05/09/29 第21回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会議事録                  厚生科学審議会            疾病対策部会臓器移植委員会(第21回)           日時:平成17年9月29日(木)13:00〜15:00           場所:経済産業省別館944号会議室  片岡室長  定刻を過ぎており申しわけございません。町野先生がおくれておられまして、町野先 生がお見えにならないと、この会議の定足数を満たしませんので、それまでの間は懇談 会ということで、始めさせていただいて、町野先生がいらっしゃってから、臓器移植委 員会ということで始めたいと思います。  したがいまして本日の議事1、2、3、4となっておりますが、4のその他の報告事 項から、先に始めさせていただくということで、よろしくお願いしたいと思います。  矢野補佐  それではまず、配布資料の確認をさせていただきます。資料1、肝腎同時移植につい て。資料2-1が生体肝移植ドナー、アンケート調査、報告と提言、資料2−2が生体 肝移植における肝提供者の提供手術後の状況に関する研究報告書でございます。資料の 3が臓器提供意思登録システムの整備について、でございます。資料の4が、平成18年 度移植対策関係予算概算要求の概要です。資料5が前国会に提出された関連法律案につ いて。資料6、7、8がネットワーク提出資料でございまして、6が新デザインの臓器 提供意思表示カード発行開始。7が黄色と緑のリストバンド約10万本を全国で配布とい うものでございます。  また本日は議事に即しまして、独立行政法人労働者健康福祉機構、横浜労災病院の藤 原先生、東北大学大学院の里見先生、首都大学東京の清水先生、平成15年度特別研究事 業協力者の鈴木参考人、社団法人日本臓器移植ネットワークの菊地コーディネーターに 参考人として御出席いただいております。本日はよろしくお願いいたします。  永井委員長  資料4と5について御説明いただけますでしょうか。  片岡室長  それでは資料4をごらんください。平成18年度移植対策関係予算概算要求の概要でご ざいます。本委員会に関係いたしますのは1の臓器移植対策でございます。本年度は、 5億8,600万円の概算要求をしております。  これまでと違った新しい中身としましては、(1)○で新と書いてあります臓器提供 意思登録システム、それから臓器移植普及啓発リーフレットの経費でございます。  臓器提供意思登録システムにつきましては、本日の議題でもございますので、後ほど 改めて御説明いたしますが、新しく登録システムを日本臓器移植ネットワークで設置し ようということで、そのシステム費、それから担当職員の人件費などが含まれておりま す。  下にあります臓器移植普及啓発リーフレットでございますが、昨年度行いました世論 調査の中でも、臓器移植に関する情報を十分得ているかどうかという世論調査の結果の 中で、残念ながら80%の方がノーと、あまり十分な情報を得ていないという調査結果が 出ております。したがいましてまだまだ普及啓発を努力していく必要があろうというこ とで、普及啓発リーフレットを作成するための経費という内容でございます。  その他設備整備費、それから施設整備費につきましては、前年どおりの項目要求とな っております。資料4は以上でございます。  続きまして資料5でございます。資料5は前通常国会に提出された関連法律案という ことで、御紹介させていただきます。2つの案が提出されておりまして、両方とも同じ 名前ですので、通称それぞれA案B案といわれております。  別添1と別添2とそれぞれクリップどめしておりますが、まず別添1の方から概略を 御説明いたします。項目としましては、5点ございます。まず1点目として、臓器摘出 の要件の改正でございます。  現行法では本人の書面による意思表示があって、遺族がこれを拒まないとき、また遺 族のないときというのが、現行の要件ですが。今回1の(2)にあります本人の臓器提供 意思が不明の場合であって、遺族がこれを書面により承諾するときが、追加的な内容で ございます。  2番はほぼ同じような形で脳死判定についても、脳死判定のための要件について、1 と同じような形で要件が追加されるというような改正でございます。  それから3点目が親族への優先提供。この委員会でも優先提供についてどうするの か、御議論いただいて、国会等での判断にゆだねるというような結論になってございま す。それを踏まえた上での議論がなされて、書面による親族への優先提供の意思を表示 することができるという改正事項が盛り込まれております。  法律上は親族と書いてありますが、具体的には、一親等プラス配偶者というふうに考 えると伺っております。  4点目が普及・啓発でございます。普及・啓発は文書に書いてありますが、趣旨とい たしましては、運転免許証それから医療保険の被保険者証に意思表示に関する欄をあら かじめ印刷をしておいて、意思表示できる機会を増やそうという内容でございます。  5点目につきましては、これは1の方で本人の意思表示が不明な場合、子供からの臓 器提供が行われることになりますが、その場合に虐待を受けた児童から臓器が提供され ることのないよう、適切な対応について検討を加えて、その結果に基づいて必要な措置 を講ずるものとする内容でございまして、附則の中にこの規定が入っているわけでござ います。  続きまして、別添2のB案でございます。これは1のところが、特に異なっておりま して、A案の方は摘出要件を追加するという内容でございますが、B案につきましては 基本的には現行の制度の枠組みの中で考えていくということでございます。本人の書面 による意思表示があり、かつ遺族が拒まなかったとき、あるいは遺族がないときという ことですが、現在ガイドラインで、本人の意思表示については15歳以上の者の意思表示 を有効とするとしております。この年齢について、15歳を12歳に引き下げるということ です。今、ガイドラインになっておりますものを法律上明記して12歳以上の者が行った 意思表示は有効なものとするという内容でございます。  2番は先ほど申しました親族への優先提供で、A案と同じでございます。  3番も基本的には同じでございますが、1行目にあります、学校、家庭、その他のさ まざまな場を通じて、移植医療に関する教育の充実を図るとともに、と入っておりま す。1番の方で年齢要件を引き下げておりますので、それに関連して、教育の充実を図 るというような文言が入っております。  この法案ですが、前国会に提出されましたが、御承知のとおり衆議院が解散されまし たので、廃案という取り扱いになっており、今は国会には何も提出されていないという 状況でございます。以上でございます。  永井委員長  ありがとうございます。何かこの件に関して御質問はございますでしょうか。よろし ければ次に資料6、新デザインの臓器提供意思表示カードの発行開始、及び資料7黄色 と緑のリストバンドです。これは菊地参考人ですね。  菊地参考人  それでは日本臓器移植ネットワークから皆様のお手元に置いてございます臓器提供意 思表示カード、新デザインのものと、リストバンドについて御報告させていただきま す。  まず日本臓器移植ネットワークでは、本年度の臓器移植普及推進月間でございます10 月より、新しいデザインの臓器提供意思表示カードを発行することとなりました。新し いデザインは、臓器移植法が施行された1997年10月以降のカードの配布枚数が今年で、 この9月で1億枚を突破することを機に発行するものです。  以前の黄色い意思表示カード以降、新しいデザインの発行は初めてのことになりま す。デザインに関しましては黄色い天使のカードをコンセプトに、これまで親しまれて きた天使の図柄を新たにしました。縦タイプ、横タイプの2つのデザインで、色や配置 をアレンジした4種類となっています。  意思表示の記入方法は、従来どおりで、これまでのカードや各団体が作成したオリジ ナルカードの意思表示ももちろん有効となっています。  新しいデザインのカード発行に伴って、自分の意思を2枚のカードに記入する。2枚 キャンペーンを呼びかけております。それは1枚を家族に渡していただいて、自分の意 思を伝えることで、命のあり方や生きることを見詰め直して、臓器移植という医療につ いて、より多くの方々が考えるきっかけにしていただきたいという考えからです。  それからリストバンドですけれども、このリストバンドは臓器移植の普及啓発のツー ルとして約10万本を作成しました。これは移植で助かる命について考えた人に着用して もらうことを、目的に配布するものです。無料配布です。リストバンドのカラーには臓 器提供意思表示カードの黄色と、臓器移植のテーマカラーである緑という国内の臓器移 植を象徴している2色を採用いたしました。移植で助かる命について考えた証としてリ ストバンドを配布することによって、命を考えるコミュニケーションが広がる、臓器移 植への関心と理解を高めていただけたらと考えております。以上です。  片岡室長  それでは町野先生がいらっしゃいましたので、ここから、移植委員会として、改めて お願いします。  永井委員長  それではただいまの法律改正あるいは、カード及びリストバンドについて何か御質問 はございますでしょうか。よろしいでしょうか。それではまた後ほどいつでも結構でご ざいますので、御質問がおありの場合は、御発言お願いします。  それでは早速議事に入ります。本日審議事項が3件、それから既に終わりましたが報 告事項ということでございます。議題の1番、肝腎同時移植について、これを議論いた します。きょうは参考人で藤原先生においでいただいておりますので、藤原先生から御 説明をお願いいたします。  藤原参考人  資料1をごらんいただきます。裏には別添がついてございます。肝腎同時移植につき まして、現状は、ここに記載のとおりでございます。肝移植を必要とする肝疾患患者の 中には、不可逆的な腎不全の合併症例があり、肝腎同時移植が望まれていようかと存じ ます。現状では両臓器の移植を希望して、日本臓器移植ネットワークに登録したとして も、両者で緊急性の順位に違いがある場合には、肝腎同時移植を受ける機会は、極めて まれとなるのが実情です。  こういった背景から、私は、脳死肝移植適応評価委員会の立場で、本年度3月30日 に、別添のような日本臓器移植ネットワーク事業本部発2名の方々あてにお願いという 形で文書を届けてございます。  簡単に読ませていただきます。「肝移植を必要とする肝疾患患者の中には不可逆的な 腎不全の合併症があり、その際肝腎移植が望まれる。」この先は読まなくてもよろしい ですね。こういうことで、かかる事例について、肝移植レシピエントの順位が高い場合 に限って優先的に腎が配分されれば問題は解決されます。第3者の善意で提供された臓 器の最良の活用にもつながるものと考えます。この肝腎同時移植の実現に向けて、貴本 部から厚生科学審議会、こちらの会議です、臓器移植委員会の審議に上げるべく依頼書 を御提出いただくようお願い申し上げます、という内容でございます。  そして今後の対応としましては、こういった要望について、膵臓と腎臓の場合と同じ ように、肝臓移植に関する作業班と腎臓移植に関する作業班を合同で開催して、御検討 いただきたい。以上です。  永井委員長  ありがとうございました。今まではどういう状況だったのでしょうか。そういう症 例、患者さんは、片方だけをまずということですか。  藤原参考人  実情をネットワークから。  菊地参考人  現状は肝腎同時移植が必要な方に関しては、肝臓は肝臓として登録していただいて、 腎臓の方は腎臓として登録していただいております。藤原先生がおっしゃられたような 肝腎同時移植希望者が選定された場合は優先的に、一腎を配布するというルールがござ いませんので、同時に移植するというのは、不可能な状況にあります。  永井委員長  全く行われていない。  永井委員長  御質問はいかがでしょうか。  大島委員  腎臓の不可逆的な状態というのは、透析患者さんというふうに理解してよろしいので すね。  藤原参考人  全部がそうではないのですが。そういう患者さんもかなりおります。  大島委員  ということになると不可逆性、透析患者さんであれば、不可逆的であるということは もう間違いないのですが、そうでないとすると、不可逆的であるということをどうやっ てはっきりさせるのかということの問題が、多分それは委員会を開いてやればいい話か もわかりませんけれども。  藤原参考人  これはかなり専門性が高い内容も含んでございます。やはり、結論から申しますと、 私はケース・バイ・ケースで判断すべきだろうと考えております。  永井委員長  そのほかにいかがでしょうか。その辺の判定基準まで含めたガイドラインをつくって いただくということになるのでしょうか。よろしいでしょうか。  藤原参考人  1つだけ追加します。実は移植関係学会合同委員会に上げており、そのときの議論の 中に非常に重要なことがございましたので、参考までに御披露いたします。この案を立 ち上げるときに思案していただければと思います。  それは膵臓のときにあったことですが、肝臓がもし使えなかった場合です。移植医が ドナーのところにきて、使えないと判断した場合に、一体どうするんだということで す。腎臓だけでも移植できるのかどうか。こういうことが質問にございました。  これも今先生の御質問と同じようなことで、やはりケースによっては、腎臓だけでも いただけると、ありがたいという患者さんも、おろうかと思います。そういったこと も、検討していただければと考えます。腎臓だけでもその人に限って優先するというこ とです。  前に膵臓のときに、それが適切に行われなかったということもございますので、ぜひ この辺をルール化していただきたい。  永井委員長  そのほかに何か御質問ございますでしょうか。  小中委員  今現在は登録の仕組みをとっていないので、登録者が何人ほどいるかということは明 確にはわからないと思うのですが、想定としてはどのぐらいの対象の方がおられると考 えたらよろしいでしょうか。  藤原参考人  これは、実は寺岡先生からも聞かれたことですが、我が国におけるこの実態の把握は 極めて難しいだろうと思います。これをもしできるとすれば、日本肝移植研究会にお願 いして、見ていただくということが一番実際的ではないでしょうか。里見先生は何か御 意見ございますか。恐らくかなり難しいですね。  里見参考人  私は別の参考人ですが、発言してよろしいのでしょうか。  永井委員長  どうぞ。  里見参考人  肝臓と腎臓が同時に悪くなっている方は、これまでも何人か移植を受けているんで す。それは生体肝移植と生体の腎移植ということで受けております。それが同時であっ たり、異時であったりという、つまり肝臓を先にやって腎臓を後にという。腎臓をやっ て肝臓という、いろんなパターンがあると思います。そういうパターンでやられている ので、少なくとも10人以上はいると思います。正確な数字は、私はつかんでおりませ ん。  そういうことですので、日本全国でどれだけの方が、そういうふうになっておられる かわかりません。肝臓が悪くなって腎臓が、その後引き続いて悪くなるというのは、そ れほど珍しい事象ではありませんから、肝不全の状態が長く続きますと、腎臓も徐々に 悪くなっていきますので、末期といいますか、肝臓が非常に必要になってくる人たちの 中には、何%とかの割合で、肝腎同時移植が必要な方が出てくると思います。それぐら いしかお答えできませんけれど。  高岡主査  事務局から補足させていただきますと、臓器移植ネットワークに確認いたしましたと ころ、現在登録されている患者さんの中で、肝臓と腎臓とが別々に登録されているんで すけれども、どちらもというふうな患者さんが、2名登録されているということですの で、補足させていただきます。  菊地参考人  肝臓移植希望者は常に100人前後登録されています。そのうちの2名のみの登録です が現在は肝腎を同時に移植するシステムがありませんので、システムができるとまた増 加するものと考えます。  永井委員長  潜在的に。  松田委員  こういう多臓器の移植というのは、当然必要度がだんだん増してくると思うので、こ れからまた他の臓器の組み合わせも出てくるかと思います。例えば肝臓と小腸とか。そ ういうことも視野に入れて、多臓器の場合の扱いというものも、単に肝腎ということで なく、何かその辺のルールも一緒に検討された方が。といいますのは、これが出ますと また次に何かと出てきますので。  肝腎はもちろん検討されて、いいと思いますけれども、全体の多臓器の、複数の同時 移植をどうするのか。そういうところもワーキングで検討されたらいかがかと思いま す。  永井委員長  それぞれ肝臓と腎臓のワーキングなのですが、少し広げておいた方がよろしいだろう ということですね。それは可能でしょうか。  藤原参考人  複数臓器移植の問題というのは、私はやはりニーズがはっきりと見えたときに、実際 それぞれに手がけていかないと、なかなか一律に全部決めるというのは、かなり困難で はないかなという気がいたします。  松田委員  決めるのではなく、この機会に検討はされておく方がいいかなと思うのです。  藤原参考人  こういうような形で、こういうふうにニーズが高まるから、作業班でやろうではない かという、そういう意味でのルールづくりなら可能かと思いますが、具体的に今度は肝 臓と腎臓の同時移植のルールはこうですよとなったことと同じような形で、将来これと これになったときには、同じにこうですという、医学的な内容を含めることは、私は困 難だろうと思います。  ただしこういう会議にかけなくても、簡便に推進できるシステム上のことでしたらで きるのかなという、こんなことでしょうか、松田先生の御質問。  大久保委員  海外だったら3臓器とか4臓器だとか、移植がありますよね。アメリカなんかはどう いうシステムになっているのでしょうか。そういう多臓器のときは。どういうルール か、全然わからないんですが。  永井委員長  菊地参考人。  菊地参考人  詳しい詳細なルールはわかりませんけれども、2臓器以上のマルチオーガンの移植希 望者については緊急度が非常に高くて、最優先で移植をされるという話は、聞いたこと がございます。たとえばピッツバーグにおいて同州のガバナーがマルチオーガンの移植 を受けたときには、かなりジャンプアップして移植を受けたり、日本のお子さんが海外 渡航されて、腹部臓器を3臓器、4臓器を同時に移植を受けられた事例がありますが、 かなり順位が高かったと聞いています。  大久保委員  ある程度ルールみたいなものは。一応あるのですか。  菊地参考人  ルールを探したんですけれども、見つけることはできませんでした。UNOSのホームペ ージでも見つからなかったので、マルチオーガンの臓器配分ルールは各OPOで、ルー ル決めがされているものと考えます。定かではありませんが。  大久保委員  また、もしもわかれば教えてください。  永井委員長  そうしますととりあえず今回は、肝臓と腎臓に関してということで。まずそれをつく っていただいて、さらに議論をしていくということで、よろしいでしょうか。それでは 合同作業班の方でよろしくお願いいたします。  次に議題の2でございます。生体肝移植ドナーのアンケート調査についてでございま す。この件は平成15年10月の本委員会でも議論をいただきまして、その後日本肝移植研 究会議の中に設置されたドナー調査委員会で調査を行われた。その報告書が3月にまと められました。これについて里見先生から、御報告をお願いいたします。  里見参考人  東北大学の里見です。生体肝移植における肝提供者の提供手術後の状況に関する研究 ということで、厚生労働省特別研究をいただきまして、移植後のドナーの調査をいたし ました、報告をさせていただきます。  今回企画立案の段階から、一緒にやっていただきました首都大学東京の清水先生、そ れから実際にドナーになられて、いろんな不安、悩み等々含めまして、アンケートの作 成等々にいろいろ御尽力いただきました鈴木さんにも、同行していただきました。私が 質問に詰まるときには、お2人に助けていただけるものと考えています。  それではこちら側で話をさせていただきます。                  (スライド)  この調査の背景ですけれども、我が国の生体肝移植が行われまして十数年たっており ます。2003年の2月末現在2,600名でしたけれども、年間500例程度の割合で増えており ます。  しかし一方で、最初小児で始まったんですが、成人間に移るに従いまして、摘出する 肝臓の大きさもどんどん大きくなっているということで、さまざまな問題が出てきてい るのではと予想されました。                  (スライド)  実際に見てみますと、肝移植研究会で行いました調査によりますと、約10%強の方に 何らかの障害がある。そういうことを調査しているうちに、我が国でも非常に残念なが ら、1人の死亡例が出ました。  これまで医学的な調査以外に、精神的な面や心理的な面、社会的な面も含めて総合的 に調査する必要性があると思ったので、この調査を開始したわけです。                   (スライド)  ドナーになられた方は、臓器を提供するだけでなく、中には一家の大黒柱という方も 含まれているわけです。いろんな面で調査をして問題点を明らかにして、できれば提言 を行い、よりよい移植体制をつくっていくために生かせればということを考えました。                   (スライド)  対象は先ほどお話ししましたように、全ドナー2,657名でしたが、残念ながら住所不 明などによって返ってきましたのが256票ありましたので、それらを除いた2,411名が対 象になっています。  14ページにわたる膨大なアンケート調査にかかわらず、1,480名、約61%の方に回答 をいただきました。大変この種の調査では高いものです。                   (スライド)  本調査の実施に当たりまして、最初から、移植医といいますか、移植をやる人間だけ の一方的な調査にならないように、ドナーになった方々が聞いてもらいたいような調査 項目の整理から始めました。そういう意味で、客観性を持たせるという意味で、我々移 植施設の代表もそうですけれど、社会学や心理学の方、それから実際にドナーとなられ た方も含めまして、企画立案をいたしました。  またできるだけ単なる数値だけの記入ではなくて、御意見とか、要望事項等々も含め まして、自由に書けるような欄を増やしてつくりました。  調査項目の内容は、大体7つの項目に大別できます。手術当時の状況の健康状態から 体験を振り返ってというところまで、14ページにわたる大きなアンケートとなりまし た。                   (スライド)  回答していただきました方々の属性特性を見ますと、男女の比率はほぼ同じぐらいで す。それからレシピエントの手術時年齢、つまり小児に対してやった手術か、成人に提 供した例かということを見ますとほぼ大体半分です。しかし今成人例が増えております ので、今後この比率はどんどん成人例の方が増えていくということが想定されます。  提供先は最初親から子供への提供が多かったわけですけれど、徐々に子供から親、も しくは配偶者、兄弟間の移植が増えています。それと同時に提供部位が左側、それから 右側になっていますが、今後右側のものが増えていくのではないかと想定されます。こ の時点で既に自分がどちらを提供したかということが、わからない方も、これだけの数 おられます。                  (スライド)  再移植も含めまして、初回の人がほとんどですけれども、再移植、再々移植の人も、 2%近くありました。  レシピエントが亡くなったという方が17%、250名くらいございます。生体肝移植の 生存が、この時期ですと75%ぐらいでしたので、若干生存例の方に偏っていますけれど も、ほぼ全体の率を現わしている偏りのない調査になっていたかと思います。職業有 無、専業主婦の方、これだけです。                   (スライド)  術後に経験した諸症状を見てみますと、やはり3カ月まで、それから4カ月から1年 まで、それから現在までということを見てみますと、傷のひきつれ、感覚のまひ、疲れ やすいとか、そのような症状は、比較的長い間残っているものであるということがわか ります。肝機能検査異常とか胆汁の漏れ等のき質的な障害に近いようなものは、あまり 数は多くないんですけれども、大体1年くらいでほぼ消えていって、現在まで持ち越す ことは多くないようです。しかしこういうひきつれとか、それから精神的な面は、少な からず長い間、症状といいますか、そういうもの訴えて悩んでおられる状況がおわかり になると思います。  4カ月から1年の間に外来治療した者が16.7%。それから1年までの間に入院治療を 要したものが2%ぐらいの方がおられる。                   (スライド)  術後の体調の回復の程度と要した期間を見ますと、現在の体調の回復状態は、幸いと いいますか、完全に回復した、ほぼ回復したを含めまして、97%強の方が、ほぼ回復し たと答えています。しかし全くしていない、ほとんどしていないという方が確か5名だ ったと思います、おられます。  回復に要した期間を見ますと、完全にというふうに答えた方は、4カ月ぐらい、ほぼ は6カ月。矛盾したようになりますけれども、これは完全に回復したと答えた方の方が より早く完全に回復するということを感じるようです。状態があまりよくない人に限っ て、そこに至るまでの期間も長いというふうに、解釈できるかと思います。                   (スライド)  社会復帰、職場、学業、日常生活がどういうふうになっているかというと、ほとんど の方、90%以上の方が術後は社会復帰をされております。それに約8週間ぐらいかか る。しかし手術前と同じように家事や仕事ができるまでには、約12週間ぐらいかかりま す。つまり3カ月ぐらいはかかっているということです。  その期間に仕事等々の調整が必要だったという人は、それなりにいるわけです。必要 で調整できたという方、必要だと思っているけれど調整できなかった方もおります。70 %ぐらいの方たちが、仕事の調整が、必要だったということになります。                   (スライド)  健康管理がどうなっているかと聞いてみますと、医療機関を定期的に受診しているか という問いに対しては、受診している人が27%。で73%の方は定期的な受診はしていま せん。健康診断は受診している方は、そのうちの64.7%で、全く健康診断を受けていな いという方が35.7%もいました。これは全体の約26%の方が、移植で臓器を提供した後 に、何らの健康診断も受けていないことを意味します。  このアンケートに答えてなかった方々もたくさんおられるわけですから、そういう方 々の健康についてどういうふうになっているのか、ちょっと不明ですが、かなりの部分 が、移植の臓器提供した後に、健康診断を受けていないのではないかという可能性が指 摘されます。                   (スライド)  将来の健康不安とドナー外来への要望ということで調査しました。手術によって将来 の健康への不安を感じている方が40%ぐらいおられます。ドナー外来の設置に関しまし ては、かなりの方々が、その設置を希望している。これは移植施設の方で、話し合いが 少しずつ進められ、いくつかのドナー外来をつくるというような形で動きつつありま す。                   (スライド)  移植になるまでの意思決定の調査をいたしました。移植医の説明から意思決定までの 期間ですが、つまり移植施設に行って、移植医から移植の説明を受ける前にもう決めて いる。もしくはその場で決めたという方が、かなりおられます。移植医に説明を聞く前 の段階での説明が、非常に重要なことになります。  移植の説明をする際に、十分なインフォームドがなされ、十分な資料が提供されて、 意思決定をしてもらわないと、移植をした後でいろんな問題が出てくる可能性があるの ではないかということが、推測されます。  また意思決定をするときに、何を参考にしているかといいますと、レシピエントの回 復、比較的一番いい肝臓を提供できるのがだれなのかということなどレシピエントのこ とを考えて、意思決定をやっており、自分のドナーの手術後の死亡事故や合併症等々に ついては、中位の重視傾向になっています。                   (スライド)  意思決定における思いや経験ではレシピエントから、何となく期待を感じていた。も しくは、家族や親族からの期待を感じた方々がそれなりにいるということになります。                   (スライド)  同じように、我々医師の側からの期待というものも、ドナーの方は感じているという ことです。それから血縁者に話すことにためらいがあった方も、いくらかいるようで す。                   (スライド)  今度は経済的な負担はどうだったかということです。これは調査の時期と現在の状況 では、特に成人に対しては、保険適用がなされましたので、現在の実態を現わしている かどうかは不明だと思います。小児については、保険適用になっていましたので、かな り負担の人は30%ぐらいでしたが、成人の場合には、この時期ですと、かなり負担と考 えている方が46.8%おられます。                   (スライド)  ドナーの損害保険についての要望です。民間の生命保険ではドナーになった方の死亡 補償とか入院補償は、給付されておりません。そういうこともありまして、骨髄バンク と同じようなドナーに対する保険の要望があります。                   (スライド)  肝臓提供の評価とレシピエントの治療状況の関係です。つまりレシピエントの状態に よって、肝臓提供の評価が、異なるのではないかということです。現在レシピエントの 外来通院が、月に2回以下、週1回以上の通院もしくは入院治療、それから亡くなった 方で分けて見てみますと、、レシピエントの状態がよければ、確かによかった、大変よ かった、が大部分をしめます。  亡くなった場合には、大変よかった、よかったという方が60%ぐらいです。我々移植 医にとりましては、ほっとすることですけれども、あまりよくなかった、大変よくなか ったという方は、レシピエントの亡くなった方でも8%ぐらいでとどまっていたという ことです。結果が悪くても移植医療に対して、理解が得られているのではないかと考え ています。                   (スライド)  せっかくたくさんの回答をお寄せいただきましたので、この解析結果をもとにして、 いくつかの提案、提言をさせていただきます。  まず意思決定における他診療科との連携ということです。これは先ほどお話ししまし たように、提供の意思は、移植医の説明以前にほぼ決まっている方が大半を占めていま すので様々なことが起こり得るということを含めた十分な資料の提供、情報の提供が必 要になってきます。それをもとにして、十分に理解した上で、臓器を提供する意思決定 をやってほしいということです。そういう意味での他診療科との連携や、説明資料の作 成を急がなければならないと考えます。                   (スライド)  術後の健康管理についての指導を受けていなかったという回答が多く見られました。 今はそういうことはあまりないと思いますけれども、今後少なくとも術後1カ月、3カ 月、6カ月、1年というような定期的な受診をするように指導すべきだと思います。  それから移植施設から居住地が遠い場合には、近隣の移植施設やドナー外来や地域の 医療機関への紹介を行うことが必要になってきます。                   (スライド)  ドナー外来のネットワークの構築を急ぐべきだということです。                   (スライド)  またドナーネットワークを十分に活用するためには、ドナーの健康手帳のようなもの を開発して、共通の情報を得るようなシステムをつくることが必要になってきます。退 院後の外来受診や、検診の記録、ドナー自身による体調の記録等々を記載するような形 で整備したいと考えています。                   (スライド)  その他ニーズの高いドナー損害保険の整備、ドナー同士の相互支援体制の確立、それ から法的検討としましては、臓器移植法等における生体ドナーの保護規定が必要になる かもしれません。医学的な面から、今後やるべきこととしては、ドナーになられた方の 術後の状況を、特にビルビリンが上昇した症例の解析を行い、そのような方の集団がも し特定できるのではあれば、そのような方はドナーになってはいけない方として、除外 するようなことで、保護規定を設けていくような必要性が、あろうかと思います。  本来臓器移植は、脳死からの提供で成り立つべきものだと思いますが、残念ながら諸 般の事情で、我々の国においては生体の移植を進めざるを得ないような状況になってい ます。善意という形でドナーの臓器提供が数多く行われている我々の国でこそこの様な 調査をしっかりやって、対策を十分とっていく必要性があると思います。幸い、厚労省 の支援により、先ほど提案しましたいくつかの研究がやれることになっています。感謝 申し上げて、発表を終わりにいたします。  永井委員長  ありがとうございました。それでは御質問をお受けしたいと思います。  松田委員  大変貴重な御報告をありがとうございました。こういう生体移植の場合のドナーのこ とというのは、ついついレシピエントの陰に隠れて、十分なケアができなかったという のが、だんだんわかってきていると思います。  2つポイントがあって、1つはこういう傾向、例えばフォローアップがあまりできて いないとかの傾向は、施設のボリューム、非常にたくさんやっておられるところと散発 的にやっておられるところと、何かそういうふうな分析がもしあれば、大変興味がある んです。  非常にたくさんやっているところはもうシステムとしてドナーのこともきっちりやっ ておられるのか。例えばドナーの方がずっと健康のチェックをされていないというの は、その背景は、そこの施設がある程度そういうポリシーをきっちりやっていないの か、地域性なのか。そこの分析がもしございましたら、興味ある所と思います。  里見参考人  この調査をやるに当たりまして、非常に留意した点がいくつかございます。これは患 者さんのプライバシーを守るという、個人情報の問題。それから各施設ごとの分析はで きるだけ避けるということです。  したがいまして匿名性とそれから施設をあまり同定しないような形での回収をしてお ります。もちろん患者さんの中には、各施設、どこの施設でやったかということも明ら かにしてもよろしいということでの報告をした方もおられます。ある程度の分析はでき ないわけではありません。ただこれは絶対に公表しないという約束のもとで、この調査 は成り立っていますので、御報告できません。  もちろん各施設には、幾分かの情報を提供して、改善点の参考にしていただくこと は、やりますけれど、全体としては公表しないということで御了解いただきたい。  永井委員長  手術に伴う合併症があったと思うのですが、それについては調査はされていらっしゃ るのですか。  里見参考人  肝移植研究会でやっております、肝移植研究会で持っている情報での分析は、既に公 表して、ランセットに載っております。そこでは手術に伴う障害といいますか、合併症 として、ある期間に区切ってみると、10%強ぐらいが起きているということが、わかっ ています。  永井委員長  そういう情報は、ドナーの方には、提供されているのですか。  里見参考人  そういう情報は提供されていると思います。ただ、今回はそれをもっと掘り下げたと いいますか、もっと細かい事も起きているのではないかということも含めて、調査をし たつもりでおります。  大久保委員  この調査は今年の3月ですね。この調査結果自体は、その後実際に生体の肝移植を受 ける御家族に関して、どういう形で提供されているのか、お教えください。  里見参考人  この調査報告書は、縮刷版も含めまして、各移植施設、もしくは臓器提供の、話をす るような内科系の施設等々も含めまして配布いたしました。ただ非常に限られた冊数し か印刷できませんでした。肝移植研究会のホームページに、この調査結果がダウンロー ドできる形で、掲示してございます。  そして私たちの施設もそうですけれども、説明するときにこういう資料をお見せしな がらお話をしている、そういう形で活用されていると思います。  大久保委員  それは肝移植研究会として、こういう形で利用してくださいというような、当然通達 とか何か、いっているんですか。  里見参考人  肝移植研究会の費用も使いまして印刷しましたので、肝移植研究会を通じて、この資 料も配布しております。  永井委員長  ほかに何かございませんでしょうか。  里見参考人  肝臓移植を実際に実施した施設、特に調査に御協力いただいた50施設には全部配りま した。患者さんを紹介していただいた施設に対しては、移植施設から冊子が何冊か配布 されたと思います。  町野委員  生体移植のルールは、現在日本移植学会の倫理指針で決まっているということですけ れど、問題は、これだけで今十分かということです。一部には、やはり諸外国と同じよ うに立法すべきだという意見もあったりします。生体移植についても法律をつくれとい う議論もありますけれども、そこまでもしいかないとしても、日本移植学会だけに任せ てしまうのではなく、ほかの何らかの形でのルールづくりが必要かという思いもいたし ますけれども、その点はいかがお考えでしょうか。  里見参考人  これは私が答えるべきかどうかわかりません。今移植学会の倫理委員会でも、少しず つ拡大する方向に行っているので、制限するかどうかという議論が出ていると思いま す。これは法で決めるものではなく、倫理委員会等で決めていくべきものであると私は 思っています。  大島委員  今の町野先生のお話ですけれども、移植学会の中の倫理委員会というのは、移植を行 う医師の集団なものですから、非常に価値観が似通っているというのか、社会全般から 見れば非常に限られた価値観の集団であるということは間違いないと思います。  したがってある医療が、その患者さんだけで完結するような医療じゃないという場合 に、どういう意思決定のあり方がいいのかというようなことについて、恐らくこれか ら、諸外国にいくつかの例があるみたいですけれども、日本の中でもどういう意思決定 のあり方がいいのかというようなことを模索するレベルの話ではないかというふうに私 自身は思っています。その点の意思決定のあり方とか方法について、何か町野先生、例 えば市民が参加するとか。  里見参考人  倫理委員会の構成について申しますと、必ずしも移植医だけではなく、かなり広範の 方々が移植学会の倫理委員会には入っておられます。町野先生も含めまして、生命科学 の方々とか、ドナーになられた方、患者さんの会の方とか、いろいろな方が入っておら れると私は認識しています。ですから中ではかなり白熱した議論が、繰り広げられてい ると思いますが。町野先生、いかがですか。  町野委員  その点は先生のおっしゃられるとおりですが、私も倫理委員会の指針というのをつく ったときの委員の一人ですが、この指針がごく少数の人間でつくっているということな んです。このルールだけで、世の中の人に納得してもらえるだろうかということが、私 たちはちょっと危惧するところです。  倫理委員会で決めて、そこである範囲で決定するという、私はそれは1つの行き方だ ろうと思いますけれども、そのルールづくりについて、今のような格好でいいのかとい うのは、かなり危惧があるところがあります。  大島先生の御質問ですけれども、何かアイディアがないかということなんですが、ノ ーアイディアというと格好が悪いのですけれども、この問題というのはやはり生体移植 の問題というのは、言ってみると背に腹はかえられないという格好で出てきた問題では あることは間違いない。一部の人たちではむしろこれを積極的に使うべきだと、脳死臓 器移植については反対だと、脳死についてはやはり人の死ではなくてだめなんだ。だか ら積極的に生体移植の方を進めるべきだという見解も、一部にはあります。  日本はそこまでは行ききらず、中間の非常に妙な段階に今あるわけです。人々の意識 というのは、はっきりしていないところがあるんです。それをどう考えるかというのは やはり、死体臓器移植の問題、脳死臓器移植の問題を含めた上で、全体的に考えていか なければいけない問題だと思いますけれども。  その生体臓器移植の問題を、言ってみると、倫理委員会のメンバーというのは、倫理 指針をつくった人たちとほぼ同じなんですけれど、20人はいないと思います。かなり私 は自分の立場も含めて、危ういところにいるなという感じはしています。  永井委員長  松田委員。  松田委員  きょうの御提案を委員会としてどうとらえて、どうレスポンスするのかということだ と思います。こういうボールを投げていただいて。そして基本的なことを、この委員会 でどう検討するかということ、ボールを投げられたと私は理解しています。こういう情 報を単にこういうことですよということではなく、どう我々がこの委員会が扱うか。  それに関連しましては、生体肺移植も50〜60例ですか、ですから生体移植の場合には 2人ドナーがいるわけです。そして私も具体的にドナーのフォローまでできていなかっ たんですけれども、恐らくシステマチックなフォローというか、そういうことはまだで きていないのではないかと思うんです。  やはり肝臓と違って肺を一側ですが、それを摘除してという、再生しない、そういう 肺をいただいているということもあって。  ですから心肺移植研究会でも、この話題をしないといけない。現実に進んでいるかど うかわかりませんが、そういうふうにとらえると、倫理的なことはちょっと別なことと して、生体からの移植の場合には、ドナーの方の医学的あるいは精神的フォローを、や はりこういうことでやりなさいという、ごく基本的な何かメッセージを各研究会に出す ということが、最低限必要で。  例えば肺については、ある程度まとまったときに報告するように、この委員会がする のか学会がするのか。その辺がこの委員会で問われていることかなと、私は理解したの ですが。  永井委員長  まずこの報告書の位置づけですが、これはどこで閲覧できるのですか。ホームページ 上に公表していらっしゃいますか。  里見参考人  肝移植研究会のホームページで閲覧できます。  藤原参考人  永井先生、参考人で発言していいですか。  永井委員長  どうぞ。  藤原参考人  ただいまの問題は、非常に重要でして。生体肝移植の場合について申し上げますと、 例えば子供が親にやる場合でも、子供が兄弟が何人もいて、その人たちにそれぞれ家族 がいた場合、非常に心理的な葛藤があるというのです。つまり、倫理それ以前の問題で ある。その辺も視野に入れないといけない。  その一方で、河野太郎さんが父親に提供したように、積極的に行う場合ももちろんご ざいます。その場合でも、こういう問題は出てくる。レシピエントが亡くなってしまう と、医療機関とドナーとの接点がなくなってしまうというのです。これは確か厚労省の 方にも意見があったと思いますが。そういった場合どうしたらいいだろうという側面も あります。  それについて、今里見先生のこの研究の中で、ドナー健康手帳の開発というのがござ いました。こういうものを定着させ、なおかつドナーに対していろんな保険適用も含め て、何がプラスになるものをやるという。こういう側面もあっていいのではないかと私 は考えますが、行政としてどのように考えているのか、その辺の意見を、もしよろしか ったら聞かせていただきたいのですが。  永井委員長  事務局お願いします  片岡室長  今回のこの生体肝移植のドナーアンケート調査について、ここで御議論をいただくこ とにいたしましたのは、2年前に生体肝移植についてご議論いただいてドナー調査など 生体肝移植研究会で、いろいろな取り組みを進められるということで、その方向で引き 続き適正な推進に努めてほしいとされております。  そのドナーの研究調査がされて、報告がまとまりましたので、今回御説明いただいた わけです。この報告の中で先ほど里見先生のお話の中にありましたように、いくつかの 課題が見えてきております。これら3点について、引き続き特別研究という形で調査研 究を進めていただくことになっております。  3点といいますのは、1つは、ドナーに思わしくなかったような症例について、より 研究していくということ。それからドナー健康手帳の開発、それから移植を希望する方 に対するハンドブックの作成ということが必要ではないかということで、それらについ て、引き続き研究を進められることになっています。  先ほど藤原先生のお話にもございましたが、こういうような課題が見えてきて、そう いうものが必要で、引き続き、研究会でいろいろ取り組みを進められるのであれば、行 政としてもできるだけ支援していきたいという考えを持っています。  永井委員長  ドナーのための情報提供というのは、今どういうところで行われているのですか。移 植ネットワークのホームページに、そういう欄があるかどうかとか。  里見参考人  これまではどちらかといいますと、移植医施設の持っている、自分たちの情報を中心 にして、自分のところではこれぐらいの期間で退院していますとかいう話がなされたと 思います。  ただ全国的に見て、こういうことが起こり得るということも含めた情報というのは、 提供されていなかったのです。これからは肝移植研究会のホームページで見えますの で、それを印刷してお渡しするなりして利用いただきたいと思います。  永井委員長  この情報へ、移植ネットワークのホームページからリンクアップすることは可能でし ょうか。  菊地参考人  リンクを張ることは可能ですが、現在はされていません、  永井委員長  それはよろしいのですか。  里見参考人  全然構わないと私は思いますけれども。だれもこれは独占する情報でも何でもありま せん。公開していますから、どこにリンクされても、全く問題はないと私自身は思って いますけども、こういう情報はどうなんですか。今の個人情報保護法とか言われると、 私は弱くて。  鈴木参考人  よろしいですか。私は先ほど藤原先生がおっしゃった施設と縁のなくなった、患者が 亡くなっているドナーなんですけれども。これまで解っていたドナーの情報というもの は、今東北大の里見先生がおっしゃられたように、各施設で示された資料の中に書いて あるドナーの情報及び医師やその近辺の方から聞いた情報、あるいは入院しておられる 患者さんや患者仲間の方から得られる断片的な情報等の集大成でした。ですからその量 も質もまちまちでした。  命をかけてドナーとなる決断をする方々が得ることのできる情報の量や質に差がある ことに危険性を感じましたので、我々当事者の方からも、明らかなことを皆さんに知っ ていただく必要があるので全数調査を行ってほしいという要望を厚労省あてに提出しま した。この当事者側の動きと肝移植研究会の積極的な取り組みが、うまくかみ合わさっ て行っていただけたのが、今回の調査ということになろうかと思います。  この報告書が出たことによりまして、私どもはドナーの会として、わずかですが相談 なども受けておりますが、こういう資料がありますという情報発信が初めてできるよう になりました。それまでは、横の連携から得た情報、例えばどこそこのだれだれはまだ ビルビリンが高いらしいよ、退院して半年もたつのにとか。γGPTが2〜3年たって も若干高い人がいるよとか。そういう類の情報しか得られないというのが現状でした。  少なくとも1つ、こういう形で、だれもが見られるような形のものをつくっていただ けだということは、非常に重要なことだと思います。ですからぜひ臓器移植ネットワー クに限らず、関連学会や患者団体でもリンクを張っていただいて、どなたでも見ていた だけるようになって欲しいと思います。  ただしやはり解説がないと、数字だけが独り歩きをして正確に読み取るのは難しいと いう現状もあります。そのためにガイドブックでありますとか、施設での指導の検討を 同時にやっていただけるというふうに理解しております。  それから先ほど町野先生がおっしゃった立法に絡んだ倫理指針のことですけれども、 当事者として移植が必要な家族を目の前に、うろたえた経験から申し上げますが、必ず 立法してほしいという意味ではありませんが、倫理指針という形だけでなく、もっと明 確な形で、1つの基準があった場合の方が、家族が本当に問題に直面したときに、何を 基準に判断するかという根拠の1つになるということは、確かですので。  移植学会の倫理指針だけではなくて、もう少し広く我々にとって、インパクトがある ようなものが示されていると良いのではと思います。それをガイドラインというのか、 その法的な重みについてはわかりませんが。  なぜかと申しますと、臓器移植提供者も結局のところ、目の前で困っている患者を見 ながら意思決定をするわけです。そこに完全なる自由意思とか、だれにも左右されない 完全な自己決定があるということは、これは幻想です。あらゆる条件が加味される中で 意思決定がされていくのが現状ですので。やはり先ほど御心配をされたように、もう一 段進んだ形で、少なくともこれは最低ラインであると、国としても認めているものだ と。それに外れる場合においては、個々の施設及びほかの中央の審議会を経るというよ うなことが明らかでない限り、あそこの施設ではやってくれる。でもあの施設はだめだ とか、あそこへ行けば倫理委員会は通るらしい等のように、今はネット上で、こういう 情報が実際に飛び交っております。そしてここの倫理委員会はノーと言った。だからあ っち行った方がいいというアドバイスまで行われているのが現状です。  ですから最低限のものをやはり国として明文化していただくと同時に、学会の倫理指 針ではないものの必要性を、どういったものかということは申し上げられなくてすいま せんが、これは切実に感じるところであります。そうでないと、さまざまなことに照ら し合わせて、家族内の弱い立場の者が、臓器提供の圧力を感じてしまう。実際に圧力が あるという意味ではなくとも。感じてしまうケースが増え心配があります。  また、今回の調査では全く出ていない金銭的な問題も、現実にはないとは言い切れな いというのが、現状です。  この報告書が、肝移植研究会及びその周辺の皆様方の御努力によって作られたという ことは大変ありがたいことだと思っています。この貴重な調査結果を踏まえて、日本の 移植のこれからのあり方にもつなげていかれるよう登録制度や、学会倫理指針の検討の 材料として、ぜひこちらの委員会でも活用していただけたらというふうに考えます。以 上です。  永井委員長  ありがとうございました。大島先生。  大島委員  我々も腎臓で、肝臓と腎臓で違うと言えば違うのですが、生体からの腎臓移植をずっ とやってきました。今は肝臓に比べれば、腎臓の献腎移植は多くありますけれども、し かし生体からの臓器提供ということでは、同じ歴史をずっと歩んできて、今でも同じよ うなことをやっているわけです。  何か基準をという、それが目の前の患者さん、あるいは目の前の家族が病気になって いるという状況を前にしての意思決定というのは、本当の意思決定ではないというの は、よくわかるお話です。  先ほども私たち、移植医療をやっている集団の価値観というのは、比較的似通ってい る価値観。似通っている価値観といいながら、これは議論をし始めると、非常に大きな 差が明らかになってくる。移植をやっている人間の中でも、断固として積極的に生体肝 移植を1つの治療オプションとして進めるべきだというぐらい強い意思を持っている人 もいれば、もうとにかく本当にぎりぎりのやむを得ざるオプションの選択であると。こ んなことはやるべきでないと。しかしほかに手がない以上、仕方がないんだというぐら いのところでやっている移植医もいる。それぐらいの幅があることは間違いないんで す。  それでは日本の中に、もう少しフリーに全体を考えた何かの指針のようなものがある かというと、御指摘されたように全くないと思います。移植医療を巡って、法律を巡っ てのこの十数年間、つまり法律はできたわけですけれども、その間の議論というのは、 言ってみれば、脳死も含めて、同じような議論、今指摘されたような議論がずっとされ てきました。脳死に関する決着がついたというのが、法律の問題だと思うんです。  一方で世界ではどうかというふうに見ますと、私が、知っている限りでは、WHOが 指針を出していると思います。生体肝移植が日本から発信されて、これほど日本の中で 広がる以前の知識しか、私にはありませんが。腎臓の提供が生体から行われているとき の、あの時点でのWHOの指針というのは、基本的に生体からの移植というのは、勧め られないというのが指針だった。今変わったかどうかはわかりませんが、多分変わって いないのではないかというふうに思います。それぐらいだろうと思うんです。  日本の中で違った形の、何らかの指針というような話をもしし始めますと、今は依然 として、空気が変わってきているのかどうかちょっとわかりませんけれども、これはや り始めたら、また大変な話になりそうかなというのが、率直な私の今の感想です。  大久保委員  指針の話だと、恐らく今移植学会が出している生体に関する指針があります。それを もう少し公的なところで裏付けをつけた指針をつくってほしい。先ほど先生がおっしゃ ったように、移植医、移植施設によって、かなり考え方に差があります。恐らくそれと 同一にはならないだろう。恐らくその施設の、倫理委員会の指針というのをつくって、 うちはここまでしかやりません。うちはここまでやりますと。ということは、確実にそ れを全部一緒にしろというわけにはいかないです。結果的にはやはり同じようなことが 起こるのではないかというふうには思っています。  今の移植学会の指針は、かなりゆるいというか、広いというか。今国会の方で、どち らかというと臓器移植自体に反対しているような議員が、生体移植に関する法律をつく った方がいいということで動いていますが、そういうのはかなり厳しい状況です。恐ら く今、本当に生命が危い患者さんを目の前にしている御家族にとっては、もっと厳しい 内容のものが出てくるのではないかと思うんです。  指針をつくるということというか、ガイドラインで決めていくということも、非常に 難しい作業なので、先ほどから町野先生もおっしゃっていたけれど、どういう方法が一 番いいのかというのは、本当になかなか簡単には出ないような問題だと思います。私自 身も、法律で規定するべきではなく、もう少し違うところで、こことは別の委員会をつ くるべきなのかどうかわかりませんけれども、そういったもので広くたくさんの方の御 意見を伺って検討した結果、出すものだというふうには思っています。法律自体の制定 については、私は反対をしています。以上です。  里見参考人  移植を実際にやっている身で考えますと、断る理由みたいなものが本当にあった方が いいのかなと思うときもないわけではありません。ただ実際には、なぜやってくれない んですかというような要望の方が、非常に強いんです。とてもこれではできませんとい うようなことも、なかなか言いにくい状況になるのが多いんです。  法的に決められて、本当にクリアカットに割り切れるかどうかは、よくわからないと 思います。  ただ、今できることとしては、医療側の方でできる規制のかけ方としては、移植をや った後に、少しでもドナーの方の状態が悪くなった方の分析をして、それがもしあるカ テゴリーにくくれるのであれば、そういう方々は、医学的に見て、ドナーになるべきで ないというようなことを決めていくことは、最低限できるのではないかということで す。  今後は移植をする側の人間としては、まずはそういうものを除外できるような、つま りドナーの安全性をもっと高めるような指針をつくりたいとは、思っています。  ただ倫理的な面も含めて、この方々をドナーにすべきではないということを決めるの は、医療側で決めることではないので、もっと広範な議論で決めていただきたいと考え ます。  鈴木参考人  いつもいろいろな議論の中で、生体の移植に関して、ほとんど取り上げられないの が、再移植、再々移植の問題です。先ほど松田先生がおっしゃった生体肺移植の場合に は、1人の方に提供するに当たって、当然どうしても同時に複数名ドナーが必要だとい うという例ですが、そうではなく、1人の患者さんのために再移植、再々移植が行われ るというケースが、肝臓では徐々に疾患の拡大に伴って、増えつつあるのが現状です。  私自身も実は再移植のドナーですが、生体移植が進むことによって、初回移植のドナ ーだけではなく、再移植、あるいは再々移植を考えるドナーも出てきているという事実 が、きちんと認識されていないように感じます。  今移植学会の、倫理指針が出ておりますが、再移植、再々移植といった厳しい条件が 重なったケースにおけるドナーが自己決定をするときにでも、基準が同じという状態 で、1回目の移植であろうが、2回目の移植であろうが、同じ判断基準を用いることに 私は疑問を感じております。  肝臓は特にウィルス性肝炎及び肝がんからの移植が増えてきましたので、当然再発を 視野に入れた移植ということになります。そうなると患者をかかえる家族が、次々と肝 臓の考えなければいけないというような状況や、調べてみたらみんなが実はキャリアだ ったということが解ったりとか。ほかにもいろいろ大変な問題が出てきております。  ですからせめてこの審議会では、生体移植におけるには再移植、再々移植のあり方も 含めた、先を見越した議論をぜひお願いしたいと思います。  永井委員長  すぐに結論というか、方向性を出すのはなかなか難しいですけれども、継続して議論 が必要ですね。これまで出てきた、きょうの報告書のような情報は、できるだけ開示し て、皆さんのもとに届くようにすることが大切です。  それとあとは、これは厚労省にもお願いしたいわけですけれども、フォローアップの 調査研究です。これはかなり長期にわたってしていきませんと、長期予後はどうかとい うのは全くわからないわけです。その辺の対応をお願いしたいということになるかと思 います。  きょうはこの辺までにして、引き続きこの件については、議論を重ねたいと思います ので、よろしくお願いいたします。  では次に、議題3でございますが、臓器提供意思登録システムについて、事務局から 説明をお願いいたします。  矢野補佐  資料3をごらんいただきたいと思います。臓器提供意思登録システムの整備につきま して、まずその趣旨から御説明させていただきます。  厚労省、それから日本臓器移植ネットワークでは、これまで約1億枚に上る臓器提供 意思表示カードを作成しまして、地方自治体、郵便局、コンビニエンスストア等に配備 をしまして、より多くの方に臓器提供に関する意思を表示していただけるよう、取り組 んできたところでございます。  しかしながらカードの所持率は、平成16年の調査によりますと、10.5%ということ で、カードを持っていないより多くの方に所持していただけるように、カードをより効 果的に普及する方法が、求められているところでございます。  それからカードを持っている方であっても、御家族がそのことを知らなかったりしま すと、カードが発見されずに、提供に至らないケースがあったりですとか、カードの記 載不備のために、御本人の意思が生かされないケースというのも出てきております。  また心停止下の腎臓提供では、本人の書面による意思表示がある場合、拒否の意思を 表示している場合以外の場合には、遺族の承諾によりまして、腎臓を提供することがで きることとなっておりますので、御本人の臓器提供に関する意思、提供する、しないと いうのをより確実に確認する方策が、求められているところでございます。  このため臓器の提供に関する意思表示の機会を拡大しまして、カードの所持者の増加 を図るとともに、より確実に臓器提供に関する意思を確認することができるように、臓 器提供意思登録システムを整備するというのが、趣旨でございます。  2番目に移りまして、登録システムの内容でございます。実施主体が日本臓器移植ネ ットワークでございます。実施のやり方ですけれども、ページをめくっていただきまし て、参考1という概念図というものをごらんいただきたいと思います。まずネットワー クのホームページ上に、登録コーナーというものを設けます。そこに携帯とかパソコン からアクセスしていただきまして、チェックリストの方式によりまして、臓器提供の意 思を登録していただく。  登録内容を記載したカードが、ネットワークの方から御本人に郵送されます。それを まず内容を確認していただいて、署名をしていただいて、御本人に持っておいていただ くというのが、イメージでございます。  左のページに戻りまして、今後の進め方でございますけれども、システムの整備につ きましては、現在来年度の概算要求で、関連予算を要求しているところでございます。 今後の進め方としましては、法律関係、医療関係、情報システム関係等の有識者にお集 まりいただきまして、作業班を設置します。登録システムの基本的な仕組み、事業化に 際して留意すべき事項、個人情報の取り扱い等ございますので、こういったことについ て検討してはどうかというふうに考えております。  最後に1枚めくっていただきまして、参考2という資料で諸外国の臓器提供意思登録 システムということです。システムを持っている国について、いくつか御紹介させてい ただきます。  まず登録方法ですけれども、左からイギリス、オーストラリア、カリフォルニアにつ いては、ホームページにアクセスしていただいて、それでオンライン登録をするという システムを持っています。右のオランダ、フランス、ベルギー、韓国については書面に よる登録を行っているということでございます。  登録事項なんですけれども、これは国によって制度の違いというものもありまして、 いろいろでございます。イギリスについては、臓器提供の意思がある場合に登録をする ということになっています。提供する臓器全部または一部を選択するという仕組みにな っています。  オーストラリアについては、臓器提供に関する意思の内容を登録する。イエス、ノー を登録するということになっています。  カリフォルニア州の場合には、臓器提供の意思がある場合に登録をする。  オランダについては、臓器提供に関する意思の内容を登録します。イエス、ノー、そ の他を登録します。  フランスについては、臓器提供を拒否する場合に登録しております。  ベルギーは、臓器提供に関する意思の内容。イエス、ノー等を登録するということで す。  韓国は臓器提供の意思がある場合に、登録をしているということです。  それからその下のその他のところですけれども、オランダ、フランスにおいては、臓 器の摘出に当たって、事前に登録システムに照会することが義務づけられているという ことでございます。  大体の登録率、登録者数でございますけれども、イギリスの場合、これは21%。イエ スの登録とありますけれども、これはちょっと訂正をしていただきたいのですが。これ はイエスの登録ではなく、登録に協力することで、役に立ちたいと言っている人の数と いうことです。アンケートの調査の回答だと思いますけれども、登録に協力することで 役に立ちたいと回答している人ということでございます。  それからオーストラリアは、イエス、ノーの登録をするということになっております が。大体27%が登録をしているということです。  それからフランスにつきましては、システムが始まってから、1年で大体4万名の人 が拒否の意思を登録しているということでございます。  ベルギーにつきましては、1995年の末ということで、システムが導入されたのは1987 年ということです。大体8年で、国民の1.8%、それから外国人の3.2%が拒否の意思を 登録しているということでございます。以上でございます。  永井委員長  ありがとうございます。ではこの件に関して、御質問お願いします。  大久保委員  法律が近いうちに変わる可能性もあるとは思うのですが。現状で考えた場合ですが、 登録内容を確認して、向こうからインターネットで登録をしていただいて、それを内容 記載したものを本人に送って、署名した上で所持してもらうということは、この署名し たものが、実際に出てこない限りは、移植は当然できないということになるわけです ね。  ですからそれはもう少し別の方法で往復葉書みたいに向こうに1つ持っていてもらっ て、こちらにもう1つ送り返してもらうというような方法はできないですか。  片岡室長  私どもで検討はさせていただきたいと思います。  大久保委員  今やろうとしているのは、とりあえずその方が、そういう意思があっただろうと。だ からどこかにはそのカードなり、署名したものがあるだろうということがわかるわけで すね。  片岡室長  現行では脳死下の臓器提供であれば、署名が必要でございますので、それはカードを 持っていただくということです。心停止下での腎提供の場合には、こういう意思があっ たということになります。  大久保委員  もう1つ問題になってくるのは、法律がもしも今のA案で通ったとすると、問題は拒 否の意思の尊重が重要になってくると思います。そのときにコンピュータには拒否にな っていますけれども、実際には拒否のものが全然どこにもありません、どうしましょう と。  もう少し確実に、ただ単に向こうに送りっぱなしではなく、それを両方で持ってお く。要するに国の方でも片方を保管するとか、そういった方法も考えて、より確実性を 上げるようなことをぜひ考えていただきたいと思います。  金井委員  アイバンクでは今のこのようなシステムを既にやっています。やはり1つの問題がア イバンクの場合にあります。絶えず2年に1回とか登録者に情報を提供していないと、 なかなか。登録して、その先が進まないことが多いんです。ですからそこら辺も考えら れた方が、こういうシステムをつくるのでしたら、そこまで一歩踏み込んでやられた方 がいいのではないかと思います。  町野委員  私は、これはやはりやった方がいいだろうとは思います。どういうふうに法律が変わ るかはわかりませんけれども、本人がノーと言っていたときには臓器の摘出は行うべき ではないことは明らかなので、その誤りを防がなければいけない。それが1つです。  もう1つはイエスと言っていたということがはっきりしているときについては、御遺 族の方も、その意思を尊重する方に行くと思われますから、二重の意味で私はやった方 がいいだろうと思います。  最初のノーと言った場合ですけれども、現行法によりますと、拒否の意思表示は必ず 書面による意思表示である必要はないのです。ですからインターネットのホームペー ジ、登録されているところにそれが残っていることで、十分だと思います。  もう1つ問題は、現行法ですと承諾の意思表示というのは、署名がなければいけませ ん。書面によるものがなければいけませんから、それをどのようにするかというもう1 つの問題があるかと思います。署名のは必ずしも直筆である必要はないと思われます。 身体に障害のある方は、書けないようなときがあります。そのときはどうするかという 問題です。点字のときはどうするかという問題が昔ありましたけれども、それと同じレ ベルで書面の問題を、もしインターネット上の登録で、そちらの方に、それが残されて いることを書面によるそれと見るならば、いずれにせよプリントアウトしたものだけで なく、何かプラスアルファが必要ですから、署名をどのように解釈するかという問題 は、残るだろうと思います。しかしそれはまだ工夫し得る余地がある問題だろうと思い ます。  小中委員  実際の運用のときについてなんですけれども、1つに実際に提供の連絡をいただいた ときに、登録の確認をすることをどのようにするかということが1点と。それから登録 後の意思が変化することは当然起こり得ることですので、それを運用的にどういう形 で、実際のデータを管理していくのかというあたりについても、作業班で今後検討して いただくことになるかと思いますが。そのあたりについても検討していただければ、あ りがたいなと思います。  町野委員  現状でこういう意思表示カードの所持率が低いことを、何とか改善しようというもの で、私は前向きにとらえてもらえる。種々の問題、法的な問題があるかと思いますけれ ども、進めてほしい。  先ほど大久保委員からも出ましたけれども、本人の署名は書面による云々という法律 のことがございますけれども、やはり啓発という意味も含めて、こういうシステムがあ って、意思表示をして、それに送り返したものにサインをしていたら、カードと同等で すよと、そういう意味の啓発的な意味で、そこを皆さんに理解してもらって。  そしたらこのシステムで、せっかくやったけれど、だめな場合もあるかと思います が、皆さんの意識を高めてもらうという意味で、そういう意味でぜひ進めてもらえれば と思います。  永井委員長  非常に数が多くなると、いろんな問題が発生してくる可能性がありますね。予算とか そういうことも含めた検討ということですね。  片岡室長  概算要求でシステムの経費等を要求しておりますので、予算に関しては、特に検討す るということはございませんが。できるだけ効率的にできるような御検討をいただきた いと思います。  永井委員長  そのほかに意見はございますか。もしよろしければ、ワーキンググループで、基本的 な仕組みといろいろ派生する問題、注意事項、それらについて御検討いただくというこ とで、進めていただくことにします。どうもありがとうございました。  それでは報告事項ですが、先ほど町野先生がお見えになる前に、一通りしてしまった のですが、何か先生、資料をごらんいただいて、あるいは事務局から、追加の説明等ご ざいませんでしょうか。  松田委員  質問ですけれども。前のでなく、これに全部変わるんですか。前のドナーカード、意 思表示カードは切りかわっていくんですか。  菊地参考人  以前のものは、在庫ぶんだけ配らせていただいて、新しいデザインのカードに切りか わっていくことになります。  里見参考人  私はこの意思表示カードをつくって普及させようと、頑張った時期がありましたけれ ど、最初は、1、2、3の番号がないカードをつくっていたんです。しかしこの1、 2、3をつけるということが、審議の課程の中で出てきました。そのためにその後の混 乱が生じたというふうに私は理解しているんです。  最近1、2、3に○がついていなくても、臓器の提供ができるような話も伺っていま すので、もし可能だったらこの1、2、3を除いたカードをおつくりになったらいかが かと、私は思っています。  最初にこのカードを移植学会でつくったときには、この1、2、3を除いたカードを つくったんですけれども、いろんな交渉の中で、どうしてもこれをつけなければだめだ といわれて現在のカードに決まったんです。当時これをつけると混乱して、提供に著し い障害になるんじゃないかと主張したんですけれど、案の定、いろんな問題が起きてい ると思います。  ですから1、2、3がなくても、もう臓器の提供ができるというふうになっているの であれば、そのようなカードにした方が、混乱がないと私は思います。ちょっとつけ加 えさせていただきます。  永井委員長  具体的にどういう混乱が起こっているか、御説明いただけますか。  里見参考人  例えば私が脳死の判定に従い、脳死後に以下の臓器を提供しますと、臓器に○をつけ ていても、1に○がついていないと、これは無効だと、された時期があったのです。  日本は厳しいといいますか、厳密さを求める国ですので、本当はこの人は臓器提供の 意思があったはずなのにと思われる場合も、それが生かされないということが、たくさ ん出てきていたものですから、私には間違ったカードのつくり方だったなという反省が あるものですから、もし可能だったらというふうに思っています。  大島委員  里見先生の御意見は、全くそのとおりでして、そのとおりの混乱がずっと出てきた結 果は、皆さん十分よく知っていると思います。その混乱が起こっているにもかかわら ず、ある時期はこれは何なのかというのは、なかなか説明が多分難しいでしょうけれど も、世の中の空気なのか、雰囲気なのか。そういったようなものがかなり支配的にあっ て、1、2、3というのも、あるところで意地悪をしてやれというような意図がどこか で働いていたとかではなくて、何かあのときの空気なんです。空気というか、雰囲気と いうか、世の中の大きな流れみたいなものがあって。それでもうせざるを得ないという ような、これは私の感想なんですけれども、それで大きな流れができてしまって、そう したと。  それがやっと、これは、12月のこの委員会、もちろんその前に提案されたのですが。  昨年そういった流れができ上がって、また大変な問題になるのかとちらっと思ったん ですけれども、それはほとんどならなくて、当たり前のような形でもって、すっと通っ てしまった。通ってしまったというのは、世の中の常識的な判断、一言で言ってしまえ ば常識的な判断で考えて、このカードを見て、ちょっとここに記載不備があっても、だ れが見たって意思があるよねというようなことがはっきりしている場合には、意思があ るというふうに判定しようというような形に変わったわけです。  それでまた大変な議論になるのかなというふうに、どこかで思ったんですけれど、ほ とんど議論にならなくて、世の中からも糾弾されることもなく、一気にどっと行っちゃ ったと。だから日本は一体何で決まるのかというようなことを一方では思いながら、見 ていました。  状況としてはそういう形で、変化してきて、今はそれが、当たり前になっています。 1、2、3が仮にあったとしても、前に大問題になったようなことは、まず起こらない だろうというのが、多分この委員会の判断というふうに考えていいのではないでしょう か。  大久保委員  内容も何か変えた別のものを考えるという、内容もこの書き方も少し検討しては。あ のとき内容もまた再検討しましょうと。  松田委員  あの議論の後、ここまでこれをどうするかの議論はしなかった。  片岡室長  カードの記載不備事例がいくつかありまして、その取り扱いについては、今大島先生 がご説明されたところでございます。カードに、より間違いがないように、より正確に ということについては、引き続き、事務局の方で検討させていただいております。  しかしながら、なかなかいいアイディアといいますか、本人の提供するという意思を きっちり表すには1で、番号のところに○をするなり、□で空欄にチェックをするとか ということもあるのかと思います。チェックの場合○を書いたり、×を書いたりしたと か、いろいろな記載が出てくるかと思います。本当にわかりやすい形でというのは、も うしばらく研究させていただいているところでございますので、いい考えがまとまりま したら、またご報告させていただきたいと思います。  町野委員  はっきりしていない、矛盾しているのではないかということですけれども、そういう ときについては、一応この委員会で前に決まったところで、OKであるということにな っています。例えば○がなくて、心臓とかそういうところに何か書いてあるというよう なときについては、○はないけれども、これはOKである、例えばそういう具合に解釈 することに、もうなりました。その点は現場の方に厚労省の方から御通知差し上げれ ば、あまり混乱はないのではないかと思います。  そしていろいろ書いてみても、実は私はワーキンググループの中にいたのですけれど も、なかなか確かにいい知恵がない。こうやったら、今後はこういう誤りが出るのでは ないかということです。やはりちょっといたちごっこのようなところがあります。  松田委員  あのときの議論で、性善説でいきましょうと。そういうことでいって、ほっとしたと ころもあるんですけれど。私ももう一度これをやられるに当たっては、もう少し現場の 方、実際の市民の方々の意見も聞いてやられたらよかったのでは。  例えば○とあって、しかも×もあると。しかも1番、この説明書きもなかなか皆さん 読んでくれないと思うんですが、注意点がたくさんあるんです。○で囲まれています か、臓器に○をしましたかとか。やはりシンプルなところで、書く方がめんどうくさ い、わかりにくいということのないような方向に、ぜひもう少し議論というか、意見を 聞かれて、修正をお願いしたいと思います。  永井委員長  これは○がついていない、○も×もついていない場合はどうなるんですか。、提供さ れてしまうこともあるということなんですか。×は提供しませんというのはわかるんで すが、○も×もついていなかったらどうなのか。  片岡室長  前々回、この場で御議論いただいたときに、例えば番号の1に○がついていて、心 臓、肺とか臓器について○も×もついていない場合には、あとの記載事項がしっかり書 いてあれば、これは本人の意思、臓器を提供するという意思があると見るのが社会的に 妥当であるということで、ここで記載されている臓器についての提供意思があると解釈 しましょうという取扱いになっております。  永井委員長  その辺のいろいろな取扱いを、できるだけ周知徹底していただくということが、大事 だということですね。  片岡室長  この取扱いにつきましては関係方面の方にお伝えしていただけるよう、都道府県、関 係団体等に通知いたしまして、周知に御協力いただけるようお願いしているところでご ざいます。  永井委員長  ということでよろしいでしょうか。それでは本日のところはここまでで、次回の予定 について、事務局から御説明をお願いします。  矢野補佐  次回の日程につきましては、委員の先生方に確認させていただきまして、決まり次第 文書にて御連絡を差し上げます。お忙しいところ恐縮ですけれども、日程の確保どうぞ よろしくお願いいたします。  永井委員長  それではきょうはこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。                                     (了)                      ┌────────────────┐                      │ 照会先:健康局臓器移植対策室 │                      │         矢野、岩間  │                      │   内線(2366、2365) │                      └────────────────┘