07/09/25 第2回「児童部会社会的養護専門委員会」議事録 厚生労働省 雇用均等・児童家庭局 第2回社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会 日時:平成19(2007)年9月25日(火) 16:00〜18:30 場所:厚生労働省専用第18〜20会議室(17階) 出席者:  委員   柏女委員長、相澤委員、今田委員、大塩委員、大島委員、木ノ内委員、榊原委員   庄司委員、松風委員、高田委員、豊岡委員、藤井委員、藤野委員、吉田委員  厚生労働省   高倉総務課長、藤井家庭福祉課長 議題:  1. 開会  2. 検討項目に関する議論  3. 閉会 配布資料:  ・検討項目  ・各委員からの意見 ○藤井家庭福祉課長  それでは、定刻となりましたので、ただ今から第2回社会保障審議会児童部会社会的 養護専門委員会を開催させていただきます。委員の皆様方におかれましては、お忙しい 中お集まりいただき、厚く御礼申し上げます。初めに出席状況の報告ですが、本日の委 員の出席者は14名です。奥山委員、西澤委員、山縣委員は欠席ということでお伺いし ています。では、前回各委員の方のご紹介をさせていただいていますので、前回参加で きませんでした委員の方のみご紹介させていただきます。青山学院大学文学部教授の庄 司委員です。 ○庄司委員  庄司です。よろしくお願いします。 ○藤井家庭福祉課長  それでは、議事に入りたいと思います。柏女委員長、よろしくお願いします。 ○柏女委員長  それでは、第2回目の専門委員会に入りたいと思います。お彼岸も過ぎたのにまだま だ暑い日が続いていて、お疲れが出るところもあるのではないかと思いますが、お忙し いところお集まりいただいて本当にありがとうございました。それでは初めに、お手元 にお配りしている資料についての確認を事務局よりお願いします。 ○藤井家庭福祉課長  それでは、お手元の資料をご覧ください。初めに、前回ご説明した検討項目という資 料があります。その後、先日の委員長からのご提案を踏まえて、高田委員、藤野委員、 西澤委員、山縣委員、吉田委員、藤井委員から「全国児童家庭支援センター協議会」と いうタイトルの資料が提出されていますが、以上がそれぞれの委員から資料として提出 されています。またもう一つ、「施設内虐待を許さない会」とクレジットされた意見書が、 吉田委員からのご紹介で、委員限りとして配布しています。以上、お手元の資料が不足 している場合はお知らせいただきたいと思います。すべて、ありますでしょうか。 ○柏女委員長  大丈夫でしょうか。 ○藤井家庭福祉課長  資料の確認は以上です。 ○柏女委員長  ありがとうございます。前回は時間が足りないということで、ご意見をペーパーでで もご提出いただければというお話をしましたら、今日ご欠席の方も含めて本当にたくさ んの方からご意見をいただいて、とてもうれしく思っています。できる限り時間を取り ながら、許された短い時間ではありますけれど、その中でできるだけ皆さま方の意見を 拾い上げながら進めていきたいと思いますので、ぜひまたご協力をお願いしたいと思い ます。  前回は、この検討項目案の1、2についての主要な議論でしたので、今日は3〜4ペー ジについて諮りたいと思います。「3.自立援助ホームの見直し等自立支援策の拡充」「4. 人材確保のための仕組みの拡充」「5.措置された子どもの権利擁護の強化とケアの質の確 保のための方策」「6.社会的養護体制の計画的な整備」の四つに時間を振り分けながら進 めていきたいと思います。ただ、皆さま方からご意見をたくさんいただいていますので、 できる限り各委員から出していただいたご意見も踏まえながら、それぞれの領域のとこ ろでご発言をしていただこうと思います。私の直感的なところですけれども、もしかし たら時間が足りなくなって、今日はひょっとしたら全体についてもう1回やるような時 間は取れないかなと気もしています。事務局とまた相談をしますけれども、時間だから 無理やり切るということはしたくないので、次回もというような含みも想定しながら議 事を進めていきたいと思います。できるだけご協力をお願いします。大体めどとしては、 一つの項目について20〜25分くらいの時間をかけて、全体を通じてのご意見をもう一 度いただくということに当初はしておきたいと思います。今日、ご欠席の方のご意見は、 どうしますか。別に読み上げなくても構いませんか。 ○藤井家庭福祉課長  そうですね。お目通しいただければ。 ○柏女委員長  目を通して、その後の次回になるのか次々回になるのかわかりませんが、事務局の方 でこの議論を踏まえた提案をしていただくときには、今日ご欠席の方のこのご意見も踏 まえていただくということにしたいと思います。それでは、まず「3.自立援助ホームの 見直し等自立支援策の拡充」について、ご意見をいただきたいと思います。大島委員、 お願いします。 ○大島委員  自立援助ホームの大島です。自立援助ホームは最近、NPOでの立ち上げが積極的にな ってきていますけれども、第2種の福祉事業と位置付けられていますので、どうしても 資金難ということが一番大きな問題になると思います。私どもの資金というと、国で基 準を持っている補助金という制度になりますけれども、これが非常に小さいもので人を 雇って運営できるのがぎりぎりということです。子どもたちが働きながら生活をすると いうことで、子どもたちから生活費の一部を負担してもらうという形で運営をしていま すけれども、限度があるということです。  受け入れる子どもたちについては、やはり全国の話を聞いても、非常に難しい子ども たち、処遇困難な子どもたちが入っています。発達障害と言われる子ども、あるいは非 行の問題です。非行の問題については、受け入れ・設置について地域で反対運動が起き てしまうということも見聞きしているわけです。私たちは、非行児を集めて生活してい るわけではないのですけれども、何か非行のたまり場のように思われることがあります。  私たちは矯正指導をするわけでもないし治療をするわけでもありませんが、やはり人 材というかそういうものの指導における人数、それから資格を持った職員ができるだけ 配置できるような形を考えていかなければならないと思っています。  児童福祉法の枠を外れたというか、18歳を過ぎた子どもの援護も含めて、私たちは措 置にしないで、今まで通り第2種という形をとっていきたいとは思うのですけれども、 そういう形を取っていますので、補助制度をもっと拡充してほしいというのが第一のお 願いになると思います。  それから、今日はありがたいことに、西澤委員、山縣委員の意見の中に自立援助ホー ムの見直しということが書かれています。目を通して、まさにこの通りだとうれしく思 っています。よろしくお願いします。 ○柏女委員長  ありがとうございました。山縣委員、西澤委員のご意見についてもその通りに拡充と いうことでの、大島委員のご意見ということでよろしいでしょうか。ありがとうござい ます。それでは木ノ内委員、お願いします。 ○木ノ内委員  実は前回、里親関係でお話しすべきことがあったのですができなかったので、この流 れの中でお話ししてもいいのでしょうか。それとも、もう一度振り返っていただく方が いいのか、どのように考えればよろしいですか。 ○柏女委員長  自立支援の関係でしょうか。 ○木ノ内委員  この手前の里親関係のところなのですが、どうしたらいいですか。 ○柏女委員長  もしかしたら、他にもご意見のある方がいらっしゃると思いますので、ここでしまし ょうか。3番のところに絞って、今日になるか次回になるかはわかりませんけれども、 必ず全体を通じての時間を取りたいと思います。 ○木ノ内委員  はい、わかりました。 ○柏女委員長  藤野委員、どうぞ。 ○藤野委員  時間がないので手短に言いますが、私が出した意見の文書の4ページに「退所後のア フターケアについて」と書いてありますけれども、実はその文書を手直ししようと思っ ています。「自立支援および退所後のアフターケアについて」としてください。施設入所 児童の社会的自立の力は、自立支援計画に基づいてインケアのすべての段階でその力を 醸成しなければならないと思うのです。しかし、さまざまな年齢段階で入所してくる子 どもたちは、入所前に多くの発達課題を積み残してきており、逆に養育者による虐待な どにより、自尊感情の欠如や深刻な人間不信に陥っており、積み残しの挽回と、自尊心 や他人への信頼感の回復が課題となる。親や施設職員や里親から大切にされ愛される経 験の中からのみ取り戻されると言えよう。次に、昭和63年3月29日児発第266号によ る「養護施設入所児童のうち中学校卒業後就職する児童に対する措置の継続等について」 の通知や、その当時一連の通知が出ています。平成元年4月10日児発265号の6およ び7号による「養護施設入所児童等の高等学校への進学の実施について」の通知、ある いは平成8年1月29日児家発第1号による「措置解除後、大学等に進学する児童への 配慮について」の通知等、一連の通知の見直しや、一層の高校進学、大学・短大・専門 学校への進学の促進、自動車免許の取得、中卒就職児童の自立支援策、職業指導員のリ ービング・ケアワーカーとしての再配置、あるいは職親制度の見直し、新たに提起され ている施設を退所した子どもに対する相談等を行う拠点事業・自活訓練事業の見直し、 自立援助ホームの拡充等、一連の自立支援策の体系的整備が必要であると思います。そ ういう意味で言えば、少なくとも児童福祉法でいう、20歳までは必要があれば施設にい られるようにしていただきたいと思います。例えば「養護施設入所児童のうち中学校卒 業後就職する児童に対する措置の継続等について」という通知には、まだおおむね6カ 月ということになっていますし、そういう意味で言えばいちいち協議が必要であるとい うことになっています。この際、一連の自立支援策について体系的な見直しが必要では ないかと思います。よろしくお願いします。 ○柏女委員長  ありがとうございました。ちょうど今お話があった、昭和63年のときに私も厚生労 働省にいて、自立支援策とこれまでの他のものを含めて全体的に体系化をしようという ことで見直したことを、藤野委員のお話を聞いて思い出しました。今回、もう一度その 全部のものを自立支援という視点からさらに再体制化してはどうかというご意見だろう と思います。どこかを進めても中卒で6カ月しかいられないというように、ばらばらに なってしまっているので、その全体を整合化させなければいけないというご意見です。 とても貴重なご意見だろうと思います。ありがとうございました。他には、いかがでし ょうか。藤井委員、どうぞ。 ○藤井委員  「自立援助ホームの見直し等自立援助策の拡充」ということで、これは藤井家庭福祉 課長にお伺いしたいのですが、「施設を退所した子ども等に対する相談等を行う拠点事業 の創設」というところがあります。これに関しては、今、藤野委員から発言があったよ うに、児童養護施設を卒園した子どもたちのアフターケアにも係る重要な部分だと思い ます。この中身の方は具体的に見えてこないので、少しイメージがわくようなご説明を いただければと思います。よろしくお願いします。 ○柏女委員長  事務局の方でお願いします。 ○藤井家庭福祉課長  具体的なイメージというか、具体的にどのようにしていけばよいか、どんなものにす ればよいかということについて、ご意見をいただければありがたいと思っています。イ メージということで言うと、私どもが今この文脈で概算要求に盛り込んでいるものは、 アフターケアの相談、基本的に退所した施設、あるいは里親の方へご相談いただくこと はもちろん引き続きあっていいと思うのですが、それに加えて、それ以外にどんな施設 を退所した子どもでも相談にいけるような個別の相談拠点をつくってみてはどうかとい う頭で、概算要求をしています。それはNPOのようなところをとりあえずイメージし ているわけですが、そういった相談拠点をつくることと併せて、退所者のグループとい うか、「日向ぼっこ」からお話を伺ったりしましたけれども、あのような退所者が相互に 支え合うような組織を応援するようなことを併せて行ってはどうか。これは概算要求と いっても、モデル事業として要求をしています。実際、私どもは正直大阪でやられてい るようなことを頭においていますけれども、どこの県でも例えば人材面などで同じよう にできるかというと、なかなか不透明なところもありますので、平成20年度はとりあ えず概算要求上はモデル事業という形で要求しています。ただ、それは概算要求ですか ら、ざっくりとした世界ですので、具体的にこういうところにやってもらえばいいので はないかとか、こういう仕組みでやればいいのではないかというお考えなりアイデアな りがありましたら、ぜひこの場でもお聞かせいただければありがたいと思います。 ○柏女委員長  ありがとうございました。それを踏まえて、ご意見をどうぞ。 ○藤井委員  今のお話ですと、大阪のアフターケア事業部は私も存じているので、大体のイメージ はわくのですけれども、「日向ぼっこ」の方が前回意見を言われて、卒園生たちが気楽に 集まれるような、サロン的な場所が確保されているのかと思ったのです。卒園生たちが 集まると同時に、基本的な枠組みとして、彼らの自立を支援していくという意味合いで は、自立援助ホームというのがそういう役割を非常に担いやすい立場にいるのかという ことが一つ感じます。それから、概算の段階ですから手を挙げた各児童養護施設がそう いう取り組みをする部門を設けてもいいのかどうか。もう一つは、全国の家庭支援セン ターが今70カ所になるのですけれども、その70カ所のセンターがそれらの拠点の役割 を担っていくことは、我々が選択すれば可能なのかどうか。その辺の提案をしたいと思 うのですが、よろしくお願いします。 ○柏女委員長  ありがとうございました。さまざまな団体がそれを担えるようにしていってほしいと いうご意見として伺ってよろしいですか。大島委員の後に豊岡委員でお願いします。 ○大島委員  これは私どもの協議会でまだ話し合っていませんが、拠点事業ということのイメージ が、先日の「日向ぼっこ」のような、確かに新宿寮という自立援助ホームの一部分を改 装して使っているようですけれども、なかなかそこまでの配置あるいは養護施設の入所 児童に比べて、うちは100分の1という小さな受け皿しかないわけですから、その中で 施設を出た方たちのアフターケアは各施設で行うにしても、よりどころという拠点とい うものがどの程度できるのかということで、私どもにそれだけの力量があるのかという 疑問が出ています。それをイメージしていただいて、それだけの配置のようなことなど 何か考えていただければ、お役に立てることがあるのではないかとも思うのです。よろ しくお願いします。 ○柏女委員長  ありがとうございました。では豊岡委員、その次に庄司委員、お願いします。 ○豊岡委員  実際に施設を卒園して就職する、あるいはその後施設の措置解除になって一応自立の 方向に向かうわけですが、やはり現実的には仕事が続かない、あるいは住居等の生活の 基盤が確保されない子どもたちが結構いるという実態はあると思っています。そういう 子どもたちの再度の自立に向けた準備のための支援ということになりますと、どうして も自立援助ホームが中心になってくるのかなと思っています。児童養護施設がアフター ケアをやる場合には、それ相応の、一定の都からの支援・補助のようなものはあります けれども、児童養護施設でももっと体制を強化するなり、こういう事業ができるように していかなければいけないのではないかということは思っています。東京都の方も、今、 説明がありましたモデル事業については前向きに検討しているという話は伺っています ので、その細かい内容はともかくとして、できる場所というのが自立援助ホームであっ たり児童養護施設であったり、多様な選択肢が取れるというのが、私もいいのではない かと思っています。 ○柏女委員長  ありがとうございました。庄司委員、お願いします。 ○庄司委員  藤野委員がインケアのすべての段階でとおっしゃいましたけれども全くその通りで、 自立支援というのはそのときではなくて乳幼児期からの育ちが大事で、そのための体制 を整えるということが前提として必要だろうと思います。それからもう1点、これは容 易に実現できると思いますけれども、20歳までの措置延長が容易にできるよう、ぜひ自 治体を指導してほしいと思います。もう1点は、今はいわば福祉の枠の中で話している 感じがしますけれども、自立といった場合に就労というものが非常に大きな位置を占め るので、労働側というか、企業等への働きかけなど、そういったことを検討することも 必要ではないかと思います。 ○柏女委員長  他にはいかがですか。では相澤委員と松風委員、お願いします。 ○相澤委員  今、20歳までの延長ができるだけ容易にできるようにというご発言がありましたけれ ども、子どもの自立を考えたときには、特に社会的養護を必要とする子どもたちの現状 を考えれば20歳までではなくてもっとさらに、山縣委員が言うように「一般青年施策 に引き継ぐことが望ましい」と書いてありますけれども、私もそう思います。そういう 意味では、できるだけ児童福祉施設での養育だけではなくて、どうやって一般青年施策 等を拡充していくかという問題も実はとても大事だと思います。そういう視点を持ちな がら、努力をしていかなければならないと思っています。 ○柏女委員長  ありがとうございました。では松風委員、お願いします。 ○松風委員  先ほど庄司委員がおっしゃった就労との関係において、補足的に発言したいと思いま す。大阪のアフターケア事業部は、就労した先の事業主との交流を継続して行っていて、 就労が継続できない要因ですとか、どういうタイミングでどういう支援をすればいいの かということについても随分意見交換をされています。就労支援というのは、そういう 具体的な事実の積み上げによって必要なことをすくい上げていくというか、また構築し ていく必要があるのではないかと思います。そういう観点から、アフターケアは施設で 行われるということも非常に重要ですし、困ったときに頼れる所があるということも非 常に重要ですけれども、一方で、ある機能を集約化した形で養護施設等を卒業した子ど もたちのための支援機関というのを育成していく必要があるのではないかと考えます。 ○柏女委員長  ありがとうございました。それでは、吉田委員と木ノ内委員。 ○吉田委員  具体的な施策の問題ではないのですけれども、自立支援の関係で、やはりきちんとし た調査をする必要があるだろうと。これは、社会的養護がどの程度きちんと機能してい るのかということの検証にもなっていくと思うのです。実際にはプライバシーの問題や 技術的に大変難しい問題がありますけれども、やはり広く社会に訴えていくためには、 これだけの人にこれだけのニーズがあるのだ。さらにこれがうまくいかないときには、 これだけの社会的なコストになるのだという、きちんとした資料を作る必要があるだろ うという意味で、広く自立支援に関しては、そういった大規模調査を実施する必要があ ると思います。 ○柏女委員長  ありがとうございました。貴重なご指摘だと思います。では木ノ内委員、お願いしま す。 ○木ノ内委員  今、庄司委員から出てからというのではなくて、早い時期から支援をしていく必要が あるということと、やはり就労支援というのはその前のコミュニケーション、あるいは 挨拶や敬語といったものの上にビジネスのセンスが成り立つのだろうと思うのです。そ ういうことを考えますと、例えば私たち里親側から考えて、週末里親や季節里親のよう に施設の子どもたちを里親家庭に連れてきて経験させる、いわゆる実家機能というよう な形で、必ずしも里親というのは措置が終わってそれでおしまいというのではなくて、 帰る先として機能するようなことがあるのではないか。実は、週末里親・季節里親は地 域によっても言い方はばらばらですが、37の都道府県が取り組んでいると、全国里親会 の広報誌の「里親だより」の73号に載っていました。しかし名称も取り組みもばらば らなものですから、これはぜひ国の制度にしていただけないだろうか。前回でしたか、 里親を増やすために、こういった子どもたちを一時、施設から里親が預かるのがいいの ではないかという、いわゆる里親拡大の問題でもそうです。  もう一つは施設と里親の交流、相互理解の問題もあります。やはり大事なのは施設の 子どもたちの家庭環境を提供しながら、生意気なようですけれども、世間知らずと言っ たら大げさかもしれませんが施設経験しかない子どもたちの自立を、できれば日々、土 日やあるいは夏冬、家庭を提供する所に子どもたちが来て、父親は働きに行く、あるい はその中で敬語をどういうふうに使っているのかなど、そういうことを学びながら、最 終的にはやはり実家機能、帰るよりどころとなる家というような形でうまくいけば良い と思っています。 ○柏女委員長  ありがとうございます。では大島委員、どうぞ。 ○大島委員  確認ですが、私たちは年長児に関して、施設の先生や児童相談所の先生とお話しする ときに、要保護児童とは何なのだというような議論になることがあります。先日の「日 向ぼっこ」の出された意見の中に、3ページ目の後半の4番ですけれども「児童福祉法 では18歳まで施設に居てよいと定められているにも関わらず、一部の施設では未だに 『高校に行かないなら、施設を出て行かなくてはならない』という根拠のない慣習があ るのではないか」という文章があります。この辺のところを児童相談所はどのようにご 指導されているのですか。 ○豊岡委員  実態では、だからといってすぐ施設を出ていかなければいけないということではなく て、やはりそこで問題になるのが、その子どもがどう自立に向けて動いていくか、ある いはモチベーションを付けていくのかということだと思います。だから高校に行かない からすぐに措置が切れるなど、そういうことではないと思っています。 ○大島委員  では、この文章で良いということですよね。 ○豊岡委員  文章というと。 ○大島委員  「日向ぼっこ」の認識でよろしいと。そういうことになりますよね。 ○豊岡委員  施設を出なければいけないということですか。 ○大島委員  はい。 ○豊岡委員  いいえ。ですから、そうではないということです。 ○大島委員  そういうことではない。 ○柏女委員長  それに関連してですか。 ○藤野委員  通知ではおおむね6カ月というのがまだ生きているのですよね。高校に行かない、就 職する子どもについては、おおむね6カ月までしかいられませんと。特別な手続きがい るということで、そういう通知が生きているので、その都度やっているのだと思います。 その辺の全体的な整備が必要だということです。  それともう一つは実家的な機能ということで、やはり長年育った施設なりが、実家的 機能ができるようになるのがいいのです。うちは100年もたっていますから、墓もあり ますし、まさに実家的な機能になっていると思っていますが、その場合にやはり人なの です。そういう人がいないと駄目だと思います。ところが今の養護施設全体から言うと、 非常に労働条件も悪いし、そういう状況の中で、例えばある施設では20〜24歳が直接 ケアの主力でやっているという施設が結構あるのです。住み込みだとそうなってしまう のです。そうなると、とにかく出たOBが連絡を取ろうにもみんな知らないメンバーに なってしまいますので、そういう点でもやはり施設の人員配置の問題、それから職員の 研修の問題。そういう意味で何とかそこのところに手を付けていただきたいと思います。 ○柏女委員長  ありがとうございます。大塩委員、どうぞ。 ○大塩委員  自立援助ホームに関しては、子どもたちが自立していくという意味では、仕事に就く ということは大前提で大切なことですけれども、やはりもう一度信頼できる人間関係を 構築していくための、子どもの時期に与えられた最後の機会かなと思います。それほど 大切な施設であるにもかかわらず今のような資金源では運営がなかなか難しくて、特に 思春期の児童を対象としますと非行性があったり、発達障害などのつまずきをかかえて いたりする児童が対象ですから、今のような職員配置でやっているのが奇跡としか言い ようがないような事態ではないかと思いますので、これはぜひ運営面でもきちんとした ものが必要ではないかと思います。  それともう1点、この中に年長児の自立支援策があります。厚生労働省の予算の概算 要求の中に学習指導費加算の拡充ということで、中3の子どもたちがいる児童養護施設 の子どもたちだけではなくて、児童自立支援施設や情緒障害児短期治療施設、里親に措 置されている子どもたちへの学習指導費加算が拡充の予算要求がしてあります。母子生 活支援施設に入所している子どもたちは段々と低年齢化しているので中学生は少ないの ですけれども、本当に母子世帯は経済的に苦しい状況が続いていますので、子どもたち の進路を保障するためにも何とか中高生の学習指導ができるぐらいの職員配置の増額を、 この枠内でなくてもいいのでお願いいたします。また次のところでも言おうと思ってい ましたけれども、母子生活支援施設では少年指導員兼事務員というような職員配置です ので、中高生に学習支援をしていくことがなかなか難しいのが現状です。経済に関係な く、学ぶことを自分の力で身に付けていけるようなものが何とかならないかと思ってお ります。生活保護費の中でも母子加算の廃止など、母子世帯にとってはいろいろな厳し い現状がありますので、少し論点がずれたかもしれませんけれども子どもたちの進路が 保障できるような仕組みをお願いしたいと思います。 ○柏女委員長  ありがとうございます。他にはいかがでしょうか。では榊原委員、木ノ内委員でよろ しいでしょうか。少し先にも進みたいと思うものですから。 ○榊原委員  自立援助ホームの子どもの対象年齢の拡大は賛成です。必要だと思います。それから 吉田委員からご意見がありましたが、追跡調査もぜひぜひやるべきだと思います。私は この社会的養護の問題のプロフェッショナルではないですけれども、昨年から今年にか けて、家庭にきちんと受け皿機能がない子どもたちのことをいろいろ取材して、一番サ ポートが薄いのが自立支援の分野だと実感しました。では施設から出た子どもたちはど うなっているのですかと聞いても、ほとんどどこにも追跡調査またはフォローの研究な どは行われていないということを聞き、がくぜんとしたということがありました。  個々のケースを聞いてみると、何かあって高校を退学したという子どもたちが、施設 から出されるようなケースが今でもままある。そうでない施設ももちろんありますが、 そういうケースもある。住み込みで就職できた子どもたちは、何かあって転職や仕事を 辞めるということになったら、一度に住む所も収入も失って、本当に困る事態になると いうようなことがままあるとも聞きます。  では、児童福祉の枠を出た子どもたちはどうしているのだろうと聞いていくと、女の 子の間には例えば売春ネットワークとでもいうような、互助システムがあったり、男の 子の場合は30代になっても、引きこもり状態で生活保護を仲介してもらい暮らしてい るというケースもあるようです。自立の取っ掛かりをつかめないままでいるというよう なケースなどを目にして、社会的養護のシステムの目的は何なのだろうと考えてしまい ます。やはり、この社会で生まれた子どもたちをみんな自立した大人として巣立たせて あげたいというところをゴールとして据えていくべきではないか。そう理解すれば、こ の自立支援のところは、アフターケアどころか、フィニッシュとして大事なところでは ないのかと。そこができていないのではないかと。だから追跡調査だけではなくて、社 会的養護で育った子どもたちをフォローするシステムも必要なのではないか。例えば児 童相談所で、子どもたちのケア情報、例えば20代が終わるぐらいまでは、大まかに把 握できるような取り組みはできないかといったことも含めて、自立の援助を体系として つくっていく必要があるのではと思っています。  もちろん、一般青年施策に引き継ぐことが望ましいと私も思いますが、日本にはこの 一般青年の自立支援施策すら確立されてないという現実の上で、ハンディをさらに抱え がちな子どもたちをどう自立につなげていくかというのは、社会の責任としてやはり相 当力を入れる必要があるだろうと思います。 ○柏女委員長  ありがとうございます。では木ノ内委員、お願いします。 ○木ノ内委員  半分は質問でもあるのですけれども、施設を退所して、大体中卒だったり高校中退だ ったりしますけれども、非常に多いのです。中卒で退所する。そういった子どもたちが 自立援助ホームに来る。働いてみるとやはり勉強をしたい、高校に行きたい、あるいは 復学したいということで、大変苦労しながら夜間に通っている子どもたちがいます。こ の辺はいったん出てしまうと後戻りは利かないのだろうか。できれば施設を退所して働 き始めたら、やはり勉強をし直したいという子どもたちにチャンスを与えるべきではな いだろうか。そういうことからすると、今の後戻りができない、措置を解除してしまっ たら、その後もう支援ができない、本人が大変苦労するということがないような仕組み をぜひ考えていただければと思います。 ○柏女委員長  ありがとうございます。他にはいかがでしょうか。 ○大島委員  何度もすみません。児童相談所からも、生活場所が確保できれば高校中退しないで済 むケース、あるいは中退してしまったけれども、やはり高校に行きたいという子どもの 再チャレンジみたいなものをもう少し考えていけるような受け入れ方、あるいはそうい う子どもについては措置を実施してもらうような形態が取れるといいというのも、何人 かの意見では出ています。ただ両面性が出たときに中の指導・処遇の在り方のようなも のは、少し混乱するかもしれません。やはり貧困の連鎖を断ち切るということになると、 今の日本ではやはり高校を出たという証明のような学歴は少なくとも必要なのではない かというのもあります。よろしくお願いします。 ○柏女委員長  ありがとうございます。この部分はやはり対策として施策としても非常に手薄な部分 ですし、また全体的な体系化が図られていない部分ですので、たくさんのご意見をちょ うだいしました。一つ一つまとめることはしませんけれども、体系化するべきではない か、それから総合対策化をするべきではないかというご意見もありました。それから、 まず自立支援のための実態調査やフォローアップの調査をやるべきではないか。自立援 助ホームを格段に充実させていくべきではないか。それから社会的養護の他の関係施策 も十分活用するべきではないだろうか。里親を含めて多様な団体がそれを担っていく必 要があるのではないか。それから20歳までの措置延長は現行制度でもできる形になっ ているので、それをしっかりと運用していくべきではないかなど、さまざまなご意見を ちょうだいしました。本当にここの部分は全体的な体系化を抜本的に検討しなければい けない分野ではないかと、あらためて感じさせられました。またご意見があるかもしれ ませんが、もう一度全体を戻ってやる機会はつくりたいと思いますので、次にいってよ ろしいでしょうか。 ○藤井家庭福祉課長  二つだけ。 ○柏女委員長  お願いします。 ○藤井家庭福祉課長  すみません。事務局から二つだけ。一つは先ほど大塩委員からありました母子生活支 援施設の学習指導の話ですけれども、これはもうご案内のように児童相談所から措置さ れた子どもと、かなり生活補助の体系が違っていますので、なかなか横並びでというわ けにはいかない。難しいところがあると思います。そこは今、概算要求で出しているも の等とは、また別の側面から考えなければいけないところだと思いますので、今、概算 要求をそちらまで広げてということは難しいということをご理解いただければありがた いと思います。別の課題として。  それから、何人かの委員からご指摘がありました、私どもの昭和63年の通知です。 私もこれをあらためて見ています。確かにおっしゃっていただきましたように、就職後 おおむね6カ月程度とする。あるいは継続の場合は措置継続の協議を行うと書いてあり ます。ただ、これもこういう原則をあくまで原則として定めたものですので、おおむね 6カ月程度とするとありますけれども、協議をして継続していくような整理です。逆に その文章はやはり基本的に自立を目指して、そうしていただくところですから、これは いろいろな考え方や頭の整理があるかと思いますけれども、中卒の子どもで仕事を持っ ているにもかかわらず施設にいる。それはそういう必要性があれば、もちろんそれでよ ろしいわけですけれども、それで何ら6カ月ごとの継続協議もなしにずっとそのまま、 そこにいてもらっていいかというと、やはりそこは、今は6カ月としていますけれども、 継続的協議をしていく必要が私はあるのではないかとも思います。もちろんこれはご指 摘をいただきましたので、またこの通知の見直すところがあるかどうかも、あらためて 私どもも検討しますけれども、必ずしも6カ月になっているということ、あるいは継続 協議が必要になっているということが、即子どもたちにとって良くないことかというと、 そういうわけでもないのではと思いますので、その点だけ少し申し添えさせていただき たいと思います。 ○柏女委員長  ありがとうございます。いずれにしても、今までつくってきた一つ一つの自立支援の ための施策が幾つかばらばらに動いていますので、そこを全体が整合化するような全体 を見直してみるということは大事なことではないかと思います。既存の施策についても、 申し訳ありませんが事務局のというか、これは厚生労働省という形だと思いますけれど も、全体をもう少し見直していただければと思います。よろしくお願いします。  それでは次に移らせていただいて、これも大きな課題ですけれども「人材確保のため の仕組みの拡充」というところは(1)〜(3)までありますが、これについてご意見を賜れば と思います。どなたからでも結構です。では高田委員、お願いします。 ○高田委員  意見書に書かせていただきましたけれども、人材確保および研修は恐らく一番大変な 問題だと思います。施設機能そのものが、子どものニーズに沿わないというようなこと は言われているわけですが、研修会等で知識を得るということも大事だと思いますが、 やはり一番大事なのは職場の中での、いわゆるオンジョブトレーニングになると思って います。施設全体のことを考えますと、やはり基幹的な職員が1人、もしくは何人かい るだけで、施設の雰囲気そのものが変わって、それがケアの向上につながるのはよくあ る話ですので、そのための研修ができるようなシステムをどうやってつくるかというこ とを書かせていただきました。  実際にどうやるかは別としても、人事交流のようなものをどのようにできるかという ことがあると思います。特に公立の施設の場合は異動の期間が短くて、なかなか職員が 根付いていかないという問題があります。そこに民間の施設の人間が何年か、6〜7年入 っていくという形で、民間のノウハウをそこに注入すると同時に、施設機能の質が向上 する。かつ、そのようなシステムの中で何年かかけて育てられた人間に任用の資格を与 えることで、そうやって育った人間がいろいろな施設に配置されていくという仕組みが できるのではないかというのが私の考え方です。以上です。 ○柏女委員長  どうもありがとうございます。他にはいかがでしょうか。吉田委員、お願いします。 ○吉田委員  人材確保というより、もう少し広いかもしれません。きちんとした資料はないですけ れども、果たして今の児童養護を中心的とした児童福祉施設の施設職員の定着率はどう なのだろうかということです。大変対応が難しい子どもが増えて、年長の子どもが増え てというときに、そうした困難な状況の中から、とても仕事を続けられないということ で辞めていく人がいやしないだろうかと。  もう一つは給与と待遇面の問題です。これも民間企業や学校の先生、また公務員と比 較してどうなのだろうかと。家庭を持って自分の子どもを育てていける十分な給与と言 えるだろうか。ここのところが確保されないで、ではどうやって人材確保をするのだと。 研修以前の問題もあると思います。ですから、とかく善意に頼りがちな部分ではありま すけれども、そうした職員の生活をきちんと確保するだけの待遇面の見直しというのが 大前提だろうと思います。 ○柏女委員長  ありがとうございました。では大塩委員、お願いします。 ○大塩委員  すみません。母子生活支援施設ですけれども、どうもこの社会的養護の枠組みの中か らこぼれてしまいがちです。前回いただいた資料の55ページにも、児童福祉施設職員 の最低基準という比較が載せてありますが、その中から母子生活支援施設の職員は職名 が違うのでということもあると思いますけれども、最低基準も載せてありません。母子 生活支援の状況については別枠になってしまっています。母子生活支援施設は児童福祉 施設でありながら、職員の最低基準も載せていないというようなことがあります。先ほ ど藤井家庭福祉課長からありました措置基準が違うのはよくわかっていますけれども、 発言させていただきました。  それで先ほどからつながっていることですけれども、今、吉田委員がご発言されたこ とに私は本当に同感で、ここに最低基準で書いていないのですけれども、母子生活支援 施設も他の児童福祉施設もしかりで、本当に児童福祉施設で働いている職員は今の現場 の仕事に対して職員の配置の人数がかなり少ないと思います。それから、この最低基準 で配置されている職員に対しては身分的なものがある程度保障されたとしても、その他 加算で付けられた職員に対しては、生活が賄っていけるぐらいの給与やボーナスを払っ てはいけませんので、採用はなかなか難しいのが現状だと思います。また母子生活支援 施設は20世帯で、大体50〜60人の利用者の入所なのですけれども、最低基準でいきま すと7人の職員配置しかありません。その中で被虐待児個別対応職員とか特別生活指導 費加算とかの職員を入れても大体10人くらいの職員配置で、365日宿直をしながら仕 事を回しているという状況です。その中で、どうして自立支援を図っていくかっていう と、かなり職員のボランティアに担っているところが大きいと思っています。そういう ような状況は母子生活支援施設だけではないと思いますし、現に児童養護施設でもそう ですし、母子生活支援施設でも職員の定着率が悪いということは、これは本当に調査を かけなければいけないと思います。やはり職員の配置を手厚くしていく、職員の身分を 保障していくということは、人材確保の第一に大事なところではないかと思っています。 ○柏女委員長  ありがとうございます。では今田委員、お願いします。 ○今田委員  乳児院の立場から一言、現状というか、お願いというか、そういうお話をさせていた だきます。乳児院の最低基準の中に看護師の配置が明記されていて、ご承知のように昨 今の看護師不足というか、病院あるいは診療所と競合しつつ人材確保しなければいけな い。端的な例で申しますと、病院等からの福祉施設の看護師に対しての引き抜きが極め て頻繁にかつ繰り返し行われて、人材確保がますます難しくなっているということがあ ります。定着率あるいは研修うんぬんのずっと以前の根幹になる問題として、我々の施 設でもみんな困っているところです。乳幼児をお預かりする上では、看護師の力が絶対 的に必要だと思いますので、これは何だか特別な施策というか、そういうものが必要な 時期に来ているのではないだろうかと思っています。以上です。 ○柏女委員長  ありがとうございます。では藤野委員、お願いします。 ○藤野委員  そういう意味では、大塩委員が言われたことに尽きると私は思っているのです。とい うのは、先ほど、例えば乳児院の看護師不足の問題を言われましたけれども、実際にう ちも含めて養護施設で、今いわゆる臨時職員、日給・月給の臨時職員が2割から3割。 そういう形で同一労働同一賃金などは、どこかに吹っ飛んでしまって、そういう形でお 願いをしないと維持できないという状況です。何加算、何加算という形の加算できてい ますから、必然的にそうならざるを得ない。本採用ができない。ところがそういう状況 の中で人を確保しようと思っても、やはり本当にできません。そういう中で、例えば研 修が必要だと思います。研修は最近いっぱいできました。ところが出しようがないので す。現場は出ようがない。結局、本当に切り詰めてやる以外ないという状況になってい ますので、やはり基本的な、それこそ30年近く手を付けていない最低基準に手を付け ないでこれを何とかしようと思っても、私は無理だと思います。そういう意味で実際に 資格要件の問題にしろ、何にしろ、そこのところに手を付けないと、現場はもう施設崩 壊寸前の状況ではないかと思っていますので、よろしくお願いします。 ○柏女委員長  ありがとうございます。他にはいかがでしょうか。では松風委員、どうぞ。 ○松風委員  職員配置の基準の問題は非常に重要だと思います。それと同時に、各施設職員の子ど もたちへの対応の仕方については、非常に何というか、職人芸的なやり方が継承されて きていると。そのことが幅広く一般化がなかなかできにくい状況にあるということや、 個性に非常に影響されてうまくいく場合と、うまくいかない場合が出てくるし、職員間 でもそれを依存的になってみたり、または学ぼうとするけれども学べないといった、さ まざまな行き違いが生じている現状もあります。やはり施設職員の子どもへの対応の仕 方についての、標準化というと非常に抽象的であまり好きな言葉ではないのですけれど も、何がどういう面で必要なのか、どういうやり方をすることが集団として対応しやす いことなのか、また個別として対応しやすいことなのかといったようなことが、共通の ものとして共有される必要がある。そういう意味での資格や方法論の蓄積などといった ことをもっとしていかないと、職員同士がばらばらになっていってしまうというような 危惧を持っています。 ○柏女委員長  ありがとうございます。少し人材育成というか、質の話にも入ってきました。まず待 遇の問題や最低基準、配置基準の問題を何とかしなければいけない。ここはもう多くの 委員の方の共通理解ということになると思います。その上で何か、さらに現状をより良 くしていくための提言等がありましたら、お願いしたいと思います。 ○豊岡委員  東京都もたくさん児童養護施設等がありますけれども、職員の育成は非常に重要な課 題ですし、そもそも児童相談所の児童福祉司の育成という問題も、これは一方では大き くあります。児童相談所の問題はさておき、私が日々業務の中で実感をしているのは、 やはり児童養護施設の職員も私がいた時代と、少しずつ変わってきているという気がし ています。というのは、民間の施設の職員ですと年代もかなり若くなっていますし、若 い方が本当に数年で辞めていってしまう現状があるというのも聞いています。そういう 中で何が一番大事なのかといったときに、まずその人がどういうモチベーションを持っ てその仕事を目指してきたのかなと、まさに適性や資質という問題は一つあるだろうな と思っています。  あとは育て方の問題ですけれども、東京都ではある程度中核的な施設で、先ほど高田 委員が言われましたけれども、人材交流ができるようなシステムをつくって、そこで体 験をして、まさにこの職人芸的な技術あるいは専門的な養育スキルなどを身に付けてい ってはどうかという議論もあります。そうした意味で、養成・研修の仕方を考えていく 必要はあるのかなと思っています。  あともう一つは、施設長の資格は当然厳しいものが求められていいのではないかと私 個人的には思っています。以上です。 ○柏女委員長  ありがとうございます。その他にはいかがでしょうか。大塩委員と庄司委員。 ○大塩委員  人材育成の面での意見です。これは鳥取県で施行されていることなのですけれども、 中堅保育士のリカレントという制度があります。中堅保育士がもう一度大学に戻って先 生に付きながら、いろいろな事例を検討したり、勉強していくというシステムができて いるのです。これはかなり効果があるのですが、一方リカレントは1年間なのですけれ ども、現場からは1年間も職員を派遣できない、週1くらいで大学に通うのですが、そ れが現場からは人手が足りないので出せないということがあって、かろうじて細々と続 いている状況です。でも、現場に出てからもきちんと学んでいく。それも学ぶことを保 障していかなければ、学生のときに学んだことだけでは到底対応できませんのでそうい う制度を定着させていくことも大事なことだと思います。  それから先ほど松風委員がおっしゃった、職人芸とか職員の個性にたよっているとい うもの、それはそうだなと本当に思います。現場からはそうでないものを出していかな ければ、例えばデータに基づいたものとか、科学的な根拠とか、そういうものをきちん と出していって、それでこの方法でやっていくことが大事なのだということを出してい かなければいけないと思っています。どの施設でも行えるようなものを出していくとい うふうにしないと、個人の技に終わってしまうのではないかと、本当にそう思います。 ○柏女委員長  ありがとうございます。研修というか人材養成には、先ほど出ていたOJTとOFJT と自己啓発援助制度が私はあると思いますが、今の大塩委員のご意見は、自己啓発に対 して、金銭的な援助や時間的な援助をするという、この仕組みが不十分なのではないか ということだろうと思います。私も自己啓発で大学院に行きたいという人たちが結構い るので、その人たちを支援できるようなシステムがあるといいなと思います。そういう 意味では、自己啓発援助制度についてのシステムが欠けているかなという感じを持って 伺っていました。庄司委員、お願いします。 ○庄司委員  既に少し触れられたと思いますし、今日の西澤委員と山縣委員のところにも出ていま すが、養成システムそのものを見直す必要もあるのかなと。例えば、今は保育士が専門 学校・短大を20歳あるいは21歳くらいで出て、児童養護施設の職員になることもある わけです。本当にそういった形の養成でいいのか。あるいは施設ケアワーカーというよ うなことをもっと明確にしていくのかということを検討する必要があると思います。 ○柏女委員長  ありがとうございます。相澤委員、どうぞ。 ○相澤委員  社会的養護の充実を図っていく上において、一番ここが重要なポイントだろうと私も 思いますし、ある意味量的な問題と質的な問題ということで、量的な問題は最低基準と いうことになりますが、その量的・質的にあわせて、ここは総合的に検討していかなけ ればいけないところと私は思っています。そういう意味では、例えば施設長・施設職員 の要件の明確化ということが出ていますが、この辺できちんとした専門性が確保できる ような要件をどう出していくのか。そういうことを進めていって、子どものニーズにき ちんと応えていくことをきちんと考えていくと、いずれは任用資格からではなく国家資 格的なことも視野に入ってくるのではないかと思っています。  それからもう一つ、やはり養成・研修ということになりますけれども、例えば子ども の心の診療医の研修システムのようなものが検討会で出ましたけれども、やはりその達 成目標や研修課程を定めて、施設内研修とか都道府県レベルの研修、さらにはブロック レベル、国レベルの、そういうそれぞれが取り組むべきカリキュラム等を系統立てて編 集して、体系立てて人材養成・研修といったものを、この分野では考えていかないとい けないだろうと。そういう点で国立施設としては、その一翼を担っていかなければいけ ないと思っていますが、そういう意味での専門性の向上に向けた取り組みを緊急・早急 的に行っていくことが、必要なところではないかと思っています。 ○柏女委員長  ありがとうございました。吉田委員、どうぞ。 ○吉田委員  先ほど職員の方の待遇面の話をしましたが、これは単に待遇を良くしなさいというだ けではなくて、それだけの待遇に見合う資質を備えなければいけないのは当然のことだ と思います。その意味では、特に私は任用の要件の点とか研修の中身で、権利擁護の視 点をぜひ強調していただきたい。そういう高い評価を受ける仕事をするというときには、 それだけの高い倫理性が求められるわけで、そこを押さえるような要件等をなければ、 かえって社会的な反感を買うだけです。この後議論になると思いますが、大変注目を集 めているところです。これは両輪でやっていただきたい。 ○柏女委員長  ちょうど今、5番の話が出てきたので、そちらに移らせていただいてよろしいでしょ うか。「措置された子どもの権利擁護の強化とケアの質の確保のための方策」というとこ ろで、比較的4番とリンクするようなことがありますので、これについてのご意見に移 らせていただきますが、よろしいでしょうか。  それでは、5番についてのご意見をちょうだいできればと思います。高田委員、お願 いします。 ○高田委員  口火を切らせていただきます。職員による子どもへの権利侵害というのはもちろん大 変な問題ですが、実際施設の中では、子ども同士、子どもから職員に対する暴力が、か なり頻繁に行われています。このデータがあまり出ていないのはなぜかわからないので すが、中には性的な問題も行われているというのは、皆さんご存じのことだと思うので す。現状では加害の子を施設の中で何とかケアしていかなければならないという状況を よく耳にします。これは被害の子に我慢していただくということになるわけです。結局 は恐怖におびえながらも被害の子はそこにいて、加害の子も同じ施設の中で、顔を合わ せて生活をしていくということになります。こういう場合に施設の職員としては、一時 保護をしてほしいということを児童相談所にかなり頼むのですけれども、なかなかそれ が行われていないということをよく耳にします。私が言いたいのは権利擁護という場合、 弱者を守るために一時期でも加害の子をその場から引き離す必要がある場合が多いと思 うのですが、それが保障されていない。保障されていない中で、加害の子も被害の子も ケアしてくださいというのは、やはりかなり無理がありますし、職員側も非常なジレン マに陥っているというのが現状です。  今は先ほどの研修うんぬん以前に、被害を受けた人をいかに守るかということが徹底 されないと、権利擁護にならないというのが現状だと思うのですが、その辺で私として は一時保護機能をもう少し充実させていただきたいと強く思うところです。 ○柏女委員長  とても大事なご指摘だと思います。ありがとうございます。豊岡会員、お願いします。 ○豊岡委員  一時保護ということで言えば児童相談所の機能ということになると思いますけれども、 これは基本的に私、東京都の児童相談所の一児童相談所長として申し上げます。加害し た児童を一時保護するのは基本の考えだと私も思いますし、できるだけその対応でやり たいと思っています。ただ、もう少し待ってくださいとか、時間的に今すぐ保護できな いという状況が東京ではありますので、施設の方にご苦労をいただく場合もあります。 あとは個別ケースごとによって、一時保護をしていくということです。  もう一つには、この施設不調があれば、当然一時保護をしなければいけないという問 題も出てきますので、さまざまなケースがあります。従って、今ご指摘がありました保 護をしていくことを基本に児童相談所はやっていくべきだろうと私は思っています。  もう一つ、性的な問題があれば、当然一刻も早く保護をして離す必要があると思いま す。これは待ったなしだと思います。それは全く異論のないところです。 ○柏女委員長  ありがとうございます。関連してですか。 ○松風委員  はい、関連です。私も同感です。ただ加害児童というのは単発的な事象における加害 児童かどうかということ。その問題がどういうメカニズムの中で、どういう集団のダイ ナミクスの中で出現しているのか。それは職員との関係の中で、どのように出現してい るのかというところまで十分調査またはケース検討をされた上で、加害児童に対するケ アといった視点も含めて、一時保護および次の処遇を考えるべきであると。散見します のは、悪者を特定して排除するというふうになってはならないと。児童の施設ですので いろいろなことが起こりますし、支配・被支配の関係は非常に多く見えますし、またそ ういう中で性加害もあります。ただ、その一つ一つのことについて何か困り事があった ら排除するということではない。全体の問題性と、それぞれの子どもたちの今後のケア の在り方を深く検討すべきである。その上で判断する必要があるということで、児童相 談所と施設、施設を指導している行政も含めてトータルな問題の在り方、または方策に ついて検討すべきであると考えます。 ○柏女委員長  具体的な運用改善はとても大事なことなのですけれども、この委員会に求められる役 割は運用改善ではなくて、新しい施策をどう作っていくかということですので、できれ ば新規施策についてご意見をちょうだいできれば、とてもありがたいのですということ でよろしいでしょうか。もし何か、短く。 ○豊岡委員  追加ですが、結局加害した子どもも最初は被害者であって、そこが見抜けなかったと か、長い間施設で生活をしているうちに、そういう事実もあった結果での加害者という ことですが、やったことはやったこととして、きちんと対応していかなければいけない という現実があります。一時保護機能だけで問題が解決するとは思いませんので、施設 心理・児童相談所心理を含めて速やかに対応できるような体制が必要だと思います。そ ういった意味では、施設への心理職の配置や児童相談所の心理職の充実も私は必要だと 思っています。 ○柏女委員長  ありがとうございます。では藤野委員、お願いします。 ○藤野委員  私の文書の5ページのところに書きましたが、一つはやはり先ほどからあるように、 子ども同士の虐待、加害・被害の関係というのが非常に深刻だと思います。もちろん大 人から子どもへの、職員から子どもへのというのも、まさに破廉恥罪のようなものは論 外で、これはどうしようもないと思います。ただ被虐待児というのは巻き込みとか、い ろいろ加害・被害に巻き込まれるという問題がありますので、私は例えば里親の拡充を しても、アメリカなどではそうでしたが、里親さんの所での虐待みたいなことも非常に 心配されると思います。  そういう流れの中で、どういう対策が必要かということを考えたときに、私はここで 提案されている高齢者虐待防止法をモデルにしたこの案には賛成しかねるのです。とい うのは、そういう老人施設などの構造と子どもの構造と大きく違うところがあると思い ます。いつも同じことばかり言って申し訳ないのですけれども、特に職員配置の基準の 見直しを抜きにして、しかも都道府県主導による指導監督の強化という点では、私は現 場に非常に混乱を持ち込むことになると思うのです。そういう意味でいうと、子どもの 権利、基本法うんぬんと書いたり、国や都道府県単位で子どもの権利擁護制度、子ども のオンブズパーソン制度を設けるとか、もう一つは子どもの人権に視点を当てた指導監 査体制の強化などの形で対応すべきであって、法律で何とかするということであれば、 もっと大きな枠組みが必要だろうと思うのです。  それと、例えば先ほど一時保護の話がありましたが、例えば都市部の一時保護所では 60人の子どもがひしめいていると。長期にわたって一時保護所にいるという状況が実態 的にあるわけです。そこでの例えば子ども同士のそういう相互作用というか、むしろそ ういうものも私はきちんとチェックする必要があると思います。そういう意味からいう と、例えばこの間の施設内虐待の処理を見ても、都道府県によってはもう少し県が何と かすればいいのにということはたくさんあるわけで、そういう点ではむしろ第三者的な きちんとしたチェック機能を作るべきだと思います。そういう意味でいえば、老人の虐 待防止法をモデルにした、ここで提案をされているようなことは、かえって混乱を招く のではないかという危惧を持っています。 ○柏女委員長  今の関連でよろしいでしょうか。かなり根本的な問題が出てきていますが。では吉田 委員、お願いします。 ○吉田委員  私が提出させていただいた資料に沿って話をさせていただきます。まず現状というと ころなのですが、一言で言えば、施設の中での暴力の問題は先ほどから指摘があります ようにさまざまな形態がありますので、今やどこでも起きてもおかしくないという認識 を持つ必要があるのではないか。いろいろな話を聞いていると、あれは特殊な施設の話 だから自分のところは、ということになりかねない問題ですが、これからお話しするよ うな事情で、普遍的に起こり得る問題だということを最初に押さえておきたいと思いま す。  施設内暴力の原因として、ここにあるような職員の個人的な資質の問題もまず考えら れます。子どもの行動に対する無理解と、先ほど藤野委員がおっしゃった、巻き込まれ るというのはそれではないかと思います。配置不足ということで、子ども同士の権利侵 害に目が行き届きにくいというのも、こうした原因ではないかと思います。  建物の構造もあると思いますが、一番大きい理由は構造的なところだと思います。構 造的というのは子ども独自のという意味よりも、施設内での対応という中で、必然的に 起こり得るということで、高齢者も児童も障害者も同じだろうと思います。  というのは、まず職員と子どもとの力関係は圧倒的に違う。暴力的な威圧的な支配が なされかねないし、職員に依存せざるを得ないという立場に置かれている子どもが、ど れだけそれに対して反論できるだろうか。特にこれは施設内虐待の会の提供資料にあり ますが、新聞報道で出た記事は、ニュース性ということがあるかもしれませんが、やは り職員による事件が圧倒的に多い。中には施設長による権利侵害もある。こうしたとき に果たして、これは配置基準の問題だろうかということなのです。  2番目が密室的であるということで、なかなか外部に知れにくいというのはどこでも 同じだと思います。子どもが訴えにくい。訴えたら何があるかわからない。特に子ども 同士の関係では、施設職員の目の届かないところで権利侵害を受けますから、非常に怖 い思いをすると聞いています。  それから事後的救済が大変困難だと。損害賠償をしようにも時効の壁があったり、行 政不服審査の壁があったり、裁判の壁があったりということで、事後的な救済というの は、実際の今被害を受けている子どもにとっては何ら役に立たないわけです。  とすると、どのように考えたらいいかというと、これはむしろ個々の職員の資質の問 題や最低基準だけの問題にしてはいけないと思います。そういうとらえ方をしたときに、 そうではない職員の行動を委縮させていく恐れがあると思うし、それによって、また子 ども同士の暴力が増幅するという恐れがあります。  もう一つはこの問題を考えるときに、子どもに対してどう言い訳をするのかというこ とになりがちです。職員の数が足りないから子ども同士のいじめを我慢してとは言えな いだろうということです。現に被害を受けた子どもは、そこから何とかしてほしいし、 それを何とかしてほしいわけで、職員の数が足りないというのは子どもに対して言い訳 にならないと思います。そうした意味で、施設運営をどう透明化していくかということ で第三者評価の話が出ていますが、措置制度であってもやはり第三者評価は必要です。 逆に言えば措置制度であるからこそ、利用者の目が行き届かない分だけ、こうした第三 者評価によってきちんと中身を外部に公表するということが必要だと思います。同時に そうした透明化に伴って、自治体の責任も大変重たくなってくるだろうと。それを知り ながら措置した責任も問われるわけです。そうした点を指摘したのが、まさに最高裁の 暁学園事件だと思うのです。そういう意味で社会の厳しい目を意識して、どう対応する かということが必要だと思います。  この手の問題を考えるときに、よく臭いものにふたをすると言いますけれど。そうい う事件があると中にいる子どもが地域で言われたり、学校で言われたりして気の毒では ないか。そのように扱われているという偏見があるという理屈がありますけれども、だ からといってそうした権利侵害をずっと我慢させ続けていいという理屈にはなりません。 しかも今回新聞報道があった福岡育児院事件は、前に同じ問題が起きています。構造的 であるからこそ同じ施設で起きてしまった。その暴力事件を起こした施設職員を排除し ても起きてしまうというのは、やはり構造的な問題に他ならないわけです。そういうと ころで子どもに対しては、そうした事件があるのだけれども、自分たちはこうするのだ ということをきちんと説明しておく必要があるのではないかと思います。また子ども自 身、これも恩寵園事件で子どもたちが言っていますが、自分たちが育った実家みたいな ものなのです。これがなくなるのは忍びないのだと考えれば、施設を皆で良くしていこ う。子どもの参加のもとで良くしていこうという取り組みが必要なのではないかという ことなのです。  今まで厚生労働省から何回も施設内虐待についての通知が出て、これはまた出たかと いうくらい。でも全然守られていないというのは、この辺りの構造的なところに問題が あるのだということを、もう一度認識するべきだと思います。対応と書きましたが、ま ず施設の側はやるべきことをきちんとやらないといけないのではないか。最低基準を引 き上げるということと同時だと思いますが、より説得力を持ってそうした主張をするた めには、施設の自助努力がかなり求められるだろう。そういう意味では苦情処理の仕組 みや、子どもが苦情を言いやすい環境をつくる、第三者評価を実施するなどが必要にな ってくると思います。  自治体としては、これは従来以上に自治体は施設に対する監督強化が必要になるだろ うと。これも暁学園事件の判決がいっているように、一種準公務員になったわけで、そ ういう見方がされるわけですから、施設のフリーハンドというわけにはいかないだろう ということ。そういった点では改善勧告・改善命令ということが必要だと。これは藤野 委員と少し考え方が違うところです。  国としては、こうした施設内暴力をなくすために早急に措置を講じる必要があるだろ うと思います。こうした構造的な問題であることをきちんと分析した上で、監査基準を 見直したり、第三者評価の受審の促進や子どもからの苦情受け制度を整備するというこ とだし、根本的には子どもが安心して施設職員にまず語れるような、そういう養育を実 現できるような環境を整えるということもあいまって必要だと思います。  それから、これも藤野委員と意見は違うのですが、私は高齢者虐待防止法における内 部通報制度は、児童福祉の場面でもあってもいいのではないか。というのは、子ども同 士という特異性はありますが、先ほど話したような密室性という共通点はありますので、 そういうところから学ぶ必要があるのではないかと思います。最後に書き落としました が、もう一つ大事な施策としては、国レベルでの施設内暴力、施設内人権侵害に対する 検証の仕組みをつくるということが必要だろうと。これをつくることで今度はそれを自 治体レベルにさらに下ろしていくということで、虐待と同じようなシステムをこの場合 にもつくりたいと思います。長くなって申し訳ありません。 ○柏女委員長  どうもありがとうございます。内部通報だけをやるのではなくて、全体的な権利擁護 のシステムの中にそれも位置付けていくべきだというご意見だったと思います。藤野委 員、どうぞ。 ○藤野委員  施設内虐待の問題が、構造的にどこでも起こり得るという認識は、その通りだと思い ます。今の例えば被虐待児が養護施設で62%などという現状からしますと、やはりそう いうことがあって当然と言ったら叱られるかもしれませんが、どの施設でも起こり得る と。それを気付きというか、職員がそのことに気付く必要があるのです。また、子ども が職員にそういうことを訴えられるということが必要なのです。それは、やはり通告制 度ではできないのです。そういう点では、最低基準とは無関係だと言われたら、やはり そんなことはないと言わざるを得ません。実際にこれだけの子どもたちをこんな粗末な 人数で、従ってそこで質も落ちるのです。それを無関係であるというように言われると、 そうではないですよと。今、私がピンチだなと思っているのは、施設内虐待がこれだけ キャンペーンのようになって、そういう中で、今、例えば施設では職員配置がこれだけ 低いのだと、こういう状況なのだと言うのがためらわれるような、今ごろそんなことを 言っても国会でも通用しませんと言われて、それはやはりないだろうと思います。だか ら、そこのところは絶対に無関係ではないです。  それから私は通告制度みたいなことではなく、やはり施設の中でそういう力が醸成さ れなければならないのです。そのためにはさまざまな手だてが必要で、実際うちなどで もかなりそういうことに神経をとがらせてきたつもりなのですけれども、やはり子ども 同士のそういうものは出てくるのです。その場合に子どもに対して言い訳をするなどと いうことは一切しません。その辺の、現場の苦闘を理解してほしいと思います。 ○柏女委員長  庄司委員。 ○庄司委員  今の吉田委員と藤野委員のお二人の意見に賛成という感じで、やはり施設の環境を変 えなければならないということは、これを強く言っていかなければいけないと思います。 ただ、構造的な問題があるということももちろん確かなことです。もう1点、別の問題 としては、ここは施設が中心、特に児童養護施設が中心になってきますが、里親の下に いる子どもの権利擁護というのも少し見落とされているのではないかと思います。問題 の提起だけです。 ○柏女委員長  ありがとうございます。では松風委員、どうぞ。 ○松風委員  検証の必要性について非常に強く感じています。その結果、施設が悪いとか施設のや り方が悪いといったような結論に達しないような、何がその背景としてあり、もちろん その施設の中での施設長の在り方、それから職員の構成やそのダイナミズムといったこ とが十分に検証されるというものがあれば、入り口が施設内虐待であったとしても、そ の改善に向けた対策が検討されるのだろうと思います。  それはそれとして、私の方の地域でいわゆる施設内虐待という大きな事件にはなりま せんけれども、その前の段階で把握して改善に向けた事例が幾つかあります。その取っ 掛かりになったのは、子どもから自分を担当するケースワーカーへの訴えでした。それ は訴えという形を取らなくても、日常的な生活を聞く中で、こういうことがあるという 話から出発して調査を重ねたことから、どういう不適切な状況があるのかといったとこ ろで問題の発掘をしていったということがあります。それから幾つかの事例は、職員か らの通報です。これは、やはり幾つかあります。通報が必ずしも正しいか正しくないか というのは、調査しないとわかりませんが、それを無視することはできません。ですか ら、やはり子どもたちからの状況把握というか、子どもの言葉から知るということと、 それから職員からの通報というのは非常に大きな入り口だと考えています。  幾つかの事例の中で改善に向けていろいろな努力をしていく中で感じているのは、子 どもたちや職員から状況を聞く、調査するのは、一つは児童相談所のケースワーカーで す。その対象となる子どもたちだけではなく、できれば全員から聴取するといったこと をしています。もう一つ、ある施設で改善委員会をつくられまして、その中で非常にい い方針として見られたのは、第三者委員の方がすべての子どもとすべての職員から聞き 取りをされました。それは突然の第三者委員ではなくて、何回か施設に顔を出している 方で、職員も子どもも「あのおじさんなら」や「あのおばさんなら」などというような、 知っている人に対してなら言えるという。ですから、突然誰かが入っていってというの ではなく、やはりケースワーカーなり継続的にその施設に出入りしている第三者委員な りといったことが、把握につながりやすいのだと実感しています。  それから、調査分析にしろ、その検証も含めて、それは自治体の責任として非常に必 要であると思っています。それで幾つかの対応をしましたけれども、施設の方も積極的 に改善委員会をつくったりして対応していただきました。しかしながら、行き詰まった のはどういうことかというと、具体的な方策について誰も成功例を持っていないという ことなのです。これから成功例をつくっていかなければならないということで、幾つか の改善委員会の中では工夫しました。一つは、施設の中の情報というか、要するに職員 間ダイナミズムまたは子どもたちの情報を職員の中でどう共有するかということの民主 化を図る。民主かというか、要するに言いやすい環境をつくり、それに対して対応でき るような信頼関係をつくっていくということ、これは一遍にできませんので、かなりの 時間をかけてされるということ。そのために、他から協力者を得てその会議の中に入っ てもらうといったこともされました。いろいろなことを工夫されているけれども、そう いう解決に向けた手法や解決策というのはこれから積み上げていかないといけないと思 います。そういう意味では、検証も、それから改善策についても、もっと共有化してい く必要があるのではないだろうかと思っています。以上です。 ○柏女委員長  では高田委員、お願いします。 ○高田委員  今、伺っていて、現場にいた人間から少し言わせていただきますと、現状は火急に何 とかしてほしいという状態にあるということです。いろいろ検証しているよりも、今日 明日何とかしてほしい。子どもが訴えていないわけではなくて、子どもが訴えても職員 は何もしてくれそうにない、私の待遇を改善してくれそうにもないとあきらめていると いうことは多く耳にすることです。今までの議論は、施設の中で施設を変えましょうと いうような発想ですよね。そうではなくて、施設をサポートする機能をどうやってつく り上げるかということの方に目を向けていただかないと、施設職員が幾ら研修や監査を 厳しくされてもつらくなる一方です。非常に矛盾を抱えています。職員もこれでいいと は誰も思っていない、思ってはいないのだけどどうしていいかわからないし、施設単位 で何とかしてくれと言われているし、挙句の果てにあなたの力量を上げろと言われるの はなかなかつらいものがあります。やはり施設そのものをサポートする。一時保護の話 は一例としてお話ししただけで、何か他にやり方があれば、幾つかの施設の中で、お互 いに助け合うようなシステムをつくるなどということが、もしかしたら考えられるのか もしれない。ただ、もう既に一つの施設の中だけで何とかしましょうというような現状 ではないということは、お話ししておきたいと思います。 ○柏女委員長  では吉田委員の次に、豊岡委員、藤井委員、藤野委員ということで、すみませんが時 間もかなりおしているので、少し手短にお願いします。 ○吉田委員  では、短めに。私は、別段施設に対する監督指導を強化するだけというつもりは毛頭 ありません。当然現在の人員配置が十分だとも思っていませんし、施設の居住等条件、 これも早急に解決するべきだと思っています。けれども、それが改善できればなくなる のかというと、そうではないでしょうと。それと両輪というか、それも目指すべきだし、 でもそれと同時に、やはり今できることがあるのではないかというところで申しました ので、誤解があるといけませんので、少しその点だけ。  まず考え方だと思うのです。西澤委員か山縣委員が書いてあったと思いましたが、要 するに施設に対する見方、性善説、性悪説というのでしょうか、あり得るものだと見て いくのか、本来あってはならないと見ていくのか。当然これは施設の中の努力で、そう 目指されてきたし、そうあってほしいし、そういう方向に持っていきたい。でも、そう でない場面というのはやはり出てきてしまうのです。そこのところをどう対応したらよ ろしいかという提案として出させていただいたということです。 ○柏女委員長  ありがとうございます。では豊岡委員、よろしくお願いします。 ○豊岡委員  私はこの問題について考えますのは、せっかく社会的養護の在り方を検討して、子ど もたちの権利をどう守っていくかということですから、子どもを育てていく、社会的に ある意味任されて、お願いされて、子どもを育てるということですから、当然そこには 私たちに責任が生じると思うのです。従って、苦情解決への第三者委員・機関の設置や 子どもの権利擁護等を含めて、問題が起こったらどう対応するのかをここで決めておく というのは当然のことだと私は思います。従って、高齢者虐待防止法がいいのかどうか は別としても、施設内を含めて、これはもう私たちがやるべきものであると。この会で はなく国としてこうやるのだというのは、当然のことだと私は思います。 ○柏女委員長  ありがとうございます。藤井委員、どうぞ。 ○藤井委員  今までの話とそれから今回まで出されている検討の方策という一連の項目があって、 私の個人的な感想なのですけれども、例えば、児童養護施設で今、生活している被害を 受けた1人の子どもが、これを聞いて納得できるかなという判断が必要なのかと思うの です。うちの施設でも虐待や加害をいかにゼロにするかというのは、本当に重要な課題 だと思って取り組んでいます。具体的な改善策と言いますが、待ったなしの状態で非常 に危機感を持って臨んでいるという状況です。  私の施設では、表現はともかく毎月20日はチェックの日というのを設けています。 これは小さい子どもから大きい子どもまで全員、職員が子どもから聞き取り調査を行う という形を取っています。それは、いわゆる調査ということでなくて、この日はあなた の意見をしっかりと受け止めて話を聞く日ですという形にしているわけです。ただ、チ ェック項目が「暴力や虐待を受けていませんか」や「要望はありますか」や「好きな職 員は誰ですか」など、いろいろと必要な項目を揃えているわけです。具体的にそれを聞 き取りながら、問題は現場にいる職員が、それを気付くのかどうかということにかかっ ていると思うのです。話された中身を聞いても聞き逃してしまえば、それはずっと放っ ておかれる状態になるのです。そこの状況をいかに改善していくかということでしか、 この問題は対処できないというふうに実際やりながら思っているところです。その意味 で、最低基準の問題などもありますけれど、とにかく子どもの安全を確保する、これを 最優先にしたときに、何をしなければいけないかというところです。そこで、具体的に 人員配置が必要なのだと持っていかないと、権利擁護を守るというシステムはつくれな いと感じました。 ○柏女委員長  ありがとうございました。では、藤野委員。 ○藤野委員  まさに、高田委員が言われたように、施設現場は待ったなしの状況だと思います。実 際にどれだけの施設が本当に預かっている子どもの人権をきちんと擁護できているのか と言えば、かなりいろいろなところで人権侵害は起こっています。それとの日々の戦い だと思いますけれども、ただ、本当に待ったなしだと思います。そういう意味では、こ こに出されている老人の虐待防止法に倣った提案に私は反対ですが、早急にシステムを つくる必要があると。そのシステムは、やはり第三者あるいは当事者を入れたり、そう いう意味での行政も含めて、チェックできるようなシステムを早急につくる必要がある ということだと思うのです。そういう意味での提案をしています。それともう一つは最 後に、私が6〜7ページに書いてありますけれども、早急に手を付けなければならない 過渡的な方策というものも必要だろうと思いますので、ひとつよろしくお願いしたいと 思います。以上です。 ○柏女委員長  まだまだご意見があるのではないかと思います。では、意見をどうぞ。 ○藤井家庭福祉課長  それぞれに非常に貴重なご意見ということで拝聴しているのですが、柏女委員長から もありましたように、具体的に先ほどから何人かの委員がおっしゃっていますように、 まさに切羽詰まった問題なのだと思うのですけども、ここでは、では具体的にどうすれ ばいいのかというのを議論いただきたいと思っています。いろいろと運用面あるいは処 遇面、ケアの方法論の面でのお話もいろいろとありましたので、それはもちろんまだ恐 らく別途で何がしかお渡しできるものを整理していただけなければいけないとして、制 度論として法制度としてどうしていけばいいのかというところで、まさに何回か話題に なっている高齢者虐待防止法を参考にしたのをそちらに幾つか並べてあります。藤野委 員からは、これは反対だとご意見いただいているわけなのですけども、そこはこの検討 会として、きちんと議論いただきたいところであります。正直私も、例えばこういう子 ども本人の届け出などやあるいは職員等による通報義務と書いてあるわけですが、こう いうことを法制度として入れると施設の中が混乱するというご意見ですが。 ○藤野委員  その受け皿をつくる必要があるということです。 ○藤井家庭福祉課長  それは、なぜ施設の中が混乱するのか、個人的にはよくわからないところも正直あり ますので、そこはよく議論いただきたいと思うのです。正直これはある意味では、これ を入れてしかるべきなのかそうでないのか、この検討会としても白黒付けていただかな いと我々も困ってしまうので、それの具体的なご意見をいただければありがたいと思い ます。 ○柏女委員長  今私が言おうとしたことも、まさにそこです。今回の専門委員会では、現場の実務を 担っている方が入っていらっしゃるわけです。そういう意味で前回もそうでしたけれど も、運用を改善し強化していくというところでできる部分が、かなり意見が出ていて、 まずそれをやるべきではないだろうかという意見は出ているのですが、それと同時に現 状の運用の改善あるいは充実によっても、なおかつ欠けている部分がある。あるいはそ れを新しい制度を導入することによって、運用全体がより向上する。そのための仕組み をどう補充的に用意したらいいか、ここが恐らくこの委員会で一番大事な検討になるの だろうと思うのです。  そういう意味で、松風委員が先ほど入り口としての内部通報制度は、非常に大事だと いう意見もおっしゃいました。その内部通報制度を導入することが、全体の権利擁護に 運用面の改善も含めてより資するのであれば、それは導入した方がいいだろうと。しか し、藤野委員の言うように、もしこれを導入することによって、全体が混乱するという ことであれば、それは導入しない方がいいのだろうということを含めて議論すべきだろ うと思うのです。それについて、議論するためには少し提案なのですが、今日実はそれ をやるには時間的にはかなり難しいだろうと。  もう一つは、現状の運用の改善は、全部絵にしていったときに何が欠けているのか、 あるいは内部通報制度などを導入することによって、現場のシステムの何がより活性化 されるのか。事務局の方にもご迷惑をおかけすることになると思うのですが、次回それ をしっかり議論するための材料をご用意いただけないだろうかと思います。今、部分だ けを議論したり、全体の運用の改善という議論になってしまっているので、ちょっと全 体の図柄を出していただいた上で議論したいと思うので、その方が建設的な意見が出る のではないかと思うので、ちょっと提案させていただきたいのですが、いかがでしょう か。委員の方々のご意見を。今は両論あるということは理解した上で、内部通報制度は 駄目だという意見にも傾いていないし、内部通報制度を完全に導入すべきだという方に も傾いていないというか、合意が取れていないと思うので、次回にそうした資料を出し ていただいた上で議論したいと思うのですが、よろしいでしょうか。 ○吉田委員  資料の点で、例えば高齢者虐待防止法の運用状況など。 ○柏女委員長  そうですね。そうしたものもぜひ。今回新聞にも、立入調査が随分出たというような ものもありましたけれども、そうした全体の動向をいただいた上で。それから今の児童 養護界でそうした権利侵害が多数起こってしまって、内部の委員ですら待ったなしだと おっしゃっているこの実情をぜひ出していただいた上で。それから第三者委員というの が今あるけれど、どういう活用状況になっているのか。あるいは子どもたちは、苦情解 決部会に意見を言えることになっているわけですけれども、そこに本当に言っているの かどうか、あるいは子どもたちがそれを知っているのかどうかなど、知り得る範囲のと ころで、その辺も含めて内部の今あるシステムをどう活性化させていったらいいのか。 活性化させるためにその一つの手段として、この内部通報制度というのがどう生きるの か。あるいはその制度を導入することによって、どんな混乱が起こるのか。それらを少 し整理したいと思いますので、次回それを出していただけるとありがたいのです。申し 訳ありませんが。よろしいですか。 ○藤井家庭福祉課長  了解しました。 ○豊岡委員  児童虐待防止法ということで言えば、日々、子どもたちのいわゆる虐待と向き合って いる者として、内部通報がどうこうという議論でいいのか私はわからないのです。当然 社会的な責任を持っている児童養護施設の職員は、児童虐待を発見しやすい立場にある から通告しなさいというのは、児童福祉法でもあり虐待防止法でもあるわけです。そこ で内部通報がどうのこうのと言っている状況なのでしょうか。 ○柏女委員長  ですから、そういうことがあるにもかかわらず、それは現在の法制度があってそれを 運用していけばいいわけですが、その運用がうまく行っていないわけです。うまく行っ てなければそれを補強するための新たな制度が必要なのかどうか。あるいはもう今まで の運用を強化するだけでは、本当に無理な場合は内部通報制度を導入すると。補強的に それをすることによって、児童虐待防止法によって早期発見の通告義務が課せられてい る児童養護施設の職員の通報義務をより活性化させることができるとすれば、それは導 入すべきではないかということになるのではないかと思います。そういう議論をしてい くために。 ○豊岡委員  それはよろしいのですけれども、施設が混乱するのでやめましょうというのは、私は 議論にはならないと思います。 ○柏女委員長  個人的にはそう思いますし、豊岡委員もそう思うのはおっしゃる通りだと私は個人的 にはそう思いますが、全体の意見としてどうなっているかというと藤野委員のようなご 意見をお持ちの方もいらっしゃるので、そこについては次回しっかり議論しましょうと いうことだと思うのです。  お願いします。 ○松風委員  内部通報の問題が象徴的に、今、議論されているだけで、全体のシステムについて提 案していただくということなのだろうと理解しています。それから私は自治体ですけれ ども、自治体によっても温度差がありますし、施設間の温度差もありますので、それを 日本全体としてどう底上げしていくのかという視点で、法制度なりシステムをつくって いくということが必要なのだろうと思います。 ○柏女委員長  ありがとうございます。どうぞ榊原委員、お願いします。 ○榊原委員  一言だけ。この場の議論としては、児童福祉の今の状況が配置基準一つ取っても薄過 ぎる、手厚くしていく必要があるだろうというところにはコンセンサスがあると思いま す。ただ、施設の配置基準を手厚くするとは、つまり公的な投資、世の中からもっと財 政的支援をとりつけることを意味するわけです。社会からもっと財政的支援を取り付け るべきであると考えるのであれば、当然今の児童福祉施設、システムの近代化というも のは避けられないと考える必要があります。児童の権利侵害の問題や内部通報をどうす るのかというさまざまな課題があり、構造的な問題があるというご指摘も出ていますが、 もし社会から、もっと子どもの福祉のために投資を下さいと求めていくのなら、同時に、 では児童福祉施設や児童福祉システムの近代化をどう図るかも提示する必要があると思 います。その際に当然説明責任や情報公開ということは当たり前のように入ってきます し、前回「日向ぼっこ」の方が繰り返しおっしゃっていた、施設長の方の資質、要件の 問題といったところなど、世間から理解を得るためにどういうシステムに脱皮させてい くのかという視点も必要です。その中に内部通報、是か否かというのも置いて議論して いく必要があるだろうと思います。 ○柏女委員長  ありがとうございます。今の榊原委員のご発言に一つ付加させていただくならば、私 はこうした委員会が議論すると同時に、業界そのものがもっと議論すべきだと。例えば、 児童の分野だけ倫理綱領がない。母子生活支援施設がつくり、そして保育所がつくって いるのに、児童養護施設や乳児院その他、社会的養護の分野だけ倫理綱領を持っていな い、施設職員の倫理綱領を持っていない。そういう現実も含めて、業界内部でも議論し ていただきたい。これは検討会でも申し上げたことですけれども、そうしたこともぜひ 考えていただければと思っています。  それでは時間がありませんので、6番の方に移っていきたいと思います。「社会的養護 体制の計画的な整備」の問題に入っていきたいと思います。これについては、いかがで しょうか。藤井委員、お願いします。 ○藤井委員  この問題は「社会的養護体制の計画的な整備」ということで、市町村や児童相談所、 国や県というトータルなところで見たときに、どのように個別のニーズや相談に応じて いくかという、その基本的な入り口の部分の問題なのかなと考えています。現実の問題 として、市町村の方の相談体制がまだ十分でないという現状があると思うのです。  全国の児童家庭支援センターで、今70カ所ですが実態調査を行っています。児童相 談所との関係あるいは地域の相談体制の在り方、市町村そのものがきちんとした相談体 制を整えているのかという実態です。まだまとめるには時間がないのでまとまったもの を提示することはできないのですが、現実問題として今は市町村そのものがまだその整 備ができていないという状態だと思うのです。児童家庭支援センターは今回、この会議 への意見書という形で、提案させていただきました。特にセンターは数が少ないもので すから、非常に社会的養護体制の枠の中に入りにくいという現状があるというのは重々 承知の上で、それでもなおこの児童家庭支援センターをもう少し活用いただければと思 うのです。時間もないので、4点ほどまとめて言わせていただきます。  一つは児童家庭支援センターの増設を推進していただきたいとお願いしたいと思うの です。これは次世代支援対策推進法の行動計画の中に盛り込んでいただけるような、そ こまでの指導をいただければいいのかなと思います。各市町村に設置していただくよう な方向性、非常に大胆かもしれませんけれども。  それから、里親支援機関としての役割を児童家庭支援センター設置運営要領に加えて くださいという提案です。里親を支援する機関について、前回も検討課題がありました ので、児童家庭支援センターがその役割を担うことが十分可能だと思っています。既に 徳島県の児童家庭支援センターでは、徳島県からの委託で里親委託支援事業というのに 取り組んでいるのです。その成果を上げているという現状もありますので、これは全国 のセンターでも取り組むべき大きい問題だろうと思っています。  それから、民間型の児童相談所としての児童家庭支援センターの位置付けをしてくだ さいということで、市町村の相談体制以上に児童家庭支援センターそのものの機能とい うのが、児童相談所に近い体制が既に整備されている状況です。専門的な支援をしっか りとしていくために、相談員は全員社会福祉士の資格を取って、外から来てもしっかり とした対応ができるようにしていくというセンター協議会内部の合意もあります。この センター自体が設置されていない市町村がほとんどなのですけれども、単独の市町村で なく児童家庭支援センターそのものは、隣接も含めて広域の市町村を扱うことができる センターなのです。ですから児童相談所との連携を十分にしていくことで、相当な市町 村の相談体制をカバーできるセンターなのだろうと思っています。  あとは、市町村や児童相談所の相談体制を強化するための児童家庭支援センター活用 を推進していただければと思っています。それぞれの専門性や分野、すみ分け等はある と思うのですが、どうも市町村と児童相談所も仲が悪いという現状もあるようですし、 なかなか市町村の体制が整わない場合、児童相談所がその窓口になって、結局市町村が 相談できない、受け付けられない分、児童相談所が動くという悪循環があると思うので す。そういったことも踏まえて、児童家庭支援センターを有効に活用することで全体の バランスが取れるのではないかと思っています。よろしくお願いします。 ○柏女委員長  ありがとうございました。貴重なご意見をいただきました。他にはいかがでしょうか。 どうぞ、お願いします。 ○庄司委員  この社会的養護の整備の中に、一時保護所を含めなくていいのかということが気にな ります。 ○柏女委員長  これは自立援助ホームも含めて、それら全体を含めての量だと思います。私どもの検 討会では、社会的養護では児童養護施設や乳児院など、そこの国で整備すべきことにつ いて提案はしましたけれども、それ以外の例えば自立援助ホームも含めた社会的養護全 体の社会的支援の整備ということでとらえていいのではないかと思います。それを県に 立てていただく。そのための国の指針をつくるということで考えていいのではないかと 思います。厚生労働省の方でも、そのようにお考えですか。よろしいですか。では、そ ういうことでお願いします。 ○松風委員  県としては、どのような受容見込みを立てるのかということが非常に頭の痛い問題で す。それはそれとして、どういう子どもたちの範囲を含めるのかということも非常に議 論が必要だと思っています。その中の一つに知的障害の子どもたち、現実に児童養護施 設に療育手帳を持っている子どもたちが10〜20%在籍しています。その地域の養護学級 や養護学校に通っている子どもたちがいて、その子どもたちの自立支援を今後どうして いくのかということは児童養護施設の課題でもあります。  もう一方、知的障害児施設に同様の子どもたちがたくさん在籍しています。重度な子 どもたちも在籍していますが、社会自立を目指している子どもたちもいて、その中に支 援法で対応する子どもたちだけではなく、措置で対応しなければならない子どもたちも たくさん含まれています。知的障害児施設の先生方から、自分たちは児童福祉法内の施 設であり、かつ社会的養護の一端を担っていると自負していると。この現状に対して二 つの法律の狭間で、今後自分たちはどのようにしていくべきなのかということを非常に 訴えられていて、今回のこの委員会で結論は出ないかもしれませんけれども、一つの現 状の問題提起としてお聞きいただければと思います。 ○柏女委員長  ありがとうございました。私もこの点は、今後計画を整備していく段階に当たって、 国としてのガイドラインの指針をつくっていくときにしっかりと議論しなければいけな い課題になるだろうと思いながら伺っていました。ありがとうございます。吉田委員、 どうぞ。 ○吉田委員  これは既に検討委員会で出されているところなのですが、やはり大事だと思いますの で繰り返します。一つは、自治体間格差の問題です。特に近年の動きからすると、各自 治体での要保護児童対策についての温度差が随分大きいということが控訴検討会でも明 らかになりましたので、これはぜひ国の法で指針をつくっていただきたいということ。  もう一つは将来予測を見るときに、やはり質の問題も見ていただきたいということで、 これも中間とりまとめにありますように、将来の小規模化や子どもの生活の質も加味し た将来予測ということで、とかく何人は入れるようになったという量の問題だけに議論 がいきがちですので、そこをもう一度押さえておきたいと思います。 ○柏女委員長  ありがとうございました。藤野委員、どうぞ。 ○藤野委員  まず誤解を解きたいのですが、私は先ほども言いましたけれども、通告に反対してい るということではないわけで、通告も必要ですし、いろいろな一刻の猶予もならないも のが必要だということなのですが、ただそれを受けたところがきちんと指導し、助言し、 解決できる能力を持ったところでないと駄目だと言っているのです。それを例えば都道 府県の主管課にそういう能力があるかという、その辺のところを明らかにしてほしいと。 むしろそうではなくて、新たに専門性を持った第三者機関をつくるべきだというのが趣 旨ですので、誤解のないようにお願いします。  もう一つは、私の文書の2ページに一時保護アセスメントの体制強化が必要と書いて いますけれども、特に一時保護機能というのは待ったなしで対応しているわけですから、 今現実に乳児院や児童養護施設に直に子どもがどんどん来ています。それは便宜的に来 ているのではなくて、もし本格的に来るのであればきちんとした体制をとる必要がある ということが一つです。  それからアセスメントの機能に関しては、入所の当座に当たってのアセスメントは重 要だと思います。これは前回も出ていましたように、感染症の問題であるとか、特に先 ほどもありましたように20%くらい知的障害の子どもたちが来ていますから、それは重 要だと思います。ただ、それともう一つ、入所後のアセスメントの機能というのも非常 に重要なのです。例えば、児童養護施設にしろ、乳児院にしろ、自立支援計画等に基づ いて常に見直しをして、そのようなアセスメント機能の強化が必要だと思います。  もう一つは、児童養護施設の当面の課題ということに関して言えば、やはり70%が大 舎制の施設であって、預かっている3万人の子どもたちのケアを改善していくという意 味では、例えば冒頭に私が言いましたように、施設の小規模化にしても、複数の小規模 ケアを認めていくとか、そういう対応がないといけないと思っていますのでよろしくお 願いします。それから、文書にも書きましたけれども、70%が大舎制だと言いましたけ れども、入所している子どもの数からいうと90%くらいはそこで生活しているわけで、 それこそそれを放置するわけにはいかないだろうと思います。 ○柏女委員長  量だけではなく質の指針も入れてほしいということです。  今田委員、お願いします。時間がかなり過ぎていて、ご予定のある方もいらっしゃい ますので手短にお願いします。 ○今田委員  乳児院特有の問題かもしれませんけれども、旧虚弱児施設が養護に組み入れられて、 その結果として病児というか、乳児院でお預かりしている本来は障害児施設に行った方 がより高いケアを受けられるという子どもも行けないのです。どうしても5〜6歳まで 乳児院でお預かりしなければいけないという構造的な問題があります。従って、障害児 施設等との綿密な流れというか、その子どもにとってベストのケアができるような仕組 みを構築していただく上では、どうしても整備していかなければいけないことだろうと 日常から感じています。 ○柏女委員長  これもとても大切なご指摘をいただきました。お願いします。 ○相澤委員  社会的養護体制の計画的整備というのはとても必要だと思いますし、非常に声が小さ い分野ですので、きちんとした計画を立てて進めていくことはとても大切だと思います。 先ほどハード面ということ以外に、ソフト面でも質的な担保が必要だとのご意見があり ましたが私も思います。そういうハード的なものの計画的な体制を整えると同時に、例 えば具体的に里親に委託をするときに養育計画を作らなければならないけれども、実際 は100%そういう計画は立てられないで委託をしている実態がある。数年前の調査結果 に出ていますし自治体間格差などがあると思いますが、そういうソフト面に対してもき ちんと計画的に仕事をやっていただくという意味で、社会的養護の質的担保を取ってい く計画づくりも必要になってくるのではないかと思います。 ○柏女委員長  ありがとうございました。大塩委員、お願いします。 ○大塩委員  母子生活支援施設の立場からなのですが、この社会的養護体制の計画的な整備の中で 母子生活支援施設ほど自治体間格差の激しい施設はありません。公立の施設が3分の2 ありますが、その公立の施設は老朽化し風呂もトイレも共同というような施設が多く、 施設が古くて利用者がないから切り捨てられていくという現状があります。また指定管 理者制度が導入されたが故に、最低ラインのケアの質の担保もされないままに指定管理 者制度の中で民間に委託されていくという実情があり、本当に今、母子生活支援施設は 死活問題です。どの都道府県にあってもこれだけ母子家庭の方が増えているのに、どこ の都道府県で生活をしていても母子生活支援施設が利用できるという仕組みでなければ ならないと思います。そしてどの母子生活支援施設に入所しても同じケアが受けられる ということを保障しなければいけないと思います。その辺も漏れがちなのですけれども、 ぜひ母子生活支援施設も入れていただきたいと思っています。 ○柏女委員長  ありがとうございます。今、都道府県あるいは国が策定する指針や盛り込む内容につ いてのご意見をたくさんいただいて、とても大切なことだと思いますが、指針そのもの を策定する、計画的な整備を行う仕組みを作るということ自体についての反対は特にな いということで理解してよろしいでしょうか。わかりました。ありがとうございます。  そうしますと今、3〜6まで議論を進めてきました。今、意見の相違があったところで 言えば、施設内虐待への対応で内部通報制度をどうするかということについて若干意見 の相違がありました。ただ、藤野委員の後のご意見で、その制度そのものについて反対 をしているわけではなく、その運用の在り方が問題なのだというご意見もいただいたの で、基本的に大きな差はない、これはやるべきではないという意見は無かったように思 います。ですので、これを踏まえてもう一度全体をやらなければならなかったので、そ の時間が全くなくなってしまいました。従って、事務局にもお願いしたいのですが、次 回はいただいたご意見を基に、少しペーパーを用意していただくのは5番のところでし ょうか。もう一度全体をなでる時間を少し取らせていただけるようにご配慮いただきた いと思います。当初の予定ですと次回に取りまとめ案をご提示いただいて、それをすぐ に議論するということでしたけれども、全体をなでる時間を少し取らせていただきたい と思うのですが、ご配慮いただいてもよろしいでしょうか。 ○藤井家庭福祉課長  では段取り等を考えて、委員長にご相談させていただきます。 ○柏女委員長  わかりました。では、その時間は必ず取るということで、その持っていき方について は私と事務局で打ち合わせをさせていただいてよろしいでしょうか。ありがとうござい ます。  今日は20分も過ぎてしまって、私の進行のつたなさを痛感していますけれども、今 日はこの辺で議事を終了させていただきたいと思います。次回については全体を一当た り議論する時間を必ず入れるということで、あとは場合によっては取りまとめ案も提示 していただくかどうか、そこを含めて事務局と私とで打ち合わせをさせていただきたい と思います。  では、今日はこれで終わりにしたいと思いますので、次回の予定について事務局から 連絡をお願いします。 ○藤井家庭福祉課長  次回は、既にご連絡を差し上げているかと思いますが、10月23日(火)16:00〜18:00 厚生労働省の専用第21会議室(17階)で行いますので、よろしくお願いします。 ○柏女委員長  それでは、他にはよろしいでしょうか。委員の方々から、全体の進行も含めて、何か ご意見はありますか。それでは今日はこれで終了します。各委員におかれましては、大 変お忙しい中お集まりいただき、ありがとうございました。 (照会先) 厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課措置費係 連絡先 03−5253−1111(内線7888) 1