05/03/11 労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会第15回議事録         第15回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会 1 日時 平成17年3月11日(金)16:00〜 2 場所 厚生労働省 専用第17会議室(16階) 3 出席者  〔委員〕    公益代表  保原委員(会長)、石岡委員、稲葉委員、岩村委員    労働者代表 佐藤委員、須賀委員、高松委員、寺田委員、内藤委員、          真島委員    使用者代表 川合委員、紀陸委員、杏委員、下永吉委員 4 議題 (1)平成17年度労働保険特別会計労災勘定予算(案)について (2)労働福祉事業について (3)労災保険率の設定に関する基本方針(案)について (4)事業主からの費用徴収制度の運用の改善について 5 議事 ○部会長  ただいまから「第15回労災保険部会」を開催いたします。本日は岸委員、金城委員、 早川委員が欠席です。本日の議題は全部で4つで、1番目は「平成17年度労災保険特別 会計労災勘定予算(案)について」、2番目は「労働福祉事業について」、3番目は 「労災保険料率の設定に関する基本方針(案)について」、4番目は「事業主からの費 用徴収制度の運用の改善について」です。これから審議に入りますが、議題1と、第2 は関連しておりますので、事務局から併せて説明をお願いいたします。 ○労災管理課長  資料1〜3を順次説明いたします。資料1は、平成17年度労働保険特別会計労災勘定 予算の概要ですが、1頁は労災勘定の歳入・歳出の総表となっております。歳入と歳出 の総額ですが、いちばん上に記してある、平成17年度予定額の歳入総額は、対前年度0.2 %、32億円減の1兆3,894億円。歳出総額は、対前年度0.9%、103億円減の1兆1,769億 円となっております。2頁は歳入の内訳ですが、保険料収入については平成16年10月末 の徴収決定済額を基にして、平成17年度の保険料収入を積算しており、対前年度71億円 増の1兆514億円となっております。  次に、一般会計より受入ですが、対前年度2%、2,600万円減の12億8,000万円となっ ております。背景を少し述べると、平成17年度の予算編成方針においては、昨年6月に 閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」に基づき、各特別会 計については効率化、合理化を行い、一般会計からの繰入を抑制するよう強く求められ たところです。そのような中で厚生労働省としては、労災保険への一般会計繰入につい ては、前年度までの額である13億700万円と同額を要求し、財政当局と折衝を重ねてき たわけですが、結果として、いま述べた予算編成方針を踏まえ、2%の減額査定となり ました。  3番目の「未経過保険料受入」は235億円、対前年2億円の減です。これはすでに収 納している有期事業に係る保険料のうち、平成17年度に係る部分の保険料を前年度から 受け入れるものです。4番目の「支払備金受入」は、備考欄に記してあるように、支払 備金は、すでに業務災害及び通勤災害を受けた労働者等に対して、過年度分として支払 われるべき給付見込額について繰越受入をするという内容で、平成17年度予定額は1,865 億円、対前年度29億円の減となっております。これは保険給付費及び特別支給金の減少 を反映したものです。  5番目の「雑収入」は1,264億円、対前年度72億円の減、率にすると5.4%の減です。 この大部分を占めるのが、備考欄に記載してある預託金利子収入で、これは財政融資資 金に預託してある積立金の利子収入が運用利回りの低下の影響により、平成17年度は 1,056億円を見込んでいるところです。以上が歳入です。  歳出については3頁です。3頁の歳出の表のいちばん上、平成17年度歳出予算額の総 額は1兆1,769億円、対前年度103億円、率にして0.9%の減となっております。1番目 の「給付費」すなわち保険給付費及び特別支給金については、平成15年度の実績及び平 成16年度の直近までの支払状況を基礎として、平成17年度を見込んでおります。保険給 付費については、労働災害の減少等の影響により、対前年度14億円の減、特別支給金に ついては対前年度10億円の減となっております。2番目の「業務取扱費」については、 労災保険事業の運営に必要な人件費、事務費等を計上しておりますが、事務事業の見直 し、運営の効率化を図り、対前年度20億円減の539億円となっております。  3番目の「労働福祉事業費」については、対前年度4.8%、62億円減の1,222億円とな っております。内訳については後ほど資料3で説明いたします。4番目の「他勘定への 繰入」ですが、労働保険料の徴収等に係る人件費、事務費及び保険料返還金の経費で、 対前年度3億円増の624億円となっております。最後の「予備費」については、給付費 の短期分の2%を計上しており、対前年度同額の100億円となっております。  次に、 資料2の「労災保険経済概況」については、平成11〜15年度の収支状況を記 載しております。収入の欄を見ると、景気の動向、保険料率の改定等の影響により、平 成10年度以降、連続して減少の傾向にあります。支出については、労働災害の減少によ る保険給付費等の予算額の縮減や、収入状況を勘案し、労働福祉事業等について随時精 査、見直しを行ってきた結果、平成10年度以降減少傾向にあり、平成15年度を平成11年 度と比べると、5年間で約918億円減額しているところです。  次に、資料3で労働福祉事業について説明いたします。労働福祉事業については、労 災保険法第29条に基づき、「社会復帰促進事業」「被災労働者等援護事業」「安全衛生 確保事業」「労働条件確保事業」の4つの柱で実施しております。1頁の社会復帰促進 事業は、対前年度15億円減の209億円となっております。内容としては、1番目の「補 装具・アフターケア等経費」については3億円の増となっておりますが、この「増」 は、備考欄にあるように補装具及び社会復帰保養費及び特殊疾病アフターケア実施費の 増が主な要因となっております。  補装具及び社会復帰保養費については、業務災害または通勤災害により四肢の亡失や 機能障害が残った方に対して、義肢その他の補装具の支給を行うことにより、社会復帰 を図る事業等であり、特殊疾病アフターケア実施費については、業務災害または通勤災 害により、脊髄損傷など、特定の疾病に罹患した方で、症状固定後にまだ一定の後遺障 害のある方を対象にして、後遺症状に付随する疾病を発症することがないように、予防 その他の保険上の措置を講ずる事業ですが、実績が伸びていることから、補装具、アフ ターケアとも対前年度約2億円の増となっております。なお参考までに述べると、平成 15年度実績として、補装具等の支給個数は3万5,619件、アフターケアの実施件数は43 万1,343件となっております。  2番目の「被災労働者社会復帰経費」ですが、事業の見直し等により、6,000万円の 減となっております。備考欄に書いてあるCO中毒患者に係る特別対策事業経費につい ては、労災病院の再編計画における大牟田労災病院の廃止に伴い、炭坑災害による一酸 化炭素中毒症に関する特別措置法に基づく国の責任を履行するため、一酸化炭素中毒患 者の診療及び療養を行う事業として、約1億6,000万円を新規で計上しているものです。 3番目の「労働者健康福祉機構に対する施設整備に係る経費等」については、対前年度 17億円減の143億円となっております。このうち、備考欄の労働者健康福祉機構に対す る施設整備費については、独立行政法人への円滑な移行を進めるため、経過措置として 現在着手中の労災病院の施設整備に対する国庫補助を、平成20年度までの中期目標期間 内に限って交付することとしています。平成10年度においては、中期計画どおりの対前 年度18億円減の130億円を計上しております。  2つ目の柱である「被災労働者等援護事業」については、対前年度4億円減の245億 円となっております。内容として1番目の「労災就学等援護経費等」は、対前年度9,000 万円減の29億円となっており、業務災害または通勤災害により、死亡、重度障害を受 け、または長期療養を要する労働者の子どもについて、学費の支弁が困難な場合の就学 の援護や、保育を必要とする児童を抱える労災年金受給者、またはその家族の就労の援 護を図る事業です。参考までに平成15年度実績は、就学援護の支給人数が1万1,360人、 就労・保育の支給人数が477人となっております。2番目の「高齢被災労働者等援護経 費」ですが、対前年度1億円減の75億円となっております。主な事業としては、備考欄 にあるように、労災特別介護施設設置運営経費で、高齢となった重度被災労働者が、住 宅において介護人がいないなどにより介護が困難な場合、障害特性に合った介護による 安心した生活を、施設において措置する事業であり、この経費が対前年度1億3,000万円 減の41億円となっております。なお、この事業の実績としては平成15年度で入居者数が 671名であり、定員720名に対し、93.2%の入居という状況です。  2頁に、3番目の「労災診療費の貸付事業実施費等」がありますが、この経費が対前 年度2億円減の141億円となっております。主な事業は、備考欄にあるように、労災診 療被災労働者援護事業補助事業費で、被災労働者が迅速かつ費用の負担をすることな く、療養を受けられる労災指定医療機関制度を維持するため、労災診療費の支払が行わ れるまでの間、労災診療費債権相当額を無利子で指定医療機関に貸し付けることによ り、被災労働者の援護を図る事業で、この経費が対前年度7,000万円減の102億円となっ ております。なお、平成15年度の実績としては、貸付額が1,862億円となっています。  3番目の柱である「安全衛生確保事業」については、対前年度15億円減の338億円と なっております。内容としては、1番目の「労働災害防止対策推進費等」は、事業主等 の業務災害の防止に関する活動に対する援助で、労働者の安全及び衛生の確保等のため に必要な事業であり、対前年度9億円減の255億円となっております。主な事業として、 備考欄にある地域産業保健センターの整備事業は、産業医の選任義務のない小規模事業 場の労働者の健康の確保を図るため、健康相談、指導等を行うため、体制整備を行う事 業で、経費は対前年度2億円増の24億円となっております。参考までに、平成15年度の 実績としては、健康相談窓口を2万2,929回開催。また、個別訪問、産業保健指導を1 万1,293件、コーディネーター活動を5万7,408日、協議会及び説明会を2,016回実施し ております。労働災害防止対策費補助金については、労働災害の防止を目的として設立 された中央労働災害防止協会、業種別労働災害防止協会に対して補助金を交付し、作業 現場等の実態に即したきめ細かい労働災害防止活動の進展を図る事業であり、経費は対 前年度14億円減の28億円となっております。  3頁の3番目、「小規模事業場産業保健活動支援促進事業費等」は、対前年度3,000 万円減の6億円となっております。主な事業として、備考欄の小規模事業場産業保健活 動支援促進事業費等補助金では、小規模事業場に対して、産業保健サービスの提供を受 けることを奨励するための補助金等を、労働者健康福祉機構に交付して行っておりま す。参考までに、平成15年度の実績としては、助成金支給件数が2,778事業場となって おります。  4つ目の柱である「労働条件確保事業」ですが、対前年度31億円減の315億円となっ ております。内容は、1番目の企業の倒産等により、賃金が支払われないままに退職し た労働者に対する保護を図る「未払賃金立替払事業実施費」については、立替払の原資 である未払賃金立替払事業費補助金が、前年度の278億円から250億円へと28億円の減と なっております。なお、平成15年度実績としては、支給者数が6万1,309人となってお ります。2番目の勤労者の生活の安定を図るため、勤労者の財産形成を促進する「勤労 者財産形成促進事業実施費」については、対前年度5,000万円減の7億円となっており ます。3番目の「中小企業退職金共済助成費等」は、対前年度3億円減の54億円となっ ており、主な事業である中小企業退職金共済掛金助成費は、独力では退職金制度を設け ることが困難な中小企業の事業主に対して、退職金制度の設置を促進する事業であり、 経費は対前年度2億円減の22億円となっております。平成15年度の実績としては、新規 加入掛金助成が45万8,995件となっております。  4頁の「独立行政法人労働者健康福祉機構運営費」は、独立行政法人労働者健康福祉 機構に対する運営費交付金を計上しており、対前年度3億円増の115億円となっており ます。従前は、1番目の柱の社会復帰促進事業と、3番目の柱である安全衛生確保事業 に分割して計上していた経費ですが、独立行政法人に対する運営費交付金について、そ の経費の性格上、分割することができないため、別個に計上しているものです。3億円 の増の要素ですが、運営費交付金の算定ルールに基づき、定年退職者以外の自己都合等 による中途退職者等の予定外退職手当についても、増分を計上しております。  以上が予算の概要ですが、併せて、労働福祉事業の見直しについての取組に関して、 資料はありませんが説明したいと思います。労働福祉事業については、従来から事業の 趣旨を踏まえて随時精査、見直しを行ってきたところですが、特別会計の改革に関し て、各方面で指摘があったことをも踏まえ、平成17年度予算要求に当たっては、内部に おける作業として、昨年6月に創設から5年を経過したすべての事業について、個々の 事業の予算執行状況や事業内容に踏み込んで、厳しく見直しを実施したところです。予 算の目的の達成状況や重点化、効率化といった観点から見直しを行いました。この見直 し結果を活用し、平成17年度予算においては、いくつかの事業について、事業の全部ま たは一部の廃止等を行い、労働福祉事業費について特別支給金を除き、対前年度比較で 4.8%、62億円減額しているところです。  さらに、昨年6月4日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針 2004」において、各省がそれぞれの特別会計について、性格に応じて改革案を策定する こととされたところであり、私どもとしても改革、見直しを進めているところです。私 どもが考えている改革、見直しの方向を述べると、休養施設及び労災保険会館について は、すでに廃止したものを含めて、平成17年度末までに全廃するという方針で取り組ん でおります。また、労災病院再編計画に基づき、平成19年度末までに37の労災病院を30 に再編するということで、平成16年度に1労災病院を廃止し、今後もこの方針で再編を 図っていくということです。平成17年度から労働福祉事業について、事業の性格に応じ て成果目標の設定による目標管理の手法を導入すること等により、労働福祉事業の一層 の効率化を図ることとしております。本日の議題にもなっている労災保険率の設定のあ り方について、より透明性を高めるための取組や、4番目の議題である費用徴収制度の 適切な運営の取組についても、改革、見直しの取組の一環として位置づけているところ です。  労働福祉事業についての説明は以上ですが、本日もご意見をいただき、引き続き効率 的な運営に向けた見直しを進めていきたいと考えております。 ○部会長  大変丁寧な説明をありがとうございました。平成17年度の労災保険関係予算案、労働 福祉事業について、ご意見、ご質問があればお願いいたします。 ○佐藤委員  この委員会の所掌ではないと言われるかもしれませんが、労働福祉事業の中の安全衛 生確保事業について、昨年アスベスト世界会議が開かれ、厚生労働省や連合も講演され ました。厚生労働省のどなたかちょっと忘れましたが、アスベストの規制について強化 していく、既設物の撤去についても手当をしていく旨の非常に積極的な発言があり、全 体の中で拍手を浴びられました。それだけ取り出してという意味になるのでしょうが、 アスベストに関しては、1%以上のものについては原則禁止を決められたことから考え て、今後、中皮腫、肺がんの発症がかなり懸念されるといったものと、対策の問題も含 めて、どの項目の中にどの程度含まれているのか教えていただきたいと思います。 ○労災管理課長  資料3は全体の予算は書いてありますが、備考欄は主な事業の内訳ですから、すべて を含んで書いてはおりません。その中でアスベスト対策ですが、アスベストによる健康 障害防止対策の推進ということで、平成17年度予算において7,723万5,000円の予算を計 上し、各種の事業を推進していくことにしております。アスベスト製品の代替化等の促 進事業や総合的な対策を実施していくことを予定しております。 ○佐藤委員  本日の予算説明は、対前年度の関係で説明されていたのですが、強化をするというの であれば、前年との対比を教えていただけませんか。 ○労災管理課長  一部新規ということで拡充を図ることにしており、前年度3,876万円の予算を、平成 17年度予定額は7,723万円ということで、約4,000万円の増額予算を組んでおります。新 規項目として、建築物の解体作業等の対策に係る指導や対策の充実を進めていくことな どを含んでおります。 ○部会長  差し当たりよろしいでしょうか。他にご意見、ご質問があればお願いいたします。 ○紀陸委員  労福事業の件ですが、資料1の3頁にあるように、平成17年度は60億円ほど減少はし ていますが、この内訳は基本的に未払いの立替払いの額が約半分の減で、約5ポイント 程度減っていることになっています。料率の問題とも絡むのですが、いずれにせよ全体 的に災害が減少して、予算規模も縮小しているという傾向があるわけですが、労働福祉 事業の料率がここだけ千分の1.5と据え置かれているのは、使用者側から見ると、何と なく得心がいかない部分です。いろいろな費用が変動している中で、料率的に1.5だけ 全然変わらないというのは、何となく立て付けとしてもおかしいのではないかというの が使用者側の基本的な考えです。  労働福祉事業が全部ノーだということではないのですが、これについては賃金立替の 問題等も含めて、いろいろな観点から論議をしていく必要があると思っており、論議の 場を何らかの形で継続的に設けていただけるとありがたいというのが私どもの考え方で す。いますぐ結論をどうのこうのということではありませんが、料率の見直し、その他 いろいろ問題が出てくると思いますので、それと並行的に事業のあり方、この料率も含 めていろいろな観点から論議する場が必要だと思います。その点の勘案をお願いしたい と思っております。 ○労災管理課長  労働福祉事業については効率化を図ってきましたし、これからもさらに効率的な見直 しをしていきたいと考えております。本日、この場で労働福祉事業について議題にした ものも、いろいろな観点から意見をいただき、それを踏まえて今後の見直しに繋げてい きたいという考えからです。平成18年4月からの料率改定に向けて、いろいろな作業を 進めていくことになる中で、労働福祉事業についても、より効率化を図っていく観点か らの見直しを踏まえ、そのようなものを前提にして、どういった料率設定にするかご審 議いただくことを基本方針として考えております。  ただいま指摘のあった継続的な協議、懇談の場についてですが、例えば、これまでも 労働福祉事業に関する懇談会という形で、保険料を負担いただいている使用者側を代表 する方々に入っていただき、そのような場を持ってきていることもありますし、去る3 月1日にもこのような趣旨で説明させていただきました。それ以外の方法も含めて、提 案がありましたら相談させていただきたいと思います。 ○稲葉委員  労働福祉事業の中で、先ほど休養施設を平成17年度までに全廃ということがありまし たが、具体的な計画と進捗状況がどうなのかをお聞かせください。 ○労災管理課長  中身を述べると、施設として1つは休養所、労災保険会館というものがあります。休 養所が全部で8カ所ありました。設けた当時、被災労働者の治療の一環としての温泉保 養などの趣旨からつくられたものですが、昨今の状況の中での判断として、全廃する方 針です。すでに7カ所の休養所のうち、平成16年3月末までに4カ所を廃止し、残る3 カ所についても平成17年度末までに廃止する予定です。  東京に後楽園会館という労災保険会館がありますが、これについても平成17年度末ま でに廃止する予定です。労災病院については、独立行政法人労働者健康福祉機構が発足 した平成16年4月1日の時点で、37カ所ありましたが、その中の5カ所の労災病院につ いて、平成19年度までにすべて廃止という方針で進めているところです。このうちすで に平成16年7月に鹿児島県の霧島温泉労災病院を廃止しており、残る4労災病院につい ても平成17年度に2カ所、平成18、19年度に各1カ所廃止する予定です。その他、4つ の労災病院を2つに統合することで進めているところで、都合37を30に再編する方針で 進めております。労災看護専門学校についても、平成16年度に2カ所廃止しておりま す。施設関係の廃止等の状況については以上です。 ○稲葉委員  休養所について、金額的にはどの程度の売却をしているのですか。 ○労災管理課長  申し訳ありませんが、いま手元に数字を持っておりませんので、改めて説明させてい ただきます。 ○佐藤委員  不要不急の施設なり事業は、基本的には見直していく。見直し即廃止なり縮小なりと いうことがあると思いますが、やはり労働者の健康、あるいはアフターケアの問題が、 時代、時代の産業の構造、就業の実態といったものに合わせながら見直していくことが 正しいと思うのです。そのような議論に将来なるのかどうかわかりませんが、これは無 駄だという議論を、あまりストレートにやられるのはいかがなものかと思います。十分 資料を提供いただいた上で、論議できるようにしてほしいと思います。 ○部会長  他にありませんか。労働福祉事業については、事務局として引き続き効率化のための 努力を行っていただきたいと思います。次の議題に移ります。労災保険料率の設定に関 する基本方針(案)について、事務局より説明をお願いいたします。 ○労災管理課長  資料4は労災保険率の設定に関する基本方針(案)ですが、先の部会に報告した料率 のあり方に関する検討会の報告書を踏まえて、厚生労働省としての基本方針を定めると いう性格のものです。経緯については、すでに何回か説明しておりますが、総合規制改 革会議の第3次答申で指摘されたことを踏まえ、平成16年度中に結論を出すということ で対応しているものです。本日ご審議をいただいた上で、年度内に厚生労働省として省 内決裁の上、公表したいと考えています。内容については、先に報告した検討会での報 告書には全般的な整理をした結果、考え方も含めて料率設定に関する今後のあり方が示 されているわけですが、これを踏まえて料率設定に係る基本的なルールに相当するもの をまとめ、公表したいと考えているものです。  内容について順次見ていくと、業種別の設定ということで、「労災保険率は、業種別 に設定する」こと。業種区分の考え方として、「労働災害防止インセンティブを有効に 機能させるという観点から、作業態様や災害の種類の類似性のある業種グループ等に着 目して、当該グループごとの災害率を勘案して分類する」ということです。2番目の改 定の頻度ですが、「労災保険率は、原則的に3年ごとに改定する」としております。  3番目の算定については、「労災保険率は、次に掲げる方式により算定する」という ことで、算定ルールが出ております。算定の方法として、イの算定の基礎ですが、「過 去3年間の保険給付実績等に基づいて算定する料率設定期間における保険給付費等に要 する費用の予想額とする」となっています。ロの業種別の料率に係る基本的な算定方式 は、「業務災害分の料率については、短期給付分、長期給付分に分けて、各々、次の方 式により算定する」ということで、2頁の冒頭、短期給付、すなわち療養補償給付、休 業補償給付等については、短期給付分について3年間の収支が均衡する方式。すなわち 「純賦課方式」によって算定していく考え方です。長期給付分、つまり年金である保険 給付については、災害発生時点の事業主集団から、将来給付分を含めて、年金給付等に 要する費用を全額徴収する方式、「充足賦課方式」により算定するという考え方です。  ハの全業種一律賦課方式は、給付等に要する費用のうち、以下に掲げる部分について は全業種一律賦課で、全体の業種でカバーするという考え方を示しています。(イ)業 務災害分は、短期給付のうち、災害発生から3年を経ている給付分と、長期給付のう ち、災害発生から7年を超えて支給開始される給付分については、全業種一律賦課でと いう考え方です。検討会の報告書に基づき考えているわけですが、基準法上の災害補償 責任との関係で、短期給付では基準法上、被災後3年を超えても傷病が治癒しない労働 者については、3年経過時点で打切り補償を行い、事業主はそれ以後の補償の責任を免 れるという規定があります。そのような基準法上の責任との関係から、それを超える部 分については全業種でカバーすることが適当ではないかという考え方によるものです。  長期給付分である7年を経過して支給開始される部分についても、労働基準法上の災 害補償責任においては、労災保険法で概ね治癒してから年金4年相当分の給付、つまり 重い障害等を負った場合、基準法上の障害補償の最高額を年金換算すると4年相当とな るので、基準法上は最高約7年相当分が事業主責任と見ていることを勘案し、それを超 える部分については全業種でカバーすることが適当ではないかという考え方です。過去 債務分と書いてあるものは、平成元年度から採用した充足賦課方式で、積立金として負 担を先送りしないという形で、将来の年金給付に要する経費に関する責任準備金として 積立金を持つというものです。昭和63年以前については6年間相当分ということで、完 全には充足賦課方式を採っておらず、その時点の積立不足分を計画的に徴収していく部 分については、全業種一律で対応していくという考え方です。非業務災害である通勤災 害、2次健康診断等給付に要する部分については、全業種一律です。労働福祉事業及び 事務の執行に要する費用についても全業種一律という考え方です。  (2)激変緩和措置等は、原則として算定された数値によって労災保険率を設定する という考え方がここまで書いてありますが、算定された数値が増加した場合、これに対 応して労災保険率が一挙に引き上がる業種の労災保険率については、必要に応じて一定 の激変緩和措置を講ずるという考え方です。さらに、産業構造の変化に伴い、事業場 数、労働者数の激減が生じたため、保険の収支状況が著しく悪化している業種の労災保 険率については、必要に応じて一定の上限を定めるという考え方です。これらの具体的 な措置については、料率改定時において過去3年間の数理計算も踏まえて設定するとい う考え方です。また、激変緩和措置等を講ずることによって、財政的な影響が出る場合 には、必要な所要額について全業種一律賦課するという考え方です。  最後に、労災保険率改定の手続等ですが、労災保険率は労災保険率の改定に係る基礎 資料、つまり業種別に計算した数字等の状況を公開した上で、これに基づく審議会での 検討を経て決定するということです。要するに、基本的なルールを明示した上で、今後 このルールに基づき、また基礎資料を公開し、審議会等を中心に透明性の高い決定手続 をしていくということが基本的な考え方です。  併せて資料5についてですが、資料4は今後に適用されるルールですが、資料5は具 体的に時期、平成18年度の料率改定時に行う事項ということです。1つは業種区分につ いて、現行の「その他の各種事業」の業種区分、これは全体の60%を占めている大きな 業種区分になっていますが、これを分割していくということで、その考え方としては作 業態様の面に着目し、事務従事者割合の比較的高い業種を取り出して、災害率等を考慮 した上、日本標準産業分類の大分類に対応して、(1)〜(3)に書いてあるような業 種区分を新たに分割し、新しい業種区分として設定するという考え方で対応したいとい うことです。今後、引き続き必要に応じて更に業種区分を適時適切に行うことを可能に するため、同一の業種区分の中でも災害率が異なる業種を適切に把握することができる ように、適用事業細目を適切に設定し、収支状況等のデータの収集・整備を行っていき たいと考えております。  2つ目の特例メリット制は、一般の継続事業場のメリットは増減幅が±40%ですが、 中小企業における安全衛生措置への取組を支援するというインセンティブ措置として、 そのような措置を実施する中小企業については、申請により、±45%の範囲で増減させ るという制度ですが、十分に活用されていないという現状があります。そのようなこと を踏まえ、活用の促進という観点から、特例メリット制の普及活動に努めるのはもちろ んですが、中小企業が取り組む安全衛生措置のメニューとして、対象となる安全衛生措 置の追加等を検討し、更なる活用を図っていきたいと考えています。具体的には、今回 の安全衛生法等の一部改正の中でも盛り込まれている、安全衛生マネジメントシステム に取り組む中小企業を対象にしていくことを現在検討しております。  ここには書いてありませんが、すでに当部会で審議いただいた有期事業のメリット増 減幅の見直しの問題については、今国会に提出されている一括法案の中に盛り込まれて おります。今後のスケジュールとしては、この基本方針を当省として年度内に策定、公 表した上で、料率改定については、平成14、15、16年度の過去3年間の給付等に基づく 数理計算を行い、必要な資料が公表できるようになった段階で、本年秋口以降の当部会 の場を中心にし、今後の労災保険率についてご議論いただきたいと考えております。 ○部会長  労災保険料率の設定に関する基本方針について説明していただきましたが、ご意見、 ご質問等があればお願いいたします。 ○杏委員  資料4の2の(2)激変緩和措置等について、質問とお願いがあります。平成15年か ら千分の±4という幅で上限と下限とを決めて、現在運用していると承知しております が、平成15年以前に、千分の±4よりも幅が大きかった時代がありましたか。 ○労災保険財政数理室長  ございます。労災保険財政が非常に悪かった昭和55、56年ごろですが、千分の10ほど 上がったようなところがありました。逆に、引下げにおいても千分の10ほど下がったよ うな時期もあります。それは業種によってということで、全体的にというわけではな く、個別の業種で見ると、そのような改正が行われた時期もありました。 ○杏委員  今後、見直しが行われる可能性は否定できないと考えておいたほうがよろしいです ね。 ○労災保険財政数理室長  ただ、引下げについては大きな引下げも災害が減ってくれば、当然考えられると思い ますが、引上げの段階については、基本方針(案)にもあるように、一定の激変緩和措 置という形で設けられるのではないかと思っております。 ○杏委員  次は要望ですが、平成15年4月に保険率の引下げが行われて、事業の大変なコストダ ウンに繋がり、ありがたく思っているところです。今後の保険率の見直しによって、保 険率が引き上げられる業種が出る場合は、当たり前ですが直ちにコストアップに繋がる わけですから、特に現在、円高傾向が続いていることも踏まえて、海外相手に競争して いる企業も国際競争力が非常に厳しい状態ということもありますので、急激な保険率の 引上げは是非避けていただきたい。これが要望です。 ○下永吉委員  私もお願いです。私どもの業界は建設業ですが、最近の工事施工については、機械 化、省力化に著しいものがあるわけです。また、これによって労働災害が大きく減少し てきているという実態があります。機械化率、あるいは危険度が全く異なる工事をひと まとめにしていることを我々は非常に問題視しており、事業の種類や保険率の見直しの 必要性を痛感しているところです。また、安全成績が優良な企業に対する保険料率の優 遇措置というものも、前々から申し上げているように、それなりの道理についてもそろ そろ見直しの時期にきているのではないかと考えております。秋口から議論に入ってい くということですが、できれば早めに基礎資料となるものを提示いただき、その場でお 互い十分な議論ができるような形を取っていただきたい、これは要望ですがよろしくお 願いいたします。 ○労災保険財政数理室長  平成14、15、16年の給付実績等が基礎資料となりますので、まとまり次第、この場を 通じて提示していきたいと考えております。 ○部会長  その他、ご意見ございませんか。本日、説明のあった基本方針の考え方については、 概ね委員のご理解が得られたと思いますので、事務局においては本日の審議を踏まえ て、基本方針の策定、公表の作業を進めてもらいたいと思います。最後の議題に移りま す。「事業主からの費用徴収制度の運用の改善について」、事務局から説明をお願いい たします。 ○補償課長  資料6に基づき、事業主からの費用徴収制度の運用の改善について説明いたします。 1頁には考え方等をまとめたペーパーがあり、後ろに関係条文、通達、規制改革会議で 指摘された事項について、参考までに付けております。1頁に基づきまして説明をさせ ていただきます。  労災保険法第31条に事業主からの費用徴収の規定がおかれておりまして、その1つと して、事業主が故意又は重大な過失により保険関係成立届を提出していない、いわゆる 未手続の期間中に生じた事故については、被災労働者には通常どおりの保険給付が行わ れるということを前提としまして、その保険給付に要した費用に相当する金額の全部ま たは一部を事業主から徴収することができるとされています。この費用徴収を行う場合 の徴収金の額については、これは労災保険法施行規則第44条により、厚生労働省労働基 準局長が定めることとされています。具体的には未手続の事業主に対して行う費用徴収 に関しては、訪問あるいは呼び出し等を通じた行政の直接的指導にもかかわらず、加入 手続を行わない事業主を「故意または重大な過失」と認定した上で、保険給付額の40% を費用徴収するという運用を行っているところです。  この未手続事業主に対する費用徴収制度について、一昨年の総合規制改革会議での 「規制改革の推進に関する第3次答申」、最終答申ですが、これにおきまして指摘があ りました。すなわち、「法律上、保険給付に要した費用の全部を徴収できるにもかかわ らずそのような運用をしていないことや、故意または重過失がある場合を限定的に解し ており、一部使用者のモラルハザードを助長している」という指摘を受けたことを踏ま えて、昨年の3月ですが、「規制改革・民間開放推進3カ年計画」において、未手続事 業場一掃に向けた措置として、その積極的な運用を図ることが閣議決定をされておりま す。  これを受けまして、3番の所ですが、厚生労働省においては未手続事業主に対する費 用徴収制度の運用につきまして、これまでは未手続期間中の災害のうち、保険関係成立 届の提出について、行政の直接指導を受けたにもかかわらず、その提出をしない事業主 について、故意または重大な過失に当たるものとして保険給付額の40%を費用徴収して おりましたが、今後においては、未手続期間中の災害にかかる費用徴収を故意の場合と 重大な過失の場合と、この2つに分けまして運用することとしたいと考えております。  まず故意のほうですが、保険関係成立届の提出について行政の直接指導を受けたにも かかわらずその提出をしない事業主につきましては、故意により保険関係成立届の提出 を行わないものとして、保険給付額の100%を費用徴収するということで、徴収率の引 き上げを図ることとしたいと考えております。また、保険関係成立届の提出について行 政の直接指導を受けていない場合でも、事業を始めてから相当の期間を経過してもなお 保険関係成立届の提出を行っていない事業主につきましては、重大な過失による保険関 係成立届の提出を行わないものとして、新たに費用徴収の対象とするという対象範囲の 拡大を図ることを考えております。なお、この場合は、従来どおり、保険給付額の40% を費用徴収するということを考えております。  そういった内容で検討しているところでありまして、パブリックコメントの手続を経 て、本年10月を目途に新たな制度運用を開始する予定としております。 ○部会長  ありがとうございました。ただいまの事務局の説明につきましてご意見やご質問があ りましたらお願いします。 ○須賀委員  ちょっと教えてください。総合規制改革会議からの指摘については、ある意味、もっ ともなところがあると思うのですが、なぜこういう運用で、つまり、40%徴収というこ とでこれまでやられてきたのか、何か過去に経過があるのだと思いますので、そこの状 況について説明をしていただけますか。 ○補償課長  未手続事業主に対する費用徴収制度は昭和40年の労災保険法改正のときに導入をされ たものですが、その当時から保険給付の40%とされておりました。40%という数値がど ういう根拠であったかということについては、現在残されている資料からは必ずしも判 然としないわけですが、1つ考えられることとしては、費用徴収制度が導入される、昭 和40年以前に設けられた給付制限制度においても、保険給付額の30%から50%を制限す るというような利率等が設けられておりまして、この点を考慮し、40%という水準が設 けられているのではないかと思います。 ○佐藤委員  60万件あって、直接行って「おい入れよ」と言わないとこれが発動しないということ ですね。現実に例えばここ2、3年そういう督促をどの程度やって、どの程度費用徴収 に及んだかを教えてください。 ○補償課長  平成15年度において、この未手続事業主に対する費用徴収の件数は、52件となってお ります。これは実際に費用徴収をした件数ですが、勧奨を、どの程度、何件したかとい うことについては、現在手持ちの資料がありません。 ○佐藤委員  例えば非常に怖い税務署だって、実徴率7%と言われています。労災の先端にある職 員は非常に大変だろうと思いますが、そういう数字もないというのはちょっとどういう ことですか。いま手元にないという意味ですか。  100と40はいいだろうと思うのですが、もう1つ聞きますが、では、算定基礎調査の 調査率というのはどのくらいですか。  何というか、議論の素材にちょっとならないというか、レクチャーにおみえになった ときに、私は「税務署の実徴率は7%ですよ」ということをあえて申し上げたので、そ れをヒントに持って帰られたと思っていたから、それなりのことをおっしゃるだろうと 思ってあえて質問したのですが、ちょっと今日のこの提案に関しては、基本的には賛成 なのですが、いま質問していることなんてそんな難しいことを質問しているわけではな いので、これは労災補償部の責任においてはすぐ答が出てしかるべきではないかと私は 思います。 ○内藤委員  別の件で、2つほどお聞きします。いわゆる重大な過失については40%の費用負担で よろしいとした根拠は、もともとの方法の40%の根拠はあまりないにもかかわらず、そ のまま40%としたというのはどういう判断なのかというのが1つです。それから、「成 立の日以降、相当の期間を経過してなお」と書いてありますが、この「相当の期間」と いうのはどのくらいの期間を相当とされているのか。と言うのは、加入するのはもう義 務づけられていますね。ですから、加入していないというのは即違反ですから、過失が あろうとなかろうと、保険に入ってなかったら100%その企業が負担するというのは、 もう一般的な、民間では当たり前のような気がするのですが、それを相当期間という幅 を設けて、なおかつ現行基準が曖昧ではない40%というものを適用された、その背景に ついて、わかれば教えてください。 ○補償課長  まず相当期間につきましては、保険関係成立後、現在のところですが、まだ詰めきっ ておりません。現在のところ1年から3年の幅の中でどこが適当かということで早急に 詰めたいと考えております。それから、40%につきましてはこれまでの基準でなってい るわけですが、そもそも未手続事業主に対する費用徴収制度については、保険給付に要 する費用そのものを賄う、保険支出したものを賄うという趣旨の制度ではありませんの で、あくまでも保険制度の健全な運営を図るという観点から、特に労働保険の適用の手 続の促進あるいはその履行促進というような観点から、そうした経済制裁的な規定を設 けまして、その自主的な履行を促進するということを第一義に考えている制度です。そ うした意味で、完全な故意と、そうでない重大な過失ということで2つに分けまして、 片や100%、片や従来の水準である40%とさせていただいているところです。 ○内藤委員  法律を知らなかったということをもって、責任は基本的に免れないでしょう。ですか ら、その40%といういまの運営が、ある根拠に基づいて正当なものであるということで あれば、これを継続するというのはうなずけるのですが、それはいまお聞きしました ら、何かこんなことで決まってますよということなので、むしろこの機会に6割に引き 上げるとか、そういう検討をしてしかるべきではないかと思うのです。要は、入ってい なかったら、万が一災害が起きたときには相当大きなペナルティーが課せられますか ら、ちゃんと入ってくださいよということがこの趣旨だと思うのです。そのことから言 えばそうではないかと思うのですが、その辺の検討は特にされなかったのでしょうか。 ○補償課長  この40%という水準はこれまではそういった水準であったわけで、それは、これだか ら40%という、資料は40年当時の資料で、ちょっと見当たらないのですが、1つ考えら れますことは、類似の保険である自動車損害賠償保険の取扱いを見ますと、被災者のほ うに明白な過失があった場合、これは70%以上の過失があった場合というふうに想定し ているようですが、その場合でも、20%あるいは30%、最高で50%という支給制限をか けているわけです。最高の50%の制限というのは、もうよほどのことでなければ適用が なく、相当厳格に運用されているというようなことが一方であるようです。それと、労 災保険制度の中でもともとありました給付制限制度、この中でも、給付の種類に応じ て、30%から50%という幅の中で制限をかけていたというようなことを参考にして、40 %という水準はおよそ妥当と考えております。 ○内藤委員  法律を知っていて3年間加入せず、災害が起きて、起きたらその費用の4割を負担す るのが妥当な取扱いだとは、ちょっと私なんかの感覚では思わないですね。10日とか20 日とか、ちょっとうっかりしたということでも私は過失だと思うのですが、人を扱うと いうことについて言えば。ですから、これは皆さんのご意見で結構なのですが、やはり ここに未加入で災害起こした場合には相当大きな負担を強いられますよということによ り、100%加入、この60万件が少しでも減るようにするためにはどうしたらいいかと、 こういう視点も必要ではないかと思いますので、意見として申し上げたいと思います。 ○高松委員  同じような関連になるのですが、私どもはいまいろいろな形で問題意識を持っており まして、それはこの労災保険にかかわらず、いまの社会保険制度そのものの取扱いで、 やはり未加入あるいは脱退という事例が増えてきている風潮の中で、最低限の企業の義 務として、それを果たしていない企業が、企業経営といいますか、労働者を使ってそう いうことをやっていること自身がまず違法ではないのかという視点で、いまいろいろな 形で検討会を開いているような状況です。やはり入口でもう少しきちっとした対応がで きるような方策を、考えていただけないかなという強い意向を持っております。そのこ とも踏まえて今後対応していただきたいなと思います。 ○須賀委員  ちょっと確認したいのですが、先ほど相当な期間、1年から3年でどこにするのかを まだ決めかねているという言い方をされたと思うのですが、ちょっとここ、もう1度補 足してもらえませんか。 ○補償課長  相当期間というのは、各局でのその取扱いの実態やその他の周辺事情も踏まえなが ら、1年から3年の間のどこが適当かということで考えていきたいと思っております。 ○須賀委員  労働側委員からだいぶ指摘をさせていただいているのですが、いま社会保障制度全般 が保険の負担をめぐって、これは私ども労働者も同じなのですが、言葉遣いが正確では ないかもしれませんが、社会保障逃れをしていて、その企業がコスト的に優位に立っ て、まともに社会保険料を負担している従業員も含めて、あるいは労働者も含めて、そ れを負担している企業が、ある意味馬鹿をみているという、こういう不公平が至る所で 起こっているわけですね。そこをある意味、相当な期間、先ほどおっしゃったように、 たぶんこれはいろいろな省庁によって、あるいは部署によって判断は違うのでしょうけ れども、つまり社会保険逃れというようなことをなるべく許さないというシステムにし ていくのが、私どもは本来の企業の社会的な責任ということがいま厳しく問われている 中で、本来果たすべき姿ではないかと考えているわけです。  それと、もう1つは、もちろん事業を起こしたり廃業したりというのが頻繁にありま すから、それを逐一きちっと追いかけていくというのは非常に行政的にも大変だという のも一方でわかるのですが、その一方で先ほど言ったようなことがあるということも、 よく念頭に置いていただいて、この相当の期間については、先ほど内藤委員からも指摘 がありましたように、事業を起こすからには、あるいは人を使うからには、きちんとそ れに必要な費用負担はすると、あるいはそのための費用負担をさせると、そういう視点 が私は大事だと考えていますので、ここについては、この改善の中身のことを反対して いるのではなくて、その入口にある部分のことについて、しっかりとした行政としての スタンスを出していただくようにお願いしておきたいと思います。 ○部会長  先ほどの佐藤委員のご質問について。 ○補償課長  算定基礎調査の件ですが、これについては平成15年度ですが、5万2,000余の事業場 を対象に実施をしておりまして、適用事業場数に対するウエイトとしては1.76%です。 ○佐藤委員  税務署のほうが熱心ですね。 ○労災管理課長  ちょっと1点補足させていただきます。社会保険逃れというような指摘もありました が、もともと規制改革会議で言われておりましたのも未手続事業場の一掃ということ で、その一環としてその費用徴収制度の適正な運営ということでございました。それ で、費用徴収制度だけではなくて、そもそも未手続事業場を一掃するという問題意識 で、これは労災補償部の直接の所管ではなくて、労働保険を徴収する担当のほうで取り 組んでいくということにしておりますが、これについてもきちんとした体制を組んで、 関係行政機関と連携したり、あるいは労働保険事務組合とも連携して、きちんと未手続 事業場を把握して、手続等をして、最終的には職権による成立といったことまで含めて 対応していくという方針を今年度中に決めて、来年度から実施していくということにな っております。その一環としてその費用徴収の問題についても適正にやっていくという 位置づけでありまして、ですから、社会保険にきちんと入るのが使用者の義務である と。また、それが全体の公平にもつながると。これはある意味、規制改革会議の指摘か らもきているわけですが、そういうような姿勢で行政としてはやっていくということを 報告させていただきます。 ○部会長  保険料の徴収とか、そういうのはこの部会の問題ではないのですが。 ○部会長  技術的な話ですが、労災保険の徴収とかは、厳密に言えばこの部会の問題ではないと いう話でして、どこでやるのかということをあえて言えば、結局1つ上の労働条件分科 会だろうということです。 ○須賀委員  徴収に関しては、私の記憶する限りでは、この部会ではたぶん扱えないのだろうと思 うのです。守備範囲ではないと思うので。そうすると、分科会のほうでやるということ になるのかもしれませんが。やはりこれは今日ここにお集まりのそれぞれの行政の窓口 の部署ではない所でご担当なさっているのだろうと思いますので、当部会として、この 改善方向についてどういうふうな取扱いをされるか、これから部会長がご判断なさる部 分があるのでしょうけれども、仮に一定の方向で取りまとめたときに、できましたらば そういう徴収にかかわる不公平をなくすといいますか、私が先ほど指摘したような部分 について、これを実施するに当たって、どういうふうに是正をさせていくのかというこ とについて、一定の方向性が出せる、あるいは行政としての姿勢が示せるようなそうい うものを是非要請をさせていただきたいと思います。もしこの部会でその議論が仮にで きないということになるのであれば、どこかの場できちんと議論をさせてもらうという ことをお願いしたいと思います。 ○労災補償部長  これは基準局の中で対応する話でございます。先ほど2人の課長から説明しておりま すように、そもそも未手続事業場をなくしていくというのが私どもの今回のこの制度の 提言ですので、今回こういう議論があったということを局内でも議論しまして、未手続 事業場に対してもいろいろな権限があるわけですので、それを積極的に活用していくと いうことでございます。これはその労災部分での内容ですが、それも含めて私どもの局 内でまた議論をいたしまして、その目的に向かってまた調整していきたいと思います。 ○佐藤委員  すみません、あまり追求しませんが、こういう故意あるいは悪質についてかけること は何も反対していないのですが、現実には60万件あって、上のほうからいろいろ言われ ている。未手続事業場をなくす努力をどうしているのかということについてお答えでき ないと言われると、ちょっとこのことを審議するのも、では我々にはそういう権限ない のかということになってしまうので、それはそれなりに説明できることを次回でいいで すから出していただきたいと思います。そうでないと、いや、ありますよと、そういう のに対してこういうペナルティーをかけますよという議論だけするのでは、それはこの 審議会としては、ちょっと権限が超えているか超えていないかの問題以前の問題だと思 うので、あえて申し上げておきます。 ○労災補償部長  いまのご意見を踏まえて十分に部内で対応します。 ○岩村委員  一言だけ。私の考えなのですが、いまのご議論を聞いていて、費用徴収の部分につい てはやや議論が混線しているのかなという気がします。というのは、これはあくまでも 未手続事業場の所で業務災害等が発生してしまって、そのときに保険給付は、政府が要 するに被害者のためにやるのですが、その給付額の全部または一部を事後的に事業主か ら徴収しましょうという、いわばペナルティーなのですね。しかし、他方で、いわば未 手続であるということが発覚した時点で、今度は保険関係の成立の時点に遡って時効に かからない限り、労働保険料の徴収というのは強制徴収ができるわけです。ですから、 ここは非常に微妙になるのですが、そうすると、遡って保険料を払ったことになるので すね。ですから、そういう意味では、100%徴収するのか40%徴収するのかというのは 本当に純粋にペナルティーの議論です。  しかもさらに厄介なのは、これが、今日のご説明でもそうですし、従来の取扱いでも そうなのですが、施行規則に基づく通達で全部やられていて、行政裁量でやっているの です。ですから、もし裁判所にかかると、この裁量が適法かという話になって、要する に犯した保険料不払いというものに対してペナルティーの比例が取れているかという話 になってしまって、非常に微妙な話になってくるのです。ですから、万が一、100%俺 は気にくわんと言われたときに、裁判所で勝てるかどうかという話になってしまうの で、なかなかそういうことを考えると、先ほどのご発言のご趣旨もよくわかるのです が、そう40を60にとかという簡単な話にはちょっとならないのかなと思います。  ですから、保険関係自体の成立あるいは強制徴収の問題と、未手続であった結果とし て給付をしなくてはいけなくなったときにペナルティーとして取るかどうかということ と、ちょっとレベルの違う問題なので、そこをちょっとご理解いただいた上で、この今 日の行政側の事務方の提案というものをご理解いただければと思います。もちろん40が いいのか60がいいのかという議論というのはあり得るし、100ではなくて120という、こ れは法律上できませんが、そういうことだってあり得るのかもしれない。いずれにして も、ちょっと微妙なバランスがあり得る。とりわけ、例えば60にすると、なぜ40を60に したのだという話が当然出てくることになりますし、行政側としてそれを説明するとい うのもなかなか難しい所があるのかもしれないというような気もします。 ○部会長  ありがとうございました。 ○内藤委員  私もそういう心配をしておりまして、これを100にすると、いわゆる労災に掲揚しない で自分の所で全部やってしまうという可能性が、どちらも同じだとなれば、労災隠しに つながるという可能性もないわけではないのですが、質問したいのは、(1)の100%を費 用徴収する場合も、いま先生がおっしゃったように、個々に遡って保険料は強制徴収す るのでしょうか。 ○補償課長  2年間の時効がありますが、その間は遡及して徴収します。 ○内藤委員  遡及した上で100%ということですね。 ○補償課長  はい。 ○部会長  そのほかございませんでしょうか。 ○紀陸委員  先ほどの、保険料改定のこのルール設定の問題、ちょっと私どもとして一言お願いを 申し上げておきたい。メリット制の問題で、これは前から私どもが主張してきた点です が、要するにメリットの幅をもっと広げてほしいということです。この問題は、これか らずっと私どもとしても主張させていただかなければいけないと思っておりますし、こ の特例メリットをやっていただく点は大いに評価をさせていただきますが、これだけで はなくて、メリット料率の拡大、それと併せて収支率、現行で例えばいちばん下の収支 率が10%でも、メリット料率でマイナス40にしかならないわけですね。これではやはり インセンティブの幅が乏しいというような産業界の意見が強くて、メリット料率の幅の 拡大と同時に、この収支率との組合せの問題も併せていろいろご検討をしていただきた いと考えておりまして、その件だけちょっと申し添えさせていただきたいと思います。 ○部会長  ありがとうございました。そのほかございませんでしょうか。 ○佐藤委員  またメリットの問題は、それはそれで議論させていただきます。それと、事業分類と いったって、これを見ればわかるのですが、こういう社会を構成しているのは、非常に 複雑に入り交じった産業が、いまの日本の工業社会、産業社会、資本主義社会を構成し ているわけで、その単品だけのものというようなものの考え方は、非常に危険だと思う のです。だから、社会保障的考え方、社会保険的考え方というのを一定部分持つという のは、これは正しいと思うのです。とことん追求していくと、もう個別事業場ごとに算 定しましょうということになってしまうので、ここは慎重な議論をさせていただきたい なと思います。 ○部会長  ありがとうございました。いろいろご意見を伺って当局に宿題がたくさん出た感じで ありますが、ほかにありませんか。よろしいですか。それでは今後の日程について事務 局から説明をお願いします。 ○労災管理課長  次回の部会についてはまた別途日程調整をさせていただいた上でご案内したいと思い ますので、よろしくお願いします。 ○労災補償部長  では、最後に一言ご紹介とご挨拶をさせていただきます。この部会の委員の任期は4 月10日までとなっておりますが、保原部会長におかれましは今期限りをもってご退任さ れるということなので、ここでご紹介をさせていただきたいと思います。保原部会長に おかれましては、現在の部会の前の審議会時代から、非常に長きにわたりましてご指導 を賜ったわけです。もちろんこの間、いろいろな法律改正、制度改正、いろいろな案件 等も含めましてご指導をいただき、労災補償行政の推進に格別なるご尽力を賜りました ことを、この場を借りまして御礼申し上げたいと思います。本当にありがとうございま した。 ○部会長  長い間ありがとうございました。私が労災に関わったのは昭和45年でありまして、も う本当の大昔ですが、通勤途上災害調査会というのが、この労災保険審議会のもとに出 来まして、そのとき、たまたま私が通勤災害のことなんかやっていたものですから、委 員になりまして、そのときは、私の親父のような年の人の中に入って、坊やなどと言わ れてやっていたのを覚えております。それ以来ずっと何やかんや労災保険に携わってま いりまして、ちょうど35年ぐらいの間やらせていただきました。ごく最近では労災保険 の民営化とか大変な問題もありましたが、みんなで力を合わせて何とか乗り切ってここ までまいりました。今回で退任させていただきますが、委員の皆様や当局の皆様をはじ め、多くの方々にお世話になりまして、ここまで何とかやってまいりました。本当にあ りがとうございました。  最後の私の仕事ですが、本日の議事録の署名委員は、労働者側は高松委員、使用者側 は紀陸委員にお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。本日はありがとう ございました。                照会先:労働基準局労災補償部労災管理課企画調整係                    電話03-5253-1111(内線5436)