07/07/30 社会保障審議会後期高齢者後期高齢者医療の在り方に関する特別部会平成19年7月30日議事録 07/07/30 社会保障審議会後期高齢者医療の在り方に関する特別部会          第10回議事録  (1)日時    平成19年7月30日(月)15:00〜17:09 (2)場所   厚生労働省専用18〜20会議室(17階) (3)出席者  糠谷真平部会長、遠藤久夫委員、川越厚委員、高久史麿委員 辻本好子委員、野中博委員、村松静子委員         <事務局>         水田保険局長、原医療課長、唐澤総務課長 他 (4)議題   特別部会におけるこれまでの議論等について (5)議事内容 〇糠谷部会長  川越委員がまだお見えになっておりませんが、定刻を過ぎておりますので「後期高齢者 医療の在り方に関する特別部会」を開催いたします。  委員の出欠状況でございます。本日は、鴨下委員と堀田委員が御欠席でございます。ま た審議官は公務のため欠席との連絡を受けております。  では、議事に移りたいと思います。  前2回の特別部会においては、後期高齢者の医療について「外来」「入院」「在宅」に 分けて議論を行いました。今回は、第8回にお示しした予定のとおり、秋ごろを目標とし た「後期高齢者医療に係る診療報酬体系の骨子」の取りまとめに向け、前2回の議論を踏 まえて引き続き議論を行っていくこととします。  本日は、事務局から今までの議論について少し項目立てをした上で再整理をした資料が 提出されております。次回には本日の議論も踏まえまして、後期高齢者医療の診療報酬を 考える上での基本方針の方向性がわかるようなたたき台を事務局に作成させることを考え ております。本日はこうしたことを念頭において御議論をいただければと思います。では、 資料について事務局から説明をお願いいたします。 〇医療課長  医療課長でございます。本日は資料1だけでございます。前2回に議論をいろいろとし ていただきました。それまでの議論を含めまして、さまざまな議論があった項目を少し具 体的に立てて、その体系で整理をしてみました。  1ページでございます。目次に当たります。1.総論、2.外来、3.入院、4.在宅、 5.終末期医療、そういう形で組ませていただいております。それぞれの中でのボリュー ムでいきますと、特に特徴かあるというところとしては、在宅医療の部分がどうしても分 厚くなっているということでございます。  2ページ、「1.総論」です。基本的視点につきましては、4月にまとめていただきま した基本的な考え方の中でございました視点を述べております。生活を重視した医療。尊 厳に配慮した医療。高齢者及びその家族が安心・納得できる医療。これらを求めていくと いう視点が重要であると考えております。  総論としては、医療の連続性ということでございます。75歳以上が対象の保険制度でご ざいますが、74歳までと75歳になってからの医療が分断されるようなことがあってはい けない。その意味で、その部分は十分に留意する必要がある、という御意見をいろいろい ただいていたところでございます。  同時に、75歳になると必要な治療も受けられなくなるのではないか、という不安もある ので、そういうことがないような、当然ながらそういうことはない、ということも目指し て検討してくださいという意見もございました。  3ページは、「2.外来医療」です。  2−(1)の項目です。総合的に診る医師ということで、後期高齢者が慢性の病気が多い、 あるいは複数の病気をもっているという特徴もあることから、1人の方を総合的に中心に なって判断していただけるような、そのための総合的な医師、というものを養成していく 必要がある。ただ、その時に総合的に診るお医者さんそのものを、強制的にだれか1人を 決めなさい、ということはいかがなものかという御意見もございました。  総合的に診る医師の中身としては、基本的な日常生活の能力や、認知機能あるいは意欲 等について総合的に評価が行え、さらに結果を療養や生活指導で活用することができるよ うな要素が必要ではないか、という御指摘がございました。  2−(2)の項目です。患者の病歴等の一元的な把握ということでございます。繰り返しに なりますが、後期高齢者の場合には多数の疾患を持つ、あるいはそのことによっていろい ろな専門の医師にかかる場合も想定されるわけでございます。そのときの患者さんの医療 を中心とした状況について一元的に把握できる、そのような医師が重要なのではないかと いうことでございます。  4ページです。薬に関しては、できれば「お薬手帳」、これは現在もございますが、こ のようなものをとおして、関係者が、その患者さんがどういう薬をどれだけ飲んでいるの かということが把握できるような工夫であるとか、「薬の一包化」、つまり、一回に飲む 薬を一つの包みにする。あるいは朝・昼・晩、あるいは寝る前、そういうときにどういう 薬を飲むかをポケットに入れられるような「服薬カレンダー」、そういうものの活用を考 えてはどうかということでございます。  2−(3)の状況の共有と連携です。これはいろいろなところで出てきます。情報の受診歴 であるとか病歴、その方の医療情報について、関係の方々がしっかりと共有していく必要 があるのではないか。医療従事者間のみならず、介護・福祉等のサービスとの連携を進め るためにも、情報を共有することが重要ではないか、という御意見もいただいております。  また地域での連携、この場合は生活が中心であったりしますので、その場合にはケアマ ネジャーというものも重要な役割を担うという御意見もいただいております。  総合評価の結果、後期高齢者の方の状況を総合評価した場合に、その結果を関係者間で 情報共有して、診療のみならず介護予防等に活用することか重要ではないか、という御意 見もございました。  5ページ「3.入院医療」でございます。入院医療そのものは、74歳以下の入院医療と 分断されることがあってはいけないと思います。その上で、後期高齢者に特徴的なものと して次のようなものが考えられる。  3−(1)は、退院後を見据えた入院医療。退院後の生活というものがどのようになるのか、 それを見通した総合的な入院診療計画、こういうものをきめ細やかに考える必要があるの ではないか、という御指摘がございました。  入院して退院していくわけですが、そのサイクルの中で、それまで診てきたかかりつけ 医と入院先の担当医との間での情報共有は、入院に際しても必要になる、という御指摘が ございました。  3−(2)、入院中の評価及び関係者との共有です。入院中に基本的には主たる病気の治療 を行うわけですが、それにしても退院後、後期高齢者の生活の場面に移っていくわけで、 生活の中で療養していく必要があるのですが、その時に、どのような状況にあるのか、と いうことについてしっかり評価する必要がある。特に意欲や認知能力というところも重要 ではないか、ということでございました。  6ページです。退院に際して、完全に治った場合にはいいのでしょうが、多くの場合に は完全に治るという状況で退院されることはないわけでして、特に後期高齢者の場合には、 引き続き治療も必要になりますので、どのような医療や介護が提供されればいいのか、と いうところを踏まえた一つの場としてのケアカンファレンス、それができない場合の情報 の共有が不可欠ではないかということでございます。  3−(3)は、退院時及び退院後の支援です。退院時あるいはその前後です。特に退院直後 というものは、患者が入院医療から在宅に変わる、環境そのものも変わりますし、退院直 後というものが非常に不安定になるということから、このあたりをしっかり見るべきでは ないか、という御意見もございました。  退院調整の話、3番目に書いてあります。地域に戻っても必要な医療が継続的にできる ような仕組みが必要である。この退院調整をどのようにするのか。医療機関同士だけでは なくして、その後の「他職種が連携」と書いてあります。例えば介護関係の職種の方とも、 介護サービスが必要な場合も多々ございますので、それとの連携が重要ではないか、とい う御指摘がございました。訪問看護が非常に重要であることは在宅では当然です。この退 院時にどのような状況になっているのかというところを、看護師の目からも十分にしっか り見ていただきたいということがございました。  7ページ「4.在宅医療」でございます。在宅医療につきましては、1つ目は、次の8 ページにございます。  大きなくくりでいうと、4−(1)チーム医療です。情報の共有と連携。医療関係者間の連 携です。医療あるいは治療という面からいきますと、主治医等が中心となって、患者に関 する情報を提供して、医療従事者間での情報の共有を図っていってはどうかということで ございます。この場合、必要に応じてカンファレンスというものも活用できるのではない か、という御意見もございました。  次の介護従事者等の関係者との連携ということです。これは当然ながら介護福祉サービ スと医療サービス、この間での情報の共有は重要であるということであります。特にこう いう場面でのケアマネジャーの積極的な役割が重要ではないか、という御指摘がございま した。  これは全般にかかわることですが、患者や家族、医療介護従事者間での情報の共有とい うことです。ここでは総合評価の結果、どういうことに注意をしなければならないとか、 あるいはどういう治療が必要かというもの、診療や介護予防等の活用の面でも重要になる。  あるいは急変時の対応等についてどうするのか、ということもあらかじめ決めておいて、 関係者の間で共有していく必要があるということがございました。  在宅療養です。ここでは居住系の施設等も含んで議論をしております。特に老人保健施 設、医師が配置されている施設でございますが、基本的には、ここでは必要な医療が基本 的には施設内で提供されるということであります。ただ、医師の専門外の分野である場合 には往診が行われることもございます。そのために、当然ながら、医師がいる場所に外か らやたらと医師がいくということがないように、特に施設側もみだりに往診を求めないと いう基準を定めるべきではないか、という御意見もございました。  次の大きい項目は病院による後方支援でございます。ここは一つだけ〇がございます。 在宅患者さんが当然ながら病状が急変するという場合もよくあるわけですが、そのときに 円滑に入院できるように医療機関間の連携を十分に考えていく必要がある。これは事前に 共有するという場合もあるでしょうし、事後に共有する場合もあるかもしれません。いず れにしても在宅から入院医療に移ったときに、在宅での診療方針というものが大きく変わ ることがないように情報の共有化が必要ではないか、ということでございました。  9ページです。さまざまな支援です。1つ目が、歯科医療の分野でございます。特に要 介護者の口腔衛生のみならず口腔機能の維持管理は非常に重要なことであって、身体的な 合併症にも影響をしている、という御発表もございました。その意味では、歯科診療にか かる情報提供など、地域の医療関係者との連携の推進が重要である、ということがござい ました。  服薬管理、ここは外来でも出ておりましたが、この場合には「服薬カレンダー」である とか、「薬の一包化」などを推進して、飲み残し等がないように、必要な薬を必要な時に 飲める工夫が必要ではないか、ということがございました。  訪問看護でございます。ここにつきましては、入院中から退院時にどのような形の療養 が必要かということから、入院中から在宅への移行のための訪問指導等が必要ではないか。 夜間、深夜を含めて24時間の体制というものを充実することが重要ではないか。いまのと ころ訪問介護というのは、回数がある程度制限されているということもございますので、 その場合に特に状態が不安定な方については、一日に何度も訪問しなければいけない。そ ういうものの必要性を認めるべきではないか、ということかございました。  4−(2)は、居住系の施設を含むさまざまな施設における医療です。介護保険の領域では、 施設サービスに規定されている介護療養型医療施設とか老人保健施設、特別養護老人ホー ムという施設ものと、居宅サービスがあるわけです。自宅も当然入るわけですが、自宅や その他の居住系の施設、こういうところの問題がある。特に居住系の施設につきましては、 その中でどのような介護を含めたサービスが行われているか、非常にさまざまでございま すので、その状況をみながら適切な評価を行う必要があるという意見がございました。  9ページ「5.終末期における医療」です。ここでは2項目ございます。5−(1)は、本 人の意思の尊重ということです。これは終末期の意思確認というものを後期高齢者の一人 ひとりでやっていく必要がある。ある程度終末期が見通せる状況であれば、特に本人の意 思確認をできる仕組みを考えてもらいたい。  本人が意思表示ができない場合での延命治療の在り方、これについては医政局からも資 料をいただきましたが、本人の意思を代弁できる家族がいればそうですし、それがいない ときにはどうするのか、もう少しはっきりさせるべきではないか、という御意見をいただ きました。  5−(2)は、終末期における診療と看取りの問題です。特に終末期の病状の急変時の対応 等における患者の変化に応じた診療等は、この情報提供をしっかり持つことによって、過 剰でない診療ができるのではないか。そういう意味での情報提供が必要ではないか、とい うことでございました。  終末期での診療内容、これについては事前に書面等で希望というものを聞いておいて、 しっかりと書面でもって関係者間で情報を共有することが重要ではないか、ということで ございます。  最後の5−(3)疼痛緩和ケアでございます。緩和ケアにつきましては、なかなか技術的に というか、現在、必ずしも十分に在宅医療の場でも広がっていない。あるいは入院医療で も広まっていないといわれております。特に疼痛緩和についての知識の普及のための方策、 その専門家による研修等の充実が必要であるという御意見がございました。  特に麻薬などの服薬、麻薬などの投薬を受けている患者さん、こういう方々が在宅にお られる場合に、適切な保管管理方法、あるいは不要となった薬剤の廃棄の方法等について 十分に指導をすることが必要である、という御意見がございました。  以上、項目立てをして現在までの御意見の整理をさせていただきました。これをもとに、 きょうの御意見を踏まえて次回に最終的な方向に向けての資料を取りまとめたいと思って おります。ここに盛られている事項、あるいは盛られていない事項がございましたら、積 極的に御意見をちょうだいしたいと思います。  説明は以上でございます。 〇糠谷部会長  ありがとうございました。今回は資料がこれまでの議論全体を含んでおりますし、中身 も、外来、入院、在宅等多くの分野にわたっております。そういうことですので、議論を 一つずつ分けて、分野ごとにやっていた方がよろしいのではないかと思います。もちろん 最後に、再度全体について振り返って議論をする、という機会も持ちたいと考えておりま す。  そういうことで、最初は、資料1の1〜4ページまでの「総論」及び「外来」について の御意見・御質問などを始めていきたいと思います。そういう運びでよろしくお願いした いと思います。どなたからでも結構ですのでお願いいたします。 〇野中委員  まず総論のところです。1−(2)の医療の連続性等というところに4つの〇があります。 そこには「国民の声には、少ないかもしれないが、必要な治療が受けられないのではない かという不安があり、これがなくなることを目指して検討していくことが必要ではない か。」という意見が書かれております。前からもいっておりますし、特に後期高齢者の医 療には、その連続性が、すなわち医療を必要な人には必要な医療が提供できる原則を貫く ということが、最終的には後期高齢者の尊厳に配慮した医療ということになると思います。 ぜひ、その辺は注意をしてぜひ配慮していただきたいと思います。  「治す医療」と「支える医療」が書いてございます。最後の終末期の話にもなりますが、 本人の希望にどう配慮するのかが尊厳で、そのことも患者さんと一緒に、そして患者さん の背景などを考慮しなければ支えることはできないので、その辺に対してもぜひ配慮して、 単に支える医療という言葉だけではなく、どのように実現していくのかに関しては御配慮 いただきたい。 〇辻本委員  4ページの一番上に「総合的に診る、という中には、他科の受診状況を聞き出す努力」 と書かれてございます。いま研修していらっしゃる若いドクターとか、学生さんたちは共 用試験のOSCEなどで、コミュニケーションということが教育の中で大きく扱われてお りますが、50代以上のお医者さんの本音のところで、私もよく耳にするのは、僕たちはそ ういう教育を受けてきていないのだよねという言葉。だからコミュニケーションができな くてもいい、という問題では決してないと思います。そうした教育というところに、でき ない理由を探してしまうということもまま耳にする現実です。  聞き出すということがこの門構えを書いた耳「聞く」ではなく、耳へんを書いて十四の 心と書く「聴く」、あの聴くという姿勢を改めて後期高齢者の診療に当たる方たちには心 していただく、ということを大切に思っていただきたいということをお願いいたいと思い ます。 〇村松委員  いまの辻本委員と重なります。聞き出す努力が必要ではないかというところが、私とし てもとてもひっかかります。もう少しみずから言いたくなるような聞き方、というものを 教えていく、医師たち看護師たちすべてに、そういうところまでも少し考えないといけな いのではないかと思います。  この文章全体も、聞き出すとか、情報共有でも医療者・福祉者だけであって、利用者と 家族はそっちのけのようなところがあるというよりも、そのようにとられてしまう、そう いう文章のように思いますので、すべて、あくまで利用者と家族の方が中心である。主役 である、その上でその人たちが治療の方向性を見いだせるような情報共有というところが 私はとても大事ではないかと思います。  これからの後期高齢者というのは、私たち団塊の世代がこれから年をとっていきますと きに、一方的に指導をされるというのではなく、いまから自己管理を、いろいろな機会が ありますので、例えば血圧だとか、脈を測るとか、そのレベルだけではなく、例えば酸素 飽和度を測るとか、血糖値を測る、いろいろな器械があります。そういうもので自己管理 をしている、その上で医師にきちんと伝え、それを受け取られ、継続される医療というよ うにしていく必要があるのではないか。  いまどうするのか、「総合的に医師は診る」ということになっておりますが、その前に、 一般市民の私たちが自分の健康を維持していくための方法論、というものもちょっと加え ていただけると、この後期高齢者にはもっとプラスになるのかなと思いました。以上です。 〇野中委員  辻本委員が言われた総合的に診る医療は、最終的には大きな話題になると思います。そ れは入院にも共通した話です。本来は患者さんを総合的に診て、その上に專門的な医療が あるべきであって、ここで総合的なという部分が語られるというのが、どうも私としては 理解ができません。薬や検査が重複される。高齢者はいろいろな病気を抱えておりますか ら、そのことに関しては薬や検査の重複が問題にされると思いますが、現実に、薬と検査 が重複しているのかというデータがほしい。厚生労働省のさまざまな委員会などでよく言 われるのですが、本当にそうなのかデータでもそれが本当なのか。もう一回調査してほし いと希望します。  外来で患者さんといろいろとお話をすると、実はどこどこの医療機関にかかっていると いう話を聞き出せます。例えば風邪でも、他の医療機関にかかっていたとか、聞かないと 重複するのは当然なので、そのように聞きます。  実際に患者さんと話をすると、先生に怒られるのではないかと思いました、と患者さん が言うことにも遭遇します。それほど患者さんたちは、逆にいえば他の医療機関への受診 を言いたくないのかなと思います。  他の医療機関にどのようにかかっているか、聞くのは医者として当然の話と思います。  個人の能力として聞くという段階もありますが、私は総合的にいろいろな職種から情報 を集めるということも大事と思います。特に看護とか介護などさまざまな職種の方々から 情報をつかむのが大事と思います。  現実は、お薬手帳もある面では活用されていて、私も活用したこともありますが、中に はお薬手帳を3冊も4冊も持っている人がいるのも事実です。患者さんが薬局を一つにし てくれればいいわけですが、実際に薬の重複と検査の重複が全くないことは私も体験して おります。  ただ、それが本当に議題になるほど問題なのかということに関しては、ぜひ、調査して いただきたい。最終的には、情報をどうやって周りの関係者から患者さんとの会話から共 有するかが、実は総合的に診るという部分で大事な話です。個人の能力として総合的に診 る医者を語ることに対して、疑問を感じます。  患者さんの生活を支えるのであれば、むしろ薬や検査の他に患者さんの生活を把握しな ければ総合的に診る事はできない。  情報の共有がいままでできていない部分をどうやって解決するか、それを単に医師の能 力だけで解決するということだけで本当にいいのか、今後後期高齢者の話を考えるとき、 仕組みという部分の中で考えていかないと解決できないのではないかと思っております。 〇糠谷部会長  いまの野中委員の御議論で、私がいうのも早すぎるかもしれないのですが、むしろ私な どはこういう議論は初めてですから、新鮮な目というか、わからないものは大胆なことを いうのかもしれないのです。事務局にも教えていただきたいと思います。  この部会は診療報酬の基本を最後はまとめるということになっていて、いまの野中委員 のお話もそうだと思いますが、総合的に診る医師が大事ですとか、あるいは情報の共有を しましょうそれが大事です、ということが最後に報告として出てきたとした場合に、診療 報酬は中医協がお考えになることですから遠藤委員にも教えていただければと思います。 ある意味では、野中委員がおっしゃったのは当たり前といえば当たり前のことです。しか もそれは診療報酬で、どういう形で情報の共有というのは皆でして、それをだれにつけて あげるのかというのはよくわからない。言っていることは皆正しいのですが、それがどう いう形で現れるのかというのは、私はイメージできないところがあるのです。私がこうい う質問をしておかしいのかもしれないのですが、遠藤委員でも事務局でも教えていただけ ればと思います。 〇遠藤委員  事務局が答えることかもしれません。基本的には、点数というのは医療行為の非常に強 力なインセンティブになるわけですので、ある種、ここで方向性が決まれば、その方向で 医療が変わっていく形の報酬のインセンティブをつける、そういう考え方であると理解し ております。 〇糠谷部会長  それは具体的にどういうことでしょうか。患者として考えた場合に、どういう薬をもら ったとか、初診料が幾ら、というのはすぐにわかります。情報の共有というのは、大勢で 共有するわけですよね。それをどういうインセンティブで皆につけるということもないの でしょうし、かかったお医者さんにつけるということになるのでしょうか。 〇川越委員  見当違いの発言ですと恐縮です。例えば私たちの診療所の医者が診ている患者さんがい まして具合が悪いということで病院に紹介をする。この場合には、まさに情報の共有とい うことになります。そのときには、診療情報提供料という形で、そのケース一つについて 幾らという形で点数が設定されております。従来はこういう点数はなかったのです。です から、連携が大事であるということを診療報酬の上で、そういう形で表されているという ことがございます。 〇野中委員  いままでの診療報酬の考え方では、限界があることを認識していただきたい。  入院から外来、外来から入院を考えると、病状の悪化に関しては、診療情報の提供で考 えますが、その患者さんの生活は、患者さんの状況にもよりますが、介護保険のケアプラ ンで、ケアマネとかの他職種と情報を共有しながら患者さんの生活を維持するわけです。  病院に入院するにおいても、医療の情報提供も必要ですが、介護の現場での情報も必要 です。ケアマネはこれらの情報を多職種と協力して集め、それを病院に情報提供する。そ して患者さんの生活を支えるということになるわけです。  いままでの考え方と異なった視点で診療報酬を検討すべきと考えます。  もう一つは、高齢者ですから病状が悪化して入院することがあるわけです。入院して集 めるデータには、医療機関における病状を診療情報だけではなく、患者さんが家に帰った ときに必要なサービスの部分の情報提供も必要です。  退院の際、病院から私たちに提供される情報を基にして、在宅の現場に行って、訪問看 護師さんやケアマネと一緒になって、生活に応じて、患者さんの生活を支援していくわけ です。  そういう作業が、介護保険では、担当者会議として訪問看護など多職種とやるようにな っています。入院だけではなく、毎日の外来においても、患者さんの病状だけではなく、 先日説明された後期高齢者の外来患者さんの診療のイメージに沿って、複数の疾患を擁し ている患者さんを総合的に評価する。医療では、それは当然の話です。そのためには医者 個人の能力だけではなく、多職種が絡む部分を、まず評価していく必要があると考えます。  部会長が質問してくださったように、従来の診療報酬の考え方で、インセンティブを与 えるだけで皆が実際にそのような方向で動くのか。特に総合医という部分を医師個人の能 力として考えることは必要で、今後も私たちが勉強していくことも大事だと思いますが、 総合的に診るということを皆で連携して実行にしていくという視点がないと、現実には患 者さんを総合的に診ていくことは、前に進まないのと思います。 〇糠谷部会長  いまの野中委員のお話で私はよくわかりました。余計なことを申し上げました。情報と か共有とか総合というのは、非常に一般的というか、大変に広い意味の言葉ですから、な かなかそれでどうなの、というところにどのようにつなぐのかというのは、いまの野中委 員のお話でわかった気がいたします。なかなか難しいなという印象はあります。余計なこ とを申しました。 〇遠藤委員  最初に野中委員が御発言された内容で、私も疑問を持っていたことがありましたので、 それに対するある種の御回答を得たのかなと思います。外来の問題です。総合医の問題で すが、医師も患者も専門医指向の中で総合医というものをつくり、さまざまな社会的な評 価を与えたとしても、これは期待ができるためには、それなりの期間がかかると思うわけ です。  しかし短期的な議論としてみると、それに期待をするということがどこまで現実的なの か。そこでむしろ医学的にお聞きしたいのです。  例えば、年をとって、目が緑内障になって前立腺の肥大があって腰と膝が痛くて杖をつ いていて血圧も高い。こういう病気は一人の医者で治るものでしょうか。そういうことで す。そういう人はざらにいるわけです。そういうざらにいる人たちにどういうことをする のか。全部を診るという話なのか、それともこれは専門医にかかりなさい、これはかかる べきでない、というようなアドバイスをするものなのか。外来のところで総合医の役割が よく見えないのです。  それが在宅のときには、そういう医師が来て包括的に診てくれるというのはよくわかり ます。果たして、後期高齢者の外来のときに、こういう人たちを総合的に診る医師という のが、どういう役割を果たすということを期待しているのか、というのがちょっと見えて いないということが一つです。  もう一つは、本当に総合医に期待をするというのであれば、その育成は実現可能なのか。 短期的にです。そこの問題があるのです。私は何となく実現が不可能ではないかという気 がするのです。同時に元気な後期高齢者であれば、それなりの専門の医師にかかって、が んかどうかは見落としてほしくないと皆は思うわけです。そういう意向がある以上は、そ こをどう調整するのかも課題です。  結局、そこでむだがおきないようにするためには、情報の共有というか、ある種のネッ トワークのようなものを非常に重視するという野中委員の考え方は、一つの方向性を示し ているのかなと思うわけです。  要するに、すべてを診るような医師というものをどのくらい現実的に考えて制度設計を するのか、ということの問題提起というか疑問を申し上げました。以上です。 〇高久委員   ここに総合医という言葉が出ています。後期高齢者ですと複数の病気を持っていますか ら、先ほどの目と前立腺でなくても、例えば高血圧と糖尿病の両方とかは当たり前のこと としてあります。多分、目も悪いと思います。そういう複数の疾患を持っている人を診る のを総合医といいます。  また、これを見てみますと、日常的な生活の能力とか認知機能、意欲についても判断を する、他科の受診状況を聞き出す能力も持っている、一種のスーパーマンのような要求を しているというようにも見えないわけではない。  もう一つ、総合医の役割も場所によって違うと思います。僻地にいきますと、そこには 一人のドクターしかいませんから、来た患者は全部を診ないといけない。ある程度のレベ ルの診療はしないといけない。自分の診療の能力以上の患者のときには、紹介をするとい うのが普通の在り方です。自分の診療能力の限度を見極めるということは、言うのは簡単 ですが、難しい場合もしばしばあります。  総合的な診療能力をもった医師が必要なことは重々ですが、そう簡単には養成できない。 そのように考えています。いま関連する学会で、総合医の認定制度が始まっていますから、 そういう制度がうまくいっても恐らく5年とかもう少しかかる可能性があります。 〇糠谷部会長  きょうは大変に盛りだくさんですので、また全体として戻るということがあるべしとい う前提でよろしければ、次の入院のところに入らせていただければと思います。5〜6ペ ージの入院のところで御議論をいただければと思います。 〇野中委員  遠藤委員の質問に対して、答は、5ページ、「急性期入院医療にあっても、治療後の生 活を見越した高齢者の評価とマネージメントが必要」ということです。実際、高齢者の評 価をして、マネージメントをどうするのか、このことに一番大きな意味があると思います。  そこには、遠藤委員がいわれたような患者さんが外来受診されたとき、患者さんの訴え を聞いて、当面の方策を説明し、そして患者さんの状況を診て、眼科の専門の先生に診て もらう、あるいは違う病院の先生に診てもらいます。相談をして患者さんと考えていくこ とが本来の方法と思います。  そのためには、評価が必要なのです。現場の医療で最も不足しているのは、專門的な医 療が必要な状況であるかの評価と思います。一方で患者さんがどうやって生活をしていく か、この部分に対する評価は、必ずしも医師だけでできるわけではなく、多職種が皆で評 価することが大事と思います。  患者さんが外来に通っているとき、つまり介護保険などのさまざまなサービスを使って いないときには、医師の診断や治療が主となります。しかし地域包括支援センターと協力 してあるいは看護師さんと共に患者さんの生活をみていく評価で充分と思います。  入院では、患者さんは体に異常を抱えて入院される。まずはその異常に関して治療をす る。どの様に治療するところから始まるわけです。病状が安定したら、どこで治療を継続 しながら生活していくのか課題になります。この課題を整理することが求められるわけで す。  その作業が現実には適切に実行されていない。それは退院後の生活を考える行動をして いないということです。  この入院の場合には院内の多職種連携により、患者さんの生活背景と治療との継続をど う計画する事こそ、高齢者の評価とマネージメントです。  そこでCGAが提案されております。CGAを調べてみますと、これは老年病学会で提 案されております。しかし、老年病の病棟で退院にCGAが行われているのかの調査報告 を見ましたが、残園ながら実際CGAの大事さを理解しているのは、老年病の医師でも6 割。実際にCGAが行われているのが4割という数字が出てきます。まだまだ現場の老年 病の専門の先生ですら、そのことの重要性をそのくらいしか理解していないということで す。  なぜ病院で、少なくとも老年病の病棟から退院する際に、行われていないという理由は が問題です。  その一つの理由は、高齢者とリハビリテーションという項目にCGAは書かれている事 にもあると思います。CGAに固執しているのではなく、多職種が集まって討議する事を 最も評価すべきことです。リハビリのためだけではなく、自分の家とか、さまざまな施設 で暮らすときにも評価してマネージメントする事が大事と思います。  余計なことですが、介護療養病床の話でも、なぜ患者さんが介護療養病床にいるのか、 あるいは老人保健施設にいるのかという根拠を、施設が評価してマネージメントしていれ ば、こんな大きな問題にならなかったと考えます。  現実に私もいま何名か在宅でお世話ささせていただいておりますが、病院から退院され て在宅に移るときには、最近は病院が強引に退院してくださいと言っている事を経験しま す。御家族が理解する間もなく退院が決まって、現場でこの御家族と多職種と調整して在 宅の生活を実現していく、というのが最近では非常にふえております。患者さんか納得し て退院している状況ではないわけです。  CGAを実行している老年学の病棟もあるでしょうが、多くの病棟では実行されていま せん。病院が特に高齢者に関しては評価をして次の場所に移す作業を行っていくべきであ り、それこそ総合的に診る医療と思います。個人の能力として総合医を語ることは、これ から5年先とか10年先は可能かもしれませんが、総合的に診る事を現状では一番に考えて いただきたいと思っております。 〇辻本委員  先ほどから総合医への期待は5年後とか10年後ということを何度もお聞きして、来年か ら始まるのにどうするのだろうという非常に悲しくなるような気持ちでお話を伺っており ます。  この5ページと6ページに当たるところで少し申しあげておきます。認知症の高齢の親 をみる立場の方のお話をじっくりと聞くおりがございました。日本の中でも屈指にカンフ ァレンスを地域連携ということで取り組んでいる有名な地域の住民のお一人です。  その方の親が退院をするときに、カンファレンスが行われた中で何が一番悲しかったか、 腹が立ったか、それは病院のドクター、入院中に担当してくれたお医者さんがそこに参加 してくれなかったことだったそうです。その御家族は、なぜ参加してくれないのかという ことを問うたようです。そのときにその地域の方たちが、公式におっしゃったのかどうか わかりませんが、病院の先生は退院後の患者さんには興味関心はないのです、ということ がまことしやかに語られてしまったという話を聞いて、非常に悲しかったというお話を伺 いました。  たまたま、別なシチュエーションですが、私どもは月に一度、患者塾という語り合いの 場ということを150回ほど続け、ここ数ヶ月は後期高齢者の医療に関することをずっとシ リーズのテーマで取り組んでおります。先般、在宅医療ということで訪問を一生懸命に努 力しているドクターのお話を問題提起として聞いたあとに、参加者が自由なディスカッシ ョンということでグループワークの中で話し合いました。そこに参加した病院のナースが、 在宅看護を取り組んでいる人の話を議論の中で聞きながら、お家に帰ってからの患者さん のことは、病院の中にいる私たちは想像も及ばない、いま病棟でやらないといけないこと を一生懸命やっていて、退院後にどうなっていくのか、関心もないばかりか、そこにまで 想像力も及ばなかった、ということを学んだという感想を述べてくださったのです。  これが来年4月から始まるといういまの現状なわけです。どうしたらいいのだろうかと、 患者の側にしか立てない私としては非常に心細い気持ちをいまもまだ抱いているのが本音 のところです。 〇糠谷部会長  ありがとうございました。 〇高久委員  この5ページのところです。「入院に際しても、それまで診てきたかかりつけ医と入院 先の担当医の間の情報共有が必要ではないか。」これはまさしくそのとおりです。現実に は、かかりつけ医を経ないで入院してくる患者さんが結構おります。そういう患者さんの 場合には、退院するときに、どこに在宅というか退院後の医療をお願いしていいのかわか らないのですね。そういう状況も結構多いということを申しあげたいと思います。 〇野中委員  それは現場としてそのようにお考えになるのは十分によくわかりますが、だからこそ連 絡調整とか、それがなぜ現場で行われていないのかということを考えないと、解決に向か ない。 〇高久委員  患者さんが直接病院に来て、具合が悪いと入院するというのか結構多いわけです。日本 のいまのように、患者さんがどこの病院にも自由に、夜などに来るという状況が現状です から、退院するときに、どこの開業の先生に紹介していいのかわからない。もちろん連絡 網をつくっていく必要はあると思いますが、しかし現実にはそうです。かかりつけ医の方 の紹介状を持ってきて入院された方は簡単です。そこにお返ししてお願いします。そうい う方が少ないから困っているのです。 〇辻本委員  先ほど言葉足らずでしたので1点加えます。急性期医療の現状の中で興味関心がもてな いという余裕のなさ、それも一方の問題だと思います。決して悪意があってということで はなく、そこまで余裕がない医療現場の実態、というのも今日の現実の一つだということ を加えさせていただきたいと思います。 〇川越委員  まさに病院と診療所というか、地域の中の連携の在り方ということが問題になっている と思います。こういう問題はいろいろなところでディスカッションになっております。私 が関係しているところでも、がんの専門病院から末期になって患者さんが地域に帰ってい くというときに、病院の方が余り熱心にやっていない。ポンと投げられて私たちのところ に調整されながらやってくる。そういう不満をおっしゃる先生方もいらっしゃるのは事実 です。  病院の方も、いまは在院日数を減らすということが至上命令のようになっておりますの で、そういうことから、やることがなくなったら地域に帰す、そういう状況が起きており ます。  その問題を考えるときに、非常にいろいろな大事なポイントがあると思います。一つは 私たち医者といいましても、病院で働く医者と地域で働く医者は違うのです。その違うと いうことの一つは、一番大きな面は、病院の医者は医療の中でしか患者さんを診ませんが、 これは先ほどから野中先生が指摘されておりますが、地域の医者というのは、医療と同時 に生活という点を一緒にみている面があります。そういう点があるということを一つ押さ えておかないといけないと思います。  もう一つ大事な点は、いままでの日本の医療というのが、病院を中心にどうしても構築 されてきましたので、何でも病院でやって、あとを病院の延長を在宅でやってもらうとい う感覚がどうしてもあったと思います。ですから、そういう考え方が本当に良いのかどう かという反省はしないといけない時期になっているのではないか。それはいまいった患者 さんが住みなれた地域で過ごすということには、生活支援という視点がないと無理です。 このことは今回のまとめの中にも盛ってありますが、では具体的にそのことを実現するた めにはどうすればいいのか。  つまり、病院に全部をお任せして、在宅のアレンジまでやってもらうということが本当 によいのかどうか、そういう点を反省しないといけないのではないかと思っております。  ちゃんと整理されないままでポンと在宅に投げ出される、これはいまはやりの言葉でい うとがん難民とか、さまようがん患者ということになってしまいます。  実は、がんのことに限って恐縮ですが、この問題は私たちのようにホスピスケアにかか わっている医療者が最初に求めたことです。もっともっと早い時期に、病院でやることが 終わったら、早い時期に患者さんを我々にバトンタッチしてほしい。現実にそういうこと が起き出してしまったのです。がん専門病院がいままででしたら、長いこと引っ張って外 来で診ていて、患者さんがヘトヘトになって通院できなくなって初めてホスピス医とか在 宅に渡す。そういう形になっていたのが変えられた。もう病院ではやることがないといっ た段階で、次のところにバトンタッチするということが行われるようになりました。  これが良いか悪いかということは別問題です。実際にそういうことは必要ですし起きて いるわけですから、それをどのように考えていけばいいのかというときに、先ほどから申 しましたように、病院が全部をやるという考え方は、基本的に反対です。  いまこれは言葉がどうなるかわかりませんが、がん患者の地域支援センターとかがもし できるとしたら、病院にそういうものをおくのではなく、地域の方にそういうセンターの ようなものを設定するべきではないか、というのは、根本的に考えていることです。  病院の方が在宅のことを知らない、これは確かに直していかないといけない、きょうも 実はこの会にちょっとおくれてきたのは、ある患者さんのところにいってきたからです。 2人診てきたのです。そこにある新聞の記者さんが私のところに取材にきていて、同行し ていったのです。たまたま亡くなった方がいまして、家族の方の許可を得ましたので一緒 について見ていただいたのです。  本当にびっくりされていました。在宅で本当にこういうことができるのかということが、 そういう疑問を持ちながら来てしまった。実際に亡くなった患者さんもみた、いま治療中 の患者さんもみて、家族の話も聞く。本当に考え方が変わったということをおっしゃって いるのです。  辻本さんがおっしゃっていたように、病院の医療者が知らない、知らないままに在宅の アレンジをするということは、本来はおかしな話です。それを是正しようとするなら、そ ういうことをアレンジする方には在宅のことを徹底して知っていただかないといけない。 少なくとも在宅で働いたという経験がないといけない。そういう方がアレンジをするとい うことは非常に不幸なことになります。我々在宅を担う者としては、逆に変なアレンジを されることですごい迷惑を被るということがございます。  ですから、この連携ということは特に大事ということは重々承知しておりますが、その 時の在り方ということを本当に慎重にやっていただきたい、ということが私の感想でござ います。 〇村松委員  先ほど来のお話と関連します。ここの3−(1)の2つ目です。「入院に際しても、それま で診てきたかかりつけ医と入院先の担当医との間での情報共有が必要ではないか。」とあ ります。私はちょうど病院の医師、かかりつけ医との中間で動いていることが多いので、 とても感じますのは、病院の医師というのは、自分たちの治療をすべてやって、あとかか りつけ医のことを、悪い言葉でいうと、どうせできないのだから、ただわたせばいい。器 械もこのままでお願いします。あとは外来にくればいい、というやりとりが非常に多い。  実際に辻本委員がおっしゃっていたように、興味関心というのが薄いのです。病院にい ますとね。看護師も医師も確かに余裕がないということもあるのですが、余裕があっても 関心がない。  その意味でいうと、もしこの後期高齢者制度うんぬんということであれば、そういう医 師たちに対して、生活する人とはどういうものかということを、もう少し学んでいただけ る、あるいは意識をしてみずから学ぶ方法論というものを打ち出さないと、情報共有が必 要ではないかではなく必要なのです。必要なのですが、できないのです。そういう気がし ております。  ですから、本当に適切に行うべきであるということです。共有はね。ですができていな い現状がある、それは病院側の医師たちにも問題がある。むしろかかりつけ医というのは、 かなり訓練されてきている先生が多いので、人の生活の中でその人を総合的に診ようとい う努力はなされてきていると私は思います。  その意味で、その辺の病院の医師に対する意識変革、それは条件として私はつけてほし いと思います。そうしなければとても共有はできない、そういう気がいたします。最終的 には利用者、患者さんたちが最も困るということになるのではないかということです。  もう1点あります。6ページ3−(3)「患者は退院直後に最も不安」そうなのです。です から、退院前後、何回か顔合わせから、あるいはお話を伺うとか、そういうことが必要だ ということを含めていただきたいと思います。もちろん退院当日もです。以上です。 〇野中委員  川越先生がいわれることが非常によくわかります。現場の在宅医療をやっている人間に とっては、病院が余り勝手な方向性を決めるな、現場では患者さんたちとやっているので すから、安易に決めるなという視点は理解できます。しかし私は病院がすべてという面で 主張しているわけではありません。  実際に考えていることは、現在、病院が在院日数短縮などの影響で治療が終わりました から退院してくださいというわけです。それが当たり前になっています。在宅であろうが どこで患者さんが生活しようが、在宅で生活したいという意志、あるいは了解を得て初め て在宅医療は実現するわけです。退院する前に、診療所の医者と病院の医者、そして多職 種が連携して患者さんの意思、了解を確認することを実現する事が始まりであるべきと思 います。  ところが、現状では、病院は、治療が終わりましたから退院してください。それで患者 さんの了解と納得が受けられているかどうか不安です。  ですから、病院として総合的にみる事には、入院時も、退院時も責任を持つべきです。 その作業があってこそ患者さんは治療に対して了解して納得すると思います。それがなけ れば、村松委員もいわれたように、退院直後に最も不安になる。自分の在宅生活をだれが サポートして、どういう体制があるのかどうかがわからないからです。  その患者さんの不安を解決するためには、総合的に病院でまず評価することから始まり ます。当然ながら在宅医療をやっている医師としては、病院が作成した計画を基本として。 患者さんの状況の変化に対応して行くのです。患者さんは家で死にたいといっていても、 最後にはどうしても入院したいという方もおられます。  患者さんの了解とか納得を得られるためには、総合的に診る医療を考えながら、CGA を現場で実践する事が必要と考えます。そのことが現場でやられていないことは、一方で 患者さんの了解とか納得が得られていないことです。そのことをきちんと実行して行くこ とが、総合的に診るということになる。そのことを医師とか現場の能力だけに頼るのでは なく、そういう作業を実現して行く事が重要です。  川越先生のいわれることは、私も十分にわかります。病院がすべて作成して、現場の活 動を制限するのはおかしいと思います。現場は患者さんと御家族とその状況において、自 分たちのできる範囲で決めていくということの重要性はあるわけです。しかし、その前に 退院では、多くの病院には退院調整室があるわけですから、病院の中で治す職種と支える 職種が連携することが、高齢者の納得した医療とか人生を送れることのためには不可欠で す。終末期医療にとっても大事な話と思います。  終末期医療において、患者さんの尊厳を守る視点で、ぜひ御理解いただきたいと思いま す。 〇川越委員   患者さんが病院から家に帰るとき、これは一番不安なときです。そこを医療者、これは 特に在宅のチームがしっかり支えないといけないときです。その前から病院にいって顔を 知っていただく、というような作業が必要なわけです。  その場合、私は先ほど病院中心に医療が組み立てられていたということを申しあげまし たが、もう一つ、野中先生の話を伺いながら常々思っていることがあります。  それは、医者だけで考える、というのはどうもあるような気がいたします。これは医師 法上の20条ですか医行為が医師しか許されていない、というところに法的にはさかのぼる ことになると思います。それにしても、いまここで議論していること、それは医療者の中 でいうと、だれが一番ふさわしいかという問題が実はあるわけです。これは医者というの は確かに医療の専門家ですが、生活支援というのは普通は習いませんし、病院などにいた ら介護保険のことに正直いいまして関係が小さいですね。だからいいということではない。  では、いいかというと、病院にいる医者がしっかり介護保険のことを勉強してわかるよ うになる、そして地域のケアマネジャーとかいろいろなヘルパーの方と一緒にやればでき るかというと、それも確かに方法としては可能だと思います。  そうではなく、もっと視点を変えますと、看護師という生活までみられるプロがいるわ けです。ですから医者だけで連携ということを考えるのではなく、チームで考えるべきだ と思います。  これからの医療というのは、医師の指示で動くということではなく、これは野中先生も 同じ考えだと思いますが、チームで動くことが特に大事です。特に病院から在宅への橋渡 しというときは、確かに医療的なことも大事ですが、それよりももっと大事なのは、生活 的なことをどのように支えていったらいいのかということです。先ほどに戻りますが、看 護師の力がチームとして働きやすい場を提供する、そういうものを考えていただきたいと いうことを思います。  御承知のように、在宅療養支援診療所の医者が、病院の医者と退院前の連携というか、 病院まで赴いたときには、たしか千点だったのか1万円をいただけることになっておりま す。これだって正直いいまして看護師さんたちの点数はずっと低い点数で押さえておりま す。これはあげろとかということではなく、そういう看護師さんたちがもっと働きやすい ような点数を設定していただきたい。ただ上げろということではなく、あるいはチームと してやっているような場合とか、そういう工夫が必要でしょうが、もっともっと生活のこ ともみられるプロたちが活動できるような格好に将来的には考えるべきではないかと思い ます。  これは高久先生とも以前話をして、野中先生がおっしゃっているような形で一生懸命や っているところが日本にもございますが、結局はそういうやり方が普及しないということ がなぜだということです。  一つは医者は非常に忙しいです。病院の医者も開業医もね。それが一つのケア会議のた めに時間を割くのがなかなか難しいということがございます。もしそういうことではなく、 看護師さんが行くということで医療的なこと生活面のことも全部ある意味では解決してし まうわけです。  私たちのところは、退院前のときに、看護師が全部行って、向こうの看護師さんと引き 継ぎをする、患者さんと顔を合わせて家についた時点から私たちが責任をもって診ますと いうことを約束して顔を覚えていただく。そして時間があるときに、担当医にいろいろな ことをお伺いする、そういうことをやっています。  そういう形で十分にいくのではないか。むしろこれからの医療を考える場合には、そう いう形の評価ということの方をしっかりすべきではないか、そのように考えております。 〇辻本委員  先ほど部会長が診療報酬のお話をなさいました。結局、カンファレンスをやるにしても、 連携というところに何らかのインセンティブを働かせることにおいても、いまのお話を伺 っていると、形骸化してしまう単なるケア会議ということのおそれも患者の立場として感 じるわけです。  それから、もう一つは、状況証拠づくりのように一枚の紙を渡したことで終わりにして しまう、ということだっておきないとは限らない。例えば、昨年の4月から歯科医療で治 療計画書というものが必ず手渡されて、患者さんの同意を得てサインをしてもらう、そこ に何点であったか細かいことを覚えていないのですが、実際に歯医者さんにお聞きすると、 3行くらい書くだけなんだよねって。あんなものを受け取って患者さんは満足するのかと、 出していらっしゃる方が疑問に思っている。そういう形骸化ということが現にいまでも医 療現場のあちこちで起きてしまっている。  そういうことを考えたときに、いま川越さんのお話の中で評価というお話が出てきたの ですが、話が広がってしまいますが、外部評価委員について。例えば治験審査委員会IR Bとか、大学の病院の倫理委員会の議論に参加している中で、かなり難しいとは思うので すが、議論の中に外部委員という第三者的立場を参加させるという形が進んできているの です。  私はこのカンファレンスなどにも、地域の評価委員のような外部の人がすべてに参加す ることはできないとしても、時々自由に評価という目をもって監視役ではないのですが、 検証役のようなシステムが、逆に質の担保というか情報の公開というようなことにつなが っていくのではないかと思います。他のかかわりをいただく中で学習させていただいたこ とでの一つの提案です。  簡単なことではないかもしれませんが、いままでこの議論の中にはそういう視点が全く 語られてきておりませんでしたので、一度お考えいただきたいということを申しあげたい と思います。 〇野中委員  総合的に診るという事を医師個人の能力で語るのは、片手落ちだといいたいのです。看 護師さんとか栄養士さんとか理学療法士さんとか、さまざまな人と絡んで、最終的には自 分なりの専門性としての情報をきちんと集めて整理すればいいわけです。医者がケアプラ ン作成しなくてもいい、医者は治療方針を立てればいい。その治療方針を実行する上にお いて、看護とかOTとかPTとか栄養士などの多職種がどのようにしたらいいのか、それ で生活ができるのかを検討しプランを作成すればいい。  いま介護保険でも担当者会議がなかなか開かれないのは、医師は担当者会議に出て、ケ アマネジャーに対して何を話していいのか、ということがまだ理解されていないからです。 医者は患者さんの病状のことを話せばいい、ケアマネがその情報を基に生活をつくるため に動く。問題は、いつも手段の話ばかりしている。その患者さんが病気を抱えても、何を したいのか、そのことを聞くのが医療や介護のプロとしての大事なことです。  病気を抱えていても、その治療やいろいろなケアをいろいろな人たちの力を借りて、そ の患者さんのやりたいことを実現することが目標の筈です。  検査等のデータが良くなったことばかりに視点を持っていることがおかしいわけです。 支えるということは、医師や看護師、栄養士など皆さんが自分の専門職として、この病状 からこういう生活が可能です、という話を皆でするというのが担当者会議です。医者が担 当者会議でプランまで提案することは、必要ないと思っております。  担当者会議の本質を理解されずに、担当者会議に出るのは面倒とか忙しいとか話にされ る。その人の何が実現できたかで評価すべきなのに、担当者会議そのものがやられている かを評価すると、それは現場に対する足かせになってしまうと思います。  CGAにこだわるわけではないのですが、多職種が絡む理由は、多職種が自分の専門性 の中でその患者さんを評価して、その人にとっての適切なサービスを皆で話をするから、 病気や障害を抱えても生きることが可能になるわけです。医療はどうしても手段ばかり話 してしまう。手段ではなく目的、医療という目的を通じてこの患者さんの人生、生活をつ くるという視点が医療にはもっと望まれるべきと思います。  今度の診療報酬が、いままでと同様の視点だけではなく、何を実現したのか、評価はで きにくいと思うのですが、地域での生活を病院でつくるという視点で考えたらどうかと思 います。  もっと現場で、看護師さんが足りないMSWが足りない、さまざまな職種が足りないと いうことであれば、それが実現できるように、人を配置して、医者が治療に専念して、患 者さんの今後の生活をつくるという作業は、決してできないわけではないと思います。  それがそういう人たちがいないのであれば、その人たちをふやすという話だっていいの ではないかと思います。そういう視点で、いままでの従来の診療報酬ではない視点で考え るべきです。  入院医療は、外来から入院して、入院から在宅という話ではなく、本当の始まりは入院 であって、その後の病状が安定したときの外来はどうするのか、あるいは在宅医療はどう するのか、という視点で考えた方がもっと整理されるのではないかと思っております。以 上です。 〇糠谷部会長  ありがとうございました。一番分量の多いところが残っております。7ページから11 ページまでの「4.在宅」及び「5.終末期」についての御意見をお願いしたいと思いま す。時間がありましたら、最後にまた全体に戻るという前提でそういうことにさせていた だければと思います。どなたからでも結構でございます。よろしくお願いします。 〇村松委員  9ページの訪問看護の部分です。5つ目、「訪問看護ステーションは在宅ケアを支える ために24時間対応できる体制をとり、緊急時の訪問看護や電話対応等」というところがあ ります。実際にここの部分というのは、ターミナルケアとも非常に重なってまいります。 ですから、私たち看護職にとっては、容体不安定悪化傾向にある、さらに死というものの 前後、これを全部含めて緊急あるいは電話対応24時間というものを考えております。  その意味でいいますと、この中でかなり医療行為を要する方が多い、さまざまな指導管 理料です。中心静脈栄養であったり、在宅酸素療法であったり、費用を上げろという前に、 そういう指導管理というのは最後の最後まで非常に多い、ということを申しあげておきた いと思います。  さらに電話対応の内容もぐっと変わってまいります。ドクターにどう話せばいいか、い まの状況をどう受け止めたらいいか、そういうことも含めて行われてまいりますし、ある いは直接私どものステーションに足を運んできて、悩みやあるいは不安を訴える方が多い。 そういうところも含めて、訪問看護といってもかなり終末期とも絡み、また容体にも絡ん でおりますので、十分にここのあたりは御検討いただければと思います。以上です。 〇川越委員  いまの点に関連します。申しわけございませんが、私は読まないで発言しているかもわ かりませんので、失礼があったらお許しください。  24時間の対応ということは、在宅で患者さんが過ごすための安全安心ということの質の ものです。ただし24時間ケアといっても漠然とした形で24時間ケアをやっていれば、こ れだけの点数をつけますというやり方ではまずいのではないかという気がいたしておりま す。いま村松さんがおっしゃられた、例えば私たちがやっているがんの在宅ケアというこ とだったら、看護師さんたちは本当に呼ばれるし行きます。そして行ったら、結構大変な ことです。それを24時間やります。大変というか、普通のただ高齢者の方をみていて月に 1回しか呼ばれないということとちょっと違うのです。  ですから、24時間の対応というものもセットして、こういう場合には24時間対応が高 くなるとか、病状の悪化とか病気の種類によるとか、あるいはどこと組んだ場合、そうい う形の工夫を検討していただくということが必要ではないかと思います。 〇野中委員  在宅医療の件に関しては、現場でまだまだ始まったばかりです。サービスを提供する多 職種が戸惑いながらやっていることも現実です。そして実際には、訪問看護師も夜中に呼 ばれるとか、疲れ切っています。以前は多くの訪問看護師さんの希望者もいたのですが、 最近はなかなか希望者がいないのも事実です。訪問看護師として、一人で現場を回って、 そして一人である程度の危機を乗り越えながら医師に連絡するなど、そういう苦労も多く あることをさらに評価すべきです。川越委員がいわれるように評価していくということが、 大事と思います。医療保険の訪問看護と、介護保険の訪問看護とは多少違います。両方に 関係することは、治療計画とかケアプランです。ここでもチームケアがその中でどうやっ て皆が納得するかが大事です。  患者さんや御家族が在宅の生活を選ぶところに、大きな問題があるような気がします。 それは御家族として、家に1人の病人がいることは、本来不安に思うのは当然です。  しかし、御家族と患者さんとが共に生活をする目的をきちんと話をすることが、在宅医 療を始めるには大事と思います。  そういう視点の中で、在宅医療支援診療所がどういう形で在宅医療を提供するか、病院 との関係はどうしても大切です。患者さんは退院するに当たって、病院との縁が切れてし まうのを不安に思います。その部分を本当はもっと説明してほしいと思います。  そうやって突き詰めると、在宅医療を考える上で大事なのは、病院の外来の在り方です。 病院の外来として必要な外来をきちんと整理すべきと思います。患者さんが病院で治療を 受けたいのは、専門の先生がいるし、異常が見つかったときにはその病院で治療が受けら れる、これらの理由で病院の外来に行きたがるわけです。  退院のときに総合的にきちんと評価して患者さんに説明をしていれば、患者さんは病院 の外来に行き続けなくても地域の医療機関に行きます。そういう視点も本来必要と思いま す。  病院の退院に当たって総合的に評価することの大事さをぜひ考えていただきたい。在宅 医療にも、これが不可欠です。在宅医療はチーム医療ですから、チームとして総合的に評 価する。その辺が課題と思います。その点に対しては十分に配慮していただきたいと思い ます。  この中に書いてあります。総合的に診るという事を、仕組みとして、従来の形と違った 視点の中で評価するということは欠かせないと思っております。以上です。 〇糠谷部会長  ありがとうございました。 〇村松委員  また訪問看護のことです。24時間訪問しますが、そのときにステーションが例えば私の ところであれば10名程度しかいないわけです。常勤のナースが10名です。すると非常に 病状の悪い人が2〜3人いるときに、1人かが駆けつけてもう1人結構ダブルで行くとき があります。ほかのステーションに依頼をした場合に、同じ日にほかのところが入った場 合、保険が効かない。そういうこともあるものですから、助け合いながらでもみていける ような、そういう体系を御検討いただければと思います。 〇辻本委員  細かな議論ではなく大まかなことになります。  終末期、10ページ、5−(2)の最初の〇のところにも、「終末期の病状や急変時の対応な どについて情報提供・指導等」とございます。この指導という言葉が最初のページ、3ペ ージの総合的に診る医師の最後の4つ目の〇のところにも「結果を療養や生活指導で」と いうように指導という文字が表されております。  先ほど来、川越委員は支援という言葉をお使いになっております。野中委員も支えると いう言葉を使っていらっしゃいます。確かに服薬指導とか在宅支援においても、指導管理 料という診療報酬の項目はまだ残っているようですが、私どもの人生の大先輩、尊厳の配 慮ということが基本的視点にも入っているわけですので、指導という言葉は、私は支援と いうか、背中に回って支えさせていただきますというような、そういう視点を大切にする ために用語もこだわっていただきたいことを、お願いしておきます。 〇川越委員  7ページの(2)の黒字の太字の6行目くらいからです。地域でのうんぬんということが ずっとある。要するに、チームとして対応しなさいということが書いてございます。これ は確かに大原則ですが、ただこのチーム医療で注意することは、必ず総合ということが必 要なことです。これが抜けるとチームがばらばらになって、かえって人を分断するだけで、 かえっておかしなことになってしまいます。その点です。ですから総合をどうするのかと いうことを考えていかないといけない。この会の中でもソーシャルワーカーの方の話がご ざいましたが、向こうの話をして恐縮です。  米国などのホスピスは、確かにたくさんの他職種の専門家がかかわって1人の患者さん をケアするという格好がとられております。そのチームの総合の中心になるのは、ソーシ ャルワーカーです。ソーシャルワーカーというのは、日本がいまいっているケアマネの方 とは全然違います。普通はちゃんとした学位をとったあとに、実習をしてマスターディグ リーを取る、そういう方が要になってケアをやっていく、という取りまとめをやっており ます。  ただ日本の場合には、そこの要にだれをもっていくのかというのは、もちろん制度的に 全然ないわけです。医者がやるというのもどうかとちょっと思います。そこを今後考えて いかないといけない。今回の診療報酬の改定でうんぬんというのは不可能ですが、どうい う形でチームを総合していくのか、という視点をぜひ今後持って検討していただきたいと 思っております。  これはどこかに出ておりましたか、出ておりましたら申しわけございません、ダブって しまう発言になってお許しください。 〇糠谷部会長  ほかにどなたでも結構でございます。もし何でしたら全体にわたってということでも結 構でございます。 〇野中委員  これから居宅として多様な居宅になるわけです。その多様な居宅における医療、特に医 療と生活という部分で評価すべきと思います。  特に施設で医療を抱えながら生活する方々に対してのケアプランは、まだまだ不充分で、 特に医療が必要なだけで施設に入れない人もたくさんいますし、今後まだまだ考えるべき 事は多いと思います。そのためには、多様な居宅における医療の改善、すなわち訪問看護 とか、医師とか、外部からどうやって提供するのか、整理していく必要があると思います。 患者さんの住みなれた地域とかの生活も実現できるという視点では、ぜひ検討するべきと 思います。  その点でも、チーム医療という視点を忘れてはいけないと思っております。以上です。 〇川越委員  いまの野中委員の発言にちょっと関連します。  従来の病院か家かということではなく、居宅系施設ということが出てきた、これは9ペ ージの4−(2)に書いてございます。それに関連します。2つのことをお話ししたいと思い ます。  1つは、先だってあるところで会合があったときに、死亡診断書の問題が出てまいりま した。ある方が私に死亡診断書の中にどこで亡くなったのかというものの中に、こういう 施設、つまりその他というところに入るのでしょうか、例えば有料老人ホームで亡くなる とか、そういう方の書く欄がないので、その辺を工夫してほしいというか、いまの死亡診 断書の中には確かにないと思いますので、そういうところを見直してほしい、これから必 要になるのではないかということかございました。  もう1つは、これは仙台の方で一生懸命在宅医療をやっている先生からありました。彼 らは最近、患者さんの家以外に、こういう施設での看取りをかなり経験するようになって きた。そのときに、変な話ですが、その施設に医者がいる場合、典型的な例は特養ですが、 特養に医者がいる場合には、非常にやりにくいというか、入っていけないという現状がど うもあるらしいのです。  こういう居宅系の施設、介護施設も含めてですが、そういうところにもっと在宅の力が 入っていくような工夫を考えてもらえないか、そういう意見がありました。私もその点は 常々考えていることです。その2つの点を話させていただきました。 〇辻本委員  ここに書かれていないことで一つぜひ御検討いただきたいという提案をいたします。  介護保険が始まったときには、利用者の方が何か不安になったりしたときに、最初から 相談受け付けということの窓口機関が用意されました。この後期高齢者の医療の問題にお いては、果たしてどこに相談するのだろう。介護の問題でもない、というように門前払い をされてしまったときに、では他の医療というところでいいのか、そういうことを不安に 思います。  いまは大変な役割になっていますが、二次医療圏の保健所機能の中に、そもそもは医療 安全ということで設置された相談受け付け機関というものがさまざまに機能しております。 いま考えられる範囲だと、そこに包括していただくことにしかならないのかなと思いなが ら、悩みは抱えるであろう後期高齢者本人や家族が、だれかに相談ができるというサービ スというか、そういうこともできれば介護のときのように、スタート時点から用意をして いただきたいとお願いしておきたいと思います。 〇村松委員  総合的に診る医師ということです。私の中ではひとつ理想があります。医師というのは、 臓器別になってしまったり、あるいは最近は神経しか診ないとか、心臓の血管のここしか 診ないとか随分と変わってきています。どうしても総合的に診ていただきたい。この総合 的に診るというのは、いろいろな疾患を抱えているというだけではなく、昔の赤髭先生は 頭の先から足の先まで、すべて触れながら診て、加齢に伴う個別の生理的変化プラスそこ に及ぼす疾患、それぞれの疾患が本当に問題なのか、あるいはどの程度なら調整できるか、 あるいはどういう機材は必要で、これはいらないのではないか、そういう判断ができる医 師と私の中では思っております。  ですから、最初に遠藤委員から、例えば緑内障があって糖尿病があってというお話があ りましたが、当然、目も診る。私たち看護職も全身をみます、ですがドクターの場合には この目がおかしいと思ったら検査をします。そこで異常を見つけて、私ではなく眼科の専 門医という形でわたしていけると思います。  そういう総合的に診る医師というものを、私は非常に望んでおります。そこがかかりつ け医の先生がそのようになってくださいますと、私たちとの情報交換や交流によって、さ らに生活という意味で非常に皆さんも少し安くなり、私も将来安心して老いていけるかな と思っております。ぜひ、総合的に診る医師というものを、すべて専門というとらえ方で はなくしていただきたいというのが、これは私の希望でございます。以上でございます。 〇遠藤委員  8ページです。病院による後方支援の話です。病院からの退院時についての議論という のは先ほど来随分とされました。後方支援の話はむしろ、在宅医療をされておられます両 先生にお聞きしたい。在宅医療をする上で後方病院の存在は、極めて重要なのか、それほ ど重要ではなく、何か問題があればかつてかかっていた病院に行く、あるいは救急車で最 寄りにいく、そういうもので対応できるのか。その辺の実情のようなものを知りたいと思 います。 〇川越委員  いまの質問は、在宅だからこうだという話はできないのです。というのは在宅医療とい うのは、少なくともいまの日本の現状ですと、千差万別というか、かなり力をもったチー ムの中に医者がいて働いている。在宅もですね。あるいは、1人で孤軍奮闘しているとい う先生もいらっしゃる、いろいろです。その中で後方支援がどの程度大事かというのは、 非常に難しいと思います。  一般的な話をすればいいかもしれません。例えば、私たちのところはどうかという話を させていただきますと、がんの方、ここでも話をしたと思いますが、一度でも往診した方 は大体96%の方が家で最後を迎えられます。そういうところにおいては、後方支援病院と いうのは実はほとんど必要ないということになります。それはなぜそういうことか可能か というと、我々、私も産婦人科ですが、外科的なこともできる。カテーテル管理などは全 部できるということがある。それから優秀なナースがチームの中に入ってくれている。我 々もチームの中にボランティアがいる。そういう在宅のチームがしっかりしていれば、実 は後方支援というのは役割が少なくなります。  例えば患者さんが予期に反して長く生きられて、家族が疲れてきたときにレスパイト入 院、あるいは遺産問題が絡んで、ここで死んだら困るという状況が家族の調整の中で出て きて入院される。そういう方だけです。  一般的なところというのはどうかというと、実はそういうことができません。では、後 方支援のための入院施設がどういうためにあってほしいのかというと、申しわけないので すが、がんの方に限っていいますと、一つは家族が疲れたときに一時的に預かってくれる 後方支援病院、レスパイトケアのためにですね。それから症状緩和が難しくなる。例えば 痛みが非常に強くなってきて、いままでのモルヒネをただ増やす、あるいは他の補助薬を つかうというやり方だけでは非常に難しくなるときに、硬膜外にカテーテルを入れて留置 してそこからモルヒネを入れるということか必要である。そういうときにお願いする。  あるいは、疼痛緩和に長けていない先生がやると、例えばモルヒネの処方権をもってい ない先生がいらっしゃるわけです。麻薬登録をしていない先生ですね。そういう先生方は、 NSAIDsで疼痛緩和をやっていて、それで緩和できなくなったら自分のところではで きないから病院に診てもらいなさい、ということに当然ながらなります。  ですから、チームがどのくらい力をもっているかによって、後方支援の病院が必要かど うかということが当然あるわけです。一般的な言い方をすれば必要だと思います。  症状緩和のためとレスパイトの場合をいいましたが、もう一つは亡くなるときは家族は 一番不安になります。ケアを提供する我々にとっても、ある意味一番で大変な時期になり ます。ですから、そういう死の看取りのために、入院をするということが必要になること があります。多分、私が関係している在宅でのホスピスケアでは、その3つくらいの状況 が考えられると思います。  それから高齢者の方も当然私たちはみております。医療的には高齢者の場合には補液を するとか、あるいは胸の写真を撮って肺炎があるかどうかを診るということになります。 そういうときには、例えばちょっと検査して診断を確定して何かやるときには、病院の力 を借りないといけないということがございます。  ですから、いろいろあれこれいいましたが、必要ということは間違いないのですが、必 要度はチームの持っている力によってかなり違ってくるということを申しあげます。 〇野中委員  いまの川越委員の発言で網羅されていると思います。現状からすれば、後方病院が整備 されている現状で語るのなら、結論が出ると思います。しかし、本当は後方病院があれば なというケースは多数あります。高齢者との理由で入院できない現実があります。  私の診療所は8床の有床診療所です。その入院ベッドは、一日二日とか、一週間とかの 短期の治療、レスパイトというかショートステイとして利用しています。もっと医療が例 えば検査ができるとか、トリアージができる後方病院があればと強く感じます。  ただ現実としては、その様な後方病院は不足しています。在宅医療をさまざまな診療所 が展開していくには、地域の後方病院が必要不可欠ですが、現状では在宅医療に対して理 解は広がらないと思っています。  医療と介護保険との調整として、大事な部分があります。特に訪問看護は医療保険から の部分と、介護保険の部分と、もっと検討が必要と思っています。患者さんの多様な居宅 において介護保険を活用する場合にも、今後検討することは必要と思います。  先ほど辻本委員が言われた相談窓口として、地域包括センターがあります。現状では地 域包括センターは介護予防のケアプランセンターになっておりますが、本当は包括的なケ アマネジメントをする施設として、患者さんや主治医をサポートする施設として提案され ておりますから、そこは在宅医療でも活用するために用意されていると認識しております。 以上です。 〇遠藤委員  ありがとうございます。もちろん診療科によって後方病院が必要かどうかという問題が あるかと思います。後方病院、そもそも入院を短期間受け付けてくれるような病院がなか なかない、というのが現状であるとするなら、患者にとってみれば、何かのときには病院 に入院できるというのは非常に安心感ですから、その意味では非常に意味のあることだと 思います。なぜ受け入れないのでしょうか。 〇野中委員  しつこいようですが、これは総合評価していないからと思います。年齢だからもういい のではないですかとか、入院されると患者さんも不安に思ってそこで大声をあげたりされ ると、うちではそういう患者さんは受け入れられません、ということで入院を断られる現 状があるわけです。まだまだ病院として限られた視点で考えられていることと思います。 〇遠藤委員  病院の方も余りそこは整理できていないということですね。  同時に開放病床というのは余り使われていないようですが、これは在宅医療をする立場 からみたらどうお考えになられますか。 〇川越委員  その前になぜ入院できないかということです。1つは病院の方の立場からいいましたら、 空きベッドを置くというのは経営上でまずいわけです。当たり前の話です。いつくるかわ からない方のためにベッドを空けておくというのは、経営的にいうと非常にまずいという か、そのために病院としてなかなか受け入れられないということがございます。それから もう1つ、なぜ入院できないかというのは、特に私たちが頑張ってやっているケースは、 入るときは本当に大変なときなのです。例えば、せん妄状態が非常に強くなって家族がち ょっとまいってしまって、一時的にちょっと預かってもらえないか。それが病院に入った らもっと表情が悪くなりますし、大変だということはわかっているということです。病院 の都合がどうしてもあると思います。  介護病床が必要かという問題ですが、在宅をもうちょっと充実させないと、いまのまま とにかくどんどん来るというのは、大変ではないかという気がいたします。  ただし高齢者の場合には、私はこの会でも申しあげましたが、医療よりも福祉系の充実 が非常に大切ではないか。つまり日々の生活の充実ということが、非常に大事なのです。 確かに介護保険で生活支援ということが非常に充実してまいりましたが、例えば療養病床 に入っている方を、在宅にそのままポンと移して、賄うだけの力というのは残念ながらち ょっとないのではないか、そういう危惧はちょっとしております。 〇野中委員  開放病棟に関しては、本来は活用すべきと思います。しかしなかなか活用方法が現場で は理解されていないと思います。ただ、特定の地域として活用しているところはあります。 今後CGAを実行して連結をした形として、広がるべきと思います。ただ川越委員がいわ れたように、空けておくことが病院にとってプラスかマイナスかという視点になると、な かなかそれはデメリットの方が現状と思います。 〇遠藤委員  ありがとうございました。 〇糠谷部会長  大体、時間もまいりました。特に何か御発言ございませんでしょうか。よろしいでしょ うか。では本日の議論はここまでにしたいと思います。本日の部会におきましては、後期 高齢者医療の診療報酬を考える上で、大変に幅広いいろいろな議論がなされたと思います。 本日までの議論を踏まえまして、事務局において後期高齢者医療の診療報酬体系の骨子に ついて、たたき台としての原案をまとめさせることとしまして、次回の特別部会において 提示することしたいと思います。  なお、第8回のこの部会においてお知らせしました医療部会及び医療保険部会における 議論につきましては、次回の特別部会の議論を踏まえてからお願いをするということにし たいと考えております。  では、次回の特別部会の予定につきまして、事務局から説明をお願いいたします。 〇医療課長  また調整をして御連絡したいと思います。 〇糠谷部会長  決まってから各委員の皆様に御連絡をするということです。では、そういうことで次回 はまた追って御連絡をするということにします。本日の部会は、これにて終了とします。 ありがとうございました。     【照会先】     厚生労働省保険局医療課企画法令第1係      代表 03−5253−1111(内線3288)