07/04/20 平成19年4月20日医道審議会医師分科会医師臨床研修部会議事録            医道審議会 医師分科会医師臨床研修部会 日時 平成19年4月20日(金) 10:00〜 場所 厚生労働省共用第7会議室(5階) ○井内臨床研修専門官 定刻になりましたので、ただいまより「医道審議会医師分科会 医師臨床研修部会」を開催させていただきます。本日は、ご多忙のところのご出席、誠 にありがとうございました。それでは、部会長のほうで議事進行よろしくお願いいたし ます。 ○齋藤部会長 おはようございます。前回及び前々回において、臨床研修制度に関して、 大学病院関係者、臨床病院関係者、指導医、研修医と様々な方々からご意見を伺ってお ります。  本日は、関係者として文部科学省と日本医師会からお話を伺い、そのあと、今までの ヒアリングで出た事項について議論を深めていきたいと思っております。初めに資料の 説明をお願いします。 ○井内医師臨床研修専門官 本日用意しました資料の説明をいたします。  まず「議事次第」「座席表」「委員名簿」です。そのあとからは本日の資料で、資料1 −1は「医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議第一次報告、最終報告(概 要)」、資料1−2は「医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(第一次報告概 要)」、資料1−3は「医学教育の改善・充実に関する調査協力者会議(最終報告概要)」 です。そのあとに「第一次報告」「最終報告」として冊子本体を付けています。さらに資 料2は「日本医師会『医師の臨床研修についての検討委員会(プロジェクト)』における 議論」です。資料3−1は「臨床研修制度に関する論点整理(未定稿)」、資料3−2は「臨 床研修制度に関する意見」、資料4は「制度の概要」、資料5は「臨床研修の到達目標」、 資料6は「事務手続きについて」、資料7は「都道府県別研修医在籍状況、マッチング結 果状況推移」です。参考資料として、「医師法」から「臨床研修に関する通知」というこ とで付けています。さらに前回の「議事録(案)」を付けてあります。これに関しては、 この部会を終了して、見ていただけましたら有り難いと考えております。お手元に青の ファイルを準備しておりますが、このファイルに関しては、前回、前々回の資料を入れ ております。今後、検討部会が進むにつれて、このファイルにどんどん入れていこうと 考えております。また必要でしたら、この部分というご指示をいただきましたら、コピ ーをして先生方のお手元にお届けしたいと考えております。以上です。 ○齋藤部会長 いまの説明について、何かご意見、ご質問はありますか。それでは、ま ず文部科学省の三浦課長から説明をお願いします。  ○三浦文部科学省医学教育課長 文部科学省の医学教育課長です。本日はお時間をいた だきまして、誠にありがとうございます。主として資料1−1を使いながらお話したいと 思います。場合によっては本報告といいましょうか、「第一次報告」、ないしは「最終報 告」と書かれた厚い本を用いてご説明したいと思います。  資料1−1の「医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」では、第一次報告 と最終報告があり、最終報告というのは第三次に相当するわけですが、その報告の概要 を抜粋してあります。ちなみに協力者会議のメンバーですが、第一次報告の添付資料の 1頁の協力者会議の目的と併せて、2頁に協力者会議名簿があり、自治医科大学の高久学 長に座長をしていただき、医療関係者、大学の先生方、マスコミの方々なども含めた構 成になっています。  それでは、資料1−1に戻り、最初からお話したいと思います。まず「第一次報告」で す。これは平成18年11月にとりまとめられた報告です。この報告では、主に地域医療 を担う医師の確保をどのように行うのかという観点から、大学、さらには医学教育の在 り方などが議論されました。  1「地域医療を担う医師の養成及び確保について」で、(1)地域医療を担う医師が不足 している、また医学教育・大学病院の果たす役割は何かということが、総論としてとり まとめられています。(3)ですが、入学者選抜における地域枠ということで、地域医療 を担う医師を確保するという観点からは、地域枠の拡大が重要であることを含めて、奨 学金との関係など、地域枠の在り方についての議論が展開されています。(4)で、学部 教育でも地域医療を担う医師の養成が必要であるということで、様々な関係者の協力を いただきながら、特に2頁目の最初の○に、プライマリ・ケアの能力を向上させるとい うことで書いてあります。(5)は、卒後教育における地域医療を担う医師養成の在り方 ということで、これがまさに新医師臨床研修との関係について論じたもので、今日の話 題と特に関係が深いので、本報告の文の8頁の「卒後教育に係わる論点」で、(5)卒後 教育における地域医療を担う医師養成の在り方ということで、大学病院における新医師 臨床研修の充実が必要だという観点から、例えば、9頁のg)で、研修医のマッチングの 結果、大学病院の占める割合が減少しているということ。h)で、その結果として、大学 病院から地域の医療機関への医師紹介の要請に応じることが難しくなっている。さらに、 i)の後段で、今後大学病院では卒後臨床研修者の数を増やす、また地域医療の定着を図 るという観点から、地域の医療機関、保健所が連携した形で体制を整備していくという ことが謳われています。大学病院における課題の1つでもある臨床研修の指導医あるい は研修医の中で、「地域保健・医療」の関係について、j)あるいは、k)で記述されてい ます。  10頁ですが、n)で、大学病院が臨床研修において占める割合が減少しているという ことがありますので、その原因を分析し、研修医に対する教育指導体制の整備、処遇の 改善、あるいは協力病院等との緊密な連携体制の構築等などが課題であると指摘されて います。(2)として、臨床研修が終了したあと、社会的にも要請が高い総合診療医の育成 を引き続き大学も関与していく必要があるということで、例えば、c)では、卒後2年間 だけではなく、引き続き実力ある専門医の養成、継続的・専門的な臨床教育・研修提供 体制を整備という形で、地域の医療機関等との連携の中で提供をしていくことが重要だ。 e)では、プライマリ・ケアを極める医師も、高度な専門性を持った臨床医であるという ことで、そのシステムを構築する。さらには大学病院と地域医療機関との連携という形 で、f)にプライマリ・ケアのための研修体制の充実が書いてあります。10頁の(3)です が、大学や大学病院における生涯学習体制ということで、卒後臨床研修を終わったあと、 専門的な研修をさらに終えた方々に対しても、引き続き大学、さらには 大学病院の役 割が継続していくということが記載されています。  資料1−1に戻り、2頁です。2の「医学教育モデル・コア・カリキュラムの改訂につ いて」ですが、先ほど地域保健・医療についての議論がありましたが、(2)で、地域保 健・医療についての記載の充実ということが書いてあります。いま申し上げたのが一次 報告で、特に先ほど申し上げたとおり、地域医療との関係を強調した報告になっていま す。その中で臨床研修の関係が欠かせないわけで、そういう記載があるということです。  資料1−1の4頁です。これが平成19年3月にとりまとめられた最終報告の抜粋です。 これは医学教育全般について、かなり幅広く議論されたもので、例えば1の「入学者選 抜の改善」。つまり、優秀な学生、資質の高い学生を入学させる。それを通じて優れた医 師の養成を行っていく必要があるということで、そのための手続きというか手段につい て記載されています。  2で教育者・研究者の養成についての議論が行われております。これは臨床研修が始 まって以来、特に基礎系の教室に入る方々が減少しているという、特に基礎系の先生方 からの指摘もあって、研究者の養成について、従前に増して強化していく必要があると いう指摘がありましたので、この報告書の中で教育・研究という観点について強調した ものになっています。中身としては、大学院教育を始めとする役割を、さらに強化して いくといったことが書いてあります。  5頁ですが、モデル・コア・カリキュラムについての話が、第一次報告の中にも書い てありましたが、モデル・コア・カリキュラムについては、策定されて以来、大幅な変 更はあまり行われておりませんでしたが、当然、医学・医療進歩あるいは制度の改正な どもありますので、ここはモデル・コア・カリキュラムを改訂していく仕組みを作って いくことが謳われています。  4は、診療参加型臨床実習で、学生時代の実習を実のあるものにしていくことが求め られるわけで、そのために様々な対応をしていこうということで、例えば、最初の○で すが、共用試験を行っている共用試験実施評価機構が関与しながら、共用試験に合格し たことが、学生の診療技能の習得の1つの目安になるというともあって、例えば証明書 を発行するということで、学生が診療に携わることについての患者の理解・同意を促す ことをしてはどうだろうかという提案です。  2つ目の○は、大学病院のみならず、学外の医療機関での実習が非常に重要ですので、 そことの連携が謳われています。  3番ですが、診療参加型の臨床実習が終わったあと、確実に臨床実習の成果が上がっ ていることを確認するために、到達目標あるいは到達したことを評価する基準などの明 確化を図ったうえで、いわゆるadvanced OSCEを実施することを検討してはどうだろう かということです。その後段では、卒前・卒後教育を通じて優れた医師を養成するため の一貫した教育内容のグランドデザインを示すことも必要ということで、卒前教育に関 わる文部科学省、卒後教育に関わる厚生労働省の連携のうえで、一貫した体制を築いて いくことの必要性が謳われているわけです。  これが今日の議論といちばん関係が深いところですが、5頁の5の「大学病院におけ る新医師臨床研修の充実」ですが、これについては「医学教育の改善・充実に関する調 査研究協力者会議最終報告」を参照していただきたいと思います。25頁の部分の詳細な 内容について説明したいと思います。  25頁の5の「大学病院における新医臨床研修の充実」の上から2つ目の○は、大学病 院においては、一般的な疾患が少ない、また専門志向が強く、診療科別に教育指導体制 が構築されるなど、一般的な病院と比べて特徴的という記述をしているわけですが、そ の上で、診療科を横断した緊密な連携協力の下、大学病院として一体的な指導体制を確 保した上で、研修内容の充実に取り組むことが必要ということです。  その下に研修体制・研修プログラムの工夫・改善等という事項があり、その1行目で すが、大学全体の統一的な理念に基づく研修目標やプログラムを策定する。基本研修科 目や必修科目ごとに到達目標を明示する。  同じパラグラフの下から4行目ですが、学生が病院の選択に当たって、研修体制、研 修プログラムを重視しているということが伺えるわけで、魅力的なプログラムを提供で きるよう取組をしていくということが書いてあります。  その下のパラグラフですが、主要なところとしては下から4行目に、研修希望者の要 望の反映、研修希望者への情報提供の充実、研修医が研修に専念できるような適切な処 遇の確保等々、先ほど申し上げた研修プログラムの内容の充実などについて、ある程度 具体的な内容を記載しています。  26頁の1つ目の○ですが、今回の臨床研修において、多くはそれぞれの大学が個別に 検証を行うものが多いわけです。2行目の、複数の大学が共同して様々なプログラムを 提供する。あるいは卒後1年目は学外の病院、残る2年目の1年程度は大学病院で臨床 研修、こういうものを含めて多様な仕組みが必要ではないかということ。さらには指導 医に対するサポート体制の充実ということで、指導医は卒前の臨床実習にも携わってい ますし、卒後臨床研修、さらには専門医の研修ということで、大変多忙を極めていると いう指摘もあり、研修医に対するサポート体制を具体的に組んでいく必要がある。 その下に、卒前・卒後教育を通じた取組の充実ということで、卒前・卒後の研修を実施 する大学の特性というのがありますので、卒前から卒後に至るまで一貫して研修内容、 研修指導体制、あるいは研修内容の改善を図るということで、安心して臨床研修医が大 学で研修できる。大学の良さを、ここでもっと打ち出すべきだということです。  さらには27頁ですが、臨床研修における研修医の確保では、臨床実習の段階からしっ かりと学生とコミットメントをしていくことが重要であるという観点から、大学の指導 者の下で臨床研修を受けたいと思う希望を、学部段階から学生に醸成するということが 言われています。  27頁ですが、事項としては6ですが、「専門医養成の在り方」ということで、臨床研 修終了後の専門医の養成についてどうかということです。臨床研修そのものとの連携に ついて、若干具体的に書いてありますが、28頁です。28頁のいちばん上に、新医師臨床 研修と連動した取組等ということで、新医師臨床研修と専門医研修との関係の明確化と いうことで、キャリア形成を視野に入れながら、例えば第一次報告にありましたように、 総合診療医の養成システムの問題、4行目から5行目にかけて新医師臨床研修と専門医 研修の到達目標の整合ということも議論になりました。その上で、専門医研修について も学会等と連携しながら、研修内容の標準化等も含めた研修プログラムの改善・充実を 図るといったことが言われています。  このほか最終報告においては、それ以降ですが、「臨床研究の推進」の話題。さらには 「教育研究病院としての大学病院の役割を適切に果たすための組織体制の在り方」。また 最近、新規に参入してくる医師の中で、女性の占める割合が多いということもあって、 「女性医師の増加に伴う環境整備」等々についてとりまとめたものです。  私どもはこの報告書をいただいたことによって、この報告書の内容を具体化していく 作業に今後入っていくことになっています。以上です。 ○齋藤部会長 ただいまの説明について、ご意見、ご質問ございますか。広範囲にわた って、卒前・卒後生涯教育のこと、あるいは臨床研究のことについても述べられていた かと思いますが、いかがでしょうか。  1つ伺いますが、先ほど基礎医学の教育者・研究者の育成のために、イギリスの取組 が少し出てきましたが、実際は2年間のうち、1年間はリサーチをしてもいいというシ ステムなのですか。 ○三浦文部科学省医学教育課長 これは最終報告の10頁です。具体的な内容として10 頁のいちばん下に、イギリスにおいては2年間の臨床研修のオプションとして研究者、 教育者を目指す医師を対象に、研修2年目の1年間を研究のために使うことが認められ ているということで、こういうものも参考になるのではないかということです。 ○齋藤部会長 いかがでしょうか。 ○冨永委員 大学の教育に関する、あるいは臨床研修に関する提言を幅広くお示しいた だいたと思っております。大学病院における疾患群の特殊性ということもあると言われ たのは、そのとおりだと思います。プライマリ・ケアの研修と、その後のいわゆる専門 研修についてですが、いま臨床研修医のアンケートなどを見ても、大学病院よりも一般 の臨床研修病院のほうが満足度が高いということも出ています。  大学のほうで何が問題かということになりますと、地域医療に携わる医師の不足を含 めて、人材派遣で非常に困っているというお話でしたが、プライマリ・ケア研修よりも、 その後の専門研修を大学がどのぐらい担えるかということのほうが重要な要素を占めて いるのではないかと思っています。ですから、大学病院と一般の臨床研修病院は協力し て、1年交代でプライマリ研修を行うということも1つの方法だと思いますが、結果を 見ても、大学のほうがプライマリ・ケアでもやや少ないし、その後の専門研修でやる研 修においても、大学と半々か、やや大学のほうが少ないと伺っていますので、いかにし て専門研修を受け入れるかに、全力を尽くしていただいたらいいのではないかと思って おります。  またプライマリ・ケアも専門医であるということを、私たちも認識しておりますので、 是非総合診療科の充実とプライマリ・ケアを担う医師の養成をしていただければ地域医 療に興味を持つ人がたくさん出てきて、地域医療にも医師が来ていただけるのではない かと思っております。  私ども一般病院の者としては、初期研修よりも後期研修に全力を尽くしていただいて、 大学に帰るという言葉が適切かどうかわかりませんが、2年を終わった人が、さらに高 度なプライマリ・ケアの研修を含めて、いかに大学のほうでやっていくかということに 力を尽くしていただいたほうが、有難いのかなという気はいたします。 ○齋藤部会長 いかがでしょうか。 ○矢崎委員 卒前の医学教育で、早急に改善すべきポイントが2つあると思います。1 つはモデル・コア・カリキュラムで述べておりますように、従来の基礎教育と臨床教育 をもう少し柔軟にシャッフルして、卒後、基礎研究に取り組むようなインセンティブを 与えるには、疾患や病態がわかったうえで、advancedの基礎、最近の知見などを教育し たほうが前期で一生懸命やるより効果的ではないかと思うのです。そういう方向に一部 なっていますが、まだまだ不十分なので、最終報告ですが、そういうことをもう少し大 学のほうに検討をお願いしたいと思います。  もう一点は、国家試験は文科省と厚労省のほうですが、国家試験についても、大学の 先生が試験委員の主なところを占められているので、国家試験の在り方を大学のほうで ももう少し検討していただく。いまはペーパー試験がメインですから、最終学年の6年 生は国家試験対策で費やされているところがあって、本来はそこを臨床実習にフルに使 えれば、卒業時の学力及び診療能力がもう少し上がるのではないかと思います。  この中にadvanced OSCEの考え方などがありますが、実際に学部教育の中で臨床能力、 診療能力をしっかり磨けば、安心して国家試験を受けられるという安心感を、卒前の学 生に与える。皆さん不安感でそういう方向になってしまうので、しっかり学部教育をす れば、国家試験がよほどのことがない限り、advanced OSCEなどのチェックでパスでき る。学生に安心感を持たせて学部教育、臨床教育を含めたものができるように、何とか 工夫していただければ、大変有難いと思います。 ○齋藤部会長 ほかにいかがですか。 ○相川委員 いま矢崎委員のおっしゃったことは非常に大事なことだと思っております。 実は4年に1度の医師国家試験改善検討部会が開かれ、たまたま今年の3月16日に報告 書を出しました。たしか矢崎委員の4年後に部会長を務めさせていただきました。その ときにも、いまのadvanced OSCEのことに関しても、かなり議論がありました。報告書 を読んでいただければわかります。単にadvanced OSCEだけではなく、一連の医師養成 過程のうえでということが、強調された報告書になっています。  そういう点も含めて、国家試験がある時点での大きなハードルということよりは、基 礎から臨床へ行くときの融合と、コア・カリキュラムにおける最初のOSCEあるいはCBT、 臨床実習、国家試験、それから2年間の臨床研修が一連につながるためには国家試験が どのような位置づけにあるべきかを含めて、特に臨床能力の養成及びそれの評価につい て検討されました。  簡単に申し上げますと、前回の報告書は平成14年に出たもので、それを基に平成17 年版の基準ができたと思いますが、それでもadvanced OSCEをどうするかということは、 色々検討されました。前回の報告書でもadvanced OSCEに、あるいは国家試験にOSCE を入れるべきかどうかについては、入れる方向で検討するということになっていました が、今年の3月16日に出した報告書の中でも、それが可能かどうかも含めて検討しまし た。実際にOSCEを国家試験の一部として用いて合否を判定することは、いろいろな問題 があることも明らかになっております。つまり、3日間の国家試験の中で約9,000人を 対象にOSCEをやることは実際には不可能ですし、それに必要な模擬患者のトレーニング、 養成ができているかとか、OSCEの評価者が客観的評価ができるかということもあって、 不公平が起こってはならないということもあります。  そのような議論の中で、不可能だから国家試験にOSCEを入れないのではなく、むしろ 卒業から国家試験、さらに臨床研修に行く前に、何らかの形での臨床能力を評価する、 例えばadvanced OSCEなどによって、これを一度パスしておくことが必要ではないか。  考え方として1つの方法は、大学で国家試験を受ける前に、それぞれの大学が作った advanced OSCEをしっかり受けてもらって国家試験に臨むという方策もあるのではない かということになってきており、この連携は非常に大事だと思っています。  また、それを大学で行うことによって、そのOSCEを卒業試験の資格の1つにするとい う方法もあるかと思いますが、それによってその前の臨床教育がかなり充実してくるの ではないかと思っています。 ○齋藤部会長 ほかにいかがでしょうか。それでは、また後ほど、もしあれば伺うこと にして、次は日本医師会の飯沼委員から、医師の臨床研修についての検討委員会プロジ ェクトの報告を伺います。 ○飯沼委員 このような機会をいただきまして感謝申し上げます。日本医師会の医師臨 床研修についての検討委員会、通常の委員会は2年にわたっておりますが、このプロジ ェクト委員会は1年ずつです。この委員会に関しては、平成19年度も継続するというこ とでお許しを得ていますので、今年も続けて議論がされると思われます。資料2をご覧 いただきながら説明いたします。  この委員会では、結論は一切出さなくても結構ですので、先生方のご意見をくまなく 申し出ていただいて、まとめることができればまとめようということで始めました。9 月20日に会長が皆様にご挨拶を申し上げたのがありますので、読ませていただきます。  「平成16年度にスタートした新医師臨床研修制度は一定の成果を上げ、評価されてい ると認識しているが、一方では、これを批判する声も耳にする。確かに、新医師臨床研 修制度を機に、医師偏在、研修医の大学離れ、基礎医学研究者の減少、地方・へき地医 療崩壊というような新たな社会問題が顕在化したことも事実である。この検討委員会で は、臨床研修について、広くわが国の良き医師養成という観点からご議論していただき たい」ということで始まったわけです。  3頁はプロジェクト委員会の名簿です。栗山課長、三浦課長、宮嵜室長の3人にも出 ていただいて、その都度トピツクスをお話いただいております。この委員会と我々の委 員会とダブっている委員もおられ、このようなメンバーで、本年4回開催しました。  4頁です。その4回で、主に検討され、報告された議題があります。第1回目には、 厚労省の平成17年度「臨床研修に関する調査」、全国医学部長・病院長会議の「緊急声 明」。第2回が11月8日で、文部科学省の「医学教育改善・充実に関する調査研究協力 者会議」の第一次報告、平成18年度研修医マッチングの結果、日本医師会による医師確 保に関する見解等が出されました。第3回目は、文部科学省の「医学教育の改善・充実 に関する調査研究者協力会議」の審議経過等が報告されています。今年の2月14日には 厚生労働省、齋藤座長の医道審議会医師分科会医師臨床研修部会で、福井先生、堺先生 から、それぞれこの会議でヒアリングしたものを我々の会議でも報告がなされました。5 頁です。これから申し上げるのは、すべて一方通行だとご理解いただいて結構です。そ のとき出た意見を箇条書にしましたので、読ませていただきます。   「新医師臨床研修制度についての調査結果より」。平成17年度「臨床研修に関する調 査」最終報告。報告されたのは宇都宮先生だと思います。臨床研修の目標達成度は全体 では64%がよろしい。大学病院では57%、臨床研修病院では70%というように、臨床 研修病院のほうが達成度が高いというのが、このときの集計結果です。臨床研修体制の 満足度も、大学病院39%、臨床研修病院65%、全体で53%です。研修プログラムの満 足度は大学病院が38%、臨床研修病院が57%、全体で48%です。研修後の診療科別進 路は、内科が14.6%、外科8.9%、小児科約8%、麻酔科6%、産婦人科5%です。診療 科を選んだ理由は、学問的興味があるが63%、やりがいが60.2%です。このときに出さ れた反対側からの見方からは、アンケートのとり方が悪い、設問が不適切である、必ず しも実態を表していないというご意見も頂戴しています。  福井先生が2年次の研修生の臨床能力に関して、旧制度のときの平成15年3月と新制 度の平成18年3月について比較したデータを紹介し、新制度のほうが研修医の臨床能力 が高いという自己評価がされており、経験された症例数も多いという話が出ました。  反論として、到達目標が明確化しているので、新制度下の自己評価のほうが高いのは むしろ当然ではないかという話でした。  堺先生からは、「研修病院から見た医師臨床研修制度」についてお話がありました。 患者、医師、コメディカルの評価を総合すると良い医師が育ちつつあるのではないかと いうことでした。  6頁です。「全国医学部長・病院長会議の『緊急声明』」が7月20日になされ、その報 告がなされて、全国医学部長・病院長会議は、当初は新医師臨床研修制度の廃止を含め た迅速な見直しという話もありましたが、廃止というマイナスの方向ではなく、よりよ い方向にということで、平成18年7月に緊急声明が出されました。大学の医師不足・基 礎医学者の不足、地域における医師不足、医師偏在などは、新医師臨床研修制度にすべ て起因するわけではないが、後押ししたことは事実である。日本の医学・医療の危機で あり、迅速な見直しと迅速な対応が望まれる、というお話でした。  臨床研修制度の位置付けを明確にして、卒前臨床実習、卒後の生涯研修を含む一貫性 のある生涯教育システムを早急に構築すべきである、という話でした。  7頁です。「どのように、新医師臨床研修制度を議論するか」という問題ですが、学部 教育、卒前臨床実習、卒後臨床研修、いわゆる後期研修、生涯教育という一貫した医師 養成過程の中で臨床研修制度の在り方、良い方向を考えるべきである。  2番目が、新医師臨床研修制度のポジティブな面は高く評価するが、地域の医師不足・ 偏在、研究者養成、診療科の偏在などネガティブな面を含めた大局的な視点から評価し、 見直すべきである、というご意見でした。  8頁です。必ずしもこれでいいとは思っておりませんが、先ほどからお話のあったOSCE やCBTを4年次が終了したときに取り入れて臨床実習に力を入れるということで、これ には国家試験の予備校化している6年次の学習が、非常に重要なファクターになるので はないかと考えています。  9頁です。「卒前臨床実習を充実させる。その1」。臨床研修の到達目標の多くは、医学 生の間に達成できる内容である。そのためには現在の卒前臨床実習を充実させることが 重要で、もし充実すれば、臨床研修は1年でもよい。卒前臨床実習が今の状態のままで あるならば、臨床研修2年はやむを得ないではないか、というご意見でした。たくさん ご意見がありますので読みます。大学がクリニカル・クラークシップをしっかり行えば、 米国のように、卒直後からスペシャリティのトレーニングが開始できる。臨床に直結し たスチューデントドクターのシステムを確立しないと、2年間が大きな無駄になる可能 性がある。これは学部の5年、6年のことです。  なぜクリニカル・クラークシップが進まないかということに関しての意見ですが、医 療安全、医療過誤に対する保障がない。指導医が疲弊している。十分なスタッフ、予算 が必要である。教育技法が普及していない。例えば、気管挿管を行うときのスキルラボ、 シミュレータの充実度に大学間で差が見られるというお話です。  「卒前臨床実習を充実させる。その2」です。文部科学省には、学生の臨床実習は、 医行為を必ずしも第一義とはせず、診断から治療へという、いわば医師としての思考回 路を身に付けること、医師としての基本的な知識と技術をどう一体化させていくかとい うプロセスの中に、卒前臨床実習を置くことが重要であろうという、うちの生涯教育課 が、文部科学省のご意見はこうではないかと書いています。  卒前にも実践的なことをできる範囲で行い、免許取得後もっと広く行うことにより、 臨床医としての読み書きそろばんにあたるものをしっかり身に付ける必要がある。一貫 した教育課程を築けば、臨床研修の在り方も変わる、というご意見です。  上記の考え方は、2年間の臨床研修制度ありきに基づいた考え方である。全国共用試 験(OSCEとCBT)によって、その質が担保されているのであるから、学生に仮免許を与 え、5年、6年生の間にしっかり実習をさせる。現在国が赤字を抱えている中で、わざわ ざ予算化して臨床研修をやることはない、というご意見もありました。  11頁です。「全国共用試験について」。診療参加型臨床実習が進展していないから、全 国共用試験という考え方が登場した。OSCEとCBTをパスすることにより、知識と技量は あるレベルまで達していることを指導医側、患者にも明示できる。仮免許を与え、医学 生にスチューデントドクターという意識を持たせることもよいのではないか。  平成17年12月から正式に開始した全国共用試験を評価し、社会的認知を高めるため にも、いずれ国のシステムとして動かしてほしい。  文部科学省が言わないと動かないということが、日本の教育をおかしくしていること もあるから、各大学の自主的な参加で共用試験機構をつくった経緯がある。機構と文部 科学省が一体となって学生の質の担保と国民への周知に努力すべきである。  「医師国家試験の在り方」です。先ほど相川委員が言われたようなことが出てまいり ます。医師国家試験は知識を問うペーパー試験であり、6年生の2/3の期間が、医師国 家試験対策に費やされ予備校化し、結果として卒前臨床実習が骨抜きになってしまって いる。  国家試験に臨床実地試験を導入すれば、かなり卒前の技能教育が熱心に行われるので はないか。  4年生修了時に全国共用試験を行い、臨床に入る学生の質を担保する試みが各大学で 始まっている。全国共用試験が重み付けられ、医師国家試験へのステップとして位置付 けられるとよいのではないか。  卒前の教育方法はずいぶん変化しているが、その評価方法がまったく従前のままでは 一貫性は望めない。文部科学省、厚生労働省が協力して改善に取り組んでほしい、とい うご意見です。  「基礎医学研究者激減に対して」は、日本の生命科学、基礎医学の研究は圧倒的に医 学部がリードしてきた。現状は基礎医学に入ってくる人は激減しており、10年、20年先 の日本の医学・医療に大きなダメージを与えるのではないか。  基礎研究志望者は臨床研修を修了しなくてもよいと考えるが、その辺のキャリアパス が示されていない。あるのは、2年間はともかく臨床研修が義務だということだけであ る。これでよろしいのかということです。  臨床研修期間に基礎の大学院に入ることができる、あるいは基礎医学で挫折しても臨 床に方向変換できるパスウウェイを提示する、などの柔軟な対応が望まれる。  博士号、学位より専門医資格を取るのが若者の傾向なのだろうか。  基礎医学研究者は日本に何人必要か。その議論がないまま、減った、少ないというの はおかしい。また、大学院の学生枠が1学年5,000人は適切であろうか、というご意見 です。  「地方の医師不足・偏在とその対策 その1」です。緊急対策。マッチングシステム の見直し。卒業生8,000人に受け皿が1万2,000近くある。臨床研修病院の指定枠を8,500 〜9,000人ぐらいに減らす。また、標欠病院までが臨床研修病院として指定を受けてい るのはおかしい、というご意見です。  地域枠の設定(マッチング時、あるいは後期研修のところで)。これは医師の職業選択 の自由というところにかかわってくるので、難しいかもしれません。同じくへき地勤務 あるいは出身地勤務を義務化する。これも話としてはよろしいかと思いますが、医師の 職業選択の自由に引っかかってくる可能性があります。  「地方の医師不足・偏在とその対策 その2」です。中長期対策としては、今まで大 学vs市中病院、市中病院vs開業医、大学vs医師会というような構図で研修問題を捉え ていましたが、医師という同業種で協力しあっていかなければいけない。例えば、一次 救急の休日急病診療所の運営を医師会が担い、勤務医の負担を減らしてあげるようなこ とはどうであろうか。  各地域の医師の需要・供給の把握、勤務医の就労環境の把握、後期研修先の把握など により、地域医療のデータベース化を図り、共有化する。  幅広く診ることのできる医師(総合診療医、総合医)が地域に確保され、専門医へ送 るシステムが確立されること。そのためには医師「確保」だけではなく、総合医を「養 成」することも重要である。  「診療科の偏在について」です。救急、産科、小児科などの診療科を希望する医師が 少ないわけではない。これらの診療科は重症化すると非常にリスキーで、いまの社会状 況からするとやりたくても躊躇せざるを得ない。  産科領域で検討された無過失補償制度、これは間もなく発効すると思いますが、もっ と広げてほしい。クリニカル・クラークシップ同様、リスクに対するサポートがないと 進まないのではないか。  異状死の問題に対し、第三者機構の設置に向けた厚生労働省の検討会の議論等に期待 をしている。これは日本医師会でもこの会を立ち上げております。  最後に「プライマリ・ケア研修について」です。国民が求めるプライマリ・ケア医と は何か。患者は専門性を有しながら、なおかつ、幅広く診てくれる医師を望むのではな いか。  プライマリ・ケア研修は、病床数の少ない病院での研修がよいという印象を受けるが、 2年間の研修終了後、なかなか継続性がない。プライマリ・ケア医、総合医をどう育て るか。  医学部教育において、地域の医療機関との連携でプライマリ・ケアを体験することが 重要である。プライマリ・ケアこそ診断から治療へのプロセスを学ぶ絶好の機会である。 臨床実習の裾野を拡げていかなければならない。  一応項目別に先生方の意見を羅列しただけですが、たくさんの意見があり、気に入ら ない話も出てきますが、こういうことで平成18年度は終わりました。平成19年度は、 これにさらに幅を付けて、できれば最後にまとめたいとは思っております。以上です。 ○齋藤部会長 まだ議論中のいろいろな論点を挙げていただいたわけですが、何かご意 見はございますか。 ○相川委員 大変参考になる多くの意見が出ており、勉強になりました。福井先生のご 報告などは、この研修部会でも参考人としてご報告があったと思いますが、さらに新た なことを学ぶことができました。  ちょっと教えてほしいのですが、この検討委員会あるいは医師会のお考えとしてのプ ライマリ・ケアの定義あるいはプライマリ・ケア医の定義、総合医の定義を教えて下さ い。プライマリ・ケア医と総合医とはどのように違うというお考えなのか。これは今回 の臨床研修制度において、プライマリ・ケアというキーワードもずいぶん使われてきて おりますし、それぞれ多少違う考え方もあるのかと思いますが、特にこの検討委員会で はどのようなお考えで、それぞれを定義なさっているのでしょうか。英語ですと、family doctorというのが片仮名になって、わが国でも使われるようなこともありますが、その 辺をご教示いただきたいと思います。 ○飯沼委員 ここに出てくるお話は、すべて先生方がおっしゃった言語をそのまま使っ てありますので、必ずしも全部適切な使い方ではないと思います。英語でGPでしたよね、 ジェネラル・プラクティシャンの和訳をどうするかということで、これは非常に難しい 問題だと思います。そのほかに「かかりつけ医」という言葉もあるのです。つい先日、 プライマリ・ケア学会、総合家庭医学会、総合診療医学会の3つの合同シンポジウムが あって、高久先生が基調講演されました。その時に私もシンポジストで認定医や専門医 のお話をさせていただきました。日本医師会でもその和訳をどうするかで非常に困って いて、その都度使いやすい言葉を使っている状況ですし、こういう言葉にしようとはま だ決まっていません。最終的に日本医師会としては、ここにたしか出ていたような気が しますが、プライマリ・ケア医という言葉には収束しないと思います。いま、総合診療 医や総合医くらいのところで集約できればと皆で議論しているところです。厚生労働省 からは、いま、後期高齢者の医療のために総合診療医という名前が出ていますよね。だ からそこら辺は物の考え方も近いなとは思っていますが、相川先生への正しい答えにな っていませんけれども、そんな状況です。 ○齋藤部会長 よろしいですか。次に前回、前々回のヒアリングを踏まえた議論をして いきたいと思います。一応、事務局のほうでヒアリングの主な意見、課題を項目別に分 けた資料を出しています。本日の議論ではヒアリングで指摘された提案や課題を踏まえ た上で、フリーディスカッションを主として行いたいと思っています。もちろん本日の 資料の項目というのはまだ不完全なものですので、さらにこういう論点が必要だという 指摘もお願いしたいと思います。事務局から資料の説明をお願いします。 ○井内医師臨床研修専門官 資料3-1、3-2についてご説明させていただきます。いま部 会長からお話がありましたように、前回、前々回のヒアリングの内容を項目ごとにまと めてみたものです。資料3-1が項目を羅列したものです。資料3-2がそれぞれの項目に おいて前回、前々回のヒアリングでどんな意見が出ていたか集めたものです。  資料3-2のほうで説明させていただきますが、「研修プログラムについて」という論点 のところでたくさんの意見をいただきました。スーパーローテーションについて、そも そもスーパーローテーションの是非、研修科目の在り方、期間についてといった点、さ らに臨床研修の到達目標について新たな知見が出てきたときの対応方法、その到達の評 価方法、事務手続きの煩雑さ等の指摘がされています。  ヒアリングにおける主な意見のところで、前回及び前々回の意見を書いています。簡 単に説明させていただくと、例えばスーパーローテーションについての1つ目のいちば ん下の行で、新制度は研修医の臨床能力を高める上で、よかったのではないかと思って います、と調査を基にした意見がありました。プライマリ・ケアへの関心が高まった、 という意見もありました。3つ目で下から2行目の後半ですが、細切れにローテーショ ンするために、いくつかの問題点が起きることもあると思います、との指摘もいただき ました。次のいちばん下で、他科へのコンサルトのしやすさが非常に出たと思います、 という意見もいただいています。2頁のいちばん上で、専門科に対する知識、技術の遅 れを痛感しています、というお話も出ています。各専門科を見据えたローテートができ たほうが、医療の質の向上にもつながる、という意見も出ています。  研修期間ですが、内科系の先生からすると2年間の短い期間で習得するのは不可能だ から長いほうがいいという者もいれば、外科系の人間でも早く専門科で修練したいとい う人間もいて、長すぎるというのと両方の意見がある、というものでした。次のところ で2行目の後半で、もう少し特徴のあるプログラムの選択が病院にもできる研修も許さ れることが重要だと思います、との意見をいただいています。以上がスーパーローテー ションのところで、スーパーローテーションの是非や研修科目の在り方、その期間とい うところで出た意見です。  次は研修プログラムの中の到達目標に関して出た意見をまとめています。基本的にこ こに書いてあるのは議事録の抜粋という形にしています。1つ目で厚生労働省から提示 されているのは研修目標、到達目標で、要は評価がないので経験だけすればいいとなっ てしまうという意見をいただいています。次では、「二次救命処置、ACLSができ、一次 救命処置を指導できる」と到達目標にあることに関し、いまはICLSコースというのが普 及してきている。こういった技術的な変更、新たな知見の見直しを随時していく必要が あるという指摘です。次の麻酔科で学ぶのと救急室で学ぶのは違う。現在は救急部(麻 酔科を含む)という科目設定がされているが、違うのではないかという指摘がありまし た。さらに経験目標、経験手技、レポートが非常に煩雑で面倒だとの指摘もいただいて います。また将来の目標別にしっかりやっておいたほうがいいところと、誰でもできな ければいけない最低の目標を明確にしてほしいとの意見もありました。以上が研修プロ グラムの中の到達目標で出た意見です。  参考として資料4、5を用意しています。資料4はそもそもの「制度の概要」で、プロ グラムのことについてどう示しているかを書いています。資料4を見ていただくと、1 頁の3の臨床研修病院の指定基準の(1)で、内科、外科、救急部門(麻酔科を含む)で、 必ず研修を行う項目を示し、(2)でどれぐらいの期間やればいいか示しています。これ がまさに現在の制度の枠組みです。  資料5は「臨床研修の到達目標」で、いま到達目標がどのように示されているかを抜 いてきたものです。参考資料として付けています。  資料3-2の3頁に戻って説明を続けます。次に指摘が多かったのが「指導体制につい て」です。病院内の研修医の指導体制がどうあるべきなのか、指導の内容がどうあるべ きなのか、いま指導医の置かれている環境にはどういう課題があるのか、というまとめ をしています。ヒアリングにおける主な意見ですが、1つ目の下4行で「つまり」以下 を見ていただくと、名前は主治医ですが、指導医は主治医業務から完全に解放されてお り、いわゆる専門的な診療や教育に専念できるように研修ができる・そういう形をとる べきではないかとの提案をいただいています。  次の3行目の後半で、どうやって指導医に相談すればいいのかわからない。つまり、 ここでは急性疾患も診たいけれども、慢性疾患ばかり担当してしまうときに、どう相談 すればいいのかわからないとの指摘です。  次の1行目の後半から、指導医にとっては教えるのが得意なことが是非教えたいこと で、それは自分の専門領域であり、研修医が知りたいこととは必ずしも一致していない ことが多々見られる、との指摘もいただいています。次で、指導医の先生は非常に疲れ ているというのがあります。さらに次には指導医の役に対する待遇、役付けの点で、病 院の中で明確になっていない部分が多いとの指摘もいただいています。以上が、病院内 での指導医及びその周辺の環境について、ご指摘いただいたことをまとめたところです。  5頁で「手続き」についても意見をいただいています。ヒアリングの主な意見では、 いわゆるプログラム変更が前年の4月30日までしかできないというので、部分的な変更 について柔軟性のある変更ができるようにしてほしいとの意見です。  関連資料として資料6を準備しています。資料6で簡単に現在の大枠の手続きの段取 りを書いています。いちばん上の「事務手続きについて」のところで、新規指定申請と いうのがあります。さらにその下にプログラム変更・新設届出、年次報告の3つのパタ ーンがありますが、新規指定申請の場合は新たな臨床研修病院の指定を受ける場合や、 一緒に臨床研修をしている協力型病院などが変わる場合です。こういったときは、例え ば今からであれば6月30日までにこういった申請をしていただくと、その形で研修が開 始されるのは平成20年4月1日からということです。研修プログラムを変える部分に関 しても、例えばこの4月30日までにプログラム変更が出されると、そのプログラムに基 づいた研修が実施されるのが来年の4月1日以降ですから、どうしてもタイムラグが出 てしまうことに対する指摘です。  資料3-2の6頁に戻って「研修医の募集定員」ですが、全体数と地域別定員数の設定 の提案という形で意見をいただいています。ヒアリングにおける主な意見ですが、1つ 目のいちばん下から2行目に、地域分布を考えて、もう少し研修医の枠を減らしてもよ いのではないかと思っていますとの意見をいただいています。次は、各都道府県の実態 と分布を考えた施設の基準と限定をすべきではないかと思います、という意見です。そ ういう意見がある一方で、次の2行目に、ただ現実を見ますと、少しずつではあります が、都市集中が緩和されつつあるような傾向を私どもは見ています、との前提のもとで、 もう少しこのまま様子を見ていいのではないかとの意見もいただいています。以上が研 修医の募集定員の指摘です。  7頁ですが、「臨床研修を行っている病院の評価について」、第三者評価の是非、評価 方法の具体的手法ということで、いわゆる第三者評価を積極的に進めていくべきではな いかとの意見をいただいています。  8頁で、本日もたくさん議論いただいていますが、卒前教育、後期研修との連続性に ついて意見をいただいています。長いところが多いのですが簡単に要約させていただく と、上の2つでは、基本的に卒前、卒後の一貫した医師の生涯教育システムの確立をし てほしいとの指摘がなされています。後半には生涯総合医という言葉も出ていますが、 そういったゼネラリストを育てることを、この臨床研修制度を使って強化すべきではな いかとの意見です。  10頁ですが、「臨床研修病院と地域における医療について」ということで、地域にお ける医師養成・確保との関係です。本日もたくさんお話していただいていますが、臨床 研修制度で地域の医師がという指摘と、さらに逆の意見もあります。下から2つ目で、 いわゆる家庭医、総合内科医を今後、この臨床研修制度を踏まえた上で育てていくこと で、地域の医師不足解消の1つの突破口になるのではないか、との意見もいただいてい ます。11頁でも、臨床研修制度を使った地域での医師養成の意見をいただいています。  12頁ですが、「その他」でまとめています。この中では簡単に言うと、いわゆる国民 の信頼に応えるために、医師だけでなく利用者からの評価をやっていく必要があること。 さらに現制度で育った研修医が指導医になってからの評価など、少し長いスパンでの評 価が必要ではないかとの意見をいただいています。  資料3-1に戻っていただきます。いまお話した項目をざっと並べたものです。この意 見は議論の材料にしていただければということで書き出したもので、項目としてはこの ようなものがあるのではないかと事務局では考えましたので、このような資料を作らせ ていただきました。 ○齋藤部会長 ありがとうございました。資料3-1を見ていただくとわかるのですが、 これは大小は不同、順不同に並べてあります。1の研修プログラムから5の病院の評価 までは制度の内側のことというか、実務上の細かいことの論点が挙げてあります。6と7 はこの制度を巡るもう少し大きな視点から見た論点です。先ほど文部科学省あるいは日 本医師会の検討委員会のご意見も出ましたので、それも取り入れて自由なご意見をいた だいて、これをだんだん整理していきたいと考えていますので、よろしくお願いしたい と思います。約40分ほどあります。大局的にこの制度自体の評価をすることが、いちば ん大事だと思いますが、いかがでしょうか。1から5までの細かい点というのは、いま 井内さんから説明があったように、かなりいろいろな意見が出て、相互に違う意見もあ りますけれども、そちらのほうからやったほうがいいのか。あるいは、6、7の少し大き い局面のほうの議論からしたほうがいいか、どちらがよろしいですか。  それでは順番で実務上というか、制度の内側のことについて少しご意見をいただきま しょうか。まず研修プログラムについてですが、スーパーローテーションの問題につい ては良い面と悪い面とあって、細切れになってしまい、1カ月ずつ回るのがどういう意 味があるのかという、ややネガティブな検討ですけれども、しかし、そういうことでい ろいろなコンサルトなどをするときに知識ができるし、人間関係もできてやりやすいと いう両方の意見があって、これはなかなかそう簡単には決められないことだと思います が、いかがでしょうか。この点でご意見があれば後から伺うことにします。  次に到達目標、評価方法はいかがでしょうか。この中で1つ指摘されていることは、 救急部に麻酔科を含むのは少し分けたほうがいいのではないか、という意見が多かった と思います。  それでは次は指導体制にいきましょうか。ここでは指導医の負担が非常に大変だとい う意見を多くの方から伺っていると思います。指導することがなかなか評価されにくい。 各病院は経営のことや忙しいということもあって、これは大きい問題だと思います。い ちばん上の沖縄県立中央病院のように、指導医は主治医義務から解放される。いわゆる 完全なチーム主治医制をとることがいいということですが、これは医療提供側だけでな く患者さんというか、家族を含めた方々から理解していただかないとこういうことは出 来ないですよね。これができればかなり指導に力を注ぐことができると思います。 ○相川委員 今までこの制度をやってきた中で、いくつかの問題点がありますけれども、 この研修の効果を上げるためにはしっかりした指導体制を、この次のステージからは構 築していくことが大事な時期に来たのではないかと思っています。というのは、例えば 私どもの大学病院ではたすき掛け、すなわち1年目に大学病院で研修し、2年目は協力 病院というか、約30数病院、施設で研修します。逆に1年目にそのような協力病院で研 修した人が、2年目に大学病院に来るというプログラムを作っていて、私はその管理者 になっています。  見ていると、病院によって指導体制をしっかり作っている病院もあれば、いくつかの 病院では、今までの臨床の仕事の上に指導もやってくれと言われて努力をしてやってい るということです。むしろ後者のほうがまだまだ多いのではないかと思っています。私 どもの大学病院の例で言うと、そのたすき掛けに対応するために、平成16年に指導医と しての有給枠を10作りました。10人の医師の有給を作るということは極めて大変なこ とだったのですが、たまたま私が病院長でしたからいろいろな所と相談をして、有給枠 を新たに作らないと指導がしっかりできないということで作りました。  しかしながら、ではその方は24時間、すべて指導だけしているのかというと、いま部 会長からお話がありましたけれども、その方々が患者さんを診療したり、あるいは自分 の受持ちの患者さんを持ってないとなかなか指導がしにくいところもあります。つまり、 例えば病棟に行ったときに自分が診ている患者さんに対しては、「研修医がいますので一 緒に診ましょう」と言うと、患者さんも比較的受け入れやすいのですが、私は指導医だ けで、あなたのことはカルテを読みましたし、こういう状況ですから研修医に研修させ てくださいというのでは、なかなか患者さんとしても理解できない。そのようなことが あり非常に難しいことがあります。  もう1つは、指導医も3年も指導ばかりしていると臨床能力が落ちてしまうとか、あ るいは臨床研究も続けられないといった、いくつかのジレンマがあると思います。指導 医によって指導の時間をシェアしたり、また指導医だけが指導するのではなく、指導医 の有給枠でない他の今まで有給であった人たちも指導するのですが、タイムシェアリン グみたいなものです。  いずれにせよ私の言いたいことは、指導をするためにはそれだけのマンパワーが必要 で、指定された人が100パーセント指導するわけではないけれども、マンパワーを増や さなければいけない。マンパワーを増やすことによって良い指導ができるということで、 いよいよそれを整備する段階に入ってきたのではないかと思っています。ある程度臨床 研修をしている施設には、診療報酬でもある程度のインセンティブが付いているわけで すが、指導医をどのぐらい確保しているかに関しても、可能であれば補助金で対応して、 しっかりその制度を構築するという方向がよろしいのではないかと思います。 ○齋藤部会長 指導医に関しては、ほかにいかがでしょうか。たしかヒアリングをした 病院の中には指導医手当を出している病院がありますよね。矢崎先生、指導医について ご意見はいかがですか。 ○矢崎委員 大きな大学病院あるいは大きな総合研修病院というのは各専門科があって、 スーパーローテーションの場合は、皆さんご指摘のとおり細切れになっているところか ら、指導医というのが広い視点に立って指導しないといけない。研修医の満足度を見る と、小規模の病院で比較的いい研修を受けられたというのは、おそらくこれは各診療科 の壁がなくて、そこのドクターが格別に指導医という目配りをしなくても、密接に指導 してくれるということで満足度が高かった。ですから指導医が議論になるのは、大きく てカリキュラムが細切れになったような所で、位置付けが問題になるのではないかと思 います。  そういう場合に大学もそうですが、大きい病院は総合診療科というのが結構あるので す。専門性が高い病院で総合診療科の位置付けというのはなかなか難しくて、十分機能 していないところも結構あると見ています。一部では振り分け外来をやっているだけと か、あるいは総合診療に非常に熱心な方は、ほかの専門科と自分たちの診療能力のレベ ルを争うなど、なかなかうまい位置付けになっていないので、私は指導医の今のお話の ときに、総合診療科というのは医師の研修のヘッドクオーターというか、そういう教育 に重点を置いた部局にするという考え方もあるのではないかと思います。  国際医療センターの総合診療科というのは非常に活発に活動していますが、それは教 育目的であって、総合診療科の病棟を持つのではなく、救急部から病棟に入ったときに 救急部及び総合診療科の人が受け持っていく。指導医の体制を整備する意味で、相川先 生が言われるような特別なシステムとともに、既存の総合診療科の活用を考える。診療 科を明確に位置付けて、そのスタッフをどうするかというのを次に考えていただきたい。 ですから、指導医の視点から総合診療科というのを見る。単なる振り分け外来といった 皆の下請の仕事ではないということです。 ○齋藤部会長 活用できますよね。 ○矢崎委員 はい。 ○齋藤部会長 山口委員、指導医を巡る問題についていかがですか。 ○山口委員 うちも指導医は、従来の自分の仕事に新しい仕事が加わったということで、 いま現場でやられている先生方は、医療安全など目配りしなければいけない範囲がずっ と増えていますから、その中に新たに研修医に対する目配りも必要になったという形で、 指導医を引き受けているのが多くの臨床病院の格好で、総合診療科があってそれが活動 しているという形には、実際にはなっていない病院のほうがずっと多いと思います。  そうかといって、ではそれ用にスタッフを増やすことができたかというと、相川先生 の所はスタッフを10人増やしてということですが、うちも例えば医学教育部にスタッフ はいますけれども、みんな兼任という形でやっていますから、なかなか専任のスタッフ を置けるような形になっていない。だからそういうスタッフが置ける財政的援助という のは、ひとつ大きな問題であろうと思います。できれば専属で教育に携わるスタッフを、 少なくとも大きな病院は1人か2人、ある期間専属できるような体制ができれば非常に 望ましい。先ほどお話がありましたが、そういう仕事を3年間ずっと続けるのはなかな か難しいので、ローテーションで代わってもいいと思います。  もう1つは、実際に現場で教える側の指導者が非常に疲弊しています。例えば小児科 や産科は短期間でローテーションしているので、教えたことが次の診療の場に活かされ ることになかなかならない。ひたすら目配りをしているだけで終わってしまい、ある意 味、そこで本当に戦力となってやれるところまでなかなかいかない。その辺は内科や外 科という、大きな場のローテーションをしてやっているのと根本的に意味が違いますか ら、そういう部署の指導医の先生方は更に負担が増えている。  これは卒後教育、卒前教育とも関わりますが、研修医のレベルで責任を持って診療に タッチというのはなかなか難しい領域です。例えば短期間のローテーションは、卒前研 修でできないかという話は常にあると思いますが、スタッフの一部として、あるいは後 期研修の人たちと一緒に組んでできる研修の領域と違い、非常に短期でその辺は難しい のです。しかも小児科や産科というのは特殊で患者さんからの要望のレベルも高い。そ ういうところに短期間行くことの是非は、もう一度卒前の教育も含めて、よく検討し直 してもいいのではないかと思います。そこのところは指導医の負担としてはいちばん厳 しいところなので、ちょっと人を増やしたぐらいでは解決のつかない問題だと思います。 ○篠崎委員 指導医の問題は人の問題もありますが、何を教えるかの中身があります。 それからどうやって教えるかというのがあると思います。今回の場合は到達目標という のがありますし、これまでのようにストレートに、その科で先輩の医師が教えるという ものではないというのが、今までと大きく違っているところだと思います。  そこで国立保健医療科学院が中心になって、この2年間にマニュアルを作ったのです。 これは医事課に采配を振るっていただき、それぞれの科目の各学会の先生方に集まって いただいて、そのコンセンサスを持ったものでマニュアルができています。保健医療科 学院のホームページをクリックすると、指導医なら誰でも見られるようになっています。 ヒット数が何十万回と非常に多いのですが、より充実したものにして、さらには教え方 というか、教育技法のようなものも入れた形に充実していくのも1つの方法ではないか。 限られた人材そして財源の中でそういうことができるのではないかと思います。各団体 等でこの2年間、指導医の研修会が行われてきました。もちろんそれを継続することも 大事でしょうけれども、いま私どもがやっているようなことも大きく貢献できるのでは ないかと思っています。 ○西澤委員 いま現場を見ていると、指導医は仕事が増えたというか、病院は指導医だ けにやらせている面もあって、ほかのドクターがあまり協力していないような面も見ら れるのです。ですから指導医だけするのではなく、組織として病院全体、医師全体がこ の臨床研修の意義を感じて、これはしなければならない事だという認識のもとに、ある 程度の知識も持って支援をすべきです。そういうことによって指導医の負担が減るので はないかと思います。極端なことを言うと気持の上では皆が指導医ということが必要だ と思います。これは医師だけでなく、ほかのコメディカルを含めて全体的にもそういう 意識を持つことが、指導医を支えていくのではないかと思います。 ○齋藤部会長 そうですね。病院全体で若い人を育てるという姿勢が大事だと思います。 よろしいですか。それでは3の手続きですが、これは確かにエポック、その他の評価が かなり煩雑だと思います。プログラムの変更が前年の4月30日までしかできないとか、 この辺は少し柔軟にできるようにしたほうがいいのではないでしょうか。手続きのこと では次の研修医の募集定員かもしれませんが、マッチングのシステムの問題もあります よね。これが今のやり方でいいのか、変えるところはないのかということも論点かと思 います。手続きはそれほど議論することはないですね。実務的な問題ですね。  4の募集定員ですが、ここは大きな意見があって、いまの募集定員が多すぎるのでは ないかという意見もあります。ですから枠を減らしたほうがいいのではないか。あるい は分布の問題がありますが、いかがですか。資料7に都道府県別の在籍状況、マッチン グ結果の状況がありますが、井内さん、どう変わってきたかということで、ごく簡単に ポイントだけ説明をお願いします。 ○井内医師臨床研修専門官 資料7の都道府県別研修医在籍状況とマッチングの結果状 況ですが、平成15年から平成18年までをまとめています。この見方ですが、いちばん 左が研修医の募集定員の総枠で、例えば北海道であれば518人で、最終的に採用した数 が288人ということです。518分の288が充足率のところで55.6%、マッチ者数のとこ ろの518分の315が60.8%という意味の表です。これがそれぞれ平成15年、16年、17 年、18年ということです。資料の説明は以上です。 ○齋藤部会長 そうすると、例えば平成15年というのはこの制度が始まる前ですよね。 そのときの充足率を見ると、東京都の115%とか京都府の114%など100%を超えている 所がありますね。それが制度が始まってからはいかがでしょうか。 ○相川委員 15年が最初の年度ということです。 ○井内医師臨床研修専門官 15年が最初です。 ○相川委員 15年のマッチングについてです。本当はもう1つ前の何人かあったという のもあるといいと思いますけど、マッチングはないですね。15年が初年度ですね。 ○齋藤部会長 初年度に比べて、100%をオーバーしている所はなくなってきているので すね。例えば東京でも18年度は86%、京都も82%でしょうか。医師の国家試験に合格 する人が大体7,700、7,800人ですか。 ○井内医師臨床研修専門官 そうです。7,500人くらいです。 ○齋藤部会長 枠のほうがそれよりかなり多いという問題です。問題になるかどうかは 別にして事実はそうですね、いかがでしょうか。 ○相川委員 これは地域の問題というのもありますが、まず募集定員のことについてよ ろしいですか。募集定員に関しては各施設のいろいろな評価をするときに、私もその評 価のお手伝いをする委員をしたことがありますが、その中で気が付いたことは、1つの 基準というか、その施設の患者数、救急患者数など、いろいろなことを見て定員がある 程度定められるはずなのです。一部の施設、特に大学病院の中でもほんの一部ですけれ ども、実際に扱っている患者数あるいは研修の対象となる患者数に対して、募集定員を 非常に多くとっている所があることに気が付きました。  しかしながら、私が仕事をした部分は一般の臨床研修病院、つまり厚労省が指定する 臨床研修病院ということでしたので、単に私はそこの時にはコメントを言っただけです けれども、そのようなこともあって、この募集定員というのはある程度は決められるの ですが、恣意的にかなり多くの定員を出している病院もあるので、必ずしもこれが分母 になって充足率を評価するのに適当でない場合もあると思っています。特にそのような 非常に多くの定員を募集していた大学病院が入っている都道府県などでは、充足率が必 ずしも1つの指標でないと思います。 ○篠崎委員 おっしゃるように募集の数と決まる数で、募集の数のほうが多いというの は、当時を考えると研修浪人が出たら大変だというので無制限になったのです。そうい う意味では、ある程度マッチングの数と合わせたほうがいいのかもしれません。  ただ、相川先生がおっしゃったように、大学病院はこの場合に抜けてしまうのです。 だから、まさに三浦課長の大学に対するご指導がいちばん大事ということになります。 ○齋藤部会長 研修医の募集定員はよろしいですか。 ○長尾委員 募集定員の問題は、いまのマッチングときっちり合わせる方向でというこ とも言われましたが、募集の地域での枠を決めすぎると、逆にその地域へまた行かなく なる恐れも出てくるかと思いますので、その辺はある程度余裕を持った形でやることは 必要だろうと思います。あまり現状に合わせて決めるのは、よろしくないかなと思いま す。 ○飯沼委員 先生のご意見とまるで反対な意見が医師会にはあるのです。これを見てい ただくとわかりますが、右から2番目のカラムは実際に行った人の数ですが、ごくわず かな例外を除けば、医師が少ない所に行っているパーセントが低いです。ということは 研修の2年間のうち1年ぐらい経つと、そこの地区の医師としての勢力になっていると 読まざるを得ないわけです。この充足率が30%ぐらいの所もあります。こういう所は偏 在や不足ということで、岩手県を除けばみんな少ない所です。だから研修医であろうと、 その地区の医療資源としては十分活躍されているという判断をすれば、これが均等にい くぐらいにする。そのためには定員枠を少なくしないと都会へ集中してしまうことにな ります。 ○齋藤部会長 いまのご意見は、都会の定員を少なくすればもう少し少ない所へ行くと いうことですか。 ○飯沼委員 かもしれない、全体でなくてね。 ○相川委員 実際の採用実績を、本当に1つの指標ですけれども、それぞれの地域の人 口に対して何人採用されたとか、あるいは病床数に対して何人採用されたかなど、その ような指標というのは意味があるのでしょうか。 ○齋藤部会長 それは作ればできますよね。 ○相川委員 それがどういう意味を持つかは別ですが、ある程度1つの指標として、人 口当たりどのぐらい医師がいるか。 ○齋藤部会長 それでは次に5の病院の評価のところですが、これについては第三者評 価を積極的にしたほうがいいというご意見です。手法についてはまだ完全には固まって いないと思いますが、実際に病院を訪問して評価するという試みも始まったように聞い ています。何かこの点についてご意見はございませんか。いずれにしても、これは非常 に重要な論点だと思います。次に6ですが、ここからは周辺も含めた制度全体のことに なりますが、卒前教育、大学院との関係、教育研究者養成との連続性、卒前、卒後の一 貫した医師の生涯教育、システムの確立ということですが、いかがですか。 先ほどの日本医師会の資料では、かなり大胆な提言がありましたよね。9頁に卒前臨床 実習を充実させるということで、その1のところで卒前の医学生にいろいろ侵襲的なこ とも含めてアメリカのようにさせれば、臨床研修は1年間でもいいのではないかとか、 一方、それができない理由は医療安全、その他を含めて、また米国とは文化とか医療制 度も違うので、向こうのようにはできないと思うのですが、いかがでしょうか。三浦課 長に伺いたいのですが、この点について文部科学省として、現時点でどういうふうに考 えていますか。 ○三浦文部科学省医学教育課長 先ほどの最終報告の中にも書き込まれていますように、 いわゆる診療参加型の臨床実習をもっと進めるべきだという考え方です。先生が言われ たような侵襲的な医行為、あるいは患者さんが羞恥心を抱くような羞恥的な医行為につ いても一定の要件が必要だと思いますが、できる限り進めていく。そのための要件をど のようにすればいいのかについても、かなりご議論いただきました。  先ほど簡単に申し上げましたが、いわゆる共用試験の合格者について、もちろん共用 試験が適切に行われることが非常に重要ですけれども、それを前提にして例えば共用試 験機構がその合格を証明する仕組みとか、患者さんから見て理解しやすい形で実習が進 んでいく仕組みなど、具体的な提言もいただいているところです。 ○齋藤部会長 ある程度オーソライズというか、公的な裏付けがないとなかなか患者さ んに理解されないですよね。この点について何かご意見がございますか。あと後期研修 との連続性については、大学附属病院は後期研修に知力を注ぐべきではないかとのご意 見も先ほどあったと思いますが、大学院との関係、特に基礎医学の次の世代の教育者、 研究者育成との関係が、いちばん難しい問題かと思います。ご意見はございませんか。 ○山口委員 いま、実際に研修を終わるときの若い人たちのいちばんの悩みは、どっち に進むにしろ、初期研修に対してあった情報へのアクセスのしやすさに比べると、後期 研修に関する情報は人伝の話しかないのです。後期研修も一連の流れと考えれば各病院 の後期研修に関する情報も、いまのマッチングと同じレベルぐらいの情報を提供する体 制を整備してあげないと、若い人が基礎系に進むにしても、どういう所にどういうもの があるかという話は、出身大学に関しては知っていても、他の所はどうかとなるとなか なか難しいと思います。専門医としての研修コース、研究者としての研究コースも含め て、もう少し組織立って国が音頭を取り、少し整備したらどうなのでしょうか。 ○齋藤部会長 そうですね。それは大変いい考えですが、問題はどういう組織でやるか ですね。 ○矢崎委員 新医師臨床研修の場合、大学病院以外の研修病院は、それぞれが会費を出 して臨床研修を受ける医学生に情報を発信する仕組みで、これは非常にうまく動いてい ます。それを臨床研修協議会がハンドリングして、実際の情報発信は医療研修推進財団 がホームページを立ち上げ、我々はそこにアプライしてお借りしているわけです。どう いう情報を皆さんにお伝えするのがいちばんいいか、常にアンケートを取りながら内容 をブラッシュアップして非常に好評なのです。これは国がやっているのではなくて、我々 の研修病院が集まってやっているのです。ただ、公表する場は我々は持っていませんの で、いわゆるP-metというホームページで立ち上げて、アクセスはものすごい数です。  ですから、施設側がどういうふうに後期臨床研修の情報を発信するかを考えてやらな いと、国が情報を集めて情報発信するといっても、どういう情報が必要かは実際の人た ちが関与して自主的にやらないと、いい情報にならないと思います。臨床研修も前期の ほうは施設のガイドブックを作り、それを毎年ブラッシュアップして結構歴史があって、 いま大変好評な情報発信になっています。おそらく公表する場としては財団なりにお願 いするにしても、何かそういう仕組みを考えて作らないと、このままだと山口先生が言 われるように、皆さん迷える羊になってしまい、噂によって動いてしまうということも ありますから、本当に良き医師を育てる意味で真剣に考えたほうがいいと思います。 ○齋藤部会長 それに、いま山口委員が言われたような研究者向けのところも、医学教 育課にお願いして、全国の大学が横断的にわかるような情報公開をやるといいですよね。 ○宮嵜医師臨床研修推進室長 現状だけ申し上げますと、情報伝達の多様性と情報の中 身の均質性の問題があろうかと思いますが、いまの臨床研修については矢崎委員からあ りましたように、財団や協議会のほうから情報がある程度統一的な形で出ていることと、 そういう手法以外にも他の民間も含めていろいろなツールがあるので、アクセスしやす いところがあろうかと思います。  3年目以降についても、厚生労働省のほうでは各厚生局のホームページから、各病院 が後期研修をやっている場合には、そこにリンクできるようにはしていますし、さらに 厚生局に情報を集めることもしているのです。これは以前にも議論がありましたが、病 院ごと、診療科ごとに期間が違ったり何が違ったりしますから、後期については情報を 均一にできなくて比較しにくい問題が1つと、あとご指摘があったように厚生労働省の ホームページには確かに載っていますけれども、民間も含めて情報量があまりにも不足 している実態があるのではないかと思いますので、またいろいろご意見をいただければ と思います。よろしくお願いします。 ○齋藤部会長 まだ今日は途中なのですが、議論が白熱したところで時間がきてしまい ましたので、また継続してディスカッションしていきたいと思います。また部会の終了 後でも重要だと思われる論点があれば、事務局のほうへおっしゃっていただきたいと思 います。次回は本日の議論を踏まえて更に議論を進めたいと思います。事務局から最後 に何かありますか。 ○井内医師臨床研修専門官 今回、ご議論いただきました内容を整理させていただき、 次回の部会でお諮りさせていただきたいと思います。次回につきましては5月25日(金)、 午前10時から12時ということでお願いしたいと思います。よろしくお願いします。冒 頭でもお話させていただきましたが、前回の議事録で何か問題がありましたら事務局の ほうに適時ご指摘いただければと思います。よろしくお願いします。事務局からは以上 です。 ○齋藤部会長 本日はありがとうございました。 (照会先)                   厚生労働省医政局医事課                      医師臨床研修推進室                    (代表)03−5253−1111                   (内線4123)