07/04/20 平成19年4月20日社会保障審議会福祉部会議事録            社会保障審議会福祉部会議事録 1 日時:平成19年4月20日(金)10:00〜12:01 2 場所:厚生労働省18階専用第22会議室 3 出席委員:岩田部会長、石原委員、石橋委員、井部委員、江草委員、小島委員、 京極部会長代理、木間委員、白澤委員、高岡委員、 鶴委員(代理:遠藤日本経団連経済第三本部副本部長)、中島委員、 福田委員(代理:田中栃木県保健福祉部長)、堀田委員、村尾委員、        森委員   欠席委員:鴻江委員、駒村委員 4 議事 (1) 介護・福祉サービス従事者の現状について (2) 「社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針」に ついて (3) 関係者ヒアリング 5 審議の内容 ○岩田部会長 みなさん、おはようございます。ただいまから第6回「社会保障審議会 福祉部会」を開催いたします。 まず、委員の出欠状況について、事務局より御報告お願いいたします。 ○矢崎総務課長 おはようございます。 本日の委員の出欠状況につきまして御報告させていただきます。 鴻江委員、駒村委員が御欠席でございます。 鶴委員の代理として日本経団連経済第三本部副本部長の遠藤様が、そして、福田委員 の代理として栃木県保健福祉部長の田中様がお見えでございます。 江草委員でございますが、間もなくお見えになられると思います。なお、堀田委員は 所用のため、途中で御退席と伺っております。 また、申し訳ございませんが私どもの中村局長は、国会用務がございますので、途中 で退席させていただくことになります。 また、本日は、現場における介護・福祉サービス人材の確保及び定着等のための取組 みにつきましてお話いただくということで、社会福祉法人横浜長寿会篠原正治理事長、 そして特別養護老人ホーム「まどかの郷」太田二郎施設長にお越しいただいております。 よろしくお願いいたします。 ○岩田部会長 それでは、早速本日の議事に入りたいと思います。 本日は、前回に引き続きまして、人材確保あるいは定着ということのための取組みに ついて、いろいろ御審議いただきますけれども、まず、進め方としては事務局から本日 提出された資料に基づいて、御報告をお願いします。 その中には、前回も事務局から御報告いただいたものが含まれておりますけれども、 前回の福祉部会の議論を踏まえて、改めてその要約をしていただきながら進めたいと思 います。それらについての質疑は、今日、お二方ゲストでおいでいただきまして、御報 告いただきますので、それが終わった後で、まとめてフリーディスカッションというふ うに進めたいと思います。よろしくお願いいたします。 それでは、まず事務局からお願いいたします。 ○成田福祉人材確保対策室長 それでは、事務局から御用意させていただきました資料 の1から3までについて御説明をさせていただきたいと思います。 まず、資料1「人材確保対策に係る前回福祉部会における主な議論」は、前回の福祉 部会におきまして、人材確保対策について委員の皆様などからいただいた御指摘事項を 事務局の方で整理させていただいたものでございます。本日は、それぞれの御意見につ いて御説明はいたしませんが、御議論をいただく際の参考としていただければと思って おります。 次に、資料2「介護・福祉サービス従事者の現状」でございます。これは、基本的に 前回お出しした資料でございます。若干、表現を変えたり、数字を訂正させていただい ている部分もございます。また、前回の御議論を踏まえて、幾つか新しいデータを付け 加えさせていただいているところもございます。前回、この資料につきましては、ほと んど御説明できませんでしたので、改めてポイントだけ御説明させていただきます。 まず、2ページ「介護・福祉サービス従事者の現状」でございますが、介護・福祉サ ービス従事者が約328 万人で、そのうち、高齢者の分野が約6割の約197 万人、そのう ち、介護職員の方が約114 万人で全体の約3分の1を占めているというような状況でご ざいます。 次に、4ページ「介護・福祉サービス従事者数の推移(実人員)」でございます。人 材確保指針が策定された平成5年と平成17年を比べておりますが、介護・福祉サービ ス従事者は合計で約4.6 倍、高齢者の分野では約12倍増加しております。 9ページ「介護職員数の推移と介護福祉士の割合(実人員)」からは主に介護保険事 業に従事する介護職員の状況などを中心に御紹介しております。まず、介護職員数の推 移でございます。介護保険制度が導入されてから、介護職員が急速に増加し、最近では、 毎年10万人以上ずつ増加をしており、平成17年には約112 万人となっております。 次が、10ページ「常勤・非常勤別介護職員数の推移(実人員)」でございます。「合 計」の非常勤の職員の割合をごらんいただきますと、非常勤の職員の割合が少しずつ増 加しており、平成17年には、約42%となっております。 次に、13ページ「事業所の種類別・年齢層別・男女別介護職員の状況」をごらんいた だければと思います。左側の表が年齢で、平均年齢は、約36.5歳でございます。訪問介 護を除き、29歳以下の介護職員が多くなっております。右側が男女別の表で、女性の職 員の方が約8割を占めております。 15ページからは介護職員の需給状況で、「都道府県別の有効求人倍率(平成18年)」 をごらんいただきますと、「介護関連職種」の有効求人倍率が1を超えており、「全職 業」に比べ高くなっております。特にパートタイム労働者の有効求人倍率が高くなって おります。また、都道府県別にみますと、愛知県、東京都などの大都市圏で高くなって おります。 17ページでは「有効求人倍率の推移」でございます。「社会福祉専門職種」をごらん いただきますと、以前は有効求人倍率が低かったわけでございますが、最近では「全職 業」の雇用情勢の改善とともに、「社会福祉専門職種」の有効求人倍率も高くなってき ております。 20ページ「給与総額階級別従事者数の構成割合」からが労働条件になります。まず、 給与で常勤の介護職員を対象とした調査では、月額平均20.8万円となっております。 「介護老人福祉施設」「介護老人保健施設」で比較的高くなっているという状況でござ います。 22ページ「職種別きまって支給する現金給与額等」でございますが、福祉施設介護員、 ホームヘルパーの給与は、全労働者の平均よりも低くなっておりますが、平均年齢も低 く、勤続年数も短くなっております。 23ページ「福祉施設介護員等の給与(きまって支給する現金給与額)の推移」は、前 回、賃金の推移がわかるようなデータをというような御指摘もございましたので、追加 しております。全体の労働者の給与はほぼ横ばいといったような状況でございますが、 福祉施設介護員とホームヘルパーの給与は、平成16年のヘルパーの動きがちょっとイレ ギュラーでございますが、それを除きますと少し減っているような状況でございます。 24ページ「福祉施設介護員等の求人の平均賃金の推移」は、福祉人材センターへの求 人の平均賃金の推移を示したものでございます。これも年によって変動がございまして、 ほぼ横ばいではございますが、例えば、正規職員の平成13年度と平成17年度を比べて みますと、平成17年度の方が低いといった状況になっております。 25ページ「介護保険サービス事業所・施設における収支の状況」も資料を追加してお ります。前回、労働分配率というお話もございましたので、介護保険サービス事業所・ 施設における収支の状況から収益に占める給与費の割合の推移を、「訪問介護」、「介 護老人福祉施設」について見たものでございます。 26ページ「実労働時間階級別従事者の構成割合」でございます。「介護職員」の「平 均実労働時間」は37.6時間で、「訪問介護」では比較的短いというような状況でござい ます。 27ページ「勤務形態別従事者数の構成割合」でございますが、訪問介護以外では、何 らかの形で、交替制で夜勤を行っている介護職員の方が多くなっております。 28ページ「夜勤日数階級別従事者数の構成割合」でございますが、平均で4.4 日とな っております。 30ページ「入職率・離職率」からが、介護職員の定着状況でございます。1年間の訪 問介護員・介護職員の入職率が約28%、離職率が約20%となっております。別の調査で はありますが、全労働者に比べますと高くなっておりますが、前回の御指摘を踏まえま して、全労働者の男女別の離職率を調べましたところ、介護職員の離職率よりも女性全 体の離職率の方が高いということがわかりました。 31ページ「平成17年産業別入職率・離職率」も新たに資料を追加しております。入 職率、離職率が産業によってもかなり違っているということがわかる資料でございます。 32ページが「勤続年数の推移」で、それぞれの調査でほぼ横ばいというような状況で ございますが、多少短くなっている傾向になっているというデータもございます。 33ページ「潜在的介護福祉士の状況」は以前もお示しいたしましたが、いわゆる「潜 在的介護福祉士」、資格を持っておられながら介護の仕事をしておられない方の状況で ございますが、平成16年時点では約18万人いらっしゃるというふうに推計されます。 34ページ「現在の仕事や勤務先を選んだ理由」から、実際に働いておられる方の意識 でございますが、まず、現在の仕事を選んだ理由といたしましては、「働きがいのある 仕事だと思ったから」が多くなっておりますが、35ページを見てみますと、実際に「仕 事をしていく上での不安や悩み」につきましては、給与等が低いことや有給休暇が取り にくいといったような項目の割合が高くなっており、36ページの介護福祉士会の会員の 「転職理由」を見てみますと、給与よりも仕事のやりがいや職場の人間関係を理由とし て転職されている方の割合が高くなっております。 37ページ「介護労働者の流れ(イメージ)」でございます。これまでのデータを基に 介護労働者の流れのイメージ図をつくってみたものでございます。介護保険事業に従事 する介護職員の方が約112 万人で、先ほどの入職率、離職率をかけますと、大体毎年、 「福祉系高校」、「介護福祉士養成施設」、「その他の学校等」からの卒業生の方や、 他の分野から入ってこられる方も含めまして、約30 万人の方が新たに就職し、また、 約20万人の方が離職して全体で約10万人ぐらいずつ増加をしているといったような状 況なのではないかと思っております。 39ページからは、これは前にもお出しいたしましたが、「介護職員数の将来推計」を 付けております。 次に資料3「『社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な 指針』について」に進ませていただきたいと思います。 1ページ「『人材確保指針』は現行の人材確保指針が策定されました平成5年ごろと 現在の状況の変化を整理しております。指針が策定された当時と現在では、前提とされ る状況がかなり違うのではないかということをお示ししようとしたものでございます。 まず「介護・福祉分野の環境の変化」につきましては、行政がサービスを決定する措 置制度から利用者がサービスを選択するようになり、対象者も低所得者から普遍化し、 事業主体が社会福祉法人主体から民間企業やNPOなどが参入するようになり、また、 施設中心のサービスから在宅サービスが重視されるようになり、更に認知症ケア、個室 ・ユニットケアなどの新しいケアモデルに対応できるサービスの構築が進められてきて いるところでございます。 「労働環境の変化」につきましては、必ずしも平成5年から現在までの変化というこ とには限らないかと思いますが、長期的な傾向といたしましては、少子高齢化の急速な 進展によって総人口が減少し、更に労働力人口の減少も見込まれているということ、パ ート、派遣労働者などの就業形態の多様化が進んでいること、業績や評価に基づく賃金 制度が導入されるようになってきていること、それから、働く女性が増えていることは 長期的な傾向でございますが、子どもができても仕事を続けることを希望するという方 の割合が増えているというようなこと、若者の失業率の高まりといったような変化がご ざいます。  「介護・福祉サービス従事者の状況の変化」は資料2で御紹介したことをまとめてお りますが、従事者が大幅に伸びている、離職率が高い、従事者の不満としては仕事のや りがいや給与などが挙がっている、いわゆる潜在的介護福祉士が増えているといったよ うなことがあるのではないかと考えられます。 こういった状況の変化の中で、人材確保対策を議論していく上での「環境の変化を踏 まえた検討の視点」として考えられるのではないかと思われる事項を挙げております。 今後の議論の際のきっかけとなればと思っておりますが、8項目ございまして、  (1)魅力ある介護・福祉労働市場を構築するため、国、地方公共団体、事業者がどのよ うな取組みを行っていくべきか。 (2)利用者の尊厳の保持や権利擁護の視点を重視すべきではないか。 (3)在宅サービスにおけるマンパワーの確保や従事者の資質向上を重点的に進めていく べきではないか。 (4)認知症など新たな介護ニーズに対応するため、研修等による従事者の資質の向上を 図るべきではないか。 (5)キャリアパスの形成やキャリアに応じた適切な処遇の確保など、従事者がやりがい を持って働けるようにしていくべきではないか。 (6)労働法規が遵守されるよう、労働法規の理解、周知に努めるべきではないか。  (7)多様な人材を確保する観点から、介護・福祉分野における事業者の経営のあり方を 見直していく必要があるのではないか。 (8)IT技術を積極的に導入するなど、できる限り業務の省力化を進めていくべきでは ないかといったような項目を挙げております。 2ページは「現行『人材確保指針』の構成(平成5年策定)」でございます。大きく 4つの項目に分けられており、「第1 就業の動向」が就業の動向を分析し、「第2 目標と課題」で資質の高い人材の養成、魅力ある職場づくり、国民のニーズに対応した 適切なサービスの提供といったような目標を挙げて従事者の確保のための取組みの方向 性を示し、「第3 経営者の行う措置」、「第4 国・地方公共団体の支援」という、 大きな4本の柱立てとなっております。 3ページと4ページは、前回もお出しした「現行『人材確保指針』の概要」でござい ます。 5ページからは「現行の人材確保等のための主な取組みの概要」を御紹介をしており ます。こちらも議論の参考としていただければと思っております。 ○岩田部会長 ありがとうございました。恐らく質問あるいは御意見があると思います が、それは先ほど申しましたように後の議論のところでお願いしたいと思います。 先ほど御紹介しましたように、本日、お二方にお越しいただいておりますので、その プレゼンテーションを続けてお願いしたいと思います。 初めに、横浜長寿会の篠原様からお願いしたいと思います。よろしくどうぞ。 ○篠原理事長 今、事務局の方で御説明がありましたけど、非常に厳しい状況だという ことは皆さんもおわかりだと思いますけれども、資料Iということで「介護・福祉人材 の確保及び定着等の取り組み」という資料はございますでしょうか。 その中で書いてございますけれども、(6)までは事務局の方で説明がございまして、 ある程度理解していただいていると思いますけど、(7)の方で書いてありますように、 やはり従事者の養成確保や資質の向上について、充実してきてはいますけれども、ヘル パー資格のように安易に資格取得ができたり、福祉業務に従事する資格要件が十分でな いため、無資格者や未経験者でも従事できるという、そのような形の中でのサービス低 下が起こってきているのではないかという懸念もあります。 逆に(8)の方で、経営者は、人員不足による減算を避けるために未経験者や資質の 低い者でも採用せざるを得ない状況であるという、その辺のところで非常に矛盾点があ るんですけれども、現状としてはそのような状況の中での実態だということを御認識い ただければと思っております。 また、(9)ヘルパーの資格者に代表されるように、資格は持っていますけれども、 実際に福祉の現場に従事する者が少ないという、このような先ほどの事務局でも潜在的 介護士ということの中で、この辺のところの掘り起こしもこれからはしていかなければ いけないんではなかろうかと思っております。 それとともに、やはり人材が不足していることから初任給やパート職員の時給、夜勤 手当などが上昇し、経営を圧迫している。特に神奈川の場合には、介護福祉士の初任給 が大体18万から20万以上という形の中での高騰で、それでもなかなか人材が集まらな いというような状況でございます。 それと、これはまた後で申し上げますけれども、最終的に都市部に特別養護老人ホー ムを新規に開設しても、職員が集まらないため、入所待機者が多数いるのにもかかわら ず、定員分の入所者を受け入れられない状況が続いているということでございます。 そのような中で、2ページにございますように確保と定着に向けた具体的な取組みと いうことよりも、むしろ半分要望のようなことも書いてございますけれども、やはり給 与の水準というものを引き上げていくということが当然必要であるわけでございますけ れども、(2)の職員配置基準の抜本的な見直しを図り、労働時間の短縮と労働条件の 緩和を積極的に推進するということでございます。特に私どもの法人でも、施設側の介 護福祉士の場合に、夜勤体制というものが従来でいきますと、非常に長い時間の拘束が ございます。その辺のところを、短い拘束時間の中で交代を3交代、4交代にすること によって、労働条件の軽減を図るというような形のものもとっておる状況でございます。 それと、やはり福祉人材の定着を図るために、福利厚生ということで当然この辺のと ころは各法人もしっかりと考えている状況でございますけれども、横浜でも横浜市の第 三セクターに置かれる福祉人材の雇用センターというのがございまして、その中に全国 にあるホテルとか旅館とか、そういったものの優待券を出しながらやるという、1人の 職員に対して毎月500 円を法人で払いながら、その辺の福利厚生をしているということ でございますけれども、特にうちの場合には、それとともに当然有給休暇もございます けれども、日ごろの中でそういった形で一生懸命やった方にはリフレッシュ休暇という ことで、別の中で1週間の休暇を与えるというような形の中で、ある程度リフレッシュ の効果も上がるような形のものもとっている状況でございます。 特に、この3ページから非常にこれから皆さんに御理解していただきたいということ でございますけれども、介護離れをしている中で、先ほども申し上げましたように、新 規の施設が人不足でベッドオープンまで1年以上もかかるというようなことでございま す。 特に最終ページの中でございますけれども、一番下に神奈川県内、特に横浜市でござ います。横浜市の指導の中で平成18年から平成22年までの五か年計画の中で、毎年90 0 床ずつ、五か年で4,500 床の老人ホームをということで建設事業計画をしております。 それで、新規施設の中で当然900 床とともに、また老健もそれに加わって約1,500 床。 それと従来の施設、特養、老健が1万7,000 床。それと有料グループホーム、在宅サー ビスということの中で、当然この中でやはり1,500 名程度の介護職が必要になるという ことでございますけれども、当然この括弧の中にありますように、市内の養成校も新卒 者が300 名。そのうち、介護分野に入るのが200 名。神奈川県合わせても700 名とい うことで、非常に実用に向いた中での必要数に満たないような新卒者の中で、こういう ことが起こるということでございますので、当然新規のオープンも、施設もなかなか人 手不足だという状況でございます。 そういった意味で、その上段にも書いてありますように、横浜市内の全施設からいろ いろとるる細かく書いてございますけれども、非常に悲鳴が上がっているというような ことでございます。やはり、我々も非常に人員確保のために努力はしておるんですけれ ども、たまたま私どもも何法人の中で、地方に行って職員確保のためにお話をしたわけ でございますけれども、やはり一番ネックは住宅問題ということの中で、非常にその辺 のところで就職させるための環境づくりというのが大事になってくるんではなかろうか と思っております。 そのようなことで、先ほどの2枚目の中に書いてございますように、やはり職員の宿 舎などの整備の助成、民間アパートの借り上げの補助制度の創設などを実施して、職員 の確保と定着の促進を図るということで、是非この辺のところも都市部の家賃というも のが非常に高額でございますので、その辺のところをしっかりと我々も考えながらいか なければいけない。これは法人の中で努力をしながら、逆に3法人、4法人の中で宿舎 を借り上げ、買い上げという形の中で職員確保をするような形もとっていかなければい けないんではなかろうかと思っております。 そのような中で、我々も創意工夫の中で努力はしておりますけれども、現状として非 常に厳しい状況だということでございます。 また、私ども法人でも、要人要所の中での現在の人員確保というものは非常にできて おりますけれども、たまたま今年の5月にオープンをする新しい施設におかれまして、 約40名の介護職を募集をしておるわけですけれども、現時点でまだ35名ということで、 あと5名の職員が集まらないというような、そのような現状の中でございます。ほかの 施設におかれましても、なかなか職員が集まらない。 そのようなことで、特に最近の増設の施設におかれましては、当然個室ユニットとい う形で、ユニットごとの形態でございますけれども、例えば10ユニットで100 名の施 設におかれましても、職員がそろわないので2ユニット、3ユニットだということの中 で、すべての施設が開放できないというような状況でございます。 勿論、待機者は非常に多いわけですけれども、やはり職員がいないということの中で、 待機者が多くてもなかなかその辺のところのカバーができないというような非常に厳し い状況であるということでございます。 我々も今後の中で、介護職をいかに確保し、なおかつ定着するかということを当然考 えていかなければならないんですけれども、ますますこれも厳しくなってくるというこ とを皆さんにも御認識していただければと思っております。特に、横浜でこの前のアン ケートをとりましたけれども、この中に書いてございますように介護福祉士の資格3分 の2以上でないと減額というような条件が出たというようなことがここの中で出たとき に、果たして施設の中でそれが維持できるかということになりますと、まず98%の施設 が非常にその辺は困難だと。これから先、人材的な確保のために不安材料としては98% の不安を抱えているというような非常に悲惨なところが現状としてあります。 もちろん、我々もその中で努力をしながら人員確保のためにやらなければいけないと 思っておりますけれども、非常に施設の中で優先入所という形の中での介護度の高い方 々を入れておりまして、ほとんどの施設が平均介護度が4以上、多いところでは4.5 と いうような重介護者の方が入所なさっておられると。 その中で、職員の非常に過重な労働というものも、現在、起きている状況でございま すので、やはりその辺のところで俗に言う燃え尽き症候群ではございませんけれども、 なかなか体がしんどいということで退職をなさるという方も結構おるというのが現状で ございます。この辺のところも、いろいろな中で人員確保のためにやっていく中で、制 度として配置人員の形のものをもう少し見直していただかないと非常に厳しいんではな かろうかと思っておりますので、是非その辺のところも御理解いただければと思ってお ります。 何か泣き言のようで非常に申し訳ございませんけれども、そういった形の中でせっぱ 詰まった状況だということをかんがみながら、我々も創意工夫の中でこれからもやって いかなければいけないと思っております。 ありがとうございます。 ○岩田部会長 ありがとうございました。 先ほどの都市部での有効求人倍率の高さの裏側に、大都市の職員確保の大変大きな困 難があるという話で、本当に難しい問題だと思いますが、後ほどこのことも含めて議論 を進めたいと思います。ありがとうございました。 それでは、続いて「まどかの郷」の太田様からお願いしたいと思います。 ○太田施設長 愛知県からまいりました、社会福祉法人和敬会特別養護老人ホーム「ま どかの郷」の施設長の太田でございます。 季節の変わり目で寒暖の差に体がついていきませんで、風邪を引いてしまいました。 大変お聞き苦しい声で恐縮でございますが、どうぞお許しをいただきたいと思います。 さて、247 、245 、180 、170 。この数字、何の数字だかおわかりになりますでしょ うか。これはJR名古屋駅周辺に建ち始めております超高層ビルの高さであります。一 番高いのが、3月に本格開業いたしましたミッドランドスクエアで247 メートル、47 階建てで世界のトヨタのグループが入っております。 次いで、245 メートルのビルがJRツインタワーでございます。ミッドランドスクエ アが3月にできたおかげで、2メートルほど越されてしまいましたが、開業から7年、 すっかり愛知名古屋の表玄関、ランドマークタワーとなっております。 そして、180 メートルのルーセットタワー。40階建てで名鉄と中部電力が入っており ます。来春、オープン予定の名古屋モード学園のビルはスパイラルタワーと呼ばれ、17 0 メートルです。 このように次から次へと立ち並ぶビル群を見て、地元の人たちは名古屋のマンハッタ ン街とも呼んでおります。まさに天高く伸びる超高層ビルは愛知名古屋の元気の象徴と なっております。 では、1.94、この数字は何の数字だかおわかりになりますでしょうか。これまで御紹 介いたしました数字と比べれば桁が違いますが、それでも小粒でぴりっと辛い全国一の 数字でございます。この数字は、愛知名古屋の今年2月の有効求人倍率でございます。 3年3か月、愛知県が全国一の座に居座り、目下、記録を更新中でございます。しかし、 これは裏を返せば全国一の求人難を示すシンボル的数値でもありまして、愛知名古屋に 大きく立ちはだかっている数字でもございます。 愛知名古屋の元気の象徴となっている超高層ビルのように、全国に比べて高い水準に あります愛知名古屋の景気拡大傾向は、トヨタ自動車を中心とする製造業、ものづくり の好調さに加えまして、非製造業にも普及し、もはや1991年11月のバブル期並みとも 言われております。超高層ビル、ミッドランドスクエアの開業によりまして、小売業も 全国に反して歩幅に上昇し、地元ではミッドランド効果とも呼んでおります。 景気拡大傾向が鮮明さを増す中で、東海地方の主要企業のトップは、今年の会社の入 社式の訓示で「挑戦」といった言葉や「飛躍」といったフレーズが飛び交い、攻めの姿 勢を新入社員に求めたといいます。 景気拡大傾向の中で、企業は新卒採用を積極的に進めるとともに、大企業ですら、今、 人手不足が解消できずに、この人手不足が東海地方の経済成長のボトルネックとも言わ れております。こうした状況下で、果たして私ども介護労働現場に人は来るのでしょう か。 日曜日の新聞折り込みチラシ、求人広告欄には医療、介護の募集が所狭しと紙面 を埋め尽くしております。どこも聞き覚えのある隣近所の事業所の求人募集が肩を並べ ております。しかし、どこも募集しても応募がないというのが現状でございます。チラ シ広告の掲載は3日が勝負でございます。今は、掲載日の午前中に電話がかからなけれ ば、もうその効果はあきらめざるを得ないという大変厳しい状況がございます。せっか くチラシ広告を打ちながらも、大手自動車会社の期間工の募集に負けてしまっているの が現実であります。期間工との給料を見比べられてしまったら、応募がないことに納得 をせざるを得ないのが現実でございます。 それではと作戦を変えまして、神頼みの派遣会社にすがるのですけれども、この人材 派遣会社とて深刻な人手不足でございまして、派遣会社でありながら派遣する人材がい ないというのですから、これでは話になりません。 人材派遣会社がだめなら、年中募集中の職業安定所に頼み込みます。介護保険になり まして、必要人員配置ができなければ、減算のペナルティーになることから、施設は退 職者が出ますと急ぎ翌々月までに欠員補充をする必要がございます。そのために施設の 新卒採用は極めて低く、27%止まりでございます。大半が中途採用となってしまう現実 がございます。 ハローワークへ募集を出す際、書類には年齢不問と書きます。介護はベッド移乗や入 浴介護と力仕事が多いために、若者が欲しいのが本音ではありますが、今や若者を募集 しても応募はございません。ないものねだりをしても仕方がありません。下手をすれば、 在宅の労働介護を傍らに、施設でも年齢不問の老老介護が発生しかねないと心配する、 今日このごろでございます。 先日のNHKスペシャルをごらんいただいた方もきっと多かろうと思います。この給 与では家族を養えない、生活ができないとやめていく、まさに介護現場、介護労働がネ ガティブに映し出された瞬間でございました。これでまた、応募者が減る。そう危惧し た施設長は恐らく全国中にお見えになると思います。せめて、介護の仕事に献身的に打 ち込む介護職員の生活を保障していただきたいと思います。 勿論、離職要因は決して給与面ばかりではないと思いますが、まずは、雇用不安、給 与不安、この問題の解決が先ではないでしょうか。 今や報酬は下がるばかりで、将来に向けての賃金上昇が見えてこない、こういう職場 では職員が集まらないのは当然でございます。 おまえは優しいから福祉に向いている、そう言われて進路選択をする。決して本人の 熱い思いがあってではございません。確かに国家試験を受けないでも就職できる。こん な安易さが施設に入ってリアリティーショックを起こすようであります。資格を持つこ とが、どうインセンティブをもたらすのか、それがなかなか見えてこないのが現実でご ざいます。 ゆえに、介護福祉養成校を卒業して、資格を持ちながらも大手自動車会社 の期間工として就職をしていくのが現実でございます。給与に魅せられ、大手自動車会 社の期間工へと就職をする。残念でなりません。 高齢者は失うという不安を抱いております。今、介護現場の若者は、働くという魅力 を失いかけております。働くことへの対価として給与がありますが、その給与の魅力も 失っています。 介護保険で契約になり、利用者や家族の嫌疑心が強まり、ありがとうという言葉の声 が小さくなっていく一方で、サービスへの苦情や介護事故の責任追及に介護現場の職員 は常にプレッシャーを背負いながら真面目な者ほど押しつぶされていく現状がございま す。 また、年々施設入所者の介護度は重度化し、入所者とのコミュニケーションもままな らないのが状況でございます。 職員は働きながら多くの人生の先輩から知恵を授かることがこの仕事の醍醐味でもあ ったはずなのですが、今や対人援助業務の魅力すら消え去ろうとしています。 そして、業務のマニュアル化、膨大な記録、ケアプラン、加算・減算の書類の煩雑さ は、本来のヒューマンサービスの魅力を味わう時間さえ奪ってしまっております。こう した4つの魅力を失えば、職員はやりがいと生きがいを失い、職場を離れていくのです。 ものを失えば、形がなくなります。名誉を失えば、多くのものを失います。気力を失え ば、すべてを失うのです。生の根源である気力、意欲を失わせないような介護報酬であ っていただきたいと思います。 嘆いてばかりもいられません。こうした状況の中で、施設は労働環境を少しでも働き やすい、働きがいのある職場にしようと、現場では試行錯誤を続けております。 例えば、夜勤勤務時間帯の拘束時間を短縮するためのシフトの見直しも行っておりま す。人事考課による能力給制度も導入しました。ファーストフード店並みに働き手に合 わせたフリーな勤務時間でシフトを組むことも、今、検討しております。 しかし、生活施設ゆえに働き手側の都合に合わせることになかなか四苦八苦をしてい るのが現状でございます。職員が燃え残り症候群とならないように、リフレッシュの機 会を与えるため、福利厚生の充実にも力を入れていかなければなりません。 施設では資格取得を応援することで、資格所得の向上につなげよう、それが強いては 施設の専門性も向上するとの思いで、研修会やセミナーへも積極的に派遣をしておりま すけれども、現員体制では、なかなかこうした研修会やセミナーへの派遣もままならな いのが正直なところでございます。 勿論、結婚しても辞めないで勤めてもらうために、職場の配置転換も行っております。 人事確保問題の取組みを誤りますと、施設の事業そのものが成り立たなくなることは明 白でございます。 施設の事業が崩壊すれば、やがて高齢者虐待、親子心中、介護殺人等々多くの事件が 社会で発生しかねません。社会のセーフティーネットの崩壊を招きかねない危さがこの 問題には秘められているように思います。 決して専門性を否定するものではありませんが、今、この事態では、まずは介護労働 の裾野を広げるべきではないでしょうか。高齢者は資格がなくても自分の話を聞いてく れる人がほしいのではないでしょうか。 最後に、早急に新しく働こうとする人を取り込んでいただきたいと思います。そのた めには、フィリピン人を始めとする、外国人労働者の早期受け入れを切にお願いをし、 私のレポートとさせていただきます。 ありがとうございました。 ○岩田部会長 どうもありがとうございました。いずれも現場の、特に経営の立場から 大変お困りになっているといいますか、もうぎりぎりのところに来ているという御報告 をいただきましたが、先ほどの事務局からの御報告も含めまして、皆様方、どうぞ、質 問あるいは御意見を自由に出していただきたいと思います。 どうぞ、石橋委員。 ○石橋委員 今、プレゼンテーション等から介護の人材難の状況等の御説明をいただい たわけでございますけれども、当初、平成5年に人材確保の基本指針が作成されたとき に、私も民間の福祉施設で勤めておりましたが、その民間の福祉施設の職員におきまし ては、公務員、もしくはほかの民間の企業に比べて給料、労働環境の面が余りよろしく なかった。 それで、人材確保の基本指針ができたときには、非常に喜んだんです。非常に大きな 期待を持っていたわけですけれども、しかしながら、現実的に、特に第三の経営者の行 う措置の部分につきましては、十分守られてこなかったり、実現性がなかったと思って おります。もし、これがきちんと実効性のあるものであれば、今のような現状は招かな かったような気がいたします。 したがいまして、今回、新たな見直しを行うわけですけれども、せっかく見直しをし ても、これが実効性があるものにしていかないと、絵に描いた餅になるわけですから、 まずは何らかの形できちんと実効性のあるものにしていただきたいというのが1つであ ります。 更に、社会福祉法だけで縛るのではなく、他法ともリンクして、指針の拘束 力を強めるというのも一つの方法ではないかなという気がいたします。 それから、前回の資料の中に、社会福祉法における規定の中で、89条のところにおき ましては、社会福祉事業に従事する者の確保が示されておりますし、90条、91条におき ましても、社会福祉事業を経営する者というふうに規定されておりますが、特に2000 年に介護保険が導入されてから、従来型の施設から、いわゆる特定施設とか居宅サービ ス系の事業と変わるなど、社会福祉を目的とする事業が非常に拡大していく中、また、 介護保険が導入されて、民間事業者等も多く参入し、介護従事者を経営する者が非常に 増えてきている現状の中において、これが法律上、社会福祉事業を経営する者というふ うに限定する、そういう枠組みだけで、法律を規制するのが十分だということが言える のかどうかということが一つ気になるところですし、この社会福祉法自体も見直しが必 要ではないかということを感じました。 以上です。 ○岩田部会長 堀田委員、どうぞ。 ○堀田委員 質問ですけれども、太田さんと篠原さんにそれぞれお伺いいたします。ま ず、太田さんのレジュメの1ページの下の「5.施設の取組み」の中の2番目に「人事 考課による能力給導入」とありますが、どういう点が評価基準になっているのか、特に キャリアパスのような仕組みが入っているのか。 それから、中途退職者というか、結構転職者も多いと思うんですけれども、それまで の経歴で福祉職に就いておられた、そういう経験がある人について、採用時の能力評価 で、それ相応の処遇をされるような仕組みになっているのか、その辺りを伺いたいと思 います。 それから、関連して篠原さんにお伺いしたいんですが、レジュメの3ページ 目の下の方の真ん中に対策の基本が書いてあります。その中に「結婚し子供を持っても 働き続けられる最低限の生活保障」という御主張がありますが、これはどの程度のこと をお考えで、どういう仕組みをお考えなのか、特に能力評価との関係で、生活保障の点 をどういうふうにお考えなのか、その辺りをお伺いしたいと思います。 ○岩田部会長 それでは、太田様の方からどうぞ。 ○太田施設長 それでは、ただいま御質問をいただきました件でございますが、人事考 課による能力給の導入ということですけれども、これもサービス評価を数値を表わすと いうことが大変難しくて、なかなか適正な人事考課ができていないというのが、実は正 直なところでございます。試行錯誤をしながら、何度も何度も人事考課制度を見直しを かけていくわけですが、非常に労力をかける割には、本当に数千円から数万円の差しか 出せていないという状況でございまして、まだまだよちよち歩きの人事考課制度である ということは、悔しい思いをしているところでございます。 それから、転職者が多いけれども、採用時の能力評価はされるのかということですけ れども、主に転職をして来られます方の履歴書を拝見しますと、前歴の中にデイサービ スですとか、グループホームですとか、介護サービス事業所から移られて来られる。言 ってみれば、特養や介護サービス事業所の中で、いわゆるどんぶりの中で人が動いてい るという状況も勿論ございます。 ただ、介護の現場には戻りたくないといって退職をしていく者もいるということで、 これはケース・バイ・ケースかなと思います。 ただ、私どもの施設では、採用時の能力評価ということで考えれば、前歴加算をして おりますので、経験者はそれなりの前歴加算を付けさせていただいている状況でござい ます。 以上でございます。 ○篠原理事長 女性の方の問題ですけれども、やはり先ほどの資料の中でもございます ように、やはり若い女性の職員の従事者というのは、非常に多うございます。その方々 が結婚なさり、子どもをということになりますと、当然、現状の中での福祉施設の中で は子育て支援の中での条件というのが非常に弱いわけです。 特に、私どもはこれから考えていかなければいけないんですけれども、やはり保育所 を併設した中で勤務ができるような環境整備というのもこれから必要ではないかという ことで考えております。 ですから、その辺のところをしっかりと、我々も大手の病院とか、そういうところで は病院の中に完全に保育所を設けて働きやすい環境をつくっているということが非常に 多うございます。やはり我々もその辺のところをしっかりと、ただ、小さな弱小法人の 中で保育所をということになると、非常に難しいわけですから、先ほど来言っています ように、何法人かで協力し合いながら保育所をつくる、勤務地の近いところで働きやす いような環境のところにつくるという形の中でやるというのが、今、私どもが考えてい ることでは、最大重要な案件でございます。 ○岩田部会長 どうぞ。 ○中島委員 お二人にお聞きしたいんですけれども、経営が非常に苦しい、労働条件が 悪いということは非常に理解できましたが、それを改善する上で、現行の社会福祉法人 としての枠組みの中で、もう少し収益改善なり労働条件の改善をしたいんだけれども、 社会福祉法人という枠組みの中で、どうしてもそういうルールというものがあってでき ないとか、こういうことをやりたくても社会福祉法人であるがゆえに難しいとか、先ほ どもお話があったように、一方で民間の企業が介護サービスに参入してくるという状況 もありますので、そういう点で、現在あるいろんなルールが足かせになっているという ことはお感じになっていらっしゃいますでしょうか。 ○篠原理事長 私の方から、まず、お答えさせていただきたいんですけれども、最近非 常に社会福祉法人も規制緩和の中で柔軟な対応の措置ということはわかっておりますけ れども、ただ、非常に民間会社と違いまして、我々の状況の中で資金調達というものが 非常に厳しい状況でございます。 やはり、我々の事業の展開の中で、今の介護報酬の経営の中で、例えば資金調達をし た剰余金の中で返済ができるかということのシミュレーションをしますと、非常に厳し い状況だということと同時に、先ほども申していますように、施設経営の中で、当然介 護報酬の中での人員配置というのは、3対1ということでございますけれども、やはり 現状の中で介護度の高い、4以上の方々が多いということになりますと、3対1の人員 配置では、とても物理的に介護ができません。 当然、うちの法人でも2対1という形の中でやっておりますけれども、ただ、先ほど 来人材不足の中で、欠員が出たときに当然3対1以上の人員確保はしておりますので、 減算にはならないんですけれども、そういった中で、非常に職員が厳しい。 ただ、経営コンサルタントの方々に言わせますと、3対1という形の中で工夫ができ るんではなかろうかということをよく言われるんですけれども、実際に現実の中で、そ れだけの重介護者の中での人員配置ということになりますと、非常に厳しいなというの が現実でございます。 ○太田施設長 社会福祉法人であるがゆえにというところで問題を考えてまいりますと、 やはり運営基準の問題があるだろうと思います。入りが報酬であるならば、出が運営基 準ということになるわけですけれども、例えばユニットケア1人1日職員を張り付けな ければならない。こういう状況の中で、多くの人員が必要になっていくわけであります。 ユニットケアの運営をされておられるところでは、そういった部分での運営基準をもう 少し緩和いただければというような声も聞こえてきております。 また、社会福祉法人であるがゆえの、反対に利点を言えば、非課税団体であるという ことで、この先、この問題がどう流れていくかは、まだ見通しは立ちませんけれども、 そこで課税をされるようなことになれば、それはまた大きな痛手になるんではないかと 危惧をしております。 以上です。 ○岩田部会長 そのほか、いかがでしょうか。 どうぞ。 ○篠原理事長 私の方からお願いというか、各委員の方々と厚労省の方にお伺いしたい んですけれども、当然新聞紙上でも団塊の世代の方々が当然リタイアした形の中で、相 当数いらっしゃるわけでございますけれども、やはりその辺の方々の社会福祉に従事で きるような環境整備というものは、当然我々もやらなければいけないんですけれども、 やはりその辺のところの発信の仕方というんでしょうか、むしろそういった形の中で、 厚労省の方で発信ができるような土壌があれば、是非そのような形の中で福祉施設に対 する発信の仕方の中での就業というようなものの位置づけがしていただければ非常にあ りがたいと思っているんですけれども、その辺のところのお考えはいかがでございまし ょうか。 ○岩田部会長 リタイアした後の人材を介護現場が一定程度吸収するというような考え 方ですね。いかがでしょうか。 ○成田福祉人材確保対策室長 そういった点も含めて、今回の指針の議論の中で、何か いい方法があれば教えていただきたいと思います。 ○篠原理事長 是非それを委員の方々にお願いしたいと思っておるんです。 ○成田福祉人材確保対策室長 はい、教えていただいて盛り込んでいくような形でやり たいと思っております。 ○岩田部会長 委員の方でいかがでしょうか。 どうぞ。 ○京極部会長代理 プレゼンテーション以外のことも含めて、3点ばかりお話しします。 1つは、厚労省の方の資料3でございますけれども、大変よく整理されて、特に1ペ ージのところで、現在の状況がどうなっているかということが書かれているんですけれ ども、1つ抜けているのは、この間、養成校あるいは福祉系大学がめちゃくちゃ増えた んです。そういう労働力の供給側の方が書いていないので、それはやはりきちんと書く 必要がある。 それから、専門職団体、石橋会長さんがいらっしゃっていますけれども、 専門職団体も社会福祉士会もそうでございますけれども、一定程度伸びてきていますけ れども、やや伸び悩んでいる状況はあるんですが、これはともかくとして、そういうの が形成されたという状況もあるということで、その2点を申し上げます。 それから、賃金のことで、今、介護報酬の問題が非常に議論されて、大変参考になり ましたが、介護職の方々の給与というのは、労働市場の上で、一体どういうメカニズム で決まってくるのか。これは、専門家の方がいらっしゃいますので、ちょっと釈迦に説 法ですけれども、一般の経済市場と違って、介護報酬という政策市場ですので、その中 で、まず決まるということがあると思うんです。それで、介護報酬を基に、今度は労働 力分配率がそれぞれの施設が違っているということになるわけでありまして、最初に介 護報酬ありきということが特徴だと。 そうしますと、私の感じでは、横にらみで診療報酬を見ますと、例えば看護にしても、 一定程度の評価がされているんだけれども、介護の方は必ずしも評価されていないと、 これは国民の側にも問題があって、保険料は抑えろと、サービスの質は上げろと、人員 を増やせと言われても、これはこの単価ではできないわけです。 ですから、ある程度生産費みたいなことを考えて、1つは診療報酬上の看護師の単価 と、養成課程では1年違いますので、試験がないということもありますので、低くなら ざるを得ないんですけれども、やはりそこそこに考える必要がある。 それから、国民の側というか、財政当局もそうですけれども、やはりこの状況を打開 するには、ある程度報酬単価を上げるということをきちんと論証していく必要があるん ではないかと思います。 ちなみに米価なんかも、米価審議会で決めたんですけれども、あのときは、たしか農 協団体がはちまきして、農林省を囲んでやったから上がったように見えますけれども、 実は非常にシビアでありまして、生産者側と消費者側、消費者側は上げては困るという 運動ですね、生産者側は上げろと、そういう中で審議会がいろんな米価の生産品を分析 したりいろいろして、適当なところでぎりぎりで決めていくということなので、それだ けシビアなんです。比較的介護報酬、私は、もう今は入っておりませんからわかりませ んけれども、坦々と決まっていくのはいいんですけれども、本当はもっと厳しいんでは ないかと思います。 ただ、そういう運動論ではなくて、やはり科学的にきちんと単価を決めて、これは国 民も保険料を上げられては困ると、財政当局もそんな負担はできないと言うかもしれな いけれども、必要なものは必要なので、やはりきちんとする必要があるんではないかと 思います。その辺の介護報酬の決定メカニズムがはっきりしない。 最後でございますけれども、人材確保指針について、これは法的な位置づけがどうも はっきりしないんですが、前回、私も関わったんですけれども、全国社会福祉協議会の 研究所の所長で、なかなか厚労省は仕事をしないので、情報センターで先につくったん です。それを当時宇野室長でしたけれども、もうできているのかと、これにいろいろデ ータを付けてつくりましょうと、安直につくったんです。 私は、今回は安直ではなくて、非常によく研究調査し、データに基づいた分析なので、 非常に期待していますけれども、先ほど石橋委員が入ったように、効力を持つようにす るにはどうしたらいいか、ここは非常に重要でございます。 特に、労働分配率のことに関わることは、私は前から申し上げているんだけれども、 一般市場と違いまして、半分は税金が入っているんですから、そこで国の規制というの はある程度あっても構わないし、都道府県だって発言力もあるし、市町村もあるという ことでありますので、そこを非常に規制緩和という微妙な下に、何か中が非常におかし くなっているのではないか。 例えば一部の特別養護老人ホームへ行きますと、ほとんど人がいないんです。パート がいても、役所が監査に行ったときにちゃんといるんですけれども、いないときはだれ もいない。こういうことが許されていいかということで、そういう中から虐待とかいろ んな問題が出てくるわけなので、その点を国がどこまで規制できるかというのが、規制 緩和の中で非常に慎重にしなければいけないんですけれども、ある程度考えていただけ ないかということです。 ○岩田部会長 いろいろ出ておりまして、先ほどちょっと御質問があった団塊世代の再 雇用といいますか、そういう場合に、先ほどのプレゼンテーションでは、介護の現場は 若い人がよくて、それは重労働だからということが片方にありましたね。こういうのは 何らかの工夫とか、それこそ資格というのは、実質的な意味ですけれども、介護のスキ ルを向上する中で、ある程度克服できるようなことなんでしょうか?機械導入とか、い ろんなことも含めてですけれどもね。 ○篠原理事長 そうですね。当然直接介護ということの中でなると、非常に技術的にも 難しいと思いますので、やはりある意味で、対話の問題とか、処遇の方法というのは、 いろいろございます。その辺のところを、できない面というか、直接処遇ではない間接 的な中でのお年寄りとの関わり合いというのは、非常に多うございますので、是非その 辺のところの対応の中で、そういった方々を取り入れるということも非常に必要ではな かろうかと思います。 特に最近の施設経営の中で、やはり個室ユニットという非常に孤立した形の中での処 遇環境が多くなってございますので、やはりその辺のところを、今までの人生経験の中 で逆に活用できればなと思っておりますので、その辺のところを各委員の方々もどのよ うに取り入れたらいいかという御意見もちょうだいできればと思っております。 ○岩田部会長 どうぞ、森委員。 ○森委員 今、おっしゃったことについては、私どもでは認知症サポーターの講習を、 いわゆる団塊の世代よりもちょっと高い方たちが、いわゆる地域でまちづくり協議会と いう組織の中でやって、そして地域で見守りをしようという動きがあります。今、おっ しゃいましたように、私どもは周辺部の、要するに、例えば施設ではない、在宅のいろ んな周辺部を地域で支えていくという仕組みをつくっていく。 そのときに、俗に言いますと、団塊の世代の方たちが、ある面では、いろんな人生経 験を含めて有効ではないだろうか。例えば市内のいろんなところにもそういう方たちが 入る。 勿論、ここでおっしゃるように、いろんな資格的なことというのは、なかなか 無理だと思います。ですから、周辺部でそれを支える仕組みをつくることによって、少 しお話しさせていただきますと、人材確保指針の1ページのところでございますけれど も、在宅重視ということをもう一度私どもがきちんとすべきではないかと。これは私ど もが、いわゆる保険者という立場もございますけれども、やはりここをきちんとしない と、どうしても施設ということにある面で重点的になってしまう。そうすると、そこで、 先ほどのいろんな人材確保の問題を含めて大変だということになります。 それで、先ほど石橋委員がおっしゃいましたけれども、私は2ページのところの現行 の人材確保指針の目標と課題というのは、まさしくこれは平成5年のときも今も変わっ ていないと思うんです。これをどう担保していくかということを着実にやっていくこと の方がより実効性が高いんではないかと思います。 ○岩田部会長 特に介護が一番人材確保の問題では厳しい状況にあるわけですけれども、 コアにある事業としての、特に介護保険制度をバックに置いた事業としての基本サービ スという意味と、周辺的な、これはもう少し広げればボランタリーなサポートといいま すか、これは病院なんかでもあると思いますけれども、こういう重層的な人材を配置す る中で、コアのところをより活用していくような仕組みをつくっていくというようなこ とが片方にないと、今後も、他産業との競争の中で若い人を常に確保しているというの は、なかなか難しいということがあるかもしれないということかもしれません。 その辺を資格制度の充実とともに重層的に考えていくということが課題かもしれませ ん。ただ、これも善意に頼るということではなくて、今、おっしゃったように何か仕組 みをつくらないと、なかなか難しいということがありますね。 もう一つは、社会福祉法人なり、あるいはNPO法人なりの中で、規模が小さい、9 人以下事業所の問題が出ていましたが、それらがどういう協力連携をし合いながら人材 をある程度流動化させる必要があるのではないか。やはり非常に小さい職場というのは、 働く側にとっては息が詰まるというか、途中で辞めたくなってしまうんではないかなと いう感じも、私どもはもっております。これは必ずしも介護だけではなくて、社会福祉 の職場というのは、みんなそういうところがあって、例えば社会福祉協議会や何かでも 町村部ぐらいのレベルになりますと、非常に規模が小さいですから、毎日、ずっと10 年同じ人とやっていて、もうあきたみたいなところもどうしても出てくる。 そうすると、人材の登用の仕方というか、キャリアパスの在り方ももう少し連携して、 先ほど他法人に移るときのペナルティーみたいな話も少し出ていましたけれども、ペナ ルティーをかけないで、お互いに許容し合いながら、年齢バランスなんかも上手に許容 し合いながら一緒に人材確保していくような連携といいますか、それでいて、それぞれ の法人の個性というのもあるでしょうから、そういうものを確保しつつみたいな、何か そういう仕組みをつくっていく必要があるのではないでしょうか。保育所とか、そうい うことにも連動していくと思うんですけれども、規模の小さな福祉職場の、デメリット をなるべく減らしてメリットを生かすような仕組みをつくっていかないと、一つひとつ の形態では、なかなか難しいところがあるような感じがどうしてもします。 いかがでしょうか。どうぞ。 ○小島委員 今の部会長との関連でいいますと、資料の中でも資料2のところで、転職 される方の理由の2番目に大きい比率になっているのが、1番目は転職あるいは離職さ れる場合、仕事にやりがいがなくなるということで、これは資料2の36のページに出て いますけれども、2番目の理由として職場の人間関係ということが挙げられております。 これは、私、労働組合の連合の施設調査の中でも、やはり離職に当たっての理由とし ては、職場の人間関係というのが挙げられている。結構高い比率がある。これは、今、 部会長が指摘されたように、言わば施設の規模が小さいということがあって、そういう 問題があるんだと思いますけれども、この辺について、今、お話をいただきました太田 さんと篠原さんのところについて、具体的に職員の皆さんの悩み事とか、苦情とか、相 談というか、そういうことについて実際どういうような対応をされているのか。 部会長が言われたように、横断的なというか、ネットワーク型でそういうものを調整 するというのはなかなか難しいと思うんですけれども、皆さんの施設の中では、職員の 皆さんの悩みとか、そういうことは日ごろどういうような対応をされているかというこ とが1つの質問です。 もう一つ、なかなか都市部における人材確保、求人が難しいということでありますけ れども、皆さんのところでは、実際にどこのツールを使って求人、人集めをしているの か、ハローワークを使っている、あるいは養成施設等に直接応募を出すとか、あるいは 福祉人材センターというようなところを通じてやっているのか。言わば、これは指針の 中にありますけれども、人材センターの充実ということがありますけれども、その辺を もっと活用、充実させるということを通じて、もう少し人材確保が可能かどうかという ところなんですけれども、実際のところは、今、どういうツールで人材を募集している のか、この2つほど質問なんですけれども、お願いします。 ○篠原理事長 まず、人材の方ですけれども、すべてのものに出しております。当然学 校にもすべての専門学校にも出しておりますし、ハローワークにも出していますし、当 然すべての法人でもそれをやっております。 こちらにも書いてございますように、やはり各法人でも土曜、日曜日の新聞に掲載を して、年間200 万とか300 万を出してもなかなか来ない。ある施設では募集を出しても 連絡すら1人もなかったというような現状でございますので、その点では、すべての法 人も今のお話のように、すべてそういった求職できる箇所にはすべて出しているという のが現状でございます。 あと、転職というか、退職の理由ということでございますけれども、うちの法人は、 意外に結婚をなさって、先ほど私が保育ということで非常に気にしているというのは、 結婚をなさっても多少はいていただけるんですけれども、当然すぐにお子さんができる ということで退職なさるというのが圧倒的に多いんです。 それと、これはいいか、悪いか、私も非常に困惑しているんですけれども、職場での 結婚が多いんです。どうしても不規則勤務でございますので、職場同士で結婚をなさる。 そうなると、当然私どもも事業所が多数ございますので、配置転換をするんですけれど も、どうしてもお子様ができることによっての退職ということが非常に多うございます。 あとは、2〜3は、やはり仕事がきつくてというのが状況としては多いです。 これは、うちではなかったんですけれども、よそ様でお話を聞いたんですけれども、 訪問介護をなさっている方が、たまたまパートなので施設に勤めたいということでいら したんですけれども、2日間仕事を従事した中で、こんなきつい仕事は、とても私には できないからということで、2日間で辞めたという例もございます。 一応、そんなところでございます。 ○岩田部会長 とうぞ。 ○太田施設長 それでは、ただいま小島委員から御質問がございました、職場の人間関 係が退職の理由になる、まさになぜ若者は、今、3年で会社を辞めるのか、時代の一つ のテーマにもなっておりますけれども、介護現場も非常に短期間での離職が多うござい ます。 施設で経験年数を積んでいる職員が多いところは、やはりそれなりに若い職員 へのメンタルケアができておりまして、離職を抑えていくことができますけれども、経 験年数の多い職員が残っていないところというのは、やはりだれも手を差し伸べてもら えず、離職につながっていくという現状があるように思います。 また、施設の職員の有資格者の多いところは、その歯止めが何とかかかっているとい うことで、施設も資格取得に応援をしているというのが現状でございます。 それから、採用募集においてのツールですけれども、先ほど申し上げましたように、 ハローワーク、年中募集中です、中途採用が施設の全体の7割を占めておりますので、 新卒採用はたかだか2割、専門学校、大学等へ求人を出すよりも、ハローワークを通じ て、今、人手がほしいときでありますので、ハローワーク、派遣会社、人材センターと、 先ほど篠原先生がおっしゃられていましたように、すべてのツールを用いてやっており ますけれども、いかんせん費用のかかる新聞折り込みチラシをしても、電話一本かかっ てこないということであれば、昨今、チラシに介護施設の求人はあきらめムードで出て こなくなったのが現状ではないかと思います。 以上です。 ○岩田部会長 どうぞ。 ○田中栃木県保健福祉部長 栃木県でございますけれども、私どもは、NPOなり法人 なりの監査などに行って、ときどき思うことなんですけれども、やはり経営者の方、創 始者の方が熱意で始められて、それに引き連れられていろいろと事業をされているんで すけれども、やはり肝心の経営であるとか、あるいは今、言われておりますけれども、 人手を集めていく、あるいは経済的な面から言えば、材料の仕入れから、ノウハウとい うか、そういったところが乏しいままに事業を続けていっているなという印象が幾つか のところにあるんですけれども、今、団塊世代の活用ということ、これは別にこの分野 だけではなく、県議会などでもよく質問されるんですが、そういった経理のプロである とか、材料の仕入れのプロ、あるいは労務管理、先ほど言われましたけれども、職場の 中の人間関係をうまく行っていく。 そういった点でノウハウを持った団塊世代という方が、今、退職をされて、次の職場 なり第2の人生ということで言われているんですが、果たしてそういったところを各N POなり、あるいは法人なりで受け入れてもらえる余地というのはあるのか、ないのか。 もし、そういった面で受け入れるということであれば、やはり県といたしましても、そ ういった方々の活用を何とかしなければいけないということ、あるいは呼び込まなけれ ばいけないということなので、やりがいという意味で、そういった施設での経理、労務 管理あるいは人手を集める求人費、そういったノウハウを持ったプロを紹介するという こと。逆に受け入れる立場としてやった方がいいのか、悪いのか、その辺りを少し御意 見を伺えれば、今後の県行政としての参考にしたいと思うんですが、いかがでしょうか。 ○篠原理事長 今のお話ですけれども、当然我々としても労務管理とか、いろいろな意 味で介護保険に突入してから、非常に各法人も勉強なさっておりますけれども、まだま だその辺のところで非常に弱い面というのもございます。 ただ、逆に先ほど来言っておりますように、人材の中で、人材というか、人件費の割 合というのは非常に高うございますので、やはりその辺のところは法人によって非常に 温度差があると思います。 その辺のところは、逆に1法人1施設というような形の法人であれば、非常に難しい んではなかろうかというところも多少考えられますけれども、やはり、今、全国的にも 老人介護の中で、1法人1施設という社会福祉法人というのは半数近くございます。そ ういった方々は、果たしてその辺のところでどういう受け入れをするかということは、 私の方も答えとして難しいんですけれどもね。 ○太田施設長 PR不足なのか、求人方法が下手なのか、そこら辺のところはよくわか りませんけれども、いずれにしても、募集しても応募がないという、まさに偽らざる現 実が目の前にございまして、やはり施設のイメージというものをもう少し改善をしてい く、そういったことへの努力というのを、私どもも、または国もしていただかなければ いけないんではないかという思いでおります。 以上です。 ○岩田部会長 石原委員、どうぞ。 ○石原委員 介護の仕事も、給与等の待遇は当然大切なことです。他人の体に直接触れ る仕事というのは、一番重要で、本当は尊重されないといけない、現場中の現場だと思 うんです。その割には、非常に報酬の評価が低いということ。 もう一つは、仕事に対する誇りをきちんとキープできるような状況をつくるというこ とだと思うんです。 先ほどの太田施設長さんのお話にもありましたけれども、このごろ事故とかいろいろ なことで問題が多くなったりするので、確かに劣悪であったら勿論だめなんですけれど も、精一杯一生懸命努力してもお手伝いさんを使っているようなものの言い方を御利用 者の中でなさる方もなくはないわけですけれども、私は、本当に誇りが持てるというこ とをきちんと国民全体が認識をしていかないと、多分一番大切な仕事の分野で働き続け てくれる人たちがどんどん少なくなってしまうだろうと思います。 私が、今、努力をしていることは、石原塾と勝手に名前を付けて、本当に末端のパー トのヘルパーさんのところにも、1対1でもアポイントを取ったら、必ず話をしに行っ て、どれほど介護の仕事に価値があるか、お年寄りに一番近いところ重度のケアをして いるということがどれほど重要な価値があるかということを必ず言うようにしておりま す。 そうしていきませんと、何か使い捨てにされるんではないかとか、利用者の声とか、 周りの声で、一番恵まれていないというように思ってしまうようなんです。 ですから、そうではないんだということを一生懸命言っていく努力をしておりますけ れども、これは全国の国民がみんなそういった価値を大切に思えるという文化をつくっ ていく必要があると思うんです。 ○岩田部会長 では、木間委員、江草委員の順でどうぞ。 ○木間委員 太田施設長の、先ほどプレッシャーの問題、そのことばかり強くて仕事の 魅力を失うというご指摘は、よくわかります。私は、国民生活センターという消費者の 立場でこのことに関して、苦情と調査の結果から申し上げたいのですが、そのことは十 分わかりますが苦情が増えています。 苦情の中身を見ますと、介護のサービスの質がかなり低い人が出てきている。その背 景というのは、先ほどからお二人が御説明なさったような事情があるということはよく わかります。 調査結果から少し申し上げたいのですが、国民生活センターでは、先月、「第三者が とられた高齢者ホーム」という調査をまとめました。 この調査でいう、第三者とは、介護サービス情報公表制度の調査員であるとか、第三 者評価機関の評価者とか、介護相談員、成年後見人という人たちですが、その人たちは、 利用者支援制度の下で、高齢者ホームとはこの調査では特養、老健、グループホーム、 有料老人ホームを指しますが、そこに行ってどういうふうに入居者の暮らしを見てきた かということについて、今日のことに関して、介護職員の待遇と介護サービスの質に関 してですが、幾つか回答のまま申し上げます。 介護福祉士の地位向上と給与の改善が不可欠であるということが1点。それと、介護 職員の給与を上げなければ、介護サービスの質はよくならないという人もいます。 それから、職員の権利が守られなければ、入居者の権利は守られないといった意見も 書かれておりました。 先ほど御指摘もありましたけれども、職員の配置基準の見直しがなされなければなら ないという意見も寄せられておりました。  人材確保指針を取り巻く状況の検討の視点の中の1つに、利用者の尊厳の保持や権利 擁護の視点を重視すべきではないかということがありますので、それに関連して申し上 げたいのですが、この調査の中では、介護サービス情報の公表の調査員であるとか、第 三者評価機関の評価者は、介護福祉士や社会福祉士、ケアマネといった方々ですけれど も、この人たちは非常にすばらしい仕事をなさっていますが、その一方で、せっかく行 っていながらホームのサービスの質というものを見てきていない、とらえていないとい う人たちが少なからずいる。問いによっては半分も見ていません。 例えば食事とか、入浴とか排泄の介助について、それは職員の権利擁護意識であると か、援助技術のレベルというものが問われる重要な場面でありますが、そういう場面も 見ていないという人たちが少なからずいるという結果となっております。 改めて個人の尊厳を大切にする意識と援助技術の研修・教育を充実させることが重要 だということを思いました。 以上です。 ○岩田部会長 では、江草委員、どうぞ。 ○江草委員 お二方のお話を伺いまして、私は介護職員の養成の立場もあるんですが、 また一方では、恐らくお二方と同じように介護現場をたくさん持っております。両面か ら考えさせられることは大変多かったんでありますが、確かに人が足りないということ はよくわかります。しかし、全国的に見て、先ほど小島さんがおっしゃいましたが、ど こからどのような方法で人を求めているのかということについてですが、有効求人倍率 も物すごく地域差がありますね。それは一体どうしたのかということも考えた方がいい んではないかという気がするんです。狭いところで取り合いをすることもいいんですけ れども、もう一つオールジャパンで考える方法も見なければいけないんではないか。そ んなことを言うけれども、宿舎がないじゃないかと、そのことはまた解決のための手段 として別に考えればいいと思っております。 その上に、また仕事にやりがいがないということでありますが、これは人によって随 分違うと思います。しかし、一つの救いは、先ほどのお話の中に、有資格者とか経験の 豊かな人が多いところは、人間関係が保てているんではないかというお話があった。 では、有資格者や経験のある人が多い職場はどういう職場なのかということを、でき ましたらお二方から伺いたいと思うんです。 そして、また1法人1施設というのが半分ぐらいだとおっしゃいましたね。では、1 法人1施設でないと不適切であるとするならば、どのようなものであったならば、経営 形態として望ましいのかということも考えてみる必要があるんではないか。 1つは、横浜の例で、幾つかの法人が連携して、保育についてのお話がありましたが、 勿論それは一つの方法だと思うんですが、もう少し自治体で言いますならば、広域連合 というような自治体の連合形態で、合併しなくてもできるではないかというのもあるわ けでありますので、そういう方法、つまり法人運営、施設運営あるいはサービス現場の 運営、そんなものについて何かお考えがあるかどうか伺ってみたいと思います。 それから、給与、労働条件、その他問題は山ほどあるわけで、それは今後の人材確保 指針でよく考えていただければいいんでありますが、いかに確保指針をつくってみても、 確保した者が働けないようなところでは話にならない。それは、給料が高かったら、そ れでいいのかと、労働条件がよかったら、それでいいのかと、それだけではないと思う んです。人間と人間とが絡まって仕事をしているわけでありますから、その条件あるい は状況を見直す必要があるんではないかと私は思っております。 そして、私自身は、私が責任を持っております法人では、介護報酬をどうせい、こう せいという話は、別の事前の話として、いただいている介護報酬で最も有効なやり方は どこにあるのかということを考えれば、今の離職率の問題はかなり解決するんではない かと思います。 それから、名古屋の方でしたか、おっしゃいましたが、新人は比較的少なくて、中途 採用が多いということをおっしゃいましたが、これは私には理解しにくいんです。私は、 中途採用というのは、よほどのことがない限りしない。新人で十分賄っている。では、 求人倍率が物すごく低いのか、そうではないですね。 それから、折り込みチラシとか、その他、これは私の経験からしますと、一番効果が ない。むしろ、それよりかは高校生が夏あるいは春にボランティアとして大量に入って きてくれる。その入ってきた子どもたちが、それで目覚めて学校へ行って、そして卒業 して来る、こういうのが一番オーソドックスな方法ではないかと思います。 それから、割合求人の効果があったという方に聞いてみますと、これは看護師の確保 の問題でありますが、神奈川県で小規模の病院なんですけれども、全然折り込みチラシ などやっていないと、何をやっているかというと、インターネット一本槍です。それで 十分確保していると。10対1看護は十分だと。勿論それだけではないです。その院長が 極めて人間関係をつくるのがうまい人です。入ってきた看護師さんたちとの対話が非常 にうまくいっている。 こういうこともありますので、私はだめな例をたくさん並べることもいいんですけれ ども、うまくいっている例を探すことも必要なんではないかと、そこから学ぶことが必 要なんではないかと思います。 以上です。 ○岩田部会長 高岡委員、どうぞ。 ○高岡委員 先ほど京極先生の方からもお話をいただいたんですけれども、福祉施設経 営の現場から、先ほど来事例発表でありましたように、給与が低いとか、労働条件が悪 いとか、その中には経営者自身の責任もありますけれども、介護報酬の低さから、そう いうことが余儀なくされている。 介護保険制度ができてから、2回介護報酬の見直しがあったんですけれども、2回と も大幅な減額になってきて、施設経営者からすると、その報酬の範囲内の中でやらない といけないからということで、下げるということは余りやっていないと思いますけれど も、平成12年と17年、18年を比べると、ほとんど変わらないというような状況であり ます。 もう一つは、施設が経営努力ができるのかといったときに、施設サービスについては、 横出し、上積みが非常に規制されている。在宅介護についても、なかなか取り組めない ということと併せて、今、地域ではそういう規制の中で社会福祉法人が事業展開をする のにも一定の制約があるということで、非常に経営努力によって労働条件等を改善して いくのにも非常に厳しい状況であるということを是非御理解いただいて、介護報酬の決 定の仕組みを労働者に対しては、最低基準も含めて、これぐらいの費用は要るよと、平 均年齢がこれぐらいになれば、少なくとも一定の金額を出すというような仕組みがない と、今みたいにお金が残っているから減らしていく、また残っているから減らしていく というと、経営者は経営の存続維持がありますから、その収入に合わせて人件費等を決 めていくということがありますので、是非京極先生からの提言というのは、我々経営者 にとってもそういうのを痛感しておりますので、是非お願いしたいと思っております。 もう一つ、人材確保で、今、高齢者の確保に対して、もう少し受け止めるシステムを つくったらどうかということで、これだけ労働力人口が減ってきたら、今、我々ができ ることというのは、65歳の高齢者に限らず、40代、50代の人たちを確保していかない と求人対策になりませんので、そういうときに、我々としても労働力の質というのをず っと求めてきていまして、専門性を高めるために、今回、介護福祉士の見直しも大賛成 であります。 ただ、一方、そういう高度の有資格者と反対に、補助食品的な、ヘルパ ーがそれに当たるかというと、いろいろ問題があるかもわかりませんけれども、ヘルパ ー等をもう少し確保するような仕組みを短期的には考えていかないと、今、大阪の方で 聞きましたら、ヘルパー養成事業所がいろんな条件が厳しくなって、どんどん撤退して いっているということです。 ヘルパー事業というのは、40代、50代の人が年齢からしますと多いものですから、そ ういうところへの確保対策も、一方では専門性を高める、一方では量を確保するという 両方の構えでいっていただきたいという思いであります。 それから、行政にお願いしたいのは、先ほど来経営者に対して、労働の再配分だとか、 いろいろ指導を、今、都道府県で経営指導事業というのを厚生労働省の主導の下で続け てきたわけですけれども、それが一般財源化され、あるいは都道府県の財政が厳しいと いうところで、どんどんカットされている傾向があります。 我々社会福祉事業というのは、措置の時代では、行政に守られている中で来たもので、 経営能力は非常に低いものですから、そういうふうな経営者への指導体制なんかも、ま た今後も続けていっていただきたいというのが、現場からのお願いであります。 ○岩田部会長 どうぞ。 ○京極部会長代理 今の高岡委員の関連で2点申し上げます。 1つは、これは介護保険の部会ではないので、余り深く議論するのはいかがかと思い ますけれども、介護保険の仕組みは、皆さん御存じのように、保険料は市町村で決めて いるんですけれども、介護報酬は全国一律で決めている。 そこに矛盾がありまして、医療保険に見習ったわけですけれども、やはり介護報酬も 大都市型と地方型では差があっていいんではないかと思います。加算という考えもあり ますけれどもね。 それから生活保護も地域格差というか、地域の等級があってなっているんですけれど も、医療に見習って一律にしたということの矛盾が表われているんではないかと思いま す。 例えば市町村ごとにすごい介護保険料を取っていても、これはあくまでも当該市町村 の財政との関係であって単価にも影響がないんです。ですから、もともと介護保険には、 保険料は市町村で決めるけれども、介護報酬は全国一律で決めるという矛盾があるんで す。 ですから、幾ら議論をしても、そこを解決しないと根っこがならない。ですから、 これはここでの問題ではなく、介護保険の位置づけの問題だと思うんです。 もう一点は、配置基準その他について、やはり新しい時代状況で、もう少し見直しが 必要なんではないか。 私は、最近ヨーロッパに行っていないんですけれども、ドイツとかフランスだと、や はり経営者がいて、例えば施設の場合ですと、各フロアにかなりシニアな看護師がいま して、そしてケアワーカーがいて用務の人がいる。そういう構想になっているんです。 日本は、その辺がはっきりしないで、介護職員は一体用務の仕事をやっているのか何 だかわからないような感じで、もっとはっきり用務の人は用務で掃除、洗濯みたいなこ とは、そういう方にやってもらっていいんじゃないかと。別の海外の労働者を使えとか ではなくて、お年寄りでもいいし、できる人にはやってもらうと。中核部分で人に接す る部分は介護職員としてきちんとした単価を出してやる。 それから、私は井部委員がいらっしゃるので言いにくいんですけれども、やはり施設 にもっと立派な看護師を置かなければいけないと思います。申し訳ないんですが、ほと んど研修もしていないような看護師の方がいればいいという感じで、看護の世界で通用 する人かどうかというと、私は通用しないんではないかと思うんですけれども、やはり ちゃんとした看護師を置くということ。 それで、施設長とほぼ同格のような人を置いてやっていかないと、そういう点で配置 基準をそろそろ見直した方がいいんじゃないかと思っていますし、規制緩和でどうでも いいということでは困るので、緩めるところはうんと緩めていいと思うんですけれども、 職員の中核部分についてはきちんと位置づける。その上で、ボランティアとか地域の支 えがあるという構造でいかなければいけないと思っています。 ○岩田部会長 ありがとうございました。どうぞ、井部委員。 ○井部委員 ちゃんとした看護師を置くということは、日本看護協会も高齢者ケアにお ける看護師の役割は非常に重要であることは認識しておりまして、介護施設に従事する 看護職に対する研修を積極的にやることを始めているわけですけれども、先ほどのマン パワーの全体的な不足ということはありますので、まず質の確保は重要ですけれども、 その前に量の確保がきちんと行われなければならないというのが、いろんな委員の方が おっしゃっていることだと思います。 もう一点は、私は看護も含めてですけれども、こうしたケアに従事する者たちに要求 される精神性、奉仕とか愛といったようなことが非常に強調されることが、余り時代に 見合っていないんではないかと思いまして、もう少し科学的な知識に基づいた技術をき ちんと提供することが重要であるんですが、勿論相手を尊重するとか、相手の優しさが 必要だということはどの職業にも必要なものであって、そういうことが特に介護とか看 護に徹底的に教育のときに教え込まれること自体が、やりがいがあるから入ってきたの に、結局やりがいがないから辞めるという今日のデータにも反映しているのではないか と思っているので、もう少しドライな教育でもいいんではないかと、それから職場もそ のような余りねちねちしたものではない方がいいんではないかと、ちょっと誤解を招く 発言ですけれども、立派な看護師を介護施設に提供できるように努力したいと思います。 ○岩田部会長 村尾委員、どうぞ。 ○村尾委員 介護の転職理由のことですけれども、私が介護職の関係者からお聞きして いるデータとしては、まず、人間関係が1位で、2番目が腰痛だと聞いています。これ は福祉用具をもう少し使うようなことを考える必要があると思います。欧米は、御承知 のように福祉用具を非常に使われていますけれども、日本の場合でも福祉用具を全部ア セスメントしてケアプランの中に入れているという施設もあります。 それから、私は長野県の方から直接伺った話ですが、えらく遠いところに勤務してい るんです。それで近くのところに施設があるので、あなたはどうしてそこへ替らないん ですかとお聞きしたところ、私の近くのところはリフトが1つもないんです。腰痛にな ると、私は辞めなければいけないので、転勤しないんですというお話もありました。 そんなことで、皆さん御存じのことですけれども、福祉用具、人力以外のものも少し 取り入れる必要があるんではないかと思います。 それから、最後にちょっとお時間をいただいて、私のところから出した社会福祉士の 統計で関係のあるところをちょっと御紹介をさせていただきたいんですけれども、2ペ ージのところの「(7)転職について」というところです。 社会福祉士のことですけれども、資格を取得して関連業務に就いた後、転職した者は 30%。 転職の理由としては、他によい仕事が見つかったとか、労働条件、処遇に不満 があるなどです。 転職によって年収は下がる傾向にあるが、その一方で職場の満足度は 高くなっている。私はここだと思います。これをクロスしますと、はっきり出てくるん です。やはり収入もありますけれども、職場環境の満足度ということです。 それから、次のところも関連ですけれども、説明させていただきますと、約60%が1 年間に研修を3回以上受講している。 研修テーマとしては、権利擁護とかです。 職場の満足度が高いほど研修受講回数が多い傾向がある。そのほかのも出ていますけ れども、職場環境がいいということ、そうするとモチベーションも上がるし、自己研鑽 に励むということ、こういうことが定着率につながっている。社会福祉士会の会員の場 合ですけれども、こういうデータがありますということを御参考までに紹介させていた だきたいと思います。 ○岩田部会長 どうぞ、石橋委員。 ○石橋委員 やはり、介護の人材不足の一番の問題解決の方策というのは、介護を魅力 ある職業として確立するということが何より大切だと思っております。 当然ながら、介護を魅力ある職業として確立するためには、労働環境の改善というの は当然のことだと思いますけれども、それだけてはなくて、やはりそういった職場に勤 めてやりがいがある職業となるためにはどうしたらいいかということも考えなければい けないと思っております。 それで、定着率の問題につきましても、例えばいい法人、いい職場でありましたら、 必ずいい人材が育っていると思っております。ですから、いい人材を育てているところ については、恐らくそういった定着率も高いんではないかと、介護者の満足度も非常に 高いんではないかと思っております。 そのためには、やはり介護職のキャリアアップの仕組みというものを、今後きちんと 制度的に導入する必要があるんではないかと思っております。 例えば資格を取って、また数年経てば、チームリーダーとなれるような仕組みとか、 その後は中間管理職、将来的には、それこそ施設長とか経営者とか、そういった生涯目 標を持って働けるような仕組み。 更には、より専門的な仕事に打ち込むためのスペシャリストの養成ということについ ても、やはり介護福祉士を取った後の選択肢をかなり広げていく仕組みというのもつく っていかないと、定着率もよくならないんではないかと思っておりますので、その辺の ことも十分盛り込む必要があるんではないかと思っております。 ○岩田部会長 どうぞ。 ○白澤委員 石橋委員のおっしゃるとおりだろうと思うんですけれども、介護の中で質 を担保する前提というのをしていって、それでもう一つは、やはり施設の質をどう上げ ていくのかということなんだろうと思うんですが、実はそのことというのは、社会福祉 士も実は非常に同じような状況にあるというのを少し御報告をさせていただきたいと思 います。 例えば我々養成校ですが、大学の初任給調査をしてみますと、社会福祉士も 随分低い状況にあるということを御紹介をしておきたいと思います。 例えば九州の大学の求人、これは我々会員校の求人情報というのは全部集めているわ けですが、例えば福祉施設であれば、最低が11万4,000円、最高でも19万、これは1 つだけですが、そういうような実態。医療機関では12万5,000円、最高が18万。福祉 関連企業では更に低くて最低が10万円、こういう実態でございます。こういう中で4年 制大学を卒業して就職をしていっているという実態。 もう一つは、実はいろんなところで社会福祉士の人材が求められているんだけれども、 そこが到達していないというもう一つの結果を少しお話をしたいんですが、社会福祉士 振興試験センターの委託事業でやっている調査なんですが、社会福祉施設の社会福祉士 の雇用と介護保険の居宅サービス事業所の雇用状況の結果なんですが、実は社会福祉士 を雇用したいと、非常に重視するところが7割以上あるんです。 一方で、非常に社会福祉施設や居宅サービスでは、社会福祉士なりの業務である家族 との関係とか、利用者のニーズをつかむとか、そういうことで大変困難を来していると いうのが6割以上ある。そして、それを社会福祉士に期待するというのが7割ぐらいあ る。これが全体の特徴なんです。 御存じのように、この審議会でも出ましたデータで、老人福祉施設では4人に1人し か生活相談員に社会福祉士がいないという現実。あるいは在宅のサービスについてはも っと低い。こういうミスマッチというのをもう一度検討していただくというのは、社会 福祉士と介護の状況の中で同じような状況があるということを御理解いただきたいとい うのが全体です。 もう一点、非常に個人的な感想から申しますと、例えば、先ほどのキャリアアップの 問題なんですが、我々、大学も就職をしていく上で、社会福祉士のキャリアアップは大 変難しいわけです。1法人1施設ということになれば、相談員で入れば一生相談員で終 わるという問題もございます。 そういうことで、できる限り大きな法人に言ったらどうかと、そういう支援をせざる を得ない状況がございます。 そういう中で、もう少しキャリアアップの仕組みというのをどう考えていくのかとい うことを介護と同じように社会福祉士も考えていただくと大変ありがたいなという提起 でございます。 以上です。 ○岩田部会長 ありがとうございました。今日は、介護の方の問題が大変緊急といいま すか、大変難しい局面にあるということで、少し社会福祉士の方は、今のお二人の発言 ぐらいで余り深められておりませんけれども、今、白澤委員の方から御発言がありまし たように、職場としては同じ状況にある。勿論社会福祉士の場合は、私も今回資料で出 していただいた職種というのが、社会福祉施設等調査報告がベースになっているので、 どうしても社会福祉施設というところに限定されていますね。今までの統計の取り方が そういうふうになっているからですけれども。社会福祉士、介護福祉士も含めて、職種 の限定をしておりませんので、つまり名称独占でしかないということがありますので、 現状把握としてもすっきりしないところが片方であります。 今、施設問題中心あるいは社会福祉法人問題中心の議論になっていますけれども、そ ういうことも含めて、社会福祉サービスが行われている職場といいますか、人材という のはそこで活用されていくわけですけれども、そこ自体の根本的な考え方というか、今 後どうあるべきかということが、どうも一番根底にあるような気はいたします。勿論余 り高邁な議論をしていますと、現状に合わなくなる。先ほど御指摘もありましたように、 消費者の側からいうと、やはり質が確保されていないサービスを利用するわけにはいか ない。社会福祉の方も当然そうで、つまり、そうした社会的なサポートの必要な人たち へのサービスですから、その質・量をどうやって調和させながら一定程度確保していく かという大変難しい問題があって、これは資格制度や質を単純に向上させればいいとい うだけの問題ではない。そういうような問題点がたくさん今日は出していただけたと思 います。 それから、いろんな職種間の位置づけといいますか、分業のありよう、その辺りも、 日本社会の職種や分業の考え方の一般的な伝統というのがあるのか、なかなか京極先生 がおっしゃったようなヨーロッパモデルになり得ないところもありますけれども、その 辺りも少し宿題にしながら、次回は社会福祉のことも含めまして、またもう少し突っ込 んだ御議論をお願いしたいと思います。 どうぞ。 ○京極部会長代理 1点だけ、人材指針と関係があるんですけれども、国や都道府県の 支援という中で、今までの指針の枠組みですけれども、社会福祉士とか介護福祉士の現 状把握をするというのは、重要な仕事なので、国がやらないとできないんです。試験セ ンターは全くやりませんから、後ろにいらっしゃいますけれどもね。 そういうのではなくて、国としてきちんと社会福祉士はどこで働いているんだ、介護 福祉士はどこで働いているか、全然データがないんです。 さっきお知らせいただいた村尾委員も石橋委員もそうですけれども、会員のデータで ありまして、会員に入っていない人のデータが全然把握されていない。 勿論登録ですから、名簿を勝手に使ったりあれすることはできませんけれども、しか し、サンプル調査何なり、20年も経ってまだ全然データがないんですから、そういう状 況を改めて、むしろ福祉人材白書ができるような、それぐらいのことをしていかなけれ ばいけないので、人材確保の指針の1つに、少なくとも状況把握というか、実態がどう なっているかということを定期的につかむということが大事ではないか。それがないと、 具体的なデータに基づいた議論というのは、なかなかできないと思います。 ○岩田部会長 そうですね。どうぞ。 ○村尾委員 資料3で、もう御説明はいたしませんけれども、こういう資料を出させて いただいております。2000年のときの調査と7年後の調査の対比ですけれども、正直い って余り改善していません。もう少し改善しているんではないかと思ったんですけれど も、余り改善が見られないんですけれども、実態が大分見えてきましたので、今、京極 先生がおっしゃったように、この調査を継続的にやっていきたいと思いますし、会員以 外のことがやはり重要だと思います。 それから、資格を取ったことによって評価をし、報酬を上げていくことが1つですけ れども、やはり専門性というのをもう少し掘り下げて、それで専門的な業務というのは 何なのか、それに伴った専門的なサービスというのは何かと、もう少しそれを今後進め ていく必要があると思います。 その中で、やはり職能団体の役割というのは、今回、はっきりさせていただいた面が あると思いますので、そういうことを踏まえて、今後取組みをさせていただきたいと思 います。 以上でございます。 ○岩田部会長 そのことについては、また次回に少し御報告いただければと思います。 いずれにしても、先ほど京極委員がおっしゃったように、私も社会福祉は何かという社 会福祉法の定義自体が一定の枠をつくってやるし、統計は更にその前からの伝統である 社会福祉の典型的な場でとらえているわけですが、実際に社会福祉士を持っている人の 職場はもっと広いわけですね。ただ、職場で社会福祉士として働いているかどうかは、 また難しいところがあるので、それも含めた実態把握といのうは、どうしても必要で、 それが今回の定義の改正と非常に関わってくると思いますので、是非それをしていただ きたい。また、やはりキャリアパスの問題は非常に重要な問題だと思いますので、その ことと職場の規模の問題というものを全体的にどういうふうにしていくかということが 大枠としてあって、その中に介護報酬単価の問題を位置づけていく、介護保険の場合は ですね。そのような形に持っていければと思いますので、また次回により深い議論がで きればと思います。 今日は大変たくさんの御意見をいただきましてありがとうございます。 どうぞ。 ○井部委員 今日の資料2の30ページの入職率、離職率で、入職率が全体の平均で28. 2%で離職率が20.2%という数値は、これは全体の平均なんですけれども、多分都道府 県のを別に見ると、かなり差があるし、施設によっても高いところと低いところがある と思いますので、1つは都道府県別の入職率と離職率のデータがあれば、準備をしてい ただければいいということ。 それから、もしそういうデータがあったら、施設間の差が、ベンチマーキングですけ れども、離職率が低いところと高いところは何が違うのかという検討もした方がいいの ではないかと思います。 ○岩田部会長 何かいろいろ宿題が出てあれですけれども、できる範囲でしたいと思い ます。 それと、転職、離職の問題ですけれども、とくに転職の場合は経営者側から言えば、 自分の職場からいなくなるというのは、甚だ困るということになると思いますが、業界 全体といいますか、介護や社会福祉サービスの供給という面からいくと、転職、離職が かなり頻繁にあっても、同じフィールドの中で動いてキャリアアップしていくというよ うな、こういうのは専門職の場合は、むしろ非常に望ましいといいますか、我々大学教 員も余り一定のところに居過ぎると言われるぐらいですから、ですからその問題とそう ではない業界の外に行ってしまうとか、あるいは経営体としては、余りに頻繁なものは 困るというか、育てられないとか、そういう問題が起こってくるので、ちょっとその辺 も何か仕分けられないかなという気がします。データ的には、まだ難しいと思いますけ れどもね。 それでは、今日は少し余裕を持って議論できると思ったんですが、だんだ ん白熱してしまいましたね。では、次回の御案内を事務局の方からお願いいたします。 ○矢崎総務課長 どうも熱心な御議論をありがとうございました。次回の日程でござい ますが、5月30日14時からということで予定させていただいております。会場につき ましては、現在、調整中でございますので、また追って御連絡差し上げたいと思います。 よろしくお願いいたします。 ○岩田部会長 それでは、以上で本日の部会は終了いたします。どうも長時間ありがと うございました。  照会先:厚生労働省社会・援護局総務課       03−5253−1111(内線2814) 1