05/04/27 労働政策審議会第10回議事録             第10回 労働政策審議会 議事録 日時 平成17年4月27日(水) 15:30〜17:30 場所 厚生労働省9階省議室 出席者【委員】公益代表  今野委員、今田委員、齋藤(邦)委員、諏訪委員              菅野委員、清家委員、西村委員、林(紀)委員              横溝委員、和田委員        労働者代表 草野委員、小出委員、古賀委員、林(誠)委員              森嶋委員、山口委員        使用者代表 井手委員、内海委員、齋藤(朝)委員              佐々木委員、柴田委員、矢野委員 議題   (1)会長の選挙      (2)第162回国会提出法案審議状況及び今後の政省令等施行予定につい         て(報告)      (3)労働政策の今後の課題について 配付資料 資料1 労働政策審議会委員名簿      資料2 労働政策審議会分科会委員名簿      資料3 第162回国会提出法案審議状況及び今後の政省令等施行予定につ          いて      資料4 労働政策の今後の課題      資料5 今後の労働契約法制の在り方に関する研究会中間取りまとめ(ポイ          ント)      資料6 最低賃金制度のあり方に関する研究会報告書(概要)      参考1 厚生労働省設置法(抄)      参考2 労働政策審議会令      参考3 労働政策審議会運営規定      参考4 労働政策審議会諮問・答申等一覧 議事 ○東労働政策担当参事官  定刻になりましたので、第10回労働政策審議会を開催いたします。当審議会は第3期 目を迎えましたが、会長が選任されるまでの間、事務局が議事を進行させていただきた いと存じます。また、本日、尾辻厚生労働大臣にご挨拶いただく予定にしているのです が、いま国会出席中ですので到着次第、ご挨拶申し上げたいと思います。  議事に入ります前に、新たに委員になられた方のご紹介をいたします。お手元に、資 料1として新しい委員名簿を配付しております。まずは公益代表委員です。学習院大学 経済学部経営学科教授の今野委員です。明治大学法科大学院教授の菅野委員です。弁護 士の林委員です。東京大学名誉教授の和田委員です。続いて、使用者側代表委員です。 株式会社NTTドコモ営業本部お客様サービス部長の井手委員です。NECソフト株式 会社執行役員の内海委員です。また、本日欠席ですが、使用者側代表委員として、東京 電力株式会社取締役社長の勝俣委員、富士電機ホールディングス株式会社相談役の加藤 委員がそれぞれ選任されていますのでご報告申し上げます。それから、未だ私どもから 任命辞令をお渡しできていない方については、お手元に配付していますのでご査収願え ればと思います。  議事に入ります。審議会令第9条に基づき、議決を行うに足る委員のご出席をいただ いていますので進行させていただきたいと思います。  早速ですが、第1の議題「会長の選挙」に移ります。労働政策審議会令第5条によ り、公益を代表する委員の中から委員が選挙するとなっており、皆様方に選んでいただ くことになっていますが、どのような取扱いをしたらよろしいでしょうか。 ○諏訪委員  僭越ですが、学識、ご経験からして菅野委員にお願いできたらよろしいのではないか と思っています。いかがでしょうか。 ○東労働政策担当参事官  いま、諏訪委員より菅野委員に会長をという推薦がありました。異議ございませんで しょうか。                  (異議なし) ○東労働政策担当参事官  ありがとうございます。それでは、菅野委員に会長にご就任いただくこととします。 以後の進行については、菅野会長にお願いしたいと思います。 ○菅野会長  菅野でございます。錚々たる委員の皆様の中で大変僭越ですが、進行役を務めさせて いただきます。よろしくお願いします。  労働政策審議会令では、私から会長代理を指名するということになっています。私と しては、諏訪委員に会長代理をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。  第2の議題、「第162回国会提出法案審議状況及び今後の政省令等施行予定について 」、事務局から資料の説明をお願いいたします。 ○東労働政策担当参事官  議題2についてご説明申し上げます。資料3「第162回国会提出法案審議状況及び今 後の政省令等施行予定について」に基づいてご説明いたします。  まず、法案の審議状況等ですが、「障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正 する法律案」については、本日、提案理由説明が委員会で行われると聞いています。提 案理由説明がなされると、そのあと審議に入っていくという予定になっています。それ から、「労働安全衛生法等の一部を改正する法律案」は3月4日に、「建設労働者の雇 用の改善等に関する法律の一部を改正する法律案」については2月10日に国会に提出し ておりますが、未だ審議には至っておりません。  この法律案について、今国会会期内に成立するということになりますと、また各分科 会でご議論をいただくことになろうかと思います。まず1頁目ですが、「労働安全衛生 法等の一部を改正する法律案」です。仮に法案が通りましたならば、6月から9月にか けて、「労働安全衛生法の一部改正関係」の政省令案を安全衛生分科会において、ま た、「労働者災害補償保険法及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部改正関 係」の省令案を労働条件分科会労災保険部会において、それぞれご議論いただく予定で す。また、「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部改正関係」については、 労働時間等設定改善指針案と関連の政省令案を労働条件分科会において、ご議論いただ くことを予定しています。  3頁目ですが、「障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案」で す。本年7月以降において政省令案、あるいは「精神障害者把握確認ガイドライン」 (案)についてご議論いただくことを予定しています。  5頁、「建設労働者の雇用の改善等に関する法律の一部を改正する法律案」です。本 年9月ごろに、職業安定分科会において政省令案、あるいは第7次の建設雇用改善計画 についてご議論をいただくことにしています。以上です、よろしくお願いします。 ○菅野会長  ただいまのご説明について、ご質問等がありましたらお願いします。よろしいでしょ うか。それでは、各法案の成立後に各分科会で政省令等についてご審議いただくことに なります。関係分科会委員の方には、よろしくお願いいたします。  続いて第3の議題、「労働政策の今後の課題について」です。本議題を設定した経緯 などについてはのちほど事務局から説明いただきますが、分科会では検討できない、労 働政策全般の横断的な問題をご議論いただくために設定したものであります。  幅広い内容ですので、大きく2つに分けて議論していただきたいと考えています。ま ず1つ目の課題、「働き方の多様化、個別化が進む中で、公正な処遇の実現を図る方策 について」、事務局から資料の説明をお願いします。 ○東労働政策担当参事官  資料4として、「労働政策の今後の課題」という資料を用意しています。ただいま、 菅野会長からお話がありましたが、この議題をご議論いただく趣旨について簡単にご説 明したいと思います。これまで9回やってきたわけですが、本審、あるいは各分科会、 部会においていろいろな議題、課題等についてご議論いただいてきたところです。昨年 来、委員の皆様方から、本審において、労働政策全体について横断的に議論すべきでは ないかというご意見をいろいろと頂戴したところです。それを受けて西川前会長、菅野 会長ともご相談し、年度の初めに当本審において労働政策全般に渡る課題について、先 ほどもお話がありましたが大所高所の観点からご議論いただくということで、今回この 議題を設定いたしました。  本日は、労働政策の今後の課題として2つの大きな課題があるのではないかというこ とで、課題を2つ設定しています。1点目としては、「働き方の多様化、個別化が進む 中で、公正な処遇の実現を図る方策」、2点目として、「少子・高齢化、人口減少社会 を迎える中で活力ある経済社会を維持する方策について」という議題を設定していま す。本日はこの2点について、幅広いご議論をいただければと思っているところです。  まず、課題1からご説明させていただきます。2頁をお開きください。既に皆様方ご 案内のとおりですが、我が国において雇用形態の多様化が進んでおります。グラフにあ るとおりですが、簡単に言いますと、正規の職員・従業員について平成12年は73.8%と いうことだったのが、平成16年になると68.5%ということで、5ポイントほど低下して います。その一方で契約社員・嘱託等、あるいは派遣社員の比率が少しずつ上昇してき ています。  このグラフを見る際に1点だけご理解いただきたいのは、平成12年と13年が接続して いないということであります。13年8月から統計の取り方が変わりまして、契約社員と いうものが新しく入っています。12年で「契約社員・嘱託・その他」という数字が2.9 になっています。これが13年になりまして、6.3ということでございます。これはおそ らく正規の職員、従業員、あるいはパート、アルバイトから契約社員に移ってきたとい うことであろうかと思われます。統計の取り方が変わっているということだけご承知お きいただければと思います。  3頁、一般労働者とパートタイム労働者との賃金比較です。一般労働者の賃金を100 とした場合において、女性のパートタイム労働者の賃金が大体65、男性が50程度という ことになっています。時系列的に見ると、その格差が拡大傾向になっています。ただ、 ここ2年ほどは右に水平になっているという状況です。  こういった非正規労働の増加といった面に見られます雇用形態の多様化は、経済産業 構造の変化、あるいは価値観の多様化などにより、企業、あるいは労働者の多様な働き 方に対するニーズが高まっていることを背景としていると考えられるわけです。過去に もこの審議会においていろいろご議論があったわけですが、この多様化の中で正規労働 と非正規労働のバランスをどのように考えるべきであるかとか、あるいは働き方にかか わらず公正な処遇をどのように図っていくのか、さまざまな論点があろうかと思いま す。そういった点についてご議論いただければと思っています。  課題1に関連して、資料にお付けしていますけれども、「今後の労働契約法制の在り 方に関する研究会」の中間取りまとめ、また「最低賃金制度のあり方に関する研究会報 告書」をお配りしています。それが先般発表されましたので、労働基準局長からご説明 させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○青木労働基準局長  それでは、「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」中間取りまとめについて まず御説明申し上げます。資料5ですが、厚生労働省では平成15年の労働基準法改正に 際して、衆参両院で附帯決議がなされました。それを踏まえて、昨年の4月から座長を 菅野委員にお願いし研究会を開催していただきました。  この研究会では労働者が納得、安心して働ける環境づくりや、今後の良好な労使関係 の形成に資するよう、労働契約に関するルールの包括的な整理・整備を行って、その明 確化を図ることのために検討を行っていただいています。今月の13日に中間取りまとめ ということで発表がなされました。  資料5、色の付いた1枚紙でご説明申し上げたいと思います。まず、検討の背景とし まして、近年の就業形態、就業意識の多様化に伴う労働条件決定の個別化が進展した り、あるいは経営環境の急激な変化、個別労働関係紛争の増加というようなこと、ある いは集団的な労働条件決定システムの機能の相対的な低下ということが背景としてある ということです。また、労働者の創造的、あるいは専門的能力を発揮できる自律的な働 き方に対応した労働時間法制の見直しの必要性ということも指摘をされていることが背 景です。こういったことに対応して、実質的に労使が対等の立場で、自主的に労働条件 を決定することを促進して、紛争の未然防止を図るためにも、労働契約に関する公正か つ透明なルールを定める新たな法律としての労働契約法というものが必要となっていま す。  また、仮に労働時間法制の見直しを行う場合には、労使が労働契約の内容を自主的 に、対等な立場で決定できるようにするための労働契約法が一方でも不可欠だというこ とでございます。「労働契約法の性格」が真ん中辺りにありますけれども、労働基準法 とは別の民事上のルールを定めた新たな法律ということであります。したがって、履行 確保のための罰則は設けない。監督指導というような手法を使わない、ということが適 当だというようにされています。労使間で紛争が生じて、労使が行政に対して指導・助 言を求めた場合には個別労働紛争解決制度によって対応する。そのほか、個別の相談に 行政が応ずる。あるいは、適切な情報提供を行う。場合によっては、指針を示すなどの 援助は適宜適切に行うということが示されています。  「具体的な検討の方向性」については、労働条件の設定の運用状況を常時調査討議し て、労働条件決定に多様な労働者の意思を適正に反映させることができる常設的な労使 委員会制度を整備するというのが一つです。それから、労働契約の内容の公正さを担保 する強行規定は当然必要ですが、そのほかに手続規制や任意規定、推定規定なども活用 するという考え方です。労働契約法の成立・変動・終了に関する要件と効果を規定す る。例えば採用内定、試用期間、あるいは配置転換・出向・転籍、懲戒、解雇、退職な どのルールを明確化する。一方で安全配慮義務、あるいは労働者の個人情報保護義務な どについて整備する方向で検討することが適当だとされています。  さらに、耳慣れない言葉ですが、「雇用継続型契約変更制度」の導入の検討というこ とが書かれています。労働契約の変更に際し、労働者が雇用を維持した上で労働契約の 変更の合理性を争うことが可能となるような、そういう制度を設けることを検討するこ とが適当となっています。  解雇の金銭解決制度についても、解雇に関する紛争の救済手段の選択肢を広げるとい う観点から、解雇の金銭解決制度を導入する場合に実効性、あるいは濫用の恐れという ものを排除したような制度設計が可能であるかどうかについて、法理論上の検討を行っ ていただいています。このほか、有期労働契約の雇止めについてのルールの整備など、 有期契約労働者にも対応することにしています。  右側の「労働基準法の見直し」ですが、労働基準法第14条に定めています有期労働契 約の契約期間について、その上限規制の趣旨というのは労働者の退職を使用者が制限す ることを防止することに限られるということを明確にする。現行法18条の2にある解雇 権濫用法理については、むしろ民事的効力のみを有する規定ということで、基準法から 切り取って労働契約法に移行するということが指摘されています。今後、この中間取り まとめを踏まえ、研究会においてさらに御議論をしていただくということになっていま す。今年の秋を目途に最終報告書を取りまとめていただき、その後労働政策審議会にお いて議論を行っていただくと考えています。  資料6ですが、「最低賃金制度のあり方に関する研究会報告」です。まず、研究会を 開催した背景ですが、最低賃金制度は昭和37年に「最低賃金法」が制定され、昭和43年 に法改正がなされたあと、目安制度の改善、あるいは産業別最低賃金の再編など、主に 運用面を中心に改善をしてきました。しかし、産業別最低賃金については中央最低賃金 審議会、あるいは規制改革・民間開放推進会議などから見直しについて指摘を受けてお りました。  また、最低賃金制度自身を取り巻く状況を見ると、産業構造が変化していたり、ある いはパートタイム労働者の増加による就業形態の多様化の進展がなされたり、あるいは 賃金格差が拡大するという中で、最低賃金制度がセーフティネットとして一層適切に機 能していくということがこの際求められているということであります。  そういうことで、昨年9月から慶應大学の樋口先生に座長をお願いし研究会を開催 し、最低賃金制度全般について検討していただきました。そして、先月31日にこの報告 書がまとめられたということでございます。  この中身ですが、まず左側上の「見直しの必要性」であります。最賃制度に求められ る役割ということですが、すべての労働者を不当に低い賃金から保護する安全網として の「一般的最低賃金」がまず第一義的な役割である。それから、公正な賃金の決定の役 割を担わせるとしてもそれはあくまで第二義的、副次的な役割であるということです。  現行制度の問題点として、産業別最低賃金については、実態として基幹的な業務に従 事しているとは言えないような、低賃金層の者までも対象としている。したがって、そ の水準は地域最賃を総じて14%程度上回っているということにとどまっているというこ とで、現実に果たしている役割が地域別最低賃金と重複しているという問題が指摘され ています。  労働協約の拡張適用による最低賃金もあるわけですが、これは現在全国で2県しかあ りません。我が国の労使関係の実情から見て実効が上がっていない。もう1つ、労働協 約ケースというパターンもあるわけですが、それと役割が重複しているという問題も指 摘されています。地域別最低賃金については、一般の賃金水準と比較した最低賃金の比 率が地域的に見て不均衡があるという問題があります。それから、地域別最賃の水準が 生活保護の水準より低いという点もあります。そういう場合には最低生計費の保障とい う観点、あるいはモラル・ハザードの観点からも問題があるのではないかという指摘で す。  右のほう、最賃制度を取り巻く環境変化に伴う問題点で、産業のボーダレス化が進ん でいる中で小くくりの産業について、地域別に設定することになっている現在の産業別 最低賃金というのは公正競争を確保する、あるいは公正な賃金決定という存在意義が低 下しているのではないか。あるいは、派遣や請負労働者が増加してまいりました。そう いう中では、就業形態が異なるというだけで適用される最低賃金が区々となる。従事す る職務に応じた公正な賃金の決定が困難となっているのではないか、という指摘でござ います。さらに、賃金分布の分散が拡大している中で、最賃は低賃金労働者層の安全網 としての役割を適切に果たすことが求められている。仕事給の導入、職務に応じた処遇 が拡大する中で、最低賃金についてもこうした要素をどのように考慮していくのかとい うことも課題になっています。それから、労働組合の組織率が長期的に低下している中 で、最低賃金制度が安全網として果たすべき役割というのは一層重要となっているとい う指摘です。  そういうことを踏まえ、下の左、「今後の最低賃金のあり方」、いちばん左の「体系 のあり方」として地域別最低賃金については安全網としての性格に鑑み、各地域ごとに 設定をすることを義務付けるべきだというものです。また、産業別の最低賃金について は廃止を含め、抜本的な見直しが必要だということで、見直しの方向については完全に 廃止すべきという意見と公正競争ケースは廃止するけれども、労働協約ケースについて は大くくりの産業について設定するものに改める。基幹的な労働者についてするという ことですが、基幹的労働者の定義についても産業を代表するような職種に応じて設定す べきであるという意見がありました。もし存続するにしても、罰則はいずれにしても不 要ではないかというご指摘でした。  次に図の中央、「安全網としてのあり方」です。決定基準ですが、類似の労働者の賃 金については低賃金労働者の賃金水準だけではなく、一般労働者の賃金水準も重視すべ きとの意見がありました。あるいは、「支払能力」については個別企業の支払能力では なくて、生産性の水準や雇用の確保といった趣旨が含まれているということを明確化す べきではないか。  地域別最賃の水準については、安全網として適切な機能を果たすにふさわしい水準と することが必要である。地域の一般的な賃金水準などの関係で見て、地域的不均衡があ るものについては一定の見直しが必要であるということです。それから、最低賃金の水 準そのものについては、少なくとも単身者について実質的に見て生活保護の水準を下回 らないようにすることが必要だと指摘されています。さらに、最低賃金法違反について は現行2万円以下ということで、ほとんど改正をされていないままになっています。そ の罰則を引き上げるべきだとされています。  それからいちばん右、「その他」については、地域別最低賃金の設定単位について、 より労働市場の実情を反映した単位で設定する方向で検討する必要がある。派遣労働者 に対する最低賃金の適用については、現在派遣元の事業主の最低賃金が適用されている わけですが、これは派遣先の最低賃金を適用して、もちろん派遣元が守らなければいけ ないわけです。最低賃金額については、派遣先の最低賃金を適用することとされていま す。最低賃金の表示単位については、法律上も時間額表示に一本化すべきということで した。  最低賃金制度の見直しについてはこうした状況を踏まえ、先般、大臣から労働政策審 議会に対し、今後の最低賃金制度のあり方について諮問が行われました。労働政策審議 会の中で、労働条件分科会の所掌とされていますが、今月12日に分科会に最低賃金部会 を設置することが決定され、今後この最低賃金部会において検討いただき、今年の秋ご ろを目途に答申をおまとめいただければと考えております。以上です。 ○菅野会長  ただいま「働き方の多様化、個別化が進む中で、公正な処遇の実現を図る方策につい て」という、1つ目の課題についてご説明をいただきました。この説明も踏まえ、課題 1についてのご議論をお願いいたします。 ○齋藤(邦)委員  議論の発端を作る意味で少し申し上げたいと思います。雇用形態の多様化というのは これからも進むだろうと思います。進むという意味は、いまあるような雇用形態の多様 化という概念では当てはまらないような、いろいろな形の雇用形態がおそらく出てくる だろうと思います。それがなければ、やはり経済の活力なり企業の活力、社会全体の活 力がおそらく出てこない世の中になってきているのではないかと思います。そういうこ とを考えると、いまのような雇用形態を前提にしたような議論というのは慎重にやらな ければいけないのではないかという気がします。  雇用形態の多様化でどういうシステムがいちばん隆盛になるかということは、その時 々の経済情勢なり社会情勢なり、需給関係によって決まってくるだろうと思います。現 実にもう東京都あたりでは、普通のパートタイマーは人手不足で集まらなくなってきて います。おそらく、派遣のほうにみんな総ざらいにされてしまっているのだろうと思い ます。  いろいろな枠をはめてしまうというのが問題ではないか。例えば労働契約の法制化 も、これについてとかく言うわけではないのですが、ある一定の枠をはめてこういう契 約でなければならない、こういうものでなければならないというものを国の意思として 示すというのはどうか。むしろ、そういうようなものではなくて、労使の間の話し合い なり自主的な努力によってもっと違う雇用形態があるのではないか、もっと違う就業形 態があるのではないかということを考えていただいたほうがより良いのではないか。  ここで言うと、非常に細かいことをいちいち法律というか国の意思で、「皆さん従い なさい」となるというのはちょっとやり過ぎというか、むしろ社会の活力を失わせるこ とになるのではないか。いろいろな矛盾点はあるにしても、その矛盾点はある意味で自 ずから解決されてくるところもあるし、自主的に放っておいても何とかなるというとこ ろもある。そうでないところももちろんあるのでしょうが、いろいろな事をもう少し考 えないといけないのではないかと思います。以上です。 ○菅野会長  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。 ○齋藤(朝)委員  議論の内容的なことではないのかもしれませんが、いまご説明のあった資料の3頁 に、一般労働者とパートタイム労働者との賃金比較が載っています。女性が大変高く て、男性が低いという感じがするのですが、これは女性の正社員の賃金との差ですよ ね。女性と男性を分けている意味がいまひとつ分からないのですが、女性の賃金も、正 社員の賃金もここ数年ずいぶん変わってきていると思います。男性の賃金と女性の賃金 をよく比較して、男性を100とすると女性がいま68%ぐらいになったでしょうか。そう いうものもこの中に含まれていて、実態がこの表だけでわからないのではないかという 心配があります。これからいろいろ議論していくときの資料として、例えばここに男女 の賃金の格差が1つあれば、多少理解が進むのではないかと思っています。是非、その ようにしていただければと思います。 ○林(誠)委員  先ほど、あまり細かいことを決めていくという形は経済の活力を失わせてしまうので はないか、という1つの考え方が提起されたと思います。そこについて、私は若干違う 考え方を持っています。というのは、先ほど説明された資料の中でも正社員の数が減る 一方で、派遣、契約、パートという雇用形態の労働者の数は増えている。もう30%を超 えて、31.5%という大変大きな数に進んでいると思います。  こういった人たちの賃金その他の処遇と、いわゆる「正規の労働者」と言ってきた労 働者との格差というのはどんどん開いています。そして、賃金が少ないという人たちの 層がどんどん増えているということは、一般に賃金が少ないだけではなくて、有期契約 であって極めて不安定であることからして、社会保険への加入状況も十分ではない。そ ういう人たちの層が増えているということであるし、税を納めなければならないという 責任も果たせない程度の収入の人たちが増えているということでもある。一方では1,000 万円以上の人たちも増えているわけですが、格差は二極化していると思います。その二 極化の一方、低いほうの人たちがどんどん増えるような雇用形態の多様化というもの が、果たして経済の活力をもたらすのかといえば、むしろそこを放置しておくことのほ うが経済的な活力は失われていくのではないかという気がするわけです。  やはり、いろいろな働き方が増えることを否定するものではないし、長い人生の中で この時期にはこのような働き方をしたいという選択というのは重要なことだと思います が、「非正規」と言われるパートタイム、有期契約等の人たちがこれほど大きく増えて いくと、社会全体がもう成り立たなくなってしまうのではないか。そうであるならば、 もう少し均等待遇を目指しながらも、せめて均衡処遇からでも具体的に進めようという ことをやってもいいのではないかと思うわけです。  連合としては、均等待遇の確保を求める法律を目指して、その制定をいま強く求めて いるところですが、それに対する反対の声も大変多いわけです。反対ならば、どのよう な道筋でこの格差を埋め、社会的基盤をもう少し安定的にし、持続可能な仕組みに作り 換えていくのかという道筋を提案されるべきだろうと思います。そのあたりがどうも、 均等待遇を求めるということに対して反対の意見は強いにもかかわらず、もう1つの道 が示されていない。その意味では、労使が均衡処遇でもいいから一歩ずつ進めていくこ とをやっていけないものかと思っています。  この間、産別のある学習会に行きますと、自分はいま時間給にすると正社員であっ て、時間単価で2,700円になる。決して高いとは思いませんが、2,700円だと。同じよう な仕事をしている労働者が別の雇用形態で自分の職場にいる、その人の時給は800円で ある。このことについて責任が一定程度違うとは思うけれども、これほどの格差がある ことを自分としては黙っていていいのかどうかということを発言した人がいました。そ の感性というのは大変大事だという気がします。そういうことを我々も大事にしながら 均衡、均等に向かう道筋を見い出していけないものか。そういう議論としてこの労働政 策審議会全体が動いていかなければ、モグラ叩き的なやり方で議論をしたのでは何か見 い出すものが見い出せないという気がしています。 ○古賀委員  少し観点は違うのですが2つほど課題提起させていただきます。1つは働き方の多様 化、個別化が進む中でということですが、雇用形態別の雇用者比率のデータが出ていま す。前回のこの審議会で、今日も議題としてあった安全衛生法の関連に関して少し意見 提起をさせてもらいました。製造業では請負という比率がものすごく多くなっていま す。こういう人たちをどう見ていくのか、ということも片一方では非常に重要な課題で あろうと思います。  プラスして働き方ということから見れば、ホワイトカラーを中心に在宅勤務、サテラ イト勤務というような働き方も増えてくるだろう。そういうとき、労働政策としてどう あるべきかというようなことも片一方では必要ではないかと思います。  2つ目ですが、大げさに言えば、今日も2つの研究会の報告がありました。この研究 会の報告と審議会、分科会との関係についてなのです。具体的な項目については、先ほ どおっしゃったように分科会などでどんどん詰めていくと思います。例えば、労働契約 法制の中間取りまとめについては解雇の金銭解決制度、あるいは変更解約告知、労使委 員会の在り方、俗に言うホワイトカラー・エグゼンプション制度等、私たち労働側とし てはより深く、もう少し突っ込んで議論しなければならない課題とか、さまざまな課題 を含んでいると思います。  最低賃金制度の研究会報告でも、産別最賃の廃止を含めた抜本的見直し、あるいは労 働協約の拡張適用の廃止というようなことも同様です。これを1つひとつ議論する場が この場ではないと思っています。これは分科会でやってもらったらいいのですが、この 間、多くの研究テーマが研究会論議をされているわけです。研究者の方々を中心に専門 的な見地から議論されている。私は決してこうした研究会を否定するものでもありませ んし、重要なことだと思っています。  しかし、最近の報告を見ていると、あまりにも詳細・具体的な方向性までをも提起し たもの、打ち出したものが多い。変な話ですが、それがマスコミ報道される。言い方は 悪いですが、既成事実化したまま分科会、審議会に持ち込まれるということになってい るのではないかと思います。本来審議会で、あるいは分科会で議論を重ねながら方向性 を見い出していくべきであると思います。研究会の役割というのはその論議をするため のより本質的な議論、例えば諸外国の制度との比較というようなことで、素材を提供し ていくということではないかと考えるわけです。  研究会がもし割と詳細な論点を、あるいは方向性を整理するということであれば、そ れは労使が加わるべきだと考えているわけです。是非、研究会と審議会、分科会との関 係についても一考をお願いできればと提起したいと思います。以上です。 ○菅野会長  ほかにいかがでしょうか。 ○清家委員  3点ほど申し上げたいと思います。1つには、雇用の多様化がこのように進んでいる 背景というのは、先ほど参事官がご説明になったように労使双方の事情というか、雇用 の柔軟性を求める使用者側の都合、それから多様な働き方を志向する労働供給側の都 合、両方があいまって進んでいる問題である。先進国どこでも、雇用形態の多様化とい うのは進んでいるわけですが、これを正社員中心の社会に戻す、あるいは、ある種の働 き方そのものを規制していくというのは無理であるし、また好ましいことでもないと思 います。  ただ、1点申し上げたいのは、おそらく雇用の多様化を促進させている1つの背景に さまざまな公的なコストが安いことがある。公的年金の保険料の負担、これは労使双方 にとってある種の働き方をすると負担が安いということがあると思います。したがっ て、労使双方の自然な理由で比率が増えているところについては、市場の選択ですから いいと思うのですが、国の制度が雇用の多様化を加速化している部分については経済主 体の決定にゆがみを与えているわけです。その辺については出来るだけある種の働き 方、あるいはある種の雇い方をするとコスト的に有利であるという制度は、一般論とし て是正していくべきだろうと思っています。  2つ目、こういった働き方の多様化は派遣労働、あるいは有期契約労働が増えている もう1つの背景には規制の緩和があると思います。先ほど申しましたようにこういう働 き方は良い、こういう働き方は良くないというようなことを事前に規制することは無理 があるし、また好ましくないことが多いと思います。一方で、事前の規制を緩和すると いうことは、もともと問題が起きる可能性が多い働き方を事前に規制していた部分もあ るわけですから、事後的な監視・監督、つまり労働基準、あるいは最低賃金、安全衛 生、いわゆる正社員以外の働き方の部分については、そういった問題が起きやすいとい うことを念頭に置いて労働基準の監視・監督、最低賃金の監視・監督、あるいは安全衛 生、個別の紛争処理システムというようなものを一方で強化しないとバランスが取れな い。したがって雇用形態、あるいは雇用契約等の事前規制の緩和が相当進んでいるわけ です。それは私は基本的に正しい方向だと思いますが、一方で事後的な監視・監督の強 化が必要だということを指摘したいと思います。  3つ目は雇用の多様化が進む際、おそらく経済全体でいちばん問題になるのは1国全 体の能力開発の問題というか、人的資本投資が過少になってしまうのではないかという ことだと思います。つまり、従来の日本の企業の職業能力の開発というか、経済学の言 葉で言えば「人的資本投資」というのは企業がコストを負担して、人々に職業能力を身 につけさせ、企業がそれを回収するという形で進んでいったわけです。例えば、パート タイマーというのは労働時間が短い分だけ、企業の回収が難しいわけです。個人が複数 のところで働けば、同じだけあとで回収できるかもしれませんが、例えばパートタイマ ーは明らかにフルタイムの人に比べて、企業にとって投資をする対象としては魅力が小 さい。  あるいは、有期契約の社員というのはもともと契約期間が短いわけですから、回収期 間が短い。パートタイマーや有期契約の社員、それから派遣労働者はもともと即戦力と して雇っているわけですから、派遣先ではそれほど能力開発はしない。雇用形態の多様 化が進むのは自然の流れかと思いますが、その結果、長期的に憂慮されるいちばん大き な問題は人的資本投資が過少になるということですから、実はその分だけ個人、あるい は社会全体が何らかの形で能力開発のコストを負担し、またその収益を回収するような 仕組みを作っていかなければいけないということがあると思います。  つまり、1つは非正規の形で雇ったり、雇われたりすると、有利になるような制度を 是正する必要がある。それから事前規制の緩和に換えて、事後的な監視・監督を強化す る必要があるのではないか。また、雇用形態の多様化に対応した能力開発の仕組みを真 剣に考えなければいけないということを問題提起させていただきたいと思います。以上 です。 ○菅野会長  ほかのご意見もお願いいたします。ひととおりお伺いして、もしも事務局からお答え になりたいことがあればお答えいただくこととしたいと思います。 ○柴田委員  雇用形態の多様化について発言します。実はいま、愛知県の経営者協会の会長をやっ ています。いろいろな形態について、確かにご指摘のようにパートなり、その類の人の 増加が非常に多いわけです。例えば、我々は製造業だけでなく小売など、いろいろな職 種の人が経営者協会に属しています。この前、ディスカッションに来た中で、例えば正 規従業員が20%、非正規従業員が80%というかなり大手の企業が存在するわけです。こ れは明らかに逆転の発想というように考えていかないと、従来の範疇の中では捉えられ ない。したがって、そういう形態自身をどう判断し、今後どうコントロールしていく か。  特に中長期的に見ると、日本という国はかつてのように優良な労働力がたくさん得ら れるという時代から、人が足らない時代に明らかに入っています。特にいま、中部の3 県については、愛知県が特にそうなのですが、有効求人倍率が1.5とか、いずれも1を 越えています。いま、厚生労働省と我々の経営者協会、あるいは県のような人と相談を して、若い人を含めてできるだけ就業機会を作るように、いくつかの会社を集めて求人 を募集する。  実際にそういうことを我々がやりますと、従来の考え方で言うと就職をしていない人 たちがワッと来て、会社がそこの中から選ぶという考え方はもはや夢物語であります。 特に愛知県の場合、いま愛知万博や中部国際空港の開港等があり、一時的なのですが人 の需要が非常に大きい。この前も中小企業の人たちを集めてやったのですが、募集者が 全くいない。逆の状況が発生しているわけです。  先ほど、林委員から、短期の人たちとの格差が増大するどころか、時間給は800円で も人が来ない、900円でも来ないという状況にあります。私は経団連の中で地方団体の 労使問題の会長代行をしておりますから、地方へはずいぶん行くわけですが、それぞれ の地方に応じた多様化を考えていかないと、どうも一律に、こういう時代だからこうい うふうに対応しようという問題だけでは、なかなか解決が難しいというのが幾つかの議 論の中で出てまいります。特に20対80という逆転のときに、いろいろな意味で今後の政 策を考えていくかという観点も、この多様化時代、あるいは、多様性、ダイバーシティ の時代には、そういう逆の発想も考えていかないと、従来の常識だけで一律に国の方針 を決め、一律にしてしまうという考え方だけでは、どうも片付かないのではないかとい う気がいたしまして、ちょっと発言をさせていただきました。 ○林(誠)委員  流れとして多様化の問題はこれから進んでいくと思うし、そのことはマイナスではな いと思っています。先ほどの報告でも、最低賃金制度研究会のポイントの所で、そのい ちばん上の表の右側にもありますが、派遣・請負の増加、賃金分布の分散の拡大の後ろ に、仕事給の導入、職務に応じた処遇といった動きが出されています。こういうことが 真剣に議論されていくならば多様化はマイナスにならない状況が生まれると思います。 しかしながら、厚生労働省ではこれについて、職務に応じた処遇というときに、職務の 価値をどう見ていけばいいのか、その物差しづくりの研究が必要ではないかということ に対しては、いまはそのつもりはないと大変明確にこたえられています。  これは、男女共同参画会議の次の基本計画の策定の段階で、そのようなことが明らか になったわけです。やはり、人に着目した賃金から男女共同参画の時代になり、いろい ろな人たちが働いていく、いろいろな働き方をしていくという段階になったときに、賃 金のあり方も職務に応じた処遇という観点は非常に重要になってくるし、全体的な立場 で検討していく課題ではないかと思っております。 ○矢野委員  働き方の多様化というのは、経済社会が情報化し、ソフト化、サービス化が進んでい く中で、これから一層進んでいくだろうと思っております。雇用の契約の仕方も変わっ てくるし、古賀委員からお話があったように働き方も多様化していく。会社に勤務する だけではなく在宅勤務が増えていく。これはコンピューターがこれだけ発達したことが 大きな支えになっていると思います。そうしますと労働時間の考え方もこれからずいぶ ん変わっていくと思います。  1つには、時間で管理できない仕事がどんどん増えていることだと思います。労働基 準法は、裁量労働制という制度を設けてその問題の解決を図ろうとしているわけで、こ れは大きな変革であったと思います。だんだん使い勝手のいい制度になって、これから 普及していくと思います。その行き着く先に、ホワイトカラーの時間管理の適用除外、 ホワイトカラーエグゼンプションというものがあると思っております。労働条件分科会 で今後の検討課題になっていると伺っていますので、その議論の進展に期待したいと思 っております。労働契約法制の在り方に関する研究会の資料を見ても、一方で労働時間 法制の見直しが論じられております。主題ではないようですが、やはり、この問題を真 っ向から取上げて、新しい経済、社会の変化に対応した法改正を進めていく必要がある だろうと思っております。 ○菅野会長  今までの議論で事務局から何かお答や、ご意見があればお聞きしたいのですが、いか がでしょうか。 ○戸苅事務次官  労働政策審議会の運営は、委員の方々に納得いただける運営をどう図っていくかとい うことで、会長あるいは公益委員の先生方とご相談しながら、今回こういう形でやらせ ていただいたわけです。我々も課題と思われるものは提起したのですが、回答を持って いるわけではないというのが正直なところです。  1つは雇用形態、あるいは働き方の多様化が進んできた中で、従来は我々が雇用主と いうか、雇用関係に着目していろいろな規制をしてきているわけですが、それだけでは 雇用主と雇われている労働者との間を規制するというだけで、十分な労働行政の目的が 達せられるのかということが最近かなり増えているのではないかという感じがしており ます。先ほど請負や派遣の話が出ていますが、派遣法でも派遣先に安全衛生の義務は課 しているのですが、請負の場合は請負の事業所の使用者、あるいは管理者が請負先にい ると、それで責任を果たしているのだということなのですが、例えば安全衛生面もそう なのですが、もっとメンタルの面で、例えばデパート、スーパーマーケットにしても、 いろいろな所にテナントで出て行ったり、派遣の社員がいたりする。そういう社員が、 実は顧客との最前線に立って顧客の苦情を受けてみたり、あるいは嫌がらせを受けてみ たりということがあるわけです。その辺りは就労先のデパートなりが見るのか、それと も派遣会社がきちんと見ていられるのかということになると、これはメンタル面になっ てきて、物理的な安全衛生だと派遣法である程度処理できていますが、そういったもの がきちんと処理できるのだろうか。  実際の就労現場にいろいろな企業に属している人が1カ所で働いていて、労働時間制 度なり、あるいは賃金体系、賃金水準はみんなバラバラになっている。現場の安全の確 保、あるいは従業員の満足度といったものをどうやって安定させ高めていくのか。そう いうのは就労現場の雇用主というか、雇用関係がないにしても当該事業所の収益にかか わるから、最後はそこでやるはずだということで本当に済む問題なのか。  派遣でかなり端的に表れているのは、もともと派遣が臨時応急的な仕事の増減に対応 してやっている企業が多いですから、そういった中で、本当は6カ月の派遣契約を結び たいところを、非常に企業競争が激しくなっている、国際経済環境もいつ変わるかわか らないという中で、6カ月の契約を結んでしまうと、後で仕事がなくなったときに損害 賠償や派遣契約の問題等が出てくるということで、必要以上に短期の派遣契約を結ぼう とする傾向がかなり出てきて、その辺りをどう派遣労働者の雇用の安定、安心という か、そういったものをどう確保していったらいいのか、いろいろな問題が現場で出てい るのではないかと思っています。  ホワイトカラーエグゼンプションの問題にしても、確かに意欲を持って会社を支え る、あるいは、自分の仕事は非常に満足できる仕事なので仕事にのめり込むのはいいの ですが、それでは本人の健康は一体どうするのか。本人は正直言って、もう給料はい い、残業手当などもらいたくない、むしろ代わりに休みをくれという声もないわけでは ない。そういったことについて金銭的な仕組みというか、そういったものでやっている 今の体系が十分なのかとか、いろいろな問題意識を我々は持っているわけです。そうい った問題解決について、正直言って共通ルールが多分必要なのだろうと思うのですが、 共通ルールの前に、やはり共通の理解を労使の間で結んでいただかないといけないのか なということで、この問題を提起したわけです。  今日のご議論を踏まえ、また、我々もいろいろ考えていきたいと思いますが、先生方 にも、ひとつよろしくお願いしたいと思う次第です。 ○菅野会長  議論の途中ですが、ただいま尾辻厚生労働大臣が到着されましたので、ご挨拶をいた だきたいと存じます。 ○尾辻厚生労働大臣  本日はご多忙の中、労働政策審議会にご参集いただきましてありがとうございます。 労働政策審議会の第3期の委員の皆様方による初めての会議の開催に当たり一言ご挨拶 を申し上げます。遅れてまいりましたこともお詫び申し上げます。さらに、折角のご審 議を中断していただいて、ご挨拶申し上げるということになります。このこともお許し をいただきたいと存じます。  いま雇用情勢は改善が進んでおりますが、なお、雇用のミスマッチが見られます。特 に若者の雇用問題、それから北海道、九州など地域の対応が課題となっております。そ こで厚生労働省といたしましては、若者の雇用問題については、平成17年度においてフ リーター20万人を常用雇用化するとの目標を定めた就職支援の強力な推進。また経済 界、労働界、地域社会等の関係者が一体となって、問題解決に取り組むための「若者の 人間力を高めるための国民会議」の開催。さらに、共同生活の中で若者に働く自信と意 欲を付与するための「若者自立塾」の創設。こうしたことなど若者の働く意欲や能力を 高めるための総合的な取組を推進してまいりたいと考えております。  また、地域の雇用問題についてですが、地元による主体的な雇用創出への支援を基本 に、改善の遅れている地域での重点的実施を図ることとしております。さらに、重大災 害の頻発、過労死の増加など労働者の生命や生活に関わる問題が深刻化しており、安全 衛生の確保や、個々の労働者の健康や生活に配慮した施策を進めることとしておりま す。  加えまして、少子・高齢化の進展に対応して子どもを安心して産み育てることのでき る環境をつくること、そのために仕事と家庭の両立支援対策の充実や働き方の見直しも 重要であると考えているところであります。本審議会は労働政策に関する重要課題を総 合的な見地から調査・審議するための唯一の機関として、極めて重要な役割を担ってい ただいております。本日は労働政策の今後の課題として、働き方の多様化、個別化が進 む中で、公正な職場環境の実現や少子・高齢化、人口減少社会を迎える中で、我が国経 済社会の活力の意義についてご論議をいただくことになっておるようでございまして、 いまご審議いただいている最中だと存じます。委員の皆様の幅広い識見と豊かな経験に 基づいた有意義なご意見をいただきますよう、よろしくお願いを申し上げます。重ね て、遅れてまいりまして、また会議を中断していただきましたことに対してのお詫びを 申し上げて、ご挨拶にさせていただきます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。 ○菅野会長  ありがとうございました。尾辻厚生労働大臣は所用のためここで退席させていただき ます。 ○尾辻厚生労働大臣  大変申し訳ないのですが、どうぞお許しください。 ○菅野会長  それでは事務次官どうぞ。 ○戸苅事務次官  先ほど来、均等待遇の問題やホワイトカラーエグゼンプションの問題などいろいろ出 ておりますが、新たな規制を設けるとか、今までの規制を自由化するとか、そういった ときに一方向に偏っていくのは、労働者の健康や労働者の労働条件、あるいは労働者の 生きがい等を考えるとなかなか難しいので、その辺のバランスをうまくとりながら、全 体として労使がよりうまくいくようにというやり方以外にないと思います。そういった 意味で、この審議会にはそれぞれ労使トップの方に出ていただいているので、こういっ た議論を何度か重ねる中で、一定の方向が1つでも2つでも出てくれば我々として大変 心強いという思いであります。  これは細かい話で一般論になると思いますが、先ほど古賀委員から審議会と研究会の 関係というお話がありました。我々も研究会は学識の先生方にお願いしてきているわけ ですが、やはり先生方がいろいろ議論している中で議論がどんどん深まっていくのに、 この辺りでやめてくれとはとてもできないわけです。そういった意味で、研究会の自立 的な運営ということで、それぞれの研究会のテーマなり、あるいは先生方の間での議論 の深まりなりで、いろいろな形での研究会報告が出ているということではないかと思い ます。  我々としては、基本は審議会での公労使三者の議論を踏まえて、我々は政策を取りま とめていく、あるいは、それを運営していくのが基本です。研究会の報告が出たからと いって、それをスタート台にということで、必ずしもそれぞれの審議会なり分科会でや っていただくということではないのではないか。むしろ、白紙からやっていただいても いいし、あるいは研究会の基本的な考え方のところで止めて、そこから先は労使でご議 論をいただくとか、公労使でご議論いただくとか、いろいろなやり方はあると思いま す。我々のほうが古賀委員が言われるように、事務局で細部にわたってまでの議論を無 理矢理進めることはないと思いますが、そういったことがあれば是非注意していただけ ればと思います。それぞれの審議会なり分科会の自主的な運営を基本にやるようにとい う考え方で、我々取り組んでいるつもりですので、そこはそれぞれの分科会ごとに公労 使で話し合っていただければ、我々は当然それに従っていくということではないかと思 っています。 ○菅野会長  第1の課題について、なおご意見がありましたらお願いいたします。よろしいでしょ うか。  それでは2つ目の課題、「少子・高齢化、人口減少社会を迎える中で活力ある経済社 会を維持する方策について」、事務局から資料の説明をお願いいたします。 ○東労働政策担当参事官  資料は5頁以降です。5頁は我が国の人口の推移で、国立社会保障・人口問題研究所 の「日本の将来推計人口」から抜粋したものです。ご存じのとおり2007年になりますと 我が国の人口は減少に転じます。人口ピークは2006年で1億2,700万強となっておりま す。団塊の世代が60歳代に到達すると、いろいろなグラフはありますが、生産年齢人口 は減って高齢化率は増えてきます。出生率は、減っていくか横這いとなっております。  6頁の主要先進国の出生率の推移のグラフを見ますと、日本は2003年、1.29、過去最 低です。諸外国の状況を見ますと、アメリカは1980年ごろを底として若干上昇。フラン ス、スウェーデンも1990年代後半から上昇傾向にあります。逆にドイツ、イタリア、日 本は低下傾向にあります。ここには書いてありませんが韓国、中国等も国際的にも減っ ていく予測になっております。  7頁は、労働力人口の推移です。今後10年間の労働力人口の推移を見ると、何も対策 を講じなかった場合はどうなるかというと、各年齢層の労働力の変化がなかったという ことです。2004年の労働力人口に比べて6,600万強から6,267万に、375万人減るのでは なかろうかという推計になっております。その右、高齢者、女性、若年者に対して、そ れぞれに応じた対策を講じた場合は、労働力人口は約330万人増加し、その結果、42万 人の減、2015年に6,600万人ぐらいでとどまるのではないかという推計になっておりま す。このように高年齢者、女性、若年者といった方々について対策を打ち、その持てる 力を発揮していただく、社会の支え手、担い手になってもらう、全員参加型と申します か、そういった社会を実現するのが今後の雇用政策の課題ではないかと思っておりま す。  資料はありませんが簡単に高齢者、女性、若年者の対策ということで若干申し上げま すと、高齢者雇用対策は2013年度から年金支給開始年齢が65歳になります。年金支給開 始年齢引上げは3年間に1歳ずつ上がるわけですが、それに合わせて段階的に65歳まで の定年の引上げ、あるいは継続雇用制度の導入を実施することを内容とした高年齢者雇 用安定法の改正が、昨年の通常国会で行われております。これを受けて、今春闘でも労 使の間でいろいろ真剣なご議論がなされたと、新聞報道等で私どもも把握しているとこ ろです。この法律については、来年4月1日施行で、鋭意準備を進めて万全の体制で臨 みたいと思っております。  年齢の問題になりますと、どうしても求人年齢の制限を行う事業主の方が多いという ことです。その関係で、理由の明示について昨年12月にやってくださいとお願いしてい るわけですが、ハローワークにおいて年齢不問求人の割合が昨年11月、26.0%であった わけですが、本年3月には40.5%と上昇しており、法改正の効果が少しずつ出てきてい るのではないかと思っております。  仕事と家庭の両立支援については、特に働く意欲、あるいは能力のある女性の方につ いてその支援をするということで、昨年改正されましたが育児・介護休業法に基づく育 児休業の取得促進、あるいは子どもさんの看護休暇制度の定着といった仕事と子育ての 両立のための仕事環境の整備、あるいは、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの是 正、均衡確保対策を通じた職場環境の整備、あるいは両立支援ハローワークにおける再 就職援助の推進などによる再就職支援に取り組んでいるところです。  先ほど大臣の挨拶の中にもありました若者の問題ですが、平成17年度においてフリー ターは厚生労働省の推計では217万人ほどという統計が出ており、20万人を常用化する という目標を定めております。共同生活の中で働く自信と意欲を持ってもらうというこ とで「若者自立塾」をつくったり、あるいはジョブカフェ等における就職支援、日本版 デュアルシステムといったものを充実強化していきたいと思っております。  これも大臣のご挨拶の中でもありましたが、「若者の人間力を高めるための国民会議 」ということで、5月中・下旬に奥田日本経団連会長に議長となっていただき、その議 論を立ち上げ、経済界あるいは労働界の皆様、また地域の関係の皆様方にいろいろと会 議していただき、若者の問題について、その問題解決についてそれぞれご協力いただき たいと思っているところです。  いま申しましたように、高齢者の観点、女性の観点、若者の観点といったものについ て、対策を打つということで活力ある経済社会を維持していくためには、我々としても やっていますが、皆様方にいろいろな観点からご議論いただければと思っております。  前回の審議会でフリーターやニートの動向について、できれば毎月把握してもらえれ ばというお話がありました。労働力調査、就業基本調査といったものは総務省統計局で やっていますのでいろいろとお話をしております。そういったものを含めて研究会を立 ち上げると聞いておりますので、その辺について我々としても必要なことがあれば申し 出て、できるだけデータの把握、あるいは、その公表がうまくいくようにしていきたい と思っております。 ○菅野会長  ただいまのご説明を踏まえ、この課題2についての議論をお願いいたします。 ○齋藤(邦)委員  この問題点の意識は、いろいろな要素が入っていてよく分かりにくいところがあると 思います。国の政策もいろいろなことをやっているために、何が重点だかよく分からな いところがあると思います。例えばですが、高齢者対策とか、ここに書いてある若年者 の話も含めて、一体どういう趣旨でやっているのかがよく分からない。いま労働力人口 が足りないから一生懸命働いてくれる人を増やそうという趣旨みたいにもとれるし、逆 に、若年者とか仕事の両立という類の話になると、いまのことではなくて将来を見据え て、もっと産まれる人を増やして、人口を増やしていこうという施策にもとれます。  どちらが重点になるかによって対策はいろいろ違ってくるだろうと思うのです。これ からの人口減少が重大問題で我が国存亡の危機に関わるというのであれば、それこそ子 どもの産みやすい環境をつくるのに、国民的大世論を形成することに重点を置かなけれ ばいけないと思うのです。  単に仕事と家庭の両立というような環境をつくればいい、という類の話ではないので はないかと思います。現実に子ども1人産むと大体100万は余計にかかるという話をよ く言われますが、もしどうしてもというのであれば、子どもが産まれた所には100万円 を支給するとか、100万円では刺激にならないからもっと多くするとか。どういう刺激 策があるかは別にして、そういうことが最重点であるのであれば、もっと刺激的な政 策、対応策、それこそ金に糸目をつけずという対策を講じなければ、増えることにはな らないだろうと思うのです。だから、どういうところに重点を置くか。要するにいろい ろな要素が混じっているから、結局、拡散してしまうのではないかという気がします。 ○戸苅事務次官  労働政策の立場といいますか、労働政策で何ができるかということで、1つあるので はないかと思っているのは、いまのフリーターやニートを考えたとき、日本労働研究・ 研修機構のいろいろな調査研究ですと、フリーターやニートの結婚率はものすごく低い のです。もう1つは、日本の無業者のこれまでの推移を見ますと、10年前は20歳代前半 以下の無業者の比率のほうが高かったのですが、ここへきて25〜35歳までの無業者の比 率のほうが高くなっているのです。これはどういうことかと言うと、10年前の20歳代前 半以下の無業者のかなりの割合が10年後もまだ無業者になっている。そうしますと、こ の後の10年を考えたときに、その連中が今度は35〜45歳の無業者になってしまったら、 一体日本はどうなってしまうのだという問題意識で、今のうちに、とにかく無業者ある いはフリーターといった人たちの働く自信、あるいは働く意欲といったものを高められ ないだろうか、というのが基本的な問題です。  日本労働研究・研修機構の調査だと、フリーターのかなりの部分が親と一緒に住んで いて、親の小遣いで生活しているわけで、親がいる間はいいのですが、両親共に亡くな ったとき彼らは一体どうやって生活するのか、生活保護にいってしまうのかというのも 考えなければいけない。そうすると、やはり今のうちに手を打たなければいけないと思 っています。  男女共同参画ということで言うと、これにはいろいろな議論がありますが、先ほどの 説明でスウェーデンやイギリスなど、結局そういう所は何をやっているかと言うと、子 育てをしながら働きやすい環境をつくっている。もう1つ併せて、いま齋藤委員が言わ れたように、かなり手厚い児童手当的なものを払っている。両立すると何か高くなって いるというのは何となく言えそうだなというのがある。あとは雇用均等・児童家庭局に 答えさせますが、我々としてはそういう意味で首尾一貫したことで、偏ったことではな くやっているということ。それから、少子化対策なんて決めちゃわなくて、何でもいい からやれることはやる、役に立つことはみんなやってでもやるということではないか と、情けないことながらいま思っているということであります。真面目な話は向こうか らさせます。 ○北井審議官  少子化対策といいますか、子ども・子育て応援という観点からの政府の取組の現状を 簡単にご報告します。昨年末に全閣僚が参加しております対策会議で「子ども・子育て 応援プラン」をつくりました。この中身はかなり幅広いものになっており、4つの重点 で成り立っております。要するに少子化対応といっても、これまで保育サービスみたい なことを中心にやってきましたが、これでは足りなかったという反省のもとに4つの重 点を置く。  1つは、まず若者が社会的に経済的に自立しにくい状況になっている。こういう若者 の状況では結婚だ出産だ、育児だということにいかないということで、第1点目は、若 者の自立という観点であります。第2点目は、仕事と家庭の両立支援。あるいは、もっ と広い働き方の見直し。男性が育児参加できないような長時間労働の状況。女性は出産 か仕事かを迫られるような、非常に両立しにくい状況ということで、やはり職場の問 題、両立支援や働き方の問題を見直そうということが第2点目の観点です。  3点目は、特に子育てとか、命の大切さという、あるいは家庭の役割についての理解 が乏しくなっているのではないかということで、命の大切さとか家庭の役割についての 理解です。4点目は、地域ぐるみでの子育て支援、児童虐待対策、あるいは母子保健な どを含む諸々、子育ての新たな支え合いと連帯という観点です。この中に保育サービス 等も入っております。したがいまして、労働政策の観点から言うと、特に若者の自立の 問題、あるいは両立支援と働き方の見直しが大きな重点課題になっており、それぞれそ の重点に基づいて施策を進めていくという取組です。  このプランを作るに当たりましては、政治の世界、各政党の中でも非常に熱心にご議 論をいただきました。よく言われた議論のエキスをあえて一言で述べるならば、ポイン トは、働き方、職場の問題と、つまり労働時間の問題とお金だろうということが言われ ました。労働時間、働き方の問題については、政府としても出来る限りのことを盛り込 んでやっていくつもりでありますが、唯一このプランで抜けておりますのは経済的支援 の問題であります。諸外国に比べて、ご案内のとおり手当を含む経済的支援が弱いとい うことです。しかし、これは金のかかることでありまして、おいそれとお金がどこかか ら出てくるわけではありませんが、しかし日本国の社会保障を見ますと、高齢者給付に 比べて子どもの給付、社会保障に充てる割合があまりにも低いことは統一された議論に なっております。やはり高齢者のシェアから、もっと子どものために給付を回してもら うような、何か大きな仕組みを考えないといけないのではないかということです。ただ おいそれと、ちょっとやそっとでできる話ではありませんので、これから政治の世界で も、あるいは行政としても、経済的支援のところは多岐にわたる検討を精力的に進めて いくという状況になっているところです。真面目な説明をすると、こういうことでござ います。 ○菅野会長  ほかにご意見をいただきたいと思います。 ○林(誠)委員  いま北井審議官から説明されました4点について。私も大いに進めていただきたいと 思います。言い方を変えれば前段で申し上げましたように(1)の1番目に言われました 若者の経済的な自立というのは、若者の働き方が多様化と言われる中にいっぱい含まれ てしまっているわけですから、多様な働き方における均等・均衡という問題をきちんと やればいいということになるわけです。  そして、働き方の見直しというのを言い方を変えれば、一般のフルタイマー労働者が 年間総労働時間2,021時間働いているという状況の中で、果たしてうまくいくのかとい う労働時間の問題として見ていけばいいのではないかと思います。1,845時間という年 間総労働時間の平均が出ていますが、それは2,021時間というフルタイムで働く人の総 労働時間と、一方では小刻みに働いているパートタイマーの平均をとって、やっと1,800 時間台であるわけですから、ここの部分においては、一律の規制は要らないというもの の見直す必要があると思います。  したがって、少子化対策という「対策」と銘打つやり方、何でも「対策」とやってい くのはモグラ叩き的だと思わざるを得ません。いま言われたような4点については、独 自の若者だけの問題ではない物差しを使うことで、解決できていく問題ではないかと思 いますので、是非、大いに進めていただきたいところです。 ○今田委員  少子化問題と仕事と家庭の両立の問題の関係についてお話をさせていただきたいと思 います。この2つは、ある意味では無関係というか直接結び付く問題ではないと考えて います。簡単に言いますと、仕事と家庭の両立という働き方の問題は、少子化があろう がなかろうが今の産業社会のさまざまな変化の中で、我々が労働の問題として基本的に 想定しなければいけない問題で、労働行政としてもこの観点は重要だというのは、諏訪 会長の研究会でも提起されたことで、そういう位置づけがされるべき問題であると思い ます。  もう1方の少子化の問題は、我々思い起こしてみれば、1.5を切った1.47ショックの とき、この図にもありますように昭和何年でしたか、そのときに非常にショックを受け たわけです。ある大臣だったか政治家の方が、「どんどん少子化していくので止めなけ ればいけない」。そのときの「止めなければいけない」という論点が、要するに女性が 働いているからだという議論があったわけです。子育てをきちんとするように、女性の 就業、職業進出、社会進出ということが、というようなコンテクストで少子化の進行を 憂える、それに対する対策というような受け止め方があって。今日もワーッと笑いがあ ったのは、何かそういうものの残存かなとも思うのですが、そういう日本社会の全体の 受け止め方があったのですが、その後どんどん進行していくにしたがって、少子化に対 する対策の在り方というのが、女性は働かないで家庭にいれば子どもをたくさんつくる のだから、少子化は大丈夫だし、産めよ増やせよという感じの施策をすればいいのだと いう議論は、どんどん弱くなってというか。  それに代わって、ここで言っているように、要するに子育てをしながら仕事もしてと いうような社会をどうつくっていったらいいのか、という議論に少子化の捉え方は変わ っていったのだろうと思うのです。現在もそのコンテクストの中であって、それはまさ に我々の研究の観点から言うと、事実がそれを証明しているわけです。諸外国の例を見 ても、両立支援対策が充実した国においては、本当に次官が言われたように出生率が回 復している傾向があります。我々国内の状況を見ても、両立というのは、貧しいから結 果として女性は結婚もしないし子どもも産まないしという少子化が進むのであって、両 立がうまくできるのならば結婚する男性、女性も増え、さらに子どもをつくり育てる女 性も増え、結果として出生率が回復する可能性がある。  次世代育成の発想も、まさにそういう発想の中で構築されてきているものです。そう いう意味で、少子化に対して両立というものが、いみじくも、この状況に至って調和し たというか、接合したというような、逆に言えば、女性は家庭で出産すればいい、子育 てすればいいという状態から意想転換をした状態であるのが今日の状況だと認識すべき ではないか。少子化の問題にいろいろ対策はあるし、何か両立なんていうようなことを やっても、本当に少子化問題に効果があるのかというような、何となしに懸念をという か、そういう受け止め方がないとは言えないと思うのですが、この問題が少子化に非常 に重要な問題であるということをまず考える。  でも、いちばん最初に言いましたように、もともと仕事と生活の両立というのは、少 子化問題があるからではなくて、いま我々の労働の問題として基本的に重要な問題であ るという捉え方が、この問題を考えていく上で、労働の問題としても、捉えていく上で 重要ではないかと思います。 ○諏訪委員  本日労働政策の全般的な課題をこの場で議論することになったことは、大変よろしい ことだろうと思います。まさしく縦割りで何でも問題を処理しがちな我々は、審議会の 中でも分科会に下ろし、さらには部会に下ろしてと。そうしますと、どうしてもそれぞ れの狭い範囲内の制約条件の中で、部分均衡的な議論をせざるを得なかった。もう少し 全体均衡といいますか、全体を見たマクロの視点が必要なんだろうと常々感じておりま したので、大変結構なことだと思います。  そうなりますと、おそらく今回で終わりではなく、今後も議論していくのだろうと思 うのですが、課題の1と2というのは、いかにも労働政策全体の問題では、重要な背景 ではありますが、これだけではない。すでに事務局側からのご発言、とりわけ、戸苅次 官のご発言の中にもありましたが、就業率全体をどう上げていくかという、昔はフルエ ンプロイメントといいますと「完全雇用」と訳してきたのですが、いま世界の考え方は 「完全就業」でして、いろいろな働き方であったとしても、ともかく社会に意味のある 就業をしていく、それをどう促進し支えていくようなシステムを作っていったらいいか という議論がなされておりまして、これなども今後詰めていかなければいけない問題だ ろうと思います。  もう1つは、いま知識社会と言われている問題との関わりでは、知識社会というのは 日本語でいいますと、何かとても物知りの人がたくさんいたら良い社会というふうに誤 解されがちなんですが、実は英語のknowledge based societyというのは、知識といい ますか人間的な活動に基礎を置いた社会という意味でありまして、知識の中には経験と か技能だとか、あるいは芸術的感性だとか、いろいろなものを含めた意味で使われてお ります。その意味では、いま人間力をめぐる国際競争というのが先進国間で行われてい るわけです。  このような観点からしますと、労働政策にとりましても、日本の将来を支える人材の 質をどのように確保していくかというのは、重大な国家戦略であります。今や大砲を持 ったり、あるいはミサイルを持ったりすること。あるいは、ただ単に国内に大きな工場 を持ったり何かすることだけが日本国の国際戦略の重要な部分ではなくなってきており まして、中長期的に考えますと、どのように、高齢者も中高年も含めてですが、人材の 力を上げていくか。しかも向かっていく時代との関わりで、うまく対応した基本的な人 間力をどう高めていくか。それによってアジアだけでなく世界で存在感のある、尊敬さ れる国にどうなっていくかという、重要な課題があるように思っております。  その意味では、量の問題だけではなく、労働政策は質の問題もこれから議論していく 必要があるのではないかと思いまして、一言述べさせていただきました。 ○柴田委員  労働行政全般について幾つか意見を述べさせていただきます。まず市場化テストの問 題ですが、経済界ということで、民間の活力をできるだけ活かして経済を活性化させる ということで、規制改革の方向を官から民へ、あるいは、民でできるものは民へという 考えに基づき、官業の民間開放を促進することを我々のほうは訴えてきておるわけで す。そのための市場化テストについて、労働行政関連でも、今年からモデル事業とし て、たしかハローワークの一部の業務が民間委託とされておるわけです。引き続き、い ろいろなその他の分野で可能なものから、これは全部一斉にということではありません が、順次できるものから、いわゆるテストの対象範囲の拡大ということをお考えいただ きたい。  2つ目は、労働行政の執行に当たって、労使間の話し合いの結果をできるだけ尊重し ていただきたいということです。例えば高齢者の雇用の安定法、あるいは、来年4月か ら再雇用等の義務化が施行されるわけですが、現在労使間でその対応について、いろい ろ検討を行っている最中です。したがいまして、こういう改正法案の審議のときに、使 用者側として主張してまいったように、企業の実情をいちばん良く知っているものは労 使であり、本問題については、労使間の話し合いの結果をよくお聞きとどけいただき、 尊重していただきたいということがお願いです。  もう1点は、地方の実情に応じた柔軟な対応ということのお願いです。先ほど私から 申し上げたように、例えば愛知県の場合と、非常に厳しい状況にある地方。これは私が いろいろ地方にまいりまして講演会等をやってまいりますと、いま名古屋は恵まれてい ると言われるわけですが、地方は非常に格差があります。その格差を、できるだけ各地 方の労使の団体が厚生労働省の出先機関、あるいは、それぞれの地方自治体に応じてい ろいろな施策を、これは国という立場でお考えになるときは、公平であり、公正である というのは非常に重要なことだと思うのですが、やはり地方の実情に応じて、ある程度 弾力的に、柔軟に対応していただきたいということのお願いです。 ○草野委員  直接議題とは関係ないのですが、先ほど諏訪委員が言われましたことに大賛成という 立場で、ひとつ申し上げさせていただきます。先ほど次官からお話がありまして、前々 からこの労働政策審議会の在り方についていろいろな意見が出されており、今回こうい う形でフリートーク、討議みたいな形で出していただいた。  第一歩としては大変努力をしていただいたとは思いますが、やはりさまざまな課題が ありますので、産労公の場ではありませんので、もう少しテーマを絞って、ある一定方 向に合意が得られるならばいくと、そして、その中から労働政策が出てくるというよう なテーマの持ち方あるいは進め方を、是非、菅野会長を中心に少しご検討いただければ 大変有難いなと思います。  もう1点は、最近国会で与野党問わず質問等があって話題になっておりますが、実は 東急観光株式会社の労使関係が、いま極端なところにきております。先般も厚生労働委 員会で尾辻大臣に対して、与党の自民党の議員、それから民主党の議員がそれぞれ質問 しました。中身についてはここでは申し上げませんが、不当労働行為を絵に描いたよう な内容でありまして、労働組合を脱退すれば一時金を払うと。これは1つの例を挙げる とそういうことなんですが、要はファンド会社が85%の株を持ってしまう、その中でと にかく早く会社をスリム化して売り飛ばそうという感じ、いわゆるファンドが株を持っ た場合の労使関係の問題です。そして、これと関係するわけですが、いわゆる持株会社 の労使関係です。持株会社が現実的にかなり増えてきておりますので、そういう面でも 労使関係の在り方について、是非早急に、名前はどうなるか知りませんが、立ち上げて いただきたい。  実は、平成8年でしたか「持株会社の労使関係に係る懇談会」というのがありまし て、労使3人ずつで、実は私もその時のメンバーの1人だったのです。あと、公益委員 の先生方がたしか4人おられたのではないかと思います。現実的に持株会社化がまだ、 その当時はほとんどなかったということもあって、中間報告を出して終わりになってい るのです。現実には、いま申し上げましたようにさまざまなことが起きてきておりま す。たしか尾辻大臣も、記憶では国会答弁の中で、早急に立ち上げたいというようなニ ュアンスの答弁をされていたと思いますので、是非お願いをしたいと思います。 ○矢野委員  先ほど事務局のご説明の中に、失業統計を見直すということについて、総務省統計局 を中心に研究会を立ち上げるというお話があって、大変結構な方向で動き出した、早速 のレスポンスを感謝します。何しろフリーターが一体200万なのか400万なのか、えらい 大きな差があり、わからないわけです。定義を決めたらいいと思うのです。省によって 定義が違うのなら、政府全体としての定義を決めてほしいと思います。  統計がはっきりしていないのに対策を打つというのは、なかなか困難なことでありま す。200万でも大きい数なんですが、そこのところをなるべく早く結論を出していただ いて、そして皆がその分析結果を基にして、対策を考えることが大事だと思います。若 者の雇用の問題は、これからの最大課題の1つでありますから、是非、よろしくお願い したいと思います。  もう1点は、課題2の資料のいちばん最後の頁を見ますと、各種対策で相当挽回でき ると、10年後の姿を描いておられるわけですが、私は10年スパンで物を考えるのであれ ば、外国人労働の問題を労働政策としても正面から取り上げる必要があるだろうと思っ ています。この問題は厚生労働省だけで解決できるものではなくて、各省庁が連携して やらなければいけない、政府としてはそういう問題でありますが、労働政策という立場 から、正面から取り上げてほしいと思っております。ここでも書かれているように、ま ずは若者であり、女性であり、高齢者ということになると思います。失業率もまだ4% の半ばでありますから、足下の問題として、まずそこから始めると。長期的にも、その 対策は今すぐ動き出す必要があると思います。しかし、中長期的な課題、少なくとも10 年スパンの政策として考える場合には、外国人の問題を抜きにして考えられないと思う のです。いろいろ実態を見てみますと、日本人がやりたがらない、日本では賄えない仕 事が現実に増えてきているのを一体どう考えるのか、放置していいのか。これは労働政 策の基本問題だと私は思うのです。その点についてのディスカッションがこの場で行わ れてもいいと思います。ほかの方法があるかもしれませんが、是非、検討していただき たい。これは菅野会長にもお願いしたいと思っております。 ○菅野会長  ほかにいかがでしょうか。 ○清家委員  私も先ほど諏訪委員が言われたことに大賛成です。これからの日本の将来を左右する のは人的資源をいかに高め、また有効に活用していくかということだと思います。その 際に考え方が2つあるというか、1つ確認しておきたいと思いますのは、例えば7頁に 「各種施策により330万人増」とあります。これは私の解釈ですと、あくまでも労働力 を総動員するということではなく、例えば高齢者の場合だと、元々高い就労意欲を持っ ている人たちの能力を活用する。あるいは女性の場合も、働きたいと思っているのに、 両立ができないために働けない人が働きやすいようにする。若者の場合も、とにかく働 けばいいというのではなく、例えば将来を見通せないような、あるいは能力を一切身に つけさせてくれないような所に無理に働かせるというのは好ましくないので、彼らが働 きたくなるような雇用機会をつくっていくことが、この趣旨ではないかと思います。  また、先ほどの少子化の問題も、世論調査をすると2人ぐらい子供を産みたいと言っ ているのに、そこまでいっていないのを、どうそのギャップを埋めるかということであ ると思うのです。そういう面では、私の理解では、あくまでも嫌がる人たちを総動員す ることではなく、元々そういう潜在的な意思を顕在化させることだと思うのです。そう いう私の理解なのですが、それでいいのかどうか。それとも、労働政策あるいは労働力 政策としてもっと踏み込んで、総動員という言い方はちょっと悪いですが、もう少し、 例えば積極的に、潜在的な就労意思自体を高めるような政策まで考えようとするのかど うか。それはいま結論を出す必要はないのですが、やはり考えておく必要があるのでは ないかと。  私自身が個人的な理解というか、考えているのが前者のほうですが、しかし、後者の ほうまで踏み込んで考える必要があるのかどうか、いつか機会があったら議論していた だきたいと思っています。 ○菅野会長  ほかにいかがでしょうか。それでは本日は時間がまいりましたので、この辺りで閉会 とさせていただきたいと思います。ご意見いろいろとありがとうございます。審議会の 意義とか審議の仕方等については、本日のご議論を踏まえ、また考えさせていただきた いと思います。ただ、各分科会の所掌事務もありますので、各分科会の所掌事務に関わ るものについては、各分科会でご議論をいただくよう、関係分科会長はじめ分科会の委 員の方々にはよろしくお願いいたします。  本日の会議に関する議事録については、当審議会の運営規定第6条により会長ほか2 人の委員に署名をいただくことになっておりますので、つきましては草野委員、井手委 員に署名人になっていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  それでは、特にございませんようでしたら、本日の会議は以上で終了したいと思いま す。どうもありがとうございました。 照会先 政策統括官付労働政策担当参事官室 総務係 内線7717