05/07/13 第26回厚生科学審議会科学技術部会議事録                   第26回               厚生科学審議会科学技術部会                    議事録              厚生労働省大臣官房厚生科学課             第26回厚生科学審議会科学技術部会                   議事次第 ○ 日時    平成17年7月13日(水)15:00〜17:00 ○ 場所    厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館 9階) ○ 出席委員  矢崎部会長         今井委員 井村委員 垣添委員 加藤委員 金澤委員 北村委員         倉田委員 笹月委員 佐藤委員 竹中委員 永井委員 長谷川委員         南委員         (事務局)         松谷技術総括審議官 上田厚生科学課長 高山研究企画官 他 【議題】  1.厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針の見直しについて  2.厚生労働省の平成18年度研究事業に関する評価(予算概算要求前の評価)    について  3.ヒト胚研究に関する専門委員会について  4.厚生労働科学研究費補助金の配分機能の移管について  5.遺伝子治療臨床研究に関する報告について 【配布資料】  資料1−1 「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」改定案(新旧対照表)  資料1−2 国の研究開発評価に関する大綱的指針の改定のポイント  資料2−1 平成18年度科学技術関係施策および重点事項について(案)  資料2−2 厚生労働省の平成18年度研究事業に関する評価(予算概算要求前の評        価:案)  資料3 ヒト胚研究に関する専門委員会(仮称)の設置について  資料4 厚生労働科学研究費補助金の配分機能の移管について  資料5 遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について(4件)  参考資料1 厚生科学審議会科学技術部会委員名簿  参考資料2 国の研究開発評価に関する大綱的指針(平成17年3月29日内閣        総理大臣決定)  参考資料3 厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針(平成14年8月27        日厚生労働省大臣官房厚生科学課長決定)  参考資料4 厚生労働科学研究費補助金の成果の評価(平成16年度報告書)  参考資料5 厚生科学審議会科学技術部会運営細則 ○高山研究企画官  定刻になりましたので、ただいまから第26回「厚生科学審議会科学技術部会」を開催 いたします。委員の先生方には、ご多忙の折、お集まりいただき、厚く御礼を申し上げ ます。  本日は、あらかじめ岸委員、黒川委員、中尾委員、長尾委員、橋本委員、松本委員か らご欠席との連絡をいただいております。また現在、委員20名のうち、出席委員は過半 数を超えておりますので会議は成立いたしますことをご報告申し上げます。  まず冒頭、会議の資料の確認をさせていただきたいと思いますので、もし欠落等ござ いましたら、事務局までご指摘いただければと思います。  資料は「議事次第」、資料1−1「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」改 定案、資料1−2「国の研究開発評価に関する大綱的指針の改定のポイント」、資料2 −1「平成18年度科学技術関係施策および重点事項について(案)」、資料2−2「厚 生労働省の平成18年度研究事業に関する評価(予算概算要求前の評価:案)」、資料3 「ヒト胚研究に関する専門委員会(仮称)の設置について」、資料4「厚生労働科学研 究費補助金の配分機能の移管について」、資料5「遺伝子治療臨床研究に関する実施施 設からの報告について」。参考資料1「厚生科学審議会科学技術部会委員名簿」、参考 資料2「国の研究開発に関する大綱的指針」、参考資料3「厚生労働省の科学研究開発 評価に関する指針」、参考資料4「厚生労働科学研究費補助金の成果の評価」、参考資 料5「厚生科学審議会科学技術部会運営細則」とともに、資料番号はありませんが、 「厚生労働科学研究費のあらまし」という最近出来上がったパンフレットの直近版を付 けてあります。  それでは、部会長、議事の進行をよろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  委員の皆様、お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。 今日は、議題がたくさん詰まっておりますので、部会の進行を円滑に進むようにご協力 をよろしくお願いいたします。  それでは、最初に「厚生労働省の研究開発評価に関する指針の見直し」について、事 務局から説明をお願いします。 ○高山研究企画官  議題1についてご説明いたします。資料は、資料1−1を中心に1−2、参考資料 2、3です。資料1−1については、参考資料3にありますが、従来出ている「国の研 究開発の評価に関する大綱的指針」を受けて、平成14年度に厚生労働省の科学研究開発 評価に関する指針を定め、厚生科学審議会科学技術部会のご意見をいただいた上で、厚 生科学課長決定という形で作り上げたものの内容です。これについて、先にご報告いた しました参考資料2ですが、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」の新しいものが できましたので、これに基づいて厚生労働省の指針について、事務的に新しい指針と整 合をとるような形で整理したのが資料1−1の新旧対照表です。  「国の研究開発評価に関する大綱的指針の改定のポイント」は資料1−2にあります が、この中に「評価システムの改革の方向」として、創造への挑戦を励まし成果を問う 評価、世界水準の信頼できる評価、活用され変革を促す評価、という方向性を基として 全体を見直しました。2以下に見直したポイントがあります。評価の意義や評価関係者 の責務、評価システムの改革の方向性、評価手法、評価結果の取扱いなどです。このよ うな改定のポイントがあって、これを踏まえて厚生労働省の指針も見直しました。  ただ1つだけ、平成14年に厚生労働省としてよく吟味した上で定めた基本について は、従来のものを維持する形で見直しを図っているところもあります。  簡単に見直しの内容についてご説明いたしますと、資料1−1の2頁の総括的事項に ついては、国の研究開発評価に関する指針について、どのような経緯があるか、国の指 針のほうから引用し、経緯を書きました。  3頁の「定義」については、基本的には国の評価の指針を引用して、定義をはっきり 書きました。また、いちばん上については、特に個人情報保護の観点が重要ですので、 それを踏まえつつということを追記しました。  4頁の対象範囲の定義については、現在の予算の名前や実施している機関に改めたと ともに、基本的に厚生労働省における政策的評価などについて、研究開発を対象とする 政策評価を行う場合は、国の大綱的指針及び本指針に基づき行うこととするとともに、 独立行政法人については、別途独立行政法人の評価が行われますので、その場合に本指 針を参考とすることが期待されるという形で規定しています。  5頁で、評価実施主体の関係で、先ほどの高い目標に挑戦する、あるいは評価実施に 伴う作業の負担が研究者に対して時間や労力を著しく費やすことのないように留意す る、あるいは評価者の行う厳しい評価とともに、適切な助言を行う。あるいは評価者 は、最終的には国民によって評価されるものであること。  研究者等の責務として、研究者については、国費により研究開発を行うことに際し て、成果をあげる、成果を国民社会に還元する、成果が出ない場合には説明責任などを 行う、あるいは結果責任を重く受け止めるなどの自覚を促すということが書いてありま す。  6頁については、モラルの関係や、評価の諸情報については基本的に公開ということ が出てきますが、一方で、国や国民の安全が害される恐れがある等の観点について、秘 密保持が必要な場合は、本章に定める方法によらずに評価を行うことができるという規 定を設けました。あとは追跡評価について、さらに今後充実を図ると規定しています。  7頁、評価結果の具体的利用方法は、事前評価などについて、いくつか大綱的指針を 基に例を挙げました。  9頁で、先ほど独立行政法人の扱いを書きましたので、ここに規定されていた「その 他」は削除しました。  第2編の「研究開発施策の評価の実施方法」の実施体制についても、大綱的指針を基 にいくつかの評価について階層的に行われ、相互に関連しながら、全体として効果・効 率的に運営していく。評価の観点については、大綱的指針から評価項目については、例 示を引用し充実させています。10頁の上には、評価結果についてはホームページ等で公 開するという原則を書いています。  11頁の研究開発課題の評価事項の中で、中長期的な厚生労働科学研究の在り方の報告 書で指摘のあった疫学・生物統計学の専門家について関与しているかどうかを評価項目 とし、関与している場合は評価するという観点から評価項目として入れることを、ここ に記載しました。  13頁は、評価結果の通知の事前評価については、原則として必要に応じて評価内容を 研究者に通知する。その場合に、被研究者から反論などをするような体制整備は、国の 指針で触れられていますので、同様な体制をとるように努めると記載しています。  16頁の研究機関の評価項目についても、疫学・生物統計学の専門家が関与する組織の 支援体制を評価項目として入れ、これらが整備されている場合には、高い評価が与えら れる形との意味合いです。  17頁に「研究者の業績の評価」が書いてありますが、最後の文に、大綱的指針の文章 などを参考として、「研究者等の業績の評価結果については、次の段階の研究開発の実 施への反映や研究環境の改善等、幅広い観点からの処遇の改善に反映させる」という形 で、新たに追加しました。  「別紙」は、現在の名前に沿って訂正しました。以上が事務局として整理した内容で す、ご審議のほど、よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  ただいまのご説明にご質問はございますでしょうか。 ○金澤委員  大変よくまとまっていると思いますが、前々から気になっていることがあまり解決さ れていないのでお話をしたいと思います。事後評価のことですが、定義は3頁に、訂正 されることなく、前々から載っていて、14で、「終了後に」と書いてあります。それで いて7頁の4の(3)で、「次の段階の開発研究の企画・実施、次の政策云々への活用 等」と書いてあります。終了してしまったあとは、こういう活用はなかなか難しいので す。  それから6頁の2の(1)のウに「切れ目なく研究開発が継続できるように、研究開 発終了前の適切な時期に評価を」となっています。どれをもって事後評価と言うべきか というのは、なかなか難しくて、私は「終了後に」というのは直したほうがいいのでは ないかと思っています。終了後と定義されてしまうと、次の手を打ちようがないので す。 ○矢崎部会長  例えば、終了時ではどうなのでしょうか。 ○上田厚生科学課長  事務局で解説をさせていただきます。事後評価は、言葉どおりでは研究が終了しない とできないとなりますと、研究者から何らかの研究の報告をいただかざるを得ないわけ です。そうすると、報告書という形であれば、研究を終了して若干の時間がかかるのか なということになり、どうしても一般的には年度を越えてしまい、4月、あるいは5月 になってしまいます。  一方、その研究者が継続して研究をしたい場合には、いまはできるだけ早く研究費を 交付することになりますから、前の年度の間に大体評価を決めてしまい、新年度になっ たらすぐスタートできるようにせざるを得ない。そうなると、どうしてもそこに全体と してタイムラグがあるわけです。そこをどうするかというのは問題としてあるわけで、 我々としては、継続して、例えば3年とか5年研究を更に続けられる場合には、中間評 価などを十分参考にしています。終了後ということで報告書が出ない形でも、その辺は 情報をとってやっているとは認識していますが、言葉の上でこのように整理をすると、 確かに時間がずれているではないか、できるはずがないではないかとなるのですが、実 態としては、かなり中間評価を利用したり、そういうことを含めて、新しい課題の採択 時については参考的に十分利用していると申し上げておきたいと思います。 ○金澤委員  よくわかります。お願いというか、まともに行くと、中間評価を6頁の次のプロモー トをするかどうかの判断に使われると思います。やむを得ないとは思うのですが、基本 的にそこがいちばん大事なのです。もちろん事前評価はいちばん大事ですが、もう1つ 大事なのは、いまのだということを是非お考えおきいただきたいと思います。事後評価 というのをやらされてきたのですが、実に力が抜けます。終わったものをいくら言って もしようがないのです。少し重みづけを考えていただきたいとお願いだけしておきま す。 ○上田厚生科学課長  研究によっては、例えば2年目では十分成果の見えないものもありますので、なかな か難しいのですが、例えば、継続の案件については今でもやっていると思いますが、継 続の案件は前の3年間の成果はここまできているということを、継続申請のときにきち んと書いてもらう。それはある意味では自己評価になるのですが、それと中間評価を合 わせて、その課題を改めて継続していくかどうかについては、評価委員にお諮りすると いう運用をさせていただければと思います。もし字句の問題として矛盾があるような ら、事務局で「事後評価」という言葉の字句の部分については、言葉として混乱しない 形に訂正したいと思います。 ○金澤委員  わかりました、中間評価として考えます。 ○垣添委員  私は字句の問題というよりも、金澤委員が指摘されたように、評価が研究者にとって 非常な負担になっているという話があって、その際に事後評価というのは、現実問題と してあまり機能していないのではないかと思います。評価される側の研究者にとって も、評価する評価者にとっても、非常に大きな負担になっているのではないかという気 がするのです。  新しい研究をスタートするときには当然事前評価を専門家を交えてきっちりとした形 で行いますから、そのときに参考にされるのは、いま議論されていたように中間評価の 辺りの話が中心になってくると思います。そうすると、事後評価でさらに負担を増すの は考えものではないか。つまり、字句の問題ではなく、本質的な問題として私もちょっ と疑問を覚えるのです。 ○矢崎部会長  事前評価と中間評価の重要性ですね。事後評価については報告書をまとめていただく ということでいかがなものかというご意見でしたね。 ○垣添委員  それでいいのではないかという気がするのですけれども。 ○矢崎部会長  どうでしょうかね。 ○上田厚生科学課長  委員の皆様にもこの辺は議論してもらえばと思います。例えば、3年間の研究が済ん だということで、研究者が1つの形に成果をまとめるというのは非常に意味があると思 います。それをさらにこのように発展させるのだという提案なども非常に意味があるの で、そういうことに対して、何らかの客観的な目で評価をすることは悪いことではない と思います。しかし、次のステップに至る所には役に立っていないという実態がありま す。ただ、その1つの区切りをつけて、我々としてはこの研究がこれだけの成果をあげ たのだという評価をしていく仕組みは残さざるを得ないのかなと思っています。  継続をする場合の評価の在り方と、1つの区切りがついたことについて、それを社会 的な意味も含めて評価をすることと2つの側面があるように思うのですが、それをどう 解決したらいいかについて、委員の皆様のご意見なりサジェスチョンをいただければと 思います。 ○矢崎部会長  金澤委員と垣添委員のお話は、事前評価と中間評価は従前どおりヒアリングを含めて 厳しくやるべきであるが、事後評価を事前と中間と同じようなシステムでやるのはいか がなものか。事後評価の価値を否定するのではなく、やり方を少し工夫していただけれ ばいいのではないかと私は理解したのですが、どうなのでしょうか。 ○笹月委員  私も事前と中間と事後では意味が違うと思います。事後評価の場合には、申請書でい ろいろなことをプロポーズしたわけですから、それを本当にどこまで達成したか、研究 費をもらった責任として報告すべきだと思います。  ただ、それをどういうジャーナルにパブリッシュしたかというのが、必ずしも3年や って、すぐその時点でパブリケーションがない、もう1年ぐらいして初めてパブリッシ ュされる、それをパブリケーションがないではないかと一般に評価されるのは問題だと 思います。  事前評価のときもそうだと思うのですが、『ネーチャー』とか『サイエンス』とか、 一流のジャーナルにあればそれでよろしいという、あまりにも他人任せの評価をしてい るところが間違いで、本当に3年の仕事が終わったときに、目的に沿ってこんなことを 解明したということが、きちんと報告書に書いてあれば、それを評価者が自信を持って 評価する。何にパブリッシュされているからいいのだという他人任せではなく、そうい う評価のシステムそのものを、もう少し工夫する余地が残されていると思います。  私自身経験して、国際的な評価を受けてないではないかというコメントが返ってきた のですが、その人に、「いや、これは『ネーチャー』に出ました」と言ったら、黙って しまった。それは本人が評価しているのではなく、他人の評価に準拠している証拠だと 思いますので、何か工夫が必要なのはおっしゃるとおりだと思います。 ○長谷川委員  私も事後というのはすごく疲れるだけという感じもよくわかりますし、事後評価その ものがどのぐらいプロジェクト自身の改善に役に立つかというと、もう終わってしまっ たのだから直接は反映されないという、そちらのフィードバックがあまりないものだと いうのは、それはそうだと思います。経産省などほかので見ていて、中間評価までで結 構意見が割れるものがあって、最終的に終わったときに、どういう評価の仕方が正しか ったか、どういう評価の仕方は揺れ動いて間違った評価をしたかもしれないという、評 価自体の基準を上げるために1つは使えるのではないかと思っています。 ○北村委員  実際に規模の大きい臨床研究では3年で終了し切れないという課題はたくさん出てい ます。同じグループというか同じ研究主任が3年を終了したときに、翌年にほぼ同じテ ーマの課題を出してくる人は結構たくさんあります。これは終わったばかりではないか という課題が出てくるときに、どのようにするかという問題が、委員会でしょっちゅう 議論になります。  1つは、3年で成果を出すという約束で始められた課題だからという意見と、そうは 言っても時間のかかる研究だしということです。そのときには私が担当している小委員 会でも事後評価が非常にいい方は5分の1ぐらいの割合だと思いますが、同じテーマ で、また新しい年に採択してはどうかということで、結構事後評価の点数で、さらに同 じテーマの継続的なものを採択することに使っているのが現状としてあります。中間と いうのは本当に出だしだけで、プロトコールがこうなりましたとか、本当に評価に足り ないぐらいなのが、新しい臨床研究の場合は非常に多いのです。  事後評価というのは次に継続していくかどうかの目安としては欲しいものではないか と思います。今さら言ってもというのは、確かにあります。意欲ある研究者は、継続し て出してきているのが現実にたくさんあります。事後評価はやらなければ仕方がないの ではないかと思います。 ○金澤委員  いまのは終わってしまったあとの評価で、次にタンデムに続かないではないですか。 ○北村委員  一旦は終わり、報告書が出るまでの時間がありますが、例えば、平成16年度で終了す る予定のものを平成17年度に同じようなテーマで、同じ主任研究者がまた出しているわ けです。終わるべき事業であって、時には1年空いている場合もあるかもしれません が、その間、同じテーマで翌年度に先に出してきているのです。この間の間隔は1年ず れている場合もありますが、先生のおっしゃっていることと私の議論とはずれがあるか もしれません。 ○矢崎部会長  時期的にタイムラグがある。ですから、事前と中間と事後というのが極めて密接な関 係があればいいのですが、なかなか難しいところがあって、中間評価をきっちりやっ て、プロセスを評価する。いまおっしゃられたように、私も中間評価に関与しています が、たくさんの研究費をいただいて、プロトコールを作るだけで終わってしまっている ような発表もあります。ですから、最初から大きな臨床研究にお金を出すかどうかとい うこともあります。  この間、契約型の研究プロジェクトもありました。ですから、中間評価を研究費によ く反映するような仕組みをとって、事後評価に関してはしっかりまとめていただき、そ れを評価するという方向にする。そうすると、字句的にはどうしましょうかね。 ○今井委員  事後評価のときに、先ほど上田厚生科学課長からお話があったもう1つの必要性、例 えば、社会的にどうなのか、政治的に後で使えるのかなどという見方の違う部分をきち んと出せば、それはそれで価値が出るのではないかと思うのですが。 ○高山研究企画官  対照表の6頁の評価の時期のこととして、原則として事前評価及び事後評価を行うと いう形の事後評価については、終わってから行うものという定義を書いていて、これに ついては事務局として、さらに見直して、どのような形になるか検討したいと思いま す。その中で3年間の研究というのがあって、それがそこで終了するが、再び新規とし て中身をさらに発展させ、応募してくる場合は、前の状況について、どのぐらい成果が 出た、どういうところが良かった、どういうことを改善すべきということを参考にする 必要があります。評価時期については大綱的指針にも「優れた研究成果が期待され、か つ、研究開発の発展が見込まれる研究開発課題については切れ目なく研究開発が継続で きるよう、研究開発終了前の適切な時期に評価を実施することが必要である」とあり、 それを引用して、その時期に事後評価として実施してしまうものを、運用上できるよう な形であります。  事後評価というのは原則として行っていただくのですが、新規として内容が発展的に なるものについては、終了前に研究が終わってから出されるレポートではなく、評価を 行えるようなレポートを、あまり負担にならない範囲で作っていただき、それで評価を した上で、新規採択の委員会に結果をお伝えいただいて考慮いただくとか、評価の行い 方を少し工夫して次の採択に活かしていける形に持っていければと思います。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。それでは、評価が実際に研究の実績に反映するよう な、またさらにその研究の成果が世の中のためになるような方法を、今後もしっかり我 々も考えていくということで、一応この指針に関しては、これでよろしいでしょうか。                  (異議なし) ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。次に「厚生労働省の平成18年度研究事業に関する評 価」です。これは概算要求前の評価についてご審議いただきたいと思います。それで は、事務局から説明をお願いします。 ○上田厚生科学課長  資料2−1「平成18年度科学技術関係施策及び重点事項について(案)」という資料 に基づいてご説明いたします。いま部会長からもお話がありましたように、この時期で すので、8月末の概算要求、研究費関係の概算要求をするに当たって、いま内部でいろ いろな議論をしております。その基本的な考え方、方針について、この資料でご説明い たします。毎年この時期にこういう形で行っております。  まず私のほうから総論を説明して、各研究事業の中の主要課題について関係課からご 説明をしたいと考えております、  1頁は、従前からの資料ですが、健康安心、先端医療、健康安全という3つのキーワ ードを掲げて、総合科学技術会議のさまざまなご示唆もいただきながら、私どもとして 厚生労働省の科学技術研究を進めていこうと。特に健康安心の推進と先端医療の実現に ついては、健康フロンティア戦略にも組み込まれているわけです。  これまでのこの審議会の議論を踏まえてターゲットを重点化する、アプローチを改善 していくことをこの中で明確にしていく。いちばん上には、総合科学技術会議が第3期 の科学技術基本計画を策定しようとしていますが、その中での基本的な柱として、社会 ・国民に支持される科学技術など4つほど、総合科学技術会議の考え方が示されてい て、こういうものと調和をとりながら、私どもとしてはさらに平成18年度のこの研究関 連の予算要求を進めていきたいと考えています。  2頁は、黒川委員にお願いして、「今後の中長期的な厚生労働科学研究の在り方に関 する専門委員会」を立ち上げていただき、その中間報告をこの部会でもしていただいた ところです。そこにいくつかの課題、今後の在り方、第3期の科学技術基本計画と私ど もの研究の関係ということで、こういう形で整理しています。課題はここに書いてある ように、4つの大きな括りがありますが、今後の在り方として、1つ目の資源配分の基 本方針をどうするかについて、私どもとしては目的志向型の研究をすべきであろうと。 これは私どもの理念、政策目標、実現目標などに照らして研究を進めていくべきだと。 2番の研究システムの見直しというのは、次の頁に別紙が付いていますが、研究の枠組 みや研究実施体制をいかに強化するかについて考えていく必要があります。当然なが ら、その成果について、透明性・社会的貢献の実現、普及啓発活動を推進することが中 間報告の内容であったと思います。  さらに第3期科学技術基本計画と厚生労働科学研究との関係としては、言うまでもな く、ライフサイエンスを第3期でも、さらに振興、推進してもらいたい、府省連携した 研究を進めましょう、総合科学技術会議の研究事業評価については我々にも少しものを 言わせていただきたい、今後さらに公的研究機関の在り方については議論していかなけ ればならない、といったことが中間報告の成果だったと思っています。  3頁は、「厚生労働科学研究の具体的見直し案」となっていますが、中長期の委員会 を踏まえて、こういう提案があったのではないかと整理をしています。まず研究の枠組 みについては、例えば、プロジェクト提案型を新たに入れる、あるいは戦略型を入れ る、若手育成型を取り入れるということで、これまでの一般公募・指定型以外に5つの 類型を新たにしてはどうかということです。  研究体制については、研究費執行体制の改革として、交付時期が遅いことに対して、 対策本部を設置する、ファーストトラックを設定するという形で、迅速にこの問題に対 して対応していきたい。さらに取扱規定・取扱細則の改正も前倒しをして、研究費の交 付、申請交付にかかわる事務がスムーズに動くようにしたいということも書いていま す。研究体制の強化としては、多様な研究への参画スタイルを確保する、若手研究者育 成を充実する、研究基盤を支援する専門家を育成することについて支援するなどが書か れていました。  こういうことを念頭に置きつつ、4頁の具体的な平成18年度の研究費の形になるわけ です。従前からの4つの分野となっていますが、左から2つ目のカラムに、政策目標と して、それぞれの分野に対して、このような政策目標をきちんと掲げるべきだというこ とで、先ほどからある理念、政策目標、実現目標などをきちんと明確化して、それぞれ の研究事業を位置づけていくべきだろうということで、政策目標として、厚生労働行政 の基盤となる政策研究の推進から先端医療実現のための基盤技術の開発等々、それぞれ の分野別に政策目標をきちんと立てました。  なお、実現目標については、いちばん下に注が付いてるように、実現目標については 厚生労働省の平成18年度研究事業に関する評価案を参照していただきたいと思います。  研究事業ですが、従来18の事業がありましたが、今回4つの分野、政策目標に照らし て研究事業をある程度整理しました。名前の変わったものがあります。例えば、下から 3つ目のカラムに地域健康危機管理というのがありますが、これは従来の健康科学総合 研究事業を地域健康危機管理研究事業という形に名前を変えたいということです。上か ら3つ目のカラムの3−4−3は、今年度までの名前は創薬等ヒューマンサイエンス総 合研究事業だったのですが、政策創薬総合研究事業と名前を整理しました。ここは全体 的に研究事業を今まで18あったものを17に括り直したことと、さらに基本理念、政策目 標に若干合わせて、その中を整理して統廃合しています。先ほどから申し上げている基 本理念、政策目標に照らして研究事業を括り直し、来年度は要求をしていこうと考えて います。5頁以降は各論ですので、それぞれの担当から説明いたします。 ○矢崎部会長  それでは、予定の時刻を過ぎていますので、簡単にご説明いただければと思います。 ○研究開発振興課  先端医療の実現から説明いたします。先端医療の実現については、健康フロンティア 戦略の中に盛り込まれているという位置づけがありましたが、このためには5頁の図 で、オーダーメイド医療を含めた画期的な医薬品、医療機器等の実現が必須です。この ため、ここに書いてある各事業を基礎研究から応用研究まで切れ目なく実施していまし たが、平成18年度はこれをより明確的に捉えて、戦略的アプローチを目指して従来の研 究事業の整理統合を行うとともに、特に出口につながる上で弱点となっていた臨床研究 事業の強化を図るための予算要求を行っていきたいと考えています。  具体的には、まず基礎研究の分野ですが、いちばん左の赤字になっているのが平成18 年に特に重点的に実施したいと考えていますが、従来トキシコゲノミクス研究、疾患関 連タンパク質解析研究という個別の研究事業で行っていたものを、創薬基盤総合研究事 業という1つの大きな枠の中に入れ込み、先ほど申し上げた2つの基盤的研究ととも に、政策目標をはっきりさせた政策創薬総合研究事業を新たに実施したいと考えていま す。  その下のほうに、これは新規でお願いしたいと思っていますが、タンパク質研究の第 3の研究分野として考えられている糖鎖研究についても新規に実施したいと考えていま す。  真ん中の部分ですが、基礎の非臨床から臨床応用の部分に渡す橋渡しの部分の研究と して、従来、基礎研究成果の臨床応用研究推進事業を実施していましたが、これは探策 的な医療に到達すればよしとしていましたが、それをより確実に臨床研究につなげ、さ らには実用化につなげるということで、後半部分を拡充させていただきたいと考えてい ます。  最後ですが、いちばん右側の臨床研究の部分については、創薬実用化総合研究事業と して、ここの大きなものは真ん中の臨床研究基盤総合推進研究ですが、これについて は、従来個別の疾患群ごとに行っていたものを一本化して臨床研究の基盤を整備した上 で、きちんと治験につなげ実用化につなげ、これをもってオーダーメイド医療を括り直 した画期的な医薬品・医療機器の実用化につなげたいと考えています。 ○生活習慣病対策室  続きまして、「循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業」についてご説明させてい ただきます。次の頁をお開き下さい。参考までに資料2−2は76頁からとなります。現 在、厚生労働省では「健康フロンティア戦略」が策定され、国民一人ひとりが生涯にわ たり元気で活動的に生活できる「明るく活力ある社会」を構築することを目指して、生 活習慣病対策の推進を柱とした施策の展開を実施しております。特に最近、新聞を賑わ せておりますが、経済財政諮問会議において、社会保障給付費の伸び率管理が強く求め られていること等から、厚生労働省では生活習慣病対策といった柱を、強力に推進する ことによって医療費の適正化を図っていくこととしております。  中長期的な医療費適正化に向けた生活習慣病対策への取組が、今後社会保障政策にと っての喫緊の課題でもあります。このようなことからも、今後ますます生活習慣病対策 が重要になるとともに、そうした政策を裏づける意味で研究成果が必要になってくると 考えています。  そこで今回、「循環器疾患等生活習慣病対策総合研究」という名前に変わりました が、平成18年度から実施する新しい研究事業であり、平成17年度までは、循環器疾患、 糖尿病などの診断、治療に関する研究を実施していた「循環器疾患等総合研究事業」を ベースにして、「健康科学総合研究事業」の一部がこちらに合流した構成となっており ます。具体的に合流した研究としては、健康づくり、栄養、運動、たばこ・アルコール などといった一次予防に関する研究と疾病の早期の発見、すなわち健診や保健指導など の二次予防に関する研究が挙げられますが、これらを合わせて、これまで生活習慣病対 策という観点からそれぞれの研究事業で行われてきたものを、一次予防から診断・治療 まで一貫して研究が実施できるように統合して研究を進めてまいりたいというのが今回 の変更のポイントです。生活習慣病対策のイメージを川の流れにたとえて説明します と、上流が健康な生活をしている人で、下流に進んでいくほど不健康な生活を実施して いく、健康が害されていくと考えた場合、この研究ではその成果をもって、より下流に 進まないように防いでいく防波堤の役割を果たしていきたいと考えています。  具体的に最初の防波堤は一次予防ということで、健康づくり、すなわち集団健康教 育、あるいは普及啓発により、いまだ疾病を発症していないけれども、自分が不健康な 生活習慣であることを発見して改善していただく、そういうプロセスにこの研究成果が 役に立つことになります。次の防波堤が二次予防となります。不健康な生活習慣を続け た結果、肥満や高脂血症、高血圧、高血糖を併せ持ったメタボリックシンドロームとい う概念も最近専門家において議論されておりますが、そういう状態の人たちが、できる だけ診療所や病院に入院しないように心がけるために、この研究成果を役に立てたい。  その次の防波堤は、生活習慣病を発症した人たちが医療機関に継続的な治療を受けて もらうことにより軽症化させたり、治癒していく方向にこの研究成果を役に立てていき たいと考えています。  特に今回は、肥満対策としての栄養、運動、あるいは健診、保健指導、さらには高脂 血症、高血圧、高血糖といった一連の状態をメタボリックシンドロームという概念を導 入することによって、川上から川下まで体系的に研究を実施していきたいと考えていま す。これまで以上に研究成果をあげていきたいと考えておりますので、よろしくお願い いたします。 ○生活習慣病対策室  資料2−1、7頁です。「第3次対がん総合戦略研究・がん臨床研究」です。詳しく は資料2−2、73頁以降をご覧ください。がん対策については、第1次、第2次のがん 研究を経て遺伝子レベルにおける病態の解明が進むとともに、早期発見法の確立、標準 的な治療法の確立、診断・治療技術における進歩が指摘されています。  しかしながら、高齢化に伴って、依然としてがんは日本人の死亡原因の第1位を占め ておりますし、がんの特性を見た場合、複雑性に富んでおります。生物学的特性やがん 細胞の浸潤能・転移能を見ますと、まだまだその全貌が十分に解明されているとは言え ず、一層の研究の推進が不可欠であるという状況にあると思います。  平成16年度ですが、厚生労働大臣の下に、均てん化に関する検討会が置かれ、その中 でも今後のがんの均てん化方策、それから研究についてもご提言をいただいたところで す。こうした社会的関心の高いがんの分野において、平成18年度は第3カ年目に当たる わけですが、研究成果を、より直接国民の福祉につなげていくという観点から研究を推 進したいと考えております。そのため、がんの本態解明の飛躍的推進、革新的な予防・ 診断・治療法の開発、がんの実態把握と情報・診療技術の発信・普及、がん医療の向上 と社会環境の整備という観点から、具体的には発がんの分子基盤に関する研究、臨床的 特性を踏まえた研究や革新的ながんの予防法、診断技術・治療法に関する研究を推進し たいと考えています。もう1つ大事な点は、がん患者のQOLに関する研究、実態把握 に基づいた情報発信に関する研究も推進したいと考えております。  こうしたさまざまな分野のがんに関する研究を総合的に推進することによって、第3 次がん戦略の目標であるがんの罹患率・死亡率の激減といった目標を達成してまいりた いと考えております。 ○疾病対策課  免疫アレルギー疾患予防治療研究事業について、ご説明いたします。資料2−1にお いては8頁、資料2においては95頁です。免疫アレルギー疾患については、花粉症、食 物アレルギー、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、リウマチ等の疾患がありますが、国民 の30%以上の患者がおり、ますます増加傾向にあります。  また、我が国において、免疫アレルギーのIgEという抗体が発見されたという経緯 もあって、研究成果があげられていますが、まだまだ一般的には免疫アレルギー疾患の 病態は十分には解明されておらず、根治的な治療法は確立されていないということで、 多くの患者たちが長期にわたり、生活の質を低下させている状況です。  このような状況において、免疫アレルギー疾患予防治療研究事業を平成4年度から開 始してきましたが、平成18年度においては短期的、重点的に目標として達成していく 「慢性期医療管理の支援法の確立」と、長期的に着実に実施していく「免疫アレルギー 疾患克服にむけた総合研究」という二本柱で考えております。  アレルギーについては、生活において長期に悩んでいる患者がたくさんおられます が、より確実で簡便な診断法を開発することで、患者が日常生活においてアレルギーの 原因物質を適切に管理し、生活することを目指した開発普及を目標としています。  リウマチに関しても、患者が重症化に至らずに、活き活きと生活できるように早期診 断、早期治療法と悪化予防法の確立に重点化を図ってまいりたいと考えています。  また右側の柱の免疫アレルギー疾患克服に向けた総合研究ですが、免疫アレルギー疾 患の増加に関する原因究明と病態解明なども併せて、治療戦略を立てていかなければい けません。特に平成17年春は花粉飛散量が多く、多くの国民が花粉症に悩み、根治的治 療法の開発が強く要望され、厚生労働省においてはその中でも新規治療法として、舌の 裏側に花粉のエキスを投与して、徐々に体質改善を図る舌下減感作療法についての開発 を推進していくこととしています。  またこの花粉症に関する治療法の開発については、総合科学技術会議の下で、関係省 庁における花粉症対策研究の総合的な推進について、科学的観点から検討され、舌下減 感作療法に重点を置いて研究を推進すべきであることが報告されました。  このような研究を推進して行政施策に反映し、安心・安全な生活を実現する科学技術 活動を推進してまいりたいと考えています。 ○結核感染症課  資料9頁の「エイズ・肝炎・新興・再興感染症研究の国内・国際危機管理・研究体制 の構築」に基づいて説明いたします。詳しい資料については資料2−2の93頁に新興・ 再興感染症について記載があります。  まず新興・再興感染症の研究の今までの成果として、SARSコロナウイルスの迅速 診断法や鳥インフルエンザワクチンの緊急開発の着手などを行ってきたところです。た だ、残された課題として鳥インフルエンザ、西ナイル熱など、野生動物が伝播する感染 症についての関係機関が連携したネットワークの研究は必要であるということ。そして 主にアジア地域の感染症研究拠点のネットワークを構築して、鳥インフルエンザ、西ナ イル熱、マラリア等の予防・診断・治療に関する研究が必要であるという問題意識を持 っており、平成18年度の研究においては、海外で発生した新興感染症に関する実地調査 の迅速な実施のための研究、そして新型インフルエンザの発生・伝播モデルを開発する などの新型インフルエンザ対策の確立に向けた研究、動物由来感染症のコントロール法 の確立に向けた研究などを行っていくこととしています。  それ以外にも昨今のテロ対策を踏まえ、生物テロ対策の確立のための研究、若年者に おける性感染症の蔓延防止のための研究などを、国内研究拠点、海外研究拠点を通じた 研究で進めていくこととしております。  肝炎については、現在、専門家会議などでご検討いただいているところですが、B型 肝炎、C型肝炎等の慢性肝炎の治療法や治療用ワクチンの開発のための研究などを進め ていきたいと考えております。  エイズ対策については、疫学研究、基礎研究、臨床研究、社会学研究という4つの分 野の切り口から研究を進めていくことを考えております。 ○食・企画情報課  10頁ですが、「食品の安全・安心確保推進研究事業」についてご説明いたします。食 品の安全については現在政府の「骨太方針2005」において「BSEへの対策、食品表示 基準の見直し、輸入食品安全対策の強化等、科学に基づいた食の安全と消費者の信頼確 保に努める」とされており、今後も食品安全については、科学技術をふんだんに使った 政策は必要であると考えています。  また昨今、内閣府において、「科学技術に関する特別調査」が行われましたが、その 中でも、安全な社会の実現のために科学技術に対して政府が支援すべきとの意見があり ました。そういった中で、食品安全につきましても、今後、こういった科学技術をどん どん取り入れた行政施策が必要と考えております。  これまでの研究ですが、平成17年度までにつきましては、左側のほうにあるように、 いわゆる食品に関係する物質、例えば食品添加物や残留農薬やBSE、その他諸々につ きまして(1)〜(3)、危害要因のリスク解明、検査機器等の開発、安全管理体制の高度 化、こういったものを中心に研究が行われてきておりまして、それぞれ成果があがって きております。また、それらの成果につきましては、さらに国際社会への貢献なども行 われてきています。  平成18年度につきましては、厚生労働省の食品安全行政というものがフードチェーン の中で最後、いわゆる川下の部分を担当しているというところもございますので、今後 は「レギュラトリーサイエンスの推進」「健康危機管理の強化」、この2つを二本柱と して研究を進めていきたいと考えております。特にレギュラトリーサイエンスの推進に つきましては、ここに書いてあるように、科学に基づいた食の安全確保に資するため、 科学データの蓄積、規格基準の作成、公定検査法の確立等のための研究を推進するとい うことです。そして、特に重点研究課題というものを設けまして、それにつきましては ここにある3つ、BSEに関する研究、乳幼児用食品の安全性確保に関する研究、遺伝 子組換えなどモダンバイオテクノロジー応用食品の安全性に関する研究を重点課題とし て研究を進めていきたいと考えております。  健康危機管理につきましては、国民生活の安全を確保するということから、食品を介 した危害要因の排除を目的とした研究を推進していくということで、食中毒対策、ま た、いま薬剤耐性食中毒菌が世界でも話題になっておりますので、それらに対する研 究、それから原因不明の健康危機管理に関する研究等を推進させながら、最終的には暮 らしの安全確保、また国際貢献の推進を目指しながら研究を進めていきたいと考えてい るところです。 ○上田厚生科学課長  いま重点事項について各課から説明いたしましたが、全体はこれだけではありませ ん。全体像は資料2−2という形で非常に分厚いものを配っておりますので、これにつ いて簡単に説明させていただきます。 ○事務局  資料2−2が本体です。これは昨年度も、基本的に同じような形で評価をいただいて おります。5〜6頁を中心にご紹介します。5頁に「3、厚生労働科学研究費補助金」 というものがありまして、1〜17研究事業になっています。  資料2−2の6頁は「今後の中長期的な厚生労働科学研究のあり方に関する専門委員 会」中間報告書に基づく研究事業で、左から基本理念、行政目標、主要な実現目標を、 いちばん右に研究事業を示しております。実現目標というのは、基本理念のもとに、国 民にわかりやすい政策目標の達成に資する評価可能な目標ということで、今後これをよ り数値化していくよう検討を進める予定です。この17事業については、その後のページ で具体的にそれぞれの研究事業についての説明をしております。 ○矢崎部会長  膨大な厚生科学研究費全体の評価というより、現状を踏まえた今後の方針、概算要求 に向けての要求の内容だと思うのですが、何かご意見をいただけますか。どの課題から でも結構ですので、よろしくお願いいたします。 ○永井委員  循環器疾患等生活習慣病対策総合研究の絵は、全体をよくカバーしていると思うので すが、生活習慣病研究分野と糖尿病戦略研究、これはどういうふうに分けるのでしょう か。糖尿病は、ある意味ではメタボリックシンドロームの一角ですし、循環器疾患のテ ーラーメイド医療というのもある。むしろメタボリックシンドロームの先にあるのが循 環器疾患だと思うので、この辺の整理がもう少しすっきりするとよいという感じがいた しました。 ○生活習慣病対策室  資料2−1でお示しさせていただきました6頁目ですが、糖尿病戦略研究は、平成17 年度から実施する新たな研究の枠組みとして抜き出されております。糖尿病に関して目 的を持って戦略的な研究を進めるということです。委員がおっしゃるとおり、生活習慣 病の中の一環ではございますが、より具体的な戦略を作るということで、糖尿病だけ飛 び出した形になっております。全体の流れとしては少し違和感を覚えられるのかもしれ ませんが、どちらかというと、生活習慣病は全体の流れで、糖尿病はその戦略というこ とを具体的な目標として別枠に挙げさせていただいております。繰り返しとなります が、流れとしては同じ生活習慣病の中に入るのですが、戦略という目標を掲げて、アウ トカムと研究方法を明確にした形で、戦略研究を平成17年度から進めている中での1つ の枠ということになっておりまして、全く乖離したものという位置づけではございませ ん。資料のほうがわかりにくかったのかもしれませんが、そういったことでご理解いた だければと思っております。 ○永井委員  わかりました。もう1点。今度は食品のところです。安全についてはいろいろ手を打 たれていると思うのですが、最近、健康食品等いろいろな機能性食品が出てきて、これ の位置づけというのはどういうふうに評価したらよいのかと思うのです。医薬品につい ては非常に厳しい評価があるのですが、機能性食品についての評価は、研究対象になら ないのでしょうか。 ○食・企画情報課  健康食品は今問題になっております。医薬品成分を含んでいるものに関しては薬事法 の中で対処できるのですが、それ以外のものにつきましては、一般にいわれる健康食品 の中でも、よくわからないものによる健康被害は、かなり多く出ているのが現状です。 ただ、それにつきましては、どこまで因果関係を求められるかというのが非常に難しい ところでございます。今回は重点の中の例示では挙げておりませんが、健康食品に関し ましては、安全性の問題やデータベースの作成、そういったものについての研究は別途 行っていて、その中で、いま委員のおっしゃったようなお話につきましても研究を進め ているところです。 ○笹月委員  平成18年度へ向けてということとは違って、話が少し大きくなるので恐縮なのです が、連携施策群ということを、しきりに総合科学技術会議で言われていると思います。 それは各省庁がスタートした研究に対して後からいろいろ手当をするという感じなので すが、それでは遅いのです。国家的プロジェクトは最初から省庁共同、複数の省庁が共 同して提案する課題というようにするのが、最終的にはよいのではないかと私は思いま す。これまでの科学研究費のパイというのは、対GDPにおける科学研究費の比率から 見たら、先進国の中で、日本は非常に低いので、それを少し上積みするということを、 総理をはじめ、よくご理解いただいて、それをどのように使うかということに関して は、複数の省庁が一緒になって提案する国家的課題というものを1つ設けていただくこ とが非常に重要ではないかと私は思います。  例えばがんの場合には、垣添委員はよくご存じですが、厚労省のがんと文科省の癌 と、初めからプランを一緒にしながらうまくいっている例だと思いますので、それをさ らに進展させ、その他の分野、例えば新興・再興感染症やアレルギー、あるいは生活習 慣病、そういう本当に国全体が一緒になって解決すべきテーマというのは、今までの枠 組みだけでは、理想の姿からはまだまだ遠い気がいたします。そういう抜本的なことを 是非一度討論していただいて、全省庁を挙げて総理その他に訴えるということが必要で はないかと思いますので、一言申し上げました。 ○矢崎部会長  いまの貴重なご意見は、厚生科学の中長期的な展望の検討会にも是非反映させていた だいて、それを各省庁の統合的な検討会に反映していただければと思いますので、よろ しくお願いします。その他いかがでしょうか。 ○佐藤委員  いまの意見と同じような方向のことなのですが、これを概算要求として出すから、今 回はいまのような理想的な形にいかないとは思うのですが、出た後で他の助成領域とバ ッティングするようなものがあったら、是非そこでの調節をお願いできればと思ってお ります。例えば、先端医療の実現の基礎研究のところで、糖鎖研究というものが出てい ます。これは非常に大事な領域だと思いますが、そう言いながらも、非常に狭い領域で もあろうと思うわけで、たぶん科研費などでも重点項目にしているのではないかという 感じがするのですが、そういうときに、両方から出ていたら、是非そこのところの調整 もしていただきたいと思います。細かい点ではありますが。 ○矢崎部会長  ご議論は尽きないと思いますが、卓上にご意見を書いていただく用紙がございますの で、後ほどご覧いただいて、こういう点を加えたらどうか、あるいは、こういう点を重 点的に要求されたらいかがなものかというご意見を書いて、7月20日までに事務局宛に お送りいただければ大変ありがたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  次の議題は「ヒト胚研究に関する専門委員会について」ですが、説明をお願いいたし ます。 ○佐藤母子保健課長  資料3を見ていただきながら、「ヒト胚研究に関する専門委員会」についてご説明い たします。先生方の中でもご存じの方は多いと存じますが、平成16年7月に、総合科学 技術会議生命倫理専門調査会から報告書が出ました。それは「ヒト胚の取扱いに関する 基本的考え方」というものです。これは読んで字のごとくでございまして、ヒト胚の取 扱いに関する基本的な考え方が示されたものです。  具体的にどういうふうに取り扱うべきかについては、厚生労働省に対しまして、「ヒ ト受精胚の研究目的での作成・利用」ということに絞ってガイドラインを作成すべきで ある。また、仮にこういう研究を行うとすれば、その研究の審査体制のようなものにつ いても整備をするべきであるということで、言ってみれば宿題が出ていた状況にござい ます。  そこで私どもでは、平成16年度に厚生労働科学研究の中の特別研究という形で「ヒト 胚の研究体制に関する研究」という研究を設置してご検討をいただきましたが、その研 究成果が概ね出てまいりましたことから、その成果をもって、厚生科学審議会科学技術 部会に専門委員会を設置して検討を行っていただきたいといま考えております。  参考までに検討課題とスケジュール等を申し上げます。まず、ヒト受精胚を研究目的 に使う場合の、あるいは作成する場合の指針、それから、その研究が妥当かどうか、そ の施設が妥当かどうか等を審査する枠組みの検討を行っていただきたいと考えておりま す。以下、もう少し具体的な話です。  どういう研究であれば許されるのか、どういう研究体制があり得るか、それから、胚 や配偶子をご提供いただくわけですが、その場合に、ご提供いただく方に対してどうい うインフォームドコンセントをすべきであるか、また、ちょっと言葉が悪いのですが、 実験なり研究なりが済んだ後の胚の廃棄なり処分の方法はどうあるべきか。たぶん尊厳 を忘れずとか、敬意を持ってとか、そういう話になるのだろうと思うのです。常識の範 囲内で管理をすることになるのだと思いますが、そういった管理の方法はどういうもの であるべきか。それから、先ほど申し上げているように、遺伝子治療のような事例を見 ますと、個々個別に審査を行っているという状況にありますから、そうした審査体制の ようなものは必要なのかどうか。必要とすると、どういう形でやるべきか、そのような ことをご検討いただきたいと思っております。  スケジュールにつきまして、これは全くの案ですが、昨年の7月に宿題を頂いたわけ ですから、あまり遅いというのも何でございます。また、特別研究の結果も出ましたの で、8月の下旬ごろに、ストレートに申しますと、顔合わせ的に第1回を開催させてい ただいて、それから9月の下旬ごろ。それ以降は2カ月に1回程度で全5回程度開催し ていただいて、年度内、あるいは年度をまたがるかもしれませんが、ガイドラインの形 で取りまとめをお願いしたいと思っております。  委員の構成ですが、倫理的な要素があるだろうということで、基礎臨床研究者は当然 のことといたしまして、生命倫理や社会学、あるいは人文といったような分野からのご 参画もお願いしたいと思っております。いずれにしましても、委員、それから委員長に つきましては、科学技術部会長等と相談をしていただいた上で部会長からご指名をいた だく形にしたいと思っております。  これは全くの蛇足ですが、このヒト胚の取扱いに関する基本的な考え方が内閣府で、 言ってみれば上位機関から示されまして、私ども厚生労働省に対してはヒト受精胚です が、文部科学省のほうにはクローン胚の取扱いについて宿題が出ているようです。そう いう状況でご理解、ご了承がいただけるようであれば、資料3にまとめましたような形 で手順を踏んで検討してまいりたいと考えております。よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  ただいまのご説明について、ご意見はいかがでしょうか。 ○垣添委員  私も、冒頭で紹介がありました平成16年7月のヒト胚の取扱いに関する基本的考え方 をまとめた総合科学技術会議の生命倫理調査会の専門委員の1人だったのです。約3年 間の議論を通じまして、初めから終わりまで、対立した議論はそのまま持ち越されて最 終結論に至ったという経緯をよく見ていたものですから、この検討に関しても委員の構 成は基本的に、研究を進めるという立場の人と、批判的な人をどのように交えるか、要 するに委員構成をどういうふうにセットするかということで、ガイドラインがどうなる かということは大きく変わってくるのではないかという心配があるのですが。 ○佐藤母子保健課長  現時点で、はっきりしたことはまだ申し上げられませんが、完全に賛成の委員の方だ けで構成するというのは無理があるだろう、多少とも批判的なものの考え方のある人の 意見は頂戴しなければいけないと思います。また、行司役になるのか、調整役になるの かわかりませんが、倫理的な方にも入っていただいて、その辺りは多少もめようとも、 きちっとご議論は尽くしたという形をとりたいと考えております。 ○垣添委員  厚生労働省がヒト受精胚を、文部科学省のほうがクローン胚の検討をするという説明 でしたが、もしその検討が内容的に大きく食い違ったりすると、大変困った事態になら ないでしょうか。 ○佐藤母子保健課長  結論から申しますと、食い違うこともあるのかもしれないと思っております。と申し ますのは、クローンについては、ヒト受精胚以上にご批判が多いと承知をしておりまし て、もしかすると食い違う点もあるのかもしれません。ただ、進める過程では文部科学 省と常に連携をとりながら、さらには内閣府とも相談をしながら、できる限り意見の齟 齬がないように、少なくとも一致できるところは一致できるような形で進めたいと思っ ております。ただ、結論の出る時期については、これは私の私見も交えておりますが、 おそらく、文部科学省のほうは相当難航して、私どものほうがやや早めにゴールに飛び 込むということがあるのではないかと観測しております。 ○矢崎部会長  ヒト胚研究ですから、厚生科学課が直接事務局をやるのかと私も思っていたのです。 前に私も母子保健課の生殖補助医療の検討会でだいぶ苦労しました。検討課題の1〜5 というのは、研究そのものも大事ですが、そこに至る過程がヒト胚研究には重要ではな いかということで、母子保健課が担当されると理解しております。  垣添委員が総合科学技術会議の議論の内容に少しお触れになりましたが、ヒト胚の研 究のところまで行く可能性はあるのです。研究を許可するか、しないかのところで根本 的な議論が分かれてしまったというところがあるのですが、その辺はいかがでしょう か。 ○垣添委員  人の胚というのは、人の生命の萌芽として尊厳を持って扱う、というところまでの認 識は皆さん一致するのですが、それから先、例えば研究目的という非常に限られた条件 の下で、再生医療や難治性の疾患に役立つような研究を進めるという立場と、まだそん な段階にはない、技術的にも倫理の観点からもそんなことを考える時期ではないとい う、その議論がずっと平行線のままだった。これは、あと2年やったとしても状況は同 じだという感じがするのです。ですから、衆知を集めて議論するというのは確かにその 通りなのですが、最終的な結論を得る。こういう極めて難しい課題に関して言えば、こ の3年間の経験は、そういう作業に対して非常に疑念を持つのです。私の感想として、 そういう印象を強く持ちました。 ○北村委員  質問なのですが、新しい委員会で作成されるものは、いま紹介がありました総合科学 技術会議の胚の取扱いについての部分を逸脱できるのか。あるいは、これは上流方とし てあるのだから、その中で具体策を考えろと言うのか。  クローン胚の研究について、日本はネガティブであるけれど韓国はすでにかなり進め ています。ヒトのクローンを3胚葉分化までやっています。そういったところで、それ に対応的な研究は可能にするような方向性があるのか。それ以前に、上流として、それ は禁止としているものが厳然としてある中でやるのか。その辺はどうなのですか。 ○佐藤母子保健課長  結論から申しますと、内閣府のお決めになった基本的な考え方の枠内で議論すべきで あろうと思っています。もちろん、その過程で突然に新たな研究手法なり治験なりが得 られて、これまでの概念を崩すようなことがないとも限りません。また、内閣府がそれ に合わせて基本的な考え方を変えないとも限りませんが、そういう大きな変更がない限 り、私どももこの傘の下で与えられた検討をするという、やや制約のある形であろうと 思っております。 ○加藤委員  世界的に見ると、議論がだいぶ深刻になっている、ある収斂点に達するというより は、だんだん分裂していっていると思います。アメリカ型の生命倫理学とドイツ・フラ ンス型の生命倫理学が対立していて、特にドイツでは、憲法第1条が「人間の尊厳を守 ることは国家の義務である」という観点から、今までとは非常に違う人間の尊厳アプロ ーチに基づく論文がたくさん出てきていて、世界的に見ると、基本的な概念がどんどん 深刻味を増して分裂している状況なので、この5回の委員会でそういうところまでどん どん入り込んでいくようなことをすると、とんでもないことになって、絶対に結論が出 ないと思います。そこで、ある領域については結論は出さない。いわば、それを固く固 めておいて、この辺で別のところで議論をする、そういう議論の枠組みをつくっていく 必要があるのではないかと思います。 ○長谷川委員  基本的な考え方の質問なのですが、ずっと議論を見ておりますと、本当に収斂しませ ん。どちらかというと、本当に国民的と付けてよいかどうか分からないけれど、完全に 二分します。そういうものを、では5対4でこちらの勝ちと言って、全面的に5のほう に行くというのが審議会や何かの権力なのですか。それと、意見分布を見ると本当に割 れているわけだから、本当に割れているということを尊重して、「5対4で5にします 」ではないようなやり方を模索することも道になっているのかどうかという質問なので す。 ○矢崎部会長  これは採決して多数決という結論にはならないと思いますが、事務局としては、いか がでしょうか。 ○佐藤母子保健課長  非常に難しいご質問だったので、なかなか答えづらいのです。5対3なのか、5対4.5 なのか、5対1なのかでいろいろ違ってくると思いますが、私の私見を交えてというこ とでよろしければ、強引に結論を出さなければいけないものかどうか、というところは あると思います。つまり、これについて今この時点で決論を出して、こっちですとか、 あっちですとかと言わないと。それも短時間に、一定のスケジュールの中で確実に出さ なければいけないかというところは、少し実際の検討委員会での議論を拝見して考えた いと思っております。わかりやすく言えば、スケジュールに拘泥するあまりに結論を急 いで後で批判を浴びるということがないようにしたい。もう少しわかりやすく言うと、 もめるようであれば、結論のスケジュールは先延ばしもあり得るということではないか と思います。 ○矢崎部会長  なかなか難しい課題です。約2年前でしたか、生殖補助医療の議論を振り返ってみま すと、議論が真っ二つに分かれました。生殖補助医療賛成派と、やるべきでない、禁止 すべきだという議論がありまして、29回、それも1回4時間かけてやったのです。大変 だったのですが、結局、こういう審議会でいちばん大事なのは、なぜ反対なのか、なぜ 賛成なのかというのを両方の側の委員によく理解していただくことです。そこで結論を つけるということではなくて、大まかな方向性で、こちらの枝のほうに行くと絶対駄目 だ、この枝に行けばある程度反対も寛容できるというように、何かそこで議論しながら 行っていただく。ただ観念的に絶対駄目だと最初から言われてしまうと、なかなか議論 が進まないので、議論をともかく進めていただきたい。母子保健課で、こういう終着点 をとか、そういうことはないのですよね、この場合は。委員長に議論を任せていただけ るということでよいですね。 ○佐藤母子保健課長  建前で申し上げれば、終着点は頂戴したいのです。 ○矢崎部会長  どういうふうに終着点を持っていくかということは決めないで、要するに議論を尽く して、ある程度の終着点を見つけていただくということですね。 ○佐藤母子保健課長  そのようにお願いしたいと思います。 ○笹月委員  この手のことは文化や歴史が違うので、国際的に共通なコンセンサスはなかなか得ら れないと思います。例えば遺伝子治療で、レトロウイルスベクターを用いて成功したの だが、その中で白血病が発症した。それに対して各国がどう反応したかというのを見ま すと、イギリスは、とにかく成功するのだから、放っておけばなくなる病気なのだか ら、少々のリスクは構わないということで、何の制約も設けずにやってしまったので す。ところがドイツは、一切レトロウイルスは禁止です。イタリアは、そういうことを 議論もしない。野放しで、どうぞということです。アメリカは、自分たちは一度も同じ 遺伝子治療をやっていないのに、すぐ会合を開いて、世界中の専門家を集めて、そこで 議論をしたのです。ですから、国によって本当に取組み方が違う。  そういう会合がしばしば開かれますので、日本からも是非、例えばUNESCOの安 全部会、例のカルタヘナなどもそうですが、そういう会合に是非厚労省からも人を派遣 していただいて、議論を尽くしていただきたいと思います。  先ほど垣添先生が、委員としてどういう人を選ぶかによって結論は違うということで したが、答えは違ったとしても国際的に通用する議論のプロセスがなされたということ をやっておかないと、国際会議に出ても、みっともないことになります。外国の考え方 を意識する必要はなくて、むしろ、こういうふうに議論を進めるべきだという、国際的 にもモデルになるような議論の進め方を是非行っていただければと思います。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。大切なご意見で、事務局も是非その辺を勘案してく ださい。しかし、委員長になる方は大変なご苦労なので、引き受けてくださる方がいる かどうか分かりませんが、一応、説得して委員長を引き受けていただくことになるかも しれません。専門委員会を立ち上げるということで、この部会でご賛同いただきたいと 思います。よろしいでしょうか。                  (異議なし) ○矢崎部会長  ありがとうございました。次に「厚生労働科学研究費補助金の配分機能の移管につい て」、事務局から説明をお願いいたします。 ○事務局  それでは、配分機能の移管について、進捗のご報告をいたします。資料4の1頁にあ りますように、その背景には、平成15年4月に総合科学技術会議から、厚生労働科学研究 費補助金について、独立した配分機関にその配分機能を委ねる方向で検討することが示 されたことにあります。そして、平成15年10月の厚生科学審議会科学技術部会におい て、厚生労働省の既存施設等機関の専門性に着目し、研究事業の内容に応じて配分機能 を付与する方向で検討することが議論されました。現在、平成18年度予算分から段階 的、慣らし運転的に既存施設等機関へ業務移管することを検討しております。  2頁をご覧ください。厚生労働省本省と施設等機関との役割分担に関する基本的考え 方は次のとおりです。厚生労働省本省は予算要求、国会対応、取扱規程及び細則策定等 を行う。施設等機関では、評価を行い各研究課題の採択及び配分を行うとともに、その 適正な執行を支援・審査するというものです。3頁目は役割分担を図示したものです。  4頁目は、役割分担を、研究評価の流れに沿って表として示したものです。5頁は、 配分機関における業務イメージを、公募から報告書提出という流れで図示いたしまし た。  6頁は、移管に関する基本的考え方をまとめたものです。特別研究や指定研究など政 策に直結し、緊急性の高い研究事業は引き続き本省で行い、その他の研究事業は基本的 に移管を検討するというものです。その際、施設等機関の専門性に着目して検討をして いくことになります。なお、推進事業は移管しません。また、手続上研究事業の、例え ば新規研究のみから移管するなど、細分化して段階的に移管することはせず、移管は研 究事業単位で行うことになります。  7頁は当面の方向性です。研究事業のうち、本省所管課及び施設等機関の調整が得ら れたものから試行的に移管の実施を検討しています。なお、情報交換や研修等は、検討 中の施設等機関へも提供させていただきます。  最後に8頁ですが、配分機能の移管に伴い解決すべき論点として、公平性・中立性の 確保があります。基本的考え方として、評価委員・委員長は、施設等機関職員も可能と 考えていますが、同時に、公平性・中立性の確保が不可決となります。願わくば、この 点についてご意見等をお伺いできますと、ありがたく存じます。  施設等機関への事務委任をする際の前提条件には、次の内容が考えられます。すなわ ち、評価者に利害関係のないことを署名で求める。これは「今後の中長期的な厚生労働 科学研究のあり方に関する専門委員会」の中間報告書においても、評価者の確保の観点 から指摘されている事項です。施設等機関の自らの評価には出席しない。交付決定権者 (機関長)自らの申請は不可である。そして、個人情報保護等への配慮をした上での議 事内容の公表及び評価結果の公表です。以上進捗についてご報告いたしました。よい研 究計画に対して、より適切に助成できる仕組みとするために、ご意見等をお伺いできれ ば幸いです。 ○矢崎部会長  ただいまの補助金の配分機能の移管について、何かご意見はございますか。 ○井村委員  意見ではないのですが、伺いたいのです。このことについて、研究機関のほうはどう いう考え方を持っておられるのか、それを教えていただければありがたいのです。私 は、こういう形になると、国立の研究機関が研究費をかえって取得しにくくなってしま うのではないか、そういう心配をチラッとしているのですが。 ○上田厚生科学課長  今日の会議にも機関長の方々が随分おられるのですが、ご指摘の点を非常に心配して おります。ただ、一方で透明性・中立性・公平性ということであれば、そこを担保しな ければなりません。その辺の知恵を出さなければいけないということも踏まえて、平成 18年度は試行的に行っていきたいと思っています。ただ、この辺は、そういう点で各機 関と私ども本省の間である程度話がついて、これはやってみようということで双方が理 解できたところから始めるということで、とりあえずがんセンターと保健医療科学院の 名前を挙げておりますが、そのほかの機関でも手を挙げていただくなら、是非進めてい きたいと思います。  一方で、こういうFA機能をそれぞれの機関にお願いする以上、人や組織が必要では ないか。ただ仕事だけ来たのでは大変ではないかということがございますが、いま定員 管理が厳しい中で、この度のFA機能の移管ということで、定員を確保するのは非常に 困難な状況にあります。ですから、そこも事務的にどのように解決するかも一緒になっ て考えていきたいわけです。いずれにしても、いろいろな難題があるので、それを相談 しながら一つひとつ解決する。ただ、このようなFA化をしなさいというのが大きな流 れでございますので、問題の解決に当たっていきたいと考えております。 ○金澤委員  話は大体わかりました。6頁の「注意」のところに、推進事業は移管しないというこ とが明快に書いてあるのですが、このポリシーは、どういうことですか。 ○事務局  現在、推進事業は法人に委託するという形で行っていますので、これからもその方向 で進めていくという意味です。 ○矢崎部会長  ナショナルセンター、国立研究所はそれぞれ規模も違いますし、ミッションはそれぞ れ当然違うわけですが、なかなか大変なところはあるかと思います。私が言う立場には ないのですが、定員法で厳しく規制されているところで、Funding Agency(FA)の人 を配置するというのはなかなか困難ではあると思いますが、その辺、何とか頑張ってい ただきたいという気持はあります。機関を代表してという形になるかもしれませんが、 その辺は是非よろしくお願いしたいと思います。 ○笹月委員  いまおっしゃったように、それから先ほども話題になりましたように、評価というこ とがFAをお引き受けするときのいちばんの根本だと思うのです。これまでの評価に関 して、いろいろな議論がありましたので、そういうことも十分に精査し、それから外 国、例えばNIHで行われている評価の方法なども十分調査して、本当に国民が納得す る、あるいは研究者も納得する評価のシステムというものを確立する非常によいチャン スだと思いますので、お引き受けするからには、そこをまずきっちり確立して、それか ら引き受けることにしたいと、私どもの中では議論しているところです。 ○北村委員  私もいま笹月先生がおっしゃったことと同じ考えなのですが、研究費の配分のあり方 というものが、いわゆる一般会計を通してセンターに来るのか、今回糖尿病等で考えら れているような、財団を通すという形になるのかで、また、センター自身の人的負担と 財団に対する人的負担も随分変わってきます。どういうお考えで配分をやっていこうと いうのかお伺いしたいのです。  もう1つは、機関長自らの申請が完全に不可になってしまうというのは、ある意味で は大変つらいことです。そういった場合に、どのような対応策が考えられるのかという ことです。それから、その機関長というのは総長になるのか、研究所長になるのか、委 員長も含めて全てだという形になるのかで、従来のあり方とは随分変わった形のことが 起こってくるわけです。そういったことも含めて、何らかの対応策がないものかという 気がしているところなのです。 ○上田厚生科学課長  まず1点目の、直接国の機関か、場合によっては財団かというお話ですが、あくまで も財団というのは可能性の1つであって、私どもは、原則は国の機関に直接と考えてお ります。その前提でいくと、これは事務的に少し詰めなければいけませんが、これまで の厚生労働大臣に代わって機関長が交付をする。それである以上、受け取る人が機関長 であれば、自分が自分に交付することになりますが、それはいささか理屈が立たないだ ろうと思います。機関長については申請はできないだろうという非常に単純な理屈から そうなっておりますので、ここはどうも変えようがないのではないかと思っておりま す。 ○矢崎部会長  機関長はほかの領域の。 ○北村委員  推進事業ならいいのではないでしょうか。 ○矢崎部会長  そうですね。ほかによろしければ、この件についてはお認めいただいたことにいたし ます。最後の議題は、「遺伝子治療臨床研究」に関する報告です。事務局からお願いし ます。 ○高山研究企画官  お手元の資料の5です。これまでに我が国で、遺伝子治療臨床研究という形で、この 審議会あるいは前身の審議会などでお認めいただいたものが17件ございまして、この資 料の最後の頁30頁にございます。このうち8と12は施設の統合等で一本のものです。 この中で、過去に終了報告としていただいているものが3件ございましたが、書類を整 理し、中を整理したところこの部会に報告していないものがございましたので、この場 を借りて報告させていただき、資料の公開をさせていただきたいと思います。併せて1 点、別の報告がございます。  資料の1枚目、千葉大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究の終了報告書は、表題 にございますように、進行食道癌に対する正常型p53遺伝子発現アデノウイルスベクタ ーを用いた遺伝子治療第I相/第II相臨床試験についてです。これは、当初は薬事法に 定める治験がらみで始まったものですが、途中から、ベクターの供給元等の関係から臨 床研究のみとなっております。  これにつきましては、切除できない食道癌のところに対して正常型p53遺伝子を発現 するアデノウイルスベクターを投与して、局所の抗腫瘍効果や生物学的反応の有無の観 察、あるいは安全性の検討を行うというもので、予定どおり、10例の患者に対して遺伝 子治療がなされました。その結果につきましては、6頁に最終的な結果の概略がありま すが、重篤な副作用はなく治療を施行できたと判断しました。ただ、今回につきまして はCRやPRはなく、NCの変化なしというものが大半であり、悪化したものもあった ということです。ある期間の変化なしということですので、その分は増殖しないという ような効果は認めていたということで、計画されたものを終了したという報告です。施 設内の委員会でもご議論をいただいており、遺伝子治療に基づく重篤な副作用や有害事 象はなかったということです。  7頁目以降が東京慈恵会医科大学附属病院で実施されたものです。これは「非小細胞 肺癌に対する正常型p53遺伝子発現アデノウイルスベクター及びシスプラチンを用いた 遺伝子治療臨床研究」というものです。これは岡山大学が最初に取り組み、その後東北 大学、東京医科大学、それと東京慈恵会医科大学の4施設が共同で行う形で進められた もので、共同で集める症例のうちの一角を担う形です。いくつか詳しい記載があります が、結果として実際は1例実施されました。しかし最終的には患者さんの希望で、遺伝 子治療は中止となりました。  この治療の経緯は13頁にありますが、遺伝子ベクターを投与後、ベクターの排出確認 のため、一定期間ある部屋に個室管理されたこと、あるいは、その期間中喫煙や飲酒な どが許可されなかったことから高度な拘禁症状を呈するようになって中止したいという 申し出があり、議論されたところ了承されたということです。結果としてはその後、原 疾患等により死亡されたということです。  こちらの施設ではこれだけですが、共同して研究を行っている岡山大学、東北大学、 東京医科大学病院については今それぞれのところがまとめております。書類自体は少し 古いものですが、いずれ3施設からの報告がまとまった段階で、4施設共同で解析を行 う予定であると伺っておりますので、他の施設から終了報告が来た際にはご報告させて いただきます。  21頁以降は、東京大学医科学研究所附属病院の臨床研究です。これは「再発性・治療 不応性神経芽腫に関するサイトカインとケモカインを用いた免疫遺伝子治療(第I相臨 床研究)」という形のものです。これは当初予定していたのですが、該当となるような 患者さんが現れなかったこと、また24頁にありますが、このプロトコールについては、 インターロイキン2の単独の遺伝子治療に比べて、効果が優れていないということが海 外で見つかった、あるいは、先ほどご指摘がございましたが、海外でレトロウイルスベ クターを用いた重症免疫不全症候群の遺伝子治療で白血病の例があったということ等か ら、これ以上続けることはしないということで、1例も行われていません。その後、こ の計画を変更するか、新規で出すか、いろいろ分析をして、最終的に断念することにな りましたが、それは今年に入ってからですので報告の日付は今年です。以上が終了報告 としてこちらに来ているものです。  25頁から、遺伝子治療臨床研究重大事態等報告書という形で、東北大学附属病院長か ら頂いているものがございます。これは先ほど東京慈恵会医科大学のときにご紹介申し 上げた肺癌の遺伝子治療臨床研究の関係です。経過は28〜29頁にありますが、平成15年 に投与され、その後転移などがわかったため放射線治療などを行っていた。その後原疾 患、あるいは癌転移などによりまして全身状態が悪化し、平成17年、今年になって亡く なられました。そして、用いたベクターなどの投与から2年間経過しており、因果関係 はないと考えたということの報告です。こちらは報告が出た段階で委員の先生方にお送 りしたものです。以上まとめての報告となりましたが、これらのものが届いていること について事務局から報告させていただきました。 ○矢崎部会長  いま3施設からの遺伝子治療が一応終了したという報告をいただいて、大きな副作用 がなかった。残念ながら、これといった素晴らしい効果もなかったという報告でござい ます。あとは東北大学からの報告ですが、お認めいただけますでしょうか。                  (異議なし) ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。本日の議題は以上ですが、委員の方々から何かご意 見はございますか。よろしければ事務局から今後の予定をお話していただきます。 ○高山研究企画官  大変なご議論、どうもありがとうございました。次回につきましては、事務局のほう で現在事務的に整備している案件がございますので、それの整備が整い次第日程調整を 行いたいと思うのですが、概ね8月下旬から9月ぐらいにお願いすることになるかと思 いますので、日程調整の際にはご協力方よろしくお願いしたいと思います。 ○矢崎部会長  これをもちまして本日の部会を終了させていただきます。ご熱心なご討議、ありがと うございました。                                     −了− 【問い合わせ先】 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担当:情報企画係(内線3808) 電話:(代表)03-5253-1111    (直通)03-3595-2171