05/02/18 第27回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会議事録    第27回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会 議事録 1 日時  平成17年2月18日(金)10:00〜12:00 2 場所  厚生労働省共用第8会議室 3 出席者 [委員]  奥平委員、勝委員、小山委員、齋藤委員、佐藤委員、            讃井委員、菅井委員、鈴木委員、田村委員、都村委員、            中山委員、成宮委員、堀越委員、山路委員       [事務局] 松井勤労者生活部長、宮本勤労者生活課長 4 議題 (1)累積欠損金の解消に向けての目標の設定等について (2)平成16年度における利益の見込額について 5 議事内容 ○齋藤部会長  第27回の中小企業退職金共済部会を開催いたします。今日は下永吉委員がご欠席で す。本日の議題は、「累積欠損金の解消に向けての目標の設定について」と「平成16年 度における利益の見込額について」です。この2つの議題は、それぞれ密接に関係する と思いますので、事務局からまとめて資料のご説明をいただいて、議論を進めたいと思 います。なお、累積欠損金の解消については、だいぶ議論をしてきましたので、そろそ ろ具体的な案を事務局で用意していただいて、それを基に議論を進めようではないかと いうことを前回申し上げたと思いますが、その案が出てきていますので、それを土台に して議論を進めたいと思います。それでは資料の説明をお願いします。 ○宮本勤労者生活課長  初めに資料の確認をお願いします。今日は、資料1、2、3という3部セットになっ ています。資料1は2頁もの、資料2も2頁もの、資料3「参考資料」とありますの は、最終頁が11頁になっています。それでは資料のご説明をいたします。  資料1の1頁は、前回お示しした資料を若干ご指摘に沿って修正をかけてみたもので す。前回のご指摘の中で、特にいちばん右の欄、「現行ルールを維持しつつ年度ごとに 解消すべき額を達成するために必要となる利回りの目安」の算出に当たっては、今後ど のぐらい被共済者の方が増える見込みなのか、あるいは退職者の方がどの時点でどのぐ らいになるかにより、それぞれの残高の推移があるだろうから、そういったものも考慮 する必要があるのではないかというご指摘がありましたが、今回の推計については、そ ういった予測数値は今後増えるということは、我々も見込んでいるわけですが、その増 え方についての見込みなり、中期目標に掲げられているような数字を見込むことによ り、この数字が少し下がってくる、資産が今後増えてくるだろうということになります ので、どのぐらい増えるかという見込みをするというか、逆に言うと利回りがどのぐら い下がるかという見込みをするということがありますので、若干厳しめの数字で考えた ほうがいいのではないかと思い、資産額が増えるかどうかということについては、資産 は今後も一定である、という前提を置いています。  ただ、今回は例えば9年間でいくと上の表で3.05%〜2.82%という幅になっていま す。順次累積欠損金を解消していくと、解消した分、資産が相対的に増えることにな り、それに伴って同じ298億、192億、141億という数字の割合が、だんだん分母が大き くなるといったことから下がってきます。その幅で、最初にスタートするときには3.05 %だったものが、例えば9年間の最終局面では2.82%、14年間では最終局面が2.16%と いうように、だんだん落ちてきます。その辺の効果を見込んだ数字として掲げていま す。同じように下の表では、林退共部分について、同様の考え方に基づき、右の欄「解 消すべき額を達成するために必要となる利回りの目安」について、幅で表示していま す。  2頁は、利益の処理のイメージについてです。具体的な案として、これまでいろいろ いただいたご意見を事務局なりに斟酌し、大まかに2つの案、<案1>と<案2>を用 意し、その中でさらに、どのぐらいの計画期間にするのかということで、いくつかの選 択肢を<案1><案2>それぞれに設ける形の案を、今回、叩き台として用意いたしま した。  <案1>から説明いたします。<案1>の基本的な考え方は、現行の予定運用利回り は1%ですが、これはやむを得ず設定しているもので、その引上げを図ることが今後重 要であろう、不断の努力を行って引上げをしていかなければならないということを中心 の哲学に据えています。したがって、付加退職金の支給率の決定に当たっても、加入者 の増加、退職金の資産のさらなる効率的運用、累積欠損金の早期解消が優先課題になる という位置づけで処理をしようとするものです。  具体的にどうするかということですが、<案1>に棒グラフが3つ並んでいます。こ れまで「目安額」と呼んでいたものですが、簡便化のために言い換えて、「年度ごとに 解消すべき額」という形で略称させていただきますが、この「目安額」との関係におい て、それぞれの今後の各年度において、どういう利益の状況だったときにどう考える か、という処理を場合分けして図示したものです。  いちばん左の棒グラフは、「年度ごとに解消すべき額」に比べて、利益が下回ってい る場合ということです。このときには、<案1>では、利益の全額を累積欠損金の解消 に充てる。したがって、付加退職金はこのときにはないという案になります。  真ん中の棒グラフは、利益の額が「年度ごとに解消すべき額」を上回ってはいるが、 それほど十分ではないというようなケースです。このときは、利益の額が上回っている 場合の上回る額を付加退職金の原資に充てるということです。  ただし、際限なくいくのかということですが、それはいちばん右側のような形で、再 び累損解消分に充てる部分として考える幅を設けてはどうか。付加退職金の原資の額が 「年度ごとに解消すべき額」を超えるとき、つまり非常に高い利回りがあり、「年度ご とに解消すべき額」の倍になる。ちょうど倍になると、付加退職金の原資の額と累損解 消に充てる額が等しくなるわけですが、それよりもさらに利益の額が大きいような場合 ということです。このときには、2倍の額を超える、網掛けになっている部分につい て、累積欠損金の解消に充てて、累積欠損金の早期解消を図るという案です。  <案1>の考え方は、基本的には予定運用利回りの引上げ環境を早く整えるというこ とを眼目に置いており、したがって単年度に返すべき額もなるべく大きくしたほうがい いだろうと考えていますので、いくつかの選択肢はあるわけですが、<案1>の考え方 に基づいて、もしどれかを選択するということになるとすれば、解消までの年数は9年 または14年、その場合にはそれぞれ「年度ごとに解消すべき額」は、9年では298億、 14年では192億という数字で考えてはいかがかという案です。  一方、<案2>の右の欄ですが、同じように現行の運用利回りはやむを得ず設定して いるわけですが、付加退職金の支給によって被共済者の皆さんが被っている不利益とい いますか、甘受している部分を何らかの形で、付加退職金という形で緩和する必要があ るということを、この哲学の基本に置いている案です。したがって、加入者の増加や <案1>と同じように、退職金の資産のさらなる効率的な運用といった課題について は、優先課題と位置づけつつも、一方で累積欠損金の解消だけを図るのではなく、累積 欠損金の解消と被共済者の不利益緩和の均衡を図りながら処理するという考え方です。  具体的にどのように処理をするかということですが、<案2>も同じように、「年度 ごとに解消すべき額」と、各年度における利益の大きさがどういう状態になるかによ り、累積欠損金と付加退職金への原資の配分の考え方が少し違ってくるわけです。棒グ ラフのいちばん左側は、<案1>と同じ作りにしていますが、利益が「年度ごとに解消 すべき額」を下回っている場合ということです。この場合には、利益の全額を累積欠損 金の解消に充てる、したがって付加退職金はなしということになります。  一方、真ん中の場合は、「年度ごとに解消すべき額」について、ある年度の利益が、 その額は超えているがそれほど十分ではないというようなケースを想定しています。こ のときには、「年度ごとに解消すべき額」を上回っている額を付加退職金の原資とする という考え方です。<案1>と同じような考え方ですが、それが際限なく付加退職金に いくのかというと、そうではなくて、いちばん右側の棒グラフにありますように、付加 退職金の原資の額が「年度ごとに解消すべき額」を超えて、「年度ごとに解消すべき額 」と付加退職金の原資の額に等しくなる額、「年度ごとに解消すべき額」の2倍の利 益、またはそれ以上の利益があったときには、それ以上の利益について、超える分の2 分の1を付加退職金の原資に充て、残りの2分の1を累積欠損金の解消に充てるという 考え方です。網掛けになっている部分が累積欠損金の解消に充てるべき額というイメー ジで、白抜きの部分が付加退職金の原資に充てるという考え方です。  例えば、<案2>のいちばん右の棒グラフですが、このときはちょうど網掛けの部分 の面積と白い部分の面積が等しくなるという仕組みになっています。つまり、<案2> では、基本的な考え方が累積欠損金の解消と被共済者の皆さんの不利益の緩和の均衡を 図りながら、ということを哲学の基礎に置いていますので、原則として現行の方式はな るべく踏襲するということで、いちばん右の利益が十分あるときには、現行の2分の1 ルールと同じ結果になるということになります。ただし、利益が「年度ごとに解消すべ き額」の2倍を下回るときは、2分の1ルールをそのまま適用すると累積欠損金を解消 すべき額、網掛けの部分の額が目標額に届かなくなってしまいますので、そのときは目 標額のところまで累積欠損金の解消額を優先してはどうかという案です。  <案2>は<案1>に比べて累積欠損金の解消だけを目的としていないというところ があり、この場合には累積欠損金の各年度に充てる額も少し下げないと、付加退職金の 原資の部分が生じませんので、解消までの年数を14年または19年とするという、この2 つがあり得ると思っています。したがって、事務局で用意した案は、<案1−1>の9 年間、各年度298億円を「年度ごとに解消すべき額」とする案と、それを14年、192億で 考えるという<案1−2>と、同様の考え方で<案2−1>と<案2−2>という4パ ターンのものを、ここの議論の叩き台の材料として今回用意しています。  なお、次回以降の話になろうかと思いますが、いずれかの案の形、あるいは現行の2 分の1ルールの修正を何らかの形でお願いしたときに、法令上の処理をどうするかとい う問題があるわけですが、それはそれとして、また別に検討をお願いしたいと思ってい ます。  資料3の1頁は、法令集の抜粋ですが、そこにありますように法律の第10条第4項 で、付加退職金について率の決定の手続、考え方が定められています。ここでは「運用 収入の見込額その他の事情を勘案して、労働政策審議会の意見を聴いて定める」ことと されています。具体的にどうするかということが問題になるのは2頁の省令の第17条1 項、2項です。現行の配分方式を何らかの形で変えたときに、第17条の1項、2項の修 正が必要になる可能性がありますが、ここをどこまでこの省令ではっきり書き込むか。 そこで明らかにならない部分については、別の文書の形、例えばこの審議会での決定事 項、審議会での内規のような形として文書を定めるか、あるいはすべてを省令で書き切 ってしまうか、いろいろなやり方があろうかと思いますので、これについては本日のご 議論の結果によって、事務局で用意することが必要であれば、その段階で次回辺りに形 式も含めてご検討をお願いしたいと思っています。  資料2の1頁で、平成16年度の収支の見込みについての報告を書いています。今年度 の収支の見込みの数字は、いちばん右の欄、「平成16年度(見込み)」とある、この数 字です。単位は億円です。初めにお断りしなければいけませんが、12月の審議会におい て、この運用収入の欄、今回は589億という数字を見込んでいますが、この数字の算出 については、12月末の実績の残高を基に、1月のベンチマークの動きでその残高で延ば し、1月末の数字を推計して報告をすると申し上げていましたが、実は審議会が今日の 日程でしたので、実績のとりまとめが間に合い、本日ご報告しています589億というの は、1月末の実績の残高に基づいて計算された委託運用部分と自家運用で行っている見 込みの利益です。次回の報告は、日程の都合からいって2月末の確定値をご報告できま せんので、12月の審議会で説明しましたように、1月の確定値に2月のベンチマークの 動きなどを勘案し、それから推計される残高に対する委託料、委託の場合は信託報酬か ら手数料相当分を差し引いたものが運用収入となりますが、それから計算される運用収 入で報告させていただきたいと思います。  この結果ですが、今年度の見込みは、収入は約4,000億円程度が見込まれています。 それに対する支出は約3,750億程度ですので、現時点における損益計算上の金額は273億 円程度となります。この273億円が、今後絶対に動かないかというと、必ずしもそうで はありません。大体この辺の数字だろうとは思うのですが、年度末にこれだけ絶対にあ るわけではないということを、念のために申し上げておきたいと思います。2頁は、そ れぞれの掛金収入や退職金支出、あるいは責任準備金等の増減について、どういう考え 方で、どういう手法で計算をしたのかということを説明した資料ですので、この場での 説明は割愛させていただきます。  参考資料については、審議の時々で説明なり、ご質問があればお答えのところで利用 するということにさせていただきたいと思います。新しいものとしては、各審議会のた びごとに、一般の中小企業退職金共済事業の直近の資産運用状況について報告をしてい ますが、その1月末版の実績値です。自家運用の欄は、機構が自ら債券、国債等を購入 し、満期保有している、運用によって行っているものです。  小計の欄の下のほうに、金銭信託と生命保険資産(新団体生存保険)とありますが、 これは民間の信託銀行や投資顧問、生命保険会社に運用をお願いしており、その時々の 市場の変化や投資行動により残高が変化、それに合わせて時価で評価するという形で運 用している部分です。具体的な資産の内訳については、その下の欄、「金銭信託及び新 団体生存保険」にありますように、時間加重収益率、4月以降累積して、1月までの間 でどのくらい収益率が上がったか、それに対するベンチマークの収益率はどうだったか ということを表にしています。  単年度で金銭信託や新団体生存保険において、どのぐらい収益率が上がるのかという 問題は、近代投資理論に基づいて計算されていますが、その基本的な考え方の骨子は、 それぞれの資産にどれだけの資産を割り当てるか、自家保有で何パーセント持ってい て、金銭信託や新団体生存保険にどのぐらいの割合を割り当てるか。基本的に今、7対 3から6対4の間ぐらいで自家運用の割合が多くなっていますが、さらに金銭信託等に 振り分けているおよそ30%強の資産についても、それを国内債券、国内株式、外国債 券、外国株式のどこにどれだけ割り当てるのかにより、当然期待収益率が変わってきま す。  前回も事務局からご説明しましたが、今後何年間ぐらいで累損を解消していくか、そ のためにどのぐらいの利回りが必要かということが明らかになりますと、それに応じて 各資産に割り当てる金額、比率、もう少し大きく捉えると自家運用と金銭信託等の民間 に委託して運用している資産の割合といったものも、最適な数値を検討し直して、それ に合わせて運用を見直すということが必要になりますので、この審議が終わりました段 階で直ちにその作業に着手させていただきたいと思っております。  とりあえず事務局からの資料の説明はこれで終わります。後ほどご質問等があれば、 またご説明させていただきます。 ○齋藤部会長  ただいまの説明について、ご意見なりご質問がありましたらどうぞ。 ○田村委員  先ほどの説明の中で、1月末の推計値273億というのが出ていますが、これが確実に あるわけではないという発言をされました。これはどういう意味ですか。 ○宮本勤労者生活課長  これは1月末の残高の実績値です。あまり希望的観測を持たないようにお願いしたい わけですが、このときの株価、配当込みの数値と、先週末、2月10日(金)の数値を比 べると、実は先週末のほうが高いのです。円レートについても、1月末よりも2月10日 のほうが円レートが円安に振れていましたので、その分だけ海外資産の評価額が大きく なっています。まさに今日この時点の数字を推計すると、たぶんもう少し残高は大きく なると思います。そうなると、当然、信託報酬を控除した後の利益も、委託部分が大き くなりますので、実際には今日この時点を計算すると、もう少し大きい数字になる可能 性があります。ただ反対に経済の変動要素がありますので、次回に報告をするときに は、もう少しこの数字が小さくなる可能性もありますという意味です。 ○都村委員  前回は、累積欠損金の解消における目標の設定ということが最初に議論になったわけ ですが、今日の説明を聞くと、解消と被共済者の不利益緩和を図るという点に少し重き を置くかどうかということが、累積欠損金解消までの年数に関連してくるということで すね。<案1>と<案2>で、<案2>のほうは解消までの年数をやや長くとったほう が、被共済者の不利益緩和を図ることも両立できるということですから。目標の設定と いうことは、独立ではなくて、前提をどう考えるかということと関連があるということ ですね。 ○宮本勤労者生活課長  基本的にはそういうご理解をしていただいた上で、どういう手法でということと、そ れを何年間でということが相互に関連する、というご理解で審議をお願いしたいと思い ます。なお、累積欠損金の解消と被共済者の不利益の緩和の均衡を図りつつと申し上げ たのは、基本的には平成10年の建議に書いてありますような、これとこれとその2つを 勘案してという言い方がされていました。今の説明では別の言葉に変えていますが、基 本的には建議の発想がありますのでということを申し上げたつもりです。特段、新しい ことをここで申し上げているつもりはございません。 ○佐藤委員  利益処理のイメージですが、このように見せてもらうとイメージだからよくわかるよ うなのですが、さっぱりわからないというのが正直なところです。要するに、非常に少 ない利益しか生まなかったとき、次はいちばん生んだときの半分ぐらい、というような 絵ですが、例えばこの<案1>のいちばん少ない状態で、全部を累積欠損金の解消に充 てる、これは「年度ごとに解消すべき額」といっているのですから、どれぐらいの運用 が行われた場合という予想を立ててみるわけですか。 ○宮本勤労者生活課長  1頁の表と関連するわけですが、<案1>で「年度ごとに解消すべき額」の欄をもし 9年間、298億という形で仮にセットするとしますと、このときの必要利回りはおよそ 2%になります。さらにその倍のところ、細い点線の部分は、スタート時点では3.05% ぐらいということになりますし、14年間を仮にということにしますと、「年度ごとに解 消すべき額」192億を達成するためには、1.64%、その上の細い線を達成するときの水 準が、スタート時点ではおよそ2.34%という数字になります。この下にもう1つ、予定 運用利回り1%がありますので、考え方としては1頁にある数字の各年限、298億円、 例えば1%になりますとありますが、下のラインは1%の数字、上のラインはそれを2 倍した数字ですが、その下に予定運用利回り1%がありますので、今のような数字の結 果になります。  一方、<案2>の場合には、「年度ごとに解消すべき額」の少し太い点線の部分で、 もし仮に14年間192億をこの水準と考えると、その水準が1.64%、その上の点線に相当 する部分がスタート時点でおよそ2.34%。19年では下が1.47%で上のほうが2.01%に概 ねなろうかと思います。 ○齋藤部会長  わかりにくいですね、表の1頁と2頁の関連をもう一度説明してください。 ○宮本勤労者生活課長  表の2頁を見ていただきたいと思います。1頁の表から計算されるわけですが、結論 だけ申しますと、2頁の<案1>の横に2本線が引かれていますが、「年度ごとに解消 すべき額」に相当する点線のところが9年で、ここが298億の水準だとすると、これが 2.0%になります。 ○齋藤部会長  1頁は関係ないのですか。 ○宮本勤労者生活課長  予定運用利回りは下に沈み込んでいますので。計算していくと、298億は1%に相当 すると計算されていますので、予定運用利回り1%に298億が相当する金額1%が足さ れておよそ2%になります。さらに、その上のラインは、そのさらに上の数字になりま す。今、幅でお示ししていますが、端数が出ていますので少し計算が違いますが、これ が3.05%になるということです。14年間では、同じように計算すると、2頁の<案1> の下の点線の部分、「年度ごとに解消すべき額」が1.64%になります。1%+0.64%、 上の点線部分は、1%+0.64%の約2倍で2.34%という数字が入ってきます。  <案2>については、2頁の右の棒グラフで、「年度ごとに解消すべき額」の横の点 線を14年間を想定すると1.64%、19年を想定すると1.47%、このときは1%+0.64%、 1%+0.47%の数字になります。その約2倍に相当する利回りは、14年を想定すると 2.34%、19年を想定すると2.01%ということになります。 ○佐藤委員  議論を深めたほうがいいとは思うのですが、要するに日本の経済状況がどうなるかわ からない、運用利回りもどうなるか、予想するのは困難だと、冒頭にそういうお断りを なさった上で、それでも予定運用利回り1%にしておいて、累損の解消年限と数値目 標、解消額を決めるというのは、何だか雲をつかむような話というか、そこのところが わかる人はわかるのかもしれませんが、19年ぐらいかかって解消し、毎年見直していく のだというぐらいの結論なら、「ああ、そうか」ということも言えるのですが、ちょっ と数値目標にこだわりすぎているのではないかという印象を与えるのですが、どうです か。 ○宮本勤労者生活課長  確かに説明が不十分な点があり、申し訳ありません。ただ、投資や資産運用で今、ど この信託銀行や銀行でもやっている考え方、あるいは公的年金等でやっている考え方 は、長期で見たときに多少のブレがあるが、単年度ごとに見るといろいろな変動があ る、上がったり下がったりはあるが、平均的に見れば、このぐらいの利回りで、このぐ らいのバラつきでというものをある程度前提にして運用をする。ただし、それは平均値 でしかありませんので、何年か積み上がってくるとそのぐらいの利回りになりますとい うことですので、ここで設定している9年、14年、19年という数字は、長期で見た平均 的な値だということです。それに対して、私がこの数字で安心しないでくださいと申し 上げたのは、短期の、非常に短い期間の推計の話ですので、長期の数字と比べると良か ったり悪かったりすることもあり得ますので、これがいつもの状態ということではあり ません、という意味で申し上げたのです。  うまく説明できずにわかりにくいかと思いますが、必ずしもそこが両立しないという ことではないと思いますし、見通せないからその場主義でやればいいということでは、 国民の信頼を得られないという部分もあろうかと思いますので、ある程度のきちんとし た目標なりを定めておくことは、やはり必要なのではないかと考えています。 ○讃井委員  議論の前提として確認をさせていただきたいのですが、解消の目安期間を9年でも14 年でも19年でもというときに、決してその間ずっと予定運用利回りを1%にしておくと いうわけではないですよね。そこを据え置く、その期間はずっと1%というわけではな いわけですね。 ○宮本勤労者生活課長  累損解消を優先課題と考えるならば、可能ならば据え置かせていただければ、私ども としては累損解消には役立つかなと思います。ただ、そこは審議会のご意見を聴いてと いうこともありますし、法律に少なくとも5年ごとには見直すようにという規定があり ますので、その時点その時点で見直しをして、もし条件が整っているならば。つまり、 政令事項ですので、これは厚生労働大臣だけが決定できるものではなく、各省に相談を し、各省の了解が得られるならば、見直しもできるということです。ですから、絶対に 据え置きであるということではないと思いますが、いつでもできるというものでもない だろうと思います。 ○勝委員  予定運用利回りを据え置きというのは、今のお話でもある程度考えているということ ですが、むしろ予定運用利回りを、いかに早く他の、例えば退職金の利回りに近づける ような形で上げていくか、ということのほうが重要なのではないか。そのことから考え ると、例えば今年の運用の実績を考えると、大体2%はとれるわけですね。たぶん、こ こ数年は2%から3%の間で利回りは回ってくるだろう。そうすると、例えば9年の場 合だと2%、14年では1.64%というお話がありましたが、付加退職金は必ず出てくると いうことが現実を考えるとあるわけです。運用利回りを1%に据え置いて、付加退職金 をつけるよりも、最初から運用利回りを1.2%なり1.3%にして、それを上回った分に関 しては累損を解消するといったほうが、むしろ健全な形になるのではないか。予定運用 利回りをどうするかということも考えて、総合的に判断しなければいけないのではない か。つまり、目先のことだけを考えて、付加退職金で配分することが重要なのか、ある いは運用利回り自体を上げて、もう少し魅力的な制度にしていくことが重要なのか、そ の辺も考えなくてはならないのではないかと思います。 ○宮本勤労者生活課長  私の説明が不十分だったようです。勝委員がおっしゃるとおりだと思います。 ○讃井委員  今のご意見に賛成です。累損解消のためにとれる手段がいくつかあるかと思います が、1つは加入者の拡大ということですね。そのために必要なことは制度の魅力という ことで、やはり信頼性や安定性ということがありますが、付加退職金も利回りが低いと きの補う手段としては魅力にはなるかと思います。金利情勢、経済情勢が変わっていっ たときに、やはり他のものに比べて予定運用利回り自身の数字が見劣りがするというこ とになると、制度の魅力が非常に損なわれるという気がいたしますので、それはある程 度情勢に合わせて変えられることが必要だと思うのです。  そのために何が必要かとなると、前提条件としては、確実に累損を解消していく。掲 げた目標を確実にクリアしているというところが前提とならないと、やはり予定運用利 回りを上げるということも可能にはならないのではないかと思います。やはり第一義的 には、累損の解消目標をきちんとクリアしていくことが、いちばん重要なのではないか と思います。そうなると、利益の処理のイメージですが、「年度ごとに解消すべき額」 に点線がありますが、やはりここまでは絶対に、何としてでも解消しなければいけな い、これが重要だと思うのです。そこから出た部分をどうやって配分するか、というこ とになってくるかと思います。  その意味で、点線で切ってあるそこから上の部分の配分を考える、という考え方は基 本的には賛成です。ただし、点線まで届かないというところがあるわけですね。金利の 動向等によりますが、どのぐらい点線に届かない場合が出てきて、それを超える場合が どのぐらいあるかという出現率のようなものがどうなのか。予想はできないとは思いま すが、やはり届かない部分もあるであろうという想定の下に、利益の配分を考える必要 があるのではないかという気がいたします。付加退職金という制度そのものの持ってい る性格といいましょうか、利益が出たときは配分されるが、利益が出なかったとき、赤 字になったときに、それを解消する手段は何もないわけですから、その辺も十分に勘案 して、点線を超えた部分の処理を健全なもので考えていく必要があるのではないかと思 います。 ○齋藤部会長  ほかに何かありませんか。 ○小山委員  この解消の目標数値を設定するということにこだわらざるを得ない、という外的な要 因等は前回いろいろ説明いただきましたから、わからないわけでもないのですが、そも そも累積欠損金とは何なのか。前回も若干議論がありましたが、普通の会社の欠損とは 話が全く違うわけで、どこかからその赤字分を借金をして、金利を返しながらそこで賄 っているというわけではなく、実際上どこにも迷惑はかけていないわけです。たまたま 計算上そうなるというだけで、お金がその場で足りないというわけでもない。しかし、 どこに問題があったかというと、実際の運用利回りよりも予定運用利回りが高い設定が されていた、ということが問題であったわけです。  1%に下げるという決断を我々がしたのは、それもかなり大目に下げた、要するに必 要以上にと言ったほうがいいかもしれませんが、利益が出やすいように1%に下げたと いうことで、労働側もかなり加入者に対してマイナス要因がありながらも決断をしてき た。だから利益が出た場合の2分の1は付加退職金でという制度を使って納得をしてき たという経過があるわけです。ここで累積欠損金とは何かということをもう一度考えて みる必要があるのではないか。私はどこにも迷惑をかけていないということに立って物 事を考えていかないと。実際に、これに入っている中小企業の加入者にとって、本当に 退職金制度として有効なものにしていくということから考えて、一体どうなのかという 観点でいかないと、数字ばかりが目の前で先走りするような傾向があるものですから、 その点について改めてご説明をいただきたいと思います。 ○松井勤労者生活部長  予定運用利回りという言葉が悪いのかなと思ったのですが、実はこの予定運用利回り は、いくらお支払するという退職金の額を計算する基礎なのです。つまり、掛け金を何 カ月かかけていただいたら、少なくとも1%で回して、掛けた額だけ何年何カ月したら お支払いしますという、支払う額を確定するための道具なのです。平均1%なのです が、長くなればなるほどそれが少し上回るようになっていて、低いとそれを下げて、平 均値で1%にしています。退職金の給付額を確定するための道具で、ですからこの利回 りは絶対に確保しなければいけません、予定はこれだけですといって運用しているわけ です。そして、運用益が出たらその分をどうするかという計算です。  給付額が確定している中で運用は波があるわけです。以前は4%ぐらいの率で描いた 給付額で、それではいくらやっても赤になる、累損が出ていたわけです。あるとき、そ こにいる方々に退職金を支払わなければならないというときに、その時点でお金が全然 足らないというのが累損で、支給事由が発生したときに、直ちに今より支給開始は困る というのがこの累損の問題なのです。それで、出すべき確定された額と、それに必要な 資産をどのぐらいためておくか、同額であればこの運用団体は安定しているからお客さ んは安心して入ってくださる。ところが、累損があれば、出さなければいけないときに 十分な資産がない。そういう団体は、あやしいから入りませんということが起こる。こ れは、生命保険や、共済集団を組んでいる団体について言えることです。  つまり、予定して出さなければいけない額と、それに見合う資産がいつも必ずあるか どうか、累損を出さないようにというモデルになっているということですので、予定運 用利回りという言葉にあまりとらわれないで、むしろ給付額を確定するためのベースの 数字だと見ていただきたい。累損がある中で、それまで予定運用利回りを4%ぐらいで 描いてあった給付カーブをずっと下げて、それぞれの方に出す額を下げますということ をお願いしました。ここで苦汁の決断をしていただいたわけです。そういう中で、累損 があるときに、もし利益が出たら、それを累損解消分と、下げた分を補うために給付に 充てますということで、この2分の1ルールを作っていただいたと認識しています。で きれば、この退職金カーブ、給付額を上げることを本気でやっていただきたいという話 だったと思うのです。ところが、それをある時点でやってしまうと、そこで約束する と、今でも累損が出ているのに、運用が駄目になるとまた赤字になるかもしれないか ら、とにかくいちばん下の額で約束をした。  春闘の盛りですが、例え話で申しますとベースアップはしない、要するにボーナス配 分だけでやりましょうと。ベースアップをすべきなのですが、ベースは落としておい て、いわゆる賃金カーブそのものは維持する。それを低水準で維持しておいて、利益が 出たときにボーナス配分をしようというイメージなのです。恒常的に利益が出るように なれば、このカーブを上げる、要するにベースアップするということを本当は狙いたい のですが、それができない構造の中でどうするか、という苦汁の決断だったのです。と ころが、その後のいろいろな事情の中で、この集団として計算上の損益がずっとあると いうこと自体やめてくれ、民間としてはそんなことはできない、国だからそんなことを 許したのだが、独立行政法人的なものに使用者責任を問うということになると、それを 一刻も早く解消してバランスをとった上で運用を考えてくれと、こういう命題が出てき ましたので<案1>とか<案2>、まずもって利益が出て、一定の少ない範囲であれ ば、先に累損解消に充当して、それがうんと上回るときに配るということで整理させて いただけないか、ということをご提案申し上げているということです。 ○山路委員  今の累損は、確かに当面は誰にも迷惑をかけていないという考え方があるわけです が、ただ、それは非常に危険な考え方だと思います。必ず後世にしわ寄せされていくわ けです、いつの時点かでは顕在化する、しかもそれを放置すれば破綻するわけです。こ の間の中退金の運用利率と給付の乖離を見ていると、1つ致命的だったと思うのは、た ぶん平成2年だったと思うのですが、5%利率だったのです。バブルのとき、5%以上 の運用利率が当たり前という時代の中で、当時たしか4%に下げたときに付加退職金と いうのを作ったわけです。そして、その時点で退職金を受け取る人に給付されたわけで す。しかし、結果的に考えてみると、あれは致命的な失敗だったと思うのです。  要するに、その時点の人と今と比べてみたら、明らかに不公平があるわけです。5% から4%に下げた分を将来の累損が起きない形に補填すべきだったと思うのです。あの ときの付加退職金というのは、なぜあんな馬鹿なことをしたのかということです。やは り、持続可能な制度ということを考えたときに、常に給付率と運用利率の乖離は起きる わけですが、累損の解消ということを前提に、できるだけ不公平が起きないような仕組 みをどう作っていくか、という考え方を私たちは第一にとるべきだったと思っていま す。  今回の話と前回の付加退職金の話とはだいぶ違います。確かに1%になったわけで、 これだけひどく利率を下げたのだから、付加退職金でカバーしなければいけないという のは、その意味では違うけれど、やはり当面の人だけをカバーするだけではなく、20 年、30年単位で、いかに累損を解消して、結果として魅力ある制度にしていくか、とい う観点に立つべきだろう、その視点が若干欠けていたのではないかと思います。いい教 訓が平成2年の付加退職金の制度の設置だったと思うのです。それを振り返って、今回 の話を考えてみるべきではないかと思います。 ○佐藤委員  山路委員の発言は、ちょっと納得し難いのです。結局、後ろの人にしわ寄せがいくと いう議論がありますが、後ろの人たちは、リタイアしていくことがあり得るわけです。 その当時その運用利回りで約束し、その期間についてはその部分が支払われているので あって、そういう人たちは、仮に19年というのを採用すると、今の予定運用利回りを変 えないとしたら、圧倒的多数の人、1.0の人が過半数を占めると思うのです。上げなけれ ばならないという議論も出て、上げることができれば非常に良いと思います。ですか ら、付加退職金が決定的な誤りの決定だったというのは、私はとてもそうは思えないの です。 ○山路委員  あの時点では誤っていましたね。その後のことを考えたら、明らかに不公平ではない ですか。あのときにもらった人はいいですが、それ以降、これだけ低利率になってもら った人との不公平の乖離は明らかにあったではないですか。付加退職金を付けたという 思想の問題のことを言っているのです。 ○佐藤委員  思想の問題ですが、付加退職金はほんのわずかだったですよ。 ○山路委員  わずかとか額のことを言っているのではないのです。当面の人たちを糊塗するために ああいうことをやったのが間違いだと言っているのです。 ○堀越委員  部長の話に関連してくるわけですが、「企業会計原則等」というのが資料3の2頁に あります。世の中全般の通例ですが、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従 うのだと。こちらからの議論は別なのだという認識はちょっと違うという気がします。 しかし、累損の解消が第一と私は考えます。 ○齋藤部会長  ほかにいかがですか。 ○小山委員  結局、金利の変動というのは、その時期に生きた人にとって、それこそ何がプラスだ ったのかマイナスだったのか、ということになるわけですね。少なくとも1990年代の日 本の金利の状況は、歴史上稀に見る事態であった、あのバブル崩壊以降はそういう時代 だっただろう、というのが一般的に共通の認識だろうと思います。異常時代にたまたま 設定してきた予定運用利回りの設定が高すぎたという問題が結果として生じたのであっ て、それは解消しなければならないと我々は理解をして、極端に1%まで下げるという 決断をしたわけです。これは、歴史上稀に見る異常な事態の中での1つの現象だっただ ろうと考えていいと思うのです。その中で逆ざや現象が生じたわけですから、そのこと によって出た累損は解消していこうということについては、何ら反対はない。だから1 %に下げたのだ、そこまで下げることに合意をしたということです。  労働者側から言うと、今までの設定の率を下げたわけですから、退職金の金額を下げ たと言ってもいい決断だったわけです。その水準をできるだけきちんと維持し、また向 上させていくためにこの制度がなければならないわけですから、累損はもちろん無視で きないことですし、解消していくという方向がありますが、それが最優先ではなくて、 そこでもらう退職金としての金額をいかに増やしていくかという努力も、この制度を維 持していく上での重要なというか、もう1つの大きな、それに勝る要素として哲学に持 たなければいけないことだろうと思うのです。  ですから、できるだけ長期の設定の中で、退職金額をどのように確保し、また増やし ていくかという努力をしていかなければいけない、ということでこれから具体的な議論 をするとすれば、次回以降どういうようにするか、できるだけ長くというのは当然だろ うと思いますし、先ほどの1%を引き上げていくことができるのなら、それは上げるこ とも、どうやって担保していくかということも含めて議論をしていかなければいけない と思います。  もう1つは、あといくらの目標でと、どうしても数値目標ばかり出てくるのですが、 実際上の加入の拡大をどう進めていくのか、あるいは機構としての事務処理を含めた合 理化努力をどのようにしていくのか、実際の運用をどのように高めていくのか、そうい う具体策も含めて議論をしていかないと、この数値目標で1%がどうだとか、それだけ で議論をしていたら、また少し違うのではないかと思うので、そうしたこれからの運用 のあり方、拡大のあり方、そうすれば制度として今のままでいいのかどうか、他の制度 との関連性を含めて、もっと分母を増やせるような検討を、具体的にセットで議論して いかないと、この数値だけの議論でどうだと言われても、特に労働側としては非常に困 るということを申し上げておきます。 ○松井勤労者生活部長  私自身が聞いていて、今出していただいている意見は、どれ1つ矛盾していないと思 うのです。どれが正しいということでもなくて、それぞれの視点で正論をおっしゃって いると思うのです。ただ、その中で、今の状況でどのように調和させていただくかが、 我々の視点なのです。  山路委員と佐藤委員のやり取りですが、整理させていただくと、当時予定利回りが5 %、4%という高い水準、つまり高く給付するという給付を約束している中で、少し給 付額を下げなければいけないとしたときに、下げたときに、ベースアップをやめたのだ から、もしボーナスが出たのなら、それを出た都度配分するようにして、皆さん仲よ く、この団体に入ってよかったとするために、付加退の制度を導入したのが、そのとき の議論でありました。  ただ、そのときに山路委員が言われたように、そういったものはそこで今いる人に配 分するより、この制度を永続するのだから、もし運用益が落ちたら大変なので、未来の 人のために取っておいて、今後入る人のためにも、健全運用ということで留保しておけ ばいい、それがこの制度を長く運用するための視点ではないか、というご意見があった と思います。ただ、その当時は、そういう制度を導入したときには、そうは言っても、 今まで高くもらえているもののベースを下げたのだから、いきなり下げたのだから、利 益が出たときに少しボーナスで戻す形でセットしよう、ということで導入したと聞いて います。  ところが、その後実際の運用利回りがどんどん落ちていって、毎年赤字が出たもので すから、その制度を導入後、ずっと付加退は実際には発動できていませんでした。そこ で累損が貯まってきていて、付加退という装置はあるが発動できない、これではまたど んどん赤字になります。先ほど問題ないと言われましたが、赤字というのは個の集団に 対する信用が失われます。新しく加入拡大をしようとしても、もともと給付がよくない のに、あんなに利益が上がっていないところに預けて、本当に将来に自分たちはもらえ るのだろうかということで、加入拡大は図れないということで、正直に申し上げて、本 当に出すべき額をうんと下げて、でも入ってください、1%に下げてでも入ってくださ いと。  ここからまた問題が起こりまして、その代わりに利益が出たときに、その利益で赤字 を埋めるのか、今の付加退と同じように、そこである方々に還元するのかという大議論 が起きて、要は足して2で割ると、つまり今の方にも配るし、将来に向けての安心感の ためにも配るということで、2分の1というルールが導入されました。こういう理解で す。  そこまではよかったと思います。ところがここで問題なのは、出す額を決めていて、 将来どのように利益、損失が出るかはわかっていない、単にそのルールを決めただけで すと、どのくらいの間で赤字をなくしていくかという目的意識、気持ちがないものです から、エンドレスなのです。とにかくうまくいけばいくだろう、というぐらいの話だっ たのです。  ところが、それ自身が特殊法人であって、国の組織だから大丈夫だというのがあっ て、赤字があっても国だから大丈夫だというのがあって、そこでいっていました。とこ ろが、今回、その後独立行政法人化して民間的な手法となったときに、国の貢献的なも のは相当後退してきている中で、1つのお金を預かる集団として動いていくためには、 ということでいろいろと評価を受けると、やはりどこだって赤字そのものがない構造、 そういった不安感がないものにしなければ、先ほど言われたような加入拡大もできな い、目標を立てなければ、効率運用というノルマがかけられない、そのように時代は動 いてきていると思います。  そこで申し訳ないけれども、この2分の1ルールを<案1><案2>のようにして、 なるべく短く赤字を解消して、赤字解消が見えてきたら、本来の給付カーブを1%から 2%、3%と上げる。短い期間で上げられるように努力するのか、長くダラダラ続けな がら、たまたま出た利益をうまく配分しながら、ある意味ではごまかしながらやるよう なイメージで運用していくのか、どちらがいいでしょうかと提案していると聞いていた だきたいのです。  先ほど言われた加入拡大、効率運用を本当に考えていただくなら、今後に入る方々、 将来に退職金を出さなければいけないときに、ある方までは満額出すけれども、資産が ないからあなた以降は半分とか、退職金が出ないことがないようにするためには、累損 を可能な限り早く解消することが必要です。解消するための運用利益も、先ほど言った いろいろな想定の中で、今後予想される運用利率を考えてやると、目茶苦茶高い運用利 率を予定すると難しいから、どれくらいの期間でやりましょうかということで、9年、 14年、19年という期間をお諮りしていると考えていただけないかと思うのです。 ○勝委員  付加退職金は導入の話で、山路委員からもご意見があったと思いますが、現在と導入 された平成4年と決定的に違うのは、導入当時は黒字でした。黒字であれば付加退で配 分しても全く問題ないと思うのですが、今は1割の赤字です。そういうときに、ある程 度の利益が出たときに配分してしまって、本当にいいのでしょうか。つまり、累損が1 割ある中で、付加退職金という制度自体が存続していいのかという問題はあると思いま す。  そうすると、付加退を導入している1つの理由として、先ほど「被共済者の不利益を 緩和する」という言葉がありました。仮にその不利益を緩和するのであれば、例えば 1.2%くらいに運用利回りを引き上げて、付加退職金制度をなくしてしまったほうが財 政面でも健全ですし、透明性も確保されますし、名目的な利回りが高まることで魅力も 増すのではないかと思います。つまり、付加退職金という2分の1ルールを、1%に引 き上げたときのバーターとして残ってしまったとすると、これは長期的に見てあまり望 ましくないということも考えられるのではないかと思います。 ○松井勤労者生活部長  一般的に考えると、付加退という装置そのものは、本来これくらい給付するという額 を決めると、それの予定運用利回りが出ます。それより効率運用したときに必ず利益が 出ます。その利益を、当該集団として剰余金として積み立てて、何か起こったときの穴 埋めに置いておくというシステムで運用するのか、今いる方々に一定程度を還元しなが らやるかという判断になると思います。どちらがいいとは申しませんが、そういう利益 が出るときに働かせる装置としては、決して悪くないと思います。 ○勝委員  ただ、それは状況によるというか。 ○松井勤労者生活部長  おっしゃるとおりです。そうすると、装置そのものの存否ではなく、その装置を発動 するかどうかと言っていただくほうが、私としてはありがたいのです。実は法律に書い てあるので、なくすとなると大変なのです。ですから、そういう装置を働かせるかどう かで、つまり単年度黒字であっても、何らかの形で関連的に赤字が出ているときは、発 動停止するというのはあるでしょうし、今のように赤字があったとしても、出た利益を 赤字解消に当てるのと、皆さんに還元するというやり方もあるでしょうし、全く赤字を 先に埋めるとか、いろいろな使い方ができて、有効な装置であると思うのです。ただ、 使い方を誤らないようにすることが極めて重要かと思っています。 ○齋藤部会長  質問なのですが、例えば9年間で累損を解消しようとするには、3.05%で回すような 努力をしてもらえれば何とかなるということですか、それに1%を足すのですか。 ○宮本勤労者生活課長  足してあります。 ○齋藤部会長  3%以上で回してもらえば、9年間で累損は解消できると。 ○宮本勤労者生活課長  先ほど、2分の1ルールで出た利益の半分を累損、半分を付加退にというルールであ るとするならば、3.05%あれば、大体9年間で解消できるということです。 ○齋藤部会長  とすれば、共済機構でどういう努力をするかは別にして、ポートフォリオを工夫する とか、民間業者投資先を工夫する、あるいは経済情勢にもよりますが、そういう努力を 積み重ねれば、努力をどうするかはお任せするにしても、これだけやってくださいと言 えばいいだけの話になるわけですか。 ○宮本勤労者生活課長  仕組みの上では部会長のおっしゃるとおりで、今独立行政法人制度という形になった ので、政策決定についてはこの審議会でのご意見を伺いながら、行政主体である厚生労 働大臣が決定するので、それを達成するような手足の部分としては、機構に任せたとい う形になるので、機構としては3.05%を達成することを運営目標として、ご指摘のよう ないろいろな資産運用のあり方について、変更なり改善をすることによって、3.05%を 達成するべく仕事をしてくださいと。仮にそれが達成できなければ、人事なりの点でい ろいろ考えなければいけないということは政府側の問題としてありますし、外部委員の 皆さんによる評価として、この目標に対してちゃんとやったかどうかが評価対象になっ てきて、それがその機構の評価につながってくることになります。 ○松井勤労者生活部長  端的に言いますと、2分の1ルールでやると、このようなイメージでいきます。この 運用利回りを確保しろとなります。予測のつかない中で相当高いハードルだと思いま す。そうすると、前に言ったように、これはもちろん大臣やいろいろなところで決める 話ですが、理事長が次々と交代させられるのです。経営者責任でこれだけの利益を上げ ろと掲げるわけですので、あとは経済予測の話もありますが、こういう利回りを、右肩 上がりでなくなった中で課すことはどうかということも、ちょっと勘案していただきた いと思います。  それぐらいの話で、先ほど言ったことも全部絡んでいるのです。予定利回りを出さな いとなると、ときどきの理事長の責任、執行体制の責任を問わないといけないのです。 ○山路委員  理事長の首が飛ぶのは結構な話です。 ○松井勤労者生活部長  ですけど、予定していて、それを達成できない集団ということが、メッセージとして 世の中に出ていくわけです。そこで、先ほど言われた会員拡大、被共済者維持にどうい う影響を与えるかも、トータルで考えでいただきたいのです。むしろ、これは我々とし ては、この退職金共済事業を健全なものとして長く運用し、多くの方に利用していただ きたいという点もあるのです。それが、どの程度であれば健全と見られて、恒常的にう まくいくようにセットできるか。  ところがその理想に反して、今現に累損という形で、うまくいっていない状況があり ます。それをいい状況に持っていくために、累損解消を急がなければいけないという気 持ちと、そうはいっても、ハードルを高くして逆に首を締めるのもどうか、単純に言う とそんな状況でもあるということです。そこをわかっていただければ、問題はクリアに なるのではないかと思います。 ○田村委員  今おっしゃられたように、会員の拡大、運用という要素も当然あって、ベースが広が ってくれば、利率が低くても利益が出てくる形があります。そういうときに必要なの は、商品としての魅力がないといけないと思うのです。今1%の運用利回りというの は、それほど魅力はないわけで、3年前に下げたときに、それを補完する意味での付加 退というのはあったと思うのです。そうすると、今せっかく独法になってやる努力のア イテムをまた取ってしまうことは、運用利回りだけではないところのマイナス要因にな りはしないかと思います。  それと小山委員も言われましたが、現実的に負債を生むような赤字ではないわけです から、そう急いで返すよりは、安定して返すほうがいいと思います。安定して返せる中 で、少しでも前倒しできて、途中で年月を延ばすようなことを考えるよりは、ある程度 のスパンを見ながら、それが少しでも縮小できる方向ということのほうが、私はより健 全に見えるのではないかという気がします。 ○松井勤労者生活部長  それは全くの一面ですが、仮にある中小の事業主の方が、自分の企業の財務会計、他 の企業の財務会計を分析して、この集団に入るかどうか。そうすると、給付すべき額が 100あるのに、資産が60しかない企業と、70、80ある企業とを比較するという目で見た とき、累損というのはそういうものなので、それで見ていただきたいのです。そして、 この退職金機構にいろいろお金を入れていくと、言われたように大体1%予定でお金が 増えるようなシステムということで、入ってくださいと。他でそういう運用ができると いうのは、例えば1.5%、2%があるとか、しかもそれが全然赤字がなくうまくいって いるのがあるとすれば、今言われたような話がチョイスできるだろうか。  以前は、どちらかと言うと我々が自信を持って言っていたのは、運用益も然ることな がら、20年近く前の中退制度は、基礎ベースは国庫補助で出していて、運用益を少し乗 せて、国が運用する制度だから大丈夫だと売り込んでいました。それがなくなって、初 めの掛金は助けます。それから特殊法人という、国のすごく強いコントロールから離れ て、独法までいったのです。このこと自体にご議論があるかと思いますが、実際問題と して、民間組織に近いような運用形態になってきている中で、この赤字のようなものは あるけれども、どうでしょうか。利率は低いけれども着実に返しているので入ってくだ さい、という宣伝をして皆さんに加入してもらうのと、今短い期間で赤字を解消する努 力をし、しかも運用利回りが予定される中で、限界を狙いながら、いいところで赤字を 解消して、赤字体質から脱却したところで、必ずや基本的なカーブを上に上げる努力を している団体ですから、入ってください、というメッセージを送るのと、どちらが健全 性があるかという議論になっていると思うのです。  どちらかと言うと、今のご提案は私は後者のほうの説明にだいぶシフトしていて、今 までのように、単に利益が出れば、累損があって、2分の1ずつ分けていくより、累損 解消後にお金を注込んで、それでも超えるときに今いる方に分ける、予定運用利回り等 を考えながら、その期間はどのくらいの期間がいいか、無理な運用設定をしない範囲で となると、9年から19年の間のどこがいいかを、どれが正しいというわけではなく、ト ータルで考えていただいて、中庸を得るところを皆さんの合意を取れないかという気持 ちでやってるということです。 ○奥平委員  今、予定運用利回りの問題が討議されているのですが、特退金などで、一般の生保な どがやっているこういうシステムは、どのくらいの予定運用利回りでやっているのです か。 ○宮本勤労者生活課長  特退金ですか。 ○奥平委員  それに限らず、いろいろなそういうシステムがあると思うのですが、民間ではどうか と。 ○瀧原課長補佐  特退金ですが、これは非常にさまざまあって、一言で平均はこのくらいというデータ はありませんが、端的に言うと、特退金は大体皆さん中退を見ています。まず第一に中 退並のことをやることが基準となっています。中退より高い利回りのところもあります が、そういうところは皆さん結構苦しんでおられます。結構どこも同じような歴史を踏 んでいて、金利が急激に下がっていたときに速やかに下げられたか、下げられなかった か。そういう意味では、中退金の1%とというのは、比較的標準的と思っていただいて よろしいかと思います。  ただ問題は、それぞれの特退金団体で状況が異なっていて、スムーズに予定運用利回 りを下げたことによって、今負担が少ないところは、これから上げていくところが出て きます。他方、中退より遅く下げたところがありまして、そういうところは中退以上に 赤字が広がっていて、そこはもうとても上げる状態ではないというのが、現状としてあ ります。 ○奥平委員  平均的なパーセントではあるということですね。 ○堀越委員  私どもは規模は小さいのですが、東京の税理士会の中に特退金があります。こちらの ほうは3%の時代にポストの中にいろいろなものを入れていったという、抵抗はあった のですが、1%になったということで、今は0.7%になっています。  もう一言申し上げたいのは、例えばペイオフがあると、商工中金は大丈夫だったので す。なぜ大丈夫だったのかというと、国だからです。いちばんわかりやすい証言なので すが、ここも同じなのです。国だと思っていますが、私どものところにお客さんが来 て、入りたいといったときに、銀行でも関係ないわけです。知ってしまうとまずいとい う感じはあるので、できるだけ赤字を解消してもらいたいということです。 ○佐藤委員  論議の終盤にきたような感じですが、累損を解消することについて、反対しているわ けではないのです。皆さんは1%は並の数値だと言われますが、19年先を予測できる か。かなり上のところから、数値目標を出せと迫られているのだと思うのですが、19年 か20年かかって、累損を解消しますということでは駄目なのでしょうか。  なぜかと言うと、グローバル化の中で、日本の経済の位置の問題も含めて、金利とい うのはどのように変わるかわからないわけです。141億が固定したものだとして考えら れてしまうと、前回の建議は失敗だったとおっしゃいましたが、全く無視したことにな ってしまって、ここに絵でも示されていますが、付かない場合もあると平然とおっしゃ られるのは、それも実務者としてはあるのでしょうが、実際の労働者、経営者の方もそ うかもしれませんが、そういう人たちに対して、一定の責任を負っている立場から言う と、これだけは絶対に解消していかないと、お前らのほうには回らないと。日本経済が もっと高い率で成長するのかどうか、なかなかそういうようなことを希望的観測で言う エコノミストもあまりいません。予定運用利回りを上げることも想定してと、それは言 葉であったとしても、例えば実質的にそういうことが約束される保証もないわけです。  であるならば、こういう会議を毎年開いていけばいいのです。要するに累損解消に向 かって、あるときは141億円であったり、100億円であったりすることがあって、そのと きの付加退の割り方についても、その度に決めればいいと思います。私は政令を変えよ うと思っているような気がするのですが、政令で縛ってしまって、累損解消を優先する 内容の政令案が通ってくるのだとすると、前に1%に下げたときの問題も含めて、労働 者に対する説明責任というのはなかなか果たせません。  結果的には、年度ごとに解消すべき額が141億円だと数字が出てくるのだと思います が、機構のほうで1%の運用利回りを承知の上で、何十万人と増やすことを可能なので す。運用についても、死に物狂いで運用してもらえれば、高い運用だってできるかもし れません。人の首を切れとは言いませんが、事務の合理化だって一生懸命やって払うこ とはできます。そういうことを勘案すれば、先々のことを見通すことについて、ここで 数字が固定されて、この金額が政令に書かれるとは思いませんが、累損を優先して、そ の残与について、付加退と累損の解消に2分の1ずつと、こういう書き方をされると、 もう踏んだり蹴ったりです。  そういうのは、前回の1%を決めたときも失敗だったとおっしゃいましたが、建議に も書いていますが、累損の解消は必要だと謳っているのです。そして、下がった人たち の立場も考えて、2分の1ずつという建議に皆さん落ち着いたのであるから、この場で 19年先に生きている人はほとんどいないと思いますが、あまり先の話はしないで毎年や っていけばいいのではないですか。 ○山路委員  20歳の労働者もいるのですから。 ○佐藤委員  そうだからこそ、人も変わっていくのだろうと思うのです。私は比較的長くやってい ますが、ずっと付加退というのはゼロだったのです。そのための会議を開いて、ゼロで すね、終わりますと終わっていたのです。それでもやむを得ないと思ってやっていまし た。だから、せっかく前の建議という精神が、それなりに活きる方法を考えてもらいた いと思います。 ○松井勤労者生活部長  おっしゃるように、今までの制度に与ってきたいろいろな議論に敬意を踏まえること は、本当に重要だと思っています。ただ、議論というのはそのときの事情、状況を総合 勘案していただいて、これだけの立場でご意見をいただくわけですから、事情変更の原 則というか、変化を踏まえて、もう1回合意を取り直していただくことは、決して無茶 な話でもないし、あるべき話だということを基本としています。  今の論点の中で少しどうかと思ったのは、例えば141億円をベースに19年と言われま したが、同じ論理の中で、これをやりながら、機構に効率運用すればいいではないか、 そしてどんどん努力するようにとおっしゃいましたが、そのときの運用利回りをここで 言いますと、1.85%や2.01%で、それぐらいで出る額なのです。効率運用をしろという のであれば、こちらのほうで運用利率を高めに出すように努力しなさいという目標を掲 げるのと、実はワンセットになるのです。  例えば、298億円を9年で解消しろということは、毎年3%以上を運用しろというこ とと、有期的につながっているわけです。損失だけの話ではないのです。効率運用しな ければいけないという命題は重要だと言われました。累損解消も重要だと言われまし た。だけど、それをアドホックに、その度ごとにやりましょうというのでいいかという ことをあえて問うているわけです。  前回は、少なくとも利益が単年度で出たら、アドホックに2分の1分けることでうま くいくのではないかということで言われて、それは間違いありません。ですが、それが どれぐらいかかるかが全然視野に入っていなかったのを、ここまで利率を入れて、年月 をわざわざシミュレートしてみたわけです。そうすると、その解消までの期間を19年 で、しかも運用利率は2%程度でいいという命題を与えるのか、もう少し高めに、短く しながら累損を解消するという気持ちを込めて指示を出していただけるかどうか。そう するならば、出てきた利益の配分、2分の1ルールをどこからどう適用するかというこ とを少し入れてくださいと、端的に言えば<案2>などがストレートに出ていると思う のです。  つまり、これ以上の利益を出したときに、単に利益が出たというのではなくて、一定 利益を超えたときに分けるというぐらいの気持ちになりませんかということを申し上げ ている、というふうに聞いていただければと思うのです。あえて<案1>でそうでない パターンを載せていますが、例えばこれぐらい利益が上がったところで2分の1ルール というのを、とにかくゼロから出たのではなくて、これぐらい出たところでやりません かと。企業が相当稼いだからボーナスを出しましょう、これぐらいだとまだ赤字が出る かわからないから、内部利用さしてくれと。このぐらい超えたらボーナス配分すると、 そういったやり方に近いのではないかと思います。出た部分をまさに2分の1で分ける と、2分の1の原則は変えていないと言えなくはないのではないかと思います。  最後ですが、政令と言われましたが、課長から説明を申し上げておりますが、我々と して法律改正をやることは考えていません。やるとすれば、省令以下で手当するのか。 もう1つここの議論で、先ほど言った、道具は残しながらも、運用面で考えていくかと いうことです。そこで、運用面の根拠として、法律の条文に戻って、第10条第4項のこ の言葉に込めたいと思っています。「当該年度以降の運用収益の見込額を、その他の事 情を勘案して意見を聴いて定める」と。その他の事情を勘案するときのルールをここで やっていただければ、労働政策審議会で、毎年意見を聞いて利率を設定できるわけで す。その範囲での運用の許容度があるのではないかと。  それをもっと明確にしろと言うのであれば、戻って第17条の条文を書き直すことで す。これは省令ですから、もう1つ前の段階で、第10条4項の「その他の事情を勘案」 というところで、勘案の仕方をここである程度ルール化して、審議会の意見を聴くとき に、こういうルールでやるのですねということも、十分余地はあるのではないかと思っ ています。  そこで、こういう議論で、仮に<案2>などでそういうものを整理しろということで ご議論いただければ、次回にまとめて提示できるのではないかと思っています。 ○都村委員  現時点で大事なのは、中退金制度の目的を確認することだと思います。それから、制 度の安定を図ることです。そういうことと、付加退職金制度が創設されて以来の経緯 も、ある程度考えるということです。それから、被共済者間の公平の確保も考えるとい う、2つの大きな問題があるわけですが、それを両立するようなことを考えると、<案 2>がかなり妥当な案ではないかと思います。  だから、年度ごとに解消すべき額と、解消までの年数が関連あるということですが、 そうすると、案にあったような9年間というのは、かなり短期です。短期ではなく、14 年間とか、19年というように、やや長くとってやっていくことが、2つの重視すべきこ とを両立させることもできるし、機構の安定も、率も必要となる利回りの目安も下がっ てくるわけですから、妥当なので、この<案2>で14年、19年というやや低いところの 年度ごとに解消する額を設定し、付加退も活かしていくというのが、現時点ではかなり 妥当なのではないかと思います。 ○齋藤部会長  私が意見を言うのはどうかと思うのですが、個人的な感じからすれば、共済機構に対 する目標を考え合わせると、年間200億円ぐらいは、何とか累損解消に回せるだけの努 力をして、その努力の方法はどうでもいいと思うのですが、これだけの資産を抱えてい るわけですから、それをうまく運用するなり、適用拡大でも、手段はいいのですが、わ りときつめの努力目標を設定しておいたほうがいいという感じがするのです。皆さんの ご意見に影響を与えるつもりはないのですが、そういう感じがします。 ○松井勤労者生活部長  ちなみに現時点での資料を使っての推計なのですが、これは確定ではありませんが、 現時点、平成16年度見込みの当期損益金は273億は利益が出ています。<案2>に直ち に当てはめると、14年の計算で192億円を差し引くと、80億円ぐらいが純利益になって、 この場合は2分の1以下になるので、超えた部分だけは、80億円程度は付加退に回せる と。実はこの額は今年度でしたか。 ○瀧原課長補佐  今年度は72億円です。 ○松井勤労者生活部長  これぐらいのイメージなのですね。少し努力して運用するという気運に入ってきた中 で、見込みは立たないけれども、出た利益と2分の1ルールを適用してやった額に見合 う額かというぐらいの感じはあります。これは確定的ではないということではあるので すが、それで141億円などにハードルを下げて、運用にもっと拍車をかけろという指示 を出さなくていいのか、出すのかという辺りのバランス感覚にもなるかという感じです ね。 ○都村委員  この表の収入のほうで、掛金収入が過去4年間よりかなり上がっています。それか ら、支出のほうも、退職金支出がかなり下がっているのですが、これは人数が関係して い るのでしょうか。 ○瀧原課長補佐  そうです。今年は加入者が増えているのと、退職者が減っていますので。 ○成宮委員  このイメージの図ですが、<案1>と<案2>の違いというのは、左と真ん中のケー スの場合はどちらでも同じです。言わば、2倍を超してさらに利益が出たときの2倍を 超した部分をどう考えるか、というところの違いです。ただそれだけの違いですが、も ちろんそこに哲学があるわけです。  この絵の中に、<案1>の場合には19年をネグって、<案2>のほうには逆に9年を ネグって書いてあります。それは、そういうケースの発現確率がどのくらいになるかが 念頭にあってのことかもしれませんが、ものを考えるときに、こちらから長いほうを削 って、こちらから短いほうを削って、そこからスタートして考える必要はないと思いま す。 ○松井勤労者生活部長  これはある程度作為が働いております。ご覧いただければわかるように、<案1>の ほうに19年を付けてハードルを低くすると、上の累損に当てるというのは相当たくさん くるので、ここまでの議論で付加退にもやることをもう少し重視しろと言われた議論に 真っ向から反するものですから、これは少しひどいかと思って落としています。 ○宮本勤労者生活課長  もう少し申し上げると、<案1>の場合には早く返すということが哲学の根底にある ので、そういう意味でいうと、3つ、4つの並びの中で19年という数字は、世間の相場 から見て、哲学と合わないかという意味で落としています。  <案2>の場合には、返すということとともに、付加退職金を配ることももう1つの 要素として入っているので、その意味でいうと、単年度の税金部分というか、必ず累損 に当てたい金額をあまり高く設定してしまうと、今度はもう1つの哲学の柱にある付加 退部分に影響が出てくるので、あまり極端に短い、逆に言うと単年度の額がすごく大き くなる案は、哲学に合わないかという意味で。 ○成宮委員  哲学が関係しているのですが、少なくとも絵柄を見たことから言うと、同じことにな るわけで。 ○松井勤労者生活部長  数字を書くことはやぶさかではなくて、9年、14年、19年と並べればよかったのです が、気持ちを前面に出したくて、あえてこのようにしました。 ○田村委員  これは調べていくのは非常に難しいと思いますが、現行のもので、現行の付加退2分 の1でやると、何年かかるかわからないということですか。 ○松井勤労者生活部長  それは先ほど言った数字なのです。 ○宮本勤労者生活課長  資料1の1頁なのですが。「現行の」というのは。 ○田村委員  この2分の1方式の、このままでいったときに想像すると何年くらいかかるのだろう かと。固定で返すということを頭に置かずに、出たものを半分ずつ分けるという、今の 制度のままでいったときです。 ○瀧原課長補佐  その場合は、資料1の、一般中退の上の表のいちばん右側のところなのですが、これ をそういう見方で説明すると、これから3.05%程度で回るとして、かつ出た利益を毎年 半分ずつに分けると9年かかるということです。 ○松井勤労者生活部長  今の状況ですと、この3%はきついのではないかと思いまして、細工を始めたわけで す。 ○齋藤部会長  3%以上で回してもらえれば全然問題はないですから。 ○松井勤労者生活部長  だけど実際問題は、ここ1、2年のうち3%全体が、先ほど申し上げた、今の金銭信 託と自主運用の割合がありますが、これは見込みで見えないとおっしゃいますが、いろ いろな予測からして、どう配分しても、1、2年でトップにいくと思わないし、3、5 年でいくかというとトップ途中になるのです。 ○田村委員  例えばここで19年が妥当だと思っているのですが、そうしたときに独法の機構のほう は、うちはそれではなしに15年でやると決めるのは自由でいいわけですね。 ○松井勤労者生活部長  いや、ここである程度目標値を設定するのは政府のほうですから、ここではご意見を いただいて、最終的にはこちらで判断しなければいけないところで、自分でやりたいと いうのは駄目です。  というのは、この19年を見ていただくと、すでに2%ぐらいいっているわけです。目 標と言うかと、こういう部分もあるのです。1%を確保しなければいけない上で、1% ちょっと取ればいいわけです。だから、結局目標を掲げて、効率運用をすると言いなが ら、実は目標がうんと低いではないかという構図が見えるので、それを大臣が決定し て、評価委員会などに見せたときに、それで運用目標を設定したことになるのかと言わ れたときに、バッタリ倒れるのではないかという気持ちもあるのです。これ方向性の問 題になると思うのです。 ○小山委員  1つ確認しておきたいのですが、最初のほうの議論にあった、予定運用利回り1%を 据え置くのか据え置かないのか、あるいは変更するときはどういう手続きで、どういう ふうにするのかという問題ですが、本当に機動的に予定運用利回りを変更していくこと が可能なのか、あるいはそういう考えを持っているのか、その点だけ確認をさせていた だきたいと思います。 ○松井勤労者生活部長  手続的には、予定運用利回り、つまり給付のお約束する額は機動的にできるようにす るというコンセプトで、今、法体系はできています。今までは法律で給付額を決めてい ましたが、それを内閣の運用という政令に落としたので、これはできるのです。ただ、 政令ですから全部大臣が合意しなければいけません。経産省、財務省といった大臣が合 意しなければいけないという制約があります。  ここからは問題なのですが、そこで内閣全体で合意してもらうときに、こんなに累損 がある中で給付を上げていいのかという議論がすぐに出てきます。そこで我々として頑 張ろうとするならば、累損はあるけれども、これくらいの期間で確実に返せるようにな ったのだから、上げてもいいではないかという論理展開をするか、わかりませんがとに かく上げてくださいとするか、という勝負なのです。いちばんわかりやすいのは、累損 が解消したから上げてくださいというものです。  それだと、いろいろな方を加入させながら発展するというときに、そこまで待たなけ ればいけないのか。要するに、減少傾向が確実になったら、働きかけてこのカーブを直 すのが本来の姿ということは、多分言わざるを得ないし、言うと思います。今のところ はそこまでなのです。次回に必要であれば、そういう考え方を整理しますので、その上 で合意いただければと思います。 ○讃井委員  前回3%を1%に下げたときの議論と、今の議論というのは、そのときに大変な議論 をして決めたことは重く受け止めなければいけないと思うのですが、決定的に事情が変 わっていることを意識して、考えることが必要なのかと思います。国がサポートしてい る制度の下での議論と、独法になって具体的に累損解消の目標を立ててください、と要 求されている環境での考え方は変わってくるのだと思います。  確かに前の議論のときも、運用利回りを下げるときに累損の解消、急激な変更によっ て痛みを伴うことに対する手当ということで、2分の1と決まったのだと思うのです。 私はそのときの議論に参加していなかったので、どれだけ苦労なさったのかはわかりま せんが、当時の資料を見ると、1%にするのか、1.1%にするか、1.2%にするのか、か なり細かい議論をされたようで、1%にするときの資料も経済情勢によって変わってき ますが、それによって解消される累損はいくつかのケースに分かれて出ています。経済 の回復が順調にいけば、かなりの早さで解消できる見通しもあったような気がするので す。私の記憶ですと、6年ぐらいかけて累損が半分ぐらいになる見通しもあったかと思 います。  そうすると、経済情勢がよければ何も目標を立てなくても、19年も経てば解消される ことはあり得るのかもしれません。ただ、今求められているのは、具体的に目標を設定 し、確実に解消することですので、ある程度高い目標を立てて、挑戦していくことが必 要なのではないかと思います。そのように考えると、希望としては民間準拠ということ です。9年間で解消というぐらいの目標を立ててもいいのではないか、というような気 がします。 ○菅井委員  一にかかって、このことは被共済者の責任で起こってきている問題ではないのです。 おそらく機構も迷惑しているのだと思います。乱暴な言い方をすれば、国の経済や政策 の運営に責任があると思います。  もう1つは、この制度、機構、運営のあり方がコロコロ変わるという印象を、被共済 者、これからこれを考えようとしている人たちに与えるのは、私は非常にマイナスだと 思います。そういう意味で言うなら、枠組み、今までの運営、仕組みをあまり変えない ようにしながら、安定感を出しながら、赤字の解消、借金返済をやっていく形を取ろう とすれば、なだらかな方法を取ることが正しいのだと思います。大きく枠組みや運営の 仕組みを変えない形で、なだらかにやっていこうとすれば、自ずから答えは出てくるの だと思います。 ○齋藤部会長  そろそろ時間になりましたので、この辺で終わりにしたいと思います。今日は具体的 な議論がたくさん出たので、そのような議論をうまく反映した形で具体的な形をつくっ ていただいて、次回議論をしたいと思います。  それから、もう少し今年度の利益見込み額についても、直近の事情を反映したような 数字は出せるのですか。 ○宮本勤労者生活課長  次回に報告したいと思います。 ○齋藤部会長  それも出していただいて、議論を続けたいと思います。次回について何かあります か。 ○宮本勤労者生活課長  次回は3月9日(水)の10時半からとさせていただきます。場所は今回と同じで、厚 生労働省6階共用第8会議室を予定しています。以前に11日は予備日としてご連絡しま したが、3月11日(金)も、10時半からこの会議室で開催したいと思っています。 ○佐藤委員  日程設定についてですが、そういう設定は部会長がなさるのでしょうが、今日かなり の議論をして、大体言い尽くしたという判断に立っているのかもしれませんが、9日に 具体的に省令になるのか、建議になるのかわかりませんが、中1日というのはきついの ではないですか。 ○齋藤部会長  そうですか、9日に議論をしてみた上で。 ○佐藤委員  11日が最終日で切るのはいいと思うのですが、9日で概ねの方向性は決めてしまうわ けですよね。 ○松井勤労者生活部長  今ご議論いただいたもので、私は大体いけるのではないかと思っています。それまで にまた個別に調整させていただきます。というのは、もし何らかの法令的な手当をしな ければいけないとなると、後ろの日程から各庁調整などがあるのでギリギリなのです。 少なくとも、省令の時価簿価の改正はご了解いただいていると思うので、それに合わせ てやるかどうかです。  今のご意見ですと、私の感じでは、法律の解釈運用で処理するほうがいいのではない かと思っていて、その辺をご提案できればと思っていますので。 ○佐藤委員  解釈運用ということなら、それなりにかかわってくることもあるので。 ○松井勤労者生活部長  だから、そのルールをここでご披露して、それに基づいてやれば、先ほど言ったよう に法律に書いてあります。そして審議会とあるので、そこでいけるのではないかと思っ ています。その辺をご提案すればということですので、よろしくお願いします。 ○田村委員  累損の解消の議論と、平成16年度の付加退支給の議論は一緒ですか。 ○松井勤労者生活部長  そうです。まず時価に変えてやるというルールがあって、それで計算して、その見込 み額を出しますので、ルールと額がポンと決まります。そうすると、今言った一定部分 を落として、付加退に出せる額が決まります。今までですと、わからないけど2分の1 だったのが、少し変わります。 ○宮本勤労者生活課長  日程について、事務局の不手際もありまして、ご迷惑をかけまして申し訳ございませ ん。ただ、3月11日(金)としたのは、付加退職金の支給率の告示は年度末までに出さ ないと、来年度に支給できないので、それを逆算して考えたときの法令上の、官報公布 その他、省内関係部署との調整の時間を考えると、できれば11日には審議をお願いしま して、ここでおまとめいただけないかと思っています。 ○齋藤部会長  また9日に議論した結果で決めましょう。今日はこれで終わりにします。本日の議事 録署名委員は、小山委員と讃井委員にお願いします。よろしくお願いします。 6 配付資料 (1)累積欠損金の解消における目標の設定等について (2)平成16年度における利益の見込額について (3)参考資料 照会先:厚生労働省 労働基準局 勤労者生活部 勤労者生活課 調査係(内線5373)