06/04/26 第11回労働政策審議会労働条件分科会最低賃金部会議事録 第11回労働政策審議会労働条件分科会最低賃金部会議事録 1 日 時  平成18年4月26日(水)10:00〜11:55 2 場 所  厚生労働省労働基準局第1、第2会議室 3 出席者 【委員】 公益委員   今野部会長、石岡委員、勝委員、武石委員、 労働者側委員  加藤委員、須賀委員、石委員、橋委員、中野委員、 横山委員        使用者側委員  池田委員、川本委員、杉山委員、竹口委員、原川委員   【事務局】厚生労働省   青木労働基準局長、松井審議官、熊谷総務課長、 前田勤労者生活課長、吉田副主任中央賃金指導官、 梶野課長補佐 4 議事次第    (1)今後の最低賃金制度の在り方について    (2)その他 5 議事内容 ○今野部会長  ただ今から、第11回労働政策審議会労働条件分科会最低賃金部会を開催いたします。  前回の1月19日に、「公益委員試案の詳細について、さらに検討しなければ合意はで きない」という意見が出されました。部会としては「公益委員試案を尊重しながら、引 き続き議論を継続していく」ということで報告をまとめました。今回はそれ以来の開催 となり、公益委員試案について、引き続き検討をしていきたいと考えております。  まず議論を再開するに当たって、最低賃金部会の今後の進め方について、こちらの考 え方をご説明申し上げます。昨年、公益委員試案を提示したときは、最低賃金法改正を 先行して、職種別設定賃金の根拠法の整備はその後に行うという2段階方式を考えてお りました。しかし、公益委員試案について合意が得られなかったという経緯を踏まえつ つ、さらに最低賃金の見直しという課題を早急に解決しなければならないということを 考慮すると、今後は、できれば最低賃金法改正と職種別設定賃金の根拠法の整備を、次 期の通常国会で同時に行うこととして議論を進める必要があるのではないかと考えてお ります。  「公益委員試案」では職種別設定賃金の根拠法を最低賃金法とは別の法律とするとい うようにしておりますが、別の法律については、労働条件分科会で議論をしていただく 必要があります。そうしますと、秋口までに最低賃金部会から何らかのものを労働条件 分科会に投げかけねばならないと考えております。また、目安の議論が本格化すると、 多くの委員、事務局ともそちらに大変時間を取られてしまうという事情もあります。  このようなことを考慮いたしますと、「公益委員試案」を前提としつつ、目安の作業 が本格化する前に、最低賃金法の法律改正事項に係るとりまとめを行い、併せてそのと りまとめの前提となる、新しく作る職種別設定賃金の内容の大枠についても、おおむね 整理をしたいと考えております。したがって昨年もそうでしたが、短い時間に回数を重 ねさせていただければと考えております。皆様のご協力をお願いしたいと思います。  今後の進め方については、このように考えておりますが、この進め方についてご意見 があったら、お伺いしたいと思います。 ○須賀委員  従来の2段階方式から、先ほどご指摘があったように、最低賃金法の改正と根拠法の 設定という両方を視野に置きながらやらなければならないという状況は理解できます。 同時に、根拠法の設定をめぐって、労働条件分科会での審議の時間が必要になるという ことも理解できます。ただし、部会長がおっしゃったように、職種別設定賃金の大枠を 固めるといっても、大枠の枠のつくり方によっては、今の時点でも対立点がかなり明確 になっているようなところもあるのではないかという印象を持っております。そういっ た意味ではどの程度のものを固めるのか、つまり枠の中身をどの程度のものにするのか によって、審議に要する時間もかなりぶれるのではないか、という予測を私どもは持っ ております。  確かにこれまでと同じように、かなり頻繁に部会を開催しなければならないというの も分からなくはないのですが、拙速とまでは言わないにしろ、あまり急ぎすぎるのもい かがなものか。時間切れで、はい、これでおしまいですよということにならないように、 審議の進め方については、是非ご配慮いただきたいと思います。時間的な猶予がない中 での審議になりますから、まとめ上げるといいますか、私どもも努力しますが、部会長 にはそういう趣旨での進め方なり、運営なりをお願いしておきたいと思います。大枠と しては先ほどおっしゃったような方向で、私どもも是非そういう努力をしたいと思いま す。 ○今野部会長  今、須賀委員がおっしゃったように、論点としてはまだまだたくさんありますので、 やってみてとりまとめられるかどうか。やってみなければ分からないというところはあ ると思いますが、折角とりまとめようとするのですから、目標を設定して、やるぞとい うようにすることが重要ではないかと思っております。とりあえず先ほど言ったような 形で、目標の時期を設定させていただいて、とりまとめについては最大限努力を行う、 というように私は考えております。昨年末の12月26日か27日までやって、最後まで頑 張るぞということでやりますと言ってやったのと同じことですが、今回のような目標時 期を設定させていただいて、最大限努力するということでやっていきたいと思います。 ご協力の程、よろしくお願いいたします。 ○川本委員  今のことについて、労働者側の委員からご意見がありましたから、こちらも一つ申し 述べておいた方がよかろうかと思いますので申し上げます。今、労働者側の須賀委員が 言われたとおり、そういう状況があろうかと思います。また、今、部会長が言われたと おり、やってみないと分からないというところも当然あるわけです。したがって、とに かく回数を重ねて議論をしていくことについては、私どもとしても協力してまいりたい と思っております。 ○今野部会長  それでは進め方については、この程度にさせていただきます。まずは今日の資料の説 明を、事務局からお願いいたします。 ○前田勤労者生活課長  まず資料1は、昨年の11月に部会で出された「公益委員試案」を、その後12月の時 点で修正したものです。資料2も、昨年の12月にこの部会で提出した、職種別設定賃金 についての「決定の流れのイメージ」です。資料3は、「職種別設定賃金の適用対象労 働者のイメージ」です。これも同じく、昨年の部会で出した資料です。ここまではこれ までに出した資料と同じですので、説明は省略させていただきます。  資料4は、「今後の論点(案)」ということで提出しております。資料1の「公益委 員試案修正(案)」の中で、今後さらに検討していくべきとされている事項や、これま での部会でのご意見も踏まえ、今後、この部会でご議論いただくための材料として委員 の方と相談し、論点案として整理させていただいております。  まず「職種別設定賃金」の関係で、(1)の「適用対象労働者」です。資料1の2頁 の(2)の「運用の基本方針」の下の3つ目のポツ、あるいは4つ目のポツに、適用対 象労働者のイメージというのが示されており、こういったことについて、さらにご議論 をいただくという趣旨です。  (2)の「申出要件」も、資料1の2頁の(2)の2つ目のポツにありますように、 「賃金に関する労働協約が一定程度以上締結されている場合に、一定数以上の労働者又 は使用者の申出により行う」ということになっておりますので、その「一定数」「一定 程度」についてどう考えるかということです。  (3)の「決定手続」については、資料1の3頁の(3)と関わります。まず決定手 続の中で適用対象労働者をどのように決定していくか。審議の在り方としては、3頁に ありますように、最低賃金審議会において、労使が合意した場合に決定を行うとしてお りますが、その中で公益委員がどういった役割を果たすのか、労使の合意というものの 在り方はどうか。あるいは3頁の一番上の所で、必要性審議と金額審議を分けて行わな いとしておりますが、そういったことについての考え方、さらに(3)の3つ目のポツ にありますように、職種別設定賃金の水準の設定と改正に係る手続をどうするかといっ たことです。  (4)の「移行期間中の適用の在り方」も、3頁の(3)の「運用の詳細」の4つ目 のポツにあります。移行期間の中で職種別設定賃金が新たに設定されたときに、産業別 最低賃金の適用等をどういうようにしていくのかということです。  また、※として、「職種別設定賃金の根拠法」をどうするかということです。  2の「地域別最低賃金」については、(1)にありますように、生活保護との関係の 考慮ですが、資料1でいきますと、4頁の(2)の「決定基準の見直し」で、「生活保護と の整合性も考慮する必要がある」となっており、「運用の詳細」で、その具体的な方法 について、さらに検討と言っておりますので、そういったことがあります。  (2)の「地域における労働者の賃金」というのも、4頁の(2)の「決定基準」で、 「類似の労働者の賃金」については「地域における労働者の賃金」に改めるということ で、その具体的な方法については、「運用の詳細」で、引き続き検討するとしておりま す。  (3)の「罰則の強化」については、4頁の(1)の(4)で、最低賃金法の罰金を引き 上げるという案になっております。これについて、労働基準法との関係などがあります。  一応こういう形で「今後の論点(案)」を整理しておりますので、今後、こういった 論点について、ご議論いただければと考えております。  資料5は、「規制改革・民間開放推進3か年計画」が、この3月に再改定されたとい うことで、その閣議決定です。産業別最低賃金制度の見直しについては、「実施予定時 期」にありますように、平成16年度、17年度は検討となっていたわけですが、平成18年 度も検討ということで改定されておりますので、ご報告させていただきます。 ○今野部会長  今日は、資料4にある「今後の論点(案)」にかかわる点で、労使のご意見をお聞き したいとは思っているのですが、その前に、既に出した「公益委員試案修正(案)」と いうのが、だいぶ経っておりますので、この辺についても何かご質問があったら、まず ご質問していただいて、それから資料4をめぐるご意見を伺いたいと考えております。 まず、今日は資料1にある公益委員試案の修正、あるいはそれ以外の資料もありますが、 これまで出された資料に関連して、ご質問がありましたらお願いします。 ○川本委員  ただ今、部会長からお話がありましたとおり、前回の部会から随分時間が経過してお ります。また、今、事務局から論点のご説明がありましたが、これに入っていくについ ても、いくつかご質問させていただいて、確認しておきたいと思います。中には昨年の 部会の議論でご質問したものもあるのですが、確認の意味も含めて、改めてさせていた だきたいと思っております。  まず、職種別設定賃金の問題についてです。1番目に、なぜ職種別設定賃金が必要な のかについて、改めてお伺いしたいと思っております。別の法的根拠を設けて、職種別 設定賃金を新設する場合に、その法律に書かれる設定の目的として、どのようなものを お考えなのかというのが1番目です。  2番目に、資料1の1頁の1に「基本的考え方」があります。その中の(2)の3行 目に、「基幹的な職種に応じた企業横断的」とあります。この「基幹的な職種」という のは、具体的にはどういう意味でお使いになっているのか教えていただければと思いま す。  3番目です。同じく(2)の5行目に、「別に法的根拠を設け」とありますが、この 別の法的根拠ということで、今、法律で何かイメージがあるかどうか、お聞きしておき たいと思います。  4番目です。2頁の「具体的方向」の(1)「基本的な枠組み」です。(1)の最初のポ ツの中に、「労働協約の適用状況等が一定の要件」ということで、「等」というのがあ りますが、この意味についてお伺いしたいと思います。  5番目です。同じく「基本的な枠組み」の(3)「その他」の中に、移行期間の話で、 「この間は現行の産業別最低賃金の改正は行うことができるようにする」とありますが、 「行うことができるようにする」とした意味、理由をお聞かせ願えればと思います。  6番目は、2頁の(2)の「運用の基本方針」の1番目のポツです。「現行の産業別 最低賃金の運用上の要件等を配慮した上で実効が上がるようなもの」とありますが、こ の「配慮」と「実効が上がるようなもの」という意味について、お伺いしたいと思いま す。  7番目です。その下の2番目のポツに、申出について、「賃金に関する労働協約が一 定程度以上」となっておりますが、この「賃金に関する労働協約」というのは、職種別 の企業内最低賃金に関する労働協約という理解でよろしいのかどうかお伺いしたいと思 います。  8番目です。同じ所ですが、「賃金に関する労働協約が一定程度以上締結されている 場合に、一定数以上の労働者又は使用者の申出」とあります。この「一定程度以上」あ るいは「一定数以上」の具体的な意味、要は分母をどう考えているのか、この辺につい て教えていただければと思います。  9番目です。同じ頁の一番下のポツに「例えば」ということで、「技能職で一定程度 以上の技能を有する者」というのがあります。1頁の「基本的考え方」に、「基幹的な 職種」という表現がありましたが、この基幹的な職種という意味で用いられているのか どうか。  10番目です。同じ所の後ろの文章ですが、「個別の技能の程度については、労使が実 情を勘案して決定する」となっております。この「労使」というのは個別の労使のこと なのか、労使の意味をお聞きしたいということです。  11番目です。3頁の一番上のポツで、「必要性審議と金額審議を分けて行わない」と なっておりますが、分けて行わない理由についてお聞かせいただければと思います。  12番目です。その下のポツですが、「最低賃金審議会の労使が合意した場合に」と書 いてあります。この「労使が合意した場合」というのは、どういう意味でしょうか。つ まり地方最低賃金審議会の労働側委員と使用者側委員が全員合意した場合という意味合 いなのか、そう理解してよろしいかどうかをお聞きしたいということです。  13番目は、地域別最低賃金についてです。4頁の(2)の「決定基準の見直し」の最初の ポツに、「生活保護との整合性も考慮する必要」と書いてありますが、具体的にはどの ような意味なのかをお聞きしたいと思います。  最後の質問です。同じく「決定基準の見直し」の2つ目のポツに、「類似の労働者の 賃金」については、「地域による労働者の賃金」に改めるとありますが、この理由につ いてお伺いできればと思っております。 ○今野部会長  私から、今のご質問にお答えしますが、不十分な点があったら、他の公益委員の方々 にも補足していただくことにいたします。  まず、なぜ職種別設定賃金かということですが、これにはいくつかの理由があると思 います。やはり労働市場が大きく変わっております。例えば産業構造が大きく変化して いますし、派遣労働者やパートタイム労働者が増えて就業形態の多様化が進んでいます。 もう少し言うと、企業内の働き方も非常に多様化しています。さらに労働移動も増大し ています。このような労働市場の変化を考えると、公正な賃金決定ベースを、仕事に応 じた賃金の方向に変えていくことが必要です。もちろん公正さを担保しますが、それと ともに、労働者にとっては能力発揮の機会を高めますし、会社にとっては労働力の有効 活用が図れるだろうと思っております。したがって、仕事に応じた公正な賃金決定の労 使の取組みを補完して、公正な賃金決定を実現するという意味で、職種別設定賃金が必 要であると考えております。  こういう設定趣旨を法律の中に書き込むかどうかということですが、たぶん職種別設 定賃金の独立の法律が作れれば書けるのではないかと思います。しかし、今の段階では、 どこかの法律と合体させるようなことを一応想定しているので、そうなると難しいので はないかと考えております。それが第1点目です。  2番目は、1頁の下から7行目ぐらいの「基幹的な職種に応じた」の基幹的な職種と はどういう意味かというご質問です。既に現行の産業別最低賃金でも、基幹的労働者と いうのは「当該産業に特有の又は主要な業務に従事する労働者」というように書いてあ ります。ただ、ご存じのように現状では、ネガティブリスト方式で労働者を定義してい ます。そういう定義の仕方をしているがゆえに、地域別最低賃金の対象者と重複する部 分があるのではないかというご批判があるわけです。そこで職種別設定賃金では対象労 働者をポジティブリスト方式で挙げようと考えております。基幹的労働者のイメージと しては、当該産業の特有の職種で、一定程度の技能を有する者を基幹的な労働者と考え ます。そうすると問題は、特有の職種、一定程度の技能の定義です。この辺はそれこそ、 さらにここで議論をしていただきたい論点になります。  今2つ終わりまして、あと12個残っているのですが、多くの部分で、今後の論点です という部分が多いと思いますので、それはお許しいただきたいと思います。  3番目は、同じ頁の下から5行目の「別に法的根拠を設け」で、法的根拠のイメージ はあるのかというご質問でしたね。 ○川本委員  法律を作るのに何かイメージをお持ちなのかということです。 ○今野部会長  最低賃金法に書くのはふさわしくないという意味でのネガティブリストはあるのです が、別のどの法律にすべきかということは、現段階では私どもはノーアイデアです。こ ういう職種別設定賃金ができたときに、円滑に対応できることというのが非常に重要で すので、そういうことも踏まえて、今後どうするかということもご相談申し上げたいと 思っております。  4番目は2頁の大きな2の(1)の(1)、「職種別設定賃金」の1番目のポツの1行目、 「労働協約の適用状況等が」の「等」とはどういう意味かというお話だと思います。そ の頁の(2)の2つ目のポツに、申出要件のことが書いてあります。申出要件では、 「労働協約が一定程度以上締結されている場合に、一定数以上の労働者又は使用者の申 出により行うことができる」となっています。その中の一定数の決め方に関連して、当 該労働協約の適用者に限るのか、それ以外の人も含めて考えるのかというのが、論点に なるだろうということで「等」にしてあるわけです。ですから労働協約の適用者のみだ ったら、ここは「労働協約の適用状況」でいいわけですが、それ以外の可能性もあるの で「等」としてあるのです。現段階では機関決議や個人合意というのは、最初から排除 して考えていく必要はないだろうと考えておりますので、「等」ということです。  5番目は、同じ頁の(3)の移行の問題です。移行のときに改正できるようにするという のは、どういう意味かというご質問です。当然のことですが、移行のときに一番重要な のは、産業別最低賃金を廃止して職種別設定賃金を創設するというときに、実務面で混 乱が起きてほしくない、それを避けたいというのが、基本的に非常に重要な点です。こ こでは3年とありますが、一定程度の移行期間も必要だとしております。それと同時に、 その改正を可とすることについても、同じような趣旨を踏まえてこういうようにしてあ ります。以前、最低賃金法を改正して業者間協定を廃止したときにも、こういう措置を しているということも参考にして、混乱を避け、移行期間中は改正を可とする方がいい だろうというように考えて書いております。  6番目は、(2)の最初のポツ、「現行の産業別最低賃金の運用上の要件等を配慮し た上で実効が上がるようなものとする」について、この配慮や考慮というのは、どうい う意味かというご質問です。新しい制度を作る以上、実効が上がるようにしないと意味 がありません。その際に現在の産業別最低賃金の運用上の要件もあるわけで、それを廃 止して新しいところへ行くわけですから、やはり産業別最低賃金の運用の条件も配慮す る必要があるだろうと考えて書きました。どう配慮するかについては、私は今後の議論 だと考えております。  7番目は、労働協約は職種別労働協約かというご質問でしたっけ。 ○川本委員  要するに賃金に関する労働協約というのは、どういう中身をイメージされているのか ということです。職種別ということも言えるかもしれませんが、先ほど解説がありまし たとおり、基幹的職種の企業内最低賃金という意味なのかをお聞きしたいと思います。 ○今野部会長  協約に書かれる内容については、大きく言うと、最低限2つのポイントがあると思っ ております。1つは、誰を対象にした協約かということです。それが今、川本委員がお っしゃったことだと思います。あくまでも職種別設定賃金なので、協約の中でどのよう な職種の労働者を対象にしているかが、わかる必要はあると考えています。ただ、それ を具体的にどう表現するかについては、今後の議論です。もう1つは、賃金協約ですか ら、そこで書かれる賃金の水準の問題があります。これが第2番目のポイントになりま す。職種別設定賃金というのは、あくまでも特定の職種の下限となる賃金という意味で すから、協約の中に賃金の下限を決める内容が入っていないといけません。ですから、 最低限この2つの内容がポイントになるだろうと思います。  その次が先ほど私が言った、一定程度、一定数以上の分母の問題です。これにはいろ いろ考えられます。非常に狭く考えれば、職種別設定賃金ですから、その職種の対象者 を分母にするということが考えられます。ただ、それ以外も含めて分母にするという考 え方もあるわけです。それ以外はどうするか、どこまで広げるかというのは、今後の議 論ですが、いずれにしても可能性としては、当該職種の労働者を分母にする場合と、そ れ以外の労働者も含める場合の2つの可能性があります。この辺もどうするかについて は、今後ここで議論をしていただきたいと思っております。 ○川本委員  一番狭く考えた場合に、当該職種の労働者と言われましたが、一番狭いのであれば、 当該職種の基幹的職種の労働者ということで理解してよろしいでしょうか。 ○今野部会長  職種別設定賃金は基幹的労働者と言っているわけですから、同じことを同じ意味で言 っています。  9番目は、同じ頁の下から3行目、「技能職で一定程度以上の技能を有する者」とい うのは基幹的労働者かというご質問ですが、イエスでもあるし、ノーでもあるというこ とです。つまり言葉上からすると、ここに書いてあるのはあくまでも例示ですからイエ スです。例示だということは、こういうことにならないかもしれないということで、ノ ーです。そういう意味でイエス&ノーです。いずれにしても基幹的な職種をどう決める かについては、今後議論をしていただくことになります。  10番目は、下から2行目の「労使が実情を勘案し」の労使とは誰かというご質問です。 これも可能性があります。労働協約をベースにしていますから、個別労使が労働協約で 決めてきて、それを積み上げてそのままスッと行ってしまう場合もありますし、それを 踏まえて地方最低賃金審議会で、また労使が何かを加えるなどして決める場合もあるわ けですから、両方の可能性があります。いずれにしてもここで重要なのは、労使は実情 を勘案して決めてほしいということが、非常に重要だと考えています。  11番目は、「必要性審議と金額審議を分けて行わない」というのは、どういう意味か というご質問です。何度も言っていますが、職種別設定賃金の基本的な考え方というの は、労使の自主的な取組みをベースとしていますので、手続上は現行の労働協約拡張方 式のイメージに近いわけです。しかも労使の自主的な取組みを基本とするわけですから、 行政上の関与も減らしたいということで、必要性審議と金額審議を分けて行う必要がな いのではないかという意味で、ここでは分けて行わないというようにしてあります。  12番目は、すぐ下の行の「最低賃金審議会の労使が合意した場合」の労使が合意とは どういう意味かというご質問です。ここには2つのポイントがあると思います。ここで は「労使が合意した場合」と書いてありますが、そのときに公益委員はどういう役割を 果たすのかという問題が、実はあるのです。ですから公益委員も入れた合意とするのか、 しないのかという問題です。もう1つは、合意のやり方の問題です。例えば全会一致で なければいけないのか、多数決でいいのか、それ以外でもいいのか。ですから合意の中 に公益委員の存在をどう考えるかという問題と合意の取り方の問題、この2つが論点に なるだろうと思います。この点についても、これからここで議論をしていかなければい けない重要なポイントだろうと考えています。  13番目は、地域別最低賃金のことです。4頁の上から3行目の「生活保護との整合性 も考慮する」の「考慮」とはどういう意味かというご質問です。何頁か前の「基本的考 え方」の中で既に言っておりますが、ここでは社会保障政策との整合性を取るというこ とを明確に打ち出しております。それを踏まえ、生活保障政策の具体的な例として、こ こでは生活保護を特記しているわけですが、それと同時に公益委員としては、最低賃金 は生活保護水準を下回らないことということは、ずっと考えております。さらに現在、 生活保護の見直しが非常に重要な政策課題にもなっています。そういう諸々のことを踏 まえ、整合性を考えてはという意味で、ここでは書いてあります。ただ整合性を取ると いっても幅が広いので、具体的にどう整合性を取るかについても、検討課題だろうと考 えております。  最後に、すぐ2行下に「類似の労働者の賃金」については、「地域における労働者の 賃金」に改めるとありますが、この改めるのは何のためかというご質問です。現在の最 低賃金法ですと、ご存じのように地域別最低賃金もOK、産業別最低賃金もOK、職業 別最低賃金もOKということで、全部OKというのを前提にして、同種の地域や産業や 職業という意味で、「類似の労働者」という言葉を使っていると理解しております。今 後、地域別最低賃金については地域だけというように決めますので、明確に地域におけ る労働者というようにすればいいだろうということで書いております。  一応チェックしていたのは14点ですが、何か不十分な点があったら追加していただけ ればと思います。よろしいですか。他にご意見なり、ご質問なりがありましたらどうぞ。 ○池田委員  私から2つの点に関して申し上げたいと思います。1つ目は、2つ目と関連するスケ ジュールの点です。6月決定という枠の中でできれば最善だと思いますが、私たちが思 うには、産業別最低賃金から変わるということで、歴史的な1つの大きな流れですから、 私どものみならず、やはり末端に理解をさせるのに非常に時間がかかるという争点もあ ると思います。あまりスケジュールにとらわれず、これが本当にいい改正だったという ことが理解できるために十分な時間を尽くして、その中でできればいいということを前 提にしていただければと思っております。  2つ目は、先般も申し上げましたが、現在の職種別の賃金における公益の先生方の前 回の案については、私どもは十分に理解できているわけではありません。これをやると いうことは、まだ完全には了解していないところもあるという前提に立っております。 今、目的のところを先生からご説明いただいたわけですが、その部分については、もっ ともっと突っ込んだ勉強というか、末端が理解できるところも、大きな論点にしてもら いたいと思います。この点については、産業別最低賃金をこれにするから廃止するとい うことではなく、1つの大きな流れの中で、産業別最低賃金をより有効にするための改 正なのか、それとも産業別最低賃金は屋上屋を重ねてあるものだから、もう廃止する。 これを1つの区切りとして、次により生産性を求め、労働力の改善をするためには、こ ういうものが必要なのではないかということで切り離した法律を作るのかというところ が、ちょっと理解できていない面もあります。  職種別賃金について、中小企業では職場の概念はあるのですが、現場へ行けとか営業 へ行けというような職種という概念が、今のところほとんどできていません。1人の従 業員がほとんど1つのことを兼務して、社長も現場へ行ったり、時には末端の者が受付 をやったり、運転をしたり、あらゆることをやるわけですから、職種という概念がまだ 非常に希薄なので、これが設定される前に、現状ではまだ混乱をするということが予想 されます。  また、中堅の中ではかつてこの賃金体系を採用していても、使い勝手が悪いからやめ てしまったという所があると聞いております。逆に大企業は可能であっても、中堅以下 では現状のこの制度が本当に馴染むものなのかというところから、まだ理解できていな いということで、先ほどの論点の前のスタートと重なるわけです。特に労働者側には大 企業の方が多くいらっしゃいます。やってトライしたけれども駄目だったとか、昔やっ たことがあるけれどやめているという所が、大企業でもあると聞いております。昔やっ たものとどう違うのか、今度改正したものは以前と違って、これが本当に労働性の向上 につながるということを、はっきり明確に理解するということも、論点の1つに加えて いただきたいと思っております。  生活保護の問題も出ておりますね。罰金を上げることはいいと思いますが、最近、障 害者自立支援法が改正になりました。私も知的障害者の方に関係しているのですが、最 低賃金の部分などは適用除外事項になっています。非常に劣悪な中で一生懸命働いても、 最低賃金ももらえない。逆に生活保護の方たちは、最低賃金より高い給付をもらってい て、それで最低賃金を上げろという論点になっているわけです。生活保護というのは、 最低賃金よりももっと低くてもいいのではないでしょうか。実際に知的障害者というの は、働いて生産性もある人たちが、「お前らには職場を提供してやるだけありがたいと 思え」と言うような環境の中で、非常に苦労をしているのです。今度法律が変わって、 ファミリーが非常に困っているということもありますので、逆に最低賃金まで引き上げ なければならない。生活保護の人たちは下げて、そこまで何とか生産性を見て上げてあ げなければならない部分は、やはり他の観点から論議する必要があるのではないかと思 います。 ○今野部会長  スケジュールの点については、私が一番最初に申し上げたような趣旨で進めていきた いと思います。  2番目は非常に重要な点で、なぜ職種別設定賃金が必要かというそもそも論ですよね。 それを多くの方に理解していただくために、これも1つの論点にしようではないかとい うことですから、論点というか趣意書ですね。趣意書をもう少ししっかり、丁寧に、わ かりやすくということだと思いますので、この辺も検討させていただきます。重要なこ とだと思います。  最後のことはお聞きしておきます。障害者のお話がありましたが、したがって職種別 設定賃金にしておいた方がいいのですよね。お話のように、職場の実態をどうやって適 合させるのかというのは、非常に大きな問題があると思います。そういうことを片方で 抱えつつ、片方では今おっしゃったこととか、あるいは先ほどの趣旨で申しましたよう に、いわゆるパートタイム労働者の問題などもそれとは違うが、同じ問題を抱えている わけです。そのようなことも考えると、職種別設定賃金があるといいのではないかと思 いながら、お話を聞いておりました。いずれにしても第3点目についても、お聞きいた しました。他にご意見なり、ご質問なりはありますか。 ○川本委員  今のことに対して質問というか、確認いたします。今はパートタイム労働者等の問題 もあって、職種という概念が必要だと言われましたが、そのことと、今回基幹的職種の 労働者、それも一定程度以上の技能ということも書かれているくらいですから、そうい う所において最低限のものを決めるという意味合いとは、実は違うように思うのです。 今、部会長が言われたのは、それらを一緒くたに含めた中での職種概念が必要だという ことでしょうか。 ○今野部会長  いや、基幹的ということをどう定義するかというのは、これからの議論です。私が今、 池田委員に申し上げたのは、そういう基幹的というか、一般的に仕事別で賃金設定が行 われていれば、先ほど言われたような問題は、少し避けられるかもしれないという趣旨 でお聞きください。 ○川本委員  ではもう1つ確認しておきます。ヨーロッパとは全然違って、今の日本の社会におい て、一般的に職種別概念というのはつくられてきておらず、どちらかと言えば企業内に おいて、いろいろな時代の流れの中で仕事が変わっていきます。そういう中で日本人が 一つの知恵として編み出したのが、職能給という人に賃金を付けていくという考え方で す。こういうものが一般的ですよね。職種別の賃金というのも当然あるわけですが、あ る程度限定的なところではないかと思います。それを今回、この方法によって、そうい うものを我が国の中に広めていこうといった思いがおありなのでしょうか。 ○今野部会長  それはどういうように職種を定義するかという議論に入ってしまいますので、ここか ら先、私はあまり話さない方がいいと思うのですが、1つだけ申し上げます。一定程度 以上の技能を有する技能職というのを、例示で挙げましたね。その定義を、例えば職務 経験3年以上としたとします。そうすると職能的なのです。つまり職種別設定賃金の職 種の範囲をどう定義するかというのは、仕事にものすごく引っ張るケースと、能力にす ごく引っ張るケースと、真ん中と、そのまたどこかといういろいろな選択肢があるわけ で、そこはまだここでは議論していないわけです。言っている意味がわかっていただけ ますか。  いずれにしても仕事に関する能力、あるいは仕事、職種なのです。ですから、そこは あまり最初から私の方から何か言って限定しない方がいいのではないかと思います。も し、そこが最初から決まっていれば、適用対象労働者の職種の概念をそんなに議論する 必要はなく、イエス・オア・ノーでいいわけです。議論をするということは、そこに幅 があるという意味です。今日の第1番の論点は、その幅の中でどういうポジションを選 択するのが一番いいか、適用対象労働者をどのように定義するのかということになると 考えております。他にありますか。 ○中野委員  今、使用者側の委員からたくさんのご質問が出ましたし、旧制度を廃止して、これか ら新しい制度を作るということなので、新制度ができたときにどのような運用がされて、 その影響がどうなるかということに、やはり不安を抱かれているのだろうと思います。 労使という立場は違っても、新しい制度に対する不安というのは、労働者側としても同 じように持っています。ただ、今野部会長もおっしゃったように、細部についてはこれ からの検討というように、ずっと言われていますので、そういう不安はこの部会で、公 労使の各委員の皆さん方の努力で解決していかなければならないだろうと思っておりま す。  ただ、そういう細かい審議を始める最初のところでは、今、池田委員もおっしゃった ように、今回の制度で作る職種別設定賃金なり地域別最低賃金の改正なりが、今の時代 に合わせて必要だという認識と、その目的はこういう目的で、それが社会的にも有用だ という共通認識を持たなければ、あるいは認識の共有化をしなければ、これから運用の 詳細部分についての議論をするにしても、おそらく疑心暗鬼だけを招いて、最終的には どうにもならない可能性すらあるのではないかと私は思っています。  そういう意味から言いますと、私は労働者側の一員として、前回の公益委員試案修正 案については、いろいろな不安があるし、課題もあるし、聞きたいこともいっぱいあり ます。その中で大枠を何とかしようではないかという方向での決断をしたのですが、池 田委員の必要性との関係も含めて、なぜ私がそのような決断をしたのかということを2、 3申し上げて、使用者側の委員の皆さんもその辺りを十分ご理解いただきたいと思いま す。  1点目は、バブル崩壊以降の不況の中で、私たちはたくさんの組合員が職場を去ると いう実態を見ました。日本ではどんなに技能を持った職人でも、中小であればあるほど、 職場を失って違う職場に行くことは、非常に困難なわけです。仕事を探すのも困難です し、労働条件も非常に下がります。しかしいい腕は持っている。今、技能工が足りない、 足りないと言い始めていますが、よくよく見ると、例えば5、6年前、10年前に職場を 離れたいい腕の職人が、自分の腕や技能とは全く関係のない仕事をしているという実態 がたくさんあります。そうするとその人たちが折角獲得してきた技能というのは、その 産業で使われずに失われてしまうのです。私たち労働組合の立場から言うと、できるだ けその人が獲得してきた技能を正確にきちんと評価をして、産業の中で有効に活用して いくことが、これからの日本社会の中では非常に重要だと思っています。今回、提案さ れたような職種別設定賃金というのも、そういうときの1つの助けになるのではないか という可能性を感じて、その可能性にかけてみようというのが1点目です。  2点目は、前回の不況のときに特に下請の中小企業を中心に、大幅な発注単価の切下 げが行われました。ひどいときになると30%、40%といった発注単価の切下げなのです。 そうすると、そこでは雇用を守らなければならないから、それを断ることもできないの で、賃金を下げて発注単価に応えようとします。不況期で仕事がなくなるわけですから、 受注側から見れば、向こうが下げるから下げる、向こうが賃金を下げるから、こちらも 下げなければいけないという無限競争地獄が、淘汰されていくまでの間に起こっている のです。そのときに職種別設定賃金のようなものがあれば、これ以上賃金は下げられな いということで、みんなでこれ以上の発注単価の切下げはやめようと言える可能性があ るのです。  現にヨーロッパの労働協約を見ますと、中小企業団体が協約締結書に入っています。 つまり中小企業団体が中心になって、職種別設定賃金なり、労働条件の協約を結んでい るのです。それはむちゃくちゃな発注単価の切下げなどを避けるような公正競争概念を そこに入れていこうということです。独占禁止法の中でカルテルをつくって問題がない のは労働条件だけです。カルテルをつくっては駄目だけれども、労働条件だけはできる から、力の弱い中小企業などでもそういうことができるのではないかと。そういう可能 性が、この職種別設定賃金の中にはあるのではないかと考えたわけです。もちろん最終 製品は市場価格で決まりますから、一定の値引きが必要なことは理解していますが、今 ほどひどくないということに、少しでも可能性があるのではないかというのが2点目で す。  3点目は、これはずっと言われていることなので簡単に言います。パートタイム労働 者やフリーター、派遣労働者など、いろいろな雇用形態の多様化があります。日系ブラ ジル人や外国人研修生・実習生の実態も、我々は一生懸命調べています。そういうこと を聞くにつけ、例えばフリーターが物づくりの現場に入ってきたときに、35歳を超える と、あるいは年齢が高くなればなるほど、肉体的に厳しい現場で遠方に行かなければな らないのです。なぜ日系ブラジル人の方々が重用されるかというと、彼らはどこにでも 行けるからです。日本人はどこにでも行けないから、日系ブラジル人よりも重用されな いというところがあります。  しかし、そのような人たちも35歳とか40歳ぐらいになっていくわけですが、その人 たちが労働力の使い捨てのような感じで、今のように使われていったときに、将来はど うなるのだ。きちんと技術修得をさせてあげて、そういうインセンティブを与えてあげ て、意欲を持って努力していただく環境を作るのが非常に大事なのではないかと思いま す。  介護でこれからどんどん人が必要になってきますが、介護の現場でも同じことなので す。例えば、ヘルパーの1級、2級を持っていたとしても、家計的に非常に強い、いわ ば主婦パートタイム労働者のような方々は、しんどい仕事や患者を抱えたりするような 仕事はしません。やはり3級程度の仕事にどんどん行ってしまうわけです。そういうと ころで、本当にやる気のある人たちが必要なときに、その賃金設定を変えて、そしてイ ンセンティブを与えていくような手法は、介護の現場においても非常に重要になってき ていると私は思っています。  先ほど日系ブラジル人や外国人の技能研修生・実習生の問題を言いましたが、現実に 外国人から話を聞きますと、もう差別が始まっている。日系ブラジル人だから安い賃金。 例えば請負会社でも、日本人中心の請負会社、日系ブラジル人中心の請負会社みたいな ものがあって全部賃金が違うわけです。やっている仕事はみんな同じ職場に入って同じ 仕事をやっているのです。これは差別になる、しかも国際問題の差別になります。  そういう具体的な実態を見て、問題は、提案されているような最低賃金制度の改正が、 今のような実態の中で、どのような現場で、どんな有効性を持って、それが日本の将来 に役立つかどうかです。役立たないものは作らない方がいい、そんなことにお金をかけ るのなら作らない方がいいのです。しかし、今申し上げたような実態を見たときには、 私は必要だと思って、いろいろな不安はあるが乗ったということですので、課題は感じ ています。  したがって、池田委員が言われたことは、私は大賛成ですが、そういう今の実態で変 えなければならないのはどこか。その認識を使用者側の皆さんにももう一回ご検討いた だいて、必要なものは必要という立場で審議に臨んでいただけないかというお願いを申 し上げて、総論的ですが、意見にさせていただきたいと思います。 ○横山委員  昨今、大卒がバブル期以降の求人倍率であったり、あるいは全産業で過去3カ年の平 均の雇用数の増減でいけば、11年ぶりにプラスになったというニュースがありました。 そこを見てみると、正社員ではマイナスなのです。  この審議会でも前にも申し上げましたが、私どもの産業は、非常にパートタイム労働 者が多い仕事ということでは、本文にも書いてあるように、就労形態の多様化など、今 の労働市場の変化を見据えて、ある意味で地域、産業別でやってきたところを新たにど う機能させていくか、なぜ変えなければいけないか、ということをもう少し全員共有化 できるように。そのためにはどのような改定をしていかなければいけないかという進め 方でスケジューリングを進めていきたいということですが、重ねて期待と要望とこれか らの進め方ということでお願いしたいと思います。 ○今野部会長  他にございますか。 ○加藤委員  議論は総論的な議論をしていますね。どういう進め方をするのかによって意見の言い 方が違ってくるのですが。 ○今野部会長  趣旨は、資料1とか従来の資料についてご質問があったらということだったのですが、 広がりましたね。それでは、次に入ります。 ○須賀委員  次の論点に基づいた議論もということになるのだったら、その前に1つだけお願いを しておきたいことがあります。これはあとの進め方にも関係するのですが、質問をした いところは、たぶん論点なのです。つまり、私どもにとって、あるいは使用者側の皆さ ん方にとって読み方によって解釈が微妙にずれるところが、たぶんこれから結論づけて いかなければならないポイントになっている。だから、そこはたぶん論点だという認識 でいますので、あまりきちんと仕分けて「はい、質問」「はい、論点」ということでは なく、今日はいろいろな視点でごちゃごちゃと論議させてもらった方がいいのではない かと思います。 ○今野部会長  私もそれについては異論がありませんので、これからご自由にご意見を伺いますが、 一応、今回は論点として出しますので、これについてどう考えるか、あるいは論点はこ れが足りないなどというのも含めて自由にします。全く自由というのでは、何のために 資料4を出したのかということになりますので、最低限資料4についてのコメントは労 使からいただきたいということも含めて自由にします。それでは、お願いいたします。 ○加藤委員  部会長が言われましたので、資料4にも少し触れて申し上げたいと思います。先ほど 中野委員からは、基本的な認識について、あるいは考え方について述べられましたが、 そのような基本認識に立った上で、本日意見を求められている今後の論点について、各 論に入る前に、いくつか前提となる考え方を述べさせていただきたいと思います。  公益委員試案では、提起している職種別設定賃金の目的について、先ほど部会長から も丁寧な説明がありました。記載してある内容は、雇用環境や産業構造の変化を踏まえ て、基幹的な職種に応じた企業横断的な処遇の確保を通じて労働生産性の向上に資する ことということを掲げているわけです。もう1つの論点上のポイントになる申出の要件 などに関しては、現行の産業別最低賃金の運用上の要件などを配慮した上で実効が上が るようなものとすると書かれています。  これに関連して、実効性が高い運用上の在り方とは一体何なのかということですが、 掲げてある目的を果たす上で十分に機能する仕組みづくりだろうと我々は認識していま す。そのためには新しい職種別設定賃金が作りやすい仕組みと運用とすることが、何よ りも肝要ではないかと考えています。なお、現行の産業別最低賃金からの円滑な移行や 転換が図られるような措置を講じるべきだということを述べておきたいと思っています。  以上のような今後の在り方や方向性について、少し具体的に検討する上で、使用者側 の皆さんも何度もおっしゃっているように、私どもも、地方組織や構成産業別労働組合 と意見交換をしながら、あるいは合意形成を図りながら、審議に臨み、とりまとめに当 たっていかなければならないという立場は一緒で、具体的に検討する上で、今私が述べ たような点を評価や判断の基準とせざるを得ないのではないかと考えているということ を、まず申し上げておきたいと思います。  今後の論点については、昨年の段階で数次にわたる審議の中で、ほとんどの項目につ いて労働者側の考え方を述べており、もう一回意見を述べるとかなり重複します。した がって、いくつかの論点に関して、時間の関係もありますので、改めて簡潔に考え方を 申し上げておきたいと思います。考え方が昨年来から変わったわけではありませんので、 繰り返しになることだけはご容赦いただきたいと思っています。すべての項目ではあり ませんので、いくつかポイントとなる点だけに絞りたいと思っていますし、その他の項 目については、今日の川本委員の質問に対する部会長からの答弁もありましたので、そ れらを踏まえながら、次回以降、私どもは頭の中を整理して、もう一回具体的な考え方 を述べて議論に参加させていただきたいと思っています。  申出要件については、まず「一定数以上の労働者又は使用者」の「一定数」というの があります。新しい職種別設定賃金を創設しやすい仕組みにすることが実効性を高める ことだと言いましたが、申出に関わる要件、すなわち「一定数以上の労働者又は使用者」 の「一定数」については、職種別設定賃金の実効性を高めること。そして、労働組合組 織率の実態なども勘案をし、現行の産業別最低賃金に比べて相当程度緩和すべきではな いか、ということだけを申し上げておきたいと思います。  次は、「賃金に関する労働協約が一定程度以上締結されている場合」の「一定程度」 が論点になっています。ここの趣旨は、賃金に関する労働協約が含まれないと駄目だと いうことを明確に書いているものだと思っています。私どもとしては、労働協約以外の 合意、例えば、いろいろなことが考えられると思いますが、現行の産業別最低賃金の事 例で言いますと、機関決議や個人合意もあるのだと思います。そうした様々な合意も申 出の数量的要件の中にあり、カウントすべきだろうと思っています。申出は基本的に、 労働協約の拡張適用に近い審議の流れというように説明がありましたが、労働協約の拡 張適用とは少し異なるのだろうと思っておりまして、基本的には諮問発議の契機だろう と思っており、そういう意味で決定金額と労働協約とが完全にリンクするのなら、それ はそれなりの意味があるのだろうと思いますが、そうではないケースも考えられるのだ ろうと思います。したがって、労働協約以外の合意も何ら重みには違いがないのではな いかということを申し上げておきたいと思います。ちょっと乱暴な言い方かもしれませ んが、労働協約の割合の一定程度については、ゼロも含めて考えるべきだということを 申し上げておきたいと思います。  必要性審議と金額審議を分けて行わない考え方ですが、先ほどの趣旨はよく理解でき ます。私どもとしても要件を満たした上で申出をするのであれば、あえて必要性審議を 行わなくてもいいのではないか。つまり、必要性審議は必要ないのではないかと考えて おります。ただ、先ほどのいくつかの資料に記載してあった審議決定の流れについては、 もう少し申入れから金額決定に至る具体的なイメージを描きながら、実態も踏まえなが ら、プロセス全体の議論として再検討してもいいのではないかと思っています。一括審 議を否定しているという意味ではありません。これでいいのだということではなくて、 プロセス全体を機能させるために、きちんと実態を踏まえた議論をしておく必要がある のではないかと思っています。  それに関連して、一括審議の場合の労使の扱い、あるいは一括審議ではないケースも 考えられると思いますが、審議会の労使については、私は労使のイニシアティブ発揮の 観点から、例えば地方最低賃金審議会の本審の委員だけではなく、当該職種別設定賃金 に直接関わる職業や産業の労使を基本とすべきだ。そうしないと関係労使のイニシアテ ィブ発揮による審議決定にはならないのではないかと思っておりますので、その点、何 か工夫ができないかということを申し上げておきたいと思います。  移行期間中の取扱いの問題ですが、移行期間は先ほどご説明があったのでよく理解で きます。改めて確認の意味で言いますと、前回は2段階方式でしたので、最低賃金法改 正施行後という言い方でしたが、移行期間の取扱いは改正最低賃金法ではなく、職種別 設定賃金の根拠法施行後一定期間、3年程度なら3年程度というようにするのが妥当で はないかと思っています。なお、根拠法が施行されるまでの間は、金額改正をすること は触れてありますが、私はその新設についても容認をしてよいのではないかと思ってお ります。  職種別設定賃金の根拠法に絡むところで、根拠法に限定してという意味ではありませ んが、先ほど来議論されているように、労使が共通認識に立って職種別設定賃金の創設 を進めることの合意がなされることが望ましいと思っており、この考え方を前提に別の 根拠法については、先ほど部会長が言われましたので、そのとおり進めていただきたい。 つまり、先送りすることなく、最低賃金法改正問題と一括して審議決定すべきだ。その ことが今後の在り方についての労使の認識の一致につながる、疑心暗鬼を招かないでつ ながるのではないかと思いますので、一括した審議をお願いしておきたいと思います。  生活保護の関係は、部会長が言われた考え方と同様ですので、繰り返し申し上げるこ とは避けたいと思います。長くなりましたが、ご了承いただきたいと思います。 ○今野部会長  資料4の論点をめぐってで結構ですので、使用者側はいかがですか。川本委員からは たくさん質問がありましたから。 ○杉山委員  川本委員は参議院の参考人になっていますので、失礼させていただいて、川本委員の 代理でやっていただきます。 ○新田氏  川本の代理で、日本経団連で労働政策を担当しております新田と申します。私から今 後の論点に対する見解ということで数点にわたって申し上げたいと思います。先ほど加 藤委員から、労働者側は既に内容について意見を申し上げたということですが、使用者 側はこれまで内容についてあまり触れておりませんので、今回、意見表明という形で数 点申し上げたいと思います。  中身についてお話する前に「はじめに」ということで申し上げたいことがあります。 そもそも使用者側委員は、かねてからすべての労働者を対象とした地域別最低賃金があ ることに対して、それに屋上屋を架している産業別最低賃金は廃止すべきと、これまで 主張しておりました。そうした中で、昨年11月に公益委員試案が示されて、その中で特 に産業別最低賃金と労働協約拡張方式を廃止するということが示されたことについては、 高く評価しています。  その一方で、別の法的根拠を設けて職種別設定賃金を設けるということは、屋上屋論 からすると変わりありません。また、特に地域別最低賃金においては、生活保護との整 合性を明確にすることについては、使用者側としてはにわかに賛同できるものではない と申し述べたいと思います。  先ほど、職種別設定賃金を設定する目的について、部会長からもご説明がありました が、まだ釈然としないというのが正直なところです。しかしながら、議論が労使平行線 の中で、公益委員試案が示されたことを重く受け止め、今後も議論を行いながら、この 点については使用者側として判断してやっていくということを申し上げたいと思います。  今回示されている今後の論点の中の使用者側の主張を申し上げたいと思います。まず 最初の「職種別設定賃金」の(1)「適用対象労働者」の適用対象労働者をどう定義す るかという点ですが、どの職種で、どのような労働者を対象とするかは、あくまでも当 事者である企業労使において、一定程度以上締結されている職種別の企業内最低賃金に 関する労働協約を踏まえて決めるべきだと考えております。  また、一定程度以上の技能を図る尺度ということで、勤続年数などを例示してありま したが、私どもとしては勤続期間や国家資格、もしくは検定を採用することは適当では ないと考えております。勤続期間が長い方が能力は高まっている可能性が高いという1 つの目安にすぎないということと、資格を有しているということは、賃金の高い職務、 仕事に就ける可能性が高いということにすぎないと考えていることがその理由です。  (2)の「申出要件」です。「一定数以上の労働者又は使用者」の「一定数」とか、 「賃金に関する労働協約が一定程度以上締結されている場合」の「一定程度」という部 分についてですが、公正競争ケースから労働協約ケースに移行するという産別全協の報 告の指針に照らして考えるべきだと考えております。すなわち、公正競争ケースのよう に、機関決定や個人合意を含めた申出については認めるべきではないと考えています。 特に今回、「基幹的な職種に就いている者」ということになりますので、その労働者が 基幹的な職種に就いているかが明確にわかるのは労働協約に書いてあることが必要では ないかということで、この点からも労働協約による申出が必要ではないかと考えていま す。  申出要件については、先ほど来話がありましたように、労使の取組みを補完する、実 質的な取組みを補完するということから考えると、現行の産業別最低賃金より高い基準 を考えるべきではないかと思っています。具体的には、申出のあった職種別の基幹職の 最低賃金に関する労働協約に示されている対象労働者を考えるべきだし、分母について は、その職種における基幹職の対象労働者数を考えるべきではないかということで、割 合で言うと、新設の場合は3分の2以上、改正の場合は2分の1以上と考えるのが妥当 ではないかと思っています。  次に決定の手続です。「賃金に関する労働協約が一定程度以上締結されている場合」 という試案の趣旨から考えると、申請された労働協約に記されている職種別の最低賃金 に関する労働協約に定められている基幹的な職種に就いている者を適用対象労働者とす るのが、ごく自然のことではないかと思っています。  また、審議の在り方については、労使が一致して見直しに取り組めるようにと試案で 示されていますので、こうした考え方を尊重して考えるならば、最低賃金審議会におけ る労使が合意したということで、労働者側、使用者側の双方の委員が、全員合意した場 合をもって決定するのが極めて妥当ではないかと思っています。  したがって、公益委員の職種別設定賃金の設定に対しての審議における在り方は、こ れまでの地方最低賃金審議会における役目とは少し異なり、あくまでも労使の意見を調 整するコーディネーター役として位置づけられるべきではないかと考えています。  必要性審議と金額審議を分けて行わないということと、職種別設定賃金の水準設定・ 改正に係る手続について申し上げたいと思います。私どもは必要性審議と金額審義をこ れまでどおり分けて行うべきだと考えております。申出のあった労働協約の内容、要件 が、本当に職種別設定賃金の趣旨にかなっているのかを、単に数や数量的要件だけでは なく、中身をきちんと確認した上で、その必要性をきちんと議論して、その上で労使合 意、私どもとしては全会一致と考えていますが、全会一致をみた場合に、次に金額審議 を考えています。  また金額改正については、必要性ありとされたものが、金額審議においてゼロという 回答があるのはおかしいというご指摘があると伺っていますが、金額をいくらにするか ということと、金額審議が必要かということについては、全く別物と考えておりますの で、そもそも必要性ありでゼロ回答はおかしいとは考えていないということを申し述べ たいと思います。  水準の設定については、労働協約で締結されている賃金額をそのまま適用するという、 いわゆる労働協約拡張方式的な考え方を採るべきではないと考えております。ですから、 現行の産業別最低賃金と同様に、審議を行った上で金額は決めるべきということで、そ の手続については、労使の全会一致による合意が妥当ではないかと考えております。  (4)の「移行期間中の適用の在り方」で、移行期間中における産業別最低賃金と職 種別設定賃金の適用の在り方についてですが、移行というのは実務上の混乱を避けると いう意味で理解しております。しかし、3年間ということの妥当性については、長いの ではないかというのが率直な思いです。仮に3年間という長期間で設定するのなら、廃 止されることが明らかな産業別最低賃金の新設を認めないことはもちろんですが、廃止 されるものを改正することの必要性も認められないのではないかと思っています。  さらに言いますと、その産業において1つでも職種別設定賃金が設定された場合には、 その産業別最低賃金は直ちに廃止すべきだと考えています。と申しますのは、地域別が あって、産業別があって、他に職種別設定賃金という3つが併存するような形はあって はならないことだと考えています。  次に、「地域別最低賃金」の(1)「生活保護との関係の考慮」です。私どもは、そ もそも最低賃金制度と社会福祉政策との間の整合性を図ることについては疑問を禁じ得 ません。さらに言えば、労働の対価である最低賃金と社会福祉としての生活保護では、 根本が全く異なり、その両者の間で整合性を考慮することについても疑問を禁じ得ませ ん。  もし仮にということで申し上げると、最低賃金と生活保護との関係は、最低賃金を生 活保護の水準に引き上げるのではなく、生活保護の水準が適正なのかどうかも考慮すべ きだと考えております。先ほど生活保護についての見直しも議論されているという発言 もありましたが、そういうことを十分踏まえた議論が不可欠ではないかと考えています。  (2)の「地域における労働者の賃金」で、類似の労働者から地域の労働者に変える ということですが、産業別最低賃金を最低賃金法から削除して地域だけになるので、地 域における労働者とするという説明がありましたが、「地域における労働者の賃金」と いう表記は、その地域における一般労働者という捉え方をされる可能性があるのではな いかと思っています。多くの企業において、年功的な制度運用を採っている日本におい ては、一般労働者の平均賃金と最低賃金とを比較して考慮することは妥当ではないと考 えています。あくまでも地域別最低賃金を決定する際には、地域別最低賃金が適用され ている可能性の高いパートタイマーやアルバイトなど、いわゆる労働市場の需給関係に よって、主として時間給で支払われている労働者の賃金を参考にすべきではないかと考 えております。よって、もしこの部分を書き換えるのなら、あくまで地域別最低賃金が 適用されている類似の労働者ということで、「地域における類似の労働者」とすべきで はないかと考えています。  次に、「罰則の強化」の点です。現行の罰金は運用で2万円となっていますが、これ が低いということについては一定の理解をしております。しかし、労働基準法24条違反、 賃金不払の違反は、当初は5,000円から段階的に引き上げられて、現行は30万円以下と なっています。その一方で、最低賃金法は昭和34年の制定の罰金1万円が、現在まで据 え置かれていたという歴史的な意味は、決して軽くないと思っています。その点を申し 上げておきたいと思います。よって、仮に罰則を強化するということであれば、こうい う歴史的な経緯も踏まえて議論する必要があると思っています。そもそも地域別最低賃 金の目的は、すべての労働者の賃金の最低限を保障する安全網という機能ですので、そ のために必要なことは、むしろ罰金額を上げて抑止力を期待することよりも、広報活動、 行政指導などを通じて、地域別最低賃金をきちんと周知徹底して、法令遵守を促すこと が一番大事ではないかと考えています。  以上縷々申し上げましたが、今後の論点ということで資料4が示されております。今 後の議論の展開によっては、ここに書かれていない、これ以外のものということで議論 に入ってくると考えていますので、その点を最後に申し上げたいと思います。 ○今野部会長  それでは、今日はお聞きしておくということでよろしいですね。1つだけ理解のため に質問をさせていただきます。先ほど必要性審議と金額審議の中で、金額審議はゼロ円 もあり得ると言われたのは、意味はよくわかりませんが、金額引上げのことを言ってい るのですね。ゼロ円などという賃金はないと思ってお聞きしたのですが。 ○新田氏  引上げの改正のときにということです。 ○原川委員  今の日本経団連の意見と私は全く同じ考えを持っております。重複は避けますので、 それだけ申し上げます。あと1つ、地域別最低賃金について、その地域における一般労 働者という捉え方をすべきではないという意見が出ましたが、まさに中小企業の立場と して心配しているのはそういうことで、地域の最低賃金が適用される可能性の高い中小 企業、小規模零細企業の実情をよく考慮していく必要があるのではないかということで、 そのことについてお願いいたします。 ○池田委員  先ほどの共通認識の件でお話になって、労働者側の理由がよくわかりました。他の業 種といっても、コックをやっていたのが突然タクシーにいってしまったり、「私はコッ クだから、これだけよこせ」と言っても無理な世界だし、日商の検定でも取ってくれれ ば欲しいところが入ってくるのでしょうが、3つの点を言われましたが、労働者側にと ってはこういう前向きな理由がありますが、経営者側にとっては何がいいのかが私には 認識できないので、次回に教えていただければと思います。 ○須賀委員  今日は論点に関して意見を出し合う場ですから、経営側のおっしゃったことの揚げ足 をとるつもりもないし、そういうつもりで言う意見ではないので、そのことをまずお断 りしておきたいと思います。  これまでの経営側の主張は、一貫して産業別最低賃金は廃止するのだ、屋上屋なのだ というところからスタートしてきており、私どもは別の意見を持っていますが、今回、 公益委員試案修正案で提案されている職種別設定賃金は、基本的には産業別最低賃金は なくすことになっています。いろいろな労働市場の変化、あるいは本来果たすべき役割 からして職種別設定賃金という考え方で新しいものを作ることが必要だと言われている わけです。したがって、ここをスタートにしてやるのか、形を変えて屋上屋だというと ころをスタートにしてやるのかは、まるっきり違う議論になってくるのではないかと労 働者側は考えています。ここをきちんと整理しないと、議論をしてみて到達点を見なが らどうかしようという話ではないのではないかという気がしますので、ここはこれから またよくよく議論をさせていただきたいと思います。  揚げ足取りになったかもしれませんが、生活保護との整合性については、にわかに認 め難いという代理の方のご発言がありました。にわかに認め難いのだったら、地域別最 低賃金のあるべき姿を求めている部会の方向性からすると、根本的に違うことを言って いるという受け止めに立たざるを得ないので、にわかに認める必要はないのですから、 どこかで認めていただきたい。また認められないのだったら諦めてもらいたいと思いま す。ここまでは行かないのかもしれません。私は笑い話的に言っていますが、スタンス としてそういうところからスタートして議論をしていくと、まとめようというものもま とめ得ないのではないかという懸念を持ちましたので、この点は是非ご了解いただきた いと思います。  労働者側としては、休会をする前の部会のときに、公益試案修正案を労使双方が尊重 しながらやる、さらに継続検討をするという重みを、私は受け止めているつもりですが、 できればこの部会の全委員が受け止めて、新しいものをこれらどうやって作ればいいの か。そのために私どもも含めて、譲るべきところ、死守すべきところがあって、労使の ある意味での交渉事の場ですから、あると思いますが、いつまでもそれで突っ張られた のでは妥結に至らずということでストライキになります。そういうことがあってはなら ないと思っていますので、是非そういう趣旨でこれから先の論議は進めていただきたい と思います。  もう1つは、今、小泉内閣が5年目を迎えて、いろいろな総括がマスコミ等で賑わっ ています。公益委員試案の前書きに書いてありますが、最低賃金制度が果たしている役 割を、きちんと機能させるのが一番重要で、特に労働市場における低賃金層の底割れを なくすという非常に大きな役割があると思います。その前提にあるのが、企業の公正な 競争をどうやって担保するか、そして、公正な賃金決定をどうやってルールづけするか、 底支えをどうやってするかという状況で、二極化、格差の拡大などが言われているとき に非常に重要です。  経営側の論理からしたら、賃金はできるだけ安い方がいい、何ならゼロ賃金でもいい というのがベースでしょうが、基本的な生きる権利としての生活権の上に立った賃金の 在り方、働いていることによる賃金の在り方もあるわけですから、そんなことも含めて、 企業の公正な競争を確保して、国全体としての生産性を上げる。そのことによって国全 体が社会的な水準を上げていくことに資するような賃金制度を支える最低賃金制度を作 り上げるという気概で是非。私の思いも込めて意見として申し上げておきたいと思いま す。そういうスタンスで議論をしていただかないと、時間をかけることに無駄を感じま すので、そういう視点での議論への参加を経営の皆さん方にはお願いしておきたいと思 います。 ○中野委員  最初の経営側の論点に対するご意見ですので、それはそれでお聞きしますが、感想と して申し上げますと、職種別設定賃金も最低賃金制度も要らないとおっしゃっているよ うに聞こえてなりません。これから歩み寄りですので、最初ですからお聞きはしますが、 そもそもそういうスタンスで出てこられるのであれば、こういう会議は要らない。国会 できちんと作ってもらえばいい、公正に公益の委員の皆さんだけで作ってもらえばいい、 外国のようにすればいいと、私は少し憤っております。最初ですから、まあ、お聞きを しますということにとどめておきます。  2点目は、私が先ほど申し上げたことは、労働側にとって必要と感じているだけでは ありません。中小企業の経営者の皆さんも、是非必要なのだという観点を持っておられ ると思います。私はつくづく感じるのですが、個別の企業に行って労使交渉をすると、 組合も会社のことをよく考えるのですが、会社も組合員のことをよく考えてくれるので す。そこで労使交渉というのは成立するのです。ところが、ここに来ると、本当に経営 者なのだろうか。経営というのはヒト・モノ・カネで成り立っていて、最初にヒトがく るはずですが、本当にヒトのことを考えてくれているのかという印象を今日は持ちまし た。  したがって、個別労使交渉のように、お互いが物を作って、それを分け合うのだと。 生産をする作業がきちんとあって、そこではお互いに協力するわけですから、その立場 をもう少し前に出していただけないかというお願いをして、意見にしたいと思います。 ○今野部会長  たぶん使用者側の方は、だいぶカチンとくることをおっしゃっているのではないかと 思います。今日は久しぶりに再開しましたので、広くご意見を主張していただくという 趣旨で、これでまたカチンときて、ガッと始まると、時間がないので中途半端で終わっ てしまいますので、両者いろいろあると思いますが、お互いに再開に当たって広く意見 を開陳したということにさせていただければと思います。ということで閉めようと思い ますが、これだけということがありましたらお願いいたします。 ○原川委員  今のこととは関係なく、確認をさせていただきたいと思います。論点で、地域別最低 賃金のところで、今も出ましたが、生活保護との関係の考慮で、私は生活保護との関係 を考慮するというのは、地域別最低賃金の決定基準の1つの要素にすぎないと理解して います。これを見る限り、これだけが従来の決定基準に勝るというか、上位に置かれる ような、これだけで地域別最低賃金の水準が左右されるような書きぶりにも思うのです が、論点の2の(1)のこの項目は、どういう意味合いなのか。私の理解で正しいのか どうかを部会長にお尋ねしたいと思います。 ○今野部会長  これはあくまで論点ですから、我々を含めて、これを労使でどうするかということを 考えなければいけないポイントだろうということです。生活保護との関係を考慮すると いうことのみで決めるとは書いてありません。いくつかの要素の中で、非常に重要だと は書いてありますが、これの扱いについはどうするかというのが論点ですという意味で 書いてあると思います。 ○杉山委員  個々の点について申し上げることは避けて1点だけ申し上げますと、現在の地域別最 低賃金の論議が、生活保護との関係でどのように行われているか。ちょっと誤解がある のではないかと思います。従来から生活保護の点は論議に入っております。法律などで も、労働者の生計費と書いてあり、両方とも生計費をベースにしているわけで、必要な 生計費がいくらで、どうそれを要素として入れるべきかというのは、ずっと論議されて きました。それを今回は、そういうこともやっていないかのごとく、限定して、それだ け入れるのはちょっとおかしいではないかということで言っています。そういう問題は 考えないと、血も涙もないということでしたが、全く違います。今までもやってきたの です。そういう意味で、それ以上に加える必要はないのではないか。これは屁理屈的で すが、整合性ということなら、一方的に最低賃金の方だけ整合するのではなく、向こう も整合するというのが整合という言葉ではないかと思います。  もう1つは、今度できる職種別設定賃金の設定の理由と、現在ある地域別最低賃金が 混同されているのではないか。現在ある地域別最低賃金があることによって、例えば外 国人の問題も、身体障害者の問題も基本的にはカバーされているのです。ということは 全国で適用されているわけですから、そういう意味では、ごく一部にしか適用されてい ない産業別最低賃金と、それと入れ替わる今度の職種別設定賃金は、基本的に違うので はないか。その目的を混同するので、誤解があって、現在の最低賃金、産業別最低賃金 以上にしばられて困ったことになるのではないかというのが中小企業の経営者の疑問で あると、私は受け取っています。したがって、目的とか何とかで広げられるのは結構で すが、そういうことになればなるほど抵抗も強くなるという点もご理解いただきたいと 思います。 ○今野部会長  労働者側もだいぶおっしゃいましたし、最後に使用者側からも言っていただきました ので、大体この辺でバランスがとれたかと思います。今日は長い間中断をしての再開で すので、広く労使からご意見を伺いました。この辺で終わりにさせていただきます。本 日出されたご意見を踏まえて次回も引き続き議論をしていきたいと思います。  次回の日程調整は別途させていただいて、ご連絡を申し上げたいと思います。  本日の議事録署名人は、労働者側は中野委員、使用者側は竹口委員にお願いいたしま す。それでは、今日は終わります。ありがとうございました。                      【本件お問い合わせ先】                       厚生労働省労働基準局勤労者生活部                       勤労者生活課最低賃金係                       電話:03−5253−1111                              (内線 5532)