08/02/27 薬事・食品衛生審議会薬事分科会血液事業部会運営委員会・安全技術調査会 合同委員会 平成20年2月27日議事録 平成19年度薬事・食品衛生審議会薬事分科会 血液事業部会運営委員会・安全技術調査会 合同委員会 議事録 1.日時及び場所   平成20年2月27日(水)13:00〜   霞ヶ関東京會舘「シルバースタールーム」 2.出席委員(13名)五十音順 今井 光信、大平 勝美、岡田 義昭、高橋 孝喜、◎高松 純樹、新津 望、花井 十伍、 半田 誠、水落 利明、山口 一成、山口 照英、○吉澤 浩司、脇田 隆字   (注)◎運営委員会委員長(座長)、○安全技術調査会委員長  欠席委員(4名)五十音順   内山 巌雄、菊地 秀、杉浦 亙、高本 滋 3.行政機関出席者   新村 和哉(血液対策課長)   植村 展生(血液対策企画官) 他 4.議題   1.化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法)の導入について   2.輸血用血液製剤に対するウイルス感染対策と不活化技術の導入について   3.その他 5.備考   本合同委員会は、公開で開催された。 ○血液対策課長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから平成19年度薬事・食品衛生 審議会血液事業部会運営委員会・安全技術調査会合同委員会を開催いたします。本日はお 忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございます。私は血液対策課長の新村と申します。 どうぞよろしくお願いいたします。  まず今回の会議の持ち方について御説明申し上げます。まず本日の会議は公開で行うことと なっておりますので、よろしくお願いいたします。本日は安全技術調査会の内山委員、菊地委 員、杉浦委員、高本委員から御欠席の御連絡をいただいておりますが、その他の委員は全員 御出席とお聞きしております。また、採血事業者等血液事業の担い手として、日本赤十字社血 液事業本部から田所憲治さん、日野学さんにお越しいただいておりますので、どうぞよろしくお 願いいたします。  議事に入らせていただく前に、本日の合同委員会におきましては、個別品目の承認の可否や 個別品目の安全対策措置の要否の審議はございませんけれども、議題の2、輸血用血液製剤 に対するウイルス感染対策と不活化技術の導入については、血液事業の運営において日本 赤十字社が調達する技術の提供企業との利益相反を確認しているという観点から、薬事・食 品衛生審議会薬事分科会における利益相反問題の対応に関する昨年4月23日の薬事分科 会申し合わせを準用して利益相反の確認を行いましたところ、審議及び議決への参加につき まして退出委員はおられません。議決には参加しない委員として高松委員、花井委員、半田委 員となっておりますので、御了承をお願いいたします。  この後の進行につきましては、本日の合同委員会の座長をお願いいたしました高松運営委 員会委員長にお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○高松委員長 皆さん、こんにちは。それでは、まず初めに事務局より資料の確認をお願いい たします。 ○事務局(武末課長補佐) 資料の確認を行います。まず議事次第の紙が表紙として1枚ござ いまして、座席表が1枚ございます。血液事業部会運営委員会委員名簿が1枚ございまして、 血液事業部会安全技術調査会委員名簿が1枚ございます。右肩に資料1とございます「検査 法の変更について(CLEIA法の導入について)」という資料がありまして、資料2−1としまして 「輸血用血液製剤の更なる安全性向上に向けて」という資料がございます。A4横で資料2−2 としまして日本赤十字社血液事業本部の「感染性因子の不活化技術評価」という資料がござ います。その後ろに右肩に別添1と書いてございます「感染性因子不活化効果」、別添2「凝固 因子活性及び血小板等に及ぼす影響」という資料がございます。次に別添3「安全性試験(前 臨床試験)の結果」という資料がございまして、A4横の別添4「諸外国における感染性因子不 活化技術の製造承認及び導入の状況」という紙が2枚ございます。最後に資料3、平成19年 11月14日運営委員会配布資料というので一連の資料がございます。以上が本日の資料でご ざいます。 ○高松委員長 ありがとうございました。  それでは、本日の議題第1、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法)の導入について、日本赤 十字社の方から御説明いただきたいと思います。 ○日野担当者(日本赤十字社) 日本赤十字社の日野と申します。よろしくお願いいたします。 資料ナンバー1を用いまして検査法の変更について(CLEIA法の導入について)」ということに ついて御説明申し上げます。  現在、日本赤十字社の方は以前から凝集法という感染症検査方法を用いまして、そこにあり ますように9つの検査を行ってきたところでございます。今後日本赤十字社が薬事法に対応す るために、具体的に言いますとGMPに対応、あとは検査の集約ということも今進行している中 で、凝集法よりもこういったCLEIA法できっちりGMP対応をしていった方がいいと判断しまして、 既に本年の1月2日九州血液センターにおいてこの検査法を導入しているところでございます。  試薬の性能につきましては現行と同等、またはそれ以上の感度、特異性が確認されておりま して、特にHBs抗原の検査につきましては、感度は0.1ng/ml以上、パルボウイルスに関しまし ては1×10の6乗copies/ml以上という現行よりも優れた試薬を使って検査を順次導入していく ということにしております。  2番の検査システムにつきましては、こういったかなり規模的には大きなものですけれども、こ のCL4800という絵が4つ描いてありますけれども、その部分で感染症検査を行いまして、行っ た後、一番右の方に小さな箱になりますけれども、生化学の検査を実施していくということで、1 つのラインで検査ができるということにしております。  3番、導入のスケジュールということで、冒頭にもお話ししましたけれども、本年の1月2日から 九州血液センターを皮切りに、現在北海道と埼玉県の赤十字血液センターにおいてこのCLEI A法に変更しているというような状況でございます。おおむね順調に検査は終了しているという ことになります。  次の2ページに写真を載せております。かなり大規模なものになりますけれども、こういった形 で試験管の遠心から開栓をすべて全自動で行うことができる機器ということになるかと思いま す。  3ページにつきましては、こちらの方は先生方御存じだと思いますけれども、下のCLEIA法の 例ということで2ステップ法ということで検査を行っておりまして、最終的に発光量をカウントして いくということでございます。  次の5ページはちょっと細かい表で申しわけないんですけれども、日本赤十字社が遡及調査 を実施したときに、各医療機関側にどういった試薬を使ってやっているかということの技術提供 をするためにこういった表をつくって提供をしているというところです。  この表の一番下にウインドウ期間と書いてありますけれども、こちらに関しましては、CLEIA 法を始めたのはつい最近でございますので、ここに書かせていただいているものに関してはHB s抗原検査が現行のRPHAという方法を使用しておりますけれども、そういった方法でのウイン ドウ期間の推定を日赤が行っておりますので、その数字をここに入れさせていただいているとい うことで、これは参考でございます。  実際にCLEIA法を使ってどういう形で検査結果が変化したのかしないのかということについて は最後の7ページになりますけれども、上の部分が九州血液センター2008年1月から開始して おります。こちらの方は1月から九州ブロックすべて福岡県の血液センターで実施しておりまし て、その数字を記載しております。下の黄色の部分に関しましては、その1カ月前になりますけ れども、凝集法の検査を行ったときの数字でございます。例えばHBs抗原検査であれば、凝集 法の時代であったときには0.05%の陽性率だったんですけれども、CLEIA法を導入したときに は0.22%ということで、抗原検査はかなり精度がよくなっているということもありますので、こうい った数字がたたき出されているということになります。  HCV抗体検査につきましては、凝集法の時代は0.09%、1月に開始したときには0.09%で、 率からいきますとほぼ同じような数字になっているかと思います。ただ、今ままでもそうだったで すけれども、日本赤十字社の方ではブラッドスクリーニングのためにかなり試薬を改善する必 要がやはり出てくると思いますので、そういった試薬の改善につきましても今後引き続きやって いきたいと思っております。  簡単ではありますけれども、以上検査法の変更についてということで御説明を終わります。 ○高松委員長 ありがとうございました。ただいま御説明いただきました件は昨年11月の運営 委員会で既にお話をいただきました。技術部会の先生方にもディスカッションしていただこうとい うことで改めて議題としました。何か御質問あるいは御意見ございますでしょうか。どうぞ。 ○水落委員 HBs抗原ですけれども、感度に関して私ずっと以前からお願いしているんですけ れども、やはりIUにしていただきたいと思うんですね。これngと表示されていますよね。国際整 合性からいってもぜひIUにしていただきたいと。 ○山口(照)委員 細かい点を2点と全体のことをお伺いしたいんですけれども、例えばHBV抗 原のときに陽性率が高くなっているということなんですけれども、陽性率が高くなったというその 高くなっている部分ですべてこれはNATポジティブでしょうか。要するに擬陽性ではないというこ とは一応確認いただいているのかという点と、もう1つは、HBs抗体、要するに日赤法だとサン プを使ってBに対してはその可否を判断していると思うんですけれども、HBs抗体についての 感度というか、逆に言うとHBs抗体はファルスポジティブが出てしまうとリスクが非常に高くなっ てしまいますので、その点のお話をもし教えていただければと思います。  それと、もう1つ、これは全体にかかわる話ですけれども、こういった検査法自体が多分一変 対象になっていないということ自体ちょっと僕は疑問を持っていまして、例えばFDAですと、こう いうふうな検査法は多分FDAの認可を得ているというふうに思うんですけれども、こういう変更 に関して、これはGMPというか製造方法ではないので検査のところになるんですけれども、総 合機構へやはり一変申請すべきではないかなと。その辺についてはどうお考えかと思います。 ○日野担当者(日本赤十字社) 1点目のHBs抗原が昨年の0.05%から0.22%になったという ことで、約4倍増えているわけですけれども、感度がよくなったばかりではなくて、NATを一応や っておりますけれども、その増えた分についてすべてNATが出ているか、HBVのウイルスが出 ているかというと、それではございません。当然カットオフ値が1.0以上ですので、それと1.0から 2.0の間に関しましては、吸収試験というものが現在のところできない状況ですので、そのあた りも含めて今後試薬の改善をする必要があるのかなと思っています。  2点目につきましては、HBs抗体に関しましては、先生御存じだと思いますけれども、コアが 陽性でHBs抗体が陽性のパターンは適にしておりますけれども、凝集法の時代からもHBs抗 体の力価が200mIU以上ないと適にはしておりませんので、当然コア抗体もHBs抗体も定量法 でございますので、そこをきっちり見ているというところがあります。  一変対象ではないかということですけれども、こちらの方は日赤の方で承認の中身を見た範 囲内では読み切れるという判断でございましたけれども、先生、前回もいろいろ御指摘ありまし たので、そのあたりは今後少し検討させていただければと思います。 ○高松委員長 ほかに御意見、どうぞ。 ○山口(一)委員 まず確認ですけれども、これは同じ検体ではないのですよね。この5万検体、 別々ですね。新しいシステムの方が確かに少し陽性率が高く出ています。これは疑わしきはス クリーニングするという意味では非常にいいかと思うんですけれども、これの確認はどこかある 段階ではされるのでしょうか。一般的にではなくて、この妥当性という意味ではされているかどう か。 ○日野担当者(日本赤十字社) 当然CLEIA法に変更するときに日赤の社内で評価はしてお りまして、先生がおっしゃっているのは、今後ルーチン検査ということですか。ではなくて、今ま で評価をきちんとしてきたかということでよろしいですか。それは社内の方できっちり評価をして おりまして、薬事的な責務というのが製造販売業者にもありますので、GMP上の流れと製販業 の流れの中で変更管理をしているということはあります。 ○吉澤委員長 移行期間を1月から6月に設けていますね。この移行期間という意味なんです が、従来の方法と新しく導入しようとする方法とを同時進行で一定の場所で検査をしているとい う意味なのでしょうか。 ○日野担当者(日本赤十字社) 日赤として初めてCLEIA法に変更したということもありますの で、まず余り規模の大きくないところから少し見ていこうということでございます。最終的に日本 全国で見ますと凝集法で検査しているところとCLEIA法で検査しているというところはそういう 意味では混在しているということになるかと思います。この夏をめどに一斉にCLEIA法に切り かえるということです。 ○吉澤委員長 いや、今の質問は、九州のデータがここにありますね。この九州の血液センタ ーで従来の方法と新しく導入する方法とを同時進行でしていらっしゃいますかという質問です。 つまり違う集団を対象として陽性率を比較しても余り意味を持たないわけですね。感度という話 をしてもですね。一番大事なのは、従来の方法と新しく導入する方法で乖離が生じた検体があ るはずです。その乖離が生じた検体を相互に比較して、新しく入れようとする方法の妥当性をき っちり検証してから移行するということをしないといけないのではないかと思って聞いたのです けれども。 ○日野担当者(日本赤十字社) 先生がおっしゃるとおり、この7ページの資料につきましては 12月分と1月分のそれぞれの検体について乖離したものについて精査しているかというと、今 日お出ししたものに関しては特にしておりません。ただし、先ほどもちょっとお話ししましたけれ ども、CLEIA法に変更するに当たって、当然凝集法とCLEIA法で先生がおっしゃるような乖離 例が出てきますよね。そういったものに関しての精査はNATも含めてやっているということにな ります。 ○吉澤委員長 すみません、もう1つ。特にHCV抗体のところ、これ抗体の検査ですね。今まで の経験からしますと、抗体の検出感度というのを上げますと、ウイルスがいないケースをいっぱ いつかまえてくるわけです。今までの凝集法は抗体価をあるレベルでカットしているために、抗 体陽性例の中の大体7割がウイルス陽性で3割がウイルスがいないというのが大体定着した データであったのですが、肝炎ウイルス検診を導入するに当たりまして、エンザイムイムノアッ セイで抗体の測定をしたところ、抗体陽性者の6〜7割がウイルス陰性で3〜4割がウイルス陽 性という結果を得たことがありましたので、CLEIA法に変えますとそういうことが起こるのか起こ らないのか。安全性を確保するというのは大事なことですが、かといって、その余り、廃棄率を むだに上げるということが起こるのかどうかというのがちょっと気になったものですから。 ○日野担当者(日本赤十字社) すみません、過去には実はすべての検体についてシングルN ATを実施して、ドナーさんの方に通知をしてやっていたのですが、それを今徹底しておりますの で、そういう意味では今後CLEIA法に関して、例えばHBV、HCV、当然HIVも含めてNATを実 施していくという形で今やっているところです。そういう意味では先生がおっしゃられるような検 討はできるのかなと思っています。 ○吉澤委員長 すみません、くどいようですが、HCVについては抗体陽性は廃棄するわけです よね。そうすると、ウイルス陰性例をいっぱい廃棄し過ぎるということが起こらないかどうか。今 までのレベルでもウイルス陽性例ををほとんどチェックしているわけです。ですから、新しく導入 する測定法でもそこのレンジに合わせたところでカットオフ決めるということをされるのか。つま りそういうことをするためには、現時点で同時進行でパイロットスタディをして、乖離が生じた血 清については保存しておいて、検討をして、カットオフ値を合理的に決めるということをしていく 方がいいのではないかと思ったわけです。 ○田所担当者(日本赤十字社) 御指摘ありがとうございます。先ほどちょっと言いましたけれ ども、前はHCVの抗体のタイターによって、通知をする際にNATをして出すのかどうかというの をやっていて、低力価や中力価レベルのものだけ確認していて、それより高い力価のものにつ いてはウイルスがいるからNATはやっていなかったわけですけれども、今ここで移行している 段階では全部のものについて今確認しながらやっています。  先生がおっしゃっている、そういう意味ではNATによる確認は今している。とりわけ導入過程、 全国導入されるまでの過程ではそういうことをトライアルとしてやりながら進めています。  ただ、おっしゃるように、前の方法とどうなのかという点をその今の個別NAT以上にする必要 があるかどうか、ちょっと検討させていただいていきたいと思います。 ○高松委員長 そのほか御意見ございますか。よろしいでしょうか。  それでは、今いろいろ御意見いただきましたので、日本赤十字社としてもまた検討してよろしく お願いしたいと思います。  それでは、引き続きまして第2の輸血用血液製剤に対するウイルス感染対策と不活化技術導 入についてでございます。これは日本赤十字社が進めております安全対策の8項目の1つで、 従来までも運営委員会でいろいろお話をいただきました。お手元の資料にもございますように、 ヨーロッパではこういう技術というのは一部導入されているわけであります。また、アメリカでは その検討が始まったということで、本日は日本赤十字社から現在の状況をお話をいただくという こととともに、まず現時点での我が国における輸血用血液製剤の安全性、特に感染病原体に 関する安全性につきまして御説明いただきます。事務局の方からお願いします。 ○事務局(武末課長補佐) では、資料2−1に基づきまして輸血用血液製剤の更なる安全性 向上に向けてということで、まず現状でどういった病原体に対してどういった対策がなされてい るかをざっと御説明申し上げます。  1番の輸血後肝炎発症率の推移ということでございまして、これが1960年から現在までの輸 血後に発生したB、C合わせた肝炎の推移でございますが、当初50%程度ありましたのが、現 在はかなり測定できないようなレベルまで来ておりまして、B型肝炎については年間10例くらい、 C型肝炎については5年に1例程度まで下がってきているというのが現状でございます。  2番目の方で、輸血用血液製剤の安全対策としてどういった病原体を念頭に置いてどういっ た対策をやっているか。その有効性はさまざまではあるとは思いますけれども、そこを整理した ものでございます。  まず献血の受付としましては、本人の確認、問診・検診等で海外渡航歴であるとかさまざまな 過去の既往歴をお聞きしまして、ウエストナイル熱とかSARSであるとかいうことをお聞きして、 場合によっては献血を御遠慮いただくということで採血をしないということを行っております。  次に、採血をする際に徹底した皮膚消毒や初流血除去を行うことで、特に血小板で問題とな ります皮膚の常在菌の除去や混入防止を行っています。  さらに、その採血した血液に対しましては検査を行いまして、そこにお示ししておりますように、 異常があれば、今少し議論がございましたように、製剤化をしないで使用しないというような方 針をとっているところでございます。製剤化の際には昨年全輸血用血液製剤に導入しました保 存前から白血球を除去するという取り組みをやっておりますが、これは白血球が持っている細 菌による汚染を防止することを目的としておりまして、濃厚赤血球で問題となりますエルシニア 菌を製剤中に入れないためとか、白血球に感染しているサイトメガロウイルスを製剤の中に入 れないというような効果がございます。  さらに供給のところで、新鮮凍結血漿については180日、半年間の貯留保管を行っておりまし て、専門用語ではクアランチンというわけでございますけれども、これによって献血後に発症し た病原体、患者さん、献血者が分かった場合には、当該の献血者による貯留してある血漿に ついては使用しない。そこでブロックをすると。使用されることを防止するという取り組みを行っ ております。  最終的に輸血をされた後でございますけれども、副作用や感染症情報の収集を行いまして、 さらにフィードバックをかけてルックバックで感染症の予防を行っているというのが今の安全対 策の流れでございます。  ページをめくっていただきまして、A4横の紙でございますけれども、安全対策の変遷として、 主に平成11年10月以降に行ってきたものでございます。表の見方としましては、上の方で行っ てきた対策、一番下に対象となる病原体というところで整理をさせていただいております。左の 病原体からいきますと、新興感染症・再興感染症病原体、異常プリオンに対する対策としては、 海外の渡航歴による献血の制限であるとか、プラセンタ注射をした方の献血制限を行っており ますし、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、エイズウイルスについてはNATと中心として精 度の向上を年々500プール、50プール、20プールのNATを実施しています。  また、肝炎その他いろいろな感染症に対しては、肝炎一般としてALTの検査を行っているとか、 北海道での試行的なE型肝炎に対するNAT、また今回CLEIA法の感染症検査へ移行するこ とで感度を上昇させるというような取り組みを行っています。  エルシニア、サイトメガロウイルスについては先ほど御説明したとおり保存前の白血球を除去 など、あと、成分献血由来の新鮮凍結血漿や全血由来の新鮮血漿に対する保存前の赤血球 除去を順次行ってきたところで、今のところすべての製剤について保存前の白血球除去を実施 しております。  皮膚の常在菌については初流血除去、その他遡及調査や保管貯留を行うことでさまざまな 感染症に対しての対策を行っているというところでございます。  この図を見ていただいて分かるように、次第にウイルスから細菌に対する取り組みというのが 近年取り組まれてきているというような流れが全体的にはございます。  1枚めくっていただきまして、4番目としまして、日本と諸外国の安全対策と輸血後感染症の 残存リスクということで、主なウイルス感染症、B型肝炎、C型肝炎、エイズウイルス、ウエスト ナイルウイルス、ヒトパルボウイルスB19についてNATを実施しているか、プール数、残存リス ク、実際の感染症発生事例ということでまとめてございます。国としては、日本、アメリカ、イギリ ス、ドイツ、フランスということでまとめておりますけれども、C型肝炎とエイズウイルスについて はNATはいずれの国も行っておりますけれども、B型肝炎については日本とドイツで、フランス は海外県、熱帯にあるフランスの地方でのみ行っているということで、NATを行っているのは日 本とドイツのみでございます。一方で、ウエストナイルについては、アメリカ、イギリスで行ってお りますけれども、日本やドイツ、フランスでは行っていない。パルボウイルスについてはドイツが NATを行っておりますが、その他の国では行っておりませんで、日本についてはパルボウイル スについては抗体検査の方で検査を行っております。  プール数については数字が小さいほど感度が高くなるということでございますけれども、日本 では20プール、アメリカでは16プール、イギリスでは96プール、ドイツでは96プール、フラン スでは8プールであったり24プールであったりということでございます。  残存リスクについては、もともとの原著を少し改変しまして100万当たりに直しておりますので、 値が大きいほどリスクが高いということになりますけれども、各国の状況はそこにお示ししたと おりでございます。これはあくまでも残存リスクですので、各国の感染罹患率にいろいろな安全 対策でどの程度途中で感染症対策がなされて危険性を低減できたかという結果が残存リスク に残るというような形ですので、これだけで安全対策の優劣を比べるものではございませんが、 現実として血液を受ける方の感染症のリスクとしてはこの程度のものが今あるというふうに理 解していただければと思います。  実際、確認症例としましては、日赤については7年間を集計しておりますので、1年間当たり に直しておりますけれども、HBが10例、Cが1年当たりでは0.29例、HIVについては1年当た り0.14例というようなことになっております。諸外国についてはその下に書いてあるとおりでござ います。  次をめくっていただきまして、ウイルスを中心にまとめておりましたが、次は細菌感染症等でご ざいます。対象国は先ほどと同じ並びになっておりまして、細菌培養の検査をやっているかどう かと血小板製剤の有効期限を述べております。有効期限を安全対策として1つ述べております のは、表の下の2行目のところに書いてございますけれども、血小板は24度で振とうしながら 保管するために、基本的に血液は無菌でございますけれども、何らかの原因で混入した細菌 が増殖して、それが輸血をした際にいろいろな副作用を起こすということで、有効期間が短いほ どある意味でリスクは少なくなる。安全対策としては有効であるということでございます。その観 点からしますと、日本は細菌培養は行っておりませんけれども、有効期限が3日と、諸外国に 比べて非常に短い有効期限で利用していると。アメリカやイギリス、ドイツ、フランスは5日ある いは7日で血小板を利用しているということです。  残存リスクについてはなかなか日本においては推定は困難でございますけれども、確認症例 で述べますと、日本においては年間0.71程度、マラリアが1例、バベシアが1例ということで、ア メリカは細菌感染が8例、イギリスは2例、ドイツは27例、フランスは10例発生しているというこ とでございます。  次に5番目として、現在スクリーニングの検査を実施していない病原体というのを一応整理し て並べてございますが、肝炎ウイルスについてはA型肝炎とE型肝炎。ただし、日本では北海 道で試行的にE型肝炎については検査を行っております。その他のウイルスとしてはウエストナ イル、SARS、デング熱、麻しんウイルス、鳥インフルエンザ等のものがございます。細菌としま しては、皮膚常在菌、エルシニア菌。その他の病原体としては、プリオン、マラリア、バベシア、 トリパノソーマ(シャーガス病)、リーシュマニアなどが今スクリーニング検査を実施していないと ころですけれども、下線部でお示ししたのが一般的に不活化効果があると言われている病原体 でございます。  最後に参考文献をつけておりますけれども、次に日赤の方から現在の不活化の状況につい て御説明いただいた後に、最後に諸外国の導入状況についてまた事務局から御説明させてい ただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○高松委員長 ありがとうございました。  それでは、日本赤十字社の方からお願いいたします。 ○日野担当者(日本赤十字社) それでは、資料ナンバー2−2を用いまして、感染性因子不 活化技術の評価についてということで御説明いたします。  輸血用血液製剤の不活化技術につきましては、化学物質を用いた感染性因子、ウイルス、 細菌、原虫などがございますけれども、そういった技術とはどういった技術かと申しますと、不 活化剤であります化学物質に一定の光を照射することによって、そのときに発生する活性酸素 や不活化剤が直接病原体の核酸に結合しまして、それで感染性因子の複製を阻害して死滅さ せる技術ということになるかと思います。薬剤を全く用いないで遠紫外線(UVC)照射のみで病 原体を不活化できるという技術についても最近開発されつつあるという情報が得られているとこ ろでございます。  感染性因子不活化技術のうち、一部の諸外国で製造承認されているものは何かと申しますと、 3種類ございまして、メチレンブルー、アモトサレン(S−59)、リボフラビン(ビタミンB2)であり、 それぞれの特性によって血漿または血小板製剤の不活化が可能です。赤血球製剤に対する 不活化技術というのは現在開発の途上にあり、現時点では臨床に応用できるものは全くござい ません。しかし、どの技術も1つの方法であらゆる病原体を不活化できるというものはないとい うことが1つの今後検討するときの課題になるかなと思います。  1)でございますが、不活化技術の概要ということで、メチレンブルー、リボフラビン、アモトサレ ンについて情報が得られておりますので、簡単に御紹介いたします。メチレンブルーにつきまし ては血漿製剤のみが不活化できるということになるかと思います。リボフラビンとアモトサレンに つきましては血漿製剤と血小板製剤が不活化可能という技術でございます。インアクチンと書 いてありますけれども、ちょっとこれは誤植になりまして、実際にイナクチンと言われているそう ですけれども、こちらとS303につきましては、先ほども申しましたように、前臨床の開発段階に あるということで、現在赤血球製剤については全く不活化技術が導入できるものはないというこ とです。  いずれの不活化技術につきましても、不活化が有効とされる病原体といいますのはHBVとか HCV、HIVのようなエンベロープウイルス、いわゆる脂質膜を持つウイルスが一番不活化が得 意とするというところですけれども、それぞれの不活化剤によって一部の原虫が不活化できたり、 一部の細菌に応用できたりということが言えるかと思います。  それと、ここで1つ、後で課題になるかと思いますけれども、それぞれ、例えばメチレンブルー の容量規格というところを見ていただきたいんですけれども、こちらの方は血漿で200〜315、リ ボフラビンでございますと、血漿が170〜360、血小板が10単位以上、アモトサレンが血漿の場 合は400〜650、血小板であると15単位以上ということで、非常に高単位ということになるかと 思います。このあたりは今後日本国内で導入するときにそれぞれの血漿、血小板の単位数、 容量規格というものが1つの導入するときの課題になるかなと思います。  次の2ページを見ていただきたいんですけれども、その他の血小板製剤の不活化技術という ことで、現在ドイツで開発中のUVC照射のみで不活化できるという情報がありまして、CE−M arkが取得された後に日本赤十字社の方で独自にまた評価を引き続き行っていきたいと思って おります。  3)になりますけれども、感染性因子の不活化効果ということで、こちらの方は別添1を御覧く ださい。別添1の不活化効果でございます。こちらの方は3つの不活化剤がございますけれども、 ウイルス、細菌、原虫ということで、表の見方、例えばアモトサレンの血小板であれば6.0という 数字が載っているかと思いますけれども、こちらの数字の見方は、これは対数減少率を示して おりまして、HIVが元が10の6乗個あったウイルスに対して不活化ができたということを示して いるという数字で見ていただければと思います。総じて大体10の4〜6乗程度のウイルスの量 があるものについては、細菌もそうですけれども、不活化効果がある程度期待できるのかという ことをあらわしている別添です。  その次に凝固因子活性及び血小板等に及ぼす影響ということで別添2を御覧ください。別添 2の1枚目でございますけれども、いずれにしましても不活化の工程というのはバックを入れか えたり不活化剤を入れたり、またそれをフィルトレーションしたりという、非常に煩雑な工程にな ります。そういうことがありますので、凝固因子活性にしても血小板にしてもある程度の品質が 低下するということは否めないかなと思います。例えば凝固因子であれば、20%以下の低下が 認められたものについては青色、30%以下が黄色、40%以下が桃色という形で示しております。 メチレンブルーにつきましてはおおむね20%程度の凝固因子の低下が見られるかと思います。  その次のページでございますが、こちらの方はリボフラビンでございます。こちらの方もブルー とイエローがいろいろとあるかと思いますけれども、およそ20〜30%程度の凝固因子の低下が 認められております。  3枚目は血漿製剤に対するアモトサレンの結果でございますけれども、こちらも20〜30%程 度凝固因子活性の低下が認められるという各社からの報告をいただいているところです。  4枚目は血小板機能に対する影響ということで、血小板の方はメチレンブルーは使えません ので、リボフラビンとアモトサレンのデータを記載しております。血小板は一番端的に機能が悪 くなるという、pHが一番機能を見るための指標になるわけですけれども、リボフラビンにしても アモトサレンにしてもそんなにpH6.2よりも下回るというものはございません。ただし、先ほども かなり工程が複雑になるという御説明をさせていただきましたけれども、リボフラビンにいたしま してもアモトサレンにいたしましても、それぞれ表の一番下を見ていただきますと、総血小板数、 掛ける10の11乗という欄がございますけれども、そちらの方をコントロールとそれぞれ比較す ると10%程度くらいは血小板の総数が減少するということがあると思います。そういうことがあ って、文献とか開発メーカー各社の情報からしますと、輸血回数が増えたというような報告とか 全く変わらないというような報告がそれぞれ出ているというような状況です。  別添3になりますけれども、こちらの方は感染性因子が不活化された製剤の安全性ということ で、安全性試験(前臨床試験)の結果ということで一覧表をつくっております。いずれにしまして も、リボフラビンというのはビタミンB2でございますけれども、メチレンブルー、アモトサレンにつ きましても輸血用製剤について見たところ、それぞれ急性毒性、慢性毒性、遺伝毒性、細胞毒 性、生殖毒性、発がん性を初めとしたNeoantigenicityも含めて陰性という報告を受けていると。 文献もありますけれども、そういった状況だということです。  本文の方を見ていただきたいんですけれども、3ページになります。こういった工程の絵をカラ ーで印刷したものがあるかと思いますけれども、これは例えば血漿製剤に不活化技術を導入し たときに現行の血漿製剤、FFPですけれども、それを製造した場合とどう変わってくるかという ことを表したものです。現行を見ていただきますと、採血、例えば献血ルームですけれども、献 血ルームで採血されたものが血液センターに搬入されてきます。それで、血液センターの中で 凍結をして、在庫として持って、医療機関の方に必要に応じて供給されるということになります。 ここで、採血から凍結までの時間というのが生物学的製剤基準で採血から6〜8時間以内に凍 結の工程に入らなければならないという基準がありまして、そういった中で今後血漿製剤への 不活化技術導入する場合にはそれが1つのポイントになるのかなと思います。  例えば不活化剤を導入した場合は、採血からセンターに持ってくる、ここは同じなんですけれ ども、いったん凍結をします。その後血漿分画製剤と同様にその凍結したものを中間製品とい う形で在庫をしまして、一度融解して不活化処理をすると。さらに、いわゆる再凍結になります けれども、再凍結をして在庫として持って、医療機関の方に必要に応じて供給するということに なるかなと思います。こういった導入をもし凍結血漿に不活化処理をするのであれば、こういっ た形になるのかなということが考えられます。  今後例えば新鮮凍結血漿が今大体年間20万L、95万本ですけれども、製造・供給するという ことで考えますと、例えば製造規模が1日1,000本の規模であれば、不活化処理に使用する光 を照射する装置というのを整備する必要があるのですけれども、それが1,000本規模であれば 18台、500本規模であれば9台ということで、それぞれ処理時間が現行にプラスして最低限7時 間くらいは出てくるかなと思います。全国規模でいくと大体100数十台の機器を整備するととも に、不活化をするためのエリア、大体120平米くらいは必要になると思いますけれども、そういっ たところも確保する必要が出てくるかなと思います。  最後になりますけれども、4ページ、不活化技術導入に際しての論点ということで、簡単に項 目を整理させていただきました。1番は不活化効果ということで、先ほどちょっとお話しさせてい ただきましたけれども、不活化といえども病原体をすべて殺すことはできないということもありま すし、その不活化の強さというものにも限界があるということがあります。もう1つは、製剤の影 響とか全国一律導入するのか、段階的に導入するのかというところにつきましては、先ほども 言いましたように、製剤の品質を多少なりとも損なうというのがありますし、製剤のそれぞれの 容量規格というのもございますので、そういった血漿製剤の容量とか血小板製剤の単位数とい うものに制限が生じて安定供給のところも波及するということとか、採血装置等の基盤整備も 必要になりますので、そういったことも論点に入ってくるのかなと思います。  それと、製剤の安全性になりますけれども、リボフラビンにつきましてはビタミンでございます が、不活化自体の安全性というものがやはり問題になると思いますので、そういったところも含 めて十分審議をしていただければと思っております。  簡単ではございますけれども、日赤からは以上です。 ○事務局(武末課長補佐) 引き続きまして、別添4を用いまして現在の諸外国の輸血用血液 製剤における不活化技術の動向、導入状況について御説明させていただきます。お断りしてお きますけれども、これは急遽集めたものでございますので、現時点で把握できた範囲、主に日 本赤十字社からと血液製剤調査機構の方から情報を収集しまして取りまとめたものでございま すので、また順次最新情報が入手でき次第更新してまいりたいと思いますので、その点御承知 願います。  総論としまして、血漿の不活化については欧州においてメチレンブルーを中心として導入が進 んでいる国もございますけれども、すべての血漿製剤について不活化を実施しているのはごく 一部の国、具体的にはフランス、ベルギー、ルクセンブルグなどが行っているようでございま す。  また、これらの国においては有償採血であるとか輸血用血液製剤の使用量が我が国と比較 して3分の1から3分の2と少ないなど、先ほどもありましたように、工程がかなり煩雑になること に対して実施しやすい状況があるというのが背景としてもあるようでございます。  一方で、血小板の不活化についてでございますけれども、感染症が蔓延している地域におけ る導入や、国によっては一部試行的に導入しているというような国がございますけれども、現在 さまざまな技術が開発されているところでありまして、1つの技術を全国的に導入するということ を決定している国は今のところないというふうに聞いております。  また、多くの感染症が蔓延している国においてはNATなどの高額な検査を多数実施すること ができない場合もあり、広範な病原体に対して有効な不活化の技術のみ、もちろんこれは抗体 検査はある程度実施するのだと思いますけれども、不活化技術を導入しようとする場合もある というふうに聞いております。  各国の状況ですけれども、全体を見ていただいて、1枚目の方を中心に御説明いたします。  まずアメリカでございますけれども、製造の承認については特に今行われている技術はござ いませんで、導入を検討しているという状況でございます。実施主体はさまざまな血液銀行や 院内での有償採血を初めとする実施主体がございまして、先ほど多少有効性が落ちたりとか 輸血回数が増えるというようなお話もございましたけれども、採血量の増加に対しても比較的 対応がやりやすいというようなことがあるようでございます。血漿に対する不活化技術の導入を するような動向は今のところ認められておりませんけれども、新興・輸入感染症と血小板に対し て多発する細菌感染症の対応策として、血小板の不活化の導入を検討しているということを聞 いております。具体的には不活化の血小板の承認申請が行われている最中だということです。  参考までに、1,000人当たりの血漿使用量というのを調べておりますけれども、これは2003年 時点での数値でございますが、アメリカでの血漿の使用量というのは日本の3分の2程度にな っているというふうに報告を受けております。  次にフランスでございますけれども、メチレンブルーとアモトサレンの不活化の製造承認が行 われております。血漿に対しては、60%が血漿をいったんタンクにプールしまして、分画製剤と 同様にS/D処理を行っております。それが60%。40%がメチレンブルーによる不活化処理をし ているというところで、血漿に対しては一定の不活化処理が実施されております。血小板に対 する不活化につきましては、インド洋、カリブ諸島、南米の3つの海外県、いずれも熱帯やいろ いろな感染症が多い地域でございますけれども、そこにおいて血小板の不活化が実施されて いると聞いております。本国においては5つのセンターでアモトサレン、リボフラビンによる処理 を導入しているというふうに聞いております。フランスはフランスの血液機構という自主主体が 日本と同様に実施しておりまして、献血により採血を行っているところでございます。熱帯地域 の海外県における感染症発生リスクがございまして、その影響で本国においても血漿や血小 板の不活化対策に取り組む必要性が高いというところでこのような導入を行っているというふう に聞いております。  ちなみに、1,000人当たりの血漿の使用量は日本の3分の1程度だというふうに報告されてお ります。  次にドイツでございますけれども、ドイツもメチレンブルーとアモトサレンの承認がなされており まして、血漿に対しては今年の1月からメチレンブルーによる不活化の導入を順次行うという方 針が出されているというふうに聞いております。血小板の不活化については未導入ということで ございます。ドイツは赤十字が輸血業務の8割を実施しておりまして、血小板の不活化としては、 ドイツ赤十字はアモトサレンの使用はしておらず、薬剤を製剤に投入しない不活化技術の1つ であるUVCの開発を行っているというふうに聞いております。アモトサレンの方もその評価につ いては行う計画はあるというふうに聞いております。ドイツは血漿については有償採血を行って おりまして、ある程度採血量の増加にも対応が可能かというふうに思います。  ちなみに、1,000人当たりの血漿使用量は日本とほぼ同じレベルだという報告でございます。  イギリスについてはメチレンブルーによる血漿の不活化が承認されておりまして、血漿につい ては小児を対象にメチレンブルーによる不活化製剤を提供しているということで、血小板につい ての導入は行っていないと聞いております。イギリスにおいてはプリオン病、クロイツフェルト・ヤ コブ病の問題がございまして、血漿はアメリカからのある意味有償採血された血漿を輸入して いるという関係から、感染症のリスクを考慮しまして、1996年以降、つまりはクロイツフェルト・ ヤコブ病の対策が十分なされた以降に生まれた人、約12歳くらいのお子さん以下の方に対し て輸血を使用する際には、安全性を考えてメチレンブルーによる不活化を実施した血液を使用 しているというふうに聞いております。  1,000人当たりの血漿使用量は日本の2分の1程度になってございます。  あと、ベルギーや2枚目にありますルクセンブルグについては、メチレンブルーによるすべての 血漿製剤を不活化して供給しているという国でございます。  あとは見ていただければと思いますけれども、ちなみに、下から2番目のシンガポールが少し 修正がございまして、シンガポールはまだ不活化技術に対する承認はなく、導入も行われてい ないと。ただし、メチレンブルーの承認申請が今行われているというふうに聞いております。です ので、韓国と同じような承認と導入状況でメチレンブルーの申請中というふうに聞いておりま す。  以上でございますが、これは順次最新の情報を入手しましたらアップデートしていきたいと思 いますので、また委員の方々におかれまして情報がございましたら、また訂正等ございましたら、 事務局の方に御連絡いただければと思います。以上でございます。 ○高松委員長 ありがとうございました。今事務局及び日本赤十字社から御説明いただきまし た。これにつきまして何か御意見あるいは御質問ございますでしょうか。どうぞ。 ○山口(一)委員 不活化についていろいろな角度から検討されるのは非常にいいことだと基 本的には思います。ただ、やはりその効果と安全性については相当慎重に検討されるべきだと 思っています。  私の質問は2点ございます。まず第1点として、ファンクションが特に凝固関係は20〜30%下 がる。それから、血小板についても、数が10%下がっているようですけれども、そのファンクショ ンについても下がるのであれば、こういった20〜30%の低下を補充できる、臨床から考えれば 当然20〜30%余計に入れるということになるのだろうと思いますけれども、そういった場合に、 血液センターとしては今後そういったことに対応ができるかというのが第1点です。  もう1点は、こういったメチレンブルーとかソラーレンのようなものを幾ら除去するといってもDN Aに架橋しているわけですから、そういったものとほかの薬剤とのインタラクションの問題は外 国においても検討されているのかどうか。その2点についてもし情報があれば教えていただきた いと思います。 ○田所担当者(日本赤十字社) 製剤の品質につきましては、やはり機能は損なわれるところ があります。血漿については第8因子とフィブリノゲンで約30%くらいはやはり下がるということ がありまして、ではそれでどういう問題が起きるかということですけれども、臨床的におおらかに 使っているのであれば余り問題は起きないかもしれないけれども、例えば大量出血でoozing(し み出すような出血)が起きている、フィブリノゲンが下がっている、それを補充したいというような ときには、やはり今まで以上の量が必要だろうと。  それから、血小板についても回収率自身は10%程度下がるだけではありますけれども、機能 面ではやはり少し下がりまして、CCI、輸血後の当日あるいは翌日の血小板の数を測定します と、それもコントロールに対して短くなる、あるいは投与間隔も短くなるということもあります。  ただ、これもトリガー値を決めてきっちりやったトライアルではそういう結果が出る。ただ、おお らかに予防的に使っているのであれば余り違いは出ないというのが報告で、報告によって使わ れ方が違いが出るというのはそういうことだと思います。  それで、結果として供給量を確保できるかという問題はまさに病院側の使われ方によるところ もあるわけですけれども、非常にきちんとした使い方をされている病院などでは使用量は恐らく 増えるだろう、おおらかにやっているところは変わらないだろうという気はいたします。  それから、安全性の他の製剤とのインタラクションというのは、まさに臨床の場でいろいろな薬 剤といろいろな条件の中でということになりますので、それはまさに臨床的に症例を重ねるしか 多分ないと思いますので、前臨床あるいは治験の段階では出てこないことがある。少なくともそ のレベルで明らかに他の薬剤とのインタラクションでという話は出ていないというふうに思いま すけれども、ただ、アメリカのFDAが血小板の不活化の製造承認に対して現在再審査、もう一 回考えているというのは、血小板でアクトレーションしている、体の中でもいろいろな条件がある 中で、肺障害等が本当に起きていないか、もう一回調べろというようなことを言っているというよ うにはお聞きしていますが、実際他の薬剤との相互関係ということできちんとした報告はいずれ もないというように思います。 ○大平委員 今日の不活化技術の導入の提示なんですけれども、私にとってはかなり唐突な 今日の招集という感じで、これを今の国側の厚生労働省側の説明と日赤側の説明を伺ってい ると、緊急に取り組むというインセンティブというのはどこから出てきているのか。そして、いろい ろな添加剤の問題として今日データが出ましたけれども、これに対して割と効果的なお話は出 ているけれども、逆に問題点としての副作用とかそういう問題について、素人なりに今日の会 議に出席するのにいろいろ情報を集めさせていただいたんですけれども、なかなかそろった情 報というのは見つからないで、輸血の専門家の先生とかそういう方にちょっとお聞きしたりした んですが、いろいろそれぞれのメチレンブルーとかリボフラビンとかアモトサレンなどの1つ1つ、 紫外線照射ですとかいろいろな問題も含めて問題点はあるということで、それをここには具体 的な副作用としてのいろいろな御提示というのがないので、どういう問題点があるのかというと ころを安全性と比較してわかりやすいデータというのも提示していただきたいなというふうに思っ ておりました。  今までの厚生労働省側の説明とか日赤の方の話を聞いていますと、割と安全性は確保され ているというお話に聞こえていたんですけれども、特段これを導入するメリットとしての大きな意 味合いというのがなかなかここに説明されていないのではないかなというふうに思いますので、 使う側としましてはやはり安全性の高いものが供給されるというのは大変いいことなので、そう いう不活化技術の新しいいろいろ技術の開発とか導入というのは積極的にされるというのは大 変いいことだろうと思うんですが、それに対して新しい技術をフォローしていく体制として総合的 に、血漿分画製剤もそうですけれども、ずっと使い続けていく中でのフォローする体制というの ができていないのではないかなというふうに感じておりまして、そういうのも含めて多分トロント の会議でこういう問題が出てきたのだろうと思うんですけれども、日本も国内としてしっかり長期 にわたってこれをフォローしていくシステムができていないと、これを全面的に採用していくとな ると、ちょっと言葉は悪いですけれども、場当たり的な採用になってしまう。総合的に見てきちん とフォローできるような体制ができて、それと一緒に走っていくという感じにならないと信頼度が 確保されないのではないかなというふうに思うんですが、いかがでしょうか。 ○血液対策企画官 今日の会議の冒頭、課長それから委員長の方からも御紹介いただきまし たように急遽の開催をお願いしたわけでございますが、1つは国会の方でもこういった技術の 開発について急ぐべきではないかという指摘もあった上で急いだ検討をというところがございま した。運営委員会で以前、安全対策の総合対策のメニューの進め方、進捗状況ということでの 御報告もさせていただき、そのときも検討ということでしばらく時間が空いたわけでございますけ れども、日赤さんの方で8項目を挙げた具体的な安全対策、安全性向上のための対策という 中の項目として不活化技術の導入の検討というのはこれまでも進められていたところでござい ます。  一方、ヨーロッパをはじめ一部の国で、一部の技術からということでございますが、実用化とい う段階が始まっていると。それから、今年の1月11日でしたか、DHHS、アメリカのいわゆる保 健省に当たるところでございますが、そちらのアドバイザリーコミティーの方で、こういった病原 体を除去する技術の導入をもっと早期に検討を急ぐべきであるというような要請を出されたと。 そういう機運がちょうど国際的にもあり、我が国でも国会で、安全対策の推進の項目としてこれ があるなら検討を急ぐべきではないかという指摘もあった上で、この技術的な評価を専門の先 生方に御議論いただく、あるいは事業全体に対する影響ということも含めて、我が国における 導入について御議論いただくということから、運営委員会と安全技術調査会の両先生に急遽お 集まりいただいて、この現在の状況、それから導入に当たっての課題というようなことをきちんと ディスカッションをした上で御議論いただければと。方向性を見出すにしても御議論をいただけ ればということで今日お集まりいただいた次第でございます。 ○高橋委員 私も大平委員と同じような違和感といいますか、今日の新聞によりますと、厚生 労働省は不活化技術を導入する方針を固めたと、そういうような報道がされているんですね。と ころが、最初こういう御案内をいただいたときは、導入するかどうかも含めて検討するというよう な話だったと思うんです。それは今お話にありましたような国会での議論とかいろいろな影響が あって導入を急ぐべきだという方向になっているんだと思いますけれども、その議論で気をつけ なければいけないのは、どのような仮定があって、どのような仮定が満たされれば導入すべき であるのか。それがいつの間にか、これは非常に有用な技術であるということが半分決定され たかのように話が進んで、それがまた前提のようになって、導入を急ぐべきだ、この方法がいい のではないかというような話になったり、それから、諸外国の状況も一部導入している国が多い からやるべきではないか。アメリカで導入を決定したというようなことを言われている向きもある んですけれども、今日の先ほどの資料にも書かれていますけれども、アメリカで導入するという のは決まっていないわけですよね。  ですから、よく事実関係を整理して、その上で何のための議論なのか、それから、議論のポイ ントを整理するのは今日非常に大事なのではないかなと。その意味で日本赤十字社が御提示 くださった資料2−2の4ページ目、最後のところの論点の整理というのは非常に私は大事だと 思いますね。  ただ、ここにも抜けているのがあって、大平委員がいみじくもおっしゃられましたけれども、メリ ットは何か、この不活化技術を導入して、どういう目的でやるのかというようなところからも議論 しなくてはいけませんし、盛んに治験というようなお話がありましたけれども、今まで血液製剤に 関する治験というのは日本で十分行われていないのではないかなと思うんですね。もし導入を するとしたならば、治験の実施、その具体的なやり方、評価、検証、そういうのも考えなくてはい けないし、それから、5番目に一律導入と書かれていますけれども、一律導入ということは我が 国の血液事業は今まで多く行われていたわけですけれども、この件に関してまだ有効性と安全 性から見てすべての人がこれを受け入れるべきであるという結論は容易に出ないと思うんです ね。そうなると、個人の任意性にゆだねる、少なくとも望まない人にはこの不活化技術を経た血 液が供給されないようにしないといけないと私は思うんですね。今までどおりのものが一方で供 給されて、一方で不活化技術導入のものが供給される。そして、その評価は治験の後でもさら に検証が進んでいくと。さらには、もし大きな問題が生じたときにはどうするかということもあわ せて議論しておかないと、何か新聞報道もそうですけれども、かなり話が性急になり過ぎて、ま かり間違うと「木を見て森を見ず」という問題が起こるのではないかなと、そういう点を危惧して います。 ○半田委員 1つは資料の確認をさせていただきたいということです。それは資料2−1、これ は要するに我々の判断材料になる資料なのでちょっと確認なんですけれども、資料2−1の3 ページ目、日本赤十字社で既知のウイルス、B、C、I、この残存リスクというのがあるんですけ れども、要するに伝わる率なのか肝炎が発症する率なのかというところをもう一度確認したい。 例えばB型肝炎に関しては100万回に7.69の感染が成立するのか、あるいは感染の機会があ るのか、あるいは肝炎が発症するのか。これが一番問題点になると思うんですが、この辺はい かがでしょう。 ○事務局(武末課長補佐) 訂正があったら日赤の方からしていただきたいんですが、一番下 に書いてございますように、ここの残存リスクについては、50プールNATスクリーニングと個別 NATスクリーニング陽性率にさらに2000年から2003年の4年間の感染症報告を加味して出し たもので、基本的には製剤に病原体が混入しているリスクだというふうに解釈していいと思いま すので、当然病原体が投与された場合でも抵抗力で感染しない場合、感染が成立しない場合 もございますので、感染率ではないというふうに理解していますが、何か追加があれば日赤の 方からお願いいたします。 ○田所担当者(日本赤十字社) リスクとここで言っているのは、スクリーニングテストで見つか らなくて個別NATで陽性であった血液というのがどれくらいあるかという確率です。実際にB型 肝炎はこれだと15万分の1くらいなわけですけれども、感染が起きている人は10名前後になり ますから、そうすると50万分の1ということですから、実際に感染が起きている人は3分の1以 下ということになります。年間です。  それぞれまたどの製剤でということになれば、確率としてはもっと低くなってくるということで す。  それから、さらにもっと踏み込むと、では発症する人はどうなのかとか、そこまでいくと少し全 部をフォローしていないのでそこまでのコメントは少しできないというのはあります。年間10名と いうのも感染であって、発症というのとか、さらにその先というのはまだ我々としても把握できて いない。 ○半田委員 理論的に言うと、当然発症率は減ってくるから実際にはもっと肝炎となる率はもっ と減るだろうというのが一般的な考え方だということですね。  それから、資料2−2ですけれども、各不活化技術における病原体の対象とされるものという ことで、私がちょっと気になったのは、例えばメチレンブルーだとエンベロープウイルスと一部原 虫等と書いてありますね。それから、リボフラビンでも一部細菌、原虫等と書いてあるんですが、 この一部というのは検査をしていて効かないものが入っているのか、あるいは検査をしていなく て、検査をしているものだけを対象にして一部と言っているのか、ここはすごく大きな違いがあ るので、その辺はいかがですか。 ○田所担当者(日本赤十字社) 幾つか整理する必要があると思うんですが、基本的にはどう もノンエンベロープウイルスについては比較的よく効くらしいと。ただ、その中でもB型肝炎、C 型肝炎、エイズウイルスについてはNATをしていますよね。ですから、そこの時点でもう濃度は 低いものしかないわけです。NATの検出限界以下のものしかないという状況ですね。これにつ いてはほぼ確実にできるだろうというのはあります。では、NATをしていないエンベロープのつ いたHIV等の類似ウイルスはどうなのかというと、今担保されているのは10の6乗くらいまでで すね。10の6乗ということは、バックは200〜300ccありますから、実際濃度で言うと10の4乗の レベルまでしか担保していないということですよね。すると、感染でウイルスが極期になるときと いうのは10の7乗、8乗になることは多々あるわけで、バック総量といえば10の9乗くらいにな ってしまうというようなことですから、本当の意味で検査していないウイルスですごく高いものを 不活化できるかどうかについてはどこにも担保はされていないというのは1つあるだろうというこ とと、一般的にはやはりノンエンベロープウイルスに対しては弱い。それは2ログとか3ログくら いが大体関の山ですから、パルボウイルスのようなものは10の9乗くらいの濃度であるわけで すから、ということはバック数を総数でいうと10の11乗あるわけですので、たかが2乗減らして も全然効かないということになる。そういう事実ははっきりあるということを、これは夢の技術で はなくて、そういう広範なものには効くけれども、そういう限界はあるということは知る必要があ ると。  それから、細菌についても非常に広範なものには効きます。そういう意味ではトータルで言え ば非常に有効なものではありますけれども、すべてではないと。つまり両方ちゃんと見る必要が あると思います。非常に広範なものには確かに効きますよ、けれどもすべてではありませんよと。 例えば芽胞菌のようなものには余り効かないし、なかなか我々データ全部出せないので、この ものがこれに効かないとはちょっと言うことを許されていませんから言えませんけれども、ある 種のものは比較的ポピュラーなものにもちょっと効果は悪いというようなものもつかんではいま す。 ○半田委員 そういう意味ではこれはすごく大切なことで、結局不活化技術というのは多分我 が国の場合だと新興感染症とか未知のものということが対象になると思うんですね。すると、そ ういうものでもし病原体量がすごく多いような状況のものがあったとしたら、これは不活化技術 もやはりリダクションという考え方からリスクが完全にゼロとはならないということですよね。そう すると、NATなどと同じことが言えるわけですから、そういうところはすごく大切なことかなとちょ っと思いました。  それから、先ほど山口委員が質問されたと思いますが、私一番気になるのが、血小板と凝固 因子の活性の低下なんですね。特に凝固因子は大体30%とかいくわけですけれども、我が国 での問題点というのは実はフィブリノゲンの補充の問題なんですね。これは外国はクリオが承 認されていますのでクリオを投与するんですね。したがって、臨床的にはそれで担保されますか ら、全然問題ない。ところが、我が国の場合はクリオがありませんので、FFPで投与しなくては いけない。そうすると、20%、30%の凝固因子のリダクションというのはかなりの問題になってき て、今のままで使った場合、我が国の血漿供給量が足りなくなる可能性がある。もちろんさっき 田所担当者がおっしゃったように、ある程度のどんぶり勘定で使うならいいんでしょうけれども、 もしストリクトにやるとすると、これは非常に問題かなというところですね。  それから、ここに挙げた資料は多分vitroの資料ですよね。もちろん今後資料として出てくると 思うんですけれども、vivoでの、あるいは臨床試験の結果というものは、最終的な判断をしたり、 あるいはそういう結論をつけるとか、そういうところの方向性をつける場合には基礎データとして 重要になってくるかなと思います。 ○高松委員長 大平委員、高橋委員あるいは半田委員からありましたように、私も確認をしま すけれども、これは不活化をするためにどうしたらいいかという議論ではないということを確認し たいと思います。すなわち不活化をするということを前提として我々は今ディスカッションしてい るのではないということです。この問題につきましては、広範な御意見とか議論が必要ですので、 技術的な問題につきましてはやはりより専門家の御意見も必要でしょうし、総合的なディスカッ ションも要ると思います。  ほかに何か御意見ございますか。 ○花井委員 以前からウイルス肝炎の問題から血液というのはこういう感染リスクとの戦いで ずっときたわけですね。血漿分画につきましてもほぼ不活化技術によって安全になってきたと。 今度は輸血用も不活化できるのだというと、一見夢のような話に聞こえるわけですけれども、や はり今回の議論の中で一番重要なのは、患者にとって利益は何なのかということが今の段階 では判然としていないですね。その利益を判断するのに重要なのは、やはり何と比較考慮する かですよね。赤血球はまずだめなわけですよね。すると、血小板ユーザー、それから、いわゆる FFPのユーザーが治療でその製剤を使うときにさらされているリスクというのは何であって、そ してそのリスクと比較して今度のものが導入されるとどれだけの利益があるかということをやは り比較した上でこの技術というのを検討すべきではないか。スタート点はここじゃないかと思い ますね。患者にとって利益が何なのか。  ちょっと今までの議論からすると、力価が下がってしまうとか、そうすると分画の場合は量をふ やせばいいんですけれども、こういう輸血用の場合は必ずしも量をふやすことは単純にいいわ けではなくて、循環血液量が増えるわけだから、使い方としてはよいことばかりではないわけで すよね。そういったいろいろな問題を含めて比較衡量する対象を厳密に評価していくという作業 がやはり必要ではないかなと思います。そこのところをもう少し資料等足りない部分があるので はないかと。  それから、さっき発症が云々とございましたけれども、私も同意見で、確かに感染したら最悪 なんだということであれば、それは比較のうえで感染は不利益ということになりますけれども、し かし、比較対象がある限りは、例えばB型肝炎の場合は感染が成立しない場合もあるわけです よね。そういうものも含めて、本当の意味での患者の利益と不利益というものをやはり正しく比 較衡量して、そして前に進めていくということが必要ではないかと思います。  それから、海外の状況を見ていると、結構細菌感染が多い地域についてはこれが有用だとい う考えで、必ずしもウイルスをリダクションすることが目的という感じでもないようにも見受けられ ますし、我が国は南北に長い国ですけれども、僕はデータは知らないですけれども、もしかした ら、例えば沖縄の方とか南方の方ではある程度何かの感染率が高いとか、そういうような状況 がもしあるのであれば、そういったことも含めて部分的に導入していくということもあり得るので はないかというふうには思います。 ○事務局(武末課長補佐) 貴重な御意見ありがとうございました。事務局といたしましては、 今回お願いしたいこととしましては、不活化という技術があって、それを導入を検討していこうと いうのは日赤の安全対策の中にはあるわけですから、理論的には安全性の高い不活化技術 があるとすれば、それを導入していくことは皆さん目指していることは間違いないであろうという ことの確認をひとつさせていただきたいということでございます。  2点目としては、そういった際に、では今の不活化技術がどうなのであるかということを御評価 していただく必要があろうかということと、今花井委員から御指摘がございましたように、その際 に日本はどのレベルまでそれを求めるのかというのを、いろいろな観点からある意味で不活化 に求める技術指標みたいなものを皆様から御提言いただいて、恐らくはそれがクリアされてい れば導入していいのだろうと。まだ導入されていなければ、そこを改良されるのを待つのか、ま たは、大平委員から御指摘があったように、導入する際にはきちんとしたモニタリングをしなが らやらないとその影響が分からない、有効性や効果が分からないということがあれば、そういっ た体制の整備をした上でやるべきであるというような、そういう全体を見渡して課題という形で 御提示いただければというふうに考えている次第です。  ですから、高松委員長の方から不活化を前提としてやっているわけではないというのは、全く そういう意味ではそうなのかもしれませんけれども、逆に言えば、不活化技術についてどのよう に日本として評価をし、または不活化技術に対して日本としてはどういう要求があるのか。それ は患者の立場からどういうふうなことを求めるのかということを明確にしていただくということだと 思います。諸外国が少なくとも最近カナダとかアメリカとかで動きがある中で、日本としては今 の時点でどういうふうなスタンスでいるのかというのをこの現時点で明確にしていくというのがこ の委員会にお願いしていることでございます。 ○高松委員長 申しわけないです。私が最初に今事務局からお話しされたようなことを言えば よかったんですけれども、花井委員もおっしゃいましたように、この技術の問題につきましては、 1つは感染症の問題だけではないということです。これは今一緒にまぜて議論するつもりはあり ません。輸血の安全性という観点に立てば、決して感染症だけではないということもきちんと押 さえていかなければいけないと思います。免疫学的な副作用なども十分考慮しなければなりま せん。これだけが突出すれば決着がつくということではないことも事実だと思います。 ○大平委員 今厚労省の方からのお話がありましたけれども、第1番目の課題のところで、日 赤の不活化対策の問題としての8項目の問題ですけれども、先ほどの検査法の問題と同様と いったら語弊があるかもしれませんが、やはり日赤だけの問題ではなくて、国全体として日赤が 現場として一生懸命やっておられるというところは評価しなくてはいけないと思うんですが、最終 的にやはりみんな国がある程度の方向性を示さない限りは、すべて日赤の責任でそれをやっ ていくとなると、かなり負担を背負わせるような感じになってしまうというような感じになると思い ますね。それで、こちらも製造業者という立場でそういうのをすべて責任とするのかというところ については、献血血液ですべて輸血用製剤とかそういうのを扱っているわけで、そこのところは かなり一元的に国も私たちもそうですけれども、それが関与してやっているというところは大きい と思うんですね。ですから、いろいろこれからも議論していく中では、国がもう少し責任感を持っ て提示していくとか、そういうことをしていかないと、では誰がこの大事な問題を整理していくか というところになかなか行き着かないと思いますので、そこは最終的に国の責任というふうには なるのかもしれませんけれども、でも、ある程度国の方向性とかそういうのも少し提示して、そし て議論を進めていかないと話が進んでいかないのではないかというふうに思いましたので、そ れだけ1点お願いしたいと思います。 ○吉澤委員長 今事務局の方から、安全性の高い不活化技術があれば導入するという前提で 議論するとおっしゃいましたですね。間違いありませんね。それ以前の問題として、現在日本の 国の中で輸血に伴ってどういう感染症が起こっているのか、どれぐらいの数が起こっているの か、ここに書いてあるとおりですね。それから、未知の病原体とおっしゃいますが、未知の病原 体というのがこの国に入ってくるリスクがどれくらいあるのか。そこのところをきっちりとした上で の不活化の技術の基本的な技術の検討ということをするのがまず第1ではないでしょうか。外 国がこうだから日本も入れる。論文にこう書いてあるから日本もこう入れる。外国の動向に従っ てこう入れる。エビデンスも何もなくそういうふうにしていったら、主体性も何もないわけでして、 今現在この国で輸血に伴ってどれだけのことが起こっているかということをもう一度きっちり詰 めた上で、それも同時に進行させながらということになるのではないでしょうか。  そして、もう1つは、全面導入かということを書いてありますが、導入するなら全国一律、これも またちょっと乱暴な話でして、ある種の病気の未知も含めましてパンデミーが起こったときには、 その起こった場所もしくはそこに限定して適用できるような技術の蓄積をしておくというのは理 解できるんですけれども、いきなりこういう議論になるのは、ここへ来て初めて聞きまして、大変 びっくりした次第なんですが、もう少し慎重に対処すべきではないでしょうか。 ○事務局(武末課長補佐) 今御指摘の点はまさにそのとおりでありまして、冒頭でも申し上げ たように、まず現状の把握が重要であろうというところについては全く事務局としてもそのように 感じているところです。ただ、ではそれを具体的なデータがあるのかということも含めまして課題 として整理をしていただいて御提言いただければと思いますし、もしそういったものがそもそも議 論するデータがないということであれば、そういった調査を行った上でさらなる検討が必要という こともあるかと思います。  ただ、今回は感染症を中心として不活化という位置付けになっておりますけれども、今改めて 見直すべきことは、日本の血液製剤の安全性というのをどの程度設定するのか、どの程度目 指すのかというのを見直す機会でもあると思いますので、この短い期間では無理かもしれませ んけれども、今御指摘のような点は今後の課題として逆に挙げていただければと思いますので、 どうかよろしくお願いいたします。 ○高橋委員 先ほど半田先生が言われた感染リスクといいますか、そういうものの評価の説明 とか、いろいろな表が出されているんですが、少し舌足らずといいますか、はっきりしない部分 があるように思います。別添3の例えば安全性試験の結果というのを見ても、陰性、陰性で、承 認申請資料によるとこうであると言うんだけれども、どういう系でどこまで確認したのか。この場 合だと繰り返し投与されて、それでも本当に先ほどお話があったアレルギーのような問題とか 何か起こらないのか、免疫抑制とかそういうこともないのか、そこら辺非常に気になるんです ね。  もう1つは、先ほど田所先生からお話がありましたけれども、不活化による効果というのを私も う少し定性的にというんでしょうか、十分量照射できて、それによってそれこそ一網打尽に、そこ の中にもしウイルスがいれば少しそのウイルスが傷んで感染力をなくすような技術かなと、そう いうふうに思っていたんですが、田所先生のお話を聞くと、何かフィルターで数を減らすというよ うなイメージに近い感じなんですね。ですから、この不活化技術の効果がどういうことが本当に 期待されるのか、それがどこまで確認されているのか。人に投与した場合以前のウイルスを入 れた血液を照射して、それを動物なり何なりに接種したとか、どういうやり方をするかわかりま せんけれども、なお感染力を保持しているかどうかとか、そういうようなものが確認されているの かどうか。何かうたい文句と本質とが正確に一致しているのかどうかというのが非常に不安だ ったんですけれども、それを次回のときにしっかり1個1個きちんとどこまで言えるという限界が はっきりしたような資料を出していただくと話は整理しやすいんじゃないかなと思います。 ○半田委員 先ほど花井委員がおっしゃったことに関連することですが、せっかくこういう機会 ですから、私も臨床側の立場として、患者さんが今どういうリスクにイクスポーズされているかと いうところをちょっと申し上げたい。我々はもちろん輸血前と後で感染症のチェックをやっていま す。実際私も10年ほど見ていますけれども、少なくも既知のウイルス感染経験はありません。 ところが、患者が日常的に非常に困るのは、特に血小板の場合、大体血小板輸血の3〜6% にいわゆる急性のアレルギー反応が出ます。そのうちの1%ほどはショックあるいは血圧低下、 意識障害まで来すような、もちろん死亡に至る場合もありますけれども、そういうリスクがありま す。それから患者さんの人数からいいますと、血液疾患の3割くらいの人がそういうアレルギー 反応を1回以上は大体経験されています。ということは、これは1〜5%のリスクですから、非常 に高いわけですね。ですから、当面はまずそういうリスクがプライオリティーからいうと優先では ないかなというふうに思います。もちろんこの議論と不活化の議論とは違うとは思うんですが、 やはりプライオリティーはこれから考えなくてはいけないことなので、次回はそういう資料も出し ていただければと思います。 ○高松委員長 輸血の安全性という観点から立てば、これは感染症だけではないわけで、免 疫学的な反応など、さまざまあるわけです。輸血の安全性という観点で、ただ今回はたまたま 感染症の問題だけだということ、またそれがすべてではないということは絶対確認をしなければ ならない。例えばシステムが悪ければ、国内だけではなくて国外でもABO不適合は今でも現実 に数からいけば圧倒的に多く起こっているわけで、そうしますと、システムをいかに安全な構築 をするかということも一方では非常に重要な問題であると。  ですから、技術的な問題につきましてはこの程度の資料しか今日は出ていませんので、なか なか我々にはわかりにくいところがありますので、次回ある程度の専門のメーカーの方にお話 を伺うということも1つの方向ではないかというふうに思いますが、その辺いかがですか。 ○吉澤委員長 各論にわたると思ったからここのことには触れなかったんですが、不活化のと ころの問題ですが、このB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスの不活化の数字が出ていますけ れども、これ可能でしたら、次回どのような指標でもってこの数字を出してきたのか。通常の場 合は感染性のリダクションということをするときには、普通は感受性動物を用いてスタンダード の感染材料にある種の介入をして、どれくらいのリダクションが起こるかという定量実験が必要 なはずなんです。その感受性動物も人間からできるだけ近い、遠くないものを使って、培養細胞 系ではだめだと思います。やはり生体でするのが常識的だと思いますし、その辺がどの辺まで 詰まっているのか。この数字だけ見ますと、あたかも有効であるように見えますが、もしそういう データがあれば次回出していただければと思います。 ○事務局(武末課長補佐) 今御指摘のは別添1の感染性因子の不活化効果のところでござ いますね。はい、かしこまりました。 ○岡田委員 恐らくモデルウイルスを使っているはずですので、その辺はメーカーに確認した方 がいいと思います。絶対BとCに関してはモデルウイルス以外は今のところ世界に通用するよう なものはないですから。 ○吉澤委員長 分かって言ったつもりですから。 ○高松委員長 幾つかの問題点といいますか議論が出てきましたが、そもそも一番大事なこと は、導入した製剤を投与されるのが患者さんでありますし、しかも、当然患者さんですからさま ざまな病気を背負っておられるし、お薬も飲まれているということもあって、輸血そのものはもち ろんそうでありますけれども、こういう不活化した結果として、例えば今御指摘ありましたように、 フィブリノゲンが下がっているということも現実であることもよく考えた上で、どういう意味で患者 さんにとって最も意味があるかということよく考えないと、不活化のための不活化導入ということ に、そんなことにならないと思いますけれども、そういう議論では非常に困ります。  それから、もう1つは、具体的な技術的な問題につきましても、余りよく分からない同士がお話 をしても余り意味がないわけで、やはり専門家、業者の方も含めまして少し次回にでもディスカ ッションといいますか、いろいろ御教授を頂ければというふうに思います。  それから、もう1つは、輸血の感染に対する安全性ということと輸血の安全性は違うわけで、 輸血医療の安全性ということはもっと総合的なことです。今半田委員からありましたように、ま だ積み残しがいっぱい残っておりますので、そういうのをやはりきちんと視野に入れて今回もデ ィスカッションしていくということを確認したいと思いますが、いかがでしょうか。  そういうことで、次回これは日本赤十字社も含めてメーカーの方に来ていただいて、これは恐 らく企業のいろいろシークレットのことがあると思いますので、委員の皆さんだけで非公開という 形で一度お話を伺う機会をつくったらと思いますが、いかがでしょうか。具体的な日にちはちょっ とまた事務局の方で御相談いただければと思います。そういうことで今後やはり今日お話ししま したような問題点をある程度踏まえて上で技術的な問題、それから、導入するということに当た っても、これは治験が要りましょうし、日赤のさまざまな整備投資、これは当然国の経済的な支 援が絶対必要になります。そういうことも含めて総合的に判断することが絶対問われますので、 拙速を避けて十分議論したいというように思います。それでいかがでしょうか。  それでは、次回いろいろなメーカーの皆さんから少しお話をいただくということで、このことにつ いてはいったん今日はここで議論を終わりたいというふうに思います。  それでは、3番目のオーストラリアのウイルス感染症につきまして事務局からお願いしたいと 思います。 ○事務局(武末課長補佐) 右肩の資料3でございますけれども、これは実は運営委員会で御 報告したので、そのフォローアップの資料でございます。11月14日に運営委員会配布資料の 中に感染症報告事例で、オーストラリアにおいて1人のドナーからその臓器移植を受けた方が 新たなウイルスで亡くなったという報告をさせていただきました。その後その詳細が『New England Journal of Medicine』に載りまして、また、国内でも報道されたことを踏まえまして、その フォローアップとして御報告させていただきます。  前回は新たな検査方法が出たために今まで検出されなかったウイルスが特定されるようにな ったという形で御報告させていただいたと思いますけれども、その後いろいろな検査の結果、そ れがアレナウイルス科のものであるということが分かっております。ドナーの方は南欧を旅行さ れた後に脳出血で亡くなって臓器移植のドナーとなられた方なんですけれども、それ自体は新 しいウイルスでありますけれども、ある意味で特別な事例でありまして、それであって臓器移植 についてそのウイルスについて検査をするかどうかについては、まだウイルスの性格やどういっ たものであるかということが分かっておりませんので、現時点ではまたそういうウイルスが特定 されたというところですが、今後それがどういった感染経路なのか、どういう特性を持って、どう いうところに病原性を持っているのかというのがまだまだ今後必要であって、今の時点ではこれ があるから臓器移植を控えるべきであるとか、この検査を行わなければならないというところの 結論までには至っていないという状況でございます。補足的には以上この報告をさせていただ きます。以上です。 ○高松委員長 ありがとうございました。何か今の御説明に御質問ございますでしょうか。特に ございませんか。  それでは、本日はこちらで用意した議題は以上ですけれども、何か先生方の方からございま せんでしょうか。特にございませんでしたら、本日の会議はこれで終了したいと思います。  なお、次回は先ほど申し上げましたように、非公開でヒアリングというか各メーカーの方のお 話をお伺いしたいと思います。日程等につきましてはまた事務局の方から御連絡申し上げます。 本日はどうもありがとうございました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局血液対策課 後藤(内線2902)