05/12/09 第8回労働政策審議会労働条件分科会最低賃金部会議事録 第8回労働政策審議会労働条件分科会最低賃金部会議事録 1 日 時  平成17年12月9日(金)10:00〜10:50 2 場 所  厚生労働省専用第21会議室 3 出席者    【委 員】公益委員   今野部会長、石岡委員、勝委員、武石委員、      田島委員、中窪委員         労働者側委員  加藤委員、須賀委員、石委員、橋委員、                 中野委員、横山委員         使用者側委員  池田委員、川本委員、杉山委員、竹口委員、     原川委員、前田委員                     【事務局】厚生労働省   青木労働基準局長、松井審議官、熊谷総務課長、                 前田勤労者生活課長、名須川主任中央賃金指導官、                 山口副主任中央賃金指導官、梶野課長補佐 4 議事次第 (1) 今後の最低賃金制度の在り方について (2) その他        5 議事内容 ○今野部会長  定刻になりましたので、第8回最低賃金部会を開催いたします。本日の議題は「今後 の最低賃金制度の在り方について」です。まず、資料の「意見の整理」について前回の 議論を踏まえて修正していただきましたので、事務局から説明をお願いします。 ○前田勤労者生活課長  資料1−1と資料1−2です。前回のご議論でそれぞれの意見について公労使の別、 あるいは、最低賃金制度のあり方に関する研究会での提言がわかるようにしてほしいと いうことでしたので、それぞれの意見についてそれがわかるように入れさせていただい ております。以上です。 ○今野部会長  前回ここでの議論で、この資料の中の発言は誰がしたのか明確にしろということでし たので、それをやっていただきました。あとは、ここでやると時間もかかりますので、 見ていただいてあとで言っていただければと思います。それとは別にご質問があればど うぞ。よろしいでしょうか。  それでは次に移りたいと思います。前回、公益委員試案をお示ししました。それを受 けて今日は労使各側から意見を伺いたいと思います。まず労働者側から意見をいただけ ますか。 ○須賀委員  最初に公益委員試案に対する受け止めと、これからの審議の進め方について申し上げ たいと思います。  前回、公益委員試案が示されたわけですが、この基本的枠組みは、「産業別最低賃金 等の在り方」で労働協約拡張方式の廃止、産業別最低賃金の最低賃金法からの削除、及 びこれに伴う別の法的根拠を設けた職種別設定賃金の設定ということが織り込まれてい まして、この内容は、私どもにとってもあまりにも大きな変更であって、痛手が大きい ということをまず表明しておきたいと思います。しかし、これまでの審議を通じて、労 使の主張が対立する中で示されてきた公益委員試案ということについては、これまでの 公益委員のご努力を多として真摯に受け止め、取りまとめのための検討素材として受け 止めておきたいと考えております。  一方で最低賃金法はご案内のように、骨子のみを定めたきわめて簡潔な法律で、運用 に関する事項は細則や省令等で定められております。したがいまして本日は、今後の実 効ある制度の円満な運用を目指して、運用に関する基本的な枠組みについて意見、要望 を申し述べたいと考えております。  なお、今後の審議の中で円満な合意が得られることを切に希望するところです。  その考え方を前提に、大きく2つに分けて意見を申し上げたいと思います。1つは職 種別設定賃金についてです。まず、この職種別設定賃金に対する公益委員試案について、 基本的な考え方を述べたいと思います。  派遣や有期雇用契約などの労働者が増加しており、労働市場に多様な雇用形態が生ま れてくる一方で、フリーターやニートといった人々も増加しております。市場経済の下 で、契約自由の原則に基づく労働契約の領域が拡大しているわけですが、契約自由の原 則は、契約当事者の対等性が確実に確保されるということが基本でなければなりません。 契約当事者の対等性が確保されないとすれば、それを法的措置によって補完する必要が あり、特に公正な賃金決定に際しては、労働者の基本的な権利を守るばかりでなく、ル ール無視の契約を横行させないためにも、こうした措置はきわめて重要であると考えて おります。これが実現できない場合には、日本経済の活力を損ねることも、火を見るよ りも明らかであるという認識に立っております。  派遣などの就業形態の多様化が進む中では、企業横断的な仕事に応じた処遇の決定が 重要になっております。多様な価値観や考え方を持つ個人が安心して働き方を選択でき、 かつ、働きに応じて処遇される仕組みをつくっていく必要があると考えておりまして、 そうした中での社会的な枠組みとして職種別設定賃金を積極的に評価し、実効性を高め る方法を検討すべきであると考えております。その上で、別の法律ということについて 意見を申し述べたいと思います。  職種別設定賃金を措置するための別の法的根拠については、労使の自主的な決定を重 視するのであれば、例えば現行法の中では、労働時間等設定改善法の改正などが考えら れるわけです。いずれにしても企業横断的な労働条件については、労使の自主的な処遇 改善の取組みをオーソライズするために、民事効を含む法体系の中で措置すべきである と考えております。  次に、職種別設定賃金の審議機関について意見を申し述べたいと思います。公益委員 試案の中では「公的機関(例えば地方最低賃金審議会)の場において」とされておりま すが、審議機関は最低賃金審議会以外に考えられないと思っておりまして、最低賃金審 議会において審議するということを明確にすべきだと考えております。  次に公益委員試案の3頁、「(3)『職種別設定賃金』決定のための手続」について 意見を申し述べたいと思います。この中の「労働協約が締結されている場合その他これ に準ずる場合」については、労働協約は当然のこととして、それ以外の機関決議や個人 合意も申出の数量的要件の中にカウントするとともに、申出に係る数量的要件は緩和す べきであると考えております。  次に「(5)その他」について意見を申し述べたいと思います。1つは移行期間につ いてです。この移行期間については、混乱が生じないように十分に長い期間を確保すべ きだと考えております。また、移行期間中であっても現行の産業別最低賃金の新設、あ るいは、水準改正が行われるように措置する必要があると考えております。  次に「3運用に係る事項」の関係で、申出の要件について意見を述べたいと思います。 この運用に係る事項の中には、「労働協約が一定程度以上締結されている場合の」と提 起されておりますが、諮問発議の契機でしかないこの申出要件に労使合意の労働協約を 求めることは、労使関係の現状を無視しており問題があると考えております。元来、労 働協約の拡張適用ではなく、決定金額が労働協約と切り離されて審議決定されるのであ れば、労働協約以外の合意も何ら重みに違いはないわけです。  次に決定の手続について述べたいと思います。現在の産業別最低賃金のように必要性 審議と金額審議を分けて行うのではなく、審議会で一括審議すべきだと考えております。 また、現行の労働協約拡張方式のようなスキームを参考にすれば、こうした課題への対 応も容易になると考えております。  次に現在の産業別最低賃金についてですが、必要性の審議は全会一致という運用で行 われております。しかし、審議会令によると出席委員の過半数による決定となっており ます。審議会の民主的運営という観点からすれば、当然、審議会令による決定とすべき だと考えております。特に職種別設定賃金は公正な賃金決定の観点から設置されるもの であって、その公正さを担保するためにも過半数決定とすべきだと考えております。さ らに「労使」についてですが、審議会の本委員ではなくて、当該の職種別設定賃金の関 係労使とすべきだと考えております。  以上の点が職種別設定賃金に関する労働者側としての意見ですが、さらに、地域別最 低賃金について申し述べたいと思います。仮に労働協約拡張適用方式あるいは産業別最 低賃金が廃止されるという中では、従来より以上に、地域別最低賃金の安全網としての 機能の拡充が重要になってくると考えております。そういう前提に立っていくつかの点 で意見を述べたいと思います。  1つは、通常の事業の賃金支払能力の関係についてです。決定基準の見直しについて は、通常の事業の賃金支払能力には触れられていないので、現在の地域別最低賃金の審 議過程では、限界企業の賃金支払能力と誤って使用される場面もあって、通常の事業の 賃金支払能力ということを厳密に適用するよう求めたいと考えております。  2つ目は生活保護費の考慮要素ということです。生活保護費との関係については生活 扶助、住宅扶助、医療扶助、これについては方法について別途申し上げる部分もありま すが、さらに生業扶助、そして勤労控除の合計を念頭に置くべきだと考えております。  最後は設定単位の見直しの関係です。設定単位を見直す場合の具体的基準については 拙速を避け、実情を細かく把握する必要があると考えております。  以上、職種別設定賃金なり地域別最低賃金について、公益委員試案に対する労働者側 の意見を終わりますが、もう一度重ねて、今後の審議の中で、円満な合意が得られるこ とを切に希望しているということを、労働者側の総意として申し述べておきたいと思い ます。以上です。 ○今野部会長  ありがとうございました。他の労働者側の委員の方はよろしいですか。それでは使用 者側のご意見をお願いします。 ○川本委員  一委員として意見を申し上げます。  私どもはすべての労働者を対象に、地域別最低賃金が設定され機能しているというこ とで、屋上屋を架す形で別途設定されている産業別最低賃金を廃止すべきだという主張 をしてきたわけです。それで前回、11月18日に公益委員試案が示されたわけですが、こ れにおいて、最低賃金法は地域別最低賃金に特化するという考え方が示されたことは評 価しております。しかしながら、別の法的根拠を設けて職種別設定賃金を設けるという 考え方が示されたことについては、屋上屋を架すことには変わりがないということも言 えて、にわかに賛同できるものではないと思っております。しかしながら、公益委員試 案が示されたことについては重く受け止めております。この試案について地方経協にも 意見を求めたということですが、内容について時間をかけて詰めながら、そして理解を 深めながら、その具体的な内容によって判断をしたいという意見が大勢だったわけです。  したがって、本日は、現時点での意見を申し上げるということで、今後は、やはり公 労使それぞれの意見が出てくるでしょうから、それに基づいて具体的内容を詰めつつ、 私どもとしては逐次、地方の意見に基づきながら判断をしていきたいと思っております。 先ほど須賀委員からも、今後審議の中で円満な合意を期待しているということでしたが、 もちろんその円満な形で話合いを進めていきたいと思っております。具体的な内容を、 この試案に基づいて簡単に申し述べさせていただきます。  1頁目に全体の考え方が示されているわけですが、下から2段落目に、「今後は、産 業ごとの賃金の決定というよりは、基幹的な職種に応じた企業横断的な処遇の確保、労 働生産性の向上という機能を重視するという観点から、最低賃金制度とは別の社会的な ルールとして、労使が一致して取り組む枠組みとする必要がある」とありますが、この 「産業ごとの賃金の決定というよりは」というのは、先ほどちょっと申し上げましたが、 屋上屋を架すということに、本質的にはあまり変わらないのかなと思っております。と いうことはまず申し上げておきたいということです。  2つ目はその下、改正法成立から1年程度の準備期間を設けて施行する、その間に運 用に関わる事項について検討するとなっております。地方の声として先ほど述べた、内 容を具体的にという話がありましたが、結局、実際の手続あるいは運用ルールの中でポ イントとなる部分について、ある程度明確になってこないと判断ができないという声が 大勢を占めていることから、ポイントとなるべきところはなるべくここで話し合いなが ら、明確にしていきたいという考えを述べさせていただきたいと思います。  2頁目の真ん中、「具体的方向」の(1)に「基本的な枠組み」が示されております。 「職種についての下限となる賃金(「職種別設定賃金」)を設定できるものとする」、 その次に「「職種別設定賃金」は、公的機関の場において労使が合意して決定するもの とする」とあります。今回この考え方は、たぶん、労使自治の観点で示されたのだと受 け止めておりまして、その意味では、労使一致ということが絶対要件なのかなと考えて おります。したがってこの「労使が合意」、「労使一致」ということが絶対に必要だと 思っているということです。  3頁の(3)(4)(5)でその申出あるいはそういう要件関係等の考え方と、十分 な移行期間等が示されておりますが、ここは先ほどの労働者側の意見とは違う意見にな ります。「労働協約が締結されている場合その他これに準ずる場合」とあるわけですが、 私どもはやはり労働協約のみを判断材料とすべきだと思っております。したがって現行 の公正競争ケース、あるいは労働協約拡張方式の考え方はとるべきではないと思ってい ますし、その際、労働協約についても、職種の最低を定めた労働協約の締結が必要にな るのかなと思っています。また、ルールについても現在の産業別最低賃金においては、 新設では労働協約ケースで2分の1ルール、あるいは改正、廃止では3分の1ルールと いうのがあるわけですが、それと同様な考え方でこの職種別設定賃金の要件についても 考えるべきではないかと思っております。  十分な移行期間。これも非常に漠然とした表現で、本来、期限は明確に書かれるべき だろうと思っていることが1点。また、その中の取扱いについて、先ほどは新設、また 水準改正もできるというお話でしたが、もしもこの制度に移行するのであれば、新設と いうのは絶対にすべきではないし、水準改正についても、そういうことをできるように するかどうかについては非常に慎重な議論が必要だろうと思っております。  地域別最低賃金については4頁で、その(2)に「社会保障政策と整合性のある政策 を展開する」とありますが、これは非常に連動感が強い表現だろうと思っていまして、 賃金問題ということから言えば、例えば「考慮して」とか、整合性を考慮して考えてい くというような形の方がベターなのではないかと思っています。  2の(2)に生活保護との関係ということがあって、ここに「考慮する」と書いてあ ります。実は地方から、この最低賃金は労働の対価としての賃金を決めているのであっ て、生活保護との関係というのを示すべきではないという意見が強く出されてきており ます。したがってその意をここでお伝えしているということです。  罰則の強化について、24条違反よりも厳しいものとするということがありました。 これについても地方の意見は、厳しすぎるのではないかという意見が大半を占めており ます。ではいくらがいいのかというところまではまだ整理がついていませんが、これで は少し厳しすぎるという意見が大半出されたという段階です。  こんなところが大体の大枠です。先ほど須賀委員から運用の部分でかなり細かな発言 がありましたが、この辺のことについてはまた逐次、その辺の意見も聞きながら私ども も改めて検討して、地方の声を聞きながら意見を申し述べていきたいと思っています。 いずれについても、今後、ここでの審議状況を踏まえて、より具体的な内容になったも のを逐次地方に持ち帰って、意見を聞きつつそして判断をしていきたいというのが、本 日の段階の意見です。以上です。 ○今野部会長  他の委員から補足はありますか。 ○池田委員  内容の細かいところは別といたしまして、今回の試案で産業別最低賃金を廃止すると いうことにつきましては、私どもも従来から申し上げてきたことですので、大変評価さ せていただきたいと思っております。ただ、大きな枠組みから言って、職種別設定賃金 につきまして、国の中であれば官から民へ、それから規制緩和の流れにこれがどういう 形で寄与しているのかというところで、新たにこういうものを作ることに対して、なか なか説得しかねるのではないかということが1つあります。  官から民へということで、産業別最低賃金がなくなった後にまた職種別設定賃金を作 って賃金を設定する。基本的には国が関与することになるわけです。国が関与していて も規制緩和になっているのだということもありますが、やはり、国が関与して決めるの かなというイメージを拭えないところがあります。職種別の賃金というのは企業が、会 社側が決めていくという根底があると思いますので、国の領域を超えた介入ではないの かなという意見も大いに出てくるのかなと思っております。  会社の人事制度が、採用の時点でまだまだ職種別になっていないのではないか。野球 は別で、一塁手、ピッチャーとかと別々に採ります。けれども、普通の企業で言います と、総合職と一般職、それから技術系というような大きな枠組みはあると思いますが、 このように職能別に採用するというところまで、企業の採用体系ができていないのでは ないかと思います。また、人事制度もそこまで追いついていないのではないかというこ とで、産業別最低賃金から切り替えたときに、早急にそこに対応し切れるかというとこ ろが、会社の経営者としては非常に心配なのではないかと思います。  労働組合にしても、いろいろ対応していくという時に、企業がそこまで職種別に対応 できるような体制ができているのかというところも、経営側としては非常に心配がある ところです。  また、人事異動をするにしても、これからは、機械でできるところは機械でやる、ど うしても人間でなければできないところをやっていくという、サービス部門の人材提供 が多くなってくると思います。今の生産をしている会社ではなくて、第三次、第四次産 業の領域にどんどん広がってくる可能性がありますので、前の産業別最低賃金よりも、 かえって賃金設定されるところが非常に増えていくのではないかという思いがあります。  人事異動にしても、同じ会社の中で、「あなたはこっちをやってよ」と言われた途端 に賃金が下がってしまったり、非常にややこしい問題があり、解決していかなければな らない問題が非常に多くあると思います。とりあえずは産業別最低賃金を廃止していた だいて、次の職種別設定賃金につきましては、十分な説得期間と認識期間が必要ではな いかと感じております。  地域別最低賃金の生活保護の問題は、再々申し上げているように、労働の対価と生活 保護というのは違うものであります。我々の観点は、基本的には、生活保護を受ける人 を少なくしてほしいというのが第一義的であります。今、増えているという状況と、勤 めているより生活保護をもらっている方が楽だというような気運が、何か社会的にもあ るようですが、最低賃金と生活保護の水準を一緒にして考えるのは如何なものかという 感じがしております。 ○原川委員  私も川本委員、池田委員と同じ意見です。繰り返しは避けますが、今回の産業別最低 賃金の廃止、労働協約拡張適用方式の廃止、このことについては私も大変評価をしてお ります。  職種別設定賃金につきましては、私どもも地方にいろいろ意見を聞いたわけですが、 日本の、特に中小企業を考えた場合に、職種別設定賃金というものが、現状においてで はありますが、まだよく定着しきれていないというようなこともありまして、果たして これが十分機能するのか。あるいは複雑化するのではないかと。中小企業の従業員の場 合には、職種を複数でこなしている労働者も多いわけですが、そういった場合にどのよ うに適用するのか、また、それで企業の対応が複雑化しないかといった危惧がございま す。  それから、一定の技能職というようなことを考えた場合に、例えば資格はあっても、 その技能者の実質的な能力をどのように評価するかということもございます。そういっ た問題がありまして、地方の現場においては、職種別設定賃金がどういう形になるのだ ろうかということについて、不安感を隠し切れないのです。例えば職種別設定賃金とい うものを考える場合に、申出要件や審議会の決定手続、職種別設定賃金の賃金水準やそ れを改定する場合の方法や方式、対象労働者や職種の範囲をどう決めるか、また、産業 別最低賃金を廃止するにも移行期間が必要だということでありますから、その移行期間 と新しい職種別設定賃金の移行期間における関係はどうなるか、といったことについて、 もう少し時間をかけて議論をしていく必要があるのではないか。そうしないと、職種別 設定賃金はこういうものだからということについて、我々が地方の方になかなか説明が できないということもございますので、是非、こういうことについては十分審議をして いただきたいと思います。  もう1つは地域別最低賃金です。先ほど川本委員がおっしゃったように、生活保護費 を考慮するということについて、行政が、あるいは国が支給する生活保護費と、労働の 対価という意味での最低賃金とは切り離して考えるべきである。私どもとしては、そう いう意見が多かったということを申し上げておきたいと思います。そして、連動性が水 準を引き上げるということの含みを持たせるような、ちょっとそういう印象を与えるよ うな表現であると、つくづく感じておりまして、水準引上げとの連動性というところで、 この表現は問題になるのではないかと思っております。  罰則についてですが、労働基準法の24条よりも厳しくするということについては非常 に反対がありました。少なくとも、それでは厳しすぎる、それよりは周知とか指導の強 化といったことで、より有効な実行策も考えられるのではないかという意見が多かった ことを申し上げておきます。 ○杉山委員  私の方からは、ちょっと感想めくところがありまして恐縮ですが申し上げます。私ど もで、職種別設定賃金について何とか意見を取りまとめるようにしたいという気持ちで 議論をしてみたのですが、依然として内部で十分な時間を取って検討しないと踏み切れ ないという理由の1つは、移行期間の問題、要するに十分な移行期間をとるということ だろうと私は思うのです。撤廃をすると言いますが、十分な移行期間というのがどの程 度か。1年、2年のことであれば、確かにその程度はいるかなという気もしますが、5 年も10年もというようなことであれば、規制緩和と言いながら、5年も10年もの間屋上 屋に屋を架すことになるわけです。これが屋上屋ですから、屋上屋に職種別設定賃金と いう屋を更に架す。それでは規制改革の概念に反するのではないか。新しいものを入れ るのであれば、そこそこの移行期間で踏み切らないと、なかなか新しいものは入らない。 屋上屋に屋を架すようなことには踏み切れないというのが率直な、現場の人たちの意見 なのです。  職種別設定賃金がわからないとか、言葉の上の綾はありますけれども、一番大きいと ころはそこである。しかもその上に、先ほどちょっと労働者側から意見が出てきており ましたような、新設であるとか水準の改正であるとか、そういうことが十分な移行期間 の間、更にできるということになれば、一体法律的にはどうなるのだろう。単なる附則 に書いてあるようなことで、旧法が全部残らなければ、そういう運用はできないわけで す。ですから、法律のどこに書いてあるのか分からないようなことで何年間も運用する、 というようなことが許されるのだろうか。やはり、せいぜい1年か2年というのが限度 ではなかろうか。私の感想も含めて、それがポイントであろうと思った次第です。 ○今野部会長  他に追加のご意見がございますか。いろいろなご意見をいただいたので、公益の委員 からご質問があればお受けしますし、お互いに質問されても結構ですが、よろしゅうご ざいますか。  今後の進め方でご相談をしたいのです。我々の案に対して今日たくさんの意見をいた だいて、全部数えたら30か40か50ぐらいあって、これ1つずつには答えられないという 思いが当然あるわけです。また、今、労使が言われたことを私が正確にメモできている かどうかも心配です。ですから、今日のご意見も踏まえてこちらでもう一度ご意見を整 理させていただく。少し公益委員で相談をさせていただいて、それを踏まえて修正案を 考える。そしてお出しして議論していただくという方がいいかなと思うのです。今日は まだ40分しかたっていないのですが、今の40の意見1つずつというのは、私とても無理 ですので、どうでしょうか。あるいは、これだけは公益委員の意見を聞いておきたいと いうことがあれば少し絞っていただくとか、この案を作ったときの考え方として、この 辺は基本的にどう考えているのかとか、これだけは絶対に聞いておきたいということが あればお答えするのですけれど。 ○川本委員  特に聞いておきたいというような話ではなく、先ほど座長から言われた進め方ですが、 本日の意見も踏まえた上で改めて修正案を出してまた議論していきましょう、というこ とについては賛成いたしますので、そういう形で進めていただければと思います。 ○今野部会長  いかがですか。公益委員だけの話なのですが、我々もあのようなたくさんの項目を一 個いっこ対応するというのは、今難しいですよね。 ○須賀委員  私どもも結構たくさんの意見を出しました。そんなにたくさんはなかったと思ってい るのですが、細かく見ていけば、たぶん結構な分量になると思います。そういった意味 では、その場でそれを具体的に公益委員の方から考え方を述べていただく、あるいは、 述べられたことに対して更に議論をするとなると、ちょっとここの場には馴染まないの ではないかと思っております。これからどういうふうに進められるのかは部会長の方で ご判断されると思いますが、ご意向に沿いたいと思います。ただ、いたずらに時間をか けることは避けるべきだと考えておりますので、今後予定されている部会の配置等もあ りますが、そうした配置も含めて、これからの審議が円満にいくように、是非ご配慮い ただきたいと思います。 ○今野部会長  今日いろいろご意見をいただいた中で、大変重要な問題がたくさんあるので、時間を かけて審議すべきであるというご意見がかなりありまして、私も、時間をかけていくと いうのは重要であると思います。それを踏まえた上で、でも、できるだけ早くやるとい う努力はしたいと私は考えております。これは私にとってのベストなのですけれども、 もう1回審議会が用意されていますが、その間に時間がありますので、公益委員の修正 案というのを出させていただく。それを事前に少し検討していただいて、次回でOKだ と言えば、それはそれでベストですけれども、今日だと難しそうなのです。でも、私は、 ベストとしては今年いっぱいにと思っていますので、これまでご相談をしてないのです が、そういう努力をするということで、できれば更にもう1回ぐらいセットして、なる べく年内で合意を得られるような努力をしたい、そんな運営の仕方をしたいと考えてい るのです。  次回は20日ということで一応セットしてあるのです。もう暮れで、31日までに10日し かないのですが、できればその間に1回でも入れて、私としては最大限の努力をしたい と考えているのですが。 ○川本委員  今、年内にというお話がございました。私どもは先ほど、時間をかけてということで ございましたが、今回のものは、例えば旧産業別最低賃金を多少修正していくといった ようなものではなくて、全く新しい枠組みを作るという話なわけであります。これにつ いて、ここに座っている委員だけではなく、実は、諮るべき地方の方々も、それぞれの 団体を持っているわけです。その中でも、使用者側にとってはどこにメリットがあるの か、あるいはフラットなのか、あるいは、ここは妥協しなければならないのか、そうい うことをよく考え、理解し、そして納得するということは、とても大事であります。そ れを拙速に決断をせよというのは大変難しい話なのだろうと思っています。新しい枠組 みであると、頭をまず切り替えていかなければいけないという作業が、実はいるわけで す。そういうことで、私どももこの審議においてはもちろん前向きに努力してまいりま すけれども、今言ったスケジュール観については大変厳しいと思っているということは、 感想として申し上げておきたいと思います。 ○今野部会長  私の考え方は、最大限努力させてくださいということです。もちろん20日はセットし てあるのですが、もしもう1回今年議論できる場が持てるのであれば、それを用意して 最大限努力したい。そういうことでこの運営をしていきたい、そういうふうに考えてい るのですが。 ○須賀委員  部会長も相当にご苦労なさっていますし、経営側のおっしゃっている事情は私ども労 働者側にもあるわけです。しかし、公益委員案が示されて結構時間も経過しております し、今、私どもが申し述べたことをできるだけ明らかにしていただきたいというのは事 実なのですけれども、更に引き続き審議をするという部分が、とりわけ運用に関しては 非常に多うございまして、その中でも十分な検討ができる課題もたくさんあると考えて おります。したがって、今、部会長がおっしゃったように、日程の設定ができるかどう かは微妙な部分もありましょうが、できるだけそうした方向で努力をいただいて、労働 者側としては、その意向を尊重していきたいと考えております。 ○今野部会長  基本的な枠組み、特に法律事項にかかる枠組みについては、合意していただくように 最大限努力をするということで、もう1回この審議会の場を20日から31日の間でセット させていただきたいのです。           (日程調整についての打合せ) ○今野部会長  それでは12月27日の午前中ということで、よろしくお願いします。これは公益委員で も話し合っていませんし、今日突然話をさせていただいたので、無理なことを言って申 し訳ございません。先ほども言いましたように、今日のたくさんの意見をこちらでもう 1度整理して、それを踏まえて公益委員試案の改正案を急遽作成したいと思います。そ れを事前にお配りいたしますので検討しておいていただきたいと思います。本日の議事 録の署名委員は、須賀委員と川本委員にお願いいたします。それでは終わります。どう もありがとうございました。                  【本件お問い合わせ先】                   厚生労働省労働基準局勤労者生活部                   勤労者生活課最低賃金係                   電話:03−5253−1111                         (内線 5532)