07/09/03 第4回厚生労働科学研究における利益相反に関する検討委員会議事録   厚生科学審議会科学技術部会   第4回厚生労働科学研究における利益相反に関する検討委員会   議 事 録   ○ 日  時 平成19年9月3日(月)17:00〜19:00   ○ 場  所 厚生労働省 省議室(9階)   ○ 出 席 者   【委  員】  笹月委員長            北地委員 木下委員 末松委員 平井委員            福井委員 宮田委員 望月委員 谷内委員             【議 題】   1.厚生労働科学研究における利益相反への対応について    2.その他    【配布資料】    1−1.米国NIHの規定(42 CFR. Part 50. Subpart F)のポイント    1−2.利益相反マネジメントのための事例解析集(平成19年6月利益相反        マネジメントのための事例解析検討班)    1−3.基本的な考え方(案)    1−4.研究の類型による対応(案)    1−5.指針の構成(案)    参考資料1.臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン(平成18年          3月臨床研究の倫理と利益相反に関する検討班 文部科学省「21世          紀型産学官連携手法の構築に係るモデルプログラム」)    常設資料.適正に医学研究を実施するための指針 ○坂本研究企画官 傍聴の皆様にお知らせいたします。傍聴に当たりましては、既に お配りしております注意事項をお守りくださいますようお願いいたします。なお、本日 はクールビズということで、事務局は軽装で失礼しております。上着をお召しになって いる方も適宜脱いでいただくなど、よろしくお願いいたします。  定刻になりましたので、ただいまから、「厚生科学審議会科学技術部会第4回厚生労 働科学研究における利益相反に関する検討委員会」を開催いたします。委員の皆様には、 ご多忙の折お集まりいただき、御礼を申し上げます。なお、本日は上智大学法学部の岩 田太委員からご欠席の連絡をいただいております。また、厚生労働省のほうに人事異動 がありましたのでご紹介いたします。技術総括審議官の上田です。厚生科学課長の矢島 です。  本日の会議資料の確認をお願いいたします。議事次第の半ばの所から、配付資料の一 覧があります。資料1-1は「米国NIHの規定(42 CFR. Part 50. Subpart F)のポイン ト」、資料1-2は「利益相反マネジメントのための事例解析集」、資料1-3は「基本的な 考え方(案)」、資料1-4は「研究の類型による対応(案)」、資料1-5は「指針の構成 (案)」です。参考資料1として、第1回でもお配りしておりますが、「臨床研究の利益 相反ポリシー策定に関するガイドライン」、平成18年3月に臨床研究の倫理と利益相反に 関する検討班が作成したものです。常設資料として、冊子で「適正に医学研究を実施す るための指針」をお配りしております。こちらの冊子については次回以降の会議でも使 用しますので、お席に置いたままでお帰りくださいますようお願いいたします。お持ち 帰りの希望がありましたら、事務局までお申し付けくださいますようよろしくお願いい たします。  それでは、笹月委員長、議事の進行をよろしくお願いいたします。 ○笹月委員長 今日で第4回ということで、ウォーミングアップも済みまして、脂がの ってきたということかと思いますが、一つよろしくお願いいたします。最初に、資料1-1 について、事務局からご説明をお願いいたします。 ○坂本研究企画官 資料1-1について説明いたします。「米国NIHの規定(42 CFR. Part 50.Subpart F)のポイント」です。日本語の資料が二枚あって、その後ろに英文の原文 を載せております。こちらの前の二枚については逐語訳というわけではなく、後ろのも のをこちらで読んで、多少意訳といいますか、ポイントをまとめたものです。米国NIH では、どのように規定しているかということを説明するために作成したものです。  1のSignificant Financial Interestについては、これの適当な訳ということだけで も議論があろうかと思いましたので、あえて英語のままにさせていただいております。 これはNIHでは、「給与又はサービス対価(例えば、コンサルタント料又は謝礼)、株 主持分(例えば、株式、株式買入れ選択権、又は他の所有権利益)、及び知的所有権 (例えば、特許、著作権、及び当該権利からのロイヤリティ)を含むが、それらに限定 されない、何等かの金銭的価値を意味するが、所属機関からの給与、ロイヤリティ又は その他の報酬、公的な又は非営利的な機関のセミナー、講演、委員会等からの収入は含 まない」という整理をしているということです。  2にありますように、Significant Financial Interestに含まれないものとしては、 「公的価格又は他の合理的な算定による公正な市場価値を参照し、その価値が1万ドル を越えず、かつ5%以上の権利を所有していない株主持分。今後12ケ月間の総額が1万ド ルを越えることが予期されない、給与、ロイヤリティ又はその他の報酬」ということ です。  3は「研究者の配偶者及び被扶養の子どもも金銭的な利益相反の検討対象」というこ とです。この辺については、我が国でどのようにするべきか議論があろうかと思われる 点です。  4は「各機関は、この規定に従った、適切な、文書化された利益相反のポリシーを維 持し、関連規則を各研究者に周知しなければならない」という規定があるということで す。   5にあるように、各機関に外部の分担研究者等にもこの規定に従うよう求めております。   6は「申請提出時までに、各研究者は、機関において指定された職員に、当人(及び配 偶者及び被扶養の子ども)の既知のSignificant Financial Interestについて報告」す るようにということです。  7として「金銭的開示は、研究の期間中、年次毎に又は新しく報告すべきSignificant                                        Financial Interestが得られた場合に、更新されなければならない」という規定があり ます。  8として各機関における関連記録の保存について、少なくとも3年間といった規定があ ります。  9として、「各機関において、利益相反を特定し、管理、減少又は排除するための管理 プロセスを規定」するとしております。  10として「各機関は、相反している利益を認識した場合、当局に60日以内に報告する」 という規定があります。  11として「当局からの求めに応じて、各機関は利益相反、及び、バイアスから研究を 保護するため、それらの利益をどのように管理、減少又は排除しているかの情報を提供 する」といった規定もあります。  12として「機関において指名された職員は、すべての金銭的開示を検討し、利益相反 が存在するかどうかを決定し、存在する場合は、当該利益相反を管理、減少、又は排除 するため、機関がどのような行動をとるべきか決定しなければならない」という趣旨が 規定されております。  13として「利益相反の管理の例として以下があるが、これらに限られるものではない」 といった規定です。(1)としてSignificant Financial Interestの一般への開示、(2) として独立した評価者による研究のモニタリング、(3)として研究計画の修正、(4) として当局により資金提供された研究の全部又は一部への参加の資格剥奪、(5)として                                         Significant Financial Interestの剥奪、(6)として現実の又は潜在的な相反を生み出 す関係の分離といったものが管理の例として示されているということです。  14ですが、「機関の利益相反ポリシーに従わず、資金提供を受けた研究の計画、実施、 又は報告にバイアスがある場合、機関は、実施した又は実施しようとする矯正行動を当 局に直ちに報告しなければならない」といった趣旨の規定があります。「当局は、必要 に応じ、資金提供されたプロジェクトの適切な客観性を維持するための指示ができる」 という趣旨の規定もあります。  15として「当局は、資金提供した研究における金銭的利益相反に関する機関の手続き 及び行動について、この規定の遵守に関係のある全記録の提出要求又は現地調査を含め、 いつでも照会することができる」といった趣旨の規定があります。  16として「記録の調査あるいは利用可能な他の情報に基づき、当局は、特定の利益相 反が資金提供した研究の客観性にバイアスをかけ、又は、機関がこの規定に従って、利 益相反を管理、減少又は排除しなかったと決定することができる」といった規定があり、 また、「当局は、問題が解決されるまで、資金提供の停止が必要と決定することができ る」、原文ですと、条文の引用等のある規定があります。  17として「医薬品、医療機器、又は治療の安全性又は効果を評価する目的の臨床研究 が、この規定により要求される開示又は管理をせずに、計画され、実施され、又は報告 されたと当局が決定した場合、機関は、研究者に対し、研究成果それぞれの公表におい て、利益相反の開示を含めるよう求めなければならない」といった趣旨の規定がありま した。  米国と日本ではいろいろ状況が異なりますので、これらの規定をそのまま採用という わけにはいかないところもあろうかと思いますが、米国の規定はこれからの指針作成に おいて参考にすべきところが多いと思い、このような資料を準備させていただいた次第 です。 ○笹月委員長 NIHの規定ということで、これまで議論してきたようなことですが、特 にご質問、あるいはご意見などありましたらお願いいたします。最初のSignificant                                         Financial Interestの所ですが、質的なものがいろいろ出てきて、2にその額などが出 てきておりますが、この額などはNIHが示した目安で、また我が国では我が国の目安と いうものが必要になろうと思います。1と2の所はご質問はありませんか。3の「研究者 の配偶者及び被扶養の子ども」も検討対象とする、ここはいかがですか。 ○谷内委員 日本でも、文科省のガイドラインでは一応、配偶者及び被扶養の子どもは 開示するということになっております。ただ、うちの大学ではまだそこまでいっていな かったのですが、今回以降、少しこれに対応しようかと考えております。なぜかという と、ベンチャーなどをつくったときには、自分自身がなるよりも、やはり配偶者とか子 どもにお願いする場合が非常に多いと聞いております。私たちの実例でもそういうこと があります。そういうことで、ここはやはり入れたほうがいいのではないかというのが 私の実感です。確かに配偶者と子供が入ってきますと、個人情報の管理を含めて問題が 非常に多いのですが、やはり含めるべきではないかと私はいま考えております。実際に 私たちのほうで臨床研究を行っている方も、疑われるのだったら開示したほうがいい、 という方のほうが多いです。 ○笹月委員長 被扶養の子どもということは、独立していればもうよろしいということ ですか。 ○谷内委員 そうですね。 ○笹月委員長 独立していればよろしい。対象にする範囲というところのラショナルが 私は何かいまひとつピンとこないんですが、どなたか説明していただけませんか。 ○北地委員 税でいう生計を一にしたというところが使われやすいと思います。 ○笹月委員長 そうすると、配偶者が生計的に独立しているということはないですか。 ○北地委員 これは監査法人の例なのですが、例えば扶養の中に子どもだけではなくて、 私の父がもう仕事を引退して、私が養っていると。だけど、貯金の中で私が持ってはい けない株を買ったというような場合は、やはりやめてくれということになっております。 配偶者は経済的な要因だけではなくて。 ○笹月委員長 いまおっしゃいましたが、私も質問しようと思ったのです。両親のこと はここには触れられていないのですが、これから我々がつくる場合、これはそれでよろ しいのですか。 ○北地委員 これをどこまで厳密にするかですが、幸いといいますか、私の両親はいま 私が経済的に全く援助することなく暮らしておりますから、そこは全く何の報告も求め ておりませんし、求められる立場でもないのですが、際限なく含めるとしたら、非常に 広い範囲になると思います。どこまで広げるかですが、まず合理的に実行可能な範囲と いうのは、このぐらいから始めたほうがいいのかと思っております。何度も私は繰り返 していますように、組織的利益相反ということも気にはなっておりますが、合理的にど うやればいいのかということは、まだなかなか難しいところです。 ○平井委員 北地委員と同意見なのですが、私が実際に見聞きした例でも、父上がベン チャーにかかわっている、あるいは弟さんがベンチャーにかかわっているという例は、 かなり多いのです。いずれにしても、かかわるだけの実態的な理由がある場合、例えば 父上は関連する会社でもう長く経験があって、是非その知識・経験を活用したいという 場合もありますし、単に名目上の場合もあると思うのです。そういった状況に対して、 日本の中での現在の多くの例を見ると、配偶者はとりあえず含めると。それから、生計 を一にする一親等の親族を入れるというケースが、いちばん多いです。  なぜ生計という一種の限定を加えるかというと、生計が共になっていないと、かなり 縁が遠い場合もあり得る。親等というのは配偶者はゼロ親等ですから配偶者から発して いくつと数えますので、仮に二親等といった場合に、配偶者のお父さんの息子さんとか、 普段お会いしない方までかなり広がる可能性があるのです。ですから、生計を一にとい うことで、なるべくそこで限定をかけようという例が多いようです。親等も、二親等と いう例は見たことがありますが、やはりかなり範囲が広くなりがちなようなのです。で すから、一親等でとどめるという例がわりと多いと思っております。 ○坂本研究企画官 参考までに、本日の参考資料1の10頁ですが、既に先行しているガ イドライン、これはあくまで自己申告書例ということで、必ずこうしろということでは ないと理解しておりますが、こちらのほうではBの所に「(一親等まで)」という記載 があります。谷内委員のところはこれをベースにされるということですが、これに「生 計を一」などという条件を新たに付け加えられる、という理解でよろしいでしょうか。 ○谷内委員 家族のどこまで含めるかというのはまだ決まっていないのですが、一応 「生計を一にしている一親等」ということで理解しております。 ○笹月委員長 4以降は大体了解を得ていると思うので、17までどこでも結構ですが、 ご質問あるいはコメントがありましたらどうぞ。 ○北地委員 16ですが、3行目の「決定することができる」というのがなかなか強いな と思っております。つまり、利益相反というのは、本来、自己の組織の中で管理する問 題であって、なかなかわかりづらいということでずっと議論していますが、NIHのこれ は決定ということはなかなか強い扱いだなと思っています。この辺が日本で考えた場合 に違和感がないかどうか、ちょっとご感想をお伺いしたいなと思っております。 ○笹月委員長 これは先ほど坂本企画官からもご説明がありましたように、逐語訳では なくて、中身をこのように表現したということですので、言葉自身は実際に指針をつく るときに考えていただければいいのではないかと思いますが、そういうことでよろしい ですか。これは英語では何と言っているのですか。determine。 ○坂本研究企画官 8頁の(b)の7行目で、「may decide that」という記載がありま す。法令の訳語として、これを決定というのがいいかどうかは、ちょっと議論があるか もしれません。 ○木下委員 13でSignificant Financial Interestの一般への開示は、本来、組織内 の管理ということであるはずだと思ったのですが、こういったSignificant Financial                                        Interestの場合には、要するに直接研究をしている所と関係あるような株券などといっ たことが問題になるのであって、全く関係ない、いろいろなInterestも一般へ開示する ということも、利益相反の管理ということになるのですか。つまり、そういった研究者 は自分たちの個人情報も含めて、すべてを開示するのだということですか。 ○谷内委員 NIHと米国の普通の私立大学と違うと思います。私の理解では、NIHの研究 者はたぶんSignificant Financial Interestがある場合は、金額とかカンパニーまで、 全部ホームページ上でオープンになっていると思います。NIHの研究者はそれだけ重要 なポジションですし、あるいは人物的に非常に高潔な方が選ばれるわけですが、それで もやはりSignificant Financial Interestが出てくる場合があります。臨床研究を行う 場合には、日本の大臣みたいな形で、ホームページ上に全部出ていると、私は理解して います。ただ、一般の大学ではSignificant Financial Interestの金額だけ明示してい て、この研究者が利益相反があるかないかということはオープンになっていないと思い ます。その大学によって違いますが、NIHの研究者は非常に厳しいところにいると理解 しております。 ○平井委員 私の意見は若干違うのですが、実はジョーンズ・ホプキンズなども、これ と同じような規定を置いているのですね。若干違うのですが、各大学にいろいろなこれ に類する規定を置いています。その趣旨は、多分に、これはちょっと語弊があると非常 に問題なのですが、一種のペナルティとは言いませんが、これにどのように対処するか という一例として挙げているように思うのです。  それで、(1)にあるようなSignificant Financial Interestを常に一般に開示する、 これが通例であるというわけではないと思います。いろいろな管理のやり方がある中で、 この場合はもうほかに管理のしようがないと。この事例については、一般への開示が最 も適切な管理であると判断された場合に行われる手法ではないかと思います。だから、 このような開示を伴わなくとも、十分な管理が行われるケースであれば、たぶん情報の 開示はないと私は考えています。 ○笹月委員長 いまのご意見は、よく理解できるコメントだと思いますが。 ○谷内委員 そうですね。 ○宮田委員 そういう考え方でよろしいと思いますが、特にベンチャー企業との関係は すごく重要になると思うので、一応Significant Financial Interestは5%ということ になっています。それは尊重すべきだと思いますが、自分たちがいまやっている医薬品 の臨床研究みたいなものに関して、その企業とどういう関係にあるか。特にベンチャー 企業とどういう関係にあるかというのは、やはり十分管理されなければいけなくて、特 に5%以上持っているような場合には、それは公開しておいたほうがいいと私は思いま す。 ○笹月委員長 いま宮田委員がおっしゃったところは、いわゆるConflict of Interest の最も根幹のところですので、それはおそらく開示の対象になるだろうと思います。こ のNIHのを参考にしながら、日本の実情も勘案して指針へどう利用するか、応用するかと いうことですので、特にほかにないようでしたら、先に進ませていただきたいと思いま す。資料1-2について、事務局から説明をお願いいたします。 ○坂本研究企画官 資料1-2について説明いたします。こちらは文部科学省の「21世紀 型産学官連携手法の構築に係るモデルプログラム」の「利益相反マネジメントのための 事例解析検討班」の方で取りまとめられた「利益相反マネジメントのための事例解析集」 ということです。  1頁の「はじめに」の下の方にありますが、利益相反マネジメントに関する具体的な ノウハウ等についての事例研究を重ねてこられて、今回その結果を報告されたというこ とです。2頁の2.の「利益相反状況調査および情報」の2段落目ですが、利益相反管理の 現実の問題としては、「[1]その多くが本人の自覚の無い状態で発生すること、[2]産学連 携関係者の利益相反に対する意識や自覚が希薄なことなどが上げられる。このことから、 利益相反マネジメントは教員の意識向上が鍵となる」といった記載もあって、利益相反 マネジメントは意識向上が鍵といったご指摘が最初の方でされております。  9頁以降、いろいろな状況に伴う利益相反状態の検討項目に関して記載されておりま す。例えば、10頁の最初の[2]の「共同研究、受託研究を実施しているか」というところ では、チェックする内容の中には、共同研究、受託研究など研究開発の資金は目的・内 容に合った金額かという項目があり、その細かい事項としては、寄附金や兼業を目的と して実施されていないか、受託研究の意味を明確に理解して実施されているかといった チェック項目が記載されています。  35頁から共同研究、受託研究、寄附金授受に関する記載があります。物品の購入に関 しては、37頁から検討項目が記載されております。こちらの方の(8)の社会的説明の 所に、社会的説明責任が果たせるか、社会的納得が得られるものかといった検討項目が 記載されています。  41頁から「兼業に対する利益相反状態の解析事例」ということで、6・1に仮想事例に おける検討結果の例が書かれております。6・1の前に、利益相反状態の解析には、この 前に書かれた項目のうち必要な調査項目を選択して行うこと、この調査項目は、各大学 のマネージメントポリシーやマネジメント基準に従い、各大学で選択・追加する必要が あるという記載があります。41頁の下の方からは、この仮想事例における検討結果が一 例として示されております。  53頁に検討班のメンバーがあり、54頁以降が利益相反の事例の解析集ということにな っています。目次の二枚目にURLが記載されておりますが、54頁以降については冊子で はなくてホームページから打ち出したものです。大部な資料ですので、いくつかここで の検討に関係の深そうなものを選んでみますと、91頁に医療関連事例の2として、臨床 研究(寄附金と講座)といった事例があります。「活動状況」の所に書いてありますが、 ある教授が相当額の寄附金を受けている会社からの依頼で臨床兼業を実施することにな ったということです。相当額の寄附金を受けていたことから、この教授は臨床試験に参 加しないこととした。しかし、教授の配下の助教授、この方もこの分野に高い見識と専 門的知識を有するということですが、この方が担当して臨床試験を実施したという事例 です。  (3)の想定される利益相反状態の[5]の社会的説明の判断として、「寄附金受け入れは よいが、臨床試験を担当する場合は不適切である。一般的には、結果の判断にバイアス がかかるのではないかと疑念を持たれる。また、配下の助教授が担当することにも教授 の意向が優先されるのではないかとの疑念もあるが、本臨床試験分野で教授と同じよう な見識と高い専門性を持つ助教授の担当は社会的理解が得られるものである」という記 載があります。[8]の法的違反・学内規則違反への考察の判断としては、「臨床研究は社 会的信頼性が問われ、対応に十分な配慮が必要である。本研究は、大学の専門性を活か した社会貢献であり、妥当な申請と判断される」ということが記載されております。  91頁の(5)の「解説」の所では、「臨床研究で多く行き当たる事例である。臨床研 究には非常に専門性の高い、高度な判断を必要とする。このことから、常日頃より専門 に近い企業との連携が研究開発に重要であることから、社会への説明、大学も明確な基 本方針による社会への説明を通して社会の信頼と理解を得ることが重要である。研究者 の対応よりも大学組織としての対応が必要な兼業である」といった解説が書かれており ます。  93頁の下から、医療関連事例の4として臨床研究(寄附金供与とその対策例)という 例があります。「活動状況」については94頁の上の方にありますが、高い専門性があっ て、この臨床試験の医学専門家として外すことができないという判断がされた教授がい らっしゃったということで、[4]にあるように、依頼した会社が教授に寄附金等の支援を 行っていることから、臨床試験の計画・実施には教授は参加するが、データ評価を別に 3名の医学専門家を配置して行うこととして兼業申請が承認された事例ということです。 判断として、「大学が求める社会的説明と透明性を保つ基本方針にマッチしたものであ る」、それから、「本申請は、多くの誤解を招かず、大学、研究者および依頼先企業が 一体となった対応であり、社会的説明を考慮した兼業申請である」といったことが赤字 で書いてあります。  94頁の下から医療関連事例の5として、責任医師担当への依頼という事例が書いてあ ります。95頁にかけて記載がありますが、ある分野の世界的専門家である教授が、ある 会社から400万円の寄附金を受け取っていて、そのほか4社との兼業も行うという状況 等があって、その会社から臨床試験の責任医師担当の依頼があった事例ということです。 判断として、兼業による金銭等利益授受の状況について検討し適当と判断したというこ とで、寄附金の取得による兼業先との利便関係と社会的説明責任への対応が十分かとい うところで、「一企業との関係が非常に強いと判断され、社会的説明責任は難しいので ないと判断される」。ここはちょっと誤植があるように思われます。寄附金が兼業先の 業務内容に対して疑念やバイアスを発生させる原因となっていないかという所で、「一 企業との連携が強く、一般的には、臨床結果等へのバイアスや疑念の発生の恐れがある。 しかし、寄附金はB教授が代表しているが、講座として受けており、一企業に利便が働 くような状況を回避していると判断される」という記載があります。[8]の社会的説明で、 「一企業の産学連携が集中しており、社会的説明責任と社会的理解が得られ難いと判断 される」という記載があります。  96頁の上の方の「解説」ですが、研究業績などから、臨床試験の責任医師を担当する ことも当然と判断されるが、会社と深い関係があり、また他の会社との関係もあり、 「医薬品会社間の関係も考慮する必要がある。この医薬品分野で1社への配慮があると 疑念を持たれないような産学官連携の構築を大学として検討する必要がある」といった 解説が書かれております。  96頁から顧問契約書を付して兼業申請した事例が書いてあります。97頁の[5]の社会的 説明で、判断として、「共同研究に価する活動であり、個人的収入を目的としたものと 判断されても仕方ない状況にある。社会的説明が難しく、理解が得られない。公的に認 められている共同研究で取り扱うのが適当と判断される」といった記載があります。 「解説」の所で、「学内で実施される研究開発(本務)は共同研究等公的に認められた 方法で実施し、研究成果の区別を明確にする。知的財産の区別や社会的説明責任を果た す上でラボノート等の記載や兼業実施の記録の報告など、研究者自身が産学連携活動を 管理することが求められる」といった記載があります。  107頁では、兼業以外の産学官連携活動に伴う利益相反の事例として、多企業との共 同研究実施の例があります。10社と共同研究を実施されていたという例で、研究内容も 少し方向性が異なる程度で、研究内容や研究手法が同じであった。そういったことから、 研究費の流用、研究成果の帰属決定、企業への情報漏洩などが心配されるといった活動 状況が書かれております。[8]の社会的説明の所では、判断として、「同じ研究分野で共 同研究件数が多くなると研究経費の区別や研究費による研究成果への貢献度など社会的 に疑念を持たれる可能性が大きい」という記載があります。  109頁では、寄附金事例2として、寄附件数の多い例が記載されております。こちら の例は、多くの企業、44社から寄附申請があって、多額の寄附金を受けておられた事例 ということです。111頁にこれの「解説」がありますが、あまりにも数多くの企業等か ら寄附金を受けていると判断されるということが書かれており、「企業との関係がかな り緊密であることが伺えることから、寄附金授受の背景(教授からの強い要求など)が 無いことを明確にする必要がある。寄附による企業への研究成果の提供、講座構成員の 寄附企業との関係(臨床医の担当、データの提供、助言・指導などの口約束等)に十分 注意する必要があると判断される。また、寄附金の用途を明確にし、寄附企業への研究 費としての活用に十分配慮する必要がある。また、学会発表等における研究成果等の取 扱に十分配慮する必要があると判断される」という記載があります。  118頁に物品購入の例があります。こちらは、競争的資金を獲得し、その資金を獲得 した教授が役員兼業している大学発ベンチャーに、業務委託・物品発注をしようとした といった事例です。119頁の[8]の社会的説明の所では、「社会的には部局長のみの判断 でなく、大学が選出した委員による調査・判断および入札制度の活用など、広く公開し た手段で購入し、社会的信頼を得ることが必要である」という記載があります。また、 「解説」の所では、「教授と部局長との関係、部局長のベンチャーとの関わり状況など を調査して明確にしておく必要がある。大学の規則に沿って購入すれば問題はないもの と判断される」という記載があります。  126頁に共同研究の事例が書かれております。兼業して研究開発の助言・指導を行っ ている企業との共同研究ということで、装置の提供があることから、共同研究経費を計 上していない。この研究室では公的資金を用いたプロジェクトによる研究開発等も同時 に実施されているといった事例ということです。  127頁の[4]金銭以外の利便の供与という項目の判断として、「装置は共同研究のため であり、供与にはならない」という判断がされていることの記載があります。[6]の組織 との利便関係では、判断として、この事例では「公的資金が導入されている場合には、 その資金に対する透明性が確保できない」といった記載もあります。  既にある事例をこちらの検討班で取りまとめられたもので、ほかにもいろいろな事例 がありますが、我々の検討に近いような事例等をピックアップしてみますと、こういっ たものがあるということでご紹介させていただきました。前回も想定した事例はお出し しておりますが、こちらの方でより現実に検討されている事例がオープンになりました ので、今回資料として出させていただいたものです。 ○笹月委員長 ここで赤で書かれているのは判断、解説ですが、これは文部科学省でつ くられたものに準拠しての判断という理解でよろしいですか。 ○坂本研究企画官 基本的には、そのように理解しておりますが、こちらは平井委員が 参加されておられたと思いますので、もしコメントがあればお願いします。 ○平井委員 もちろん文部科学省の報告書をベースにしたものであり、かつ先ほどご説 明があった参考資料1「臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン」を基 礎として、これを具体的に一つ一つの事例に当てはめたらどういう答えが出るのだろう か、ということを行ったものだと理解しております。 ○笹月委員長 そうすると、ここに書かれている赤字の所に対するクエスチョンがもし あるとすれば、それは文科省がつくった案に対する疑問というか、そういうことになる と理解してよろしいですか。案といいますか、指針。 ○平井委員 赤字の所ですよね。赤字の所は、判断の一例を策定したものだと思うので す。だから、検討班としてこういう項目、こういう点についてはこのように判断をして みたと。もちろん、これが100%正解とは言い得ないとしても、他の方々が判断する上 で参考となるだろうという模範解答みたいなものだと思います。 ○笹月委員長 判例みたいに取り扱って。 ○平井委員 そこまでは、利益相反の話というのはケースバイケースのところもかなり ありますので、必ずしもぴったりということはないと思うのです。ただ、ご参考にはな るかと思います。 ○笹月委員長 私はいまの企画官からのサマリーを伺っていて、例えば95頁の[2]の中の いちばん下、「寄附金が兼業先の業務内容に対して、疑念やバイアスを発生させる原因 となっていないか」という所の判断で、「一企業との連携が強く、一般的には、臨床結 果等へのバイアスや疑念の発生の恐れがある。しかし、寄附金はB教授が代表している が、講座として受けており、一企業に利便が働くような状況を回避していると判断され る」という点は。 ○北地委員 そこで、是非申し上げたいのが、質問項目が教授個人が寄附金をもらって いるという前提で書かれているものが多いのです。つまり、事実関係としては、大学は たぶんそういう認識ではなくて、個人に寄附金ではなくて、奨学寄附金というのはその 流れがあり、質問項目はそこを非常に単純化して、教授が個人的に寄附金をもらってい るということで、この答えになっているというのが多いので、私はそこは事実関係が歪 められているような気がします。 ○笹月委員長 もちろん、奨学寄附金というのは、窓口は個人の教授かもしれないけれ ども、実際には国庫に入るお金ですよね。ですから、個人、一教授がそれを自分のもの にしてということではない。それは理解した上なのですが、それが「寄附金はB教授が 代表しているが、講座として受けており」ということで、教授が代表しているけれども、 講座として受けていれば、一企業に対して利便が働くような状況は回避していると言っ てしまっていいのかどうかというのを、私はちょっと疑問に思ったものですから。 ○北地委員 例えば91頁のタイトルが「臨床研究(寄附金と講座)」という所ですが、 もしこの(寄附金と講座)ということであれば、講座との関連のことをもう少し書き込 まなければいけないと思うのですが、2番目の所に「A教授はE社から相当額の寄附金を 受けている」と、非常に明快な書き方をしてしまうと、明快というか、単純化しすぎて いて、かえってここは誤解を招く上に次の文章が重ねられているような気がします。 ○木下委員 実態としてはいろいろなケースがあると思いますが、通常は代表として教 授がサインします。講座に入れるというのは、教室の准教授や講師の研究に対して奨学 寄付金を入れるということなのですが、原則は教授が代表となって寄附金を講座に入れ るのだという発想は構わないのではないかと思います。しかし、教授個人ではなくて講 座だから大丈夫だということには全然ならないのです。教授の仕事、あるいは助教授の 仕事をすべて講座ということで括ってありますが、実態は個人ではないとは言えません。 実態としては、同じだなという気がいたします。 ○北地委員 いいえ、奨学寄附金と受託研究と共同研究は、私は実務的には区別はして おかないとまずいと思うのです。奨学寄附金と受託研究が、この表現だとほとんど同じ ではないかというように見えまして。 ○笹月委員長 そこも大事なポイントです。 ○平井委員 事例が全部分析できているかあれなのですが、95頁の上の[4]の所は400万 円の寄附金を講演料、講座運営、研究推進の名目で受けている。それを基礎として、こ の寄附金とバイアスとの関係について論じているのがご指摘のところだと思うのです。 この金額で講演料と講座運営と研究推進の目的であれば、相場というとおかしいのです が、不自然に多額ではないと思うのです。講座運営として、きちんと使われたという蓋 然性も高いのではないかと思います。だから、この[4]の点だけを引いて、一律にこれで バイアスが発生するかというと、ちょっと疑問はあるのです。その前の94頁の[2]の所で、 A教授に臨床試験の責任医師の依頼があったということがあって、むしろこれとの絡み でどう判断するかというところが重要ではないかと思います。したがって、たぶん責任 医師への依頼は回避すべきであるというようにしているのではないかと思うのですが、 していないでしょうか。たぶん、そちらをきちんと処理することによって、講座運営と しての一般的な寄附金については、もちろんモニタリング等のきちんとしたマネジメン トは必要ですが、受け入れられる余地もあるかなという気がします。 ○谷内委員 この症例はちょっと不確かなところがあるのですが、頼まれた臨床試験が 治験か、治験でないかということによって、うちの大学では私たちの判断が分かれてく ると思うのです。非常に難しい事例だと思うのですが、例えば治験であれば、通常、多 施設共同になってきますし、お金をもらってもバイアスはかからないと思います。そう いう意味で、治験に関しては比較的安心して見ていられる。ただ、これは自主臨床研究 で、A教授だけが行うとなってくると、400万円だけではなくて個人収入もありますし、 少しバイアスがかかるかなということで、できたら主任研究者をやめてくださいという ことは言えるのではないかと思います。そういう形でマネジメントはできると思います。 治験であればいいのではないかと、うちの大学の考え方では、いまのところはそう思っ ています。これは非常に判断が難しい事例だと思います。 ○笹月委員長 これも大事なことなので、参考にさせていただくことにしたいと思いま す。 ○宮田委員 これは非常に貴重な研究なのですが、事例の一端にしかすぎないですね。 これがある意味の典型だとか、個別に沿わなければいけないという誤解を招くほうが怖 いのです。法律のような判例がきちんとデータベースになって、みんなで共有されるシ ステムもまだできていないので、そういう意味ではこれが金科玉条になることをむしろ 恐れると思います。ですから、そういう意味では、利益相反というのはこれから社会情 勢も変わりますし、研究を囲む状況も変わりますので、あまり詳細にわたって議論をし てもしょうがないなと実は思っています。NIHだって1万5,000ドルだったのが、いつの 間にか1万ドルになっていたり、いろいろ手直しをしていきますので、あまり詳細にわ たって議論することが必ずしも良くない、副作用もあることを皆さんご確認の上、議論 していただきたいと思います。 ○笹月委員長 漠然と議論してもあまり意味がないので、こういう症例がありますと具 体性があって、いろいろな問題が指摘され浮き上がってくると思います。ただし、全部 を詳細に議論するのは、もちろん時間的にも無理ですし、ナンセンスだと思いますが。 ○北地委員 この事例集は、ある部分には非常に詳しいです。兼業であるとか、ベンチ ャーであるとか、自分の研究領域について、外部であることに対して非常に詳しいので すが、一方、前回第3回の資料が配られた中で、私は非常に精読させていただいたのが、 タミフルの問題でどういうことが起こったかというものです。あの内容については、こ ういうところとはほとんど重なっていませんね。副作用を調査するのに、どういうお金 の受け取り方がいいのかというような、逆にこの中に載っていないことで、あぶり出さ なければいけないことをこれから出さなければいけないのだろうと思います。 ○笹月委員長 ほかにどなたかお気付きの点、あるいは疑問の点、コメントはあります か。 ○木下委員 宮田委員から、これは詳細には検討しても意味ないし、もっと大事なこと があるというようなお話ですが、我々現場サイドとして、こういうものがこういう対応 をするのかという例として意義があると思うのです。ですから、治験なのか、個人の臨 床研究なのか、あるいはベンチャー企業の問題なのか、ベンチャーでないのか、内容に よっては大きく対応が違ってくるのではないかと思いますが、少なくとも科学研究とい うことに限っていえば、これに対して、学内でどう対応すべきかという点では参考にな るのです。従って、細かいことはともかく、こういうような手法でいくのかと。あるい は、そのような対応でいいのかという意味では、私どもには参考になりました。先生方 のように、この問題を真剣に考えてこられた方としてはこんなのという思いがあるかも しれませんが、これをまたさらにカテゴライズしてまとめていけばもっと整理されると 思いますので、そのように使っていただければ、これは大変良い案ではないかと思って おります。 ○宮田委員 そのとおりで、要するに原則を見出すという方に使っていただきたいと思 います。ただ、一つ残念なのは、「駄目である」と書いてあって、どうすれば良くなる とか、要するに一種のセーフティーハーバーとして、むしろ研究を促進するための利益 相反マネジメントというのがあるべきだと思っているので、これはファーストステップ で、この駄目な状況をどうやって打開するようなマネジメントがあるかという提案がこ こまで出ていれば、もう一つ先生にも役に立つのではないかと私は思います。 ○木下委員 特に今回、これで見ますと、Significant Interest、Financial Interest というものと、非常に限られたその対象となる会社との関係においてのみきちんと対応 すればいいのだということがはっきりしました。そういう意味では具体例があって、あ りがたいという気がいたします。 ○笹月委員長 いまのご議論がそうだと思うのですが、いわゆる利益相反というのは、 だから罰するというのではなくて、どうそれをマネージするかというところがポイント だと思いますので、マネージの仕方を示すということは大事なガイドラインにもなろう かと思います。ただ、マネージのしようがないというときには、初めて駄目だというこ とになるのだと思うのです。ほかにもいろいろあろうかと思いますが、少し進ませてい ただいて、資料1-3、1-4、1-5について、事務局からご説明いただきます。 ○坂本研究企画官 資料1-3から1-5までを説明いたします。資料1-3は、これまでご議 論いただいたところをまとめて、基本的な考え方(案)という議論の叩き台として、こ ういうものをつくってみたということです。1として「我が国では、科学技術創造立国 を目指し、産学連携活動が推進されている。大学等における研究成果を社会に還元する ため、そういった産学連携活動は否定されるべきものではなく、適正に推進されるべき ものである」ということを書いております。  2として「複数の業務を実施する場合、関係する機関・個人それぞれの利益が衝突・ 相反する状態(利益相反)が生じ得る。このため、活発に研究活動が行われ、産学連携 活動が盛んになれば、利益相反が必然的・不可避的に発生する」と書いております。  3として「厚生労働科学研究は、国民の保健医療、福祉、生活衛生、労働安全衛生等 の課題を解決するための目的志向型の研究であり、産学連携活動が行われる可能性のあ る大学や研究機関等においても実施される。些かでも利益相反が考えられる研究者を直 ちに排除すると、厚生労働科学研究についての利益相反が問題になることはないが、活 発に研究を行っている研究者を排除することになり、また、各種研究事業を有機的に連 携し、出来るだけ早く研究成果を社会に還元しようとする動きを阻害することになる上、 厚生労働科学研究に応募する研究者の減少、研究の質の低下等も懸念され、適切ではな いと判断される」。  注1として「米国における検討においても、特定の利益相反そのものが問題であるこ とは希であり、問題はむしろ利益相反への対応であり、ほとんどの場合、利益相反が明 らかにされないか、評価または管理されない場合に問題が発生しているとされている。 利益相反について、米国の有力大学においてもその対応は様々である。利益相反に関し、 比較的厳しい対応を取っているペンシルバニア大学においても、年間1万ドルを超える 収入がある場合等には、関係する臨床研究への参加を原則禁止しているが、余人を以て 代えがたい場合には、個別に判断し、臨床研究の実施計画の策定に携わらせない、デー タ分析などについては利害関係をもたない他の人に任せる、臨床研究に対する第三者の 監査などといった対策を講じて実施を認めている」と記載しております。  4として「ただし、公的な研究である厚生労働科学研究の信頼性を確保していく上で、 利益相反を適切に管理する必要があり、公共の利益及び厚生労働科学研究の信頼性を確 保するために必要と判断されるような場合には、主任研究者の交代等の厳重な管理が必 要な場合があり得る」。  5として「また、大学においては、教育・研究という学術機関としての責任と、産学 連携活動に伴い生じる個人が得る利益との衝突・相反を管理するための取組が既に行わ れており、混乱や無用な重複を避けるため、既存の取組と出来るだけ整合したやり方で、 厚生労働科学研究における利益相反を管理するべきである」。  6として「被験者が研究者の興味や企業の利益行動において不利益を被らないこと、 及びそのように見られないこと、並びに公的研究である厚生労働科学研究と研究者・企 業間の利益相反(例えば、規制当局が利用するデータを供する研究について、研究者又 はスポンサーとなる企業が自らに有利な結果を出すのではないかとの懸念)について、 情報公開・透明性の確保を基本として、科学的な客観性を保証するように管理するべき である」としております。  注2として、前回までいろいろご議論していただいた「利益相反には、実際に弊害が 生じていなくとも、弊害が生じているかの如く見られる(appearance:アピアランス) 状況が含まれる。アピアランスが指摘されても的確に説明できるよう、適切な管理を行 う必要がある(潜在的な可能性を適切に管理し、各研究機関及び研究者が説明責任を果 たす必要がある)。なお、データのメーキング等の不正行為は別途の指針等で対応し、 また、被験者の保護等に関し、ヘルシンキ宣言や『臨床研究に関する倫理指針』等の指 針等の遵守は当然のことである」と記載しております。  7として「本指針は、意欲ある研究者が安心して研究に取り組めるよう環境を整備す る趣旨で策定されるものであり、以下の原則を重視する」として、「・研究をバイアス から保護する。特に、ヒトを対象とした研究においては被験者の保護にバイアスがかか ったように見られてはならないこと。・例えば、外部委員を利益相反委員会に参加させ る等、外部の意見を取り入れるシステムが必要。・法律問題ではなく、社会的規範によ る問題提起となることに留意し、情報公開及び透明性の確保を管理の基本とすること。 ・研究者及び研究機関に説明責任があることを自覚し、管理を行うこと。・客観性、公 平性を損なうという印象を社会に与えることがないように管理を行うこと。」と書いて おります。  注3として、これまでのご議論を踏まえ、「模範解答はない課題であるが、米国では                                        Significant Financial Interestという判断基準を設け、管理の対象者を選定している (一定の金額以上の収入や株式を所有している場合には管理の対象とする)。金額等に ついては、現在の研究現場の実態を踏まえる必要がある」と、このように整理を試みま した。  1-4は研究の類型による対応(案)です。I.として一般公募型の研究の場合、指針に おいて各研究機関における利益相反の管理を実施するように求めること、既に「臨床研 究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン」(平成18年3月)が公表されており、 これに準拠した対策が講じられていれば、原則可とする。情報の公開・透明性の確保を 基本として、自己申告による透明性の確保、及び研究者と組織の説明責任を示す、とい ったことを挙げております。  留意点として、猶予期間を設ける必要があること、また括弧の中で、大学等における 利益相反への対応は整備中の状況があると、これまでいただいたご指摘を書いておりま す。そこから矢印を書き、例えば平成20年度から試行し、平成22年度から本格実施と なっていますが、これはあくまでも案ということです。また、体制整備が必要な状況で もあり、作成した指針の遡及適用はしない、厚生科学課が相談に応じる旨Q&A等で示す としておりますが、これは相談にどこかが応じなければいけないだろうというご指摘が あったことを踏まえたものです。厚生労働省において利益相反が検討できるよう体制を 整備する必要もあろうということで、個別案件について、必要に応じて有識者の意見を 聞く、指定研究に対応するといった課題があるという認識を書いております。  参考として「臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン」における利益 相反マネジメントのプロセスを書き出してみました。「・研究者(全員)が実施計画書 と同時に利益相反自己申告書を機関の長に提出。・機関の臨床研究利益相反委員会にお いて審議、答申を受けた後、研究実施の承認の判断を行う。・臨床研究利益相反委員会 は、研究実施計画書と当該研究にかかる利益相反自己申告書をもとに評価し、研究者が 利益相反状態にあると判定された場合、要約書や意見書を倫理審査委員会に報告する。 ・倫理審査委員会は、それを受け、臨床研究の実施計画にかかる研究者の利益相反状態、 インフォームド・コンセントへの記載内容等を含めて総合的に判断し、承認か条件付き 承認、または不承認とすることができる。・臨床研究利益相反委員会は適宜、当該研究 者に対してヒアリング、相談などを通して、利益相反状態に関する見解を提示して改善 に向けた指導などを行うことができる仕組みも考慮されるべきである。」と、このよう なことが例のガイドラインには記載されているわけです。  II.は指定型の研究の場合についてです。いちばん下の注にあるように、指定型とは 「行政施策の推進のために必要な研究課題であって、優れた成果につながるものにする ため、当該研究課題を実施する者を指定するものをいう」と定義される研究ですが、こ れについても指針において、各研究機関における利益相反の管理を実施するように求め ること、既に「臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン」が公表されて おり、これに準拠した対応を求め、事前に利益相反に関する対応(機関の利益相反委員 会の評価結果等)の報告を求めることが考えられます。一定の基準を設けて一般公募型 の研究よりも厳しい管理を求めるが、余人をもって代え難い等の理由がある場合には、 管理した上で、研究が実施できるよう検討する。必要に応じ、厚生労働省において当該 機関の管理の内容等を検討し、指導等を行う、といったことを書いております。  留意点として、「・指定型の場合、猶予期間は設けず、平成20年度から適用する。遡 及適用はしない。」ということを考えております。また、できるだけ各機関での対応を 促して、各機関で対応していただくべきと思われますが、過渡期でもありますので、機 関において利益相反を管理する体制が整備されていない場合、利益相反自己申告書及び 研究実施計画書の提出を受け、厚生労働省において評価することも検討せざるを得ない と考えられます。さらに、想定される事例等はQ&A等で公表する必要があると考えてお ります。  資料1-5は、これまでご議論いただいたことを踏まえた指針の構成案です。粗々とし たものでありますが、まずIとして、こういった指針で通常書かれる「目的」を書き、 IIとして「定義」、指針の対象となる利益相反、それから用語。書き方にもよりますの で、どの程度まで定義が必要かということはこれから検討する必要があると思いますが、 そういった定義を書くということです。IIIは、先ほどの資料にあるような「基本的な考 え方」を指針の中にある程度入れませんと、人によってイメージが相違することがあり そうな分野ですので、そういったことを指針の中に書く必要があろうということです。  IVは「研究機関の体制等」。これも「実施機関の長の責務、研究者の責務」とした方 が適当なのかもしれませんが、体制や責務に関する項目を起こして、利益相反の委員会、 関係書類等の保存、それから個人情報、研究または技術上の情報の保護といった規定が 必要であろうということです。また、研究機関及び研究者に関して、利益相反に関する 説明責任があるということを示す条項が必要ではないかと考えております。  そしてV「厚生労働大臣の調査等」として、状況報告を求めたり、調査を行ったりす るといった規定を設ける必要があろうということで構成案を示しております。資料の説 明は以上です。 ○笹月委員長 1-5「指針の構成(案)」のIIIの「基本的な考え方」、これがイントロダ クション的に大事になろうかと思いますが、資料1-3としてその案が示されています。 まず、この基本的な考え方(案)について少しご議論をいただきたいと思いますが、ど なたか質問あるいはコメントはございますか。 ○末松委員 「基本的な考え方」の1頁目の注1に、年間1万ドルという言葉が出てきま す。これはあくまでアメリカの例ですから、日本でどう考えるかというところがまた問 題になるわけですが。資料1-1でNIHの規定のポイントのまとめと、その原文に相当する 英文があるのです。私の読み方が足りないのかもしれないので確認しますが、例えば、 特定の教員が複数のリソースで副収入をもらっている場合で、一つ一つの収入源は1万 ドルを超えない。非常に少額であるが、全部足して1万ドル以上になった場合、NIHでは アウトになるのかどうか。それがもしわかれば教えていただきたいのです。それは結構 重要なことだと思うのです。  また、今後この「基本的な考え方」を固めていったときに、例えば先ほどの事例集で も、兼業による報酬が年収より下であるから適当である、と赤字で書いてあるところが あるのです。例えば、製薬企業のアドバイザリーをやって、A企業、B企業、C企業と、個 々で見てやると12カ月の総額は1,000ドルとか2,000ドルである。ところが、これが仮に 5社とか6社からもらっていてトータルが1万ドルを超えたら、それはどう考えたらよいの か。おそらく、利益相反の対象になるものは特定の企業とのコンフリクトが出来るかど うかということになると思うのです。これはディテールに入っていくと迷路にはまる可 能性があるのですが、そこはどのようにNIHが考えるかというのが英文の原文を見ても書 けていないような気がしたので、もしわかっておられる委員の先生がおられたら教えてい ただきたいのですが、いかがでしょうか。 ○谷内委員 参考になるかどうか分かりませんが、たぶんアメリカの場合は日本と違っ て、製薬会社はダイレクトに出す。中間の出版業者がいて、そこから出すというような ことはないと私は理解しています。基本的には、これから先の12カ月を自分で見て、1 万ドルを超えると思ったら、つまり危ないと思ったら研究者が自発的に申告するという のがアメリカのやり方ではないでしょうか。なぜかというと、アメリカでは罰則が非常 に厳しくて、もしこれに少しでも漏れがあると後でつつかれる可能性があるということ で、アメリカの研究者は非常に注意していると思うのです。  日本の場合だと、製薬会社がダイレクトではなくて、ある出版会社から来るとか、関 係する出版会社を持っている場合もあるので、そこからも謝礼が来る等いろいろあると 思いますが、研究者の方で自分から考える。研究者でないとわかりませんし、あくまで も自己申告ですので、1万ドルを超えるようだったら前もって申請しておくのが安全だ という考え方で日本もやるべきではないかと考えています。私のわかっている範囲では、 そういうことです。 ○末松委員 自己申告に関してはきちんと全部ディスクロージャーするということを徹 底すればいいと思うのですが、例えば、Significant Financial Interestに含まれる定 義の方を大学機関として、考慮してマネジメントを当然やるわけですが、そのときに、 先ほどの個別のCOI(Conflict of Interest)の額を問題にするのか、それとも、どこ からもらっているかに関係なく、トータルの額でこうだからということでやるのか。は いかがでしょうか。その辺でもしご経験があればご教示いただきたい。つまり、自己申 告はきちっとディスクロージャーするのがいいに決まっているわけで、そうでない部分 をどう考えるかについて、もし何かご意見があればと思うのですが。 ○谷内委員 トータルというのがA、B、Cの製薬会社で、それぞれ100万円を超してい れば申告しなければいけないのだと思うのです。しかし、A製薬会社がスプリットして 出したときには、自分のほうで合算して出すのがよいのではないかと私は考えています。 ○末松委員 A、B、C、Dと来た場合は。 ○谷内委員 A、B、C、Dを足して100万円になるからではなくて、A製薬会社が100万 円を超していれば出すし、B製薬会社が50万円であれば出さなくてもいいと私たちは考 えていますが、それではまずいでしょうか。私たちはそういう考え方で、AとBは全く 関係ないと考えております。  収入の2倍以上もらってはいけない、たぶんうちの大学もそうだと思うのですが、文 科省の考え方を一度お聞きしたら、数年前だと思いましたが、そんなことは心配しなく ていいと言っておられたように思います。うちの大学は非常に厳しくて、年収の2倍は もらえないという規定があるのですが、そういうことは必要ないと言っておられたと理 解しています。 ○坂本研究企画官 参考資料1の10〜11頁が自己申告書の例ですが、大体それに沿って やっている所が多い、谷内委員の以前の御説明はそういうことと理解しております。こ この書き方としては「年間の合計収入が同一外郭組織から」ということで、ある組織か ら100万円を超えた場合に書くという形になっています。 ○平井委員 いまの末松委員のお話の中で1点気になったところがあるのです。利益相 反の問題は、このように捉えることがあるのです。ある基準があって、その基準の中で あったら、そこはフリーである。何をやってもいいのだ。利益相反であろうが何であろ うが、一切関知しない。ある基準を超えたら管理するのだ、このように捉える発想があ るのですが、私の個人的な意見として、これは利益相反の本来的なあり方ではないと思 うのです。  利益相反というのは、もともと参学連携を推進するため、それから、研究者の方々に なるべく安心して不安なく研究活動をしてもらうために実施するものですから、例えば、 年間10万円とか20万円もらっている方でも、不安があれば、利益相反のマネジメント の対象になる、あるいはお手伝いをする。仮に年間1億円もらっていても全く懸念がな い、バイアスなどということはあり得ないようなケースであれば、もしかしたら利益相 反マネジメントは必要ないかもしれない。もともと金額ディペンデントではないのです。 そこを踏まえて、こういうスレッシュホールド(閾値)を設定するということが大事か と思います。  だから、私が説明するときは、これはあくまで事務上の第一ステップである。金額が 少ないケースというのは、合理的に考えて利益相反問題のマネジメントが少ないケース が多いので、そこはとりあえず外して考えましょう。比較的重要な部分からまずマネジ メントさせてください。そのための閾値の設定をいくらにするかと、そのように考える べきかと思うのです。ですから、それは大学ごとに違うわけで、例えば医科系の大学で あって、総額がどうしても多いケースであれば、ある程度高めの閾値になることもあり 得ると思いますし、工学系あるいは文学系、芸術工科大学、そういう大学の利益相反マ ネジメントの場合には、かなり低めになるのです。これは大学によって全然違うので、 そういった観点から物事を考えるべきだと思います。だから、米国で1万ドルだから日 本で100万円、200万円。この下は何をやっても自由なのだ。セーフティーハーバーと いう言い方をすることもありますが、それは誤解を招く可能性があると私は考えていま す。  1点ご指摘のあった年収の問題なのですが、あれは一つの基準として、そこを見よう ではないかというような話があったにすぎないのです。実は、年収を超える報酬を受け ている方もおられて、それは文科省的にも特段問題はないということなのですが、一つ の基準として、年収の枠内であればアカウンタビリティ(説明責任)という点で国民の 理解も得やすいという点が考慮されているのだと思います。 ○笹月委員長 例えば1万ドルが適正かどうかというようなことは一概に言えない。だ からこそNIHのセリフとしてもSignificant Financial Interest、要するに、この利益 相反に関して意味のあるレベルのFinancial Interestですから、それはその都度違うの だと思います。ですから、例えば1万ドルで線を引いて、それ以下ならとか、それ以上 ならという問題ではない。まさにsignificantかどうか。その判断も本当は個々のケー スでやらなければいけないということでもあろうかと思います。 ○北地委員 1-4、指定型研究の場合の留意点の2つ目の・ですが、「過渡期でもあり、 機関において利益相反を管理する体制が整備されていない場合、利益相反自己申告書及 び研究実施計画書の提出を受け、厚生労働省において評価することも検討」とあります。 これの読み方なのですが、実は最初のNIHのところで心配した、利益相反マネジメント ができていないと決定することができる、つまり、こうしていないと見なしますと。見 なしか決定か、実際にはよくわからないのですが、それよりは、できていないときには 一緒に考えましょう型と、そのように持っていくと理解していいですね。 ○坂本研究企画官 これはまだ決定しているわけではなくて、あくまでも案ですが、基 本的な考え方としては、できるだけ各機関での対応を促すべきということがこれまでの ご議論であったと思いますので、それをベースにして考えております。したがって、各 機関でやってもらうが、過渡期でもありということで、こういう文章を書いたのです。 ○北地委員 NIH型みたいに、やっていないと決めて、決めた以上はもう出さないとい うようになってしまうと、不十分なものでもスタートさせてしまう所があるかと思いま すので、促進させるためにはこのほうがよいと私は思います。 ○望月委員 これは前回のこの委員会でも議論になっていたと思うのですが、「基本的 な考え方」の2頁の7番について「例えば、外部委員を利益相反委員会に参加させる等、 外部の意見を取り入れるシステムが必要」ということですが、外部の委員を入れるかど うかで意見は分かれたかと思うのです。この場合、外部委員を入れなくても、例えば 「参加させる等」の中に何となく含まれているような気がするのですが、この「等」と いうのは、参加させる以外にどういうことを考えておられるのかというのがやや気にな るのです。「等」を取ってしまったほうがいいという考えもあると思うのですが、いか がでしょうか。 ○坂本研究企画官 これについて前回までのご議論では、委員会の持ちようもまたいろ いろなパターンがあり、独立している場合もあれば、IRBが兼務するような場合もある。 それと、2段階に行うような場合があるので、細かいところは内部でやって、その結果 を上に上げて、上には外部の先生に入っていただく場合もある。その検討のプロセスの 中で外部の先生に入っていただくというイメージです。詳細に見るところに外部委員が 入る場合もあれば、そうでない場合もあるだろうということで書いてありますが、何ら かの形で外部委員の目を通した方がいいということが意見としては多かったと理解して います。 ○望月委員 利益相反委員会あるいは倫理委員会、どちらかには外部委員が入ることを 原則と考えるということでよろしいのですか。 ○坂本研究企画官 利益相反に関する検討プロセスの中で外部の方の目が通るというこ とですから、そこが一体化しているような場合であればよいのではないかという意味で 書いてありまして、両者が分かれているときに、こっちにいるからこっちはというわけ にはなかなかいかないのではないかと思います。 ○谷内委員 これは指針ですのでガイドラインだと思うのですが、ガイドラインという のは、つくっていただいても、浸透するまでに時間がかかるという問題点がございます。 法律で決めてしまえばわりと早いのですが、ガイドラインだけではなかなか浸透しない ということがあります。一つの可能性として、こういう指針をつくった後、できたら、 厚生労働省が主体で会議か公開のシンポジウムのようなものを開いていただいて、こう いうものをつくったから守ってくださいねというアナウンス的なことをしていただきた いというのが1点です。 ○笹月委員長 これは指針をつくる場合には常に問題になることなのですが、どのよう にそれを徹底させるのか。あるいは委員会の委員も、本来、これまでそういうことに長 けた人はそんなにいないわけですので、そういう人たちをどう教育するのかという問題 がありますので、最後にそれを議論したいと思います。 ○谷内委員 それに関連して、今話題になった「基本的な考え方」の7で「研究者及び 研究機関に説明責任がある」というときの「研究機関」の定義は。臨床研究倫理指針の 「研究機関」の定義は部局になります。しかし、私たちのような総合大学では、法人化 されてから、部局の権限というものはだんだん小さくなって、総長サイドに権限あるい は、間接経費というのですか、研究費が集まる。私は基本的に、利益相反のマネジメン トというのは組織の長の責任だと理解していますので、コンプライアンスをちゃんと上 げるということに関して、組織の長に責任があるのだということを是非明示していただ くことは可能かどうかをご検討いただきたいと考えます。 ○笹月委員長 それが適切だろうと思います。そのほか「基本的な考え方」あるいは大 きく抜けているようなことがありましたら是非ご指摘いただきたいと思いますが、いか がでしょうか。 ○平井委員 1-4の1頁目のいちばん下の行でインフォームド・コンセントが挙げられ ています。アメリカの事例を見てもインフォームド・コンセントは非常に重要なのです。 訴訟が起きて、最後にインフォームド・コンセント違反で終わるという例もかなりあり ます。「ヘルシンキ宣言」や「臨床研究に関する倫理指針」でもインフォームド・コン セントにかなりウェートが置かれているのです。そこで、ここはもう少し書いたほうが いいかと思うのです。単に記載内容等を含めてというよりも、どういった範囲の利害状 況を患者に伝えることが自己決定権ないしはインフォームド・コンセントの趣旨に沿う のか、それを真剣に考えていただきたいのです。また、こういう場で言うと恐縮なので すが、私が実務でいろいろ見聞きする中で、インフォームド・コンセントが不十分であ るということも間々あるのです、もちろん、そう多くはないと信じていますが。利益相 反の問題というのは、インフォームド・コンセントを含めて非常に重要なのだというこ とを是非何らかの形で書いてもらえればと思います。 ○笹月委員長 いまの点は大変重要なご指摘だと思います。大学では、利益相反に係る かもしれない、そういう状況が生じるかもしれないという懸念がある場合に、インフォ ームド・コンセントにそういうことを書き込む、あるいは、どういうマネージをすると いうようなことを書き込むようなことは行われているのでしょうか。 ○谷内委員 私たちのところも含めて、たぶん利益相反マネジメントしている所はすべ て、インフォームド・コンセントに明確に記述していると思います。この企業からこれ だけの研究費をいただいている、あるいは個人的収入が一定額以上あるとかと記述して いると思います。いまのところそれほど厳しいものがないので、金額は明示しておりま せんが、利益相反が一定以上あるということは被験者の人にちゃんと示すようにしてい ますし、それをマネジメント委員会でちゃんと監視しているということも一文入れて、 ホームページ上にその文例は出すようにしております。 ○宮田委員 1-4は類型化のためにつくられているので、いまの点は「基本的な考え方」 に入れたほうがよいのではないか。厚生労働科学研究費ということを考えると、被験者 保護をもう少し明確に打ち出す必要があって、そのためにインフォームド・コンセント は「基本的な考え方」のほうに盛り込んでいただきたいと思います。 ○笹月委員長 私もそう感じましたので、是非そうしていただけるとよいと思います。 ○坂本研究企画官 1-4のいまのところは、参考として既にあるガイドラインのマネジ メントプロセスを書いたところですので、ご指摘のように「基本的な考え方」のほうに この辺を書くべきということであれば、文章を考えさせていただきます。 ○笹月委員長 よろしくお願いいたします。1-4は類型による対比です。一般公募型の 場合と指定型の研究の場合。特に指定型の研究の場合、重要なことがあると思いますが、 どなたかご質問、ご意見はありませんか。 ○宮田委員 純粋な質問なのですが、指定型を受け取る機関というのは、もう体制整備 は終わっているという認識でよろしいのですか。 ○坂本研究企画官 指定型といいましても幅が広いので、正直に言って、我々としても、 その辺の調査はまだできておりません。したがって、体制につきましても、今終わって いる、ということを言うことはできないのが現状です。 ○宮田委員 そうだとすると、ひょっとして来年配れなくなる可能性があるのではない でしょうか。 ○坂本研究企画官 そのために厚生労働省の側で見る必要もあろう、という趣旨を書い ているというところがあります。 ○宮田委員 お話としては、原則は来年からやるけれどもということですね。 ○木下委員 おっしゃるとおり、それだけ大きな研究を行うところは、大学であると思 いますので、厚生労働省がやるぞと言えば、みんなつくると思います。国でやるという 形にするよりは、各機関がやるのだということの原則は崩さないほうがいいと思います。 その意味では、早く対応するようにという指示のほうが健全だと思います。 ○谷内委員 たしか今年2月に文科省で調査をしたと思いますが、臨床研究の利益相反 マネジメントをおこなっている所は10カ所に満たないと思います。7、8カ所ではない かと私は聞いています。このガイドラインをつくった所がやっているのではないかと私 は理解していますが。 ○笹月委員長 いま話題になりました、厚生労働省において利益相反が検討できるよう な体制を整備するというのは、厚生労働省が単独で、あるいは外からも人をリクルート するということなのでしょうか。 ○坂本研究企画官 ここも詳細はまだ決まっておりませんが、外部の先生方の力を借り ませんと、我々も簡単にできるとは思っておりませんので、やる場合には、何らかの形 を検討する必要があるという問題意識がございます。 ○笹月委員長 ガイドラインをどう徹底させるのか、遵守させるのか、あるいは逆に、 各研究機関でこの指針を本当に審査できるような人をどう教育し、育成するのか。育成 するというのは非常に難しいと思うのです。ですから、それをどのようにするのかとい うこともきちんと検討しておかないといけない。実際につくれ、つくれと言っても、で きる人はなかなかいないというのが現状だろうと思います。ですから、その辺も後で是 非議論したいと思います。1-4に関してはよろしいでしょうか。特に指定型は一般公募 型に比べてどの点が重要であるかがポイントですが、この点に関してご質問、ご意見が ございましたら、どうぞ。 ○平井委員 いまふと思ったのですが、指定型というのは、当該研究課題を実施する者 を指定するわけなので、それは厚生労働省ないしはその関係機関において指定するのだ と思います。その場合、指定する際の決定方法ないしは、そのプロセスの開示というの はどういう形になっているのでしょうか。 ○坂本研究企画官 基本的には、研究費の採択プロセスのルールがあり、それに従って ということになります。 ○平井委員 そこのアカウンタビリティについては、ここの中では心配しなくてもいい。 そこはここの範囲外であるということでよろしいのですね。 ○坂本研究企画官 たしか最初のころにもその辺は議論がありまして、まずはこちらの ほうを詰めてから、そちらのほうを検討する必要があるかどうかを考えてはどうかとい うことであったかと思います。 ○笹月委員長 いまの平井委員のご質問は、誰がどのようにして選考するのかというこ とですね。それは今議論しているCOIにはダイレクトに関わらないでしょうから、それ は置いておいて、これをつくった後、何か議論することがあれば議論しましょうという 括りだったと思います。1-4はその程度にして、最後に1-5、いよいよ指針をつくる場合 のフレームワーク、指針の構成(案)を先ほどご説明いただきました。目的、定義、基 本的な考え方、体制、それから厚生労働大臣の調査等となっていますが、何かご質問、 ご意見はございますか。 ○平井委員 この利益相反の問題は、社会状況や研究者の意識に負う部分が多いと思い ます。ですから、指針をつくって1年、2年、どんどん進化していくものだと思うので す。イギリスでは、指針をつくった後3年後に、体性幹細胞については改めて議論しま しょうなどと言ってスケジューリングがされていたと思うのです。今回のケースでも、 ステップバイステップですので、とりあえず現時点ではこの指針でいく。そして、3年 後に新たに検討して、そのときにオンサイトレビューを入れるとか、ここはこうしよう とか、その成熟度に応じた新たな検討をするとよいと思うのですが、いかがでしょうか。 ○笹月委員長 これまでのさまざまな臨床研究の倫理指針には、3〜5年後には必ず見直 しをするという一行が入っておりますので、ご指摘のように、これも是非それは必要だ と思います。 ○宮田委員 基本的にそれは大賛成です。実際にNIHのサイトをのぞいても、あまり厳 しいことを言うと、彼ら研究者は辞めてしまいますから、新しいエシックスのルールで どれぐらい影響が出たかということも、85%ぐらいは今のままでよい、というような話 が出ています。したがって、厚生労働科学研究費に対する指針による影響というものを 3〜5年の見直しのときにきちんとやらないといけない。我々は本当に良いことをしたの かどうか、という問題を後でちゃんと評価しなければいけないと思います。必ず指針に は良い面と悪い面が出てきます。  いま私がちょっと漏れ承っていることに関しては、利益相反というのがあまりに厳し いと研究が萎縮するのではないかと。木下委員や末松委員が随分ご指摘なさったことを 実際に懸念している研究者が現れていますので、そういう影響も含めて、実際にモニタ リングして見直しをするという体制をこの指針にビルトインしておかないと、この指針 が、本当はガイドラインなのに、法律みたいな効能を持ってしまう。法律とは違うのに 改訂プロセスがないという非常に不思議な規則になってしまうことを恐れています。3 年ぐらいの見直しが絶対に必要だと私は思います。  別の意見ですが、指針に対して実行性を得る。NIHで一体どのような影響があったか という調査がウェブサイトにありますから見ていただきたいのですが、30何パーセント ぐらいの人がoutside activityを、Significant Financial Interestも含めて申告し たと書いてあるのです。それぞれの研究機関で3割とは思えませんが、かなりの人から の申告が本当に起こった場合に、実際にそのような体制を組んでいない機関ができるの か。これは谷内委員に伺いたいと思うのですが。そういう意味では、指針をつくって心 とか精神、あるいは規則をつくって、実際にそれを実施するボディーの形成に対するサ ジェスチョンが何もないと全然うまくいかないのではないかと思います。  もう一つは、機関内に所属する人たちに対する教育というものを指針の中に盛らない と、やたら書類手続だけが増えて実行性がない、というようなことにならないのか。で すから5番目に、実行体制整備あるいは教育というようなことに関しての何らかの情報 を盛り込んだ方がいいのではないかと思います。 ○谷内委員 実際に産学連携をやっている研究者は、そんなにいろいろなアイデアが出 てくるわけではなくて、10年ぐらいの期間で大体決まってきます。だから、そんなに大 変だというような意識は私たちにはあまりありません。なぜかというと、利益相反のマ ネジメントというのは定期自己申告がベースになっています。定期自己申告を中心にし ていれば、ほとんどの方はマネージメントできると考えています。しかも、産学連携を 行っている研究者は、マネジメントしていただいて意見をいただくほうがありがたいと 考えていると思います。逆に言うと、産学連携を進めていくには、利益相反マネジメン トシステムがないと怖くてできない、というようなことを言う研究者の方が最近増えて きました。確かに、特に立場の高い上の方々では苦情を言う先生が多いのですが、私ぐ らいの世代で実際に産学連携を一生懸命やっている方々というのは、意見を言っていた だき、こうした方がいいよということを指摘してもらったほうがありがたい、と言う方 が結構多いです。 ○宮田委員 谷内委員、どうもありがとうございます。「大変」という言葉の解釈の問 題で、たぶん若手の研究者をどんどん出してくると思うのですが、事務処理の体制をつ くっておかないと。これは結構金と人が要ると思っているのですが、そこら辺の意味の 利益相反マネジメントの大変さということを、もう一度この指針の中に盛らなくていい のかと思っているのです。 ○北地委員 言うだけ言って代案がなくて無責任な発言なのですが、今回のこれは「利 益相反」という言葉を使わないと駄目でしょうか。というのは、大学との研究の独立性 とかということだけではなくて、元々のところでは、薬害とか、生命に関わるところが 出てきて、利益相反を検討した結果相反状況にないということがわかっても「利益相反」 という開示で責め立てられるような機会が増えるのではないかという懸念がされて仕方 がないのです、「相反」という言葉は。最初に利害調整とかということをしなかったの ですが、やはりこの言葉を使うしか仕方がないのでしょうか。開示とか。それから、 significantでないからいいと言っても、誰が重要と決めたのだとかという議論が必ず 出てくるような気がするのです。つまり、大学の学内とか研究機関内というのは、それ なりに普及活動をしてプロトコールなどがわかった人たちなのですが、この言葉が社会 に出たときに、「だって利益相反だったんでしょう」ということが独り歩きしないかと いうことが非常に心配になりました。 ○谷内委員 同じような事例が個人情報保護法ではないかと思うのです。あれも「個人 情報保護」をあまりにも謳ったために非常に厳しくて、名簿をつくることも大変になっ てきたという現状があるのです。ですから、委員がおっしゃるように、利益相反という 言葉をガイドラインに入れると確かに厳しすぎるかもしれないので、経済的な利害関係 の調整に関する指針、何かわかりづらいかもしれませんが、そういう形にしていただい た方がいいのかなと、いま北地委員の意見を聞いて思いました。 ○平井委員 そのクレームは私もさんざん受けているのですが、最近良いと思っている のは、COIですよと言うと、「それならいいね」とおっしゃる方が結構多いのです。英 語ばかり出てきて、本当はよくないかもしれませんが、ではCOIでやりましょうと言う と比較的スムーズに進んでいるケースもあります。ご参考までに。 ○福井委員 ちょっと違う点で、研究を行う側に利益相反が重要だというのはわかりま すが、もう一つ。臨床上、最近、診療ガイドラインがたくさんつくられています。その 診療ガイドラインの作成委員の利益相反、そのことが外国では非常に問題にされている のですが、日本ではそれがほとんど問題にされない。私自身、診療ガイドラインのつく り方、つくった後の評価に関わっているのですが、外国の評価基準では、客観的に言っ て、良い診療ガイドラインの評価項目の中に必ずCOIが入っているのに、日本でつくっ た診療ガイドライン、そのかなりの部分は厚生労働科学研究費を使って作っているので すが、そこではCOIの考え方が全く導入されていません。純粋な研究だけではなく、診 療面に非常に大きな影響を与える診療ガイドラインの作成についても、利益相反は大き な問題なのだけれども、ほかの国に比べて、日本はものすごく遅れをとっているという ことも頭に置いておいていただければと思います。 ○笹月委員長 具体的な例としては、どういう場合にコンフリクトの状況が生まれるの でしょうか。 ○福井委員 心筋梗塞のガイドラインでも何でもいいのですが、これこれのタイプの薬 よりも、これこれの薬のほうが有効性が高いというエビデンスがあると、リコメンデー ションとしては特定の薬のタイプを勧めるわけです。そのときに、作成委員がその薬を 作っている製薬会社と経済的な利害関係が濃厚な場合、利益相反という問題が起こって きます。そのような場面が診療ガイドラインの作成にはたくさんあるようですが、なか なかそこまで踏み込めていないというのが実情です。 ○平井委員 ヘルシンキ宣言の中で、診療の際におけるインフォームド・コンセントに ついても利害の報告が義務づけられていませんでしたか。 ○福井委員 そのころは、こういうところまで言われていなかったのではないかと思う のですが、いまは定かではありません。 ○平井委員 いまおっしゃられた例は、たぶんインフォームド・コンセントに近い部分 だと思うのですが、たぶん臨床研究も含めて。 ○笹月委員長 ヘルシンキ宣言の件は次回にでもお話していただければと思います。 ○谷内委員 福井委員のことについてコメントさせていただきます。アメリカの診療ガ イドラインは学会がつくるのだと私は理解しているのです。アメリカの学会というのは COIを非常に明確にしています。そういう関係で、アメリカのガイドラインではCOIが 必ず入ってくるのだと思います。日本の学会ではCOIへの対応について、最近はだいぶ 対応を検討し始めていますが、学会でほとんど対応していないという現状がございます。 がん治療学会で、今年の10月にシンポジウムを組み、来年4月からは完全実施したいと 言っていましたので、少しずつ変わってくると思います。特に、厚生労働省が音頭をと っていただければ、学会のほうも変わっていくのではないかと私は感じております。 ○宮田委員 いまのところはすごく重要で、実は、これの契機になったような話でもあ るのです。実際に厚労科学研究費をお取りになってガイダンスをつくるための研究をや りますね。そのときに、このCOIの指針というものがどのように適用されるのかという ことがあまりイメージできないのです。厚生労働科学研究費は学会が申請するのですか。 それとも、ある研究代表を設定するわけですか。 ○福井委員 最初のころは学会単位で診療ガイドラインをつくるというようにしなかっ たのです。リーダーシップをとれる個人の研究者がアプライして、その先生がご自身の ネットワークの中で分担研究者を選んでつくるという形になっていました。ところが、 何年か経って、一旦つくった診療ガイドラインは2、3年に1回リバイズしないと駄目で すので、それを学会が責任を持ってリバイズしようと。そうなったら、個人でつくった ものなのか、学会でつくったものなのかわからなくなってきたり、どこが責任を持つの かという話になったりして、少々混乱しているところがあります。かなりのものが学会 に移ってきているのは事実なのですが、そうでないものもあり、すべてが学会で括れる ものでもないようです。 ○北地委員 どちらかといいますと、今までの利益相反は大学の中のことを中心にやっ ていましたので、基礎研究段階のものはこのように溜っているのです。医学や生命に関 することで議論をしなければいけないことが、まだあまり出てきていないと思うのです、 事例はもちろん出てきていますが。学会や個人の先生の場合、研究機関を我々は一体ど のように扱えばいいのかと。基礎研究や副作用、薬の選定、そういうところの視点をも う少し見なければいけないかもしれません。件数はそんなに多くはないかもしれません が、影響と金額は大きいと思います。 ○末松委員 福井委員のご指摘は非常に重要で、学会で扱わないもので過去にあった事 例、ガイドラインとして実を結ばなかった例があるのです。トランスレーショナルリサ ーチで医療機器の開発プロセスを加速化するガイドラインを、経済産業省と厚生労働省 でお互いに知恵を出し合って行おうという試みがありました。除細動器や埋め込み型の もののほかに細胞培養、いわゆる組織培養のマテリアル、それからリポソーム製剤、こ ういったものを全部セットで医療機器として扱うという議論をされたことがあります。 ちょうど同じ時期にNIHでたまたまリポソームは明確に医薬品であるというガイドライ ンがそのときに出たお蔭で、いまのいろいろなものの中からリポソーム製剤が外れたと いう事例がありました。そのときには、当然まだCOIを議論をする委員が全部調べると かというようなことは全然やっていませんでした。ですから、今後の課題として、学会 が決めないガイドラインの部分、省庁のイニシアチブで決めなければいけない部分はま だまだたくさんありますので、福井委員がご指摘になったことは、十分考慮されるべき であって、私もそのように認識しております。 ○笹月委員長 個人のつくるガイドライン、あるいは学会がつくるとしても、学会と企 業とのCOIが当然出てきます。学会が学術集会を開くために、しばしば寄附をお願いす るというようなことは、どの学会でも行われているだろうと思うので、そういうことま で考えてくると、学会の問題も一つ出てまいりますね。 ○福井委員 「個人」と「研究機関」以外にも言葉が必要かもしれないと、これを見な がら思いました。 ○木下委員 いま福井委員がおっしゃったことは確かに大事です。基本的な考え方とし て、利益相反については、臨床医学の中でいろいろな問題があります。、その中で、今 回は特に臨床研究に関する利益相反とスペシファイした形の基本的な考え方のほうが、 より広くカバーすることになります。利益相反という問題は、我々臨床に携わる者には あまり理解されておりませんでした。従って、是非「基本的な考え方」に総論的なこと としてこのご意見を入れておいていただくのがいいのではないかと思います。 ○笹月委員長 ありがとうございました。いろいろご議論はあろうかと思いますが、一 つの区切りがきましたし、時間にもなりましたので、次回に向けて今日の議論を事務局 で整理していただいて、最終的に指針をつくる方向へまとめていただければと思います。 今日の議論はこれまでにしたいと思います。事務局から何かございますか。 ○坂本研究企画官 次回の開催については、日程調整をした上で後日ご連絡させていた だきますが、10月には開催したいと考えております。正式なご案内は、日程調整をした 後に送付いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。 ○笹月委員長 今日の会議はこれで終了といたします。大変貴重なご意見をたくさん賜 りまして、ありがとうございました。                                ―了―     【問い合わせ先】   厚生労働省大臣官房厚生科学課   担当:情報企画係(内線3808)   電話:(代表)03-5253-1111    (直通)03-3595-2171                                                  - 1 -