06/07/27 第33回厚生科学審議会科学技術部会議事録  第33回厚生科学審議会科学技術部会  議 事 録   ○ 日  時  平成18年7月27日(木)15:00〜17:00   ○ 場  所  厚生労働省 省議室 (9階)   ○ 出 席 者     【委 員】 矢崎部会長           今井委員 井村委員 岩谷委員 垣添委員 加藤委員 金澤委員                      北村委員 木下委員 黒川委員 笹月委員 永井委員 南 委員           宮村委員   【議 題】    1.平成19年度の科学技術に関する予算等の資源配分の方針について    2.厚生労働省の平成19年度研究事業に関する評価(案)(概算要求前の評価)      について    3.遺伝子治療臨床研究について    4.「ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会(仮称)」の設置について    5.研究開発機関の評価結果等について    6.研究上の不正への対応について    7.その他   【配布資料】    1.平成19年度の科学技術に関する予算等の資源配分の方針について    2−1.平成19年度科学技術関係施策および重点事項について(案)    2−2.厚生労働省の平成19年度研究事業に関する評価(案)(概算要求前の評価)   3−1.遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様             性影響評価に関する申請について(岡山大学医学部・歯学部附属病院)    3−2.遺伝子治療臨床研究実施計画の変更報告及び終了報告について        (九州大学病院、東北大学病院、東京医科大学病院、岡山大学医学部・歯学              部附属病院、大阪大学医学部附属病院)    3−3.遺伝子治療臨床研究に係る申請手続きの変更について(案)   4.「ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会(仮称)」の設置について(案)    5.研究開発機関の評価結果等について(国立循環器病センター研究所)    6.厚生労働省の科学研究における研究上の不正への対応について    参考資料1.厚生科学審議会科学技術部会委員名簿    参考資料2.厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針    参考資料3.ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の施行等について    参考資料4.厚生労働省科学研究費補助金の成果の評価(平成17年度報告書) ○林研究企画官  ただいまから第33回厚生科学審議会科学技術部会を開催いたします。傍聴の皆様に は、すでにお配りしております注意事項をお守りいただきますようお願いいたします。  委員の先生方には、ご多忙の中お集まりをいただきどうもありがとうございます。本 日、岸委員、中尾委員、竹中委員、長谷川委員、松本委員からご欠席の連絡をいただい ております。また、まだお見えになっていない先生方が若干いらっしゃいますが、委員 19名のうち過半数は超えておりますので定足数に達していることをご報告いたします。  委員の変更がございました。前国立医薬品食品衛生研究所所長の長尾拓委員が、7月 1日から食品安全委員会に移られましたのでご報告を申し上げます。なお、後任の委員 はまだ決まっておりません。したがって、現在の委員は、参考資料1の名簿のとおりと なっております。  続いて本日の会議資料の確認をさせていただきます。今日は非常にたくさんの内容で すが、まず資料1が平成19年度の科学技術に関する予算等の資源配分の方針について。 資料2−1が平成19年度の科学技術関係施策及び重点事項について(案)。資料2−2 が厚生労働省の平成19年度研究事業に関する評価(案)ですが、これは概算要求前の評 価資料です。資料3−1が、遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研 究に係る生物多様性影響評価に関する申請で、岡山大学医学部・歯学部附属病院から出 されたものです。資料3−2が、同じく遺伝子治療臨床研究実施計画の変更報告と終了 報告。資料3−3が遺伝子治療臨床研究に係る審査手続きの変更(案)です。資料4が ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会(仮称)の設置についての案です。資料5が研 究開発機関の評価結果等についてで、今回は国立循環器病センター研究所です。それか ら資料6が、厚生労働省の科学研究における研究上の不正への対応についての資料です。 あとは参考資料が1〜4までございます。以上全部お手元にございますでしょうか。そ れから、資料2の概算要求前の評価に関するご意見を書いていただく1枚紙を置いてあ ると思いますので、そちらもご確認いただき、もし足りないものがありましたら事務局 までお知らせください。よろしければ矢崎先生、以降の議事進行をよろしくお願いいた します。 ○矢崎部会長  本日はお忙しいところ、またお暑いところをお集まりいただきましてありがとうござ いました。議題1は、6月14日の総合科学技術会議で決定されました平成19年度の予 算等の資源配分の方針です。まず、事務局から説明をお願いします。 ○林研究企画官  それでは資料1に基づいて説明いたします。資料1は、本年6月14日に総合科学技術 会議から示されました平成19年度の科学技術関係予算の資源配分方針についての資料 です。資料1の13頁以降に資源配分方針の本文、20頁以降に資源配分方針の中に出て まいります「イノベーション創出総合戦略」の本文を付けてあります。そして、その前 のほうにそれぞれの概要をまとめたポンチ絵を付けてありますので、そちらに沿って説 明をさせていただきます。  まず1頁をご覧いただきたいと思います。この頁の下のスライドに、平成19年度の科 学技術関係の予算、人材等の資源配分方針の基本認識が記載されております。  2頁の上のスライドに、今回の資源配分方針の基本的考え方が4つ示されております。 1点目は、平成19年度が第3期基本計画を本格的に実施する実質的な初年度であるとい うこと。2点目は「選択と集中」を徹底し、優先すべき重点課題を厳選すること。3点 目は「イノベーション創出総合戦略」の具体化が平成19年度の最重要課題であるという こと。それから4点目は「社会・国民に支持される科学技術の実現」です。  3点目に出てまいります「イノベーション創出総合戦略」というのは、今年の5月23 日に総合科学技術会議の有識者議員から提議されたもので、この資料の5頁にポンチ絵 を付けておりますので、これを使って内容をごく簡単に紹介したいと思います。  5頁のスライドの下半分に「イノベーション創出総合戦略の概要」というタイトルが 付いています。ここにございますように、いちばん左の「基礎研究」の段階から「応用 ・実用化研究開発」を経まして「製品開発」そしていちばん右側の「新たな需要の創出」 に至る流れをより早く、より太くしていくためには、この流れの各段階に応じて、その 下のほうに書いてある「1.イノベーションの源の潤沢化」から「5.イノベーションを 支える人材の強化」までの5つの戦略が必要であるというのがイノベーション創出総合 戦略のポイントであります。  資料の2枚目に戻って、右下に3と書いてあるところは、科学技術関係予算の充実、 改革に向けた取組の強化です。まず1つは「選択と集中」の徹底ですが、各省が国の資 源を活用して科学技術関係施策を推進している以上、社会・国民への説明、それから、 投入資源から最大限の成果を得るべく努力する責任を負っているという認識のもと、選 択と集中の徹底等による科学技術関係予算の改革がまず挙げられております。  具体的にはスクラップ・アンド・ビルドの徹底、戦略重点科学技術を府省横断的に推 進するため、各省個々の政策の位置付けを明確化した全体俯瞰図の作成、関係府省にお ける科学技術関係予算の比重の増大等の取組が各省に求められているということです。 またその下、研究費の配分における無駄の徹底排除を強化するため、府省共通研究開発 管理システムを、当初の予定より早めて、平成19年度中に運用開始を目指すこととされ ております。  3頁の上のスライドは、取組の強化の続きで、国民への説明責任・成果発信の徹底、 そのための取組も求められております。  同じ頁の下、平成19年度予算において優先すべき重点課題では、第3期基本計画を本 格的に実施していく上で優先すべき重点課題として、まず1つは「イノベーション創出 総合戦略」に基づく施策を早急に具体化し、これを平成19年度予算に反映していくこと。 そして、国際競争を勝ち抜く人材立国を実現していくこと。4頁の上にある、国際的に 通用する競争的で魅力ある研究環境を醸成するために、科研費等の競争的資金を拡充す るため、公正で透明性の高い審査体制の強化、間接経費の30%確保、繰越明許費の活用 等を併せて推進すること。それから、科学技術の戦略的国際化の推進ということで、若 手研究者の海外での活躍・研鑽機会の拡大等が求められております。  4頁下の最後のスライドでは、総合科学技術会議でも、取組の強化ということで、1 つはSABCの優先順位づけの改革を行って一層メリハリの効いた優先順位付けに改革 していくこと。独法の科学技術関係活動の把握・所見取りまとめを更に強化すること。 不合理な重複・無駄の排除の徹底、関係府省連携の一層の強化を進めていくこと。研究 開発の評価の徹底が挙げられております。平成19年度の総合科学技術会議の資源配分方 針の説明は以上です。よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長   ありがとうございました。これについて何かご質問はございますか。 ○北村委員   いままでの説明の中に再三出てくる国家基盤技術。後のほうに載っているのかもしれ ませんが、例えば厚生労働省関係の国家基盤技術というようなものはあるのか、また、 それはどういうものを指しているのか説明していただけますか。 ○林研究企画官   それは国家基幹技術だと思いますが、結論から申しますと、厚生労働省では該当する ものはございません。ロケットやX線自由電子レーザーのような、かなり大規模な研究 開発が該当しますが、多くは文部科学省の所管です。 ○矢崎部会長   黒川先生、総合科学技術会議から何かメッセージはございますか。 ○黒川委員   やはり1つは、イノベーションというキーワードです。シュンペーターではないので すが、常に創造的破壊というのは大事だと言っても、いままでの日本のサクセスモデル では、また社会構造もそうですが、なかなかそれができないという話がある。もう1つ の期待は、トランスレーショナルリサーチではないけれども、これだけライフサイエン スに大きなインベストメントが起きているのに、アウトプットが何かということは非常 に気にしているのではないかと思います。  厚労省関係では対がんの10カ年もあるし、いろいろ言うのだけれども、実際のアクト は出ない。文科省的なのとは全く違って、厚労省の政策医療にしても、アウトプットが 見えるようにしないと非常にまずいのではないかという話があって、ここでも議論され ているような戦略的アウトカム・スタディ、それからTRもそうだけれども、それらを どのようにやっていくかというのは、行政だけではなくて我々のような現場の人たちと か、大学も法人化されたとか、できない理由はいろいろありますが、どのようにしてや っていくかということは最も大事だという気はします。  そのほかにやることはたくさんあると思います。「安全と安心」というのも1つの大 きな幹ですし、医療だけではなくて、一般的な問題として厚労省的な課題はたくさんあ るのではないかと思います。 ○矢崎部会長   そうしますと、戦略研究の成果が極めて重要な意味づけになってくると。 ○黒川委員   先生も今やっておられるからそうだと思いますが、臨床研究的なことが今までなかな かできない理由があったのだけれど、それをいちばん認識していなくてはいけないのは 私たちだから、それをいかに厚労省と組みながらやるかというのが1つの大きなポイン トだと思います。 ○垣添委員   臨床試験がなかなか進まなくてプロダクトが生まれないというようなことが今までず っと言われてきました。また、総合科学技術会議の中でも、制度的隘路を解決しようと いう話がいろいろ出ていますが、例えば新薬や新しい医療機器の承認についても、医薬 品・医療機器総合機構の体制を強化しないと、窓口が遅くて進まないという部分がある。 それから現場のほうも両方を手を打っていかないといけないと思いますが、前者は、国 家公務員定員削減という国の方向性があるために、求められていることと逆の方向に動 くのではないかと思うのですが、その辺のことはいかがですか。 ○黒川委員   実は昨日の本会議では、PMDAでしたか、それの定員の数や予算の話もあるのです。 しかし、あそこはフィーを取ってやっているわけで、フィーのパーセントから言うと、 それだけのサービスをしているかという話も結構話題にのぼると思うのだけれど、昨日 は厚労大臣が来られなかったのです。だからその話はちょっとペンディングにしておい たほうがいいのではないか、と中で私は言っておきましたが、その辺もただ増やせばい いというものではない。今までだと、あそこの承認機構は非常に権威的だから、民間と しては非常に恐ろしい所だと思っているわけです。権威的な所に公務員が増えるなどと いうのはとんでもない、そういうことは無きにしも非ずなのです。シビル・サーバント としてのサービスをするのか、お上的なサービスをするのかによって、その辺はかなり 違うのではないかという話はあると思います。先生がおっしゃるように、これも非常に 大事なステップなので、我々が関わって、いろいろな所で透明性のある議論ができれば いいと思います。また、たぶん、そういうことを民間も望んでいるのではないかと思い ます。 ○矢崎部会長   いまの隘路は審査するということではなくて、サポートするというような対応をとっ ていただければ皆さんも納得されると思うのです。 ○黒川委員   そちらでもFDAとかいろいろな所に行った人がいると思うのだけれど、FDAの審 査のプロセスなどというのは、予備のヒアリングにあってもそうだし、いろいろなパネ ルのスタディーがかなり公開された場所で、大学の先生や病院の人や患者団体も入れた 上で、かなり透明性の高いところで議論しているので、そういうプロセスがいずれ入っ てきたほうが全体として国民の信頼は上がってくるだろうと思うので、随時それも検討 するといいのではないかと思うのです。  また、あそこの機構は給料がやたらと安すぎるとか。いろいろなことがあると思うの だけれど、がんセンターの人や国循の人等臨床をやっているお医者さんたちも、最初は 随分ローテーションで来ていました。ああいう人たちが審査側に入っているとお互いに 問題点がわかってきて、あれはすごくよかったと思うのです。お医者さんというのはあ そこの給料ではなかなかやれないから、国のそういう所からローテーションしている。 垣添先生の所からすごくいい人が何人も出てきているのだけれど、今度独法になったり すると、そういう動きができない。お互いに独法だからいいのかもしれないけれど、人 事の交流ができればいいと思います、それは我々の責任でもあると思いますが。 ○矢崎部会長   時間も過ぎておりますので、議題2、厚生労働省の平成19年度研究事業に関する評価 についてに進みます。科学技術部会としては、評価に関する報告を取りまとめたいと思 いますので、よろしくご審議のほどお願いいたします。まず事務局から説明してくださ い。 ○林研究企画官   資料は2−1、2−2と2つございます。毎年8月末のこの時期に、研究費関係の概 算要求を行うに当たり、その基本的考え方について当部会でご審議をいただいているも のです。説明の順序としまして、まず私のほうから資料2−1に沿って総括的なところ を説明し、その後資料2−2に基づいて、我が省として特に平成19年度に力を入れてい く予定の研究事業を4つだけ取り上げて関係課から説明させていただきたいと思いま す。  それでは資料2−1の「平成19年度科学技術関係施策及び重点事項について(案)」 をご覧ください。最初の紙の下、右下に2と書いてあるスライドは従前からの資料です が、厚労省の科学研究は、左側の「第3期基本計画」を踏まえて右側の「健康安心」「先 端医療」「健康安全」の3つのキーワードを掲げて、第3期基本計画が示す理念と政策 目標の実現に貢献する、そして、その成果を社会・国民に還元していくという基本的考 え方に沿って取組を進めているというスライドです。  3頁のスライドは、先ほど議題1で説明した平成19年度の資源配分方針を踏まえた厚 労省の取組に関するスライドです。左側に資源配分方針の4つの基本的考え方を記して おりますが、これに基づく厚労省の取組を右側のほうにまとめております。1つは、戦 略重点科学技術に該当する科学技術の推進で、厚労省の各研究事業のうち、どれが戦略 重点科学技術に当たるかを明確化し、そこに重点的に予算を配分していく。各省施策の 俯瞰図づくりがいま総合科学技術会議を中心に進んでおりますが、その議論にも参加し て俯瞰図づくりに協力しております。それから、制度に関する検討ということで、治験 を含む臨床研究の推進、あるいは早期執行等研究費の制度改革にも取り組んでおります。 さらに、分野別推進戦略で示された研究開発目標等の達成状況を今回の概算要求前の評 価の中で各事業ごとに記載して、そこでフォローアップしていただくことも考えており ます。  4頁は、いま申し上げた重点化ということを説明したスライドです。左側の「戦略重 点科学技術への選択と集中」は、資源配分の方針の中でも出てきた話ですが、厚労省の 研究にはそれ以外に、このスライドの右側に記載されている、戦略重点科学技術ではな いが重要な研究開発課題として、難病患者や障害者等の自立支援等生活の質を向上させ る研究、医薬品・医療機器等の安全性確保のための研究、健康危機管理の研究等、地味 ではあるが国民の生活と健康の安全を守るためには不可欠であるものもありますので、 そういった研究も疎かにならないよう着実に推進していく必要があると考えておりま す。  5頁のスライドは、ライフサイエンス等厚労科研が関係する4つの分野で定められた 研究開発目標等に対する進捗を今回の概算要求前の評価の中で確認をしていただく、そ のことによって国民への説明責任を果たしたいということを述べたスライドです。  6頁のスライドは、厚労省の主要な成果目標等を示したものです。上から「健康安心」 「健康安全」「先端医療」の順番で並べてあります。「健康安心」では、先般がん対策 基本法も出来ましたが、がんの研究に力を入れていきたい。「健康安全」では、肝炎あ るいは新型インフル等の感染症研究に力を入れていきたい。「先端医療」では、臨床研 究の体制整備やゲノム、タンパク質のデータベース等の基盤整備といったことに力を入 れていきたいと考えております。  特に、臨床研究の基盤整備は、いま説明したがん、アレルギー等の個別疾患を対象と した臨床研究の推進、それから真ん中の、医薬品や医療機器の実用化のカギとなる承認 審査を研究面から下支えする医薬品・医療機器等のリスク評価等の研究、こういったこ ととその基盤整備としての臨床研究の体制整備、これらを三位一体で推進することで我 が国の臨床研究の推進を強力に後押しできるものにしていきたいというのが私どもの考 えです。  また、これまで当部会で何度かご意見をいただいている、小児を含めた発達障害につ きましても、6月から発達障害対策の全省的な取組を開始したところであり、今後、省 内関係課が協力して研究を進めていく予定です。  7頁のスライドは、研究費の早期執行の取組に関するものです。左側に早期執行を妨 げる要因を挙げ、それに対して右側に関係規程の早期改訂、課題採択の前倒し、ファス トトラックの導入等の取組を進めてまいりました。  8頁に、平成14〜17年までの各年の6月、9月、12月時点の交付決定通知済み件数 の割合を棒グラフで示しております。これを見ますと、特に9月の交付済み件数の割合 が、平成17年は顕著に改善していることがおわかりいただけると思いますが、今後さら に改善の努力を続けて、9月には、できれば9割に持っていくということが私どもの目 標です。  9頁のスライドは、厚労科研費補助金の繰越の取扱いに関するものです。上の現状の ところにあるように、制度自体は平成15年度の研究費から繰越できるような仕組みは作 りましたが、利用実績は、残念ながら、平成15年の3件のみです。その後文部科学省が 本年4月1日に繰越事由の整備を行い、また、平成19年度資源配分方針でも繰越明許費 の適切な活用が盛り込まれたことから、現在、厚労省でも、右側の枠のようなことで、 文科省の内容を参考に、繰越事由の整備の検討を進めているところです。  10頁は厚労科研費補助金の不適正経理、それから研究上の不正に対する取組です。ま ず不適正経理のほうは、本部会でもご議論をいただきましたが、不合理な重複及び過度 の集中の排除等に関する各省申合せの趣旨を平成18年度の厚労科研費の公募要項及び 取扱規程にすでに反映させております。  一方、研究上の不正に関しましては、総合科学技術会議が本年2月に各省に対して意 見具申をしておりますし、その後文科省においても、「研究活動の不正行為に関する特 別委員会」を設置して検討が開始され、特別委員会の報告書案に対するパブリックコメ ントが行われておりました。厚労省としても、文科省の取組を参考に、研究上の不正へ の対応について検討中でして、これは後ほど議題6で改めて詳しくご説明をしたいと思 います。以上が平成19年度の厚労省の科学技術関係施策の基本的考え方です。  次に、資料2−2に基づいて平成19年度の重点事業として考えるものを、全部取り上 げますと時間がございませんので、4つだけピックアップして説明したいと思います。  まず資料2−2の65頁、生物資源研究のところをご覧いただきたいと思います。ここ で言う生物資源といいますのは、遺伝子や実験用動物などライフサイエンス研究に用い る研究資源のことです。第3期基本計画のライフサイエンス分野推進戦略の中でも、生 物遺伝子資源等のライフサイエンス研究の基盤整備の必要性が指摘されており、厚労省 としても、創薬あるいは新規医療技術などの実用化研究の基盤として、現在独立行政法 人医薬基盤研究所に存在する遺伝子バンク、細胞バンク、薬用植物、霊長類など、特に 「ヒト」「疾患」といったキーワードに関連した生物遺伝子資源の拡充を図り、臨床研 究や医薬品開発のニーズを意識した、厚労省としての強みを活かした研究事業を開始し たいと考えております。具体的には、上のほうのスライドのいちばん下に「生物資源研 究事業」という枠がございますが、この中にある(1)「新規有用生物資源の開発」から(4) の「遺伝情報等のバイオリソースの背景情報と所在情報データベースの整備」、このよ うな研究課題を採択し、課題間の有機的連携も図って厚労科研の基盤強化に努めていき たいと考えています。  次に資料2−2の181頁を見ていただきたいと思います。そこに「健康危機管理・テ ロリズム対策システム研究」というものがございます。テロリズム対策の重要性は本年 6月に総合科学技術会議から出された「安全に資する科学技術推進戦略」においても指 摘されておりますが、これまでの厚労省の健康危機管理に対する研究は上のスライドの 下半分、左から新興再興感染症、医薬品、食品等が並んでおりますが、こういった個別 分野の対策の中で実施するものが中心でしたが、平成19年度からは、従来の健康危機管 理に関連した研究事業を再編して、このスライドの上半分にありますように、分野横断 的な健康危機管理の基盤システムあるいはオペレーション手法の確立を目指した研究体 制に組み換えて、それと個別分野の研究とが連携するような姿にしていきたいと考えて おります。  その研究の成果は、下のスライドにあるように、健康危機初動体制を確立するための マニュアル整備、情報共用システムを含むオペレーション手法の活用等行政施策に直結 した健康危機対策の強化に役立つような成果を出していきたいと考えています。厚生科 学課からは以上の2課題について説明させていただきました。この後引き続いて研究開 発振興課から臨床研究に関する取組について、がん対策推進室から、がん研究に対する 取組をそれぞれ説明してもらいます。 ○医政局研究開発振興課  私どもからは臨床研究に関する取組について説明いたします。私どもでは優れた医薬 品・医療機器の開発を推進する様々な研究事業を行っております。内容としては、ヒト ゲノムに代表される基礎から、基礎研究の成果を臨床に応用させる橋渡し研究、いわゆ るトランスレーショナルリサーチ、さらには臨床研究までもカバーするものをいろいろ と行っております。中でも臨床研究は、医薬品・医療機器の実用化には極めて重要かつ 必須のものでありながら、基礎研究に比べると資本投下が十分ではないのではないかと いう指摘がされております。  このような指摘に対して私どもでは、平成14年度よりトランスレーショナルリサー チ、平成15年度より治験環境整備のための研究等を始めていますが、中でも臨床試験並 びに臨床研究基盤の整備は重要と考えておりまして今年度、平成18年度より臨床研究基 盤を整備するための人材育成のための研究等を実施しております。  資料の71頁をお開きください。平成18年度より臨床研究基盤の整備の推進を始めて おりますが、平成19年度からはこれに加えて、臨床試験の実施そのものに研究資金を提 供し、根拠に基づく医療の推進を図ることが必要であると考えております。これにより 倫理性及び科学性が十分に担保された質の高い臨床試験が実施されることによって、我 が国発のエビデンスの創成及び構築を図ることができると思っております。この点につ きましては第3期基本計画の中でも「臨床及び臨床研究への橋渡し研究」が戦略重点課 題の中に入っておりますので、これに合致する研究事業であると考えております。私ど もからは以上です。 ○健康局がん対策推進室  引き続きまして健康局がん対策推進室より、がんの研究について説明いたします。資 料は資料2−2の94〜102頁までです。がんに関する研究については、現在、第3次対 がん総合戦略研究とがん臨床研究ということで推進しております。第1次、第2次のが ん研究を経まして一定の成果が得られたところですが、依然としてがんが日本人の死亡 原因の第1位を占めていること等を踏まえて、引き続き推進をしていく必要があるとい う状況です。  平成16年度から第3次対がん総合研究等を進めてきておりますが、その流れの中で均 てん化の推進という観点も含めて研究を推進しております。平成19年度は従来から推進 してきた研究課題も含めて4年目になりますが、さらに推進してまいりたいと思います。  加えて、今般がん対策基本法ということでがん対策の推進に関する法律整備も行われ たところです。その中におきましても「がんの研究の推進」が位置づけられております。 以上のような状況も踏まえながら、がん研究を総合的に推進することによりまして、第 3次対がんの戦略目標である「がんの罹患率、死亡率の激減」を達成してまいりたいと 考えております。 ○矢崎部会長   ただいまの説明でご質問あるいはご意見がございますか。大部の資料で、いますぐこ れでというのはなかなか難しいかと思いますが。先ほど事務局から示しましたコメント 用紙、これで出していただければ大変ありがたいと思います。前回のときも井村先生、 黒川先生からご意見をいただき、どうもありがとうございました。いま何かお気付きの 点があれば出していただきたいと思います。 ○金澤委員   臨床試験推進研究の中で、医師主導のものが大事だということはよく分かっておりま すが、何事かが起こったときの保障というのでしょうか、そのことについていろいろな 議論があったように思うのです。研究費から出せないというようなことが盛んに言われ ていた時期があったのですが、これは解決されてのご提案なのですか。 ○医政局研究開発振興課   いま金澤先生からご質問があったのは、いわゆる補償ということでしょうか。 ○金澤委員   そうです。 ○医政局研究開発振興課   実は今、それは私どもの課で、民間の会社と、そういう保険のようなものは組めない かどうかということも含めて交渉しております。 ○金澤委員   検討中ということですか。 ○医政局研究開発振興課   はい、検討中でございます。 ○矢崎部会長   特に医師主導の臨床試験というのは大きな課題ですね。 ○垣添委員   それが民間の会社とうまく組めなくなった場合は、どうなるのですか。 ○医政局研究開発振興課   治験の場合は、すでに医師主導治験の民間の保険を販売しておりますのでそれにご加 入いただいて、その保険料は研究費から支出できる形になっております。ですから、治 験届の出された治験であれば対応は可能と思います。それ以外の、治験届が出ていない 医師主導の臨床試験については、先ほど説明いたしましたように、同様のものが組めな いかどうか、民間の保険会社といま交渉しているところです。 ○垣添委員  それがうまくいかなかった場合、それがいちばんのネックになっているわけです。 ○医政局研究開発振興課   私どもとしては、できる限りやれる方向でいま考えておりますが、垣添先生からのご 意見をいただいて、できなかった場合をどうするかについても至急考えたいと思います。 ○黒川委員   例の科学者の不正行為もそうだけれど、最近、研究費の執行というのは厚労省でも少 しずつ早くなっているのです。これは、事業をやるときに、例えば3年間のプロジェク トでも、応募して予算が通ったらすぐに出てこないと、かなり大型になってくると、人 件費とかいろいろな話が出てくる。4月からすぐに、人件費はどうするのかと言うと大 学の側の立替えというか、バッファーになるような予算がないから、どうしても研究者 が自分でいろいろなことをやらざるを得なくなってしまう。十分なキャパシティーがな いのです。  今度の文科省のものを見ても、大学の研究費の調査とかチェック機構などというのは いいのですが、むしろ大事なのは、執行するメカニズムをきちんとしてくれないと、す ごく困るわけです。それができないから、研究者がみんな、人件費をどうするか、では こうするかと、同じことが繰り返し出てくるわけでしょう。それを早く執行することも 1つあるけれど、インディレクト……とかいろいろな話でインスティテューションがし なくてはならないことは、お金などのマネージメントを研究者がやらなくてもいいよう なシステムを作ってもらいたいと思います。今度の文科省の報告を見ても、そういうと ころが書いてないのですが、研究室単位で研究費のマネージをさせているというのはも のすごくまずいと思うのです。厚労省にユニークな問題は執行を早くしてほしいという こと、ユニークに遅れていますから、そこは是非やってください。……が去年は8月で 55%とかと言っていたけれど、今度はどうなっているのですか。厚生科研の場合は、予 算が通って執行して大学などに来るのに、去年は8月の時点で55%だったのです。遅い から立替え払いなどといっていると、また何か変なことをやるので困ってしまうのです が。 ○安達厚生科学課長   資料2−1の8頁の表でお示ししておりますように、9月の時点で比較しますと急激 に多くなっています。本年度はこれ以上の成果を得ようということで頑張っておりまし て、最終的には、9月の時点で9割を目指して今後努力していこうと考えております。 ○黒川委員   やればできるのですが、ちょっと足りない。 ○笹月委員   先ほどイノベーションのところで、省庁横断的に、しかも俯瞰的なプランを作るべき であるという話が出ておりますが、特にトランスレーショナルリサーチなどは、むしろ 文科省が先行しているようなところもありますが、これは是非厚労省が力を入れていた だくべきテーマだと思います。「省庁横断的な、あるいは全体を俯瞰した基本計画を作 る」というサジェスチョンが出ていますが、それを是非具現化していただくことが大事 だと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○林研究企画官   いまの笹月委員ご指摘の点ですが、総合科学技術会議で、前年度までは、概算要求を 行った後に、各省で行っていることに重複がないかどうかをチェックしていたのですが、 今回からは、要求前の段階から各省でどういうことを考えているかを出し合って、基礎 から実用化までのどこにそれぞれの省の施策が位置づけられるのかを、俯瞰図の形でき ちんと整理しております。  また、文科省が先行しているということですが、文科省はどちらかというと基礎寄り の部分を行い、厚労省は出口に近い部分を担当する。文科省、経産省で良いシーズが出 てくれば、それを実用化につなげていくということで、そこを是非我が省でやりたいと 思っております。したがって、そういう役割分担がスムーズにいくように良く調整した いと思います。 ○笹月委員   いまおっしゃったように、これまでのように、連携施策群といっても仕事が始まって から、あるいはお金が出てから相談するのではうまくいかないので、まさにプランニン グのところでそれをやっていただくことが大事だと思います。それは、例えば来年度あ るいは再来年度の予算からというような具体的な話し合いが何かできているのでしょう か。 ○林研究企画官   そこも含めて総合科学技術会議の場で各省の考えのすり合わせを行っております。 ○矢崎部会長   そのほかにお気付きの点がありましたら、8月3日(木)までに別紙のコメント用紙 で事務局のほうにお寄せいただければ大変ありがたいと思いますので、よろしくお願い いたします。コメントをいただきましたら、中の文言を修正して最終版を作りたいと思 いますので、よろしくお願いいたします。  それでは議題3「遺伝子治療臨床研究について」岡山大学医学部・歯学部附属病院か ら前立腺がんの申請がございましたのでご審議いただきたいと思います。この案件は7 月25日に厚生労働大臣から諮問されて、我々のほうに同日付で付議されております。ま ず事務局から、申請の概要等についての説明をお願いいたします。 ○林研究企画官   それでは、岡山大学医学部・歯学部附属病院の前立腺がんの遺伝子治療臨床研究につ いて、事務局から説明いたします。  まず、遺伝子治療臨床研究の指針では、実施施設から当該遺伝子治療臨床研究の実施 に関して意見を求められた場合には、複数の有識者のご意見をいただいて、新規性の有 無の判断をさせていただいております。今回笹月先生、永井先生、早川先生、3名の有 識者のご意見を伺いましたが、各先生とも新規性ありというご結論でしたので、今般厚 生科学審議会に諮問させていただいたものです。  それでは、この岡山大学医学部・歯学部附属病院の申請につきまして、資料3−1に 沿って説明をさせていただきます。3頁が遺伝子治療臨床研究実施計画の申請書です。 申請日は7月18日。実施施設は、岡山大学医学部・歯学部附属病院です。遺伝子治療臨 床研究の課題名は「前立腺がんに対するInterleukin-12(IL-12)遺伝子の発現アデノ ウイルスベクターを用いた遺伝子治療臨床研究」です。  4頁以降が臨床研究実施計画概要書です。研究実施期間は、承認されてから3年間。 総括責任者は、岡山大学大学院医歯薬総合研究科の公文教授です。  6頁に研究の目的が書かれていますが、本研究は、内分泌療法抵抗性再燃前立腺がん に対してIL-12遺伝子発現ウイルスベクターを単独で投与した場合の安全性の確認、具 体的には最大耐量の推定を主たる目的とし、副次的に免疫学的反応の検討、治療効果の 観察も行うという内容です。遠隔転移の有無にかかわらず、内分泌療法中に再燃してき た前立腺がん症例にIL-12遺伝子発現アデノウイルスベクターを単独で前立腺腫瘍内、 または局所ないし遠隔転移病巣内に直接投与し、その際の質的・量的安全性等を確認す る第I/II相試験です。  その下は対象患者ですが、病理組織学的に前立腺がんと診断され内分泌療法で治療さ れた患者のうち、腫瘍マーカーPSAを用いた診断で内分泌療法が無効とされた症例で、 転移の有無、前立腺全摘出手術の有無により3つのカテゴリーに分類されております。  6頁の下、対象疾患の選定理由については、前立腺がんに対して、現在の放射線治療 や化学療法では効果にそれぞれ限界がある一方で、動物実験の治験などからIL-12には 腫瘍特異的免疫活性を賦活化する作用があるとされております。海外の臨床研究では、 IL-12蛋白を皮膚T細胞性リンパ腫患者に皮下投与したところ、副作用は軽微なものし か認められなかったというような成績も得られております。7頁の「遺伝子の種類及び その導入方法」の少し上の部分で、本研究の担当医師らが実施した動物試験成績に基づ いて、化学療法や放射線療法よりも高い安全性と臨床効果の確保を目指して、今般、こ の遺伝子治療臨床研究の実施を計画したものであるとされています。  7頁の下は遺伝子の種類、それから導入方法です。本研究に用いられるIL-12遺伝子 発現アデノウイルスベクターはE1領域を欠損させて増殖性を失わせたヒトアデノウイ ルス5型ベクターにヒトIL-12の構造遺伝子とプロモーター配列等を組み込んだもの で、米国のGMP基準に従って米国ベイラー医科大学で生産されたものを使用するとい うことです。  投与方法が8頁の中ほど、遺伝子導入方法の(1)(2)に書かれています。前立腺部の腫瘍 ないしは前立腺全摘出手術施行後の局所再発腫瘍に対して、経直腸的超音波プローブに 装着された穿刺用のガイド装置を用いて、ベクター溶液を最大1mlずつ1、2カ所に注 入するというものです。それから、遠隔転移した腫瘍に対しては、部位に応じて、左記 と同様に、経直腸的超音波プローブを用いて注入を行うケースと、CTガイド下でベク ター溶液を注入するという2つの投与方法を計画しているということです。  9頁はこれまでの研究成果です。本臨床研究とほぼ同様の第I相遺伝子治療臨床研究 プロトコールが米国のベイラー医科大学で2004年5月から実施中で、9頁の下の表に、 それと対比する形で記載されております。ベクターは基本的に共通であるということ、 それから、漸増方式の要領も同じです。主な相違点は、1つは、米国では放射線療法抵 抗性の症例が中心であるということ、それから、術後の再発症例は米国では含まれてい ないということ、3つ目に、米国での注入部位は前立腺腫瘍のみで、前立腺全摘出手術 後再発部位や転移部位への投与は行われないということです。ベイラー医科大学ではす でに3例の投与が行われておりますが、重篤な副作用はいまのところ見られていないと いうことです。  10頁、前立腺がん以外の癌腫につきましては、進行性の消化器がんを対象に Interleukin発現アデノウイルスベクターを用いた遺伝子治療が行われたり、これはス ペインの成績ですが、安全性が確認されたということが報告されています。有効性につ いては、21例中1例で部分寛解、10例で病状の安定化が見られたということです。また、 レトロウイルスベクターやプラスミドを用いたex vivoの遺伝子治療も米国で実施され ているようです。  同じ頁の(2)「前立腺がん遺伝子治療について」で、本臨床研究の総括責任者らが、内 分泌療法抵抗性の局所再燃前立腺がんを対象に、単純ヘルペスウイルスチミジンキナー ゼ(HSV-tk)発現非増殖性ヒトアデノウイルス5型ベクターとガンシクロビル(GCV) との併用による遺伝子治療臨床研究を2001年から実施し、安全性を確認しております。 また神戸大学でもHSV-tkを発現する非増殖性ヒトアデノウイルス5型ベクターと抗ウ イルス剤との併用による遺伝子治療臨床研究が実施されております。  次に10頁の下、安全性の評価です。ウイルスベクターは米国GMP基準に従ってベイ ラー医科大学遺伝子ベクター室において生産されており、11頁にあるように、増殖性ウ イルス出現の可能性が理論的にはないだろう、また突然変異の可能性は低い。動物実験 では、標的細胞とその隣接臓器以外の全身的な広がりを示唆する所見はなかった。患者 以外の人への感染の可能性は低い。積極的に染色体内に組み込まれる機構を持ってはい ない。癌原性はない、というようなことが記載されております。  11頁の下は研究の実施が可能であると判断する理由の欄ですが、ここには、すでに IL-12遺伝子発現アデノウイルスベクターを用いた遺伝子治療が米国ベイラー医科大学 で施行されていること。また、今回の申請者である岡山大学医学部・歯学部附属病院で は、すでに前立腺がん、肺がんを対象とした遺伝子治療臨床研究の経験があることから 今回の計画も十分実施可能であると判断したということです。  12頁の実施計画の所は、要点のみ申し上げます。各ステージの症例数は3例、最大耐 量での症例数は6例ということです。また、有害事象が発生した場合には、その重篤度 に応じて、当該ステージの症例数を6例とするか、あるいは試験を中止するということ です。  本臨床研究では、13頁のいちばん下の段落にございますように、3回の投与終了後、 安全性が確認され、かつ悪化傾向が認められなければ、被験者の希望に応じて同量のベ クターの追加投与を実施することとしておりまして、追加3回投与ごとに安全性、有効 性を判定し、さらに被験者の希望があれば追加投与を3回ずつ実施するということです。  14〜15頁に、安全性の評価、治療効果判定、それぞれのタイムスケジュールが記載さ れておりますが、治療開始後1年後まで安全性、有効性の評価を行う。また被験者のフ ォローアップは最終投与終了後5年間追跡調査を実施するということです。  16頁に被験者の同意の取得方法が記載されておりますが、被験者の登録時及びその後 の遺伝子治療臨床研究審査委員会下部委員会で適格性が認められて実際に治療を開始す る前の2回、患者及び家族あるいは親族の自由意志に基づき文書同意を得るということ です。資料の21頁から被験者への同意説明文書が付いておりますが、この説明は省略さ せていただきます。  本日は、この岡山大学医学部・歯学部附属病院の遺伝子治療臨床研究の実施計画につ いて、倫理面を含めて総合的にご審議をお願いしたいと思います。その結果は、がん遺 伝子治療臨床研究作業委員会にお伝えし、そこでは主として科学的事項を中心に詳細に ご検討いただくこととなります。作業委員会の構成はこの資料の90頁に付けてございま す。  今回は併せて、この遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関しても引き続 き説明させていただきます。ウイルスベクター等の遺伝子組換生物を使用する臨床研究 に対しては、いわゆるカルタヘナ法に基づいて、実施施設から第一種使用規程の承認申 請が必要とされております。さらに、第一種使用規程の承認に当たって、その主務大臣 は学識経験者の意見を聞かなければならないとされておりますので、その場としてこの 部会、それからその下に、資料の107〜108頁に記載しております生物多様性影響評価に 関する作業委員会が設置されております。本日ご審議いただく岡山大学の遺伝子治療臨 床研究は、94〜95頁にある、カルタヘナ法に基づく第一種使用規程の承認申請が提出さ れております。したがって、これについて今後、作業委員会でご審議をいただいて論点 を整理していただいた上で再度本部会に報告することを考えております。以上長くなり ましたが、ご審議のほど、よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長   これは遺伝子治療臨床研究の作業委員会、それから生物多様性の委員会でご議論をい ただきます。笹月先生は両方に入っておられてご苦労いただきますが、よろしくお願い したいと思います。ここで何かなければ、2つの委員会にご検討いただくことといたし たいと思いますが、よろしいでしょうか。それでしたら、この2つの委員会にご検討い ただきまして、お時間をいただいて論点整理を行っていただいた結果、またこの部会で 総合的な審議をしたいと思います。 ○北村委員   9頁のベイラー医科大学の治験が、平成16年5月ですからいまから2年前に始まって いるにもかかわらず、たった3例という症例のスピードですと、岡山大学のほうは最大 36名をどのぐらいの期間で考えておられるのかということになります。2年間経過して いるのであれば、この3名の成績等もある程度わかるのかなという気がします。その辺 も委員会で検討していただきたいと思います。 ○矢崎部会長   その点もよろしくお願いいたします。次の議題は「遺伝子治療臨床研究の実施計画の 変更及び終了に関する報告書」です。事務局から説明をお願いいたします。 ○林研究企画官   資料3−2です。遺伝子治療臨床研究実施計画の変更報告が1件、終了報告が4件あ ります。まず変更報告ですが、表紙をめくりまして九州大学病院からのものです。昨年 10月に当部会でご了承いただきましたものです。1頁に課題名がありますが、変更箇所 は4頁にあり、変更前・変更後ということで対比されています。内容は、人事異動に伴 う変更や語句の整備のほか、検査において当初、血小板凝集能を測定することになって いましたが、これを削除するというもの。検査スケジュールをもう少し柔軟なものに一 部変更する。学内に新たに設置された臨床研究に係る利益相反マネジメント委員会から の指示で、同意説明文書における利益相反に関する説明を追加・変更したということ。  同じ頁の下で、これまでの研究結果及び研究結果の公表状況の欄を見ますと、第1例 目の被験者が4月21日に登録されておりますが、その当時、この方に軽度の肝機能障害 があって、学内の先進医療適応評価委員会で、この肝機能障害の改善を条件に適格性が 承認されていた事情があり、この肝機能障害の改善後の6月20日に改めて委員会で適格 性を再確認・再登録をしたということです。その後の情報では、7月4日に最初の投与 が行われたということです。以上が九州大学からの報告です。  同じ資料の15頁から26頁にかけて東北大学病院、27頁から39頁に東京医科大学病 院の終了報告があります。課題名は15頁にありますが、これらは非小細胞肺癌に対する 4施設共同遺伝子治療臨床研究のうち、終了報告が未提出だった2施設を今回まとめて 報告するものです。他の2施設の終了報告は、東京慈恵会医大附属病院が昨年7月、岡 山大学医学部・歯学部附属病院は本年2月にこの部会で報告しております。岡山大学の 報告の際に、今回の東北大、東京医科大の2大学の成績についても合わせてご説明して おりますので、今回は詳しい説明は省略させていただきます。4施設合わせて15症例の 成績は、例えば東京医科大学の終了報告書の34頁から37頁にかけて記載されています のでそちらをご参照ください。  41頁からは岡山大学医学部・歯学部附属病院の終了報告です。課題名は41頁にあり ますように前立腺癌に対するHSV-tk遺伝子発現アデノウイルスベクターとガンシクロ ビルを用いた遺伝子治療臨床研究です。これは、先ほどご覧いただきました資料3−1 と同じグループによる安全性確認を主目的とした臨床研究です。47頁のいちばん下の行 に、2001年3月から8症例、のべ9件に対して遺伝子治療を実施したと記載されており ます。  48頁の頭から、当初の計画では低用量群、中用量群、高用量群の3群を設定していた けれども、本臨床研究の開始前に、ベクター、対象疾患とも類似のプロトコールで先行 していた米国ベイラー医科大学の遺伝子治療臨床研究において、高用量群1例で重篤な 副作用が発現したということで、本臨床研究では高用量群はやめて、低用量群3例、中 用量群6例として実施したと記載されております。その下の安全性については、8名9 件の資料において重篤な副作用は見られず、血尿、頭痛、発熱、吐気などの軽度から中 等度の一過性の有害事象のみで特に治療は要しなかったということです。  49頁の臨床効果ですが、9件中6件で腫瘍マーカーPSAが低下し、PSA低下症例 での平均PSA減少率は6.7〜43.9%、平均24.1%であった。ベクターの投与後3ない し4週間の時点で最大下降を示したということです。  50頁の表を見ますと、PSAの変動に基づく有効性評価指標も別途設定して判定され ているようですけれども、それによれば部分寛解PRが2件、不変NCが4件、悪化P Dが3件という判定です。それから転帰は、低用量群3名のうち2名は原疾患の悪化と いうことで既に死亡しており、残る1例は中用量群に再度組み入れて、中用量群6名の うち、追跡不能となった2名を除いた4名全員が現在もまだ生存されているということ です。  49頁に戻りまして結論としては、投与群における導入遺伝子の発現が確認され、治療 効果も認められたということが記載されております。申請者らは、今回申請され、先ほ どご審議いただいたInterleukin-12遺伝子治療がまず承認されれば単独で実施し、その 後、このHSV-tk遺伝子治療とInterleukin-12遺伝子治療の併用療法の実施を将来的に は考えているということです。  53頁からは、大阪大学医学部附属病院からの終了報告書です。これは、遺伝子プラス ミドを用いた末梢性血管疾患に対する遺伝子治療臨床研究で、プラスミドを罹患肢の筋 肉内に注射する安全性確認を主目的とした臨床研究です。  59頁からは、阪大の最終報告書です。60頁に安全性の評価の項があります。対象とな った17名22肢において、ベクター投与との因果関係が否定できなかったものは全部で 221件あったということですが、重篤な有害事象17件についてはいずれもベクター投与 との因果関係は明白ではないと判断されております。また、HGFによる悪性腫瘍促進 の可能性、安定した増殖網膜症を悪化させる可能性、冠動脈病変の進行、このベクター に関してはそういった懸念がありましたけれども、本臨床研究ではそのような兆候は見 られなかったということです。  一方、重篤ではなかったものの、ベクター投与が発熱等の炎症あるいはアレルギーを 惹起する可能性は否定できず、今後臨床研究をやる場合には慎重に安全性を確認する必 要があるという判断がされていますが、最終的には、本臨床研究を中止すべき副作用は 見られず、本ベクター投与は安全であると判断されたということです。  一方有効性については62頁から後に記載があります。そもそも、本臨床研究は安全性 の確認を主たる目的としており、プラセボ対照群を設けていないということもあります し、それから有効性評価基準を治療開始3カ月後の成績を見た上で設定する計画になっ ていたこと、例数も十分ではないこと等から、本臨床研究の成績を基にベクターの有効 性を議論することは科学的には難しいだろうということで、有効性を検証するためには プラセボ対照二重盲検試験が必要だということが記載されております。  変更報告と終了報告については以上です。よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長   いまの報告についてご質問はございますか。 ○笹月委員   遺伝子治療の場合のコントロールですが、いま二重盲検コントロールを用いてダブル ブラインド法が必要だと本人たちが書いています。例えば、虚血のある下肢の何十箇所 にも注射をして、それは遺伝子の入っていないベクターだけであるというようなコント ロールが本当に許されるのかどうかという点も難しい問題です。逆に言えば、それがな いと臨床研究としてきちんとした評価ができません、という意見ももちろんありますの で、その辺が非常に難しいところだと思います。 ○加藤委員   患者の数も少ないし、一つひとつあまり共通の事例がないので、ダブルブラインド方 式でテストしても意味がないのではないかということで、いま垣添委員に個人的に質問 してみました。 ○矢崎部会長   おっしゃるとおりです。それは、笹月委員のおっしゃる意味も含めてなかなか難しい です。倫理的にしっかり審査して安全性、その次には最終的に効果はどうかというとこ ろが遺伝子治療でいちばん大きな課題になると思います。最初の計画の変更で、血小板 凝集の検査はどうでしょうか。 ○笹月委員   もともとその必然性があったとすれば、いま理由のところを拝見すると、検査項目か ら外れて検査できないのでやめましたということです。サイエンティフィックな話では ないのでそれでいいのかどうか、というのは確かに部会長がおっしゃるように疑問とし て残ります。 ○矢崎部会長   なかなか評価は難しいのですが、遺伝子治療臨床研究をやっている方に、評価方法を さらに検討していただくということで、ほかの臨床試験と同じようにすべてダブルブラ インドというのは難しいかもしれませんので、その点をさらに詰めていただくというこ とでよろしいでしょうか。 (異議なし) ○矢崎部会長   それでは報告を認めていただいたということとさせていただきます。続いて、「遺伝 子治療臨床研究に係る審査手続きの変更について」事務局から説明をお願いいたします。 ○林研究企画官   資料3−3です。遺伝子治療臨床研究に係る審査手続の最初の部分を少し簡素化し、 審査の迅速化・効率化が図れないかということを考えております。資料は2枚あります が、1頁目が臨床研究実施計画の審査手続に関するもの、2頁目がカルタヘナ法の第一 種使用規程の審査手続に関するものです。  1頁の左側が現行の審査手続です。申請があると複数の有識者のご意見をいただき、 新規性を判断し、新規性がなければ30日以内に厚生労働大臣から申請者に回答する。新 規性ありなら審議会に諮問、部会に付議して、まず当部会で1度ご審議をいただいた上 で、作業委員会に落とすというのがこれまでの流れです。  もしご了解いただけるようであれば、これを右側のように、まず部会長のご了解をい ただいた上で、作業委員会での審議を先行し、その後、最初に開催される部会で、作業 委員会の審議経過とともに、申請内容の概略を報告するというふうにはできないかと考 えております。そうすれば、部会の開催を待たずに作業委員会の審議に入ることができ ますし、部会のほうにももう少し内容のある報告ができるのではなかろうかということ です。2頁の第一種使用規程の手続も変更内容は全く同じです。提案の内容は以上です。 よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長   本日の審議にもありましたけれども、一応私は見させていただきました。私以外にも、 新規性の問題で永井委員、笹月委員、早川委員に検討していただきましたが、そういう 手続は一応踏むのですか。 ○林研究企画官   はい、その手続は踏みます。 ○矢崎部会長   作業委員会で検討していただいた、その最終結果をこの部会で検討していただく。そ うしませんと迅速な審議ができないということですのでお認めいただけますか。 (異議なし) ○矢崎部会長   ありがとうございました。それでは、作業委員会の正式な議論を先行させていただい て、その前には新規性の問題を議論していただいて判断させていただきたいということ です。今後はそのような流れで審査を進めていきたいと思います。議事の4番目は、「ヒ ト幹細胞臨床研究に関する審査委員会の設置」について事務局から説明をお願いいたし ます。 ○関山疾病対策課長   ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針については、5月の部会で取りまとめてい ただき、7月3日に大臣告知をさせていただきました。この指針の運用に関して、厚生 科学審議会科学技術部会の下に、ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会(仮称)を設 置しようとするものです。  委員会の業務は、研究施設から上がってまいりますものの中で、新規性を有するヒト 幹細胞臨床研究についての実施計画書が来るわけですが、これに指針に適合しているか 否かについて審査を行っていただき、その審査結果を厚生科学審議会科学技術部会へ報 告していただくというものです。それが主たる業務です。設置期日については9月1日 です。これは、指針の施行日に合わせています。会議等の取扱いについては原則として 非公開、議事録はその趣旨を公開するということで、他の審議会と同様の取扱いをする ものです。  この手続の流れは次の頁です。研究機関から実施計画書の提出が上がってまいります。 その実施計画書については、機関の長が許可するわけですが、許可するに当たって、各 研究機関の倫理審査委員会の承認を得て厚生労働大臣に上がって来るということです。 これ以下の対応は先ほどもご議論がされておりましたが、遺伝子治療臨床研究に関する 指針の取扱いと同じことです。以上です。 ○矢崎部会長   ヒト幹細胞を用いる臨床研究というのは既に行われている研究ですが、新規性を有す る場合には指針を作って、審査するということだと思いますが、何かご意見はございま すか。 ○加藤委員   「新規性を有する場合とは次の場合である」と書いてあり、その3項目に「その他は 厚生労働大臣が必要と認めるとき」と書いてあるのですが、その他厚生労働大臣がどう いう場合に新規性を認めるかという基準が書いてないです。この規定だけを見ると、ま るでザル法というか、非常にいい加減な審査をするのではないかという不安を感じるの ですがどうでしょうか。 ○関山疾病対策課長   新規性の判断については、先ほどの2枚目の流れをご覧いただきますと、厚生労働大 臣が新規性の判断をしていただくに当たり、複数の有識者の方々に判断していただくと いうことです。この複数の方々において、新規性ということについては、基本的には日 本国内において、指針施行前においても既に実施されている臨床研究も含め、科学的に 見て判断していただくということです。  それでは具体的にどう判断するのかということになると、既に同様の臨床研究が実施 され、その研究成果及び一定の予後に関する報告が学会誌等に発表されているか否か、 こういうことを申請していただくときに添付していただくことにしておりますので、こ ういう情報を得ながら判断していただくということになろうかと思います。 ○加藤委員   この規定では「新規性を有する場合とは次の場合である」と書いてあって、「新規の ヒト幹細胞又は移植・投与方法を用いているとき、過去にヒト幹細胞臨床研究の対象に なったことがない新規の疾患を対象としているとき」と書いてあるわけです。「厚生労 働大臣が必要と認めるとき」というのは、同じ審査基準で、最初の1、2と同じ審査基 準で必要と認めたということになると、手続法的に見て第3項目というのは別ルートの 手続を認めているという趣旨なのですね。実体法的には同じだけれどもと。 ○関山疾病対策課長   第3とおっしゃいますが、そこは基本的に有識者の方々の意見を伺いながら決めてい きます。「その他」と書いてあるのが、例えば組織培養の方法が異なるといったことも ありますので、上がってまいります個々の書類を審査させていただくことになろうかと 思います。 ○加藤委員   ということは、新規性の評価について、1、2のほかにも新規性を評価できる基準が あった場合には、それは厚生労働大臣の指命する委員会で評価するという趣旨ですね。 ○関山疾病対策課長   そういうことになろうかと思います。 ○矢崎部会長   これは、遺伝子治療臨床研究と同じように、先ほどのは3名の有識者の方々で議論し ていただくのですが、これについても同じようにそこで目を通していただくことになる わけですね。 ○関山疾病対策課長   そうです。 ○垣添委員   それが、先ほど承認した遺伝子治療の流れで、厚生科学審議会の部分は元に戻ってい るような感じになりますが、遺伝子治療と同じような扱いにするわけにはいかないので しょうか。つまり、新規性ありと判断された場合です。 ○関山疾病対策課長   これは同じです。 ○垣添委員   新規性ありと判断された場合、科学技術部会に出てきて、それから専門委員会で検討 して、その結果がここに上がってくるという流れになっています。でも、先ほどの遺伝 子治療の場合はそうではなくなりましたよね。 ○安達厚生科学課長   先ほど新たな方法として認めていただいた方法と同じと考えております。図ではちょ っとわかりづらいのですが、付議するのは部会に付議いたしますが、付議された時点で すぐに審査委員会のほうへお願いすることになっております。 ○垣添委員   先ほど承認された遺伝子治療の扱いと同じと考えてよろしいわけですか。 ○安達厚生科学課長   同様の扱いです。 ○矢崎部会長   よろしいでしょうか。 (異議なし) ○矢崎部会長   それでは、ヒト幹細胞臨床研究に関する審査も、このような手順で遺伝子治療臨床研 究と同じような手順で進めさせていただきます。議事の5番目は「研究機関・開発機関 の評価」です。本日は、国立循環器病センター研究所の評価です。事務局から説明をお 願いいたします。 ○林研究企画官   研究開発機関の評価については参考資料2ということで、厚生労働省科学研究開発評 価に関する指針をお配りしております。その参考資料2の15頁の上の第1章の下線を引 いてあるところに、「研究開発機関は、各研究開発機関における科学研究開発の一層の 推進を図るため、機関活動全般を評価対象とする研究開発機関の評価を定期的に実施す る」とされております。その評価結果が本部会にもこれまで報告されているところです。  なお、前回国立がんセンター研究所の評価結果を報告させていただきました際に、本 日は欠席ですけれども長谷川委員から、評価を受ける研究機関が報告を行うのは変では ないかというご指摘をいただきました。そのことについて事務局から申し上げておきま す。この指針を見ますと、機関評価は研究機関が評価を外部の方にお願いするという外 部評価の形態をとっており、評価の実施の主体はあくまでも研究機関にあるということ で、評価の内容とそれへの対応の全体に責任を負うのはあくまで研究機関であると解さ れることから、これまでも評価結果とその対応については研究機関のほうから部会に報 告をしていただくというやり方がとられてきたものと考えております。  そういうことで、今回は国立循環器病センター研究所の評価結果と、その対応方針に ついても同研究所の寒川副所長にお願いしているということです。それでは、寒川先生 から5分程度でよろしくお願いいたします。 ○寒川副所長(国立循環器病センター研究所)  概要を報告させていただきます。資料5の2頁にありますように、国立循環器病セン ター研究所評価委員会により評価が行われました。7頁のような形で評価報告書が作成 されております。委員としては1頁にある10名の先生方で、委員長は松尾壽之先生です。  研究機関の状況については1頁から5頁にあるような形です。評価については、平成 14年度から平成16年度にかかる循環器病センター研究所の機関評価ということで、平 成18年2月24日に行われました。書面による評価とともに、当日は研究所長、あるい は副所長の私による概要の説明と同時に、続いて各部門の部長による研究の概要につい て、プレゼンテーションを行い、丸一日をかけて評価をしていただきました。  その評価の要点を紹介させていただきます。研究所から発表された業績の中には、非 常に高い評価を受けたものも少なくないということです。しかし、突出した研究成果が 出ているものがある一方で、部内の研究テーマに一貫性が見られなかったり、焦点が十 分絞り込めていないという指摘も受けております。世界をリードするような先導的研究 については、今後、より適切に研究開発成果が確保されることを望んでそれを推進する ようにということです。  次の頁で、研究分野・課題等の選定については、概ねナショナルセンターの研究所と してとるべき課題が選定されているということです。ただ、部長の新旧の交代により、 研究テーマがまだ十分整理できていない部門もあることが指摘されています。研究資金 あるいは開発資源の配分について、治療研究費については、研究スタッフへの均一な配 分でなく、業績に応じた重点配分や、分けて研究員の育成を目的としたような形で考慮 する必要があるということも述べられております。  組織については、アクティビティの高い部長がリーダーシップを発揮しやすい組織の 整備を行う必要があるということです。若手研究員の人材の確保・活用などについても 積極的に行うべきではないかということです。研究設備については概ね適当であるとい うことです。  情報基盤については、センターの魅力をアピールして若手研究員を勧誘するような努 力を続けてほしいということです。研究及び定期財産取得の支援体制については、特許 の出願も年々増加しており、平成14年度の初めから比較すると、平成16年度末には倍 以上に増えているということで評価されております。共同研究あるいは民間資金の導入、 あるいは国際協力等の外部との交流については、産学官連携による共同研究を推進して いるということで評価を受けております。ただ、さらに海外の研究室とも広く共同研究 を行うようにという助言がありました。民間の研究助成金等については、活動数はかな り多いということで概ね評価できるということです。倫理規程等の整備状況については、 十分に整備されているということです。  その他については、前回はこういう評価について書面のみの評価で行いましたが、そ の際に、時間は短くても各部門の部長によるプレゼンテーションをしてほしいというこ とで、今回はそういう形で行いました。予定の時間よりもかなり質疑があって時間を要 しましたが、十分理解していただいたと考えております。そういう評価における資料等 については、もう少し整理してわかりやすい形で提出してほしいという要望がありまし た。  以上が、評価委員会からの指摘の概要です。それについて、評価にかかわる対処方針 として別紙3にまとめてあります。研究・試験・調査等については、循環器病領域の臨 床応用を試行したトランスレーショナルリサーチと関連する基礎的研究を積極的に進め ていくということで、部門別の研究テーマの一貫性や焦点を明確にする形で今後努力し たいということです。  人員配置等については、現行の制度下でできる範囲では努力して進めたいが、いろい ろな面で人員配置に柔軟に対応するのは困難なところもありますので、平成22年度の独 立行政法人化に際しては、適切な措置が構築されるように今後検討していきたいと考え ております。  研究課題の選定等については、ご指摘がありました部長の交代などによる研究テーマ が1つの部で混在しているということについても、今後、部長のリーダーシップの下で、 テーマの統一性を図るように整理していきたいということです。  研究資金等については、とにかく競争的研究資金を獲得するということで、積極的に 取り組んでいきたいということです。特に、若手の研究員の人材の確保・活用等に関し ては、今後はこれまで以上に積極的に行う方針でおります。  外部研究機関との国際協力等については現在も行っておりますが、今後さらにこうい う交流を含めるような形で積極的に努力していきたいということです。評価委員会に対 する運営については、叱責を踏まえて、今後できるだけ評価していただけるような形で、 資料整備も含めたいということです。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。国立循環器病センター研究所の評価について、ご意見、ご 質問がありましたらお願いいたします。 ○笹月委員   私も、いいのかどうかわかりませんけれども、この評価委員会の委員長が研究所の名 誉所長の松尾先生ということで、かつての仲間内ということで、それは中がよくわかる からいいのだろうという考え方もあろうかと思いますが、いわゆる外部評価委員会とし ては、本当の外部かどうかという点もあろうかと思います。我々の今後の参考のために、 どういうことでこのようになさったのかプリンスプルをお聞かせいただければと思いま す。 ○寒川副所長(国立循環器病センター研究所)   松尾先生は以前から委員でしたので、選ばれた経緯については私自身十分に把握して おりません。こういう形が不適切であれば、ご指摘をいただいて、今後は本当の外部の 先生にお願いするという形で考えていきたいと思います。ただ、大学の先生などが評価 に来られますと、国立循環器病センターは組織的にもいろいろ異なっていて、なかなか 理解し難いシステムなどもありますので、そういう面で松尾先生にお願いしたのではな いかと考えております。 ○矢崎部会長   それについて、ほかのナショナルセンターの方から何かありますか。 ○金澤委員   私たちは、こういうことはやっていないです。全く外部の方にやっていただく形をと っています。 ○寒川副所長(国立循環器病センター研究所)   そうですか、考え方の違いかもしれません。 ○矢崎部会長   がんセンターではどうですか。 ○垣添委員   私どもも全くの外部になります。 ○矢崎部会長   国際医療センターはどうですか。 ○笹月委員   外部の人にお願いしています。 ○宮村委員   感染症研究所も外部の人です。 ○寒川副所長(国立循環器病センター研究所)   そういうことでしたら、帰りましてそういう状況を報告し、今後の参考にしたいと思 います。 ○北村委員   これは私の責任なのかもしれませんが、どなたを決めるという規約があったのかない のか私も詳細は存じませんが、皆さんのご指示、ご意見に従って変えるべきところは変 えていきたいと思います。おそらく評価委員の中で、互選の形で委員長を選んだんでし たかね。ですから、一切関連者を省くほうが、やはり現状には即しているような気もい たしますので、持ち帰りまして次回に向けての対応を早速開始させていただきます。経 緯について、唯今、どうして松尾先生が委員長になったのかは私の責任ではありますが、 経緯自身まではよく承知していない点がありますので、それも確認した上で部会長宛ご 報告するか、あるいは厚生科学課にご報告したいと思います。どのようにしてそうなっ たのか、もし何か理由があるのであればご報告させていただきます。 ○寒川副所長(国立循環器病センター研究所)   委員会を始めるに当たり、委員の互選という形でその場で委員長が選ばれました。委 員として内部の者が入っているのが不適切であれば、委員からも外すような形で考えた いと思います。 ○矢崎部会長   その点はともかくとして、評価については極めて客観的にされています。良い点と問 題点を的確に指摘されているような印象を受けました。いまのご意見を伺って、今後国 立循環器病センターで対応を考えていただきたいと思います。  研究所の中で、例えば部長が代わったときに、研究テーマが混在するとか、あるいは 人員の配置が、成果の上がった所にも選択と集中ということがなかなかできないという のは、研究者の任期制というのをどこまでとするかということがあるのでしょうか。 ○寒川副所長(国立循環器病センター研究所)  我々の所では、任期制の導入は非常に早くから進めております。現在、室長室員のう ち大体25%が任期付で、これまで27名を任期付で採用しております。ですから3年間 の任期ですと、既に任期が終わっているということもあります。おそらくナショナルセ ンターの中では、任期付の人員がいちばん多いのではないかと考えております。 ○矢崎部会長   それでも、その問題はなかなか解決できないですね。 ○寒川副所長(国立循環器病センター研究所)   そうです。ただ、今回は部長の交代がかなりの部でありましたので、そういうことも 今回の評価の中でたまたまといいますか、若返ってはいるのですけれども、そういう形 で出てきたのではないかと考えています。 ○矢崎部会長   いくつかの課題が指摘されましたので、この評価に基づいて伸ばす点はさらに伸ばし ていただいて、課題については的確な対応で、研究所をさらに発展させていただければ と思います。今後ともよろしくお願いたします。本日は、寒川先生ご出席いただきまし てありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。 ○寒川副所長(国立循環器病センター研究所)   ありがとうございました。こちらこそよろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長   最後の議題の「研究上の不正への対応について」事務局から説明をお願いいたします。 ○林研究企画官   資料6の表紙をめくり1頁目に、これまでの流れと今後の対応についての案を記載し ております。「1.これまでの流れ」では、1つは総合科学技術会議が本年2月に、研 究上の不正に関する適切な対応について検討し、その結果が各関係大臣宛に意見具申さ れています。  2番目に、文科省において「科学技術・学術審議会」の下に、「研究活動の不正行為 に関する特別委員会」が設置され、本年3月から検討を開始し、研究活動の不正行為に 関する特別委員会報告書(案)を取りまとめ、パブリックコメントの募集がされており ます。7頁以降に、その報告書(案)の概要と、報告書(案)の本体を参考として添付 しております。  1頁に戻り、日本学術会議でも、科学者の行動規範に関する検討委員会を設け、本年 4月に「科学者の行動規範(暫定版)」を作成し、大学研究機関等に送付し、意見を収 集していると聞いています。  「2.今後の対応について(案)」ですが、2頁目以降に付けました、厚労省の不正 対応に関する基本方針(案)についてご議論をいただき、その後、意見も踏まえて厚労 省のガイドライン(案)を作成したいと考えております。その場合は1頁の下に書いて あるように、8月から、案の段階から厚労省所管の各機関とも協議をしながら、ガイド ラインの内容について検討を進める予定です。10月ごろに、平成19年度の各研究事業 の公募要項のご議論をいただくことになりますが、その際にこの基本方針を反映し、ガ イドライン(案)を当部会においてご検討いただきます。そして、来年3月までにこの ガイドラインを確定し、厚労科研その他の研究事業の取扱規程等に反映していくことも 考えております。  3頁からが厚労省の基本方針(案)をポンチ絵で示したものです。基本的には7頁以 降に付けた、文科省の特別委員会報告書(案)の内容と横並びの内容になっております。 この頁の下のスライドは、厚労省の研究上の不正の定義ということです。対象とする不 正行為は、研究成果等の中で示されたデータ・情報等のねつ造・改ざん・盗用の3つで す。この考え方の対象範囲としては、その下にありますように厚労省で所管する厚労科 研費補助金等の競争的研究資金等を対象として考えております。  4頁の上のスライドは、不正を調査するスキームです。スライドの左側下、告発者か ら告発があれば、原則として告発された研究者が所属する研究機関が調査を行います。 告発には、原則顕名で行う、あるいは不正とする科学的・合理的根拠が示されていると いったような条件があります。その右側、告発が悪意で行われた場合の定めもあります。  スライドの右側上に、不正行為となる場合という枠があります。不正行為の疑義への 説明責任は、基本的には告発された研究者の側にあり、当該研究者が事項の説明により 疑いを覆せなかったり、あるいは生データ、実験ノート等の不足による証拠を示せない 場合は不正行為とみなされることになります。  不正行為と認定される者は、その右下枠のとおりです。(1)は不正行為に関与したと認 定された論文の著者。(2)は不正行為があったと認定された論文等の主たる著者。これは 下線を引いていない部分をご覧いただきますと、「不正行為に関与したと認定されてい ないものの不正行為があったと認定された論文等の主たる著者」となっております。(3) 不正行為があったと認定された論文等の著者ではないけれども、当該不正行為に関与し たと認定された者。この3種類に分けられています。(2)は、不正行為に関与したと認定 されていないのですけれども、しかし、論文の主たる著者であれば、その不正行為には 応分の責任はあるだろうということでここに加わっています。  4頁下のスライドは、調査機関における調査です。これは予備調査と本調査に分かれ ています。予備調査で本格調査が必要とされれば、右側の本調査を行い、その結果に基 づいて、左下にあるように不正の認定、調査結果の公表といった措置をとることになり ます。  5頁上のスライドの、資金配分機関では、措置を検討する委員会を設置し、不正行為 の重大性等を考慮して措置を決めたり、措置内容を公表したりすることになります。下 のスライドは、不正認定後は、研究者の所属する研究機関、資金配分機関、それぞれで 競争的資金の打切りや返還、不採択、競争的資金の申請制限といった措置をとることに なります。  スライドは以上ですけれども、いま申し上げた内容をベースに、今後は先ほど申し上 げたようなスケジュールで、厚労省としてのガイドライン(案)を作成していくことに なりますのでよろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長   これは、文科省で作ったのを土台にしたものですが、厚労省としてそれに付け加える ような視点や課題があるでしょうか。 ○林研究企画官   この研究上の不正への対応については、先般も総合科学技術会議に関係府省の担当者 が全部呼び集められ、それぞれの省の取組みについて報告をしました。基本的には各省 横並びの対応が必要ではないか。どこか1つの省が違うことをやるというのは、こうい う場合はちょっと考えにくいという意見がありました。厚労省も、基本的にはそういう 考え方です。  ただし、文科省の研究費と厚労省の研究費と似ているようで違いもありますので、そ ういうところは文科省のやり方を参考にしながらも、ローカライズしたガイドラインに していかなければいけないのかなと考えております。 ○黒川委員   平成15年に学術会議が「不正行為について」という報告書を出して、それからいろい ろなシンポジウムをやったり、しょっちゅう繰り返しているので、総合科学技術会議で も、学術会議という言葉がこういうところで出てきています。そういうのを、私たちが 自発的に言うのが大事なのだけれども、しかし不正行為というのは知っていてやってい ることなのです。こういう罰則はいいけれども、科学者たちが自分たちでできることが もっとあるのではないか。あの報告書の第三者機関などというのは、そんなことをやる 前にいくらでもやることはある、という話はしょっちゅうしています。  1つは、ワシントン大統領が子どものころ、お父さんが「この桜の木を切ったのは誰 だ」と言ったら、「私です」と言ったのが、なぜ200年も経った今でも美談として残っ ているのですか。それは、人間の弱さなわけです。正直なのはいいことだと言っている のだけれども、みんな不正直になりやすい、ということを言っているわけです。もとも とは弱いんだから。だから、不正行為と間違いは別なのです。  学会は先生などもご存じだけれども、アメリカやイギリスで学会でしゃべるというこ とは、自分のピアというか、その同じ分野のグループが来て聞いているわけです。それ に指摘されてボンボン直されるわけです。そういうプロセスが日本の学会にあるかとい うことがまず大事なのです。背後に偉い先生の影がチラチラしているから言えないなど ということになるとね。  ワシントンがいつまでも美談になっているから、日本の社会構造に特異的な問題がな いかということをまずはっきりさせろと私は言っているわけです。それは自分たちで直 せることはいくらでもあるわけです。役所の不正行為とか、いろいろな会社の不正行為 はいくらでもあるわけです。そういう日本の社会構造として特異的なものはないかとい うことをまずやって、それで学会などで大学は何を評価したかというと、学会発表では 間違っていたっていいのです。みんなでフィードバックして直せるプロセスなのです。  それが、ピアレビューのジャーナルに出して、ピアレビューされて外に出た途端に、 これはパブリックドメインのプロパティになるのだからという話が、大学の研究室のセ ミナーとか、学会はそういうことをお互いに間違いではなくて、データが間違っている のではないかということは、恥でもなんでもないわけです。それは、建設的にお互いに より質のいい研究者なり教育のプロセスなのだという話をもっともっと言わなくてはい けないのです。間違ったら、すぐこういうことを書かれるでしょう、ますます萎縮する わけです。それは、研究費の支給の問題だってあるけれども。  それは、常にお互いさまであって、そういう話をどのようにやっていくかということ をアドレスしないと非常に建設的ではないのです。どんどん書くばかりで、どうせ何も できやしないのです。だから先ほど言ったように、インステチューションとして、研究 機関は研究者が持ってきた研究費をどうやって執行したらいいのかというインフラをも っともっとやってくれないと、不正をするつもりではないけれども、余ってしまったら 返さなくてはいけないとか、その手続はなんだとか、いろいろなことを言っています。  それは、総合科学技術会議でも言いましたけれども、文科省でそういうのを出してき て、誰がこんなことを書いたのだなどという話をしました。後で、委員を全部見せろと 言いましたけれども、エスタブリッシュメントの先生がそんなことを言うなんて言うけ れども、自分も胸に手を当ててみたらそんなことは言えないのではないかという話はし ておかなければいけないのです。  私たちとしては、システムとしてより透明性があるところで、若い研究者がこういう ふうにやるとか、共著者の問題もそうだし、いま外国で評判になっているのは、日本は かなり研究費を取っているから、共著者の問題で某大学で言ったように、学生がやった ので私は知らなかったと。知らなかったら名前を付けるな、というぐらいのことは当然 です。それは、日本の研究者のソサエティの不可思議さというか、その辺のレピュテー ションというか、クレデビリティが落ちてきているのは、研究者もさることながらファ ンディングもそうだし、手続がやたらとビュロクラティックでなどという話も書かない と、非常にカウンタープロテクティブだ、という話はしていますので、是非そういう視 点を入れてほしいのです。  これはチェックするのではなくて、どうやったらそういうことが少なくなるかという 話をまずしない限り、非常にカウンタープロダクティブに思います。是非そういうこと を言っておいてください。3頁のいちばん下に、ねつ造・改ざん・盗用と書いてありま すがこれは知っているのです。盗用をしたのをいちばん知っているのには、教授の命令 かどうか知らないけれども本人なのだからね。  その中をトランスペアレントすることは大事だけれども、故意でない、誤りは不正行 為から除外というのは当たり前です。学会でしょっちゅう間違いがあるから、みんなで 指摘しているわけです。だけれども、ペーパーになって、ピアレビューされて出たとき に、故意だったらそれはやるのだけれども、間違いはいくらでもありますからね。過去 の実験なんていくらでも間違えるわけだから、しょっちゅう間違いはありますよ、とも っと言っていなくてはいけないのではないか。  ただ、それを少なくするというのは、研究のあり方のプロセスで私たちの責任として はすごく大事だと思います。これだと警察みたいです。それで、警察がまたやたらと汚 職ではないけれども問題がないわけではない。そういう話ですよ。それを言わない限り ワシントンはなぜ有名なのかという話を常に私は言っています。 ○加藤委員   研究上の不正という概念の中に、いま論文の内容についての不正という考え方で議事 が進められているような感じがするのです。実際問題として、研究資料の不正な入手も かなりあって、実際には病院で管理している血液を、提供者に無断で利用したというケ ースが非常にたくさんいままで報告されています。それと、研究資料の不正入手という 項目は、一体どこで審査するのか。この研究上の不正とはみなされないのか、その辺を 聞いてみたいと思います。 ○黒川委員   それが教育だと言っているわけです。これはまずいんじゃないの、という話をもっと フラットな関係で役所も会社も言えるのかというのが日本の社会には大事で、そういう ことをかなり支持するカルチャーがないかという話がいちばん大事なことです。研究者 というけれども、役所の不正行為はどうするのだ、警察の不正行為はどうするのだとみ んなある。そういうために司法があるかもしれないけれども、司法の不正行為もありま す。そういう話は誰でもあるわけです。  そういうことを少なくする努力を私たちがすることがすごく大事で、いまの患者への インフォームド・コンセントも、前にあったサンプルの無断使用を言えないというのは 不正行為というよりは、うっかりかどうか知らないけれども、知っていてわざとやれと 言わない限り、それは教育のプロセスで、試験で間違える人はいくらでもいるわけでし ょう。間違いをしたことのない人はいないのです。ここに、わざわざ間違いは違うよと 書いてくれているのは相当いいポイントだと思っていました。不正というのは、知って いてやっているかということなのです。うっかりミスなどというのはいくらでもあるわ けで、それを直すのが教育です。 ○加藤委員   血液の利用というのは、うっかりミスとはとても言えないぐらいの数ですが。 ○黒川委員   サンプルのインフォームド・コンセントその他は最近出てきたことで、昔から教育は あるわけです。それはいけないのだよというのは、教育する場の問題だと思っています。 そうではないですか。何回言われても、わざとやっているというのは全然論外です。 ○加藤委員   これからは、こういうことがだんだん大きくなってくると、刑法上の罪刑法定主義に 当たるような、何を不正とするかということについてあらかじめ何らかの形でルールで 明記されていないと非常に具合が悪いということになると思うのです。研究上の不正の 範囲が非常に狭くなっていたり、あるいは本来不正としてカウントすべきものがカウン トされていないとするとよくないと思うのです。 ○笹月委員   いまの加藤委員のご指摘に対しましては、いわゆるヒト由来の試料を用いて研究する 場合、それはすべて臨床研究と定義されて、臨床研究であれば臨床研究の倫理指針に従 うことになっています。ずっと昔は、患者には何も言わずに血液を採ってやっていたの でしょうけれども、そういうことがきちんとルール作りされていますので、いま先生が おっしゃったレベルでは、一応体制は整えられたと思います。あとは、黒川委員がおっ しゃるように、それがどう皆に行きわたって教育がされるか、というレベルではないか と思います。 ○矢崎部会長   一応加藤委員が言われたようなことは、ルール違反だということは明白になっていま す。 ○安達厚生科学課長   笹月委員にご指摘いただいたとおりでして、厚生労働科学研究費については、取扱規 程で臨床研究の倫理指針を守っていただくことを交付の条件にしております。 ○矢崎部会長   いまご指摘いただいた点も十分勘案し、ガイドラインを策定していただいて、それは 平成19年3月までに作るということですが、その前にここの部会にもう一度出てくるわ けですね。そのときにまたご議論いただきますが、途中でもご報告いただければ大変あ りがたいと思います。事務局から連絡をお願いいたします。 ○林研究企画官   前回6月の部会でご審議いただきました、平成17年度厚労科研補助金の成果の評価に ついて、本日、参考資料4としてお配りしております。これについて、部会でのご議論、 それから部会終了後に黒川委員、井村委員よりいただきましたご意見を基に、国際医学 協力研究事業が15頁、心の健康科学研究事業が40頁ですが、2カ所若干修正しており ます。  15頁の(1)の4に「国際医学協力研究事業」という項目がありますが、その2番目 のパラグラフの冒頭「必要に応じてアジア地域の研究者の協力を得て」という文言を追 加しております。  40頁の(12)こころの健康科学研究事業のところでは、最初のパラグラフの「近年社 会的関心の高いこころの問題は」というところで、前回、精神分野と神経筋疾患分野の お話がありましたが、その趣旨のパラグラフを追加いたしました。  この件に関しては、最終的な取りまとめは矢崎部会長に一任し、その結果を当部会に 報告させていただくことになっておりましたが、この修正内容で、事前に矢崎部会長に もご了解をいただき、本日このような形でお配りさせていただきました。  次回の部会は、議題の準備ができたら改めて事務局で先生方の予定を伺い、日程を調 整させていただきます。 ○矢崎部会長   平成17年度の報告書はこの2点を変えさせていただきましたので、よろしくご了承を お願いいたします。長時間にわたり、熱心なご議論をありがとうございました。本日の 科学技術部会はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。 −了− 【問い合わせ先】 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担当:情報企画係(内線3808) 電話:(代表)03-5253-1111 (直通)03-3595-2171