05/11/22 第3回ヒト幹細胞治療臨床研究指針の策定に関するワーキンググループ議事録 第3回ヒト幹細胞治療臨床研究指針の策定に関するワーキンググループ 平成17年11月22日(火)15:03〜17:18 経済産業省別館1028号会議室 ○事務局  大変失礼いたしました。それでは、定刻を過ぎましたので、ただいまから第3回ヒト 幹細胞治療臨床研究指針の策定に関するワーキンググループを開会いたします。委員の 皆様方には、本日お忙しい中お集まりいただきましてまことにありがとうございます。  本日の会議の御出席状況でございますが、岡野委員が急遽御都合により欠席されてお りますことから、4名の委員に御出席いただいていることを御報告申し上げます。  それでは、以後の進行を高坂座長にお願いいたします。 ○高坂座長  それでは、皆さん本当にお忙しい中お集まりいただきましてありがとうございました。 第3回になるかと思いますが、ワーキンググループを開催したいと思います。  では、議事に入ります前に、事務局から資料の御説明をお願いいたします。 ○事務局  それでは資料確認をさせていただきたいと思います。資料でございますが、配付資料 一覧というものがあるかと思います。資料1でございますが、「臨床研究機関への医薬 品、医療機器等の提供について」でございます。資料2でございますが、「米国FDA における体性細胞治療臨床試験の考え方、日本との差異」でございます。資料3でござ いますが、「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」でございます。資料4でござ いますが、いつもごらんいただいております、「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する 指針(案)対照表」でございます。資料5は、「臨床研究に関する倫理指針の日本国外 における適用範囲について」でございます。資料6は、「ヒト幹細胞を用いる臨床研究 について(流れ図)(たたき台)」でございます。資料は以上でございます。あと、参 考といたしまして、いつものように先生方のところにファイルを置いておりますので、 随時御確認いただければと思います。  以上でございます。 ○高坂座長  ありがとうございました。それではまた文章を推敲していく前に、前回お約束いたし ましたように、一つは他施設でそういった細胞が製造されている場合、その他施設に出 すようなとき、薬事法の適用になるか否かといったような点、それからもう一つはアメ リカの状況をもう少し詳しく知りたいというようなことで、お二方からきょうはいろい ろなことで説明、あるいは教えていただきたいと考えています。  最初に監視指導・麻薬対策課の光岡補佐から、前回お約束をいただいた資料に基づい て御説明いただきたいと思っています。 ○監視指導・麻薬対策課  監視指導・麻薬対策課の光岡でございます。まず一般的な薬事法の規定を御説明させ ていただいた上で、資料のどこまでが薬事法上授与が可能であるかどうかということに ついて、御説明させていただきたいと思います。  まず薬事法については、いわゆる未承認医薬品については、これはいかなる者も販売 し、授与し、または販売もしくは授与の目的で貯蔵し、もしくは陳列してはならないと いう規定がございまして、したがって未承認医薬品の流通の規制がされているというも のでございます。ただし薬事法においては、治験薬については実は特別の規定を設けて おりまして、治験の計画の届け出が提出されれば、基本的には授与等が可能になるとい うような仕組みになっているわけでございます。  それで、そのものが医薬品であるかどうか、規制の対象になるかどうかということが まず一つあるだろうと思います。医薬品であるかどうかというのは、あくまでも薬事法 の第2条の定義でありまして、それは何かといいますと、一つは人体等の機能、構造に 影響を与える目的とするもの、または効能・効果をうたって販売されているもの、病気 の疾病の診断や治療や予防に使用されているもの、使用されることを目的としているも の、というあくまでも目的規制でございます。したがって、そうしたものを規制する、 医薬品として取り扱うわけでございます。しかしながら、例えば臓器との区別であるか のように、一つは一定の加工行為をするというものについて医薬品として考えますと。 いわゆる諸外国ではミニマルマニピュレーションみたいな、こうした考え方で医薬品で あるかどうかということを、実際の運用をさせていただいているというものでございま す。  それで、そのものが医薬品であるかどうかというところが、まず一つのハードルにな りまして、続いて、もし医薬品であるならば、その場合にどこまで提供が可能であるか どうかという形でございますが、これはきょうの資料に沿って御説明をさせていただき たいと思います。  もちろん未承認医薬品になるわけですから、当然本来なら流通等の規制がされている わけでございます。しかしながら、治験の部分については、これは規制がそこの部分を 解除する形になりますので、治験薬届け出が出されている、治験計画届け出が出されて いるものについては、流通が可能になっているというものでございます。  一番上の欄にありますのは、製薬企業が実施主体となって治験を実施している場合で ございます。この場合に、当然この治験届け出が出されるわけですので、外部から該当 の製薬企業の方からの医薬品の提供や薬物の提供ということが、可能となるわけでござ います。  波線で囲んである部分でございますが、これは実は平成14年に薬事法の改正を行いま して、従来の治験の範囲を拡大させていただいているものでございます。いわゆる医師 主導の治験というものを制度化したものでございまして、その中で治験の拡大を図って、 この部分についての医師の他の施設へのデリバリーを可能とするための制度をつくった ものでございます。もちろんこの場合には、当然治験の届け出というものが必要になっ てくるわけでございます。  3番目の欄でございますが、これは既承認の医薬品や医療機器でございますけれども、 この場合には当然医師の責任下におきます医師の適用外使用という形になるわけでござ いますので、この場合でも治験届け出は当然提出することが十分可能なわけでございま す。  非該当としましては、先ほど外部から既承認の医薬品や医療機器の提供を受けて実施 する臨床研究でありましたりとか、院内製造品を用いて実施する臨床研究でありました りとか、こういったものが医師の管理下のもとにおいて行われる、いわゆるデリバリー は可能ではありませんが、医師の医業の中で行われる研究のものが入っているわけでご ざいます。  次のページに行っていただいて、これが平成14年の薬事法の改正によって、さらに平 成15年7月30日にGCP、いわゆる治験の範囲を拡大いたしまして、医師や医療機関 が主体となって行う臨床研究の制度をつくったときの概念図でございます。従来は当然 医師から外部への委託研究、委託製造や、企業からの未承認薬物・機械器具等の提供は 不可でございまして、この点が非常に使いにくかったわけでございますが、それを改正 を行うことによりまして、治験届出制を拡大いたしまして、こうした将来の発展性のあ る臨床研究等を、治験の中に取り込んでいくというような改正をしてきたわけでござい ます。  最後のページでございますが、生物由来製品については実は特別な規制がかかってい まして、これを一般的に簡略化したものでございますが、当然一般の医薬品や医療機器 に上乗せをするような形で、生物由来という特性を踏まえた規制を行っているわけでご ざいます。この点については、既に承認後の話には当然なるわけでございますが、薬事 法の治験薬の品質確保については治験薬GMPに沿って、これはあくまでも行政指導で ございますが、品質確保を図るでありましたりとか、また細胞や組織を利用した医療用 具や医薬品の品質、安全性については、治験開始前に確認申請という形で申請をして、 それを治験に使用しても安全であるかどうかということを確認をした上で治験届け出が 提出され、治験がスタートするという仕組みで動いているものでございます。  簡単ではございますが、以上で終わらせていただきます。 ○高坂座長  ありがとうございました。簡単な御説明だったと思いますが、わかりにくい部分もあ ったかと思います。御質問等があれば多分答えていただけると思いますので、御質問は ありますでしょうか。どうぞ。 ○中畑委員  この前議論になりました、例えば産総研等の施設でつくったものをほかの施設に送付 して、そこで実際の医療が行われている、それを当然医師主導の治験届という形で出す としても、その場合はやはり外部に出すということでは、この1枚目でいうと上から2 番目に相当するような格好になるのでしょうか。 ○監視指導・麻薬対策課  いろいろな場合が当然あり得るだろうと思います。例えば細胞培養センターみたいな ものを共同でおつくりになって、医療機関の医師がそこに出向いて製造をして、そして みずからの患者に投与するということは、これは薬事法で規制しているものではないの ですね。これはあくまでも医業の中で行われている行為でございますから、いわゆる授 与等の行為がそこには全然生じてこないわけでございます。CPCは当然そこの施設を 管理して、それなりの手数料をもらって業として行っていたとしても、そこは薬事法の 規制の外になるというものです。 ○中畑委員  ただその場合も、CPCで働いている実際の技術者や細胞を処理したりする人は、も ちろんそれなりの教育や訓練を受けた人でないとできないわけですので、医師がそこに 出向いて細胞を処理して、また持ち帰って、自分の施設で患者さんに投与するというわ けにはいかないと思うんですよね。そういう場合はむしろ非常に危険なことで、そのC PCをきっちり運営して細胞を処理する、そういうきっちり訓練、教育を受けた人が当 然必要なわけですので、医師はそこに細胞を運ぶとしても、そこで実際細胞を処理した り加工したりする人は別の人に必ずなるわけですし、ならざるを得ないわけですよね。 そうでないと、この細胞療法というのは安全に行えないということになりますので。全 く今まで細胞のそういう処理をしたことがないような人がその施設だけを借りて、そこ で細胞を処理してまた持ち帰るということは、当然許されることではないと思いますの で、その辺の解釈というのはどういうことになるのでしょうか。 ○監視指導・麻薬対策課  ただ、責任論の話に当然なるわけでして、法的な責任論というのはだれが責任を持っ てやるのかと。その医業の中で行われる製造行為ですから、その場合例えば実際にその 医師が行くということがないにしても、医師の管理下にある専門的な技術者がそこで加 工を行って、医師の責任のもとで投与されるということも当然あり得るだろうと思いま す。その場合には、当然それが医業としてみなされる可能性は非常に高いだろうと思い ます。  しかしながら、例えば委受託を受けるような関係になるという形になりますと、これ はまさにCPCが商売を行っているわけですので、やはり今の薬事法の規制の中では業 の許可、それから承認をもらった上で行っていただくという形が前提になるだろうと思 います。 ○高坂座長  ほかに御質問はないでしょうか。どうぞ。 ○中畑委員  ちょっといいですか。具体的な例として、例えば今リンパ球を培養して、がんの患者 さんなどに投与するという治療が、日本では非常にあちこちで行われているわけですが、 その場合も確かに自分の患者さんの自分の末梢血のリンパ球を持っていって、そこでふ やしてもらって、それを持ち帰って患者さんに投与すると。ただその場合、医師の業と してやっているようなものでも、一応リンパ球を培養するのにそれなりの費用を取って いると思うのですが、そういうのは今薬事法上はどういうぐあいに規制されているので しょうか。 ○監視指導・麻薬対策課  私が存じ上げている限り、例えば医療機関とは全く関係のない医師の管理下の外にい る人間が、もしあちこちの医療機関からいろいろな注文を受けてデリバリーをするとい う形になれば、これは薬事法上違反になりますので、薬事法上ではできない形になりま す。  ただ、現在聞いている話ではそうではないという、あくまでも医療機関の管理下に基 づく医師、もしくは医師の管理下にある専門技術者が直接そちらで加工行為を行って、 医師の責任のもとで製造を行って、それで投与を行っている形だというように理解をし ておりますので、現在の段階ではまだ薬事法に規制をされているというものではないだ ろうと思います。 ○高坂座長  例えばしばしば議論になっていたのですが、某病院で実際に臨床研究が行われると。 その細胞を調製する場所が、例えば神戸の先進何とか財団であるというような場合、当 然それは当初この臨床研究の計画の中では、共同研究者として登録をされて申請は出て きているわけですね。そういった別の施設でつくられたものが病院の方に渡されていっ て、そこで実際に患者さんに投与されるというような場合は、これは今言った薬事法の 適用にはならないということですか。 ○監視指導・麻薬対策課  最終的には共同の加工施設というのは単に場所貸しですから、場所貸しをしていると いうような理解でいるわけですよね。専門技術者ももしかしたら某そうしたサービスを 行う会社から、支援事業を行っている会社からお借りするという形になるかもわかりま せんが、あくまでも製造行為をする責任というのは、その治療を行う医師にあるわけで すから、その医師の責任の管理下で行われている行為というのが、ぎりぎり医業の範囲 とみなしてよろしいのではないのかなと考えておるわけでございます。したがって、そ こについてまで薬事法は規制はしていないということでございます。 ○高坂座長  例えばそこで調製されているもの、リンパ球でも何でもいいですが、ある臨床研究に おいてはそういった非常に厳格に医者の指導でつくられて、品質も保証されていること がもうわかっているという場合、そういったクオリティーが非常にいいですよというこ とが明らかになっているがゆえに、今度はその後の幾つかの研究のときに、他施設でま た同じものを出していきましょうというようなときには、どういう扱いになりますか。 しかもそれが営利目的ではなくですね。 ○監視指導・麻薬対策課  実は薬事法は営利目的かどうかということを問うているわけではございません。あく までも未承認医薬品の販売、授与ということで、授与ですから、これは対価を伴うか伴 わないかということは全く関係ありません。販売は対価が当然伴うわけですが、授与は 対価が伴わないものも一緒にあわせて規制をされているわけでございます。医薬品の品 質及び安全性を確保する、こういったことを目的に規制をしているものでございます。 ただ、それは当然薬事法ですから、あくまでも流通規制にとどまるわけでございまして、 医師がみずからの責任で行われている医業についてまで、薬事法は規制を行おうという 趣旨ではございませんので、それが例えば商売目的みたいな形になって、何らかの方向、 委受託を受ける関係になって、それをデリバリーするという行為は、たとえそれが医師 であったとしても薬事法上は禁止されているわけでございます。その場合には、当然許 可や承認が得られているものについては、そこが解除されているという法律の構造にな っているというふうに御理解をしていただければと思います。 ○高坂座長  微妙な線があると思いますが、いかがでしょうか。御質問はないでしょうか。どうぞ。 ○位田委員  私はお医者さんではないのでとんちんかんな質問をするかもしれませんが。一番初め に例えばAという医療機関がBという研究機関、さっき高坂座長がおっしゃったように 神戸の研究所などに調製をお願いして、これを共同研究でやったとします。これについ ては最終的には、臨床研究はAという医療機関がやる形になるので、薬事法の対象には ならないというふうに理解してよろしいですか。 ○監視指導・麻薬対策課  薬事法は、販売、授与目的のない単純製造や単純輸入というものを実は規制している わけではないんですよね。薬事法が規制しているのは、あくまでも未承認医薬品の販売、 授与や貯蔵を規制しているものでございます。ですから、授与行為が発生し得るかどう かという形になるのだろうと思います。  それで、もともとのAという医療機関がBという医療機関に製造目的で委受託をして いるという形に当然なるわけですので、それは事実上は薬事法は今はできないという形 になるわけです。治験薬届け出が出されているとか、医師主導治験の共同研究の中でお やりになられているという形になれば、それは当然そこの部分の規制は解除されるとい う形になるわけです。 ○位田委員  それで、そういう臨床研究をAという医療機関がやっていて、ほかの例えばCなりD なりという機関が、うちもそういうことをやりたいと言って、同じB研究所に調製をお 願いする場合、しかしそれも共同研究の形なのでしょうけれども、Bという機関におい ては一度Aという機関との共同研究の中で、ある幹細胞もしくはそこからの組織は調製 済みなので、例えばある程度ストックがあるときに、それを提供するのはどうでしょう か。もしくはそういうものを調製する技術は確実になったとして、それで、Xという機 関が新たに申し込んできたので、そこにまた調製したものを出すというのもありえます よね、形態としては同じですが、最初にやる場合と2回目以降に同じことをやる場合と では差ができますか。 ○監視指導・麻薬対策課  2回目以降も同じでございますので、もちろん法律的にはできない形になります。た だ、事実上それを取り締まるかどうかという問題も、また別問題としてあるのだろうと 思います。私どもがそれを目くじらを立てて、例えば研究者間でのやりとりをされてい る、それともう一つはどこまでのものを医薬品とみなすかどうかというハードルがある わけでして、例えば投与する前段階の細胞加工行為をするようなものを提供していくと いうものまで、医薬品だとみなせるかどうかというのは、ちょっとそこは別問題だろう と思います。  ですけど、最終的に投与する前段階のものをそこで一定の加工行為を行って、単に保 存とかそういうものではなくて、一定の加工行為をもって形質をある程度変えた上で投 与するという形になれば、それは医薬品としてみなさざるを得ないだろうというふうに 思っているわけでございます。 ○高坂座長  少しグレーなところがありますが、今のお話をまとめてみると、最初の臨床研究にお いてAとBが共同研究で行う。そのAの責任がある医師がBに出向いて、そこで責任を 持って細胞を調製する。それをAにもう一遍持ち帰ってやる場合には、法律的にはオー ケーである。ところが2回目以降、CあるいはDの研究機関が新たに共同研究契約を結 んで、Bから細胞を送ることは一応。 ○監視指導・麻薬対策課  CやDの医療機関の医師がそこにみずから出張っていくのは別です。 ○高坂座長  でしょう。だからそこまでやらないとだめだということでしょう。 ○監視指導・麻薬対策課  もしくはみずから出張らなくても、みずからの管理下にある技術者がそこで一定の加 工行為をするということは、それは医業の中です。ぎりぎりの範囲でしょう。 ○高坂座長  そうですね。ただ単にストックがあるから送ってちょうだいよ、ということではだめ だということですね。 ○監視指導・麻薬対策課  授与した研究機関が、むしろ薬事法違反を問われてしまうという形になっています。 ○中畑委員  形の上でAという医療機関の医師がBという加工施設に出向いて、そこで自分が手を 下して加工するのではなくて、BのCPCの技術者に委託をして、実際に細胞を処理す るのはBの医療機関の技術者だけれども、Aの医療機関の医師が監督するという形で細 胞の処理が行われた場合は、それはよしとされるのでしょうか。 ○監視指導・麻薬対策課  そこはもう実質論の話になってしまうので、事実上その医師の管理下のもとで製造行 為が行われているかどうかという一つの判断になるだろうと思います。必ずしもどの場 合もいいというふうに言うわけには、ちょっと私の方ではなかなか、実は言いにくいと ころがございますので、それは当然そこがどのような管理をしているかをきちんと見せ ていただいた上で、判断をさせていただくという形になるだろうと思います。 ○中畑委員  先ほどもちょっと言ったように、患者さんにとってはやはりいかに安全にその細胞を 処理していただけるかということが、一番大事なことだと思うんですよね。より安全に 細胞を処理・加工するということでは、やはり熟練のしっかり技術を持った人が処理・ 加工するという形をとらないと、なれない人が処理・加工したものを投与するというこ とになると、患者さんにとっては非常に不利益になります。だから、患者さんの本意と いうことを中心に考えれば、やはり非常に処理・加工の技術にたけた、ベテランの十分 経験を積んだ、教育をされた人に処理・加工してもらうようなシステムにしていくこと が、本来の姿ではないかと思いますが、この薬事法という法律の上では、そこに対する 配慮というのは全く今はないというような理解でよろしいでしょうか。 ○監視指導・麻薬対策課  逆でございまして、薬事法はむしろそこら辺の規制が厳しいために、臨床研究という 本来デリバリーができない中でおやりになっておられるケースがあるのではないかと。 むしろ私の方はそちらの方をなるべく薬事法の規制の中に取り込んで、確認申請をきち っととるとか、治験薬GMPに基づいてきちっと規制をしていただくと。そしてGCP に沿って、倫理的に患者さんの人権等を配慮した中でやっていただきたいというのが、 我々の本来の趣旨でございます。ただ、そこは医業との規制の範囲、その外枠をどこら 辺で切るかというだけの話でございまして、医業の中でおやりになられている部分を、 我々薬事法の中でどこまで規制できるかというだけの話であるのだろうと思っているわ けです。 ○北村委員  主にどなたがやられるかということだったですが、例えば培養するときにその培養に 用いる材料というのは、全部薬事法に基づいて生産されたものしか使ったらいけないも のですか。例えばサイトカインとか血清に当たるようなものとか、そういうものは薬と して承認されているものしかそういう場合は使えないのですか。 ○監視指導・麻薬対策課  そこはいろいろなものがあるのだろうと思います。最終的な製品が、治験薬の薬物に ついておっしゃっておられるのだろうと思いますが、我々としては治験薬しか規制して おりませんので、原料等が承認をされていようが承認をされていまいが、それは別に構 わないんですよね。ただその場合には、当然治験の患者さんの安全性を確保するという こともあるので、治験に入る前に、届け出をする前に確認申請を受けていただく。それ で、今は一応審議会がございまして、薬事・食品衛生審議会というところで十分御議論 をしていただいて、これで治験に入っていいかどうかという専門家の意見を踏まえた上 で、治験届け出を提出していただくという、非常にやっかいな手続はありますが、そう いう手続を踏まえた上で国が確認をしていきますということでございます。 ○高坂座長  その臨床研究というカテゴリーと医師主導型の治験というのは、少しオーバーラップ しているところも実はありますが、そういった場合、医師主導型の治験ということにな ると、この場合はこの薬事法の方も適用を受けるということですね。 ○監視指導・麻薬対策課  はい、基本的には。ただ、もちろん医師主導治験という形になれば、患者さんの負担 も当然減るわけでございますね。基礎的な治療の部分というのは当然保険診療の対象に なるわけですので、ほかでやりますとこれはあくまでも自由診療になってしまいますし、 治験の範囲のものについては、基礎的な部分については保険で面倒が見られるというこ とを考えると、患者さんの負担の軽減にも当然なるだろうと思います。また、治験計画 の安全性や治験薬の品質というのは国が直接確認を行いますので、ある意味では被験者 にとっては、そちらの方には安全性があるだろうというふうに思っているわけでござい ます。医師主導治験のハードルが非常に高いとまだ言われている段階がちょっとありま すので、我々としてもその点については、医師主導治験のあり方の見直しの検討をさせ ていただいているという段階でございます。 ○高坂座長  わかりました。光岡さんからの御説明で、かなり厳しい状況であるなということがわ かったと思いますが、御質問はほかにないですね。はい、先生。 ○中畑委員  今回つくろうとしているこの指針は、医師主導の臨床治験ではなくて、研究まで含む という形でやっているわけですが、その場合もできるだけ薬事法に近づけるような形で、 より安全にその細胞を処理するような指針にしようというぐあいに今やっているんです けれども、薬事法上はそこには全く何の影響も及ぼさないというぐあいに理解していい のでしょうか。 ○監視指導・麻薬対策課  もちろん規制の対象外のところでございます。ただ、薬事法の中で規制されている部 分というのは、当然強制力がかかってきているわけでございます。その外にあるものに ついては、これはまだ医業の中で指針とガイダンスという形で、その外であったとして も少なくともこれぐらいの条件を守っていただきましょうよという形で、指針を作成し ているというふうに私は理解をしているわけでございます。 ○高坂座長  よくわかりました。はい、どうぞ。 ○事務局  事務局から聞いて申しわけありません。もう一回確認でございますが、この指針で臨 床研究に関して先ほどから先生方がおっしゃったような、Bという施設にAの施設の人 間が行って培養等をしてくるものは医療行為の中という形で、薬事法の範囲外、表でい うとこの4番という形になるのですよね。 ○監視指導・麻薬対策課  そうですね。 ○事務局  それで、例えばC、Dの施設に、つくったものが余ってしまったからお渡ししましょ うという話になると、それはもう臨床研究という範囲ではあり得ないということになる わけですね。 ○高坂座長  ただ、それもケース・バイ・ケースだと僕は思いますが。それを全部規制してしまう と、この幹細胞の治療というのは、やはり多分化能を持ってふえるといったところがか なりメリットがある治療法なわけですね。それを全部の施設で独自につくっていけとい うのは、逆にちょっとこの趣旨から逆行しているような気もしますので、将来的には緩 和される方向に向かうかもしれませんが、やはりそれは一つの臨床研究の中でもう一遍 吟味していって、これは法律の中でクリアされているなというのは審議していただきた いと、個人的には思います。 ○監視指導・麻薬対策課  実はまだ多分クリアになっていない部分というのは、リンパ球培養細胞みたいなもの は、あくまでももうこれは従来医薬品として取り扱っておりますが、それ以外のもので すね。こういったものはまだ医薬品であるかどうかと。承認もされていないし、また臨 床研究も余り活発でないというものについてまでは、ちょっとまだ判断はしておりませ んが、私どもとしては当然そうした医薬品であるかどうかという、もう医薬品としての 範囲ならば、なるべく治験という中でやっていただきたいというのが本旨でございまし て、そうでないともしかしたら患者さんへの安全性とか、それから費用等も考えあわせ ますと、やはり余り自由にしておくのは。ある程度医業の中でおやりになっている部分 は当然やむを得ませんが、それ以外の部分というのは、なるべくこうした何らかの法的 規制の中でやられるべきだという発想でいるわけでございます。 ○中畑委員  僕も第三者機関にまで配布するというようなのは、医師主導であったとしても医師主 導の治験という形でやらないと、やはりまずいのではないかという気もしているのです が。培養リンパ球の場合は、先ほど医薬品としても認められていると言われましたが、 あれは治験はやられていないですよね。 ○監視指導・麻薬対策課  今のところ判断としては、活性化リンパ球培養細胞を使った治療法の話でのリンパ球 の加工行為については、ある意味でかなり国内でも広がっておりますので、これが医薬 品であるかどうかという形での判断は、数年前に実は求められておりまして、その際に 医薬品として判断いたしますというふうに、ちょっと私どもの方はそう考えていたわけ でございます。まだ当然治験とか未承認薬の治験とか、そういうものが始まっていると いう段階ではない。まだ医師の臨床研究の段階だろうというふうに思っています。 ○高坂座長  わかりました。現状でのおおよその状態がおわかりいただけただろうと思います。  それでは時間ですので、次のヒアリングというか、教えていただきたいと思います。 米国におけるヒト幹細胞の臨床研究の現状を、東大の川上先生から講演していただきた いと思います。 ○川上参考人  東京大学の川上でございます。私は昨年度の11月まで、アメリカのFDAにおいて細 胞治療、遺伝子治療分野におきまして、臨床治験の審査官をやっておりましたもので、 その観点からアメリカの現状を御報告させていただきたいと思います。  まず、先ほどから議論になっている日本の厚生労働省としての役所の立場と、アメリ カのFDAの立場が大きく違うところがございまして、日本におきましては臨床治験に 皆さんがすると、それはハードルが高くなる、あるいは厚労省は取り締まりをするとい う立場のところがありますから、臨床研究が進まなくなるのではないかという懸念があ るようにお聞きしているのですが、アメリカの場合はむしろ皆さん研究者の方も企業の 方もFDAに出したがります。というのは、FDAに出すということは、FDAは取り 締まるところではなくて、臨床治験を行うに際してのリスクをシェアする機関でござい ますから、そのリスクをシェアするのであれば行政対応として、行政とディベロッパー、 あるいは研究者と一緒にそのやり方を考えていこうというのが、FDAの基本的な立場 でございます。  今お話があったように、日本ではシングルスタンダードになっておりませんで、先端 医療領域におきましては細胞治療に限らず医師主導の臨床試験というものと、あと臨床 研究、あと企業主導であれば臨床治験というふうにあるわけでして、出すところも多少 違うということになっていると思います。アメリカにおきましてはIND制度というも のがございまして、これはInvestigational New Drug Applicationの略でございますが、F DAとして出すところが企業であろうが医者であろうが研究者であろうが、それらはす べてスポンサーと一括して総称されます。このスポンサーがFDAにINDパッケージ という、電話帳みたいなものにたくさんいろいろ記載事項を書いて、いわゆる日本にお ける治験薬概要書のようなものですね、これを提出することによって、全例をFDAが 見るというふうになっています。ということで、行政側がこの国で、アメリカで何が行 われているのかということをすべて把握することになっておりまして、かつスタンダー ドというものが維持されるということになっております。それも公開されますから、ど ういったものがあるかというのを世の中の方、あるいは患者さんも理解されるというよ うになっております。  医療としての倫理性でありますが、これはあくまでもFDAの仕事ではございません でして、医療機関あるいは学会主導で医療機関がそれぞれIRB(Institutional Review Board)を持っておりまして、ここがそれぞれ認証して結果を出していくというようにな って、結果だけFDAに出すというようになっております。  私としてお話しさせていただくことは、体性細胞治療ガイドラインというのが、2003 年の8月にFDAの生物製剤評価研究センター(CBER)から出されまして、これの おもしろいところはGuidance for Reviewersという言葉になっているところです。つま り、FDAから出している通達でございますが、あくまでも審査官がどういうふうに見 ているのかということを、世の中の人に対して全部公知しているということです。これ がFDAのやっているガイドラインの出し方でございます。  この辺は細かい話でやや恐縮ですが、どういう内容かと申しますと、まず細胞という ものは基本的にはallogenic、他人あるいは自分ではないようなものであり、同種の細胞 型から由来している細胞というものと、autologous、自己由来の細胞というふうに2つに 分けられると思いますが、その細胞のソースが何であるのか。そしてモディフィケーシ ョンを加えたときに、例えば先ほどもちょっとお話に出ていましたが、サイトカインや 何かで細胞をパルスして、何か新しい機能を持たせてあげることがございます。こうい った場合に、それがFDAに認証されているものであるのか、あるいはそうでない場合 は、それを何で使っているかということの理由づけを書く必要がございます。採取方法 を、手術的に取ってくるとか、あるいは採血で取ってくるというものをしっかり書いて いただきます。ドナースクリーニングの病原体検査におきましては、allogenicの場合自 分の細胞ではありませんから、非常に厳密に行う必要がございます。自己の細胞の場合 は必ずしもスクリーニングは必要とされませんが、していない場合は、自分の細胞であ るがスクリーニングはされていないよということを必ず記入する必要があります。とい うのは、これをしないと、それを使っている看護師さんや医師がそれをわからないでさ わってしまった場合、問題になる可能性がありますから、この辺はしなかった場合はし ないということをきちんと明記するというふうになっております。  それで、細胞のバンク、Cell Bankシステムというのがございまして、一番大もとにな るのがMaster Cell Bank、それを実際に運用していくのがWorking Cell Bankというふう に分かれているのですが、特にMaster Cell Bankは重要でして、ここにおきましては安 全性とアイデンティティ、ピュアリティー、スタビリティー、そういったものを見てい くわけですが、ここに関しては後でまた少しお話しします。  試薬としてどういう試薬を、そのautologous、allogenicの細胞に振りかけたり使って いくかということですが、最終製剤の剤型として、細胞治療というものは人間の体に何 かした後投与するわけですから、これはあくまでも医薬品というか、細胞医薬というふ うに扱われます。ですから、ここにおきましては最終製剤にFBS、トリプシン、グロ ースファクター、サイトカイン、抗体、抗生物質といったものが、培養条件の中に含ま れていないということが望ましいと。含まれている場合はそれを明記するというふうに なっております。そのほか品質保証などについて書きます。  4番のコンビネーションプロダクトというものの意味でございますが、これは特に再 生医療におきましては細胞の治療物と、あるいはその器械、あるいは医療器具を一緒に 使うような状況というのが生じてきます。こうした場合には、FDAのCBERつまり 生物製剤、バイオ製剤を扱うところと医療器具を扱うCDRHが当該申請を一緒になっ て見てあげるというふうになっております。このための一緒に見る場合のSOPP、ス タンダードオペレーションのやり方というか、マニュアルといったものがもう既に公布 されております。さらにFDAの中にOffice of Combination Productsというオフィスがご ざいまして、FDAの中でも2つの施設にまたがって審査が行われる場合は、それがど ういうふうに行われたかという経緯について、記録としてFDAの中の別の部署に出す という、そういったことが行われています。  マニュファクチャー、製造に関してですが、先ほどお話ししました細胞の採取方法、 及びこれは閉鎖系システムか否かというのが非常に問題になりまして、細胞を取った後、 多くの場合細胞というのはCPCがあったとしても、そこに培養フードがあって人間が いて細胞を培養してというふうになるのでございますが、できれば医薬品の製造と同様 に何らかの形で閉鎖系で、人間が外から手を入れることができないような形でやる方が 望ましいということが、将来的には望まれておりまして、そういったことについても一 応明記しておきます。また、放射線をかけて細胞増殖不能にする場合というのもありま すが、特徴だけを利用したい場合、この場合もちゃんとその特徴が維持されているかど うかとか、そういうことを明記する必要がございます。また、細胞治療におきまして、 細胞をいろいろ培養して、何かを振りかけて、また培養してという手順があると思いま すが、その手順にかかる時間、それぞれ何時間かかるかということも記入していただき ます。それによってバイアビリティが下がってしまうとか、細胞の活性が落ちるという こともございますから、そういったことも留意していただく必要がございます。  また、最終段階としてどういうふうに遠心して、どういうふうに細胞を洗っていくの か。そして最終製剤としての細胞の濃度、どれぐらいの容積にどのぐらいの数の細胞が 入っているかとか、その細胞をもしCPCから医療機関に送るということがあったら、 運搬をどういうふうに行うか。ロジスティックスです。これはどういう条件でどういう クーリエ、クーリエというのは日本でいえば郵便局を使うのか、あるいは受託した運搬 会社を使うのか、といったことまで明記してやっていただく必要がございます。  評価に関してですが、Sterilityの問題ですが、微生物が混在していないかどうかとい うものに対して、あるいは微生物、細菌、あるいはマイコプラズマ、バイラスといった もの。あとアイデンティティ、いろいろな細胞が複数使われている場合というのもござ いますから、これはそれぞれの細胞がちゃんとどういったふうに区別して評価できてい るかというような系も、できればつくった方がいいというふうに指針が出されておりま す。  また、ここが一番大事なところですが、アイデンティティとしまして細胞表面のマー カー、あるいは遺伝子、あるいは遺伝子のポリモーフィズムといったものを、例えばD NAマイクロアレイで測定する、また蛋白におきましては、蛋白をクロマトグラフィゲ ルに流すことで全体にどういった蛋白の発現があるかを確認するということが、細胞が 必要なものが発現していないと治療になり得ないわけですから、そういったことをしっ かりと証明する必要がございます。これをアイデンティティといいます。  また純度というのがあります。これはエンドトキシンレベルや試薬の混在。あとポテ ンシーというものがございまして、力価というふうに訳させていただきましたが、これ に関してはバイオロジカルな、生物学的な機能というものが、どういうふうにin vitro の系で評価できるのかどうかといったことを見ていただきます。これは臨床治験のフェ ーズ1、2まではちょっと大変ですからやる必要はございませんでして、本当にフェー ズ3までこの細胞製剤が上がっていくということになりますと、FDAにそれをこうい うことで評価するんだよという方法をつくって、提出していただく必要がございます。 というのは、これを初めからやりなさいと言いますとなかなか大変なことでして、当然 のことながらお金もかかります、時間もかかりますので、こういうことによって臨床研 究、臨床治験が進まないというのを妨げたくないというのが、FDAの考え方です。  その他、細胞治療薬にはGeneral safetyが不要であるとか、バイアビリティテストとい うものがございまして、細胞の活きのようなものですが、これは70%担保しているべき であるとか、幾つかそういったことがガイドラインの中に入っております。  その他幾つか書いてあることとしましては、トラッキングとしましてautologousの場 合、同じ患者さんから取った細胞が最終的にまた患者さんに入るまでの道筋というのが しっかりと、間違ったりコンタミがあったり、あるいは人を間違えてしまうことがない ような、そういったことがもちろん守られている必要がございます。あとラベリング、 その守るためにラベルがちゃんとつけられていて、常にできれば自分の細胞の場合は患 者の2−IDシステムといいまして、この患者さんの名前のみならず何か違うアイデン ティフィケーションがとれるような、つまり患者の何らかの番号、アメリカの場合ソー シャル・セキュリティー・ナンバーのようなものがございますから、こういったものも 入れるということが望まれております。  その他、キャップのつけ方とか製造のバリデーションとか、そういったことはあくま でも医薬品の製造にかなり準じて考えられております。  以上が細かいところの説明でございます。あと、全体としてのアメリカにおける細胞 治療の考え方を紹介させていただきますと、アメリカにおきましてはFDAのCBER (Center for Biologics Evaluation and Research)といったところで、細胞治療の審査、認可 をしております。このバイオ製剤、あるいは生物製剤というものの枠組みでございます が、上から2行目のSomatic Cell Therapy、体性細胞治療というものも生物製剤の枠組み です。ほかのものは遺伝子治療やがんワクチン、あるいは感染症のワクチン、あるいは 血液製剤といったようなものと同列というか、同じように考えられています。  生物製剤(バイオロジクス)というものはどうやって考えられているかといいますと、 特に未承認治療薬におきましては医療の妥当性というものが必要ですから、FDAにお きましてサイエンティフィックに科学的な審査が行われておりまして、品質・製造、C MCと呼びますが、それと臨床、及び安全性・毒性、非臨床と呼びますが、この3つの 柱で全例分け隔てなく審査が行われます。これをIND制度といいまして、基本的な考 え方としては、FDAは先ほど最初に冒頭でお話しさせていただいたように、取り締ま りをするという考え方ではございませんので、行政側と研究者、あるいはスポンサーと 開発を一緒にやっていくことによって、学問のみならず最終的にはもしかしたらこれが 医療あるいは産業というものに結びつく可能性がありますから、そこもちゃんと手当て する、考えていくというふうになっております。ですから、とりあえずやってみろとい うのがFDAの立場といっても過言ではないと思います。  特に生物製剤の領域におきましては、従来の医薬品とは異なりまして、新規産業ある いはベンチャーというものがやることが多いですから、そういうものをよく育成しよう ということで、幾つか特例条項みたいなものがあります。  どうしてこういうことができるかというと、御存じのように日本の医薬品医療機器総 合機構という治験を見るところと、アメリカのFDAではリソースが随分違いまして、 ここに書いてありますが、日本の生物製剤は今19人しか定員がいなくて審査されている のですが、アメリカのCBERは1,000人いますから、そこでやっている。ですから、 1,000人いればそれだけどんなものが来てもちゃんと見てあげるし、安心して、皆さん 余裕がありますから、9時〜5時で働いても割と1,000人いればやっていけますから、 そういったところでやっていけるということになっております。  幾つか御提言として少々お話しさせていただきますと、私の個人的な考えではアメリ カでやってきました立場上、細胞治療というのは生物製剤であることには変わりません から、患者さんの体に最終的には何かマニピュレートしたものが入っていくことになり ます。そういったことでありますから、やはり前臨床、非臨床というものがちゃんと担 保されていないと、被験者の保護というものにつながらないと考えております。ですか ら、そういう患者さんの安全性の担保をとるためには、やはりこういったものが従来の とおりある程度は必要だと思います。完全とは申しません。というのは、完全にやって しまうと現状の科学ではできることはできる、できないことはできませんから、それは よくFDAというか行政当局と話し合って、ここまでは今のサイエンスでできるのであ るから、じゃ、ここは手当てしなければいけないね、ここはできないことだから無理に やらないで、ちょっとやってみて安全性だけ担保してみましょうとか、そういうことを FDAと研究者、あるいは企業で話し合っていただくというのが基本的なスタンスでし て、アメリカではきょうのような公聴会はそういった目的で行われたりしています。  現状では日本の場合の臨床試験というのは、先ほどお話があったように、マルチプル スタンダードといってももうしようがないと思います。ですから、将来としては国とし て、今どの国もそういう方向になってきていますが、シングルスタンダード化して、す べて日本の行政側に出して、それで全部見てあげようということが本当は必要なのでは ないかなと私は思っております。そのために法整備とか、あるいはFDAが1,000人い て、日本に小さな政府をつくるのにそんなのなかなかできないよという声もあるかもし れないのですが、そのためにアメリカのFDAはみんなが国庫から、国の予算からのお 金を使って運営しているわけではございませんでして、Prescription Drug User Fee Act (PDUFA)という法律がありまして、これは要するに治験をすることによって利益 をこうむる可能性がある、つまり治験のスポンサー、治験を提出する人がその治験のお 金をFDAに払って、そのお金がこのシステムによってFDAの役人や事務官を雇う、 あるいは場所を借りるお金に充当されております。これは一本企業が出すと20万ドル、 2,000万円ぐらい治験をやるのにお金を払うわけですが、研究者の場合はこれはディス カウントされる、バイオベンチャーもディスカウントされるというふうになっておりま す。こういったものがシステムとしてありますから、運営資金がちゃんと成り立ってお りますし、そういった根拠のもとIND制度というものが先ほどお話ししたようにでき ています。  また、開発薬事という企業あるいは研究者の方の方が、対応として実は新しいものに ついてよく研究して、それが仕事ですから頑張って、どういったものが安全か、どうい ったものが審査の対応になるか、意外とわかっていることがございます。ですから、ア メリカにおいてはFDAと企業の人材交流が非常に活発でございまして、そういったこ とも医療や学問、あるいは産業ということも考えた場合には、将来やっていった方がい いのではないかと考えております。  とは申しましても現状、あるいはきょうのような集まり、委員会におきましては、臨 床研究においての話を策定するということでございますから、将来的にはこういったこ とは理想なのかもしれませんが、将来こういうふうに移行できるように遵守を呼びかけ てやっていくということがよろしいのではないかなと、私としては思っております。  以上です。ありがとうございました。 ○高坂座長  どうも先生、大変有意義なお話をありがとうございました。アメリカの現状並びに加 工段階における安全性といったところにも言及していただいて、わかりやすくお話をい ただいたと思います。それでは、今のお話に何か御質問等はございますでしょうか。 ○監視指導・麻薬対策課  実は医薬品機構も審査手数料をいただいて、その運営資金で人の給料を出しておりま すので、似ているというふうには。ただ、確かにリソースの違いは余りにも、向こうの 物量作戦には負けてしまうなというのがありますが。 ○中畑委員  先生が言われた日本でいう医師主導の臨床研究というレベルであっても、やはりみん なFDAへ出して、そこで一緒に見てもらいながら進めていくと。要するに治験であろ うが医師主導の臨床研究としてやろうが、それもすべてFDAに一本化されているとい う、非常にすばらしいというか、日本もそうあるべきではないかと私は常々考えている のですが、今システムはそういうわけではありません。この幹細胞を用いた臨床研究と いうことについては、先ほど出ていたマルチプルスタンダードというか、マルチスタン ダードになっているのをできるだけシングルスタンダードに近づけるために、中央審査 というのを考えて、中央審査の中で安全性とか倫理性とかその他もろもろのことについ て一応審査をして、各医療機関での倫理審査にプラスして、その中央審査を通していた だくというような仕組みを考えているわけです。その場合は日本でいう医薬品機構等を 通さないで、厚労省のもとにある、恐らくあることになると思う中央審査をクリアする というような仕組みを考えているわけですが、その辺について先生はどういうようなお 考えをお持ちでしょうか。 ○川上参考人  非常にそれは将来的にあるべき姿に近づくことになるとは思いますが、ただ現況にお きまして、今厚生労働省の中の方々がこういう審査をいきなり渡されてできるのという と、それはまた大変なことであると思いまして、医薬品機構の方々の方がまだよくわか っていらっしゃるということもあると思います。ですからできれば、こういうことを言 ってはあれですが、医薬品機構というものが本当は厚労省の中にあれば済むことだと僕 は常々思っているのですが、行政対応としてそういうわかっている方がいらっしゃるの であれば、中央審査という方向がやはり望ましいのであるとは思います。 ○高坂座長  ほかに御質問はいかがでしょうか。どうぞ。 ○北村委員  幹細胞治療については、フェーズ1に当たるようなものというのはあるのですか。 ○川上参考人  はい、もちろんございます。すべての臨床研究、あるいは臨床治験といったもので未 承認と考えられるものは、必ずフェーズ1というところから始まりますから、まず安全 性を担保するためにやってみます。ただ、もしそれが重篤な疾患、つまりがんとかある いは神経疾患の重篤なものであるというような場合は、必ずしも健常人ということでは なくて、疾患を持っていらっしゃる方にそれをやってみて、代替治療はございませんか ら、あるいはいい治療がないという場合は、ということは認められております。 ○事務局  先生はマルチプルスタンダードとおっしゃいましたが、それはこのような臨床研究指 針というのが一つのスタンダードで、あと医師主導の臨床治験、先生は臨床試験と書い てありましたけれども臨床試験、あと普通に言われる医薬品の方の治験、この3つがあ るという形のことをおっしゃったのですか。 ○川上参考人  そうですね。ただ、臨床研究というのも何か非常に難しく使われているような印象が ございまして、既承認薬の臨床研究というのが基本ですが、未承認でも臨床研究という ふうな形で考えたいというところがあるから、あるいは治験に行きたくないということ があるのでこういう話も出るのではないかなと、ちょっと内心思っているのですが。こ の辺に関しては御意見があると思いますが、先ほどの資料1のテーブルにございますよ うに、これがたくさんいろいろ種類が出てきてしまう時点でいろいろあるんだなと、難 しいな、日本は、というふうには個人的には思っております。 ○高坂座長  先生、IND申請に含まれるべきことの中に、細胞バンクシステムというお話をちょ っといただいたのですが、それをもうちょっと詳しく。 ○川上参考人  このCell Bankは、討議されている公共で使うようなものという意味ではございませ んでして、その細胞もある一つの固有のIND、あるいは臨床治験申請の中での一つの Cell Bankというものがちゃんととれているということでございます。公共で使わせるバ ンクといったようなものが、どういったシステムがあるかということに関しては、アメ リカのFDAとしてはレギュレーションの中には入っておりません。 ○高坂座長  例えば一つのリンパ球にしても、遺伝子の多型性とか、あるいは細胞表面マーカーと か、そういったものを精査していくとかなりの時間を要することになるのですが、臨床 研究の中でも比較的速やかにやっていかなければいけないときがあるわけですね。そう いうときに、アメリカはどういう対応をされていらっしゃるのでしょうか。 ○川上参考人  一々全部やれというのはなかなか大変でして、FDAが幾つか例として推奨している 方法が、先ほどちょっとお話ししましたがDNAマイクロアレイでして、最終製剤に近 い状況でここをとっておけば、一気にスクリーニングとしてかなりの遺伝子の変化が、 パターンというのが見られますから、そういうことが推奨していることの一つではござ います。  その他キーになる、つまり薬効にかかわるような、こういった効果を期待して細胞を 使っているんだというのがございましたら、そのこういった効果を出すような蛋白がち ゃんと出ていることだけを確認すればよろしいとか、幾つか方法はあると思います。 ○中畑委員  先ほどFBS、ウシ胎児血清はできるだけ使わないようにという形で、もしやむを得 ず使う場合はそれを明記するというようなおっしゃり方をされたのですが、そこで使わ なければならない場合のFBSというのは、こういう基準を満たしたものでないと使っ てはならないというようなことはないのですか。例えばアメリカ産はだめで、今BSE が発症していないオーストラリアやニュージーランド産のFBSで、しかもBSEがい ないということをこれこれの方法でチェックしたものであれば、やむを得ず使ってもい いと。そういったのはただ明記するだけではなくて、FBSをもしある程度使わざるを 得ないときは、それを規定するようなものはないのでしょうか。 ○川上参考人  ございます。非常にいいポイントだと思いますが、FBSはアメリカにおきましては むしろ逆でして、北米産のものはよろしいわけでございまして、アメリカのものやニュ ージーランドのもの、オーストラリアのもの、幾つかいいのですが、危険指定国という のが幾つか指定されていまして、これはウェブサイトで見られます。一時期日本も入っ てきたのですが、そういったもののFBSは使ってはよろしくないと。ただそのFBS をつくっている製造元が、COA(Certificates of Analysis)といって、きちんとした基 準で検査したんですよといったものがあれば、そのコピーを添えていれば、自分で全部 見るということは必要ありません。ただ、危険指定国のものは使わないようにというこ とだけでございます。 ○高坂座長  ほかにいかがでしょうか。先生、もう一つだけ。先ほどの最初のお話とも関連するの ですが、アメリカの方でバイオ領域というのはかなりベンチャーにシフトするというこ とで、広くプロモートしようとしていますね。日本ではまた今かなり抵抗があるのです が、アメリカで例えば金銭でそういったものが売買されて、どんどん出て使われていく ということについては、どういう議論をされていますか。 ○川上参考人  いずれにしろFDAが一括して見るので、提出しなければいけませんから、それが仮 に研究費をもとにした金銭の授与が全くないようなものであったとしましても、ある程 度利益になることを考えているベンチャーでございましても、同じようにFDAは管理 します。ですから、そこの点は基本的には問題になりません。また、アメリカの場合は、 臨床治験をやる場合は、国民皆保険ではございませんから、自分の買っている保険を使 わないで行い、そのスポンサーが全部出す義務がございますので、その辺が問題になる ことはありません。 ○高坂座長  ほかに御質問がないようでしたら、先生、本当にどうもありがとうございました。 ○川上参考人  まだいていいですか。 ○高坂座長  ええ、どうぞ。また御質問させていただくかもしれませんのでよろしく。  それではヒアリングということで、これをおしまいにさせていただきまして、以降、 前回までの議論を踏まえて、それ以降の審議に入りたいと思います。それでは、進め方 について事務局のお話は何かありますか。 ○事務局  毎度申し上げていることでございますが、資料4の対照表が未定稿との違いを明記し たもので、御議論が円滑に進むように当方で作成したものでございますので、これを用 いていろいろと御議論いただければと思います。また、文言につきましてはいろいろと 事務局の方でも整理させていただきたいと思いますので、先生方におかれましては必要 な項目が何であるのかなどにつきまして、いろいろと御議論いただければと思います。 よろしくお願いいたします。 ○高坂座長  ありがとうございました。それでは、前回までにこの対照表でいきますと、18ページ まで終わったということになっています。今回はその18ページの一番下、6番の「研究 機関の基準」といったところが少し積み残しになっていたかと思いますので、そこから 始めていきたいと思います。これは訂正していただいているのは、臨床に関する基準な ので、ヒト幹細胞を提供する研究機関は除く整理でよいかということで、少し手直しを していただいているわけです。一応除いた整理になっていますが、これは先ほどの議論 に従いますと恐らく除いていいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。あとは 文言の整理ということです。先ほどのお話ですと、除いて考えなければならないだろう ということになるかと思います。はい、どうぞ。 ○中畑委員  ただ、前ちょっとヒアリングもしましたように、提供機関が例えば大阪日赤というと ころで患者さんの、あの場合は胎児という特殊な、今回の対象にはなりませんけれども、 それを提供して、産総研という別の施設で細胞を処理・加工して、神経幹細胞を増殖し ていく。その場合、やはり提供機関の倫理審査がしっかり行えるような体制になってい るかどうかということがかなり議論されて、ヒアリングもしたと思います。だから、提 供機関について全く触れないというわけにはいかないと思いますが、後でどこかに出て くるのでしょうか。この実施する施設というところには入らないけれども、これはどう でしたっけ。 ○事務局  また先生方に御議論いただきたいとは思いますが、28ページのところに第5章「製造 及び加工段階における安全性確保対策」という項目を立ててございますので、一応ここ のところで。製造という言葉が正しいかどうかというのはまた議論があるかもしれませ んが、本日の医薬局からのいろいろなお話でございますが、基本的にはそういう製造・ 加工段階という意味での安全確保というのは項目を立てていますので、ここで御議論い ただければと思います。 ○高坂座長  今、中畑先生のは製造ではなくて提供する場所ですね。 ○事務局  ですから、先ほどの医薬の話だと、治験以外に関しては製造というか、そういうのは 余り考えにくいと思いますので、言葉としては製造がよろしいかどうかちょっと今後考 えなければいけないと思いますが、別な場所で院内製剤のような形でおつくりになると いう、そっちの方の施設の安全確保対策という意味では、第5章があるのかなというふ うに考えているところでございます。 ○高坂座長  だから、これですと提供という言葉がちょっとまずいのかもしれないですね。 ○監視指導・麻薬対策課  提供というと本当にデリバリーをする、授与行為になってしまいますので。ヒト幹細 胞すべてというわけではありませんが、医薬品に該当するものも当然出てくるでしょう から、提供行為がまずできませんので。 ○高坂座長  従来の考え方としては実施施設としてまとめているわけですね。 ○事務局  文言につきましてはまた医薬局と相談をして、先生方に御相談したいと思います。 ○高坂座長  そうですね。要するに細胞を調製する、あるいは製造する場所と、それから実際に臨 床研究を行う、患者さんに投与する等の場所が、今回同一院内施設であるという理解に なったわけですね。そこで提供施設という言葉を入れるとまた誤解を生じるので、文言 をちょっと整理していただきたいと思います。では、これは次回までに事務局の方で。 はい、どうぞ。 ○位田委員  6の研究機関というのは、臨床研究を実施する実施責任医療機関であるということで すね。先ほどの中畑先生の例でいいますと、ドナーがいる医療機関というのがあって、 それは先ほどの28ページの第5章の製造・加工には入らないということですよね。つま り、ここでは「原材料であるヒト幹細胞を取り扱う施設」というふうには書いてあるの ですが、原料の受け入れをするというのは、真ん中にある調製する機関であるというこ とになると、3種類の機関があり得るわけですね。全部が1種類であるケースもあれば、 全体が2種類であるケースもあるし、3種類であるケースもあり得ると。提供と言うか どうかは別として、それがデリバリーに当たるかどうかという問題も含まれるかなと思 いますが、ドナーからいただいて、それを調製機関に持ってきて、それを臨床研究をや る医療機関に持ってくると、こういう流れですよね。プロセスとしてはどっちにしても 3段階はあるわけですから、それがそれぞれ別の機関である場合に、一番初めのところ についてはこの指針はほとんど触れられていない。しかし、ドナーに対する安全性とい うか、採取のところでの安全性というのは、当然確保しないといけないわけですね。 ○高坂座長  以前の議論も、多分ドナーからサンプルを得るわけで、それも全部同一施設というよ うな感じで確かにディスカッションしていきましたね。だから、これはちょっとどうし ましょうか。 ○位田委員  3つのプロセスがそれぞれ別になったときにこの指針はちょっと。一番初めの部分が 抜けているんですけれども、1番目と2番目は1つであるとすると、第5章、28ページ 以下でいける。ただし、ドナーからいただくときについて余りきちっとした規定がない という部分がある。3つが全部1つであればそれはそんなに問題はないのでしょうが。 ○事務局  ドナーに関しましては第3章に書いてございます。ただ、施設については確かに項目 を立てていません。 ○位田委員  手続としては書いてありますが、だれがこれを確保するかという規定はないわけです よね。もともとは1つであるという話だったから、みんな通しで研究代表者がやればそ れはそれで全部いいのですが。 ○高坂座長  これは次回もう一遍議論しますので、ちょっと頭を整理します。これは確かに今まで 議論していませんでした。 ○事務局  未定稿には載っていないです。 ○高坂座長  ええ。載っていないですね。これは場合によっては親委員会に戻さなければいけない かもしれないので、別途相談させてください。 ○位田委員  もう一点、済みません。この臨床研究を行う機関は、当然医療機関であるという前提 ですよね。でも、その前提は書いていないですよね。医療機関でなければならないとは 書いていませんよね。それは構わないのですか。臨床研究だから当然医療機関だろうと は思いますが、それは書かなくてもいいのでしょうか。 ○事務局  先生の御指摘は、臨床研究が実施される場所について規定するべきではないか、規定 しなくてもよいのかという御質問ですか。 ○位田委員  場所というよりも、要するに最終的に被験者に幹細胞、もしくは幹細胞からの組織を 臨床研究で移植する機関は医療機関だろうなと。それが臨床研究でしょうから。だけど、 それが医療機関でなければならないということは、ここは書いていないわけですよね。 だから、本当にそれでもいいのかなと。やられるのはお医者さんで問題ないかもしれな いですが。 ○北村委員  それについては研究責任者が病院長又は医学部長と書いてあるのですが、それでカバ ーされるのではないでしょうか。 ○高坂座長  どうぞ、事務局。 ○事務局  今の先生の御指摘は対照表でいうと10ページの細則です。 ○位田委員  「例えば」ですから、それ以外もあり得るという話ですよね。 ○事務局  あとは「研究機関」とはということで、対照表でいうと2ページの(5)で定義をし ておりますので、臨床研究を実施する機関を研究機関というと。ここのところは臨床研 究指針と同様に規定しておりますので、臨床研究を医療機関以外でも実施してもいいか どうかという議論について、特にヒト幹細胞の臨床研究に特化して、医療機関というふ うに規定した方がいいというような御議論であれば。 ○位田委員  いや、そこはちょっと判断できないので。 ○高坂座長  恐らく最初の話とも関連するのですが、例えばさっき細胞の製造、調製に関しては産 総研がやるという話が出ましたですね。そこの場所に医療機関から責任者がきちっと行 って、調製の段階まで携わって、実際に患者さんに対応するときには医療機関でやると。 これはよろしいですね。ただ、産総研というのは医療機関になり得ないので、むしろ… …。 ○位田委員  要するに全体の臨床研究のプロセスはその3つの段階があるという話で、それが1つ のところで行われていれば当然医療機関なのですが、間に違うのが入ってくる場合に、 これも臨床研究だとすると、それはここの研究機関には当たらないわけですが、その辺 がちょっとどうなのかなと。やはり患者さんは病院にいないといけないんでしょうね。  これはそれほど大きな問題ではないと思うので、きちっとどこかで規定するかどうか という話です。私は臨床研究に関する指針は一般指針で、これは特則の方だと思ってい るので、例外を決めるのだったら例外はそれで決められるのだろうと思いますが。 ○高坂座長  そうですね。場合によっては細胞を調製する機関については、設備が整ったところで あれば必ずしも医療機関でなくても構わないとか、そういったものは必要かもしれませ んね。細則でちらっと入れておくということです。ではそれも含めまして、さっきの提 供をする機関といったところをもう一遍議論したいので、たたき台を次回までにつくっ ていただきたいと思います。それでは、そこはあとは文言の整理ということで結構かと 思います。  次は19ページに参りまして、「審査の体制」ということです。これにつきましては、 以前かなり中央審査ということも含めて議論をさせていただいたものですが、ここの赤 で直していただいている趣旨としては、一つは委員の構成についてわかりやすくするた め、4つの号に分けてはどうだろうかという御提案です。事務局、この点についてちょ っと御説明いただけますか。この御提案の趣旨は。 ○事務局  それでは、事務局より御説明いたします。倫理審査委員会について以前未定稿で先生 方に御議論いただいたところですが、このような専門家で構成される倫理審査委員会で 各研究機関において審査されることというのを、4つの号に分けて記載したということ です。この分野でよろしいかどうか確認いただければと思います。 ○高坂座長  実際に(1)や(2)や(3)という、こういう方々であるということを議論していると。それを 整理していただいたのですね。(2)(3)(4)は余り変えていないわけですね。 ○事務局  先生、(1)ではなくて、(1)の中の一、二、三、四でございます。 ○高坂座長  そうですね。細胞生物学とかそこら辺ですよね。一、二、三、四、そこら辺に分けて はどうだろうかという御趣旨です。 ○中畑委員  この方がわかりやすくていいのではないですか。 ○位田委員  細かい話もいろいろありますが、(1)の「申請に係るヒト幹細胞臨床研究の実施に関す る医療上の有用性及び倫理性を科学的根拠に基づき総合的に審査できるよう」と、ここ はもともと入っていますが、倫理性を科学的根拠に基づいてというのもちょっと何かお かしいので、僕はこれこれができるようにというのは要らないのではないかと思ってい ます。というのは、倫理委員会の業務はその下の(2)のところで出てくるので、倫理 委員会はこれこれ以下の者をもって構成する、倫理委員会の業務は次のことである、と いうことで整理をすれば、余分な修飾語は要らないのではないかと思います。  それからもう一点、二号ですね。「当該申請に係るヒト幹細胞研究が対象とする疾患 に係る臨床医」ということは、これは案件ごとに倫理審査委員会の委員がかわるという 趣旨でしょうか。このままだとそうなりますよね。「当該申請に係る」ですから。IR Bの段階でそこまでする必要があるかどうか。 ○事務局  こちらで「当該申請」という言葉を加えたのですが、そうすることによって、未定稿 とちょっと意図が変わってしまったということですね。個別ごとになってしまったと。 それでありましたら、先生方の意図が違うのであれば、もちろん事務局としては未定稿 を重視していきたいとは思いますので、もう一回済みませんが御議論いただければと思 います。 ○位田委員  実際に計画ごとに委員を変えるとなるとIRBの方が大変だと思うんですよね。IR Bの方でエキスパートを倫理委員会の中に抱えていて、そのときに意見を聞くとか、も しくは小委員会システムをIRBの中でとって、その申請に関係するような臨床研究の 専門家に意見を聞いて、それを参考にしてIRBで議論をして決めるというのは、可能 だと思いますが、こう書いてしまうと実際に動かしにくいのではないかと思います。 ○高坂座長  そこら辺は、以前我々が議論して決めていた文章を、かなり忠実に守っていただいて いるがゆえにこうなっていると思います。それも以前は、「ヒト幹細胞臨床研究の対象 となる疾患に係る臨床医」というようになっているので、これをもう少し緩くしてもよ ろしいのではないかということですね。 ○中畑委員  「当該審査に係る」だけ抜けばいい。 ○高坂座長  要するにその分野に詳しい臨床家ということですよね。そういうことですから、文言 整理ということでよろしくお願いいたします。ではそこの倫理審査委員会については、 (1)(2)(3)(4)まで文言整理ということでよろしいでしょうか。  よろしければ、その次の(2)ですね。「倫理審査委員会は、次の業務を行うものと する」、ここは以前つくったものについて、文言を整理していただいたということにな ります。その文言を整理していただいたのが赤字で書いているところです。(2)の(1) (2)が文言整理ですね。(3)はもうそっくりそのままですか。そういうことですね。はい、 どうぞ。 ○位田委員  細かい話ばかり申し上げて恐縮ですが、例えば(1)は、倫理審査委員会の基本的な業務 というのは、やはり意見を提出することだと思いますので、これはここで一つ切って、 あとは記録を作成して保管するというのはある意味ではまた別の業務だと思います。4 つに分けていただいてそれぞれはわかりやすいのですが、もうちょっと細かくしてもい いのではないかなと、箇条書き的にやってもいいのではないかなと思っています。  (2)のところについても、研究機関の長から報告を受ける、必要な説明を求める、自己 調査を行う、意見を提出するというのが並んでいますが、これは必ずしも時系列的もし くはカテゴリー的に並んでいるのではないような気がします。というのは、(2)は基本的 に「臨床研究の進行状況及びその結果について研究機関の長から報告を受け」、今度は その次の「研究計画書を申請している研究責任者に会議への出席及び必要な説明を求め」 とありますが、これは申請している研究責任者ということでしょうから、まだ承認され ていないという趣旨で受け取っていいのですか。そうであれば、「進行状況及びその結 果について」という段階ではないので、むしろその前の段階ですから、進捗状況につい て「説明を求め」ることはもちろん必要だとは思いますが、(2)に入るのはやはり少し論 理的にはおかしい。  それから、自己調査というのは自分を調査するように読めます。みずから調査を行い というのはわかるのですが、自己調査というのは両方に読めますから、その辺が気にな っています。  それから、(5)のところで、これは前の合意事項で10年以上となっていますが、10年 以上とするのか、もう10年間で切るのか。10年以上とすると一体何年間保管するんだ という話になるので、指針としてはやはり最低何年間は保管しろと言っておけば、それ で各研究機関が10年以上置いておこうと思えばそれでもいいのだろうと思うんですけ れども、短いのは困ると思いますが、10年間は保管すると。 ○高坂座長  これは臨床指針はどうなっているのですか。 ○事務局  遺伝子治療臨床研究指針において、倫理審査委員会の規定はここからもともと未定稿 もとられたものかと思われるのですが。 ○高坂座長  以前、先生、我々はどういう議論をしましたですかね。10年以上とこれは書いてしま っていたのだけど。 ○位田委員  余り細かい議論はしていないという気がするのです。もう昔の話ですが、記録の保存 ということの意味が問題で、幹細胞治療の臨床研究をやるときに、要するに移植したそ の後どのぐらいフォローしておかないといけないかということに連動すると思うんです よ。これは遺伝子治療だって同じだと思うんですね。むしろ遺伝子治療の方が期間的に は長い期間、記録を保存しないといけないかもしれないなとは思っていますが。ただ、 幹細胞治療が本当に10年でいいのか。できれば15年ぐらいの方がいいのか。その辺は 私はちょっと判断がつかないものですから。 ○高坂座長  これはここで何年何年というのは即決まらないと思うので、遺伝子指針などちょっと ほかの例も検討して、もう一遍これは議論した方がいいと思います。やはりフォローア ップですね。要するにフォローアップという意味から、何年は最低限保存しておいたら いいだろうかということにかかわりますので。便宜上ここでは10年以上としておきます が、先生、いかがですか。 ○中畑委員  10年なら10年間、少なくとも10年間保存しなければならないということにした方が いいのではないですか。10年以上と言うよりも。 ○高坂座長  最低限10年ですか。少なくとも10年は保存する。 ○中畑委員  遺伝子治療だと研究終了後、少なくとも5年間保存しなければならないという規定に なっていますので。 ○位田委員  だから10年がいいか、5年がいいかという問題でもある。 ○高坂座長  こういうものはやはりフォローアップという意味から、5年というのはちょっと短い と思うんですね。やはり10年だろうと思います。もちろん見直しのときに、これは5年 にしても構わないということでも構わないですが、やはり現状では10年というのは押さ えておいた方がいいと個人的には思います。いかがですか。ではそうしておきましょう。 テンタティブに、少なくとも10年間は保存する義務があると。  今、位田先生から御指摘いただいた点、順番をまた少し変えた方がいいのではないか。 それから、やはり文言も少しおかしいところがあるという御指摘をいただきましたので、 事務局の方でそれを直していただきたいと思います。 ○位田委員  ほかにも細かいのがあるのですが、ちょっと事前にお送りできなかったので、また後 日にします。 ○高坂座長  細かい「てにをは」についてはメール等でやりとりしていただけると。お願いいたし ます。  それでは(5)まで終わったということで、次は「フォローアップ手続」、これは以前書 いたものについて文言を整理していただいた。それから、大臣の意見の求めの規定追加 に伴う修正をしていただいています。お目通しいただいて、いかがでしょうか。「中央 審査委員会」という言葉が消えて、かわりに大臣の規定というのが下に入っているため に、修正を加えたということになります。 ○位田委員  恐らく以前はこの辺は余り議論しなかったのではないかと思っているのです。倫理審 査の過程は余り議論をしていないので、合意しているようなものですけれども、合意の もとが余りなかったと思います。  それはそれとして、フォローアップというのは、どこからどこまでをフォローアップ と言うかというのがちょっとはっきりしていません。前に議論したときに、余りここは 検討していないということに帰着するのですが、その上の先ほどの倫理審査委員会の業 務の(2)のところで、進行状況及びその結果について報告を受けるという規定があって、 これはフォローアップではないのかという問題があると思います。つまり、審査委員会 の業務は業務でいいですけれども、ここはフォローアップの手続ですから、今書いてあ るのは、(1)は改善の報告を受けた場合に再審査をするというのがフォローアップで あるという理解ですね。(2)の「審査結果等については」というのは、これは当然再 審査の結果ということですね。そうであるとすると、これはフォローアップというより、 むしろ再審査なり研究計画の改善なりという話だろうと思います。  フォローアップは、一たん承認した研究計画がどのように行われているかというのを 見て、そこからフォローアップが始まる。つまり承認の直後からフォローアップが始ま る。フォローアップの段階で改善が必要だということが何らかの形でわかった場合には、 当然研究機関の長からこんな改善がありました、もしくは必要です、という報告が倫理 審査委員会に上がってきて、倫理審査委員会が審査することになる。それが再審査にな るんですかね。それで改善を求める、もしくは承認を取り消すというケースもあり得る と思うのです。その再審査は、もう一回厚生労働大臣の意見を求めるというプロシージ ャーに上がっていって、それがおりてくる。そこまではフォローアップですが、その後 どこまでフォローアップかという問題です。フォローアップ手続というのであれば、や はり最初から最後まで手続は書いておかないといけない。これは再審査の手続だけにな っているので、ちょっとこれだけだと困るかなという気はするのですが。 ○高坂座長  では、そこはフォローアップ手続というよりも再審査ですね。ということにしておく ということで、フォローアップはまたもうちょっと議論しなければいかんですね。どう ぞ。 ○川上参考人  ちなみにFDAの対応としましては、承認がおりるまでは先生がおっしゃるように未 承認ですから、これはまだ決まっていない未決状態ということになりまして、フォロー アップに関しましてはアメンダメントと言うのですが、1年に1回アニュアルレポート というのを当局に提出する必要がございます。 ○中畑委員  何年間ですか。 ○川上参考人  それはその臨床試験のINDというものが提出されている間ずっとです。それがイナ クティブという形になったときに初めてそれを出さなくてよいのですが、皆さん余りイ ナクティブにわざわざしないというか、アクティブにしておいた方が研究所としてもう ちでやっているんだよということを言えるので、ということが実際には多いのでござい ます。 ○位田委員  そうすると、例えば毎年報告を求めるかどうかというのが、ここに入ってくるという ことですよね。報告を求めて、それを例えば倫理審査委員会が審査じゃないですけれど も、それを読んでちょっとおかしいなと思ったら改善を求める。アメンダメントですね。 そういう形になる。 ○高坂座長  それではここは一応テンタティブに再審査ということに変えて、フォローアップ体制 についてはもう少し議論が必要だと思いますので、次回以降、しかるべきときにもう一 遍これを議論したいと思います。確かにこれまで余り議論をしていなかったところの一 つの分野です。ではそれでよろしいですね。これはもう一遍次回以降にやりましょう。  それから次、ここがまた中央審査委員会で、これはほとんど議論ができていないとこ ろだったのですが、いずれにしても中央審査委員会という言葉を厚生労働大臣の意見を 求めるという形に直す、これはいいかと思います。その厚生労働大臣の意見に関するこ とについて、遺伝子治療指針と同様の規定を適用してはどうだろうかということで、ず っとその遺伝子治療指針に倣って書いていただいているのが左にございます。それが延 々と続いていくわけですね。「厚生労働大臣の意見」、それから「重大な事態等に係る 厚生労働大臣の意見」、それから「厚生労働大臣の調査」といったところです。 ○川上参考人  一点だけよろしいですか。ここは多分薬事法の範疇にならないものですから、意見を 述べるということにしかならないと思いますが、本来ならばこれは厚生労働大臣が通達 あるいは公示というものを行政指導でするべきだと思うのですが、これは薬事法でない ので民事あるいは刑事の適法ということに将来的にはなるかもしれないけれども、今は 意見として言っておこうというだけのこと、ということですよね。 ○監視指導・麻薬対策課  医師の個人研究もすべて薬事法の中で取り込んでいくという、そこまでの判断という のは今世の中にはまだ存在しないものですから、そこまで私どもがどうこうという話で は多分ないだろうと思います。ただ、ここは行政指導の段階でこういったものを厚生労 働大臣に確認をとるということの一つの仕組みを、法的な仕組みではないですけれども、 指導レベルでの仕組みをつくろうということだろうというふうに理解はしているのです が。 ○高坂座長  この改定されたところは一応事前にお目通しいただいておりますか。これは親委員会 でも実は余り議論していないんですね。これでいいかどうかというのをここで決めてい くよりも、もちろんある程度のものを決めますけれども、やはりこれはもう一回親委員 会に最終的に諮る必要があるところの一つです。ワーキンググループの中でもある程度 まとめたいと思っていますので、もう一回この項目についてはよく読んでいただいて、 意見出しをしていただく。これをもう一遍次回に、再度ここはやりたいと思います。よ ろしいですか。この厚生労働大臣の意見等、ここは中央審査委員会が置きかわったとこ ろですので、もう一回読んでおいていただきたいと思います。これを次回もう一回やり たいと思います。  これをちょっと飛ばせていただいて、次の研究実施体制等はもう前回議論して、第1 の3へ移動ということで議論が終わっています。22ページについても第1の3(8)へ 移動等々、ほかのところへ移動したというだけです。これは議論いたしました。  次の第3章、これについては以前我々がかなり議論した点です。それを文言の整理等 をやっていただいているということで、22ページの一番下のところからいきたいと思い ます。第4章「ヒト幹細胞等の採取及び他の研究機関への提供」、ここでまた他の研究 機関への提供が出てきましたね。ここは事務局、どういう整理になっていますか。 ○事務局  これからまた整理させてください。申しわけありません。 ○高坂座長  そうですね。これは先ほど、他の研究機関へ提供というのは余りよろしくないという ことだったので。 ○事務局  本日の議論でここがかなり明確になりましたので、また整理して御提供します。 ○高坂座長  そうですね。これも直していただきたいと思います。  それでは、「ドナーの人権保護」にいきます。23ページ、そこでは一つはドナーの同 意です。そこの同意については文言の整理ということで、「ドナーの同意」という言葉 が消されているわけですね。ちょっと事務局、その改定の趣旨を簡単に御説明いただけ ますか。臨床指針と同様に、不利な立場にある場合の配慮規定を記載してはどうだろう かということです。 ○事務局  ここの削除は、「自由意思による同意を」というのを、ただ「インフォームド・コン セント」と書きかえただけでございます。あとは右側にございますように、不利な立場 にある配慮規定という形で、特に十分に配慮しなければならないというのを、これは臨 床指針と同レベルのものを入れたという形でございます。 ○高坂座長  これはきちっと書いているので特にだめということではないと思いますが、いかがで しょうか。 ○位田委員  よろしいでしょうか。ドナーに医学上の不利益、つまり例えば骨髄細胞などを取ると きはそれなりのリスクが伴いますので、リスクのことをここに書いておく必要はないの ではないでしょうか。2のドナーに対する説明事項にはもちろん書いてあるのですが、 しかしこれこれに関する事項について当該者の理解を得るようというのは、まさに説明 の中身の話ですので、中身の話も1に書いてあるとすれば、利用目的と個人情報の保護 と採取に関する事項というのは、恐らくどちらかといえば技術的な事項だと思うので、 むしろリスクがあればそのリスクもこの1のところに書いておくべきという気はしま す。そうでなければ、2で全部言ってしまって、2に定めるような説明事項を説明して、 同意を得るというのでいいのではないかなと思いますが。 ○高坂座長  なるほどね。リダンダントになるから、1の最初の方は要らないのではないかという 御指摘です。御指摘どおり簡潔にしましょうか。そこは今のを消して、2の方でカバー しているからもうよろしいということですね。 ○位田委員  それともう一つ、経済上または医学上の理由等により不利な立場にあるというのは、 理解はできるのですが、なかなか難しいだろうなという気がします。まず第一に医学上 不利な立場にあるというのはどういうことをいうのか。医者、患者の関係というのは有 利不利というふうには、そう言ってしまうとお医者さんにしかられるのではないかと思 いますが。 ○中畑委員  これをわざわざ取り上げた……。 ○事務局  先生、臨床指針にあるから外さないだけで。 ○中畑委員  臨床指針で何でわざわざこれを入れたのでしょうかね。 ○高坂座長  これも多分もう要らないのではないでしょうか。限りなくもとの文章に近づけた方が すっきりするかもしれませんね。特に後半の方ですね。 ○位田委員  細則なり解説なりに置くのは妥当だと思いますが、ちょっと指針の本文にこう書いて しまうと、何が不利なのかというのが問題になりそうな気がするのですが。 ○疾病対策課長  ただ、臨床研究指針の方には、いわば基本法のような臨床研究指針には、ちょうど皆 さんのページでいえば38ページになりますが、そこの「被験者からインフォームド・コ ンセントを受ける手続」の(2)にそのように書いています。したがって、我々として は当然臨床研究指針に書かれていることというのは、一般的にも御理解されている状況 であろうと。したがって、具体的にどういうものかというのはすぐ担当者が答えられな かったりするので、ここでベースになるようなことを書いてあるので、とりわけ重要な ことであろうということで「なお書き」で書いていったということです。 ○位田委員  趣旨はよくわかっているのですが。 ○疾病対策課長  だからそういうふうに書いていまして、基本的に今回もこれに埋めさせていただいた のは、臨床研究指針の方で言っていてこちらで言っていないものを補っていったという ようなことだったのです。細則あたりでいいというような、あるいはもうこういうのが 前提になっていて、この整理の仕方というのも、今まではこちらの臨床研究指針でない ものは極力入れましょう。いや、そうは要らないんだと。もう臨床研究指針は必ず読む ものだと。だからそれは省きましょうというふうに整理して書くのか、そこら辺が整理 の仕方としてありますが、もしもうこれは臨床研究指針は当たり前なのでということで あるならば、それは最初の方でそういうふうにうたっておいて、文章の重複は避けてし まうということに。 ○位田委員  その方が読みやすいのではないかなという気がしますが。 ○中畑委員  それは全部あれじゃなくて、どうしても重複した方がいいことはやはり述べた方がい いと思います。 ○疾病対策課長  そうですか。必要なところはですね。 ○中畑委員  同じ指針ですので、もちろん出た年数は臨床研究指針の方が先なので、これも広い意 味での臨床研究の一つの分野という見方もできますが、別の見方をすれば幹細胞だけを 特別のものとして取り出していて、その臨床研究指針の下にこれが来るという位置づけ ではないという解釈もできるので、だからそういった解釈の上に立つとすると、臨床研 究指針に述べられていることでも、最低限必要なことはこの中に盛り込んでおいた方が 僕はいいと思います。 ○疾病対策課長  幹細胞に非常に密接な事項についてはこちらにも入れて、それ以外については***。 ○中畑委員  最低限必要なことだけをこっちにも盛り込んでおくと。こっちしかなかなか読まない 人も多いと思いますから。 ○位田委員  それで結局、この不利な立場というのを入れておいた方がいいかどうかということを 判断するときに、どういうケースを想定して不利な立場と言うかなというのが判りにく いのです。患者さんとお医者さんの関係は一般的に有利不利とよく言われますし、私も ある程度はそう思いますが、他方で経済上というのはちょっとよく理解できなかったも のですから。具体的に幹細胞研究のときに経済上不利になり得るという場合がある程度 想定されて、そこはやはりちゃんとインフォームド・コンセントしないといけないとい うことであれば、書いておいた方がいいと思いますが。 ○疾病対策課長  もし特段こういうことが際だって必要でなければ、カットしてしまうということでよ ろしいですか。もし後で議論で必要があれば復活させる。 ○位田委員  だから重要なのは自由意思ということだと思うので、前の未定稿のところで「自由意 思による同意」と書かれていたのを、「自由意思による同意を文書により」として、「な お書き」に「自由意思の確保」というふうに落とされたので、そういう形になったとい うことだと思います。 ○中畑委員  前の「自由意思による同意を文書により得るものとする」という、ここはもう復活と いうか、この方がいいのではないですか。 ○位田委員  もしくは、不利な云々はちょっと除いて、「なお、その際、特に当該ドナーの自由意 思の確保に十分配慮しなければならない」と入れるのであれば、それはそれできれいな 形になるかなとは思いますが。 ○高坂座長  それは文言整理というか日本語の問題ですから、では事務局、今の議論を踏まえて、 特にドナー、経済上ですね、そこら辺を省いていただくということでお願いいたします。  では次、「ドナーに対する説明事項」、これはよろしいですね。文言の整理と、わか りやすくするために、「文書による説明と同意の取得」の次に「ドナーに対する説明事 項」の規定を記載してはどうだろうかということです。それは実際はどこですか。 ○事務局  これは先ほど未定稿においては、第1「ドナーの人権保護」の1.「ドナーの同意」 (1)「文書による説明と同意の取得」、 (2)「代諾について」、 (3)という ふうな順番でありましたのを、順番を入れかえさせていただいて、「文書による説明と 同意の取得」についてのまず総則がありまして、次に「ドナーに対する説明事項」、次 に「代諾者による同意」というように、項目をかえてあるということです。 ○高坂座長  項目をかえていただいているということですね。その2番の「ドナーに対する説明事 項」は、以前我々が議論したところとほとんど変わっていないということですね。それ で、ヒト幹細胞等の「等」を全部消していただいています。あとは文言の整理をしてい ただいているということになります。 ○位田委員  1つだけ。個人情報がどのように保護されるかという趣旨で、やはり個人情報の保護 というのを入れておいた方がいいと思います。(7)でカバーできないわけではありません が、やはり前から個人情報保護法がつくられたのでということも強調されていますので、 かつ上の先ほどの1の「ドナーの同意」のところでも、さっき削った方がいいと言いま したが、個人情報の保護というのも入っているものですから。 ○高坂座長  前回個人情報保護についてかなり議論しましたが、それはドナーのところは入ってい ませんでしたか。 ○事務局  個人情報の保護に関しましては「総則」の「基本原則」のところ、第1章第5の7に なりますが、ここのところで基本原則として個人情報の保護について記載されていると ころです。 ○位田委員  今議論をしているドナーに対する説明事項というのは、ドナーにこういうふうにして 個人情報が保護されますよ、あなたの情報は保護されますよ、ということを説明する項 目ですから。基本原則は臨床研究全体として個人情報を保護されるシステムができます よという話ですが、ドナーに対してそれはちゃんと説明はしないといけないだろうと思 います。 ○中畑委員  そうすると、これは(7)に「その他ドナー」とありますが、「その他ドナーの人権及び 個人情報の保護に関して」というような形に書きかえればいいのではないですか。 ○高坂座長  「その他ドナーの人権の保護や個人情報に関し」ですかね。人権の保護というのは個 人情報をいうのか。 ○中畑委員  人権と個人情報というのはちょっと違いますよね。 ○位田委員  人権と個人情報というのはほとんどかぶっている。 ○高坂座長  では単に「その他ドナーの個人情報の保護に関し必要な事項」、それでよろしいです か。では、そこはそんな文章に改めましょう。 ○北村委員  2番のところで、(5)の「無償による提供であること」、これはよくわかりますが、「た だし、提供に際し発生した実費相当分」、これはどういうことですか。私には実費相当 分という意味がわからない。 ○高坂座長  これは以前つくったものですが、だれが発言したのかな。 ○位田委員  よく言われているのは、例えばドナーになるために来る人の交通費とか日当とか。採 取にかかる費用はドナーに与えるというのは関係ないですね。一般的に言われているの は交通費と日当で、つまり仕事を持っている人はその時間休まないといけませんから、 それをカバーするという程度ですね。 ○北村委員  それは、交通費、日当などと例示しておいた方がよくわかるのではないかと思います が。 ○位田委員  細則とか。それは指針に書く話ではないとは思いますが。 ○高坂座長  では、日当、交通費などは細則に書きましょう。  次は、「代諾について」という言葉を、「代諾者による同意」という言葉に直してい ただいて、あとは文言の整理ということになっています。最初のところの言葉が消えて いますね。2行が消えて、「ドナー本人が説明を受け同意を与えることが困難な場合又 は単独で完全な同意を与える能力を欠いている場合において」という言葉を、「代諾者 の同意によりヒト幹細胞等──これも「等」が入っているよ。これも「等」を抜かなけ ればいけないですね。──の採取を行うことができるのは、以下の要件を満たすものに 限るものとする」という言葉にして、その要件を(1)〜(4)までに列記しています。 ○中畑委員  最初に省略したのは、2ページで「代諾者」とはという定義をしてありますからね。 「ドナー本人が説明を受け同意を与えることが困難な場合又は単独で完全な同意を与え る能力を欠いている場合において」というのは全く同じ文章なので、ここは省いていい ですね。 ○高坂座長  そうですね。そうなると条件を、文言の整理ではないですけれども、まとめていただ いているということになります。 ○位田委員  (5)に行ってよろしいですか。これは代諾者による同意の制度全体にかかわるのですが、 いわゆるコンセントとアセントというのを、日本語でどう言うかという問題です。特に アセントにかかわる部分で(5)のところでは、「当該ドナーの理解」という言葉が書いて ありますが、それでいいのでしょうか。代諾者はコンセントするけれども、未成年者で もある程度の年齢の人であれば、未成年者だから何も言わないというのではなくて、そ の未成年者のアセントが要るというのが一般的な考え方だと思います。理解ということ でいいのか。アセントを日本語にどう訳すかというのはなかなか難しい。「同意」と言 ってはいかんわけですから、「賛意」という言葉を使っている方もおられて、片仮名で 「アセント」と言っている人もいます、余り片仮名を使うのはよくないと思いますが。 例えばドナーの「承諾」とか。「承諾」と言ってしまうとこれもまた困るので、なかな か言いにくいんですけど。アセントも要るんだというのが(5)の趣旨なんですけどね。 ○高坂座長  では、そこの「理解」を、仮に「アセント」にしておきますか。片仮名に。確かにア セントというのは適当な日本語の訳はないですよね。 ○位田委員  臨床研究は「理解」です。 ○中畑委員  この場合は、代諾者からのインフォームド・コンセントを受けるとともに、当該ドナ ーからインフォームド・アセントを得ているということですよね。両方必要だと。理解 だとちょっと言葉が弱すぎるということで、当該ドナーのインフォームド・アセントを ……。 ○高坂座長  ちょっと「アセント」と書いておいていただけますか。 ○疾病対策課長  ここで臨床研究指針においては未成年の場合、理解が得られるよう努めなければなら ないと。「努めなければならない」と言っていて、こちらについては「理解を得ている こと」と言っている。一段上なんですね。そして、理解というものについての定義、ち ょっとアセントということが、今の法学的にどういうふうに整理されているのかよくわ からないですが、そのコンセント、アセントということが行為として手続上どの程度の レベルまで、認識の水準ですね、どこまで求めるかというのがきちっと整理されると非 常にいいのですが、しかしそういう整理されましたといった場合、言いたいことは臨床 研究指針よりもこの幹細胞については、2つの要素として程度、レベルを高い位置で求 めるのですよということになるわけです。すなわち、「努めなければならない」という ことを「得ていること」というふうに言って、そして臨床研究指針については「理解」 と言っているところを、さらにここを強く程度を狭めていくというのか、絞り込んでい くというのか。そういう2つ規制をしていくというようなことの考え方の整理というの は、ある程度必要だというところがバックボーンにあって、そういうことが言えるとい うように理解してよろしいのかということです。 ○高坂座長  以前の議論ではそうだったと思いますね。ただ、それはいろいろなほかのセルソース が入った上での議論だったので、より厳格なことが必要ではないかということがあった のだろうと思いますが、どうでしょうか。こういった幹細胞治療だから、ほかの臨床研 究よりも一段縛りを厳しくするために「理解を得ていること」としたというのは。 ○位田委員  私の整理が間違っていたら修正していただきたいのですが、臨床研究指針の38ページ にある「代諾者等からインフォームド・コンセントを受ける手続」というのは、未成年 者が患者さんであるケースですよね。つまり、治療を受ける立場にある人が未成年者だ から、同意する能力はないとみなされて、したがって代諾者、例えばお母さんならお母 さん、お父さんならお父さんが同意をして、本人も例えば15歳とか17歳とか以上だっ たら意思はある程度表示はできるというふうに考えて、アセントも要りますよと、こう いう話ですよね。だからコンセントとアセントと両方要るのだと。それで、代諾者はオ ーケーしたけれども、つまりコンセントしたけれども、御本人がそんな治療は嫌だと言 ったらできないはずですよね。ある程度の年齢以上の子供の場合は。  ところが、今議論しているのはドナーの話なので、ドナーというのは別に治療を受け るわけではないけれども、自分のところから幹細胞を提供するわけですよね。これはす べての場合かどうかわかりませんが、侵襲行為が何らかの形で伴うので、侵襲行為が伴 うのに代諾者だけの同意でよいわけではない。本人は理解したけれども嫌だというケー スが出るかも知れない。だからこれは臨床研究以上に、つまり治療していただくという 以上に、自分の治療ではないのにほかの人を治療するために自分の幹細胞を提供するわ けですから、当然アセントなしには提供させるわけにはいかないのだろうと思います。 これが私の理解ですが。 ○高坂座長  ごもっともな御理解だと思います。「得ていること」ということでよろしいでしょう か。一つ縛りを強くすると。 ○疾病対策課長  そうですね。あと、アセントを理解という言葉でなければ、どの程度の認識のレベル なのかというところ、いい言葉を、日本語をおつくりいただけるとありがたいですね。 ○位田委員  それがないから困っている。インターネットでいろいろアセントに関して探したので すが、ないですよね。ベルモント・レポートか何かで出てくるんですよね。それで、中 畑先生は小児科ですけれども、日本の小児科のお医者さんもアセントという言葉をお使 いになっていて、小児神経外科学会か何か忘れましたが、何かガイドラインをつくられ ているときに、コンセントとアセントという言葉を使っておられて、両方とも必要なの です。 ○高坂座長  「納得」、本人の「納得」を得ていること。どうですか。一番近いかもしれませんよ。 ○中畑委員  アセントがとれる年齢というのもありますよね。 ○位田委員  理解はしたけれども嫌だというケースも当然あり得るわけですよね。 ○疾病対策課長  「アセント」と書いておいて、括弧して「納得」と。 ○高坂座長  テンタティブにそうしておきましょう。もっと文学的に表現していただける方がいる かもしれない。  それでは、大変申しわけありません。20分超過しましたので、ここら辺で打ちどめに したいと思います。本当は4番のドナーの死亡、5番の手術等もスッといきそうですが、 その次に実は「組織バンク又は細胞バンクを用いる場合」というのがまたそこで出てき ますので、事務局、そこの新しい6番ですね、それも先ほどの議論から外れているとこ ろがありますので、そこも修正をかけていただいた上で、次回にそこから回したいと思 います。  それから、先ほどの中央審査、いわゆる厚生労働大臣による意見ですが、そこもよく 見ていただいて、次回までに意見出しをしておいていただきたいと思います。それで、 大ざっぱなことをここでまとめておきたいと思います。望むらくは次回でこれをほぼま とめてしまいたいと思いますので、御協力をよろしくお願いいたします。  事務局、次回はいつごろを予定していらっしゃいますか。 ○事務局  12月を一応予定しておりますが、本日岡野先生もいらっしゃいませんので、また追っ て調整させていただきたいと思います。 ○高坂座長  それでは以上です。どうもありがとうございました。                         ○照会先                         厚生労働省健康局疾病対策課                         tel 03−5253−1111                          担当:野上(内線2353)