06/05/22 平成18年5月22日薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食品規格部会議事録 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会 食品規格部会議事録 ○日 時:平成18年5月22日(月) 13:58〜15:42 ○場 所:中央合同庁舎5号館共用第8会議室 ○出席者:  【委員】五十君委員、池上委員、石田委員、小沢委員、香山委員、小沼委員、品川委 員、      高鳥委員、中澤委員、廣瀬委員、柳川委員(部会長)(敬称略)  【参考人】井上好文((社)日本パン技術研究所長)       吉川惠則((社)日本パン工業会技術委員会委員)       山田雄司((社)日本パン工業会技術委員会委員)  【事務局】松本食品安全部長、伏見基準審査課長、加藤課長補佐、松岡課長補佐  ○議 題  (1)加熱後摂取冷凍食品(凍結直前未加熱)の規格基準の一部改正について  (2)その他 ○松岡補佐 定刻より少し早いのでございますが、皆様おそろいのようでございますの で、始めさせていただきたいと思います。 ただいまより「薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会 食品規格部会」を開催いた します。 本日は御多忙のところお集まりいただきまして、ありがとうございます。 本日は部会の委員12名中、米谷先生が御欠席されております。11名の委員の方に御 出席いただいておりますので、当部会が成立していますことを御報告申し上げます。 また、本日は参考人として、社団法人日本パン技術研究所の井上所長。社団法人日本 パン工業会の吉川委員及び山田委員に御出席いただいております。 それでは、開催に先立ちまして、松本食品安全部長よりごあいさつ申し上げます。 ○食品安全部長 食品安全部長の松本義幸でございます。 本日はお忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。 「薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会 食品規格部会」の開催に当たりまして、 一言ごあいさつを申し上げます。 皆様方におかれましては、日ごろより食品安全行政への推進につきまして、多大なる 御協力をいただき、ありがとうございます。 本部会は、平成15年12月に開催されて以降、実に2年半開催されておりません。そ ういうわけでありますけれども、この間も以前御議論いただきました食品中のカドミウ ムの問題ですとか、清涼飲料水の規格基準の改正につきまして、食品安全委員会に諮問 を行い、現在も食品安全委員会の方で審議がなされているところであります。今後、食 品安全委員会からこれらの答申がなされた際には、改めて御議論いただくこととなりま すので、よろしくお願いいたします。 本日は、新しく凍結直前未加熱の加熱後摂取冷凍食品の規格基準の一部改正というも のにつきまして、御審議をお願いする次第です。具体的には、小麦粉を主たる原材料と いたしまして、摂食前に加熱工程が必要な冷凍パン生地様食品については、E.coli陰性 の成分規格を適用しないことということにつきまして、御審議をお願いするものです。 冷凍パン生地様食品につきましては、原材料の小麦に由来するE.coli汚染が一定程度 認められ、凍結前に加熱工程がないという食品の性質上、E.coli陰性の成分規格を適用 するということが、実際には困難だということの指摘を受けまして、昨年8月に食品安 全委員会に食品健康影響評価依頼を行ったものであります。 食品安全委員会での審議の結果、本年4月に摂取前に十分な加熱・焼成が行われる限 りにおいて、E.coli陰性の成分規格を適用しないことにより、健康被害のリスクが増大 するとは考えられないとの答申がなされましたことから、リスク管理機関といたしまし て、今後冷凍パン生地様食品の取扱いをどうするべきかということを本部会に御議論い ただくため、先生方にお集まりいただいた次第でございます。各委員におかれましては、 積極的に御意見をお出しいただきたいと思っております。 簡単ではございますけれども、これをもちまして、あいさつとさせていただきます。 どうぞよろしくお願いいたします。 ○松岡補佐 それでは、まず事務局の方の紹介をさせていただきたいと思います。 事務局でございますが、先ほどあいさつのありました、食品安全部長の松本でござい ます。 基準審査課長の伏見でございます。 基準審査課長補佐の加藤でございます。 そして、私は松岡でございます。よろしくお願いいたします。 それでは、座長を部会長の柳川先生にお願いしたいと思います。柳川先生よろしくお 願いします。 ○柳川部会長 柳川です。よろしくお願いします。それでは、部会の座長を務めさせて いただきます。 まず最初に配付資料の説明、確認を事務局からお願いします。 ○松岡補佐 事務局より本日の配付資料について、御説明申し上げます。 皆様のお手元には、まず「薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会 食品規格部会 議事次第」というものがあると思います。そこに配付資料1〜7、そして参考資料1− 1〜3という形であると思います。 資料1ははぐっていただきますと、表紙といたしまして、食品安全委員会からの答申 が付いております。 資料2は「冷凍パン生地に関するリスクプロファイル」となっているもの。 資料3は「平成17年度冷凍食品の規格に関する調査(−総括報告ならびにリスクプロ ファイル−)」というもの。 資料4は「冷凍パン生地様食品の定義について」というもの。 資料5はフローチャートになっておりまして、横組みになっております。「冷凍パン 生地の製造・加工工程フローチャート」。 資料6は「冷凍食品の規格基準」というもので、これは従前の規格基準をとりまとめ たものでございます。 資料7は本日の「論点メモ」となっております。 あと、先生方のお手元のみに配付させていただいているんでございますが、そちらの 方はブルーのファイルになっておると思いますが、ファイルの中に参考資料1−1、1 −2、2、3となっております。 参考資料1−1は「平成17年度冷凍食品の規格に関する調査(汚染実態調査)」とい うものでございまして、こちらは今回の調査の生データになっております。 参考資料1−2は同じようなものでございますが、汚染実態調査というものでござい ますが、若干資料の組み方が変わっているものでございます。 参考資料2は、調査をほかの主体において行っていただいているものでございまして、 これも報告の資料の基データでございます。 参考資料3も同じようなものでございます。これは三菱総研の方がとりまとめたもの でございます。 以上のものと、こちらには載ってはいないのでございますが、皆様のお手元に、この ような3つの何も振られていないものがあると思います。1つはAIB食品安全統合基 準。AIBフードセーフティーシステムについて。AIBフードセーフティーGMP指 導監査システム。こちらにつきましては、日本パン技術研究所の方から御提供のありま した資料でございます。こちらの資料は、日本パン技術研究所及び日本パン工業会が何 らかの説明を行うときに使用されるものとして、提出いただいたものでございます。 以上でございます。 ○柳川部会長 ありがとうございました。 それでは、議事に入りたいと思います。第1の議題は「(1)加熱後摂取冷凍食品(凍 結直前未加熱)の規格基準の一部改正について」でございます。具体的には、今お話が ありましたように、小麦粉を主たる原材料とし、摂取前に加熱工程が必要な冷凍パン生 地様食品について、E.coli陰性の成分規格を適用しないことについて、審議をお願いし たいと思います。 それでは、資料1を説明してください。よろしくお願いします。 ○松岡補佐 それでは、資料1の説明をさせていただきます。 資料1というのは、先ほど申し上げましたように、食品安全委員会からの答申が頭紙 になっているものでございます。こちらの方は、平成18年4月27日付で食品安全委員 会より厚生労働大臣あてに答申されたものでございます。 この答申内容といたしましては、私どもが諮問しておりました「小麦粉を主たる原材 料とし、摂食前に加熱工程が必要な冷凍パン生地様食品についてはE.coli陰性の成分規 格を適用しないことに係る食品健康影響評価について」というものだったのでございま す。 この内容につきまして「記」の下のように「小麦粉を主たる原材料とし、摂食前に加 熱工程が必要な冷凍パン生地様食品については、摂食前に十分な加熱・焼成が行われる 限りにおいて、E.coli陰性の成分規格を適用しないことにより、健康被害のリスクが増 大するとは考えられない」という答申がなされております。 このバックとなっております報告書が、次のページから「別添」という形で書かれて おります。これは4月に食品安全委員会によって報告されたものでございまして「検討 の経緯」は、1ページにあるように、平成17年8月23日に厚生労働省から諮問をし、 その後、微生物専門調査会で4回の検討がなされた後、食品安全委員会に報告され、パ ブリック・コメントに付された後に、こちらの方に答申されたというものでございます。 それでは、食品安全委員会の報告書について、御説明をしたいと思います。 この報告書に4ページというものがあります。「1 はじめに」から始まるページで ございます。 「2.1 経緯」というものがございます。これはなぜ厚生労働省が、小麦粉を主たる原 材料とする冷凍パン生地様食品(パン生地の他、ピザ生地、パイ生地等を含む。以下同 じ。)というものについて、E.coli陰性を外そうというようなことを諮問したのかとい うことを書いているわけですが、輸入冷凍パン生地様食品に関し、食品の性質上、現在 の成分規格を適用することが困難であるという指摘があったと。厚生労働省に対し規格 基準の見直しが要請されたということがあります。この見直しの要請に応じまして、厚 生労働省は国際貿易上の問題より規格基準の見直しについて検討する必要があると判断 し、食品安全基本法に基づき、食品安全委員会に食品健康影響評価の要請を行ったとい うような経緯がございます。 この諮問の内容ですが、2.2 にありますように、E.coli陰性の成分規格を適用しない ことによってリスクは増大するか否かということを諮問しております。そして、その検 討のために、私ども厚生労働省はさまざまな資料を提出し、その資料を基に食品安全委 員会が検討を行ったわけです。 5ページの「3.1 ハザード関連情報整理」というところなのでございますが、まずE. coliというものは、食品衛生においてどのような位置づけにあるのか。そして、また冷 凍パン生地にとって、どのような意味があるのかなどということを書いております。 細菌学的なE.coliというのは大腸菌のことなんでございますけれども、そうではなく て食品衛生法上のE.coliというものは、糞便性大腸菌と言われる一部の大腸菌群である とお考えください。このE.coliは糞便汚染の指標として設定されているものでございま す。またE.coliそのものに明白な病原性はないと位置づけられているということでござ います。これらのE.coliという菌群のD値というものは、0.26〜2.64、64.3℃における D値は0.16と報告されているものでございます。 また「3.1.2 冷凍パン生地様食品について」は、厚生労働省に対して説明を求められ たものなんですが、どのようなものなのかということを書いております。 冷凍パン生地様食品といいますのは、基本的には食パン、ハードロール、菓子パン、 ドーナツ、デニッシュ、パイの6種類であると。イーストが入るものもあれば、パイの ように入らないものもあると。また、あん、クリーム、カレーの具などをフィリングし た後に冷凍されるものもあるであろうと。ただ、フィリングの衛生管理は今回範囲には 含まず、生地の衛生管理を対象にしているということに御留意いただければと思います。 また、ブラウンサーブというものがございます。これは冷凍前に一度加熱して焼いた 後に冷凍して、家庭などで温めて、焼き立ての食感を楽しむというようなパンなんでご ざいますが、これは冷凍パン生地様食品には該当しません。加熱を冷凍前に行わないと いうのが今回の食品のものでございます。 「(2)製造方法」につきましては、20℃〜24℃以下に設定された工場内で2時間半程度、 冷却過程を挟んでも7時間以内に成形が完了し、急速冷凍が行われるというようなもの でございます。 「(3)輸入実績等」でございますが、これは大体年間届出重量にいたしまして、1万5, 400 トンぐらいあります。 それでは、国内でのパンの生産数量はどれぐらいなのかと申し上げますと、124 万3, 000 トンぐらいあるということでございます。 「(4)食品衛生法による成分規格」は、今までどうなっているかということにつきまし ては、また後ほど御説明したいと思います。 海外の状況なども調査しております。アメリカ、中国、韓国では、一部規格もしくは 農作物としての規格です。だから、強制的なものはないのですけれども、農作物として こうあるべきであるというような規制対象ではなく、品質保証のものもあると聞いてお ります。 国内の冷凍パン生地の汚染実態などについても見ておるのでございますが、 一部大腸菌群などが検出される場合もあるということです。 麦類などにつきましても、検出が報告されていると。文献報告でございますが、その ような場合もあるということを、3.1.3 というところにずっと書いております。 8ページ「3.1.4 健康被害について」というところでございます。厚生労働省によ れば、我が国における凍結直前未加熱を原因とする健康被害は報告されていません。微 生物専門調査会で調査した限りにおいても、国内外においてパン生地様食品、これは冷 凍、冷蔵及び常温のものを併せてでございますが、健康被害は報告されておりません。 冷凍パン生地自体の流通量は全パン生地の10%以下ということでございますが、冷凍パ ン生地も普通のパン生地も同程度のE.coli汚染があると推定されるとなっております。 「3.2 リスク特性の解析」につきましては、 ○健康被害の報告がないということ。 ○冷凍パン生地様食品は、高温において焼成される必要があるということ。 ○腸管系微生物以外の有害微生物の混在について、E.coli陰性の成分規格のみで、そ の被害を阻止することは困難であるということ。 ○冷凍パン生地様食品の諮問でありほかの冷凍食品ということについては、今回議論 していないということ。 「(6) 考えられる代替規制について」として、E.coliまたは大腸菌群の菌数規制とい う形で基本的には現時点では規格基準を設定する必要はないということが言われており ます。 ほかに有害微生物等が規制としてあり得るのかというところにつきましては、現在の ところ危害となり得るような微生物は見当たらないということも言われております。 冷凍食品の特性では、長期保存がリスクに及ぼす影響について検討するための十分な 知見がないということなどについて、議論されました。 「4 結論」といたしましては、先ほど申し上げましたリスク特性解析に基づきまし て、E.coli陰性の成分規格を適用しないということにより、健康被害のリスクが増大す るとは考えられないというような結論を得たということでございます。 一番最後のページでございますが、意見1、意見2という形で、これは食品安全委員 会が行いましたパブリック・コメントの内容とその回答でございます。 焼成はうまく行われるのかと。焼成が行われない場合には、やはり危険があるのでは ないか、焼成をきちんと行う主体が消費者であるならば、その消費者がリスクを一方的 に負うのはおかしいという御意見などがありました。 専門調査会の回答といたしましては、基本的には焼成をきちんと行うということによ って、安全は担保されるので、その担保を何らかの形でリスク管理機関が行うべきであ るというような形で回答をしていると私どもは認識しております。 以上で、資料1の説明を終わらさせていただきます。 ○柳川部会長 ありがとうございました。 それでは、ただいまの説明について、何か御質問なり議論なりありませんでしょうか。 もし特になければ、引き続き資料2〜6までについて説明をしていただきたいと思い ます。資料3に平成17年度食品等試験研究費、冷凍食品の規格に関する調査というのが ありますけれども、本日出席されておられる五十君先生にも説明をしていただきたいと 思います。 それでは、よろしくお願いします。 ○松岡補佐 まずは私の方から御説明させていただきまして、もし足りないところや間 違えているところがありましたら、五十君先生に補足していただくという形で説明の方 を進めさせていただきたいと思います。 ○柳川部会長 お願いします。 ○松岡補佐 資料2を中心にお話をさせていただきたいと思います。 資料2は、五十君先生などに中心となって進めていただきました冷凍食品の規格に関 する調査を基にして、エッセンスをリスクプロファイルとしてまとめたものだとお考え ください。このリスクプロファイルにつきましては、厚生労働省より食品安全委員会に 提出され、これを基に食品安全委員会ではリスク評価を行ったというような経緯があり ます。 先ほどの食品安全委員会の資料1と若干重複する面もあるんですけれども、最初から お話をさせていただきたいと思います。 「1.問題となる微生物・食品の組み合わせについて」ということでございますが、 先ほど申し上げましたように、E.coliといいますのは食品衛生法に基づく試験法に規定 されているE.coliというものでございまして、EC発酵管を用いた検査方法によって検 出されるものをE.coliと私どもは呼んでおります。すなわち糞便系大腸菌群と言ってお ります。これを更にIMViC試験を用いて、パターン++−−である場合というもの を食品衛生検査指針で大腸菌と呼んでおります。この概念と区別するためにE.coliとい う表現を用います。普通はイタリックでE.coliと書けば種別になるんですけれども、食 品衛生上のE.coliは、このようなブロック字体にして書いているということになってお り、分類学上のE.coliと食品衛生法でいうE.coliというものを区別いただきたいと、 まず申し上げておきたいと思います。 「● 対象とする食品または加工食品についての概略」は、先ほど申し上げましたよ うに、小麦粉を原料とする加熱後摂取・凍結直前未加熱の冷凍食品であり、高温で加熱 しなければ食すことができない冷凍パン生地のような食品です。 これにつきましては、資料4というものがございます。1枚紙です。こちらに平成17 年10月に食品安全委員会からの質問に答える形で、定義をさせていただいたペーパーが ございます。「小麦粉を主たる原材料とする冷凍パン生地様食品とは、小麦粉を主原料 とする加熱後摂取冷凍食品(凍結直前未加熱)であり、高温で加熱しなければ食すこと ができない冷凍パン生地のような食品を指す」としておりまして、(1)〜(3)を例示として 挙げております。(1)〜(3)で大体言い切っているのではないかと私どもは思っております が、世の中にさまざまな食品がございますので「等」というような言い方になっており ますが、流通しているものはほとんどこれぐらいであろうと思っております。 資料2に戻ります。 「● 過去に報告されている健康被害」というのは、先ほど申し上げましたように、 これまで我が国においては知られていない。文献検索などでも、特段報告されている例 は見当たらないということが言えます。 「2.問題となる微生物の特徴について」は、D値につきましては、先ほど申し上げ ましたように、60℃、64.3℃では大体0.26とか0.16、そういったものでございます。 また、汚染し得る病原体といたしまして、サルモネラ、赤痢菌、セレウス、黄色ブド ウ球菌、エンテロトキシンなども知られております。これらの細菌につきましては、セ レウス菌の芽胞と黄色ブドウ球菌エンテロトキシンを除き、63℃〜65℃以上の加熱によ って、非常に速やかに死滅することが知られています。セレウス菌芽胞では100 ℃での D値は4分以上であるが、121 ℃では極めて短時間で死滅すること。エンテロトキシン は120 ℃の加熱においても、毒素の力価が10分の1になるまでに20〜40分必要である ということが言われております。 「3.食品製造、加工、流通と摂取」というところでございます。 「● リスクマネジメントに関与し、影響を与え得る媒介食品の特性」ということで、 冷凍パン生地がどのようなものであるかということを、ここで明らかにしています。先 ほど申し上げましたように、冷凍パンというものは、基本的にはこれらのパン生地、ハ ードロールなどの6種類であること。またいろいろなつくり方があるのだということで す。 製造工程につきましては、おおむね20〜24℃以下に設定された工場内で、基本的に2 時間半、パンの種類によって冷却過程を挟んでも7時間以内に成形が完了し、急速冷凍 が行われるということでございます。 これらの大体のフローというものが、資料5になります。このようなシェーマがあり まして「○国産品」「○輸入品」と分けておりますが、基本的には同じでございまして 「原材料の受入・保管」から「原材料調整」「生地調整」「(発酵)」「分割・丸め」 「ベンチ」「成形」そして「冷凍」という過程を経ます。そして「包装・金属検出」「冷 凍保管」「出荷」すると。「(1) 成形冷凍品」と「(2) 生地冷凍品」では、成形過程が あるかないかというところで、若干の違いが生じるということがあります。 また、参考として一般生地の工程を右下に付けておりますが、これは見ていただいて わかると思うのですけれども、冷凍の過程、冷凍保管の過程がないということ以外は、 国産品、輸入品にかかわらず、冷凍品の製造過程とほぼ同じであるというようなことが 見てとれると思います。 「● 国内での製造状況」なんでございますが、パンの製造につきましては、平成16 年では大体124 万トンぐらいありました。冷凍生地の使用量として、7万6,879 トンあ りまして、パンの生産数量の約6%が冷凍生地を使用したものであるということです。 また、輸入の実績でございますが、平成15年の届出件数は4,064 件、届出重量は1万 5,400 トンあり、うち277 件の検査結果として、4件のE.coli陽性による違反が見つ かっております。 「● 既存のリスクマネジメントについての要約」というものがございます。これに つきましては、既存の規格基準についてなんでございますけれども、皆様のお手元に資 料6がございます。 資料6は「冷凍食品の規格基準」を抜粋してきたものでございまして、それをめくっ ていただきまして(3)というところでございます。下線を引かさせていただいており ます。「加熱後摂取冷凍食品であって、凍結させる直前に加熱されたもの以外のものは、 細菌数(生菌数)が検体1gにつき3,000,000 以下で、かつ、E.coliが陰性でなければ ならない」ということで、その下にはずっと検査法を書いているわけですが、これには もう一つありまして、発酵食品とかパンのようなイーストを使うものについては、生菌 数がはかれないということがありますので、生菌数は除外ということになっております。 ですから、従前のイーストの入った冷凍パン生地様食品の場合には、E.coliが陰性でな ければならないというところが基準としてかかってきていたとお考えいただければよろ しいかと思います。 「4.国内の冷凍パン生地ならびに原材料の汚染実態」につきましてですが、これに ついては資料3というものがございます。 10ページからずっと表2とかがあるんですけれども「表2.冷凍パン生地汚染実態予 備調査における、冷凍パン生地製品および小麦粉類の大腸菌群ならびにE.coliの検査結 果」ということで、陽性がどれぐらいあったのか。大腸菌群の陽性がどれぐらいあった のか。E.coliの陽性がどれぐらいあったのかということで、調査の結果が載っておりま す。これを見ていただきますと、やはりE.coliの方でも若干の検出があるところもあり ます。 次のページの表3なども同じようなものでございますが、どの過程で汚染が見つかっ ているのかということで、生地の過程や小麦粉のところなどでも見ておりますけれども、 大腸菌群でいいますと、やはり汚染が小麦粉の段階で見つかるものもありますし、大陽 菌数のところで、下の方の表でしたらCとかDとかのところで見つかっているものもあ ります。 これは非常に細かいので、もしよろしければ見ていただいたら結構かと思い ますけれども、このような形で提供いただいた国内の検体で調べてきたというようなこ とがございまして、国内の冷凍パン生地及びその原材料においても、やはり汚染が起こ っているものもあるということがわかっていただけるかと思います。 表4につきましては、製品メーカーの方から御提供いただいた自主検査の汚染状況な んですが、こちらにつきましては、陰性のものが非常に多いということがおわかりかと 思います。 その次の14ページからは文献調査による海外の事例でございます。生地、小麦、小麦 粉の段階で汚染があったかどうかということを調べております。 資料2でいいますと、2ページの5からでございます。「5.冷凍パン生地および原 料の麦類の汚染実態に関する文献情報」なんでございますが、少なからず小麦及び小麦 粉において、汚染が行われていることがあるということでございまして、そういった実 態もあるんだということが、この調査でわかったということです。 「6.海外の冷凍食品の規格基準」ですが、先ほど少し申し上げましたが、アメリカ ではクッキーのものとして、大腸菌群数が100 未満とか、大腸菌が10未満、サルモネ ラが検出されないこと、総菌数が5万未満、黄色ブドウ球菌が10未満というような規格 がございます。 中国では、急速冷凍インスタント食品の規格ですけれども、この中にこの食品が入る のであれば、240 未満、大腸菌が検出されない、総菌数が30万未満、黄色ブドウ球菌が 検出されない、サルモネラが検出されないというようなことがあります。 また、韓国でも日本と同じような形で規格がありますが、大腸菌が検出されないとい うことと、総菌数が300 万未満というような規格があります。 また、これは冷凍ではないんですけれども、fresh な生地については、カナダが大腸 菌について規格を有しており、キューバでも糞便性の大腸菌について規格があります。 小麦粉の規格としては、スペインが持っております。 このような形で、若干の微生物規格を今回の対象食品、もしくは今回対象とする食品 の周辺について、持っているような国があります。 7番以降は、食品安全委員会になぜ諮問をしないといけないのかということですが、 規格基準の適用を図る場合には、食品安全基本法において、食品安全委員会への諮問を 必要とすることがあると。今回、輸入の冷凍食品に関し、食品の性質上、現在の成分規 格を適用することが困難であるという指摘があったため、厚生労働省に規格基準の見直 しを要請されており、今回国際貿易上の問題提起であり、規格基準の見直しについて検 討しないといけないのですが、その前にやはり健康について影響がないかどうかという ところを食品安全委員会において確認していただくという意味より、食品安全委員会へ の諮問が必要であると判断されたところでございます。 以上が資料2、資料3、資料4、資料5、資料6までの御説明になるかと思います。 もし何か御質問等ありましたら、またおっしゃっていただければと思います。 五十君先生、何かもし付け加えること等がありましたら、よろしくお願いします。 ○五十君委員 特にございません。 ○柳川部会長 よろしいですか。 それでは、資料2〜6までの説明について、いろいろ御質問があるのではないかと思 いますので、いかがでしょうか。非常に膨大な資料、海外の文献もたくさん出てきたよ うですが、何か御質問なり御意見なりありませんでしょうか。よろしいですか。 特になければ、小麦粉を主たる原材料とし、摂食前に加熱工程が必要な冷凍パン生地 様食品について、E.coli陰性の成分規格を適用しないことについて、議論をいただきた いと思います。 まず議論に当たって、議論のポイントとなる事項を事務局に整理をしていただきまし たので、まずこれを説明してください。お願いします。 ○松岡補佐 それでは、私どもの方で僭越ながら「論点メモ」という形で、皆様に食品 安全委員会での議論を踏まえて、若干整理させていただきました。 「論点メモ」には、論点が3つあります。 「論点1」でございますが、小麦粉を主たる原材料とし、摂食前に加熱工程が必要な 冷凍パン生地様食品についてはE.coli陰性の成分規格を適用しないこと、という食品安 全委員会へ諮問した内容を食品宛然委員会からの答申を踏まえて、成分規格として取り 込むことが可能であろうかどうかというところが、まず一番大きな議論の争点になるん だろうと思います。 それに当たりまして、もしその成分規格の変更を良しとする場合に「論点2」及び「論 点3」というものを、考慮しなければならないのではないかと考えております。「論点 2」と「論点3」は食品安全委員会においての議論及びパブリック・コメントへの回答 も踏まえて、リスク管理機関である厚生労働省が何らかを行わなければならない。もし くは行った方がよいと思われるようなリスク管理措置の一部を書いているものでござい ます。 「論点2」でございますが、冷凍パン生地様食品の製造工程等における衛生管理の徹 底というものが、食品安全委員会において議論されました。この徹底について、行政が 何らかの措置を講ずるべきであろうかどうかというところは、1つ論点としてあろうか と思っております。 もし行政が何らかの措置を講じる必要がある場合、どのような措置を講じることがで きるのであろうかというところが「論点2」でございます。 「論点3」でございますが、食品安全委員会の評価結果は、摂食前に十分な加熱・焼 成が行われる限りにおいてとあります。これは食品安全委員会の付けた前提条件でござ います。この前提条件をどのように担保するのかと。それを担保するためには、どのよ うな措置を講ずることができるのか。講ずるべきなのかというところについて、論議す るべきであろうと私どもは考えております。 以上「論点1」「論点2」「論点3」につきまして、御議論いただけましたら、非常 にありがたく考えております。 ○柳川部会長 ありがとうございました。 まずこのような論点整理で議論を進めていっていいかどうか。別の観点で、是非これ はこうやなければいけないというもがあるかどうか。それについて何か御意見ありませ んか。 特になければ、まず「論点1」です。これは先ほどの資料1にありましたよう に、食品安全委員会から大臣あての答申に書かれていますように「小麦粉を主たる原材 料とし、摂取前に加熱工程が必要な冷凍パン生地様食品については、摂取前に十分な加 熱・焼成が行われる限りにおいて、E.coli陰性の成分規格を適用しないことにより、健 康被害のリスクが増大するとは考えられない」と。このような食品健康影響評価結果を 答申として得ているわけですが、冷凍パン生地様食品の成分規格からE.coli陰性の成分 規格の適用を除外するということについて、健康被害のリスクが増大するとは考えらな いと書いてありますので、問題はないのではないかと思いますが、それについてはまた 「論点2」「論点3」について、いろいろな条件が出てくると思いますが、まず「論点 1」については、いかがでしようか。「論点1」について、冷凍食品の成分規格の一部 改正を行うことでよろしいかどうか。それについて、議論していただきたいと思います。 小沢委員、どうぞ。 ○小沢委員 論点1、2、3という中身はよろしいかと思いますけれども、論議の仕方 の順番として、2と3が担保されないと、1についていきなりOKとはならないと思い ます。○柳川部会長 確かにそのとおりだと思います。1を取り入れるかどうかという のは、多分2と3のそれぞれについて、皆さんの同意を得られるということがあるんだ ろうと思います。 それでは、今の小沢委員の御意見に従って、まず1をイエスとするか、ノーとするか というところを前提として投げかけたわけですが、2、3を議論していただきます。そ して、最終的に2ではこういうこと、3ではこういうことということを出していただい て、それで同意が得られれば、そういう前提で1についても同意が得られるということ にしていきたいと思いますが、よろしいですか。 それでは「論点2」です。「論点2」は、ここに書いてありますように、衛生管理を 徹底する上で、行政が何か措置を講ずるべきかどうか。その場合にどのような措置を講 ずるかといったようなことなんですが、今日はパンの製造工程において、衛生管理がど のようにされているかということについて、日本パン技術研究所から井上所長、日本パ ン工業会から吉川技術委員、山田技術委員の3名に参加をしていただいていますので、 まず現状について説明をしていただき、それなども参考にしながら、議論をしていただ きたいと思いますが、よろしいですか。 では、お願いします。どのような順序でも結構です。 ○井上参考人 私は日本パン技術研究所の井上と申します。 今の御質問について、簡単に御報告させていただきます。大腸菌群E.coliの件につき ましては、今、食品の安全を高度に保つために一番有効な手法とされていますHACC Pの手法に基づいて管理しようとしますと、まず危害分析を行うと、最後の加熱工程で 除去できるということになります。これによって安全性は確保できるわけですが、国民 の間からいろいろ出てくるのは、安心の問題かと思います。安心の問題に答えるために、 予防的に事前から菌数の汚染を防止するというような対策をいかに講じているかという ことになってくるかと思います。この件に関しましては、HACCPの手法ですと、G MPを中心とします前提条件を高度に構築して動かすということによって、予防的な安 全性の確保ということが果たされることになります。 この件に関しまして、議案に関連しております我が国のパン業界、パン産業に関しま しては、HACCPでいいますGMPを前提とする前提条件の構築というものを2001 年から導入しております。米国の任意のシステムになりますが、AIBのフードセーフ ティー監査指導システムというのがございます。 それはお手元に用意させていただきました3つの資料になるわけですが、ピンクのパ ンフレットを見ていただけると、それがどのようなものかというのが、よくおわかりい ただけると思います。GMPを中心とします食品の安全を高度に確保するための前提条 件の構築というものは、非常に難しいことではありませんで、当たり前のことの羅列に なるわけですが、それをいろいろな食品工場のすべてにわたって実施するというときに、 たまたま漏れが出てくるようなことが起きます。そうすると、そこから事故が発生する ということになるわけですが、そのような漏れがないかどうか、このAIBのフードセ ーフティー指導監査システムというものは、工場の中に入って、危害の目になって専門 の人間が工場の人たちと一緒に漏れがないかどうかを点検すると。仮に漏れがあった場 合には、それが二度と起こらないような改善を進めるというようなシステムでございま す。このシステムを導入しましてから、特にパン産業に関しましては、俗にいいます一 般衛生管理という面が非常に高度化していると。そして、消費者からのクレームが顕著 に少なくなっているというような現状がございます。 このような面もE.coliの問題に関しましては、科学的に安全性は担保されているもの であると。更に安心していただくというような対策が、その製造メーカーでとられてい るかと。それに関しましても、皆さんに安心していただけるような努力を今、着実に進 行しているということでございます。 ○柳川部会長 吉川参考人、山田参考人よろしいですか。 ということは、安全性は担保されている。安心の対策については、現在進行中である と。要約するとそういうことですね。 ○井上参考人 そうです。 ○柳川部会長 それでは、ただいまの説明も踏まえていただいて「論点2」です。実際 に「論点2」は、行政が何らかの措置を講ずるべきかとか、どのような措置を講じ得る のかということなんですが、これについて現状はどうなんでしょうか。 ○松岡補佐 現状というのは、なかなか難しいんですけれども、冷凍パン生地様食品に つきましては、今までは基本的にはE.coli陰性というものは適用されております。現在 もされておりますので、そちらの方の規格基準を用いて、輸入食品、国内の食品もそれ にのっとった管理を行っている。つまり、そのような規格基準を適用してきたというよ うなところでございます。 冷凍パン生地様食品以外の生のといいますか、冷蔵パン生地様食品、普通の冷蔵して いないようなものもそうなんですけれども、基本的には今まで行政的な管理措置は特段 行っておらず、食品衛生の観点より食品製造業者が守るべき一般的な衛生管理を徹底す るように、保健所等を通じて指導等を行ってきているというようなことはありますが、 例えばパン生地様食品をつくっている業種に対して、特段の指導や監査といったものを 行っていたというような経緯はございません。 ○柳川部会長 一般のパン生地については、特段の指導は行ってこなかったと。したが って、冷凍についても同じような状況であるということですか。 ○松岡補佐 同じような状況だったんですが、ただ、規格基準がたまたま冷凍食品とし てありますので、冷凍食品としての規格が適用されてきたということがあります。 ○柳川部会長 その基準に合っているかどうかということは、確認するというか、そう いうことはやってきたということですか。 ○松岡補佐 何らかの事件などが起こった場合には、確認するというようなことになり ます。 ○柳川部会長 ということですね。 そうすると、いかがでしょうか。委員の先生方から、まず行政はどうすべきかという こと、どういう措置を講ずべきかということについては、何か御意見ありますか。どう ぞ。○小沢委員 今も安心の問題だというお話が出たように、やはり今までは冷凍食品 としての規格基準ですが、E.coli陰性という基準があったと。今度はいってみれば、冷 凍のパン生地については、微生物を含めてもともとないわけですから、何の条件もなく なるということですね。半ばというか、焼成された冷凍のパンには、既に冷凍食品とし ての大腸菌群と大腸菌の規格基準はあるということで、ある意味では輸入するときに何 でもいいといってはおかしいですけれども、それを担保する保証が何もなくなるわけで、 最終的に焼くから大丈夫でしょうということしか保証の限りはないわけですね。今まで ある程度はE.coli陰性という規格基準があるから、この辺は担保されてあったであろう と。特に衛生指標ということがあったということで、その辺がなくなるということに対 して、一般的な消費者の感覚すると、非常に不安というか、どうなるのかなという気持 ちは出てくるのではないかと思います。そうすると、それをどうやって担保するかとい うことが、やはり一定程度保証されないといけないのではないのかなと思います。 あとは、冷凍のパン生地様食品ということでは、パイの生地などが消費者のところで 比較的頻繁に利用されています。それも勿論E.coli陰性ということになって、例えば自 宅で焼くときに、一定の温度で焼かないとパンにならないんだといってしまえばそれま でなんですけれども、やはり家庭でも一定の温度がどういうふうに保証されるかという ことで、やはり何らかの担保する措置がないと、外しましたということだけでは済まな いのではないかと思います。 もう一点なんですが、先ほどGMPという観点で、いろいろ業界として衛生的な製造 ができるようになさっていると伺いましたけけれども、パン屋さんというのは、本当に 大きいところから、本当に小さな街角のベーカリーというのもたくさんある中で、その 辺のところはどんなふうに行き届くのかということをちょっと伺えればと思います。 ○柳川部会長 そうすると、今、小沢委員から「論点2」についてちょっと話が始まっ たんですが、今のお話から「論点3」に触れているというか、摂食前に十分な加熱・焼 成が行われる限りにおいてはという前提があるわけで、それを担保するにはどうすれば いいかというところと両方一緒に議論していった方がいいような気がするので、行政が なすべきかどうかということとか、業者の方に自主的に管理してもらうかどうかという こととか、一般消費者にもわかりやすいような表示なり、一定のものを義務化するかと か、そういったものも含めて議論していただいて、ある程度行政はこういうことを、業 者の方はこういうことを、一般の消費者はこういうことというところがある程度具体的 に出れば、そういう前提条件の下で、先ほどの「論点1」をOKするということになる んだろうと思いますが、今の小沢委員の御提言に関して、吉川参考人お願いします。 ○吉川参考人 今、不安というお話があったんですけれども、恐らく食品安全委員会の 結論というのは、そういった不安がないということで、今回こういった結論が出たんだ と思います。 その背景は、先ほど井上の方から御説明申し上げましたように、やはり私どもは各保 健所の食品衛生管理基準にのっとって、しっかり衛生管理をやっておるんですけれども、 その上で更にアメリカのAIBのシステムを導入して、更に強化をしていこうという形 で、不安を一掃しようということで努力はさせていただいております。 まずリスクの問題なんですけれども、HACCPではリスクになり得ないと。最後は 加熱をしてしまうからということで御説明があったんですけれども、実はこの資料にも ございましたけれども、大腸菌がどこから由来するかということなんですけれども、小 麦粉なんです。やはりほ場から直接入ってきて、加熱工程を経ていないものですから、 出てくるということがあるわけです。そのレベルも実は私どもも工場で調べているんで すけれども、実際は300 以下の検査精度では全く出てこないんです。10のオーダーとか、 若干高いものもありましたけれども、一般的にはそのぐらいのオーダーのものしか出て こないということで、リスクの心配というのは、私どもは一切していなかったというこ とはございます。 もう一点は、先ほど規格で酵母も入っているので、こういった菌に ついては生菌の300 万は除外されるんだというお話がございましたけれども、パン生地 は10億個以上酵母が入っているわけです。そういうことからしますと、E.coliが10の オーダーであったとしても、ほかの菌がいっぱいございますので、増える余地がないん です。そういう意味でのリスクもないと私どもは考えていました。 ですから、その上で最後は加熱するんですけれども、それに加えて何度も申し上げま すように、各都道府県の衛生管理基準に上乗せして、しっかり工場で管理していこうと いうことをやっているわけです。1点目のお答えはそういったことでございます。 2点目の御自宅で焼かれるときに心配だというお話があったんですけれども、これは 実は私どもパン工業会は21社ございまして、大手はやっているんですけれども、小売の ための冷凍生地の販売というのはやっていないんです。すべて卸なんです。卸で実際は 焼き立てパン、オーブン・フレッシュということで焼いたパンを提供しているわけです。 ですから、こういった規格基準は適用されないんですけれども、その際にどういうこ とを卸先に指示しているかと申し上げますと、何℃で何分ぐらい焼いてくださいと、全 部スペックを出しているわけです。そうしませんと、これは製品にならないんです。 御承知のとおり、冷凍パン生地にも大きさが大小がいろいろあるわけです。そうしま すと、一概にこれは何℃でというような指定の仕方ができないので、個々の製品ごとに これは何分解凍して、何分焼成してくださいという条件付けをすべてやっていると。そ れがないと、パンは焼けないんです。 そもそも御家庭で心配だということがあるのかもわかりませんけれども、御承知のと おりパンにするためには加熱が絶対必要でございまして、これはデンプンがα化すると いうことがまず必要なんです。パン生地中のタンパクは主にグルテンなんですけれども、 これが凝固するということが必要なんです。それを糊化する温度、α化する温度と凝固 する温度というのは、ここに出ています資料からすれば、E.coliが完全に死滅する温度 であるということで、そういった心配は一切していなかったということがございます。 なぜ今まで冷凍パン生地だけが特別扱いをされていたのかというのも、不思議に思っ たぐらいなんです。といいますのは、先ほど御説明申し上げましたように、E.coliとい うのはほ場から入ってくる。小麦粉から入ってきてあるわけです。現実に常温でつくっ ているものにも同じような条件で入ってきているわけです。それで冷凍というのは、そ の増殖をある意味では停止させているという工程が入るというだけなんです。ですから、 常温と普通のパンの違いというのは、それしかないわけです。停止させているわけです。 ということでの心配は一切していなかったということでございます。 ○柳川部会長 わかりました。消費者の立場から、いろんな不安があると思います。例 えば今のこのようなE.coliの条件がなくなった場合に、先ほどおっしゃったように歯ど めがなくなるのではないかと。これは消費者にとっては、非常に大きな不安であると。 その点についてどうお考えになるか。 一般家庭向きに小売などはしていないと言われましたけれども、例えばネット販売と か何かで、個人単位でかなり購入できる状態ではないかと。そういう点についても、ど のようにお考えになるか。 小沢委員、今のことに追加して何かありますか。 ○小沢委員 今は卸だけとおっしゃいましたが、実際に家庭向けのものは結構ございま すので、そこのところの実態の数字はお持ちなのかどうかよくわかりませんけれども、 確かに最終的には焼けばということは、私はあると思うんですが、やはりそれがきちん と担保できる形というのは必要だと思います。 ○柳川部会長 要領よく短くお願いします。 ○吉川参考人 長くて済みません。 先ほど申し上げましたように、焼く方法を示していないと家庭ではパンは焼けません。 それと冷凍生地は発酵させて、私どもはホイロというんですけれども、最終発酵させて 焼くものと、そのまま焼くものと2種類あるんです。そういった条件も示してあげない と実際はできませんので、それは必ず示されているはずだと思います。 ○柳川部会長 ありがとうございました。 そうすると、そのようなことを担保するために必要なことを、消費者にはきちっと情 報が行き渡るように、表示を義務づける。先ほど言われましたように、パンの種類によ ってそれぞれ時間が異なっているというようなことですので、その点もきちっとわかり やすく表示するというのは、前提条件としてまず必要ですね。 そのほかにも何かあるのではないかと思うんですが、ほかの委員の方も含めて何かい かがでしょうか。品川委員、どうぞ。 ○品川委員 今、具体的な条件を余り出されなかったけれども、加熱しなければ食べら れないということはどの様な条件か。実際に家庭で焼いたとき、中心部が十分に焼けて いないときがあるのですが。 条件というのは、どういう加熱条件ですか。安全委員会でも出してきていることは、 「十分な加熱・焼成がなされていること」という言葉があえて入っているということは、 そういうことが十分守られない場合があるのではないか、ということだと思います。 ○柳川部会長 どうぞ。 ○山田参考人 山田の方からちょっと説明させていただきます。 パンの品質に関してということでお話しさせていただきたいと思うんですが、摂食前 に十分な加熱・焼成が行われているかどうかというのは、パンとしての商品価値がある かということ、そのものになります。私どもは不十分な加熱・焼成というのは、生焼け ということをいいまして、先ほど吉川が申し上げましたように、大体60℃ぐらいからデ ンプンの糊化、あとタンパクの変性というものが始まりまして、80℃を超えるごろにな りますと、通常のパン様のような状態になってまいります。パンを焼いているとき、完 全に焼き上がる前の途中の段階で切ってみますと、中央部がペースト状になっているも のが、加熱を行っていくに従ってどんどんペースト状がなくなってまいりまして、パン 状態になってまいります。ですから、不十分な焼成の場合というのは、とても人が食べ られるようなものではございません。ですから、家庭でもたとえどんな状況で焼かれて も、それがペースト状態で残っているのだとしたら、とても食べられるものではありま せん。当然先ほどのE.coliの死滅の温度に達しているわけですし、そういう衛生的な問 題は一切ないと考えております。 ○柳川部会長 どうぞ。 ○品川委員 パン生地がどういう形態で、中心部でパンがどうなっているのかはわかり ませんが、確かに十分焼けていないときには生地が残っていますけれども、温度が上が って80℃と言われましたね。だから、温度が上がってきたとき、60℃ぐらいでは、見か け上はもう焼けている状態になっているが、中心はそうではない。それでなおかつまだ 温度をかけているのか。温度のかかり方はグラジェントに上昇しているから、ここから は大丈夫で、ここからはまだであるというのは、なかなか難しいなと思います。パンを 普通に焼いているという条件は、我々が食べているパンは何度になれば十分に焼けてい るのか。本当に加熱して製造したときには、少しでも生地が残っていない。要するに生 地のペースト状が残っていないが、一見パン状ではあるが、まだ十分焼けてはない。こ の様な状態が起こり得るのではないかと考えられます。 ○山田参考人 先ほど事務局の方からもお話がございましたように、85℃で1分半とい うような条件に頼るのでしたら、間違いなくそういうペースト状の状態というのはなく なっております。 ○品川委員 ということは、85℃1分半まで加熱しているということですか。確かに、 O157 事件のときにも、ハンバーグについて、中心温度が75℃1分間加熱されることと 示されました。 ○柳川部会長 実は私も自分でパンを焼くんです。それできちんとこれで大丈夫だとい うのは、わからないです。例えば何分焼けというので機械でやりますね。ちょっと間違 えて、30分早く止めてしまうと、確かに周りの色は赤くならないし、中はぐにゃぐにゃ としていますけれども、それででき上がったら食います。食えないといっても、それは 商品としてはです。パン屋さんにはそういうのはないと思いますけれども、家庭ではだ めならもう一回それを焼いて食べるとか何かすると思います。だから、そういう場合で もきちっと担保されるような注意事項を明記するとか何かをしないと、リスクは高くは ならないんでしょうけれども、安心して食べることにはならないのではないかと思うの で、その辺の具体的な記述といいましょうか、義務的な表示をしていただく必要がある のではないかと思います。特に個々の家庭で消費者としてやる場合に、間違えないよう にしていただく必要があるのではないかと思います。 あと、いかがでしょうか。池上委員、どうぞ。 ○池上委員 私も何点かわからない部分がありますので、御質問したいと思います。今 の冷凍パン生地様食品の定義の中で、ごく普通のパンの場合は問題ないと思うんですが、 今はいろんなものがあります。ピザのような形態ですとか、あるいはジャムやあん等を フィリングした場合のパン生地は、中身の方は対象にはならないんですか。外のパンの 生地の部分だけが対象になるということですね。そうすると、中の具の部分というのは、 どういうふうな安全上の担保がされるんでしょうか。それが1点目の質問です。 2点目の質問は、小沢さんが提起されたことに関連するものです。今、家庭でパンを 焼いたときのことが問題にされたんですが、町には小さなパン屋さんというのが、最近 はかなり出ていて、自分のところでは焼いて売っていますみたいなのが結構ありますね。 そうすると、家庭とある意味では線上にあるそういう町の小売にどの程度利用されてい るのか。そこら辺りのデータというのはお持ちなのでしょうか。 ○柳川部会長 どなたからお答えになりますか。どうぞ。 ○松岡補佐 まず1点目の方からお答えします。先ほどおっしゃられていましたように、 フィリングしたものも確かに対象なんですが、ただ、フィリングの衛生管理は入らずに、 パン生地の衛生管理のみを今回は議論の対象とさせていただいております。ジャム、あ んなどのフィリングなんでございますけれども、こちらにつきましては、加熱等の調理 が行われた後にフィリングされているものでございますので、調理過程、フィリングを 中に入れる過程におきまして、衛生管理がなされているものだと考えております。です から、今回の小麦由来、もともと小麦からきている汚染で、一定の汚染が考えられるよ うなパン生地に起因するリスクというものの検討については、今回のあんとかクリーム とか、そういったものの衛生管理というものは今回考えないとことにさせていただいて おります。 ○柳川部会長 どうぞ。 ○池上委員 その辺の識別というのが、厳格にできるのでしょうか。例えばあんやカレ ーの具というようなものの衛生上の管理が不適切で大腸菌が出た場合と、パン生地の部 分に問題があって出た場合に、この大腸菌を識別できますか。別々の管理対象にすると いうのは余り適切ではないように私は思うんですが、いかがでしょうか。 ○柳川部会長 どうぞ。 ○松岡補佐 確かに非常に重要な問題提起であるとは認識しております。1つあります のは、一度フィリングを外して考えていただくんですけれども、パン生地の生地自体の こと、パン生地だけを考えてみたときに、パン生地が適切に加熱されているならば、パ ン生地の中のE.coliとか、一部の病原菌を除く病原菌などは死滅するとされております。 今度フィリングの方の安全管理ということをくっ付けてきたときには、確かに総体と しての安全管理という意味では問題になることではありますけれども、パン生地の衛生 管理、パン生地の取扱いというものと、総菜パンとか、そういったものをつくるときの 全体としての安全管理というものは、切り離さないとなかなか議論が難しいということ で、切り離して考えさせていただきたいと考えています。 ○柳川部会長 よろしいですか。 ○池上委員 もう一つの質問は、実際に小さい店舗への冷凍生地の販売は、どのぐらい の実態になっているのかということです。 ○柳川部会長 井上参考人、どうぞ。 ○井上参考人 正確な数字は持ち合わせておりませんが、日本での冷凍生地の使用量と いうのは、日本のパンの6%です。 ○柳川部会長 6%ですか。 ○井上参考人 はい。日本のリテールベーカリーと言われるようなベーカリーのマーケ ットシェアというのは、恐らく20%ぐらいではないかなと思います。 焼き立てパンの店がどのぐらいかというと、正確な数字がないんですけれども、非常 にこれはアバウトなことで、恐らくアベレージで見ると1割ぐらいの製品が冷凍生地に 使われている可能性があるということかと思います。 ただ、それは焼く場面ですので、今は冷凍生地をつくっているところが問題になって いる部分だと思うんですが、そこで先ほどの御質問で1つ答えていなかった部分で、大 手の製パンメーカー、パン工業会に加盟していないようなところで冷凍生地をつくって いるところはあるわけですが、そういうところに対する一般衛生管理の支援はどうなっ ているのかということなんですが、そういう中小の小型の学校給食パンとか、個人の店 とか、そういうパン屋さんの組合に全パン連という団体がございます。加盟数が約三千 近くということで、小型のパン屋さんが大勢加盟した団体がございます。 そういうところに対しまして、私どもの研究所が全パン連と一緒になって、今年から なんでございますが、中小もしくは小型の製パンメーカーに対しても、衛生管理の現場 での指導を行いましょうと。そのためのスタンダード、基準を全パン連と私どもの研究 所が一緒になって構築しまして、内容的にはAIBと同じでございます。それを本年度 から希望するところに対してですが、実地での改善指導というものを行うことになって おります。ですから、数年はかかりますが、皆さんが御心配しないようなレベルには、 近いうちにほとんどのところで進むであろうというような状況です。 ○柳川部会長 ありがとうございました。 ほかにいかがですか。小沼委員、お願いします。 ○小沼委員 資料5のところで「発酵」は「0〜30分程度」とありますけれども、今は いろいろ変わってくるのかもしませんけれども、低温発酵というのがありますね。そう いう名前のときというのは、どうなるのか。要するに、これは大体30分程度のところの 発酵で見ていますね。それをちょっとお伺いしたいと思います。 ○柳川部会長 何かお答えありますか。 ○井上参考人 では、私の方からお答えいたします。 冷凍生地をつくるプロセスで、低温発酵を使う場合があるのではないかと。そのとき に大腸菌群関連の増殖が進むのではないかというような御懸念ということでよろしいの でしょうか。 ○小沼委員 そうなんですけれども、そういうデータがなくて見せていただいていない ものですから、そういう疑問があるので、ちょっと教えていただきたいんです。 ○井上参考人 製パンのプロセスの中でも従来使っておりますが、パン製品の中でデニ ッシュペストリー等々、油脂を折り込んで層をつくるような、パイもそうですけれども、 そういう製品がございます。そういうものを製造する場合には、生地を冷やすというプ ロセスが入ります。生地を増やすプロセスは、大体0℃前後、トータルで12時間とか、 場合によっては24時間という冷却のプロセスが入る場合があります。ただ、我々製造に 関わる者としましては、そういう低温下では大腸菌群もしくは病原菌群の増殖というの は、余り進まないというような認識を持っておりますが、そういうプロセスは一部の製 品の中には入ってきております。 ○柳川部会長 どうぞ。 ○吉川参考人 ちょっと質問の趣旨と違うお答えになるかもわからないんですけれども、 冷凍生地と普通のパンの発酵時間が違うんです。普通の食パンなどですと4時間半ぐら い、菓子パンなどですと2時間半ぐらいとか、長時間発酵させるんですけれども、冷凍 パン生地の場合は、イーストを余り活性化させますと、冷凍障害を起こすとかというこ とがあって、ちょっと短くなっているといういきさつはございます。 ○柳川部会長 ほかの委員で何かございますか。品川委員、どうぞ。 ○品川委員 先ほど冷凍生地の中では、大腸菌や大腸菌群というのは死滅していくとい うのがありましたね。生地のpHや酵母により菌が死滅するというのは、微生物的にはち ょっと考えにくいと思いますが、これらは実験的に証明されているのですか。 ○柳川部会長 どうぞ。 ○吉川参考人 死滅すると申し上げたのではなくて、増殖しないと。ほかの菌が大量に、 10億個以上パン酵母があります。 ○品川委員 pHは、測られていないのですか。 ○吉川参考人 pHは5.5 ぐらいで、非常に増えにくい状況にはなっているかと思います。 ○品川委員 このpHでは死滅するのではなく増殖を抑制しているということですね。 ○吉川参考人 死滅とは申し上げていないと思います。 ○品川委員 このpHではほかの微生物でも増殖するものもあります。菌の生残性は当然 変わらないものもありますが、pHとか物理的な作用により、微生物は死滅します。パン 生地は、そういう条件を有しているのかと思いました。 私も「論点3」のところは、やはり行政的にマネージメントするということからすれ ば、十分な加熱・焼成というのは何にも条件を付けなくて、十分な説明さえ行えばそれ で全面的に良いとすると、「論点3」に書かれていることについては、いいのでしょう か。 「論点2」では行政の立場として、また監視指導する立場から、何もしなくても良い のか、製造する生地というものに対しては、十分管理が行われているから、それで良い のかなと思いますが。従来の食品衛生法で示されていたのは、衛生管理が十分に行われ たかを見るために、直接的なハザード、危害物質が存在するかどうかではなくて、管理 がされているかどうかを見る指標菌という概念を入れてきていました。そういうことか ら指標菌をマーカーにして判定していました。衛生的な取扱いが行われているか、場合 によっては過去の取扱いが十分であったのかということを見ていました。 大腸菌というのは、今までよく取り上げられていますが、例えば他の腸内細菌である サルモネラとかは、大腸菌群がどうして小麦粉からそんなに出てくるのか。ハーベスト された時、小麦に付着し汚染されており小麦から検出されるのか。どういう状態の時検 出されるのか十分わかりませんが、非常に不思議に思います。小麦のここから大腸菌群 が検出される。だから、大腸菌も検出されるということになるのですが。 農場の段階で小麦がハーベストされる時付着すると考える。そういう段階から付いて きているのか、またはどこでこれらの菌が入ってきて、大腸菌群として検出されるのか。 他の腸内細菌のサルモネラの汚染もあってもいいと思われますが、その辺はどうでしょ うか。 ○柳川部会長 その辺について、何かコメントありますか。 ○吉川参考人 フィールドでの汚染というのは、品川先生の方が一番詳しいのではない かなと思います。 ○品川委員 セレウス菌とか芽胞形成菌という土壌細菌の汚染でしたら十分考えられま すが、今回の腸内細菌については、小麦にも付いていて、それが小麦粉になっても生残 していると考えられる。それらの粉をブレンドしたということですよね。 ○柳川部会長 どうぞ。 ○五十君委員 今のことにつきまして、実際に測定した側から一言コメントさせていた だきます。 大腸菌の検査についてですが、実は以前カイワレのときに、植物フローラを検査した データがありまして、このときに植物がE.coliとして間違って入るような菌をフローラ として持っているという話がございまして、今回の試験ではそれにつきましてかなり気 を配ってテストをやっております。したがいまして、ここに出てきておりますデータは、 純粋に食品衛生上の大腸菌が検出されたと理解していただいて問題ないと思います。 では、大腸菌がどこからきたのかということですが、それにつきましては、事実とし て考えるしかないと思います。文献検索等をやりましたら、やはり海外の小麦粉の汚染 実態等々のデータからいいましても、ある割合でどうしても大腸菌は市販の通常流通し ている小麦粉から検出されているというデータがございます。我々はきちっとした形で 実証的に確認しましたところ、汚染理由はまだ不明ではございますが、恐らく大腸菌の 混入は通常どうやら起こっているということになるかと思います。 ○柳川部会長 国内はどうなんですか。 ○五十君委員 今回は国内のパンに実際使う小麦粉についてのデータを出しておりまし て、国内、国外と分けて検討しておりませんので、それについては直接お答えすること はできません。 ○品川委員 11ページ、12ページの大腸菌群の検出率は非常に高い。菌量的にはそんな に高くはないと思っています。これに対し、生菌数の方は酵母が入っているから、なか なか測りにくいですが、11ページ、12ページの成績というのは、非常に高いと思われま すが、実際は100g中ですから、1グラム中に直すと数個しか入っていない。これが生残 していて混入されるということは、多い菌数のものが検出されても、例えば、1,100 個 を超えているというのは、これらを腸内細菌と考えるのか。植物に存在する大腸菌群と 同定されるものか、大腸菌群について、ここで検出された菌種を少し細かく調べれてい るのですか。 私は、今これを基準として入れるべきであるということではないですが、この辺の大 腸菌、菌群についてまずしっかり説明できないと、ただ、これを載せていいとか悪いと かという問題ではないと思います。従来の衛生管理の1つの指標として用いてきた意義 づけについて、こういう考え方で全く危害がなく、全て加熱して食べるのであるから問 題ではない、これからの基準において外していくんだということ。危害があるものだけ 残していくんだということ。確かにこの考え方もあると思いますけれど、今後、どうい う方向で衛生行政、食品衛生を評価していくかということが重要であり、今回の事例が 最初の指針になるのではと思われます。 ○柳川部会長 今、先生が言われたように、説明できないといけないと。どこで汚染さ れるかということについても、今の段階では十分な情報は収集できていないんだろうと 思いますので、それはその方向でいろいろ情報収集なり研究なりを重ねていかなければ いけないんだろうとは思います。 香山先生、いかがですか。 ○香山委員 先ほど手を挙げた論点はちょっと違うんですけれども、よろしいでしょう か。○柳川部会長 どうぞ。 ○香山委員 「論点2」に関してなんですが、海外の輸入品についてなんですが、米国 はAIBというシステムをとられているということですが、それ以外の国からの輸入、 フランス、イタリア、あるいは中国からとか、そういうものが入ってきているのか。あ るいは今後どういう対応を国に、行政的にリクエストしておくのかということは、どう でしょうか。実情はどうなんでしょうか。 ○柳川部会長 これは何か答えありますか。 ○松岡補佐 お答えになるかどうかわからないんですが、現状の方を少しお話しさせて いただきます。 私どもは先ほど申し上げましたように、輸入の実態ということで、資料2の●の2つ 目になりますが「● 輸入実績ならびに違反状況」というところがございます。輸入実 績として、平成15年には4,000 件近い輸入がございました。これらは当然アメリカ以 外の国、ヨーロッパ、東南アジアなどの国からもきております。私も詳細な国の名前ま では覚えていないし、今、手元にリストがないんでございますけれども、4,000 件近く の輸入件数があるという実態があり、AIBのような監査システムを持っていないであ ろう国というものも当然あるかと思います。HACCPなどを使っているようなものも あるのだとは思いますが、いってみればそれは個々の企業の努力によるものでありまし て、国として冷凍パン生地についての何からの衛生管理をきちんとやっているかどうか ということについての情報は、私どもでは持ち合わせておりません。 以上でございます。 ○柳川部会長 ほかにいかがでしょうか。 大分議論も進んできたんですが、これはまとめるのは非常に難しい。御意見をいろい ろいただいたわけなんですけれども、確かに解決すべき問題があるのは事実です。今ま で出てきた議論を私は完全にまとめられるかどうかはわかりませんが、1つは必要な情 報をきちっと提供する。物によっては表示義務を課す。その内容を明らかにするという こと。 例えば加熱が必要かどうかということは当然ですが、温度がどうであるかとか、時間 がどうであるかとか、場合によっては何か確認の方法があるかどうかといったような表 示をきちっとする。必要な情報を提供する。 行政が何をやるかということについては、行政だけではないんでしょうけれども、今 の業界の団体の方々にもお願いすべきなんだろうと思いますが、自主的な管理をするた めの指導努力をする。これは行政もしなければいけないと思いますし、自主的に業者の 方もやらなければいけないと。一般生地と同様にということでいいのかどうかわかりま せんが、そういう自主的な管理はやらなければいけない。特に先ほどからもしかしたら 問題があるかもしれない中小の企業の方が3,000 か所ぐらいあると言われましたけれ ども、そういう方々に対してきちっと正しい情報を提供し、そのために何らかの義務づ けをするかどうか、そういうことをやっていただく。自主的に参加をして講習を受ける とか何かは、今やっていただこうとしているわけですね。それでいいのかどうかです。 何からの講習を、これだけのことをきちっと受ける義務があるとするのかどうか、もう ちょっと強く持っていくのかどうか。その辺はやはり検討しなければならないような気 がします。 あとは今の輸入の状況であるとか、外国の衛生管理の状況であるとか、実際にどのぐ らい利用しているかということの実態であるとか、そういうものはこれからも積極的に 情報収集をしていただき、必要な情報を提供していただくということが必要ではなかろ うかと思います。 「論点2」「論点3」に関しては、今のような御意見をいただいたような気がするん ですが、こういう前提を敷くならば「論点1」は認めてもいいということになるのかど うかなんです。それについては、時間はもう少しありますので、もうちょっと議論いた だけませんですか。これではとてもだめですというのか、それとも今、言われたような ことを前提として「論点1」は認めてもよろしいとするのか、いかがでしょうか。どう ぞ。 ○五十君委員 規制に対する考え方というか、そちらに関係するお話かと思うんですが、 今回提供させていただきましたデータの中で、基本的には焼成を加えられたパン生地と いうのは、食中毒として事件を起こしていない。これは食品安全委員会でもきちっとし た形で評価されまして、食中毒事例が起こっていないということは非常に重要なことと 考えます。 その上であえて法的な規制を持ってくる必要があるかどうかというところが、ここの 3つの議論をしなくてはいけない部分かと思います。 1つは現在全く法規制がない低温流通のパン生地におきましては、国内の流通の9割 以上がこちらの形態をとっておるにもかかわらず、焼成が行われた後のものとしては、 食中毒を起こしておりません。これは非常に重要な事実かと思うわけでして、現実的な 問題からいきますと、低温流通のものと冷凍したものでリスクが変わってくるか。取扱 い上に不備が起こりやすいのかどうかというところで考えて、現在特に規制のない低温 流通に対して、冷凍にしたからこういう規制を持ってくるんだという考え方を示さない といけないと思います。感覚的に安心のために規制を持ってくるんだというわけにはい きません。 規制するなら何を持ってきたらいいかという、行政当局として科学的根拠のあるよう な規制を持ってこないと、むしろ消費者の安心が得られないのではないかと思います。 特に冷蔵技術の製品に対して、冷凍というパン生地のリスクが上がってくるのか。そし て、法的にどの様に押さえなければいけない部分があるのかどうかと。その辺のところ を議論していただけると、すっきりするのではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○柳川部会長 何かこれについて御意見ありますか。 ○品川委員 今、私達は冷凍食品について1つの研究課題として行っていますが、凍結 前未加熱食品で、今、先生が言われますように加熱するからリスクとしては非常に低い し、危害を起こすという問題はないだろうと思われます。しかし、今、私が問題として いるのは、これまでの食品衛生法で規制として用いられてきた指標細菌の考え方をどの ようにしていくのかということであると思います。大腸菌群、大腸菌の汚染をどうとら えるかという問題と、冷凍食品という凍結を行ったものと、凍結していないで低温流通 を行うものは全く同じで、ただ、冷凍食品というのは普通の食品をただ凍らせただけで あるとの違いです。何も変わっていないし、普通の食品を凍らせて販売したときには、 冷凍食品の基準が適応される。そういう中で、冷凍食品自体も、そこに含まれる指標菌 について、今我々も厚生労働科学研究の中でその基準、衛生管理について作業を進めて いますが、常に問われるのは、冷凍したものと普通の食品について凍らせたら細菌汚染 の規制が入ってくる。これらの考え方の整理をどのようにすべきかについては、よくわ からないところがあります。 ○柳川部会長 お願いします。 ○松岡補佐 確かに先生のおっしゃられるとおりでございまして、冷凍食品は規制とし ては非常にかっちりしたものがあるんですけれども、現在の食の流通形態とか食品のカ テゴリーとかに本当に合っているのかどうかというところは、食品安全委員会の議論の 中でも指摘を受けております。食品安全委員会では、冷凍食品の規制自体がもしかする と時代遅れなのではないかとか、もうちょっといい方法がないのかとか、そういったよ うな議論がなされました。実際ペーパーにはきちんと記されておりませんが、厚生労働 省に対する宿題という形で、冷凍食品全体の規格基準の見直しというものを要請されて おります。事務局といたしましては、それを受けまして、近々冷凍食品のカテゴリーの 分類方法のやり方から必要なハザードの設定、そして規制の在り方について議論を始め ようと思っております。またこの部会でやるのかと思われるかもしれませんが、私ども の方で議論がある程度煮詰まった段階で、先生方には見ていただいて御議論をいただく ような時期もこようかと思いますので、その節にはよろしくお願いいたします。 ○柳川部会長 ありがとうございました。 ほかにいかがですか。どうぞ。 ○小沼委員 これは意見になるかどうかわからないんですが、原材料にはどっちみちそ ういった病原菌、その他の菌がいるというのはあることなんです。ですから、パンの冷 凍生地に限って言えば、そういったものがまれではあるけれども、入っている可能性が ありますということで、例えば75℃1分以上で加熱してくださいとかという表示の部分 というのをつけていければ、もう全部明らかにしておけば、このE.coliに限って言えば 別に問題はないような気がするんですけれども、そんなようなことでいいのかなという 気がします。○柳川部会長 小沢委員、何かありますか。 ○小沢委員 今やられている条件でクリアーできているのかどうかは、私はわかりませ んけれども、これも余りに仰々しく書いてしまうと怖くなってしまうと思うので、そこ までの必要はないと思いますけれども、十分焼き上げるためにこういう条件はクリアー してくださいというようなことを押さえていくということは必要だと思います。 ○柳川部会長 いろいろ議論が出ましたけれども、これを先延ばしにしても、これに議 論が集中していくのはなかなか難しいような気がしますし、おおよその同意は得られた のではないかと思います。必要な情報はきちっと提供すると。行政は行政として食品衛 生という観点から、いろいろ指導していくという前提条件の下で「論点1」は認めさせ ていただくということに、もし御異論がなければしたいと思うんですが、いかがですか。 当然輸入の実態であるとか、外国の衛生管理の状態であるとか、現在の利用状況に関 するデータはできるだけ積極的に集めていただいて、必要なときにこの委員会なりいろ んなところへ開示していただくということにしたいと思います。特にそれで異論がなけ れば、そういうふうにまとめさせていただきたいと思いますが、いかがですか。 ○品川委員 済みません。「論点3」の食品安全委員会が評価してきた部分、あえて安 全委員会がこのように示したことに対し、マネージメントを行う側の何らかのアクショ ンというか、進め方については、業界サイドで十分周知徹底なり、表示していくという ことですか。この点についてはどういうふうに考えているのでしょうか。 ○柳川部会長 きちっとした焼成の時間であるとか、温度であるとか、そういう情報を きちっと提供するということだけでは不十分ですか。 ○品川委員 先ほど小沼先生が言われた表示するとかではなくて、周知徹底するという ことは、業者への研修なり、指導して周知徹底ということですか。これらについてどう 考えるんですか。 ○柳川部会長 ここでそこまで細かく決めるかどうかということなんですけれども、当 然業界としては、そういう周知徹底をやっていただくし、保健所からもやっていただく し、必要な情報は国からも提供していただくということだろうと思います。 どうぞ。 ○松岡補佐 確認もかねて私の方から、こういったことなのかなという形でさせていた だきます。 「論点3」につきまして、摂食前に十分な加熱・焼成が行われる限りについての担保 ということなんですけれども、基本的にこの食品については、きちんとした加熱条件、 つまり時間と温度については書かれていないと、使えるものではないという前提でござ いますので、表面に書くのか、インストラクションシートみたいな形で中に放り込むの か、それは私にはどういった形がいいのかというのはわからないんでございますけれど も、そういったものをきちんとすべての製品について付けて、消費者なり製造者がわか る形で、それにのっとってやると。それにはなぜ書いているかというところを、もしで きのならば、書いておいた方がいいのではないかということを、皆様がおっしゃってい たのではないかと私は理解しているんですが、それでよろしいのでございましょうか。 ○柳川部会長 そういうような議論だったと思います。 よろしいですか。 (「はい」と声あり) ○柳川部会長 では、そういうことで了解するということにしたいと思います。 もし特に御意見がなければ、事務局の方にお渡しをして、その後のことについてお話 をいただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○松岡補佐 先生方どうもありがとうございました。長い時間御議論いただきまして、 ありがとうございます。 今後はこのような議論の結果を、パブリック・コメント及びWTO通報の所定の手続 を行い、部会の報告をとりまとめさせていただきたいと思います。分科会からの答申を 経た上で、告示の改正手続に入らさせていただくということになりますので、部会への 報告につきましては、先生方に一度お目通しいただいた上で、部会長の方に最終的な案 としましては、一任していただければと思いますが、よろしゅうございますか。 (「はい」と声あり) ○松岡補佐 皆様には当然お配りいたしまして、もし何か質問とか説明を求められるよ うなことがございましたら、私どもの方で対応させていただきたいと思っております。 また、食品安全委員会からの宿題でありました冷凍食品の全体の見直しということで ございますが、私どもはもうすぐしたら進めたいと思いますので、ここの場でいつまた 始めさせていただくかどうかわかりませんが、ある一定のまとめができましたところで、 皆様には御議論いただければと思っております。 私ども先日コーデックスのCCFAC、食品添加物・汚染物質部会の会議がありまし て、そちらの方に伏見と松岡でまいってまいりました。そこでのカドミウムの議論につ きまして、伏見の方から若干の御報告をさせていただきたいと思いますので、よろしく お願いします。 ○基準審査課長 先ほど会議の冒頭で部長がごあいさつ申し上げましたときに、2年半 ぶりにこの会議を開くと申し上げたんですけれども、多分2年半前のこの会議のときに カドミウムの御議論をいただいたのではないかと思っております。 それ以来でございますけれども、食品中のカドミウムの国際基準につきましては、現 在コーデックス委員会で議論を進めているところでございまして、ちょうどつい先日、 4月末でございますけれども、コーデックス委員会の食品添加物・汚染物質部会、CC FACと言っておりますけれども、その会議が開かれました。 申し訳ございません、本日資料を用意しておりませんで、口頭だけで御説明させてい ただきます。そこへ厚生労働省、あるいは農林水産省から日本政府代表団として参加い たしましたけれども、議論の結果といたしましては、従前から御議論いただいています 米の精米のカドミウムの残留基準値でございます。これはもともと我が国が提案したも のでございますけれども、現行案の0.4mg/kgというものを国際基準値として、最終採択 すること。現在ステップ7だったのが、今回ステップ8、最終ステージまで進めるとい うことで合意がされました。 これにつきましては、7月に今度はコーデックス委員会総会、CACと言っておりま すけれども、これが開かれる予定でございますので、そちらで最終的な議論がなされる という運びになっております。国際基準をめぐる議論は、そういったところでございま す。 国内的には、現在食品安全委員会においてリスク評価をお願いしておりますので、そ ちらの結果を踏まえて、厚生労働省としてはリスク管理を考えていきたいと思っており ます。 簡単でございますけれども、以上でございます。 ○柳川部会長 よろしいですね。終わっていいですね。 ○松岡補佐 はい。 ○柳川部会長 それでは、どうもありがとうございました。 照会先: 厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課  規格基準係TEL:03-5253-1111(内線4280)