05/12/13 第2回「厚生科学審議会科学技術部会ヒト胚研究に関する専門委員会」議事録                   第2回              厚生科学審議会科学技術部会              「ヒト胚に関する専門委員会」       日時:平成17年12月13日(火)9:45〜12:30       場所:厚生労働省5階 共用第7会議室 1.開会 ○母子保健課長補佐  定刻となりましたので、只今から第2回「ヒト胚研究に関する専門委員会」を開催い たします。  まず、前回の委員会におきまして、第2回は当初11月7日に開催するというお知ら せをさせていただいたところでございますが、諸般の事情で本日に延期させていただき ました。委員の皆様、関係者の皆様にはご迷惑をおかけいたしましたことをおわび申し 上げます。  では、お手元にお配りいたしました資料につきまして順番に確認をさせていただきま す。 一つ資料の綴りがございまして、あと二つ水色とピンクのファイルがございま す。一つ目の綴りでございますが、その上に座席表と会議次第が1頁ございます。それ から資料の一覧表が2頁目にございます。こちらに沿って確認をさせていただきます。  資料1といたしまして、「ヒト胚研究に関する専門委員会」について、その設置、趣 旨等についての資料が3頁ほどございます。  資料2−1といたしまして、「科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会おける委員 会の設置」について、こちらは文部科学省からの資料となっております。  資料2−2といたしまして、「ヒト受精胚の生殖補助医療研究目的での作成・利用に 係る制度的枠組みの検討」について、こちらも文部科学省からの資料になっておりま す。  資料3といたしまして、神里先生ご提出のプレゼンテーション資料でございます。  資料4といたしまして、久慈先生ご提出のプレゼンテーション資料でございます。  それからお手元の2冊のファイルでございますが、こちらは第1回の専門委員会の資 料一式でございます。水色のファイルは、特に頻繁に使用されることが考えられます。 資料4−2に総合科学技術会議の平成16年7月、「ヒト胚の取り扱いに関する基本的 考え方」の報告書が入れてございます。こちら、わかりやすいようにタブをおつけして ございます。適宜ご参照いただければと存じます。  なお、こちらのファイルの資料一式に関しましては、厚生労働省のホームページにも 掲載させていただいております。また、第1回議事録も厚生労働省のホームページに掲 載されておりますのでご覧ください。以上でございます。 2.本専門委員会に係る、厚生労働省と文部科学省との連携体制について ○笹月座長  それでは、早速議事に入りたいと思います。本日は橋本委員、位田委員がご欠席で1 0人のご出席でございます。  本日はこの会議の次第にもありますように、まず会議の進め方をご相談します。それ からヒアリングで、お二人の委員の方からご報告を伺うということになっております。  前回の専門委員会では、第1回ということで目的の確認を行いました。それから総合 科学技術会議の「ヒト胚の取り扱いに関する基本的考え方」に関して、厚生労働省、文 部科学省がガイドラインを作成するようにというお話を伺って、それに基づいて議論を 進めなければいけないということをお話しいたしました。その議論の進め方といたしま して、この専門委員会が中心となって、ある一定の期間内に目的を達する、すなわちガ イドラインを作成するということで集中的に審議を行いたいということです。それから 周辺に関しましては、いろいろな関連事項、重要なことがございますが、文部科学省あ るいは厚生労働省にそれらを専門に議論する委員会がございます。それらのことに関し てはその委員会にもちろんお任せするわけですが、そこで得られた結論といいますか、 議論の進捗状況などはその都度伺いながら、しかしながらここでは目的を達する項目に ついて集中的に議論を進めたいということをお願いいたしました。  本日はさらにもう一つその議論の進め方、最終的な目的を達するための方策として、 先ほどお話しいたしましたように、総合科学技術会議から厚生労働省及び文部科学省に ガイドライン策定ということが課題として与えられたわけです。最終的なガイドライン をどうするのか、各省別々に出すのかあるいは合同で出すのか、あるいは議論の進め方 に関してどのように連携していくのかというようなことがいろいろ問題になると思いま す。そのあたりの連携の仕方あるいは分担の仕方に関しまして、まず事務局からご説明 をお願いします。   ○母子保健課長  母子保健課長でございます。只今座長からもご説明がございましたので、一部繰り返 しの説明になる部分もございますが、私の方から説明をさせていただきます。  平成16年7月の内閣府の総合科学技術会議「ヒト胚の取り扱いに関する基本的考え 方」の報告書を受けまして、厚生労働省がこの専門委員会を設置したところでございま す。一方、文部科学省でも本日の資料の2−1にございますが、10月11日にほぼ同 じ趣旨で「生殖補助医療研究専門委員会」を設置したところでございます。両者の位置 づけや関係でございますが、当初、厚生労働省のこの委員会というのは、その所管する 医療機関でありますとか研究機関というところで行われる生殖補助医療研究を中心に検 討をいただきたいと考えていたわけでございます。  文部科学省の方でも、同省が所管します大学やあるいは研究機関といったところで行 われる研究の対応を中心に検討を進めていただくということでございます。しかし、1 0月11日の生殖補助医療研究専門委員会を設置する前後におきまして、両者の専門委 員会の位置づけ、あるいはこの委員会の位置づけ等を考えた上で、合同で開催してはど うかという申し入れのご提案をいただきました。これを受けまして厚生労働省といたし ましても、それぞれが検討するべき内容を改めて精査してみたわけです。  結論から申しますと、研究の多くが大学を含む医療機関で実施されているものであっ て両者を敢えて切り離して議論するほどでもない。また、切り離して議論するのもかえ って難しいのではないかということになりました。  そこで事務局としての結論ですが、先生方からご意見をちょうだいするとしまして も、厚生労働省と文部科学省がこうして二つ独自に別々に委員会を設置したわけです が、時期を見て合同で開催していただくこととしまして、そして最終的な成果物につき ましては、例えば2省連名でガイドラインを策定して報告をするということではいかが かと考えております。  二つお話をしましたが、合同開催そのものについてご了解、ご理解をいただけるよう でしたら事務局の提案を引き続き申し上げます。例えば次回の第3回、1月末を予定し ております。その第3回ヒト胚研究に関する専門委員会から合同の開催ということにし てはいかがかと考えております。  また、委員の構成に関しましては、文部科学省単独の委員の先生方、厚生労働省単独 という方もいらっしゃいますが、そのほとんどの方については両方で委員としてご就任 いただいております。メンバーについても、ほぼ同一の構成となっているということを 申し添えます。ご意見をいただきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。 ○笹月座長  どうもありがとうございました。  かつて、遺伝子治療に関するガイドライン検討会というものも最初は単独にスタート しましたが、最終的には一つのガイドラインにまとめられたという経緯がございます。 そういう経験も踏まえて、省庁を超えて合同で検討していくというのがよかろうと私も 思います。文部科学省の方でも設定されたと伺っておりますので、文部科学省から方針 といいますかお考えをお聞かせいただければと思います。 ○石井室長  それでは文部科学省よりご説明を申し上げます。先ほど、佐藤母子保健課長様の方か らもお話がありましたとおり、私ども資料2−1、2−2にございますように10月1 1日の科学技術学術審議会生命倫理安全部会におきまして、生殖補助医療研究専門委員 会を設置いたしました。資料2−2の中に、(1)から(6)まで検討事項を書いてご ざいます。  表現に若干の違いがあれ、本委員会と基本的に同様の検討事項を対象にしているとこ ろでございます。文部科学省と厚生労働省の違いは何かということも先ほどお話があり ましたように、私どもの方は大学または研究機関の基礎的研究を対象に考えておりま す。厚生労働省さんは、基本的には医療機関でありますとか厚生労働省所管の研究機関 の基礎的研究から、場合によっては臨床研究なども対象にしているのではないかという 理解をしてございます。  しかしながら、実際の運用を考えますと、例えば胚や配偶子の提供は、基本的には医 療機関からの提供になるということ。そして研究現場においても研究機関そのものも必 ずしもきれいに切り分けられない部分もあるのではないかということも理解しておりま す。そういうことでますと、現場で一応整合性は取ったといっても、やはり違うガイド ラインで運用するというのは非常に難しいことになるのではないかということもござい ますので、できることであれば共通の合同で作成したガイドラインを連名で作成し、そ してこれを両省で運用していくのがよろしいのではないかということで、私どもの方か ら厚生労働省さんにお願いを申し上げたものでございます。  私どもと厚生労働省との関係で言いますと、遺伝子治療のガイドラインもそうでござ いますし、その他にもゲノムでありますとか医学研究のガイドラインについても連名で 作成して運用しているところでございます。そういう意味で、途中からということにな りますがぜひとも共同で作業をさせていただいて、可能な限り研究現場に混乱を与えな い形でガイドラインが運用できるようにしたいと考えてございます。  以上でございます。 ○笹月座長  どうもありがとうございました。両省ともに合同で検討し、最終的に合同のガイドラ インを作成するというお考えを伺いました。委員の先生方から何かございますか。 ○加藤委員  なぜ、最初から合同にしなかったのですか。 ○石井室長  前回9月29日の時点で、本委員会が開催された段階で、大変申しわけなかったので すが、私どもの方はまだ委員会を設置してございませんでした。そういう意味で、先般 の会議で、座長から文部科学省のお考えを聞かれた際も明確にお答えできないところが ございました。連携して検討させていただくということで申し上げました。その時点で はまだ文部科学省として厚生労働省の方と共同開催するというようなことまで合意に達 していなかったという点がございました。そういう意味で、若干時間的に効率できなか ったような形になったことについてはおわびを申し上げたいと思います。 ○笹月座長  厚生労働省の事務局として、今のご質問に対して何かございますか。なければ特段結 構です。  それではただ今の両省からのご提案にありますように、次回からは合同で委員会を行 う。そして合同の委員会のプロダクトとして、一つのガイドラインを策定するというこ とにしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。  このガイドラインにつきましては、総合科学技術会議からの宿題があります。諮問を 受けて「答申」とするべきか、あるいは宿題としていただいた課題に対する「報告」とす るのかということもございます。  それは文部科学省、厚生労働省あるいは総合科学技術会議ともご相談いただいて、最 終的に「答申」という形にするのか、単なる「報告」とするのかは後ほどご検討、ご報告 いただきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。  それでは次の議題に入ります前に、皆様、マスコミの報道でご存じと思いますが、韓 国のソウル大学黄禹錫(ファン・ウソク)教授が実験用の卵子提供に関して、金銭の授 受があったということで国際的に問題になっております。この件につきまして、我々と しても看過することはできません。中辻先生、この件について特段情報をお持ちでした ら委員の先生方のご参考にご披露いただければと思います。 ○中辻委員  私自身も直接関係者と話をしたわけでなく、メディアの情報、韓国の新聞やネットワ ークでのこと、ネイチャーの特派員との話を含めたものですが、普通の方よりは情報を 把握していると思いますので、この委員会に関係した部分で少し概論をさせていただき ます。  これを考えますに、現時点と以前ではかなり状況が違っています。現在、韓国では胚 の研究に関する法律が定められました。今年5月に論文が出た時点は、法律が定められ て研究が行われています。現時点では黄博士の研究のために卵子を提供したいという女 性がたくさん申し出ています。それのボランティアというか自発的なことで無償で提供 が行われて研究が進んでいる状況です。ただ、その以前の段階、それよりも1年前のサ イエンスに論文が出た、それの研究の時点では、今の時点での状況を申し上げると卵子 の入手が非常に困難であった時期がありました。その時に研究チームに所属していた若 手の女性研究者が提供を申し出たと、その時点でこれが今のところ自発的な意思による 提供だということになっています。それを疑う根拠はないわけです。ただそれを黄博士 は断った、しかしながらその女性研究者は産婦人科に行って、匿名にしろ何しろ提供し たので、黄博士は知らなかったけれどもそれを使ったということになっています。  これに関してはサイエンスのチーフエディターももしそれが自発的な意思によるもの であれば問題はないと言っています。当然そういう立場にある者の提供にはいろいろな 疑念が考えられますから、それはやめた方がいいことは確かです。最低限第三者による 意思の確認ということがあった方がよかったとは思います。  現在、黄博士がこの件に関して一番非難されているのは、そのことをネイチャーの雑 誌が問題提起したときに、自分でその事実を知ったにも関わらずそれを隠していたとい うことです。つまりその事実があったことを、部下から提供があったことを気がついた と彼は表明していますが、その後もその事実を表明していなかったということが非難さ れているという状況です。  もう一つの金銭に関しても、法律では売買を禁止しています。この間も違反した人が 逮捕されました。それ以前にはその法律がなくて、研究に協力している産婦人科の病院 の人が、提供者に一人15万円程度支払っていたということがあって問題になったわけ です。ご注意していただきたいのは、卵子提供が世界中で常に無償で行われているわけ ではありません。例えばアメリカでは有償で行っているところも見られます。米国では 法に違反しないことが、韓国では現時点では法に違反するということになります。そう いう意味で韓国はしっかりした法律をつくっているということでもあるわけです。  金額に関して、完全に無償あるいは実費というか交通費とその日当みたいな、卵子へ の支払いではなく、その人が何回か訪れてホルモン注射を受けるといったことに対する 補償というか、コンペンセーションのようなものはいいのではないかと考え方が欧米で もあると思いますし、個人的にも考えます。この程度でよろしいでしょうか。 ○笹月座長  ありがとうございました。どなたか、さらにこの件に関しまして、情報をお持ちで追 加いただくようなことがあればぜひお聞かせいただければと思います。事務局の方で特 段把握しておられることがありますでしょうか。 ○母子保健課長  特別ございません。中辻先生からお話がありましたように、メディア等を通して知る 限りでございます。こうした韓国での議論がこの委員会や文部科学省の方の委員会も同 様ですが、少なからず影響を及ぼすだろうと思いました。本日は、差し当たりお話をし ていただくとしましても、問題点が今後はっきりしてくる過程で、他山の石と申します か反省を十分踏まえながら議論を進めていく必要があると思いまして、本日はきっかけ ということでお願いをした次第でございます。 ○笹月座長 少し話がずれるかもしれませんが、厚生労働省の医系技官の方が例えば韓 国のソウルに滞在しているとか、あるいは大使館に出向しているとかそういうことはあ りますか。そういうことを通じての報告など、そんなものがあればと思ったのですが。   ○母子保健課長  私どもの知る限り、現時点ではございません。 3.ヒアリング ○笹月座長  委員の先生方から、この件に関しまして何かお考えがあれば少しお聞かせいただけれ ばと思います。これはまた、未受精卵の提供あるいは取得ということに関して、後で議 論の対象となりますので、もし何かありましたらその時にまたお聞かせください。  それでは次第の3にうつりたいと思います。第1回の時には、厚生労働省の特別研究 ということでご検討いただきました吉村委員からお話を伺いました。いわゆる総論的な お話、それから今後ガイドラインをつくるについての大事なポイントについても幾つか 既に示唆に富むご報告をいただきました。今回はこれを受けまして生殖補助医療研究を 取り巻く海外の状況、あるいは日本で実際に行われていますヒト胚を用いた生殖補助医 療研究の具体的な例あるいは方向性といったことに関しましてヒアリングを行いたいと 思います。  最初に厚生労働省科学特別研究吉村班にも参加しておられまして、いろいろご検討な さいました科学技術文明研究所の神里彩子先生に、生殖補助医療研究に関する海外の法 律・制度あるいは審査体制について、最近のイギリスの動向、さらに先生が特別研究で ご担当なさった部分についての成果などにつきましてお話をお伺いし、その後議論を深 めたいと思います。神里先生よろしくお願いいたします。 ○神里氏  只今、ご紹介いただきました神里彩子と申します。本日は、このような場にお招きい ただきまして誠にありがとうございます。 ○笹月座長  科学技術文明研究所という名前は初めて伺ったのですが、どんなものなのか少しご紹 介をお願いします。 ○神里氏  これは民間のシンクタンクでございます。もともと三菱化学生命科学研究所の中に生 命倫理を扱っていた部署がありました。それが独立したところでございます。それでは 始めさせていただきます。  (資料3・スライド使用)先ほどご紹介がありましたように、私は吉村先生の研究班 で約半年間研究をさせていただきました。本日は、そこでわかったこと、そして逆に研 究をしたからこそわからなくなってしまったこと、というようなことをご報告させてい ただきたいと存じます。  前回は吉村先生がご報告されました。それと若干重なる部分が出てきておりますがご 了承いただきたく存じます。それではスライドをお願いいたします。  *目次  本日お話をする内容は、大体このようなものです。その報告書では、これ にプラスしてカナダについての検討もしておりました。カナダについては、後で補遺と いう形でご紹介したいと思います。  報告書を読んでいただいた方につきましては、大体同じことをご報告させていただき ます。まずは諸外国の規制状況をざっくりとつかみまして、その後イギリスの規制状況 についてお話をしたいと思います。イギリスにおいては、2003年の末から法改正に 向けた動き、法の見直しというのが大々的になされておりますので、その辺の話もつけ 加えながらお話をしたいと思います。  またオーストラリアにつきましては、これは全体を見渡さず、おもしろい特徴的な点 のみを拾ってお話をしたいと思います。そして最後に、そこから何がわかったかという ことと、何を決めなければならないのかということをお話しさせていただきたいと思い ます。  *諸外国の規制状況  諸外国の規制状況です。研究班の調査では、対象としてドイ ツ、オーストリア、フランス、ベルギー、イギリス、カナダ、オーストラリア、韓国の 8カ国を調査対象といたしました。そこからわかったことですが、1点目としては、こ のスライドを見ていただくとわかりますとおり、すべての国において法律レベルで規制 をしているということです。そしてその法律ですが、ベルギーとオーストラリアのみが ヒト胚研究に特化したものです。それ以外につきましては、生殖補助技術全般を規制す る法律の中に胚研究というのが加えられています。  2点目にわかったことは、胚研究を禁止している国はドイツとオーストリアの2カ国 であったという点です。これにつきましてはよく知られているかと思いますが、つまり この2つの国においては、卵子が由来する女性の生殖補助目的以外の目的で、体外で胚 を作成すること、そして利用することを禁じているということです。それを逆に言え ば、もしその卵子を女性の体内に戻すということを前提にしたものであれば、利用も可 能ということになります。この点はイタリアについても同じです。イタリアでも胚研究 は禁止しています。ドイツ、オーストリアと同じことが言えるわけですが、女性への移 植を前提とした研究という点も少し気にとめておく必要があるのではないかと思いま す。  次に胚研究容認国についてです。  *胚研究容認国における規制状況  こうやって並べますとおわかりのとおり、研究 目的で胚研究を規制している国と、規制していない国があります。  イギリス、ベルギー、韓国におきましては、目的という観点から規制をしておりま す。いずれの国においても、不妊治療の向上という生殖補助医療研究はその中に含まれ ています。  一方、目的から規制していない国はフランス、オーストラリアになります。2つ目の 研究価値の条件ですが、すべての容認国において研究がどういう価値を持っているかと いうのが判断基準とされていました。ここではスペースの都合でかなり要約して載せて います。  フランスにおきまして、重大な治療上の進展を可能にし現時点の科学的知見では、他 の方法ではこれに比肩し得る効果が得られないと考えられること、となっています。  ベルギーにおきましては、当該研究に比肩し得る効果をもたらす代替法がないこと。  イギリスでは、当該研究が容認された目的にとって必要または価値があり、かつ胚の 利用が必要であること。  カナダは、当該研究に胚の利用が必要であること。その他は規制で今後規定されるこ とになっております。  オーストラリアにおきましては、他の手段では合理的に達成できない重大な知見の向 上、技術の進展の見込みがあること。  韓国では、少し様相が違います。現在利用可能な治療法がない場合、または利用可能 な治療法と比べ著しく優れていることが予測されること。というのが研究の条件になっ ております。  次は、研究目的で胚をつくることができるかという点です。これにつきましては、イ ギリス及びベルギーのみが可能となっています。  ベルギーの印が三角というのは、原則は禁止しています。但し書きがありまして、そ の中で余剰胚では研究目的を達成することができないという条件をもって、例外が認め られるということになっております。どのぐらいの実施があるのかという状況について は調査していませんので把握しておりません。  管理機関、管理体制というところに移ります。すべての容認国において公的機関によ る認可、それが「決定」だったり「承認」という言葉を使っている場合もありますが、 そういった体制がとられています。その機関ですが、韓国以外の国では、ヒト胚研究の 研究根拠となる法律に基づいて設置された機関が認可権限を有して、その認可権限と裏 腹に立ち入り権限等々の査察で認可を担保しているという形になっております。  そこには載せませんでしたが、すべての国において「書面による同意」というのが研 究の実施条件になっております。  *イギリス:禁止行為  ここからイギリスの話に入っていきます。この辺は皆様の 方がよくご存じかもしれません。イギリスでは3つのレベルで規制をしています。その 一つ目の一番ベーシックな土台となるのが、HFE法による直接的な禁止による規制で す。そこに挙げました6つの行為を禁止しております。その中で、ここで問題になるの がマル2だと思います。「原始線条の」というところですが、配偶子が混合された日か ら14日以内に出現するものとしています。その他議論が今現在上がっている点はこの 中にありますが、今は割愛いたします。  そして第2レベルの規制ですが、それが内務大臣の制定した規則による規制です。こ れにつきましては2001年に制定された「ヒト受精及び胚研究目的規制」というのが 制定されております。後で少しご紹介することになると思います。  *イギリス:認可を要する行為  3つ目の規制です。HFEAによる認可を通じた 規制です。胚につきましては、体外で作成・保管・利用するにはHFEAの認可が必要 になっています。つまり胚を伴う行為全般に認可が必要ということになります。一つ確 認しておきたいのが、胚というのは、ここでは「生きた胚」を指すとしています。ただ し、生きた胚というのがどういう場合が生きていて、どういう場合が死んでいるのかと いうことにつきましては明らかにしていません。  次の配偶子については、1に保管。2に、女性に対する治療サービスの提供過程にお いて、女性と男性が一緒にサービスを受けていない場合に男性の精子を利用すること、 また別の女性の卵子を利用すること。つまり例えば、非配偶者間の人工受精などがこれ に当たります。そして3つ目の配偶子を動物の生きた配偶子と混合すること。という3 つのみが認可の対象になっています。そして認可を必要とする行為につきましては、H FEAによる「治療」「保管」または研究のため「認可」が必要であるとしています。  ここでなぜこのスライドを挙げたかということです。確認しておきたい事項に配偶子 の点にあります。今申し上げましたように、配偶子につきましてはこの3点以外の認可 は必要ありません。つまり配偶子の採取、配偶子の保管を伴わない研究につきましては 認可の対象から外れています。認可の対象から外れるということは、HFEAの規制を 受けません。例えばHFEAでは、ドナーに対してのお金についてが決められていま す。相当な実費というものの内容も決められていますし、それプラス15ポンド渡せる ということになっています。そういった規制の対象外になってきます。その点を注意し たいと思います。  したがってこの配偶子の提供についても、認可の規制の枠外に入っていることが問題 視されております。現在、11月末まで保健省のコンサルテーションが行われていまし たが、そこにおいてもこれが一つのトピックとして挙げられていました。  *イギリス:胚研究のための認可条件  次が胚研究のための認可条件ということで す。これはHFE法及びそれに基づく研究目的規制におきまして、ここに書きましたよ うに目的が明確化されております。マル1からマル8の目的プラスマル9というのが、 規則で規定される他の目的というもので、今後何か必要な研究が出たときにフレキシブ ルに目的を追加できる規定というのがマル9に当たります。今回、ここで問題となりま すのは当然マル1です。その不妊治療の発展、促進についての研究は認可対象になって おります。  先ほども冒頭で申し上げましたとおり、研究の価値ですが上記研究目的の一つまたは 複数にとって当該研究プロジェクトが必要または価値があり、当該研究に胚の利用が必 要であるとHFEAが判断することというのがその条件となっております。  *イギリス:胚・配偶子の source  次が胚・配偶子のソースです。今見たように、 研究目的で胚を使うことができるわけですが、どのような胚を使っていいのかという胚 のソースの問題が出てきます。それについては全く規定がありません。そこで一般的に 考えられるものというのを挙げますと、1点目が治療目的で作成された胚で、今後の治 療に用いないことを当事者が決定した胚。いわゆる余剰胚と呼ばれるものです。2点目 に治療目的で作成された胚はあるが移植や凍結に適しておらず、通常廃棄される胚。そ してこの間に、スライドでは1点つけ加えております。保存期間を過ぎた胚というのが 3点目に入れるべきだったと思います。そして4点目が、研究目的で作成された胚。こ ういうものがソースとして考えられるわけです。これらについて禁止しておりません。  したがいまして、研究目的で作成された胚というのを使うことができます。そうしま すと何をもとに胚をつくるのかという、今度はさらに精子及び卵子のソースが問題にな ってきます。これについても規定がございません。例えば1994年にHFEAが、 「胚研究及び補助生殖における提供卵巣組織」という報告書を出しております。そこで は、生体ドナーからの採取した卵子というのはもちろんのこと、死者から採取した卵子 や中絶胎児の卵子を用いて研究目的で胚を作成することも許容されるという報告内容が 出ております。ただし、2003年7月1日現在、胎児から採取した卵子を用いる研究 にHFEAが認可を与えた例はありません。   ○笹月座長  これは申請があったけれども、認可しなかったということですか。 ○神里氏  すみません、申請についてはわかりません。  *イギリス:ドナーの同意  次にドナーの同意という点に入っていきたいと思いま す。ヒト胚研究に参加する人は、2種類の同意書に記入をすることが必要となります。 1つ目が、HFEAが策定した同意書式における同意です。それをここではAとしまし た。この1通の同意書に含まれていることというのが、そこに書きました配偶子の利用 についての同意。胚の作成・利用について同意。配偶子・胚の保管についての同意。こ の3点が1枚に盛り込まれております。そしてここでの同意の内容を遵守することとい うのが、認可施設に義務づけられております。  もう1つの同意書が、当該研究への参加についての同意です。これは研究機関が同意 書を作成することとなっています。  *イギリス:ドナーの同意書式(A)  ここにお示ししましたのが、今言いました Aに当たる、HFEAが発行している同意書です。小さい文字ですがHFEA007番 という同意書です。これは「卵子及び胚の保管と利用に関する同意書式」というタイト ルが書かれています。男性の場合も同様に「精子及び胚の保管と利用に関する同意書 式」というものに記入することになります。男性、女性の両者が夫婦である場合は、お のおのにこの同意書式を書きまして、それを照らし合わせて結論が同じになった場合に 例えば研究に提供することができるということになります。  その内容ですが、1のUSEという利用についてのところを見ますと、「私は以下の 目的で私の卵子を利用することについて、ここで同意いたします。」として、その下を 見ますと、私自身の治療、それについての「YES・NO」、他人の治療、「YES・ NO」、研究プロジェクト「YES・NO」。そしてそれについて条件があれば、それ を書いてくださいということを記載しています。  もう一段下に行きます。「私は、私の卵子が体外で胚発生するために受精されるこ と、これらの胚を以下の目的で利用することをここに同意いたします。」という記述に なっています。同様に、I、II、IIIというのがあります。それぞれに「YES・N O」というのをつけていくことになっております。  つまり、このように選択肢をたくさん用意していまして、自分はどれについてならイ エスでどういう条件だったら、どういう利用に用いていいのかという自己の胚に対する 決定権をなるべく尊重できる形でつくられた同意書となっています。  *イギリス:ドナーへのカウンセリングと情報提供  ドナーへのカウンセリングと 情報提供です。ドナーは、今見ましたAの同意に際して以下が保障される。マル1適切 なカウンセリングを受ける機会。これは受ける側にとって義務ではありません。そして マル2関連する適切な情報提供。という点で、ここではドナーの保護ということになっ てくるわけです。その内容は、研究は実験的なものであり、研究プロジェクトのために 利用または作成された配偶子・胚は、治療において移植されないこと。治療で余った新 鮮配偶子・胚、または凍結配偶子・胚のみ研究で用いること。研究が治療周期に影響を 及ぼさないこと。研究のための配偶子・胚の提供が治療を侵害しないこと。研究に配偶 子・胚を提供する義務がないこと。当該研究プロジェクトのために配偶子・胚が用いら れる前であればいつでも同意を変更または撤回する権利があること。研究プロジェクト について質問や議論をする機会を持つことが期待されていること。研究終了後、すべて の提供胚が廃棄されること。の情報が必ず提供されなければなりません。  *イギリス:認可取得手続  今のがドナー側の話でしたが、今度は研究をする方の 話に入っていきたいと思います。  研究のための認可を得るためには、そこに書きました5つのステップを踏んでいくこ とが必要になります。1つ目が、機関内の倫理委員会による研究計画の承認を取得して いることが前提になります。承認を取得したら、HFEA規制局へ申請書を提出しま す。その申請書は、15頁にわたる申請書式でして、それに必要な書類をつけていくと いう形になりますのでかなり厚い物になるのではないかと思います。その中にはレイサ マリーを入れなければならないとか、使用することが予想される卵子や胚の数の概算数 を入れなければならないといったように細かく決まっております。  この際に申請料も払わなければならなくて、ES細胞樹立を伴わない研究におきまし ては大体10万円をここで払うことになります。HFEAがこれを受理しましたら、次 にHFEAの同僚審査に回します。同僚審査者ですが、今38名おります。国内外の生 殖学及び不妊治療の領域の専門家になっています。この中の二人をHFEAが選びまし て、その二名からの審査報告書を得なければならないことになります。  4番目に研究実施施設の査察をHFEAのスタッフが行います。5番目がHFEA研 究認可委員会による審査・決定、ここでようやく到達することになります。これにつき ましては、間にピアレビューを挟むということがイギリスの特徴と言えると思います。 かなり手続を踏まなければいけないということについて、国内で確かに批判もあります が結果的に研究申請の90%が、申請から4カ月以内に処理されています。  *イギリス:HFEA研究認可委員会による審査手順  今の頁の5番に当たるとこ ろです。HFE研究認可委員会による審査手順というのも決められております。認可対 象の特定をして、先ほど申しました禁止行為に当たらないのかということ。また認可条 件に適しているのか。研究された胚の作成・利用がその研究のために必要であるか。患 者情報と同意書に委員会が満足しているか。認可を与えることが適切であると委員会が 考えるか。条件を付すならば、それは何にするか。セクション16に基づいて認可付与 の要件は満たされているか。セクション16というのは、細かいことで申請料が払われ ているかといったようなことです。  これを全部クリアしたときに、ようやく認可が付与されることになっています。次、 お願いします。  *イギリス:研究認可状況  研究認可状況ですが、2005年9月16日現在、認 可を受けているプロジェクト数は33です。それを施設数に直しますと24施設が認可 を受けています。研究のみの認可しか持っていないのが、そのうちの8施設です。  研究内容を見ますと、2001年の規則によってES細胞の研究ができるようにな り、現在は40%を占めております。そして不妊治療の発展、促進については8程度か と思います。程度というのは、何もHFEAが統計を示しているわけではありません。 私がレイサマリーを見たところ、8ぐらいがそれに当たるのではないかと考えたわけで す。今、現在8ですが、1994年を振り返りますと、認可申請数が39ありました。 そのうちの28が不妊に関連する研究でした。つまり今はかなり減っているということ が言えると思います。  *イギリス:研究目的での胚の供給状況  研究目的での胚の供給状況です。そこに も書きましたように1999年から2001年まで、私がHFEAから最新の情報とし て今年の初めにいただいたデータです。大体こうして見ますと、他者提供のための保存 胚というのと、上から4番目を見ますと、他者に胚を提供する人よりも研究に提供する 人が圧倒的に多く、2001年で4,225ありました。これは国際的に見ても割と多 いのではないかと思います。どのようにしてこんなに集めているかということを知りた くて、すべての認可施設にメールを送りましたが、返事がないというのが現状です。  一番下を見ていただきますと、1999年から2001年にかけて研究目的での作成 胚はゼロです。ただし、それ以降、今ですが、胚作成を行う研究は行われています。そ れが次の頁です。  *イギリス:現在認可されている胚作成を伴う研究マル1  このようにレイサマリ ーがHFEAのホームページではすべてだれもが見られる状況にあります。そのうちの 一つですが、体外でのヒト卵子の成熟と受精ということを見ますと、胚の作成を伴う研 究となります。  *イギリス:現在認可されている胚作成を伴う研究マル2  これはES細胞の研究 です。そのために受精卵を作成し、その作成された受精卵を使うというのがこの研究で す。次、お願いします。  *イギリス:現在認可されている胚作成を伴う研究マル3  これは私が間違えて入 れた関係ないものですので削除してください。  *オーストラリア:胚研究を規制する二つの方法  少し時間が長くなっております が、オーストラリアについて簡単にお話をしたいと思います。胚研究を規制する法律と して二つあります。「ヒトクローニング禁止法」、この中で16の行為を禁止していま す。その一つとして、女性の妊娠をもたらすこと以外の目的でのヒト胚作成を禁止して おります。  もう一つの法律が「ヒト胚を用いる研究に関する法律」です。これは主に余剰胚を用 いた研究を規制する法律になっています。  *オーストラリア:「胚」・「余剰胚」の定義  オーストラリアについての特徴をお 話ししたいと思います。ヒト胚を用いる研究に関する法律では、胚についてこのように 定義をしています。ヒトゲノムまたは改変されたヒトゲノムを有する発生可能な胚で・ ・・と続きますが、つまり発生可能な「胚で」ということをここで言っています。そし て法律ではありませんが、NHMRCの文書、NHMRCは後でご説明しますが、その 文書において、いつが「胚が生きて」いて、どういう場合に「胚が死んでいる」のかと いうことも規定されています。つまり、この生育可能な発生可能な胚に該当しない胚と いうのは、今からお話をする胚には入ってきません。そしてこのような胚の定義を前提 として余剰胚も定義されております。  余剰胚の定義ですが、女性の生殖補助治療で用いるために生殖補助技術によって作成 された胚で、かつ胚を作成した女性及び、いれば、その配偶者の必要性を上回っている 人の胚というふうに定義されています。どういう場合が人の必要性を上回っていると言 えるのかということで、(a)当該女性のART治療に関する目的以外の目的で胚を利 用することを書面で許可を与え、許可が有効である場合。(b)胚が彼らの必要を超え ていることを書面で決定し、決定が有効である場合。としています。  普通、余剰胚といいますと、一般的には当人の妊娠が成功した等の理由によって、必 要ではなくなった胚と考えます。この必要性を上回っているというところの(a)の規 定を見ると、これは残った胚というのとは違うものになってございます。ということ で、余剰胚は何を指すのかということをきっちりとした定義が必要になってくるのでは ないかとこの点から考えます。  *オーストラリア:規制フレーム  オーストラリア規制のフレームですが、胚を 「余剰胚」と「余剰胚以外の胚」に分けて考えています。そして「余剰胚以外の胚」に つきましては、使用行為を認定されたARTセンターで実施される女性の生殖補助技術 治療に関係する目的での利用のみが許されるとしています。そしてBですが、「余剰 胚」の利用につきましても、これも「免除利用」と「免除利用以外の利用」と2つに分 けています。「免状利用以外」の利用については、NHMRCの認可が必要であるが、 「免除利用」につきましては必要でないとしています。このNHMRCというのは、R IHE法という先ほどご紹介しました法に基づいて設置された委員会でして、イギリス でいうHFEAに当たる機関と考えていいかと思います。  *「免除利用」  免除利用ですが、どういうものを指しているか。マル1からマル 8にありますことを免除利用としております。つまり研究に当たるものであっても、こ れらに関するものは認可を必要としないとしております。  *補遺:カナダ  カナダを少しだけつけ加えます。カナダの特徴は「すべての人が これら技術の影響を受けるとはいえ、男性よりも女性の方が直接的かつ顕著にこれらの 適用による影響を受け、これら技術の適用において女性の健康及び幸福が保護されなけ ればならない」という規定を置いている点が特徴ではないかと考えます。  もう一つが「人を創出する目的、補助生殖処置を向上させる、または教育する目的以 外の目的での体外胚の作成」を禁止するとしていまして、逆に言えば処置を向上させる とか、教育する目的で胚を作成することは認められています。これも女性の保護、そし て生まれてくる子供を保護するという観点から、教育上必要であればということで認め られています。  *まとめ  最後のまとめですが、まず調査対象国の共通点は先ほど申しましたので 省略します。研究を通じてますますわからなくなった点は、検討を要する点についてお 話をして終わりにしたいと思います。  余剰胚の定義ということです。これは先ほどオーストラリアについて紹介しました が、あの場合は自己決定権がかなり強い形で働いている余剰胚ということが言えるので はないかと思います。  *韓国における「余剰胚」の定義  その一方でこれは後から加えたスライドです。 韓国における「余剰胚」の定義というのが特徴的です。余剰胚というのは、人工受精で 作成された胚の中から妊娠目的で利用し残った胚を言うとしています。  ここには書きませんが15条で、胚作成のために配偶子を採取する際に、書面による 同意をします。その時には作成、そして廃棄、研究利用についてのそこで同意を一括し てしまいます。次、16条の1項ですが、胚の保存期間は5年とする。そのただし書き がついています。2項、胚作成医療機関は第1項の規定による保存期間が到来した胚の うち、第17条の規定による研究目的として利用しない胚を廃棄しなければならないと して、17条1項では、第16条の規定による胚の保存期間が経過した余剰胚は発生学 的に原始線条が現れる前までに限り、体外で次の各号の目的で利用することができる。 としています。  その目的というのは、冒頭に述べたところです。つまり廃棄をすることになる余剰胚 については、5年前の同意に効力を持たせて研究で利用することができるということに なっています。つまり研究する際に同意を新たに取る必要がなく、5年の間にその人が 撤回をしない限り、その胚は研究に利用できるという言ってみれば自己決定の範囲がか なり弱い形で余剰胚というのを考えているのが韓国の例です。という具合に余剰胚と一 言で言うと簡単ですが、かなり内容が違っているという点に留意して考えていかなけれ ばならないと思います。  もう1点が、ヒト胚研究規制の対象範囲です。これは、女性への移植を前提としない 胚研究というのが通常と言われるヒト胚研究に当たると思います。つまり、なぜヒト胚 研究がこんなに問題視されるかといいますと、それは胚の廃棄を前提としているからで す。その生命の源である胚を壊すということが、倫理的に問題であるということで国際 的に胚研究が問題視されてきたわけです。イギリスでもそういう観点からでして、人に 移植しないことを前提とした胚研究のみ扱っています。これについて最近イギリスで問 題視されています。つまり女性への移植を前提とする研究についても広く考えなけれ ば、臨床研究の問題がクリアできないのではないかということです。そこでたとえとし て挙げられているのが、顕微授精の話です。研究の認可を受けても、それは胚を女性に 戻してはいけないのだから、戻すことを前提としたもう一歩進んだ臨床研究について は、何らHFEAの管理に置かれないということが問題ではないかということで、クリ ニカルトライアルのための認可を新たにつくるべきではないかということが最近では言 われている点です。  3つ目の研究の価値評価というのは、先ほども言いましたようにいろいろあるという ことです。胚提供の同意権者というのは、今後もし日本でも卵子提供によるIVFがで きるようになるとするなら、そこにおいての同意権者は胚を自分たちのために受けたレ シピエントなのか、それとももともとの卵子を提供した人なのかという同意権者の問題 も出てくると思います。以上、長くなりまして申しわけありません。   ○笹月座長  どうもありがとうございました。外国の状況を詳しくご説明いただきました。  それでは少し委員の先生方の間で質疑応答を行いたいと思います。どなたからでも、 あるいはどんなことでも結構です。 ○鈴木委員  本日はどうもありがとうございました。大変勉強になりました。少し質問があります がよろしいでしょうか。1つ目、これは大きな問題だと思います。各国がすべて法律で 規制しているということがありました。今、私どもの委員会でも「ガイドライン」とい う言葉が飛び交っております。法律ではないかのような形で、議論がスタートしている なということをお話を聞きながら改めて思いました。各国がなぜガイドラインでなく、 法律で規制しているのか、これの背景なり、そこに持たれている考え方のようなものが おわかりであればお聞きしたいと思います。   ○神里氏  明確な答えになっているかわからないのですが、ご存じのとおり1990年代に各国 ではヒト胚研究ということだけでなく、生殖補助技術に関する法律がどんどんとできて います。その中に、胚研究を位置づけているというのが法でほとんど規制されていると いう理由かと思います。  それともう1点としましては、本日議題として私が話すアジェンダーとしていただい たのが生殖補助医療研究に関する海外の状況ということです。研究の話に限ったとして も生殖補助医療のみの研究を規制している国は普通ありません。ですのでちょっと今お 話をしたのもかなり広くなってしまったのです。そういったわけで生殖補助医療研究に 限るということは通常はないということです。 ○鈴木委員  いわゆる生殖補助医療研究にというよりは、例えば胚なり配偶子なりに伴う研究、治 療といった包括的な法律という形で多くがつくられていると考えてよろしいですか。 ○神里氏  はい。 ○鈴木委員  質問の2つ目です。先ほど胚の保存期間の話が出ました。イギリスでも確か5年と決 まって、大量に廃棄されたということが以前新聞で報道されたような記憶があります。 イギリスの保存期間は、今は何年でしたか。 ○神里氏  5年です。 ○鈴木委員  やはり過ぎたら廃棄といった規定になっているのでしょうか。 ○神里氏  そうです。 ○鈴木委員  もう一つ質問です。イギリスにおける認可委員会の構成です。通常はIRBなどです と、医療者以外に社会科学者、哲学者ですとか倫理学者を入れるべきである。あるいは 市民団体の人も何人か入れるべきであるといった考え方もあるようです。この認可委員 会に対してはどのような構成になっていますか。 ○神里氏  研究認可委員会については6名で構成されています。手元に持っているはずですが、 今ちょっと記憶の中だけですとジャーナリストが1名入っています。あと医事法の学者 が1名、それ以外については医学的な人ももちろん入っています。 ○笹月座長  他に何方かご質問あるいはコメントがございますか。 ○加藤委員  余剰胚の定義がわからなくなったという趣旨の発言がありました。例えば、韓国の定 義はウワノク委員会以来の定義と同じで、特に余剰胚の定義が変わってきているという か、範囲がわからなくなったという説明でした。私には少し理解できなかった点がある のですが、具体的に言うとどういうことなのでしょうか。 ○笹月座長  イギリスの余剰胚の定義で2項あって、その1項がややわかりにくいということです か。 ○神里氏  余剰胚は、イギリスでも通常自分にとってつくった受精卵というのが第一であって、 それが必要なくなった物ということになると思います。ただ、韓国の規定を見ますと、 自分のために必要がなくなったということは規定していません。先ほどお示ししました ように、「利用し残った物」ということであって、自分にとって必要かどうかというこ とは余剰胚となるか否かの判定基準にはなっていないということです。 ○秦委員  認可取得手続のところで、2名のピアレビューアーによる検討と報告というのは非常 にユニークな手段だと思います。この2名のピアレビューアーは自然科学者でしょう か、それとピュアーレビューアーの検討と報告というのと、最後のHFEA研究認可委 員会による審査、決定、このあたりの関連はどのようになっているのか、おわかりにな れば教えてください。 ○神里氏  2名のピアレビューアーは科学者です。生殖学及び不妊治療の領域の専門家に限られ ています。先ほど申しましたように、HFEA認可委員会についてはそれ以外の科学者 以外も入っているというところで話が違ってきます。 ○笹月座長  先ほどの余剰胚の問題、よろしいですか。 ○加藤委員  まだ理解できなくて、その余剰胚の、こういう言い方をするとよくないのかと思いま すが、ベトイトンクンが同じでジンが違うのではないかという解釈でいいのではないか と思ったのです。余剰胚と言われているものの、集合の範囲は同じだけれどもそれを表 現する仕方が違っているだけなのではないかと思います。 ○笹月座長  イギリスでの定義は、何頁でしたか。 ○神里氏  イギリスでは法的に定義をされていません。    ○笹月座長  失礼しました。オーストラリアです。 ○中辻委員 関連したコメントです。多分韓国の例で私が知りたいのは、5年間で廃棄 するということは、患者さんが5年間以上残したいと言っても廃棄するのであれば5年 ですべて余剰胚になってしまうのですが、患者さんが残したいと言わなければ余剰胚だ けでも言えば続くという理解でよろしいのですか。 ○神里氏  私が法文を見た限り、韓国では5年以上余剰胚を残すということはできないと解釈し ます。 ○中辻委員  強制的に5年で切ってしまっているわけですか。 ○神里氏  そうです。つまり、患者サイドとしては、5年以内については定めることができます が、5年以上ということについては定める権利を持っていないということです。   ○鈴木委員  関連ですが、イギリスの方はいかがでしょうか。 ○神里氏  すみません、その点については調べさせてください。 ○吉村委員  今の余剰胚のことですが、加藤先生の質問が少し哲学的でわからないところがありま す。具体的な例を挙げていいますと、やはりオーストラリアのところで一番の問題は、 当該受精のART治療に関する目的以外の目的で胚を利用するということです。  ですが、そうなりますと、これはART治療を行う時に、一部の胚は事前に研究に余 剰胚として扱っていいという同意を取るということですか。そういう理解でよろしいの でしょうか。これがなかなか大変理解しくにいのですが、20頁です。 ○笹月座長  先ほどのご説明ではなく、私もそのように聞いたのです。それでよろしいですか。 ○吉村委員  そうですね。  事前にARTを行うときに、例えば、恐らくここの状況では卵が15個とれるであろ うと。そうすると10個ぐらい胚になるだろう、そのうちの3個をART目的以外に余 剰胚として扱ってもいいですよと、それも余剰胚の範疇に入るという理解でよろしいの でしょうか。 ○神里氏  そうです。 ○吉村委員  これは、我が国の余剰胚の考え方と随分違います。 ○神里氏  今の点、少しつけ加えます。20頁ですが、「必要性を上回っている」の(a)につ きましては、自分にとって必要かどうかということではなくて、目的として使わないか ということで、それを別の目的で使うことは自分のためにもできます。ですから検査の ために使うということも入ってきます。 ○笹月座長  それはいわゆる着床前遺伝子診断とか、そういうことを想定しているわけですか。 ○神里氏  着床前遺伝子診断の場合は、通常それは自分の中に入れることを前提としていますの で、また話は少し別です。 ○小澤委員  余剰胚を用いた研究と、それから研究目的のヒト胚作成を区別して規制をかけている 国はどこでしょうか。きちんと区別しながら規制をかけている国です。 ○神里氏  ヒト胚研究のための作成ですね。ヒト胚研究のための作成をしている国は、私の調査 においてはイギリスとベルギーのみです。イギリスにおきましては、胚と言ったら胚で あって、区別をしていないというのは先ほどお話をしましたが、それ以外の国におきま しては、そもそも胚作成ができませんので必然的にそこで区別をしています。 ○笹月座長  そういう意味でイギリス以外では、例えば研究目的であればもう余剰胚以外はあり得 ないということですか。 ○神里氏  余剰胚及び移植できない胚というのも入ってきます。 ○安達委員  最初に、ベルギーが余剰胚では研究目的が達成されない場合のみ研究目的で胚をつく ってよいということですが、非常にわかりにくいですがどんなことが想定されるのでし ょうか。 ○神里氏  すみません、ベルギーにつきましてはこれ以上のことを調査しておりません。 ○笹月座長  ベルギーは印が三角になっていますので、いろいろな条件を付して何か考えていると いう意味ではないかと考えます。ここのところを調査していただくと、我々が議論を進 めていく上で何か参考になるのではないかと思いますので、もし可能ならぜひお願いい たします。 ○神里氏  わかりました。 ○加藤委員  ベルギーの法律は何語で書いてありますか。 ○神里氏  フランス語です。 ○中辻委員  研究目的のヒト胚にこれが入るかどうかわかりませんが、核移植の胚というものが含 まれるのでしたら、シンガポールと韓国では許可される場合があるという理解でいいわ けですか。スウェーデンもそのはずだと思うのです。 ○神里氏  移植胚を含むという意味での作成を考えるのであればということですか。はい。 ○笹月座長  それはオリジンが余剰胚でなくて、未受精卵に受精させてその目的でつくってよろし いと。 ○中辻委員  はい、未受精卵の除核卵子に体細胞核を移植するという、いわゆるクローン胚研究と いうものが含まれるとすれば、それに関してはスウェーデンとシンガポールと韓国はあ る条件で許される場合があるということです。 ○安達委員  確認ですが、胚の保存が5年ですが、配偶子は別に5年ではないわけですね。 ○神里氏  配偶子につきましても規定がありますが、何年かは忘れました。(追記:10年) ○小幡委員  イギリスはかなりしっかりした法律に基づく制度になっているようでございますが、 先ほどもご質問がございましたが、申請書を提出してからの手順が12頁にあります。 研究実施施設の査察までやって、ピュアレビューもやって、そこは恐らく規制局の職員 のER査察までやるのだと思うのです。そして13頁のに審査手順があります。ここま で全部合わせて4カ月以内、つまり申請書提出してから最終的にオーケーが出るまでに 4カ月以内で処理されているという理解でよろしいのでしょうか。 ○神里氏  はい、そのように記載されています。 ○小幡委員  そうするとかなりのスピードだと思います。これ全部を4カ月以内でやるというのは 大変ではないかという感じがします。現実に努力目標だけでなく、されているという実 体だということですか。 ○神里氏  90%がそうです。この申請書と認可の割合を見ますと、かなり申請されたものの多 くが認可をされています。つまりある程度この書式をきっちりとしていれば認可をする ということが前提になっていますので、そういう意味でスピードが図られているという ことです。 ○中辻委員  今の点は、13頁にあるHFEAの審査手順のチェック項目が非常に明確な項目にな っていて、これを次から次とチェックしていくということだと思います。多分、研究の 意味の評価というところが少し議論が分かれるかもしれませんが、それはピュアレビュ ーでやっているということだと思います。 ○小澤委員  実費や謝金が認められている国はありますか。 ○神里氏  あります。実費につきましてもかなり事細かに書いてあります。例えば交通費、宿泊 費。交通費に関してもタクシーだったらどうとか、すべて細かく規定されています。そ れプラス15ポンド、大体3,000円を支払うことができるという規定があります。 ○安達委員  他者提供のことでお聞きします。15頁などに書いてあります他者提供のための保存 胚というのは、第三者の配偶子をARTでどなたかの不妊治療に用いるという意味だと 思うのです。研究のために本当に配偶子を提供するといったことに対する規制、あるい はそういうことを実施している国はあるのでしょうか。 ○神里氏  研究のための配偶子のみについて規制をしているという国は、私の知る限りでは見受 けられません。   ○笹月座長  例えば、イギリスにおける研究目的での胚の作成の時の、配偶子、卵、精子は何に由 来するのですか。イギリスの場合、研究目的の胚の利用の時に、胚の作成を認めるとい う時の、精子・卵子のソースはどういうことになるのでしょうか。 ○神里氏  ソースは限られていません。そこが一つ問題です。HFEAで、その胚を作成すると なるとHFEAの認可がかかってくるわけです。それ以外についてはかかってこないわ けです。  私が少し懸念しているところは、HFEAが、ではまずは卵子のみを使う研究をしよ うということでだれかから提供を受ける。その時はHFEAの監督外ですからお金につ いてもフリーです。はっきり言ってしまえば、売買も可能と言えば法的には可能になり ます。それをいただいた上で、その後これを使って胚を作成しようとした場合にどうな るのか。その辺がうやむやになっていないのかということが懸念される点です。この 辺、現場に行って調査をしたいと思っていましたが、なかなかできなくて疑問のままに なっています。 ○笹月座長  実際に研究を目的とした胚の作成というのが、ボランタリーに卵子を提供する、ある いは精子を提供する人がいると、それによってつくられた胚が研究に用いられるという ことは実際に行われているのかどうかというのはどうなのでしょうか。 ○神里氏  実際に行われています。先ほどご覧になりましたように、ヒト胚研究の認可研究作成 です。 ○笹月座長  ええ、そこのところは認可があるけれども、配偶子に関しては規制がない。配偶子の 提供とか採取に関しては規制がない、ということでよろしいですか。 ○神里氏  採取に関しての規制はないです。 ○笹月座長  他にどなたかご質問あるいはコメントがございますか。 ○鈴木委員  今のお話の確認です。15頁の数について、研究目的の作成はなされていると言われ ましたが、それは可能だけれども、例えば99年から2001年は実際の回答ですね、 それでゼロとなっている。実際はなされていないということ、これはどういう意味です か。 ○神里氏  1件もそれを認める研究がなかったということです。先ほどご紹介した2件の研究に ついては、これ以降になっております。 ○笹月座長  他によろしいですか。それでは神里先生からのご報告はこれまでとさせていただきま す。先生、どうも大変ありがとうございました。  続きまして、厚生労働省の特別研究吉村班にご参加なされました慶応大学の久慈直昭 先生にお話を伺い、また議論を深めたいと思います。ヒト胚を用いた生殖補助医療研究 の具体例と今後の方向性、あるいは先生がご担当なさった吉村班での成果などを中心に ご報告をお願いいたします。 ○久慈氏  ここで僕が話したいと思いますのは、吉村先生からも前回お話があったと思います が、過去5年間に大体どんな研究がどんなところで、どんなように行われているかとい うことの確認です。それから2、3コメント。後は新たに胚をつくる研究が、研究の方 あるいは不妊症の治療をするお医者さんの方から見るとどうして必要なのかというこ と。なぜそれが動物実験で代替がきかないかということをお話ししたいと思います。そ の後で、新たに受精をさせる研究というのがふえるかふえないかということについて、 卵巣とか卵子の凍結に多分関係してくると思いますので、そのお話をさせていただき、 最後に実際に生殖補助医療の不妊症治療の体外受精の現場でどういう卵がどのように出 てくるかということを、皆さんのご理解を確認する意味で参考にはならないかもしれま せんが発表させていだだきたいと思います。  (資料4・スライド使用)*背景  これは前回お話をしたとおりですので、簡単に 説明をします。結局、昨年7月に生殖補助医療研究に限定して、ヒト胚の研究目的の新 たな作成と利用を認めるということで、これは私どもにとっては大変ありがたいという か非常に時宜を得ていると同時に、次に出てきますが私どもと同じような人間をつくる というふうにも見られるわけですから、それを重大に考えてこの研究の機会というのを 有効に使いたいと思います。これは要するに患者さんのためにですが、有効に使ってい きたいと考えています。  下記三点を考察したということです。  *研究目的での胚作成に関する議論  1984年のWarnock報告、これも前回出て いると思いますが、ここでいろいろなことが議論されています。前提として1番に、研 究目的での胚作成禁止により医学の発展が妨げられる。ただ、慎重意見として特に1番 ですが、余剰胚の利用と、研究目的で作成された胚は倫理的に異なるということです。 これは要するに余剰胚というのは、夫と妻の不妊治療のためにつくられた胚ですから、 つくられた目的そのものは間違っていないわけです。ですが、研究目的で作成された胚 は、結局2週間以内に死滅させることだけを目的につくられた胚というふうに見られな いこともないわけです。これは認めるか認めないかは倫理的に考えなければいけないと 思います。  こちらでお話をしたいと思いますのは、推進意見の2番に、認めないと研究範囲が抑 制され、ある分野では事実上不可能(例えば受精過程の研究)が出ています。卵子を治 療というか、よい卵子をつくる、元気な卵子をつくる、正常な卵子をつくる研究という のはどうしても最後には受精とか胚発生を確認しなければいけません。ですから不妊症 の分野では、この研究が非常に必要となります。  *1.精子・卵子・胚に関する研究の調査  繰り返しになりますが、過去5年間で 刻一刻と変わっておりますので、2005年でまた状況が変わってきます。それはご容 赦いただきます。どういうことを見たかと言いますと、新たにヒトの受精卵を作成して いたかどうかということ。それから夫婦間の精子・卵子の受精なのか、夫婦以外か。そ の後の個体発生が一応研究の範囲としては可能性があるのか、それとも例えばホルマリ ンで固定してしまうとか、細胞を壊してしまうとか、その後の個体発生は絶対にできな いような研究なのかということを見ています。それから今後、この枠組みをつくる意味 では研究がどういうところで行われるかということを見ています。  *あつかったヒト細胞の種類  扱っているヒトの細胞ですが、圧倒的に精子が多い です。先ほどのお話にもありましたが、精子とか卵子を単独で例えば卵子を固定して染 めてみる、あるいは卵子の遺伝子を調べてみるという研究が非常に多かったです。受精 卵を研究していたのは、そのうちの7%だけでした。  *研究の種類  研究の種類としては、妊孕性を持った実験が53%と書いてありま す。これは実験なのかそれとも不妊症の治療の改善なのかわからないところがありま す。と言いますのは、例えば体外受精で不妊症を治療するときに新しい培養液を使って みようということは、研究なのかそれとも治療の一部かがわかりません。もう一つは先 ほどの議論と関係するかと思いますが、非常に先進的な研究の場合あるいは治療の場 合、今度は移植をしないと患者さんと約束をして、夫と妻の卵子を受精させるというこ ともあり得ると思うのです。こういうことも含め妊孕性を持ったまま実験ということで す。そういう実験は結構あります。半分ぐらいは死滅した後に実験しているということ です。  *研究実験施設  どんな機関でやられたかということです。筆頭の研究実施施設と して大学の研究所が大体68%です。次に病医院単独、体外受精というのは、今多くは 大学研究機関ではなく不妊症専門のクリニックで行われています。病医院単独でこうい う研究を行っているところも少なからずあります。もちろん同意を取っているとは思い ますが28%ぐらいです。   ○笹月座長  その他の4%は何ですか。 ○久慈氏  今はわかりません。すみません。  *主たる研究科  筆頭者の研究科です。やはり卵とか受精させるとかあるいは体外 受精をやっているということで産婦人科が圧倒的に多いです。精子の研究も産婦人科が 多いです。それ以外ですと、泌尿器科、臨床検査、基礎研究室ということになります。  *新たな受精(胚作成)  それから新たな受精を起こしているかどうかということ ですが、7割は起こしていません。残った3割のうち17%は夫婦間の受精で、これは だから夫婦間の治療あるいは治療を向上させる目的で行われています。それ以外の残り の12〜13%は、夫婦間以外です。研究の中身を見ますと、例えば妻の卵子に異常が ないはずなのに受精が起こらないという場合、ご夫婦に了承を取って夫の精子を他の人 と変えて見るとかということが起こりうるわけです。それから研究として、新たな受精 と書いてありますが生きているかどうかということは考えていません。後でも出てきま すが、受精させたあと発生できなくなった卵に精子を振りかけて見て、その精子が膜に 接着するかどうかといった実験も入っています。それから動物実験としては、不妊治療 にはどうしても欠かせないのですが、動物をモデルとして例えば動物の卵とヒトの精子 を受精させるという実験が9%です。これはヒト卵子を極力使わないという意味ではど うしても必要だと思います。   *新たな胚形成が必要な研究の例  これも前回、吉村先生から説明していただいた と思いますのでご参考までに見ていただければと思います。これだけ必要な研究があり ます。多くは受精機能の判定とか精子・卵子の体外での形成、これは後で出てきます。 機能の改善、凍結保存してその凍結保存した精子、特に卵とかが機能を持っているかど うかという検査、これもやはり研究のレベルになります。それから受精機構そのものの 研究です。  *結果  まとめです。多くは精子を直接固定・解析するもので、受精卵を使用した ものは不妊治療そのものの工夫とか、廃棄予定胚を用いたもののみであった。これも後 でどういうものが廃棄予定胚かを説明させていただきます。  精子と卵子を用いて新たに受精を起こすものは、新しい治療等のための研究として大 体必要なものと考えられます。それから非常に新しい技術の場合、移植を前提としない 約束で夫婦間の受精を起こすものも見られた。だから夫婦間の受精卵ですが、それが本 当に赤ちゃんになったときに異常を起こすか起こさないかわからないので、移植はしな いという約束で受精を起こしているものも見られます。  それから見ようによっては人間と動物のあいのこをつくるように見えますが、不妊の 実験として必要なもので、4番として、動物配偶子との融合を要する実験も見られまし た。  研究を施行する医療機関は研究機関を含まないものもあって、こういうところではや はり医者以外の委員を含める倫理委員会の設置の便宜を、新しい受精をする研究を必要 とするのであれば考慮するべきではないかと考えます。  *2.新たな胚形成が必要な研究  どんな研究が新たな胚形成が必要なのかという ことです。まず、研究が必要な理由として、ヒトの精子とか卵子の構造、受精過程が動 物とは異なるので動物での代用は難しい。これはもっと言ってしまうと、動物ごとに全 部受精過程も精子・卵子の構造あるいは機能が違います。ですからモデル動物として例 えばマウスを使った場合、この部分はヒトと似ているけれども、この部分はヒトと違 う。ウシを使った場合には、ここが同じだがここは違うということで、どれ一つとして ヒトの代用となる動物はないわけです。  最終的には、どうしてもヒトの精子とヒトの卵子を受精させるという実験が必要にな ってきます。それから精子と卵子の機能というのは、そのものが受精して胚を形成する こと。もっと言うと、赤ちゃんをつくらなければ不妊症の研究としては成り立たないわ けですのでそこまで必要です。少なくとも胚を形成するということが必要になります。 ここの胚を形成するということでこの実験はどうしても必要になります。研究の例とし ては、先ほどお話をしたとおりです。必要な理由の例を挙げて説明をさせていただきま す。  *精子・卵子の構造、受精過程はヒトと動物で大きく異なる  例えばの話でこのよ うなことがあります。核のタンパクがあります。DNAとくっついているタンパクがあ りますが、ウシというのは肉牛ですが、受精しやすいかしにくいか、ウシの肉をつくる のは凍結したウシの精子を種牛の子宮の中に入れてつくるのが普通です。精子がいいか 悪いか、強いか弱いかということがよくわかっているのです。この精子の核タンパクと いうのは、1種類しかありません。ヒトでは2種類あります。この2種類のタンパク は、不妊に関係していると言われますのでウシをモデルにしてはできません。それから マウスの精子の頭のところに、卵に入っていくための袋がついています。その袋の中 に、卵の外側の殻を溶かす酵素が入っています。ヒトのそれは小さくて、マウスの方は 大きいと。先日、ネイチャーかサイエンスに出ていましたが、顕微授精をする時に先体 と言いますが、この中の酵素が顕微授精の後の受精卵の発生に悪影響するのではないか というのが出ていました。ヒトでは、小さいがために余り影響が出てこないようです。 それから、顕微授精がマウスとヒトではしやすいか、しにくいか違うというのはご存じ のとおりだと思います。  その受精過程の相違にも、例えば精子が2匹入るのをブロックする機構が、マウスで は透明帯ですがヒトでは細胞膜で起きているということで、臨床の不妊症治療でもこの モデルになり得ないということをいろいろ書きました。  繰り返したいのは、結局どんなモデルを使ったとしても最終的にはヒトで確認するし かない。それからヒトで不妊症のカップルの物だけを使っていても、研究には限界があ ります。例えば赤ちゃんのいる男性の精子を使って患者さんの卵に受精させてみるとい った研究はいつか必ず必要になってくると思います。  *ヒト精子中心体と受精  例えばこれは一つの例です。ヒトの精子の中心体です。 中心体というのは、細胞分裂の時に二つの細胞の染色体を分ける核みたいなところにな ります。その中心体は、ヒトの場合は精子が持ち込んで受精卵が分裂していきます。図 を見ていただきたいと思います。これが今入った精子です。入った精子から線が伸びて いって、ここに卵の核がありますが、卵の核に寄って行って精子の中心体だけで細胞分 裂を起こしていきます。  *受精過程における中心体と微小管  スライドをご覧ください。ヒトは左側です。 精子がここにあって、この後ずっとつながっていきます。緑色の部分がどんどん卵子の 核に伸びていきます。ところがマウスでは、マウスというのは受精の過程の研究にはよ く使われます。核がここにありますが、中心体になる部分は卵の中に幾つも存在してい ます。ですからマウスの精子の場合には、精子にその中心体が全然なくても、あるいは 機能していなくても受精が起こって子マウスが生まれてしまうわけです。このような違 いがところどころに出てきます。ということで動物モデルが機能する場合もあるし、機 能しない場合もあるということをわかっていただきたいと思います。  *精子・卵子の研究と成体への薬物投与  もう一つは、どんな病気でもそうだと思 いますが、精子とか卵子の機能はずっと長い間育って分化をして子供をつくるという、 よくわからないことの連続なわけです。例えば成体への薬物投与のことを考えますと、 一部分だけをブロックしたり、よくすることができれば、それだけで研究の意味があり ます。それで患者さんが助かるわけです。しかし精子・卵子の場合には、その一部分だ けがよくなっただけではうまくいきません。要するにその一部分を治したことで、それ から後の発生が正常にいくかどうかということを検証しなければいけません。ある程度 の発生、実際にやってみないとうまくいくかわからないという研究の違いがあると思い ます。  *予想される提供者  どんなところから卵や精子が出てくるかということです。こ れも吉村先生のスライドにありましたので、重複するところは省きます。卵子の方でボ ランティアももちろん出てくると思います。ですが、卵子とか卵巣の凍結を希望する女 性はそろそろ増えてくるのではないかと思います。実際に臨床をやっていましても、悪 性腫瘍の患者さんで卵子とか卵巣を取っておけないかという問い合わせが結構きます。  *3.卵子、胚および卵巣凍結の現状  何故、増えてきたかということです。これ も吉村先生からいただいたスライドをそのまま使用しています。少し変えてあるのは、 成熟の卵子の凍結は出産例が100例と少ないけれども、確かに増えています。5年ほ ど前に総説を書かせていただいたのですが、その時には10例ぐらいしかありませんで した。それは技術革新によって100例となって、ある程度もしかしたらできるかもし れないという望みを抱かせるぐらいにはなっています。  もう一つ、卵巣の凍結ですが、自家正所性移植、これは後で説明しますが、去年でし たかベルギーで1例出産したというのが、ネイチャー、サイエンスで出ていました。こ れも本当に凍結卵巣から由来したかどうか議論がありますが、患者さんは希望を持って いるという意味では、卵巣とか成熟卵子を凍結保存するという方が特に未婚の方でふえ てくる可能性はあります。こういう方に子供をつくってあげるために、その研究も必要 になると思います。  逆に言いますと、そういうところから卵子、卵巣という組織が出てきてしまうかもし れないので、それを研究に使うかどうかどのように枠組みをつくるかというのは、これ から大変大きな問題になってくるのではないかと思います。次、お願いします。  *卵子凍結保存の問題点  なぜ卵子の凍結がうまく行くようになり始めたか、これ もご存じの方にはお聞き苦しいかもしれません。成熟した卵子、これが精子とあわせる 卵子です。この卵子というのは非常に微妙なバランスの上に立っています。少しでも手 を触れればどんどん分割して二分割、四分割になります。それから染色体そのものも分 裂の真ん中で止まっているという不思議な細胞です。この細胞はいろいろな影響を物す ごく受けやすいのです。  *ガラス化凍結法  ガラス化の凍結法というのがあります。今までの凍結法という のは1分間に0.3度、ゆっくりゆっくり、言い方は少し適当でないかもしれませんが 卵を冷凍の温度になじませるようにして凍結するような凍結法でした。これは逆に言う と長い時間低温にさらされることになって、低温に弱い卵だと働きが悪くなるというこ とです。ところがガラス化法というのは、特殊な凍結液を使用して直接マイナス196 度の液体窒素に入れます。そうすると生きて動いている状態そのままで時間を停止する ことができます。このことによって卵子の凍結保存の確率が高くなっています。  *卵子凍結による染色体異常発生(1)  その卵子の凍結の時に問題になるのは染 色体です。染色体を分けるためのひもがついています。さっき話をしました中心体がこ の辺にくることになります。これで温度が下がってしまうと、この不安定なひもはとこ ろどころ切れてしまうことがあります。そうすると例えば切れた方はどうなるかという と、青と緑が下に行ったときに本来であれば真っ二つに割れるはずですが、青と緑だけ は一遍に右側に移ってします。そうするとこれで2つの細胞ができたとすると、右側が 2本染色体が多いことになりますし、左側は2本染色体が少ないということです。  *卵子凍結による染色体異常発生(2)  これが実際の卵で起こると、例えばさっ きの紡錘糸の異常というのが長い時間低温にさらされて起こると、24本の染色体を持 った卵細胞が精子と一緒になると、普通だったら23プラス23で46本になるはずが 47本になってしまうと。これが起こらなければ正常の染色体数になるわけです。時間 が少なくて済めば正常になる卵の割合が多くなりそうだということはわかると思いま す。  *凍結による卵子の活性化と顕微授精  もう一つは染色体の異常の他に、卵の外側 に表層顆粒と言いますが小さな袋があります。これが卵の膜をコントロールして精子が 例えば2匹くつかないようにしています。1匹、精子がつきますと、この小さな袋はす ぐに外側の膜と融合しまして外側の膜の性質を変えてしまいます。ですから2匹目の精 子はつかないのです。精子は1匹だけ入って、一つの核と一緒になって46本正常の細 胞があらわれるのです。もしこれが起こらないと2匹入ってしまうのです。  ところが凍結の場合には、この不安定な卵に凍結の刺激で小さな袋が膜と融合してし まって、最初の精子さえも入っていけないという状態が起こります。ですから今までの 凍結法ですと受精率そのものが低かったのです。ところが顕微授精ができるようになる と、こういう卵であっても精子を中に入れることができるようになり、受精率が改善す ることによって赤ちゃんができる可能性が高くなります。  *卵巣凍結保存の現状  今までのことで卵子の凍結は少し技術革新があり、望みが 出てきたということはわかると思います。次に卵巣の凍結です。今凍結法としては卵巣 は組織が大きいためゆっくり凍結する方法しか今のところうまくいっていないようで す。例えば15歳とか17歳のがん患者さんの女性からとった卵巣を、幾つかに分けて 液体窒素で保存してしまいます。これをいろいろな方法で卵にします。今うまくいって いるのは自己移植といいまして、その人の元あった卵巣のところに溶かした卵巣をもう 一回埋め込むという方法です。それ以外にも同じ女性ですが、下腹部に埋め込んだり、 前腕に埋め込んだりこれを異所性、元あったところに埋め込むのを同所性(正所性)と いいます。というこの自己移植という方法が現在は主流です。現時点ではこれしか卵を つくる方法はありません。  問題点として、もしこの人ががんだったとすると、卵巣にがんがあるとそのままそれ を移植してしまうことになります。異所性であっても、例えば子宮とか卵巣だとおなか の中ですからがんが大きくなってきてもわかりにくいのですが、前腕とか下腹部であれ ば移植したところにがんがあるということは早くわかります。ということで異所性の方 がいいのだという先生も多いです。どちらにしてもがん細胞を移植する可能性はずっと 残っているということです。  成功しているかどうかということを言いますと、同所性の1例は先ほど述べたルギー の報告があります。それから異所性の方は受精して胚形成をした報告は幾つもでていま す。  ではどうしたらいいのか、がん細胞の移植をしないために。そうすると一つのやり方 はヌードマウスみたいなものに卵を植えて、その卵をヌードマウスに育ててもらうとい う考え方があります。これの問題点は、マウスから何かが感染する可能性がある。ある いはマウスが何か卵子を異常にしてしまう可能性があるということです。ということで 今のところうまくいっていませんし、方法そのものに問題がないとは言えない。最終的 に将来の夢として残っているのは、これを体外で培養してこのままシャーレの中で卵を つくるという方法です。これをすれば卵だけ取り出して、それを精子と受精させて受精 卵にすることによって、例えば卵巣の他の部分、血管とか間質にがん細胞があったとし ても、これはがんを再発させないでそのまま戻すことができますが、これは今のところ 全然うまくいっておりません。  *凍結卵子・卵巣増加の可能性  ということでまとめです。こんなことがあるわけ です。卵子の凍結は確実に改善しているし、卵巣の凍結も可能性が出てきている。もう 一つは、マウスの方ですが原始卵胞、要するに非常に未熟な卵巣の中の卵を先ほどの一 番右の図ですが、シャーレの中で培養してマウスをつくれたというのが何年も前から出 ています。そのグループではずっと研究を続けていまして、だんだん確率がよくなって きています。ですからマウスで使われている体外培養のメソッドを人間に応用しようと いう動きがいつかは出てくると思います。  ということで卵子・卵巣の凍結を求める女性はふえる可能性があるということと、効 率改善・安全性確認のための研究を推進することは私どもとしては非常にやりたいとこ ろです。  *4.生殖補助医療と生殖補助医療研究  これはこの議論のお役に立てばと思って つくったスライドです。生殖補助医療、生殖補助医療研究、生殖補助技術などいろいろ 出てきます。僕なりに一応分けてみました。  生殖補助医療というのは、要するに患者さんのための治療です。夫婦が子宮への胚移 植を前提として、夫の精子と妻の卵子を受精させる医療というふうに規定していいと思 います。日本では、体外受精は法的に婚姻している夫婦にしか許されていませんから、 この定義でそれほど間違いではないと思います。  生殖補助医療研究というのは、女性の体内に受精卵を戻さないという前提で、ヒトの 精子・卵子・胚の提供を受けて行う研究です。ヒトの精子・卵子・胚というのは、夫婦 の場合もあるでしょうし、夫婦以外の場合もあると思います。  生殖補助技術というのは、あくまで科学技術です。ヒトの精子・卵子を体外で授精さ せて、体外培養して胎児になり得る胚を作成する科学技術というふうに規定できると思 います。ただ混乱のもとになるのは、生殖補助医療例えば不妊症の治療で体外受精をし た人からも、発生しない卵子とか胚、凍結して赤ちゃんになり得る余剰胚、研究に用い られるような胚が出てきてしまうからです。  *生殖補助医療で発生する卵子・受精卵  これは実際に体外受精をやったときに、 どんな結果になるかという図です。一番上の行が普通の体外受精の治療です。採卵をし て左側で卵が出てきますが、線の上に精子が映っていると思います。大体24時間する と受精が確認できます。48時間で四分割ぐらいになって、これを胚移植するのです。 胚移植する時に、もし例えば1個胚を戻したけれども5個とれたとすると、4個の胚は 凍結保存することになります。これだけかといいますとそうでなく、とれた胚のうち受 精させようと思っても例えば全然精子が入らないとか、2匹とか3匹精子が入ってしま うとかという胚が必ず出てくるのです。こういう胚あるいは正常に受精したのだけれど も、どこかで発生が止まってしまった胚は廃棄で、一部同意を得て診療とか研究に使っ ているのが実情です。  それから採卵した時にそもそも全然未熟な卵が出てきてしまって、受精に適さないと いう場合があります。この場合でも追加の24時間ほど培養しますと、最初に採卵して 左上に出てきた卵と同じような卵が得られることがあります。追加培養をしてから顕微 授精をしてそのまま胚移植をして赤ちゃんができる場合もありますが、多くの場合はや はりどこかで発生が止まってしまったり、受精が起こらなかったり、あるいは患者さん 自身がこういう卵は受精させてくれるなということで廃棄を希望なさる場合もありま す。こういう廃棄胚が私どもとしては一部同意を得て診療とか研究に使える胚になりま す。  *精子核膨化・核タンパク置換  これは一つの例として聞いていただきたいと思い ます。例えば精子の核タンパクでプロタミンというのが出てきました。これは普通の私 どもの体細胞の核とは違いますが、この精子の細胞の核タンパクというのはDNAを守 っている青いタンパクです。これはいつかは卵のヒストンに変わらなければならないの です。変わるのがうまくいかないために、受精あるいは受精の過程が進まなくなって結 局子供ができないという場合があるわけです。  下の図で言いますと、青い方がプロタミンだとしますと、ヒストンとプロタミンが真 ん中辺りで入れ替わっているところがわかると思います。この入れ替わって赤くなった ものだけが卵の核に一緒になることができるということです。  *ヒト非受精卵の膨化と核タンパク置換  これは実験の一つの結果です。受精しな かった卵は何で受精しなかったのか、どこで止まっているのかを見るためのものです。 卵子の方のヒストンに反応する抗体を染めてみて、それで精子の核の中にそれが入って いるかどうか、入っていないということは先ほどの図で言うと青いままということにな ります。少しでも入っていればヒストンに反応しますから反応が出るということになり ます。下の段だけ見ていただければいいのですが、一番左の下の図では精子の核の中に 全くヒストンが入っていませんから、置換が全然起こっていないということになりま す。右の2つの図では、精子の核の中に緑色の蛍光、「SC」と書いてあるものです が、入っているので置換が起こっている。要するに育ち始めたのだけれどどこかで止ま ったということがわかるわけです。これはまだ実験としては最初の段階です。もう発生 しないとわかっている胚だけをいただいて実験をしています。この実験をもし、患者さ んがいらしたら例えば普通に受精するはずなのに、あるいは顕微授精をしているのに、 全然そこから発生が進まないという場合にどこで止まっているか、どうしたらそのこと を治療できるかという研究にはつながっていくはずです。そうしますと、この発生しな かった卵をいただいて解析するということは、科学の研究でもありますし患者さんの治 療につながるものでもあります。それを分離することは難しい場合があると思います。  *生殖補助技術で取り扱う精子・卵子・受精卵  ということで生殖補助技術で取り 扱う精子・卵子・受精卵を分けてみました。今の状況では、やはり体外受精の治療を行 っているクリニックでこういうものが出てくることが圧倒的に多いです。これからも全 部とは言いませんが、例えば卵巣を凍結する、卵子を凍結するというのは、その先に必 ず体外受精というものをしなければ赤ちゃんができる可能性はほとんどないです。そう すると産婦人科あるいは不妊症のクリニックでやられることが多いと思います。  そうやって考えた時に、一つは夫婦の不妊治療を目的として、移植を前提とする。こ のときにどういうふうな卵が出てくるかというのは、移植する卵もあるでしょうし凍結 保存する胚もあるでしょう、廃棄する受精しなかった卵とか異常に受精した卵。これが 何に使われているかというと、まず夫婦の不妊原因の検査のため、それから今言った研 究のためです。  もう一つ、先ほど教育目的というのが出てきました。この教育目的とは、ヒトの卵は 大きさが動物の卵と一番違うところです。例えば顕微授精は針を刺して精子を入れる技 術であります。これを技師さんに教えるために、あるいは技師さんの技術を向上させる ために患者さんに同意をいただいて、それを使って実際に刺してみてうまく刺さったか どうかということを検討する場合があります。これが教育目的ということになります。  後は夫婦間でなかなか受精しないときに受精のための研究を、これは移植を前提とし ているのかしていないのかわかりませんが、先ほど言った非常に先端的な技術の場合な どは、一応移植を前提とするような、でもうまくいかなかったら移植しないとか安全性 を確認しなから今はやめておこうという研究はあり得るのです。みんな同じなのは、こ れは夫婦間の精子と卵子だということです。夫婦間以外で移植を前提としない研究、こ れが今問題になっていると思います。ですからこれは少し分けて考えなければいけない と思います。  これだけでしたら話はクリアカットですが、これから多分移植を前提とする提供みた いなものが出てくると思うのです。例えば提供精子とか提供卵子、この提供精子とか提 供卵子を使うのが子供をつくるためなのか、他の人の子供をつくるためなのか、研究の ためなのかということも少し分けて考えなければいけません。それが移植を前提とする 場合と移植を前提としない場合と出てくると思います。研究の場合でしたら、移植を前 提としないでしょうし、夫婦間以外で、例えば卵子がない人に卵子を提供して子供をつ くってあげる治療に参加するというのであれば、これは移植を前提とする提供でしょ う。  この移植を前提とするか否か、夫婦間であるか、ないかということを、研究かそうで ないかということの他に考えて分けて考えていく必要もあるのではないかと思います。  *まとめ  まとめはこんなところです。今まで、我が国で行われた研究は簡単に言 いますとそれほど問題のあるものはなかったです。ほとんどが夫婦の精子と卵子を用い ていたもので、夫婦以外の受精を起こすということは非常に珍しかったです。これは、 不妊治療の研究ですから、その人たちの子供ができればいいわけです。たまたまかもし れませんが、何か特殊な技術で受精を起こした場合に子供ができればそれでお医者さん としてはオーケーなのです。ところが科学者としては、それはたまたまうまくいったの か、根拠を持ってうまくいったのかということを調べるために、では他の人の精子だっ たらどうなのかというコントロール実験が必ず必要になります。このコントロール実験 のためには、恐らく他人の精子と妻の卵子とか、その逆とかということを本当はしてい く必要が出てくると思います。  まとめの2番は自明だと思います。3番として、研究へ提供される卵子・卵巣は今後 増加する可能性はあるということ。4番として、不妊治療目的で採卵された卵子の一部 (発生しないことが確認された胚・余剰胚)は患者の同意を得て研究・教育に現在でも 使用されているということです。以上です。ありがとうございました。 ○笹月座長  どうもありがとうございました。今後の議論を進めていく上でどういう項目で考えな ければいけないか、あるいはどこで卵子、精子が出てくるのか、余剰胚が出てくるの か、今後のためにも非常に大事な基礎的な解説をいただきました。委員の先生方、ご質 問あるいはコメントをお願いします。 ○加藤委員  4頁に、総数310件について調査されたと書いてあります。この310件から漏れ てしまったケースはほとんどないと考えてよろしいのでしょうか。310件は100% に近いと考えてよろしいのでしょうか。それともまだ相当数漏れていると考えたらいい のか、医学中央雑誌より抽出というのはどの程度の実質的なカバー率なのか、概略の見 当をを教えてもらいたいと思います。 ○久慈氏  一応、今回の検索は、シソーラスで「精子・精巣」、「卵子・卵巣」、「受精卵」、 「胚」というキーワードを含み、「ヒト」をかけあわせて抽出して、その中からこれは 明らかに動物実験であるというのは抜いてあります。どのくらいカバーできているかと いうことについては検討していません。 ○鈴木委員  総合科学技術会議の委員会の時に、日本産科婦人科学会がヒト胚研究の登録制という のでしょうか、申請でどのような研究が行われているかという資料が出ていました。確 かそのときには、ナンバー60幾つまでこういう研究をしていますという登録がありま した。久慈先生の研究はあくまで発表されたもの、論文になったものであるので、もし かしたらその学会の方に登録されているものでもまだ発表になっていないものがあるの ではないかと思います。この調査とその学会の登録のリンクというのでしょうか、今回 の調査がその使命ではなかったかもしれませんが確認とかはなさいましたか。加藤先生 と同じようなことがやや気になっていますので。 ○久慈氏  必要だと思いますが、この研究を発表した時点では、日産婦の方に問い合わせをして も、やはり研究のプライバシーみたいなものがありますので中身まで見せてもらえませ んでした。今のところ、まだ整合性というかつき合わせはしていません。ですから先生 が仰ったように、隠れている研究あるいは進行中で発表を待っている研究がないとは言 えないと思います。 ○笹月座長  ありがとうございました。他に何かご質問のある方はございますか。 ○鈴木委員  ハムスターテストがあります。精子の受精能を調べるテストです。最近は余り聞きま せんが、これなどもやるとしたら範疇としては、動物とのかけ合わせに入るのでしょう か。 ○久慈氏  仰るとおりで、先ほどの動物とヒトの受精という中にハムスターテストは相当数入っ ています。 ○中辻委員  関連して確認しておいた方がいいのは、そういう異種間の受精現象が起きるかどうか を見たときに、その胚をあえてとめずに発生させたとしても、私は覚えていませんが染 色体異常が起きて胎児になることさえもないというように思いますがそれはどうでしょ うか。 ○久慈氏  私どもは自明だと思っています。要するにそれは染色体の数も違いますし、遺伝子も 違います。それが発生するはずはないと思っています。ただないと思って信じているだ けに、それが本当に破棄されたかどうかということまでは、ほとんどの論文には書いて ありません。でもそれはあり得ないと思います。 ○中辻委員  通常は、それは育つことはあり得ないようなセッティングをしている。 ○久慈氏  はい。研究であれをわざわざ出した理由は、こういう物すごい変な研究をしているの ではないかというように取られかねないということで、一応明言はしておいた方がいい かなという趣旨です。   ○笹月座長  いわゆるヒトとマウス、あるいはヒトと霊長類のそういう受精研究みたいなこと。現 時点では、これまでのあらゆる法に照らしても別に禁止される条項ではないということ になっていますか。 ○久慈氏  法律で規定されるかどうかはわかりませんが、少なくともそれが例えば罰金になると か、禁固になるということにはなっていないと思います。ただ、研究する時にそれはも う破棄することをもちろん前提として、あるいは発生しないことを前提として研究を行 っています。例えば先ほどのハムスターの場合ですと、授精をさせて全核をできること はできますが、二分割とか四分割になることはほとんどありません。胚盤胞になったと いう話は聞いたことはないです。 ○笹月座長  霊長類ではそういう例はありませんか。 ○久慈氏  霊長類でヒトとサルを授精させたという研究はありますが、それを発生させたという のは見たことがありません。文部科学省の規定に入っているのではないでしょうか。 ○石井室長  一応ヒトの精子と動物の卵子で授精させて発生させたものというのが、ヒト 動物交 雑胚ということになります。これはクローン技術規制法の規制がかかっております。当 然、法律で母体への移植は禁止されています。それから研究利用を行う場合について は、特定胚指針の中で決められたものしか認められておりませんので、ヒト動物交雑胚 は認められていません。これを行った研究、受精させて発生させてヒト動物交雑胚をつ くってしまえば法律に違反することになります。今、仰っているのは、まさに発生させ る前でとめておられるということで、この法律との関係では法律違反にはなりません。 もしご懸念なられているような形で発生させて研究したり、または母体に移植すると法 律違反ということになります。 ○秦委員  大変お答えにくい質問をするようですが、26頁に生殖補助医療と生殖補助医療研究 という語が出てまいりました。これは当専門委員会でどこまで取り扱うという問題とも かなり大きく絡むと思うのです。例えば先ほどのプロタミンの置換不全によって受精が 進まないというものが、場合によっては検査になるし場合によってはもちろん研究とい うことになります。その境目というのですか、要するに生殖補助医療なのかあるいは生 殖補助医療研究なのか、あるいは技術なのかというその辺りの区別というのか、それぞ れの定義がなされているのでしょうか。または、それぞれの区別について、大体そのコ ンセンサスが得らているのでしょうか。 ○久慈氏  この26頁の図表は、引用した文献ではなく私の考えです。でもそれほど間違っては いないと思いますが、これが答えかどうかはわかりません。それから先生が最初に仰っ た生殖補助医療研究であるのか、それとも診療であるのかということは非常に難しいで す。一応目安があるとしたら、例えばその検査をしたことで、当該した患者さんの次回 の治療に役に立つということがあれば、これは診療と考えていいと思います。例えば受 精しなかった卵を調べて、その中に精子が入っていたのか、入っていなかったのか、あ るいは顕微授精はしたのだけれども、テクニカルエラーで精子が入らないという場合も あります。そういうことが起こって受精が起こらなかったのか、それとも受精入ってい たのだけれども卵とか精子の病気で起こらなかったのかということは、その次の患者さ んの治療に直接関係してくると思います。これも診療でしょう。  でも先ほどのプロタミンとヒストンの置換みたいな場合には、すぐその置換が起こら なかったから治療を次の時に変えるということにはならないと思います。やはりこれは 研究として取り扱った方がいいのではないかと思います。 ○笹月座長  医療なのか、医療研究なのかというのを、どこかできちんと定義する必要があればき ちんと定義しなければいけないと思います。例えばガイドラインをつくるときにきちん と定義しておかなければいけないなら定義すべきだと思います。しかしここに書かれて いるようなことではどうですか、例えば生殖補助医療を目的とした研究であれば、当然 体内に戻して、本当に健康な赤ちゃんが生まれたかというところまでを見なければだめ なわけです。そうやって最後まで見て、初めて研究が完結する。あるいはこの研究は成 功したみたいなことだろうと思うのです。補助医療研究は戻さないことを前提にしてい ますということを言ってそれで済むのか。私、どちらがいいというのでなくて、この定 義だけで済むのかどうかというのはまだ議論が必要ではないかという感じがいたしま す。 ○久慈氏  そのとおりだと思います。先ほど神里先生からもお話がありましたが、卵子と精子を 用いる研究と、臨床研究なのかそれとも純然たる研究なのか、それが例えば非常に実験 的な研究でどんな赤ちゃんが生まれるかわからない胚を子宮に戻すことが倫理的なのか どうかということは、多分いつも研究や診療をしていく上では考えなければいけないこ とです。ただ、それが夫婦間に限ったことであれば、それは医者の裁量権というところ が入ってくるところはあるかもしれません。と言いますのは、余りに厳密に突き詰めて いくと新しい治療とか新しい培養液というのが全然できないということになりかねませ ん。それをどこら辺で線を引くかというのが非常に難しい問題だと思います。 ○笹月座長  ですからその両者を厳密に規定することが、本当に最終的なプロダクトをつくるとい いますか、ガイドラインならガイドラインをつくる上で必要であればここは厳密に議論 しなければいけません。必要がなければこの場のことでそう時間を費やす必要はないと 思います。これはまた少し置いておいてということだと思います。  他にご質問、ご意見、コメントなんでも結構です。 ○小幡委員  技術のこといろいろ説明いただいてわかったのですが、30頁のところで夫婦間か夫 婦間以外というご説明がわかりにくかったのです。むしろ不妊治療を目的とした余剰胚 として、出てきたものか、そうでないかとそこが一番区別としては決定的なのかなとい う感じがいたしますが、夫婦間ということの意味をご説明いただければと思います。 ○久慈氏  これは確かに先生の仰るとおりもともとは不妊治療、あるいは子供をつくるのを目的 としてつくられた胚なのかどうかということは一つの規定だと思います。ただ、夫婦間 なのかどうかということをわざわざここでつけた理由は、例えば受精卵ができたとき に、その受精卵を誰かに提供して子供をつくるという場合もあります。それからできた 子供が、要するに夫婦間であれば夫の遺伝子と妻の遺伝子をもって生まれてきたという ことを、その胚も認識すると言ったら変ですが、ということで胚の位置というのを規定 しやすいのではないかと思います。 ○小幡委員  そうしますと、それはむしろ自己決定との関連の問題ですかね。つまり他の提供者の 卵子を子宮に戻すというようなことを想定されて仰っているのですか。そうではないで すか。 ○久慈氏  そうですね。今これは日本の実情ではありませんが、例えば片方が提供者の配偶子で 片方は妻の卵子という場合に、これをだから夫婦の精子と卵子の場合と全く同じに扱っ ていいのかどうかちょっと僕にはわからなかったので、一応夫婦間ということをつけま した。 ○笹月座長  夫婦間なのか夫婦間でないのかというのは、土俵が違うというか、少し別の問題かも しれません。   ○中辻委員  法的な夫婦間か実質的な夫婦間か、多分ガイドラインみたいなことに入ってくると言 葉の問題が出てきてしまうと思います。ともに不妊治療を受けている人の場合というの は、イギリスの場合だと表現していました。夫婦か夫婦でないかは別として、その両方 で不妊治療を受けようとしているカップルかどうかという定義になるわけです。この場 合は二人の子供をつくろうとしているカップルかそうでない全くそれとは違うものかと いうふうなことで、本質的な違いのような気がします。 ○加藤委員  いわゆる事実婚を含むということですか。 ○笹月座長  それもさることながら、全然知らない人の精子を利用するということもあるわけで す。そういう意味で、これはまた議論する別のイシューです。 ○久慈氏  研究という意味では、確かに別のイシューかもしれません。 ○笹月座長  他によろしいでしょうか。いわゆる生殖補助医療を最終的なゴールに置いた研究とい う大きなしばりのところに来ています。そうすると一体生殖補助医療そのものはどうい うものかということに関して、委員の先生方、これまでのお話やその他の資料から、十 分に共通の認識といいますか理解に到達したということでよろしいでしょうか。 ○加藤委員  一つだけ聞きたいことがあります。要するに、研究目的のための胚の樹立というの は、研究のために必要であるというか有効であるというご意見だと思うのです。その場 合に、どのくらいの数の胚が年間必要になるか。 ○久慈氏  これは難しいご質問です。どういう研究かにもよると思います。 ○加藤委員  例えば1個でもあれば、相当たくさんの研究ができるというのか、それとも研究者の 数程度が必要だというのか、研究者の数の10倍必要だとか。 ○久慈氏  必要な胚は、思っておられるよりは多分多くないと思います。という理由は、私ども が考えることは例えば先ほどの卵巣凍結の場合ですと、凍結した卵巣から卵をつくると いうのは、結局その人の子供をつくるためにやるわけです。例えばその人が結婚した時 に相手の方の精子を用いて実験をすればいいわけです。それは新たに胚をつくるけれど もそれは夫婦間の話になります。でもそれをやっているうちになかなかうまくいかない と、そういう場合どうしても必要な場合だけあらかじめ精子の方は絶対大丈夫だという のを持ってきて奥さんの卵と合わせなければいけないという研究がいつか必要になる。 だからできるだけ夫婦間だけで済まそうとは思いますが、それ以上の実験的な事実を必 要とする場合にはどうしてもということになると思います。 ○笹月座長  研究者の数と言われましたが、研究者の数というか、一つの研究プロジェクトにどれ ぐらいの胚が必要かというそういうご質問でよろしいですね。研究のプロジェクトによ ってもちろん違うと思いますが、大ざっぱなところでお答えするとすれば。 ○久慈氏  どこまで厳密に研究するかにもよりますが、ざっといって数十とかというのは一プロ ジェクトではないかと思います。本当でしたら大事な研究であればもっと使いたいと思 うのです。でも検証するためであれば、そのぐらいあればある程度の結果は出せると思 います。 ○鈴木委員  一言だけコメントをさせていただきます。本来、今回のこの調査、研究というのは前 回の委員会の中の時期にやられるべきだったと思います。別に久慈先生にいうべきこと ではないですが、これだけ文献検索でできるのですからと思いました。  それから質問ですが、同じ厚生科学研究の報告書の中に先生が同意書のあり方につい てももう一つ発表なさっています。結局今回の調査の中では、どういった形の同意が取 られているのかというのは、論文発表だから多分検索をできなかったのではないかと思 うのです。本来は、どういう同意の取り方がなされているかというのは重要なポイント だったと思います。論文によっては患者の同意を得てときちんと書いてあるものと、そ の辺どうなっているのだろうと思わせるものがかなりありました。特に培養液の工夫な どは、確かに臨床でもあり、実験的でもあり非常に微妙なところです。だからこそ患者 さん、ご本人たちに説明をするのがすごく大事になってくると思うのです。例えば、来 週に別のもう一本の報告の話をしてくださるとか、そのようなご予定になっています か。もしそうでなければ、同意書についても少しお話をしてくださるといいかなと思い ました。インフォームド・コンセントの書式設定についてです。 ○母子保健課長  来週にというお話でしたが、私どもとしてみれば次回に考えております。私どもこれ で大体総論が終わって、座長からは先ほどコンセンサスが得られましたでしょうかとい うお話がありましたが、これで私ども自身も完結したとは決して思っていません。本日 のこのご意見を聞いていただいて、幾つか疑問やもう少し掘り下げてみたいというお話 があればもっとお受けしたいと思っています。そもそも座長に事前にお話に参りました 時に、座長からももう少しここを聞きたいということがありました。私どもはスケジュ ールをきちっと刻んで、まとめていくという形ではございません。疑問やご質問あるい はもう少し聞きたいというご意見がありましたら、引き続き寄せていただきまして1、 2回は十分時間をかけて結構だと思います。 ○笹月座長  次回は、文部科学省との合同会議ということになります。文部科学省の第1回の会議 の進捗状況などを勘案しながら、合同の会議の時にどこからスタートするかというの は、その時点でまた両省でご相談していただくということになろうかと思います。  他にいかがでしょうか。よろしいですか、それではお二人の先生どうもありがとうご ざいました。今後、本日のお話、前回の吉村委員からのご報告などを踏まえて事務局で まとめていただきたいと思います。そしてガイドラインをつくるときの項目といったこ とを整理した上で、文部科学省の第1回の委員会の進み具合とも勘案しながら次回、も し必要であればヒアリング、必要でなければ整理していただいた項目について議論をス タートするという手順になろかと思います。もう少し文部科学省での委員会の進み具合 をお伺いしながら、両省でご相談していただければと思います。  今後の予定、その他につきまして事務局からお願いします。 4.その他 ○母子保健課長補佐  それではご連絡でございます。次回、第3回の専門委員会でございます。調整の結 果、年が明けました平成18年1月27日、金曜日を予定しております。どうぞよろし くお願いいたします。  また、会場などが決定いたしましたらご案内させていただきます。ありがとうござい ました。 5.閉会 ○笹月座長  それでは、本日の委員会はこれで終了とさせていただきます。ありがとうございまし た。 ―終了― 照会先:雇用均等・児童家庭局 母子保健課 電 話:(代表)03−5253−1111 斎藤(内線:7933) 木阪(内線:7939)