06/04/19 第30回厚生科学審議会科学技術部会議事録 第30回 厚生科学審議会科学技術部会 議 事 録 厚生労働省大臣官房厚生科学課 第30回厚生科学審議会科学技術部会  議事次第 ○ 日  時  平成18年4月19日(水)10:00〜12:00 ○ 場  所  厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館 9階) ○ 出席委員  矢崎部会長         今井委員 井村委員 岩谷委員 加藤委員 金澤委員          北村委員 笹月委員 永井委員 長尾委員 松本委員         南委員  宮村委員 【議 題】 1.第3期科学技術基本計画について  2.平成19年度厚生労働科学技術政策について  3.厚生労働科学研究費補助金取扱規程の改正について(不正経理等関係) 【配布資料】  1.第3期科学技術基本計画分野別推進戦略の概要について  2.平成19年度厚生労働科学技術政策(案)について  3.厚生労働科学研究費補助金取扱規程の改正について(不正経理等関係)  参考資料1.厚生科学審議会科学技術部会委員名簿  参考資料2−1.科学技術基本計画  参考資料2−2.分野別推進戦略  参考資料2−3.第3期基本計画を本格軌道に乗せるプラン2006 ○林研究企画官  ただいまから、第30回「厚生科学審議会科学技術部会」を開催いたします。委員の 先生方には、ご多忙の中お集まりをいただきどうもありがとうございます。本日は、 垣添委員、岸委員、黒川委員、竹中委員、長谷川委員からご欠席の連絡をあらかじめ いただいております。委員20名のうち、出席していただいている先生方は過半数を超 えておりますので、会議は成立していることをご報告いたします。  委員の変更がありましたのでご報告いたします。前国立感染症研究所長の倉田毅委 員が辞任され、国立感染症研究所長の宮村達男委員にご就任いただきました。前国立 身体障害者リハビリテーションセンター総長の佐藤徳太郎委員が辞任され、国立身体 障害者リハビリテーションセンター総長の岩谷力委員にご就任いただきました。この 結果、現在の委員は、参考資料1にお配りしております名簿のとおりですので、ご確 認をいただければと思います。  本日の会議資料の確認をさせていただきます。資料は、「第30回厚生科学審議会科 学技術部会議事次第」の下半分に書いてありますが3つあります。1番目は「第3期 科学技術基本計画分野別推進戦略の概要について」、2つ目は「平成19年度厚生労働 科学技術政策(案)について」、3番目は「厚生労働科学研究費補助金取扱規程の改 正について(不正経理等関係)」です。参考資料1、参考資料2−1、2−2、2− 3とあります。以後の議事進行を矢崎部会長にお願いいたします。 ○矢崎部会長  本日は、お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。今回 から2名の委員を新しく迎え入れるということで、一言ご挨拶をいただきます。 ○宮村委員  4月から、感染研の所長を仰せつかっております宮村です。本職は、肝炎ウイルス 等ウイルス学一般ですが、もっと広く感染症全体のことについていろいろな意見を述 べさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○岩谷委員  岩谷です。4月1日に、国立身体障害者リハビリテーションセンター総長を拝命い たしました。私の専門は整形科学とリハビリテーション医学です。どうぞよろしくお 願いいたします。 ○矢崎部会長  早速議事に入ります。最初の議題は「第3期科学技術基本計画について」です。事 務局から説明をお願いいたします。 ○林研究企画官  資料1に沿ってご説明させていただきます。2月、3月に当部会でご説明したこと のおさらいのようになって恐縮ですが、資料1「第3期科学技術基本計画分野別推進 戦略の概要について」というタイトルの資料です。1頁ですが、本年2月1日に厚生 労働科学研究の成果目標等をこの部会でご審議いただきました。その結果を私どもか ら内閣府に対して提出いたしました。その後、昨年末に総合科学技術会議から答申が ありました「第3期科学技術基本計画」が、平成18年3月28日に閣議決定されると ともに、内閣府ではそれと並行して、各省が提出した成果目標等を基に各省とも議論 をしつつ、右側の図に示しております「ライフサイエンス分野」「ナノテク・材料分 野」「環境分野」等の分野別推進戦略を検討し、それが3月22日の第53回総合科学 技術会議本会議において決定されております。  2頁は、分野別推進戦略を説明した紙です。第3期科学技術基本計画では、研究を 大きく「基礎研究」と「政策課題対応型研究開発」とに分け、後者の「政策課題対応 型研究開発」に対しては、科学技術の戦略重点化を図る。選択と集中の一層の徹底を 図ることとされております。  下の図の1にあるように、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー ・材料等の「重点推進4分野」と、エネルギー等の「推進4分野」という、全部で8 つの分野を選択し、各分野での課題等をまとめるとともに、その中で2にあるように、 併せて分野内での重点化も図ることとされております。  3頁は、分野別推進戦略の内容です。先ほど申し上げました8分野毎に、下の枠の 中にあるように、各分野の「状況認識」、「目標設定」これは研究開発目標や成果目 標が、その目標達成に対して責任を負っている各省の名前とともに挙げられているも のです。それから「重要な研究開発課題」これは予算の増減は別として、今後この基 本計画の5年間に、政府が取り組むべき重要な課題を抽出したものです。その中から、 特に今後5年間に集中投資すべき、つまり予算をこの5年間に重点配分していくべき 科学技術を選定したものが「戦略重点科学技術」というものです。また、研究開発の 取組を円滑に進め「活きた戦略」とするために、「研究開発の推進方策」というもの が別途とりまとめられております。  4頁は、選択と集中の考え方です。例えば、上のほうの左右にありますように、「科 学技術の発展可能性」「世界の技術との比較優位性」「経済的・社会的な波及可能性」 などの観点から選ばれた重要な研究開発課題は、全部で273課題あります。そのうち 当省の関係では「ライフサイエンス分野」41課題、「環境」57課題、「ナノ」29課 題があります。  そこから、さらに右下にあります各分野毎の戦略の理念として、「社会・国民のニ ーズに迅速に対応」「国際競争に勝ち抜く上で不可欠」という2つの観点から、基本 計画期間中に集中投資を行う科学技術としての戦略重点科学技術が62選ばれ、そのう ち「ライフサイエンス」7、「環境」10、「ナノ」10の科学技術が選ばれております。  前回もご説明したかと思いますが、「国家基幹技術」というのももう1つ戦略重点 の選択の観点としてあるのですけれども、これはスーパーコンピューターや宇宙ロケ ットなど国家主導型の大規模プロジェクトのことで、厚労省の関係では該当するもの はありません。  5頁は、厚労省関係の重要な研究開発課題の例と、対応する研究開発目標の例、成 果目標の例です。いちばん左端に、厚労省の科学研究における3つの柱である「健康 安心の推進」「健康安全の確保」「先端医療の実現」の3つにグルーピングして例示 しております。1例だけ申し上げますと、「健康安心の推進」では、がん、アレルギ ー・免疫疾患等の予防・診断・治療という重要な研究開発課題の例に対応し、真ん中 では、早期がん等の疾患の本態や病態変化を解明し、疾患の早期発見と悪性度の早期 診断を実現する技術を開発する、という研究開発目標。右側で、その結果としてがん の罹患率・生存率を改善するという成果目標が掲げられております。  6頁は、戦略重点科学技術の例です。戦略重点科学技術は繰り返しになりますけれ ども、重要な研究開発課題の中から、基本計画期間中において集中投資の必要がある ものということで絞り込まれたものです。ライフサイエンス分野では、(1)臨床研 究・臨床への橋渡し研究、(2)標的治療等の革新的がん医療技術、(3)新興・再 興感染症克服科学技術などの科学技術が掲げられております。  7頁は、研究開発の推進方策です。推進方策と申しますのは、上の◆のところにあ るように、その分野に特有の人材育成、産学官連携強化、成果の社会還元を支える制 度的な環境整備など、今後取組を強化すべき方策として示されているものです。ライ フサイエンス分野でいうと、例えば(1)臨床研究推進のための体制整備ということ が特に重要視されており、支援体制等の整備・増強、臨床研究者・臨床研究支援人材 の確保と育成、研究推進や承認審査のための環境整備、国民の参画などの事項につい て、今後詳細な検討を行うこととされております。  参考資料2−2に、いまご説明いたしました成果目標、研究開発目標、重要な研究 開発課題の全体像が、参考資料の28頁から後ろに表の形で記載されています。戦略重 点科学技術については、46頁にその体系が示されております。推進方策については、 19頁に掲載されておりますので併せてご参照ください。  資料1に戻りまして8頁です。厚労省の今後の取組について記載しております。1 つは、平成18年から平成22年の第3期科学技術基本計画期間中における、科学技術 投資の戦略的重点化の方針が、これから第3期基本計画を受けて、総合科学技術会議 から資源配分方針の形で示されてくるわけですけれども、これを毎年度の我が省の研 究開発の資源配分に着実に反映していくということがあります。  2つ目は、推進方策に示された課題です。例えば、先ほど申し上げました臨床研究 推進のための環境整備等の課題について、対応方策を関係府省とも協力しながら検討 していくということがあります。  3つ目は、臨床研究の基盤整備を進めるだけでなく、臨床研究そのものが成果を上 げることを重視していく。その取組を推進するということがあります。厚生労働省と しては、実用化につなげる出口の部分の研究を担っているということがありますので、 基礎研究の成果を実用化につなげる重要なステップとしての臨床研究自体を重視して いくということです。  最後に、技術動向・社会情勢の変化を見つつ柔軟に対応するということがあります。 これは今後5年間に技術や社会の状況に変化が出てくることがありますけれども、そ の場合には必要に応じてフレキシブルに見直しを行っていくということです。資料1 は以上です。  参考資料2−3は、「第3期基本計画を本格軌道に乗せる改革プラン2006」という タイトルの資料です。3月22日に総合科学技術会議有識者議員が連名で、総合科学技 術会議の本会議に提出されたものです。我が省に関係しそうな部分のみ簡単にご紹介 いたします。冒頭のパラグラフの2行目から「5カ年間の政府研究開発投資総額規模 『25兆円』に込められた国民の期待に応えるためには、総合科学技術会議は、策定さ れた計画や戦略のフォローアップはもとより、時代の要請に応えたスピードを持った 改革に取り組まなければならない」とあります。  そのために、その下の1.「『選択と集中、戦略性の高い研究開発投資』の実現に向 けて」ということで、1.の2番目の「各府省に」で始まるパラグラフに「政策課題対 応型研究開発における分野別推進戦略の具体化(特に、戦略重点科学技術への資源の 重点配分の確実な実施)を両輪として取り組むことを求める」ということです。3番 目のパラグラフで、「資源配分方針においては、課題の網羅的列挙を避け、優先すべ き重点課題を鋭角的に掲げる」ということがあります。4番目のパラグラフには、「こ れまでの資源配分方針、SABC付けの改革を図り」と書かれております。  2頁の2.の「スピーディな改革着手と実行」に関しては、冒頭から2つ目のパラグ ラフで「総合科学技術会議は2006年の最重点事項として、当面、次の3点を中核に据 え、早急に行動を開始する」と書かれています。  1点目は「研究競争力の強化とイノベーションの創出」ということで、厚労省に関 連する事項としては、例えば5つ目のパラグラフで「各省にイノベーション創出能力 の強化に係るこれまでの取組を総点検し、各省の間の縦割り的な障壁の除去、各省連 携によるイノベーション創出の具体化」等の「抜本的改革策の策定を求める」という ことで、各省連携ということが強調されております。  3頁の制度改革では、科学技術振興を取り巻く制度・運用面での隘路の解消として、 2行目に「我が国の治験の促進」ということが取り上げられており、これらの課題毎 に検討し、解決に導くための工程表を早急に策定することとされております。次のポ ツでは、「研究費の無駄遣いの防止やデータ捏造などの不正行為の撲滅に向けた取組 を進める」などのことにも触れられております。  その下の国民理解のところでは、「政府一丸となった戦略を早急に策定する」こと と、3つ目のポツでは、各府省に第2期の間の、過去の研究開発投資の成果を、効果 が得られなかった事例の分析も含めて、国民に向けてわかりやすく取りまとめさせ、 次年度概算要求の際に提出を求めて公表する、ということが記載されております。  この改革プラン2006は、総合科学技術会議有識者議員の考えをまとめたものという ことですけれども、今後、総合科学技術会議内の議論を経て、平成19年度の資源配分 方針にさらに具体的な形で反映されていくこととなると思われますし、その際には戦 略的重点化ということや、各省連携ということが、これまでにも増して強く求められ るのではなかろうかと想定しております。第3期基本計画及び分野別推進戦略につい ての現状の説明は以上です。ご意見をよろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  ただいまの、第3期科学技術基本計画についてご議論をお願いいたします。 ○笹月委員  資料1の6頁の「戦略重点科学技術について」の左の四角のライフサイエンス分野 の例として、(1)臨床研究・臨床への橋渡し研究ということが掲げられております。 いつもこのことが出てきて、トランスレーショナル・リサーチとかいろいろなことを 言われますけれども、今回は「橋渡し研究」という言葉で述べられています。これを、 具体的にどのような組織といいますか、支援体制でいくのか。言葉としてはいつも出 てくるのですけれども、具体的に何をどのように工夫するのか、というところがいつ もあまりはっきりしないのです。この点についてどのようにお考えといいますか、支 援体制の構築ということでプランがあれば教えていただきたいのです。 ○林研究企画官  この点がいつも問題になっていて、この部会でもご指摘をいただいているというの は確かにそのとおりです。厚労省では、厚労科研費の中で、今年度から臨床応用基盤 研究事業の中で、そういう臨床研究を行うときの基盤整備を推進するための事業を始 めております。そういうところが、1つ取組が実際に具体化している例という感じが いたします。  また、総合科学技術会議の中で、昨年から制度上の問題について行ってきた議論の 中で言われていたのは、被験者保護はどのようになっているのかという点でした。そ れに対して厚労省は文科省や経産省と協力をして、倫理指針を定めておりますので、 まずはその遵守について現場の先生方に周知徹底を図っていくのが大事でしょうとい うことです。その点についても、総合科学技術会議の議論がこれから始まるのと並行 し、厚労省でもほかの関係府省と連携を取って、まずは現在の遵守状況の実態調査を やっていく、それから指針の見直しも何年か後には控えておりますので、そのための 準備を進めていくということを考えております。そういうことで、基盤の整備、倫理 指針の徹底ということが、まず具体的な取組としてあるのかなと考えております。 ○北村委員  3頁の8つの分野を策定し、例えばライフサイエンスの分野の府省連携ということ をやる場合に、総合科学技術会議でもいろいろなところで言われてきたことかもしれ ませんが、ライフサイエンス分野の本部的なものが内閣府に置かれていて、例えば、 林企画官のような方は常時そこに詰めていて、厚生労働省には審議官との対応のため に帰ってくるぐらい各省がメンバーを出して、内閣府にライフサイエンス関係の事務 所を設けてやる方向になってきているのか。それとも、ライフサイエンス担当の事務 官は向こうにいるけれども、あとは各省庁で別々に配分したことをやるのか。  前に専門委員に入れていただいたときにも、やはり府省連携をやるならば、ライフ サイエンスの分野の各省庁が4省庁か5省庁関連しているところがあります。そこか ら厚生労働省の代表として、どの専門部分、つまりその橋渡し部分を掌るのは厚生労 働省だと思うのですけれども、そういった府省の組織としての発展性は出てきている のですか。 ○林研究企画官  いま北村先生からお話のあった点については、内閣府にライフサイエンス・グルー プというのがあり、そこを中心に関係府省がいつも集まって連携を取っていくという ことですので、既にそういう体制はできていると理解しております。  内閣府は、各省からいろいろな方々が出て仕事をされているのですけれども、ライ フサイエンス・グループは厚労省から2人出向し、その人たちがこの作業に当たって おります。 ○北村委員  厚生労働省から派遣されている方が2人位いることは知っていますけれども、林企 画官が常時詰めて指揮をするとか、もうちょっと中枢の人が集まる、ブレインクラス が集まるというのは、年にどのぐらいやられているのですか。 ○林研究企画官  第3期の基本計画の取りまとめの時期は非常に頻繁に会議があり、週に1、2回は やってきております。内閣府に出向している人たちは、私より上の方々です。 ○北村委員  分かりました。 ○永井委員  5頁を拝見しますと、先端性、卓越性、実用化を明らかに目指しているようなので す。ただ、安心とか安全という言葉が出ているわりには、医療安全とか病院感染対策 といった医療の基本的なシステムづくり、QC的な研究のことがあまり書かれていな いように思うのです。実際の運用ではそういうところにも気を使って、研究費の配分 をお願いしたいと思います。 ○林研究企画官  永井先生のご指摘の点は、参考資料2−2の40頁、先ほど重要な研究開発課題、研 究開発目標、成果目標の全体像が示されていると申し上げた部分ですが、40頁の29 番に「重要な研究開発課題」として、「医療の安全の推進、医療の質の向上と信頼の 確保に関する研究開発」ということが挙がっております。その点は、私どもも重要だ と考えて入れるよう主張してこのような形になったものです。 ○長尾委員  ナノ・材料とか、ナノテクが非常に大きなポイントになっていると思います。私た ちは、経産省とも一緒にディスカッションはするのですけれども、厚労省はどちらか というと開発にブレーキをかけるようなイメージなのです。我々のほうは、ヒトに対 する影響や、身体の中に入ってしまったらどうなるか、あるいは身体に接触したらど うなるか、あるいは労働環境などでヒトに対する影響を非常に懸念しています。なん となく厚労省はブレーキをかけるような言い方をされるのです。  経産省のほうも非常に力を入れて、安全性のほうもやるとは言っているのですけれ ども、我々とはかなり視点が違うのです。我々も、そんなに巨大な研究費が要るわけ ではないけれども、厚労省の視点でしっかりヒトに対する安全性を継続的にやってい くと、全体がうまくいくのではないかと思っています。 ○林研究企画官  私どもも、ナノテクの部分も重要だということはそのとおりで、それに対しては、 きちんと安全性を確保しながら研究開発を進めていくべきだと考えております。  長尾先生もおっしゃるように、最後にヒトへの影響が何か出ることは本当にないの かどうかというところは私どもの責任です。経産省の所掌としてはその部分は入って おらず、むしろ産業振興としてどういうことが必要か、という観点から考えていると 思いますので、そこに差が生じるのはやむを得ない部分もあるのかと思います。ただ、 ご指摘の点も踏まえて対応してまいりたいと思います。 ○金澤委員  参考資料2−2というのは、総合科学技術会議の資料ですから、厚労省の方にお伺 いするのは妙な話ではあるのですけれども、28頁以降は前々から見せていただいてい てかなり大事なことがいろいろ載っています。28頁の別紙1−2の説明の下の注1)、 注2)を見ますと、ここにやらなければいけないことを書かれたのはわかるのですけ れども、全体を網羅しているものでもない、特定の研究開発投資を前提とするもので もない。これは、一体どういうことになっているのでしょうか、教えてください。 ○林研究企画官  金澤先生がおっしゃるように、内閣府総合科学技術会議の資料ですので、私の答が 正しいかどうか保証はないのですけれども、おそらくここに書いてあることだけがす べてではない、ということの注釈かと思っています。 ○金澤委員  厚労省側からの提言といいますか、考え方がいろいろこの中に入っていますね。こ ういうのを求められるときにはどのように求められるのですか。求められたからこそ なったのだと思うのです。非常に大事なことが書いてあるわけです。 ○林研究企画官  基本的には、これまでの厚生労働科学研究で行ってきている、私どもの政策と非常 に密接に関連している調査研究ですけれども、そういうものが基本的にここにきちん と位置付けられるように、という考え方で主張してきております。ここに挙がってい ないと、概算要求しても、内閣府総合科学技術会議では、それを重要だと考えていな いではないかと取られますので、そういうことのないように気をつけてきたというこ とです。 ○矢崎部会長  ごく素人目に見ますと、注1)はここに述べているものが全てではない、重要なの が漏れているかもしれない。注2)は、ここに載っているから全て研究費を付けると いうわけではない。そのような注釈ではないかと思います。  先ほど、永井委員から言われたことは非常に大切なことだと思うのです。ここの部 会は科学技術部会ですので、メインはイノベーティブな科学技術開発ということが興 味の中心だと思うのです。興味というか、我々が推進する中心のものだと思います。 しかし、厚労省の研究としては、医療政策を進める上のいろいろなデータや、あるい は我が国の医療の質を向上させるために必要な臨床研究といったものは、厚労省とし て強く支援していただきたいのです。ただ、参考資料2−3にあるSABC付けの評 価というのは、そういう意味で改革していただくのならいいのですが、基盤研究のよ うに、やったことがすぐ結果につながるというような評価をされると極めて難しい。  一方では、いろいろな施策に貢献するようなデータをどう評価するかといった場合 には、やはりランクの高い一般臨床ジャーナルに掲載するというようなことが重要だ と思います。ただ、研究費を取ってからそこへ行くまでが、科学論文などと違って極 めて時間がかかるわけです。そういうところの配慮を是非していただきたい。それが ないと悪循環になってしまって、いつまで経っても、我が国から世界に情報発信する この領域での成果がなかなかないのではないか。ないのだから予算は削りますよとい うことだと、なかなか難しいところがあるかもしれません。厚労省としては、そうい う面で是非サポートしていただきたいというのがお願いです。 ○林研究企画官  いま部会長からご指摘のあった点は、次の議題ともたぶん関係してくると思います。 医療安全の確保なり、医療の質を高めるための臨床研究の推進といったことが重要だ ということは、私どももその通りだと考えております。  総合科学技術会議では、選択と集中ということが強調されております。私どもとし ては、全部重要だと言いたいところなのですけれども、選択をしろと。どこに集中し たかを明らかにしていかないと駄目だということで、そこをどのようにバランスをと っていくのかということだと思います。その点については、議題2で私どもの考え方 をご説明させていただき、ご意見をいただければと思います。 ○矢崎部会長  それでは、議題2に進ませていただきます。 ○林研究企画官  議題2は「平成19年度厚生労働科学技術政策について」ということで資料2です。 例年いまの時期に、当科学技術部会で次年度の厚生労働省の科学技術政策の大きな方 向性についてご審議いただいているところです。特に、今年は議題1でもご説明した ように、第3期科学技術基本計画及び分野別推進戦略が策定されましたので、それを 踏まえた平成19年度の厚生労働科学技術政策の基本方針を策定していかなければな りません。  まず、平成19年度の研究費の検討スケジュールから説明させていただきます。資料 2の1頁ですが、現在、総合科学技術会議において、平成19年度の研究分野における 資源配分方針の検討が開始されております。6月のところですが、本年6月の総合科 学技術会議において、政府全体としての「平成19年度の科学技術に関する予算、人材 等の資源配分方針」が決定され、示される予定です。その前に4月、5月と総合科学 技術会議の本会議が2度ありますので、そこで平成19年度の厚労省としての重点分野 についての考え方を必要に応じて表明していく、ということをすべきではないかと考 えております。平成19年度の資源配分方針の検討に向けて、本日は厚生労働科学技術 の大きな方向性についてご意見をいただければと思っております。  また6月に、政府全体の科学技術に関する資源配分方針が示されましたら、もちろ ん当部会においても、平成19年度の厚生労働科学技術における個々の研究課題につい て、さらに詳しいご議論を今後お願いすることになるだろうと考えております。  資料の2頁は、厚生労働科学技術研究の方向性です。大きく「ターゲットの重点化」 と「アプローチの改善」に分けております。ターゲットについては、昨年同様少子高 齢社会の進展に対応し、ライフサイエンス研究を重点化するということで、資料にも 書いてありますけれども国民の関心は、老後の生活設計や、自分や家族の健康、社会 保障の問題などに集まっている。これらの国民ニーズに沿うためには「健康安心の確 保」、あるいは「医療等持続可能な社会保障の構築」といったことが重要で、それを 具体化するために平成17年度から「健康フロンティア戦略」が策定され、健康寿命、 つまり健康で自立して暮らすことのできる期間を延伸していく、あるいは医療費の適 正化、健康安全の確保といったことを進めてきているところです。  「健康フロンティア戦略の策定」のもう少し詳しい内容については、資料の5頁に 参考として付けてあります。平成17年度から平成26年度にわたり、働き盛り層、女 性層、高齢者層のそれぞれに対し、糖尿病対策等の推進、先端医療の実用化等ターゲ ットを絞って対策を講じることにより、例えば右下にありますような生活習慣病の死 亡率・発生率の改善、あるいは要介護者の減少を目指しているというものです。  2頁に戻りまして、右側の「アプローチの改善」については、課題を解決するため の研究推進方策ということで、当部会の専門委員会でおまとめいただきました、今後 の中長期的な厚生労働科学研究のあり方に関する中間報告に沿い、(1)政策目的志 向型研究の更なる推進ということで、政策目的志向型研究という役割を一層明確化し、 それをさらに推進していくということ。(2)成果に直結する効果的・効率的研究手 法の開発として、治験を含む臨床研究を推進する、あるいは戦略型研究やプロジェク ト提案型研究という、中間報告で提案された研究を平成18年度から開始しております ので、それをさらに推進していく。(3)人材の育成。疫学/統計学の専門家等の研 究基盤を支える専門家を育成し、臨床研究の拡大等のニーズに対応してまいりたい。 これらを総合的に進めることにより、政策的に必要な科学研究を戦略的に推進してい くことを考えております。  3頁は、第3期科学技術基本計画と、厚労省の取組の関係を説明したものです。左 側の枠の中、内閣府総合科学技術会議は、第3期基本計画において3つの理念、その 右下が「健康と安全を守る」となっておりますけれども、こういう理念と、その右の 政策目標の下で、議題1でご説明したように、分野別推進戦略を決定しております。  厚労省では、第3期基本計画と、科学技術基本計画・分野別推進戦略に基づいて、 右側の枠の中にあるように、従来からの「健康安全の確保」「健康安心の推進」「先 端医療の実現」の3つの柱を中心として、第3期科学技術基本計画が示す理念及び政 策目標の実現に貢献することを目指していきたいと思っております。  その結果として、三角形の真ん中にあるような、安全・安心で質の高い健康生活を 実現したいと考えております。そのために右側の枠の下ですけれども、分野別推進戦 略が示す重要な研究開発課題及び成果目標等の実現に向け、着実に研究開発を推進し、 戦略重点科学技術や研究開発の推進方策が示す科学技術や体制の一層の充実を図って まいりたい。その結果、得られた研究成果を社会・国民へ還元したいと考えておりま す。  4頁は、平成19年度の厚労省の科学技術研究の推進の基本的考え方です。カラーで ないのでわかりにくいのですが、左下の第3期科学技術基本計画分野別推進戦略に掲 げられた「戦略重点科学技術」「研究開発の推進方策」と、それから厚労省の3つの 柱、従来厚労省が掲げてきた「健康安心の推進」「先端医療の実現」「健康安全の確 保」という3つの柱をリンクさせ、それを1つの大きなサイクルとして回していくよ うなイメージということです。それぞれのところに記載してある課題について、重点 的に取り組んでいきたいと考えております。  この内容自体は、前々回、前回と第3期科学技術基本計画及び分野別推進戦略の策 定に向けて厚労省の方針をご審議いただきましたときと、基本的に大きな変更はあり ませんが新たに、例えば、先ほど来申し上げておりますように、ライフサイエンス分 野での推進戦略において、臨床研究が戦略重点科学技術に位置付けられたことを受け て、4頁の左上の健康安心の推進の中に、臨床研究の推進を7番目に追加したり、そ れから中長期的な厚労科学研究のあり方に関する中間報告を受け、それぞれの課題の 中で戦略研究、あるいはプロジェクト提案型研究といったものが開始されたりという ことはございます。大筋の基本線は変えないのだけれども、中身に少しずつ新しい要 素を取り込んだり、あるいは新しいやり方を導入したりということで対応してまいり たいと考えています。説明は以上です。これについてもご意見をよろしくお願いいた します。 ○矢崎部会長  ただいまの、平成19年度の厚生労働科学技術政策についてご意見をお願いいたしま す。 ○井村委員  3頁の左側のいちばん下のほうに、「研究開発の推進方策」というのがあり、これ は前にも出てきた言葉なのですが「活きた戦略」という言葉が出ています。これは極 めて平易な言葉ですから、わかるはずなのですけれども、なんとなく具体的にわから ないので説明をしていただければと思います。 ○安達厚生科学課長  これも、内閣府総合科学技術会議で作った文章で出てくるものですからいま、調べ ております。 ○井村委員  あまり難問であれば結構です。その間にもう1つ、2頁の最初に「ターゲットの重 点化」というのがあり、いちばん最初に「少子高齢社会」という言葉が出てきます。 高齢社会のほうについては、例えば老後の生活設計などいろいろな言葉があります。 少子のほうについては、はっきりしたキャッチフレーズみたいなものが全然出てこな いので、どこかで「少子化への歯止め」といったようなものがあるといいという気が するのですが、いかがでしょうか。 ○林研究企画官  後のほうのご指摘についてお答えいたします。少子化のキャッチフレーズは、確か にこの資料には出てまいりませんが、「健康フロンティア戦略」の中の1つの柱とし て「女性の健康」というのが挙がっております。そこで特に取り上げられているのは、 女性のがんなのですけれども、それと関連して厚生労働科学研究の中では、母子保健 という捉え方をし、子ども家庭総合研究事業ということで、子供にも焦点を当てた研 究事業を設定しております。 ○井村委員  確かにそれはわかるのですけれども、これは科学技術部会ですからちょっと違うと 言われるかもしれませんが、例えば「安心して子供を産んで育てられる環境の整備」 という言葉が厚生労働省の施策の中には出てこないのでしょうか。 ○林研究企画官  いまの子供の関係の話では、参考資料2−2の37頁の20番のところに、「子供の 健全な成長・発達及び女性の健康向上に関する研究開発」という課題を1つ立てまし て、その中で取り組むこととしております。 ○井村委員  そうしますと、科学技術部会ですからこういうテーマが挙がってくるということな のですね。 ○安達厚生科学課長  2頁の図は、科学技術部会でおまとめいただきました中間報告の中から、典型的な ものを選び出したものです。その中間報告の中で、少子化に関しても何らかのご指摘 をいただいたかと思いますので、それを調べております。 ○林研究企画官  いま課長から申し上げました中間報告の中にも、高齢化の進展による社会的な負担 増の話が前文で書かれており、そういうことに取り組む必要があること、医療、保健、 福祉、年金等の国民生活の安心・安全に関する課題についても克服が求められている ことが書かれております。  それに関する研究課題として、参考資料2−2の44頁の40番に「ライフサイエン スが及ぼす社会的影響や、社会福祉への活用に関する研究開発」ということで挙げて あります。その中の研究開発目標のいちばん下に、「人口減少に対応するための社会 的基盤整備を確立するための技術を確立する」。あるいはその上のほうでも、子供の 話に少し触れられており、そういう形で挙がっております。 ○矢崎部会長  井村委員が言われるように、一生懸命探さないと出てこないという現状があるので、 これはそういう視点からも今後重点化するようにしていただきたいと思います。 ○井村委員  よろしくお願いいたします。 ○岩谷委員  「介護予防の推進」という言葉が何ヶ所かに出てくるのですが、これを科学的にど のように取り組むのか、具体的にどのようなアプローチが考えられるのでしょうか。 資料2の4頁、健康安心の推進の中に「介護予防の推進」という言葉が出てまいりま すし、5頁の健康寿命を伸ばす科学技術の振興の中にも、もろに「介護予防」とか「要 介護」という言葉が出てきますが、これらを科学技術の中でどういう枠組みでという か、どのようにお考えなのかを教えてください。 ○林研究企画官  いまの点に関しては、参考資料2−2の41頁の32番のところに、「リハビリテー ションや、感覚器等の失われた生体機能の補完を含む要介護状態予防等のための研究 開発」ということで、その右の概要のところに「老化・疾患・事故等により低下・喪 失した身体機能を回復・補完するため、あるいは要介護状態を回避や、障害保健福祉 に資するため、リハビリテーション技術、医療機器・福祉機器等を開発する」という こと。これが、いまご指摘の点に対するアプローチであろうと考えております。 ○岩谷委員  もう1つ、介護予防の成果を何で測定するのかが問題です。患者さんが医療から、 介護に、さらに在宅生活に移っていきますと介護予防の成果を測ることが難しくなり ます。ヘルスケアとソーシャルケアを一体化するような視点からの取り組みが必要で はないかと思います。 ○林研究企画官  いまご指摘の点は、平成19年度の要求に向けて検討させていただきたいと思いま す。 ○金澤委員  林さんたちのレスポンスはわかったので、逆にこの表から言っているのですけれど も、参考資料2−2の36頁の19番に私が関係しているところがあるので見ています。 この中に、こういうことが含まれるのかどうか教えていただきたいのです。ちょっと 具体的なことを言って恐縮なのですが、アメリカとヨーロッパで、アルツハイマー病 に対するコホート研究のものすごく大きなものが始まってしまったのです。ある一定 の方式に基づいてやるというわけです。日本はどうするのかと言われていて、かなり 大きなことなので考え込んでしまっているのですが、こういう国際的な動きに呼応し てやらなければいけないようなことというのは、この19の中に含まれると見ていいの でしょうか。そういう話をご理解いただけるとしてですが。 ○安達厚生科学課長  いまのようなお話でしたら、この19に含まれていると思います。冒頭に座長がおま とめくださったように、注のところで、網羅的に記載しているものではありません、 というエクスキューズをしてありますので、必要になればやるということも可能です。  新たに委員になられた方もいらっしゃいますので、先ほどの2頁の件について事務 局からご説明させていただきます。この資料2の2頁については、厚生労働科学技術 研究の方向性ということで、昨年、本部会において中間報告をおまとめいただきまし た。その中間報告を絵にしたものがこれです。言い換えますと、これが現時点におけ る私どもの厚生労働科学技術研究の方向性についての考え方です。介護予防の話、少 子化の話についてもう少し具体的なことを書くべきではないか、あるいは書いていな いのではないかというご指摘は、中間報告に包括的には書いてあるのですが、より具 体的なことは書いていなかったということで、結果的にこの表にはそれが反映されて いないということです。含まれていないということではありませんが、本部会におい てはそのような具体的なところまでの議論には及ばなかったということです。 ○矢崎部会長  これは予算制ですので、アドホック的な対応というのはなかなか難しいところがあ りますよね。そういう部門も将来持っていかれたほうがいい。そうすれば、健康被害 などの問題があるときに、ある程度の余裕があって、政策的あるいは戦略的に解決で きることもある。全部予算で配分というのは、研究の領域、健康政策、医療政策では 無理なところが出てきますね。 ○笹月委員  資料2の4頁の「推進の基本的な考え方」ですが、(7)に「臨床研究の推進」、 その基になった科学技術基本計画の下に、先ほどの「臨床研究・臨床への橋渡し研究」 というのが出てきます。先ほど質問して、結局その具体的なこととしては基盤の整備 だとおっしゃったのですが、参考資料の2−2総合科学技術会議の20頁の(1)「支援体 制等の整備・増強」を見てみますと、例えば「基礎研究からのシーズを臨床開発へ展 開するのみならず、臨床の視点からのシーズを基礎研究へ結び付ける取組」とか「臨 床医と基礎医学研究者、他領域の研究者との共同体制の増強」とか、言うなれば当然 のことしかここは書いていないわけです。  総合科学技術会議ですから総論でいいのかもしれませんが、これだけでは何も具体 的な支援体制の強化にならないわけですので、これを受けて厚生労働省として具体的 にどのような施策をするのか、あるいは公募研究を出すとすれば、その課題を、例え ばある病気について研究している人の持っているシステムにケミカルコンパウンドを 入れてやると、それをアップレギュレートするとかダウンレギュレートするという、 本当にアウトカムが創薬に結び付くような研究課題を公募するとか、厚労省としては この総合科学技術会議に書かれていることを具体化した施策を、是非示していただき たいと思うのです。 ○矢崎部会長  それは是非お願いしたいと思います。 ○宮村委員  いまの笹月先生のサジェスチョンに、少し補足をしておきたいと思います。先端的 な研究開発がエンカレッジされていて、これは最大の科学の進歩のための不可欠なモ チベーションとなりますが、厚生労働省には、もう1つ、このようにして得られたい ろいろな新しい開発技術や診断系を客観的に評価して、ただインパクトファクターの 高いジャーナルにパブリッシュされたということのみで評価するのではなく、エビデ ンスに基づいた評価ができるような、地道で、確実なものを期待したいと思います。  例えば具体的に言いますと、新興・再興感染症で新たな迅速で簡便な画期的な診断 系の開発というのは、非常にいいオリエンテーションを持った研究だと思うのです。 それを確実に、地道に日本人の中で評価する研究も又必要だと思います。必ずしも莫 大な研究費を必要とするわけではありませんけれども、厚生労働省がサポートしてい く1つの方向として大切なのではないかと思います。 ○矢崎部会長  結局、それを総合科学技術会議に厚生科学課の方が説得していただく、それで、S ABCの評価で、そういう研究でもSがとれるというプレゼンテーションをしていた だかないといけないわけです。これは厚生科学課だけではなくて、研究者、我々の共 同責任ですので、なるべく総合科学技術会議でそういう方面の臨床研究がSランクが とれるように、我々のほうでも工夫しないと、従来どおりではなかなか難しいところ がある。  そこで、先ほど申し上げたのですが、医療政策、我が国の医療の質の向上のための 臨床研究の点数を、従来のように科学的なジャンルと一緒に比較して議論されると、 どうしてもなかなか難しいので、そこを少し区分けして議論していただけるように。 それから、グローバルなスタンダードからは少しレベルは落ちるかもしれないけれど も、我が国ではこういう領域のデータがない、これは重要なのだということを特に強 調していただければ、大変ありがたいと思います。今後とも委員の先生方にもサポー トしていただきたいと思います。そのほか、いかがでしょうか。 ○金澤委員  ちょっと違う観点でお願いをしたいと思います。17年度から健康フロンティアが10 年間ということで始まりました。こういう息の長い計画というのは非常に大事だと思 うのですが、このような形で毎年毎年、1年空いた次の年の計画ではあっても、結果 的には毎年毎年新しいものをということで計画が出されるわけです。そうすると、当 然いままでの計画に少しかどうかわかりませんが、影響が出てくる。つまり、たぶん スクラップ・アンド・ビルドの原理が働くのだろうと思うのです。そういうことを繰 り返していくということに対して、必ずどこかがスクラップされると考えざるを得な いのですが、それでいいのですか。 ○安達厚生科学課長  途中見直しを行うことがこの中に含まれているか、というご質問かと思いますが、 これは含まれています。 ○金澤委員  なぜ私がそういうことを申し上げたかというと、それをやるとコホート研究が非常 に育ちにくいのです。釈迦に説法かもしれませんが、コホート研究というものに対し て非常に期待をしているのです。日本では臨床研究が非常に弱いということをいろい ろ言われていますが、非常に幅広く患者さんたちにご協力いただいて、長いこときち んと見ていくということが、あまりいままで評価されていなかった。  それに対して、このように臨床研究を非常に評価する方向に来たのは大変いいこと なのですが、下手をするとそれが途中でどんどん予算が削られていって、結局あまり 意味のないものになってしまう。それを非常に恐れるのです。そういうことがないよ うに是非お願いしたい。お願いでとどめておきたいと思います。 ○矢崎部会長  観察研究、コホート研究というのはきわめて重要だと思います。私は生活習慣病関 係の中間事後評価をしているのですが、コホートを円滑に進めるためのノウハウを研 究者自身がご存じない。皆さんペーパーで審査で通ってしまって、そのままいってい るというところがあるのです。システマティックに、我が国で効率よくコホート研究、 観察研究ができるような仕組みを、厚生科学課の研究として是非取り上げていただか ないと。出た結果が駄目だからということになると、最初の出だしの方法論があまり よくないということで。  そういう意味で、今度は戦略研究を立ち上げていただいて、しっかりプロトコルを 固めるところから始めるということで、そういう方面ではインセンティブな研究にな っていると思います。なるべくそういう方向で、よろしくお願いします。 ○笹月委員  いま部会長がおっしゃったことも大事だと思うのですが、コホート研究の場合には、 一旦スタートしたら長期にわたってサポートしなければ意味がないわけですので、ど のようなプロジェクト、どのような課題、どのような主任研究者のプロジェクトでス タートするかというのが、ものすごくクリティカルになるわけです。ですから、スタ ートする場合に、1年ぐらいその分野の専門家でつくった検討班のようなもので十分 検討させて、そして実際にスタートするという、その準備段階をつくっていただくこ とが必要なのではないかと思います。 ○北村委員  いまの件に関連して、矢崎部会長が事後評価をされている部門の事ですが、私が事 前評価をやっています。この間、事後評価から見た事前評価のあり方というものを、 矢崎部会長にもご出席いただいて検討しました。これは健康局の仕事なのですが、結 局、新しい方法を試みることになりました。  コホート、あるいは大規模臨床試験のアプローチ、どういう方法でやるかという第 1年目の経費に何千万も要るはずがないだろうと。何千人の患者の追跡が始まります と、何千万という金額がかかってくる、それでも足りないという形になるかもしれま せん。息の長い研究期間が必要になってくるのですが、初年度の計画の判断を重視し ようということで、初年度を大体1,000万円レベルで抑えて、そこで中間評価を受け ていただいて、大変いい方法論と、いい対象群だという判断があれば、最初に求めら れていた要求額に近付けていくという方法に今年からなりました。臨床試験では事後 評価委員会のご意見を反映して、事前評価の金額配分等も少し変わっている、という ことをお伝えしておきます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。厚生科学研究費というのは、初年度にある金額を 取ると次年度は必ず減額されるというので、初年度をいちばんマキシマムに要求され る傾向があるので、北村委員には本当にご苦労いただきました。ありがとうございま した。よろしいでしょうか。時間も過ぎていますので、次に「厚生労働科学研究費補 助金取扱規程の改正について」よろしくお願いします。 ○林研究企画官  ご議論ありがとうございました。井村先生の「活きた戦略」というのは、私の推測 では、ほかの分野は予算が減っているのに対して科学技術分野は増えていますので、 総合科学技術会議側は第3期基本計画で理念や政策目標を示して、それに沿って分野 別推進戦略を作って、それに従って各省に施策を行わせて、きちんとその成果を社会 や国民へ還元できるようなものにするという意味で「活きた戦略」ということを言っ ているのだろうと思います。その正確な意味は内閣府に確認をしてご報告したいと思 います。個別のご議論の中で出てきた話につきましては、7月以降に分野毎の研究課 題について詳しくこの場でご議論いただくことを予定していますので、その際に留意 させていただければと思っています。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。今ご議論いただいたご意見を十分踏まえて、総合 科学技術会議に厚生科学課が対応されるということですので、的確に説得していただ ければと思います。よろしくお願いします。評価を得たあとの予算配分の方針をこの 部会でご報告いただくということで、そのときにさらにご議論いただければと思いま す。よろしくお願いします。それでは次の議題をお願いします。 ○林研究企画官  それでは議題3の「厚生労働科学研究費補助金取扱規程の改正について」、資料3 に沿ってご説明をさせていただきます。前回の部会で、厚労省では「競争的研究資金 の不合理な重複及び過度の集中の排除等に関する指針」、これは関係府省で申し合わ せたものですが、この指針に基づいて、各府省における不正経理の取扱いも参考に、 競争的研究資金の取扱いの見直しを検討している、ということをご報告したところで す。  資料3の5頁からご覧ください。前回の見直しの主な内容としまして、厚労科研費 補助金の交付の決定が取り消され、しかも、それが補助金の他の用途への使用が認め られたようなケースでは、すでに補助金の返還が命じられた翌年度より2〜5年間補 助金を交付しないとされていたのですが、その年数について、どういう場合に何年と するのかということ、その具体的な考え方を定める方向で検討していると申し上げた と思います。それから、他府省または独立行政法人が所管する競争的研究資金におい て、一定期間交付しないこととされたものについては、そちらと同じ期間厚労科研費 補助金も交付しないようにするという方向で検討していることもご報告したと思いま す。これらのことを今回、資料の5頁、これは平成18年3月24日に出して3月31 日にマイナーチェンジした厚生科学課長決定に盛り込むことで手当をしています。  それ以外に少し変更があります。1頁の不正経理の関係では、この厚生科学課長決 定以外にも、厚労科研費補助金取扱規程も改正していますので、それについて若干ご 説明したいと思います。1頁に「主な改正点」とありますが、この取扱規程の改正も いま申し上げた「競争的研究資金の不合理な重複及び過度の集中の排除等に関する指 針」に対応するためで、改正前においても※1、※2のようなことは対応規定が存在 していました。  ※1は、厚労科学研究費補助金(以下、補助金という。)において不正が発覚した 場合には、不正を行った者は2〜5年間、補助金における主任研究者としての交付が 制限されるということで、これはすでにありました。※2は、補助金等の執行の適正 化に関する法律の適用対象事業において不正が発覚した場合、研究費ではない補助金 であっても、そちらのほうで不正が発覚した場合には、不正を行った補助事業者に対 して2〜5年の間、補助金における主任研究者としての交付が制限されるというもの です。  こういった点はすでに対応が図られていたのですが、今回、各府省申し合わせの指 針に対応するために、以上に加えて「改正による不正への対応強化」にありますよう に、(1)不正経理又は不正受給に共謀した者も交付制限の対象とする、(2)不正受給した 者に対しては、5年間の交付制限を行う、(3)補助金以外の競争的研究資金において、 例えば委託費による競争的研究資金なども含めて、不正経理又は不正受給が発生した 場合には、厚労科研費補助金においても交付制限を行う、(4)不正を行った者について は、厚労科研費補助金における分担研究者としての参画も認めない、といった点につ いて取扱規程を改正し、不正への対応を強化しています。  2頁は、不正経理を行った場合の厚生労働科学研究費補助金の取扱いが改正前後で どう変わったか、ということを表に示したものです。厚労科研費補助金で不正経理を 行った場合と、厚労科研費補助金以外の競争的研究資金で不正経理があって、そちら のほうで応募制限がなされた場合とに大きく場合分けをしています。それぞれ改正後 は、翌年度の厚労科学研究に主任研として応募、分担研として応募、いずれの場合も 不可になったということがお分かりいただけるかと思います。  3頁の平成18年3月31日付の厚生科学課長決定は、今ご説明した取扱規程の第3 条第7項の規定による特定給付金及び補助金を交付しないこととする期間について定 めたものです。3頁の2の特定給付金というのは、資料の1頁の(3)に書いてある厚労 科研費補助金以外の競争的研究資金のことです。厚労科研費補助金以外の競争的研究 資金で不正経理や不正受給を行った場合にはペナルティがかかることになりますが、 具体的にどの競争的研究資金がペナルティの対象になるのかということを示しておか ないと、ペナルティがかけられません。そこで、内閣府が具体的にどの研究資金が該 当するのかということを調べて各省に示していますので、それをここに掲げていると いうことです。  4頁の3は非常にわかりにくい文章なのですが、要は、1頁の(3)の厚労科研費補助 金以外の競争的研究資金、つまり、いま申し上げた特定給付金において不正経理また は不正受給が起きた場合に、厚労科研費補助金においても特定給付金で科せられた交 付制限期間と同一の期間、交付制限を行うということを言っている文章です。以上、 込み入った構成で恐縮ですが、今回の改正によって競争的研究資金の不合理な重複及 び過度の集中の排除等に関する指針で求められている内容には一定の対応ができ、他 府省の取扱いとも整合性がとれたものになったと考えています。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。きわめて厳格になったということですね。何かご 意見はありますか。 ○北村委員  不正経理と不正受給という2つの言葉がありますが、例えばデータの捏造のような ことをして、業績として提出したことの評価を受けて競争的研究資金をもらったと判 断される場合には、それは不正受給と判断されるのですか。 ○林研究企画官  データの捏造等の研究上の不正については、これはこれで別途いま検討していると ころです。ただ、そういうことが事実として確認される、あるいは身分の詐称があっ たことがわかるというようなケースは、不正受給に該当すると考えています。 ○北村委員  そういう場合には、厚生労働科学研究費についての支給を何年間か中止するという 命令は、厚生科学課長の名前で来ることになるのですか。誰からの命令で中止するの かということは決まっているのですか。特に我々は、文部科学省と厚生労働省と両方 もらっている人がたくさんいまして、どちらと明確に線引きできない共通項目のある 研究もあるわけです。本日の資料を拝見すると、すべて厚生科学課長決定となってい ます。その辺は決定されているのでしょうか。これからの問題ですか。 ○林研究企画官  今はその関係の決裁文書を持ってきていないものですから、誰の名前でということ はまた確認をさせていただきたいと思いますが、この制度は基本的に文科省等と並び で考えていますので、そこのところも考慮することになると思います。 ○矢崎部会長  これは、あらゆる省庁が普遍的にこれを守るということですね。 ○林研究企画官  これは厚生労働科学研究費が対象になっています。各府省の申し合わせで求められ ていることについて、各府省で自分が持っている研究費に対して必要な制度を整備す るということになっていまして、その厚生労働省版といいますか、厚生労働省として はこういうことをやります、ということをここで言っています。 ○金澤委員  これは、年度途中に発覚した場合に、その年度の交付金についてはどう扱うかとい うのは、どこかに書いてあるのですか。 ○安達厚生科学課長  この規定は、不正が起こった場合、そのあとに厚労科研費なり他省庁の研究費を出 すか出さないかの規定です。お金を不正経理しているわけですから、それについては 別途、補助金適化法に基づいて、今年度も含め、以前の不正のあった分は返していた だくことになります。ちなみに、不正がわかって応募してきている場合、これを採用 するかどうかは、かなり難しい問題があります。そのときには不正の状況を調査して いる段階ですので、この規定が動き出していない。これはなかなか辛いところがあり ます。それに関しては、この規定の中で明確にその場合どう扱うかが書いてありませ んので、知恵を絞って対応することとなります。 ○金澤委員  先ほどの林研究企画官の北村委員の質問に対するお答えに関連するのですが、一種 の虚偽の申請内容によって採択されたということがわかった場合の扱いというのは、 各省共通の扱いにしていただいたほうがいいのではないかと思います。ほかの省庁で は、その扱いは決まっていないのではないですか。これはお金の関係のものと、いわ ゆる不正行為とのちょうど中間に当たることなので、別個にきちんと検討したほうが いいのではないですか。今それをこの中に含めるというと、ちょっと厄介になりませ んか。グレーゾーンがものすごくあると思うのです。 ○安達厚生科学課長  例えば虚偽の所属を書いてあるといった明確な場合について申し上げましたが、お っしゃるようなデータ捏造などに関しては、ご指摘のとおり対応についての検討が必 要です。このため、前々回のこの部会でご報告させていただいたかと思いますが、別 途、各省連携して現在検討中です。 ○矢崎部会長  私からお聞きするのはいけないかもしれませんが、5頁に1、2、3、4、5とあ りますね。5は論外で、4もそうですが、研究費というのは申請してから1年後に、 例えば先端的な研究の場合、申請したときにどうしても必要な研究費は、予算の前に ほかの研究費が下りて、どうしても必要だから購入してしまったような場合がありま すよね。そのとき、いま各大学などで問題になっているのは、目的使用外といいます か、例えばラットを買うということで申請したお金を、ほかの設備、研究費に使った というもので、これは目的外使用ということで厳しく糾弾される対象になっているの です。ただ、現実としてそういうことが起こり得るので、そのときどうしたらいいか という協議の場はあるのでしょうか。それはもう決まったことだから、そのとおりに 使わなければいけない、あるいはその分返却しなさい、という規定なのですか。そう いうことはどういう範疇に入るのでしょうか。研究費をこういう項目で申請したけれ ども、こういう事情でほかのところに使いたい、ということを申請できるシステムは あるのでしょうか。 ○林研究企画官  もし研究目的以外に変更されたということであれば、変更のための手続もあります ので、それに則って対応していただくということが1つあります。それから、そうい うことが発覚したとしても、いきなり機械的にこの規定を適用するということは普通 はありません。まずは各研究事業を所管している課などにそういう情報が来ますので、 そこでいろいろと状況も調べながら対応を検討していく、ということになると思いま す。 ○永井委員  先日報道で、科学研究費の繰越しの報道があったかと思うのですが、厚生科研につ いては何かそういうことを考慮されていらっしゃるのでしょうか。 ○林研究企画官  先日報道されたのは文部科学省の研究費の繰越しの扱いのことだと思いますが、私 どもも基本的にはそれと並びですので、必要な手当をすべく、いま検討中です。 ○矢崎部会長  よろしいでしょうか。今日の議題は以上ですが、何か委員の方々からご意見があり ますでしょうか。よろしいですか。事務局からありますか。 ○林研究企画官  ご審議どうもありがとうございました。事務局から最後に、研究費の早期執行に関 連して一言申し上げたいと思います。平成18年度の厚労科研費補助金に関しては、お 蔭さまで4月1日に大半の研究課題について交付基準額通知を発出しまして、4月14 日に各研究者の先生方に交付申請書の早期提出をお願いする書面を、各研究事業の所 管課から採択研究者宛に、メールまたは郵送で送らさせていただいております。そう いう形で研究者の方々の注意喚起を図っており、今年も昨年のように早期執行に向け た準備を進めていますので、当部会の先生方におかれましても、周囲の研究者の先生 方に、厚労科研費補助金交付申請書の提出を早くしていただければ、それだけ研究費 の交付時期も早くなるのだということを、広くお知らせいただければと思っています。  次回の本部会は、5月18日の13時から15時でお願いしています。場所は本日と同 じ省議室を予定していますが、正式なご案内は詳細が決まり次第送らせていただきま す。よろしくお願いします。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。交付金の交付時期が画期的に迅速化されて、これ は厚労省厚生科学課を中心としたご努力の賜物だと思いますので、是非今後ともこの 努力を続けていただきたいと思います。よろしくお願いします。また、早く執行でき るように研究者の皆さんも協力していただいて、手続を迅速にしていただくというこ ともキャンペーンしていきたいと思います。今日は、お忙しいところをありがとうご ざいました。 −了− 【問い合わせ先】 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担当:情報企画係(内線3808) 電話:(代表)03-5253-1111 (直通)03-3595-2171 - 1 -