05/08/03 労働政策審議会労働条件分科会最低賃金部会 第2回議事録        第2回労働政策審議会労働条件分科会最低賃金部会議事録 1 日時  平成17年8月3日(水)13:00〜15:00 2 場所  厚生労働省専用第21会議室 3 出席者    【委員】 公益委員    今野部会長、勝委員、武石委員、田島委員                 中窪委員         労働者側委員  加藤委員、須賀委員、田村氏                 高橋委員、中野委員、横山委員         使用者側委員  池田委員、川本委員、杉山委員、竹口委員                 原川委員、前田委員    【事務局】厚生労働省   松井審議官、前田賃金時間課長、                 名須川主任中央賃金指導官、                 山口副主任中央賃金指導官、梶野課長補佐 4 議事次第    (1)最低賃金法の適用対象労働者    (2)現行の最低賃金制度についての評価       (1)産業別最低賃金       (2)「労働協約拡張方式」に基づく最低賃金       (3)地域別最低賃金 5 議事内容 ○今野部会長  それでは、第2回最低賃金部会を開催します。本日はお忙しい中お集まりいただきま して、誠にありがとうございます。前回欠席された方をご紹介します。公益側代表の田 島優子委員です。 ○田島委員  田島です。よろしくお願いします。 ○今野部会長  同じく公益側代表の中窪裕也委員です。 ○中窪委員  中窪です。よろしくお願いします。 ○今野部会長  次に、使用者側代表の前田薫委員です。 ○前田委員  前田です。よろしくお願いします。 ○今野部会長  なお、本日は石岡委員がご欠席です。また石委員が欠席で、田村雅宣UIゼンセン 同盟参与に、代理で出席していただいています。  それでは、早速議題に移ります。本日の議題は「最低賃金法の適用対象労働者」と 「現行の最低賃金制度についての評価」の2つのテーマです。まず、前半の最低賃金法 の適用対象労働者について、事務局から説明をお願いします。 ○前田賃金時間課長  資料1−1をご覧ください。前回の議論で家内労働者など最低賃金法の適用にならな い者に対するご議論がありまして、とりあえず現状を整理させていただいております。  まず資料1−1ですが、最低賃金法の適用対象労働者です。最低賃金法第2条で労働 者の定義をしていますが、そこでは「労働基準法第9条に規定する労働者」と最低賃金 法の適用対象を定めています。さらに、労働基準法第9条に戻りますと、「労働者」は 「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と定 義されていますので、労働基準法上の労働者に該当するかどうかについては、「使用従 属性」の有無、すなわち「指揮監督下の労働」という労働提供の形態と、「賃金支払」 という報酬の労務対償性によって判断されるということです。  具体的な判断については、その明確化のためにこれまで労働基準法研究会報告が昭和 60年及び平成8年に出されておりまして、労働提供の形態や報酬の労務対償性、さらに 関連する様々な要素を勘案して、総合的に判断するということになっています。  例えば「指揮監督下の労働」ということについては、諾否の自由があるかどうか、業 務遂行上の指揮監督や拘束性があるかどうかというようなことが判断基準としてある。 さらに、業務提供についての代替性があるかどうかということも補強要素となるとなっ ています。  報酬が「賃金」であるかどうかによって、直ちには「使用従属性」を判断することは できないわけですが、報酬の性格が使用者の指揮監督のもとに一定時間労務を提供して いることに対する対価と判断される場合には、「使用従属性」を補強するような要素に なるということです。さらに、事業者性があるかどうか、あるいは専属的に雇われるな り契約しているかどうかということが、「労働者性」の判断を補強する要素となるとな っています。  労働基準法上の労働者に該当しないような者については、最低賃金法も適用されない ということですが、一部については個別に、報酬等についての保護が図られているとい うことで、まず2の(1)にありますように、家内労働法によって家内労働者について は最低工賃などの保護が図られています。これについては、後ほど詳しく説明をしま す。  2頁の(2)下請事業者については、下請事業者が元請事業者との関係で従属的な立 場に置かれるということで、下請代金支払遅延等防止法により、下請代金の額や支払期 日、支払方法等を記した書面交付、あるいは書類作成・保存義務、不当な受領拒否、あ るいは買叩きなどの禁止が定められています。さらに、建設業法においては、下請事業 者の労働者の賃金相当額を元請事業者が立替払をするように勧告できるような規定もあ るということです。  (3)在宅ワーカーについては、家内労働に該当しないような、特に情報通信機器な どを用いた在宅での就業が広がっておりまして、そのうち特に他人が代わって行うこと が容易なものについて、在宅ワークのためのガイドラインという指針として、契約の文 書明示や保存、報酬についての適正化、あるいは個人情報保護、健康確保などについ て、ガイドラインを定めて、その周知、啓発が図られています。これについてもまた後 ほど説明します。  資料1−2は、家内労働の最低工賃についてですが、最低工賃の経緯については、当 初最低工賃が最低賃金法の中で規定されていたということです。昭和34年に最低賃金法 が制定されましたが、その当時最低賃金との関係において、最低工賃というものを設定 することができると謳っています。  家内労働については、昭和32年12月の中央賃金審議会の答申において、とりあえず最 低賃金法の中に最低工賃に関する規定を設けるとされています。さらに、総合的家内労 働対策のための調査準備に着手すべきということで、総合的な家内労働の保護のための 対策については、調査を行うことになったということです。  当面最低賃金法の中で最低工賃に関する規定が設けられたということですが、これは 一定の地域において一定の事業又は職業に従事するすべての雇用労働者に適用する最低 賃金が決定されている場合に、最低工賃を決定できるという形になっています。趣旨と しては、雇用労働者を使用する使用者について最低賃金が適用された場合に、家内労働 者に委託する委託者との間の競争条件が異なる結果になるので、最低賃金の有効な実施 という観点から、最低工賃というものも制定し得るというような形で、当初は決められ ております。  その後に(2)にありますが、家内労働の総合的な対策についての調査が進められま して、昭和43年の家内労働審議会答申で、当面基本的かつ緊急に必要な事項について法 制的措置を講ずるということで家内労働法が制定されたということです。その中では委 託者の届出制や家内労働手帳、あるいは工賃の全額通貨1月以内払制、あるいは安全衛 生などについて、法的な保護が図られたということです。このときに最低工賃について は、「一定の地域内において一定の業務に従事する工賃の低廉な家内労働者の労働条件 の改善を図るため必要があると認めるとき」に、最低工賃を決定することができるとい うことで、最低賃金とは切り離して、家内労働者そもそもの保護という観点から、最低 工賃が決定されるということになったということです。  2頁の家内労働の現状ですが、1つはまず家内労働法の対象となる家内労働者が委託 者から主に労働の対償を得るために物品の提供を受け、これを原材料とする物品の製 造、加工等の作業を行うということで、「物品の製造、加工等の作業を行う」というと ころが、定義としてあるということです。  家内労働者の数については、真ん中にグラフがありますが、法律が制定された昭和40 年代後半は、180万人を超えていたのですが、その後徐々に減少し、昨年10月現在で21 万6,000人です。そのうち女性が19万7,000人で、大部分が女性であるということです。  最低工賃については、3頁にありますが、3カ年ごとに最低工賃の新設・改正につい て、各労働局において計画を立てています。現在が平成16年度を初年度とする「第8次 最低工賃新設・改正計画」に則って、最低工賃の新設・改正が進められています。別添 2にあるような形で、今各都道府県労働局ごとに、その地域に特有の家内労働について の最低工賃が設定されているところで、全国に現在150件設定されています。適用家内 労働者が11万7,700人ぐらいということで、全家内労働者の大体5割ぐらいに最低工賃 が適用されています。  家内労働については、3頁の上にありますように、制度については労働政策審議会の 雇用均等分科会の下に家内労働部会が設けられ、家内労働に関わる制度についての審議 をしています。最低工賃については、最低工賃専門部会が設けられています。各地方局 におきましても、地方労働審議会の下に家内労働部会と最低工賃専門部会が設けられて いて、具体的な最低工賃の新設・改正は地方の最低工賃専門部会で審議が行われる形に なっています。  資料1−3は在宅就業対策ということで、先ほどの在宅ワークとの関わりですが、こ こで一応定義として在宅就業というものは、情報通信機器を活用した在宅形態等の働き 方の中で、雇用ではない、そして企業形態ではなく、他人を雇っていないような就業形 態というものを在宅就業と定義しています。そのうち「在宅ワーク」が、一応「主とし て他の者が代わって行うことが容易なもの」ということで、例えば文章入力、テープ起 こし、データ入力、ホームページ作成など、そういった作業を行うものを在宅ワークと 言っています。  実際にテレワーカーなり在宅就業がどの程度あるかということで、必ずしも全体的な 調査ではないわけですが、一部のものを抽出したアンケートなどから推定するに、国土 交通省の調査ですが、平成14年現在で自営型のテレワーカーは週8時間以上実施すると いうことに一応限定すると、97万人ぐらいいるということで、自営業者の中の8.2%ぐ らいを占めているという推定がされています。そのうち在宅就業ということで、自宅で テレワークを実施しているという者が82万人ぐらいということで、自営業者の6.9%ぐ らいというような推定がされています。  2頁をご覧いただきますと、収入について、特に自営型の場合には400万円未満、あ るいは100万円未満という収入分布が多い一方で、1,500万円以上というところも10.6% ありまして、自営型の場合には、収入がかなり二極化している傾向があるかと思いま す。  3頁以降は在宅就業に限らないわけですが、業務委託契約従事者の活用の実態という ことでJILPTで昨年調査したものですが、業務委託契約を結んでいる業務の内容と しては情報処理が一番多くて29.8%です。それ以外ではデザイナー・カメラマン、営業 ・販売、建築・土木・測量技術といったものが、かなり委託契約が多いということで す。業務委託契約と同じような仕事をしている正社員、あるいは非正社員がいるかとい うことについては、正社員がいるのが3割ぐらいで、非正社員になると6割ぐらい、こ れは労働者という意味ですが、そういう人がいるということです。  4頁は、業務内容は細かい点まで取り決めているというのがかなり多く、報酬につい ては、会社と個人のお互いの話合いで決めるというのが多くなっています。報酬の決定 方法については、やった量に応じて決めているというものと、仕事の質やできばえで決 める、あるいはその両方の組合せといったような形になっています。  5頁の報酬額の決定については、同業他社の同業務の報酬を基に決定しているという 割合が高く、成果の反映度もある程度反映されている、あるいは大いに反映されている というような形になっています。この中で特に在宅ワークということで、他の者が代わ って行うようなことが容易なのについては、契約をめぐるトラブルの発生や、仕事の確 保に必要な情報入手が困難な状況にあるといったような問題点が指摘されておりまし て、在宅ワークを安心してできるように、平成12年6月にガイドラインが策定されてお りまして、発注者、あるいは在宅ワーカーに対して周知を図っております。中身として は、契約条件を文書明示する、契約条件の適正化を図る、あるいは個人情報の保護、健 康確保措置などが、ガイドラインの中で決められているということです。ここまでが現 状です。  次に、資料1−4は「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」の中間取りまと めということです。現在労働契約法制の制定に向けた検討が、この研究会において行わ れています。就業形態や就業意識の多様化によって、労働条件の決定の個別化が進展し ている。経営環境の急激な変化や個別労働関係紛争の増加する。一方で労働組合の組織 率が低下して、集団的労働条件決定システムの機能の相対的な低下などもあるという中 で、労使当事者が対等な立場で、自主的に労働条件を決定するということを促進して、 紛争の未然防止を図るというために、労働契約に関する公正かつ透明なルールを定める ということから、労働契約法制の制定に向けた検討が行われたわけですが、その中で労 働契約法制の対象とする者の範囲ということが、1つの論点としてあるということで す。  資料1−4が、今年4月に研究会の中間的な取りまとめとしてまとめられたもので す。この中の2つ目の段落ですが、労働基準法の対象とする者の範囲は事業に使用され る者に限られているが、労働契約法制の対象とする者の範囲については、そのような限 定の必要はないのではないかというようなご意見がありまして、請負や委任に基づいて 労務を提供する者であっても、ある程度従属性が認められる者については、労働契約に ついての民事的効力を定める労働契約法制の対象とすることが有意義であるというよう なご意見があったということです。  また、具体的に紛争が生じた場合に、労働契約法制の各規定の趣旨、目的、効果を考 慮しつつ、類推適用がなされ得るというようなことによって、柔軟な対応も可能ではな いかというご意見もありました。さらに今年の秋に向けて、研究会においての中間取り まとめから最終取りまとめに向けた検討が行われているわけですが、3枚目の所に、中 間取りまとめ以降の論点と考え方についてということで、これは7月の研究会で出され た資料で、この中の考え方として、SOHO、テレワーク、在宅就業、インディペンデ ント・コントラクターなどの雇用と自営の中間的な働き方が増えている中で、当事者間 の交渉力の格差から生じるトラブルが存在するということで、労働基準法上の労働者以 外の者についても、労働契約法の対象とすることを検討する必要があるのではないかと いう考え方が示されています。その際に請負、委任に基づき役務を提供している者につ いて、特定の者に経済的従属しているような者については、相手方との間に情報の質及 び量、あるいは交渉力の格差が存在するということで、労働契約法の対象として一定の 保護を図ることとしてはどうかというような問題提起はされております。例えば(1)〜 (5)にあるような要件を満たす者については、労働契約法を適用するといったような考 え方があるのではないかという指摘がされています。こういった考え方も含めて、現在 労働契約法制の在り方に関する研究会において、最終取りまとめに向けての検討が進め られているのが現状です。前半の部分についての説明は以上です。 ○今野部会長  ありがとうございました。今の説明についてのご質問、ご意見がありましたらお願い します。 ○須賀委員  前回の私どもからの質問に対して、事務方として状況の説明をしていただいたという 認識に立ちたいと思います。したがって確認ということになるのかもしれませんが、冒 頭に資料1−1で説明をされたところについては、基本的には今回の検討の対象にはな らないと。ただし、そういう状況については参考にすると、こういう理解でよろしいの でしょうか。 ○前田賃金時間課長  基本的には最低賃金法の適用対象労働者ということについては、やはり労働基準法の 労働者ということがベースになるということで、この部会においてはそれを前提に検討 いただきたいということであります。  ただ一方で、労働契約法制の在り方の中で、雇用労働者以外の者に対しての保護とい うようなことも検討が進められていますので、そういうことも参考にしながら検討をし ていただくということで、基本的には最低賃金法については、労働基準法の労働者を適 用対象とすることをベースに考えていただきたいということです。 ○須賀委員  了解です。 ○中窪委員  前回の経緯がわからないのですが、今質問をしないとする機会がないかもしれないの で、ちょっと質問をさせていただきます。2点ありますが、1つは最低賃金法の適用労 働者に関して、6月に研修医に関する最高裁の判決が出ていたと思いますが、あれは資 料として皆さんは、最低賃金法そのものが問題になっていますから何かお配りいただい たほうがいいのではないかという気がします。それに関連して、研修医の問題について どういう対応が今までになされ、どういう形で今あるのかということを、ちょっとご紹 介いただければと思います。  第2の点は、最低工賃と家内労働法と在宅ワークの関係が、若干よくわからないので すが、最低工賃の決まっているものをみますと、大体伝統型の加工のようなものは多い のですが、在宅のほうでテープ起こしというのが結構あるということです。こういう人 というのは、テープを持ってきてそれを電子的な媒体に加工するというのは、そもそも は家内労働法の適用対象にならないということなのか、それとも適用対象にはなるが最 低工賃は決められていないということなのか、その辺をちょっと教えていただきたいと 思います。 ○前田賃金時間課長  まず最初の、研修医の関係ですが、具体的には研修医の方がかなり長時間労働で、過 労死になられたというような事案であったかと思います。そもそも研修医という形で大 学病院で働いている場合に、従来はそれが労働者として働いているかどうかということ が、必ずしも明確に整理されていなかったところがあったわけです。その方の事案をき っかけに、研修医についても労働基準法上の労働者であるということで、その関係で最 低賃金、結局労働時間に対して賃金を計算すると、最低賃金以下にしかなっていなかっ たというような部分もありまして、そこは最低賃金法違反というところがあったわけで すが、いずれにしても研修医というものが労働者であるということが、最高裁の判決の 中で明確になっている。  一方で研修医の体制の整備ということで、厚生労働省のほうでも医政局で研修体制を 含めて、今病院等に対しての指導を行っているというように承知しています。判決につ いては、次回にお配りさせていただきたいと思います。  2点目ですが、テープ起こしなどの関係が家内労働法の対象になるかどうかというこ とですが、これはおそらく対象になっていないということであろうと思います。先ほど 申しました資料1−2の2頁のところで、物品の製造、加工等の作業を行うということ になっているのですが、その製造、加工等の作業の中で情報通信機器でやり取りをして いるようなときには、必ずしも成果物というような形のものが明確になってこないとこ ろもあったりして、対象になっていないのではないかというように認識しております。 その点はまた担当の所に、もう一度確認はしておきますが、とりあえずそういう状況で す。 ○今野部会長  よろしいですか。もう一度正確に確認していただくということです。 ○松井審議官  家内労働法の2条に定義がありまして、この法律で委託とはとありまして、他人に物 品を提供してその物品を部品、付属品若しくは原材料として物品の製造又は物品の加 工、改造、修理、洗浄、選別、包装若しくは解体を委託するという定義の類似がありま して、要はものの外形や形をデフォルメする、変えるという行為というぐらいの定義が あるわけです。割と情報処理は、物の加工ではなくて情報の加工なので、この法律は現 行の規定では読めないのではないかという限界線上の話がありまして、情報加工が入っ ていないので、現行の扱いでは製造にはなっていないということなのです。それで家内 労働と在宅就労などでいろいろな情報処理をする方が、法令上別の範疇として整理され ることになっています。 ○中窪委員  ただ基本としては、雇用に当たらないが保護に値する人々が、もし家内労働法で保護 されるのであれば、より現代的な形で、そういう人たちに保護を拡大することも、ここ でかどうかはわかりませんが、検討する必要があるのではないかという気がしました。 ○松井審議官  最後のご提案につきましての検討は、現行の審議会の状況を見ていただきますと、家 内労働法のための審議会が一応法律でついておりますので、ここでは最低賃金法でとい うことですし、いちばん最初の須賀委員の話に戻るのですが、最低賃金法がいわゆる賃 金をもらう労働者の方の最低額を保障するための枠組みなので、この法律の体系で労働 者以外の方を救う議論をするのは、なかなか難しいのではないかと。ですが契約法制全 体で労働者性の議論をしていますので、そちらでの議論を考慮しながら、最小限現行の 最低賃金制度の扱いを議論していただく、それを踏まえて労働者全体、あるいは労働者 類似の働き方をする方々に対する契約のあり方は、労働契約法制の中で改めてしっかり 議論をしていただくほうが、物事を整理できるのではないかというように思っていると ころです。 ○今野部会長  それでは、第1番目の議題はこの辺にさせていただき、続きまして次の議題「現行の 最低賃金制度についての評価」について行いたいと思います。  現行の最低賃金制度については、産業別最低賃金と労働協約拡張方式、地域別最低賃 金の3つがありますので、それぞれについて事務局から説明していただきます。 ○前田賃金時間課長  資料2−1からです。前回の資料と重なる部分もあるので、要点のみを説明します。 まず、資料2−1で、最低賃金法の中で、特にこの制度にかかわる関係の条文というこ とですが、そもそも第1条の目的において、「賃金の低廉な労働者について」と対象が 決まっており、決め方については、事業、職業の種類、地域と3つが書かれています。 それらに応じて、賃金の最低額を保障することによって、労働条件の改善を図るという のが1つの目的です。「もって」ということで、労働者の生活の安定、労働力の質的向 上、事業の公正な競争の確保に資するとしています。最終的な目的として、国民経済の 健全な発展に寄与することを目的とする、ということです。  第3条で最低賃金の決定についての原則を書いています。「労働者の生計費、類似の 労働者の賃金、通常の事業の賃金支払能力」この3つを考慮して定めなければならない ということです。  最低賃金の効力ですが、第5条で、使用者は最低賃金額以上の賃金を支払わなければ ならないということで、これについては刑罰が科されるということです。第2項が民事 的な効力で、最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で、最低賃金に 達しない賃金を定めるものについては、その部分については無効となり、無効となった 部分は最低賃金と同様の定めをしたということで、民事効が働くものということです。  第7条で「最低賃金の競合」という規定があります。現在の最低賃金法の体系では、 「事業若しくは職業の種類又は地域に応じ」ということで、多元的に最低賃金が設定さ れ得るような体系になっていますので、労働者が2以上の最低賃金の適用を受ける場合 には、「最高のものにより第5条の規定を適用する」ということが定められています。  第11条が「労働協約に基づく地域的最低賃金」ということで、いわゆる労働協約の拡 張適用方式です。一定の地域内の事業場で使用される同種の労働者及びこれを使用する 使用者の大部分が、賃金の最低額に関する定めを含む一の労働協約の適用を受ける場合 又は実質的に内容を同じくする定めを含む2以上の労働協約のいずれかの適用を受ける 場合において、その労働組合又は使用者の全部の合意による申請があったときに、これ らの賃金の最低額に関する定めに基づき、最低賃金を決定することができるということ です。  第16条が「最低賃金審議会の調査審議に基づく最低賃金」ということで、これは現在 の地域別最低賃金と産業別最低賃金は、この第16条に基づいて決定されています。第16 条は、「一定の事業、職業又は地域について、賃金の低廉な労働者の労働条件の改善を 図るため必要があると認めるとき」は、最低賃金の決定をすることができるという、必 要があるときに最低賃金を決定することができるという規定になっています。  第16条の4に最低賃金の決定に関する関係労使の申出という規定があって、現在の産 業別最低賃金は、この第16条の4の関係労使の申出を契機として、第16条に基づいて審 議会で決定されているというところです。  資料2−2で、「産業別最低賃金について」です。概要は前回ご説明したとおりで、 現在、全国で250件設定されていて、約410万人に適用されて、加重平均額が時間額で 758円となっています。この産業別最低賃金は、先ほどの法第16条の4の規定による、 関係労使の申出を経て、「労働条件の向上又は事業の公正競争の確保の観点から地域別 最低賃金より金額水準の高い最低賃金が必要と認めたものについて設定する」というこ とで、大きく分けて、労働協約ケース、公正競争ケースの2つに分かれています。  労働協約ケースは、「一定の地域内の事業所で使用される同種の基幹的労働者の2分 の1以上のもの」が、労働協約の適用を受ける場合ということが要件です。公正競争ケ ースについては、「事業の公正競争を確保する観点から同種の基幹的労働者について最 低賃金を設定することが必要であることを理由とする申出」ということです。  3頁以下に、主な産業別最低賃金の現在の整理についての答申があります。昭和56年 の答申で、(1)基本的考え方で、(2)「関係労使が労働条件の向上又は事業の公正競 争の確保の観点から地域別最低賃金より高い最低賃金を必要と認めるものに限定して設 定すべき」ということで、具体的には産業の括りを「小くくり」にして、対象者を「基 幹的労働者」にすると。契機は「関係労使の申出」ということで、先ほどの労働協約ケ ースと公正競争ケースの2つということです。基本的には、昭和57年の答申がそれをさ らに細かく、運用のやり方を決めたということです。  昭和61年に、新産業別最低賃金について、現行法の旧産別からの一定の転換について の措置が設けられて、現在の新産業別最低賃金は、この大部分が転換によって設けられ ているということです。その後「公正競争とは何か」とか、そのような議論がなされた ということです。  資料2−3が「産業別最低賃金の現状」で、これは前回の資料と同様ですが、現在は どういった産業別で決定されているかが1頁です。2頁が、その産業別の水準です。3 頁が、地域別最低賃金に対して大体14%くらい高い水準が平均だということです。4頁 が、各産業ごと、労働協約ケース、公正競争ケースごとの、地域別最低賃金に対する比 率です。  5頁が、産業別最低賃金について労働協約ケースへの移行を図ることが、中央最低賃 金審議会の報告などでも謳われていて、徐々にそのような取組みがなされているわけで すが、現在あるうちで、労働協約ケースが約3分の1という状況になっています。  次に資料2−4で、「労働協約拡張方式」に基づく最低賃金についてです。これは先 ほどの法第11条の規定に基づいて、一定の地域内の同種の労働者及びその使用者の大部 分について、労働協約が適用されているということですが、この「大部分」について、 今3分の2程度という解釈をしています。  労働組合法の第18条に、そもそも労働協約の地域的拡張適用の規定があります。それ についても「大部分」という規定があるわけですが、それは「4分の3」と解釈されて います。最低賃金法についても、当初は4分の3というものを参考にしていたのです が、その後は「3分の2」ということでやっています。  2頁に、最低賃金法第11条と労働組合法第18条との関係について整理しています。労 働組合法第18条は、労働組合法ということから、あくまでもその目的は労働協約の実効 の確保を通じて、団結を擁護することです。最低賃金法は、地域における賃金の最低額 を保障することによって、公正な競争を確保するとともに、労働条件の改善を図ること です。  要件的に違っているのが、最低賃金法は労使双方の大部分ということで、概ね3分の 2以上とされています。一方労働組合法は、労働者の大部分ということで4分の3以上 です。ただ、労働組合法は、あくまでも労働協約の実効の確保を図ることで、労働協約 は1つでないといけないということです。最低賃金法は2つ以上の労働協約であって も、実質的に内容が同じであればいいという違いがあります。  3頁が、審議会方式と労働協約拡張方式との違いです。産業別最低賃金について労働 協約ケースを申出の要件として、同種の基幹的労働者の2分の1以上に労働協約の適用 を受ける場合等で、労働協約当事者の全部の合意がある場合には、産業別最低賃金の申 出ができるという要件になっています。労働協約拡張方式は、労使双方の大部分に労働 協約が適用されることで、それを契機に労働協約で決めた最低賃金額を基に、最低賃金 を決める形になっています。  4頁が、現在の「労働協約拡張方式の現状」です。全国で2件しかないということで す。いずれも、塗料製造業の関係で設定されています。適用されている労働者数は 約500名で、非常に限られたものになっているのが現状です。  資料2−5「地域別最低賃金について」です。これは現在すべての都道府県に設定さ れているので47件あります。適用労働者は5,000万人、加重平均が665円です。  現在、目安制度ということで、中央最低賃金審議会で、毎年地域別最低賃金額の引上 げについての目安を提示して、地方最低賃金審議会でその目安を参考に、各都道府県の 地域別最低賃金額を審議しています。目安制度は、昭和52年の中央最低賃金審議会の答 申で、(3)にあるように、全国的整合性がある決定が行われるように目安を作成して 提示するとされています。  その後、目安制度のあり方について、パートタイム労働者と一般労働者との関係をど うするか、あるいは就労日数の増減をどう反映するかといった議論がなされて、目安制 度が徐々に改善されていきました。一方で、表示単位について、時間額への一本化が進 められてきました。  資料2−6の「地域別最低賃金の現状」についても、大部分が前回の資料と重複して います。1頁が、引上げの経過、2頁が目安小委員会における賃金改定状況調査と引上 率との関係です。3頁が、地域別最低賃金の所定内給与に対する比率で、一般労働者が 3頁、パートが4頁です。5頁が、都道府県別の地域別最低賃金と所定内給与に対する 比率で、地域的にみて、かなり不均衡な面があります。6頁がパートについて同じくみ たものです。7頁が、さらに昭和53年と平成16年を比較したものです。8頁が、所定内 給与の第1・10分位と第1・20分位と最低賃金との比率を、さらに地域別にみたもので す。9、10頁が、高卒初任給との比率の推移です。  11頁が、前回池田委員から、高齢者のパートの賃金との比較のご質問があって、それ についての資料です。これは「賃金構造基本統計調査」でみたものですが、60歳以上の パートで、男子の時間額、それに対して最低賃金の割合がどうなっているかです。最近 若干上がっているところがあって、男子は60%前後です。12頁は同じく女子についてみ たものです。こちらも若干上がっているようなところがあって、74%ぐらいまでいって います。ただ平成16年はパートの賃金がかなり上がったところもあって、比率が少し下 がっています。  13頁が、未満率、影響率で、これは前回にみたとおりです。15、16頁が、それをさら に都道府県別にみたものです。18頁以下が生活保護との関係で、これは前回お出しした ものと同じです。以上です。 ○今野部会長  主に、産業別最低賃金、労働協約拡張方式、地域別最低賃金の3つについてご説明い ただいたので、まず労使委員からそれぞれについてご意見を伺いたいと思います。まず 産業別最低賃金について、労使のご意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。 ○川本委員  私ども委員も、それぞれの立場があるので、代表ということではなく、一委員として 意見を申し上げます。産業別最低賃金ということでしたが、現在経済のグローバル化の 進展などによって、日本企業は国内の企業にとどまらず、世界各国、特に近年は中国や 韓国など、アジア諸国の企業と熾烈な国際競争を繰り広げるに至っています。このこと は、実は都市部、大都市、大企業に限ったことではなく、各地域の地方の中小零細企 業、また最低賃金の影響を非常に大きく受けるような零細企業においても、状況は同様 であろうと考えています。  このような状況下において、産業別最低賃金が数多く設定されているのがものづくり 産業ということになりますが、極めて厳しい状況にあるのかと考えています。したがっ て、産業別最低賃金があることによって、事業活動に支障をきたす、あるいは雇用にも 悪影響を及ぼすことがあるのではないかと非常に懸念をしています。  そもそも最低基準であるのが最低賃金になりますが、現在この地域別最低賃金と産業 別最低賃金ということで、2つあるわけですが、実はこのこと自体に疑問を持っていま す。すべての労働者を対象とする地域別最低賃金が各都道府県別に設定されているわけ で、機能的にはそれで十分かということで、今その上に産業別がある場合は、高い方を 取るということになっていますが、やはり屋上屋を架す形になっているのかと考えてい て、産業別最低賃金を別途設定している必要性は認められないのではないかと考えてい ます。したがって、産業別最低賃金は廃止すべきであると考えています。 ○池田委員  私の立場としては、産業別最低賃金は屋上屋を架すので廃止してもいいのではないか と思います。それと、労働協約拡張方式も現在機能していないので、廃止してもいいの ではないかという意見です。  一方で、廃止することによって、水準論を含めて、最低賃金を引き上げる1つの材料 になるのは、非常に困ることがあります。先ほどの資料の中の60歳以上のパートの金額 が非常に高いので、私はびっくりしています。これから増えていく60歳以上のパートは 賃金が非常に高い分野になるので、産業別最低賃金がなくなって、そのような水準にな ってくると非常に困るというのが率直な意見です。 ○原川委員  今経営側委員の2人から意見がありました。私は中小企業の代表ですが、全く同じで す。中小企業についても、熾烈な国際競争の中で、コスト削減が中小企業の最大の経営 課題になっています。今後景気が回復したとしても、中小企業はまだ厳しい状況にある ことは申し上げています。仮に景気が回復したとしても、大幅な上昇は見込めないので はないかと思います。今後は低空飛行での厳しい経営を恒常的に強いられる状況が続く のではないかと考えています。そうしたことから、産業別最低賃金が経営に与える影響 は非常に大きいということが言えると思います。  それから、制度の問題ですが、地域別最低賃金が全国的に整備、適用されています。 セーフティ・ネットの役割は十分果たしていると思います。これはすでに定着している と考えています。強行法規である最低賃金法で、罰則つきの最低基準の二重底の設定を 産業別最低賃金でしているわけで、そういった制度のあり方というのは、考え直すべき ではないかと考えています。 ○今野部会長  労働側からご意見をお願いします。 ○加藤委員  労働者側も代表的意見ではなく、後に各委員から補強なりご意見を提示したいと思っ ています。産業別最低賃金については、先ほど事務局からご説明のあったように、昭和 61年の中賃答申に基づいて、従来の産業別最低賃金と考え方を整理をして、地域別最低 賃金と産業別最低賃金の役割と機能を明確にしながら、制度運用を図ってきたという性 格だと考えています。そうした意味では、答申に基づいて関係労使の申出、それから 「小くくり」の産業を基本として、基幹的労働者に適用する最低賃金という形で育成を してきたのではないかと思います。  屋上屋論はよく聞かれるわけですが、労働者側としては、産業別最低賃金は決して屋 上屋だとは考えていません。最低賃金制度全体としての実効力を持たせることが、極め て大事だと思っています。地域別最低賃金の水準と関連づけて議論をしているわけでは ありませんが、もちろん地域別最低賃金の水準についても、これは後ほどのテーマのよ うですが非常に問題があって、地域別最低賃金の水準も改善すべきだとは思っています が、そうした水準論の観点だけではなく、最低賃金制度の機能面から考えても、制度全 体の実効性を確保するためには、産業、その産業の特性に基づくということも言えるの かもしれませんが、職務、職種に無関係に、すべての労働者に共通したセーフティ・ネ ットとして、行政主導で設定をされるナショナルミニマムとしての地域別最低賃金に加 えて産業別最低賃金が必要だと考えています。この両方がうまく機能することにより、 最低賃金制度全体の実効性を高めるのではないかと思っています。  少し論点は変わりますが、屋上屋論がよく言われますが、例えば欧米の賃金決定の仕 組みと、日本の賃金決定の仕組みは異なっていますが、例えばヨーロッパの場合には、 基本的に産業別労働協約がベースになって、その産業別労働協約が極めて社会的な広が りをもって運用されている、あるいは実行されていることが挙げられると思います。そ のような中で日本の場合には、もともと産業別労働協約の仕組みが非常に脆弱ですし、 もともとの労使関係が企業内労使関係、内部労働市場をベースにしていますから、日本 での賃金の決定、労働条件の決定は、企業内にとどまる面があると思います。  そのような中で、私から言わせれば、日本の場合には企業内にとどまる労働条件決定 の弱さだと思うのですが、そうした労働条件決定の弱さをカバーする意味で、産業別最 低賃金が果たしている役割は極めて大きいのではないかと思っています。つまり、労働 条件の社会的規制や外部労働市場での職種別賃金相場の広がりが希薄なわけで、そのよ うな中で、我が国唯一といっても過言ではないと思うのですが、我が国唯一の企業の枠 を超えた産業別労働条件決定システムとも言える産業別最低賃金というのは、今労働市 場が大きく変化する中で、その機能や役割がますます重要になってきているのではない かと考えています。  そして、こうした日本特有の労使関係の土壌の上に、当該産業労使の団体交渉の補完 的な機能を持った、産業ごとの最低賃金決定システムであるので、こうした点をぜひ大 事に育てていただきたいと思っています。例えば最低賃金制度のあり方に関する研究会 報告などでは、「適用労働者はわずか8%ではないか」「地域別最低賃金に比べてわず か14%の賃金の優位さしか持っていないではないか」ということを指摘しながら、産業 別最低賃金の在り方についての課題提起を投げかけているようですが、これについて は、もっと広がりをもったものとするための上での制度的な改革が求められるのだろう と思っております。  先ほど事務局のご紹介にあったように、昭和61年答申に基づいて、今ある約250件の 産業別最低賃金は、当時の現行産業別最低賃金を新しく、関係労使の申出による現行の 新産業別最低賃金に転換したものが大半になっております。非常に組織率の低さ、低下 傾向もあるのですが、それ以外の制度的枠組みもあって創設しにくい状況があります。 先ほどご紹介のあった2分の1要件とか3分の1要件、それに加えて、申請したものに ついての必要性の審議があり、金額の審議に入る前に必要性の審議が関係労使だけでは なく、審議会の全会一致、1人でも反対したら新設できないという全会一致の要件が課 せられている点もあって、8%と適用対象労働者が限定的に設定されている課題がある わけです。むしろ、そうした点を改善し産業別最低賃金の持っている機能を充実させて いく、強化していくことが大事ではないか、ということを申し上げておきたいと思いま す。 ○中野委員  私からも同様の考え方かもしれませんが、少しご意見を申し上げたいと思います。産 業別最低賃金は、今ご説明のとおり最低賃金法第16条の4から設定されております。様 々な最低賃金に係る要件、例えば、新設の場合は労働協約ケースですと2分の1、改定 の場合は3分の1、公正競争ケースの場合は3分の1相当の決議等の要件があります。 これらについては、第16条4の第2項にある厚生労働大臣又は都道府県労働局長の「必 要があると認めるときは」ということに関わる、いわゆる行政の裁量に関わる規定であ ると理解しております。  そういう意味で言えば、2分の1なり3分の1の申出要件が非常に厳しいと理解して おります。例えば諸外国をみても、拡張適用要件ですら、これほど厳しい要件はないわ けです。この申出要件がそもそも厳しすぎるが故に、なかなか分かりにくい制度と言わ れる部分が生じてしまっていると考えるわけです。翻って考えてみると、公正な賃金決 定はどういうことかと考えたり、適正な賃金はどうあるべきかと考えたときに、やはり 一方的な賃金決定はいけない。一方的な賃金決定が賃金の低廉な労働者を生み出す原因 の1つであると言われております。そういう意味から言うと、労使の合意に基づく賃金 決定がどうしても必要になってくる。  しかし、労働組合の組織率は低くなっておりますので、労使の合意に基づく賃金決定 が行われずに、一方的に賃金決定をなされている労働者が拡大しているということです から、そういうところについては、やはり団体交渉の補完的機能を持つと言われる産業 別最低賃金制度は非常に重要ではないかと考えております。これが1点目です。  もう1つは、最低賃金の最低という日本語です。日本の最低賃金法は「最低賃金法」 で、社会的最低賃金法という言葉は付いていません。例えば、アメリカは連邦最低賃金 と言ったり、あるいは州の最低賃金というように、最低のグルーピングが前段で定義さ れています。日本語の最低というのは、ある一定のグループの、集団の中におけるいち ばん下、相対的に低いところを最低というわけです。そもそも法の名前からして、いく つかの最低賃金を想定していると理解しております。また、賃金実態そのものも、その 産業や、その人の持つスキル、技能などにより、いくつかの層に分かれるわけです。そ のいくつかの層ごとに最低という概念が必要になってくるのではないかと考えておりま す。  そういう立場から言いますと、現行の産業別最低賃金の適用対象労働者は、「基幹的 労働者」ということで1つのグルーピングがなされております。地域別最低賃金の、す べての労働者という概念から絞り込んだ概念規定になっています。そういう意味から言 いますと、やはり層ごとに少しずつスキルなり何なりが違う労働者を保護していく、賃 金の低廉な部分を保護していくという意味では、非常に有効な制度ではないかというの が2点目です。  3点目は、労働市場は大きく変化してきております。例えば3年未満で辞める学卒者 が「七五三」と言われるように、中学校卒は7割、高卒は5割、大卒は3割が、3年未 満で辞めるというように言われています。それは転職市場が充実してきたということも ありますが、従来の企業の内部労働市場だけでなく、外部労働市場が形成されてきたこ とだろうと思います。その外部労働市場の中には、一定の職種なり、あるいは産業なり による賃金相場が形成されるわけですし、それぞれの相場の底支えという意味で産業別 最低賃金は、その役割はますますこれから重要になってくるのではないかと考えていま す。そうした立場から言いますと、私も現行の最低賃金制度が、これで完全に有効で実 効性があるとは、その水準も含めて考えておりませんし、これからの社会の変化に対応 できるような、さらに実効性のある産業別最低賃金制度に充実させていかなければなら ないのではないかと考えております。 ○須賀委員  今水準の話が若干提起されました。後ほど地域別最低賃金との関わりも出てくるので すが、私の考え方を紹介したいと思います。純粋な経済論的にいきますと、市場経済の 下で競争があるのは当然の話です。その中でアジア諸国との競合があって、地域あるい は中小企業は大変だということは私どももよく理解しています。またそういう状況のあ ることも認識しています。従来のように国内の競争だけではなく、それが東南アジアと いう枠を超え、さらにもっと大きなグローバル化という流れの中で、一層拡大している ことも理解をします。  確かに、経済論的な競争でいきますと、東南アジアあるいは中国とコスト的に競争し なければならないのでしょうけれども、20分の1、30分の1、場合によって50分の1と 言われている中国の賃金と、日本の状況を単純にコスト論だけで比較することは果たし て妥当なのかどうか。もっときつい言い方をすれば、純粋に効率的にコスト競争をする のだったら、そういった事業あるいは企業というのは、自由主義の市場の下では、市場 の中から退出していくのが本来の姿だろうと思います。しかし、依然としてそこで事業 生業をやっているということは、別の意味での意義があって、その中で事業生業をして いるのであって、そのときに賃金をいくら払うのかというのは、純粋にコスト論だけで はないはずだと考えております。  この水準のあり方を今後議論していくことになるのだろうと思いますが、そういう状 況をよく考慮しないと、最低賃金が上がるからもう大変だという話を、いつもいろいろ な所で、審議会の場などでも聞くわけです。今の影響率、未満率の関係も含めて直接的 に結び付けるものではないと考えますので、この辺の水準のあり方については、またい ろいろな形で議論させていただければ有難いと思っております。 ○今野部会長  ほかにはございますか。よろしいでしょうか。それでは労使からご意見を伺いました ので、あとは自由に議論したいと思います。 ○勝委員  今両方のお話を聞いておりまして、見方は2つに分かれていると率直に思いました。 労側の主張にあるように産業別最低賃金の役割と機能を明確にしていくことは、非常に 重要なのだろうと。日本の産業別最低賃金を今後どうしていくかを考えるに当たって は、やはり実態はどうであるかを押さえる必要があるのではないかと思います。研究会 報告等をみますと、産業別最低賃金と地域別最低賃金は重複している面が多く、ここの 検証が非常に重要ではないか。例えば技術の継承、産業特性を活かしていくということ であれば、基幹的労働者の産業別最低賃金は非常に重要であるだろうと思われるわけで す。この基幹的労働者の定義がふさわしいのかどうか。つまり、この研究会報告によれ ば、重複しているということは、いわゆる技術者とか、グルーピングしている人以外の 者も含まれているということで、考え直すことが主張としてあるわけで、その実態を押 さえる必要がある。もし産業別最低賃金を継続していくのであれば、基幹的労働者の定 義を考えていく必要があるのではないかと思います。  1点事務局に質問させていただきたいのは、資料2−3の2頁、産業の特性によって 産業別最低賃金はかなり違ってくると。これをみましても産業別最低賃金はかなりバラ つきがあります。これは今言われた技術の問題なのか、交渉力の問題なのか、産業の特 性を反映したものなのか、このバラつきの要因は何なのかを教えていただきたいと思い ます。例えば、道路貨物運送関係は突出して高いのに対して、家具・装備品とか、この 辺のものは地域別最低賃金にかなり近くなっている。ここで300円近い開きがあるわけ で、この辺の産業別最低賃金、業種別の開きの要因は、何によるものかを教えていただ きたいのです。 ○今野部会長  前半の話は組合の方にお聞きしますか。 ○勝委員  これは私の意見です。 ○今野部会長  前半の基幹労働者の実際はどうなっていて、定義はどう考えるのかというのは組合の 人にお聞きしましょうか。 ○勝委員  これは、そうなっているのではないか、実態を押さえるべきではないかという意見で す。 ○今野部会長  でも、折角だからお聞きになったほうがいいのではないでしょうか。 ○勝委員  はい。お願いします。 ○加藤委員  基幹的労働者がどうあるべきかについて考えることは重要だ、というご意見について はよく理解をいたします。現状について申し上げますと、昭和61年答申に基づいて、基 幹的労働者を定義するに当たって2つのやり方があります。1つはポジティブ方式とい って、あらかじめ職種なり、あるいは基幹的と思われる仕事を特定をして、この仕事に ついての賃金はいくらとする、この職種はいくらとするという決め方が代表例だと思い ます。そういうやり方と、そうではない、いわば適用除外をして、適用除外をしたあと に残った労働者を「基幹的労働者とみなす」というやり方の2つがあったわけです。大 半のものは、今転換をして残って新産業別最低賃金として運用している、約250件近いも ののほとんどは、後者のネガティブ方式によるものです。  したがって、年齢でいうと18歳未満と65歳以上は除外し、そのほかに共通する軽易業 務として清掃・片付け。そのほかに産業特有の軽易業務。電機産業なら電機産業におけ る軽易業務をそれぞれ除外し、残ったものを基幹的労働者とみなすというやり方を採っ ていますし、そう採らざるを得なかった背景があります。現在もあまり大きく変わって ないと思いますが、とりわけ作った当時の15〜20年ぐらい前においては、日本の賃金 は、職種別の賃金を決定するとか、スキルの高さ、能力の高さといった資格で賃金を決 定するものではなかつたものですから、初任給で企業に入って、あとはOJTなどを通 じて技能を高めながら内部的に賃金も上昇していく、資格も上昇していくというのが日 本の賃金決定の基本パターンでしたので、社会的な横串として、企業の枠を超えた横串 として、職種を指定するとか、資格を指定する、スキルを指定するといったやり方が採 りにくかった背景があったのではないかと思っております。そこが欧米との決定的な違 いです。 ○今野部会長  よろしいでしょうか。 ○勝委員  はい。 ○今野部会長  曖昧に定義してきたというご回答でございます。 ○加藤委員  曖昧とは言っていないです。 ○今野部会長  失礼しました。ネガティブリスト方式で定義をしてきたということです。 ○加藤委員  日本の土壌ではそうやらざるを得ないのではないかということです。 ○須賀委員  そう選択をしてきたということです。 ○今野部会長  はい、わかりました。2点目のご質問は、資料2−3の2頁、業種によって何でこん なに違うのだという質問だと思います。 ○前田賃金時間課長  今の産業別最低賃金、先ほど説明したように大部分が旧産業別最低賃金から転換した ことがまずあります。当初は、もともと地域別最低賃金と同じように全労働者について のセーフティ・ネットということで、その産業の賃金格差もある程度反映されて、産業 内の最低ということで設定されていた旧産別の時代がありました。そうしたものを転換 していったという経過もあるので、そういう影響を受けている面もあるかと思います。 あとは、その産業で実際の賃金がどうなっているかということによって違ってくる面も あります。  あと、労働協約ケースと公正競争ケースもありますが、労働協約ケースのほうが若干 高く決定される傾向もあるところもあります。過去からの経緯が若干影響している面が あるのではないかと思います。 ○今野部会長  この点について労使で、何かコメントしていただくことはありますか。 ○須賀委員  この産業別最低賃金は、まさに当該業種に関係する労使の専門部会がそれぞれ都道府 県の中に設定されて、その専門部会の中で具体的な水準改正の必要はありや否や、ある いは、新設設定の必要はありや否やと。そういう議論をし全体で、新設の場合は、全会 一致で必要はありや否やということ、あるいは、水準の見直しについても必要はありや 否やを決定し、それをベースに置いて専門委員会の中で具体的な水準を議論する。まさ に、関係労使がそこでは、当該の労使であるわけです。  特に家具・装備品から左にあるグルーピングのところは、数年「水準の改正は必要な し」と見送られてきた経過もありますし、今の新しい制度に変わってくるときにもとも と低かったことが影響していると考えています。それ以外のところは、道路貨物運送業 は少し例外的で、これは逆にもともと高かった部分があります。真ん中辺りにある紙・ パルプから自動車整備ぐらい、この辺の関係については、関係の労使がきちんと話し合 ってきた結果、つまり産業の事情なり、地域の特性なりが反映された結果、こういう水 準にバラついていると考えていただいて結構だと思います。 ○前田賃金時間課長  636円とか910円とかなり極端なのは、そもそも全国に1つしかないというのがあっ て、特定の都道府県で決めた分しかないというのもあります。平均というよりも1つし かない産業もあったりしますので、そういうところもあります。 ○今野部会長 他にご質問はありますか。 ○池田委員  経営側から言いますと時代的背景が、例えば昭和56年だと、おそらくオイルショック の始まりの辺り、昭和61年は円高不況など、社会的に経済が不況の時代です。世の中が 不況の時代に国としてセーフティ・ネットを決めたというような経緯があるのではない かと思います。その後にバブルの崩壊がきていますから、ある程度賃金を抑えていかな ければならないということで、国際的な競争や国内の競争で、わりに突発的に上がった りはしていないのです。  現在の時代は規制緩和の時代で、最低賃金が地方別に決まっている上に、なおかつ産 業別をセーフティ・ネット的に決めるというのはそぐわない。これからの国際間並びに 日本の産業の競争力維持・強化に向けた規制緩和のもとで、産業別最低賃金も外すこと になるのではないか。例えば、私ども運送業や倉庫などをやっていますと昔はタリフな どがあるわけです。一定の金額以上にしてはいけないとか、そういうのが今全部規制緩 和で外されているわけです。企業間で何か協定すると公取委に怒られる。みんな自由競 争の時代にどんどんされている。一方賃金だけはセーフティ・ネットで産別できちんと 決めなさい、これでなければ駄目ですよということは、経営側からみると、一方では規 制緩和がどんどんされる。厚生労働省以外でも、例えば、お酒の免許にしてもどんどん 規制緩和をしなさいと。そうすると、みんな安売りになってくると経営側は安くしない といけない。  一方では規制緩和がどんどん行われているのに、こういうところの規制緩和が一方的 にないというのは、世の中の景気、社会情勢からみたときに、これを作った時代背景か らみると、いま規制緩和の時代ですから、産別などは自由に企業は競争しなさいと、二 重のセーフティ・ネットが国として必要なのかなと、経営者側からは非常に不公平だな という観点はあります。 ○今野部会長  まだご意見はあると思いますが、あと2つテーマをやりたいと思っております。ほか のご意見があれば、その2つのテーマが終わった後に、もう一度ご意見を伺うというこ とにさせていただきたいと思います。  次に労働協約拡張方式について少し議論をしたいと思います。先ほどと同じように最 初に労使にご意見を聞いてから議論をしたいと思います。先ほどは経営側からでしたの で今度は労働側からお願いします。 ○加藤委員  これも代表ではありませんが先に口火だけ切らさせてもらいます。最低賃金法第11条 の労働協約拡張適用方式は、一言で言うと、大事にすべき制度だと思っております。た だ先ほどのご説明にもあったように、塗料の分野で2件と極めて少ない設定件数になっ ていることが過大指摘されておりますが、その最大の要因は、労働協約拡張適用をする に当たっての厳しすぎる要件だと思っております。そこの厳しすぎる要件については、 やはり是正緩和をする必要があるのではないかと思っております。  先ほど産業別最低賃金のところで、ヨーロッパの労働市場との兼ね合いについて少し お話を申し上げましたが、基本的に労働協約の拡張適用の仕組みというのは、制度的な 仕組み、具体的に法制度も含めて仕組みを作られているところ、あるいは、そうではな く慣行なり、慣習として行われるところを含めて、例えばヨーロッパの場合は、基本的 に労働協約の拡張適用がベースになっているわけです。やはり同一価値の労働に対して は公正な賃金決定といいますか、均等な賃金決定、均衡な賃金決定といろいろな言い方 ができると思いますが、いずれにしろ、公正な賃金決定のルールがあって然るべきだと 思っております。  例えばドイツの場合は、一般的拘束力宣言の申出要件が2分の1であります。日本の 労働組合法第18条や最低賃金法と違って2分の1要件です。そのほかにフランスやその 他の国においては、あまり要件の定めはない。フランスは申請をして基本的に労働大臣 が宣言をすれば拡張適用されるということで、その組織率は5〜7%ぐらいではないか と言われています。その5%や7%の組織率の産業別労使が結んだ労働協約は、およそ 98%ぐらいまで拡張適用されております。イタリアは拡張適用の法的枠組みはありませ んが、慣習として大体90%ぐらい産業別労働協約が拡張適用されています。  日本においては、唯一労働組合法と最低賃金法の第11条があるわけです。これは2件 しかないから、こんなのはなくすべきだというのはとんでもないことであって、日本の 賃金決定における基本的な枠組みといいますか、重要な枠組みとして位置づけておく必 要があるのではないかと申し上げておきたいと思います。 ○中野委員  私もこの第11条は残すべきだと思います。それには2つ理由があります。1つは、社 会的な賃金決定を行うというのは、集団的労働契約関係における決定を広く社会的に拡 張していくことが、社会的労使の合意を形成していく基礎だと思いますので、そういう 意味から発展をさせるべきと思います。  2点目は、研究会報告では「適用が2件しかないから、実効性がないからやめてしま え」というような書き方になっております。私から言えば労使の3分の2という、労も 使も3分の2ですから非常に厳しい拡張適用要件です。私は「手足を縛って、プールに 放り込んで、溺れそうになったから死んでしまえ」と言われているような感じがいたし ております。労働組合法では4分の3ですが第18条は大部分であります。最低賃金法に おいても大部分であります。こちらは労及び使の大部分でありますが、同じ大部分でも なぜ4分の3、3分の2という読み替えができるのか、私には理解できないところであ ります。  もう1つ、労働基準法の第38条の4、いわゆる企画業務型裁量労働制の労使委員会が あります。ここは労使で委員会をつくりますから全体の5分の4であります。そうする と使側は大体反対か賛成ですので、賛成の場合は10分の5は賛成だと。そうすると、あ との労側で全体の10分の3、半数ですから5分の3、つまり過半数をそこで持てば少数 者に対して多数の意見を強制できることになっております。そうしますと、労働組合法 では4分の3、最低賃金法では3分の2、労働基準法では過半数とスタンダードは全部 違う。しかし、いずれも少数者に対して多数の意見を強制するという内容について、こ れほどスタンダードがいくつもあっていいものかどうか。やはり民主主義の観点から言 うと、過半数で物事を決めるのが民主主義の基本でありますから、そういう意味で言え ば、労働組合法でも2分の1で然るべきだし、最低賃金法についても適用労働者の2分 の1で然るべきというのが基本ではないかと思います。そういう厳しい要件の中で、2 つあるのは立派なことであり、これをさらに広げていくのが社会的合意形成をつくって いくためには重要なのではないかと考えております。 ○今野部会長  他にはいかがでしょうか。よろしいですか。では、使側からご意見をお願いします。 ○川本委員  この話の前に私から一言。先ほど産業別最低賃金の話がありました。その中でヨーロ ッパの状況の話がありましたので、そのことについて意見を言っておきたいと思いま す。ご指摘のあったとおり、欧米諸国は、特に欧州は社会横断的な職種別の組合であっ たり、そこから導き出される職務給の概念が非常に定着しております。これは早くから 徒弟制度があったり、職種別組合がつくられたという中で歴史的に形づけられてきたの だなと。そういう中で、先ほど言った同一労働、同一賃金的な考え方にもつながってき ているのかなと思います。  それに比べて我が国のほうは、1つは、先ほど指摘があった企業別組合が中心になっ ていたこともありますが、もう一方で賃金的な話をしますと、属人給要素、あるいは人 の能力ということで、やはり人について賃金がついていく、いわゆる年功型賃金という 形がつくられてきたわけです。その違いは、実は非常に大きいのだろうなと思っており ます。したがって、先ほど言った産業別最低賃金も、基幹的労働者と言ったときも、そ の定義は非常に難しくなるのはすべてこういうところからきているのかな、ということ を先に申し上げておきたいと思います。そういう意味で、産業別最低賃金の必要性は、 もう希薄になっているのではないかと思っております。  それから、今の課題である労働協約に基づく拡張方式の問題は、現在2件、それも塗 料関係だけ、労働者も500人程度ということですので、その実効性や影響も軽微であるこ とから廃止してもよろしいのではないかと思っています。 ○今野部会長  他にありますか。よろしいですか。それでは議論をしたいと思います。 ○松井審議官  多数、少数と民主主義の決定で数字を言われましたが、少しだけ申し上げます。それ ぞれの過半数代表の意見、あるいは多くの意見を意見の少ない方に効果を及ぼすという ときは、その制度ごとに、個別に議論していただいているはずです。一般論としてはわ かるのですが、どうかなという気がしました。例えば労使委員会については、もともと 全会一致だったのを5分の4にするのも大変だったのです。もし過半数にしていいとい うご意見があれば、ものすごく事態の展開は違っていたという。 ○中野委員  私はそんなことは全然言っていません。労働者の過半数だけのということです。今別 に労働基準法の話をする場所ではないので。 ○松井審議官  それはいいのです。 ○中野委員  労使ですから、組合側から言うと、過半数が頭の中にあって5分の4というのが出て いるわけです。それは菅野先生にも考え方として、そういうものだという。 ○松井審議官  全会一致が。 ○中野委員  それは承知しています。全会一致が5分の4になったのだけれども、そのときの考え 方というのは、使側は全部一緒になるだろうと。労側も、少なくとも過半数ぐらいはO Kしなければいけないね、というのが基本になったというところですから、そういう考 え方になっている。  私が申し上げたいのは、大部分だとか、多数者の意見を少数者に適用させるときに、 いくつものスタンダードがあるのは、いかがなものかということを申し上げているわけ です。 ○松井審議官  分数ですからブレを申し上げるとわかりやすい話で、4分の3と3分の2では12分の 9と12分の8で12分の1ずれるのです。5分の4のさらに通分すると、60分の48と。 ○中野委員  算数の時間ではありませんよ。 ○松井審議官  なぜかというと、そういうふうに大部分、あるいは過半数といったものを制度ごとに 労使で議論していただいて、それを規則に落としているということですから、というこ とを申し上げているのです。感想として、そういうものは統一していくべきだというご 主張はわかりますが、それぞれの制度とか法の趣旨を、いろいろ議論してきた経過があ るのではないかということを受け止めていただきたいということです。 ○中野委員  制度ごとに議論してきているというのは理解はできますし、そのことについていろい ろ申し上げているわけではないのです。私は4分の3なり3分の2はいかに厳しいもの かということです。最低賃金法は労使ですから、さらに厳しくなっているわけです。日 本の労働組合の組織事情から言うと、やはり大手企業の組織率が高いわけです。そうし ますと中小の事業所に対して、組織ができなくて協約が集まらないということになりま すと、それはさらに厳しい。労働組合法よりもさらに厳しいと私は思っていまして、そ ういう厳しい要件が問題なのだということを言っているわけです。その中でいくつかの スタンダードがあるというのは、いかがなものかと申し上げているだけです。  それぞれの法律の中で、それぞれの場面に応じて基準が考えられているのは理解でき ますが、同じ労働組合なり労働者に対して、多数派の意見を少数派に押しつけるわけで すから、いずれにしても。そのときには、やはり一定の考え方があって然るべきではな いか。それは自然人である労働者の数を基本に考えるべきではないかという意見を申し 上げているのです。 ○今野部会長  他にありますか。 ○武石委員  率直な疑問ですが、労働者側委員の方にお聞きします。これまで産業別とか労働協約 拡張適用方式とかいろいろな制度があって、それぞれの役割があるというご意見だと思 います。労働協約拡張方式と産業別の中の労働協約ケースというのは、役割的にかなり 似ている部分があると思うのです。仮に産業別の労働協約を残した場合、労働協約拡張 方式、私はこの役割は似ているのではないかと思うのです。両方必要というのは、どう してなのでしょうか。 ○加藤委員  私は名前は似ているけれど全く似ていないと思っております。たしか研究会報告の中 でも、似ているのではないか、近似した性格を持っているのではないかというようなこ とが書かれておりますが、私は全く違うと思っております。現在の産業別最低賃金の申 請ケースとしての労働協約ケースは、最低賃金法で申し上げますと、第16条の4に基づ いて申請しているわけで、最低賃金法は第16条の4しかないわけです。第16条の4の申 出の要件にほかならないことだというように思います。要するに、一定の要件を満たし て申出をすることによって審議の俎上に載せることだと思います。  最低賃金法上の第16条の4には、定数要件は全く書いてありません。少数でも申請す ることはできますが、審議の俎上に載せるという意味で、運用上昭和61年答申の中で は、合意のケースとして労働協約ケースが用意されている。つまり、最低賃金に関する 労働協約の適用労働者が、概ね2分の1以上あった場合には最低賃金の設定を申出する ことができる。あるいは、いったん設定された最低賃金について概ね3分の1以上の最 低賃金の労働協約の適用労働者があれば、金額改正の申出をすることができるという申 出要件にほかならないわけで、実際の金額の審議は、現状の実情を申し上げますと、申 出をした金額水準をベースに議論しているわけでも何でもないし、拡張適用しているわ けでもなくて、あとは第16条に戻るわけですから、審議会の中で専門部会が招集され、 専門部会の中で適正水準についての議論が行われるということです。申し出た最低賃金 協約の水準と、実際に決定する水準とは分離されていることだと思います。  それに対して第11条の労働協約拡張方式は、その金額、その労働協約を同水準、全く 水準で拡張適用をする。未組織の労働者、あるいはアウトサイダーに拡張適用をするの が第11条ですから、全く異なった性格だと思います。そこのところをもし今後議論する のであれば、私ども労働協約ケースは、やはり労働協約の水準をベースに議論すべきだ と思っております。今申し上げたのは現状の話です。 ○須賀委員  補足という意味ではないのですが、基本的に労働基準法の中に第2条に賃金の定めが あり、労使が自主的に対等の立場で決めると。私どもの努力不足もあるのですが、組織 率がこんなに落ちてきている中で、自主的に対等な立場で決め得ない労働者が8割を超 えているわけです。そこに向かって労使の自主的な決定ができた中身を、もともと最低 賃金法の第11条が定められたバックボーンには、そうした所に対してきちんと拡張適用 させていこう。つまり、労使の自主的な決定を広めていこうと。これは事務方からそう いう思いがあったのかどうかわかりませんので、お答えをしていただければ有難いので すが、そういう部分が多分にあったのだろうと思います。  そして、ヨーロッパの拡張適用をある意味、下敷にしながら労使が自主的に決めたも のを、当該の産業あるいは当該の業種の中に拡張適用させていくという、非常に高邁な 理想の下につくられた第11条だと私どもは考えております。それと先ほど加藤委員が申 し上げた、第16条の4に基づく申出要件としての労働協約の締結状況、3分の1なり2 分の1ということは、中身がまるで違うと考えております。そういう意味で、この2つ は別々のものとして議論していく必要がある。なおかつ第11条については残す必要があ るのは、そういう背景があると考えております。 ○松井審議官  今のご議論で現行制度の基本のところをちょっと押さえていただきながら、もう1回 今の議論をみていただきたいということであえて申し上げたいのです。現行の最低賃金 法の目的をみますと、最低額保障のために、労働条件の改善を図るためにという目的は 須賀委員が言われたとおりであります。ただ、それを実行するときに、最低賃金をどの ように適用していくかという基本のところを、今から議論していただく視点と思ってい ます。なぜかというと、現行法においても、事業若しくは職業の種類又は地域。つま り、事業という切り口でみるか、職業という切り口でみるか、地域でみるか。どういう ようにして対象者を決めて保障するかという、少なくとも3つの方法を示しておりま す。この3つの捉え方を今の第11条なり、第16条なり、第16条の4が、きれいにできて いるのだろうかというのが、実は制度を議論するとき、いつも実態のことで問題になっ ています。  先ほどありました基幹労働者、産業別最低賃金は、実は地域ごとにということでやっ ていますから、地域は地域別最低賃金と同じエリアになっています。その中で、この産 業となれば事業で押さえていると思います。ところが、この事業だけだと地域別最低賃 金と全く同じなので結局二重になってしまうからということで、労働者についてより高 いものを認める。いわば職業といいますか、基幹的労働者だけを対象にして、そうでな い方を地域にすべきではないかということを何となく合意しておいて、その基幹的労働 者をポジティブに定義できなかったものですから、ネガティブ方式で「軽易なものは除 く」とやったところで、実は地域別最低賃金で対象となる職業の方も混ざっているので はないかという議論が起こったわけです。  そんな観念的なことを言っても実態で無理だったのだというのが加藤委員の説明にな ると思います。実際そういう形で今まで審議会も報告し、2つを入れて、この資料にも ありますように説明されたものがまさに、186頁の3のところに「基幹的労働者の意義 について」と昭和57年の議論が載っております。その後、昭和61年にそれを引き継ぎ、 190頁のハ「基幹的労働者の意義に関する経過措置」と。いろいろポジティブ方式、ネ ガティブ方式を考えたけれども、結局はうまくやってくれというか、ネガティブ方式で 理論的にうまく押さえられないという経過をたどっているものですから、学者先生が折 角きれいにしようとしても実態でうまくいかないと。そのことを捉えて、実態に合わせ てもう少し制度を充実するように考えるべきだと。まさに、ここをご議論いただきたい という感じがするわけです。どういう形でするか、職業でいくか、事業でいくか、地域 でいくか、というこの3つの概念をうまく使っていくのか、それを一掃するのかが意義 づけになるのではないかと思っているわけです。  その上で、労働協約拡張方式なるものは、大きく最低賃金制度に2つの枠組みがあ り、審議会という公的機関がオーソライズする最低賃金方式と、労使が自主的に議論し てその議論した結果を世の中に普及させる、要するに自主性を貫くというこの2つがあ る。片方は協約の拡張方式で、これについての要件というのはどういうものにしたらい いのでしょうということで、議論されたのではないかということを申し上げる。片方 は、国にオーソライズしてもらうときに、申出するときに過半数的なものでやり、さら に議論した上で、言われたように中身を決めるときにまたやっている。それで二重、三 重に何回もチェックをかけるのはどうかという意見を言われていますが、多分創設した ときには、もともとは国が必要と認めてやれるという仕組みを使うという意味で、第16 条の4と書いてあるように、第16条の後に作った条文なのです。ですから、その国の仕 組みを借用するためにはそこに入らなければいけないから申出のところでどのくらい皆 が合意したものを取り込んで、そして、そこの中で議論するという考え方で、いまの規 定が整理されている。そこの各段階で多数決原理の数字をどう使うかとなっている。こ れは分析だけですよ。  だから、そういう目で見ていただいて、その仕組みと現状との乖離、あるいは、その 仕組みの理想と現状とが必ずしも一致していないということは概ねわかってきているわ けですが、その乖離を縮めるために制度を直すと。その直し方をどちらにするかが、こ この労使の議論と思っているわけです。そういう設定で考えていただければと思いま す。 ○今野部会長  今松井審議官が言われたようなことは今後の大きな議題です。今日は時間もありませ んので、あまり。 ○須賀委員  部会長、ちょっと事実関係だけですが、よろしいでしょうか。 ○今野部会長  はい。 ○須賀委員  第11条ができて、そして新産業別最低賃金に転換をしていくときに第16条の4ができ たわけですよね。 ○松井審議官  そうです。 ○須賀委員  第11条はもともとからあったのですよね。 ○前田賃金時間課長  第11条はもともとあって、第16条の4は、昭和43年の改正時にできて、それは産別の 転換よりずっと前に、すでに第16条の4はあります。 ○須賀委員  一番最初の法制定のときから第11条はあって、第16条の4は後で追加になったという ことですね。 ○松井審議官  そこはおっしゃるとおりです。 ○今野部会長  将来どうあるべきかというのは次回以降でやりたいと思いますので、今回は現行制度 についてどう考えるかで終始したいと思っております。  もう1つ、地域別最低賃金について、同じように労使のご意見を伺いたいと思いま す。今度は使側からお願いします。 ○川本委員  地域別最低賃金については、すべての労働者を対象に、労働の対価である賃金の最低 保障として機能してきています。国民生活の安定と健全な発展のために、重要な役割を 果たしてきたと思っております。また、地域別最低賃金については、各都道府県の「地 方最低賃金審議会」において公労使の3者構成により話し合い、決定してきています。 各地域労使の意思の疎通や相互理解を図る観点からも、非常に重要な機能を果たしてき たと考えております。この意義は大きいと思っております。  地域別最低賃金は社会保障制度と、例えば生活保護費などありますが、そういうもの は一定の基準により、いろいろ決められるわけですが、そういうものとは異なって、一 応各地域の労働者の生計費や類似の労働者の賃金の伸びがどうなっているか、通常の事 業の支払能力がどうなっているかなど、3つの要素を中心にさまざまなデータを検討し ながら総合的に勘案し、社会の経済情勢を踏まえ、公労使の話合いによって、各地域の 特性や実態に即して決定してきた歴史があります。その積み重ねの結果、実は未満率も 低くなってきた。その意味で安全網として現在十分に機能していると思っております。  したがいまして、地域別最低賃金については、現行制度のままでいいと考えておりま す。 ○今野部会長  他にありますか。よろしいですか。では、労側からお願いします。 ○加藤委員  今川本委員からありましたが、仕組みとしては地方最低賃金審議会で公労使、3者構 成の審議会できちんと審議をしながら決定すると。しかも、1978年からは目安制度が発 足をし、その目安制度もうまく、問題がすべてないとは言いませんが、うまく機能して いる面はあるのではないかと思っております。ただ、ここは認識の違いなり見解の違い ではないかと思いますが、水準については大変問題意識を労働側としては持っておりま す。現行の最低賃金の水準はあまりにも低すぎるという認識を持っており、最低賃金の 議論をするに当たっては、一般労働者の賃金水準など、他の賃金指標、最低生計費など さまざまな指標を勘案しながら、適正な水準はどうあるべきかについて議論をし、議論 をするだけではなく、それをベースに決定していく仕組みを改革していく必要があると 思っております。 ○今野部会長  川本委員、どうされますか。今水準のことを言っておられましたが。 ○川本委員  先ほど言ったいろいろな要素を検討しながら決めてきたということで、その積み重ね の結果今日まできているということですから、水準も適正だと当然考えております。今 ご指摘があった一般労働者の賃金というお話が出ましたが、たしかにこの資料の中に も、一般労働者に比べて6割とか7割、いますぐ開けないのであれですけれども、一般 労働者自体の平均といってもどの程度の意味をもつのかと思うのです。先ほど言ったよ うに、新入社員から入って、一般労働者の場合はそのまま年功型賃金に乗っかりながら 定年を迎えるのが一般的で、その中の平均を押さえているということであり、単純にこ の平均値と、この最低賃金を比較して、その割合で考えるのは本来的にはあまり意味が ないと考えております。 ○今野部会長  労使とも仕組みについては、現行の仕組みで問題はないとは言わないけれど、いいの ではないかという感じでしょうかね。水準についてはそれぞれご意見があると思います が。何か、ご質問、ご意見はありますか。特に公益の方はいかがですか。 ○勝委員  労側から水準について低すぎるというご意見がありましたが、これはその地域によっ てかなり格差があるのが実状だと思うのですが、これについてはどうお考えでしょう か。東京では最低賃金についてはあまり機能していないというか、はるかに高いところ で一般もパートにしても決まっているのに対して、例えば沖縄などは、所定内給与に対 する比率はかなり高くなっている。地域の格差については是正すべきだと考えているの でしょうか。もしご意見を伺えればと思います。 ○加藤委員  労働側としては、要するに地域の格差はどうあるべきか、という議論をまとまっては しておりません。先般の最低賃金審議会の中でも、会長からご指摘のあった点だと思っ ております。問題は地域のバラつきだけで議論する、要するに賃金格差であるとか、バ ラつきだけで議論するのではなく、地域格差の問題は、やはり水準も含めてきちんと押 さえておく必要があるのだろうと思っております。様々な観点から、やはり様々なデー タを使って議論をしたり、検討すべきことだと思っております。今後どうあるべきかに ついては、かなり精査をし議論をする必要があるだろう、ということだけを申し上げて おきたいと思います。 ○須賀委員  もう1つは、ナショナルミニマムとしての最低賃金水準はどうあるべきなのかをベー スに置きつつ、その線上で地域の格差を考えていくべきではないかと基本的に考えてお ります。 ○今野部会長  使側でご意見はありますか。 ○杉山委員  先ほど川本委員が言われた中に結論は含まれておると。現状まで歴史的に積み上げて きたもので結構である。それに公労使の知恵が含められている。それを今の立場で、高 いだの低いだのというのは、いかがなものかと考える、そういうことです。 ○池田委員  今47都道府県の県境で非常に問題があるわけです。県を越えたら線があるわけではな いので、向こうへ行ったら、高い、安い、労働者の移動の問題など。将来的には、私は もっと大括りにしていいのではないかという気はしています。そんなに細かく分ける必 要はない。企業も分かれていますし、いろいろな所がたくさんナショナリズムをつくる よりも、ある程度で。国の方針はどうかわかりませんが、私はあまり細かく決めるより も、小さくて単純なのがいいという感じをしています。 ○松井審議官  地域別最低賃金については、概ね現状のシステムだということでずれのないことがわ かりましたが、1つ法令上の視点でご意見を、あり方を議論するときでもいいのですが やっていただきたいのです。実は、法律上地域別最低賃金は設定することができる方式 です。日本で全部やらなければならないと書いていないのです。だけど運用上は、すで に47都道府県全部網羅するようになっています。例えば、その事実に応えてこのシステ ムがいいのであれば法律上も47都道府県でやらなければいけない、設定しなければいけ ないという規定で、現状追認型にするのがいいのかどうかについてもやっていただきた い。  もちろん行政単位ではやっていますが、例えば、地域で経済が、自治体がこれから道 州制にいくかどうかわかりませんが、いろいろな形で地方の行政単位の括りが変わって いくという中で、この最低賃金制度を行政で考えていくのか、経済単位で考えるのか、 そして日本中を網羅するのかという実態的な話も、もう少し双方からのご意見があると 有意義になるのではないかと思いますので、次回以降、掘り下げるときに是非、論点と してお願いしたいと思います。 ○今野部会長  わかりました。今事務局から、将来そういう論点も議論していただきたいという話が ありましたので、お忘れなく。  それでは、今日はこの辺にしたいと思います。本日は、現行の最低賃金制度の評価に ついて労使それぞれからご意見を伺いましたので、次回以降は、今後どうするかについ て議論をしていきたいと思います。いろいろ論点はありますが、次回は「産業別最低賃 金と労働協約拡張方式のあり方について今後どうすべきか」を議論したいと考えており ますが、それでよろしいでしょうか。                   (了承) ○今野部会長  では、次回はこの2つの点について議論をしたいと思います。事務局から次回の会議 についての連絡をお願いいたします。 ○前田賃金時間課長  次回は9月16日(金)午前10時から開催いたします。正式には追って通知いたします ので、よろしくお願いいたします。 ○今野部会長  本日の会議はこれで終わります。本日の議事録の署名は須賀委員と川本委員にお願い いたしますので、よろしくお願いいたします。  では、終わります。ありがとうございました。                       【本件お問い合わせ先】                        厚生労働省労働基準局勤労者生活部                        勤労者生活課最低賃金係                        電話:03−5253−1111                        (内線 5532)