長  本日は時間が尽きましたが、ただいまの岩村委員のご指摘は大変興味深いご指摘ですの で、個別ではなく、次回にでもぜひ今のQ&Aを展開していただければありがたいと思い ます。  それでは予定の時間がまいりました。本日は本当に貴重な数々の意見をありがとうござ いました。今日、皆様が何度も言及なさいましたのが、資料2の1ページ目の給付費の負 担割合の表です。これは前回の福島委員のご要望で事務局に作っていただいたのですが、 これからの議論の前提を考える上でとてもわかりやすい資料だったと思います。福島委員 が「発射台はもう整った」とおっしゃられましたが、この後はどういう方向に向かって撃 つかということだと思いますが、その辺りに関して、今日は皆様から大変貴重なご意見を いただきました。また駒村委員からのご発表につきましては、委員の皆様からも参考にな ったというお声をいただき、また最後に岩村委員がご指摘くださった点は、今後の私たち の部会の議論に厚みを持たせていただけたのではないかと思います。岩村委員と駒村委員 のディベートは次回もぜひ続けていただければと期待していますので、よろしくお願いし ます。  それでは、これまでの議論と本日の議論を受けて、次回までに事務局に基本的な考え方 についてのたたき台の案を作成していただき、次回の部会に提出していただきたいと思い ますが、そのような段取りでよろしいですか。  それでは、最後に次回の日程について説明をお願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  本日は誠にありがとうございました。次回の日程については、5月9日(金)15時から厚生 労働省9階の省議室で予定しています。引き続き、次世代育成支援のための新たな枠組み についての議論をお願いしたいと考えています。お忙しいところ恐縮ですが、ご出席いた だきますよう、よろしくお願いします。 ○大日向部会長  それでは、本日はこれで閉会といたします。ありがとうございました。 (照会先)  厚生労働省  雇用均等・児童家庭局総務課  少子化対策企画室  (内線7944)