07/05/30 社会保障審議会福祉部会(平成19年5月30日)議事録  社会保障審議会福祉部会議事録 1 日時:平成19年5月30日(水)14:00〜15:49 2 場所:厚生労働省7階専用第15会議室 3 出席委員:岩田部会長、石原委員、石橋委員、井部委員、江草委員(代理:小林日本介護福 祉士養成施設協会会長)、小島委員、京極部会長代理、木間委員、駒村委員、白 澤委員、高岡委員、鶴委員、福田委員(代理:田中栃木県保健福祉部長)、村尾 委員(代理:谷口日本社会福祉士会副会長)、森委員、吉岡委員   欠席委員:中島委員、堀田委員 4 議事 (1)「社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針」の見直しに   ついて (2)その他 5 審議の内容 ○岩田部会長 それでは、定刻となりました。皆様おそろいのようですので、ただいまから「社 会保障審議会福祉部会」を開催いたします。  まず、本日の委員の出欠状況について事務局よりお願いいたします。 ○矢崎総務課長 初めに、今回から鴻江委員に替わりまして吉岡正勝社団法人全国老人福祉施設 協議会副会長に委員に御就任いただくこととなりましたので御紹介いたします。 ○吉岡委員 吉岡でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○矢崎総務課長 なお、お手元に新しい名簿もお配りしておりますので、またごらんいただけれ ばと存じます。  次に、本日の委員の御出欠の状況でございますが、中島委員、堀田委員が御欠席です。 また、 江草委員の代理として日本介護福祉士養成施設協会会長の小林さんが、福田委員の代理として栃 木県保健福祉部長の田中さんが、村尾委員の代理として日本社会福祉士会副会長の谷口さんがお 見えでございます。  それでは部会長、議事進行の方をよろしくお願いいたします。 ○岩田部会長 それでは、本日の議事に入りたいと思います。今までいろいろ御議論をいただき ましたけれども、そろそろ確保指針見直し案の取りまとめの方向での御議論をお願いしたいと思 っております。  初めに、まず事務局より本日提出された資料についての御報告をお願いいたします。 ○木下福祉基盤課長 まず資料の説明に入ります前に、3月29日に本部会におきまして私の方 から御報告申し上げました「社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律案」について の今の国会の審議状況につきまして御説明をさせていただきたいと思います。  先般御説明いたしました際には、3月14日に国会に法案を提出いたしまして、29日の時点で はまだ審議がなされておらなかったわけでございますが、参議院の方での審議がまず先でござい ますので、参議院の審議が4月24日にスタートいたしまして、与野党合わせて6時間の審議が なされました。  そして、25日に参考人質疑ということで、この部会の委員の方からは京極部会長代理、小島 委員、石橋委員に参考人として御出席いただきまして意見陳述をされたということでございます。  そして、26日に1時間ほどの審議を経まして参議院の厚生労働委員会では採決が行われて賛 成多数で可決をいたしまして、翌27日に本会議ということで参議院では可決をされております。  その後、衆議院の方に回付をされておりまして、現在社会保険庁関係の法案あるいは昨日提出 されました年金のいわゆる記録に関します特例法案といった法律案が国会に出されて、現在その 関係の審議が進められております。したがいまして、そういった法案、それから恐らく労働関係 の法案が3法案ございまして、労基法ですとか最低賃金法、それから契約法という形で3つの法 案も委員会の方に付託をされて提案理由説明をされておりますので、それをまずやって、その後 に回ってくるかなという状況でありまして、現在のところまだ審議が衆議院ではなされていない という状況でございます。会期末は6月23日でございますので、それまでの間にできるだけ早 く可決成立するよう私どもとしても努力をしたいと思っております。  そこで、参議院の審議の内容でございますが、お手元に参考資料1とは別に縦で「法律案に関 する修正要綱」というものがあります。この中には、最初の方が法案の修正でございまして3枚 物でございます。その後に、参議院での附帯決議をお配りしております。  参議院の段階での審議の主な多かった意見といたしましては、この部会でも3月に御説明いた しました際にフィリピンとの協定の関係で准介護福祉士という制度をつくらざるを得ないとい うことで御説明をし、これは賛否両論いろいろ部会の委員の方からも御意見があったわけですが、 国会の審議の場におきましても同様に准介護福祉士の関係の規定について賛否両論ございまし た。  そこで、政府といたしましてはフィリピンとの協定をできるだけ早く見直すことによってこの 准介護福祉士自体ができるだけ発生しないように努めたいということでの御説明を申し上げて きたわけでありますが、それを条文上、明確にすべきであるということで、法律案の中にこの検 討規定を新たに追加しているということでございます。それが最初にございます修正の要綱でご ざいます。検討規定の中ではこういうふうに書かれておりまして、「政府は、経済上の連携に関 する日本国とフィリピン共和国との間の協定に関する日本国政府とフィリピン共和国政府の間 の協議の状況を勘案し、この法律の公布後5年を目途として、准介護福祉士の制度について検討 を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること」という形で附則に検討規定を 追加しております。  この趣旨は、1つはちょうど真ん中にありますが、この法律公布後5年を目途と、法律がこの 国会内に成立をいたしました際、6月の末ということになりますと5年後でございますから24 年の6月というのは大体5年を目途ということでございます。  この准介護福祉士の規定が動きますのは24年度でございます。実際上は国家試験が25年の1 月でありますので、そこで受験しなかった方、あるいは不合格の方で介護福祉士養成校を卒業さ れた方については准という名称が与えられるということになります。  したがって、24年の6月くらいを目途としてフィリピンとの協定の見直しが順調に進み、准 という規定がなくてもいいということになれば、逆に言いますと発生しなくて済むということに なりますけれども、多少ずれたとしてもできるだけ発生しないようにということでの趣旨で5年 を目途ということで出ております。そういう意味で、協議の状況を勘案してということで、それ で検討を加えて必要な措置ということを規定したということでございます。  合わせまして、最後の3ページ物で附帯決議が同時に採決をいたしております。先ほどの法律 案に関しましては、法律案そのものに関しては与党、自公、民主党が賛成ということで共産、社 民は反対というものでございます。この附帯決議は、共産党も社民党も含めて全会一致で賛成と されております。附帯決議の中身は、最初の方が現在この部会におきまして議論されております 人材確保のための指針に関係する内容が含まれております。  1つ目としましては、資格取得方法の見直しと合わせて介護報酬の見直しなど、制度を含めた 介護福祉士の社会的評価に見合う処遇の確保ということについての施策の推進というものです。  2つ目が能力開発あるいはキャリアアップという意味での支援、それから潜在マンパワーにつ きましての就業促進といったような介護労働力の確保対策についての推進というものです。  3つ目が任用につきまして、特に資格を持った介護福祉士を念頭に置いた任用の在り方につい てちゃんと検討しなさいということであります。  4つ目が、准介護福祉士の仕組みに関して、法案の検討規定に合わせて更に明確にしておりま す。フィリピンとの間の連携協定との整合を確保する観点にも配慮して暫定的に置かれたもので あることから、「介護福祉士制度の見直し後の介護福祉士の受入れの在り方について早急にフィ リピン側と調整を行う等の対応を行い、その結果を踏まえ、速やかに介護福祉士への統一化を図 ること」というふうに出ております。  5つ目が、実務経験ルートに6か月新たにオンされるわけですが、それの関係でできるだけ、 負担軽減に配慮する措置を講ずるべきだということで通信課程等々について出ております。  6つ目が各ルートそれぞれ、例えば養成校ルート、それから福祉系高校ルート1,800時間に引 き上げられるわけですが、その間の教育内容とか基準についてバランスにきちんと配慮すべきで あるということです。  7つ目が、本日資料の中に出されておりますけれども、専門介護福祉士あるいは専門社会福祉 士といった一つのキャリアアップ、専門的な分野に対応した資格といったものについての検討。  8つ目が、社会福祉士及び介護福祉士の国家試験の在り方についての検討。  9つ目が、社会福祉士の任用・活用の拡大という観点。  そういった点につきまして、附帯決議で決議をされております。以上でございます。 ○成田福祉人材確保対策室長 それでは、事務局から御用意させていただきました残りの資料に ついて御説明させていただきたいと思います。  まず資料1は、前回お配りしたものと同様に、福祉部会で人材確保対策について委員の皆様な どからいただいた御指摘を事務局の方で整理させていただいたものでございます。下線を引いて ある部分は前回、引いていない部分は前々回御指摘いただいた御議論でございます。事務局の方 で、「基本的な考え方」、「需給状況等」、「入職・離職状況」等、適宜項目を分けて整理をさせて いただいております。本日は、それぞれの御指摘事項につきまして特に御説明は申し上げません が、御議論をいただく際の参考としていただければと思っております。  次に、資料2でございます。本日は主にこの資料を基に人材確保指針の見直しについて御議論 いただければということで、議論のたたき台として御用意させていただきました。 まず1ペー ジでございます。見直しの基本的考え方といたしまして、現行指針が策定された平成5年から現 在までの制度の変化を踏まえつつ、今後生産年齢人口が減少していく中で人材が確保されるよう に必要な見直しを行うこととしております。下に社会福祉法の規定を付けてございます。第89 条第2項で、指針に定めなければならない事項を書いてございます。  2ページが、見直し後の指針の構成の案でございます。まず上の大きな四角の左上に制度の変 化、右上に従事者を取り巻く環境の変化を挙げております。  これらを踏まえまして、下半分の四角全体が、今回の見直し後の指針案の構成として考えてい るものでございます。まず「前文」で社会福祉事業を取り巻く情勢の変化の整理などを行ってい きたいと思っております。それから、「就業の動向」ということで、これまで2回にわたる福祉 部会でデータなどをお示しして御紹介しました福祉・介護サービス従事者の就業の動向を整理し ていきたいと思っております。  次に「人材確保の目標と課題」で、「現に従事している者の定着の促進」、「離職者等の再就労 の促進」、「多様な人材の参入の促進」という3つを目標として掲げまして、それぞれの課題を整 理した上で、それぞれの目標ごとに経営者、関係団体等、国・地方公共団体が行うべき具体的な 措置を整理いたしまして、最後にそれぞれの主体の果たすべき役割や国民の皆様の福祉・介護サ ービスへの理解の必要性といったようなことを整理していくことを考えております。  3ページからが、指針の見直し案の骨子でございます。まず「前文」でございます。「社会福 祉制度の変化等」ということで、国民の福祉サービスに対するニーズが多様化、高度化している こと、近年の制度改革においては措置から契約制度への転換、利用者の普遍化、営利法人などの 多様な事業主体の参入といったようなことが起きていること、労働力人口も減少が見込まれる中 で福祉・介護サービスの分野において安定的に人材の確保を図っていくことが課題であるとして おります。  4ページ目にまいりまして、「指針の位置付け」と書いております。人材確保指針は社会福祉 法に基づく指針でございますので、社会福祉事業の従事者の確保を図ることを目的とするもので はございますが、介護保険制度において社会福祉事業に該当しない居宅介護支援や特定施設入居 者生活介護などが位置付けられ、これらの事業については社会福祉事業と一体的に運営されてい ることから、今回の指針においてはこれらを合わせて「福祉・介護サービス」と総称して一体的 な人材の確保を図ることとしております。  5ページから「第一 就業の動向」でございます。生産年齢人口の減少に伴い、労働力人口も 減少することが見込まれること、従事者数が平成5年度と比べて4.6倍、特に高齢者分野では約 12倍と大幅に増加しているということを挙げております。  6ページにまいりまして、これらの従事者の特徴として、女性の占める割合が高いこと、非常 勤職員の占める割合が増えていること、離職率が高いことなどが挙げられるとした上で、介護関 連職種の有効求人倍率が全体に比べて高い水準にあること、それから、福祉部会でも御議論がご ざいましたが、いわゆる「潜在的介護福祉士」が多数存在しているといったことを挙げておりま す。介護保険サービスに従事する介護職員の需要の見通しにつきましては、今後10年間に約40 万人から60万人の介護職員の確保が必要となるとしております。  7ページが「第二 人材確保の目標と課題」でございます。先ほども申し上げましたように、 「現に従事している者の定着の促進」、「離職者等の再就労の促進」、「多様な人材の参入の促進」 の3つの実現に向けた取組みがより一層必要となるとしております。また、労働力人口の減少が 見込まれる一方で、福祉・介護サービスに対するニーズはますます増大していくことを踏まえて、 まずはいわゆる団塊の世代が65歳以上の高齢者となる平成27年を見据えて重点的に取り組む必 要があるとしております。  最初の「「現に従事している者の定着の促進」を図るための目標と課題」については、従事者 が安定的に働き続けられることを目標に据える必要があるとし、定着促進については3つの課題 を挙げております。1つ目は、労働関係法規の遵守を前提としつつ、仕事と家庭の両立が図られ るよう労働環境を整備すること、2つ目が、従事者がやりがいを持って働いていくことができる よう、キャリアアップの仕組みを構築すること、3つ目が、人材の育成及び確保は経営方針や経 営基盤の安定化と密接に関わることから、新しい福祉・介護サービスの経営モデルを構築するこ とが課題であるとしております。  2つ目の「「離職者等の再就労の促進」を図るための目標と課題」につきましては、潜在的有 資格者や福祉・介護サービスから離職された方の掘り起こしなどによって潜在的な人材を有効活 用していくことを目標に据える必要があるとし、そのためには、こういった方々の就業の現状等 の実態を把握し、これらの方々への働きかけから就業の支援などを一体的に行っていくことが課 題であるとしております。  3つ目が「「多様な人材の参入の促進」を図るための目標と課題」ということで、こちらも3 つ課題を挙げております。1つが、あらゆる機会を通じて若年層を始めとする国民各層に対する 福祉・介護サービスへの理解などについて普及を図るとともに、2つ目が職場体験などを通じて 他分野に従事する人材の福祉・介護サービス分野への参入促進を図ること、3つ目が、退職した 高齢者などの知識や経験などを積極的に活用する観点から参画促進を図ることが課題であると しております。  10ページの「第三」から、それぞれの目標ごとに関係者の実施すべき事項を整理しておりま す。それぞれの項目の後ろに、その事項を実施すべき主体を括弧の中で書いております。まず定 着促進を図るための1つ目の課題が「労働環境の改善」でございます。1つ目は、労働基準法等 の労働関係法規を遵守するとともに、いわゆるパート法の改正の趣旨を踏まえた対応を図ること。 2つ目の「給与等」につきましては、キャリアと能力に見合う給与体系の構築などにより処遇の 改善を図ること。3つ目の「労働時間等」につきましては、仕事と家庭の両立が図られるよう育 児休暇等の取得や職場内保育の充実などを推進すること。4つ目は、IT技術や福祉用具の積極 的な活用等を通じて業務の省力化に努めるとしております。  11ページにまいりまして、「福利厚生」につきましては、この部会でもバーンアウトの問題点 などが指摘されており、メンタルヘルス対策など、あるいは福利厚生事業の推進、「雇用管理全 般」につきましては雇用管理に関する相談事業、助成金の活用等に取り組むこと。「その他」に ついては、従事者の給与等の水準や事業者の収入の従事者の給与等への配分状況を含め、経営者 の経営実態を把握することを通じて適切な水準の介護報酬等を設定すること、IT技術の活用等 を通じた事務の簡素化を挙げております。  定着促進の2つ目の課題が、「キャリアアップの仕組みの構築」でございます。1つ目で、資 格制度を基盤として、施設長や生活相談員等の資格要件の見直しなどの従事者のキャリアパスを 構築すること。2つ目が、キャリアパスに対応した生涯を通じた研修体系の構築を図ること。3 つ目が、それぞれの現場において研修の機会を確保すること。4つ目が、従事者の多様な業務を 経験する機会を確保する観点から、法人間のネットワークを生かした人事交流などを通じて人材 の育成を図ること。5つ目が、例えば専門介護福祉士など、さらに高い専門性を認証する仕組み の構築を図るなど、従事者の資質向上に取り組むことを挙げております。  13ページが、定着促進の3つ目の課題の「新たな経営モデルの構築」でございます。1つ目 が、福祉・介護サービスが人によって支えられる事業であることを踏まえ、経営理念を確立する とともに明確な人事戦略を確立すること。2つ目が、小規模かつ脆弱な経営基盤からの脱却を図 るため、法人間の連携を進めることなどにより経営力を強化すること。3つ目が、社会福祉法人 制度改革などの規制改革を推進すること。4つ目が、融資や相談事業等の経営の支援を推進する ことを挙げております。  14ページからが、2つ目の目標の「離職者等の再就労の促進」でございます。まず潜在的有 資格者や離職者などについて就業の現状や離職の理由、再就業の意向などの実態を把握した上で、 2つ目でございますが、就職説明会の実施などを通じて再就業を働きかけること。3つ目に再就 業を希望される方に対しては職業紹介の実施や再教育などを通じて就業の支援に取り組み、さら に4つ目で就業後においても相談体制を整備するなど、その定着の支援に取り組むことという一 連の対応が必要ではないかとしております。  15ページにまいりまして、3つ目の目標の「多様な人材の参入の促進」でございます。  まず、教育現場におけるボランティア体験や福祉・介護サービスの職場体験の実施、あるいは ボランティアの受入れなどを通じて、若年層を始め広く国民に対する福祉・介護サービスへの理 解を深め、他分野に従事する人材の参入の促進のために、再就労の促進の場合と同様でございま すが、まずは就職説明会や職場体験等を重点的に実施する期間の設定などを通じて就業への関心 を喚起し、就業を働きかけ、無料職業紹介等の実施を通じて就業の支援に取り組み、就業後にお いても安定的に仕事ができるよう相談体制を整備するなど、その定着の支援に取り組むとともに、 就業に当たって必要な情報が得られるよう第三者評価結果の公表や情報開示などを推進すると しております。  また、退職した高齢者や障害者などに対する研修等を通じて、福祉・介護サービスへ就業しや すい環境を整えるとともに、これまでの就業経験の中で培ってきた経理や労務管理などの専門性 の活用を図ることを挙げております。  17ページの、「第六」につきましてはまだ詳しく書き込んではおりませんが、最初にも申し上 げましたように、経営者、関係団体等並びに国及び地方公共団体の役割に加えて国民の役割を整 理していきたいと思っております。  18ページからは、参考資料でございます。  18ページは、現行指針が策定された平成5年と現在の介護・福祉サービス従事者を取り巻く 状況の変化を整理したものでございます。  19ページは、前回もお出ししましたが、現行の指針の構成でございます。  20ページは、現行の指針と今回の見直し案の骨子の構成を比較したものでございます。現行 の指針では、まず経営者の行う措置を整理した上で、国・地方公共団体が行う措置を整備してお りましたが、今回はそれぞれの目標ごとに措置を整備するという形になっております。  21ページの「参考4」は、骨子案に出てまいります福祉人材センター、介護労働安定センタ ー、福利厚生センター等の事業の概要を整理したものでございます。  この資料2につきましては、本日委員の皆様からいただく御意見も踏まえまして、必要があれ ば修正の上、国民の皆様あるいは都道府県からも意見をお伺いしていきたいと考えておりますの で、その点もお含みおきいただいた上で御議論をお願いできればと思っております。  次に、資料3の「専門介護福祉士の在り方に関する研究会」につきまして御報告させていただ きたいと思います。  1ページの「趣旨」にもございますが、専門介護福祉士につきましては、12月にこの福祉部 会からいただいた御意見におきましても、「資格取得後の一定の実務経験を前提として、一定の 研修を行った上で認定を行う仕組みとしての専門介護福祉士(仮称)の在り方について、有識者 や関係団体で早急に検討を行っていくべきである」とされたところでございます。  これを受けまして、専門介護福祉士の在り方についての論点の整理を行うために、有識者・関 係団体による研究会を開催することといたしました。メンバーは2ページに書いてございます。 第1回の会合を5月14日に開催いたしまして、今後議論を深めていただきたいと考えておりま す。  資料4は前回の議事録でございます。  最後に、「参考資料」は、前回お出しした関係するデータの資料を再度配布させていただいた もので、御議論の参考にということで御用意させていただいたものです。  繰り返しになりますので御説明は申し上げませんが、1点だけ、32ページと33ページを追加 しております。これは、入職率と離職率のより詳細なデータ、法人格別サービスの種類別、事業 所規模別、開設経過年数別の離職率・入職率を、32ページが訪問介護員、33ページが介護職員 に分けまして資料を追加させていただいております。これは、前回、離職率・入職率について都 道府県別のデータがないかという御指摘があり、調べてみたところ、都道府県別のデータはござ いませんでしたが、こういった詳細なデータがございましたので、ここに追加をさせていただき ました。  資料の御説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。 ○岩田部会長 どうもありがとうございました。  最初のものは御報告ということで、資料1、資料3についても一応これまでのここでの御議論 と、それから資料3についてはこういうことをともかく始めましたという報告を承ったというこ とで、今日は主として資料2の人材確保指針に関わる見直しのたたき台というものについて、ど うぞ御自由にどこからでも結構ですので御意見をいただきまして、今おっしゃっていただきまし たようにこの部会の議論と並行してパブリックコメントとか、あるいは関係の地方公共団体等か らの御意見等々も伺う予定だそうですので、今日何か決めてしまうということではなくて、むし ろ御意見をまずいろいろ出していただくということにさせていただきたいと思います。よろしい でしょうか。  では、森委員どうぞ。 ○森委員 人材確保のことについて、現に就職している、そして離職した人という中で一番大き く論点が浮き彫りにされたというのはやはり労働環境で、これだけ出入りの激しい環境というこ とであれば今回この人材を確保していく根本は、いかに質の高いサービスをこれから追求してい かなければだめか。そうすると、いかにして定着率、そこの中で先ほどの専門介護福祉士もそう いうようなことを経て初めて達成できると思います。  そうするとやはり労働環境、取り分けある面では報酬と申しますか、賃金の問題に最後はいく のではないかと思います。しかし、財政の面とかいろいろなことがあるかもしれませんけれども、 その中で国民にとって、利用者にとって、あるいは家族にとってどういうサービスが求められる かということを考えたならば、やはり質の高いサービスを安定的に提供していただける。そうい うことに対して、利用者あるいは家族がお金を支払うことに対しては恐らくそうだと思います。  そういうことから言ったら、この労働環境の中で特にいわゆる賃金の問題はある面でははっき りと打ち出していかないと、恐らくいい人が集まらない。集まらなければ安かろう悪かろうとい うことになる。結局、私が一番心配しているのは保険制度そのものが崩壊してしまったら意味が ないということです。それがまず第1点です。  それから、15ページのところだと思いましたけれども、「国民に対する福祉・介護サービスへ の理解」というところがございます。その中で、今回の人材の件でも一番出てきた問題というの は、例えば今までなかった認知症の問題、こういうものはある面ではもっと国民の皆様方に広く 知っていただくことをしないと、キャラバンメイトとかいろいろなことをやっていただいている んですけれども、まだまだ広まりというものは、やはり認知症というのは病気ではないんだ、加 齢によって起こってくることであるということをもっと国民の方に理解していただけるような 例を出して広く知っていただく。その理解をしていただくことによって、だから人材というもの が必要なんだというような書きぶりが是非あってほしいと私は思いました。 ○岩田部会長 ありがとうございました。では、石原委員どうぞ。 ○石原委員 日本は、介護福祉士という国家資格を持っている数少ない国で、現場で働くスタッ フにとっては大きなステータスになっています。また今度、国家試験になっていくと、実力も伴 ってくるだろうと予測されます。  「生活」に専門性があるということは、まだ国民の中の常識にはなっていませんが、本当の専 門性に気づいていくためには、現場の喜びを肌で知ることが大切です。  私たちの教育の中で「ふれあいタイム」という授業があるのですが、毎週現場に入って現場の 中で学んでいくことを重要視しています。そうすることで喜びや面白みがわかってきて、例えば 転職をしてもまた介護の現場で働くというケースが非常に多いです。  それから、15ページの最初の丸にありますように、全町民の小学校4年生が社会科の時間に 現場に来ます。子供の時に、生活を支える重要性や面白み、喜びを体で感じる経験を増やしてい くと、現場に魅力を感じてくれる人たちが増えるのではないかと思います。 ○岩田部会長 では、石橋委員、小島委員の順でどうぞ。 ○石橋委員 まず資料2の4ページの指針の位置付けでございますが、もともと平成5年に出さ れました指針というのはあくまでも社会福祉事業に従事する者が対象であったわけでございま すが、今回の指針の位置付けに関しましてはそれ以外の事業者も含めて福祉・介護サービスと総 称して一体的な人材の確保に努めることとすると前文で示されておりますが、社会福祉事業の分 野の従事者に関しましては89条の方で縛りがあるわけですけれども、それ以外の事業者の方に ついては法律的な縛りがなく、人材確保の基本指針を具体的にどのような形で一体的な人材の確 保に努めることができるのかということがまず1点です。  それから、第二の「人材確保の目標と課題」で8ページの1つ目の「現に従事している者の定 着の促進を実現するためには」のところで1つ目でございますけれども、「労働関係法規の遵守 を前提としつつ、従事者の業務上の負担が加重なものとならず」というような文章のつづりにな っておりますが、どちらかと言えば、「従事者の業務上の負担が加重なものとならず、仕事と家 庭の両立が図れるよう、労働関係法規の整備を図ること」というような形で、もう少しはっきり と書いた方がよろしいのではないかということを提案させていただきます。  それから、10ページの「現に従事している者の定着の促進を図るために」というところの2 つ目、「給与等」で「キャリアと能力に見合う給与体系の構築等により、処遇の改善を図ること」 と書いてありますが、これは具体的にどのようなものをイメージしたらよいのかということをお 聞きしたいと思います。  それから、11ページの4つ目、「その他」のところでございますけれども、「従事者の給与等 の水準や事業者の収入の従事者の給与等への分配状況を含め、経営者の経営実態を把握すること を通じて、適切な水準の介護報酬等を設定すること」と書いてありますが、これは非常に大切な ことであると思います。  また、前回、介護保険の半分は税金で賄われているから労働分配率を幾ら低くしても構わない ということではないというような御意見があったと思いますけれども、やはり私もそう思いまし て、人件費率を保障する仕組みが必要ではないかと思っております。  なおかつ、人材確保のためには介護報酬の設定も合わせてですが、職員の配置基準の見直しと いうことも入れていく必要があるのではないかということも意見として申し上げたいと思いま す。質問の回答をよろしくお願いします。 ○岩田部会長 今、幾つかありましたが、後の方は要するに経営者への努力と、それを保障する 制度的なものですね。それと賃金と人員配置の問題というのは多分セットであると思うのですが、 最初の4ページの福祉事業の範囲を拡大する場合、拡大してはみ出した部分についてどのように 実際上の規制ができるかという点について事務局からいかがでしょうか。 ○成田福祉人材確保対策室長 まず4ページでございますが、確かに社会福祉事業に該当しない 事業は法律上はそういう意味では社会福祉法第90条の努力義務はかからないことになると思い ます。ただ、今回こういう形で指針をお示しすることで、是非関係者の方に取り組んでいただく きっかけになればと思っております。  それから給与等についてでございますが、ここは実際にキャリアと能力に応じた給与というの はどういうものか、おそらく事業所によって違うということもあろうと思いますし、これから多 分いろいろと研究していく話、あるいは経営者の方においていろいろと御検討いただく話ではな いかと思っております。 ○岩田部会長 では、今の関連でどうぞ。 ○京極部会長代理 確かに経営者の努力もあるんですけれども、労働関係法規のところと給与等 は国の関与というものがなくていいのか。経営者だけでいいのか。国あるいは地方公共団体と経 営者、特に介護報酬などは経営者が勝手に決められませんで、労働分配率とか人件費率は企業に よって大分違いますけれども、書いたからといって厚生省を責めているわけではなくて、全体と して国も地方公共団体もこういうところに対して手厚くしていこうではないかという姿勢を示 す意味で、経営者だけというのはちょっと弱いような気がします。 ○岩田部会長 小島委員、どうぞ。 ○小島委員 個別の形より少し全体の取りまとめ、あるいは今回の指針の位置付けといいますか、 そういうことを初めに発言したいと思います。今、何人かの委員の皆さんからもお話がありまし たけれども、魅力ある職場とか、そういうようなことが具体的に施策で実現できるということが 基本だと思いますので、今回のこの指針を通じて各施策を実現すればこういう働きやすいといい ますか、いわば希望の持てる働きがいのある社会福祉の分野であるということがイメージできる ような、これは表現の仕方だと思いますが、最終的に是非そこは考えていただきたいと思ってお ります。  その関係で言いますと、8ページに社会福祉分野の経営モデルの構築という表現が出されてお りますけれども、それとの裏腹の関係で言えば経営モデルとそこに働く従事者の働き方のモデル といいますか、標準的な働き方、生涯福祉分野を通じて働き始めてからキャリアアップ形成をし て働き続けて退職を迎えるというような標準的な働き方がある程度イメージできるようなもの が必要ではないかと思っております。  今、離職者が多いということで、つい昨日、失業率が改善されて4%を切っているということ で、ほかの分野が相当雇用関係がよくなっているということがあります。そういう状況の中です と、より社会福祉分野での雇用の魅力ある職場というか、そういうことがイメージできるような、 そのための働き方の経営モデルに対して就労モデル的なものが少しイメージできるということ であれば、より人材確保につながってくると思っておりますので、その辺も含めて整理する必要 があるだろうと思います。  3つ目は、今回の指針の位置付けで社会福祉分野と介護分野との関係がありますけれども、特 に介護分野でいいますと介護の方の雇用管理改善計画というものがたしかあったと思います。そ ちらで幾つか助成制度などもあったかと思いますけれども、今回の指針と、既にある介護の雇用 管理改善計画との整合性はやはりきちんとしておく必要があると思います。その位置付けについ て中に触れておりますけれども、その辺のことを更に具体的な施策の中で整合性を図るようなこ とが必要ではないかと思っております。  それと、これは初めに森委員からも指摘されましたけれども、国民の理解と役割ということか と思います。このページでいくと最後の17ページでしょうか、第六の柱として各経営者、各団 体、国及び地方公共団体と国民の役割というところがありますけれども、そこに今後少し議論し て書き込んでいくということで言えば、まさに社会福祉あるいは介護分野のサービスの向上を図 るためにもそこで従事する職員、働く人たちの労働条件の改善ということが当然必要になってく る。それがあって初めて質の高いサービスを提供するということになりますので、そのためには 必要な費用というものはかかるんだということで、その国民的な理解、合意を得ていくというよ うな内容、趣旨といいますか、そういうことも書き込むべきではないかと思いますので、最後の ところにそういう役割ということですね。  それと、最後の20ページに参考3で現行の指針と今回の見直しの骨子案の対比というものが あります。これは、最終的に現行の指針と今回見直した指針の内容の違いというようなことをわ かりやすくつくっていただければと思いますので、その辺はこれからの中身をどう詰めていくか ということかと思います。とりあえず以上です。 ○岩田部会長 では、吉岡委員どうぞ。 ○吉岡委員 全体的にきれいに整理されているというふうな印象です。  ただ、インパクトが弱いんです。どうしてインパクトが弱いかというと、具体的な踏み込みが ない。弱い。今20ページのことが出ておりましたけれども、20ページを見てみますと現行の指 針と見直しの指針とどこが違うかというと、現行の指針というのは経営者が行う措置等を整備す る経営者の責務、それから下が国・地方公共団体の行うべきことというふうに明確になってきて いる。だから、非常にわかりやすいんです。  それで、最初に森委員の方から定着対策ということで賃金は極めて大事だ。そのとおりだと思 うので、賃金だけで決まるわけではありませんけれども、一般の市場経済であれば自由価格です から事業者が価格設定をすればいいわけですが、今回は介護保険の事業分野だけにとどまらない ということではありますけれども、殊、介護保険に関する事業に関しては公定価格ですから我々 事業者が一切手をつけることはできない。これは国の決定に従わざるを得ないということがあり ます。  それで、21世紀が本当に安心して暮らしていけるのかどうか。極めて大事なものがこの社会 福祉であり、社会保障であり、まさにセーフティネットの善し悪しではないですか。そういった 意味では、国の方としてもこれについてはきちんとしたことをしなければならない、していただ きたいということがあります。  それからもう一つは、例えばNHKでもありましたけれども、給料が安くて先行きの見通しが たたないからどんどん辞めていく。生活もできない。福祉の世界というのは非常にきつい。苦労 が多くて汚いというふうなダーティなイメージというものをつくり上げてくれる。  しかし、そういう厳しい面もあるわけですけれども、そういった介護労働があるからこそ高齢 社会を支えていけるといったことではないですか。家族にだけ、女性にだけ、あなたの責任でや ってくださいよということではなくて、社会全体で支えていこうというのが介護保険の趣旨であ ったわけですね。そういったことを考えますと、介護労働のイメージアップといいますか、そう いうものをしていかないと、すばらしい仕事なんだよ、21世紀の社会を支える大事な大事な仕 事ですよ、若い皆さんはどんどんこの世界に入ってくださいねというイメージを高めていくよう なこと、これは国にお願いするだけではなくて我々社会福祉法人でもそうですし、事業者でもそ うですし、市町村でもそうですし、そういうイメージアップを図っていく必要があると思うんで す。  ですから、そういったことについてだれが責任を持ってどう進めていくのかということまでで きてくると、非常にしっかりとしたものになっていく。指針というのはそこまでやらなくてもい いんだということなのかどうか私はわかりませんで、非常に感想的なことしか申し上げられませ んけれども、以上です。 ○岩田部会長 3つに共通するものというのがかなりはっきりあって、それが恐らく専門性が生 かされないといいますか、つまり資格を取っていろいろブラッシュアップしたことが生かされて いなくて、なおかつ経済的な裏付けもそこについていないということがいろいろな調査からかな りはっきりしたというのが、恐らくこの分野の人材問題のコアにある。それはこの部会でも今ま でいろいろな御意見があってかなり一致したところだと思うんですけれども、それをどうするか という話が前段にあって、その後、各論的に3つの戦略といいますか、そういうふうに分けると いう手も確かにあるのかもしれません。  そこが3つにばらされると、今、吉岡委員がおっしゃったようにインパクトが小さいというか、 ちょっと中に引っ込んでしまう。中に書いてあるわけですけれども、引っ込んでしまうというよ うな印象は確かにあるかなという気は私もちょっとしています。  では、どうぞ。 ○江草委員(代理:小林日本介護福祉士養成施設協会会長) 代理で出席させていただいた小林 と申します。  今、部会長もおまとめいただきましたけれども、先ほど吉岡委員のおっしゃったことは私もそ う思うわけです。  1つは、私どもこの介護福祉教育をずっとやってきて非常に残念だと思っていることは、例え ば高校を卒業して一生懸命勉強をして、そして2年後に介護福祉士になって現場に行きました。 行って一生懸命仕事をして熱心に仕事をすればするほど、かわいそうにその人はせいぜい長くて も2年くらいやると腰痛になってしまう。この腰痛が持病になって、どうしてもリタイアせざる を得ない。これは今まで議論されていることだろうと思いますが、そういうことがずっと起きて いたということで離職せざるを得ないという状況ですね。  そのことを含めて11ページに対策ということが書いてあるんですけれども、私はなぜ腰痛が 改善できないのかというようなことを科学的にちゃんと検証して、そしてそういったことを学校 教育の中にもきちんと取り込んでいくというようなことをして、腰痛改善の具体的な事例ですね。 改善法の具体的な事例を研究開発をして、それを教育の中、そして現場に普及させていくという ようなことをきちんとやっていかなければならないのではないかということを十数年前からず っと考え続けていたわけです。  ヨーロッパなどを見ていきますと、そういうボディメカニズムなどの基礎的な知識をきちんと 取り入れて、あるいはテクノエイド協会のいろいろな用具も活用するというようなこともここに 書いてありますが、具体的な活用例をきちんと普及させていくというようなことをやらなければ 腰痛の改善というのはできないだろうと思っているんです。それはやはり教育にも生かし、現場 にもきちんと普及させていくということをもっと徹底的にやるべきだと思います。  ヨーロッパの一部の国では、腰痛問題というのは20年以上前から起きていて、それは既に改 善済みだという国もあるわけです。現に腰痛を出す施設であれば、その施設自身が罰せられるな どというようなことになっている国もある。私はこの間、ドイツやデンマークに行ってきました が、まさにそういう事例になっているわけであります。そういうような介護の具体的な、要する に技術と申しましょうか、専門性というようなものをきちんと研究開発をして、それをきちんと 普及させていく。そして、学校教育にも生かしていくということが今まで十分なされていなかっ たような気がするんです。大変残念ですが、それをもっときちんとやって進めていくことがまず 第一に必要だろう。科学的な検証をきちんとしていくということを是非やっていただきたいとい うことが1つあります。  それは、先ほど吉岡委員がおっしゃいましたように3Kと言われていることです。要するに、 きついとか、汚いとか、危険だとか、あるいは5Kなどというような話もありますが、そういう ことを言って、現場では介護というのは大変ダーティな仕事だというイメージがおっしゃるよう にマスコミを含めて、あるいは介護の現場の人たちがそういうことを言っている。そしてまた、 若い人たちが例えば実習に入って更にそういうことを感じてあきらめていく、あるいは高校など で介護は大変な仕事だからいかない方がいいというようなことを進路指導の先生方が言うとい う話も一部では聞くというような状況ですから、何とかこの3Kというものを払拭する。  それは、科学的にちゃんと検証していけば全部できることなんですね。そういうことをきちん と私は是非進めていかなければ、本当に魅力ある介護福祉士というものはつくれないんだろう。 そういうことをきちんと改善をして払拭をして、そしてやはり介護福祉士という若者のあこがれ る、そういう専門職にきちんと育て上げていくということをもう一回私は仕切り直していかなけ ればいけないのではないかと思っております。 ○岩田部会長 井部委員、どうぞ。 ○井部委員 前回、私の提案で資料を用意していただきましてありがとうございました。参考資 料の33ページで、介護職員の組織別並びにサービスの種類別の離職率を私は大変興味深く拝見 しました。この離職率で法人格別のところを見ますと最も高いのは民間企業、営利法人が33.0% ですね。低いのが社団とか財団法人で11.1%、その開きが倍以上あるということは注目すべき ことで、比較的離職が少ない組織があるということにもう少し注目すべきではないかと思います。 全体的に介護職というのは、辞めるというふうなイメージが先行しない方がいいんじゃないかと 思いますことと、なぜこのような開きがあるのか。前回も少し申し上げましたけれども、少しベ ンチマーキングをして重要なポイントについては指針に盛り込むことができるといいのではな いかと思います。  もう一つは、下の「主とするサービスの種類別」のところでは30%台の離職率を示している ところがあります。これは特に認知症のところで、認知症対応型共同生活介護32.1、特定施設 入所者生活介護38.4、こんなに辞められたら組織としては仕事が続けられないんじゃないかと 思うくらいです。それから、事業所別では小規模が比較的離職率が高いことと、開設経過年数別 で見ますと比較的新しい組織が離職率が高い傾向にあるということがわかります。  それで、今回の人材確保指針の書き方を見まして、先ほども少し意見が出ましたが、最後の 20ページの具体的措置の内容で何人かの方が指摘されましたけれども、つまり措置をやる人は 経営者と国と地方公共団体と関係団体となるわけですが、そもそもサービスを提供している組織 そのものが何もしなくていいのか。これはやはり経営者だけではなくて組織経営、経営管理とい ったようなマネジメントが十分考えられていないのではないかと考えてしまうわけです。サービ ス提供組織としての組織体制というものにもう少し言及してもいいのではないかと思いました。  別件ですけれども、介護福祉士のイメージとしては今回カンヌ映画祭でグランプリを取った河 瀬監督の映画が介護士の女性と、それから認知症の男性との心の交流を描いたもので、『殯の森 (もがりのもり)』はとても魅力的な内容ではないかと思います。介護福祉士の人たちにとって 崇高な職業であるということを考える機会になるのではないかと思いました。以上です。 ○岩田部会長 では、今の関連で石橋委員、谷口委員どうぞ。 ○石橋委員 今の関連ですけれども、最初に日本介護士会が設立された平成6年には、まだ国民 の皆さんは介護の仕事、介護福祉士の役割などを十分知っておられない状況でした。そこで私た ちは、平成6年9月から毎年敬老の日の月間に全国一斉介護相談というものを行いまして、介護 の方法とか介護技術の方法、介護相談、それから介護福祉士の役割、仕事についての説明、資格 の取り方などのキャンペーンを全国で行ってまいりました。  それで、やはり介護職のイメージアップというのは非常に大切なことであると思いますので、 日本看護協会は看護の日というものがありますね。それで一大キャンペーンをやっておりますけ れども、できたら介護の日というものを設定して国民に関心を持っていただく機会を増やすのも 一つの手かなと考えておりますので、そこも検討していただければと思います。 ○岩田部会長 多分、井部委員がおっしゃったことや、先ほど小林委員がおっしゃったことは、 中身としては例えば経営モデルとか、幾つかITの活用とか入っているんですけれども、それを 経営者が福利厚生でやりなさいとか、そういう形ではなくて、もっとその前にシステム開発とい うか、介護環境を改善あるいは近代化していくような仕組みを公民で、あるいは学校や多様な関 係者が集まってつくっていきながら、それを取り入れた近代的な経営に移行するというような感 じかと思って伺っていました。  何かそういうふうなことと、それから井部委員がおっしゃったことで種別のパーセントという のは元の数がどうなのかということにもよるのかもしれませんけれども、例えば社会福祉協議会 みたいなところだとやや離職率が低いとか、確かにそういうことがあるとすると一体どういう秘 密がそこにあるのかというようなことはやはり研究課題だと思うんですね。だから、一律にかな り深刻な状況であることは事実ですけれども、その中で比較的人材確保できているところのノウ ハウのようなものも研究していい事例を拡大していくという感じもあった方が、イメージがより 悪くなることを避けるというのは両面なかなか難しいと思いますけれども、必要なのかもしれな いですね。  それでは、谷口委員どうぞ。 ○村尾委員(代理:谷口日本社会福祉士会副会長) 村尾会長の代理の谷口です。  全体を読みまして、人材確保指針を実効性あるものにしていただきたいというのは前提として ありますが、全体として社会福祉士という言葉が余り出てこないということがあります。それで、 今、会員は御存じのように2万人、もうすぐ3万人です。登録者が9万ということで、介護の福 祉士とかヘルパーさんに比べると圧倒的に少数ではありますが、参考資料でも5年当時と今日の 状況の変化ということで、最後の参考資料1のところに福祉従事者を取り巻く現状というものが ありますが、御存じのように介護保険を2000年にして、そこから同時に成年後見が出てきたわ けですね。それを車の両輪として、当然ながら選択とか自己決定を保障するために社会システム として出てきたわけです。  そういう状況の中で、認知症の高齢者にしても、判断能力が不足した障害者でも、この介護保 険制度なり障害者の制度なり、また子どものサービスなりを利用できる。利用に結び付いてそれ が生活を豊かにしていくんだという、その権利擁護に基づいた支援を社会福祉はしているんだと いうようなとらえ方で今までやってきたつもりなんですが、この人材確保でそういうような社会 福祉士の現状を踏まえた役割について、余り多くないのですが、そういったことも書き加えてい ただき、今、実はそういう役割を持った社会福祉士の介護、両福祉士法を見直しているんだとい うことを是非書き添えていただければ大変ありがたいと思っております。それが最大の申し上げ たいことでございますので、何とぞよろしくお願いいたします。 ○岩田部会長 では、白澤委員どうぞ。 ○白澤委員 ただいまの谷口委員の発言とも関係するのですが、介護福祉と社会福祉というのは 共通の課題と異なった課題を持っているということを是非ご認識下さい。今までの議論にもあっ たと思うんですが、要するに労働環境なり社会的な待遇が悪いという問題については一致してい るわけですが、一方で社会福祉士の方は実際に働く場がない。これが仕事そのものが見えにくい ことからくるもので、職場の拡大議論が必要です。さらには、そこでの専門職の比率が非常に低 いという大きな問題点を持っているわけです。その辺りから言うと、例えば行政、地方自治体や 社会福祉法人あるいは民間法人できちんとした任用をすることを具体的な議論として、本文に書 き留めていただくことが必要なんじゃないかと思います。例えば知事会でもケースワーカーとい うものをきちんと配置して生活保護の問題に関わっていこうというようなことを文章化してい る時期でございますから、そういう形で書いていただければありがたいというのが1点です。  それから、本来ならば今回の議論というのは福祉・介護サービスということに限定をするとい う議論なんですが、社会福祉士の場合は福祉領域を超えて、例えば司法領域では今回刑務所で社 会福祉士を採用するというような議論が進んでいるという状況があるわけですが、これは補足的 な議論になるかもわかりませんけれども、雇用や教育や司法という範囲で職域を広げていくこと も非常に重要な課題だということをどこかに明記をしていただければ大変ありがたいと思って おります。 ○岩田部会長 では、谷口委員どうぞ。 ○村尾委員(代理:谷口日本社会福祉士会副会長) 今、白澤先生が言われたので、先般の福祉 部会の参考資料の介護・福祉サービス従事者の現状という5ページ、6ページなのですが、実は 地域包括支援センターに業務として、生業として社会福祉士はこういうことをするんだよという のが歴史上、この20年の中で初めて位置付けられた。それまでは資格として任用資格でありま して、施設の指導員とか、相談員とか、司についても任用資格ということで、あるいは児相の所 長とか、そういうものも任用資格にはなってきて拡大はしているのですが、生業そのものとして は業務独占ではありませんので、今回の地域包括は初めてだということで今、白澤先生が言われ たように見えにくい。非常に社会福祉士の仕事の中身が見えにくい労働環境条件、社会環境条件 があったんだろうと思うんです。  それで、1つは去年の4月からもう1年たちましたけれども、地域包括の中で少しずつ支援を したり、関係機関行政にも支援、援助をお願いしたりして、何とか保健師さんやケアマネさんと 一緒に地域包括を切り盛りして、地域の介護予防を中心にサービスを展開しているというような 現状があります。  それで、今からそういったフィールドワークといったものの権利擁護を中心としたソーシャル ワークを展開するのが社会福祉士であるというようなことをやはり国民に広く啓発していただ いて、それで頼りになる仕事である、職業であるんだということを是非行政の方も啓発していた だいて利用していただく。せっかくお金をかけてつくった資格制度でありますから、地域の住民 の方々にどんどん利用していただく方が我々もありがたいわけでありますので、是非そのことを 付け加えてお願いしたいということでございます。 ○岩田部会長 田中委員、どうぞ。 ○福田委員(代理:田中栃木県保健福祉部長) 今、福祉職というか、県庁でも独立した職種と しては採れないんですけれども、一応事務職の中で社会福祉士を採って、本人の異動希望なども 聞きながらできるだけ長く福祉関係のところに異動を回すようにしております。  ただ、県庁側の組織になりますと、事務で採ると農務に行ったり商工に行ったりということな のですが、現在は異動希望という中でできるだけそういうところに長くいられるようにしている。  ただ、印象とすると非常によく気が利くといいますか、例えばNPOなどの経営が悪いときに 一緒に話を聞いて、それではここにこういうOBがいるから少しということで紹介をして経営が よくなったとか、幾つかそういう好事例的なものはあるんですが、どうしても俗人的なものにな ってしまいがちなので、印象としては県とすれば社会福祉士の活用というのは悪い話ではないだ ろうと思います。  ただ、いかんせん内容的なものが幾つか好事例の範囲にとどまっていますので、そういったも のも少し整理をしていただければ、もう少し福祉職の独立といったことにもつながるのかなとい うことは考えております。印象としては、そういう方を使うということについては悪くないとい うことです。 ○岩田部会長 今回、社会福祉士については定義自体を変えたわけで、もうちょっと調整とか、 地域の資源開発とか、そういうところにはっきりした特徴を持たせたということが明記されてい ますので、さっき白澤委員がおっしゃったように、例えば6ページの「介護の現場では」の下の ところにもう一個、例えば何かつくられて、つまり同じように従事者の特徴として女性の割合が 高いとか、非常勤が高いとか、入離職、つまり異動が多いとかということがあると思うんですけ れども、かなり現状は違っていて、介護は人手不足で来てくれない。  社会福祉士の方は逆に働く場がないとか、社会福祉士という仕事の内容が国民に理解されてい ないだけではなくて、福祉の雇用者にも全然理解されていないとか、そういうようなことが多分 あって、その2つは相当違うわけですね。  何かそういうものを6ページの「就業の見通し」の前に書かれて、そして「就業の見通し」の ところも社会福祉士を一体どの程度の就業数で見通すかということの何かがないと、人材確保と 言っても余りはっきりしないというような感じはありますね。介護の方が大変緊急的なので、ど うしても前面に出てきてしまっているんですけれども、例えばボランティアとかさっきの介護体 験みたいなものを仮に介護施設等で受け入れる場合も、社会福祉士がいる場合にはその辺のコー ディネートや調整というものが上手にできていく可能性が非常に高いと我々は思うわけですけ れども、そういう連関も余りはっきりしていないので、この際その辺りの共通性とその2つの職 種の違いというものを分けて、なおかつ具体的な職種の中にはその両者が混じり合っているよう なものもあるんだと思いますけれども、専門職としての違いというものをはっきり仕分けをした 上でどう人材確保するかというような見通しを書いていった方が、めり張りが確かにつくような 感じがいたします。  では、京極委員どうぞ。 ○京極部会長代理 先ほど部会長がお話になったことで、全体としてはこの人材確保指針はすご く細かくきちんと整理されて、大変いいできだというふうに私は評価しているんですけれども、 ただ、21世紀の福祉社会の担い手は福祉人材なんだということを明確にして、非常に重要だと いうことを前文できちんとうたう。最後のところで、国民の連帯でそういうものを押し上げてい くというようなことで、ここには書き込んでおりませんけれども、小島委員もおっしゃったんで すが、組合も含めて国民連帯でそういう専門職のイメージアップと地位の向上をやっていくんだ というようなことにちょっと触れるような感じがよろしいかということです。  それから、研修に関してこれは緻密に書いてありますけれども、私のイメージでは介護福祉士 協会の会長さんもいらっしゃるんですが、医療の世界、看護の世界というのは非常に歴史があっ て、技術的な日進月歩する世界でやっていますので、小林委員がおっしゃったように介護はどち らかというとそこが非常に弱い。だから、例えばシーティングとか、ベッドから下ろすときなど も器具を使えばほとんど腰痛は起こらないんですけれども、それを全然やっていない職場が多い ものだから辞めてしまうということがおこるので、そういう問題ですね。  それから、研修に出させる機会があるかどうか。これは経営者の側もあるんですけれども、医 療関係は既得権みたいな形で出て、それも何か数字があればいいんですが、この参考資料にはな かなか十分でないんですけれども、全体としては医療と比べて介護・福祉の分野は研修条件が不 十分だと思います。  随分行政努力をしてきて、国や都道府県もやっていたんですけれども、私は歴史を調べました ら、昔、全社協の前身の中央慈善協会というものがありまして、あれはお金を集めて社会事業者 にお金を配る団体だと思っていたんですが、そうではなくて実は研修をものすごくやって、海外 から有名な方が来たり、全国研修をやったり、泊まり込みでものすごい研修をやっていました。 今の全社協の前身ですけれども、そういう役目だったということが調べてわかったんですが、そ の辺りもこれからもっともっとやっていかなくちゃいけない。支援していかなくちゃいけない。  それから、さっき社会福祉士のことで白澤委員もおっしゃったんですけれども、社会福祉士は ややジェネラルな面があって、私は制度化に関わった人間として、介護は非常に明確に説明でき るが社会福祉は説明しにくいということで、ああいう規定を今度少し改正してやったので任用資 格化ということの方向をはっきり出して、私は都道府県知事会の方にも言っているんですけれど も、各県ごとの福祉職採用試験をやめて社会福祉士で採ったらどうか。精神保健福祉士はそうし ているんですね。介護福祉士もそうしているんです。  ところが、社会福祉士だけは従来から福祉職で採用して、その福祉職も各県によって皆、違う んですけれども、こういういいかげんな試験よりは社会福祉士を取った人で落ちたら採用しなけ ればいいわけだから、その中から選んでくる。  それで、私の持論で申し訳ないんですけれども、社会福祉士を取った人が行政官としてほかに 通用しないということはほとんど聞いたことはなくて、行政官としてシビルサービスとしては非 常によくやっている人が多いので、ほかの部署に行っても教育や行政窓口でも非常に親切にきち んと対応しています。  社会福祉士というのは福祉専門職でそこがわからないという言い方をしている人がいるんで すけれども、行政事務としてもちゃんと通用していますので、その辺は少し知事会とか市長会、 町村会とかで考えを改めていただいて、任用資格だとか採用についてもう少し手広くやっていた だくと随分変わっていくのではないかと思います。全体としては非常によくまとまっているので、 さっき各委員から出ましたが、今までのものに比べて違いをせっかく一所懸命書いたんだけれど も、この表だけだと見にくいのでもう少し整理されたら非常にアピール性がでてくる。  それから、マスコミ関係に対しての最後のところですが、確かに非常にNHKその他で取り上 げていただいていいことなんだけれども、これは逆効果の場合があって、そんなひどい職場だっ たら行かないよという若い人たちがどれぐらいいるか。逆にもっと上げなくちゃいけない、待遇 をよくしろと非常に義憤に燃えた方がいるかと思うと、他方でそういう職場だったらやめましょ うという人も結構いる。人間の取り方というのはいろいろなので、マスコミ関係者はもうちょっ と理解をしていただいて、いい意味でイメージアップのキャンペーンをしていただければと思っ ています。 ○岩田部会長 それでは、木間委員、駒村委員の順でどうぞ。 ○木間委員 人材確保指針の見直しの中で経営者、関係団体、国・地方公共団体が行うべき措置 について御説明がありましたが、それに関連して東京都社会福祉協議会がなさいました社会福祉 施設における人材確保と育成に関する調査結果について申し上げたいと思います。  東京都社会福祉協議会の調査対象は、東京都内の社会福祉施設です。東社協はこの調査結果に 基づき、経営者と行政に加え、福祉施設のネットワークの取り組みを提言しています。この福祉 施設のネットワークとは、東社協とその部会組織と福祉人材センターなどによって構成されると なっております。  福祉施設のネットワークへの提言は幅広くなされておりますが、その中から3点ほど挙げます と、1つ目は法人、施設を超えた職員採用や人材の移動の仕組みづくりであります。2つ目は、 法人、施設を超えた職員のメンタルケア特設相談の実施。3つ目は、法人、施設を超えた人事交 流にとどまらず、企業とも広く人材を交流し、循環できる仕組みの構築を求めています。  かつて国民生活センターにおきまして、特別養護老人ホームや知的障害者の入所施設を調査し たことがございます。その際に、ほかの施設と人事交流をして大変意義のある経験をしたという 声を聞いたことがございます。先ほど井部委員が離職率のことをご指摘なさいましたが、私は国 民生活センターにおいてグループホームや有料老人ホームといった主として営利企業が経営す る事業者を対象とした調査を実施したことがありますが、非常に離職率が高く、前々回でしたか、 有料老人ホームは求人の際の給料が高いというような御報告もありましたが、調査では非常に低 いという実態も明らかになっております。  事業者、経営者に努力をせよということで、法人間のネットワークを活かした人事交流などが 経営者に求められておりますが、事業者だけに努力せよとなっていますと事業者に都合のいいこ とがなされてしまうおそれもあります。事業者にとって都合のいい運営をされれば権利を侵害さ れるのは利用者であります。利用者の権利擁護のためにも東社協が指摘する福祉施設のネットワ ークの実現が先かとは思いますが、広く福祉・介護サービス事業者のネットワークの仕組みづく りに期待したいと思います。以上です。 ○岩田部会長 では、駒村委員どうぞ。 ○駒村委員 全体的に感想めいたことになってしまうんですけれども、この話というのは経済学 を専門にしておりますので、すごく冷めた見方をすると、これは少子化の中で、あるいは景気拡 大の中で、労働力という貴重な資源にどうやってこの分野に来てもらうかという指針だろうと思 うわけです。  その中で重要なのは、労働者がどちらを選ぶか。介護ということを選ぶのかというのは、絶対 的な処遇が前よりよくなったかどうかということも大事なんですけれども、総体的な処遇がよく なっているかどうかということが決定的に長期的には一番大きな影響を与えるんだろうと思い ます。そういう意味では、先ほどありました賃金あるいは総体的な雇用、労働条件をよくしない と、やはり長い意味ではシステムとしては動いていかないだろうと思います。  それからもう一つは、この福祉という分野、特に介護の分野は価格が公定されている。そうい う意味では、純粋な市場メカニズムではなくて疑似的な市場メカニズムになっていく。つまり、 最終サービス価格がもう固定されてしまっているわけですね。これは介護保険を導入した当初は 景気が悪かったので別の労働市場からのプレッシャーがなかったわけですけれども、これからは どんどんそれが強くなってくる。その中で、先ほどお話があったように、あるいは前回お話があ ったように、税金からきている収入なんだから分配ルールをある程度決めてしまおうという考え 方もあると思うんです。  それはそれで一つの考え方なんですけれども、こういう疑似市場というメカニズムを入れたと きに景気がよくなってくれば、他のマーケットと資源をめぐって競争しなければならなくなって くる。そのときに、例えばどういう分配ルールをつくるべきなのかということをどこかできちん と議論しなければいけない。特に、先ほどから議論が出ている非常に離職率の高い民間企業に対 して、このマーケットはどういう分配ルールに沿ってできているものだというメッセージを出す のか、出さないのか。出すとすればどういう形で出すのか。あるいは、それによってどういうリ アクションが起きてくるのかということも考えなければいけないだろう。そういう意味では、民 間企業に対するメッセージみたいなものは余りないのかなという感じはしました。以上です。 ○岩田部会長 事業者の多様化というものを介護保険は目指したので、さっきの離職率などの違 いにも出ているように、実はそう簡単な分野ではないということが今の駒村委員の御発言にもあ ったと思うんですけれども、そこを突破してどうやって人材確保をしていくかというのが、特に 介護の分野は非常に難しいように思います。ですから、その辺りにどのぐらい触れていくかとい うことが、そう簡単な答えはないにせよ、そこにまで触れておかないと確かに現実的ではないか もしれないですね。  ほかに、どうぞ。 ○高岡委員 この人材確保指針全体についてはいろいろな点に触れていただいてまとまってい ると思うんですけれども、6ページの介護関係の将来の労働力需要で、10年間に約40万人から 60万人の介護職員の確保が求められるということの中で、今の日本の経済界の景気回復の中で 全産業の中での労働力需要は今後ますます増えていくような気がします。  そうすると、5年あるいは10年に40万人、60万人が本当に確保できるのかといったときに、 相当目に見える形で今の状況の中での対応をしておかないと、実際は集まらないのではないかと いうのが現場の危機感です。  その1つには、外国人労働に期待する。人数にしたら600人くらいでも、何千人も来るような 思いがあるのがそういう現状だと思います。そういう中で、先ほど来お話がありますが、最終的 には介護報酬の在り方の見直しの中で職員の人件費がそういう資格のアップ、キャリアアップも 含めて資質のアップに伴うような給料を出せる仕組みというものが1つでありますけれども、も う一つは介護機器というものがあります。ああいうものが個人の現場ではなかなか機器の開発な どはできないものですから、もっと専門的な知識だとか、あるいは動けるような団体で本格的に 取り組んでいただいて、そういう労働力がひょっとしたら確保できないことに対する仕組みとし てどんなことがあるのかというと、1つは外国人労働でもありますけれども、もう一つは介護機 器を積極的に開発していただくというようなことだと思います。  それから、キャリアパスとか一生懸命頑張ったらどんどん上に上がっていくという仕組みをつ くるには、今、社会局の中村局長などの御指導をいただいて社会福祉法人の現状と課題というと ころでも言っているんですけれども、一法人一施設ではそういう職員がライフワークとして生き ていくには規模が小さ過ぎるのではないかということも言われております。そういう意味では、 施設の複合化をやりやすい仕組みでどんどんしていく。大きな組織が責任を持って、サービスも 一定の水準を維持した提供もできるようなことを仕向けていってやるとか、いろいろな形で40 万人、60万人増えても、他の産業と競争しても人員を確保できるんだという何か方向づけをこ こで明確にしていただけたらという思いです。以上です。 ○岩田部会長 森委員、どうぞ。 ○森委員 ちょっと伺いたいんですけれども、冒頭に木下課長さんが参議院の附帯決議のお話を されました。この附帯決議の中身の9項目は、ほとんどここで議論されておるようなことが載っ ているわけです。そうすると、この附帯決議がどれほどの担保能力があるのか。特にこの一番大 きいものは財政的な問題になってくると思うんですけれども、この辺の感触として附帯決議とい うのは私ども自治体でもこういうものはないものですから、ではどのぐらいかというのは一度感 触も含めて御指導いただけますか。 ○木下福祉基盤課長 国会の決議、いわゆる立法府における決議でございますから、行政府とし ては施策の運営に当たっては決議の内容が十分配慮されているか努力義務があるということで あります。例えばこれに伴って必要な制度の見直しとか、場合によっては法律の改正ですとか、 そういったことは努力義務として当然課されますし、同様のいろいろな審議の場で、これは社会 福祉士、介護福祉士の法律の議論の附帯決議ではありますけれども、例えば介護の関係の審議の 際に当然こういった附帯決議の実施状況、履行状況はどうなっているかということが問われます ので、我々としてはそれに対する説明責任を負うということになろうかと思います。 ○岩田部会長 どうぞ。 ○鶴委員 先ほどから御指摘のあります労働条件とか環境といったことの改善は非常に大切で あり、また根本だということは重々認識できますし、理解できます。  ただ、実際に報酬の割合がこのくらいとか、そういったところまでの介入がいいものかどうか。 最低賃金法みたいな形の関与はあるにしても、それを超えるところは基本的には労働市場とか、 あるいは経営の中で決まるといった意見の方も多数いらっしゃるかと思いますので、非常に慎重 に扱っていただきたい。具体的なところまでは踏み込みにくい感じがいたします。  同じように、介護報酬に直結するようなところも、報酬を上げろという話になりますと、これ は当部会が現状の報酬に対して評価を下してしまうことになり、躊躇を覚えます。今は低いんだ から上げろといった発言は、当部会の守備範囲を超えるような感じがいたしますので、その辺り は慎重にお願いしたい。介護報酬は多様な要素を含んだ全体の中でのお話なものですから、従業 者確保の視点だけをつかまえての議論はしにくいと思います。 ○岩田部会長 ただ、分業的にこういう議論をしているのでそうだと思うんですけれども、人材 確保をしないと福祉や介護の実施ができない。つまり、福祉というのはサービス分野ですから人 がいないとできないんですね。だから、人材確保というのは非常に中心的な課題で、ほかでどん な理想論を言っても、人がいてそこで希望を持って働けない職場だとすると、やはり失敗してい くのではないかと思われるわけです。  それで、どのぐらい具体的に書くのか、抽象的なところにとどめるのかというのは、ここの議 論自体がそんな深まっていないところまで具体的には書けないということがどうしてもありま すから、そこは抽象的にならざるを得ないにしても、例えば駒村委員がおっしゃったように、要 するに福祉にいくかいかないかというのはそのときそのときの労働市場の他分野との比較で決 めていくわけです。そうすると、どこが競争相手なのか。労働市場で競合、例えば介護に入って くる人は何と競争をして入ってくるのかというような見定めが本当はきちんとできた上でター ゲットを絞っていくというふうにやらないと、多分失敗するんだろうと思うんです。  では、石橋委員どうぞ。 ○石橋委員 やはり質の高いサービスを受けられるためには質の高い人材を養成しなければい けないということですから、質の高い人材を養成し、質の高いサービスを受けるためには、必然 ながら国民も相当の負担をしなければならない、その辺のことについても理解していただかなけ ればいけないと思っております。したがって、介護報酬の設定に当たっては、サービスの質の保 証を前提に設定するということも言っていいんじゃないかと思います。 ○京極部会長代理 先ほど鶴委員から出ましたけれども、具体的に介護報酬を幾らにしてどうす るというのはこの場の審議ではなくて、まさに介護報酬分科会でやることですし、それから労働 分配率も私もちょっと発言した関係で弁解いたしますと、何割にしろとか具体的なことを書くの はいかがなものかということはありますけれども、方向性として例えば前者に関しては他産業に 介護福祉士の資格を持った人がいかないようにとか、もっと魅力ある分野にするとか、そういう 抽象的な形でむしろ書かなければ、ちゃんとした人材確保指針にならない。  それから、経営においてもそれにふさわしい研修やふさわしい報酬をどうするかということは 当然考えなくてはいけないので、それを比率で書いてしまうとか、そうなるとちょっと行き過ぎ なので、そうではない限りは可能な限り、これはまさに今後の努力目標でございまして、法律で ここで書いたからと縛って罰則でどうするというわけにはいきませんので、やはりこの人材確保 指針が出ますと、これに基づいて世間がだんだんと動いていくという形で、部会長がおっしゃっ たような形で表現上いろいろ工夫しながら希望を与えるようなものにしていただきたいと思い ます。 ○岩田部会長 いかがでしょうか。よろしいでしょうか。  人の問題というのは一番難しいところですけれども、特にサービス分野ですから、人なくして あり得ないというようなことをはっきり出す。それから、外国人労働力に依拠する動きというの はグローバライゼーションの中で当然出てくるし、そのこと自体の議論というのはまた別にある と思いますけれども、他方、中核としてはやはり人材確保というものは当該社会の中でできるだ けの努力をしてやっていかないと、長期的にはなかなか難しいことになるのではないかという気 も私自身はします。  後段に出た御議論の中では、こちらにいろいろな経営努力として書かれているネットワークな どをもう少し広げた形で、これは事業所の規模の問題等と絡んでいると思うんですが、そのとき にもちろん任意のネットワークをどんどんやっていくということとともに、地域のどこがそうい うものの責任を持って、取り分け利用者に対してメリットのあるようなネットワーク、あるいは 働き手を実質的に確保できるようなネットワークが組めるかということになるだろうと思いま すが、その辺を盛り込んでということでしょうね。 ○京極部会長代理 ネットワークでは、福祉人材センターというものをもう少し活性化できない んでしょうか。県社協にあって、初期は非常に人の紹介とか随分やって成果も上げた地域がある ようですけれども、最近は余り聞かなくなってしまって、とりあえず各県社協、全社協にもあり ますが、存在しているというだけで機能がどうも私には聞こえてこないので、県の方で何かあり ますか。 ○福田委員(代理:田中栃木県保健福祉部長) 確かに、社協の方におきましてそういった活動 ということにはなっているんですけれども、そういった御批判も一部にあろうかと思います。  ただ、一応今回こういった指針と、こういった業界をどう進行させていくかという中で、役割 とすればあると思います。そういった状況の中で今後どう使っていくのか。ですから、先ほどの 腰痛の話にも関連してくるのですが、新しいものをどんどんというよりは、やはりあるものを使 い切っていない、ある制度を使い切っていないのではないかという印象を今、議論の中で感じて います。  例えば、腰痛の問題についても実は看護師の問題で、医療ではうまくやっているのにという話 が出ましたが、これはある意味で労働災害の一つになるわけです。そうなると、腰痛についての 労災防止といったようなところについて、例えば都道府県には産業保健推進センターであるとか、 地産保であるとか、そういう制度をこのNPOがきちんと使っていないのかというイメージなど も持つわけで、やはりある制度をよく理解していないがゆえに漏れているところがある。  ですから、今の福祉人材センターについても実はそういうものがあるんだけれども、使い切っ ていないじゃないか。新しいものをつくることも大切なのですが、今ある制度をちゃんと使い切 るということをまずやった上で、必要なことをやっていくということが必要なのかなという印象 を持ちました。当然、福祉人材センターについてもそういった御批判があるということであれば、 またその活用を図っていく必要があるだろうというふうには思います。 ○岩田部会長 そのほか、いかがでしょうか。  もし、そのほか御意見が特にありませんでしたら、少し早いですけれども、本日の議論はこの 辺りにしまして、非常にたくさんの御議論をいただきましたので修正を事務局の方でしていただ きまして、私と事務局の方で御相談をして修正したものを皆様のところにお送りして御確認をい ただいて、次回の議論の基礎にするというふうな方向でやっていきたいと思います。よろしいで しょうか。  それから、先ほど申し上げましたようにパブリックコメントを同時に並行して伺うというよう なことになると思いますので、その辺りと今日の議論を踏まえた修正というものと両方にらんで 次回、更によい案にしていきたいと思います。そんなふうに進みますので、よろしくお願いいた します。 ○中村社会・援護局長 今日はたくさん御意見をいただきましてありがとうございました。今、 座長からお話がありましたとおり、この指針を決めるためには都道府県の皆さんの御意見も伺わ なければならないと法律上も決まっておりまして、あらかじめ幅広に意見を伺った方がいいと思 いますので、今日の議論も踏まえて骨子をつくり直した上で提示して、都道府県の皆さんの御意 見なり、一般の方々の御意見もちょうだいしたいというのが1点目でございます。  2点目は、この資料2の20ページで現行の人材確保指針と今回の指針、これだけではわかり にくいというお話がありましたけれども、大分スタイルを変えておりますが、実はこの人材確保 指針が経営者と国・地方公共団体と、どうしてこういうふうに個々の記述についてだれがやるべ きかと書いてあるかというと、法律上、経営者が行うべきことを書いてくれという要請がありま すとともに、国や地方公共団体はそれをサポートするように努めなければならないという規定が ありますので、どうしても人材確保指針の要素としては経営者の部分と国・地方公共団体の部分 があるので、そこを律義にやろうとしてこういうふうになっております。  我々が考えていますのは、御指摘がありましたように経営者の責任だけではなくて経営体とし てなすべきこととか、そういう部分もあると思いますし、御指摘いただきましたようにネットワ ーク化して事業体でもネットワークする、あるいは関連団体とネットワークするというのはもっ ともっと大事なことだと思いますので、そういう法律上の要請は、それはそれとして、できるだ け今日いただいた御意見も踏まえるという話が1つです。  それから、冒頭に御質問がありましたように、法律上は社会福祉事業の従事者の確保となって いますが、社会福祉事業にとどまらず、実際に介護の事業とか、サービス利用を支援するソーシ ャルワークの範囲というのは、どうも法律上の社会福祉事業では収まり切らない部分があり、そ ういった人材の養成も一体的に行っているということでありますので、法律上の範囲よりややは み出した視点も持って書いたらどうかと思ってこういう御提案をさせていただいておりますの で、その辺は御理解をいただきたいと思います。  また、森委員から附帯決議との関係といいますか、附帯決議を行政としてどうとらえているか ということですが、これは国会の意思でございますので最大限尊重ということでやらせていただ きたいと思っております。そもそも今回、資格法の法制化をいたしましたのは、介護保険の5年 の見直しの法律のときに附帯決議で資格制度の在り方も見直すべしと言われているのでこれに 着手している点もありますし、今回ここの人材確保指針見直しというのもまさに附帯決議が付き ましたので、附帯決議におこたえする第1弾としてこの確保指針を、委員の皆さんの御協力を得 て立派なよいものにしていかなければならないと考えておりますので、何分よろしくお願いした いと思います。よろしくお願いします。 ○岩田部会長 それでは、次回の日程につきまして事務局より御案内いただきます。 ○矢崎総務課長 どうもありがとうございました。  次回の日程でございますが、7月4日16時からとさせていただきたいと思います。会場につ きましては調整中でございますので、追って御連絡したいと思います。よろしくお願いいたしま す。 ○岩田部会長 それでは、どうもありがとうございます。本日の部会は以上で終了いたします。 照会先:厚生労働省社会・援護局総務課      03−5253−1111(内線2814)