07/12/27 第42回厚生科学審議会科学技術部会議事録 第42回厚生科学審議会科学技術部会 議 事 録  ○ 日  時 平成19年12月27日(木)17:00〜19:00  ○ 場  所 厚生労働省 省議室(9階)  ○ 出 席 者   【委  員】  垣添部会長           石井委員 岩谷委員 金澤委員 川越委員 菊川委員           佐藤委員 末松委員 竹中委員 永井委員 西島委員           福井委員 松本委員 南(砂)委員 宮田委員 宮村委員            望月委員             【議 題】   1.厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest : COI)の管理に          関する指針(案)について   2.平成20年度科学技術関係予算(案)について   3.遺伝子治療臨床研究について   4.ヒト幹細胞臨床研究について   5.その他   【配布資料】   1−1 厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest : COI)の管理       に関する指針(案)   1−2 厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest : COI)の管理       に関する指針(案)の概要   2   平成20年度厚生労働省科学技術関係予算(案)について   3−1 岡山大学医学部・歯学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画について   3−2 岡山大学医学部・歯学部附属病院の遺伝子治療臨床研究に係る第一種使用       規程について   3−3 東京大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子       治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する申請について   3−4 遺伝子治療臨床研究実施計画の変更報告及び重大事態等報告について   4−1 ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について   4−2 ヒト幹細胞臨床研究実施計画について   4−3 「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」に基づく手続きの流れ(改訂       案)   5   府省共通研究開発システムについて   参考資料1 厚生科学審議会科学技術部会委員名簿   参考資料2 遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生         物多様性影響評価に関する参考資料   参考資料3 ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料 ○坂本研究企画官 傍聴の皆様にお知らせいたします。傍聴にあたりましては、既にお 配りしております注意事項をお守りくださいますようお願いいたします。  定刻になりましたので、ただいまから「第42回厚生科学審議会科学技術部会」を開催 いたします。委員の皆様にはご多忙の折、お集まりいただき御礼申し上げます。本日は 今井通子委員、北村惣一郎委員、木下勝之委員、笹月健彦委員、南裕子委員からご欠席 のご連絡をいただいております。少し遅れておられる先生方もいらっしゃいますが、委 員22名のうち、出席委員は過半数を超えておりますので、会議が成立することをご報告 いたします。  次に本日の会議資料の確認をお願い致します。資料1-1「厚生労働科学研究における 利益相反(Conflict of interest:COI)の管理に関する指針(案)」です。資料1-2 「厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of interest:COI)の管理に関する 指針(案)の概要」です。資料2「平成20年度厚生労働省科学技術関係予算(案)につ いて」です。資料3-1「岡山大学医学部・歯学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計 画について」です。資料3-2「岡山大学医学部・歯学部附属病院の遺伝子治療臨床研究 に係る第一種使用規程について」です。資料3-3「東京大学部医学部附属病院の遺伝子 治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関す る申請について」です。資料3-4「遺伝子治療臨床研究実施計画の変更報告及び重大事 態等報告について」です。資料4-1「ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について」で す。資料4-2「ヒト幹細胞臨床研究実施計画について」です。資料4-3「『ヒト幹細胞を 用いる臨床研究に関する指針』に基づく手続の流れ(改訂案)」です。資料5「府省共 通研究開発システムについて」です。その他、参考資料を3点お配りしております。そ れでは部会長、議事の進行をよろしくお願いいたします。 ○垣添部会長 ただいまから「第42回厚生科学審議会科学技術部会」を始めます。委員 の皆様方には、本当に年末のいちばん押し迫った中、大変ご無理をしてお集まりいただ きましてありがとうございます。今日は久しぶりに金澤委員の巨体も拝見できて嬉しく 思います。どうぞよろしくお願いいたします。  それでは議事に入ります。最初に「厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of interest:COI)の管理に関する指針(案)」について、事務局から説明をお願いします。 ○坂本研究企画官 それでは資料1-1、資料1-2に基づいてご説明いたします。厚生労働 科学研究における利益相反に関しては、この部会の下に、厚生労働科学研究における利 益相反に関する検討委員会が設置されまして、6月以降、5回会議が開催されましてご検 討をいただいたところです。   ご検討をいただいた結果を「厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of interest:COI)の管理に関する指針(案)」、資料1-1に取りまとめて11月21日から12 月21日までパブリックコメントを実施しております。パブリックコメント実施前には、 この部会の委員の先生方に電子メールで内容をご連絡しておりますが、資料1-1はそれと 同じものとなっております。資料1-2は、指針(案)の概要をまとめたものです。  最初に資料1-2をご覧ください。表題の下に利益相反と記載して*を付けていますが、 利益相反とは、外部からの経済的な利益関係によって、公的研究で必要とされる公正か つ適切な判断が損なわれる、又は損なわれるのではないかと第三者から懸念が表明され かねない事態ということで、複数の業務を実施する場合には、関係する個人、機関、そ れぞれの利益が衝突・相反する状態が生じ得まして、この利益相反というものは、産学 連携活動が盛んになれば、必然的・不可非的に発生するものということです。  利益相反を厳密に排除しようとしますと、活発に研究を行っている研究者が排除され る、研究成果の社会還元を阻害、応募する研究者の減少、研究の質の低下などのデメリ ットが考えられます。一方で、利益相反の管理が不十分な場合には、厚生労働科学研究 の信頼性の低下、被験者が不当な不利益を被る可能性などの問題が出てくるわけです。  このため利益相反を排除するというのではなく、適切に管理することで、研究の振興 や研究の質の確保、信頼性の維持といったものを両立させることが必要で、また「ヘル シンキ宣言」や各種指針を遵守して、被験者の保護は当然のこととして行う必要がある わけです。  指針(案)では、厚生労働科学研究に係る研究者の利益相反、「COI」と略しています が、所属機関の長の責任の下で、第三者が参加したCOI委員会でCOIを管理することが、 この指針(案)のポイントとなっております。COIの管理については、各研究施設にCOI 委員会を設置すること、経済的な利益関係につきまして、一定額を超えるものについて はCOI委員会へ報告すること、COI委員会はCOIの管理に関する審査及び検討を行い、機 関の長に意見を言うこと、機関の長は、COI委員会の意見等に基づき、改善に向けて指 導、管理、そういったものを行うということ、それから厚生労働省への報告、厚生労働 省等からの指導、といったものを含む内容となっております。  資料1-1ですが、I目的は、「公的研究である厚生労働科学研究の公正性、信頼性を 確保するためには、利害関係が想定される企業等との関わり(利益相反)について適正 に対応する必要がある。本指針は、利益相反について、透明性が確保され、適正に管理 されることを目的とする。」となっています。  II定義のところで、この指針の対象となる利益相反、COIについて記載しております。 広義の利益相反には、責務相反も含まれるということで、また、狭義の利益相反の中に も「個人としての利益相反」と「組織としての利益相反」が含まれるということです。 本指針では、基本的に「狭義の利益相反」の中の「個人としての利益相反」これをCOI として中心に取り扱うということです。COIとは、具体的には、外部との経済的な利益 関係等によって、公的研究で必要とされる公正かつ適正な判断が損なわれる、又は損な われるのではないかと第三者から懸念が表明されかねない事態をいうということで、公 平かつ適正な判断が妨げられた状態としては、データの改ざん、特定企業の優遇、研究 を中止すべきであるのに継続する等の状態が考えられる、ということを記載しておりま す。  2の経済的な利益関係ですが、研究者が、自分が所属し研究を実施する機関以外の機 関との間で給与等を受け取るなどの関係を持つことをいい、「給与等」には、給与の他 にサービス対価、産学連携活動に係る受け入れ、株式等、及び知的所有権を含みますが、 それらに限定はされず、何らかの金銭的価値を持つものはこれに含まれるとしておりま す。3として、この指針の対象となる「機関」及び「研究者」について、この指針は基本 的に厚生労働科学研究を実施しようとする研究者及び研究者が所属する機関を対象とし ているものです。なお、研究者と生計を一にする配偶者及び一親等の者についても、厚 生労働科学研究におけるCOIが想定される経済的な利益関係がある場合には、COI委員会 等における検討の対象としなければならないとしております。  III基本的な考え方ですが、科学技術創造立国を目指した取組の一環として産学連携活 動が推進されており、厚生労働科学研究においても、大学や公的研究機関等における研 究成果を社会に還元するため、企業との共同研究や技術移転といった産学連携活動は適 正に推進されるべきものということを記載し、次に利益相反の発生について記載してお ります。厚生労働科学研究は、国民の保健医療、福祉、生活衛生、労働安全衛生等の課 題を解決するための目的志向型の研究であり、産学連携活動が行われる可能性のある大 学や公的研究機関等においても実施されるということを記載し、いささかでもCOIの状 態にあると考えられる研究者はすべて排除するといった場合の問題点を次に書いており ます。先ほど説明したようなことから、それは適切ではないと考えられる旨も記載して おります。  注2として、米国における検討においても、特定のCOIそのものが問題であることはま れであり、問題はむしろCOIへの対応であって、ほとんどの場合、COIが明らかにされな いか、評価または管理されない場合に問題が発生しているとされていること。また、COI に関して比較的厳しい対応をとっているアメリカの大学の対応例として、関係する企業 等から年間1万ドルを超える収入等がある場合には、関係する臨床研究への参加を原則禁 止しているが、その研究者でなければ当該研究が実施できない等の事情がある場合には、 個別に判断し、臨床研究の実施計画の策定に携わらせない、データ分析などについては 利害関係を持たない他の人に任せる、臨床研究に対する第三者の監査などといった対策 を講じて実施を認めていると記載しております。  ただし、公的研究である厚生労働科学研究の信頼性を確保していく上で、COIを適切 に管理する必要があり、公共の利益及び厚生労働科学研究の信頼性を確保するために必 要と判断されるような場合には、研究代表者の交代等の厳重な管理が必要な場合があり 得ること。また、大学においては、教育・研究という学術機関としての責任と、産学連 携活動に伴い生じる個人が得る利益との衝突・相反を管理するための取組が既に行われ ているということを記載しています。具体的には、平成18年3月に、文部科学省の21世 紀型産学官連携手法の構築に係るモデルプログラムの臨床研究の倫理と利益相反に関す る検討班というところから、臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドラインが 示されており、既にそれに基づく取組が行われているところもあるということです。こ のため、混乱や無用な重複を避けるため、既存の取組とできるだけ整合性のある方法で、 厚生労働科学研究におけるCOIを管理するべきであるということです。当然のことですが、 COIの管理においては、被験者が不当な不利益を被らないことをまず第一に考えること、 また、公的研究である厚生労働科学研究と研究者・企業間のCOI(例えば、規制当局が利 用するデータを供する研究について、研究者又はスポンサーとなる企業が自らに有利な 結果を出すのではないかとの懸念)といったものについて、透明性の確保を基本として インフォームド・コンセント等に十分留意しつつ、科学的な客観性を保証するように行 うべきであると書いており、注3を付しております。  注3ですが、利益相反には、実際に弊害が生じていなくても、弊害が生じているかの ごとく見られる状況が含まれる、このような状況であるとの指摘がなされても的確に説 明できるよう、研究者及び所属機関が適切な対応を行う必要がある(潜在的な可能性を 適切に管理し、説明責任を果たす必要がある)ということです。  なお、データの捏造や改ざん等の不正行為は別途の指針等で対応し、また、被験者の 保護等に関し、「ヘルシンキ宣言」や「臨床研究に関する倫理指針等」の指針等を遵守 することは当然であるということです。  この指針は、意欲ある研究者が安心して研究に取り組めるよう環境を整備する趣旨で 策定するものであり、以下の事項を原則としているということで、いくつか書いており ます。・研究をバイアスから保護すること。・ヒトを対象とした研究においては被験者 が不当な不利益を被らないようにすること。・外部委員をCOI委員会等に参加させる等、 外部の意見を取り入れるシステムを取り入れること。・法律問題ではなく、社会的規範 による問題提起となることに留意し、個人情報の保護を図りつつ、透明性の確保を管理 の基本とすること。・研究者はCOIの管理に協力する責任があり、所属機関はCOIの管理 責任と説明責任があることを認識し、管理を行うこと。・客観性、公平性を損なうとい う印象を社会に与えることがないように管理を行うこと。そういったことを記載した上 で、研究者と異なる機関から研究に参加する場合などにおいても、関係者によって適切 なCOIの管理が必要であることに十分留意すべきであるということを記載しております。  IV所属機関の長の責務、研究者の責務のところで、1の所属機関におけるCOIの管理に 関する規定の策定では、研究者への周知や、研究者が所属機関のCOIの管理に誠実に協 力しなければならないこと、当該研究の研究分担者に本指針を遵守するよう求めなけれ ばならない旨の規程を書いております。2のCOI委員会につきまして、機関の長は原則と して、当該機関における研究者のCOIを審査し、適当な管理措置について検討するため のCOI委員会を設置しなければならないということを規定しております。倫理審査委員 会等、当該機関に既に設置されている委員会にCOI委員会の任務を兼務させ、また、COI 委員会の下に小委員会等を設置し、そこにCOIに係る審査及び検討を行わせることがで きるといったこと、設置が困難な場合には、COIに関する審査及び検討を適当な外部の 機関に委託することができるといったことを規定しております。  4頁、当該委員会には、当該機関の外部の者が委員として参加していなければならな いという規定があり、注4として、外部の者として、例えば、利益相反の管理に精通し ている者、関連する法律等に詳しい者、産学連携活動に詳しい者などが考えられるとい うことを書いております。また、この委員会では、個人情報を取り扱いますので、外部 委員には研究者の個人情報を匿名化して情報を提示することでもいいということも記載 しております。  3のCOI委員会等への報告等では、厚生労働科学研究費補助金の交付申請書提出時まで に、各研究者はCOI委員会等に対して「経済的な利益関係」について報告した上で、当 該研究のCOIの審査について申し出なければならない、研究の期間中に新しく報告すべ き「経済的な利益関係」が発生した場合には報告しなければならないといったことを規 定しております。また、COIの管理については、各所属機関において一定の基準を設定し、 それを超える「経済的な利益関係」の報告を求めて管理することで差し支えないとして おります。一定の基準の例示を示してありますが、文部科学省から出ているガイドライ ンの例示と平仄を合わせており、ここはあくまで例示であって、各機関の実情を踏まえ て一定の基準額を設定して差し支えないものとすると記載しております。  4のCOI委員会等の意見等では、この委員会は、研究者の経済的な利益関係、研究者が 実施しようとしている研究、講じられようとするCOIの管理に関する措置等について相 談に応じ、必要に応じて指導を行うこと、それから、ヒアリング、審査及び検討を行っ て、COIの管理に関する措置について、機関の長に対して文書をもって意見を述べるこ となどを規定しております。  5の厚生労働省等への報告というところで、機関の長は、厚生労働科学研究に何らか の弊害が生じた、又は弊害が生じているとみなされる可能性があると判断した場合には 報告をし、その上で、適切にCOIの管理を行うものとするという規定があります。  5頁、6の厚生労働省等からの指導ということで、報告があった場合には、厚生労働省 などは必要に応じて、当該機関に対して、厚生労働科学研究の公正性、客観性を維持す るためCOIの管理に関して指導を行うことができるという規定を設けております。  7のCOIの管理では、COIの管理に関していくつか措置の例示をしております。これら は例示であり、この段落の3行目からあるように、案件によって適・不適があるため、 各COI委員会等において、個別の研究課題及びCOIの状況等を踏まえ、適切な管理の方法 を検討し、それに基づいて機関の長が適正な指導、管理を行う必要があるということを 書いた上で、適切な情報の開示等透明性の確保には十分留意する必要があると記載して おります。  8の関係書類の保存については、5年間保存ということ。9の個人情報、研究又は技術 上の情報の保護に関する規定では、COI委員会等の関係者は、知り得た情報を正当な理 由なく漏らしてはならないということを規定しております。10のCOIに関する説明責任 として、COIに関係する問題が指摘された場合等における説明責任は、各所属機関にあ り、機関の長は、適切に説明責任を果たせるよう、予め、十分な検討を行い、必要な 措置を講じなければならないという規定を設けております。  V厚生労働省による調査等については、1の調査及び調査への協力といった規定を設 けております。6頁の2と3ですが、調査結果を通知し、調査の結果、改善が必要と認め られた場合、厚生労働省等は、当該所属機関に対して、改善の指導を行うといった規定 も設けており、改善指導が行われたにもかかわらず、正当な理由なく改善が認められな い場合には、資金提供の打ち切り等の措置を講ずることができるという規定を設けてお ります。VIその他として、1の経過措置ですが、機関の長はできるだけ早期にCOI委員会 を設置するように努めなければならないとした上で、原則として、平成22年度以降の厚 生労働科学研究費補助金の交付申請書提出前に、COI委員会の設置等がなされていなけれ ばいけないという趣旨を書いております。詳細については、各年度の公募要項等で確認 するようにという形にしております。  この指針は策定から5年以内に、各所属機関におけるCOI委員会等の活動状況を踏まえ て見直しを行うということを2で規定しております。  3のその他として、組織としての利益相反に関して明示的な規定は設けていないが、 研究者及び各所属機関においては、組織としての利益相反にも十分留意して、個々の研 究における利益相反の管理を検討し、透明性を確保し、研究の客観性や公平性に関して、 説明責任を果たせるように適切な管理措置を講じる必要があるということを記載してお ります。  この指針に関しまして、今後の進め方については、公式なパブリックコメント以外に も委員の先生方からいくつかコメントがあり、現在、それらに関して整理を行っている ところです。検討委員会の委員の先生方とご相談して、パブリックコメントへの対応、 それからQ&Aなどを作成する必要があるだろうというご議論もありましたので、そうい った点について検討するため、検討委員会を1回は開催し、ご議論をいただいてから本 部会で改めてご審議をいただきたいと考えております。資料1-1及び資料1-2の説明は以 上です。 ○垣添部会長 ありがとうございました。大変説明が長くなりましたが、産学連携の活 動が盛んになれば、利益相反というのはある程度、避け難いような形で出てくるけれど も、厚生労働科学研究がちゃんと推進されてかつ研究の公正性、透明性が確保されるに はどうしたらいいかということで、このような指針が作られたという説明をいただきま したが、利益相反の管理に関する指針に関して、何かご意見、ご質問等がありましたら お受けします。 ○宮田委員 これは運用次第では、研究を阻害してしまいますので、むしろ、正々堂々 と研究を促進するものであると重ねて確認させていただきます。 ○石井委員 拝見しますと、所属機関に任せている部分が大きいと思いますが、もう少 し指針で具体的に定めるということは考えられないのでしょうか。  これは厚生労働科学研究にかかわる利益相反ということですので、研究の応募型の場 合には、応募に際して現に利益相反の問題があるとすれば、それを示した上で応募いた だくというような措置は考えられないのですか。 ○坂本研究企画官 まず、研究を実際に行っている現場できちんと管理をしていただく べきであろう、というのが検討委員会でのご議論であったと思います。先ほどご紹介し たように、すでに文部科学省からもそのようなガイドラインが出ており、それも各機関 が利益相反の管理をするように求めているということですので、まずは所属機関におい て管理を行っていただいた上で、必要があれば厚生労働省が調べに行くとか指導すると いった規定もあります。第一のところとしては機関での対応があろうということで記載 しております。 平成22年度までは、各機関の体制の問題もありますので、経過措置はありますが、基本 的には平成22年度以降は交付申請書提出前にCOI委員会にその審査を申し出た方が応募 され、ということです。審査等の時間の問題などもありますので、その結果というのは ないにしても、COI委員会の審査を受けますというところははっきりさせた上で公募に 応じていただくという形をいま考えているところです。 ○石井委員 ご趣旨はわかりましたが、研究費の受け入れは所属機関にとってもメリッ トのある事柄なので、そこが気になるということです。 ○垣添部会長 所属機関との間のConflict of interestになり兼ねないというご懸念か と思います。 ○永井委員 このガイドラインはどういう形で、主体は誰になって出されるのですか。 研究費の管理上このようなガイドラインを守ってくださいというのか、研究者たちの自 主規制としてこういうものを出すのか。あるいはもうそれは一緒なのか、主体はどこな のかということです。 ○坂本研究企画官 形式はまだはっきり決めておりませんが、イメージとしては厚生科 学課長通知といった形で、厚生労働科学研究費補助金を受けようとするときに守ってい ただく指針という形で考えております。 ○松本委員 少しわかりにくいのですが、厚生労働科学研究に応募するつもりのない人 がもしいるとすれば、彼は経済的な利益関係があるということをCOI委員会に報告する 必要はないということ、すなわち経済的な利益関係というのは、企業から一定の経済的 利益をもらっているという話ですよね。寄附をもらっているとかいう話があれば、すべ てその委員会に届けなければならないと。すなわち組織は、当該構成メンバーが、どう いう企業からどういう経済的利益を得ているかということを、一応全件管理していると いうのが前提なのか。それとも、厚生労働科学研究に応募する時点において、実はこう いう寄附をもらっていますということを、その際にCOI委員会に通知すればいいという 類なのか。どちらなのですか。常時、管理しているというものなのか。応募の段階のみ なのか。 ○坂本研究企画官 この指針の構成としては、あくまで厚生労働科学研究に関するとい うことですので、応募する方を対象に書いております。先ほど申しましたように、各機 関がそれぞれ取り組まれているところがありますので、そこできちんと取り組まれてい るのであれば、ほぼこれを満たせるであろうという形を考えております。あと、それぞ れの機関がどのような管理をするのかというところは、各機関のご判断もあるというよ うに整理できると思います。 ○末松委員 私は策定の委員会のほうでしたので、メールで反応はしませんでしたが、 先ほど永井委員からご指摘のあった点は非常に重要です。それはいま気が付いたのです が、5頁に「厚生労働省による調査等」という項目があり、「調査結果の通知及び改善 指導」、「改善指導に対して適切に対応しなかった場合」とあります。このガイドライ ンを作るときに私どもも、応募する研究者、応募者が対象のものと理解して作っており ました。例えば文科省の場合ですと、研究者に対するガイドラインと、被配分機関、研 究費を受ける大学がきちんと監査をしているかどうかというガイドラインが別にあるの はご存じかと思います。  例えば「改善指導に対して適切に対応しなかった場合」というのも、「未使用研究費 等の返還」「研究費全額の返還」というのは、おそらくCOIの管理が十分でなかった特 定の課題に対してという意味だと思います。これがもし研究機関を対象にしているもの だとすると、COIの管理がちゃんとやられていなかった場合に、再三の注意にもかかわ らずやらなかった場合には、全部厚生労働科研費の応募はもうできませんよ、というふ うに取れなくもない文章になっています。  ですから、対象が何なのかということをどこかにしっかりと書いておきかつそこはは っきり書く形でまとめ上げられることが適切ではないかと思いました。 ○垣添部会長 大変重要なご指摘だと思います。 ○坂本研究企画官 対象は基本的には各研究者の研究ということになりますので、一つ ひとつ見ていくことになると思います。何かそこの機関が系統的にやり方がおかしかっ たということがあっても、一つひとつ見ていかざるを得ないといった問題はあると思い ます。厚生労働科学研究の立場からすれば、一つひとつの研究課題についてということ にならざるを得ないと思います。 ○金澤委員 4頁のいちばん上の4〜5行に、この委員会に「外部の人を」ということが 書いてあります。いままでのガイドラインは確かにそういうことが多いのですが、この 委員会に本当に必要なのでしょうか。つまり、研究を推進し、また教育もしということ で、大学なり研究機関なりが本来の業務を果たすためには、いろいろなことをやらなけ ればいけないわけでして、これだけたくさんいろいろな委員会を作る必要が出てきます と委員も大変です。「当該機関の外部の者」を入れるというのは本当に必要なのでしょ うか。これはそういう議論が出たのでしょうか。 ○坂本研究企画官 検討委員会でもいろいろ議論が出ており、やはり、こういうものの 管理に際しては、外部の方の意見を聞くべきである、というのが検討委員会の議論のま とめとして出ているところはあります。 ○垣添部会長 やはり、いまの時代ですと入れないとなかなかこういう指針としてはま とまらないということだったのではないかと推察しますが。大変重要なご指摘をたくさ んありがとうございました。 ○西島委員 1頁目の2のいちばん下に「公的機関から支給される謝金等」とありますが、 これは以前にも質問があったかと思います。これは民間の財団の研究助成金は公的なも のと考えるのでしょうか。 ○坂本研究企画官 あくまでここは「謝金等」で、研究費とかは考えておりませんので、 その辺に関してはQ&Aなどで説明を加えるべきであろうということで、今後Q&Aで整理し たいと考えております。 ○望月委員  応募する際なのか、あるいは組織が常に管理するのかという問題ですが、4頁に「COI委 員会等への報告」で「研究の期間中に報告する」と書いてあるのですが、これは遡って 何年間かの報告はいらないのですか。 ○坂本研究企画官 その点はまた検討委員会でもご議論をいただくべきかと思いますが、 ここはあくまで例示ということですので、経緯もあり、そこまで詳しいことを書く必要 があるのかどうかということもあります。いずれにしても、もう一遍検討委員会でご議 論をいただくことになります。 ○垣添部会長 まだまだ議論はおありかと思いますが、時間の関係で先に進みます。ご 指摘の点は大変重要ですので、取り入れて検討させていただきたいと思います。次に、 「平成20年度科学技術関係予算(案)について」事務局から説明をお願いします。 ○矢島厚生科学課長 資料2に基づいてご説明いたします。まず、全体の基本的な考え方 です。ここに図示しております。右の四角の枠の中に、全体の予算が書いてあります。 科学技術関係予算としては1364億円で3.7%の増。そのうち厚生労働科学研究費補助金は 428億円で、これは前年とほぼ同額です。この柱には三つあり、「健康安心の推進」、 「先端医療の実現」、「健康安全の確保」という形で、それぞれのテーマを中心の柱と して、安全・安心で質の高い健康生活を実現していくという考え方で、これらの研究を 組み合わせて、第3期科学技術基本計画の分野別推進戦略、この理念を実現するための研 究を行っているという大きな流れになっております。  2頁、これは関係予算ということで、いちばん下の合計を見ますと関係予算で3.7%の 延びを全体で示しております。表の上の点線四角の「厚生労働科学研究費補助金」が 99.9%ということで、ほぼ前年と同額の金額になっております。「健康安全の確保」、 「健康安心の推進」、「先端医療の実現」、それぞれの柱に沿って、ここにあるような 形で研究費の配分をしております。この研究費の配分については、総合科学技術会議の 評価を受けて、その中でそれぞれメリハリを付けた研究費の配分の形になっております。  3頁、厚生労働科学研究費補助金の全体です。これを見ますと、それぞれのテーマ、 分野ごとにどのような配分になったのかご覧いただけるかと考えております。以上です。 ○垣添部会長 ありがとうございました。何かご質問、ご意見はありますか。 ○末松委員 厚生労働科学技術関係予算額は、ほぼ対前年度比で同じという形ですが、 いわゆる間接経費などの扱いは結局どのように手当てされたのか教えていただければあ りがたいです。 ○坂本研究企画官 公募要項のほうでお示ししていたかと思いますが、これまで3,000 万円というところを、平成20年度については2,000万円からということで間接経費の拡 充を図らせていただいております。公募要項に明記しております。 ○金澤委員 間違っていたら訂正します。2頁の真ん中辺りの「特定疾患治療研究費補 助金」が増えて114.4%になっていますが、これはまさに補助金、つまり患者さんたち への補助金が増えたのであって、研究費そのものは、むしろあまり増えていなかったと 思います。そこをはっきりさせておいてもらいたいのです。 ○矢島厚生科学課長 「特定疾患治療研究費補助金」のところは、このような名称にな っていますが、治療費という形です。 ○垣添部会長 科学研究費だけではないというご指摘だと思います。 ○宮田委員 先ほどの末松委員の質問に関連して、2,000万円以上の申請に関しては間 接経費は認められるということですが、今回の予算というのは間接経費も込みの予算で すか。そうしますと、中身は実質的にちょっと減るということになるのですか。それを 確認させていただきたいと思います。 ○矢島厚生科学課長 それは全体の枠の中での配分、それぞれ増えたところもあれば、 評価が厳しかったところもあったということです。全体の中で間接経費の分も読めるよ うにしたということです。 ○垣添部会長 こういうことで、平成20年度厚生労働省科学技術関係の予算(案)は進 むということでよろしくお願いします。次に3番目の「遺伝子治療臨床研究について」、 資料3-1が「岡山大学医学部・歯学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画について」、 事務局からご説明をお願いします。 ○坂本研究企画官 資料3-1の1頁以降が、がん遺伝子治療臨床研究作業委員会でご審議 いただいた結果の本部会への報告書です。2頁の1の「遺伝子治療臨床研究実施計画の概 要」ですが、研究課題は、前立腺癌に対するInterleukin-12遺伝子発現アデノウイルス ベクターを用いた遺伝子治療臨床研究となっています。申請年月日は平成18年7月18日。 対象疾患は(5)にあるように、内分泌療法抵抗性再燃前立腺がんです。この臨床研究 では、非増殖性のIL-12遺伝子発現ヒトアデノウイルス5型ベクターを前立腺局所または 遠隔転移巣の病変部内に注入した場合の安全性を検討することを主要な目的としており ます。副次的な目的としては、免疫学的反応の解析及び治療効果の観察ということにな っています。  用法・用量では28日ごとに計3回(追加投与が認められた場合には3回以上)の投与が 計画されており、順次増量して6段階の用量が想定されております。目標症例数につい ては、標準で21例、最大で36例の計画です。国内では、非増殖性のインターロイキン- 12遺伝子発現ヒトアデノウイルス5型ベクターを用いた遺伝子治療は初めてですが、米 国のベイラー医科大学では、この臨床研究と同一のベクターを用いて、放射線療法・内 分泌療法・凍結療法に抵抗性を示す前立腺がんを対象に4例実施されており、条件は今 回の臨床研究と異なるところはありますが、これまでに重篤な副作用は報告されていな いということです。ベイラー医科大学の研究者も本研究の協力者になっております。  3頁の2がん遺伝子治療臨床研究作業委員会における審議概要です。第1回目の作業委 員会は昨年の9月に開催され、免疫学的反応の検討、同意説明文書、追加投与の条件等 について意見が出され、申請者に検討を求めております。  4頁、第2回目の作業委員会が本年の9月に開催され、この実施計画は概ね了承され、 検査スケジュールの見直しや同意説明文書の記載整備等について確認できれば、本部会 に報告することとなりました。その後、所要の整備がなされ、今回この部会にお諮りし ております。  5頁に作業委員会における審議を踏まえた主な変更の内容を記載しております。実施 計画については、2番目ですが、有効性評価における遺伝子治療に伴う免疫学的反応の 検討に関して、患者の負担にも配慮しながら、検査項目と各検査の実施時期がより充実 したものに改められております。新たな検査項目として、導入遺伝子の解析のための組 織検査、及びCTL誘導ペプチドに対する特異的IgG抗体の測定が追加されております。 この測定は、久留米大学で研究されていたもので、専門家として久留米大学の研究者が 新たに追加で参加されることになっております。また、長期フォローアップを行うこと になりましたので、研究実施期間は最終症例の治療終了後5年間に改められております。  患者への同意説明文書については、同意撤回可能である趣旨がより明確な記載に改め られました。また、遺伝子治療以外の治療法については、放射線治療、抗癌剤治療の現 状をより正確に説明する記載とされ、さらにこのベクターの作用機序や投与方法、腫瘍 内直接投与に関する説明等について修正されています。  9頁以降は作業委員会での審議を踏まえて、本年の10月15日付で改訂された実施計画 の概要書です。  25頁以降に遺伝子治療臨床計画実施計画書が付いております。その添付資料として、 110頁以降、患者さんへの説明と同意書が付いております。参考資料2として、遺伝子治 療臨床研究の状況、遺伝子治療臨床研究の指針関連の資料をお配りしております。以上 です。 ○垣添部会長  ありがとうございました。治療抵抗性になった前立腺がんに対して、IL-12遺伝子をアデ ノウイルスで局所、あるいは転位部位に注入するPhaseI/IIスタディに関する説明をい ただきました。何がご発言はありますか。よろしいですか。それでは岡山大学医学部・ 歯学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画については、本部会において妥当と認め ることにいたします。続きまして「岡山大学医学部・歯学部附属病院の遺伝子治療臨床 研究に係る第一種使用規程について」お願いします。 ○坂本研究企画官 資料3-2をご覧ください。遺伝子組換え生物による生物多様性影響 防止等が目的の「カルタヘナ議定書」という国際的な議定書がありまして、それを受け て「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」、い わゆる「カルタヘナ法」と呼んでおります法律が、平成16年から施行されています。カ ルタヘナ法では、開放系で遺伝子組換え生物を使用する場合を第一種使用等としており、 そういった場合には事前にその使用規程について主務大臣、この場合については厚生労 働大臣と環境大臣の承認を得る必要があるとなっております。遺伝子治療臨床研究に係 る第一種使用規程の審査については、遺伝子治療臨床研究の実施計画と同様、厚生労働 大臣がこの審議会の意見を聴取することになっており、ご審議をお願いしております。  1頁以降が遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する作業委員会の報告 書です。昨年の7月18日、第一種使用規程の承認の申請がなされ、昨年の12月に開催され た作業委員会で、本件第一種使用規程承認申請に関する生物多様性影響の評価について の審議が行われました。その結果、申請のあった第一種使用規程及び生物多様性影響評 価書に関しては、概ね妥当という結論が出ましたが、当該遺伝子組換え生物等から発現 されるたん白質が、生物多様性に与える影響についての評価を追記することなどの指摘 があり、それら各委員より指摘のあった点について整備の上、委員長の確認を得た後に、 別途行われていた遺伝子治療臨床研究作業委員会、先ほど結果をご報告した委員会です が、そちらでの遺伝子治療臨床計画実施計画についての審議が終了後、その計画と併せ て科学技術部会に報告することとされておりました。  2頁、作業委員会の評価結果がまとめられています。生物多様性影響評価において評 価すべき事項として、(1)「生物多様性影響評価の結果について」に示されております が、(1)他の微生物を減少させる性質、(2)病原性、(3)有害物質の産生性、(4)核酸を水平伝 達する性質といった項目があります。それぞれについてご検討をいただきまして、この 遺伝子組換えヒトアデノウイルス5型は増殖能を失っており、野生型アデノウイルスと の共感染がないかぎり環境中で増殖することはないといったこと、第一種使用規程に従 った使用を行うかぎり、環境中に拡散したとしても比較的早期に消滅すると考えられる こと、このウイルスが感染したほ乳動物では、一過性に感染細胞でインターロイキン-12 遺伝子を発現する可能性はありますが、これによるヒトへの病原性は知られていないこ と、アデノウイルスの副作用で問題となる非特異的免疫反応を引き起こすインターロイ キン-6が、ヒト腎臓細胞で大腸菌感染存在下では、インターロイキン-12により上昇す るとの報告がありますが、本ウイルス投与時には大腸菌感染に特に注意することにより、 IL-12によるアデノウイルス副作用の増悪の事態は十分避けられると考えられるとのこ とでした。  有害物質の産生性も知られておりません。感染したほ乳動物から他のほ乳動物に水平 伝達することは非常に考えにくいとされております。  2頁のいちばん下、(2)が結論になります。この遺伝子組換えウイルスについて申請 された第一種使用規程に従って使用した場合に、生物多様性影響が生ずるおそれはない とした生物多様性影響評価書の結論は妥当と判断したということです。  3頁はこの作業委員会の名簿、4頁以降に第一種使用規程の承認申請書、5頁以降は作 業委員会での審議を踏まえて改訂された内容となっております。7頁以降に改訂された 生物多様性影響評価書が資料として付いております。以上です。 ○垣添部会長 ありがとうございました。何かご発言はありますか。作業委員会の検討 結果は、この遺伝子治療研究が進んでも、生物多様性のカルタヘナ議定書に反するよう なことはないであろうという結論です。よろしいですか。それでは作業委員会からの報 告については、本部会としても了承することにいたします。なお、今回了承いただいた 岡山大学医学部・歯学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画、ならびにそれに伴う カルタヘナ法に基づく第一種使用規程については、本部会より厚生科学審議会へ報告す ることになります。  続きまして、東京大学病院からの遺伝子治療臨床研究実施計画(進行性膠芽腫)の申 請及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する申請についてご審議をい ただきたいと思います。  これは11月16日に厚生労働大臣から諮問され、同日付で当部会に付議されております。 それでは事務局から説明をお願いします。 ○坂本研究企画官 資料3-3に基づいて、東京大学医学部附属病院から申請がありまし た遺伝子治療臨床研究実施計画、及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に ついてご説明いたします。  実施施設から遺伝子治療臨床研究の実施に関して意見を求められた場合、遺伝子治療 臨床研究に関する指針に基づいて、複数の有識者の意見を踏まえて新規性等の有無の判 断をさせていただいております。今回の件につきましては、笹月先生、島田先生、早川 先生、3名の先生のご意見を伺いましたが、各先生とも新規性ありというご判断で、厚 生労働科学審議会に諮問させていただいております。  資料3-3の1頁が諮問書、2頁が当部会への付議です。昨年の7月の当部会において、 科学技術部会長の了解をいただければ遺伝子治療臨床研究作業委員会の審議を先行して もよろしいとされており、11月19日に部会長の了承をいただきまして、本件に関しては 12月25日にがん遺伝子治療臨床研究作業委員会を開催しております。この作業委員会の 名簿については、42頁に載せております。  3頁が遺伝子治療臨床研究実施計画申請書です。10月23日に申請されて、遺伝子治療 臨床研究の課題名は「進行性膠芽腫患者に対する増殖型遺伝子組換え単純ヘルペスウイ ルスG47Δを用いた遺伝子治療(ウイルス療法)の臨床研究」となっております。  4頁以降が、臨床研究実施計画の概要書です。研究実施期間は承認されてから5年間と なっております。5頁、研究の目的ですが、この研究は初期放射線治療にもかかわらず、 再増大または進行する膠芽腫の患者さんに対して、遺伝子組換え単純ヘルペスウイルス 1型であるG47Δの定位的腫瘍内投与を行って、コホート単位で3段階に用量を増加し、 安全性の評価、有害事象の種類と発生頻度の調査を主目的としており、副次目的として は画像上の腫瘍縮小効果とか、全生存期間、無増悪生存期間により効果を評価するとい うことになっております。  対象疾患は進行性膠芽腫で、こちらの病気は予後が不良で、5年生存割合は6%といっ た記載があります。増殖速度も早く、各種治療を行っても再発は必至で、機能温存のた め手術で腫瘍を全摘することも通常不可能ということです。膠芽腫は一般的に放射線抵 抗性で化学療法への反応も低いということで、膠芽腫の治療成績はこの40年間ほとんど 改善が見られていないということでした。  この臨床研究は遺伝子組換えウイルスを用いるウイルス療法ということで、腫瘍細胞 内で選択的に複製する増殖型ウイルスを腫瘍細胞に感染させ、ウイルス複製に伴うウイ ルスそのものの直接的な殺細胞効果により治療しようという研究です。脳腫瘍、特に神 経膠腫は、定位的脳手術等により比較的容易かつ確実にウイルスの腫瘍内直接投与が行 えること、神経組織という高度に分化した非増殖細胞からなる組織に囲まれていること、 腫瘍の他臓器への転移が稀であること、著効を示す治療法は存在していないことなどか ら、ウイルス療法の臨床試験対象に適していると記載されております。  このウイルスは腫瘍細胞で選択的に増殖するように単純ヘルペスウイルスを改変した ものであり、すでにG207という遺伝子組換えウイルスがありまして、それを改良したと いうことです。今回使われるウイルスそのものはこれまで人に投与されたことはありま せんが、資料11頁の中ほどにG207を用いた第1相臨床試験の記載があります。海外の臨 床試験で再発悪性グリオーマ患者21例を対象に投与がなされており、grede3以上の有害 事象は認めていないということです。  16頁、(6)「実施期間および目標症例数」ですが、目標登録期間は1年間、観察期間は 投与完了後90日間、治療後2年間追跡を行うということです。目標症例数は21人(最大 で30人)ということです。(7)「ウイルス療法臨床研究の実施方法」のところで投与方法 等の記載があります。脳腫瘍内に直接G47Δを2回投与するということです。安全性を確 認しながら、用量を順次上げていくという計画となっています。  一昨日開催された作業委員会では、投与スケジュール等に関するご意見が出ておりま すので、現在、事務局で作業委員会の結果の取りまとめ作業をしております。作業委員 会の委員の先生方にご確認をいただいた上で申請者に連絡し、回答をいただいた後、再 度作業委員会でご検討をいただくことにしております。また本日のご審議でご意見をい ただいた場合には、がん遺伝子治療臨床研究作業委員会にお伝えいたしますのでよろし くお願いいたします。  続きまして、カルタヘナ法の関係です。43頁からが生物多様性影響評価に関する資料 です。こちらについても、カルタヘナ法に基づいて第一種使用規程の承認を受ける必要 がありまして、第一種使用規程の承認に当たっては、その主務大臣は学識経験者の意見 を聞かなければならないとされております。当部会の下の作業委員会については63頁と 64頁に資料を付けておりますが、そちらにご審議をお願いしております。  45頁から、第一種使用規程承認申請書となっております。この内容については、今後、 作業委員会でご審議をいただき論点を整理していただいた上で、再度この部会でご議論 をお願いすることになります。説明は以上です。どうぞよろしくお願いいたします。 ○垣添部会長 東京大学から悪性膠芽腫の遺伝子治療の申請が上がって、2日前に第1回 の作業委員会で検討が始まったところです。いま事務局からご説明があったとおり、悪 性膠芽腫の治療成績は極めて悪く、しかも、抗癌剤も放射線もよく効かないので、遺伝 子治療で何とかできないかという申請です。ただいまの事務局からの説明に関して、何 かご発言はありますか。 ○宮田委員 実は天然から分離された欠失型のHSV-1で臨床研究をやっている例を知っ ているのですが、これは遺伝子治療ということで、よく読みますとLacZで遺伝子操作を やって潰しているので、だからこれは遺伝子治療として議論するということですか。 ○坂本研究企画官 はい、遺伝子組換えウイルスを用いるということです。 ○垣添部会長 よろしいですか。ただいまいただいたご意見も含めて、事務局を通じて 作業委員会に伝えることにいたします。各作業委員会で論点整理を行っていただいて、 その検討結果を改めて当部会に報告がありますので、その時点で再度ご議論をいただけ ればと思います。それでは3-4「遺伝子治療臨床研究実施計画の変更及び重大事態等の 報告について」事務局からお願いします。 ○坂本研究企画官 資料3-4です。変更報告が2件、重大事態等報告が1件あります。1頁、 九州大学からの変更報告です。4頁に変更内容があり、(1)人事異動に伴う変更、(2) 語句の統一、整備、(3)検査スケジュールの変更、(4)除外項目改訂という変更がな されております。3頁の(4)除外項目改定を見ていただきますと、この5行目の所から ですが、症例登録番号103(臨床研究薬投与2例目)における重大事態に関する遺伝子治 療臨床研究審査専門委員会の意見に対応し、潰瘍・壊疽を有する被験者については、別 途感染の発生や拡大に関する説明と同意取得を実施することとしたと、今回、こういっ た内容も改定されております。こちらについては10頁に新旧対照表が載っております。 10頁のいちばん最後のほう、別紙12として「潰瘍・壊疽に関わる感染の危険性に関する ご説明」が追加されていて、別紙13の、それまでに発生した「有害事象一覧」も説明に 用いるために追加されています。本件については、検討委員会の委員の先生方にも変更 内容のご確認をいただいております。  続きまして、15頁からが、筑波大学からの変更報告となっております。17、18頁のこ ちらの変更内容の所ですが、基本的には研究実施期間を延長して有効性等の検討を行お うとするもので、この際、組織の改組再編への対応、それから、今回これからやろうと するものについては検査方法を改正しまして、これまでよりも早期に結果が出る検査方 法を導入したいといった改正、そういった所が改正点となっております。こちらの変更 内容についても、検討委員会の委員の先生方に変更内容のご確認をいただいております。  40頁からが、九州大学からの重大事態等報告書となっております。42頁の下のほうに 「重大事態等の内容及びその原因」という項目があります。この臨床研究の3例目の患 者になるわけですが、臨床研究薬投与後2週間で退院はされています。そのときには症 状の改善を認めていたということです。臨床研究薬投与後1カ月半頃に再び安静時疼痛 が増強し、潰瘍の増大傾向を確認したということです。以後、高圧酸素療法とか左腰部 交感神経切除を施行したが、奏功せず、潰瘍部の壊疽化と同部の強度の疼痛の治療目的 で、左総大腿動脈・腓骨動脈バイパス術ならびに左第3、4、5趾切断術を施行したとな っております。そういうことに至ったわけで、重大事態等報告ということになっており ます。そして、44頁の「その後の対応状況」という欄の所で、九州大学の先進医療適応 評価委員会の検討結果も記載されていますが、本症例の経過は臨床研究薬との因果関係 は必ずしも否定できないものの、医学的・科学的見地から疾患の自然経過(自然悪化) と考えることが妥当という結論に至ったとのことです。本件に関する報告を速報で受け た段階で、末梢性血管疾患遺伝子治療臨床研究作業委員会の委員長の永井先生とも相談 して、九州大学病院での切断に至る率等の確認も行っております。44頁「その後の対応 状況」の欄の下のほうにありますが、これまで報告されている本疾患の予後、観察期間 6カ月において50%を超える切断率が認められた場合は、被験者に対するより高い安全 性の確保の観点から、再度九州大学の先進医療適応評価委員会で投与全症例を検討する こととされた、という対応もとられるわけです。本件におけるこの内容についても、検 討委員会の委員の先生方に確認していただいております。変更報告と重大事態等報告に ついては以上です。よろしくお願いいたします。 ○垣添部会長 ありがとうございました。  「変更」は、九州大学の説明同意書の一部変更、それから、筑波大学の研究期間の延 長に関して、「重大事項の報告」は九州大学の、下肢部閉塞性疾患に対する重大事態の 発生という、自然経過であって遺伝子治療の影響はなかったのではないかというお話で すが、この三つの変更、重大事態の発生に関して、ご発言はありますか。 ○宮田委員 その九大の例ですが、いままでに何症例ぐらい遺伝子治療がなされていた のか、伺いたいと思います。 ○坂本研究企画官 確か3例です。 ○宮田委員 すると、3例中1例ということですか。 ○坂本研究企画官 投与2例目がMRSA感染もあって切断手術が行われており、前々回の 部会で報告しております。 ○宮田委員 下肢切断は1例ですか。 ○坂本研究企画官 それは前回報告した1例です。 ○宮田委員 わかりました。3例中1例ですね。 ○垣添部会長 かなり厳しい症例に対して行われています。 ○永井部会長代理 かなり重症例を対象とするということで始まっていますので、この 数字を高いと読むのか、この程度と読むのか、もう少し症例を重ねて検討する必要があ ると思います。 ○垣添部会長 ありがとうございます。  続きまして、帝京大学医学部、他2機関からの「ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請 について」のご審議をいただきたいと思います。これは11月21日に厚生労働大臣から諮 問されて、同日付で当部会に付議されております。今回の申請の概要等について、事務 局から説明をお願いします。 ○研究開発振興課 ヒト幹細胞臨床研究に関しましては、資料4-1、資料4-2、及び一枚 紙の資料4-3を用いてご説明したいと思います。昨年9月1日施行の「ヒト幹細胞を用い る臨床研究に関する指針」に基づいて申請されました、ヒト幹細胞臨床研究実施計画に ついて、新たに認められた4件の申請の件、それから、これら4件に、さらに前回から継 続審議となっておりました二つの申請を加えた計6件について、審査委員会で審議した 結果、適合性が了承された1件についてご報告を申し上げます。まず資料4-1からご覧く ださい。10月に開かれた前回の科学技術部会以降、新たに申請が認められ、諮問及び付 議されたのはご覧の4件でございます。1頁から2頁が、これら4件の申請に関する諮問書 です。平成19年11月21日付で申請が付議されております。それぞれについて簡単にご説 明いたします。  まず5頁を開けてください。平成19年4月13日に申請されました、帝京大学医学部によ る、自家骨髄間葉系細胞移植による骨組織再生医療に関するものです。対象疾患は、骨 折後の合併症としての遷延治癒・偽関節および骨延長術となっています。骨延長術等に 伴う骨欠損を骨髄間葉系細胞によって再生させようという臨床研究になります。その他 については順次ご参照ください。  二つ目、22頁です。平成19年10月1日に申請されました、信州大学医学部附属病院に よる、TypeIcollagenを担体とする培養自己骨髄間葉系細胞移植による軟骨欠損修復で す。対象疾患は、離断性骨軟骨炎・変形性関節症などにともなう、骨軟骨障害などです。  それから三つ目、35頁です。同じく平成19年10月1日信州大学医学部附属病院の同じ グループによる、ハイドロキシアパタイトあるいはβ-リン酸三カルシウムを担体とす る培養自己骨髄間葉系細胞移植による骨欠損修復です。対象疾患は骨嚢腫など、いわゆ る良性の骨腫瘍の摘出後に生じた骨欠損です。新規性等については概要をご覧いただき たいと思います。  それから四つ目、48頁をご覧ください。こちらが平成19年11月14日に慶應義塾大学医 学部から申請されました、重症心不全患者への外科的治療に付随して行なう、自己骨髄 由来間葉系細胞を用いた細胞移植に関する臨床研究となっています。対象疾患は、冠動 脈バイパス術及び左室形成心臓外科手術施行予定の重症心不全患者です。四つのいずれ の研究に関しましても、用いられている幹細胞は自家骨髄間葉系幹細胞です。詳細に関 しては適宜ご覧いただければと思います。以上、今回付議された四つの申請でございま す。  これら四つの申請と、前回継続審議となっていた、奈良医科大学及び東海大学の申請 を併せた計六つの申請につきまして、平成19年11月28日に開かれた、第3回ヒト幹細胞 臨床研究に関する審査委員会での審議におきまして、動物実験などの前臨床試験の結果 による治療法についての科学技術分野で、幹細胞の調製時の安全性、細胞治療機関とし ての施設状況、患者への説明の文書や同意についての対応、倫理審審議の手続きや審議 内容について詳細な検討を行いました。資料4-2にある、東海大学医学部の申請につい て、審議での適合性が認められ、報告書が付記されております。1頁をご覧ください。 ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会、永井委員長からの報告でございます。  続きまして2頁目、ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要になります。課題名は自家骨 髄間葉系幹細胞により活性化された椎間板髄核細胞を用いた椎間板再生研究になります。 総括責任者は東海大学医学部の持田譲治教授です。この研究の対象は、椎間板ヘルニア 等に代表される腰椎の椎間板変性疾患のうち、椎間板摘出及び腰椎椎体間固定術が適用 される症例で、かつ隣接した椎間板が、固定術までは必要としませんが、既にある程度 まで画像上の変性が進んでいるものとなっております。固定術の際に摘出された椎間板 に含まれる、椎間板髄核細胞を同じく術中に採取された骨髄間葉系幹細胞と共に培養さ せることで活性化させ、後日、画像下に椎間板造影針を用いて経皮的に注入して、変性 しかかった、隣接した椎間板に移植し変性を抑制しようというものでございます。既に 小型動物や、家兎あるいはビーグル犬を含めた動物で安全性と椎間板変性抑止効果が示 されていて、ヒト髄核細胞を用いた場合の実験でも細胞の活性化が示されております。 椎間板髄核細胞に着目した椎間板再生研究は、世界でも他にまだ報告はなく、申請の新 規性が認められております。  3頁目からが、審査委員会での議事概要です。審議のポイントとしましては、3頁の下 のほう、確認事項として出された、被験者のクライテリアで、15〜30歳と、未成年者が 含まれております。それから、4頁目の中ほどに「対象疾患群に関して」とありますが、 申請時には対象が、いわゆる手術が対象になる椎間板変性疾患全般が幅広く選定されて いて、これらの評価は困難ではないかというのが論点となっておりました。  以上、他の小さな問題点も含めて申請者に確認をしまして、4頁の下のほうに3となっ ていますが、現在、変更内容のほうで示されているように、安全性評価がこの研究の目 的である点を考慮して、未成年者を対象から外して、20歳から30歳までにしたこと、さ らに、先ほどの概要の所で申しましたように、対象疾患をかなり細かく限定するなど、 適切な修正が申請者によって行ってこられましたので、最終的に了承されております。 6頁目以降は、申請書類のうち申請書、実施計画書などがあって、43頁からは、患者へ の説明文書、同意文書となっていますので、適宜ご参照いただければと思います。なお、 今回了承を見合わせた、帝京大学、奈良医科大学、信州大学、慶應義塾大学の申請に関 しましては、委員会での審議の中で委員の先生方から出された部分の指摘について、申 請者にお返しして、審査委員会で審議を継続していくわけでございます。  最後に、資料4-3をご覧ください。「ヒト幹細胞臨床研究に関する指針」に基づく申 請の受理から当部会への報告の流れですが、下のほうをご覧ください。遺伝子の指針に おける手続きと同様に、新規性があると判断されたものに関しては諮問され、当部会で 審議されますが、速やかに審査委員会の開催がされるよう部会長の了解をいただいた上 で、部会開催に先立って先行審議を行うことを明確化させていただくものです。また、 中ほどに「新規性の判断」とありますが、前回の部会で報告させていただいた申請につ いては、専門家の意見を聞きながら行うプロセスと、審査委員会での審議についての区 別が不明確でしたが、今後は審査委員会の先生方の意見を持回り等でお伺いしながら、 事務局の判断として迅速に対応できるようにしたいと考えています。このような、申請 手続き上の明確化を行うことになりまして、同時に、前回ご指摘をいただいたような、 手続きの流れに関する運用上の混乱をきたすことのないように、遺漏のないように務め てまいりたいと思います。なお、同様にご指摘いただいた、申請から審査委員会までの 処理期間を短縮すべく、申請者に対する資料等の不備に関して事前相談を受け付けてい くなど、対応を行ってまいりたいと考えております。以上です。 ○垣添部会長 ありがとうございました。資料4-1〜3までを説明していただきましたが、 まず資料4-1は、ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請です。この四つに関しては、厚生 科学審議会の久道会長から、この部会に関して審議を願いたいという要請で行っている ものです。帝京大学からは、自家骨髄間葉系幹細胞を移植することによって骨組織の再 生を促そうと。2番目、信州大学は、TypeIcollagenを担体として、自己骨髄間葉系幹 細胞を移植することによって軟骨の欠損を修復しようと。3番目、もう一つの信州大学 の計画は、ハイドロキシアパタイトあるいはβ-リン酸三カルシウムを担体として、そ こに自己骨髄間葉系幹細胞を移植することによって骨欠損を修復しようと。最後の慶應 義塾大の申請書は、重症心不全患者に対して、外科的治療の際に、自己骨髄由来間葉系 細胞を用いて細胞の移植を行おうと、そういう四つの申請です。この資料4-1に関して 何かご発言はありますか。 ○末松委員  信州大学の二つのうちの最初のほうですね。資料4-1の25頁、個別資料で3/11という所 です。「臨床研究に用いるヒト幹細胞」という項目で、骨髄間葉系幹細胞で「由来」は 自己・生体由来と書いてあります。その下を見ると、「非自己由来材料使用」というこ とで、「有」と書いてあって、動物種(ブタ・ウシ)と書いてあります。これの具体的 な内容というのは何でしょうか。 ○研究開発振興課  これに関しましては、一般的に医療材料として販売されているcollagenを材料にしてい るわけです。 ○末松委員 これはcollagenのリソースということですね。 ○研究開発振興課 はい。 ○宮村委員 信州大学の、一連の離断性骨軟骨炎ですが、対象が13歳から65歳までの10 症例と書いてあります。前にもどりますが、資料4-2の場合は、未成年の場合は慎重に というコメントが入っています。この場合はひろい範囲の年齢にわたる骨軟骨炎の治療 ですが、こういうコメントは入らなかったのでしょうか。どうでしょうか。 ○研究開発振興課 この信州大学の対象年齢に関しては、前回の審査委員会でも議論さ れたところでして、資料4-2に関しては、申請があったままの状態の情報が書かれてい まして、この件については今後の審査委員会の中で議論していただければと思います。 ○永井部会長代理 まだ審査が始まったところですので、これで承認されたわけではあ りません。 ○宮村委員 わかりました。 ○垣添部会長 それでは、2番目の資料4-2、東海大学のヒト幹細胞臨床研究について、 永井先生にお願いします。 ○永井部会長代理 私のほうから補足させていただきます。資料4-1にも関係しますが、 この審査のポイントはやはり科学的妥当性、倫理的妥当性になります。しばしば議論に なるのは、科学的妥当性についてはまず根拠ですね。他施設でやっているからうちもや るというようなのは駄目だと、やはり自分達できちんと予備実験を重ねて、それなりの 根拠がある研究をしていただきたいということです。それから、研究のプロセスですね。 特にセルプロセッシングセンターの設備とか、いろいろな実験器具だとか、そういう設 備がしっかりしているかです。  かなり難しいのは評価ですね。本当に臨床的に評価できるのかどうか、きちんと担保 しておいていただきたいということになります。最初は安全性が目的になるわけですが、 その場合においても次のステップは有効性の評価になりますから、そういうことが本当 にわかるのか、そういうこともしっかり研究のデザインとして組み込まなければいけな いことになります。  倫理的妥当性の所では、先ほど議論になった対象で、未成年を入れていいのかどうか とか、あるいはインフォームド・コンセントで、目的をきちんと説明しているかどうか、 安全性が当面の目的であるにも関わらず、有効性を評価できるかもしれないような説明 では非常に不十分であると、そういう所が論点になります。それをクリアできた申請が こちらに上がってくるわけです。この東海大学のケースですが、いまお話をお聞きにな ってもなかなかわかりにくいと思います。  最後から2、3頁目、図2と図3をご覧ください。何をしようとしているのか、あるいは、 どういうプロセスで細胞を処理するのかということですが、図3の上のほうに「固定予 定椎間」と書いてあります。三つ目の椎間板ですね。これは相当変性が進んで手術せざ るを得ないものですね。これはもう手術するわけです。下に「椎体間固定術」と書いて あります。その上の2番目の椎間板は固定隣接椎間板で、少し変性しているわけです。 ある基準から考えると、上の椎間板はいずれ駄目になるだろうと。手術が必要になって くる、これを助けることが目的のようです。どうやって助けるかといいますと、椎体間 固定術ですが、手術する椎間板の固定をするときに細胞を採ってきて、図2にあるイン キュベーターへ持っていって、上のカップのほうに髄核細胞をまき、下のカップに接す るような形で、カップの裏側に骨髄間葉系幹細胞をまいて、かなり接触したような状態 で髄核細胞を増やして、かつ活性化する。それを駄目になりそうな椎間板に注射する。 そうすると助けられるのではないかという考え方です。それが本当に評価できるのかど うかは、やはり症例を選ばないといけない。そのためにパールマン分類の何とかという のと持田分類というのがあって、なおかつ、機能的にもかなり障害が出ている患者を選 べば、自然歴から考えてかなり悪くなるから、多分評価できるだろうと、そういうロジ ックになります。対象患者は、症例をたくさん集めるには当然若い人を入れたほうがい いのだそうですけど、今回は未成年は除くということで、一応審査会のほうは了承して いるわけでございます。以上です。 ○垣添部会長 明解なご説明をいただき、ありがとうございました。何かご意見はあり ますか。よろしいですか。資料4-3は、確か前回石井委員からご指摘の、手続きがおか しいのではないかということに関して、審査の流れを整理していただいたものですが、 よろしいですか。ありがとうございます。それでは、ヒト幹細胞臨床研究については、 作業委員会からの報告について本科学技術部会として了承することとします。なお、今 回了承いただきました、東海大学医学部のヒト幹細胞臨床研究実施計画については厚生 科学審議会へ報告することになります。  次に「府省共通研究開発管理システムについて」、事務局から報告をお願いします。 ○坂本研究企画官 資料5をご覧ください。府省共通研究開発管理システム(e-Rad)に ついてでございます。この資料は文部科学省のほうで作成したもので、後ろのほうには パンフレット的なもののコピーもつけてあります。平成20年1月からこの府省共通研究 開発管理システムが稼働するように、文部科学省が中心となって準備を進めているもの でして、その説明資料でございます。1.の下のほうにあるように、略称としては「e- Rad」を用いることになっております。このシステムの対象としては、競争的資金の全 てとプロジェクト研究資金と呼ばれる研究資金の一部を対象にしようということです。 このシステムの利用者としましては、資金の配分機関の業務担当者、その他、研究課題 を応募する研究者の方、大学等の研究機関の事務担当者、PD・PO、評価者等もこのシス テムを利用して、共通的に活用しようということで作業が進んでおります。システムの 機能としましては、1頁の下のほうにあるように、(1)研究開発管理に係る書類のオン ライン電子化ということがあります。研究者、研究機関から配分機関への課題の応募、 研究資金の交付申請、成果報告等を電子化しようということで、業務の効率化、研究者 等の利便性向上、負担軽減を図りたいとのことです。  2頁の上の(2)ですが、研究者への研究者番号発行と一意性の確保ということで、こ のシステムを利用する際には事前の登録が必要でして、研究者に番号を付与して、重複 や過度の集中の排除の支援等もこのシステムで実施することになっております。既に文 部科学省の科学研究費補助金の研究者番号を持っている方は、それを継続して使用でき るようにしようということになっております。繰返しになりますが(3)の所では、不合 理な重複、過度の集中の排除の支援にこのシステムを使うということが書いてあります。 システム化による効果としましては、オンラインの応募で効率的になるのではないか、 管理の負担の軽減といったことが下のほうに書いてあります。「おわり」に書いてある ように、平成20年1月の運用開始以降も、いっそう利用者の視点を重視し、配分機関、 研究機関、研究者等の意見を踏まえながら、PDCAサイクルを意識したシステム運用を行 っていきたいと考えているわけで、当然これからも運用しながら検討が進められていく ものです。  さらに次の頁、イメージ図です。ここにあるように、右上から言うと、このシステム では、どういう事業をやっているのかという案内から、研究機関登録、研究者登録、評 価者登録、電子応募、審査業務、採択・交付、成果報告・評価業務も一元的にやってい こうということでして、こちらにあるように、一省だけでなく、関係府省が、連係して やっていこうということでございます。  その次の頁には、このシステムの計画策定の経緯が書いてありまして、さらに最後の 頁では、このシステムの機能として、先ほどの所を細かく書いたような資料をつけてお ります。  いま現在、このシステムはまだ立ち上がっていませんし、既に実施しているものにつ いては無理にこのシステムに入れることは想定していませんが、今後こういったシステ ムが動き始めると、我々のほうもこのシステムに合わせた形で動いていくことが想定さ れますので、実際に活用していく段になったら、関係者には順次情報提供をしていきた いと考えております。まだ立ち上がっていませんので、いま出せる情報はこの程度です が、まずは情報提供させていただきたいということです。以上です。 ○垣添部会長 ありがとうございました。府省共通研究開発管理システム、Electronic- Research and Development(e-Rad)の内容のご紹介をしていただきましたが、何かご発 言はありますか。 ○金澤委員 2頁目の(4)に総合科学技術会議云々のことが書いてありましたので、総 合科学技術会議でこのことが議論になったときのことをお話ししたいと思います。この 一つ前の(3)に「不合理な重複」、「過度の集中」という言葉が出ています。この「不 合理な」と「過度」という形容詞がついていることが、実は重要だという議論になった わけです。つまり、何でも重複している、何でも集中しているから、すべて駄目という 形で「e-Rad」を使うのは問題だろうという議論をしております。つまり、誰にどのくら い国からお金が出ているか、一目でわかるシステムがいままでなかったのを作ったこと が一つの大きな点ですが、いまの点を考えると、重複しているから完全に駄目だという ことには使わないでいただきたいわけです。そこが非常に大事なことで、iPSセルに関 しても似たようなことがあるわけで、ある部分に集中していないと仕事が進まない部分 があるのです。そういうことも両睨みで、これをきちんとした形で利用してほしいわけ です。 ○垣添部会長 ありがとうございました。大変重要な内容のご説明かと思いますが、い まのことも含めて何か他にありますか。 ○宮田委員 これは厚生労働省ではないと思いますけど、実は一部の研究者の中で、違 うプロジェクトでも、自分が入っているために外されてしまったというのは今年度に起 こっていますので、厚生労働科学研究費の運用に関してはここら辺をきちんとメリハリ をつけて、本当に使い切れないぐらい研究費をもらっている人が日本に何人いるかとい う疑問もあり、機械的な運用だけは絶対やめてほしいと思います。 ○垣添部会長 これも大変重要なご指摘かと思います。 ○松本委員 最近、研究申請するときにエフォート率を書かされますよね。あれも加算 するのですか。そうすると、100%を超えることが出てくる可能性があるのですが、そう いうのははじくことになるのでしょうか。 ○坂本研究企画官 すみません。詳細な項目等の内容まではいま手元にありません。そ うは言いましても、エフォート率につきまして、研究者から出されたものを足したのが もし100を超えていたら、管理がどうかという問題があるので、その辺は研究者側でも きちんと管理していただく必要があるかと思います。 ○垣添部会長 先ほど金澤委員が言われた、「不合理な」というのと「過度の」という のは大変重要な部分で、重要な領域だから重複する可能性が出てくることを是非勘案し ていただきたいと、私もお願いしておきたいと思います。他にご発言はありますか。 ○金澤委員 いまのエフォート率の件ですが、やはり総合科学技術会議でも議論にはな りましたけど、はっきり言って、日本ではまだ慣れていないですね。申請の時点で100 %を超えるのはちょっと問題ですけど、通ってないものまで全部含めてエフォートを出 しますから、どのぐらい通ったかで本当は変わってくるわけです。サルベージというか、 それをきちんと把握するシステムがまだできてないわけですね。そういうことも含めて、 やはり申請の時点で100%を超えているかどうかぐらいに。だから、似たようなプロジ ェクトに、ある人は5%エフォートして、ある人は15%している。ならば15%のほうが いいではないかという、単純な判断だけは絶対にしないほうがいいだろうということで、 一応話は進んでいます。 ○垣添部会長 ありがとうございました。  よろしいですか。予定された議題はすべて終了しましたが、事務局から何か他にあり ますか。 ○坂本研究企画官 特にありません。次回については別途日程調整をしますので、どう ぞよろしくお願いいたします。 ○垣添部会長 それでは、予定より少し早いですが、年末ですので、これで終わりたい と思います。委員の皆様方には本年大変お世話になりました。どうぞよいお年をお迎え ください。ありがとうございました。                               −了− 【問い合わせ先】  厚生労働省大臣官房厚生科学課  担当:情報企画係(内線3808)  電話:(代表)03-5253-1111     (直通)03-3595-2171 - 1 -