05/01/17 労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会第12回議事録         第12回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会 1 日時 平成17年1月17日(月)15:00〜 2 場所 厚生労働省 専用第21会議室(17階) 3 出席者 〔委員〕    公益代表  保原委員(会長)、石岡委員、岩村委員、金城委員    労働者代表 佐藤委員、須賀委員、高松委員、寺田委員、内藤委員、          真島委員    使用者代表 川合委員、紀陸委員、杏委員、下永吉委員 4 議題  (1)建設労働者の雇用の改善等に関する法律の一部を改正する法律案要綱について    (諮問)  (2)「労災保険料率の設定に関する検討会」報告書について 5 議事 ○保原部会長  ただいまから「第12回労災保険部会」を開催いたします。本日は稲葉委員、岸委員、 早川委員がご欠席です。なお、紀陸委員は遅れていらっしゃる予定です。  議事に入る前に、委員の退任がございましたので、紹介いたします。使用者代表の久 保委員が退任されております。また事務局のほうで人事異動がありましたので、自己紹 介をお願いします。 ○補償課長  補償課長の明治でございます。労災保険業務室長を兼務しております。どうぞよろし くお願いいたします。 ○保原部会長  それでは本日の議題に入ります。本日の議題は、1が「『建設労働者の雇用の改善等 に関する法律の一部を改正する法律案要綱』について(諮問)」、2が「『労災保険料 率の設定に関する検討会』報告書について」です。まず1の議題、「建設労働者の雇用 の改善等に関する法律の一部を改正する法律案要綱について」ですが、これには一部労 災保険に関連する内容が含まれており、その部分が当部会の審議事項となります。それ では職業安定局雇用開発課の吉永建設・港湾対策室長より、説明をお願いします。 ○建設・港湾対策室長  まずは事務局から、建設労働者の雇用の改善等に関する法律の一部を改正する法律案 要綱を読み上げさせていただきます。 ○労災管理課長補佐  それでは要綱の関連部分を読み上げます。12頁の第七の七です。  七.送出労働者に係る災害補償の特例。送出労働者の災害補償に関しては、送出事業 主を受入事業主の請負人とみなす特例を設けるものとすること。  以上です。 ○建設・港湾対策室長  要綱の次に参考資料という形で、「『建設の労働者の雇用の改善等に関する法律』の 改正について」というペーパーを用意しておりますので、それに即して内容をご説明申 し上げます。現在の建設業をめぐる状況ですが、平成2年に85兆円あった建設投資額 が、現在55兆円という形で、大幅に減少しております。一方、建設労働者数は、ピーク 時が685万人であったのが、600万人強という状況です。特に公共投資が削減される中 で、地域における地場の建設業の労働者の雇用というのは、非常に厳しい状況になって きております。こうした中で地場の建設業の事業主が仕事を受注できないときに、自己 の労働者を他の事業主に送り出しをして、雇用の安定を図りつつ、事業経営を継続する という方策について、検討してきたところです。  具体的には昨年8月より、職業安定分科会において、今後の建設労働者の雇用のあり 方について、検討を進めてまいりました。今般、その報告がまとまりつつあるという状 況の中で、今回諮問させていただいた次第です。詳細はお手元の資料の最後の頁、参考 2をご覧いただければと考えております。  概略は今ほどご説明したとおりですが、基本的には事業主団体に雇用の安定に関する 措置について、大きな機能を担っていただくことになっております。具体的な建設事業 主団体としては、社団法人である都道府県協会なり、専門工事業者団体なりを念頭に置 いております。これらの事業主団体が雇用の安定のための措置、雇用の改善のための措 置についての計画を策定し、その計画の中で構成事業主が相互に労働者を送り出す、あ る意味で融通をするという仕組みで行うことについて、計画を策定するものです。この 計画が適当であると厚生労働大臣が認定した場合、個々の構成事業主に許可を出して、 自己の雇用する労働者を他の事業主に送り出しをすることを認めるというのが、今回の 法案の骨格になっているところです。  送り出しを受けた労働者に対する災害補償については、通常の労災の特例を設けたい と考えている次第です。通常、一般の産業労働者の労働保険は一元適用になっており、 当然、本来の雇用主がすべての責任を負うことが求められるわけですが、建設事業の労 働保険は二元適用になっており、雇用保険は本来の事業主が負担をし、労災保険はその 現場の元請が一括して責任を負うという形になっております。今回の送出労働者につい ても、雇用保険は従来のとおりで、労災保険は建設事業における原則になりますが、行 った現場における元請が災害補償の責任を負う、ということで構成したいと考えており ます。  要綱にありましたとおり、送出労働者に係る災害補償の特例として、送出労働者の災 害補償に関しては、送出事業主を受入事業主の請負人とみなす特例を設けます。これに より常に受入事業主が送出事業主よりも上位の請負人になります。受入事業主よりさら に上部の請負人がある場合は、そちらが元請人という形で、すべての責任を負います。 上位に請負人がない場合は、その受入事業主が送出事業主の元請になるということで、 労災上の災害補償の責任を負うという形になっております。具体的な労災部分について は、労働保険徴収法第8条において、数次の請負に対する特例措置が設けられておりま す。また災害補償一般については、労働基準法第87条において、同様の措置がなされて おります。この両者について特例を設けるということで考えております。以上、よろし くお願いいたします。 ○保原部会長  送出労働者の災害補償に関しては、送出事業主を受入事業主の請負人とみなす特例を 設けるということが、ただいま提案されておりますが、この点についてご意見、ご質問 をお願いします。 ○佐藤委員  諮問された内容については、賛成したいと思います。今日のご説明は、それはそれと して受けとめたいと思うのですが、最近の一般紙によりますと、建設業も派遣の解禁か という見出しの大きな記事が出ているわけです。今回の労働力需給調整事業というの は、いわゆる派遣ではないのかどうか、そこを簡略にお答えいただきたいと思います。 ○建設・港湾対策室長  現在、職業安定分科会のほうで、具体的な報告書のとりまとめ作業が進められており ますが、その中においても労働者派遣の適用除外業務の緩和については、慎重に対応す べきであり、今回はそれとは別に緊急措置として設けるべきであるという形で整理され ているところです。したがって私どもとしては、労働者派遣法の派遣とは全く別のスキ ームとして、導入の検討を進めてきた次第です。 ○保原部会長  そのほかにございませんか。第1の議題はよろしいですか。特にないようでしたら、 第1の議題は原案どおり承認されたということで、取り扱わせていただきます。この件 は労働条件分科会に報告することになっていますので、報告文、報告の時期について は、私に一任ということにさせていただきます。  続いて2つ目の議題、「『労災保険料率の設定に関する検討会』報告書について」の 説明を、事務局からお願いします。報告書の内容の中には、法律の改正を要する事項も 含まれておりますので、その点も含めてご説明をお願いします。 ○労災管理課長  主として資料2−1の概要版に基づいて、ご説明いたします。まず本文の説明に入る 前に、検討会での検討の経緯について、若干ご紹介いたします。この検討会報告書は昨 年5月以来、12回にわたり議論を行い、先週11日の第12回の会合において、報告書のと りまとめの議論を行い、先週14日に取りまとめ、公開されたものです。当部会では検討 会を立ち上げる時点と、中間とりまとめを行った時点の2回にわたって、ご報告させて いただいて、10月の第8回の労災保険部会で、中間とりまとめについてのご報告、ご審 議をいただきました。その後、引き続きこの検討会において、特に基本的な対応に係る 部分について審議を重ね、今回のとりまとめに至ったという経緯です。  今後のスケジュールですが、厚生労働省としては、この報告書で取りまとめられた内 容を踏まえ、今後の労災保険率の設定に係る厚生労働省としての基本的な方針を、今年 度中に策定、公表するとともに、この基本方針に基づいて、平成18年度の料率改定の作 業を進めることにしたいと考えております。今後のスケジュールとしては、今後の労災 保険率の設定に係る基本的な方針の案について、私どもで策定した上、改めて当部会に ご報告し、ご審議いただいた上で、当該方針の策定、公表を年度内に行いたいと考えて おります。また、平成18年度の料率改定については、この基本方針に基づいて過去3年 間の数理計算等の作業を経て、本年秋以降、当労災保険部会でご議論いただいた上で、 決定したいと考えているところです。  この後、本日の報告書の内容について、概要版により説明させていただき、ご議論い ただきたいと思います。なお、本報告書の基本的な対応の中で触れられている有期事業 のメリット増減幅の拡大の問題については、部会長からもお話がありましたように、報 告書の方向に従って対応することにした場合、法改正を要する事項が含まれていること から、この点は後ほど特に説明させていただきたいと考えております。  まず1頁からです。中間とりまとめとして10月の段階で整理された検討課題が、いく つかありました。検討課題のみ紹介いたしますと、まず、最初の労災保険率の問題につ いては、下の四角囲みで書いておりますように、業種ごとに異なる災害リスクを反映し た適正な労災保険率のあり方について、検討が必要であるという課題、労災保険率を設 定するルールについては、現状において必ずしもその全てにわたって明確に示されてい るとは言えない状況があることから、今後はより明確なルールを示す必要があるという 課題、労災保険率改定のプロセスを通じての基礎資料の公開、決定手順の透明化につい て、より一層の改善方策を検討する必要があるという課題が指摘されております。  2頁です。業種区分の問題に関しては、産業構造の変動等の状況を踏まえ、業種区分 について改めて検討する必要があるという課題が指摘されておりました。またメリット 制の問題については、検討課題として、メリット制に係る適用事業の要件をどう設定す るか、メリット増減率の幅をどう設定するか、継続事業と有期事業のメリット増減率の 幅に差があることについて、検証が必要であるということ、特例メリット制について は、中小企業の安全衛生水準の向上等に資する有効な政策として、活用を推進する方策 について検討が必要である、といった課題が指摘されています。  これらの課題に対して10月以降、検討会の場で今後の基本的な対応の方向についての 検討を重ねてまいりました。その結果が3頁以降にまとめてあります。3頁のいちばん 最初に、今回のとりまとめの性格が書いてあります。紹介しますと、これらの主な論点 に関しては、今回の検討会においてこれまでの状況のおさらいも踏まえ、総合的に検討 を行った結果、新たに労災保険率の設定に係る今後の基本的な対応の考え方を、以下の とおり取りまとめたということです。行政においてはこのとりまとめを踏まえるととも に、審議会における検討等の所要の手続を経て、労災保険率の設定に関する基本的なル ールを改めて策定し、これを明示することが必要であると。また労災保険率の改定に際 しては、改定の基礎となる資料を公開するとともに、これに基づいて審議会での検討を 行うなど適切な手続を経て、労災保険率の設定を行うことが必要であるという考え方が 示されております。  以下に書いてあるのが、基本的な対応の具体的な考え方です。検討会としてのいわば 基本的なルールに相当する考え方が示されております。順次ご紹介いたします。最初 に、労災保険率の論点に関しては、基本的な考え方として労災保険率は業種ごとに設定 し、原則として3年ごとに改定することが適当である。また業種別の料率設定に係る基 本的な財政方式として、業務災害分の料率の短期給付分については、一定期間(3年間 )の収支が均衡するように賦課する方式(純賦課方式)を、年金給付に係る長期給付分 については災害発生時点の事業主集団に、将来の給付見込みに相当する費用を賦課する 方式(充足賦課方式)によって算定することが適当であるという考え方が示されており ます。  また全業種一律賦課ということで、業種ごとの算定を基礎にするわけですが、その中 で災害発生から3年を経ている短期給付分、災害発生より7年を超えて支給開始される 長期給付分については、いわば基準法上の使用者責任を超える部分に相当するという考 え方の下に、これらは全業種一律賦課とすることが適当であるという考え方です。併せ て昭和63年以前においては充足賦課方式を採用していなかったという関係から、それら の積立て不足に係る過去債務分については、全業種一律賦課として算定することが適当 であるという考え方が示されております。通勤災害分等の非業務災害分、労働福祉事業 及び事務費分は、全業種一律賦課として算定することが適当であるという考え方が示さ れております。  次は激変緩和措置についてです。労災保険率は原則として、ただいま述べた原則で算 定された数値とすることが適当であるということを述べた上で、しかしながら算定され た数値によって大幅に引き上げることになった場合には、一定の激変緩和措置を講ずる こともやむを得ないと考られます。ただし激変緩和措置の具体的な内容については、今 後の料率改定時において過去3年間の数理計算も踏まえ、改めて設定することが適当で あるとされております。  さらに、急激な産業構造の変化に伴う労働者数の減少によって、収支が著しく悪化し ている一部の業種については、通常の激変緩和措置を適用しただけでは、労災保険率が 改定ごとに際限なく上昇していくといった事態も想定されることから、こういった場合 に一定の上限を設ける必要があるかどうかについて、労災保険率等のこれまでの状況等 を勘案し、過去3年間の数理計算も踏まえて検討することが適当であるとされておりま す。  最後に、激変緩和措置等を講ずることによって下がる場合は、算定された数値まで下 がるけれど、上げる場合は一定の激変緩和措置を講ずるという場合、収支均衡の観点か らは不足額が出てくる場合、その必要な所要額は全業種一律賦課とすることが適当であ るという考え方が示されております。  4頁は業種区分についてです。業種区分の原則は、労災防止インセンティブを有効に 機能させるという観点から、作業態様や災害の類似性のある業種グループ等に着目し、 当該グループごとの災害率を勘案して分類する。併せて保険集団としての規模及び日本 標準産業分類に基づく分類等も勘案することが適当である、とされております。  「その他の各種事業」は、適用労働者数の数からいっても、全体の60%に達する大き な区分になっております。分割という考え方については、業種区分の原則に基づいて、 事務従事者割合が比較的高い業種を取り出して分類していくという観点から、日本標準 産業分類に対応し、「新聞業、出版業又は通信業」「卸売業、小売業、飲食店又は旅館 その他の宿泊事業」「金融、保険又は不動産の事業」を、「その他の各種事業」から分 割して、新たな業種区分とすることが適当であるという考え方が示されております。  また、「その他の各種事業」の中には各種のさまざまな事業が含まれているという観 点から、今後は必要に応じて業種について適時適切に分割することができるよう、適用 事業細目という形で、諸分類の事業集団ごとに収支状況等のデータの収集・整備を行う ことが適当であるという考え方が示されております。  統合の検討としては、保険集団としての安定性を維持するために、規模が小さい業種 については、今後の労働者数の変化等の動向を見つつ、統合の検討を行うことが望まし いとされております。ただし、急激な産業構造の変化により保険収支が著しく悪化して いる一部の業種については、現状の業種区分を維持することとした上で、先に述べた激 変緩和措置等の必要な対応を行うことが適当であるという考え方が示されております。  次はメリット制についてです。メリット制は、事業主の労働災害防止インセンティブ を促進するために必要なシステムである、という基本的な考え方が示されております。 その上でメリット制の適用要件、すなわち適用事業場に関する規模等の要件について は、メリット制の趣旨を踏まえて設けられた現行の適用要件に係る前提条件等に変化が ないこと等から、現状どおりとすることが適当であるというとりまとめがされておりま す。  メリット増減幅については、後ほど本文でご覧いただきたいと思っておりますが、継 続事業のメリット増減幅については、現在の増減幅±40%を維持することが適当である とされております。有期事業(建設の事業)のメリット増減幅は、現行±35%ですが、 これは継続事業と同じ増減幅にすることが適当であるとされております。特例メリット 制については、中小企業への安全衛生措置の導入を促進するため、対象となる安全衛生 措置を追加することが適当であるという考え方が示されております。以上申し上げたこ とが、検討会として基本的な事項の全体をカバーする形で、考え方を取りまとめたもの です。  最後に、今後の状況変化等への対応です。今後の状況変化等に対応して、適時適切な 見直しを行っていくという観点から、専門家の参画も得て、業種区分あるいはメリット 制の機能をより高める方策等の課題については、継続的に検討することが望ましいとい う指摘がなされているところです。報告書の全体的な概要は以上のとおりですが、冒頭 にも申し上げたように、本報告書の基本的な対応の中で触れられている、有期事業のメ リット増減幅の問題について、指摘されている方向で対応することにした場合は、法改 正を要する事項が含まれておりますので、この点について特に説明させていただきま す。  最初に、資料2−2の報告書の本文です。報告書本文の11頁が、メリット増減幅に係 る該当箇所ですので、紹介いたします。まず継続事業と有期事業とを分けて書いており ます。継続事業に適用されている現行のメリット増減幅の±40%については、3つの理 由を挙げております。1点目として、制度が導入された当時と比較して、災害率が相当 程度低下しているという現状において、メリット増減幅の拡大による災害防止効果を予 測することが、過去に比べて難しくなっています。2点目として、現在の災害発生状況 を踏まえると、保険料収入の減少が見込まれ、それを補填するため、労災保険率のベー スを引き上げる必要が生じると考えられます。3点目として、強制保険としての労災保 険制度においては、メリット制の適用によって保険料が割増しになる場合の、使用者の 負担能力の問題も考慮しておかなければなりません。これらの問題があるところから、 現在の増減幅を維持することが適当であるというとりまとめになっております。  一方、期間を定めて行われる有期事業としては、建設業と林業の立木の伐採事業が該 当します。これらの有期事業は継続事業と異なり、現行では±35%の範囲で保険料、保 険率を増減させていますが、有期事業へのメリット制の導入当時、当該業種においては 重大災害が多発する傾向にあって、継続事業と同様のメリット増減率の幅の設定を行っ た場合、著しい保険料負担の増加とそれに伴う事業主の災害防止インセンティブの減退 を招くおそれがあったため、差が設けられたという経緯があります。  しかしながら、建設事業における最近の災害発生状況を見ますと、度数率・強度率に ついて、いずれも有期事業のメリット制度の導入当時に比べて、著しく低下しておりま す。継続事業で±40%の増減幅に拡大された昭和55年当時の全産業の災害発生状況を下 回る水準にまで低くなっており、これらの取扱いに差を設ける合理的な理由がなくなっ てきています。このため有期事業(建設事業)のメリット増減幅は、継続事業と同じ増 減幅にすることが適当であると取りまとめられているところです。  併せてメリット増減幅の拡大については、「労災かくし」を助長することから拡大す べきではないという意見がありますが、「労災かくし」は労働基準法および労働安全衛 生法に違反する事案として、行政機関において厳正に対処されることが当然です。また 「労災かくし」の背景には、公共工事の指名停止等を恐れることなど複合的な要因が考 えられるものであり、「労災かくし」に係る対応については、それ自体、別途検討され る必要があると考えられるという指摘がなされております。  資料2−3は、有期事業(建設事業)に係るメリット増減幅について、報告書のとり まとめを踏まえ、どのように見直しの方向性を考えていくべきかという点です。1に書 いてあるメリット制の現状について、本文で触れられている現行の制度の仕組み、差が 設けられた経緯は、先ほどご紹介のとおりです。2のこの報告書を踏まえた見直しの方 向性は、本文でも触れられておりましたように、災害発生状況の面から言いますと、度 数率・強度率とも減少してきているという状況の中で、継続事業との間でメリット増減 幅に差を設けていた合理的な理由がなくなってきているという考え方が示されておりま す。したがって、建設事業等の有期事業に係るメリット増減幅を、継続事業と同じ±40 %に拡大し、これによって建設事業の事業主による災害防止努力を一層促進していくの が適当ではないかと考えられる、というのが検討会のとりまとめを踏まえた見直しの方 向性と考えられますので、この点についてご審議いただきたいと思います。  なお、後ろに若干の関連資料が付いております。同じ資料の2頁には、メリット制の 仕組みと適用要件があります。メリット制の仕組みとしては、個々の事業の労災保険の 収支率に応じて、労災保険率や保険料の額を増減させる制度で、分子・分母に保険給付 と保険料がくるという中で、メリット収支率を計算しております。メリット制の適用事 業に係る要件としては、継続事業、有期事業それぞれ一定の規模以上の事業所に適用し ます。内容については記載されているとおりです。  3頁はメリット増減幅の改正の経緯です。継続事業と有期事業について、これまで、 以上のような経緯で改正されてきているという状況です。  4頁ですが、労働災害の頻度を測るときの度数率・強度率の意味合いは、下の脚注で 定義しております。度数率・強度率の推移ということで、「総合工事業」と書いてある のが建設業です。平成15年の建設業における度数率が1.61、強度率が0.25ということ で、同じ年度の調査産業計と比べますと、度数率は調査産業計をやや下回っており、強 度率は調査産業計を上回っております。調査産業計が現行の±40%になった時点が昭和 55年で、度数率が3.59、強度率が0.32ですので、これと比較しますと、現在の建設業の 度数率・強度率はいずれも下回っている水準にあることを、ご紹介させていただきま す。  そのほかの資料としてメリット制以外でも、労災保険率の設定に関する検討会報告書 に関連する、若干の資料を添付しておりますが、説明は省略させていただきます。説明 は以上です。よろしくお願いいたします。 ○保原部会長  ただいま労災管理課長から、メリット制を中心に、労災保険料率の設定に関する検討 会報告書のご説明をいただきました。ただいまのご説明について、ご意見、ご質問をお 願いします。 ○下永吉委員  ただいまの事務局のお話ですが、業界にとっては大変ありがたくお聞きいたしまし た。メリット増減幅の拡大については、業界としてもかねてより強くお願いしていると ころです。是非実現を期待しております。その根拠としては、労働行政のご指導の下、 建設業界一丸となっての努力もあり、労働災害は着実に減少しているという事実があり ます。これはまさに個々の企業において、また元請を中心とした安全で快適な職場環境 づくりに、積極的に取り組んできた結果であることは言うまでもありません。  具体的な取組みについて、1つ2つ申し上げます。団体の活動としては、建設関係団 体による総合工事業団体安全連絡協議会の毎月の開催、企業の経営者および安全業務担 当部長等を委員とする、安全問題検討専門委員会を開催しつつ、その中で安全衛生に関 するマニュアル、CD−ROM、ポスター、リーフレット、ワッペン等を作成すると同 時に、各企業に配付し、安全に関する周知に努めております。一方、各企業においては 安全衛生管理体制の確率、安全衛生教育の計画的実施等の安全対策を講じ、それらの確 実な実施により、災害防止に精一杯の努力をしてきております。このような状況の中で 増減幅の拡大は、企業にとってより一層の安全意識の高揚と、安全管理体制の充実に寄 与するものと確信しております。  業界団体といたしましては、これを契機として、労働災害のもう一段の減少を目指し て、災害防止のための対策を推進していくことにつなげたいと考えております。業界と してのこのような考え方、姿勢をご理解いただき、メリット制に係る制度改正につい て、よろしくお願いしたいと思います。 ○保原部会長  ただいま下永吉委員から賛成のご意見をいただきました。そのほかにございません か。 ○佐藤委員  下永吉委員が言われるように、業界として労働安全対策を強化されているということ は、基本的にはありがたいことだと思いますが、社会問題にもなっている労災かくし等 の問題で、若干触れていきたいと思います。  メリット増減における有期事業については、平成13年度、14年度に改正したばかり で、あまり期間が経っていません。にもかかわらず、いま40%にしなければならない理 由を、私はあまりつかまえられないのです。度数率・強度率が変わらなくなってきたと おっしゃいますが、前回35%に引き上げたときは、その後労災報告の適正化に関する懇 談会が持たれ、平成14年8月に報告書が出されております。メリットと労災かくしとに 因果関係ありやなしやという議論は、それぞれ皆さんお持ちだと思いますが、その報告 書で出された内容によりますと、直近の平成13年度においては、126件の書類送検が行 われております。これは全体についてで、建設業が含まれていると理解しております。 126件のうち、建設業が占める割合はどれぐらいあるかと言いますと、102件、パーセ ントに直すと81%です。参考として製造業では15%です。それ以降の資料は出されてお りませんので、逐次またお出しいただきたいと思います。  あのとき労働災害について、「『労災かくし』は犯罪です」というポスターが作られ ました。私は厚生労働省として、とりわけ基準局として、非常に踏み込んだポスターを 作ったものだと感心いたしましたし、敬服もいたしまして、私たちの組合でも大いに使 わせていただきました。この期間の中では度数率・強度率に変わりはないと言いながら も、建設業においては、もう皆さんご存じのとおり、元請が圧倒的な優位に立つので す。そして建設業法に定められている経営事項審査の項目の中では、重大災害等につい て、あるいは災害の発生について、それが審査の対象になります。あるいは無災害表彰 等との関係から、労災を労災保険の給付として行わないケースが、相当数あるのではな いか。ただ私たちには調査のしようがないので、そこは憶測の域を出ない。  しかし組合員の声としては、元請にばれると困るからね、次に仕事もらえないからね といった声、あるいは労働者から言えば、もう次からは雇ってくれないからねという、 非常に古い体質の部分を持っている業界であることも事実です。そういう意味から申し 上げますと、今回なぜこんなに慌てているのか。  前回35%に上げるには、相当な期間があったわけですし、この審議会の中に基本問題 委員会というのも設けられて、議論もかなりされたわけです。今回、検討会が持たれた ことについて異議をはさむつもりはありませんが、労災かくしは別途の問題だというよ うに、結論づけて見えるようです。幾重にも重なっている建設業の重層下請の現場を、 実際にご覧になられて、そのようなところに置かれている労働者の労災だけを取り上げ ても、どのような処理が行われているのか。私たちの中で議論をいたしますと、40%に 上げることが、労災かくしを助長するだけだという声が圧倒的です。今回の提案につい ては、あまり十分に議論する余裕がありません。  飛び飛びで申し上げますが、これは法律事項ですので。前回35%になったときには、 衆参のそれぞれに該当する委員会の中で、メリット制に伴って労災かくしが増えること がないように、政府としても十分安全衛生対策に対応しろ、という内容の決議も行われ ている。そういう状況から考えますと、今回出されてきている40%というのは、あまり にも時間的な間が短い。そして、たまたま平成13年度がそうなのか分かりませんが、か つて労災かくしによって送検された件数よりも、増える傾向にあります。私から見ます と、これは相当因果関係ありと言わざるを得ない。そういうときに直ちに40%という提 案がなされて、これに理解を示すというのは非常に難しい。十分なご論議をいただきた い。できれば現状をもっと詳しく把握なさって、その上でこの問題をやられても、業界 全体でそんなにマイナスになる問題ではないのではないでしょうか。  もう一度言います。度数率も強度率も一緒であるにもかかわらず、労災かくしの件数 が、それも当局が、送検した件数が8割も占めるということは、正当なことではないの ではないか。労災かくしの摘発のために、厚生労働省の出先機関の職員が頑張っている ことについては、それはそれとして敬意を表しますが、明らかになっている数字から判 断した場合、この問題は建設産業にとって、非常に大きな問題だということを申し上げ ます。できれば慎重審議をお願いしたいと思います。 ○保原部会長  いま佐藤委員からは、現時点で建設業等の有期事業のメリット制を動かすには、問題 が多すぎるというご発言をいただきました。そのほかにございませんか。 ○下永吉委員  労災かくしについて、ただ今いろいろなお話がありました。私どもの基本的な考え方 は、メリット制の趣旨は、企業の災害防止努力を促進することにあると考えておりま す。私どもとしては先ほども申しましたとおり、このようなメリット制の趣旨を踏まえ つつ、災害防止対策に万全を期してまいりたいと考えております。そもそも労災かくし は労働安全衛生法に違反し、検察庁への送検もあり得る事案で、あってはならないこと です。それに加え、入札時での評価点に不足をきたしますと、入札に参加できないとい う事態も出てまいります。これもまた問題ですが、そういう行為を許すような状態、環 境にはありません。労災かくしは業界にとって、あまりにもデメリットが多すぎるもの です。  そこで業界団体としては、労災かくしを防止する対策に、積極的に取り組んでいると ころです。具体的には従来から労災かくしを意図する動機の解明を行いつつ、それに対 する対策をはじめとして、現場代理人、管理技術者等の職員の教育、協力会社幹部、作 業員の教育、災害の報告をしやすい社内現場環境の仕組みづくり、また先の基準局通達 が出てからは、業界では要領や手引きの作成等をはじめ、ポスターやリーフレットの活 用、安全パトロールを通じて、企業トップは当然として、現場の各労働者に対して労災 かくしの排除に係る周知、啓発を強力に推進しているところです。  しかし、このような取組みにもかかわらず、依然として労災かくしが生じていること については、遺憾に思っております。業界としては今後とも労災かくしの排除のため、 周知、啓発をはじめとした取組みに、全力を挙げて取り組んでいく覚悟です。この点を ひとつご理解いただきたいと思います。 ○佐藤委員  建設業に従事する人数について、先ほど課長からお話がありました。世間で言われて いるのは、全産業就業者の大体1割だと言われています。1割の就業者数が産業として 圧倒的に大きいかどうかというと、私は大きいとは思いますが、いまの労災かくしで現 実に送検されているもののうち、建設業が占めているウエートは80%を超えています。 ご努力については、いま申されましたが、建設業の就業者が4割も5割も、あるいはそ れ以上高い率であるならば、そこで発生する労災かくし、あるいは悪意があって働かな かったとしても、そういうこともあるのかもしれません。建設業の元請優位、そして建 設業投資がどれだけ減って、公共投資も減ったと言っても、約4割は公共投資です。そ の中での審査基準にも入ってくる。それは委員もお認めになったところです。  そういった問題等から考えたり、あるいはこのメリット制の最大の特徴は、労働安全 衛生を進めるインセンティブを与えるという、非常に善意に基づいたものであるわけで すが、隠し切れば隠し切れるのだということが、ある程度表明されている。そこで、課 長にもお尋ねしたい。労災かくしの送検事案以外に、労災かくしではないかというのを 現場の職員の皆さんがそれなりに察知しても、送検されていない割合が6割もあるとい う、ある雑誌の報告もあります。  皆さんご意見はいろいろあると思いますが、そういったことからも考えて、労災かく しの問題とメリット制の問題を切り離して物事を議論するのは、私はなかなか納得でき ないし、適切な説明が行われているとは、なかなか思えない。少なくともこの制度が35 %になるときは、労働者側は意見書も出しました。検討会もつくられました。労災かく しについて、いろいろな方策も出て、基準局長名による通達も出た。それほど社会問題 として重要なのだという位置づけを、当局はなさっている。にもかかわらず、ここで40 %に踏み込むというのは、ちょっと尚早ではないかということを再度申し上げておきま す。 ○労災管理課長  佐藤委員からいくつかご指摘がありました中で、まず労災かくしとメリット制につい ての基本的な認識ですが、私どもとしても、もちろん労災かくしは安全衛生法等に違反 する、あってはならないことということで、行政として厳正に対処していくというのが 基本的な姿勢です。ただしメリット制の問題について申し上げますと、メリット制は先 ほど来、下永吉委員からもご発言がありましたように、事業主の労働災害防止努力を促 進する制度と考えておりますので、メリット増減幅のあり方については、基本的にこう いったメリット制本来の機能、趣旨との関係で、まず検討されるべき問題であると考え ております。  なお、労災かくしの背景要因としては、確かにいろいろなことがあるのだろうと思い ます。労災かくしの背景には佐藤委員からもお話がありましたように、公共工事の指名 の問題、そのほかに元請、下請関係等から生じる問題も含めて、複合的な要因が考えら れると思います。したがって基本的にメリット増減幅の拡大が、直接労災かくしに結び 付くといった因果関係にはないと考えているところです。ただし冒頭にも申し上げたよ うに、労災かくしについて佐藤委員がご懸念される点は、私どもも基準行政の根幹にか かわる、あってはならない問題だと考えておりますので、従来から各般の対策に努めて きておりますし、今後ともより一層の対策に努めていきたいというのが、基本的な考え 方です。 ○佐藤委員  ここに『なくせ労災かくし』という本が出ています。出版社は別ですが、これはいわ ゆる赤本でも何でもなくて、毎日新聞大阪本社労災かくし取材班が取材をし、いろいろ な事例が報告されています。その中でメリット制とのかかわりについて、かなり踏み込 んでいます。因果関係なしという今のお言葉については、当局としてはそうなのかなと は思いますが、こういう社会的告発さえ行われるという現実について、世間はなかなか そう見ないのではないだろうか。そんなことを申し上げておきたいと思います。 ○保原部会長  そのほかにもご意見をお伺いしたいと思います。今回の報告書は、メリット制以外に もいろいろありますが、メリット制の問題は法律事項ですので、できれば今日方向性を 出したいと思っております。そこで是非、委員の方の積極的なご意見をお伺いしたいと 思います。なかなか気の重い問題ですね。 ○岩村委員  報告書を出した検討会の座長だったということもあるので、あまり発言するのはどう かという思いもややあるのですが。メリット制については佐藤委員も先ほどおっしゃっ たように、なかなか難しい問題であるというのは確かだろうと思います。ただ我々専門 家の中で検討していく上では、やはり実証的なデータに基づいては議論をする必要があ ります。そうしますと今日の報告書のご説明にもありましたように、過去においてメリ ットの増減幅が拡大されていくという経緯を見たときに、継続事業が40%の増減幅とな った当時と、現在の建設業の度数率・強度率とが遜色ないという事情がある中で、なお 上限35%の増減幅で維持することについては、少なくともデータを基にして考える限 り、その理由を考えるのは難しいと思います。  それから、これは議事録をご覧いただければお分かりいただけると思いますが、私ど もの検討会の中でも、労災かくしの問題が軽い問題であるという認識に立って議論をし たわけではありません。労災かくしの問題というのは、非常に深刻な問題であり、あっ てはならないことであるという認識の下に立った上で、ではメリット制との関係をどう 考えるかという点で整理したのが、今回の報告書の基本的な方針であると、ご理解いた だければと思います。  もちろん適用範囲や何かは限られているにしても、メリット制自体、労働災害防止の インセンティブを事業主に与えるという点では、意味のある制度だろうと思います。上 下40%に広げるということは、場合によっては事故が起きると、それだけ労災保険料率 の引上げという形でのペナルティも高く、事業主に対して労災防止のインセンティブ を、より働きかけるという意味がある。これは否定できないだろうと思います。  それ以上に事業主が労災を隠そうという誘惑に駆られるのは、もちろん労災を出して それを申告してしまい、労災保険の対象になることによって、その後労災保険料率が増 えるという形で響いてきて、経常マイナスになるということも関係するのでしょうけれ ど、先ほど労使それぞれの委員も言及されたように、公共工事における審査や指名の問 題というのも、どうしても無視できない。そもそも公共工事の指名が受けられないとい う形で、事業主自体にとって死命を制するような形になってしまう。そういうより大き な圧力になる可能性もあるということを考えると、やはりちょっと。  我々も、メリット制が関係していることを否定するわけではありませんが、メリット 制が労災かくしにとって決定的な決め手になっているということについては、データの 裏付けを見つけるのは困難です。確かに先ほど佐藤委員がおっしゃったように、上下35 %に拡大したのが平成13年(2001年)ですから、比較的時期が近いというのも考慮いた しましたが、他方で継続事業と併せて40%に広げないということをうまく説明できるよ うなデータというのが、客観的に見る限り、我々の議論の中では出てこなかったと考え ております。  私が座長になったので、これは割り引いてお聞きいただくしかないのですが、私個人 としても、また検討会の座長としても、メリットの増減幅における有期については、40 %に拡大するということでお考えいただいた上で、是非お願いしたいのです。労災かく しの問題については今後とも、当局および関係労使のご尽力によって、なお一層の改善 をお願いできればと考えております。 ○保原部会長  そのほかにございませんか。いままでご発言のない方も、もしよろしければお願いし たいと思います。 ○労災管理課長  佐藤委員のご発言の中でいくつかありましたが、実態認識に関してのご指摘もありま したので、補足させていただきます。労災かくしと申しますのは、事柄の性格上、全体 像を数値的に把握するのは困難な面があるわけですが、監督を中心とした私どもの業務 の中でも重点対策として、当然司法処分を含む厳しい姿勢で対応してきております。  先ほど佐藤委員からも数字のご紹介がありましたが、私どもが把握している数字とし ては、平成15年において安衛法第100条の死傷病報告届出義務違反ということで、132件 を送検しております。最近10年間で見ますと、最も多い数字です。佐藤委員からも件数 が多いというご指摘がありましたが、これは私ども行政としても、労災かくし問題が看 過できない問題ということで、監督行政の面でも大変力を入れて取り組んできていると いう意味での数字という面もあると思っております。いずれにしても私どもの監督業務 を通じて把握している数字について、少なくとも減っていることを証明できる状況には ないということは、厳しく受けとめておりますし、今後ともより一層対策をやっていく 必要があるという認識です。  また先ほど佐藤委員からは、建設業において特に多いというご指摘もありました。私 どもも当然第一線機関を通じて業務をやっておりますから、実態については第一線機関 を通じて、いろいろな形で把握しているところです。確かにご指摘のように、送検件数 等を見ましても、建設業が占める比率がかなりの割合を占めているというのは事実で す。その背景としては、特に佐藤委員からもご指摘があったような、建設業における元 請、下請の構造問題とか、建設業固有の事情というのもあるだろうと認識しておりま す。  労災かくしの問題とメリット制本来の機能の問題は、別の問題として考えて、メリッ ト制本来の機能の問題については、先ほど下永吉委員からもご発言がありましたよう に、労働災害防止努力を促進していく契機として、この制度を使っていくことが、いち ばん肝心なポイントだと思います。同時に労災かくしという、あってはならないことに ついては看過できない問題です。建設業特有の問題としての背景があるとすれば、建設 業特有の問題を踏まえた対応の方針について、今後より一層、関係の方々ともお話させ ていただいて、対応していく必要があると考えているところです。 ○石岡委員  この問題については私も、労災かくしと全く関係ないとは言い切れないのではないか と思います。そういう意味では下永吉委員のおっしゃることもよく分かりますが、佐藤 委員がおっしゃることもよく分かるのです。それはそれとして、そういう懸念がある以 上、やはり取締まりと教育という2つの面で、行政あるいは関係建設業団体が、例えば 平成17年度から、いままで以上の取組みを示すという具体策を検討していくべきではな いでしょうか。厚生労働省としては132件の送検があったということですね。よくやっ ていらっしゃいますが、やはり行政運営方針などで建設業の労災かくしというのを、 平成17年度、18年度に徹底的にやるということを特記するとか、厚生労働省や建設業団 体の関係者を中央段階、あるいは地方の労働局段階で集めて、労災かくしの撲滅を徹底 的に指導するとか。予算措置も必要でしょうけれど、そういうことを厚生労働省はやる べきではないか。  また先ほど下永吉委員もおっしゃいましたが、私も建設業の退職金などの仕事をやっ ておりますので、全建も今までいろいろやってこられたことはよく分かります。しか し、こういう懸念があるわけですから、全建としても平成17年度、18年度にさらにもっ と予算や新しい考えを取り入れて、労災かくし防止対策を徹底的にやる、教育なり取締 まりという面で大いに意識を変えていく、全建もその一翼を担うということで、新しい 事務などもやるということを具体的に姿勢として示していただかないと、佐藤委員がお っしゃったような懸念は、なかなか拭い切れない面があるのではないか。ですから私は 役所と関係団体が平成17年度は、労災かくし防止に徹底的に取り組むという姿勢を示し て、具体的に行動していただきたいと思います。 ○須賀委員  いまメリット制について、かなり突っ込んだ議論がされて、石岡委員からいいご提案 をいただいたわけですが、メリット制が災害をできるだけ減らしていくというインセン ティブを持っていることは、事実だと思います。これが本来の制度の趣旨のように使わ れることが、そもそもメリット制の持っている狙いですから、佐藤委員がご指摘された ような、労災かくしに裏返して使われるようなことがあってはならないと、私どもも考 えております。  そこは石岡委員もおっしゃったように、当該の労使を含めて、自らどういう安全対策 なり防止策をきちんと実行するのかということを。そのことに関しては行政としても、 特に災害の発生状況の中で重点的に監督した結果なのかもしれませんが、一方で建設業 界に災害かくしが多いというのも、紛れもない事実だと思います。そこはある程度ター ゲットを当てて、行政としてもきちんとしたスタンスなり、具体策を持って指導をして いき、これらのものをセットにしてやることが、私ども労働者側委員にとっても、非常 に好ましいことだと思われますので、そうしたことを要請しておきたいと思います。行 政としても先ほど石岡委員がおっしゃったようなスタンスで実行していただいて、労災 かくしをなくし、メリット制そのものを本来の姿に立ち活かしていく、という方向性が 大事だろうと思っております。以上、意見です。 ○労災管理課長  ただいま石岡委員と須賀委員からご指摘いただいたわけですが、やはりメリット制に ついては、制度の趣旨に従って、災害防止インセンティブを促進し、災害を減らすとい う方向に活かしていき、それに携わる方々が、そういった趣旨で取り組んでいただくと いうのが、本旨であろうと思います。しかし同時に、特に建設における労災かくしにご 懸念があるという点については、行政としても重く受けとめなければいけないと思って おります。  行政としても、業界としても、これまでも各般の対策を講じてきているわけですが、 現に労災かくしが生じているという現状は、受けとめる必要があると思います。特に今 日問題となっております建設業における状況については、建設業において労災かくしが 多く発生している現状を踏まえ、今後の取組みをまとめていく必要があると思います。 この点は行政としても、特に業界団体のほうにお願いしたいと思っておりますし、お願 いをするだけではなくて、行政としても特に建設業の実態を踏まえた対策について、関 係業界団体、関係組合の方々からも意見を聞く場を設け、これまでの対策の検証をしつ つ、今後の実効ある取組みを取りまとめていくことについて、かかわっていきたいと考 えております。 ○下永吉委員  ただいま石岡委員、または事務局からご提案のあった、建設業における労災かくしを 防止するための実効ある取組みを、取りまとめるための話合いについては、業界として も積極的に参加させていただきたい。今後に向けた対応のとりまとめに、積極的にかか わってまいりたいと思います。 ○保原部会長  大体ご意見も出たようですので、建設業等における労災かくし対策を積極的に講ずる ことを前提として、有期事業のメリット増減幅については、検討会の報告書で提案され た方向が適当である、というご意見をいただいたということでよろしいでしょうか。                   (了承) ○保原部会長  事務局においては本日の議論等を十分に考慮の上、今後、法案要綱等の検討に当たっ ていただきたいと思います。なお、労災かくしの排除のための対策は重要ですから、次 回の部会で事務局から、労災かくしの実態や動機等について把握している状況と、労災 かくし排除のためにこれまで講じてきた対策の状況について、報告をしていただきたい と思います。その上でさらに議論をするということを考えておりますので、事務局も準 備をよろしくお願いします。また次期料率改定に向けて、料率設定の基本的な考え方に ついての議論も、当部会において引き続きやっていきたいと思いますので、よろしくお 願いします。  メリット制はそのようにさせていただきたいと思いますが、報告書ではメリット制以 外にも、いろいろな問題を含んでいます。検討の機会はいずれ別にありますが、今日承 れるご意見があればお願いしたいと思います。特にございませんか。  ではその問題は、次回以降にいたします。次回の日程について、事務局から説明をお 願いします。 ○労災管理課長  次回、第13回労災保険部会は、昨年12月に取りまとめられた労災保険制度の改善につ いての建議と、本日のご議論を踏まえて作成する法案要綱について、諮問させていただ きたいと考えております。日程は1月31日月曜日、16時からです。場所は厚生労働省16 階専用第17会議室において開催する予定ですので、よろしくお願い申し上げます。 ○保原部会長  本日はこれで終了させていただきます。なお、本日の議事録署名委員は、労働者代表 として佐藤委員、使用者代表として杏委員にお願いします。                照会先:労働基準局労災補償部労災管理課企画調整係                    電話03-5253-1111(内線5436)