06/04/12 第8回労働政策審議会勤労者生活分科会基本問題懇談会議事録 第8回労働政策審議会勤労者生活分科会基本問題懇談会                   日時 平成18年4月12日(水)                      15:00〜16:00                   場所 経済産業省別館 920共用会議室 ○齋藤座長 定刻になりましたので、まだお見えにならない方もいらっしゃいますが、 第8回の基本問題懇談会を始めさせていただきます。最初に委員の出欠ですが、新村委 員がおいでになりますと、全員ご出席ということになります。また、勤労者生活分科会 の三井委員、篠原委員、末永委員もご出席になっておられます。  それでは議事に入らせていただきます。本日の議題は「今後の勤労者財産形成促進制 度について(中間報告)(案)」ということになっておりますが、最初に行政改革の現 在の状況など、財産形成制度をめぐる今の情勢も含めて事務局からご説明をお願いいた します。 ○坂本課長 勤労者生活部企画課長の坂本でございます。それでは、まず政策金融の見 直し等を含めた行政改革の状況からご報告申し上げたいと存じます。先回、ご報告いた しました行政改革の重要方針に従って、政府は行政改革の特別法を国会に提出しており、 すでにこの4月初めから審議が始まっておりますが、明日衆議院の行政改革特別委員会 で政策金融周知を含めた議論が行われるということで、いろいろな政策金融の関係、特 別会計の問題についての議論が行われるやに聞いております。  そのような状況を見ながら、今後、私どもはいろいろ作業を進めていかなければなら ないわけでございますが、政策金融、独立行政法人関係のその他の動きとしては、この 4月4日に総務省の政策評価、独立行政法人評価委員会が開催され、雇用能力開発機構 の見直しということでのヒアリングが行われております。  基本的には、独立行政法人である雇用能力開発機構の見直しの一環でしたので、しご と館を中心に、能開機構そのもののいろいろな事業の関係が議論になったわけですが、 その中で財形融資も1つの事業ということで、若干のご質問を賜ったところです。財形 融資の必要性、今後の改革の見直し方針、あるいは証券化等による間接金融化、これは 住宅金融公庫が現在改革を進めるやに聞いておりますが、そういうことに関連した質問 等がありました。  私どもは基本的なところをお答えしたわけですが、別途、独立行政法人評価委員会に おいてはワーキンググループのヒアリング等を含めた独立行政法人全体の見直し、その 中での政策金融のあり方についての見直しの作業が進められるものと承知いたしており ます。  また、これと関連して特別会計の見直しが各省でも進んでおります。私どもの所では 労働保険特会の関係が見直しを進められており、雇用保険勘定、労災保険勘定それぞれ について見直し検討会が3月から開始されております。現在、見直し検討会の下のワー キングチームで個別事業ごとの見直しが進んでいる状況です。雇用福祉事業、労働福祉 事業について、財形関係については来週末以降、それぞれのワーキングチームで個別に 議論をされる予定となっております。  特別会計の見直しの状況ですが、全般的にいえば、雇用福祉事業等については、原則 廃止を含め、現に見直すと言われておりますので、予算的にいろいろな意味でなかなか 厳しい状況にあります。  これらの行革等に対する私どもの考え方ですが、財形制度そのものについては、例え ば自営業者との格差解消の関係、計画的財産形成による老後生活等の安定、特に生活拠 点たる住居の確保等々については、政策的にも大変重要であると考えており、財形融資 を含む財形制度の堅持は必要であると、先の政策評価、独立行政法人評価委員会でも申 し上げたところですが、他面、融資実績などを踏まえれば、非常に低調なものも現にあ るわけで、事業の見直しは必要であるとお答えしたところです。  また事業の効率化等の観点から、例えば国費投入のあり方、特別会計から国費を投入 してまでそのような事業を行うかどうかというあり方の問題についても、見直しが必要 とお答えしたところで、そういう見地から適宜・適切に対処してまいりたいと考えてい る次第です。  次に、本日の議題である中間報告(案)についてご説明いたしたいと思います。今後 の勤労者財産形成促進制度についての中間報告です。中間報告(案)の全体構成は大き く3点ないし4点に分けています。1点目は「はじめに」で、このような中間報告に至 った経緯等について、2点目は主な意見の概要で(1)財形制度をめぐる基本的な問題 意識。(2)は具体的な意見の内容ということで、論点ごとに9項目に分けて整理した もの。3点目は開催状況で、これまでの基本懇の開催状況について整理しています。順 次、内容について簡単に説明したいと思います。  1頁の「はじめに」の部分については、財形制度の現況、財形制度の意義を記載した うえで、見直しの発端となる経緯等について簡単に記載していますが、最後のほうに書 いてありますように、行政改革の重要方針の決定、あるいは行革の特別法案の提出など の環境の変化を踏まえて、改めて検討を行う必要性があること。さらにそれに備えて現 段階における各委員のご意見を整理することが非常に重要であるということから、この ような中間報告をとりまとめることにしたという経緯について記載しています。  2頁以降です。1の主な意見の概要です。(1)は、財形制度をめぐる基本的な問題 意識で、基本懇において議論を行った際の各委員の共通と思われる基本的な問題意識等 々についてとりまとめて、簡潔に記載しています。「三者協力の原則」のあり方の問題、 より多くの勤労者にどういう形でこの制度を広めていくか、そのための見直しはどのよ うなものか、あるいはライフプランの多様化とか、雇用の流動化等、財形制度を取り巻 く雇用関係に大きな変化が生じているわけですが、これをどのように考えていくのか。 あるいは金融改革等による金融機関や金融商品の選択の拡大のような金融自由化の問題 をどのように考えていくのかについて、簡単に記載しています。  3頁以降で、(2)の具体的な意見の内容ですが、これについては個別の8項目と、 それ以外の項目ということで、計9項目に分類して、各委員のご意見を整理しています。 まず3頁の(1)財形制度の位置付けですが、財形制度の位置付けに分類されるような必要 性・重要性についてのご意見や、勤労者のニーズに立ち返って、いろいろと検討を進め ていくべきではないかという基本的な視点を含む位置付けについて整理をしています。  4頁の(2)の自助努力への支援ですが、これについては財形制度そのものが勤労者の自 助努力を支援し、それを国と事業主が支援するという制度の基本にあるわけですが、そ れについての必要性、あるは企業の役割等々についてのご意見を整理しております。  (3)は「三者協力の原則」のあり方です。当初、私どもは各委員の皆様方には企業の福 利厚生等のあり方ということでタイトルを提示していましたが、議論の内容のほとんど が「三者協力の原則」のあり方が中心でしたので、それに特化してまとめており、それ 以外の部分については、別の各項目に再整理をしています。ここでは「三者協力の原則」 の必要性、あるいは新しいあり方として、例えばオンライン化等による給与振込口座か らの引き落としなどが一般的になっている現状における三者協力のあり方等々について のご意見を頂戴しましたので、それらについて順次記載をしています。  5頁の(4)は財形制度の対象者についての考え方ですが、自営業者を含めるか否か、あ るいは現在の勤労者の中でも、特に施策としてターゲットを絞って、一定の層に手厚く 何らかの措置を行うべきではないかという、対象者についてのさまざまな議論をここで まとめています。  6頁の(5)の財形貯蓄の対象とする金融機関、金融商品ですが、この部分については金 融の自由化等を踏まえた貯蓄面でのあり方について、さまざまなご意見をいただいてお ります。特に一定の自己責任の下に、リスク運用を図ることが必要なのではないか。特 に現在のような低金利下においては、その必要性があるのではないかというご意見、あ るいは安定的なものを主として行うべきではないかといった金融機関、金融商品につい てのさまざまなご意見をここで整理しています。  7頁の(6)雇用慣行の変化への対応です。これについても基本的な認識にも書きました が、雇用の流動化等が進んでいる雇用慣行なり雇用状況が劇的に変化する中で、いわゆ るポータビリティーのようなものの必要性はどうなのか。あるいは雇用も正規職員に限 らずパートタイマー、派遣労働者、フリーター等の非正規、非典型的な労働者が大変増 加しているという現実を踏まえて、それに対する財形制度の対応のあり方についてご意 見を賜っておりますので、そういう点について意見を順次整理しています。  8頁の(7)中小企業への普及促進です。より多く勤労者に財形制度を利用していただく ことは大変重要なことですが、特に中小企業等について、どのように普及促進をさせて いくのかについて、現状の課題を含めて改善策などについて、さまざまなご意見を頂戴 し、その点について、ここで整理をしております。  10頁の(8)の財形融資ですが、貯蓄と車の両輪をなすものと私どもは認識しており、財 形融資そのものは大変重要な意義を有すると考えておりますが、その必要性、あるいは 一般の金融機関が個人向けの関係でいろいろと融資をしている現状における、財形融資 のあり方をどうするのか。とは言ってもキャンペーン金利等でいつまでも低利というわ けでもないでしょうという、さまざまなご意見を頂戴しています。特にカにありますよ うに、オペレーション費用はどうかかっているのかというコスト分析みたいなものも重 要であるというご指摘をいただいております。特別会計の見直しに際して、このような 視点が大変重要だと認識をしているところです。財形融資をめぐる必要性課題について ご意見を頂戴し、その点について、さまざまな意見の記載をしております。  11頁の(9)その他ですが、必ずしも(1)〜(8)の各項目に分類するのが適当とは言えない、 あるいはいくつかの項目に跨るようなご意見を中心に、その他で整理をしています。基 本的に財形制度の創設時の意義との違いなど、非常に重要な事項、あるいは年金制度等 との整合性を考えるべきではないかという、他制度との関係、あるいは今の財形貯蓄の 姿が、少し使い勝手が悪いということを含めた全般的な議論など。あるいは昨今のサラ 金等の多重債務の問題等を踏まえて、貯蓄を含めた財形制度の教育的効果、意義などに ついても、さまざまなご意見をいただいておりますので、それらについて整理をいたし ました。  最後に13頁以降の開催状況です。これについてはこれまでの経過を各回の議題を中心 に再整理して、このようなことについて議論を行ったことについて、簡単に整理しまし た。以上が中間報告(案)の概要説明です。 ○齋藤座長 それでは、ただいまの事務局の案について、ご意見、ご質問がありました らお願いいたします。 ○松井委員 事務局にはいろいろ修正をお願いし、お手数をおかけしまして申し訳ござ いません。まず全般的に読んだイメージで申し上げますと、議事録をそのまま抜き書き して要約してきたような感じで、同じ項目は近くに整理するとか、「どうかとなってい るのは、どうかというのが言い切りになっていないから、言い切りにしろ」とか、そう いう提案を私どもとしては、ほかの委員の発言部分も含めて相当言ったのですが、「そ れは松井委員の意見じゃないから駄目だ」ということで、相当却下をされたと私は理解 しております。  その意味で、ほかの委員の発言にまでは私の職権は及ばないので、ほかの委員の方々 に是非自分が言ったであろうというところをよく見ていただいて、何を言っているのか わからないところは、もう少し方向性を出した言い切り型にするならばすることにして、 なおかつ事務局にはお手数をおかけしますが、似た意見があるなら、ニュアンスが違う から同じ文章にはできないとしても、寄せて見やすくする工夫は、是非お願いしたいと 思います。事前にやったのですが、徒労に終わりましたので、そのことだけをまず申し 上げておきたいと思います。 ○坂本課長 私どももできる限り順番の入れ替え等はさせていただいたわけです。構成 としては、例えば事項ごとの中でも、なるべく似たようなご意見はまとめて、かつそれ に対峙するご意見をそれに続けてという格好で、ある程度意識的にはしたつもりですが、 なお不十分だということで、またご指摘を賜れば、適宜修正をさせていただきたいと思 います。 ○奥村委員 松井委員のことに関連しますが、「はじめに」をざっと読んだ感想は、生 活分科会、「基本懇」ということで取り上げて議論しようということになったのは、そ もそも財形制度の運営の実態を見れば、いろいろな問題がある、本当に狙っているとこ ろが達成できていないということでスタートしたと思いますが、非常に円やかに書いて あるから、そういう内容が書いてあると言われたらそうなのですが、ニュアンスが正し く伝わっていないのではないか、ということです。例えば、労働側委員からも勤労者が 本当に使いやすい形になっていないし、加入者がどんどん減っているし、大変なのでは ないか、変えるべきものは早く取り組むべきだというご意見がありました。  公益側委員からだったと思いますが、こんな制度は意味がないのではないかという意 見もあったし、それぞれの立場において違った意見がかなりあったと思います。その辺 は「はじめに」を見ると、実績を上げているし、制度として十分定着しているというこ とが書いてありますが、このことに関しての認識もそれぞれの立場で違うのではないか。 そうすると、これは正しい報告、まとめなのかなという疑問を感じます。ですから、皆 さん方のご意見をお聞きしたいと思います。  例えば、財形貯蓄契約件数は1,100万件とありますが、雇用労働者の数から、この数 字が多いのか少ないのか。現実に財形への契約は1人複数件できますから、実際に利用 されている雇用労働者がどのぐらいの比率でおられるのか。例えば、その人は所得のレ ベルで見ると、どの層にあるのかなどということを見ないと、本当に実績があって定着 しているとは言えないのではないか。財形融資残高というのも、融資制度が両輪の1つ であるという話ですが、本当に両輪の1つであるという実績になっているかどうかとい う議論は必要なのではないか。ですから、松井委員がおっしゃったように、それぞれの ご意見が本当に反映されているかどうかという見方が必要ではないかと思います。  先ほど言ったように、それぞれの立場で意見が相当違っているところもあると理解し ていますから、むしろこういう意見があったというように関連付けながら並べるよりは、 こういう意見があって、対極の意見はこうだったという両論併記的な記述をされるほう が、この分科会なり基本懇なりの実際の議論に即した内容になるのではないかと思いま す。 ○田村委員 若干違う意見を持っています。いろいろ議論はありましたが、必要性等々 はあります。ただ伸びていない所があります。1頁の「はじめに」の下から6、7行目 にある「財形制度をめぐる状況が大きく変化してきた」というところに対する対応が鈍 かっただけで、そこの手直しや見直しは足りなかったというのだと、「はじめに」の書 き方でいいのではないかという気がしています。  両論併記のあるところは、多少見えるような併記があるような書き方のほうがいいと 思いますので、「はじめに」は、私はこの程度でいいのではないかと思います。件数は、 あえて比較して少ないとか多いとかをはじめに書く必要があるとは思いません。むしろ 状況の変化に対する対応が足りなかったところを、もう一度反省していく必要があるの ではではないかという論調でいいのではないかと思います。 ○齋藤座長 ほかに何か気が付かれた点がありますか。 ○田村委員 8頁の下から3行目のアの書出しで、大企業はいろいろな福利厚生の制度 があって、労働組合のない企業や50人以下の中小企業とあるのは、あえて50人以下と 書かずに中小企業だけでわかるのではないか。どなたかが言われた数字だとは思います が、ここは大企業と中小企業の比較だけでいいと思います。 ○松井委員 私は修正意見を出しましたが、却下されました。 ○田村委員 言ったほうが、訂正をやっていいのではないかと思います。 ○齋藤座長 ほかに何かありますか。それでは、前文の所は、もう少し私に預けていた だいて考えさせてください。どのようにまとめたらいいかもう一回考えてみます。並べ 方、その他で、非常に急務だというところはありますか。松井委員が言われる却下され た意見で。 ○松井委員 提出したものを手元に持っていなくて、全部覚えてないのですが、例えば、 その他のところに入っている中で、まず11頁ですが、制度創設時のところのア、イ、ウ は、本当はその他ではなく、イメージ的には具体的な意見の内容の財形制度の位置付け、 あるいは3頁の(1)に入るようなイメージなのではないかと私は思っていたのですが、自 分が言った意見ではなさそうなので動かしてもらえなかったということを、ほかの委員 の方に考えてもらえればと思います。それは1例です。  その他があまりにも雑多すぎるというか、前のほうにきちんとある程度収まるのでは ないかと思ったという意見は述べさせていただきました。 ○坂本課長 実はこの件については、松井委員がおっしゃるように、年金制度との関連 みたいなところもありますので、(2)の(1)の辺りにはまるべきものもあるかなという 気もしたわけですが、例えばアの意見やウの意見などは、なかなか広範囲にわたってい て、少しはまりにくいところもあるかなということです。決して事務局が却下したわけ ではなく、当日の場において、各委員の皆様方のさまざまなご意見があろうかと思いま したので、その場においてご提起していただければありがたいと申し上げたつもりです。 そういう意味で(1)等にこういうのを整理し直すことは当然あり得るかなと事務局として は考えたところです。 ○齋藤座長 具体的に出てしまったのならあれですが、少し書き方を変えれば、ウの意 見の概要をめぐる基本的な問題意識の中のほうがいいのかもしれませんね。 ○松井委員 今のを見ていて、また違う気になりました。11頁の(9)その他のウの「そも そも、財形制度はどうあるべきかといった原理原則の議論云々」というのは、例えば2 頁の財形制度をめぐる基本的な問題意識というのはこういうのがあるが、そもそもこう いう考え方ではなく、もともと考えなければいけないのではないかという意見におそら く収まるようで、3頁より2頁のほうが、もしかしたらふさわしいかもしれません。私 が言ったわけではないので、言った方にそういう意見を言ってもらえるとうれしいとい う気がします。 ○齋藤座長 そう思いますね。 ○松井委員 読んでいて、何かゴツゴツしていると最初に申し上げたのですが、全体的 にもう少しすんなり整理ができるという気がします。 ○奥村委員 11頁のアですが、先ほど田村委員が「はじめに」はこれでいいのではない かと言われましたが、アは私の意見がかなり入っているのではないかと思います。こう いう問題意識はもともとあるということで、このようなことが「その他」に括られてし まうと、本当に問題意識をみんな共有できたかというと、非常に不安になってきます。 こういう意識であって、現状はこのまま行くと立ち枯れになるのではないかという問題 意識を持っているということがあるので、これは基本的な問題だと思います。これが「そ の他」に位置づけられて、「はじめに」では非常に実績があるなどと書かれてしまうと、 一体どんな問題意識があるのかと心配になるということを申し上げているわけです。 ○松井委員 どんどん言っていいのなら言いますが、11頁のアのような意見は「はじめ に」に持ってきて、現在このようになっているが、かつてはこれだけあって、今はちょ っと少なくなってきたという問題意識があって議論をしているということが分からない と、外堀が埋まっているから何かをやるというのでは、この分科会並びに懇談会が何も 考えてないのかと思われます。もともと問題であると言ってきた私どもの立場からする と、「はじめに」に事実関係をもう少し丁寧に書いて、現状だけではなく、これまでの 傾向も含めてほしい。現状のままではいけないという認識は、労働側の方も否定はされ ないと思いますので、どうにか「はじめに」に盛り込むことはできないでしょうか。 ○齋藤座長 田村委員、どうですか。 ○田村委員 現状認識として、ここについては共通意識を持っていますので、松井委員 の意見でいいと思います。 ○松井委員 そういうことで見直しをしているので考えているのだということが、「は じめに」では、実情を示しつつ、制度に問題があり見直しをしなければならないと考え ているところを見せて、そのため平成15年7月から検討をはじめており、そしてさらに 外堀も埋まってきているという流れのほうが自然ではないかと思います。 ○坂本課長 確かにそういう経緯があることは十分認識しているのですが、アの意見等 々を含めて、財形制度そのものを融資を含めて否定するものでは当然ないといったとこ ろを、もし誤解があるような格好で入ると、そこはどうかなというのがあります。です から、この文言のままだと、「はじめに」にしてもはまりにくいのかなという面もあり ます。そうは言っても、財形制度を取り巻く現状がなかなか厳しいものもあるのだとい う強い意見もありましたので、それをきちんとどこかに何かしら表すことが必要である と考えたものですから、私どもとしてはなかなかうまくはまらないので、(9)に置いたと いうのはあります。これはほぼ4人の委員のご意見で、ちょっとまとめたところもあり ますので、表現を少し考えさせていただきます。「はじめに」で、財形を取り巻く現状 もいろいろ変わってきているのだという趣旨で反映させることができるのならやってみ たいと思います。  正直申し上げますが、政策金融を含めて財政制度や特会などの見直しがワッとある中 において、このような報告が出ているではないかという使われ方をするのは、冷静な制 度の議論をしていくうえで困ることもあったりするものですから、少しその辺の書きぶ りなりニュアンスなりには、事務局としても気を遣わなければいけないのかなと。これ から必要な部分については、きちんと根幹を残しながらも、松井委員が言われるように、 制度的にいろいろ問題点があるところは直していくということできちんとやっていくべ きだと思いますので、そういうところを上手に、きちんと整理することができればとい うことです。 ○齋藤座長 私に預からせてください、少し考えてみます。ア、イ、ウは言い方がどぎ ついということはないのですが、直截的すぎるから、もう少し表現の仕方を考えれば、 皆さんの言わんとすることは出るのだろうという気がします。確かになぜ基本懇で議論 することになったのかという話が、最初のほうには何となく出てこないから、そこをも う少し書くようなことも考えて。別に財形制度は役に立たないということを正面から言 う必要は毛頭ないわけです。 ○南雲委員 中間報告は分科会へ出す報告なのですね。 ○齋藤座長 そうです。 ○南雲委員 分科会ではいろいろ。 ○齋藤座長 その問題は、ほかの委員もおられるから、また議論はあるかもしれません。 それはそのときの話です。 ○南雲委員 まとめではなく、ここでは報告にするということですから、そういう面で は私どもはこれでいいのではないかと思っています。まだ中間まとめではありませんね。 ○勝委員 私がこの中間報告を見て思ったのは、3頁以下の具体的な意見の内容という のは、各委員の意見がベースになっているということで、特段修正する必要はないと思 います。  問題の設定というか、特に2頁で、財形制度の基本的な問題意識のところは見た印象 ですが、今の財形制度が置かれている現状が、もう少しクリアにわかるような形にすべ きなのかなと。いま何がいちばん重要なのかというと、財形制度というのは1頁にもあ るように、そもそもは勤労者の生活の安定をより図るということ。それで「三者協力の 原則」が出発点になっている。ただし、これは企業のあり方というか、それがここ何十 年で、非常に大きく変わってきているという構造変化の中で、今後どうあるべきかとい う問題を考えていくということなのだろう。つまり、財形制度を取り巻く環境が、非常 に大きく変わってきている中で、我々はこれをどう考えるかということを、もう一回考 える必要があるのではないか。  そうすると、2頁の書き方としては、例えば、企業のあり方、コーポレートガバナン スが変わってきているということと、雇用水準の構造変化ですが、これは規制緩和とい うこともありますし、金融改革、あるいは行政改革という中で、財形制度をどう考えて いくかを、この懇談会では話し合ったという形にまとめるべきなのか。つまり、2頁を もう少し拡充させて、すべての人がこの報告書を読んで、いま何が財形をめぐる問題な のかが、とりあえずわかるような形にすべきなのか。この懇談会自体が、特に全会一致 で何かを決めるということではなかったわけですから、それについていろいろな意見が 出てくるのは当然です。先ほどから1頁の議論がありますが、2頁にビジュアル的にも わかるような形になると、なおいいかなという気がしています。 ○齋藤座長 ただ、いま勝委員が言われたようなことを自身に反論する言い方もあるか ら、そこは難しいところなのです。 ○勝委員 客観的には見られないということですか。 ○齋藤座長 客観的に見ると、どうなるかという感じがするのです。勝委員が言われた ものも直球を投げ込んでくる感じだから。 ○坂本課長 ここで4つの項目を挙げたのは、ここは間違いなく各委員の共通の認識と して、まさにこのような4点についてはきちんと議論をしていく。それ以外にもいろい ろ対立した意見を含めてあったのですが、ここは間違いなく共通していると、私どもは ずっと議事録を読み返しながら、そういうことで共通のエッセンスを抜き出したという ことです。  もちろん勝委員が言われたような問題意識も持っておりまして、先ほど「はじめに」 を拡充して、少しその辺のところを盛り込んだらどうかというご意見があった11頁の議 論ですが、そういうところを、そちらのほうで持っていくのかなと思ったのです。事務 局としても11頁のア、イ、ウの扱いは、どのようにすべきなのか、皆様方にお諮りしな いと決められない問題だと思ったのです。先ほど座長からもご意見がありましたので、 この辺りの「環境の変化」ですが、それは両論のある環境の変化だと思いますが、両論 があっても、環境の変化のところは、例えば「はじめに」に工夫をして入れていくとい う整理をする。特に年金制度のところなども、あまり議論がなかったのでこれだけにし ているのですが、DCのような拠出制の年金ができたということは、財形年金を含めて、 今回は必ずしも議論が十分ではなかったように思いますが、非常に大きな今後の影響を 与えるような制度改革が行われたのは事実ですから、それらをどのように書き込んでい くのかということが大変大事だと思いますので、そういう意味で、できれば1頁に、い ま言った趣旨を例示などを挙げながら書き込めるならばと考えています。 ○齋藤座長 ほかに何かありますか。 ○藤田委員 余計なことを申し上げるかもしれませんが、財形制度の根幹的な問題とし て申し上げておかなければいけないと思いますので、あえて申し上げるわけです。いま 国会内外で所得格差ということがいろいろ言われています。あるいは格差社会というの が、いろいろな所で問題にされています。フローとしての所得の格差は、大体格差が広 がってきているというのが共通した認識ではないかと思います。もちろん政府は、基本 的にこれには反論されているように思いますが、いろいろな実感として所得格差は広が ってきています。  同時に、所得格差が広がっているとすれば、ストックとしての資産格差も広がってい るだろう。財形制度というのは資産形成ですから、資産格差が広がってきているとすれ ば、この分科会としても、これを正面から取り上げていかなければいけないだろうと思 います。ですから、報告書においても、資産格差が開いているのかどうなのかという認 識だけは載せておく必要があるのではないか。  実態的に議論をしていないということになるのかもしれませんが、例えば、10頁のア に「資産格差が広がっていく」という前提として立論されているわけですが、これをで きるだけ前のほうへ。融資の問題だけではなく、大きなテーマとして所得格差は広がっ ている。資産格差は広がっていると。ですから、財形制度のニーズは高いのだというこ とを、この際述べておくべきではないか。言わずもがなと言われるかもしれませんが、 一言申し上げておきます。 ○齋藤座長 1つの意見として、そういうご意見を紹介するのはいいのでしょうが、所 得格差があるのかないのかというのは、まさしく今や政治的問題でもあるし、いろいろ な議論があって、まだ収斂していないと思います。 ○藤田委員 ですから、この分科会では、どういう見方をとっているのかということは、 外部の人間にとっては非常に聞きたいところだろうと思います。ですから、全くそれに 触れないというのもおかしな話です。 ○齋藤座長 だから、ご意見として書くのはやぶさかではないと思いますが、全員のコ ンセンサスでこうなっていますというのは、ちょっと難しいのではないでしょうか。 ○藤田委員 コンセンサスとして取り上げてほしいとは申し上げておりません。 ○齋藤座長 ほかに何かありますか。 ○松井委員 今の点の格差をどう見るのかというのは、ここの中では十分議論がされて ないので、議論した事実そのものは「はじめに」に分科会なり、基本懇に出されたデー タに基づいて書かれていると思います。具体的には1頁の真ん中辺りの2段落目の3行 目に、「勤労者は自営業者に比べて貯蓄、住宅等の資産形成面で立ち遅れが見られ」と 書いてあるのですから、藤田委員が言われている趣旨は、勤労者に対する財形は必要だ ということは、ここに盛り込まれているとは思います。  格差というのは、資産の格差について、フローによる最終的な資産格差なのか、その 資産格差については、相続をした場合における資産格差なのか、もう少し厳密な分析が 必要だと思いますし、それはここの基本懇で私はやったとは思っておりませんので、そ れを書き込むまでには、本来はもっと議論がなされなくてはいけないのではないかとは 思います。 ○藤田委員 それなら、それを書き込むべきだと思います。実はこの点はまだ十分消化 していない。しかし、資産格差の問題もあり得るということは、分科会として述べない と、外部の人間から見れば、この懇談会は何を考えているのか、それについてはどのよ うに思っているのかということを必ず問われるだろうと思います。 ○松井委員 あえて反論するならば、財形をやっている人が資産格差で見ると下のほう なのかどうか、反対に財形すらできない人がいるということはどうなのかとか、勤労者 のほうが恵まれている人もいるとか、勤労者になれない人もいるとか、そういうことま で考えると、勤労者財産形成制度が維持が必要だという結論にはならないと思います。 格差がないと言っているのではなく、それをストレートに財形制度を充実しなくてはい けないという議論には結び付きそうにないのではないかと思っております。 ○藤田委員 そうであるならば、例えばニーズ論というのはどこから起こしてくるのか ということですね。資産形成の必要性は何を根拠に、どういうデータをベースにして論 を立てていくのかということが問題になると思います。この問題については書き方はい ろいろあると思いますし、考え方もあると思いますが、私が申し上げたいのは、これに ついて触れないわけにはいかないだろうということです。議論していないということで あれば、この議論については、まだ検討中であるということで、我々は資産の問題を扱 っているわけですから、そこをちゃんと書き込むべきだということを申し上げているの です。 ○坂本課長 ご議論を拝聴いたしましたように、所得格差の問題、資産格差の問題は、 いろいろな見方、見解があって、なかなか難しいところでもありますし、政府としても 非常に微妙な問題であることは事実です。  ただ、事務局の認識としては、例えば松井委員がご指摘になった「はじめに」の上の ところで、「高齢化の状況が進みつつある現在、安心できる老後生活を送るためにも、 勤労者が計画的に財産形成を行っていくことが、ますます必要になってきている」とい うような書き方にしてあるのですが、その裏にはもしいろいろな格差があるとしたら、 しかし財形制度の目から見れば計画的に資産を形成することによって必要最低限のミニ マムの安定したものを確保していくことが大事だし、そういう施策がそもそも財形制度 という施策なのだという財形の本来的な趣旨は書いたつもりです。  財形制度があるからと言って、もし格差が開いているとしても、その格差を解消でき るかどうかは別問題ですが、自助努力を原則とする財形制度の中において、そういう自 助努力をうまく支援することによって、格差がどうあろうとも必要最低限のものは確保 していく。例えば、老後の居住生活の場所を確保していくなどということは、きちんと やっていくべきだろうし、それは必要なのだということで、この中にはそのような問題 を込めたつもりではいます。その下もそういう趣旨で書いているわけです。確かに正面 から格差を取り上げるのは、議論がなかったということもありますが、それ以前になか なか書きづらいところでもあるかなという気がします。藤田委員のおっしゃることも踏 まえて、ともかく財形制度でカバーできる範囲を必要性としてきっちり書くという意図 はあります。 ○奥村委員 今のことで言うならば、10頁の「資産格差が広がっていく」という、財形 融資に関して資産格差ということが出ているので、資産格差が広がっているということ は、融資制度を一生懸命作れば解消になるとは思いませんが、むしろ今のは資産格差の 問題は財形融資のところだけで書くのではなくて、全般的なところで、計画的に財産形 成をしていくことが大事なのだというご意見があったということにして、融資のところ から外してしまい、もっと大きい「その他」にでも書くということでどうなのでしょう か。ご意見としては間違いなくあったわけで、さらにこういうことを議論すべきである というご意見だったということです。 ○坂本課長 「その他」のところですか。 ○奥村委員 それはわかりません。 ○田村委員 全般に書かれるということについては異論がないのですが、財形融資のと ころに、いま働いていて、若い時期に子育てをし、教育をし、住宅を持つというところ で資産がないわけですから、それは長いローンなりを組んで返していくということなの で、是非ここは残していただきたいと思います。 ○奥村委員 これを消せと言っているのではなく、この意見に関しては融資制度があれ ば資産格差がなくなるのだということはないという意見を申しただけで、反論があるの なら、その意見も書いてくださいと申し上げます。  例えば、公的年金、企業年金に問題があるとか、社会保障制度に問題があるというこ とも書いてありますが、個別の意見から言うと、財形制度があるから、それらが問題を 解消するわけでも何でもないのです。むしろ財形制度の問題は、すべての勤労者が財産 形成をこの制度に則ってできるのであれば、そのような問題は解消になるかもしれない が、貯蓄制度だから、財産形成制度と言いながら実態は貯蓄ができる余裕のある人しか 使用していないことであると再三申し上げたのです。あまりテクニカルな議論をし始め ると、公的年金、社会保障制度のことも、こんな意見は誰が言って、本当に今の財形制 度がこういう問題の解消になるのかといった議論になってしまうのでしょうが、そのこ とについて言えば、私は今の財形制度ではそういった問題の解消には全然ならないと思 います。 ○齋藤座長 それでは、今日伺ったお話を基にして、少し手直しをしてみて、もう一回 お集まりいただくのも大変ですから、どのように直したかわかるようにして、事務局か ら皆さんの所へお配りしていただき、それにまたご意見をいただき、それを見た上でも う一回やるかやらないかを考えさせていただきたいと思います。 ○坂本課長 今後の日程ですが、本日ほぼまとまれば5月に分科会を開催と考えており ましたが、所得格差の問題を含めて重いご意見もありましたので、事務局で少し手直し をして、個別に委員の皆様方にお諮りしたいと思います。その結果を見ないと日程が立 たないものですから。例えば、今月中にまとまるようであれば5月に分科会をと考えて おりますが、もう一回開く必要があるのなら分科会の日程を少し遅らせていただくこと も考えなければいけないものですから、スケジュールについては保留とさせていただけ ないでしょうか。 ○齋藤座長 最後に本日の議事録の署名委員ですが、座長である私と、座長が指名する 委員ということで、労働者側委員から南雲委員、使用者側委員から奥村委員にお願いい たします。それでは、本日はこれで終わりにさせていただきます。どうもありがとうご ざいました。 照会先:厚生労働省労働基準局勤労者生活部企画課財形管理係 (内線5368)