08/01/28 労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会第28回議事録    第28回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会          日時:平成20年1月28日(月)          15:00〜          場所:虎ノ門パストラルホテル                        新館6階ヴィオレ ○平野部会長  それではただいまから第28回労災保険部会を開催いたします。  本日は、稲葉委員、金城委員、那須委員、高松委員が御欠席です。なお、長谷川委 員は御都合により遅れて出席されるとのことですので、それまでの間の代理者の出席 の申出がありました。日本労働組合総連合会雇用法制対策局部長の漆原肇氏です。  それでは本日の議事に入ります。1つ目の議題で「通勤災害保護制度」についてで すが、前回の部会において、事務局に調査あるいは資料の提出をお願いしていた事項 がありますので、まずは事務局から説明をお願いします。 ○労災管理課長  それでは資料1は前回と同じものですので、資料2からご覧ください。  現在の労働者災害補償保険法施行規則第8条では、逸脱・中断について定めており、 その中で「その他これに準ずる行為」とありますが、どういうものが該当するかとい うような御質問が前回の部会でありましたので、それを整理いたしました。  「日用品の購入その他これに準ずる行為」には、「社会通念上、日常の生活を営む 上で必要な行為であり、かつ、その態様が日用品の購入と同程度と評価できるものを いい、本人又は家族の衣、食、保健、教養のための行為及び公民権の行使に伴う行為」 が該当します。  まず、1号の「日用品の購入その他これに準ずる行為」ということで、これまで通 達などで整理されているものをまとめております。例として、帰途で総菜等を購入す る場合、クリーニング店に立ち寄る場合、理美容院に立ち寄る場合、独身あるいは単 身赴任の方が食堂に食事に立ち寄る場合、それから前回御質問がありました入院して いる同居の家族の洗濯物を取りに病院に立ち寄るというような場合があります。それ から法第7条第2項第2号、これは複数就業者の場合ですが、前の就業場所から次の 就業場所に移動する際に次の就業場所の始業時間との関係から食事に立ち寄る、同じ く複数就業者の場合で、途中に図書館等で業務に必要な情報収集等を行う場合です。 法第7条第2項第3号で、住居間移動とありますが、これは単身赴任の場合などに帰 省先から就業場所に移動するような場合に途中で食事に立ち寄るとか、マイカーで移 動する場合に途中で仮眠を取るといった場合が該当します。  次に、2号の「職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育 その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける 行為」ですが、1つは専修学校における教育、もう1つが各種学校における教育で、 修業期間が1年以上であって課程の内容が一般的に職業に必要な技術を教授するもの です。一般的に職業に必要な技術を教授する課程というものとしては、例えば工業、 医療、栄養士、調理師、理容師、美容師、保育士、商業経理、和洋裁等の課程が挙げ られます。  3号は「選挙権の行使その他これに準ずる行為」ですが、ここで該当するものとし て、最高裁判所裁判官の国民審査権の行使、それから地方自治における住民の直接請 求権の行使といったようなものが該当します。  4号では「病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる 行為」として、施術所における柔道整復師とか、あん摩マッサージ指圧師、はり師、 きゅう師等の施術を受ける行為というものが該当します。  次に資料3です。労働者災害補償保険法施行規則第8条の逸脱・中断に該当する事 例がどの程度あるかということで、統計的に把握できておらず、特別に全部調べるの が難しいということもありまして、8つの労働局の主要な監督署23カ署において、平 成18年度に新規に、保険給付を行った通勤災害の事案について調査して集計したも のです。  2が、調査結果で、23の調査対象の監督署において、18年度に新規に通勤災害で保 険給付を行ったものの件数が合計で8,962件となります。そのうち逸脱・中断に該当 するもので保険給付を行ったのが23件で、号別に見ますと、第1号の日用品の購入 その他これに準ずる行為が23件で、後は0であったということです。  下記の1つ目の※にあります、まず1号の事案については、帰り道でスーパーで買 い物をするとか、食事に立ち寄ったというようなケースがほとんどです。2号、3号、 4号の事案はなかったのですが、4号との関係で病院に立ち寄る途中で事故にあった というケースはありましたが、それは通勤経路からの逸脱中ということで不支給にな ったものが2件ありました。  次に資料4は、前回の部会でパートタイム労働者と一般労働者とで、通勤災害の件 数等がわからないかという質問がありまして、これも統計上集計ができていないとい うことで、それに代わるものとして、平成18年度に通勤災害で休業給付を受けた方 について平均賃金の分布を見たものです。パートタイム労働者の賃金がどのくらいか もありますが、仮に月10万円くらいと仮定すれば、平均賃金は3千数百円になろう かと思います。3,500円以下の部分を足し合わせると16.2%になり、もちろん全く一 致するわけではありませんが、概ねそれに近いのではないかと推測されます。ただ毎 月勤労統計調査などでパートタイム労働者の比率を見ると20数%となっていますの で、一般的な労働者の割合から見ると通勤災害におけるパートタイム労働者の割合は 低いのではないかと推測できると思います。  資料5は、前回労災保険全体の経済状況について説明しましたが、その中で非業務 災害の収支について、粗々の試算をしたものです。収入の方ですが、保険料収納額に ついて、非業務災害の部分の率で全体の保険料収入を按分比例するとだいたい1,394 億くらいの保険料収納額です。運用収入についても按分比例すると、収入計で1,560 億超という推計です。支出の方ですが、保険給付については非業務災害の給付がどれ だけか統計上把握できますので、短期、長期それぞれ444億、368億となっています。 事務費については、これも按分比例で推計しました。特別支給金については、非業務 災害の分から出ますので、それで集計しております。それで集計すると支出が1,165 億で、単年度で見た場合の収支としては395億ぐらいの黒字です。もちろん長期給付 の年金等については積立金の方に移るということで、これすべてが黒字ではないです が、非業務災害について収支を試算したものということです。説明は以上です。 ○平野部会長  ありがとうございました。それではただいまの事務局からの説明も踏まえて、御意 見等をお伺いします。前回出した資料は最初の資料1ですが、前回議論をしたうえで、 今日出していただいた資料について、皆さんからの御意見を伺いたいと思います。 ○松井委員  まず部会長に確認をしたいのですが、いま俎上に上っているのは介護のケースと育 児のケースと2つあると思います。それで、両方とも順不同でどっちでも議論すると いうやり方をするのか、介護について十分議論してその後育児について議論していく のか、その辺の決め具合はどうやればいいのかを確認したいのです。と申しますのは 今日案件が結構たくさんありまして、課長に伺ったところ、ここの通災の議論は1時 間程度と、内々聞いていましたので、やり方としてはそれも合せ技でということなの か、その辺の確認をした上で議論ができればと思います。 ○平野部会長  では、事務局にコメントしていただけますか。 ○労災管理課長  まず介護について議論していただき、その後育児の方を議論していただければどう かと思います。 ○平野部会長  ここでの議論は取り敢えず介護について議論をしていただくようにしたいと思い ます。 ○松井委員  前回の事務局の提案でいきますと、新たに省令を規定する方向で検討すべしという、 検討したらどうかのお話だったと思いますが、現行、細かい点は少し違いますが、育 児では通達でカバーできていると、事務局に確認しますが、仮に通達等で読むように すると、何がどのように問題なのか、事務局として考えておられるその問題点はどの ようなのかを教えていただきたいと思います。と申しますのは前回の議論ではおそら く、省令施行規則化することで、むやみやたら広がることがないようなご説明があっ たように記憶しておりますが、私はそれに書いたところで広がるケースは広がってい くのではないかという気もしないわけではないので、事務方としての提案理由そもそ もを確認をしたいと思います。  それからもう1つ質問でいきますと、先ほど資料3で説明いただいたところで、大 きな労働基準監督署23署の説明でしたが、この23件は全部の労働基準監督署にひき 直したとき、仮に同じ比率だったらどのくらいの件数なのかも教えていただきたいと 思います。  それと職業訓練、2号のところですが、私の知識不足なのかもしれませんが、専修 学校における教育とか、各種学校における教育云々と書いてありますが、厚生労働省 がやっているような職業訓練校はここに含まれるように読める気がしますが、これだ け見ると職業能力開発学校における教育等の形には書いてないので、その辺のものが どのようになっているのかということです。  育児のことになるかもしれませんが、現行通達で育児のケースで保護されているの は、逸脱・中断ということではなくて、保育所に連れていくとかを全て合理的な通勤 経路とみなされていると私自身は理解していますが、事務局が提案しているのは、逸 脱・中断という形で別途手当をするということなのかどうか、そういうことをする前 に受け手とか、労働者側から見た場合の取扱いの違いに対する正しい理解が得られる と思っておられるのか、育児のほうは後でも結構ですが、御回答願えればと思います。 ○労災管理課長  1点目で、これも育児とも関連しますが、例えば共働きの方で子供を保育所に預け ないといけないという場合に、それは保育所に預けないとその人が仕事そのものがで きないということですので、通勤途上で保育所に預けに行くのは合理的な経路として 現在通達の中で読めるので、それで保護しているということです。その場合には単に 預けるだけですので、非常に時間もかからないでしょうし。逆に介護の場合にはこの 裁判のケースでもかなり長時間に渡って逸脱しているケースでして、今の省令からい くとなかなか読みづらいということで、別途省令上措置しないと、もっと他のケース まで広がっていくのではないかということで、介護のケースについては省令で措置し てはどうかという提案です。それとの関係で育児に戻りますが、育児について最初申 しましたように保育所に立ち寄るケースについては経路でカバーされるのですが、育 児について、介護との並びで考えた場合に、途中で育児行為そのものをするというケ ースが論理的には考えられないわけではないので、そういうことが介護との並びで一 応御議論をいただいたらどうかということで、資料1にはそれも含めて論点として出 させていただいているということです。  次に資料3の関係で、23の監督署で通勤災害がそもそも8,962件でそのうち逸脱・ 中断が23件であったとありますが、全体の監督署では平成17年度になるのですが、 新規の通勤災害の事案が56,367件ということで、これを比べると6倍強ぐらいにな りますので、それとの比率で単純に推計すると23件の6倍ぐらいで130数件くらい の数字になります。  それから2号の職業訓練の場合には、そもそもその他ではなくて、元々の職業訓練 という中で、例えば能開機構の職業能力開発校とか、都道府県でやっている職業訓練 校などは元々の職業訓練の方で読めるということで、ここはあくまでもその他で該当 するものとして専修学校とか、各種学校というものを挙げさせていただいているもの です。 ○平野部会長  ありがとうございます。よろしいですか、他にありますか。 ○内藤委員  前回欠席しておりまして、論議がちょっと見えていないところがあるかもしれませ んが、前回の議事録を読ませていただきまして、様々な委員の方からいろいろな趣旨 の発言があったことについては一応承知していますが、前回論議に参加してなかった ということで、私の考え方をまず述べておかないといけないかと思いまして、発言を 求めましたが、私自信は介護に関する労働災害保険制度についての省令を定めるとい うことについては基本的に賛成をしたいと思います。特に介護という問題は現在注目 されていますし、確かに裁判の判例は1例のみでありますが、今後も類似のことが発 生することが想定されるという中で、こういったことを定めることについて私は当該 のケースを救うというだけではなくて、社会の変化なりニーズに対応してそういった ルールなりを見直すという意味からも意義のあることだと思いますので、私は賛成の 立場でこの委員会に望んでいるということを申し上げておきたいと思います。 ○平野部会長  はい、ありがとうございます。他にはありますか。 ○筧委員  先ほど質問のあった資料3の事案の調査結果について少し質問させていただきます。 前回のときにもいったいどのくらい発生するのかをお願いしたところがあると思い ますが、この第1号で、調査結果で23件、上の労働基準監督署は23ということでそ れは数字はあっていますが、全国的な分布としての傾向みたいなものはあるのでしょ うか。全国的にそういう件数が発生していると考えてよろしいのですか。例えば都会 の通勤の形態が非常にしっかりしているところとそうではないところとでは随分違 うのではないかというような思いもありましたので。 ○労災管理課長  そもそも調査対象の労働局が資料3の1にありますように、北海道、新潟、宮城、 東京、愛知、大阪、広島、福岡と8つです。その中で多かったのは広島、福岡が5件 ずつで、最も多かったということです。あと愛知が4件、北海道3件、大阪3件、東 京2件、宮城1件、新潟は0です。 ○筧委員  東京は2件しかないわけですか。 ○労災管理課長  はい、逸脱・中断についてはそうなります。 ○筧委員  はい、わかりました。 ○平野部会長  それでは都会の中とか、福岡と言ってもいろいろありますからね。 ○労災管理課長  そこまではちょっと読みきれないのでしょうけれど。 ○平野部会長  場所はわかるように特定できますか。例えば福岡の5件のうちだけでもいいのです が、市内で起こっているのか、あるいは郡部で起こっているのかというのがわかりま すか。わかればちょっとだけでもお願いします。 ○労災管理課長  ちょっと、どこかはっきりしないのですが、ただ監督署について主要な監督署とい うとで、基本的に方面制の監督署を調べていますので、どちらかと言えば都市部であ ることは確かです。 ○平野部会長  どうもありがとうございます。 ○小手川委員  同じく資料3で確認します。一番下の※で病院に立ち寄る途中で、不支給が2件あ ったということですが、内容は本人が病院に治療に行くのか、お見舞いだったのか、 もう少し具体的にわかれば参考までにお教えください。 ○労災管理課長  基本的に単なるお見舞いでは対象にならないので、このケースはいずれも本人が病 院に治療に立ち寄る途中の事故になります。 ○小手川委員  それで、経路が逸脱していたということですよね。 ○労災管理課長  はい、通常の通勤経路から離れた所に病院があって、経路から丁度離れた所で事故 に遭われたということで、給付の対象になっていないものです。 ○小手川委員  わかりました。 ○松井委員  単なるお見舞いは、そもそも対象としていない、そういう理解ですよね。そのお見 舞いよりもう少し先にというか、介護と非常に似て、もしかして非なるものかもしれ ませんが、いままでの取扱い等をいろいろ調べて見ると、例えば娘さんが出産をした ときに立ち会ってそこに寝泊まりをして何か面倒を見ていたときには、いまのような お見舞いという取扱いではなくて、さらにそこにわりと長く寝泊まりしていた場合に、 住居とみなされて、そもそもそこから通勤しているのだという取扱いになるというこ とも解説書を見ると書いてあります。そういう場合お見舞いと、病院に行って何かを していることとの差は現実にはどのような違いをもって見ているのかどうか。それと、 もう一つ、いまは病院に寝泊まりはさせなくなってきていますので、最近そういう形 での通勤災害を調べようがあるのかどうかわからないのですが、そんなケースで件数 は把握できているのか、その辺を教えてください。あと泊まっているケースとは、何 日間ぐらい泊まっていると住居と見なしうるのか、そういうものは行政として何らか の判断基準はもっておられるのか、それともそれぞれの状況に応じているのか。と言 うのは、親族の方が手術などをしてずっと付き添っているケースもあると思いますが、 それを単なるお見舞いと見るのか見ないのか、いま一つ、介護の面でも議論をしてい くときに、少し参考というか、横に並んでいるようなものなので、違いを明らかにし ておいてもらいたいのです。現行の取扱いはどうなっているかをまず教えてください。 ○労災管理課長  そこに行って家族が何かをすることが、病人なりの生活上必要かどうかということ です。単なる見舞いだけであれば、それは行こうが行くまいが病人にとって生活に困 るわけではないので、そこで何らかの世話をするということが必要な場合に区別がで きるのではないかと思います。それで長女の出産に際してというのは、昭和52年に そういった事例があって、そのケースについては15日間泊まり込んだというもので す。具体的に何日以上であればというのは明確には引けないのですが、その程度であ れば、住居として認められるというか、実際認めたという事例です。最近どのくらい あるかについては、いまは把握できておりません。 ○松井委員  そうすると何かしてなくてはいけないということですから、例えば非常に重い手術 などをして、単に手術室の外でというか待合室でずっと待っているというのは対象と ならない、そういう理解をしておいてよろしいのでしょうか。 ○労災管理課長  そういう理解です。 ○平野部会長  よろしいでしょうか。なるべく、いろんなお立場から御意見いただいて、それを反 映して、最後まとめたいと思います。大体の予定ですと、この次ぐらいに案ができて、 先ほども松井委員からの質問があったのですが、そこのところは、もし皆さん御理解 いただければ条文に落とすという恰好になると思うのです。よろしいでしょうか。前 回いろいろ御意見を伺ったので、それを反映するということはもちろんです。 ○松井委員  まず介護のケースで議論をさせていただくといたしますと、その場合の公平な取扱 いをするための要件を、どのように決めていくのかということが考えられると思うの です。まずどのようにするのかではなく、それを大きく取るとすると、おそらく介護 を受ける人、被介護者をどこまで設けるのかということと、それから被介護者がどう いう状況になっているのかという、いわば要介護状態であるのかないのか、その判定 基準はどのくらいのものにしていくのかというもの。それから前回の審議会の中では、 仮に他の介護をする人がいなくて義理のお父さんの家での介護をしているという、た だそれは本当に介護をしているというものが、必要性があるのかないのかということ を判断をする。というのは先ほどの議論ですと、単にお見舞いくらいしているのは対 象としないのだというならば、一例で言えば単に義理のお父さんの顔を見に行くだけ は介護をしたことと見なさないとか、そういうことが現実の問題としてできるのかで きないのか。できなくても精神的なものは何らかの後ほどでも確認できるようなこと をする必要なのかどうか、そういうところが最低限あると思います。それが反復継続 性というか継続的に行われているのかどうかというのは、前の論点の中に入っていた と思うのですが、どういうことをした場合に反復継続性というものを見ることが可能 なのか。それが初めて行ったときは、それは今後やるはずだということを、どういう 形で公平性が担保される形でやれるようにするのかという論点もあると思います。そ れからもう一つ、先ほどの課長の説明ですと、介護のケースですと、もう少し時間も かかっているケースがあるだろう、その場合設定できるか否かは別として、そこに滞 在している、介護をしている時間というものを決めるのか決めないのか、そういう論 点もあるのだと思います。それとの関連でいくと、先ほどの介護の必要性と同じかも しれないのですが、具体的に本当に介護をしているということまで求めるのか求めな いのか、少なくともこのくらいについてのコンセンサスをどうやって得ていくのかと いうことを議論していかないと、次回に急に案が出てきてといっても、そこまで議論 するのかしないのかというのは、まずやっていかないと難しいのではないかと思いま す。 ○平野部会長  先ほど出てきた8千何百件、これを皆審査したというのですよね。審査する部署が あって、今の松井委員のお話ですと、実はそこに任されている部分がかなり大きいの だけども、大体のガイドライン自体はわからないかというご趣旨だと思うのですよね。 あまりガイドラインがわかってしまうと、後やりにくくなるというようなこともある かもしれませんが。 ○漆原氏(長谷川委員代理)  代理ですけど、ちょっと発言をさせていただきたいと思います。今回の裁判例の話 をみてみますと、5日勤務の内4日程度を、義理の兄の替わりに、義理の兄ができな い時間に介護を行った。その介護の内容については、例えば夕食を温めたりとか、入 浴の介助をするというようなことだと聞いております。どこまで介護の内容がどうか というところは、確かに決めたいという気持もあるのかもしれませんが、今回の通勤 災害で認めようとしているところは、中断・逸脱の部分はもとより、介護中のところ を認めようという話ではなくて、通常合理的な経路に復帰したその後を認めようとい うことですので、そう考えますと、介護ということがある程度継続的なものが認めら れて、一般的に介護だなということがわかるのであれば、その内容まで詰めていかな くてもいいのではないかなと思っております。 ○平野部会長  おっしゃることはよくわかりますが、結局どのように審査するのかというときの審 査のガイドラインがわかると、こういう議論がもう少し微細なところまでいくのです が、まずここで枠組みを作るということは、非常に重要な話であって、その枠組みの 中に、介護による中断を認めるかどうかという話だと思いますね。またそのうちに課 長さんにお願いしておいて、ガイドラインの大枠を説明できる方がもしいらっしゃっ たら、どういう場合を労災とするか。 ○労災管理課長  どういう場合というのは、ある程度議論していただく必要があるのです。まず誰を 対象にするのかとか、常時介護が必要である者を対象にするのか、その点については この場で御議論いただく必要があるかと思います。 ○平野部会長  ただあまり公表すると。 ○労災管理課長  ただ省令上、そこはある程度限定して決めないと、何でもいいということにはなら ないので、省令でどこまで書くかということはあるかと思いますが、一応どういう場 合に対象にするかということを決める必要はあると思います。松井委員の御質問との 関連で若干事務局から申し上げます。資料1を見ていただくと、2の(1)の論点で、 例えば介護を受ける対象者の範囲、具体的内容、反復継続性等というのを一応論点と しているのですが、一つは参考にあります介護休業制度の概要というところで、対象 家族については配偶者、父母、子、配偶者の父母、同居かつ扶養している祖父母、兄 弟姉妹、孫というような、介護休業の場合はそういうのを対象にしている。労災保険 においても単身赴任の場合の要件として、介護をしていることによって単身赴任せざ るを得ないというような場合にも、これと同様のものを使っておりますので、一つは そういったものを参考にして対象家族の範囲を定めるというのが一つの考え方では ないかと思います。しかも介護ですので、被介護者が常時介護を必要としているとい う条件が必要ではないかと思います。労災保険の単身赴任の場合には、常時介護を必 要としている者の介護のために、誰かが残って単身赴任せざるを得ないというような 形になっておりますので、常時介護を要する対象家族の介護をするためというような ことを一つの要件にしてはどうかと考えております。反復継続性というのも通勤災害 で保護するためには、ある程度その人が一定の役割を果たすことが前提になっている ことが必要であると思われますので、反復継続性も必要であろうというのが我々の考 えです。ただ先ほどお話がありました、一番最初の場合どうするかというのは問題と してはあるのですが、そこはその人が一定の頻度で介護することが予定されていたか どうかということを調べた上で、判断せざるを得ないかなと考えております。実際の 内容や時間については、細かく要件設定するのは難しい面があるのではないかと思い ます。 ○平野部会長  ありがとうございました。よろしいでしょうか。少し中身がわかったということで す。それでは今日議論いただいて御意見伺ったわけですが、介護については大阪高裁 判決の事実がカバーできるように、介護休業制度における対象者のことも参考にしな がら、通勤災害の通勤保護制度の対象とすることにしたい。省令改正を行うことにす るのですが、育児についてはほとんどのケースが合理的経路として。 ○労災管理課長  前半まず介護をやってからいくということでしたので、育児については、ここで御 議論いただければと思います。 ○平野部会長  それでは、育児について御意見を伺いましょう。 ○内藤委員  意見というより質問ですが、私もいろいろと考えてみたのですが、介護はある程度 想定ができるのですが、育児の中途逸脱のケースがなかなか想定ができなかったので、 例えばこういうケースは現行のルールで救われるのか救われないのかを聞きたいの です。例えば難病で子供が入院をしていまして、もちろん介護、治療を含めて病院が きちんとやるのですが、帰宅の途中にそこに立ち寄って、その子供に本を読んでやっ たり話をしてやったり励ましてやったり、見舞いと言えば見舞いだけども、これは一 種の育児ではないかと私は思うのですが、それで、また夜通勤ルートに戻る。このケ ースですと、時間的にも子供の洗濯物を取りに行く時間よりは相当長いですし、想定 されてる洗濯物を取りに帰るということでは救えないかなと思いますので、これは育 児になるのか、それが、もしそういうケースだと現行法で救えるのかどうかお答えを いただければと思います。それによっては、私は育児についても、介護と育児セット にして今回のケースに適応したらどうかと思っているのですが、いかがでしょうか。 ○労災管理課長  その単なるお見舞いと違うというのが、どの程度かという問題はあるのですが、結 局家族の保健、衛生、教養のための行為、最初の資料2で言っている中で読めるケー スはあるのではないかと思います。 ○内藤委員  どの部分にあるのでしょうか。 ○労災管理課長  資料2で、そもそも日用品の購入その他これに準ずる行為というものが、本人また は家族の衣、食、保健、教養のための行為ということで言っており、先ほどおっしゃ られたようなものについて、それで読めるものがあるのではないかと思います。 ○内藤委員  ということは、いま私が申し上げたようなケースは、いまのルールでも救われると いう。 ○労災管理課長  もちろん内容や時間によるかと思います。 ○中窪委員  育児についてはそんなにシリアスな状況ではなくて、例えば子供を保育園に朝は自 分の娘が連れて行ってるけれども、夕方は遅いので、週3回保育所からうちに連れて 帰って1時間なり面倒を見てあげて、娘が帰ってきたときに、じゃあということで元 の通勤経路に復帰して自分のうちに戻る、そういうタイプではないかなと思ったので すが。 ○斎藤委員  私も子供を保育所に預けていた経験がありますので、例えば息子や娘が近隣に居住 していれば、仕事で保育所へお迎え行けないというのは多々あることで、そういった 場合に親が替わりに迎えに行って、娘や息子が帰ってくるまで、そこの家で子供とい っしょに食事を食べたり待っているという場合は非常に多いと思われます。親ではな いですが友人とかで、実際に私もそういう経験していますので、その場合は他にその 子供の面倒を見る人がいればいいですが、いない場合や、または子育てをする上での 環境が十分整っていないという場合について、少子化が急速に進行している中で、企 業が次世代育成に取り組むことも求められるという今の状況においては、育児もこう いう中に入れていただいたほうがよろしいのではないかと思います。 ○松井委員  確認をしたいのですが、今の斎藤さんがおっしゃられたケースというのは、まず現 行の仕組みですとどこまで読むことができるのかを共通認識をし、その上で議論をし てもらえればと思います。いま斎藤さんがおっしゃられたのは、友人宅に預けて取り に行くのはいいのですけれども。 ○斎藤委員  それは結果です。私がこういうことをした経験もあるのでということで、親が孫の 面倒を見るということに限定して思っておりますので、それは近所に親がいなかった からそういうケースもありましたが、近所に親がいればそういう場合も十分あり得る ということで、入れていただきたいと思ったわけでございます。 ○松井委員  その場合確認をしたいのは、要するに親がおそらく孫を預かっているというケース なのですが、まず確認したいのは、親のところまで子供を引き取りに行くのは、現行 でも読めるのではないかと思うのですよね。それをまず確認して、共通のベースを作 っておきたいということと、いまおそらく新たに提案されようとしていることは、中 窪委員がおっしゃられたケースでいくと、例えば孫をお祖母さんが保育所に引き取り に行って、自分の娘の家に連れて行って保育をして待っている、そういうケースです よね。そういうことを、逸脱・中断の一つの例外的措置として入れていくかという議 論ですよね。そのケースのときに、反対に私から質問するのも変ですが、友人が預か ってくれたケースは対象としないとなる、そういう意味になるのですか。 ○斎藤委員  はい、なると思うのです。 ○平山委員  非常に細かい適用の話になっているのですが、前回欠席していますので申し訳ない ですが、資料1で育児について今回これも対象としたらどうだということなのですが、 育児については現実的には多くのケースで既にカバーされている、我々の中で話を聞 いていてもほぼカバーされていると思うのですが、今回介護についてこういう議論を するので、育児もやっておいたらどうだみたいに見えるのですよね。例えば介護につ いては今度のような議論をしますよね。じゃあ、育児は本当に今の実態で足りないと ころがあると思う、こういうところはやらないといけないのだよというところが、具 体的なケースとして想定された上で、こういう議論をしようということなのでしょう か。それとも、こういう整理をするから、介護、育児一体のものとして、育児も明記 したほうがいいな、そういう実態とは離れたような形で議論をしようとされているの でしょうか。教えてください。 ○労災管理課長  基本的には今回裁判で介護の事例があったということです。 ○平山委員  実態的な話としてですよね。 ○労災管理課長  介護についてはですね。それとの並びで理論的に育児についても検討していただい たらということで、ただ育児については一般的には経路でカバーされる場合が実態と しては多いのではないかというのが、一つの認識です。 ○平山委員  いや、要するに実態的に問題になるところがあるから、こういう整理をしないとい けないということがあるのかどうか。 ○労災管理課長  介護について議論することの並びで、理論的に御議論いただければと思います。 ○平山委員  実態的というより理論的にということですね。 ○佐野委員  ちょっと斎藤さんがおっしゃった、対象になる労働者はお祖母さんなのですよね。 ○斎藤委員  はい。 ○佐野委員  友人も労働者でしょうか。 ○斎藤委員  家族ということで考えていますので、友人は考えておりません。 ○佐野委員  入れるつもりはないのだけど、さっきのケースで同じようなケースを考えた場合に、 友人も労働者ですよね。 ○斎藤委員  はい。 ○佐野委員  そう考えていくと、子供を持っている労働者の直接的な子供が他の人に頼んだとき に、お祖母さんは入る、他の友人だと入らない、そういうケースになるわけですよね。 ○斎藤委員  ただ、お祖母さんの場合だと娘の家に連れて行って、その後通勤経路で帰らなけれ ばいけないということがありますが、友人の場合は自分の家に連れて帰りますから、 その後の通勤経路は無くなると思います。 ○佐野委員  斎藤さんの場合はそうかもしれないけれども、そうじゃないケースも出てくる可能 性がありますよね。労災保険法そのものは、どちらかというと介護と違って、労働者 本人の保護という視点がはっきりしていますよね。そうなってくると、例えばお祖母 さんであろうが、友人だろうが、私それをやれと言っているわけでないのだけど、目 的が育児であれば両方とも認めないと不公平だという感じがするのですけどね。どこ に区別があるのと。 ○斎藤委員  いま介護と育児の場合でありまして、介護のときの裁判が、介護を行うことができ る親族が他にいないということと、労働者本人またはその家族の家庭生活を営む上で の必要な行為という2点から見ると、保育ができない娘、孫のためにその子供を保育 することは、保育を行うことができる親族が他にいないということと、それから、こ れも家族としてみた場合には、家族の家庭生活を営む上での必要な行為ということで、 合致する部分が非常に多い。ですので、介護といっしょに横でみた場合に、介護で認 められることについて、育児では横並びにした場合に、それも認められるのではない かという考えで申しておりますので、友人まで入れるというように広くするという意 味ではないです。 ○田中委員  ちょっと私不勉強なのかもしれないですけど、少し混乱してきてしまったのですが、 いまの議論は、育児・介護休業法という法律の横並びでみていくとしたら、育児は自 分の子供か、あるいは養子縁組か、何らかの対象が限られていますよね。孫の面倒を 見ることは、育児・介護休業法などの対象にはなっていませんよね。いまの議論は、 それをすることが良い悪いの議論と申し上げたいわけではなくて、育児という概念を、 いわゆる孫というライン、孫の面倒を見るのは私も大事なことだと思うのですけれど も、その概念まで広げて、労働者の育児という行為を広げて拡大するという議論につ ながっているような気がするのです。もし、いま介護の議論をさせていただいたとき に、介護の対象をどのように考えるかというとき、介護休業の対象をある前提に争点 を置きながら、労働者の対象を決めていったときに、同じように考えるのであれば、 育児もどうしても何らかの、どこまでを対象と考えるかという議論をするときに、育 児・介護休業法が頭に浮かぶのは、これは両並びで見ればいっしょになってしまうと 思うのですね。そのときに、孫という存在に対する育児休業法のことを労働者の育児 の行為として認定して議論していこうと。もし、通災の中で議論をしていこうという ことだと、そこの議論をきちんとしておかないと、何となく適用という気持もわかり ますし、そういうケースがあるのはよくわかるのですが、非常に線引きやいろいろな 議論がちょっと複雑になってくるのかなと。正直言ってそういう感想を持ったのです。  いまの育児休業法の対象を変えるという議論ではないですが、ただ通災にあたって は労働者の育児という行為、言葉の適用範囲を広げましょうというのが、いまの斎藤 委員がおっしゃっていることだという理解でよろしいでしょうか。かなり大きな議論 かなという気はするのですが、一つの考え方ではあると思います。  先ほど佐野委員がおっしゃったように、ちょっと今度は労働者と育児をされる側と の関係を除いて考えたら労働者の行為をどこまで広げるかというときに、友人の育児 という行為はどうなるのかと。孫はよくて友人は駄目という、ではその線引きはどの ように考えるのかと、育児という行為を労働者がするに当たっての考え方の整理、こ れを議論していかないと。 ○斎藤委員  それは家族という中で、労働者本人またはその家族という中で、友人や知人は入ら ないというようになってくるのです。 ○田中委員  それはどこかで規定が。 ○斎藤委員  それは、介護の裁判の中で出てきた文書の中にあるのです。 ○田中委員  介護の裁判はちょっと置いておいて、労働者のある行為を通勤途上の経路に復され たとき、何か災害に遭われたときにそれを救いましょうというのが、一つの考え方だ と思いますが、労働者の育児という行為をどう考えるかというときに、いままで介護 というのは、介護対象者と被介護者、介護者という関係が非常に明確だったのです。 それで家族も入ってきますが、育児という行為を切ると、いままで育児という行為は、 孫にまでは広げてあまり議論をされてきていないと私は認識していて、もし間違って いたら事務局の方に御訂正いただきたいのですが、その議論をいましているような気 がするのです。  では、このようにしましたと。育児休業法や何らかのいろいろな措置を、これから 早くお子さんが生まれて、お祖父さんやお祖母さんの立場になる労働者はたくさんい ますから、そういう方たちが育児休業法なりを、娘のほうが忙しいから、働き盛りだ からちょっと私のほうが少し管理職になったし余裕があるから、私が休業を取りまし ょうという議論にもつながる。飛躍しすぎですが、そういう議論、ある想定をせざる を得ない部分もあるかなと。  育児については、私自身は正直言っていまはかなりカバーされていると思うので、 先ほど平山委員がおっしゃったように、カバーされない範囲をもう少しきちんと検証 して、それを救うための省令整備が必要かどうかを議論するべきかなと。ちょっと介 護と一緒にというよりもという気が個人的にはしているのですが、いまの議論をこの まま持っていくと、繰り返しになりますがそんな印象を持ったので、もしそこを議論 されるのであれば、もう少しそれぞれ事務局からも御意見を頂戴して、どういう考え 方でこれをアプローチして整理をしていくのかを、是非議論、審議させていただきた いと思います。 ○中窪委員  すみません。いま田中委員がおっしゃったことは、非常に論理的に正しいと思いま す。育児・介護との並びでいうと、確かに育児というのは育児・介護休業法では自分 の子どもをやっていますから、それはもう資料に出ていますように、すでに法理的経 路の中でカバーされることが多いと思うのです。  ただ、一応、参考のために育児・介護休業法を見ますが、一応我々がいま議論して いるのは、労災保険法の7条3項の「日常生活で必要な行為であって厚生労働省で定 めるものをやむを得ない事由により行うための最少限度のもの」、ここに当たるかど うかというのが究極的な問題です。そういうときに、確かに自分の子どもについては 済んでいるが、孫について現実にそういう形で迎えに行っている例が多くて、それに ニーズがもしあって、かつ、本人の日常生活に必要な行為と見なすのであれば、この 機会に対処することも一つはあり得るのではないか。だから、そうすべきかどうかに ついて、議論するのだと思います。ですから、我々はいまどこにいるかを明確にして いただく意味で、大変有意義なご指摘だと思います。  それとの絡みで、いま若干変に思ったのです。先ほど資料2にの該当する例のリス トがあるのですが、そこのいちばん上に「日用品の購入その他これに準ずる行為とは」 云々と書いてありますが、これは「日常生活上必要な行為とは」の間違いではないで すか。 ○労災管理課長  それはこの通達が、昔は全部日用品の購入その他これに準ずる行為で、4号までを 読んでいたときのものなので、ちょっと誤解を招く表現であったことはお詫び申し上 げます。いちばん最初、省令は全部日用品その他でやっていたので、その後2号以下 が分かれています。 ○中窪委員  現在に引き直せば、違う言葉になるわけですね。 ○労災管理課長  そうですね、はい。 ○中窪委員  1から4を全部統合する概念として、上にいく部分があるのですね。 ○労災管理課長  はい。 ○松井委員  いま中窪委員がもう一度きちんと整理してくださったので、あえて私としては付け 加えることはないのですが、この場で労災保険の労災補償の部分は違うのですよとい う理屈は、それならばどういう理屈を立てていくのかということ。それと使用者側と しては、育介法の範囲の拡大は別途雇児局でいま検討もしていますので、そういうこ ともつらつら頭に思い浮かんだりとか、そういうものもないわけではないのです。そ して、本当に場合によって、労災保険の世界をより広げていこうとするのであるなら ば、あまり会社側からするとそこまでなかなか踏み込んだ形で把握できない部分が相 当多いと思うのです。そうすると、このファンドを本当に事業主だけでいま見ている。 その部分について、労働者にとって欠くべからざる行為という形の限定になされてい るのかどうかということは、やはり十分踏まえた形で議論をしてもらわないと。それ ならば何かどうしても社会的に必要だとか、どうしても世の中的に必要だということ についての必要性を100%否定するつもりはないのですが、ならばもう少し違った形 で支えることも、従業員側、労働者側の支援もあってもいいのではないかという素朴 な感じも持つわけです。そうしないと企業側として本当に働くために欠くべからざる 行為の範囲はどこまでなのだと、その辺は労災保険の本旨に戻っていくと、私どもと してはそれなりに限定せざるを得ないことは、少しは理解していただけるとありがた いと思います。  あと反対に私から言うべきことではないと思いますが、私が労働者の立場に立った ら、何で友人に預けるケースが駄目なのかというのが、なかなか友人のお子さんを預 かって面倒を見ているのが救われないというのは、社会的にうまく説明し得るのかど うかというのが、特に大都会ですと親族が近くに住んでいるケースが少ないので、そ ういうことを制度化していくことの公平性というか納得性も議論した上で、納得され 得るものがどうなのかということは十分議論しなくてはいけないと思います。 ○平野部会長  私の言い方が悪かったのかもしれませんが、いま育児について松井委員のお話した のは、もう育児の本質のところにまで関わっている話です。ですが、ここでは通勤災 害をどれだけ保護するか、こういう議論です。  いまのお話の中でいちばん大事なところは何かというと、友人自身が実際に通勤の 途中にそういう行為をして、少し時間を取って帰路についたときに、いわゆる通勤経 路として認められるかどうか、認めようとするかどうかという議論なのです。だから ちょっとほかの部分がきちんとしないと、育児の場合はここだけで決められない典型 的な例だという気がするのです。だからどうなのですかね、いまは変化しつつあるの でしょう。課長、これはここではどのように扱うのですか。 ○労災管理課長  今日の御議論では、なかなかいますぐに整理するのは難しいのではないかと思いま す。直接的には裁判では介護の事例ということでしたので、それに絞ってやるのが一 つの考え方かと思います。 ○平野部会長  ただ、せっかく今日議論していただいたので、育児については引き続き議論をする 方向だけは残しておいて、その後に大阪高裁の判決にあるように、通勤経路について 考え直さなければいけないことが主体だったはずなのです。だからそこについては是 非ともまとめて、この次ぐらいに出していただかなければいけない、そういうことに なると思うのです。いかがでしょうか。何かこれを続けていくと、少し微細な項目に わたりすぎて、どうもまとまらなくなってしまうような気がするのです。もし皆さん のほうでここだけは注意喚起をしておきたいということがありましたら、お願いした いのですが。 ○松井委員  もしそういう形で新たなものを盛り込んでいくのであるならば、企業側の人事労務 管理上の管理の容易さというか、理解のしやすさという観点からすると、育児・介護 休業法の並びで、制度は考えてもらいたいと思います。そこと異なる形でいくと、育 児・介護休業法の中でも休業と短時間勤務と時間外労働の制限と深夜業の免除とか、 全部対象範囲が異なっていて、現場は何が何だかわからないというのが率直な印象で す。ですからわかりやすい仕組みで、違うやり方は是非やめていただきたい。これは 使用者側として全員皆さんそう思っていますので、そういう仕組みにしていただきた いと思います。そういうことで、よろしくお願いします。 ○漆原氏  ちょっと一点お伺いしたいのですが、育児の通達が昭和48年に出されたものと、 資料には記載されています。たぶんこの時期には育介法はなかったのかなと思ってい ますが、ここでいう育児というのは、例えば何歳までの子どもが対象だったのか。こ れを見ると託児所、親戚等に子どもを預ける場合という託児所だけではないことも入 っています。例えばこれまで通勤災害の保護の対象になってきたケースというのも、 本当は何歳までだったのかと。例えば、いま育介法でいう何歳までというのを超えた ところが入っていたのかどうなのかということが、なかなかわかりにくいなと思うの です。もしそこで設定している年齢以上のものが対象になっているとすれば、今後も そういうものについて検討すべきではないかなと思っています。 ○労災管理課長  この48年の事例でいきますと、子どもを看護する者がいない労働者が託児所に預 けるという形になっていますので、基本的には保育園というケースを想定しているか と思います。 ○中窪委員  先ほど松井委員から、育児の関係で、友人の場合とどこが違うのかという発言があ ったのですが、友人というのはしばしば有償だったりしますので、私は、家族とはそ こは違うのではないかという印象を持っています。 ○平野部会長  事務局からこの件について、何か付け加えて議論していただくことはありますか。 ○労災管理課長  特にございません。 ○平野部会長  では、ちょうどこの意見を踏まえて、関係方面と議論をいただいて、まとめる方向 にいっていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。ありがとうございます。                   (了承) ○平野部会長  第1の議題が今日のいちばん大切なというか、大きな問題だったのですが、あと3 つほど議題が今日はございます。前回もちょっと議論をいただきましたが、2番目の 「二次健康診断等給付について」、事務局のご説明をいただきたいのです。 ○労災管理課長  まず参考2をご覧ください。その中で「二次健康診断等給付の概要」が10頁にあ ります。二次健康診断等給付については、脳・心臓疾患の予防を目的に、一次健診に おいて一定の項目について異常があるという場合に、二次健康診断と特定保健指導を 行うというものです。3の(1)に対象者を書いてありますが、事業主が実施する一次健 康診断において4つの項目いずれについても異常の所見があると診断された労働者に 対して、(2)にあるような二次健康診断を行い、特定保健指導を行うものです。  資料6は、今回「高齢者の医療の確保に関する法律」によって、40歳以上の方につ いて特定健康診断と特定保健指導を行うことになったわけですが、それに当たって標 準的な健診、保健指導プログラムがまとめられて、それを受けて、労働安全衛生法に 基づく定期健康診断についての健診項目の追加が行われたということです。具体的に は2番に書いているように、1つは肥満度について腹囲を健診項目として追加しまし た。ただ一定の場合、例えば40歳未満等については、省略ができます。  2つ目は、総コレステロールに変わって低比重リポ蛋白コレステロール、いわゆる LDLコレステロールを用いることに変わりました。これに伴いまして、労災保険にお ける二次健康診断の給付については2頁ですが、まず対象者の条件について、これま で血中脂質検査においては血清総コレステロールを見ていたのですが、そこをLDLコ レステロールに変えると。肥満度についてもBMIで見ていたわけですが、腹囲または BMIということで、一定の労働者については腹囲が省略される場合もあるので、補足 的にはBMIを用いるということです。  二次健康診断の検査項目についても、血清総コレステロールの部分はLDLコレステ ロールに変更することで、基本的には安全衛生附則の改正に伴って、その整合性を図 ることで、労災保険の二次健診給付についても見直しが必要であるということです。 説明は以上です。 ○平野部会長  ただいまのご説明につきまして、何か皆さんから御意見等がありましたらお願いし たいと思います。 ○松井委員  少し意見を申し上げます。先ほどの議論では1つの裁判の例で、これだけ省令を見 直そうという話が行われようとしているのですが、今回私どもとしては、高齢者医療 確保法が変わっていく中で、保険者にいわゆる生活習慣病対策を重点的に行ってもら うという大きな医療制度改正が行われたのですが、二次健康診断給付のあり方そのも のについては、労災保険部会ではほとんど議論されていないと。そこについては私ど もとしては非常に不満であると言わざるを得ません。法律が変わっているのにここに ついては単に健診項目が変わったからそこだけを直しますと。そこを直すなとは言い ませんが、直すのであるならばその前に二次健康診断給付がどれだけ役に立っている ものなのかどうか、そもそもここの部分について利用の状況がどうなのか、そういう ことをきちんと議論の俎上にあげた上で、対応してもらいたいと思います。  私たちども使用者側からすると、この制度そのものを知らない人も多すぎるのでは ないか。では、それだけ労災保険の給付を行っていながら、どれだけ効果が検証され ているのかどうかと。そういうものの考え方や、あるいは高齢者医療確保法と二次健 康診断給付そのものの役割分担論はどうなのかということの議論を、是非きちんと今 後してもらいたいと思います。少なくともいまのものが役に立っているのか。  よく産業医の先生等から聞くと、やりっ放しでほとんど意味がないと。当初想定し たよりは数は少ない、それはそれでいいのですが、ではどうしてそうなっているのか、 そういうことをきちんと把握した上で、どこが責任を持って今後やっていくのか、そ ういうものは是非やってもらいたいと思います。  繰り返しますが、お国が控訴しなかった一件でいろいろ議論するのであるならば、 こういった医療制度改革という大きなものが変わっていく中で、ここの労災保険部会 が一切ここのものを議論しなかったことについては、私としては非常に不満が残る、 そういうことだけは申し上げておきたいと思います。それで今後の議論につなげてい ただければと思う次第です。以上です。 ○平野部会長  場所は違いますが、これは何回か話題になったことがあります。そのことについて、 労働者側からどなたかございませんか。確かに周知徹底というのは使用者側だけでは できないことで、労働者側も十分に協力をすると。  次に、それでは診断結果についてどのように応答しているのか、そこの部分につい てもやはりあれですか。事務局としては、とりあえず今日ここにこの議題を出したの ですが、ここでいま松井委員から出たような基本的なことを議論できるとはとても私 は思えないのですが、そういう場をどこかに設けていただくということで、お声をか けていただけますか。 ○長谷川委員  ただ私は、一つ松井委員の言っていることがわからないのですが、私は職場にいた ときに二次健康診断はすごく重要だと思って、そういうことに取り組んできたわけで す。二次健康診断を受けて、それでいろいろな問題を指摘された人に対して、生活指 導をやるとか栄養指導をやる、運動指導をやると、私はずっと職場で取り組んできた ので、今日何か松井委員に言われてあら、あらと思ったのです。 ○松井委員  その重要性を否定しているのではなくて、新しい枠組の下で、例えば二次健康診断 でやって給付がなされたもののデータや、そういうものはおそらく保険者のほうに反 映されることは、現行の仕組みだとないと思うのです。ただそれを高齢者医療確保法 においては、生活習慣病対策に取り組んだことの結果やそのプロセスにおいて、さら に5年後に後期高齢者医療に対する支援金の額が変わってきたり、そういうこともあ るのに、これはここでやっておしまいというもののデータや情報の共有化や連携。反 対に、そういうものがあまり議論されないでこのまま残っていくというのは、何かせ っかく使った給付について無駄が起きはしないのか。最低限そういう活かす仕組みは やれないのか。そもそも保険者で全部やってくださいというのか、もう少し議論の仕 方があるのではないかということです。取組の必要性を否定しているわけではないと、 そのようにご理解を賜れればと思います。 ○長谷川委員  事務局がもっと議論できるような資料を提供しろと、平たく言えばそういうことで すか。 ○松井委員  事務局がもっと勉強してほしいです。 ○長谷川委員  それはそうですよね。 ○平野部会長  それと松井委員がおっしゃっていることは前から私は理解しているのですが、きち んと意見表示してディスカッションをする場があって、それでいまの資料が出てくれ ば申し分ないと、こういう話ではないかと思います。非常に難しい話でそれぞれ意見 が違いますし、場所としても先ほど私が申し上げましたように、ここがそれに適当な 場所かどうかというのもちょっと考えなければいけないと思うのです。それをむしろ 事務局の方で、今日部長さんもおられるので判断していただいて、そういう問題とい うのはどこで議論をするのか。ここの部会でこういう話題が出ましたよということだ けでも結構ですからお伝えいただきたい。 ○労災補償部長  おっしゃっている意味がいま一つわからないので確認をさせていただきたいと思 います。二次健康診断等給付は、私の理解するところ労災保険制度の中の一つの給付 であって、この場で生まれ、いま制度が運用されているものだと思います。あとから 高齢者医療確保法ができて、その中で予防が必要ということでこれに着目して、二次 健康診断等給付と若干似たような性格のものが出てきたということです。それはその こと自体は正しいと思いますし、そういう制度ができるときに、いや労災にはこうい うものがありますということで両者の調整を付けるべきであったと、もっと何かやり 様があったのではないか、たぶん松井委員はそういうことをおっしゃっているのでは ないかと私は理解しています。そういう時点で、場として医療保険を議論する場でも、 もっと我が方の制度について議論できるような形で仕掛けるべきであったというの であればわかるのです。ただ、今はもうすでに法案が通って、それぞれの制度がある わけです。  私は、確かに似ている面はあると思うのですが、もともと二次健康診断等給付とい うのは過労死対策、過労死予防という形で生まれてきたものでありまして、ハイリス クのものに絞り込んだ形で要件設定もしています。仕組みももちろん労働者が結果を 提出してきた場合ですが、事業主の方で配慮する形でフィードバックして、まさに事 業主の労災予防という形で機能するという違いは、明らかにあるわけです。その辺り を本当に理解されているのかというと、まだ十分理解されていないところがあるかも しれない。そういう意味で一度確認をすることは意味があると思うのですが、議論の 場をほかに求めるというのは、ちょっと難しいのではないかなと思いながらお話を聞 いておりました。  あともう一つ、今日の資料の出し方として、私どももどのくらいこの給付の受給者 が出ているのかや、どういう効果があると我々は思っているのか、そういう資料をお 出しすることはできたはずでありまして、それを次回に用意することは考えたいと思 います。 ○平野部会長  部長、このことが実は未消化なものですから、いろいろなところで顔を出してくる のです。そのために議論が長引いて、ここでは議論できない、ほかでは議論できない という話になってしまうのです。それはちょっと労災部会の責任ではないのです。全 く違って、私は別のところにも関連しているのですが、そこで議論はいろいろあった のですが、どうもまだ未消化なのです。そういうことが部会、あとルーチンワークで こうすればいい、そういうところにまで顔を出してくるとなかなか仕事が進まないと いうことで、少なくとも未消化だったということは、厚生労働省のいわゆる労働安全 衛生分科会で、皆さんに知っておいてもらったほうがいいと私は思うのです。だから いろいろなところに出てきますよ。その度にお忙しいところをご出席してくださる貴 重な皆さんの時間を何分も取らなければいけない、そういう状況なのです。  ただ私も座長としてではなく、一委員として意見を申し上げているだけであって、 そういうことを少なくともここに出席してくださっている方が皆さん御承知であれ ば、それも一つの成果だと私は思っております。 ○平山委員  すみません。未消化というのは、何が未消化だという議論になるのでしょうか。 ○平野部会長  例えば、その話に出てきたことにはいくつか論点があるのですが、いちばん大切な ことは、生活習慣病まで労働者の健康維持のために経営者と労働者で見ていかなけれ ばいけないのかと。それは日常習慣のことではないか、そういうところから始まって、 いろいろあります。  ですから、こういう理由で、例えば労働者の健康維持のために是非これをやらなけ ればいけないと。一般には生活習慣病と言われているのですが、それだって労働者の 健康維持には大切ではないかという意見にまとまっていれば、こういう話は出ないの だと思います。 ○労災管理課長  安全衛生法に基づくものについて、それは安全衛生分科会の方でいろいろ部会長の おっしゃる未消化の問題もあったかと思いますが、一応安全衛生規則で健診項目が改 正されていますので、二次健診給付においては、それに伴ってどうしても整合性を取 る必要があるということで、その点についてはちょっとまた別のことになるかと思い ます。 ○松井委員  そこでいつも行政に逃げられてしまっているということだけ申し上げておきます。 労働衛生課は、労災保険のことは知らないとか言って逃げるのです。ですから、私と しては、そもそも論はきちんと整理した上でやっていただきたいと。ただ今回ここの 項目を替えることについて、反対をするつもりはありません。そこだけははっきり申 し上げておきます。それはそれでやってくださって結構ですが、ではこのあり方その ものはどうなっているのですかということは、きちんと今後議論をしていただきたい ということです。 ○野寺委員  まさに松井委員がおっしゃるとおりだと思うのです。最小限は実質的な議論がこの 場でされるとしても、この場でいやしくも皆さんにお集まりいただいて決めるわけで すから、最小限の情報は提供していただかないと、決めるものも決められないと思い ます。確かに並びの議論はあると思うのです。ただ少なくともほかの部分でどの程度 の実質的な議論があってこうなったのかぐらいの説明や、松井委員がおっしゃったよ うな健診の実態はどの程度の数がどういう効果があると思っておられるのか、そうい ったような最小限の資料を提供していただいた上で、議論すべきだろうなという感じ はします。 ○労災管理課長  件数や効果については、次回資料を整理して出させていただきます。 ○平野部会長  では、そのようなことでこの件を終了させていただきたいのですが、まだほかにも し事務局にお願いすることがありましたら、御発言いただきたいのですが、よろしい でしょうか。事務局の予定はだいぶ狂うかもしれませんが、次回よろしくお願いしま す。  それでは3番目の「労働保険審査制度の見直しについて」を御説明ください。 ○労災管理課長  資料7を御覧ください。見直しの背景ですが、行政不服審査手続について、簡易迅 速性を活かしながらより客観的、公正な審理手続を定めて、不服申立人の手続保障を 強化するという観点から、行政不服審査制度の一般法である行政不服審査法について の見直しが予定されておりまして、通常国会に法案が出される予定です。  行政不服審査制度の一般法の見直しが行われることで、それと整合性を図るために、 特別法でやっている労働保険についての不服審査についても、見直しを行う必要があ ります。  まず行政不服審査制度の見直しについてですが、資料7の別紙の2枚目の1番に、 手続の一元化と書いてありますが、現在不服申立てについて行政庁がない場合に処分 庁に対して「異議申立て」が一つの類型としてあります。上級行政庁がある場合には 「審査請求」と2種類あるわけですが、意義申立と審査請求で、手続オプションのレ ベルに差があることもありまして、新しい制度においては審査請求に一元化する。不 服申立てについては審査請求のみという種類を一つにするということです。  2つ目に、現在審査請求についてさらに特別な場合には再審査請求が認められてい るわけですが、審理を一段階化するということで、再審査請求は廃止する。ただ※に ありますように、大量に行われる処分等については、審査請求の前段階として「再調 査の請求」を個別法で設けることを認めます。  2番目に審理の客観性・公正性の担保で、一つは処分に関する手続に関与した者以 外が審理を担当する審理員ということで指名すると。行政不服審査会に諮問をした上 で裁決を行うという手続を定めることになっています。  3番の審理の迅速化等ですが、まず標準審理期間を設けるように、定めるように努 めるのが1点。争点及び証拠の整理手続を導入する。審査請求期間については、現在 処分があったことを知った日から60日となっていますが、それを3カ月に延長する。 行政不服審査法についてこういった形で見直しが行われるということで、それとの整 合性を図る形で労働保険についての審査制度を見直します。  資料7の1枚目の見直しの方向についてですが、1つは再調査請求を設けることで、 先ほどの大量に行われる処分等について審査請求の前段階で再調査請求を個別法で 設けることを認めることになっています。労災保険についても大量に行われる処分で あって、要件事実の認定にかかわるものであるので、審査請求の前段階で再調査請求 がまずできることにする。  2つ目は、現在は都道府県労働局に審査官がいまして、そこに審査請求をした上で 再審査請求を労働保険審査会に対して行う形になっていますが、再審査請求は基本的 に廃止して、審査請求を労働保険審査会に対してできるようにします。その前段階で、 先ほど申し上げた再調査の請求をやるということで、実質的にはいま審査官がやって いる審査請求は再調査の請求の形に変わるような形になります。  その他の行政不服審査法で審理の迅速化等について取組が行われますので、それに ついては併せて見直しを行います。ただ、行政不服審査会等への諮問についていえば、 そもそも労働保険の場合には、すでに労働保険審査会という機関が裁決そのものをや っていますので、そこは現行の仕組みで足りると考えています。  こういった形で労災保険法及び労働保険審査官及び審査会法等の改正が必要にな りまして、これは行政不服審査法の整備法の中で一括して改正を予定していますが、 3月上旬に国会に提出する予定ですので、次回に法案の中身について、また御審議を 賜ることになります。 ○平野部会長  ただいまの説明について、何か御指摘いただくことはありますか。 ○林委員  この関係についても事前にレクチャーをいただきましたので、少し傘下のいくつか の組織に聞いてみたのですが、審査請求だけではなくて再審査請求に持っていく場合 もあるという中で、今回の新しい仕組みですと、何か窓口が狭まるのではないかと。 門前払いとまではいきませんが、いままでの審査請求、再審査請求から、今度は処分 庁に対して再調査請求となると、いままでもあまり認められなかったことがもっと狭 まってくるのではないかという心配をかなり皆さんがしていますので、実態的にはお そらくいままでとそんなに変わらないのだという中身を何か読み取れるようなもの を、是非とも次回に提出していただければありがたいと思います。以上です。 ○長谷川委員  質問なのですが、3の別紙の資料の審理の迅速化のところで、審査請求期間の延長 で、処分があったことを知ってから60日となっている審査請求期間を3カ月延長す るわけですね。これを60日から3カ月に延長するということは、労働者にとっては どういうことになると解釈していいのですか。  あといま林委員が言ったように、これだけだとよくわからないのです。私は労働委 員会の迅速化の議論に参加したことがあるのですが、迅速化になるときには、審理期 間の計画書を作ることになるので迅速化になることはとてもいいのです。ただ、どこ かでポンと抜けるというか。本当は行政審査というのは非常にいろいろな手続があっ て、労働者にとっては長いけど使いやすかったのですが、迅速化をやると裁判所と同 じになっていく可能性があるとよく言われるのです。そういうことが今回の場合ない のかどうなのか。  労働者についてこれはいろいろな形で使われてきたのですが、そういうときにこの 辺のところはどうなのかを聞かせていただきたいと思います。この表だけではちょっ とよくわからないので、もう少しわかりやすいものにしてほしい。新旧でもうちょっ と作ってほしいです。 ○労災管理課長  流れ図をまた次回出します。それで、まず審査請求期間の延長については、いま60 日を3カ月に延ばすことは、労働者にとっては請求できる期間が延びるので、基本的 には有利な方向ではあるかと思います。  あとは先ほどの御意見とも関連するのですが、基本的に再調査の請求というのが審 査官のやっている審査請求と実際の運用においてはそれほど変わらない形にできる 工夫ができるのではないかと思っていまして、そこは結局請求者の権利が制限される ことがないような運用を考えていきたいと思います。 ○平野部会長  いまの件は、次回にわかりやすい流れ図にして出していただくといいと思います。 よろしくお願いします。ほかには何かございますか。 ○松井委員  労働保険の審査については、結構滞留件数が多いという話も聞いています。ここに 迅速化と盛り込まれたとしても、本当にそれをきちんと担保できるのかという問題も あると思うのです。  一つお願いは、介護の通勤災害保護を入れていくときの議論とも関係するのですが、 現場で判断しにくくて審理期間が長くなって滞留しているケースが多いという話も 聞きますので、現場での判断を全くゼロにしろというつもりはありませんが、問題が 起きている案件は特に精神の部分が多いという話も聞いています。ですから、今後こ この判断基準そのものについても、あるべき姿はどうなのかということも併せてやっ ていかないと、法律でこう書いても絵に描いた餅の部分もありますので、施行するに あたっては、これ以外の仕組みも十分考えた上で対応をお願いできればと思います。 以上です。 ○平野部会長  ほかにはございますでしょうか。それでは、これは次回に引き続きということにな るわけですが、よろしいでしょうか。よろしければ、最後の議題に移りたいと思いま す。  いまの議題ですが、これは3月上旬に国会に法案提出というので、もう一回その前 に会を開かなければいけないですね。 ○労災管理課長  次回に資料を出した上で、併せて御議論いただければと思っています。 ○平野部会長  その他があるかもしれませんが、4番目の「20年度労働保険特別会計労災勘定予算」 の説明をお願いします。 ○労災管理課長  資料8を御覧ください。平成20年度の労災勘定の予算案の概要で、まず歳入予算 については、1兆4,470億9,700万円という予定でして、前年と比べると0.4%増で す。歳出については1兆1,320億5,200万円で、1.7%ぐらい減です。  2枚目で若干歳入ごとの整理がされていますが、保険料収入については今年度の実 績や来年度の経済見通し等を基に、保険料収入は前年と比べると、0.58%若干減の1 兆943億3,900万円という見込みです。あと運用収入が預託金の利子収入の見込みの 増により128億の増で、歳入についてはトータルで53億9,900万円増の見込みにな っています。  3枚目の歳出ですが、保険給付については平成19年度の実績等を基に見込んでいま すが、短期給付が若干減少を見込んでいるのに対して、長期給付がちょっと増える、 特別遺族給付金がかなり減るので、全体で17億4,500万ぐらいの減です。特別支給 金については、若干の増を見込んでおります。事務費については事務費の節約等で3 億強の減です。社会復帰促進等事業費についても、現在特別会計見直しの中で毎年減 額をしていて、29億9,700万円の減という見込みです。予算案の概要については、以 上です。 ○平野部会長  ただいまの最後の説明について、皆さんのほうから何か御質問があればお願いしま す。よろしいでしょうか。もし御質問がないようでしたら、これで。その他は、議題 はないですね。 ○労災管理課長  特にないです。 ○平野部会長  皆さんのほうからこれが将来問題になりそうだということがありましたら、御発言 いただいて結構ですが、よろしいでしょうか。  それでは、本日の部会は、これで終了します。署名委員は、労働者代表の内藤委員、 使用者代表の佐野委員にお願いします。よろしくお願いします。それでは皆さん、本 日は本当にお忙しい中、どうもありがとうございました。これで部会を終了します。