06/04/26 第22回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会議事録 厚生科学審議会 疾病対策部会臓器移植委員会(第22回) 開催日:平成18年4月26日(水) 場 所:経済産業省別館1111会議室 ○矢野補佐 まだお見えになっていない先生がいらっしゃいますが、定刻になりました ので、ただいまより第22回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会を開催いたしま す。  本日は金井委員、山勢委員から御欠席の連絡を受けております。また、日本医師会の 役員改正に伴いまして、橋本委員から木下委員への交代を予定しております旨御報告を いたします。また、本日は議事に即しまして、信州大学教授の清澤研道先生、それから 国立感染症研究所ウイルス第1部研究官の林昌弘先生、社団法人日本臓器移植ネットワ ークの菊地耕三コーディネーターに参考人として御出席いただいております。  次に資料の確認をさせていただきます。議事次第の冊子がありまして、その後に資料 1「肝腎同時移植について」、資料2−1「ウエストナイルウイルスと臓器移植」、資 料2−2「臓器移植等におけるウエストナイルウイルス対策について」、資料3「移植 医療に関する普及啓発について」、資料4「臓器提供意思登録システムに関する作業班 報告」、資料5「臓器移植の保険適用について」、資料6「第164回通常国会に提出さ れた関連法律案について」、資料7は11月の通知文書になっております。不備等ござい ましたら事務局までお申しつけください。  それでは、議事の進行を永井委員長にお願いいたします。   ○永井委員長 それでは早速議事に入ります。本日、審議事項が3件、それから報告事 項がございます。まず議題の1ですけれども、肝腎同時移植レシピエント提供基準につ きまして議論したいと思います。まず清澤先生の方から御説明をお願いしたいと思いま す。   ○清澤参考人 参考人の信州大学の清澤です。よろしくお願いいたします。  資料1を見ていただきたいと思いますが、肝腎同時移植ということで現状と背景です が、現状はそこに書いてあるとおりでございまして、肝移植を必要とする肝疾患患者の 中には不可逆的な腎不全の合併症例があり、肝腎同時移植が望まれます。現状では、両 臓器の移植を希望して日本臓器移植ネットワークに登録しても、両者で緊急性の順位に 違いがあると、肝腎同時移植を受ける機会は極めてまれということであります。  決して症例の多いわけではないのですが、肝腎を同時にやると予後が非常にいいとい うことが言われております。そういった患者さんが、まれではありますけれども、ある ということで、裏のところに実際にはどれだけあるかという資料がございますが、現在 では、肝臓、腎臓とも移植を希望し登録している方は1名おられるということです。そ の方の原疾患は、肝臓の方は胆汁性の肝硬変であるということと、腎臓は多発性嚢胞腎 であるということですね。(2)として、肝臓を移植した後に、現在、腎臓移植を希望して いる方が1名ということで、これは肝臓も腎臓も先天性の多発性嚢胞疾患であるという ことです。そのような背景があるということでございます。  次に1ページに戻っていただきますが、そこには現在の腎臓移植、それから肝臓移植 の希望者の数と平均の待機日数ですね。それから右端には、昨年の移植件数というのが あります。これは脳死からの移植件数ということでございます。  次に2ですが、3月1日に肝臓移植に関する作業班と腎臓移植に関する作業班で合同 の会議を開きまして、以下の取り扱いを決めさせていただきました。  まず(1)としまして、選ばれた移植希望者(レシピエント)が肝腎同時移植の待機 者である場合であって、かつ臓器提供者(ドナー)から肝臓及び腎臓の提供があった場 合には、当該待機者が――これは肝臓で1位の場合ですね、選ばれた場合に、腎臓待機 リストで下位であっても、そのレシピエントに優先的に肝臓及び腎臓を同時に配分する というものであります。  それから(2)としまして、(1)により肝腎同時希望者(レシピエント)が選定さ れたものの、ドナーの肝臓が移植に適さないことが判明した場合には、腎移植希望者(レ シピエント)選択基準で選ばれた腎臓移植希望者(レシピエント)に腎臓を配分すると いうものであります。これは、ドナーの肝臓が医学的理由等によりまして肝移植に適さ ないという場合には、腎臓はもとのルールにのっとって腎臓の方に配分するというもの であります。これが合同会議で決定したものであります。  最後に、参考としまして「肝臓移植希望者(レシピエント)選択基準の見直し(案)」 というのがございます。これは、ごらんになっていただきますと、下線がずっと引いて あるところが最後の方にありますが、これが今回の改定のところでして、上から適合条 件、それから2の優先順位、ここは従来と同じでございます。  3の具体的な選択法として下線の部分が変わるということで、(2)のところを読ま せていただきますが、選ばれた移植希望者(レシピエント)――これは肝の方からトッ プに選ばれた方という意味ですが、肝腎同時移植の待機者である場合であって、かつ臓 器提供者(ドナー)から肝臓及び腎臓の提供があった場合には、当該待機者が腎臓移植 待機リストで下位であっても、当該待機者に優先的に肝臓及び腎臓を同時に配分すると いうものです。  それから(3)は先ほど言いましたことですけれども、(2)によって肝腎同時希望 者(レシピエント)が選定されたものの、肝臓が移植に適さないことが判明した場合に は、腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準で選ばれた方に腎臓を配分するといった ものであります。説明は以上でございます。審議のほどよろしくお願いいたします。   ○永井委員長 ありがとうございました。ただいまの御説明に対しまして、何か御質問、 御討論お願いいたします。   ○大久保委員 今肝臓の方はわかったのですけれども、もしも腎臓の方で選ばれた場合 は、腎臓だけを移植するということですか。   ○清澤参考人 それは、肝腎同時に登録してあって、腎臓だけで選ばれるということで すか。   ○大久保委員 腎臓が、たまたま選択基準でトップに上がっている場合。   ○清澤参考人 それは、腎では登録しないことになっています。肝臓に付随して腎臓も 同時移植する登録をするという、1本にすることになっています。   ○大久保委員 わかりました。   ○小中委員 先生のお話の中に、肝腎の同時移植希望者の方が選定されたけれども、肝 臓が移植に適さない場合は腎の患者さんにというお話ですが、過去の状況からも考えま して、例えば肝臓が適さないと判明するのは段階がございますよね。実際に手術室に入 室して、おなかを切開し直視して病理精検などをした結果適さないとなった時期なども ございますが、この段階というのが明確に話し合いがされているのであれば教えていた だきたいのですけれども。   ○清澤参考人 その辺の細かな議論も結構ありまして、一応肝臓は12時間以内というこ とがありますよね。腎臓は48時間だけれども、現在は24時間でネットワークでやられ ているということで、その辺のタイムラグがありますのでそれは十分可能だろうという 結論でした。   ○小中委員 ということは、どの段階においても、肝臓がだめになったらその腎臓は腎 オンリーの方のところに行くという判断でよろしいですか。   ○清澤参考人 ええ。それは、摘出チームが現場に行くわけですよね。そこで判断され た時点で、腎の方に自動的に優先順位は移るということになると思います。   ○永井委員長 そこの適応が決まるまでは、レシピエントの手術は始まらないというこ とでよろしいですね。   ○清澤参考人 そういうことでいいと思います。開腹してしまってから、使えないとい うことはまずないという判断だと思いますが。   ○小中委員 もう一つよろしいですか。今度はそれと逆になるかと思いますが、肝臓と 肝腎と両方あるのですが、肝腎ではなく肝臓だけの方が上位に上がって、その方々の意 思確認をしていくと、断られて最終的に下位の方に肝腎の方がおられてそこまで到達し た場合、先にもし腎臓のレシピエントの方が意思確認をして2腎とも決まっていた場合 は、肝腎の人がその後に選定された場合にどういうふうに……済みません、説明が悪く てわかりにくいかもしれませんが。   ○清澤参考人 それは肝臓の方の順位がどんどん下がっていったという場合ですね。そ して、既に腎臓が決まっていると。これについては、そのときに議論をしていないので 具体的なお答えは私からはできませんが、私の個人的な考えでは、多分肝臓があくまで も順位が下がっていっても、決まった人がそうであればそういうルールにのっとってや ればいいのではないかと思っていますけれども。その場合は、腎の方は1腎はそのルー ルにのっとった方に行くことになると思いますけれども。これはまたネットワークとも 細かく詰めなければいけないということで、そのときは話が終わっています。   ○北村委員 似たようなケースが心肺移植でもありまして、つい最近の症例で、心臓移 植の方が上位にあったのですが、医学的ないろんな理由でお断わりになられた。第2位 もお断わりになられた。そして第3位でとまったんですかね。しかし、第4位かのとこ ろに心肺移植が入っているんですね。そうすると、その時点までおりてきてしまうと、 初めに検討していた肺移植の方を急に取り消さなければいけないことになるわけです ね。それをどうするかというのが、今菊地さんとお話し申し上げていたら厚生労働省と も考えているということでしたけれども、それも含めて、上位の方がキャンセルするこ とによって到達した場合、もう1個の臓器をほかの人から取り戻せるのかということ。 そこまで事を進めずに待つのかということ。ここを検討していただきたいと思います。   ○永井委員長 その点はいかがでしょうか。腎臓は2つあるからまだいいかもしれませ んが、肺の場合には問題になる可能性があるということですが。   ○清澤参考人 その場合も、恐らく具体的な選定作業のところで問題になってくると思 いますが、これについてもネットワークとまた話を詰めていきたいと考えています。   ○相川委員 質問ですが、私が間違っているかもしれませんけれども、肝腎移植を希望 していた方が、たまたまここに書いてある3ページの(1)の具体的選択法によって肝 臓だけでトップに来てしまった場合、そのときには腎臓が出なかった場合には、肝臓だ けをまず手術して移植してしまうのですか。   ○清澤参考人 そういうことはやりません。   ○相川委員 そうすると、その方が腎移植を希望している場合には、肝臓が出て、その レシピエントがトップになっても、肝腎が出てくるまでずっと待つのですか。   ○清澤参考人 ちょっと待ってください。   ○相川委員 つまりその人は2度別の手術を受けるのか、常に1回の手術でやるのか。 聞いた理由は、医学的には1回の手術で両方移植を受けた方がよろしいという根拠があ ったものですから、お聞きしているわけです。   ○清澤参考人 わかりました。それも議論がありまして、肝は選定されて、腎臓が適応 がなかった場合は……。   ○相川委員 適応がなかったのではなくて、そのドナーからは肝臓だけが出て、腎臓は 出なかったと。   ○清澤参考人 その場合は、腎の場合は透析というような手段があるので行われる可能 性はあると思いますが、多分その取り決めも十分にはなされていなかったですね。今の ような選択肢があるので、多分患者さんとのインフォームドの中での話になってくるの かなとも思うのですが、腎についてはそのときの状況で透析という可能性があれば……。   ○相川委員 でも、根拠のところでは、肝腎を同じ手術で同じドナーから受けた方が、 2回にわたって別々のドナーから受けるよりは医学的には成績がよいであろうという根 拠があったわけなので、その場合に肝臓だけ出た場合に自分がトップで選ばれても待つ のか。つまり同時に出るまで待つのか、それとも、そのときはトップなのだからとりあ えず肝臓だけを受けるのかということについては、まだ決められてはいないということ ですね。   ○清澤参考人 そうです。   ○相川委員 わかりました。   ○松田委員 北村委員からもお話がありましたように、2つの臓器を同時移植するとい うことで問題提起がされているわけです。前回のときに私はちょっと申し上げたと思い ますが、既に膵腎同時移植がありますので、腎臓は2つあるので大丈夫かなと思います が、こういう多臓器の同時移植の場合は、これで膵腎と肝腎と心肺と3つ認めるという ことになりますと、あとはネットワークの方できっちりその順番を整理されて、ネット ワーク主体で決めていかれるといいと思います。清澤先生のところにこの順番云々のこ とまで提示されるというのは、少し役割が違うかと思うので、これはネットワークの方 でそういう多臓器の場合の基本線を出して、順番をきっちり皆さんに明示しておく。そ うでないと、当日いろいろ混乱するかと思います。膵腎同時移植というのもあるという 認識をされた方がいいのではないかと思います。   ○大久保委員 膵臓と肝臓が一緒に選ばれてしまって、どっちに行くかということもあ り得るということですね。   ○永井委員長 さていかがでしょうか。   ○清澤参考人 今のことも当時合同の会議の中でありまして、当然多臓器の移植という ことがこれから起こり得るということもありまして、恐らくそういうことについてはま た綿密な話し合いが必要ではないかと思います。  それから今松田先生から提案されたことは、ネットワークの方とやはり綿密に連携を とって、恐らく私どもの方では、適応評価の方としては順位づけはできますけれども、 実際に選定するところはネットワークの方ですので、ネットワークの現場が混乱しない ようなシステムをぜひつくっていただきたいと思っていますけれども。   ○菊地参考人 細かな選定の部分になりますので、臓器移植対策室と相談しながら運用 は定めていきたいと思います。   ○永井委員長 そういたしますと、とりあえず今回は肝腎移植について取り決めをして おくということでよろしいですね。心肺あるいは膵腎というのはまた別の機会にという ことで。ただ、かなり細かいところまでルールづくりをこれからしていかないといけな いと思いますけれども、少なくともインフォームドコンセントとかその辺、当事者の話 し合いということは十分明記しておく必要があるのではないかと思いますが。そういう ことで、ネットワークにお任せしてよろしいでしょうか。   ○北村委員 3つを同じルールでいけるようなのが一番いいのではないですかね。それ ぞれ別個では、わけがわからなくなると思うので。多臓器のときのそういう特殊状況に おける、多臓器の合併臓器をいただける順位というのをまた検討していただきたい。   ○永井委員長 それでは、その辺の文章づくりを少し練っていただいて、もしよろしけ れば私の方に拝見させていただければと思いますが。   ○菊地参考人 既に肝腎と膵腎では、配分ルールが変わってきておりますので、そのあ たりも含めまして相談して提示させていただきたいと思います。   ○永井委員長 そういうことでよろしいでしょうか。ではそのように進めさせていただ きます。では、ネットワークの方でよろしくお願いいたします。  続きまして議題の2、臓器移植におけるウエストナイル熱・脳炎に関する取り扱いに ついてでございます。ウエストナイルウイルス感染症、昨今アメリカ等で、PCR陰性 のドナーから移植を受けた患者さんが発症したという例が報告されております。このこ とにつきまして、まず国立感染症研究所の林先生から参考人として御説明をお願いし、 その後事務局から対応策について説明をお願いしたいと思います。それでは林先生、よ ろしくお願いいたします。   ○林参考人 おはようございます。国立感染症研究所の林でございます。本日は事務局 から、昨年米国で発生いたしました2例目の臓器移植を介したウエストナイルウイルス 感染についてお話をするようにということで、御指示がございましたので参りました。 それではスライドを用いて説明させていただきます。  ウエストナイルウイルスは、黄熱ウイルス、デングウイルス等とともにフラビウイル ス科フラビウイルス属に分類されるプラス鎖の1本鎖RNAウイルスでございます。日 本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルスなどとともに日本脳炎血清型群に分類され ております。また、このウイルスはトリのウイルスでありまして、ヒトは終末宿主であ り、増幅宿主ではございません。次のスライドをお願いします。  トリで増殖したウイルスは、蚊の吸血により蚊の体内で増殖維持されます。ウエスト ナイルウイルスを保有する蚊に、さらにトリが吸血されることによって感染環を形成し ております。ウエストナイルウイルスを保持する蚊によって吸血されることにより、ヒ トや馬などのその他の動物はウエストナイルウイルスに感染いたしますが、これらのヒ トあるいは馬は終末宿主でございます。また、現在流行しておりますウエストナイルウ イルスの蚊は、特にカラス属のトリに対して強い毒性を持っているという特徴がござい ます。次のスライドをお願いします。  ウエストナイルウイルスの流行状況ですが、まずこのウイルスは、1937年にウガンダ のウエストナイル地方の女性から初めて分離されたウイルスでございます。その後1950 年代を中心にアフリカ、ヨーロッパ、あるいはインドなどにおきまして散発的に発生し ておりましたが、熱性疾患を中心としていたために大きな問題とはなっておりませんで した。しかしながら近年、アルジェリア、ルーマニア、チュニジア、ロシア、イスラエ ル、スーダン、あるいは米国などにおいて、脳炎症状を伴う流行が報告されました。次、 お願いいたします。  1999年にニューヨークで発生したウイルスは、その後西へ感染地域を拡大いたしまし て、2002年において大流行を起こしました。また2002年には、カナダ、メキシコ、2003 年にはカリブ海諸国、また2004年には、南米のコロンビアにおいてその活動が確認され ております。次、お願いいたします。  これはウエストナイルウイルス感染症の流行期間を示しておりますが、2001年から 2002年にかけて顕著な流行期間の延長が認められております。2005年におきましては、 1月から11月にかけて患者の発生が認められており、本年度におきましても、2006年 1月にアメリカ南部のミシシッピー州におきまして1例の患者が報告されております。 次、お願いいたします。  ウエストナイルウイルスに感染しますと、ほとんどの人々は無症状なのですが、その うち約25%の方に感染が認められます。熱症状を主とするウエストナイル熱において は、27万人が感染しているのではないかと推定されております。またウエストナイル脳 炎は、これまで1999年からの間に8,390名報告されておりまして、そのうち死者は782 名を数えております。次、お願いいたします。  蚊を媒介する以外のウエストナイルウイルスの感染経路として、臓器移植以外に、輸 血、あるいは母乳、それから経胎盤感染、針刺し事故、あるいは結膜を介した感染など が、これまでに報告されております。次、お願いいたします。  まず、輸血によるウエストナイル感染の状況について御説明いたします。2002年の大 流行時に16人のドナーから23例の輸血感染が報告されました。それ以後2003年7月か らアメリカにおきまして、ミニプール核酸増幅検査によるスクリーニングが実施されて おります。その結果、1,382名のウエストナイルウイルス保有ドナーを特定しておりま す。この検出率は非常に流行地域によって大きく異なっておりまして、ある流行地域で は非常に高い割合でウエストナイルウイルスが検出されております。また、7例のスク リーニングを逃れた輸血感染も報告されております。次、お願いいたします。  これまでに輸血感染において問題になっておりましたB型肝炎、C型肝炎ウイルス、 あるいはHIVなどと比べまして、ウエストナイルウイルスにおいては違った傾向が観 察されました。それは、流行地域による多様な高い検出率、それから短期で非常に低い ウイルス血症、また抗体陰性血液の輸血による感染例などが報告されており、感染増幅 検査を主に行うことでスクリーニングを行っております。次、お願いします。  本日の議題であります臓器移植によるウエストナイルウイルス感染について、御報告 いたします。まず、この症例は2005年にニューヨーク州及びペンシルバニア州で同一ド ナーの男性より発生したということ。次に、同一ドナーから移植を受けた4例のうち3 例がウエストナイルウイルスに感染し、うち2例で脳炎症状が認められたこと。それか ら、ドナーは頭部外傷を受ける以前に発熱が認められ、移植前日の血清サンプルにおい てウエストナイルに対してIgM、IgG陽性、PCR陰性であったということ。また、 ドナーの住居近隣でウエストナイルウイルス陽性の蚊が検出されていたということが明 らかになっております。次、お願いします。  少し詳しくこの症例について御説明いたします。これは2005年8月の臓器ドナーの記 録でございます。8月23日に頭部外傷を受けまして、硬膜外血腫の摘出手術を受けてお ります。26日に脳死状態に陥り、28日に臓器移植が行われました。その後、ドナーのう ち2名に脳炎症状が発生したために調査が開始されました。その結果、移植手術前日に おきまして、血清、血漿においてPCRは陰性ですが、IgM、IgGにおいて陽性が 確認されました。またその後の問診により、事故以前に発熱を訴えていたこと、また8 月16日にはドナー住居の近隣でウエストナイル陽性の蚊が検出されていたということ が明らかになっております。また、事故時に受けた手術において用いられた輸血血液に おきましては、ウエストナイルウイルスは検出されませんでした。次、お願いいたしま す。  これは臓器レシピエントの記録でございます。まず、肝臓の移植を受けたレシピエン トですが、術後の経過は良好でございましたが、その後、脳炎症状を発症し、さらに急 性弛緩性麻痺を起こしまして、気管内挿管が必要となりました。その後の調査で、Ig M陽性、PCR陽性ということが明らかになり、昏睡状態が続いているということでご ざいます。その次に、肺の移植を受けたレシピエントの記録でございますが、この患者 も術後経過は良好で、術後16日目に退院をしているのですけれども、翌日に急性弛緩性 麻痺あるいは発熱など脳炎症状を呈しまして、また気管内挿管を受けております。その 後の検査の結果、IgM陽性という結果が得られております。残りの腎臓患者の2例で ございますが、1例においてウエストナイルウイルスのPCR陽性結果が出ております が、症状は出ておりません。また最後の腎臓レシピエントは、ウエストナイルに対する 感染が確認されませんでした。次、お願いいたします。  以上をまとめますと、これまでに腎臓移植を介してウエストナイルウイルスに感染し たとされる報告は、米国において2例であるということ。また、臓器レシピエントのウ エストナイル脳炎発症率は約60%で、これは平均の約85倍のリスクであるということ がわかっております。  続きまして、資料2−1の最後の12ページの資料について御説明したいと思います。 これは、感染症研究所の生物製剤に由来する感染症情報収集検討委員会が、このたびの 臓器移植に関するウエストナイルウイルスの感染の症例を受けて出したコメントでござ います。このコメントですが、日本におきまして、昨年ウエストナイル熱の鑑別疾患で あるデング熱の輸入症例が発生し9月に亡くなられていらっしゃるのですけれども、こ の患者においては、発病18日目で血中からのウイルス遺伝子は消失していたにもかかわ らず、肝臓からは高いウイルス遺伝子が検出されたということがございました。ウエス トナイルウイルスもデングウイルスと同じフラビウイルスでございますから、Viremia の消失する時期よりも、臓器において感染が持続する期間が長いだろうと推測されます。 また、今回の臓器移植による感染例において報告されたドナーの場合も、感染蚊のいる 地域に居住し、IgM抗体陽性で発熱のエピソードもあったことから、血液中にウイル ス遺伝子が検出されなくとも、腎臓などの臓器にウイルスが存在することが予想された と考えられております。  また日本におきましても、昨年、米国渡航者からのウエストナイル熱の患者が報告さ れておりまして、国内に輸入される可能性は否定できず、現在渡航者に対しては問診を 行い、一定期間献血を受けない処置がとられているのですが、臓器移植については、提 供者数や対象患者が移植により得る利益と、発症の確率の間の評価が難しいのでござい ます。  したがいまして、移植の実施に際し、ドナーに対して事前に必要な検査を実施するこ とはもちろんですが、病歴の問診を確実に行い、感染が予想される場合には特異的Ig M抗体を測定し、これが陽性であったときは、移植担当医はリスクの存在を認識し、適 切にリスク評価し、レシピエントに対しすべての情報を提供し、臓器移植による利益と 感染のリスクについて十分に説明した上で移植の実施の有無を決定すべきである、とい うことでございます。また、可能でございますなら、移植臓器のバイオプシーなど、感 染リスクを軽減するための検査の導入を行うことが望ましい、ということでございます。  また、腎臓など輸入臓器の利用や、渡航し移植を受ける者がある場合には、十分な情 報提供を行い、適切なリスク評価を実施することが重要である、ということになってご ざいます。以上で私からの御説明は終了させていただきます。   ○永井委員長 ありがとうございました。それでは、引き続き事務局から資料2−2を 説明いただいて、その上でまとめて質疑をしたいと思います。   ○高岡主査 では、続きまして事務局より資料2−2臓器移植等におけるウエストナイ ルウイルス対策について御説明申し上げます。  先ほど御説明いただきましたとおり、復習になりますけれども、ウエストナイルウイ ルス対策といいますのは、献血において、国外からの帰国後4週間以内の供血者を供血 禁止としていることを踏まえまして、臓器移植等においても帰国後4週間以内のドナー についてはPCR検査を行いまして、陽性とならないことを確認して移植を行っている ところでございます。  平成17年9月、先ほど御報告いただきました、海外において同一ドナーから臓器移植 を受けた4例のうち3例がウエストナイルウイルス感染症を発症しました。ドナーの血 液検査を行ったところ、PCR検査は陰性でございましたが、IgM、IgG抗体検査 は陽性でございました。血液中にウエストナイルウイルス遺伝子が検出されなくとも、 肝臓、腎臓等の臓器にウイルスが存在していたことが考えられるとの報告でございまし た。  このため、PCR検査で陰性のドナーから臓器を移植されたレシピエントが、ウエス トナイルウイルスに感染した可能性がある報告があったことを踏まえまして、臓器移植 等におけるドナーの移植前検査につきまして、PCR検査に加えて、発熱の有無等の確 認とウエストナイルウイルスIgM検査を追加したいということでございます。  現行の制度についてでございますが、また繰り返しになりますけれども、国内のドナ ーにつきまして、帰国後4週間以内の者についてはPCR検査にて陽性にならないこと を確認しております。角膜、強膜移植につきましては、帰国後4週間以内の者について は、問診の結果を踏まえて慎重に移植の可否を判断しております。移植を実施する場合 には、感染の可能性が全くないものでないことについてインフォームドコンセントを行 うこととしております。  国外のドナーにつきましては、海外のアイバンク等から提供を受ける際は、当該バン クに対して眼球摘出前4週間について問診の強化を依頼いたしまして、その結果を踏ま えて慎重に移植の可否を判断しております。移植を実施する場合には、感染の可能性が 全くないものではないことについてインフォームドコンセントを行うこととしておりま す。  改正案でございますけれども、下線部が変更箇所となっておりますが、帰国後4週間 以内の者につきまして、PCR検査とウエストナイルウイルスIgM検査及び発熱の有 無等の確認を行いまして、PCR検査にて陽性とならないことを確認いたします。移植 医は、陽性でないことが確認された場合にあっても、ウエストナイルウイルスIgM検 査結果及び発熱の有無等とともに、移植に伴う感染のリスク等をレシピエント候補者に 十分説明して頂きます。2つ目といたしまして、4カ月以内に渡航歴がある場合には、 移植に伴う感染リスク等をレシピエント候補者へ十分説明する、ということでございま す。  皮膚、心臓弁、骨等の組織移植につきましては、臓器移植における対応を関係団体等 に周知することとしております。  3ページ以降、制度についてイメージ図で書いております。現行の制度では、渡航歴 の問診をいたしまして4週以内に渡航歴があった場合にはPCR検査を実施し、PCR 検査で陽性の場合はあっせんしないとうことでございます。  一方、国立感染症研究所報告書の推奨というのが、先ほど林先生から最後に御報告い ただいた報告書の内容をイメージ図に示したものですが、発熱の有無などの病歴を問診 いたしまして、そういったことがあって疑わしい場合は、ウエストナイルウイルスのI gM抗体検査を行います。これで陽性であった場合は、移植医はリスクの存在を認識し、 移植の利益と感染のリスクを十分説明した上で移植の実施を判断すべきという報告書の 内容でございました。  次のページのイメージ図が、今後の対応案でございます。渡航歴の問診をいたしまし て、4週間以内に渡航歴があった場合にはPCR検査を行います。PCR検査で陽性と なった場合にはあっせんしないというのは、現行の制度と同じものでございます。これ に加えまして、渡航歴4週間以内があった場合には、病歴を問診。発熱、脳炎、髄膜炎、 弛緩性麻痺の有無などの問診結果、またウエストナイルウイルスIgM抗体検査の結果 等もあわせまして、十分説明するようにあっせん機関は移植医に促した上であっせん可 能。PCRが陰性であった場合には、そのような対応にしてはどうかということでござ います。  加えまして、4週間以内の渡航歴がなかった場合であっても、4カ月以内に渡航歴が ある場合には、十分リスク等について説明した上で移植というふうにしてはどうかとい う対応案をお示しさせていただいております。  こちらの4週間以内の渡航歴をまず伺うということは、先ほど冒頭御説明しましたと おり、献血において帰国後4週以内の供血者を供血禁止としていることを踏まえたもの でございまして、ウイルス血症が4週間の経過を見ておりますと落ち着くということか ら判断されたものであると伺っております。一方、4カ月以内の渡航歴がある場合にも 十分リスク等について説明することとしております4カ月と申しますのは、最後の7ペ ージ目に移りますけれども、7ページ目に臓器移植におけるウエストナイルウイルスの 感染リスクについての参考資料を作成しております。こちらの2番「ウエストナイルウ イルス感染症の特徴」というところに書いてございますが、3つ目のポツでして、発症 後104日後にウイルス遺伝子を検出した例があり、これが最長の例ということでござい まして、これにちなみまして、4カ月以内に渡航歴がある場合には十分説明した上で移 植という対応案を考えております。  戻りまして5ページ目でございますが、こちらは臓器移植ネットワークの理事長あて の通知案ということでございまして、「臓器移植におけるウエストナイル熱・脳炎の取 扱いの一部改正について」の案文を掲載しております。6ページ目の別紙が具体的な内 容でございますけれども、こちらは先ほどイメージ図にて御説明いたしました内容を文 章にしているものでございます。  読み上げますと、1番、臓器あっせん機関は、臓器提供施設の医師に、臓器提供者の 海外渡航歴を確認し、提供前4週間以内の渡航歴がある場合にはPCR検査及びウエス トナイルウイルスIgM検査などを行うとともに、渡航中及び帰国後の発熱の有無及び 既往歴(脳炎、髄膜炎、弛緩性麻痺等)の確認を行います。  2番、臓器あっせん機関は、PCR検査においてウエストナイルウイルス陽性でない ことを確認する。ウエストナイルウイルス陽性でないことが確認されない場合には、当 該提供者の臓器を移植に用いない。これは現行の制度と同じでございます。  3番、臓器あっせん機関は、PCR検査においてウエストナイルウイルス陽性でない ことが確認された場合においても、移植医が患者に対してウエストナイルウイルスIg M検査結果及び発熱、脳炎、髄膜炎等の既往歴の有無とともにウエストナイル熱・脳炎 及び移植に伴う感染のリスクについて十分説明するよう促すこと。  4番、臓器あっせん機関は、臓器提供者に4週間以内の渡航歴がない場合であっても、 4カ月以内の渡航歴がある場合には、移植医が患者に対しウエストナイル熱・脳炎及び 移植に伴う感染のリスクを十分説明するよう促すこと。  7ページ以降に、先ほどお話しいたしましたとおり、ウエストナイルウイルスの感染 リスクについての参考資料をつけてございます。こちらの参考資料につきましては、通 知に添付したり、ホームページに掲載したり、皆様方にウエストナイルウイルスと臓器 移植についてお知らせする参考資料とする予定でございます。以上でございます。   ○永井委員長 ありがとうございました。ちょっとややこしい話ですけれども、いかが でしょうか。林先生にちょっと私はお聞きしたいのですが、先ほどの先生のスライドの 7ページ目でしょうか、まとめのところで「臓器レシピエントのウエストナイル脳炎発 症率は約60%であり」というところですが、これは母数というのか、要するにIgM抗 体陽性の方を移植した場合に60%ということですか。分母の方がよくわからないのです が。   ○林参考人 これは非常にはっきりとした数字ではないのですが、これまでに起こった 2例の患者と脳炎発症者を換算しますと約60%で脳炎が出ている状況でして、そういっ た意味での60%というふうになっています。   ○永井委員長 既に発症した方の臓器の数を分母としているということですか。   ○林参考人 レシピエントの数を。   ○永井委員長 既に発症した方の中でレシピエントを選んで、そのうちの3人が発症し たと。だから、必ずしもこれは抗体陽性者の60%が発症するとか、そういうことではな いんですね。   ○林参考人 前回のケースと今回のケースで、8例中5例で脳炎が発症している。それ は抗体とPCRによって感染が確認されているという意味での60%で、症例数は少ない というデータでございます。   ○永井委員長 わかりました。よろしいでしょうか。   ○大島委員 この表現はものすごく誤解を招く表現なので、これはきちんと事実に基づ いた表現の仕方にしてもらわないと、とんでもない誤解につながると思います。今の永 井先生とのやりとりをきちんと押さえた言葉に変えていただきたいと思います。   ○永井委員長 いずれにしてもこれほどの数字にないとしても、危険はあるということ は認識しないといけないということですね。   ○大島委員 米国では、少なくとも腎臓移植だけで年間に1万例以上行われているわけ ですから、その1万例のうち60%というふうにこれだととられかねないですよね。   ○永井委員長 その辺の表現を、少なくとも発症してしまった方を対象にしてそのレシ ピエントの60%がということなので、かなり特殊な統計だと思いますね。ですから厳密 には多分、IgM陽性の方、あるいはPCR陽性の方で移植を受けたら何%かといふう にしないといけないのですが、もちろんそういうデータはなかなかないとは思いますけ れども、それを踏まえて議論しないといけない。   ○相川委員 今の件、ちょっとしつこくなりますけれども、大島先生がおっしゃったよ うに、この日本語ですと、臓器レシピエントが分母、分子はウエストナイル熱・脳炎発 症したレシピエントということになってしまいますから、一般の方がそういうふうに解 釈すると、かなり臓器移植は危険であると誤解されますね。臓器のレシピエントの6割 は脳炎になるというような誤解があるので、日本語を整備して、60%の分母が何なのか、 分子は何なのか。それから、平均値の85倍というのも、平均値というのは何を平均した ものなのかということを解説していただきたいと思います。   ○林参考人 まずこの臓器レシピエントというのは、ウエストナイル陽性患者から臓器 を提供されたレシピエントにおけるウエストナイル脳炎が、これまでのところ60%でご ざいます。またこの平均値は、ルーマニアあるいはニューヨークの例によって導き出さ れている数字でして、140人に1人の割合で脳炎が発症している、約0.7%の発症率であ るという意味での平均値でございます。   ○相川委員 平均値のところですけれども、平均値の発症率の分母と分子は何ですか。   ○林参考人 140人に1人ですけれども。   ○相川委員 140人という分母は、具体的には。   ○林参考人 現在ちょっと資料を持ち合わせておりません。   ○相川委員 これは臓器移植に関連した140人ということですか。   ○林参考人 いいえ。健常人の、一般の人の流行地域の140人です。   ○相川委員 ですから、この文章は2つのことを1つの文章で言おうとしていることに も問題があるのではないでしょうか。つまり最初の部分は、臓器移植に絡むドナーで、 ウエストナイルウイルス陽性であったドナーからのレシピエントのウエストナイル脳炎 の発生率を言ってありまして、そこで点で区切って「これは」というのは、今度は臓器 移植に関連しないウエストナイルウイルス感染者のうちに脳炎が発生する率とこの60 %を比べると85倍だということを言っているのですか。   ○林参考人 ウエストナイルウイルスに感染した場合に、ほとんどの患者7割は無症状 でございますので、ウエストナイルウイルスが感染したと考えられる人たち全員に対し ての140人に1人という数字でございます。   ○相川委員 そうですよね。結局この文章は2つのことを1つの文章で言っていて、「こ れは」というのも比較の対象が非常に脆弱だと思うんですね。つまり一方は自然に感染 した中で脳炎が発生する率、それに対して臓器移植をした場合にはということを言おう としているので、その辺の解説も必要ではないかと思います。   ○林参考人 わかりました。   ○永井委員長 これは既にウエストナイル脳炎を発症したレシピエントをまず選んで、 それが2例なわけですね。そして、そのもとになったドナーから受けられたのが5例で すか。そして、そのうちの3人が……ちょっとお待ちください。2例というのは、ドナ ーが2例ということですね。そうですね。2件ですね。そのレシピエントが8名いらし て、そのうちの6割が発症したということですね。ですから、恐らくこれは厳密に言う と、ウエストナイルウイルスに感染していても発症しなかった人はたくさんいるわけで すね。それで多分移植が行われた方もいらして、それについては全くわからないわけで すよね。発症しなかった例については全くわからないということですよね。   ○林参考人 そういうことだと思います。   ○永井委員長 その辺を踏まえてのことだということで、いずれにしてもここは厳密に 説明が必要かと思います。   ○大島委員 今のことは、ほかのものと比較するには余りにも数が少な過ぎると思うん です。したがって、事実だけを並べていただいて、ウエストナイルに感染したとされる 報告は米国において2例のドナーから8名のレシピエントにあったと。そのうち脳炎発 症したのは何名であったということでよろしいのではないですか。それ以上のパーセン テージだとか、ほかとくらべて何倍だとかいうことを、今のこの症例数の段階で言うの は非常に危険というか、信頼性に乏しい話になると思いますので、事実だけを並べられ た方がいいと思います。   ○永井委員長 そういうことを踏まえまして、それでは対応をどうするかということで ございます。これについていかがでしょうか。   ○貫井委員 6ページの(3)、あるいは4ページの今後の対応ですけれども、IgM 抗体が陽性だったらどうするのかということが問題だと思います。陽性でも陰性でも、 この場合には抗体検査をただやればいい、感染のリスクを十分説明しろというふうにと れるのですけれども、そうなんですか。実際にこの参考資料で、PCRでは陰性でIg M抗体陽性のときに感染が起こったというのを今お話しいただきましたけれども、Ig M抗体は陽性でも陰性でも、リスクがあるよと説明してやってよろしいということにな るわけですか。そういう意味では、検査をやるというだけで、余り今までと変わらない ですね。   ○高岡主査 基本的には移植医の判断になります。CDCや感染研からの報告があった ことを受けて、IgM検査結果も踏まえて判断されることが望ましいということでした ので、参考情報としてIgM抗体検査結果もお知らせするということですけれども、先 生がおっしゃるとおり、基本的にはPCRが陽性でなければあっせん可能という枠組み は変わらないもので案を出しております。   ○永井委員長 ただ、米国の場合はPCR陰性でも出てしまったということですね。だ から、そこは十分説明して進めるということでやむを得ないのではないかという御判断 ですね。いかがでしょうか。米国ではIgM陽性で何割ぐらいが発症したかなんていう データは全くないのでしょうか。林先生、御存じないでしょうか。   ○林参考人 今のところはございません。   ○永井委員長 ございませんか。いかがでしょうか。   ○大島委員 ほかと比較するのが必ずしもいいとは思いませんけれども、これで見る限 り「アメリカ合衆国においては」というところを読むと、検査もしていないみたいです ね。問診だけで、脳炎、髄膜炎、弛緩性麻痺等の症状がある者からの移植は行わないと いうだけで、チェックもしていない。ということは、アメリカは非常に合理的に物事を 考える国であるということを考えると、これぐらいのリスクというのは今の段階では無 視できるというか、そう考えられているのかどうかはわかりませんけれども、少なくと もすべての患者さんに全部検査をやるというほどのリスクの高さというようには認定し ていない。感染の起こっている場所でそういう状況にあるということですね。日本の今 の指針というのは、それに比べるとすごく厳密で厳しいものであると考えていいわけで すね。   ○高岡主査 大島先生がおっしゃいましたとおり、アメリカでの体制は、ウエストナイ ルウイルスの蚊が常在している地域に住んでいる人であって、発熱や脳炎などの症状が あるような方からの移植はしないとされており、そうでない場合は、PCR検査やIg M検査は移植前には行っていないものと聞いています。今回のMMWRの報告にもあり ましたとおり、事後的に検査はできるようにストックはしてありまして、移植が起こっ た後レシピエントに発熱や脳炎などの症状があった場合は、ウエストナイルウイルスの 感染も疑って検査ができるようにはしてあるということでございます。  こちら事務局からの案として出させていただいておりますのは、今までどおりPCR の検査は行いますけれども、IgMの検査もさらに行って、陽性であった場合には移植 しないというふうにするわけではなくて、そのあたりの選択肢の幅は置いておいた上で、 移植の可能性を狭めるようなことはしないということで、検査の追加のみ案として出さ せていただいているところです。これは事後的に、移植をした後で検査ができるような 枠組みにしたとしても、治療法がございませんので、診断ができるだけですので、事前 に行うべきであろうという判断でございます。   ○大久保委員 確かに日本の移植の数、それから今お話があったような発症のリスクか ら考えて、現在PCRを行っているわけで、それにプラスそういった検査をして、なお かつきちっとインフォームドコンセントをするということで、今の日本の現状において は私は適切ではないかと思います。   ○永井委員長 いかがでしょうか。あと、PCRの実施機関はどういう体制で行われる ことになっているのでしょうか。どこかの検査機関なのか、感染症研究所なのか。  菊地参考人 PCR検査については、一般の企業2社に対して検査を依頼するように しています。それにプラスして、当面の間は国立感染症検査センターでもお願いすると いうような取り決めになっています。   ○永井委員長 複数に依頼するということでしょうか。   ○菊地参考人 はい。複数に依頼するということになっています。   ○松田委員 論点は2つあって、1つはそのレシピエントをうまく生存させるというか、 移植を成功させる、思わぬ合併症で失わないということと、もう一つは、その感染を日 本にさらに広げないという視点だと思います。そういう意味では、大久保委員がおっし ゃったように、移植が非常に少ない状況ですので、こういうことで移植の道を確保して いただきたいというのは私も賛成ですけれども、今の貫井委員からもおっしゃったこと で、やはりこのままですと、とにかく移植をさせてくれ、危険はあってもとにかく臓器 が欲しいんだという印象を社会が受けるようなところもあるので、例えばIgMをどこ まで課すのかですね。IgMが少なくとも陽性であれば、例えばバイオプシーをするの か。移植をしてもいいわけですけれども、その後の単に説明ではなくて、アメリカで言 うとCDCに当たる国立感染研のところに何らかの報告義務を負わすというか、そうい うスタンスを置いておかないと、単に十分に説明してやりなさいということでは、こう いう感染をきっちりフォローする、それから広まるという視点からは抜けているように 思いますので。   ○永井委員長 そうですね。実際にIgM陽性患者の移植をすると一体どれくらい発症 するのかというデータもこれから必要になってまいりますね。そういう意味では、きち っとそれを報告しておいて、後の調査に役立てるということが必要ではないかと思いま すが。はい、北村委員。   ○北村委員 IgMは殺菌能力というか、ウイルスに対する治癒効果を持つ抗体なのか、 ただの肝炎のように、抗体はあるけれどもウイルスは存続しているという抗体なのか。 これはどういう抗体なのですか。そして、IgM抗体の検査とPCRが同時にできて、 同じ時間帯に検査結果として得られるものなのでしょうか。   ○林参考人 今回の症例にもありますように、実際にIgMが出ていても臓器の中には ウイルスが残っているという状況があります。血中からのウイルスは除去していると思 いますが、どうしても臓器の中には残っているという現実がございます。それから、I gM検査、PCR検査ですけれども、6時間以内に結果は出すことが可能です。   ○北村委員 75%は発症しないと。そうすると、その75%の人たちをこういう検査をす れば、IgMは陽性なのですか、陰性なのですか。発症していない人、わからない人で すね。さっきの三角の絵の中で、75%は発症しないから、症状が出ないからわからない けれども、そういう人のIgM検査をすれば陽性のことはたくさんあるわけですか。   ○林参考人 発症していない人に対しては、データはございません。ただ、ウイルスに 感染が成立していれば、IgMは上昇してくるものと考えられます。   ○北村委員 PCRは陰性でIgMは残っている発症していない患者というのは、多数 あり得るということでしょうね。IgMは陽性だけれどもPCRは陰性で、症状を聞い ても発熱の期間もなかった、脳炎の症状もなかったという人は、一般の元気にしている 提供者になりうる方々の中にはたくさんいるということ。そういう面からIgM陽性は 注意するということにとめたというふうに解釈してよろしいですか。   ○林参考人 その件に関しては事務局からお返事いただければと思いますけれども、ウ イルス血症が感染していれば、ウイルス血症が起こっているという可能性はあります。 しかしながら、ウイルス血症の平均日数は非常に短い、平均6.5日というふうになって いますので、感染が成立してもPCRネガティブの患者が出てくる可能性はあると思い ます。今回のプランについての考え方は事務局からお返事いただければと思います。   ○高岡主査 IgMが陽性でPCRが陰性で発症していない方もいるということで、そ のことと説明にとどめるという事務局案を出したことが直接関係しているわけではあり ません。前者につきまして、IgMが陰性でPCRが陽性で発症していないという方は いらっしゃいますが、先ほど林先生からのお話にありましたとおり、どれくらいいらっ しゃるのかはわかりかねるというところでございます。   ○小中委員 医学的な危険性の観点が1つと、もう一つは現実に実際のあっせんにおい てどういうふうになっていくのかと、両視点合わせて御検討いただきたいと思うのです が、結果的にこの規定が決まってから2年間――いつでしたか、そのPCRの検査を必 要な渡航の方が何名いたかという点が1つと、もう一つ、そのような方がおられた場合 に、今現在はPCRの検査だけを実施しているわけですが、そこにIgMの検査を追加 して、なおかつ精検まで実施すると、その方が臓器を提供できる方になるかどうかとい う、そのあたりの流れと数を。私がお答えしてもいいのですが……。   ○菊地参考人 ウエストナイルウイルスのPCR検査を行ったドナーは、2004年に1名 おられました。それ以降は発生していません。  少し懸念しているのは、これはIgM抗体だけの検査でよろしいのですか。その検査 のできる施設ですけれども、非常に難しい検査であれば限られてしまうと思います。多 分今PCR検査を頼んでいる会社には無理だと思うのですけれども、どのような施設で 検査が可能なのでしょうか。   ○高岡主査 現在、国立感染症研究所でひとまず検査をお願いすることを検討しており まして、それ以降また企業にお願いするかどうかは別途検討していくことになると考え ております。   ○永井委員長 ありがとうございました。いろいろ議論がございますが、現実的リスク はまだ低いということを踏まえて、しばらくこういう注意喚起そしてインフォームドコ ンセントで行ったらどうかということではないかと思いますが。   ○貫井委員 現実的リスクは低いと言いますけれども、現実にアメリカの例で高いわけ ですね。一般のものと違って、IgM抗体が陽性PCRマイナスであったときに、4人 に移植したら3人が発症したと書いてあるんですね。どこが現実的危険性が少ないので しょうか。   ○永井委員長 4人は、発症した人を母数にしているわけですね。ただ、IgM抗体… …。   ○貫井委員 臓器移植を受けた4人のうち3人が発症したと。   ○永井委員長 ですから、これは分母がわからないんです。   ○貫井委員 いや、そんなことはありませんよ。事実は、PCRマイナスでIgM陽性 の人の臓器を受け取った人を対象にしている訳ですから。   ○関山課長 貫井委員も先ほどから疑義を呈していらっしゃいますように、私どもも、 今日出させていただいた資料が必ずしも本日御議論いただくのに十分な資料でなかった ように思っております。したがいまして、IgMの取り扱いについてどうするか。もう 少し資料を整えて次回にでも提出させていただいて、そして御議論していただければと 思っております。先ほど参考人の御発言もありましたので、そういったところをもう少 ししっかりしながら御提案させていただければと思っておりますが、よろしいでしょう か。きょうの委員の方々の御意見は、そういったことで整理させていただきます。   ○永井委員長 そういうことでよろしいでしょうか。やっぱりちょっと先ほどの統計の 問題がありますね。分母が一体どういうことになっているかというところをよく認識し た上で、議論をした方がいいだろうということかと思います。ありがとうございます。 それではそういうことで、この件に関してはまた次回議論したいと思います。   ○関山課長 なお、この取り扱いにつきましては、ちょうど昨年の11月に、私どもから は、ウエストナイル熱の臓器移植については慎重に対応するようにということで、公文 書を発出させていただいているということでございます。   ○永井委員長 次は議題の3でございます。移植医療に関する普及啓発についてでござ います。これは事務局からお願いいたします。   ○矢野補佐 移植医療に関する普及啓発につきまして、現在の取組み状況を御説明させ ていただいた上で、先生方の御意見を伺えればと思っております。  まず資料3の後ろの6ページ目から御説明させていただきます。移植医療の現状につ いてですけれども、6ページ目、脳死下での臓器提供者数の推移でございます。平成9 年に法律ができまして、平成10年度が1件。大体数件で推移をしておりまして、昨年度 は8件となっております。  7ページに行きまして、年次別の腎移植の患者数でございます。西暦で記載しており まして、右下の枠から2000年になっております。増加傾向にありますが、生体の腎移植 について増加傾向にあるということがわかります。  8ページに行きまして、臓器移植の実施状況でございます。平成9年の法律施行から 現在までの状況でございます。左が臓器提供者数、中央が移植実施件数、右手が待機患 者数となっております。  次のページに行きまして、各国の死体からの臓器移植の実施数ということで、4カ国 の比較をグラフにしております。一番左手の赤いグラフが日本、次がアメリカ、イギリ ス、ドイツとなっております。下の※印ですけれども、人口100万人あたりの臓器提供 者数については、日本が0.7、アメリカが24.4、イギリスが13.6、ドイツが12.8とい う状況になっております。  次のページに行きまして、生体間移植の状況ですけれども、図の1、2、3でそれぞ れ腎臓、肝臓、肺についてグラフにしております。左手のブルーの棒グラフが生体の移 植、右手の赤い棒グラフが脳死体からの移植でございます。どの臓器も生体の移植が増 加傾向にあります。  ページをめくっていただきまして、海外への渡航による心臓移植の実施件数です。こ れは1988年から学会で統計をとっておられまして、法律が96年にできましたけれども、 近年増加傾向にありまして、2005年、昨年度は合計15名が心臓の渡航移植に行かれて いるという状況です。  次のページに行きまして、海外の渡航移植者の状況、肝臓と腎臓についてです。これ は4月21日に公表された「渡航移植者の実情と術後の状況に関する調査報告研究書」を 厚生労働科学研究でやっていたものですけれども、これを引用しております。肝臓につ いては、123施設中有効回答が120施設ありまして、それらの施設に外来通院している 移植の患者の数は2,983名。そのうち、渡航移植を受けて通院をしている患者の数は221 名。渡航先の国別人数につきましては、221名中101名分の回答がありまして、不明が 120名となっております。米国、オーストラリア、中国等々、御覧の状況となっており ます。  腎臓につきましては、調査対象154施設中、138施設からの回答をいただいておりま して、外来通院をしている移植患者数は8,297名、渡航移植を受けて通院している患者 数は、そのうち198名。渡航先の国別人数につきましては、198名中180名の分が明ら かとなっておりまして、中国、フィリピン、米国等、御覧の状況となっております。  次のページに行きまして、これはネットワークに連絡があった意思表示カードの情報 についてです。一番上のグラフが、カードに書かれている意思表示の内容になりまして、 左の650というのが、脳死下での臓器提供をしますという意思表示がされていた数です。 そのうち、提供可能な医療機関、いわゆる4類型病院から連絡が来たというものが320。 その他の医療機関から来たものが183となっております。脳死下での臓器提供が可能な 医療機関320のうち、心停止前に連絡があったものが191、心停止後に連絡があったも のが129となっております。また、その他の医療機関の中で、これは脳死下でない心停 止下での腎臓提供も可能になりますけれども、心停止前に連絡があった数と心停止後に 連絡があった数が、大体半々となっております。脳死下での臓器提供が可能な医療機関 から心停止前に連絡があった191件のうち、法的脳死判定が行われたものは42件、行わ れなかったものは149件となっておりまして、その実施しなかった理由は右手にあると おりでございます。  ページをめくっていただきまして、移植医療の社会的基盤整備に関する研究でござい ます。これは厚生労働科学研究で実施していただいている研究でございまして、大島先 生も研究者の1人としてかかわっておられます。平成17年にその調査結果の途中の報告 書が出ておりまして、その状況を御紹介させていただきます。  まず、こちらのグラフは病院職員に対するアンケート調査の結果でございます。左手 「脳死は死の妥当な判定方法であるか」というアンケート調査を行いましたところ、ヨ ーロッパではイエスが81.8%、日本ではイエスが38.6%。ノーについては日本の方が多 くて、わからない、回答なしというのが日本で半数ぐらいになっております。「臓器提 供は家族の悲嘆を軽減するかどうか」そう思うというお答えをされた方が、ヨーロッパ では69.3%、日本では11.3%ということで、家族の悲嘆を軽減するかという点について は、日本の医療機関の職員は懐疑的な傾向があるということがわかります。  次のページに行っていただきまして、これはMRRと言いまして、病院の医療記録を レビュー、分析しまして、実際のドナーの数と潜在的なドナーの数を比べまして、臓器 提供のプロセスの中でどこに問題があったのか、提供に至らなかった事由があるかとい うのを明らかにする方法でございます。レビューの対象となった症例が1,093例ござい まして、そのうち年齢要件と医学的な適応があったかどうか、呼吸器の使用がされてい て、脳死の前提条件が満たされていたものというのが、中央のグラフになりますが134 件ありまして、そのうち脳死の診断が行われたものが24件となっております。さらに、 この脳死の診断が行われて、家族に対してオプション提示が行われた、臓器提供につい てのお話が医者などからなされたものが8例となっております。この8例については、 結果としてすべて心停止後の臓器提供に至っているというのが、昨年度の調査の結果で ございます。  資料1ページ目に戻りまして、現在の普及啓発の取り組み状況についてお話しさせて いただきます。まず1点目が、国民に対する普及啓発ですけれども、臓器提供意思表示 カード、シールの配布につきましては、公的機関ですとか、医療機関、店舗に配置をし ていただいております。それから健康保険の関係の機関等に対しては、被保険者証の更 新の際の意思表示シールの配布について、協力のお願いをしております。また、法律が 施行されてから今年の3月までにカードの配布枚数は、累計で約1億463万枚、シール については2,710万枚を配布してきております。また昨年の10月からカードのデザイン を一新する等の取組みを行っています。  2点目、関係団体による普及啓発でございますけれども、毎年10月の臓器移植普及推 進月間を中心としまして、ネットワーク、都道府県、腎バンク等関係団体で活動を行っ ています。また、昨年から公共広告機構、ACによるCM、ポスターによる普及啓発を 再開しております。またネットワークでは、移植医療に関するリストバンドを配布する といった取り組みを行っております。  2ページ目に行きまして、教育における普及啓発でございますが、平成16年度から全 国の中学3年生、これは意思表示の有効とされる年齢が15歳以上ということになります ので、大体120万人になりますけれども、中学生に対してわかりやすいパンフレットを 作成し、臓器移植対策室の方から配布しております。  4点目、臓器提供意思登録システムの整備についてですけれども、これは今年の夏頃 からネットワークで運用開始する予定でございますが、後ほど報告事項の中で御説明を させていただきます。  それから、医療保険の被保険者証への意思表示記入欄の記載についてですけれども、 これは平成15年に健保法の施行規則等が改正されまして、被保険者証の余白については 各保険者の判断によりまして、臓器提供の意思表示の記入欄を設けたり、シールの添付 欄を設けたりするという形で、適宜使用して差し支えないということとされました。こ の結果、現在御覧の国保と2つの健保で意思表示欄の記載がされております。また、政 府管掌健康保険につきましては、意思表示欄を導入することについて、現在1カ月の期 間を設けてパブリックコメントを実施しているところでございます。  次に行きまして、医療機関等関係者への普及啓発、支援ですけれども、都道府県コー ディネーターによる医療機関への協力要請をしております。院内コーディネーターの設 置支援。  それから2点目、医療関係者、医療機関等の体制整備の支援としましては、医療関係 者に対する研修、マニュアルの作成についての協力、シミュレーションの支援。それか らネットワークでは、昨年脳死判定に関するDVDを作成して医療機関に配布をしてお ります。それから、臓器提供に関する意思表について入院時に確認するといった形での 院内システムの整備の支援について、学会で検討しているところと聞いております。医 療機能評価における臓器提供体制の評価。これは日本医療機能評価機構で病院の機能の 評価をしているのですけれども、その評価の審査項目の中に、臓器提供施設については 臓器提供体制として十分な体制をとっているということを盛り込んでいるというもので す。  3点目、提供病院に対する事例発生時の支援ですけれども、メディカルコンサルタン トの派遣、それから脳神経外科学会による脳波検査の支援、またネットワークからの提 供施設に対する交付金。これは、これまで100万円であったものを、昨年から200万円 に引き上げを行っております。また、脳死判定、ドナー管理等に関する診療報酬上の評 価。これは後ほど報告事項で御説明させていただきます。  移植医療の社会的基盤整備に関する研究。これは先ほど一部御説明させていただきま したが、スペイン等の取り組みを参考としまして、病院のスタッフの意識調査ですとか、 院内の体制の構築支援モデルの開発。それからコーディネーターの教育プログラムの開 発等を実施しているところでございます。  最後に、今後についてですけれども、本日普及啓発についての御意見をいただいた上 で、今後はこの委員会のもとにあります臓器移植に関する普及啓発作業班、これは班長 は大島先生にお願いしておりますけれども、その作業班の場で、国内における先進的な 取り組みですとか、普及啓発に関する調査研究の成果などを踏まえて、主に医療関係者 に対する普及啓発を中心として、効果的な方策について検討していただく予定でおりま す。以上です。   ○永井委員長 それではこの件に関して御質問、御討論をお願いいたします。先ほど、 長谷川先生の調査がございましたけれども、何ページでしたでしょうか。   ○矢野補佐 14、15ページです。   ○永井委員長 15ページで、脳死の前提条件を満たしていたケースが134で、脳死の診 断が24件ということですが、この差というのは、要因はわかっているのでしょうか。   ○矢野補佐 今回の平成17年の調査では、まずはレビューをして、数として、この段階 でこういう数字が出たというところまでがわかっておりまして、その詳細の分析につい ては、今年度の調査で引き続き分析がされることになると聞いております。   ○永井委員長 あるいは大島先生、何かこの辺の事情について御存じでいらっしゃいま すでしょうか。   ○大島委員 今のところは、事実がこうであったというだけで、実際になぜ脳死の診断 がされていないのか、いわゆる脳死の診断というのも法的な脳死の診断という意味では なくて一般臨床の流れの中における脳死の診断ということで、それはなぜされていない のかということについての詳細は、わかりません。   ○松田委員 今のところに関連するのですが、13ページのいつもの情報ですね。この全 体の比率が、この委員会で何遍も申し上げているのですが、ほとんど毎年この歩どまり というか、順番に減っていく頻度はほとんどずっと変わりないですよね。本当にそうな のか。要するに最近になってここの比率が、数はふえていっているのですけれども、ど う見てもその半分は4類型以外でとか、心停止後とか、この比率は年度ごとに分析され て少しは何か、改善という言葉は悪いですけれども、変わっているのかという分析が必 要ということと、根本的にやはりシステム上の問題があって、ここの最終的に650とい う数から40にとどまっている。当然母数は広げたらいろんな議論があると思いますが、 最終的にここまで行く、せっかく生前の意思を示されている方の臓器を提供に生かそう という努力をどうするかという、そこを、これを見て関係者は考えなければいけないと 思うんですね。  その中の大事なことは、今の委員長の指摘にもありましたけれども、ここでも「法定 脳死判定が実施できず」という149例のうちの、98例が「脳死と診断できず」というの ですけれども、ここは医学的なことなので、次も含めてできればここの98とか、37ま でですかね、この辺の医学的な検討をこういう会で出していただければ、どうしたらい いかというのがわかってくると思います。いつもこの表を見て思うのですけれども、下 の方をだんだん右の方にしていくにはどうするかという視点で、いろんな資料を出して いただければと思います。   ○藤村委員 14ページですが、このグラフは素人の私からいたしますと、病院関係の方 々が、脳死に関しての妥当な判定方法であるというところで、数字から言うと、とても これは理解をしていないということなのですか。38.6%しか病院関係者が……その辺が とても不思議というか、これだけいろいろと脳死の臓器移植のことをこうして先生方と 考えております。また、いろいろと具体的なことをやっておりますのに、病院関係の方 々のこの意識の低さというのは、私は、素人としてはとても理解に苦しんでしまうとこ ろですが。  それから、脳死から臓器移植されて元気になられた方々のその後の健康状態などは、 ネットワークで全部掌握していらっしゃるのですか。そういうことも、全部公開すると いうことはいろいろプライベートの問題がありましょうからあれですけれども、ときど きこの会議では例えばそういう方々の健康状態、本当に元気になられていらっしゃるの か、そういうこともちょっとお教えいただくとありがたいと思いますので。  大島先生がこれからなさいますこれをもっと普及するためのことも、どうぞお願いし て、私どももお手伝いできることがありましたらと思っております。   ○永井委員長 では大島委員、お願いします。   ○大島委員 今の御指摘は、実は私たちがこのデータを見たときにも愕然としまして、 まさかこれほどだとは本当に思っていなかったのです。このデータを見てからどのよう に頭を切りかえたかというと、臓器提供、臓器提供なんていうお話をしていても根本的 なところから考え直さないと全く空回りをしているのではないかと考えました。全く御 指摘のとおり、医療関係者が脳死というのを本当にわかっているのかと。この程度の理 解度では、一般の方に幾ら話をしても説得力をもたないというのは、全く御指摘のとお りだと思います。  今、日本全体で100万人以上の方が1年に亡くなられていますが、その中で年齢要件 あるいは医学的な要件、そして脳死の要件というようなものを全部かけ合わせていって、 そして実際に臓器の提供の意思があるか、仮に臓器提供意思カードを持っている方を10 %ぐらいにカウントしますと、年間に少なくとも1,000人以上2,000人ぐらいまでの間 の方が臓器を提供してもいいという意思を持ったまま亡くなられているということが、 これは机の上の計算ですけれども、成り立つわけです。  法律の第2条に、生前に臓器の提供をしたいという意思は尊重されなければならない ということがはっきり書いてありますので、この精神にのっとって臓器を提供したいと いう意思をどう生かすかというようなことを考えて、これを実現していくためには一体 どういう方策があるのかというのが、今我々が考えているところであります。15ページ の医療記録レビューというのは、入院から死までの過程でどこに問題があったのかとい うことを各プロセスをチェックしてその問題点を明らかにするもので、それによってど ういう方策で解決に向かえばいいのかということを具体的に提示して、それを具体的な 行動に移していくしかないのだろうという考え方で進めようとしているのが、我々が考 えていることです。   ○相川委員 今の藤村委員の、14ページの左の(1)のところですけれども、まず1つ だけ確認ですけれども、病院職員というのは、大学病院ですと医師を教員、医師以外を 職員と言うのですけれども、これは医師も入っているわけですね。わかりました。それ で私のコメントですけれども、この(1)、もし僕がこういうふうに聞かれたら、僕は ドント・ノーなんですよね。つまり、「脳死」ということと「判定方法」ということを 一緒に聞いていますので、これは何を聞こうとしたのですか。「現在の脳死判定方法は」 ということですか。「脳死は」が主語になっていますよね。そうすると答えられないで すよね。  というのは、文句を言っているわけではないんです。ノーというのはたったの2倍な んですよね。積極的にノーと答えている人は少ないので、もうちょっとはっきり問えば、 僕は38.6よりは、ドント・ノーあるいはノー・アンサーの方がどちらかに答えてくれた のではないかと思うのですけれども。そもそも、脳死の判定方法とか判定基準というこ とと、脳死は人の死であるかどうかというところが、はっきりされていないのではない かと思うんですけれどもね。   ○大島委員 厳密には、医学的に死を判定するのに脳死というのは妥当な判定方法であ るかという意味合いの質問のつもりだったのですが、確かに先生が御指摘のように少し 考え込むとちょっと迷うかなと、今御指摘を受けていたしました。   ○大久保委員 きょうのお話では普及啓発についての意見を述べていいということだと 思いますが、正直に言って、私は患者団体の代表なので、(2)のところに患者団体の名前 が一つも出てきていないのは、私たちとしては残念であります。確かに日本の患者団体 は大変で、人的にもそうですし、資金的も非常に苦労しながらかなり頑張って、患者団 体としてできることをして、かなり普及啓発運動をやっているつもりであります。正直 に言って、我々は腎バンクより頑張っていると思いますが、そこに患者団体の名前がな いのが非常に残念です。  こういった公共広告機構とか日本全体におけるポスターをつくったりということは、 やはりネットワークにお願いしなければいけないことだと思いますけれども、普及啓発 というのはもう一本ありまして、地域に根ざした運動というのがあります。この運動は、 やはり患者団体が非常に頑張ってやらせていただいていると思います。もっと本当はや りたいと思うのですが、患者団体も皆さん病気を抱えている方もいらっしゃいますし、 腎臓透析の方も非常に今厳しい状況で治療を受けていらっしゃいますので、その中で頑 張って各団体はやっていると思います。  特にこういう患者団体の方が力を入れているのは、地域における健康フェアだとか、 いろんな一般の方たちと接点をどうふやしていくかということを非常に大事に考えて、 我々も運動しています。これからもそれをもう少し強化することが大切です。普及啓発 は、1つは社会全体、日本全体を考えた普及啓発。中央から地方の方にいろんな情報を 流していくということも非常に大事だと思いますけれども、もう一つはやはり地域に根 ざしたところで、一般の方たちと本当に触れ合うような接点を持ったところでの活動と いうこと。この2つをやらないとなかなか進まないと思います。  もちろんここで今問題が指摘されました病院関係者に対する普及啓発というのは非常 に大事だと思いますけれども、なかなか患者団体としてはそういったところに踏み込め ませんので、我々としてはできるだけ一般の方との接点をふやして、そこで普及啓発を やっていきたいと思っていますし、今も微力でありますけれども皆さん頑張っていらっ しゃるということを、ぜひここで認識していただきたいと思います。よろしくお願いし ます。   ○永井委員長 よろしいでしょうか。そうしましたら、事務局を中心にさらに進めてい ただくことにしたいと思いますが、ぜひ患者団体という視点を入れていただきたいとい うことでございますが。ほかに何か御意見ございますか。   ○町野委員 非常に興味深い調査で、現物を読んでみたいと思います。私も、医療関係 者の間で脳死についてネガティブな人が多いということはかなりショックを受けました が、私の経験ですと、移植を担当される方はポジティブですけれども、例えば救命救急 だとかほかの医療の分野になってまいりますと、多くの人はどっちでもいい、あるいは ネガティブという人がふえているというのが感触です。だから、内訳をちょっと聞いて みたいと私は思います。  日本の生命倫理の特色は、立場の相違が倫理の相違にすぐなるということがあり、こ れはかなり問題だと思っております。皆さんがおっしゃられるように基本的に医療関係 者の方の理解とか、それが得られない以上は、社会の理解も得られないだろうと思いま す。  それからもう一つは意思表示カードの普及とかそういうことに向けての活動は、もっ と積極的に私は進めるべきではないかと思います。もちろん法律が将来変わって、本人 の積極的なオプトインがなくてもオーケーだとしても、やはり臓器の提供は本人の意思 に基づいていなければいけない。それは現実的な意思かどうかは別といたしまして、と にかく本人の意に反するものであってはならないという点ははっきりしているわけです から、ノーという機会ももっと与えるようにしなければいけないし、イエスという機会 も与えるようにされる必要があるだろうと思います。   ○片岡室長 藤村委員のお話にありましたように、移植を受けられた方のその後の状況 という資料について、本日は御用意できませんでしたが、こういう機会に次回以降、御 用意させていただきたいと思います。  また、カード情報で1,000件から減っているという情報について、これまでの累計で 出しておりますが、最近の状況とか、いろいろと変わってきているかどうかも大事だと 思いますので、そういう最近の状況等も踏まえて今後は用意させていただきたいと思い ます。  また、患者団体の方々に対しては、普及啓発について先頭に立ってご活動いただいて おり、本日の資料に抜けておりまして大変失礼いたしました。もちろんこれからも大事 なことだと思っておりますし、行政だけ、あるいはその他医療関係者だけでもなかなか できませんので、これからも連携して行っていきたいと思っています。  小中委員 先ほど来からのデータで、きょうは正確なデータ的は持ち合わせていない ので非常にあいまいな表現になるかもしれませんが、実際的にコーディネーターとして 臓器あっせん、あるいは提供病院の普及啓発の現状から御報告したいと思うのです。  昨年の臓器の提供数は90数件ございますが、その中で御家族から先に病院の方に申し 出られて移植につながった経緯と、病院の方が死後の選択肢の1つとしての臓器提供を 家族に御提示して提供につながった比率を見ているものがございますが、病院の方から の提示の比率が年々ふえております。徐々にふえて、昨年は先に家族が申し出られたの が50%、病状説明の終わった後に、選択肢の1つとして臓器提供の方法を主治医が提示 して提供につながった比率が5割でした。正確な数字で御紹介できないので申しわけな いのですが、以上のことから病院の方々の御理解が深まっているということを一言つけ 加えさせていただきたいと思います。   ○永井委員長 ありがとうございます。それでは最後に……時間の関係がございますの で。   ○大島委員 済みません。今のお話は非常にいいことだと伺っているのですが、先ほど も言いましたように、臓器を提供したいという方が、日本の中には潜在的に多くみえま すが、その方たちの意思が現実に実現されていない。それも極めて多く実現されていな いというのが実態としてある。なぜなのかということを考えたときに、そんなに潜在的 に実現されないという状況があるのはネットワークの責任なのかと考えると、必ずしも ネットワークの責任だとは言えないんですね。  ネットワークの業務の中にそういったことがはっきりと責任としてあるのかというこ とになると、必ずしもそうではない。そうすると、本気になってこの問題をきちんと解 決しようとするような仕組みとか形というのが、日本の中にはないのではないか。臓器 の提供については最終的には、現場の方たちの善意に頼るしかないというような形が今 の日本の実情ではないかと考えられますので、そこのところをもう少しシステムとして 動かすようなことを考えないといけないのではないか、ということも今後考えてみたい と思っています。   ○松田委員 大島先生にフォローすることになると思いますが、きょう普及啓発が出ま したので、従来から言っていることをちょっと突っ込んで提案したいと思います。1つ はコーディネーターですね。小中さんも頑張っておられますが、海外に学ぶことの1つ としては、提供病院でのコーディネーターの数はかなり提供に結びつくというのは明ら かなんです。スペインから見まして。もちろん法律とか社会状況は違うと思いますが。  それで、ネットワークの理事会で私は申し上げたのですけれども、かなりの国費がネ ットワークに行って今の普及啓発に使われていますけれども、要するにコーディネータ ーの数は非常に限られているわけです。今のコーディネーターを例えばどれくらい増や したら実際に臓器提供がどのくらいふえるかというシミュレーションというか、その辺 の検討をぜひしていただいて、そして国から使っているお金をもう少しコーディネータ ーにふやすかどうか。今は都道府県と半々にしていますけれども。  恐らくこれから大事なことは、普及啓発と同時に、現場のコーディネーターを増すと いう、それが大事であって、そのための資料づくりというか、それをどうして分析して 実際にどうお金を使うかという方に持っていく。もうされているとは思いますが、ネッ トワークで私も提案したけれどもほとんど聞いてもらえなかったのですが、ぜひこの会 からも提案していただければと思います。   ○永井委員長 時間の関係で、この件に関しましては今後も、普及啓発ワーキンググル ープがございますので、さらに具体的な御検討を進めていただくということにしたいと 思います。次に報告事項でございますが、事務局から御説明お願いします。   ○矢野補佐 本日、報告事項が4件ございます。続けて御報告させていただきます。  まず、臓器提供意思登録システムに関する作業班の報告、資料4でございます。この 作業班については、昨年9月のこの委員会で、臓器提供意思登録システムをことしの夏 以降運用開始するということで作業班で議論いただくということで御了承いただきまし て、本年の1月から3月にかけて開催されました。作業班のメンバーは7ページにござ いますけれども、コーディネーター、法律の専門家、医療関係者、情報システムの専門 家にお集まりいただいて、非常に精力的な御議論をいただきました。  システムの目的や基本的な仕組みについては昨年御説明させていただきましたが、イ ンターネットを活用してカードを普及することによって、カード所持者の一層の増加を 図るということと、臓器提供に関する意思がより確実に確認されるようにするというも のです。  システムの概念図については、8ページにございますけれども、基本的な仕組みとし ては、携帯メールやパソコンから御本人の情報、氏名、生年月日、住所等を入力いただ いて、臓器提供に関する意思、臓器提供します、しません、という意思を入力していた だいて、メールアドレス、パスワードを記載した上でネットワークに登録する。ネット ワークで登録されますと、その登録された内容が記載されたカードが御本人の住所あて に郵送されて、御本人にはそれに署名をしてお持ちいただくというのが基本的な仕組み でございます。  3ページのシステムの運用について、幾つか御議論のあったポイントを御説明させて いただきます。まずシステムに登録された意思表示の法律上の取扱いですけれども、「脳 死下で臓器提供します」という意思表示については、臓器移植法の中で本人の書面によ る意思表示が必要とされておりますので、このシステムの登録だけで有効というふうに されるわけではない。一方、心停止下での臓器提供については、法律の附則の中で、御 本人の意思が不明の場合は御遺族の承諾で提供できるとされているのですが、拒否の意 思表示をされる場合には、書面による意思表示でなくても、臓器摘出されないというこ とになりますので、このシステムに登録しておくと、それによってあっせんされないと いうことになります。  本人が登録した状況であることを確認する方法としましては、4ページになりますけ れども、郵送によって、登録した覚えのない方はネットワークに対して連絡をしていた だくという仕組みにしておりますけれども、拒否の意思表示の場合には、登録しただけ で有効とされるということで強い効果があるということなので、本人のなりすましの防 止が必要である。そのために何か工夫ができないかという御議論がありまして、少なく とも拒否の意思を登録された方につきましては、登録内容を記載したカードと一緒に確 認番号というのをお送りしまして、その確認番号が届きましたらまたネット上でその番 号を入力していただきまして、それによって意思表示が有効として取り扱われるという 仕組みにしてはどうかという御意見でした。  その他、保存期間とか、登録された情報を定期的に確認するといった御意見等があり まして、資料の5ページ目、6番目になりますけれども、システムの検索を行う時期に ついてですけれども、ネットワークでは、臓器のあっせんを行う場合には必ず御本人が システムに登録していたかどうか、またその内容を検索して確認をするということとさ れております。またその検索する段階としましては、現在の臓器あっせん手続の過程で、 医療機関からネットワークに連絡があって、ネットワークが御本人の情報を把握したと きに行うこととする。このほか、家族からの求めによって検索の依頼があった場合にも、 検索を行うこととしてはどうかという御意見がありました。  それから、登録することができる方の年齢は、15歳以上とする。それから、登録しよ うとする方に対しては、必要な事項を必ず事前にわかりやすく説明しておいて、御本人 の了解を得ておくということ。  6ページ目になりまして、安全管理。今回取り扱う情報というのが、個人の臓器提供 に関する御意思ということで極めて重要なものでありますので、十分な対策をとるとい うことが提言されました。また、今後移植医療の制度とか政策の状況に応じまして、よ りよいシステムのあり方について見直しを行っていく、とされました。  これらを踏まえまして、システムの具体的な運用については引き続きネットワークで 検討を行い適切な運用を図るというのが作業班の結論でございます。   ○永井委員長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。この件に関して御質問、 御意見がございましたらお願いします。   ○矢野補佐 すみません。報告事項を先に全部御説明させていただいてよろしいでしょ うか。   ○永井委員長 はい、お願いします。   ○高岡主査 続きまして、資料5について御説明申し上げます。  臓器移植の保険適用についてということでございますけれども、平成18年度の診療報 酬改定におきまして、臓器移植の保険適用、診療報酬上の新たな評価が行われました。 これまでは、同種腎移植術また生体肝移植術について保険収載がされておりまして、そ の他の主な死体臓器移植につきましては高度先進医療という枠組みであったものが、真 ん中の表に書いてございます網掛けの部分、心臓、肺、肝臓、膵(死体、脳死した者の 身体を含む。)からの臓器移植が新たな保険適用とされたところでございます。  具体的な内容といたしまして、それらの臓器に関するそれぞれ採取術、移植術の技術 料が新設されましたことと、もう1点が、臓器提供施設における脳死判定、脳死判定後 の医学管理等に関しまして、脳死臓器提供管理料ということで、1万4,200点、(レシ ピエント1人につき)が新設されました。  これらの点数につきましては、提供病院と移植病院の相互の合議によって点数、金額 が配分されるということでございますので、現在臓器移植ネットワークにおきまして、 費用配分規定を作成しているところでございます。特に脳死臓器提供管理料につきまし ては、レシピエント1人につき1万4,200点ということでございますけれども、レシピ エントの数にかかわらず1人でも5人でも一定の金額を提供病院に支払えるような枠組 みで検討中でございます。簡単でございますが以上でございます。   ○矢野補佐 続きまして資料6の第164回通常国会に提出された関連法律案についてで ございます。  臓器移植法の一部を改正する法律案、A案、B案が、今年の3月31日に今通常国会に 提出されております。内容は、昨年8月8日に提出されて廃案となりました法案と同じ でございますので、前回の委員会で御説明させていただきましたので、説明は省略させ ていただきます。  最後資料7、平成17年11月に臓器移植対策室長から各臓器提供施設長にあてて出さ れた通知について御報告させていただきます。通知の内容は2点ございまして、1点目 が、法的脳死判定マニュアルの遵守の徹底を改めてお願いするということ。2点目が、 脳死判定記録など書式例を改定したというものです。  これは経緯としましては、昨年の9月に行われました検証会議の場で、30例目の事例 の検証が行われまして、その中で脳死の前提条件の確認としてのCTの画像診断等が行 われていないといったことがありまして、これがマニュアルに準拠していなかったと。 マニュアルに従って行うべきであるという検証会議からの意見が出されました。これを 踏まえて、臓器対策室長名で各提供施設あてに、改めてマニュアルの遵守の徹底を図る とともに、脳死判定の記録の書式例等を改定してお示ししたものでございます。  書式例の改定につきましては、資料の3ページ目になりますけれども、脳死判定の的 確実施の証明書、これは脳死判定を行った判定医から移植医に対して交付される書類で ございますけれども、この書類の中に、下の※印の部分「以下のすべてに該当すること を確認した上で脳死の判定を実施しました」という記載を追加いたしました。  次の5ページ目の脳死判定記録書になりますけれども、これは脳死判定を行った施設 で一定期間保存が義務づけられているものですけれども、これにつきましても、6ペー ジ目になりますけれども、上の前提条件のところで※印にある部分、それぞれチェック 項目を設けております。この記載を書式に追加しました。以上でございます。   ○永井委員長 ありがとうございます。以上一括して御質問、御意見をいただきたいと 思いますが、いかがでしょうか。   ○松田委員 保険適用の印刷物で、本を見ますと心肺移植も入っていましたけれども、 これには書いていませんけれども、あれはそのとおりでいいのですか。   ○高岡主査 そのとおりでございます。   ○永井委員長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。もし御質問等ございま せんでしたら、そういうことで進めさせていただきたいと思います。本日用意した議題 は以上でございますが、最後に事務局から連絡事項をお願いいたします。   ○矢野補佐 次回の日程につきましては、先生方の日程を調整させていただきまして、 決まり次第文書で御連絡をさせていただきます。お忙しいところ恐縮ですけれども、日 程の確保に御協力をお願いいたします。   ○永井委員長 よろしいでしょうか。それではこれで終了させていただきます。どうも ありがとうございました。                                    (終了) 照会先:健康局臓器移植対策室 高岡 内線 :2362