06/02/22 第7回労働政策審議会勤労者生活分科会基本問題懇談会議事録        第7回 労働政策審議会勤労者生活分科会基本問題懇談会                     日時 平成18年2月22日(水)                        16:00〜                     場所 三田共用会議所特別第4会議室 ○座長(齋藤) 定刻になりましたので第7回の懇談会を開催します。最初に事務局か らマイクの操作方法について説明があります。よろしくお願いします。 ○課長補佐(改田) 失礼いたします。皆様の前に置かれているマイクは2種類ありま す。1つは録音マイク固定式というもので音を録るだけのもので、そのまま放っておい ていただいて結構です。細長い柄の付いたほうのマイクですが、ご発言の際に真ん中の ボタンを押していただいてご発言くださいますようにお願いします。ご発言が終わりま したら、また再び同じスイッチを押していただいて電源を切っていただくようにお願い します。以上です。 ○座長 議事に入らせていただきます。今日は南雲委員が欠席です。松井委員は少し遅 れます。その他の委員は全員ご出席いただいています。また生活分科会の新芝委員、末 永委員、村井委員にもご出席いただいています。併せてご報告します。  最初の議題ですが、「当面の基本問題懇談会の進め方」ということで、事務局から説 明をお願いします。 ○企画官 ご説明させていただきます。資料1をご覧ください。第7回ということで、 本日は財形融資の議論の2回目と、残った時間で財形給付金・基金、助成金等の制度に ついて、ご議論いただきたいと思います。その後、第8回目を3月に開催して中間報告 書の取りまとめの検討をしていただきたいと思っています。こういったスケジュールで 進めさせていただきたいと思います。 ○座長 当面の進め方は、こういうことにさせていただきたいと思いますが、よろしい ですか。 ○奥村委員 議事に入る前に確認、お願い等、ちょっとお話したいと思います。前回、 財形貯蓄の論点ということでのお話合いがあって、その時もいろいろ申し上げたのです が、財形融資等の検討をする際にも、行きつ戻りついろいろな議論もできるでしょうと いうお話だったのですけれども、この進め方についての案を見ると、もう最終のところ まであまり時間も回数もないということです。それでお願いなのですが、財形をどうす べきかということに関して言うと、財形貯蓄の論点のところでも申し上げてきましたし、 今までも申し上げてきましたが、財形が広く世の中に認知される制度ということである ためには、遍く勤労者が利用し得る制度であるということ、それと制度を利用する勤労 者の方々が、金融自由化の恩恵を享受でき、特にリスク回避ということを担保し得るこ とが大事かなと思います。それから労働力流動化へも対応し得るということが必要だろ うと思います。  財形貯蓄の論点のところで、こういった視点というのが、ややもすると見おとされた 形で議論されたというふうにも感じています。今回の財形融資制度、それから給付金・ 基金、助成金等の論点ということでお話が進むと思いますが、いま言った視点をきちん と押さえないと、本当の意味で、財形をより良い制度にすることにはならないのではな いかと思いますので、その点をお願いしておきたいと思います。  それと先回申し上げたように、この融資制度等については、どういう仕組みで行われ ているかということと併せて、効率的に本当になされているのかという視点が必要だろ うと考えます。いろいろな制度が設けられていますが、中小企業に普及するために設置 したという施策等については、本当にそれが中小企業に財形を普及させることに結果と してなったのかということを、きちんと説明していただく必要があると思っていますの で、これらをお願いしておきます。 ○座長 わかりました。この前は融資の論点を事務局から簡単に説明したところでお開 きになったと思います。それを改めてもう1回やっていただくのもどうかと思いますの で、それは前のことを思い出していただきながら、いま言われたところも含めて、いろ いろご議論いただければと思います。ただ、いまの中小企業の話では、そういう感じか らはまだ説明がなかったですね。説明で何か追加するようなことがありますか。 ○企画官 中小企業にいかに普及促進していくかということにつきましては、今日の論 点の中でも例えば資料3の(1)に、中小企業対策の必要性も含めて助成金制度をどう していったらいいか議論いただきたいと思います。同じ資料の(3)でも今後の中小企 業対策として、中小企業への普及促進を図っていくためにどのようにすべきかというと ころで、いろいろとお知恵をお借りしたいと思っていますので、ここでご議論いただけ ればと思います。 ○座長 財形融資の点で何かご議論がございますか。 ○企画課長 いまの奥村委員のご提言にも関することですが、私から資料を読んで、最 近の政策金融改革・独法改革・特別会計改革のところについて、おさらいではあります が説明させていただきたいと思います。いま言った中小企業にちゃんと効果的に広がっ ているかという効果測定なども、実はこの「行政改革の重要方針」の中で問われている と認識していますので、簡単に説明させていただきたいと思います。  資料4ですが、昨年12月24日に閣議決定されたものです。いま政府部内では行政改 革の推進基本法を制定するということで、基本的な考え方についての協議等が進められ ています。そこにおける書きぶり、表現ぶりは、実はこの「行政改革の重要方針」をほ とんどそのまま踏襲したような形になっていますので、法律自体は、この重要方針に沿 ったものになるのではないかと考えています。したがって、今日は内部のものというこ とで法律の案までまだきていませんから、重要方針で説明したいと思います。  行政改革は、多方面にわたっていろいろなことが言われていますが、この財形制度に 関しては、おそらくこの政策金融改革、融資のところがいちばん大きいかと思います。 それ以外にも独立行政法人改革、特別会計の改革という3つの課題を、いわば政府部内 から示されています。それに対して我々は応えていかなければいけないという立場だと 思います。  直接、財形等に関しての政策金融改革のところの書きぶりについては、資料4の2頁 の(4)に「その他留意事項」ということで、エのところだけです。「独立行政法人及 び公益法人等による政策金融機関類似の金融業務についても、本重要方針の趣旨を踏ま え、所管府省で見直しを行い、平成18年度中に行政改革担当大臣の下で取りまとめる。 このうち、独立行政法人については、中期目標期間終了時の見直しの仕組みの中で、平 成18年度に見直し期限の到来する法人に加え、平成19、20年度に期限の到来する法人 についても、前倒しで見直す」ということです。これは雇用能力開発機構の中期目標が 平成19年度に終了するのですが、政策金融機関類似の金融業務をやっているということ で、平成18年度中に見直しをしなければいけないことになります。  その見直しの中身については、ここに「本重要方針の趣旨を踏まえ」となっています ので、1頁に戻っていただき、政策金融改革の趣旨は何かを説明させていただきます。 ここの(1)基本原則以下のところは国民金融公庫など、いわゆる政府系7金融機関の 統合の関係のところで謳われているものですが、その趣旨が遵用されるということです。  そこでは、政策金融は基本的に3つの機能に限定し、それ以外は撤退するという大原 則があります。中小零細企業や個人の資金調達支援は、なかなか民間でも難しいところ があるので残しましょうということ。国策上重要な海外資源確保、国際競争力確保に不 可欠な金融というのは、かつての輸出入銀行の業務みたいなものを念頭に置いてのこと だと思います。  あるいは円借款というのは、今度JICAのほうでまとまってやるとなっているよう ですが、そういったところは残しましょう、それ以外は撤退ということです。ですから 財形について言えば、中小零細企業に資する。あるいは個人の資金調達に資するという ものでないといけないとなります。  イに「『小さくて効率的な政府』実現に向けて」とあり、(2)で新たな財政負担を行わ ないとあります。融資のところでもご議論があるのではないかと思いますが、能開機構 の融資、平成11年までの融資の仕組みの問題で、そのころの融資のギャップの話があり、 いわば赤字を抱えているわけですが、その赤字を国費で新たに埋めることはやらない。 したがって各金融機関、各政策金融主体の独自の努力で、これを埋めなければいけない というものです。  エは効率的な政策金融機関経営を追求するということで、これは部門部署、間接融資 というふうな民間金融機関や他の方向でいけるなら、そういうふうにしたほうがいいと いう中身ですので、そういったものなども考えなければいけないということです。そう いった面から、政策金融の各機能の分類ということですが、すぐ撤退する、必要であれ ば残す、当分は残すの3段階に分けてやると言われています。  2頁で、例えばこれも国民生活金融公庫分野ですから、直接には我々の財形には関係 ないですが、教育資金の貸付のところについてはやや厳しい目で見ているようで、民間 金融機関なり独立行政法人日本学生支援機構、昔の育英会ですが、そういったところの 奨学金制度で代替可能だったら撤退すると言われていますから、私どもで教育融資につ いてどういう判断が出るかというのは、ややあろうかと思います。そういうふうな政策 金融のところで、いろいろと見直しをしなければいけないということになります。  3頁で独立行政法人としての見直しのところがあります。つまり能開機構の見直しが ここに絡むわけですが、これについては先ほど政策金融のところで申し上げたこと以上 は書いてありません。融資業務を行う独法については、平成18年度中に融資業務等の見 直しを行い、結論を得るということですから、それに引き続いて全体的な見直しが、本 来ならば平成19年度に行われるはずですが、平成18年度中に前倒しで行われることに なるだろうと思います。そのスケジュールとしては、平成18年の夏を目途にして政府と しての基本的な考え方を取りまとめることになっていますから、それらに従って見直し を行わなければいけないということになるのだろうと思います。 最も早いのが3の「特別会計改革」のところです。これはいろいろ母屋のほうで苦労 しているときに別な所ですき焼き、ということなども言われたりしたこともあるのです が、特会について、きちんと見直しを行うということが言われています。  その後の労働保険特会については、原則として純粋な保険給付事業に限り本特会で経 理するということで、労働福祉事業及び雇用保険3事業については、廃止も含め徹底的 な見直しを行うものとすると書かれています。私どもの財形の関係の業務のための費用 については、労働福祉事業並びに雇用保険3事業の中で支出がなされていますから、そ ういう観点で、先ほどもあったように十分効率的に行われているのかどうか等々につい て見直しが必要になるわけで、特会からの費用等もどうなるのかについては、別途、急 ぎ検討しなければいけないという状況です。  そのような状況を踏まえて、本日は融資と助成金のところについて、いろいろご議論 を賜れればということです。 ○座長 ありがとうございました。融資から何かご意見があればお願いします。 ○田村委員 発言がないようなので。「中小企業に資する」というところがありながら 融資の関係でいくと、私どもはちょうどこの時期、労使の間でいろいろな話合いが行わ れる時期になってきているわけです。そのデータ等を調べていくと、我々は資産格差と いうことを非常な大きな問題にしています。特に下位の20%くらいのところが、2005 年の数字がありませんので2000年と2004年を比べたときに、資産を持っていない人た ちのところは負債というか、要は自己の貯蓄を崩すという形が非常に現れてきています。 逆に上のほうの20%くらいの資産を持っている方は、資産そのものを増やしている。金 額でいくと486万円ぐらいあったものが1,490万円ぐらいまで資産が伸びている現状に あります。  まずここのところで貯めるということはあるわけですが、資産がない中、少子化の中 で子供を育てながら教育融資をするだとか、あるいはお金が非常にかかる時期に住宅を 取得していかなければならないという事情が、ますます厳しい環境の中で行われてくる のだろうと思っています。  そうすると、この効率的な運用というのは当然のことだと思いますけれども、いま、 なかなか借りるに借りられない状況がある。むしろ、こんなことのシステムを見直すこ とのほうが大事であって、上のほうからのいろいろな改革の中で効率的なということは 当然わかる話ですけれども、それはそれで置きながら、もう少しこれが融資を受けやす い制度だとか、あるいは金融も我々も含めて、個々人にどんなアピールをしたのかとい う反省も含めながらやっていかなければならないと思っています。是非、融資の関係に ついて我々は大事ですが、さらにもう少し融資を受けやすい制度の見直しも必要ではな いか。こんな意見を申し上げておきたいと思っています。 ○座長 ほかに何かございますか。 ○奥村委員 繰り返しになりますが、いまの財形の活用状況というのは、一部のかなり 規模の大きい企業に比重がかかっている。もう1つ融資制度の活用状況でいくと、それ ほど活用もされているわけでもないということがあり、財形融資制度単独の議論をして も、いまの行革の方針等を含めて、あまり意味がないのではないかというふうに思って います。むしろ財形貯蓄が先ほど言った基本に照らしてどうあるべきかといった議論を、 まずは先行して行うべきだろうと思います。 ○座長 ほかに何かありますか。特段ないようでしたら、次の資料3の論点を議論いた だき、その間にまた何かあれば戻ることにします。資料3を説明していただけますか。 ○企画官 資料3の「財形給付金・基金及び財形関係の制度助成金論点」を説明します。 1の「背景」ですが、先ほど説明しましたように年末の「行政改革の重要方針」におい て、労働保険特別会計については、原則として純粋な保険給付事業に限り本特別会計で 経理するものとし、労働福祉事業、雇用保険3事業については、廃止も含めて徹底的な 見直しを行うとしています。財形の関係の助成金については、すべて労働福祉事業及び 雇用保険3事業で予算措置されていることになっています。そういったことを前提とし て、具体的な個々の助成金についてどうしていくかについて、ご意見をいただければと 思います。  2「具体的な論点」の(1)ですが、財形の関係の助成金として4つの助成金があり ます。この4つの助成金の中で最初の2つは、平成16年度の実績で18件であったり、 ゼロ件であったりと利用実績が少ないものや、実効が上がっていないものとして、例え ばいちばん下の中小企業共同化支援事業助成金がこれに当たると思いますが、そういっ たものが見られます。ただ、中小企業対策として財形を普及させて、活用促進を図るこ とは必要だと思われますので、そういったことも含めて、これらの助成金をどうしてい ったらいいかについて、ご意見を賜りたいと思っています。  (2)の中小企業共同化支援事業助成金ですが、先ほどのところで実効があまり上が っていない例としてお話ししました。事務代行制度の普及を図ることを目的としている ものでありながら、事務代行制度は平成16年度の実績で91団体指定しているわけです。 平成8年度からこの助成金が始まって以降、事務代行制度の普及を図ってきているにも かかわらず、平成16年度で91団体という数字にしかなっていないということや、1団 体当たりの事務代行の実績を見ても、1団体当たり約10社の代行事務しか受けていなか ったり、勤労者数にして1団体当たり約20人の代行しか行っていなかったりするような 実態にあります。そういう意味で代行実績が十分とは言えない面がありますので、そう いった実態を踏まえながら、今後、どうしていったらいいかについてご議論いただけれ ばと思います。  (3)の中小企業への財形制度の普及促進は、重要な課題だと認識していますので、 その普及促進の事業を効果的に行うためには、どういったやり方で普及促進を図ってい ったらいいのかという観点から、ご議論いただきたいと思います。その際に、民間の福 利厚生のアウトソーシング会社として、企業にカフェテリアプランの中の1項目として 財形事務の代行を含めて、提供するようなアウトソーシング会社があったり、また財形 貯蓄のパソコンのシステムを企業に提供する企業などもありますので、そういった民間 の福利厚生のアウトソーシング会社を活用することも考えていけないか、についてご意 見を賜れればありがたいと思います。 ○座長 先ほどの奥村さんの議論とまさしく絡んでくると思いますが、何かありますか。 ○奥村委員 考えていることはあるのですが、皆さんの意見を聞いた上で発言させてい ただきたいと思います。 ○座長 ほかに何かありますか。 ○田村委員 (2)の事務代行が91団体でしかないと、サラッと書いてあるのですが、 十分とは言えない背景というのは、特に心当たりの論点というのはあるのでしょうか。 ○企画官 事務代行制度がうまく機能しない原因と思われるのは、事務代行団体が、企 業でやるべき財形貯蓄の事務や、勤労者からお金を受け取って金融機関にお金を渡す事 務を、団体が代行することになっています。本来、企業単位で財形貯蓄に入っていれば、 勤労者から企業にいって金融機関にいくところの、金融機関と企業の間に団体が入る形 になっていますので、書類やお金の二重渡しになっています。団体が間に入ることによ って、かえって事務が煩雑になっている面があるのではないかと思われます。  そういうことから団体としては、代行事務を企業からたくさん受ければ受けるほど、 事務がどんどん増えていく形になりますから、団体としてもあまりたくさんの企業から 代行事務を受けたがらなかったりということがあります。また中小企業からの代行事務 ですので、1企業当たり、平均で2人ぐらいの代行事務を代行として行っていたりする のですが、各企業単位がばらばらなので、団体で事務を行うにあたってもすごく煩雑だ ったりします。そういった面から団体としても、あまりたくさんの中小企業からの事務 を引き受けたがらない面があると考えられます。 ○座長 何かありますか。 ○松井委員 おそらく事務が複雑というよりも、いま金融機関が、いろいろな形で手数 料でも収益を上げるという構造になってきている中で、会社から事務代行団体に1回お 金を送って、さらにそれから金融機関にお金を送るという仕組みでは送金手数料が無駄 になっているのです。そもそもこの仕組みを入れた時に私ども事業主側としては「こう いう無駄なことをやっていたら、どうせ使われないよ」ということは申し上げてきたつ もりです。ですから、そこをどういう形で変えていくのかということを議論しないとい けません。事務が面倒といわれますが、事務は1つ定形化されたものがあれば、数が多 いということはそんな大変ではないと思います。ですから、その部分をどう考えるか。  具体的に言うと、賃金控除をやめてしまわない限り、ここは難しいだろうと思います。 ずっと指摘をしていることですが、三者協力の原則だとか理念は立派なのですが、お金 がかかって無駄なことをずっと引きずっていることはおかしい。そこを変えない限り、 いくら民間のアウトソーシング会社を使うとしても、お金が二重かかるならばその分の コストはかさみます。さらにプラスアルファで事務の手数料がかかります。そういう仕 組みまで残しておいて、やる意味合いがありますかということを議論しないといけませ ん。単に民間を使えばいいという議論ではないと私は思います。  民間では、もう少し具体的にどんなことをやっておられるのか、簡単に企画官に教え ていただきたいのですが。いま民間でやっているものはどんな形でやっているのか、ご 紹介がありましたけれども、私はよくわからないので、その点は質問です。 ○企画課長 詳しくは企画官から説明しますが、まだ完全に調べきれているわけではあ りませんが、民間のアウトソーシング会社というのは規模のメリットを非常に使うもの ですから、中小企業というより大企業について、まとまった数の所の福利厚生を、まと めてアウトソーシングするというのが多いようです。その中の一環として財形のところ も引き受けますよということです。だから、もともとかなり規模があるので、うまく仕 組めるというのがあるみたいですから、必ずしも中小企業のところにうまく使えるかど うかは、わからないなとは思っています。そういうことだけ前提の上で、若干説明させ てもらいます。 ○企画官 財形事務の代行がどの程度行われているかまでは、正確には把握していませ んが、民間企業の中でよく行われているサービスとして、カフェテリアプランを提供す る会社があります。カフェテリアプランの中には、例えば家族の中に介護が必要な人が 出たときにホームヘルパーを派遣したり、ベビーシッターを派遣したり、財形事務を含 めて費用計算の代行をやったり、カフェテリアプランの中のいろいろなメニューの中の 1つとして、財形事務の代行も行うとしています。  そのカフェテリアプランをセットで、福利厚生事務を会社で行わない代わりに、福利 厚生のアウトソーシング会社から、カフェテリアプランとして福利厚生メニューを提供 する。その提供する契約を会社と福利厚生会社の間で結んで、会社の中で必要な福利厚 生のメニューを選び、福利厚生サービスを外部から受ける。そのときに財形貯蓄事務も、 カフェテリアプランのサービスの中のメニューの1つとして入っているところがありま すので、会社として財形事務の代行サービスのカフェテリアプランのサービスメニュー の1つとして選んで、財形事務を福利厚生のアウトソーシング会社でやっていただく。 そういう仕組みでやっている所があると聞いています。 ○松井委員 いまひとつわからないのですが、カフェテリアプランはわかります。財形 事務というと、いまの制度は、事業主が賃金控除して、天引きしたものを金融機関に預 けるという仕組みですよね。そのとき、福利厚生会社は、どのようにかかわるのですか。 そこが私はよく理解できなかったのと、もう1つあるのは、福利厚生会社というよりも、 賃金計算を行うような事務があり、それに併せてやっているということが考えられるの です。私はまずそう思うことと、カフェテリアのメニューの中に財形事務ができますよ ということは、従業員サイドからすると、それがカフェテリアのポイントとして使われ ているということですか。ポイントというのは、一定限度額が通常、決まっていますの で、何かいまひとつイメージが湧かないことだけを言っておきます。もしできましたら、 それをやっている企業の事例を、この審議会ということでなく別途教えてもらえればと 思います。 ○奥村委員 いまのことに関連して言うと、いわゆる給与事務、その他諸々の企業の事 務を代行するサービスというのは、いま、いろいろな形で生まれてきています。特に大 企業で言うと、グループ間の企業の事務を全部代行するということが進んでいます。ス ケールメリットなり効率化を追求する、システム化も進めるということです。そういう 中で中小企業に対しても、そういったサービスを提供して、より効率的にお宅の事務を 軽減しましょう、人も減らしてあげましょうという提案は、いくらでもあるのです。  ただ、財形に関して言うと、そういったことと全く関係なく加入率は伸びないし普及 も進まないということであり、アウトソーシング議論は後付けの議論になってしまって いるようです。賃金計算の事務自体はどんどんアウトソーシングは進んでいるし、世の 中の効率面から見ても非常に貢献しているということはあるのですが、財形は逆に、そ こから取り残されているのが現状だということでしかないので、そこに財形を入れてく れという言い方をしても、なかなか簡単に進むものではないと思います。  それと、議論がないようなのでよろしいですか。実はかつての高度経済成長期に生み 出された財形制度というのは、勤労者の貯蓄を奨励するということでした。これはマル 優制度や住宅貯蓄控除から始まって諸々の支援制度があって、勤労者の持ち家に寄与し たというのは間違いない事実だと思います。  ただ、いま勤労者の生活の実態等が、当時からはかなり変わってきている。格差があ るという話があって、それはいろいろな数字からも裏付けられないわけではないのです が、いろいろなライフスタイルがあって、いろいろなニーズがあるというところで、財 形の中でいろいろな問題があるということを考えていくと、特に最近感じているのが財 形制度と金融機関との関係です。どうしたら中小企業に普及するかいろいろ考えて、金 融機関との関係というのを皆さん方もご承知のことかと思いますが、自分なりに少し整 理してみました。こういったことが解決されないと、実は先ほど言った勤労者が利用で きないし、金融自由化という中で財形の活用が硬直的になってしまっているとか、中小 企業に普及しないことの弊害になっていると考えた次第です。  1つは、金融機関の選択に限界がある。財形制度を導入する企業における金融機関の 選択というのは、資本関係が重視されるケースが非常に多いのではないか。企業ごとに 個別に金融機関が絞り込まれる。勤労者の目から見たら、金融機関を自由に選択するこ とができないということになっている。労働力の流動化に対応しきれないということに もなっている。いろいろな機会に、いろいろな所で働いてみようというふうに意欲のあ る勤労者は、財形制度加入というのをためらうことになるのではないか。  それから金融機関が企業を選別している。金融機関は、貯蓄、集金を効率的、低コス トで実行できる規模の大きい実務レベルの高い企業から、財形制度取扱金融機関に指定 されようとする。これとは反対に中小規模の企業は敬遠されるということで、中小企業 への財形制度の普及は進まない。代行機関ということがなかなか進まないのも、プロの 金融機関さえあまり手を付けようとしないということからすれば、ある意味では当然の ことなのかなと思います。そうすると、結果として中小企業の勤労者の方というのは、 財形制度を利用する機会の制約を受けるということになる。  一般的に、規模の大きい企業ほど社員管理のレベルが高いし、賃金レベルも高いケー スが多い。財形に精通する専任者も置いている。金融機関から見れば、財形というのは 非常に低コストでローリスクの大企業を相手にするときには、おいしい制度ということ が言えるのではないか。  また金融機関は金融商品を限定します。企業が指定する形で財形制度を取り扱う金融 機関が決定されるのですが、この場合に金融機関が取り扱う金融商品は、法的な規定も ありますけれども、企業、金融機関双方の管理コストといった面から、金融機関のどん な商品も扱おうというふうにならないケースが、自分自身の経験からも読み取れる。そ うすると幅広い金融商品がラインアップされることはない。結局、勤労者が自分のライ フスタイルやニーズにおいて、金融商品を自由に選べるということもできなくなってい る。こういった金融機関、金融商品が企業ごとに異なってしまっているということで、 労働力の流動化にも対応できなくなっている。  金融機関の窓口事務を、企業が行うのは法で定められています。実は企業が担当すべ き財形貯蓄関係の業務というのは、基本的には皆さんもおわかりだと思いますが、募集、 利用申込み、受付、定期の積立て、振込み、集金、残高通知、解約、その他、諸々の手 続は企業が行っていますが、これは実は機関の窓口で行っている業務なのです。そうい う意味では、いま代行機関にロスがあると事務方からお話がありましたが、財形貯蓄は ずっと経験もして運用もして考えてきていますけれども、社会的に見ると、銀行の窓口 業務を企業が行っているということでロスを生んでいるのではないか。チェックオフ、 金融機関振込みというのが、もともと三者協力の企業の原点だと思います。こういった 企業に対する協力要請は当然のことですが、特に規模の小さい中小企業にとってみると、 それは非常に負担になっているケースがあるのではないか。  金融機関関係の方がいたら反論があるかもしれませんが、金融機関は先ほど言いまし たように、大企業のところで集金、預金業務を手広く、うまく行っている割には、金融 機関の協力みたいなものが実はそれほどないのではないか。企業が、いわば窓口業務等 事務を代行している部分がかなりある。こういった金融機関との関係を見た場合に、特 に事務能力の点や規模が小さいという中小企業に普及することの障害が、1つ考えられ るのではないか。何とかこのあたりのところを、もっと金融機関の協力を得ながら中小 企業も参入しやすくなるようにできないか。これは、例えば企業の事務の負担を考えれ ば、松井委員もおっしゃっていますが、チェックオフということではなく口座振替とい うのも具体的に考えられる1つの手段です。  企画課のほうから出ている論点をずっと見ると、そういった財形の、いわゆる企業が 実際にいつも課題として考え、何とか解決しようというところの視点とは、およそ懸け 離れた制度論みたいなところがものすごくあります。どうもこのままでは、中小企業に 普及するに至らないのではないかと、だんだん思ってきたのがいまの現状で非常に残念 です。  ですから、お答えを聞くたびに、これはなかなか進まないなと思います。金融機関の ほうのいろいろな意見も聞いてみないと、良い制度の改善はできないと思います。少し そういう視点からも議論しないと、話が進まないのではないかと思います。この辺のと ころは労働側委員の方からも、お伺いしたいのですが、どうしてもこのままでいくと大 企業中心で、それこそ労働組合がしっかりしている所とか、ちょっと生意気な言い方を しますけれども、そういった所の、ごく一部の人しか利用しなくなる制度に、極端な言 い方をすると、もうなってしまっているのではないかと思います。 ○座長 ご参考までに、私のところの団体は小団体ですから、今までは自分の所で給与 計算もやって、自分の所で給与関係のソフトを持ってパソコンで処理していたのですが、 これもだんだん年限が経って耐用年数が過ぎてくると使えなくなって、新しいものに変 えなければいけないということになり、この機会に給与代行に出したほうがよほど安上 りという話で、給与代行でやってもらったのです。全くこちらのほうには手間暇がかか らないのです。単にこの人の給与の計算方法はこうですというのを予め送っておけば、 そのとおりにソフトを作ってくれて計算できてしまうわけです。この人は毎月変動する 超勤が何時間ですというのさえ毎月通知してやれば、自動的に全部印刷して個人ごとの 振込みから全部やってくれるわけです。例えば毎月の親睦会費が2,000円というのだっ て、個人から天引きしてちゃんと親睦会の預金口座へ毎月振り込んでくれる。だから手 間暇は全くかからないのです。  だから中小企業の財形だって、そういうことであれば、そういうのも天引きと言えば 天引きなわけですから、全く手間暇かからずに技術的にやろうとする仕組みというのは、 いくらでも考え得るだろうと思います。あとは本人のやる気とか、中小企業の事業主の やる気、あるいは金融機関のやる気だけにかかっている気もしないでもないのですが、 いかがですか。そうすれば松井委員が言われたように、二重に手数料なんてかかってい ないのです。1回で済んでいるのです。 ○松井委員 例えば企業が財形を直接やるということになればそうですけども、先ほど の団体を通じてやると2つになるということです。それで先ほど奥村委員が申し上げた ことは、金融機関から見ると、はっきり言って零細規模の会社はあまりおいしいところ ではないということです。金融機関の関係の方の反論を伺いたいと思います。 ○末永委員 私も労働側で出ているのですが、労働金庫ということで発言は控えてきた のですけれど、前提として言っておかなければいけないのは、私ども労働金庫は厚労省 の管轄の金融機関であるし、もともと労働金庫法というものに基づいて取引しています ので、原則は労働組合が利用者となります。ですから、組合が利用者という形になりま す。ですから組合のない企業との取引はないという前提で、特殊な金融機関ということ でご理解いただきたいと思います。  先ほど言われた企業サイドの事務はかなりあると思います。ただ、私ども労働金庫で 最近、力を入れてやってきているのが、1つは払戻しです。これについては先ほど窓口 でやって企業が代行しているという話でしたが、そこのところは電話で振替ができるよ うに仕組みを作っています。昨年からそういう仕組みを作ったのですが、かなり件数が 伸びています。これは一般財形が中心になってしまうのですが、必要ある人は電話で自 分の預金口座に振り替えるということで、事務的な手間を少しでも減らしていこうとい うことでやっています。  もう1つは賃金控除の関係ですが、確かに控除についても企業はいろいろシステムを 持っているので、私どもでそういった賃金控除のシステムを作って、使っていただく所 には提供するということも、いま、いくつかの企業でやっています。まだ全部でやって いるわけではありません。それと、前からやっていることでは企業の奨励金があります ね。この奨励金の事務代行なども、私どもが計算して企業と突き合わせてやるというこ とを従来からやっています。  したがって、冒頭言ったように若干の特殊事情はあるのですが、一般的には確かに手 間がかかって、おっしゃるようなことがあるのでしょうけれど、少なくとも私どもは、 そういう点では使い勝手がいいように、この間、いろいろな工夫はやってきたつもりで す。  それと個人情報の関係が入ってきたので、その点についても今後、さらにいろいろ工 夫していかなければいけないし、電磁的な手法をいろいろ工夫していけば、いまよりは 使い勝手がよくなると言えると思います。ただ、それをどういう形でやるかというのは、 我々ももう少し検討していきたいとは思っています。 ○座長 ほかにないですか。 ○田村委員 参考資料1−5の日本経団連が出しているアンケート調査の2頁の表を見 ると、下から2つ目の「福利厚生代行サービス費」が、前年対比40.9%伸びているとい う数字が出ています。それを見ると、やっていただいているのではないかという気はし ます。その上の項目を見ると、医療や健康の部分についての関心が伸び率で非常に高い のですが、真ん中のライフサポートのところの下から3つ目に「財産形成」というのが あって、これが6.4%という伸びを示しています。  大企業の中で、こういうものが必要だというのは、ずいぶんやっていただいているの ですが、私どものほうの努力不足から、労働組合の組織率が年々下がっている中で、特 に大企業の組織率はかなり維持されている格好にあるのです。ただ、300名以下の中小 零細企業のところの組織率は1.3%くらいしかないという現状の中では、これがうまく 使われていないのかなという気がしています。金融や行政も含めて勤労者へのアピール というところの不足が、要は届かない所が非常に多い母体がある中で、そこへのアピー ルが足りないという気がしています。そこのところをちゃんとしながら、事務手続の関 係についてはいろいろ工夫すれば、効率というものは出てくるのではないかと思います ので、その辺のアピールを大事にしていくことを是非お願いしておきたいと思います。 ○座長 いまは事務代行というのは、事業主団体でないと代行できないことになってい るのですか。 ○企画官 団体でなくても、企業から委託することはできることになっています。 ○座長 私が思ったのは、給与計算をやっている会社が代行業務を引き受ければ、2回 も手数料を払う必要はないと思ったのです。そういうのは可能なのですか。 ○企画官 そういうことはできることになっています。よくあるのは、大企業の企業グ ループで分社化されている所で、給与計算をやっている会社が1つの独立した会社にな っている場合に、その企業グループの中の他の会社の給与計算をやると同時に、財形貯 蓄の事務もグループの中の企業から委託を受けて、併せてやっている所はたくさんある と思われます。 ○松井委員 ただ、これは事務代行団体として指定するのは、事業主団体ということで はなかったですか。民間の福利厚生会社が、そういう指定を受けられるということにな っていましたか。ですから、要するに事務代行というより、給与計算上のいろいろな仕 組みを財形も含めてやれるのは、それはそれでいいのですが、それがいわゆる事務代行 団体足り得るのかどうか。それが厚生労働大臣が指定するという仕組みになっていたと 思いますが、それができるのかできないのか。もう1つ、指定されるけれど、事業主団 体でないと助成金が受けられないのかどうかなど、ここら辺の事実関係はどうだったか、 もう少し教えていただけますか。 ○企画官 いまのご質問ですが、先ほど私が申し上げたような企業グループのようなケ ースの場合には、事務代行団体の指定の対象にはなっていませんが、そういう指定を受 けなくても、財形貯蓄の事務は委託を受けて代行事務を行うことができることになって います。  事務代行団体として指定を受けた場合、特別に行うことができる事務として、助成金 の中の1つとして財形貯蓄活用助成金があります。その助成金の支給申請の事務だけは、 指定を受けた団体のみしか、その事務を行わないことになっています。この財形貯蓄活 用助成金支給申請の代行事務以外の通常の財形事務については、大臣の指定を受けなく ても、どこの団体や企業でも委託を受けて行うことができることになっています。 ○藤田委員 毎回、同じような議論がされているような感じがするのですが、先ほど企 画官が挙げられたカフェテリアプランについて、これは新しいアイデアではないかとい う感じがして、その点について意見を申し上げたいと思います。カフェテリアプランと いうのはどういう性格を持っているかといえば、1つはコストが固定化するということ だと思います。ですから予算統制が効いてくるということです。高いか安いかというの は一概に言えないと思います。ただ、コストが安定化してくるということは確かだろう と思います。業務内容がそれだけ定形化してくるだろう、という面でもメリットがある と思います。  しかし、ご提示されたカフェテリアプランというのは、これは一般の福利厚生のメニ ューを揃えている。その中に財形を入れることがふさわしいかどうかという点は、まだ 検討する必要があるだろうと思います。というのは、もう1ついまの財形の問題でネッ クになっているのが、普及がなかなか進展しないということだと思います。普及の点で 考えると、これはある意味では逆行することも考えられる。というのは、一般のメニュ ーは選択制ですから、財形を選ぶか、あるいは医療給付を選ぶかということになります ので、結局、選択ということになると、財形をこれから普及させていこうという点から 見ると、これは普及をむしろ阻害する面もないわけではない。どちらかを選ぶとなると、 財形をやめてしまおうということにもなりかねないわけです。分散していくわけですか ら、そこは、これからの検討課題だろうと思います。  そうは言っても、せっかくお出しになったカフェテリアプランですから、もしおやり になるとすれば、もう1つコスト固定的な新しい財形制度を作る。2段構えで作ったら どうかというのが、私のアイデアというよりも感想なのです。つまり、もっと予算が固 定的に、かつ、今の貯蓄制度でなくて、例えば利益分配制度のようなものをその中に入 れていけば、非常に固定的なものだけではなくて、企業にとっても追加負担にはならな い。変動的なアドホックな制度として、機能していくのではないか。そういうものを付 け足していけば、カフェテリアプランというものも、ひとつの魅力のある新しいシステ ムとして機能してくるのではないか。そういう感じがしました。  ただ、アウトソーシングすればいいということは、確かにカフェテリアプランもアウ トソーシングの一種だと思いますが、そうなるとコストは安定化してくる。スケールメ リットが出てくれば、コストもダウンする可能性もありますが、一般にアウトソーシン グは、高い、安いということではないだろうという感じがしています。アイデアとして 私は大変面白いと思うので、そういうものを含めて何か新しい制度を作り上げていかな いと、いまの財形制度では非常に問題が出てきて、じり貧状態にあるのは間違いないだ ろうと思います。ですから、カフェテリアプランも1つの突破口になり得るということ を申し上げておきたい。 ○松井委員 藤田委員に教えていただきたいのですが、カフェテリアプランが突破口に なるというのは、どういうメカニズムでなっていくのか、もう少しご説明をお願いでき ればありがたいと思います。どうしてそうなっていくのか。福利厚生の別の言い方をす ると、カフェテリアを入れている企業がそれをやればいいということなのか、カフェテ リアをもっとほかの企業も入れてやるようにすれば進むのではないかというお話なの か。カフェテリアと財形がくっ付く場合、どういう付け方をしていくのかがいまひとつ わからない。  もう1つは、これが財形法上、可能かどうかもわからないのですが、カフェテリアと 財形がつなげられるというのは何かなと思っていたときに、頭の中に浮かんだのは、財 形給付金というものをカフェテリアの中で選択ができるという仕組みが、もしかしてあ り得るかもしれない。そうすると、選択するかしないかは従業員が決めます。けれども、 私の知る限りにおいて財形法上の財形給付金というのは、ある程度、財形貯蓄を行う人 の間で合理的な範囲での差はあってもいいけれども、極端な差はあってはいけない。そ こが本当にクリアされているかどうかがわからないので、正直を言ってカフェテリアと 財形がどのように付くのかのイメージができないので、先生がお考えのところを教えて いただきたいのです。 ○藤田委員 まず申し上げているように、コスト面。コストが安定化していく、固定化 していくということが1つあると思います。ですから、財形で伴う経営サイドのコスト をここで固定化していく。その中には事務費、給付金等を含めて、これを固定化してい く。ですから、いまはまだ普及していない中小企業にとっては、そういうものならば財 形をやっていこう。新しく財形の分野に入ってくる企業もあるだろう。逆に、いまやっ ているところは選択制ということになりますと、財形をやめてほかのものを選択してい くこともあり得る。ですから、一概に普及の面でカフェテリアプランができれば普及す るとは言えないということは先ほど申し上げた。  カフェテリアプランを引いておいて、新規にコスト面で十分に財形制度に入ってこら れる。また、それを補強するような何か装置を作っていかなければいけないことを先ほ ど申し上げたのです。それには、もっと固定的な、あまり企業の負担にならないような ものを付け加えていくとか、何かそれをプッシュするような追加的な装置を作っていく 必要がないと、そういうものを作らないとなかなかカフェテリアプランにおいて財形を プッシュすることができない。ただ、せっかくこういう制度、アイデアをお出しになっ たのですから、いまからいろいろと検討して、いまの財形制度に代わり得るものになる かどうか、検討してみないとわかりませんが、アイデアとしては非常に面白いと考えて います。成案があって申し上げているわけではないのです。 ○勝委員 私も今日の議論を聞いていて思ったのですが、前提として財形を取り巻く環 境では非常に厳しくなっている認識をすべきであろうと。労働特会の見直しであるとか 政府系金融機関統廃合ということで、助成金についてもかなり厳しく考えざるを得ない のではないか。そういう中において先ほど奥村委員も言われましたが、例えば中小企業 に財形を普及させていく意味で、平成14年度はもう1つのプレーヤーである金融機関だ ろうと思っています。先ほどから議論になっているように、助成金はなかなかニーズが 少なくなっているのは、二重の負担であるとか、そういった面もあるし、なおかつ中小 企業にとってはそういった負担が非常に大きいということであるとすると、金融機関は どう財形に向けるのかということを知識として知りたいというのがありました。  例えば銀行と証券会社では違うだろうし、先ほど金融の商品が少ないと言われました が、金融機関にとってもあまりおいしくない仕事なのだろうと。手間はかかるけれども、 あまり実入りがないということで積極的に働きかけないということなのだろうと思いま す。例えば投資信託、そういったものの手数料業務みたいなものとか、あるいは報酬の 手数料といったもの等を考えると、必ずしもそういったものを集めていくのは金融機関 にとってもニーズはあるだろうと思われるわけです。そういった部分で実際に金融機関 がどう行動しているかも考えていくべきではないか。これは、2年ぐらい前にこの部会 でも申し上げたことであります。  それと関連して、先ほどの融資のことで意見を申し上げなかったので、この場で申し 上げたいと思います。参考資料の1−1が配られていると思います。13頁に能力開発機 構の財形勘定収支の計画書があるわけですが、政府系金融機関統廃合ということで、例 えば融資は全面的に見直す必要があるわけですが、これを見るとかなり赤字が膨らんで いて、累積欠損で見ると平成16年度は380億円とかなり巨額なものになっていて、融資 残高から比べると、相当程度赤字が拡大している。これは、平成16年度で単年度収支が 黒字になっていますが、スプレッドが発生したということで、それまでは逆鞘だったと いうことは考えられますし、あるいは不良債権ではないですが、この資料には出ていま せんが貸倒れ分もかなりあるのではないかとも推測されるわけです。そういう中で住宅 融資を続けていく必要性というもの。これは先ほど労側委員から、ニーズは非常にある ということですが、既に民間の銀行でもかなりいろいろな商品が出ているわけで、あえ て財形で持家の融資制度をしていく必要があるのかなということも考えていくべきなの ではないかと思いますが、この辺の貸倒れの比率と、そういったデータはあるのでしょ うか。 ○企画課長 13頁の資料の赤字の原因等について、ご説明しておきたいと思います。平 成11年度までは、機構が財形融資の資金を借入れるときの借り入れを10年で借りてお いて、貸し出して事業主から返してもらうほうは、金利が毎年変動という仕組みだった のです。制度的に10年という長期金利で借りておいて、1年という短期金利で返しても らう。ですから、金利が低下していけば必ず短期金利は下がるわけですから、構造的に 赤字が出る構造になっていたのです。  それは当然、当時は国費か何かで埋めればいいということだったのかもしれません。 そこはよくわかりませんが、そうなっていたのです。でも、これでは赤字が増えていく だけなので、構造的な問題でこれはいけないということで、平成11年度に改革をしまし て借入れも貸し出すほうも、全部5年に揃えたのです。したがって、この金利の変動に よるギャップによる構造的な赤字が発生する恐れはここでなくなったので、そこから以 降は過去分は引き続きありますが、5年ごとに金利を見直すことになりますので、ずっ と経ってくればすべて5年ごとになってセットになりますから、過去分の中には少し出 てきますが、この段階以降は構造的な赤字がまずなくなったという整理です。  かつ、そこで過去の赤字分をなんとかしなければいけないものですから、これまでは スプレットを乗せると認められなかったのです。政府系のものなのだから、利潤を追求 してはいけない。いまでもそうですが、したがってこの赤字を解消するために、スプレ ッド0.69という格好で、いま、乗せることが認められましたので、10年で借りていた ものがどんどん5年に切り替わっていくわけです。構造的に赤字を抑えておいて、スプ レッドを乗せているもので、リターンが少し多いわけです。  そういう状態になってきているので、ずっと見ていただきますと単年度収支の赤字が どんどん減っていきますね。ついに平成16年度になって、黒字に転換したということな のです。これからは逆に10年ものの借りにきていたものがどんどん返済されていきます ので、既存分だけでもいけば黒字が拡大していき、累積欠損分は減少する見込みです。 いつまでというのがまだはっきりしているわけではありませんが、平成20年代の初めに は、ほぼこれがトントンになるだろう。そこから逆に黒字が貯まる構造になるというシ ミュレーションできています。  実は、実績を見てみると若干、黒字幅が計画よりも大きくなっているのです。そうい う意味では、ここのところは構造的な問題は止めた。かつ、スプレットを有効に使って、 当初の計画よりは少し早めに黒字転換したという状況になっていることを、ご説明しな ければいけないと思います。  貸倒れのところは別途資料があると思いますが、私が聞いているのは機構は転貸融資 という格好で事業主のほうに基本的に貸し出すものです。それから、必ず融資の手法と しては債務保障等を付けていますので、ほとんどいまのところは貸倒れ等がありません。 非常に優良な融資と言われていまして、そういう意味でこの融資事業そのものの評価か らいえば、過去の構造的な赤字は引きずってはいるものの、将来的に見れば比較的に健 全な融資事業であると考えています。ただ、そうは言いましても過去の赤字をいかに早 く解消するか。それから新規の融資が伸びなければ、この赤字の解消が遅れることにな るわけですから、そういうことなどもいろいろ考えなければいけないということかと思 います。  デフォルトに使うような資料はないですか。 ○企画官 いま、この場にはお持ちしていませんので、また改めてお配りさせていただ きたいと思います。 ○勤労者生活部長 付け加えまして、あとは民間の金融機関の方々が当然ながら、ずい ぶん住宅融資をしてこられて、残高が190兆ぐらいあると思いますが、財形融資は全部 入れても2兆円強ぐらいですから1%強ぐらいしかないわけです。その中で、何ゆえに これがあるのかというご質問だと思います。私どものいまの考え方をご説明します。そ れがいま、良いのか悪いのかが問われています。  考え方としては、個々の企業の方々、これは大企業もあれば中小企業、零細企業もあ りますので、その方々が個別に資金を取り入れられますと当然ながら国の信用を背景に して、大量に何千億も取り入れていて、それを資金にしてお貸しする。いまの財形法上、 いまは独立行政法人が調達していますが、それと同じ、またはそれより低い金利でない と従業員の方に貸してはいけないことになっているわけです。つまり国の信用を使って、 原則として安い資金を大量に取り入れて、それをそのまま従業員の方に基本的に届くよ うにするのが制度の趣旨で、民間の方々がやっておられる場合に、今度は個々人と金融 機関との間の話になりますので、金利が必ずしも安いときばかりではないだろう。力関 係からいいますと、国の信用を使ったほうが超長期的にいいますと安定的で、なおかつ 安い可能性がある。  私どものいまの試算でも、民間の方々の融資よりは長いスパンで見ますと、いまやっ ている財形融資のほうが勤労者にとって有利であるという試算があります。ただ国が真 ん中に割って入って、国の信用を使って、相対的に安定して相対的に低い金利でお貸し するようなシステムを維持することが良いのか悪いのかという根本問題があると思いま す。ただ、私どものいままでの考え方は、そういう考え方でやらせていただいています。 ○企画課長 その点について、もう1点だけ補足します。その資金源が財投資金とか、 そういうものではないということです。財形の場合には、財形の勤労者の方々の貯蓄を ベースにしている。かつ、限度額として貯蓄額の3分の1という歯止めをかけているわ けですが、勤労者間の相互の共済的なところがあります。財投資金等で民間の資金を吸 い上げて、というような仕組みではない。あくまで一般財形も含めてではありますが、 勤労者が貯蓄をして、その貯蓄を住宅の融資のほうに一部回して、相互共済の仕組みと してやる。そこでの利率その他については、国程度の公的なものが介入することによっ て、一定の金利を緩やかに保ちながら、金融機関ごとの融資不足とか過不足がないよう にうまく調整する仕組みを取っているという仕組みなのです。  それらトータルを含めて、今回の政策金融の見直しで、これでいいのかとか、そうは いっても国費を投入している部分がありますから、そういう特会からの国費投入が本当 にふさわしいのかとか、そういう議論は当然あるのだろうと思います。それに対して、 どう答えていくのかを私どもも考えなければいけない。あるいは、どういう形であれ、 機構の事業を見直して、もっと効率的にできる面がないのか。経費の節減を図る余地は ないのかとか、そういうのは担務的に考えていかなければいけないだろうと思います。 ○松井委員 国費投入というところでお話がありましたが、参考資料1−2の11頁で、 仮にいま融資の利率が1.72ということで財形が非常に有利だということがこれを見て 取れます。では、いまの貸出残高に対して国費が右のほうにプラスアルファがあると思 いますが、それはどのくらいになっているのかが分かりますか、そういうことも含めて 議論しないといけません。いま低くて有利ですよ。でも、それはこの財形融資を受けて いる人はほんの一部ですよ。それは貸出残高が非常に低いですよ。それは、雇用特会、 労災の特会を使っていますよ。ここが本来、効率的かどうかをきちんと見る尺度になる と思いますが、そういう点をずっとお願いをしてきているのですが、そこはどうなのか。  それから、仮に国家公務員共済のほうは、特会から資金が行っているとは思えないの ですが、事実関係はどうなっているのかを教えていただければと思います。 ○企画課長 直接、金利には利子補給制度もないことはないのですが、ほとんど入って おりません。実際上特会から流れている費用というのは、能開機構が融資の審査をする ときの事業費として、それの部分は特別会計法という格好になっています。そこの部分 は大体9億6,000万円ぐらいなのです。いわゆる能開機構における審査業務、そのため のシステムの関係、それと民間金融機関のほうに代替という格好で出していますから、 そこでの事務費、委託費等々です。金額からいくと、絶対額から見ればかなりの額であ ります。 ○企画官 共済組合への融資の仕組みですが、参考資料の1−2の1頁を見ていただく とわかりやすいかと思います。横長の資料です。雇用能力開発機構が財形貯蓄をやって いる金融機関から資金調達をします。資金調達をしたお金の一部は、いちばん下が公務 員の共済組合ですが、雇用能力開発機構から共済組合が融資を行うに当たって必要な資 金を融資をします。そのお金を使って、公務員に共済組合が融資をするという仕組みに なっています。この仕組みを行うに当たって、雇用能力開発機構が共済組合に融資をす る事務費については、労働保険の特別会計では負担はしていません。その事務費の部分 については、総務省から一般会計で機構のほうに行っているということになっています。 ○企画課長 単位は100万円オーダーでしょ。数百万円でしょう。 ○企画官 数百万円です。 ○勤労者生活部長 いま申し上げたとおりですが、今日ご議論の対象になっている助成 金とか何かを含めましても、10億円とか10数億円の世界でありまして、それから事務 費ということでチェックをしなければいけない。その事務費について特別会計等から補 填をしているわけです。それが仮に、それだってもし民間の金融機関の方であれば、そ ういう事務費というのも自前で出して、そのものを乗せるではないかという議論が仮に あったとしましても、いまはご存じのように転貸融資全体の底溜り、全体のお金が8,000 億円ぐらいありますので、その8,000億円全体について毎年の金利分に、いまの10億ち ょっとぐらいの、どれくらいかかるかを単純に割ってみますと0.12とか0.15程度にし かならない。  ですから、いまは1.72の中で、それを事務費や何かを、もし自前の金融機関であった と仮定するならばと言ったときでも、この中で1.72がどこまで動くかというと、これが 0.1ぐらい違うのかどうか。ただ、その前にスプレッドを取っていますから、スプレッ ドが0.69ありますから、それでどこまで吸収できるのか、できないのかという議論は当 然理論的にはあり得ると思います。その程度の影響です。 ○新芝委員 労働側の委員です。私も、かなり昔に生命保険会社で財形設置をしたこと がありますので、その経験を踏まえて少しだけコメントをさせていただきます。  私がかなり昔にいたころも、当然我々のほうの中ではメインの商品ではありませんが、 極めて重要な企業の福利厚生の中の商品ラインナップに位置づけていました。ただ、ご 案内のとおり商品ですので、お客様、我々からすれば企業なり従業員の方々が欲しがら なければ売れないということがありますので、そこは極めて大きな問題だと思います。 そういう意味では、まず何を考えるかについては金融機関の取組以上に商品の魅力度と いいますか、独自性といいますか、その辺をしっかりと向上させることが最優先の問題 でありまして、そういうことができれば結果的にニーズが生まれて、当然売る環境また は売ってほしいという声がかかってくるということかなと思います。  商品としては、非常に三者協力ということで独自性のある商品だと思いますし、単純 に低金利の中での競争力がないことだけに片付けずに、いまある魅力をもう少ししっか りアピールをして、さらに新しい魅力を付け加えたり、いま負荷になっている部分をど う減らすかを考えていくことによって、結果的にそれはニーズが生まれて、金融機関も 一所懸命に売ろうということになるのではないかと思います。以上です。 ○松井委員 新しい魅力ある商品が仮に出てきたとしても、いまの年金と住宅財形は新 しいものに移行できないということも踏まえて、どうしたらいいのかということも考え ないと難しいと思います。あと、一般財形は3年に1回ですか。 ○企画官 3年経過後は預け換えができる。 ○松井委員 3年経過後ということになっていることも、生命保険の営業していた立場 として、どうしたらいいかも含めておっしゃっていただきたいです。 ○新芝委員 労働組合専従が長くなりまして、専門のほうから外れましたので、あまり 的確なコメントができないかもしれませんが。まず住宅についてはかなり潜在的なニー ズといいますか、魅力があると思います。極めて低金利の中で、あと金融機関が短期間 のキャンペーンで当初の安い金利でやりますと、見た目にはとても差があるように見え るのですが、長い目で見たり、またこれからの金利判断を考えると、先ほど部長もおっ しゃっていましたが、かなり魅力ある商品だと思いますので、その辺のアピールをしっ かりすることが大切だと思います。  年金については、私が労働組合の仕事の活動を中心にやり始めたころから、いろいろ な制度ができてきました。昔以上にいろいろな選択肢が並んでいますので、そういう意 味では現在、ほかに提供されている確定拠出型の年金も含めたその辺の整理はある程度 していかないと、結局そのような商品の中に埋没してしまうのではないかと思います。 ○新村委員 議論に水をかけるようになってしまうので発言を控えていたのですが、昨 年暮れの基本方針が出たときに、私はがっかりしました。なぜかというと、いまの財形 を非常に虚心担懐に見たときに、この政策金融の改革の方針から見ると、ほとんど政府 が介入する必要はないという結論が出そうである。私は、そういう意味ではこれまでの 懇談会や分科会で、財形というのはもう少し基本的な哲学から考えなければいけないこ とを発言させていただいたと思いますし、私だけではなくて多くの委員の方がそういう 議論をしたにもかかわらず、いまこういうふうになって非常にスケジュールがタイトで すよね。特会が今年ですか、そういうふうに最後を切られているときに、こちらから提 案する素材がないことを非常に残念に思います。  今日のご議論も、多分少しでも前向きの議論ということで、皆さんもいろいろなこと をおっしゃっていられたと思います。これまでずっと指摘されてきた、大企業の所得上 位のサラリーマンに対する国の介入する制度の是非みたいなものが、それを直そうとし て一生懸命に中小企業とかそういうことで議論してきたわけですが、結果としてエビデ ンスとしてはそういうものが出てこなかったという事実を見て、そこの議論ができなか ったことを大変残念に思います。  いま、さまざまな議論が出てきたわけですが、これからそういうことを議論して間に 合うのかどうか。そういう意味では、最初のスケジュールのところでお伺いした中間報 告というのは、いったいどういう性格のものになるのかは次回の議題のようですが、教 えていただきたいと思います。感想です。 ○勤労者生活部長 少し先走った話ですが、正に今ご指摘がありましたように昨年の12 月24日の閣議決定は、非常に大きな影響を財形制度全体に及ぼす可能性が当然あるわけ で、3つの改革、いずれも財形制度に触れるものです。特会改革、独法改革、そして政 府金ということです。  実は、今まで当懇談会でいろいろとご議論を頂戴していて、すごく前向きにより良い 商品にするにはどうしたらいいかとか、あるいは中小企業の人、いまでもそれなりには 普及はしていますが、この資料を見ていただくと基金とか、いろいろな給付金の件数は 中小企業の方々のほうが、ずっとスタートのときにはたくさん使っているのが分かりま すが、それは別にして、そういう中小企業へより普及させるにはどうしたらいいのかと いうご議論とか、根本的ないろいろなご指摘を頂戴してきたわけです。ところが、ご議 論のベースになっていた状況と昨年の12月以来とは全く違ってしまっている。  少し先走って誠に恐縮ですが、次のときに取りまとめをさせていただきたいと思って いる内容というのは、単純に言いますと、いままでのご議論を議事録的に、とりあえず こういう議題についてはこういうご議論を頂戴した、ということを記録としてしっかり 留めたいのが1点です。  方向性と申しましても、いまのところはまだそんなに方向性が出ているとは思いませ んので、ありがたいいろいろなご議論を頂戴したということ。ですから、あくまでも中 間取りまとめ。そこで、とりあえず中断させていただきたいと思います。なぜかという と、いまの3つの議論は例えばこの場で「それは怪しからんではないか」とか、「お金 をもっと取ってきなさい」と言われましても、私どもはそれは予算の関係でいうと、必 死で頑張っても駄目なものは駄目で、ズバッといってしまう可能性。つまり、全く私ど ももほとんどコントロールの外にある話です。それから、金融政策改革等についても全 く外から突然ブルドーザーがやってきて、当面のものような話です。そういう中で、い ろいろとこうしなさい、ああしなさいというご議論、ありがたい言葉をここの中でずっ と続けていたとしても、結局それが活かされる可能性が非常に少ないだろうと思います。 その中で、貴重な皆様方のお時間を頂戴し続けるのも、いかがなものかと思います。  そこで、この制度がどれくらいのスピードで、いちばん早いのは今年の6月ぐらいま でで、特別会計の見直しの中で予算的な話が決まってまいります。その話はそのスピー ド感ですが、ほかの2つがどれくらいのスピードで、どれくらいの強さで、どれくらい の絶対的なものを持ってくるのかというのは政治との絡みですので、私どもは全く見え ていません。最悪の場合には、当然ながら制度そのものは完全に崩壊します。そういう 状況ですので、3つの流れというのがどういう強さで、どういうスピードでくるかによ りますが、私どももいろいろな形で抵抗したり、無理矢理押しきられたり、いろいろな ことがあると思います。その段階で、いずれにしても1年以内に独法の問題にしても法 改正まではともかくとして、少なくとも方向性は出しなさいと閣議決定は言っているわ けですから、あと1年くらいの間にはある程度の、私どもにとってこの財形についての 外堀りというのでしょうか、つまり前提条件というものがかなり見えてくるであろうと 思います。その段階にある程度至りましたときに、法改正というものは当然必要になっ てくると思います。  例えば、財形制度をなくすにしても、大よそのものはなくさなければいけないわけで すから、あるいは、もっといろいろな意味での微細な改正かもしれませんが、いずれに しても外からの力で相当決まってしまうことについては、その方向性もある程度決まっ てきた段階で改めて懇談会を再開させていただいて、残念ながら私どもの力ではどうに もならない世界での前提条件が決まって、その前提条件をベースにした上で、その範囲 内でまた皆様方のお知恵を頂戴して、法改正をどうやっていったらいいかをお諮りさせ ていただければと思っている次第です。非常に先の見えない話で誠に恐縮ですが、そう いうイメージでの次の中間取りまとめをお願いできればと思っている次第です。 ○座長 この機会に、いまのお話で何かありますか。 ○菅井委員 昨年末に閣議決定が出たときに、私自身はこういう言い方はおかしいので すが、正直に、政治の世界だとはいえ、あまりにも冷たいものだなという印象を持ちま した。そして、今日のこの中身も、労働福祉事業及びこれこれについては廃止も含め、 徹底的な見直しということですが、徹底的な見直しというのはいわゆる財政が困窮して いるから、少しまずいものはなくしてしまえということで、すべて下降修正なのです。 例えば育つようなものも、中でしっかり議論して、その中でよりよく育てられるものは 育てていけ、というようなことになっていく雰囲気ではひとつもないという印象をまず は持ちます。  それから、先程来議論がありますが、この財形で特に問題というか、普及がなかなか 進まない中小零細企業のところですが、いままで指摘されたとおり銀行の営業姿勢にも 問題があるだろうと思いますし、中小企業の経営者の理解というか、大変経営も苦しく なってきていまして、なかなかそういうところにも思いが及ばない。それから、労働組 合の組織率が低いということで、労働組合のほうが経営者に対していろいろ言っていこ うとしても、なかなかそういうことになっていないという、いくつかの要素があるのだ と思います。  例えば、その中で我々が努力するといってみても、まさか役所のほうに労働組合の組 織率を高めるように頑張ってくれというわけにいきませんので、そうしますと銀行の営 業姿勢だとか、中小企業の経営者に対する啓蒙活動をしっかりやっていただかなければ ならないのですが、どのくらいやっておられたか。私が内容を知らずに申し上げて大変 失礼かもしれませんが、そういうことが非常に重要だろうということが1つあります。 そういうことで、すべて進んでいないから、やめてしまえということになってしまうと 制度をなくしたら住宅、教育、年金、財政ともに、いわゆる労働者の将来への自立基盤 がかなり危うくなるというか、失うような恐れがあることをまず指摘をしておきたいと 思います。  それから、こういう政策の場合、もっと総合的にいろいろなところから労働福祉とい うのならば、この問題1つだけで普及する、しない、うまくいっている、いない、赤字 だ、黒字だということだけの議論ではなくて、もっと広く見てほしいと思います。それ は、例えばいま、貯蓄率が大変落ちています。少し長くなりますが、ご勘弁いただきた いです。これはいったい、何を意味しているのかということだと思います。いわゆる可 処分所得が全体で低下している。可処分所得が低下すれば、貯蓄率は上がらなければお かしい。もし、せめて横這いでいるならば、可処分所得分の貯金額ということになれば 上がっていかなければおかしいのですが、さらにそれを倍増す勢いで、いま2.6%ぐら いまで下がってきているということです。それは何かといえば急激に下降している要因 は、いわゆる家計の余力の低下。家計に対して、大変余力がなくなってきているという ことだと思います。  生活費が窮屈になっている。住宅ローンの返済、教育費に滞りが出ている。滞りとい うよりも、バンザイしている状況です。それが、どこへ向かうかというとサラ金へ向か っている。このサラ金がどんどん増えている。そのために大手金融機関まで、そのサラ 金の業界へ進出していっている状況です。自己破産の申立てが多重債務者ということに なるのでしょうか、20万人を超えている。経済苦自殺したのが平成16年度でいえば、 警察署統計で経済苦の自殺として7,974名、1年間で約8,000名という状況が来ている。 こういう問題をしっかり捉えて、これから勤労者の生活に対してどうあるべきなのかを 見てほしい。  2つ目は、教育の機会均等が崩壊してきていると思います。地方都市は大都市よりも 賃金が低下している。ところが、一方、例えば教育費などにかける支出は多くなってい るのです。地方都市から大都市へ、例えばいい大学に入ろうとすれば、かなり金をかけ なければならない。持って来て、下宿やマンションやアパートやというところへ、最低 でも月額6万円ぐらいかかってしまう。そこへ食費も当然要るということになれば、こ れでどんどん教育の機会均等が失われている。進学も断念しなければならない人たちが 出てきている。住居費などは、少し地方都市のほうが安いかもしれない。そういう問題 が出てきている。  中小企業と大企業に働く者それぞれの格差が出てきていることを総合的に考えてみれ ば、何かここで、遍く勤労国民的労働者が、将来の自立生活に向けてしっかりと基盤を 自立的にしていけるようなものを、労働者の連帯もそうですが、同時に一方では国もそ れを応援する。いい方法は、いまこれがあるのだけれども、これをさらに充実させると いうか、しっかりしたものに、お互いやっていこうではないかというコンセンサスをど こかで作り上げていくことこそが、政策で最も大事なことだろうと思います。そのため に、是非こういうものをしっかり残していってほしい。そんなことを訴えておきたいと 思います。 ○奥村委員 ずっと長い間、参画させていただいてきて、いろいろな提案をしたつもり ですが、もっとオープンな議論をするようにしていればよかったのではないかと思いま す。ただ、先ほど貸付利率について、非常に有利だというお話がありました。本当にそ うかなと疑問に思います。実は、法的なベースでもってそういうファンドを作ることに、 金融機関なり企業がある意味では協力ということで払ってきた負担というのがありま す。そういったコストも本当に入れて、有利であるかどうかを議論しないと本当の議論 にはならない。  再三、財形融資制度というのは効率的かどうか、国家的な見地で見て、ロスがあるの ではないかということをずっと申し上げてきたのですが、少しずつ情報を出していただ いて、今日初めて聞いたこともあります。こういった制度を国民の支持を得て運用しよ うとすると、オープンに制度の内容を皆さんに示して、どんな議論にも耐えられる仕組 みで運用することが大事なのです。こういう懇談会というか基本懇というか、議事録も オープンにされるようになった。聴講も認めますというふうに制度もだんだん変わって きて、オープンになっているのですが、もう少し制度の詳細から含めて具体的な議論が できるようにしておくべきだったなと、委員として反省します。  より良いものをと言われても、急に具体的なものが出るわけでも何でもないのですが、 繰返しになりますが三者協力と金融機関があって、もう少し金融機関の協力を引き出す とか、先ほど事務代行機関ということでカフェテリアという話がありましたが、お金を 扱うというのは餅は餅屋なので、金融機関が得している部分で費用負担しろということ も言えるかもしれません。そういう意味では実際に集金するなり、金融機関での資金の やりくりをするなり、融資をするなり、そういった餅は餅屋としての金融機関としての 協力を求めることだってあると思います。もっと幅広く考えれば、特に財形のいちばん の問題は金融の自由化に対応していけなかったことかなと思います。  銀行が10年間眠っていましたが、不良債権をほとんど一掃し、公的資金を返してしま っていて、元気なところに協力しろといっても難しいかもしれませんが、もう少しその 辺りも含めて国全体で「なるほど」と思われるような、合理的で効率的でロスも出ない ような仕組みを考えることができたらなと思います。 ○田村委員 時間が過ぎていますので、簡単に申し上げます。政治なり行政の日程的な ものがあって、次回には中間取りまとめということになると思いますので、いろいろな 議論の中で必要性は言われているし、それは見ている方向は同じだろうと思います。シ ステムや啓蒙や効率の問題では、まだ議論が煮詰っていないところはあるわけですが、 せっかくここまで議論をしてきたわけですので、中間取りまとめの方向としては前向き な方向で、政治決断があって全部駄目ではなしに、せっかくこの段階で出た中間報告が、 逆に政治決断に影響を与えられるような方向性が出せるようなことを、是非お願いして おきたいと思いますし、そんな議論をさせていただきたいと思います。 ○松井委員 手短かに申し上げます。中間取りまとめは、いままでの議論を並べるだけ ということで、あとはこの基本懇としては外部環境が決まるまで、ずっと眠っていると いうご説明だったと思いますが、いままでこれだけ議論してきて、本当にそれでいいの か。というのは、そういう外部環境が変わっていく中でも耐えられる仕組みとしては、 本来どういうものがあるのかということも詰めていかないと。もう1つあるのはそうい う逆風が吹く中で、本当に大切な仕組みですよ、いまは駄目だけれども、もう少しこう いう変え方をすればより普及が進むはずですよ、という議論の仕方もあると思います。 今後の基本懇における財形制度を検討していく取組みについても、来月で終わりという ことでなく、是非議論を深めていってもらいたいと思います。然るべきときが来たらや るということでなくて、やってほしいという要望です。 ○座長 また、その辺は来月に少し議論をしてみようと思います。事務局に日程の調整 をお願いをして、次回は3月に開かせていただきたいと思います。  最後に本日の議事録の署名委員は、従来どおり座長である私と座長が指名する委員と いうことで、労働者側委員からは田村委員、使用者側委員からは松井委員にお願いした いと思います。よろしくお願いします。  それでは、だいぶ時間が過ぎましたが、今日はこれで終了します。また、よろしくお 願いします。 照会先:厚生労働省労働基準局勤労者生活部企画課財形管理係 (内線5368)