05/09/29 第1回「厚生科学審議会科学技術部会ヒト胚研究に関する専門委員会」議事録                    第1回               厚生科学審議会科学技術部会             「ヒト胚研究に関する専門委員会」        日時:平成17年9月29日(木)16:00〜18:00        場所:経済産業省別館 827会議室 1.開会 ○斎藤補佐  それでは、定刻となりましたので、只今から「第1回ヒト胚研究に関する専門委員会 」を開催いたします。本日はお忙しい中お集まりいただきまして、大変ありがとうござ います。私は厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課の斎藤慈子と申します。座長 の選任までの間、議事進行を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいた します。  それでは、議事に入りたいと存じます。まず、専門委員会の委員の先生方のご紹介を させていただきます。本日は橋本委員がご欠席となっておりますが、本日ご出席いただ いております委員の先生方のお名前を資料2により五十音順でご紹介させていただきま すので、各委員の先生方からお一言ずつ、ご挨拶をいただければと存じます。  それでは、資料2に基づきましてご紹介をさせていただきます。座ったままで失礼さ せていただきます。まず安達委員。 ○安達委員  愛育病院の産婦人科におります安達と申します。生殖医療、不妊症というところが専 門でありまして、現在は愛育病院の方で周産期の方も兼ねてやっておりますが、産婦人 科医の立場、また生殖補助医療に実際に従事している者としての立場から何らかの力が こちらから発揮できればと思っております。よろしくお願いいたします。 ○位田委員  京都大学の位田でございます。資料4−2にあります「ヒト胚の取り扱いに関する基 本的考え方」を出しました。、総合科学技術会議の生命倫理専門調査会の委員をしてお りました。文部科学省の方では今、クローン胚の作業部会におります。よろしくお願い いたします。 ○小澤委員  自治医科大学の小澤と申します。遺伝子治療の研究や造血幹細胞移植などを行ってお りますが、大学の中にはES細胞の研究をしている者もおりますので、この領域には関 心を持っております。よろしくお願いいたします。 ○小幡委員  上智大学の小幡と申します。私は法律を専門にしておりまして、ヒト胚自身にかかわ るのは初めてなのですが、科学技術と法律の関係、あるいは個人情報保護などをやって おります。よろしくお願いいたします。 ○加藤委員  京都大学名誉教授の加藤尚武と言います。生命倫理学を主としてやっておりますが、 最近はドイツ、フランスの生命倫理学の紹介に力を入れていて、以前やっていたアメリ カタイプとだいぶものの考え方が違うので、その間どのように調整がつくのか、非常に 困った状況だなというように思っています。 ○笹月委員  国立国際医療センターの笹月でございます。私は専門としては遺伝医学、免疫遺伝 学、これらを専門としております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○鈴木委員  鈴木良子と申します。本業はフリーの編集者なのですが、プライベートの方で、不妊 の当事者としてフィンレージの会というグループに参加してまいりました。フィンレー ジの会自体は1991年の誕生になりますので、既に来年で15年目になるグループな のですが、私自身も30歳ぐらいでそのグループに参加いたしましたので、既にやはり 十何年ぐらい。会の活動の中でいろいろな方のお話も聞いてまいりましたので、そうし たことも踏まえて委員会に参加していきたいと思っています。よろしくお願いいたしま す。 ○中辻委員  京都大学再生医科学研究所の中辻です。私自身の研究分野は哺乳類の発生生物学なの ですが、最近はヒトES細胞株の樹立と分配を行っております。よろしくお願いしま す。 ○秦委員  国立成育医療センターの秦と申します。専門は病理学ですが、特に発生病理学に大変 興味を持っております。よろしくお願いいたします。 ○町野委員  上智大学の町野と申します。先ほどの小幡先生と同僚でございますが、刑事法を専攻 にしております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○吉村委員  慶應義塾大学の産婦人科の吉村と申します。専門は生殖医学でありまして、人クロー ン胚の作業部会にも参加させていただいています。よろしくお願いします。 ○斎藤補佐  ありがとうございました。また本日、文部科学省からは石井生命倫理・安全対策室長 がお見えでございますので、一言ご挨拶をお願いいたします。 ○石井室長  文部科学省生命倫理・安全対策室長の石井でございます。私どもの方ではES細胞の 樹立・使用の審査でありますとか、今お話も出ましたが、人クローン胚の研究・利用に 関する検討を行っているところでございます。また、生殖補助医療についてもこれから 検討を始めるということで準備を進めているところでございます。以上でございます。 ○斎藤補佐  ありがとうございました。続きまして、事務局のご紹介をさせていただきます。外口 大臣官房技術総括審議官でございます。 ○外口技術総括審議官  技術総括審議官、外口でございます。厚生労働科学研究全般を担当しております。よ ろしくお願いいたします。 ○斎藤補佐  白石雇用均等・児童家庭局審議官でございます。 ○白石審議官  白石でございます。ご紹介いただきましたように、雇用均等・児童家庭、その児童家 庭に母子保健がございますが、その関係の担当でございます。よろしくお願いいたしま す。 ○斎藤補佐  佐藤雇用均等・児童家庭局母子保健課長でございます。 ○佐藤課長  佐藤でございます。よろしくお願いいたします。 ○斎藤補佐  八神企画官でございます。 ○八神企画官  八神でございます。よろしくお願いいたします。 ○斎藤補佐  それでは、事務局のご紹介は以上でございますが、事務局を代表いたしまして外口大 臣官房総括審議官から一言ご挨拶を申し上げます。 ○外口技術総括審議官  本日は大変お忙しいところご参加いただきまして、誠にありがとうございます。皆 様、ご存じのとおり、昨年の7月に総合科学技術会議から出されました生命倫理専門調 査会の報告書、「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」でございますが、この中で人 クローン胚等を含めたヒト胚全体の取り扱いについて包括的な議論が取りまとめられて おります。厚生労働省に対しましては、「ヒト受精胚の研究目的での作成・利用」に関 するガイドラインの作成及び審査体制の整備が求められているところであります。これ に応えるため、今般、厚生科学審議会科学技術部会のもとに、ヒト胚に関する専門委員 会を設置させていただいたところであります。  我が国の出生時の65人に1人が体外受精によるものとの報告もあります。生殖補助 医療は今後もそのニーズを増していくものと思われます。厚生労働省といたしまして は、昨年度、特定不妊治療費助成事業を設けたところであります。また、不妊治療の安 全性確保に関する研究等を推進しつつ、ヒト胚の研究目的での取り扱いについてご議論 いただくために、本専門委員会を設置させていただいたところであります。  本専門委員会設置に先駆け、いわば本専門委員会の作業部会的位置付けで、厚生労働 科学特別研究でヒト胚の研究体制に関する研究として、吉村慶應大学教授を主任研究者 として、ヒト胚研究の枠組み構築のための論点整理を行っていただきました。この研究 成果等ももとにして、本専門委員会で十分にご議論を交わしていただきたいと存じま す。  また、後ほどご説明いただく予定でありますが、クローン技術規制法を所管して発生 ・分化・再生の基礎研究を管轄されております文部科学省におかれましては、現在、科 学技術・学術審議会生命倫理・安全部会の特定胚及びヒトES細胞研究専門委員会のも とに設置された人クローン胚研究利用作業部会において、人クローン胚作成の要件、作 成機関の技術的協力や取り扱いと管理の要件、未受精卵の入手の仕組み等について活発 な議論が進められているとお聞きしております。  文部科学省、また総合科学技術会議生命倫理専門調査会の事務局もお務めになられま した内閣府とも緊密に連携をしながら、これまでの経緯や議論も十分に踏まえ、厚生労 働省の立場から医学と医療の進歩、そして社会のニーズとも調和のとれた、ヒト胚・生 殖補助医療研究の今後の方向性を考えてまいりたいと存じますので、委員の先生方の皆 様のご理解、ご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○斎藤補佐  次に、配付資料の確認をさせていただきます。お手元にないものがございましたら、 ご指摘いただければと存じます。まず、資料という1枚の紙がございまして、こちらに 沿って念のため確認をさせていただきます。  資料1といたしまして、厚生科学審議会科学技術部会「ヒト胚研究に関する専門委員 会について」という1枚の紙がございます。  資料2といたしましては、本日お集まりの委員の皆様の名簿がございます。  資料3といたしましては、本委員会のおおよそのスケジュール案。  資料4−1、4−2といたしまして、「総合科学技術会議生命倫理専門調査会の報告 書」、まず上の方に抜粋という形でございまして、その後に報告書の全文という形で、 資料の4としてご用意させていただいております。  資料5−1から5−6といたしまして、資料の一覧にございますような形で、文部科 学省の方から後ほど石井室長からお話をいただく予定でございますが、ご提供いただい ている資料のセットがございます。  資料6といたしましては、同じく後ほどご発表をいただきます吉村委員からご提供の ヒト胚の研究体制に関する研究の資料。  資料7−1と7−2といたしまして、平成16年度厚生労働科学特別研究での「ヒト 胚の研究体制に関する研究」の概要を7−1、そして報告書全文といたしまして資料7 −2という形でご用意させていただいております。  本日、その綴りとは別に、一つ参考資料を綴りでご用意させていただいておりまし て、参考資料1から参考資料6までが文部科学省からご提供の資料。最後に参考資料6 といたしまして2枚ほど、厚生労働省と文部科学省の役割分担についての横置きの図が お付けしてございます。  本日、机上配布といたしまして、平成15年4月の精子・卵子・胚の提供等による生 殖補助医療制度の整備に関する報告書、この報告書の全文をご用意させていただいてお ります。こちらは資料とは別に机上配布という形で机の上にご用意させていただいてお ります。  本専門委員会でございますが、厚生科学審議会運営規程に準じまして、公開の形で行 われます。また、議事録につきましても、委員の先生方のお名前を明らかにさせていた だきました形で、厚生労働省のホームページ上に公開されますので、どうぞよろしくお 願いいたします。  また、お手元の机の上に置かせていただいておりますが、科学技術部会部会長による 委員の指名と新規の委員の先生方の辞令を茶封筒の中にご用意させていただいておりま すので、お持ち帰りいただくようにお願いいたします。  では、本日は第1回目の会議でございますので、ここで座長の選任をお願いしたいと 存じます。座長の選任の方法につきましては互選でお願いしたくお諮りを申し上げま す。いかがでございましょうか。 ○町野委員  私は笹月先生に座長をお引き受けいただきたいと思います。笹月先生は卓越した学者 でございますと同時に、長い臨床経験もお持ちの方です。そして、文部科学省の方の委 員会の座長も務められておられました。笹月先生が適任と思いますので、推薦いたした く思います。 ○斎藤補佐  ありがとうございました。只今、町野委員から笹月先生に座長をお願いしたいという ご発言がございましたが、いかがでございましょうか。  それでは、ご異議がないということでございますので、笹月委員に座長をお願いした いと存じます。これ以降の議事の進行をお願いいたしますので、どうぞよろしくお願い いたします。 2.問題提起と目標に関する共通認識 ○笹月座長  只今、座長を仰せつかりました笹月でございます。この懸案につきましては、国内は もちろん、国際的にも非常に注目を浴び、議論も多いところでございますので、どう か、この委員会が最終的には目的を達せますように、効率よく円滑に進みますよう努め させていただきたいと思いますので、委員の皆様のご協力、どうぞよろしくお願いいた します。  それでは、本日が第1回の会合ということですので、この専門委員会のそもそもの設 置の目的、どのようなことをどのように検討していくのか、あるいは最終的な目標はど ういうものかということに関しまして、例えば検討すべき課題、あるいは全体的なスケ ジュール、そういうことに関しまして佐藤母子保健課長より、よろしくお願いいたしま す。 ○佐藤課長  私の方から説明をさせていただきます。  只今、笹月座長からお話がありましたように、私の方から3点についてご説明をさせ ていただきたいと思います。1点は、この専門委員会が設置されるに至った経緯につい てでございます。2点目は、専門委員会におけます具体的検討課題が何になるのか。ミ ッションと言いかえてもいいと思いますが、その部分でございます。3点目が全体的な 進め方のスケジュールでございます。  まず、53頁の参考資料をご覧いただきたいと思います。  冒頭の外口技術総括審議官のご挨拶にもございましたように、この会議は、平成16 年7月に内閣府の総合科学技術会議で「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」で示さ れたものを受けて開催されるものでございます。図の中では一番上に載せております。  ここで政府の中での役割分担や指示関係が文部科学省と厚生労働省に対して出されま した。その指示を受けまして、文部科学省では人クローン胚の研究目的での作成・利用 に関する検討が行われ、平成16年12月以降、8回開催されたと承知しております。 一方、厚生労働省に対しましては、ヒト受精胚の研究目的の作成・利用に関する検討の ご指示があったと理解しております。具体的には、右側の2つ目の枠に書いてあります ように、生殖補助医療研究目的でのヒト受精胚の利用・作成、未受精卵の入手に係る手 続き、審査の体制、これらを検討するということです。  文部科学省と私どもの違いがあるとすれば、文部科学省にはすぐに検討に着手を入ら れたわけですが、厚生労働省の方は一度、学者の先生方に基本的な骨格、あるいは諸外 国の情勢をまとめていただいた方がいいだろうということになり、言ってみれば、勉強 でいうと予習のようなことをお願いしまして、これは後ほど、吉村委員からご説明があ ろうかと思いますが、平成16年度厚生労働科学特別研究、緊急研究のような形で、ヒ ト胚の制度的枠組みに関する研究をお願いしたわけです。この研究が初夏に完了しまし て、それをもとに「ヒト胚に関する専門委員会」で議論を開始することとなった次第で あります。この位置付けとしましては、53頁にお示ししておりますように、全体の関 係はこういう関係である、と思い出していただければと存じます。  55頁の参考資料をご覧いただきたいと思います。今、申し上げた53頁の内容につ いて中身で分類する図になっております。白と黄色で色分けをしておりますが、ヒト受 精胚を用いる場合の研究と人クローン胚を用いる場合の研究と二通りありまして、文部 科学省には専ら下の方をやっていただき、厚生労働省ではこれから上の白い部分、太い 矢印で書いてありますが、とりわけ生殖補助医療につながるような研究に当たっての留 意点やルールをご議論いただくということになっております。  参考のため、右端にある長方形の枠は何かと申しますと、生殖補助医療に関しては、 この「ヒト胚研究に関する専門委員会」を行う母子保健課と「ヒト受精胚を用いたヒト ES細胞に関する専門委員会」を行う疾病対策課が事務局となり、厚生科学審議会科学 技術部会のもとで、専門委員会を開いて議論をしていただいているというものでありま す。  一番下が、科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会の中で、「特定胚及びES細胞 研究専門委員会」、それから「人クローン胚研究利用作業部会」というものを開催して いただいておりまして、これは文部科学省生命倫理・安全対策室で担当していただいて いるというわけです。したがいまして、こうした受精胚やクローン胚を用いた生殖補助 医療、あるいはES細胞に関する研究が2つの省のそれぞれの課に分かれて検討してい るというわけでございます。その辺りの役割分担があるということを冒頭にお見知りお きいただきたいと思います。  さて、そうした中で、最初に全体の枠組みをご説明しましたが、経緯の中で、先ほど の53頁の中にありましたが、内閣府の総合科学技術会議にあります基本的考え方につ きまして、私どもの方から説明をさせていただくことになります。この部分につきまし ては、内閣府の所管でございましたし、また、この会議の基本的考え方の作成に当たっ ては、そのときに委員でご参加いただいた方もたくさんいらっしゃいますので、私より もご存じの方が多いかもしれませんが、本日は第1回目ということですから、多少丁寧 にその辺りの経緯を資料4−2を中心にご説明したいと思います。  資料4−2の中の1頁目でございます。「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」が どのような経緯でつくられることになったかというのがこの1頁目から、書いてあるわ けでございます。文章中心の書きぶりになっておりまして、なかなかわかりづらいかと 思いますが、この4−2という、基本的考え方の報告書の後ろの方になりますが、ブル ーの紙が2枚ありますが、その2枚目の方、一番最後の方のブルーの紙をあけていただ きますと、そこに参考資料とありまして、その参考資料の3というところ、14頁にな りますが、そこにこの基本的考え方が検討されるに至った背景、経緯が書いてありま す。なかなか委員の先生方には見づろうございますが、本文の方と参考資料3の14頁 というところを両にらみしながら、ご覧いただきたいと思います。  歴史的にたどっていきますと、そこにもありますように、旧科学技術会議時代にクロ ーン羊ドリー誕生の発表等があった後、旧科学技術会議に生命倫理委員会を設置するこ とになった。この辺りからが、こうしたクローンであるとか、ヒト受精胚を使った生殖 補助医療研究とかがスタートしたということが言えようかと思います。詳細は省きます が、平成12年11月には、こうした議論を踏まえて、クローン技術規制法というのが 成立したという時代背景になっております。  また、今度は15頁の右下に、2番、総合科学技術会議生命倫理専門調査会における 議論等というものがございますが、ここからが中央省庁再編の後の総合科学技術会議設 置後の動きでございまして、平成13年1月以降、4月には生命倫理専門調査委員会が 設置される、あるいは諮問に対して答申がなされる、少し飛ばしますが、平成13年1 2月には文部科学省が特定胚の取り扱いに関する指針を出すなどという形で進んでおり ます。次の16頁をお開きいただきますと、ここにも歴史的な部分が書いてございまし て、16−3、制度の整備というところ、ここはどちらかというとクローンやES中心 でございますが、平成11年から14年までの動きについて書いてあります。  もう一度、本文の1頁にお戻りいただきたいと思います。本報告書はこうした過去の 経緯を少し整理しておりまして、1頁目の1番の第2パラグラフの辺りですが、「本報 告書は、ヒト受精胚、人クローン胚等のヒト胚について、それらの位置づけや取り扱 い、研究における取り扱いを中心に検討し、社会規範の基本的考え方を示すこととした 」と。これはなぜこのようになったかというと、ヒトに関するクローン技術等の規制に 関する法律、平成12年にできたクローン技術規制法の附則第2条で規定され、ここで 議論すべきとの指摘を踏まえて検討したということが報告書の目的に書いてあります。  その下、2番目が検討の背景ですが、ここは先ほど年表のような形でご説明をしまし たので省略をいたしますが、旧科学技術会議の生命倫理委員会他でずっと議論をされて きたということが書いてございます。  次に2頁になりますが、この報告書の中では、クローン技術規制法に規定されるヒト 受精胚だけではなくて、人クローン胚などを含めたヒト胚全体について検討を行ったと いうことが書いてございます。  次に3頁をごらんください。この中では研究の現状が書かれているのですが、研究の 中で生殖補助医療についてかなり頁を割いて述べておりまして、3頁の「(3)科学研 究と医学応用」の「ア 生殖補助医療」とありますが、生殖補助医療、生殖補助医療研 究についてのこれまでの概括がしてあります。イのところは非常に重要でございまし て、この委員会の議論にも影響を及ぼしますので読み上げますが、一番最後のパラグラ フで、「現在まで、国は特段の規制を設けてこなかったが、日本産婦人科学会が会告 (昭和60年)を定めて自主規制を行っており、この会告はヒト受精胚の作成を伴う研 究やヒト受精胚の研究利用を容認し、研究の許容範囲の制限、研究の学会への登録報告 など、遵守事項を定めている。」こう書いてございます。この会告に基づいて、これま でに種々の研究が登録されているということが4頁にかけて書かれております。  次のES細胞研究は省略させていただきます。  5頁でございますが、この辺りから段々と、この生命倫理専門調査委員会の考えが出 てまいりまして、ヒト受精胚の位置づけについてどう考えるかということが書かれるよ うになります。真ん中辺りですが、ヒト受精胚を特に尊重して取り扱うべきだと。ヒト 受精胚を「人」と同様に扱うべきでないとしても、「人」へと成長し得る「人の生命の 萌芽」として位置づけるべきだと。特に尊重されるべき存在として位置づけるというよ うなことが書かれております。  この下にもヒトの受精胚の取り扱いの基本原則がありまして、一番最後の3行です が、「研究材料として使用するために新たに受精によりヒト胚を作成しないこと」など の原則が書かれております。  6頁になりますが、ここもこれからご議論いただくことにかなり重要な意味を持つ部 分でございます。「(3)ヒト受精杯の取扱いの基本原則」の「イ ヒト受精胚尊重の 原則の例外」。少し複雑な言い方をしております。その3行目にありますが、ヒト受精 胚の取り扱いについては、一定の条件を満たす場合には、たとえ、ヒト受精胚を損なう 取り扱いであるとしても、例外的に認めざるを得ないと考えられるということで、ここ ではっきりと明言をしているということであります。  では、その例外が許容される条件とは何かというのが「ウ ヒト受精胚尊重の原則の 例外が許容される条件」に書いてございまして、3つの条件が書かれております。十分 な科学的合理性に基づくこと、人への安全性に十分な配慮がなされること、そのような 恩恵やこれへの期待が社会的に妥当であることというようなことが書いてあります。い ずれにしても、適切な歯止めは必要であると書いてあります。  次に6頁の真ん中にあります「3.ヒト受精胚の取扱いの検討」の「(1)研究目的 のヒト受精胚の作成・利用」ですが、今も申し上げたような考え方に沿って、基本的に はヒト受精胚を損なう取り扱いは認められないが、例外の条件を満たす場合は容認し得 るということが書いてあります。  7頁の「ア 生殖補助医療研究目的での作成・利用」ですが、生殖補助医療の技術の 向上に貢献したこと等を考えますと、十分科学的に合理性があるとともに、社会的にも 妥当性があると書いてあります。  7頁下の「(2)医療目的でのヒト受精胚の取扱い」についても書いてあります。こ の委員会に直接には関係しないのかもしれませんが、医療目的というのも間接的には影 響してくると思いますので、この部分も重要かと存じます。7頁の一番下の「ア 生殖 補助医療」から始まりまして、その次の8頁でございますが、ここの4行目で、ヒト受 精胚のうち、移植予定がなく、最終的に廃棄されることになる余剰胚が生じることが問 題だということで、問題提起をされております。問題提起をした上で、次のパラグラフ で、種々の科学的合理性や社会的妥当性を認めた上で、余剰胚の発生は容認し得るので はないかというようなことが書いてあります。  次に、着床前診断、遺伝子治療、その他、それから未受精卵等の入手の制限、提供女 性の保護等がありますが、これもまたこの委員会で議論していただく上で非常に重要に なってくると思いますが、いずれにしても、みだりに未受精卵を採取することを防止し なければならないとか、インフォームドコンセントの徹底等が必要であるということが 8頁から9頁にかけて書いてございます。  9頁からはESの話とか人クローン胚の話になりますので、本日は省略させていただ きまして、お時間のあるときに見ていただくということにいたします。  少し飛びまして16頁。この頁以降は圧縮し、エッセンスにして抜粋したものです が、制度的枠組みというところが、この専門委員会に対するミッションが書き込まれて いるところであります。先ほどのような議論を踏まえて、基本的な考え方が書かれた上 で、17頁をごらんください。ヒト受精胚の研究目的での作成・利用というものがあり まして、社会規範が必要であるということが書かれています。真ん中辺りですが、当面 は国のガイドラインとして整備すべきであるが、当ガイドラインの遵守状況等を見守り つつ、国は新たな法整備に向けて、今後とも引き続き検討していくこととすると書いて ございます。  その下の辺りですが、ヒト受精胚の研究目的での作成・利用は、一応条件を限定して 認め得ることとしたと書いてございます。以下18頁までその話が出てくるわけです が、18頁の頭には、先ほども申し上げましたが、未受精卵の入手については提供する 女性の方への不必要な侵襲を防止する、あるいはインフォームドコンセントの徹底等を 義務づける必要があるとしております。  次のパラグラフこそが私どものミッションでございますが、この際、国は、生殖補助 医療研究のためにヒト受精胚の作成・利用を計画している研究がガイドラインの定める 基準に適合するかを審査するための適切な枠組みを整備するとなっております。文部科 学省及び厚生労働省はこれらを踏まえてガイドラインの具体的な内容を検討し、策定す る必要がある、このようにになっておりまして、ここにこの委員会のミッションが書き 込まれているということであります。以下、結びにつながっておりますので、省略をい たします。  次に、青い紙が挟み込まれておりまして、ここは添付資料という整理になっておりま すが、非常に重要なことが書き込まれておりますので、本当に概要だけ説明させていた だきます。最終報告書に対する補足意見が幾つかあります。まず1頁目は、病院の立場 から、医療法人社団アレスアライアンスの天使病院の先生が書かれています。  3頁目につきましては、生命倫理専門調査会の専門委員のお立場で、どちらかという とこの最終報告に対してやや批判的なご意見をちょうだいしております。非常に重要な 問題提起がなされておりまして、この基本的考え方が示されるに当たって、どのような 反対意見があったのか、反対の根拠は何かというのがかなり丁寧に書き込まれておりま すので、お時間のあるときにお読みいただきたいと思います。  少しめくっていただきまして、この反対意見に近いご意見が相当長く続いておりま す。  14頁でございますが、本日お見えの石井委員と位田委員の共同の意見という形でご ざいまして、この制度的枠組みという部分に絞り込みまして、かなり重要なご意見をい ただいております。ここも先ほど同様、なぜこの基本的考え方にやや批判的な意見にな らざるを得ないのかということが相当丁寧に書き込まれておりますので、お時間のある ときにご覧いただきたいと思います。  17頁は、こちらも本日お見えの、町野委員からの報告書に対するご意見でございま して、私の方でコメントをしていいのかどうかわかりませんが、やや肯定的なご意見と いうふうに承ります。いずれにしましても、17頁から19頁にかけましては、この基 本的考え方に対して肯定的にとらえるとすればどういう点なのか、どの点は問題がある のかということが書かれておりますので、お時間のあるときにご覧いただきたいと思い ます。  次の青い頁に入りまして、参考資料でございますが、1年前にまとめられたものでご ざいますので、時間が経過してしまいましたが、それでもなお有用性があると思います ので、これもお時間のあるときにご覧いただきたいと思います。  参考資料の2の部分は13頁でございます。ここには受精から出生に至る過程と、報 告書の中での胚の定義が書いてございます。14頁から参考資料3が始まりますが、こ こは歴史的な経緯について記述がしてあります。そこから18頁まではまた時間をおい て復習なり、お目通しいただければと思います。  本日お集まりの委員の先生方、既にご存じの方も多いかと思いますが、これら一連の 議論が19頁、参考資料4に、議論の構図という形で書かれております。左側は基本的 考え方に沿った文言の整理でございまして、右側はそれに対して異論のあるもの、異論 の内容というものが書き込まれた形になっておりまして、これもご一覧をいただくには 非常にいいものではないかと考えております。  次の20頁以降はアメリカ、ヨーロッパ、その他、各国の事情でございまして、本日 は後ほど吉村先生からもご説明がございますので、ここではこういうものが書き込まれ ているということだけに止めさせていただきます。  33頁以降は、この生命倫理専門調査会が何回行い、いつ頃開催されて、どんなヒア リングで、どんな方がお見えになったかというのが書かれております。  大変長い時間をとりましたが、ヒト胚の取り扱いに関する基本的考え方の歴史的経 緯、その中の内容について触れさせていただきました。いずれにいたしましても、私ど もがこの専門委員会にお願いしたい部分というのは、この基本的考え方で示されました 生殖補助医療というものが一応この基本的考え方の中で是とされた上で、是とされた上 でのルールとか、枠組みはどうあるべきなのかということをご議論いただく場になろう かと思います。  最後に全体的な進め方でございますが、これは資料1の中に書いております。何回開 催し、何カ月で議論するというようなことにはとらわれずにご議論いただければと考え ております。同等の、あるいは類似の会議を見ておりましても、やはりいろいろな意見 が出て、必ずしも意見が一致することばかりでないと承知しております。私どもも、十 分に意見が出尽くされて、合意できる部分が合意できた時点で報告書という形になれば いいのではないかと思います。  私どもとしましては、最初の2回〜3回にかかってもいいと思いますが、それぐらい は過去の経緯や他の部会がどういう議論をしたのか、あるいは特研のようなところでど ういう準備をしたのかということを披露させていただき、理想で言いますと1年ぐらい でそれなりの成果が出ればいいと思っておりまして、その辺りも委員の先生方のご議論 次第と考えております。  大変長くなりまして恐縮でございましたが、私の方からの説明でございます。ありが とうございました。 ○笹月座長  大変重い報告書の内容をわかりやすくご説明いただきまして、大変ありがとうござい ました。これらの委員会にご出席の委員の先生方もおられますので、もし今の佐藤課長 からのご説明に補足していただいて、今後の検討の進め方に役立てるような面等、その 他ありましたら、ぜひお聞かせいただければ、ご参考にさせていただきたいと思いま す。どなたかございませんでしょうか。 ○町野委員  この委員会のミッションのところですが、資料1のところを拝見いたしますと、ヒト 受精胚研究が中心で、研究目的での受精胚の作成に関することはこの委員会のミッショ ンではないということなのでしょうか。つまり、この内閣の報告書はかなり不分明で、 ヒト胚を研究目的でつくるということについて原則は禁止するという書き方になってい ます。しかし、後の方を見ますと、生殖補助医療の研究目的のためのヒト胚の作成及び 使用という文章になっておりまして、生殖補助医療の研究のため、つまり、例えば着床 率を高めるとか、そういうことの研究のために、受精胚をつくるということも許容する というようになっております。私の理解では、この内閣府の委員会は、それを許容する 趣旨で議論が推移したと理解しております。  他方では、それ以外の、難病研究のための受精胚の作成は現在のところ必要でないと して、それを許容しないことにしています。それを、イギリスの法律はその目的のため に受精胚をつくることは認めているのですが、それは現在のところ必要がないとして、 これが除かれている。しかし、そうだとすると、生殖補助医療研究のための受精胚の作 成については、ここのところで許容する、いわばガイドライン的なものは考えなくてい いということだと思います。そのことを確認と言いますか、ご議論いただきたく思いま す。 ○笹月座長  今のご質問は、いわゆる余剰胚ではなくて、ここにその研究をうたうので、研究のた めに新たにヒト胚を作成することをターゲットにするのかという、そういうご質問です ね。 ○町野委員  そのことも、やらなければいけないのかと思っていたわけですが、これを見ておりま すと入っていないけれども、大丈夫だろうかということです。 ○佐藤課長  確実なことは申し上げられませんが、また座長とも話をしてみますが、恐らく含めて 考えるべきなのかもしれないと現時点では思います。 ○笹月座長  それは議論の過程で明らかにしていくべきだと思います。本当に研究のための作成、 これまで臨床的に使われた場合の余剰胚ということをどう仕分けしていくのか。ここ で、研究の場合には例外的にそれを認めるなどということを前提に議論しようというこ とではないわけです。 ○吉村委員  昨年の7月の大手新聞報道を見たとき、私の理解では総合科学技術会議は生殖補助医 療研究のための胚の作成は認めるといった判断を下して、なおかつ、それは緩やかなガ イドラインでよろしいのではないかといった総合科学技術会議の判断だということで す。私たちの胚の取り扱いの研究体制に関しましても、胚をつくるということもテーマ になっていると私は認識していたのですが。そういった理解で私もこの報告書は何度も 何度も読んでいるのですが、先ほどのご説明を聞いておりますと、5頁の一番下には、 「研究材料として使用するために新たに受精によりヒト胚を作成しないことを原則とす るとともに」と書いてあります。  その文章と、私も余り気づかなかったのですが、17頁の下から2段目のパラグラフ の、「今回の検討において、ヒト受精胚の研究目的での作成・利用は、生殖補助医療研 究での作成・利用及び生殖補助医療の際に」、これは余剰胚でございますが、「余剰胚 からのES細胞の樹立の利用に限定して認め得ることとした」ということになっており ますから、生殖補助医療の研究であっても、誰からか卵子をいただき、精子を誰からか もらい、そして胚をつくってもいいというガイドラインを策定しなさいというような理 解で私はいて、この研究をやってまいりました。以上です。 ○位田委員  私も先ほどの吉村委員の理解でこの委員会に出させてきていただいておりまして、個 別意見を書いた私の個人的な意見は別といたしまして、この総合科学技術会議の報告書 は、原則は先ほど吉村委員の仰ったとおり、研究目的で胚をつくってはいけないという ことです。しかし、6頁にその例外という形で示されておりまして、これは先ほど課長 からご説明のあったところですが、一定の条件を満たせば例外が認められる。その上で 生殖補助医療研究についてはヒト胚を作成してもよろしいとなっています。ただ、どう いう条件で、もしくはどういう方法でという問題はもちろん残っていますが、そういう 形で結論としては認めたと。  認めたことの、ある意味では理由というか、背景としましては、これまで日本産科婦 人科学会が会告でもって、明文で胚をつくってよろしいとは書いていなかったのです が、現実に胚をつくる研究を示唆するようなと申しましょうか、それを含んだ表現を使 って会告を書かれております。また、実際に産科婦人科学会に登録されている生殖補助 医療研究のリストを見ますと、明らかに胚をつくることが含まれているという内容のも のでありましたので、いろいろな現状及びこれからの問題等も含めて、生殖補助医療研 究のために胚をつくってもよろしいといたしました。ただし、それにはちゃんとガイド ラインをつくりなさいと。  私は、個人的には法律をつくった方がいいという意見ですが、それはさておいて、産 科婦人科学会のガイドラインに任せたらどうかという意見もございましたが、それでは 実効性に疑問があるので、国の方で生殖補助医療研究のために胚をつくることについて も含めてガイドラインをつくりなさいと、そういう結論だったと思います。それに基づ いてこの委員会がつくられたのだろうと私は思っております。 ○笹月座長  今のお二人の委員からのご説明で明快になったと思いますが、作成、それからその利 用というところのガイドライン、その作成のところは新たな、いわゆる生殖補助医療そ のもののためだけではない、生殖補助医療を推進する研究のための作成ということでの 研究の進め方、それのガイドラインの作成という了解でよろしいですか。 ○町野委員  ということは、この委員会のミッションの中にそれが加わっているという理解でよろ しいでしょうか。ガイドラインをつくるにはそちらも含んだガイドラインをつくらなけ ればいけないということですね。わかりました。 3.関係者からのヒアリング ○笹月座長  ほかに何かございますか。  それでは、課長からの説明にもありましたように、時間を限定するわけではありませ んが、1年ぐらいかけてヒト胚の作成・利用に関する、そのやり方、ガイドライン、そ れを審査する制度の確立ということを目標として検討を進めていきたいと存じます。 今、質疑応答をいたしましたが、これまで既に決定したこと、現在行われているES細 胞、あるいはヒト胚、ヒト幹細胞、それを用いた研究、あるいはそれに関するガイドラ インの作成・検討、そういうものを十分参考にしながら議論を進めていかなければいけ ないと存じます。そのためには、それらの周辺を取り巻く研究、あるいはそれを対象と した委員会と私どものこの委員会とのミッションを常に明確に区別しながら、あるいは 意識しながら議論を進めていかなければならないだろうと思います。そのためには、ほ かの議論は、関連しておりますので、全くこの会での議論の対象としないというわけに はいきませんが、なるべく方向を集約しながら議論を進めさせていただきたいと思いま すので、どうぞご理解よろしくお願いいたします。そういう進め方、背景ということで 特にご意見、ご質疑、ございますでしょうか。よろしいでしょうか。  それでは、先ほどの経緯の説明の中にもありましたが、人クローン胚の研究を目的と した作成・利用、あるいは人クローン胚から樹立されるヒトES細胞の樹立や使用に関 する案件につきまして、必要な枠組みということに関しまして、既に検討をされており ます文部科学省からお話をお伺いしたいと思います。文部科学省の生命倫理・安全対策 室の石井室長にいらしていただいておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。 ○石井室長  それでは、「文部科学省におけるヒト胚に関連した生命倫理に関する取組みについて 」ご説明させていただきます。資料5−1から5−7までございます。基本的には資料 5−1に沿ってご説明申し上げます。  まず、「ヒトに関するクローン技術等に関する規制について」ということで1番目に 書いてございます。制定経緯として(1)に書いてございます。先ほども少しご紹介が ございましたので、簡単に申し上げますと、平成9年2月、クローン羊ドリーの誕生以 降、旧科学技術会議で生命倫理委員会が設置されまして、クローン小委員会、ヒト胚研 究小委員会が設置されました。それで検討が進められまして、平成11年12月にクロ ーン小委員会の報告書がまとまっております。この中で、生命倫理委員会がクローン技 術による人個体の産生等について決定してございます。  報告書等のポイントとして真ん中の方に書いてございますが、人クローン個体の産生 については、法律により罰則を伴う禁止がなされるべきということ、人クローン胚の研 究については、移植医療等に有用性が認められるが、人の生命の萌芽であるヒト胚の操 作につながる問題や人クローン個体産生につながるという問題があることから、規制の 枠組みを整備することが必要であると。この時点で、規制の形態としては罰則を伴う法 律による規制よりも柔軟な対応が望ましいとしつつ、ヒト胚研究小委員会でのさらなる 検討に委ねるということになってございました。人と動物のキメラ個体やハイブリッド 個体の産生は、人クローン個体産生を超える問題を有する行為であり、全面的に禁止す べきということがこの報告書のポイントとして挙げられます。  その後、平成12年3月でございますが、ヒト胚研究小委員会の報告書がまとまりま して、報告書のポイントでございますが、人クローン胚、キメラ胚及びハイブリッド胚 を作成・使用する研究は原則として行うべきではないが、科学的な必要性のある場合に 限り、厳格な審査により個別に妥当性を判断する余地があるということ、先ほどのクロ ーン小委員会の結論と途中段階のことは少し異なってございますが、人クローン胚等の 規制の枠組みはクローン個体産生を禁止する法律に位置づける必要があるということ で、クローン胚につきましては法律による規制ということがこの報告書の中で示された ところでございます。  2頁目にまいりますが、平成12年4月に通常国会に法案が提出されまして、一度廃 案になりましたが、12年10月、臨時国会で法案が再提出されまして、12年11月 に「人に関するクローン技術等の規制に関する法律」が成立したということでございま す。  この法律の内容でございますが、「特定胚のうち、人クローン胚、ヒト動物交雑胚、 ヒト性融合胚及びヒト性集合胚を人または動物の胎内に移植することを禁止する」とい うことがまず一番重要な点でございまして、これについても罰則が定められているとこ ろでございます。  もう一つは、特定胚の適正な取り扱いの確保のための措置を規定するということで、 いわゆる研究利用などはこの中に入ってまいりますが、指針ということで、「文部科学 大臣は特定胚の取り扱いに関する指針を定めること」、遵守義務として、「特定胚の取 り扱いにおいて、指針を遵守する義務」というものを定めてございます。  特定胚の作成、譲受または輸入に際しまして、文部科学大臣に届け出る義務を設けま して、この届出の場合、届出後60日以内の特定胚の取り扱いまたは届出事項の変更の 禁止をしまして、この60日の間に文部科学大臣の方で指針に適合しないという場合に は計画変更、廃止措置等を命令することができることになってございます。  また、措置命令ということで、「届出をした者の特定胚の取り扱いが指針に適合しな い場合、中止、改善措置等を命令する」という規定がございます。また、その他として 個人情報の保護、報告の徴収、立入検査などを規定しているところでございます。  また、この法律の附則の中で、先ほども出てまいりましたが、「ヒト受精胚の在り方 に関する総合科学技術会議等における検討の結果を踏まえ、この法律の施行の状況、ク ローン技術等を取り巻く状況の変化等を勘案し、この法律の規定に検討を加え、その結 果に基づいて必要な措置を講ずること」という附則が定められてございまして、この附 則に基づきまして、先ほどの総合科学技術会議の検討がなされたところでございます。  今の法律の特定胚に関する指針でございますが、1−2という中で書かれてございま す。経緯といたしましては、平成13年8月、法律に基づいて文部科学省が指針案を総 合科学技術会議に諮問いたしまして、3頁目にまいりますが、13年11月に答申とし てございます。この際、「動物性集合胚を除く特定胚の作成を認めず」ということで、 その他の特定胚、この中にクローン胚などございましたが、「総合科学技術会議のヒト 胚の在り方に係る議論を踏まえて今後検討する」ということになったところでございま す。13年12月、この答申を受けまして、「特定胚の取扱いに関する指針」が告示さ れ、運用が開始されているということでございます。  この特定胚の指針でございますが、具体的な内容は、特定胚の作成の要件といたしま して、特定胚の作成の限定をしてございます。第1条、「特定胚を用いた研究以外の方 法では得られない科学的知見が得られること」、「作成者が十分な技術的能力を有する こと」というのに限定されているところでございます。また、「ヒト細胞由来の臓器の 作成に関する研究を目的とする動物性集合胚の作成以外の特定胚の作成を当面禁止する 」ということが定められてございます。また、「細胞の提供者からは書面により同意を 得ること」、「細胞の提供は無償で行われるべきこと」などが定められてございます。  また、特定胚の取り扱いの要件でございますが、「特定胚の譲受は、譲り受けようと する者が十分な技術的能力を有するとともに、無償で行われる場合に限られること」で ありますとか、「特定胚の輸入及び輸出は当面禁止する」ということ、「特定胚の取り 扱いは原始線条があらわれるまでに限られること」、「特定胚の人または動物の胎内へ の移植の禁止」といったことが定められているところでございます。  また、特定胚の取り扱いに関して配慮すべき手続きとしては、「文部科学大臣への届 出前に機関内の倫理審査委員会の意見をきくこと」、「特定胚の取り扱いの成果の公開 に努めること」といったことが定められております。  以上がクローン技術規制法に基づく特定胚の研究利用に関する規定でございますが、 今のところ、動物性集合胚のみということでございますので、具体的にこれに基づく届 出というのが出されたものはございません。  2番目といたしまして、ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針でございます。こ れも先ほどの経緯とダブってございますが、平成10年11月、ヒトES細胞の樹立が 米国において発表されたということを受けまして、10年12月からヒト胚研究小委員 会の中で議論が開始されたということでございます。そして平成12年3月にヒト胚研 究小委員会の報告書がまとめられたということでございます。  4頁目に報告書のポイントが書いてございますが、この中で、「ヒト胚は人の生命の 萌芽としての意味を持ち、人の他の細胞とは異なり、倫理的に尊重されるべきであり、 慎重に扱わなければならない」という考え方が示されてございます。先ほどの総合科学 技術会議の報告書でも、基本的にこの考え方が踏襲されていると理解してございます。  また、「ヒト胚の研究利用については、医療や科学技術の進展に重要な成果を生み出 すための研究の実施が必要とされる場合には、余剰胚を適切な規制の枠組みのもとで研 究利用することが一定の範囲で許容され得る」ということ。「ヒト胚性幹細胞を扱う研 究は、その樹立の過程でヒト胚という人の生命の萌芽を扱うという倫理的な問題はある ものの、ヒト胚自体は現在のところ法的な権利主体とまでは言えないこと、ヒト胚性幹 細胞それ自体は個体の産生につながることはなく、その樹立及び使用に際して重大な弊 害は生じるものとは言えないことから、罰則を伴った法律による規制が不可欠なもので はない」ということで、ここでクローンとは異なりまして、法律による規制が不可欠で はないという考え方を示してございます。  また、この関係で、「ヒト胚性幹細胞の研究は、まだ端緒についたばかりであり、実 績もほとんどない分野であるということから、技術的な進展に適時に対応していくこと が必要であり、研究者の自主性や倫理観を尊重した柔軟な規制の形態を考慮することが 望ましい」ということが示されまして、これを受けまして、文部科学省におきまして は、法律による規制ではなくて、指針として整備するという考え方になってございま す。  クローン技術等規制法とは別に、平成13年4月にES細胞の指針を総合科学技術会 議に諮問いたしまして、13年8月に答申をいただいて、14年9月に「ヒトES細胞 の樹立及び使用に関する指針」を告示して、運用しているところでございます。  この指針の概要でございます。指針の適用範囲でございますが、これは「すべてのヒ トES細胞の樹立及び使用に適用する」ということ、「当分の間、基礎的研究に限定す る」ということが書かれてございます。また、ヒト胚及びヒトES細胞に対する配慮と しましては、先ほどのヒト胚小委員会の報告書の中にもございましたように、ヒト胚は 人の生命の萌芽としての意味を持つということから、倫理的に尊重されるといった考え 方が書かれているところでございます。  また、手続きでございますが、ES細胞の樹立または使用についての計画について科 学的妥当性及び倫理的妥当性について、まず機関内の倫理審査委員会で審査をいただい た後、国の方に確認の申請をしていただくということで、二重の審査という体制をとっ ているところでございます。樹立については、さらにこれに加えまして、樹立機関がヒ ト受精胚の提供をしていただく提供医療機関において、さらに倫理審査委員会での審査 をしていただき、了解をいただくということを要件として挙げているところでございま す。また、研究の進行状況・完了などについて機関内の倫理審査委員会に報告をいただ くとか、国に報告いただくといった規定が書かれてございます。また、研究成果は原則 として公開ということが規定されてございます。  ヒトES細胞の樹立ということの樹立に関する規定でございますが、樹立の要件とし ましては、5頁目にまいりますが、「使用の方針が示され、当該方針が新たにヒトES 細胞を樹立することの科学的合理性及び必要性を有すること」といったことが示されて ございます。また、樹立機関の基準について、「研究実績、研究設備、技術的能力、倫 理審査委員会の設置」といった要件が示されております。樹立機関の業務でございます が、「ヒトES細胞の樹立、維持・管理、使用機関への分配」。使用機関への分配につ いては無償で行う。また、使用機関には原則、分配することを義務づけるといったよう な形の規定がございます。樹立の用に供されるヒト胚の要件でございますが、「無償提 供」、「凍結された生殖補助医療の余剰胚に限定」、「適切なインフォームドコンセン トを受けたもの」といった要件が書かれてございます。  樹立機関がヒト受精胚の提供を受けるときの提供医療機関でございますが、「ヒト受 精胚の取り扱いに関する実績・能力、倫理審査委員会の設置、個人情報保護のための措 置」といった基準が示されております。また、「ヒト受精胚提供時における適切なイン フォームドコンセントの取得」ということも基準に書かれてございます。  続きまして、ヒトES細胞の使用でございますが、使用の要件としては2つのことが 書かれてございます。以下のいずれかに資する基礎的研究を目的とするということで、 1つ目は「ヒトの発生、分化及び再生機能の解明」、2つ目は「新しい診断法、予防法 もしくは治療法の開発または医薬品等の開発」といったことでございまして、さらに 「科学的合理性及び必要性を有する」といった要件が示されてございます。また、「個 体産生、胚や胎児へのヒトES細胞の導入、生殖細胞の作成を禁止する」といった禁止 事項が掲げられてございます。また、ヒトES細胞については使用機関から再分配する ということを禁止するということ、ES細胞から分化誘導してできた分化細胞について も、当分の間はES細胞の使用とみなすといった規定がございまして、原則、同じ扱い を求めているところでございます。使用機関の基準については、「研究実績、研究設 備、技術的能力、倫理審査委員会の設置」といった基準を掲げてございまして、これに 基づいて、こういった個々の要件について、国の方でも、また各機関の倫理審査委員会 でも、この指針の適合性について審査をいただくということになっております。  「(3)指針に基づく文部科学大臣の確認の状況」でございます。これは資料5−5 の方に具体的にリスクがついてございますが、これまで、樹立計画については1機関1 件。本日、中辻先生が来られてございますが、京都大学の再生医学研究所の1件が既に 樹立計画として確認されているところでございます。また、使用機関については、平成 17年8月末現在で11機関23件。その後、1件さらに確認してございますので、9 月に入った段階では12機関24件ということになりますが、確認されているところで ございます。  資料5−1に戻りまして、指針の見直しということでございます。指針の中には、附 則の中で、研究の実施の状況等を踏まえた指針の見直しについて規定がございまして、 この規定に基づいて平成15年12月から指針の見直しの検討を行っているところでご ざいます。現在、議論されている主な論点としては、ヒトES細胞の分配のあり方でご ざいますとか、研究者、技術者等が有すべき知識・技能、これは審査の中でたびたび議 論になっているということで挙げてございます。さらに、合理的な審査のための指針の 見直しといった議論が今なされているところでございます。以上がESの指針でござい ます。  6頁目にまいりまして、総合科学技術会議の意見具申「ヒト胚に関する基本的考え方 」を踏まえた対応ということでございます。経緯といたしましては、先ほどもご説明が ございましたが、総合科学技術会議の意見具申の中でクローン胚の研究目的の作成・利 用について考え方が示されてございまして、この中で人クローン胚の研究目的の作成・ 利用を限定的に容認しているところでございます。この中で必要な枠組みを整備するた めに、クローン技術規制法に基づく特定胚指針、先ほどの特定胚指針は動物性集合胚に 限定されてございましたが、これを人クローン胚について行うというのに伴いまして、 この特定胚指針を改正するということ、必要に応じて国のガイドラインで補完するとい うことがミッションとして示されてございます。  また、人クローン胚から樹立したヒトES細胞の使用について、現在のESの指針で は、これは前提とされておりませんが、人クローン胚から樹立したものを前提として、 現行のES指針を改正するということで対応するということがミッションとして掲げら れてございます。  この意見具申を受けまして、文部科学省の方では特定胚及びヒトES細胞研究専門委 員会のもとに人クローン胚研究利用作業部会を設置いたしました。これは昨年の10月 でございます。それから、人クローン胚の研究目的の作成・利用に係る指針の改正に向 けた検討を行ってございます。  「(2)審議経過」でございますが、平成16年12月以降、これまで7回、作業部 会を実施してございます。これまでのところ、主として関連する研究についてのヒアリ ングを行いまして、主要な論点に関し検討を進めているところでございます。  これまでに実施した主なヒアリングは、具体的には、「ヒトES細胞の研究の現状と 問題点」、「動物のクローン技術の研究の現状、応用、問題点について」、再生医療の 中のほかの治療法の状況といたしまして、「組織幹細胞を使った研究の現状と問題点 」、「骨髄間質細胞研究の現状と問題点について」、「特定疾患、いわゆる難病」とい うことの範囲についてお話を伺っているところでございます。また、クローン胚を使っ た研究が進んでおります韓国における規制の状況、研究の状況について、韓国のMoon教 授にお越しいただきまして、お話を伺ったところでございます。もう一つの大きな問題 としましては、未受精卵の入手、こちらの検討とも非常に関係してまいりますが、未受 精卵の入手のあり方について、その提供の可能性、提供者の負担やリスク、適切なイン フォームドコンセントのあり方といった点についてお話を伺っているところでございま す。  これまでの議論の状況といたしましては、特に重要なものとして、大きく2つ総論的 な議論が必要なものとして考えられてございまして、まず一つは、人クローン胚の作成 ・利用の目的、これは総合科学技術会議の意見具申の中では、ほかに治療法のない難病 に限るということが掲げられてございます。この難病等の範囲についてが一つの論点で ございます。  もう一つは、未受精卵の入手のあり方ということで、意見具申の中で掲げられている 方法、生殖補助医療の方で出てくる未受精卵または非受精卵、そして摘出卵巣という3 つについて、どういったものが入手できるか、その場合、どういう考え方で入手するの か、また、総合科学技術会議の意見具申の中ではボランティアについては原則認めるべ きではないと掲げられてございますが、その原則認めるべきではないというものについ て、例外的なものがあるのか、ないのか、そういった点について議論をする必要がある のではないかということで、こういった点についてまず議論を深めて、基本的な考え方 をまとめるということで、今議論を進めているところでございます。  一応、資料5−1については以上でございまして、5−1から7について、それに関 連するものが書いてございますが、これについては省略させていただきます。以上でご ざいます。 ○笹月座長  どうも大変ありがとうございました。これまでの経過についてご報告いただきました が、何かご質問ございますでしょうか。生殖補助医療研究のためのヒト受精胚の作成・ 利用ということに関するガイドラインの策定というものが文部科学省、厚生労働省、両 省に求められているわけですが、文部科学省としてのこの問題に関する検討の進め方と いうものはどのように考えておられますか。 ○石井室長  説明いたしませんで申しわけございませんでした。私どもの方でも、総合科学技術会 議の意見具申の中で、生殖補助医療研究についてガイドラインの検討というのは宿題に なってございます。私どもの理解では、生殖補助医療研究ということであれば、基本的 には病院の中でなされるものという理解をしてございますが、ただ、その中で、提供を 受けたヒト受精胚でありますとか、卵子・精子などを使った研究というのは、研究機関 においても行われる可能性があるということから、私ども文部科学省でも厚生労働省と 連携をとって、このガイドラインの検討をしていかなければならないと考えてございま す。このため、近く検討に着手したいと考えてございまして、その中では厚生労働省さ んの検討、この委員会との考え方も合わせながらやるように、連携をとって進めていき たいと考えております。以上でございます。 ○笹月座長  どうもありがとうございました。どなたか、ご質問ございますか。この委員会の検討 に際して非常に重要なことが先ほどちょっと述べられましたが、いわゆる未受精卵の入 手法と言いますか、この件に関しては何か特段意見が固まりつつあるとか、そういう状 況でしょうか。 ○石井室長  後ほど、吉村先生からも多分お話があると思うのですが、私どもの検討の場でも、こ れまで吉村先生から可能性のあるものについてのお話をいただきました。私どもの検討 の中では、実際に生殖補助医療をやられているクリニックの先生からもお話ししていた だきました。今までのところ、それぞれについて具体的なご紹介をいただいて、いろい ろな問題点等、出していただいたところでございますが、まだこれらについて、具体的 にどうするかというところまで議論は進んでいないところでございまして、これからそ ういった点について議論が本格化すると私どもでは考えてございます。 ○笹月座長  どうもありがとうございます。ほかの委員の方から何か。 ○町野委員  質問なのですが、文部科学省所管のES指針にしろ、特定胚指針にしろ、これは最終 的に総合科学技術会議の意見も聞くということになっておりますが、厚生労働省の方で これから新しく指針をつくろうということになるのですが、恐らく同じ手続きによらざ るを得ないと思いますが、そのような理解でよろしいでしょうか。 ○佐藤課長  現時点ではっきりしたことは申せませんが、この会を開くに当たりまして、総合科学 技術会議と事前に相談をしたのですが、総合科学技術会議としても決めていないと。必 ずしも同じスタイルにするかどうか決めていないという意見だったと理解しておりま す。 ○町野委員  これはかなり重要な問題でして、前のときにこの指針がつくられたとき、省庁の縦割 りの関係、今回、文部科学省と厚生労働省、当時は厚生省だとか、そういうことだった のですが、ばらばらにつくっていいのかと。もしかしたら、国が一方でやった方がいい のではないかという議論があったので、それは今の行政的な体制ではできないので、今 のような総合科学技術会議のところで最終的な意見の調整を図るという格好にしたわけ ですから、今回の厚生労働省の指針だけはそれに乗らないというのは、理屈としては全 然合わないことだろうと思います。 ○笹月座長  ほかにどなたか、ご意見ございますか。よろしいでしょうか。それでは続きまして、 今回検討を行いますヒト胚研究ガイドラインの基盤ともなるべき研究を既に行われまし た吉村委員、これは厚生労働科学研究費の中の特別研究というのがございますが、そこ で研究・検討を進められまして、これが今後の検討を進める上で非常に重要な資料で、 基盤的な情報を提供するものだと存じますので、ひとつご報告をお願いいたします。 ○吉村委員  只今、座長の方からお話がございましたが、ヒト胚研究体制に関する研究ということ で、特別研究事業ということで補助金をいただきまして、半年少々でございましたが、 その間にまとめたことを本日報告させていただきます。  パワーポイントを用意しましたので、こちらを見ていただきたいのですが、これは我 が国の生殖補助医療の歩みでございます。後から見ていただければよろしいのですが、 昭和24年に、AIDと申しまして、人工授精児が誕生したわけであります。  イギリスでは1978年だったのですが、日本でも1983年に東北大学で体外受精 児が誕生しました。その後、余り大きな問題はなかったのですが、例えば1991年ぐ らいになりますと、日本人夫婦が渡米いたしまして、アメリカ人の女性に子宮を借りま して代理出産した、こういったことが行われたり、卵子提供を受けたりといったことも 行われたわけであります。  1998年になりまして、体外受精は現在のところ、日本産科婦人科学会の会告によ って、配偶者間でしか認められておりませんが、非配偶者間ですから、弟さんの精子を いただく、妹さんの卵子をいただいて体外受精児が誕生いたしました。我が国におきま しても、2001年に妻の妹による代理出産があったり、夫の義理のお姉さんで代理出 産があったり、こういった歩みがあったわけでございます。  これが日本産科婦人科学会の会告でございまして、13個あるわけでございます。昭 和58年に体外受精の会告ができておりますが、随分時代も変わっていますし、体外受 精の技術というものも随分進歩してきております。今、こういったものの改訂の作業を しているところでございます。  これが体外受精の方法でございます。卵巣には卵胞と言いまして、卵を入れておく袋 がございますが、人の場合は通常、1個の卵子しか排卵しないわけです。排卵誘発剤を 使うことによりまして、このようにたくさんの卵胞を成長させまして、卵をたくさんと ってきます。そしてシャーレの中で精子をかけまして、受精を起こします。そして、4 細胞期ぐらいの胚を子宮に戻します。現在では、この4細胞期の胚ではなくて、胚盤胞 と申しまして、5日、6日ぐらいまで培養いたしまして、良好な胚をできる限り少なく 戻すといった方法がとられております。  これが日本産科婦人科学会に登録されている実施数でございますが、実に590の施 設が登録しています。この施設を見ていただきますと、日本では8万周期とか、9万周 期が行われておりますが、この施設数は世界最高であります。非常に多い施設数で行わ れている。イギリスは6万から7万周期でございますが、90施設弱でございまして、 そういった数から見ますと、日本ではあらゆるところで行われているといったことがお わかりいただけると思います。  これが妊娠率・生産率でございます。昔は、ブルーの線でございますが、妊娠反応が 出れば陽性としていたわけでありますが、最近では臨床妊娠率と申しまして、子宮の中 に赤ちゃんを入れておく袋が見えた場合に妊娠とするというようになっております。こ の妊娠率は、生殖補助医療が進歩したと申しましても、23.0%ぐらいでございまし て、5人に1人。まだ4人に1人の時代までは行っていないということでございます。 生産率と申しますのは赤ちゃんを連れておうちに帰れる割合でございますが、これは 20%以下であるということでありまして、5人に1人しか、まだ赤ちゃんを連れてお うちに帰っていられないという状況であるというご理解でよろしいかと思います。  これが顕微授精という方法でございます。これがヒトの卵子でございまして、卵子は 直径が0.1ミリぐらいでございますので、目を凝らしてみますと、見ることができま す。これに細い針を刺しまして、ここに精子がございますが、顕微鏡下で受精をさせる ということであります。  こういった方法を用いますと、どこでもよろしいのですが、精液中から精子を探して こなくてもいいわけでありますが、精巣の中から精子を探してこられれば、1匹でも探 してくることができれば、妊娠できるようになったわけであります。このICSIとい う先ほどの方法が行われるようになったのが93年ぐらいでございますが、95年ぐら いになりますと妊娠率が20%ぐらいになって、その後は余りよくならない、これ以上 よくなってこないということであります。この辺に生殖補助医療、医学の研究に対し て、要するに胚を作成するという研究の意味が出てくるのかもしれません。ブレイクス ルーを起こすためにはこういった研究が必要になってくるかもしれないということであ ります。このように、顕微授精と言いますのは年々ふえてきているわけでございます。 出生児数もふえてきているということでございます。  これが一番新しい平成15年のデータでございますが、実に1年で1万7,400人 の方がお生まれになっているということであります。顕微授精の割合はどうかと申しま すと、30%から40%ぐらいで顕微授精が行われているということでございます。  現在、精子の数との割合で申しますと、体外受精というのはもともと卵管が詰まって いる方に行った技術でありますが、最近では男性不妊の方にも非常に多く使われていま す。一般に人工授精というのは精子を子宮に戻す操作でございます。この場合は精子の 数が1cc当たり1,000万個以上ないと妊娠しない。それ以下になりますと、やはり 体外受精をしなければならない。しかし、体外受精でも精子の数が100万以下になっ てまいりますと、なかなか妊娠しにくい。となりますと、顕微授精をしなくてはいけな い。顕微授精は精子1個あれば、理論的には妊娠できるということであります。精液中 に精子がなくても、精巣上体から精子を探してくる、あるいは精巣の組織を一部とって まいりまして精子を探してくる。MESAという方法とか、TESEという方法で妊娠 することができるような時代になったということでございます。  これが総出生児数に対するART出生児の割合でございます。実に1999年に1% を超えました。すなわち1999年に、総出生児数、生まれた赤ちゃんの1割、要する に100人に1人の時代になったということでありまして、先ほど審議官からもお話が ありましたが、2003年には1.55%ですから、65人に1人の時代になってきた。 あと5年もたちますと、恐らく30人に1人ぐらいの時代になってくるだろうというこ とが予想されるわけであります。  こういった数というのは、日本では高いのかと申しますと、そうではありません。デ ンマークでは3.7%の時代に入っていますし、アイスランドでは3.8%。ヨーロッパ の各国々はほとんどが日本より多く、イギリスが日本と同じぐらいということを考えま すと、これは世界の流れであると思います。  ここでもお話し合いになると思いますが、受精卵というものをどう考えるかというこ とでございますが、母体に戻されてヒトになる予定の受精卵というのは通常の体外受精 でできた受精卵ということになります。例えば、体外受精で2人、3人がお生まれにな って、このほかは廃棄しても結構ですよ、あるいは研究に使ってもよろしいですよとい った胚が、母体に戻されないことが決定された受精卵ということになるわけでございま す。こういったものを利用してES細胞が中辻先生のところで樹立されたわけでござい ます。  胚の研究のことに関してですが、できた胚を使ってもよろしいというのは、ドイツ、 オーストラリアを除いたほとんどの国で研究をしているわけでございます。ここの下に 書いてございますが、研究目的である胚の作成の可否となりますと、イギリスとベルギ ーといったような国だけであるということであります。すなわち、ここで検討される事 項でありますが、生殖医療の研究目的で精子・卵子を使って胚を作成していいといって いる国というのは結構少ない。私は、イギリスは非常にプラクティカルな国だと思いま すが、ガイドラインをきちんと定めて、こういった研究をしてよろしいといったような ことをしている国だと思います。イギリスなどは非常に参考になる国ではないかと思っ ているわけであります。ほかのフランス、カナダ、オーストラリアといった国は原則不 可としているわけであります。  イギリスは1984年でございますから、日本の体外受精が初めてできたころから、 もうこういった胚の作成に関する議論が行われている非常に成熟した国と言ってよろし いかと思います。前提となったのは、研究目的での胚の禁止により医学の発展が妨げら れる。それから、偶発的に利用可能となった胚というのは、すなわち余剰胚とか、そう いったものであります。こういったものは恐らく質が悪いだろうから、不可能な研究が 当然あるだろうといったようなことも言われているわけであります。慎重意見、推進意 見、それぞれありますが、これは見ていただきたいと思います。  HFEAがこういった研究のプロジェクト、いわゆる施設数と申しますと、どの程度 の施設が行われているかと申しますと、研究に関しましては申請が140から150ぐ らいでありまして、ほとんどの施設で許可がされているわけであります。終了したプロ ジェクトはこの程度であるということで、研究に関しても100以上の施設で研究が行 われているということであります。  これがイギリスにおけるヒト胚研究の実施状況をまとめてくださったデータでござい ます。赤で書いてございますが、他者への提供のために保存された胚というのは、胚の 提供に使うものであります。治療周期から研究に提供された胚と言いますのは、これは 日本においても使っておりますが、いわゆる余剰胚であります。そのほか、治療周期か ら研究に提供された卵子というものもございます。どういった形で卵子が提供されたか ということは詳しくはわかりませんが、シェアリングあるいは研究のために卵子をいた だくといったようなことを前提にしたものも結構イギリスでは多いということがわかる わけでございます。  日本産科婦人科学会では、精子・卵子・受精卵の取り扱いに関する見解を出しており ます。当初は生殖医学の発展のための基礎的研究、不妊症の診断治療の進歩に貢献する 目的の研究に限って、こういった研究をよろしいですよと言ったわけでございます。文 部科学省で、ES細胞の樹立のためにこういったものを使えるかどうかと。これに抵触 するのではないかということで、この項目を加えまして、平成13年12月に改訂した わけでございます。私も何度もこの研究のガイドライン、会告を読んでみたのでありま すが、胚をつくってもいいということは明言しておりません。しかし、卵子を受精のた めの研究に使うことができるということを言っているわけでありますし、精子はハムス ターの卵子に入れるとか、そういったこともあるわけでございますが、そういったこと を禁止しているわけではないということであります。この辺が、先ほど位田先生が言わ れましたが、会告ではちょっとわかりにくいというか、不明瞭な点があるということで ございます。登録報告に関しましては学会の指定の書式に準じてこれを報告するという ことになっておりますし、再審査も今年から行うようにしております。  これは今年の7月に行ったものですが、現在までの登録の数、86研究がございまし た。今回、進捗状況を聞きましたところ、再申請をされたのが48研究で、研究が完了 したのが12例で、14例は研究していないということで登録を抹消いたしました。そ ういうようなデータになっているわけであります。  これは日本産科婦人科学会で検討したことではないのですが、医学雑誌より、こうい った胚の研究に関してはどういったような研究が行われているかといったことでござい ます。扱ったヒトの細胞に関しましては圧倒的に精子が多いわけであります。精子は、 当然のことながら、提供してもらいやすいということもございますが、卵子に関しては 非常に難しい。これは、例えばこういった卵子の主なものは、受精をしたけれども、受 精が成立しなかった卵子を使っていることがほとんどでございます。新たな胚の作成に 関しては、受精しなかった卵子を用いてICSIをしたりして、こういった胚の作成の 有無をしているということでございます。研究の実施施設は大学・研究所、病院、さま ざまございます。科も、泌尿器科も当然あるわけでございますが、産婦人科が圧倒的に 多いと。基礎的研究室も5%ぐらいで行われているということでございます。  予想される研究の領域でございますが、受精のメカニズムに関する研究は必要なので はないか。どうしてかと申しますと、顕微授精を行っても20%前後で頭打ちになっ て、一定度の受精障害があるわけでございます。こういったものに関しましては、幾ら 動物の卵子を用いて研究いたしましても、種差は当然のことながらあるわけでございま して、こういったものはヒトを使って研究しなければならない。胚の発生・着床のメカ ニズム、遺伝的異常、こういったものに関して、それから配偶子の保存、これが非常に 大切なわけであります。しかし、卵子の未受精卵と申しますか、精子を入れていない卵 子、受精していない卵子を凍結保存するということは極めて困難でございます。なかな かまだ臨床応用ができる時代まで行っておりません。胚に関しましては、凍結保存でき るのですが、こういった研究にも卵子を使用することができるのではないかということ でございます。  これはHFEAで言っていることで、いろいろなことが書いてございます。精子の source、これは可能性としてすべてを挙げているわけでありまして、現実的でないもの もいっぱいございます。卵子も同じように書いてございますが、この中でどういったも のが関係あるのかなと思うようなものもございます。  ですから、私たちが研究で考えた精子に関しては、無償のボランティアの男性、人工 授精をしたときの残り、余剰、体外受精を受けた男性、そうした方が提供者のキャンデ ィデートになるのではないか。精巣疾患で精巣をとった方もあるだろう。精巣性女性化 症候群というのは、女性として育てられておりますので、精巣が悪性化することがある といったようなことがありまして、精巣をとります。そういったものも可能性としてあ るだろう。  卵子に関しましては非常に難しい問題です。これが今一番の大きな問題となり得るわ けでありますが、体外受精を受けた女性、例えばシェアリングをするとか、あるいは、 これには当然ボランティアという可能性も出てまいります。ボランティアで、体外受精 を受けていませんが、要するに体外受精と同じようなことをした女性。韓国で行われた のはこういったケースでございます。卵巣の手術を受けた受精。この場合に、一番の大 きなキャンディデートになる得るというのが性同一性障害の方々ではないかなといった ことも考えられます。もう一つは、中絶の胎児というものがあるわけでございます。こ れには原始卵胞が多数含まれております。こういった卵巣から卵子をとってくるといっ たことも考えられないかと。未受精卵が成熟している過程に何が因子として必要なのか といったような研究も中絶胎児を使って、要するに卵子が成長してくる過程に何の要素 が必要なのか、そういった研究もできるのではないかなと思っているわけであります。  研究の条件ですが、用いてよい配偶子の段階は、精巣の中でのもとになる精粗細胞と か、卵祖細胞以降であろう。精粗細胞から精子になるためには70日から80日かかり ます。卵祖細胞の場合には胎児からの長い過程が必要なわけであります。研究の条件 で、こういったものを使えばよろしいのではないか。配偶子・胚に対して禁止すべきな のは、遺伝子改変が起こり得る研究を行ってはいけないだろうと。作成した胚の培養条 件に関しましては、原始線条と言いますと、これは要するに人間が分化していくとき、 内胚葉、中胚葉、外胚葉に分化していく14日目ぐらいが妥当なのではないかというこ とであります。  これが受精卵でありますが、受精卵の場合に関しましては、当然のことながら、妻と 夫、両方からの同意も必要であるということでございます。  要するに説明と同意を求めるといった同意書の具体的な例を示してあります。  HFEAの胚の研究に関する申請用書類、これは後から見ていただきたい。非常によ くできております。なかなかすばらしいものではないかと。こういったものは参考にな るのではないかなということでございます。  この現状を見てみますと、未受精卵を誰からいただくかということになりますと、凍 結が必要になってくる。凍結ができるようになりますと、この研究は随分進むだろうと 思います。まず未成熟卵、要するにまだ成熟していない、子供さんの卵子だというふう に考えてくださって結構ですが、こういったものから成熟させて、凍結してあったもの を成熟させて、そして子供が生まれた例というのは1例のみです。成熟した卵子、例え ば体外受精のときの卵子をとってまいります。こういった卵子を凍結しておいた例にお いても、妊娠・出産例は世界で100例ぐらいでございます。ガラス化法になりまし て、卵子の凍結ができるようになってまいりましたが、まだこの程度です。胚凍結は、 パートナーが決まっていれば可能です。これはもう確立しておりまして、臨床応用は可 能です。卵巣凍結。卵巣の組織をとってまいりまして、これを凍結しておきまして、移 植をいたしまして、妊娠・出産した例が1例であるということであります。  まとめといたしまして、どういったことが言えるかと申しますと、新たな胚を作成す る研究に対する規制の必要性、これはやはり余剰胚の提供を受ける場合とは少し違うだ ろう。こういったことをここの委員会で決めなくてはいけないだろう。人クローン胚づ くりと同じなのですが、提供卵子の入手の困難性が当然のことながら予想されるわけで あります。ボランティアといっても、どういったボランティアを許すのかとか、どうい ったボランティアからいただけるのか。性同一性障害とか、そういった方から卵巣をい ただいたとしても、未受精卵・卵巣凍結の非確実性がある。これが非常に大きな問題で ある。中絶胎児からいただくとしても、未成熟卵子を体外で成熟させることは極めて困 難であろう。となりますと、ボランティアに対しても卵巣刺激をしなくてはいけない。 こういった問題点があるだろうといったことが予想されるわけでございます。  これが以上、まとめでございます。ありがとうございました。 ○笹月座長  どうもありがとうございました。今後の検討にとって大変貴重な情報提供をいただき ました。時間も迫ってまいりましたが、どなたかご質問があればどうぞ。 ○中辻委員  私も、イギリスは非常に長い議論をして、許容範囲の広い枠組みをつくりながら、し かし実際の研究計画の審査は慎重にやるというところで、参考にすべき点が多いと思い ますが、吉村先生が出されたイギリスの数の状況の中で、イギリスは研究目的で作成す る場合も許容しているとは言いながら、数としては1999年から2001年までゼロ になっています。もしそれ以降、許可された計画があるとすれば、それがどのような計 画かということがわかれば、非常に参考になるのではないかと思うのですが。 ○吉村委員  このデータにつきましてはちょっとわかりません。もう一度検討させていただきま す。研究目的で作成された胚は、この時点ではゼロでした。今は許されていると思いま すが。 ○小澤委員  余剰胚では不都合のある研究もあるということをお話になりましたが、具体的にはど ういうときに新たに作成しなくてはいけないのでしょうか。 ○吉村委員  余剰胚と申しますのは、質のいい胚は初めに戻します。質の悪い胚が当然残るわけで ありまして、こういったもので研究していくということは、胚の研究をする上において も余り適したものではないかもしれません。胚の作成ということになりますと、余剰胚 とは全く違ったものになってくるわけでありまして、研究のために胚を作成するという ことになりますから、そうなりますと、さまざまな、例えば受精障害に関する研究に関 しても、当然のことながら不妊研究には福音になるだろう。どうして受精しないかとい う方が一定の割合で必ずお見えになるわけです。ですから、形態学的にも全く問題ない のにもかかわらず、ICSIをしても受精できない。受精に対するメカニズムを研究す る上においては、卵子・精子を用いた研究が必要になってくるのではないかなと思いま す。 ○小澤委員  もう一つよろしいですか。研究の条件のところで、配偶子・胚に対して禁止すべき操 作として遺伝子改変はだめだということですが、すぐ応用するわけではなくて、将来的 な臨床応用を考えてゲノム改変を研究としてやるということだったらよろしいのではな いかなという気もするのですが、この辺はどうして不可ということになったのですか。 ○吉村委員  これはある女性の研究者の方が、これはやってはならないと。委員全体の総和でござ いますので、現時点ではそういった意見にまとまったということです。 ○笹月座長  あるいは、このことはヒト胚の作成というときに、遺伝子操作をしたヒト胚の作成の ようなことも絡んで、この委員会で議論する一つの項目になるかもしれませんね。 ○秦委員  そうすると、この専門委員会では胚の作成と余剰胚を使った研究と、その2つのガイ ドラインをつくるということが目的になると考えてよろしいのでしょうか。この2つの 命題は本質的に、本質的というとちょっと語弊があるかもしれませんが、非常に違う話 になる可能性があると思うので、その辺りをきちんと整理して議論を進めないと、混乱 を招くのではないかと思います。その辺りの整理をしてから本格的な議論に入るべきだ と思いますが、いかがでしょうか。 ○笹月座長  全くそのとおりで、最初に申しましたように、本当に新しく、研究のためのヒト胚の 作成と、既に臨床のためにつくられたものの中の余剰胚、これはもちろん、現時点では 全く異質のものと考えて、整理しながら議論を進めていかなければいけないだろうと思 います。そういう意味でも、くどいようですが、未受精卵の入手というところが非常に キーポイントになると思うのですが、先生の仰った、生殖医療に用いられて、しかしな がら受精しなかった卵というものを未受精卵とするのは、また正常な卵とは違うという 問題があると思いますし、さまざまな意味で、本当に自然な形での未受精卵の入手とい うことは、それこそボランティアでも募らなければみたいな形にもなろうかと思います が、そういうことに関しては、学会としてはどんな見解をこれまで示されたのか。 ○吉村委員  学会では何も見解はないです。未受精卵をどうやって得るかということについては、 学会の会告はあるのですが、作成ということを明記していないのです。位田先生が仰っ たように明記していないのです。明記していないのですが、やって悪いとは言っていな いのですが、ただ、そういう場合に使う場合も、先生が今、仰ったように、受精しなか った未受精卵をあえてまた受精させる、顕微授精で研究のために受精させると。ですか ら、これを戻しても何の意味もありませんと患者さんにご説明を申し上げて、これを我 々の場合は凍結しておく場合が多いのですが、凍結しておいた卵子を使って精子を顕微 授精したりしています。例えばボランティアベースで卵子をいただけるとか、そういっ たことについて学会では全く話しておりません。 ○笹月座長  それと、ご報告いただいた中で、外国の例ですが、アメリカの情報というのをお示し にならなかったのですが、これは何か特段の理由がおありなんでしょうか。 ○吉村委員  アメリカはこういったことについて自由な国でして、何も決まりをつくっていない国 なんですね。ですから、当然行われていると思いますが、例えばどういうふうになって いるんですかと言われると、全く規制のない国ですので、参考にならないと思います。 ○小幡委員  大変わかりやすく説明していただいてよくわかりました。今回は、ガイドラインをつ くるということは既定路線のようなので、私もそれについては若干の意見はあります が、それはそれでわかりましたが、そこで、今までは、少なくとも生殖補助医療に関し ては産婦人科学会の会告ということでやっていらっしゃったというご説明で、少し、わ からないのでお伺いしたいのですが、産婦人科学会というのは、このような医療に関わ る方全員が学会員でいらっしゃるのか。いろいろなアウトロー的なところでの学会員以 外の可能性というのはあったのかということをお伺いしたのですが。 ○吉村委員  一応、ほとんどの産婦人科医は日本産婦人科学会に入っております。ですから、生殖 補助医療をやっている方で産婦人科学会に入っていない方というのは、お見えになるか もしれませんが、極めて稀です。99.9%の方は入っていると私は認識しております。 ○笹月座長  そういう意味でも、学会から独立した、国のガイドラインが必要だろうということ で、こういう委員会が設定されたというのも一つの理由だと思います。細かなことはた くさんあると思いますが、今後の委員会での議論、あるいはその情報を含めてのガイド ライン策定ということになろうかと思いますので、先生のご報告に対する質問はこれぐ らいにさせていただきたいと思います。  今後のことですが、繰り返しになりますが、生殖補助医療研究を目指したヒト胚作成 ・利用に関するガイドラインを策定すること及び審査のシステムを確立するというのが この委員会に付託されたことでありますので、今後そういう形で議論を進めていきたい と思います。本日、文部科学省、吉村委員からお示しいただいたことをもとに、このよ うな手段が必要だ、あるいはそれに対してはこういうガイドラインを策定すべきだとい う幾つかのヒントを委員の先生方も感じられたと思いますので、ぜひ次回までに、どの ようなステップ、それに対してどのようなガイドラインが必要なのかということをぜひ お考え置きいただいて、第2回目へ進みたいと思いますので、よろしくお願いいたしま す。  時間もまいりましたので、今後の進め方、あるいは次回につきまして事務局からお知 らせいただけますか。 4.その他 ○斎藤補佐  次回でございますが、第2回目の専門委員会は11月7日、月曜日の16時から19 時とさせていただきます。また、今回は初回でございましたので2時間で、所与の事情 で設定させていただきましたが、次回は少々ご議論のためのゆとりを持たせていただき まして、3時間とさせていただければと存じます。  本日の資料でございますが、さまざまな資料をご用意させていただいておりまして、 大変大部でございまして、大変申しわけございませんでした。これはもし何でしたら、 こちらに置いていっていただいて差し支えございません。また、この資料は全部、PD Fのファイルの形でインターネット上、ホームページにアップロードをなるべく早くさ せていただくようにいたしますので、そちらからもごらんいただけるようにいたしま す。ありがとうございます。 ○笹月座長  最後に吉村先生、もう一つだけ質問させていただきたいのですが、日本において、現 実的に未受精卵を用いた研究というのはどれぐらい、あそこの円の中で幾つかあるよう でしたが、何課題ぐらいそういうことが行われたかという数字はおわかりでしょうか。 ○吉村委員  数は少しわからないのであれですが、それは調べることはできます。 ○笹月座長  ソースと言いますか、どのような形で未受精卵を手にしたかというようなことも、も し、この次に…。 ○吉村委員  それは調べておきます。 ○笹月座長  ぜひよろしくお願いいたします。それでは、本日は第1回目ということで、検討の進 め方、あるいは次回へ向けての目標と言いますか、そういうことを共通の認識をいただ いたと思います。長時間にわたりありがとうございました。  最後になりましたが、北井局長からご挨拶をいただければと思います。 ○北井局長  雇用均等・児童家庭局長の北井でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。 本日は所用のために途中からの出席となりましたことをお詫び申し上げます。委員の先 生方におかれましては、大変お忙しい中お集まりをいただきまして、本当にありがとう ございました。初回から活発なご議論をいただいたことに感謝申し上げます。本日は、 吉村先生の大変わかりやすいご説明をいただき、私もお願いした立場ながら勉強させて いただきました。本委員会にお願いしましたテーマは大変難しいテーマでございますの で、今後ともいろいろな議論が出てくるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたし ます。 5.閉会 ○笹月座長  それでは、これで終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。                   ―終了―                    照会先:雇用均等・児童家庭局 母子保健課                    電話 :(代表)03−5253−1111                             斎藤(内線:7933)                             木阪(内線:7939)