2006/12/20 社会保障審議会人口部会 第10回議事録 社会保障審議会人口部会 16:00〜17:00 ○ 日 時  平成18年12月20日(水) ○ 場 所  厚生労働省 省議室(9階) ○ 出席者  〈委員:五十音順、敬称略〉        阿藤 誠、岩渕勝好、鬼頭 宏、国友直人、小島明日奈、榊原智子、        白波瀬佐和子、鈴木隆雄、津谷典子、樋口美雄、廣松 毅、山崎泰彦、        山田昌弘        〈事務局〉        薄井康紀 政策統括官(社会保障担当)        北村 彰 参事官(社会保障担当)、城 克文 政策企画官、        佐藤裕亮 社会保障担当参事官室長補佐        高橋重郷 国立社会保障・人口問題研究所副所長        金子隆一 国立社会保障・人口問題研究所人口動向研究部長 ○ 議事内容 1.開会 (城政策企画官)  定刻になりましたので、ただ今から第10回社会保障審議会人口部会を開催いたします。 委員の皆様におかれましては、年末のお忙しい中をお集まりいただきまして、誠にあり がとうございます。  なお、岩淵委員におかれては若干遅れるとの御連絡をいただいております。また、宮 城委員につきましては所用により御欠席ということでございます。  本日は御出席いただきました委員の皆様方が3分の1を超えておりますので、会議は 成立していることを申し添えます。  それでは以後の進行につきましては廣松部会長にお願いをいたします。 (廣松部会長)  本日は御多忙の折、お集まりいただき、誠にありがとうございます。本日の会議は1 時間と時間が限られておりますので、早速議事の方に移りたいと存じます。  本日の議題は、お手元の議事次第にございますとおり、日本の将来人口推計、平成18 年12月推計の御報告でございます。  これまで当人口部会では国立社会保障・人口問題研究所が行います将来人口推計の前 提等につきまして、この6月から4回にわたり審議をしてまいりました。このたび将来 人口推計の結果がまとまったということでございますので、本日はこの推計結果の報告 をお受けしたいと思います。  それでは早速、国立社会保障・人口問題研究所の金子人口動向研究部長より御説明を お願いいたします。よろしくお願いします。 (金子人口動向研究部長)  ありがとうございました。長らく御審議をいただきました日本の将来推計人口の結果 がまとまりましたので、ここに御報告をさせていただきます。  まず資料でございますけれども、三つございまして、日本の将来推計人口という表紙 がついたものが二つございます。そのうち、薄いものと厚いものがございます。まず厚 いものが今回まとめました日本の将来推計人口の結果でございます。薄いものの方には 結果の概要と記してございますが、こちらは説明のために抜粋して作成をした資料でご ざいます。  もう一つ、表紙に推計手法と仮定の設定と書かれた資料があるかと思いますけれども、 こちらはこれまでこの部会で報告をさせていただいてきました手法につきまして、まと めるような形で順に並べております。そこに今回の推計の結果、得られました数値であ るとかグラフを配置したものでございます。  今日の御説明につきましては、薄い冊子を開きまして最初のページに要約表というも のがございますので、こちらの方で説明をさせていただきます。薄い冊子の最初のペー ジをお開きいただければと思います。  まず推計の枠組みでございますが、推計の対象は、これまでどおり外国人を含めて日 本に在住する総人口を対象にして推計を行うということです。これは国勢調査と同じ定 義になります。  また、推計の期間でございますけれども、昨年の平成17年国勢調査を基準人口、すな わち推計の出発点といたしまして、平成67年、2055年までの50年間を推計いたしており ます。  なお、枠組みにつきましての一つの変更点といたしまして、これは今回の一つの特徴 になろうかと思いますが、死亡の仮定についても幅を設けてございます。すなわち、こ れまで死亡の仮定につきましては幅を設けず、一つの仮定につきまして、出生仮定の幅 に従って中位、高位、低位の三つの推計を御提供してまいったわけでございますけれど も、今回につきましては、死亡につきましても中位、高位、低位の3仮定を設けまして、 それらの組み合わせによって出生、死亡の違いによる将来の人口の違いというものをご 覧いただけるようになってございます。  したがいまして、三つの出生仮定、三つの死亡仮定の組み合わせでございますので、 今回の推計につきましては九つの推計で構成されているということになります。  要約表の方でございますけれども、推計結果のところをご覧いただきますと、ここに は今申し上げました九つの推計のうち、死亡中位の仮定につきまして、出生の3仮定、 中位、高位、低位の三つの推計を示してございます。  次にその結果でございますけれども、まず総人口から御報告をしてまいりたいと思い ます。現在、国勢調査の時点の人口は1億2777万人です。これを出発点としまして、出 生中位の仮定におきましては、平成67年、2055年におきまして8993万人。これは出発点 から約3800万人、30%ほどの減少ということになります。  これと比べまして高位の仮定をご覧いただきますと、9770万人。こちらは出生率が高 目に推移するという想定でございますので、人口の減少幅は中位仮定よりも少なくなっ ておりまして、約3000万人の減少、パーセンテージにしますと24%程度、4分の1程度 の人口減少ということになります。その結果、9770万人ですから、約4分の3程度の人 口になるということになります。  それから低位につきましては、2055年時点の人口は8411万人。これは出発点からの減 少で見ますと、4370万人の減少ということでございます。したがいまして、人口はおよ そ3分の2になるといった結果になってございます。  前回推計と比較いたしますと、前回推計の最終推計年次というのは2050年でございま したので、その2050年で比較いたしますと、中位、低位の仮定におきましては、前回の 中位仮定の推計の人口を下回るということになります。  以下、年齢区分に分けた人口についてもご覧いただきますと、まず年少人口でござい ますが、実績の1759万人から、推計期間最終年度の2055年に至りますと752万人ですから、 出発点の年少人口に比べて43%の人口となり、半分を下回るということになります。  高位の仮定におきますと1058万人。これは当初の年少人口に比べて60%の規模になる ということになります。  低位の仮定におきましては551万人で、出生率が低く推移する結果、年少人口は大幅に 減少いたしまして、当初の年少人口の31%、約3分の1という規模になるというように 推計をされております。  次に生産年齢人口でございますが、中位の仮定におきましては2055年に4595万人。こ れは当初の生産年齢人口の54%でございます。高位の仮定におきましては5073万人。こ れは当初の人口の60%です。それから低位の仮定におきましては4213万人。これは当初 の生産年齢の半分、50%ということになります。  次に老年人口を見ていきたいと思います。こちらの方は2055年時点で、人口自体は中 位、高位、低位とも同じ人口でございます。2055年時点での65歳以上の人口というのは、 既に現在産まれて存在している人口になりますので、この表で御説明しております3推 計の死亡仮定は同一でございますので、同一の人口になります。  しかしながら、その比率、構成割合、65歳以上人口割合につきましては、若年層の規 模の変化に従いまして、中位、高位、低位の仮定によって値が異なっています。中位の 仮定につきましては40.5%ということになります。高位の仮定につきましては37.3%。 低位の仮定につきましては43.4%です。これは前回仮定の中位仮定と比較しますと、前 回は2050年でございますけれども、35.7%という数字でございます。これに対しまして、 今回の推計結果によりますと、中位、低位ともに、この割合よりも多くなっています。  なおかつ前回の低位推計は、出生率が低く推移する結果、高い高齢化率、すなわち65 歳以上人口割合、となる推計でございましたけれども、その結果が39.0%でございまし た。今回につきましては、中位の仮定はこの前回低位の65歳以上人口割合をも超えてい ることになります。39.6%ということになりますので、ほぼ同程度、あるいはそれより もやや速いペースで高齢化が進むという形になってございます。  次のページでは、こうした結果に至る推計の方法について御説明をいたします。推計 の手法の枠組みは基本的に前回までを踏襲しまして、コーホート要因法に基づく推計を 行っております。  仮定の設定につきましては、出生、死亡、国際人口移動、人口変動の要因となります 各要因に関する実績統計に基づきまして、人口統計学的な投影手法によって設定をして おります。具体的な方法につきましては、これまで当部会におきまして御報告をいたし てきたところでございます。  それぞれ出生、死亡、それから国際人口移動を見てまいりますと、出生の仮定につき ましては、出生仮定指標という、出生率を構成する指標に分けまして、これを参照コー ホート、今回の場合は1990年生まれ、現在おおむね16歳の世代でございますけれども、 その16歳の女性の生涯にわたるライフコースの出生行動をあらわす出生仮定指標に分け まして、それぞれについて仮定を設けて出生率の仮定をつくってございます。  それぞれ四つの出生仮定指標がございます。まず平均初婚年齢、これは1955年生まれ 世代、これが現在の実績でございますが、24.9歳から、参照コーホート1990年生まれま でに28.2歳に上昇するという仮定でございます。  生涯未婚率は現在の実績で5.8%、これが参照コーホートにおきまして23.5%に上昇し ます。  夫婦の完結出生児数は、実績値の2.1から参照コーホートの1.70に減少します。  次に離死別再婚効果と書いてございますけれども、これは離婚、死別、それから再婚 が出生率に影響を与え得るという観点から、その影響につきまして数値化をしているも のでございますが、実績値の0.952から0.925と、これも減少を示してございます。  こういった四つの出生仮定の要素につきまして仮定を設定いたしました結果、その年 次別の合計特殊出生率に計算をいたしましたものがその右側に示してございます。実績 値は2005年時点で1.26であったものが2030年に1.24を経まして、2055年におきましては1. 26に推移するというような仮定になってございます。  以下、高位、低位につきましては、それぞれのパラメーターにつきまして、行動的な 数値、想定の幅を設けます。そして高目の想定値を組み合わせたものが高位の仮定、低 目の想定値をかけ合わせたものが低位の仮定ということになります。その結果、高位の 仮定では、最終年次の合計特殊出生率は1.55という仮定になってございます。低位の仮 定につきましては1.06という数値になってございます。  ただ、一つだけここで注意を申し上げなくてはならないのは、こうした仮定設定をす る分析の過程におきまして、今回につきましては日本人女性のコーホートについて、特 別に初婚率、出生率の再計算を行いまして用いております。これは出生変動の行動要因 というものを、より精密に測定するという観点から、そのような若干の定義の変更とい うことを行っております。  ただし、こうした分析上の精密化、定義の変更等によりまして、設定される仮定値の 水準に影響するということは一切ございません。より精密な測定に基づいた仮定値が設 定されたと考えております。  以下、死亡の仮定につきましては、これまで一つの仮定について行ってきたものです けれども、これを踏襲した形で、もちろん若干の手法的改善についてはこれまで御報告 いたしました改善を施した方法によりまして、1970年から2005年の死亡実績に基づきま して死亡中位の仮定を設定いたしました。  それによりますと、2055年時点の男性の平均寿命は83.67という仮定値になってござい ます。これは前回の仮定値、2050年の値でございます80.95に比べまして高い平均寿命の 設定ということになってございます。  女性につきましては、今回の中位の仮定では90.34で、これは前回の50年時点での設定 値である89.22に比べまして、やはり高くなるということになります。  残りました国際人口移動の仮定につきましても、基本的にこれまでの手法を踏襲して ございます。日本人につきましては95年から2005年の年齢別の入国超過率の平均値を一 定として用いております。外国人につきましては入国超過数を仮定いたしまして、2006 年の男性2万5000人、女性2万6000人から、2025年に男性は3万3000人、女性は4万20 00人となりまして、その後は一定になるといった仮定を置いてございます。  以上が今回まとまりました日本の将来推計人口の結果の要約でございます。 (廣松部会長)  どうもありがとうございました。国立社会保障・人口問題研究所におかれましては、 金子部長を中心に精力的に推計を行っていただき、ただ今御説明いただいたような結果 が得られたということでございます。  ただいまの御説明に関しまして御質問等がございましたら、御発言をいただきたいと 思います。 (阿藤部会長代理)  感想というようなことと、あとは細かい質問ですが、何といっても今回の推計は、死 亡率に変動幅を設けて三つの仮定を設けたということは、私個人は大変画期的なことで あったと思います。当然、将来のことは、出生に限らず、死亡についても不透明な部分 があるということで、例えばアメリカなどの推計では、その3本の仮定が常道化してい るということでございましたから、大変よかったと思います。  それから細かいところですけれども、出生率の仮定設定の中で、離死別再婚効果係数 という、今まではコンスタントに見ていたものを、増加傾向にあるということを踏まえ て将来的に変動させていくということだったと思いますが、これもそういう意味では精 緻化の一つの現れというふうに考えたいと思います。  また、これは今回の推計ではなく、恐らく今後のことになるかと思いますけれども、 このように出生率と死亡率を3本ずつ仮定するようになると、米国の例のように、これ からの日本政府の外国人に対する受け入れ動向と政策の変動によりますけれども、外国 人についても、そういう一種の3本くらいのシナリオ型のものが要求されるようになる かなと。恐らくこれだけの人口減少、そして高齢化が続けば、個人的にはそういうこと が必然的に起こってくると思いますし、そういうものが要求されるときが来るかもしれ ないという感想を持ちました。  細かいことでの質問ですけれども、仮定設定の中で幾つか特徴的なことが見られるの で少しお伺いしたいと思います。一つは、生涯未婚率というものが、仮定の中でもとり わけ大きく将来について上昇していて、中位では16.8%から23.5%となっていますが、 これは前回推計と比べて、やはり2000年から2005年の国勢調査の未婚率のいわば実績の 変動幅といいますか、これが予想外に非常に大きかったということを反映してこういう ふうになったのかどうかということについて、確認でございますけれども、それを伺い たいと思います。  もう一つは、夫婦の完結出生児数の低下というものが、逆に1.72から1.70とそれほど 大きな変化はなかったということですが、これは、仮定設定上は初婚年齢の上昇、前回 と比べると27.8から28.2ということで、それほど大きな変更ではなかったということを 反映したものかどうかということを確認させていただきたいと思います。  それから離死別再婚効果係数でございますが、前回の推計を確認しましたところ、0. 971という数字になっていて、1955年生まれの世代の数字が、0.952というふうに足元の 数字が変わっているのですが、そこは定義の変更なり何かあったのか、計算上の違いが あったのかどうかということを伺えればと思います。  もし0.952から0.925であれば、それほど大きな変化ではないとも見られるわけです。 それほど大きく変化していないということになると、離婚率はかなり増加しているので、 離婚だけでいえば、かなり出生率を下げる方向に働くと思いますが、再婚増加というこ とも若干あるのかということで、それほど大きなものになっていないのかということで す。  また、死亡の仮定ですが、ぱっと見て、だれしもが印象を持つのは、女性の方は将来 の平均寿命が89から90ということで、前回の驚きほどには今回は余り変わっていない。 ところが男性の方は80.9から83.67ということで、かなり大きな上昇が見られる。この辺 の差といいますか、特に男性がこれだけの伸びを見込むというのはどういうことによる のか。例えば、これも直近5年間の男性の死亡率低下が顕著であって、そういうことを 反映したものかどうかということをお伺いしたいと思います。  最後に、中の細かい部分ですけれども、合計特殊出生率の長期トレンドは2005年が1. 26で、最後も1.26ですが、途中で1.29、1.21というふうに、一度は実績として上がるの でしょうが、その後に1.21まで下がっていき、そしてまた緩やかに上がってくるという ふうなTFRの変動の様子ですが、逆に言うと、2006年の1.29という数字は、つまり1 年間で0.03上がったという反騰現象というものを一時的なものと見たのかどうか。これ は長期トレンドの一つのヒントになるものではないと見たということになると思います が、そのあたりで何か理由があれば教えていただきたいと思います。  以上でございます。 (廣松部会長)  ありがとうございます。それでは時間も限られておりますので、簡潔にお答えいただ ければと思います。 (金子人口動向研究部長)  まず出生の仮定の各要素につきまして、先ほども申し上げましたとおり、今回は精密 な測定を行うということを趣旨としまして、微妙に各指標の定義を変えてございます。  まず生涯未婚率が大幅に増加しているということの一つの理由としまして、もちろん この5年間の未婚率の増大ということをとらえてございます。  ただ、数値の上で、それだけではございませんで、この要約表の下の注のところをご 覧いただきますと、生涯未婚率につきましては今回は日本人女性のコーホートというも のに純化した測定を行いました。それに従いますと23.5%という数字になります。  前回定義と比較するために、近似でございますけれども、それと同定義の数値を算出 したものを注の中に示してございます。それによりますと、中位では20.4%で、これは 前回推計時の想定である16.8%に対して今回は20.4%である。ですから、その差の分だ けは実績の変化を反映したものであり、そこから23.5%の部分というのは今回の定義の 変更、精密化によって生じた分であるというようにご覧いただきたいと思います。  それから完結出生児数、離死別再婚効果係数につきましては、簡潔に説明する上から 資料を用意してございます。推計手法と仮定設定と書いてありますカラーの資料の22ペ ージをご覧いただきたいと思います。  これは以前に部会の方で報告いたしました各出生要素の推移の考え方と、その具体的 な数値を示したものでございます。右から2番目の欄に、平成18年推計中位仮定値とい うものを今回の結果として挙げてございます。中ほどに前回の中位の仮定値を挙げてご ざいます。  これらを比較する上で、一番右の欄に、前回定義による仮定値というものを近似とし て計算をいたしまして示してございます。先ほど御指摘がありましたように、今回の23. 5%というものは、前回の定義ですと20.4%に相当します。  また、夫婦の完結出生力と離死別効果係数というところは効果が混在している部分が ございまして、これが行動要因と構造要因を区別する上で障害になる部分でございます けれども、今回、若干の改良をいたしました結果、表にありますように、夫婦完結出生 児数は1.72から1.70人という変化になっているということですけれども、これをほぼ同 定義と考えるためには、その下の離死別効果係数とかけ合わせて、1.67人と、一番右の1. 57人という今回の仮定による数値の二つを比較いただきたいと思います。これで見ます と、離死別の効果等も含んだ違いというものになってしまいますが、こういった違い、 減少、低下が起きているということです。  離死別効果につきましては、下げ幅につきまして、先生の方から思ったほどではない といった御意見をいただきましたけれども、確かにこれが出生仮定の中で占める低下の 割合は、ほかに比べるとかなり少ない部分になろうかと思いますが、ただ、離婚の増加 を見込むという観点から低位の数値を見ますと、離婚がより多く発生するという想定の もとで、0.918ということで、9割強ですから、この効果によって全く離婚がない場合に 比べて1割程度の低下があるといった幅を評価できるということになります。  それから男性の死亡率の伸びが著しいという点でございますけれども、この理由は、 専らこの5年間、男性の死亡率の改善が目覚ましいものがあり、この実績値をグラフの 方でご覧いただくとわかりやすいと思いますが、要約の資料ですと10ページの方で実績 の部分をご覧いただきますと、男性は90年代にやや伸び悩んでいたことに対して、前回 推計以降の5年間に極めて目覚ましい寿命の延びを示しており、この伸びを反映したと いうことになります。  それから2006年の出生率につきまして、この出生率の変動は一時的なものかどうかと いう御質問でございますけれども、これは出生率の仮定値の設定の方法を、基本的には 女性の生涯の結婚・出生行動をもとに仮定値を設定しておりますので、細かな年次変動 というものはこのコーホートモデルでは出てこないのですが、ただ、この推計の基本的 な性格として、できるだけ多くの実績値を用いるという観点から、2006年に入ってから の月別の出生の実績値、具体的には7月までの概数の値、あるいは9月までの速報の値 といった実績値を反映しております。  ただし、その先につきましては基本的にコーホートのパターンに戻っていく。年次的 な出生、結婚のタイミングの調節による変動というものは、将来についてはなかなかわ かりません。  ただし、わかるのはコーホートの生涯の出生のパターンということになりますので、 その実績値のある部分、ない部分、ない将来につきましてはそのコーホートの仮定に従 って仮定を置いているということになります。  以上です。 (廣松部会長)  ありがとうございました。それでは鬼頭委員、お願いします。 (鬼頭委員)  一つだけ、質問というよりは提案のようなことなのですが、お話ししたいと思います。 先ほど、阿藤委員からも外国人の取り扱いについては今後変わっていく可能性もあるの ではないかというお話がありました。そして、金子さんの方からは、合計特殊出生率を 計算する上で、外国人の問題というのはそんなに大きな影響を与えていないというよう に私は伺ったのですが、やはり本文の6ページの計算式、あるいは資料1−3の8ペー ジに書かれている出生率の計算式ですが、今後、日本がアジアゲートウェイといったこ とで外国人にどんどん来てくださいというようなことを言っている以上、この統計の取 り方も少しきちんと整備していく必要があるのではないかというふうに思います。  今回の推計には直接影響はないのですが、全出生児数の2.3%が外国籍女性から産まれ ているわけですね。ですから、これから外国人がどのくらい入ってきてどう動くかとい う計算をしていくときにも接続できるように、やはり分けていくことが必要なのではな いかと思いました。これは意見ということですので、特にお答えは必要ないかと思いま すが、今後はそういう操作ができるようにしていく方向がいいのではないかというのが 私の考えです。 (廣松部会長)  ありがとうございました。それではまず樋口委員の方からお願いします。 (樋口委員)  はい。見せていただきまして、大変なことだなというのが実感です。要約すると、20 55年までを中位で見ますと、総人口が3800万人減る。その内訳がすごく重要で、老年人 口が1000万人増える一方で年少人口が1000万人減少する。したがって、そこは相殺する わけですね。ということは生産年齢人口、15から64歳のところが3800万人減るという、1. 26の出生率の重みといいますか、それを再確認させられたということで、先ほど阿藤先 生がおっしゃったように、出生率が今のまま、途中では若干下がるというところもある わけですが、1.26まで戻ったとしてもこういう状況だということで、これは大変だなと いうことと、やはり寿命が延びたということは、ある意味では、人間は長く健康で生き たいということですから、それが実現する社会になってきたわけですので、それに対し て政策、制度といったものがどう対応していくかということが非常に重要だという感じ がします。  質問は、2050年と2055年の5年間にすごく大きな変化が起こるということが見てとれ ます。今は55年までで推計が終わっているわけですが、この後の2060年、2065年という ものがあったとすると、生産年齢人口のところはさらに加速して減少していくのか、ど ういう結果になっているのかということを教えていただければと思います。 (廣松部会長)  それではごく簡単にお答えをお願いします。 (金子人口動向研究部長)  御指摘のとおり非常に大きな変化が生ずるという結果になってございます。2050年か ら55年の変化というものの先ですけれども、これは2056年以降、仮定値によって変わっ てくるものだということになりますので、正確な姿というのはここでは計算できないの ですが、参考推計という形で機械的な仮定を置きまして、その先を延ばした推計を参考 のために載せてあります。それは厚い冊子の後ろの方、37ページから掲載してございま すけれども、この全体像をご覧いただくためには46ページのグラフをご覧いただくとわ かりやすいのではないかと思います。  ご覧いただきますと、2055年までが今回の仮定値による推計でございますけれども、5 6年以降、それらの仮定値、出生率、死亡率、移動推移、移動率、これらを2055年時点で 固定しまして、そのまま人口を推計したものでございます。  ご覧いただきますように、人口につきましては連続的な曲線として減少していくとい うことになります。基本的には、このころになりますと、大体年齢構造が安定してきま すので、同じ出生率、同じ死亡率ということになりますと、理論的には安定人口という 一種の定常的な状態になりまして、指数関数的に人口が減少していくというフェーズに 次第に入っていくということになります。  それから高齢化率につきましても、ご覧いただきますように、ほとんどの推計につき まして上昇を続けてまいります。しかしながら、2070年代ころからは少子化の影響が高 齢層に及ぶ時代ですけれども、その頃からは横ばいないし減少に移っていくといった姿 になってございます。 (樋口委員)  現在、老年人口、高齢者1人を生産年齢人口3.28人で支えている社会になっているわ けです。これが2055年になると1.26人で支えなくてはいけない。さらに進むと、大体1 人を1人で支えるくらいのペースという、それこそ何とかしなくてはいけないというこ とを感想として持つところです。 (廣松部会長)  ありがとうございます。それでは山崎委員、津谷委員、山田委員の順にお願いします。 (山崎委員)  一つは中位推計に基づいて説明をいただいたのですが、出生と死亡のそれぞれについ て、高位、低位、どのような考え方で仮定を置いておられるのかということをお聞きし たいということでございます。  2点目は、印象としては非常に寿命の延びというものが効いているような気がするの ですが、例えば同じ2050年をとって、高齢化率は前回推計で37.5であったものが今回は3 9.6になり、ほぼ4ポイント上がるわけでございますが、その要因として、出生率の低下 と寿命の延びに分けた場合に、それぞれどのような寄与率になっているのかということ をお尋ねしたいということでございます。  3点目は、実は年金はこれをもとに将来の財政計画を立てているわけでございますが、 100年の財政計画を立てています。したがって、この人口推計が出ましたから、恐らくま た財政検証をすることになると思いますけれども、その場合には恐らくこの参考推計に 基づいてやるのだろうと思います。今の樋口委員の質問についてのお答えにもありまし たが、参考推計の仮定値が、2006年以降は一定というふうに書いています。実は前回の 参考推計の仮定の置き方は、将来に向かって合計特殊出生率は置きかえ水準に向けてな だらかに回復すると、しかも国際的にどこの国でもそのような仮定を置いているという 説明だったのですが、今回は一定としているわけです。これは100年で財政の均衡を図る という点からは非常に効いてくると思います。  そして感想としては、男性の寿命の延びというものが年金財政的には非常に効いてく るというふうな気がします。女性の延びは遺族年金の伸びですが、男性の場合は本来の 高い年金の受給者が伸びるということで、非常に財政的には効いてくるという気がいた します。  以上です。 (廣松部会長)  各委員に御発言をいただいた後、金子部長にまとめてお答えいただくことにいたしま して、それでは津谷委員お願いします。 (津谷委員)  非常に大きなお話が出ているときに細かいことをお聞きして恐縮ですが、先ほど、阿 藤先生とそれから鬼頭先生も少し感想をおっしゃったことの確認をしたいと思います。 生涯未婚率のお話ですが、前回は16.8で、これは85年生まれの参照コーホートの50歳時 の未婚者割合ですが、今回は参照コーホートが90年生まれになっていますので、23.5と いうことで確かに変動の幅が大きいのですが、もし前回定義と同じものを使った場合は、 90年生まれの参照コーホートは20.4なので、考え方の変化で大体3.1%の上昇というふう な御説明だったと思いますけれども、これは、当然参照コーホートは違うわけで、5年 後ですから未婚化が進行しているので、それもあると思いますが、この差というのはそ れだけではなく、先ほどは余りはっきりと御説明にならなかったのですが、動態統計の 戸籍法のお話もちょっとなさっていらっしゃいましたね。  手法のところの11ページの初婚率の定義というもので、日本人女性、日本国籍を持つ 女性で90年生まれが参照コーホートになっていまして、その未婚者割合は、最初は全員 ですので1ということで、それがだんだんと50歳になったときにどれだけ残っていくか ということですが、分子の問題で、初婚数というのが、日本国籍を持つ女性は、夫が日 本国籍であろうがなかろうがよろしいですけれども、これを見ていますと、夫が日本国 籍で、つまり外国籍女性の相手が日本国籍であった場合、戸籍法ですと恐らく両方が入 ってくると思いますが、前回はその両方が入ってきてしまっていたのでしょうか。  もし今回の、つまり日本国籍の女性の初婚ということでは16.8から20.4になるという ことプラス、もちろん5年後の若いコーホートの未婚化の影響ということでこういった 結果が出ているのかどうか。  TFRの問題にも同じような問題があって、先ほどから外国人のお話が出ていますが、 実はこの動態統計というのは戸籍法にのっとってやっているわけですから、分子のとこ ろに、日本人が産んだ子供はほとんど日本国籍でよろしいですけれども、外国人の女性 が産んだ子供は外国籍を持つ場合もありますが、相手が日本人ですと日本国籍を持って しまう。そうすると分母には入っていないけれども分子に入ってくる。ある意味でかさ 上げされるわけです。  これはむしろ反対の場合で、つまり日本国籍を持つ女性の初婚だけを見た場合ですと、 生涯未婚率は、コーホートが少し違いますけれども、もう少し高くなっているという問 題があるということでしょうか。  それでしたら、ある程度、本来のTFRの、コーホートTFRでもピリオドでもいい ですが、ある集団の女性が生涯に産む平均子供数の指標だという本来の出生力の指標、 それから本来の生涯未婚率の指標という意味からいきますと、要は夫婦で国籍が違って、 女性が日本籍ならいいけれども、そうではない場合はどうするのか、分子にだけはめる のかということ、もしくは分子から除くのかということで、これはある程度の処理が可 能なものなのでしょうか。定義も含めて、そこのところを明らかにしていただけると助 かります。  済みません。ごちゃごちゃとわからないことを言ってしまったかもしれませんが、た だ、これは割に大きいですよね。これだけ出生率が低くなると、無視できないものにな ってきているように思います。 (廣松部会長)  時間が迫っておりますので、金子部長、ごく簡単に御質問に対するお答えをいただき たいと思います。 (金子人口動向研究部長)  順番が前後いたしますが、最初に津谷先生のお話から御回答させていただきたいと思 います。カラーの資料の11ページの図ですが、例えばこれが初婚率の定義です。統計と いうものにつきましては、目的によりましていろいろな定義のあり方があろうかと思い ます。推計に際しましてはどういったことを注意しなくてはいけないかといいますと、 構造的な変化と行動的な変化というものをうまく切り分けて、例えば外国人の問題が出 ていましたけれども、総人口を推計する上では、外国人との結婚であるとか、出生であ るといったことが増えたり減ったりする構造的な変化部分と、実際の行動が生涯の子供 の数を決める行動的な要因を分ける必要がある。しかしながら、同じ定義に計算し直し た場合には、基本的には同じものを仮定していることになるということで、その点が申 し上げたい点であります。いろいろと定義を変えて測定の精密化はしているのですが、 同じ定義にした場合には、基本的には同じものを設定していることになるということで、 手法の精密化が結果を左右することはないというように御理解いただきたいと思います。  また、出生率の高位、低位の設定の方法ですが、それぞれの出生率については、結婚 や出産といった行動的な変化というものを将来について仮定しなければなりません。そ のために行動的な変化を要素に分けまして、先ほど見ていただきました1番から4番、 平均初婚年齢、生涯未婚率、完結出生児数、離死別再婚効果という要素に分けまして、 それぞれについてこれまでの変動の幅を統計的に想定するということとともに、それぞ れのライフコースとしてあり得る想定というものを設けまして、それらの組み合わせ、 かけ合わせによって、最も高い出生率になった場合にはどうなるのか、最も低い場合に はどうなるのかという形で仮定設定をしています。  結果としましては、例えば高位の仮定は1.55という結果でございますけれども、結果 で見ますと、正確ではないですけれども、日本では1990年代の初めごろの出生率の状況 に、いわば日本全体が戻るというようなイメージの想定になっています。  それから低位につきましては1.06ということでございますから、現在でいいますと、2 006年の東京都の1.00、それから名古屋ですとか福岡は1.08くらいになっていると思いま すけれども、そのあたりの出生率に近いものになっている。つまり日本全体がそういう ような想定というように見ることもできようかと思います。  とりあえずは以上です。 (廣松部会長)  ありがとうございます。それでは山田委員、国友委員と、あともう一方だけというこ とで、恐れ入りますがよろしくお願いいたします。 (山田委員)  質問としては私は津谷さんと同じ質問をしようと思っていたので、そのついでですけ れども、参照コーホートの生涯未婚率というのはわかりましたが、生涯無子率というの は今わかりますでしょうか。 (金子人口動向研究部長)  後ほどでよろしいでしょうか。 (山田委員)  結構です。あとは感想などですが、合計特殊出生率が余り下がらない仮定というのは これで構わないと思いますけれども、やはりもっと強調していただきたいのは、子供数 の絶対数の減少が甚だしいということを、私は教育関係者でもありますので、そこをも う少し強調していただきたかったかと思います。  色つきの資料の27ページを見ますと、中位推計で2055年に生まれる子供の数が45万70 00と2分の1以下、高位推計であっても67万人まで減るという数字でよろしいですね。 (金子人口動向研究部長)  はい。 (山田委員)  つまり合計特殊出生率が変わらなくても、団塊ジュニア世代の出産年齢からのリタイ アによって、子供の数はどんどん減っていくというふうに考えてよろしいですね。 (金子人口動向研究部長)  はい。 (山田委員)  私はそちらの絶対数の方が重要ではないかと思っている次第です。 (金子人口動向研究部長)  先ほどの生涯無子率の中位の仮定によりますと、90年の出生コーホートで37.2%です。 (山田委員)  ありがとうございました。 (廣松部会長)  国友委員、お願いします。 (国友委員)  私のコメントとしては、将来の死亡率に変動幅を考慮することは、日本の人口推計の 方法におけるより望ましい改善だということです。さらにこの問題に関係する質問が一 つあります。将来の死亡率に幅を設けた図を見ると、平均寿命ではかなりの幅があるよ うに見えますが、人口水準の推計値ではそれほどでもない。これは将来の死亡率の幅の 設定の仕方の影響と見られますが、死亡率幅の設定方法についてもう少し説明して頂け ればと希望します。  それからもう一つの質問ですが、今回の人口推計では出生率3通り、死亡率3通りの 設定があり、合計では9通りの人口推計値が求められることになりました。中位、低位、 高位という出生率の変動に加えて、死亡率の変動を中位、低位、高位と想定例が倍の数 が増えると、推計結果をどのように利用したら良いかという問題が生じるように思われ ます。例えば出生率を中位、死亡率も中位、と想定を合わせれば確かにある種の平均的 想定にはなりますが、人口推計の全体については将来の人口水準はより不確実であると 判断して良いか、人口推計の理解と利用の仕方についてどのように判断されているかを 伺いたいと思います。 (廣松部会長)  それでは榊原委員の方から先に御発言をいただいた後に、最後にまとめてお答えをい ただきたいと思います。 (榊原委員)  時間もありませんので、感想だけ一言申し上げます。中位仮定の将来推計人口が1.26、 出生率がここまで下がったというのは本当に大変な状況だと思いますが、冷静に考えて みると、実は既に現実となっている姿がこのまま変わらなければ、社会全体がこういう ような人口構造になっていくということが冷静に示されたというふうに見ることもでき るというふうに思います。  私が一番重く受けとめたのは年少人口の比率のところでした。既に日本の子供人口と いうのは11.8%で、世界で最も少ない比率になっていますが、中位仮定でも8.4%、過去 の経緯のように低位に近い数字で推移したら6.6%になるかもしれないと。全体人口の中 で1割にも満たない割合しか子供がいない社会が果たして健康に元気に育つ環境なのか という気もします。  子供にとっては一緒に育つ子供仲間がいてこそ健全に育つということが指摘されてい ますが、こんな社会の姿が現実になった時、次の世代の子供たちがきちんと育っていく のか、こうしたこと一つとっても、私たちの社会が持続可能性を失いつつあるという事 実をきちっと直視する必要があるというふうに思っています。  これまでも少子化についてのさまざまな議論はあったけれども、社会全体で取り組ん だことといえば、できる範囲の対策、さほどの財政的な影響もない範囲でのやりくりと いうような対応しかとってこなかったということを、ここで改めて教えてみる必要があ るのではないでしょうか。このトレンドをどうするのかということを、国民も政府も政 治リーダーも非常に問われているなというふうに思います。 (廣松部会長)  ありがとうございました。それでは金子部長から簡単にお答えをいただきたいと思い ます。 (金子人口動向研究部長)  死亡の幅のことでございますけれども、これまでの考え方では、死亡の状況、寿命の 延びというものが比較的安定した推移をするというように、各国とも、あるいは学界の 方でも見ていたわけでございますけれども、我が国のこの5年間の延びというのは、そ ういった定説的な見方も覆すような延びをいまだに続けているということで、やはり将 来についても不確定な要素というものはあるだろうという考え方から幅を設けたという ことでございます。  しかしながら、出生における行動的な変化、選択によって変わるものというものでは ありませんので、統計的な変動の幅というものを採用しまして、出生に比べると小さな 幅ということになってございます。  全体として不確定性が増したのかということでございますけれども、基本的には死亡 が不確定であると見た分だけ不確定になっているということになります。  以上です。 (廣松部会長)  ありがとうございました。 (山崎委員)  私は三つ質問したのですが、一つしか答えていただいていません。 (金子人口動向研究部長)  はい。65歳以上人口割合に対する出生率、死亡率の寄与率につきましては、現在推計 を行った結果を得たところでございますので、今後分析をしてまいりたいと思います。  それから、参考推計の置きかえ水準の設定ですが、過去においては国際的にそういう 設定の推計が長期的に一般的でありました。ところが、ここにきまして、先進各国とも その置きかえ水準に戻るという推計が少なくなってまいりました。  その是非というのはなかなか難しい議論があろうかと思いますけれども、今回の参考 推計につきましては、比較的わかりやすい機械的な仮定として、出生率、死亡率一定と いたしました。ただし、今後、参考のために、前回のような形で置きかえ水準に戻った 場合等、幾つかのシミュレーションを行う予定でございます。  以上です。 (岩淵委員)  一言だけお願いします。 (廣松部会長)  では一言お願いします。 (岩淵委員)  今いろんな方からいろんな質問がありまして、年金がどうなるのか、これから先の出 生率はどうなるのかという、かねて予想された推計ではあるのですが、現実にこういう ものが出てきた中で、これから先、政府の方は、いわゆる目標値を設定されるかもしれ ませんけれども、今回の予算編成を見ていましても、ある程度の努力はしていると思い ますが、こういう現実に対して対応できるほどの取り組みはなされていないと言わざる を得ない。  そうした中で、目標値を設定するにしても、それなら一体どれくらいのことをやらな ければいけないのかということの基本的な認識が欠けているのではないかというふうに 思いますので、政府側から、今後の取り組み姿勢といったようなものをお聞かせいただ きたいと思います。  (廣松部会長)  この点につきましては政策統括官の方から御発言をお願いします。  (薄井政策統括官)  最後に御礼のごあいさつを申し上げようと思ったのですが、その前に御質問もござい ましたので、それも含めて少々お話をさせていただきます。  お手元に参考資料というものが配られているかと思います。これは、今、研究所の方 でまとめられました人口推計につきまして、私どもが簡単に説明するためにまとめたも のでございます。その最後の紙をご覧いただきたいと思います。  既にこの場でも御説明を申し上げておりますけれども、一つは一番上の箱にございま すように、潜在出生率を前提とする仮定人口試算というものの実施、これは人口構造に 関する特別部会を設けまして、今、御議論いただいているところでございます。  結婚なり、あるいは出生に関する意識調査、アンケート調査の結果を見る限り、今の 現実の姿、今回の新しい人口推計は過去のデータの将来に向かっての投影ということで あるわけでございますけれども、過去のデータ、実績というものが、必ずしも国民の皆 様が望まれた結果、そうなっているのか。やはり壁が取り除かれればもう少しこれが上 がっていくということが考えられるだろうということで、国民の希望が一定程度かなっ た場合の将来の人口の姿について仮定的に試算をしていくということで考えているとこ ろでございます。  これにつきましては、年が改まりますけれども、1月の下旬を目途に部会での御議論 を経まして公表したいと考えているところでございます。  それから今、岩淵委員からお話がございました少子化対策の関係でございますが、既 に今回の人口推計はかなり厳しい少子高齢化の姿を示すものになるということが見込ま れたところでございまして、今日、19年度予算の政府原案の内示があるわけでございま すけれども、それにつきましては、それで十分かといった御意見もあろうかと思います けれども、いろいろと項目を取り込んであるところでございます。  それから先ほど申し上げました潜在出生率を前提とする仮定人口試算、壁が取り除か れたらと申し上げましたけれども、やはりどこが壁なのか、結婚についての壁、あるい は出産についての壁、それぞれがあろうかと思います。それを取り除くためには何が有 効なのか。必ずしも予算が伴うものだけではなく、働き方の問題であるとか、いろいろ とあろうかと思いますけれども、そのための効果的な策というものについては、引き続 き、これは議論の段階ではなく取り組まなければいけない段階だと思いますけれども、 取り組んでまいりたいと考えているところでございます。  最後に年金財政との関係で山崎委員からも御質問がございました。前回の年金改正は 平成16年でございましたので、5年後というのは平成21年ということになります。それ につきまして、法律の規定に基づきます財政検証というものをやっていかなければいけ ませんけれども、これにつきましては人口の要因もございますが、一方で経済の要因、 物価、賃金、あるいは運用利回りといった要因もございます。こういったことも含めま して、近く社会保障審議会の年金部会において、財政検証の議論を再開していただくと いうか、開始していただくということで考えているところでございます。  ただ、平成21年というとまだ2年も先ということになりますので、やはり今回こうい う姿が出ましたら、それを踏まえてということが一つと、それからやはり年金財政につ きましては経済前提の部分もございます。運用利回りなどはかなり前回の前提よりは高 く推移しているというところもございますので、そういったことなども含ました粗々と した試算というようなものを、これも年が改まりますが、1月末を目途に厚生労働省の 方で作業したいと考えているところでございます。  以上がこれからの取り組みということでございますけれども、最後に御礼のごあいさ つを申し上げたいと思います。  今日は本当に年末のお忙しい中をお集まりいただきまして大変恐縮に存じております。 また、推計の結果がいつ整理できるかというところもございましたので、会議の日程が 固まるのが遅れまして、何日もリザーブをさせていただきましたことについて御迷惑を おかけしたと思います。おわびを申し上げたいと思います。  また、今日は必ずしも十分な御審議の時間がとれなかったこともおわび申し上げなけ ればいけないかと思います。御質問等があれば、また事務局の方増えお寄せいただけれ ばと思います。  そういったことで、今年の6月から、廣松部会長を初め委員の皆様方、それから各省 庁の幹事の方々には、長期にわたりまして将来推計人口の前提について御審議を賜りま したことにつきまして、誠にありがとうございました。この場をお借りいたしまして厚 く御礼を申し上げたいと思います。  今後、この人口推計を念頭に各種の施策を考えることになるわけでございますけれど も、皆様方には引き続きさまざまな局面で御指導、御助言を賜りたいと存じます。今後 ともよろしくお願いを申し上げまして、御礼のごあいさつとさせていただきます。どう もありがとうございました。  (廣松部会長)  この会を閉じるに当たりまして、部会長としても委員の方々に一言御礼を申し上げた いと思います。  この6月から、今日を含めまして5回にわたり、大変熱心な御討議をいただきました。 その結果として、今日説明をいただいたような新しい将来人口推計ができ上がりました。  結果としてはかなり厳しいものであるということは認めざるを得ないと思いますが、 ただ、先ほど御説明いただきましたとおり、出生率に関しても死亡率に関しても、より 精緻に仮定を設け、その上で計算をしていただいた結果でございます。これが今後、少 なくともあと5年の間は日本の将来人口を見通したものとして、すなわち次回の推計が 行われるまでの間、将来人口の推計値として使われることになります。  この間、皆様方にいただきました大変熱心な御討議及び御協力に関して、部会長とし て御礼を申し上げた上でこの会を閉じさせていただきます。長い間、どうもありがとう ございました。 (終了) 照会先 厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室 代)03−5253−1111(内線7774、7692) ダ)03−3595−2159 国立社会保障・人口問題研究所人口動向研究部 代)03−3595−2984(内線4474、4475) ダ)03−3595−2992