07/06/29 厚生科学審議会科学技術部会ヒト胚研究に関する専門委員会 第12回議事録 第11回 科学技術・学術審議会 生命倫理・安全部会「生殖補助医療研究専門委員会」 第12回 厚生科学審議会科学技術部会「ヒト胚研究に関する専門委員会」 議事録 日時:2007年6月29日(金) 13:00〜15:00 場所:厚生労働省5階共用第7会議室 議事: ○笹月座長  ただ今から、第12回「ヒト胚研究に関する専門委員会」および第11回「生殖補助医 療研究専門委員会」を開催いたします。  最初に事務局から、委員の出席状況と資料の確認をお願いいたします。 ○小林母子保健課長補佐  本日は、安達委員、位田委員、奥山委員、小澤委員、緒方委員、高木委員、中辻委員、 秦委員、深見委員がご欠席で、10名の委員の方々にご出席をいただいております。  次に、お手元にお配りしました資料について確認をさせていただきます。まず、座席 図、議事次第、配布資料の一覧表です。この資料に沿って確認させていただきます。資 料1としまして「前回の議事録(案)」、資料2として「検討事項(たたき台)」、資料3-1 としまして「検討のためのたたき台」、資料3-2としまして横長の「生殖補助医療の流れ の例」、資料4としまして「配偶子・ヒト受精胚の提供に係るインフォームド・コンセ ントの説明方法についての検討にあたっての整理すべき事項」、続きまして参考1とし て「『生殖補助医療研究専門委員会』名簿」、参考2としまして「『ヒト胚研究に関する 専門委員会』名簿」、参考3としまして「他の指針等におけるインフォームド・コンセ ント(I・C)の手続の比較」、参考4としまして「分担研究の研究報告書」です。資料は以 上ですが、不足、乱丁等がありましたらお申し付けください。 ○笹月座長  よろしいですか。どうもありがとうございました。  議事に入りたいと思います。まず、資料1「前回の議事録(案)」ですが、お送りしてお りましたけれども、さらに何かご意見がありましたらお願いいたします。よろしいです か。それでは、これを前回の議事録として確定いたします。  続きまして、資料2に沿って前回の委員会で検討した内容についての確認を行いたい と思います。資料2は、前回の委員会で検討した事項として、既にお送りいたしており ますので、事務局から簡単にご説明をお願いいたします。 ○長野対策官  それでは、資料2に基づきましてご説明申し上げます。前回の委員会でご議論いただ いた部分は6ページ目になります。その中で、●については委員会の中で既に整理され た事項、○については今後さらに整理が必要な事項になっております。  卵子の入手に関して「1)生殖補助医療に使用されなかった未受精卵・非受精卵の提供」 という場合分けにつきまして、(1)として「生殖補助医療の過程で生じた非受精卵」です が、これについては「適切なインフォームド・コンセントを受けて提供を受けることを 認める」ということで整理されております。それから、「この場合、インフォームド・コ ンセントは、生殖補助医療のためのインフォームド・コンセントと同時に、研究利用に ついての説明を行った上で、非受精卵が生殖補助医療に使用されないことが決まってか ら受けることとする」ということで整理していただいております。  次は、今後整理が必要な事項となっておりますが、「同意の撤回の考え方としては、 撤回によって研究利用に多大な不利益が生じることのない範囲で、提供者の保護を最大 限図るため、撤回可能とするのは研究への利用が開始されるまでとしてよいか」という ことで、整理が必要ということにしております。それから、「医師による恣意的判断を防 ぐため、提供を受けた非受精卵については写真を撮影するなどにより記録を残す必要が あるか」ということを論点として挙げさせていただいております。なお、具体的な手続 きにつきましては、本日の議題になっております「インフォームド・コンセントのあり 方の検討の中で検討するということで、※にしております。  「(2)形態学的な異常により使用されなかった未受精卵」についてですが、これについ ても「適切なインォームド・コンセントを受けて提供を受けることを認める」というこ とで整理いただいております。次のインフォームド・コンセントのタイミング、撤回の 考え方、記録等については今ほどの非受精卵と全く同様のことで挙げさせていただいて おります。  次の7ページをご覧ください。(3)としまして、「形態学的な異常はないが精子等の理由 で使用されなかった未受精卵」についてです。これについても「適切なインフォームド・ コンセントを受けて提供を受けることを認める」ということで整理いただいております。 その次のインフォームド・コンセントのタイミング、撤回の考え方、記録等の保存とい ったことについては、今ほどと同様のことで挙げさせていただいております。  次に、「2)疾患の治療等のため将来の妊娠に備えて凍結された未受精卵のうち不要とな るもの」ということで、「卵子保存目的で凍結保存されていた未受精卵のうち不要となっ たものについては、適切なインフォームド・コンセントを受けて提供を受けることを認 める」ということで整理いただいておりまして、その場合、インフォームド・コンセン トは実際に「未受精卵が生殖補助医療に使用されないことが決まってから受けることと する」ということで整理いただいております。なお、同意の撤回の考え方については、 「研究への利用が開始されるまでとしてよいか」ということで挙げさせていただいてお りまして、「この場合、提供者の保護のため、インフォームド・コンセントを受けてから 研究開始までに一定の期間を確保する」とするかどうかということで挙げさせていただ いております。これにつきましても同様に、具体的な手続きについては、本日の議題の 中でご検討いただくとさせていただきます。  8ページ目になりますが、「3)手術等で摘出された卵巣又は卵巣切片からの提供」です。 (1)として、「婦人科疾患等の手術により摘出された卵巣又は卵巣切片」についてですが、 これについても「適切なインフォームド・コンセントを受けて提供を受けることを認め ることとする」と整理いただいておりまして、「この場合、インフォームド・コンセント は、手術のためのインフォームド・コンセントを受け、摘出卵巣の廃棄の意思が確認さ れた後に、受けることとする」ということで整理していただいております。なお、撤回 の考え方としては、「撤回可能とするのは研究への利用が開始されるまでとしてよいか」 ということで挙げさせていただいております。  次に、(2)としまして、「他の疾患の治療のため卵子を保存する目的で摘出・保存されて いた卵巣又は卵巣切片のうち不要となったもの」ということで、これについても「適切 なインフォームド・コンセントを受けて提供を受けることを認めることとする」という ことで整理いただいております。この場合、インフォームド・コンセントは最終的に「卵 巣又は卵巣切片が生殖補助医療に使用されないことが決まってから受けることとする」 ということで整理いただいております。同意の撤回の考え方につきましては、「研究への 利用が開始されるまでとしてよいか」ということで挙げさせていただいております。ま た、「提供者の保護のため、インフォームド・コンセントを受けてから研究開始までに一 定の期間を確保することとするか」ということで挙げさせていただいております。これ らにつきましても「具体的な手続きは、インフォームド・コンセントのあり方の検討に おいて検討」することにさせていただいております。  それから、「4)生殖補助医療目的で採取された未受精卵の一部利用」ということで、こ れについては、「生殖補助医療に必要な数以上の卵子を採取することを厳に慎むという前 提の元に、適切なインフォームド・コンセントを受けて提供を受けることを認めること とする」と整理いただいております。「この場合、インフォームド・コンセントは、自発 的な申し出があってから受けることとする」ということで整理いただいております。な お、同意の撤回の考え方については、「撤回可能とするのは研究への利用が開始されるま でとしてよいか」ということで挙げさせていただいているとともに、その他配慮事項と しまして、「採取された未受精卵のうち、研究に利用するものの選別については、グレー ドの低いものから順にするなどの配慮が必要か」、また、ホルモン剤の投与による合併症 等のリスクを考慮しつつ、「自発的な意思の確認はどのように考えるか」、また「同意の 撤回可能な期間を確保するために提供の自発的な申し出は、未受精卵採取以前に受けた ものに限ることとするか」ということで、整理すべき事項として挙げさせていただいて おります。これらにつきましても、インフォームド・コンセントのあり方の検討におい て検討していただくことにさせていただこうと思っております。  最後に、「5)ボランティアから未受精卵の提供」ということですけれども、「ボランテ ィアからの提供は認めないということでよいか」ということで、今後整理が必要な事項 として整理させていただいております。 ○笹月座長  ありがとうございました。ただ今ご説明いただいた資料2に関しまして、インフォー ムド・コンセントに係るところは今日のメインテーマでありますのでこれから議論しま すが、その他に関して何かご質問、あるいはお気づきの点があればおっしゃってくださ い。よろしいですか。  それでは、本日のテーマであります「ヒト受精胚の作成・利用のための配偶子・ヒト 受精胚の提供に係るインフォームド・コンセントのあり方について」議論したいと思い ます。それでは、これに関する資料3・資料4につきまして、事務局からご説明をお願 いします。 ○小林母子保健課長補佐  まず、資料3-1をご覧ください。この資料は「検討のためのたたき台(ヒト受精胚の作 成・利用のための配偶子・ヒト受精胚の提供に係るインフォームド・コンセントのあり 方について)」整理させていただいた資料です。1ページ目、総論の「インフォームド・ コンセントの説明内容について」議論いただいた後、2ページ目以降は各論ということ で、余剰胚、精子および卵子に関するインフォームド・コンセントの基本的事項につい て、その入手方法別にご議論いただきたいと考えております。  まず、1ページ目の総論です。「インフォームド・コンセントの説明内容について」で すが、「○提供医療機関及び研究実施機関では、それぞれ提供の方法等や研究の内容等に ついて説明する際、自由意志による適切なインフォームド・コンセントを確保するため、 以下の説明内容を説明書に明示することでどうか」ということです。順に読み上げさせ ていただきます。「(1)研究の目的及び方法」、「(2)提供される配偶子又は胚の取扱い」、「(3) 予想される研究の成果」、「(4)個人情報の保護の具体的な方法」、「(5)提供が無償であるこ と及び提供者が将来にわたり報酬を受けることのないこと」、「(6)提供者等に対して予測 される危険や不利益」、「(7)提供される配偶子を用いて作成される胚又は提供される胚の 遺伝子の解析が行われる可能性のあること及びその遺伝子の解析が特定の個人を識別す る目的で行われるものではないこと」、「(8)提供者を特定できないようにした上で、研究 の成果が公開される可能性のあること」、「(9)提供される配偶子を用いて作成される胚又 は提供される胚の取扱期間については、受精後14日以内であり、14日以内であっても 原始線条が形成された場合には利用しないこと、ただし凍結している期間については胚 の取扱期間に算入しないこと」、「(10)研究の成果から特許権、著作権その他無体財産権ま たは経済的利益が生ずる可能性があること及びこれらが提供者に帰属しないこと」、「(11) 提供することまたは提供しないことが提供者に対して何らの利益または不利益をもたら すものではないこと」、「(12)原則としていつでも不利益を受けることなく同意の撤回が可 能であること及び撒回が不可能となる場合にはその具体的条件をインフォームド・コン セントの説明内容として説明書に明記すること」です。続けて2ページ以降も説明しま しょうか。 ○笹月座長  まず総論について。逐一決めていこうというわけですか。 ○小林母子保健課長補佐  総論として全体の説明内容をこのような形で扱ってはどうかということです。 ○笹月座長  今日は(1)から(12)までは中身もきちんと決めるのではなくて、こういうことを含めまし ょうということでよろしいのですか。 ○小林母子保健課長補佐  そうです。 ○笹月座長  わかりました。 ○梅澤母子保健課長補佐  もし過不足があればご指摘いただきたいということです。 ○笹月座長  わかりました。それでは、このインフォームド・コンセントの基本的事項について、 このようなことを含めることが案として出されていますけれども、これは必要ありませ んとか、これが足りないのではないかというご意見をいただきたいと思いますので、よ ろしくお願いいたします。 ○水野委員  最初の「研究の目的及び方法」というところなのですが、特に凍結しておいて後ほど 使うということになりますと、研究の中身というのは絶えず進展しますし動きますので、 ある程度研究者の側に広範な自由を保持しておく必要があるのだろうと思います。 ○笹月座長  そうですね。 ○水野委員  提供する側からとしては、自分の個人情報などが分析されて、全部解析されてどこか に行ってしまったりするのは嫌だとか、あるいはそれを使って子どもが作られてしまう のはすごく嫌だとかいうことはあるだろうと思いますし、意志決定への圧力から守られ る必要はあります。でも研究に用いられることについて、研究の種類はいろいろであっ たとしても基本的にはそれほど利害は持たないと思いますので、目的を医学研究の進展 のためというようにかなり広く取る方がいいのだろうという感じを持っております。こ の「研究の目的及び方法」というものの中身について、具体的にどのようなことをお考 えなのでしょうか。 ○笹月座長  どういう目的でというのは以前にかなり詳しく議論したのですが、今おっしゃったよ うに、特に凍結している場合には将来何に使うか研究課題を特定できません。ですから、 おっしゃるように広くというか漠として、一番漠とした表現としては「生殖補助医療に 資する研究」ということになってしまうと思うのです。項目立てとして「受精に関わる こと」、「着床に関わること」などとすることはできると思いますけれども、おっしゃる ようになるべく広い形で、しかも特定はできないわけです。今の件について、何かご意 見はありますか。「生殖補助医療に資する研究」、そして、「例えば」ということで幾つか の物を項目立てするという、その程度のことでいかがでしょうか。 ○鈴木委員  今、直接患者にお渡しする文章の中身を考えているわけでは決してないのですね。項 目でよろしいわけですよね。通常、患者は「生殖補助医療に関する研究」と一行書かれ た同意書に対してサインをなさっているのか、それとももう少し詳しい項目、例えばこ ういうデータを解析する研究ですというように詳しく聞いているのですか。私はある程 度具体的な話としてきちんと、どういう操作がなされるのかも含めて、患者が納得の上 での方がいいと思います。それは別に、今項目をということではないのですけれども。 ○笹月座長  中身については改めて案を作って、また検討いただくということにしたいと思います。 ○後藤委員  恐らく考えていらっしゃると思いますが、研究組織は必要ではないかと思います。 ○梅澤母子保健課長補佐  研究組織ですか。 ○後藤委員  研究組織とか研究担当者です。 ○梅澤母子保健課長補佐  研究の実施者の要件といったことであれば、次回以降にご議論いただく予定でござい ます。 ○後藤委員  説明書に。 ○梅澤母子保健課長補佐  そうですね。 ○笹月座長  これもまた、例えば凍結しておいて将来使うという場合には特定できないということ になります。ですから、もし書くとしても、このガイドラインならガイドラインの研究 担当者としての資格を有する機関、有する者というくらいのことでしょうか。確かにお っしゃるように誰が使うのかということは明確にしておかなければいけないでしょうか ら、その項目は必要なのではないですか。 ○小林母子保健課長補佐  研究実施機関名とその研究責任者の名前を明記するとか、そういうことですか。 ○笹月座長  いやいや、それは課題が決まらない。例えば凍結して1年後に誰が使うかわからない わけで、実施者ということは言えないので、後で研究機関の併せ持つべき条件を議論し ますから、その条件に適した機関でというような、そういう漠としたことしか書けない かもしれませんが、そういうことを述べておくことは必要でしょうね。 ○鈴木委員  今の笹月座長のお話は、例えばどのような研究に使うかわからないけれども、研究用 として最初からより分けておくとか、そういうことでしょうか。 ○笹月座長  いやいや、そうではなくて、生殖補助医療に資する研究です。 ○鈴木委員  もちろんです。ですが、生殖補助医療の中のどのような研究ということではなく。 ○笹月座長  それは特定できないのではないかと。 ○鈴木委員  特定できないのではなく、特定しなくても、とりあえず大枠の研究として、研究に使 ってよいですかという同意書ができるというようなお話かと思ったのですけれども。そ のような理解でいいですか。 ○笹月座長  はい。 ○鈴木委員  すみません。私はこの議論を全然そのように理解していませんでした。少なくともあ る程度は、先に研究デザインがあって、どのようなどのくらい卵子が必要であるかと、 例えばこのようなものを使ってやるという、先にデザインありきでと思っていましたの で、漠としたもののために最初からより分けストックしておくということはイメージし ていませんでした。 ○笹月座長  今の点についてどなたかご意見ございますか。よろしいですか。研究のテーマと研究 実施者は特定できないけれども、将来の生殖補助医療に資する研究に資するためにイン フォームド・コンセントをもって、ものをいただいておくということです。 ○鈴木委員  では、私はそれには反対です。そういうやり方では少しおかしいのではないかと思い ます。研究なさっている先生方にとっては、その辺はどうなのかわかりませんが。 ○笹月座長  はい、どうぞ。 ○吉村委員  私ども厚生労働科学研究でやった参考資料4を見ていただきたいですが、別添2のよ うな説明書を用いて研究をしているということです。通常はプロスペクティブな研究と か、そういった研究においては、鈴木委員がおっしゃったようにプロジェクトを立てて から卵子を集めていくということはあるのですが、そういったことでは間に合わないの ですね。ですから、通常は、まずこの卵子はもう要りません、この非受精卵は要りませ ん、あるいは形態異常胚は要りませんというインフォームド・コンセントを十分に取っ た上で、例えば凍結をしておく、さまざまな保存をしておく。その前に、これを研究に 使わせていただいてよろしいですかとお聞きし、OKが出れば凍結する場合もあるし、 そのまま使う場合もある、ということがあります。ですから、大体はこういったものと いうのは、それほどたくさんあるものではありませんので、数百という卵子を必要とす る研究が圧倒的に多いということを考えますと、保存をしておかないとやれないという ことになります。ですから、この説明も生殖医療の研究のための云々という言い方をし てある。例えば蛋白を調べたいと言って、それから卵子を集めるとすると数年掛かって しまうというようなこともありますので、それは現実的ではない感じがします。 ○笹月座長  はい、ありがとうございます。 ○梅澤母子保健課長補佐  後にインフォームド・コンセント等の項目に出てきますが、当然先ほどのご指摘にあ りましたように実施研究責任者・研究実施者の氏名・職名については、特定していただ きませんと、申請する段階でも困ってしまいます。あまりにも漠とした形よりも、ある 程度の範囲で決めていただくことになると思います。 ○笹月座長  それは今の吉村委員の話からすると現実的ではないということですよね。この蛋白が 受精にどう寄与するかを研究したい。そのために卵子を500個集めたいと言って、その テーマでその都度やっていたら、それはなかなか事が進まないでしょうと。 ○梅澤母子保健課長補佐  実施研究責任者・研究実施者の氏名・職名について、例えば責任者が吉村教授である とかは決めていただくことになると思います。 ○笹月座長  それはできないでしょう。 ○後藤委員  研究機関は。 ○笹月座長  だから研究機関は、かくかくしかじかの各要件を満たしたものが研究機関と。その研 究機関をリストアップすることが可能なら、リストアップできるというくらいのことじ ゃないのですか。 ○小林母子保健課長補佐  入手方法によってインフォームド・コンセントを行う時期が違うと思いますが、例え ば、生殖補助医療の過程で入手したものですと、生殖補助医療のためのインフォームド・ コンセントを治療を開始する時点で行って、しばらく時間が経ってから、研究を行う直 前くらいに行うという、2回インフォームド・コンセントを行うケースがあると思いま す。どの時期に説明するかということによって、説明の内容も変わってくると思います。 ○笹月座長  種類が幾つかありますというのは駄目で、一般論としてこういう形でありますという ことで了解を得ているということが必要ではないですか。この件は今まで一度も議論し たことがないので、皆さんお考えいただいて、後で議論をすることにしましょう。初め てのテーマですので、皆さんお考えがまだあると思いますので、一度お考えいただく時 間を取るということにしたいと思います。 ○星委員  デザインが全くないのではなくて、このような研究、あのような研究ということで大 枠の研究の目的は出てくると。ただ個人の卵子を何に使うということは特定できないで すから、慶応大学とか山口大学とかで研究をやる場合には、こういう人の卵子、人の精 子、人の胚を使ってこういう研究をやりたいとい大枠は出てくる。目的はいろいろある と思いますが、それはお示しできますが、あなたの卵子をここの部分に使いますという ことは絶対に言えないから、それで十分ではないかと思います。 ○笹月座長  生殖補助医療に資する研究、例えばこれこれがありますとリストアップしてもいいで す。ただし誰が使うか、どこで使うか、ということは特定できないということです。 ○町野委員  確認なのですが、先ほど研究申請と言われたのは、研究全体を最初から申請をしてし まうということではないのでしょう。恐らく私のイメージでは卵子を集めるという一つ のプロジェクトがあって、その時は研究内容がどのように使われるかはあまり決まった 答えを言えない。次にその卵子を用いて研究をする時に、もう一回研究申請を出すとい う段取りにならざると得ないと思います。最初に集めるのと、次にそれを使って研究す るのと、二つの研究に分けて考えないとうまくいかないと思います。そこをどういうイ メージで皆さんがお考えかということを知りたいです。   ○笹月座長  今の話は集める時の話でしたが、実際に研究実施者がこれこれをやりますという時に は、インフォームド・コンセントがもう一度必要だということになりますかね。 ○町野委員  いいえ、そうではなくて、その時は恐らく提供された卵子を使っていいですかという 話ですから、前にきちんとしたインフォームド・コンセントをして、採られた卵子を使 いますよという話ですよね。 ○笹月座長  はい、ただし申請者のこの研究ということは特定されてないわけですよね。 ○町野委員  いや、その段階ではもう特定されているわけですよ。 ○笹月座長  でも情報は提供者には行っていない。 ○町野委員  最初の集めるところが一つのプロジェクトであって、次の研究計画は次のプロジェク トですから、それを一つでやろうとすると無理だというのはおっしゃる通りです。二つ に分けるという前提での議論なら何とかなるのではと思います。 ○鈴木委員  二つに分けるというより、多分その二つが現実にあるということですよね。既に研究 デザインがびしっと決まっている時もあるでしょうし、広汎にまず集めるための同意書 が必要になる時もあるということで、そういう理解であれば私には何となくわかってき ました。 ○笹月座長  これは先ほど申しましたように、初めて出てきた問題ですので、皆さんお考えいただ いて。これだけで終わってしまいそうですので、先に進ませてください。項目立てとし て、研究機関と研究者が大事なテーマですので、どう処理するかということです。 ○千村母子保健課長  座長、よろしいですか。割り込むようで申し訳ありません。今の観点についてなので すが、また後で戻って議論をしていただくという理解でよろしいでしょうか。恐らく委 員のご理解の間に、若干ずれがあるのではないかと思いますので。 ○笹月座長  この件について、皆さんお考えいただいて、次回にでも確定しましょうというという ことです。今結論は出しませんということです。 ○水野委員  私は参加したてで、従来の経緯を全く存じませんので、一つだけ質問をさせていてい ただきたいのですが、このような全体の構造、いわば契約の相手方をどういうものを想 定されているのか、ご教示下さい。つまり極端な話だと、生体試料の保存バンクみたい なものが独立してあります。日本ではこのようなバンクは弱体ですから、生体試料につ いては専ら外国のものを輸入するという形になっているわけですが、インフォームド・ コンセントを取って、そういう種類のきちんとした責任のあるバンクを日本でも作り上 げていく可能性もこれからあると思うのです。そういうものを契約の相手方としてイメ ージされて議論されてきたのか、それとも例えば慶応大学の医学部が責任を持ってこう いう研究をしますので、それに協力をしてくださいというような形で、それぞれの研究 機関を相手方としてイメージしてこられたのか、それによっても話は随分違ってくるよ うに思うのですが、そういうイメージみたいなものはないのですか。 ○笹月座長  いわゆるバイオリソースバンクみたいなことはこれまで実は考えていませんでした。 これも大きなテーマですね。 ○木下委員  そこまでいかないまでも、共同研究というのはあり得ます。そういう意味では、自分 で集めたものは他の施設もご利用下さい、またそちらのものを貸して下さいということ はあり得る。その行き着くところは水野委員が言われたことになるのですが、これから 具体的に考えなくてはいけないことであると思いました。しかし、今までは細かいこと も含めて前向きの姿勢で来ておりますので、インフォームド・コンセントゆえに、厳し いことになってしまっては意味がないので、現実的に考えてあまりがんじがらめでない ようにすべきであると思います。 ○笹月座長  吉村委員に質問ですが、例えば今のような、極端に言えば生殖補助医療に資する研究 に使いたい、例えば研究の中身はこういうものがありますと箇条書きにしたようなもの をお示しして、いただくと。そしてそれを凍結しておくと。別の人にもそういうことで 集めて凍結しておく。それは採取した機関が凍結して、もちろん責任を持って保存管理 する。それを他の研究者が利用するということはこれまで考えていなかったのですが、 そういうことも学会の議論の中では出てきたのでしょうか。 ○吉村委員  あまりないですが、可能性としてはあり得るということです。例えば卵子が足りない から、こういった卵子がもしあれば研究に使わせていただきたいということはあっても おかしくはないですね。今まではあまりそういったことはなくて、日本産科婦人科学会 に研究登録をする場合は、施設登録でしていまして、その時に協力機関として出てくる 場合もないことはないです。ですから今後はそういったことはあり得るだろうと思いま す。 ○笹月座長  このバイオリソースバンクにしても、あるいは共同研究、他人がそれにアクセスでき るのかということも含めて、これまで議論してこなかったので、この件について項目立 てして、よくお考えいただいて、この件については次回検討するということにさせて下 さい。 ○木下委員  新たに項目立てするより、実際に慶応大学で作られたモデルがあります。具体的なモ デルで検討すれば、二重手間にならないのではないかと思います。事務局でもその方が 容易だと思います。つまり各施設で説明する際、自由意志による適切なインフォームド・ コンセントはおかしいので、今まで討議した内容が網羅されていればある一定のフォー ムができてもおかしくないし、そのことは当然であると思います。 ○笹月座長  文章が出てきたとしても、その中に盛り込まれる要件として、まずこれをご覧いただ いて、これはやはり機関の問題とか共同研究、第三者がそれにアクセスできるのかどう かとか、本人は現実的にどういう研究に使われるか実はわからないまま提供しましたと いうことはどうなのかとか、これまであまり検討されなかった事項が今日幾つか提示さ れましたので、そのことは時間をおいて考えさせていただくということにしたいと思い ます。項目については、今ここに示されているもので十分なのか、あるいは足りないの か、あるいは必要ないものがあるのか、ということをご覧いただけませんか。木下委員 がおっしゃったように、実際に文章として書き込む中でいろいろなことが出てくるだろ うと思います。せっかく項目立てがなされていますので、これについて足りないこと、 入れるべきこと、あるいは必要ないことなど、お気づきになればご指摘下さい。   ○鈴木委員  実験終了後の胚なり配偶子はどうなるのかということもあった方がいいと思いました。 ○笹月座長  実験終了後の。 ○鈴木委員  廃棄されるなら、例えば。 ○笹月座長  実験終了後に胚として存在するということは普通の実験では考えられないですよね。 そこから何かを抽出してしまって、影も形もないというような、そういう状況があるで しょうし。 ○鈴木委員  解析だけした場合は現実に14日間生きていたりします。仮に14日間でしたら、胚が 生存している。 ○笹月座長  何もせずにじっと見ていたということですか。 ○鈴木委員  つまり、例えば14日の後、最終的にどのように処分されるのかがあってもよいかと 思います。 ○笹月座長  胚、あるいは配偶子のまま存在するとすれば、それは焼却するということでよろしい ですか。普通は焼却ですか。 ○星委員  固定か焼却です。 ○笹月座長  固定か焼却。何かルールやガイドラインがあるのですか。 ○吉村委員  そうではないです。 ○笹月座長  どのように焼却、廃棄するかと。 ○星委員  普通は廃棄だと思いますが。 ○笹月座長  ではそのことも具体的な文言としてまた検討するということにします。その他、何か ありますか。 ○後藤委員  先ほどから出ていますが、他の施設へ贈与することがあるかどうかということです。 ○笹月座長  わかりました。次回検討すべき項目として。 ○石原委員  凍結している期間は特に記載する必要はないでしょうか。 ○笹月座長  凍結している期間は14日で破棄しなければいけないという中にはカウントしないと いうことを書いておいた方がいいでしょうね。   ○石原委員  10年でも、100年でも。   ○笹月座長  中身については議論があるかもしれませんが、凍結の期間についても加えておくとい うことでお願いします。 ○小林母子保健課長補佐  今の点ですが、資料2の4ページを見ていただきますと、凍結の扱いについては上か ら3行目の黒丸の下の※のところなのですが、「当該研究の終了後、胚を保存する目的 で凍結すること、保存目的で凍結していた胚を他の研究者が違う研究目的で使用するこ と、を認めるか否かついては、研究実施の要件について検討する際に再度検討」するこ ととしておりますので、今の指摘にもございますが、改めて議論いただきたいと考えて います。 ○笹月座長  この総論の項目は今ご覧になったばかりだと思いますので、後日気がつかれた点は事 務局にお送りいただくということで、総論はこれまでにして、各論に進ませていただき たいと思います。各論のところを簡単にご説明下さい。大体これまで議論したところで すので、皆さんは了解しておられると思います。 ○小林母子保健課長補佐  2ページ目以降各論に入らせていただきますが、その前に一点確認ですが、事務局が 今回まとめた資料というのは1ページ目の総論の中で、(1)の「研究の目的及び方法」で すとか、(3)の「予想される研究の成果」と書いてありますように、先ほどの議論からし ますと、基本的に研究目的をはっきりと定めた上で、特定の研究のために使用すること を念頭に置いています。ですからバイオリソースバンクのような包括的な合意というこ とは考えていませんでしたので、研究目的を明確にして予想される研究の成果までを明 確にした上で、インフォームド・コンセントを行うことを前提として2ページ目以降の 各論をまとめておりますことに留意して議論いただければと思います。  ざっと順番に2ページから説明させていただきます。まず1番の胚でございます。※ に書いてありますように、「医療機関に凍結受精胚を預けている患者のどちら一方又は両 方が死亡した場合に、代諾者の同意を得て提供を受けることができるのか、ということ については、今後改めて検討することとする」といたしまして、具体的に胚の入手方法 といたしましては、「生殖補助医療で利用されなかった凍結受精胚で廃棄が決定されたも の」という場合に胚を入手するというふうに考えています。インフォームド・コンセン トの同意権者については、「原則として、提供者(夫婦)から受けることとしてよいか」と いうことを挙げさせていただいています。  二つ目といたしまして、インフォームド・コンセントを受ける時期ですが、 「凍結保 存胚の保存期間が終了し、凍結保存期間の延長希望がなく、廃棄の意思が確認された後、 行うこととしてよいか」  三つ目といたしまして、撤回についてですが、「原則としていつでも撤回可能というこ とでよいか」「提供者の保護は最大限に考慮されるべきであるが、撤回が物理的に不可能 である場合あるいは撤回によって研究利用に多大な不利益が生じる場合があることから、 以下のような場合にはインフォームド・コンセントの撤回は不可能とすることでどうか」 具体的な条件として、「ア)当該試料等が連絡不可能匿名化されている場合、イ)研究が既 に開始されており、研究を中止することで過大な社会的不利益が生じる恐れがあり、提 供者保護と照らし合わせても研究を続行することが適当であると倫理委員会において承 認され、研究を行う機関の長に許可された場合、ウ)研究結果が既に公表されている場合」 「提供者の保護の観点から、インフォームド・コンセントを受けてから研究を開始する まで一定の期間を確保することとするか」  4番目といたしまして、インフォームド・コンセントの説明内容についてですが、1 ページ目の総論で書いた事項ですが、「I. 1の内容に加え、受精胚の場合に特に付け加 えるべきあるいは削除すべき項目はあるか」次のページの説明方法等についてですが、 「インフォームド・コンセントの説明及び同意の取得については文書で行うこととして よいか」説明者等に関しては、基本的には提供医療機関と研究実施機関が別々というこ とが多いかということもありますが、同一の場合にはどう扱うのかということを後ほど 資料4で説明させていただきたいと思います。  (6)としまして、その他配慮事項等についてですが、「特に必要な配慮事項はあるか。例 えば、個人情報の保護の観点からはどうか」ということを整理させていただいています。  続きまして精子の扱いです。精子についてもいろいろな入手方法がありますので、入 手方法ごとに整理させていただいています。まず一つ目に 「生殖補助医療において利用 されなかった精子」です。同意権者といたしましては「生殖補助医療の過程で生じた試 料であるため、原則として、提供者とその配偶者から受けることとしてよいか」という ことでございます。  (2)のインフォームド・コンセントを受ける時期ですが、 「提供者とその配偶者が受け る生殖補助医療が終了した後、行うこととしてよいか」「もしくは、生殖補助医療が終了 しなくても、提供者とその配偶者の廃棄の意思が確認されれば、行うこととしてもよい か」  3番目といたしまして、インフォームド・コンセントの撤回についての考え方でござ いますが、先ほどの胚の場合と基本的に同じで「原則としていつでも撤回可能というこ とでよいか」ただし、「以下のような場合にはインフォームド・コンセントの撤回は不可 能とすることでどうか」ということで、当該試料等が連結不可能匿名化されている場合 などア)、イ)、ウ)として三つを挙げさせていただいています。「提供者の保護の観点か ら、インフォームド・コンセントを受けてから研究を開始するまで一定の期間を確保す ること」としてよいか。  4番目といたしまして、説明内容について総論で記載した事項以外に付け加えたり削 除したりすべき事項はあるか。5番目の説明方法等については文書で説明及び同意の取 得を行うこととしてよいのか。その他配慮すべき事項があるかということです。  続きまして(2)の凍結保存されていた精子のうち不要となったものを扱う場合ですが、 その場合幾つか分類できます。一つ目といたしまして、「生殖補助医療の過程で凍結され ていた精子のうち不要となったもの」を研究に使用する場合、一つ目の同意権者につい てですが、この場合も提供者とその配偶者の両方から同意権者であるインフォームド・ コンセントを受けることとしてよいか。受ける時期ですが「提供者の生殖補助医療には 利用しないことが決定され、廃棄の意思が確認された後」でよいか。3番目の撤回につ いての考え方ですが、ここは先ほどと同様にいつでも撤回可能ですが、以下のようにア)、 イ)、ウ)で挙げたような場合には撤回はできないということでよいか。提供者の保護の 観点から研究を開始するまで一定の期間を空けることはどうかということです。(4)、(5)、 (6)の説明内容について、説明方法等について、その他の配慮事項等については、先ほど と同様ですので省略させていただきます。  次の2)の「他の疾患の治療等のため凍結されていた精子のうち不要となったもの」を 研究利用する場合ですが、 この場合のインフォームド・コンセントの同意権者ですが、 生殖補助医療目的として使うのではなく、配偶者は関係がないので提供者本人のみから 同意を受けることでよいかということです。  2番目のインフォームド・コンセントを受ける時期ですが、「生殖補助医療には利用し ないことが決定され、廃棄の意思が確認された後、行うこととしてよいか」(3)、(4)、(5)、 (6)については同様ですので説明を省略させていただきます。  次の6ページ下の「(3)泌尿器疾患等の手術により摘出された精巣又は精巣切片」です が、この場合の同意権者については提供者本人から受けることとしてよいか。(2)のイン フォームド・コンセントを受ける時期ですが、「摘出精巣又は精巣切片の廃棄の意思が確 認された後に、受けることとしてよいか」撤回についても考え方は先ほどと同様です。 「提供者の保護の観点から、インフォームド・コンセントを受けてから研究を開始する まで一定の期間を確保すること」としてよいか。(4)の説明内容、(5)の説明方法等、(6)の その他配慮事項等についてはそれまでと同様でございますので、説明を省略させていた だきます。  7ページ目の一番下ですが、4番目の「他の疾患の治療のため精子を保存する目的で 摘出・保存されていた精巣又は精巣切片で不要となったもの」についてですが、(1)の同 意権者については提供者本人から受けることとしてよいか。(2)のインフォームド・コン セントを受ける時期ですが、「生殖補助医療には利用しないことが決定され、廃棄の意思 が確認された後、行うこととしてよいか」ということです。撤回の可能性についても先 ほどと同様ですが、「提供者の保護の観点から、インフォームド・コンセントを受けてか ら研究を開始するまで一定の期間を確保すること」としてよいかということです。(4)、 (5)、(6)はまた省略させていただきます。  次に9ページで、「(5)外来検査受診の後、不要となった精子」を使用する場合ですが、 この場合のインフォームド・コンセントの同意権者についてですが、外来の検査の中身 が生殖補助医療の検査であると。生殖補助医療の過程で、ない場合とある場合で同意権 者が変わってくるということで、検査が生殖補助医療の過程でない場合は、原則として 提供者本人1名から受けることとしてよいか。それに対して「検査が生殖補助医療の過 程である場合、原則として、提供者とその配偶者から受けることとしてよいか」という ことです。  インフォームド・コンセントを受ける時期についてですが、「検査に関するインフォー ムド・コンセントを行った後、検査終了後の精子の廃棄の意思が確認された後に、行う こととしてよいか」撤回についても同じような考え方で、「提供者の保護の観点から、イ ンフォームド・コンセントを受けてから研究を開始するまで一定の期間を確保すること とするか」(4)、(5)、(6)は同様ですので省略します。  10ページの「(6)無償ボランティアからの精子」ですが、まずインフォームド・コン セントの同意権者については「提供者から受けることとしてよいか」、(2)のインフォーム ド・コンセントを受ける時期についてですが、「基本的に、本人からの自発的な申し出が あった場合に行うこととしてよいか」「研究の実施に当たって不可欠である場合には、そ の科学的合理性及び社会的妥当性について十分検討を行った上で、特定の者に精子の提 供を依頼することとしてよいか」とを挙げています。撤回の可能性についても先ほどと 同様です。説明内容について、説明方法等についても説明を省略します。  11ページから「卵子」の例です。卵子につきまして前回、前々回、議論を十分したと ころを踏まえて整理したものですが、資料3-2をご覧いただきながら具体的な入手方法 別に示しています。まずは1番目としまして「生殖補助医療に使用されなかった未受精 卵・非受精卵」です。そのうちの一つ目の「生殖補助医療の過程で生じた非受精卵」に ついて利用する場合ですが、インフォームド・コンセントの同意権者については「原則 として、提供者とその配偶者から受けることとしてよいか」(2)のインフォームド・コン セントを受ける時期ですが、生殖補助医療のためのインフォームド・コンセントと同時 に、研究利用についてまず説明を行う。それからまた非受精卵が生殖補助医療に使用さ れないことが決まってから再度説明を受けることとしてよいかということです。「生殖補 助医療のためのインフォームド・コンセントと同時に、研究利用についての説明をする 際、説明すべき内容としてどのようなものがあるか。例えば、以下の項目でどうか」と いうことで挙げています。まずア)として「研究の目的及び方法」イ)として「提供され る配偶子の取扱い」ウ)として「予想される研究の成果」です。撤回の可能性についても これまでと同様です。(4)の説明内容について、(5)の説明方法等についてですが、「生殖補 助医療のためのインフォームド・コンセントと同時に行う研究利用についての説明、並 びに及びインフォームド・コンセントの説明及び同意の取得については、文書で行うこ ととしてよいか」ということです。それから、その他配慮事項ですが、これは前回の議 論で委員から指摘のあった事項ですが、「医師による恣意的な判断を防ぐため、提供を受 けた非受精卵については、写真を撮影するなどにより記録を残す必要があるか」「その他、 特に必要な配慮事項はあるか。例えば、個人情報の保護の観点からはどうか」というこ とで挙げています。  次に13ページの「2)形態学的な異常により使用されなかった未受精卵」ですが、こ の場合の同意権者については、「生殖補助医療の過程で生じた試料であるため、原則とし て、提供者とその配偶者から受けることとしてよいか」  インフォームド・コンセントを受ける時期ですが、この場合も先ほどの1の場合と同 様に、生殖補助医療のためのインフォームド・コンセントと同時にまず研究利用につい ての説明を行う。それから最後、未受精卵が生殖補助医療に使用されないことが決まっ てから受けることでよいのかということです。「(資料4-2参照)」と書いてあります。こ れは申し訳ございません。資料3-2の間違いです。資料の3-2をご覧いただいて、この 並びについて理解いただければと思います。それから生殖補助医療のためのインフォー ムド・コンセントと同時に、研究利用についての説明をする際に説明すべき内容につい ては、このようなア)、イ)、ウ)に記載した項目でどうかということです。  次の(3)の撤回について、(4)の説明内容、(5)説明方法等については省略をします。先ほ どの同様の内容について指摘しています。  それから14ページの3)ですが、「形態学的な異常はないが、精子等の理由で使用され なかった未受精卵」の扱いです。この場合はこの未受精卵を凍結しない場合と、してい る場合でインフォームド・コンセントを受ける時期が違ってくるかと思われていますの で、区別をして書いています。  まず凍結しない場合ですが、インフォームド・コンセントの同意権者については、「提 供者とその配偶者から受けることとしてよいか」インフォームド・コンセントを受ける 時期ですが、生殖補助医療のためのインフォームド・コンセントと同時に、まず説明を 行った上で、未受精卵が生殖補助医療に使用されないことが決まってから受けることと してよいか。まず最初の生殖補助医療のためのインフォームド・コンセントと同時に説 明する際の説明内容が、ア)、イ)、ウ)に書いてある記載事項でよいか。撤回の可能性等々 については先ほどと同様、他の場合と同様です。  15ページの下の方のii)の「形態学的な異常はないが、精子等の理由で使用されなか った未受精卵を凍結する場合」については、(1)同意権者については、「提供者とその配偶 者から受けることとしてよいか」は先ほどと同様ですが、(2)の受ける時期については、 「提供者の生殖補助医療には利用しないことが決定され、廃棄の意思が確認された後、 行うこととしてよいか」ということで整理をしています。  それから16ページ撤回の考え方です。基本的に原則として撤回可能ということでよ いか。ただし以下のような場合には不可能とするというのは先ほどの通りですが、「提供 者の保護の観点から、インフォームド・コンセントを受けてから研究を開始するまで一 定の期間を確保すること」としてよいかということです。  (4)、(5)、(6)は説明を省略します。次の16ページの「(2)疾患の治療等のため将来の妊 娠に備えて凍結された未受精卵のうち不要となったもの」の取り扱いです。インフォー ムド・コンセントの同意権者については、「提供者から受けることとしてよいか」(2)のイ ンフォームド・コンセントを受ける時期ですが、「生殖補助医療には利用しないことが決 定され、廃棄の意思が確認された後、行うこととしてよいか」ということです。(3)イン フォームド・コンセントの撤回についての考え方も基本的に他の場合と同様で、「提供者 の保護の観点から、インフォームド・コンセントを受けてから研究を開始するまで一定 の期間を確保すること」としてよいかということです。  次に17ページの1番下の「手術等で摘出された卵巣または卵巣切片からの提供」で すが、この場合も「婦人科疾患等の手術により摘出された卵巣又は卵巣切片」の場合と、 他の疾患治療のために卵子を保存する目的で摘出・保存された場合と、二つのケースが あります。まず婦人科疾患等の手術により摘出された卵巣又は卵巣切片の扱う場合です が、インフォームド・コンセントの同意権者については、「原則として、提供者から受け ることとしてよいか」(2)として受ける時期ですが、「摘出卵巣又は卵巣切片の廃棄の意志 が確認された後に、受けることとしてよいか」次の(3)の撤回についての考え方は同様で す。  続きまして19ページですが、「他の疾患の治療のため卵子を保存する目的で摘出・保 存されていた卵巣又は卵巣切片のうち不要となったもの」についてですが、同意権者に ついては、「提供者から受けることとしてよいか」(2)のインフォームド・コンセントを受 ける時期ですが、この提供者といった場合に、配偶者がいる場合は提供者とその配偶者 について、双方から生殖補助医療には利用しないことが決定され、廃棄の意思が確認さ れた後、行うこととしてよいか。インフォームド・コンセントの撤回についても、撤回 の状況をここに挙げているところと、「提供者の保護の観点から、インフォームド・コン セントを受けてから研究を開始するまで一定の期間を確保すること」でよいかというこ とです。  続きまして20ページの上から4行目の「(4)生殖補助医療目的で採取された未受精卵 の一部利用」についての考え方です。これまで同様、同意権者ですが、「生殖補助医療の 過程で生じた試料であるため、原則として、提供者とその配偶者が受けることとしてよ いか」(2)インフォームド・コンセントを受ける時期ですが、「本人からの自発的な申し出 があった場合に行うこととしてよいか」「自発的な提供の申し出は、未受精卵の採取以前 に受けたものに限ることとするか」(3)撤回、(4)の説明内容、(5)の説明方法等については、 他の場合と同様です。  最後の21ページ、(6)その他配慮事項等についてですが、「採取された未受精卵のうち、 研究に利用するものの選別については、グレードの低いものから順にするなどの配慮が 必要か」「その際、医師による恣意的な判断を防ぐため、提供を受けた未受精卵について は、写真を撮影するなどにより記録を残す必要があるか」「ホルモン剤の投与による卵巣 刺激、排卵誘発の合併症としてあげられる卵巣過剰刺激症候群(OHSS)等のリスクを考慮 しつつ、自発的な意思の確認はどのように考えるか」「その他、特に必要な配慮事項はあ るか。例えば、個人情報の保護の観点からはどうか」ということを議論いただきたいと 考えています。 ○笹月座長  どうもありがとうございます。 ○町野委員  すみません。出たり入ったりして非常に申し分けないのですが、余剰胚の使用のこと です。この問題はここでは議論をされていないですけれども、簡単に済むことですので ちょっと申し上げたいことがあります。  一つは内閣府からの報告書で委託されている問題は、胚を作って研究するということ です。これは既にできた胚をやるわけですから、その点は実は委託されていないことを ここで議論することになるのですが、だからやってはいけないということではないので すが。 ○笹月座長  それは配偶子のことですね。 ○町野委員  いいえ、胚です。最初の余剰胚を使った研究のところで提供のことをしていますから。 それはもちろん結構ですが、もう一つの問題は、余剰胚を使ってES細胞を樹立するこ とは既に認められています。しかしそれを認めたのはかなりの議論の末の出来事で、ES 細胞を樹立して研究することが、科学的に非常に必要であるということから例外的に認 めたことです。ですから今度これをするということは、実はそのES細胞の樹立以外の 研究目的で余剰胚を使うということをやるわけです。しかしそのことについては、これ は駄目だという見解が一部にあります。つまりES細胞の樹立に限って余剰胚の使用を 認めたのであって、それ以外の研究について何も議論してないのだから、これをこちら で認めるというのはおかしいのではないかという議論もあります。実際に内閣府の中の 生命倫理専門調査会の中で出てきた発言の中にそれはあります。私はそのときに直ちに は言えないと一応申しましたが、そこら辺のことは少し意識された上で進行していただ きたいと思います。 ○笹月座長  生殖補助医療に資する研究における胚の利用、これの目的ですね。それのどこが合わ ないことになるのですか。 ○町野委員  合わないというのは、生命倫理専門調査会の報告書から二つの点でその範囲内ではな いということです。一つの点は、生命倫理専門調査会報告書は胚を作って研究すること についての諮問です。これは既にできている胚を使うということですから、その点が少 し違うということです。確かに違ってもよいという議論はあります。しかし第2に、こ れは余剰胚を研究目的で使用するということですから、余剰胚の研究目的の使用はES 細胞の樹立研究についてだけ議論をしたという経緯があります。それを議論なしにこち らもできるという前提で始めるのですが、そのことを前提としていると認識していただ かないと、後で内閣府、生命倫理専門調査会にあがったときに多分議論になりますから、 この議論をしていただきたいと思います。 ○笹月座長  町野委員のおっしゃる意味はわかりました。ただ余剰胚を使うということと、新たに 未受精卵、それから精子を手にして胚を作って、それを実験に使うこととを比べてみま すと、社会的な受け入れ方としては、前者の方が容易なわけです。だからそれが認めら れないというのがおかしい感じがします。 ○町野委員  私は認めないと言っているのではなくて、今のことを十分認識した上で進めていただ かないと、非常に大変なことになると申し上げているわけです。 ○吉村委員  私は、町野委員は誤解されていると思うのです。ヒトの受精胚の作成・利用、これが どういうことを意味しているかを考えないといけないと思うのです。これは逆に言いま すと、ヒトの受精胚の利用もでき、容認し得るということは厚生科学審議会で内閣府の 総合科学技術会議で言っていると思うのです。今のことを考えますと、私は総合科学技 術会議の判断に驚いた。生殖医療の研究のための胚を作ってもいいですよと。これはと んでもないことですと私は思うのです。ですからヒト受精胚の作成に関しては、私はよ くここまで言われたなと。しかし利用に関しては、私は今までもずっと使っていました し、この点についてはどちらかというと作成の方が問題であって、利用に関してはこの 中ポチをどう考えるのか。作成者したのを利用するということではないような判断だと 思っています。 ○町野委員  いろいろご議論があると思いますけれども、前から吉村委員と私の理解が違うところ ですが、中にいた人間としては作成して使うという前提で報告書を作られたと私は理解 しています。しかし、できた以上は後で別の解釈もあり得ることですから結構ですが、 私が問題にしているのは、余剰胚を用いた研究です。あれを認めるかどうかというのは かなり世界的に問題があったわけで、ES細胞を樹立する時に、それを認めるかどうか で人の生命の萌芽、人の生命をつぶしていいか。つぶして研究していいかという議論で、 余剰胚だけはいいだろうということで認められた経緯があります。ES研究以外の研究 目的に用いることについては、だから駄目なのだと、反対解釈だという議論は当然出て くるわけです。ですから私はそのような解釈を取れと言っているつもりはないし、それ に従うつもりはありませんが、今のような議論があるということを理解いただきたいと 思います。 ○笹月座長  一言申しますと吉村委員がおっしゃるように、作ることを認めることの方がよほど大 変なことです。もう余剰胚として存在するものを、しかもボランタリーに使ってよろし いとなっているものを使うことの方がずっと社会的には容認しやすいだろうと私は思い ますので、それ以上の議論は。 ○町野委員  確かにおっしゃる通り、作ることの方が大変だという議論はあります。そのために 1990年のイギリスの法律というのは当時としてはかなり異端だったわけです。それを内 閣府は是認したということになるわけで、これはかなり新しい問題です。しかし他方、 すでに存在している人間の生命を研究目的で利用していいというのはかなりそちらも大 きいので、どちらが社会的に受け入れられやすいという問題ではないと思います。だか ら両方問題があるということなのです。片方を認めた以上、片方は構わないという議論 ではないと思います。いろいろ議論はありますが、インフォームド・コンセントに入る 前に、実はスタートが問題だったわけで、そのことを申し上げたのです。 ○笹月座長  ただ生命の萌芽といえば新しく作ったものも生命の萌芽です。だから余剰胚は生命の 萌芽、新しく作ったものはそうではないとはならないです。生命の萌芽である余剰胚を 使うのは難しい、新しく作った物も、そういう意味では同じです。 ○町野委員  それはそうです。議論を延々と続けるつもりはありませんが、もう1度繰り返しにな りますが、要するに出産目的ではなくて人の生命を作るということは、世界的にタブー だったわけです。これを突破した点でかなり大きいということは確かに吉村委員が言わ れる通りだと思います。しかしその前から議論がありましたのは、諸外国において、特 にドイツあたりの議論では、とにかく受精胚は萌芽とは言わず人の生命そのものである から、それを侵害することは絶対処罰するというのが世界的にあったわけです。その中 でES細胞で初めて日本は認めた。ドイツは認めなかったけれども日本は認めた。そう いう事情を考慮いただきたいということです。 ○笹月座長  それでは一応、この各論をスタートしたいと思います。中身については、これまでも 何度も繰り返し議論してきたことですので、大きなものはないかと思いますけれども、 実際にこれをガイドラインとして書き込むということになって、いわゆるインフォーム ド・コンセントについては、その都度インフォームド・コンセントのところで議論しま しょうと言って先送りしてきた項目ばかりですので、ここで改めてきちんと一つずつ確 認をしていきたいと思っています。それで、まず各論に示された順序で一応スタートし たいと思いますが、よろしいですか。 ○石原委員  共通部分がかなり出ていますので、それはどのように。 ○笹月座長  後で簡単にしますので、まず最初の受精胚というところでしっかりやって、あと共通 のところはそれに従うとしたいと思います。  まずこの凍結受精胚、それも生殖補助医療目的で作られたけれども、実際には生殖補 助医療には利用されなかった凍結受精胚で、しかも廃棄が決定されたものについては、 「(1)インフォームド・コンセントの同意権者について」は、原則として夫婦提供者から 受けることでよろしいかということですが、これはよろしいですか。何か特段の意見が ある方は、時間の節約上、手を上げて速やかにお願いします。よろしいですね。はい。  「インフォームド・コンセントを受ける時期について」は、凍結保存胚の保存期間が 終了し、凍結保存期間の延長希望がなく、破棄の意志が確認された後、行うこととして よいか。「凍結保存胚の保存期間が終了し」というのはどういうことですか。 ○梅澤母子保健課長補佐  保存期間といいまして、一定期間、たとえば1年ごとに生殖補助医療に携わっている 医療機関の方から患者ご夫婦に対して凍結保存を継続いたしますかというお伺いが行き ます。そのことを意味しています。 ○笹月座長  そうすると、その期間が終了していなくても本人がもう子どもは十分、受けたのでも う結構ですと言ってきた場合は、でも保存期間が終了していないから駄目だみたいな制 約があるみたいに聞こえますが。 ○梅澤母子保健課長補佐  そういうことを意味しているわけではありません。 ○笹月座長  ですから、「凍結保存胚の保存期間が終了し」ということは必要ないのではないかとい うのが私の質問です。 ○梅澤母子保健課長補佐  書きぶりを検討させていただきます。 ○鈴木委員  今ここで議論しなくてもいいのですが、後ほど廃棄の意志の確認方法についてはご確 認をお願いしたいと思います。  私どもの会に入っている情報ですと、施設から電話であなたの凍結保存しているのを 使ってもいいですかと、電話でやっているところもあると話が入っていますので、それ ではちょっと困ると思います。 ○笹月座長  実際にインフォームド・コンセントの取り方というところで、これまでも議論いたし ましたけれども出てきます。「(3)インフォームド・コンセントの撤回について」、原則と していつでも撤回可能ということでいいですか。これはよろしいですね。はい、どうぞ。 ○水野委員  前回にも少し違和感を感じたのですが、身体についての医的侵襲ではなくて、提供の 行為であるわけですね。あの後フランスの資料などを読んでみたのですが、基本的には 贈与契約として論じているようです。もちろん通常の贈与契約とは同一には考えられま せん。対象が人体の試料に関するものなので、契約の中身を例えば決して有償ではいけ ないとか、公序良俗性を厳しく考えてもらった後の行為について倫理委員会が強く規制 をかけたり、相手方を限定したりすることで規制はしていますが、贈与契約というのは 契約として1度与えるという意思表示をしてしまいますと、それに縛られることが前提 になります。インフォームド・コンセントとして、いつでも契約撤回可能ということで はなくて、原則はその意思に自分も拘束されて、相手方はそれによって保護が与えられ るという枠組みの中で議論されているようです。そしてインフォームド・コンセントを いつでも撤回できるということに依拠して安全性や正当性を担保しようという枠組みは むしろ危ない気がします。ある種市場原理というのか、変なことをしているところから は皆取り返すよということによって適正性を保障できるのか、大抵の場合渡してしまっ たらそれきりという人の方が多いでしょう。むしろ原則撤回自由というのを少し考え直 しておいて、それよりも研究の中身を公的規制できちんと見られているという方が安心 できる枠組みだと思うのです。遅くに加わった者がいきなりこれまでの議論の仕方と違 うことを申し上げて恐縮ですが、原則としていつでも撤回可能という大きな枠組みがそ れほど優れたものとは思えないのです。 ○笹月座長  前回、前々回、私も水野委員にご質問したと思うのですが、私自身も、提供しますよ と言ったインフォームド・コンセントがインフォームド・コンセントであって、それを また撤回というと、インフォームド・コンセントの意味といいますか、その位置をおと しめるみたいに感じられるので、前回質問したときの水野委員の説明に私は非常に共鳴 したのですが。 ○水野委員  身体に対する侵襲行為であれば、インフォームド・コンセントの撤回の自由、つまり 侵襲行為をずっと続けているときに、もうやめてくれというのはいつでもできないとい けないと思うのですが。 ○笹月座長  それと、その延長線上で行くと、いつでも撤回可能ですと、それから後で出てきます けれど、何カ月間かおいてそのときにもう1回確認して、撤回しますと。そうしたらま た何カ月間かおいて確認したら撤回しますみたいなことできりがないし、どこまでやれ ば本当に正当なのか。水野委員がおっしゃった意見と同じになるのですが、私も理論的 にはそうやってサインしたのだから、それで終わりみたいな感じの方が受け入れやすい のですけれども、個人的なものですから、皆さんの意見を。 ○梅澤母子保健課長補佐  臨床指針・ゲノム指針等の他の指針においては、ヘルシンキ宣言に基づきまして、原 則としていつでも撤回可能という枠組みを取っています。その枠組みの中で、提供者の 保護に関しましては前回の議論にあったように、提供者の保護が最大限に考慮されるべ きことを前提に、撤回が物理的に不可能である場合としての条件についてア)、イ)、ウ) という整理をしました。 ○水野委員  ヘルシンキ宣言は以前のナチのような経験からも出来上がってきて、医事の領域にお ける憲法になっていることも存じ上げているのですが、患者の治療と生体資料の提供を 同列に考えるべきではありません。フランス語を少し読んだだけですが、ヘルシンキ宣 言とは違って、医事法学というものがあって、医事法学のレベルはかなり契約の方へ従 来の民法学の法理も入っていって規律されているように思うのです。そちらの配慮を入 れる議論をしてもいいように思うのですが。 ○石原委員  胚でも配偶子でも同じだと思いますが、基本的には要するにドネーションですよね。 要するに経済的な反対給付は当然ないというそういうレベルの状況の議論に必ずなって くるので、もし比較するとすれば、例えば献血であるとか臓器移植の臓器提供ととても 近いと思うのです。そういう場合に、これはいったんインフォームド・コンセントを受 けた後で撤回は事実上あり得ないというか、不可能だということが、その撤回の問題に ならないということだと思うのですが、この胚とか配偶子の場合にはプラクティカルに 撤回可能な部分があるところが違うので、議論が非常に難しくなっているのではないか と思うのです。そういう場合にドネーションのものであるからということで法的に押し てしまって問題ないのでしょうか。水野委員に伺いたいのですが。 ○水野委員  押してしまってというよりも、結論はともあれ、今まさにおっしゃったような、献血 と同じような贈与契約の枠組みで基本的に議論されていると思うのです。詳しくきちん とは勉強していませんが、贈与契約の枠組みで言っても、自動的に通常の契約と同視は できません。何しろ贈与の対象が対象ですので、それについての包括的な倫理的な配慮 は必要だと思います。例えば決して有償はいけないとか、扱う機関を限定し、扱い方も どのようにこれを慎重に扱わなくてはいけないという形での規制。それからまさにイン フォームド・コンセントの保障、つまりどれだけ情報が与えられて、そのドネーション、 贈与の意思を決定したかということで、そちらの方からまさに中身について規制をかけ ていく形で、心配なことは全部手配が必要で、その限りで通常の自由な契約とは全く異 なります。でも契約法理で考えずに、インフォームド・コンセントだけで考えて、いつ でも撤回可能だからということで、提供者の人権であるとか、扱われる精子や卵子につ いての人格的な貴重さを、いつでも撤回可能だということだけにかけているような気が しました。それは実効的でもないし、むしろ危ないのではないかという気がしてなりま せん。 ○町野委員  よろしいでしょうか。 ○笹月座長  はい。 ○町野委員  今事務局の方のご説明で、要するに他の指針との並びですね。他の指針がおかしいの です。つまり説明された通り、ヘルシンキ宣言というのは、こういうことを考えての問 題ではなくて、例えば献血するときに「献血OKですよ」と言った後に「やはり撤回し ます」、それはいつでも自由だという話なのです。要するに侵襲に対する、それがいつで も撤回可能だということで原則成り立っている。これは一回提供したものについてそれ を取り戻せるかどうかの問題ですから少し別の問題なのです。しかし今水野委員のご指 摘のように、とにかく自己決定でいつでも撤回できるのだという議論だけでずっと指針 ができていて、もちろんそれはあながち悪いということではないです。他のことは原則 だけまず言えというようにできていますから、私はこれで結論としてはいいだろうと思 います。書いていて、しかし後の方できちんと手当てをしているということなので、全 部を今から変えるということはかなり大変です。ですからヘルシンキ宣言にしろ、自己 決定の概念にしろ、皆独り歩きしているのが現状だろうと私は思います。結論は賛成で、 長くなりましてすみません。 ○笹月座長  結論はこれでよかろうと町野委員はおっしゃっているわけですね。 ○町野委員  水野委員に反対ということです。 ○笹月座長  はい、どうぞ。 ○水野委員  大きな流れがそうであって、ここでいきなり覆すのは不可能だと言われましたら仕様 がないですが、でもそうなると後の撤回不可能という枠組みのところで、もう少し柔ら かくしていく必要があるでしょう。例えば○の2つ目のイ)で「既に開始されており、研 究を中止することで過大な社会的不利益が生じる恐れがあり」かつ「続行することが適 当であると倫理委員会において承認され」という、ここまで要求するというのはおかし いという気がします。 ○笹月座長  そうですね。 ○水野委員  はい。いつでも撤回可能といっても、研究に着手していて、例えば「撤回請求が研究 機関にとって不合理な要求である場合には」など、何かそれぐらいのことで十分であっ て、見張らなければいけないのはむしろ研究の中身がきちんとしているかということの 方で、そちらを例えば倫理委員会や公的規制で見張っていただく方がいいと思います。 ○笹月座長  そうだと思いますね。今の水野委員の最初のメッセージに私は大変賛成なのですけれ ども、いつでも撤回可能とすることが本当にこれまで議論してきた提供者の人権や何か を守ることになるのかどうかというこのクエスチョンは、私は本当に大事なクエスチョ ンだと思います。例えば先ほど石原委員がおっしゃった献血や臓器移植、例えば骨髄移 植の場合に、何度も申しますけれども入院して全身麻酔で提供するわけですね。まず登 録をします。そしてHLAのタイプ、輸血で言えば赤血球のABO型に相当するHLA型 が合わないと臓器移植できませんから、そのタイプを調べて登録をしておく。そのHLA 型に合う患者が出てきたときにはその人に戻って提供してくださいと言う。しかしその ときには撤回可能です。そういう意味の撤回可能であって、いったん骨髄を採ってもら った後でそれを撤回するというのは、もうほとんど意味がないことですよね。その撤回 を保障するというのは。ですからそういう意味において、水野委員のおっしゃったその 後のことでいつでも撤回可能ということが、提供者を本当に守ることになっているのか どうか、我々は錯覚しているのではないかと水野委員のお話を伺ってそういう気がしま した。 ○石原委員  もう1点よろしいですか。このインフォームド・コンセントを取る相手を、胚のとこ ろは提供者夫婦になっていて、これ以降は例えば生殖補助医療が関係しているものは提 供者とその配偶者、関係していないのは提供者だけという三つに分けていますよね。こ れに私は非常に違和感があるのです。最初の胚はいいにしても、あとはなぜ提供者では ない配偶者が同意をしなければいけないのか。最初はあまり気にならなかったのですが、 何回も出てきたので段々と気になってきて、それはどういうことなのでしょうか。 ○小林母子保健課長補佐  そこは統一的な整理といたしまして。 ○笹月座長  今の話に進む前に、最初のテーマがまだ解決していないのでどう処理するか。どうこ れを取り扱うか。要するにいつでも撤回可能ということをどう把握するかを、皆さんも う一回考えていただくべきテーマで、今早急に結論を出すにはまた新しい視点を水野委 員から指摘されたわけですから、これを一晩寝かせてと言いますか、次回までに考える 項目に置いておきたいと思います。 ○木下委員  いいですか。 ○笹月座長  はい。 ○木下委員  今の水野委員のお話は我々が実際に仕事をする上では極めて重要な話だと思います。 つまりインフォームド・コンセントそのものが契約書と同じであるとすれば非常にあり がたいと思います。しかし町野委員のご意見では過去の御経験からいろいろと問題点が あるとのことですので、基本的な考え方は水野委員の通りだと思いますが、実際にこの 文書はどのように修正すべきかについて、御教示いただきたいと思います。というのは 先ほどのお話のように社会的不利益だとか倫理委員会の視点では少し不自然だとか非常 に不合理なことだというのであれば、それほど難しくないと思います。現実的な対応を しなくてはなりませんからそういう表現にしていただきたいと思います。この契約が結 ばれた以上は、いついかなるときにも我々はやっていいはずなので、いちいち撤回の意 志の有無を確認する必要はないと考えますと、現実的な対応の表現が望ましいと思いま す。 ○笹月座長  この件は次回にしたいと思います。今日結論を出すことはできないと思いますので。 ○町野委員  すみません。ア)、イ)、ウ)のところをやはり議論しろということですよね。木下委員 がおっしゃるのは。 ○木下委員  はい、そうです。 ○町野委員  そうですね。要するに制限できる場合は具体的にと。これも次ですか。 ○笹月座長  次でいいと思います。 ○町野委員  そうですか。 ○笹月座長  だってもう撤回しないということを決めればそういうことを議論しなくてもいいわけ でしょう。ア)、イ)、ウ)は、「インフォームド・コンセントの撤回について」で撤回で きない場合を議論しようというわけでしょう。 ○町野委員  そうです。 ○笹月座長  だけれども、そもそも撤回は不可能ですよと言えばア)、イ)、ウ)は議論する必要はな いわけですからね。 ○町野委員  そのような意見があるとは私は承知しておりませんでした。水野委員もそのような意 見ではないと思います。 ○笹月座長  いいえ。そういうことを言っているのではなくて、次回きちんと議論しましょうとい うことです。  それでは(3)は残しておきまして、「(4)インフォームド・コンセントの説明内容について」、 「○I. 1の内容に加え、受精胚の場合に特に付け加えるべきあるいは削除すべき項目は あるか」ということについて、これはいかがですか。 ○小林母子保健課長補佐  I. 1というのは1ページの(1)〜(12)までの説明内容についてです。 ○笹月座長  ではその次ですね。3ページの(5)説明方法等について。「インフォームド・コンセント の説明及び同意の取得については文書で行うこととしてよいか」これは先ほど電話でう んぬんというお話がありましたが、文書でやりましょうということでよろしいですか。 それから説明者に関しては、これはまた問題がいろいろ出てきますので資料の4を整理 してから検討いたします。  「(6)その他配慮事項等について」、個人情報の保護の観点から何か配慮事項についてあ りましょうかと。これも難しい問題で、すべてのインフォームド・コンセントに共通の 事項ですので、これも先送りさせてください。  次に2番、「精子」です。「(1)生殖補助医療において利用されなかった精子」で「(1)イ ンフォームド・コンセントの同意権者について」は「原則として、提供者とその配偶者 から受けることとしてよいか」と。これは先ほど石原委員から出された問題点でありま すが、この点いかがですか。先ほどの受精胚については提供者、すなわちこれは精子と 卵子の提供者という意味で夫婦ということになっておりますが、この精子の場合には提 供者とその配偶者ということで配偶者が入っていることの意味。 ○小林母子保健課長補佐  事務局です。精子あるいは卵子の場合ですが、生殖補助医療の一環として入手したも のについては、生殖補助医療に精子を提供した男性あるいは卵子を提供した女性本人以 外にも配偶者がその利害に関係してきますので、そういった意味で原則として提供者と その配偶者から受けることということで整理させていただいていたます。生殖補助医療 以外の場合、生殖補助医療とは無関係なところで入手した精子または卵子については、 提供者本人からだけのインフォームド・コンセントの同意でいいのかということで、事 務局としては整理させていただいています。 ○笹月座長  それについて石原委員のご意見は。 ○石原委員  よろしいですか。二つの点で少し違和感があります。一つは夫の精子は妻のもので妻 の卵子は夫のもののような感じがするという、生理的に嫌な感じがすることが一つと、 もう一つは現実に卵子はともかく精子について生殖補助医療の過程であるかどうかとい うことを判断するのはとても難しい場合が多々予想されます。外来で精液検査をする場 合も生殖補助医療を予定している人において精液検査をする場合はどちらなのか、現実 に分けられるのかどうか、その二点についてお伺いしたいです。 ○鈴木委員  すみません。私の質問です。先に確認しておきたいのですが。 ○笹月座長  ちょっと待ってください。今の石原委員の質問にどなたか答えていただかなくては。  生殖補助医療の目的で採取された試料であって、それを。 ○梅澤母子保健課長補佐  まず、生理的に違和感があるというご指摘がありましたけれども、それは他の倫理学 者からも同じようなご意見をちょうだいしたことがございます。そこの点を含めてもご 議論いただければと思います。2点目の、そういうものを明確に分けることができない というところですけれども、それは個々の機関内倫理審査委員会等でもし分けられるも のであれば、ご検討いただければと考えていました。 ○石原委員  例えば一番わかりやすいのは、卵子についても婚姻しているカップルで奥さんの方が 卵子提供をするという場合に、夫の同意を必要としていないという国はスウェーデンを 始めたくさんあります。それは婚姻していてもです。本人の同意でよいと。一方で、配 偶者の同意を必要としている国もあります。だから必ずしも一律ではないですが、日本 の法律との関連のところ、どちらが整合性があるのかということはよくわからないので すが、どうなのでしょうか。 ○水野委員  おっしゃったように基本的に自分の体について決めるときには、いちいち配偶者の同 意を得ないという方が筋であろうし、トレンドだろうと思いますけれども、ただ二人の 精子と卵子が合体した、例えば中絶の場合には夫の同意が必要であるとか、胚になって しまった場合には自分ひとりの自由になるものではないだろうと思います。しかし石原 委員がおっしゃったように、特にそれで新しい命をつくるというときには、配偶者のコ ンセントが必要になってくると思います。そうではなくて研究目的の場合には要らない ように私も思いますけれども。 ○笹月座長  ありがとうございました。この件についてどうでしょう。 ○木下委員  星委員は精子の研究をやっていらっしゃいます。精子の採取をして精子を研究に用い るときに、人権や安全、あるいは生命的な問題ということはありません。精子というの は非常に特殊な位置付けにあるような気がするのです。卵子とは全く意味が違います。 こういう場合はいけないのだというものである方がわかりやすいと思いますが、実際に インフォームド・コンセントはどんなことに注意されますか。取っていないですか。 ○星委員  取っていますけれども、配偶者の同意などは得たことはないですね。 ○木下委員  もちろん生殖補助医療のところでもそうですし、研究のレベルでもそういう精子を使 わなくてもいいわけですので、そういう意味では今のところはあまりそういったことは ないですよね。 ○星委員  石原委員に言われるまで気が付かなかったのですけれども、確かにボランティアから 精子もらうときに奥さんの了解を得てもらうかということになってしまいますよね。結 婚していればの話ですけれども。だから水野委員のおっしゃったように配偶子の場合は 本人の承諾で十分ではないかという気がしますけれども。 ○笹月座長  はい、どうぞ。 ○町野委員  事務局はそういう意向だったわけですね。 ○梅澤母子保健課長補佐  いいえ。違います。 ○町野委員  違うのですか。 ○梅澤母子保健課長補佐  生殖補助医療にかかわった精子、卵子は、提供した女性本人以外にも配偶者がその利 害に関係するという考え方です。 ○町野委員  だから結局これからヒト胚を作って研究をしますよと言ったときに、誰か精子をくれ る人と言ったときに、では奥さんの意見も聞いてくださいとは言わないということです よね。だから今おっしゃった通りだと思いますけれども。 ○梅澤母子保健課長補佐  「言わない。」ということです。 ○町野委員  ですからその整理できているわけでしょう。非常に悪いけれども、わかりにくいです けれども、そういうことですね。 ○梅澤母子保健課長補佐  そういうことです。 ○町野委員  つまり生殖補助医療の目的で一回精子が提供されたときについて、それがそちらに使 われなくなったときに、それではそこから先は夫の同意だけでOKというわけにはなか なかいかないだろうということだから、妻の同意もいるだろうと。しかしそれに対して 最初からそういうつもりでないときには話は別だという整理でできているわけですね。 ○梅澤母子保健課長補佐  そういう整理です。 ○笹月座長  その生殖補助医療に使用する目的で取られたとして、それは将来とも生殖補助医療と して使うために保存しているものの中からたくさんあるからこれでというのであれば、 それは妻の同意は必要かもしれないけれども、もう破棄することが決まった後にはそれ は生殖補助医療の目的で採取したのかボランティアとして研究目的で採取したのかによ って区別する必要はないのではないかという気がしますけれどもね。 ○鈴木委員  すみません。よろしいでしょうか。 ○笹月座長  この件ですか。 ○鈴木委員  もちろんです。とても素朴な疑問ですけれども、町野委員の先ほどのご指摘とつなが るのですが、ずっと胚と卵子に関しての宿題の委員会であり、精子についても一応議論 しようということにはなっていたけれども、ここまでまるきり卵子を置き換えただけの 中身ですよね。そもそも精子を生殖補助医療研究に使ってよいという結論自体は、この 審議委員会の中で既に出ているのですか。殖補助医療研究に使っていいということの合 意はもうできているのですね。 ○町野委員  もちろんそれはヒト受精胚を研究目的で作っていいのだから卵子も精子もいいという 前提だろうと思います。 ○鈴木委員  わかりました。ただ他項もすべて、木下委員がおっしゃっているようにうまく言えな いのですが、違和感と同じようなことで、全部卵子と文字を変えただけですよね。こう いう話なのかなというところが私は違和感があるのですけれども。 ○笹月座長  もし違和感があるとすれば、それは卵子が出てきたときに。これはまず受精胚を議論 してそれから今精子を議論しているので、では卵子は特別にこうですよということで、 具体的にご意見をいただければと思います。 ○鈴木委員  わかりました。では一つだけいいですか。これをずっと読んできたときに、まず精子 に関してはボランティアはいいだろうという合意が、どこかで私が欠席したときなどに あったのかどうかということです。無償ボランティアもいいと。当然そういうレベルの 研究というのは現実にあるわけですから、別に私は駄目だとは申し上げませんけれども、 これの合意はしておく必要があるだろうということと、逆に言うとこれも卵子と同じレ ベルの無償ボランティアという言い方でいいのかどうか、私には少し。まあ無償ボラン ティアでもいいのですけれども。それともう一つ、後で委員の方々どなたかお答えいた だければ、6ページにある「(3)泌尿器疾患等の手術により摘出された精巣又は精巣切片」 というのがありますね。これを読んで初めてあれっと思ったのですが、例えばそもそも 卵巣切片なりが問題になってきたのは、ES細胞のときにもそうですが、クローン胚に ついてはそれ自体が研究解析の対象なのではなく、クローン胚の材料として必要である からということがずっと問題になってきて、ある程度特別扱いだったわけです。今この 話は精巣というのはその材料の話ではなくて、これはそれ自体が研究の対象であるとい うようなイメージのことになりますよね。 ○梅澤母子保健課長補佐  あくまでも胚を作成するというときの精子の基としての材料ということを念頭におい ております。 ○鈴木委員  材料入手のためだけの話なのですか。 ○梅澤母子保健課長補佐  そういうことです。 ○鈴木委員  つまり、人体資料として採られる側からすれば、その精巣切片が例えば癌研究に使わ れようが、生殖補助医療研究に使われようが、使い道の問題であって研究のレベルとし ては同じではないかということです。なぜ生殖補助医療研究に資する研究のときだけ、 例えば今後こういった非常に複雑な手続きが必要になるのかというのは少し変なのでは ないかなと思いました。 ○笹月座長  ちょっと待ってください。今逐一上から議論しているので、その順序を守っていただ きたい。 ○鈴木委員  わかりました。例えば他の精子単体に関しても、すべて生殖補助医療研究のためだけ に使われるのならこの話は頭からいっても分かるのですけれども、他の研究に使うこと というのは絶対にないのですか。生殖補助医療以外の研究に関するときはこのガイドラ インは適用されるのですか。 ○笹月座長  いいえ。これはそもそも生殖補助医療に資する研究と、それのガイドラインを決める 委員会ですから、それ以外のことはこの委員会の埒外ですからね。 ○鈴木委員  同じ精子を使うことであってもですね。 ○笹月座長  はい。ここでは生殖補助医療に資する研究。 ○鈴木委員  ですから精子だけの話だとそうなりますが、精巣の話で言うと恐らく違うだろうと思 いますのでということです。少しその辺まで踏まえて考えた方がいいのではと私は思っ たのですが。 ○笹月座長  それにしても順序を守っていただいて、その項目が出てきたときに議論いたしましょ う。(1)ですけれども、スタートしたところの(1)、配偶者の同意を本当に必要するかどう かということ。 ○加藤委員  規制はなるべく少ない方がいいという最小限の原則というのがあってもいいと思いま す。ひとまず精子の場合は男性の側の承諾があればいいというようにした方がいいので はないかと思います。増やしたからといってそれで特にこの全体のプランが良くなると いうことはないのではないかと思います。 ○笹月座長  他の委員の方、いかがですか。 ○町野委員  それは事務局案と違ってすべての場合についてということですか。 ○加藤委員  いいえ。規制は最小限でなくてはならないというのは。 ○町野委員  ですからそれが一つずつの問題なので、事務局案は最初は二つに分けた上で、片方に ついては両方、片方は一つだけという議論だったのですけれども、加藤委員のご意見と いうのはどうですか。 ○加藤委員  いや、今この点について。 ○笹月座長  だから卵子はどうかといったときにまた議論したらどうですか。 ○町野委員  いいえ。精子についての議論です。精子については事務局案と違って、男性だけの。 ○加藤委員  男性だけの同意で別に構わないのではないかと思います。 ○町野委員  はい、わかりました。 ○笹月座長  わかりましたではなくて、ご意見はどうですか。 ○町野委員  私はその意見もあり得ると思います。それは恐らく座長のご意見と同じだろうと思い ますけれども。 ○吉村委員  例えば例を挙げますと、町野委員と二人の意見の疎通がまだできていないと私は思い ます。事務局は生殖補助医療のために精子を採りました。これは研究に使うというとき に、もう私は要りませんと言ったときに、生殖補助医療で採った場合には、両方の同意 が必要ですというのが事務局の意見。ただボランティアで精子を採ったときなどは本人 の同意だけでよろしいですよということですね。ですから加藤委員へのご質問は私が例 えばAIHをする場合に、ご主人がいろいろと出張していてそのときに来られないので凍 結をしておきました。それで都合のよいときに人工授精を奥様がしていた。そういった 場合に夫が「もう子どもは欲しくない。私は要らないから生殖補助医療の研究に使って いいですよ」と言ったときに、奥様の同意は要らないのかいうこと。そういう例を挙げ れば。 ○加藤委員  それはちょっと違うと思います。これは生殖補助医療そのものをやめるということに ついては夫婦間の両方の合意が既に成立しているわけですよね。その前提の下で精子の 利用については夫の同意だけで十分だというように私は言っているのです。 ○吉村委員  私は生殖補助医療の同意が本当に得られたならそれで十分だと思いますが、そうでは ないケースもあると思います。同意して「もう生殖補助医療はしません」とお二人が言 えばそれはもう全くご主人だけでも構わないと思いますよ。 ○笹月座長  ポイントはそこだと思うのです。この「(1)生殖補助医療において利用されなかった精 子」ですから、これは生殖補助医療には利用しませんという両者の同意で決定した。 ○吉村委員  それだったらそれで十分だと思います。 ○笹月座長  今の件についてはそれでよろしいですか。事務局の方はそれでよろしいですか。 ○梅澤母子保健課長補佐  そのような形に整理させていただきます。また他にありましたら事務局までご連絡く ださい。 ○笹月座長  今は気付かないけれども、後で気付いたことがあればという意味ですか。 ○梅澤母子保健課長補佐  そうです。 ○笹月座長  ではここでは生殖補助医療に利用されなかった精子についての同意権者については提 供者とすると決定とします。 ○後藤委員  よろしいですか。利用されなかったという言葉をもう少し、廃棄が決定したとかにし た方がよろしいかと思います。 ○笹月座長  そうですね。その方がよろしいですね。それで明快になります。  「(2)インフォームド・コンセントを受ける時期について。」この最初の○「提供者とそ の配偶者が受ける生殖補助医療が終了した後、行うこととする」というところ。「生殖補 助医療が終了」ということは、第1回目の生殖補助医療が終了、まだ将来は子どもが欲 しいと言うかもしれないという意味なのか、もうすべてが終了したのか、これは少し意 味が不明ですね。だからその○よりも2番目の○「生殖補助医療が終了しなくても」よ りも、「提供者とその配偶者の破棄の意志が確認されれば」それでよいということではな いのですか。 ○小林母子保健課長補佐  提供者とその配偶者の間で廃棄する合意が得られたということです。 ○笹月座長  その場合に初めてインフォームド・コンセント。ではここは最初の○はなしにして、 2番目の○は「提供者とその配偶者の破棄の意思が確認されたとき」と、それでよろし いですか。 ○小林母子保健課長補佐  はい。 ○笹月座長  「(3)インフォームド・コンセントの撤回について」。これは○のまま残す。  「(4)インフォームド・コンセントの説明内容について」何か付け加えることはないか ということ。説明の方法は文書で行う。その他配慮すべき項目があればご提示いただき たい。  今度は「(2)凍結保存されていた精子のうち不要となったもの」「不要となったもの」 というのも明確にした方がいいですね。「生殖補助医療の過程で」というのは、吉村委員 あるいは星委員、凍結していて例えば何年経ったらもうあまり良くありませんよという ことがあるのですか。そういうことがあれば、もう不要になったと。 ○吉村委員  そういうことはないです。 ○笹月座長  ないですか。 ○笹月座長  そうすると、ここも子どもをこれ以上は要らないということで、夫婦の両者の破棄の 意思が確認された。これもインフォームド・コンセントの同意権者は提供者でよろしい ですか。受ける時期は、最初のものと同じように、提供者とその配偶者の両者の破棄の 意思が確認されたとき。  それから、「2)他の疾患の治療等のため凍結されていた精子のうち不要となったもの」 この凍結はもちろん生殖補助医療のために凍結されていた、ところがそれを両者の合意 で破棄しますということになったものということでよろしいですか。「不要となった」と いうのがあいまいなので。 ○梅澤母子保健課長補佐  「廃棄が決定されたもの」または「廃棄の意思が確認されたもの」のどちらかにさせ ていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○笹月座長  そうですね。 ○鈴木委員  この文章は何度か他のところでも出てくるのですが、もう少し検討していただきたい と思います。「他の疾患の治療等のため凍結されていた精子」、「凍結されていた卵子」と いう言い方になっているのですけれども、この意味があいまいなので文章を考えていた だきたいと思います。「他の疾患の治療等で生殖なりに問題があって自己の将来の生殖に 向けて」というように、「治療」と「精子」は「ため」がかかっていないので。 ○笹月座長  そうですね。 ○梅澤母子保健課長補佐  鈴木委員のご指摘の通りの意味ですので、検討したいと思います。 ○小林母子保健課長補佐  よろしいでしょうか。定刻の時間になりまして、帰られる委員の方がいらっしゃいま して、そうすると定足を満たさなくなってしまいますので。 ○町野委員  実は、私は3時15分から授業があるのですが、座長に聞いたところ私がいなくなる と会議が成立しなくなるということなので、大学には少し遅れると連絡をしたのですが、 もう限界ですので申し訳ありません。 ○笹月座長  予定の時間にもなりましたし、定足がこれで切れますので会は成立しませんのでこれ で終わりにしたいと思います。恐らくあとは今までの線に乗って、卵子の場合の特殊性 というようなことが出てくることだろうと思いますが、次回、議論することといたしま す。次回は、先ほどの総論のところとインフォームド・コンセントの撤回という大きな 問題が残されています。それも最初にするとまたそれだけで終わるかもしれませんので、 各論を終わらせてから最後にやるということにしたいと思います。 ○小林母子保健課長補佐  次回は、7月20日の14時から16時30分で予定しております。会場が決まりました ら改めてご案内させていただきます。 ○笹月座長  他にありませんか。文部科学省から審議官がいらしていますが、何かありませんか。 ○藤木審議官  特段ありません。大変ご熱心な討議をありがとうございました。この生殖補助医療研 究あるいはその他の倫理関係の委員会につきましては議論を尽くすということがとても 大事だと思っておりますので、スピードはやや遅いという印象をお持ちの方も多いと思 いますけれども、そこの点はしっかりと議論を尽くすという観点からぜひよろしくお願 いします。 ○笹月座長  今日はいろいろな問題が浮き彫りになりましたので、次回を期待したいと思います。 ありがとうございました。 −終了−  事務局:文部科学省研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室       電話:03−6734−4108(直通)      厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課       電話:03−5253−1111(内線7938)