06/07/04 第13回労働政策審議会労働条件分科会最低賃金部会議事録


      第13回労働政策審議会労働条件分科会最低賃金部会議事録


1 日 時  平成18年7月4日(火)14:00~16:05

2 場 所   経済産業省別館1028号会議室

3 出席者  
    【委員】 公益委員    今野部会長、石岡委員、武石委員
              労働者側委員  加藤委員、須賀委員、田村氏、髙橋委員、中野委員、
                              横山委員
       使用者側委員   池田委員、川本委員、杉山委員、竹口委員、原川委員、
               前田委員
  【事務局】厚生労働省   松井審議官、熊谷総務課長、
                              前田勤労者生活課長、名須川主任中央賃金指導官、
                              吉田副主任中央賃金指導官、梶野課長補佐

4 議事次第
 (1)今後の最低賃金制度の在り方について
 (2)その他

5 議事内容

○今野部会長
 定刻になりましたので、ただ今から、第13回最低賃金部会を開催いたします。本日の
出欠状況ですが、勝委員、田島委員、中窪委員、髙石委員がご欠席です。髙石委員の代
理としては、田村日本労働組合総連合会総合労働局労働条件局長にご出席をいただいて
います。早速、議題に入ります。本日も「主な論点」について議論をしていただきます。
そこでまず、前回までの意見の整理について、事務局から説明をお願いします。

○前田勤労者生活課長
 資料3は、「公益委員試案の考え方と公益委員試案に対する労使の意見」として、前
回の部会で労使から出されたものをさらに追加して、整理しています。
 1頁、適用対象労働者では、全国全産業を横断的に一定の職種の労働者を対象とする
必要はなく、一定の地域の中分類等を対象とした特定の産業内の職種の労働者に限定し
てもよいこととすべきである。さらに、適用対象労働者については、その考え方の範囲
で申請時点に申請者が確定すればよいという労働者側のご意見でした。使用者側の意見
で前回出されたのが「一定程度以上の技能」については、どれだけの技能を持っている
かではなく、何の仕事をしているかという具体的な仕事の中身で本来定義すべきである
ということです。
 2頁上段、労働組合の組織率が極端に低い場合には、地方最低賃金審議会の建議によ
って設定できるという考え方も取り得るのではないかという労働者側のご意見でした。
 前回から追加したのが、労働協約が一定程度についての3頁上段で、労働者側意見で
は、賃金に関する労働協約については、最低賃金協定を含む、賃金の範囲と水準を定め
た賃金協定等を含めるべきである。また、職種についても、労働協約に具体的な記述は
必要はなく、実質的に基幹的な職種が含まれていると解釈できればよいとすべきである
とあります。
 真ん中の決定手続で、労働者意見として、申出内容に定めてある職種の基幹的労働者
を適用対象労働者とすべきであるとあります。その際に、一定の要件を設けることは否
定しないし、併せて、異議申立て要件についても整える必要があるということでした。
 5頁、必要性審議と金額審議では、使用側意見の上段一番下に、実態としてはどうし
ても大企業を中心に申出が行われることから、中小企業の意思を反映させるために、必
要性審議を十分に尽くした上で金額審議を別に行うべきであるということでした。
 5頁下、水準の設定・改正に係る手続では、労働者側の意見として、労働協約が締結
されていることを、前提要件として求めるのであれば、労働協約の内容を重視していく
べきであり、労働協約で締結されている水準を基本として、金額審議を行うことが当然
であるとあります。また、使用者側意見では、労働協約拡張方式の流れは、大企業を中
心とした申出で金額が自動的に決まってしまうので、避けるべきであり、中小企業の意
見を反映するためにも、審議会で審議して決めるべきであるということです。
 6頁、移行期間中の適用の在り方について、労働者側の意見の一番下で、長年にわた
って運用されてきた産業別最低賃金を廃止して新たな仕組みとするのであるから、現行
産業別最低賃金からの円滑な移行や転換が図られるように、水準の改正はもとより新設
も含めて何らかの措置を構ずるべきとあります。
 8頁、地域別最低賃金と生活保護との関係で、労働者側の意見として、昭和37年の社
会保障制度審議会の勧告でも、最低賃金と生活保護との関係について記載されている。
平成16年の専門委員会報告書にも、雇用政策との関係で明確に記載されていて、最低賃
金は、雇用政策の重要な一部であり、地域別最低賃金が社会のセーフティネットとして
の役割を果たすためには、生活保護との関係について整合性を図るべきであるとありま
す。
 8頁下、地域における労働者の賃金で、「地域における労働者」とは地域別最低賃金
が適用される労働者全体を指すことは当然であり、したがって、比較の対象者について
も、適用対象者全体と考えるべきであるという労働者側のご意見がありました。
 9頁、罰則の強化で、セーフティネットとしての機能を高め、さらにそれに特化する
ことによって、実効あるものにしていく以上、最低賃金法制定時の考え方にのっとって、
罰則については十分強化を図るべきであるという労働者側のご意見もありました。
 以上が前回の部会の意見で追加した部分です。

○今野部会長
 ありがとうございました。前回の議論を整理していただきました。ご質問ありますで
しょうか。よろしいですか。それでは、次に入りたいと思います。本日、特に職種別設
定賃金のイメージをつくる上でポイントとなる適用対象労働者の問題、労働協約の問題、
申出要件の問題、審議会における審議の在り方の問題を中心にご意見をいただければと
考えています。ご意見をいただくにあたって、現在の産業別最低賃金の申出要件等と対
比した方が具体的なイメージがわくのではないかと思いますので、事務局に議論の材料
を整理してもらっています。まず、それを説明していただいて、労使のご意見をいただ
ければと考えています。それでは、説明をお願いします。

○前田勤労者生活課長
 資料4は、現在の産業別最低賃金について、適用対象労働者、申出要件等について整
理してあります。1頁、「適用対象労働者」ですが、(1)の業種については、原則と
して産業分類の小分類又は必要に応じて細分類です。ただし、2以上の産業を合わせて
1つの産業別最低賃金を設定することができるということです。産業別最低賃金につい
ても基幹的労働者を対象とするとなっていまして、一般的にはその産業に特有、あるい
は主要な業務に従事する労働者を基幹的労働者といいます。実際の運用上、現在の産業
別最低賃金では、ここにあります3つのものを主に除くというネガティブリスト方式に
なっています。1つは18歳未満又は65歳以上の者を除く。2つめは雇入れ後6カ月ない
し3カ月未満で、技能習得中の者を除く。それから、清掃、片付けの業務、さらにその
産業で特有な軽易な業務をそれぞれリストアップして、適用除外という形でやっている
のが現状です。
 「申出要件」は、大きく労働協約ケースと公正競争ケースという2つに分かれていま
す。労働協約ケースは、決定について、原則として同種の基幹的労働者の2分の1以上
の者が賃金の最低額に関する定めを含む労働協約の適用を受ける場合において、その協
約当事者である労働組合又は使用者の全部の合意で申出を行います。この場合、「賃金
の最低額」とは、いわゆる最低賃金額についての定めということで、例えば初任給や特
定の年齢ポイントの最低保障額を定めたものは直ちにこれに該当するものではありませ
んが、その協約で約定された賃金を下回る労働者がその協約の適用対象労働者の中にい
ないということが明確である場合には、それに該当するという扱いになっています。
 労働協約ケースは、原則として2分の1以上が要件になっていますが、現在の労働協
約ケースである産業別最低賃金は、旧産業別最低賃金から新産業別最低賃金への転換の
場合の経過措置のときに、「おおむね3分の1以上」という要件で経過的に転換してい
ますので、そういうものがほとんどであります。2頁の労働協約ケースの改正又は廃止
については、おおむね3分の1以上のものが適用を受ける場合という要件です。
 大きな2つ目の「公正競争ケース」については、事業の公正競争を確保する観点から
同種の基幹的労働者について最低賃金を設定することが必要であることを理由とする申
出ということです。この申出については、定量的要件は一律に付すことは適当でないと
いうことですが、労使いずれか一方の「おおむね3分の1以上のものの合意」による申
出があったものについては、受理、諮問が円滑に行われることが望ましいということに
なっています。現在の公正競争ケースについては、やはり旧産業別最低賃金から新産業
別最低賃金への転換に当たって、労使いずれか一方の「おおむね3分の1以上の合意」
で、署名、機関決定、労働協約などを含むものでありますが、そういう合意によって、
経過措置で転換したものがほとんどであるということです。改正、廃止については、お
おむね3分の1以上のものの合意によって、申出が行われることが要件になります。
 「審議」については、産業別最低賃金は、厚生労働大臣又は都道府県労働局長が必要
であると認めれば、審議会で審議して決定するということですが、全体として最低賃金
審議会で労使の申出に基づく必要性判断をまずやる形になっています。必要性判断につ
いては、先ほどの形式的要件を満たした申出がなされた場合に、必要性判断を諮問して、
必要性の判断については審議会の議決として全会一致の議決に至るように努力するとい
う扱い、運用になっています。公正競争ケースについての必要性の判断は、関連する諸
条件を勘案した上で、賃金格差等が存在する場合に必要性がありと扱います。必要性が
ありとなった場合に、その後に金額審議を行い、金額審議についても全会一致の議決に
至るよう努力することが望ましいとされています。以上が現在の産業別最低賃金の適用
対象労働者等であります。
 資料5は、職種別設定賃金の具体的なイメージのために、議論の材料として整理して
あります。適用対象労働者と労働協約について、どういうことが考えられるかを例示し
ています。まず、1頁は職種別設定賃金の適用対象労働者です。職種別設定賃金は基幹
的な職種について設定し、一定程度以上の技能を有する者というイメージで、公益試案
の中で言われていますが、さらにそれを具体的に、どういう形で適用対象労働者を決め
るかについて、考えられる例を挙げたものです。
 例1は、一定の○○製造業という中で、技能職で経験年数が何年以上のものを対象に
するということです。ただし、その中で特に軽易な業務等については除外するとして、
具体的に適用除外の業務を挙げていきます。例2は、同じような形ですが、経験年数で
はなくて、年齢何歳以上と決めるというパターンを挙げています。例3は、○○製造業
の中で具体的にどういうものの製造というように、基本的にはその産業の技能職という
イメージで、ただ具体的に適用除外する業務をあげていきます。例4は、技能職の中で
もさらに○○の業務と具体的に特定して、一定程度以上の技能が必要な具体的な仕事の
中身で、「○○の業務」を定めるというような決め方です。例5は、技能職で○○の資
格に相当する職で、例えば国家資格などをもとに、それに相当するようなものに特定し
ています。例6は、○○産業の○○職として、これは「○○職」が基幹的な職種と考え
られる具体的な職名で、例えば資格や免許などが必要で、○○職というだけでかなり仕
事の中身などが限定されて、一定程度以上の技能であるのがわかるようなものです。例
7は、同じような形で、資格を必要とする業務で、適用対象労働者を特定するようなも
のです。 
 2頁、労働協約については、現在の産業別最低賃金において、申出の際にどういう労
働協約が用いられているかを整理しています。労働協約はいろいろありますが、代表的
な例としてご理解いただければと思います。2頁左、企業内最低賃金協定は、18歳の最
低賃金を定めて、18歳未満は適用除外して、この金額を下回ることをしないと保証して
います。2頁右側はそれをさらに18歳だけではなく、年齢別に定めています。2頁左側
は組合員についての協定であり、場合によってはその組合員以外を含めた協定を結んで
いる例もあり、2頁右側は全労働者を対象としたものとなっています。
 3頁は、一定の技能職など、そういう形で適用対象労働者を限定している例もあり、
○○の製造及びこれに準ずる職務以外に従事する者を適用除外とするとし、逆に○○の
製造等の職務の者だけに適用するという形で限定して最低賃金に関する協約を結ぶ例も
あるということです。
 そこまでが現在の産業別最低賃金でどういう協約を使っているかの例であります。4
頁以降が、この職種別設定賃金を申し出る場合に、ではどういう協約を用いるのがよい
のかについての議論の材料として様々な例を挙げています。例1は、先ほどの2頁の現
行の協約をもとに、経験何年以上の技能職を含むという注意書きを書くとしています。
例2は、同じく2頁の左側の協約をもとに、技能職で経験何年の者についてはいくらと
いうのを別途注意書きで書くとしています。
 5頁の例3は、技能職に限定した上で、その技能職について何かというのを注意書き
などで具体的に示すか示さないかと、両方考えられるのではないかということです。具
体的に示す場合にも、それを協約で決めるか、あるいはモデルを中央最低賃金審議会で
策定した上でそれを用いるということも考えられるとしています。例3はそれを年齢別
で定めたものです。例4は、年齢のところを経験年数に変えています。
 6頁の例5は、3頁の一応技能職で限定したものをそのまま使うのがどうかというこ
とで、それを挙げています。例6は、適用対象労働者のところでもありましたが、「○
○職」など基幹的な職種と考えられる具体的な職名である場合もありますので、○○職
と書いて最低賃金を定めるということです。例7は、技能職で○○の業務に従事する者
ということで、先ほどの適用対象労働者でいくと、例4に当たるような、具体的に一定
程度以上の技能が必要な業務を特定して、協約を結ぶものです。例8は、技能職で経験
何年以上の者ということで、最低賃金を協定します。
 例9は、今までのは企業内の最低賃金協定というものですが、これは必ずしも最低賃
金ではなくて、企業内の賃金に関する協定の中で、例えば技能職についていくつかの等
級に分かれている場合に、協定の中で等級についての金額が決まっていれば、基幹的な
職種をどこか特定した上で、それについての賃金の下限が決まるので、それを用いるこ
とができないかという例として挙げています。例10は、協約は先ほどの現在の産業別最
低賃金の協約を用いた上で、併せて労使で協約の適用労働者がどういうものかの確認書
を添付して、申出を行うパターンを考えています。
 これだけに限られたものでもないわけですが、議論の材料としていくつかの例を整理
しています。以上です。

○今野部会長
 イメージを持っていただくためにいろいろな例を考えてみたということなのですが、
今の説明についてご意見をいただきたいと思います。主要な論点が4つありますので、
順番にお話を聞ければと思っています。先ほど言った4点というのは、適用対象労働者、
労働協約、申出要件、審議会における審議の在り方の4点です。最初に適用対象労働者
の考え方について、今、例示として説明していただきましたので、そういう点を踏まえ
ながら議論をいただければと思います。労働者側はいかがですか。

○加藤委員
 例えば、今ご説明のあった資料5の1頁にあるようなイメージを念頭に置きながら議
論をしてくれ、ということではないのですよね。

○今野部会長
 どちらでも結構です、これはあくまでも議論の材料ですので。

○加藤委員
 職種別設定賃金についての公益委員試案の考え方というのは、職種についての特定を
することと併せて、基幹的労働者を何らかの形で特定をする。例えば、それは一定程度
以上の技能のレベルなどを指すという、いわゆる概念についての説明があったと思うん
です。その具体的なイメージは論議してこなかったと思うのですが、基本的には、私は
産業や職業によって適用対象労働者のイメージというのは随分違うのではないかという
印象を持っています。一律的に適用対象労働者はこのような形で特定することが望まし
いという位置付けはできないのではないかと思いますので、その産業あるいは職業の特
徴なり、実態なりを踏まえた設定をすることになるのだと思います。ただ、基本的に申
出をして、その申出を踏まえて審議をするという流れがベースだと思いますので、申請
当事者が、申請時点にそれぞれ理由を付けて申請をするわけですので、基幹的労働者の
イメージをつくりながら、申出をするということになるのではないかと思います。
 だから、一律的には決められないだろうと思いますが、基幹的労働者については、社
会的通念というか、一般的に通用する基準なり、枠組みでしかつくれないのではないか
と思います。というのは、賃金の決定なり、労働条件の決定というのは、日本の場合に
は企業によってまちまちでありますし、もちろん産業によって特徴がありますが、なお
かつ同じ産業の中でも企業によって賃金の決定の仕方や賃金体系はまちまちであります
から、それを一律的に、これが基幹的労働者だというような設定の仕方はできないので
あろうと思います。
 しかし、あえて設定をするとすれば、社会的に誰が見ても通用するような線引き、あ
まり特異ではない、そういう線引きしかできないのではないかと思っています。ただ、
この例1から例7のどれが望ましいかは言えないと思うのです。場合によってはどれも、
申請時点ではあり得る。

○今野部会長
 今のお話は、基幹的労働者の定義については、社会的通念としての一般的な枠組みで
しか設定できないのではないかというご意見ですね。

○加藤委員
 はい。

○今野部会長
 ということは、ある意味では抽象的には設定できると。つまり、一般的通念としては
設定できるかもしれない。具体的に設定しようと思うときは、職業とか産業によってそ
れは多様でしょうということでしょうか。

○加藤委員
 産業や職業によって随分違うと思います。私は詳しく事情はわからないのでイメージ
で言うわけですが、例えば医療の分野とか、福祉の分野であれば、誰が見ても看護師、
介護士であるといったことで、ポジティブに職業と、おそらくその職業の中には資格と
いう概念が入って、基幹的労働者を定義づけしているのだろうと思いますので、そうい
う定義の仕方は、誰が見ても社会的、一般的な基準だと考えられると思うのです。
 しかし、それは製造業やその他の流通サービスなどにおいては、同じやり方が通用す
るかというと、通用しないわけでありまして、それは産業ごと、職業ごとに違うのでは
ないかという意味です。

○今野部会長
 ご発言の内容を理解したいものですから、今おっしゃられた社会的通念としての一般
的な枠組みというのはよくわかりませんが、抽象的な憲法があって。

○加藤委員
 憲法という意味ではないです。

○今野部会長
 共通的な抽象的定義があって、それを医療に適用したら、今おっしゃられたような現
実で、製造業に適用したらこういう現実になると、そういう意味なのでしょうか。

○加藤委員
 製造業といっても産業によって全部違うと思うのです。一般的に理解できるし、それ
が職種別設定賃金として設定された場合には、その産業全体、もちろん事業主も労働者
も、適用対象になるわけですから、誰でも共通の物差しとして理解できるということで
ないと、この企業では通用するけれどもこの企業では通用しないとか、この産業では通
用するけれどもこの産業では通用しないという物差しは成り立たないのだろうという意
味です。具体的にものを言っているわけではないです。

○今野部会長
 公益委員試案で1つの例示として、一定程度以上の技能を持った云々という表現は、
1つの例示なのですが、加藤委員がおっしゃられた点でいうと、社会的通念としての一
般的枠組みを表現するための1つの例示として出したわけです。他にご意見はございま
すか。使用者側はいかがですか。

○川本委員
 まだ使用者側として意見をまとめているわけではないので、個々の委員からの発言と
いう位置付けだということを申し上げておきます。しつこいようですが、毎回全体的な
話を申し上げてから中に入っているので、今回も申し上げたいと思います。今日のイメ
ージ等の話の前という段階で、全体の最低賃金制度の在り方ということですが、使用者
側は従来からすべての労働者を対象とする地域別最低賃金があるので屋上屋を架してい
る産業別最低賃金は廃止すべきと主張をしてきましたところ、昨年11月に公益委員試案
が示されたということで、その中において産業別最低賃金の廃止並びに労働協約拡張適
用方式の廃止が盛り込まれたことは評価しています。
 ただ、一方、別の法的根拠を設けて、この職種別設定賃金を設けるという考え方につ
いては、屋上屋を架すものには変わりはないと思っております。また、地域別最低賃金
についても、生活保護との整合性を明確にするという考え方についても、にわかに賛同
できるものではないことを申し上げてきました。
 しかしながら、労使の意見は平行線ですので、こういう中で公益委員試案が示された
ことは重く受け止めて、今後も議論を続けて、内容を明らかにした上で、判断をしてい
きたいという旨も述べてきた次第ですし、本日も改めて申し上げたいと思います。した
がって、本日もあくまでもこういう議論を通じて、中身を少しずつ明らかに、あるいは
労使の意見の違いも明確にしつつ、その中で全体としての話も判断をしていきたいと思
っている段階であることを申し上げておきたいと思います。
 今の資料5をご提示いただいたわけですが、これについて簡単に意見を申し述べたい
と思います。まず、このような資料を提示いただいたことによって、より具体的なイメ
ージについて議論できることは大変有意義であると考えています。前の公益委員試案修
正案を見ているだけでは、個々にイメージは違っていると思いますので、こういう紙あ
るいは図にしていただいたことについては有意義であると思っています。ただ、これに
ついて議論させていただくわけですが、この議論をすることが公益委員試案の職種別設
定賃金そのものについて賛同していることを意味するものではありません。これは重ね
て申し上げておきます。内容の議論を深める中で、私の立場としては地方経営者協会、
業種団体等の意見を聞きつつ、判断をしていくことになることを申し上げておきます。
 この適用対象労働者のイメージ図です。今回公益委員試案修正案が示され、それから
5月19日の第12回の部会では、資料として「職種別設定賃金の必要性」というものが示
されています。その中にいくつかのポイントがあるのですが、「仕事の内容等を基軸と
して賃金を決定する労使の取組みを支援するための制度が必要」とした上で、「労使の
自主的な取組みをベースとして、それを補完・促進するための制度」、また「基幹的な
職種に応じた企業横断的な処遇の確保を図ることができる仕組み」ということで、また
職種については、例えば「対象産業を製造業に限定し、技能職で一定程度以上の技能を
有する者と定義する」といった形で、職種と労働者の職務レベルという、2つの視点を
示されています。付け加えれば、前提として労使の自主的な取組みがベースということ
も言われているわけです。
 このような趣旨に照らして考えてみると、適用対象労働者のイメージについては、例
えばこの例の中でいうと、例4では、職種と具体的な職務内容を明確化しての適用対象
労働者となっていると考えます。それから、また例4でも、括弧書きの中で、(「○○
の業務」とは、一定程度以上の技能が必要な具体的な業務をさす)となっていますが、
私としては「一定程度以上の技能が必要な」というよりは、「具体的な一定程度以上の
技能を使っている具体的な業務」とした方がいいと思っています。つまり、何の仕事を
行っているのか、具体的な仕事の中身で定義すると、その人たちについて、この職種別
設定賃金の額が適用されていくことになるのだというのが、考え方として一番筋が通っ
ているのではないかと思っています。したがって、経験年数、年齢あるいは国家資格を
持っているとか、個別企業における業務内容と関係のないものが、このイメージの要件
に入ることについては賛成できないと申し上げておきます。
 また、「職種別設定賃金の必要性」というペーパーですが、その必要性そのものにつ
いては、前回の部会でも何人かの委員からご意見があったように、職種別設定賃金の具
体的なイメージとその幅、そういうものの議論が進んだ中で、別の機会に改めて、この
必要性そのものの議論はしたいと私どもは考えています。以上です。

○池田委員
 商工会議所の中小企業を抱えている立場の意見ですが、大きく3つあります。1つは、
大企業を中心に作られるわけですから、適用対象労働者を定義されたとしても、中小企
業の現場では具体的にどの従業員に適用するかという、定義の適用の問題が非常に難し
く、現場が混乱するのではないかという懸念があります。
 2番目が、その職種上、一定の経験年数を適用対象労働者の基準とする場合は、中小
企業の場合は中途採用が多いということですので、非常に対応が難しいので反対である
ということです。それから、前職の経験を通算する場合に、その人が本当に職種に従事
していたのか、一定以上の技能に見合う業務であったかということ、事実関係の確認を
どうするのかということが、事実上不可能なので、簡単な従業員の履歴書をそのまま信
用するというおかしな話もあり得るのかということです。
 3つ目は、対象労働者を定義する方式ではなく、何々以外の者、何々以外のとした場
合に、ネガティブリスト方式というのは、現状の産業別最低賃金とあまり変わらないの
ではないかということで、議論をするのが非常に難しいので、どちらかというと反対し
たいということです。
 もう1つは、職種別設定賃金が設定されていない職種へ人事異動をした場合に、賃金
が下がるケースも生じるのではないかということで、かえって現場では混乱するのでは
ないかという意見です。以上です。

○原川委員
 今、池田委員が言ったことは私も前に申し上げたことでもあるのですが、新しい制度
をつくるとすれば、従来の産業別最低賃金とどこが違うのかを、その違いをはっきりと
明らかにする必要があると思います。特にここが一番肝心なところだと思いますので、
適用対象労働者あるいは職種について、はっきりと違いを示す必要があると思います。
 今、話が出た中小企業の現場での話ですが、複数の職種を行っている従業員が多いこ
とがありますから、そういったことを実務的にどう解決するかという問題があります。
それから、例えば職種が50、100と出てきた場合に、それがどういう人に適用されるか
がわかるように、実務上対応できるような形をもって提示しないと、中小企業ではとて
も対応できないと思います。
 3つ目は、複数の職種を行っている人が多いということですから、誰が職種別設定賃
金に該当して、誰が該当しないかということで、内部の人事労務面で混乱、不平不満と
いったことも起こりかねないと思います。職種を設定するということであれば、そうい
うことをしっかり考えて、実務面の対処を慎重に行う必要があると思います。

○川本委員
 少し付け加えさせていただきます。先ほど労働者側の委員からも、一般社会通念上通
用するような枠組みという話がありました。つまり、この産業では通用するけれども、
この産業では通用しないような物差しでは困るというようなご意見がありました。一方、
先ほど池田委員等から申し上げたのは、むしろ、具体的な職種と仕事の中身が明確でな
いと、中小企業でも、自分の会社の社員の誰にどう適用になるのかが全くわからず、混
乱するという意見を申し上げたということだと思います。
 何が言いたいかというと、きっちりと職種、そしてどのような中身の業務なのかが明
確であるということは、どのような産業、職種でも、その中からきちんとピックアップ
して決めることは可能であろうと思います。ただ、それについて現実的に個別企業の労
使で、そういう限定的なこういう結び方が可能か、難しいのかというのは、また別の問
題としてあるのかと思いました。先ほど、現実的なことも踏まえて言われているご意見
だったのかと聞いておりました。

○加藤委員
 おっしゃっていることはよくわかりますが、川本委員がおっしゃったのは、個別具体
的な職種、仕事内容、業務の中身が明確になっていないと対応できないのではないかと
いう考えだと思いますが、仕事内容については企業、産業によってかなり異なるわけで
す。それが企業の枠を超えて、一般的に誰でもわかる、こういう職種で、こういう業務
の設定賃金をつくりましょうということの、こういう職種とこういう業務について、企
業を超えて横断的に、それが共通の尺度になるということであれば、それは基幹的労働
者の定義もあり得るのだと思いますが、そうではないケースもあり得るのではないかと
考えています。
 もう1つ考慮しなければならない点は、職種や業務を細かく明確に定義するというこ
とですが、職種や業務が、その産業における賃金決定にどういう相関を持っているのか
という実態についても、きちんと把握しておく必要があるのではないかという感じがし
ます。賃金を決定しなければならないわけです。企業で違っていても構わないのですが、
企業の中ではなくて、企業を超えて、例えば設定しようとする地域や産業の中で、共通
の尺度や物差しになっているということが見えるかどうかということも大事なポイント
だと思っています。

○今野部会長
 実際にやってみないとどうなるかわかりませんが、例えば、基幹的業務というのが、
ある業界の中で通念として、一般的枠組みで設定できたとして、Aの仕事、Bの仕事、
Cの仕事があったとします。その実態を調べたら、賃金が全く同一だということはあり
得ないですよね。ですから、それは基幹的業務の定義の問題で、どうなるかわかりませ
んが、定義というのはいつも一定の幅をもって定義しますから、そこで賃金が違ったか
らといっておかしいという話にはならないと思っています。そういう実態を踏まえて、
どういう設定賃金を設定するかになるのだと思います。

○加藤委員
 実態を十分に考慮すべきだという意味です。業務というか、場合によっては職務、労
働市場の中でジョブごとに賃金が決定されているといったことが明らかにわかるのであ
れば、それはそれで1つの尺度になると思いますし、場合によっては、企業ではそうい
う賃金の決定の仕方をしているのだろうと思うのです。そこはまだちょっと見えないも
のですから、その辺の検討も必要だと思います。

○川本委員
 基幹的職種と基幹的労働者というか、職務のところが2つダブッているので、話に気
をつけて聞いていないと混乱してしまうわけですが、今のジョブの話になると、今回の
公益委員修正案の中では、基幹的な職種を絞り、その中の職務レベルも絞って、そこに
職種別設定賃金を審議をして決めようという話の筋だと考えています。だとすれば、当
然職種もいろいろな幅はあると思いますが、まず職種をきちんとする。その上で、一定
の職務レベルというのがなければ、そもそもこの公益試案の考え方にのっとったものに
はならないと私は考えます。
 ジョブごとに賃金が決定されている企業もあるかもしれない、そうでない企業もある
というお話ですが、今の社会実態はその中に職種と職務レベルという概念を持ち込むの
が、今の実態として非常に難しい。難しいのだから、それから外れて適用対象者は多め
に、緩めようという考え方であるとすれば、この公益試案の考え方からは離れていくも
のと受け取りました。

○今野部会長
 緩めにするという話は全く出ていないから、緩めにするとしたらという話ですね。

○川本委員
 趣旨から外れていくものであると。重ね重ね言いますが、この試案そのものの考え方
に私どもは賛成、反対を申し上げていないわけですが、少なくともこの試案の考えてい
る趣旨からすれば、それから外れていくものになっていくのではないでしょうかという
ことです。

○中野委員
 試案に対する認識の持ち方ですので、少し私は違うように認識していたので間違って
いるかもしれませんが、教えていただきたいと思います。1つは、公益試案修正案の前
文のところに、「産業別最低賃金の果たす公正な賃金決定といった役割は評価すべきも
のではあるが」とあって、「就業形態の多様化により労働移動が増大し、従事する仕事
に応じた処遇の重要性が増加している状況の下で」、「基幹的な職種に応じた企業横断
的な処遇の確保」云々と書かれているということですから、産業があって、基幹的職種
があって、技能があると、3段階と私は考えています。最後のスキルと、真ん中の基幹
的な職種についての考え方、ここはある意味でポイントになると思うのです。
 そのときに、試案の2頁で、「例えば、対象産業を製造業に限定し、技能職で一定程
度以上の技能を有する者と定義する」と書かれていて、技能職というのはかなり幅広な
職種というイメージ、「一定程度以上の技能を有する者」というのが基幹的労働者の概
念だと私は理解していたものですから、「一定程度の技能を有する者でなければできな
い仕事」とは書かれていませんので、そこは例えばスキルの問題だと私は考えています。
今の議論とは、そこは私の認識が違うのかわかりませんが、少し認識が違うのでお教え
いただきたいということです。
 もし私の認識が違っていた場合に、こういう場合にどうするのか、社会的影響もある
と思いますのでお聞きしたいのですが、例えばそういうスキルを持った労働者がいて、
そのスキルに応じた仕事がある場合は、当然使用者はその仕事を労働者にどんどんして
もらうことになると思います。しかし、景気の変動もありますから、その仕事でない仕
事、簡単な仕事しかなくなった場合です。私の経験で言いますと、かなりの経験年数を
積んだ熟練の労働者が、仕事がないために工場の草抜きをやっていたと。草抜きをやっ
た労働者の賃金は下がるべきなのかという議論が、同じ労働者についても出てくる場合
があると思います。
 このときは、そのスキルを持った労働者が草抜きをした場合には、その期間について
は、この職種別設定賃金は適用されないと考えるべきなのか、それは事情だからそれは
適用されると考えるべきなのか、そこで基幹労働者概念はかなり違うと思うのです。そ
の辺りを明確にしていただかないと、もし私の考えていることと違うことになれば、判
断を少し変えないと。それはこういうことになると審議会で決まると、社会的な賃金決
定に対する影響も出てくる可能性すらありますので、ちょっと慎重にしなければならな
いと思いますので、お教えいただきたいと思います。

○今野部会長
 前から言っていますが、ここにはあくまでも例示で書いてありますので、川本委員が
おっしゃられたように、定義の仕方としては、人で定義する場合と、仕事で定義する場
合があります。あと実際は時間軸があるのです。今、中野委員がおっしゃられた状況が
10年続いたら、草取りの賃金を考えるということになると思いますが、それが短期であ
れば、考慮しなくてもいいではないかというのが現実だと思うのです。
 ですから、その時間軸も考えて、かつ現実はもしかしたら人で定義する、仕事で定義
する、もしかしたらミックスした方が現状に合うかもしれない、いろいろなことが考え
られるわけです。そういうことは知恵を出していこうということで、ここでは単に例示
として書いてあるので、今日の資料5のイメージでも、例1から例7がありますが、こ
れは川本委員がおっしゃられたように、人で定義している例と、仕事で定義しているも
のがあります。そこはどっちでいくべきかというふうに、あまり硬直的には考えていま
せん。この設定賃金の趣旨が活かされるように、上手に定義したいということで、上手
については知恵を出そうというふうに考えています。

○中野委員
 それは前からおっしゃっているのですが、議論が例4の仕事で進んでいますので。

○今野部会長
 川本委員がおっしゃられた主張はそういうことです。

○中野委員
 それは理解しています。全体のものではないということが確認できれば、それで結構
です。将来的にどういう姿にするかということはあるのですが、現実は無視できないわ
けですので、足元の現実で、どういう賃金決定がなされているのか、それを基に考えな
いと、協約などの問題も一緒なのでしょうけれども、そうしないと現実的には非常に難
しいことになるのではないかと思います。

○今野部会長
 現実には中野委員がおっしゃられたように、技能の問題と、仕事の問題がいつも1対
1の関係であるわけではないという現実があるので、そこは柔軟に対応できます。
 もう1つは、池田委員もおっしゃられましたが、実際は現場の職務は多様なので、こ
れにも上手に対応する。ですから、人と仕事の関係の複雑さにも対応できて、仕事構成
の複雑さにも上手に対応できる、そういう程度の定義をつくっていかないと、現実には
使えないものになるとは思いますが、実際にはどういうふうにやっていくのかは、もう
少し知恵を出していければと考えています。

○池田委員
 試案の2頁の(2)にありますが、一定の地域の特定の産業というのは、例えばどう
いうものを指すのかということです。それから、製造業に限定するというのは、永久的
に製造業に限定できるのかと。一定程度の、労使が実情を勘案してとありますが、実情
というのは、例えば一定程度といったら最低限できればいいといったら、最低賃金と何
も変わらないようになってしまいます、最低の賃金が保証されているのです。一定程度
というと、ある程度の水準ならいいのかと。
 それから、地域別の最低賃金が決まった場合に、それの違い、この辺が中小企業には
ちょっとわからないところです。一定の地域の特定の産業というのは、すべての中小企
業に影響されないのか、どういうところを一定の地域と、この辺がわかりません。

○今野部会長
 平たく言うと「上手にやってね」と書いてあるのです。あくまで例示ですが、製造業
で基幹的な労働者はAですと言いましたが、全国一律で、例えば設定賃金いくらという
ことも可能ですし、でも労働市場が地域によって全然違いますので、A地域だったらA
円、B地域だったらB円、C地域だったらC円というのもいい、どちらでもいいという
のがこの地域の考え方です。一定程度以上というのは最低ではなく、一定程度以上です
から、そこは地域別最低賃金とは違います。それこそ一定程度以上の技能というのが例
示ですが、書いてあります。

○池田委員
 限定というのは、どこが限定するのですか。国は限定できるのですか。

○今野部会長
 いやいや、申請があるわけですから。

○池田委員
 実情は限定できないということですか。申請があればできるのですか。

○今野部会長
 例えば中央最低賃金審議会で事前に幅を最初から限定して決まるとは考えてないので
す。例えば、産業の切り方はこれしかありませんとか、地域の切り方はこれしかありま
せんということは考えていません。「限定し」ということですが、内容上は「特定し」
です。この産業のこの労働者というように定義しますという意味です。

○川本委員
 先ほど今野部会長から、現実的にはスキルと仕事にも柔軟に対応できるもので、また、
職場の仕事の多様性にも対応できるものをいかに作っていくのかというお話がありまし
たが、そうなると非常にいろいろな要素を入れて、かなり幅広なものというイメージに
聞こえました。それで何か決めてどうやって適用していくのかと、非常にイメージがし
づらくなったという感想です。
 もう1つは、人の定義の場合と仕事の定義の場合があるが、それに時間軸があると言
いましたが、時間軸というのは一体何なのでしょうか。私が先ほど経験年数や年齢など
も違うのではないかと申し上げたのは、職種で一定程度以上の技能を有する者とありま
すが、及ぼすとすれば、最低こういう仕事の人たちに及ぶのですというのから、明確に
なっていって自分に及ぼされているかどうかがわかるわけです。それが例えば年齢とか、
経験年数などを別にすると、仕事は必ずしもリンクしていないと思います。特に企業に
よっては中途採用の方が非常に多い、あるいは若いときにあまり仕事に就かず、正式に
仕事に就いてくる人だって入ってくるでしょうし、そうすると年齢はあまり関係がない
と思います。ですから、この考え方は職種と一定程度以上の技能を有する仕事という考
え方であって、だからこそ第三者、アウトサイダーに及ぼしても、及ぼされた方がわか
るという話になるのであって、そこがグチャグチャになっていたら、逆に何に適用され
るのだろうかがわからないと思います。

○今野部会長
 今いろいろなことをおっしゃいましたが、結局は私が言った多様な現状について考慮
して決めるということについてのご意見だと思います。でもどんな政策を作るときも多
様な現実を踏まえて、どこかでエイ、ヤーでやるわけです。そのときに多様な現実を全
部包み込んでしまう場合もあるし、多様な現実を一切包み込まない場合もあるし、50%
包み込む場合もあるし、いろいろあるわけです。いずれにしても実際の現場で使ってい
ただくには多様な現実は踏まえなければいけないことは事実なので、そういう趣旨で私
は申し上げたのです。川本委員が言われたように、多様な現実と言ってしまうと、全部
の現実の多様性を全部包含して、何が何だかわからなくなってしまうという恐れがある
ので、全てを包含すべきとは考えていないのです。ただ現実の多様性は踏まえなければ
いけないことは事実だろうという意味で、私は申し上げたのです。

○川本委員
 踏まえなければいけないという議論について反対するものではありませんが、私も現
実として最終的に職種別設定賃金がある産業の中で、ある職種で、ある一定程度の技能
を有する者ということで作られたときには、地方最低賃金審議会の場で正式に決めれば、
それは第三者に及ぶわけです。つまり、及ぼされる人への影響というのも考えておかな
ければいけないし、そこに混乱を起こさないというのは最大限の配慮というか、当然そ
こがなければいけないものだろうと思っており、そこからの意見として申し上げたので
す。定義が曖昧模糊としていれば全くわからないのではないですか、という意見を申し
上げたのです。

○今野部会長
 わかりました。

○池田委員
 1つの考え方として、製造業に限定されますと、ものすごく幅が広いですよね。

○今野部会長
 これはあくまでも例示ですから、そんなことはありません。

○池田委員
 例えば、介護の世界で人が足りないというところは、国としてもっと上げるべきで、
人材を確保しろとか、企業側の生産性がどこで考慮されるのか。製造業はどんどんお金
があれば払えばいいのですが、払いたくても払えない世界が1つあります。そういうと
ころは救う必要のある世界があるかもしれません。どうしても人が足りないので、ある
程度賃金を保証するから人材を確保して、そういう人たちを増やしていこうということ
が政策上あって、それだけの生産性が上がらなければ払えないのですが、企業としての
生産性があっての賃金だと思うのです。

○今野部会長
 いずれにしても公益委員試案修正案の2頁は、あくまでも例示ですので、そのように
考えていただきたいと思います。あと3点あり、労使のご意見を伺いたいと思っていま
す。

○加藤委員
 考え方の違いになると思いますが、川本委員が言われていた経験年数で、経験年数に
ついては、一定程度の技能のレベルを測るものではないという考えだと思います。私は
経験年数というのは、社会的にその職種における経験年数ということであれば、それは
習熟であるとか熟練であるということの1つの代理指標だと考えます。もちろん個人差
がありますが、個人差と言ったら、何で規定しても個人差があるわけで、習熟や熟練の
要素なのだと考えることができるのではないかと思っており、私は十分尺度にはなり得
ると思っています。

○中野委員
 私もその点同様に思っています。もう1つは、産業によって業務で、例えば何々の資
格を持った人が行うべき業務と明確にわかる産業領域、あるいは職種領域と、そうでは
なく、そこは融通無碍にいろいろな仕事をやっている所と産業によってかなり違うと思
います。そのことを理解をしてやらなければいけないと思っているというのが2点目で
す。
 3点目は、川本委員に質問したいのですが、例えば製造業で、あるいは製造業の中の
一般機械のような所で、川本委員が言われるように、一定程度の具体的な業務を考えた
ときに、1つの産業の中でもたくさんの職種別設定賃金を作るのか、あるいは機械工の
中でも随分違うので、例えば旋盤工のある一定のスキルと決めるのか。そうすると他の
職種はどうするのかなど、その辺りはどのようにお考えなのかをお聞きしたいと思って
います。たくさん出てきすぎではないかと思ったりするのですが。

○川本委員
 それも公益委員試案の中は幅があるのです。産業職種の中で代表的なものとして考え
て、旋盤工なら旋盤工という中で申出のある場合もあるでしょう。そのときに、試案で
言えば「どの程度の一定の技能を有する業務」という表現ですが、それを定義づけるか
という話としてするわけです。それが幅広に括ってくるところもあるとすれば、それは
当然形が変わります。旋盤工だったら旋盤工の中でこれこれができる業務というのをも
う少し大括りになれば、例えばこの技能職として最低これこれのレベルの仕事というの
は表現として当然あり得ると、私なりに考えております。

○中野委員
 そうすると、たくさん作るというのではなく、代表的な基幹的な職種についてという
ことですね。

○川本委員
 いろいろな幅広で出るような形に案はなっているのではないでしょうか、と踏まえた
上で意見を申し上げているのです。また付け加えてしまえば、あまりに幅広にできるも
ので、そして条件も非常に幅広でという中で、適用も何もどんどん薄まっていくと、一
体どうなってしまうのでしょうかという不安を、私は非常に強く持っていると申し上げ
たかったのです。
 池田委員が先ほど少し払いたくても払えない業界があって、賃金の保障のこともある
のではないかと言われましたが、これは最低賃金の議論とは違う世界の話で、所得再配
分政策なり、違った話だと思いますので、これは違う話だということを議事録にとどめ
ておいていただきたいと思います。

○今野部会長
 議論というのはちょっと膨らみがあっていいのです。あと3つ意見をいただきますの
で、後半戦は効率的に意見をいただきます。

○原川委員
 今の経験年数の話ですが、中小企業などの場合には、1つは転職経験の人が多いとい
うことになりますと、確認をする方法として、一番は履歴書になると思います。記載が
正しいかどうかの確認が、最低賃金などが変わって、それによって適用が変わるという
ことになると、またそういうところで意識的に期待をするという人も出てくるのではな
いか。
 もう1つは、職種をいくつも持っている、あるいは経験している場合に、主たる職種
ではない従たる職種をやっていても、私はこの職種の経験がありますと書いた場合など
は、それを数に入れるかという問題も出てきます。ですから経験年数というのは難しい
のではないかと考えます。

○須賀委員
 今の原川委員のご意見に少しだけ反論をして、あとで確認したいと思います。仕事を
してもらったら、その時点でどの程度の経験があったのか、技能が備わっているのかと
いうのはわかりますね。履歴書を見て、仮にとても信じ難い、例えば旋盤を何年間やっ
ていましたと言ったときに、実際にやらせたらできなかったら、嘘だろうというのがわ
かります。そういうところをきちんと定めればいいと私は思います。
 具体例を出した方がわかりやすいので、具体例を申し上げますと、一般機械の製造業
という中分類で職種別設定賃金を作ろうとしたときに、この職種もこの職種もという定
義をして、いくつもできる可能性もあるということを確認したいのです。

○今野部会長
 それは論理的にあるかと言えば、あり得るのではありませんか。現実には非効率かも
しれないけれども。

○須賀委員
 一般の作業の中の基幹的な職種の基幹的な労働者を対象にした職種別の設定賃金だと
いうことになれば、それは極端に言えば、一般機械製造業の中で5つも10もできる可能
性としてはあるということですね。

○今野部会長
 理論的にあり得るかということで言えばあります。

○須賀委員
 わかりました。

○今野部会長
 それでは、先を急ぐようで申し訳ございませんが、次の論点で労働協約についてご意
見をいただきたいと思います。例示ですが、今日も出ておりますので、こんなことを踏
まえてご意見をいただければと思います。

○加藤委員
 先ほどの説明の中にあって例を示していただきました。2頁の現行の産業別最定賃金
の協約の例が3頁にあり、4頁以降は今後イメージされる協約規定のことだと思うので
すが、現実を離れた運用の在り方というのは考えられませんので、4頁以降の協約みた
いな例が現実にどのぐらいあるか、ご存じだったら教えていただきたいと思います。

○今野部会長
 4頁以降の例1、例2、例3、例4 ですが、こういうのが現実にあるのかどうかで
す。 

○前田勤労者生活課長
 例5というのは3頁と同じですから、現実にあるということです。例9は最低賃金で
はない一般の賃金のものなので、こういうのも現実にあるだろう。それ以外のものにつ
いては、今、現にあるかどうかという問題ではなくて、考えられる事例として作ったも
のです。

○今野部会長
 それでは労働協約について、使用者側からご意見をいただければと思います。

○川本委員
 職種別設定賃金の申出にはどのような協約を用いるかということで、今、ご質問があ
りました。4頁から8頁まで例を掲げています。先ほどの適用対象労働者のイメージで
も申し上げましたが、第三者に及ぼしていく、アウトサイダーに及ぼすということであ
れば非常に限定的にわかりやすいものでなければいけないのだろうと思っており、そう
だとすれば基幹的な職種、それから具体的な業務の内容レベル、その中の最低賃金額の
3点について、締結された労働協約である必要があるのだろうと考えております。その
意味では、7頁の例7の考え方が、例としては近いかと思っております。
 公益委員試案では、職種別設定賃金の決定の申出があって、必要があると認められた
場合には最低賃金審議会の意見を聞いて決定するという文になっていましたが、今言っ
た3点の内容が入った労働協約が、一定程度以上締結されていて申出が出てくるので、
その審議会の場において必要性の論議をすることも可能になるのだろうと思っています。
その上で、その議論を通じて各社の内容の違いがあるでしょうから、その調整を行った
上で賃金の実態の調査をし、その上で審議会で賃金水準の設定の在り方を議論すること
が可能になると考えている次第です。
 また、私は労使自治の原則はきちんと守っていくべきだし、きちんと強めるべきだと
いう考えも持っています。したがって、実は提示されてくる労働協約については個別企
業の使用者も、それが職種別設定賃金の申出に使われることについて、合意したもので
なければならないと考えております。これは今、産業別最低賃金の話合いの中でも、当
該労使が話合いをしてから審議会に申出が出てくるというのが、一番好ましいことだと
思っており、それと同じ私なりの考え方ですが、そういうのは非常に重要だと思います
し、それが現実的に話合いをし、決定していけることにつながるのだろうと思っていま
す。

○今野部会長
 聞き漏らしてしまったのですが、労働協約に入らなければいけない3つとおっしゃい
ましたね。

○川本委員
 基幹的な職種というので、この中では技能職という表現が結構あると思います。技能
職でも、先ほどご指摘のあった旋盤工というのが代表的なものであれば、それでもいい
のです。2つ目は具体的な業務内容です。この公益委員試案の中にはそれがあるわけで
す。ただ、職種で最低賃金を、職種で賃金を定めればいいというのではなく、一定レベ
ルのもの、つまり基幹的労働者という概念がもう少し具体的に入っているわけです。そ
この部分のことを考えますと、具体的な業務内容レベルというのがあるでしょう。そし
て最低賃金の額があります。この3点です。

○今野部会長
 わかりました。他にご意見ありますか。

○池田委員
 一応意見をもらっています。基本的にこういうものが適用された場合は、新たな職種
が賃金に関する労働協約を結んだ企業だけが適用するのが筋であるということです。労
働協約を結んでいない企業に適用するのは絶対反対であるということで、場所によって
は1つの会社が決めると、それで全部が決まってしまうような地域もあるそうですから、
ある程度限定して、すごく絞り込んでもらわなければ困るというのが1つです。
 それから中小企業で、現在労働協約を結んでいる会社が、新たに結び直すのは非常に
大変だろう、労使ともに非常な労力がいるので、そんなことはやりたくないというのが
大勢の意見で、賃金テーブルもないし、かえって下がってしまう所もあるし、それだけ
の労力を使う価値があるのかという中小企業が非常に多いので、労働協約をやり直すこ
とは勘弁してほしいという意見があるようです。

○今野部会長
 前半の話は、Aという会社で協約を結んだら、それを職種別設定賃金という形で他の
会社に適用するのはやめてくれ、という趣旨ですね。

○池田委員
 そうです。やはり特定地域のどこまで限定できるのですかということで、生産性を考
慮して、企業ごとに事情がありますから、それを1つの所が決める、でも最低3分の2
ぐらいにしていただく。できれば100%にしてほしいのですが、何しろ作り直すのは大
変だということで、すること自体が反対されました。

○今野部会長
 他にご意見ございますか。

○原川委員
 質問ですが、資料5の6頁の例6と7頁の例7の違いで、例7は業務というので、一
定程度以上の技能ということが含まれていて、例6はそれは含まれておらず、基幹的な
職種にとどまるという解釈でいいのでしょうか。

○前田勤労者生活課長
 例6は具体的には資格とか、免許などが必要な職種の場合には、その職種だけを特定
しただけで、一定程度以上の技能が必要だということがある程度わかるような場合もあ
るのではないか。そういう場合には例6みたいなものもあり得る。必ずしも技能職では
なく、看護師や介護士などで一定の免許や資格で、ある程度そういうものが特定できる
場合もあり得るということで、そういうのを想定して例として作っています。

○今野部会長
 労働者側、ご意見をどうぞ。

○加藤委員
 先に口火を切らせていただきます。最初に質問させていただきました。例4以降につ
いては、現実にある協約ではなく、今後考えられる職種別設定賃金の申出に当たっての
協約として考えられるケースということですが、私も労働組合で賃金の仕事をしていま
すから、あらゆる賃金協約などを見ますが、最低賃金に関しては、例9のようなものは
賃金体系があって、賃金体系に基づく賃金表で賃金決定ということですから、これは多
くの企業にあり得るのだと思います。それ以外のは最低賃金協約で、最低賃金に関する
協約で職種を限定したり、技能のレベルを限定した最低賃金協約というのは、私はあま
り見たことがないというのが実態です。まずそのことに触れておきたいと思います。
 ここに記載してあるとおり企業内協約です。企業内協約というのは、企業内の賃金決
定とか、処遇の在り方に関する企業労使の考え方に規定されるのだろうと思っています。
したがって、現在の最低賃金協約は、今のレベルで最低賃金まで職種で分けるという姿
にはなっていないのだろうと思います。もちろん賃金表で賃金決定はされますので、例
9はあります。したがって、一般的には従業員を職種や仕事内容に区分せずに、包括的
に決めるケースが一般的なのだろうと思っています。企業内の決定ですから、企業内の
賃金決定ルールとしてそれが間に合えば、それで企業内協約として十分なのです。私は
もちろん例4以降の職種別や仕事別の最低賃金協約を締結することをけしからんと否定
するつもりはありません。
 したがって、例1から例3までとか、例4を区別せずに取り扱うことが基本なのだろ
うと思っています。例4以降に限定することが企業労使による社内ルールとしての現行
最低賃金決定の見直し、変更を強要することにつながるのではないかという懸念があり
ます。強要するというのは少し言いすぎかもしれませんが、誘導するというか、そうい
うことがあってはいけない。処遇の在り方の多様性の否定につながるような対応をして
はいけないのではないかと申し上げておきたいと思います。
 それと設定しようとする職種別設定賃金の対象労働者と、協約の対象労働者と完全に
一致させる必要はないのではないかと思っています。それが現行の最低賃金法の11条の
ように、労働協約の拡張適用をするのだったら、その労働協約の内容を全くアウトサイ
ダーにまで拡張適用するわけですから、そこは協約と設定する対象労働者とが一致して
いないといけないと思いますが、労働協約の拡張適用ではない場合は、必ずしも一致し
なくてもよく、分離することも考えて然るべきではないかと思っています。
 もう一点は、川本委員から、最低賃金に関する協約を申出に使うときには、合意を前
提とすべきである。企業内労使の合意を前提とすべきだというご意見がありましたが、
現行の産業別最低賃金の例からいっても、合意の前提というのは、ちょっときついので
はないかと思っています。もともと申出は、申出する主体が一定の理由と目的を持って
申請をするわけですから、現行の産業別最低賃金の適用労働者の在り方についての資料
4にも記載されていますが、労働者又は使用者のどちらか片方での申請を是としている
わけですので、現行の産業別最低賃金の在り方についても、十分踏まえた対応が必要で
はないかと思います。

○須賀委員
 先ほど池田委員が言われたように、最低賃金の協定を結ぶ、また結び直すというのは、
ものすごく大変な労力がいるのです。それを惜しむと言うつもりはありません。またそ
のことは労働組合の役割として、あるいは労使関係を持っている組織の役割として、最
低賃金に関する協定は、なるべくたくさん結ばなければならないと考えています。その
ときの最低賃金協定の考え方は、Aという企業に雇われているのだったら最低限これだ
けのお金は払ってあげますよと。どういう仕事をしているからとか、何とかという要素
は別にして、雇われていることを要件にして最低限これだけのお金を払いますというこ
とを約すものが最低賃金協定だと私どもは理解をしています。たまたま今回の職種別設
定賃金とのかかわりでいけば、そういうことを協約にちゃんと盛り込まなければ駄目だ
ということで、全部外されると該当する労働協約なり労使協定は、ほとんどないに近い。
そうすると、申請をするために、あるいは申出をするために、協約そのものを結び直さ
なければいけない。そうすると先ほど池田委員が言われたような、あるいは私が言って
いるように、とても難しい話になって、基本的には職種別設定賃金はできないというこ
とを意味するのではないかと、私は解しました。
 もともと最低賃金協定が、企業内でどういう趣旨で結ばれているのかを十分踏まえて
いただいた上で、労働協約として、それをどのように扱っていくかについては、これか
ら議論していけばいいのではないかと考えております。

○中野委員
 今、議論している協定書の中身というのは、試案でいうと2頁の(2)の運用の基本
方針の「賃金に関する労働協約が一定程度以上締結されている場合に」というところの、
賃金に関する労働協約と理解しているわけですが、公益委員試案では、「賃金に関する
労働協約」と記載されていて、別に最低賃金協定とは記載されていないわけです。賃金
に関する労働協約というのは、考えてみれば、非常に幅広いものがあるわけで、公益委
員試案をみたときに、その中身をどのように考えるかという議論で、今の議論がされて
いると思っています。
 それでは何のために申出に当たって賃金に関する労働協約が必要なのかと考えたとき
に、議論の適用対象労働者をカバーする労働協約があるのが前提というのは理解できる
のです。しかし、あとの議論にも少しかかわるかもしれませんが、使用者側から出てい
る職種と業務と最低額の3つが必要だというご意見は、おそらくその職種については、
どのぐらいの水準の金額が支払われているのかを求められていると考えられます。そう
すると、議論としては、その協約の金額で金額審議がなされるのかと私は考えてしまう
のです。
 そうすると、そういうものもあってもいいが、先ほどから使用者側の池田委員もおっ
しゃっているように、そういうものを作るのは企業内の努力としては非常に大変で、現
行のものも使えて、なおかつそういうものも使える。それによって水準が変わるわけで
す。そこで一番問題になるのは、全員を対象にしようとすれば水準は下がり、ある一定
程度のスキルのところに焦点を当てれば最低のところよりも水準は上がるわけですから、
その水準とのかかわりが協定書の中身としては一番問題になるわけですから、協定書の
中身として現行の協定書をベースにして、その他のものも使えると幅広に考えればいい
のではないかと思っています。
 もう1つは、加藤委員がおっしゃいましたが、川本委員が、職種別設定賃金の申出に
当たり協定書については、これに使うという労使の合意が必要だと言われていました。
11回に出されている、決定の流れのイメージの中では、現行の産業別最低賃金よりも、
さらに異議申立てが答申要旨の公示の直後にあるとか、様々な工夫がなされた提案がさ
れています。試案の中でも「労働者又は使用者」となっていますので、そういうものは
いらないのではないかと私も思っています。

○今野部会長
 今、中野委員が言われたことのイメージですが、従来の最低賃金協定がある。そこで
は我が社の従業員の最低賃金を協約で結んでいる。申請のときに、では、その中の、例
えば旋盤工をやってくださいと申請してくるわけですが、そういうことになるのですね。

○中野委員
 そうです。

○池田委員
 中小企業が反対しているのは、産業別で決まっているし、さらに細分化されて、協定
を結んでより高くなってしまうのでは何にもならない、そんなに苦労したくないという
のが根底にあるでしょうから、産業別最低賃金をなくすことと、なくすがさらに細かく
分けて、それが全部に普及してしまい、上げられてしまうのでは勘弁してくださいとい
うことで、何のための産業別最低賃金廃止だかわからないということだと思います。

○川本委員
 今いろいろご意見が出て、確認されていましたが、今の産業別最低賃金に出てくるよ
うな最低賃金協定をベースに申し出て、こういう職種に限定して、こういう基幹的労働
者の所で決めたいと言われても、一体誰が責任を持って決められるのでしょう。企業労
使の使用者側も全然何も知らない、納得していない。そこに出た5人だか、6人の使用
者側の委員も何も言えない。私は労働者側のことはわかりませんが、少なくとも使用者
側の委員は、議論の俎上には乗れません。そこで議論するのであれば、議論するベース
のものがなければいけないでしょう。労働協約拡張方式とは決定的に違います。あくま
でも似たようなものが出てくるのですが、全く同じものではないので、微調整しなけれ
ばいけないし、金額も1回調査し直さなければいけないし、その上で議論するわけです
から、ベースとなる取決めがあるからこそ、現実にこういうことが行われているのだか
ら、こういうものを第三者にも及ぼしていいかどうかという議論になるわけです。ない
所で、誰が一体やれるのだろうと。
 今回の公益委員試案の特徴は、最低賃金法からは産業別最低賃金を廃止します。しか
しながら、代わりに別法を設けて職種別設定賃金を作りましょうという案で、そのとき
に大きなポイントは産業別から職種別になるということであり、罰則がかかっていたも
のから罰則がかからなくなるということであり、より労使が一体して取り組める枠組み
ということですから、今よりも労使の取組みの、労使自治の原則が強まるものという受
止め方の枠組みで読んできているわけです。ですから、今と違って、より労使自治の原
則を強めるべきだと何度も言っていますし、併せて申出も使用者側が全然知らない、勝
手に企業内ルールだけを定めたものというのが、どこかに持っていかれて、勝手に話し
合われて、第三者に及んでいるというのでは、非常に困るのではなかろうか。現実的に
地方最低賃金審議会の使用者側委員からは、それで悩んで、苦しい声がいっぱい上がっ
てきているわけです。
 私は今回の新しい枠組みづくりの前提として、企業労使そのものが、そういう形で使
われていくことを承知して出てくることが、すごく必要なのではなかろうかと思ってい
るということを申し上げておきたいと思います。
 先ほど今の協約は、職種別設定賃金と切り離してもいいのではないかというお話があ
りましたが、むしろ逆で、きちんと外で第三者に影響していくものが必要なのだ、産業
の中における一員として労使が必要だと思う認識の下に、企業内ルールの延長線上とし
てそういう職種、あるいはその中の一定の職務についての最低賃金ルールを、当社とし
てはこう考えているというのを出してくることが必要なのではないだろうかと思ってい
ます。
 最低賃金の金額を定めるということですから、それが企業内の配分ルールや賃金体系
に影響するものではないと思います。ただ、労働者側が言っている結ぶのは非常にむず
かしいというのはわかります。なぜなら日本は職種別設定賃金が普及しているような国
ではありませんので、ヨーロッパとは違いますので、そういうむずかしさがあることは
承知しております。

○今野部会長
 労使の意見がどういう点で大変違うかということは十分理解できました。もう一点あ
りますので、そちらについてのご意見をいただければと思います。残ったのは、申出要
件の問題と審議会における審議の在り方の問題の2件がありますので、この2つは同時
にご意見をいただこうかと思います。では、労働者側からお願いします。

○加藤委員
 私の方から申出要件の点を申し上げたいと思います。資料3の中には、それぞれ労使
の意見が記載されており、その中にも触れてあり、過去に何度か主張した繰り返しにな
るかもしれません。一般的に申し上げますと、申出要件は、現行の産業別最低賃金に照
らして緩和すべきだと思っています。
 公益試案の中では、「申出に係る要件等については、現行の産業別最低賃金の運用上
の要件等を配慮した上で実効が上がるようなものとする」と記載してあって、ここの解
釈は、場合によっては難しいのかもしれませんが、実効が上がるということは、職種別
設定賃金が、一定の数創設をされるということでないと実効が上がらない。現実を踏ま
えて、ないものねだりをしてもしょうがないのでという面もあるから主張しているので
すが、作りやすさ、創設しやすさが新しい仕組みを作るときに一番大事なポイントだと
考えています。
 もう1つの緩和すべきだという理由の1つですが、産業別最低賃金は先ほどご説明が
あったように、労働協約ケースと公正競争ケースでは違いますが、新設の場合には2分
の1、改正、廃止の場合は、おおむね3分の1という、2分の1、3分の1要件が付い
ています。これを決めた当時は、昭和61年答申ですが、昭和60年ぐらいの審議ではなか
ったかと思います。その当時の日本の組織率が30%近くて、28.9%ぐらいではなかった
かと思います。そんなことはどこにも書いてないのですが、そういうことも考慮された
申出要件ではなかったかと解釈しています。現行の組織率などの実態と申出要件とがあ
まり乖離するようなことがあったら、冒頭に申し上げたとおり、なかなか実効が上がる
新しい仕組みを創設することが困難になるのではないかと思いますので、その点は申し
上げておきたいと思います。

○今野部会長
 審議会の審議の在り方についてありましたらお願いいたします。

○加藤委員
 既にこのペーパーに記載しているような内容ですので、さらに追加することは特にあ
りません。

○今野部会長
 それでは、使用者側はいかがですか。

○川本委員
 私の方は、資料3にこの辺については労働者側意見、使用者側意見と欄があって、ポ
イントは記載してありますので、特に付け加えるつもりはありません。特に本日の前段
階となる適用対象労働者、あるいは労働協約の在り方そのものについて、これだけ意見
が違うわけですから、ここに私どもの主張を書いていただくことで、とりあえずこの段
階では十分です。

○今野部会長
 他にご意見ございますか。

○須賀委員
 質問をさせていただきます。公益委員試案のそのもの、あるいは考え方の中に「実効
性の上がる」職種別設定賃金にしていくのだという決意が込められていますが、具体的
にどういうことを想定されているのか、例示でも構いませんのでお示しいただければと
思います。

○今野部会長
 どこかの答弁のように言って申し訳ないのですが、実効性が上がるように、いろいろ
な面で知恵を出すということです。

○須賀委員
 ものすごくどこかの答弁に似ていますね。

○池田委員
 中小企業の方で再三申し上げる公益委員試案修正案の前文には企業横断的な処遇の確
保と書いてあり、こちらには特定の産業に絞り込んでいいと書いてあって、温度差が違
うので、我々としてはなるべく今の産業別最低賃金よりも絞られた形でないと、とても
ではありませんが、協約を結び直したりするのは無理だということです。前文では横断
的に随分広がったような感じがして、それだととても耐えられないので、後ろの方で特
定の産業と特定の地域にどれだけ絞り込めるのかわからないと、とても賛成できないと
いう意見が多いと思います。

○今野部会長
 いずれにしても、前文にある横断的というのは幅がすごくあって、全国横断というの
もありますし、地域横断、産業横断もあるし、地球全体が横断というのもありますね。
その辺は労働市場の実態、労使との関係で決めていくものだろうと思います。ただ、横
断と言った以上は企業は超えるということだけは確かだろうというぐらいで考えていま
す。
 最後は急がせていただいたのですが、今日は4点ご意見をいただきましたが、この点
は忘れていたということがあったら、ご意見をいただければと思います。よろしいでし
ょうか。
 それでは今日は労使からいろいろご意見をいただきました。最後に一言お願いをした
いことがあります。今日はいろいろご意見をいただきまして、労使の意見が大変隔たり
が大きいということはよく認識をさせていただきました。それにもかかわらず、私とし
ては、非常に難しいとは思いますが、両者の意見を解消できる余地があると考えて頑張
ってみたいと思っています。
 そこで次回は、職種別設定賃金というのはどうあるべきかということをもう一度考え
直してみるということと、本日の労使のご意見を踏まえさせていただきまして、今日の
例では適用労働者の問題をどうするか、あるいは協約との関係でいくと労使の合意は何
に求めればいいのかといった問題を含めて、職種別設定賃金の全体像がわかるようなも
ののイメージを作ってみて議論をさらに進めていただきたいと考えております。
 進め方としては、これから目安審議が始まりますので、この場はしばらく休憩という
ことになりますので、その間に事務局を通じて労使双方の意見を十分お聞きして調整を
させていただきたい。それを踏まえてこちらとしては全体像をもう一度考えてみたい。
そしてお示ししたいという手順で進めさせていただければと思いますので、また事務局
からいろいろ行くと思いますが、よろしくお願いしたいと思います。
 この部会は目安が終わってからということになりますので、その間はお休みとさせて
いただきます。
 それでは、本日の会議はこれで終了したいと思います。議事録の署名は、加藤委員と
前田委員にお願いいたします。本日は終わります。





                                        【本件お問い合わせ先】
                                          厚生労働省労働基準局勤労者生活部
                                          勤労者生活課最低賃金係
                                          電話:03-5253-1111
                                                  (内線5532)