06/02/01 第28回厚生科学審議会科学技術部会議事録 第28回厚生科学審議会科学技術部会  議事次第 ○ 日  時  平成18年2月1日(水)10:00〜12:00 ○ 場  所  厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館 9階) ○ 出席委員  矢崎部会長         今井委員 井村委員 加藤委員 倉田委員 笹月委員 佐藤委員          竹中委員 永井委員 長尾委員 長谷川委員 松本委員 南委員 【議 題】 1.平成18年度科学技術関係予算(案)について  2.第3期科学技術基本計画について 3.競争的研究資金の不合理な重複及び過度の集中の排除等に関する指針について  4.遺伝子治療臨床研究について 【配布資料】  1.平成18年度厚生労働省科学技術関係予算額(案)の概要  2.第3期科学技術基本計画について  3.「競争的研究資金の不合理な重複及び過度の集中の排除等に関する指針」    の検討経緯及び今後の予定について  4−1.遺伝子治療臨床研究実施計画の申請について      (北里大学病院及び自治医科大学附属病院)  4−2.遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する申請について      (北里大学病院及び自治医科大学附属病院)  4−3.遺伝子治療臨床研究実施計画の変更報告について      (神戸大学医学部附属病院及び名古屋大学医学部附属病院)      遺伝子治療臨床研究実施計画の終了報告について      (岡山大学病院医学部・歯学部附属病院) 参考資料1.厚生科学審議会科学技術部会委員名簿 ○林研究企画官   ただいまから「第28回厚生科学審議会科学技術部会」を開催いたします。  委員の先生方にはご多忙の中、また天気が悪い中お集まりいただきましてお礼申し上 げます。今日は垣添委員、金澤委員、岸委員、北村委員、黒川委員、中尾委員、橋本委 員からあらかじめご欠席のご連絡をいただいています。委員全体で20名ですので、出席 いただいている委員の先生方は過半数を超えていますので、会議が成立することをご報 告いたします。  本日の会議資料の確認をいたします。「第28回厚生科学審議会科学技術部会の議事次 第」の真ん中から下に配布資料のリストがあります。資料1〜4−3までと、参考資料 があります。資料1は「平成18年度厚生労働省科学技術関係予算額(案)の概要」です。 資料2は「第3期科学技術基本計画について」です。資料3は「『競争的研究資金の不 合理な重複及び過度の集中の排除等に関する指針』の検討経緯及び今後の予定について」 です。資料4−1、4−2、4−3はいずれも遺伝子治療臨床研究実施計画の関係です。 資料4−1は、北里大学病院及び自治医科大学附属病院の申請にかかわるものです。資 料4−2は、同じく北里大学病院と自治医大附属病院の生物多様性影響評価に関する申 請についての資料です。資料4−3は、すでにご審議をいただいた遺伝子治療臨床研究 実施計画について、変更の報告が2件と、終了の報告が1件の資料です。参考資料とし て、厚生科学審議会科学技術部会委員名簿をお配りしています。  本日、机上配布資料として、理化学研究所の「科学研究上の不正行為への基本的対応 方針」というプレスリリースのコピーと、第29回厚生科学審議会科学技術部会の開催に ついての先生方のご予定を記入していただく1枚紙をお配りしています。資料は以上で す。それでは矢崎先生に以後の議事の進行をよろしくお願いします。 ○矢崎部会長   本日は期末で、大変お忙しいところ委員の皆様にはご出席をありがとうございます。 その関係から、本日少しご欠席の委員が多いようですが、ご検討をよろしくお願いしま す。  それでは「平成18年度科学技術関係予算(案)」について、簡単に事務局から説明を お願いします。 ○林研究企画官  資料1に沿いまして、説明をいたします。これは年末にこういう形で予算案がフィッ クスされたというご報告です。まず、平成18年度科学技術関係予算全体の額は、合計と いう欄をご覧ください。平成18年度は全体には非常に厳しい財政事情の中で、ほとんど の分野で予算額が減額されております。そういった中で、科学技術関係予算だけは将来 への投資であるということで、例外扱いになりまして約1,308億円、対平成17年度比で いくと101.3ということで、1.3%増になっています。  このうち科学技術振興費については1,098億円で、対前年度比1.8%増になっていま す。厚生労働科学研究費補助金については428億円、対前年度比1.3%増ということで す。  その下に個々の厚生労働科学研究の事業名が記載されています。これについては2枚 目の紙に沿ってご説明いたします。2枚目のポンチ絵は、本部会でも何度かご説明して いますが、厚生労働科学研究については、総合科学技術会議から示された方針に従いま して、3つの柱、健康安心の推進、健康安全の確保、先端医療の実現という3つの重点 事項を設定して、それぞれの下で対応する研究を実施しています。ここにはそれぞれの 重点事項のカテゴリーに入る厚生労働科学研究の事項と、その予算額を記載しています。  2つ並んでいますが、括弧書きのほうは平成17年度予算です。例えば健康安心の推進 のところでは、がん予防・診断・治療法の開発は、平成17年度は予算額は46億円でし たが、平成18年度は55億円と大きく増えています。健康安全の確保では、新興・再興 感染症対策等の充実ということで、これが45億円から54億円に増えています。その一 方で、額がほとんど変わっていないところや、若干減っているところもありますが、こ れは総合科学技術会議のほうで毎年行われるSABC評価に沿って、査定が行われた結 果が反映されているということです。簡単ですが、平成18年度予算案についてご報告い たしました。 ○矢崎部会長  予算案については、前回ご議論をよくいただいたところですが、最終的にこのように まとめられたということで、何かご意見はありますか。お蔭様で、全体の予算がシーリ ングで減額される中で、やや増加したことは特記すべきことではないかと思います。今 井委員から何かコメントはございますか。 ○今井委員  全体から見たら大変良かったと思うのですが、それだけ期待されているので、それぞ れ頑張らなければいけないのかなという感じです。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。おっしゃるとおりだと思いますが。生活習慣の対策 について、笹月先生何か一言ありますか。 ○笹月委員  今日は垣添先生がいらしていないのですが、例えばがんの予防・治療・診断のところ が、46億から55億とかなり大きく伸びていますが、一方、生活習慣病対策とこころの 健康は、病気の種類、頻度、あるいは医療費における意味合いとか、これも非常に重大 なテーマです。この伸びがやや小さいような感じはいたします。これはそれぞれ積算さ れたことなので、ここで議論すべきことではないと思います。がんが病気として非常に 注目を浴びているということもありますが、一方、生活習慣病は予防に力を入れて、予 防医学といいますか、予防疫学ということでしっかり頑張ってこれからいかなければい けない重大な疾病だと思います。これにも是非お力添えをいただきたいと思います。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。その他はいかがですか。よろしいですか。次は「第3期科 学技術基本計画について」です。まず事務局から説明をお願いします。 ○林研究企画官  資料2に沿いましてご説明いたします。1頁は、第3期科学技術基本計画の経緯につ いて記載されています。これに沿って簡単に背景をご説明いたします。平成16年12月 に、平成18年度から始まる5カ年の第3期科学技術基本計画の策定について、内閣総理 大臣より総合科学技術会議に対して諮問が行われ、総合科学技術会議の基本政策専門調 査会において検討されて、平成17年12月27日に総理大臣に対して答申がなされたとい うことです。  2.今後の予定ですが、総合科学技術会議の答申を受けて、内閣府を中心に関係府省 も集まり、今年度3月末の閣議決定に向けていろいろな作業を行っています。  その中でも特に第3期の中で、引き続きライフサイエンス分野等の重点推進分野の推 進戦略を検討して、どういった課題を重点課題とすべきかといったことなどを年度末ま でに決定することになっています。  3頁以降から、第3期科学技術基本計画の答申から、今日の議論に特に関連の深い部 分を抜粋したものです。2.政策課題対応型研究開発における重点化です。(1)「重 点推進4分野」及び「推進4分野」では、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテ クノロジー・材料の4分野については、第3期も引き続き、特に重点的に研究開発を推 進すべき分野、すなわち「重点推進4分野」と名付けられていますが、そういうものと して位置づけるということが書かれています。  4頁の(2)分野別推進戦略の策定については、重点推進4分野に該当する研究開発 であっても、十分な精査なくして資源の重点配分を行うべきではないとされています。 (1)から(4)に書いてありますが、このような考え方に基づいて、各分野における「重要な 研究開発課題」を選定することとされています。  一方、(3)「戦略重点科学技術」の選定については、「重要な研究開発課題」の中 には予算が増加しないもの、一定の予算内で息長く研究開発を持続させるべきもの等も あるので、基本計画期間中に予算を重点配分する研究開発課題をさらに絞り込む必要が あると言われています。そこで総合科学技術会議では、5頁の(1)、(2)、(3)のような視点 から、さらに絞り込んで「戦略重点科学技術」を選定することとされています。いま申 し上げたことを繰り返しますと、要するに、ライフサイエンス等の重点推進分野におき まして、重点的に研究開発を推進すべき分野をまず「重要な研究開発課題」としてアイ デンティファイする。さらにその中で次の5年間に予算を重点的に増加させる必要があ るものを絞り込んで、それを「戦略重点科学技術」として位置づける、という2段構え になっています。  5頁、3の(2)、政策目標との関係の明確化及び研究開発目標の設定ということで、 「重要な研究開発課題」については、基本計画で示された政策目標等の達成に向けて、 研究開発として目指す科学技術面での成果、ここでは研究開発目標と名付けられていま すが、これを明確化して、その達成が政策目標の達成に至る道筋を明らかにすることに より、科学技術成果の社会・国民への還元についての説明責任を強化することが書かれ ています。  7頁は、平成18年1月に総合科学技術会議の有識者議員から示された「分野別推進戦 略における研究開発の選択と集中の具体的な作業方針」が記載されたペーパーです。1 つ目の○、「重要な研究開発課題」の選定に当たっては、関係府省の役割を明確にした 上で、当該研究開発により、社会・国民にどのような成果を還元しようとしているのか、 という成果目標(アウトカム)を明確化することが言われています。2つ目の○、成果 目標の明確化に当たっては、それぞれの「重要な研究開発課題」を担う関係府省名を付 記する。プレッジ&レビューによる評価システムの機能強化を図る。  8頁、2.「戦略重点科学技術」の選定については、1つ目の○、「戦略重点科学技 術」は、政府全体の研究開発投資の資源配分に関係することから、予算額ベースでの絞 り込みが必要だと。2つ目の○、厳しい財政事情に配慮しつつ、総合的にバランスのと れた絞り込み作業を行う観点から、各分野で一定の比率を目安とする必要があり、具体 的には平成18年度の各分野の研究開発予算全体に対して、当該分野の「戦略重点科学技 術」関係予算合計額の割合が、ライフサイエンスを含む「重点推進4分野」で、20%以 下になることを目指すということです。  9頁のいちばん最後の○ですが、「戦略重点科学技術」と毎年の総合科学技術会議の SABC優先順位付けとの関係ですが、戦略重点になったものは、5年間の集中投資が 必要だということを予め考慮するものの、SABC優先順位付けは、あくまでその年の 予算要求の中身を是々非々で評価するということです。要するに戦略重点になったから と言って、必ずSになるわけではないよということが、ここで言われています。  11頁はいままで言葉で申し上げてきたことを模式化したものです。これは内閣府で用 意された資料です。重点推進4分野の中で、「選択と集中」を徹底する。さらに重要な 研究開発課題の中から、まず点線で囲んだものが重要な研究開発課題です。その中で色 が濃い部分が戦略重点科学技術ということで、(1)、(2)、(3)と考え方が箇条書きされてい ます。こういった観点から戦略重点科学技術の絞り込みを行うということです。  25頁に第3期科学技術基本計画・ライフサイエンス分野推進戦略の検討日程をポンチ 絵で示しています。これは上中下と3段に分かれています。まずいちばん上の欄は、本 会議及び基本政策専門調査会ということで、科学技術に関する基本政策に対する答申12 月27日と書いてあります。これは第3期基本計画の答申が12月27日付であったという ことです。  真ん中の欄には、ライフサイエンス分野推進戦略があり、この答申が出る前の12月 14日から内閣府を中心にライフサイエンス分野推進戦略PT(プロジェクトチーム)が 設けられて、産業応用、農業・植物、医療、基礎・基盤科学技術の4つのWG(ワーキ ンググループ)が置かれて、関係府省も入って、重要な研究課題についての検討を行っ てきています。  第1回が12月14日、第2回が1月18日です。第3回が2月16日、第4回が3月9 日の予定です。このプロジェクトチームでの検討結果が、総合科学技術会議の基本専調 に、さらには本会議に報告され、3月末に閣議決定の運びの予定です。  各省の対応については、WGへの出席、発言、各省の成果目標等の提出ということで、 各省はそのWGに出席して意見を言うことができるようになっています。そこに今まで 出ていろいろな意見を述べていることと、各省成果目標等、それぞれの重要な研究開発 課題に対して、対応する成果目標を作って、それを提出することが求められています。  13頁、14頁は、これまで総合科学技術会議のプロジェクトチーム(PT)において、 関係府省もWGに入って、検討してきた「重要な研究開発課題」の候補の案を記載した ものです。左端に、カテゴリー分けということで、「基本生命情報から脳機能まで」「食 料・環境」「医療・医薬品」等の大きなカテゴリー分けがまずあり、それぞれのカテゴ リーごとに、そこに入ってくると思われる研究開発課題案が列記されています。  15頁以降は、厚生労働省のほうで、関係府省が集まりPTで議論された重要な研究開 発課題候補案ごとに、個別に対応する個別政策目標、研究開発目標、成果目標を整理し たものです。いままでの説明は、主にライフサイエンス分野について述べてきましたが、 他にも重点推進分野には4つあります。厚労省関係のものとして、環境分野、ナノテク ノロジー・材料分野も若干ありますので、これも15頁の表の中には併せて記載しており ます。  例えば、17頁の真ん中に国民の安全・安心から生活の質の向上までの上の枠の中に、 QOLの高い診断・治療機器の開発ということで、研究開発目標のところには、「2011 年頃までにデバイスやバイオセンサ等、ナノ技術を駆使して、生体構造・組織への適合 性を高めた医療機器の開発を進め、臨床が検討される段階まで到達する。」これはナノ の関係です。  個別政策目標、成果目標等を作るときには、23頁、これは平成17年7月13日に行わ れた第26回の本部会で使った資料です。ここに厚労科研の各研究事業ごとの基本理念、 政策目標がリスト化されています。このリストを元に、15頁からの文言を作成してきた ということです。  15頁からの研究開発目標については、何年までに何をするという書き方になっていま すが、これは例えばすでに健康フロンティア戦略の中で使われている文言や、各局の委 員会の報告書の記載、さらには各研究事業、厚労科研の研究事業の説明資料等で述べら れているものから引用したものです。  今日は、いまご説明した重要な研究開発課題、個別政策目標、研究開発目標、成果目 標をご覧いただいて、お気付きの点がありましたら、それをお聞かせいただきたいと思 います。いただいたご意見は、総合科学技術会議のPTのほうに、私どもからフィード バックをさせていただきたいと考えています。以上です。 ○矢崎部会長  ただいまの説明について、ご意見はありませんか。重点領域の中にライフサイエンス が残っていますが、その中の内容などについてお願いします。 ○笹月委員  例えば13頁の表ですが、重要な研究開発課題と、その基礎研究・基盤研究に対して、 実用化研究・社会応用研究となっており、基盤的な研究をして、その成果に立脚してそ れを実用化、あるいは社会応用すべき研究という仕分けだと思うのです。そのときに、 「医療・医薬品」の所で、創薬の促進、予防・診断・治療の研究ということだと思いま すが、それを薬にするための基盤的な研究で出た成果を、本当に患者に届くものとして まず作ってみせる。そしてそれを治験というか、現場での検証、評価、そして普及とい うことになると思います。まず、患者に届くものにして見せるためには、それを担うイ ンフラといいますか、組織が必要だと思うのです。基盤的な研究をした人が、すなわち すぐそれを患者に届くものにすると、できると本人は称して、トランスレーショナルリ サーチの研究に応募したりするのですが、私はそれは全然別で、基盤的研究をする人、 それを患者に届くものにするためには専門の人、基盤というものが必要で、それを国と してどう整備するのか、私は早くそれをすることが大事だと思います。それなしに、応 用研究と言って個人のサポートをしても、なかなかその成果は上がらない、効率は悪い と思うのです。  それよりも、例えばプロティン3000と言って、立体構造を開設するプロジェクトが走 っています。そこで明らかになった、例えばSARSのウィルスのリガンドとヒトのレ セプターのコンプレックスの構造がわかれば、あとはインシリコでどういう化合物がそ こに入れば、それをブロックできるか。あるいはそれを実際にケミカル・コンパウンド ライブラリーからリード化合物を取ってきて、スクリーニングして見せるとか、本当に そこへ届くようなものを作るためのシステムづくりは急ぐべきであり、ここの研究のサ ポートもありがたいのですが、国としてそういう組織づくりを是非考えていかなければ、 いつまで経っても本当に国際的な競争に勝てないのではないかと、私は常に危惧してい ます。 ○矢崎部会長  組織づくりというと、なかなか大変でしょうが、事務局で何かお考えはありますか。 ○安達厚生科学課長  笹月委員がご指摘のとおりというか、こういう医薬品開発、医療機器開発にかかわっ ておられる方皆さんが、重要な問題だと考えている点かと思います。  経緯を申しますと、実はもっと前からこの問題は取り組まなければいけないというこ とで、さまざまな議論が行われてきたと承知しています。その後、具体的にはJCOG、JCRAC のような組織ができ、一定の取組みもしているわけですが、まだまだ不十分といいます か、もっと根幹的な取組みが国としても求められていると認識しています。  現在、JCOG、JCRACも含めて、広い意味でのデータマネジメントセンター的なものが どうあるべきかという検討がまず必要だろうということで、現状がどうなっているのか について今年度の特別研究において、実態把握を行っております。今後、そういった研 究成果をもとに、より一層突っ込んだ議論をしていく必要があると考えています。 ○笹月委員  この間、私は内閣府でそういう話をするように言われて、資料を集めたり、いろいろ な人と議論をしたのですが、ある製薬企業の人と話していますと、民間のケミカルライ ブラリーでは300万種類も持っているそうです。そもそも300万種類も本当は必要では なく、10万から20万あればよろしいと。そうすると、1個がいま大体1万円ぐらいで 買えるので、リード化合物としていいものを、まず10万種類集めれば、10億あればや れると言うのです。  ですから、目標は50万種類ぐらい、すなわち50億ぐらいを目標にして、それを使っ てすべての大事な病気のタンパクとタンパクのインタラクションに当ててみて、スクリ ーニングするというハイスループットスクリーニングのシステムを作ったとしても、ス タートのときに100億もかからずにそういうものを作って、あとは本当に経常費として 毎年2億か3億でやれるようなシステムができる。まず、プラットホームを作るという ことが必須である。そうすると、企業の人は是非そういうものがあればと言いますし、 研究者もそういうものがあれば発見したものをそこへ出しますと言うのですが、それで は誰がそれを作るかというと、企業はそのレベルではまだお金を出しませんと言うので す。そうすると、やはりそこは国に出していただかないと、誰もこれを作る人がいない のではないかと思います。逆に言えば、そういうことにお金を出せば、本当に物が取れ るのではないかという期待も、みんなが考えていますので、是非、1回真剣に議論をし ていただければと思います。 ○矢崎部会長  笹月先生からは、臨床研究の基盤とその応用のシステム作りということで、データマ ネージが大切だという、課長からのお話で大変ありがたいと思います。その他、いまの 創薬に絡んだお話に関して、竹中委員から何かご意見はありますか。 ○竹中委員  いま笹月先生がおっしゃられて、例えばハイスループットとスクリーニングのシステ ム作りについて、化合物数が多いほどいいという考え方は、だんだん少なくなってきて いると思います。しかし、10万ぐらいでは、個人的にはちょっと不十分ではないか。や はりもう少し50万、60万ぐらいのドラッグアブルなものをいかに過去のデータベース といろいろなものを駆使して、揃える必要はあるのではないか。これについては、日本 の製薬企業の経験より言いますと、そのくらいを集めている所は、正直言いまして日本 では1社か2社ぐらいだと思います。公称100万とか数を多く言いますが、いわゆるど うにもならない化合物も含めて発表しているケースが多いです。本当にドラッグアブル といいますと、50万〜100万化合物必要です。  手前味噌的な言い方ですが、そういうものを効率的に運用するために、私たちは合併 して新しい会社をつくり、研究能力を高めようとしているわけです。今後、また新しく それを国でつくってやっていくことも一案かもしれませんが、私は企業と連携を結んで いただきたいと思います。各社どういう治療領域をするかという点は公表しており、私 どもも4領域や5領域に限定しているのです。そういうところで、先生方の基礎研究に 起こって出てきたドラッグターゲットになりやすい分子がありましたら、スクリーニン グ系を移行していただいて、またスクリーニング系が発見の過程においてできない場合 がありましたら、私どもに作らせていただいて、それらを活用して、企業の化合物を使 ってスクリーニングする。こういうような相互乗り入れといいますか、これがもう1つ の道です。これは散々言われていることですが、これについて私は非常に積極的に進め させていただければと思います。 ○笹月委員  おっしゃるように産官学、大学の基盤研究からそこにシーズを乗せてもらわなければ いけませんので、国と産業界と大学、アカデミアとが一緒になってというのが、私のス キームなのですが、国のところを国の会議でしたものでお願いした次第です。もちろん、 産業界と一緒になって、しかしながら最初のスタートの呼び水と言いますか、国が音頭 をとってやりますという姿勢を是非示していただきたいというのが私の気持です。 ○佐藤委員  同じような方向の話です。産官学で結構取り組んでいて、もう一歩というような研究 も見受けられるのです。  応用技術開発を目的とした研究としてスタートして、3年程度で、結構時間的には短 いながらも、基礎的な成果が出てきている。または要素的な技術ができている。そうい うものをもう一歩進めると、それを産官学でさらに進めると、それが最終的にアベーラ ブルな応用できる技術になるのだがというものが結構あると思います。  重点研究課題の一覧では、何年で終わりみたいな形で書いてありますが、継続性が必 要なもの、それで成果が確実視されるようなものについては、それなりの取組みの促進 をすべきではないかと思います。  いろいろな研究の審査をしていて、そういう研究が結構あるようにも思いますので申 し上げます。 ○矢崎部会長  安全で安心なという、5頁のテーマの選定のところですが、「社会・国民のニーズ(安 全・安心面への不安等)」ということですが、医療に関しては、安全・安心というのは 大きなトピックになっています。永井先生、何かご意見はありますか。 ○永井委員  安全・安心と言ったときには、意味がいくつかあると思うのです。医療現場のシステ ムをどうするか、いろいろな研究も最終的には医療現場で評価を受けるということ、安 全・安心を達成するためには、相当高度な技術がないといけない。そういう意味では、 安全・安心というのは非常に象徴的な言葉だと思います。  ですから、これは常に高く掲げておいてよいかと思います。そういう意味で、システ ムをどうするかということと、高い要素技術をどういうふうに展開していくか。その縦 糸と横糸のような関係にあるのだと思うのです。  先ほど笹月先生がおっしゃったことも、まさに要素技術をシステムとして持っていっ て、安全・安心で評価されるかという、そこの全体の流れが、やはりまだまだ日本では 現場が1人ひとりで格闘しないといけない状況にあるのではないかと思います。その辺 を統合するような調整機構、場合によってはそれ自体も研究テーマになるのかもしれま せんが、そういうところがこれからもっと重点化する必要があるのではないかという気 がします。 ○矢崎部会長  前の資料のポンチ絵の中で、「医療等の安全確保」というのが、少し予算が減少して いますが、研究としてはどうなのですか。 ○永井委員  いくら必要かというのもよくわかりませんが、いわゆる科学技術という意味と、もう 1つは最近言われる社会技術という言葉があります。そういう観点からの研究がこれか らももっと必要なのだろうと思います。  研究費を注げばよいということではないと思いますが、テーマは無限にあるのではな いかと思います。意識改革をいかにしていくか、効率的に医療をシステムとして推進す るか、いろいろな課題があると思います。いわゆる従来の科学技術に偏ることなく、社 会技術的な分離融合というか、総力を上げた研究というものが、今後も非常に重要にな るのではないかと思います。 ○矢崎部会長  いま感染症が極めて大きな対策です。倉田委員から何かご意見はありますか。 ○倉田委員  大事なことは、これにかなり盛り込まれてきていますから、あとはその折々の新しい 問題に対して、迅速に反応していくことかと思います。  認識が非常に高まっても、今度具体的にものを整備するときには、これから基盤整備 という面ではまだまだ国の一機関だけではなく、地方に全部それが行き渡って対応でき るようにならないと、感染症への対応は難しいと思うのです。  そういう意味では、地方の基盤整備は大事になってくるのではないかと思います。こ れは是非推進していただきたいと思います。 ○矢崎部会長  「健康安心の推進」の中で、「生涯を通じた女性の健康の向上・次世代育成」という タイトルがありますが、今井委員、何かご意見はありますか。 ○今井委員  先ほど会長がおっしゃった「医療等の安全確保」が、むしろ49億から42億に減って いるというお話もありましたが、どちらかというと、言葉の上で安全とか安心とか、曖 昧模糊としたところから、今回の切り口がシビアになってきたなという印象があるので す。いま言われたように、まだその中には安心みたいな言葉や、先ほど15頁から17頁 まで検討してくださいというお話でしたが、ここでも「こころの発達と障害ならびに意 思・伝達機能」の「意思・伝達機能」という部分は、はっきりした言葉ですが、「ここ ろの発達と障害」のような言葉が結構続いている部分があって、たぶんこの辺をもう少 し具体化した形で、しかも戦略の中で重点的にされたものの、5年間の中でも、どこの 部分を急ぐのか、もう少し細かく検討していかないと、その次の段階で、これだけ予算 を付けて、厚労省のライフサイエンス分野に関しては、しっかりやっているなというと ころが見えてこないような気がするのです。  これをざっと拝見していて、何となくこれは思い込みというか、私がもともとここで 何かにつけてお話をしていたのですが、やはり生まれる前の子どもから、生まれてきた 子どもたち、そういう次世代の人間に対して、かなり熱い研究が必要なのではないかと 思っているのです。少子・高齢化と言いつつ、少子の部分の対策がなかなか進んでいか ないので、そこもきちんと考えると、やはり女性だけではなく、男性もちゃんとフォロ ーしないと少子はなくならないのですが、具体的には女性の身体のコンディションがす ごく問題になってきます。それから生まれてきた子どももいろいろと問題を抱えてくる。 おのずから何となくどれが大切かというのは、例えば私が考えるとというのは見えてく るのです。  例えば13頁の「基本生命情報から脳機能まで」という中の、もちろんゲノムの問題は そのままずっと進めていかなければならないと思いますが、「脳や免疫などの高次複雑 制御機構の解明」とか、こういうところで何が必要かというと、外的因子なんかについ ても、かなり検討するというか、配慮する必要もあると思います。  ですから、こういった表になっていると、全体的にバラマキとは言わないですがベタ なものに見えてしまうのです。ある意味、重点ではあるが、どこの部分を早くするかと か、まとめてやるかとか、その手法もいろいろ考える必要があるのではないかと思いま す。以上です。 ○矢崎部会長  いまのご指摘は、厚生科学の科学技術部会の切り口からはなかなか具体的な到達目標 は立てにくいのですが、是非、事務局のほうでいろいろな部会と総合的に検討していた だければと思います。まだご意見がおありと思いますが、時間が過ぎておりますので、 事務局にお願いして、今回の委員の皆様のご意見の内容を踏まえて、総合科学技術会な どへの対応をよろしくお願いします。その結果については、またこの部会に報告してい ただくということで、よろしくお願いします。  次の議題の3番目の競争的研究資金の不合理な重複、その他です。事務局からお願い します。 ○林研究企画官  第3期科学技術基本計画については、いただいたご意見を整理して、内閣府総合科学 技術会議にフィードバックさせていただきます。内閣府での議論で、形も変わってくる と思いますので、またそれは本部会でご報告させていただく予定です。  今日は、重要な研究開発課題についてご覧いただいたということです。もう1つ私の 説明の中で出てきた「戦略重点科学技術」は、まだご議論はいただいておりません。こ れは内閣府でもまだ正式には議論されていない状況です。ただし、そちらも3月末まで にはフィックスしなければいけない状況です。次回までにそこは内閣府と話をして、案 を作成して本部会にお諮りしたいと考えています。  議題3、「競争的研究資金の不合理な重複及び過度の集中の排除等に関する指針につ いて」です。資料3に基づいて説明させていただきます。  1頁目に検討の経緯等を記載させていただいています。まず、平成16年11月に、第 42回総合科学技術会議において、採択案件の不合理な重複や過度の集中を避けるため、 各府省共通のルール作りを行うという旨の説明がありました。そこから内閣府を中心に して、「競争的研究資金に関する関係府省連絡会」が開催されて、ルールの検討が始ま りました。  その後、平成17年8月にも、省庁間の情報共有の仕組みの必要性について指摘があり、 その検討の結果が平成17年9月9日付で、競争的研究資金の応募・受け入れ状況や、不 正経理を行った研究者等の情報を他府省に情報提供するためのルール等を定めた指針が 出来上がりました。それを資料3の2頁以降に添付しております。  この指針ができたあとも、その指針の具体的な運用の内容について、関係府省間で協 議を重ねており、11月18日に、指針のうちの不正経理を行った研究者等の情報を、ま ず内閣府が一元管理することに指針でなっていますので、内閣府へ提供する場合の方法 について、その議論をした結果が内閣府のほうから、事務連絡として発出されています。 それも資料3の7頁からあとに付けております。現在も引き続き関係府省の間で、この 指針の内容について、特に過度の集中の排除の方法等について検討しているところです。  1頁目の2.厚生労働省の対応についてです。競争的研究資金の応募・受け入れ状況 等の情報共有を、厚労科研費補助金の公募要項に記載するとともに、この指針に則り、 他府省とも連携しながら、重複等がないかどうかすでにチェックを実施しています。今 後も指針の円滑な運用に向けて、関係府省と協力していく予定です。  本日、机上配付資料をお配りしましたが、最近、日本国内外で論文捏造等の研究者の 不正がマスコミ等で報道されています。それに対して、例えば理化学研究所などでは、 このような指針を策定されています。わが省としても、関係する他府省とも連携して、 必要な対応を早急に検討していきたいと考えていることをご報告します。以上です。 ○矢崎部会長  この件について、何かご意見はありますか。研究費の過度な集中については、各省庁 間で情報交換して、そういうことがないようにと、随分前から、そういう仕組みを作る ということで始められていますが、なかなかそういう連絡が行っていないということな のですかね。 ○林研究企画官  実際にこの指針ができて、その辺のルールがはっきりしたので、そこは各府省とも遺 漏なくやっております。 ○矢崎部会長  その他にご意見はありますか。よろしいですか。それではこれはお認めいただいたと いうことで、よろしくお願いします。次の遺伝子治療に関する審議ですが、それに入る 前に、前回の会議でご議論をいただいた「九州大学病院の遺伝子治療臨床研究実施計画」 について、この対象はバージャー病や閉塞性の動脈硬化症ですが、その後の状況につい て、事務局から報告いたします。 ○林研究企画官  昨年の10月に、本部会で九大病院の遺伝子治療臨床研究実施計画のご議論をいただき ました。前回の審議の中で、患者の選定を判定する大学内の委員会に外部の血管外科の 専門家も加えるべきではないかと、たしか永井委員よりご意見をいただきましたので、 その旨、申請者の九大病院側に指示して、その他、計画書の細かい表現の整理なども行 いました。最終の修正案については、昨年の12月19日に矢崎先生にご了解をいただき ました。  その後、今年の1月23日に九州大学のほうで審査委員会が開催されて、計画について 承認されて、同日付で九大病院から私どものほうに最終の実施計画の提出がありました ので、通常の手続きに則りまして、科学技術部会から厚生科学審議会への報告、それを もちまして、厚生科学審議会から厚生労働大臣あてに答申をいただきました。昨日付で 九州大学病院あてに、実施計画に関する厚生労働大臣の意見、それからカルタヘナ法に 基づく第一種使用規程の承認について、通知をしたところです。以上、ご報告申し上げ ます。 ○矢崎部会長  それでは議題に入りたいと思います。まず計画の申請についてです。これは1月30 日に厚生労働大臣から諮問され、同日付で当部会に付議されたものでありまして、2つ の施設、すなわち北里大学と自治医科大学からの申請もございますので、その内容につ いて、事務局からよろしくお願いいたします。 ○林研究企画官  はい、北里大学病院の遺伝子治療臨床研究の計画について、ご説明をいたします。ま ず北里、自治医大両方の申請の取扱いですが、遺伝子治療臨床研究に関する指針におき まして、まず実施施設の長から当該遺伝子治療臨床研究の実施に関して、意見を求めら れた場合には、複数の有識者の意見を踏まえ、この遺伝子治療臨床研究に関して、ベク ター遺伝子投与方法または対象疾病もしくは遺伝子治療の方法が新規性を有するか否か というところのご判断をいただいて、その結果新規性等を有するということであれば、 当該遺伝子治療臨床研究の医療上の有用性及び倫理性について、厚生科学審議会の意見 を聴くこととされております。  今回は複数の有識者といたしまして、笹月委員、永井委員、それから独立行政法人医 薬品医療機器総合機構の顧問の早川先生の3名の先生方にご意見をお伺いしました。今 回、北里大学病院と自治医科大学附属病院より、申請があったのですが、北里大学病院 のほうは、永井委員からは、プロトコールが変わっただけで、新規性があるかどうかは 微妙というようなご意見をいただいていまして、ちょっとそこは後でご意見をいただき たいと思います。ほかの2名の先生方は「新規性あり」ということでした。自治医科大 学附属病院のほうは3名の先生方、いずれも「新規性あり」ということでしたので、本 日ご審議をいただくということでございます。  それでは北里大学病院の申請につきまして、資料4−1に沿いまして、説明をいたし ます。資料4−1の3頁目からが「遺伝子治療臨床研究実施計画申請書」です。今年の 1月19日付で申請がありまして、実施施設はそこに書いてあります北里大学病院という ことです。その下の遺伝子治療臨床研究の課題名ですが、「前立腺癌に対するHerpes Simplex Virus-thymidinekinase遺伝子発現アデノウイルスベクター及びガンシクロビ ルを用いた遺伝子治療臨床研究」ということです。4頁目からが「遺伝子治療臨床研究 実施計画概要書」でして、研究の実施期間は承認をされてから、2年間の予定です。総 括責任者は北里大学医学部・泌尿器科学の馬場教授ということでございます。  7頁、「研究の目的」ですが、本研究はHerpes Simplex Virus-thymidine kinaseの 頭文字を取ったHSV−tkの遺伝子を組み込みましたアデノウイルスベクターを前立 腺内に注入をしまして、抗ウイルス剤のガンシクロビルを投与しますと、この遺伝子か ら作られる変換酵素によって、ガンシクロビルが癌細胞に対して、毒性のある薬に変換 されて作用を表すと。その後に根治的前立腺摘除術を施行することで、外科治療の効果 を高めることを期待したものだということです。その場合の安全性等の確認を目的とし たものです。  対象は外科的手術だけでは治療後に再発の可能性が高い局所限局性前立腺癌患者とい うことで、7頁の「対象患者及びその選定理由」の所に詳しい基準が記載されておりま す。8頁、「遺伝子の種類及びその導入方法」ですが、導入する遺伝子はHSV−tk タンパク質のすべての翻訳領域を含む遺伝子であり、これを複製能力を持たないヒトア デノウイルス5型ベクターに組み込んで、組換えアデノウイルスベクターを作製すると いうことです。その下、「安全性についての評価」ですが、本研究に用いられるHSV −tkウイルスベクターは癌原性のないアデノウイルス5型をもとに作製をされたもの で、現行の米国cGMPに従って一貫した品質管理のもとに、ベイラー医科大学遺伝子 ベクター室において、生産をされたものだということでございます。ベイラー医科大学 における第1相試験のほか、その後の本遺伝子治療と放射腺治療、内分泌治療との併用 治療、更に日本でも既に同一ベクターの前立腺癌患者への投与が岡山大学で行われてお りますが、いずれも特に重篤な副作用は認められていないということです。  10頁、「実施計画」ですが、5行目「HSV−tk遺伝子発現アデノウイルスベクタ ーの投与量は既に米国ベイラー医科大学で確立された1010PFUを用いるものとし、有害 事象が発生した場合は、その重篤度を評価しプロトコールに則って、試験を中止する」 ということです。その下のパラグラフ、遺伝子導入方法は被験者に対して、経直腸的超 音波を用いて、病変部を確認後、その超音波に装着された穿刺用ガイド装置を用いHS V−tkアデノウイルスベクター溶液を4カ所に注入する。ガンシクロビルの投与は遺 伝子導入24時間後から開始し、1日2回、14日間投与する。この一連のベクターから ガンシクロビル投与終了までを1サイクルとして、初回ベクター投与から2週間後に2 サイクル目を投与する。最終ベクター投与から6週間後に根治的前立腺全摘除術を行い、 治療効果の判定を行う、ということでございます。  それから被験者の同意取得につきましては、備考の所に書いてありますが、本臨床研 究について、文書に基づいて説明を受けていただいて、その内容と期待される治療効果 及び危険性を十分に理解し、自主的に同意した上で、同意書に署名をしたものとする、 ということです。11頁から後に、その被験者の方々への説明の文章が付いておりますが、 これは説明を省略いたします。今日はいまご説明をしました内容につきまして、倫理面 を含めた、総合的なご意見をいただきたいと思いますが、その後はご意見をがん遺伝子 治療臨床研究作業委員会にお伝えしまして、そこで科学的事項を中心に詳細なご検討を いただいて、その結果をまた本部会にご報告をするということになります。作業委員会 の名簿はこの資料の37頁に付けております。事務局からの説明は以上でございます。よ ろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。ただいまの北里大学の申請について、何かございま すか。 ○永井委員  私も意見を求められたのですが、このベクター自体は既に岡山大学で使われているも ので、前立腺がんに対して使われているわけですが、その治療スケジュールが少し岡山 大学のプロトコールと違っています。そこを遺伝子治療の新規性として、どういうふう に評価するかというのは、ちょっとよく私もわからなかったのですが、必要であれば、 また部会も含めて、全体として判断するということが必要かと思います。むしろ笹月委 員のご意見をお伺いしたいのですが。 ○矢崎部会長  いかがでしょうか。 ○笹月委員  ここでいう新規性と申しますのは、いわゆる科学的なプロポーザルにおける新規性と 違って、治療のプロトコールそのものが少しでもこれまで行われたものと違う点があれ ば、一応作業部会で検討させていただくということで、慎重を期してということであり ます。永井委員がおっしゃるようにサイミジンカイネースを用いてガンサイクロビルで 細胞を殺すということは、もう既に行われておりますが、治療方針というか、方法、そ のプロトコールを一度確認しておくという意味では、部会で一度検討させていただけれ ばという意味であります。 ○矢崎部会長  どもありがとうございました。そのほか、倫理面も含めて、何かご指摘はございます でしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。いま事務局からお話のよう に、コメントをいただきましたので、それを併せて作業委員会で検討していただき、そ の結果がまた再度この部会で総合的に議論したいと思いますので、よろしくお願いいた します。続きまして、進行期のパーキンソン病に対する遺伝子治療で、自治医科大学か らの申請です。 ○林研究企画官  次に自治医科大学附属病院より申請のありました進行期パーキンソン病を対象としま した遺伝子治療臨床研究実施計画について、これも資料4−1に沿いまして、ご説明い たします。40頁、この自治医科大学附属病院の申請につきましても、先ほどの北里大学 病院の申請と同じように3名の先生方にご意見をお聞きして「新規性あり」とご判断い ただいたので、厚生科学審議会に諮問をするということです。その際、永井委員からは 同時に、この臨床研究は脳への遺伝子治療ということですので、倫理上の問題がないか どうか、議論を尽す必要がある旨のコメントをいただいております。  資料4−1の40頁ですが、こちらは1月25日に申請があったものでして、実施施設 は自治医科大学附属病院、課題名は「AADC発現AAVベクター線条体内投与による 進行期パーキンソン病遺伝子治療の臨床研究」ということでございます。  41頁から臨床研究の実施計画の概要でして、研究の実施期間は承認日から10年間の 予定です。総括責任者は自治医科大学医学部神経内科の中野教授です。42頁、4番の「遺 伝子治療臨床研究の目的」というのが真ん中より少し上にありますが、この研究では進 行したパーキンソン病患者の線条体に芳香族Lアミノ酸脱炭酸酵素遺伝子、AADCを 組み込んだアデノ随伴ウイルスベクターを定位脳手術的に注入し、その安全性を検証す るとともに、経口投与するL−dopaによって、ドパミン産生を促し、パーキンソン 症状を改善することを目的とする、ということです。その下の「遺伝子治療、臨床研究 の対象疾患およびその選定理由」ですが、進行したパーキンソン病患者で、(3)に他の治 療法との比較及び遺伝子治療を選択した理由というのがありますが、この病気、パーキ ンソン病に対する治療法としては、aのドパミン産生細胞の移植やbの幹細胞治療とい うのがあるのですが、それぞれいろいろ問題があって、実施に困難が伴うのに対して、 43頁の上のc、遺伝子導入療法は、現在のところ実施に当たっての障害が、ほかに比べ れば小さいだろうということで、この方法を選択したということです。  43頁6の「遺伝子の種類及びその導入方法」ですが、導入する遺伝子はヒトのAAD C遺伝子でして、これを2型での随伴ウイルス、2型のAAVに組み込むということで す。AADCは(3)にありますが、二量体として存在し、L−dopaの脱炭酸により、 ドパミンを合成する酵素であるということです。また(4)にありますようにAAVベ クターは、神経細胞に効率よく遺伝子導入できること、非分裂細胞で長期間遺伝子発現 できること、細胞毒性が少なく非病原性のウイルスを基本骨格としていて安全性が高い との特徴があって、更に2型AAVというものは神経細胞への特異性が高いということ で選ばれたようでございます。  44頁の7の「安全性についての評価」ですが、組換えウイルスの製造及び純度の検定 は、ベクター供給元の米国Avigen社において行うが、この会社は米国FDAによるG MP認可を受けていて、GMPガイドラインに従って品質管理されたものを用いるとい うことです。46頁の9、「遺伝子治療臨床研究の実施計画」ですが、(2)のAAV、AA DCの投与にありますように、進行期パーキンソン病患者の被殻に左右2カ所ずつ計4 カ所に組み換えたウイルスベクターを定位脳手術的に注入する。注入するベクター量は 3群を予定しているということでございます。  被験者の同意につきましては、先ほどの北里大学病院の場合と基本的に同じです。被 験者への説明文書がその後ろに付いておりますが、特に、投与の方法につきまして、こ の説明文書の62頁に図7として、治療用ベクターの注射ということで、頭蓋骨に2カ所 穴を開けて線条体に4カ所注入するということが図で示されております。  資料の説明は以上ですが、このパーキンソン病を対象としました遺伝子治療臨床研究 は先ほどの北里大学病院のがんの場合と違いまして、パーキンソン病は今回が初めてで すので、遺伝子治療臨床研究作業委員会に新たにパーキンソン病に関する作業委員会と いうものを設けて検討を進めていただく必要があります。作業委員会のメンバー構成に つきましては、厚生科学審議会の科学技術部会運営細則によりますと、委員会は厚生科 学審議会の委員、臨時委員、または専門委員の中から部会長が指名するものにより構成 するということと、委員長は委員会の中から部会長が指名するということが定められて おります。  したがいまして、矢崎部会長とも相談をいたしまして、現在資料の76頁にお示しした ような委員構成で作業委員会を設置させていただきたいと考えておりますが、この76 頁の下にありますように、更にパーキンソン病に関する専門家にも入っていただく必要 があろうということで、その人選につきましても部会長と相談をしながら、決めさせて いただきたいと考えております。それから、最後に77頁に参考として、現在我が国で実 施中の遺伝子治療臨床研究の全部のリストを付けておきました。事務局からの説明は以 上でございます。よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。自治医大からのパーキンソン病に対する遺伝子治療につい て、何かご意見ございますでしょうか。永井委員からコメントをいただいた倫理的な課 題ですか、加藤委員、いかがですか。 ○加藤委員  自治医大のほうが説明書はよく出来ていると思います。患者に対する危険度の説明が 懇切丁寧で、また危険が発生した場合の処置についても触れているという点で、非常に いいインフォームド・コンセントの文書だと思います。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それで は笹月委員、すみませんが、作業部会で主に科学的事項の論点整理を行って、その検討 結果をこの部会にご報告いただいて、その上で、また審議させていただきたいと思いま すので、よろしくお願いいたします。  次の議題ですが、これは2施設で行われる遺伝子治療による生物多様性影響評価とい うことに対する、いわゆるカルタヘナ条約に対する考慮をどうしているかということを ご審議いただきたいと思います。これも1月30日に厚生労働大臣から諮問されまして、 当部会に付議されたものであります。事務局から、よろしくお願いします。 ○林研究企画官  資料No.4−2をご覧いただきたいと思います。ウイルスベクター等の遺伝子組換え生 物を使用する臨床研究に対しましては、いわゆるカルタヘナ法、遺伝子組換え生物等の 使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律に基づきまして、実施施設から第 一種使用規程の承認申請が必要とされております。第一種使用規程というのは、簡単に 申しますと、治療施設においてヒトの遺伝子治療を目的とした遺伝子組換えウイルスを 使うときのその使用、保管、運搬、廃棄及びこれらに付随する行為、それを定めまして、 厚生労働大臣の承認を得る必要があるということです。  さらに第一種使用等の承認に当たりましては、その申請がありますと、主務大臣の厚 生労働大臣は学識経験者の意見を聴かなければならないこととされておりますので、そ のための場として、本部会及びその下に、この資料4−2の33、34頁に記載をしており ます作業委員会を設けさせていただいております。本日、ご審議をいただきました北里 大学病院と自治医科大学附属病院の2つの遺伝子治療臨床研究につきましても、カルタ ヘナ法に基づく第一種使用規程の承認申請が提出されておりますので、これらについて、 今後この作業委員会のほうでご審議をいただきまして、論点を整理した上で、再度本部 会にご報告をすることになります。説明は以上でございます。 ○矢崎部会長  この件につきまして、何かご意見ございますでしょうか。よろしいでしょうか。これ はもう遺伝子治療のときは必ずこういう申請書を同時に出すということですね。その都 度、作業委員会で議論を済ませるということですね。それでは作業委員会は吉倉先生が 委員長でおられますので、生物多様性の影響の観点から、評価を行って、同じくその評 価の結果につきましては、当部会にご報告いただき、また再度ご審議いただきたいと思 いますので、そのときはよろしくお願いいたします。 ○笹月委員  遺伝子治療の国際的な現状というか、それを一言ご報告、よろしいでしょうか。例の 重症復合免疫不全症の患者にレトロウイルスベクターを使って正常な遺伝子を入れて治 療して、パリでの話ですが、11名の患者が免疫学的に改善し、大成功と言って、喜んだ ところが、その中から3名白血病様患者が発生しました。その3名のうち、本当に白血 病だったとわかったのは、最終的には2名だったのですが、残念ながら、そのうちの1 名は白血病のために亡くなりました。  それで、世界中、そのレトロウイルスベクターを使った、その疾病をターゲットとし た遺伝子治療は自粛したのですが、イギリスだけはそれほど効果があるのでという事で、 治療をそのまま続けております。フランスのその2人の白血病の患者のうち1人は幸い 白血病も完全に治って、それから免疫不全も完全に治って、最終的にはうまくいったと いうことで、フランスでもまた同じ治療法を再開するということです。  日本は東北大学が申請しようとしていたのですが、そういう事件があったので自粛し ていたのですが、そろそろ又考えたいという状況です。一言ご報告まで。 ○矢崎部会長  あとで報告された3例目も予後も。 ○笹月委員  3例目というのは、クローナルエクスパンジョンがあって、白血病と言っていたので すが、それは大丈夫でした。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。次の議題ですが、これは遺伝子治療の実施計画の変 更及び終了報告でございます。まず事務局から報告書、資料4−3について、説明をお 願いいたします。 ○林研究企画官  はい、遺伝子治療臨床研究実施計画の変更報告が2件、終了計画が1件あります。資 料4−3に沿ってご説明いたします。まず変更報告の1つ目ですが、神戸大学医学部附 属病院からの報告です。1頁、課題名は「前立腺癌転移巣及び局所再発巣に対する臓器 特異性オステオカルシンプロモーターを組み込んだアデノウイルスベクター及びバラシ クロビルを用いた遺伝子治療臨床研究」ということです。この資料の5頁に変更内容が 記載されております。  1つは総括責任者の後藤先生が神戸大学から兵庫医大の先端医学研究所へ転出された ことに伴いまして、これまで本研究の共同研究者であった白川先生を新たに総括責任者 とし、後藤先生は共同研究者として引き続き本研究に参加されるということでございま す。  もう1つ、研究実施期間がもともと平成18年2月4日までとなっていたのですが、平 成20年2月4日までに変更をされております。これは当初の期間中に被験者が6名とい うことだったのですが、5名に止まったことから、2年間、研究期間を延長して、当初 の目的どおり、もう1名遺伝子治療を実施して、経過観察を行いたいということだそう です。  次に7頁、名古屋大学医学部附属病院からの変更報告ですが、課題名は「正電荷のリ ポソーム包埋ヒトβ型インターフェロン遺伝子による悪性グリオーマの遺伝子治療臨床 研究」ということでして、9頁の真ん中辺りに変更内容の記載があります。それにより ますと、研究者の八木國夫先生が死去されたことに伴いまして、先生のお名前を削除す るということが1つと、この資料の12頁以降に、対象となった5例の病理所見が添付さ れておりますが、それによりますと、これまで5例の悪性グリオーマ再発例について病 理学的に遺伝子治療に関連すると思われる有害事象は特に認められなかったと。  腫瘍の壊死やマクロファージ・CD8陽性細胞の浸潤等が確認をされているというこ とで、この結果の精度をさらに上げるということで、症例数を20例追加いたしまして、 それに伴って期間も3年間延長したいということでございます。  最後に19頁から岡山大学医学部・歯学部附属病院からの終了の報告があります。課題 名は「非小細胞型肺癌に対する正常型p53遺伝子発現アデノウイルスベクター及びシス プラチン(CDDP)を用いた遺伝子治療臨床研究」ということです。なお、この研究 は岡山大学のほかに慈恵医大、東京医科大、東北大との共同研究でして、今回は岡山大 学からの終了報告ということでございますが、ほかの大学にも早急に終了報告を提出す るよう、これは現在事務局から催促をしております。  結果の概要につきましては24頁から記載されておりますが、それの「要旨」の7行目 辺りから見ていただきますと、全施設で15例登録をされて、そのうち岡山大学では9例、 うち正常型p53遺伝子発現アデノウイルスベクター単独の症例が6例、シスプラチン併 用が3例ということですが、その治療が行われたと。その結果、最も多く見られた副作 用は一過性の発熱のみであって、その他因果関係が証明された重篤な副作用は認められ なかったということでございます。また臨床効果としましては、咳や血痰の消失、呼吸 機能の改善、腫瘍マーカーの低下などが見られたということです。また1例だけですが、 26頁の3)「臨床効果」に記載がありますが、腫瘍縮小効果が見られ、局所的に癌細胞 のアポトーシス誘導が組織学的に確認をされたということでございます。  以上のような結果によって、本研究で遺伝子発現アデノウイルスベクターの腫瘍内投 与が安全に施行可能であることが明らかになったと。これは安全性を確認するという試 験でございましたので、その点は明らかになったという報告です。以上でございます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。2件の計画の変更と1件の計画の終了報告ですが、 ご意見はございますでしょうか。変更の安全性と倫理性に関するご議論をいただきたい と思います。笹月委員から、何かコメントはございますか。 ○笹月委員  北大で行われた、先ほど申したレトロウイルスベクターを使って、遺伝子が違うので すが、やはり重傷複合免疫不全症に関する遺伝子治療、この会議で認めていただいて、 ゴーサインを出したのですが、これについていろいろな方がその後どうなったのかとい う関心をお持ちで、事務局で調査していただいたと思いますが、ちょっとご報告いただ けますか。 ○林研究企画官  それは笹月委員からもご指摘がございまして、いま北大にも確認をしているところで すが、まだちょっと正式な報告を受け取っていないものですから、またそれを受け取り ましたら、次回以降にもご報告をさせていただきます。   ○矢崎部会長  ありがとうございました。終了に関しては、いかがですか。これは一部効果があった ということで、これは更に広げて。何でしょうか。 ○加藤委員  岡山大学の研究成果の発表というのは、同じようなところばかり発表していて、これ でいいのかなと笹月委員に個人的に聞いたのです。そうしたら、「まあ、まあ」と言っ て。 ○矢崎部会長  これはもう少し広げてやるというご意志はあるのでしょうか。 ○笹月委員  これまでの遺伝子治療を見てみますと、終了して、その後本当にやめてしまっている のですね。もともと、これは安全性を確認するというのがいちばんの目的ですので、本 来安全性が確認できれば、今度は治療効果ということで、先に進んでほしいのですが、 なぜか本当に安全性を確認して、さらにエクスパンドしてやりますというのがなかなか、 これまで出て来ていないというのが実情です。1つには、遺伝子治療がああいう事件が あったものですから、全体として、世界中でもトーンダウンしたというところもあるか もしれませんし、それから、非常に大変な臨床研究であるということで、人が替わられ たら、なかなかそれが続かないということかもしれません。  しかし、私はやはり在り様として、これだけの大変なことをスタートして、本当に安 全性を自信をもって確認できたのなら、さらに先へ、効果という意味で進んでほしいと 思っているところです。そういう意味で、フランスの事象もネガティブに捉えるのでは なくて、白血病が発症しても治療できるということも1例では証明できています。それ からイギリスでは初めから中止せずにそのまま継続しているのですが、なぜか白血病は 1例も出ていなくて、出たのはフランスだけですので、何が違うのか。そういうところ も検証も必要でしょうが、やはり非常に有効な治療法だと思いますので、前向きに日本 としても取り込んでほしいと個人的には思っているところです。 ○矢崎部会長  それでは、そういうご意見も付けて岡山大学のほうにお返しいただければと思います。 ○林研究企画官  はい。いただいたご意見は岡山大学のほうにまたお伝えをしたいと思います。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。お陰様でこの議題で一応終了いたしました。その他 として、事務局からよろしくお願いします。 ○林研究企画官  資料はございませんが、お伝えしたいことが2つあります。1つは動物実験に関する ことでして、昨年公布をされました動物愛護法の改正法等に関連いたしまして、国会議 員の先生、あるいは日本学術会議から、動物実験が適正に行われるよう国としても指針 を策定すべきというご意見をいただいております。昨日、朝日新聞にも出ておりました が、文部科学省において、研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針の案 というものが策定をされまして、現在パブリックコメントの募集が行われているところ でございます。  しかしながら、残念ながら、文部科学省の指針は文部科学省所管の機関、法人等のみ を対象にしたものであることから、厚労省としてもその指針を参考にいたしまして、当 省の関係機関、法人、及び事業者に適用する指針を検討したいと考えておりますので、 その旨ご報告いたします。なお、この指針案が出来上がりましたら、その段階で、本部 会にもご報告いたしますので、よろしくお願いいたします。  もう1つは、次回の科学技術部会の日程についてのお願いでして、机の上に「第29 回厚生科学審議会科学技術部会の開催について」という1枚紙をお配りしておりますの で、先生方には、ここにご都合を記載していただきまして、できれば今週中に事務局に 送り返していただければと思います。なお、次回は、今日ご説明を申し上げました「戦 略重点科学技術」等について、ご審議をいただく予定でおりますが、総合科学技術会議 のライフサイエンス分野の推進戦略ブロジェクトチームの次回会合が3月9日に予定さ れている関係で、それまでに事務局としてはお願いをできればと考えております。  会議室の確保の関係から、非常に無理を言って申しわけないのですが、事務局として はできれば3月2日か、3月3日の15時以降、あるいは3月8日に開催をさせていただ ければ、大変助かります。無論、この日ではどうしても駄目だということであれば、ほ かに会議室を探しますので、ご遠慮なく言っていただければと思います。事務局からは 以上でございます。 ○矢崎部会長  そのような次第で是非3月上旬に、またこの部会を開かせていただきたいと思います ので、よろしくお願いいたします。今日は技術部会にしては比較的早く終わりましたの で、せっかくの機会ですから、外口技術総括審議官に何か全体的な厚生科学の今後の、 これから審議官としてどういう期待あるいは抱負を抱かれているか、大変恐縮ですが、 簡単にお話いただければ、ありがたいと思います。 ○外口技術総括審議官  資料1の2枚目を見ていただきたいのですが、「平成18年度の厚生労働省の科学技術 研究の推進の基本的考え方」という1枚紙が図にしてあります。ここにもいちばん上の 所にも書いてあるのですが、先ほどご議論いただきました第3期科学技術基本計画に関 わる内容で厚生労働省が何をやるべきかということですが、特に総合科学技術会議、あ るいは政府の中の議論の中では、やはり科学技術分野の中で社会・国民に支持され、成 果を還元する科学技術ということを強く打ち出していくべきであろうという議論がされ ております。科学技術の予算は毎年毎年大変皆様のご協力によりまして、ご理解をいた だきまして、増やしておりますが、やはりこれは国民に支持される内容でないと、なか なかこの先続かないわけでございます。  その意味で、私も成果を還元する科学技術ということをもっとわかりやすく国民に説 明していく必要があるのではないかと思っています。そういったことで、特に厚生労働 省というのは、大変わかりやすい分野を担当しているわけでありますので、我々の責任 は大変重いのではないかと思います。  今回もがん対策とか、感染症対策が大変高い評価を受けて、予算を伸ばすことができ ましたが、これもいままでの実績、業績を科学技術会議、あるいは財務省に説明をした ときに大変中身をよく理解していただきました。それはやはりいままでの研究の内容が より実践的なものであったことが理解されたからではないかと思います。それから、創 薬のほうも、今日ご議論がありましたが、これもいまいろいろな方面でどう進めるかと いう議論を実際行っておりますが、私はやはりせっかくの研究成果をどうやって国民に 還元するかということについては、先ほどほ竹中委員から相互乗り入れというお話もあ りましたが、第一線の研究者、創薬のプロであるメーカーの方と、もっとお互いの得意 分野ということをもっとよく理解し合うと、うまく進むのではないかということも考え ております。必要なものが、両方が求めているニーズにギャップがあるのかないのか、 例えばある研究者は、次はこういうことをしたいということがありますが、ではメーカ ーのほうのニーズと合っているのかどうかですね。  そういったことももうちょっとよく意見交換をしていくと更にこれからわかりやすい 方向へ進むのではないかと思います。そういった意味でも国民に成果を還元する科学技 術ということに視点を強く置いて、進めていきたいと考えています。よろしくお願いい たします。ありがとうございました。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。それでは本日の部会を終了したいと思います。大変 ご熱心にご議論いただきまして、ありがとうございました。 −了− 【問い合わせ先】 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担当:情報企画係(内線3808) 電話:(代表)03-5253-1111 (直通)03-3595-2171 - 1 -