07/04/12 第37回厚生科学審議会科学技術部会議事録     第37回厚生科学審議会科学技術部会     議 事 録     ○ 日  時 平成19年4月12日(木)15:00〜17:00     ○ 場  所 厚生労働省 省議室(9階)     ○ 出 席 者    【委  員】  垣添部会長     石井委員 今井委員 岩谷委員 北村委員 木下委員     笹月委員 佐藤委員 末松委員 竹中委員 永井委員     西島委員 福井委員 松本委員 南(砂)委員 宮田委員     宮村委員 望月委員              【議 題】    1.早急に取りまとめるべき厚生労働科学研究のあり方について    2.研究開発型独立行政法人の現状について    3.「疫学研究に関する倫理指針」の見直しについて    4.その他    【配布資料】    1.早急に取りまとめるべき厚生労働科学研究のあり方について    2−1.独立行政法人国立健康・栄養研究所 説明資料    2−2.独立行政法人医薬基盤研究所 説明資料    2−3.独立行政法人労働安全衛生総合研究所 説明資料    3−1.「疫学研究に関する倫理指針」の見直しに向けた検討    3−2.疫学研究指針の見直しの方向性及び改正案    3−3.「疫学研究に関する倫理指針」新旧対照表(案)    参考資料1.厚生科学審議会科学技術部会委員名簿    参考資料2.自由民主党 科学技術創造立国推進調査会(3月7日開催)独立行政法人理化学研究所提出資料 ○坂本研究企画官   定刻になりましたので、ただいまから第37回「厚生科学審議会科学技術部会」を開催 いたします。傍聴の皆様へのお願いですが、傍聴にあたりましては、既にお配りしてお ります注意事項をお守りくださいますようお願いいたします。  委員の先生方には、ご多忙の中お集まりいただき御礼申し上げます。本日は、金澤一 郎委員、川越厚委員、南裕子委員からご欠席のご連絡をいただいております。また、今 井通子委員から、少し遅れるとのご連絡がありました。委員21名のうち、出席委員は過 半数を超えておりますので、会議が成立いたしますことをご報告いたします。  次に、今回初めてご出席されております委員のご紹介をさせていただきます。佐藤洋 委員です。宮田満委員です。続きまして、事務局に4月1日付で人事の異動がありまし たので紹介させていただきます。私は、研究企画官の坂本純です。主任科学技術調整官 の神ノ田昌博です。  なお、本日の議題3「疫学研究に関する倫理指針の見直しについて」の審議の関係上 「疫学研究指針の見直しに関する専門委員会」より矢崎委員長にご出席いただくことと しております。  本日の会議資料の確認をさせていただきます。議事次第に配布資料一覧があります。 資料1「早急に取りまとめるべき厚生労働科学研究のあり方について」、資料2-1「独立 行政法人国立健康・栄養研究所説明資料」、資料2-2「独立行政法人医薬基盤研究所説 明資料」、資料2-3「独立行政法人労働安全衛生総合研究所説明資料」。資料3につい ては事前送付させていただきました資料に修正があり、修正したものをお手元に置かせ ていただいております。資料3-1「『疫学研究に関する倫理指針』の見直しに向けた検 討」、資料3-2「疫学研究指針の見直しの方向性及び改正案」、資料3-3「『疫学研究に 関する倫理指針』新旧対照表(案)」。このほかに参考資料として2点の資料を置かせ ていただいております。  それでは、以後の議事進行は、垣添部会長、よろしくお願いいたします。 ○垣添部会長   年度当初の大変お忙しい中、多数の委員にお集まりいただきまして誠にありがとうご ざいます。これから議事に入ります。最初に、「早急に取りまとめるべき厚生労働科学 研究のあり方について」をご審議いただきます。まず、事務局から資料の説明をお願い いたします。 ○藤井厚生科学課長   資料1に基づいてご説明いたします。「早急に取りまとめるべき厚生労働科学研究の あり方について」ということです。1頁は、総合科学技術会議において、平成19年度の 研究予算の優先順位付けが実施された際に、指摘をされた4つの事項を抜粋したもので す。これら4つの事項については、この夏に再び総合科学技術会議で、来年度予算の関 係のヒアリングがありますので、それまでに整理をしておく必要があることから、今回 科学技術部会でご審議をお願いするものです。  1点目は、課題が細切れになっており、その再構築を進められたいという指摘です。2 点目は、独立した配分機関に、研究費等の配分機能を委ねる方向で検討を進められたい という指摘です。3点目は、研究費の交付時期の早期化と、間接経費の拡充に努められ たいという指摘です。4点目は、研究費の不正防止対策についての指摘です。  以下、資料に基づいて現状と取組みについてご説明させていただきます。独立した機 関への配分機能を委ねる件と、研究費の交付時期の早期化は関連しますので、後の資料 でひとまとめにしてご説明させていただきます。  最初は、2頁からの研究事業枠組みの整理・再構築です。3頁は、平成19年度の厚生 労働科学研究費補助金を平成18年度と比較した予算概要です。予算は、いちばん上にあ りますように約428億円です。左側の事項の2行目に「I.行政政策研究分野」、その 少し下に「II.厚生科学基盤研究分野」、中ほどに「III.疾病・障害対策研究分野」、 下のほうに「IV.健康安全確保総合研究分野」と大きく4つに整理をして研究事業の分 類をしております。トータルとしては17研究事業ありますが、ちょっと見にくいので後 ほど別の形でご説明させていただきます。  4頁は、昨年総合科学技術会議においてヒアリングを受けた研究課題事業の一覧です。 これは、一定の予算規模以上のものについて説明を行うこととなっておりますので、厚 生労働省関係のすべての研究事業について説明をしたわけではありません。いちばん右 に「担当課」と書いてありますが、各研究事業により、各々担当課があります。この担 当課が入れ替わり立ち替わり説明をしたこともあり、総合科学技術会議の議員には、非 常に細切れであるという印象を与えたようです。  従来から、研究事業についてはわかりやすい資料という観点から、5頁のような資料 を準備しております。ここでは左側上の「健康安心の推進」、右側上の「先端医療の実 現」、右側下の「健康安全の確保」という3つの大きな分野に分け、それぞれ研究費を 大括りに整理して説明をしているところです。  6頁では、その3つの大きな研究分野の分類を踏まえ、17の研究事業について再整理 をしたものです。最初の行政政策の2つは別ですけれども、その後の先端医療の実現、 健康安心の推進、健康安全の確保という形で、各々の研究事業を分類しています。  総合科学技術会議に対しては、この全体像の研究分野を、先端医療の実現、健康安心 の推進、健康安全の確保という3つの分野に大括りされることをまず説明して、そして 各々の分野ごとに、関係の研究事業を説明するという形で、できるだけ細切れに分かれ ているという印象を与えないような工夫をしてはいかがかと考えております。  2点目は7頁からで、研究費の早期の執行です。研究費の交付が遅い原因について、8 頁の左側のところに要因を掲げております。事務上の問題が、その原因の大半ですので、 その右側にあります実施している取組みのような事務上の改善を進めてきました。  その結果が9頁です。この棒グラフは少々見にくい格好になっておりますが、各々の 月の右端から、平成18年度、平成17年度、平成16年度という順番になっております。 まず各々の月、特に9月以降について平成17年度から交付の早期化が行われていること がグラフ上でおわかりいただけると思います。  これについてどのような取組みをしてきたのかということが、先ほどの事務上の取組 みと合わせて、9頁の右側にも載せております。特に平成18年度について、FA移管事業 は顕著な早期執行を達成と書いてあります。このFAというのは、ファンディング・エー ジェンシーということです。これは、研究費の交付事務を、ナショナルセンターである とか、国立試験研究機関に移行したものです。その結果、6月末の交付済み決定件数を 見ますと、FA化後は非常に顕著な改善が見られていることがわかります。いちばん下に もありますように、今年度についても3事業を新たにナショナルセンター等に移管をす ることにしております。これら研究費の交付の早期化のために、事務作業の効率化に加 え、FA化を含めて今後とも改善努力をしていきたいと考えております。  10頁からが間接経費の拡充についてです。11頁ですが、間接経費というのは、研究実 施に伴う研究機関の管理等に必要な経費の手当をすることが必要なため、研究者の所属 する研究機関に対し、研究費の一定割合を配分するというものです。2つ目の・にあり ますように、厚生労働省においては、平成13年度以降、順次拡充を進めてきて、現在は 1課題当たり3,000万円以上の研究課題について、予算の範囲内で上限30%の間接経費 を支給しています。  下の参考のところで、厚生労働科学研究費は、直接研究費と間接研究費各々318億円、 18億円となっております。間接経費は、直接経費の約6.6%になります。その右にある ように、国の機関については、国の補助金が受けられないということもあり、それを除 いた機関に30%の間接経費を充てようとしますと、予算的にはあと64億円必要という 試算をしております。  単純に、直接研究費を間接研究費に回して、間接経費を確保することも可能ですが、 そうしますと実際の研究費が減ってしまうことになりますので、間接経費を別枠で予算 要求して獲得する、という努力をしていきたいと考えております。  12頁は、研究費の不正防止対策についてです。前回のこの部会でもご説明いたしまし たように、現在、厚生労働科学研究費補助金に関して、捜査当局により調べが行われて いる事案があります。したがって、その捜査結果を踏まえ、13頁以降にお示ししており ます、昨年8月に総合科学技術会議から出された共通指針にも対応した、総合的な不正 防止対策を検討してまいりたいと考えております。事務局からは以上です。 ○垣添部会長   1頁にあるように、総合科学技術会議から求められている4点の、予算の細切れを正 して再構築、独立した研究費の配分機関、交付時期の早期化と間接経費の拡充、公的研 究費の不正使用等の防止に関して事務局から説明していただきましたが、ただいまの説 明に関してご意見、ご質問等がありましたらお願いいたします。  私から1つですが、1番の研究費の枠組みの整理・再構築ということで、5頁の模式図 と6頁にありますように、大きくII、III、IVの先端医療の実現、健康安心の推進、健康 安全の確保と分けたというのはわかりますが、実際に総合科学技術会議に対して説明を するときに、6頁の後ろの例えばIIIの部分は、それぞれ担当者が説明する形になります か、それともどなたかが代表して説明することになりますか。 ○藤井厚生科学課長   どうしても各局に担当が分かれておりますので、ある程度は関係局にお願いし、担当 者を替えながら説明せざるを得ない部分があるかと思っております。同じ局で所管をし ている研究費については、できるだけ人を替えないような工夫等をしていけたらいいと 考えております。 ○望月委員   早期執行の効果について、9頁の資料で平成19年度は3事業を新たに追加予定という ことですが、そのほか全体的にこれがさらに早期執行になるという見通しについて、平 成19年度はどうなっているのですか。 ○藤井厚生科学課長   平成19年度については、既に各研究費を所管しております窓口課のほうに、6月時点 でどれだけ執行することが可能だ、という目標を各々設定していただき、この目標を忠 実に実行するという形で進行管理を厚生科学課でも実施することも含め、できるだけ早 期執行ができるようにしてまいりたいと考えております。 ○望月委員   おそらく、大幅に早期になると理解してよろしいですか。 ○藤井厚生科学課長  そのように私どもとしては期待しております。 ○宮田委員  1番のことについてはきれいに整理してあるのですが、これで説明しても総合科学技 術会議でうんと言うとは思えないです。もう少し組織的な対応の工夫を検討していただ きたいのです。厚生科学基盤、あるいは疾病・障害対策、健康安全確保、総合と分けて ジャンル化してあります。しかも、各課別で、かなり課の違うところがあります。です から、その上にきちんと相互調整するような連絡会みたいな組織をつくる、ということ も検討していただかないと、いまは省庁間連携のプロジェクトですら推進を、総合科学 技術会議では推しておりますので、少なくとも課の連携プロジェクトみたいなものを相 互調整して、相互に個別独立ではなくて、相互に資源とか知識を融通するような形の研 究マネジメント体制をとる、ということを言ったほうが絶対にいいだろうと思います。 ○藤井厚生科学課長  ご指摘のとおりだと思います。担当者が毎年のように替わってきて、なかなかそうい う部分について、例えば厚生科学課についても必ずしも掌握しきれなかった部分も反省 材料の1つとしてあります。今年度については、ご指摘をいただいた点を踏まえ、厚生 科学課が中心となって、きちんと体系的な説明ができるように工夫をさせていただきた いと思います。 ○垣添部会長  いまの宮田委員のご指摘は大変重要で、おそらく総合科学技術会議には、昨年に続い てこれでは不十分だ、と言われかねないというような気がいたします。研究マネジメン ト体制ということで、私が質問したのもそういう意味なのです。なるべく統一した形で、 相互の調整をした上でのまとめなのだということが見えるようにしていただければと思 います。 ○宮村委員  同じく1番目の件です。I、II、III、IVにカテゴライズされた場合、評価について、 いままでよく問題になった専門的評価とか行政的評価ということについてのポイントの 置き方についても、配慮の提言をついでにやっていただきたいと思います。 ○垣添部会長  どのようにか、もう少し具体的におっしゃっていただけますか。 ○宮村委員  総合科学技術会議に提言していくときに、このように4つのカテゴライズをしたとき の、評価のシステムについて4つのそれぞれに具体的に専門的評価と行政的評価につい て重点の置き方についても提言していっていただきたいということです。 ○垣添部会長  いまの点について、事務局からお答えはありますか。 ○藤井厚生科学課長  総合科学技術会議で評価を受ける場合は、どちらかというと学術的、専門的な評価と いう観点から我々は受けております。しかしながら、厚生労働省の研究については、か なり行政ニーズを踏まえた研究分野がほとんどですから、そういう意味では学術的な評 価だけでは完全に評価をしきれないのではないかということは、総論的な部分で毎回申 し上げてきております。今年度につきましても、総論の部分でその点についてはきちん と申し上げていきたいと思っております。 ○垣添部会長  3の間接経費の拡充について、言われるように30%を上限でいこうとすると64億円足 りないと。これを予算要求するといっても、それが通らなかった場合には、総合科学技 術会議から指摘されても、なかなかそれに応えきれないわけですが、その辺のことはど う考えていますか。 ○藤井厚生科学課長  確かに相手がある話ですので、ここは努力をしていくという形で総合科学技術会議に は説明をせざるを得ないと思います。できることなら、先ほどもご説明申し上げました ように、実質の研究費を削って間接経費に回すことは避けたいと考えておりますので、 そういう意味でも、新たな研究費、間接経費の財源を確保できるよう努力してまいりた いと思っております。 ○垣添部会長  研究費を削ってということだけは避けていただくよう是非お願いいたします。 ○宮田委員  いまの垣添部会長が言われたことをもう一度強調します。国立大学法人化したときに、 実際に純研究費は減額しました。つまり、私たちは研究機器試薬のマーケットが縮小し たことを見ています。ですから、これは本気でそちらが予算措置を通してもらわないと、 厚生科学研究費の実効的な研究資金は本当に減ります。なおかつ、一方で独立行政法人 化しようとしているので、各法人は自分たちの財源を確保するために、容赦なく研究間 接経費を、事務職員の手当などに回してくることになります。ここをしっかり担保する ような努力を、いくら強調してもこの会議では足りない。実に大学では起こってしまっ たので、そのようなことを起こさないように、是非配慮をお願いしたいということを重 ねて申し上げます。 ○垣添部会長  重要なご発言をありがとうございます。他にないようでしたら先に進ませていただき ます。ただいまご指摘をいただきましたいくつかの点について論点を整理していただき、 次回さらに議論を深めてまいりたいと思います。  続いて、議題2「研究開発型の独立行政法人の現状について」ということで、事務局 から説明をお願いいたします。 ○藤井厚生科学課長  今回、垣添部会長とご相談させていただき、「研究開発型独立行政法人の現状につい て」を議題に挙げさせていただきましたのは、総合科学技術会議そして自民党与党など で、独立行政法人のあり方について現在議論が進められております。その中で出てきた 資料の1つを、今回参考資料2に付けております。  これは資料にもありますように、自民党の科学技術創造立国推進調査会に、この3月 7日に理化学研究所の野依理事長から説明をされた資料です。その立国調査会での説明 内容が、表題にもありますように「独立行政法人が直面する制度上の諸課題について」 ということでした。それをまとめますと1枚めくって上のところに、「何が問題か?」 ということで3つの点が挙げられています。  1点目は、独立行政法人はいろいろな評価がなされるけれども、評価が良かったから といって、その評価が資源配分、いろいろな資金配分に適切に反映されているのかとい うことです。  2点目は、人材の確保がかなり困難になってきた。これについての中身として、例え ば民間からの外部資金による、人件費を確保しようとした場合についても、人件費総枠 の削減対象になってしまうことから、なかなか優れた人材の確保が難しい状況になって いる、という点を説明しております。  3点目は、独立行政法人として、例えば特許料収入等々を、努力した場合について、 それが独立行政法人としての自主財源として使えるようになるのではなく、トータルと しての交付金が減ってしまうために、新たな自主財源としてなかなか使いづらい仕組み になっているということから、経営努力を促すようなインセンティブに欠けるのではな いかという指摘をされております。  いろいろ各省庁ごとに独立行政法人個々の課題もあろうかと思いますので、今回は厚 生労働省が所管します研究開発型の独立行政法人においでいただきまして、その問題点 等を洗い出していただき、必要に応じて私どもとしても総合科学技術会議なり、自民党 の立国調査会に改善のお願いをしていきたいということです。  本日は、厚生労働省所管の研究開発型独立行政法人として、3つの機関に声をかけて おりますが、まだ2つの機関については来られていないようです。独立行政法人国立健 康・栄養研究所、医薬基盤研究所、労働安全衛生総合研究所の3つに声をかけておりま す。時間の関係もありますので、おいでになっております、医薬基盤研究所の山西理事 長から、準備をしていただいた資料に基づいてご説明をお願いできたらと思います。 ○垣添部会長  その前に事務局に質問です。先ほど説明していただきました参考資料の2というのは、 理化学研究所の野依理事長が、直面する制度上の諸課題について、ということで科学技 術創造立国推進調査会宛にこういうものを出されたということですか。 ○藤井厚生科学課長  そこに出席されて、これをご説明されたということです。 ○垣添部会長  2頁の「研究機関の活動に対する評価は正当か」というのは、理研がこういう考え方 を持っているということですか。 ○藤井厚生科学課長  はい、そうです。 ○垣添部会長  事実として評価が反映された適切な資源配分となっているかということに対して、大 きな疑問を持っているということですね。 ○藤井厚生科学課長  はい。 ○垣添部会長  はい、わかりました。それでは山西理事長からよろしくお願いいたします。 ○山西理事長  いま栄養研の渡邊理事長も来られたのですが、資料の順番どおりいたしましょうか。 ○垣添部会長  流れがありましょうから、まず山西理事長からお話をいただきます。 ○山西理事長  説明にいただいた時間が5分で、10分間ディスカッションということのようですので 手短にご説明させていただきます。資料2-2が独立行政法人医薬基盤研究所の資料です。 医薬基盤研究所というのは2年経って、本年4月から3年目に入った独立行政法人です。 2頁に沿革が書かれていますけれども、この研究所は2年前に国立医薬品食品衛生研究 所、国立感染症研究所、それとともに医薬品医療機器総合機構の3つが統合し、新たな 研究所を立ち上げたものです。  3頁です。この研究所においては、先ほど申しました3つの所が統合し、その統合し た結果どのようなことを行っているかというと、大きくは基盤的技術研究、それから生 物資源、いわゆるバイオリソースが非常に重要でありますので、これをサポートする部 門。3つ目は、研究開発振興で、これはファンディング部門です。この3つの部門に分 かれていま現在活動をしております。  我々のミッションとしては、産学官の連携というのは非常に重要ですので、この3つ とも企業、厚生労働省、研究所と連携をしながらこの活動をしているところです。最終 的には創薬につながるような研究を行うということで基盤的な研究、それからバイオリ ソース、ファンディングとも、そのようなミッションを持って研究を進めてまいりまし た。  4頁です。若干具体的になりますけれども、基盤的研究部門ではどのようなことを行 っているかということがここに書かれています。我々はプロジェクト制を引いていて、 現在8つぐらいのプロジェクトが動いております。  いちばん最初にあるトキシコゲノミクスは医薬基盤研究所が立ち上がる前から研究が 進んでおりました、産業界との連携のプロジェクトで、それ以下は主に立ち上がった後 にできたプロジェクトです。いかんせんこの研究所は、研究者としての人員もたくさん はおりませんので、このような4つに括らせていただいて研究を進めております。特に、 疾患関連たんぱく質の研究、免疫・ワクチンの研究に現在は力を入れて研究を行ってお ります。  2つ目は生物資源です。この中には細胞バンク、遺伝子バンク、小動物バンクという 研究用生物資源のバンキング事業を行っております。この細胞、遺伝子、小動物とも大 学等の研究、それから企業等に供給することを目的として事業を進めております。それ 以外に薬用植物資源の研究、それから霊長類医科学研究、これは我が国としては非常に ユニークなセンターだと思いますけれども、これはつくばにあります。こういう生物資 源の研究を行っている部門があります。  3つ目は、研究開発振興です。これも3つに分かれております。基礎的な研究業務、 ベンチャー企業を支援する業務を行う所、オーファンの開発支援を行う所とこのように 3つに分かれて、ファンディングの事業を行っております。  それでは、独立行政法人制度上の課題をご説明いたします。先ほど、野依理事長の提 言がありましたけれども、基本的には全く同じような問題が起こりつつあります。私は、 いちばん重要なのは人材の確保だと思います。優れた人材を確保することが非常に難し い問題であり、最大の命題であります。このように人件費が減らされる状況の下では、 なかなか新しい、また優れた人材を確保することは難しいのであります。  現在、我々の医薬基盤研究所というのは、製薬企業などの創薬現場のニーズに基づい た新規プロジェクトを立ち上げているところであります。先ほど申しましたプロジェク ト制、それから任期制を採用しております。プロジェクト・リーダーは5年、研究員は 3年という任期をもって全国又は国際的にも募集し、外国人を含めて採用しております。  課題としては、この研究員を含めた人件費・一般管理費というのを、医薬基盤研究所 に関しては年率3%で削減することが決まっております。5年後には15%削減するとい うことであります。非常に大変な問題になっております。この削減率というのは、他の 研究開発の独立行政法人と比べても極めて厳しい削減の目標を我々は達成することにな っており非常に苦労しております。下に改善策が書かれていますけれども、できればほ かの法人と同じように1%の削減率であれば、もう少し余裕を持った研究者の確保がで きるのではないかと思っております。それが人材確保です。  2つ目は、経営努力を促すインセンティブの付与です。先ほどの野依理事長の提言に も全く同じことがありました。自己収入額に係る運営費交付金削減の緩和をということ は重要だと思います。我々は、外部資金を得るべく生物資源の分譲とか、施設の利用な ど自己収入の確保に2年間努力してまいりました。この課題として、自己収入の5年の 平均額を第2期の運営交付金から削減すると言われているそうですけれども、このよう にしますと、なかなかモチベーションが上がらないということは事実であります。こう いうことに関しても、何らかの改善策をお願いしたいと思っております。  次は目的積立金の認定基準の弾力化ですが、時間の関係もありますのでこれは割愛さ せていただきます。  最後は理化学研究所でも書かれておりますけれども、正当な評価とメリハリのある予 算配分を是非お願いしたいということです。この課題として、中期計画の達成度を指標 とした評価、それから画一的なルールに基づく事業費・一般管理費等の削減目標、これ は事業費が1%、一般管理費は3%削減ですけれども、こういうことに関しても是非一律 ではなく、評価に基づいたメリハリのある予算配分をこれからはお願いしたい。特に我 々は先ほど申しました人件費等は3%削減ということで、非常に重い目標を持っており ますのでやっていくのは大変だろうと思っております。  簡単にご説明いたしましたけれども、もしご質問等があればお答えしたいと思います。 ○垣添部会長  ありがとうございました。大変厳しい内容のご説明をいただきました。ご質問、ある いはご発言がありましたらお受けいたします。 ○竹中委員  先生の所の研究の中で、昨年はワクチン産業ビジョンの発表がありました。私どもは それを見ましたところ、ワクチンに関する研究は産でもない、大学でも少ない、我が国 におけるワクチンの研究機関は非常に少ないわけです。先生の所は、その中の一翼を担 われているわけです。こういう言い方はちょっと失礼になるかもしれませんが、例えば 疾患関連たんぱく質の研究というのは、よそでも非常にたくさん研究している場所があ る。ところが、ワクチンについてはほとんどやっている所がない。そうすると、資源の 重点化とか、資源の集中化というのはいまどのような予定がありますか。 ○山西理事長  非常に的確なご指摘をありがとうございます。先ほどご指摘がありましたように、私 自身もワクチン等は、この国にとって非常に重要な研究だと思っております。実はこの バックグラウンドがあるのですけれども、2年前の4月に新たな研究者をすべてリクル ートすることができるならば、これは先ほど先生が言われましたようにある一定の目標 でできたのですけれども、先ほど言いました3つの研究機関の統合があり、実際にこう いう研究をしている方がおりました。疾患関連のたんぱく質の研究の中にも、このバイ オインフォマティクスも含めて、このような免疫やワクチン、製薬企業ではなかなかや られてこなかったものに、だんだんとシフトさせていることは事実であります。  本年も新たなプロジェクトを立ち上げ、ワクチンに関する産業ビジョンに関連するプ ロジェクトの募集を始めようとしているところであります。そちらのほうにシフトして いるところです。 ○北村委員  山西理事長とは、場所が大阪なものですからよく悩みを聞いています。既に2年経っ て事業費は2%削減で、人件費については数パーセントになってきていると。こんな馬 鹿げた削減率でどうしてスタートしたのかもよくわかりません。この不足部分は、産学 連携等を進めて、民間等からの資金でカバーできる方向性になっているのですか、それ とも人員を含めた規模縮小にいかざるを得ないという状況なのかその辺りを教えていた だけますか。 ○山西理事長 私はこの5年間の目標を挙げてこれを達成する必要がありますので、現 実に人を切るというのは非常に難しい問題です。最初からすべてのプロジェクトのフル メンバーを立ち上げたわけではなく、だんだん年次的に立ち上げたこともあり、現在で はまだ切るような事態にはなっておりませんけれども、4年以降になってそのような事 態が生じるかと思います。  それは、産業界との共同研究の費用を使って、やはりその研究を継続又はアクティベ ートしていくというのが私の業務だと思いますので、現在は特に産業界との連携、共同 研究を非常に重要視して進めているところです。 ○北村委員  なんとかコンペンセートできるという見通しが立っているというふうにお考えです か。 ○山西理事長  少なくともこの5年間はなんとかやっていけると思います。第2期に入ると、どうい う予算立てになるか私は知りませんけれども、かなり難しいことになってくるのではな いかと懸念しています。 ○永井部会長代理  いまの課題の中で、医薬基盤研究所に特有の課題と、それから法人化された機関共通 の課題と両方あるのだと思います。例えば、3%削減というのは、医薬基盤研究所のみな のですか、それとも。 ○山西理事長  私の聞きますところ、研究型の研究所では、医薬基盤研究所のみだというふうに理解 しておりますが、現実にあるかどうかはわかりません。私は、1カ所しかないと理解し ています。 ○永井部会長代理  その辺を整理してから、改善を要求したほうがよろしいのではないかと思うのです。 全体に共通の話ですと、こういうのを変えるのはなかなか難しいと思うのです。2期の ときはともかく。 ○山西理事長  私は、現中期目標期間の5年間は難しいのではないかと思っています。その次の将来 にこういうことが続かないようにという提言をさせていただくつもりです。 ○垣添部会長  どうして3%という状況でスタートしてしまったのですか。 ○山西理事長  私は初代の理事長なのですが、準備室等で行われておりましたので、その経過に関し ては藤井厚生科学課長から説明していただいたほうが正確に伝わるのではないかと思い ます。 ○藤井厚生科学課長  皆さんが私のほうをご覧になっていますが、私もどういう経緯で3%という形になっ たのか、ということは正直把握しておりません。ただ、山西理事長が言われましたよう に、医薬基盤研究所の場合は中期計画というのは5年間です。その5年間はセットされ てしまっていますので、いまの中で他省庁等の独立行政法人も十分研究して、次期5年 の中期計画を立てるときに、きちんと必要な説明をして改善を図っていく、求めていく という工夫が必要ではないかと思っています。 ○笹月委員  組織というよりも、例えば基盤的研究のプロジェクトの設定の仕方なのですが、これ はどういう形でこういう設定がなされたのか。例えば、中身がわかりませんのでコメン トは控えますけれども、生活習慣病の細胞内シグナルに関する研究とか、あるいはサイ トカインシグナル伝達制御とか、あるいはバイオインフォマティクスと、わりと目的と して掲げられている創薬とか医療機器の開発を目的とするならば、まさに基盤的といい ますか、大学などで行われる基礎研究のような印象を得ますけれども、これはどういう 過程からこういう研究が選定されたのでしょうか。 ○山西理事長  この内容に関してはこのように書かれておりますけれども、やはり大学とは違いまし て出口が見えるもの。中期目標を達成するためには出口の見えるような設定を行ってお ります。大学のように見えますけれども、創薬とか、あるターゲットとしてそれに対す るドラッグをどのように当てていくか、そのような目標にいつでもセットしながら研究 を進めておりますから大学とは若干違います。  なぜこのようなプロジェクトが立ち上がったかというと、これは平成13年に医薬基盤 研究所を立ち上げるための委員会がありました。そこで岸本先生のレポートが出ていま す。そこで、このような研究をここでは行うべきだということが書かれており、そこに はセルシグナルとか、バイオインフォマティクスということが書かれています。  最初はそのように立ち上げたのですけれども、私はこの研究所自身があまり大きい人 員の研究所ではありませんので、やはり日本の国の中で役に立つような、これは100% 特化するという意味ではないですけれども、かなり特化したような研究を行うべきだと 思って、だんだんとシフトしているところです。 ○笹月委員  評価も行われるということですが、私は評価委員会の役割というのは、最近いろいろ な所でいろいろな議論をしたのですが、単に行われたことを評価するだけではなくて、 そのようなプロジェクトが設定された過程を評価すべきだと思うのです。そして、新た なプロジェクトを決めるにはどういう仕組みでプロジェクトを決めるのか、本当に目的 に達したプロジェクトを、誰がどごでどういうふうな過程で選ぶのか、これは非常に大 事だと思います。評価のことがどのように反映されるかみたいなことがよく言われます けれども、それにプラスもう少し大事なのは、そういうプロジェクトをどうやって決め るか、決めたところも評価するみたいなそんな視点が必要ではないかと思っております。 ○垣添部会長  大変大事なポイントだと思います。 ○望月委員  教えていただきたいのですけれども、国立衛研から分かれたと考えるのですけれども、 そのときに研究業務の住み分けといいますか、衛研との住み分け。逆に、今度は共同研 究体制をどのように衛研と組むか。あるいは、人事交流を衛研とどういう形でできるの か。もう1つは、最終的に部門の再配置ということまで考えることはあり得るのか。そ の4点について教えてください。 ○山西理事長  思いつくところからお答えしますけれども、衛研とのコミュニケーションというのは よく行われております。例えば、トキシコゲノミクスには衛研の方も来られていますし、 それから衛研の方との人事交流も行っております。衛研から来られた方が、非常にアク ティブにこの研究を進めて昨年3月で第1期が終わったのですけれども、かなり効果が あったと思っており、今後とも衛研とは人事交流を含めて行っていきたいと考えており ます。第2期が動きますので、行っていきたいと思います。  住み分けについては、我々は衛研の目的を100%理解しておりませんけれども、先ほ ども申しましたように、あるターゲットを目標にして、創薬とか医療機器を含めて、そ ういう所に出口の見えるものを研究していきたいというのが目的であります。若干トキ シコゲノミクスはレギュレーションにも関係しますけれども、キーワードは創薬とかそ ういう所にしたいと思っております。そういう意味では、衛研と100%とは申しません けれども、住み分けができるのではないかと思っております。  プロジェクトをどうやって決めるか。先ほどの笹月先生のお話も同じなのですけれど も、非常に申し訳ないのですが私はまだ2年ということで最初のプロジェクトが動いて おりますので、第2期のプロジェクトには先生方のサゼスチョンに従い、きちんとした ある一定のところで決定し、また評価もされながら行っていきたいと思っております。 お答えになっているかどうかわかりませんがそういうところで進めております。 ○西島委員  非常に大事な問題の1つとして、自助努力をして収益を得た場合に、運営資金から削 られてしまうというお話がありました。これは栄養研究所でも同じようなことが書かれ ています。そこも、是非みんなの力でなんとかしなければいけないと思うのです。その ことをすることによって、ある程度はその収益でもって人件費もカバーできる道が理想 的にはできるということです。その点は一致団結して、是非なんとかしていただきたい と思います。 ○垣添部会長  プロジェクト制をとっていて、任期付き研究員を採用しているということですが、そ の研究員の応募状況はどうでしょうか。 ○山西理事長  特にプロジェクトのリーダーがいちばん重要だと思いまして、通常は数倍の応募があ ります。プロジェクト・リーダーの場合には外部の委員も含めて、評価委員会を行いま して、点数によって決めております。  特に、バイオインフォマティクスは昨年立ち上げたのですけれども、これはコンピュ ーター関係であり、インドを含めて外国から随分応募があって、研究員としてインドの 方も採用いたしました。非常にハイコンペティションではないですけれども、まあまあ の方に応募していただけます。  私は大学におりましたけれども、任期制というのは人気がないということで非常に懸 念しております。任期制で5年間非常にアクティブにして、また外に応募して出ていっ ていただいてもいいのですけれども、継続性がないというのが非常に懸念するところで あります。そこも我々はひと工夫する必要があるのではないかと思っております。 ○垣添部会長  大変活発なご議論をありがとうございました。時間の関係もありますので、次に国立 健康・栄養研究所からお願いいたします。 ○渡邊理事長  国立健康・栄養研究所の渡邊です。国立健康・栄養研究所は大正9年に佐伯矩という 先生によって設立されております。佐伯矩さんは岡山を出た後、京大の生化学、エール 大学というように、主に生化学畑でやられた方ですが、留学中にいろいろなサイエンス を総合した栄養学というのが必要だということで、日本に帰って世界で初めて、栄養研 究所として設立されたという歴史があります。その関係で関東大震災の後に視察に来た 国際連盟の方が、栄養学に基づく給食施設などが非常に効果を上げているのを見て、連 盟最初の招聘教授となり1年間、ヨーロッパやアメリカ、東南アジアを講演して回りま した。その講演を聞いて国立栄養研究所が、何カ所かでできたというヒストリーがあり ます。  戦後、始めて国民栄養調査をやって、海外からの食糧援助の量を決めました。お蔭で 3,000万人ぐらいが餓死することから免れたということがあります。その後も国民栄養 調査は続けられ、現在は、健康増進法により厚生労働省に協力してやっております。60 年間連続したデータが溜まっているということで、世界で唯一の貴重なデータベースに なりました。ただし、それはあまり自由には使えなくて、黒川委員会のほうで総務省と 検討して、データをどう有効に活用するかということが、いま検討されているところで す。  私どもは平成13年に旧厚生省でいちばん最初の独立行政法人、公務員型になり、平成 17年に第1期の5年を終了いたしました。そして平成18年から第2期目に入って、そ こから私が理事長をお引受けしております。それまでは公衆衛生院からの実験部門の移 行とか、厚生労働省傘下のいろいろな研究所の再配置が多少ありましたが、それらを全 体として栄養疫学、健康増進、臨床栄養、栄養教育、基礎栄養、食品保健の6プログラ ムおよび情報センターと国際産学連携センターの2センターに再構成しました。これら は世の中がどう変わっても、日本の国民のためには絶対に必要な部門であろうというこ とでつくったわけです。あと、情報センターと国際産学連携センターは、NIHで言う extramural programのような形でつくりました。  健康増進法等の法律によるミッションは、国民健康栄養調査、食事摂取基準をつくる こと、収去食品の測定です。現在、研究員の構成は事務職員を含めて47名、研究職員が 35名となっておりますが、実際にはそれではとてもできないので、特別研究員、技術職 員、研修生、連携大学院の学生等々を含めて、総員200名ぐらいの運営となっておりま す。  独法は現在、100いくつありますが、私どもの法人はいちばん下のほうの非常に小さ な法人で、交付金総額が8億円ぐらいです。そのうち6億円ぐらいが人件費となってお ります。また、うちの建屋は非常に複雑で、3研究所が合同庁舎に入っていたのですが、 病院管理研究所が出たものですから、国立感染研と私どもの独法型の法人が同居してい るということで、部屋の拡張などが非常に難しい段階にあります。  先ほど交付金8億円という話をしましたが、この6プログラム2センターを完璧に動 かすためには、やはり11億〜12億円の総額が必要です。それで残りの部分は競争的資 金の獲得等々で、補うように頑張っています。しかし今まで栄養学というのは、家政学 の範疇で扱われてきております。現実には病院における栄養療法とか、メタボリックシ ンドローム対策のための栄養指導など、さまざまな部分が台頭しているにもかかわらず、 栄養学という範疇は、研究費の申請でもないのです。例えば臨床試験、介入研究をやろ うと思っても、東大のUMINには栄養学という項目がなくて、大変苦労いたしました。  時代時代で必要なテーマは変わってきております。戦後すぐは栄養の不足の時代でし た。バブルのころは過食による肥満、その後はその対策のために運動や食事療法という ことになりました。これからは食育ということで、内閣府のほうとも協力して、どうや っていけばいいのかということになります。いずれにせよ食、栄養、運動、健康という キーワードで国際的に顔を出しているのは、うちの研究所が唯一の研究所ですので、か なり頑張ってやっています。また今年は、WHOの研究協力センターになる予定でもあり ます。  ここでは制度的な問題点を、4点挙げさせていただきました。これはどこの独法も、 すべて同じ問題を抱えていると思います。1つには、いつも一律に「削減、削減」と言 われていることです。どれだけ頑張っていい成績を出しても、それが反映されてくるこ とがありません。2つ目は、一生懸命利益を上げるように努力しても、それで備品すら 買えない、何年か経つと、5年ごとにすべて国庫に納入することになっているというこ とです。3つ目は評価です。100人いる研究所と、私どものように40人しかいないよう な研究所でも、同じだけの書類を用意しないといけないものですから、労力的に非常に 大きな負担になっています。最後は自助努力の範疇と自由度です。  ここで私がもう1つ不思議だと思うのが、任期についてです。理事長は大体4年にな っておりますし、理事は2年になっておりますし、中期計画は5年になっています。そ うしますと中期計画はすでに決まっているので、そこで理事長として入ると、自分の創 意工夫が何も反映されずに決まったことだけやって、しかも評価も受けずに終わる人が 出てくるのです。ですから、これをせめて5年にするとか、何か同じようなプログラム を立てたら、それを実行して任期を終えるというような形が、どこかで考えられると大 変いいのではないかと思っております。 ○垣添部会長  ありがとうございました。いかがでしょうか。ご質問、ご発言に戻りたいと思います。 問題点は、ほかの独法機関と同じことをご指摘になっているかと思います。 ○永井部会長代理  国立大学病院ですと、診療報酬などで収入が上がったら、それは自分たちで留保でき ます。ただ事業によっては、これは収益事業ということで、その分は翌年の運営費や交 付金が削減などということもあるのですが、実際に研究所における収益事業には、どう いうものがあるのでしょうか。それを本来の研究の一部、アクティビティーの一部とし て、うまく留保できるようなシステムは考えられないのでしょうか。 ○渡邊理事長  留保するシステムは、原則としてありません。うちの場合は県や市町村の健康づくり をどうやったらいいかというコンサルテーションなどをやっています。また、うちの大 きな事業としては「NR」と言って、MRに対応する形でサプリメントなどの情報、健康食 品のプロを育てようということで、その収益事業等もありますし、NR協議会と協力して、 試験などもやっていますから、多少の収益はあります。しかし、そういうものが5年後 に残っているとしますと、いまのシステムでは全部財務省に返納するということになっ ているわけです。 ○永井部会長代理  お話を伺っていると、法人化のメリットが一体どこにあるのかがよくわからないので す。これは全くなかったということですか。 ○渡邊理事長  私は法人化はとてもいいと思うのですが、自由にやっていいというところが、どこま で自由にできるのか、ちょっと難しいところがあります。要するに民業を圧迫しないで、 国がやらねばならない施策をやるということですよね。それはとても分かるのですが、 国がやらないといけない施策で、いまのように削減していって、本当に5年の中期計画 ができるのでしょうか。それはどこかを切らないと成り立たないのではないかという、 先ほどの山西さんと同じ質問になるわけです。  もう1つは、総務庁自体が視察に見えたことがありまして、「ずっと落ちていくのは、 一体どこまで行くのか。ゼロまで行くのか、それともある所から、これは絶対に必要だ から平行移動するのか」とお聞きしましたら、「まだ決めていない」とおっしゃるので す。それならそれでどうなるのかなというのが、とても不思議です。  それと、私が理事長になって非常に戸惑ったのは、「所長」という言葉にはとても慣 れているのですが、「理事長」となると何をやるのか。例えば研究を全部わかっている 理事長と、研究のことは全くわからないけれども、管理だけはとてもできる理事長が来 る場合もあります。そういうときに研究所の理念というのは、どうつながるのだろうか という心配があります。竹を繋いで作った蛇があるじゃないですか。私は、「5年ごと に中期計画をつないでやっていると、どこに行くかわからない」と言ったのです。やは り人の問題はとても大事です。 ○垣添部会長  永井先生のご質問からだいぶ外れておりますので。 ○渡邊理事長  メリットがどこかとお聞きになったので、いま考えているところなのです。 ○竹中委員  いま中期計画のことをおっしゃいましたが、企業の例ですと、中期計画には5年の固 定計画と、そうしておいてもローリングという方法を入れるという2つの方法を取りま す。もう1つは、社長が代わりますと必ず計画も変えるわけですし、ビジョンも変わり ます。理事長が代わられても固定された5年を続けること自身、私にはちょっと理解し かねるところがあります。なぜ変えられないのでしょうか。 ○渡邊理事長  私も君子豹変すというのが本来、独法の本筋だと思いますが、現実には5年間の中期 計画が決まりますと、それから変えて何かをやるというのは非常に難しいのです。 ○笹月委員  いわゆる経営努力がインセンティブにならないで、それも全部吸い上げられてしまう、 あるいは運営費、交付金が減らされるというのは、何も厚労省だけではありません。理 研もそういうことを言っておられますし、大学もそうかもしれませんので、共通の問題 として、そういうことの改善を訴えるというか、そういう努力はなされているのでしょ うか。あるいは、もうそれに甘んじて、それでよろしいということなのか。 ○垣添部会長  大学は何かなさっていますか。 ○永井部会長代理  全貌がわかってきたのは、やっとここ最近です。独法化というのはどういうことかと いうのが、数字で経年的に3年ぐらい経ったところで、こういうことだったのかという のが、やっと今わかってきたところです。ですから2期に向けて平成19年度、20年度 に相当大きなアクションがあるだろうと思います。 ○笹月委員  我々ナショナルセンターも、平成22年度をもって独法化するとなると、そういうこと はやはりきちんと考え、あるいは、そういうことについてはその前に十分議論を喚起し なければいけないのではないかと思いました。先行するところは是非、頑張ってくださ い。 ○竹中委員  独立法人化して、まだ時間は経っていないのですが、各機関における自分たちのステ イクホルダーはどこなのだろうという議論をされていくと、中期計画等も変わるのでは ないかと思うのです。その点はまたご検討いただきたいと思います。 ○渡邊理事長  独法化してよくなった点というか、比較的自由度を認めていただいたのは、テストケ ースとしてお認めいただいたのだろうと思いますが、うちの場合は部長、室長というの を全部なくして、5年ごとのプログラムをプロジェクトにしてしまったのです。それで 何人かの部長は降格になりましたし、昇格した人もいます。そういうように人事だけは、 多少柔軟性を持たせられるようになったと思います。 ○宮村委員  これは厚生労働省の問題だけではなくて、あらゆる所で起こっている問題です。やは りミッションが不明確なのです。先ほど竹中さんがおっしゃったように、一体この研究 所は誰のためにあるのかということが、もうちょっと明確でないと。ただ整理していく ようなプロセスに入っているような感じがあります。厚生労働省の独立法人化が遅れた のは、国民の健康に直関係するからで、平成22年にナショナルセンターが独法化したこ とによって、国民の健康や安心を損なうような手を打つとするならば、非常に大きな問 題だと思います。是非、その前にきちんと議論をして、厚生労働省のナショナルセンタ ーの独法については、新しいタイプの独法を施行しないとまずいというのが、たぶん皆 さんの共通概念だと私は思います。 ○垣添部会長  まさしく、そういう認識ではないでしょうか。それでは先に進ませていただきます。 労働安全衛生総合研究所から、よろしくお願いいたします。 ○荒記理事長  労働安全衛生総合研究所理事長の荒記です。よろしくお願いいたします。まず資料2-3 の1頁から、ご説明申し上げます。  最初に当研究所の性格ですが、主務省である厚生労働省のご指導により、行政ミッシ ョン型研究所としての位置づけです。もちろん独法の調査研究機関です。したがって今 日の主要なテーマになっている研究開発型の独立行政法人とは、若干性格が違います。 確かに研究開発もやりますが、あくまでも第2優先事項の業務と考えております。  実際の研究所の運営ですが、厚生労働省安全衛生部のその時々の行政活動の学術的支 援メインです。現在は、労働災害調査、産業ストレス、過重労働、過労死、自殺、さら に化学物質アスベストなどの問題を中心に、すべて時々の労働安全衛生に関する行政テ ーマを中心に、独立行政法人通則法と個別法に従って、研究所の運営を行っております。 この場合、業務はイコール調査研究業務です。こういう意味での研究をやっているとい うことになっています。  研究所の概要ですが、職員数は120名、このうち研究職員が94名。約2/3が博士号を 持っております。予算は、今年度は29億1,000万円。施設面ですが、敷地面積で言いま すと、約5万8,000平方メートルです。歴史経過は、昭和17年に旧産業安全研究所が旧厚生省の研 究所として設立されました。戦後の昭和24年に、産業医学総合研究所の前身が労働省の 試験室として設置されました。この2つの研究所が昨年4月に、労働安全衛生総合研究 所として統合されました。私自身は旧労働省時代の国研の研究所長を1年、その後独立 行政法人理事長を1期5年、さらに去年の4月から2期目の理事長職を務めております。  この頁の下半分には当研究所にかかわりのある主要な関係機関を、図の右側に示して あります。1番目は行政機関です。主に厚生労働省、さらにその他の府省です。2番目は いろいろな学会や大学、あるいは中災防という協会が大きい組織の1つですが、労働災 害防止協会などの科学技術関係の機関です。3番目はILO、ISO、WHO等々の国際機関で す。4番目は一般社会です。これは独立行政法人として非常に大事です。事業場やマス コミ関係等です。  3頁に、主要な調査研究業務をまとめました。見出しにありますように、主要な調査 研究業務はプロジェクト研究です。これは「重点研究領域特別研究」と称している研究 で、研究所が厚生労働省からいただく運営費交付金を使って、厚生労働省の行政テーマ に合わせて研究活動をやっております。現在13研究課題を動かしており、1年間に1題 当たり約3,000万円前後の予算です。それを大体1課題3年前後で動かしております。  4頁の下に、「基盤的研究」と書いてありますが、この基盤的研究というのが、研究 所の2番目の主要な研究業務です。これはプロジェクト研究のための萌芽的な研究をや っていただく、研究職員の実力を伸ばしていただく、オリジナリティーを期待するとい うような、いくつかの目的を持って運営しております。現在、研究所全体で数十課題を 持っており、1題当たり100万円前後の年間予算です。  5頁をお願いします。最初にご説明申しましたとおり、研究所は行政ミッション型研 究所です。ということは、ここに書いた科学技術基本計画との関係が多少微妙です。理 由は先ほどご説明申し上げたとおりで、このような位置づけであるということをご理解 いただきたいと願っております。  6頁から最後までは、独法研究所としての4つの問題点を出しております。最初の項 目は、その中でも最大の問題点だと私は理解しております。その問題点というのは、コ ミュニケーションの問題です。具体的に、例えば研究所の中には独立行政法人の長であ る理事長がいます。さらに役員として、理事あるいは監事が数名います。さらにたくさ んの研究職員、および行政から出向される総務関係の管理をやられる職員もいます。こ れらがすべて所内で、1つのグループになっております。もう1つのグループが、国の 独立行政法人の評価委員会です。さらに、研究所外の諸機関として、先ほど図で示した ような専門機関や民間の機関があります。  問題は、これらの機関、組織、研究所の中の役員、所員等、主務省の方々のいずれも が、独立行政法人の運営にかかわる具体的な知識と経験が一切なかったということです。 全く何の知識も経験もないにもかかわらず、実際に国の命令でこのような法律に従った 運営をやっていくという位置づけ、運営組織になっております。このために、例えば組 織内外の意思の疎通、情報交換、相互の交流等が的確にできない場合が出てまいります。 いつもこういう問題が出るわけではないのですが、こういう問題がときどき出て大問題 になります。そういう意味で今後も、相互のコミュニケーションの確立の努力を続ける 必要があると思いますし、努力を続けております。  2番目の問題は、繰り返し述べられている自己収入の確保を巡る問題です。基本的に は研究員が外部から得たいろいろな外部研究資金を、国のほうに吸い上げられてしまう ということです。このために研究資金、外部資金を確保する意欲がなくなってしまうと いう問題点です。  3番目は、優秀な人材を確保するための問題です。特に状況としていちばん大事なの がポストドクター、いわゆる「ポスドク」と言っている方々を受け入れる必要があるの ですが、定員枠という枠が定められておりますので、この方々の時限付きの雇用が実際 にできないのです。これは非常に大きな人材確保上の問題点です。  最後に、去年4月から新しく研究所が統合されて、実質的な統合を進めるということ がいかに難しいことであるかという問題があります。1年間やってきたのですが、問題 はこの2つの研究所が、電車や車でも1時間以上離れた場所にあることです。これでど のように統合化するかということです。もうすでに始めているのですが、本部で理事長 と理事を隣合わせの部屋にする。また、理事長の直属部門である総務部門と研究企画調 整部門を、理事長室に近い部屋で隣合わせる。さらに、2つの研究所の業務を各部署で 一元化することを最終的な目標としています。これはいま言ったそれぞれの部屋を近接 した所に収めれば、解決に近づくと理解しております。こういう本部体制の確立のため に、是非関係者のご支援をお願いしたいと思っております。 ○垣添部会長  どうもありがとうございました。何かご質問はありますか。やはりほかの2つの機関、 あるいは別件でご指摘の問題点と、同じような問題点を抱えておられると思います。 ○宮田委員  政府のミッション型ということでお尋ねします。毎年の経費削減のパーセンテージは、 どれぐらい要求されているのですか。 ○荒記理事長  これは国の中央省庁の削減と同じです。中期計画ですでに決められております。去年 4月に中期計画が5年間始まりましたので、それに従って人員なり予算の削減をしてお ります。 ○宮田委員  具体的にはどれぐらいですか。 ○荒記理事長  例えば人員からしますと5%です。ただし、その中で研究職員はほとんど削減しない ようにご理解いただいて、そのようにやっています。 ○宮田委員  5年で5%ということですか。 ○荒記理事長  5年で5%です。 ○垣添部会長  ほかにいかがでしょうか。まだいろいろご議論はおありかと思いますが、時間もあり ますので、議論はここまでにさせていただきたいと思います。事務局においては本日の 議論の内容を踏まえ、今後、総合科学技術会議に対応していただければと思います。大 変お忙しい中ご出席いただいた3つの独法研究所の皆さん方には、これでご退席いただ ければと思います。どうもありがとうございました。  それでは議題の3番目、「疫学研究に関する倫理指針の見直しについて」ということ で、ご審議をいただきたいと思います。専門委員会より矢崎委員長にご出席いただいて おりますので、まず矢崎委員長からご発言いただければと思います。 ○矢崎委員長  格別なことはありませんが、ご案内のように倫理指針にはゲノム指針、臨床研究、疫 学研究の3つがあります。当初から見直し条項があって5年後、すなわち平成19年6 月30日を目途に、必要があれば見直すこととなっております。この3つの指針の中で疫 学指針が、まず最初に見直されたという経緯があります。要約に主な見直しの方向性が 書いてありますように、例えば倫理審査委員会の付議を必要としない疫学研究とか、イ ンフォームド・コンセントの取得などについては、明確化はある程度できたのですが、 例えば指針の適用範囲、疫学研究と臨床研究、あるいは医療と臨床研究の区分けについ ては、なかなか一言ではできません。ですから今後、これをQ&Aの形式で少し具体的に わかりやすくしていく予定です。 ○垣添部会長  それでは事務局から、資料の説明をお願いいたします。 ○藤井厚生科学課長  お手元に用意している資料は3-1、3-2、3-3です。委員の皆様には事前に資料をお送 りいたしましたが、文言等が若干変更になっている部分があります。ただ基本的な部分 に、大きな変更はありません。先ほど矢崎委員長からご説明がありましたように、疫学 研究に関する倫理指針は平成14年に、文部科学省と厚生労働省とが共同して作成したも のです。その後、個人情報保護法が施行された時期に、それに見合うような変更を若干 しておりましたが、当初から5年後に見直しをするということが謳われておりましたし、 この間も研究者等の関係者から、いろいろな問題点等のご指摘もありました。そういう ものを踏まえて、今回見直しをしていただきました。  実際にこの指針そのものが、文部科学省と厚生労働省両省の指針という形になってお りますので、資料3-1のいちばん上にもありますように、昨年から5回にわたり、両省 合同の委員会で検討していただきました。厚生労働省側は資料3-1の最後の頁に、専門 委員の名簿を載せております。両省合わせた合同委員会においても、矢崎委員長が座長 という形で取りまとめいただいております。事前にお送りしていたということもありま すので、資料3-1に基づいて、主な改正点についてご説明させていただきたいと思いま す。  まず2頁からご覧ください。「指針の適用範囲の明確化」ということで、最初が疫学 研究指針と臨床研究指針の適用範囲を明確にするという点です。いままでは疫学研究指 針を適用するのか、臨床研究指針を適用するのかということで、非常に質問が多かった 項目に、診療録などの診療情報を活用した観察研究というのがあります。その下の図で 言いますと、「臨床」といういちばん左隅の「疫学研究」と「観察研究」が交差してい る、四角では「予後調査」というのが中に入っている点です。診療情報や診療録などを 活用した予後調査、観察研究については、非常に質問が多かったものですから、今回は 疫学研究指針の対象であるということを明確に整理したわけです。  2番目が、「診療と疫学研究指針の適用範囲の明確化」です。実際の診療現場では、 ある病気の治療法を検討するために、患者の診療情報を集計することはよくあることで すが、現在の指針の中では疫学指針の対象であるのか、それが一般の診療の一環として 整理していいのかわかりづらいという指摘がありました。今回、委員会でご検討いただ いた結果、四角の中に示しておりますように、3つの要件を満たすものについては、疫 学研究指針の対象として整理してはどうかということで、適用の最低限の要件を明確に したところです。  次の3頁をご覧ください。「倫理審査委員会への付議を必要としない疫学研究」につ いてです。現行の指針では研究の許可を求められた場合、研究機関の長は倫理審査委員 会の意見を聞くことというように規定されております。そのため単にデータの統計処理 のみを請け負うような機関についても、倫理審査委員会を経なければならないというこ とは、あまり適正ではないのではないかという指摘が出ておりました。  それも含めて委員会でご検討いただいた結果、図の左側にも示しておりますように、 単にデータ処理のみを請け負っている場合については、倫理審査委員会での議論を経な くてもよいと整理してはどうかと。それに加えて右側にありますように、これらの項目 をすべて満たす研究については、倫理的配慮をそれほど要する研究ではないだろうとい うところから、倫理審査委員会があらかじめ指名した方が判断をして、その判断によっ ては倫理審査委員会の意見を聞かなくてもよい、という整理をしてもいいのではないか という議論がありました。  4点目は、「教育を目的とした疫学研究の取扱い」についてです。学生が実施する疫 学研究についても、この指針の対象となりますが、実習のようにあらかじめ結果がわか っていて、単にプロセスを学ばせるようなものについては、指針の対象外というように 整理してもいいのではないかと。また、研究スキルの未熟な学生が疫学研究を実施する 際、指導者はこの指針の趣旨を十分理解をして、学生の指導監督をしなければならない とする責務を新たに追加する必要があるというまとめでした。  次に大きな2の「効率的・効果的な多施設共同研究の実施」のいちばん最初、「多施 設共同研究の場合の倫理審査」についてです。現行の指針では、共同研究機関が各々の 機関ごとに倫理審査委員会を設置するということを原則としております。また、主たる 研究機関の倫理審査委員会で承認後は、共同研究機関においては迅速審査に委ねること ができるという規定もあります。実際面では分担研究機関において、単に資料の提供だ けを行う場合もあることから、分担する研究内容に応じた審査をする必要があるのでは ないかという指摘がありました。そこで今回の委員会でご議論いただいた結果、分担研 究機関が自ら倫理審査を行うか、他の機関に委ねるかというのは、研究機関の長が判断 できるようにしてはどうかというまとめでした。  4頁をご覧ください。「既存資料等かつヒト由来試料を提供する場合の取扱い」です。 これについては図ではわかりにくいので、口頭で説明させていただきます。疫学研究の 計画書を作成するまでに存在していた資料等は、既存資料という整理にしております。 その場合、ヒトに由来した試料であっても提供者が同意した場合は、倫理審査委員会の 承認等を得なくてもいいという整理になっております。  このような取扱いについて倫理的に問題はないかという観点でご検討いただき、人体 から採取された試料提供に関しては、把握しておく必要があるのではないかということ から、試料提供を行う者が所属機関の長に、きちんと報告をするように義務づけてはど うかというまとめでした。  その下の3が、インフォームド・コンセントの取得に関するものです。ヒト由来試料 の「既存資料等」を利用する場合、資料の提供を行う者ではなく研究者が研究対象者に 対し、資料の利用に関する同意を得ることになっておりましたが、個人情報保護法等の 観点から、資料提供を行う者が資料提供と併せて資料利用に関する同意も得ていただい たほうがいいのではないかという議論から、資料提供を行う方には併せて利用の同意も 取得できるように整理いたしました。  5頁が、「他の指針等との整合」ということで、国際共同研究の場合です。四角の中 にありますように、相手国の基準が我が国より緩やかな場合には、我が国の厳しい基準 を遵守することを原則とします。しかしながら相手国の社会的実情等から我が国の指針 の適用が困難な場合は、我が国の研究機関の倫理審査委員会が承認をし、研究機関の長 が許可すれば、研究が実施できるということで整理いたしました。  4、その他、まず最初の「研究対象者の保護」についてです。研究実施により研究対 象者に危険や不利益が生じる可能性がある場合、研究計画書に記載をして、インフォー ムド・コンセントの説明事項でも、補償等についての追加をするというように整理され ております。併せて研究機関の長が研究内容を踏まえ、有害事象が生じた場合の対応を あらかじめ定めておくということも加えられております。  (2)の「未成年者からのインフォームド・コンセント」については、下の図をご覧く ださい。従来、未成年者は代諾者からインフォームド・コンセントを受け、16歳以上に 関しては併せて本人からもインフォームド・コンセントを受けるという形になっており ました。それを16歳以上の場合は倫理審査委員会で代諾者からの同意の必要性について 審査し、代諾が必要ないと判断された場合は、本人からの同意のみでよいということに してはどうかということで整理されております。  6頁は「資料の保存・廃棄」についてです。現行の指針では、資料の保存方法だけが 規定されておりますが、今回、併せて保存期間、廃棄方法を記載すべきということでま とめられております。併せて、廃棄に関しては個人情報保護に留意するため、匿名化し て廃棄いたします。保存期間を定めずに保存を行う場合については、研究の担当者が異 動・退職をして、資料の管理が杜撰にならないよう、きちんと継続されるように、研究 機関の長に情報が集まるように規定を加えております。  最後の4番は、「指針の遵守に関する点検及び評価」です。従来、指針の遵守をチェ ックする機能は規定しておりませんでしたので、研究者の属する研究機関の長が指針の 遵守状況の点検・評価を実施することを、今回加えております。必要に応じて倫理審査 委員会の意見を聞き、研究計画の変更・中止を求めることができるということも、併せ て加えております。  最後に、今後のスケジュールについてもご報告させていただきます。今回、パブリッ ク・コメントを開始してもいいというご承認が得られましたら、5月上旬に文部科学省 と合わせてパブリック・コメントを行い、その結果を踏まえて、6月には矢崎先生の「疫 学研究指針の見直しに関する専門委員会」において、さらに検討を加えていただきます。 それを踏まえて7月に、当科学技術部会において最終改正案についてご審議いただいた 後、新たに見直した指針を策定・公布という形にさせていただきたいと思っております。 ○垣添部会長  疫学研究に対する倫理指針で、これまで研究者が困っていた問題に関して、かなり明 確な答えを出していただいたのではないかと思います。矢崎委員長、いまの事務局から の説明について、何か補足いただくことはありますか。 ○矢崎委員長  特にありませんが、文部科学省の委員会で笹月委員から、ゲノム研究の際、疫学的手 法を用いた場合に、ゲノムの倫理審査委員会に疫学の専門家がいないとき、問題になる のではないかというご指摘がありました。それは見直しの資料の3-2のいちばん最後、 48、49頁に、「ゲノム指針に基づいて設置される倫理審査委員会の構成員に疫学の専門 家を加えることにより、その科学的合理性及び倫理的妥当性について審査すべきである」 という文を新規に加えてあります。ただ、これは疫学研究を見直す委員会ですので、こ のことはゲノム指針の改正時において、議論していただけるように申送りをするという ことで対応させていただきましたので、よろしくお願いします。 ○垣添部会長  何かご発言はありますか。よろしゅうございますか。これからはいま事務局からご説 明がありましたように、パブリック・コメントに向かってその意見を取りまとめた上で、 再度科学技術部会でご審議いただくということで、パブリック・コメントにかけてよろ しいですね。                  (異議なし) ○垣添部会長  ありがとうございました。矢崎委員長にはお忙しい中ご出席いただきまして、誠にあ りがとうございます。これで予定された議題は一応終わりましたが、その他に事務局か らありますか。 ○藤井厚生科学課長  今回、特に資料等は用意させていただかなかったのですが、研究における利害の衝突、 利益相反に対する対応についてお諮りしたいと思います。研究者が研究の実施や報告の 際に、金銭的な利益やそれ以外の個人的な利益のために、専門的な判断を曲げるような ことがあってはならないというのは、当たり前のことです。ただ、一方では産学共同研 究ということも進められております。利害関係のある企業等とのかかわりを持つ研究を、 一律に禁止するということになりますと、特に厚生労働省関係で申し上げますと、医薬 品の開発などに影響を及ぼす可能性があろうかと思います。昨今、研究と起こり得る利 害の衝突、利益相反についてどのように対応するのかということを、きちんと整理すべ きだという指摘があるのを受けて、当部会の下に専門委員会を設置して、検討をお願い したいと考えております。もしご承認いただけましたら、メンバーについては垣添部会 長とご相談の上、決めさせていただきたいと考えております。 ○垣添部会長  利益相反に関しては今後、この会議の下に小委員会を設けて検討するということです が、よろしゅうございますか。                  (異議なし) ○垣添部会長  ありがとうございます。それでは、そういう小委員会をつくって検討するということ にいたします。研究企画官、何かありますか。 ○坂本研究企画官  次回の開催についてですが、5月に開催したいと考えております。別途、日程調整の ご案内等を送らせていただきますので、その際はよろしくお願いいたします。事務局か らは以上です。 ○垣添部会長  それでは本日の会議はこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございまし た。    ―了―    【問い合わせ先】 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担当:情報企画係(内線3808) 電話:(代表)03-5253-1111 (直通)03-3595-2171 - 1 -