04/10/21 社会保障審議会児童部会 社会的養護のあり方に関する専門委員会 第9回議事録      社会保障審議会 児童部会 社会的養護のあり方に関する専門委員会                  第9回議事録           厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課  社会保障審議会 児童部会 社会的養護のあり方に関する専門委員会 第9回 議事次第                  日時:平成16年10月21日(木) 13:03 〜15:05                  場所:厚生労働省 専用第21会議室 1.開会 2.少年非行法制の見直しについて 3.その他 4.閉会 ○松原委員長  何人かの委員の方がまだ御着席ではないようですが、時間も限られております。定刻 となりましたので、ただいまから第9回の社会保障審議会児童部会社会的養護のあり方 に関する専門委員会を開催させていただきます。  本日は、御多忙のところ御参集いただき、ありがとうございます。  それでは、今日の出席状況について、事務局から御報告をお願いいたします。 ○事務局  本日は、安達委員、兜森委員、坂本委員、庄司委員が所用により御欠席となっており ます。 ○松原委員長  それでは、本当に約1年ぶりの専門委員会で、先ほど地下鉄に乗っておりましたら、 来年のカレンダーを箱に入れて持っていらっしゃる方がいて、そういう時期にもう来た んだなというふうに感じております。  それでは、早速、議事の方に入らせていただきたいと思いますが、議事については 「少年非行法制の見直しについて」ということがメインの議事になっております。この 議事につきましては、この専門委員会で初めて取り上げますので、幾つか事前に御説明 を伺って、それから、委員の方々の御意見を伺っていくという手順にしたいと思いま す。  もともとこの少年非行法制の見直しについては、少年法等の改正ということが一つの 契機になっております。最初に、法務省の方から瀬戸企画官がお見えですので、少し御 説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○瀬戸法務省企画官  法務省刑事局の瀬戸と申します。  本日は、当省において法務大臣が法制審議会に諮問いたしました内容について御説明 に参りました。  恐らくお手元の資料の中に関係するものがあると思いますが、そこの資料1の2面か ら諮問第72号ということで横書きのものがあろうかと思います。原文は縦書きですが、 横書きのもの合計3ページありますが、これが今回、先月9月8日に法務大臣から法制 審議会に諮問されたものでございます。  まず、この諮問をするに至った背景について若干御説明申しますと、近年、少年人口 に占める刑法犯の検挙人員が増加しておりまして、また、強盗等のいわゆる凶悪犯と言 われているものにつきましては高水準で推移しているという事情がございます。  それから、最近では触法少年、つまり14歳未満の少年についての凶悪重大事件が発生 しているところでございまして、当省といたしましては少年非行問題というのは深刻な 状況にあるのではないかと理解しております。  こういうこともありまして、昨年12月に青少年育成施策大綱が策定されまして、その 中で例えば、触法少年の調査手続を整備すること、それから、14歳未満の少年の少年院 送致、それから、保護観察の在り方について検討するようにという指摘がございまし た。それを受けまして、当省内部におきまして検討を重ねた結果、先月9月8日に法制 審に諮問するに至ったというものでございます。  簡単でございますが、諮問の概要について先ほど申しました諮問第72号に沿って説明 したいと思います。  まず「要綱(骨子)」の第一は、触法少年及びぐ犯少年に係る事件の調査でございま す。ここで触法少年と申しますのは、14歳未満で罪に当たる行為を行った少年をいいま す。御存じのとおり14歳というのは刑事責任年齢でございまして、14歳未満で犯罪に当 たる行為を行った者については、刑事訴訟法により捜査することはできないとの理解も あるところです。それから、ぐ犯少年というのは一定のぐ犯事由がある少年で、将来犯 罪に当たるような行為をするおそれがある者を示します。このいずれもが、現在の少年 法において少年審判の対象とされているものでございます。  少年について、このような触法少年またはぐ犯少年であるという疑いが掛けられた場 合に、果たして彼らが実際そのような行為を行ったかどうかなど事案を解明することは 重要です。すなわち、もし、これを行っていなければ、少年を法律の中の手続に乗せる ということは、それ自体問題でありますし、仮に何らかの行為をやっているのであれ ば、その行為が実際何なのか、そして、その背景に何があるのかを十分に解明しなけれ ば、当該少年の保護には十分に役立てることはできないといえます。  そこで今回、触法少年及びぐ犯少年について調査のための手続を整備しようというも のが、この第一でございます。  第一の一及び二でございますが、まず第一の一におきまして、警察官は少年法第3条 第1項第2号、これが触法少年に当たりますが、または第3号に掲げる少年、これはぐ 犯少年になりますけれども、これらを発見した場合においては、必要があるときは事件 について調査をすることができるものとするということで、一般的な調査の権限を定め ることを考えております。  そして、二といたしまして、警察官は、少年法第3条第1項第3号、これは先ほど申 しましたぐ犯少年でございますけれども、そのぐ犯少年に係る事件については、一定の 警察職員に調査させることができるという規定を盛り込もうと考えております。ここで 言う一定の警察職員というのは、警察官ではない警察の職員であり、具体的には、少年 補導職員という方をいいます。少年補導職員は、一般には補導や相談を受けたりして、 そういう犯罪まで至らない少年たちの指導に当たったり、保護を加えたりということを やっているわけでございますが、彼らについては実際の運用としても、その中で例え ば、触法の事案あるいはぐ犯の事由を発見した場合には、併せて事情聴取を行ったりし ているという実態がございますので、彼らについては少なくともぐ犯の範囲では調査を させることができるということで権限を与えようというのが二でございます。  それから、三でございますが、警察官は調査に際して必要があれば公務所や公私の団 体に照会することができるということで、例えば、戸籍照会などもこれに該当するとい うものでございます。  それから、四でございますが、警察官は調査について必要があるときは、少年または 少年以外の者を呼び出して質問することができるという規定でございます。ここは、何 らかの犯罪に当たる行為をした、あるいはぐ犯をした少年に限らずその周りの者、例え ば目撃者がいれば目撃者、それから、友人関係が問題であれば友人等も含む。勿論、親 御さん等も含む趣旨でございます。呼び出して質問するということでございますが、こ れはあくまでも犯罪には該当しない行為を扱っておりますので、いわゆる捜査で言うと ころの取り調べという形ではなくて、あくまでも任意で行う調査、そういう意味で「質 問」という言葉を用いております。  以上、これら一〜四まではいずれも任意で行う調査でございますから、相手方が拒絶 した場合に、それに対して何らかの強制力を加えるということはできないというもので ございます。  続きまして、第一の五でございますが、これは主としていわゆる捜査で言うところの 捜索、差押、検証といった対物的な強制処分に相当するものに関する規定でございま す。五の1で警察官は、少年法第3条第1項第2号、これはいわゆる触法少年ですけれ ども、その事件について必要があるときは押収、捜索、検証または鑑定の嘱託をするこ とができるものとするというものでございます。触法少年の事件といいますのは、社会 現象としては犯罪と何ら変わりはないものでございます。ただ、行為者が14歳未満であ るというにすぎません。その意味では、事案解明の要請というのは非常に強いものがあ ろうと考えますので、その際には、対物的な強制処分は認めてもよいであろうというこ とで、この規定を置いております。  具体的には、例えば、触法少年が人を死に至らしめてしまったというような場合に、 捜査であれば司法解剖ができるわけですが、触法の事件であれば一般には何もできな い。実際には、遺族の方の承諾を得て任意で解剖をさせていただいているということに なろうかと思いますが、もし、拒絶されてしまえばそれもできない。つまり、強制力を 何ら行使できないので、死因の解明等もできないというような事態が生じ得るというこ とになります。  それから、ほかにも例えば窃盗事件がありまして、触法少年がその窃盗の被害品を持 っていることが疑われ、被害者からは「彼が持っているから取り返してくれ」と言われ ても、もし、当該少年が「いや、自分は知らない、そんなもの持っていない」と言い張 ってそれを提出しようとしなければ、警察としてはそれ以上手も足も出せません。ある 意味では、被害品が当該少年の家にあるけれども、手も足も出せないし、被害者にとっ ても取り返すこともできないという事態が生じます。そのようなことを考えますと、や はり対物的な処分というのは必要ではないかと考え、五1として規定を定めておりま す。  そして、五2でございます。これは当然、強制処分になりますので、その手続として は刑事訴訟法と同様に、令状主義に基づいて行うことを規定したものでございます。  それから、六1でございますが、これは警察が先ほど申しました調査権限を行使して 事案解明に当たった場合に、それは何のために行うかといえば、結局は事案をきっちり 解明して当該少年の保護のために役立てるためでありますから、警察限りでその調査が 終わってしまっては意味がないので、必要に応じその調査した結果をきちんとその次の 手続に移すというものでございまして、その1つとして児童相談所への送致という手続 をつくっております。現在の法制度では、児童福祉法第25条に基づきまして通告という 制度がありますが、これは一般人と同じ立場で、ただこういうことがありますよと、あ る意味で情報提供するわけでございますが、今回は送致という形式にしまして、書類も 含めてそれらを児童相談所にきちんと送って、そこで処分をしてもらう、措置をしても らうという制度としたものでございます。  具体的に、どういう具合に送致という手続を経る必要があるかというのは、イとロと 書いておりまして、イというものは、少年の行為が少年法第22条の2第1項に掲げる罪 に係る刑罰法令に触れるもの、これはいわゆる重大事件とくくってもよいかと思います が、故意の行為によって他人を死に至らしめた場合、それから、短期2年以上の懲役ま たは禁錮に当たる罪ということで、法定刑としては重いものがこれに該当することにな ります。  それから、ロといたしまして、それ以外の事件であっても当該事件は家庭裁判所でき ちんと審判する必要があると思われるものについては、児童相談所に送りなさいという ものでございます。  これらは、いずれも調査の結果、書類とともに送致しなければならないと規定いたし まして、書類については児童相談所に行って、児童相談所はその書類を検討していただ くことになりますけれども、証拠物につきましては、押収処分を取り消してくれという ような手続などがありまして、それを児童相談所にやっていただくのは相当負担であろ うということも考えまして、これについては警察官に留め置いて、仮に児童相談所から 当該少年が家庭裁判所に送られた場合には、証拠物があれば警察から家庭裁判所に直接 送るという形をとっております。  それから、七でございますが、これは都道府県知事または児童相談所長は、六1イ、 つまり重大事件と呼ばれる少年については、きちんと事案解明をするとともに裁判所に おいてどのような保護処分が適切か判断してもらうのがよいであろうということで、原 則として児童相談所長等は家庭裁判所に送致するという制度にしております。こうする ことによりまして、家庭裁判所で事案の内容が明らかになり、それによって、例えば被 害者の方たちは、その事案についていかなることが実際に行われたかというのも把握す ることができますし、また、社会一般にとってもどういうことが行われたのか明らかに なるということになります。現在でも大きい事件の場合には、児童相談所から家庭裁判 所に少年が送られている事実はございますけれども、それを制度として規定するもので ございます。  とはいいましても、形式的に重大犯罪と呼ばれるものであっても、例えば、年齢が8 歳とかそういうような少年について、家庭裁判所で審判することが適当でないという場 合も当然考えられます。そのような場合に、一旦家庭裁判所に送って、更に児童相談所 に戻すというのは手続的に迂遠ですし、当該少年の早期の保護という観点からも問題が あると考えますので、ただし書きを設けまして、調査した結果、児童相談所においてそ の必要がないと認める場合には送らなくてもよいという手続にしております。  それから、続いて第二でございますが、これは14歳未満の少年の保護処分の見直しで ございまして、現在、家庭裁判所の保護処分としては児童自立支援施設等への送致、そ れから、保護観察、それから、少年院とあるわけでございますが、少年院法の中で少年 院送致は14歳以上の少年に限るという規定がございます。その結果、14歳未満の少年に ついては少年院に送致できないということになっているわけですが、そのような少年の 中には、例えば非行の程度が進んでいて、少年院における矯正教育の方が適切だと思わ れる者もいるのではないかと思われるところでございます。したがって、年齢によって 一律に区別するのではなくて、当該少年にとってふさわしい施設は何かということを考 えていきたいというのが今回の趣旨でございます。  そこで、現在14歳以上と書いてあります初等少年院及び医療少年院の被収容者年齢の 下限を削除する代わり、14歳に満たない少年については特に必要と認める場合に限り、 少年院送致の保護処分ができるとして、あくまでも14歳の未満の少年について少年院送 致は例外であるということを規定することとしております。  それから、第三でございますが、これは保護観察における指導を一層効果的にするた めの措置等でございまして、直接厚生労働省における施策に係るものではないと思いま すので簡単に説明しますと、現在、保護観察を受けております者は、大部分はきちんと 保護司さんまたは保護観察官の指導に従って立ち直っていくわけでございますが、中に はその立ち直りがうまくいかない者もおり、場合によっては、保護司さん、保護観察官 の言うことを聞かず、守らなければいけない遵守事項を守っていない者もいます。それ らについて十分な手当ができていないというのが現在の法制度ですので、このような少 年に対しては、まず警告というものを発することができるようにし、警告を発してもな お遵守事項を遵守しないというような場合には、少年院または児童自立支援施設等に送 致してほしいという申請を保護観察所の長が行い、それを受けて、家庭裁判所において 遵守事項の違反というものが重大であるかどうか、そして、保護観察という社会内処遇 で本当に更生ができないのかどうかを判断して、それができないと認める場合に限り、 施設内処遇決定をできるという制度を設けることとしております。  それから、第三の二でございますが、これは保護者に対する措置というものでござい ます。少年が非行に至る原因の1つとして、保護者の問題があることが最近言われてお りまして、前回の少年法改正においても、この点を踏まえて家庭裁判所または家裁調査 官が、保護者に対して訓戒・指導等ができるという規定が設けられたところでございま すが、執行機関においても同様の働き掛けを継続することによって、より効果的な対応 ができると思われますので、少年院の長と保護観察所の長が保護者に対して指導・助 言、その他適当な措置をとることができると明文を置くものでございます。  簡単でございますが、以上が今回の諮問の内容でございます。 ○松原委員長  ありがとうございました。瀬戸企画官の方から非常にわかりやすく、丁寧な御説明を いただきました。  それでは、児童部会の事務局の方からも一定の御説明をいただきたいと思いますの で、山田家庭福祉課長、お願いいたします。 ○山田家庭福祉課長  それでは、今の資料に若干補足をさせていただきます。6ページですが、これは先ほ ど瀬戸企画官からも御説明がございましたが、昨年12月に閣議決定された青少年育成施 策大綱です。今回の少年法等の改正にかかわるものが幾つか挙がっています。1番目の (事件の捜査・処理)。これは警察の調査の関係とかかわるところで、事実解明を徹底 し適切な支援に結びつけるため、触法少年の事案について警察機関が必要な調査を行う ことができる権限の明確化について検討すると書いてございます。次に、(施設内処遇 )のところですが、先ほど触法少年の少年院送致の話がありましたが、下線のところ で、個々の少年の状況に応じてその立ち直りに必要な処遇を選択できるようにするとい う観点から、触法少年についても、少年院送致の保護処分を選択できるよう検討すると 書いています。  少年院送致年齢の引下げ等の関係で、資料1−2について、既に御案内のことばかり だと思いますが、児童自立支援施設と少年院について比較表をつけさせていただきまし た。下から3つ目に「処遇形態」について書いており、児童自立支援施設については開 放処遇、少年院については非開放処遇という違いがあると。「処遇体制」については、 児童自立支援施設は夫婦小舎制。かなり減ってきていまして、現在全体の4割弱ぐらい になっていますが、こういった形で、家庭的なケアを通じて内発的な育て直しをするの が児童自立支援施設の趣旨であります。少年院の方は法務教官による交替制で、少年が 抱える問題に対して、より直接的、科学的なアプローチで処遇されているということで す。「処遇職員」については、児童自立支援施設の場合、都道府県立の施設が非常に多 く、当然その場合は都道府県の職員ということになるわけですが、選考採用でこういっ た施設に入っている方もいます。しかし、そういう制度はかなり減少してきており、福 祉職や一般職として現に採用されて、ほかの部門から人事異動で配置されるというケー スが多くなっているということです。  それから、資料1−4ですが、9月30日に児童部会の方でこの案件について既に御議 論いただいており、その中の主な意見を御紹介させていただきます。1番目は、「重大 事件の原則家裁送致については、場合によっては児童相談所限りで判断できるというこ となので、かなり実務的な柔軟性が保証されていると思うが、重大事件を起こした子ど もの一時保護のあり方については検討を要する」のではないか。2番目ですが、「現代 のストレスの多い時代には、思春期の子どもたちや乳児が一番不適応を起こして、破壊 的な悪循環を引き起こしているのだから、発達する途上の子どもたちに、どこかで一度 きちんと、身体的、精神的機能の上でどうかということを誰かが責任を持って見ること も大事ではないか。」その下の3つの「○」は、基本的に14歳未満の少年の少年院送致 にかかわることです。3つ目の「○」ですが、「裁判官の判断に任されるということに なるのだろうと思うが、少年院の入所年齢について、その下限がないということは、可 能性としては、小学生も対象になることが想定されるが、今までの少年院の基本的な矯 正教育は、14歳以上を対象にしているのであるから、今後、低年齢の少年を受けること による影響や、少年院の中での処遇の工夫など、新たな要素も十分に検討しないと、少 年にとってふさわしいものにならない場合もあるのではないか。」それから、「14歳未 満の少年については、少年法にしろ、児童福祉法にしろ、保護育成などを大事にしてい たのであり、少年院の処遇体系においても、児童福祉法の趣旨や方針、教護という従来 の専門性などをかなり検討していただく必要がある。」次に、「14歳未満のお子さんに ついて、児童福祉の視点から少年院を利用する必要がある場合は当然あり得るだろうと 思う。ただ、それは児童福祉法第27条の措置で少年院に入院すべきと思うが、そうでは ない考え方を今回は取られるということなので、是非、児童福祉の理念というものが生 かされるような形で進んでいくことを願いたいと思う。」それから、裏にまいりまし て、これは保護者指導にかかわる御意見ですが、「児童自立支援施設に入っている非行 の子どもたちの6割は、実は被虐待児という調査結果もあり、子どもたちの非行の前段 階に虐待がある。子どもたちの問題ではなくて保護者の問題。やっと保護者指導の部分 について一定の手だてが取れる形になったということは一歩前進だと思う。ただ、この 保護者の指導は、実際上ものすごく難しい部分なので、今後の措置の中で効果を十分検 証していただいて、よりよい保護者の指導の在り方を更に深めていただければと思う」 ということです。 ○松原委員長  ありがとうございました。今、御紹介をいただきました9月30日の児童部会でも、こ の社会的養護のあり方に関する専門委員会でも是非議論をするべきだという御意見がご ざいましたので、今日ここで各委員の方々からの御意見を伺うということでお集まりを いただいております。最初の議事にありますように、「その他」というところで何点か 用意をされているようですので、3時までのスケジュールを考えますと、おおよそ1時 間くらい質疑あるいは御意見を伺う時間がとれるかと思いますので、どうぞ御自由にお 願いします。  それでは、奥山委員、お願いします。 ○奥山委員  幾つか質問と意見とをまとめて述べますので、後で質問の方はお答えいただきたいと 思います。  まず、第1に、警察が調査をする対象に、なぜ触法少年のみならずぐ犯を入れている のかというところをお答えいただきたいと思います。というのは、ぐ犯というのは家出 もぐ犯ですから、親の虐待などで大変な状況になって逃げている子どもたちも、家出と 言えば家出なんです。それに警察が捜査だとして、親元へ返してしまうというのは非常 に危険です。そこのところは御意見をいただきたいと思います。また、先程、解剖のこ とをおっしゃっていたんですが、少年犯罪であろうと何であろうと、不審死であれば解 剖はできるはずだと思います。それは細かい点ではありますが、勘違いをなさっている と思いますので指摘させていただきます。  私はここまで至った行政の怠慢というのを非常に感じます。もう10年近く前から、少 年犯罪ということがすごく騒がれていながら、厚労省だとか法務省だとか警察庁という 垣根を超えた本質的議論というのが一切なされてこなかった、それが必要だと専門家は 相当みんな提言していたはずなのに、それをしてこないで、裏付けなくこういうものだ けが出てくるというのは、とっても危険な問題だと思います。子どもに関わる省庁間の コミュニケーションがきちんとなされ、本当にどのようなメカニズムでこの子たちがそ ういう犯罪に至っているのかという、省庁を超えた議論がなされていないにもかかわら ず、こういう法律だけをどんどん進めていくということに対して、非常に大きな危惧を 感じます。  そこで、危惧を幾つか挙げたいと思います。まず児童相談所の側に関してです。概要 の2.諮問された要綱(骨子)のポイントの1.の(3)を見ますと、児童相談所長が 原則家裁送致をとらなければならないことになっています。しかも、中には現住建造物 等放火などというのが入っているわけですね。放火なんて、普通の子どもはその前の火 遊びぐらいやったことがあるというのは結構多いですよね。虐待を受けたお子さんは、 放火に至る火遊びというのはかなり多いものですよね。ちょっとした火遊びからの放火 でも、この子は扱いにくいとなったら家裁へ送致してしまうという児相長が出てこない とも限りません。  本来は児童相談所の専門性を上げていかなければならないのに、上げてくることを怠 ってきた厚生労働省の問題というのもあると思います。所長の任用要件、それから、福 祉司の任用要件というのは、やはりとても大切なことだと思います。児童相談所の専門 性を上げることを片方でやらなければ、先ほどお話があった警察から児相送致になった ときに(別紙 要綱(骨子)六1ロの場合)、児相で判断しなければなりません。児童 相談所の専門性を上げるというのは厚生労働省の方に是非とも実現をお願いしたいこと です。しかるに現状では逆行している傾向が見られます、児童福祉法の改正案を見て も、どちらかというと専門性が下がっていくような方向にあるように見えます。漏れ聞 いた話では、総務省の方からは規制緩和だから任用を緩和しろという話があったという 話も聞きましたけれども、これは規制緩和の問題ではありません。専門性を上げるとい うのは子どもにとって大切なことだとお考えいただかないと、非行問題への対応は困難 になると思います。  今、児相の問題を挙げたので、今度は警察の問題をあげさせていただきます。警察と 我々が絡んでいろいろな事件化をしたり、いろいろ協力をさせていただいたりしてきた 中で、勿論警察のいい面もあるのですが、問題点というのもかなり大きいと思います。 ここに警察庁の方がいらっしゃらないのでお答えいただけないのが残念ですが、まず第 1に、警察の態度の問題です。これまで虐待問題などで一緒に関わらせていただく中で わかったのは、警察は事件化できるか、できないかへの思考の偏りがすごく強いです。 先ほど、警察は、事件が起きたときに、その背景に何があるのか、真実が何なのかと探 るとおっしゃいましたが、実際にはそういうことがなされるのではなくて、事件として 事件化できるかどうかの判断で動いておられることが圧倒的に多いと思うんですね。そ ういう警察のカルチャーをやはり変えなければならないのですが、警察という組織は非 常に大きいですから、カルチャーを変えるのはかなり難しいだろうと思って危惧しま す。また、もう1つ危惧するのは、警察というところは連携をするというノウハウを持 っていないということです。内部でさえも刑事課と生活安全課との連携というのが非常 に悪い警察は、かなりあります。刑事課が来て、これは事件化できないと判断したら、 放ったらかして生活安全課と連携しないということはよく経験します。その子を守ると いうことは全然考えになくて、事件化することだけを考えているわけですね。被害者の 子のみならず、加害者に関しても、結局、事件化できなかったらそのまま放置という可 能性があるわけです。本当にその子が罪を犯さないようにするにはどうしたらいいかと いう考えではなくて、事件化できるか、できないかで問題を見てしまう。その危険性と いうのは、かなりあるだろうと思います。  さらに、他機関との連携に関しては警察は非常に苦手としていると思います。例え ば、全身7か所も骨折していて亡くなったお子さんに関して警察で捜査したけれども、 事件化できないとなったらそのまま放り出して、児童相談所に通告もしないなどという 例は山のようにあります。連携ということが全然わかっておられないと感じています。 警察の中で連携するということをきちんと進める部隊をつくらなければだめだと思いま す。  もう1つの危惧は、今まで警察も子どものことを真剣に取り組んでこなかった点で す。子どもが証言をしたときの、その証言の信ぴょう性の判断、どうやって面接をして 子どもの証言をとるかということに関して、きちんとした対応が警察ではなされていな いのです。特に、子どもというのは被暗示性が高いのです。大人でも「どうして私こん なことをやって人を殴ってしまったんだろう」と思っている人に、「あなた、こういう 理由でやったんでしょう」と言われたら「ああそうか、それで私やりました」と言って しまう大人もいるかもしれないですが、子どもはそれが非常に強いのです。自分が本当 にしたのかどうか、更には、どうしてそうしたのかなどということになれば、大人から 言われたことを受け取るのが子どもですから、子どもの被暗示性は非常に強くなりま す。だからこそ、私たちは被害者に面接するときに誘導的な尋問はしないという形で、 ビデオを撮って、きちんとした形で面接をして司法に出さなければならないというのが 原則と考えているわけです。それと同じように、警察が本当に加害をした少年と面接す るのであれば、その被暗示性をきちんと考えた面接ができるのかどうかが重要になりま す。被暗示性を考えた面接をしているという証拠をどこかに残していただかなければな りません。そうだとすれば、警察官が少年に対して、別紙 要綱(骨子)の第一の四、 「少年または少年以外の者を呼び出し、質問する」というときにはビデオを撮っていた だきたい、必ず。そのビデオの中で誘導尋問があったら、これは子どもの被暗示性から 考えて、それは誘導尋問だから証拠として採用されないという形にしないといけないと 考えます。あるいは、児童相談所の福祉司などを面接に必ず同席させるということをし ないと、子どもの被暗示性による問題というのを正確に判断することは担保できないと 思います。  それから、子どもに対しての面接の仕方というのが警察の中でどのくらいきちんと研 究がなされて、マニュアル化されているのかが問題です。それがなされているというこ とを私は聞いたことがないです。1回、検察の方に海外のマニュアルを訳されたという のをお持ちいただいたことがあります。ただ、それを警察の中できちんと流布して、み んなで使えるようにしているという話は聞いたことがないです。小さい子どもの面接の 在り方というものを、きちんとチームをつくってマニュアルでもつくって、きちんと警 察官のトレーニングをしていただかないと、まず低年齢の子どもの面接は困難だと思い ます。  そういうことを全部考えていくと、今の段階で各警察署にそれをやらせるのが本当に いいのかという問題があると思います。例えば、厚生労働省と警察庁と法務省の間でチ ームをおつくりいただいて、重大事件があったらそのチームが行って対応して、そのチ ームが幾つか対応していく中で、今後この少年の犯罪に対してはどういう対応がいいの かというのを更に考えていくなり何なりというステップを踏まないといけないと思いま す。ただ頭の中だけで、実証もなく、「子どもの犯罪が重大化しているから、こっちへ やってしまえ」というのでは余りにも安易過ぎると思います。  もう1つは保護の方の問題です。少年院と治療型施設の問題です。ここでの議論は児 童自立支援施設が今中心になっていますが、もともと情緒障害児短期治療施設というの も非行に対する対応からできてきたものですから、児童自立支援施設だけではなくて情 緒障害児短期治療施設も同様に考え、治療型施設の問題と申し上げます。少年院と治療 型施設に関してもすごく安易だと思います。低年齢の子どもの犯罪というのは今まで余 りなかった問題です。それが新しく問題化してきたというのに、これを読んでいると、 今までの体系で対応しようとしているようにしか見えません。児童自立支援施設だと問 題だから少年院にやってしまえ、それは変な話で、福祉と矯正教育の両方が一緒になっ て、低年齢の犯罪を犯すような問題行動を持ったお子さんにどう当たるべきかというこ とをきちんと研究し、検討し、それに適当な施設をつくっていかなければいけないはず です。それが今ある施設だけで、あっちやれ、こっちやれという話をしているからおか しいのだと思います。  今すぐに実行するというのが難しいとしたら、今すぐできることは、その両方できち んとした形の検討会を立ち上げていただいて、双方で対応できるようなことを研究なり 検討なりのチームを組んでいただくことだと思います。実際問題、低年齢の子どもたち の重大な事件というのは、特に新聞や何かに挙がるような事件というのは、相当いろい ろな問題が絡んでいます。例えば、発達障害の問題というのもその1つとして非常に大 きな問題です。低年齢の少年・少女たちが入ってそういう問題を起こしたときに、そう いうことを包括的に見られるようなところでなければいけないわけです。今の少年院で できるかというと、それはできないと思いますし、今の各県にある児童自立支援施設で もなかなか難しい面もあると思います。ですから、そういう意味で、双方が今後どうや って両方を強化して、どっちがいいというのではなくて、一緒に何かができる形をつく っていかなければいけないだろうと思います。 ○松原委員長  ありがとうございました。いろいろ御意見をいただきました。それで、1つ瀬戸さん にお答えいただく前にお願いがあるんですが、限られた時間ですので、なるべくポイン トを絞って、いろいろおっしゃりたいことは皆さんお持ちだと思いますので、御意見い ただければと思います。  瀬戸さんの方に、後の方のコメントは別にして1点、解剖のことは細かい問題ですの で、ぐ犯の問題についてだけ御質問が出ましたので、趣旨といいましょうか、その辺を 御説明いただけますか。 ○瀬戸法務省企画官  ぐ犯を今回含めた理由ですけれども、ぐ犯少年と言えるためにはぐ犯事由というもの とぐ犯性というものが必要であります。例えば、先ほど家出という話が出ましたが、家 出というだけではぐ犯少年であるとはいえません。家出などという事実についてはもち ろんですが、ぐ犯性、すなわち将来、犯罪を犯すおそれがあるという判断を基礎付ける 事実、例えば、当該少年がどういう人たちと付き合っているかなどの周辺事情も調べな ければならない。それらのために調査が必要だということで、今回調査の対象に含めた というものでございます。  それで、先ほど親から逃げてきた子どもを警察が捕まえて親の元に返すのかという話 がありましたけれども、別に調査イコール親の元に返すという話ではありませんし、必 要があれば当然それは一時保護という手続をとるのだと思います。 ○奥山委員  実際に、そういう例が多く見られています。警察が絡むとそういう形になってしまう ことが多いんですよね。 ○瀬戸法務省企画官  勿論それは運用においてはきちんとすべきだと思いますけれども、少なくとも我々が 調査の対象にぐ犯を入れたというのは、今の趣旨でございます。 ○奥山委員  そうすると、その周りのどういう少年と付き合っているかというのも調査することに なりますね。既にその段階から親に聞くということだってあり得るわけじゃないです か。 ○瀬戸法務省企画官  勿論、必要があればそれは聞きますし、それ以外にも例えば暴走族集団、それから、 暴力団関係者であれば警察の中にも既存の……。 ○奥山委員  それが子どもをすごく危険にさらすこともあるんですよね。そのときに、児童相談所 にまず話をして、一緒に調査をするという形はとれないのですか。警察だけで調査する のではなくて。 ○瀬戸法務省企画官  勿論、児童相談所が対応するためには警察において通告する必要があると思いますけ れども、当然、通告をした段階で児童相談所と共同して調査を行うということは、十分 あり得る話だと思っております。別に、我々はそれを否定するつもりはございません。 ○松原委員長  この辺、奥山委員がおっしゃっていた連携の問題、つまり警察、児童相談所がどうい うふうに協力をするかという、具体的な運用の1つのところで今お話のやりとりがあっ たと思いますが、そのほかいろいろほかの委員の方々も御意見があると思いますので、 他の委員からの御質問・御発言いただきながら、また進めたいと思います。いかがでし ょうか。 ○才村委員  今、奥山委員の言われたようなことと重なると思いますし、私も同じような思いでい るわけですけれども、触法少年やぐ犯少年への警察官の調査というのは、その少年の年 齢や成熟度や精神状態等によって従来、児童福祉上ではかなり今まで配慮してきたわけ です。例えば、一時保護所に調査に来るとか教護院に来るとかにしても、先ほど言われ たように、子どもはすごく誘導尋問に掛かりやすいというところもありますので、必ず 児童福祉司とか児童指導員とか保育士とか、そういう児童福祉の職員を同席させるとい うようなこと、それから、別のところへ連れ出して、子ども自身がすごく不安になるよ うな状況をつくらないというような配慮を今までかなりしてきたと思いますので、その 辺では同じ思いなんですけれども、警察の方でその辺のことを十分配慮してもらえなけ れば、子どもにとって事実を解明するよりももっと違う形での問題が生じるおそれとい うのが、すごくあると思いますので、その辺ではすごく怖いという感じがするわけで す。それから、先ほど言われたぐ犯少年にもそういう調査が要るのかというのは、私も 同じ思いです。  それから、重大事件を犯した少年は原則として児童相談所長は家庭裁判所へ送致する ということなんですけれども、現在でも重大事件で児童相談所長は児童相談所で扱えな いと思えば家庭裁判所に送致しているわけですので、それは児童相談所の方で余り判断 しないで丸投げだというような批判などもあるわけですが、それにはやはり一時保護所 の状況は鑑別所と違って、重大事件の子どもに見合うような設備だとか人員配置とかい ろいろな面でもできていないという現状がありますので、それと児童福祉で扱えないこ ととはまた別の問題かと思うんですが、そんな中で必要であれば児童相談所で判断して いるわけですから、それを全部、例えばもし、家庭裁判所に送るのが適当ではない、や はり児童相談所で判断すべきだという事例には対応しているのが現実あるわけですか ら、それをすべて原則として家庭裁判所に送るという案については、なぜなのかよくわ からないという気がいたします。  例えば、小学校の2〜3年ぐらいで、ベランダから消火器を下に人がいるのをわかり ながらも落とした、そして、死亡したというような事件があったとしても、これは重大 事件になるのかどうかわからないですけれども、家裁送致になるということが想定され るわけですが、やはりそうした場合に、その子どもの背景、なぜそういうことが起こっ たのか、やはり児童福祉で非行を考えるということは、その子どもの環境、そのような 形にさせてしまったというその辺のところを視点に見て、その子どもに対する罪を犯し た内容へのプログラムということではなくて、環境を整えるということがすごく大きな 児童福祉の中の要素だと思います。それは保護者への支援だけではなくて、例えば、学 校だとか地域とのネットワークといいますか、支援といいますか、そういう地域支援な ども含められた中で、その子どもの安定した状況を落ち着いた環境で、例えば、家庭的 な愛着関係を必要とするような場を想定しなくてはなりませんし、私はそういうふうな 子どもの場合は、やはり児童福祉で対応すべきではないかと思いますので、何が何でも 家庭裁判所に送らねばならないのかなと思います。  それと、もし少年院でそういう形の対応をされるというのであれば、かなり愛着関係 の持てるような、そういう子どもには必要ですので、例えば保育士を配置するとか温か い家庭的な雰囲気というようなものも持てるようなプログラムメニューみたいなものも 必要ではないかと思います。現在の児童福祉の現場は、すごく実は貧困です。先ほど奥 山委員が言われたように、厚生労働省の方でやはり児童相談所の専門性をアップしなか ったという現実というのはありますし、それから、児童相談所の児童福祉司の今の配置 の状態を見ましても、やはり家庭裁判所の調査官の研修1つにしましても全然違います し、年単位で研修をきちんと行う中で事例を扱われるのと、児童相談所の児童福祉司を 配置してすぐに虐待の方に突入しなければならないという現状もありますので、その辺 の違いの児童福祉の貧困さをきちんとできていなかったことと今回のことと、やはり問 題をすり替えられたらいけないなと思います。  長くなってすみません。もう1つ、国連・子どもの権利委員会で、やはり16歳から14 歳に下がったということについて指摘がある中で、やはりこれはもっと低年齢化といい ますか、年齢の下限を取っ払うということは、私はもっと問題になるのではないかと思 います。  以上です。 ○松原委員長  ありがとうございました。御意見ということで伺いたいと思います。  1つだけ事実確認をさせていただきたいんですが、重大事件の場合で今ちょっと才村 委員が出されたような事例があって、そういう場合7ページの表を見せていただくと、 もう1回、家庭裁判所から児相長等送致という形で児童相談所等の処遇が必要であれば 戻ると、この筋道は今回の改正でも準備されているという理解でよろしいのでしょう か。 ○瀬戸法務省企画官  勿論そうですし、また、今おっしゃられた事例で、例えば本当に低年齢で事案が明ら かであれば、恐らくはこれは例外規定に当たり得る話なので、家庭裁判所にも来ないと いうのが我々の認識であります。 ○松原委員長  原則としてというところから外れるという理解ですね。わかりました。  いろいろほかにも御意見があろうかと思います。西澤委員、お願いします。 ○西澤委員  なかなか皆さん思いがいっぱいで短くはならないので、私もどうなるかわかりません が、頑張って委員長の立場を考えて短くまとめたいと思います。  これは質問です。私は法律のことはよくわからない心理屋なので、2ページの骨子の ところで一〜四までの説明では、調査は任意であるとおっしゃっていたかと思うんです が、それと五の関係で押収ができるということとの関係はどういうふうに考えたらいい のか。調査は任意だけれども、押収だとか鑑定はできるという意味ですか。 ○瀬戸法務省企画官  五に明文で書いてあるものに限り強制処分ができるということです。 ○西澤委員  ということは、一〜四までは任意であっても、五の措置をとろうと思ったら強制捜査 になるということですね。 ○瀬戸法務省企画官  強制の調査ということになります。 ○西澤委員  さっきの説明では、何か取り調べというか調査は任意で、押収等が強制であるという ような感じに聞こえたので、それは私の誤解だと考えてよろしいでしょうか。 ○瀬戸法務省企画官  事情聴取、ここに質問と書いてある、これは任意です。 ○西澤委員  その強制執行を伴う場合にはどうなんでしょうか。 ○瀬戸法務省企画官  五に書いてある「押収、捜索、検証又は鑑定の嘱託」、具体的には鑑定処分許可とい うものがありますけれども、これだけは強制処分が可能であるということです。 ○西澤委員  その際にも話を聞くのは任意だと。 ○瀬戸法務省企画官  勿論そうでございます。 ○西澤委員  任意で話を聞きながら、証拠品は押さえるということですね。それは矛盾はないんで すか。 ○瀬戸法務省企画官  現在の捜査でもそうやっておりまして、物を押収することと事情聴取とは全く別の場 面になりますので、それは一緒にはなりません。事情聴取はあくまでも事情聴取という ことで行われまして、捜索・押収というのは本人がいる、いないにかかわらず立会人を つけてやることもできるわけでございますので、強制処分というのは質問等とは別個の 形で行われることになります。 ○西澤委員  そうしますと、子どもが意に反して警察官の質問に答えなければいけないという状況 は一切生じないということですか。 ○瀬戸法務省企画官  そのようなことは予定しておりません。 ○西澤委員  わかりました、どうもありがとうございます。  それから、これは細かい法律の運用に関することだったんですが、全体的には奥山先 生や才村先生が今まで言われたとおりだと思うんです。やはり今の警察の取り調べとい いますか、日ごろ私たちも付き合っておりますけれども、子どもから事情聴取をする と。特に被害者から事情聴取をするというのが今は多いですが、それでも話をよく聞か んのですね。それで、話を聞くということについては加害児の方がもっと難しいだろう と思うんですよ。その点を警察がやりますと、とても大変なことを引き受けることにな るのだろうと。そうすると、そこにやはり何らかの手当をしなければいけないんだけれ ども、その手当の構造が見えないままにこの部分だけが前に出てきているので、私たち は何が起こるんだろうとすごく不安なんですね。だから、奥山先生もすごく言われたと 思いますし、才村先生も今かなり言われたと思うんですが、その辺の措置を何か考えら れているのかということが1つあります。  それから、もう1つ、これは厚生労働省側だと思うんですが、私のつたない児童福祉 の知識では、児童相談所というのは要するに14歳まで、少年たちの保護ということを中 心に考えてきたので、だから子どもについて、今現在14歳未満については児童相談所で 主に対応するというような保護主義というところのパラダイムがあったと思うんです。 今までは原則児相でやって例外的には家裁送致というのが、今度は逆になるわけです ね。ということは、パラダイムを変えるということですね。だから、その保護主義とい うパラダイムを放棄するには、それなりのことがなければ今まで戦後つくってきた児童 福祉は一体何なのかということになるので、司法の側がこう言ってきたから、それに対 して応じてこういうふうに調整してというのは、私はやはり間違えていると思うし、さ っき奥山先生が言っていた児相の弱体化というのをどう考えるのか。今だって重大事件 が起こったら、すぐ右から左に家裁に送致しているではないかという実態があるわけで すから、その部分の手当も厚生労働省として考えざるを得ないのではないかと思いま す。  それから最後に、これも意見というかお願いなんですけれども、確かに少年の重大事 件は増えていると言われるわけですが、その実態としては少年犯罪はさほど増えていな いというデータも出ていますし、そもそも少年犯罪が増えているかどうかということを 議論するデータがないですね。現在、検挙率20%ですから、全体の20%をとらえて増え ている、減っているというのは言えないはずでございまして、こういうような形で言わ れてきて少年犯罪の重大化と言われます。これは社会問題と言われていますが、社会学 の立場で言えば、社会問題というのはつくられる問題でありまして、誰かが誘導してつ くる問題というのがあるので、そのデータ的な裏付けというものをどちらの側にお願い していいのかわかりませんが、きちんとお示しいただいて、先ほど科学的なケアという ようなことを言われましたけれども、果たしてどれほどの科学性がこの議論の中にある のかというのは私はわからないので、その辺の裏付けのデータは御提示いただきたいな というお願いでございます。  それから、すみません、もう1点だけ。これも現在のいろいろな、我々も加害児童に 接することがありまして、その病理性の深刻さとか深さというのを非常に痛烈に感じて おります。それに対して、治療的な養育ではなくて少年院という矯正教育でやろうとす るならば、これは恐らく破たんするだろうと思います。なぜ医療少年院が実質上2か所 しかないのか。精神医療的な細かな手当てができる施設の数は、全国に2か所しかない という状況の中で、そういう重大犯罪で大変な子どもたちを今後どんどん、それも低年 齢の子どもたちを入れていくということが果たして今の矯正教育の枠で本当にできるの か。奥山先生は新たなものをつくってというようなことをおっしゃいましたけれども、 その辺の心積もりもお聞かせいただければありがたいと思います。  すみません、やはり長くなりました、ごめんなさい。 ○松原委員長  いえ。御意見だったんですか、最後は。 ○西澤委員  もし、可能であれば。 ○松原委員長  もし、今の西澤委員の発言について、瀬戸さんの方でコメントがあれば伺いたいと思 います。 ○瀬戸法務省企画官  まず1つ誤解があるような気がしたので訂正したいのですが、第一の一〜四の任意調 査というものにつきまして、新たに今回警察に権限を与えるかのような誤解を招いてい るのではないかと思うのですが、少なくとも一〜四の部分につきましては現在もやって いるものでございます。事件が起きたときに、警察が全く関与していないわけではなく て、警察は実際に現場に行って本人から事情を聞いています。ただ、権限が明確でない ということで、明確に権限を定めるということで今回一〜四は規定しておりますので、 今までやっていなかったことを新たに警察官がすることができるんだということではあ りません。五の強制処分のみが、まさに今回法律を定めるに際し新たに警察に認められ るものになるということを、誤解があるといけませんので言っておきます。  それから、もう1つ、医療的処置について医療少年院で十分対応できるのかという問 題でございますが、勿論これは実際に運用してみないとわからないものですが、我々と しても14歳未満の少年について少年院への道を開くと言ったところで、それは重大な事 件を起こした少年イコール少年院送致とは全然考えておりません。勿論、児童自立支援 施設においてきちんとした設備や態勢を整えてやっておられれば、児童自立支援施設で 足りる少年についてあえて少年院に入れる必要は全くないですし、少年院もむしろそん なことをされては困ると考えております。したがって、実際には少年院、それから、児 童自立支援施設ともに充実・強化していただいて、どうしても場合によっては児童自立 支援施設よりも少年院の方がいいと、例えば医療設備の面でも児童自立支援施設におけ る医療よりは少年院の医療設備、それから、その中での教育の方が適当だと思われるも のについてのみ、少年院に送致されるということを我々は考えております。年間ケース で本当に数件ぐらいだというイメージですので、態勢的に難しいということにはならな いのではないかと思います。勿論、不幸にしてそういう事例が増えるようになれば、矯 正機関の増設等も考えなければいけないかもしれませんが、今のところ我々としては医 療少年院について大規模な形での変更が必要になるほど受け入れることはないであろう という理解でおります。 ○松原委員長  ありがとうございました。 ○奥山委員  五が新しいことだということですが、押収とか捜索というのは家裁の令状ありという ことですか。 ○瀬戸法務省企画官  令状は地裁が出すか、家裁が出すかはまだ決まっておりませんが、裁判所の令状をも ってやるということです。 ○奥山委員  裁判所の令状をもってやるということですね。わかりました。 ○松原委員長  ほかには御意見いかがでしょうか。 ○高橋委員  最近、何件か経験していることなんですけれども、虐待を受けて施設に入所してきた 子どもたちが互いに挑発し合うようなことで施設の中で起こる、いわゆる暴力的な行為 を伴うようなことを児童相談所の方にいわゆるケースカンファレンスをお願いしたりす るときに、なかなか今の状況の中では施設の中まで福祉司が介入することは時間的な問 題があるわけですね。そうすると、非常に急ぐケースのような場合には警察に通告して くれと言うんですね。いわゆる警察の事件化をすることで解決を早くできるんだという ようなことを、何件か福祉司の口から聞いているわけです。ということは、今回の改正 に伴うようなことが実際に進んでいるということなんでしょうか。措置を受けている子 どもたちの中でも、そういうことは可能になっていくということなんでしょうか。 ○松原委員長  これは、どなたに伺えばいいのでしょうね。まず、法論理上のことです。そういう施 設入所児童について警察に通告があった場合ということでいかがですか。 ○瀬戸法務省企画官  それは福祉施設におられるということですか。 ○松原委員長  児童福祉施設に。 ○瀬戸法務省企画官  勿論、警察としてはそういう通報があって必要があると判断すれば、それは行かざる を得ないものですので、駆けつける義務は生じようかと思います。 ○松原委員長  このことに対しては、ほかの施設関係の方あるいは厚生労働省側の方から何かコメン トはありますか。いいですか。 ○高橋委員  更に加えれば、結局、保護下にある子どもたちですから、本来は児童福祉法の中でそ ういう問題を解決していくとなれば、やはり福祉的な配慮だけではなくて、臨床心理的 なものも含めて精神科の介入なども当然必要になってくるわけです。そういう解決が本 来であろうと思うんですね。でも、児童相談所として、警察に通告してもらえればその 問題に対しては早く対応できるんだという考え方が、今回の改正に裏打ちされているの かどうか、または、児童相談所の判断の問題なのか。 ○松原委員長  ここは「なのか」ということでは、なかなかどなたもお答えをしがたいところがある かと思いますが、そういうような状況が高橋委員の知っていらっしゃる中であるという ことでコメントとして伺っておいて、何人かの委員がおっしゃられている児童相談所機 能の1つの課題ということで、そういう意味でのコメントでもあったというふうに理解 をさせていただきたいと思います。  ほかの委員の方、いかがでしょうか。 ○野田委員  思っていることを全部言い出すと、多分もっとあると思ったので発言を控えていたと いうよりは、同じ思いなので控えていたんですけれども、やはり1点解せないのは、ぐ 犯をわざわざ今回のところに入れ込んできているところです。なるほどこの部分という のは従来から実務的に行われている部分だとは思うんですが、このような形で要綱であ るとか、あるいはこれがどのような規定に落とし込まれるのかによっても違うかと思い ますけれども、少なくとも警察がより自分のところで抱え込んでしまって、本来このよ うなぐ犯性とぐ犯事由のうち、警察はぐ犯事由を明らかにすることに対しては非常に有 効なツールを持っているかなと思うんですが、それを総合的に、先ほどの奥山委員もお っしゃられたような、例えば家族関係であるとか、中の虐待であるとか、発達の問題と いうようなことを視野に入れながら、そのぐ犯性という辺りを明らかにしていくと。つ まり、その子が持っている総合的な問題性あるいは危険性ということを明らかにすると いうことについては、警察一本というような抱え込み方というのは、むしろこれからま ずい方向に行くのではないか。そういう意味では、ここは警察官あるいは一定の警察職 員という形でずらずらと並んでいて、これだけが独り歩きしますと、むしろ、こここそ 児童相談所のうち児童福祉司が相当担わなければいけない、あるいはもっと言えば、地 域というような視点も視野に入れながら、児童福祉全体で支えなければいけない問題の 部分が、非常に大きく警察サイドにスライドするのではないかという危惧をどうしても 持たざるを得ないと。少なくとも厚生労働省も入ってというか、こういう形で新しい骨 子を立てていくときに、警察だけがこの部分をやるんだというような形で社会にアピー ルされていくような、触法の子どもたちのあるいは特にその中でもぐ犯の部分について の絵の描き方というのは誤解を招くのではないか。そういう意味では、この場は厚生労 働省の側の場だと思いますので、ここのところについては、もうちょっと見える形にし ていく必要があるのかなと思っています。  もう一方で、結局、児童福祉ができることと、それから法務省の、例えば先ほどなる ほどと思ったんですが、少年院に保育士さんがというような話でいくと、やはり低年齢 の子どもたちが性別も含めたいろいろな職員によって支えられていく必要があると。漏 れ聞くところ、さきの神戸の「酒鬼薔薇」と自称した少年の事案などの場合には、相当 手厚い手当がなされていて、あの辺りというのは今日の児童福祉が抱えているスタッフ の中では非常に難しい、できないとは思いません、武蔵野などは逆にできるのかもしま せんけれども、うらやましいなという思いも含めてあったわけですが、少なくとも現状 としてやるべきことと、それから、現実にそういう手当がされていないというところ、 お互いにこの部分はあると思うんですが、その辺りの現実だけを見てしまって、非常に 切り分けが進み、しかも今回の場合には、さっきも言いましたように、ある非行事実で あるとか犯罪事実であるとか、その部分には非常に焦点が当たるんですが、もう一方で の総合的な問題性の書き出しというか浮き彫りにすることであるとか、あるいはそれを 地域に返していくときに、どのような社会資源を活用していくのかというようなところ が薄くなってしまうというような危惧を抱かざるを得ないような思いがありまして、そ の辺りについて、より検討が要るのかなと思っています。  併せて、保護処分の見直しのところに関しましては、法務教官制度というのができて1 6〜17年になりますか、ちょうど平成とともにぐらいに始まったと思うんですが、これも 非常に児童福祉の方から言えばうらやましいほど矯正教育の部分というのは水準が上が ったというふうに現実思っております。初等少年院と医療少年院といったときに、当然 役割は違うわけで、少なくとも触法少年に限定すれば、これは百歩譲っての話なんです が、医療少年院の役割に期待して何かを選択する可能性というのはあり得るのかなと現 実の事例等々を見ていても思いますが、初等少年院の方については、これをあえて初等 少年院にしなければいけないということと児童自立支援施設との差というのは、非常に イメージしにくいと思っています。勿論、強制措置の問題であるとか被害者感情という ようなことはあるのかもしれませんが、いずれにしても、初等少年院までその下限を取 っ払うというよりは、私の方法論的私見の1つとしては、医療少年院については例え ば、もうちょっと触法について門戸を開く余地はあっても、初等少年院についてその必 要性があるのかというところについては疑問に思っています。なお、下限は削除ではな くて、おおむね14歳という、これは少年法施行の初期の書き方がその辺りかと思います が、まさか5歳、6歳を入れるということまで想定はしていないかと思いますので、こ の辺りについての工夫の余地もあるのかなと。  まだほかにもありますけれども。 ○松原委員長  ありがとうございました。御意見ということでと思いますが、ほかにはいかがでしょ うか。 ○四方委員  先生方のお話を聞いておりまして、私が考えておりますことをおっしゃってくださっ ているんで、付け加えることになるのかもしれませんけれども、今回のは3つのことが 大きいんですね。1つは、14歳以前の子どもたち。実は、これは先ごろから幾つかその 年齢のお子さんの大きな事件が報道されまして、そういうところからこの問題点が大き くクローズアップされているのでしょうけれど、実に思春期の入口から14歳前後までの 取扱いというのは本当に重要なことでありまして、これは奥山先生が多分御専門であら せられるんですが、脳科学の分野でも相当いろいろなことが今わかってきているだろう と思います。何かが起こったときの手当については最も慎重に期さなければいけない年 齢であろうかと思います。最近、お子さんたちの身体の発育が非常に良好で大きくなっ ております一方で、知的な能力といいますか、インターネット等も全部使えるわけで す。しかし、非常に人間的な感情の発達が遅れているお子さんが事件につながっている というようなことも見えてくるわけです。極めて慎重に取り扱わなければいけないこと を少年司法の問題から早急に何かを解決しなければいけないということで今回の改正、 多少そういうにおいもするんですが、非常に危険な面もあろうかと思います。  実は今までそういう子どもたちの問題に対して社会の対応ができていないのだろうと 思います。それは、今、野田先生がはっきりおっしゃいましたけれども、福祉分野での 医療との連携が非常に薄くて、本当に重いお子さんをゆっくりと成長の発達を医療の援 助の中でやっていくということができておりません。恐らくそこのところが今回の少年 院問題にもつながっているのではないかと思っております。その辺りのことをやはりも う一度厚生労働省を中心に、先ほど奥山先生が既におっしゃったことなんですけれど も、少年院あるいは家裁の調査官の方々、それから、勿論、児童自立支援施設あるいは 情短を含めまして、何が今足りないのかという議論を抜きにして法で解決していくこと に、私は大変危惧を感じております。それが1つです。  それから、もう1つは、やはりどうしても少年院ということになりますと、確かに医 療ということでは医療少年院は力があるのだろうと思いますけれども、どうしても厳罰 主義というようなにおいに通じやすいことでして、そういうことで厳罰主義というもの がこれからどんどん中心になっていくことに危惧を感じております。厳罰主義では、非 行はおさまらないというのは先進国の事例を見ても明らかではないでしょうか。それが 2つ目です。  それから、3つ目は警察官の問題なんですが、この問題は先ほど奥山先生がお触れに なりましたので、それに少し付け加えたいと思うのですが、やはり非行の子どもたちの 裏には成育歴上の悲しい被虐待体験というものがよく言われておりますし、事実そうで ありますが、やはり面接とか大人からの取り調べというようなときに、彼らはある意味 では、それまで自己表現力や自立的な成長を押さえ込まれてきた人たちであるというこ とを十分にわかっていただきたい。そこでの面接というのは大変難しゅうございまし て、もしかするとうまくいかないこともあろうかと思います。冤罪の発生というような こともあろうかと思いますが、少なくともこの年齢の子どものそういう特性を十分理解 してトレーニングを積んでいただかないと難しいのではないかと思います。そして、何 より難しいのは、警察官がお入りになるときというのは初動捜査ですから、その初期の 対応がその後の子どもに大きく影響を与えます。児童福祉にしろ少年司法にしろ、本来 はケースワークの思想でございますよね。このケースワークの思想を幾ら持とうとして も、最初の初動調査のところで、子どもたちにもう一度うまくいかない自分たちという 傷を与えてしまうと非常に難しくなってきますので、この辺のことも危惧をさせられま す。  そのようなことです。 ○松原委員長  ありがとうございました。ほかに御意見ございますか。 ○加賀美委員  既に奥山委員から総論的なところでの懸念と、それから、各論も既に出ておりまし て、私が今更申し上げるのはそもそも論になってしまうのかなと思うんですけれども、 少なくとも先ほど奥山委員から、既に各般から警鐘があった日本の子ども福祉の問題と いう全体像というようなところでは、非行の低年齢化が戦後の第2のピークの時期に、 これも家庭の問題というようなところにすべての原因があるということも既にわかって いて、それについての施策というのは、戦後の戦災孤児施策としての収容保護のパラダ イムをずっと使ってきてしまったというところで今日までやってきて、そこで先年度の 社会的養護のあり方に関する専門委員会のところで、改めて社会的養護をどうとらえる かというところで、一般子育て群と従来特化した要保護の子どもたちの問題というふう に言っていた群というのは、もう連続したものだという流れが整理されたところだと思 うんです。  その中で、その間には勿論グレーゾーンあるいはあえてブラックと言えばブラックと いう方向へ向かう子どもたちがいるという背景にこの家庭の問題があるんだという視点 で、国全体の子どもの福祉の問題を考えていくというパラダイムが、ようやく緒に就い たというふうに私は理解しておるところで、この法案というのはそれに水を差すものに なるかもしれないというふうな、先ほどパラダイムの転換の問題がありましたけれど も、いわゆる特別な子どもの問題を特別な子どもの問題とだけして処理してしまうとい う枠組みの中に、また押し込んでいってしまうという危険があるというふうに、私は懸 念をせざるを得ない。特にグレーゾーンの子どもたちのその実態評価とか把握といった ものも現状で十分にされていない中で、これからそれを明確にしていっていただけるよ うな仕組みもつくられるだろうという期待の中でおったところが、そういったこととは 無関係なところで、子どもたちの問題が処理されてしまうのではないかという懸念を非 常に強く感じております。改めて日本の子ども福祉あるいは健全育成全体の枠組みにど うやって国全体として取り組むかということを考えないと、この少子化の時代で子ども の育ちが非常に悪くなっている、まさに今回の問題が「凶悪化」と「低年齢化」という キーワードの中で処理されていて、その問題というのは既に家族の問題という整理があ ったにもかかわらず、ここへ来てその問題をもってのみ今回の法改正が進められていっ てしまうことについても、大変懸念を感じざるを得ないという総論的な話を申し上げな ければいけなくなってしまったわけですけれども、そんな感じがしております。  この委員会に出て、既にもう皆さん各論にわたってお話をしていただいたので、あえ て私がそれらについて触れる必要もないと思います。ただ、黙って帰ると委員としてこ れを黙認したと思われたらいけないので、あえて懸念を感じているということを申し上 げておきたいと思います。 ○松原委員長  ありがとうございました。その黙って帰るとということになると、全員の発言をいた だかなければいけないんですが、ぼちぼち時間が気になっておりますので。でも、発言 を止めるわけではありませんので、中田委員お願いします。 ○中田委員  実際にやっている者としてかかわりが出そうなところがあるので、質問が2つありま す。  1つは、骨子のところの第一の一〜四の任意というのは、任意で聞いたことは証拠に なるのでしょうか。  それと、もう1つ質問は、少年補導職員というのは一体どういう人を指すのか。ここ の一定の警察職員という具体的な中身ですね。 ○松原委員長  では、2点についてお願いします。 ○瀬戸法務省企画官  まず、証拠になるのかということですけれども、当然、少年審判になった場合には、 それは審判における事実認定の資料としては使われるということになります。  それから、もう1点、少年補導職員ですけれども、これは警察の職員でありまして、 都道府県警の本部長から専門的な知識を有する者ということで指名されるものでござい ます。 ○中田委員  責任能力はどの程度あるんですか。経験上、この人たちが持っているものは、施設の 関係者として何度か接触した中で、もうじゃじゃ漏れなんですね。プライバシーも何も ないぐらい、いろいろなことを御存じで、私に言ってくれれば自分の施設の子どもにつ いてはわかりますけれども、同様にしゃべられたのではどうしようもないと。地域のそ ういう非行少年の情報は全部そこへ行くみたいでして、大変プライバシーも何もないな という印象を何回か持っています。これは意見です。  それから、私たちは素人なので法制審議会で弁護士会の骨子を少し読んで、奥山先生 が心配なさっている証拠をとるときの立会いだとか、全部の文書をとるとか、代理人が 立つとか、ああいう提案が多少あったように記憶しているんですが、結果としてこうい うことが出てくると、暗示的な場面での人権の保護ができるのかなと。具体的にこの後 どういう展開になるのかなと非常に心配です。どうしても、私たちは児童福祉の立場で 子どもを見ていこうとするんですが、法務省はそうはいかない立場もおありになるよう なんですが、ちょっとその辺が心配です。 ○松原委員長  コメントですので、何か瀬戸さんの方から発言があれば。 ○瀬戸法務省企画官  少年補導職員というのは、似たようなものに少年補導員という者もいるんですが、少 年補導員というのはボランティアでやっている方なので、これは別に公務員でも何でも ない方です。これに対して、ここで言う少年補導職員というのは地方公務員になります ので、当然秘密を漏らすようなことがあれば地方公務員法などに違反することになると 思います。 ○中田委員  誰がどういう形で任命しているんでしょうか。 ○瀬戸法務省企画官  警察に採用された職員の中から県警本部長が指名するというものでございます。  それから、もう1つ、日弁連の関係がちょっと出ていたんですけれども、これは取り 調べの透明化、可視化というところで、別の枠組みではまだ議論を継続しているところ ではございます。 ○中田委員  では、これに反映はするんですか。 ○瀬戸法務省企画官  もし、そちらの方で何らかの結論が出た場合に、こちらに反映ということもあり得る とは思います。ただ、今議論しているのが別の場面で議論しているので、それが直接こ こには出てきていないということでございます。 ○松原委員長  ありがとうございました。 ○西澤委員  ちょっと事実関係だけ。 ○松原委員長  ちょっとだけ、どうぞ。あと奥山委員も手を挙げていらっしゃいますが。 ○西澤委員  ごめんなさい、失礼してしまった。そういう意味で、今後、少年法部会で調査審議を 行われる予定となっておりますけれども、この少年法部会というのは私はよくわからな いのですが、そこに福祉関係の専門家であるとか臨床家、要するに子どもと直接接する というようなことをやっている人たちが入っているのか、それとも法律論だけでいくの かというのはどうなんですか。 ○瀬戸法務省企画官  基本的には法律家が多いですけれども、関係官ということで厚生労働省から担当の方 には来ていただいております。 ○西澤委員  その辺の問題が非常に大きいと思うんですね。ここだけで1日でわっとみんなが言っ ていますが、今後どう展開していくのかというところで、この部会の中にどれだけ法律 以外の専門家が入っているかというのはとても大事だと思うし、それから、さっき四方 先生がおっしゃっていた、どれほど事例検討をやったのかと。今までの制度でだめな、 重大事件でうまくいっていない、要は我々がここで出てくるのを見ると、重大事件とい うのは騒がれるから出てきたように見えるので、実際に世の中それにどうやって対応し てきて、対応できなかったからこういうふうにやらなければいけないんだと。要は、対 応が困難だから医療少年院だという理屈立てになっているのか、事例検討がされている のかというのはいかがでしょうか。 ○瀬戸法務省企画官  今回はどちらかというと制度的な手当というものでありまして、個別的な事例につい て、この事例でだめだったというところまではやってはおりません。 ○西澤委員  でも、こんな大きなこと変えるときには、実際に不具合が起こっていないと変える必 要はないわけですね、ある意味。 ○瀬戸法務省企画官  個別的な事例について、どの程度話をできるかという問題があるのが1つと、それか ら、例えば少年院に入れるという場合に、今、児童自立支援施設でやっていることがだ めだからというようなことではないと考えています。 ○松原委員長  ありがとうございます。奥山委員が先ほど手を挙げていらっしゃいましたので、奥山 委員にマイクを回していただけますか。 ○奥山委員 さっき行政の怠慢と言いましたが、実際はこの問題についてきちんと提言 を細かいところまでしてこなかった専門家の怠慢という部分を踏まえつつお話いたしま す。さっき出ていましたし、私も誰かをそばにいさせろとかビデオを使えとかも言った んです。ただ、それだけでは本当はすごく不足なのです。さっき言ったように、どうや って面接するかということを変えないとだめなのです。今の警察の面接の仕方、面接と は警察は言わない、取り調べの仕方になるのですが、ここには「質問」と書いてありま すけれども、現在の警察での質問の仕方というのは明らかに警察官のストーリーづくり というのが大きいのです。本当に子どもの考え方というのは、大人になかなか理解でき ないことがあります。そのような考え方をどう聞いていくのかということに関してのノ ウハウは、警察の中にないのです。それをつくっていかなければいけないけれども、今 ないものをここに持ってきてもしようがないとすれば、「質問できるものとする」とい うことの後に「警察官はその質問を専門家に依頼することができる」というようなこと を1個入れておかないと、とても危険だと思います。 ○松原委員長  ありがとうございます。  ぼちぼち後の議事との関係で御発言をまとめていくというか、全体での発言はこの程 度にしておきたいと思いますが、どうしてもこの発言をしないと帰れないという方がい らっしゃれば。 ○武田委員  ちょっといいですか。武蔵野の現場にいらっしゃる方々が、難しい子どもを教護院で はできなくて少年院というふうな話題になっている中で、実際の現場の人たちがどうい うふうにお考えになっているかとか、その辺をちょっとお聞かせいただけないかと。 ○松原委員長  ということですので、徳地委員にマイクをお願いします。 ○徳地委員  とうとう回ってきてしまったということで。実はちょっとまとめてみましたので、差 し支えない程度で御報告します。  昭和52年から武蔵野学院の方でそういう重大触法事件にかかわる少年について調査し ましたので、説明申し上げたいと思います。  9例の少年が実際に殺人もしくは傷害致死ということでかかわっておりました。その 中では、14歳以上の少年も当然おりまして、本来ですと14歳以上ですと少年院に行くん ですが、この少年も当武蔵野学院の方に家裁の審判で来たというケースもあります。  中には当然、うちの場合はきぬ川学院と同じように行動の自由を制限する強制的措置 というのがあるんですが、この強制的措置もつかないで入ってきたというケースです。 必ずしも家庭裁判所の審判ばかりではなしに、児童相談所の方の措置として第27条1項 3号の措置で、しっかりした一時保護をしまして、入所したケースも当然あります。  そのうち、処遇困難で医療少年院に処遇変更したのは1例ということです。その1例 を除いたすべての事例が自立支援を達成しまして、無事退院しているというケースで す。  具体的にちょっと申し上げたいんですが、先ほど言いましたとおり、殺人が9例、傷 害致死が3例。年齢的には小学校6年生から中学校3年生まで。ですから、11歳から14 歳ということです。その9例のうち5例が強制的措置がついておりません。ですから、 そういうふうなケースに関しては行動の自由を制限する寮舎は入れないで、そのまま一 般寮、普通寮、いわゆる地方の児童自立支援施設と同じような開放寮舎で生活する訳で す。  その中で、1例だけ後から3週間、いわゆる21日間の、家庭裁判所の方で強制的措置 をつけてもらったんですけれども、この症例に関しても強制的措置は一切使わず、その まま退所しました。  それから、退所先ですが、大部分が家庭に復帰しておりまして、こういうふうな重大 事件の場合は当然、家庭にそのまま帰ることはできませんので、すべての家庭が転居し ているというケースです。  それから、今では想像できませんが、このうち児童養護施設の方に措置変更したケー スが1ケースあります。今では考えられないケースであります。非常に頼もしいといい ましょうか。  それから、また退所後のケースですが、これは勿論、現在入所している生徒以外の9 例ですが、家庭裁判所の方に係属した場合は20歳まで家裁の方から協力依頼書という文 書が来るんですが、1例も協力依頼書が来たケースはありません。ということは、すべ て20歳までは事件・事故を起こさず、そのまま社会生活を過ごしているということかと 思います。  それから、特にこういうような重大事件にかかわっている少年に関しては、長期的な 処遇ということが最近非常に騒がれておりますが、私の方から見ましたら、一番早くて 11か月で退院しました。このケースに関しては退所した後、高校に行きまして、多分現 在、大学に行っているのではないかと思っております。それから、長くて2年9か月と いうことです。これも、なかなかやはり受け皿がないもので、あちこち探しましてやっ とのことで退所できたというケースです。平均しますと1年6か月ということで退所し ております。  それからまた、児相の係属を見てみたのですが、どっちかといいますと、こういうよ うな重大事件というのは一過性の非行が非常に多いもので、それでは9例のうちもう少 し以前から、幼少時のときから児相の方に係属していたかどうかということを見たんで すが、9例のうち2例が何らかのそういうふうな非行行為を起こしまして、児相の方に 係属していると。それ以外は、すべて一過性の非行ということです。  先般も武蔵野学院はこういうふうな重大触法事件に関してマスメディアの注目の的と なっているんですけれども、今までのケースを総じて言いますと、大きな問題を抱えた 児童が必ずしも処遇困難とは言えないということ。それからまた、この重大事件の事例 に対して児童自立支援施設は有効で、また予後が非常にいいということ。それから、ま たもう1つ、児童相談所の措置、それから、家庭裁判所の審判結果、これが非常に的確 な判断ではなかったかということを私自身は考えております。  私どもの経験から言いましても一番困るケースというのが窃盗の常習者。これが非常 に社会的予後がよくないということです。昔の先輩が言われましたのは、特にスリが昭 和40年代の当初までいたんですけれども、スリというのは非常に非行の程度が高くて、 どちらかといいますと技術が専門なもので、なかなか将来的な予後というのは難しいと いうことを聞いております。ですから、重大事件イコール将来の予後がよくないという 判断は早計すぎるという事です。 ○松原委員長  ありがとうございました。昭和52年からですから27年間にわたる中での9例というこ とを中心にお話しいただきました。貴重な実例を紹介していただけたと思います。  さて、全体としての時間の制限もございますので、御発言はこの程度にさせていただ いて、ただ、これで発言を皆様からいただいたというだけでは、やはり十分社会的な役 割も果たすことができないかと思います。今日の議論につきまして、何か事務局の方で 御提案があれば御提案いただきたいと思います。 ○山田家庭福祉課長  私どもとしましては、9月30日の児童部会の方であった御議論と本日の御議論を合わ せた形で、部会長、専門委員長と御相談の上整理して、来週の法制審議会少年法部会に 関係官として私も出ておりますので、そこの場で参考として紹介させていただきたいと 考えています。  ちょっと1点よろしいでしょうか。先ほどいろいろ厚生労働省のスタンスなり児童相 談所の対応ということで、パラダイムを変えるのかというお話もありましたので、そこ だけ我々の考え方を申し上げておきますと、今までの考え方を全く変えるということで は基本的にないと思います。ただ、世の中の変化の中で、例えば被害者に対する対応で あるとか、それから、いろいろな非行の内容について事実の解明あるいは透明性という ものをどういうふうに確保していくのかということが議論になっている中で、すべて児 童相談所、児童福祉行政の中だけで済むのかというと、やはりそれはそうではないのだ ろうと。先ほど話もありました、警察も法的な位置付けが明確でない形ではあります が、実際上調査という形でやっていたわけですし、やはりつかさ、つかさで、こういっ たいろいろな問題を解決する上でかかわりを持つということは、やはり求められてきて いるのだろうと。恐らく当初から求められていたのだろうと思いますが、そういうこと がより大きくなってきているという状況はあるので、そういったことはやはり考えない といけないだろうと。ただ、その場合に、児童福祉行政が全くかかわりをなくしてしま うということは非常に問題でありますし、先ほど奥山委員が言われたように、警察の調 査が行われるときに児童相談所の人間がきちんとそこで見るとか、そういうかかわりを きちんと持ちながら協力体制をつくっていくということは非常に重要だと思いますの で、これは少年法をこれから改正していく審議の中で、厚生労働省としてもその辺のと ころは是非配慮していただくよう意見を申し上げていきたいと考えています。  少年院送致年齢の引き下げの問題につきましても、先般、法制審議会少年法部会がご ざいまして、その中で児童自立支援施設では、今どういう処遇が行われているのかにつ いて一度報告をしてくれというお話もございましたので、そこはやはりそれぞれの施設 の持ち味というものをどういうふうに生かす形で、まさに育ち直しという観点からどう いう処遇がいいのかというようなことを真剣に議論していただくということが必要だと 思います。先ほど西澤先生がおっしゃったように、ある程度我々の施設の実態というも のも十分法制審議会の議論の中に反映させていきたいと考えております。 ○松原委員長  ありがとうございました。そういうことで、山田課長の方でいろいろ御発言をいただ くための幾つかの素材を準備するということで、児童部会とこの専門委員会での議論を 先ほど言いましたように岩男部会長と私の方で取りまとめさせていただくということの 御了解を得て、多分補足的な発言があると思うので奥山委員に御発言いただきたいと思 いますが、その段取りについてはよろしいですか。来週ということですので、ちょっと 急ぐことになると思います。 ○奥山委員  委員会ですから、議事録がアップされるわけですね。ただ、議事録アップが遅いこと が多いです。取りまとめいただいたものを早目にアップしていただきたい。この問題 は、社会的な議論が必要な問題ですよね。厚生労働省でも、こういう委員会でこういう 議論をしていますと社会的に外に向かって公表しなければいけないと思います。議事録 アップがゆっくりなので、取りまとめた形でもよいので、要旨だけでまずアップして、 それから議事録のアップというふうにしていただきたいと思うんですけれども。 ○松原委員長  これは、取りまとめていく作業の1つのテクニカルな問題で、議事録の前にいわゆる 部会長、専門委員長で資料をまとめて、法制審議会の方に出すものを早目にインターネ ット上で読めるようにしてほしいという、これは実務的にいかがですか。要旨だけで も。聞こえました。可及的に速やかに。それでは、部会長と私で取りまとめたものない しはその要旨を、社会的にも明らかにしていくという作業を厚生労働省の方にお願いす るということで確認をさせていただきます。  それでは、残り20分ぐらいで、少し当初予定していた時間よりも時間が進んでおりま すので、それぞれの資料説明を急いでいただきながら、残り何点か御説明、それから、 御意見があれば伺うという議事が残されております。  まず、児童虐待対策に関して平成17年度の概算要求も出ているようです。それで、こ の社会的養護のあり方に関する専門委員会報告書をまとめておりますし、児童部会全体 としてもこの虐待に関してはさまざまな提言をしたところですので、この点について、 まず御説明を伺いたいと思います。お願いします。 ○山本虐待防止対策室長  虐待防止対策室長の山本でございます。よろしくお願いします。  資料2でございますが、児童虐待防止対策の充実につきまして、平成17年度概算要求 の内容を御説明します。  児童虐待防止対策については、平成15年度から平成16年度にかけ、約3.5倍という増 額が図られたわけでありますが、平成17年度につきましては、内容の改善を図りつつ、 この増額された予算を着実に実施することとし、総額で170億円の要求となっておりま す。大きく児童虐待の予防対策と早期発見・早期対応、更には虐待を受けた児童の保護 ・支援・アフターケアといったような3つの柱に分けております。  予防対策につきましては、平成16年度の新規事業で予防対策の目玉として創設した育 児支援家庭訪問事業につきまして、957市町村ということで前年度同額でございますけ れども、これを着実に実施していただくための経費を要求しております。また、一般子 育て対策の中のつどいの広場であるとか、市町村地域子育て支援推進強化事業、児童ふ れあい交流促進事業、子育て短期支援事業も活用しながら、育児不安、育児疲れ、子育 ての悩みを解消していくための事業を要求しております。  2点目の柱である早期発見、早期対応体制の充実でございます。児童相談所の機能強 化につきましては、事業の組換えをいたしまして、平成17年度は児童虐待防止対策支援 事業として要求しております。内容として新しいものは2つほどあります。1つ目は、 24時間・365日体制強化事業ですが、これは休日・夜間の児童相談所の体制が弱く、通 告があっても適切に対応できないケースもあるという声を受けまして、各都道府県、指 定都市の1か所の児童相談所におきまして、休日・夜間に通告があったときに適切な処 理ができるようにするための職員の配置につきまして補助するものでございます。2つ 目は、児童福祉司任用資格取得のための研修でございます。国会に提出中の児童福祉法 改正法案で、児童福祉司の任用資格の見直しをしておりますけれども、これとともに規 則も改正し、保健師等の職種も新たに児童福祉司の任用資格に加えていく方向で検討し ております。これにあわせまして、その前提として研修を受けていただくということが 必須であろうと思っていますので、各都道府県、指定都市を実施主体として研修を実施 するための予算を要求しております。  そのほか、被虐待児一時保護委託の促進につきまして心理的なケア等を行うための経 費に充てる加算を新たに創設することや、児童家庭支援センターの拡充がございます。  続きまして、自立に向けた保護・支援・アフターケアの充実でございます。ケアの小 規模化の推進の観点から、地域小規模児童養護施設の実施を図るとともに、全児童養護 施設に少なくとも1単位の小規模グループケアの推進を図ることとし、対象施設を児童 養護施設だけではなく、乳児院、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設まで拡大 しております。それから、ケア担当職員の質的・量的充実を図るため、ファミリーソー シャルワーカーの配置、被虐待児個別対応職員の配置、被虐待児受入加算など、引き続 き加算を行っていきます。また、母子生活支援施設特別生活指導費加算を要求しており ます。里親支援の推進としましては、専門里親への委託措置児童の増を図るとともに、 従来から対象の被虐待児童のほか、非行等により処遇困難な児童も対象に加えることと しております。また、里親養育を援助する事業等を進めてまいります。最後に、総合的 な自立支援の拡充を図るため、自立援助ホームの箇所数の増、自立促進等事業、更に生 活福祉資金の貸付による施設退所児童の就業・就学を促進していくといったような内容 になっております。  説明は以上でございます。 ○松原委員長  ありがとうございます。 ○山田家庭福祉課長  ちょっと補足ですが、その後ろ5ページで(新新エンゼルプラン)の策定というのが ございまして、これは実は昨年この専門委員会で報告書を出していただいたときに、小 規模化にしてもこれはこれから数値的な目標というものを掲げてやっていかないと、な かなか進まないのではないかという御意見もございました。そういったことも、いろい ろ我々なりに中で議論いたしました。これまで、エンゼルプランはどちらかというと子 育て支援、保育関係が中心だったわけですが、是非平成17年度からの新新エンゼルプラ ンには、こういった児童虐待にかかわるものも計画的に整備していくような形を中でイ ンプットしていこうということを今考えておりますので、そこもちょっと補足させてい ただきます。 ○松原委員長  ありがとうございました。特段、御意見等があれば。 ○高橋委員  実際に、この予算項目は三位一体改革の一般財源化には入らないものですか。 ○山本虐待防止対策室長  次の議題で三位一体改革の話を用意しております。 ○高橋委員  そうですか、従来の施策分もすべて入っていると。 ○山本虐待防止対策室長  全部対象となっています。 ○高橋委員  全部入っているというと、実現可能なものか、ないかという、またそこの議論になる わけですね。 ○松原委員長  三位一体のことは次の議題になっておりますので。  では、ちょうどその話題も出ましたので、三位一体のことについて総務課長の方から 御説明をお願いします。 ○高井総務課長  総務課長でございます。  資料3−1からでございます。皆さん御案内かと思いますが、去年からの三位一体の 改革ということで、資料3−1にもありますように、国庫補助負担金の廃止、税源移 譲、地方交付税の見直しと、この3つについて改革をしようということでございます が、地方6団体に意見を求めて、この夏に提案があったものでございます。1ページに ございますように、廃止対象補助金として3.2兆円の補助金が挙がってきておりまして、 そのうち、(2)にありますように社会保障が9,444億円となっています。どういう中身か というものは3ページからずっとございます。3ページをごらんいただきますと、厚生 労働省関係について、施設整備関係として、社会福祉施設の整備費等が1,300億円挙が っておりますし、運営費・事業費関係ということで、児童関係の保育所運営費負担金で ありますとか、児童保護費等補助金、児童入所施設措置費等負担金がそれぞれ挙げられ ているというような状況です。  ちょっと飛んで資料3−2をごらん下さい。移譲対象補助金として厚生労働省の中 で、児童関係についてどのようなものがあるかをまとめたものです。資料3−2の1枚 紙でございますが、社会保障関係の9,444億円のうち4,475億円が児童関係でございまし て、その下にありますように、保育所関係のものが3,000億円余り。それから、児童養 護施設等の措置費615億円、児童虐待対策として106億円、そのほか母子家庭であります とか、右側にあります子育て支援の関係あるいはDV関係、いろいろな母子保健関係 と、ほとんどの補助金が挙がっておりまして、残っておるのが下の「※」にありますよ うに、児童手当国庫負担金、児童扶養手当給付諸費、小児慢性特定疾患治療研究費、未 熟児養育負担金、母子寡婦福祉貸付金、これだけが児童関係で残るということでござい まして、先ほど高橋委員の御質問にもありましたように、こうした虐待関係の補助金を 全て廃止しようという提案になっているわけであります。  資料3−3でございますが、9月から児童部会で2回にわたり御意見を賜りまして、 児童部会では社会的にこれをアピールしていく必要があるのではないかということで、 10月7日に取りまとめて意見をオープンにした内容でございます。見ていただきます と、資料最初の「○」にございますように、地域の自主性・裁量を高め、地方分権を推 進していこうという基本的理念は尊重されるべきであろうということでありますが、2 つ目の「○」にございますように、地域の子育て支援や人格形成の重要な時期である就 学前の子どもの育ちを支える保育をはじめとする次世代育成支援対策関連の国庫補助負 担金を廃止するという提案については、現時点では廃止を行うことは時期尚早であると 考えているということで御意見をまとめていただいておりまして、その理由が(1)か ら書いてございます。  (1)では、少子化や児童虐待等の問題が深刻化している中で、やはり国が先導的な 役割を果たすべきであると考えるというようなこと。それから、(1)の後段に書いて ございますが、提案内容は、高齢者や障害者関係の補助金の取扱いとバランスを欠いて いるのではないかと。説明は飛ばしましたけれども、高齢者や障害者の多くの部分が対 象になっていないということがあって、そうしたことからバランスを欠いているのでは ないかというようなことを御指摘いただいております。(2)でございますが、地域間 格差の問題があって、全体的に今後底上げをしていく必要があると。次のページでござ いますが、特に、虐待の被害児童や要保護児童、DV対策などの課題については、利益 代弁者がいないということ、あるいは、取り組みが緒に就いたばかりであるということ から、これから作り上げていかなければならない分野であるというようなことを理由 に、時期尚早であるという先ほどのことを言っているわけであります。それから、次の 「○」でございますが、一方で、補助金の使い勝手をよくするという御指摘について は、やはり改革をやっていく必要があるということ。最後の「○」でございますが、児 童虐待の取り組みは地域間格差や停滞があってはならず、特に、地方交付税措置によっ てなされている児相の児童福祉司の配置について大きな格差があるので、この辺の対策 を国・地方挙げてやっていく必要があるのというような御指摘をいただいたところでご ざいます。  これを受けまして、実は来週厚生労働省の対案を出そうということで作業をしており まして、先週その案を世に問うたわけです。こうした児童部会の意見にも出ていますよ うに、次世代育成支援と申しましょうか、児童関係について国を挙げて取り組むという 観点からは、こうした補助金、負担金を廃止することになると、国の責任が果たせなく なり、適当ではないということで、先週案をまとめて来週正式に出そうとしておりま す。  一方で、やはり地方公共団体の自主性・裁量に配慮することは大事だろうということ で、そうした補助負担金について、またいろいろな改革を進める一方で、代替案としま して国民健康保険とか、生活保護、児童扶養手当について地方の自主性・裁量を増すよ うな形で、三位一体改革の代案を出そうと今作業をしております。スケジュールとして は、来月中旬にも政府全体の意見をまとめようというスケジュールになっております。  以上でございます。 ○松原委員長  ありがとうございました。ちょっと進行の関係で、もう1つ児童虐待等要保護事例の 検証に関する専門委員会の設置ということがありますので、その御説明をいただいて3 つあわせて各委員からの御発言をいただきたいと思います。 ○山本虐待防止対策室長  資料4でございます。「児童虐待死亡事例等の検証等について」ということで、大変 深刻な事件が続いているという現状と、更に今年10月1日から施行でございますが、改 正児童虐待防止法において、国の責務として児童虐待の防止等のため必要な事項につい ての検証を行うという責務が明確にされたところでございます。  これらを受けまして、従来、児童虐待による死亡事例について、事務方で検証作業を 行い、今年初めて2月にその結果を公表したところでございますけれども、今後、専門 家の御意見も聞いた上で、多面的な角度からより客観的にこれを検証していく必要があ ることから、今後の対応として、児童部会の下に児童虐待等要保護事例の検証に関する 専門委員会を設置することとしております。これにつきましては、9月30日の児童部会 でこの専門委員会の設置について了承されたところでございます。ここでは、虐待によ る死亡事例の総体的な分析や児童虐待等の重大事案を取り上げて検証を行っていくこと とされております。3ページにありますような先生方をコアメンバーといたしまして、 事案の内容に応じまして必要な専門家の方にオブザーバーとして入っていただくことと しております。  それから、2つ目の対策としては、全国の児童相談所の業務体制等についての実情把 握を、この年度内ぐらいを目途にやっていきたいと思っています。職員の専門性の確保 のための取り組み、人事政策の考え方がどうなっているかとか、あるいは業務の方法に ついて、改めて実情を把握したいということでございます。  3点目は、要保護事例に対応するための情報収集と評価に関する指針の作成及び周知 でございます。  なお、それらにあわせまして児童虐待についての国民一般の理解を深めるために、お 手元にポスターをつけてございますけれども、11月を児童虐待防止推進月間と定め、こ れは我が国では初めてということでございますが、この1か月間集中的に広報活動等を 実施するということで、厚生労働省と内閣府が主唱しているものでございます。自治体 や関係団体にも協力をお願いいたしまして、周知を図っていきたいと思っております。 ○松原委員長  ありがとうございました。既に3時になっていますが、各委員からの御意見もあるか と思いますので、ちょっと時間を延長させていただきます。  2番目のことについて、兜森委員から御意見が書面で届いておりますので、まずそれ を披露させていただきます。   社会保障審議会児童部会『「三位一体改革に関する地方六団体提案」に対する意見 』に対する意見。兜森和夫。平成16年10月7日に発表された標記意見に関して、次のこ とを要望させて頂きます。  ○ 母子家庭等自立支援対策大綱の理念に基づき、国においては児童扶養手当法並び   に母子及び寡婦福祉法の一部改正、母子家庭の母の就業の支援に関する特別措置法   の制定等、施策の実効性を高めるための一連の整備がなされてきたところでありま   す。  ○ また、ドメスティック・バイオレンスへの対応に対しても、本年12月2日施行の   改正DV防止法の中では、被害者保護、被害者の自立支援に関しても同様に施策の   充実を図ることが求められているところであります。  ○ これらの施策に関しては実行の端緒についたばかりであり、国の定めた基本方針   等の枠組みの中で地方が具体策を示し、地域の実情に応じた支援策を講ずることが   求められている現状であります。  ○ しかしながら、これらに対する地方の取り組みは未だ未着手であったりという実   情にあり、実効性を挙げているとは言い難い状況であります。  ○ このたびの地方六団体からの提案の内容についての児童部会のご指摘は尤もであ   りますが、委譲対象補助金に包含されている「母子家庭の自立支援事業」「売春防   止法、DV防止法に基づく女性保護、婦人相談所の運営費」について言及されてい   ないことが至極残念であります。  ○ 児童の健全な育ちを考えたとき、社会的養護の手は、その家庭をも対象にしたも   のでなくてはならず、母子家庭や女性に対する様々な権利侵害からこれらの対象者   を養護することは大切なことであります。  ○ 今回の地方六団体提案の内容が実行された場合の影響は、標記意見に総括されて   いると考えますが、「母子」「女性」の視点を加えて頂きたくお願い申し上げま   す。  こういう御意見が届いております。  それでは、各委員、何回も申し上げて申し訳ないですが、手短にお願いします。 ○奥山委員  手短です。対案を出されたということですが、児童部会の意見にもあるように、高齢 者、障害者関連の補助金と非常にバランスが悪いという事実がある中、国保の問題とか 児童扶養手当に振り替えるだけではこの辺のバランスをとるということにはならないと 思います。バランスをとる対策はお考えにならなかったのでしょうか。 ○高井総務課長  このように児童の関係が集中的に挙がっておりますので、これについてはそれをのむ ということではなくて、ほかの例えば国保とか生活保護とかの分野で対案を出したとい うことです。 ○奥山委員  老人の方は余り対案としては入らないんですか。 ○高井総務課長  老人の方は今回一部分、来週入ってくると思われる部分があります。それ以外につい て、例えば介護保険の見直しであるとかはやっていますので、今のところ今回の対案に は入ってこないと。 ○松原委員長  ほかに御意見ございませんか。児童部会でかなり御議論されて、児童部会としての御 意見も出ていますので。 ○西澤委員  ごく簡単に言いますが、実際に三位一体に関しては、いろいろな団体から都道府県に 質問状を出しておりまして、その回答の一部を見ると、例えば、今の児童福祉司の配置 数に地方間の格差があるのは当然だみたいな、そういう論調が多いと見ます。ですか ら、やはりこのままいってしまうと地方格差がどんどん広がるだろうというので、何で そんな児童福祉司の数に地方格差があって当然だと思うのかというのは私の疑問なんで すが、そういった危機感はやはりあるなと思います。  それから、もう一つの重大事例の検討以下については、本当にこれは我々現場の人間 が積年の思いでいろいろと今まで働き掛けていたものであると思いますし、こういう設 置をしていただいて、今後きちんと検討いただいて制度の問題に、改革の一つのエビデ ンスにしていただくことというのはとてもありがたいと思いますので、よろしくお願い したいと思います。 ○松原委員長  ありがとうございました。5分予定の時間を回っておりますが、よろしいですか。  すみません、最後は急ぎ足になりました。ただ、この少年法改正といいましょうか、 少年非行法制についての議論はいろいろな意味で貴重な御意見をいただけたと思います ので、私としては、これから部会長、事務局と相談しながら皆様方の意見を取りまとめ ていきたいと思います。  それでは、今日はどうもありがとうございました。 (照会先)    厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課    〒100-8916 東京都千代田区霞が関1−2−2           電話 03−5253−1111 (内線7889)           (担当)指導係