07/01/29 第20回労働政策審議会労働条件分科会最低賃金部会議事録 第20回労働政策審議会労働条件分科会最低賃金部会議事録 1 日 時  平成19年1月29日(月)9:35〜10:10 2 場 所  厚生労働省専用第15会議室 3 出席者   【委員】 公益委員   今野部会長、石岡委員、勝委員、武石委員、田島委員、 中窪委員、 労働者側委員  勝尾委員、加藤委員、高石委員、高橋委員、木住野氏        使用者側委員  池田委員、川本委員、杉山委員、竹口委員、原川委員、 前田委員 【事務局】厚生労働省   青木労働基準局長、青木勤労者生活部長、               熊谷総務課長、前田勤労者生活課長、               藤井主任中央賃金指導官、吉田副主任中央賃金指導官               吉田勤労者生活課長補佐    4 議事次第  (1)最低賃金法の一部を改正する法律案要綱について  (2)その他 5 議事内容   ○今野部会長  ただ今から、第20回最低賃金部会を開催いたします。なお、本日は中野委員と横山委 員が御欠席です。中野委員の代理として、木住野徹JAM組織・調査グループ局長に御 出席いただいております。  早速ですが議題に移ります。本日の議題は、「最低賃金法の一部を改正する法律案要 綱」についてです。本件は、厚生労働大臣から労働政策審議会会長あての諮問案件です。  まず、事務局から説明をお願いいたします。 ○前田勤労者生活課長  資料1が、厚生労働大臣から労働政策審議会会長あての諮問文でして、その別紙が要 綱です。資料2が、昨年12月27日に、この部会でまとめていただいた報告及び労働政策 審議会から厚生労働大臣あての答申です。基本的には、資料2の報告の内容を、今回要 綱にしたということですが、まず、要綱について読み上げさせていただきます。 ○吉田勤労者生活課長補佐  それでは、読み上げます。  最低賃金法の一部を改正する法律案要綱。  第一 最低賃金に係る総則。一 最低賃金額。最低賃金額は、時間によって定めるもの とすること。  二 最低賃金の効力。最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最 低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とするものとするこ と。この場合において、無効となった部分は、最低賃金と同様の定めをしたものとみな すものとすること。  第二 地域別最低賃金。一 地域別最低賃金の原則。(一)地域別最低賃金は、あまね く全国各地域において決定されなければならないものとすること。  (二)地域別最低賃金は、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の 賃金支払能力を考慮して定められなければならないものとすること。  (三)(二)の労働者の生計費を考慮するに当たっては、生活保護に係る施策との整 合性に配慮するものとすること。  二 地域別最低賃金の決定。厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、一定の地域ごと に、中央最低賃金審議会又は地方最低賃金審議会(以下「最低賃金審議会」という。) の調査審議を求め、その意見を聴いて、最低賃金の決定をしなければならないものとす ること。  三 派遣中の労働者の地域別最低賃金。労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣 労働者の就業条件の整備等に関する法律に規定する派遣中の労働者については、当該派 遣中の労働者がその事業場における派遣就業のために派遣されている派遣先の事業の事 業場の所在する地域について決定された地域別最低賃金において定める最低賃金額によ り第一の二を適用するものとすること。  四 地域別最低賃金の減額。使用者が都道府県労働局長の許可を受けたときは、次に 掲げる労働者については、当該地域別最低賃金において定める最低賃金額から当該最低 賃金額に労働能力その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める率を乗じて得た額を減 額した額により第一の二を適用することができるものとすること。  (一)精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者。  (二)試の使用期間中の者。  (三)認定職業訓練のうち職業に必要な基礎的な技能及びこれに関する知識を習得さ せることを内容とするものを受ける者であって厚生労働省令で定めるもの。  (四)軽易な業務に従事する者その他の厚生労働省令で定める者。  第三 特定最低賃金。一 特定最低賃金の決定等。(一)労働者又は使用者の全部又は 一部を代表する者は、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣又は都道府県 労働局長に対し、当該労働者若しくは使用者に適用される一定の事業若しくは職業に係 る最低賃金(以下「特定最低賃金」という。)の決定又は当該労働者若しくは使用者に 現に適用されている特定最低賃金の改正若しくは廃止の決定をするよう申し出ることが できるものとすること。  (二)厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、(一)の申出があった場合において必 要があると認めるときは、最低賃金審議会の調査審議を求め、その意見を聴いて、当該 申出に係る特定最低賃金の決定又は当該申出に係る特定最低賃金の改正若しくは廃止の 決定をすることができるものとすること。  二 派遣中の労働者の特定最低賃金。第二の三は、特定最低賃金について準用するも のとすること。  第四 労働協約に基づく地域的最低賃金の廃止。最低賃金の決定方式について、労働 協約に基づく地域的最低賃金を廃止するものとすること。  第五 その他。一 最低賃金審議会の委員の任期。最低賃金審議会の委員の任期を二年 に改めるものとすること。  二 監督機関に対する申告。事業場の法令違反の事実についての労働者の監督機関に 対する申告及び申告を理由とする不利益取扱いの禁止について定めるものとすること。  三 罰則。(一)地域別最低賃金の適用を受ける労働者に対し、当該地域別最低賃金 に定める最低賃金額を支払わなかった使用者は、五十万円以下の罰金に処するものとす るほか、罰則について所要の整備を行うものとすること。  (二)特定最低賃金については、最低賃金法の罰則の適用はないものとすること。  四 その他。(一)船員に関する特例について所要の整備を行うものとすること。(二) その他所要の整備を行うものとすること。  第六 附則。一 施行期日。この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内 において政令で定める日から施行するものとすること。  二 経過措置等。(一)この法律の施行の際現に効力を有する労働協約に基づく地域 的最低賃金は、この法律の施行後二年間は、なおその効力を有するものとすること。  (二)この法律の施行の際現に効力を有する一定の事業について決定された最低賃金 は、第三の一による特定最低賃金とみなすものとすること。  (三)(一)及び(二)のほか、この法律の施行に関し必要な経過措置を定めるもの とすること。  (四)関係法律について所要の改定を行うものとすること。以上です。 ○前田勤労者生活課長  若干補足して説明させていただきます。まず、1頁の第一の「最低賃金に係る総則」 ですが、これは、地域別最低賃金、産業別最低賃金両方に共通の総則的な事項です。  まず、一の「最低賃金額」については、これは表示単位を時間額に一本化するという 趣旨です。  二の「最低賃金の効力」については、現在も最低賃金法第5条第2項で、民事的に強 行的効力があるということを規定しておりまして、今回改めて書くということではない のですが、後ろの方で引用する関係で念のために、「最低賃金の効力」というのを書い ております。  第二が「地域別最低賃金」です。そのうちの一が原則で、(一)は地域別最低賃金が まずすべての地域をカバーするという趣旨を書いているものです。(二)が地域別最低 賃金の決定基準について、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃 金支払能力を考慮して定めるということです。次に2頁(三)ですが、先ほどの「(二) の労働者の生計費を考慮するに当たっては、生活保護に係る施策との整合性に配慮する」 という趣旨です。  それから二の「地域別最低賃金の決定」については、厚生労働大臣又は都道府県労働 局長は、最低賃金審議会の調査審議を求め、その意見を聴いて、最低賃金を決定をしな ければならないということで、地域別最低賃金は決定しなければならないということで 義務づけをするということです。  三の派遣労働者についてですが、派遣労働者については派遣先の事業場の所在する地 域についての地域別最低賃金を適用するということです。  四の「地域別最低賃金の減額」ですが、現在、最低賃金法第8条で、一定の者につい ては、都道府県労働局長の許可を受けて、適用除外することができるということですが、 運用上、現在減額という運用になっているということで、法律上も減額に改めるという ことです。  3頁の(一)から(三)は、現在適用除外の対象になっている者と同じです。(四) につきましては、今回、表示単位を時間額に一本化することとの関係で、「所定労働時 間の特に短い者」を削って、ここにある「軽易な業務に従事する者その他の厚生労働省 令で定める者」と改めるということです。  第三の「特定最低賃金」ですが、現在、法律上一定の事業若しくは職業又は地域につ いて最低賃金を決定できるということになっていて、そのうち地域別最低賃金について は、先ほど第二の方で規定するということで、特定最低賃金というのは、一定の事業又 は職業についての最低賃金というもので、一応、法律上の略称としては、これを「特定 最低賃金」という略称を作っておるということです。実態としては、現在の産業別最低 賃金のことをイメージしていただければと思います。  (一)は、この産業別最低賃金については、法律上も申出によって決定するというこ とを明確にするということです。  4頁の(二)で、申出があった場合に必要があると認めるときは、最低賃金審議会の 調査審議を求め、その意見を聴いて、特定最低賃金の決定あるいは、改正若しくは廃止 の決定をすることができるということで、先ほどの地域別最低賃金は決定しなければな らないわけですが、こちらの産業別最低賃金は、決定ができるという任意的なものです。  二の派遣中の労働者についてですが、第二の三ということで、先ほどの派遣労働者に ついては派遣先の地域別最低賃金を適用するというものですが、産業別最低賃金につい ても派遣先の産業別最低賃金を適用するということで、第二の三を準用するということ です。  第四の労働協約に基づく地域的最低賃金ということで、現在の最低賃金法第11条の、 いわゆる労働協約の拡張方式ですが、これについては廃止するということです。  第五で「その他」ですが、一で「最低賃金審議会の委員の任期」というものがありま すが、これについては、これまでの審議会の中では特に御議論いただいていないのです が、今回、最低賃金法の改正に合わせて委員の任期を2年に改めたいということです。 現在、最低賃金法第29条2項で最低賃金審議会、これは中央、地方両方ですが、任期が 1年となっておりますが、労働政策審議会など他の労働関係の審議会の委員の任期も2 年であるということで、それに合わせて2年に、この改正に合わせて改めたいというこ とです。  第五の二で「監督機関に対する申告」ということで、法令違反について、労働者が監 督機関に申告できること及び申告を理由として解雇その他不利益取扱いをしてはいけな いということを定めるということです。  5頁の三で「罰則」ですが、地域別最低賃金を支払わなかった場合の罰金について、 現在2万円以下ですが、これを50万円以下に引き上げるということです。  それから、罰則について所要の整備ということで、その他の最低賃金法違反、例えば 周知義務違反とか、報告を受けた臨検拒否等については、罰金額の上限を30万円に引き 上げる。申告に伴う不利益取扱いについての罰則を整備するというような中身です。  (二)については、産業別最低賃金については、民事的なルールに改めるということ から、最低賃金法の罰則の適用はないものにするということです。  それから、四「その他」ですが、(一)は、船員に関する特例について、現在、最低 賃金法第40条以下に、船員については国土交通省が所管しておりますので、厚生労働大 臣の権限を国土交通大臣が行うとか、あるいは、最低賃金審議会については、船員労働 委員会がその審議を行うというような特例が設けられております。今回、陸上の最低賃 金の見直しに伴って、船員については、現行の実態としての最低賃金がそのまま維持で きるようにということで、所要の整備を行うということです。例えば、船員の場合には 地域別最低賃金ではなくて、事業や職業によって定められているとか、あるいは、船員 については、表示単位が月額になっているというようなことがありまして、そういった ことに伴って、特例について所要の整備が必要であるということから、船員についての 所要の整備を行うということです。  (二)はその他の所要の整備ということで、形式的な整備を行うということです。  第六の「附則」で「施行期日」ですが、公布の日から起算して1年を超えない範囲内 で政令で定める日から施行するということで、成立後、省令の制定とか、あるいは周知 その他を考慮して、1年を超えない範囲内で政令で定める日から施行するということに しております。  二の「経過措置等」ですが、6頁の(一)で、まず、労働協約拡張方式で現在決めら れている最低賃金については、施行後2年間はなお効力を有するという経過措置を設け ています。これについては、昭和43年に業者間協定方式を廃止した際の経過措置が2年 間であったということで、それと同様の措置を講ずるというものです。  (二)で、現在あります産業別最低賃金につきましては、この改正後の規定に基づく 特定最低賃金とみなすということで、この法律の施行後、新たに新設する必要はなくて、 改正という手続をとっていけばいいという趣旨です。  (三)でその他の経過措置として、例えば、この法律の施行前に行った行為に対する 罰則の適用については従前の例によるとか、あるいは、施行前に適用除外の許可を受け ている場合には、一定期間それを有効とするといったような経過措置を定めるというこ とです。  (四)で、関係法律について所要の改正を行うということで、例えば労働組合法第18 条の労働協約の拡張適用につきましては、この最低賃金法第11条の労働協約拡張方式と の調整の規定などが設けられておりまして、今回、労働協約拡張方式を廃止することに 伴って、形式的に労働組合法の改正を行う必要があるというものです。以上です。 ○今野部会長  ありがとうございました。ただ今の説明について、御意見、御質問がございましたら お願いいたします。 ○加藤委員  2頁の1行目の所ですが、「生計費を考慮するに当たっては、生活保護に係る施策と の整合性に配慮する」という表現になっていますが、前回答申いただいた最低賃金のあ り方のまとめの「「地域における労働者の生計費」については、生活保護との整合性も 考慮する必要があることを明確にする」といった内容との表現の違いなど、特に「生活 保護に係る施策」というのはどういう意味なのか、ちょっと教えていただければと思い ます。 ○前田勤労者生活課長  「生活保護に係る施策」というのは、生活保護の制度全般について、その整合性に配 慮するということで、法律の用例として、こういった「施策との整合性に配慮する」と いう前例がありまして、そういった例にならい、法制局の審査などを経て、条文上そう いう書きぶりにしたらどうかということです。併せて、まず(二)の所で考慮するとい うことになっておりますので、その考慮に当たって、また「考慮」と書くと重なってく るので、「配慮する」ということにしております。内容的には、昨年末の部会報告にあ る趣旨からは変わっていないわけですが、条文として表現するときに、技術的にこうい った表現になったということです。 ○今野部会長  他にございますでしょうか。 ○池田委員  商工会議所としての意見を述べたいと思います。1つは、前回までと同じような意見 でもう一度申し上げることになると思いますが、前回、12月27日の部会で商工会議所と しては、産業別最低賃金は屋上屋であるから廃止すべきという意見に変わりはございま せん。生活保護との整合性についても異論があるということで、部会報告の内容に反対 であるという旨の発言をさせていただきました。本日提案された法案の要綱につきまし ても、産業別最低賃金及び生活保護につきましては、部会報告の内容と同じである以上、 商工会議所としては、その内容に反対であるということを、改めて申し上げておきたい と思います。  1、2点、別の意見として、1つは、部会の報告で罰金額につきまして、上限を労働 基準法、すなわち30万円以下という高いものとするということでしたが、今回50万円と いうことが出ているのですが、個人的な意見として、50万円というのは引き上げすぎで はないかということで、現在、罰金に至るケースは限られている中で、ここまで引き上 げる必要があるのかということです。まず、この50万円につきましては、賃金の不払の ときの30万円より上げるということを聞いておりますが、果たしてこの賃金不払の30万 円と最低賃金に違反した50万円と、どれほどの差があるのか。賃金不払というのは、ひ どいことでして、全然払わずに働かせるわけです。最低賃金は、ある程度払っているも のが、それ以上の50万円という必要がなぜあるのかという、まずその根拠について後日 でもいいですが、お教えいただきたい。  それから、5万円を約10倍の50万円にするという根拠は、他の法律で見ても、他の判 例でもそういうことがあるのか。10倍の額まで引き上げる必要がなぜ故にあるのか。50 万円というのは、不当に高いということを私は感じるわけでして、この50万円にした根 拠、単に賃金不払の場合の30万円よりも高いものにした理由、それから10倍まで上げる 理由は。交通違反1つとりましても、昨今の酔っ払いにしましても、あれは違反が続い て続いて、人身事故になった結果、罰金額を上げて規制するということがあるわけです が、現実に最低賃金の不払いに至るところは、非常にここのところ減っているわけでし て、なおかつ50万円までどういう根拠で引き上げる必要があるのかという、この50万円 につきまして、ひとつ私は金額的な疑問を持っています。  それから、労働者の生計費の問題ですが、1つは2頁の最初の行で「生活保護に係る 施策との整合性」とあります。そして上の方に「労働者の生計費」とあるわけですが、 労働者の生計費を決めるのは最低賃金です。この生活保護をいただいている者は労働者 と言えるのか、その辺のところが、生活保護をいただいている人たちが労働者であるが 故に、生活者としての整合性を持たせるという意味なのかということは、ちょっとお聞 きしたかった点です。  もし、これが正当な労働者でないのであれば、3頁にあるような減額措置というもの が当然あるわけでして、何故に生活保護をいただいている人たちが労働者の生計費とし て合致するのかという点が2点目です。  3点目は、最近のマスコミの報道ですが、あたかも最低賃金の引き上げが前提である ような議論が非常にされているわけでして、非常に違和感をもつわけでして、新聞の報 道につきましては、何しろ今国会で最低賃金の引上げを目指すということは、与野党の 政策的なもので、反映しているわけでして、あたかも値上げをするために最低賃金法を 改正してやっていくのだというようなものが出ているわけです。総理大臣の所信演説だ けは、ここに書いてある、最低賃金制度をセーフティネットとしての十分に機能するよ うな必要な見直し、とありますので、これは妥当な意見であります。ただ、新聞報道を 見ますと、引上げをするためには見直しをするという前提であるというようなことがあ りまして、そのような報道の中で、さらに50万円まで罰金を上げるとなりますと、これ は、中小企業の経営者にとってはダブルパンチでして、何のための部会かというような ことを問われたわけです。私どももこれから説明するに当たっては、今ちょっと違和感 を持っている点につきまして、ちゃんと私どもが説明できるような説明をしていただき たいと思います。以上です。 ○今野部会長  今、池田委員の方から、大きく言うと2つの点がありました。前段の方は、この要綱 に対する全体的な意見ですので、それはお聞きしておきます。後半の方の罰金額とか生 計費とか3点ほど質問がございましたので、お願いします。 ○前田勤労者生活課長  まず罰金額についてですが、労働基準法の賃金不払というものについては、全く支払 わないというだけではなくて、約束した賃金全額を払わない、要するに一部不払という ものも含まれております。それで、最低賃金違反についても同様なわけですが、労働基 準法は約束した賃金を払わないという、単なる債務不履行ということです。ただ、最低 賃金違反というのは、この最低賃金法で定められた最低限のものも支払わないというこ とですので、それは労働基準法の賃金不払と比べても、より悪い行為であるということ です。ですので、昨年の部会では、この労働基準法第24条違反の罰金額の上限である30 万円よりも高くするということで、報告がとりまとめられているわけです。その後、罰 金額を具体的にいくらにするかということにつきまして、法務省とも調整を行ったわけ ですが、この罰金の体系が30万円の上が50万円で、その上が100万円であるということ です。最低賃金法を制定した当時は、この最低賃金法違反の罰金額の上限が1万円で、 労働基準法第24条違反の上限が5,000円であったということで、2倍ぐらいであったと いうことです。労働基準法が現在、上限が30万円であるということから、その2倍に近 いところということで、今回、上限は50万円とするとしております。  2つ目に、2頁の「労働者の生計費を考慮するに当たっては、生活保護に係る施策と の整合性に配慮する」ということですが、そもそも生活保護との整合性を考慮するとい う場合に、働いて賃金を受けている方が、働かずに生活保護を受けている方と比べて、 生活保護の方が多いということであると、なかなか就労する意欲がわかないという、モ ラルハザードという問題があるということで、労働者の生計費について、生活保護を受 けている方が働いているか、働いていないかという問題ではなくて、労働者として、最 低限度の生活を保障するということ、あるいはモラルハザードという観点から、生活保 護との整合性を考慮するという趣旨で、部会で報告をとりまとめていただいたと考えて おります。今回は、その部会の報告に沿って、それを条文化するということで、この要 綱にあるような表現になっております。  最後の御指摘とも関係するのですが、この考え方については、昨年の部会でも部会長 から御説明があったように、決定基準については、労働者の生計費及び賃金並びに通常 の事業の賃金支払能力を考慮して定めるという、こういった3つの決定基準に基づいて、 様々な要素を総合的に勘案するわけです。その3つの決定基準のうちの生計費を考慮す るに当たっては、その1つの要素として生活保護があるということを明確にするという 趣旨でして、いずれにしても、最終的に地方最低賃金審議会において審議して決定する ということから、この生活保護基準から機械的に最低賃金を決定するということではな いので、法律上、機械的に引き上げるというものではないという趣旨は、以前説明した ものと変わっておりません。以上です。 ○今野部会長  他に、御質問ございますか。 ○中窪委員  1点だけ確認なのですが、申告については、特定最低賃金の違反についても申告権が あり、不利益取扱いの保護があり、基準監督署としても、立入り検査や質問とかの権限 もあるというふうに理解してよろしいのでしょうか。 ○前田勤労者生活課長  それについては、そういう方向で検討しております。 ○今野部会長  他にございますか。よろしゅうございますか。それでは、この要綱案につきましては、 昨年末に本部会においてとりまとめました報告に基づいた内容であると考えます。つき ましては、本部会としては、厚生労働大臣から諮問された「最低賃金法の一部を改正す る法律案要綱」を妥当であると認め、労働政策審議会から厚生労働大臣に答申すること としたいと思います。よろしゅうございますか。 (了承) ○今野部会長  ありがとうございました。形式的には、本部会から労働条件分科会へ報告をし、さら に労働条件分科会から労働政策審議会へ報告し、そして最後に、労働政策審議会から厚 生労働大臣あて答申がなされることになります。その案文を事務局からまず配付をして いただきたいと思います。 (報告・答申案文配付) ○今野部会長  今配付しました報告・答申の案文についてですが、そのとおりにしたいと考えており ますが、よろしゅうございますでしょうか。 (了承) ○今野部会長  それでは、了承いただいたということにさせていただきます。それでは、これから厚 生労働大臣に答申させていただきたいと思います。審議会の会長に代わって答申を手交 させていただきたいと思います。 (部会長から局長へ答申手交) ○今野部会長  それでは、労働基準局長から御挨拶がございます。 ○青木労働基準局長  ただ今「最低賃金法の一部を改正する法律案要綱」につきまして、妥当と認めるとい う御報告をいただきまして、ありがとうございました。この法律案要綱に基づきまして、 速やかに最低賃金法の一部を改正する法律案をとりまとめまして、通常国会に提出した いと思っております。委員の皆様方には、長期間にわたりまして、御熱心に御審議いた だきまして、大変ありがとうございました。この間の様々な議論も十分私ども念頭にお きまして、施行に当たってまいりたいと思っております。どうもありがとうございまし た。 ○今野部会長  それでは、その他何かございますか。よろしいでしょうか。それでは、本日の会議は、 これで終了したいと思います。本日の議事録の署名ですが、加藤委員と竹口委員にお願 いをいたします。それでは、終わりたいと思います。ありがとうございました。    【本件お問い合わせ先】    厚生労働省労働基準局勤労者生活部    勤労者生活課最低賃金係    電話:03−5253−1111            (内線5532)