06/10/12 第34回厚生科学審議会科学技術部会議事録     第34回厚生科学審議会科学技術部会     議 事 録     ○ 日  時  平成18年10月12日(木)14:00〜16:00     ○ 場  所  厚生労働省 専用第21会議室 (17階)     ○ 出 席 者    【委 員】 矢崎部会長     今井委員 井村委員 岩谷委員 垣添委員 加藤委員 北村委員     笹月委員 竹中委員 永井委員 西島委員 松本委員 南 委員     宮村委員       【議 題】   1.平成19年度科学技術関係予算の概算要求について   2.平成19年度厚生労働科学研究費補助金公募研究事業について    3.遺伝子治療臨床研究について   4.研究開発機関の評価結果等について   5.研究費の不正経理等への対応について   6.厚生労働科学研究費補助金配分機能の施設等機関への移管について   7.その他    【配布資料】    1.平成19年度科学技術関係予算の概算要求について    2.平成19年度厚生労働科学研究費補助金公募要項(案)    3−1.自治医科大学附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画について    3−2.自治医科大学附属病院の遺伝子治療臨床研究に係る第一種使用規程について    4.研究開発機関の評価結果等について(国立長寿医療センター研究所)    5−1.厚生労働科学研究費補助金の不正経理への対応について    5−2.厚生労働省の研究活動の不正行為への対応について    6.厚生労働科学研究費補助金配分機能の施設等機関への移管について    参考資料1.厚生科学審議会科学技術部会委員名簿    参考資料2.厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針    参考資料3.厚生労働省の平成19年度研究事業に関する評価(概算要求前の評価)    参考資料4.厚生労働科学研究費補助金に係る歳出予算の繰越しの取扱いついて ○林研究企画官   定刻になりましたので、傍聴の皆様にお知らせをいたします。傍聴にあたりましては 注意事項をすでにお配りしていると思いますが、その記載事項をお守りくださいますよ う、お願いいたします。  ただいまから、第34回「厚生科学審議会科学技術部会」を開催いたします。委員の先 生方にはご多忙の中、お集まりいただきどうもありがとうございます。本日は岸委員、 木下委員、黒川委員、中尾委員からご欠席のご連絡をいただいております。また、北村 委員、永井委員が他の委員会の関係で、3時以降にお見えになるとのことですが、委員 20名のうち、現在でも出席委員は過半数を超えており、会議が成立することをご報告い たします。  次に、委員の変更についてご報告いたします。国立医薬品食品衛生研究所所長の西島 正弘先生が、今回新たに委員にご就任になっております。次に事務局側ですが、9月1 日付けで異動がありましたのでご紹介をいたします。私の左隣、技術総括審議官 西山 正徳です。その隣、厚生科学課長 藤井充です。さらにその隣、健康危機管理官 桑島 昭文です。  また、本日の議題4の「研究開発機関の評価結果等について」の関係で国立長寿医療 センター研究所副所長の柳澤先生においでいただいておりますので、ご紹介申し上げま す。  続いて本日の会議資料の確認をいたします。「第34回厚生科学審議会科学技術部会議 事次第」というA4、1枚紙の下半分に、配付資料の記載があります。資料1「平成19 年度科学技術関係予算の概算要求について」。資料2が少し部厚い資料で「平成19年度 厚生労働科学研究費補助金公募要項(案)」。資料3−1が「自治医科大学附属病院の 遺伝子治療臨床研究実施計画について」、3−2が「自治医科大学附属病院の遺伝子治 療臨床研究に係る第一種使用規程について」です。資料4が「研究開発機関の評価結果 等について」ということで、今回は国立長寿医療センター研究所です。 資料5−1「厚生労働科学研究費補助金の不正経理への対応について」、資料5−2が 「厚生労働省の研究活動の不正行為への対応について」。資料6が「厚生労働科学研究 費補助金配分機能の施設等機関への移管について」というA4、1枚紙です。  あとは参考資料1から4まで、部会の「委員名簿」、「厚生労働省の科学研究開発評 価に関する指針」、参考資料3「厚生労働省の平成19年度研究事業に関する評価(概算 要求前の評価)」は、前回部会でご審議いただいたもののリバイス版です。参考資料4 は「厚生労働科学研究費補助金に係る歳出予算の繰越しの取扱いについて」の通知です。 資料は以上ですが、もし欠落等がありましたら、事務局までお知らせいただきたいと思 います。それでは矢崎部会長、以降の議事進行をよろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長   今日はご多用のところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。10月に 異例な暑い中で、クールビズが終わったのが誠に残念で、このようなラフな格好でお許 しください。それでは議事に入ります前に、最初に交代された事務局を代表して、西山 技術総括審議官からご挨拶をお願いいたします。 ○西山技術総括審議官   ただいまご紹介いただきました技術総括審議官の西山でございます。前職は防衛庁の ほうにおりまして、2年1カ月ほど、防衛庁の防衛参事官ということで、現在26万人の 陸海空軍がおりますが、約1万人が医官、看護官で、そういう方々と仕事をしてまいり ました。  私がここでご挨拶するよりも、先生方のほうがお詳しいと思いますが、一応最近の状 況についてご説明を申し上げます。ご案内のように政府では、科学技術創造立国の構築 を国の最優先課題の1つとして掲げております。国際競争力のある研究成果の創出を目 指して、ライフサイエンスなどの重点分野における研究を進めております。例えば、平 成18年7月6日に政府与党で決定されました経済成長戦略大綱ですが、ここでは基盤基 礎研究、臨床研究及び基礎研究から臨床研究への橋渡し研究ということで、これを推進 していくこと。さらには臨床研究基盤の整備、治験環境の充実等の国民に医薬品あるい は医療機器を迅速に届けるための環境整備を行うこととされています。こういった領域 はまさしく厚生労働省の本来職務でございます。我が省への期待はますます高まってき ているというところです。  また、今回は第3期科学技術基本計画と、それに基づく分野別推進戦略が本格実施さ れて、最初の概算要求となっております。私どもとしては最も密接にかかわるライフサ イエンス分野では、がん研究、新興・再興感染症対策、あるいは臨床研究や臨床への橋 渡し研究等、戦略重点科学技術として取り上げられております。先生方もご承知のとお りですけれども、これら一層の振興を図ってもらいたいと考えております。  厚生労働省の科学技術政策を総括する立場から、全力で取り組んでまいりますので、 委員の先生方のご理解、ご支援を賜りますよう、引き続きよろしくお願いを申し上げま す。 ○矢崎部会長  どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。それでは議事に入らせ ていただきます。第1の議案は「平成19年度科学技術関係予算の概算要求について」で す。事務局から説明をお願いいたします。 ○林研究企画官   資料1です。1頁目に「平成19年度の厚生労働省の科学技術研究の推進の基本的考え 方」というタイトルのポンチ絵があるので、ご覧ください。平成19年度の科学技術関係 予算は、これまでも本部会でご報告してきた、第3期科学技術基本計画と、それに基づ く分野別推進戦略、本年6月に総合科学技術会議から示された資源配分方針に沿って、 厚労省としては「健康安心の推進」「健康安全の確保」「先端医療の実現」の3つを柱 として、概算要求を行っております。要求額は平成19年度科学技術関係予算全体で1,491 億円、対前年度比14%増、そのうち厚労科研費補助金の部分が519億円、21%増という 要求になっています。  3つの柱ごとに主なところをご紹介します。健康安心の推進ですが、(2)のがんの 予防・診断・治療法の開発が71億円。健康安全の確保では(1)の新興・再興感染症、 これは肝炎対策、あるいは新型インフル対策などを含む新興・再興感染症対策ですが、 これがやはり71億円。先端医療の実現のところでは、(1)医療機器の開発を含む先端 医療の実現のための基盤技術の開発ということで114億円。(2)ライフサイエンス分 野の推進戦略で戦略重点科学技術にもなっている臨床研究の推進のためのもので、治験 を含む臨床研究基盤の整備の推進に51億円となっています。  この後、私ども財務省との間で予算編成の折衝を行っていくわけですが、19年度は科 学技術が特別扱いされる保証はなく、今後厳しい査定を受ける場面も出てくるかと思い ます。  2頁に19年度概算要求の概要を一覧表の形でまとめています。総額1,491億円、科学 技術振興費全体の中には厚労科研費補助金を含む一般会計部分のほかに、国立高度専門 医療センター特会などの特別会計もあり、ここに記載したような内訳となっています。 健康フロンティア関連は19年度は約292億円です。  3頁は19年度の厚労科研費補助金の概算要求の概要です。全部で4分野、17事業の 内訳を示しています。対前年度比率は例えば臨床研究推進に関連している医療機器開発 推進研究、あるいは医療技術実用化総合研究、子ども家庭総合研究、がん、新興・再興 感染症、健康危機管理・テロリズム対策システム研究といったところを中心に、要求額 の伸びが大きくなっていることが、この表からお分かりいただけるかと思います。  同じく「組替」と記載されている事業がありますが、今回は大きく健康危機管理の研 究と臨床研究の推進に関連する先端的基盤開発研究、この2つで事業の組替を行ってい ることから、このような記載になっています。 ○矢崎部会長   概算要求について、いまのお話で何かご意見はございますでしょうか。これは科学技 術関係予算は、概算要求全体で+14%で、厚労科研費は+21%要求されたのですね。 ○林研究企画官   そうです。厚労省の場合はどうしても社会保障関係の経費というのが大部分を占めて いるため、研究費を含む裁量的経費は少なくなってきます。その皺寄せを受けるところ が他省に比べて大きいという事情はありますが、第3期科学技術基本計画では5年間の 政府研究開発投資を25兆円とすることが謳われていますし、他省もライフサイエンス研 究について力を入れると言っていますので、厚労省も負けないよう頑張っていきたいと 思っています。 ○矢崎部会長   よろしいでしょうか。ともかく研究費で生み出すアウトカムがしっかり評価に耐え得 るアウトカムを全体で出していかないといけない。それが結果的に予算に結び付くとい うことで、研究費をいただいた方には、さらに一層ご努力いただくということで、この 概算要求についてはよろしいでしょうか。 ○矢崎部会長   どうもありがとうございました。それでは2つ目の議題である「平成19年度厚生労働 科学研究費補助金公募研究事業について」、ご審議いただきたいと思います。それでは 事務局から説明をお願いします。 ○林研究企画官   資料2は「平成19年度厚生労働科学研究費補助金公募要項(案)」です。頁数が全体 で162頁あり、説明が少々長くなることをご容赦いただきたいと思います。基本的には 新たに18年度から追加変更した部分を中心に説明したいと思います。1頁のIの「厚生 労働科学研究費補助金の目的及び性格」です。平成19年度公募研究事業が1から16ま で列挙されています。枠の上の下線部分にあるとおり、厚労科研費補助金は「補助金適 正化法」の適用を受けるものですので、この公募要項に記載されている諸条件に従って 実施をしていただく。それが守られなければ必要な措置をとることになります。 下線部※の部分ですが、公募は本来は予算が成立した後に行うべきものですが、一方で できるだけ早く研究費を交付すべし、という総合科学技術会議からの指摘もあるので、 予算成立前に見込みの形で公募を行うことから、予算の成立状況によっては、新規採択 予定課題数が、この公募要項に書かれている数字を下回ることがあると書いています。  2頁のII「応募に関する諸条件等」です。1)厚生労働科学研究費補助金において不 正経理等を行った場合、というところがあります。ここに、以前この部会でもご報告し ましたが、補助金の交付制限がどういう場合に何年かかるのかということを、今回新た に追加しています。  3頁の※で始まる「不正経理等については」というパラグラフがあります。研究費の 不正経理について、平成18年8月31日に、総合科学技術会議から「公的研究費の不正 使用等の防止に関する取組について(共通的な指針)」が出されており、それを受けて、 今後厚労科研費補助金の取扱規程等に反映する予定だということを、その共通的指針の URLとともに、ここに記載しています。いまのは不正経理等の話であるのに対して、 3頁から4頁にかけては研究上の不正についてです。これも現在指針等を私どもで検討 中で、今後、19年度の研究費の取扱規程等に反映する予定であるということを、ここに 書いています。  7頁のウ「研究計画策定に当たっての研究倫理に関する留意点」というところで、下 線を引いてあるところがあります。ここに本年から疫学研究の指針等の見直しを私ども は開始することとしており、それに伴って指針等の遵守状況について、研究者の方々に も調査に協力していただくことがある旨を追記しています。  ○で遵守していただかなければならない指針等を列記してありますが、先般この部会 でもご審議いただいたヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する倫理指針と、動物実験等の 実施に関する文科省、厚労省、農水省各省の指針を追加しています。  エは「臨床研究登録制度への登録について」で、厚労科研で介入型の臨床研究、臨床 試験を行う場合には、ここに挙がっている臨床研究登録システムに登録をしていること が条件になることを明確にしています。  8頁の(5)提出期間です。ここは空欄になっていますが、本日もしこの公募要項を ご了承いただければ、今月末からおよそ1カ月半、厚労省のホームページを利用して、 公募を実施する予定です。(6)提出先です。厚労省内の各事業の所管課のほか、FA 化した事業については、第3次対がん総合戦略研究事業は国立がんセンターがん対策情 報センター、こころの健康科学研究事業は国立精神・神経センター、地域健康危機管理 研究事業は国立保健医療科学院の3つの事業と各FAの連絡先を記載しています。18年 4月から交付事務など、業務の一部を厚労省所管の機関に移管する、いわゆるFA化を 進めていますので、この3事業に関しては研究計画書を直接FAに提出していただくこ とになります。  9頁の(9)その他のアの※で下線を引いてある部分です。これは前々回この部会で、 研究成果の自己評価をご審議いただいた際に報告した、研究成果を継続的に評価するた めの「行政効果報告」に関する注意書きです。研究者の方々に、研究により得られた成 果を行政効果報告WEBに必ず登録してくださいという注意喚起をここで行っていま す。  12頁から13頁に照会先の一覧を示しています。12頁の2「先端的基盤開発研究事業」 は先ほど申し上げましたように、今回は事業の組替を行っているため、(1)から(3) までは(仮称)という語が付いています。また、13頁の16の「健康危機管理対策総合 研究事業」も同じ理由で(仮称)が付いています。  15頁からが各公募研究事業の概要等で、中長期的な厚労科研の在り方に関する専門委 員会中間報告に基づき、18年度からは厚労科研を5つの研究類型に整理しましたが、こ の公募要項の中では「指定型」「戦略型」「プロジェクト提案型」の3つを除いた残り 2つについて、公募を行うことが書かれています。2「若手育成型」については、将来 の厚労科学研究を担う若手研究者の育成を促進するために、平成19年度4月現在で満 37歳以下の方々を対象に公募を行う予定にしています。  15頁の中程から「各研究事業の概要及び新規課題採択方針等」になります。行政政策 研究事業ですが、そのうち政策科学総合研究事業では、この事業概要に人文・社会科学 系を中心に、人口・少子化問題、社会保障全般に関する研究を行うものです。19年度は 特に少子高齢化に対応して、(1)社会・経済構造等の変化が社会保障に与える影響に関す る調査研究。最近所得格差の拡大をめぐる議論が盛んになっていますが、これに対応し て、(2)世帯・個人の経済・生活状況と社会保障に関する研究。(3)社会保障分野における 厚生労働行政施策の効率的な推進等の検証に関する調査研究、この3つについて募集す ることとし、一般公募とともに一部若手枠も設けることとしています。  次頁から具体的な課題を挙げています。19年度は行政政策研究に限らず、厚労科研全 体を通じ厚労省がそのミッションに照らして、一体各研究においてどういったことを求 めているのかということが、応募される研究者にも分かりやすく伝わるよう、できるだ け具体的な説明を各課題の下に留意点として付けています。今回はそのようなわけで、 公募要項も全体のボリュームが18年度までのものに比べて少し増えています。  18頁、イの「統計情報総合研究事業」です。19頁の上から3段落目に、保健、医療、 福祉、生活衛生、労働安全衛生等の厚生労働の各分野における統計調査の調査手法、項 目の改善やITを活用した高度処理、高度分析、統計データの効果的な情報発信に関す る研究といったことを行うものです。19頁の※にあるように、本課題は厚労科研費補助 金の電子システム化に向けて、申請書作成支援システムを用いて申請をしていただくこ とになります。新規課題採択方針としては、特に「統計行政の新たな展開方向」という 報告書が出ていますので、そちらを踏まえた応募を優先して評価をすることとしていま す。  20頁、(2)社会保障国際協力推進研究事業です。社会保障にかかる国際協力を、よ り重点的・戦略的に推進していくために、特にWHO、UNAIDS等の国際機関への 拠出のあり方に関する研究、あるいは国際保健分野での知識マネジメントに関する研究、 21頁ですが、そういった2つの研究に重点を置いて公募を実施することとしています。  21頁下から22頁にかけて、先端的基盤開発研究事業の再生医療等研究事業(仮称) があります。こちらは臨床応用に近い研究の支援に重点化して、安全・品質管理を含め た再生・移植医療技術の開発とその臨床応用を目指す研究を行うこととしています。特 に再生医療・移植医療における安全性・倫理性確保については若手枠を設ける予定です。  23頁、「研究計画書を作成する際の留意点」という項目があります。ここの(4)と(5)に 記載されているように、介入を行う臨床試験を実施する場合には、研究開始までに臨床 研究登録機関に登録を行っていただく。妥当なプロトコールが作成され、臨床研究倫理 指針等に沿って、倫理審査委員会の承認が得られていること、患者または家族に必要事 項が説明され、文書による同意が得られていること。モニタリング・監査・データマネ ジメント等を含めた研究体制がきちんとできていることなどを求めています。これは平 成19年度の他の臨床研究課題においても、共通のリクワイアメントとして義務付けてい くこととしています。  24頁の(2)創薬基盤推進研究事業(仮称)です。この中にはヒトゲノムテーラーメ ード研究(仮称)、生体内情報伝達分子解析研究(仮称)と、25頁に、生物資源研究(仮 称)があり、この3つから構成されています。  まず、ヒトゲノムテーラーメード研究は、疾患関連遺伝子や医薬品の反応性、安全性 に関与する遺伝子等の知見を基に、がん等の日本人に代表的な疾患について、個人の遺 伝子レベルの差異を踏まえた診断、治療法の実用化を目指した研究を行うというもので す。  生体内情報伝達分子解析研究のほうは、昨年から取り上げていますが、蛋白について いる糖鎖が関与する生体内反応メカニズムに関する研究成果を応用して、画期的な医薬 品の開発に結び付けようというものです。  一方、25頁の生物資源研究は、19年度から新たに立ち上げるもので、ヒトの細胞や遺 伝子、疾患モデル動物、薬用植物など、疾患・創薬研究に関連した生物資源の開発等を 行って、厚生科学研究の基盤の整備を図るもので、生物資源では開発生産された生物資 源が、広くライフサイエンス研究に活用されることが重要であることから、本研究に関 しては27頁のエに記載してあるように、生物資源の普及及び解析データの公開等の事業 によって、創出される成果の活用、生物資源の使用条件等について、連絡調整等を行う 運営委員会を今後立ち上げて、そこに参加していただくこととしています。  (3)医療機器開発推進研究事業(仮称)は、昨年までのナノメディシン研究がその 内容で、超微細技術を医学への応用により、非侵襲・低侵襲の医療機器の研究・開発を、 民間企業と連携して推進することを目指した研究です。このうち28頁の(1)の超微細画像 技術と、(2)の低侵襲・非侵襲医療機器の開発では、若手枠も設ける予定です。また、(3) の疾患の超早期診断・治療システムの開発に関する研究は、29頁にあるように、経産省 と連携して行っていくために、NEDOとのマッチングファンドで実施する予定です。  また、ここには出てきませんが、医療機器開発推進研究事業には、ナノメディシンの ほかにこれまで身体機能解析補助代替機器開発研究事業、いわゆるフィジオームと言っ ていた研究事業も含まれているのですが、フィジオームについては19年度は公募しない ため、今回の要項の中には出てきません。  30頁の3「臨床応用基盤研究事業」の(1)医療技術実用化総合研究事業です。事業 概要に、我が国で生み出された基礎研究の成果を、臨床現場に迅速かつ効率的に応用し ていくために必要な技術開発、探索的な臨床研究等を推進するものです。31頁の公募に 当たっては、「がんに関連する研究は除く」とありますが、これはがんと再生医療に関 する研究を除きます。がんと再生医療に関する研究は、それぞれの研究事業の中でやる という趣旨で、ここでは除かれているということです。  31頁、「臨床研究基盤整備推進研究」は18年度から開始したもので、我が国で行わ れる臨床研究の質的向上を目標に、医療機関、教育機関等の臨床研究を支援する基盤整 備を、主に人材育成の観点から行う研究ということで、中身は「医療機関における臨床 研究実施基盤整備研究」と、教育機関における「臨床研究基盤をつくる教育プログラム の開発研究」の2つを両輪として実施するものです。採択に当たっては、各機関の実績、 研究計画の具体性、研究成果の長期的活用内容といったものを重視して採択していくと いうことと、データマネジメントの基盤整備など、臨床研究データの質的向上を図るこ とに重点を置いた研究は、特に多施設共同研究の実施体制整備に資するような研究を優 先することとしています。  「臨床試験推進研究」がありますが、こちらは18年度までは小児疾患臨床研究という 名で、小児疾患に関する臨床研究を支援していたものですが、19年度は少し範囲を拡大 して、医薬品だけでなく医療機器も対象にして、適応外の効能・効果、用法・用量、あ るいは小児を対象とした効能・効果等で、特に学会等からも要望が高いものの実用化に つながり、かつ倫理性、科学性が十分に担保されたような質の高い臨床試験の実施をサ ポートしていくという内容に衣替えするものです。  35頁の4「長寿科学総合研究事業」です。高齢者に特徴的な疾病・障害の予防、診断、 治療並びにリハビリについて研究を行い、また介護保険制度に関しても介護ケア確立等 の社会科学的検討及び保健・医療・福祉施策の連携方策に関して研究を行うものです。 内容的には「老化・老年病等長寿科学技術分野」「介護予防・高齢者保健福祉分野」「認 知症・運動器疾患等総合研究分野」の3つの分野で課題を募集しますが、特に認知症・ 運動器疾患分野では、若手育成枠も設ける予定です。  40頁の5「子ども家庭総合研究事業」です。41頁の新規課題採択方針にあるように、 晩婚化、少子化、不妊治療の普及などの社会環境を踏まえて、厚生労働行政において解 決しなければならない諸課題の解決のための、新たな施策の企画と推進のために応用が 可能な研究を採択します。特に基礎から臨床への橋渡し研究や、大規模な社会医学的研 究について公募を行う予定です。また、より短期間で成果を得られる研究を優先的に採 択します。  その中でも重点課題として、不妊の原因究明や生殖補助医療の医療技術の標準化、安 全性の確立や不妊治療により生まれた子の長期予後の検証を行うための大型多施設共同 研究で、これについて本年度試行的な調査研究を開始することとしています。また、あ と一歩で原因究明と治療法の確立が期待される子どもの先天性疾患や慢性疾患について も、大型多施設共同研究について募集を行うこととしています。  43頁の6「第3次対がん総合戦略研究事業」です。これは第3次対がん総合戦略研究 事業の中に、狭義の第3次対がん総合戦略研究事業と、がん臨床研究事業の2つがあり ます。まず、狭義の第3次対がん総合戦略研究事業ですが、公募要項でいうとかなり多 くの頁にわたっており、44頁から56頁まで、分野1から7まであり、分野1が「発が んの分子基盤に関する研究」、分野7が「がんの実態把握とがん情報の発信に関する研 究」ですが、こういった非常に幅広い分野をカバーする研究を行うものです。  平成19年度は特にがん対策基本法が制定されたことなどを受けて、例えば研究分野の 7、患者・家族・国民の視点に立ったわかりやすく有用ながん情報の提供体制の確立に 資するような研究といったものも取り上げることとしています。  一方、57頁のがん臨床研究事業ですが、主に政策分野に関する分野1の研究と診断・ 治療分野に関する分野2の研究があり、分野1では質の高いがん医療水準の均てん化の 推進を目標に、がん専門医の育成、がん診療連携拠点病院の機能強化と診療連携の推進、 緩和ケアや精神的ケアのための体制整備の促進に関する研究を行うほか、がん予防の観 点からたばこ対策に関する研究や、医療経済学的な視点から効率的な医療体制整備に資 する研究も行うこととしています。  一方、分野2はがんの標準的治療法や延命効果、療養の質を向上させる効果的治療法 の開発を推進する多施設共同研究を優先的に採択することとしています。また、分野1、 2の両方に共通して小児がんに関する研究は引き続き行っていく。若手枠も設けるとい うことです。  61頁、7「循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業」です。新規課題採択方針にあ るように、生活習慣病の予防、診断、治療について、質の高い研究を優先的に採択する とともに、健康フロンティア戦略、医療構造改革に掲げられた生活習慣病対策の実現に 向け、実践的な指針の作成や、新たなエビデンスの構築に資する研究を推進するという ことです。また、循環器疾患の臨床研究として、日本人におけるエビデンスの構築につ ながる大規模な多施設臨床研究を推進することとしています。若手育成枠も設ける予定 です。  64頁、8の(1)障害保健福祉総合研究事業です。事業概要にあるように、障害者自 立支援法による新たな障害保健福祉制度の枠組みを作ろうとしているところで、そのた めの地域生活支援を理念として、障害全般について予防からリハビリに至る適切なサー ビス、社会参加の促進、地域における居宅・施設サービス等の提供体制づくりなどの研 究を進めることとしています。  67頁、(2)の感覚器障害研究事業です。視覚、聴覚・平衡覚等の感覚器障害におけ る研究開発を進め、感覚器障害の軽減や重症化の防止、機能の補助・代替等に関する成 果を障害者の方々にフィードバックすることを目標に、67頁から68頁に挙がっている 課題について研究を行うものです。  69頁、エイズ対策研究事業ですが、事業概要にあるように平成9年から多剤併用療法 が行われるようになって、HIV・AIDも一応コントロール可能な慢性感染症となり つつありますが、まだ根治的治療法、あるいは予防薬が見つかっていないということで、 引き続き最新の治療法の開発、治療ガイドラインの作成等が必要とされています。また、 平成8年のHIV訴訟の和解を踏まえた恒久対策の一環として、予防、医療の両面にお ける総合的なエイズ対策研究も求められています。このような背景の下、平成18年度か らエイズ予防指針が改正され、今後5年間のエイズ対策の新たな方向性が示されている ので、その実現に資する研究を優先的に採択することとしています。  71頁、(2)肝炎等克服緊急対策研究事業とあります。B型、C型肝炎対策がいまは 強く求められていますが、その中で事業概要にあるように、肝炎ウイルスの病態、感染 機構の解明を進めるとともに、肝炎、肝硬変、肝がん等の予防、診断、治療法等につい て研究を進めるものです。  74頁、(3)新興・再興感染症研究事業です。事業概要にありますが、新興・再興感 染症に関して発症機序や診断法、治療法の開発、病原体の管理体制強化のためのバイオ セキュリティーの研究。感染症が発生した場合の、国民の不安を解消するためのリスク コミュニケーションのあり方等に関する研究等を総合科学技術会議の下で関係府省と連 携して進めていくというものです。  78頁、10「免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業」です。これはリウマチ、気管支 喘息、アトピー性皮膚炎等の免疫アレルギー疾患の発症原因と病態との関係を明らかに し、予防、診断及び治療法に関する新規技術を開発するとともに、既存の治療法の再評 価を行って、より良質で適切な医療の提供を目指すということです。  80頁、「こころの健康科学研究事業」は新規課題採択方針にあるように、精神疾患、 神経・筋疾患について、データの蓄積と解析を行うことで、病因・病態の解明、画期的 な予防、診断、治療法等の開発のための研究、及び心身喪失者等の医療観察法における 処遇、医療等に関する研究・精神保健医療福祉の改革ビジョンの成果に関する研究など を進めるものです。神経・筋疾患分野は若手枠も設ける予定です。  83頁、12「難治性疾患克服研究事業」です。新規課題採択方針のところで難治性疾患 の克服に向けて特定疾患調査研究分野の範疇に含まれる疾患の臨床調査研究、横断的基 盤研究、治療成績及びQOLを著しく改善させることが期待できる治療法の開発といっ たものを優先的に採択することとしています。  86頁の13「医療安全・医療技術評価総合研究事業」です。87頁の医療システムを構 築・評価する研究、医療安全体制を確保するための研究、医療の質と信頼を確保するた めの研究等を支援し、より質の高い効率的な医療サービスの提供に資することを目的と したものです。特に新規課題採択方針にある「医療提供対策の改革のビジョン」に示さ れた将来像のイメージの実現に資する研究、社会保障審議会医療部会における「医療提 供体制に関する意見中間まとめに」おいて、個別論点となっている研究課題といったも のを優先的に採択する方針です。若手育成枠も設けます。  90頁の14「労働安全衛生総合研究事業」です。新規課題採択方針にあるように、19 年度は特に労働者の健康診断において、効率的かつ疾患の発見に有用な胸部エックス線 検査等の実施方法や対象を明らかにするための研究を実施することとしています。  91頁の15「食品医薬品等リスク分析研究事業」の(1)食品の安心安全確保推進研究 事業です。食品供給行程全般におけるリスク分析のうち、厚労省が担当するリスク管理 及びリスクコミュニケーション並びにリスク評価に必要な科学的知見の収集等を実施す るものです。本研究事業でも食品安全におけるレギュラトリーサイエンスの分野で、積 極的に人材育成を進める観点から若手枠を設けることとしています。  97頁の(2)医薬品・医療機器等、レギュラトリーサイエンス総合研究事業です。事 業概要にあるとおり医薬品・医療機器等の安全性、有効性、品質の評価、及び乱用薬物 への対策に必要な規制に対して、科学的合理性と社会的正当性を付与するための研究を 行うものです。その成果は医薬品・医療機器の承認審査、治験の推進、安全対策に寄与 するだけでなく、有効性、安全性の評価手法・指針等を整備すれば、新たな医薬品・医 療機器の開発の効率化や承認審査の迅速化も促進することにつながるものということ で、19年度は特にこの承認審査の迅速化に向けて、ファーマコゲノミクス等の新たな知 見に基づく評価手法の研究を強化するほか、マイクロドージング、あるいはクリティカ ルパスリサーチといった新たな評価手法等についても研究を行うこととしています。  100頁の(3)化学物質リスク研究事業です。事業概要の2段落に、化学物質の総合 的な評価を加速化し、国際的な化学物質管理の取組に貢献するため、化学物質の迅速か つ効率的な評価手法の開発や戦略的な評価スキームの構築に関する研究を進めるほか、 ナノマテリアルの健康影響評価試験法の開発や有害性発現メカニズムに関する研究も公 募することとしています。  102頁の16「健康危機管理対策総合研究事業(仮証)」の(1)健康危機管理・テロ リズム対策システム研究(仮称)です。平成19年度からは事業の内容を見直し、事業概 要の2段落目にあるように、健康危機管理対策を強化するために基盤技術・オペレーシ ョン手法に関する研究を推進し、(1)機動的かつ体系的な初動体制の確保や、(2)危機情報 の共有・活用のための情報ネットワークの構築といった課題の解決に必要な分野横断的 な研究を推進することとしています。  104頁の2「健康危機管理に資する情報ネットワークに関する研究分野」という箇所 がありますが、そこから下、(2)の地域健康危機管理研究(仮称)の上まで、ここが その前の頁と重複していたので、削除をお願いします。  104頁の(2)地域健康危機管理研究(仮称)はその下の事業概要にあるように、(1) 地域における健康危機管理体制の基盤を強化・推進する研究、(2)水道等による水供給に おける原水水質事故、災害等に対してもより安全で安定的な水提供の研究、(3)建築物や 生活衛生関係営業等の生活環境に起因する健康危機の未然防止及び適切な対応等に資す る研究等を行う予定です。  以上が課題の概要です。110頁からは今後の公募研究事業の流れ、111頁からは研究費 の積算単価、117頁からは研究計画書の様式と記入例を参考として付けています。かな り長い説明で申し訳ございません。説明は以上です。よろしくお願いします。 ○矢崎部会長   ありがとうございました。いまの説明に何かご質問、あるいはコメントをいただけま すでしょうか。厚生労働科学研究費が相当広い領域にわたってカバーされています。し かも、ある程度目標を定めた研究公募という形をとっているということは、十分にご理 解いただけたと思います。 ○垣添委員   私も大変広い領域がカバーされていることはよくわかりましたが、97頁の(2)の医 薬品・医療機器レギュラトリーサイエンス総合研究事業ですが、ここは主に医薬品のこ とが書いてあるように思います。一方で、新規の医療機器などの開発、特に承認の部分 が我が国で遅れていて、そのために国際競争力が落ちているといった問題点があるとい うことを、かねてから指摘されていますが、その医療機器の部分の配慮は、何か十分に なされていないような気がするのですが、それはいかがでしょうか。 ○林研究企画官   いま垣添委員からご指摘があった点は、総合科学技術会議の分野別推進戦略の検討の 過程でもご指摘があったことです。確かに医薬品に比べて、医療機器のほうはまだそこ までのレベルに達していないということがあります。説明が少し弱かったかもしれませ んが、個別の課題の中では、例えば99頁のいちばん上、医療機器の国際的な動向を踏ま えた品質、有効性及び安全性の評価に関する研究、あるいは医療機器・医用材料のリス クアセスメント手法開発に関する研究ということで、医療機器についても医薬品に追い 付けるよう目配りをしているつもりです。 ○垣添委員   わかりました。よろしくお願いいたします。 ○笹月委員   さっと拝見しただけですのでよく理解しないところもあるかもしれませんが、69頁の エイズ対策のところで、コントロール可能な一般的な慢性感染症に移りつつあるという こと。もう1つは、エイズは予防できる感染症であるということで予防戦略に関する研 究が見当たらなかったのですが。私どもがACCでいつも議論しているのは、これから は予防戦略をきちんと確立してそれを提示することが大事ではないのかということで、 何かそういう項目があればという気がいたしました。 ○矢崎部会長   中で読み取れるような項目はあるのでしょうか。 ○藤井厚生科学課長   70頁の(3)の2つ目のポツに「個別施策層に対するHIV感染症予防対策とその介入効 果の評価に関する研究」とあります。最近は、ハイリスクグループとか、個別のリスク グループごとに予防対策を確立していくべきではないかという方向になっていると思い ますが、そこがここでなされるのではないかと考えております。 ○林研究企画官   これはいまの藤井課長の説明についての補足ですが、エイズはについて戦略研究も別 途やることになっており、その中でも、いま笹月委員からご指摘のあった点は取り上げ ることとしております。 ○矢崎部会長   戦略研究が、がんとエイズで始まるわけですか。 ○林研究企画官   そうです。 ○北村委員   移植医療について、特に膵臓のランゲルハンス島(膵島)移植が始まっており、研究 させるべき課題はまだまだたくさんあるのです。移植関連のことは難病のところにも入 っていないのですが、そういうところはどこかありますか。 ○事務局   23頁の(イ)再生医療のところに入っております。 ○矢崎部会長   21%増えるという予測のもとで課題数や研究費の配分を考えておられるわけですね。 これによって、例えば1題採用というところが消えてしまう可能性もあるわけでしょう か。 ○林研究企画官   この公募課題に関しましては、各研究事業を所管している課に対しては、既存のもの で終了するものが何課題ぐらいあるかということを確認をした上で、スクラップ・アン ド・ビルドを前提として組んでいます。19年度の研究費については増額要求しておりま すが、そこのところはまだ不確定要因があるということも理解した上で、このような構 成にしております。 ○矢崎部会長   予算も限られている中だと思いますが、いま委員の方々からご指摘いただいたような 箇所が、ある程度重点的に配分されるようにご配慮いただければ大変ありがたいと思い ます。それでは、平成19年度の厚生労働科学研究費補助金の公募について、いま説明が ありました資料のとおりに進めたいと思います。ただし今後、字句の修正などがある場 合には、事務局においてこれを完全な形にして持っていきたいと思います。それにつき ましては、必要に応じて、私のほうで確認した上で内容を確定したいと思いますので、 ご承知いただければ大変ありがたいと思います。よろしいでしょうか。                 (異議なし) ○矢崎部会長   どうもありがとうございました。それでは次の議題に移りたいと思います。次は自治 医科大学附属病院の、進行期のパーキンソン病を対象とした遺伝子治療臨床研究実施計 画、これにつきましてご審議いただきたいと思います。まず、事務局から説明をお願い いたします。 ○林研究企画官   事務局から説明をさせていただきます。資料3−1「自治医科大学附属病院の遺伝子 治療臨床研究実施計画について」をご覧いただきたいと思います。表紙をめくっていた だいて、1頁以降が、パーキンソン病遺伝子治療臨床研究作業委員会でご審議いただい た結果の本部会への報告書です。  2頁の1は「遺伝子治療臨床研究実施計画の概要」です。研究課題名は「AADC発現AAV ベクター線条体内投与による進行期パーキンソン病遺伝子治療の臨床研究」。申請年月 日は平成18年1月25日。この部会では2月1日に最初のご審議をいただいております。 総括責任者は(4)にあるように、自治医科大学医学部神経内科学教室の中野教授。  (5)の対象疾患と(6)の研究の概略について簡単に述べますと、パーキンソン病 の原因は、脳内神経伝達物質であるドパミンの不足によってもたらされるとされており ますが、初期の段階ではL-ドーパという経口薬を飲むと、脳内でAADCという酵素の働 きによってL-ドーパがドパミンに変換されて症状も改善するのですが、症状がだんだん 進んでくるとAADCの酵素の働きは弱まり、L-ドーパを飲んでも効かなくなります。そこ で、このような患者を対象に、頭蓋骨に直径1〜2cmの穴をあけて、AADCの遺伝子を外 から注入して補充することによってL-ドーパの治療効果を回復させることを意図して 今回の臨床研究の実施が計画されました。  ベクターの種類は(5)にありますが、国内では初めてのアデノ随伴ウイルス2型 (AAV2)を非増殖性に遺伝子改変したものが用いられております。このAAV2の病原性は これまでに知られておりません。国内で初のウイルスベクター、初の対象疾患というこ とで、本臨床研究の第1の目的は(6)にもあるように、安全性を検証することです。 症例数は全部で6例の予定です。  2頁の下から3頁の頭にかけて(7)その他(外国での状況等)という項目がありま すが、今回の計画とほぼ同じ臨床研究が、米国UCSFで2004年から開始されておりま す。今回の計画より低用量ではありますが、すでに5例に投与されて有効性が示唆され ております。この米国の臨床研究も含めて、海外での非増殖性AAV2の遺伝子治療は、資 料によりますと、計128例ということですが、そこでは現在までに重篤な副作用の報告 はありません。  3頁の2「パーキンソン病遺伝子治療臨床研究作業委員会における審議概要」ですが、 第1回目の作業委員会は本年の3月22日に開催されました。そこでは「本作業委員会の 意見」の2)のAAV2ベクターの安全性、同じく4)の有効性・安全性評価の客観性の確 保、そして6)の生殖細胞へのベクター導入のリスク、そういった点に関して申請者に 照会が出されました。  4頁に進みます。第2回目の作業委員会が8月4日に開催され、このときには、軽微 な資料整備の宿題付きで了承、という結論でした。その後その宿題事項の確認も終了し、 今回の部会に報告する次第となったものです。  5頁は、作業委員会での審議を踏まえた申請資料の主な変更内容です。この作業委員 会での審議を踏まえ、実施計画書や同意説明文書についてです。まず1つ目のポツで、 AAV2ベクターが生殖細胞に導入されてしまうリスクを考慮して、被験者が男性であれば 避妊に同意、女性であれば閉経後に限ること。2番目、3番目のポツで、用量群の数や 症例数の見直しをすること。4つ目のポツ、被験者の適格性及び有効性、安全性評価に 関して、学外のパーキンソン病専門医が加わる判定委員会を新たに組織して、そこで判 定を行うこと。6つ目のポツ、患者への同意取得は治験コーディネーターが行うこと。 いちばん下のポツで、被験者に対する同意説明文書の情報を充実し、被験者に理解しや すい記載に改めることなどの修正が行われております。  9頁以降の資料は、いずれも作業委員会での審議を踏まえて改訂された実施計画概要 書、実施計画書、及び被験者に対する同意説明文書を含む実施計画書添付資料の抜粋で す。140頁以降は、毎回配付している遺伝子治療臨床研究の指針関連の参考資料です。 説明は以上です。ご審議をよろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長   この報告書をおまとめいただいた笹月委員、追加のコメントは何かございますか。 ○笹月委員   いまお話がありましたように、初めてのベクターであるということと、対象疾患も初 めてであるということで慎重に審議しました。安全性の確認を第1の目的とするという ことで承認しました。 ○矢崎部会長   ありがとうございました。それでは、この遺伝子治療に関して、倫理面を含めて総合 的にご議論いただければと思います。  米国のUCSFで行われて、低用量群で有用性が認められたということです。日本人 と外国人では薬の効き方が少し違うようなところがありますが、2つの用量を検討する というのは、どういう措置がとられているのでしょうか。 ○笹月委員   薬の場合には、代謝酵素や排出機構など遺伝子レベルで決まった機構があって、それ に個人差や人種差がある、ということで薬の効き方に差があるということだと思うので すが、遺伝子治療の場合には、むしろベクターの感染力というところで決めているので、 白人と我々とで、あまり問題がないのではないかと思って、そこは議論いたしませんで した。 ○矢崎部会長   そのほかには、よろしいでしょうか。それでは、自治医科大学附属病院の遺伝子治療 臨床研究実施計画については、本部会において、妥当であるという作業委員会の報告ど おりに認めることにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。                 (異議なし) ○矢崎部会長   どうもありがとうございました。  次は、遺伝子治療に伴った生物多様性に関する課題です。「自治医科大学附属病院の 遺伝子治療臨床研究に係る第一種使用規程について」ご議論いただきたいと思います。 まず、事務局から説明をお願いします。 ○林研究企画官   今度は資料3−2です。まず、遺伝子組換え生物による生物多様性影響を防止する目 的のカルタヘナ議定書という国際的な議定書を受けて、国内でもカルタヘナ法という法 律が平成16年から施行されております。  自治医科大学附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画では、言葉が適当かどうか分か りませんが、遺伝子組換えAAV2ウイルスを体内に投与して保持している患者を封じ込め ることができないことから、カルタヘナ法では、開放型での使用(法律でいう第一種使 用)に該当するということで、この試験を開始する前に主務大臣(この場合は厚生労働 大臣と環境大臣)の承認を得る必要があります。遺伝子治療臨床研究に係るカルタヘナ 第一種使用規程の審査については、遺伝子治療臨床研究での手続と同様、厚生労働大臣 が厚生科学審議会の意見を聴取することとなっておりますので、ここでご審議いただく ものです。  資料の1頁以降が、吉倉先生に委員長をしていただいている「生物多様性影響評価に 関する作業委員会」の報告書です。自治医科大学からの第一種使用規程承認申請は、先 ほどご承認いただいた遺伝子治療臨床研究の実施計画書の申請と同じく、平成18年1月 25日に行われました。第1回の部会が2月にあり、3月29日にカルタヘナの作業委員 会が開催され、そこでは、記載整備の宿題付きで了承という結論に至っております。そ の後、先ほどご審議いただいた臨床研究実施計画書の審査の進行を待ちながらその宿題 を終わらせ、今回の部会に合わせてご報告する次第です。  資料の2頁に、作業委員会による遺伝子組換えAAV2ウイルスをこの遺伝子治療に用い る際の生物多様性影響の評価結果がまとめられております。要約しますと、この遺伝子 組換えAAV2ウイルスは非増殖性である。環境中や生体内で増殖性を獲得する可能性は極 めて低く、また、野生型AAV2においても、病原性や有害物質の産生性も知られていない こと等の理由から、生物多様性影響評価において評価すべき事項とされている(1)の (1)〜(4)、すなわち他の微生物に与える影響、病原性、有害物質の産生性、核酸を水平伝 達する性質、このいずれの点についても生物多様性に影響を与えるおそれはないと判断 され、2頁のいちばん下の(2)にあるように、この遺伝子組換えウイルスを申請され ている第一種使用規程に従って使用した場合に、生物多様性影響が生ずるおそれはない、 という結論に至っております。  3頁が作業委員会のメンバー表、5頁以降が作業委員会での審議を踏まえて改訂され た「第一種使用規程承認申請書」です。  今回の臨床研究実施計画では、これまでの国内の遺伝子治療では例のない、手術室内 で頭蓋骨に直径1〜2cmの穴を開けて脳の内部にベクターを注入するという投与方法を とっていることから、これまで承認されている他の遺伝子治療での規定に比べて、例え ばこの資料6頁の(5)あるいは7頁の(6)にあるような、手術室における投与の方 法、それから使用方法の(7)にあるように、手術後の手術室の滅菌方法のところで、 作業委員会からの指示に基づいて、かなり詳細な記載がなされているという特徴があり ます。  9頁以降は、同じく作業委員会での審議結果を踏まえて改訂された「生物多様性影響 評価書」、さらに23頁以降に、毎回配付しているカルタヘナ法関連の参考資料を添付し ております。説明は以上です。よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長   どうもありがとうございました。この報告書についても笹月委員が加わっておられま すが、補足の説明は何かございますか。 ○笹月委員   ここにも記載されておりますように、実際に増殖性を獲得するためには、アデノウイ ルス、野生型のアデノウイルス、ヘルパーウイルス、要するに、ベクターと3つのウイ ルスが同時に存在しないとそういうリコンビネーションが起こらない。増殖可能なウイ ルスが出来る確率は著しく少ない、あるいは自然界では起こり得ないということで、問 題がないであろうということになりました。 ○矢崎部会長   いまの説明で、この報告書を本部会として了承させていただいてよろしいでしょうか。                 (異議なし) ○矢崎部会長   どうもありがとうございました。それでは、今回了承いただきました自治医科大学附 属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画並びに、それに伴うカルタヘナ法に基づく第一種 使用規程につきましては、この科学技術部会から厚生科学審議会に報告することになり ますので、よろしくお願いいたします。  次の議題に入る前に、前回の本部会で国立循環器病センターの評価結果等の報告があ った際に、外部評価委員長の選定について若干意見がございましたので、それに関して 事務局からご説明ください。 ○林研究企画官   前回の部会で、国立循環器病センター研究所の評価結果をご報告いただいた際に、外 部評価委員会の委員長選定の件で指摘がありましたが、その後事務局のほうで厚労省の 科学研究開発評価に関する指針を確認したところ、外部評価委員会の委員長に現役が入 ることは駄目、ということは書いてあるのですが、OBに関する明確な規定はありませ んでした。しかし、前回部会で笹月委員からご指摘がありましたように、外から見て疑 念を抱く方もいらっしゃるかもしれませんので、関係する機関においては、評価の客観 性、公正性がより一層確保できるよう、次回の外部評価委員改選の際には、この点につ いてご配慮をいただければと事務局では考えております。よろしくお願いします。 ○矢崎部会長   今後とも、外部評価委員会を組織するときは、その点を十分ご配慮いただければと思 います。それでは議事に戻りまして議題4、国立長寿医療センター研究所の評価につい て、まず事務局から説明願います。 ○林研究企画官   いつも説明しておりますように、研究開発機関の評価については、厚生労働省の科学 研究開発評価に関する指針に沿って行っていただくということで、今日も参考資料2と してお配りしてありますが、その15頁の下線を付したところ、第1章の中に「研究開発 機関は、各研究開発機関における科学研究開発の一層の推進を図るため、機関活動全般 を評価対象とする研究開発機関の評価を定期的に実施する」と書かれております。そし て、その評価結果を本部会にも報告していただくことになっております。今回、国立長 寿医療センター研究所の評価結果とその対応方針について、同研究所の柳澤副所長にお いでいただいております。柳澤先生、5分程度で説明をお願いいたします。 ○柳澤副所長   国立長寿医療センター研究所の機関評価の概要について説明させていただきます。資 料4をご覧いただければと思います。私どものセンターは、平成16年3月に6番目のナ ショナルセンターとして新たな活動を開始したものでありますが、研究所に関して、昨 年末から数カ月にわたって外部評価を実施していただきました。評価委員に関しては、 資料の1頁にあるように、国内の老化、老年病あるいは社会学の専門家を含めた14名か ら構成され、互選により、東京大学老年科の教授であり日本老年医学会の理事長の大内 先生に委員長に就任していただきました。  全般的な機関の評価に加えて個々の部署、具体的には13の研究部と5つの省令室に関 して、過去3年間、新設したものに関しては新設後から昨年9月までの期間、研究部・ 室の人的な構成、研究の概要や成果、さらには細かいことですが、外部の競争的な研究 資金の獲得状況について、報告をしていただきました。  今回実施した機関評価の作業の流れですが、3頁の2−4にあるように、まず、昨年 11月上旬に、私どもの研究所で作成した研究報告書と、5年を目安として作成した中長 期計画書を事前に評価委員の方々に郵送で配送し、書面による審査を受けました。その 後12月の半ばに評価委員会を実施し、先ほど申し上げたように、各部署の代表者によっ て口頭で報告をさせていただき、それに基づいた質疑がありました。また、当日は私が 案内させていただいて、研究所内の施設に関しても実地の調査をいただいたわけです。 その後、各委員から寄せられた評価表を委員長の下で報告書という形でまとめました。 それを再度各委員の先生方に郵送でお送りし、訂正あるいはコメントの追加等をいただ いたわけです。私どもは、それらで評価を受けた事項に関して、今後どういう形で改善 していくかということを対処方針としてまとめ、6月末に本省に対して提出したわけで す。  今日は非常に限られた時間ですので、本当に概要だけ報告させていただきます。4頁 の「平成17年度外部評価報告書」を見てください。2「総括的評価」を紹介いたします と、全般的な研究レベルに関しては、ナショナルセンターとして、発足後比較的短期的 な期間である割には頑張っているのではないか、というような評価を受けました。しか し、長寿医療というスローガンに合致した研究課題を、病院と研究所の連携で更に積極 的に推進する必要があるであろう。研究の一貫性、連続性、研究全体を横断的に推進す る努力が必要であろう。さらには、学術的な貢献ばかりではなくて、長寿医療を専門と する唯一の国内機関として、長寿医療の広報や普及について、国内はもちろんのこと、 世界に対しても発信する努力が更に必要であろう、というご指摘をいただきました。  運営面に関しましては、連携大学院、これは既にいくつか組んでおりますが、更にそ の構築を進める一方で、外部からの競争的資金を得た上での若手の研究員のリクルート に更に努力するように。職員の雇用に関しましては、任期制を積極的に導入し、国内に おける研究員の流動性を支援する一助となるようにというご指示をいただきました。6 頁にいきますと研究開発分野等々ありますが、時間の関係で省略させていただきます。  私どもは、今回の機関全般にわたる評価に加えて、更に各部門のより専門的な評価を いただくということで、今年度末から3年にわたって、6名の常設委員と6名強の専門 委員をお願いして、3つのグループに分けて部門評価を実施する予定でおります。  今回の機関評価でご指摘いただいた内容に対して、どのような改善策を講じるかとい った対処方針に関しては、今年の年明けから6月ぐらいまで研究所内で協議し、方針を 立てたものを9頁以降に「対処方針」として挙げました。詳細は省略いたしますが、そ の中で2、3すでに実施に移っているものもあります。簡単ですが、以上概略を説明さ せていただきました。 ○矢崎部会長   開設間もない研究所ですので、評価もなかなか難しいと思いますが、何かお気付きの 点はございますか。 ○加藤委員   5頁に、研究成果は3年間に230編の英文原書・論文が発表されており、と書いてあ りますが、研究者は全部で何名いますか。 ○柳澤副所長   常勤の研究者が57名、流動研究員が42名、それ以外に外来研究員あるいは大学院生 を合わせますと90名弱おります。 ○笹月委員   私は忘れてしまったのですが、この研究所は元々あったものではなくて、長寿医療セ ンターになるときに新しく研究所が出来たということでしたか。 ○柳澤副所長   療養所中部病院の時代に、長寿医療研究センターというものを平成7年につくってい ただきまして、それから10年足らずの段階でナショナルセンターに格上げしていただい たという形です。 ○笹月委員   センターになったときに、どれぐらい新たに正式なポジションが増えたのでしょうか。 ○柳澤副所長   長寿医療研究センターの時代には8つの研究部と1つの省令室がありましたが、ナシ ョナルセンターになりまして、研究部を13に、省令室を5つに増やしていただきました。 また、一つひとつの研究部も、長寿医療研究センターの時代は1部が2室だったのです が、今はおよそ3室が原則となっています。 ○井村委員   何の根拠もないのですが。発足してから3年でこの評価をやるのは早すぎるのではな いかという気がしたのですが、その辺はいかがでしょうか。試行錯誤のようなことも当 然行われるだろうと思うのですが、国立の研究所はいつもこんなに早く評価をされてし まうのかと思うわけです。 ○矢崎部会長   それが各研究部の一貫性と連続性がないというご指摘になったのかもしれませんが。 ○柳澤副所長   これは先ほど笹月委員からも質問があったところなのですが、コアになる研究部は発 足後10年以上経過しているということもあって、今回評価していただいたのだと思いま す。 ○矢崎部会長   「鉄は熱いうちに打て」という言葉もありますので、頑張っていただければと思いま す。 ○林研究企画官   事務局から補足です。厚労省の指針では、評価は3〜5年程度の期間を1つの目安と して定期的に実施するという規定になっております。初回をいつということは特に書か れていないのですが、これに従って始めていただいていると理解しております。 ○北村委員   論文についての記載はあったのですが、その他の知的財産としての特許件数などがナ ショナルセンター化してから急激に増加しているとか、ナショナルセンター化したこと によって、以前と比べて知的財産の獲得等に目が大きく向いているようなことはありま すか。 ○柳澤副所長   ナショナルセンターになる前から、特許申請は行っています。昨年末までで、特許申 請の課題数としては23なのですが、ナショナルセンターばかりではなく、知的財産の重 要性が非常に叫ばれているということもあってか、最近、申請は非常に活発になってき ていると思います。しかし、それをどういう形で実用化へ持っていくかというところで 今後問題があるかもしれません。 ○矢崎部会長   そのほかには、よろしいでしょうか。それでは、今いただいたご意見を踏まえて、国 立長寿医療センターにおかれましては、今後の研究所の運営の改善に努めていただけれ ばと存じますので、よろしくお願いします。今日、柳澤副所長にはご多用のところこの 部会に出席して説明いただき、ありがとうございました。御礼申し上げます。  次の議題に移らせていただきます。議題5は「研究費の不正経理等への対応について」 です。まず、事務局から説明をお願いいたします。 ○林研究企画官   資料5−1と資料5−2に沿って説明いたします。資料5−1は、厚労科研費補助金 の不正経理への対応の資料です。1の「これまでの対応」にありますように、これまで は不正経理が認められれば、補助金適正化法に基づき返還を求め、また、平成16年から は取扱規程を整備して、不正経理を行った研究者には2〜5年の間、主任研としての交 付を制限してきております。  2の「最近の動き」として(1)にあるように、平成17年9月9日に「競争的研究資 金の不合理な重複及び過度の集中の排除等に関する指針」について関係府省間で申し合 わせが行われ、厚労科研費補助金に関してもこれを受けて、公募要項、取扱規程等を改 正して対応を図ってまいりました。  次に前回の部会以降の新たな動きですが、(2)にあるように、本年8月31日付けで 総合科学技術会議から「公的研究費の不正使用等の防止に関する取組について(共通的 な指針)」が出されております。その中で、研究費を配分する関係府省・配分機関が今 後取り組むべき事項、それから、研究費を受け取る側の研究機関が今後取り組むべき事 項に分けて示されております。そのため、3の「今後の対応(案)」にお示ししている ように、今回の公募要項でも、共通的な指針を受けて検討を始めている旨は記載してお りますが、今後来年3月までに研究費を受領する研究機関に対しては、必要な対応をと っていただくよう促していくとともに、厚労科研費補助金の取扱規程等を改正して必要 な規定を盛り込むことを予定しております。  資料5−2は、ねつ造・盗用等いわゆる研究上の不正行為への対応についてです。1 は「これまでの流れ」ですが、総合科学技術会議で今年2月に「研究上の不正に関する 適切な対応について」検討が行われ、その結果を受けて各大臣宛に総理から、これを踏 まえた対応を期待する旨の意見具申がなされております。その後、(2)と(3)にあ るように、文部科学省、それから日本学術会議でガイドライン等が取りまとめられてお りますが、このことは前回7月の部会でも説明しました。  いちばん下の「今後の対応(案)」ですが、厚労省では、文科省のガイドラインなど も参考に指針を作成しており、公募要項にも今回その旨を記載して、次回の部会には、 この指針(案)をお諮りできるようにしたいと考えております。そして、先ほどの不正 経理への対応同様、来年3月までに、指針の策定あるいは研究費の取扱規程等に反映し ていく予定です。以上が不正への対応状況の報告です。 ○矢崎部会長   今度は研究者だけでなく、配分する側、それから研究機関の経理の責任が問われると いうことが新たに加わったわけですが、いかがでしょうか。 ○林研究企画官   いままでも研究費については、研究者個人ではなく研究者の所属する機関のほうで管 理する、つまり機関経理を徹底してくださいということはお願いしておりますので、そ この責任というものが今回新たに出てきたというわけではないのですが、そこのところ を事細かにルール化して明確にしていくことであると理解しております。 ○矢崎部会長  大学もこういう機関経理管理という方向に進んでいると思いますが、永井委員、いか がですか。 ○永井委員   そうですね、かつてはみんな個人経理だったのですが、この何年かは完全に機関経理 に移行していると思います。おそらく今、対応していない所はないのではないかと思い ますが、もし残っていれば、速やかに移行すべきだと思います。 ○矢崎部会長   研究費の配分機関になったら、チェックするのが大変ですね。配分機関になる国立が んセンターと国立精神・神経センターで、今後具体的な対策をどう立てるかというのは 結構大変なことかと思います。北村委員は何かございますか。 ○北村委員   私どもはまだFA化していないのですが、早晩という形で。この間も各ナショナルセ ンターの方々、すでに始まっている所に、どういう問題点があるのかというようなこと の聞き合わせや話合いを始めたところなのですが、FAが不正まで管理するのかとなる と、矢崎部会長がおっしゃるとおり大変なことだろうと思うのです。そして、もし何か が起こればFA化の配分機関のほうも処分対象になるのであれば、どうなのでしょうね。 ちょっと分かりませんが、喜んで厚労省にお返しします、というような人も出てくるか もしれません。その辺り、しっかり勉強していかなければいけないと思います。 ○矢崎部会長   笹月委員、いかがですか。 ○笹月委員   いわゆる機関経理の場合に、納品されたものについて、本当に物が来たかどうか等、 特に物品の検証について最近非常に厳しいルールが出来ました。これを本当に一つひと つやるためには、人材の確保が非常に重要で、そのことなしには空論になります。それ は間接経費できちんとやりなさい、と言われればそれまでなのかもしれませんが、そう いうところの手当も是非考えていただければと思います。 ○矢崎部会長   そのほかにはよろしいでしょうか。それでは、不正経理への対応についてはご了承い ただいたということにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。                 (異議なし) ○矢崎部会長   次に「厚生労働科学研究費補助金配分機能の施設等機関への移管について」、これも まず事務局から説明をお願いします。 ○林研究企画官   これについては資料6をご覧ください。いわゆるFA化については、この資料にある ように、平成15年4月に総合科学技術会議から、厚労科研費補助金については、その規 模を考えると、実態を勘案しつつ独立した配分機関にその配分機能を委ねる方向で検討 する、という意見が出されました。それを受けて同年10月の科学技術部会で、厚労省の 既存施設等機関の専門性に着目し、研究事業の内容に応じて配分機関機能を付与する方 向で検討する、という方向が示されました。  それから、このペーパーには記載しておりませんが、平成17年3月の中長期の厚労科 研のあり方に関する専門委員会中間報告書でも、既存の施設機関等に、研究課題の現状 や特徴を踏まえて配分機能を移管する、という流れがエンドースされております。そし て、資料の真ん中にありますように、平成17年10月の部会で、平成18年度から試行的 に、国立がんセンター等既存の3施設に配分業務を移管するという方針が示され、現在、 各機関により、交付申請書の受付業務等が実施されているところです。  この結果、研究費の配分機能が移管された3つの研究事業に関して調べてみると、従 来からの厚労科研費の懸案であった研究費の早期執行が、この3機関の場合、顕著に改 善されておりまして、着実な成果を上げている状況です。  ここからが今日の本題です。いま述べたような形でこの部会で方針を決めていただい たのですが、その後、対象になっている国立高度医療センターの独立行政法人化が本決 まりになったという、新たな状況が出てきました。また、つい今し方ご報告した不正対 応等いろいろなことで対応が大変になってきているにもかかわらず、配分機能の業務移 管に伴うこちらのほうの予算の確保が現状では難しい状況にあります。さらに、総合科 学技術会議からも、厚労省のFAに関して注文がついているということもあります。そ こで、今後ともFA化を早期執行実現のために着実に進めていかなければいけないとい う、私どもの方針には変更はないのですが、以前の部会で報告していたFA化の試行期 間をとりあえず3年間としていた点を、いろいろな状況変化もありますので、国立高度 医療センターの独法化が行われる平成22年度まで延長させていただいて、その間更に中 長期的な視野に立った望ましい配分機能移管のあり方について、検討させていただきた いと考えております。このことに関して本日ご意見を賜りたく、よろしくお願いいたし ます。 ○矢崎部会長   いかがでしょうか。 ○北村委員   先ほど言いましたように、この3機関の実施譲渡を踏まえまして、他のナショナルセ ンターを含めて話し合う会合を持ったところ、その機関に属する研究者たちの申請をど のように取り扱うのかと。その会自体は医政局の国立病院課長が出席しての会でしたが、 その中でも、研究費を供出する所、つまり自分の所の研究者に研究費をどのように付け ることができるのか、という大きな問題を明確にしないといけないということでした。 その会では、総長や研究所長自らは研究者になることはできないが、その他の者は入ら せてもらわないと成り立たないという意見と、配分機関が自らの所に良き処遇をしてい るという態度は認められないという形で、外部資金と内部資金とを分けるのかどうかと いう意見があった。そのところは総合科学技術会議からも大きく問われることだと思う ので、その辺も検討し、明確にしていかなければならない問題だと思っています。 ○矢崎部会長   その点は大きな課題だと思いますが、今施行機関の間で、それはどういう区分けにな っているのでしょうか。 ○林研究企画官   総合科学技術会議から、今まさに北村委員からお話があったような点が言われており ます。現在、各研究事業のS・A・B・Cの評価が行われているのですが、いずれその 正式な結果が私どものほうに送られてくるときに合わせて、厚労科研費全体に対して、 留意事項ということで先方の問題意識をこちらに示す、ということを言われております。 私どもはそれを受けて検討を進めていくことになろうかと思うのですが、その内容はい ろいろあります。総合科学技術会議の指摘の中では、例えば米国のNIHでとられてい るようなシステム、それが1つ基準になっているような感じを受けているのです。ただ、 我が方の現状を考えると、一気にそこまで本当に持っていけるのかどうかということも あります。ですので、対応は、比較的短期間に手立てが可能なものと、ある程度時間を かけて考えていかなければならないものと、大きく2つあるのかなと思っております。  あとは、どこまでやれば、外部から見て疑惑を招かないような形として皆さんに納得 していただけるのかというところだと思いますが、そこのコンセンサスがどこで得られ るかというのは、私どももこれから検討させていただきたいと思います。 ○松本委員   私は日本学術振興会の経験しかないのですが、ファンディングエージェンシーという 場合に、当該ナショナルセンターがどの研究者に予算をあげるかを決めるわけではなく て、おそらく、お金の管理だけをして、競争的資金だから、当然、しかるべき審査委員 に評価をさせることになると思うのです。そうしますと、同じ研究機関の人は審査委員 に入らないというようなルールで運用すれば、審査における不公正は外形的には出てこ なくなるかと思うのですが、そういうやり方はとられていないということでしょうか。 ○林研究企画官   いまもFA化を進めるに当たりまして、例えばプログラムディレクター、プログラム オフィサー、そういった方は評価には関与できない。それから、所内の研究者からの応 募について審査をする場合には、同じ機関の方は退席していただく、そういう措置はと らなければならないと考えております。ですが、先ほども言いましたように、米国など ではそれよりも更に徹底していて、エクストラミューラルの資金はNIHの中でも独立 した組織で配分しているということで、そこは明確に分かれていますので、そこまでの ことが本当に必要なのか、あるいは厚労省のFAでできるのかどうかといった検討は必要 かと考えております。 ○笹月委員   いまのNIHの話は、この話が出るとすぐに出るのですが、アメリカのNIHの場合 には、日本の文科省が持っている科学研究費、それから厚労省で持っている科学研究費、 それを全部持っている形で、非常に大きなお金があるわけです。ですから初めから、外 部用のエクストラミューラルの研究費、それから自分たちが国策として行う研究のため のイントラミューラルのお金をきちんと分けることができるのですが、ここでは、文科 省のお金とは別に、厚労省のお金だけでやるわけですから、それをそういうふうに分け ると非常に小さくなりますし、また、それを分けることの問題点も出てくると思います。 よく総合科学技術会議から、NIHではこうだと言われるのですが、いろいろな事情が 違いますので、それがそのまま日本には通用しないのではないかと思います。  プログラムオフィサー、プログラムディレクターの話が出ましたが、ファンディング エージェンシーのシステムが省庁以外にはなかったものですから、プログラムオフィサ ーとか、プログラムディレクター、そういう経験のある人がいないわけなのです。です から、そういう人をどのように育成するのか。JSTではセミナーを1年に1回ぐらい 行っているようですが、そういうことを是非厚労省としてもお考えいただいて、PD、 POの育成プログラムを何か考えていただけるとありがたいと思います。 ○矢崎部会長   課題の審査の部分で独立性を保っておけば、外からの批判にある程度耐え得るという ことになるかと思います。これから施行予定の3施設とその他のナショナルセンターに おかれましては、そういうことも考えながら体制を整えていく。なかなか予算が出ない ので、実際にどうするかというのは相当な工夫が必要かと思いますが、いまから十分に 検討し、また、厚生科学課とご相談いただければありがたいと思います。ともかく厚生 労働科学研究費が公正に、しかも迅速に、遅滞なく配分できるようにということが、こ の配分機関への機能の移譲ですので、その趣旨が実現するように、何卒よろしくお願い したいと思います。それでは、いまの配分機能に関しては以上のことで終わらせていた だきますが、よろしいでしょうか。                 (異議なし) ○矢崎部会長   本日予定されていた議題はすべて終了したわけですが、事務局から何かございますか。 ○林研究企画官   本日参考資料3と参考資料4を配付しましたので、その説明をさせていただきます。 参考資料3は、前回7月27日に本部会でご審議いただいた、厚労省の平成19年度研究 事業に関する概算要求前の評価の資料です。前回部会でいただいたご意見、それから、 部会後井村委員から、参考資料の172頁にある「化学物質リスク分析研究事業」に関し て、子どもへの影響を重視している、ということがもう少し明確になるようにしてはど うかというご意見をいただいたことから一部修正を行い、その内容を矢崎部会長にもご 了解いただいた上で、本日配付しております。  次に、参考資料4として「厚生労働科学研究費補助金に係る歳出予算の繰越しの取扱 いについて」をお配りしております。この繰越明許のことは、以前にも検討状況を報告 いたしましたが、平成15年度から、繰越しに関して厚生科学課長決定を定めて、厚労科 研費補助金でも研究費を翌年度に繰り越して執行できるようにしてきたのです。しかし、 研究者による利用がなかなか進んでおりませんでした。そういった中で、文科省が今年 4月に繰越事由の具体例の追加を行い、また、6月に出た総合科学技術会議の19年度資 源配分方針の中でも、繰越明許費の適切な活用ということが盛り込まれたことから、私 どものほうでも検討を進めてきましたが、10月3日付けで厚生科学課長決定を改正し、 文科省と同様の繰越事由の具体例を追加したものを発出いたしました。以上報告をさせ ていただきます。 ○矢崎部会長   繰越しは前から課題だったのです。実際にはいろいろな規定があって、研究者はなか なか繰越しができないということだったのですが、今回それが少し緩和されたと理解し てよろしいのでしょうか。 ○林研究企画官   いままでは基本的に、やむを得ない外部要因がある場合のみ繰越しを認めるというこ とで、どういう場合に認められるのかということについて3つぐらいしか例がなかった のですが、資料を見ていただくと、今回は具体的な事例を増やしておりますので、こう いう場合であれば研究者の方も申請をしていただける、ということが明確になったので はと思います。 ○矢崎部会長   これについては、よろしいでしょうか。また、井村委員には適切なコメントをいただ きましてありがとうございました。それでは次回のことについて、事務局からお願いし ます。 ○林研究企画官   次回の部会については既に委員の方々には日程調整をさせていただいて、12月25日 (月)15〜17時ということでお願いしたいと思っております。正式なご案内については、 詳細が決まり次第事務局より送付いたしますので、よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長   長時間にわたってご議論いただき、ありがとうございました。本日の科学技術部会は、 これで終了させていただきます。 −了− 【問い合わせ先】 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担当:情報企画係(内線3808) 電話:(代表)03-5253-1111 (直通)03-3595-2171 - 1 -