04/11/02 第8回雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会議事録          第8回雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会 1 日時 :平成16年11月2日(火)10:00〜 2 場所 :経済産業省別館827号会議室 3 出席者:委員  (公益代表)椎谷座長、白木委員           (雇用主代表)奥田委員、才賀委員、林委員           (労働者代表)池口委員、池田委員、笹田委員、寺澤委員       事務局 大石職業安定局次長、吉永建設・港湾対策室長           小宅補佐、森下補佐、下出補佐       オブザーバー           職業能力開発局育成支援課 杉澤補佐           国土交通省総合政策局建設振興課労働資材対策室 藤田補佐 4 議題 :新たな建設労働対策の検討について 5 議事 : ○森下補佐  ただいまから、第8回「労働政策審議会建設労働専門委員会」を開催いたします。本 日は、冨田委員と下永吉委員が欠席です。以後の議事は椎谷座長にお願いいたします。 ○椎谷座長  これまで、何回かにわたり建設業をめぐる産業なり、雇用の状況について統計資料等 を基に説明があり、また新しい建設労働対策についていろいろご議論いただきました。 特に大きな柱として、新しい分野への進出の問題、建設業離職者対策の推進、労働力需 給システム、技能労働者の確保・養成という問題について議論を深めてまいりました。 皆様方のこれまでのご議論等を踏まえ、事務局で議論を踏まえたたたき台の素案を作っ ていただきましたので、まずそれを説明していただいて議論を進めていきます。 ○森下補佐  本日の資料は3枚紙のもの1種類です。前回と前々回において、事務局から「建設業 をめぐる情勢」及び「需給調整システムのあり方」などについてご説明いたしました。 それを踏まえ、委員の皆様にさまざまなご議論をいただきました。本日の資料は、これ までの議論を十分に踏まえ、論点を整理しつつ、今後の建設労働対策のあり方につき、 その方向性を探るものとして作ったたたき台です。  1「建設業をめぐる状況」については、前回、前々回にご説明いたしましたが、再度 簡単にご説明させていただきます。1ポツ目の建設投資については、平成4年には84兆 円ありましたが、平成15年には56兆円と約3分の2に落ち込んでおり、減少基調にある と見込まれております。今後も一層減少することが懸念されている状況にあります。  2ポツ目は、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」、いわゆる骨太と言 われているものです。これは、本年6月に閣議決定されたものですが、その中において 地域の中小・中堅建設業主の新分野進出への取組みの支援策を、関係省庁が連携して、 本年秋までに取りまとめを速やかに実施する、ということが規定されております。  3ポツ目で、構造改革特区の提案もいくつか出されております。長野県の小谷村、岐 阜県の建設業協会から、地域の雇用情勢が大変厳しいということを踏まえ、建設業にお ける労働者派遣を認めてくれ、という要望が提出されております。これを踏まえ、建設 労働者の雇用の安定を図る観点から、建設業務における労働力調整のシステムのあり方 について検討することが求められています。  4ポツ目は、やや中長期的なことになりますが、技能労働者の高齢化が確実に進んで いるということです。中長期的には不足することが懸念されているという状況です。  こういう状況を踏まえ、今後の建設労働対策はいかにあるべきかを以下に整理してお ります。IIで4本の柱を立てておりますが、これは前々回のこの専門委員会で4つの課 題に則して検討をしていきたいという提示をいたしましたが、まさにその4つの柱に沿 って整理をしたものです。  1「事業主の新分野進出の支援について」という論点についての(1)「基本的な考 え方」として、中長期的に建設投資の減少が見込まれている。今後、一層就業の場も縮 小していくことが懸念されている。建設業の場合には、一旦離職しても、また建設業の 中に戻ってこられる傾向があることを踏まえ、まずは建設業内部で労働移動を円滑に進 めるための方策が必要ではないか。例えば、リフォーム、バリアフリー、介護関係とい うふうに、建設業内部にもいくつか有望な分野がありますので、そういう分野への労働 移動を図るべきではないか。そのための支援を強化すべきではないかということです。  (1)の2ポツ目は、建設業内部だけではなく、例えば建設業外部では、地域によっ て有望な受け皿である農業分野と、建設業以外の新分野に対しても労働移動を円滑に進 めていく必要があるのではないか。  こういう基本的な考え方を踏まえ、(2)「具体的な対応方向」を示しております。 1ポツ目は、こういう新分野に従事するためには、個人個人が必要な能力を高めていた だく。必要な能力開発を行っていくことが必要だろうと思っております。それぞれの新 分野にふさわしい人、その分野に明るい人といった中核的な人材を雇い入れることも必 要ではなかろうか。こういう取組みを強化していくことが必要ではないか、ということ を1ポツ目で書いております。  2ポツ目は、前々回事務局からご説明させていただきました、「ワンストップサービ スセンター」です。これは、国土交通省であれば経営診断に関するサービス、経済産業 省であればベンチャー企業育成や金融の観点からのサービス、厚生労働省であれば労務 面のサービスを一括して提供できるという場所を最大限に活用し、あるいは積極的に活 用していく仕組みを構築していくべきではないか。  3ポツ目は、平成16年度から「建設雇用再生トータルプラン」を策定しております。 これは、助成金を中心としたパッケージですけれども、こういうトータルプランを強化 し、政策を推進していくことも必要ではないかということです。  2「建設業離職者の円滑な労働移動の推進について」のところは、離職者対策と言わ れているところです。(1)「基本的な考え方」で、離職を余儀なくされる建設業労働 者については、まず事業主にいろいろ努力していただきます。それでも持ちきれない、 それでも無理なところがありますので、そういう場合には事業主団体による支援、取組 みを支援していく必要があるのではないか。  これを受けて(2)「具体的な対応方向」の1ポツ目はやや1番目と重複するところ があるかと思います。新分野の業務に従事するためには、個々人の能力を高めていただ く。そういうことに対して、行政としても支援を行っていくことが必要ではないか。  2ポツ目は、離職を余儀なくされる労働者と、現在でもやや不足を感じている事業主 もありますので、その両者のマッチングを図る観点から、事業主団体が情報提供、ある いは職業紹介を行う仕組みも必要ではないか。事業主団体は、業界の事情にある程度精 通していることを踏まえ、労働者の能力や経験に関する情報を提供しつつ、必要に応じ て職業紹介を実施することが必要ではないか。  3「建設業における需給調整システムについて」の「基本的な考え方」としては、 (1)の1ポツ目のように、建設業全体では過剰感が強い、ということが挙げられると 思います。そういう全体的な傾向の中でも、技能労働者については、過剰を感じる企業 と不足を感じる企業が、それぞれ同じぐらい一定量存在するという状況があります。こ ういう状況を踏まえ、技能労働者の就業を確保し、その雇用の安定を図るという観点か ら円滑な労働力需給調整を可能とする仕組みを整備していくべきではないか、というこ とを提起しております。  2ポツ目は、この新しい需給調整の仕組みを検討するに当たり、現在のところ建設業 務については労働者派遣法により「適用除外」を受けております。この背景として、人 を集めて不正を行う、ピンハネを行うといったおそれが全く消滅したわけではありませ んので、そういう歴史的な背景や趣旨を十分汲んで、労働者保護の観点で万全を期すべ きではないか、ということを提起しております。  3ポツ目は、この新しい仕組みを作るに当っては慎重に検討を行っていくべきであ り、委員からご指摘がありましたように、地域内における雇用の安定を図る観点に即す る形、いわば緊急避難的かつ限定的な形で整備を行う必要があるのではないか、という ことを提起しております。  こういう基本的な考え方を基にして、(2)「具体的な対応方向」を記しておりま す。1ポツ目は、これまでの歴史的な背景のところで申し上げましたが、悪質なブロー カーの介入、賃金の中間搾取のおそれは皆無ではありませんので、そういうことを十分 に防止しつつ、十分に配慮しつつ技能労働者が不足している企業と、離職を余儀なくさ れる技能労働者の両者のマッチングを図る観点から一定の仕組みを設ける必要があるの ではないか。  その仕組みというのは、国がしっかり関与し、国の一定の関与の下で厳格な適格性要 件を満たした事業主間、送出し側と受入れ側がそれぞれ厳格な適格性要件を満たした上 で、労働者の融通を図っていく仕組みを構築していくべきではないか。  2ポツ目は、1ポツ目とはやや違う観点からですが、現在建設業務に係る民間の職業 紹介事業としては、無料のもののみ可能となっております。この部分についても、まず 国がしっかり関与した上で、適格性要件を満たした事業主団体が実施するような仕組み を構築していくべきではないか。「有料」と書いてあるのは、紹介に必要な実費を徴収 することはよいのではないか。実費を取ることにより、そのインセンティブを高めてい くことも可能ではないか。  3ポツ目は、こういう新しい需給調整システムを導入するに当たり、そのシステムが しっかり適正に運営されるよう、事業主や事業主団体に対して研修を徹底して行う。そ れにより、関係法令や仕組みをしっかり理解していただく、あるいは求められる責任を どのように果たしていくかを徹底的に理解していただく、修得していただくことが必要 ではないか。  4はやや中長期的な課題ですが、「必要な技能労働者の育成・確保の促進について」 という柱です。(1)「基本的な考え方は」の1ポツ目にあるように、長期的に見れ ば、数年後に人口減少に転じることは確実視されている。そういう中で建設労働者の高 齢化も進展し、業界で必要となる人材不足が懸念されております。こういう状況の中 で、若い労働者がこの分野に入ってきてくれるような環境整備をどんどん進めていくべ きではないか。  2ポツ目も委員の皆様からご指摘がありましたが、これまで重要な役割を果たしてき た認定職業訓練校が減少しております。こうしたことを踏まえ、必要な技能労働者の育 成・確保に向けた有効施策とは何なのかを検討していくべきではないか。  この基本的な考え方に基づき、(2)「具体的な対応方向」ですが、近年厳しい経営 環境の下で、事業主が独力で技能労働者の育成・確保を図ることはやや厳しくなってき ている。こうした中で建設業界全体として、これは個々の事業主の負担をできるだけ軽 くするような形で、必要な教育訓練の確保に向けて、例えば教育訓練を共同化していく べきではないか、あるいは教育訓練の効率化を図ることができるのではないか、という ことを提起しております。  2ポツ目は、技能労働者の有する熟練技能の継承が円滑に行われていないのではない か、という意見があります。こういう熟練技能を効率的、かつ体系的に後の世代に伝え ていける教育訓練の方策も検討していくべきではないか。  以上、たたき台として粗々ですけれども、こういう整理をさせていただきました。ど うぞよろしくお願いいたします。 ○椎谷座長  ただいまの説明に対し、ご質問なりご意見をお願いいたします。 ○池田委員  全体的な提案がなされました。2頁の「建設業における需給調整システム」について 質問いたします。2頁の基本的な考え方の3ポツ目の「新たな需給調整の仕組みの創設 については、慎重に検討すべきである」の次でありますが、「緊急避難的かつ限定的な 形で地域における雇用の安定を図る手法とする必要があるのではないか」というところ がまさに重要だと思います。「緊急避難的」というのは何なのか、「限定的」というの は何なのか。3頁の具体的な対応の方向の1ポツの中で説明されております。確かに文 章上は素晴らしく見事に書かれておりますけれども、これではわからないです。次回に は図表か図式か何かで表してほしいということが1つです。  2つ目は、派遣法の適用除外は認める。したがって、新たな需給調整システムについ てありましたが、先ほど私が言ったように、仕組みがはっきりすれば、もっと具体的に 質問したいと思います。まず、「緊急避難的かつ限定的な形」とは何か。図表あるいは 図式をこれから出していただけるのかの2点について質問いたします。 ○吉永室長  ご指摘のとおり3回目になっても、なかなか具体的なあり方をお示しできずにいるこ とは誠に申し訳なく思っております。法制面でいろいろ詰めなければいけない事項があ り、現時点でとにかくお示しできる形になっておりません。可能な限り次回までに整理 し、この議論のたたき台という形で提出させていただければと考えております。  「慎重に行うべきであり、また緊急避難的かつ限定的な形で」と書かせていただいて おりますが、これは今回の議論の経緯として、小谷村の特区の要望があり、岐阜県建設 業協会からの地域再生の要望であった、ということを思い返していただければと考えて おります。  彼らの要望は、労働者派遣法適用除外業務をなくしてくれ、という議論ではないかと 思います。要望される方々も、その難しさは十分認識していただいているし、その弊害 も理解していただいていると思います。そうはいっても、いまの厳しい状況の中で、全 体としての経済状況は改善しつつあるとは言われておりますけれども、建設業について は公共投資を中心とした投資枠の減少ということから立ち直っている状況にはないと考 えております。  そうした中で、なんとかその企業を継続的に運営していく。それに伴って当然ながら 労働者を雇用し続けていく。そのための特別の手法という形で何らかの仕組みを導入し てほしいという点については、私どもも多として今回の検討の1つの項目に追加してお ります。  「慎重に検討を行うべきであり」という部分の私どもの意図としては、例えば労働者 派遣法の適用除外業務を廃止する議論はなかなか難しいだろう、ということを反映した 記載になっております。「緊急避難的かつ限定的な」という部分の「緊急避難的な」の 部分は、今回新たに導入される需給調整のシステム、これは需給調整のシステムですか ら需給調整を行うものではありますが、これは岐阜県建設業協会や小谷村の要望を噛み 砕きますと、まさに労働者の雇用の安定を図る観点から行われるものだろう。通常の労 働者派遣法の労働者派遣形態とは趣旨・目的が全く違う。  全く趣旨・目的の違うものを何らかの形で使える形にしたい。そのためには、趣旨・ 目的だけではなく、規制方法等も考えて、趣旨の弊害が予想されるこの分野において、 実際に需給調整が実施できるような形にしたい。そのための第1の前提として、常用の 建設労働者が主になるだろうと思っております。このような形で対象を明確にしてい く。労働者派遣法では、もちろん常用労働者も対象となるわけですが、通常私どもが派 遣といった場合に思い浮かべるのは、登録型の労働者派遣事業ではないかと思います。  こういう形態について、この分野に導入することは、現時点においてもなお危険が大 きいのではないかと考えております。これからどういう限定が必要かについてはご意見 を賜り、可能な限り弊害のない形で実施できるようにしたいと思っております。そうい う観点で、「緊急避難的かつ限定的な形」で記載させていただいております。  繰り返しになりますが、次回には議論のたたき台になるような図表のようなものを提 出させていただければと考えております。 ○池田委員  3頁の具体的な対応の方向ということで、「国の一定の関与の下で、厳格な適格性要 件を満たした事業主間で労働者の融通」の「融通」というのは派遣だと思います。派遣 法内の派遣ではなくて、苦しんだところの活字ではないかと思うのです。「図ることが 認められる仕組みを構築する」というのが具体的なものだと言っています。「国の一定 の関与の下」というのは何なのか。「厳格な適格性要件を満たした事業主間で」という のは何なのか。それを、労働者の派遣をすることの仕組みだと思っているわけです。  しかし、だいぶ大きな問題があります。これは室長もご存じで書いてありますけれど も、1つは「悪質ブローカーの介入」です。はっきり申し上げますと、ブローカーとい いますか、暴力団の介入がそういう中で阻止というか縛りが効くのかが1つです。2つ 目は、そういうものがここに書いてあるように、「賃金の中間搾取」等が防止できるの か、あるいは昨年度1年間で5,067件の倒産がありました。そこで発生するのが賃金や単 価の不払い問題です。こういうものが、この関与の中できちんとできるのか。離職や不 足労働者の円滑なマッチングが図れるのか。この辺を室長にお聞きします。 ○吉永室長  まさにご指摘の点が、今回の需給調整に対する施策のポイントではないかと考えてお ります。繰り返しになりますが、現時点で具体的な案をお示しできない点は誠に申し訳 ないと思っております。「国の一定の関与の下で、厳格な適格性要件を満たした事業主 」と書いておりますのは、通常、労働者派遣の形態であれば許可をして、事前にその適 格性を見て、あとは事後でその実施状況を見るということで、事前規制と事後規制の2 段階の観点から見る形になっております。  ご指摘のような問題があることに鑑み、単に通常の労働者派遣のような、単純な事前 規制と事後規制で十分かどうか、ということを現在慎重に検討しております。何より も、今回のスキームが円滑に動くかどうかという点は、ご指摘のように暴力団が排除で きるのかどうか、中間搾取を排除できるのかどうかという問題だろうと考えておりま す。具体的な枠組みの中でこういうものを排除していく。具体的には個別の事後規制で 排除することはもちろんですけれども、入口の段階でも縛りをかけていくことは非常に 重要ではないかと思っております。逆に、そういうものが効くようなシステムであるこ とが望まれるのではないかと考えております。  賃金については非常に難しい面があろうかと思っております。賃金の支払い確保に関 する法律という枠組みの中で、この支払いの確保がされている面もあります。請負代金 になると、また別の枠組みになってしまいますけれども、そのような一般施策もあると いうことで、ある程度その辺がカバーできるのではないかと考えておりますので、ここ で特別な枠組みが必要かどうかについて、現時点ではそこまでの必要はないのかと考え ております。  今回の仕組みを作るというのは、離職のマッチングを円滑に図ることが1つの眼目で す。労働者派遣のような、派遣元と派遣先という形態だと、ある程度システム立ってし まえば円滑なマッチングも可能になろうかと思っております。今回やろうとしている、 雇用の安定のために、送り出す企業と受け入れる企業があるという場面で、単に派遣法 のような派遣元と派遣先だけがある、という形では不十分だろうと思っております。こ ういうマッチングを円滑化するような仕組みも当然今回の枠組みの中に導入していく必 要があるのだろうと考えております。  繰り返しになりますが、なんとか次回には具体的な枠組みをお示しして、具体的な議 論をしていただければと考える次第です。 ○池田委員  「国の一定の関与」というのは、具体的にどのようなことを考えているのですか。 ○吉永室長  現時点において申し上げるのは難しい点もあります。考えているのは、事前規制で個 別の業者に許可を出す前段階として、今回の枠組みは、「事業主間で労働者の融通を図 る」と書いてあります。「事業主間で図る」という段階で、事業主の枠組みを国のほう で何らかの形で認定していくような枠組みが必要ではないかと考えています。 ○寺澤委員  いま議論になっている、需給調整システムに関連してですが、我々働く側にとっては 大事なポイントだと思いますので、当初から慎重に、限定的にやっていただきたいとい う議論をしてきました。これからまとめていく上での方向性みたいなもののお話を伺っ て、ある程度いろいろな枠をはめた中で考えるということでした。基本的な考え方、方 向性についてはある程度理解できるのではないかと思っています。最終的には、具体的 なもので判断しなければいけないので、いまの状態ではそのような感じがするというこ とを申し上げておきます。  3頁で、需給調整システムを受けた形で、具体的な対応の方向の2ポツ目について は、今回の需給調整システムに関連したということではなくて、いま大きな課題になっ ている2番目の「労働移動の推進」という観点の中で、労働移動をいかに円滑にするか という中での情報提供なりあっせんという形で考えるならば、2番の中の具体的な対策 のほうに整理したほうが、需給調整システムの整理がつくのではないかと思いました。 その辺りは、どういう形でいまの場所に収まったのでしょうか。前者は、いまの状況 で、今回の需給調整システムについて、当局側の考え方を受けとめた感想です。 ○吉永室長  お尋ねの点については、ご指摘のとおりこの中身は、2番目の項目の離職者対策の中 の事項になるかと思います。どちらに入れるか迷った部分です。職業紹介事業も、ある 意味で需給調整のシステムに入りますので、そういう意味でこちらにも書いておこうと いうことで記載させていただきました。  ただ、ご指摘のような点もありますので、このペーパーを読んでいただいても論理が 混乱するおそれがありますので、その辺りは次回までに整理させていただきたいと考え ております。 ○椎谷座長  最終的な位置づけで少し考えればいいかもしれませんね。 ○奥田委員  技能労働者の範囲はどのように考えるのでしょうか。いまは鳶工、型枠などが技能労 働者ですけれども、建設業法に対象外の建設技術者もいるわけです。それを含めて単純 工も含めて技能労働者という範囲として理解してよろしいのでしょうか。 ○吉永室長  ご指摘のとおり、技能労働者の範囲は非常に制限が難しいです。基本的には、建設業 法の職種、あるいは建設関連の職種辺りが中心になります。建設業務と申しております が、その現場作業に関する労働者全般についてを指す、ということを考えておりまし て、奥田委員のご指摘のとおりです。 ○奥田委員  場合によっては、常用を条件とした監理技術者から単純労働者まで含む、という理解 でよろしいのでしょうか。 ○吉永室長  概ねご指摘のとおりです。 ○奥田委員  両方の関係で、法律的に無理なところ以外の人が中堅の建設業者の中にはいますが、 それまで含めて対象にする、というふうに理解してよろしいのですか。 ○吉永室長  概ねご指摘のとおりです。ただ、監理技術者の部分は、ある意味でホワイトカラー的 な部分があり、そこは実際の建設業務の作業の対象にはならないかと思っております。 その辺りで若干混乱する部分があります。実際に監理技術者部分というのは、現行の労 働者派遣法の体系の中に入り得るものだろうと思っております。ただ、業法との関連で 主任技術者や監理者というのは派遣形態になじむのかという議論があります。そういう 意味で、労働派遣法上の派遣の対象にはできないと考えております。概念で分けると、 その部分は、今回の検討の対象からは外れるのかと考えております。 ○奥田委員  なぜ質問したかというと、地方の中小はいろいろな役割を果たしているわけです。一 人ひとりの仕事の範囲が非常に広いものですから、この対象はどこからどこまでだとい うことをはっきりさせないと、運用面で混乱が起きるのではないか、ということを心配 しました。受けるほうが、的確にその範囲を理解して、スムーズに施行できるようなこ とをきちんとしておいたほうが混乱が起きないのではないか。これを進めることは私は 賛成です。円滑に進めるためにも、その範囲をはっきり示されるほうがより積極的に利 用されるのではないか、ということを確認させていただきました。 ○笹田委員  前回出席できなかったのですが、1回目のときに発言しようかと思っていたことがあ ります。この際に私の意見、あるいは背景にある全建総連等々の意見の中の感触から意 見なり、今回進めている問題の内容についてお話しておきます。  私は、この委員会は長年やっています。いま建設業の中で何を論議しなければならな いかという観点が一切なくて、いきなり特区の問題があるという前提の中で話されてい るというのはとんでもない話だと思っています。これは池田委員からも出ていますよう に、バブルがはじけた5年後ぐらいから、建設投資額はガッと減ってくるわけです。現 場は、ゼネコン元請から、半値8掛け2割引きという声が出てきました。その中で、下 請とその労働者はどうなってきたのかという観点が一切ない。そういうものを、労働力 需給のこの委員会ではやるべきなのではないか、という観点を以前から私は持っていま した。  単に現象的に特区の関係の意見があったということで、付け焼き刃で論議するのはい かがなものかというのが感想です。もっともっとあるよ、このままいくと大変なことに なるよ、という状況が起こっているという認識が本当にあるのかどうなのか。国土交通 省から藤田さんがいらっしゃっていますけれども、大変な状況ですという指摘をしてお きたいと思います。  今日まで特区の関係で、派遣もやるという意見がありますが、もう少し考えてほしい のです。建設業は、重層下請制度です。つまり、歴史的には戦前・戦後を含めて請負制 度で来ています。ゼネコンも改善、下請も改善しながら、いかにそこを合理的にやって きたかということで成り立ってきました。労働者の賃金、あるいは技能者の賃金もそれ なりにうまくやられてきました。もちろん欠陥もたくさんあります。  我々も、20数年前30年前は直用にしろ、という要求をしましたが現場のほうが勝って しまいます。現場でやっているシステムのほうが勝ってしまうわけです。だから、元請 構造が根付いてくるわけです。いまや、外国でも日本の建設業の重層下請制度を学んで いるという話も聞きます。それだけ日本では根付いてきているわけです。  私は何が言いたいかというと、そういう中で根付いてきた請負構造の中での労働者移 動も含めて、ある意味ではうまくいっているわけです。いまでも、それなりにうまくい っていると思いますが、いろいろ問題はあります。それならば特区で、労働者派遣を認 めろという根拠そのものは無理があるのではないかという気がします。特区は特区なり に、自ら考える方法はいっぱいあります。業務請負で、特区としてやればいいわけで す。そういうものは、国土交通省なり厚生労働省が指導してやればいい話です。  「建設通信」の中で、マルソーという会社があるそうですが、これはいわゆる労務請 負で派遣をやっています。これは、労働者の派遣ではなくて、請負でやっているわけで す。うまく仕組みを考えているわけです。いま売上高が20億円あるのを、将来50億円や ろうという話をしています。この会社は派遣法に抵触しないのかどうかは別にしても、 こういう動きが民間ではあるわけです。  こういうものとの兼ね合いを含めて、特区はもう少し勉強して、わからなければ厚生 労働省にでも国土交通省にでも聞いて、請負の中で労働移動をどうさせるかを考えるべ きではないか。私程度の能力でもそこは考えられます。だから、無理することはない。 そういう意味では、かなり無理があるのかという感じがします。民間に任せておけばい いということで、民間は勝手に動いているわけです。  そういう意味で私どもの組織は、いずれにしてもそういう動きを察知し「冗談じゃね え、いまさらこんなものやる必要ねえ、反対だ」という態度でやっています。ただし議 論に携わらないということではなくて、そういう態度だということです。背景にある我 々の組織の意見の反映も含めて発言させていただきました。  いままで、池田委員からもありましたが、我が技能労働者を抱える組織としてはいか がなものかと、冗談じゃないという大きな意見があることも申し添えておきます。それ よりも、先ほど来言う、今日的な重層下請制度の中での下請、あるいはその中で労働移 動はどうなっているのかの論議をしないと大変なことになるのではないか。国土交通省 の藤田さんもいらっしゃっているから、あえて言っておきたいと思います。 ○吉永室長  重層下請構造の問題点と、今回の需給調整システムの必要性についてのご意見があり ました。私どもとしても、重層下請構造の是非についてはさまざまな議論があることは 承知しております。ただ、ポジティブな面もあるわけで、これまである意味での需給調 整的な機能をその下請構造の中で担っていきたいというのはご指摘のとおりだろうと思 っています。  今回、付け焼き刃的にというご指摘がありましたが、特区という要望の中で、1つの 契機として議論させていただいたわけです。今回、私どもとしても需給調整だけをやろ うということではなくて、ある意味で全体的な観点からいろいろ見ていこうということ で、その1つの項目として新しい需給調整システムをご検討いただいている次第です。  業務請負的な面でできるもの、できないものがあるのだろうと思っております。もち ろんできるものもあります。平たく言ってしまいますと、建設業の中で一人親方的な形 で仕事ができる部分も多数あります。こういう面は、請負構造の中で当然できますし、 その業務請負的な形で対応することは十分できるだろうと思っております。  さはさりながら、一方ではグループの中で作業をするようなものもあります。そうい うものに実際に人を送り出して作業をするときに、実際に請負として作業をすることが 現実の問題として的確にできるかどうか。極端な場合、事故が起きたときの責任関係等 々が生じないかどうか、正直申しまして若干疑義があるのかと考えております。  私どもとしても、全体的な請負の構造を否定するものではありませんし、それを前提 とした形での、一部例外的な機能としての需給調整システムを検討してはいかがかとい うことでご議論いただいております。もとより、労働者派遣法の適用除外業務は廃止す る、というように大きくその構造を変えることを考えているわけではありません。限定 的な請負構造の中で、補助的にその地域の限定的な、ある意味で緊急避難的な枠組みと いう形での需給調整システムというものは、笹田委員からご指摘があった中で、うまく 調和して実施することも可能ではないかということで考えております。なにとぞその辺 りはご理解いただければと考えております。  実際に特区、あるいは地域再生の要望を出している所も、その業務請負のあり方は当 然認識しているものだと考えております。そういう中で、業務請負ではできない、そう いうものでも対応できないというような、非常に苦しい状況に置かれています。また岐 阜の状況でいうと、将来的に企業統合を目指すという観点からすると、業務請負という 形ではなかなか機能しない面もあるだろうと思っております。そういう現状での議論と いうことでご理解いただければと考えております。 ○才賀委員  私は、最初からこれは反対という意見です。少子・高齢化の時代になって、なおか つ、いま末端で働いている労働者の教育、生活は誰が守るのかといったときに、外した ことによって需給調整ができて、最終的に末端の労働者の面倒は誰がみてくれるのか、 というところが非常に不安定ではないかと思います。  建設業で働いていて辞めた人が、建設業へ戻ることもあるでしょうけれども、戻らな いという最終的な先行きの生活が不安定、というのは大いにあるのではないかと思いま す。そんな中で、建設業に戻ってこないということもあるでしょう。バブルの前には、 例えば北海道の寒冷地から、冬の間は東京のほうへ出稼ぎに来ていました。それは、企 業間で応援をしたこともあるのですが、現在これだけ不景気になって、いま笹田委員が 言われたように、一次業者が直用を放し、二次に依存する時代に、宿舎も持たなければ 何も持たない、身軽な我々になってきているわけです。そうすると、北海道から30人、 50人と入れる宿舎もないから呼ばない、という現状があるわけです。  初っ端にも言ったように、一人親方をどのように救うかという問題ではなくて、一人 親方をつくらない法律を何か考えてもらいたいのと同じように、いまは専門工事業者と 言っていても、いちばん苦しいのではないかと思っています。下には、ある程度生活基 盤のできる給料を払ってあげなければいけない、上からは叩かれる、それでは経費はど うするかという問題で、その辺がいちばん辛いところではないかと思うのです。  そういう中で、こういうものを外してしまうと、逆にいろいろな面で簡単に取れるそ の筋が、勉強していても激しいのです。例えば人夫出しでも、従来は人夫出しでやって いたけれども、人夫出しがいけないといえば、それではゼネコンに言って請負をさせろ と。そうすると、超高層一本を、片付け平米100円ください、10万平米ならいくらです よと言って、最終的には人工精算という隠れ蓑になってしまいます。ゼネコンもつかま らない、相手もつかまらないという中でやっていて、働いている人たちはどうかという と、1時間いくらだとか、1日6,000円だとか8,000円というような、考えられないよう なコストで使っているのが現状ではないかと思うのです。建設業を全体的に見直ししな いと、これから5年、10年経ったら末端労働者がどうなるかというのは我々も危惧しま す。  それと同時に、いま年間5,000件も倒産があって、そこに働いている労働者は100%賃 金不払いもなく全部貰っているかというとそうではないのです。ある程度のところは貰 っているけれども、ある程度のところはどこかでお世話になっているわけです。そうい うことをしないためにも、きちんとした枠を作ってやっていくのが建設業の良いところ ではないかと思います。温故知新で良いところは残し、悪いところは切り捨ててでもや っていかないと具合が悪いのではないかと思います。 ○椎谷座長  派遣法の適用除外をする、ということではないようですけれども説明してください。 ○吉永室長  座長からもありましたが、基本的な枠組みとして、例えば外国では派遣労働者を集め てプロジェクトを組んで仕事をする、という枠組みの方法をとっている国もあります。 今回私どもが議論したいのは、そういう枠組みにするという議論ではなくて、現在の請 負の是非の議論はあるにしても、その是非の中で良い面がある。その良い面を否定する ということではなく、既存の枠組みの中で、労働者の雇用の安定が損なわれない仕組み が補助的な仕組みとしてあり得るのではないかということです。  才賀委員ご指摘のように、ブローカーが介入する可能性もありますし、実際にそのブ ローカーが非常に法律を勉強していて、ある枠組みをつくるとそれに乗った上で許可を 取り、その許可の上で違法なことをやることは当然考えられるわけです。そういう弊害 を可能な限り減らし、そういう問題がない形での補助的な枠組み、大きな労働市場への 需給調整というよりは、部分的な地域における雇用の安定を図る。放っておいたら倒産 してしまう、あるいはリストラされてしまう労働者を、新しい需給システムの上に雇用 を継続する。雇用を継続することにより、その技能が維持され、あるいは能力開発に対 する事業主のモチベーションが減少しない。教育訓練を事業主が継続するというのは、 あくまでも自分の労働者であるからということだと思います。そういう補助的な意味で の需給調整システムと考えております。  全体として、大きくブローカーが跋扈して、安い受注をして、非常にレベルの低い物 をつくっていく。それで悪貨が良貨を駆逐するような形ではなく、地域が非常に限定さ れた世界での、1人、2人のやり取りをベースにした形での需給調整システムです。あ くまでも常用労働者を前提として、技能労働者をどういう形で建設業界の中に囲ってい くのか。中期的には、明らかに人手不足になるのは明らかなわけです。そういう意味で の需給調整システムの導入ということでご理解賜ればと考えております。 ○池田委員  私も才賀委員と同じく反対です。図式、図表がきちんと出てきたらさらに意見を申し 上げたいと思います。2頁の3「需給調整システムについて」の基本的な考え方のいち ばん最初ですが、「技能労働者については過剰とする企業と不足とする企業が一定量存 在する状況を踏まえて」というのですけれども、建設投資は51兆円ぐらいになって、我 々が町場を見ていると、常用を抱えているものは、先ほど才賀委員が言われましたよう に請負関係にしてしまって抱えられないという状況があります。「一定量存在する」と いうことについて質問いたします。  2つ目は、建設業界というのは、戦前・戦後を通じて、現場作業者については、まず 顔合わせです。まず顔を合わせて、2つ目に心を合わせ、そして力を合わせ、素晴らし い建築物を完成し、施主に引き渡すということになっているわけです。ところが、3頁 の「事業主間での労働者の融通を図る」ということになれば、売り手と買い手の問題が 存在します。売り手は叩かれますし、買い手はうんと安く使いたいわけですから、そこ には賃金や労働条件の後退が発生します。  先ほど笹田委員が言われましたが、戦前から含めて戦後まで、建設職人・労働者は自 らの運動によって賃金や労働条件を獲得しています。即ち、労働法以外のところに、我 々町場の建設職人などは存在していたわけです。さらにこの問題が発生して、売り手と 買い手の中で、賃金でも労働条件でも対等になることはあり得ません。必ず買い手が勝 ちます。必ず、賃金や単価や、あらゆるものについて引き下げる。労働条件も悪くな り、賃金も引き下がる、という状態が続くのではないかと思っています。次回の審議会 の中で図表、図式がはっきりしますから、そのときに意見は述べさせていただきます が、この2点について室長に答えていただければありがたいと思います。 ○吉永室長  1点目については、全体的に非常に厳しい中で、不足している企業は非常に少ないの ではないかというご指摘かと思います。9月13日に資料を提出させていただいておりま すし、次回にまた改めて付けさせていただきますが、全体としては過剰感が強い中で、 職種によっては不足が大きいとまでは言いませんけれども、かなり拮抗している部分も 出てきております。  専門技術職、あるいは技能工についても、また若干職種は違いますけれども、販売の ような分野も不足が過剰を上回っている状況があります。全体としての過剰の中で不足 している企業も、個々の企業単位ではあると認識しております。  2点目の、顔合わせ、心合わせ、力合わせということで、やはり共同作業の中でこう いう形で作業内容を確認していかなければ事故も多い産業です。そういう意味でそうい う面が必要である、というのはご指摘のとおりだろうと思います。今回の案について は、まだ具体的な案をお示しできる状況ではない、ということを繰り返しお詫び申し上 げますが、事業主間といっても、ある意味事業主といっても地域の事業主は顔の見える 範囲で、お互いの状況がわかっているケースが大層だろうと思っております。そういう 意味で、顔合わせ、心合わせ、力合わせという面もそれほど問題のない形で導入できる 範囲が自ずからあるのだろうと思っております。  売り手と買い手の問題は、市場原理に任せてしまうと、ご指摘のような問題が起きる だろうと思います。「緊急避難的、また限定的な枠組み」ということで、冒頭池田委員 からのご指摘がありました。もう1つ追加でご説明させていただければ、ここでの「緊 急避難的、限定的」という趣旨は、この需給調整システムで事業主が利益を得る、とい うことが一義的な目的ではないのだろう。  労働者を抱えていただく、私どものスキルでは雇用調整助成金のようなスキームで訓 練をやったり休業をしたりという形態で、労働者を抱えていただく仕組みというのはあ ります。それとの類似した枠組みとして、新しいシステムで別の会社で働いていただい て、そこでの企業が利潤を得るということではなく、そこに仕事があるから、その対価 を得るということで、賃金をうまく支払われると。そういう補助的な意味での指揮シス テムを考えた場合、ご指摘のような賃金や労働条件の大きな変更にはつながらないので はないかと考えております。  もう1点申し上げますと、ここで考えているのは、あくまでも常用労働者です。常用 労働者が他の事業主の指揮下に入って仕事をするということは、当然のことながら根本 的な労働条件の変更になるわけです。そういう意味では当然、同意のある労働者だけが 対象になるだろうと考えております。また常用労働者ということであれば、実際の作業 現場が他の事業主の作業現場であるという形になるわけですが、賃金、労働時間等、主 たる労働条件は、基本的に元の送出し側の事業主の労働条件が規定するものであろう と。そういう意味で今回の仕組みというのは、ブローカーが入って需給調整をどんどん やるという性格のものではないという観点からすると、労働条件等々への影響は、非常 に限定されたものになると考えておりますし、仮に一部労働条件の変更があり得るとし ても、それは労働契約の変更になるという観点で、その労働者側の同意が必要になると いう枠組みになるだろうと考えております。  実際の非常に厳しい場面で、労働者の権利が100%守れるのかというご指摘かと思い ますが、そういう面では、もちろん難しい面は残っているわけです。しかし仕事がなく てリストラされてしまうということを前提に考えれば、労働者の労働条件を守る、その 前提としての雇用を守るという形で、うまくワークする仕組みになり得るのではないか と考えている次第です。 ○池田委員  いま室長は具体的な内容に触れましたので、ひとつ具体的に質問したいと思います。 例えば120人いる送り手の事業主が、20人余ってしまったから受入れ側の事業主に20人 を移動するというか、派遣ということになりますと、借り手の事業主は指揮命令権を発 揮します。普通は指揮命令をすれば、雇用関係があるようになりますね。そうではな く、いま室長が言われたように、送出しの事業主が責任を持つということになると、1 つは賃金の問題が出てきます。具体的に言ってしまうと、送出しの事業主からは1日2 万円もらっていたけれど、受入れ側の事業主は1万5,000円しか払えないということで、 それで受けたと。そうすると2万円をもらっていたわけですから、あとの5,000円をど うするのか。これが1つの疑問として出てきます。  2つ目に、労働三保険の中の労災の問題というのが非常に大きく出てきます。指揮命 令されている所の事業主が労災保険を使うのが普通です。しかし派遣法内の派遣ではな く、緊急かつ限定的という中での融通という形になると、どこがそれを見るのか。送出 しの保険でやるのですか。それとも受入れ側の保険でやるのですか。そこら辺をひとつ ご説明願いたいと思います。 ○椎谷座長  そこまで具体的に答えられるでしょうか。 ○吉永室長  具体的な点については、その案が出来次第、その案に即した形で次回にでもご説明し たいと考えております。今回のスキームは、私どもは雇用の安定のためのスキームと考 えております。雇用の安定のためのスキームというのは、あくまでも雇用関係は従来の 事業主の関係で継続します。たまに例外的に他の事業主の下で就労する場面を認めるか という形での需給調整システムになりますが、事業主責任というのは、すべて通常の事 業主が負うべきものであります。だからこそ雇用の安定が図られるのです。また作業現 場等々が異なるにしても、実際の能力開発等々の事業主責任というのは継続するだろう と考えている次第です。  ご指摘の点は、いずれ案をお示しした段階でと考えておりますが、そういう原則で考 えてみた場合、実際に事業主間での融通でやり取りされる、事業主間での精算の金額と その賃金の金額というのは、直接的には労働者と本来的な事業主との間の賃金契約に反 映されるものではない。影響はされない。仮にその賃金を下回る形で、その他の事業主 で就労するような契約を事業主間で結んだとしても、直ちにこの賃金に影響するもので はないと考える次第です。  労災についても、建設業は正直言って少々わかりにくい面があります。通常は事業主 が労災保険の責任を負うのが原則です。しかし建設業の場合は元請が有期一括という形 で、その現場全体で入ることが認められており、通常、建設現場の場合はそういう形態 が非常に多うございます。今回の具体的なスキームは次回以降ご説明するにしても、あ くまでも送出しの元の労働者であるという観点からすると、原則に戻って有期一括のよ うな、工事費にかかる一括の元請による支払いという形ではなく、あくまでも自分の直 接の事業主が、労災の義務を負うという原則に戻るというように考えている次第です。 ○林委員  まだ具体案が出ていませんので、なかなか突っ込んだ議論にはならないと思います が。この需給調整のシステムで、確かに悪質ブローカーだけでなく、悪質業者も排除す るというのは大事だと思います。また賃金不払いや中間搾取というのもあってはいけま せん。この案では派遣法による派遣業者は認められておりません。派遣業者が技能労働 者を派遣するという形は皆さん反対だと思います。  笹田委員がおっしゃった請負については、この前の委員会でもちょっとお話したので すが、横に請負えば、連携して請け負えば、重層で請負うより経費が少しでも安くなる のではないか、それを労働条件の改善と専門工事業者の企業の体質強化に使ってはどう かという案を、2年前に建設労務安全研究会のほうで発表いたしました。あれから2年 経って、いま私どもが考えているのは、連携請負だけではなかなかうまく行かない軽微 な作業と言いますか、1週間とか10日、あるいは3人とか5人でやる作業というような ものを請負でやれるのかというと、なかなか難しいところがありますから、それはここ でおっしゃっている融通のようなもので行ってはどうかということです。現に一部の組 合などで請負という形でやっておられる所もあるようです。基本はやはり請負だと思い ますが、請負でどうしてもうまくいかないような部分に、それこそ限定的に融通のよう なものをやってはどうかと思います。  ただし、この案でも示されている国の一定の関与ですね。労研の案が5日に発表され ますので、発表されたらご参考になればと思い、室長にお届けしようと思っています。 本日示された案がどの程度のことを考えておられるかはわかりませんが、労研の案はセ ンターのようなものをつくって、そこで調整の関与をしていただいてはどうかという案 です。ですから仕掛が大きくなる案ですので、「国の組織を軽くする」という基本の流 れからは、ちょっと問題があるとは思うのですが、それぐらい関与があるもののほうが いいのではないでしょうか。それは初めに帰って、悪質ブローカーや悪質業者を排除す るというところが必要ではないかと思うからです。  例えば融通の人員も、抱えている常用の者の5割以下にするとか、受け入れるほうも 5割以下しか受け入れないようにするとかです。100%受入可能にしますと、受入れだ けで仕事をするような業者が出てきて、初めに言った悪質業者が出てくるわけです。た だ、建設の仕事は時期とか季節とか、仕事をうまくもらえたかどうかで、どうしても繁 閑の波がありますよね。そういうときには確かにほ受けたい人もいるし、送り出したい 人も出てきます。現にいまも何とか請負の形で調整はやっているのですが、その調整を もっとうまくできるようにすることが必要です。もちろん請負でやるのが基本ですが、 請負ではなかなかやれないニッチと言いますか、隙間みたいなものがあると思いますの で、そこらは少し融通できるような新たなシステムがあってもいいのではないかという のが、労研の提案です。  もう1つはちょっと違うのですが、3頁の4に教育訓練のことがありますね。これは 本当に難しい問題だと思います。しかし非常に大事な問題だとも思います。これは思い つきでいろいろ言っても、なかなか難しいと思いますが、私の認識では現状、教育訓練 をやっている人は職長だと思います。オン・ザ・ジョブというと聞こえはよろしいので すが、仕事をなんとかこなそうと、職長が自分の会社から配属された人を、いろいろ工 夫して教えているのです。現状ではこの形での教育ぐらいしかないのではないかと思い ます。職長が自分で教えるスキルと言いますか、腕のほうはわかるのですが、教え方な どは誰も職長に教えていないのです。いまの若い人にはいろいろな人がいますね。そう いう人をどうやって教えればいいか。腕のほうでなく、メンタル面での教育スキルとい うのも、職長に教えることが必要ではないかと思っております。  もう1つは突拍子もないことですので、この委員会ですぐというわけではないのです が、例えばシンガポールは外国人労働者を受け入れますと、1週間国の費用で教育して から出しているわけです。外国人労働者ということではなく、国内でも建設業に入りた い人を、雇用保険で見るかどうかは別ですが、基本的な教育訓練をしてから送り出すと いうようなシステムがあれば良いと思います。建設業で働きたいという人を事業内訓練 で受け入れるということは、今では非常に難しいわけです。  そうかといって、職業認定訓練校へ行くのもどうかという人も多いようですので、雇 用保険のほうからもある程度のお金をもらいながら、短期間に勉強できるような仕組み も必要ではないでしょうか。これはすぐに案にまとめるというのもなかなか難しいかも しれませんが、このようにちょっと視点を変えた対策を打ち出さないと、訓練、訓練と 叫んでいても、現状は非常に厳しいと思います。しかし非常に切実な問題ですので、腰 を据えて考えてはどうかなと思います。 ○吉永室長  いくつかご指摘がありましたが、労研の研究報告は非常に関心がありますので、参考 にさせていただければと考えております。いまのお話の中で、センターをつくってとい うお話がありましたが、このあたりにそういう考え方もあるのかなという気がしており ます。しかし現在、行政改革が進む中でそういうものをつくるというのは、非常に難し い面があります。具体的に労研の皆様が詰めていただいた報告書について、参考にでき る部分があればと考えている次第です。  2点目は、教育訓練についてです。教育訓練が非常に重要だということは、誰もが認 識しつつ、なかなか有効な訓練ができていないというのが、正直なところだろうと思っ ております。もちろん職長についての訓練も、実際にやっているわけですが、それが若 い入職し立ての人たちに対する訓練を念頭に置いた形になっているかどうかというあた りは、もう少し検討する必要があるのだろうと考えております。いずれにしても、中核 としての職長の役割は非常に大きいと思っておりますので、そのあたりを踏まえて、訓 練のあり方を考えてく必要があると考えております。  入職時の訓練については、事業主ではなかなか出来ない部分を国のほうでというご指 摘がありました。先日、私は才賀委員が関与しておられる富士の教育訓練センターに行 ってまいりました。そこでは年間3万人日を超える訓練がされており、事業主が入職し た若手を送り込んで、基本的な、具体的な技術や資格の訓練から、職業生活としての基 本的な訓練まで含めて、何週間とか何カ月という形でやっているということで、非常に 感銘を受けた次第です。事業主が訓練生を1回送ると、リピーターとして毎年毎年送っ てくるということで、非常に効果があると考えております。  こういう面については、私どもの助成金である程度カバーできる部分もあると思って おりますし、現に活用していただいていると確信しております。そういう効果は、富士 の教育訓練センターの皆さんのご努力を含めて、非常に効果的な面があると思いますの で、こういう問題をもっと一般的な形で、どう広げていけるのかということを十分に検 討したいと考えております。 ○椎谷座長  ほかにございますか。 ○池口委員  私はこの世界で、まだ10数年しか経っていませんが、ずっと建築の現場の管理をして いました。そこで思ったのが、まさに先ほどの池田委員の言われた顔合わせ、心合わ せ、力合わせだと思います。特に私どもは、現場で何を管理するかというと、よく「安 全、工程、品質、原価」と言われます。特に安全や品質に関しては、現場に仲間意識と いうものがある上で成り立っていると思います。例えば皆さん、それぞれのグループが それぞれの請負の範囲で、そこに与えられた図面と工期で「この仕事をやってくれ」と 言われたら、実際にその図面どおりに、工期どおりにだけに集中してやっているかとい うと、そうではないわけです。  例えば鳶が足場を組んでいるとします。図面どおりの足場を工程表どおり組めばいい かというと、そうではなく、組んでいる鳶は次にこの足場をどういう人が使うのかを考 えます。次にタイル屋がタイルを張るといったときに、この図面どおりに組んでいたら タイルは張れないなという所は、やはり聞きに来たり、工夫をされたりするわけです。 ところが、その範囲の仕事をこの図面どおり、このお金でやってくれということで作業 をされてしまいますと、やはり自分のためだけで、後から来る人のための仕事ができな い。  安全に関しては、例えばマンホールの中で、言われたとおりの仕事をして出ました と。しかしマンホールの蓋を閉めるのを忘れましたと。普通、仲間意識があれば、後か らここに来る人が落ちないように、マンホールの蓋を閉めようとか、次に来る人のこと を考えて作業をするのが現場ではないかと思うのです。ですから派遣という形である範 囲の中を、ある時間とあるお金とある品質でやれと言われた人たちが来た場合、ひょっ として仲間意識、責任感、使命感というものが停滞する恐れがあるのではないかという ことが危惧されます。  ついでに話をいたしますと、新分野の進出の中で特に「リフォーム」という文字が、 前に出すぎかなと思います。「リフォーム」と言ったときに、いまは実際にリフォーム という市場もあるのかもしれませんが、そんなに長続きするものではないのではない か。最近、新潟で地震が起きました。いまインフラの整備が非常に注目されています が、どちらかというと、古来からの日本家屋が悉く倒壊しています。特に雪国で丈夫と されていたものが、屋根の形を残したまま崩れている。これからはやはり耐震補強に対 しての市場も、具体的なものとしてあるのかなと思います。ただ、そういうときに古来 から住んでいる方が、耐震補強にお金を出す踏ん切りがつくかというと、つかない人が ほとんどではないかと思います。そのようにリフォームではなく、耐震補強をする人に 対して、補助金や助成金が出るような、造る業者ではなく、耐震補強をしようとする、 30年、40年、その家に住んでいる方に補助ができるようなシステムが、別の機会であれ ばいいのではないかと思います。  それから、高齢者の増加の中で最近、法の整備がされて、雇用延長や定年延長という 話が、これには300人というボーダーラインはあるのですが、どんどん進んでいます。 雇用延長や定年延長が進むと、その中で若年層の採用の抑制に手がかけられるのかなと いうのが、いま私たち労働組合で非常に危惧しているところです。この法律の整備によ って人員構成のアンバランスというのが、ひょっとしたら近々のうちに現れてくるのか なと思います。ですから雇用延長や定年延長という法の整備に対しても視野の中に入れ て、議論を進めていってほしいなと思います。 ○椎谷座長  室長、何かありますか。 ○吉永室長  現場の感覚も含めたご指摘をいただきました。使命感や仲間意識が必要だというご指 摘ですが、まさに総合工事、総合産業としての建設業の特質を的確にご指摘いただいた ものだと考えております。先ほども申しましたが、いわゆる人材派遣のような形で、そ の場所に行ってその仕事だけをやって帰ってくるという形態も、もちろんあります。し かし今回考えているのは、緊急避難的、限定的という形で制約をした上で、原則として は地域の事業主間の、ある意味で顔の見える範囲での融通です。事業主もある程度わか っている人たちで、労働者についても全く馴染みがないわけではないだろうと思ってお ります。  そういう中で仲間意識を醸成しつつ、就労できるような形態があり得るのではないか と考えております。一体的に作業をするという面で、仲間意識というのは非常に重要だ ろうと思っております。疎外されて実際に作業が進まない、あるいは連携した形での作 業が全く進まないという形態が、この就労形態に基づくものとして出てくることにはな らないような形にしたいと考えている次第です。  新分野進出で、リフォームが前に出すぎではないかという2点目のご指摘ですが、正 直申して私も同感の部分があります。新分野に進出する場合、いま発展している分野を いろいろ調べますと、現時点ではやはりリフォームあたりが非常に的確な例として出て くるということで使わせていただいております。リフォーム以外でも建設業関連の新分 野という形で有望な部分があれば、どんどんそちらに進出していただきたいし、いまご 指摘のあった耐震補強というのも、非常に重要な部分だろうと思っております。このあ たりの補助金等々については、私どもの省庁の実際の枠組みでは、なかなか難しい面も あるわけですが、1つの参考という形にさせていただきたいと思っております。  もう1点、雇用延長と定年延長が若年者の採用抑制につながるのではないかというご 指摘がありましたが、ご指摘のご懸念は十分理解できるものだと思っております。ただ 私どもとしては、逆の見方もできるだろうと思っております。少子・高齢化が進み、若 年労働者が圧倒的に少なくなっていく中で、特に基幹産業としての建設業には労働集約 的な部分もあります。必要な労働力を確保していくためには、人員構成を損なうことな く、若年労働者を採用し続けると同時に、高齢者の有技能者も活用していくという部分 が、むしろ逆に必要だろうと思っております。  特に法案ができたばかりですから、短期的な人員の若干の影響はあるにしても、中長 期的に見れば採用と退職という面で、それは均衡してくるという考え方も成り立ち得る のではないかと思っています。いずれにしても、そういう観点から産業における人員構 成が崩れないように、将来必要となる技能労働者を産業として的確に受け入れていくこ とが、何よりも重要だと考えております。そういう意味で、新たな職業能力開発の枠組 みを、新たでなくてもいいのですが、いま以上に積極的に若年労働者が産業に参入する ような環境整備を進めていくと。行政としても知恵のない部分もありますので、こうす ればいいのではないかという積極的なアイディアをいただければ、私どもとしても可能 な限り対応したいと考える次第です。 ○白木委員  観点は違うのですが、先ほど池田委員がおっしゃった点について、現実妥当性がある か教えていただきたい。先ほど人の融通について、2万円だった人が1万5,000円で融通 する場合の問題点とおっしゃいましたが、私のような素人の考えでは、それぞれの仕事 についてスキルレベルに応じて、ある程度のレートがあるのではないかと思うのです。 したがって、こちらで余ってこちらで足りないわけですから、そのレートに応じた取引 というのはあり得るのかどうか。実際はそうなっているのではないかと思うのですが、 ちょっと分かりません。その辺が1つです。  それから、融通してもらうほうは人がほしいわけですから、安く買い叩くということ がどれほど起こり得るかどうか。それが2つ目です。  3つ目は、協力関係があるということですから、地域内の顔の見える範囲での融通の し合いということで考えますと、一定の地域内のことだと考えられますので、そういう 買叩きが頻繁に起こり得るかどうか。素人考えでは、起こらないのではないかという考 えもあるのですが、実態からしていかがですか。 ○池田委員  白木委員からありましたけれども、前々回でしたか、私はどこかでお話したことがあ ります。いまの建設業の実態というのは、どこに焦点を当てて説明すれば、いちばんい いかは分かりませんが、私たち町場の建設業で言わせていただきたいと思います。今日 は大手もたくさんおりますから、聞いていただきたいと思います。とにかく、さし値発 注、施主の言いなりでやっています。逆に言うならば元請がありますから、下請は元請 の言いなりです。さらに重層下請ですから、それぞれ言いなりでやっていきます。です から、はっきり申し上げて吉永室長が言われたような、1日2万円で送っておいて2万 円でやるということは、建設業では考えられません。特に建設業はさし値発注で、自転 車操業です。非常に厳しいです。これは才賀委員に聞いていただければ、おわかりだと 思います。そういう本当に弱肉強食、ジャングルの法則の中で、2万円で働いていた者 が向こうで1万5,000円しかもらえなくて、2万円がもらえるかという問題は、はっきり 言って私の論理のほうが正しいような気がしてなりません。  2つ目は、今度は送る側の問題だと思います。なぜ120人いて20人送るのかといった ら、誰が考えても送り手の事業主の経営状態がどうなのかを見ますよ。出版社と同じよ うに、ものすごく口コミが発展していますから、20人も送るような会社があったら、A 社はもう危ない、そういう所に注文をしたら大変なことになるとか、いろいろな弱みが あるのです。そういう所は必ずつぶれます。そうすると、やはり買い手のほうが強くな ってしまいます。「あそこはもう会社がつぶれそうだから、安く叩いてやれ」というこ とになります。 ○白木委員  そういう世界はわかるのですが、先ほどおっしゃった協力関係がある地域内での業者 間の関係というのは、どういう形で寄与しますか。 ○池田委員  協力関係というのが、どういうものかは分からないけれど、地域の中だってジャング ルの法則はあります。我々の労働組合の中だって、いま本当に仕事がなくて取りっこし ているのですから、それは大変ですよ。地域だから協力し、お互いに共栄共存でいこう などという考えを持っている建設事業主はいないです。 ○笹田委員  白木委員から出たことに関連して、住宅で見た場合どうなのかという点ですが、そこ に建前をする棟梁がいるとします。そうすると、棟梁が育てた弟子たちがいっぱいいる わけですから、それらを一時的に建前のときだけ手伝わせます。そういう地域の住宅建 築の文化みたいなものは、今もずっとあります。地域に行けば、もっともっと強くなり ます。私は「住宅建築の文化だ」と言うのですが、そういういい意味での譲り合いは、 成り立ってずっとあったのです。残念ながら、そういうものがだんだん薄れてきている というのはありますが、そういう譲り合いは日常的に行われてきました。その中で賃金 のやり合いなのか請負なのかというのは、あまり無責任には申し上げられませんが、住 宅の世界ではそういうことがあるということです。才賀委員の所では同業意識で、北海 道から派遣して手伝ってもらうということはありますか。 ○椎谷座長  出稼ぎと言いますかね。 ○才賀委員  私のほうの現状は、いま大工や鉄筋屋が不足しているのです。それについては一定の ゼネコン、例えば清水さんなら清水さん、大林さんなら大林さんの中の同業者の中で融 通し合っているというのが現状で、ほかから連れて来るということは、まだほとんどし ていません。それと同時に、同じ仲間で同じレベルで大体似たようなものですから、 「いま忙しいから、ここのブロックだけ、来てやってくれるかな」というような、部分 請負の契約でやっています。というのは耳の問題になるので、給料をいくら払っている などという問題が出てきますから、請負で自分の腕があれば、これだけ稼げるという請 負形態を取っているのが多いですね。  鳶の工事に関しては、プライドが非常に強いものですから、貸し借りはしない。歯を 食いしばってでも自分の所で人間を集めてやるというのが、鳶・土工の世界なのです。 ですから同じ業界の中でも、「どうしても足りないから貸してくれ」と言うのは、よほ どの兄弟分付き合いとか、逆に自分の所から出た若い衆の間では貸し借りはあります が、一概の仲間に「おい、ちょっと足りねえから貸して」と言うのは、よほど困ってい るときしかないですね。その辺はプライドが非常に強いのです。 ○林委員  白木委員がおっしゃったことについて、いま才賀委員から言われましたが、実は私は 労研の案をまとめるときに、才賀委員の職種とは違う方に来てもらって、私どもの案が 妥当かどうか聞いたのです。私どもはもちろん請負が優先ですが、そのニッチと言いま すか、隙間で融通のようなことが実際に行われているようです。今、才賀委員がおっし ゃったとおり、貸した会社が次には借りる方に回るということで、貸し借りがずっと行 われているわけです。そうしたら、おかしなことや不誠実なことをする人は、その仲間 から外れてしまう。ですから彼らの中ではそういうことは出来ない。  また、専門工事業の事業主の方に聞いても、信頼を失って何かしようという気持ちは 持っていませんね。ただ、違う所へ行きましたら、弱肉強食の世界もあると思います。 私にはわかりません。しかし私が知っている範囲の所でいま行われているのは、ある程 度信頼で結ばれて行われているものです。 ○白木委員  私もそういう世界かなと思ったものですから、質問させていただいたのです。 ○林委員  それはあるのですが、違う世界もまだあることはあるのです。ですから全部が信頼関 係でもないし、全部が弱肉強食でもない。建設業はいろいろなパターンで動いておりま す。 ○才賀委員  聞くところによると、大阪地区では宿舎があって、その宿舎には大工ばかりを集めて いるとか、こちらは鉄筋屋ばかり集めている宿舎だとか。そして足りないときは青空市 場ではないけれど、業者がそこへ行って、「5人貸せ」「10人貸せ」と言って借りてく るような所もあると。関西地区にはそういうシステムがあるという話は聞いています ね。 ○笹田委員  これでしょ。宿舎です。 ○池田委員  いま才賀委員が言われたとおりです。我々町場でも、どんどんそういう共同意識がな くなっています。ということは、どういうことか。はっきり言って仕事がないのです。 例えば1軒の家を造るときに、池田工務店では優秀な下請を抱えていて、本当に優秀 で、いままで長年やってきたわけです。しかし、今はそういう人たちを抱えられない。 1つの家を造るときに左官屋や板金など、26、7ぐらいあるのですが、抱え切れないか ら、そういう人たちは笹田工務店のほうに行ってしまうのです。そうすると自分は裸に なっていく。そういうときに例えば10人いた人たちに、笹田工務店に行ってもらうとい う融通が本当に効くのか。そのときに池田工務店の私は、あそこは危ないぞ、もうつぶ れるのではないかと見られてしまう。階層分化と言ってしまいますが、昔いた素晴らし い共同体、すなわち下請を請けた1つのボウシンがいて、工務店があって、その周りを 囲っていた各職というのが抱え切れない。特に問題は、常用労働者を抱え切れなくなっ てしまったことです。ですから本当に裸になっていく。  そういう共同体は一部にはあるのです。先ほど笹田委員が言われたように、建前のと きに「3日間来て手伝ってくれ」と言ったときの美しい友情はありますよ。しかしそれ が崩壊しているのですよ。それがここに結び付くわけです。才賀委員も言われたよう に、やはり後継者問題もここなのですよ。認定職業訓練校もここなのですよ。いま資料 を持ってきたら、いま認定職業訓練校は643件あります。しかし、はっきり言って休校 や廃校は圧倒的でしょう。才賀委員が「うちはやっていないよ」と言ったでしょう。 ○才賀委員  我々の所は、もうほとんどゼロです。 ○池田委員  それは何かといったら、もう分解しているのです。すなわち事業主が抱えられなかっ たら、認定職業訓練校は駄目なのです。そういうように抱えられないという環境があり ます。それは何か。ひとつ大きいのは、家庭で抱えると奥さんが嫌がるというのがまず あります。いまの子供たちは夜はどんどん起きていて、朝は起きられないとか、いまの 若い人たちは面倒み切れないのです。ですから自分たちの所で雇わない。そうすると認 定職業訓練校にも行かない。  それだけではないですよ。今度アパートを借りてやって一生懸命援助してやっても、 2年間の認定職業訓練校を卒業すると、ほかの所へ行ってしまうのです。ほかの所へ行 ったら、いままで面倒をみた自分は何なのかと。白木委員、いまの子はすごいですよ。 もう現実的ですから。そうなってくると、何のために俺は後継者をつくっているのかと 思う。昔はお礼奉公というのがあって、卒業したら自分の所で一人前にして、お前は丁 稚奉公で5年間ぐらい働けよというような習慣があったのです。そういうものが、もう 崩れてきているわけですから、認定職業訓練校自身の問題も崩れてきているわけです。 私は、これは本当に大変な問題だと思っています。 ○椎谷座長  白木委員が先ほどご質問されたことは、それでよろしいのですか。 ○白木委員  両方の実態があるということですね。ジャングルと信頼の世界の両方ですね。 ○奥田委員  両方あるのです。池田委員のに関連して申し上げますが、「散らばる」と言いますよ ね。私はこの仕組みも全知全能ではないと思っています。ある部分でこの仕組みを使っ て有効に働く地域なり会社なりがあれば、そこを活用して、育てた常用労働者を抱えな がら、その会社の技能や技術を維持することで活用できないだろうかと。バラさなくて もいいと。20人バラしたら倒産するという噂が出るというのも事実かもしれませんが、 きちんと乗り越える力があれば、ある部分、限定的ですけれども、私はこのシステムは 有効に働くのではないかと思います。重層下請の中でどの階層がどう効くかというの は、この仕組みを提出された後で検証する必要がありますが、ある特定の限定的な部分 でうまく使える制度ではないか、一歩踏み出す制度としてあるのではないかと考えてい ます。それをうまく使うのが経営者ではないでしょうか。この制度をよく理解して、こ れで自分の経営を維持しようという人が出てきてもいいのではないかと考えます。 ○才賀委員  そちらの筋は非常に勉強して早いですからね。 ○奥田委員  議論として、その筋の防止は前提ですよ。それをうまくクリアされないような法律を どうするか、いわゆる国の関与をどうするかというのは国であり、大手ゼネコンも含め た経営者の問題でもあろうかと思います。私がここで経営者に言ってもしようがありま せんが、この仕組みをスタートさせるに当たっては、どうやってこの趣旨をきちんと理 解してやっていくかというのが、非常に大事だと思います。全知全能ではない仕組みで すが、ある階層の部分でこの仕組みがあってもいいのではないかというのはあるのでは ないかと、私は理解しています。 ○椎谷座長  私もよくわからない面があるので、お聞きしたいと思います。先ほど笹田委員が、こ ういうシステムよりも前に事業請負があるではないかとか、事業請負という格好で、新 しい分野を切り開いている所があるよというお話がありましたが、私が承知している限 り「事業請負」と言った場合、2種類あるわけです。笹田委員や才賀委員が言われたよ うに、例えば鉄筋工などの専門の分野だけを扱う請負と、そうではなく、いまは建設業 界もものすごく仕事が細分化されていますから、先ほど林委員が言われた隙間みたいな ものを見つけて、そこだけを請け負うものです。これは製造業の請負やオフィスの請負 ではなく、実際は派遣なのです。オフィスや製造業の現場とか、建設業の現場にいわば 単純作業のような格好しかないのですが、それを請負と称して送っている会社があるの です。何千人という従業員を抱えた会社です。最初は「請負」と言っていたのですが、 実態を見ると、どうも派遣なのです。あるとき労災事故を起こしたのですが、当然なが ら労災保険には入っていないので、捕まってしまいました。その後、事業請負と並行し て、労働者派遣法の適用も受けるように許可を取ったのです。  しかし、そうなりますと、いまの鉄筋工の話もお聞きしていてそう思ったのですが、 それが本当に事業請負なのか、あるいは派遣しているだけではないか、場合によっては 鉄筋工を紹介しているような職業紹介ではないかと。そういう意味で言うと、「事業請 負」と言葉では言うけれど、実態が派遣なのか、職業紹介をやっているのかわからない 面があるのです。そういう格好で本当にいいのかなと。それで労働条件が守られれば、 それはそれでいいのですが、そうでない面もあるのではないでしょうか。  お聞きしていて思ったのは、長い間の建設業のシステムである、さし値発注や重層下 請というシステムが行き詰まってきているから、いまのような状況になっているのでは ないかと。いいところは残すけれど、何となく行き詰まっているところは何らかの格好 で打開しなければもたないのではないかということで、いろいろな話が出てきているの ではないかと理解しているのです。その辺が間違っていたら、教えてもらいたいと思い ます。そういう意味で言うと、こういうシステムがいいかどうかという問題は、もちろ んありますが、前へ進もうと思えば、何かの格好で知恵を出していかないとまずいので はないかと思っています。そういう意味で笹田委員のおっしゃった事業請負というの は、どうですか。 ○笹田委員  私どもは実態として、労働者派遣だったら違法ですから、ちゃんと対応してもらわな いと困るということも、先ほど言いたかったのです。なおかつ、どういう仕組みでやっ ているかというのも、非常に興味深く思っています。中身としてはわかりません。各職 種別にそういうものをやっているという話は、先ほど林委員からもありましたが、それ こそこういう論議の前に、実態としてどうなっているのか、建設業で起こっている実態 をあからさまにしながら、論議をしたほうがいいということも含めて、私は先ほど話を したのです。 ○椎谷座長  わかりました。 ○林委員  先ほど名前が出ました業種の方の名誉のために言います。やはり請負のほうが労働者 も働きやすいですから、いまは請負でやっています。請負でやれるようなものをやり取 りしているとお考えいただいたほうがいいと思います。私どもが今度提案しようという のは、請負になじまない限定的なものもやりやすいようにしたらどうかという提案です ので、ニッチ的なものだと申し上げたのです。いままでは請負でしかやっていません。 それは法律に則ってやっています。才賀委員が言われたように、部分的に区切って請負 っているのです。 ○池口委員  実際に現場で監理していましても、この人は請負だなという人と、この人は派遣だな という人は、明白にわかります。実際に私たち発注者から建物を発注して、一次の協力 業者にそれぞれ個別に発注するのですが、その中には1人いくらという明細は、一切な いわけです。必ずこのサッシを何個付けるとか、タイルを何平米張るとか、ペンキを何 メーター塗るというような、物の量の契約でしかないわけです。ところがそれを請負で やっている人たちは、やはり一生懸命やりますよ。5時を過ぎても6時を過ぎても、自 分の請け負った範囲を「この日までやれ」と言われたら、もう一生懸命やります。それ を終わらせてから帰ります。あとは本当にとっとと終わらせて、次の仕事に行く人もい ます。  ところが1日いくらという感じで来ている人は、ぼけっとしていようが、何をしよう が、その日の日当はもらえるというのは、私たちが見ていても明白なのです。具体的な 話をしますと、5時が終業時間だとしますね。そうすると、そういう人たちは4時半ぐ らいから、もう掃除を始めるわけです。掃除が終わって5時に帰る人と、5時までピッ タリ仕事をやって、5時から掃除をやって帰る人と、この辺の違いが管理をしていて明 確なのです。そのような中に、ほかの人の安全を考える意識というものが欠落している 人がひょっとしたら出てくると、今でも建設業の労災というのが非常に多い中で、今後 問題視されるところではないかと思います。 ○笹田委員  ついでに申し上げますと、そこで働く職人の意見をよく聞くのですが、派遣で来た現 場の管理者はとんでもないと。的確な指示も何もない。それである日いなくなって代わ りが来る。とにかく系統的に物事ができなくて大変だという話を聞きます。来る人来る 人によって意見が違ったり、進め方が違ったりということで、大変迷惑すると。うちで 言えば末端のいわゆる職人ですから、そういうことはよく聞きますね。実態としてそう いうものがもう進んでいるけれど、そういう問題も同時に意見として出せという意見 も、私どももいただいているのです。実態としてはまさにそういう面もあるわけです。 ですから上から見る面と、下の労働者から見る面というのは、全然視点が違うというこ とも含めて、感じていただければと思います。 ○椎谷座長  お聞きしていると、建設業でも随分幅が広くて、ジャングル的なものと協調的な面と があって、特定のことだけでは絞り切れないものがありますね。 ○才賀委員  1兆円産業と年間500万円しかやっていない企業と、レベルが同じなのですから、同じ お盆の上で勝負しているのですから、それはどうにもならないですよ。 ○椎谷座長  最近はゼネコンでさえ、1億円ぐらいのオフィスを建てるような事業の入札へ応募し てきたりしますものね。 ○池田委員  やりますよ。地方に行ったらごまんとある。 ○椎谷座長  そういう意味ではジャングルなのです。 ○池田委員  地場産業は全然手が出せないのですから。  ちょっと角度を変えていいですか。1頁から2頁にかけての具体的な新分野の進出の 支援についてですが、ワンストップサービスセンターの問題は、少し考えたほうがいい と思いますよ。私も長いこと委員をやっていますが、関連省庁と連携しているのですか ら、例えばアメリカが州でやったように、できるのではないかと思うのです。失業して 中途の人たちが来たら、そういう人たちをカウンセリングする。もちろん今はパソコン があるから、パソコンで自分の職種をきちんと選んで、建設業というのはこういうもの なのだよ、こういう所へ行ったら、将来こういうようになっていくのだよということ を、専門的な相談者がカウンセリングをして、自信をつけていくと。しかし、この資料 はここで終わっているのです。いつもそう思います。  アメリカでは州で違うと思いますが、現場に行って教育を受けるのです。現場訓練な のです。例えばパン屋の技術を磨くなら、2年間とか3年間訓練をする。そのパン屋は 州のワンストップサービスセンターの中で、きちんと契約しているのです。別に厚生労 働省だけに言っていませんからね。ちょうど藤田さんも来ておりますから、国土交通省 も来ていますからね。やはり相当援助していますよ。現場訓練をしている所に、すごい お金を出しているのです。そこでパン屋ならパン屋、建設なら建設というものをちゃん としている。しかも狭いですよ。県単位ではないのです。ワシントンならワシントンの 中で、ニューヨークならニューヨークの中できちんとしているわけです。そして、そこ を卒業したら訓練した所で就職してもいいし、またワンストップサービスセンターに来 て、相談して紹介してもらってもいい。  いつも「情報とか相談等々で積極的に」だけですもの。やはりそれから先に進んでい ない。私は7年やっていますから、やはり進んでもらいたい。特に国土交通省は予算も すごく取っているという噂を聞いておりますので、藤田さん、ひとつここらは一歩進め ないと。いつもここで止まっていますよ。情報と資料と相談ですよね。これを進めるこ とが、私は本当に大切ではないかと思っています。 ○椎谷座長  池田委員はアメリカをご覧になって、つぶさにお知りになっているから、非常に詳し いのですが、吉永室長は何かありますか。 ○吉永室長  池田委員からご指摘のあったワンストップサービスセンターは、特にクリントン政権 のときに、だいぶ拡充されたシステムです。具体的には安定所と訓練と、実際の職場訓 練を一体的にやるという意味で、非常に効果をあげたものです。私どものハローワーク でも、訓練指導や受講指示、トライアルフ雇用といったいろいろな形で、参考にしなが ら類似施策を打っているところです。アメリカの先達としての効果というのは、非常に あったのだろうと認識している次第です。  今回、こちらに記載しているワンストップサービスセンターは、労働者向けというよ りは、ある意味で事業主向けのものです。ともかく事業主に新分野進出をしていただか ないと、雇用面がなかなか確保できないということでやっているのです。ご指摘のよう に、なかなか不十分な面は縷々あるかと思いますが、私どもといたしましては、国土交 通省、厚生労働省、経済産業省が協力して1つのことをやるというのは、それはそれで 非常に画期的なことだろうと思っております。うまく機能すれば、かなり効果があると 思っておりますし、それをうまく機能させるために、連携してやっていきたいと考えて おります。詳細は各省で連携してやっているわけですが、ともかく実際の経営診断か ら、雇用面でのサポート、あるいはベンチャー的な新分野進出に対する情報、金融面で のサポート、これを一体的にやろうということで進めております。ともかく仏はつく り、来年度に向けて魂を入れたいと考えております。 ○椎谷座長  池田委員が言われたことは、むしろハローワークを中心とした中でこなしていくこと になるのですかね。 ○池田委員  そういうことです。 ○椎谷座長  ほかにございますか。 ○才賀委員  いま言われたお話の中で、企業がという話が出ましたので。企業はやりたいことはや りたいのですが、例えば300万円のうち、100万円は助成しますよ、200万円は企業が出 しなさいと言われても、その200万円がないものですから、みんな手をこうやってしま うのが現状なのです。  それともう1つ。私たちは広島でアカデミーという職業訓練学校をずっとやってい て、毎回私が行って、教材を出していただきたいと、整備局のほうへお願いしているの です。教材というのは、若い者が高校を卒業して入ってきても、現場の実習ができない のです。それで自社に帰ってOJTで研修しているのですが、金がかかってしようがな い。できれば公共工事のトイレでも公園でも何でもいいから発注していただいて、学校 が請けて教材として使ってやれば、そこから金ももらえます。本来なら工期が3カ月か かるものを半年に延ばしてもらってでも、いいものをきちんと造って納めることによっ て、個人の企業の負担が少なくなるだろうというお願いを、ここ数年しているのです が、なかなか解決できないということがあります。そういうものを実習でしていただけ れば、非常に助かるのではないかと思います。 ○椎谷座長  実習の大手共催ということでしょうか。 ○才賀委員  はい。個人個人我々の団体でやっていると、年間1人500〜600万円かかってしまうの です。それが苦しいものですから。 ○椎谷座長  ほかにございますか。今日は随分詳細な議論を進めていただきまして、ありがとうご ざいました。まだまだご意見はあるかと思いますが、そろそろ時間でもありますので、 次回に譲りたいと思います。いずれにしても今の状況は打破しなければいけないという 思いは共通だと思いますので、今日出たご意見等を踏まえ、次回は是非たたき台ではな く、素案なり案ぐらいにして出せればいいなと思います。また皆様方にも前に向かって 進むような内容のご議論を期待したいと思いますので、お含み置きいただいて、今日は これで終了したいと思います。ありがとうございました。                      照会先:厚生労働省職業安定局                          建設・港湾対策室 建設労働係                      TEL 03-5253-1111(内線5804)