04/12/10 第11回雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会議事録          第11回雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会 1  日時 :平成16年12月10日(金)8:30〜 2  場所 :厚生労働省職業安定局第1会議室 3  出席者:委員 (公益代表)椎谷座長、白木委員、冨田委員           (雇用主代表)才賀委員、下永吉委員、林委員           (労働者代表)池口委員、池田委員、笹田委員        事務局 大石職業安定局次長、吉永建設・港湾対策室長            小宅補佐、森下補佐、下出補佐        オブザーバー            職業能力開発局育成支援課 杉澤補佐            国土交通省総合政策局建設振興課労働資材対策室 藤田補佐 4  議題 :新たな建設労働対策の検討について 5  議事 : ○森下補佐  ただいまから第11回「労働政策審議会建設労働専門委員会」を開催いたします。本日 は、奥田委員、寺澤委員が所用のため、ご欠席されております。  それでは、議事に入りたいと思います。椎谷座長よろしくお願いいたします。 ○椎谷座長  おはようございます。朝早くからご苦労さまでございます。前回の11月30日に開かれ た会合では、これからの新しい建設労働対策の中で、労働力需給調整システムにおいて 改善計画を作成することが事業主団体の範囲、あるいは就業機会確保事業を実施する事 業主に対する許可基準等について、事務局より案が示されたあと、委員の皆様に、これ らの案についてご議論していただいたところでございます。  前回は、そのあとで今後の新しい建設労働対策について、全体的にまとめたペーパー も出されたわけですが、それは今回まわしとさせていただきました。そこで今日はどち らかといえば、そちらを主として議論していただこうと思います。前回、その新しい労 働力需給調整システムの中でも、就業機会確保事業について、改善計画あるいは許可申 請書の様式をもう少し具体的に示してほしいというご意見もありましたので、その点を 事務局で整理をしていただいた資料もあります。  したがって、今日はそちらをまずご説明いただき、併せて前回繰り越しているいわば 報告書に当たるようなものの原案もご説明いただき、そのあとでご議論に入りたいと思 いますのでよろしくお願いいたします。それでは、初めに事務局から2つの資料につい て説明をお願いいたします。 ○森下補佐  それでは、事務局より資料についてご説明いたします。本日は、資料として、「改善 計画及び事業許可申請書の記載方法(案)」「新たな建設労働対策について(案)」の 2種類の資料を用意しております。それと就業機会確保事業のイメージ図を付けており ますので、適宜ご参照いただければと思います。それでは、まず「改善計画及び事業許 可申請書の記載方法(案)」についてご説明いたします。  この資料は、前回の会合において、委員から改善計画及び許可申請に当たって、どん なフォームを考えているのか。あるいはそれは個々の事項について、どんな観点から審 査を行うのかが分かるものを出してほしいという要請がありましたので、それを踏まえ て整理したものです。  なお、資料に(案)と書いてありますとおり、現在のはたたき台で、あくまでもこれ をベースとして今後詰めていくという性格のものですので、その点はご了承いただきた いと思います。  1頁です。改善計画に何を記載するかということです。左側に具体的に考えられる記 載事項を書き、その記載事項はどういうことを確認するのかを右側に記しています。1 は団体の概要です。ここには団体の名称、所在地、設立年月日などの基本的な事項、 (3)の団体の構成員数、(4)の傘下、あるいはその下に付いている常用労働者の総数、 (5)の事務局体制、(6)にあるように団体の主たる活動区域を記載してもらう必要がある のではないかと思っています。ここでは団体の指導、助言などがしっかり行き届くかど うかを確認する1つの目安になるのではなかろうかと思っています。※で示していると おり、所管行政庁に提出した団体の事業報告書も添付してもらう必要があるのではない かと考えています。  2と3は現状です。2は団体の中にいる構成事業主がどんな労働力の需給状況に直面 しているかです。いわゆる過不足について、どのような認識でいるか、足りないのか、 余っているのかについて認識を記載していただくものです。  例に書いているとおり、事業主単位で見ると、受注量には波があることから一時的に は過剰となる企業と不足する企業が、ほぼ同量存在するという記載が考えられるのでは ないかと思います。記載の方法として、過剰となっている職種、不足している職種とい うように、職種ごとに記載をしてもらう必要もあろうかと考えています。  3は、そういう労働力需給状況を踏まえて、現状としてどのような雇用管理を実施し ているかを見るものです。過不足を前提として、構成事業主がどのような対応をとって いるかを現状ベースで記してもらうものです。  2頁の4及び5は、前の頁にあった現状を踏まえて、過不足あるいはアンバランスを 調整するために、何をすべきかを書いていただくものです。4は改善措置の目標をまず 定めるということです。5で、それでは具体的にどのような対応、改善措置に取り組む かを記載する。例えば、5の1ポツ目にあるように、雇用の安定を図るため、就業機会 確保事業を行うことについて、指導・助言・調整等を行ったり、2ポツ目にあるよう に、団体主催の研修会を開催するといった具体的な労務管理の手法について書くことが 考えられると思います。  6は、改善措置の実施区域です。ここは事業主団体による改善措置ではどういう範 囲、どういう区域で実施されるかを書きます。この趣旨としては事業主団体による有効 な指導・助言が可能かどうか。あるいは送出側の事業主が、労働者に対して有効な雇用 管理を行うことができるかどうかを確認するものです。これは1頁の団体概要の中で、 団体の主たる活動区域を記載することにしておりますので、これと重ねてチェックする ことができるのではないかと思っています。  7は、改善措置をいつ実施するか。8にありますように、就業機会確保事業を実施す る場合には、送出側事業主、受入側事業主の両方をきちんと書くことが必要だろうと考 えています。以上が計画に何を盛り込むかを、あらまし整理したものです。  計画の次の段階として、個別事業主がそれぞれ許可を取ることが必要で、その許可申 請書に何を書くかを整理したものです。左側は記載事項で、その記載事項はどんな観点 からやっているかを右側に整理しています。右側の欄に書いている数字は、5頁、6頁 に就業機会確保事業の具体的な許可基準を示しています。これは前回の会合に提出した もので、5頁、6頁の資料の数字に対応するものです。  まず許可申請書ですが、申請者の氏名又は名称、住所。申請者の役員の氏名、役名、 住所といった基本的な事項、就業機会確保事業を行う場合には、事業所の名称、所在 地。  (7)は、認定計画を策定した事業主団体の名称を記してもらう必要があろうかと思い ます。これは個々の事業主が出す申請書と、その前段階の計画とちゃんとリンケージを 張っているかどうか。整合性がとれているかどうかを確認するものです。  2は、事業計画書が必要ではなかろうかと考えています。事業計画書としては、(1) の計画期間、(2)の送出計画です。ここには送出労働者数、総常用労働者数、送出料金、 受入事業主、指揮命令系統などが必要ではなかろうかと思います。ここは具体的な取組 が過大なものになっていないか、あるいは取組自体がブローカー的なものになっていな いかどうかを確認するものです。  なお、計画期間、送出計画の中に盛り込まれる事項は、あくまで前段階の計画と整合 性がとれていなければいけない。計画の範囲内でなければいけないということは言うま でもありません。  (3)の教育訓練計画です。ここは送り出しに必要な能力を身に付けてもらうというこ とで、短期的な訓練はもとより、中長期的な訓練、その両方をやっていただく必要があ ろうかと思いますが、そのようなことについて記載します。  (4)、(5)は、例えば赤字を毎年続けているような所が、事業を適正に運営するとは考 え難いので、財産面のチェックも必要ではなかろうかと思っています。  (6)に掲げていますが、労働保険・社会保険の加入事業者番号なども必要ではなかろ うか。対象となる常用労働者がきちんと保険に入っているかどうかを確認するもので す。  (7)は、自社が施工する工事量の確保のための計画で、あくまでブローカー的な者は 入ってこないように、ちゃんと本体の建設事業を営んでいるかどうかを確認するもので す。  (8)は、送出労働者に係る賃金規定も必要と考えています。送出されたがゆえに、賃 金が下がるようなことがあっては絶対にならない。そういうことをチェックするために 必要ではなかろうかと思います。  その他添付書類として、次のようなものが考えられるのではないかと思います。(1) は、建設事業の実績を証明するもので、建設業法に基づく許可番号などをいろいろ提出 してもらう必要があります。(2)の定款、(3)の登記簿謄本。(6)(7)に法人税関係の書類 を整理しておりますが、ここはちゃんと事業をやっているかどうかを確認するために設 けてあります。(8)に事業所の使用権を証明する書類と書いてありますが、ここは事業 所をちゃんと構えてやっているかどうか。例えば、携帯電話1本でブローカー的なこと を働いていないかどうかをチェックするものです。(9)の送出責任者の住民票の写し、 履歴書。(10)にありますように、個人情報についても、きちんと管理する体制、手法を 持っているかどうかを確認してまいりたいと思っています。  以上が計画並びに許可申請書について考えられるチェックすべき事項を整理したもの です。これをベースにこれから詰めていく段階のものですので、これについてもいろい ろご議論いただきたいと思います。  それでは、「新たな建設労働対策について(案)」についてご説明いたします。これ は最終の報告書となる形を想定して作ったものです。この資料の中で下線を引いた所が ありますが、これは前回の資料で「報告書素案」を示しましたが、そこが虫食いになっ ていたり、虫食いになっていた所を補なったり、前回の議論を踏まえて書き込んだりし たものを、新たに下線を引いて分かりやすく示しています。  1頁です。Iの「はじめに」は、この専門委員会の検討経緯を整理したものです。建 設業をめぐる諸問題、いろいろな課題に直面しているということ。こういう課題に対し て、新たな建設労働対策として、どのようなことができるだろうか。主に(1)「事業 主の新分野に進出への支援、(2)建設業離職者の円滑な労働移動の推進、(3)建設 業における需給調整システム、(4)必要な技能労働者の育成・確保の促進、という4 つの項目を掲げて、この専門委員会において議論していただき、これまでの経緯を整理 したものです。  2頁は、II、建設業をめぐる状況等」を整理しています。これは今後の対応方向を考 えるうえで、どのような現状認識に立つ必要があるかを整理したものです。1は建設業 をめぐる状況で、ここに書いてあるとおり、バブル崩壊以降の民間投資の減少、あるい は近年の公共投資の削減の動きということで、建設投資は減少傾向が続いているという ことです。  2つ目のパラグラフに書いてあるとおり、人口はこれから減少過程に入るだろうとい うことから、将来的にも建設投資は減少していくことが避けられないのではないか。  3つ目のパラグラフでは、建設業の就業者数は減ってはきていますが、減少の幅も小 さいものとなっていますので、労働者の過不足状況については、過剰感が際立っていま す。  4つ目のパラグラフには、就業者数の高齢化が着実に進んでおり、45歳以上の層が過 半数を占め、その過半数以上が50歳台です。中長期的にはこれらの者が引退していくこ とも考えられますので、技能労働者の不足が大変懸念され、業界内に不可欠な技能労働 者をいかにして確保していくかという面が、大変難しくなってきています。  2ですが、ここは建設業をめぐる状況から離れて、構造改革特区の要望等がいま寄せ られていることを整理しています。長野県小谷村や岐阜県の建設業協会などから、労働 者派遣法の緩和に関する要望が提出されています。これを踏まえて建設業務における労 働力調整システムのあり方について、ご議論いただいたところです。  また経済財政運営と構造改革に関する基本方針、いわゆる骨太と言われるものでも、 地域の中小・中堅建設事業主の新分野進出への取組の支援策を関係省庁が連携して本年 秋までにとりまとめ、速やかに実施するということが位置づけられています。以上が現 状です。  3頁以降は、III、「新たな建設労働対策のあり方」として、4つの項目についてこ れまでご議論いただきました。第1番目は事業主の新分野進出への支援です。(1)の 基本的な考え方ですが、建設業については公共投資の縮減が見込まれており、中長期的 にも大変厳しい状況になっていることから、他分野への労働移動を円滑に進めていくこ とが重要な課題となっています。  地域によっては建設業が基幹産業となっているため、労働移動の受け皿としては、な かなか十分機能しない場合も見られます。また一方で、各地域の建設事業主がリフォー ムや介護・福祉といったほかの分野に進出する動きは、この専門委員会の中でもいろい ろな事例を通して紹介しましたが、そういう動きも徐々に見られ始めていると言えるの ではないかと思います。こうしたことを踏まえて、平成16年3月に策定された各種助成 措置を盛り込んだ建設雇用再生トータルプランを強化していくことが必要ではないかと 思っています。  こういう基本的な考え方を踏まえて 具体的にどのように対応していくかを(2)以 降に書いています。(1)は、新分野へ進出していくためには、既存の労働者が新たな分 野の業務に従事するために必要な能力開発をすることが重要ではなかろうか。そのため の支援をする必要があろうと考えています。  また新分野への進出に当たっては、リフォーム等現時点でも需要が増加している分野 だけではなく、耐震性補強など需要増が見込まれる分野をしっかり捉まえて、需要動向 を的確に把握しつつ開拓していくことが必要です。事業運営のノウハウや高度な技術・ 技能を有する中核的な人材を外から雇い入れていくことも必要ではないかと思っていま す。  こうしたことを受けて厚生労働省においては、新分野の業務に従事するための能力開 発を行う事業主に対する支援を実施するとともに、現在でもワンストップサービスセン ターを設置しておりますので、こういう施策を引き続き実施していくことが必要だろう と思っています。  4頁です。(2)の新分野進出に当たっては、関係省庁との連携強化が不可欠だろうと 思っています。これは「地域再生推進のためのプログラム」や「経済財政運営及び構造 改革に関する基本方針2004」にも位置づけられています。  なお、この点については、現在建設業の新分野進出を促進するための関係省庁連絡会 が設けられ、鋭意議論が行われているところで、いま最終的なとりまとめを行っている 段階で、政府部内で細かい点を含めて調整をしておりますので、その調整が済み次第、 この部分に記述をしたいと考えております。  5頁の2は、建設業離職者の円滑な労働移動の推進についてです。ここは検討項目の 2番目に当たり、基本的な考え方は前の項目とやや重複がありますが、建設業における 職業別の雇用過剰感を見ると、近年、管理・事務、単純工といったところが一貫して過 剰感が強く、これらの者を中心に離職を余儀なくされてしまうことが発生していくので はないかと見込まれています。こういう離職を余儀なくされる労働者に対して、円滑な 労働を推進していくという観点は不可欠で、現在やっている建設雇用再生トータルプラ ンを強化していくことが必要ではなかろうかと思います。  (2)の具体的な対応方向ですが、ここも1番目の検討項目とやや重なるところがあ りますが、(1)の円滑な再就職に向けた能力開発等に対して支援を強化していくことが 必要ではないかと思います。(2)は検討項目と重なりますが、新規・成長分野への労働 移動の促進に取り組んでまいりたいと思っています。(3)の技能労働者については、不 足を感じている企業もありますので、技能労働者が継続的に不足している企業と離職を 余儀なくされる者を、うまくマッチングすることが必要だろう。またこの観点から建設 業務の有料職業紹介事業を導入すべきではないかと考えています。  6頁です。現在、建設業務に係る民間の職業紹介事業としては、無料職業紹介のみ可 能となっていますが、先ほど申し上げた観点を、より進める観点から、建設事業主団体 が中心になって労働者の能力、経験に応じたきめの細かい職業紹介を実施していただ く。それを若干の手数料的なことを踏まえて実施することが必要ではなかろうかと思い ます。もちろん有料職業紹介は国の厳格な関与、地域で作成してもらう改善計画を前提 にして実施することが必要だろうと思います。  7頁以降は、3番目の検討項目である建設業における需給調整システムについてで す。ここはこの専門委員会でも大変多く議論いただいたところです。基本的な考え方で すが、建設業全体では過剰感が見られ、その中で技能労働者の過不足状況については、 過剰を感じる企業、不足を感じる企業が一定量存在しています。同一企業においても、 建設業の特性もあって、一時的に過剰、あるいは不足となる時期が見られます。こうい う状況の下で、一時的な労働力の過不足を調整し、雇用の安定を図ることが重要です。 ひいては将来的に不足が懸念されている技能労働者減少に歯止めをかけることも不可欠 なことだろうと考えています。  特に、構造改革特区提案への要請が寄せられており、各地域の建設業は極めて厳しい 雇用関係に置かれています。これを改善するために、何か必要な対応策を打たなければ ならないということにも留意する必要があろうと思います。  その一方で、この専門委員会でもご意見、ご議論をいただいたように、我が国の建設 業においては、重層請負構造が大変定着している。その請負構造自体が需給調整の面で も十分機能しているのではないか。あるいは新しい需給調整のニーズが存在するとして も、請負いの仕組みを活用しながら調整を図る手法を検討すべきではないか。また重層 請負構造自体が、さまざまな課題を抱えているのが現状であることを踏まえますと、こ のあり方自体について十分時間をかけた上で、その中で需給調整もシステムのあり方に ついても議論を行っていくべきではないかという、やや慎重に需給調整のシステムの検 討を行うべきではないかという議論もいただいています。  「このように」以下ですが、緊急に対策を講じる必要性を1パラグラフ、2パラグラ フで書いて紹介していますが、このような緊急に対策を講じる必要性と並んで、一方で さまざまな意見があります。こういうことを踏まえて、緊急避難的かつ限定的な形で労 働力需給調整システムを新たに創設することが必要ではないかと考えています。  「なお」以下に、構造改革特区提案にありますように、派遣法の緩和を求める要請が なされています。この要請については、たとえ範囲を限定して認めたとしても、中間搾 取等の問題は解決できるものではありません。万が一労働者の保護に欠ける事態が発生 した場合は、適切な復旧措置を講じることが大変困難であることから、たとえ地域を限 定して、特区において、労働者派遣法の緩和を認める方向で対応することは適当ではな いと考えています。ただし、8頁以降に新しい労働力システムを活用することによっ て、その地域から寄せられている要望については、一定限度達成できるのではないかと 考えております。  8頁です。基本的な考え方を踏まえて、(2)の具体的な対応方向です。ここは前回 いろいろなご意見をいただきましたので、その分を書き込んだものです。(1)は、厚生 労働大臣による建設雇用改善等計画の策定で、現在の建設労働者の雇用の改善等に関す る法律に基づいて、5年間の基本計画を策定する枠組みを設けています。こういう基本 的な5カ年計画の中にも、新たに導入する調整システムに関する運営方針のようなもの をきちんと位置づける必要があるのではないかと考えています。  (2)は、建設事業主団体による改善計画の作成です。このシステムにおいては、事業 主団体に中心的な役割を果たしていただくことが重要であろうと考えています。各地域 の建設事業主団体が地域における雇用の安定を図る取組を支援する観点から、雇用管理 の改善を図る措置に加え、建設業務就業機会確保事業あるいは有料職業紹介事業のどち らか、あるいは両方の事業を一体として実施することを内容とする計画を作成して、厚 生労働大臣の認定を受ける制度を導入することが必要だろうと思っています。  この改善計画の中には、これまでの議論で紹介したように、改善措置の目標、内容、 実施時期、あるいは就業機会確保事業を実施する場合は、送出側、受入側の双方を記載 することが必要になってくるかと思います。  イは、計画の認定を受けることができる事業主団体の範囲をどうするかという問題が あります。この点については、悪質ブローカーの介入等による中間搾取、あるいは強制 労働の弊害の排除に万全を期さなければいけないことから、可能な限り対象を限定する ことが必要だろうと思います。具体的にはその3つの考え方に従って判断すべきではな いか。i)は、民法の規定によって設立された社団法人。いわば国の関与がしっかりあ る社団法人については、原則として認めてもよいのではないか。ii)は、事業協同組合 及び協同組合連合会については、設立条件が比較的簡単にできることもありますので、 そこは会員数が一定以上ある、あるいは建設事業を適正に営んでいるという要件を満た すものに限って認めることができるのではないかと思っています。iii)の任意団体に ついては、適正な事業運営を確保するため、厳格な要件ハードルを設定して、これを満 たすものは認めるが、それ以外のものは原則として認めないという方向が必要ではない かと思っています。  9頁です。事業主団体が策定する改善計画がどういうところを対象とするかという範 囲の問題です。ここの基本的な考え方としては、原則として雇用の安定を図るために一 体となって取り組むことが可能な地域とあり、ここはできるだけ狭く、いわば目の届く 範囲が原則になろうかと思いますが、必ずしも都道府県あるいは市町村といった行政上 の区画を単位とする必要はないと思っています。事業主団体が有効な指導・援助ができ るかどうか、あるいは送出事業主が、労働者に対して有効な雇用管理ができるかどうか を実質的に判断し、それを基準として判断するべきではなかろうかと考えています。  ウです。改善計画の認定に当たっては、大臣は地域の実態を的確に把握しつつ、いく つかの要件について、それをきちんと満たしているかどうか厳格に審査することが必要 であろうと思っています。この計画に基づいて、(3)の建設業務労働者就業機会確保事 業の導入を各種事業主に取り組んでいただくシステムを考えています。  (3)のイです。この事業の許可に当たってはブローカー等による中間搾取と強制労働 の弊害の排除に万全を期したいと考えていますので、次に掲げるような要件をクリアし ているかどうか厳格に審査をしてまいりたいと思っています。例えば、i)にあるよう に、雇用確保のための仕事量の確保の努力をちゃんと行っているかどうか。あるいは送 出期間についても適正に労災保険の加入が行われているかどうか。常用労働者のみを送 出するものであるかどうか。いわば当該事業が雇用の安定を目的とするものであるかど うかです。それからii)の建設業を営んでいるかどうか。iii)にあるように、改善計 画等が整合性がとれているかどうか。iv)の適正な雇用管理を行いうる者の配置、労働 者に対する能力開発体制が整備されているかどうか。それから、10頁にあるv)の個人 情報を適正に管理しているかどうか。vi)の財産的基盤、組織体制でしっかりしている かどうか。というこういう要件をきちんとクリアしているかどうか厳格に審査していき たいと思っています。  ウです。なお、就業計画確保事業の活用に当たっては、労働者の送出が、雇用契約の 内容の重要な変更に該当するという事情があります。そのため、送出事業主は、予め労 働者の同意を得ておくことが必要だろうと思います。  またこの事業を活用するためには、法律的な整理ですが、送出事業主と労働者の間に 雇用関係、受入事業主と労働者との間には指揮命令関係が成立することとなりますの で、使用責任については、その内容に応じて送出側、受入側が分担して負担をする。例 えば、賃金の支払いなどについては、雇用関係を取り結んでいる送出事業主が契約で定 められた範囲で責任をきちんと果たさなければならないと考えています。  労災の負担のあり方は、依然内部部局において調整を図っているところです。最終的 にはそこの調整を済ませたあと、この点について記述をしたいと考えておりますので、 ご了承いただきたいと思います。  (4)です。計画に基づき就業機会確保事業と並んで、有料職業紹介事業導入の取組が 可能になっています。イにありますように、有料職業紹介事業の許可に当たっては、厚 生労働大臣は、きちんと要件を設定し、それをクリアしているかどうかを厳格に審査し ていくことが必要だろうと思っています。  (5)です。新たに導入するシステムがありますが、適正に運営を図っていくことが必 要だろうと思います。そのためには前回の議論でも出ましたように、その運営に当たっ て、各都道府県の労働局間で落ちるようなことがあってはいけない。労働局間の連携を 密にしつつ、実施状況を的確に把握するとともに、事業主団体あるいは事業主に対する 指導及び助言、報告徴収、立入検査、改善命令、また必要に応じて許可の取消し、最終 的には計画自体の認定取消しといったあらゆる措置を総動員して運営の適正化に努めて まいりたいと考えています。  11頁のイですが、改善計画あるいは就業機会確保事業や有料職業紹介の事業の許可が 適切なものとなるように、労使の関係者より意見をいただき、その意見を反映させるこ とができる機会。具体的に申しますと、審議会のようなものを開いて、きちんとチェッ クできる場を確保していきたいと考えています。  ウです。ア、イが制度上のもので、ウは制度外のところで、いかにこの制度をバック アップしていくかというものです。システムの適正な運営を確保するために、事業主や 団体などに対して、法令遵守等の徹底を図る研修を実施することも必要であろうと思っ ています。建設事業主団体に作っていただく計画の中には、教育訓練などの取組を適切 に位置づけていただき、そのための支援も行政としてやっていかなければいけないので はないかと考えています。  12頁です。ここは検討項目の4つ目で、必要な技能労働者育成確保の促進についてで す。基本的な考え方は、建設業も高齢化が進んでいます。また建設業は厳しい情勢に置 かれており、認定職業訓練校などの教育訓練施設の休・廃止も進んでいます。こういう 状況を踏まえて現在実施している建設雇用再生トータルプランを強化していくことが必 要ではなかろうか。  具体的な対応方向としては、個々の厳しい経営環境の中で、個々の企業努力のみでは 対応がなかなか難しくなってきています。そのために厳しい環境の中でも建設事業主が 技能労働者の育成・確保を図ることができるように、建設業全体として必要な訓練をや っていく。そのために教育訓練の共同化、あるいは広域的に実施することが必要ではな いかと思います。  (2)にありますように、熟練技能の修得など教育訓練については、体系化がなされて いない。そのために熟練技能の継承が円滑に行われていないという懸念が出されていま す。この点についても、熟練技能を効率的、かつ体系的に伝承できる方策を、今後検討 していく必要があると考えています。  13頁のIV「おわりに」です。ここはこれまでの検討経緯、4つの項目についてご議 論、ご検討いただきました。この検討内容に即して厚生労働省においては必要な法制的 な整理をして、所要の措置を講ずることが適当であろうと考えています。  この中でも紹介しましたように、法律の中で5年ごとに基本方針を定めることになっ ており、現行の計画が平成17年度で終期を迎えるという事情もあります。平成18年度以 降の基本的な指針をどのように定めていくかについても、今後この専門委員会の中で十 分ご議論いただくことが必要であり、その基本方針を含めて、今後の建設労働対策につ いてどのように考えていくか、検討を深めていただく必要があろうと結んでいます。 ○椎谷座長  それでは、ただいまからご質疑とご議論をいただきます。最初に説明された需給調整 システムについてご議論いただくわけですが、前回まで随分微に入り細にわたり詳しく ご議論いただいている関係上、最初のペーパーについてはごく簡単に済ませていただけ れば有難いと思います。今日はあとのほうで説明があった「新たな建設労働対策につい て」の議論を中心にお願いできればと思います。それでは、初めに「改善計画及び事業 許可申請書の記載方法(案)」について、ご質疑、ご意見をお願いいたします。 ○林委員  この前、私は申請書の記載方法とチェックポイントのようなものをということでお願 いしたのですが、資料を出していただいてありがとうございました。今回の技能労働者 の融通については、一連の委員会で何回もお話が出ていますが、不良業者は除く、しか し、やりたい人にとってはあまり過重な要件を課さないということが原則だと思いま す。  私が特に関心を持っているのは、才賀委員の会社のような方の専門工事業団体です が、例えば団体に入っておられる会社があって、その会社は技能労働者をあまり持って いない。実際に技能労働者を持っているのはその下の協力会社、あるいはもう1つ下の 協力会社が持っていることが多いと思います。この案でその辺をどうするか。ある団体 が申請を出して認められる。団体の会員は、技能労働者をあまり持っていない。その下 の協力会社の方が技能労働者を持っているわけです。ということは、常時会員会社の仕 事に従事している協力会社については、会員会社の実力、実績を評価することによっ て、その会員会社の保証のもとで配下の協力会社の技能労働者の送出ができるというよ うなことはどうか。それを認めないと実態的には融通する技能労働者の数が非常に少な いことになりますので、条件を付けてそこを認めないと、対象となる技能労働者の数が あまりにも少なくなってしまうのではないかということです。例えば、大工の組合でも 鉄筋の組合でも、会員が雇用している技能労働者の数は限られていると思います。そこ だけ集めて何人かと言っても、そんなにはならないので、会員の下で常時会員会社の仕 事に従事している協力会社が雇用している技能労働者を含めて考えないと、なかなか難 しいと思います。ただどのような条件を課して認めるのか等、難しい問題はいろいろあ るとは思います。  細かい話で、1頁目の2の構成事業主の労働力需給状況がありますが、これの過不足 を記載して出す、これはたぶん団体が出す分ですので、この辺も次の段階で事業許可を 申請する業者だけを対象にするとかの配慮が出来ないでしょうか。全ての会員会社から これを全部取るのは大変でしょう。できるだけ不良業者が入らないことが大事なのです が、本当に申請しようという人にとっては、あまり過度な負担をかけないということか ら、その辺は配慮してはどうかということです。 ○吉永室長  1点目について、実際に労働者を雇用している事業主が必ずしも団体の直接の構成員 になっていないのではないか。こういうものについて、今回の就業機会確保事業等々を 認めるべきではないかというご指摘がありました。この辺は実態について、もう少し精 査していく必要があるのだろうと思っています。しかしながら、今回のスキームがあく までも団体の関与を前提として事業の適正を図っていくことを前提に考えております。  そういう意味で直接構成員であれば、団体のいろいろな形での関与は可能になると思 いますが、構成員の関連会社、また関連会社という考え方は実際の建設業界の中での関 係は非常に強いものがありますが、団体との関係あるいは通常の感覚からすると、単な る商取引の関係になってしまうという形になってしまいます。そういう意味で、通常の 取引関係ということを前提として見た場合に、2段階の構成員について、実際の事業が 適正にできるのかどうかについて、なかなか難しい面もあるのだろうと思っています。  然はさりながら、一方で実際に労働者を抱えている人たちは、三次下請け、四次下請 けの層であることはご指摘のとおりかと思っています。この辺りはもう少し検討したい と思っていますが、基本的には団体を構成する中での需給調整を念頭に置くということ です。  ある意味で二次下請け、三次下請けの層においても、いろいろな形での団体があり得 るのだろうと思っています。例えば、事業協同組合が設立されていて、そこがきちんと した体制であれば、そういうものも観念的には入っていくという形で、必ずしも既存の 社団法人に限っていないものもあり得るということで、弊害のある面もあるとは思いな がら、一定程度認めていくべきではないかという形で提案しているというのは、そうい う面も含めてのことです。いずれにしても団体を中心として事業の適正化を図っていた だくという趣旨から、いまのご提案については慎重に検討する必要があるのだろうと思 っています。  2点目について、団体が労働局の需給状況等について計画を策定するという点につい て、負担をなるべく軽くするべきであるというご指摘がありました。これは提案のとお りだと思っています。林委員がご指摘のとおり、必要な書類については当然出していた だきますし、必要な負担については負っていただく必要がありますが、過剰なものにな ってはいけないというのは全く同感で、一般論としても全くそのとおりだと思っていま す。  いまご提案になった需給調整の状況について、まさに就業機会確保事業をやるのであ れば、その範囲でよいのではないかというご提案だったかと思います。基本的にはご指 摘のとおりだろうと思っています。ここに記載するのは、団体が就業確保事業なり、建 設業務有料紹介事業なり、そのほかの改善措置を団体として取り込むことを前提とした ものです。  ただ、その範囲が団体の構成員の全体の中を見てどういうものなのか実際的に判断し ていく必要があると思っています。通常のケースですと、団体の一部だけでやるという ケースは少ないのではないかと思っています。全体の状況あるいは実際に就業確保事業 なら就業確保事業をやろうとする範囲について、最終的には団体が何をやるのかという 観点からの記載事項になることは重要ではないかと、実際の運用に当たっては考えてい きたいと思っています。  いずれにしても現段階で出している改善計画の記載事項の案、あるいは許可申請書の 案は、まだ全く詰まっていないもので、先般ご指摘があって、慌てて作ったものです。 いずれにしても施行の段階までに精査をしたいと考えています。 ○林委員  実際に認めるのは都道府県の労働局の段階に入っていきますので、その段階で不良業 者や悪徳業者が入らないようにすることは絶対大事だと思います。ただそれ以外の真面 目にやろうとしている人が、ある程度やれるように柔軟に考えていただけるようなこと にしておかないと、書類提出の段階で躊躇してしまうことになるとやる所がなくなって しまうことにもなり兼ねないので、不良業者は排除しなければいけないが、真面目に取 り組もうとする団体については、ある程度柔軟に考えるようにしておいていただけたら と思います。 ○池田委員  3頁の構成事業主の問題です。1が申請書、2が事業計画書です。申告書に添付する (1)(2)があり、送出労働者数、総常用労働者数の2つが書かれています。これはたたき 台のたたき台だと言われていますから、まだ精査をしていないと聞いております。先ほ どから林委員も言われているように、暴力団の防止、ブローカー派遣の専ら融通だけの 業者の排除、中間搾取、強制労働等をなくすために、果たしてこれでいいのか。送出労 働者数を出して、総常用労働者数はホワイトカラー(事務員)のあらゆる者の総数の中 の数と送出労働者数ということになるわけです。本来なら現場の常用労働者が何人い て、その中で送出労働者はどのぐらいという計画をすれば、専ら融通ということにはな らない。すなわち手配師的なものを我々はすごく懸念しているわけですから、この辺の 基準というか、見分け方はきちんとしたほうがいいのではないかと思います。 ○吉永室長  池田委員ご指摘のとおり、今回のスキームに載ってくるのは、いまの建設労働者の雇 用改善法等に基づく建設労働者、すなわち実際の現場作業者の層です。その層について 実際にどういう割合で就業機会確保事業の対象労働者になっているのかという点を把握 するのは非常に重要だと思っています。ご指摘の点を踏まえて修正をしたいと考えてい ます。 ○笹田委員  先ほど林委員から出ていましたが、事業主団体の会員の事業主は、必ずしも技能労働 者を抱えていないと言われましたが、実態はまさにそのとおりです。抱えているのはさ らに協力会社が職人を集めてきて、さらにはその下にという感じで、だから難しいと冒 頭から申し上げていたわけです。なおかつ、請負制度だったら、その辺は需給調整がう まくできていたのだという話です。実態としては、なかなか利用しづらいと思います。 しかし、ただ協力会社、さらに下請の人たちまでがやれるようにしてしまうと、それこ そ大変なことになるということも同時に認識しておいていただかなければなりません。 だから、どういう拾い方があるのかは、かなり怖い、危険なところだと申し上げておき たいと思います。 ○吉永室長  ご指摘の点は、非常に重要な点だと思っています。ご指摘の点については、次の資料 の「新たな建設労働対策について」の中にも記載したとおりで、十分考える必要がある と思っています。実際にこの事業がどういう所で使われるのかを考えた場合、翻って考 えますと、適当かどうかは別にして、1つの契機になったのは特区の話や地域再生の話 で、長野県小谷村であり、岐阜県の建設業協会からの要望です。これらはある意味で東 京のスーパーゼネコンを念頭に置いたものというよりは、地場の非常に小規模なゼネコ ンを中心にした地域における雇用の問題を、どう対処するかという問題だろうと思いま す。  スーパーゼネコンを中心にした考え方に立ちますと、この制度を扱われる余地がどの 程度なのかという点は、再度検討する必要になる部分があると思っています。今回のス キームが非常に厳しい地域における緊急避難的な対応を念頭に置いた場合に、地場のゼ ネコン等々を中心にした体制の中で考えた場合、地域においては都道府県の建設業界な り、そういった団体に、東京を中心にしたスーパーゼネコンの体制であれば、三次、四 次に相当する程度の規模のものが、きちんとした団体に入っているということは比較的 多いのではないかと考えています。  そういう観点からすると、必ずしも使われないことではないと思っていますし、今回 のターゲットである地域における中小規模事業者の雇用の安定を、団体として取り組ん でいただくという目標からすると、その目的は一定程度果たせるのではないかと考えて います。  1つの課題として、例えば首都圏の三次、四次における労働力需給システムは、新た に必要なのかどうかという実態も見ていく必要はあると思っています。またそういうも のを今回のスキームのような団体に関与させる形で、実際に事業を行っていただくこと が可能かどうか、全く不可能なのかどうかも見ていく必要があると思っています。今回 の検討の初めの段階から考えてみると、その地域における非常に厳しい雇用情勢の中、 また建設業の公共投資がいちばん減少が効いている分野、その地域における雇用という 面からすると、今回のスキームが一定程度の役割を果たすことは十分期待できると考え ています。 ○笹田委員  室長がおっしゃったことは分かっていますが、林委員がおっしゃるとおり、実態もま たそうだと思います。だからと言って、そこの会員でもない協力会社、その下の有限会 社、技能を持っている人たちが、もうやれるのだということを野蔓的にやってしまう と、おかしくなってしまうということを言いいたいるのです。そこのけじめを付けてお かないとまずいということを言っているのです。そのようになってしまうと、この世界 は誰でもやれるということになってしまうのです。だから、そこを一定の歯止めをして おかないといけないのです。林委員のおっしゃることは実態としては分かりますが、そ れをやってしまうと、黙ってやるよということになってしまい、歯止めをどうするかと いう話です。ですから、最初の段階は厳格にやっておかなければいけないということを 言いたいわけです。 ○椎谷座長  難しい問題ですが、本質的に思っていることは似ているような感じがします。その辺 を含めて、具体的に計画を作る段階でも含めて、事務局でも検討していただく。例え ば、建設労働対策の中で次のペーパーがありますが、その辺を明らかにしてもらうこと も必要だろうと思います。 ○林委員  まさに笹田委員が言われるとおりで、使われるシステムでなければいけないし、不良 業者は絶対排除しなければいけない。私がこれまで委員会等で実態をお聞きした地方大 手ゼネコンの方は、年間施工高は100億円くらいだったと思いますが、このような会社で は、技能労働者を直接雇用せず、左官から型枠大工からみんな外注していたと記憶して います。小谷村まで行くと分かりませんが。例えば岐阜の建設業協会の会員会社の方々 は、技能労働者を直接雇用しておられるのでしょうか。 ○下永吉委員  それは持ってないでしょう。 ○林委員  そうすると、技能労働者はあまりおらず、何人かはいるかもしれませんが、それの需 給調整といったら、あまり期待できないということになります。 ○椎谷座長  妙なことを言いますが、そういう会社であれば、おそらく過剰ですということは言っ てきませんね。 ○林委員  たぶん、配下の協力会社である専門工事業会社が人が余っているから、何とかしてや ってくれということになります。 ○椎谷座長  言い方は分かりませんが、ただ、今回の場合は、どちらかというと、緊急避難的、限 定的にやろうということで、出発点としては最初から広げるというよりは、比較的限定 的にやってみて、実情を見ながら検討していくことも必要かという感じはします。 ○林委員  ここのところは、あまり厳密にやり過ぎると、技能労働者の需給調整などは初めから あり得ないといことになってしまうし、あまり緩めると怪し気な業者が入ってくるの で、その辺を考えて、うまくやらないと難しいというところです。 ○池田委員  私が大変心配しているのはそこです。逆に言うならば、最初のところで社団法人の建 設協会については、この論文と同じように、私も異議なしなのです。問題は事業協同組 合と連合体があって、それは1,100ぐらいです。ところが、6,000、あるいはもっとある かもしれないと言っています。いま座長が言われたように、最初からそのような考え方 をしないで、緊急避難的、限定的な地域に限定するというわけですから、そこから出発 しないとまずいと思っています。だって、事業協同組合がどのぐらいあるか分からない のです。我々も分析できていませんが、相当数の雇用労働者、現場労働者を抱えている 人たちが構成労働事業主の中にいるか、いないか調査をしていませんから分かりません が、いると仮定してやったほうがいいのではないか。笹田委員が言われたように、構成 事業主の、さらに下請にまでしてしまうと、まさに無法状態になっていくと思いますの で、そこは限定したほうがいいのではないかと思っています。 ○椎谷座長  大変申し訳ないのですが、改善計画及び事業許可申請書記載方法の案についての議論 を、ちょっと超えて、むしろ建設労働対策そのものについてのお話になりかかっている ものですから、最初の資料については、この辺で収めさせていただいて、次のペーパー に移って、その中でもご議論いただければと思いますが、よろしいでしょうか。それで は2枚目のペーパーについて、ご自由にご発言いただければと思います。 ○池田委員  建設業務労働者就業機会確保事業の導入のイは9頁で、10頁のウは重要な点です。 「なお、本事業の活用に当たっては、労働者の送出が雇用契約の内容の重要な変更に該 当することから、送出事業主は予め送出労働者の同意を得ることが必要である」と作文 がなされているわけです。先ほど前提条件として、「送出労働者の労働条件や賃金など を最大限に保護しなければならない」と書いてあるわけです。そこで口頭では、言っ た、言わない等々でトラブルが出てきますので、ここはきちんと「書面をもって同意を 得ることが必要である」という文面を入れていただければ有難いと思っています。 ○椎谷座長  いかがでしょうか。 ○吉永室長  一般の契約の関係で言うと、口頭の契約も契約ですので、そのような観点からして、 その文章まで必要かという点は検討する必要があると思っています。ただ、基本的に通 常のケースだと、文書で同意を取ることが通例だろうと思っています。また建設労働の 特殊性から、そもそも口頭契約ですべてが決まってしまうことが多いという問題点があ りますので、例えば雇入れ時については、文書によって労働条件を明示することもして います。  そういう観点から、導入について文書を求めることについて、過剰な要求であるとも 考えておりません。具体的にどういう形で整理するかについては、もう少し検討したい と思っていますが、ご趣旨が活かせるような形で修正する方向で考えたいと思います。 ○池田委員  是非そうやっていただきたい。なぜそれを言っているかというと、特殊なものなので す。こういう所は労働組合がないのです。そうすると、一般の労働組合であれば労働協 約を結んで、きちんと送り出すことができますが、できないわけですから、きちんと書 面をもってやっていただくという点を強調したわけです。是非そういう方向でお願いし たいと思います。 ○椎谷座長  ほかにございますか。新しい需給調整システム以外でも結構ですので、どうぞ。 ○林委員  12頁の技能労働者の育成・確保というのは非常に大事だと思います。私も長年技能労 働者の養成・訓練などの実態も見てきました。具体的な対応をどうするかということに なってくるのですが、この案でもあまり具体的には書かれてないようにも思います。こ れは難しいからこうなったのだと思います。例えば、(1)の結論のほうで、「教育訓練の 共同化や広域的実施を推進することが必要である」とあります。共同化というのは、昭 和40年代ぐらいに随分やって、なかなかうまくいかず、その後また分かれて1社ずつや ってきた。そして最近では1社ずつやっていた真面目に取組んできた有力業者でもなか なか難しくなってしまった。現状は共同化の具体的道筋も見えないし、広域的実施もな かなか難しいと思います。  これは私の提案ですが、具体的な対応で、書いていただけるのならということです が、現状は職長が作業員に教えているというか、他業種から、あるいは学校を出てフリ ーターをやっていて建設業に入ってきた人達については、現実には職長が手取り足取り 教えていると思います。職長が実際に教えているのなら、職長が教えやすいテキストな のか、必要なものは業種ごとで違うと思いますが、業種団体にお話を聞いて、職長が技 能訓練をやっている段階で必要とするものを提供し、テコ入れができないかということ です。これを具体的な対策として書いていただけたらというのが私の提案です。 ○吉永室長  ここで教育訓練の共同化、広域実施について記載しています。この部分で基本的に考 えているのは、いま教育訓練の中で、比較的順調に行っているものが、才賀委員にご努 力いただいている面もありますが、富士の教育センターが広域的な施設としてかなり実 績も上がっており、評判も非常にいいということです。富士の教育センター、あるいは 三田にもありますが、このようなものは野丁場職種に限られています。  町場については、既存の認定訓練校が、これまで重要な役割を果たしていますが、こ の辺りをもう少し広域化する方向で、それを促進することはできないかということを念 頭に置いて、こういう書きぶりになっています。既存の町場の認定訓練校は非常に上級 の所が多いですし、これを共同化、広域化というのも正直難しい面もあるかと思ってい ますが、将来的にはこういうものを共同利用するような形にすることが、効果的な教育 訓練実施に必要ではないかということで記載しています。  職長教育の関係について充実させるべきではないかというご指摘がありましたが、こ れは全くそのとおりだろうと思っています。実際にこの報告書の中にどう書き込めるか は別にして、いずれにしても次の計画等々の中での中心事項の1つとして検討したいと 考えています。 ○椎谷座長  ほかにいかがですか。 ○池田委員  まず私は労働力需給調整システムについての質問と意見を述べたいと思います。10頁 のいちばん下に、「新たな労働力需給調整システムの適正な運営」というのがありま す。新たな労働力に当たっては、悪質ブローカー、中間搾取、強制労働等々と書いてあ ります。「その点から厚生労働大臣は、各都道府県の労働局間の連携を密にし、システ ムの実施」と書かれています。各労働局間との連携を密にしてと、確かに文章上は書い てありますが、具体的には労働局間に、例えば、こういう需給調整システムというのが 誕生した場合には、労働局の中に部とか課、あるいはプロジェクトチームなども具体的 に置くようになるのですか。 ○吉永室長  正直申しまして、このシステムがどのぐらい使われるかということで、かなり緊急避 難的、限定的スキームということで、それほど大きなものにはならないと考えていま す。そういう観点から、部などというものにはなかなかならないと思っていますが、い ずれにしても専任の担当官は配置したいと考えています。 ○池田委員  8頁の(2)の建設事業主団体における改善計画の作成と、構成事業主の許可を取るた めの計画をずっと見てみますと、更新とか3年計画という話があったのにそういう文字 が見当たらないのですが、更新のときには改善計画や許可を新たに取るのだということ はここに一切ないのですが、どうなのですか。 ○吉永室長  ご指摘の点について記載したいと考えています。 ○池田委員  さっきから見えないですよね。 ○椎谷座長  今まで出てきた資料には確かにありましたね。 ○下永吉委員  私は全国建設業協会から来ているのですが、現状の業体の流れには危機感を持ってい ます。業界の中に再編、統合、新分野進出の委員会、人材確保対策で確保育成に対する 検討会を昨年から、新分野関係の委員会も立ち上がらせて、真剣に検討しています。  先ほど林委員からもありましたが、需給調整システムの部分は除いて、新分野の関係 や人材の確保・育成は2、3年遅れているのではないかという気がします。我々の業界 は非常に危機感を持って、先に先にといろいろ検討をして、役所に対して要望するとこ ろは要望し、やっているわけです。まとめられる場合、例えば、3頁のいちばん上に、 「公共投資の縮減が見込まれ」とありますが、当然もう見込まれているというか、そう なっている話で、その辺の整理を図りつつ、もう少し厚みのある形にならないものか。 需給システムのほうのいろいろな議論も結構ですが、私どもとしては新分野の関係、確 保・育成の問題にも相当時間を割いていただいて、ご討議いただければと希望するとこ ろです。 ○吉永室長  ご指摘の点、私も実感しているところです。需給調整システムについては、分量的に もかなりの頁になっていますが、そのほかの部分が4項を立てたわりには、もう少し書 き込めたらいいと考えている次第です。  行政のほうが2、3年遅れているというご指摘がありましたが、まさに行政としては そのとおりで、ここでこういうものをやればという知恵がないということで、私どもと しては知恵を絞ったつもりですが、結果として下永吉委員がご指摘のとおりの状況で す。是非ともこういうことをやったらいいのではないかというご提案をいただき、そう いうものを盛り込ませていただければと考えている次第です。  また報告書の最後にもありますが、来年5カ年計画の見直しの時期にきております。 今回はかなり慌ただしく審議をしているわけですが、5カ年計画の策定に当たり、腰を 落ち着けた形で5年間という期間ですが、中期的なものについてどうしていくべきかと いう議論をきちんとしたいと考えています。その辺りも併せてご理解いただければと考 えています。 ○池田委員  今までも大きな課題になっていた労災保険の件ですが、今日は出ていませんが、次回 はどのような予定になっておりますか。 ○吉永室長  労災の適用の関係については、事務局側より送出事業主が負担すべきではないかとい う案を示したところ、現状にそぐわないという意見を公労使一致した形でいただきまし た。行政組織の内部の問題ですが、労災の関係は別の組織が所管しているということ で、そういう問題意識をぶつけながら、いま議論をしているところです。  労災の問題は、まさに補償の問題、お金の問題を非常に慎重に検討しなければならな い部分がありますので、本日、具体的な対応についてお示しできるまでには至っており ません。今年中にもう一度この委員会を開催できればと考えていますが、次の機会には 何とか案をお示しして、ご審議いただければと考えています。 ○池田委員  11頁のイに、「また、厚生労働大臣は、改善計画、許可、労使間の関係者の意見を反 映させるため」とありますが、労使等というのは公労使で、等というのは何ですか。 ○吉永室長  失礼いたしました。この委員会においてご審議いただくということを念頭に置いてい ます。そうしますと、そういう形になってしまい、この文についは記述を適正化したい と考えます。 ○椎谷座長  労使の力があるということではありませんか。まだご議論はあると思いますが、今日 は報告書の説明を詳しくしていただきましたし、さらに皆様方にご検討いただいて議論 を深めていただければと思います。そういうことで言えば、本日はこの程度にとどめて おいていただき、次回にまたご議論を深めていただければと思います。  それでは、本日はこれにて終わりにいたしますが、最後に本日の議事録の署名委員の 指名を行います。本日の署名委員は、雇用主代表の林委員、労働者代表の池口委員にお 願いいたします。次回の日程等について、事務局からございますか。 ○森下補佐  次回の日程は12月下旬で調整をさせていただいております。どうぞよろしくお願いい たします。 ○椎谷座長  皆様方はお忙しいころだとは思いますが、これから事務局で調整をさせていただくよ うです。  それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。どうもありがとうございまし た。                      照会先:厚生労働省職業安定局                          建設・港湾対策室 建設労働係                      TEL 03-5253-1111