04/12/21 第12回雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会議事録          第12回雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会 1  日時 :平成16年12月21日(火)8:30〜 2  場所 :中央労働委員会第612会議室 3  出席者:委員 (公益代表)椎谷座長、白木委員           (雇用主代表)奥田委員、才賀委員、下永吉委員、林委員           (労働者代表)池口委員、池田委員、笹田委員、寺澤委員        事務局 大石職業安定局次長、吉永建設・港湾対策室長           小宅補佐、森下補佐、下出補佐        オブザーバー           職業能力開発局育成支援課 杉澤補佐           国土交通省総合政策局建設振興課労働資材対策室 藤田補佐 4  議題 :新たな建設労働対策の検討について 5  議事 : ○森下補佐  定刻になりましたので、ただいまから第12回労働政策審議会建設労働専門委員会を開 催いたします。本日は冨田委員が所用のため欠席されています。議事に入りたいと思い ます。椎谷座長、議事の進行をよろしくお願いします。 ○椎谷座長  おはようございます。早朝から大変ご苦労さまでございます。今回の「新しいこれか らの建設労働対策」については、これまで6回にわたって議論をしていただきました。 前回12月10日に開催された会合では、新たな労働力需給調整システムにおいて、事業主 団体が作成する改善計画の認定基準、個々の事業主が取り組む就業機会確保事業の許可 基準等について、事務局より案が示された後、報告書案を中心として、委員の皆様に忌 憚のないご議論をいただいたところです。  本日は前回の議論も踏まえ、事務局に2つの資料を用意していただきました。1つ は、前回の議論において委員の皆様にお出しいただいたご意見等を踏まえ、修正・追加 等を行った報告書案が示されています。もう1つは、報告書案において、今後の対応方 向として、今年3月に策定された「建設雇用再生トータルプラン」の拡充・強化が盛り 込まれておりますが、このプランの強化を含め、建設労働対策に関する平成17年度の予 算措置の概要が明らかになったので、これを紹介する資料です。  先ほど申し上げたように、この専門委員会も6回にわたり会合を重ね、そろそろ詰め の作業に入ってきているかと思います。残り数回を予定しておりますが、報告書の取り まとめに向けた最終的な議論が必要になっております。つきましては、本日は新たな労 働力需給調整システムの項目だけではなく、他の3つの検討項目についても幅広いご議 論を行っていただければ、大変ありがたく思います。まず事務局より資料の説明をお願 いいたします。 ○森下補佐  本日は2種類の資料を用意しております。まず「新たな建設労働対策について(案) 」という報告書案についてご説明申し上げます。この資料については、前回の議論にお いて委員の皆様からいただいたご意見を踏まえ、修正・追加を行ったものです。その修 正・追加の部分を中心にご説明いたします。  8頁をご覧ください。ここは検討項目の3番目の受給調整システムです。具体的な対 応方向として、(2)改善計画の作成の部分です。前回の議論において、「改善計画には 期間の限定があるのか、期間の限定がある場合にはさらに更新制度が考えられるのか」 といったご指摘がありました。改善計画については原則3年以内という限定を付け、さ らに実施時期が終了し、更新を行う場合には大臣による審査を必要とする、大臣の審査 に係らしめる仕組みを導入すべきであるという文言を付加しています。  10頁の下線部分をご覧ください。計画の認定を受けた後に、個々の事業主が取り組む 就業機会確保の導入の部分です。この事業の許可についても、「期間の限定があるの か、期間の終了後は更新制度といったものが設けられるのか」といった指摘がありまし た。本事業の許可については、原則3年以内といった一定期間を設け、有効期間を設け るということです。さらに有効期間が満了し更新が必要な場合には、大臣の審査に係ら しめる仕組みを設けるべきであるといった記述をしています。  下のウをご覧ください。前回、事業の活用に当たっては、労働者より同意を得ること が必要であると提示しました。その際に「その同意を書面によって得る必要があるので はないか」といったご指摘がありましたので、そのご指摘の方向に沿って、「書面によ り労働者の同意を得ることが必要である」といった記述を加えています。ウの下の部分 の労災保険料の負担のあり方については、引き続き内部部局で調整中です。したがっ て、いまのところはペンディングとさせていただいています。  11頁のウをご覧ください。ここは有料職業紹介事業のところです。この有料職業紹介 事業の許可についても「期間の限定はあるのか、更新といった仕組みは設けられるのか 」といった指摘をいただきました。紹介事業の許可についても、原則3年といった一定 の期間に限り有効とし、期間が満了し更新が必要な場合には、大臣の審査に係らしめる 仕組みを設ける必要があるといった記述をしています。  少し下がって、需給調整システムの適正な運営のところです。改善計画、あるいは事 業の許可が適切になるよう、前回の報告書案には「労使等の関係者の意見を反映させる ことが必要である」といった記述をしてありましたが、どういった者が含まれるのかの 明確性に欠けていたので、その部分を具体的に書き添えた次第です。  12頁をご覧ください。ここは検討項目の4つ目です。必要な技能労働者の育成・確保 の促進についてというところで、その具体的対応方向として、効率的かつ体系的な技能 伝承に向けた教育訓練の検討を挙げています。その際、前回の議論において、「現場を 預かっている職長等を中心として、教育訓練の手法を開発していく必要があるのではな いか」といったご指摘をいただいたので、その方向に即した記述をしています。報告書 案の修正・追加については以上です。  引き続いて「建設雇用再生トータルプランの拡充・強化」について説明いたします。 ○下出補佐  平成17年度の予算に関しては、昨日20日に財務省原案が内示され、現在付加折衝中で す。24日の閣議決定を目指しているので、本日は内示に基づいて概要を説明いたしま す。金額は未確定ですので、文言として説明いたします。  資料1、2頁に「建設雇用再生トータルプラン」の体系的な表を付けています。平成 16年度から建設雇用再生トータルプランを始めています。その枠組みについて、平成16 年度は「円滑な労働移動、技能労働者の確保の推進」という項目、「雇用機会の拡大雇 用の安定の推進」という項目、「情報提供・相談等のワンストップサービスの提供」と いう3項目で構成してスタートしたところです。  平成17年度については、今回のこの専門委員会の議論の方向性を踏まえ、大きく4つ の検討項目で進めているので、この項目に従って整理をしているところです。1頁目、 2頁目にその内容が体系的に記されています。I「建設事業主の新分野進出の支援」で す。II「離職者の円滑な労働移動の推進」として3項目あります。III「技能労働者の 育成・確保の促進」で1項目です。IV「建設業における需給調整システムの適正な運営 」ということで、関連するもので5項目です。大きくこのような形でトータルプランを 構成しているところです。  ここに書いてある内容について、3頁以降の資料で説明いたします。いまの中間報告 案にもいろいろな検討方向が記されていますが、そのようなところを把握して、平成17 年度として、平成16年度のある部分を拡充したり、ある程度新規のものを取り混ぜてい ます。事業の内容の2番目で、(1)建設事業主の新分野進出の支援ということです。 アについては、新規・成長分野に必要な能力開発の訓練についての助成金です。これは 平成16年度からすでに行っている助成で、引き続きこれを継続させるということです。 括弧内に中小企業雇用創出等能力開発助成金とありますが、これは育創支援課のほうで 予算を措置しているところです。  イですが、「建設業内における新分野進出に向け、建設他社から離職者の雇入れ・定 着講習を行う建設事業主への支援」ということで、これについては若干変更していて、 6頁をご覧ください。いちばん上のイに記載していますが、平成16年度においては新分 野にこだわらず、離職者に対して、その離職者を雇い入れるときに教育訓練を施した場 合に、訓練資金を支給するということでした。それを若干修正し、新分野へ進出する中 小建設事業主に対する支援ということで、新分野に絞った形にしています。なおかつ、 これまでは1週間及び2週間以上というように分けて、10万円、20万円としていました が、平成17年度からは、2週間以上訓練していただいて新分野に進出するという話だ と、1人につき30万円を支給すると変えています。  3頁のウです。「助成金等の活用促進を図るための相談援助等のワンストップサービ ス」とあります。これもすでに平成16年度で措置していて、全国建設業協会のほうに委 託して、実施しているところです。この内容について7頁の別添2になります。安定事 業を拡充するとしています。拡充の内容は、現在各建協会でいろいろと実施していただ いているところですが、県の中でも各地域において、相談や援助などを県内を離れたと ころでも受けたいという要請もあり、そのようなことに応えるべく、県内にアドバイザ ーを出前して、出張した形で説明や相談等を行うという形で、若干の拡充を行っている ところです。集団相談会についても開催を増加して、雇用安定のための取組を充実させ るということで考えています。  3頁の(2)で、「建設業離職者の円滑な労働移動の推進」という項目です。これも 3つあって全て団体助成金です。アは「建設事業主団体による再就職支援の取組への支 援」ということで、これはすでに助成金としてありますが、雇用改善推進事業助成金と いうのがあって、各団体に対して、建設業事業主に対する講習、啓発、その他について の推進を行うものです。5頁ですが、離職者対策を再就職という形で一層進めるという ことで、雇用改善で再就職支援の実施を図る取組について重点化という項目に位置づけ る。重点化し、再就職に係る支援をすると、例えば再就職に対する事業主への講習会 や、好事例の作成、ポスターなどで啓発をしていくということです。重点化をして、そ のための助成金を限度額として通常より約100万円増加する措置を考えています。  2つ目として、「団体による業界内外への再就職等のための能力開発に対する支援」 ということで、これも平成16年度建設業労働移動支援能力開発給付金ということで措置 しているところです。5頁のいちばん下ですが、再就職の取組を強化する意味から、建 設業から離職を余儀なくされるものに対する教育訓練に対して、平成16年度も1/3の 助成をしていたところなのですが、支援を実施した後3カ月以内に再就職等を実現して いた人に対し、定着支援金のような形での追加的な助成を行いたいということです。そ れが通常の産業ですと、実施経費の1/6をプラスするということで、1/3に1/6 を合計すると、全体の1/2の助成になります。特に介護等の新規・成長分野、ここで は農業等と書いていますが、地域再生の取組などの分野への再就職の場合には、追加と して1/3の助成となります。最初の助成と合わせると2/3の助成ということで、再 就職を実現した場合にはそういう奨励金を付与すると考えています。  3頁の(2)のウです。「建設事業主団体による人材情報の提供、職業紹介等の事業 に対する支援」です。これは6頁の(3)です。平成16年度の内容には、各事業団体に 無料職業紹介事業の実施促進をお願いしたところですが、その職業紹介をするに当たっ て、人材情報を集めたり、提供したりというものが必要だろうと。そういった意味か ら、情報提供のための初期経費ということで、平成16年度は上限80万円、助成率2/3 で助成を考えていたところですが、これについては無料職業紹介の許可を取らなければ ならないという制限もありました。平成17年度については、そういうところは抜きにし て、各団体がこのような離職等の対策に資するような情報提供のシステム等を考える場 合について、その初期経費に当たるものに助成率2/3、なおかつ80万円の限度額を 100万円と若干引き上げています。このような形で、情報の集積、提供、団体間での情 報の共有、職業紹介等の体制の整備を図ることを狙いとしています。  続いて(3)の「技能労働者の育成・確保の促進」の項目です。これについては8頁 です。「建設業人材育成総合支援事業の拡充」ということです。この事業については、 建設教育訓練助成金第3種というものを現在実施しているところです。その部分を拡充 するところですが、背景としては、近年、中小零細企業はなかなか教育訓練がままなら ないという経済状況の中で、教育訓練の広域的共同化を一層促進するという意味合いに おいて、広域的な職業訓練を実施する団体等に対する支援を拡大するということです。 具体的には、職業訓練法人、広域的な職業訓練を実施するに当たって、現在、例えば富 士、三田の広域職業訓練法人は、野丁場職種に限られています。そういうものを町場と いう職種を加えた中で、建設業全般の職種に拡大するということで拡充を考えていると ころです。イ、ウにも書いていますが、イは施設整備で、これに対しても建設全般とい うことで、その実施に対しても1/2に助成が付与されます。職業訓練を受講させた事 業主に対する助成措置も拡大することになっています。かつ、富士教育センターなどは 3万人日を超えています。なお一層の達成を願うのもありますが、4万人日以上という ところには9,000万円を支給するということで、頑張っていただきたいということです。  4頁の(4)です。今回いろいろとご議論をいただいているところですが、「建設業 における需給調整システムの適正な運営」に対する助成措置ということで、5項目ほど 考えているところです。ここの項目については、今回のご議論を踏まえた上で需給調整 システムが機能を開始する必要性があります。その上での予算措置ということでご理解 していただきたいと思います。  アですが、「改善計画の認定を受けた建設事業主団体による能力開発に対する支援」 とあります。これは改善計画の認定を受け、事業主団体が建設業務労働者就業機会確保 事業において、事業主から労働者を送り出すといった場合について、その送り出す労働 者への能力開発、その訓練助成金ということです。既存の建設訓練助成金に第2種・第 4種とありますが、その辺りと同様な考え方で、助成金を措置するということです。送 り出すに当たっての新たなスキルや、新工法が訓練として必要になる場合に活用される のではないかと思います。  2つ目のイで、「改善計画の認定を受けた建設事業主団体による人材情報の提供、職 業紹介事業に対する支援」ということで、これは先ほど離職者対策の項でもありました が、建設業需給調整機能の強化促進助成金という情報提供システムを準備する必要のあ る団体の方々に、初期経費を付与するのですが、先ほどは上限は100万円でしたが、認 定した団体については上限額を150万円にするということで、強化を図るという内容で す。  3つ目のウです。「改善計画の認定を受けた建設事業主団体による雇用の安定への取 組への支援」です。これも先ほど離職者対策の中で、再就職支援等の取組を改善推進事 業で行った場合、重点化として措置するということでしたが、これと同じように、ここ では雇用の安定への取組ということで、認定した団体の内部による事業主の方々に対す るいろいろな研修、講習、周知、啓発等の経費に対して、重点化として支援をするとい うことで、全国団体、都道府県団体で上限額は違いますが、それぞれ100万円、全国だ と400万円という形で上限額のアップを図っています。  4つ目のエです。「改善計画の認定を受けた建設事業主団体による新分野の事業創出 に対する支援」です。これについては別添1の6頁をご覧ください。もしこのシステム が制度として出来上がるなら、稼働開始は10月頃の予定である。そうなると、4月から 支給を開始していく内容になっているので、平成17年度のお金としては計上していませ ん。内容としては、改善計画の認定を受けた団体が、自ら法人として新分野の事業を創 出すると。これは雇用の安定を図るという意味から、送り出す事業主傘下の労働者を継 続して雇用して、新分野事業に雇い入れようといった場合に支給するものです。当該の 事業の開始などに要する初期経費と雇い入れた労働者の人数に応じて、一定額を支給し ていきたいと考えています。例えば初期経費に1,000〜2,000万円の間ぐらいかかったと します。そして20人以上も雇用したということになると、事業主に対して100万円の付 与があります。最高では5,000万円以上、20人以上雇用で、500万円という措置を行っ て、新分野の進出を促進するとともに、雇用の安定を図っていただきたいという中で助 成を考えています。雇用というのは常用の雇用のことです。  5番目のオとして、「建設業における需給調整システムの運営に関する研修、相談等 の実施」です。これは別添4として9頁になります。新たな需給調整システムが適正に 運営されていく必要があるという観点から、事業主団体、事業主に対する、送出に関す る責任者の講習、研修、需給調整システムの運営に関する相談、助言を行う弁護士等の 法律的にも明るい方で需給調整システムアドバイザー(仮称)を用意して、相談や助言 等を行っていただきます。これもいまのところ全国建設業協会のほうに委託させていた だいて、各建協でこういった措置ができるようにと考えているところです。これについ ては、改善計画を作る認定団体のほか、これからこういうシステムを使っていこうかと いう団体、事業主の方々もお使いいただけるような形で考えているところです。  以上が平成17年度の建設雇用再生トータルプランとしての概要です。金額的にまだ確 定と言えないところですが、これらのものを合わせた総額として30億円程度を考えてい るところです。ちなみに、私ども建設労働対策室で所掌している建設労働に関する予算 としては、平成17年度は約66億円を予定しているところです。平成16年度については72 億程度でしたので、約8%減少しているところです。若干減少はしているところです が、効果的な運用が図られるように取り組んでいきたいと思いますので、よろしくお願 いしたいと思います。以上です。 ○椎谷座長  ありがとうございました。それではただいまの資料に基づきまして、ご自由にご質問 なりご意見をお願いいたします。 ○池田委員  椎谷座長から、全般的にわたって議論をしてほしいということですが、私はやはり3 番目の受給調整システムについて、1つ質問、意見をしたいと思います。7頁の後段 に、この受給調整システムについてのきちんとした前提条件があります。「地域におけ る雇用の安定を図るため、緊急避難的かつ限定的な形で新たな労働力受給調整システム を創設することが必要である」と書いてあるわけです。質問は、「限定的」というとこ ろです。「限定的」の1つに、対象となる労働者は常用の建設労働者だと謳ってあるの が9頁です。下から3行目に、きちんと「常用労働者のみを送出すること等」と書いて あります。この「等」が非常に引っかかってきているわけです。1つは、期間雇用労働 者です。2カ月や1年、3年などあります。これを限定的な常用労働者という位置づけ をするのか、しないのか、そこをまずお聞きしたいと思います。 ○吉永室長  いまのご指摘の点につきましては、新しい就労機会確保事業についてその範囲をどう するのかというご指摘です。これまで常用労働者という形で説明してきました。法的な 用語を用いるとすれば、常時雇用される労働者という概念だと思うのですが、これは原 則としては期限の定めのない労働契約による労働者を通常指す内容になっております が、雇用期間の期限の定めのない労働者と同等のものについても含む概念になっていま す。そういう意味で、例えばこれまで労働契約の期間は1年間が最長とされていました が、1年間の雇用期間を更新してきたものについては、常時雇用される労働者と整理さ れています。今般、有期雇用の範囲が通常のもので3年、一部5年まで労働契約の期間 を延ばせる形になっています。そういう意味で、若干概念としては混乱するわけです が、基本的には、有期雇用労働者であっても反復継続をして、常時雇用される労働者と 同等のものにつきましては、私どもとしてはこれまでご説明申し上げました常用労働者 の概念に含まれるだろうと考えております。  ご指摘の点は、実際に端的な有期雇用労働者が反復している場合に、それが本当に常 時雇用されている労働者と見なされるのかどうか、その辺りの概念があいまいではない かというご指摘ではないかと思っています。非常に端的な有期雇用労働者がもし該当し てしまうと、今回のご指摘のような限定された仕組みになるのかどうか、あるいは事実 上日雇に対して認めるようなことになるのではないかというご懸念だろうと思っており ます。私どもとしては、その辺りはやはり原則に戻った形で、常時雇用される労働者、 まさに期間の定めのない労働者と同等のものに限るべきであろうと思っています。具体 的に、常時雇用される労働者のメルクマールとして何を考えているかと言いますと、1 つは、当然雇用保険に入っていただいている、普通の日雇保険ではなく、雇用保険の一 般の被保険者になっていただいていることがあるだろうと思います。また、期間の定め のない雇用労働者は通常社会保険に入っています。雇用保険・社会保険に入っているこ とをメルクマールにしたいと思っています。  細かく言いますと、例えば一部高齢者などが例外になる部分が全くないわけではない のですが、おおむね社会保険・雇用保険をチェックすることによって、範囲はかなり明 確になるのではないかと思いますし、その趣旨は雇用改善計画の中で明らかにし、要件 としていくことでご懸念は解消されるのではないかと考えております。 ○池田委員  わかるのですが、3年などはいいのですが、2カ月や3カ月、6カ月のようなものの 中で、いまきちんとした基準として、1つは一般の雇用保険あるいは社会保険に入って いるものと言われましたが、そういう期間においても雇用保険も社会保険も入れるわけ です。したがって、短期の期間雇用労働者を認めることは、室長も言われたように、や はり手配師的な事業主、すなわち送出がそういう方向で見られるのではないかと私は思 っているわけです。ただ1つの基準として雇用保険・社会保険に入っているだけでいい のか、そこはどのように思われるか。 ○吉永室長  ご懸念の点は、社会保険あるいは雇用保険に入ったうえで、有期雇用の労働者を人出 しという形で使われ得るのではないかということだろうと思っています。人出しをやる ことを希望する企業の行動を考える場合に、通常のケースですと社会保険の負担、雇用 保険の負担をした場合について、非常に行動が限定されることが考えられます。つま り、そういうものを払ってしまうと、その負担額は相当のものになりますので、彼らの 初期目的を果たすことはできないだろうということになっております。  そういう意味で、社会保険を払った形は原則1年、あるいは雇用保険であれば6カ月 の雇用があることが、雇用している、あるいは雇用を見込まれるものについて入る形に なっています。しかし、いろいろな観点からチェックをしていることもありますし、企 業の行動パターンからして、そのような形でやることはなかなか想定されないだろうと 考えております。常用労働者の概念として基本的な考え方である労働契約期間の定めの ない労働者、あるいはそれと同等の者ということで、弊害は除去をされるだろうと思い ます。  実際に雇用実態から見ると、必ずしも建設事業の場合というわけではありませんが、 雇用契約のない労働者も相当数います。ただ、一方でこれまでの建設等を、最長の1年 の雇用契約の期間を反復継続して、事実上定年までいく方もかなりの数いらっしゃいま す。これも、通常私どもとしては常時雇用される労働者と考えております。もちろん、 例えば2カ月未満の期間の定めをして、それを反復継続している場合に、事実上1年あ るいは2年を超えて常時雇用される労働者という形も想定されるわけではありますが、 その辺りは私どもとしてそのものについて、一般論として雇用の改善の観点から雇用期 間を長期化すべきである、あるいは最終的には期間の定めのない労働者とすべきである と、雇用の改善の促進の意味で業界にもお願いし、計画等にも書いてあるところです。 そういう方向に誘導する形でのご指導はしていきたいと思っておりますし、弊害の除去 に努めていきたいと考えております。 ○池田委員  次にいきます。10頁のウの上で、「また、建設事業主に対する本事業の許可について は、改善計画で記載された改善措置の実施時期の範囲内で一定の期間(原則として3年 以内)」、ということですが、これは少し長いのではないか。先ほど言ったように、3 年も送出ができる事業主、あるいは送り出された労働者が3年も期間があるのは少し長 過ぎる。そして、これは誰が見ても、先ほど言ったように専ら手配師的なものになって いると考えざるを得ません。したがって、やはり1年とか半年とか、送出期間をきちん と定めたほうがよりよいものになるのではないかと思うわけですが、事務局としてどう お考えなのですか。 ○吉永室長  ご指摘の事項につきましては、改善計画の期間が3年は長いのではないかというよう に聞こえたのですが、具体的なご懸念は、むしろ実際に送り出される個別労働者の送出 の期間が、3年となってしまうと長いのではないかというご質問だろうと思います。今 回の就労機会確保事業のメルクマールとして重要な点は、1つは送出の事業主が就労機 会確保事業の専門業社になってしまう、ある意味口入れ屋専業になってしまうことにつ いては問題ではないかということ。そういう意味で、就労確保事業と本業である建設事 業の比率を見た場合に、就労確保事業の比率が大きくなってしまうのは問題だというこ とが1つあるだろうと思います。  もう1つは、それと裏返しの議論になるのだろうと思いますが、個別の労働者が就労 機会確保事業の専門の労働者になってしまっては、実際に口入れ屋専業の形に移行する 可能性があるのではないか。この2点の問題があって、その辺りをどう対処すべきかと いう点から検討すべきだろうと思っております。この委員会のご議論の中でも、例えば 才賀委員が繰返しご指摘になっておられましたが、通常の建設業社で2カ月も3カ月も 人を出すことは考えられないということがあります。また、3年も出すことは、そうい うことからすれば全くあり得ないだろうと思っております。ただ、1点考えなければな らないのは、一部の土木の関係で非常に長期の工事期間があって、そういうものに対し てその工事期間だけ就労確保事業を利用するケースも全く想定されないわけではない。 これはかなり例外的なケースだろうと思いますが、そのようなものも考慮しなければな らない。一方で、先ほども申しましたような派遣事業専門の会社、あるいは就労確保事 業専門の会社、就労確保事業専門の労働者が生まれないようにするにはどうしたらよい かということで、検討すべきだろうと思っております。  3年は長いというのはご指摘の点もあるだろうと思います。ただ、具体的な期間をど う定めるのかは、いつならいいのかは正直なかなか決め手がないということがありま す。1つの考え方としては、企業の就労確保事業と実際の建設事業の比率が半分を超え る事態は、想定してはならないだろうとも考えられます。すべての労働者が就労確保事 業に行っている期間を平均すると、半年を超えることもなかなか難しいだろう。平均で 半年であれば、ゼロの方もいるということであれば1年程度という考え方もあるのかな と思います。この辺りは池田委員、あるいは他の委員の方のご意見もお伺いしたいと思 っておりますが、一定の工事の期間がその期間を超える場合については、その工事の期 間を上限としつつ、通常送出の期間については1年程度に制限するのは1つの考え方か なと、現在検討しているところです。 ○池田委員  もう1つお願いします。送り出された労働者の苦情処理の問題です。私も、労働者派 遣法も検討しましたので、労働者派遣法、港湾労働法、職業安定法等には、送り出され た労働者の申告制度があるはずです。不利益にならないように罰則までついているわけ です。そこはどのようにお考えになっているのか、ひとつよろしくお願いしたいと思い ます。 ○吉永室長  今回新しい受給調整システムを入れるに当たって、いちばん心配なのは、やはりブロ ーカーが入ってきて、あるいは労働者が不測の不利益を被らないかということだと思っ ております。そういう観点から指導・監督に努め、許可の取消し、あるいは最終的には 業界団体の作る改善計画の変更命令、または取消しという形での事業の適正化を基本に 考えているわけですが、そもそも短所として、そこで違法な実態あるいは労働者が非常 に苦しい実態があるかどうかを把握するのは、行政として情報を得るのはなかなか難し い面もあります。そういう観点から、ご指摘の苦情申告制度は非常に重要な制度だろう と思っております。そういう意味で、今回の新しい受給調整制度の導入に当たって、申 告制度が積極的に活用できる形にしてまいりたいと考えております。 ○下永吉委員  受給調整システムの話なのですが、事業主団体の1つとして各県建設業協会が想定さ れているように見受けるわけですが、研修の実施などの委託、あるいはアドバイザーの 措置などはよくわかるのですが、改善計画やその他もろもろの立上げのときの作業を事 業主団体、各県協会がやるとなりますと、人的な配置などは予算上はお考えになってい るのでしょうか。ただ、各県協会にこういうものが必要であれば、団体を組織し、認定 を受けてあなた方が作りなさいということなのでしょうか。 ○吉永室長  ご指摘の点は2つあるだろうと思うのですが、1つは各県協会が改善計画を作って、 実際に就労確保事業等をやる場合の法律適用だろうと思います。ただ、各県協会を代表 的な事業主団体の例としていますのは、地域における中核的な団体であって、非常に信 頼性も高いということで、代表的な例という形でご説明してきたところです。これにつ きましては、やっていただければありがたいと考えておりますが、それは各県協会の状 況あるいはその地域の実状に応じた形での進め方で、絶対にやっていただかなければな らないものではないと思っておりますし、実際の運用では地域における専門工事業社の 団体であるなり、もう少し小さい都道府県協会であればその支部であるとか、そういう 単位が実際に動くとすれば想定されるのかなと思っております。そういう意味で、やっ ていただければありがたいとさまざまな助成措置を作っておりますが、それを必要性も ないのに必ずやっていただくとは考えておりません。やっていただいた場合につきまし ては、先ほどの説明にありましたが、初期経費程度のものについては若干補償できるよ うな仕組みを設けているところです。  もう1点は、全体としての受給調整システムの円滑な推進の観点から、参加の団体あ るいは地域の団体などに対する講習その他をやっていただく点です。これにつきまして は、一定の委託費の形で人件費等について見たいと考えております。 ○下永吉委員  要するに、絶対にやってもらう必要はないと、やりたい所はやればいいと、そのよう に聞こえましたが、改善計画を作成したり、どのぐらいの業務量が発生するのか読めな いのですが、県協会なり支部には、果たしてそういう能力が備わっているのかという疑 問もあるのです。ですから、もし人的な配置等々が不可能であれば、まず当座、しっか りした書類等が作成できる研修、指導をしていただけるか。していただければそれでい いのですが、指導を行う機能はどこが請け負うのか、全建が請け負うのか、よくわから ないものですからお聞きしたのですが。 ○吉永室長  全建あるいは都道府県協会におきましても、いろいろご協力いただく機会があるだろ うと思っております。そういう意味で、いろいろな形でお願いしたいと思いますが、法 律の施行の関係につきまして、実際の啓発業務等々は、厚生労働省あるいは都道府県の 労働局を中心に実施したいと思っております。具体的な改善計画の作成方法などにつき ましては、労働局等において具体的にいろいろご相談しながらやっていきたいと思って おります。 ○下永吉委員  折角こういうシステムをお作りになるわけですから、絵に描いた牡丹餅ではなく、行 政のそれなりのご協力を得ながら有効に使っていきたいと思っているのです。ですから そういう面から見て、最初のスタートの時点での事業主団体が改善計画を作ったり、も ろもろのことをやるわけですから、それがうまくいくようなものを何とか、さらに考え ていただきたいという希望であります。 ○吉永室長  改善計画につきましては一定程度のご負担もありますし、ある意味事業主団体として 参加の事業主の受給調整、あるいは下の労働者の雇用の安定という観点から、いろいろ な形で団体の取組があるだろうと思っております。私どもとして、可能な限りのご支援 をするということで、さまざまな助成措置を考えてみたところです。これで十分かとい うご議論があれば、必ずしも十分でないことは私どもも承知しておりますが、このよう なものをフルに活用する中で、あるいは事務的なご協力をいただく中で、ご指摘のよう な円滑な制度の活用がなされるように努めていきたいと思っております。 ○奥田委員  少し遡って、基本的な確認なのですが、事業主団体と送出・受入事業主は、基本的に その事業主団体に所属している範囲に限定しているのですか。例えば、受入側がゼネコ ンで、送出側が地方のゼネコンでやることはないわけです。事業主団体と送出事業主と 受入事業主は、その団体の範囲内でフラットである、上下はないと、フラットで人が動 くと考えていいのですね。そういう制度になるのですね。だから、スーパーゼネコンが 地方のゼネコンの人を受け入れることは、この制度ではないと。 ○吉永室長  そういう想定はしておりません。 ○奥田委員  ないのですね。これはそういう制度だという前提で考えればいいわけですね。歯止め がかかっていると考えればよろしいのですね。 ○吉永室長  基本的な考え方として、現在ある団体の構成員の中での相互の融通ということです。 現在の団体は、そのようなものが一緒に入っている団体はないと考えております。そう いう意味で、ご懸念のような事態はないだろうと思います。 ○林委員  トータルプランの助成金を説明していただいたのですが、先ほどの下永吉委員のご発 言にも関連があると思うのですが、受給者側から見た項目別の一覧、こういう事業をし ます、あるいはこういうことを実施しますという場合にどのような助成金をもらえるか 示していただけたら。金額はまだ出ていませんから、できたら次の委員会で金額がある 程度示せるのであれば、先ほど言われたように、地方の建設業協会が認定事業をやると どういう助成金がもらえるか、受給者側から見た分かり易い助成金一覧表、受給者がど ういう事業をやるかを横軸で、縦軸に助成金があるというものを。是非、受給者側から 見てわかりやすい、こういう助成金もあるならやってみようという気になるようなもの を次回お示しいただければありがたいと思います。 ○吉永室長  私どもの課題の1つは、どういう形で私どもが作った助成金を使っていただくかだろ うと思っております。そういう意味で、ご指摘のような形の資料も作成して周知、啓発 することは非常に重要だろうと思っております。また、次回にはそういうものを作成し てご議論いただければと考えております。 ○池田委員  少し意外な質問をさせていただきたいと思います。建設従業者は、604万とか600万と いわれております。その中で、女性で建設業に従事している方が11.7%ぐらい、82万 9,000人ぐらいいるといわれているわけです。その中で技能労働者が、なんと3.2%、28 万4,800人と、厚生労働省の実態調査で知ったわけです。そこで、男女均等法ですから、 別にそれをくだいてというわけではありませんが、送出労働者が女性の場合だってあり ますね。その場合に、保護の問題もありますし、その辺りについてひとつご見解をお聞 かせ願いたいと思います。 ○吉永室長  想定していなかったご質問ですが、特にバブルの時期などで、建設業においても女性 の進出がかなり進んだといわれております。そういう意味で、男性だから、女性だから ということは、一部トンネルなどを除けば、かなり薄まってきているのかなと思いま す。また実際の作業も、いろいろな機械を使うことで必ずしも力仕事だけではなくなっ てきたということで、50%になるかどうかは別にして、私も女性の進出は歓迎すべきも のだと思います。  ご指摘のように、そういう観点から女性の労働者が今後増えていくと、就業確保雇用 事業についてもその対象労働者としてなるということは非常に重要だと思います。例え ば女性の労働者が実際に現場で就労する場合のことを考えますと、更衣室の問題とか、 トイレの問題もありますし、また、一方でセクハラ等々というような問題も出てくるも のと思います。私どもも以前、福利厚生の関係でそういう男女別の福利厚生施設につい て請求をするというような時期もありましたし、女性の進出に付属した形で、女性が働 きやすい職場という観点は今後とも重要だと思います。  女性の更衣室がないとか、そういうことは女性が働く上で非常に問題ですし、実際に 就業確保事業で、行った先で着替えすらできないというようなことがあれば、それは問 題だと思います。そういう意味で、可能な限り、事業主間の契約の中などで問題のない ような形に処理されるような形にしたいと思います。  もう一方、例えばセクハラが行われた場合どうかというようなことですけども、当 然、セクハラの問題については、送出側、受入側双方に責任がかかってくるわけです。 特に現場におけるセクハラということであれば、受入側の事業主に責任、あるいはセク ハラが実施されたことについての責任がかかってくると考えています。そういう観点か ら、仮にそういう問題が起きた場合については、その責任を明らかにした上で適切に対 処する形にしたいと思います。 ○奥田委員  「建設雇用再生トータルプラン」の6ページ、(2)のウですが、これは、建設事業 主団体が労働者を雇い入れるということは現実的にどういうケースにあるのですか。 ○吉永室長  事業主団体が雇い入れるということで書いています。まず、そういう観点から念頭に あるのは社団法人等ではなく、事業共同組合などで実施されているものに限定して考え ているものです。一部要望がありまして、将来的な集約、強力化に向けて事業共同組合 を活用したいと、それについて、その何らかの助成組織でエビデンスを作ってくれない かというような要望等がございまして、それを受けて作っているものです。  そういう意味で、一般的に都道府県の県協会などにこういう形でお願いするのではな く、一定の、例えば将来的に集約、強力化、あるいは合併という形を目指すような方が いらっしゃればこういうメニューでご支援申し上げるということです。 ○奥田委員  団体が労働者を雇い入れるというのは現実的にはあるのかなと、ちょっと心配したの ですけれども。 ○椎谷座長  実際にそういう要望等があるのでしょう。 ○吉永室長  実際には、例えば団体が建設業の許可をとらなければいけませんし、ハードルとして はかなり高いとは思います。 ○奥田委員  団体が建設事業をやるということでしょう。 ○吉永室長  かなり限定された状況ですが、将来、合併するにあたって、こういう形でやりたいと いう要望は一部ございます。ある意味でかなり例外的なものでもありますが、そういう 要望があるということで、メニューとして用意したものです。ご指摘のように、一般的 なものかどうかというと、まだそこまでのものではないと思います。 ○寺澤委員  建設雇用再生トータルプランのことなのですが、先ほど、施策の中身についてご説明 を頂戴しましたが、平成16年度の事業の実績というか、どういうような形で全体の事業 が活用されているかというようなことのデータを少しいただきたい。事業主とか事業主 の団体とか、そういう所に対する助成が中心になっています。そういう所のニーズと今 回のトータルプランがうまくマッチングしているのかどうかという検証も必要だと思い ますし、やはり事業主やそういった団体からのいろいろな要望も多分、個別には上がっ てきているというようなこともあって、そのあたりをどのような精査をされながら、ま た、平成17年に向けて、検討内容等も含めて何か情報としてあれば、今回無理でも次 回。先ほど、林委員からも、いわゆる利用者の側から見たときにどういう制度になって いるかということが非常に大事だというお話もございました。それとの関連も出てくる と思いますので、そのあたりに対しての情報を是非頂戴したいと思います。 ○椎谷座長  実際、平成16年度はまだ終わっていない段階ですから、多分、あるとしても前半ぐら いかと思いますが、何かございますか。 ○下出補佐  いまのご指摘は実績等ということですが、実際、座長が言ったようにいまは平成16年 度途中、それから、平成16年度のトータルプランということで、平成16年度事業を新規 で行ったものについてはなかなか、進み方、取りかかった時期もかなり遅くなっている 部分がありまして、現在、その辺の実績については集約している最中です。  経過としてわかっている部分について、確かに実績の少ない所もあるので、平成17年 度についてはそういった部分をある程度拡充、変更を加えて今回の平成17年度の予算を 作っています。今後とも実績をキチッと把握した上で平成17年度以降の事業に反映させ ていきたいと思うので、わかる実績等については可能な限り提示していくような形で考 えていきたいと思います。 ○笹田委員  予算のほうが中心になりそうなので、元に戻したいのです。いろいろ勉強してきてあ るわけではないのですが、10ページ、ウです。どう考えても、送出事業主についてはか なり細かくあちらこちら出てくるのです。受入事業主、この辺の責任というか、前のは 見ていませんが、そういうものがウの所で初めて出てくるのですか。  送出事業主というのは使ってあるのですが、つまり、送出事業主は労働者を受入事業 主の所で就労させるわけですが、送出事業主と労働者の条件、賃金はともかくとして、 大幅に労働環境を含めて労働条件が違うという場合、いったい労働者はどうすればいい のでしょうか。つまり、受入事業主の責任はどういうことになっているのかということ ですね。そこをちゃんとしておかないと労働者は泣き寝入りするのではないでしょう か。 ○吉永室長  基本的な考え方として、雇用契約を結んでいるのはあくまでも送出事業主と労働者の 間です。受入側の事業主の指揮下で働くとしても、実際の労働者の労働条件というのは 基本的な労働契約に基づいた範囲でしか働けない、というのが前提です。ですから、こ の労働時間にしても、実際の残業の問題にしても基本的な雇用契約の範囲に限られるも のが前提です。そういう意味で、雇用契約の範囲を超えた形での実際の作業が受入側で 行われるとすれば、それは労働者として、その指揮下で就労する義務はないという形に なります。  何故労働者がその現場で働くか、どういう条件で働くかということについては、送出 事業主と受入側の事業主の間の契約関係に基づいて、基本的な雇用契約の内容の範囲で その契約が作られると、その契約の範囲で働くので、それは基本的に雇用契約の範囲で 就労する、というのが原則です。  ご指摘の点については、1つは、受入側と送出側の事業主間の契約がおかしいか、あ るいは、契約はきちんとしているのだけれど、受入側の事業主が契約を超えた形で働か せているか、どちらかになるのだと思います。いずれにしてもこれは大きな問題だと思 います。こういう事態になれば今回の事業はまったく弊害だけの制度になると。これを 改善するにあたっては、少なくともそういう契約を結ぶことはできないということで、 そこはキチッと契約を作っていただかなければいけないというのが前提になるわけで す。それは、1つは、送出事業主の側も苦情に応ずる担当者を決めて、これはおかしい のではないかということで労働者が言っていただければ、どちらに問題があるのかとい うことがわかると思います。それは、送出側の事業主においても、現在雇用管理者を置 いていますが、基本的には雇用管理者がそういう苦情を受けて、どこがおかしいのかを 解明していってもらいます。  通常はその範囲で、どこがおかしいのかがわかれば、そういう問題は解消されると思 いますが、そこで解消されないときは、事業主団体に苦情処理等をやっていただこうと 思っています。そこで埒が明かなければ、都道府県労働局が苦情を受け、実際にどうい う形で問題があるのかを確認し、是正する形でやりたいと思っています。いずれにして も、労働者が雇用契約の範囲を超えて不利益な形で就労する形がないようにしていきた いと思っています。 ○池田委員  これは奥田委員が言われたことと関連しているのです。どういうことかと言うと、私 も心配しているのですが、送出事業主と受入事業主、特に送出事業主のために相当なも のをやっているわけです。奥田委員が言われたとおりだと思うのですが、受入事業主 が、この制度があることによって全く経営方針を変える可能性があるのです。例えばゼ ネコン、サブゼネコンも労働者は抱えていませんが、事業団体に入っているわけです。 そうすると、それが送出から受け入れられることもあるわけです。  そうすると、受入事業主が従業員、すなわち常用労働者をいままで抱えていた、しか し、助太刀もほしい、ところがその味を占めて、自分のところの常用労働者を解雇し、 受入事業主は一切常用労働者を持たず、送出事業主の安い労働力でやることにより、社 会保険、雇用保険、あるいは社会保険の政管健康保険の2分の1も払わなくて済むし、 福祉も全部やることはないから、人のものを借りて利益を上げていくという、まさに経 営方針を変えられることを大変心配しているのです。笹田委員もそうではないかと思い ます。私もそこが考えられると特に奥田委員から言われて思ったわけです。そこはどう でしょうか。 ○吉永室長  今回の新しい需給調整システムを提案するに当たって、基本的な考え方として、今回 の枠組みは非常に厳しい地域における建設業事業主の状況を踏まえ、限定的、緊急避難 的な形で、地域における雇用の安定を図る観点から導入するものという形でご説明して いるところです。私どもとしては、そういう形で運用すべきだと思っていますし、基本 理念は、まさしくそのものでいくつもりでいます。  そういう観点からすると、例えば、いまご指摘のような事態が雇用安定と、どうつな がるのかということになるわけです。1つ考えているのは、実際に各事業主は非常に厳 しい状況ですから、労働者を減らす行動は一定程度やむを得ない面もあります。しかし ながら、いまおっしゃられたように、この制度があるから労働者を解雇し、その代わり にこの制度を活用すること。安い労働力かどうかは別の議論があるとしても、そういう 形で運用されてしまうと、今回の制度の前提である地域における限定的、緊急避難的な 制度という趣旨が蔑ろになってしまうと思っています。  そういう意味で、具体的には建設雇用改善計画の中で詳細を明記しようと思っていま すが、例えば整理解雇した事業主については、こういう形での活用を認めないとする整 理は必要だと思っています。この辺りはなかなか法律上の要件にはならないわけです が、そのガイドラインにあるべき建設雇用改善計画の中には、きちんと整理をした形で 明記して、本趣旨に則さないような形で使われないようにしたいと思っています。 ○池口委員  いまの話と関連するのですが、先ほど認定期間原則3年に対して意見をということで したので、絡めて意見を述べたいと思います。先ほどの「一部の土木工事」と言われて いるのが、おそらくダム建設、トンネル、橋梁ということで、3年ないし5年等の長い 工期となっている工事と認識しています。逆にあのような長い工期の物件は、要は1年 も2年もずっとコンクリートを打ち続ける工事があるなど、どちらかというと安定して いる工事であるような気がします。それより、むしろ工期が1年以内のマンション工 事、住宅工事など、コンクリートを打っても3カ月でおしまいという工期の物件をいっ ぱい抱えている事業主のほうが、よほど不安定だと思います。  そうであるなら、いまの安定と不安定という言葉の定義からいくと、一部の土木工事 が3年ないし5年の工期があるから、認定期間が3年というのは理由としてはきついと 思います。逆に3年あることによりその期間に甘えてしまって、自助努力で雇用の安定 を目指すという改善計画は間延びしてしまう気がするので、3年という期間の良し悪し は別として、その理由はもう少し事業主の改善計画を促進するような理由づけがほしい と思います。 ○吉永室長  先ほども若干ふれましたが、改善計画の期間が3年間、就労改革事業で実際に労働者 が行く期間もフルに3年間となると、非常に例外的なケースであればそういう場合もあ るかと思いますが、一般的なケースとしてはおっしゃったような形で、今回の主たる対 象でもないのかという気もしています。そういう意味で、先ほど1年契約のご提案をし たところです。ご指摘の点を踏まえ、再度精査したいと思います。 ○林委員  私が初めに言ったように、もともとこの需給調整というものは、請負が基本だと思う のです。才賀委員の会社のような専門工事業の団体がたくさんあると思うのですが、そ ことか、あるいは全建も地方の組織では、需給調整を請負でやっておられるところもあ ると思います。したがいまして、今回検討している需給調整を本当にやろうとすれば、 請負ではどうしようもない、短期間、人数の少ないものしかないと思うのです。先ほど おっしゃられたダムなどは請負でやると思います。2年も3年もの工事を派遣でやって いたら労働者も働きにくいし、受入れ側も労働者を長期間管理しなければいけないので たまらないです。それなら自分で雇えばいいわけです。そんなことはなかなかあり得な いと思うので、この事業そのものは請負がなかなか及ばないところが対象になると思い ます。それで今回の労働者の需給調整については労働者の確保ができる、労働者の働く 場が提供できる、悪い業者が入らない、という3つが大原則になると思います。  もう1つお願いしたいのは、先ほど寺澤委員が言われたことです。計画があって、実 施があって、助成金があります。計画の段階でどのようなことをやればいいか、実施の 段階で送出事業主、受入事業主がどういうことをやればいいか、またはどういうことを しなければならないか、そういうことをすればどういう助成金があるかを、体系的に示 していただきたいと思います。我々が考えなければいけないのは、本来は請負でやるの だけれども、請負でやりにくい部分のところです。労働者の雇用確保に資するという原 点に戻って使い易さを考えたシステムで、しかも悪い業者は入れない。その辺りの内容 で頭を整理し直して、検討したらどうかと思います。 ○吉永室長  いま林委員がご指摘のとおり、建設業のある意味での需給調整というものは、この制 度があろうとなかろうと請負が中心だと思います。一定程度の弊害はあるにしても、現 在請負制度がきちんと機能していて、それを大きく変えるという要素はないと思いま す。今回の制度も、請負を大きく変えるというより、一部例外的な場面でこういうもの が活用されるということで、1つのオプションとしての機能だと思っています。そうい う意味で、林委員のご指摘と私どもと全く同じだと思っています。  もう1点資料についてのご提案がありましたが、整理させていただいて次回再度ご議 論いただきたいと考えています。 ○椎谷座長  前回の技能労働者の確保、能力開発について、林委員から若干ご意見が出ましたが、 新しい需給調整システム以外について、他に何かご意見はありますか。 ○笹田委員  その前にもう一言述べておきたいのですが、林委員がおっしゃったのはまさにそのと おりですので、そこをよろしくお願いしたいと思います。  先ほど来指摘するように、労働者保護的な裏づけ、法的裏づけ等を含めて、いろいろ 問題があるということで、資料のほうで投げかけてはいます。そんな関係もありますか ら、融通されて受入工務店に行って就労する場合、大幅に条件が違った場合等を含め て、ここではわかりにくいので、どういった保護策で労働者は保護されているのかが見 えるようなものを用意してほしいのです。そうしないと、これだけではわからないの で、我々はそのためにいるわけで、ましてや何かあるときに、先ほど、もともと契約が あるのだという話、あるいは事業主間でという話と、事業主団体でという話もあったの ですが、労働者はそのようなところには行きはしません。労働組合でもあればそこに相 談すればいいわけですが、その労働組合がないわけです。そうすると現場で不都合があ った場合、泣き寝入りになってしまうわけです。そういう意味での法的な裏づけ等を指 し示してほしいと思います。そうしないと私たちの存在がないので、お願いしたいと思 います。 ○椎谷座長  送出側と受入側で労働条件や、労働環境が違うと送り出された労働者が感じたとき に、どういう法的枠組みがあって、あるいはどういう行政的な機関が措置をするのかと いうことをわかりやすく、ということと理解してよろしいですかね。そういうことで資 料を用意していただければいいと思います。 ○才賀委員  いま笹田委員が言われたように、我々は送り出す側と受入側の2つあります。逆に言 うと、送出側から雇用労働者、若い衆を送り出した場合に、最終的に相手に、当社の雇 用契約はこうなって、出面いくらで、残業代はいくらで、これで受けられるのといっ て、初めて向こうがいいですよと送り出せるのです。それが向こうが逆に、いや、才賀 さんのところは1万5,000円だけど、うちは出面は1万円しか払えない。じゃあ私のと ころは出さないとなってしまうのです。その辺の話は全然問題ないと思うのです。  逆に送出のほうが金を払うわけですよね。そうすると、例えば1カ月働いて、極端な 話で残業を5時間して、いまの会社はいくらくれるのですかといったときに、あなたの ところは2,000円だけど、私のところは1,000円だといったら、若い衆は来月から行きま せんという話になってしまうので、そんなにゴチャゴチャした話ではないと思うので す。  ただ、いまのように3年と区切られてしまうと、3年間自分のところの労働者を出す という話が出てしまいます。先ほど奥田委員と話をしたのですが、土木で3年間の仕事 というと、トンネルや、シールドなどは、全国を歩いているオンリー・ワンの企業がい るのです。そういう企業が従来ゼネコンに付いている我々のような専門業者が、その分 だけ相手に取られてしまうのです。そうするとゼネコンと話をして、一括で請負って、 その業者を下に使うことができるのかという心配があります。そうすると、それを専属 にしている業者が淘汰されるのではないかと思っています。 ○奥田委員  それでさっき確認したのは、事業主団体と事業主がフラットな団体だということは、 それで確認したかったのです。そういうことはないですという話になったのですよね。 重層下請け構造は変えないということですから、それは前提としてあるという議論で進 んでいるから、確認させていただきました。 ○才賀委員  だから常用雇用の労働者を出す場合には、よほど自分のところの雇用契約の中でやっ てもらわないとしょうがないのです。 ○笹田委員  才賀委員がおっしゃるのもよくわかるのですが、職人というのは大体そういうところ でいろいろあります。逆の意味で、その辺をはっきりしておかないと、法的裏づけで、 こういうもので保護されているのだというのがないといかんということを言ってるの で、そこはそこでお願いします。私は常識的には、A事業主、B事業主で、送り出す、 受け入れるというところでは、同じ会員だからないのではないかと思うのです。つまり 同じ会員だから、少々何かあっても、会員同士の事業主で適当にやってしまえという部 分も、なきにしもあらずだから、泣き寝入りするのは労働者だということがあるので、 そこはちゃんと労働者保護の観点で、どのような法律でカバーされていくのかの整理は ちゃんとしたほうがいいと思います。 ○椎谷座長  そろそろ時間ですが、新たな建設労働対策の中で全く新しいのが、この新しい需給調 整システムなものですから、どうしてもそこに議論が集中するのはよく理解できます が、他の部分についてもし何かありましたら、若干時間があるので、最後にいかがでし ょうか。 ○才賀委員  先ほど富士の教育訓練センターの話が出たのですが、やっと3万人日を確保して、助 成をもらっているのは7,500万円ぐらいですが、先ほど冗談でしょうが、4万人日でい くらということがあったので、いま3万人日を募集するにも全国津々浦々を歩いて、目 一杯やって3万人日です。これを一挙に4万人日でいくらと言われるので、希望がなく なってしまうので、3万2,000〜3万3,000で、例えば1,000万円でも、2,000万円でも助 成をしてもらえるような、手の届くところの希望を入れていただければ幸いかと思いま す。以上です。 ○椎谷座長  これは予算の問題もあるでしょうから、ご要望として承っておくということでいかが でしょうか。大変恐縮ですが、予定の時間もきましたので、本日の議論はこの程度で留 めたいと思います。いろいろ貴重なご意見をありがとうございました。本日のご意見を 踏まえて検討を深めていきたいと思いますので、よろしくお願いします。  最後に本日の議事録の署名委員の指名をさせていただきます。本日の署名委員は雇用 主代表では奥田委員、労働者代表は寺澤委員にお願いいたします。よろしくお願いしま す。次回の日程等について事務局からありますか。 ○森下補佐  次回の日程ですが、年が明けて早々ですが、1月11日(火)で調整をしています。よ ろしくお願いします。 ○椎谷座長  本日はこれで閉会といたします。どうもありがとうございました。                     照会先:厚生労働省職業安定局                          建設・港湾対策室 建設労働係                     TEL 03-5253-1111