06/07/26 第22回中央最低賃金審議会議事録 第22回中央最低賃金審議会議事録 1 日 時  平成18年7月26日(水)15:00〜15:25 2 場 所  厚生労働省専用第21会議室 3 出席者    【委員】 公益委員  今野会長、鬼丸委員、勝委員、中窪委員、樋口委員 労働者委員 弥富委員、加藤委員、久保委員、須賀委員、橋委員、 中野委員         使用者委員 池田委員、川本委員、杉山委員、原川委員    【事務局】厚生労働省 青木労働基準局長、青木勤労者生活部長、 前田勤労者生活課長、名須川主任中央賃金指導官、 吉田副主任中央賃金指導官、梶野課長補佐    4 議事次第   (1)中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告について (2)平成18年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申) 5 議事内容 ○今野会長  ただ今から第22回中央最低賃金審議会を開催します。本日の議題は、平成18年度地域 別最低賃金額改定の目安についてです。平成18年度の地域別最低賃金額改定の目安につ いては、去る5月12日厚生労働大臣から当審議会に対し、諮問が行われていましたが、 その後目安に関する小委員会において熱心に御検討いただきました結果、先日の小委員 会において報告が取りまとめられました。そこで小委員長を務めました私から報告をさ せていただきます。  本年度の目安審議については、去る5月12日の総会において諮問があり、目安に関す る小委員会に付託されました。その後、小委員会においては6月23日、7月12日、7月 21日に会議を開催し、委員の皆さんに熱心に御議論をいただきました。特に、第3回の 小委員会においては、小委員会報告を取りまとめるべく、公益委員と労使各側委員との 個別打合せを数回にわたり開催し、夜遅くまで御議論をいただきましたが、労使の意見 の一致を得ることができませんでした。しかしながら、結果として公益委員見解を本審 議会に報告することについて、労使各側に御了解をいただき、お手元に配付してありま す報告書を取りまとめた次第です。まず、小委員会報告を事務局に朗読していただきま す。 ○吉田副主任中央賃金指導官  中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告、平成18年7月21日。  1、はじめに。平成18年度の地域別最低賃金額改定の目安については、累次にわたり 会議を開催し、目安額の提示の是非やその根拠等についてそれぞれ真摯な論議が展開さ れるなど、十分審議を尽くしたところである。  2、労働者側見解。労働者側委員は、景気は確実に回復を続け、企業業績は全体とし て改善が進んでいる一方、労働者生活は置き去りにされ、所得の二極化が加速するとと もに、消費者物価も上昇に転じ、低所得層の生活苦がさらに深刻化しており、低所得層 の改善に結びつく政策対応が急務であると主張した。  労働市場の改善も進んでいるが、雇用形態の多様化が低所得・不安定雇用の増加を伴 って進んでおり、雇用者に占める非典型労働者の比率は、すでに3人に1人の割合に達 していると指摘し、持続可能な安心して暮らせる社会であるために、「生活できる賃金」 をナショナルミニマムとして保障することが極めて重要になってきていると主張した。  加えて、現在の最低賃金時間額の全国加重平均は668円であり、連合がマーケットバ スケット方式によって試算した若年単身労働者の必要最低生活費(さいたま市で月額 146,000円(時間額840円)、宮崎県延岡市で134,000円(時間額760円))を大きく下回 っており、賃金構造基本統計調査の一般労働者の所定内時間当たり賃金の36.5%の水準 でしかなく、さらに、諸外国と比べ、我が国の最低賃金水準が見劣りすることも大きな 問題であると主張した。また、この数年間の最低賃金の影響率は極めて低く、その存在 感は希薄になってきており、少なくとも、単身でも最低限の生活ができる水準を実現す べく、明確な水準改善を図ってこそ、最低賃金の存在感を社会にアピールしていくこと ができると主張した。  以上の点を踏まえれば、今年の目安決定に当たっては、存在感のある最低賃金とする ために、生計費・各種賃金指標の現行水準や環境変化の動向を踏まえ、二桁台の目安を 提示すべきであり、少なくとも昨年を大幅に上回る必要があると最後まで強く主張した。  なお、今回公益側委員から提起された課題(地域ごとの経済実態の違い等により各ラ ンクごとの改定率に差をつけること)については、長年にわたって慣行としてルール化 されている目安の決定方法を根本から見直すものであり、現行の最低賃金水準そのもの やデータのあり方等も含め、原点に立ち返った議論が必要であり、そのためには、おお むね5年ごとの見直しにとらわれず、テーブルに着くことはやぶさかでないと考えてい ると主張した。  3、使用者側見解。使用者側委員は、日本経済全体が回復基調にあるにしても、地域 間や産業間、企業規模間、さらには同じ地域あるいは同じ産業の企業の間においても、 景況感・業況感にばらつきがみられると主張した。日銀の「地域経済報告」等では、全 体としては着実な回復基調にあるものの、「依然として地域間でばらつきがみられてい る」とされており、すべての地域が同様の状況にあるのではないことに留意する必要が あると指摘した。  中小企業の景況は改善してはいるものの、大企業に比べて遅れがみられるとともに、 地域や業種によってばらつきがみられ、また、企業倒産件数が増加傾向にあるとともに、 資金繰り判断や金融機関の貸出態度判断において大企業と中小企業の間でかなりの温度 差があると指摘した。さらに、原油をはじめとする原材料費が高騰し、企業経営を圧迫 し続けていることなどを背景に、業況判断は再び悪化に転じ、先行き不透明感・不安感 は高まっており、設備投資計画においても、中小企業は前年度比がマイナスであり、単 に現在のみならず、将来的な観点からしても、引き続き厳しい状況に置かれる可能性が あると指摘した。さらに、国際経済情勢、為替や株価の動向、国際競争の激化、ICT 化による技術革新への対応など、企業経営を取り巻く先行きの不透明感・不安定感の原 因には枚挙に暇がないと主張した。  加えて、賃金改定状況調査の第4表の賃金上昇率は、Aランク、Bランクの0.6%に 対して、Cランクは0.4%、Dランクは昨年に引き続き0.0%と、厳しい現状を反映した 結果が出ていると指摘した。さらに、今年の賃金交渉結果をみても、大手企業、中小企 業ともほぼ横ばいで、ベースアップを実施しなかった企業が大多数を占めたということ を意味しており、このことは、賃金改定状況調査の第1表において賃金改定を実施しな い事業所の割合が5年連続して50%を超えていること等からも明らかであると主張した。  以上の点を踏まえれば、今年度の目安は、賃金改定状況調査の第4表で最も数値の低 かったDランクの賃金上昇率である「ゼロ」を考慮すべきであり、有額の目安を示すこ とは適当ではないと最後まで強く主張した。  4、意見の不一致。本小委員会としては、これらの意見を踏まえ目安を取りまとめる べく努めたところであるが、労使の意見の隔たりが大きく、遺憾ながら目安を定めるに 至らなかった。  5、公益委員見解及びこれに対する労使の意見。公益委員としては、地方最低賃金審 議会における円滑な審議に資するため、賃金改定状況調査結果を重要な参考資料として 目安額を決定するというこれまでの考え方を基本としつつ、上記の労使の小規模企業の 経営実態等の配慮及びそこに働く労働者の労働条件の改善の必要性に関する意見等にも 表われた諸般の事情を総合的に勘案し、公益委員による見解を下記1のとおり取りまと め、本小委員会としては、これを公益委員見解として地方最低賃金審議会に示すよう総 会に報告することとした。  今年度の目安額の算定については、基本的には各ランク同率の引上げ率とする考え方 を踏まえつつ、ランクごとの経済実態に大きな相違があるといった特殊事情も踏まえて 総合的に勘案したものである。  また、同審議会の自主性発揮及び審議の際の留意点に関し、下記2のとおり示し、併 せて総会に報告することとした。  なお、下記1の公益委員見解については、労使双方ともそれぞれ主張と離れた内容と なっているとし、不満の意を表明した。  記、平成18年度地域別最低賃金額改定の目安に関する公益委員会見解。  1、平成18年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安は、次の表に掲げる金額とす る。平成18年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安。Aランク、千葉、東京、神奈 川、愛知、大阪、4円。Bランク、栃木、埼玉、富山、長野、静岡、三重、滋賀、京都、 兵庫、広島、4円。Cランク、北海道、宮城、福島、茨城、群馬、新潟、石川、福井、 山梨、岐阜、奈良、和歌山、岡山、山口、香川、福岡、3円。Dランク、青森、岩手、 秋田、山形、鳥取、島根、徳島、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、 沖縄、2円。  2(1)、目安小委員会は本年の目安の審議に当たっては、平成16年12月15日に中央 最低賃金審議会において了承された「中央最低賃金審議会目安制度のあり方に関する全 員協議会報告」を踏まえ、特に地方最低賃金審議会における合理的な自主性発揮が確保 できるよう整備充実に努めてきた資料を基に審議してきたところである。  目安小委員会の公益委員としては、地方最低賃金審議会においては最低賃金の審議に 際し、上記資料を活用されることを希望する。  (2)、目安小委員会の公益委員としては、中央最低賃金審議会が本年度の地方最低 賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることを要望する。以上です。 ○今野会長  ありがとうございました。今回は全体としては景気が回復している中で、小規模企業 の経営実態やそこに働く労働者の労働条件の改善の必要性をどのように考えるかの点な どで、労使の主張が相反する中での目安審議となりましたが、関係者の御努力により、 ただ今御報告した小委員会報告を取りまとめることができ、改めて私から関係者の皆様 には御礼を申し上げます。私からの報告は以上です。以上の小委員会報告及び説明につ いて、何かありますか。 ○中窪委員  内容に係ることではないのですが、目安を書いてある表の都道府県の並びが昨年とは 違う気がします。これは何か順番は関係あるのでしょうか。 ○前田勤労者生活課長  昨年のは平成16年目安制度のあり方に関する全員協議会の都道府県の指標に応じた順 番で書いてありましたが、それ以前は行政で用いる局別の順番がありまして、その順番 で書いていました。今年はそれに戻しています。 ○今野会長  他にありますか。それでは、この小委員会報告をもとに当審議会としての答申を取り まとめたいと思います。いかがでしょうか。                  (異議なし) ○今野会長  事務局から答申案を配付してください。 (答申案配付) ○今野会長  事務局は朗読をお願いします。 ○吉田副主任中央賃金指導官  平成18年7月26日、厚生労働大臣川崎二郎殿、中央最低賃金審議会会長今野浩一郎、 平成18年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)(案)。平成18年5月12日に 諮問のあった平成18年度地域別最低賃金額改定の目安について、下記のとおり答申する。  記。1、平成18年度地域別最低賃金額改定の目安については、その金額に関し意見の 一致をみるに至らなかった。  2、地方最低賃金審議会における審議に資するため、上記目安に関する公益委員見解 (別紙1)及び中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告(別紙2)を地方最低賃 金審議会に提示するものとする。  3、地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心を持って見守ることとし、同審議 会において、別紙1の2に示されている公益委員の見解を十分参酌され、自主性を発揮 されることを強く期待するものである。  なお、別紙1、2については先ほど読み上げたものと同じでありますので、朗読を省 略させていただきます。以上です。   ○今野会長  ただ今の答申案について何かありますでしょうか。 ○須賀委員  答申案の内容そのものに意見があるわけではないのですが、2つ御要望をさせていた だきます。  ご要請をさせていただく1つ目は、先ほどの小委員会報告にもありましたように、今 年の目安額の提示は、ランクごとの経済実態の大きな相違を踏まえての特殊事情を総合 的に勘案したものだという中で提起をされる状況にあります。とりわけ、特殊事情とい う意味では経済状況なり、あるいは雇用実態、賃金改定状況調査の第4表、さらには影 響率等の動向等々を踏まえて、公益委員として出された考え方に基づいて、提示をされ た目安額となっています。そういう特殊事情を各地方の審議に当たって、十分に説明を していただけるようにお願いをしておきます。  もう1つは、直接地域における地域別最低賃金の審議とは関わりませんが、その後に 予定をされます産業別最低賃金の審議の状況への対応についてお願いをしておきます。 一部の地方の使用者側委員に、こういう言い方をして大変失礼ですが、中央の最低賃金 部会での検討状況があるから、産業別最低賃金の審議はしないのだと誤解をなさってい る地方の使用者側委員の方がおられるやに私どもに連絡が入っています。部会の動向は 御案内のように、この目安審議を前にして一時中断の状態にありますので、そういう結 論の出ていないことに対して、あたかも結論が出ているようなことで審議のテーブルに 着いていただけない状況も地方から報告されています。そういうことではないというこ とを改めて地方に徹底いただければと考えています。以上、その2点を御要請申し上げ ておきます。 ○今野会長  他にありますでしょうか。ないようでたら、この答申案どおり答申を取りまとめたい と思いますが、いかがでしょうか。 (異議なし) ○今野会長  全会一致でこの答申案どおり答申することが了承されたものといたします。 (答申文手交) ○今野会長  青木局長から御挨拶があります。 ○青木労働基準局長  ただ今、今野会長から大臣あての答申をいただきました。大変ありがとうございます。 大臣は所用によりまして、出席できませんので、代わりまして御挨拶申し上げます。平 成18年度の地域別最低賃金額の改定の目安について、大変に熱心な御審議のもとにおま とめいただきまして、大変ありがとうございます。今後、この答申を各地方の労働局に 伝達をいたしまして、各地方最低賃金審議会における地域別最低賃金額の改定審議が円 滑に進められるように対応してまいりたいと思っています。どうもありがとうございま す。 ○今野会長  他に何かありますでしょうか。よろしいですか。それでは、これで第22回中央最低賃 金審議会を終了します。本日の議事録の署名ですが、池田委員、橋委員にお願いしま す。終わります。ありがとうございました。                      【本件お問い合わせ先】                      厚生労働省労働基準局勤労者生活部                      勤労者生活課最低賃金係                      電話:03−5253−1111                            (内線 5532)