05/04/25 第20回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会議事録                  厚生科学審議会            疾病対策部会臓器移植委員会(第20回)                                日時:平成17年4月25日(月)15:00〜17:00           場所:経済産業省別館1014号会議室  片岡室長  定刻前ではありますが、ただいまより第20回厚生科学審議会疾病対策部会、臓器移植 委員会を開催いたします。この委員会につきましては、1月9日に委員の改正がござい まして、黒川先生にかわりまして、新しく東京大学の永井良三先生に御参加いただくこ とになりました。また厚生科学審議会疾病対策部会運営細則第3条で、この委員会の委 員長につきましては、委員の中から部会長が指名することとされております。そしてさ る2月25日に疾病対策部会長より、永井先生が当委員会の委員長に指名されておりま す。つきましては、今後の議事進行につきましては、永井委員長にお願いしたいと思い ます。  永井委員長  委員長に指名いただきました永井でございます。私の専門は循環器内科でございま す。心臓移植をはじめとする臓器移植の問題だけではなく、最近はBSEの問題も出て おりますので、ここでの審議が社会的にも重要ではないかと思います。ぜひ委員の皆様 の御協力を得まして、よい方向性を出していきたいと思いますので、よろしくお願いい たします。それでは座らせていただきます。  それではまず事務局より、参考人の委員のメンバーの御紹介、及び配布資料の確認等 をお願いします。  永野補佐  本日は、貫井先生、橋本先生、町野先生、松田先生、山勢先生から、御欠席との連絡 を受けております。また議事に即し、社団法人日本臓器移植ネットワーク、菊地コーデ ィネーター、東北大学医学部の北本先生、国立感染症研究所の佐多先生、自治医科大学 の中村先生、東邦大学医学部の長谷川先生に参考人として御出席いただいております。  次に資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第を1枚おめくりいただきま して、配布資料の一覧を裏につけております。配布資料の確認をさせていただきます。 資料の1番といたしまして、厚生科学審議会疾病対策部会運営細則、資料2−1としま して、臓器移植における変異型クロイツフェルト・ヤコブ病に関する取扱いについて。 資料2−2といたしまして、臓器・組織移植におけるvCJDの危険管理、長谷川先生 の提出資料。資料2−3といたしまして、臓器移植における変異型クロイツフェルト・ ヤコブ病、vCJDにかかわる規制に関する要望、大久保委員の提出資料。資料2−4 といたしまして国内変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の発生について。資料3−1と いたしまして、臓器提供者からの狂犬病感染2事例(米国とドイツ)、佐多先生の提出 資料、資料3―2といたしまして、臓器移植における狂犬病に関する取扱いについて、 資料4といたしまして臓器移植に関する教育用普及啓発パンフレットの配布について、 資料5−1といたしまして、膵臓移植希望者選択基準の誤運用に関する報告、資料5− 2といたしまして、あっせん機関の業務に関する指示、資料5−3といたしまして、あ っせん機関の業務に関する指示(ネットワークからの報告)でございます。  そのほかお手元にこういう黄色い冊子、パンフレットを配布させていただいておりま す。おそろいでしょうか。不足等ございましたら事務局までお申しつけください。それ では議事進行を委員長にお願いしたいと思います。  永井委員長  はい。ありがとうございました。それでは早速議事に入りたいと思います。まず議題 の1でございますが、委員長の代理の指名についてでございます。疾病対策部会運営細 則の規程について、事務局より、説明をお願いします。  永野補佐  それではお手元の資料1に基づきまして、御説明させていただきます。資料1には厚 生科学審議会疾病対策部会運営細則、上の方の左半分から下の方にかけて掲載させてい ただいております。このうち下の段の方の一番右の方でございますけれども、第4条と いう規程がございますが、第4条の第4項をごらんいただきますと、委員長に事故があ るときは、委員会委員のうちあらかじめ委員長が指名した者がその職務を行うと規定さ れております。すなわち委員長代理につきまして、委員長からあらかじめ指名していた だくというふうなシステムになっております。以上でございます。  永井委員長  ありがとうございます。それでは委員長代理を指名するということでございますが、 貫井先生にお願いしたいと考えております。きょう貫井先生は、欠席でいらっしゃいま すがよろしいでしょうか。もしよろしければそのようにさせていただきます。ありがと うございます。それでは事務局から、貫井先生に御連絡お願いいたします。  続きまして議題の2でございます。臓器移植における変異型クロイツフェルト・ヤコ ブ病に関する取り扱いについて、御議論お願いいたします。既に変異型クロイツフェル ト・ヤコブ病は、2月4日に国内最初の症例が報告されております。これを受けまして 臓器移植につきましても、当面の予防的な対応がなされておりますけれども、この間の 対応について、事務局から御報告お願いします。  斎藤主査  それでは資料2−1に基づきまして御説明申し上げます。この議題につきましては、 今年2月に国内初の変異型クロイツフェルト・ヤコブ病患者の確認を踏まえまして、臓 器移植のドナー適応基準におけるクロイツフェルト・ヤコブ病の取り扱いについて御審 議をいただくものです。  問題となりますのは、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病に関連いたしました、欧州 渡航歴に関する問診内容でございますが、資料2−1の1番から、これまでの経緯とし て、渡航制限の経緯についてまとめてございますとおり、平成13年より献血における取 り扱いを参考といたしまして、滞在国と通算滞在歴によるドナーの提供制限を実施して おります。当初は英国1カ国のみでございましたが、その後滞在国、通算滞在歴に追加 が行われまして、今年2月の国内患者の確認を受け、当面の暫定的措置といたしまし て、英国のみ通算1カ月以上の滞在での提供制限を行うということにいたしておりま す。  これにつきましては別添1の6ページになりますけれども、こちらの通知で周知をし ているところでございます。  ページをおめくりいただきまして、3月8日に、この患者の欧州滞在歴が24日間であ るという発表を受けまして、献血では1980年から96年の間のイギリス、フランスでの滞 在歴が1日以上であった者について採取制限を行うという案が示されまして、同時に当 該基準に合致する提供者についての実態調査が開始されました。  臓器移植についても同様の調査を実施いたしましたところ、日本臓器移植ネットワー ク調べによると、3月8日から4月20日の期間中、ドナー候補者となられた13名中1 名。また日本アイバンク協会による、3月8日から4月4日までの調査においては、候 補者71名中1名が該当したということでございます。  また御参考までに、献血と骨髄移植における該当者につきましては、英仏滞在になり ますとそれぞれ5.5%、5.8%。英国のみの滞在者になりますと、献血と骨髄移植それぞ れ3.6%、3.3%という結果が出ております。  次に移植における変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の発症についてですが、弧発型 のクロイツフェルト・ヤコブ病では、角膜移植、硬膜移植による感染が確認されており ますが、変異型につきましては、献血による感染が疑われる事例が確認されておりま す。  また次に海外における渡航歴による提供制限の実施状況でございますが、資料にお示 ししたとおり日本以外で滞在歴のみによる制限を行っている国は確認されておりませ ん。  次のページでございますけれども、4月1日以降の献血における採取制限の内容をお 示ししております。こちらでは当初3月に示されました案のとおり、イギリス、フラン スに1980年から96年の間、1日以上の滞在歴を有する者の採取は見合わせ、ただしフラ ンスについては、需給状況を考慮して現時点では6カ月以上の滞在で制限されるという ことになっております。  これまでの経過についてのまとめは、以上でございます。  永井委員長  ありがとうございました。北本先生、中村先生何か補足がございましたらお願いいた します。  中村参考人  ただいまの話に出ました我が国の第1例の変異型クロイツフェルト・ヤコブ病でござ いますが、資料2−4に疾病対策課がまとめたものが、本日配布されております。この ケースにつきまして、厚生労働省の研究班のクロイツフェルト・ヤコブ病等サーベイラ ンス委員会の中に作業部会をつくりまして、感染経路の確認、それから、2次感染につ いての問題点について検討してきた結果が、この資料2−4にまとめられております。  結論から申しますと、資料2−4の2ページ目の一番下にありますように、感染経路 の厳密な特定は、曝露がうかがわれる期間から既に長期間が経過しており、情報が限ら れていることなどから困難であるが、いずれの感染経路が最も高い説明力を有するか、 検討した結果、上記の情報に基づけば、他の可能性、これは我が国における感染、ある いはフランスにおける感染を完全に否定することはできないけれども、英国滞在時の曝 露の可能性が一番高いであろうという結論になっております。  これにつきまして、先月私と研究班の班長の水澤英洋先生、それからサーベイランス 委員会の委員長の山田正仁先生とイギリスに参りまして、向こうのヘルス・プロテクシ ョン・エージェンシー、それからナショナルCJD サーベイランス・ユニットにこの データを持ってまいりまして、向こうの専門家ともディスカッションしてまいりまし た。この見解に対して、彼らは、積極的に肯定をしたわけではないのですが、否定もし ない。これをそのまま受け入れるという立場であったというふうに、私どもは理解して おります。  それから2次感染につきましては、3ページにまとめられておりますけれども、特に このケースで消化管内視鏡を行ったということが問題になりましたけれども、これもイ ギリスに行って検討しました結果、特にリスクはないということです。以上でございま す。  永井委員長  よろしいでしょうか。北本先生さん、特に御追加ございませんですか。  北本参考人  ございません。  永井委員長  そうしますと、肯定もしないけれども、否定もできない。でもどちらかと言えばその 可能性が高いのではないかということでしょうか。  中村参考人  日本での感染、あるいはフランスでの感染も完全に否定はできない。しかしながら、 蓋然性を考えたときは、イギリスの24日程度の滞在のときに感染したということが一番 高いであろうというのが結論でございます。  永井委員長  何か御質問、御意見ございませんでしょうか。  長谷川参考人  御説明でわからないところがあるのですが、どういうコメントに対してイギリス側は 肯定も否定もしないというふうになったのですか。  中村参考人  感染経路について資料2−4の2ページ目の真ん中あたりにまとめておりますけれど も、まず3つ考えられる。可能性があるものとして3つあるけれども、(2)番のvCJ D患者の血液による感染、それから(3)番の観血的な医療行為等に伴う感染については これは、ほぼあり得ないということです。(1)番が残りまして、では、このBSE牛の 経口摂取がどこで行われたのかということについて、我が国、あるいはフランスの可能 性もゼロではないけれども、イギリスが最も高いであろうという。  長谷川参考人  最も高いであろうということに関して、肯定されたのですか。肯定も否定もしないの ですか。  中村参考人  積極的に肯定はしませんでしたが、まあ、彼らとしてはあんまりしたくないというよ うなこともあったのかもしれません。しかしながら、まあ、仕方がないねというような ニュアンスで、きちんと肯定したわけではないのですが、受け入れざるを得ないという ことだったと理解しています。  長谷川参考人  イギリスで感染したという蓋然性が最も高いというステートメントに対して受け入れ るという話ですか。  中村参考人  はい、そうです。  永井委員長  そのほかいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それではこれからどうするかとい うことを御議論いただきたいと思います。考えるポイントとして、移植医療における安 全性の配慮、それから臓器提供制限による影響を十分考慮しながら、かつ諸外国の状 況、また献血における対応等、こういうところを参考にしながら決めていかなければな らないというところでございます。移植医療における安全性の配慮、これがまず第1で す。第2に提供制限、臓器提供制限が起こった場合の影響について考慮するというこ と。第3に外国、諸外国がどういう状況にあるかということです。第4に献血における 対応を参考とする。こういうところを考えながら、御議論いただきたいと思います。  そこで変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の取り扱いにつきまして、東邦大学の長谷 川先生が御研究をされていらっしゃいます。その研究成果について御説明いただきたい と思いますので、よろしくお願いいたします。  長谷川参考人  私の方で平成13年に、厚生労働科学特別研究として、variant Creutzfeldt-Jakob Disease (異型クロイツフェルト・ヤコブ病)と臓器移植に関する研究という課題でま とめさせていただきました。概要の御報告と、またリスクマネジメントあるいはリスク アセスメントの観点に照らしての私の意見を後半申し上げたいと思います。  これは研究班の構成です。役職等はその当時のままです。  研究結果の要約です。2001年時点では、すべての臓器移植、移植形態にかかわらず、 変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の感染事例は報告されていませんでした。その後2 例の感染が疑われる例が報告されています。いずれも輸血によってです。現在、異型の クロイツフェルト・ヤコブ病のリスクファクターとしていくつか挙げられていますが、 これについて確立したものはなく、古典的クロイツフェルト・ヤコブ病のリスクファク ターが準用されています。変異型に関して個別に検証されてはおりません。現在のとこ ろ、スクリーニング、発症前診断の有効な方法が確立されていません。  日本における有病者は、私どもの推計では1人以下です。これはリスクアセスメント 部分です。リスクマネジメントに関しましては、ある移植を認めるとした場合には、感 染のリスクとベネフィット(便益)が比較衡量されなければなりません。移植されるもの としては、臓器、組織、血液、血液製剤などがあるわけですが、これは全部同一に扱え ばいいというものではなく、当然緊急性という問題があります。命にかかわるという状 況があります。あともう1つは代替的な治療法の有無を検討する必要があります。代替 的な治療法を用いることによって、例えば命にかかわる状況を延ばすことができれば、 あえて危険なものを使う必要はありません。一律に取り扱うというのは、マネジメント の観点からは合理的ではない。緊急性、代替可能性が考慮されなければいけない。  そういった観点に立った場合に、血液及び血液製剤、あるいは保存可能な組織に関し ては、命にかかわる状況ではないということで、緊急性が乏しい。また代替可能性も高 いということを考えますと、同じリスクに対してもよりきつい基準を使うということ は、許されるわけです。  それに対して待っている患者さん、レシピエントと呼びますが、そういった方が命の 危険にさらされているような臓器移植、例えば心臓とか肝臓とか、あるいは状況によっ ては骨髄であるとか、そういった場合には、基本的には、リスク情報を提供した上で患 者さんの同意に基づく移植がなされる必要があるのではないかというのが結論です。  最初に感染者数、患者数の推計を行いました。推計というのは、現在いらっしゃる変 異型クロイツフェルト・ヤコブ病の患者さんというのは、過去の感染を見ているわけで す。過去にどれぐらいプリオンが蔓延したかというのを今現在結果として見ている。そ うなると今現在、まだ発病していない患者さんの数はどれぐらいいらっしゃるかを推計 する必要があります。これは一番大きく影響するのは潜伏期間です。潜伏期間を何年と 想定するかによって、推計患者数は大きく変わります。その他に正診率も影響します。 実際に症状があっても、診断がなされないときがある。疾病として周知されると、だん だん正診率が高くなります。  対策の有効性も影響します。基本的には、食を通じての感染というのは、今はない、 あるいは非常に低いと思いますが、こういった防止策の有効性に基づいて一定のモデル を使って検証します。ただモデルはあくまでもモデルです。一定の仮定がある。したが ってそのモデルが本当に正しいのかどうかというのは、そのモデルに基づいて推計され た結果と、その後に発症した患者数を比較検討しないといけないのです。それで初めて このモデルが正しかったのか、あるいは仮定が間違ったから、仮定を変えないといけな いのかということがわかり、その結果に基づいてモデルの修正が行われます。  したがって仮定に関しては1個の仮定だけではなく、仮定のセットを複数つくりまし て、どのデータセットが正しかったのかどうかということを、後から検証しモデルを修 正すということは、通常なされる手法です。一遍モデルを用いて試算したらそれでいい というものではありません。  私が調べたときには3つの研究がなされておりました。それぞれの推計結果を示しま す。一番目が205名です。95%CIというのは、信頼区間です。一定の分布でもって見 積もるわけです。2つ目はいくつかの仮定のセットに応じて、データを並べています。 3つ目も同じです。  その2つ目3つ目に関しては、実際にその後の発症件数から、どのモデルどの仮定が 正しかったかということを検証することができます。それに基づいて私どもが見たとこ ろでは、潜伏期として15年を前提にしますと推計患者は最大1,000人程度と見積もられ ます。  4つ目はモデルを用いるのではなく、イギリスで虫垂炎等で扁桃腺を取った患者さん がいらっしゃる。そういった約1万3,000人の病理検査をやると、3例に疑わしい所見 を認めました。1例は典型であるが、2例に関しては典型ではありませんでした。発症 まで確認していないわけですが、1万3,000分の1、または3なのかという推計患者数 が出てくる。  私の研究では、推計患者数1,000人という数字を用いて試算しました。イギリスの総 人口を基に計算すると感染者率は100万人当たり17人となります。あるいは感受性が年 齢により異なると考えて、1,000人というのは15−49歳の比較的若い人だけに発症する と考えると、100万人あたり35人となります。  4つ目のデータです。この先ほどの厚労省の資料にもありましたが、1万3,000分の 3から計算すると、人口100万人当たり237人という結果になり、これは私どもの試算と は、ほぼ10倍数字に開きが出てきます。感染者数としましては、約1万4,000人となり ます。これは感染者を3人と計算したのですが、2人に関しては病理組織的に確証がな いということで、典型だとされる1人に変えますと、患者さんの数は4,600人になりま す。  この3人を前提にして、年齢層を10歳から30歳に限定して感染者数を推計します。と いうのは盲腸とか扁桃腺で切除した病理組織の大部分は若年者のものなので、全年齢に あてはめて推計するには無理があります。若年者だけに限定して考えると、4,000人と いう結果を得ます。この感染者数も私どもの試算とは4倍の開きがあります。  では本当はどちらが正しいのかということを考えます。これは変異型クロイツフェル ト・ヤコブ病の発症患者数です。例えば1万5,000人とか1万人の感染者が、これから 発症するとすると、潜伏期間が30年としても年に300人程度発症することになります。 もし15年としたら600人発症することになります。そういった方々が数年を経ずして死 亡するわけですから、年間死亡者数は300人から600人にならないといけないのですが、 実際には20人程度で、患者発生数、死亡数ともに、すでにピークアウトしていると思い ます。最大が2000年の20数名で、その後は減少しています。  これは死亡患者の死亡時年齢の中央値です。もし潜伏期が長いタイプ、あるいは感受 性の低い人が後から発症していると考えのであれば、死亡年齢の中央値は上がっていき ます。しかし、死亡時年齢は全く延びている兆候はありません。これまでの潜伏期15か ら30年の仮定を覆す所見がないなかで、感染者数1万数千人というのは、かなりオーバ ーな見積もりではないかと私自身は思っております。私自身が当時試算したときの感染 者数1,000人という見積もりも、かなり安全域を見込んだ大目の数字だというふうに思 っておりますし、それは現在に至るまで変わっておりません。  ではイギリスにおける感染者数の推計に基づいて、日本に異型クロイツフェルト・ヤ コブ病が持ち込まれるリスクを推計します。日本人で、3カ月あるいは6カ月以上、イ ギリスに滞在する方は、日赤の2つの献血者のデータから0.05%から0.2%と推計され ます。  日本の総人口からは6,000人から2万5,000人になります。もしイギリス人と同じだけ の感染者の割合、これは短期間の滞在でもイギリス人と同じだけの感染者割合を有する と看做すわけですが、日本における予想発生患者数(感染者数)は0.1人から0.9人とな ります。この方々が臓器提供、組織提供をしたときに感染するリスクを考えて、リスク マネジメントを行う必要があります。  他の国はどのような方針であるかについてヒアリング調査をしました。ある国におけ る滞在歴を臓器提供の除外条件としている国は、調査した限りございませんし、こうい った考え方は全くとっていません。基本的には症例ごとに判断するというような考え方 をとっています。それに対して組織提供とか血液提供に関しましては、提供要件につい てガイドラインを定めており、イギリスでの一定期間以上の滞在歴を除外条件としてい るという国が大部分でした。  実際に同じリスクを想定しても、対応はどういった移植形態を想定するかによって全 く違うということが、各国政府を対象とした調査でも明らかになりました。クロイツフ ェルト・ヤコブ病、古典的なクロイツフェルト・ヤコブ病のリスクファクターを示しま すが、これに関しては明確にされています。ある国での滞在歴はリスクファクターに入 っていません。  リスクマネジメントの前提としては、輸血による2例の感染可能性事例を除いて報告 されていない、異型クロイツフェルト・ヤコブ病のリスクファクターとして確立したも のはない、スクリーニング、発症前診断で有効な方法は確立されていないし、日本では 恐らく感染者は1人程度だろうということが考えられます。  今現在日本がなされているのですが、もし滞在歴を一律に提供の除外規定にした場合 に、こういった対策が本当に有効かどうかということを考えます。まず問診というの は、かなり信頼性に乏しい情報です。特に古い情報であればあるほど、滞在期間が短く なればなるほど、曖昧になります。しかもそれを検証する術は全くありません。いちい ち献血のたびにパスポートを持ってこいというのは実際的ではありません。したがって 信頼性の乏しい情報に基づいている。  しかも負の波及効果があります。例えば献血する方が減ってしまうなどの問題が懸念 されます。  滞在期間についても線引きをする科学的なエビデンスはありません。1日滞在はリス クなのかどうなのか。あるいは1カ月なら、3カ月なら、5年ならと、全く明らかにさ れていません。滞在期間、発症確率についてのエビデンスというのは、全くございませ ん。  あともう1つは、日本がBSEの危険国になった場合に、論理的には日本人は献血も 何もできなくなってしまうわけですが、こういったことというのは本当に科学的、倫理 的に許されるかどうかということは、ぜひお考えいただきたいと思います。  代替可能性と緊急性を考慮して、臓器、組織あるいは血液等で取り扱いを変えるとい うことは、リスクマネジメントの観点からは当然の話です。また、滞在歴を一律に除外 規定とするのは、根拠に乏しいと思われます。しかも患者さんの方から見ますと、移植 を受けるという選択機会を一律に排除する危険性を常に内包しているということを私ど もは認識すべきだと思います。  臓器移植を受けるかどうかというのは、これは患者さんの御判断ですので、その中に 提供されるべき情報として、滞在歴が明らかな場合には、リスク情報として伝えて、そ の上で患者さんがお決めになるということが本来の姿ではないかと思います。今回の事 務局案は、外国滞在歴を有しながらも臓器提供を実質的に求めるという点では大きな進 歩ですが、滞在歴に関してはリスク情報として取り扱うべきであることを明確にされる ことを提案いたします。以上です。ありがとうございました。  永井委員長  ありがとうございました。何か御質問、御意見ございますか。  北村委員  昔、日本でBSEの牛が出たときに何頭だったか。8頭出れば汚染国とか何か言って いて、今は15頭を超えているんですよね。日本が汚染国となって、こういうことがいつ か無意味になると、ちょっとおっしゃいましたけれども、その汚染国とする定義はある のですか。日本で、BSEが20頭出れば、汚染国になる可能性の方が、むしろ高いと言 えるのですか。  北本参考人  ちょっと待ってください。それはだれの定義ですか。  北村委員  それは北本先生から聞いた方がわかりやすいかもしれない。どういうことになるの か。  北本参考人  今OIEの方で、定義は変わろうとしていますので、今ここで何頭というのは言えま せん。日本というか、汚染国であるかという従来の定義にしても、実際その国で何頭生 育されているかというのがバックグラウンドにないと、何頭とは言えないはずです。で すから20頭ということがどこから出てこられたのか、むしろ僕がお聞きしたいです。  北村委員  ちょっともう1つよろしいですか。そうすればここに出てきている6カ月以上滞在と 挙がっているポルトガルとかスイスとかという国は、どういう形で汚染国になっている のですか。  北本参考人  経緯は、1つはこの先生の今の資料の2−1の。  永井委員長  資料2-1の3ページです。  北本参考人  基本的には、輸血における対応を決めたときの考え方というのは、私の記憶で申しわ けないのですが、まずvariant型のCJDが発生しているという、これはまず必ず挙げ ておこう。その次に2番目は、BSEがある一定の割合で数として出ている国、特に発 生総数を問題にしているのではなく、伸びゆく速度を考慮して区別したような記憶がご ざいます。  北村委員  そうすると今の日本のBSEの発生数と患者1人というのは、5年以上というBの (2)ぐらいには、もう入るのですか。なぜ日本だけ入れなくてよいということが言える のかとお教え願いたい。  北本参考人  1つはvCJDの発生国というのが、海外感染例である場合は、それは発生、自国の BSEによってvCJDが発生したというふうには考えていないです。それは世界的な 統計でもそうなんです。  例えば米国で1例vCJDは発生していますが、それは海外感染で、英国で感染した 可能性が高い。もちろん明確なことは何も言えませんが、そのとき米国の患者数はゼロ になります。それと同じように、今回日本もvCJD海外感染例としますと、それはゼ ロになります。  北村委員  でも英国で調査されても、サイエンティフイクにはイエスとは言い切れないというこ とでした。日本感染でないということの証拠がない以上、せめて5年以上の部類には日 本が入ってしまうのではないかという考え方は、おかしいですか。  北本参考人  さらに感染が広がって、私が言っているのは日本と同じグレードの検査をして、日本 ほどの汚染度でどうかというデータはなかなか他国では比較できないんです。ありとあ らゆる食用にする牛を検査しての数ですから、今までのほとんどの数です。ですから直 ちに比較するのはかなり難しいのではないかと思います。ただ危惧として……。  北村委員  ただ北本先生は専門家として、日本はここに入れるべき、Bの(2)にも入らない国で あると断言できますか。  北本参考人  それは答えたくないですね。  北村委員  わかりました。ありがとうございました。  大島委員  今北本先生の話で、ちょっと前提が随分違ってきたような感じがするんです。先ほど 長谷川先生が20という数を出しましたけれども、私もちょっと数が正確かどうかと言わ れると、非常に不確かでこれは自信がないのですけれども、少なくとも昨年ですかBS Eが問題になったときに、危険国の定義というのかつ発生した牛の数で出てきたという ことだけは、これは間違いないと思います。したがってそれを軸にして、とすれば北村 先生がさっき発言されたように、ある一定の数を超えたら日本は危険国と認定されて、 したがって日本の中からの臓器提供というのは不可能になるんですねという議論が、こ の場で現実に行われたことは間違いないと思います。  したがって危険国の定義が先生の言われたとおりであるとすれば、そのことを前提に して議論にしないと、非常におかしな話になってしまうというふうに、今のお話から私 はそう感じたんですけれども。  北本参考人  この場でこの委員会でどのような議論がなされたかというのは、私は知りません。当 時OIEの基準で例えば暫定的正常国であるとか、ほとんど無視できる正常国であると かと、5つのグレードになっていたと思いますけれど、それが今度は、3つにしようと かいうふうなグレードになるのです。BSEに関して、なろうとしているんです。だか ら世界的なBSE汚染の基準というのは、常に見直されていますので、あまり、何とい うんですか、何頭であればどうだというふうに、ある会議であろうと、規定しない方が 私はよろしいのではないかと。今後の国際情勢に即応していけなくなるような気がする んです。  相川委員  確かに大島委員がおっしゃったように、私もかつてこの平成15年11月に扱いが変わる 前の委員会で、もしこのように外国、ある特定の外国の滞在歴によって移植の提供を制 限するという考え方の基本には、我が国においては提供しても大丈夫であると。しかし 特定の外国、海外においては、そこに滞在すると感染するという前提があるんですねと いうことを、私は確認といいますか、発言をして、一応そういう前提があるんだという ことになっていたわけですけれども、その後variantが日本でも発生して、それは恐らく 英国滞在によるものだと推定はされているものの、我が国でもかなりの数のBSE牛が 出て、もしかしたらそうではない、実際にBSE牛として認定されない牛を食べている 可能性も否定はできないわけですから、そういう方が我が国にいるんです。ですからそ の辺のスタンスをはっきりさせておかないと、外国だけを制限してみても、我が国の中 での感染が起こる。  しかし私は制限をしろという強硬派ではございません。先ほど長谷川先生がおっしゃ ったように、やはりリスク・ベネフィットを考えて、物事を慎重に対処しなければいけ ないというスタンスであります。  永井委員長  長谷川先生に対する質問は、後ほどさらにお受けしたいと思いますが、事務局の方か ら今後の対応策の案について、まとめていただいておりますのでお願いいたします。  斎藤主査  それでは資料2−1、3ページにお戻りいただきまして、臓器移植における変異型ク ロイツフェルト・ヤコブ病のリスク評価等ということで、簡単にまとめさせていただい ております。まず公衆衛生上の観点ということから申し上げますと、移植を受けたレシ ピエントの献血や臓器提供は禁じられていることから、またレシピエント本人のリスク についても、免疫抑制剤等の影響が不明である。また移植医療における緊急性や代替性 といった特性を考慮して、移植を受けないことによるリスクとの比較衡量が重要になる というふうに考えております。  こちらのリスク評価に関しては、5ページ目の参考というところにおつけしておりま すので、御参照いただければと思います。  ページをおめくりいただきまして対応案ということでお示ししておりますけれども、 まず献血における採取制限が実施されている滞在国、滞在歴等につきましては、これら の方々からの臓器提供については、原則として提供を見合わせるということにいたしま すが、レシピエントの方が、クロイツフェルト・ヤコブ病、及び移植に関するリスクに ついて、移植医から十分な説明を受け、その上で移植を受ける意思を明らかにされてい る場合におきましては、例外とさせていただく。また移植医は、このようなケースで移 植が実施された場合には、レシピエントのフォローアップを十分に行うこと。また組織 移植においては、臓器移植における取り扱いを参考として、緊急性と代替性を考慮した 慎重な対応を求めることとすると、以上のような対応を案として示させていただいてお ります。このような方針につきまして、御審議いただければと思います。  永井委員長  ありがとうございます。それでは御意見をいただく前にまず、この件に関係しまし て、大久保委員から資料をいただいております。それの御説明をお願いいたします。  大久保委員  資料2−3です。このクロイツフェルト・ヤコブ病に関しての規制が2月に出される ということで、それを知りまして、今までのクロイツフェルト・ヤコブ病に関する規制 について、どうしたらいいものかということで我々も考えまして、その結果として、き ょう初めて実は長谷川先生のものを拝見したのですけれども、ほとんど私はあの中に言 われているとおりだと思います。  基本的にまず確率としては非常に少ない確率であるということ。それから私の考え方 として献血とそれからまた臓器移植については、もちろん緊急性とかそういった代替の 問題もあるかと思うのですけど、実は臓器移植につきましては、提供する側と受ける側 というのは完全にきっちりと確定をしているわけです。全然不特定多数から不特定多数 に渡るものではなく、個人から個人に渡るものであるということ。それからなおかつ移 植医療は終わった後もずっとこれはフォローが続くわけです。その後全然だれもその人 を知らないというのではなく、常に病院にかかり続けなければいけない。すなわちフォ ローが全部できる医療であるということを受けまして、私はこのクロイツフェルト・ヤ コブ病につきましては、基本的にドナー情報をきちんとレシピエントに対して伝えるこ とによって、レシピエントが受けるか受けないかを選択するという形をとるべきだとい うふうに思っています。  またそういったことをきちんとした上で、あとフォローをしていくということが非常 に大事ですので、今厚生労働省の対策室の方から示された案にほぼ沿った形で、原則的 に見合わせるという、そういう形に、こういう形の文章になるのかなと思うのですけれ ども、基本的にはもちろんそういう形のリスクがあったら受けないという方は、またそ の受けないという方の意見を尊重することで、私は十分ではないかと思います。  ですから現状の平成15年にされました一番最初の英国滞在6カ月も含めて、すべての クロイツフェルト・ヤコブ病についての規制について、レシピエントの確認をした上 で、レシピエントが承諾をすれば、臓器提供を行ってもいいというふうに変えていただ ければと思っています。以上です。  永井委員長  ありがとうございます。そうしますと先ほどの対応案は、原則的にこんな形でもよろ しいだろうという御意見でいらっしゃいますね。  大久保委員  はい。  永井委員長  以上、御説明をいただきましたけれども、ここでもう一度議論を行いたいと思います が、いかがでしょうか。  大島委員  原則として見合わせるという言葉が、例えば実際の臓器提供の場の中で、原則として 見合わせるということは、少なくとも臓器提供の意思のある人を、その場で廃棄してし まう方向に働いたとしても、問題がないという解釈にはなるのではないかという感じが するんですけれども、その点はいかがでしょうか。少なくともまず提供の可能性のある 人については、まずそのことをピックアップした上で、原則として考えて、こういう考 え方だけれどもというところからスタートするのか。  私の何となく感じるところでは、提供の可能性があっても、原則として見合わせると いうのがはっきりしていれば。そこでもうネグレクトされてしまう可能性が非常に高く なるのではないかというふう感じがするんですけれども、その点はいかがでしょうか。  永井委員長  事務局の考え方では、ドナーが現れた病院がもうそれ以上先に進まない可能性がある ということですね。  斎藤主査  はい。今大島委員から御指摘いただいた件でございますけれども、こちらの対応案の 趣旨といたしましては、まず見合わせが最初にくるというよりも、まずすべからくドナ ーの方の渡航歴について十分な確認をいただきまして、その情報をレシピエントに伝え ていただくということが、第一義的に来るというふうに考えています。ですので趣旨と いたしましては、先に見合わせるという方向に誘導したいといったような内容では全く ございません。可能な限りレシピエントの方に、移植を受けていただく機会を提供する という趣旨で、検討させていただいております。  永井委員長  いかがでしょうか。そうすると表現が、もう少しきめ細かい表現が必要になると思う のですが。長谷川参考人どうぞ。  長谷川参考人  原則として見合わせるけれども例外という書き方は、やはり正しい記述ではないと思 います。安全というのはあるとかないとかという話ではなくて、むしろリスクの確率で 表すものです。同じ確率であっても、何を目的としているかによって対応は変わりま す。マネジメントでは、同じリスクに対して対応が変わるというのは、これは当たり前 の話です。  したがって例えば献血との整合性を重視するなど、むしろ逆に整合性を通そうとする 方が無理があることは、リスクマネジメントをやっている人間からすれば、当たり前の 話です。  そうしますとこの書きぶりですと、やはり原則としてだめだ、でもあなたはいいので すよというふうにしか読めないのです。そういうふうに言うだけの科学的根拠があるの かどうか。しかも滞在期間として6カ月であるとか、あるいは5年であるとか、1日で あると基準が複雑です。1日もフランスではよくて、イギリスはだめ。何故なのか全然 わからないのですが、根拠が乏しいのではないかということが1つあると思います。  また実効性の問題がある。非常に曖昧な情報でしか我々は、滞在歴を掌握することが できない。それに基づいて判断を迫られる。それで本当に予防ができるのかどうか。あ るいは予防するといってももとから確率、可能性は低かったかもしれない。なおかつマ イナスの効果もあるというのは、さっきお話したとおりです。  あと3つ目としてはやはりモラルの問題があると思います。命にかかわる状況で、例 えば人工心臓をつけて待っている患者さんが、今、心臓が1個あるんだけれども、どう しますか。多分ほとんど100%の方はイエスとお答えになると思います。こういった調 査をしているのか、していないか知りませんけれども、私はイエスとお答えになると思 っています。そうするとほとんど100%の人に、あなたはルール違反だけどどうします ということを、そんな決断を迫るというのは、やはり悪い制度であると思います。ルー ル違反を100%の人に迫るということは、そのルールが荒廃するし、医療とか制度に対 する信頼性を失墜することになりかねないと思います。  あともう1つとしては、感情的な問題ですが、臓器不全で移植を待っている方々とい うのは、ただでさえ日本に生まれて非常に苦労していらっしゃるのです。そういった方 々が、例えば日本で移植を受けられないために、それこそBSE危険国に行って受けて いる方もいらっしゃいます。日本では安全性を重視するからだめだ。だから危険な国へ 行って移植を受けてきてくださいということを要求するというのは、弱者をさらに弱い 立場に追い込む可能性があります。私自身は明確な形で、お書きになった方がいいので はないかというふうに思います。  永井委員長  いかがでしょうか。北本参考人。  北本参考人  私のコメントですので、委員の先生方に聞いていただきたいのは、私もそんなに、例 えば献血の場合とは全然違うのではないでしょうか。むしろ私は献血の場合でも、そん な1日という基準にするほどじゃないんでしょうかという。議事録ではそういう発言に なっていると思うんですけれども。  それでも献血のときといいますのは、2次感染3次感染のことを考えたんです。一対 一の輸血であれば、これは2次感染としての広がりで終わってしまう。しかも輸血をし た人が、受けた人が、さらに献血をするという。自分がドナーになるということでは、 ないわけですから、今の現行のシステムとしては。血液製剤のことを非常に気にしたわ けです。そうすると莫大に広がる可能性があるということで、いたし方がないか、リス ク、ベネフィットを考えていこう。  ただ今回臓器移植ですので、一対一対応である。次にもし不幸にして、一対一対応の 人が感染したというときに、さらに3次感染が起こり得るかというところは、もうほと んど起こり得ないということからして、当然臓器移植には臓器移植の対応があるべきだ ろうというふうに考えておりました。  そこで少し委員の先生方に考えていただきたいのは、まず今までのことからすると臓 器移植で、日本だけが今のところ、海外渡航歴を問題にしているということが、1つご ざいます。ですからこれも含めて将来的に、そろそろグローバルスタンダードに立つべ きではないでしょうかという御提案と。  それともう1つ、これは長谷川先生のところでは今検査法がないと言われました。検 査法がないといいながら、例えばリンパ装置で、vCJDの場合は異常なプリオンたん ぱくが見つかるという検査法もあることはあるのです。それが100%かと言われると、 そうではないんです。だけどあることはあるんです。  私が気にしますのは、もしか1例でも臓器移植を受けた患者さんが、vCJDになっ た、例えばです。一例でもなった。そのときこの委員会の委員のメンバーの先生は、ど うされますか。そのときに、実は臓器移植を受ける前に英国の滞在歴があったんだ。そ のレシピエントの方は、というふうになったら一体どうされますか。どっちが原因でし ょうかというのは、やはり考えないといけない。臓器移植で起こったかどうか。  ですから私は少し提案したいのは、もしこんなことが可能であれば、ドナーとレシピ エントというのは厳重にアイデンティフィケーションできるわけですから、例えばリン パ装置を保存しておくとか、将来のために。つまりこの人はvCJDの移植によって起 こった可能性よりも、それはリンパ装置がネガティブであれば、陰性であれば、英国滞 在歴の方が可能性が高いんだという、1つの証拠になると思うんです。どちらかはわか りません。ですがより一例一例非常に大切な臓器のことですから、1例出たことによっ てすべての今まで英国滞在歴を云々していたのを例外としてでも認めるというのは、完 全にやめてしまうという事態も含めて、もうちょっと科学的に解決できるところが、情 報として持たれてほしい。そういう制度ができればいいなということを、少し情報とし て入れさせてください。  永井委員長  ありがとうございました。  山本委員  ドナーサイドにしても、こういう場合にはやはり何とかお役に立てたいなというのが 根本的にあるんだろうと思うんです。そこでのお話ですから、やはりあまり細かいとこ ろをディスカッションしていても、結論は出ないんだろうというふうに僕は思って、今 のディスカッションを聞いておりましたけれども。菊地委員にお聞きしたいのですけれ ども、今この間にもいろいろなところで問合せ等は出ていると思いますけれども、その 中でレシピエントの候補者、あるいはドナーの候補者の中で、そういうことをディスカ ッションで今こうなっているので、問題視しているんだというようなところは、聞いた ことがありますか。  菊地参考人  ほぼ無に等しいです。  山本委員  だと思いますよね。やはりどちらがベネフィットがあるのかという今の議論の延長線 上に、こういう移植外科も存在しているのではないかなと。私はそんな感じで聞いてお りました。  北村委員  細かいことを言うと本当にきりがないのだと思いますけれども、例えばレシピエント がフランスに1日滞在した。二十歳のときに旅行した。この期間に旅行していて、今31 歳になっていると、これで提供は不可とする。意思表示カードを持つ意味がなくなると いう問題。それから確認の方法でも献血は生きておられる方ですから、比較的容易です けれども、脳死の方の場合、家族に頼る以外はありませんので、情報そのものが非常に 不確実ということもあろうかと思います。  それから現在日本ではただでさえ少のうございますから、渡航移植の場合を考えると イギリスは減りました。しかしドイツには今でも渡航移植をやっているのです。我々医 者として日本ではこういうことだということになりますと、ドイツ人、あるいは向こう は、ユーロトランスプラントですから、どこからドナーが来ているか明確にわかりませ んけれども、そういう移植を進めないのか。進める立場をどう考えるのか、医者として の。そういう細いかもしれませんが、たくさんの問題があるので、先ほどやはりここの 臓器提供は、2、3、4の要綱をよく考えた上で行うことにしていただいて、「原則見 合わせ」を外すということではどうなんですか、という気がいたしました。  相川委員  今までの皆さんの意見を聞き、また今の御意見もありましたけれども、この資料2− 1の4ページの対応策(1)のところの、原則として見合わせるというところを少し書 きかえていただいて、「以下の欧州渡航歴を有する者からの臓器提供は、vCJDのリ スクが、他の者からの提供よりも高い可能性があるので、以下の対策をとる」というよ うなことで、(2)(3)(4)と続けていただくということがよろしいと思います。  それは今既に皆さんがおっしゃったので繰り返しませんが、もう1つ私が気になるの は、今までのお話を聞いていますと、英国あるいはフランスの1日以上というのも、1 つの事例からそういうことが危険であるから、あくまでも危険なことは一切しないとい う、それはそれなりの考え方があると思いますが、エビデンスが非常に弱いわけです し、確率論からいっても非常に弱いというと、もしこのようなものを我が国が出した場 合に、英国やフランスの方から日本は非科学的な根拠に基づいて、判断をしているとい うことを言われる恐れがある。。  さらには僕はあまり政治的なことは考えたくはございませんが、こんなことをやられ たら、英国に来る旅行者とか、フランスに来る旅行者も減るし、英国のレストランはた まったもんじゃないというところまでもし発展しますと、本当にそれを判断した科学的 根拠があるのか。あるいは日本での科学性というもの、さらにはこの委員会が本当に科 学的なエビデンスに基づいてこれを決めたのか。そういうところまでかかってくるかと 思います。  例えばメディアなどはそういう非常にインパクトのあることは、外国のメディアなど はやるかもしれません。ですけれどもそれがまた我が国の臓器移植に対して、私どもが 真剣に考えていることが、何をやっているんだと、非科学的だというようなそしりを受 けるかもしれません。現時点での証拠及び確率等を総合的に判断すれば、やはり「原則 として見合わせる」という文章は、何か適切な文章に変えていただきたいと思います。  大久保委員  私自身はそれがいいのかどうかわかりませんけれども、基本的にはひとつ原則として 見合わせるという文章を載せれば、必ず皆さんがきちんとやってくれるだろうという気 がしたものですから。それでもいいだろうという気はしていました。要するに基本的に 全部これを取り払うということになると、恐らくきちんとしたことがだれも聞かなく …。もちろん先ほどおっしゃっているように、亡くなっているというか、もう亡くなり かけている方に対して、御家族に対して聞いて、本当に渡航歴がわかるのかというのも あるかもしれませんけれども、きちんと今こういったことが実際に献血では問題になっ ているわけですから、そのことについてきちんと臓器移植についても、それがドナーの 御家族に対して聞かれて、なおかつその情報がレシピエントにしっかりと、レシピエン ト及びその移植施設に伝えられるということが、一番大事だと思って。その方法とし て、原則として見合わせるというのが一番きついんだろうけれども、一番徹底して行わ れるのかなという気がしたので、私はこれでもいいかなというふうに思っています。  先ほど相川先生の方からそういうお話があって、それにかわるものとして本当にきち んと行われるような形の文章が作られるのであれば、私はそれでいいと思います。その 辺のところ、実は、恐らくどういう文章にしたらいいのかというのは、非常に難しいだ ろうと思っています。  今、中村先生と北本先生なんかは、これに対してもし制限をつけるというか、何か条 項をつけるとすれば、何か一番いい方法というのがございましたら、ぜひお教えていた だきたいと思います。  永井委員長  論点は2つあると思います。原則として見合わせるというところをどうするかという ことと、もう1つはインフォームド・コンセントをどこまで徹底するかということで す。それについて少し整理して議論したいと思いますが。先に大島委員。  大島委員  前にBSEが問題になったときにも、これは議論になったと思うんですけれども、も し訴訟になったときに一体どういうことになるのかという議論が、前にあったと思いま す。そのときに確か、間違いなく国は負けると思いますというような発言をされて、そ れで私が移植医療の立場ですから、かなり激しくぶつかったことがあります。そのこと が新聞に、対立というような形で、大きく出たようなことがあったと思います。  私は基本的に長谷川委員の言った考え方に同意していますが、訴訟問題までもし考え た場合に例えば余命1年だと言われていた方が移植を受けて、仮に、仮の話ばかりで、 積み重ねていくとおかしなことになりますけれども、仮にvCJDになってしまって。 10年命は長らえたけれども、vCJDになったことについては、これは国の責任である というようなことが出てきたら、そういう場合にはどうなるのでしょうか。  関山課長  これは2つありまして、制度の問題として、献血の事案と臓器提供の事案を異にする 理由はどこにあるのかといいうことと,それから今まで平成15年11月12日に欧州渡航歴 等についての制限をしたではないか、これはどういう根拠でしたのか。ここは今さら先 生方が今のような御発言をされても、そのときに先生方としては一定の知見に基づい て、これらの制度を導入したということです。にもかかわらず今回そういうような制限 期間を撤廃し、インフォームド・コンセントでやろうといった場合、全く今まで平成15 年11月12日、これは5年以上の方々については、取り扱いを制限してきたということで すから、これもなくしてしまうということなんです。ここら辺の理屈が果たしてきちん とつき得るのかどうか。そこのところをクリアできなければ、事務局から提案させてい ただいているような、まず献血との制度の整合性。しかしながら、臓器提供というのは 3次感染等が、一定程度防止し得るという状況をかんがみて、原則から外れるものにつ いてはインフォームド・コンセントをやっていこう。しかしながらこの1日という期間 の方々については、そのまま適応条件として通るということにしております。  これは先ほど申し上げたような制度の整合性をどのようにきちんと論理立てて、立証 できるのかというところがあればよろしいと思いますが、果たして今までの議論から見 てあるのかということです。これが1点です。  ただ原則として見合わせるという言葉の、語彙の表現が非常に強いのではないかとい う言葉選びの観点については、もう少し検討させていただく余地があるのではないかと 思っているのですが。以上です。  永井委員長  今までの方針との整合性ということですね。  北村委員  それはもう明らかにこの1日滞在という、これが実質上提供を減らすという可能性が 極めて高くなる。例えば私の家族は4人ともだめになります。カードすらも持たなくて よいのかと。1日滞在というのは、トランジットで1日だけ居て他の国へ回る。英国滞 在が目的ではない。しかし6カ月であればこれは明らかに滞在で、英国で生活している わけです。特にフランスのドゴール空港なんていうのは、ハブの空港ですからどこでも 経由してそこから飛ぶという。1日ホテルにちょっと泊まってということもあるわけで す。そういうところが実質上のカードを持つ人も減らせる。あるいは提供そのものに も、血液でも減少と言われ始めているようなことが起こりうる。6カ月とは、大きな違 いがある。  関山課長  実質的にはそうなんですが、制度を運用しますと、どれだけ注意義務を払ったのかと いうことになるんだと思います。こういう分野については、どれだけ注意義務を行政当 局が払ったのかにかかってくるのではないかと思っております。したがって対応案もこ のようなことで、列挙させていただいた。  実質的にこの表現が強ければ、それを受け止められるドナーの方々も若干消極的にな っていくのではないかというお話でございまして、そういったことについては、私ども がこの制度を認めていただけるならば、周知の仕方として工夫をさせていただくという ふうな取り扱いでいただければ。また周知の仕方についても、委員の先生方とも個別に 御相談をさせていただきながら、進めさせていただくということではどうかと思いま す。  永井委員長  もう少し表現を工夫したいということですね。確かに献血のときはある方針で行っ て、臓器移植ならば数が少ないからいいじゃないかというところが、本当に一貫性があ るかというところです。  小中委員  表現方法ですが、従来のドナーの適応基準を見ますと、見合わせるは、中止というこ とです。例えば悪性腫瘍の場合でしたら、原発性の脳腫瘍あるいは完治したと判断され た場合を除くという文言が書かれているのです。今回の対応案でいいのではないかとい うお話になると、慎重に対応するというドナー適応基準の項目に等しいのではないかと 思っているところです。  ですから表現を多分お考えいただくということですので、そのようによろしくお願い したいと思います。  それと先ほどお話がありましたけれども、私は移植コーディネーター職としてここに 座らせていただいておりますので、移植コーディネーターの業務姿勢についてお話をさ せて下さい。例えばドナー適応基準の中に、慎重に対応するというような文言で、今回 の(2)、(3)、(4)が基準として決定しましたら、渡航歴の確認をして、レシピ エントの方にはきちんと必要な御説明がされたかどうかを、実際の手続きの中で、確実 に行なうということを、御報告させていただきたいと思います。  関山課長  文章としては、これは、(1)と(2)が独立して文章を書いていますので、いかに もこれでやるぞと(1)で書いているのですが、例えば今の言葉をそのまま活用する と、原則として見合わせるものの、移植医療における緊急性、代替性にかんがみ、当分 の間、という文章の続け方もありますので、そうしますと、受け止め方も先生方も真意 をくんだ状況になるのではないかと思っています。  山本委員  今の4ページのところ(2)のところですけれども、移植医から十分な説明を受けた 上でという、この十分な説明というところが、どうもだれが十分な説明になっているの かというのは、今話を聞いてもわからないわけです。  片岡室長  確かに内容についてどこまでというのは難しいかと思いますが、今の基準の中でも、 臓器あっせん機関は、移植医が患者に対して移植に伴う感染のリスクを十分に説明する よう促すことというのは、ございますので、特段何か追加しているものではございませ ん。しかしながら、今の移植医の先生たちに対する当方からの情報提供がまだ不十分と いうことでありましたら、いろいろと工夫させていただきたいとは思います。  山本委員  多少工夫が必要になるでしょう。  金井委員  むしろガイドラインみたいなものを作られた方が安全ではないかと。やはり移植医の 中でもいろんな説明の仕方がありますので。  関山課長  私どもも問題意識として持っておりまして、そういった説明の仕方と、それとこうい った事案でありますので、家族の方がどういうようにその後、日常生活をきちんとレシ ピエントの方がとったらいいのか。そういったお話もまとめられるようなものもお作り するということで。これは若干お時間をいただくということになると思いますが、そう いったことで対応させていただきたいと。  永井委員長  よろしいでしょうか。では佐多委員。  佐多参考人  今山本先生が言われた部分なんですけれども、レシピエント候補者の方で、説明を受 けて、そういった当該ドナーからの臓器提供を受ける意思を明らかにしている場合では この限りではないという、こういう書きぶりというのは、ほかのドナーの基準の中に、 あるんでしたか。  菊地参考人  私が答えていいのかどうかわかりませんけれど、HCV抗体陽性のドナーからHCV 抗体陽性のレシピエントに移植をする際には、移植を行う医師がきっちりとそのリスク を説明した上で移植をするというふうな書きぶりがございますので、それに等しいのか なというふうに、私自身はそう考えていますけれども。  佐多参考人  確かあのときの議論は、その場合であっても、HCVによる肝疾患を起こす確率とい うのは少ないという、エビデンスがあって、そういう書きぶりができたんだと。だから HCVと同じような書き方だからこれでいいかというふうに言われると、じゃそういっ たエビデンスが、HCVと同じような場合と同じようなそういう状況にあるのかどうか ということが、1つ問題になるだろうというふうに思います。  大島委員  私がこの委員会に何年間か出させていただいて感じている大きなことの1つは、少し でも危険性があったらそれはノーとするという考え方が、非常に大きく支配的であると 思うんです。リスクがあってベネフィットがあって、それを一体だれが、デシジョン・ メイキングするんだというようなものの考え方というのは、今までほとんど通用してこ なかった。これは別にこの委員会だけでなく、日本全体の雰囲気というんですか、日本 全体がちょっとでも危険性があったら、それはもうオール・オア・ナッシングの議論 で、危ないことには手を出すなと。このようなあり方が公益のためになるのかどうかと いうと、私は全然公益のためになるというふうには思わないのですけれども、とにかく そういう形でもって、ことが大きな流れとなって進んでいく。  今日ここで議論されていることは、その雰囲気、あるいは考え方を少しブレークスル ーするのではないかというような感じを、きょうの議論というのは随分違うなと思いな がら受け取ってきていたんですけれども、そんな感じがいたしませんか。  永井委員長  最後は表現の仕方の中にいろんな考え方が含まれてくるわけで、表現が非常に重要に なると思いますが、いかがでしょうか。長谷川参考人どうぞ。  長谷川参考人  先ほどからの御議論では、訴訟について、国が安全配慮義務があるという話でした。 我々が法解釈を云々するというのは適切かどうかわからないのですが、私は理解できな いところがあります。一般的には、原則として禁止されていることを行うことにより、 だれが免責されるのかは考える必要があります。当事者である医師、ネットワークなど は、原則としてだめと書いてあるものをやったということで、立場上はかなり悪くなり ます。この書き方は、国から当事者に責任を転嫁することになることは、やはりよく考 えるべきだと思います。  医療というのはきちんとした情報提供のもとに行われる契約行為です。結果を保証す るものではありません。だから十分な情報が提供されて、しかも適切に管理した状況の 中で医療行為が行われたものの、結果が悪かった。これは不可抗力です。裁判を起こす 権利はだれにもあるので、すべての事象には訴訟の可能性はあるのですが、一般的には 法解釈上はそのようにされると思います。  その中で例えば診療ガイドラインなどは、一般的なノルム(規範)を語るものであっ て、それに反する場合は、反することをやった人間に説明責任、挙証責任が課せされる わけで、そうしますと非常に強い制限を、一般的に原則として行うべきでないことをや る人間に課すわけです。やはり非常に強い抑制効果があるというふうに言わざるを得ま せん。  そういった観点からは、私自身は原則として見合わせるという記載は、やはり望まし くない。むしろリスク情報として、それをきちんと把握して、適切に伝えて、同意を得 ることを原則として記載すべきであると思います。慎重に対処するという表現にその意 味を含めることも可能です。そちらの方がより適切ではないかと考えます。  原則として見合わせるという言葉は、実効性があるのかないのか。一体この言葉にど のような意味をお考えになって、お使いになろうとしているのかということを、事務局 にお聞きしたいと思います。  関山課長  先ほど述べたとおりです。それ以上のものでもない。すなわち平成15年11月12日にこ の制度をつくった。それから献血の制度との整合性をどういうふうに説明していくのか ということで、今お話されたことについても、制度としての実効性がないのではないか ということであります。ただ、1日たっていない方々は、そういった制度が適用され、 スムーズにいくということはございます。  こういうBSEという科学的に十分把握されていない状況の中で、どのように、私ど も行政当局として最大限の注意を払いながら、制度構築をしていくかというところが、 問題であります。先生がおっしゃるようなことも1つあるのですが、片や他の制度がそ ういってありながら、片やこういったところの制度でないという、そこのところの理屈 がどういうふうに理屈構成されていくのかというところが、明確にクリアカットにあれ ば、私どもということに。  先生が今おっしゃられたのは、まさに不法行為の、民民の関係ではそうありますが、 ただ対応として国もきちんとした、今までの制度の見直しをした根拠としていなけれ ば、事があって、訴えられる状況も中にはなくはない、否定はできないということで す。なかなか難しい事案だと思っておりますので、そういったところで、こうやって御 議論していただいている。  小中委員  今御説明いただいたものなのですが、原則として見合わせるという表現の中には、平 成15年の2月に取り決められた渡航歴に関することを考えた形ということですね。そう なりますと、例えば今回新たに出されたた1日以上は、2、3、4の形で可能と受け取 ってよろしい。  相川委員  ちょっと確認ですが、私の理解が間違っているといけないんですが、この対応案の1 日以上というのは、これは24時間という1日なのですか。  関山課長  そうです。  相川委員  そうしますとやはりこれは、細かいことですけれども、はっきり「24時間以上」と書 きませんと、混乱が生じる可能性がありますので、24時間と書かれてはいかがでしょう か。例えば入院の日数なんかもほんの6時間入っても、1日の入院の料金を取っていま す。ですから数えで数えるのか、満で数えるのか。はっきりとする。もしそういう意向 なら24時間以上と書かれたらいかがでしょうか。  私は1日以上ということで、1時間でもそこに着地したら、滞在というんですか、入 国したらと今まで思っていましたが、24時間以上という考えですね。  北村委員  それとあと24時間なかったらいいんだろうと、いうことになる。その辺が難しいわけ です、1日というのは。  相川委員  そこはだからエビデンスのことを私は言ったので、  北村委員  空港内にもビフテキ屋はありますから。  相川委員  それはだから前回の委員会でも私は言いましたら、それでは英国の飛行機の中ならど うなのかとか、そういうことに発展するので、あまり細かいことは言ってはいけない。 24時間という意味ですね。  片岡室長  トランジットは除くという趣旨です。  相川委員  トランジットは除く。それはつまり入国しなければいいということですか。トランジ ットはそうでしょう。  片岡室長  日付をまたがなければということです。  相川委員  日付をまたぐという考えなのか、それとも24時間というか、そこのところもはっきり していただかないと。  片岡室長  日付をまたがなければといという。  相川委員  では例えば、夜中の11時に入って、それで空港のホテルで過ごして、朝の6時の飛行 機で立つというのは日付をまたいでいるから、7時間でもいけないけれども、例えば午 前の1時に着いて、夜中の11時に出れば22時間滞在しても日付をまたいでいないから これはよいという。あまり細かいことを私は言いたくないのですけれども、何だかそう いうところもおかしいので、1日というのを、つまり連続24時間とするのか、それとも 日付をまたがなければいいのか、その辺のところも後ではっきりと御説明していただけ ればよろしいかと。前回もこの議論はちょっと出たことがあるんですよね。  ちょっと細かいことですいません。この「英国」というのはウェールズもノーザンア イルランドも入るということですか。つまりスコットランド、イングランドの島のとこ ろなのか。ウェールズ及びノーザンアイルランドも入る英国なのかということも、後で はっきりしておきませんと、自分は英国には行かないけれどもベルファストには行った とか、そういうことになると混乱するので。その辺のところもはっきり現場で混乱しな いように、ぜひぜひしっかりやっていただきたいと思います。  永井委員長  はい。そろそろまとめないといけないです。いかがでしょうか。もうちょっと議論し ますか。  小中委員  ガイドラインの適応基準への組み入れ方でお願いです。原則として見合わせるではな く、慎重に対応すると入れていただいて。なおかつ6カ月以上と6カ月未満は違うのだ ということを明確にわかるような形で書いていただければ、私たちはどのような形であ ろうと、適応基準を守ることがコーディネーターとしての役割になりますので、そこを 明確に入れていただきたいと思います。  永井委員長  その場合には平成15年のこの提供制限の扱いはどうなんですか。むしろ6カ月以上に ついては緩和するということでしょうか。  大久保委員  それも含んでいるんでしょう。だから1日以上ですから、今までの6カ月以上も全部 含んだ形でこれは、基本的に原則として見合わせるけれど、それにきちんとインフォー ムド・コンセントをしてやりましょうという話でしょう。  斎藤主査  事務局から補足させていただきますと、こちらの解釈は今大久保委員からありました 解釈と同様でございます。こちらの対応案の(1)に示しております滞在国、通算滞在 歴については、必ず確認をしていただくと。ただしこの情報をきちんとレシピエントの 方にお伝えをして、御了解いただける場合には、提供可であるという解釈ですので、こ れまで5年以上滞在で提供制限がかかっていた方についても、今回の取り扱いで提供可 とするという方向で整理したいと考えております。  永井委員長  そういう方向であれば、このように原則として見合わせる、ただしというふうに言っ た方がわかりやすい。プラクティカルであるということになりますね。  大久保委員  文章を続けていただいた方が、確かに。  永井委員長  この文章を除くわけにはいかないような気がいたします。ただし慎重に対応するとい うようなことが妥当かなと私は思いますが。もしよろしければそういう方向で、もう少 し文章を作っていただいて、後で各委員にお諮りいただくということにしたいと思いま すが。それから説明についてのガイドラインを何かお作りいただくということでござい ますね。そういうことでよろしいでしょうか。  事務局 はい。  永井委員長  ではそういう形でまとめさせていただきます。また後ほど書類なり、連絡等をいただ くということでよろしいでしょうか。  では次に、議題の3にまいります。これは狂犬病に関することですが、臓器移植にお ける狂犬病に関する取り扱いについて。これはドイツ、アメリカにおいて、移植後に感 染例が確認されているということで、まず佐多先生から御報告をお願いし、その後事務 局から対応案について御説明いただきます。  佐多参考人  臓器提供者からの狂犬病感染2事例、米国とドイツと、いう説明をさせていただきま す。国立感染症研究所では、生物学製剤に由来する感染症情報収集検討委員会というの が、毎月開催されております。その中で上がってきたものであります。資料として紙で 横に印刷するつもりでごちゃごちゃと書いて申しわけありません。  最初にあったのは2004年7月1日のMMWR、これはCDCから発行されているもの です。その中に臓器提供者と移植者における狂犬病感染の調査結果が書いてあります。 その翌週、さらに翌々週については、これは内容は全く同じですが、最新情報として腸 骨動脈移植片が原因とわかったというようなことが書いてありました。これは去年の7 月ですが、今年の3月17日のニューイングランドジャーナルオブメディスンに、この経 過がまとめられたということで発表されております。  その内容については、抄録の部分ですが、これを日本語に訳したのがここに書いてあ ります。簡単に申し上げますと、臓器提供者は男性です。クモ膜下出血で亡くなった方 でありまして、両腎、肺、肝臓、腸骨動脈が5人の方に移植された。1人の方は肺のレ シピエントで、術中死亡ということで亡くなっております。結局4例の方が30日以内に 脳炎を発症させ、さらに平均14日後に死亡されたということです。  いろんな検査が行われていますが、レシピエント4例が狂犬病に感染したということ は、事実であるということが述べられています。この臓器提供者についての情報は、そ の検査時点でははっきりいたしませんで、この臓器提供者の友人が、ドナーの方がコウ モリの咬傷を受けたことがあるというふうに話していたというのを聞いていたという情 報が伝わったということです。これが米国の例です。  そうこうしているうちに2月16日、18日に配信されていますが、Eurosurveillance Weekly E-Alertというところで、ドイツにおいても同様の例が発生したということ が報告されています。この例は臓器提供者は26歳の女性でして、心停止、低酸素血症に よって、脳死が昨年の12月に起きたということです。移植前の検査では特に異常がなか ったんですが、このドナーの方は、10月にインドに渡航してトレッキングツアーに参加 している。ただ動物との接触歴については全くわかりません。  それでこの方から6人の方に臓器移植が、肺、腎臓、膵臓、それから角膜が2名で す。それから肝臓というふうに移植されました。そのうちのこちらの3名の方が狂犬病 を発症して、この時点では2名死亡したということがあります。角膜と肝臓の移植者の 方は、この時点では症状がないという記載になっていました。  米国とドイツで約半年ぐらいの間に2例、こういう例が出たということです。  患者さんの臨床経過について、簡単にまとめてありますが、これは紙で見ていただけ ればよろしいかと思います。こういう脳の前頭葉から側頭葉というところにかけて、M RIの所見が出ています。  いわゆる狂犬病の場合に、脳の中にネグリボディというのが出てくるわけです。細胞 質内の封入体ですけれども、それが陽性になっていて、ラブドウィルスが見つかる。そ れから末梢神経を調べますと、肝臓の側の末梢神経だったと思いますが、あるいは腎臓 の側、そういう末梢神経の中に赤い部分が狂犬病ウィルスの抗原でありますけれども、 それが見つかっているということです。  この2事例に関して狂犬病一般について御説明しろということなので、その辺につい て簡単に説明します。このスライドは、国立感染症研究所の獣医学研究部の井上さんか ら提供していただいたものです。ともあれ狂犬病ウィルスというのは、人及びすべての 哺乳動物に感染しますが。この狂犬病は一旦発症です、感染ではありません。発症した 場合100%死亡しているということが、言われています。ワクチンについては後でお話 します。  今現在世界でどうなっているかというと、これが最新のデータです。約5万5,000人 ぐらいいるだろうというふうに言われています。この数字はちょっと古い数字ですが、 いずれにしましても言いたかったことは、アジアで非常に多いということが言われてい ます。  これはWHOのアジアの地図ですが、中でも真っ赤なのがインドであります。こうい ったところは、狂犬病の患者さんが非常に多い。患者さんイコール死んでしまう、死亡 者ということになります。ここではほとんどがイヌの咬傷によるものというふうにされ ています。  こちらの地図で薄い緑色に書いてある部分。こういう島国、あるいは北欧、そういっ たところは狂犬病フリーですが、あとほかの国は日本から一歩出た場合に、狂犬病が存 在するということです。日本においては1957年以降はありません。ただ1970年に1回、 ネパールでイヌにかまれて、帰国後発症して死亡した例があるということが報告されて います。  この感染の経路ですが、大体イヌによる咬傷がほとんどでありますが、最近ではコウ モリの咬傷、あるいはここに空気感染の可能性があるのではないかということが言われ ている。この理由は次のスライドで述べます。あとアライグマ、スカンク、アカギツネ といったような野生動物からの咬傷によっても、人、ネコ、家畜といった終末宿主が狂 犬病ウィルスに感染すると言われています。  米国での人の狂犬病の例というのは、7割以上がコウモリが原因だというふうにされ ています。問題は、コウモリが原因の人の狂犬病の75%以上は、狂犬病に感染した時期 がよくわかっていないということです。この理由については、コウモリはもちろん夜中 に行動しています。寝ている間の感染の機会が多いというのがあって、それがよくわか らないということが1つ。  もう1つはコウモリの歯が非常に小さいということで、かまれたことにしばしば気づ かないことが多いというような理由で、要するにコウモリが原因の人の狂犬病の75% は、狂犬病に感染した時期がわからないという理由は、こういったところによるとされ ています。  狂犬病ウィルスにイヌから咬傷を受けて、人が感染するわけですが、感染した部位か らすぐウィルスは末梢神経系の中に入ります。ですから脳までの距離が、遠ければ遠い ほど潜伏期間が長いということが、一般に言われています。すなわちウィルスは末梢神 経に入って、それからずっと脊髄を通して、中枢神経に行ってここで発症するというこ とが言われています。  それで1957年、それから1970年に、日本で最後の狂犬病例があったわけですが、こう いった臨床症状は、恐水症状とかこの辺まで出てくればはっきりすると思いますが、最 初の時点での臨床診断というのは、非常に難しい。要するにイヌにかまれたか、コウモ リにかまれたかとか、そういったエビデンスがない限り、よくわからないということだ と思います。  特徴をずっと小さく書いてありますが、まとめました。一般的に発症すれば治療は不 可能、大体100%が死亡いたします。ただ我々は狂犬病のワクチンというものがありま す。ですからかまれて、ウィルスが神経の中を伝わって移動している間、いわゆる潜伏 期間ですけれども、その間にワクチンを打って抗体を誘導すれば、曝露後予防接種とし て、効果が期待できるということになっています。もう1つは狂犬病免疫グロブリンを 直ちに打つということになっていますが、今日本の国内では入手することはできないと いう、そういう状況になっています。  感染源は発症動物の唾液中に分泌されるウィルスです。粘膜あるいは尿にもウィルス が出てくるということが言われていて、粘膜、皮膚感染なんかもあるだろうというふう に言われています。ただ人から人への感染は非常に稀です。現在まで8例の角膜移植に よる事例が5カ国から報告されていて、そのときの潜伏期間は平均26日とされていま す。  今回の例、特に米国の例では、移植片の神経組織の中にウィルスが存在するというふ うに考えていて、血行性に感染が広がるものではない。いわゆる血液からウィルスが分 離されたことはないとされています。  問題は、長く不定期な潜伏感染期間です。発症例の60%は、大体1〜3カ月で発症す るというふうに言われていますが、1年以上の例も7〜8%あり、最長では7年の潜伏 期間があるということが言われています。  生前診断が本当にできるのかということに関しては、これは非常に否定的でありまし て、現在ではイヌに例えばかまれたとしたら、そのイヌを捕まえて、それが狂犬病を発 症するかどうかということが、一番確実な診断であるとされています。いろんな検査法 は、確立しているということです。  もう1つはイヌだけではなく、コウモリ由来のリッサウィルス、同じようなウィルス でありますけれども、それによって人感染の事例というのが今まで9例報告されていま す。これは狂犬病ワクチンでもある程度効果があると考えられていて、島国は、狂犬病 がだんだんなくなってきましたけれども、例えば英国などでは逆にコウモリ由来のリッ サウィルスの感染というのが報告されるようになっているということだと思います。  その後のフォローのデータを調べようとして、インターネットで少し調べたのです が、結局何もありませんで、移植には常に小さなリスクがあるんだということで、今の システムにはあまり問題がないというような意見が、その7月の前後に出ていたという ことだけです。その後については詳しい情報は、把握していないということです。以上 です。  永井委員長  ありがとうございました。それでは引き続き事務局から、対応策について御説明をお 願いいたします。  斎藤主査  それでは、資料の3-2の方をごらんいただきたいと思います。今回の事例につきま しての概要、特徴及び臓器移植との関連性ということにつきましては、佐多先生の方か ら御説明いただいておりますので、省略させていただきます。海外における制限の状況 ということで、英国における取り扱いをお示ししております。英国では保健省のガイド ラインにおきまして、ドナーについて確認すべき事項に、全身性脳炎の既往、また過去 6〜12カ月の間の海外渡航歴、または海外での動物咬傷を有することの確認を求めてお り、これらをレシピエントにとってのリスクファクターというふうにみなしまして、レ シピエント及び近親者に十分説明することを求めております。  その他の国においては、角膜、実質臓器について移植における特別な対応、そういう ものは確認できておりません。ページの方をおめくりいただきまして、対応案をお示し しております。まずドナーの海外渡航歴に関しましては、過去7年以内の渡航歴及び渡 航歴が確認できる場合には、哺乳動物による咬傷等の受傷歴についても確認をいただく ことといたします。7年という期間でございますが、現在報告されている最長の潜伏期 間からとっております。また渡航地域の確認に当たりましては、参考として次項にお示 ししておりますような狂犬病の発生国情報なども参考としていただくことを想定してお ります。  また移植医はこのようなケースで移植が実施された場合には、レシピエントのフォロ ーアップを十分行っていいただくということとしまして、またその他の感染症等に対し ましては、諸外国の状況等を踏まえながら、適宜対応するということにしたいと存じま す。事務局からは以上でございます。  永井委員長  ありがとうございました。それでは御質問、御討議お願いいたします。さっきのとこ ろでも同じ問題が出てくるかと思うのですが、組織移植ですね。北村先生のところで も、検討されていると思いますが、そのあたりはどうなりますか。  北村委員  組織移植も死亡者ですので、過去7年の輸血の場合と違って、輸血は感染しないので すね。咬傷等をとるのは非常に難しかろうと思いますが、ドナーの方の抗体か何かを調 べれば、確認できるものであれば、組織移植は臓器移植よりもはるかに厳重に例えば結 核菌の培養もしておりますし、ラブドウィルスの検査もしております。もちろんBSE というか硬膜とか、そういったものは全部入っていますが、ウィルス関係でもそういう 検査をしています。  もしそういう疑わしい場合、あるいは前例なのか、組織移植では今申しましたような ラブドウィルス関係は、全例やっているわけです。こういうものの抗体値はどうなの か、ちょっと佐多先生に教えてもらいたい。抗体値をもって診断できるのか。もちろん 不明の死因があるものは全部省いておりますし、全身性感染を疑わせる脳炎は、もちろ ん省いています。それはウェストナイルの場合も同じでして、脳炎のやつは、それも省 いていますが、狂犬病となると抗体でわからなくなると。わかれば検査は可能ですの で、対応はできます。  永井委員長  佐多先生いかがでしょうか。  佐多参考人  狂犬病ウィルスの専門家の人たちの多くの意見は、生前診断はできないという結論で す。ただ私のまとめた中に狂犬病の特徴は、5ページの下の方になりますけれども、血 清や髄液抗体価の検査を実際にはやるわけです。そのときに血清の抗体価よりもむしろ 髄液の抗体価の方が、診断の高い場合です、抗体価の高い場合は目安になるというよう なことが言われているというようなことであって、それ以外の情報は残念ながらないと いうことになっていて、そういったことも含めて、多分専門家の人たちは、生前診断は できない。ただこういう事例が起きた場合に、例えばアメリカの例もそうですし、ドイ ツの例もドナー側の組織を調べています、脳の所見。ああいう場合はできるけれども、 それ以外の方法では非常に難しいということが結論として述べられていました。  大島委員  佐多先生にお伺いしたいのですが、実際に発症したアメリカとドイツでは、多分非常 に大きな問題として取り扱って、何らかのレスポンスというのか、きちんとしたものを 出していると思うんですけれども、これを見るとイギリス以外は何もわかっていないと いうふうに出ていますね。アメリカの国あるいはドイツの国としてはどういう対応をさ れたのでしょうか。  佐多参考人  7月の1日の時点で、あるいはドイツの場合、その報告のあった時点で一番最後のス ライドに書いたとおりで、何も書いていないです。要するにリスクは常日頃あるもので あるということと、臓器の移植のシステムについて変更する必要はないというような書 きぶりのようです。  大島委員  これぐらいのリスクでは特別に対応する必要はないと、簡単に言ってしまうと。  佐多参考人  ただアメリカの場合、米国の場合は、ドナースクリーニングの方法について、もう1 回検討し直すというようなことが書いてありますが、どこにもまだ出ていないというこ とです。  永井委員長  いかがでしょうか。  大島委員  そうすると日本での対応は、世界で一番厳しい対応案であるというふうに理解してよ ろしいのですね。  永井委員長  事務局、いかがですか。  斎藤主査  対応案としてお示ししておりますのは、これも海外渡航歴及びそれに伴う動物咬傷の 受傷歴等を十分確認していただきたいということでございます。その得られた情報につ いては、すべてレシピエントに対して御提供いただきたいというものでございます。直 接的な提供制限という処置は難しいというふうに考えております。まずは注意喚起とし て、こういう事例があるということを、関係者に十分周知したいというのが、第1点で ございます。  大島委員  制限をするとかという感じは全然ないんですけれども、こういう要するに勧告を出す ということ自体が、世界で最も厳しいものですねと、厳しいというのか、きちんとした という言い方もできます。実際に死亡例が出ているようなところで、ほとんどノーレス ポンスであるということを考えれば、イギリスと比較的似ているということですが、日 本の場合には非常にきちんとした、最もきちんとした対応をするという理解でよろしい ですか。  関山課長  はい、そういうことです。  永井委員長  確認を試みたけれども不明であったと、それでも先へ進んでよろしいわけですね。  関山課長  はい。  金井委員  佐多先生にちょっとお聞きしたいのですが、アジアの一部の国はイヌを食べますね。 その場合には感染の危険はないでしょうか。  佐多参考人  何のデータもないということです。地図で色がついていないんです、あの国は。とい うことは情報がないということなんです。  小中委員  1つ教えていただきたいのですが、ドナー候補者の過去7年以内というこの7年とい うのにした理由だけ教えていただけますでしょうか。  斎藤主査  7年は現在判明している潜伏期間で、最長が7年だったというところでございまし て、もしこれ以上の期間が出てくれば、さらにまた延ばすということもあり得ると考え ています。  相川委員  そうしますと狂犬病は不顕性感染というのは全体になくて、一度感染すれば必ずほぼ 7年以内のいつかには発症すると考えてよろしいですか。必ずいつかは発症する。  佐多参考人  私も知りたかった1つは、曝露後予防注射というのをやるんです。そのときにどれく らい本当に効果があったのかというのを知りたいと思って、いろいろ調べたのですが、 よく考えたらそういうデータは出てくるわけがないのでわからないのです。ただそうい うこと、受けている方も世界で1,000万人以上受けていると、曝露後予防注射を受けて いる人が非常に多くの方がいらっしゃるということは事実です。ですからそういった方 は発症していないのであろうと。  相川委員  それと予防注射を受けなければ、必ず発症するんですか。肝炎なんかでは発症しない 人もいるわけですが。  佐多参考人  ついこの間やはりMMWRに15歳の女の子で、狂犬病、この子もやはりコウモリでし たけれども、それで狂犬病になったと。その子はリバビリンを使っただけで今のところ は、回復傾向にあるというのが世界初の狂犬病の曝露後予防注射を受けないで、まだ死 んでいないというか、少しよくなってきたという報告があります。一例だけです。  永井委員長  ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。もしよろしければ、事務局の対応案 をもとにして進めていただくということになりますが、よろしいでしょうか。はい。そ れではそのようにさせていただきます。  では次に報告事項にまいります。事務局から臓器移植に関する中学生向けパンフレッ トの配布について、御説明よろしくお願いいたします。  永野補佐  時間も押してきましたので、簡単に説明させていただきます。まず資料4とお手元に 黄色いパンフレットを配布させていただいておりますが、こちらのパンフレットは資料 4にありますように、今年の2月より全国の中学校に向けて送付したものでございま す。中学校と教職員、都道府県とか市町村の教育委員会などにも送っておりますので、 全部で168万部ほど作って、それをすべて厚生労働省より、各中学校などに送らせてい ただいております。以上でございます。  永井委員長  はい。よろしいでしょうか。よろしければ次に進めさせていただきます。次に報道で 既にお聞き及びと思いますけれども、膵臓移植希望者選択について、ネットワークで誤 った運用が行われていたという事実が判明いたしました。この点について経過及び対応 につきまして、菊地さんから御報告いただけますでしょうか。  永野補佐  まず事務局から簡単に経過だけ説明をさせていただいて、その後菊地コーディネータ ーから内容についての御説明をいただきたいと思います。  経過でございますけれども、3月16日にネットワークの内部調査で、24例目の脳死下 臓器提供事例について、膵臓移植希望者の選択基準の運用に誤りがあったということが 判明したと報告を受けております。3月16日にネットワークから記者会見をされて、3 月25日に臓器移植法第16条に基づきます、あっせん機関に対する指示を厚生労働大臣か らネットワークに出しております。その3月25日の指示に対して、4月21日に回答をい ただいております。  菊地参考人  それでは私の方から誤運用に関する報告をさせていただきます。まず経緯です。先ほ ど事務局から説明がありましたように、平成17年3月16日17時18分、37例目の脳死臓器 提供事例において、膵腎同時移植の第1候補者として選ばれた患者の移植実施施設であ る東京女子医科大学病院が、臓器摘出、ここが問題のところですけれども、臓器の摘出 手術開始後に、医学的理由によって膵臓の移植を断念いたしました。この患者さんは膵 腎同時移植であったために、膵臓の提供がなくなったということで、あっせん対策本部 から腎臓の選択意思確認を担当する中日本支部に対して、腎移植のみの候補者の第2候 補者の意思確認をするよう伝達いたしました。そこでルールが違うということが判明し たわけです。ルールにつきましては、正しいルールが4ページ、このページの上段でご ざいます。簡単に申し上げますと、臓器摘出手術の開始以降に膵臓が移植に適さないこ とが判明した場合には、腎移植希望者の選択をやり直すことなく、この膵腎同時移植希 望者に対して、腎臓のみの移植の意思があるかどうか確認して、配分を検討するという ことでした。この手順を抜かしていたということになります。  過去の事例を検討いたしましたところ、この新しいルールが加えられましたのは、平 成13年の11月1日ですので、それ以降においてこういった事例がないかを検討いたしま した。事例を検討した結果、過去に1事例において同じような事例がありまして、第1 候補者として選定された患者さんの腎臓の単独移植が受けられる可能性があったという ことが判明したわけです。その方に対しては、直接ネットワークから連絡をいたしまし て、運用にミスがあったということで謝罪をしてございます。  そこで資料5-2になりますけれども、あっせん機関の業務に対する指示が厚生労働 大臣より出ました。その内容ですけれども、下の(1)(2)(3)になります。徹底 した原因究明を行うこと。それから職員に対する周知徹底を諮ること。再発防止策を策 定することが主な内容でした。  それにつきまして5-3になりますが、私どものネットワークの原因究明、それから 職員に対する徹底周知、再発防止策等を説明させていただきます。  まず原因の究明ですけれども、これは臓器摘出手術の開始以降というところを、臓器 を搬送して、臓器の移植手術が開始した以降は、腎臓のみの移植を行うというふうに理 解しておりました。その部分が最も大きな誤解でありまして、通達自体は臓器摘出手術 の開始以降というふうに書かれていましたので、それが原因でした。  それから職員に対する徹底ですけれども、17年4月18日に、各支部のコーディネータ ー、それから関係者等を集めまして、レシピエントの選定基準の徹底した勉強会を行い ました。この膵腎同時移植の選択基準につきましては、特に読み合わせをきっちり行っ て、誤って理解していた部分の確認を行いました。  今後の再発防止策ですけれども、複数のコーディネーターと情報管理者によって、確 認作業の回数を増やしたいと思います。加えて各人が選択基準を熟知した上で選択作業 に当たるよう、毎年徹底した教育訓練を行ってまいりたいと思います。以上です。  永井委員長  ありがとうございました。ただいまの御説明に御質問等ございますでしょうか。よろ しいでしょうか。  大島委員  医学的理由というのは、膵臓が使えないという医学的理由ですね。  菊地参考人  はい。  永井委員長  ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは説明を了解したという ことで、進めさせていただきます。それでは最後に事務局より、連絡事項、報告事項お 願いいたします。  永野補佐  次回の日程につきましては、各委員の日程を調整させていただき、決まり次第、文書 にて御連絡差し上げます。先生方におかれてはお忙しいところ恐縮ですが、日程の確保 にどうぞ御協力よろしくお願いいたします。  永井委員長  よろしいでしょうか。それでは本日の会議は終了させていただきます。どうもありが とうございました。 (了)                   ┌───────────────────┐                   │ 問い合わせ先:健康局臓器移植対策室 │                   │                   │                   │ 担当者   :永野、斉藤      │                   │                   │                   │ 内線    :2366,2362  │                   └───────────────────┘